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オミクロン株時代の未成年者に対するRNAワクチン接種法とは?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 本論評の主たる対象論文として取り上げたのはFleming-Dutraらの報告で、未成年者(5~17歳)を対象としてBNT162b2(Pfizer社)のオミクロン株に対する感染/発症予防効果を調査したものである。未成年者の分類は国際的に統一されたものはなく、本論評では各製薬会社の分類に準拠し、生後6ヵ月以上~4歳(Pfizer社)あるいは6ヵ月以上~5歳(Moderna社)を幼児、5~11歳(Pfizer社)あるいは6~11歳(Moderna社)を小児、12~17歳(Pfizer社、Moderna社)を青少年と定義する。本論評では、ワクチン接種の最先端国である米国と本邦の現状を比較し、本邦において未成年者のワクチン接種として今後いかなる方法を導入すべきかについて考察する。小児、青少年におけるBNT162b2の2回目接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果 Fleming-Dutraらは2021年12月26日~2022年2月21日までのオミクロン株優勢期において、米国ほぼ全域から集積されたコロナ感染疑い症状を有し核酸増幅検査(NAAT)によって感染の有無が判定された5~11歳の小児と12~15歳の青少年を対象としてBNT162b2ワクチン2回接種のオミクロン株感染/発症予防効果(VE)を調査した。1回のワクチン接種量は小児で10μg、青少年で30μgであった。 ワクチン2回接種2~4週後におけるVEは小児で60.1%、青少年で59.5%とほぼ同等の値を示した。しかしながら、ワクチン2回接種2ヵ月後におけるVEは小児で28.9%、青少年で16.6%であり、とくに、青少年における時間経過に伴うVEの低下が著明であった。青少年のワクチン接種3ヵ月後のVEは9.6%で統計学的にゼロと判定された。以上の結果はオミクロン株優勢期に成人を対象として報告された傾向と概略一致している(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。 Dorabawilaらは小児、青少年におけるBNT162b2の2回接種後のオミクロン株に対する入院予防効果を検討した(Dorabawila V, et al. medRxiv. 2022 Feb 28.)。その結果、小児の入院予防効果はワクチン2回接種1.5ヵ月後で100%から48%に低下、青少年では94%から73%まで低下することが示された。オミクロン株に対する入院予防効果が時間推移と共に低下する傾向は成人においても観察されている(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。青少年におけるBNT162b2の3回目追加接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果 Fleming-Dutraらは905例の青少年を対象として3回目追加接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果(VE)に関しても報告している。3回目接種後の観察期間が短く確実な検討とは言い難いが、2回目接種後時間経過と共に急速に低下したVEは3回目の追加接種2~6.5週後に71.1%まで回復した。この値は青少年における3回目追加接種によるVEの最大値と考えることができ、Andrewsらが報告した成人のオミクロン株に対する3回目追加接種によるVEの最大値(67.2%)と同等の値であった(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。しかしながら、青少年において3回目追加接種によって回復したVEが時間経過と共にどの程度の速度で低下するかは解析されていない。小児に対する3回目追加接種の効果を検証した論文は発表されていない。米国、本邦における未成年者に対するRNAワクチン接種基準 インフルエンザウイルスを標的としたワクチン接種は生後6ヵ月以上の年齢層に適用されている。一方、新型コロナウイルスは発症後2.5年しか経過していないがために未成年者に対するワクチン接種法は流動的である。米国における未成年者に対するRNAワクチン接種に関する最新の指針が2022年6月17日にFDAから発表された(FDA. News Release. 2022 Jun 17.)。FDAの指針によると;(1)Pfizer社のBNT162b2に関しては、幼児(生後6ヵ月~4歳)に対し1回3μgを2回ではなく3回連続して接種する新たな方法が提唱された。2回目は1回目から21日後、3回目は2回目から8週後に接種し、3回連続接種をもってワクチン接種が完結する。すなわち、3回連続接種を“Primary series”とする斬新で価値ある考え方である(3回目接種を追加接種とは考えない)。この考え方の基礎になっているのは、成人においてオミクロン株に対するワクチン誘導性液性免疫(中和抗体形成)は2回接種では賦活化が弱く、3回目接種後に初めて有意な賦活化が観察されたという事実である(山口. 日本医事新報 2022;5111:28.)。幼児に対する追加接種(4回目接種)は推奨されていない。(2)小児(5~11歳)と青少年(12~17歳)に対するBNT162b2の接種法は以前に決定された内容が継承され、小児においては1回10μgを21日間隔で2回接種、青少年においては成人と同様に1回30μgを21日間隔で2回接種する。すなわち、小児、青少年においては2回接種をもって“Primary series”と定義された。3回目の追加接種は2回目接種より5ヵ月後に施行することが推奨された(接種量:2回目までと同量)。4回目の追加接種は推奨されていない。(3)Moderna社のmRNA-1273に関しては、生後6ヵ月~5歳までの幼児(Pfizer社の幼児の定義と異なる)に対して1回25μg、6~11歳までの小児(Pfizer社の小児の定義と異なる)に対して1回50μg、12~17歳の青少年に対して1回100μgを1ヵ月間隔で2回接種する。(4)mRNA-1273を用いた3回目の追加接種(接種量は初回量と同じで2回目より1ヵ月以上あけて接種)は免疫不全を有する未成年者(生後6ヵ月~17歳)において認められたが、BNT162b2の場合と異なり免疫不全を有さない未成年者には認められなかった。4回目の追加接種は推奨されていない。 BNT162b2とmRNA-1273の未成年者に対する3回目追加接種の適用の差は、各ワクチンの治験結果を基礎とした科学的根拠に基づくものであるが、本質的に同じ作用を有する両ワクチンの適用を異なった形のまま放置することは施策上混乱を招く恐れがある。 本邦における未成年者に対するワクチン接種に関する厚生労働省の指針は、2022年5月25日に更新された(厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き[第8版]. 2022年5月25日)。この指針では、BNT162b2(商品名:コミナティ筋注)のみが5~11歳の小児に対する2回接種(1回10μg、21日間隔)が認められているが、生後6ヵ月~4歳の幼児には認められていない。また、BNT162b2を用いた3回目追加接種は12歳以上の年齢層(青少年と成人)に対して認められているが(2回目接種後5ヵ月以降に30μg接種)、mRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)においては18歳以上の成人にしか認められていない(2回目接種後5ヵ月以降に通常量の半量である50μgを接種)。未成年者に対する4回目の追加接種は推奨されていない。以上のように本邦における未成年者に対するRNAワクチン接種指針は不完全であり、とくに、5歳未満の幼児に対する有効なワクチン施策を早急に確立する必要がある。 Pfizer社、Moderna社は武漢原株のS蛋白に加え、オミクロン姉妹株(BA.4、BA.5)のS蛋白を標的とした2価ワクチンの開発を急ピッチで進めている。米国FDAはこの新規2価ワクチンを今秋以降に追加接種用のBoosterワクチンとして期待していると表明した(The Washington Post. updated. 2022 Jun 30.)。この場合にも、従来ワクチンは医療経済的側面から2回目接種までの“Primary series”として使用されるはずであり、成人、未成年者に対する従来ワクチンの接種法を現時点において確立しておくことは重要課題の1つである。

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第1回 新型コロナのイベルメクチン「もう使わないで」

いったん下火になっていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、国内の新規感染者数は6月下旬から増え始め、昨日7月6日は4万5千人を超え、現場は警戒心を持っています。―――とはいえ、BA.2以降、滅多に肺炎を起こすCOVID-19例に遭遇しません。おそらく次の波がやってきたとしても、大きな医療逼迫を招くことはないのでは、と期待しています。「イベルメクチンを処方しない医師は地獄へ落ちろ」さて、私はCOVID-19の診療でいくつかメディア記事を書いたことがあるのですが、当初からイベルメクチンに関してはやや批判的です。疥癬に対してはよい薬だと思っていますが、COVID-19に対しては少なくとも現在上市されている抗ウイルス薬には到底及びません。しかしSNSなどではいまだにイベルメクチン信奉が強く、そういった「派閥」から手紙が届くこともあります。中には、「COVID-19にイベルメクチンを処方しない倉原医師よ、地獄へ落ちろ」といった過激な文面を送ってくる開業医の先生もいました。確かに当初、in vitroでイベルメクチンの有効性が確認されたのは確かです。しかし、かなり初期の段階で、寄生虫で使用するイベルメクチン量の約100倍内服しないと抗ウイルス作用は発揮されないことがわかっており1,2)、副作用のデメリットの方が上回りそうだな…という印象を持っていました。その後の臨床試験の結果が重要だろうと思っていたので、出てくるデータを冷静に見る必要がありました。トップジャーナルでことごとく否定50歳以上で重症化リスクを有するCOVID-19患者への発症7日以内のイベルメクチンの投与を、プラセボと比較したランダム化比較試験があります(I-TECH試験)3)。これによると、重症化リスクのある発症1週間以内のCOVID-19患者に対するイベルメクチンの重症化予防への有効性は示されませんでした。また、1つ以上の重症化リスクを持つCOVID-19患者に対して、イベルメクチンとプラセボの入院率の低下をみたランダム化比較試験があります(TOGETHER試験)4)。この試験でも、入院・臨床的悪化のリスクを減少させませんでした(相対リスク0.90、95%ベイズ確信区間:0.70~1.16)。ITT集団、per protocolのいずれを見ても結果は同じでした。EBMの基本に立ち返って、使用を控えるべき万が一、イベルメクチンの投与量や投与するタイミングを工夫して、何かしら有効性が示せたとして、ではその効果は現在のほかの抗ウイルス薬(表)よりも有効と言えるのでしょうか。塩野義製薬が承認申請中のエンシトレルビルですら、現時点ではウイルス量を減少させる程度の効果しか観察されないということで、緊急承認は見送りとなっています。イベルメクチンについて、まず今後奇跡的なアウトカム達成など、起こらないでしょう。表. 軽症者向け抗ウイルス薬(筆者作成)何より、目の前にしっかりと効果が証明された抗ウイルス薬が複数あるのです。有効な薬剤を敢えて使わずにイベルメクチンを処方するというのは、EBMに背を向けているにすぎません。この行為、場合によっては法的に問われる可能性もあります。現時点では使用を差し控えるべき、と私は考えます。参考文献・参考サイト1)Chaccour C, et al. Ivermectin and COVID-19: Keeping Rigor in Times of Urgency. Am J Trop Med Hyg. 2020;102(6):1156-1157.2)Guzzo CA, et al. Safety, tolerability, and pharmacokinetics of escalating high doses of ivermectin in healthy adult subjects. J Clin Pharmacol. 2002;42(10):1122-1133.3)Lim SCL, et al. Efficacy of Ivermectin Treatment on Disease Progression Among Adults With Mild to Moderate COVID-19 and Comorbidities: The I-TECH Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2022 Apr 1;182(4):426-435.4)Reis G, et al. Effect of Early Treatment with Ivermectin among Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2022 May 5;386(18):1721-1731.

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オミクロン株流行中の5~11歳へのワクチン接種、実際の有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン変異株流行中における、5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種は、SARS-CoV-2感染および症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し中程度の保護効果を示したことが、イスラエル・Clalit Research InstituteのChandra J. Cohen-Stavi氏らによる検討で示された。これまでオミクロン変異株流行中の5~11歳への、BNT162b2ワクチンのリアルワールドでの有効性に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年6月29日号掲載の報告。13万6,127例を対象に、SARS-CoV-2感染・症候性COVID-19への有効性を検証 研究グループは、イスラエル最大の医療ケア組織のデータを基に、2021年11月23日以降にBNT162b2ワクチン接種を受けた5~11歳の小児を特定。ワクチン非接種の小児とマッチングし、オミクロン変異株流行中にBNT162b2ワクチン接種を受けた小児における、1回目および2回目接種後のSARS-CoV-2感染と症候性COVID-19に対する有効性を推定した。 両群の2022年1月7日までの累積アウトカム発生について、Kaplan-Meier推定法で推定し、ワクチン有効性を1-リスク比で算出した。また、年齢サブグループ別のワクチン有効性も推定した。 試験期間中にワクチンを受けた試験適格児は13万6,127例、マッチドワクチン非接種児は9万4,728例だった。有効性は5~6歳が10~11歳より高い傾向 記録されたSARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの推定有効率は、1回目接種後14~27日で17%(95%信頼区間[CI]:7~25)、2回目接種後7~21日で51%(39~61)だった。 2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染に関する両群の絶対リスク差は、1,905件(95%CI:1,294~2,440)/10万人、症候性COVID-19については同599件(296~897)/10万人だった。 症候性COVID-19に対するBNT162b2のワクチン有効率は、1回目接種後14~27日で18%(95%CI:-2~34)、2回目接種後7~21日で48%(29~63)だった。 年齢サブグループ別にみた傾向として、10~11歳と高年齢グループに比べ、5~6歳と低年齢グループのほうが、ワクチン有効性が高かった。2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染への有効率は38%(95%CI:18~53)vs.68%(43~84)、同じく症候性COVID-19への有効率は36%(0~61)vs.69%(30~91)だった。

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ブタ心臓のヒトへの異種移植手術、初期の経過は良好/NEJM

 米国・メリーランド大学医療センターのBartley P. Griffith氏らの研究チームは、2022年1月7日、実験的なブタ心臓のヒトへの異種移植手術を世界で初めて行った。患者は、自発呼吸が可能になるなど良好な経過が確認されたが、約2ヵ月後の3月8日に死亡した。臓器不足の解消につながると期待された遺伝子編集ブタ心臓の移植の概要が、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号に短報として掲載された。ECMO導入重症心不全の57歳男性 患者は、慢性的な軽度の血小板減少症、高血圧症、非虚血性心筋症を有し、僧帽弁形成術の既往歴がある57歳の男性で、左室駆出率(LVEF)10%の重症心不全により入院となった。複数の強心薬の投与が行われたが、入院11日目には大動脈内バルーンポンプが留置され、23日目には末梢静脈-動脈体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された。 患者は、4つの心臓移植プログラムの審査を受けたが、いずれも許可されなかった。研究チームは、実験的な異種移植が、内科的治療や静脈-動脈ECMOの継続に劣る可能性はないと考え、米国食品医薬品局(FDA)に申請を行い、承認を得た。 今回、実施された異種移植の方法は、拒絶反応を起こさないよう10の遺伝子が編集されたブタドナー(Revivicor製)、免疫抑制薬であるヒト化抗CD40モノクローナル抗体KPL-404(Kiniksa Pharmaceuticals製)、XVIVO心臓灌流システム(XVIVO Perfusion製)を組み合わせた心臓保存療法である。移植後の初期経過:洞調律維持、拒絶反応なし 移植後、乏尿性急性腎不全が持続したため、腎代替療法が施行された。2日目には気管チューブが抜管され、胸部X線写真では肺野が明瞭に描出された。強心薬投与の必要はなく、移植後4日目にECMOから離脱した。 移植後6日目のSwan-Ganzカテーテル抜去前に、低用量ニカルジピンの投与下で、平均収縮期血圧は130~170mmHg、平均拡張期血圧は40~60mmHgで、肺動脈圧は収縮期32~46mmHg、拡張期18~25mmHgであり、中心静脈圧は6~13mmHgだった。心拍出量は5.0~6.0L/分で、体表面積当たりの1回拍出量は65~70mL/m2であった。また、異種移植心は70~90拍/分で洞調律を維持し、LVEFは55%以上を保持していた。 移植後12日目に腹膜炎が発症し、回復したものの非経口栄養に移行した。悪液質が悪化し、体重は入院時の85kgから術後の最低値で62kgまで減少した。 免疫抑制薬として、KPL-404のほかに、移植後1日目からミコフェノール酸モフェチルが投与されたが、顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)による治療で重度の好中球減少症が発現したため21日目に中止され、35日目からはタクロリムスの投与が開始された。 ドナー特異的抗体の値は、免疫抑制薬の導入後もベースラインを下回っており、移植後47日目まで低値で推移したが、43日目の免疫グロブリンの静脈内投与でIgG値が急激に上昇し、IgM値も上昇した。血清トロポニンI値は移植後に上昇したが、24日目にはベースラインの値に戻り、その後35日目に急激に上昇し始めた。 移植後34日目の心内膜心筋生検では、拒絶反応は認められなかった。患者は、心血管系のサポートなしにリハビリテーションが可能であり、異種移植心は拒絶反応を示すことなく正常に機能した。 移植後43日目に、傾眠が強くなり、気管挿管が行われた。予防対策を行っていたにもかかわらず、胸部X線と気管支鏡検査でウイルスまたは真菌感染を示唆する所見が得られた。また、微生物無細胞DNA(mcfDNA)検査では、ブタサイトメガロウイルス(pCMV)(suid herpesvirus 2とも呼ばれる)の顕著な増加が認められ、ウイルス感染の可能性が懸念された。ドナーの脾臓と患者の末梢血単核細胞(PBMC)を用いて定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)による検証を行ったところ、両方の検体ともpCMV陽性であり、ドナーがpCMVに潜伏感染していた可能性が示唆された。47日目には、気管抜管が行われ、患者は室内でのリハビリテーションを再開した。異種移植の失敗:検死所見は典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず 移植後48日目、患者は109日ぶりにベッドから解放された。しかし、49日目、軽度の腹部不快感と膨満感に伴い、血清乳酸値が8時間で4mg/dLから11.2mg/dLに上昇し、低血圧が発生したため気管挿管が行われた。肢端チアノーゼが発現し、移植後初めて心拍出量の低下が示唆された。 心エコー図検査でLVEFは65~70%を示したが、左室壁厚(1.7cm)と右室壁厚(1.4cm)の著明な増大、および左室内腔サイズ(3.2~3.5cm)の縮小が認められ、global longitudinal strainの値は劇的に低下(悪化)した。患者家族と相談し、49日目の夕方、静脈-動脈ECMOが再導入された。 移植後50日目の2回目の心内膜心筋生検では、抗体関連型拒絶反応や急性細胞性拒絶反応はみられなかったが、赤血球漏出および浮腫による局所毛細血管損傷が認められた。トロポニンI値は上昇していた。異種移植心由来無細胞DNA(xdcfDNA)値は、異種移植心特異的IgG値やIgM値と共にピークに達していたことが、後に判明した。抗体関連型拒絶反応の非典型的な発現を疑い、治療が開始された。 移植後56日目の3回目の心内膜心筋生検では、病理学的抗体関連型拒絶反応(国際心肺移植学会[ISHLT]のGrade1)が確認された。間質への赤血球漏出や浮腫は、前回の生検時に比べて少なかったが、心筋細胞の40%が壊死していた。 研究チームは、異種移植心に不可逆的な損傷が生じていると判断し、患者家族と相談して移植後60日目に生命維持装置を停止させた。検死では、心臓の重量が移植時の328gから600gに増加していた。心筋細胞や心臓内皮細胞などの所見は、典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず、このような損傷をもたらした病態生理学的なメカニズムの解明に向けた研究が進行中だという。 著者は、「異種移植心の機能不全に、患者の重度の体力減退と術後の複雑な経過が重なり、移植後60日目に、それ以上の高度な支持療法は行わないこととなった」と結んでいる。

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酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

オリジナルニュース中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験(2022/06/15掲載) 本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。 本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。 まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。このうち、デキサメタゾンはRECOVERY 試験(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で、世界で初めてCOVID-19患者治療で有意な改善を、バリシチニブもレムデシビルとの併用下で臨床的な改善が報告されている(Kalil A, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807.)。レムデシビルに関しては、中等症のCOVID-19に対する単剤治療での有意な臨床的アウトカムは見いだしがたいが、発症早期の患者に投与することで臨床的なアウトカムや死亡率を低下させた報告があり、抗ウイルス効果は期待されるだろう(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)。そして、ステロイドを投与する患者に関しては、先行して抗ウイルス薬を投与したほうが臨床症状の改善が早くなり、重症化率を低下させるという報告がある(Shionoya Y, et al. PLoS One. 2021;16:e0256977.)ことを加味すると、COVID-19の酸素需要がある患者には、ステロイドなどの抗炎症薬の投与が望ましく、レムデシビルも抗炎症薬とともに投与することがよいだろう。 さて、本研究に戻る。本研究が開始された時期は、COVID-19に対する確立された治療薬はなく、各国で有効性が期待される薬剤を探っている状況だった。本研究で対象となった薬剤の、ファビピラビル、カモスタットとシクレソニドについて整理する。 ファビピラビルは本邦で開発され、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する承認があり備蓄されていた抗ウイルス薬である。COVID-19が流行した初期に期待された治療法の1つであったが、本邦で実施された多施設無作為化オープンラベル試験でも早期のCRP陰性化や解熱傾向は見られたものの、有意差には達しておらず(Doi Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e01897-20.)、現時点でCOVID-19の標準治療に位置づけられてはいない。 シクレソニドもCOVID-19の治療で有効性が期待されていた薬剤である。本研究と患者対象が一致したデータではないが、国内のランダム化比較試験ではシクレソニド投与群で肺炎増悪が多く(https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2020/20201223_1.html)、臨床的な改善を示すことができなかった。カモスタットも臨床的改善までの日数やICU滞在期間の短縮、死亡率などの改善を示すことができず、現時点で臨床的に常用されている薬剤ではない(Gunst JD, et al. EClinicalMedicine. 2021;35:100849)。 本研究は、作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで臨床的な効果が向上することを期待していたが、シクレソニドやカモスタットは個々の薬剤としては、明らかなデータの改善を示す研究はなく、併用による相加あるいは相乗効果の薬理学的な背景も記載はない。本文に記載があるように、サンプルサイズも小さく安全性のプロファイルに懸念が残る点、hard clinical primary outcome(臨床的に客観性の高い主要評価項目)が採用されていないという点といった問題があり、これらの併用薬の有効性を示すためには、より大規模の人数で、標準治療群とhard clinical primary outcomeについて比較をすることが望ましいだろう。 本研究結果は、現在のCOVID-19診療に与える影響は小さいと考えるが、本邦における感染症研究という観点からは、同研究が発表された意義は大きいと考える。 パンデミックを起こした感染症の臨床研究は、早期に有効な治療法を見いだすことが望ましく、速やかな臨床研究の実施が望ましいが、臨床研究を実施するには医師だけではなく、多くの職種の協力や適切なモニタリング、参加者の協力などの資金とともに環境整備が必要となる。本研究のようにパンデミック下での前向き研究実施には、労力と研究が遂行できる環境、それらの下準備が求められる。 新規感染症に対する創薬を行う場合は、適切な臨床試験のもとで適正な薬剤の評価が行われることが重要であり、本邦でも新規感染症に対する創薬を行うためには、このような臨床研究ができる環境をさらに整備してゆくべきであろう。 COVID-19診療について振り返ってみると、ワクチン接種や重症化リスクの高い患者に対する治療薬の整備により、重症化率、致死率はこの2年間で大きく減少しているが、未だに終息はしていない。重症化リスクの高くはない患者さんでも、症状の早期緩和、Long COVID罹患率の低下、他者への感染リスクを低下させるなどの社会生活を円滑に進めるための薬剤が期待されており、これらの問題を解決する薬剤が開発されることを期待したい。ただ、本邦ではワクチン接種も進んでおり、オミクロン株流行下でも、重症化率や死亡率は低下し、急性期症状持続期間も短縮していたことを考えると、オミクロン株で抗ウイルス薬の有効性を評価する場合には工夫が必要かもしれない。COVID-19の比較対象にしばしば出されるインフルエンザも抗ウイルス薬があるが、インフルエンザに対する抗ウイルス薬は発症後48時間以内に内服しなければ症状などの有意な改善が望めないように、急性期症状持続期間が短縮しているオミクロン株で治療効果を評価する場合は、速やかな抗ウイルス薬投与ができる環境で評価を行わないと臨床症状の改善で有意差を確認することは難しいかもしれない。 今後は、新型コロナウイルス・オミクロン株に対する抗ウイルス薬の評価が行われることになると考えるが、ウイルスの特徴も踏まえた上で、臨床現場でどのような患者さんに、どのように用いることで、どのような効果を期待するのかを適切に捉えた臨床試験を組み立て、評価を行うことがとくに望まれると考える。

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マスタープロトコルという研究プログラムの事前登録のあり方(解説:折笠秀樹氏)

 マスタープロトコルという研究プログラムが、ここ5年くらいで多くみられるようになりました。最初はがん治療においてでした。がん種ごとに治療薬の比較試験を行うのではなく、分子標的マーカーが陽性か陰性かによって、がん種にこだわらず比較試験が行われました。疾患に対して比較試験を行うという従来方式ではなく、バイオマーカー陽性に対して比較試験を行う方式です。そこでは疾患は何でもよいわけです。これがバスケットデザインと呼ばれるマスタープロトコルです。NCI-MATCHの例が挙がっています。 一方、がん種は1つに固定し、その中で数種類のバイオマーカーを取り上げ、バイオマーカーごとに比較試験を組む形の臨床試験です。これをアンブレラデザインと呼んでいます。どのマーカーに反応する治療薬が効果を発揮するかわからないので、どちらかというと探索的目的が強いと思われます。ALCHEMISTの例が挙がっています。 最後のマスタープロトコルの例は、COVID-19で登場したプラットフォームデザインです。COVID-19の治療法開発というプラットフォームを考え、その中でいろんな治療法を評価するプロトコルを次々と増やしていくものです。RECOVERYの例が挙がっています。ホームページもありますが、現時点では5つほどプロジェクトが走っているようです。英国主導で立ち上がったプロジェクトで、国際共同試験が行われています。あのビルゲイツ財団も資金提供しています。COVID-19は残念ながらまだ収束しておりません。いつ強力なウイルスが誕生するとも限りません。抗ウイルス薬のほかにもステロイド薬やモノクローナル抗体薬など、いろんな可能性がこのプラットフォームの中で評価されていくことでしょう。 マスタープロトコルとは、いろんなサブスタディからなる壮大なプログラムです。複数の臨床試験の集合体ともいえます。現在は、マスタープロトコルとして事前登録されていますが、サブスタディごとに事前登録をすべきだというのが結論のようです。私も同感です。RECOVERY試験というのが始まり、日本も加わるべきだと武見参議院議員がテレビ番組で紹介しているのを聞きました。2021年の中ごろだったかと思います。どんな臨床試験かと思い、すぐに調べましたが、まったく理解できませんでした。それも無理はありません。いくつかの臨床試験をまとめたプログラムだったからです。個々の臨床試験、すなわちサブスタディごとに論文も発表されることでしょうから、サブスタディを事前登録すべきというのは当然のことではないでしょうか。

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第119回 英国のサル痘の症状は先立つ流行と異なる/ウイルス感染者の匂いが蚊を呼ぶ

英国のサル痘といえば西アフリカ帰りの人発端に限られていましたが今やそうではないサル痘が同国や他の幾つかの国の性保健(sexual health)診察で確認されることが急に増えています。今年2022年5月14日から25日の12日間に英国ロンドンで性保健診察されてサル痘が判明した患者54人の症状はこれまでの典型的なサル痘感染とは異なっており1-3)、適切な治療や感染拡大予防のせっかくの機会を診断ミスで逃さないようにするためにもこれまでとは異なりうるという心構えが必要なようです。調べられた54人は全員が男性とセックスする男性(men who have sex with men;MSM)であり、先立つ流行に比べて性器や肛門領域の皮膚に病変が認められることがより多く、発熱や疲労感は逆に少なくて済んでいました。54人の全員に近い94%(51人)が性器や肛門領域に少なくとも1つの皮膚病変を有し、疲労/倦怠感と発熱の発生率はそれぞれ67%(36/54人)と57%(31/54人)でした3)。38℃以上の発熱や疲労を含む英国の目下のサル痘同定の目安4)は見直しが必要だろうと著者は言っています。他の特徴として性感染症(STI)・淋病やクラミジアの併発も多く、4人に1人がそうでした。サル痘は進行過程でヘルペスや梅毒などのよくあるSTIに似通うこともありうるのでそれらと見間違わないように用心する必要があります1)。ペニスや肛門領域の皮膚病変やSTIの併発が多いことから察するに性行為などでの皮膚や粘膜の密着の際にサル痘は伝播するようです。54人の約10人に1人(9%;5/54人)は主に痛みや細菌性蜂窩織炎の治療のために入院を要しました。死亡した患者はいません。サル痘患者が性的にかなり活発なことは本連載の前号で紹介したのと同様に今回の報告でもうかがわれ、性行為に関する質問に答えた52人の9割47人(90%)は発症前の3週間に新たな人との性交渉があり、半数を超える29人はサル痘診断に先立つ12週間に5人を超える性交渉の相手がいました。ジカ/デングウイルス感染は蚊を引き付ける匂いをより作らせるジカ熱やデング熱を引き起こすウイルスは蚊に運ばれてヒトからヒトに移ります。そのためにそれらフラビウイルスは感染者の皮膚の細菌を手入れして蚊がより好む匂いをどうやら放たせるようです5-7)。フラビウイルス感染マウスは甘い香りの揮発性成分アセトフェノン(acetophenone)を非感染マウスに比べておよそ10倍多く放ち、蚊はアセトフェノンで嗅覚が強力に刺激されて引き寄せられると分かりました。デング熱患者がアセトフェノンをより多く放つことも確認されています。アセトフェノンの主な出どころは皮膚の共生細菌であり、フラビウイルスは皮膚の抗菌タンパク質RELMα発現を抑制することでアセトフェノン生成共生細菌を増やし、その結果アセトフェノンが多くなります。RELMαの合成はビタミンA誘導体で増えます。そこでビタミンA誘導体イソトレチノイン(isotretinoin)をマウスに与えたところアセトフェノンが減って蚊に見つかり難くなって感染の伝播を減らすことができました。イソトレチノインでヒトのアセトフェノン生成も減るかどうかを調べることが今後の課題の一つとなっています5)。London School of Hygiene & Tropical Medicineの研究者James Logan氏によると今回の結果は診断を刷新しうる可能性を秘めています6)。デング熱やジカ熱の診断には結果判明までしばらくかかる血液検査が今のところ必要ですが、それら患者が放つアセトフェノンを嗅ぐ装置を使えば血液検査なしですぐに診断が可能になるかもしれません。Logan氏はマラリアを匂いで同定しうるセンサーを開発する会社を興しており、似た技術がジカ熱やデング熱にも通用しうると言っています6)。参考1)Monkeypox symptoms in patients attending London sexual health clinics differ from previous outbreaks, study of May 2022 UK outbreak suggests / Eurekalert2)Monkeypox symptoms differ from previous outbreaks - UK study / Reuters3)Girometti N, et al. Lancet Infect Dis. 2022 July 01. [Epub ahead of print]4)Monkeypox: case definitions /UK Health Security Agency5)Some viruses make you smell tastier to mosquitoes / Eurekalert6)Zika, dengue viruses make victims smell better to mosquitoes / Science7)Zhang H, et al.Cell. 2022 Jun 28;S0092-8674.00641-9. [Epub ahead of print]

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今冬にインフル流行の懸念、ワクチンを強く推奨/日本ワクチン学会

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになった。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されている。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからである。そこで、日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司)は、6月23日に同学会のホームページで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」を公開した。 本見解では、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種を強く推奨し、とくに接種が推奨される方に、確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を早期に準備しておくことが重要と示している。2022-23シーズンのインフルエンザ流行の懸念 2021-22シーズンのわが国のインフルエンザ流行状況と感染者は、報告総数は753人(2020-21シーズンは1,107人)でCOVID-19の流行以前と比べると明らかに流行の規模は小さいものの、2022-23シーズンではインフルエンザに対する感受性者のさらなる増加が危惧されるとともに、海外から日本への渡航制限解除の影響による感染者数の増加が懸念される。 今後、インフルエンザが3シーズンぶりに流行した場合、死亡者や重症者の増大、またCOVID-19と時期を同じくして流行することなどによって、医療負荷の増大が心配されるとしている。 また、オーストラリアにおけるインフルエンザ流行状況(2022年6月5日現在)として、インフルエンザ様疾患の報告例が2022年3月以降、増加が報告され、4月中旬から確認されたインフルエンザの週ごとの報告数は、過去5年間の平均を超えている。また、5〜19歳の年齢層と5歳未満の子どもが最も高い報告率であることも示されている。2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について 学会は「インフルエンザの罹患率や死亡率を低下させるため、生後6ヵ月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」としている。1)日本における2022-23シーズンのインフルエンザHAワクチン インフルエンザHAワクチンは、4価ワクチンであり、2021-22シーズンからA/H3N2株とB/ビクトリア系統株の2株が変更となった。・A型株 A/ビクトリア/1/2020(IVR−217)(H1N1) A/ダーウィン/9/2021(SAN−010)(H3N2)・B型株 B/プーケット/3073/2013(山形系統) B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)2)特に接種が推奨される方・定期接種対象者:65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方、60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方・医療従事者、エッセンシャルワーカー:急性期後や長期療養施設のスタッフを含む医療従事者、薬局スタッフ、その他重要インフラの業務従事者の方・インフルエンザの合併症のリスクが高い方:生後6ヵ月以上5歳未満の乳幼児、神経疾患のある子ども、妊娠中の方、その他特定の基礎疾患を持つ方3)接種回数と接種間隔・13歳以上の方は、原則1回接種。ただし、医師が特に必要と認める場合は、1〜4週の間隔で2回接種。・生後6ヵ月以上13歳未満の小児は2〜4週の間隔で2回接種。ただし、世界保健機関(WHO)は、ワクチン(不活化ワクチンに限る)の用法において、9歳以上の小児および健康成人に対しては「1回注射」が適切である旨、見解を示し、米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)も、9歳以上の者は「1回注射」とする旨を示している。何らかの事情で2回の接種機会が得られない場合でも少なくとも1回は接種し、未接種のまま、インフルエンザシーズンを迎えないことを推奨する。ワクチンの有効性と安全性1)有効性 現行のインフルエンザワクチン製造において、インフルエンザウイルスの流行株とワクチン株の一致率は毎年異なるために、インフルエンザワクチン推定有効率において年次差がみられる。そのため、インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではなく、インフルエンザの発病予防、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされる。(国内における研究報告)・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった・6歳未満の小児を対象とした2013/14〜2017/18シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は41〜63%と報告・3歳未満の小児を対象とした2018/19〜2019/20シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は42〜62%と報告2)安全性 インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の発赤、痛み、腫れなどの局所反応や、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身反応を含む副反応が出現する可能性がある。これらの副反応は、通常、2〜3日以内に消失。また、重い副反応の報告がまれにあるが、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明確ではない。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状などについては、順次評価が行われ公表される。 日本ワクチン学会では、「今冬の国民の感染症対策と医療体制の維持のため、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について、強く推奨いたします」と提言し、「確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を、早期に準備しておくことが重要」と記している。

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第107回 医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?

<先週の動き>1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?千葉市立海浜病院で昨年7月、医師の指示により医師免許を持たない臨床工学技士に皮膚縫合の一部を行わせたことが明らかとなった。同院によれば、問題が起きたのは心臓ペースメーカーの部品交換手術で、当技士はペースメーカーの動作確認のため手術に参加。執刀医は「自分の指導下であれば問題ないと思った」と話している。2022年1月、市に匿名の情報提供があったことから発覚。同院は速やかに事実確認を行い、外部の有識者を交えて医療事故検討委員会での検討を行い、当事者である技士と縫合を指示した執刀医の2人に訓告処分を行った。病院全体で改善と再発防止に向けた取り組みを進めている。医師法は医師資格を持たない者の医療行為を禁じているが、市は「違法行為には当たらない」との認識を示している。なお、患者への身体的な影響はなく、同院は3月に患者本人への説明・謝罪を行っている。(参考)医師免許ない臨床工学技士、手術で皮膚縫合(読売新聞)医師資格ないのに手術の縫合 千葉市立病院で、健康面被害なし(中日新聞)医師以外の医療従事者による業務範囲を超えた医療行為について(市立海浜病院)2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省厚生労働省は、6月30日に第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードを開催した。新規感染者数の今週先週比は1.17と「全国的に上昇傾向に転じた」とされ、今後の短期的な予測では、大都市を中心に感染者数のさらなる増加が見込まれる。年代別で見ても、おおむねすべての年代で微増となっており、療養者数および重症者数は緩やかな増加に転じている。なお、病床使用率は総じて低水準にあり、死亡者数は減少傾向にある。今後、これまでのワクチン接種などによる免疫効果が徐々に下がっていくことや、7月以降は夏休みなどで人との接触機会が増えること、オミクロン株の「BA.5」が国内でも主流になる可能性があることなどから、医療体制への影響も含め注視する必要がある。60歳以上に対する4回目ワクチン接種の加速のほか、基本的な感染対策を徹底することなどが呼びかけられた。(参考)新規感染者数「全国的に上昇傾向に転じた」コロナアドバイザリーボード分析・評価(CB news)新型コロナ“全国で増加 BA.5で感染拡大の懸念も”専門家会合(NHK)第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省厚労省は2020年度の国民健康保険の財政状況を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、医療機関に支払われる保険給付費が減少したため、支出は前年度比3.5%減少して保険料収入を下回った。これにより単年度の実質収支は+2,054億円と過去最大の黒字となった。同時に2020年度の後期高齢者医療制度の財政状況についても公表し、収支は前年度より4,600億円あまり増加し、8,219億円の黒字となっている。(参考)市町村国保でも2020年度はコロナ感染症の影響で大幅黒字、積立金は1兆3257億円に増加―厚労省(Gem Med)後期高齢者医療広域連合、8,200億円超の黒字 20年度 受診控えで保険給付費大幅減、厚労省(CB news)4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検必要とされる量の100倍のモルヒネを誤って処方し、高齢患者をモルヒネ中毒死させたとして、警視庁は、武蔵国分寺公園クリニックの女性医師と調剤にあたった薬剤師を業務上過失致死容疑にて書類送検した。患者は93歳の男性で、昨年2月に呼吸困難のためクリニックの在宅診療を受け、この医師からモルヒネの内服薬を処方された。薬剤師から渡された薬を服用したところ、約1週間後にモルヒネ中毒により死亡した。クリニックによれば、遺族とはすでに示談が成立しており、また事故の詳細については 一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)に詳細な報告書を提出している。(参考)93歳に必要量100倍のモルヒネ処方 容疑の医師と薬剤師書類送検(朝日新聞)モルヒネ中毒で男性死亡 業務上過失致死の疑い 医師ら書類送検(NHK)報道の件について(武蔵国分寺公園クリニック)5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数埼玉県ふじみ野市で、今年1月に患者家族が在宅医療を担当していた医師を射殺した事件で、さいたま地検は1日、容疑者を殺人や殺人未遂などの罪で起訴した。この事件を受け、地元の東入間医師会が在宅医療や訪問介護を行っている事業所を対象に調査した結果、介護従事者への殺意をほのめかす家族に遭遇したり、包丁を向けられるなど危険を感じたことがあるという回答が複数寄せられていたことが判明した。在宅医療や介護の安全を確実に守るため、行政命令の規定や罰則が必要とする意見も上がっている。(参考)在宅医療や介護で「危険感じた」医師ら殺傷事件受け調査 埼玉(NHK)医師殺害の罪、男起訴 埼玉の立てこもりで地検(日経新聞)6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕美容整形クリニックの女性職員が、上司に当たる医師に睡眠薬を飲まされて自宅でわいせつ行為を受けたとして、警視庁捜査1課は準強制性交等とわいせつ目的略取の疑いで「ミッドクリニック」の院長を逮捕した。女性職員が院長と会食した後、院長の自宅に連れこまれ、わいせつ行為を受けたと警視庁に相談して被害が発覚した。被害者の体内からは睡眠薬の成分が検出されている。竹沢容疑者の周辺からは警察に同様の被害相談があり、同課が調べている。(参考)部下に睡眠薬飲ませわいせつ 容疑で美容外科医逮捕(産経新聞)部下に睡眠薬でわいせつ行為か 美容整形クリニック院長を逮捕(NHK)

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2価RSVpreFワクチン、第IIa相チャレンジ試験で有効性を確認/NEJM

 2価の呼吸器多核体ウイルス(RSV)融合前F蛋白ベース(RSVpreF)のワクチンはプラセボと比較して、症候性のRSV感染やウイルス排出の予防効果が高く、安全性に関する明らかな懸念も認めないことが、ドイツ・Pfizer PharmaのBeate Schmoele-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年6月23日号で報告された。ワクチン接種後にウイルスを鼻腔内投与 本研究は、2価RSVpreFワクチンの有効性と安全性の評価を目的に、単施設で行われた探索的なRSVチャレンジ試験(二重盲検無作為化プラセボ対照第IIa相試験)である(米国Pfizerの助成を受けた)。 健康な成人(年齢18~50歳)が対象とされ、2価RSVpreFワクチン(120μg、アジュバントは含有されていない)の単回筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。これらの参加者は、ワクチンまたはプラセボの接種から約28日の時点で、RSV-A Memphis 37bチャレンジウイルスを鼻腔内に投与され、隔離室で12日間の観察を受けた。 ウイルスの投与を受けた参加者は、ウイルス投与から28日後にフォローアップのために受診し、ワクチン注射から6ヵ月後(ウイルス投与から155日目)に最後の受診をした。 プロトコルで事前に規定された主要エンドポイントは、(1)症候性RSV感染(逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]検査でウイルスRNAが少なくとも2日連続で検出)が確定され、3つのカテゴリー(上気道、下気道、全身)のうち2つ以上で重症度を問わない臨床症状が1つ以上みられるか、または1つ以上のカテゴリーでGrade2の臨床症状がみられる、(2)ウイルス投与後1日目から退院までの総症状スコア、(3)RT-qPCR検査で測定された鼻腔洗浄液検体中のRSVウイルス量のウイルス投与後2日目から退院(12日目)までの曲線下面積(AUC)とされた。ワクチン有効率86.7%、重篤・重度の有害事象はない 70例が登録され、ワクチン群に35例(スクリーニング時の年齢中央値24歳[範囲19~47]、女性10例[29%])、プラセボ群にも35例(26歳[20~50]、10例[29%])が割り付けられた。計画どおり、このうち62例(89%、両群31例ずつ)がRSV-A Memphis 37bを鼻腔内に投与され、60例が隔離観察期間を完了した。 チャレンジウイルスの投与を受けた参加者における、症候性RSV感染(ウイルスRNAの2日以上連続の検出で確定)の予防に関するワクチンの有効率は、86.7%(95%信頼区間[CI]:53.8~96.5)であった。症候性感染は、ワクチン群が6%(2/31例)、プラセボ群は48%(15/31例)で発現した。 ウイルス投与後2~12日目までのRT-qPCR検査で測定したRSVウイルス量のAUC(時間×log10コピー/mL)中央値は、ワクチン群が0.0(IQR:0.0~19.0)、プラセボ群は96.7(0.0~675.3)であった。 ワクチン群では症状の発現期間と重症度の双方で防御効果が認められ、総症状スコアの幾何平均の和は、ワクチン群の2.1に対しプラセボ群は10.8だった(比:0.26、95%CI:0.12~0.56)。 一方、RT-qPCR検査またはウイルス培養による有効性のエンドポイントの定義に基づくと、ワクチン群で症候性感染は認められず、プラセボ群で症候性感染が確定されるまでの期間中央値はRT-qPCR検査が3.3日(IQR:2.9~4.8)、ウイルス培養は4.8日(3.8~5.3)であった。また、RT-qPCR検査で定量化可能なウイルスが検出されたワクチン群8例におけるウイルス排出は、症状の有無にかかわらず、ウイルス投与後に初めてウイルスDNAが検出されてから、24時間以内にほぼ限定されていた。 免疫原性の評価では、ワクチンまたはプラセボ注射後約28日の時点でのウイルス投与直前におけるRSV-A中和抗体価のベースラインからの幾何平均上昇倍率は、ワクチン群が20.5倍(95%CI:16.6~25.3)、プラセボ群は1.1倍(0.9~1.3)で、RSV-B中和抗体価の幾何平均上昇倍率はそれぞれ20.3倍(15.6~26.4)および1.0倍(0.9~1.1)であった。 ワクチンまたはプラセボ注射後7日までに、ワクチン群が14%(5/35例)、プラセボ群は6%(2/33人)で局所反応が報告された。ワクチン群の局所反応はすべて軽度であった。最も頻度の高い局所反応は注射部位の痛みだった(ワクチン群5例、プラセボ群1例)。全身性のイベントは、ワクチン群が18例(51%)、プラセボ群は11例(33%)で発現し、疲労/倦怠感の頻度が高かった(ワクチン群14例[40%]、プラセボ群10例[30%])が、いずれも軽度であった。38℃以上の発熱は認めなかった。 注射後28日以内に、ワクチン群が34%(12/35例)、プラセボ群は29%(10/35例)で、合計25件の有害事象が発現した。1件(顎下リンパ節腫脹、ワクチン注射後26日目に発現し53日目に消退)が、ワクチン関連と判定された。ワクチン群で試験中止の原因となった有害事象が2件(検査で新型コロナウイルス感染症が陽性と心電図でQT間隔延長が1件ずつ)認められたが、いずれも試験薬との関連はないと判定された。28日までに、重篤または重度の有害事象の報告はなかった。 著者は、「これらの知見は、今後、第III相試験でRSVpreFワクチンの有効性の評価を行うことを支持するものである」としている。

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オミクロン株BA.4/BA.5、BA.2より免疫逃避しやすい?/NEJM

 現在、米国ではオミクロン株BA.2.12.1、南アフリカではBA.4やBA.5といった、新たな系統への置き換わりが進んでいる。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNicole P. Hachmann氏らが、ワクチン接種者とCOVID-19既感染者において、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定したところ、BA.2.12.1、BA.4、BA.5といった新系統の亜種が、ワクチンと感染による免疫から逃避する可能性があることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、ファイザー製ワクチンを2回接種し、その後ブースター接種した27例と、オミクロン株BA.1またはBA.2に感染した27例において、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株)、およびオミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定し、その中央値が求められた。なお、BA.4とBA.5はスパイク蛋白の配列が同一である。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群において、6ヵ月後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して124U/mLであったが、すべてのオミクロン株亜種に対しては20U/mL未満であった。ブースター接種2週間後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して5,783U/mL、BA.1に対して900U/mL、BA.2に対して829U/mL、新系統のBA.2.12.1に対して410U/mL、BA.4またはBA.5に対して275U/mLとなり、いずれもブースター接種後は中和抗体価が大きく増加した。しかし、WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1やBA.2は6~7分の1に低下している一方で、BA.2.12.1は14分の1、BA.4とBA.5は21分の1に中和抗体価が大幅に低下している。・オミクロン株BA.1またはBA.2の既感染群の中和抗体価は、WA1/2020株に対して1万1,050U/mL、BA.1に対して1,740U/mL、BA.2に対して1,910U/mL、BA.2.12.1に対して1,150U/mL、BA.4またはBA.5に対して590U/mLであった。WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1は6.4の1、BA.2は5.8分の1、BA.2.12.1は9.6分の1、BA.4とBA.5は18.7分の1に低下している。 本研究の結果、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5は、現在日本で主流のBA.2よりも、ワクチン接種と感染による免疫から逃避しやすいことが示された。ワクチン接種や、BA.1やBA.2の感染既往のある集団においても、BA.2.12.1、BA.4、BA.5への感染が増加する可能性が考えられる。

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第115回 参院選、コロナ対策で正論を打ち出したのは思いもよらぬあの政党!?

東北北部を除いて全国で梅雨明けし、恐ろしいほどの暑さに襲われている。正直、関東甲信越の梅雨明けの第一報を聞いた時は「今年梅雨というほど雨降ったっけ?冗談だろう」と思わずにはいられなかったのが本音である。さてそんな夏をさらに暑いというか暑苦しくさせているものがある。6月23日に公示された参議院議員選挙である。屋外を歩いていると、5分もせずに汗びっしょりになるなか、街宣カーから候補者が張り上げる声を聞くのは申し訳ないがやや苦痛である。だが、それでもつい耳を傾けてしまう自分がいる。ということで、たぶん本連載で最も読まれないであろう毎度恒例の参議院選挙の各党の政策について、衆議院選挙で各党が掲げた政策も参照(第78回、第79回、第85回)しながら、批判的吟味を加えて紹介したいと思う。まず、政党と言っても中小政党まで含むと数多くの政党が存在するため、今回も参議院に現有議席を持つ政党(会派は除く)に絞る。また、医療・福祉関連はなかなかに幅が広いので、ややポストコロナ感が見えてきた中での新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策に限定する。まずは、政権与党筆頭の自民党。掲げている新型コロナ対策は(1)ワクチン接種の推進(2)検査能力の拡充(3)臨時の医療施設等も含めた保健医療体制の強化(4)国産の飲み薬をはじめとする治療薬や国産ワクチンの確保(5)将来の危機に備えた司令塔機能の強化(6)本格的な移動の回復等に向けた交通機関等の感染防止対策や空港・港湾の万全な水際対策与党ということもあり、基本的には現在政府が推進している政策を提示している感が強い。厳しく言えば特徴らしい特徴がない。もっともこのうちの(5)については該当する内閣感染症危機管理庁の新設が決まった。これは昨年12月の国会での岸田首相の所信表明演説で「これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証します。その上で、来年の6月までに、感染症危機などの健康危機に迅速・的確に対応するため、司令塔機能の強化を含めた、抜本的体制強化策を取りまとめます」と語ったのを実現したモノだ。その意味では公約通りとも言えるが、この点がやや「あざとい」のはお気づきの方もいると思う。まず、所信表明にある新型コロナ対応の徹底検証とは、「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」での議論のことだ。同会議は新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣に下に4月に設置が決定。実際の会合は5月上旬に始まり、わずか5回の会合のみで報告書をまとめている。2年にわたる政府の新型コロナ対策をわずか1ヵ月で検証するのは「徹底的」とは言えない。この報告書が6月15日に発表され、その日の夕方、岸田首相は「内閣感染症危機管理庁」の新設を発表している。しかも、6月は前々から日程が決まっていた今回の参議院選挙がある。要は選挙をにらんでバックキャスティングでモノを決めただけである。この件では国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの統合による日本版CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の創設も謳われたが、私が知っている国立感染症研究所のある職員は「寝耳に水。こちらにはまったく話がなかったんで、所内ではてんやわんやになりました」と話していた。良くも悪くも政治主導ということである。その意味では「仏に魂を入れられるかどうか」が今後のカギを握る。最後の「移動の回復と万全な水際対策」はかなり矛盾した方針である。最近では世界中で感染報告が増加しているサル痘が隣国の韓国でも確認され、日本にとっても上陸は「いつ?」ということになりつつある。水際対策を強化すれば、入国時の検疫やそのほか諸々の規制を強化しなければならず、人流の回復には障害になる。自民党と連立を組む公明党が掲げるのは、以下の3本柱。(1)新たな危機管理体制の確立(2)国産ワクチン・治療薬の開発・実用化(3)新型コロナウイルス感染症の後遺症対策前者2つは自民党の政策とほぼ同様のもので、やはり与党らしいともいえる。前回衆議院選では病床確保や検査拡充をかなり訴えていたが、それらが消えて(1)となり、(2)と(3)は前回の衆議院選から同様だが、(3)は同党が掲げているオリジナルな政策である。また、この件は現在の新型コロナ対策の中では政策的対応としてやや抜け落ちているテーマでもある。さらに同党は中小政党とはいえ与党である。これをどのように実現させるのかについては医療関係者も注視しておいて良いポイントと言えるだろう。余談だが、前回の政策を比較のため検索したら、前回衆議院選の政策集が公式ホームページから削除されていたのは公明党のみである。さてここからは野党である。最大野党の立憲民主党が掲げている新型コロナ対策は以下の通りだ。コロナ対策について国が司令塔機能を発揮できる法改正重症化リスクが高い人などが確実に医療を受けられる「コロナかかりつけ医」制度創設水際対策を徹底し、必要な時に誰でもすぐに受けられるPCR検査体制の確立政府の対策を専門的見地から客観的に検証する「コロナ対策調査委員会」の国会への設置国内でワクチン・治療薬の開発の支援体制強化COVAXファシリティへの拠出拡大を含め、コロナ対策における国際社会の取り組みへの貢献前回はほぼ1番目の司令塔強化のみが同党の新型コロナ政策だったが、今回は激増した。与党の自民党・公明党との明確な違いは「コロナかかりつけ医」制度である。新型コロナだけで、かかりつけ医というとやや突飛に見えるが、実は立憲民主党は「日常からの健康管理・相談や総合的な医療提供(プライマリ・ケア)機能を持つかかりつけ医を『家庭医』と位置付ける『日本版家庭医制度』の創設も掲げている。奇しくも政府が先ごろ閣議決定した「骨太方針2022」では「かかりつけ医」の制度化を謳っているが、自民党の強力な支援団体である日本医師会はこれに反対の立場である。立憲民主党のこの政策は珍しく政府与党の方針と親和性が高い。立憲民主党のこの政策に対する本気度は不明だが、かかりつけ医の制度化を囲む政府与党、最大野党、日本医師会の関係性がどのようになるかは気になるところだ。そして野党の中では、前回の衆議院選で改選前から3倍超も議席を伸ばした日本維新の会は、前回衆議院選では12項目もの政策を掲げ、その多くが病床確保策だったが、今回は「感染症法を改正し、治療やワクチンにかかる費用は無償を継続しながら、新型コロナウイルス感染症の感染症上の位置付けを5類感染症とする」ことをほぼ1点突破で訴えている。この辺はややうがった見方をすると、インターネット上で「新型コロナの5類相当への引き下げ」という声が少なくないことを意識したネットポピュリズムにも映る。ご存じのように新型コロナは当初感染症法では、入院勧告が可能で、治療費が公費負担になる指定感染症として同法2類相当と政令で定め、2021年2月の同法改正では1〜5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に指定された。現時点では基本は全数報告で、濃厚接触者の追跡、外出自粛要請などにも根拠を与えている。確かにオミクロン株による感染が主流になってからは、感染者が激増する一方で多くが軽症であるため、現在の位置付けは保健所などを含めた地方自治体行政の中では、さまざまな局面で負担が大きいと言える。日本維新の会の政策は、5類相当になった場合に患者にとって最大のデメリットである治療費公費負担が維持できる5類相当を感染症法の改正によって実現しようとするもの。この辺にもややポピュリズム臭が漂う。もっとも新型コロナの5類相当を求める人では、新型コロナパンデミックで顕在化した診療体制の脆弱さを基に「オミクロン株は多くが軽症だから、5類相当のインフルエンザと同じくその辺のクリニックでも診察できるようにすれば良い」という主張が多く見受けられる。しかし、このウイルスはクラスターを起こしやすいという点が極めて特徴的で、今でも医療機関や高齢者施設でのクラスター発生報告は後を絶たない。そうした中で法的に5類にしたとしても、市中の幅広い医療機関が新型コロナの診療を始めるとはとても思えない。この点を踏まえてどのような形にするかは、この政策主張だけではまったく見えないのが実際のところだ。前回の衆議院選挙で議席が微増した国民民主党は前回同様の「コロナ三策」を掲げている。第3策は直接医療とは関係のない経済支援策だが、第1策が「検査の拡充『見つける』」、第2策が「感染拡大の防止『抑える』」が医療的な新型コロナ対策で、前回10項目あった第2策は6項目に整理された。当時はデルタ株での第5波収束直後ということもあり、今回消えた項目は病床や治療薬の確保や検疫強化の話が中心だ。この第2策の中で新設とも言えるのが「マスク着用の見直し」だが、官房長官発言などで屋外での感染リスクが低い局面でのマスク不要の発言を受けてもなお市中の動きは鈍い。政治からの発信のみでここが変わるかは疑問なところではある。そして第1策は前回の衆議院選とまったく変わらない。端的に言えば家庭と市中で無料検査を拡大し、感染者を見つけ出してセルフケアで感染拡大の抑止につなげることやワクチン接種歴や検査陰性データのデジタル証明の普及を謳っている。しかし、軽症者が多く、感染拡大スピードが速いオミクロン株対応では、この政策は時代遅れと言っても過言ではない。「もう少し真面目に政策を作ってください」と言いたくなるのは厳しすぎるだろうか。一方、全体的に革新色の強い日本共産党と社会民主党の政策を見てみたい。日本共産党は立憲民主党と同様にかなり多項目の政策を掲げている。高齢者施設、医療機関などでの頻回検査を国の責任で実施感染者や疑いのある人が十分な検査と医療を受けられるよう地域医療への支援を強化ワクチンの有効性・安全性の情報発信を国が前面に立って行い、希望者への安全・迅速な接種を推進地域医療構想に基づく急性期病床削減計画を中止し、拡充に切替感染症病床、救急・救命体制への国の予算を2倍にし、ICU(集中治療室)支援制度を新設し、設置数を2倍に政府が進める医師の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続保健所予算を2倍にし、保健所数も職員数も増員国立感染症研究所・地方衛生研究所の研究予算を10倍化最後の3つは前回衆議院選時と変わらずだが、未だどこに予算根拠があるのかは不明である。検査体制については「『いつでも、誰でも、無料で』という大規模・頻回・無料のPCR検査を行います」「職場、学校、保育所、幼稚園、家庭などでの自主検査を大規模かつ無料で行えるように、国が思い切った補助を行います」からは変化し、検査の重点を医療機関と高齢者施設に絞り込んだところには進化が見える。一方、注目点は新型コロナワクチンについて「ワクチンの有効性・安全性の情報発信を国が前面に立って行い」としている点だ。やや概念的にも思えるが、新型コロナでのワクチン政策は有効性への限界から現在曲がり角に達している。そこに新規感染者での接種歴区分に関して厚生労働省が雑な集計をしていたことが明らかになり、現在はワクチン不信がピークとも言える社会状況である。その意味で日本共産党のこの主張では与野党が協力体制を敷いても良いケースと言えないだろうか。社民党の新型コロナ対応では非常時の病床確保の観点から、2019年に厚生労働省が診療実績などに基づき再編の必要性も検討すべきとして提示した公立・公的病院436ヵ所のリスト撤回を求めるという前回同様の1本柱である。これは前回も触れたが、日本国内では従来から医療機関の幅広い分布が、逆に医師などのソフトの面での薄い配置を招き、結果として医療の質の地域間格差を生んでいる側面がある。この環境でこの政策を掲げ続けるならば、もうひと捻りが必要ではないだろうか。また、医療という幅広い領域で病床削減反対のみを掲げ続けるのも新鮮味はない。「ブレない」がウリらしい同党だが、もう少し良い意味で「ブレて」欲しいものである。国政選挙では時に台風の目になっているれいわ新選組は、前回衆議院選ではやはり検査拡大やエッセンシャルワーカーへの手当拡充を訴えていたが、今回は、新型コロナの新しい変異種に限らず、まったく新しい感染症の登場に備える感染症が拡大する恐れがある場合は災害に指定し徹底した補償を実施感染症と災害の対策司令塔としての防災庁の設置緊急時に向けて平時からの病床安定確保、国による医師・看護師、保健師など人材の増員など、保守政党や革新政党が掲げる概念的な政策を足して2で割ったような大人しさ。最後にNHK党。一般にはややおちゃらけた政党のように思われ、なおかつNHKに関する政策のみで前回は新型コロナ対策が見当たらなかったが、今回は以下のような政策を掲げている。屋外など感染リスクの低い状況での積極的なマスク外しの奨励検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす日本版 CDC 創設日本版 ACIP (ワクチン接種に関する諮問委員会)制度の導入米国などで導入されているナース・プラクティショナー制度導入国民民主党のところで同党が掲げる検査拡充を批判的に評価したが、それはオミクロン株のような感染力が強く、重症化もしにくいウイルスで検査を拡充すれば無駄に無症状者などを拾い上げ、結局この感染症の対策を厄介するからである。その意味でNHK党の政策は正論である。また、そのほかでもアメリカのACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)の日本版やナース・プラクティショナー導入を掲げるなど、「あれれ、どうした?」という感じだ。誰か新たなブレーンが入ったのだろうか? いずれにせよ一番変化があったのがこの党である。もっともテストで0点だった生徒が、急に20点になったようなものかもしれない。さて皆さん、今回はどのような選択をしますか?

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追加接種のタイミング、6ヵ月以上でより高い有効性か

 ワクチンの種類や2回目接種からの間隔の長さによって、オミクロン株に対する3回目接種の有効性は異なるのか? スペイン・公衆衛生研究所のSusana Monge氏らは、全国規模の住民登録データを用いて、オミクロン株が優勢な期間におけるワクチン有効率をいくつかのサブグループごとに推定。結果をThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2022年6月2日号で報告した。 本研究では、スペインの3つの全国的な人口登録(ワクチン接種登録、検査結果登録、および国民健康システム登録)からのデータをリンクさせて、ワクチン初回シリーズ(mRNAワクチンおよびアストラゼネカ製ワクチンは2回、ヤンセン製ワクチンは1回)をフォローアップ開始の3ヵ月前までに完了した40歳以上の個人を選択した。パンデミックの開始以降、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したことがある者(検査陽性者)は含まない。 2022年1月3日から2月6日までの毎日、mRNAワクチンの追加接種者と対照者を、性別、年齢層、郵便番号、ワクチンの種類、2回目接種からの経過時間、および以前の検査回数でマッチさせた。Kaplan-Meier法を使用して、リスク比(RR)とリスク差による群間比較を行った。ワクチン有効率は、1からRRを引いたものとして計算された。 主な結果は以下の通り。・311万1,159人ずつのマッチさせたペアが解析対象。・初回シリーズのワクチンの種類は、ファイザー製が78.4%、モデルナ製が11.8%、アストラゼネカ製が7.6%、ヤンセン製が2.2%。追加接種は、ファイザー製が26.6%、モデルナ製が73.4%だった。・全体として、追加接種後7~34日目までの推定有効率は51.3%(95%信頼区間[CI]:50.2~52.4)だった。・追加接種の種類ごとにみた推定有効率は、モデルナ製が52.5%(51.3~53.7)、ファイザー製が46.2%(43.5~48.7)だった。・初回シリーズの種類ごとにみた推定有効率は、アストラゼネカ製が58.6%(55.5~61.6)、モデルナ製が55.3%(52.3~58.2)、ファイザー製が49.7%(48.3~51.1)、ヤンセン製が48.0%(42.5~53.7)だった。・初回シリーズ後151~180日に追加接種した場合の推定有効率は43.6%(40.0~47.1)、180日を超えて追加接種した場合は52.2%(51.0~53.3)だった。 著者らは、追加接種のオミクロン株に対する推定有効率はファイザー製と比較してモデルナ製で高く、また初回シリーズ完了後追加接種までの時間とともに推定有効率が増加したとまとめている。ただし一方で、推定有効率がより間隔を空けた場合と比べやや低いとしても、オミクロン株感染が拡大している中での接種は可能な限り早い段階で感染を減らすという側面から正当化されるかもしれないと考察している。

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第115回 日医の一致団結と信頼回復に期待、松本新会長のミッション

日本医師会(日医)が6月25日に行った役員選挙で、常任理事の松本 吉郎氏が会長に初当選した。松本キャビネットの副会長3人、常任理事10人の候補者も全員当選。大方の予想通りの結果となった。2年前の前回選挙では中川 俊男氏と横倉 義武氏が日医内を二分し、遺恨が残ったが、今回は松本キャビネットが圧倒的な支持を得たことで、日医の一致団結、信頼回復が期待される。松本キャビネットは全員当選会長選では松本氏と、副会長の松原 謙二氏の一騎打ちとなった。松本氏310票、松原氏は64票で、松本氏の圧勝だった。無効と白票は各1票。副会長選(定員3人)では、茂松 茂人氏(大阪府医師会会長、265票)、猪口 雄二氏(全日本病院協会〈全日病〉会長、262票)、角田 徹氏(東京都医師会副会長、250票)と松本キャビネットの3人が当選した。現職の副会長の今村 聡氏(227票)も200票を超える票を集めたが、敗れた。投票総数は1,125票。無効0票、白票121票だった。常任理事選(定員10人)には11人が立候補したが、松本氏の当選に伴い、新人で松原キャビネットの玉元 弘次氏(千葉)が立候補を辞退したため、松本キャビネットの10人が無投票で当選した。常任理事は以下の通りだ。▽釜萢 敏氏(群馬県)▽城守 国斗氏(京都府)▽長島 公之氏(栃木県)▽江澤 和彦氏(岡山県)▽宮川 政昭氏(神奈川県)▽渡辺 弘司氏(広島県)▽神村 裕子氏(山形県)▽細川 秀一氏(愛知県、新人)▽今村 英仁氏(鹿児島県、新人)▽黒瀬 巌氏(東京都、新人)。ちなみに、代議員会議長は愛知県医師会会長の柵木 充明氏、副議長は栃木県医師会会長の太田 照男氏がそれぞれ無投票で選ばれた。また、監事には河野 雅行氏(宮崎県医師会会長)、馬瀬 大助氏(富山県医師会会長)、平川 博之氏(日本精神神経科診療所協会副会長、東京都医師会副会長)が就いた。以上、会長以下執行部19人の出身を都道府県別に見ると、以下の14に分かれる。東京4人(猪口氏を含む)、栃木2人、愛知2人、大阪2人、山形、富山、群馬、埼玉、神奈川、京都、岡山、広島、宮崎、鹿児島各1人。「国民の信頼」を盛り込んだ柱と公約と初記者会見話を松本氏に戻す。松本氏は1954年山口県生まれ。1980年浜松医科大学卒業。1988年松本皮膚科形成外科医院(埼玉県現・さいたま市)開業、理事長・院長。埼玉県医師会常任理事や大宮医師会長などを歴任。2016年から日医常任理事。2017年7月~21年10月まで中央社会保険医療協議会委員を務めた。松本氏が選挙時に掲げた医師会運営の4つの柱と8つの公約を改めて見てみる。医師会運営の柱(1)地域から中央へ(2)国民の信頼を得られる医師会へ(3)医師の期待に応えられる医師会へ(4)一致団結する強い医師会へ公約(1)国民の健康と生命を守る(2)現場からの情報収集と連携(3)組織力強化(4)新興感染症および新型コロナウイルス感染症への対応(5)国民皆保険制度と医療提供体制の堅持と持続性の確保(6)超高齢社会への対応(7)医師の働き方改革(8)国民の信頼回復のための情報発信医師会会員や医師だけでなく、国民としても覚えておきたい。松本氏は当選後の記者会見で、「日本医師会の役割は国民の命と健康をしっかりと守っていくことだと考えている。そのためには、やはり現場の意見を汲み取り、地域社会のいろいろなご提言、ご意見を賜りながら、日医で検討し、いろいろな選択につなげていくことが大事だと思っている」と述べた。そのうえで、「それにはまず会員、医師の方々の信頼に応えることができる医師会になるように努力していきたい。それがひいては、国民の皆さん方の信頼を得ることにつながると思っている。行政、政界、財界、いろいろな関係職種の方々も含めて、連携し、コミュニケーションを取って、日医の使命を果たすべく努力していきたい」と「信頼」を強調した。医療現場の声に基づいた情報発信を筆者は昨年春、ある医療情報誌のインタビュー記事で松本氏を取材している。コロナ禍で医療従事者や労働者のメンタルヘルスに影響が出ていることや、女性を中心に自殺者が増えていること、対策として産業医活動の重要性などの話を伺った。その時は、医療現場の実態を把握していると感じた。日医の会長になっても、政治的な思惑や私利私欲ではなく、医療現場の声に基づいた状況を国に伝えていってもらいたい。追伸 私の連載はこの回が最後になります。スタートから2年間はあっという間でした。これまでお読みいただきましてありがとうございました。またどこかで皆様とご縁がいただければと思っています。皆様のご健康とご発展をお祈りしております。

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熱中症の経験ありは35.7%、毎年経験は2.7%/アイスタット

 2022年の夏は、例年になく長く、猛暑になるとの予報がでている。そして、夏季に懸念される健康被害の代表として「熱中症」がある。厚生労働省から新型コロナウイルス感染症予防のマスクの着脱も夏を前に発表されたが、まだ時期早々という社会的な雰囲気からか浸透していない。実際、熱中症の経験や今夏のマスク着用の考え、熱中症の予防などについて、一般の人はどのよう考えているのだろうか。株式会社アイスタットは、6月13日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~69歳の有職者300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年6月13日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~69歳/全国の有職者)を対象アンケートの概要・熱中症の「経験あり」は35.7%、「経験なし」は64.3%。毎年経験は2.7%とわずか。・熱中症経験者の要因は、第1位「水分をこまめにとるのを忘れていた」の48.6%・熱中症の予防対策を行っている人は58%。熱中症の経験がある人ほど行っている。・「屋外でマスク着用を義務付けない」という新しい方針に対し、「常に着用する」が33%といまだ多い。・汗をかきやすいと回答した人の熱中症の経験有無は、大きな差がみられない。・熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の飲みものの違い、第1位「麦茶」・熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の生活習慣の違い、第1位「食欲不振が増える」・1年を通して健康障害が起りやすくなる時期は、第1位「8月」、第2位「7月」。熱中症経験者の夏季の水分補給は「麦茶」が人気 質問1で「今までに熱中症になったことがあるか」(単回答)を聞いたところ、「今までに一度もない」が64.3%、「今までに数回」が28.7%、「毎年ではないが経験したことは多い」が4.3%、「毎年、経験している」が2.7%の順だった。熱中症の経験の有無別に分類すると「経験あり」は35.7%、「経験なし」は64.3%で、3人に1人が熱中症を経験していた。また、「毎年、経験」を回答した人の属性をみると、「50代」「女性」「既婚」「関東地方」で多かった。一方、「今までに、一度もない」を回答した人の属性は、「60代」「男性」「未婚」「中国・四国・九州地方・沖縄」で多かった。 質問2で「(質問1で熱中症経験ありと回答した107名に対し)熱中症になったときの様子」(複数回答)を聞いたところ、「水分をこまめにとるのを忘れていた」が48.6%、同率で「寝不足や疲れなどで体調が悪かった」、「長時間、屋外にいた」、「真夏日・猛暑日であった」が41.1%だった。水分摂取不足だけでなく、複合的な要因で熱中症が起こることが示唆された。 質問3で「熱中症にならないように、毎年、予防対策を行っているか」(単回答)を聞いたところ、「どちらかといえば、行っている」が46.7%、「どちらかといえば、行っていない」が25.0%、「まったく行っていない」が17.0%、「常に行っている」が11.3%の順だった。熱中症の予防対策の有無別に分類すると、「行っている」は58%、「行っていない」は42%で、過半数を超える人が予防対策を行っている一方で、対策をしていない人も多く、これからの予防啓発の必要性をうかがわせる結果だった。 質問4で「夏シーズンが終わるまで、マスクの着用をどうするか」(単回答)を聞いたところ、「高温多湿の状況により、マスクの着用有無を使い分ける」が59%、「常にマスクを着用する」が33%、「常にマスクを着用しない」が8%の順だった。回答では状況を勘案して使い分ける人が多かったが、「常にマスクを着用」では、「熱中症経験なし」「20・30代」「男性」「北海道・東北地方」の回答者が多かった。その一方で「常にマスクを着用しない」では、「熱中症経験なし」「20・30代」「男性」「四国・中国・九州地方・沖縄」の回答者が多かったことから、回答に地域差がみられた。 質問5で「汗をかきやすいか」(単回答)を聞いたところ、「どちらかといえば、そう思う」が44.0%、「非常にそう思う」が28.0%、「どちらかといえば、そう思わない」が20.7%、「まったくそう思わない」が7.3%の順だった。汗のかきやすさ有無別に大きく分類すると、「そう思う」は72%、「そう思わない」は28%で回答者の約7割が「汗をかきやすい」と回答していた。 質問6で「夏の時期に毎日1回以上飲むもの」(複数回答)を聞いたところ、「水・ミネラルウォーター」が47.7%、「麦茶」、「緑茶・ウーロン茶など茶系統」が同率で35.7%だった。熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の飲みものの主な違いは何かを「ある人」を基準に調べたところ8.5ポイントで「麦茶」、8.0ポイントで「アルコール」だった。「麦茶」は熱中症予防に良いと言われており、熱中症を経験したからこそ、リスク回避(予防)のために回答数が多いものと予想された。 質問7で「夏の生活習慣で、あてはまること」(複数回答)を聞いたところ、「冷たい物や飲み物をとる機会が増える」が63.0%、「入浴はシャワーですませることが多い」が37.0%、「運動不足がちとなる」の30.3%と続いた。なお、熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の生活習慣の主な違いは何かを「ある人」を基準に調べたところ、「食欲不振が増える」が10.9ポイント、「シャワーや入浴の温度設定は平均39℃以下」が8.7ポイント、「寝不足・睡眠不足を感じる日が増える」が8.5ポイントの差であった。 質問8で「1年を通して、気圧・気温などの理由で、健康に障害が起りやすくなることがあるか。また、起りやすい月について」(複数回答)を聞いたところ、「なし」が42.3%、「8月」が20.0%、「7月」が18.7%、「6月」が15.7%の順だった。いずれも上位の月が暑い時期に集中し、夏季に健康障害が起りやすい傾向がうかがえた。

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妊娠中のコロナワクチン2回接種、生後6ヵ月未満児の入院を半減/NEJM

 妊娠中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンを2回接種することにより、生後6ヵ月未満の乳児におけるCOVID-19による入院および重症化のリスクが低減することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのNatasha B. Halasa氏らが実施した検査陰性デザインによる症例対照研究の結果、示された。生後6ヵ月未満児はCOVID-19の合併症のリスクが高いが、ワクチン接種の対象とはならない。妊娠中の母親がCOVID-19ワクチンを接種することで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体が経胎盤移行し、乳児にCOVID-19に対する防御を与える可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年6月22日号掲載の報告。COVID-19で入院した乳児とCOVID-19以外で入院した乳児を比較 研究グループは、Overcoming COVID-19ネットワークに登録されている米国22州30の小児病院において、2021年7月1日~2022年3月8日の期間に、SARS-CoV-2のPCR検査陽性または抗原検査陽性でCOVID-19により入院した生後6ヵ月未満の乳児(症例群)、ならびに症例群とマッチさせた(入院日が症例児の入院日の前後4週以内)SARS-CoV-2陰性でCOVID-19以外により入院した乳児(対照群)を特定し、母親のワクチン接種の有効性を解析した。 母親のワクチン接種は、妊娠中にBNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを2回接種していることとした(妊娠前に1回目を接種し妊娠中に2回目を接種した母親は解析対象に含む)。 試験期間全体、B.1.617.2(デルタ)変異株の流行期(2021年7月1日~12月18日)およびB.1.1.259(オミクロン)変異株の流行期(2021年12月19日~2022年3月8日)に分け、乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性について、母親のワクチン接種のオッズ比を症例群と対照群とで比較することにより推定した。妊娠中のワクチン2回接種完了、乳児のCOVID-19入院に対する有効率は試験期間全体で52% 解析対象は、症例群537例(デルタ期181例、オミクロン期356例)、対照群512例(両群とも月齢中央値は2ヵ月)。妊娠中にワクチン2回接種を完了した母親から生まれた乳児は、症例群で16%(87/537例)、対照群で29%(147/512例)であった。 症例群では、113例(21%)がICUで治療を受け、そのうち64例(12%)は人工呼吸器装着または血管作動薬の投与を受けた。2例がCOVID-19により死亡したが、2例とも母親は妊娠中にワクチン接種を受けていなかった。 乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性は、試験期間全体で52%(95%信頼区間[CI]:33~65)、デルタ期で80%(95%CI:60~90)、オミクロン期で38%(95%CI:8~58)であった。母親のワクチン接種が妊娠20週以降に行われた場合の有効性は69%(95%CI:50~80)、妊娠初期(20週以前)の場合は38%(95%CI:3~60)であった。

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「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策

 日本救急医学会は熱中症予防の注意喚起を行うべく6月28日に緊急記者会見を実施した。今回、熱中症および低体温症に関する委員会の委員長を務める横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野教授)らが2020年に発刊された「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」に記された5つの提言を踏まえ、適切なエアコンの温度設定の考え方などについて情報提供した。クールビズと節電が苦しめる“エアコンの温度調節” 人間の身体が暑さに慣れるのには数日から約2週間を要する。これを暑熱順化と言うが、身体が暑さに慣れる前に猛暑日が到来すると暑熱順化できていない人々の熱中症リスクが高まる。今年は6月27日に関東甲信・東海・九州南部で梅雨明けが宣言され、しばらく猛暑日が続くと言われ、横堀氏は「身体が暑さに慣れていない今が一番危険」だと話した。 そんな日本にさらなる追い打ちをかけるのが電力不足であり、“エアコンの温度設定は〇〇℃にしないといけない”“エアコンではなく扇風機を使う”といった話題がワイドショーでもちきりだ。これに同氏は「『エアコンを28℃に設定しましょう』と言うけれど、それはクールビズの視点であり、室温を28℃設定にしても快適に過ごせるような軽装や取り組みを促すためのもの。エアコンを28℃に設定することを推奨するものではない」と指摘。また、全国の熱中症の48%が屋内で発症していること、発症者の半数以上が体温調節機能の低下している高齢者であることから、「エアコンの節電は後回しに」するよう訴えた。 また、近年では、環境省が発表している暑さ指数(WBGT)*や熱中症警戒アラート**が熱中症対策にも有用で、テレビの情報番組でも紹介されるようになっているので、「それに基づいて外出の判断をしたり、暑熱順化の期間は無理をしないように体調管理をしたりして欲しい」と話した。*暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標。日常生活に関する指針の場合、31以上は危険、28~31未満は厳重警戒で「すべての生活活動でおこる危険性」に該当。**熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症予防行動をとるよう促すための情報で、環境省と気象庁が発信。 さらに、コロナ禍ではこれまでの熱中症対策以外の問題も生じるため、2020年に「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を日本救急医学会ほか3学会合同で発表している。これには予防のための5つの提言(1:換気と室内温度、2:マスクと水分摂取、3:暑熱順化、4:熱中症弱者への対応、5:日頃の体調管理)が記載されており、同氏はこれを踏まえ「家庭用エアコンには換気機能がないものが多いため、部屋の窓を風の流れができるようにし、毎時2回以上は開放(数分程度/回)して換気を確保1)すること。ただし、頻回に窓を開けることで室温が上昇するため、すだれやレースカーテンなどで直射日光の照射を避け、部屋の温度をこまめに確認して欲しい」とコメントした。マスク着用習慣、熱中症への影響は? 厚生労働省でもマスク着脱のタイミングを公表しているが、日本では屋外でのマスク不要論がなかなか浸透しないのが現状である。しかし、マスクをしていると熱中症リスクも上がるのではという問題もある。これについてガイドライン編集委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター)は、「多数の論文をレビューして検討しているが、マスク着用により熱中症の発症が増えたという報告は現時点ではない。しかし、マスク着用が熱中症リスクになる可能性はあるため、人混みの中ではマスクを着用し、屋外で運動を行う際はマスクを外すなどのメリハリのある行動が良い」と説明した。熱中症という災害の再来か 今年5月時点ですでに全国の熱中症による救急搬送患者は前年を約1,000人も上回る2,668人に上り、東京・大阪・福岡などの都心部では前年の約2倍もの人が発症している。コロナ流行前の2018年にも同様の気候条件で、日本救急医学会が緊急宣言を発令するほどの災害レベルの酷暑が続き全国の熱中症による死者数が1,288人に上った。今夏はそれに匹敵もしくは上回る可能性も指摘されており、「医療者から患者への啓発も重要」と横堀氏らは訴える。熱中症リスクの高い熱中症弱者には高齢者はもちろんのこと、「既往歴や経済状況なども視野に入れて注意すべきなので見逃さないで欲しい」と同氏は強調した。<熱中症弱者>・既往歴:高血圧症(利尿薬を服用者[脱水を招く]、降圧薬[心機能抑制]、糖尿病[尿糖による多尿])、脳卒中後遺症を有する者、認知症患者[対応しない/できない]・日常生活にハンディキャップを有する者(活動性が低く暑熱順化が不十分)、独居・経済的弱者(エアコン設置なし、電気代の支払い、悪い住居環境、低栄養状態) 日本救急医学会では医療者向けに、判定が難しかった熱中症の重症度を正確化する重症度予測スコアを救急搬送トリアージアプリ『Join Triage』に組み込んだ熱中症応急処置・診断支援アプリを開発しHP上に公開しているほか、前述で紹介した「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」の作成や熱中症の実態調査を2005年より報告しているので、それらが診療時の一助になるのではないだろうか。

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ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第15回

第15回 ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?―Key Point―急性の単関節炎では、化膿性関節炎、結晶性関節炎(痛風/偽痛風)、関節内出血(外傷、血友病)を考える結晶性関節炎と化膿性関節炎は合併することがある関節液の白血球が5万/μL以上なら化膿性を示唆するが、それ以下でも否定はできない症例:81歳 男性主訴)左膝関節痛現病歴)2週間前に左肘関節痛あり。整形外科でシャント感染を疑われたが、治療ですぐに軽快。昨日深夜の転倒後から左膝関節腫脹を伴う関節痛あり。夕方からは発熱もあった。本日近医の検査でCRP 22だったため、救急室に紹介受診となった。既往歴)アルツハイマー型認知症、糖尿病腎症:3年前に血液透析を開始身体所見)意識清明、体温38.6℃、血圧149/61mmHg、脈拍108回/分、呼吸回数20回/分、SpO2 100%(室内気)眼瞼結膜は軽度の蒼白あり、胸腹部に異常所見なし、左膝関節に腫脹/熱感/圧痛あり経過)血液検査でWBC 12,000/μL、Hb 10.8 g/dL、Cr 6.15 mg/dL、CRP 23.9 mg/dLであった左膝関節のレントゲン写真では半月板に線状の石灰化を認めた関節穿刺を施行し、やや混濁した黄色の関節液を採取した(図1)。関節液のWBCは 9,000/μL(好中球86%)であった。白血球に貪食された菱形および長方形の結晶を認めた(図2)グラム染色および関節液培養では細菌を検出しなかった偽痛風と診断しNSAIDsにて軽快した画像を拡大する◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者における関節痛の訴えは多い化膿性関節炎を見逃すと関節の機能障害が起こる急性vs.慢性、単関節vs.多関節、炎症性vs.非炎症性を区別することで、鑑別診断を絞り込むことができる【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症か。急性は2週間以内、慢性は6週間以上の症状持続である単関節炎か多関節炎か。単関節炎は1つの関節、多関節炎は5関節以上の関節に炎症がある【STEP2-2】炎症性か非炎症性か炎症性では30分以上続く朝のこわばり(多くは1時間以上)、安静後に増悪、体を動かしていると次第に改善する関節に熱感、発赤、腫脹があれば炎症性である炎症性は血沈やCRP上昇を認める【STEP3】鑑別診断を絞り込む2)3)脊椎関節炎には反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、強直性脊椎炎、分類不能脊椎関節炎が含まれる(表1)画像を拡大する<参考文献・資料>1)MKSAP19. Rheumatology. 2022. p1-17.2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 21th edition. 2022 p2844-2880.3)山中 克郎ほか. UCSFに学ぶできる内科医への近道. 南山堂. 2012. p211-221.

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第118回 サル痘はなぜ同性愛男性に多いのか? / デルタ株に比べてオミクロン株のlong COVIDは生じ難い

サル痘の流行はいまのところ世界の緊急事態ではないと世界保健機関(WHO)は先週土曜日に判断しましたが1,2)、今春5月6日に最初の感染が確認された英国では増え続けています。同国では今月23日までの数日で117人の感染が新たに見つかって5月6日以降これまでに千人に迫る910人にサル痘が認められています3)。性別が判明している861人のほぼ全員(99%)は男性で、女性は5例のみです。男性の中でもサル痘をとくに被っているのはすでに報じられているとおりゲイ、バイセクシャル、男性とセックスする男性であり、詳しく調査されたイングランドのサル痘患者321人中308人(96%)がそういった同性愛男性でした4)。それら321人の半数を超える174人(54%)は先立つ1年間に性感染症(STI)を生じており、およそ3人に1人(32%;102/308人)は性交渉相手が先立つ3ヵ月間に10人以上いました。すなわちSTI伝播持続の後ろ盾である行ったり来たりの性交渉の循環(interconnected sexual network)がサル痘伝播の温床ともなっているようです。最近medRxivに掲載された解析でも過度に多数との交わりがある一握りが存在する性交渉事情が同性愛男性界隈でのサル痘流行持続を招いているらしいと示唆されています5,6)。その解析によると同性愛男性以外でサル痘が続くことはまずなさそうですが、有効な手立てや振る舞いの変化がなければ世界の同性愛男性の1万人超に及ぶ大規模なサル痘流行が続く恐れがあります。そうならないようにするには患者との接触者を同定してワクチンを接種するなどの対策が必要です。また、性交渉相手が多い同性愛男性に向けて説明し、支援を提供することがそういった感染予防対策を補完するでしょう5)。デルタ株に比べてオミクロン株感染のCOVID-19罹患後症状は生じ難い新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株が優勢の頃の感染者の方がその前のデルタ株優勢の頃の感染者に比べて疲労感、息切れ、集中困難、関節痛などの感染後長患い(COVID-19罹患後症状)の発生率が低くて済んでいました7-9)。Zoe社が開発した携帯通信端末(スマートフォン)アプリ・COVID Symptom Studyの使用者から集めた情報を使った観察試験の結果です。試験にはまずは健康な人が参加し、その後の症状やCOVID-19検査結果がスマートフォンアプリを使って記録されました。Lancet誌に掲載された今回の解析はワクチン接種後のPCR検査か抗原検査で感染が判明し、その感染判明から少なくとも28日間にアプリに少なくとも週1回の入力があった英国の被験者を対象としました。感染開始(start of acute COVID-19)から4週間以上続く症状が同国のガイドラインに基づいてCOVID-19罹患後症状(long COVID)と判断され、去年暮れから今春のオミクロン株優勢の頃(2021年12月20日~2022年3月9日)に感染した5万6,003人のCOVID-19罹患後症状の割合はおよそ20人に1人の4.5%(2,501/5万6,003人)でした。一方、デルタ株優勢の頃(2021年6月1日~2021年11月27日)に感染した4万1,361人のCOVID-19罹患後症状の割合はオミクロン株感染者のおよそ2倍の10.8%(4,469/4万1,361人)であり、年齢やワクチン接種からの期間に応じたCOVID-19罹患後症状発現率はオミクロン株感染者の方がデルタ株感染者より24~50%低いという結果となりました。しかしだからといってオミクロン株感染罹患後症状の患者数は少なくて済むというわけにはいきません。というのもオミクロン株感染者は多いからです。周知のとおりオミクロン株感染はより伝播しやすく、オミクロン株感染が英国で恐らく最多になった今春3月26日の新規COVID-19発症数は実に35万人を超えると推定されており、COVID-19罹患後症状患者は必然的に今後増えると著者は言っています7)。参考1)WHO says monkeypox is not yet a health emergency / Reuters2)Meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the multi-country monkeypox outbreak / WHO3)Monkeypox outbreak: epidemiological overview, 24 June 2022. gov.uk4)Investigation into monkeypox outbreak in England: technical briefing 2. gov.uk5)Heavy-tailed sexual contact networks and the epidemiology of monkeypox outbreak in non-endemic regions, May 2022. medRxiv. June 13, 20226)Why the monkeypox outbreak is mostly affecting men who have sex with men / Science7)Antonelli M, et al. Lancet. 2022 Jun 18;399:2263-2264.8)Long COVID risk less during Omicron compared to Delta / King’s College London9)Long Covid grows less likely / Science

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生後6ヵ月以上へのモデルナ製とファイザー製コロナワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2022年6月17日付のプレスリリースで、生後6ヵ月以上の小児に対して、モデルナ製とファイザー製の新型コロナワクチンについて緊急使用許可(EUA)したことを発表した。5歳未満への新型コロナワクチンの接種が許可されたのはこれが世界初となる。 モデルナ製ワクチン(商品名:スパイクバックス)は、米国でこれまで18歳以上の成人のみに使用が許可されていたが、今回の承認で、生後6ヵ月以上のすべての小児に対して使用が可能となり、それぞれの年齢層に合わせた用量を、初回シリーズとして1ヵ月間隔で2回投与する。年齢層別の1回の用量は、生後6ヵ月~5歳では25μg(0.25mL)、6~11歳では50μg(0.5mL)、12~17歳では100μg(0.5mL)となっている。また、免疫不全のある小児については、2回目の少なくとも1ヵ月後に3回目を投与することができる。 モデルナ製ワクチンについて、米国とカナダで実施された無作為化盲検プラセボ対照臨床試験によると、各年齢層で上記と同量のワクチンを2回接種した小児を、18~25歳のワクチンを2回接種した成人と比較したところ、成人と同等の免疫反応が確認された。また、COVID-19の既往がない6ヵ月~5歳約5,400例、および12~17歳340例において、2回目の接種から14日以降のCOVID-19に対する予防効果は、6~23ヵ月では50.6%、2~5歳では36.8%、12~17歳においては93.3%の有効性が示された。 すべての小児年齢層で安全性と忍容性が確認されており、死亡例や心筋炎・心膜炎を発症した例は報告されていない。ワクチンの副反応として、生後6ヵ月~5歳で最も多く報告された局所症状は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、発熱、注射をした腕(または大腿部)のリンパ節の腫脹・圧痛だった。生後6~36ヵ月の年少児では、神経過敏/泣く、眠気、食欲不振、37ヵ月~5歳の年長児では、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、吐き気・嘔吐、関節のこわばりなどが多く報告された。6~17歳では、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労感、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、注射と同じ腕のリンパ節の腫れ、吐き気と嘔吐、発熱などの副反応が報告された。 一方、ファイザー製ワクチン(商品名:コミナティ)については、すでに5~17歳に対する3回の接種が承認されていた。今回承認された6ヵ月~4歳へのワクチン接種では、初回シリーズとして用量3μg(0.2mL)を3回行い、最初の2回の投与は3週間間隔で投与し、3回目は2回目の少なくとも8週間後に投与することとなっている。 Pfizer(米国)の同日付のプレスリリースによると、ファイザー製ワクチンについて、6ヵ月~4歳の小児4,526人を対象とした第II/III相無作為化比較試験結果において、オミクロン株流行期に、2回目の接種から少なくとも2ヵ月後に3回目の3μgの接種によって、ワクチンによる強い免疫反応が確認され、プラセボ群と同様の安全性も認められたという。本試験でのSARS-CoV-2に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、3回目の接種から1ヵ月後で、2~4歳では1,535.2(95%信頼区間[CI]:1,388.2~1,697.8)、6~23ヵ月では1,406.5(95%CI:1,211.3~1,633.1)であり、両年齢層で30μgを2回接種した16~25歳と同等の抗体反応が確認された。 本ワクチンの副反応については、6ヵ月~4歳の小児において3回目の投与後少なくとも2ヵ月間追跡し、神経過敏、食欲不振、発熱と痛み、圧痛、発赤、注射部位の腫脹が最も多く報告されたという。

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