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認知症の評価に視覚活用、アイトラッキングシステムとは

 早期認知症発見のためのアイトラッキング技術を用いた「汎用タブレット型アイトラッキング式認知機能評価アプリ」の神経心理検査用プログラム『ミレボ』が2023年10月に日本で初めて医療機器製造販売承認を取得した。発売は24年春を予定している。この医療機器は日本抗加齢協会が主催する第1回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会(2019年開催)で大賞を取った武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学)の技術開発を基盤として同第5回大賞(10月27日開催)を受賞した高村 健太郎氏(株式会社アイ・ブレインサイエンス)らが産業化に成功したもの。 本稿では第5回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会での高村氏のプレゼンテーション、第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーでの武田氏の講演内容を踏まえ、このプログラムの開発経緯や今後の展望について紐解いていく。アイトラッキング式認知機能評価アプリとは 認知症疑い患者に対し従来行われているMMSEや改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)といった認知機能検査では、患者の心理的負担(緊張、焦り、落胆、怒りなど自尊心を傷付け心理的ストレスを招きやすい)、医療者負担(時間的制約、専門スタッフの在籍)、検査者間変動(採点のバラツキ)が課題になっているが、近年、AIを活用した新たな認知症診断技術として、脳波、視線、表情、音声、体動などのデータをAIによって定量化することで鑑別診断や予後予測ができるまで研究が進んでいる。また、現代では認知症の危険因子のなかに回避可能なものが多く存在することが医学的にも解明したこと、アルツハイマー病の根本的治療法が臨床応用されつつあることから、早期認知症患者の早期発見・治療導入のためのスクリーニング方法に注目が集まっている。 そこで、高村・武田両氏らは現場での課題を解決するべく新たなスクリーニング法の開発に着目し、認知症領域に一筋の光をもたらした。それがアイトラッキング式認知機能評価アプリである。両氏によると、認知症検査には▽安価▽特殊な機器が不要▽短時間(3分以内)▽言語依存性が低いなどの条件が求められるが、本アプリは「目の動きを利用した『眺めるだけの認知機能検査』技術。使用方法は簡便で、患者は“画面に表示される質問に沿ってタブレット画面を3分間見るだけ”。データを自動的にスコア化し、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能であり、まさに『短時間・簡易・低コスト』を実現した製品」と高村氏は話した。 さらに、認知症は非専門医による診断も難しい点が臨床課題であったが、臨床的に認知症と診断された被験者およびそれ以外の被験者(認知機能健常者および軽度認知障害[MCI]が疑われる被験者含む)を対象に実施した臨床試験において、主要評価項目である本アプリによる検査スコアとMMSEの総合点において高い相関が認められた。加えて、副次評価項目である検査者に対する使用評価調査において検査者の負担軽減が確認されたことから、認知症を診断できる施設数の増加にも寄与できる可能性がある。このほか、本アプリは多言語対応も可能であることから、将来展望として認知症患者が増加傾向のアジア圏をはじめ、欧米にも日本発の技術を輸出・展開し世界進出を図る予定だという。“技術の産業化”を果たし、ヘルスケア産業・医療界に参入 なお、薬機法に規制されない一般向けアプリとして認知機能評価法『MIRUDAKE』による事業化も進めており、公的機関(高齢者の免許更新時の検査など)、検診サービス(住民健診など)、介護サービス事業(デイサービスでの重点見守りなど)への提供をスタートさせている。 第1回大賞受賞時の宿題であった“技術の産業化”を見事に果たした両氏。アイトラッキング技術をさらに応用して認知症のみならず、本アプリからの情報をAI解析することで高い精度でMCIの発見を行う、ADHDや大うつ病の検査補助、認知症の予防/治療を行うDTxの実用化などさらなるSaMD創出に意欲を示している。認知症領域の現状 国内65歳以上の5人に2人は認知症またはMCIと推算されている。世界規模では開発途上国(とくにアジア圏)での患者数が増加傾向で、2050年には認知症患者数は1億3,150万例になることが予想されている。今秋には国内でもレカネマブの承認が報道されたことで、物忘れ外来の受診患者が増えている病院もあるそうだが、外来での診察時間は1人あたり10~15分程度と限られ、認知機能検査に時間を割くことが厳しく、診断や治療へコストをかけることができないのが現状である。ヘルスケアベンチャー大賞とは アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げたもの。第5回の受賞者は以下のとおり。〇大賞株式会社アイ・ブレインサイエンス「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」〇学会賞(企業)株式会社AutoPhagyGO 「健康寿命延伸を目指したオートファジー活性評価事業」〇ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞(企業)エピクロノス株式会社「日本人に最適化されたエピゲノム年齢測定によるアンチエイジングの見える化」株式会社TrichoSeeds「男性型脱毛症治療のための毛髪の再生医療」株式会社プリメディカ「日本人腸内細菌叢データベースを活用した腸内環境評価システムの開発」〇アイデア賞(個人)市川 寛氏(同志社大学大学院)「超音波照射による酸化ストレス耐性誘導を介した老化関連疾患予防法の開発」楠 博氏(大阪歯科大学)「オーラルフレイルの新規診断法と治療薬の探索-医科からのアプローチ」

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食道切除術の術後感染予防、アンピシリン・スルバクタムvs.セファゾリン~日本の全国データ

 セファゾリン(CEZ)は食道切除術における感染予防として広く使用されている。一方、アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)は好気性および嫌気性の口腔内細菌をターゲットとしていることから、一部の病院で好んで使用されている。そこで、国際医療福祉大学の平野 佑樹氏らが、食道切除術の術後感染予防における短期アウトカムを2剤で比較したところ、ABPC/SBTがCEZより術後短期アウトカムを有意に改善することが示された。Annals of Surgery誌オンライン版2023年12月15日号に掲載。 2010年7月~2019年3月に食道がんで食道切除術を受けた患者のデータを日本全国の入院患者データベースから抽出した。潜在的交絡因子を調整し、CEZによる感染予防投与とABPC/SBTによる感染予防投与の短期アウトカム(手術部位感染、吻合部漏出、呼吸不全など)を比較するために、傾向スコアのオーバーラップ重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万7,772例のうち、1万6,077例(90.5%)にCEZが、1,695例(9.5%)にABPC/SBTが投与された。・手術部位感染は2,971例(16.7%)、吻合部漏出は2,604例(14.7%)、呼吸不全は2,754例(15.5%)に発生した。・オーバーラップ重み付け後、ABPC/SBTは手術部位感染(オッズ比[OR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.43~0.60)、吻合部漏出(OR:0.51、95%CI:0.43~0.61)、呼吸不全(OR:0.66、95%CI:0.57~0.77)の減少と有意に関連していた。また、呼吸器合併症、術後在院日数、総入院費用の減少とも関連していた。・Clostridioides difficile腸炎および非感染性合併症の割合には差がなかった。

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第76回 海外で新型コロナJN.1が急増

もう来ないでほしい「波」Unsplashより使用日本で現在流行している新型コロナはオミクロン株のEG.5系統(通称エリス)であり、全体の6~7割くらいがこれです。現在インフルエンザの流行で陰に隠れていますが、水面下で感染が広がりつつあるのではないかという見解が増えてきました。懸念されるのは、諸外国で急激に増えているJN.1です(図)。画像を拡大する図. 世界の新型コロナウイルス変異株流行状況GISAIDに登録された各国からのゲノムデータ報告数と国別流行株(10月30日~11月30日)1)諸外国の感染状況アメリカでは12月中旬で1日約3万人の感染者数が報告されており、入院患者数もじわじわと増えてきている状況です。オミクロン株の変異株であるBA.2.86(通称ピロラ)が台頭していますが、ピロラからさらに派生したJN.1(BA.2.86.1.1)が急速に増えています。一応これもピロラの仲間になるわけですが、ややこしいのでJN.1と呼びます。たとえばオランダでは、現在JN.1が最も流行していますが、下水の新型コロナウイルス量が過去最高を記録しており、感染が相当広がっていることがわかります。そのほか、フランスやイタリアにおいても、JN.1が優勢になった直後に急激な入院増加が観察されています。イタリアはこの1年で最多水準の新型コロナ患者数を記録しています。JN.1は、感染性や免疫逃避能がこれまでの変異ウイルスの中で最も強力であることがわかっています(当然といえば当然なのですが)2)。肺炎が多くないのはこれまでのオミクロン株と同様ですが、数が多いと医療逼迫の懸念が生じます。日本もこの波に飲み込まれるのではないかと考えられます。実際、すぐ近くのシンガポールでは呼吸器系の入院のほとんどがJN.1で占められている状況で、マレーシアでも感染者数が倍増しています。ゆえに、同じ島国である日本が、EG.5系統の流行のみでこの冬を乗り切る可能性は低いと考えられます。JN.1は、XBB.1.5やEG.5系統の感染で成立した免疫や、XBB.1.5ワクチンによる免疫を逃避しやすいことから3)、しばらく人類は、このいたちごっこを続けないといけないのかもしれません。ごく軽症であればもう騒がなくてよいのですが、これまでと同じメカニズムで医療逼迫が起こるなら、インフルエンザと同じように警戒し続ける必要があります。参考文献・参考サイト1)東京都健康安全研究センター:世界の新型コロナウイルス変異株流行状況2)Kaku Y, et al. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 JN.1 variant. bioRxiv preprint. 2023 Dec 9. 3)※WHOはXBB.1.5対応ワクチンでJN.1に対しても接種効果ありとコメントしているWHO:Initial Risk Evaluation of JN.1, 19 December 2023

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mRNAベースのRSVワクチン、高齢者への有用性を確認/NEJM

 mRNAベースのRSウイルス(RSV)ワクチン「mRNA-1345」について、60歳以上の高齢者への単回接種はプラセボとの比較において、明白な安全性の懸念が生じることなく、RSV関連下気道疾患およびRSV関連急性呼吸器疾患の発生率を低下したことが示された。米国・ModernaのEleanor Wilson氏らが、第II-III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験(22ヵ国で実施、現在進行中)の結果を報告した。高齢者におけるRSV感染が重大な疾患と死亡を増加させていることが報告されている。mRNA-1345は、安定化させたRSV融合前F糖蛋白をコードするmRNAベースのRSVワクチンで、臨床研究中の新たなワクチンである。NEJM誌2023年12月14日号掲載の報告。プラセボ対照試験で、下気道疾患の予防の有効性を評価 研究グループは、60歳以上の高齢者を、mRNA-1345(50μg)またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要エンドポイントは2つで、少なくとも2つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防と、少なくとも3つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防とした。重要な副次有効性エンドポイントは、RSV関連急性呼吸器疾患の予防とした。安全性も評価した。有効性82.4~83.7%、年齢や併存疾患で定義のサブグループ間も有効性は一致 2021年11月17日~2022年10月31日に、計3万5,541例が無作為化された(mRNA-1345ワクチン群1万7,793例、プラセボ群1万7,748例)。両群のベースライン特性はバランスが取れており、登録時の参加者の平均年齢は68.1歳、49.0%が女性、36.1%が非白人、34.5%がヒスパニック/ラテン系。1つ以上の併存疾患がある患者は29.3%、うっ血性心不全既往1.1%、COPD既往5.5%であった。21.9%が虚弱またはフレイルの状態であった。 追跡期間中央値は112日(範囲:1~379)。主要解析は、予想されたRSV関連下気道疾患症例の50%以上が発生した時点で行われた。 ワクチンの有効性は、少なくとも2つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患に対しては83.7%(95.88%信頼区間[CI]:66.0~92.2)であり、少なくとも3つの徴候・症状を伴うRSV関連下気道疾患に対しては82.4%(96.36%CI:34.8~95.3)であった。また、RSV関連急性呼吸器疾患に対するワクチンの有効性は68.4%(95%CI:50.9~79.7)だった。 防御効果は2つのRSVサブタイプ(AおよびB)いずれに対しても観察され、年齢および併存疾患で定義したサブグループ間でも概して一致していた。 mRNA-1345群ではプラセボ群よりも、局所副反応(58.7% vs.16.2%)、全身性副反応(47.7% vs.32.9%)の発現率が高かったが、ほとんどの副反応は軽度~中程度で、一過性のものだった。重篤な副反応の発現率は、各群とも2.8%であった。

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日本人コロナ患者で見られる肥満パラドックス

 日本人では、肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子ではない可能性を示唆するデータが報告された。肥満ではなく、むしろ低体重の場合に、COVID-19関連死のリスク上昇が認められるという。下関市立市民病院感染管理室の吉田順一氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Medical Sciences」に9月11日掲載された。 古くから「肥満は健康の敵」とされてきたが近年、高齢者や心血管疾患患者などでは、むしろ太っている人の方が予後は良いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる関連の存在が知られるようになってきた。COVID-19についても同様の関連が認められるとする報告がある。ただし、それを否定する報告もあり、このトピックに関する結論は得られていない。吉田氏らは2020年3月3日~2022年12月31日までの同院の入院COVID-19患者のデータを用いて、この点について検討した。 解析対象は1,105人でほぼ全員(99.3%)が日本人であり、半数(50.1%)が男性だった。主要評価項目は入院から29日以内の全死亡(あらゆる原因による死亡)とし、副次的評価項目として侵襲的呼吸管理(IRC)の施行を設定。年齢、性別、BMI、体表面積、ワクチン接種の有無、レムデシビル・デキサメタゾンの使用、化学療法施行、好中球/リンパ球比(NLR)などとの関連を解析した。なお、IRCは酸素マスクによる5L/分以上での酸素投与にもかかわらず、SpO2が93%未満の場合に施行されていた。また、年齢、BMI、NLRなどの連続変数は、ROC解析により予後予測のための最適な値を算出した上で、年齢は72.5歳、BMIは19.6、NLRは3.65をカットオフ値とした。 入院後29日目までに死亡が確認された患者は32人(2.9%)であり、COVID-19による死亡が20人、細菌性肺炎7人、心血管イベント3人、および敗血症性ショック、尿路感染症が各1人だった。年齢と性別の影響を調整後に、BMI別に死亡者数をプロットすると、死亡者数のピークはBMI11~15の範囲にあり、BMI22にも小さなピークが認められた。多変量解析から、死亡リスク低下に独立した関連のある因子として、BMI19.6超(P<0.001)とレムデシビルの使用(P=0.040)という2項目が特定された。反対に、年齢72.5歳超(P<0.001)、化学療法施行中(P=0.001)、NLR3.65超(P=0.001)は、死亡リスクの上昇と有意に関連していた。 IRCが施行されていたのは37人(3.3%)だった。年齢と性別の影響を調整後に、BMI別にIRC施行者数をプロットすると、BMI11~25の範囲で施行者数の増加が認められた。多変量解析から、IRC施行リスクの上昇と有意な関連のある因子として、年齢72.5歳超(P=0.031)、デキサメタゾンの使用(P=0.002)、NLR3.65超(P=0.048)が特定された。IRC施行リスクの低下と有意な関連のある因子は抽出されなかった。 著者らは、BMI19.6以下がCOVID-19患者の全死亡リスク増大に独立した関連があるという結果を基に、「日本人COVID-19患者で認められる肥満パラドックスは、BMI高値が保護的に働くというよりも、BMI低値の場合にハイリスクである結果として観察される現象ではないか」との考察を述べている。また、レムデシビルが死亡リスク低下の独立した関連因子である一方、デキサメタゾンがIRC施行リスク上昇の独立した関連因子であったことについては、「サイトカインストームに伴う呼吸不全にデキサメタゾンが使用された結果であり、同薬がIRC施行リスクを高めるわけではない」と解説している。

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第175回 研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院

<先週の動き>1.研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院2.5シーズンぶりのインフルエンザ警報、早期対策を/厚労省3.オンライン診療、メリットあるも要件の厳格化へ/厚労省4.処方箋なしで医薬品を販売する「零売薬局」、規制強化へ/厚労省5.レカネマブが保険適用、1年間で298万円/厚労省6.来年度診療報酬改定、医療従事者の賃上げに本体は0.88%引き上げ/政府1.研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院東京大学医学部付属病院の臨床研修医2人が、病気ではないにも関わらず、互いに処方箋を発行し、GLP-1受容体作動薬を入手していたことが明らかになった。この報道に対して、病院側は「自己使用目的であって転売目的ではなく、常習性もなかった」と判断し、病院長から厳正な指導を行ったことを明らかにした。GLP-1受容体作動薬は、インターネット上で「やせ薬」として紹介されており、自由診療目的で処方を行う医療機関が急増している。一方、日本糖尿病学会は、11月28日に「2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を発表しており、本来は糖尿病治療薬であるのに、美容、痩身、ダイエット目的での自由診療による処方が一部のクリニックで行われており、需要増加による供給不足が生じている。糖尿病治療薬の適切使用は重要であり、医療専門家による不適切な薬剤使用は、専門医の信頼を損なう行為であり、日本糖尿病学会はこれを厳しく警告している。参考1)GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日糖会)2)研修医、病気装い糖尿病薬入手=供給不足の「やせ薬」-東大病院(時事通信)3)東大病院の研修医2人、病気装って糖尿病薬を入手 「やせ薬」と話題(朝日新聞)2.5シーズンぶりのインフルエンザ警報、早期対策を/厚労省厚生労働省は、2023年12月15日に全国約5,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの感染者数が1医療機関当たり33.72人となり、警報レベル(30人超)に達したことを発表した。警報は2019年1月以来、5シーズンぶりの事態で、とくに北海道では60.97人と最多。全国で33道県が警報レベルを超え、1週間で6,382ヵ所の保育所や学校が休校や学級閉鎖に追い込まれた。慶應義塾大学の菅谷 憲夫客員教授は、「新型コロナウイルス感染症の流行中にインフルエンザの流行が抑えられたことで、とくに子どもを中心に免疫が落ちている」と指摘。基本的な感染対策の継続と、症状があれば早期受診を呼びかけている。また、菅谷教授は、2つのタイプのA型インフルエンザウイルスが同時に流行していることや、約3年間に大規模な流行がなかったことを、早期警報の要因として挙げている。高齢者や妊婦、基礎疾患を持つ人は、とくに注意が必要であり、発熱などの異常を感じたら早期受診が推奨されている。冬休みに小児のピークが過ぎる可能性があるが、年末年始の休暇シーズンで全国的な感染拡大の恐れもあるため、手洗い、うがい、マスク着用などの基本的な感染対策の徹底が求められている。参考1)インフルエンザ、全国で「警報レベル」…コロナ禍の感染対策で識者「免疫落ちている」(読売新聞)2)インフルエンザ、今季初の警報レベル 1医療機関33.72人 厚労省(毎日新聞)3.オンライン診療、メリットあるも要件の厳格化へ/厚労省厚生労働省は、12月15日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、オンラインで患者を診療した際に医療機関が算定する初・再診料の要件を2024年度の診療報酬改定で厳格化する案を了承した。新たな要件には、「初診では向精神薬を処方しないこと」を医療機関のホームページに掲示することが含まれている。さらに、遠方の患者を多く診療する医療機関に対しては、対面診療の連携先を報告させることも検討されている。厚労省は、新型コロナウイルス禍を経て、オンライン診療は重要であるとして、保険診療だけでなく自由診療も対象にガイドラインを策定し、規制緩和を行なってきたが、初診時に向精神薬の処方を行ったり、メールやチャットだけで診察や薬の処方を行うなど、ガイドラインで認めていない方法で診療を行っている医療機関が問題視されてきた。今後、厚労省では、オンライン診療を行っている医療機関がガイドラインを遵守しているか実態調査を行うため、スケジュールや調査方法などを検討するほか、患者がオンライン診療を適切に行っている医療機関を選択できるよう、情報発信の強化に乗り出すことにした。一方、慶應義塾大学などの研究グループは、うつ病や不安症などの精神科診療において、オンライン診療が対面診療と同等の治療効果があることを発表した。この研究結果は、オンライン診療の普及に向けた政策的議論に貢献するもので、さらに、オンライン診療は、通院に要する時間の短縮や費用の削減といった副次的効果もあり、今後もデジタルトランスフォームを通して医療現場に浸透していくとみられる。参考1)オンラインの初・再診料要件、厳格化案を了承「向精神薬初診で処方せず」の掲示必須に(CB news)2)オンライン診療 不適切な医療機関の実態調査へ 厚労省(NHK)3)オンライン診療、対面と遜色なし 普及に弾み(日経新聞)4.処方箋なしで医薬品を販売する「零売薬局」、規制強化へ/厚労省厚生労働省は、処方箋なしで医療用医薬品を販売する「零売薬局」に対する規制を強化する方針を固めた。不適切な販売方法や広告が増加していることに対応するために打ち出されたもの。2022年時点で60店舗以上の零売薬局が存在し、例外的に処方箋なしで医療用医薬品を販売できるが、これまで大規模災害時など「正当な理由」がある場合に限られていた。しかし、一部の薬局が通知を逸脱し、やむを得ない状況ではないにも関わらず日常的に医療用医薬品を販売する薬局が増加していることや、不適切な広告などが確認されており、重大な疾患や副作用が見過ごされるリスクが高まっていた。厚労省は、処方箋に基づく販売を原則とし、やむを得ない場合に限って認めることを法令で明記する方針。また、医療用医薬品の販売を強調する広告も禁止する方向で調整している。厚労省は12月18日に開かれる医薬品の販売制度に関する検討会で取りまとめを行い、医薬品医療機器制度部会に報告した後、厚生労働省から正式に通知が発出される見込み。参考1)医薬品の販売制度に関する検討会(厚労省)2)「零売薬局」の販売規制へ 処方箋なしで医療用医薬品-認める条件明確化・厚労省(時事通信)3)特例のはずが…処方箋なし薬「零売」横行 副作用や疾患見逃す恐れ(毎日新聞)5.レカネマブが保険適用、1年間で298万円/厚労省厚生労働省は、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ(商品名:レケンビ)」を公的医療保険の適用対象とし、体重50kgの患者の1回当たりの価格を約11万4千円、年間約298万円と設定した。この薬は、アルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ(Aβ)」を取り除くことを目的とした初の治療薬で、軽度認知障害や軽度の認知症の人が対象。投与は2週に1度の点滴で行われる。レカネマブの投与は、副作用のリスクを考慮し、限られた医療機関でのみ行われる予定で、副作用には脳内の微小出血やむくみが含まれ、安全性を重視するため、認知症専門医が複数いる施設でMRIやPETを備えていることなどの条件に合致する限られた医療機関で処方される。臨床治験では、レカネマブを1年半投与したグループは、偽薬を投与したグループより病気の悪化を27%抑える結果が得られた。レカネマブの市場規模は、ピーク時に年間986億円に上ると予測されており、医療保険財政への影響が懸念されている。また、薬価の決定に際しては、社会的価値の反映が議論されたが、最終的には製造費や薬の新規性を考慮した通常の算定方法で算出された。専門家や関係者からは、新薬の保険適用により治療が前進することへの期待とともに、検査費用や治療に関する不安の意見も上がっている。また、効果が見込める患者の適切な選別や、新しい治療薬に対応できる認知症医療システムの構築が今後の課題とされている。参考1)新医薬品の薬価収載について(厚労省)2)認知症薬エーザイ「レカネマブ」 年298万円 中医協、保険適用を承認(日経新聞)3)見えぬ全体像、処方可能な医療機関は限定的 アルツハイマー病新薬(毎日新聞)4)アルツハイマー病新薬 年間約298万円で保険適用対象に 中医協(NHK)6.来年度診療報酬改定、医療従事者の賃上げに本体は0.88%引き上げ/政府政府は来年度の診療報酬改定において、医療従事者の人件費に相当する「本体」部分を0.88%引き上げる方針を固めた。今回の診療報酬の改定をめぐっては、各医療団体から物価高騰や医療従事者の賃上げに対応する意見が上がっていた。一方、薬の公定価格である「薬価」は約1%引き下げとなり、全体としてはマイナス改定となる見通し。岸田 文雄首相は、財務省と厚生労働省の間での議論を経て、賃上げ方針を医療従事者にも波及させるために、最終的に引き上げを決定した。診療報酬改定は原則2年に1度行われ、今回の改定は前回2022年度の0.43%引き上げを上回る水準となる。今回の改定により、医療従事者の処遇改善が期待される一方で、国民の保険料負担の増加が懸念される。また、診療所の利益剰余金の増加や医療費の抑制が課題となっており、国民負担の抑制が今後の大きな課題になっている。参考1)「本体」0.88%引き上げ=賃上げ対応、全体ではマイナス-24年度診療報酬改定(時事通信)2)診療報酬「本体」0.88%上げ、政府方針…「薬価」は1%引き下げで調整し全体ではマイナス改定(読売新聞)3)診療報酬改定 人件費など「本体」0.88%引き上げで調整 政府(NHK)

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BMIが高いとコロナワクチンの抗体応答が低い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが普及し、その効果に関してさまざまな報告がなされている。ワクチンと体型、とくにBMI高値の肥満の人にはどのように関係するのであろう。この疑問に対し、オーストラリア・クイーンズ大学化学・分子バイオサイエンス学部のMarcus Zw Tong氏らの研究グループは、COVID-19から回復した被験者から血液サンプルを採取し、ワクチン接種前後の抗体反応を測定・解析した。その結果、高いBMIがワクチンの抗体応答低下と関連することが示唆された。Clinical & Translational Immunology誌2023年12月3日号の報告。BMIの上昇がワクチンの体液性免疫応答の障害と関連 方法としてSARS-CoV-2感染から約3ヵ月後および13ヵ月後に回復した被験者から血液サンプルを採取(これらの対象者はSARS-CoV-2に曝露されておらず、また、その間にワクチン接種も受けていない)。そして、2回目のCOVID-19ワクチン接種後約5ヵ月経過した人(大多数はSARS-CoV-2感染歴なし)から血液サンプルを採取。SARS-CoV-2に対する体液性反応を測定し、BMIが25以上かそれ以下かでグループ分けし、結果を解析した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性差を考慮した場合、高いBMI(25以上)がSARS-CoV-2感染後のワクチン抗体応答の低下と関連することが示された。・感染後3ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下と関連していた。・感染後13ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下およびスパイク陽性B細胞の割合の低下と関連していた。・2次ワクチン接種後5ヵ月目では、BMI≧25とSARS-CoV-2に対する体液性免疫との間に有意な関連は認められなかった。 これらの結果を受けて、Tong氏らは「高いBMIはSARS-CoV-2感染に対する体液性免疫応答の障害と関連していることが示された。BMIが25以上の人における感染誘導性免疫の障害は、感染誘導性免疫に依存するのではなく、ワクチン接種のさらなる促進を示唆する」と結論付けている。

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重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。ECMO施行48時間未満の重症ARDS患者を無作為化、60日以内のECMO離脱成功を比較 研究グループは2021年3月3日~12月7日に、ICUにてVV-ECMO施行開始から48時間未満の18歳以上75歳未満の重症ARDS患者を、腹臥位ECMO群または仰臥位ECMO群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 腹臥位ECMO群では、腹臥位療法の早期中止基準を満たさない限り、最初の4日間に16時間の腹臥位を少なくとも4回行い、仰臥位ECMO群ではECMO施行中の腹臥位を60日目まで禁止した。 主要アウトカムは、無作為化後60日以内のECMO離脱成功までの期間。離脱成功は、ECMO中止後30日間、ECMOまたは肺移植を受けず生存した場合と定義した。副次アウトカムは、無作為化後90日時点の全死亡、ECMOおよび人工呼吸器非装着期間、ICU在室および入院期間などであった。また、有害事象(無作為化後7日間の褥瘡を含む)および重篤な有害事象についても評価した。腹臥位療法と仰臥位療法で、主要アウトカムおよび副次アウトカムに有意差なし 適格性を評価された250例のうち170例が無作為化され(腹臥位ECMO群86例、仰臥位ECMO群84例)、全例が追跡調査を完了した。 170例の年齢中央値は51歳(四分位範囲[IQR]:43~59)、女性は60例(35%)。170例中159例(94%)は、ARDSの主な原因が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎であった。ECMO開始前に164例(96%)が腹臥位で、呼吸器系コンプライアンス中央値は15.0mL/cm H2O(IQR:10.7~20.6)であった。 無作為化後60日以内にECMO離脱に成功した患者は、腹臥位ECMO群86例中38例(44%)、仰臥位ECMO群84例中37例(44%)であった(群間リスク差:0.1%[95%信頼区間[CI]:-14.9~15.2]、部分分布ハザード比:1.11[95%CI:0.71~1.75]、p=0.64)。 また、無作為化後90日以内に腹臥位ECMO群で44例(51%)、仰臥位ECMO群で40例(48%)が死亡し(絶対群間リスク差:2.4%、95%CI:-13.9~18.6、p=0.62)、90日以内のECMO装着期間(日数)の平均値はそれぞれ27.51および32.19(絶対群間差:-4.9、95%CI:-11.2~1.5、p=0.13)であり、すべての副次アウトカムで両群間に有意差はなかった。 重篤な有害事象については、心停止の発生率は腹臥位ECMO群より仰臥位ECMO群で有意に高かったが(3.5% vs.13.1%、絶対群間リスク差:-9.6%[95%CI:-19.0~-0.2]、相対リスク:0.27[95%CI:0.08~0.92]、p=0.05)、それ以外の重篤な有害事象の発現率は両群で同等であり、両群とも不測のECMO脱血管、予定外の抜管および重度の喀血の発生は認められなかった。

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小児インフルエンザ治療でのタミフル使用の実態とは

 米国では、インフルエンザに罹患した小児にはタミフルなどの抗ウイルス薬を処方することが推奨されているにもかかわらず、その処方率は低く、特に2歳未満の小児では5人に3人が同薬を処方されていないことが新たな研究で明らかになった。米ヴァンダービルト大学モンロー・カレル・ジュニア小児病院の小児科医であるJames Antoon氏らによるこの研究の詳細は、「Pediatrics」に11月13日掲載された。 この研究は、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseを用いて、米国の50州での民間保険に関連する取引データの中から2010年7月1日から2019年6月30日の間の外来または救急外来での18歳未満の小児に対する処方箋の請求データを収集し、小児インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬処方の動向を調査したもの。抗ウイルス薬の処方は、オセルタミビル(商品名タミフル)、バロキサビル(商品名ゾフルーザ)、またはザナミビル(商品名リレンザ)が処方された場合と定義された。主要評価項目は、小児インフルエンザ患者での抗ウイルス薬の処方箋受取率(抗ウイルス薬の薬局請求数を対象小児の総数で割ったもの)、副次評価項目は、インフルエンザの診断を受けた患者のうち抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合と、物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬のコストとした。 その結果、研究対象期間中における治療用・予防用を合わせた抗ウイルス薬の処方件数は141万6,764件であり、そのほとんど(99.8%)がオセルタミビルであることが明らかになった。研究対象期間全体で、1インフルエンザシーズン当たりの抗ウイルス薬の平均処方件数は小児1,000人当たり20.6件であり、インフルエンザシーズンにより4.35件から48.6件の変動が見られた。 抗ウイルス薬により治療された患者の割合は、年齢層では12歳以上、インフルエンザシーズンでは2017/2018年シーズン、地理別では東南中央地域で特に高かった。これに対して、インフルエンザ合併症のリスクが高い2歳未満のインフルエンザ患者のうち、ガイドラインに則った抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合は40%未満(1,000人当たり367件の処方)と低かった。 物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬の総コストは2億845万8,979ドル(1ドル150円換算で312億6884万6,850円)であり、1処方当たりのコスト(中央値)は111ドル(同1万6,650円)から151ドル(同2万2,650円)の間であった。 Antoon氏は、「ガイドラインでは、インフルエンザの小児患者に対しては、年齢を問わず抗ウイルス薬による治療が推奨されているにもかかわらず、われわれの研究から、2歳未満の小児で同治療が施されたのは40%に満たないことが明らかになった。また、全ての年齢層で抗ウイルス薬の使用率が低かったことも気に掛けるべき重要な結果だ」と話す。 また、インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の使用状況は、地域により大きく異なることも示された。この点についてAntoon氏は、「この結果は、特に最も弱い立場にある小児でのインフルエンザの予防と治療に改善の余地があることを浮き彫りにするものだ」との見方を示す。研究グループは、このような地域差が生じる原因として、小児に対する抗ウイルス薬の使用を推奨する国のガイドラインが周知されていない可能性や、副作用への懸念、あるいは薬効に対する信頼不足が存在する可能性があると推測している。 研究グループは、「今回の研究結果は、小児患者でのインフルエンザの管理の質を向上させる必要性を強調するものだ」と結論付けている。Antoon氏は、「外来で小児のインフルエンザ患者を治療することで、症状の持続期間、家庭内感染、抗菌薬の使用、中耳炎などのインフルエンザ関連の合併症が減少することが報告されている」と補足している。

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第75回 今冬新型コロナは再び流行するのか?

インフルエンザの流行が爆発中Unsplashより使用新型コロナはどこにいったのかというくらい、インフルエンザの感染が流行しています。うちの子供の学校でも学級閉鎖が相次いでいます。しかし、何となく一山越えた感じがあって、そろそろ落ち着いてくれるんじゃないかと期待しています。画像を拡大する図. インフルエンザと新型コロナの定点医療機関当たりの患者数(人)(筆者作成)1、2)新型コロナは定点医療機関当たりの患者数が2.75人とじわじわと増えてきているような印象があって、もしかしてこれは…と警戒しています。アルファ株やデルタ株のときほど怖がらなくてもよいと思っていますが、ワクチン接種を続けている人もだんだんと減ってきていますから、実生活に与える感染のインパクトは、まだ大きいかもしれません。ママ友に聞くと、子供に至ってはインフルエンザワクチンだけで2回受診しないといけませんし、ここに新型コロナワクチンは無理というのが本音のようです。ワクチン接種の手間が大きいので、早く混合ワクチンが登場してほしいところです。もはや複数回感染は新型コロナでは当たり前のように起こっているので、「もうかかっても大したことない」と思われる方が多いですが、どうも複数回感染するほど後遺症リスクは高くなってくるという報告もあって3)、そんな単純な問題ではなさそうです。咽頭結膜熱、溶連菌感染症、マイコプラズマ、そして…さらに、国内では小児を中心に咽頭結膜熱、溶連菌感染症が流行しています。いずれも過去最多水準で推移しており、小児科は大忙しです。にしても、それほどコロナ禍の感染対策が小児の免疫に影響を与えたのかと驚くばかりです。韓国や中国ではさらにマイコプラズマが流行し、そしてイギリスでは百日咳の報告数が増えていると報道されています。いやー、そんなに病原微生物が流行ったら、困りますね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザの発生状況2)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~3)Kostka K, et al. “The burden of post-acute COVID-19 symptoms in a multinational network cohort analysis.” Nat Commun. 2023;14:7449.

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コロナ禍の認知機能低下、運動量減少やアルコール摂取で増大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中の規制(活動制限や物理的距離制限など)が50歳以上の中~高齢者の認知機能に及ぼした影響を調査した結果、パンデミック前と比べてパンデミック中は認知機能が顕著に悪化し、運動量の減少およびアルコール摂取量の増加と関連していたことが、英国・エクセター大学のAnne Corbett氏らによる横断研究で明らかになった。The Lancet Healthy Longevity誌2023年11月号の報告。 これまでの大規模コホート研究では、パンデミック以前に比べて抑うつや不安、ストレス、睡眠障害、アルコール摂取量が増加していることが報告されている。これらは認知症と密接に関係するリスクであることから、研究グループはパンデミックが認知機能の健康に及ぼした影響やその要因、コロナ規制解除後も持続するかどうかを明らかにするため、英国の縦断研究「PROTECT試験」のデータを用いて、中~高齢者の認知機能を調査した。 PROTECT試験の参加者は認知症ではない50歳以上の人で、認知機能評価(実行機能と作業記憶)や健康関連アンケートを毎年受けるとともに、身体活動量やアルコール摂取量などの生活習慣を聴取された。パンデミック前(2019年3月1日~2020年2月29日)、パンデミック1年目(2020年3月1日~2021年2月28日:コロナ規制期間)、パンデミック2年目(2021年3月1日~2022年2月28日:コロナ規制解除期間)における同じ個人のデータを収集し、線形混合効果モデルを使用して3つの期間の認知機能を比較した。サブグループ解析では、COVID-19既感染者や軽度認知症患者を対象として関連を調べるとともに、探索的解析では認知機能の変化に関連する因子を同定した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、3,142例(女性:1,696例[54.0%]、平均年齢:67.5歳[SD 9.6、範囲 50~96])が含まれた。パンデミック1年目に752例(23.9%)がCOVID-19を発症し、147例(4.7%)が軽度認知症の基準を満たした。・パンデミック前と比べて、パンデミック1年目は全コホートで実行機能と作業記憶が有意に低下した(実行機能の効果量:0.15[95%信頼区間[CI]:0.12~0.17]、作業記憶の効果量:0.51[95%CI:0.49~0.53]、いずれもp<0.0001)。・パンデミック2年目においても、全コホートで作業記憶が有意に低下していた。・COVID-19既感染者および軽度認知症患者のサブグループでも同様の結果であった。・COVID-19の流行前(2017~19年)と比較して、パンデミック1年目および2年目の認知機能は加速度的に低下していた。・全コホートにおいて、認知機能の低下は運動量減少およびアルコール摂取量増加と関連していた。COVID-19既感染者では抑うつ、軽度認知症患者では孤独とも関連していた。

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うがいと鼻洗浄がコロナ感染による入院リスクを低減か

 新型コロナウイルスに感染した際には、生理食塩水でうがいと鼻洗浄(鼻うがい)をすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクを低減できる可能性のあることが、小規模研究で明らかになった。米テキサス大学ヒューストン医療科学センター産婦人科・生殖科学分野教授のJimmy Espinoza氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表された。 この研究では、2020年から2022年の間に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された58人(18〜65歳)を、低濃度(27人、平均年齢39歳)または高濃度(28人、同41歳)の生理食塩水でうがいと鼻洗浄をする群にランダムに割り付け、COVID-19の症状の発症頻度や持続期間、転帰(入院、集中治療室入室、機械的人工換気によるサポート、死亡)について比較を行った。対照者は、本試験期間中に新型コロナウイルスに感染した9,398人(平均年齢45歳)とした。生理食塩水は、8オンス(約237mL)のお湯に2.13gの塩を溶かした場合を低濃度、6gを溶かした場合を高濃度とし、対象者には1日4回、14日にわたってうがいと鼻洗浄を行ってもらった。対象者のうちの3人は追跡不能となった。 その結果、入院率は低濃度群で18.5%、高濃度群で21.4%であったのに対して対照群では58.8%であり、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄を行った群では濃度の高低にかかわらず、対照群よりも入院率が有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。それ以外の検討項目については、いずれの群でも対照群との間に有意な差は認められなかった。 Espinoza氏は、「われわれの目的は、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄が、新型コロナウイルス感染に伴う呼吸器症状の改善と関連するかどうかを確認することだった。検討の結果、高濃度または低濃度のいずれであっても生理食塩水でうがいと鼻洗浄を行った人では、対照群と比べてCOVID-19による入院率が低いことが明らかになった」と話す。その上で同氏は、「この生理食塩水によるうがいと鼻洗浄の効果に関する結果は、より大規模な試験で検証する必要がある。また、この方法が新型コロナウイルスのあらゆる株に有効であるかどうかについての検討も必要だ」と述べている。 ただしEspinoza氏は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄がワクチン接種や抗ウイルス薬に取って代わるものではないことを強調している。同氏は、「うがいや鼻洗浄は非常に単純な介入だが、われわれが臨床で行っている介入に取って代わるものではない。しかし、実施の容易さから、補完的な介入にはなるだろう。実際、塩は安価な上にどこででも入手可能だ」と話す。 一方、この研究には関与していない、米ノースショア大学病院の感染症専門医であるBruce Hirsch氏は、「生理食塩水によるうがいや鼻洗浄をCOVID-19の治療の一部とするには時期尚早だ」との見方を示す。同氏は、「ささいな介入ではあるが、私は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄を患者に勧めるのはもう少し様子を見てからにしたいと考えている」とコメントしている。

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生後6ヵ月~4歳へのコロナワクチン、救急受診・入院予防に40%有効/CDC

 米国では2022年6月より、新型コロナウイルスの起源株に対する1価mRNAワクチンが、生後6ヵ月~4歳児に推奨となった。米国疾病予防管理センター(CDC)は、2022年7月~2023年9月における乳幼児への新型コロナワクチンの有効性を評価したところ、ワクチン未接種と比較すると、2回以上のコロナワクチン接種は、救急外来受診と入院の予防に40%有効であることが認められた。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年12月1日号に掲載された。 生後6ヵ月~4歳への新型コロナワクチンは、2022年6月に起源株対応1価ワクチン、2022年12月~2023年4月にオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンが米国にて承認された。この年齢層におけるワクチン接種率は成人よりも著しく低く、2023年1月以降、幼児における新型コロナワクチンの1次接種完了の割合は米国で約5%となっている。なお、1次接種の回数は、ファイザー製では3回、モデルナ製では2回。 本研究では、7つの小児医療センターの急性呼吸器感染症(ARI)に関する集団ベースの前向きサーベイランスであるNew Vaccine Surveillance Network(NVSN)にて、2022年7月1日~2023年9月30日の期間に登録された6ヵ月~4歳の小児7,434例を対象とした。COVID-19によるARI患児の救急外来受診および入院を予防するワクチンの有効性(VE)を、ロジスティック回帰モデルを用いて推定し、ワクチン未接種者と1回または2回以上のワクチン接種を受けた者のオッズをSARS-CoV-2陽性患者とSARS-CoV-2陰性患者で比較した。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中、救急外来または病院で登録されたARIを有する6ヵ月~4歳児7,434例のうち、387例(5.0%、年齢中央値15ヵ月)がSARS-CoV-2検査で陽性となり、7,047例(95.0%、22ヵ月)が陰性となった。・SARS-CoV-2陽性群の140例(36.2%)でほかの呼吸器ウイルスが検出され、ライノウイルス/エンテロウイルス(RV/EV)がその約50%、RSウイルスが21.4%を占めていた。一方、SARS-CoV-2陽性群(7,047例)では、RV/EVが全体の36.7%、RSウイルスが17.1%を占めていた。・ARIを発症した乳幼児の85.8%が新型コロナワクチンを接種していなかった。1回接種者は3.8%、2回以上接種者は10.4%であった。・2回目接種率は地域差および人種差が大きかった。地域差は各施設で3.9~27.9%、白人で19.0%、黒人/アフリカ系で2.5%だった。・ワクチンを2回以上接種した小児は、未接種の小児よりも年齢が高かった(年齢中央値 2回以上接種:27ヵ月vs.未接種:21ヵ月)。・未接種者と比較した場合、ワクチンを2回以上接種した乳幼児のワクチンの有効性(VE)は、COVID-19関連の救急外来受診および入院の予防に対して40%(95%信頼区間[CI]:8~60)であり、最終接種からの間隔の中央値は93日(IQR:51~172)であった。・COVID-19関連の救急外来受診および入院の予防に対するワクチン1回接種の有効性は31%(95%CI:-27~62)であったが、95%CIにnull値が含まれていた。 著者は本結果について、ARIで救急受診または入院した乳幼児において、ワクチン2回以上の接種率は10.4%と低いものの、SARS-CoV-2陽性も5%と低い割合であり、この年齢層が過去に軽度のCOVID-19を経験するなど、免疫防御を有する可能性を示唆している。乳幼児へのワクチンは有効だが、ワクチン接種率と医療行為を受けたCOVID-19発生率が低いため、ワクチン効果の推定値の精度は制限されていると述べている。

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パクスロビド投与後のCOVID-19再発リスクは高い?

 抗ウイルス薬のパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防に有効ではあるが、その反面、再発リスクを著しく高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。パクスロビドを投与されたおよそ5人に1人で、そのようなウイルス学的なリバウンドが認められたという。米マサチューセッツ総合病院の感染症専門医であるMark Siedner氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に11月14日掲載された。 この研究では、新型コロナウイルス検査で陽性の判定を受けたCOVID-19患者127人を対象として、ウイルス学的リバウンドの発生率を、パクスロビドによる治療を受けた患者(72人、投与群)と受けていない患者(55人、非投与群)との間で比較した。新型コロナウイルスウイルス学的リバウンドは、1)新型コロナウイルス検査で陰性の判定後に陽性の判定が出た場合、2)ウイルス量が前回の測定値から1.0 log10 copies/mL(1mL当たりのウイルスのコピー数が10個)以上増加し、4.0 log10 copies/mL(1mL当たりのウイルスのコピー数が10の4乗個)未満であったウイルス量が、検査で2回連続して4.0 log10 copies/mL以上になった場合、と定義された。 投与群には、非投与群に比べて平均年齢と新型コロナワクチン接種率が高く、免疫抑制状態にある人が多いという特徴が認められた。新型コロナウイルスウイルス学的リバウンドは、投与群の20.8%、非投与群の1.8%で確認された(絶対差19.0%、95%信頼区間9.0〜29.0%、P=0.001)。多変量解析では、投与群のみウイルス学的リバウンドと有意に関連することが示された(調整オッズ比10.02、95%信頼区間1.13〜88.74、P=0.038)。また、ウイルス学的リバウンドの発生率は、パクスロビドによる治療開始時期が診断と同日(0日)の場合で29.3%、診断から1日後で16.7%、2日以上後で0%と、開始時期が早いほど高いことも判明した。さらに、リバウンドしなかった患者でのウイルス排出期間(中央値)は3日であったのに対し、リバウンドが生じた患者での排出期間は14日と長かった。 Siedner氏は、「われわれの研究から、パクスロビドを投与された人の20%以上でウイルス学的リバウンドという現象が認められ、この現象が予想よりもはるかに頻繁に生じていることが明らかになった。また、リバウンドが生じた人ではウイルスの排出期間も長かった。このことは、これらの人が、COVID-19から回復後もウイルスを伝播させる可能性のあることを示唆している」と述べている。 なお、これまでの臨床試験では、パクスロビドを投与された患者の中でウイルス学的リバウンドが生じたのは1〜2%であったことが報告されている。研究グループは、この数字の違いは、過去の臨床試験が2つの時点でしか患者を評価していないことに起因する可能性があるとの見方を示す。これに対して今回の研究では、新型コロナウイルス感染から治療を経てウイルス学的リバウンドが生じるまで、患者が注意深く観察された。論文の共著者である、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJonathan Li氏は、「われわれは、週に3回、時には数カ月にわたって患者をフォローアップし、自宅でのサンプル採取を行った。ウイルスRNAレベルとウイルス培養データの両方があることで、パクスロビドを使用した患者の経験をより包括的、かつ詳細にとらえることができた」と述べている。 ウイルス学的リバウンドのリスクがどの程度のものであれ、研究グループは、パクスロビドの有用性を支持している。Li氏は、「私にとって、パクスロビドがCOVID-19重症化リスクの高い患者に対する救命薬であることに変わりはない」と話す。同氏は、「この研究は重要な情報を提供するものではあるが、パクスロビドが入院や死亡の予防に優れた効果を発揮するという事実を変えるものではない。むしろ、パクスロビドを投与された患者に関する貴重な洞察を提供する結果であり、同薬の投与後の患者の転帰を予測するのに役立つ」と話している。

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第174回 2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省

<先週の動き>1.2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省2.1%の薬価引き下げで医療費抑制と処遇改善へ、製薬産業が犠牲に/厚労省3.健康保険証廃止、マイナ保険証への移行は予定通りの2024年秋か/政府4.特許切れの先発品を希望した患者の自己負担増、来年度から/厚労省5.急増する高齢者対策、2025年夏から介護保険利用料の2割負担を拡大へ/厚労省6.カテーテル治療後の死亡事例、さらに10例を追加調査へ/神戸徳洲会病院1.2024年度診療報酬改定の基本方針、医療DXと人材確保が焦点に/厚労省 厚生労働省は、12月8日に社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で「2024年度の診療報酬改定に関する基本方針案」を提示し、大筋で了承された。今回の改定の主な柱は、医療デジタルトランスフォーメーション(DX)、物価高騰を考慮した賃金上昇、人材確保、医師らの働き方改革であり、これらに取り組むとしている。改定の重点課題としては、人材確保と働き方改革の推進が挙げられ、医療従事者の賃上げを促す方向性が打ち出された。とくに「コメディカル」の賃金格差の解消と人材流出の防止を目指す。また、地域包括ケアシステムの推進や医療機能の分化・強化、連携の推進といった従来の取り組みも強化する。基本方針案では、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにデジタル化の遅延が明らかになったことを受け、マイナ保険証や電子カルテの活用による医療機能の強化を明記された。また、医療従事者の長時間労働といった厳しい勤務環境の改善も強調されている。医療部会では、医療従事者の処遇改善、医療DXの推進、高齢者の救急医療の充実などに関する意見が出されたほか、医療保険制度の持続可能性を向上させるために効率化・適正化も議論された。今後、この基本方針をもとに、来年度の当初予算案を閣僚間で最終調整する「大臣折衝」を経て、改定幅が年内に最終決定される。参考1)令和6年度診療報酬改定の基本方針(厚労省)2)診療報酬改定の基本方針案、大筋了承 社保審部会 医療DX、人材確保強化(産経新聞)3)24年度診療報酬改定の基本方針案を了承 社保審の2部会、重点課題は1つに(CB News)2. 1%の薬価引き下げで医療費抑制と処遇改善へ、製薬産業が犠牲に/厚労省厚生労働省は、2024年度の診療報酬改定において、医薬品の公定価格の「薬価」を市場取引価格に近付けるため、約1.0%程度の引き下げを検討している。この措置により、医療費の約4千億円が抑制され、国費1千億円程度の圧縮が見込まれている。さらに厚労省は医療従事者、とくに看護補助者らの賃上げを実施した医療機関に対して、報酬を加算する仕組みの導入を検討している。この賃上げの加算は、実績に応じて報酬を増やす仕組みであり、厚労省と財務省が対象職種や加算金額を協議している。診療報酬は、薬価部分と医師や医療従事者らの人件費に当たる「本体」部分から成り立っており、今後の本体部分の改定率が焦点となる。日本医師会は賃上げの実現に向けて増額を訴えているが、財務省は診療所の利益が多いとして引き下げを主張している。厚労省は、看護職員処遇改善評価料を超える幅広い職種の賃上げにつなげるための仕組みを中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会で検討する方針だが、具体的な処遇改善策は年明けに示される予定で、看護職員に限らず医療現場で働く全職種の賃上げが必要とされている。一方、わが国の製薬業界は、薬価の過度な抑圧により、構造的デフレ産業に陥るリスクが指摘されている。新薬開発の成功率が低く、とくにわが国の薬価制度では革新的な医薬品の価格が低く抑えられる傾向にあり、日本市場の魅力が失われたため、新薬の発売が米国や欧州市場よりも遅れる「ドラッグ・ラグ」や、まったく発売されない「ドラッグ・ロス」が問題となっている。今年4月、日本製薬工業協会(JPMA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)からなる日米欧製薬3団体は来年度の改定にあたって、薬価制度改革への提言を行い、患者の新薬へのアクセスを確保し、企業が次世代の治療法やワクチンに再投資できるようにするために、新薬を開発する企業のイノベーションを推進するような薬価制度への移行を求めていた。なお、今年の11月に開催された中医協の薬価専門部会では、ドラッグ・ロスに陥っている医薬品86品目のうち39品目が「わが国にはその病気に対する既存薬がない」と報告されていた。参考1)「薬価」1%引き下げを検討 診療報酬改定、賃上げで加算も(共同通信)2)薬価1%引き下げ検討 診療報酬、賃上げで加算も 6年度改定、厚労省(産経新聞)3)診療報酬の処遇改善策、年明けに具体案 中医協の分科会で枠組み検討へ(CB News)4)2024年度(令和6年度)薬価制度改革への提言(製薬協)5)「薬のないニッポン」 薬価抑圧が招いた危機(日経新聞)6)薬価下落、製薬業は「構造的デフレ」 制度見直し求め自民議連が提言(朝日新聞)3.健康保険証廃止、マイナ保険証への移行は予定通りの2024年秋か/政府政府は、現行の紙の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を明らかにしている。岸田 文雄首相が12日に開催予定の「マイナンバー情報総点検本部」で、予定通り2024年秋に廃止の方針を表明する見通しという報道があった。これに対して武見 敬三厚生労働大臣は、12月8日の記者会見で「決定した事実はない」と述べ、国民の不安を払拭する発言を行った。政府は、マイナンバーカードのトラブルを受けて総点検を行い、その結果を踏まえて最終判断を下す意向。政府関係者によると、マイナ保険証への移行には問題がないと判断されている。これまでデジタル庁の「マイナンバー情報総点検本部」による点検では、マイナ保険証や障害者手帳のひも付けに関する誤りが確認されたが、政府は再発防止策を整え、国民の理解を得る方針。来秋の保険証廃止後も、最長1年間は現行の保険証が利用でき、マイナ保険証を取得していない人には「資格確認書」が発行される予定。厚生労働省は「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて、マイナンバーカードの普及、さらに利活用推進を進めており、医療・介護の情報共有化に向けて「医療DXの推進に関する工程表」を公開している。医療・介護業界はさらに情報連携のためにIT投資を求められる見込み。参考1)医療DXについて(厚労省)2)医療DXの推進、マイナ保険証の利用及び電子処方箋の導入に関する状況について(同)3)健康保険証の廃止時期「方向性決定の事実ない」武見敬三厚労相(産経新聞)4)現行の健康保険証の廃止、予定通り来年秋…マイナ保険証への移行に問題なしと判断(読売新聞)5)保険証「来秋」廃止方針を維持 12日にも首相表明 政府(時事通信)4.特許切れの先発品を希望した患者の自己負担増、来年度から/厚労省厚生労働省は、12月8日に開かれた「社会保障審議会医療保険部会」で、2024年度中にも後発薬(ジェネリック医薬品)がある先発薬を希望した患者の窓口負担の金額を引き上げる方針を示した。具体的には、発売から5年以上経過した先発品を対象に、ジェネリック医薬品との価格差の一部を患者が全額自己負担する案が提案されている。たとえば、先発品が500円、ジェネリックが250円の場合、窓口負担が3割の患者では、現在150円を支払っているものが200円から250円に増える計算。厚労省は、後発薬との差額の4分の1(25%)を患者の負担に上乗せする案を中心に検討している。この方針により、国費で100~250億円の財政効果が見込まれ、創薬力強化や後発薬の安定供給策に活用される予定。また、医師が先発薬の処方を必要と判断した場合は対象外となる。病気によっては診療ガイドライン上で薬の変更が望ましくないものもあり、これらの状況には配慮されることになっている。この方針に対して、患者の追加負担に関するさまざまな意見が出されており、患者は負担増に敏感であるため、負担は広く薄くすることが望ましいとの声もある。また、薬局など現場での混乱を防ぐため、処方箋様式の見直しについても検討が進められている。参考1)第172回 社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)先発医薬品希望する患者 窓口負担引き上げの方針 厚労省(NHK)3)後発品のある先発薬利用、差額の一部自己負担 厚労省検討 来年度にも、25%程度(日経新聞)4)24年度予算編成作業本格化 長期収載品の選定療養 財政効果は「400億~1000億円」 自民党医療委(ミクスオンライン)5.急増する高齢者対策、2025年夏から介護保険利用料の2割負担を拡大へ/厚労省厚生労働省は、12月7日に「社会保障審議会介護保険部会」を開き、介護保険サービスの利用料について、2割負担の対象拡大を早ければ2025年8月から実施する方針を示した。現在、介護保険の利用者は1割負担が基本で、一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割負担となっている。政府が少子化対策の財源確保と社会保障制度の持続可能性を高めるために、負担割合の見直しを2024年度に実施する計画を立てていたが、システム改修や利用者への周知に時間が必要とされるため、実施時期が遅れることになった。厚労省では、2割負担の対象者を拡大するために、年収基準の引き下げなどを提案しているが、この提案に対して、介護サービスの利用控えや生活への影響を懸念する声が多く、審議会では慎重な判断を求める意見が出された。政府は、介護保険の制度改革は、保険制度を維持するために必要とされ、高齢者人口の増加と介護給付費の増大に対応するため不可欠であり、介護保険の1号被保険者(65歳以上)が支払う保険料の見直しや、介護医療院などの室料負担の変更も検討している。また、政府は、物価高によって生じている介護事業者の経営環境の悪化を踏まえ、介護報酬の引き上げと利用者負担の見直しを併せて議論を続け、来年度の介護報酬の改定幅を年末までに決める方針。参考1)介護保険利用料、2割負担拡大 来年度の導入を事実上断念 厚労省(朝日新聞)2)介護2割負担の範囲拡大、早ければ25年8月施行 年収基準引き下げで9類型提示、厚労省(CB News)3)介護2割負担拡大、年内決定へ 年収190万円以上で試算(日経新聞)4)第109回 社会保障審議会介護保険部会(厚労省)6.カテーテル治療後の死亡事例、さらに10例を追加調査へ/神戸徳洲会病院神戸徳洲会病院で、今年1月以降にカテーテル治療を受けた複数の患者が死亡した問題が今年の7月に発覚していたが、具体的な死亡事例の数は11件に上ることがわかった。一連の死亡事例は、循環器内科医によるカテーテル処置に関連しているとされ、神戸市保健所は今年8月に、病院の医療安全管理体制に問題があったとして行政指導を実施した。病院側は、これまで2件の死亡事例について国の医療事故調査制度に基づいて調査を進めていたが、新たに10件の死亡や合併症の事例が調査対象に追加された。病院のホームページによると、男性医師によるカテーテル処置150件のうち、11件が死亡例であったことを明らかにされた。現在、病院側は、死亡と処置の関連について外部の専門家を交えた検証を進めており、病院は当初の2例と新たな10例の結論は2024年3月末を目途に結論を出すとしている。カテーテル治療後の患者死亡を巡っては、今年の9月に被害者救済の弁護団が設立されており、民事訴訟など今後予想されている。参考1)【第2報】当院循環器内科におけるカテーテル治療・検査に関する経過報告について(神戸徳洲会病院)2)カテーテル手術で患者死亡、10件追加調査 神戸徳洲会病院(産経新聞)3)被害者支援へ弁護団を結成 神戸徳洲会病院の患者死亡(同)4)カテーテル治療後に複数死亡、神戸徳洲会病院が別の10例も調査 外部専門家ら、来年3月末をめどに結論(神戸新聞)

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事例037 鼻腔・咽頭拭い液採取の算定漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説新型コロナウイルス感染症が5類に変更されてから、インフルエンザや他のウイルス感染症が目立って報告されるようになりました。症状から各種の感染症の鑑別をするために、鼻腔や咽頭に長いスワブ綿棒を挿入して直接に体液を拭った検体を使用した定性検査が行われています。検査料の漏れはほとんど認められなかったのですが、長いスワブを適切な所定位置まで挿入して、検体を拭い採取する技術に認められている「D419 6 鼻腔・咽頭拭い液採取」が漏れている医療機関を複数確認しました。医療機関では、簡単な拭いだけなので診察料に含まれると考えられていました。採取料は1日に1回のみ算定できることを伝えて、手元の早見表などに採取を忘れないよう採取料を加えていただくように伝えました。鼻腔・咽頭拭い液採取の算定対象となる検査は、次の通り留意事項にて例示されています。採取料が含まれるとされる場合を除いて算定漏れの無いようにご参照ください。「クラミジア・トラコマチス抗原定性、ヒトメタニューモウイルス抗原定性、マイコプラズマ抗原定性(免疫クロマト法)、アデノウイルス抗原定性(糞便を除く)、RSウイルス抗原定性、細菌培養同定(口腔)、A群β溶連菌迅速試験定性、インフルエンザウイルス抗原定性、[SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性、その他鼻腔・咽頭粘液拭い液を検体とする検査)] 」※[ ] 内、筆者追加。

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12月11日 胃腸の日【今日は何の日?】

【12月11日 胃腸の日】〔由来〕「いに(12)いい(11)」(胃にいい)の語呂合わせから日本大衆薬工業協会(現:日本OTC医薬品協会)が2002年に制定。師走に1年間を振り返り、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらうのが目的。胃腸薬の正しい使い方や、胃腸の健康管理の大切さなどをアピールしている。関連コンテンツ最新の便秘診療の知識【診療よろず相談TV】運動意欲を腸内細菌が支える【バイオの火曜日】短腸症候群【希少疾病ライブラリ】ESMO2023 レポート 消化器がんベジタリアン食で、胃がん罹患リスク6割減

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再発/転移上咽頭がんの1次治療、toripalimab併用でPFS延長/JAMA

 再発または転移のある上咽頭がん(RM-NPC)の1次治療において、プログラム細胞死1(PD-1)を標的とするヒト化IgG4Kモノクローナル抗体であるtoripalimabと標準化学療法の併用は、標準化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の延長をもたらし、安全性プロファイルも管理可能であることが、中国・中山大学がんセンターのHai-Qiang Mai氏らが実施した「JUPITER-02試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年11月28日号に掲載された。アジアの国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 JUPITER-02試験は、中国本土、台湾、シンガポールのNPCの発生頻度が高い地域で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年11月~2019年10月に35の施設で患者を登録した(Shanghai Junshi BiosciencesとCoherus Biosciencesの助成を受けた)。 全身化学療法による治療歴のないRM-NPC患者289例を、toripalimab+標準化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)の投与を受ける群に146例(年齢中央値46歳[四分位範囲[IQR]:38~53]、男性85%)、プラセボ+標準化学療法の投与を受ける群に143例(51歳[43~57]、81%)を無作為に割り付けた。 試験薬の投与は3週ごとに最大6サイクル行い、引き続きtoripalimabまたはプラセボによる維持療法を、病勢進行、許容できない毒性、2年間の治療の終了のいずれかに至るまで施行した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSとした。PFSが13.2ヵ月延長、奏効率、奏効期間も改善 PFS中央値は、プラセボ群が8.2ヵ月であったのに対し、toripalimab群は21.4ヵ月と13.2ヵ月の延長をもたらし、有意な差を認めた(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.37~0.73、名目p<0.001)。1年PFS率は、toripalimab群59.0%、プラセボ群32.9%、2年PFS率は、それぞれ44.8%、25.4%だった。 追跡期間中央値36.0ヵ月の時点で、OS中央値は、プラセボ群が33.7ヵ月であったのに対し、toripalimab群は未到達であったが有意に優れた(HR:0.63、95%CI:0.45~0.89、両側p=0.008)。プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の高発現および低発現のサブグループの双方において、toripalimab群で一貫して良好なOSに関する有効性が観察された。 奏効率(78.8% vs.67.1%、群間差:11.4%、95%CI:1.7~21.2、p=0.02)および奏効期間中央値(18.0ヵ月vs.6.0ヵ月、HR:0.49、95%CI:0.33~0.72、p<0.001)は、いずれもtoripalimab群で有意に優れた。完全奏効の割合はtoripalimab群がプラセボ群のほぼ2倍だった(26.7% vs.13.3%)。免疫関連有害事象はtoripalimab群で高頻度 全有害事象(100% vs.100%)、Grade3以上の有害事象(89.7% vs.90.2%)、致死的有害事象(3.4% vs.2.8%)、重篤な有害事象(43.8% vs.43.4%)の頻度は両群で同程度であった。一方、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(11.6% vs.4.9%)、免疫関連有害事象(54.1% vs.21.7%)、Grade3以上の免疫関連有害事象(9.6% vs.1.4%)の頻度は、いずれもtoripalimab群で高かった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、白血球減少(toripalimab群61.6% vs.プラセボ群58.7%)、好中球減少(58.9% vs.63.6%)、貧血(49.3% vs.40.6%)、血小板減少(33.6% vs.28.7%)であり、化学療法によって誘発された毒性が主であった。 著者は、「これらの知見は、この患者集団における新たな標準治療としてのtoripalimab+ゲムシタビン+シスプラチン療法を支持するものである」としている。また、「潜在性のエプスタイン・バールウイルス(EBV)感染はNPCの発症において重要で、本試験ではtoripalimab群でEBV DNAコピー数が検出不能な値まで減少した患者が有意に多く(p=0.004)、リバウンドを経験した患者は有意に少なかった(p=0.002)。さらに、EBV DNAコピー数のリバウンドは、病勢進行に中央値で1.9ヵ月先行していたことから、病勢進行の予測に活用できる可能性が示唆された」と指摘している。

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オミクロン株感染で脳が変化、認知機能に影響か

 新型コロナウイルスのオミクロン株による感染後急性期の脳への影響はわかっていない。今回、中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYanyao Du氏らが、オミクロン株感染後の男性患者における臨床症状、灰白質と皮質下核の変化を調べたところ、急性期に左楔前部と右後頭外側部の灰白質厚と、頭蓋内総容積に対する右海馬容積の割合が大幅に減少していたことがわかった。また、灰白質厚と皮質下核容積損傷が不安や認知機能と有意に関連することが示された。JAMA Network Open誌2023年11月30日号に掲載。 著者らは、2022年8月28日~9月18日に健康診断でMRI検査を受けた男性207人のうち、98人の完全な画像データと精神神経学的データを収集し、オミクロン株感染前後の灰白質と皮質下核の変化を調べた。オミクロン株感染者については、感染急性期に精神神経学的データ、臨床症状、MRIデータを収集し、3ヵ月後に臨床症状を再度調査した。灰白質指標と皮質下核の容積を解析し、灰白質厚の変化と精神神経学的データとの関連を相関分析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの完全データを収集できた98人のうち、オミクロン株に感染した61人(平均年齢:43.1歳)の急性期のデータを登録し、17人(平均年齢:43.5歳)は3ヵ月後の臨床症状も調査した。・オミクロン株感染前と比較して、感染急性期の調査では、Beck Anxiety Inventoryスコアが有意に増加し、depression distressスコアが有意に減少していた。・感染後急性期の主な症状は発熱、頭痛、疲労、筋肉痛、咳、呼吸困難で、3ヵ月後の調査参加者においては発熱、筋肉痛、咳が有意に改善していた。・感染後急性期に、左楔前部および右後頭外側部の灰白質厚、頭蓋内総容積に対する右海馬容積の割合が有意に減少していた。・発熱患者では、非発熱患者より右下頭頂部の溝の深さが減少していた。・感染後の期間において、左楔前部の厚さがBeck Anxiety Inventoryスコアと負の相関を示し、頭蓋内総容積に対する右海馬容積の割合がWord Fluency Testスコアと正の相関を示した。 著者らは、これらの結果について「オミクロン株感染の感情的および認知的メカニズムに関する新たな洞察を提供し、神経系の変化との関連を実証し、神経学的後遺症の早期発見と介入のための画像基盤を検証するもの」としている。

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ファイザーXBB.1.5対応コロナワクチン、流行中の各変異株に有効

 2023年9月に欧米諸国や日本で承認となったファイザーのオミクロン株XBB.1.5対応新型コロナワクチン(BNT162b2 XBB.1.5)の効果を検証するため、ドイツ・Hannover Medical SchoolのMetodi V Stankov氏らの研究チームは、本ワクチン30μgを接種した医療従事者53人について、接種から8~10日後の免疫応答を解析した。その結果、すべての接種者において抗スパイクIgG抗体が大幅に増加し、現在流行しているSARS-CoV-2の各系統に対する強力な中和反応が誘発されたことが示された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年11月20日号掲載の報告。 本調査では、対象者の65人の医療従事者のうち、2023年9月にファイザーのオミクロン株XBB.1.5対応ワクチンを接種した53人について免疫応答をモニタリングし、接種から8~10日後を解析した。65人中43人(66%)が過去に4回以上のワクチン接種を受けており、19人(29%)がBA.4/5対応2価ワクチンの接種を受けていた。53人(82%)がSARS-CoV-2感染を経験していた。擬似ウイルス中和試験にて、SARS-CoV-2の8系統(起源株、B.1、BA.5、XBB.1.5、XBB.1.16、EG.5.1、XBB.2.3、BA.2.86)に対する中和反応を解析した。 主な結果は以下のとおり。・XBB.1.5対応ワクチンの接種により、起源株へのIgG抗体は2~9倍、オミクロン株BA.1へのIgG抗体は3~6倍に有意に増加した(p<0.001)。・XBB.1.5対応ワクチン接種後、受容体結合ドメインに結合するメモリーB細胞の総割合は、有意に増加した(平均頻度0.88%、p<0.0001)。全体として42.3%の増加がみられ、うち90.4%は交差反応性メモリーB細胞の増加によるものであった。・XBB.1.5対応ワクチン接種前の中和反応率は、B.1で100%、BA.5で91%、XBB.1.5で55%、EG.5.1で43%、BA.2.86で77%であった。・XBB.1.5対応ワクチン接種後、B.1の中和反応率は100%のままだったが、そのほかすべての変異株で中和反応率が増加した。とくに、XBB.1.5で44倍、XBB.1.16で32倍、EG.5.1で34倍、XBB.2.3で48倍、BA.2.86で17倍の増加を示した。・XBB.1.5対応ワクチン接種前、IFN-γ陽性CD4T細胞およびCD8T細胞のスパイクタンパクに反応する頻度は比較的低かったが、接種後は、起源株およびXBB.1.5に対するIFN-γ陽性CD4T細胞の頻度が有意に増加した(p=0.026、p<0.0001)。XBB.1.5に反応するCD8T細胞でも有意な増加が認められた(p=0.0225)。TNF-αの有意な増加は認められなかった。・中和活性がワクチン接種後から次第に低下し、ウイルスが免疫逃避する可能性がある一方で、T細胞媒介の免疫反応はより持続的で強固だと考えられる。

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