サイト内検索|page:29

検索結果 合計:4227件 表示位置:561 - 580

561.

コロナ・インフル同時迅速検査キットを発売/Meiji Seika・ロート

 Meiji Seika ファルマは12月5日付のプレスリリースにて、ロート製薬が10月13日に製造販売承認を取得した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)・インフルエンザウイルス抗原迅速検査キット「チェックMR-COV19+Flu」を発売したことを発表した。 本検査キットはイムノクロマト法によるもので、特別な測定機器を必要とせず、鼻咽頭ぬぐい液および鼻腔ぬぐい液中のSARS-CoV-2抗原、A型インフルエンザウイルス抗原およびB型インフルエンザウイルス抗原を同時検出することができる。1つのキットで15分(陽性の場合は3~15分)と、迅速かつ簡便に検査を行うことができ、診断時間の短縮と負担軽減につなげる。本製品の測定原理は金コロイドクロマト免疫測定法。有効期限は24ヵ月で、1パッケージに10テスト分を包装。 Meiji Seika ファルマは、ロート製薬と締結した販売提携契約に基づき、本製品の国内での流通、販売、プロモーションを行う。

562.

第74回 鼻咽頭スワブの「折損」、学会から啓発

日本小児科学会からのInjury Alert(傷害速報)Unsplashより使用日本小児科学会から定期的に更新される「Injury Alert(傷害速報)」で、気になる症例がありました1)。あるクリニックの午前外来に、発熱で受診した1歳2ヵ月の男児がいました。新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス…いろいろな病原微生物を疑う必要があります。となると、当然ながら鼻咽頭スワブによる検査が必要になるわけですが、多くの場合、母親が抱っこし、看護師が頭を固定した状態で、医師がすばやくスワブを鼻腔に挿入することになります。今回の症例では、患児が暴れることはなかったそうですが、綿棒が途中で折れ、引き抜いたときには先っぽが鼻腔に残ってしまったそうです。すぐに高次医療機関の耳鼻咽喉科へ紹介されました。折れた綿棒の先は中鼻道にあり、外来での摘出を試みたものの、摘出困難な状況でした。そのため、全身麻酔のもと、直視鏡で異物をカメラ越しに確認し、ニシハタ氏鋭匙鉗子によって摘出されました。とくに合併症なく、翌日退院となっています。綿棒の安全性と脆弱性はトレードオフ鼻咽頭スワブの先にある綿棒は、安全性と脆弱性がトレードオフの関係になっています。つまり、安全を重視するのであれば綿棒の脆弱性が増し、簡単に折れないようにカチコチにすれば安全性に懸念が生じるということです。そのため、グニャリと曲がってしまうと、力を入れる方向によっては折れ曲がってしまうことがあるわけです。成人でも同様の報告があり、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」で過去に紹介しています。その症例は、協力が得られにくい基礎疾患がある患者だったため、「すみやかに拭い検査を実施しなければならない」という小児例と類似した状況でした。鼻腔にスワブを挿入する場合、上咽頭に到達させるため、迷入を避けるために口蓋と平行に鼻腔底に沿わせて挿入する必要がありますが、もしこれが頭側に迷入した場合、先端が折れて鼻腔異物になるリスクがあります。こういった鼻腔異物を回避するための策として、以下の4点がInjury Alertで啓発されています。(1)不測の動きに備えて児の頭部をしっかり固定する(2)綿棒の挿入は必ず鼻腔底に沿わせる(3)綿棒の挿入に少しでも抵抗がある時は反対側の鼻腔で行う(4)後咽頭に達する最低限の長さで綿棒を把持する参考文献・参考サイト1)日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報). No. 133 新型コロナウイルス抗原検査キットによる鼻腔異物

563.

コロナ罹患後症状におけるワクチン有効性、3回接種で73%/BMJ

 感染前の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種と、罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC)の診断を受けるリスクの低下には強い関連性があることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLisa Lundberg-Morris氏らが、スウェーデン住民約59万例を対象に行った住民ベースコホート試験「Swedish Covid-19 Investigation for Future Insights-a Population Epidemiology Approach using Register Linkage:SCIFI-PEARLプロジェクト」の結果で示された。著者は「試験の結果は、PCCの集団的負荷を軽減するために、ワクチン接種の重要性を強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年11月22日号掲載の報告。ワクチンのPCC有効性、年齢、性別、合併症など補正して推定 COVID-19ワクチンの初回接種(2回)+ブースター接種の計3回の接種によるPCCへの有効性を調べる試験は、2020年12月~2022年2月にスウェーデンで最も大きな2地域(ストックホルム地域[県]、ヴェストラ イェータランド地域[県])で登録された18歳以上のCOVID-19患者58万9,722例を対象に行われた。 被験者について、初回感染から死亡、国外への移住、ワクチン接種、再感染、PCCの診断(ICD-10診断コードU09.9)のいずれかのイベントが発生するまで、またはコホート試験終了(2022年11月末)まで追跡した。感染前にCOVID-19ワクチン接種を1回以上受けた人は、ワクチン接種済みとみなした。 主要アウトカムは、PCCの臨床診断。PCCに対するワクチンの有効性は、年齢、性別、併存疾患(糖尿病、心血管疾患、呼吸器疾患、精神疾患)、2019年の医療サービス利用回数、社会経済的要因、感染時の優勢ウイルス変異で調整したCox回帰分析で推定した。ワクチン3回以上接種者のPCC有効性は73% COVID-19を発症して追跡期間中にPCCと診断されたのは、ワクチン接種者29万9,692例のうち1,201例(0.4%)だったのに対し、ワクチン未接種者29万30例では4,118例(1.4%)だった。 感染前のCOVID-19ワクチン1回以上接種者は、未接種者に比べ、PCC発症リスクが低かった(補正後ハザード比:0.42、95%信頼区間:0.38~0.46)。PCC発症予防に関するCOVID-19ワクチン有効性は58%だった。 感染前のワクチン接種者のうち、1回接種者は2万1,111例、2回接種者は20万5,650例、3回以上接種者は7万2,931例だった。PCCに対するワクチン有効性は、1回接種者21%、2回接種者59%、3回以上接種者73%だった。

564.

第192回 ヒト細胞の小さなロボットが神経損傷を修復

ヒト細胞の小さなロボットが神経損傷を修復小さなロボットのように動く有毛の細胞塊が神経損傷を治癒しました1)。ロボットのように動く細胞入りの構造物であるバイオボット(biobot)などの生きた機械を作る取り組みが近年盛んになっています。バイオボット作りの古くからの手段の1つは細胞とそれを支えるゲルや3Dプリンター印刷物などの不活性の物質を組み合わせることです。細菌、神経・筋肉・神経筋接合部などの哺乳類細胞、加工した細胞といった種々の細胞を慎重に手間ひまかけて細工する手順を経て生理機能を担う構造物が完成します。そういう手の込んだ手段のほかに、細胞がひとりでに集まるに任せて作られる多細胞構造のバイオボットの取り組みがあり、米国・タフツ大学のMichael Levin氏のチームは4年ほど前の2020年1月にそのような多細胞構造を実験動物としてよく知られるアフリカツメガエルの胚細胞から作ったことを報告しています2)。アフリカツメガエルの学名はXenopus laevis(ゼノパス レービス)で、同チームが作ったバイオボットはゼノボット(Xenobot)と呼ばれます。ゼノボットは船やカヌーのオールのような役割を担う繊毛で覆われており、そのおかげで這ったり泳いだりさえします。また多才で、通路を進んだり、物を集めたり、情報を記録したり、傷を自己治療したり、何回かの自己複製すらやってのけます3)。未経験の仕事を教えてできるようにすることも可能です4)。ゼノポットがヒトにもそのまま利用できればよいのですが、いかんせん両生類の細胞でできているのでヒトの免疫は受け入れずに拒絶してしまうでしょう。またゼノポットは削って目当ての形へ整える工程を要します。そこでLevin氏らのチームはヒトの細胞での取り組みを始めます。目をつけたのは繊毛を有する気道細胞です。その繊毛がゼノボットの繊毛と同様に機動力を担うことを研究チームは期待しました3)。まず気道細胞はヒトの気道に似せたゲルの環境で2週間を過ごして球状の小さな塊になります。続いてより粘性が低い環境に1週間置かれ5)、繊毛が外側を向いた球状の塊が完成します。人類(anthropos)起源で生物ロボット(biorobotics)として活用しうることからアンスロボット(anthrobot)とされたそれら球状の細胞塊は10~100個ほどの細胞で構成され、大きさも形もまちまちで、繊毛の配置も異なります。動きも異なり、まっすぐ進む、回転する、あるいはその両方の動きをするものもあれば、移動せず小刻みに動くものもありました。アンスロボットはそれら同士がひとりでに凝集して大型のスーパーボットを形成することができます。そのスーパーボットをあえて傷つけた神経細胞のシートに与えたところ、スーパーボットの下で神経が再び繋がって元どおりになりました。そのような治癒効果を得るにはアンスロボットにひと工夫必要だろうと考えられていましたが、驚いたことに手を加えていないアンスロボットがそれをやってのけました。研究チームはその意外な治癒効果がどういう仕組みによるのかを調べ始めています4)。アンスロボットの研究の資金の一部をLevin氏が設立者に名を連ねる企業Astonishing Labsが提供しています。同社はアンスロボット技術による神経疾患や脊髄損傷の治療を目指しています3)。また、同社の経営担当者の1人は熱傷治療への応用も想定しています。できそうなことはほかにも多くあり、人それぞれの組織から作ったアンスロボットでたとえば動脈の通りをよくしたり薬を届けたりすることが可能になるかもしれません5)。参考1)Gumuskaya G, et al. Adv Sci (Weinh). 2023 Nov 30. [Epub ahead of print] 2)Kriegman S, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020;117:1853-1859. 3)Tiny ‘anthrobots’ built from human cells could help heal the body / Science 4)Scientists build tiny biological robots from human cells / Eurekalert5)Tiny robots made from human cells heal damaged tissue / Nature

565.

コロナ緊急事態宣言は国内大学生の抑うつレベルに影響を及ぼさなかった?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下での大学生の抑うつレベルの推移を解析した結果、計4回発出された緊急事態宣言は、大学生の抑うつレベルに有意な影響を及ぼしていなかった可能性を示すデータが報告された。むしろ、4月の新年度のスタートが、大学生の抑うつレベルに影響を与えていることが確認されたという。名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野の白石直氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of General Psychiatry」に10月10日掲載された。 大学生の抑うつ状態にある割合は、一般人口に比べて高いことが知られている。例えば一般人口におけるうつ病の有病率は13%という報告があるのに対して、大学生では32%という報告が見られる。COVID-19パンデミックが人々に強いストレスを与えたことが多くの研究から明らかになっており、大学生のうつレベルもより高まっていた可能性が考えられる。白石氏らは、緊急事態宣言発出時に講義がリモートで行われるなど特異な環境にあったタイミングで、大学生の抑うつレベルが特に上昇していたのではないかとの仮説の下、以下の研究を行った。学年度が切り替わる新年度のタイミングの抑うつレベルへの影響も、併せて検討した。 この研究は、大学生のメンタルヘルス上の問題を、モバイルアプリを用いた認知行動療法(CBT)で予防し得るかを検証するために、パンデミック前からスタートしていた無作為化比較試験「ヘルシーキャンパストライアル(HCT)」のデータを二次的に解析するという手法で行われた。HCTでは、国内5大学の学生が参加し、2018年度後期(秋)に最初のコホートが設定され、その後、2019年度前期(春)/後期(秋)、2020年度前期/後期、2021年度後期という計6件のコホートが組まれた。各コホートの最初の8週間はアプリを用いたCBTによる介入が行われ、その後52週目まで(スタートから1年間)は追跡期間とされた。 HCT参加者は、介入期間は毎週、追跡期間は4週ごとにPHQ-9という指標(27点満点でスコアが高いほど抑うつ症状が強いと判定される)により、抑うつレベルの経時的な変化が評価された。なお、研究参加の適格基準は、年齢が18~39歳の大学生または大学院生でスマートフォンを所有していること。PHQ-9スコアが15点以上または10~14点で希死念慮がある学生、およびメンタルヘルス上の問題のため受療中の学生は除外されている。6件のコホート全体の参加者数は1,626人であり、平均年齢は21.5歳で男子学生がやや少なかった(性比0.74)。 研究ではまず、パンデミック下の緊急事態宣言に着目した検討が行われた。4回の緊急事態宣言発出後に顕著なPHQ-9スコアの上昇が認められたのは、2020年度後期コホートにおける28~32週時点(3回目の緊急事態宣言発出後)のみであり、24週目が5.3点であるのに対して28週目は5.8点、32週目は6.0点と推移していた。ただ、各年度の後期にスタートしたコホートの28~32週は、翌年の4月ごろに該当する。よってこのタイミングでのPHQ-9スコアの上昇は、緊急事態宣言発出の影響のみでなく、新年度がスタートした直後であることの影響も考えられた。 次に、前期スタートのコホート3件(1,104人)、後期スタートの3件(522人)をそれぞれ統合して全体を2群に分け、PHQ-9スコアの推移を解析。その結果、前期スタート群のPHQ-9スコアは、全期間を通して4週ごとに0.02点(95%信頼区間―0.03~―0.01)ずつ有意に低下していた(P=0.008)。それに対して後期スタート群では、中断時系列分析により、新年度スタート時期の28週目までは4週ごとに0.07点(同0.02~0.11)ずつ上昇する傾向が見られた(P=0.12)。ところが、その傾向は急に中断され、28週目時点で0.60点(0.42~0.78)抑うつレベルが悪化したことが推定された(P<0.001)。28週を超えると4週ごとに0.16(―0.21~―0.10)ずつ低下していた(P=0.003)。 以上の結果から著者らは、「当初の仮説に反して、緊急事態宣言発出による大学生のうつレベル上昇は確認されなかった。一方で学年度が切り替わるタイミングで、大学生のメンタルに大きなストレスが加わることが示唆された」と総括している。 なお、COVID-19パンデミックが大学生のメンタルヘルスを悪化させたとする国内発の先行研究が複数存在する。緊急事態宣言発出の影響に焦点を当てた今回の研究が、それらとは異なる解釈が可能な結果となった理由について、以下のような考察が述べられている。先行研究では同一対象への継続的な調査でなく、パンデミック後の調査にはメンタルへの影響を強く感じた学生がより積極的に回答していた可能性があり、また、調査を行うタイミングが年度替わりを考慮せずに設定されていたことの影響もあるのではないかとのことだ。一方、本研究にも、交絡因子の調整が十分でないことや、新年度のスタートは花粉症の時期であるため、その症状がメンタルに影響を及ぼしていた可能性も否定できないといった限界点があるとしている。

566.

第173回 2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省

<先週の動き>1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省2.医師の働き方改革、宿日直体制の維持が困難に/日本医師会3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/厚労省1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省厚生労働省は、11月29日に開いた社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で、2024年度の診療報酬改定の基本方針の骨子案を示した。骨子案によると、人口構造の変化に伴い、医療の支え手の長期的な不足が見込まれ、人材確保のために医療従事者の賃上げを推進する方針。厚労省は、看護補助者などの給与水準が低い医療従事者の処遇改善が求められており、重点課題の医療分野での働き方改革と人材確保に対処する。看護補助者などのコメディカルの賃上げは、医療分野で他産業に比べて遅れており、人材確保が急務とされ、長時間労働の改善も含まれている。このほか、診療報酬改定の基本方針には、地域包括ケアシステムの深化、医療DXの推進、質の高い医療の提供、医療保険制度の安定性向上などが挙げられている。さらに物価高騰や賃上げの状況を踏まえ、患者が必要とする医療を受けられるよう機動的な対応が強調されている。日本医師会など医療関係団体は、診療報酬の「本体」部分の大幅な引き上げを求めているが、財務省は診療報酬の「本体」部分の引き下げを提案しており、医療機関の経営状況や利益剰余金の活用を根拠にしている。医療従事者の待遇改善は、国の財政に大きな影響を与えるため、引き続き大きな関心を呼ぶとみられる。参考1)診療報酬 引き上げ?引き下げ?来年度改定に向け調整本格化へ(NHK)2)令和6年度診療報酬改定の基本方針(骨子案の概要)(厚労省)3)診療報酬改定の基本方針、厚労省が骨子案示す 社保審の医療部会と医療保険部会に(CB News)2.医師の働き方改革で宿日直体制の維持が困難に/日本医師会日本医師会は、11月29日に定例記者会見を開き、医師会が実施した「医師の働き方改革と地域医療への影響」に関する調査の結果を明らかにした。この中で、医師の働き方改革により、約3割の医療機関が将来的に宿日直体制の維持が困難になると回答していたと報告した。調査は、医師の働き方改革の準備状況や医師派遣の動向、宿日直許可の取得状況、および改革が医療提供体制に与える影響を把握するために行われた。調査は全病院および有床診療所を対象にして、1万4,128施設のうち4,350施設から回答を得ていた。調査結果によれば、医師派遣を行う医療機関の約68.1%が派遣を継続する予定であり、医師を受け入れる医療機関の約69.0%も継続を予定している。しかし、約7割以上の医療機関が宿日直許可を取得しているものの、将来的な維持には不安を抱えている。医療機関全体でみると、約54%が「とくに変化なし」と回答しているが、約30.0%が宿日直体制の維持が困難、約25.1%が派遣医師の引き上げ、約14.4%が救急医療の縮小・撤退を懸念している。地域医療提供体制に関しては、約37.7%が「とくに変化なし」と回答している一方で、約30.0%が救急医療体制の縮小・撤退、約19.9%が専門的な医療提供体制の縮小・撤退を懸念している。この調査結果を受け日本医師会の城守常任理事は、医師の派遣・受け入れについて、現時点で縮小や未定が約3割も存在し、今後の派遣状況によっては地域医療の提供体制に大きな影響が出る可能性があると指摘している。また、医師の働き方改革が将来の地域医療提供体制に及ぼす影響を「把握できていない」と回答した割合も高かったことを危惧している。今後、都道府県別に集計したデータを都道府県医師会にフィードバックし、行政と共有して地元の医療機関支援への検討材料にする計画であり、来年2月に再度調査を行う意向を示している。なお、厚生労働省は今月に入り、「医師の働き方改革」特設サイトを開設し、働き方改革について医療機関や医療従事者だけでなく、患者さんに対しても情報発信を進めている。参考1)「医師の働き方改革」特設サイト(厚労省)2)医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果について(日本医師会)3)「宿日直体制の維持が困難」3割 日本医師会、働き方改革調査(共同通信)3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省厚生労働省は、12月1日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2023年の医薬品価格調査の速報結果を報告し、市場実勢価格の平均乖離率が約6.0%であったことを明らかにした。薬価の乖離率は、2022年度と比較して1.0ポイント低下し、過去30年間で最も価格差が小さかった。この結果を受けて、政府は2024年度の診療報酬改定で薬価を引き下げる方針を示している。また、後発医薬品の数量シェアは約80.2%に上昇しており、政府の目標を上回っていた。厚労省は薬価の引き下げにより、国費ベースで最大900億円程度の医療費抑制が可能としており、医師や看護師などの人件費や技術料に当たる本体部分の引き上げに充てられる予定。ただし、医療職の賃上げ率は全産業平均の3.58%に対して2%程度と低く、医療機関の経営が厳しい状況が指摘されている。財務省は、コロナ対策による補助金投入などを理由に、本体部分の引き下げを求めており、年末まで引き続き議論を重ね、改定率が決められる見込み。参考1)令和5年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値(厚労省)2)24年度の診療報酬改定で「薬価」引き下げ方針…仕入れ価格が6%低下受け医療費抑制図る(読売新聞)3)薬の市場価格、薬価を6%下回る 国費900億円程度抑制可能か(毎日新聞)4)医薬品は6.0%、材料は2.5%の価格乖離、「薬価の実勢価格改定」全体で1,200億円程度の国費縮減可能では-中医協総会(Gem Med)5)薬価乖離率は6.0%、厚労省速報 22年度比1.0ポイント縮小(CB News)4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増日本全国で梅毒の感染者数が急増しており、とくに九州地方では人口比での報告数が多いことが明らかになった。2023年11月19日時点で全国の感染者数は1万3,251人に達し、これは前年の1万3,228人を上回り、3年連続で過去最多を更新している。大都市圏では、とくに感染者数が多く、東京都、大阪府、福岡県が多数を占めているが、長崎県や鳥取県など大都市圏以外の地域でも感染者が急増している。梅毒は性接触を主な感染経路とする細菌性の感染症で、初期には口や性器にできものができるが自然に消え、その後全身に発疹が出ることがある。適切な抗菌薬治療を受ければ完治が可能だが、放置すると重大な症状を引き起こす可能性があり、妊婦から胎児への母子感染のリスクもある。参考1)梅毒の感染者数が3年連続で過去最多を更新(NHK)2)梅毒の感染者数が急増 九州は人口比でも多め(朝日新聞)5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省厚生労働省は、国内の臓器提供者(ドナー)の不足に対処するため、移植医療の進展を妨げる要因を調査し、支援策を検討している。国内の約150病院を対象に脳死判定や臓器提供につながらなかった件数を調査し、2024年度に必要な支援を計画している。とくに、救急医療の現場で臓器提供の前提となる脳死判定について、家族への提案をためらっていることが一因とされている。わが国では、平成9年に「臓器の移植に関する法律」が施行され、平成21年に一部改正されている一方で、人口100万人当たりの臓器提供者数が米国の51分の1、韓国の9分の1と低く、臓器移植を希望する登録者約1万6,000人のうち、年間約400人しか移植を受けられていない現状。この問題に対応するため、厚労省は2024年度から、脳死判定から臓器摘出まで一貫して人材不足の病院を支援する取り組みを始める。これには、移植医療の実績が豊富な拠点病院から医師や看護師などを派遣する計画が含まれる。さらに、厚労省は拠点病院を再編し、「移植医療支援室」を持つ病院を拡充する。この拡充には、脳死ドナーからの臓器移植を実施することを条件にする。この新たなタイプの拠点病院から派遣される医療者は、臓器のチェックやドナーの全身管理、臓器摘出手術に至るまでの一連の流れに携わることとなる。参考1)脳死移植の支援拡充、「判定」から臓器摘出まで医療機関サポート(読売新聞)2)厚労省、連携体制を調査 要因探り人材面など支援 臓器提供者、米国の51分の1(日経新聞)3)法施行26年、脳死での臓器提供1,000件に 意思表示進まず海外と差 移植体制整備へ病院が連携(東京新聞)4)臓器移植医療対策のあり方に関する提言(厚労省)6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/政府政府は、令和3年1月に「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」で取りまとめられた報告書をもとに、マイナンバー制度を活用して、医師や介護福祉士など約40の国家資格の事務手続きをデジタル化する計画を進めている。報告書によると、2024年度中に資格取得や変更などの申請手続きがオンラインで完結できるようになる。現在、資格取得時や引っ越しの際に、戸籍抄(謄)本や住民票の写しを提出する必要があるが、新システムではこれらの書類提出が省略できるようになる。この行政のデジタル化は、医療・福祉分野の31職種を含む約80の国家資格に適用される予定で、マイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」を通じて、資格情報とマイナンバーの連携が行われる。このシステムの稼働により、資格保有者と資格管理者の負担を軽減するほか、各種届出の漏れの防止や、個人の状況に応じたきめ細やかな就業支援を通して有資格者などの掘り起こしが可能となるなどメリットが見込まれている。参考1)社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用について(厚労省)2)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」報告書(同)3)マイナンバーカードの普及・利活用拡大(デジタル庁)4)医師や介護福祉士など40の国家資格、24年度中に手続きデジタル化…マイナ活用(読売新聞)

567.

COVID-19後の嗅覚・味覚障害は3年で回復へ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、嗅覚障害や味覚障害を経験している人にとって朗報となる研究結果が発表された。COVID-19パンデミック初期に軽症のCOVID-19に罹患した人を3年間追跡したこの研究によると、罹患者と非罹患者との間での嗅覚障害と味覚障害の有病率は、罹患から3年後では同等であることが明らかになった。トリエステ大学(イタリア)のPaolo Boscolo-Rizzo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に11月9日掲載された。 Boscolo-Rizzo氏らは、軽症のCOVID-19に罹患した88人(症例群)と新型コロナウイルスのRT-PCR検査で陰性と判定された88人(対照群)の計176人(両群ともに、試験登録時の年齢中央値49歳、女性58.0%)を対象に、試験登録から1、2、3年後の患者の自己報告による嗅覚障害と味覚障害の有病率を比較した。なお、軽症のCOVID-19とは、臨床評価でも画像検査でも下気道疾患の所見が認められず、酸素飽和度が94%以上の場合と定義された。 症例群でのCOVID-19急性期と、罹患から1、2、3年後時点での嗅覚・味覚障害の有病率は、それぞれ64.8%、31.8%、20.5%、15.9%だった。症例群でのCOVID-19罹患から1、2、3年後時点での嗅覚障害の有病率は、それぞれ40.9%、27.3%、13.6%、対照群の有病率は10.2%だった。罹患から2年後時点での両群の絶対差は17.1%(95%信頼区間4.7〜29.4%)と有意だったが、3年後時点での絶対差は3.4%(−7.3〜14.1%)と有意ではなくなった。 一方、症例群での罹患から1、2、3年後時点での味覚障害の有病率はそれぞれ26.1%、13.6%、11.4%、対照群の有病率は10.2%だった。罹患から2年後時点での両群の絶対差は3.4%(95%信頼区間−7.3〜14.1%)、3年後時点での絶対差は1.1%(−9.2〜11.4%)といずれも有意ではなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、これまでCOVID-19罹患後の嗅覚障害と味覚障害の精神身体的評価に関するデータはなかった点を強調し、「この研究により、症例群でのCOVID-19罹患から3年後時点での嗅覚障害の有病率は対照群と同等であり、また、罹患から2年後および3年後の時点での味覚障害の有病率に関しても、両群間で同等であることが明らかになった」と結論付けている。 研究グループは、「今回の研究結果は、COVID-19に罹患して嗅覚障害や味覚障害に悩まされている患者にとって喜ばしいニュースとなるはずだ」との見方を示す。そして、「COVID-19罹患者で嗅覚障害が生じている人でも、感染から3年が経過すればその障害から回復するようなので、安心してほしい」と話している。

568.

パンデミックで急性アルコール中毒による救急搬送が有意に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの最中に、急性アルコール中毒による救急搬送件数が有意に減少していたことが明らかになった。住民の飲酒量が多いことで知られる高知県のデータを解析した結果であり、高知大学医学部環境医学の南まりな氏、災害・救急医療学の宮内雅人氏らによる論文が、「Alcohol」に9月20日掲載された。 COVID-19パンデミックにより人々の生活が一変し、それにより救急搬送される患者の傾向にも変化が生じている。例えば交通事故による外傷が減り、ストレスが発症に関与しているたこつぼ心筋症が増えたことなどが報告されている。一方、飲酒行動に関しては、飲食店の時短営業や入店制限などによる飲酒機会の減少と、ストレス負荷による自宅での飲酒量の増大という相反する影響が考えられるが、南氏らが2020年春というパンデミック初期に高知県で行った研究では、急性アルコール中毒による救急搬送が減少していたことが明らかになっている。今回の研究では、パンデミックが長期化した以降もそのような傾向が継続しているのか否かを検証した。 この研究には、高知県救急医療・広域災害情報システム「こうち医療ネット」のデータが用いられた。2019~2021年の救急搬送の記録12万49件のうち、データ欠落、および急性アルコール中毒患者が発生していない10歳未満と80歳以上を除外した6万2,138件を解析対象とした。このうち926件(1.5%)が急性アルコール中毒によるものだった。 年次推移を見ると、2019年は2万2,289件中412件(1.9%)が急性アルコール中毒によるもので、2020年は1万9,775件中268件(1.4%)、2021年は2万74件中246件(1.2%)だった。全体として、急性アルコール中毒による救急搬送は、性別で比較した場合は男性に多く(66.1%)、年齢層では20代が最も多くを占めていた(37.2%)。 ポアソン回帰モデルにて、2019年を基準とする急性アルコール中毒による救急搬送件数の発生率比(IRR)を検討すると、2020年はIRR0.78(95%信頼区間0.67~0.91)と有意に低く、2021年もIRR0.73(同0.63~0.86)であり有意に低値だった。つまり、パンデミック初期に認められた急性アルコール中毒による救急搬送件数の減少は、パンデミックが長期化した2年目にも継続していたことが明らかになった。 著者らは本研究について、救急搬送以外の手段で受診した急性アルコール中毒患者も存在する可能性があること、県民の酒量が多く飲酒に寛容な高知県での調査であり、解釈の一般化が制限されることなどの留意点を挙げている。ただし後者については、「研究の限界点であると同時に、特異な飲酒文化で得られた貴重なデータでもある」と述べている。また、「パンデミックによって急性アルコール中毒による救急搬送が減少したという事実は、換言すれば、パンデミック以前の人々の飲酒行動に問題があったことを示唆している」との考察を加えている。

569.

手洗いの具体的な効果

手洗いは自分が病気になったり、ほかの人に病気を広げるのを防ぐ簡単で効果的な方法です!こまめな手洗いで手を清潔に保ちましょう石けんを使った手洗い、どんな効果が報告されている?・下痢になる人の数を23~40%削減・免疫力が低下している人が下痢になる可能性を58%削減・風邪などの呼吸器系の病気を16~21%削減・お腹(胃腸)の病気による子どもたちの学校の欠席を29~57%削減・下痢になる幼児の3人に1人、肺炎などの呼吸器感染症にかかる幼児の5人に1人を病気から守ります手や指に付着しているウイルスの数は、石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます出典:米国疾病予防管理センター(CDC)「Show Me the Science – Why Wash Your Hands?」森功次ほか.感染症学雑誌.2006;80:496-500.Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

570.

12月1日 世界エイズ・デー【今日は何の日?】

【12月1日 世界エイズ・デー】〔由来〕世界レベルのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定。毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動を実施。関連コンテンツYahoo!の見出しで勘違い続出?「HIV感染報告、過去20年で最少に」【バズった金曜日】ヒト免疫不全ウイルス検査ってなあに?【患者説明用スライド】HIVの流行終結を目指す取り組みとはHIV陽性者の結核性髄膜炎、デキサメタゾン追加は有用か/NEJM米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

571.

世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika

 CSL Seqirus社(オーストラリア、メルボルン)とMeiji Seika ファルマは、2023年11月28日に、自己増幅型メッセンジャーRNAワクチン(sa-mRNA、レプリコンワクチンとも呼ばれる)である「コスタイベ筋注用」(ARCT-154)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした成人の初回免疫および追加免疫における国内製造承認を取得した。CSL Seqirus社のファミリー企業のCSLベーリングが11月29日付のプレスリリースで発表した。本ワクチンは、世界で初めて承認を受けたsa-mRNAワクチンとなる。この次世代ワクチンは、日本ではMeiji Seika ファルマが商業化を行う。なお、今回承認を取得したのは新型コロナウイルスの従来株対応1価ワクチンで、現在の流行株とは異なるため供給されない。 標準的なmRNAワクチンは、免疫システムがCOVID-19を認識し、体内の細胞に特定のタンパク質を産生するよう指示し、免疫応答を刺激して、将来の感染を認識してこれと闘うための設計図を残すことによって感染症を予防するものだ。一方、本ワクチンで初めて用いられたsa-mRNAの特徴は、体内でmRNAのコピーを作ることにより、ワクチンに含まれるmRNAの相当量よりも多くのタンパク質を産生できることにある。この技術には、mRNAの量を大幅に抑えながら、細胞性免疫応答を増強して保護期間を延ばすことができる可能性があるという。 今回の承認は、ベトナムで被験者1万6千例を対象に実施した有効性試験やMeiji Seika ファルマが日本で実施した追加免疫試験を含め、ARCT-154を用いた複数の試験で有望な臨床データが得られたことに基づいている。18歳以上の被験者を対象に「コスタイベ筋注用」を評価した追加免疫試験では、既存のワクチンと比較して、sa-mRNAワクチンが起源株およびオミクロンBA.4/5変異株に対して強い免疫応答を起こすことが示された。また、「コスタイベ筋注用」では必要な用量は5μgで、既存のワクチンと比較して大幅に少なくなっている。 「コスタイベ筋注用」は、Arcturus Therapeutics社のワクチンプラットフォーム「LUNAR」を使用している。CSL Seqirus社は、インフルエンザおよびCOVID-19等の呼吸器ウイルス疾患に対する新規mRNAワクチンや、パンデミック対策の開発におけるArcturus Therapeutic社の独占的グローバルパートナー。 Meiji Seika ファルマとCSLはARCALIS, Inc.と協力し、福島県南相馬市の製造施設で、日本におけるsa-mRNAワクチンを一貫して製造できる体制を構築している。

572.

プール熱(咽頭結膜熱)ってどんな病気?

プール熱(咽頭結膜熱)ってどんな病気?• アデノウイルスというウイルスへの感染が原因となり、プールで感染が広がるケースがあることから「プール熱」と呼ばれます• 発熱(38~39度)、のどの痛み、結膜炎(目の充血・目やになど)といった症状が多く、リンパ節の腫れ、下痢や吐き気、頭痛、せきなどがみられることもあります• 症状は多くが1~2週間でおさまります• 小児を中心に主に夏に流行しますが、最近の傾向として冬にも流行がみられます治療法は?他の人にうつさないようにするには?•特別な治療法はなく、症状に合わせた対症療法が行われます•アルコール消毒は効きにくいため、石けんと流水でこまめな手洗いをしましょう•高熱が続く、ぐったりしている、吐き気や頭痛の強いとき、せきが激しいときは早めに医療機関に相談しましょう•むやみに目や口に触れたり、こすったりしないようにしましょう•タオルの共用はしないようにしましょう•症状がなくなった後も約1ヵ月は尿・便からウイルスが排泄されるので、排泄後の念入りな手洗い、排せつ物の処理に注意しましょう•目の症状が強い場合は、眼科を受診しましょう出典:東京都保険医療局「咽頭結膜熱(プール熱)が流行しています!」厚生労働省「咽頭結膜熱について」Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

573.

石灰化大動脈弁狭窄症に、非侵襲的超音波療法は可能か/Lancet

 石灰化大動脈弁狭窄症は、一般に外科的または経カテーテル的な大動脈弁置換術(AVR)による治療が行われているが、重度の合併症や限られた余命のために適応とならない患者が多く、代替治療として非侵襲的治療法の可能性が示唆されている。フランス・パリ・シテ大学のEmmanuel Messas氏らは、大動脈弁の弁尖を修復する超音波パルスを照射する革新的な技術である非侵襲的超音波療法(NIUT)の評価を行い、安全かつ実行可能であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月13日号で報告された。欧州3施設の前向きコホート研究の6ヵ月データ 研究グループは、経胸壁的にNIUTを行う装置(Valvosoft device、Cardiawave製)の安全性と、石灰化した弁組織を軟化させることによる弁機能の改善効果を評価する目的で、前向き単群コホート研究を行った(Cardiawaveの助成を受けた)。 3ヵ国(フランス、オランダ、セルビア)の3つの施設で、新型コロナウイルス感染症の流行による中断を挟んだ2019年3月13日~2022年5月8日の期間に、高リスクの40例を登録した。 対象は、重度の症候性大動脈弁狭窄症(二尖弁を含む)を有し、外科的大動脈弁置換術(SAVR)および経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVR)の適応とならない成人患者であった。 主要エンドポイントは、30日以内の治療に関連した死亡および弁機能の改善とした。今回は6ヵ月後のデータの解析結果を報告した。 対象となった40例(平均年齢83.5[SD 8.4]歳、女性50%)のSociety of Thoracic Surgeons(STS)の平均スコアは5.6(SD 4.4)%であり、重度の合併症(冠動脈疾患45%、頸動脈疾患28%、うっ血性心不全30%、慢性腎臓病40%、不整脈55%)を伴っていた。2例で二尖弁を認めた。30日以内の治療関連死亡はない、弁機能も有意に改善 30日以内の治療に関連した死亡は発現しなかった。3例で、それぞれ1週間後、3.5ヵ月後、5.5ヵ月後に、Valvosoftを用いて追加のNIUTを施行したが、これらの患者は6ヵ月後の時点でも生存していた。また、生命を脅かすイベントおよび脳血管イベントの報告はなかった。 6ヵ月(180日)時点での全生存率は72.5%(95%信頼区間[CI]:56.0~83.7)であった。1例の死亡が188日目に追加で報告された。ミニメンタルステート検査(MMSE)で認知機能障害を検出した患者はいなかった(平均MMSEスコア:ベースライン24.2点、退院時24.5点、30日時26.0点)。188日目に、1例で非ST上昇型心筋梗塞を認めた。 弁機能の改善は6ヵ月間を通じて確認され、平均大動脈弁口面積(AVA)はベースラインの0.58(SD 0.19)cm2から追跡時には0.64(SD 0.21)cm2へと10%増加し(p=0.0088)、平均圧較差は41.9(SD 20.1)mmHgから38.8(17.2)mmHgへと7%低下した(p=0.024)。 6ヵ月時に、NYHA心機能分類クラスが25例中17例(68%)で改善し、7例(28%)で安定化していた。また、これらの患者ではカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコアが48.5(SD 22.6)点から64.5(SD 21.0)点へと33%改善した(有意差なし)。 1例で重篤な治療関連有害事象を認めた。この患者は97歳で、不快感を和らげるためにモルヒネ(1mg)を静脈内投与したところ、徐呼吸の結果として末梢酸素飽和度(SpO2)が一過性に89%に低下した(処置により迅速に回復し、6ヵ月の時点で生存)。非重篤な有害事象として、痛み、治療中の不快感、一過性の不整脈などがみられた。 著者は、「今回の初期結果は有望であり、より大規模の臨床試験で確認する必要がある」とし、「このNIUTの方法は、さらに最適化を進める必要があり、より多くの患者で安全性を確認した後、たとえば(1)中等度または無症候性の石灰化大動脈弁狭窄症でSAVRまたはTAVRを延期するため、(2)重度に石灰化した弁に対するTAVRの前処置として、評価される可能性がある」と指摘している。

574.

第一三共のXBB.1.5対応mRNAコロナワクチン、一変承認取得

 第一三共は11月28日付のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するオミクロン株XBB.1.5対応1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、追加免疫における製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。本ワクチンが特例臨時接種に使用されるワクチンとして位置付けられ次第、厚生労働省との供給合意に基づき、国産初のmRNAワクチンとして供給を開始し、2023年度中に140万回分を供給する予定。 厚労省が11月27日に公表した資料(一変承認前の情報)によると、本ワクチンは、既SARS-CoV-2ワクチンの初回免疫完了者(12歳以上)に対する、「追加免疫」として使用することができる。季節性インフルエンザワクチンの取扱いと同様に、冷蔵(2~8℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。外箱開封後は遮光して保存し、有効期間は7ヵ月となっている。 ダイチロナ筋注は、同社が開発した新規核酸送達技術を活用し、新型コロナウイルススパイク蛋白質の受容体結合領域(RBD)を標的としたCOVID-19に対するmRNAワクチンだ。本ワクチンの研究開発および生産体制整備は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施している。

575.

英語で「後手ではなく、先手で」は?【1分★医療英語】第107回

第107回 英語で「後手ではなく、先手で」は?《例文1》We should get ahead of and not get behind of other centers in this field.(この分野では他施設の先回りをして、後れを取らないようにしなくてはいけません)《例文2》This drug is an effective preemptive therapy for cytomegalovirus infection.(この薬はサイトメガロウイルス感染の先制治療として効果があります)《解説》“be proactive, not reactive”は適切なタイミングで使うと、自分の発言に説得力を持たせることができる、臨床医の必修フレーズです。医療では予防的に治療や検査をすることが多々あり、そのような場面で幅広く使用することができます。“get ahead of, not get behind of something”も類似表現です。こちらのほうが日本語の先手・後手という単語の直訳に近いので、記憶に残って覚えやすいかもしれません。また、使う場面は異なりますが、“proactive”の類似表現として、“preemptive”(先制的な)もあり、“preemptive therapy”は「先制治療・発症前治療」という意味の医学的な専門表現になります。講師紹介

576.

第191回 リドカインが苦味にまつわる仕組みでがん細胞を死なす

リドカインが苦味にまつわる仕組みでがん細胞を死なす良薬口に苦しとはよく言ったもので、苦い薬リドカインに備わると思しき別の効能がその苦味にまつわる仕組みに端を発するらしいことが米国・ペンシルバニア大学のチームの研究で示されました1)。その別の効果とは抗がん作用です。20年ほども前の観察試験で局所麻酔が乳がん手術患者の再発や転移を減らしうることが示唆されています2)。リドカインは言わずもがな局所麻酔薬の1つであり、外来での外科処置でよく使われます。乳がん以外のがんへのリドカインの検討もいくつかあり、化学療法を助けたり転移を抑制したりするなどの効果を有するらしいことが示唆されています。リドカインは電位依存性ナトリウム(Nav)チャネルを阻害して感覚神経からの痛み信号を遮断します。リドカインが担いうる抗がん作用がそのNavチャネル阻害によるのかその他の仕組みによるのかはよくわかっていませんでした。リドカインは苦いだけに、25種類ある苦味受容体T2Rの1つT2R14を活性化します。T2R14を含むいくつかのT2R受容体の活性化は核内やミトコンドリアのCaイオン上昇を介して気道上皮細胞や頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)細胞を死なすことがわかっています。そこでペンシルバニア大学のチームはリドカインがT2R14への作用を介してHNSCC細胞、もっというとそれ以外のがん細胞を死なすのではないかと考えました。その予想はどうやら正しく、リドカインはHNSCC細胞のT2R14活性化によってCaイオンを動かしてHNSCC細胞を弱らせ、やがては死に至らしめました。ヒトパピローマウイルス(HPV)と関連するHNSCCではT2R14遺伝子の発現が盛んなことも示され、リドカインによるT2R14活性化が最も有益かもしれません。そこで研究チームはHPV関連HNSCCの標準治療に加えてリドカインも投与する試験を計画しています3)。試験はペンシルバニア大学医学部のがん治療部門Abramson Cancer Centerが担当します。ペンシルバニア大学のチームはHNSCCを題材に研究を進めていますが、乳がんへのリドカインの効果の検討はより年季が入っています。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)での昨年の発表に続いて今年4月に論文になった大規模無作為化試験の結果、乳がんの手術に際してリドカインを手術前に腫瘍に直接注射したところ非注射の対照群に比べて生存が改善しました4)。試験はリドカインがNavチャンネル阻害を介して転移促進経路を食い止めるとの想定で実施されました。実際のところ生存の改善に加えて転移の減少も認められており、仕組みがどうあれ乳がん細胞の転移手段に手出しすることでリドカインは転移を減らし、手術後の経過を改善する働きがあるらしいと試験の担当者は述べています5)。乳がんもHNSCCと同様にT2R14を発現します。よって同試験で認められたリドカイン注射の生存改善にはT2R14への作用も寄与しているかもしれません1)。参考1)Miller ZA, et al. Cell Rep. 2023 Nov 16. [Epub ahead of print]2)Exadaktylos AK, et al. Anesthesiology. 2006;105:660-664. 3)Lidocaine may be able to kill certain cancer cells by activating bitter taste receptors / Eurekalert4)Badwe RA, et al. J Clin Oncol. 2023 Apr 6. [Epub ahead of print]5)Lidocaine Presurgery May Improve Survival in Early Breast Cancer / Medscape

577.

コロナワクチン、2024年度より65歳以上に年1回の定期接種へ/厚労省

 国内の新型コロナウイルスワクチン接種について、厚生労働省は11月22日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会と同分科会予防接種基本方針部会を開催し、2023年度末に「特例臨時接種」を終了し、2024年度以降は、65歳以上の高齢者を対象に「定期接種」として実施する方針を了承した。基礎疾患を有する60~64歳については重症化リスクも考慮し、重症化予防を目的とした接種を行う。65歳以上のコロナワクチン定期接種スケジュールは秋冬に毎年1回 2024年度以降の新型コロナワクチン接種については、個人の重症化予防により重症者を減らすことを目的とし、インフルエンザと同様の予防接種法のB類疾病に位置付けたうえで、法に基づく定期接種として65歳以上の高齢者等を対象に実施する。 65歳以上の高齢者を対象にした新型コロナワクチン定期接種のスケジュールは、秋冬に毎年1回となる。ワクチンに含むウイルス株は、流行の主流であるウイルスの状況やワクチンの有効性に関する科学的知見を踏まえて選択し、当面の間、毎年見直される。 なお、2024年度以降は、新型コロナワクチンはほかのワクチンと同様に一般流通が行われる見込みであり、65歳以上の定期接種の対象者以外であっても、任意接種として接種の機会を得ることができる。ワクチン価格は現時点で決まっていない。 本方針について分科会の委員らからは、特例臨時接種が終了し、自己負担が生じることについて、ワクチン価格がインフルエンザワクチンよりも高額になることが予想され、経済的負担を理由に接種できず、感染した際に重症化することを懸念する意見が上がった。接種を希望する者が安心して接種できるよう、国費等の支援による接種費用の負担軽減を訴えた。

578.

第172回 働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会

<先週の動き>1.働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会2.賃上げか負担軽減か、診療報酬改定を巡って議論が白熱/中医協3.医療機能情報提供制度の見直し、スマホ対応と多言語サポート/厚労省4.健康リスクに配慮した「飲酒ガイドライン案」を発表/厚労省5.薬のネット販売全面解禁へ、2025年から規制緩和/厚労省6.医師確保プログラム「842万円の違約金は違法」とNPOが提訴/山梨県1.働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会日本救急医学会は、医師の働き方改革に伴う救急医療の人材不足とその対策に関する要望書を厚生労働大臣に提出した。来年度から始まる「働き方改革」では、勤務医に対して労働基準法に基づく休日や時間外労働の上限規定が適用されることになっており、救急医療に従事する医師が不足し、医療体制の維持が困難になる恐れがあると指摘している。同学会は、日本の救急医療が医療者の自己犠牲により支えられてきたと述べ、働き方改革による医師不足を解消するためには、診療報酬の改定などの支援が必要だと訴えている。また、地元の医師会との連携を強化し、救急の専門医を地域の拠点病院に集約することで、効率的な救急医療体制の構築を求めている。一方、NPO法人「EMアライアンス」による調査では、救急医の約1割が深刻な燃え尽き症候群に陥っていることが明らかになった。この調査結果では、救急医療の心理的ストレスの高さと、医師の健康問題に注目が集まった。とくに若手医師や睡眠不足を抱える医師にとって、救命救急センターでの勤務が、燃え尽き症候群と高い関連性を持つことが指摘されている。救急医療の質と持続可能性を確保するためには、医師の働き方改革を通して医師の健康にも配慮する必要がある。提言では、救急医療の現場で働く医師の声を反映した、包括的な対策が必要であると指摘している。参考1)地域救急医療への影響を鑑みた医師の働き方改革に関する提言(日本救急医学会)2)医師の働き方改革 日本救急医学会が支援求める要望書提出(NHK)3)救急医の1割、深刻な燃え尽き症候群か 睡眠不足も関連?NPO調査(朝日新聞)4)1割が深刻な燃え尽き症候群とのデータも 救急医の激務、解決策は?(同)2.賃上げか負担軽減か、診療報酬改定を巡って議論が白熱/中医協厚生労働省は、11月24日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会において、昨年度の医療経済実態調査の結果を明らかにした。その結果、病床数が20床以上の一般病院は、物価高騰の影響で経営が悪化していたが、新型コロナ患者の受け入れに対する国の補助金を含めると、収支は黒字に転じていた。具体的には、一般病院の収支は平均で2億2,424万円の赤字であったが、補助金を含めると4,760万円の黒字となっていた。国公立病院は、平均で7億8,135万円の赤字で、補助金を含めても赤字だが、医療法人が経営する民間病院は補助金を含めると6,399万円の黒字に転じていた。一方、病床が19床以下の一般診療所は、補助金を除いても医療法人が経営する診療所で1,578万円、個人経営の診療所では3,070万円と、いずれも黒字。厚労省は、とくに一般病院の収益が厳しい結果となったことを指摘し、今年度はさらに利益率が悪化している可能性を述べている。日本医師会などは、医療職や介護職員の賃上げが必要だとして「本体」部分の引き上げを求めているが、財務省は保険料負担の軽減を目指し、逆に引き下げを主張している。武見 敬三厚生労働大臣は、新型コロナが「5類」に分類され、補助金や診療報酬の加算措置が大きく見直されていることに言及し、年末に向けて医療機関の経営状況を踏まえ、賃上げや物価高騰、感染症対策などの新たな課題に対応できる診療報酬改定に努力する意向を示している。参考1)第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(厚労省)2)来年度の診療報酬改定 年内決定に向け 議論活発化へ(NHK)3)「一般病院」昨年度収支 黒字 コロナ患者受け入れ補助金含めて(同)4)一般病院・診療所、コロナ補助で黒字 22年度厚労省調査(日経新聞)3.医療機能情報提供制度の見直し、スマホ対応と多言語サポート/厚労省厚生労働省は、患者が適切な医療機関を選択できるよう支援する「医療機能情報提供制度」を見直すため、11月20日に「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」を開催した。現在、各都道府県ごとに情報提供されている医療情報ネットが刷新され、2024年4月からは全国統一システムの運用を開始されることが明らかとなった。また、かかりつけ医機能を含め、国民・患者の医療機関の適切な選択を支援するよう、スマートフォン対応も予定されている。新しいシステムでは、医療機関の基本情報や医療サービス内容、治療結果のほか、高齢者や障害者向けの情報も提供される。さらに、英語・中国語・韓国語での情報提供も行われ、用語解説も整備される予定。医療機関は、毎年1~3月に定期報告を行い、基本情報に変更があった場合は都道府県に報告することが求められる。また、「かかりつけ医機能」の情報も提供され、患者は自宅近くの医療機関を選択しやすくなる。全国統一システムへの移行により、情報提供の内容も新しくなり、利用者がより使いやすい仕組みが提供されることが期待されているほか、2025(令和7)年度から発足するかかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて、今後も情報提供項目改修が行われていく見込み。参考1)医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について(厚労省)2)国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討について(同)3)医療情報ネット、来年1月から新たな報告に 全国統一の情報提供4月開始、スマホ対応(CB News)4)医療情報ネットを「より使いやすい仕組み」に2024年度リニューアル、今後「かかりつけ医機能」情報も充実-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med)4.健康リスクに配慮した「飲酒ガイドライン案」を発表/厚労省11月22日に厚生労働省は、アルコール健康障害対策基本法に基づいて、検討を重ねてきた「飲酒ガイドライン案」を発表し、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及と健康障害の防止を目指すことを明らかにした。指針は、年齢や体質に応じた飲酒量の留意点を提案し、純アルコール量での飲酒管理を重視している。とくに高齢者や若年層、アルコール分解能力が低い人々には、飲酒による健康リスクが高いと警告している。ガイドライン案では、純アルコール量の計算方法が示され、疾患ごとのリスクに応じて、少量の飲酒でも注意が必要としている。政府の「健康日本21(第3次)」計画では、1日の純アルコール摂取量を男性40g、女性20g以上と定め、60g以上の過度な飲酒や、不安・不眠解消のための飲酒、他人への強要を避けるよう勧めている。また、健康への配慮として、飲酒量の事前設定、飲酒時の食事摂取、水分補給、週に無酒日を設けることなどが推奨されている。そのほか、最近では、アルコール摂取量の自己管理を促進するため、スマートフォンアプリを利用した記録方法も普及している。ガイドラインに対する反応はさまざまで、個々の許容量に基づく飲酒量の調整を提案する声や、健康意識の高い人々にとって有益だとする意見があり、専門家は、多量飲酒時の水分摂取の重要性を強調し、飲み方の工夫を勧めている。参考1)健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)(厚労省)2)国内初の飲酒ガイドライン案「男性40g、女性20g以上はリスク」(毎日新聞)3)国として初の飲酒ガイドライン案 ビール1杯で高まる大腸がんリスク(朝日新聞)4)飲酒リスク、初指針で周知 年齢や体質に応じ留意点(日経新聞)5)お酒の望ましい量は?「飲酒ガイドライン」厚労省が案まとめる(NHK)5.薬のネット販売全面解禁へ、2025年から規制緩和/厚労省厚生労働省は、薬のネット販売に関する規制を大幅に緩和する方針を固めた。これにより、ほぼすべての薬がインターネットで購入可能になる見込み。とくに「要指導医薬品」について、これまでは対面販売が義務付けられていたが、ビデオ通話による服薬指導を条件に非対面での購入が認められるようになる。この変更は2025年以降に実施される予定。市販薬のネット販売は、2014年から一部が販売可能になり、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、さらに拡大されていた。今回の規制緩和により、市販薬のほぼすべてがネットでの購入が可能となり、患者の利便性が大幅に向上すると期待されている。ただし、緊急避妊薬など対面での情報提供が必要な薬や乱用のリスクがある薬については、20歳未満の大量購入を禁止するなどの規制が維持される。厚労省は、この方針について専門家の会議で議論し、医薬品医療機器法の改正を目指している。現在、オンライン服薬指導による安全性の確保と利便性の向上を両立させるための仕組み作りが進められている。参考1)対面販売必要な薬 薬剤師のビデオ通話でネット販売検討 厚労省(NHK)2)市販薬ネット販売、全面解禁へ ビデオ通話での指導条件(日経新聞)3)薬のネット販売全面解禁へ、利点や注意点は?(同)6.医師確保プログラム「842万円の違約金は違法」とNPOが提訴/山梨県東京のNPO法人「消費者機構日本」は、山梨県が医師不足対策として2019年に開始した医師確保プログラムについて消費者契約法に違反するとして山梨県を11月21日に提訴した。このプログラムは、医学部学生が県内の医療機関で9年間勤務することを条件に、学費の返済を免除する内容。しかし、2021年に導入された新条項では、勤務期間を満たさない場合に最大842万円の違約金を課すことになり、この違約金条項が消費者契約法に違反するとして山梨県を提訴した。NPO法人側は、学費返済だけで十分であり、違約金は不当に高額だと主張している。一方、山梨県は、違約金が必要な措置であると反論し、プログラムの早期離脱が県に追加コストをもたらすとして長崎 幸太郎山梨県知事は争う姿勢を示した。この訴訟は、地域医療の充実を目指す県側の政策と、その実施方法の法的・倫理的妥当性を巡って議論を提起しており、違約金条項導入後、山梨大学や北里大学などから約115人の学生がプログラムに参加しており、今後の訴訟の動向が注目されている。参考1)山梨県の医学部学費貸与、「違約金840万円は違法」 NPOが提訴(朝日新聞)2)医師不足解消を図る山梨県の制度 “違約金は違法”と提訴(NHK)3)山梨県の医師確保プログラム、9年間勤務できなければ最大842万円の違約金…適格消費者団体が差し止め求め提訴(読売新聞)4)医師確保事業巡り 都内の消費者団体が県を提訴 長崎知事は争う姿勢示す 山梨県(山梨放送)

579.

コロナ入院患者へのビタミンC投与、有効性認められず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのビタミンC投与は、心肺支持療法離脱日数や生存退院を改善する可能性は低い。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのNeill K. J. Adhikari氏らの研究グループ「The LOVIT-COVID Investigators」が、2件の前向き調和型無作為化比較試験の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。ビタミンCを6時間ごとに静脈投与 ビタミンCがCOVD-19患者のアウトカムを改善するかどうかを評価した2件の試験は、2020年7月23日~2022年7月15日に、世界4大陸で、集中治療室(ICU)で心肺支持療法を受けている重症患者(90ヵ所で登録)と非重症患者(40ヵ所で登録)を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはビタミンCを、もう一方にはプラセボを6時間ごとに96時間(最大16回)静脈投与した。 主要アウトカムは、心肺支持療法離脱日数(ICUで最長21日間心肺支持療法離脱で生存と定義)と生存退院の複合とした。同アウトカムの範囲は、院内死亡(-1)~心肺支持療法離脱で生存(22)で評価した。 主要解析は、ベイジアン累積ロジスティックモデルを用いて行った。オッズ比(OR)1超の場合は有効性(生存の改善、心肺支持療法離脱日数の増加、またはその両方)を、1未満の場合は有害性を、1.2未満では無益性を示すものとした。有害性・無益性の統計学的基準を満たし、試験中止に 本試験は、有害性と無益性が統計学的基準を満たした時点で、登録が打ち切られた。 主要アウトカムが得られたのは、重症患者1,568例(ビタミンC群1,037例、対照群531例、年齢中央値60歳[四分位範囲[IQR]:50~70]、女性35.9%)、非重症患者1,022例(456例、566例、62歳[51~72]、39.6%)だった。 重症患者において、心肺支持療法離脱日数中央値はビタミンC群7日(IQR:-1~17)、対照群10日(-1~17)で(補正後比例OR:0.88、95%信用区間[CrI]:0.73~1.06)、事後確率は8.6%(有効性)、91.4%(有害性)、99.9%(無益性)だった。 非重症患者においても、心肺支持療法離脱日数中央値はビタミンC群22日(IQR:18~22)、対照群は22日(21~22)で(補正後比例OR:0.80、95%CrI:0.60~1.01)、事後確率は2.9%(有効性)、97.1%(有害性)、99.9%超(無益性)だった。 重症患者の生存退院率についても、ビタミンC群61.9%、対照群64.6%で(補正後OR:0.92[95%CrI:0.73~1.17])、有効性の事後確率は24.0%だった。非重症患者の生存退院率も、それぞれ85.1%、86.6%で(0.86[0.61~1.17])、有効性の事後確率は17.8%だった。

580.

小児感染症に対する抗菌薬、多くはもはや効果を見込めず

 薬剤耐性菌の増加に伴い、一般的な小児感染症の治療において長らく使用されてきた抗菌薬の多くがもはや効果を失っていることが、新たな研究で明らかにされた。論文の筆頭著者であるシドニー大学(オーストラリア)感染症研究所のPhoebe Williams氏は、「抗菌薬の使用に関する世界的なガイドラインにこの結果を反映させる必要がある」と述べるとともに、乳幼児や小児用の新しい抗菌薬の開発に重点を置くべきだと呼び掛けている。この研究結果は、「The Lancet Regional Health - Southeast Asia」に10月31日掲載された。 世界保健機関(WHO)は、薬剤耐性菌の増加を世界的な公衆衛生上の脅威のトップ10に位置付けている。世界全体では、毎年約300万人の新生児が敗血症を発症し、57万人が死亡しているが、その原因の多くは薬剤耐性菌に有効な抗菌薬がないことである。 Williams氏は、「薬剤耐性菌の問題は他人事ではなく、すぐそこに差し迫っている脅威だ。薬剤耐性菌は、われわれが考えている以上のスピードで増加している。多剤耐性の侵襲性感染症や年に何千人もの子どもの死亡を食い止めるためには、新しい解決策が早急に必要だ」と主張する。 Williams氏らの今回の研究は、東南アジアおよび太平洋地域の低・中所得世帯の子どもに処方された、経験に基づく抗菌薬治療がどの程度有効であるのかを検討したもの。研究グループは、システマティックレビューにより抽出した、11カ国で収集された6,648の細菌分離株の感受性データを使用してパラメーター化した、WISCA(weighted incidence syndromic combination antibiogram)と呼ばれる薬剤感受性のデータベースを構築。これにより、新生児と小児の敗血症や髄膜炎に対する治療において、WHOが推奨する特定の抗菌薬(アミノペニシリン、ゲンタマイシン、第3世代セファロスポリン、カルバペネム)がどの程度有効であるか(coverage)を推定した。 その結果、新生児の敗血症/髄膜炎に対して、アミノペニシリンは26%、ゲンタマイシンは45%、第3世代セファロスポリンは29%、カルバペネムは81%有効であることが示された。一方、小児の敗血症と髄膜炎に対しては、アミノペニシリンはそれぞれ37%と62%、ゲンタマイシンは39%と21%、第3世代セファロスポリンは51%と65%、カルバペネムは83%と79%有効であった。 こうした結果を受けてWilliams氏は、「小児や新生児に対する新たな抗菌薬による治療法の研究に、資金を優先的に投入する必要がある」との見解を示す。「抗菌薬に関する臨床研究は成人に焦点が当てられることが多く、小児や新生児は置き去りにされている。そのため、小児や新生児に対する治療法の選択肢は少なく、新しい治療法に関するデータも極めて限定的だ」と指摘する。 論文の上席著者で、アンコール小児病院(カンボジア)のカンボジア・オックスフォード・メディカルリサーチユニットのディレクターを務めているPaul Turner氏は、「この研究により、小児の重篤な感染症治療に有効な抗菌薬について、その利用可能性に関する重要な問題が浮き彫りになった。また、薬剤耐性菌の拡大状況をモニタリングするために、質の高い検査データが必要であることも明示した」と述べている。

検索結果 合計:4227件 表示位置:561 - 580