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第288回 患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省

<先週の動き> 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省厚生労働省は、3月26日に「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、少子化と専門医不足のため、小児医療の提供体制を都道府県単位から広域連携へ転換する方針を明らかにした。小児の集中治療や心臓手術など高度医療は症例減少により各都道府県単独での維持が困難となっており、県外搬送や遠隔相談を前提とした体制整備、財政支援、将来的な集約化を検討する。これらの政策は第9次医療計画への反映が見込まれ、医師不足地域では他科医との連携やオンライン診療、小児科医派遣による維持策も示された。小児がん領域でも体制見直しが進む。高度治療や研究開発を担う拠点病院は集約化しつつ、全都道府県に標準治療を提供する「県拠点病院」を新設、さらに連携医療機関を整備する三層構造へ再編する。症例数減少と分散、ドラッグ・ラグ、アクセス格差が背景にあり、質とアクセスの両立を図る。2027年から新体制が開始される予定。その一方で、人口減少は医療提供体制全体に影響を及ぼす構造問題として顕在化しており、人口減少問題を議論する「未来を選択する会議」の白書では社会保障費増大やインフラ維持への危機感が8割超に達し、出生減少の要因として経済負担や性別役割意識の影響が指摘された。人口減少は、地域差・世代差を伴いながらも全国各地で進行しており、医療政策も広域化・集約化とともに社会制度改革と不可分の課題となっている。 参考 1) 小児がん拠点病院等について(厚労省) 2) 今後の小児がん拠点病院等の指定の考え方について(同) 3) 小児医療、県またぎ連携 厚労省、心臓手術など 少子化や専門医不足で(日経新聞) 4) 小児がん診療体制を大きく見直し、「拠点病院の集約化」とともに「全都道府県に県拠点病院を指定」へ-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 5) 人口減少問題 有識者団体が報告書 “社会経済全般の改革必要”(NHK) 6) 人口減に50歳以上の7割が「危機感」、未来選択会議が初の「人口問題白書」…少子化対策のヒントも(読売新聞) 7) 民間組織「未来を選択する会議」が人口問題白書を発行、人口減見据え(朝日新聞) 8) 人口問題白書2025(未来を選択する会議) 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省厚生労働省は、3月26日に社会保障審議会医療部会を開き、2040年を見据えた新たな地域医療構想のガイドラインを4月中に公表し、都道府県は2026~28年度に新構想を策定することを明らかにした。構想区域は「人口20万人以上」を基本としつつ、地域の実情に応じ柔軟に設定。区域内では医療機関の機能分担や病床再編を協議し、急性期拠点機能は人口20~30万人に1ヵ所を目安に集約化を進める方向である。社会保障審議会での議論では、ガイドラインはあくまで参考とし、地域実情を優先すべきとの意見や、老朽病院の建て替え支援、都道府県への技術的・財政的支援を求める声が相次いだ。あわせて外来医師偏在対策も具体化し、外来医師過多区域で2026年10月以降に新設される無床診療所について、地域で不足する医療機能の提供状況や要請・勧告の有無を「医療情報ネット(ナビイ)」で公表する方針が了承された。スマホ対応マイナ保険証、RSウイルスワクチン、指定難病対応などの情報も追加される。その一方で、「要請・勧告といったネガティブ情報の公開は制度趣旨とずれる」「不公平を生む」との慎重論も出た。医療機関の定期報告率は全国平均72.4%だが、都道府県差が大きく、入力負担軽減と周知徹底が課題とされた。今後、オンライン診療受診施設の広告規制や不適切広告対策の強化も進められ、外来・在宅・介護連携まで含めた医療提供体制の再構築が本格化する。 参考 1) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会とりまとめについて(厚労省) 2) 地域医療構想「人口20万人以上」 40年見据えガイドライン骨子 厚労省(時事通信) 3) 新地域医療構想等のガイドライン、医療部会意見も踏まえて「2026年4月中」に作成・公表、急性期機能等の集約化を地域で推進(Gem Med) 4) 地域医療構想策定ガイドラインは4月に 社保審・医療部会(CB news) 5) 全国の医療機関情報掲載する「ナビイ」に外来医師過多区域での医療機能提供などの情報も公表-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med) 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協3月24日に日本医師会と四病院団体協議会は、医療・介護分野の人材紹介サービスの適正化に向け、紹介手数料の上限規制導入や返戻金制度の義務化を求める要望書を上野 賢一郎厚生労働大臣に提出した。背景には、近年の人材紹介手数料の高騰と早期離職の増加があり、医療機関の経営を圧迫している実態がある。とくに紹介手数料の総額は2023年度に1,000億円を超え、その多くが公的医療保険を原資として支払われている点が問題視されている。医療機関にとっては、診療報酬が公定価格という環境で、採用コストを価格転嫁できず、地方や中小医療機関ほど影響が大きく、地域医療提供体制の持続性にも関わる課題となっている。さらに医療・介護分野では入職後6ヵ月以内の早期離職が多く、採用のたびに高額手数料が発生する構造が経営リスクを増幅させている。要望では、早期離職時の返戻金制度を義務化し、その水準を標準化することで、紹介会社にも一定の責任を負わせる仕組みを提案した。ただし、返戻期間の単純延長では離職の後ろ倒しを招く可能性もあり、実効性ある設計が必要とされる。また、離職実態の可視化として6ヵ月超1年以内の離職データ報告義務化や、求職者が紹介手数料の実額を把握できる仕組みの導入も求めた。加えて、ハローワークやナースセンターなど無料職業紹介の活用促進も提言。民間紹介への依存が進めば人材の都市部集中や地域偏在が加速する懸念がある。これら一連の提言は、単なるコスト問題にとどまらず、人材確保と医療提供体制の持続性に直結する構造課題への対応を求めるもの。厚生労働省では、まず実態把握を進める姿勢を示しており、今後の制度設計が医療経営に与える影響は大きい。 参考 1) 高額な紹介手数料、「原資は公的医療保険」と指摘 日医会長が問題視、緊急対応を要望(CB news) 2) 医療・介護の人材紹介手数料に上限規制を 医師会と病院団体、上野厚労相へ要望書(Joint) 3) 有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書(四病院団体協議会・日本医師会) 4) 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~(同) 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省厚生労働省は、3月18日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループと介護情報利活用ワーキンググループの合同会議を開催し、医療と介護の情報連携を強化するため、「全国医療情報プラットフォーム(PF)」を活用し、診療情報提供書や訪問看護指示書・計画書・報告書を医療・介護関係者間で共有する方針を示した。これまで医療分野では電子カルテ情報共有サービス、介護分野では介護情報基盤の整備が進められてきたが、両分野をまたぐ情報共有の具体像は整理されていなかった。今回、標準様式が存在する文書から連携を開始し、将来的にはリハビリ計画書や入退院情報などへ拡大する方向で検討を進める。電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書や退院時サマリーなどの「3文書6情報」を全国で共有できるものとし、2027年初頭の本格運用が見込まれる。その一方で、介護情報基盤も要介護認定情報やLIFEデータ、ケアプランなどの共有を2026年度から段階的に開始する予定であり、両基盤を接続することで多職種連携の高度化が期待される。背景には、高齢化の進展に伴い医療と介護の複合ニーズを持つ患者が増加している現状がある。情報連携により入退院時の引き継ぎや在宅療養支援の質向上、災害時対応の強化などが見込まれる一方で、同意取得の在り方や情報セキュリティ、介護側のICT環境整備、標準化の難しさなど課題も多い。とくに介護情報は生活背景や主観的評価を含むため、医療情報との整合性確保が重要となる。今後、合同ワーキンググループでは、詳細設計を進め、2026年夏に開発方針を取りまとめる予定。医療・介護の分断を埋める基盤整備は、地域包括ケアの実効性を左右する鍵となる。 参考 1) 「全国医療情報プラットフォーム」における医療介護連携の進め方について(厚労省) 2) 健康・医療・介護情報利活用検討会 第30回医療等情報利活用ワーキンググループ、及び第10回介護情報利活用ワーキンググループ資料について(同) 3) 医療と介護の情報共有、診療情報提供書などから 全国医療情報プラットフォームで 厚労省案(CB news) 4) 医療・介護連携を「情報面」からも進めるため、まず【診療情報提供書】【訪問看護指示書・計画書・報告書】の電子的共有を検討(Gem Med) 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は政府に対し、医療資材の供給確保と財政支援を求める緊急要望書を提出した。背景には、イランを巡る中東情勢の悪化とホルムズ海峡の機能不全による世界的な原油供給不安があり、医療現場にも直接的な影響が及び始めている。医療用ガウンやグローブ、注射器、点滴バッグ、カテーテルなど、原油由来のプラスチック製品を中心にコスト上昇と供給不安が顕在化しており、基礎的医薬品を含めた医療資材の不足は診療継続そのものに直結するリスクとなる。加えて、在宅医療では燃料費の上昇が訪問コストを押し上げ、結果として患者負担の増加につながる可能性も指摘される。医療機関の経営面でも、光熱費や材料費の高騰が収益を圧迫しており、2026年度診療報酬改定で盛り込まれた物価対応分(+0.76%)は今回の急激な原油高を想定したものではなく、十分な対応とは言えないとの批判がある。さらに改定施行が6月である点も、足元の急激なコスト上昇への対応としては遅いとされる。こうした状況を踏まえ、保団連は医療資材および基礎的医薬品の国内在庫確保と安定供給、診療報酬の期中改定や補助金の拡充による即時的な財政支援を要請した。医療機関が機能不全に陥る前の早期対応を求める内容であり、原油高は単なるコスト問題を超え、地域医療の持続性を揺るがす構造リスクとして顕在化している。今後の政策対応は、医療経営の安定のみならず、患者アクセス維持の観点からも重要な局面を迎えている。 参考 1) 【要望】原油価格高騰に伴う医療資材の不足等への緊急対応を(保団連) 2) 「原油急騰で機能不全に陥る前に…」医師団体が政府に緊急の要望書 医療資材の在庫確保など求める(弁護士JPニュース) 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市川崎市立川崎病院は、麻酔薬を自己使用し患者への投与量を改変したとして、28歳の麻酔科医を懲戒免職とした。医師は不眠に悩み、「麻酔で眠る患者を見て自分も眠りたかった」と供述している。事件は2025年12月、手術中に無断で手術室を離れ、麻酔薬プロポフォールを自己注射したことに始まる。この間、約30分間にわたり麻酔科医不在の状態で手術が継続され、後に別の医師が対応した。さらに2026年1月の復職後、患者に使用予定の麻酔薬から一部を抜き取り、自身の使用目的で持ち去ろうとした上、生理食塩水で希釈した薬剤を患者に投与する不正行為が発覚した。翌日にも同様の行為を試みたが看護師が発見し、事態が明るみになった。患者への健康被害は確認されていないものの、医療安全および倫理の観点から重大な問題と判断され、病院は懲戒免職とともに窃盗容疑で警察に被害届を提出した。この事件により、病院の薬剤管理体制の脆弱性のみならず、医師の健康管理や勤務環境の問題も浮き彫りにした。長時間手術や慢性的な睡眠不足の中で、適切なサポート体制が機能していたかが問われる。医療機関における薬剤管理、職員のメンタルヘルス対策および医療安全体制の再点検が求められる事案といえる。 参考 1) 「不眠に悩み」患者の麻酔薬一部持ち去り自己注射 28歳医師処分(毎日新聞) 2) 不眠に悩む麻酔科医「患者にこんなに効くなら…」抜き取って自分に注射、患者には薄めて 川崎市立病院、懲戒免職(東京新聞) 3) 手術室離れて麻酔薬を自分に注射 「少しでも寝たかった」医師を免職(朝日新聞)

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第306回 「清潔な国」日本、なぜノロウイルス集団食中毒が起こるのか

INDEXノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生食品管理に対する姿勢、日本は甘い?ノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生大阪府熊取町で3月17日に小中学校向けの給食で提供されたパンに混入したノロウイルスを原因とする集団食中毒事件が発生した。最新の報道によると、同町教育委員会が3月24日までに把握した体調不良者は633人。原因であるパンを食べてからノロウイルスの潜伏期間内に発症したとみられるのは、うち302人だったという。2025年の食中毒統計(速報値:2026年3月2日までの報告)1)によると、同年の食中毒報告件数は1,176件、総患者数は2万4,854件。このうち発生件数の39.2%に当たる462件、患者数の74.7%に当たる1万8,566例の原因がノロウイルスである。同統計によれば、食中毒件数とそれによる患者数ともに4年連続で増加し、ノロウイルスによる患者割合が最も多い。ちなみに2025年のノロウイルスによる食中毒で最大規模だったのは、同年2月に兵庫県で発生した仕出し弁当を原因とした2,307例もの患者が発生した事例である。今回の熊取町の事例は、給食パンが原因の食中毒と断定される可能性が高く、302例に限定しても、昨年のワースト5に入る規模だ。これだけノロウイルスによる食中毒が多いのは、ご存じのようにこのウイルスが10~100個というごく少量で感染が成立してしまうことに加え、二枚貝を中心とする食品、感染した調理者を介した食品、接触・飛沫を通じたヒト・ヒト感染という感染経路の多様さ、アルコール消毒が効きにくいエンベロープ(脂質膜)を持たないウイルスであることなどが影響しているといわれる。熊取町のケースは、パン製造業者の従業員の便からノロウイルスが検出されていることから、前出の「感染した調理者を介した食品を通じた感染」に当たると考えられる。そして現状、ノロウイルス感染症には特異的な治療薬もワクチンも存在しない。これもノロウイルスの特性が影響している。そもそもこのウイルスは成熟したヒトの腸管上皮細胞でしか増殖しないため、実験室レベルでの培養がきわめて難しく、結果として動物モデルによるデータも乏しい。これではウイルスの増殖機構の解明、薬剤スクリーニング、ワクチン評価のいずれも入口からつまずいてしまうのだ。ここに22種類もの遺伝子型*があることで汎用ワクチンを開発しにくいという特徴も加わる。*遺伝子群GIIの場合結局のところ最大の対策は、汚染された食品を回避するという意味での“予防”となってしまう。しかし、これも実は一般人にとっては対策が事実上困難である。というのも、報告されているノロウイルス食中毒のほとんどは、仕出し屋を含む飲食店や給食施設から提供された飲食物、あるいは今回の熊取町の事例のような製造事業者が提供する食品・食材であるからだ。食品管理に対する姿勢、日本は甘い?こうなると、ノロウイルスによる食中毒を減らすためには、川上の事業者への規制を強化するしか方法がない。日本ならば、食品衛生法に基づく規制となる。実はこの点、日米欧ではかなり基準が異なり、欧米のほうが基準は厳しい。食品などを取り扱う事業者は、自ら食中毒の原因微生物による汚染や異物混入などのリスク要因を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のリスク要因の除去・低減するため、とくに重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する手法「HACCP(ハサップ)」に基づく衛生管理が求められている。これは米国で開発された国際的な食品衛生管理手法で、日米欧ともに義務付けられている。しかし、法令やそれに基づく実態としての衛生管理は、日本の食品衛生法はかなり曖昧である。たとえば、同法第5条では「食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列及び授受は、清潔で衛生的に行われなければならない」とし、それを受けて通知・ガイドラインで下痢・嘔吐のある従業員を調理に従事させないことや手洗い・消毒の徹底、嘔吐物の適切処理を謳っている。これに対し、EUでは「食品取扱者で疾病・感染の疑いがある者は食品を取り扱ってはならない」旨を事業者の義務として明記している。米国になると、米国食品医薬品局(FDA)の食品規則により、ノロウイルスをはじめ具体的な病原体を明記し、それに伴う症状(ノロウイルスの場合は嘔吐・下痢症状)がある場合は現場からの即時排除とより強力な文言で規定している。また、同規則では該当する病原体の有症状者の復帰基準についても、症状消失後24時間以上(州により48時間)経過とし、さらには、食品施設で誰かが嘔吐または下痢などをした場合のクリーンアップ手順も具体的に定めているほどの念の入れようだ。ちなみにFDAの食品規則は法律ではなく、あくまでモデル規則であるため米国内の各州が採用して初めて法的拘束力を持つものだが、実際にはほぼ全州で採用されているため、事実上の全国標準として法的拘束力を有している。(表)食品衛生規制における日米欧の比較画像を拡大するさらに追加すると、ノロウイルスによる汚染の可能性のある二枚貝の代表格のカキの出荷に対する考え方も日本と欧米では異なる。日本ではスーパーなどの店頭に並ぶカキには「生食用」「加熱用」の2種類があるのはご存じだろう。これは保健所が海域の海水に含まれる大腸菌の量を検査し、生で食べても問題ないとされる海域でとれたカキを生食用、それ以外の海域でとれたカキを加熱用と分類している。これに対し、欧米では同じように大腸菌を指標とした海域検査を行い、海域ごとに出荷可否までも規制している。端的に言えば、日本の加熱用カキに該当するものの一部は、欧米では出荷すら認められない。日本がここまで厳格でないのは、あくまで推測になるが、「従来から日本の法規制などが緩やかな条文による包括規定に行政指導を組み合わせる柔軟運用を軸としているから」だと考えられる。しかしながら、前出のように最近の食中毒統計での件数増加を見る限り、そろそろ欧米型の規制に乗り出すべき時期に差し掛かっているようにも思えるのだが…。参考1)厚生労働省:食中毒統計資料

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急性低酸素性呼吸不全、高流量酸素療法vs.標準酸素療法/NEJM

 急性低酸素性呼吸不全において、高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は標準酸素療法と比較して28日死亡率を有意に低下しなかった。フランス・Centre Hospitalier Universitare de PoitiersのJean-Pierre Frat氏らが、同国42ヵ所のICUで実施した無作為化非盲検試験「SOHO試験」の結果を報告した。急性低酸素性呼吸不全患者において、標準的な酸素療法と比較したHFNCの気管挿管および死亡率に関するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2026年3月17日号掲載の報告。主要アウトカムは28日死亡率 研究グループは、急性低酸素性呼吸不全によりICUに入院した18歳以上の成人患者連続症例を、HFNC群または標準酸素療法群に無作為に割り付けた。適格基準は、呼吸数25回/分以上、胸部画像検査での肺浸潤影、10L/分以上の酸素投与下での動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)比200以下で、主な除外基準は動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)>45mmHg、慢性閉塞性肺疾患またはその他の慢性肺疾患の増悪、心原性肺水腫、抜管後または腹部・心臓胸部手術後7日以内の呼吸不全などであった。 HFNC群では、加温加湿器を介して50L/分以上、目標酸素飽和度92~96%で、48時間以上酸素を投与した。標準酸素療法群では、10L/分以上で酸素飽和度92~96%を目標に、48時間以上、回復または挿管まで継続した。 主要アウトカムは、無作為化後28日間の全死因死亡、主な副次アウトカムは無作為化後28日間の気管内挿管、無作為化から挿管までの期間、無作為化から28日間の人工呼吸器非使用日数などであった。28日死亡率は両群とも14.6%、副次アウトカムの28日挿管率は42.4%vs.48.4% 2021年1月~2024年10月に計1,116例が無作為化された。このうち、同意撤回5例を含む計6例を除く1,110例(HFNC群556例、標準酸素療法群554例)が解析に含まれた。 28日死亡率は、HFNC群14.6%(81/556例)、標準酸素療法群14.6%(81/554例)(群間差:-0.05%、95%信頼区間[CI]:-4.21~4.10、p=0.98)であった。 28日までの挿管率は、HFNC群42.4%(236/556例)、標準酸素療法群48.4%(268/554例)(群間差:-5.93%、95%CI:-11.78~-0.08)、無作為化から気管挿管までの期間の中央値はそれぞれ24時間(四分位範囲[IQR]:10~67時間)、23時間(IQR:10~47時間)(絶対群間差:0.4時間、95%CI:-6.8~6.5)、人工呼吸器非使用日数の中央値は28日(IQR:11~28日)、26日(IQR:10~28日)(絶対群間差:2.0日、95%CI:0.0~4.0)であった。 安全性については、自発呼吸中の重篤な有害事象(心停止または気胸)はHFNC群で13例(2.3%)(心停止3例、気胸10例)、標準酸素療法群で6例(1.1%)(それぞれ2例、4例)に発生した。 なお、著者は、COVID-19のパンデミック下でウイルス性肺炎患者の割合が高かったこと、挿管されなかった患者では順守状況のデータが前向きに収集されなかったことなどを研究の限界として挙げ、「今後の研究では、HFNCを対照群として、個別化された非侵襲的アプローチを含む呼吸補助戦略の評価が望まれる」とまとめている。

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呼吸器感染症やアレルギーに対する点鼻ワクチン、動物実験で有望な結果

 注射を何本も打たれるのが嫌でワクチン接種を避けてきた人にとって、希望の持てるニュースがある。米国の主要5大学の科学者たちが、将来的にはインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、細菌性肺炎、さらには一般的なアレルギーにまで効果を発揮し得る点鼻スプレー型ワクチンの開発に大きな一歩を踏み出したのだ。このワクチンのマウスでの実験に携わった米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授であるBali Pulendran氏は、「これは医療のあり方を一変させる可能性がある」と語っている。この研究の詳細は、「Science」に2月19日掲載された。 現行のワクチンは、病原体の一部をあらかじめ免疫に提示することで、実際の感染に備えさせるものだ。しかし、多くのウイルスは瞬く間に変異してしまうため、追加接種やインフルエンザワクチンのような毎年の接種が必要とされている。Pulendran氏は、「ヒョウが模様を変えるように、ウイルスは表面の抗原を容易に変えてしまう」と説明する。 一方、「GLA-3M-052-LS+OVA」と名付けられた今回のワクチンは、感染時に免疫細胞同士が交わすシグナルを模倣することで体の主要な防御機構を総動員し、より長く続く協調的な免疫反応を引き起こすように設計されている。具体的には、この点鼻ワクチンは、脂質から成る粒子であるリポソームを用いて、免疫を強く刺激するTLR4(Toll様受容体4)およびTLR7/8のリガンドと、モデル抗原である卵白由来のタンパク質、オボアルブミンを組み合わせたもので、鼻腔に投与することで気道や肺の免疫系を直接活性化する。 実験では、マウスの鼻腔にワクチンを滴下投与し、一部のマウスには1週間おきに複数回投与した。その後、呼吸器系ウイルスに曝露させた。その結果、これらのマウスは、新型コロナウイルスやSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス、コウモリ由来のSARS関連コロナウイルスであるSHC014-CoVなどの複数のウイルスだけでなく、黄色ブドウ球菌やアシネトバクター属菌などの細菌、さらにはダニなどのアレルゲンに対しても3カ月以上続く防御効果を示した。一方、未接種のマウスでは著しい体重減少と重症化が認められ、死亡例も多く確認された。 Pulendran氏は、「最初は突拍子もないアイデアに思えた。こんなことが可能だと本気で考えていた人はほとんどいなかったと思う」と話す。しかし、実際に成果は得られた。同氏は、「ワクチンを投与された肺の免疫システムは、ウイルスに対処する準備が万全であり、通常は2週間程度かかるウイルス特異的T細胞や抗体による適応免疫反応をわずか3日で起こすことができるのだ」と述べている。 とはいえ、すぐに現行のワクチン接種をやめられるわけではない。動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるとは限らず、GLA-3M-052-LS+OVAについても、これからヒトを対象にした試験が必要である。しかし、ヒトでも同様の結果が得られれば、将来は毎年必要な複数の注射をこの1本の点鼻ワクチンに置き換えられる可能性がある。また、新たに出現したパンデミックを引き起こし得るウイルスに対して迅速に防御を提供できる可能性もあるという。研究グループは、ヒトでの試験が成功すれば、5〜7年以内に「呼吸器系ウイルスに対するユニバーサルワクチン」が利用可能になる可能性があるとしている。 なお、今回の研究には、スタンフォード大学のほか、エモリー大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、ユタ州立大学、アリゾナ大学の研究者も参加した。

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第308回 地域の医療機関の共倒れを防ぐために、日本病院会会長、元日本医師会長の病院も取り組む地域医療連携推進法人

コロナ禍を経て2024年度から連携法人の認定数急増こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2026年度診療報酬改定の全体像が明らかになり、また新たな地域医療構想策定ガイドラインもまもなく発出されるということで、地域における医療機関の役割分担、棲み分けが活発化していきそうです。とくに今改定では「第303回 病院と診療所で『メリハリ』に違いが出た2026年度診療報酬改定、病院は急性期病院一般入院基本料新設、地域包括医療病棟入院料大幅見直しなどで地域医療構想後押しへ」で書いた、「急性期病院一般入院基本料」の新設と「地域包括医療病棟入院料」の再編、「救急患者連携搬送料」の大幅見直し(搬送の受け入れ側も新たに評価)などによって、地域における医療機関連携の様相も大きく変わっていくでしょう。診療報酬による経済的インセンティブの有無に関係なく、自発的に取り組む医療連携も着実に広がっています。そうした動きの1つが「地域医療連携推進法人」(以下、連携推進法人)の設立です。連携推進法人については、本連載でも、「第214回 岸田首相、初夏の山形・酒田へ。2024年度から制度テコ入れの地域医療連携推進法人に再び脚光」、「第168回 3年連続3回目、地域医療連携推進法人言及の背景」などで度々取り上げてきましたが、コロナ禍を経て2024年くらいから認定数が急増しています。これまで59法人が認定、最多は大阪府で9法人、次いで北海道と静岡県が4法人連携推進法人とは、地域での医療機能の分担や連携を進める目的で、母体の異なる複数の医療機関や介護事業者などが参加して共同でさまざまな連携業務を行う事業体です。「競争よりも協調」を重視し、「地域医療構想達成のための一つの選択肢」として2015年の医療法改正で制度化が決まり、2017年4月から認定がスタートしました。制度創設から約9年が経過し、2026年1月末現在、全国でこれまでに59法人が連携推進法人として認定されています。注目されるのは昨年の2024年度から認定数が急増している点です。2023年度はわずか3法人の認定でしたが、2024年度は13法人、2025年度は8法人が認定されました。都道府県別に見ると、一番多いのは大阪府で9法人、次いで北海道と静岡県が4法人、秋田県、滋賀県、高知県が3法人となっています。人口減少、医療人材不足、コロナ禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃この連携推進法人について、日経ヘルスケアは「地域医療連携推進法人の現在地」と題する記事を2025年11月号と12月号に前後編に分けて掲載、急増の理由を分析するとともに最近設立された連携推進法人のトレンドについてレポートしており、参考になります。同記事は、連携推進法人が急増している理由・背景として、「制度が創設された10年前の医療法改正時よりも、医療機関を取り巻く経営環境が厳しさを増したことが挙げられる。人口減少、医療人材不足、新型コロナウイルス感染症禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃している」と分析、「そんな中、地域の医療機関の多くが、単独ではなく、地域の複数の医療機関、介護施設、介護事業所などとともに、機能の分担、集約化、連携強化を図り、この難局を乗り切ろうと考えるようになった。そのためのツールとして、連携推進法人制度に今まで以上に注目が集まっている」と書いています。「経営コストの削減、医療人材の交流・有効活用に重点を置き取り組んでいく」と日病会長同記事には、地域で高度急性期機能を担う大病院が主導して地域内で患者をシームレスに引き継ぐ仕組みの構築を図る「垂直連携型」のケース、医療機能が同等、あるいは似通った医療機関同士による「水平連携型」のケース、大学病院が取り組むケースなどが紹介されていますが、とくに興味深かったのは、日本病院会会長を務める相澤 孝夫氏が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会・相澤病院(長野県松本市、456床)が中心となって、地域の民間病院、診療所、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなど6法人を参加法人として2025年10月に設立された「信州松本ヘルスケアネットワーク」です。同記事で相澤氏は「制度ができた当初も設立を検討したが、今ほど医療機関経営の状況も悪くはなく、地域の医療機関経営者の関心を呼び起こすことができず断念した。しかし新型コロナウイルスの感染拡大を経て、経営状況も厳しくなってきたため、周辺の医療機関の要望も聞きながら設立を決断した。まずは経営コストの削減、医療人材の交流・有効活用に重点を置き取り組んでいく」と語っています。“強い”急性期病院が1つだけが生き残っても、慢性期・回復期に入った患者を受け入れる後方病院や介護事業所が地域になければ経営は行き詰まります。相澤氏の言葉からは、地方の民間医療機関が共倒れせず、生き残っていくための最終手段として連携推進法人に早くから着目していたことがわかります。元日本医師会長の病院も連携推進法人の設立準備日本病院会会長自らが連携推進法人設立に動いたということで、同制度に改めて大きな注目が集まることとなったわけですが、今年になって元日本医師会長の横倉 義武氏が理事長を務める、社会医療法人弘恵会・ヨコクラ病院(福岡県みやま市、199床)も、地域の医療法人、診療所、社会福祉法人などとともに連携推進法人の設立準備をしている、というニュースも入ってきています。2015年に連携推進法人の制度化が決まった当時は、一部の県では連携推進法人の設立に県医師会が猛反対し、設立計画が潰されることもありました。制度誕生の元々の発端が、安倍 晋三政権時代の2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」に記された「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」だったため、大規模法人が中小を吸収合併していくイメージが先行し、中小病院や診療所の経営者などに警戒感が芽生えたことなどがその背景にはありました。しかし、時代は大きく変わりました。なにせ日本病院会会長や、元日本医師会会長までもが取り組むようになったのですから。ところで、連携推進法人の取り組みには、王道とも言える垂直連携型以外にも、ユニークな事例が数多くあります。次号ではそうしたケースについて紹介します。(この項続く)

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爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」

 新たな白癬菌抗原キットの保険収載、爪白癬に対する経口抗真菌薬のエビデンスの蓄積、耐性株の出現などを背景に、6年ぶりの改訂版となる「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」が2025年12月に公開された。ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター)に、改訂のポイントと実臨床での活用について話を聞いた。足白癬・爪白癬の患者数は70代にピーク、80代以上の患者が増加 現在、日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬に罹患していると推測される。このデータは16年ぶりに実施された足白癬・爪白癬の潜在罹患率調査(Foot Check 2023)1)によるもので、前回調査(Foot Check 2007)と比較すると減少傾向にある。この減少については、2023年の調査がより厳しい確定診断の条件を課していたことによる影響、新規抗真菌薬の治療効果により潜在罹患率が減少した可能性が考えられるという。 また、5年ごとに実施される全国調査の最新結果(2021年)2)では、足白癬・爪白癬の患者数はともに70代にピークがみられ、80代以上の足白癬患者は前回調査と比較して12.1%から16.7%に、爪白癬患者は17.6%から21.9%へ増加している。福田氏は、同調査結果のこれまでの経年変化をみても、足白癬・爪白癬ともに患者の高齢化傾向が続いていると指摘した。新たな白癬菌抗原キットの使いどころ 2022年、新たな白癬菌抗原キット(商品名:デルマクイック爪白癬)が保険収載された。同キットは、抽出液で爪甲中の白癬菌抗原を抽出し、免疫クロマトグラフィーの原理で検体中の白癬菌抗原を検出するもの。福田氏は「真菌検査の主軸はKOH直接顕鏡と真菌培養であることに変わりはない」とし、ガイドラインでも同キットはKOH直接鏡検の補助検査として位置付けられている。 KOH直接顕鏡は簡便で繰り返し検査可能な優れた検査であるが、経験豊富な医師では検出率が高くなる一方、不慣れな医師の場合は検出率が低くなる傾向がある。福田氏は、「同キットは検体採取の熟練度や菌の特性によらず検出が可能なため、併用することで不慣れな医師は誤診を減らすことができ、経験豊富な医師にとっても偽陰性を防ぐために活用できる」と話した。顕微鏡のない施設や訪問診療などでも、迅速なスクリーニングのための活用が期待される。爪白癬へのイトラコナゾールは推奨度Bに、ホスラブコナゾールはエビデンス増 爪白癬に対する内服薬として、前版ではテルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾールの3剤がいずれも推奨度A(行うよう強く勧める)と判定されていた。3剤を直接比較したデータはないものの、テルビナフィンとの比較においてイトラコナゾールはやや有効性が劣るという報告があること、併用禁忌・併用注意薬が非常に多いことから、今回は推奨度B(行うよう勧める)に引き下げられた。 2018年に発売されたホスラブコナゾールについては、前版発行後にいくつかのリアルワールドデータが報告され、いずれも臨床試験と同等あるいは上回る有効率が確認された。75歳以上の高齢者を対象とした試験、難治性・再発症例への追加投与・再投与について検討した試験においても有効性と安全性が確認されている。福田氏は、「他の薬剤にもいえることだが、推奨期間の投与を終えても治癒しない症例がある。ホスラブコナゾールの場合、12週の投与で治癒が期待できる症例は6割程度とされる。治りきらない症例においてどのような対応をすればよいのかがエビデンスとして示された点は大きい」と話す。テルビナフィンとの比較においては、薬価が大きく異なる点にも留意が必要となる。内服可能な症例には、まず内服薬でしっかり治すことが原則 現在爪白癬に対する外用薬として選択できる2剤については、ともに有効率は15%前後とされるが、実臨床では外用薬が優先して使われている。外用薬はリスクが低く使いやすいが、有効率は内服薬のほうが明確に高いことが示されており、福田氏は「外用薬と内服薬どちらも投与可能な患者さんに対しては、まず内服薬を使うことを推奨したい」と話した。ただし、高齢患者が増えている中で、多剤併用の観点などから外用薬を選択するケースもあるとし、「外用薬で治療を開始して、治癒が得られなかった場合に内服薬に切り替えるという選択もありえる」とした。ペット由来など、近年注意が必要な原因菌 現状、耐性株の出現率は日本では低く、実臨床では1~3%と推定される。注意が必要なのはテルビナフィンに対する耐性株だが、アゾール系(イトラコナゾール、ホスラブコナゾール)に対する耐性株も今後出てくる可能性はあり、福田氏はその可能性を認識しておくことが重要とした。今回のガイドラインでは各CQで耐性株に対するコメントも記載されている。 原因菌に関して、近年分類法が変更・精度が向上し、名称や分類が一部変更されている。今回のガイドラインでは、「留意すべき皮膚真菌症」として以下の4項目について記載が追加された。1.動物から感染する皮膚真菌症 ペットの多様化などにより、ヒトからヒトへの感染だけでなく、動物からの感染もあるということを認識しておく必要がある。例:ペットのデグーに由来するTrichophyton benhamiae var. luteum、ネコからのSporothrix globosaなど(本邦での報告はなし)2.Trichophyton tonsurans感染症 本邦では2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発した。近年報告症例は減少しているものの、撲滅はできていない。3.耐性菌の中心となる可能性のあるTrichophyton indotineae 本邦に在留中のインド人の体部白癬から分離された。海外で安価で入手されるステロイド外用薬と抗真菌薬、抗菌薬配合のOTC外用薬の乱用が感染拡大に関与している可能性が指摘されており、本邦でもTrichophyton indotineaeによる体部白癬を繰り返す症例の報告が徐々に増加している。4.死亡率の高い侵襲性医療関連感染症を引き起こすCandida auris 本邦で見つかった株だが、世界的に急速に拡大している。現在は本邦では少数ではあるが分離はされており、認識しておく必要がある。

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第287回 医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省

<先週の動き> 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省厚生労働省は2026年3月16日、第120回医師国家試験の合格者を発表した。受験者9,980人のうち合格者は9,139人で、合格率は91.6%と前回から0.7ポイント低下した。合格者数は前年より347人減少し、とりわけ新卒合格者は8,716人(合格率94.7%)と313人減少となり、3年ぶりに9,000人を下回った。医師供給動向に変化が生じている可能性が示唆される。試験は2026年2月に実施され、合格基準は必修問題で200点満点中160点以上、一般・臨床問題で300点満点中224点以上、禁忌肢3問以下とされた。近年と同様の基準であるが、合格率の微減と新卒者数の減少が今回の特徴となっている。大学別では、自治医科大学が新卒・既卒ともに合格率100%を達成したほか、北海道大学、京都大学も新卒で100%を記録した。平均合格率は国立93.0%、公立93.5%、私立92.5%と大きな差はないものの、既卒者を含むその他区分では54.8%と低水準にとどまった。男女別では女性92.4%、男性91.1%と女性が上回った。合格者数はコロナ禍以降、回復傾向にあったが、今回の減少は医学生数の変動や受験動向の影響が考えられる。医師偏在や地域医療構想の議論が進む中、今後の医師供給の量と質のバランスが一層重要となる。とくに新卒者数の減少は初期研修医確保にも影響を与える可能性があり、今後もこの傾向が続けば、各医療機関や自治体にとっても注視すべき事態となる。 参考 1)第120回医師国家試験の合格発表について(厚労省) 2)第120回医師国家試験の学校別合格者状況(同) 3)第120回医師国家試験合格者の状況(大学別合格者数)-9,139人が合格、合格率は91.6%(医事新報) 4)医師国家試験、合格率91.6%-新卒合格者は3年ぶりに9千人下回る(CB news) 5)2026年医師国家試験大学別合格率…合格率100%は自治医科大学(リセマム) 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省国内の麻疹(はしか)報告数が増加し、厚生労働省は注意喚起を強めている。2026年第9週までの累計報告数は87例、第10週時点では100例に達し、新型コロナ禍以降で最多となった。前年同期の22例を大きく上回る水準で、感染拡大の兆しがみられる。近年、わが国では土着株による感染は確認されておらず、2015年には世界保健機関(WHO)から排除状態と認定されている。現在の流行は、海外から持ち込まれたウイルスを起点に、国内で2次感染が広がる構図となっている。事例として、愛知県の高校での集団感染をはじめ、各地で散発的な発生が報告されており、都市部を中心に感染が拡大している。患者の約7割は10~30代で、ワクチン接種歴の不十分な層の影響が示唆されている。麻疹は空気感染を起こす極めて感染力の高い疾患であり、同一空間にいるだけで感染する可能性がある。発熱、咳、鼻水に続き発疹を呈し、重症例では脳炎を合併するリスクもある。その一方で、予防の柱であるMRワクチンの接種率は低下傾向にある。2024年度の接種率は1期92.7%、2期91.0%と、目標の95%を下回った。コロナ禍以降の接種控えが影響しているとみられ、集団免疫の維持に懸念が生じている。厚労省は、渡航前の接種歴確認や帰国後の健康観察を呼びかけるとともに、疑わしい症状がある場合は事前連絡のうえ医療機関を受診するよう求めている。感染再拡大を防ぐには、早期診断とワクチン接種率の回復が急務である。 参考 1)麻疹報告数、コロナ禍以降最多 厚労省が注意喚起(MEDIFAX) 2)はしか患者数、2026年累計100人に 25年同期22人を上回る(日経新聞) 3)感染症発生動向調査週報 2026年第9週第9号(国立健康危機管理研究機構) 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省厚生労働省は、脳死下臓器提供の増加を背景に、移植医療の集約化と体制強化に舵を切った。今回の診療報酬改定で、多くの移植手術を担う施設を「拠点病院」として位置付け、人的・設備面の支援を検討する方針を打ち出している。臓器提供数は近年増加し、2025年には150例を超えたが、心臓や肺、肝臓など複数臓器の同時対応が求められるため、実施可能な施設は一部大学病院に限られている。その一方で、突発的な手術対応により手術室や看護師の確保が困難となり、受け入れ断念例も生じている。こうした現場の逼迫は深刻で、東京大学病院では移植件数が年間100例を超える中、ICUベッドに余裕があっても人員不足で受け入れられない状況や、病院経営への負担が指摘されている。実際、移植医療は従来、手術準備や人員確保のコストが大きく、病院側の持ち出しが問題となっていた。このため2026年度診療報酬改定では、臓器移植実施体制確保加算が新設され、手術料の実質4倍相当の評価が行われる。大学病院の試算では、従来は肺移植1例当たり約400万円の赤字だったが、新加算によりほぼ解消可能とされる。また、ドナーコーディネーターの業務も評価対象とし、院内での同意取得体制強化を促す。背景には、体制不足により移植を受けられなかった患者が2024年に延べ662人に上った現状がある。国立大学病院全体でも今回の改定により年間443億円の増収が見込まれ、赤字解消に寄与すると評価されている。しかし、紹介・逆紹介要件の厳格化による減収も予測され、経営改善には引き続き対応が求められる。移植医療は高度化・集約化が不可避な領域であり、今後は拠点化と財政支援を軸に、持続可能な提供体制の構築が問われる局面に入ったと言える。 参考 1)臓器移植支援へ一部病院を拠点化 厚労省、東大病院「経営苦しく」(朝日新聞) 2)脳死者の臓器移植に診療報酬加算へ…ドナーコーディネーターの働きも評価、報酬を手厚く(読売新聞) 3)国立大学病院長会議 26年度診療報酬改定年間443億円増収で赤字解消へ 外科医療確保や臓器移植加算を評価(ミクスオンライン) 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省厚生労働省は、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」のとりまとめ案を示し、2028年度末までに各医療機関の「主たる機能」を明確化する方針を打ち出した。従来の病床機能報告に加え、新たに医療機関機能報告を導入し、各病院が担う役割を整理することで、再編・集約化と病床削減を一層進める構えである。新構想では、「医療機関の機能を急性期拠点」「高齢者救急・地域急性期」「在宅医療等連携」「専門等機能」の4区分に整理し、各施設が2040年に向けて担う機能を選択・報告する。複数機能の併存は認めつつも、急性期拠点については手術件数や救急対応などの実績要件を設け、実質的に高度急性期病院の集約を図る。人口20~30万人に1施設程度とする考え方が示され、全国では400~600施設に集約される見通しである。また、人口減少地域では構想区域の広域化を求め、より広い圏域で医療資源を維持する方向性も示された。その一方で、急性期以外の救急医療や夜間手術機能についても集約が検討されており、地域によってはアクセス低下への懸念が指摘されている。病床数の算定では、在宅医療の強化や早期リハビリによる在院日数短縮、医療DXによる効率化を前提に必要病床数を低く見積もる仕組みが採用される。急性期病床の稼働率も78%から84%へ引き上げられ、将来的な病床削減圧力が強まる見通しである。さらに、リハビリテーションでは、入院から在宅までの連続的な提供体制を支える「地域インフラ」として位置付けられ、栄養管理や口腔ケアとの一体的な取り組みも明記された。2026年10月からの機能報告を経て、各都道府県が調整を行い、医療機関ごとの役割分担が具体化する。医療提供体制の再構築が本格化する中、地域医療への影響が注視される。 参考 1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省) 2)新たな地域医療構想とりまとめ案 28年度末までに病院の「主な機能」を決定(保団連) 3)「新たな地域医療構想」とりまとめを了承、リハビリテーションは「地域のインフラ」へ(PT-OT-ST.NET) 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省厚生労働省は、2026年3月18日に開催した「医道審議会医師専門研修部会」で、2027年度に専門研修を開始する専攻医の採用上限、いわゆるシーリング数案を了承した。新たに加算対象となった都道府県診療科から提出された指導医派遣実績を踏まえ、日本専門医機構が算定したもので、委員から大きな異論は出なかった。今後、6月下旬以降に都道府県へプログラム情報を提供し、各都道府県知事の意見や厚生労働大臣の要請を反映した修正を経て、11月の募集開始を予定している。今回のシーリングでは、最新の必要医師数と足下の医師数を用いて対象都道府県を設定し、特別地域連携プログラムと都道府県限定の連携プログラムを統合した点に特徴がある。特別地域連携プログラムの受け入れ可能数は全領域で採用上限を上回り、地域偏在是正に向けた受け皿整備は一定程度進んだ。その一方で、通常プログラム加算は実績に応じて付与されるが、加算上限を下回る領域もあり、制度運用はなお調整段階にある。あわせて部会では、2040年を見据えた医療需要の変化に対応する専門医養成も論点となった。85歳以上人口の増加、高齢者救急の拡大、生産年齢人口の減少を踏まえ、各基本領域学会に対し、将来重要となる疾患や患者像、専門医制度上の課題を尋ねるアンケート調査を実施する方針が示された。専攻医以降のキャリアチェンジやリカレント教育の必要性も指摘された。さらに、医師偏在対策では都道府県、大学医学部、大学病院の連携強化が不可欠とされた。地域枠、広域連携型臨床研修、専門研修連携プログラム、総合診療医育成などを医師確保計画に明確に位置付け、地域定着を後押しする方向で議論が進む。専攻医シーリングは、単なる採用枠調整にとどまらず、地域医療を支える医師養成全体を再設計する局面に入った。 参考 1)令和7年度第5回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省) 2)2027年度の専攻医シーリング数が決定、募集開始に向けた調整進む(日経メディカル) 3)医師偏在是正策の強化に向け「都道府県・大学医学部・大学病院の連携」をこれまで以上に強化せよ-医師偏在対策検討会(Gem Med) 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県愛知県の西尾市民病院で診療を受けた70代女性が、薬剤アレルギー既往のある薬を処方・服用後に死亡したとして、遺族が市と調剤薬局を相手取り約2,541万円の損害賠償を求め提訴した。訴状によれば、女性は2025年2月に受診し、処方箋を受け取り、院外薬局で調剤された薬剤を服用後、約41日後に死亡した。遺族側では、医療機関はアレルギー既往歴を把握可能であったにもかかわらず看過したと主張している。その一方で、市側はアレルギー薬剤の処方自体は認めつつも、死亡との因果関係には争いがあるとしている。この事件は単なる確認漏れが原因ではなく、電子カルテおよびオーダリングシステムにおけるアレルギー情報の管理・共有体制が問題の根幹にある。日本医療機能評価機構は、医療安全情報の分析レポートで、アレルギー情報が「登録されているが参照されない」「画面上で視認性が低い」「更新が不十分」といった要因により、処方時に活用されない事例が発生していることを繰り返し指摘している。また、院内で把握されていた情報が院外薬局に十分伝達されないケースや、薬局側での最終確認が機能しなかった事例も報告されている。院外処方が一般化してから、医療機関と薬局の間の情報連携不足は構造的リスクとなっており、患者申告に依存した運用には限界がある。電子カルテ上のアレルギー情報については、入力の標準化、警告アラートの強化、処方時の確認が不可欠である。このためマイナ保険証の活用のほか、2重3重のチェック体制をどのように実効性ある形で運用するかが問われている。今回の訴訟は、医療安全について「情報があること」と「実際に使われること」の乖離を改めて浮き彫りにした。現場での確認フローの見直しなど再発防止策が求められる。 参考 1)「薬のアレルギーで死亡」70代女性遺族、愛知県西尾市などを提訴(中日新聞) 2)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構) 3)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構)

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血糖や肥満、虚血管理を阻むリスク記憶とは、AGEから紐解く

第26回日本抗加齢医学会総会が2026年6月26日(金)~28日(日)の3日間、パシフィコ横浜ノースにて開催される。今回のテーマは『「人新世」のアンチエイジング 食事、運動、睡眠、美容による統合医療』。大会長である山岸 昌一氏(昭和医科大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)が長年の研究で培ってきた糖尿病学と老年医学の関係、本総会のテーマの意味、大会長が力を入れる演題について話を聞いた。「人新世(じんしんせい)」とはまず、今大会のテーマである「人新世」についてお話ししましょう。人新世とは、新しく設定された地質学的な時代区分のことで、人間の活動が地球環境や生態系に多大な影響を及ぼす「現代」を示す言葉です。この時代におけるアンチエイジングを私なりに解釈いたしますと、単に若返りを求めるのではなく、持続可能な地球環境との共生や社会との調和を目指し、究極的な統合医療や健康の探求を目指すことだと思います。とりわけ、食事・運動・睡眠・美容は個人の健康を支える最も基本的な要素であると同時に、医療資源として科学的に評価・活用されるべき対象であるとも考えています。そこで、本大会ではこれらを統合医療の視点から捉え、予防・診断・治療、生活支援にまでつなぐ多角的な議論を展開していきたいと考えています。なお、このテーマに多くの先生が賛同してくださり、過去8年間で最多数の一般演題を応募いただいたようです。糖化×老化、たどり着いた30年の軌跡私の専門とする糖尿病は、患者さんの健康寿命が健康な方と比べて10~15年短く、死亡リスクは1.8倍、さらに老化が加速しやすい疾患であることが過去の研究1)から明らかになっています。また、2024年に米国心臓協会(AHA)が提唱したLife’s Essential 8の中でも糖尿病の有無が寿命を大きく左右することが明らかになってきました。では、なぜ糖尿病が実寿命や健康寿命に悪影響を及ぼすのでしょうか? そのメカニズムにはどうやら“記憶”が関与しているようです。私が医師になった37年前、糖尿病の合併症として教科書に挙げられていたのは、大小血管合併症、感染症、皮膚病くらいでした。しかし、多くの患者さんの診療に当たっていると、認知症やがん、骨粗鬆症などの老年病も糖尿病で合併しやすいことに気が付きました。そこで、糖尿病に一番特徴的な血管合併症である網膜症の病態生理を解明していくことで、最終的には「なぜ、糖尿病で老化が進むのか?」といった課題を明らかにすることができるのではないかと思ったのです。糖尿病網膜症では、内皮細胞の外側を取り囲む周皮細胞が選択的に死滅し、病期が進行していきます。そして、この周皮細胞の消失は、糖尿病でしか観察されません。しかしながら、周皮細胞は、短期間の高血糖の曝露ではなかなか死滅しません。長期間、高血糖に曝露されて初めて周皮細胞は死んでいきます。その後の研究で、年余にわたる高血糖により生体内タンパク質が糖化、変性を受け、AGE(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物)と呼ばれる老化物質が体に蓄積していくことで初めて周皮細胞が死んでいくことがわかりました(図1)。ほかの研究者らは、長い年月にわたって糖尿病患者の経過を見ていく中で、過去の高血糖の曝露歴がその後の糖尿病合併症の進展を左右することを見いだしました。そして、現在の血糖コントロールが良好でも、過去長期間にわたり高血糖に曝露していたような患者は、臓器合併症の進展リスクが高く治療が難渋しやすいことから、この現象は「高血糖の記憶(Metabolic Memory)」と呼ばれるようになり、“過去のツケ”のごとく体内に残存する物質、AGEが「高血糖の記憶」に関わることが明らかになっていったのです2)。その後、約20年前に世界で初めて血液中からいろいろなタイプのAGEを簡便に測定する手段を開発することに成功しました。(図1)AGEの蓄積過程画像を拡大する悪い過去を記憶するAGE、どうやって除去する?AGEは「タンパク質と糖が加熱されてできた物質」の総称で、老化を進める原因物質とされています。これらは高血糖状態の体内で作られたり、食べ物から体内に入ったりすることで蓄積が進み、シワやたるみの原因、動脈硬化や心血管疾患の発症リスクの上昇、骨粗鬆症や寝たきりへの発展、大腸がん、乳がんなどのがん発症リスクとの関連も報告されています3)。とくにAGEが問題とされるのは、血糖値が基準値に戻ったとしても、AGE化して一度変性したタンパク質はなかなか元に戻らないこと、加齢に伴いこの蓄積が加速するということです(図2)。(図2)画像を拡大するAGEのうち3分の1は外因性で食事由来によるものです。AGEはどんな食品にも含まれているので、日頃の予防法として重要なのは、調理法のアドバイスです。たとえば、焼き鳥とかステーキなどは茶色の焼き目が付きますが、その部分がAGEなのです。同じ食材でも低温調理などのように調理法を変えるだけでAGE摂取を抑えることができます。私の診察では、「(肉を食べる場合は)焼くよりも茹でるのはどうですか?」といった提案をしています。このように同じ食事でも、調理法や付け合わせを変えることによってAGEの生成量を低減できることが知られています。この食事に由来するAGEに関しては、米国・マウントサイナイ医科大学教授のJaime Uribarri氏をお招きし、最先端のデータをご解説いただく予定です。また、食事由来AGEに予防法があるように、加齢に伴い蓄積するAGEの制御も可能とされ、老化のプロセスとして介入できれば多くの老年病を包括的に制御できると考えられます。私は、AGEを体から除去するAGEアプタマーと呼ばれる医薬品の開発に動物モデルで成功しています。そこで、本大会ではAGEに焦点を当てつつ、老科学仮説の概念に基づきながら、食事・運動・睡眠などの観点からもアンチエイジングを考えていきたいと思っています(図3)。(図3)画像を拡大する会長企画、5つのシンポジウム今回の総会では、認知症、フレイル、睡眠、腸内細菌などの講演が組まれておりますが、AGEに関連のある記憶という概念からもシンポジウムを設定いたしました。新たな抗加齢医学の観点を理解いただくためにも、5つの会長企画シンポジウムにぜひご注目ください。(1)「リスク記憶の分子メカニズム」リスク記憶について(低酸素の記憶、肥満の記憶、コレステロールの記憶)(2)老化治療の最前線老化細胞除去法「セノリシス」や老化細胞阻害薬などの最前線を紹介(3)女性の生涯の健康課題に寄り添う―基礎的研究から支援体制の構築まで―女性の生涯の健康課題に寄り添う治療や研究の最前線について解説(4)AI技術人工知能が抗加齢医学に果たす役割について、診断、サポート、遠隔診療・治療、創薬などの切り口で講演を予定(5)インナービューティーを目指した統合医療身体の内側から健康を担保するため、統合医療の観点からヨガやピラティスをテーマに講演を予定このほか、中野 京子氏(作家・ドイツ文学者)による特別講演「“美”の裏に潜む真実―芸術と老いをめぐる想像力」と題し、同氏の代表著書『怖い絵』から人の心と身体を捉えることで新たなアンチエイジングの発想についてお話しいただく予定です。また、鍋島 陽一氏(京都大学医学研究科健康加齢医学講座)による招待講演では、「Klotho(老化ホルモン)の研究の総括と新たな展望(仮)」と題し、抗加齢医学の最新データをご紹介いただく予定です。一人ひとりがその人らしく年を重ねられる健やかな社会の実現に向けて、本大会が皆さまと共に考える場となることを願っています。一人でも多くの皆さまのご参加をお待ちしております。参考1)Seshasai, S. R. K, et al. N Engl J Med. 2011;364:829-841.2)Yamagishi S, et al. J Diabetes. 2017;9:141-148.3)Si C, et al. Food Funct. 2024;15:1553-1561.

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子宮頸がん検診、受診率は制度で変わる? 東京都51自治体解析

 日本では子宮頸がんの罹患が増加する一方、検診受診率の低さが課題となっている。今回、東京都内の51自治体を対象とした研究で、検診受診率には大きな地域差があり、医療機関数や予約制度、HPV検査導入などの制度的要因が関連していることが示された。研究は、東京科学大学公衆衛生看護学分野の原田伊織氏、月野木ルミ氏らによるもので、詳細は1月21日付で「The Asian Pacific Journal of Cancer Prevention」に掲載された。 日本では1990年代半ば以降、子宮頸がんの罹患率・死亡率が上昇しているにもかかわらず、検診受診率は欧米に比べ低い状況が続いている。子宮頸がんは前がん病変の段階で発見・治療すれば予防可能であり、細胞診やヒトパピローマウイルス(HPV)検査による検診は有効な予防手段とされるが、日本では自治体や職域など複数の仕組みが混在し、地域ごとの運用差が受診率の格差につながっている可能性がある。また、子宮頸がん検診への参加に影響する地域レベルの要因を明らかにすることは、参加率を改善し、全体の受診率向上および地域間格差の縮小につながる介入策の開発に寄与する可能性がある。そのような背景から、本研究は、東京都内における子宮頸がん検診受診率の地域差を明らかにし、それに関連する地域要因を検討することを目的とした。 本研究は後ろ向きの生態学研究として、東京都内51自治体のデータを用いて実施された。主要評価項目は検診受診率とし、データは2018年の東京都保健医療局のがん検診統計、人口統計、ならびに各自治体の公式ウェブサイトから収集した。各自治体について、就業女性の割合、検診申し込みの必要性(あり/なし)、子宮頸部細胞診とHPV検査の併用の有無など、地域要因の候補となる項目を収集した。検診受診率とこれらの要因との関連は、重み付き最小二乗法による線形回帰モデルを用いて検討した。 東京都における子宮頸がん検診の平均受診率は18.6%であり、自治体間で大きなばらつきが認められた(範囲8.1%〜85.8%)。自治体間で検診体制には差があり、就業女性割合は平均38.9%で、検診実施医療機関数にも大きなばらつきがみられた。無料検診は約6割の自治体で提供されていた一方、細胞診とHPV検査の併用はごく少数に限られた。また、約4割の自治体では保健センター等で検診申し込みが必要であった。 次に、検診受診率と地域要因候補との関連を線形回帰モデルにより解析した。その結果、対象女性1万人あたりの検診実施医療機関数(β=41.51、95%信頼区間〔CI〕:23.66〜59.36、P<0.001)、就業女性の割合(β=1.03、95%CI:0.43〜1.63、P<0.001)、検診申し込みの必要性(検診申し込み不要を基準)(β=−5.56、95%CI:−9.57〜−1.62、P=0.01)、およびHPV検査併用の導入(未導入を基準)(β=12.89、95%CI:5.42〜20.36、P<0.001)が検診受診率と有意に関連していた(βは各要因と受診率との関連の強さを示す回帰係数)。 本解析から医療機関数の多さやHPV検査導入は受診率の高さと関連していた一方、検診申し込みが必要な場合は受診率が低い傾向が示された。 著者らは、「子宮頸がん検診の受診率向上には、医療機関へのアクセス改善、検診受診手続きの簡略化、HPV検査併用の実施が関連している可能性が示された。これらの知見は、地域の子宮頸がん検診体制や公衆衛生政策の検討に役立つと考えられる」と述べている。 なお、本研究は東京都の自治体による子宮頸がん検診のみを対象としており、全国への一般化には限界がある。また、職域での任意の子宮頸がん検診は考慮されていない。 検診を受けない理由は「意識」だけではなく、「仕組み」にもある可能性が示された。検診を受けやすい環境づくりが、子宮頸がん予防の第一歩となりそうだ。(HealthDay News 2026年3月2日)

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無症候性細菌尿か判断しにくい患者、治療要否はどう考える?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第23回

Q23 無症候性細菌尿か判断しにくい患者、治療要否はどう考える?寝たきり、認知機能障害、膀胱機能低下などで、無症候か否か判断しにくい患者における細菌尿の治療の要否について教えてください。

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日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。 本研究では、疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食習慣(Diet)、アルコール、喫煙、睡眠などの生活習慣(Daily life)、などの詳細な情報と腸内細菌データを統合して収集した大規模オミクス研究基盤である「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」を用いて、日本人5,466人(平均年齢65.9±13.2歳、男性56.9%)の腸内メタゲノムデータを、世界37ヵ国3万1,695人のデータを比較解析し、日本人の独自性を特定した。さらに、1,500項目以上の変数を用いて、細菌叢の多様性に寄与する要因を評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人の腸内には、他の高所得国と比較してビフィズス菌(Bifidobacterium属)が豊富に存在することが認められた。これは日本人に乳糖不耐症が多く、乳製品を摂取して消化されない乳糖が腸に到達し、ビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。・日本人において、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ個人の割合が約90%に達し、欧米諸国(0~16.7%)より圧倒的に多かった。・腸内細菌叢の構成には、生活習慣よりも薬剤の影響が大きかった。関連の強い順に、胃腸薬、糖尿病薬、抗菌薬/抗ウイルス薬であった。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は腸内細菌の多様性を上昇させる一方で、口腔内に多い細菌(レンサ球菌[Streptococcus属]、Lactobacillus属など)が腸内で増加し、日和見感染症の原因となる多剤耐性菌(肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、Enterococcus faecium、肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]など)の定着を促進するリスクが示された。・5種類以上の多剤併用により、有益な短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌(Roseburia属、Dorea属、Faecalibacterium属、Alistipes属、Coprococcus属、Eubacterium属など)が減少し、日和見病原菌が増加して、腸内細菌叢の多様性が低下することが示された。 本研究により、日本特有の文化的・遺伝的背景によって形成された、集団特異的な腸内細菌叢の特徴が示された。著者らは、とくに高齢者における不要な薬剤の使用中止を含む薬物療法の最適化が、腸内環境の健全性を維持するうえで不可欠だと指摘し、国際的な腸内細菌叢データセットの構築は、精密医療(プレシジョンメディシン)を推進する鍵となるだろうとまとめている。

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第304回 Lancet誌が怒りあらわに、ケネディ氏に向けたEditorialを掲載

INDEX保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む危険な結果を導き出す愚策感染症の流行で結果は明確保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む前回は米国によるイラン攻撃の影響を取り上げたが、米国の無茶苦茶ぶりはほかでも進行中である。何かといえば、昨年2月に保健福祉省長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニア氏のことである。過去に本連載でもケネディ氏によるLancet誌、NEJM誌、JAMA誌の3誌の腐敗呼ばわり、米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨する小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小、CDCにワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員解任とワクチン懐疑派委員への入れ替え、mRNAワクチン開発への研究支援の縮小、自分の主張と反する科学的研究論文を掲載したジャーナルへの論文撤回要請などを取り上げてきた。しかし、ケネディ氏の傍若無人ぶりには、いよいよ目を背けたくなる。ケネディ氏の長官就任1年を経た2026年2月28日付のLancet誌407巻では、表紙にデカデカと“The destruction that Kennedy has wrought in 1 year might take generations to repair, and there is little hope for US health and science while he remains at the helm.”(ケネディがこの1年で引き起こした破壊は、修復するのに何世代もかかるかもしれない。そして彼が指揮を執り続ける限り、米国の保健と科学に希望はほとんどない)と謳い、冒頭では「Robert Kennedy Jr:1year failure(ロバート・ケネディ・ジュニア:1年間の失敗)」と題したEditorialが掲載された1)。詳細は省くが、これまでの数々の悪行を取り上げ、「ジャンクサイエンスや異端の信念が正当な説明もなく重視されている」「誤情報を拡散し、国の最も弱い立場にある人々を犠牲にして政治的な政策を推進し続けている」「議会から自身の決定について説明を求められても、彼は逃げ腰で攻撃的な態度をとってきた」と徹底的にこき下ろしている。危険な結果を導き出す愚策前述のようにケネディ氏は、小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小により、従来は小児全員に推奨されていたインフルエンザ、B型肝炎、A型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、新型コロナウイルスの6種類のワクチンを推奨から外し、「高リスク群のみ」または「医師と個別に相談して決定」という枠組みに変更した。また、2025年10月、ケネディ氏が刷新したACIPは、「MMRV(麻疹・おたふくかぜ・風疹・水痘)ワクチン」の4歳未満への定期接種の推奨を取り消した。これにより州レベルでは、フロリダ州が接種義務解除に踏み切ったほか、低所得者層向けの無料接種プログラム(VFC)からMMRVワクチンが外れ、接種のハードルが上がった。そしてこれらの影響と思われる現実は深刻である。感染症の流行で結果は明確CDCによると、米国での2025年の麻疹感染報告は2,283例、2026年(3月6日時点)は1,281例で、今年はわずか3ヵ月で前年の半数超に達している。2024年が285例なので昨年は前年比で9倍弱、感染報告が増加したことになる。もちろんMMRVワクチンの非推奨は2025年秋のことなので、これが同年の麻疹患者増加の主要な原因とまでは言えない。しかし、2026年の急速な感染報告数の立ち上がりを見る限り、ケネディ氏の政策の影響は徐々に顕在化していると言わざるを得ない。しかも、ケネディ氏はこうした危機的な状況に対して何も具体的な対策を講じてはおらず、保健福祉省の公式声明でもコメントしていない。そもそも、ケネディ氏は以前からワクチン懐疑派であることは有名だが、昨年3月のFOX Newsでのインタビュー2)では麻疹ワクチンに関し、「ワクチンの効果は年間約4.5%低下する」「麻疹ワクチン接種が毎年死者を出している」と科学的根拠の乏しい発言をしている。ちなみにこの当時、麻疹が流行していたテキサス州では、米国では10年ぶりとなる麻疹による死者が発生し、2025年全体で麻疹による死者は3例が確認され、いずれもワクチン未接種者だったことがわかっている。この数字から算出される2025年の米国の麻疹感染者の死亡率は0.1%強。一般に先進国の麻疹感染者の死亡率は0.01%程度と言われるが、それより1桁高い数字だ。このままでは2026年はもっと悲惨なことになるかもしれない。また、インフルエンザについても懸念が生じ始めている。CDCの報告では、2025~26年シーズンの小児のインフルエンザによる死者は暫定値で90例。2024~25年シーズンの293例と比べればかなり少ない。ケネディ氏の考えに基づき、インフルエンザワクチンの接種推奨が外された中で、この数字は不思議に思われるかもしれない。ここはおそらく米国小児科学会(AAP)のケネディ氏に抗った努力の成果かもしれない。2025年9月にはAAP独自でインフルエンザワクチンの接種を推奨する声明を発表した3)ほか、今年1月にはアメリカの保険業界団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)と直接交渉し、インフルエンザワクチンなど推奨から外されたワクチン接種を2026年末までは無償提供を維持する旨の共同声明を発表している。もっとも2026年2月最終週の死者報告は11例だが、それ以前の3シーズンでは同時期に死者はいない。これも踏み込んで解釈すれば、ケネディ氏の政策決定の負の効果が表れているとは言えないだろうか。いずれにせよ国外では戦争、国内ではパンデミックというまさに内憂外患状態が今の米国である。ボーダレス化が一層加速する現在の世界で、この禍に日本が無縁でいられるだろうか?参考1)The Lancet. Lancet. 2026;407:825.2)FOX NEWS:We will make sure anyone who wants a vaccine can get one, says HHS secretary3)Committee on Infectious Diseases. Pediatrics. 2025;156:e2025073620.

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季節性インフルエンザとニパウイルス感染症の現状/感染症クォータリーレポート

 ケアネットライブにて4半期に1回実施している感染症クォータリーレポート。2026年第1クォーターの報告を期間限定で公開する。 感染症クォータリーレポートでは感染症専門医である国立国際医療研究センター 国際感染症センターの石金 正裕氏が、世界の病原微生物の流行状況を4半期ごとにレポートしている。 本年(2026年)の第1クォーターでは、季節性インフルエンザ(25/26)とニパウイルスを取り上げる。 前編は第2波が報告されている季節性インフルエンザの状況についての紹介。 例年と比較して早期に始まった結果、2回目の流行も例年より早期に始まっている。2回目の流行の型、現在までのワクチンの有効性などを解説いただいた。 後編はインド東部での感染例が確認されているニパウイルスについての紹介。 その死亡率の高さからマスコミで大きく取り上げられることが多い。実際のウイルスの特性や日本での感染発生の可能性などを解説いただいた。(ケアネット)番組はこちらから!CareNeTVアーカイブページ(3月11日21時~18日24時まで 前後編無料公開)

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突発性発疹症【すぐに使える小児診療のヒント】第11回

突発性発疹症今回は、子育て世代のほとんどが経験する「突発性発疹症」についてです。小児科診療では非常によく遭遇する疾患ですが、解熱後も不機嫌が続くなど、保護者にとっては不安の連続です。非典型的な経過をたどることもあるため、少し踏み込んで学んでみましょう。症例生後8ヵ月、男児。保護者「40℃の発熱がもう3日も続いているんです。大丈夫なんでしょうか?」機嫌は良く全身状態は良好。咽頭所見で、口蓋垂の根元あたりに粟粒大の点状紅斑が集族している。医師「突発性発疹症かもしれませんね。」一般的な経過や症状突発性発疹症は、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、ときに7型(HHV-7)によって起こる乳幼児期の代表的なウイルス感染症です。生後6ヵ月頃から1歳台に好発し、2歳までにほとんどの児が感染するとされています。臨床経過はきわめて特徴的で、突然の高熱で発症し、39~40℃の発熱が3~5日持続します。それにもかかわらず、全身状態は比較的保たれていることが多く、「熱のわりに元気」という印象を受けることが少なくありません。咳や鼻汁などの上気道症状は軽度、あるいはほとんど目立たないこともあります。発熱期にはCRPが軽度上昇することがありますが、高値を示すことは多くありません。ただし、発熱3~5日目の時点では他疾患との鑑別が必要であり、安易に「突発性発疹症らしい」と決めつけることはできません。永山斑発熱初期にみられることがあるのが、いわゆる「永山斑」です。軟口蓋から口蓋垂基部にかけて出現する粟粒大の紅色小丘疹で、よく見ると点状に集まっています。頻度や特異度について具体的に記載された文献はほとんどありませんが、約3分の2の症例で認めるとの記載もあります。認めないからといって突発性発疹症を否定する根拠にはなりませんが、発疹が出る前の手がかりとなる数少ない身体所見の1つです。解熱後の皮疹と不機嫌突発性発疹症の診断を決定付けるのは、解熱とほぼ同時に出現する皮疹です。高熱がすっと下がった翌日、あるいはその日のうちに、体幹を中心に淡紅色の小丘疹が広がります。顔面は比較的軽く、四肢へ徐々に広がることもあります。全身にびっしり出るというよりは、やわらかく散在する印象です。この皮疹は通常1~3日で自然に消退し、色素沈着や落屑を残しません。強い掻痒を伴うこともまれです。一方で、この時期に特徴的なのが強い不機嫌です。解熱したにもかかわらず急にぐずりが強くなり、眠りが浅くなることがあります。そのため「不機嫌病」と呼ばれることもあります。冒頭の症例の男児は、2日後に再び来院しました。診察すると、体幹を中心に淡い紅色の発疹が広がっています。全身状態は安定しており、水分も摂れています。熱は下がったんですが、ぶつぶつが出てきて…しかも、とても不機嫌なんです。何か別の病気になってしまったのでしょうか?(ほっ。まさに教科書的な突発性発疹症の経過!)保護者にとっては数日続いた高熱がやっと下がって一安心…と思いきや、突然皮疹が出て不機嫌になり、不安になって受診されるご家庭は非常に多いです。発熱と解熱後皮疹以外の症状は?突発性発疹症では、発熱と皮疹以外にも注意すべき所見があります。発熱中に一過性の大泉門膨隆を認めることがあり、髄膜炎との鑑別が問題になることがあります。また、他のウイルス感染に比べて熱性けいれんを発症しやすいといわれており、発熱初期や解熱前後にけいれんを起こすことがあります。多くは典型的な単純型熱性けいれんですが、持続がやや長い例や、発熱のタイミングとずれる例もあり、「なんとなくすっきりしない」経過をたどることもあります。また、まれではありますが、HHV-6関連脳炎・脳症の報告もあり、意識障害や遷延する神経症状があれば慎重な評価が必要です。生涯に1度だけしか罹患しない?外来ではよく、「1度かかったら、もうなりませんよね?」と尋ねられます。HHV-6が突発性発疹症の代表的な原因ウイルスですが、HHV-7は異なるウイルスであり、それぞれに感染することで2度罹患することがあります。なお、HHV-7のほうが好発年齢はやや遅く、幼児期が多いです。したがって、「以前、突発性発疹症にかかっています」という情報だけで今回の可能性を完全に否定することはできません。突発性発疹症は、乳児期の子どもを育てる多くの家庭が経験するありふれた疾患です。しかし、発熱期には診断がまだ確定しておらず、尿路感染症や川崎病、細菌感染症などを念頭に置いた評価が欠かせません。なにより、その数日間を不安の中で過ごしているご家族がいます。解熱後に不機嫌が続くことで、不安がいっそう強まることも少なくありません。解熱後に発疹が出てきたとき、私たちは「やはり突発性発疹だった」と胸をなでおろします。その安心感を保護者と共有しつつ、不安だった日々に寄り添うことがこのありふれた疾患の診療に求められているのかもしれません。参考資料1)Up to date:Roseola infantum(exanthem subitum)2)Cherry J, et al. Roseola infantum(exanthem subitum). In:Cherry J, et al. Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 8th ed. Philadelphia:Elsevier;2018.p.559.3)Tanaka K, et al. J Pediatr. 1994;125:1-5.

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インフルへのバロキサビル、感受性低下の割合は?

 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)は2018年2月に承認され、臨床で使用されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、最初の7シーズン(2017/18~2023/24シーズン)におけるインフルエンザウイルスのバロキサビル感受性を調査した。その結果、感受性低下の割合は1.7%であった。本研究結果は、Eurosurveillance誌2026年1月8日号に掲載された。 研究グループは、WHOのFluNetに報告された国内のインフルエンザウイルス3万7,137件のうち、約500の定点医療機関から収集した検体から週ごとに加重無作為抽出した3,671件について、インフルエンザウイルスの表現型および遺伝子型の解析を実施した。また、インフルエンザウイルスのPAタンパク質におけるアミノ酸置換を特定し、バロキサビルに対する感受性との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象のインフルエンザウイルスの内訳は、A(H1N1)pdm09が1,378件、A(H3N2)が1,399件、B(ビクトリア系統)が608件、B(山形系統)が286件であった。・バロキサビルへの感受性低下が認められたウイルスの割合は、調査期間全体で1.7%(62/3,671件)であった。・シーズン別にみると、A(H3N2)が流行した2018/19シーズン(4.6%)および2022/23シーズン(3.2%)に高かった。なお、2018/19シーズンはバロキサビルの供給量が最も多いシーズンであった。シーズン別の詳細は以下のとおり。 2017/18:0%(0/833件) 2018/19:4.6%(41/900件) 2019/20:0.2%(1/612件) 2020/21:0%(0/6件) 2021/22:0%(0/23件) 2022/23:3.2%(15/465件) 2023/24:0.6%(5/832件)・ウイルスの種類別にみると、A(H3N2)が3.6%(50/1,399件)と最も高かった。次点がA(H1N1)pdm09で0.9%(12/1,378件)であった。B型では感受性低下は検出されなかった。・感受性低下に関連する主なPAタンパク質のアミノ酸置換として、E23K、Y24C、I38M/N/S/T/V、E199G/Kが特定された。・感受性低下株は、バロキサビル投与歴のある患者だけでなく、未投与の患者からも検出されており、ヒトからヒトへの伝播の可能性が示唆された。・年齢層別にみると、A(H3N2)における感受性低下株の検出頻度は、6~11歳および65歳以上で共に4.4%と最も高かった。詳細は以下のとおり。 0~5歳:3.2%(11/349件) 6~11歳:4.4%(19/427件) 12~64歳:3.1%(17/551件) 65歳以上:4.4%(3/68件) 不明:0%(0/4件) 本研究結果について、著者らは「バロキサビルの使用量の増加と感受性低下株の出現との間に関連があることが示唆された。感受性低下株は比較的少ないものの、伝播しうる変異株が存在することが示された」と指摘している。また「バロキサビルの使用量と感受性低下株出現との関連が示唆されることから、適切な治療戦略の構築や耐性株の拡散防止のためには、今後も表現型および遺伝子型に基づく継続的な監視が必要である」と述べている。

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テコビリマト、エムポックス感染者の臨床転帰を改善せず/NEJM

 成人のクレードIIエムポックスウイルス感染者において、p37エンベロープタンパク質を標的とする抗ウイルス薬テコビリマトは、プラセボと比較して臨床的回復までの期間を短縮せず、疼痛の軽減やウイルス除去の促進にも寄与しないことが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのJason Zucker氏らSTOMP/A5418 Investigatorsが行った「STOMP/A5418試験」で示された。テコビリマトは、天然痘の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているが、前臨床試験などの結果に基づきエムポックスの治療薬候補として注目を集めていた。研究の成果は、NEJM誌2026年2月26日号で発表された。7ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 STOMP/A5418試験は、日本を含む7ヵ国の49施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成を受けた)。2022年9月~2024年10月に、年齢18歳以上、検査で確認されたクレードIIエムポックスウイルス感染者344例(年齢中央値34歳[四分位範囲[IQR]:28~40]、男性339例[99%])を登録した。 被験者は、テコビリマト(232例)またはプラセボ(112例)を、14日間経口投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、time-to-event解析で評価した臨床的回復とし、すべての皮膚病変がかさぶたを形成し落屑して治癒に至り、すべての肉眼的な粘膜病変が治癒するまでの期間と定義した。主要・副次アウトカムに差はない 336例が活動性の皮膚または粘膜病変を有しており、主解析の対象となった。症状発現から試験登録までの日数中央値は8日(IQR:6~10)、登録時の病変数中央値は9個(IQR:4~18)であった。122例(35%)が直腸炎を、116例(34%)が重度の疼痛を有しており、HIV陽性の337例のうち117例(35%)が「HIVと共に生きる(living with HIV)」の状態で、78例(23%)は少なくとも1回の天然痘またはエムポックスワクチンの接種を受けていた。 29日目までの、臨床的回復の推定累積達成率は、テコビリマト群が83%、プラセボ群は84%であった。臨床的回復の競合リスクハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.31)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.89)。 副次アウトカムについては、ベースラインで重度疼痛を有していた患者における5日間の治療後の疼痛強度の軽減(群間差:0.1ポイント、95%CI:-0.8~1.0)、29日目までの病変の完全治癒(競合リスクHR:0.97、95%CI:0.75~1.26)、皮膚病変分泌物中のウイルスDNA消失(8日目の群間差:12%ポイント[95%CI:-2~26]、15日目の群間差:1%ポイント[95%CI:-10~13])のいずれにも、両群間に有意な差はなかった。Grade3以上の有害事象:4%vs.3% Grade3以上の有害事象は、テコビリマト群で4%(12/275例)、プラセボ群で3%(4/136例)に発現し、両群間に実質的な差はみられなかった(群間差:1%ポイント、95%CI:−5~5)。重篤な有害事象はそれぞれ6例(2%)および2例(1%)に発生した。死亡例の報告はなかった。 著者は、「本研究の結果は、クレードIエムポックスを対象としたPALM007試験の知見と一致する。これらの知見を統合すると、テコビリマトはクレードIおよびIIエムポックスに対する臨床的有効性を欠くことが示唆され、エムポックス治療のための治験薬を評価する無作為化対照比較試験の必要性を強調すべき状況にあると考えられる」としている。

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超加工食品の大量摂取でがんサバイバーの死亡リスクが上昇か

 がんを克服することは容易ではないが、超加工食品を多く含む食事は、がんサバイバーの将来的な健康を損なう可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。超加工食品の摂取量が最も多いがんサバイバーは、最も少ないがんサバイバーに比べて、がんによる死亡リスクが57%高いことが示されたという。IRCCS Neuromed(イタリア)の疫学・予防研究者であるMarialaura Bonaccio氏らによるこの研究結果は、「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に2月4日掲載された。 Bonaccio氏は、「がんと診断された後に何を食べるかは生存に影響を与える可能性があるが、これまでの研究は主に栄養素に焦点を当てており、食品の加工度には注目していなかった。食品の工業的加工に関わる物質は代謝プロセスに干渉し、腸内細菌叢を乱し、炎症を促進する可能性がある。そのため、表示上はカロリーや栄養組成が同じでも、超加工食品は加工が最小限の食品やほぼ未加工の“自然な”食品よりも体に有害な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 超加工食品は、天然食品から抽出された飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖などの原材料を主成分とし、味や見た目、保存性を高めるための多くの添加物も含まれている。超加工食品の例としては、包装された焼き菓子、砂糖入りシリアル、調理済みまたは加熱するだけの食品、デリのハムやソーセージなどが挙げられる。 今回の研究では、2005年から2010年の間にMoli-sani研究に登録されたがんサバイバー患者802人を対象に、がん診断後の超加工食品の摂取と死亡リスクとの関連を検討した。超加工食品の摂取状況はベースライン時と、がんの診断から平均8.4年後に評価された。 追跡期間の中央値は14.6年で、その間に281人が死亡した。解析の結果、超加工食品の摂取量が最も多い群では最も少ない群と比較して、全死因死亡リスクが48%(ハザード比1.48、95%信頼区間1.07〜2.03)、がんによる死亡リスクが57%(同1.57、1.00〜2.47)高いことが明らかになった。さらに、超加工食品の摂取と死亡リスクとのこうした関連の約40%は、炎症マーカーや安静時心拍数の変化によって説明できることも示された。 Bonaccio氏は、「これらの結果は、炎症亢進や安静時心拍数の上昇が、超加工食品の摂取量増加と死亡リスク上昇の関連の一部を説明する可能性を示しており、食品の加工そのものががんサバイバーの予後悪化にどのように関与し得るかを明らかにする助けとなる」と述べている。 研究者らは、超加工食品の摂取量を減らしてホールフードに置き換えることが、健康改善に役立つとしている。Bonaccio氏は、「一般の人々への主なメッセージは、個々の食品よりも、超加工食品の全体的な摂取量の方がはるかに重要だということだ。食事全体に着目し、超加工食品を減らし、新鮮で加工度の低い家庭料理中心の食事に移行することが、健康にとって最も意味があり、有益なアプローチである」と話す。さらに同氏は、製品が超加工食品に該当するかどうかを見分ける方法として、「ラベルを確認することだ。原材料が5つ以上、あるいは食品添加物を1つでも含む食品は、超加工食品である可能性が高い」とアドバイスしている。

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第285回 診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省

<先週の動き> 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省厚生労働省は、医道審議会医道分科会の専門部会で、医療機関が看板や広告で掲げる診療科名に「睡眠障害」を追加することを了承した。診療科名の見直しは2008年以来で、政令改正を経て、今春にも施行される見通し。医療機関は「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」など、既存の基本診療科名と組み合わせた形で標榜できるようになる。診療科名は医療法に基づき規制されており、医療機関が自由に名乗ることはできない。現在は「内科」「外科」「小児科」など約20の基本診療科名に加え、「糖尿病」「腫瘍」など疾患名や臓器名を組み合わせる形で標榜が認められている。今回の見直しで「睡眠障害」もこの組み合わせ名称の1つとして追加される。背景には、睡眠に関する医療ニーズの拡大がある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症など睡眠障害は多様で、成人の約5人に1人が何らかの睡眠問題を抱えるとされる。その一方で、どの診療科を受診すればよいか、わかりにくいことから受診が遅れるケースも多いとされ、日本睡眠学会が診療科名の追加を要望していた。睡眠障害の診療は内科、精神科、耳鼻咽喉科など複数の領域にまたがる。精神科受診への心理的抵抗から適切な診療につながるまで時間を要する例もあり、診療科名として明示することで受診先の選択が容易になり、早期診断や治療につながることが期待されている。一方、制度上は専門資格がなくても「睡眠障害科」を標榜できるため、専門性を伴わない医療機関が患者集めを目的に掲げる可能性も指摘されている。睡眠障害治療では、睡眠薬の長期使用による依存や離脱症状の問題もあり、専門的な診断や治療体制の整備が課題とされる。日本睡眠学会の専門医は約660人にとどまり、地域偏在も大きい。診療科名の追加を契機に、専門医育成や診療体制整備をどう進めるかが今後の課題となる。 参考 1) 第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会(厚労省) 2) 病院の診療科名に「睡眠障害」追加 厚労省部会が了承(日経新聞) 3) 「睡眠障害」の診療科名追加を了承、今春にも導入…通院先選びの利便性向上期待(読売新聞) 4) 「睡眠障害」診療科名に追加へ、受診の目印に 08年以来の見直し(朝日新聞) 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省厚生労働省は3月2日に開かれた薬事審議会医薬品第二部会で、麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹を防ぐ3種混合ワクチン(MMRワクチン)の製造販売承認を了承した。開発した第一三共の製品「ミムリット皮下注用」が正式に承認されれば、わが国で使用可能なMMRワクチンは約30年ぶりとなる。今後、定期接種に組み込むかどうかの検討が進められる。わが国では1989年にMMRワクチンが導入されたが、おたふく風邪成分に関連した無菌性髄膜炎の報告が相次ぎ、1993年に使用が中止された経緯がある。今回のワクチンは、無菌性髄膜炎の発生頻度が極めて低い株を使用しており、臨床試験でも重大な副作用は確認されていないとされる。海外では100以上の国・地域でMMRワクチンが定期接種として導入されており、わが国でも接種回数の減少など接種体制の効率化が期待される。その一方で、麻疹の感染は国内外で拡大の兆しを見せている。国内では愛知県で高校を中心に感染が広がり、2026年に入ってすでに20例以上の感染が確認された。東京都や埼玉県、神奈川県、岐阜県、鹿児島県などでも散発的な患者が報告され、医療機関や商業施設で不特定多数と接触した可能性のある事例も相次いでいる。海外渡航歴のない患者も複数確認されており、地域内感染の可能性も指摘されている。麻疹は、空気感染で感染する極めて感染力の強いウイルス感染症で、発熱や咳、結膜充血などの症状の後に高熱と発疹が出現する。肺炎や脳炎を合併すると重症化することがあり、ワクチン接種が最も有効な予防策とされる。海外でも流行は深刻化している。米国では、今年に入り約2ヵ月で1,100例以上の感染が報告され、前年の年間患者数を上回る可能性が指摘されている。患者の大半はMMRワクチン未接種、または2回接種を完了していない人だった。米疾病対策センター(CDC)はワクチン接種を改めて呼びかけている。国内でのMMRワクチン承認は、麻疹対策の強化に向けた制度的転換となる可能性がある。麻疹排除状態の維持には、2回接種率の向上とともに、集団免疫を維持するためのワクチン政策の整備が重要となりそうだ。 参考 1) 新薬等15製品が承認へ 第一三共のMMRワクチン・ミムリットなど 薬事審・第二部会が了承(ミクスオンライン) 2) 麻疹・おたふく・風疹の3種混合ワクチン承認へ…かつて報告された無菌性髄膜炎の発生頻度、極めて少なく(読売新聞) 3) はしか感染の20歳代男性、2月21日に日本医科大付属病院で不特定多数と接触か…東京都が注意呼びかけ(同) 4) 愛知県内で新たに2人が「はしか」に感染(NHK) 5) 米はしか感染 2カ月で1、100人 高水準だった去年の年間2,300人を上回る見通し(東日本放送) 6) 米CDC所長代理、はしかワクチン接種呼びかけ(ロイター) 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省令和8(2026)年度の診療報酬改定の詳細が明らかになってきた。今回の改定では、急性期入院医療の評価軸が「病棟単位」から「病院全体の急性期機能」へと変更され、実質的に急性期の担い手は急性期A、看護・多職種協働加算を組み合わせた急性期B、急性期1、同様の急性期4に集約される流れが強まった。厚生労働省は、3月5日に「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」として通知を発出し、その中で急性期病院Bの実績要件として救急搬送1,500件以上、または500件以上+全麻手術500件以上などを示し、さらに急性期総合体制加算では、総合性と高い手術実績を備えた拠点病院を評価する仕組みに再編した。中央社会保険医療協議会(中医協)でも、人口の少ない地域では救急搬送の受入件数に加え、外来・在宅診療体制の確保を支援する拠点病院を評価する方向性が示されている。その一方で、人口減少地域への影響は大きい。地域の急性期病床を持つ病院が同時に高度急性期を目指せば、看護師やリハビリスタッフ、症例数が分散し、どこも基準を満たせず、かえって経営不振や医療の質の低下を招きかねない。仮に50床の病棟で多職種7対1を実現するには看護師24人に加え、多職種約10人が必要で、人材が少ない地域の病院にはハードルが高くなる。結果として、急性期機能は一部病院へ集約され、周辺病院は包括期医療や在宅医療へ役割転換を迫られる可能性が高い。住民にとっては、高度急性期病院へのアクセスが遠のく一方で、地域内での「救急受け止め→早期転院→在宅復帰」の流れが整えばメリットもある。ただし、その前提は地域のかかりつけ医や在宅医療機関や介護施設の協力医療機関が軽症の救急患者の受け入れ、退院後のフォロー、看取りの支援を担えることだ。今回、介護施設の入所者の救急搬送は、協力医療機関で対応可能な例を原則として急性期A・Bの実績に算入しない方針も示され、急性期病院と地域密着病院で役割分担する発想がより鮮明になった。過疎地では、病院再編だけでなく、クリニックや訪問看護ステーションとの連携強化、訪問診療、余剰病床の介護施設への転換を含めた検討が不可欠になる。 参考 1) 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(厚労省) 2) 急性期入院医療の提供主体は「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」に集約されるのでは(Gem Med) 3) 急性期総合体制加算の施設基準詳細、「総合的かつ高度な体制を整え、小児・周産期含めた十分な手術実績」持つ病院が加算1を取得(同) 4) 救急患者応需係数で底上げ、地ケア病棟は対象外 看護必要度 C項目に腰椎穿刺など追加(CB news) 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省厚生労働省は、3月3日に「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を開き、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」についてガイドラインを取りまとめた。また、医師の偏在について「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」での検討を重ねてきていた第8次「医師確保計画」の見直し方針をとりまとめ、公開した。今回の2つの検討会の取りまとめは、病床数の議論だけでなく、医師偏在対策や医師養成過程の見直しまで一体で進める点にある。人口減少と高齢化、医療人材不足を前提に、地域ごとに「どの病院が急性期を担い、どこが高齢者救急や在宅を支えるか」を再設計する考えだ。まず、新たな地域医療構想では、人口減少と高齢化を前提とした医療提供体制の再編を進めるため、2040年の必要病床数を最新のNDBデータで推計し、高度急性期79%、急性期84%、包括期89%、慢性期92.5%の病床稼働率で換算する。急性期は少なめ、包括期は厚めに見積もる方向で、厚労省はこの数値を「必要病床数を算定するための換算値」であって、各病院が目標とすべき経営指標ではないと明示した。また、2028年度までに全病院・有床診療所が将来担う医療機関機能を整理し、地域で協議する枠組みを示している。医師確保計画の見直しでは、従来の「目標医師数」だけでなく、「地域で不足する診療科」などの定量指標を導入する。さらに、医師数は極端に少なくなくても、へき地尺度(RIJ)が高くアクセスに課題のある地域を新たに支援対象とする。小児科や産科に加え、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科なども、人口減少地域では常勤確保が難しい診療科として位置付けられ、遠隔医療の活用も検討対象となる。医師にとって重要なのは、外来医師過多区域への新規開業で、地域に不足する医療機能の提供を要請する仕組みが本格化する。その一方で、医療資源が乏しい地域では、承継支援や医師派遣、代替医師確保への支援が行われる。また、国は都道府県任せにせず、運用状況を毎年度把握し、必要なフォローを行う方針も示している。今後は、病院の再編だけでなく、診療所が休日夜間対応、在宅医療、退院後フォロー、遠隔診療をどう担うかが、地域医療構想の実効性を左右しそうだ。医師養成では、医学部の地域枠、臨床研修、専門研修、総合的な診療能力を持つ医師の育成を組み合わせる方向性が整理された。政府は、2040年の医療提供体制を「病床再編」と「医師配置」、さらに「医師の育て方」まで連動させて作り直そうとしている。2040年に向けた医療体制は、急性期医療の集約、高齢者救急への対応、在宅医療との連携、医師偏在是正を一体で進める形となる。病院にとっては、自院が地域で担う医療機能を明確にすることが求められ、外来患者数減少に直面する開業医は、医師会や地域の病院と連携して、地域で何を担うかがこれまで以上に問われる局面に入った。今後は限られた医療人材の中で、どう医療提供体制を維持するか重要な課題となりそうだ。 参考 1) 第12回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(厚労省) 2) 「医師確保計画策定ガイドラインの見直しに向けた医師養成過程における取組のとりまとめ」(同) 3) 急性期病床2040年の必要数、稼働率84%で推計 高度急性期79%、包括期89%、慢性期92.5%(CB news) 4) 2040年の必要病床数、病床利用実態・業務効率化等加味し「急性期は少なめ・包括期は多め」に推計-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府政府が進める医療保険制度改革により、公的医療保険の加入者1人当たりの社会保険料が年間約2,200円減少する見通しであることがわかった。上野 賢一郎厚生労働大臣が3月6日の閣議後の会見で明らかにした。改革の柱は、高額療養費制度の見直しと、市販薬と成分や効能が類似する「OTC類似薬」の保険給付の見直しなどで、医療費の抑制を通じて保険料負担の軽減を図る狙いがある。高額療養費制度では、医療費が高額になった場合の患者自己負担の月額上限を段階的に引き上げる。2026年8月と2027年8月の2段階で実施され、最終的には現行より最大38%引き上げられるケースも想定される。厚生労働省は、この見直しにより医療費を年間約2,450億円削減できると試算しており、保険料は加入者1人当たり年間約1,400円程度の軽減効果が見込まれるとしている。薬剤費の見直しも改革の柱となる。市販薬と成分や効能が近い「OTC類似薬」については、保険給付を受ける場合でも薬剤費の4分の1を患者が「特別の料金」として負担する制度を新設する。対象は鼻炎、胃痛、解熱鎮痛薬など77成分、約1,100品目とされ、2027年3月の施行を予定している。これにより社会保険料は年間約400円の減少が見込まれる。また、後発医薬品(ジェネリック)があるにもかかわらず先発薬を選択した場合の追加負担も拡大する。現在は差額の4分の1を患者が負担しているが、これを差額の2分の1まで引き上げる方針だ。こうした薬剤関連の見直し全体では年間約800円の保険料軽減効果が見込まれている。その一方で、高額療養費の上限引き上げに対しては、患者団体や野党から「重症患者の負担増につながる」との批判も出ている。国会審議では、保険料軽減が月額150円程度にとどまるとの指摘もあり、受診控えが生じる可能性への懸念も示された。政府は制度の持続可能性確保のための改革と説明するが、患者負担と保険財政のバランスをどう取るかが引き続き議論となりそうだ。 参考 1) 医療保険制度改革で保険料1人当たり年2,200円減、高額療養費制度やOTC類似薬の負担見直し(読売新聞) 2) 高額療養費見直しなどで社会保険料年2,200円減 厚労相が見通し(毎日新聞) 3) OTC類似薬の負担見直し、保険料減は月額33円程度 高額療養費は117円減 上野厚労相(CB news) 4) 「ペットボトル1本分の社会保険料負担軽減のために、高額療養費の負担増やすのか」共産議員が見直し迫る 衆院予算委で質疑(ABEMA TIMES) 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に美容医療を巡る訴訟が相次いでいる。焦点となっているのは、顔のしわやたるみ改善をうたう「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた後に、頬や目の下にしこりや隆起が残ったとする事案だ。2026年2月には女性3人が東京都内のクリニックを東京地裁に提訴し、施術費用の返還、原状回復のための治療費、慰謝料など計約1,850万円を求めた。原告側は、施術前に重い合併症や除去の困難さ、使用成分の実態について十分な説明がなく、安全性を強調する宣伝の下で同意が取られたと主張している。被害相談の増加を受け、医療問題弁護団は3月1日にプレミアムPRP皮膚再生療法の被害者救済を目的に無料ホットラインも開設し、同種事案の掘り起こしを進めている。この訴訟で争点となるのは、単なる仕上がり不満ではなく、説明義務違反と再生医療法令への適合性だ。報道では、「bFGFを加えたPRP療法は未承認の再生医療に当たり、患者への説明事項は省令で定められているのに、同意書や説明内容が不十分だった可能性」が指摘されている。実際、2025年1月には同種の美容目的再生医療を巡る別件で、東京地裁が医療法人の責任を認める決定が確定した。そこでは、「施術の有効性に十分な科学的根拠が乏しいこと」、「bFGFによる長期のしこりや隆起が起こりうることを説明すべき義務があったのに尽くされなかった」と判断され、解決金支払いと再発防止が求められた。今回の3人提訴は、この先行事例を踏まえ、同種施術の説明体制や広告表示を改めて司法の場で問う意味合いが大きい。美容医療トラブルが急増する背景として、過度な広告、一括払いの勧誘、十分な訓練を経ない医師の参入が挙げられる。消費者保護の視点から患者側は施術を受ける前に「専門医かどうか」「リスク説明が十分か」を見極める必要性がある。今回の訴訟は、その問題が個人の後悔ではなく、説明不足を伴う構造的な消費者被害として司法判断の対象になり始めたことを示している。美容医療では、適応外使用や未承認技術を含む施術ほど、インフォームド・コンセントの質そのものが法的責任の核心になる。 参考 1) 「鏡向くたびに絶望」顔にしこりなど副作用…美容医療受けた女性ら、都内のクリニック提訴(産経新聞) 2) 「成功してるじゃん」美容医療で“しこり”も医師が失敗認めず…被害者が施術費用の返還など求めクリニックを提訴(弁護士JPニュース) 3) 3月1日(日)プレミアムPRP皮膚再生療法被害ホットラインを実施しました(医療問題弁護団) 4) 「美容目的の再生医療で合併症」 医療法人の責任認定、訴訟が終結(朝日新聞) 5) トラブル急増・美容医療の見極め方 消費者保護に取り組む医師・大塚篤司(TBS)【動画】 6) プレミアムPRP皮膚再生療法で被害相談ホットライン開設 医療問題弁護団が3月1日に電話受付 2026年2月には3人の女性が美容クリニックを提訴

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新規配合錠、高齢HIV-1感染者の新たな選択肢の可能性/Lancet

 HIV-1感染症の治療において、1日1回1錠で完結する単一の配合錠(STR)の登場は、服薬アドヒアランスと臨床アウトカムを劇的に改善させた。しかし、長期治療や多剤耐性の患者、副作用や薬物相互作用の問題のある患者の中には、既存のSTRを使用できず、依然として1日に複数の薬剤を服用する複雑な多剤併用療法を受けざるを得ない例が少なくない。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らは「ARTISTRY-1試験」において、高い耐性障壁を持つインテグラーゼ阻害薬(INSTI)ビクテグラビルと、新規作用機序を有するカプシド阻害薬レナカパビルを組み合わせた新しいSTRは、これらの患者の新たな治療選択肢として期待できることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年2月25日号で報告された。新規STR切り替えと継続投与を比較 ARTISTRY-1試験は、複雑な多剤併用療法を受けているHIV-1感染者における、新たなSTRへの切り替え効果の評価を目的に、日本を含む15ヵ国と地域の90施設で実施した非盲検無作為化実薬対照非劣性第III相試験(Gilead Sciencesの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、血漿中のHIV-1 RNA量が<50コピー/mLの状態が少なくとも6ヵ月間持続し、既存のSTRの抗レトロウイルス薬への耐性、不耐性、禁忌のため少なくとも6ヵ月間の複雑な多剤併用療法を受けているHIV感染者を対象とした。 被験者を、経口STR(ビクテグラビル75mg・レナカパビル50mg配合錠)の1日1回投与に切り替える群(371例)、または複雑な多剤併用療法を継続投与する群(186例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、48週の時点におけるHIV-1 RNA量≧50コピー/mLの患者の割合であった。2つ以上の合併症54%、治療期間28年、耐性81% 2024年1~9月に参加者557例(年齢中央値60歳[範囲:22~84]、年齢55歳以上427例[77%]、女性100例[18%])を登録した。 ベースラインにおいて、377例(68%)が脂質異常症、280例(50%)が高血圧、133例(24%)が高血糖/糖尿病、78例(14%)が慢性腎臓病であり、298例(54%)がこれらの合併症のうち2つ以上を有していた。 HIV治療期間中央値は28年(四分位範囲[IQR]:22~32)、複雑な多剤併用療法の1日の抗レトロウイルス薬数の中央値は3剤(範囲:2~11)で、218例(39%)が1日2回の抗レトロウイルス薬の投与を受けていた。 複雑な多剤併用療法を受ける理由は、薬剤耐性(450例[81%])が最も多く、次いで現時点で使用可能なSTRの成分に対する不耐性(128例[23%])、STRが禁忌(33例[6%])の順であった。HIV-1 RNA量≧50は非劣性、治療満足度が改善 48週の時点におけるHIV-1 RNA量≧50コピー/mLの患者は、新規STR切り替え群が3例(1%)、継続群は2例(1%)であった(群間差:-0.3%[95.002%信頼区間[CI]:-2.3~1.8])。非劣性マージン(両側95.002%CIの上限値<4%)を満たしたため、新規STR切り替え群の継続群に対する非劣性が示された。 CD4細胞数のベースラインから48週までの変化の中央値は、新規STR切り替え群が+18/μL(IQR:-72~98)、継続群は-12/μL(-82~93)であり(変化の群間差:+19.0、95%CI:-11.6~49.5)、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.22)。 HIV治療満足度質問票(HIVTSQ)の平均総スコアは、ベースラインから48週までに新規STR切り替え群で+7(SD 10.6)の改善を達成したのに対し、継続群では変化を認めなかった(0[SD 9.6])。有害事象の頻度は同程度 有害事象の頻度は両群で同程度であった(新規STR切り替え群82%、継続群84%)。上気道感染症(9%、13%)、鼻咽頭炎(7%、9%)、下痢(6%、6%)、頭痛(8%、2%)の頻度が高かった。Grade3以上の有害事象(14%、14%)、および重篤な有害事象(14%、12%)の頻度にも両群間で差はなかった。 新規STR切り替え群で、試験薬関連のGrade3以上の有害事象が2例(1%)、試験薬関連の重篤な有害事象が1例(<1%)で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、新規STR切り替え群で6例(2%)、継続群で1例(1%)にみられた。新規STR切り替え群で5例が死亡したが、これらの中に試験薬関連死はなかった。至適な長期治療選択肢の可能性 著者は、「これらの知見は、抗レトロウイルス薬耐性などの理由により既存のSTRの恩恵を受けられず、複雑な多剤併用療法によりウイルス学的抑制を維持しているHIV-1感染者(とくに、併存疾患を有し、多剤併用のリスクが高い高齢患者)において、新規の至適な長期治療の選択肢としてのビクテグラビル・レナカパビルの使用を支持するものである」としている。 また、「年齢中央値は60歳と、これまでにHIV治療の登録プログラムに登録された研究対象集団としては史上最高齢であった。抗レトロウイルス療法の進歩によりHIV感染者の平均余命がほぼ正常の水準に達し、医療資源が豊富な国ではほとんどの患者が50歳以上となっている現状を踏まえると、これはとくに重要な点である」と考察を加えている。

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4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを長期抑制/BMJ

 4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種により浸潤性子宮頸がんリスクは有意に低下し、その予防効果は長期追跡期間を通じて持続しており減衰の兆候は認められなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のShiqiang Wu氏らが、同国の全国的な登録データを用いて最長18年間追跡したコホート研究の結果を報告した。本研究では、出生コホート別の評価において、最も若い学校ベースコホート(1999~2001年生まれ)が最も年長の機会的コホート(1985~88年生まれ)と比べて発生率が低かったことも示された。2006年に4価HPVワクチンが導入されているが、HPVワクチン接種後の浸潤性子宮頸がんの長期リスクに関するデータは依然として限られており、HPVワクチン効果の持続性を評価するための長期追跡研究が求められていた。BMJ誌2026年2月25日号掲載の報告。スウェーデンの全国的な登録データを用いたコホート研究、最長18年間追跡 研究グループは、スウェーデンの全国的な登録データを用い、HPVワクチンと浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を評価するコホート研究を行った。 対象は、1985~2001年生まれで2006~23年にスウェーデンに居住し、追跡調査開始時にHPVワクチン接種歴がなくかつ浸潤性子宮頸がんの既往がない女性であった。 2006年1月1日または10歳の誕生日のいずれか遅い時点から、2023年12月31日までまたは浸潤性子宮頸がんの診断、死亡、国外移住、追跡不能、2価/9価HPVワクチン接種のいずれか早い時点まで追跡した(最長38歳時まで追跡。17歳未満でワクチン接種を受けた女性は最長34歳時まで追跡)。 主要アウトカムは、HPVワクチン接種者と非接種者の浸潤性子宮頸がんの罹患率比(IRR)。追跡期間中の浸潤性子宮頸がんの初回診断で評価し、IRRは、年齢、暦年、社会人口学的要因、および病歴を補正したポアソン回帰モデルを用いて推定した。また、ワクチン接種後の期間別コホート、接種後3年ごとで区分したコホート(1~3、4~6年群など)、接種時の年齢別コホート、出生コホート(1985~88年生まれ[機会的コホート]、1989~92年生まれ[補助金対象コホート]、1993~98年生まれ[キャッチアップコホート]、1999~2001年生まれ[学校ベースコホート])分類による解析も行った。17歳未満でのワクチン接種、未接種と比較しIRRは一貫して低値 解析対象は92万6,362例、追跡期間中央値は18年(四分位範囲:15.8~18.0)で、追跡期間中に4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した女性(ワクチン接種群)は36万5,502例(39.5%)、このうち74.2%は17歳未満で接種を開始し、76.5%が全3回の接種を完了した。 浸潤性子宮頸がんは930例確認され、うち97例はワクチン接種群、833例は未接種群で、ワクチン接種群の未接種群に対する補正後IRRは0.44(95%信頼区間[CI]:0.35~0.55)であった。 接種年齢別評価では、17歳未満集団では補正後IRRは0.21(95%CI:0.13~0.32)で、ワクチン接種後13~15年間予防効果の持続が認められた(IRR:0.23、95%CI:0.11~0.46)。 一方、17歳以降の集団では、補正後IRRは全体で0.63(95%CI:0.49~0.81)、ワクチン接種後7~9年で0.77(0.52~1.15)、10~12年で0.54(0.33~0.86)、13~15年で0.23(0.08~0.60)と、ワクチン接種後10年以降で罹患の減少が有意であった。 出生コホート別では、機会的コホートと比較し、学校ベースコホートで、共変量補正後の子宮頸がんリスクが72%(95%CI:11~91)低下した(IRR:0.28、95%CI:0.09~0.89)。

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