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コロナ疾患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、コロナ後遺症患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。JAMA Health Forum誌2023年3月3日号に掲載の報告。コロナ後遺症群の死亡率は2.8%で未感染群は1.2% 米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後コロナ後遺症と診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。評価項目は、心血管疾患、呼吸器疾患、死亡など。コロナ後遺症の診断は、疲労、咳嗽、痛み(関節、喉、胸)、味覚・嗅覚の喪失、息切れ、血栓塞栓症、神経認知障害、うつ病などの症状に基づいて行われた。統計学的有意性はカイ2乗検定とt検定で評価し、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。Kaplan-Meier法を用いて死亡率を算出した。 コロナ後遺症について未感染者と比較した大規模調査の主な結果は以下のとおり。・コロナ後遺症群(1万3,435例)の平均年齢は50.1歳(SD 15.1)、女性7,874例(58.6%)。PCC群のうち3,697例がCOVID-19診断後1ヵ月以内に入院していた(平均年齢57.4歳[SD 13.6]、女性44.7%)。未感染群(2万6,870例)の平均年齢は50.2歳(SD 15.4)、女性1万5,672例(58.3%)。・コロナ後遺症群はCOVID-19を発症する前に、高血圧(39.2%)、うつ病(23.7%)、糖尿病(20.5%)、COPD(19.1%)、喘息(中等症/重症)(13.3%)、高度肥満(10.3%)などの慢性疾患を有する人が多かった。・コロナ後遺症群の追跡期間中によく観察された症状は、息切れ(41%)、不安(31%)、筋肉痛/脱力(30%)、うつ病(25%)、疲労(21%)だった。・コロナ後遺症群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。 -不整脈の発症率:PCC群29.4% vs.未感染群12.5%、RR:2.35(95%CI:2.26~2.45) -肺塞栓症:8.0% vs.2.2%、RR:3.64(95%CI:3.23~3.92) -虚血性脳卒中:3.9% vs.1.8%、RR:2.17(95%CI:1.98~2.52) -冠動脈疾患:17.1% vs.9.6%、RR:1.78(95%CI:1.70~1.88) -心不全:11.8% vs.6.0%、RR:1.97(95%CI:1.85~2.10) -末梢血管疾患:9.9% vs.6.3%、RR:1.57(95%CI:1.48~1.70) -COPD:32.0% vs.16.5%、RR:1.94(95%CI:1.88~2.00) -喘息(中等症/重症):24.2% vs.12.4%、RR:1.95(95%CI:1.86~2.03)・追跡期間中の死亡率はコロナ後遺症群2.8% vs.未感染群1.2%で、コロナ後遺症群は1,000人あたり16.4人の超過死亡となる。・COVID-19発症初期に入院を経験したコロナ後遺症群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。 -不整脈:51.7% vs.17.4%、RR:2.97(95%CI:2.81~3.16) -肺塞栓症:19.3% vs.3.1%、RR:6.23(95%CI:5.36~7.15) -虚血性脳卒中:8.3% vs.2.7%、RR:3.07(95%CI:2.59~3.66) -冠動脈疾患:28.9% vs.14.5%、RR:1.99(95%CI:1.85~2.15) -心不全:25.6% vs.10.1%、RR:2.53(95%CI:2.32~2.76) -末梢血管疾患:17.3% vs.8.9%、RR:1.94(95%CI:1.75~2.15) -COPD:43.1% vs.19.2%、RR:2.24(95%CI:2.11~2.38) -喘息(中等症/重症):31.6% vs.14.7%、RR:2.15(95%CI:2.00~2.31) コロナ罹患後症状に関する米国での最大規模の追跡調査において、コロナ後遺症患者は死亡率だけでなく心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが有意に増加し、とくにCOVID-19発症初期に入院した人では肺塞栓症が6倍、脳卒中が3倍以上など、さらにリスクが高くなることが示された。また、本研究はワクチン利用可能以前のサンプルを用いているため、ワクチン普及後では、ワクチンのコロナ後遺症緩和効果により、個人の医療利用パターンが変化する可能性もあると著者は指摘している。

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第156回 コロナ感染後の脳のもやもやがADHD薬グアンファシンで改善

日本で承認済みの注意欠如・多動症(ADHD)治療薬「グアンファシン(商品名:インチュニブ)」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つとして知られる脳のもやもや(brain fog)に有効かもしれないことが12例への投与試験で示唆されました1)。脳のもやもやは頭の働きの低下が続くことの俗称であり、脳の前頭前皮質(PFC)が担う実行・記憶・注意力、やる気を損なわせ、仕事や日常生活を妨げます。COVID-19患者の脳ではNMDA受容体(NMDAR)を阻害するキヌレン酸が多いことが知られています。脳のもやもやに似た症状を呈する外傷性脳損傷(TBI)の治療薬として検討されているN-アセチルシステイン(NAC)はキヌレン酸生成酵素を阻害してNMDAR伝達を回復させるらしく、グアンファシンはその伝達を後押ししてPFCの神経連結を強化する働きが期待できます。幸いにもグアンファシンとNACはどちらも忍容性が良好であり、long COVIDへの可能性を見出したエール大学の精神神経科医Arman Fesharaki-Zadeh氏らはそれら2剤を脳のもやもやを訴える患者に投与することを試みました。その結果、コロナ感染から3~14ヵ月経つものの認知障害が治まらず、複数作業の同時遂行(multi-tasking)・専念・集中などの遂行機能が低下していた12例のうち8例の脳のもやもやが投与の甲斐あって軽減しました。ただし、両剤の忍容性は良好とはいえ無害というわけではなく、2例はグアンファシンで生じうることが知られる低血圧症やめまいで服用を止める必要がありました。また、追跡が不可能になった患者が2例いました。残りの8例は作業記憶、集中、遂行機能の改善を示し、何例かは日常をいつもどおり過ごせるほどに回復しました。long COVIDのせいで看護師の仕事時間を大幅に短縮せざるを得ずにいた女性被験者1例の経過は示唆に富んでいます。彼女の作業記憶、遂行機能、頭の回転の速さ(cognitive processing speed)はグアンファシン治療でだいぶ良くなっていつもの仕事をこなせるようになりました。しかし急な低血圧症事象(めまい)の発生を受けてその治療を止めたところ認知機能や集中が悪化しました。そこでグアンファシンを再開したところ脳のもやもやが首尾よく再び治まり、めまいの再発なく同剤の服用を無事続けることができました。多くの患者を募ってグアンファシンとNACを検討するプラセボ対照試験の資金が今回の12例の治療報告を契機にして集まることをFesharaki-Zadeh氏らは望んでいます2)。long COVIDの治療手段の検討は他にもあり3)、たとえばファイザーの飲み薬ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の運動、認知、自律神経症状への効果を調べている試験があります4)。また、脳のもやもやや疲労に対する気分安定薬リチウムの試験5)、動悸や慢性疲労を引き起こす体位性起立性頻拍症候群(POTS)に対する重症筋無力症治療薬エフガルチギモド アルファ(日本での商品名:ウィフガート)の試験6)が進行中です。参考1)Fesharaki-Zadeh A, et al. Neuroimmunology Reports. 2023;3: 1001542)Yale Researchers Discover Possible 'Brain Fog' Treatment for Long COVID / Yale Medicine3)Long COVID Clinical Trials May Offer Shortcut to New Treatments / MedScape4)PASC試験(Clinical Trials.gov)5)Effect of Lithium Therapy on Long COVID Symptoms(Clinical Trials.gov)6)POTS試験(Clinical Trials.gov)

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水素吸入で院外心停止患者の救命・予後改善か/慶大ほか

 心停止の際に医療従事者が近くにいないなど、即座に適切な処置が行われなかった場合、1ヵ月の生存率は8%とされる。また、生存できた場合でも、救急蘇生により臓器に血液と酸素が急に供給されることで、非常に強いダメージが加わり(心停止後症候群と呼ぶ)、半数は高度な障害を抱えてしまう。このような心停止後症候群を和らげる治療として、体温管理療法があるが、その効果はいまだ定まっていない。そこで、東京歯科大学の鈴木 昌氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)らの研究グループは、病院外で心停止となった後に循環は回復したものの意識が回復しない患者を対象に、体温管理療法と水素吸入療法を併用し、効果を検討した。その結果、死亡率の低下と後遺症の発現率の低下が認められた。本研究結果は、eClinicalMedicine誌2023年3月17日号に掲載された。 HYBRID II試験は、日本国内の15施設で2017年2月~2021年9月に実施された多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験である。心臓病のために病院外で心停止となり、心肺蘇生により循環が回復したものの意識が回復しない20~80歳の患者73例が対象となった。対象患者を体温管理療法と同時に、2%水素添加酸素を吸入する群(水素群:39例)、水素添加のない酸素を吸入する群(対照群:34例)に分け、18時間吸入させた。主要評価項目は、90日後に主要評価項目は脳機能カテゴリー(CPC)1~2(脳神経学的予後良好)を達成した患者の割合、副次評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6点[死亡]で評価)、90日後の生存率などであった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の90日後にCPC 1~2を達成した患者の割合は、対照群が39%であったのに対し、水素群では56%であった(リスク比[RR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.46~1.13、p=0.15)。・副次評価項目の90日後のmRSスコアの中央値は、対照群が5点(四分位範囲[IQR]:1~6)であったのに対し、水素群は1点(IQR:0~5)であり、有意に低かった(p=0.01)。・mRSスコア0点の達成率は、対照群が21%であったのに対し、水素群は46%であり、有意に高率であった(RR:2.18、95%CI:1.04~4.56、p=0.03)。・90日後の生存率は、対照群が61%であったのに対し、水素群が85%であり、有意に生存率が上昇した(RR:0.39、95%CI:0.17~0.91、p=0.02)。・90日後までの有害事象の発現率は、対照群88%、水素群95%であった。重篤な有害事象の発現率は、対照群21%、水素群18%であった。有害事象は、いずれも水素吸入に起因するものではないと判断された。 研究グループは、「新型コロナウイルス感染症による救急医療のひっ迫の結果、本研究は早期終了となったため、目標症例数の90例には到達しなかった。そのため、水素吸入療法の有効性を検証するには至らなかった。しかし、水素吸入療法により90日後の生存率や症状や障害がない患者の割合が有意に上昇したことから、水素吸入療法は、心停止後症候群に陥った患者の意識を回復させ、神経学的後遺症を残さないようにする画期的な治療法になることが期待できる」とまとめた。

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第140回 医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学

<先週の動き>1.医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学2.がん誤診で膵臓全摘出後に患者死亡、患者遺族が提訴/大分3.病院のサイバーセキュリティ対策、ガイドライン最新版6.0に/厚労省4.パブリックコメント殺到、経口中絶薬の審議見送りに/厚労省5.レセプト請求は2024年9月までに原則オンライン化へ/厚労省6.少子化対策で、出産費用も保険適用を検討/政府1.医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学順天堂大学医学部において、女性と浪人生に対する不当な選抜基準を設けていたことに関して、平成29年度・平成30年度の入学試験で不利益な扱いを受けた受験生への入学検定料などの返還を求めていた消費者機構日本と順天堂大学の間で、和解が3月20日に成立した。和解では、大学側が消費者機構日本に1億6,000万円あまりを支払う内容。この和解案に基づき、消費者機構日本から医学部受験で不合格となった女子学生や浪人生、1,184人に対して入学検定料など相当額の損害賠償金が5月中旬に分配がされる。今回は、消費者裁判手続特例法に基づいた裁判で、回収金額は過去最高額となった。(参考)順天堂大学 入学検定料等に係る返還訴訟の和解について(消費者機構日本)順天堂大医学部、不正入試で和解 1184人分の受験料返還(東京新聞)医学部不正入試の順天堂大、1億6675万円支払いで和解…1183人と消費者機構に(読売新聞)2.がん誤診で膵臓全摘出後に患者死亡、患者遺族が提訴/大分昨年、大分県立病院で、膵臓がんの疑いと診断され、膵臓全摘出術を受けた患者が死亡した男性の遺族が県に対して、病院側の対応が問題だとして3,300万円の損害賠償を求めていた裁判が、大分地方裁判所で始まった。3月24日に第1回口頭弁論が開かれ、病院側は争う姿勢をみせている。訴状によれば、昨年5月に画像検査から膵尾部がんを疑われた59歳の男性が、大分県立病院で翌月に膵臓全摘出術を受けたが、術後の病理組織検査でがんではなかったと判明。患者はその後、術後合併症を併発し、回復しないまま退院したが、同年11月に自宅で死亡した。原告側は緊急性のない手術につき術前検査をもとに治療方針を決めず、患者に治療方法を選ぶ機会を十分に与えなかったとして、注意義務違反だと主張している。(参考)すい臓全摘出したが「がんではなかった」 大分県立病院を遺族が提訴(朝日新聞)がん誤診で膵臓全摘、死亡 遺族が賠償提訴、病院側争う姿勢 大分(毎日新聞)がん疑いで膵臓を全摘出、病変なし判明で退院した男性が自宅で死亡…遺族が賠償提訴(読売新聞)県立病院で「がん」ではないすい臓を摘出 死亡した男性の親族 3300万円の損害賠償 大分(大分放送)3.病院のサイバーセキュリティ対策、ガイドライン最新版6.0に/厚労省相次ぐ病院に対するサイバー犯罪に対応するため、厚生労働省は3月23日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の「医療等情報利活用ワーキンググループ」を開催した。この中で、昨年春にバージョンアップされた「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」をさらに6.0にアップデートするため、今後パブリックコメントを募集し、その意見も踏まえ5月中旬に最終版を正式に公表するとした。また、2023年6月以降の都道府県による立ち入り検査では、サイバーセキュリティ対策実施の有無をチェックほか、「医療機関やシステムベンダーに対して、「サイバーセキュリティ対策に関するチェックリスト」を事前に提示するなど最初に行うべき事項は明確化することを承認した。(参考)病院への相次ぐサイバー攻撃でVPNへの関心高まる バックアップへの対策も進む、厚労省調査で判明(CB news)医療情報ガイドライン6.0版、5月中旬に公表 厚労省がWGに改定スケジュール提示(同)医療機関等のサイバーセキュリティ対策、「まず何から手を付ければよいか」を確認できるチェックリストを提示-医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)第16回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)「病院における医療情報システムのサイバーセキュリティ対策に係る調査」の結果について(同)4.パブリックコメント殺到、経口中絶薬の審議見送り/厚労省国内初の経口中絶薬について、厚生労働省が専門部会の開催前に実施したパブリックコメントに、通常の100倍に相当する約1万2,000件の意見が集まったため、3月24日に予定されていた審議は延期された。同省は、多くの意見を分析する時間が必要となったため延期とした。対象となったのはイギリスの製薬会社ラインファーマが薬事申請している「メフィーゴパック」。海外では経口中絶薬は70ヵ国以上で承認されているが、国内では未承認。妊娠9週までが対象。今後、意見を踏まえた議論を経て、承認に向けた最終的な議論がなされる見込み。(参考)経口中絶薬の審議見送り 意見1万件超、分析に時間 厚労省(時事通信)「飲む中絶薬」審議を見送り 厚労省「パブコメの分析、間に合わず」(朝日新聞)「飲む中絶薬」にパブコメ殺到の背景 通常の100倍超…審議は延期(同)飲む中絶薬の承認審議延期 意見公募の対応で、厚労省(日経新聞)ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について(厚労省)5.レセプト請求は2024年9月までに原則オンライン化へ/厚労省厚生労働省は社会保障審議会医療保険部会を3月23日に開催し、オンライン請求の割合を100%に近付けていくためのロードマップ案を提示した。同省としては、規制改革実施計画に盛り込まれた社会保険診療報酬支払基金での審査・支払業務の円滑化のため、オンライン請求を行っていない医療機関の実態調査の結果をもとに、オンライン請求100%を目指して取り組む。具体的には、現在オンライン請求を行なっている医療機関が70%と増加する一方で、光ディスクと紙レセプトが減少している。令和5年4月から原則としてオンライン資格確認が導入されるのに合わせて、オンライン請求が可能な回線が全国の医療機関に整備されるタイミングでもあり、オンライン資格確認の特例加算の要件緩和により、今年4月から12月末までにオンライン請求を開始する場合には、加算を算定することが可能となっていることを広報していくことを明らかにした。現行、光ディスクなどを使って請求している医療機関や薬局に対して、経過措置期間を設けて、2024年9月末までに原則としてオンライン請求をするように求めていく。(参考)光ディスクでのレセプト請求、原則オンライン化へ 24年9月末までに、厚労省(CB news)オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ[案](厚労省)第164回社会保障審議会医療保険部会(同)6.少子化対策で、出産費用も保険適用を検討/政府新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2022年の出生数(速報値)が79万9,728人と過去最少を記録するなど今後の社会保障の持続可能性が危ぶまれている中、岸田内閣は、少子化対策で新たにまとめる子ども政策に、分娩費用について健康保険の適用方針も検討していることが明らかとなった。3月10日に菅義偉前首相が、少子化対策の一環で出産費用を保険適用として、自己負担分は国の予算で負担するなどで、実質無償化を民放番組で訴えたのがきっかけ。政府はこの4月1日以降の出産について出産育児一時金を50万円に引き上げるなど拡充を行なっているが、今後、具体化に向け議論を開始するとみられる。(参考)出産費に健康保険 将来適用方針で調整(FNN)出産費用、将来の保険適用検討 個人負担を軽減(日経新聞)出産費用を巡る「岸田路線」と「菅路線」(毎日新聞)

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3回接種後の効果、ファイザー製/モデルナ製各160万人で比較/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株~オミクロン変異株の流行期において、BNT162b2(ファイザー製)ワクチンまたはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンによるブースター接種はいずれも、接種後20週以内のSARS-CoV-2感染および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院に関して適度な有益性があることが、英国・オックスフォード大学のWilliam J. Hulme氏らのマッチドコホート研究で明らかとなった。BMJ誌2023年3月15日号掲載の報告。両ワクチン各々約161万9千例で比較 研究グループは、OpenSAFELY-TPPデータベースを用いてコホート研究を行った。本データベースは英国の一般診療所の40%をカバーし、国民保健サービス(NHS)番号を介して救急外来受診記録、入院記録、SARS-CoV-2検査記録および死亡登録と関連付けられている。 解析対象は、BNT162b2またはChAdOx1(アストラゼネカ製)ワクチンを2回接種(プライマリ接種コース)しており、2021年10月29日~2022年2月25日にブースター接種プログラムの一環としてBNT162b2またはmRNA-1273の3回目接種を受けた、ブースター接種前28日以内にSARS-CoV-2感染歴のない18歳以上の成人(介護施設入所者および医療従事者は除外)であった。BNT162b2接種者とmRNA-1273接種者を、3回目接種日、プライマリ接種コースのワクチンの種類、2回目接種日、性別、年齢などに関して1対1でマッチングした。 主要アウトカムは、ブースター接種後20週間におけるSARS-CoV-2検査陽性、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、非COVID-19関連死であった。 BNT162b2群、mRNA-1273群で各々161万8,959例がマッチングされ、合計6,454万6,391人週追跡された。相対的有効性はmRNA-1273が良好? 20週間のSARS-CoV-2検査陽性リスク(1,000人当たり)は、BNT162b2群164.2(95%信頼区間[CI]:163.3~165.1)、mRNA-1273群159.9(95%CI:159.0~160.8)、BNT162b2と比較したmRNA-1273のハザード比(HR)は0.95(95%CI:0.95~0.96)であった。 同様に、COVID-19関連入院リスク(1,000人当たり)は、BNT162b2群0.75(95%CI:0.71~0.79)、mRNA-1273群0.65(95%CI:0.61~0.69)、HRは0.89(95%CI:0.82~0.95)であった。 COVID-19関連死はまれで、20週間のリスク(1,000人当たり)はBNT162b2群0.028(95%CI:0.021~0.037)、mRNA-1273群0.024(0.018~0.033)、HRは0.83(95%CI:0.58~1.19)であった。 3回目接種後のCOVID-19関連入院/死亡はまれであったが、SARS-CoV-2検査陽性も含めてmRNA-1273よりBNT162b2のほうがリスクは高いと推定され、これらの結果は、プライマリ接種コースのワクチンの種類、年齢、SARS-CoV-2感染歴、英国予防接種に関する共同委員会(JVCI)の定義による臨床的脆弱性のサブグループ間で一貫していた。

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第153回 閣議決定、法案提出でマイナ保険証への一本化と日本版CDC創設がいよいよ始動

マイナ保険証関連法案と日本版CDC法案を閣議決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。大きな盛り上がりを見せたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ですが、この原稿を書いている段階ではまだ優勝は決まっていません。個人的に衝撃を受けたのは、3月15日(現地時間)、1次ラウンド・プールDの第4戦のプエルトリコ対ドミニカ共和国の戦いです。プエルトリコは9回にクローザー、エドウィン・ディアス投手を投入、3者連続三振に打ち取って見事勝利を収めました。しかし、ディアス投手はその直後、マウンド上で選手たちと喜び過ぎて右膝の膝蓋腱を断裂、今季絶望となってしまったのです(プエルトリコは準々決勝でメキシコに破れました)。ディアス投手はニューヨーク・メッツの”守護神”で一度聴いたら耳から離れない独特の登場曲・Narcoも有名です。昨シーズン終了後には救援投手では史上最高の5年1億200万ドル(約136億円)で契約延長したばかり。WBC出場がMLB選手にとってどれだけリスクがあるのかをまざまざと示す結果になってしまいました。今回のWBCには大谷 翔平投手やダルビッシュ 有投手などが参加していますが、今後はこうしたスター選手の出場が抑えられる可能性もありそうです。さて、今回は3月7日に政府が閣議決定した2つの法案について書いてみたいと思います。一つはマイナンバーカード関連、そしもう一つは日本版CDC、国立健康危機管理機構関連の法案です。2024年秋に健康保険証を廃止しマイナ保険証に一体化政府は3月7日、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する関連法改正案を閣議決定しました。カードを持たない人には保険証の代わりに「資格確認書」を健保組合などの保険者が発行します。ただ、有効期限が1年の更新制となるだけでなく、医療機関を受診する際は現行と同様、マイナ保険証に比べて窓口負担が重くなります。マイナンバーカードを保険証として使うマイナ保険証については、昨年10月、河野 太郎デジタル大臣が一本化を表明して以来、この連載でも「第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、『懸念』発言続く日医は『医療情報プラットフォーム』が怖い?」などで度々書いてきました。今年2月には全国保険医団体連合会(保団連)が「健康保険証を廃止する理由は一つもない」として、法案撤回を厚生労働大臣に求める動きもありました。しかし、この閣議決定によって、マイナ保険証の普及・定着が加速されると共に、マイナンバーカード取得の事実上の義務化もなされたことになります。マイナンバーの利用範囲拡大で気になるHPKIカードの今後関連法案は、健康保険法やマイナンバー法など13の法律の改正案からなり、国会では束ね法案としてまとめて審議されます。マイナンバーは、利用できる範囲が法律で社会保障と税、それに災害対策の3分野に限定されていますが、今回の改正案によって国家資格の手続きや自動車に関わる登録、外国人の行政手続きなどの分野にも範囲が広がるとしています。さらに、こうした分野について、すでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば、法律を改正しなくてもマイナンバーの利用が可能になるとのことです。「国家資格の手続き」で思い出したのは、「第146回 病院・診療所16施設、薬局138施設と低調な滑り出しの電子処方箋、岸田首相肝いりの医療DXに暗雲?」で書いたHPKIカードの存在です。電子処方箋の発行に必要とされるHPKIカードは、厚生労働省が所管する医師をはじめとする27個の医療分野の国家資格を証明するためのシステムです。電子処方箋を発行する医師・歯科医師、そして電子処方箋を調剤済みにする薬剤師ごとにHPKIカードによる電子署名が必要とされています。ただ、2022年12月末時点で取得しているのは医師の11%、薬局の薬剤師の7%に留まっており、1月26日から運用開始となった電子処方箋が低調なスタートになった一因として指摘されていました。素人考えですが、マイナンバーカードも国家資格の手続きに使えるとなれば、HPKIカードはもう必要ないのではないでしょうか。厚生労働省の意向を汲んでHPKIカード導入の旗振りをしてきた医療関係団体への配慮はもちろん必要ですが、このデジタル社会、あえて古い仕組みに拘泥する理由はありません。この際、医療現場での医療者の資格確認も、基本マイナンバーカードに一本化すべきだと思いますが、皆さんいかがでしょう。国立健康危機管理研究機構設置は2025年以降同じ日、医療関連の政策でもう一つ閣議決定されたのは、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たな専門家組織として「国立健康危機管理研究機構」を設立する新法案です。米国で感染症対策を中心的に担う疾病対策センター(CDC)をモデルとする国立健康危機管理研究機構については、この連載でも「第140回 次のパンデミックに備え感染症法等改正、そう言えば感染症の『司令塔機能』の議論はどうなった?」でも書きました。いよいよ法案ができ、実現に向けて動き出したというわけです。なお、設立するための国立健康危機管理研究機構法案のほか、現在の両組織の業務を引き継ぎ、新たな業務を加えるため、感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法、地域保健法も改正するとのことです。国立健康危機管理研究機構はCDCをモデルに、感染研の基礎研究と、国立国際医療研究センターの臨床医療のそれぞれの機能を併せ持つ、感染症研究の拠点を目指すとしています。内閣官房に設置する内閣感染症危機管理統括庁(内閣官房に秋ごろ設置予定)の求めに応じ、政策決定に必要な知見を提供したり、治療薬などの研究開発力を強化したりするとのことです。設置は2025年度以降としています。科学的根拠に基づいて政府に物が言える日本版CDCにこの連載の140回を書いた時点では不明だった法人形態ですが、特別の法律により設立される法人(特殊法人)で、政府が全額出資する形となります。厚生労働大臣による広範な監督権限が付与される予定で、理事長・監事は厚労大臣が任命、副理事長・理事は厚労大臣の認可を得て理事長が任命することとなりました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで政策のご意見番として機能してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は、時として政府や厚労省が上手くコントロールできない状況もあったようです。そうした反省も踏まえての厚労省管轄の特殊法人と考えられます。しかし、新たに設立される国立健康危機管理研究機構では、逆に感染症対策において専門家を国がコントロールし過ぎたり、政府判断を追認するだけの専門家組織になってしまうのではないかという危険性も指摘されています。国の組織であっても、科学的根拠に基づいて政府にきちんと物が言えるような日本版CDCができることを願っています。

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日本におけるオミクロン期のコロナワクチンの有効性は?/長崎大

 長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの多施設共同研究チームは、2021年7月1日より、日本国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果のサーベイランス「VERSUS(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2)」を実施している。オミクロン株BA.1/BA.2の流行期における新型コロナmRNAワクチンの効果についてVERSUSのデータを基に評価したところ、初回シリーズの接種により緩やかな予防効果が得られ、さらに、有症状感染を防ぐにはブースター接種がより効果的であったことが明らかとなった。本結果は、Expert Review of Vaccines誌オンライン版2023年3月8日号に掲載された。 本研究では、2022年1月1日~6月26日のオミクロン株BA.1/BA.2の流行期に、11県の医療機関14施設に、COVID-19の徴候または症状(発熱[37.5℃以上]、咳嗽、疲労、息切れ、筋肉痛、咽頭痛、鼻づまり、頭痛、下痢、味覚障害、嗅覚障害)があって受診した7,931例(16歳以上)が登録された。ワクチン効果を多施設共同test-negative case-control研究で評価した。初回シリーズ(1次接種)とブースター接種ともにmRNAワクチンのファイザーの1価ワクチン(BNT162b2)もしくはモデルナの1価ワクチン(mRNA-1273)について評価し、それ以外の新型コロナワクチン接種者は試験結果から除外した。 主な結果は以下のとおり。・サーベイランスに登録された7,931例のうち、検査陽性3,055例、検査陰性4,876例を解析対象とした。年齢中央値39歳(四分位範囲:27~53)、男性3,810例(48.0%)、基礎疾患のある人が1,628例(20.5%)、COVID-19罹患歴がある人が142例(1.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種13.8%、1次接種60.1%、ブースター接種20.1%であった。65歳以上では、未接種5.8%、1次接種49.7%、ブースター接種34.8%であった。検査陽性者の割合は、未接種52.7%、1次接種42.2%、ブースター接種20.3%であった。・未接種と比較した1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で35.6%(95%信頼区間[CI]:19.0~48.8)、91~180日で32.3%(20.7~42.2)、180日超で33.6%(18.5~45.8)であった。・未接種と比較したブースター接種の効果は、16~64歳では、ブースター接種完了から90日以内で68.7%(95%CI:60.6~75.1)、91~180日で59.1%(37.5~73.3)であった。・65歳以上では、未接種と比較した1次接種の効果は31.2%(95%CI:-44.0~67.1)、ブースター接種では76.5%(46.7~89.7)に上昇した。・1次接種、ブースター接種ともに、mRNA-1273のほうがBNT162b2よりも効果が高かったが有意差はなかった。・1次接種(接種から180日超)と比較したブースター接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種から90日以内で52.9%(95%CI:41.0~62.5)、91~180日で38.5%(6.9~59.3)であった。・65歳以上では、1次接種と比較したブースター接種の効果は65.9%(95%CI:35.7~81.9)であった。 本結果について著者は、デルタ株流行期での日本における1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で91.8%(95%CI:80.3~96.6)、91~180日で86.4%(56.9~95.7)、65歳以上では90.3%(73.6~96.4)と非常に高かったが、オミクロン株流行時には1次接種の有効性はかなり低下しており、有症状感染を防ぐにはブースター接種が必要だと指摘している。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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2歳までの下気道感染、成人期の呼吸器疾患死リスク約2倍/Lancet

 幼児期に下気道感染症に罹患すると、肺の発達が阻害され、成人後の肺機能の低下や慢性呼吸器疾患の発症リスクが高まるといわれている。そのため、幼児期の下気道感染症の罹患は、呼吸器疾患による成人早期の死亡を引き起こすのではないか、という仮説も存在する。しかし、生涯を通じたデータが存在しないことから、この仮説は検証されていなかった。そこで、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJames Peter Allinson氏らは、1946年の出生コホートを前向きに追跡した。その結果、2歳未満での下気道感染があると、26~73歳の間に呼吸器疾患によって死亡するリスクが、約2倍となることが示された。Lancet誌オンライン版2023年3月7日号の報告。 1946年3月にイングランド、ウェールズ、スコットランドで出生した5,362例を前向きに追跡した。26歳まで生存し、適格基準(2歳未満での下気道感染や、20~25歳時の喫煙歴に関するデータが得られているなど)を満たした3,589例について、2歳未満での下気道感染の有無別に、26歳時点をベースラインとして生存分析を実施した。また、研究対象コホート内の死亡とイングランド・ウェールズの死亡を比較し、試験期間中の超過死亡を推定した。 主な結果は以下のとおり。・26歳時点からの追跡期間は最大47.9年であった。・追跡の対象となった3,589例のうち、2019年末時点で生存が確認されたのは2,733例であった(死亡:674例、移住:182例)。・2歳未満での下気道感染のある群(913例)は、下気道感染のない群(2,676例)と比べて呼吸器疾患による死亡リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.93、95%信頼区間[CI]:1.10~3.37、p=0.021)。・2歳未満での下気道感染の回数別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1回感染群(596例)が1.51(0.75~3.02、p=0.25)、2回感染群(162例)が2.53(0.97~6.56、p=0.057)、3回以上感染群(155例)が2.87(1.18~7.02、p=0.020)であった。・2歳未満での初回の下気道感染の年齢別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1歳未満群(648例)が2.12(1.16~3.88、p=0.015)、1歳以上2歳未満群(256例)が1.52(0.59~3.94、p=0.39)であった。・2歳未満での初回の下気道感染時の治療別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、未治療または外来治療群(856例)が1.79(1.00~3.19、p=0.051)、入院治療群(52例)が4.35(1.31~14.5、p=0.017)であった。・2歳未満での下気道感染は、1972~2019年のイングランド・ウェールズの呼吸器疾患による死亡の20.4%(95%CI:3.8~29.8)に関連していると推定され、これはイングランド・ウェールズにおける17万9,188例(95%CI:3万3,806~26万1,519)の超過死亡に相当した。 著者らは、「2歳までに下気道感染のある人は、呼吸器疾患による成人期の早期死亡のリスクが約2倍であり、2歳未満での下気道感染は成人期の呼吸器疾患による死亡の5分の1に関連していることが示唆された。幼児期の下気道感染と慢性閉塞性肺疾患などの成人呼吸器疾患の発症や予後との間には、特異な関連があると考えられる。成人呼吸器疾患の発症や子供の健康格差の発生を避けるためには、生涯にわたる予防戦略が必要である」とまとめた。

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IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」【下平博士のDIノート】第117回

IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「トラロキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:アドトラーザ皮下注150mgシリンジ、製造販売元:レオファーマ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎の増悪に関与するIL-13を特異的に中和するモノクローナル抗体であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者の新たな治療選択肢となることが期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間受けても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。本剤による治療反応は、通常使い始めてから16週までには効果が得られるため、16週までに効果が得られない場合は投与の中止を検討します。<安全性>全身療法が適用となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、5%以上の頻度で認められた副作用は、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹など)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎の増悪に関与し、過剰に発現しているインターロイキン-13(IL-13)を特異的に中和するモノクローナル抗体です。2.この薬を投与中も、症状に応じて保湿外用薬などを併用する必要があります。3.寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下などが生じた場合は、すぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は、末梢での炎症を誘導する2型サイトカインであるIL-13を選択的に阻害することで、中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に効果を発揮する生物学的製剤です。IL-13は皮膚の炎症反応の増幅、皮膚バリアの破壊、病原体の持続性増強、痒みシグナルの伝達増強などに作用し、IL-13の発現量とADの重症度が相関するとされています。そのため、IL-13を阻害することによって、皮膚のバリア機能を回復させ、炎症や痒み、皮膚肥厚を軽減することが期待されています。現在、ADの薬物療法としては、ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬(商品名:プロトピックほか)が中心的な治療薬として位置付けられています。近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有するデルゴシチニブ外用薬(同:コレクチム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害作用を有するジファミラスト外用薬(同:モイゼルト)も発売されました。さらに、これらの外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:デュピクセント)、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:ミチーガ)、JAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)などが発売され、治療選択肢が広がっています。本剤は、医療施設において皮下に注射され、原則として本剤投与時もADの病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。IL-13を阻害することにより2型免疫応答を減弱させ、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる恐れがあるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行います。また、本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないため避けます。臨床効果としては、16週目にEASI75(eczema area and severity index[皮膚炎の重症度指標]が75%改善)を達成した割合は、ステロイド外用薬+プラセボ群では35.7%でしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では56.0%でした。また、32週目のEASI-75達成率は92.5%でした。16週時までのステロイド外用薬の累積使用量はステロイド外用薬+プラセボ群では193.5gでしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では134.9gでした。初期投与期間での主な有害事象はウィルス性上気道感染、結膜炎、頭痛などですが、アナフィラキシーなど重篤な過敏症の可能性があるので十分注意する必要があります。投与は大腿部や腹部、上腕部に行い、腹部へ投与する場合はへその周りを外し、同一箇所へ繰り返しの注射は避けます。遮光のため本剤は外箱に入れたまま、30℃を超えない場所で保存し、14日間以内に使用します。使用しなかった場合は廃棄します。本剤は、海外ではEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度~重度のAD療薬として使用されています(2022年8月現在)。参考1)Silverberg JI. et al. Br J Dermatol. 2021;184:450-463.2)レオファーマ社内資料:アトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相TCS併用投与試験(ECZTRA3試験)

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生後6ヵ月~4歳児に、ファイザー2価ワクチン追加接種を承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は3月15日、ファイザーの新型コロナウイルスのオミクロン株BA.4/BA.5対応2価ワクチンについて緊急使用許可(EUA)を修正し、生後6ヵ月~4歳の小児において、同社の1価ワクチンの3回接種(初回シリーズ)が完了してから少なくとも2ヵ月後に、2価ワクチンによるブースター接種1回を行うことができることを発表した。 2022年12月に、生後6ヵ月~4歳の小児は、1価ワクチンの初回シリーズの2回目までを接種した者に対して、3回目に2価ワクチンを接種することが承認されていた。今回の生後6ヵ月~4歳への2価ワクチンブースター接種の承認では、上記の3回目に2価ワクチンを接種した小児は対象外となり、初回シリーズをすべて1価ワクチンで3回接種した者のみが対象となる。 FDAは、生後6ヵ月~4歳の小児に対する臨床試験で、ファイザーの1価ワクチンを3回接種し、同社の2価ワクチンのブースター接種を1回受けた60例の免疫応答データを評価した。2価ワクチンのブースター接種から1ヵ月後、被験者はSARS-CoV-2起源株とオミクロン株BA.4/BA.5の両方に対して免疫応答を示した。 安全性のデータは、55歳以上への2価ワクチンのブースター接種、生後6ヵ月以上への初回シリーズ接種、5歳以上への1価ワクチンのブースター接種を評価した臨床試験、1価および2価ワクチンの市販後の安全性データに基づいている。加えて、6ヵ月以上に対して、以下の2つの臨床試験が行われた。 1つの試験では、1価ワクチンを3回接種し、2価ワクチンのブースター接種を1回受けた生後6~23ヵ月の被験者24例において、主な副反応として、イライラ感、眠気、注射部位の発赤、痛みおよび腫脹、食欲低下、疲労感、発熱が報告された。5~11歳の113例の被験者では、主な副反応として、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒、発熱、嘔吐、下痢、注射部位の痛み、腫脹、発赤、注射部位と同じ腕のリンパ節の腫脹などが報告された。 もう1つの試験では、1価ワクチンを2回、1価ワクチンのブースター接種を1回、2価ワクチンのブースター接種を1回受けた12歳以上の316例において、主な副反応は5~11歳の被験者で報告されたものと同じであった。

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第151回 マスク脱着による世論分断を防ぐため、知っておきたい人間の特性

政府の方針で3月13日から新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策を念頭に置いたマスクの着用は、原則個人の判断が基本となった。この日以降、街中を歩く際はマスク着用の動向を自分なりに眺めているが、確かに着用していない人は若干増えたようだ。もっともパッと見は着用していなくとも、手にマスクをぶら下げているなど様子見のような雰囲気がうかがえることも多い。私個人はというと、信号待ちで人が密集するなどの状況以外、屋外では原則マスクを外し、屋内ではマスクを着用するという元々の方針をほとんど変えていない。が、厳密に言うとむしろ屋外でマスクをするシーンが増えた。というのも、スギ花粉の飛散量が例年よりもかなり多いと言われる今シーズン、どうやら初めて本格的な花粉症を発症したようなのだ。日中、屋外にいる時間が短い場合はほとんど問題ないのだが、ノーマスクのままで数時間経つと、突如くしゃみが止まらなくなる。先日はたぶん人生で初のくしゃみ27連発を経験し(いちいち数えているのもどうかと思われるかもしれないが)、慌ててマスクを着用。それで症状が治まったため、さすがに花粉症なんだろうと思っている。そんなこんなで花粉症対策のマスクのありがたみを実感するとともに、このシーズンが終われば、マスクを外す人はそれなりに増えてくるのだろうと予測している。もっとも私個人は今のところ前述の着用原則を当面変えるつもりはない。新型コロナウイルスがいなくなったわけでもなく、重症化リスクを有する人にとっては相変わらずインフルエンザよりは明らかに恐ろしい感染症であるため、3月13日を「マスク外し記念日」と認識するのは時期尚早と考えるからである。私が屋内外とも全面的にマスクを外すようになるのは、たぶん有効性・抗体価持続期間が現在よりも大幅に改善した新型コロナワクチンが登場した時だろう。さてそんな中、この件に関して厚生労働省が開設した特設ページを見て、モヤモヤした気分になってしまった。書いている内容に間違いはないし、良い意味でお役所らしい「簡にして要」の原則は貫かれている。しかし、良くも悪くも真面目過ぎる。このページを作成した人たちは、おそらく読む人は冒頭から最後まできちっと目を通してくれるはず、あるいは目を通して欲しいと思ったのだろう。だが、メディアという世界に四半世紀以上も身を置いている自分は、多くの場合、そうした期待や願望は幻想に過ぎないという現実を嫌と言うほど経験している。具体例を挙げるならば、記事の見出しだけを見て、すべてをわかった気になっているSNS投稿などがそれだ。では、このページのどこが気になるのか? まず、原則個人の判断ではあるが、“医療機関や高齢者施設、混雑した公共交通機関では従来通りマスク着用が推奨される”というのが訴えたいメッセージのはずである。伝える側の本音として、個人の判断と今後も推奨が続くシーンという情報に本来ならば主従関係などないはずである。ところが、このページの見せ方は完全に主従関係となっている。まず冒頭のやや小さい字のお知らせは「これまで屋外では、マスク着用は原則不要、屋内では原則着用としていましたが令和5年3月13日以降、マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします」とあり、「個人の…基本」にアンダーラインが引いてある。また、後段の図示では「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となります。感染拡大防止対策として、マスクの着用が効果的である場面などについては、マスクの着用を推奨します」とあり、前文のみがやや大きい赤字フォントで目立つようにしてあり、後半はやや小さい黒字フォントで目立ちにくい。最初に目に入ったものに強く印象付けられるのが人の特性であり、この見せ方では「個人の判断」が及ばない今後も推奨されるシーンが霞んでしまう。「特設ページには前述の着用の推奨が継続するシーンについては大きなイラスト付きで示されているじゃないか」と声を大にしたくなる人もいるかもしれないが、実際こうした部分は良くて流し見、最悪、目すら向けられないことも結構あるのだ。たとえば、単語カードを使って英単語の意味を覚えようとする時、往々にして最初に覚えるのは1枚目のカードだ。1つの単語で複数の意味がある場合も、最初に覚えるのは一番目に表示される意味であることが多い。こうした現象は日常的に少なくないはずだ。ではどうするかというと、こうした人の特性を逆手にとって多少長くとも冒頭から「〇〇や××、あるいは△△のような場面では今後もマスク着用が推奨されますが、それ以外については個人の判断が基本になります」と記載するほうがベターである。また、この「最初に目にしたもの」の原則から気になった点がもう1つある。「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします」の「着脱」である。「着脱」は「着けること」と「外すこと」の両方を意味しているし、この使い方そのものは間違いではない。しかし、人は最初の「着」のほうに目が行きがちである。注意深く読まない人やマスクに否定的な人は「着脱」をシンプルに「着けること」のみに解釈しがちである。その結果起こると予想されることが、医療機関などに対して「なんでおたくはマスクを強要するのか」というお門違いのクレームである。その意味ではここでも回りくどくとも、「着けることや外すことを強いることがないよう」と表現するほうがベター。今回の私の指摘を非常に細かい「重箱の隅をつつく」ことと思われる方もいるかもしれない。しかし、少なからぬ国民が3年間のコロナ禍疲れを感じているはずで、原因の1つには、この間に推奨されてきたマスク着用も入っていると考えても差し支えないだろう。その中で今回のマスクに対する推奨の変更は1つの大きな転換点であることは間違いない。とはいえ、新型コロナウイルスがいなくなったわけでもなく、少なくとも日本人の3分の1以上は該当するであろう重症化リスクを有する人たちにとっては、いまだに油断ならない感染症である。だからこそこの局面で理性・論理性に欠くノイジー・マイノリティーのマスク否定派、あるいはそこに影響を受けかねない人たちに都合良く解釈されるかもしれない訴え方は、社会分断への「蟻の一穴」になりかねないものだと危惧している。

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パキロビッドパック600/300が薬価収載/ファイザー

 ファイザー(日本)は3月15日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬の「パキロビッドパック600」および「パキロビッドパック300」(一般名:ニルマトレルビル/リトナビル)が薬価基準に収載されたことを発表した。パキロビッドパック600の薬価は19,805.50円 パキロビッドパックは、2022年1月14日に厚生労働省に製造販売承認を申請し、同年2月10日に、日本における製造販売に関し、医薬品医療機器等法第14条の3に基づく特例承認を取得している。本剤がパッケージ化されたパキロビッドパック600および同300は、2022年11月14日に製造販売承認を取得している。 薬価はそれぞれ、パキロビッドパック600(1シート)が19,805.50円、パキロビッドパック300(1シート)が12,538.60円となる。両パッケージともに、2023年3月22日から一般流通が開始される予定。 パキロビッドパック600は通常用のパッケージとなっている。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対して、ニルマトレルビル1回300mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日に2回、5日間経口投与する。 一方、パキロビッドパック300は中等度の腎機能障害患者用のパッケージとなっている。中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビル1回150mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日に2回、5日間経口投与する。 パキロビッドパックは、臨床試験において、症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないため、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始することとしている。また、パキロビッドパックは併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服薬中のすべての薬剤の確認が必要となる。また、パキロビッドパックで治療中に新たに他の薬剤を服用する場合、事前に相談するよう患者に指導することとしている。 日本も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験では、外来治療の対象となる重症化リスクの高いCOVID-19患者において、パキロビッドパックはプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを89%(症状発現から3日以内)、および86%(症状発現から5日以内)減少させることが示された。また、有害事象の発現割合は本剤(23%)とプラセボ(24%)と同程度であり、おおむね軽度だった。

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第36回 コロナ病棟を廃止する病院が続出か

病院経営をどうする?5月8日から新型コロナは「5類感染症」に移行します。そして、3月13日からマスク着用も緩和され、世間は通常モードへ移行することになりますが、いきなりウイルスの感染性が減るわけではなく、引き算をうまくやらないと、また医療逼迫が来るのではないかと懸念しています。私がとくに気になっているのが「コロナ病棟」の行く末です。多くの病院が、新型コロナの患者さんを受け入れる使命を背負い、3年間ずっと診療してきました。収支が潤った医療機関もあるかもしれませんが、通常診療に戻してコロナ前の病院経営に戻したいという気持ちを持っている施設も多いことでしょう。いやしかし、こればかりは自治体の要請に従うことになるのだろうか、いや「5類」化するのだから、そういった要請はなくなるのだろうか、などいろいろな憶測が飛び交っております。交付金が半減確保病床を持っている医療機関を補助する交付金が見直されることから、私が耳にする限り、新型コロナの専用病棟を廃止し、コロナ前の診療体制に戻す医療機関が出てきています。とくに大学病院などはその方向に動くのではないでしょうか。交付金を段階的に廃止していくとはいえ、損益分岐点近くで運用していた医療機関はもう通常診療に舵を切ることになるでしょう。実際、「令和5年度の病床確保料の取扱いについて」1)において、重点医療機関である一般病院では確保病床1床当たり36,000円/日(ICU・HCU以外)と、これまでの約半額に減額されています。となると、おそらく今後は、かかりつけの新型コロナ患者さんを優先して、一般病床の個室で受け入れるなどの体制を構築していくのではないかと思われます。このあたりは明言はしないでしょうが、新規の入院要請を受け入れる体制にしていくとは到底思えないので…。とはいえ、やはり感染者数が増えてしまうとこの目論見は外れてしまい、結局一部区画をまとめて新型コロナ対応に転用せざるを得ない状況になるかもしれません。PPEのダウングレードPPEは、これまでのフルPPEではなく、ある程度ダウングレードしてもよいのではないかと思いますが、そのぶん院内感染リスクが増えることが弱点です。3月8日のアドバイザリーボードからのQ&Aでは、PPEや個室管理については以下のような推奨となっております2)。「診療やケアにあたる方は、アイゴーグル、フェイスシールドなどにより目を保護するようにしてください。一方、身体密着することがなければ、ガウンやエプロンなどは必要ありません。接触時には使い捨ての手袋を使用することが望ましいですが、速やかにアルコール消毒や手洗いができるのであれば必須ではありません。施設内の感染者については、できるだけ個室または感染者を集めた部屋(コホート隔離)での療養を原則としてください。トイレも感染者専用とすることが望ましいです。」院内感染リスクを減らすため、逆にPPEはダウングレードせずに、医療機関内で徹底的にトレーニングするという方策もアリかもしれません。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:令和5年度の病床確保料の取扱いについて2)資料3-10高山先生提出資料. 第118回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年3月8日)

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花粉症患者はコロナによる嗅覚・味覚障害が悪化しやすい

 花粉症患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染時の嗅覚・味覚障害のリスクが高く、その回復も遅いことが、中国・西安交通大学のJingguo Chen氏らの調査によって明らかになった。Laryngoscope investigative otolaryngology誌2023年2月号掲載の報告。花粉症患者は味覚・嗅覚障害がコロナで悪化した割合が高かった 急な嗅覚障害や味覚障害の発現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予測因子と考えられている。しかし、慢性副鼻腔炎や喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎などを有する患者では、新型コロナウイルスに感染する前にすでに併存疾患の影響によって嗅覚障害や味覚障害が生じている可能性があり、それらによる評価が効果的ではないことがある。そのため、研究グループは、呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の嗅覚・味覚と併存疾患の関連を調査することにした。 研究は、「化学感覚研究のための国際コンソーシアム(Global Consortium for Chemosensory Research:GCCR)」のアンケートデータを用いて行われた。対象者は、新型コロナウイルス感染前と感染後の嗅覚・味覚の程度と、感染前6ヵ月の併存疾患の状態を自己評価した。併存疾患(高血圧、季節性アレルギー/花粉症、肺疾患、副鼻腔炎、糖尿病、神経疾患)によって層別化し、線線形混合モデルを用いて評価した。 最終解析には、呼吸器疾患のある2万6,468例(女性1万8,429例[69.87%]、20~60歳が90%)が組み込まれた。 花粉症などによる併存疾患の有無とコロナ感染後の嗅覚・味覚障害の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・最終解析に組み込まれた2万6,468例のうち、花粉症などの併存疾患があるのは1万6,016例、併存疾患がないのは1万452例であった。・年齢、性別、地域を調整した多変量回帰分析の結果、高血圧、肺疾患、副鼻腔疾患、神経疾患の併存疾患がある新型コロナウイルス感染症患者では、嗅覚・味覚障害が悪化した割合が高かった(いずれもp<0.05)が、それらの回復に明らかな差はみられなかった。・季節性アレルギー/花粉症を有する新型コロナウイルス感染症患者では、味覚・嗅覚障害が悪化した割合が高く、回復も遅かった(いずれもp<0.001)。・糖尿病では、味覚・嗅覚障害の悪化にも回復にも明らかな関連はみられなかった。

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新型コロナワクチン、米国政府の投資額はいくら?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンの開発、製造、購入に関連した米国政府の投資額を調べた結果、少なくとも319億ドルに上ることを、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHussain S. Lalani氏らが明らかにした。このうち、COVID-19パンデミック前の30年間(1985~2019年)にわたり基礎的研究に投じmRNAワクチンの重要な開発に直接寄与した投資額は、3億3,700万ドルだったという。また、2022年3月までのパンデミック中に投じた金額は少なくとも316億ドルで、臨床試験(6%)、ワクチン開発(2%)、ワクチン購入(92%)に充てられていた。著者は「これらの公的投資は何百万人もの命を救うことにつながり、また将来のパンデミックへの備えとCOVID-19をしのぐ疾患を治療する可能性ももたらし、mRNAワクチン技術の開発に見合ったものであった」と述べ、「社会全体の健康を最大化するために、政策立案者は、公的資金による医療技術への公平かつグローバルなアクセスを確保しなければならない」とまとめている。BMJ誌2023年3月1日号掲載の報告。NIHデータやRePORTERなどでワクチン開発への研究助成金などを算出 研究グループは1985年1月~2022年3月にかけて、米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供に関するデータや研究成果を収載したReport Portfolio Online Reporting Tool Expenditures and Results(RePORTER)などを基に、米国政府がmRNA COVID-19ワクチンの開発に投じた公的資金を算出した。 政府の助成金を、mRNA COVID-19ワクチン開発の4つの重要なイノベーション(脂質ナノ粒子、mRNA合成または改良、融合前スパイクタンパク質構造、mRNAワクチンバイオテクノロジー)への主任研究者、プロジェクトのタイトルおよびアブストラクトをベースとした直接的または間接的な関与、あるいは関与が認められないもので評価した。 同ワクチン開発研究に対する直接的な公的投資額について、パンデミック前の1985~2019年と、パンデミック後の2020年1月~2022年3月で分類し評価した。COVID-19パンデミック後、ワクチン購入に292億ドル投資 NIHによるmRNA COVID-19ワクチンの開発に直接関連した研究助成金は、34件だった。これらの助成金と、その他の米国政府助成金・契約金の合計は、319億ドルだった。そのうち、COVID-19パンデミック前の投資額は3億3,700万ドルだった。 パンデミック前、NIHはmRNAワクチン技術の基礎的研究や橋渡し(translational)科学研究に対し1億1,600万ドル(35%)を投資。米国生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)は1億4,800万ドル(44%)、米国国防総省は7,200万ドル(21%)を、それぞれワクチン開発に投資した。 パンデミック後には、米国公的資金はワクチン購入に292億ドル(92%)を、臨床試験支援に22億ドル(7%)を、製造に加え基礎的研究および橋渡し科学研究に1億800万ドル(1%未満)を費やしていた。

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今後の医師のマスク着用意向は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症対策として、これまで屋内では原則マスク着用、屋外では原則マスク不要とされてきたが、2023年3月13日よりマスクの着用は個人の判断が基本となった。CareNet.comでは、医師のプライベートにおけるマスク着用意向を探るため、会員医師1,000人を対象に『今後のマスクの着用意向に関するアンケート』を実施した。その結果、大多数の医師がマスクの着用基準が個人判断になることに賛成であり、プライベートでマスクを外したい医師と外したくない医師がほぼ半数であることが明らかとなった(2023年3月2日実施)。新型コロナウイルスに感染したことがある医師は3人に1人 Q1では、これまでの新型コロナウイルスの感染歴を聞いた。感染したことのある医師は32%、感染したことがない医師は68%であった。なお、CareNet.comで2022年12月10~17日に実施した調査では、感染したことのある医師は26%、感染したことがない医師は74%で、感染したことのある医師が増えていた。着用基準が個人判断になることに賛成の医師は68% Q2では、マスクの着用基準が個人判断になることに賛成かどうかを聞いた。「とても賛成」は23%、「どちらかといえば賛成」は45%であり、個人判断になることに賛成の医師は68%であった。「どちらかといえば反対」は16%、「とても反対」は6%、「どちらともいえない/わからない」は11%であった。新型コロナウイルスの感染経験の有無別でもほぼ同様の結果であった。・感染歴あり(328人):とても賛成25%、どちらかといえば賛成46%、どちらかといえば反対16%、とても反対4%、どちらともいえない/わからない9%・感染歴なし(700人):とても賛成23%、どちらかといえば賛成44%、どちらかといえば反対15%、とても反対6%、どちらともいえない/わからない12%「外したい」「外したくない」派はほぼ同数 Q3では、マスクの着用基準が個人判断になる3月13日以降、プライベートでマスクを外したいかどうかを聞いた。「できるだけ外したい」は41%、「できるだけ外したくない」は43%でほぼ同数であった。「どちらともいえない/わからない」は16%であった。感染経験の有無別では、感染歴のある医師のほうがマスクを外したい意向がやや強かった。・感染歴あり(328人):できるだけ外したい44%、できるだけ外したくない40%、どちらともいえない/わからない16%・感染歴なし(700人):できるだけ外したい40%、できるだけ外したくない44%、どちらともいえない/わからない16%マスクを外さないほうがよい状況は「飛行機、バス、電車」 Q4では、医師としてプライベートであってもマスクを外さないほうがよいと考える状況を聞いた(複数回答)。多い順に、飛行機/バス/電車、デパート/ショッピングモール、ライブ/スポーツ観戦(観客も声を出す可能性のある催事)、映画館/美術館/博物館、近所のスーパー、飲食店、カラオケ、クラシックコンサート/観劇(観客は声を出さない催事)、スポーツジム/フィットネスクラブ、公園/路上、屋外のスポーツ競技であった。 なお、フリーコメントでは、混雑時のバスや電車はつけたほうがよいが、飛行機は必要ないと区別する意見もあった。今後感染拡大すると考える医師は67% Q5では、マスクの着用判断が個人に委ねられることで、今後の新型コロナウイルス感染症の流行に変化が生じると考えるかどうかを聞いた。「とても感染が拡大する」は16%、「やや感染が拡大する」は51%で、着用判断が個人になることで感染が拡大すると考える医師は67%と大多数であった。「あまり感染は拡大しない」は19%、「ほぼ感染は拡大しない」は5%、「どちらともいえない/わからない」は9%であった。 フリーコメントでは、「社会の流れとしてはやむを得ないと思うが、恐らく感染は拡大して多少の死者を許容する形になるだろう」「マスクを外す場合、社会として、死者数が増えることを容認することが前提。現時点ではマスクを外すことが目的になり、その先のことの説明が足りない」「緩和していくことにより死者が増え後戻りしていくと思う」など、感染の再拡大を懸念する声が寄せられた。自由回答のコメント 最後に、マスクの着用判断が個人に委ねられることや、今後のマスク着用や感染対策について意見を聞いた。マスク着用を継続したい/継続してほしい医師・医療従事者はずっとマスクを着用することになるでしょう。・医療機関、高齢者もいる公共施設では着用すべき。・人の多い閉鎖空間ではマスク必要。・感染が拡大したときの医療現場の負担や社会の混乱を考えると、少なくともマスク着用を推薦したほうがよいと思う。・マスクを外すメリットが小さいのに、リスクが多すぎます。マスクを外したい/外してもよいと考える医師・マスクは着用しなくてよいが、換気だけは十分するよう国から通達してほしい。・基本的に有症状時に着用すればよいと思います。・感染が一時的に広がっても、自然免疫をつける上でも、外したほうがよいと思う。・世界の標準に合わせるべき。・マスクしなくてよい。感染が広がってもそれが自然なことなので無理なことはしなくてよいと思う。その他・周囲からの同調圧力が心配(外せ、外すなとも)。・政府の方針が、国主導で対応→自己責任で体調管理と各病院・医院に放り投げに変わっただけ。次の流行の波が来たら、これまで以上に医療崩壊。・あまりにも感染が増加し医療体制に支障が出るようなら再検討してほしい。・個人で判断ができず、医師に聞いてくる人たちがいます。子供ではないので自分で判断してほしい。・コロナに限らず、インフルエンザなど感染症流行時は自らの判断で感染予防に努めるべき。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師もマスクを外したい?/医師1,000人アンケート

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治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗菌薬曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗菌薬が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。 著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。このコホートをICI治療の1年前と60日前の両方における抗菌薬の処方請求データを得るためにほかの医療データベースとリンクし、多変量Coxモデルにより曝露とOSの関連性を評価した。患者のがん種は肺がんが最多(53%)、メラノーマ(34%)、腎臓がん、膀胱がんがそれに続いた。ICIはニボルマブとペムブロリズマブが一般的だった。 主な結果は以下のとおり。・ICIを投与されたがん患者2,737例のうち、ICI治療の1年前に59%、60日前に19%が抗菌薬を投与されていた。・OSの中央値は306日であった。ICI投与前1年以内のあらゆる抗菌薬への曝露はOSの悪化と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.12~1.23、p=0.03)。・抗菌薬のクラス解析では、ICI投与前1年以内(aHR:1.26、95%CI:1.13~1.40、p<0.001)または60日以内のフルオロキノロン系抗菌薬への曝露(aHR:1.20、95%CI:0.99~1.45、p=0.06)はOSの悪化と関連しており、1年間の総被曝週数(aHR:1.07/週、95%CI:1.03~1.11、p<0.001)および60日(aHR:1.12/週、95%CI:1.03~1.23、p=0.01)に基づいて用量効果がみられた。 著者らは「ICI治療前の抗菌薬、とくにフルオロキノロン系抗菌薬への曝露が高齢のがん患者のOS悪化と関連していた。ICI治療前の抗菌薬への曝露の制限、もしくは腸内細菌叢を変化させ免疫原性を高めることを目的とした介入が、ICIを受ける患者の転帰を改善するのに役立つ可能性がある」としている。

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9価HPVワクチン「シルガード9」、9歳以上15歳未満の女性への2回接種の追加承認取得/MSD

 MSDは2023年3月8日のプレスリリースで、同日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来])」について、9歳以上15歳未満の女性に対する2回接種の用法および用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。今回の承認により、対象年齢の女性の来院および接種回数を1回減らすことができ、ワクチン接種者や医療関係者をはじめとする接種に関わる人々の負担軽減にもつながることが期待される。 日本では、毎年約1万例の女性が新たに子宮頸がんと診断され、年間約約2,900例が亡くなっている1)。また、子宮頸がんは20代、30代の若い女性でも罹るがんで、発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患である。子宮頸がんの予防方法には、10代からのワクチン接種と20歳になってからの定期的な検診がある。 「シルガード9」は、9歳以上の女性を対象に、子宮頸がんなどの予防を効能または効果として、合計3回接種する用法および用量で、2020年7月21日に製造販売承認を取得している。今回の追加承認は、国内ならびに海外第III相試験の結果に基づくもので、9歳以上15歳未満の女性における2回接種の免疫原性(抗体の産生など免疫反応を引き起こす性質)および安全性は良好であることが確認された。 9価HPVワクチンは、2014年12月に世界で初めて米国で承認されて以来、2023年2月時点で80以上の国または地域で承認されている。また、米国を含む諸外国では、定期接種としておおむね11~13歳を対象に9価HPVワクチンの2回接種が推奨されている2)。 HPVワクチンの接種環境がさらに整うことにより、日本においても子宮頸がんの予防が促進されることが期待される。1)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2019年)/全国がん死亡データ(2021年)2)第19回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会2022(ワクチン評価に関する小委員会 資料1-1)

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第138回 新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府

<先週の動き>1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府政府は3月10日に新型コロナウイルス感染症対策本部を持ち回りで開催し、5月8日新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に変更するのに合わせ、医療提供体制および公費支援の見直しを行うと発表した。従来行ってきた行政による入院措置や限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による通常の対応に移行するのに合わせ、医療費については原則自己負担を求め、高額な医薬品代は公費支援を9月末まで継続する。外来診療については、新型コロナ罹患や疑いのみを理由とする診療拒否は「正当な事由」に該当しないとし、現在、新型コロナ患者を診療している約4.2万の医療機関を、季節性インフルエンザを対応している最大6.4万の医療機関まで拡充するとした。(参考)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(厚労省)加藤大臣会見概要[新型コロナウイルス感染症対策本部後](同)コロナ5類移行後、原則自己負担 病院名公表は継続、政府決定(共同通信)政府 コロナ5類移行後 最大6万4000の医療機関で受け入れ目指す(NHK)コロナ5類移行 医療費負担が増える? 受診できる医療機関はQ&A(同)2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類引き下げに伴い、医療提供体制を正常化するため、コロナ患者の受け入れ医療機関に対して払ってきた「病床確保料」を半減させる方針を、3月10日に加藤厚生労働大臣の記者会見で明らかにした。また、受け入れ病院はこれまで約3,000の医療機関だったが、5月以降は約8,200の全病院での対応を目指す。このため急性期病棟以外での要介護者の受入れを評価するなど受入れを推進する。(参考)コロナ病床確保料半減へ 5類移行で厚労省、9月末まで(日経新聞)コロナ病床の補助金半減 通常医療と両立目指す(東京新聞)診療報酬のコロナ特例、5月8日に見直し 24年度からウィズコロナの報酬体系へ(CB news)3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省厚生労働省は、3月10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催した。この中で、昨年11月初旬に、ファイザー社のオミクロン株対応ワクチンの接種を受け、同日中に死亡した症例についても検討が行われた。症例は接種5分後に体調悪化を発言し、15分後に呼吸停止、心肺蘇生を行ったが、アドレナリン注射は静脈ルートからの注射を指示されるも静脈ルートがなく、医療機関へ搬送したが、接種開始後1時間40分余りで死亡した。委員会は発生した患者とワクチンの因果関係については「ワクチン接種と死亡との直接的因果関係は否定できない」とした。(参考)第92回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第27回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料(厚労省)コロナワクチン接種後42歳女性死亡「因果関係否定できない」 初認定(産経新聞)コロナワクチン接種後の死亡で初の認定「因果関係否定できず」(NHK)コロナワクチン接種後に死亡、因果関係「否定できず」 初めて評価(朝日新聞)42歳女性の接種後死亡「因果関係否定できず」…コロナワクチンで初の判定(読売新聞)4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省厚生労働省は、3月9日に「第23回第8次医療計画に関する検討会」を開催し、2024年度から始まる第8次医療計画に新たに「新興感染症発生・まん延時の医療」について盛り込む方向性を大筋で合意した。これまで医療計画には、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)」を二次医療圏ごとに定めてきたが、次なる新興感染症の発生・蔓延に備えて、医療計画の中に「新興感染症対策」を位置付けて整備を進める。この中で、新興感染症の発生時には、まず特定感染症指定医療機関・第1種感染症指定医療機関・第2種感染症指定医療機関(345病院)が中心となって対応し、流行の場合は特別協定を締結した医療機関が対応する。さらにその後、公立・公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院に対応を拡大し、最終的には「入院医療を担当する」などの協定を結んだ医療機関など全体で対応することとし、平時から医療機関と自治体で締結することを求めた。厚生労働省は、今年5月には指針・関連通知を示したいとしている。(参考)第23回第8次医療計画等に関する検討会(厚労省)意見のとりまとめ(新興感染症発生・まん延時における医療)(同)医療計画での新興感染症対策、取りまとめ大筋了承 厚労省検討会、5月ごろに計画作成指針(CB news)新興感染症への医療計画での対応方針固まる!感染症の流行度合に応じ「段階的」な対応体制を平時から固めておく!?第8次医療計画検討会(Gem Med)5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省厚生労働省は、3月9日「第7回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」を開催し、新たに立ち上げる電子カルテ情報交換サービス(仮称)において、診療情報提供書や退院時サマリーを電子的に紹介先病院と共有・送付する仕組みや、患者のアレルギー情報、薬剤禁忌、検査値などの電子カルテ情報を患者自身や全国の医療機関で確認できる仕組みを可能とする方向性について討議し、大枠で合意した。ただ、電子カルテはベンダーごとに規格が異なり、早期に体制を整えるために、国が標準規格を策定する必要があるなどさらに検討が必要だが、厚生労働省は2023年度から社会保険診療報酬支払基金でシステム構築を進めたいとしている。(参考)第7回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ資料(厚労省)医療のデジタル化、現状は? マイナ保険証の活用が鍵(日経新聞)医療機関・患者自身で「電子カルテ情報」を共有する仕組みの大枠決定、2023年度からシステム構築開始-医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省厚生労働省は、現役世代が支払う介護保険料(第2号保険料)が今年の4月以降で、現在より100円余り増加し、平均6,200円余りと過去最高となると推計を発表した。介護保険制度は2000年に発足し、40歳以上で介護認定を受けた被保険者の介護サービス利用の場合、9割まで給付する内容となっている。令和4年度の介護給付費は予算ベースで12.3兆円となっており、財源の半分は加入者からの保険料が50%、残りは公費(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)からとなっている。発足当初、第2号保険料は2,075円だったが、今回の厚生労働省の推計によれば、平均で1月あたり6,216円と発足時の3倍となり現役世代の負担が増加している。同省では、団塊の世代が後期高齢者になるのを前に、高齢者の負担能力に応じた負担の見直しや、高齢者が支払う介護保険料の見直しを検討し、今年の夏までに結論を出すことにしている。(参考)令和5年度 介護納付金の算定について(厚労省)現役世代が支払う介護保険料 4月以降 過去最高に 厚労省推計(NHK)2023年4月から「介護保険料」改定で6,216円に。40歳~65歳未満「現役世代」の負担は重く(LIMO)

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