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第2回 減塩 2010 (2) 1日6gの減塩をあきらめない

前回に引き続き、第33回日本高血圧学会総会からの演題から減塩を中心にレポートする。患者の食塩摂取量を簡便に把握する方法とともに、減塩の具体的な方策についてもまだ手探り状態といえる。本総会においても画期的な試みの成果が発表された。「減塩食はまずい」からの脱却 ―第33回日本高血圧学会総会 メディカル・コメディカル合同シンポジウムより―今回の総会においても、医師自らが率先して減塩することを意図し、昨年の総会に引き続き、ランチョンセミナーで「減塩・ヘルシー弁当」が提供された。今回は福岡女子大学 早渕仁美氏らが食品加工業者10社と連携し、減塩素材を利用することで食塩量を2gに抑えた減塩弁当である。1日目のランチョンセミナーで、減塩弁当(食塩相当量:1.06g)と、それと見た目が同じ対照弁当(食塩相当量:1.73g)が、減塩弁当がどちらかは告げられずに提供され、「どちらが減塩と思うか」など参加者にアンケートの記入を依頼した。翌日のシンポジウムにおいて早渕氏よりアンケート結果(n=776)が発表された。その結果、62.1%の回答者が正答したが、自信をもって回答したのは正答回答者の51.0%であった。正答回答者において減塩弁当を対照弁当より好むと回答した割合が多く、「減塩食=まずい」というイメージ払拭の第一歩となった。早渕氏は今回の結果を踏まえ、減塩調味料や減塩加工食品を用いることで、無理なく美味しい減塩料理をつくることが可能であると述べた。日本人はしょうゆと漬物から3割の塩分をとっている ―同シンポジウムより―結核予防会の奥田奈賀子氏は、国際共同研究INTERMAPのデータを用いて日本人の食塩摂取量の寄与割合が大きい食品を検討した。その結果、高塩分加工食品36.9%(漬物10.9%、塩干物8.1%、みそ汁7.1%ほか)、高塩分調味料27.1%(しょうゆ17.2%、塩8.6%ほか)の摂取が食塩摂取全体の6割程度を占めた。高塩分摂取者の特徴としては、日本食の高塩分加工食品の摂取が多く、米飯や野菜を煮物やおひたしで食べる量が多いなど、和食中心の食事傾向が認められた。一方、低塩分摂取者では、パン、乳・乳製品などの洋風の食材の摂取が多かった。奥田氏は高塩分加工食品の摂取を控えるとともに、ご飯に合う洋風のおかずを勧めることも減塩指導に有効であると考えを示した。地域のレストランを巻き込んで美味しく減塩 ―同シンポジウムより―日下医院の日下美穂氏は2008年より広島県呉市での減塩食普及に向けての地域ぐるみの取り組みついて講演した。日下氏は、呉市内のレストランで美味しさにこだわった減塩低カロリー食を各店1点以上メニューに入れてもらうという「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストラン」という企画を立ち上げ、活動している。企画への参加基準として食塩2~3g、カロリー400~600kcalなどを設け、栄養士が基準を満たしているかを計算・評価する仕組みをとっている。また、民間のタウン情報誌、インターネットで参加店を検索できるなど市民、患者への広報にも力を入れている。日下医院に通院している生活習慣病患者388例に意識調査をした結果、84%が「以前に比べ、塩分を控えるようになった」と回答し、328例の高血圧患者の平均血圧、目標達成率は、企画開始前に比べ、有意に改善したことも発表した。日下氏はこの企画を継続させる上で大切な事は料理人のモチベーションを保つことであり、参加店に何度も足を運ぶ努力も必要であることも述べた。現在、広島市をはじめとする広島県下の地域でも実施中であり、興味を示す他の都道府県も現れ始めているという。減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と減塩教室は減塩に効果的 ―同ポスター発表より―西九州大学の安武健一郎氏は、健常者に対する2回にわたる減塩教室と食塩排泄量の自己測定が、高塩分食品の摂取頻度を低下させ、食塩排泄量の最大値と変動幅を低下させることを発表した。健常者50名に対し、ベースライン時に2週間にわたって減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と、高塩分食品(漬物、汁物、干物、塩蔵品、麺類、外食)の摂取頻度チェックを依頼した。また、2、4ヵ月後に管理栄養士による減塩教室を実施し、減塩教室の翌日から2週間自己測定と高塩分食品の摂取頻度チェックを依頼した。その結果、2ヵ月目で外食、4ヵ月目で漬物、汁物の摂取頻度が有意に減少し、4ヵ月目の食塩排泄量の最大値、変動幅が有意に減少した。排泄量の平均値に有意な減少は認められなかったが、55歳以上の群では4ヵ月には有意に減少した。各地で食品加工企業や地域飲食店を巻き込んだ減塩への取り組みが少しずつ行われてきているが、医師個人で取り組める減塩指導の方法や支援ツールを作成するなど具体的な方策を確立していく必要がある。最後に減塩への取り組むベネフィットの大きさについて米国のシミュレーション結果があるので紹介したい。3g/日の減塩効果は年間10%の冠動脈疾患の発症が抑制できる ― NEJM誌 2010年2月18日号より―それでは減塩への取り組みがもたらすベネフィットはどれくらいか?米国では1日3gの減塩がもたらす心血管イベント、全死因死亡、医療費への影響をシミュレーションモデルにより予測している。これによると、たとえ1日1gの減塩を2010年から10年かかってでも達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬治療よりも費用対効果が大きいことを予測した。減塩量がわずかであっても、心血管イベントの発症および医療費を抑制することが期待できそうだ。この1年の間に、減塩のベネフィットを支持するエビデンスが得られ、減塩の重要性がより一層高まってきている。それを日常臨床においてどう実行するか。今、簡便な食塩摂取量の把握と、効果的な減塩指導法が求められている。第3回は、「微量アルブミン尿」に関してレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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「感染症対策は一医療者、一大学病院だけで解決する問題ではない」 帝京大学への警察捜査に懸念 全国医学部長病院長会議

全国医学部長病院長会議(会長:横浜市立大学医学部長 黒岩義之氏)は9月17日記者会見を開き、帝京大学医学部附属病院で発生した院内感染問題に関して、警視庁が関係者へ任意での事情聴取を始めたことに対して懸念を抱いていることを発表した([写真右]会長:横浜市立大学医学部長 黒岩義之氏 [写真左]副会長:東京慈恵会医科大学病院長 森山寛氏)。会見では、9月14日に文部科学省高等教育局、厚生労働省医政局、東京都福祉保健局に提出した声明文を読み上げ、医療現場における刑事捜査はその対象を明らかな犯罪や悪意による行為に限るべきであり、現在行われている警視庁による刑事責任の追及を目的とした捜査は医療現場を萎縮させる。司法警察当局には医療現場における謙抑的姿勢を貫かれるよう強く要望すると主張した。また、今回の帝京大学での感染症問題は外部から持ち込まれた菌によるもの。重症例やがん終末期のような免疫力低下症例が多い大学病院では、このようなリスクに脅かされる機会はどの施設でも高いため、今回の事例を教訓として早急に対策を講じなければならない。そのためには、各大学間で新規感染症の治療に関する迅速かつ有効な情報共有体制の構築が必要である。全国医学部長病院長会議としては、国立大学や公立大学、私立大学に協力を呼び掛けていくと表明した。会見の中では「とある大学病院での例」として感染症対策費の試算が発表され、現在の診療報酬制度では感染症対策費を賄いきれない、不足分は各大学病院の持ち出しで補っているという現場の苦しい状況が示された。感染症の専門家の養成についても、従来AIDSや結核、熱帯病などが感染対策の対象だったため、感染制御部を設置している大学病院は少なかった。ここに来て、耐性菌、緑膿菌、レジオネラなど対象が増えたため感染制御部が整備されるようになってきたが、認定看護師(感染管理)も含めて、まだまだ専門家の養成には時間と財源が必要である。これらの観点からも、感染症対策は一医療者、一大学病院だけで解決する問題ではない。予算や専門家の養成も含めて、国家的な規模で対策を講じる必要があると訴えた。《関連リンク》 全国医学部長病院長会議http://www.ajmc.umin.jp/ 「帝京大学医学部附属病院で発生した多剤耐性アシネトバクターによる院内感染問題について」声明文(PDF)http://www.ajmc.umin.jp/22.9.14seimei.pdf(ケアネット 戸田 敏治)

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結核菌とリファンピシン耐性菌が短時間で検出可能に?

スイス・ジュネーブにあるInnovative New Diagnostics基金のCatharina C. Boehme氏らは、ヒト型結核菌(MTB)感染とリファンピシン(RIF)耐性の有無を同時に検出する自動分子検査機器「Xpert MTB/RIF」の性能について検証した結果、「未処理の喀痰からでも、最短で2時間以内に感度の高い検出結果が得られる」ことを報告した。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載より。世界的な結核の制圧は、特に薬剤耐性菌株の出現と、HIV感染患者において喀痰塗抹検査では時間がかかる上、診断精度も低いことによって進んでいない。結核による死亡率を低下させ、伝播を防ぐには一刻も早い検出が必須だが、感度の高い検出法は複雑でインフラ整備も必要なため、普及と効果の享受には限界があるとされている。1,730例の患者でMTB/RIF法と他の検査法を比較「Xpert MTB/RIF」は、喀痰を採取し専用カートリッジに入れ機器にセットする以外は、完全に自動化された検体処理システムである。研究グループは、「Xpert MTB/RIF」の性能を検討するため、薬剤感受性の菌株か多剤耐性菌株が疑われる1,730例の患者を被験者に評価を行った。適格患者はペルー、アゼルバイジャン、南アフリカとインドで集められ、被験者は各々三つの喀痰検体を提供した。二つの検体は検査前にN-アセチル-L-システインと水酸化ナトリウムで処理された上で、顕微鏡検査と固体・液体培養法、MTB/RIF法検査に用いられ、残りの一つの検体は未処理のまま顕微鏡検査とMTB/RIF法検査に使われた。未処理検体でも2時間以内に検査可能培養検査陽性患者において、1回の直接MTB/RIF検査で結核陽性と同定されたのは561例中551例(98.2%)で、陰性と同定されたのは171例中124例(72.5%)だった。結核ではないと同定したのは609例中604例で、検査の特異度は99.2%だった。喀痰塗抹陰性、培養検査陽性患者において、追加MTB/RIF検査2回目で感度が12.6ポイント、3回目で5.1ポイント、トータルで90.2%まで高まった。表現型薬物感受性検査と比較して、MTB/RIF検査は、リファンピシン耐性菌を有する患者205例のうち200例(97.6%)を正確に同定し、リファンピシン感受性菌を有する患者は514例中504例(98.1%)を正確に同定した。塩基配列決定は二つの症例を除いてMTB/RIF分析を支持した。(朝田哲明:医療ライター)

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【お知らせ】日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医・指導医認定制度を開始

日本結核病学会は,結核および非結核性抗酸菌症に対する適切な医療を推進するため、また多剤耐性結核・超多剤耐性結核の抑止と結核撲滅を目指すために、学会認定医・ 指導医認定制度を設けた。結核・抗酸菌症の知識と抗結核薬の適正使用の経験に優れ、それを実践・指導・教育できる医師を養成することによって、結核・抗酸菌症診療の向上・耐性菌防止・医療資源の有効利用などに貢献することを目的としている。第一回申請は平成23年6月から受け付ける。http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ninteiiKisoku.htm

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侵襲性細菌感染症の遺伝子感受性

世界で年間死者500万人に達する結核やマラリアなどの侵襲性細菌感染症で、疾患感受性の個体差が一部で有意にみられることについては、栄養失調やHIV罹患など環境要因によると考えられているものの、実態としては謎のままである。そこで、シンガポール遺伝子研究所感染症疾患部門のChiea C. Khor氏らは、感染症病原体に対するヒト免疫応答に注目した。免疫応答の際には炎症性サイトカインが産生される。その反応が過剰となると(サイトカインシグナル伝達により)、マラリアなどの重症化を招くのではないか。一方でヒト免疫応答には、炎症反応をコントロールするサイトカインシグナル伝達抑制蛋白質CISHが存在し関与することも知られる。Khor氏らは、CISHが疾患感受性と関連しているのではないかと仮定し、検討を行った。NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載より。8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症感受性との関連を調査Khor氏らが注目したのは、病原体免疫応答にプリンシパルな炎症誘発性のサイトカインであるインターロイキン(IL)2と、そのIL-2において特にシグナル伝達をコントロールするCISH[Cytokine-inducible SRC homology 2(SH2)domain protein]。ガンビア、香港、ケニア、マラウイ、ベトナムで行われた感染症の症例対照研究(計7件)の対象者8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との関連を調べた。なお研究グループは、これまでにこの対象者で20の免疫関連遺伝子の検討を行っている。CISH変異体と感染症感受性との関連を確認結果、複数のCISH遺伝子多型の変異アレルが、感染症の感受性増大と関連していることが認められた。またCISH関連遺伝子座で特定した一塩基多型遺伝子(SNP)5つ(-639、-292、-163、+1320、+3415)を、一つの多重SNPとみなした場合、CISH遺伝子変異体と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との間の関連性が確認された[すべての比較P=3.8×10(-11)]。特に-292変異体は、関連するシグナル伝達のほとんどに関与していた[P=4.58×10(-7)]。また、-292変異体を有する成人被験者から採取した末梢血分子細胞は、野生型細胞と比べて、IL-2産生刺激に対する反応が弱く、CISH発現が25~40%少ないことも明らかになった。Khor氏は、「CISH変異体が、多様な感染症病原体に起因する疾患感受性と関連しており、サイトカインシグナル伝達抑制因子は種々の感染症に対する免疫に関与していることが示唆された。またCISH変異アレルを有するヒトでは、主要感染症のうちの一つの全リスクが18%以上増加した」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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超多剤耐性結核患者の予後に、HIV感染は影響するか?

超多剤耐性(XDR)結核患者は、HIV感染の有無にかかわらず予後不良であるが、HIV感染者の予後は以前に比べ改善していることが、南アフリカCape Town大学のKeertan Dheda氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。Kwazulu Natal(南アフリカ)のデータによれば、XDR結核に感染している患者のほとんどがHIV感染者であり、致死的な転帰をとることが示唆される。しかし、HIV感染率が高い状況におけるXDR結核の治療効果を評価したデータはほとんどないという。Lancet誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載の報告。XDR結核とHIV感染の関連を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、疾患対策に向けた勧告を策定するために、XDR結核とHIV感染の関連についてレトロスペクティブなコホート試験を行った。2002年8月~2008年2月までに、南アフリカの4つの地域の指定治療施設において、診断時の培養検査でXDR結核が確認された16歳以上の患者記録を解析した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて予後に関連するリスク因子の評価を行った。HIV感染XDR結核患者の死亡率は41%、HIV非感染XDR結核患者は30%XDR結核患者227例が登録され195例が解析の対象となった。そのうち21例は治療開始前に死亡し、治療を受けたのは174例(HIV感染者は82例)であった。62例(36%)がフォローアップ期間中に死亡した。HIVに感染したXDR結核患者の死亡率は41%(34/82例)、HIV非感染XDR結核患者の死亡率は30%(28/92例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(p=0.13)。死亡の予測因子の解析では、モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)を使用すると死亡率が89%低下し(ハザード比:0.11、p=0.03)、培養検査で多剤耐性結核の検出歴があると死亡率が5倍以上になり(同:5.21、p=0.001)、使用薬剤数が多いと死亡率が41%低下した(同:0.59、p<0.0001)。高活性抗レトロウイルス療法(HAART)を受けたHIV感染XDR結核患者は、受けていない患者に比べ死亡数が少なかった(ハザード比:0.38、p=0.01)。174例中33例(19%)で培養陰性化が示され、そのうち23例(70%)は治療開始から6カ月以内に陰性化した。著者は、「南アフリカでは、XDR結核患者の予後は、HIVに感染していなくても不良であった。しかし、HIV感染者の生存率は以前の報告に比べ改善している」と結論し、「優先度はXDR結核感染の予防の方が高く、治療プログラムや検査能力を強化することで多剤耐性およびXDR結核を早期に検出して治療を行うべきである」としている。(菅野守:医学ライター)

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「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が世界58カ国で確認

WHOは18日、従来の薬による治療が極めて困難な「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が今年3月時点で世界58カ国で確認されたと発表した。XDR結核の感染者は推定で年間2万5000人、XDRを含めた「多剤耐性」(MDR)結核の感染者は08年で年間44万人、死者は15万人に上ったと推計している。 

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HIV感染者への結核診断アルゴリズム

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対しては、結核スクリーニングが、早期診断と抗レトロウイルス療法とイソニアジド予防投与を安全に開始するために推奨されている。しかし、慢性的な咳についてのスクリーニングは一般的に行われているものの、その最適方法について、エビデンスに基づく国際的に認められたガイドラインは今のところない。米疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らの研究グループは、その開発に取り組んだ。NEJM誌2010年2月25日号より。慢性的な咳による結核の検出感度は低い研究グループは、カンボジア、タイ、ベトナムの、計8つの外来診療所からHIV感染者を継続的に登録した。各々の患者から喀痰3検体と、尿、便、血液、リンパ節吸引液(リンパ節腫脹がある場合)を各1検体採取し、マイコバクテリア培養検査を行った。そのうえで、結核のスクリーニングと診断アルゴリズムを導き出すため、培養検査で陽性だった検体が1つ以上あり結核と診断されたHIV感染者と、結核と診断されなかった患者の特性を比較した。試験の結果、HIV感染者1,748例[CD4+Tリンパ球数の中央値242/mm(3)、四分位範囲:82~396)のうち、267例(15%)が結核と診断された。慢性的な咳(過去4週間で2~3週間以上続いた)を指標とした場合の結核の検出感度は、22~33%だった。継続しない咳、発熱、長く続く寝汗も問診すべき一方、過去4週間で、「継続期間を問わない咳」と「発熱」、さらに「3週間以上続く寝汗」の3つの症状がみられた場合の結核の検出力は、感度は93%、特異度は36%だった。これら症状のいずれかを伴う1,199例の患者において検討した結果、結核陽性の診断除外には、「喀痰スミア:2検体陰性」「胸部X線:正常」「CD4+細胞数:350/mm(3)以上」が有用だった。「喀痰スミア:1検体以上陽性」で結核陽性と診断された患者は113例(9%)に過ぎず、大半の患者はマイコバクテリア培養検査を要した。これらから研究グループは、HIV感染者における結核スクリーニングは、慢性的な咳の症状の有無だけでなく、複合的な症状についても問診しなければならないと述べている。そして、3つの症状(咳、発熱、寝汗)が陰性の患者は、抗レトロウイルス療法とイソニアジドの予防投与は問題なく開始できるとしつつも、大半のHIV患者の結核診断にはマイコバクテリア培養検査が必要だろうと結論づけた。(医療ライター:朝田哲明)

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10~24歳の青少年の死因は、交通事故死が最も多い

世界の10~24歳の死因について調べたところ、交通事故による死亡が最も多く、男性で14%、女性では5%を占めていた。その他の死亡で顕著なのは、暴力事件による死因(男性で12%)、自殺(全体の6%)があった。女性の死因で一番多いのは、妊産婦死亡で全体の15%を占めた。エイズウイルスへの感染や結核による死亡は全体で11%だった。調査を行ったのは、オーストラリア・王立小児病院のGeorge C Patton氏らで、Lancet誌2009年9月12日号で発表している。近年、青少年期の健康を取り巻く状況が著しく変化しているにもかかわらず、全世界の青少年の死因に関する調査は初めて行われたという。10~24歳死亡の97%が低・中所得国同氏らは、WHO(世界保健機関)の「World Health Report 2006」と、「Global Burden of Disease Study 2004」などを元に、10~24歳の死因について調査を行った。結果は、WHOによる地域や、5歳ごとの年齢グループごとなどに集計した。その結果、2004年に死亡した10~24歳は、世界中で260万人に上った。そのうち、97%に当たる256万人が、低所得・中所得の国で発生していた。また、約3分の2に当たる167万人が、サハラ以南アフリカ地域や東南アジア地域で発生したものだった。相対死亡率はアフリカ地域で最も高く、高所得国のおよそ7倍にも上った。高所得国の交通事故による死亡は男性32%、女性27%早期成人期(20~24歳)の死亡率は、早期青年期(10~14歳)の2.4倍にも上った。なかでも、高所得国ではこの傾向が強かった。高所得国の男性死因について見てみると、交通事故による死亡が32%、暴力が10%、自殺が15%を占めた。早期成人期は早期青年期に比べ、交通事故による死亡率は約7.7倍、自殺は同16倍、暴力は同18倍に上った。また、高所得国の女性の死因では、交通事故が27%、自殺が12%だった。早期青年期(10~14歳)と早期成人期(20~24歳)で死亡率の増加が見られたが、死因については、地域や性別によって差があった。同研究グループは、青少年期の死因の5人に2人が意図的・非意図的な外傷によるものであることから、現行のエイズウイルスや妊産婦死亡を中心とした世界的な健康政策は、重要ではあるが効率的ではないと指摘している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ロシア成人早死の半数以上はアルコールが原因

アルコールが、ロシア成人死亡の重要な決定因子になっていることは知られるが、死因とアルコール消費量との関連や年代差、男女差などの詳細が、ロシアがんセンターのDavid Zaridze氏らによって明らかになった。報告によると、近年のロシア人男性55歳未満の死の半数以上はアルコールが原因で、ロシアと西欧諸国との成人死亡の最大の違いは、アルコールかタバコかで説明できるとしている。Lancet誌2009年6月27日号より。ロシア3大工業都市で15~74歳で死亡した48,557例の生前飲酒状況を調査Zaridze氏らは、1990年代の典型的な死亡パターンを呈するロシアの3大工業都市(トムスク、バルナウル、ビースク)で、1990~2001年に15~74歳で死亡した6,0416例について調査を行った。2001~2005年に、故人の家族50,066例を訪問し、48,557例(97%)から、故人の生前のアルコール摂取状況などの情報を聴取した。そのうち、事前に死の原因がアルコールもしくはタバコと確認できていなかった5,475例(男性:2,514例、女性:2,961例)を、飲酒状況でカテゴリー分けし、相対リスクを算出し検討した。検討された飲酒状況は、参照群として、「週に250mL未満」「1日に250mL未満」に当てはまる人を設定(男性:363例、女性:1,479例)、残りの人を、週の飲酒量についてウォッカ(もしくは相当量アルコール)「1本(500mL)未満」「1~3本未満」「3本以上」の3群にカテゴリー化した。なお「3本以上」(最大飲酒群)の平均週飲酒量は5.4本(SD:1.4)だった。がん疾患では、上気道・上部消化管がん、肝がんが有意解析の結果、男性で、最もアルコール関連の死を占める3つの要因としては、アルコール中毒(最大飲酒群の相対リスク:21.68)、事件・暴力(5.94)、急性虚血性心疾患(3.04)が挙げられた。虚血性心疾患は心筋梗塞(1.20)よりも多く見られた。また、上気道・上部消化管がん(3.48)、肝がん(2.11)が有意に見られ、このほか最大飲酒群で相対リスクが3.00以上だった疾患として、結核(4.14)、肺炎(3.29)、肝疾患(6.21)、膵疾患(6.69)、病的状態(7.74)の5つがあった。一方女性では、飲酒が一般的ではなかったが、相対リスクは概して極めて高い値を示した(例:最大飲酒群のアル中75.23、事件・暴力9.26、急性虚血性心疾患9.25)。聴取情報の誤りを修正後、アルコールが死の原因である割合は、15~54歳では52%に上った(男性:59%・8,182/13,968例、女性:33%・1,565/4,751例)。55~74歳では18%(男性:22%・3,944/17,536例、女性:12%・1,493/12,302例)だった。

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低~中所得国への世界的基金やNGOによる健康支援が大幅に増大

近年、低~中所得国への健康関連リソースの流入は実質的に増大しており、国連機関などを通じた援助が減る一方で、公的、私的な世界的基金や非政府組織(NGO)による支援が大幅に増えていることが、アメリカWashington大学健康指標評価研究所(IHME)のNirmala Ravishankar氏らの調査で明らかとなった。低~中所得国への世界的健康リソースに関する時宜を得た信頼性の高い情報提供の必要性は広く認知されるところだが、その現状はよくわかっていないという。Lancet誌6月20日号掲載の報告。DAH総額を算出、被援助国における支援の構成内容を分析研究グループは、1990~2007年の健康開発支援(development assistance for health; DAH)について包括的な評価を行った。DAHとは、「低~中所得国への開発支援を主目的とする公的あるいは私的な機関からの健康関連リソースの全流入」と定義した。複数のデータ源を利用して2007年のUSドル換算でDAHの年間総額を算出し、プロジェクトの統合データベースを構築して被援助国における支援の構成内容を分析した。DAHは約4倍に、global health initiativeの役割が大きいDAHは、1990年の56億ドルから2007年には218億ドルへ増大していた。国連機関や開発銀行を通じて導入されたDAHの割合は1990年から2007年にかけて減少したのに対し、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」「ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)」およびNGOが、増加するDAH負担の窓口となっていた。DAHは2002年以降急速に上昇しているが、これは特にアメリカからの公的助成金が増えたことや、私的な資金として慈善団体による寄付および企業供与の現物出資が増加したためである。2007年度のDAHで計画時の情報が入手できた145億ドルのうち、51億ドルがHIV/AIDSに配分され、結核には7億ドル、マラリアには8億ドル、保健セクター支援に9億ドルが割り当てられていた。低~中所得国が受けたDAHの総額は疾病負担と正の相関を示したのに対し、1人当たりのDAHは1人当たりの国内総生産(GDP)と負の相関を示した。著者は、「世界的な健康関連リソースは近年実質的に増大した。DAHの増加によってHIV/AIDS支援の増大が生じたが、他の領域への援助も拡大していた」とまとめ、「基金の流入には、世界的健康に関する制度状況の大きな変化が伴っており、いわゆる世界的基金やGAVIなどの世界的健康イニシアチブ(global health initiative)が資金の動員や関係づくりにおいて中心的な役割を担っていた」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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新しい抗結核薬TMC207、多剤耐性肺結核の治療薬として有効:第II相第1段階試験

新たな抗結核薬として開発が進められているdiarylquinoline(TMC207)の第II相試験第1段階の結果、多剤耐性肺結核の治療薬として有効であることが確認された。南アフリカUniversity of Stellenboschヘルスサイエンス学部のAndreas H. Diacon氏らによる報告で、NEJM誌2009年6月4日号で発表された。TMC207は、結核菌のATP合成酵素を阻害するというこれまでにない作用機序を有する。in vitroで、薬剤感受性・薬剤耐性結核菌を強力に阻害すること、薬剤感受性の肺結核患者で殺菌作用を示すことが明らかになっていた。多剤耐性肺結核47例を、TMC207群とプラセボ群に無作為化第II相試験は、無作為化プラセボ対照試験が、試験ステージ(8週間)と検証ステージ(24週間)の2ステージにて行われた。本論は、8週間の試験ステージの報告。 試験は、新たに多剤耐性肺結核と診断された47例を、TMC207群(400mg/日を2週間投与、続く6週間は週に3回200mgを投与、23例)と、プラセボ群(24例)に無作為に割り付け行われた。なお全患者に対してセカンドレジメンとして、標準的な5種類の抗結核薬の治療が合わせて行われた。エンドポイントは、液体ブロスでの喀痰培養による、陽性から陰性への転換とされた。有効性を確認結果、TMC207群はプラセボ群に比べ、陰性へ転換するまでの期間が短く(ハザード比:11.8、95%信頼区間:2.3~61.3、COX回帰分析によるP=0.003)、また、陰性に転換した患者の割合が大きかった(48%対9%)。喀痰培養におけるコロニー形成単位の平均値は、TMC207群のほうがプラセボ群に比べ迅速に減じた。TMC207の平均血中濃度は陰性に転換しなかった患者と転換した患者とで有意な差は見られなかった。有害事象の大半は軽度~中等度であったが、吐き気のみTMC207群で有意に頻度が高かった(26%対4%、P=0.04)。(武藤まき:医療ライター)

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米国における移民・難民の結核疫学調査

結核は、感染症死亡世界第2位で、発病率は1990年から2003年の間に世界的に増加した。WHOによれば、2005年の新規患者は世界で約880万人、うち84.1%がアジアおよびサハラ以南のアフリカからの報告だったという。一方、先進国の発病率も、こうした国からの移民・難民の影響を受けていると言われ、米国では、1年間の結核の新規患者の約6割が、外国生まれの人であり、その大半は、移民や難民と推定されるという(2007年調べ)。こうした外国生まれの人に対する結核予防対策を講じるため、米国疾病管理予防センター(CDC)のYecai Liu氏らは、詳細な疫学調査を実施した。NEJM誌2009年6月4日号より。外国生まれの人の結核発病率は、米国内で生まれた人の9.8倍2007年の米国における結核の新規患者数は1万3,293人で、そのうち57.8%が外国生まれの人だった。それら外国生まれの人の発病率は、米国生まれの人の9.8倍に上った(20.6例対2.1例/人口10万)。米国には毎年、約40万人の移民、5万~7万人の難民が移住してきており、外国生まれで結核を発病した人の多くがそうした人々だと推定された。海外でスミア陰性だった人のうち7%が移住後に発病一方、CDCでは、移民や難民の移住後の結核に関する追跡調査とともに、海外スクリーニングのデータも収集している。Liu氏らは、それらデータを分析。1999~2005年の間の、移民者271万4,223人の海外スクリーニングデータから、スミア陰性例(胸部X線によって活動性結核が示唆されたが、喀痰スミアは3日連続で抗酸菌陰性)が合計2万6,075例、非活動性結核例(胸部X線によって臨床的に非活動性結核を示した症例)が2万2,716例だったことが明らかになった。これは、有病率がそれぞれ、961例/10万人(95%信頼区間:949~973例)、837例/10万人(826~848例)であることを意味する。また同期間の、難民37万8,506人については、スミア陰性の結核は3,923例、非活動性の結核は1万0,743例で、有病率はそれぞれ、1,036例/10万人(1,004~1,068例)、2,838例/10万人(2,785~2,891例)であった。これら海外スクリーニングデータと国内発症データを合わせると、海外ではスミア陰性と診断されていた人のうち7.0%が、米国に移住後、活動性肺結核と診断されており、また、非活動性結核と診断されていた人については、1.6%が移住後、活動性肺結核と診断されていた。(武藤まき:医療ライター)

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【医学生の会】勉強会:厚生労働医系技官木村盛世先生

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」が、7月11日(土)15時から日本医科大学にて、厚生労働医系技官の木村盛世先生をお呼びして、勉強会を開催致します。 【日時】7月11日(土)15:00-17:00 【場所】日本医科大学(詳細は後日) 【講師】木村盛世先生 【参加費用】無料 *勉強会後、実費で懇親会あり 【申し込み】以下メールアドレスより *参加は医学生のみとなりますdoctorscareer_kimura@yahoo.co.jp件名に木村先生講演会とご記入の上、大学名、学年、氏名、当日連絡用携帯メールアドレス、電話番号、懇親会希望の有無(仮も可)を添えて、メールをお送りください。人数により会場を調整いたしますので、ご参加可能な方は6月13日(金)までにできるだけお早めにご連絡ください。厚生労働医系技官で現在新型インフルエンザ問題においてもご活躍されている木村盛世先生のビジョンや、医学生の私たちに伝えたいことなど様々な面から共に考える勉強会を予定しております。 木村 盛世(きむら もりよ)先生のプロフィール 医師/厚生労働医系技官。筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH[公衆衛生学修士号])。優れた研究者に贈られる、ジョンズ・ホプキンス大学デルタオメガスカラーシップを受賞する。内科医として勤務後、米国CDC(疾病予防管理センター)多施設研究プロジェクトコーディネイターを経て財団法人結核予防会に勤務。その後、厚生労働省大臣官房統計情報部を経て、厚労省検疫官。専門は感染症疫学。プライベートでは双子の娘のシングルマザーとしての顔も持つ。 木村盛世先生のホームページ http://www.kimuramoriyo.com/木村盛世先生のブログ  http://ameblo.jp/moriyon/ ●医学生の会ホームページhttp://students.umin.jp/

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MDR結核、中国、旧ソビエト諸国でなお脅威

結核の最新統計が、Global Project on Anti-Tuberculosis Drug Resistanceから発表された。Lancet誌2009年5月30日号(オンライン版2009年4月15日号)で公表されたのは、2002~2007年の83ヵ国の集計結果。それによると、多剤耐性(MDR)結核の脅威が、中国の2つの行政区と旧ソビエトの9ヵ国で続いていることが明らかになった。一方で、特にアフリカで顕著だが、薬剤耐性に関するデータが適切に集計できない国が多く、より簡単にデータを収集する方法の開発が必要だとしている。中国7.0%、旧ソビエト諸国は6.8~22.3%83ヵ国におけるMDR結核の罹患率は、中央値11.1%(IQR:7.0~22.3)だった。罹患率0%だったのは8ヵ国で、キューバ、ウルグアイ、アンドラ公国、アイスランド、ルクセンブルク、マルタ共和国、スロベニア、バヌアツ。一方、中国の2つの行政区(内モンゴル自治区、黒龍江省)で7%台、北マリアナ諸島で11.1%(ただし報告例は2例)、また旧ソビエト連邦諸国のうちの9ヵ国(アルメニア、アゼルバイジャンの首都バクー:22.3%、エストニア、グルジア、ラトビア、リトアニア、モルドヴァ:19.4%、ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン)で6.8%~22.3%と高い罹患率を示した。なお、日本は2002年時点の報告で、0.7%(19例)*。*最新統計は、財団法人結核予防協会結核研究所疫学情報センターを参照。http://jata.or.jp/rit/ekigaku/超多剤耐性結核(XDR)は37ヵ国で確認同プロジェクトは1994年から統計を公表しているが、2007年までの間の傾向を見ると、MDR結核が増大したのは、韓国およびロシアの2つの州(トムスク、オリョール)で、エストニアとラトビアでは一定であった。また、全結核例におけるMDR結核の罹患率は、香港とアメリカでは減少していた。さらに、MDRのうち超多剤耐性結核(XDR)は37ヵ国で確認されていた。旧ソビエト諸国のうち8ヵ国におけるMDRの約10%がXDRで、そのうち5ヵ国のXDR症例数は25例以上が報告されていた。

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結核に対するモキシフロキサシン追加の有効性を確認

結核の初期治療として、標準治療へのモキシフロキサシン(国内商品名:アベロックス)の追加投与はエタンブトール(同:エブトール、エサンブトール)の併用に比べ有効性が高く、治療期間の短縮も期待できることが、ブラジルRio de Janeiro連邦大学のMarcus B Conde氏らが実施した第II相試験で確認された。結核の治癒を目指す治療薬の開発では、治療期間の短縮と薬剤耐性菌に対する有効性が求められている。フルオロキノロン系抗菌薬であるモキシフロキサシンは、既存の抗結核薬との併用で相加効果を示すとして有望視されていたという。Lancet誌2009年4月4日号掲載の報告。単一施設における二重盲検ダブルダミー無作為化対照比較第II相試験研究グループは、Rio de Janeiro市の単一施設において、喀痰塗抹陽性の結核患者に対する初期治療としてのモキシフロキサシンの有効性と安全性を評価するための二重盲検ダブルダミー無作為化対照比較第II相試験を実施した。標準用量の標準治療〔イソニアジド(同:イスコチン、アイナーなど)、リファンピシン(同:リマクタン、リファジンなど)、ピラジナミド(ピラマイドなど)〕を受けた170例が、モキシフロキサシン400mg+プラセボを追加投与する群(85例)あるいはエタンブトール15~20mg+プラセボ投与群(85例)に無作為に割り付けられ、5日/週の治療を8週間にわたって施行された。主要評価項目は8週間以内に喀痰培養が陰性化した症例の割合とし、解析はintention-to-treat変法にて行った。ベースライン時に喀痰培養陰性の例、培養に失敗した例、薬剤耐性結核菌が検出された例は解析から除外した。8週間の治療結果が得られない場合は治療不成功とした。喀痰培養陰性化率は、モキシフロキサシン群80%、エタンブトール群63%モキシフロキサシン群の74例、エタンブトール群の72例が解析の対象となった。8週間の治療データは125例(モキシフロキサシン群:64例、エタンブトール群:61例)で得られた。データが得られなかったおもな理由は培養の失敗であった。治療8週の時点で、喀痰培養が陰性化した症例はエタンブトール群が72例中45例(63%)であったのに対し、モキシフロキサシン群は74 例中59例(80%)と有意に優れていた(群間差:17.2%、p=0.03)。薬剤関連の有害事象は、エタンブトール群でgrade 3の皮膚反応が1例に見られたのみであった。著者は、「モキシフロキサシンは結核の初期治療として喀痰塗抹培養の結核菌陰性化効果を改善する」と結論したうえで、「今回の知見は、モキシフロキサシン併用による治療期間短縮の可能性を評価するための臨床試験の実施を正当化するもの」としている。(菅野守:医学ライター)

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喫煙、固形燃料使用の抑制で、COPD、肺癌、結核の疾病負担が低下

喫煙および固形燃料の使用を抑制すれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺癌の疾病負担が低下し、結核の効果的なコントロールが可能になることが、中国で行われた多リスク因子モデル研究で判明した。2002年の調査によれば、COPDは中国人の死因の第2位を占め、肺癌は第6位、結核は第8位であり、約200万人(全死亡の20.5%)がこれらの疾患で死亡している。一方、中国人男性の半数が喫煙者であり、一般家庭の70%以上が薪、作物残渣、石炭などの固形燃料を暖房や調理に用いているという。アメリカHarvard大学公衆衛生学部疫学科のHsien-Ho Lin氏が、Lancet誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月4日号)で報告した。リスク因子の動向により将来の死亡率や発生率が受ける影響のシナリオを構築本研究の目的は、リスク因子の動向によってCOPD、肺癌、結核の死亡率や発生率にどのような影響が生じるかを予測することである。典型的なデータソースを用いて過去の喫煙および家庭の固形燃料使用の傾向を推定し、将来にわたる一連のシナリオを構築した。中国で実施された疫学研究のメタ解析や大規模試験のデータから、病因としてのリスク因子が疾患に及ぼす影響を評価した。COPDと肺癌に及ぼすリスク因子の有害な影響の経時的な累積、および結核感染リスクへの疾患罹患率の依存度を考慮したうえで、将来のCOPDと肺癌による死亡率および結核の発生率をモデル化した。試験方法およびデータ選択に対する試験結果のsensitivityを定量化した。30年間で2,600万人のCOPD死、630万人の肺癌死が回避可能中国では、現在の喫煙および固形燃料使用の状況が2003~2033年も維持されると仮定した場合、この間に6,500万人がCOPDで、1,800万人が肺癌で死亡すると予測される。COPDによる死亡の82%、肺癌死の75%が喫煙と固形燃料の複合的な影響を受けると考えられた。2033年までに喫煙および固形燃料の使用が段階的に完全に停止されれば、2,600万人のCOPD死および630万人の肺癌死が回避可能と推算された。中等度の介入を行えば、COPD死が6~31%、肺癌死は8~26%低減されると考えられる。2033年の結核の予測年間発生率は、2033年までに喫煙と固形燃料の使用が完全に停止されると仮定した場合に、対象の80%に直接監視下短期化学療法(DOTS)が継続的に施行されれば14~52%低減され、DOTS継続施行率が対象の50%であれば27~62%、20%であれば33~71%低減されると予測された。研究グループは、「喫煙および固形燃料の使用を抑制すれば、COPDと肺癌の疾病負担の予測値が実質的に低下し、結核の効果的なコントロールに寄与する可能性がある」と結論し、「次なる重要なステップは、地域住民ベースの介入試験を実施するとともに、経済、エネルギー、健康部門の関連機関の政策対話を進めることである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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多剤耐性結核より治療抵抗性の広範囲薬剤耐性結核、その治療は可能か?

広範囲薬剤耐性結核菌(extensively drug-resistant tuberculosis; XDR-TB)は、non-XDR-TBに比べれば治療抵抗性が高いが、積極的な治療によって治癒は可能であることが、アメリカHarvard大学医学部のSalmaan Keshavjee氏らがシベリアの地方都市で実施したコホート研究で明らかとなった。多剤耐性結核菌(MDR-TB)は1次治療に抵抗性の結核菌株であり、XDR-TBは最も効果的な2次治療にも抵抗性を示すMDR-TBのサブグループと定義される。XDR-TBの世界的な疾病負担は不明だが、MDR-TBの7%がXDR-TBとのデータがあるという。Lancet誌2008年10月18日号(オンライン版2008年8月22日号)掲載の報告。広範囲薬剤耐性結核菌感染者の転帰をレトロスペクティブに調査研究グループは、2000年9月10日~2004年11月1日までにWHOの治療戦略に従ってロシア・トムスク市の民間あるいは刑務所の医療施設で治療を受けたMDR-TB感染患者608例を対象に、レトロスペクティブなコホート研究を実施した。これらの患者をXDR-TB感染患者およびnon-XDR-TB感染患者に分け、その背景、管理状況、治療結果を調査した。主要評価項目は治療終了時の転帰とした。XDR-TBの約半数は治癒あるいは治療が成功MDR-TB感染患者608例のうちベースライン時にXDR-TB と診断されたのは29例(4.8%)であった。治療無効例の割合は、non-XDR-TB群の8.5%に対しXDR-TB群は31%と有意に高かった(p=0.0008)。治癒率あるいは治療成功率については、non-XDR-TB群の66.7%に対しXDR-TB群は48.3%と有意に低かった(p=0.04)。有害事象の頻度および管理可能例の割合は、両群間に差は見られなかった。著者は、「慢性化した結核患者の特徴から、XDR-TBは積極的な治療を繰り返し施行したにもかかわらず市中で生存し続けたMDR-TBの可能性が示唆される」としており、「積極的な治療は一定の効果をあげているためまだ実行可能であり、それによって結核による死亡および薬剤耐性菌のさらなる伝搬を防止できる余地は残されている」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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初のマラリア治療用合剤CoarsucamにWHO事前承認

サノフィ・アベンティス株式会社は10月22日、フランス、パリの本社と非営利団体「顧みられない病気のための新薬イニシアティブ(DNDi:Drugs for Neglected Diseases initiative)」が、アーテスネート(AS)とアモジアキン(AQ)2種類のマラリア治療薬による初の合剤 Coarsucam / Artesunate Amodiaquine Winthrop(ASAQ)が、世界保健機関(WHO)医薬品事前承認プログラムによる承認を取得したと発表した。事前承認されたASAQは、水溶性製剤であり、特に小児向けにデザインされた初のマラリア治療用合剤。WHO医薬品事前承認プログラムは、HIV/エイズ、マラリア、結核の領域において重要性が高く高品質な医薬品の入手利用を促進することを目的としている。WHOの品質基準を満たすと認められた製品は「事前承認薬リスト」に収載される。このリストは当初、国連機関が医薬品を調達するために利用していたが、現在は医薬品の大量購入に関わる多くの期間や組織にとって不可欠となっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/918457A7-645C-46E7-873D-4CA2B7FAA833.pdf

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抗酸菌症治療薬ミコブティン新発売

ファイザー株式会社は10月7日、抗酸菌症治療薬ミコブティンカプセル150mg(一般名:リファブチン)を新発売した。ミコブティンはリファマイシン系抗酸菌症治療薬で、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害しRNA合成を抑制することにより抗菌作用を示すと考えられている。結核や非結核性抗酸菌(NTM:Non-Tuberculous Mycobacteria)症の治療、さらにHIVに感染している患者さんが発症しやすい抗酸菌症であるマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症の発症抑制に効果があるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_10_07.html

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