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乳房外パジェット病の治療体制確立を目指して がん・感染症センター都立駒込病院 皮膚科・皮膚腫瘍科 吉野 公二氏

日本、アジアに多く、欧米に少ない乳房外パジェット病 乳房外パジェット病は、東南アジア、特に日本や韓国に多く、欧米に少ない疾患です。多くのがんの場合、欧米で確立したエビデンスをもとに日本で治験を組む、あるいはそれを基に公知申請で治療薬を導入するという方法が今の世の流れです。しかしながら、乳房外パジェット病には欧米でのエビデンスはありません。つまり、公知申請はできない状況で、日本で一から治験を組まないと新しい治療体制が生まれてこないのです。 ところが、乳房外パジェット病は疾患数が少なく、市場の小ささが障害となり製薬会社としても新たに治験を組めません。また、医師主導治験も製薬会社からの薬剤供給が確立できず実現不可能です。もうひとつ、高度先進医療という方法がありますが、キードラッグであるドセタキセルはがん領域で十分な実績のある薬であり、新たな治療法を対象とする高度先進医療の適用とはなりません。日本発のデータで新しい治療体制を さまざまな検討を行った結果、実際の治療実績のデータを、日本から世界に向かって発信し、それを基にして公式な臨床研究や申請の実現を目指すことになりました。そのためには単独施設ではなく、多施設の臨床研究を行う必要があります。そこで、乳房外パジェット病の治療に携わる医師が主体となり「乳房外パジェット病研究会」を設立しました。臨床研究といっても保険適応外ですので、多施設の後ろ向き研究となります。その結果を、乳房外パジェット病研究会で論文化し、早ければ来年中にpublishするという方針です。 同研究では、抗がん剤だけにとどまらず、他の治療関連エビデンスも検討する予定です。そのひとつはステージ分類です。乳房外パジェット病には国際的なステージ分類がありません。今回の研究で、日本オリジナルのTNM分類を世界に向かって発信しようと計画しています。 また、センチネルリンパ節生検の有用性についても調べています。乳房外パジェット病では、センチネルリンパ節転移陰性例の予後は良く、5年生存率は100%です。リンパ節腫脹後にセンチネルリンパ節生検を実施した例と、事前にセンチネルリンパ節生検を実施した例とを比較することで、予後予測因子ならびに予後の改善に結びつくか有用性を確認したいと思っています。現在、乳房外パジェット病でのセンチネルリンパ節生検は保険未認可であり、結果次第では保険適応も視野に入れたいと思っています。 乳房外パジェット研究会は皮膚科だけの集まりでしたが、婦人科、泌尿器科、形成外科にも広げています。患部が陰部であることも多く、さまざまな診療科が関わるため、より幅広いデータを収集しようという試みです。乳房外パジェット病の治療報告は、世界的にみても1例のケースレポートがほとんどです。同研究では、現在ドセタキセルを使用した約20例を収集しており、すでにかなりのインパクトはあると思います。また乳房外パジェット病自体で最終的には400例近くのデータ収集を目指しています。世界的にも大きなインパクトを示すことになるでしょう。発見が遅れがちな乳房外パジェット病 乳房外パジェット病の患者さんは、皮膚科に行ったり、泌尿器科に行ったり、女性は婦人科に行ったりしています。陰部が痒いという症状から単なる湿疹と判断され、湿疹の薬を処方されたり、症状が改善せずドクターショッピングを繰り返すことも多いようです。 そのためか、医療機関を受診しているにもかかわらず、発見されるまで数年かかり、来院時にはすでにリンパ節転移があるケースも少なくありません。通常の湿疹だと思われるケースのなかには、わずかですが乳房外パジェット病も隠れています。早期発見すれば、ほとんどの症例は予後良好なので、ステロイドや抗真菌薬を使っても奏効しない例では、1ヵ月以内に皮膚生検を行うなど、乳房外パジェット病を念頭に置いて診療をしていただければと思います。

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ダニ媒介の新種のフレボウイルス、米国で特定

 米国・ミズーリ州北部で発生した重症熱性疾患は、ダニを媒介として人へと感染した、新種のウイルスによるものであることが特定されたと、米国CDCのLaura K. McMullanらが報告した。このウイルスを「ハートランドウイルス(Heartland virus)」と命名したという。NEJM誌2012年8月30日号の短信報告より。血清、PCR、培養で特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科のウイルスと確認発生の報告は2009年初期で、男性2人が発熱、倦怠感、下痢、血小板減少症と白血球減少症で医療施設に搬送されたことだった。2人は見ず知らずの他人であったが、両者とも症状発症5~7日前にダニにかまれていた点が共通していた。当初は、病原体としてEhrlichia chaffeensisが疑われたが、血清、PCR、培養においても特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科に属するウイルスであることが確認された。研究グループは、その後の次世代シーケンサーと系統発生学的分析から、このウイルスをフレボウイルス属の新種と特定した。フレボウイルス属には抗原が異なる70種以上のウイルスがあるが、大きくスナバエ、蚊、ダニが媒介するタイプに分類される。このうちスナバエを媒介としたフレボウイルスは、アメリカ、アジア、アフリカ、地中海沿岸部で広く特定されていたが、ダニが媒介となりヒトへと感染し血小板減少症候群を伴う重度発熱(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)を発症したことが特定されたフレボウイルスは、2009年に中国中・北東部で特定された報告例が唯一だという。「ハートランドウイルス」と命名研究グループの今回の調査では、ダニから新規ウイルスは分離できず、患者に付着していたダニは入手できなかったなどいわゆる「コッホの原則」は不完全であったが、「患者の臨床症状からアメリカにおける新種のフレボウイルスであると信じるに足りる」と報告した。そして、「ハートランドウイルス」と命名したたこの新種のウイルスに関して、人から人へ感染する可能性があるのかも含め、発生率、疾患重症度や詳しい臨床経過が明らかではないが、媒介の可能性が高い背中の1つ星模様が特徴のダニA. americanumがミズーリ州中南部に多く存在し、北大西洋に面するメイン州まで生息が確認されていることなどを踏まえて、現在認められるよりも発生が広がっている可能性を指摘。「この新種のウイルスの疾患負荷、感染のリスク、自然宿主を特定する疫学的および生態学的研究が必要だ」と報告をまとめている。

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肺移植、喫煙ドナー肺はレシピエントの予後を改善するか?

 喫煙ドナー肺の移植を受けた患者の移植後3年間の生存率は、非喫煙ドナー肺の移植を受けた患者に比べ不良だが、非喫煙ドナー肺の提供を待ち続けるよりは良好なことが、英国・バーミンガム大学病院のRobert S Bonser氏らの検討で示された。肺移植の臓器選択基準では、当初、ガス交換機能がほぼ完全な若いドナー肺のみが適応とされたが、移植治療の進歩に伴い基準が見直され、喫煙歴のあるドナー肺の移植も行われている。喫煙ドナー肺はレシピエントの生存に有害な影響を及ぼすことが懸念されるが、喫煙ドナーを除外するとドナー数が減り、移植を待つ患者の生命を脅かす可能性があるため、喫煙ドナー肺のリスクの正確な評価が求められている。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版5月29日号)掲載の報告。喫煙ドナー肺移植のリスクを前向きコホート試験で評価研究グループは、喫煙歴のあるドナーからの肺移植を受けたレシピエントの3年生存率を検討し、ドナーの喫煙歴を理由に移植をせずに非喫煙ドナー肺の提供を待った場合の死亡リスクを評価する目的で、プロスペクティブなコホート試験を実施した。1999年7月1日~2010年12月31日までに、脳死ドナーからの初回肺移植を受けた成人患者を対象とした。英国の臓器移植登録のデータを用いて、喫煙ドナー肺が3年生存率に及ぼす影響をCox回帰モデルで解析した。次いで、喫煙ドナー肺を移植した患者と、喫煙ドナー肺の移植を受けずに非喫煙ドナー肺の待機リストに登録した患者の生存率を比較した。肺移植を受ける患者には十分に説明を 肺移植を受けた1,295例(両側肺880例、片側肺415例)のうち、510例(39%)が喫煙ドナー、712例(55%)が非喫煙ドナーからで、73例(6%)のドナーは喫煙状況が不明であった。移植後の生存期間中央値は、喫煙ドナー肺移植患者が4.9年、非喫煙ドナー肺移植患者は6.5年だった。3年生存率の未調整ハザード比(HR)は1.46[95%信頼区間(CI):1.20~1.78]で、喫煙ドナー肺の移植患者は非喫煙ドナー肺移植患者に比べ不良であった。生存に影響を及ぼす独立のリスク因子として、レシピエントの年齢、ドナー・レシピエントのサイトメガロウイルス感染状況、ドナー・レシピエントの身長の差、ドナーの性別、総虚血時間が挙げられた。これらの因子で調整後のHRは1.36(同:1.11~1.67、p=0.003)で、3年生存率は喫煙ドナー肺移植患者が57.3%、非喫煙ドナー肺移植患者は65.7%だった。待機リストに登録された2,181例のうち、802例(37%)が移植を受けることなく死亡または待機リストから登録を解除していた。喫煙ドナー肺移植患者は待機リスト登録患者に比べ生存率が良好で、未調整HRは0.79であった(95%CI:0.70~0.91、p=0.0004)。著者は、「喫煙ドナー肺の移植は不良なアウトカムと関連したが、生存率は喫煙ドナー肺移植を受けた患者のほうが、これを拒否して非喫煙ドナー肺の待機リストに登録した患者よりも優れていた」と結論し、「英国では、喫煙歴のあるドナーの肺を移植に使用するという臓器選択指針により、肺移植を望む患者の生存が全般的に改善されており、これを継続すべきと考えられる。肺移植を受ける患者には、このような状況を十分に説明し、話し合う必要がある」と指摘する。

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エキスパートに聞きました!「痛みの治療」に関する素朴なギモン Part2

CareNet.comでは8月の1ヵ月間を通し、痛み、特に神経障害性疼痛にフォーカスして様々な情報をお届けしてきました。そんな中で視聴者から寄せられた痛みの治療に関する質問に対し、小川 節郎 先生にご回答いただきます。(前編/後編シリーズ)治療効果の評価方法は?急性痛の治療ゴールは疼痛をゼロにすることですが、慢性疼痛治療のゴールはQOLの向上を念頭に置いた治療目標を決めることが必要です。その際留意すべき点は、慢性疼痛とくに神経障害性疼痛の場合、疼痛ゼロを目標とすると達成は困難で、かつ患者さんも満足しないという点です。たとえば、まずは眠れるようにしましょう、次に10分散歩できるようにしましょう、その次には旅行できるようにしましょう、といった目標を立てそれを達成できたかを評価するとよいと思います。また、客観的に評価する場合には、VASスケール*を用いるとよいでしょう。*VAS:Visual Analogue pain Scale最近発売されたプレガバリン(商品名:リリカ)、デュロキセチン(商品名:サインバルタ)、トラマドール/アセトアミノフェン配合剤(商品名:トラムセット)の使い分けは?神経障害性疼痛と考えたらまずCaチャネルα2σリガンドであるプレガバリンを使っていただくのがよいと思います。第一選択薬であるプレガバリンや三環系抗うつ薬などで副作用が強く出る場合には、デュロキセチンをお使いになっても良いと思います。プレガバリンとデュロキセチンは一緒に使っても構いません。どの薬剤でも副作用が出ることがありますので、その際は患者さんとって副作用が少ない方、患者さんがよいと言った方を使うということになります。それでもだめな場合は、トラマドール/アセトアミノフェン配合剤を追加するか、同剤に変更するかとなるでしょう。また、プレガバリンが奏効するタイプ、奏効しないタイプの見極めという質問がありましたが、残念ながらそれは使ってみないとわからないというのが現状です。プレガバリンの副作用のマネジメント、増量方法、離脱方法は?副作用についてですが、眠気が出る場合は、1週間程度、夜だけ投与してみるのも一つの方法です。その後、夜の1回量を増やす、昼間も飲ませるなど段階的に増やしてきます。また、体重増加が出るケースがありますが、その場合は薬剤の減量しかないといえます。増量についてですが、添付文書では75mgから開始となっているものの、その用量でスタートすると副作用がでて治療初期から失敗することもあります。プレガバリンには25mg錠があるので、25mg夜1回から使い始め、1週間単位で25mgずつ増量することにより副作用をマネジメントしながら効果を出してく方法もあります。また、用量上限の目安は300mgとしていただく方がよいと思います。離脱についても、増量と同じく徐々に行うことになります。たとえば、1週間ごとに25mgあるいは50mgずつ減量していくことでよいと思います。いつまで使ってよいか?という質問がありましたが、これは難しい問題です。たとえば、薬剤を使いながら患者さんの体力を向上させる手段を併用し、診療のたびに生活の質を聞いて、薬剤を使わなくてもよいと判断したら積極的に減らすというのも一つの方法です。糖尿病性神経障害に伴う痛みに対する有効な治療法は?アルドース還元酵素阻害薬エパルレスタット(商品名:キネダックほか)を使ったり、メキシレチン(商品名:メキシチールなど)を使用します。抗けいれん薬のCaチャネルのα2σリガンド、三環系抗うつ薬、SNRIのデュロキセチンなどが、第一選択薬、第二選択薬がワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピンなど)となっています。それでも効果がない場合、トラマドール/アセトアミノフェン配合剤、さらにひどい場合は強オピオイドということになりますが、一定のところで折り合いをつけることが重要です。その基準は経口モルヒネ換算で120mg/日です。それを越えるようであれば専門的な治療法を考える必要があります。脳卒中後の疼痛(視床痛)への最新の治療法は?治療方法としては、薬物療法は神経障害性疼痛の薬物療法に準じます。薬物以外の最新の治療は脳刺激療法です。脳に電極を挿入する脳深部刺激療法、脳の表面に電極を当て磁気刺激をする経皮頭蓋磁気療法などがあります。指切断・幻肢痛の機序は?これは神経障害性疼痛の機序そのものといえます。切断された神経が脳の帯状回や視床、前頭前野機能を変化させるので、それらに対する治療法になります。治療方法としては、神経障害性疼痛の薬物療法、薬物療法以外では、末梢神経電気刺激、脊髄電気刺激療法、電気けいれん療法なども用います。これらの方法を実施される場合は、脳神経外科やペインクリニックにご相談いただければよいかと思います。

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の増悪を抑制:EMBRACE試験

 アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)は、嚢胞性線維症を原因としない気管支拡張症におけるイベントベースの増悪の予防治療として有効なことが、ニュージーランド・Middlemore病院(マヌカウ市)のConroy Wong氏らが実施したEMBRACE試験で示唆された。気管支拡張症は好中球性の気道炎症、慢性的な細菌感染、繰り返す肺の病態の増悪で特徴づけられ、大量の喀痰を伴う重篤な咳嗽や進行性の肺機能低下、QOL低下をきたし、死亡率の上昇をもたらす可能性がある。アジスロマイシンは抗炎症作用および免疫調節作用を有するマクロライド系抗菌薬で、嚢胞性線維症の病態の増悪を抑制することが示されている。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。気管支拡張症に対する効果をプラセボ対照無作為化試験で評価EMBRACE(Effectiveness of Macrolides in patients with BRonchiectasis using Azithromycin to Control Exacerbations)試験は、非嚢胞性線維症に起因する気管支拡張症の治療において、アジスロマイシンは増悪率を低減して肺機能を増強し、健康関連QOLを改善するとの仮説の検証を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験。2008年2月12日~2009年10月15日までに、ニュージーランドの3施設に、抗菌薬治療を要する増悪の既往歴があり、高解像度CT検査で気管支拡張症と診断された18歳以上の患者が登録された。これらの患者が、アジスロマイシン500mgあるいはプラセボを週3日(月、水、金曜日)、6ヵ月間投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月の治療期間中のイベントベースの増悪率、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、St George呼吸器質問票(SGRQ:0~100点で表し値が低いほど良好、4点以上の変化で臨床的に有意と判定)総スコアの変化の複合エンドポイントとした。増悪率が有意に改善、FEV1、SGRQ総スコアは改善せず141例が登録され、アジスロマイシン群に71例、プラセボ群には70例が割り付けられた。治療期間中の増悪率はアジスロマイシン群が0.59/人と、プラセボ群の1.57/人に比べ有意に改善した(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.26~0.54、p<0.0001)。拡張薬投与前FEV1は、アジスロマイシン群はベースラインから変化はなく、プラセボ群では0.04L低下したが、この差は有意ではなかった(群間差:0.04L、95%CI:-0.03~0.12、p=0.251)。さらに、SGRQ総スコアの変化についても、アジスロマイシン群は5.17点の低下、プラセボ群は1.92点の低下で、有意差は認めなかった(群間差:-3.25点、95%CI:-7.21~0.72、p=0.108)。著者は、「6ヵ月間のアジスロマイシン治療は、増悪率の低下に加え、初回増悪までの期間もプラセボ群に比し有意に延長し、これらの改善効果は治療終了後6ヵ月の時点でも継続していた。SGRQの症状関連項目の改善効果も確認された。それゆえ、アジスロマイシンは1回以上の増悪歴のある非嚢胞性線維症性気管支拡張症における増悪の予防治療の新たな選択肢である」と結論し、「長期治療の場合は、マクロライド系抗菌薬への耐性の発現を十分に考慮して患者を選択すべきである」と指摘している。

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抗インフルエンザウイルス薬イナビルの第3相臨床試験結果が発表

第一三共株式会社は22日、抗インフルエンザウイルス薬イナビル(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)のインフルエンザウイルス感染症予防に対する効果を検証するための第3相臨床試験の結果を発表した。今回の試験では、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症患者と同居する家族または共同生活者を対象に、プラセボを対照とした無作為化二重盲検比較試験を実施された。その結果、有効性の主要な評価指標である臨床的インフルエンザウイルス感染症の発症割合において、イナビル投与群はプラセボ投与群と比較して統計学的に有意に低く、本薬によるインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果が検証されたという。また、安全性についても問題は認められなかったとのこと。実際の症例数や効果に関連する具体的な数値など、試験結果の詳細については、今後関連学術雑誌または学会にて発表する予定とのこと。イナビルは、同社が創製した純国産の長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤であり、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療を効能・効果として、2010年9月10日に製造販売承認を取得し、同年10月19日に発売されている。

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「痛み」の診療に関する緊急アンケート その2 ~「痛み」の評価、どうしてますか?~

対象ケアネット会員の内科医師244名方法インターネット調査実施期間2012年8月7日~8月13日Q1.痛みの強さに関して、客観的な指標を用いて評価していますか?Q2.帯状疱疹を発症し、皮膚科で抗ウィルス薬を処方されていた患者さん(60代、女性)が、発症後4日目で痛みを訴えて受診してきました。この患者さんの痛みに対し、どのような治療を行いますか?Q3.2011年7月に発刊された神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ編集)をご存じですか?

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「慢性の痛み」へのオピオイド適正使用を考える

非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター 住谷昌彦氏非がん性疼痛におけるオピオイド鎮痛薬の位置づけ2010年、国際疼痛学会(IASP)は「疼痛治療を受けることは基本的人権である」とするモントリオール宣言を採択している。その中でもオピオイド鎮痛薬は多くの痛みの病態に対する有効性が確立した薬剤であり、非がん性疼痛患者のQOLを大きく改善することにつながるため、その役割は非常に重要である。がん性疼痛と非がん性疼痛の治療戦略は異なる。がん終末期の侵害受容性疼痛、いわゆるがんの内臓痛に対しては、WHOが3段階除痛ラダーを提案している。第一段階は NSAIDsやアセトアミノフェンなど、中等度の痛みには第二段階の弱オピオイド、非常に強い痛みには第三段階の強オピオイド、というものである。この場合、オピオイド鎮痛薬については用量上限を決めず必要量を投与すること、疼痛が増強した場合は速放剤を投入すること、必要があれば静脈投与も実施することとなっている。だが、これはあくまでも終末期のがん性疼痛に対するストラテジーであり、非がん性の慢性疼痛に対する治療は大きく異なる。非がん性疼痛でのオピオイド鎮痛薬の使用については、用量上限を設け、頓用は行わないなどの原則がある。非がん性慢性痛に対し、WHO3段階除痛ラダーを適用するケースを見受けることがあるが、適切な治療戦略にしたがったオピオイド治療を行う必要がある。非がん性疼痛における侵害受容性疼痛変形性股関節症や変形性の膝関節症など非がん性の侵害受容性疼痛に対し、オピオイド鎮痛薬の使用はもっとも高いエビデンスレベルで認められている。日本ペインクリニック学会でもオピオイド使用が必要な患者に対して積極的に使うべきであると推奨している。今回発表された「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の上限用量は経口モルヒネ換算120mg/日以下とし、徐放剤を推奨している。一方、オピオイドの頓用、静脈投与は原則行わない事としている。これには、頓用や静脈投与によるオピオイド鎮痛薬の血中濃度が不安定な状態の繰り返しが招く依存性や耐性形成を防止するという理由がある。非がん性疼痛における神経障害性疼痛非がん性疼痛の中でも神経障害性疼痛は治療抵抗性である事が多い。2011年、日本 ペインクリニック学会が発行した「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」では、第一選択薬として三環系抗うつ薬、Caチャネルα2δリガンドであるプレカバリンやガバペンチン 、第二選択薬として、SNRI抗うつ薬デュロセキチン、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含(ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン、第三選択薬として、麻薬性オピオイド鎮痛薬が推奨されている。このオピオイド鎮痛薬については、非がん性疼痛としての添付文書の適応を遵守したうえで、前出の「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド処方ガイドライン」に基づき、徐放剤を推奨する、疼痛増強時の頓用および静脈投与もしないなどの原則があてはめられる。非がん性疼痛における中枢機能障害性疼痛中枢機能障害性疼痛は、central dysfunctional painといわれ、疼痛の下行性抑制系の機能減弱が原因とも考えられているが、その本態は十分解明されていない。実臨床では、治癒後も痛みが残る外傷や手術後の遷延性疼痛、線維筋痛症や慢性の腰背部痛などがこれにあたる。中枢機能性疼痛に対するオピオイド使用の是非については国際的にも統一見解はない。この疾患概念に対しては、他の代替療法が無効の場合に限り、オピオイドの使用を検討し、用量は最小用量にとどめるべきとされている。また、このようなケースでは、心理・情動的影響や精神疾患に対する評価が重要だといわれており、オピオイド鎮痛薬使用時には、より入念なフォローアップが必要である。がん終末期の神経障害性疼痛一方、がんの終末期の神経障害性疼痛、たとえば脊髄に浸潤しているような場合、麻薬性鎮痛薬を第一選択薬として使用することは妥当だと考えられる。国際疼痛学会のレコメンデーションにも、 オピオイドは神経障害性疼痛に対しても有用で、その効果の発現が早さから積極的に痛みが強い場合や終末期の場合には使っていくとある。終末期の場合、オピオイド鎮痛薬は上限を決めず必要量を投与し、疼痛増強時の速放剤頓用、必要時には静脈投与も実施するといったがん性疼痛の治療原則が支持されるが、がんの治療中あるは生命予後が十分にある場合には、痛みが非常に強くても、モルヒネ120mgの上限、徐放剤推奨など非がん性疼痛の治療原則は遵守されるべきである。今回のガイドラインのキーメッセージ今回の非がん性疼痛に対するオピオイド処方ガイドラインのキーメッセージは、(1)オピオイドを用いて患者の生活を改善すること、(2)オピオイドの乱用・依存から患者を守ること、(3)オピオイドに関する社会の秩序を守ること、である。そのためには、慢性疼痛、オピオイド、薬物依存に関する知識と経験を有する医師の育成、そして、痛みの原因理解、薬の管理、疼痛の緩和目標理解という患者側の啓発が重要である。このような資質を持つ医師と患者の信頼関係の上に、適切なオピオイド使用が成り立つ。非がん性疼痛におけるオピオイド使用はすでに特殊なこととはいえない。オピオイドを適切に用い、患者の利益につなげていくべきであると考える。

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インフルエンザウイルスキット「ブライトポックFlu」新発売

塩野義製薬株式会社は20日、体外診断用医薬品、インフルエンザウイルスキット「ブライトポックFlu」を9月11日に新発売することを発表した。「ブライトポックFlu」は、インフルエンザウイルスによる感染を迅速に診断する検査キット。同製品は高い感度(陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する割合)と特異度(陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する割合)を有しており、患者さまの鼻腔や咽頭から採取した検体中のインフルエンザウイルスA型抗原およびB型抗原について、陽性判定を最短1分で行うことが可能である。ブライトポックFluの製品概要は以下のとおり。・測定方法:イムノクロマト法(A型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルスをそれぞれ認識するモノクローナル抗体を用いた測定法)・使用目的:鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、鼻汁鼻かみ液および咽頭ぬぐい液中のインフルエンザA型抗原およびB型抗原の検出(インフルエンザウイルスA型およびB型感染の診断補助)・包装単位:10回用/箱・貯蔵方法:2~30℃で保存・有効期間:製造後24ヵ月・製品特長: (1)陽性判定が1分から可能 (2)高い感度と特異度 (3)カラーのラインで抗原識別が容易 (4)綿棒としてフロックスワブを採用・発売日:2012年9月11日・希望小売価:1箱10回要 11,500円(税抜き)・販売:塩野義製薬株式会社・製造販売元:株式会社ニチレイバイオサイエンス詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/120820.pdf

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米国在住HIV感染者のうち、米国外出生者は16.2%

 米国在住で2007~2010年にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の診断を受けた約19万人のうち、16.2%が米国外出生者だったことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のAdria Tassy Prosser氏らが、CDCに報告されたデータを調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月8日号で発表した。国内生まれの感染者と国外生まれの感染者とでは疫学的な特性が異なるという。米国外出生感染者の4割が、メキシコを含む中央アメリカ出生同研究グループは、CDCの「National HIV Surveillance System」を基に、2007~2010年にHIV感染の診断を受けた46州と5自治領の計19万1,697人について、その出生地を調べた。米国外で生まれた人は、米国市民権の有無にかかわらず米国外出生とした。その結果、19万1,697人のうち米国外出生者は3万995人で16.2%(95%信頼区間:16.0~16.3)だった。そのうち、出生地域の特定できた2万5,255人の出生地についてみると、14.5%(3,656人)がアフリカ、41.0%(1万343人)がメキシコを含む中央アメリカ、21.5%(5,418人)がカリブ海地域だった。米国外出生者の割合およびHIV感染者の割合ともに、カリフォルニア、フロリダ、ニューヨーク、テキサスの4州が最も高かった。異性間性交による感染、米国内出生感染者27%に対し米国外出生感染者39%米国外出生HIV感染者のうち、男性は73.5%(2万2,773人)だった。人種別に米国外出生者の割合をみると、白人は3.3%(1,841人/感染者5万5,574人)、黒人は10.0%(8,614人/感染者8万6,547人)、ヒスパニック系は42.2%(1万7,913人/感染者4万2,431人)、アジア系は64.3%(1,987人/感染者3,088人)だった。異性間性交による感染は、米国内出生感染者の27.2%だったのに対し、米国外出生感染者では39.4%に上った。

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寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

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インフルエンザワクチン優先接種戦略、高齢化と獲得免疫が鍵

 世界各国にインフルエンザパンデミックへの対策プランがあり、ワクチン供給が不足した場合の優先接種方法が決められている。大半の国のプランは、他国やWHOの計画を基に作成されているが、オランダ・感染症疾病対策センターのAnna K Lugner氏らは、「各国の事情(人口構造、社会的接触パターン、医療システム、医療費構造)が異なるなかで、どのような優先接種方法が最も費用対効果に優れるのかは、これまで検証されていなかった」として、ドイツ、オランダ、イギリス3ヵ国を対象に4つの異なるワクチン戦略の費用対効果について比較検討する経済的疫学モデル研究を行った。BMJ誌2012年8月4日号(オンライン版2012年7月12日号)掲載報告より。想定パンデミック下で4つの戦略について3ヵ国の費用/QALYを算出し比較研究グループが検証したのは、異なる国で想定されるあらゆるインフルエンザパンデミックにおいても単一のインフルエンザワクチン接種戦略が費用対効果に優れるのかどうか、どの年齢群が資源注入によるベネフィットが最も高くワクチン接種を受けるべきか、また異なる国では異なる戦略が適用されるのかどうかについてだった。近接するが社会・文化的背景の異なるドイツ、オランダ、イギリス各国の社会的接触パターンや人口構造データを入手し、数理モデルを作成して解析した。各国で想定されるインフルエンザAウイルス伝播が描出された、ウイルス感受性・曝露・感染・リカバリー伝播を加味して作成した年齢群モデルを用いて、4つのワクチン接種戦略[ワクチン非接種、全員へワクチン接種、65歳以上高齢者へ接種、高伝播群(5~19歳)へ接種]を比較した。4つの戦略は、ワクチンがパンデミックの早期に接種可能だったかピーク時となったか、また全員がウイルス感受性が高く感染しやすい状態だったか、高齢者は免疫を獲得していたかについても評価された。主要評価項目は、1QALY(生活の質を調整した生存年)獲得に要する費用(費用/QALY)だった。高齢社会が顕著なドイツは65歳以上に、オランダとイギリスは5~19歳への接種戦略に軍配解析の結果、すべてのワクチン接種戦略が費用対効果に優れており、費用/QALYは非介入群と比較して介入群のほうが大きかった。費用/QALYの割合が大きかったのは、ワクチン接種がパンデミックピーク時となった場合、また高齢者が免疫を獲得していた場合だった。各国の1QALY獲得に要する費用は、ドイツが7,325ユーロ、オランダ1万216ユーロ、イギリス7,280ユーロだった。最も費用対効果に優れる至適戦略は、想定シナリオによってばかりでなく国によっても異なった。特にワクチンがパンデミック早期に接種可能な場合、また獲得免疫がなかった場合、最も費用効果に優れる接種戦略は、ドイツでは高齢者への接種戦略だったが(1QALY獲得に940ユーロ)、オランダとイギリスでは高伝播群への接種戦略だった(各国同525ユーロ、163ユーロ)。この違いは、ドイツでは高齢者の割合がオランダとイギリスに比べて有意に高いという各国人口構造の違いによるものだった。結果を踏まえLugner氏は、「どの国においても費用対効果に優れるという単一のワクチン接種戦略はなかった。今後、インフルエンザパンデミック緩和のための費用対効果に優れる選択肢の決定には、特に高齢者割合と獲得免疫が重要になるだろう」と結論している。

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男女間のHIV-1感染、抗レトロウイルス薬の曝露前予防的投与により有意に低下

抗レトロウイルス薬の曝露前投与による男女カップル間のHIV-1感染防御について検討した無作為化試験の結果、感染率の有意な低下が示され、防御効果があることが報告された。試験は、米国・ワシントン大学のJ.M. Baeten氏ら「Partners Preexposure Prophylaxis(PrEP)試験」グループが、テノホビル(TDF、商品名:ビリアード)およびテノホビル配合剤(TDF-FTC、商品名:ツルバダ)についてプラセボとの対照で検討した結果で、単剤、配合剤ともに男女間の感染を防御することが報告された。NEJM誌2012年8月2日号(オンライン版2012年7月11日号)掲載報告より。TDF群、TDF-FTC群、プラセボ群に無作為化し36ヵ月間追跡試験は2008年7月~2010年11月に、ケニアとウガンダ両国合わせて9地点からHIV-1血清不一致の異性愛カップル(男女いずれかのみが感染し血清陽性)4,758組を登録し、経口抗レトロウイルス薬の曝露前予防的投与について、無作為化試験を行った。被験者カップルは、無作為に3つのレジメン、TDF群、TDF-FTC群、プラセボ群(いずれも1日1回投与)に割り付けられ、毎月検査を受け最長36ヵ月間追跡された。主要評価項目は、血清陰性だったパートナーが血清陽性となった割合とした。被験者カップルのうち血清陽性被験者は、抗レトロウイルス療法開始の両国ガイドライン指針を満たしておらず、同治療を受けていなかったが、全カップルとも標準的なHIV-1治療と予防サービスを受けていた。感染率の相対的低下はTDF群67%、TDF-FTC群75%、両剤間の防御効果に有意差はなし試験登録4,758組のうち、4,747例が追跡された(TDF群1,584例、TDF-FTC群1,579例、プラセボ群1,584例)。追跡カップルのうち62%が、男性パートナーがHIV-1血清陰性だった。また、HIV-1血清陽性パートナーのCD4陽性細胞数の中央値は495個/mm3(四分位範囲:375~662)だった。試験期間中に、血清陰性だったパートナーにHIV-1感染が認められたのは82例だった。各群の発生は、TDF群17例(発生率:65/100人・年)、TDF-FTC群13例(同:0.50/100人・年)、プラセボ群52例(同:1.99/100人・年)で、TDF群は67%(95%信頼区間:44~81)、TDF-FTC群は75%(同:55~87)の相対的低下が認められた(両群ともp

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女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンなど)の7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが、スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のTorsten Sandberg氏らの検討で示された。尿路感染症の最大の原因は腸内細菌の抗菌薬に対する耐性化であり、対策としては投与期間の短縮など、抗菌薬の消費量の抑制が重要だという。急性腎盂腎炎は成人女性に高頻度にみられる感染症だが、その治療法に関する対照比較試験は少なく、抗菌薬治療の至適投与期間は確立されていない。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。至適投与期間を前向き無作為化非劣性試験で検討研究グループは、急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン治療における7日間投与と14日間投与の有効性をプロスペクティブに比較するプラセボ対照無作為化非劣性試験を実施した。対象は、スウェーデンの21の感染症医療施設で急性腎盂腎炎と推定診断された18歳以上の妊娠していない女性であった。これらの患者が、シプロフロキサシン(500mg×2回/日)を7日間投与する群あるいは14日間投与する群に無作為に割り付けられた。最初の1週間は非盲検下に全例に同様の治療が行われ、2週目は二重盲検下にシプロフロキサシン(500mg×2回/日)あるいはプラセボが継続投与された。患者、介護者、担当医、試験運営センター職員には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は治療終了後の短期的(10~14日)な臨床治癒率、副次的評価項目は長期的(42~63日)な累積治癒率とし、per-protocol解析を行った。治癒は、臨床的かつ細菌学的な治癒が達成された場合と定義した。短期的臨床治癒率:97% vs 96%、長期的累積治癒率:93% vs 93%2006年2月1日~2008年12月31日までに248例登録され、7日間投与群に126例が、14日間投与群には122例が割り付けられた。それぞれ73例(平均年齢46歳、27~62歳)、83例(同:41歳、23~58歳)が解析の対象となった。短期的臨床治癒率は、7日間投与群が97%(71/73例)、14日間投与群は96%(80/83例)で、短期投与の長期投与に対する非劣性が確認された(群間差:-0.9%、95%信頼区間:-6.5~4.8、非劣性検定:p=0.004)。長期的累積治癒率は両群とも93%(7日間投与群:68/73例、14日間投与群:78/84例)で、これも同様の非劣性が示された(群間差:-0.3%、95%信頼区間:-7.4~7.2、非劣性検定:p=0.015)。両群とも忍容性は良好であった。7日間投与群の1例が筋肉痛で治療を中止し、14日間投与群ではそう痒性発疹による治療中止が1例認められた。最初の1週間の治療後にシプロフロキサシン関連の有害事象を発現した患者は、7日間投与群が5%(4/86例)、14日間投与群は6%(6/93例)だった。粘膜カンジダ感染症は7日間投与群ではみられなかったが、14日間投与群では5例に認めた(p=0.036)。著者は、「高齢女性や比較的重篤な病態の女性を含む急性腎盂腎炎患者において、シプロフロキサシンの7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが示された」と結論し、「薬剤耐性が増加傾向にある現在、短期的抗菌薬療法は好ましい治療法といえよう」と指摘している。

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黒人で高い、男性間性交渉者のHIV感染リスク

 黒人の男性間性交渉者(MSM)は、非黒人MSMに比べHIV陽性者が多く、抗レトロウイルス薬併用療法(cART)を受けている者が少なく、低所得などの構造的障壁を持つ者が多いことが、米国疾病対策予防センター(CDC)のGregorio A Millett氏らの検討で示された。2009年の米国のHIV感染者の約4分の1を、全人口の1%に満たない黒人MSMが占め、人種間の感染隔差の最大の要因となっているという。CDCによれば、2009年の若年の黒人MSMにおける新規HIV感染者は2006年に比べ48%も増加した。Lancet誌2012年7月28日号(オンライン版2012年7月20日号)掲載の報告。黒人MSMのHIV感染リスク関連因子をメタ解析で評価 研究グループは、カナダ、英国、米国の黒人のMSMにおけるHIV感染リスクの関連因子の評価を目的にメタ解析を行った。 データベース(Embase、Medline、Google Scholar)およびオンライン版の学会記録集に登録されたデータ(1981年1月1日~2011年12月31日)を検索して、HIVの感染リスクや感染状況に関連するアウトカムを人種間で量的に比較した試験を抽出した。 全試験のデータをアウトカムごとに統合して全体の効果量(effect size)を推算し、黒人MSM(10万6,148人)の黒人以外の人種のMSM(58万1,577人)に対するサマリー・オッズ比(OR)に変換した。構造的障壁の除去、治療を受けにくい状況の改善が必要 カナダの7試験、英国の13試験、米国の174試験が解析の対象となった。いずれの国でも、HIV感染者と非感染者間の安全でない性交渉の頻度は、黒人MSMと黒人以外の人種のMSMで同等だった。カナダと米国では、黒人MSMは非黒人MSMに比べ薬物使用歴のある者の頻度が有意に低かった[カナダ、OR:0.53、95%信頼区間(CI):0.38~0.75、米国、OR:0.67、95%CI:0.50~0.92]。 英国と米国では、黒人MSMは非黒人MSMに比べHIV陽性者が有意に多かった(それぞれ、OR:1.86、95%CI:1.58~2.18、OR:3.00、95%CI:2.06~4.40)が、両国ともHIV陽性黒人MSMはHIV陽性非黒人MSMよりもcARTの施行率が有意に低かった(それぞれ、OR:0.78、95%CI:0.69~0.88、OR:0.40、95%CI:0.26~0.62)。 米国では、HIV陽性黒人MSMはHIV陽性非黒人MSMに比し、健康保険加入者、CD4陽性細胞数>200/μL、cART服薬遵守、ウイルス抑制の割合が低かった。とくに、米国の黒人MSMは、HIV感染リスクを増加させる構造的障壁(失業、低所得、被拘禁歴、低学歴など)を有する者が非黒人MSMの2倍以上多かったが、HIV感染に対する予防的行動をとる者が有意に多かった(OR:1.39、95%CI:1.23~1.57)。 米国では、HIV感染関連因子のうち、構造的障壁、性的パートナーの年齢や人種については黒人MSMと非黒人MSM間に大きな差がみられたが、性的リスク(肛門性交、コンドーム使用、男性パートナー数など)は両群間でほとんど差がなかった。 著者は、「黒人MSMにおける高頻度のHIV感染状況を解消するには、構造的障壁やHIV治療を受けにくい環境を改善する必要がある」と結論している。

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子宮頸がんリスク、子宮頸部細胞診正常でHPV陰性ならHIV感染による増大なし

子宮頸部細胞診が正常で発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性の女性において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の有無による、高度扁平上皮内病変以上(HSIL+)や子宮頸部上皮内腫瘍2以上(CIN2+)の、5年発症リスクの増大は認められないことが報告された。米国・Albert Einstein College of MedicineのMarla J. Keller氏らが、約700人の女性について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月25日号で発表した。HIV感染約400人と非感染の約300人を5年追跡研究グループは、2001年10月1日~2002年9月30日にかけて、試験開始時点で子宮頸部細胞診が正常だった、HIV感染の420人と、HIV非感染の279人の女性について、2011年4月30日まで追跡した。主要エンドポイントは、HSIL+とCIN2+の、5年累積発生率だった。被験者の平均年齢は、HIV感染群が34歳(標準偏差:7)、HIV非感染群が30歳(同:8)だった。被験者のうちHPV陰性は、HIV感染群中369人(88%、95%信頼区間:84~91)、HIV非感染群中255人(91%、同:88~94)だった。HIV感染群・非感染群ともに、HSIL+発症は1例、CIN2+発症は5%結果、追跡期間中にHSIL+が認められたのは、HIV非感染群で1人、HIV感染群でも1人(発症者のCD4細胞数は500/μL以上)だった。CIN2+も、HIV非感染群が145人中6人(累積発生率:5%、95%信頼区間:1~8)に対し、HIV感染群は219人中9人(同:5%、同:2~8)だった。9人は、CD4細胞数350/μL未満は1人(2%)、350~499/μLは1人(2%)、500/μL以上は7人(6%)だった。CIN3+発症はHIV感染群とHIV非感染群でそれぞれ1人ずつだったが、がんの発症は認められなかった。

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HIVとHCV重複感染者、肝線維化進むほど肝細胞がんや死亡リスク増大

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染者では、肝線維化が進んでいるほど末期肝疾患・肝細胞がん・死亡の複合リスクが増大することが明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のBerkeley N. Limketkai氏らが、600人超の患者について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月25日号で発表した。638人を中央値5.8年追跡研究グループは、HIVとHCVの重複感染者で、ジョンズ・ホプキンスHIVクリニックで診察を受けている638人(黒人80%、男性66%)について、1993年7月~2011年8月まで、前向きに追跡した。追跡期間中央値は5.82年(四分位範囲:3.42~8.85)だった。肝線維化ステージについては、METAVIRスコアシステムで評価した。主要アウトカムは、末期肝疾患、肝細胞がんまたは死亡の複合アウトカム発生率だった。結果、試験開始時の肝線維化ステージが高いほど主要アウトカム発生率も増加することが示された。主要アウトカム発生率は1,000人・年当たり、肝線維化ステージF0の人は23.63、F1では36.33、F2は53.40、F3は56.14、F4は79.43だった(p

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「痛み」の種類に応じた治療の重要性~全国47都道府県9,400人を対象とした実態調査~

 痛みとは本来、危険な外的刺激から身を守ったり、身体の異常を感知したりするなど、生命活動に必要なシグナルである。しかし、必要以上の痛みや原因のない痛みは防御機能として作用しないばかりか、健康や身体機能を損なう要因となるため、原因となる疾患の治療に加えて痛みのコントロールが必要となる。 ところが、日本では痛みに対する認識や治療の必要性が十分に知られていない。そのような実態を踏まえ、47都道府県9,400人を対象とした「長く続く痛みに関する実態調査」が実施され、その結果が2012年7月10日、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏によって発表された。(プレスセミナー主催:ファイザー株式会社、エーザイ株式会社)●「痛み」とは 痛み(疼痛)はその病態メカニズムにより、怪我や火傷などの刺激により侵害受容器が持続的に刺激されて生じる「侵害受容性疼痛」、神経の損傷やそれに伴う機能異常によって生じる「神経障害性疼痛」、器質的病変はないものの、心理的な要因により生じる「心因性疼痛」の3つに大別される1)。 これらは疼痛の発生機序や性質が違うため治療法は異なるが、実際にはそれぞれの要因が複雑に絡み合っており、明確に分類することは困難である。とくに神経障害性疼痛は炎症が関与しないため、消炎鎮痛剤が効きにくく難治性であることが知られている。●神経障害性疼痛の特徴と診断 神経障害性疼痛は「知覚異常」、「痛みの質」、「痛みの強弱」、「痛みの発現する時間的パターン」という4つの臨床的な特徴がみられる1)。1.知覚異常: 自発痛と刺激で誘発される痛みの閾値低下(痛覚過敏など)2.痛みの質: 電撃痛、刺すような痛み、灼熱痛、鈍痛、うずく痛み、拍動痛など3.痛みの強弱: 弱いものから強いものまでさまざまである4.痛みの発現する時間的パターン: 自発性の持続痛、電撃痛など 神経障害性疼痛の診断アルゴリズムによると、疼痛の範囲が神経解剖学的に妥当、かつ体性感覚系の損傷あるいは神経疾患を示唆する場合に神経障害性疼痛を考慮する。そのうえで、神経解剖学的に妥当な疼痛範囲かどうか、検査により神経障害・疾患が存在するかどうかで診断を進める2)。●神経障害性疼痛の薬物治療 神経障害性疼痛の治療は薬物療法が中心となるが、痛みの軽減、身体機能とQOLの維持・改善を目的として神経ブロック療法、外科的療法、理学療法も用いられる。日本ペインクリニック学会の「神経障害性疼痛薬物治療ガイドライン」によると、以下の薬剤が選択されている2)。第1選択薬(複数の病態に対して有効性が確認されている薬物)・三環系抗うつ薬(TCA)  ノルトリプチン、アミトリプチン、イミプラミン・Caチャネルα2δリガンド  プレガバリン、ガバペンチン下記の病態に限り、TCA、Caチャネルα2δリガンドとともに第一選択として考慮する・帯状疱疹後神経痛―ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(ノイロトピン)・有痛性糖尿病性ニューロパチー―SNRI(デュロキセチン)、抗不整脈薬(メキシレチン)、アルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット)第2選択薬(1つの病態に対して有効性が確認されている薬物)・ノイロトピン・デュロキセチン・メキシレチン第3選択薬・麻薬性鎮痛薬  フェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、トラマドール、ブプレノルフィン なお、三叉神経痛は特殊な薬物療法が必要となり、第1選択薬としてカルバマゼピン、第2選択薬としてラモトリギン、バクロフェンが選択されている。●47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査 調査結果 各都道府県の慢性疼痛を抱える人の考えや行動を明らかにするために、「47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査」が実施された。 対象は慢性疼痛の条件を満たした20歳以上の男女9,400人(各都道府県200人)で、インターネットを用いて調査が行われた。主な結果は以下のとおり。・「痛みがあってもある程度、自分も我慢するべき」と考える人は74.3%(6,981人)、「痛いということを簡単に他人に言うべきではない」と考える人は55.7%(5,240人)であった。・長く続く痛みへの対処で、病医院へ通院していない人は50.1%(4,707人)であり、そのうち31.2%(1,470人)が「病院へ行くほどでもないと思った」と回答した。・痛みがあってもある程度、自分も我慢するべきと考える割合や、過去5年以内に1回でも通院先を変更した経験があったり、3回以上通院先を変更したりしている人の割合については地域差がみられた。・神経障害性疼痛を判定するスクリーニングテストの結果、20.1%(1,888人)に神経障害性疼痛の疑いがあった。・72.9%(6,849人)が「長く続く痛みの種類」を知らず、76.6%(7,203人)が「長く続く痛みの治療法を知らない」と回答した。 これらの結果より、宗圓氏は、日本では痛みを我慢することが美徳とされてきたが、痛みを我慢するとさまざまな要因が加わって慢性化することがあるため、早めに医療機関を受診することが重要であると述べた。 そして、痛みが長期間続くと不眠、身体機能の低下やうつ症状を併発することもあるため、治療目標を設定し、痛みの種類や症状に合わせて薬物療法、理学療法や心理療法も取り入れ、適切に治療を行う必要があるとまとめた。●プレガバリン(商品名:リリカ)について プレガバリンは痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑えることで鎮痛作用を発揮する薬剤であり、従来の疼痛治療薬とは異なる新しい作用機序として期待されている薬剤である。また、現在120の国と地域で承認され、神経障害性疼痛の第一選択薬に推奨されている。 さらに、2012年6月にプレガバリンは「線維筋痛症に伴う疼痛」の効能を取得した。線維筋痛症は全身の広い範囲に慢性的な疼痛や圧痛が生じ、さらに疲労、倦怠感、睡眠障害や不安感などさまざまな症状を合併し、QOLに悪影響を与える疾患である。国内に約200万人の患者がいると推計されるが3)、日本において線維筋痛症の適応で承認を受けている薬剤はほかになく、国内唯一の薬剤となる。国内用量反応試験、国内長期投与試験、外国後期第Ⅱ相試験、外国第Ⅲ相試験および外国長期投与試験において、副作用は1,680例中1,084例(64.5%)に認められた。主な副作用は浮動性めまい393例(23.4%)、傾眠267例(15.9%)、浮腫179例(10.7%)であった。なお、めまい、傾眠、意識消失等の副作用が現れることがあるため、服薬中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように、また、高齢者では転倒から骨折に至る恐れがあるため注意が必要である。●疼痛治療の今後の期待 慢性疼痛は侵害刺激、神経障害に加え、心理的な要因が複雑に絡み合っている。さらに「長く続く痛みに関する実態調査」によって、疼痛を我慢して治療を受けていない患者の実態が明らかとなり、さまざまな要因が加わって疼痛が慢性化し、治療が難渋することが懸念される。 抗炎症鎮痛薬が効きにくいとされている神経障害性疼痛において、プレガバリンのような新しい作用機序の薬剤の登場により、痛みの種類に応じた薬剤選択が可能となった。患者と治療目標を設定し、適切な治療方法を選択することにより、今後の患者QOLの向上が期待される。

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ロタウイルス胃腸炎疾患啓発サイト「産後ロタ.jp」オープン

MSD株式会社は24日、7月20日の5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン「ロタテック内用液」の発売を機に、ロタウイルス胃腸炎疾患啓発サイト「産後ロタ.jp」(PCサイト:http://35-rota.jp/、携帯サイト:http://35-rota.jp/m/)を開設した。産後ロタ.jpでは、ロタウイルス胃腸炎の症状やその原因となるロタウイルスに関する解説のほか、予防ワクチンに関する情報提供や体験談、Q&Aなどを紹介している。また、ロタウイルス胃腸炎とワクチンに関する用語をわかりやすく解説する用語辞典もある。さらに、子どもが罹患した際の家族の負担などをマンガでわかりやすく紹介した「とある家庭のロタウイルス胃腸炎」や、実際に子どもがロタウイルス胃腸炎に罹った母親の声なども掲載している。詳細はプレスリリースへhttp://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2012/Pages/product_news_0724.aspx

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5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン 7月20日より販売開始

MSD株式会社は13日、5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン「ロタテック内用液」(以下「ロタテック」)の販売を、7月20日より開始すると発表した。ロタテックは、ロタウイルスの感染によって引き起こされる乳幼児のロタウイルス胃腸炎を予防する5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン。ロタウイルスには多くの血清型があると報告されているが、そのうちG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]の5種類の血清型の組み合わせで、ロタウイルス胃腸炎の原因の約90%を占めている。ロタテックは、G1、G2、G3、G4およびP1A[8]型の5つの血清型のロタウイルス株を含む5価のワクチンであり、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]に起因するロタウイルス胃腸炎に対して予防効果が示唆されている。また、疫学研究において、ロタウイルスに複数回感染することで、ロタウイルス胃腸炎に対する自然免疫をより高く獲得することも報告されている。その研究結果から、ロタテックは3回接種のロタウイルスワクチンとして開発されたという。ロタテックは、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.によって開発され、2005年にメキシコで承認されて以来、2012年3月時点で、世界107の国と地域で承認されている。日本では、2012年1月18日に厚生労働省より製造販売承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2012/Pages/product_news_0713.aspx

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