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エボラ、初期データ解析からの知見/NEJM

 2014年5月にシエラレオネで起きたエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクの初期データから、潜伏期間や死亡率は同時期の他の地域や過去の事例と類似しており、出血はまれで発熱や下痢などの消化管症状が多いとの特徴があることが、同国ケネマ国立病院とWHOの研究チームの調査で明らかとなった。10月25日現在、EVD例はギニア、シエラレオネ、リベリア、セネガル、ナイジェリア、マリの6ヵ国で1万100例を超えたが、収集された患者データは限られたものだという。NEJM誌オンライン版2014年10月29日号掲載の報告。潜伏期間6~12日、死亡率74% シエラレオネのケネマ国立病院は、ウイルス性出血熱の研究拠点であり、2014年5月に起きたEVDのアウトブレイク以降、患者を受け入れ治療を行っている。 今回、研究チームは、2014年5月25日~6月18日までにEVDと診断され、同院で治療を受けた患者のデータを精査した。診断には定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を用い、ザイール種エボラウイルス(EBOV)のウイルス量の測定も行った。 ラッサ出血熱またはEVDが疑われた213例のうち、106例(50%)がRT-PCR法でEVDと診断された。このうち転帰が確認できたのは87例で、詳細な臨床情報が得られたのは44例だった。 潜伏期間は6~12日と推定され、死亡率は74%であった。また、症状発現から入院までの期間は平均5.7±0.5日、死亡までの期間は9.8±0.7日であった。生存例の罹病期間は平均21.3±2.6日で、入院期間は15.3±3.1日だった。発熱、衰弱、めまい、下痢、肝・腎機能低下が死亡と関連 発症時の主要所見として、発熱(89%)、頭痛(80%)、衰弱(66%)、めまい(60%)、下痢(51%)、腹痛(40%)、咽頭炎(34%)、嘔吐(34%)、結膜炎(31%)などがみられた。 これら発症時の臨床症状や検査値異常のうち致死的転帰との関連が認められたのは、衰弱(p=0.003)、めまい(p=0.01)、下痢(p=0.04)のほか、血中尿素窒素(BUN、p=0.01)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、p=0.009)、クレアチニン(Cr、p=0.04)の上昇であった。初診時の発熱は死亡とは関連しなかったが、38℃以上の場合は関連が認められた。 また、下痢を発症した患者の死亡率は94%に上ったが、下痢がみられない場合は65%であった。出血を認めたのは1例のみであったが、データが少ないため可能性は排除できない。 さらに、6つのバイタルサイン(発熱、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、呼吸速度、酸素飽和度)を6時間ごとに測定したところ、死亡との有意な関連を認めたのは発熱(38℃以上)のみであった(p=0.001)。入院時の平均体温は、死亡例のほうが生存例よりも有意に高かった(37.5 vs. 35.9℃、p=0.001)。45歳超、コピー数107/mL超で死亡率94% 死亡率に関する探索的解析では、21歳未満が57%と45歳超の94%に比べ有意に低く(p=0.03)、21~45歳の死亡率は中間的(74%)であった。EBOVのコピー数が105/mL未満の患者の死亡率は33%であり、107/mL以上の94%よりも有意に低かった(p=0.003)。 一方、ほとんどの患者が入院時または入院中にアシドーシスをきたしていた。死亡例は経時的にBUNおよびCrが上昇したことから、入院経過では脱水や腎機能低下が重要な役割を果たすことが示唆された。  著者は、医療従事者の感染予防策の重要性を強調したうえで、「EVD施設は検疫よりもむしろ患者の治療や延命に注力すべき」とし、「これらの臨床所見と検査所見は、今回だけでなく今後のEVDアウトブレイク時の対策の参考となるだろう」とまとめている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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エボラ国際伝播、出国検疫強化がカギ/Lancet

 カナダ・トロント大学のIsaac I Bogoch氏らは、国際線航空機搭乗者を介したエボラウイルス伝播の可能性について、国際線フライトデータとエボラウイルス調査データを連動し評価を行った。その結果、現在アウトブレイクが伝えられる西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国からは、毎月平均2.8人のエボラウイルス感染旅行者が出国している可能性を報告。同時に、それら3ヵ国に関連した出国時の検疫を強化することで、感染リスクの高い全旅行者の健康状態の評価が可能になるとして、国際的な支援の必要性を提言した。Lancet誌オンライン版2014年10月21日号掲載の報告より。フライト制限、出入国時スクリーニングの有効性をモデル化 Bogoch氏らは、2014年9月1日~12月31日までの国際線フライトスケジュールや、2013年の旅行者データを分析し、ギニア、リベリア、シエラレオネからの航空機による出国旅行者数などを割り出した。 それらとエボラウイルス調査データを連動して、予想されるエボラウイルス感染者の出国者数を調べ、航空機出国旅行を制限することの有効性、空港での出入国時スクリーニングの有効性をモデル化し検討した。検討では、対象3ヵ国の国内線または国際線搭乗者は全員、エボラウイルス曝露の可能性があるとみなし、その他の旅行者には有意な曝露リスクはないものとみなした。ギニア、リベリア、シエラレオネから毎月2.8人の感染旅行者が出国 分析の結果、2013年における全世界の航空機搭乗者に占める出国搭乗者は、ギニア、シエラレオネからはいずれも0.02%、リベリアからは0.01%であった。各国からの出国者数は、2014年9月1日時点でフライトキャンセルや減便などにより、リベリアで51%、ギニアで66%、シエラレオネで85%まで減少していた。 モデル検討により、空港での旅行者の健康スクリーニングが、エボラウイルス伝播の阻止に最も有効であると推定された。スクリーニングが必要なのは、出国時については3ヵ国の3都市の空港、入国時については3ヵ国からの直行便がある15ヵ国の15都市、また直行便のない1,238都市での入国時スクリーニングが必要であることも判明したという。 また、3ヵ国からは毎月平均2.8人のエボラウイルス感染旅行者が出国していることが推定され、ギニア、リベリア、シエラレオネからの航空機搭乗出国者のうち64%(9万1,547例)は、低所得国、低中所得国に向かっていると予測され、3ヵ国3都市の出国時スクリーニングが、エボラウイルス感染曝露が高い全旅行者の健康評価を実現できる可能性が明らかになったという。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏

 2014年10月30日、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。今回は、記者との質疑応答をレポートする。前回記事(「発見者ピーターピオットが語るエボラの今」はこちら)今までのアウトブレイクとの違いは? 今回の死者は約5,000人となり(会見時:2014年10月30日)、1976年の発見以降の38年間におけるエボラによる死者数の3倍に達する。これまでのアウトブレイクは非常に限定的なものであった。ところが、今回は、医療システムの崩壊、政府への信用欠如、対応の遅れなど、さまざまな要素が合わさり、流行を制御不能にした。また、医療従事者に悪影響を及ぼし、医療システムの崩壊を招いている。このように社会全体に与えている影響を鑑みると、大規模な国際的取り組みは喫緊の課題といえよう。事態は好転しているのか? 国際的協力が進み、社会の認知が改善したことで良い刺激が出てきているが、国によって状況は異なる。シエラレオネでは流行はまだ悪化している。リベリアでは一部の地域で沈静化のサインが出てきている。実際の社会での拡大阻止を実現できるのは、国際的援助ではなく、地域の人間の活動である。リベリアでは、伝統的指導者が、(死者の身体を拭くという)埋葬の方法を変えるべき、と発言するなど新たな動きが出てきた。これは非常に重要なことだ。 個人的な楽観的シナリオではあるが、クリスマスまでには緩やかな減少が各地にみられるかもしれない。防御服を着ても医療従事者の感染が起こっているが? 防御服を脱ぐ時が問題である。エボラウイルスは死亡患者の身体にも非常に多く生存する。嘔吐、下痢、出血などがその原因だ。死亡者の身体でも2~3日は感染性が高い状態が続き、患者の寝ていたシーツやテーブルの上などでも数時間生存する。ウイルスは口、鼻、結膜などから侵入する。防護服を脱ぐ際、過って患者や死亡者の体液がついた防御服に触れ、その手で瞼や鼻をさわるなどして感染を起こす。そのため、国境なき医師団など熟練した組織では現在、防御服の脱衣を監督下で行っている。中国、日本への拡大リスク 伝播は世界中どの国でも起こりうるが、中国での危険性は高いといえる。現在、何千人という中国人労働者がアフリカ大陸にいる。人の渡航は止めることはできない。中国人労働者がエボラを本国に持ち帰ることも、逆にアフリカ人が中国にウイルスを持ち込む可能性もある。だが、ここで最も大きな問題は医療機関の感染制御の質なのである。SARSの経験で徐々に改善されているものの、中国の公の病院の感染制御レベルはまだ低い。そういう意味で、中国は脆弱性が高いと考えられる。 一方、日本は衛生面、感染制御とも基準を満たしている。だが、同じレベルにある米国テキサスでも死者が発生していることからも安全とはいえない。この時期に、国全体でより良い感染制御の訓練を加速すべきである。これは一部の指定された病院だけでなく、すべての病院が対象となるべきだ。エボラウイルス治療薬、ワクチンの開発 現在は患者の隔離、生命維持、水分補給、接触者の検疫措置、環境改善などの原始的な形でしか封じ込めはできない。そのようななか、富士フイルムグループの富山化学工業のインフルエンザ治療薬アビガン錠がエボラ治療薬として認められた。エボラに対する効果はヒトでは確認されていないが(マウスでは確認済み)、WHOは本疾患の死亡率を鑑みこの判断を下した。現在、用量設定試験が進行中である。そのほかにも幾つかの治療薬が開発されつつある。また、ワクチンも開発されつつある。現在の混乱した状況では効果確認は容易ではないが、いつくかの候補があり、うち1つのワクチンで第I相試験が行われている。 エボラの大きな問題は、他者に感染させる危険がある最後の1人がいなくなるまで終わらないことである。実際、ギニアでは一旦沈静化したにもかかわらず1人の有名人に集まった葬儀参加者から感染が再拡大している。つまり、患者が1人いれば流行が再燃するには十分なのである。この点が他の感染症とは大きく違うところである。そして、これは同時に今後も全面的な取り組みが必要であることを意味する、とピオット氏は強調した。グローバルヘルス技術振興基金 GHIT Fund(Global Health Innovative Technology Fund):開発途上国に蔓延する感染症制圧に必要不可欠な医薬品、ワクチン、診断薬の研究開発および製品化の支援を目的とし、官・企業・市民がパートナーシップを組み資金を拠出して設立したグローバルヘルスR&Dに特化した基金。途上国の最貧困層が必要とする医薬品・ワクチン・診断薬の研究開発・製品化に向け活動している。

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肺結核の1次治療、より簡略なレジメンが非劣性/NEJM

 肺結核の1次治療では、高用量リファペンチン(国内未承認)+モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)の週1回投与を含む6ヵ月レジメンの有効性が、イソニアジド(同:イスコチンほか)+リファンピシン(同:リファジンほか)の6ヵ月連日投与を要する標準治療に劣らないことが、英国・ロンドン大学セント・ジョージ校のAmina Jindani氏らが行ったRIFAQUIN試験で示された。現在の肺結核に対する6ヵ月レジメンは、薬剤感受性菌の場合、適切に投与すれば95%以上の無再発治癒達成が可能だが、より短期間で簡略化されたレジメンの確立が求められている。リファペンチンの間欠投与では再発率が高く、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の重複感染例ではリファマイシン系薬への抵抗性がみられるが、マウス実験では高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの併用が治癒率を改善する可能性が示唆されている。NEJM誌2014年10月23日号掲載の報告。簡略、短期レジメンの非劣性を無作為化試験で評価 RIFAQUIN試験は、肺結核患者の1次治療において、高用量リファペンチン+モキシフロキサシンの間欠投与を含む6ヵ月および4ヵ月レジメンの、標準治療であるイソニアジド+リファンピシンの6ヵ月連日投与レジメンに対する非劣性を検証する国際的な無作為化対照比較試験。対象は、年齢18歳以上、体重35kg以上で、2つの喀痰塗抹の顕微鏡検査で結核菌陽性の未治療の患者であった。 被験者は、以下の3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられた。(1)エタンブトール、ピラジナミド、イソニアジド、リファンピシンを2ヵ月連日投与後、イソニアジドとリファンピシンを4ヵ月連日投与する群(対照群)、(2)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン900mgを週2回、2ヵ月投与する群(4ヵ月レジメン群)、(3)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン1,200mgを週1回、4ヵ月間投与する群(6ヵ月レジメン群)。 喀痰検体の顕微鏡検査と培養検査を定期的に行った。主要評価項目は、治療不成功と再発の複合エンドポイント(治療効果不良)であった。非劣性マージンは6%とし、per-protocol(PP)解析とmodified intention-to-treat(mITT)解析の双方で90%信頼区間(CI)の上限値が6%を超えない場合に非劣性と判定することとした。4ヵ月レジメンでは効果はむしろ不良 2008年8月15日~2011年8月1日までに、南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビアから827例が登録され、593例(6ヵ月レジメン群:277例、4ヵ月レジメン群:275例、対照群:275例)がmITT解析、514例(186例、165例、163例)がPP解析の対象となった。mITT集団の64%が男性、27%はHIVとの重複感染例だった。 PP解析では、治療効果不良率は対照群の4.9%に対し、6ヵ月レジメン群は3.2%(補正後対照群との差:-1.8%,90%CI:-6.1~2.4%)、4ヵ月レジメン群は18.2%(同:13.6%、8.1~19.1%)であった。 mITT解析では、治療効果不良率は対照群の14.4%に対し、6ヵ月レジメン群は13.7%(補正後対照群との差:0.4%、90%CI:-4.7~5.6%)、4ヵ月レジメン群は26.9%(同:13.1%、6.8~19.4%)であった。 すなわち、6ヵ月レジメン群はPP解析、mITT解析の双方で90%CIの上限値が6%を超えなかったことから、対照群に対する非劣性が確認された。一方、4ヵ月レジメン群はいずれの解析でも上限値が6%を超えており、非劣性であることは認められなかった。なお、より厳格な95%CIでは、6ヵ月レジメン群のPP解析は非劣性マージンを満たしたが、mITT解析は満たさなかった。 38例に45件の重篤または生命を脅かす有害事象がみられたが、治療に関連するものはなかった。割り付けの対象となった827例中25例が死亡し、このうち4例は結核による可能性があると判定された。 著者は、「高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの週1回投与を含む6ヵ月レジメンは、HIV重複感染のない患者やイソニアジド抵抗性の患者などの1次治療として使用可能と考えられる」としている。

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エボラ、赤道アフリカと西アフリカは別種/NEJM

 西アフリカで大規模に広がり続けるエボラウイルス病(EVD)の流行の一方で、赤道アフリカのコンゴ民主共和国で7回目のEVDアウトブレイクが報告されたのは、2014年7月26日のことだった。ガボン共和国・世界保健機関(WHO)研究協力センターのGael D Maganga氏らは、これら近接する2つの地域における同時期のアウトブレイクの関連を調査した。その結果、赤道アフリカのエボラウイルスは西アフリカとは異なることが判明したという。NEJM誌オンライン版2014年10月15日号掲載の報告より。サルから感染した妊婦と接触した医療者が感染源に 研究グループは、標準的なWHOのウイルス性出血熱臨床調査票を用いて、コンゴ民主共和国における疫学および臨床データを収集した。患者は、EVDに関して、「感染が疑われる(suspected)」「感染の疑いが濃厚(probable)」「感染確定(confirmed)」「非感染(non-EVD)」のいずれかに分類された。 個々の患者の接触者を追跡することで感染源の同定を試みた。また、採取された血液サンプルを用いて、特異的なRT-PCR法による診断を行い、ウイルス単離、ゲノム・シーケンシング、系統樹解析を実施した。 今回のEVDアウトブレイクは、同国Equateur州Boende市(人口約4万5,000人)近郊のInkanamongo村(首都キンシャサから直線距離で北西に約700km)で始まり、この地域に限定されていた。最初の感染例(index case)は同村に住む妊婦で、夫が見つけたサル(種は不明)の死体を解体したところ、2014年7月26日に発症し、8月11日に死亡した。 その後、1名の医師を含む4名の医療従事者が、妊婦と胎児を別個に埋葬するという現地の慣習に基づき、死亡した妊婦の帝王切開を行ったところ全員が感染し、死亡した。これらの医療従事者が、その後の感染源となっていた。死亡率74%、潜伏期間16日、迅速な対応で早期終息か 2014年7月26日~10月7日までに、感染疑い3例、感染濃厚28例、確定38例の69例(医療従事者8例を含む)が報告された。男性が33例、女性は36例で、21~60歳が80%を占めた。感染疑いの3例は、のちに非感染であることが判明している。感染濃厚例と確定例のうち49例(男性21例、女性28例、5歳未満の3例を含む)が死亡し、死亡率は74%(49/66例)だった。 EVD患者との接触から発症までの期間中央値は16日(3~27日)で、西アフリカの状況と類似していた。死亡例のうち32例の解析では、発症から死亡までの期間中央値は11日(1~30日)であった。8例の医療従事者(感染濃厚4例、確定4例)はすべて死亡している。 非感染例に比べ感染濃厚例および確定例で頻度の高い症状として、発熱、頭痛、下痢、悪心・嘔吐、疲労感、食欲不振、筋肉痛、嚥下困難、結膜炎、血便および血液の混じる吐瀉物が認められた。 index case以外は、すべてヒト-ヒト感染であった。アウトブレイクの最初の24日間にEVDと診断された29例のうち21例は、index caseと身体的またはその体液に接触していた。6回の発生のピークがみられ、8月17~24日の週の報告例数が最も多く、その後は急速に減少。10月7日の時点で、10月4日を最後に感染の報告はない。 また、index caseと接触した21例を除いた場合の平均再生産症例数(reproduction number、1人の感染者が再生産する2次感染者数)は0.84であり、感染持続の閾値である1を下回ったことから、今後、感染は終息に向かうと予測された。 一方、ゲノム・シーケンシングでは、今回のアウトブレイクの原因ウイルスは1995年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)のKikwit地区で発生したアウトブレイクの原因ウイルスとの遺伝学的同一性が99.2%で、現在西アフリカで進行中のアウトブレイクで同定されたウイルスとの遺伝学的同一性は96.8%であったことから、これらは別種のウイルスであると考えられた。 著者は、赤道アフリカのアウトブレイクが西アフリカよりも小規模であった理由のうち最も説得力のある要因として、(1)西アフリカとは対照的に、遠隔の森林地帯であり、人口密度が低く、交通機関が未発達でヒト間の接触が少なく時間もかかる地域であること、(2)過去6回のEVD流行の経験があり準備が整っていたため、対応が迅速で効果的であった点を挙げている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も

 現在、エボラ出血熱が西アフリカを中心に蔓延している。厚生労働省検疫所は、WHOの情報として10月27日の段階で世界のエボラウイルス病について、疑い例を含む感染者が1万3000人を超え、そのうち死者が5,000人近くにのぼっていることを報告している。 最近では、西アフリカのマリで初めてとなるエボラウイルス病の確定症例が報告された。この患者は2歳の女児でギニアからの移動中に発症し、マリにあるFousseyni Daou病院を受診したが助からなかった。WHOのチームはすでにマリに配置されており、感染予防と制御、接触者の追跡、医療従事者の訓練に関して人的支援を続けている。 9月30日に初めての感染が報告されたアメリカでは、現在4例の感染が発生し、うち1例が死亡している。2例は、すでに退院しているが、残る1例は、ニューヨークで隔離され治療を受けている。接触可能性のある人については現在も監視が続けられている。 WHOが感染リスクの高い集団として挙げている医療従事者でも感染および死亡数が増加している。10月27日現在で、医療従事者におけるエボラウイルス病の感染は500名を超え、270名以上が死亡している。WHOは感染原因の調査を実施するとともに、全ての医療従事者が暴露リスクを最小限にとどめるための訓練準備、および個人用防護具を十分に確保すべく徹底した努力を続けている。 感染が広がる一方で、セネガルとナイジェリアでは、感染発生後の対策に成功し、それぞれ10月17日、19日に終息が宣言された。スペインでもただ一人の患者が検査の結果、1回目、2回目とも陰性であったため、このまま42日間新たな感染が発生しなければ終息が宣言される、とWHOは伝えている。詳しくは厚生労働省検疫所HPをご参照ください。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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発見者ピーター ピオットが語るエボラの今

 2014年10月30日、都内にて公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。記事の続編はこちら(エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏)。予測できなかった今回のアウトブレイク エボラ出血熱は、1976年に発見されて以来25の集団発生を起こしているが、すべて数ヵ月で完全に封じ込められている。その多くはコンゴ、ウガンダなどの中央アフリカでの発生であった。今回の西アフリカで起こった最大の集団発生はすべてが異なっており、誰も予測できなかったという。 今回のアウトブレイクの始まりは、昨年(2013年)12月 。その3ヵ月となる3月25日、WHOがギニアでエボラ集団発生が報告されたとの声明を発表。国際NGO、国境なき医師団などが急遽、発生地ギニアに入り、隔離ユニットによる診療を開始した。しかし、ギニアにおける状況はさらに悪化し6月には首都でも発生。この時点で流行は加速し、隣国リベリア、シエラレオネでも発生している。その後、さまざまな拡大防止策を実行しているが、今日に至っても集団発生は継続しており、シエラレオネ、リベリアそしてギニアの一部で発生が多い。西アフリカの制圧が唯一の予防策 発生地から遠く離れたスペイン、米国でもエボラによる死者が出ている。グローバルな時代の今日、流行を防止する策として国境閉鎖、渡航者のスクリーニングがあるが、科学的には有効とはいえない。唯一の予防策は、西アフリカで封じ込めることであると、ピオット氏はいう。 しかし、ここにきて国際的な動きが始まった。今回の初めての集団発生の報告から5ヵ月を要しているものの、8月にはWHOがPublic Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を宣言した。それに伴い、各国政府も活動を開始。米・英国も軍、関係者を派遣し、発生地における病院の建設、物流サポートを開始した。アウトブレイク制圧は初動がカギ この予想外の流行の背景には、初動の対応の不備があるという。ナイジェリアの数十年にわたる内戦、ギニアの政治腐敗、リベリアの医療サービスの崩壊(多くの医師が国外に去り、2010年には10万人に1人以下の医師しかいない)。これらのことが対応を遅らせ、流行がコントロールできない状態に陥らせてしまった。 このようななか、明るい兆しもある。セネガル、ナイジェリア、コンゴでは自国でエピデミックを制圧している。これは隔離、ケア提供、接触者の検疫という非常に単純な方法によるものである。つまり、初期対応が良ければ制圧は難しくないのである。 今日のようなグローバル世界では、いや応なく感染症の流行は台頭する。日本のような感染症の少ない国でも、流行の危険にさらされている。そのため、感染症には今後も注目し続けて欲しいと、ピオット氏は述べた。関連記事 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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今シーズンのタミフル供給計画を発表

 中外製薬株式会社は29日、スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社から輸入し、製造・販売している抗インフルエンザウイルス剤「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」(一般名:オセルタミビルリン酸塩)(以下、タミフル)について、2014-2015年シーズン(以下、今シーズン)に向けての供給計画を発表した。 今シーズンのタミフル供給計画(2014年10月29日時点)は以下のとおり。 タミフルカプセル75約400万人分 タミフルドライシロップ3%約300万人分 合計約700万人分 同社は、インフルエンザウイルスの流行拡大の状況に応じて追加供給も検討しているという。詳細は中外製薬のプレスリリースへ

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髄膜炎ワクチン、費用対効果は?/BMJ

 英国・ブリストル大学のHannah Christensen氏らは、髄膜炎菌血清群Bワクチン「Bexsero」接種導入の費用対効果について、英国民0~99歳を接種対象としたモデル研究の再評価を行った。結果、乳児への定期接種が最も効果がある短期的戦略であり低費用で費用対効果があるとしたうえで、長期的戦略の可能性として、乳児と青年への接種プログラムが大幅な症例削減につながることを報告した。同ワクチンは欧州で2013年1月に承認され、英国では同年7月にJoint Committee on Vaccination and Immunisationが、先行研究から費用対効果があるとして導入を助言。それに対し、導入を呼びかけてきた慈善団体や臨床医、研究者や政治家から費用対効果について十分な再検証を求める声が上がり本検討が行われたという。BMJ誌オンライン版2014年10月9日号掲載の報告。モデル研究で、ワクチン導入の費用対効果を検証 研究グループは、Bexsero接種導入の疫学的および経済的影響の予測と、英国ワクチンポリシーに情報を提供するため、数学・経済モデルを用いた検討を行った。 0~99歳の英国民集団を対象に、伝播力モデルを使ったシミュレーションによりワクチン戦略の影響を調べた。モデルには最新エビデンスのワクチン特性、疾病負荷、治療コスト、訴訟コスト、疾患により損失したQOLをパラメータとして含み、また家族やネットワークメンバーへの影響なども含んだ。ワクチン接種の健康への影響は、回避症例および獲得QALYにより評価した。 主要評価項目は、ワクチン接種導入による、回避症例と獲得QALY当たりのコスト。QALY獲得に要する接種プログラムの費用が2万ポンド未満の場合に費用対効果があるとした。乳児定期接種は5年で26.3%減、乳児・青年接種は30年後に51.8%減の可能性も 結果、短期的には、乳児への定期接種が最も症例の減少が大きかった(最初の5年間で回避症例は26.3%)。この戦略は費用対効果も認められ、接種にかかる費用は1回3ポンドで、良好な仮定(接種率88%の場合、保菌に対する効果は30%、疾患に対する効果は95%など)およびQOL調整因子がもたらされる可能性があった。 長期的には、乳児および青年への組み合わせ接種プログラムが、接種により髄膜菌伝播を阻害できれば、より多くの症例を予防できることが示された(30年後に51.8%)。接種にかかる費用は1回4ポンドで費用対効果も認められた。 なお、保菌率を30%まで減らした場合、青年期の予防接種のみで良好な戦略的経済効果が得られるが、十分な症例減少には20年以上を要することも示されたという。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の定期接種が最も有効な短期的戦略であり、費用も低く費用対効果がある」としたうえで、「もしワクチン接種が思春期の保菌を減少すれば、乳児と青年へのワクチン接種の組み合わせが長期的には大幅な症例の減少をもたらすものとなり、費用対効果も他と負けない可能性がある」と述べている。

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事例26 細菌培養同定検査の査定【斬らレセプト】

解説事例では左下肢の蜂窩織炎の患者に、D018細菌培養同定検査を実施したところC事由(医学的理由による不適当)で査定となった。レセプトには静脈採血があり、D018「3」細菌培養同定(血液)にて請求されている。血液に対して細菌培養同定を行う必要性のある病名が病名欄に表示されていない。嫌気性培養加算も算定されているが、血液に対して行う場合は、2ヵ所からの血液採取が奨励されており2回算定できる。事例では1回の算定であることと、診療報酬では「血液又は穿刺液」と記載されていることから、同一区分の穿刺液の入力誤りも考えられる。しかし、この区分の穿刺液は「胸水、腹水、髄液及び関節液」と規定されているので、蜂窩織炎の穿刺液に対しては適用されない。D018 「5」その他の部位からの検体の区分が適用される。いずれの理由にしても、レセプト上からは、医学的に不適当であることに変わりがないためC事由で査定となったものであろう。この事例では、蜂窩織炎からの穿刺液に対して検査が行われていた。医師が選択を迷わないように電子カルテの表示を変更した。

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新たな鳥インフルエンザワクチン Anhuiの免疫原性/JAMA

 米国・ワシントン大学医学部のRobert B. Belshe氏らは無作為化試験にて、最新の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株であるA/Anhui/01/2005(安徽株)を抗原株とした不活化インフルエンザワクチンの免疫原性と安全性を評価した。被験者は、米国FDAが新型インフルエンザのパンデミックワクチンとして承認している、A/Vietnam/1203/2004(ベトナム株)ワクチン(90μg、アジュバント非添加、2回接種)を1年前に接種した人であった。また同ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチン(MF59アジュバント添加・非添加)の評価を行った。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。ベトナム株接種者に安徽株を接種、また未接種者へ安徽株を接種し評価 アジュバント非添加のインフルエンザA(H5N1)ワクチンであるベトナム株ワクチンは、免疫原性が低いことが示されていた。しかし、その接種により接種者に免疫プライミング(免疫記憶を誘導する効果)がもたらされ、新たなH5型鳥インフルエンザワクチンの単回接種により二次抗体反応(ブースター効果)を示す可能性が示唆されていた。そこで本検討では、安徽株ワクチンの追加接種による接種免疫プライミングを評価すること、そしてベトナム株ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチンの用量反応効果を調べることを目的とした。 試験は米国内8クリニックにて、1年前にベトナム株ワクチンを接種した72例と、未接種の565例の健康成人(18~49歳)を対象に行われた。被験者登録は2010年6月に開始され、2011年10月まで追跡した。 ベトナム株ワクチン接種者72例は、ベトナム株接種回数1回または2回の2群を、安徽株ワクチン(3.75μg)のMF59アジュバント添加・非添加別に分けた計4群に無作為に割り付けられ評価された。 一方、ベトナム株ワクチン未接種群565例は、5種の安徽株ワクチンの抗原用量設定に加えMF59アジュバント添加の有無、およびプラセボの合計10接種群に無作為に割り付けられ評価された(安徽株3.75μg、7.5μg、15μg、45μgは各々アジュバント添加・非添加群、90μgはアジュバント非添加群のみ)。 主要免疫原性アウトカムは、最終接種後1ヵ月(28日)時点および6ヵ月(180日)時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査による抗体価であった。主要安全性アウトカムは、0日、7日時点で評価した局所および全身性の有害事象と、重大有害事象とした。ベトナム株の免疫プライミングを確認 ベトナム株ワクチン接種者は、安徽株ワクチンによる1回接種で二次抗体反応を示したことが確認された。28日時点で1:40以上のHI抗体価を示したのは21~50%であった。しかし、HI抗体価達成者(1:40以上)が、ベトナム株1回接種群ではアジュバント添加群で高率だったのに対し、2回接種群ではアジュバント非添加群で高率であるなど、アジュバント添加の効果については、関連性が確認されなかった。 ワクチン未接種者への検討からは、アジュバント添加安徽株ワクチンは7.5μg量が適量であることが示された(幾何平均抗体価[GMT]:63.3、95%信頼区間[CI]:43.0~93.1)。アジュバント非添加の同ワクチンでは用量依存的に抗原反応は高まり、最大用量90μg群で最も高かったものの、GMTは28.5(95%CI:19.7~41.2)であった。 局所または全身性反応は、安徽株ワクチン7.5μgアジュバント添加群でそれぞれ78%(40/51例)、49%(25/51例)であったのに対し、同90μg群アジュバント非添加はそれぞれ88%(50/57例)、51%(29/57例)であった。 なお、概して抗体半減期は短く、全接種群のHI抗体価は180日時点までに1:20未満に低下していた。

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HALLMARK-DUAL 試験:C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeのアスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の報告―(解説:中村 郁夫 氏)-266

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン・プロテアーゼ阻害薬(シメプレビル、バニプレビル、テラプレビル)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例で約85~90%とされている。 さらなる治療効果の向上・患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その一つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1)NS3プロテアーゼ阻害薬、(2)NS5Bポリメラーゼ阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3)NS5A阻害薬が挙げられる。 本論文は、日本から発信された1b型のC型慢性肝炎に対するアスナプレビル(NS3プロテアーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法を、18ヵ国116施設で行った第III相の国際マルチコホート試験(HALLMARK-DUAL)に関する報告である。 本試験は、未治療例、前治療無効例および不適格・不耐容症例(計747例)を対象として行われ、治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は82~90%と高率であった。 一方、経口薬の併用療法の問題点の一つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。本邦での検討により、治療前にダクラタスビルの耐性変異(L31,Y93)を有する症例ではSVR24が40%以下となることが知られている。さらに、同治療の無効例の中に、NS5Aに対する変異のみでなくNS3 プロテアーゼ阻害薬に対する耐性変異(D168)が生じる例があることが報告されている。 今後、SVR がさらに高率で、しかも、耐性ウイルスの出現率が低いとされるソホスブビル(NS5Bポリメラーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法の承認が見込まれる現在、アスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の適応は慎重に検討する必要があると考えられる。日本肝臓学会および厚生労働省研究班から出されている治療ガイドラインを熟知したうえでの治療方針の決定が必要であると思われる。

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CTL019、再発・不応性ALLに有効/NEJM

 CD19を標的とするキメラ抗原受容体を導入したT細胞(CTL019、以前はCART19と呼ばれた)は、再発・不応性の急性リンパ性白血病(ALL)に対し完全寛解率90%、最長で2年の寛解維持をもたらしたとの研究結果が、米国・フィラデルフィア小児病院のShannon L Maude氏らにより、NEJM誌2014年10月16日号で報告された。再発ALLの治療は、積極的なアプローチが可能な場合であっても困難であり、遺伝子操作を加えたT細胞療法は新たな治療戦略とされる。CTL019は、従来治療の限界を克服し、不応例にも寛解導入をもたらす可能性があることが示されている。30例のパイロット試験で有用性を評価 研究グループは、再発・不応性ALLに対するCTL019によるT細胞療法の有効性を評価するパイロット試験を実施した。CTL019は、患者由来のT細胞にレンチウイルス・ベクターを介してCD19を標的とするキメラ抗原受容体を導入した自家T細胞であり、0.76~20.6×106cell/kgが患者に投与された。 2012年4月~2014年2月までに、5~22歳の25例(小児コホート)がフィラデルフィア小児病院で、26~60歳の5例(成人コホート)がペンシルバニア大学病院で治療を受けた。有効性と毒性の評価とともに、血中のCTL019の増殖および残存のモニタリングを行った。 30例のうち、26例が初回~4回目の再発性のB細胞性ALL、3例が原発性不応性のB細胞性ALL、1例はT細胞性ALLであった。年齢中央値は小児コホートが11歳、成人コホートは47歳、女性がそれぞれ11例、1例で、小児コホートのうち18例は同種幹細胞移植後の再発例であった。ブリナツモマブ(T細胞上のCD3に結合するドメインおよびCD19結合ドメインを有する二重特異性抗体)無効例が3例含まれた。サイトカイン放出症候群、脳症は管理可能 完全寛解は27例(90%)で得られた。そのうち2例はブリナツモマブ不応例、15例は幹細胞移植例であった。2~24ヵ月のフォローアップ期間中に19例が寛解を維持し、このうち15例は追加治療を要しなかった。CTL019細胞は生体内で増殖し、奏効例では血液、骨髄、脳脊髄液中に検出された。 6ヵ月無イベント生存率は67%、6ヵ月全生存率は78%であり、これらの患者は寛解が維持されていた。6ヵ月時のCTL019の検出率は68%、無イベントB細胞無形成率は73%であった。B細胞無形成は、機能性CD19標的T細胞の残存に関する薬力学的(PD)指標で、すべての寛解維持例に認められ、CTL019が検出不能となった後も、最長で1年間持続した。 全例にサイトカイン放出症候群が認められたが、ほとんどは自己制御が可能で、高熱や筋肉痛を伴う場合も数日で自然消退した。本症はCTL019関連の主要な毒性作用で、T細胞の活性化および増殖によるサイトカインの上昇に起因する全身性の炎症反応である。重症例は27%で、いずれもCTL019投与前の疾病負担が大きい症例であり、抗インターロイキン-6受容体抗体であるトシリズマブが有効であった。 神経毒性(失語、錯乱、せん妄、幻覚)が13例にみられた。また、高熱発症後の遅発性の脳症が6例に発現したが、自己制御が可能で介入なしで2~3日で回復した。 著者は、「CD19を標的とするキメラ抗原受容体導入T細胞療法は、自家幹細胞移植無効例を含む再発・不応性ALLの治療に有効である」とまとめ、「ある程度のサイトカイン放出症候群の発現は有効性の指標である可能性がある」「ブリナツモマブ不応例で完全寛解が得られたという事実は、CD19標的治療が奏効しない症例にも、CTL019は有効な可能性があることを示唆する」と指摘している。

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どの向精神病薬で有害事象報告が多いのか

 精神科治療における薬物有害反応(ADR)は患者にとって苦痛であり、公衆衛生に重大な影響を及ぼす。英国・ブリストル大学のThomas KH氏らは、1998~2011年に英国Yellow Card Schemeに自己報告された、抑うつ症状および致死的・非致死的自殺行動の頻度が多かった薬剤を特定した。その結果、バレニクリン、ブプロピオン、パロキセチン、イソトレチノイン、リモナバンにおいて抑うつ症状の報告が多いこと、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、バレニクリンおよびクロザピンでは、致死的および非致死的自殺行動の報告が多いことが判明した。BMC Pharmacology and Toxicology誌オンライン版2014年9月30日号の掲載報告。 本検討では、1964年以降に抑うつ症状および自殺行動の自発報告が最も多かった薬剤を明らかにするため英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)よりYellow Cardのデータ提供を受け、NHS情報センターおよび保健省より入手した処方データに基づき薬剤によるADRの報告頻度を調べた。処方データは1998年以前分を入手できなかったため、1998~2011年に処方されたデータを分母としてADRの頻度を推算した。 主な結果は以下のとおり。・検討期間中、20件以上の抑うつ症状が報告された薬剤は110種類、10件以上の非致死的自殺行動が報告された薬剤は58種類、5件以上の致死的自殺行動が報告された薬剤は33種類であった。・抑うつ症状の報告が多かった薬剤のトップ5は、禁煙治療薬のバレニクリンおよびブプロピオン、次いでパロキセチン(SSRI)、イソトレチノイン(にきび治療に使用)およびリモナバン(体重減少薬)であった。・致死的および非致死的自殺行動の報告が多かった薬剤のトップ5の中に、SSRI、バレニクリンおよび抗精神病薬のクロザピンが含まれていた。・地域で抗精神病薬100万件処方当たりのADR頻度が高かった薬剤はリモナバン、イソトレチノイン、メフロキン(抗マラリア薬)、バレニクリンおよびブプロピオンであった。・5件以上の自殺の報告があったエファビレンツ(抗レトロウイルス薬)とクロザピンの2剤については、地域における処方数は多くなかった。・以上のように、多くの神経系および非神経系薬について、抑うつ症状と自殺に関連するADRが報告されていた。 結果を踏まえて、著者らは「薬剤とADRの因果関係を明らかにする際に、自己報告データは使用できない。それゆえ、重大な警鐘が鳴らされる可能性がある精神的ADRについては、すべての無作為化対照試験において特別に評価、報告がなされるべきである」と述べている。関連医療ニュース 入院から地域へ、精神疾患患者の自殺は増加するのか SSRI依存による悪影響を検証 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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股部白癬、体部白癬の治療エビデンスは?

 オランダ・ライデン大学医療センターのE J van Zuuren氏らは、股部白癬と体部白癬の局所治療の有効性および安全性のエビデンスを評価するコクラン系統的レビューを行った。129試験、被験者1万8,086例を包含し分析した結果、薬剤塗布による積極的治療はいずれも大半は効果的であることが示されたが、臨床意思決定に役立つエビデンスを示すには、さらに質の高い無作為化試験の必要性が判明したと報告している。股部白癬、体部白癬は一般開業医、皮膚科医がいずれも最もよく遭遇する真菌感染症である。British journal of dermatology誌オンライン版2014年10月7日号の掲載報告。 股部白癬、体部白癬の大半は、さまざまな外用抗真菌薬による治療が行われている。 検討は、Cochrane Skin Group Specialised Register、CENTRAL in The Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、LILACSなどを2013年8月時点で検索して行われた。 主な結果は以下のとおり。・129試験、被験者1万8,086例が参加した無作為化試験を包含して介入評価を行った。・介入の大半は、アゾール系薬によるものであった。・プールできたアウトカムのデータは、2つの治療についてのみであった。・テルビナフィン(商品名:ラミシールほか)は5試験におけるデータから、プラセボと比較して統計的に有意な臨床的治癒率が認められた(RR:4.51、95%CI:3.10~6.56)。・真菌別の治療データは、不均一性が大きくプールすることができなかった。・真菌学的治癒率は、ナフチフィン1%含有薬(国内未発売)がプラセボと比較して良好であることを支持するデータであった(3試験、RR:2.38、95%CI:1.80~3.14)。しかし、エビデンスの質は低かった。・アゾール+コルチコステロイド系薬は、アゾール系薬単独よりもわずかではあるが効果的であった。しかし、真菌学的治癒率に関する統計的な有意差は認められなかった。・65試験が「不明」であるとの評価を、また64試験は「バイアスリスクが高い」との評価をしていた。被験者は大半が20歳超であり、試験デザインが不十分で、報告も不十分であった。

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H7N9ワクチン、安全性と効果/JAMA

 鳥インフルエンザA/上海/2/13(H7N9)ワクチンの安全性と免疫原性について、MF59アジュバント有無の4つの抗原用量を比較した第II相多施設共同二重盲検無作為化試験の結果が発表された。米国・エモリー大学医学部のMark J. Mulligan氏らによる検討の結果、最小用量3.75μg+MF59アジュバントの2回接種(0、21日)群において、42日時点の抗体陽転率は59%であったことが報告された。鳥インフルエンザH7N9は、2013年に中国で確認された新型の鳥インフルエンザウイルスで、家禽には問題なかったが、ヒトでは重症肺炎を引き起こし、同国では入院率67%、死亡率33%に達した。WHOには2014年6月27日時点で、検査確認症例450例のうち165例の死亡(36.6%)が報告されているという。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。7つの接種群を設定し検討 H7N9不活化ウイルスワクチンの安全性と免疫原性を評価した試験は、米国内4施設で19~64歳700例を登録して行われた。2013年9月に開始され、フォローアップは6ヵ月間であり、2014年5月に完了した。 被験者は、抗原用量、MF59アジュバント有無別に設定された7つの接種群(接種回数は2回[0、21日])に割り付けられ評価を受けた。(1)3.75μg+MF59アジュバント(100例)、(2)7.5μg+MF59アジュバント(99例)、(3)15μg+MF59アジュバント(100例)、(4)15μg+1回目のみMF59アジュバントあり(101例)、(5)15μg+2回目のみMF59アジュバントあり(100例)、(6)2回とも15μgのみ(101例)、(7)2回とも45μgのみ(99例)。 主要評価項目は、42日時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査法による抗体価40以上または抗体陽転(定義:抗体価40以上への増大率が4倍以上)の達成割合とした。ワクチン関連の重大有害事象は13ヵ月間、接種後症状は7日間調べた。3.75μg+MF59アジュバント2回接種が有望 HI抗体価は、非アジュバント接種群はいずれも低値であった。 一方、42日時点の、3.75μg+MF59アジュバントのH7N9ワクチン2回接種群の抗体陽転率は59%(95%信頼区間[CI]:48~68%)であった。抗体陽転率のピークは29日時点で62%(95%CI:52~72%)だった。また同接種群の42日時点のGMTは33.0(95%CI:24.7~44.1)であった。 抗原用量が増えても、免疫獲得効果の増大は認められなかった。 中和抗体価分析では、3.75μg+MF59アジュバント接種群の42日時点の抗体陽転率は82%(95%CI:73~89%)、GMTは81.4(95%CI:66.6~99.5)であった。 一方、抗原用量15μg+MF59アジュバントあり群について、42日時点の抗体陽転率は、接種1回目のみアジュバントあり群35%、2回ともアジュバントあり群47%で、両群間の統計的有意差は認められなかった(p=0.10)。 季節性インフルエンザワクチン接種者および高齢者については、弱毒化が認められた。 ワクチン関連の重大有害事象は報告されなかった。接種後7日間に報告された症状は概して軽度なもので、最も多かったのはアジュバントあり群の被験者で認められた接種部位に関する症状であった。 なお今回の結果について著者は、3.75μg+MF59アジュバント2回接種の潜在的価値を評価した上で、試験は42日以降の抗体価データがないこと、また臨床アウトカムの報告がないことから限定的なものであるとまとめている。

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アビガン錠、エボラ出血熱向けに生産

 富士フイルム株式会社(社長: 中嶋 成博)は、海外での使用を目的とし、エボラ出血熱対策として抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)を追加生産すると決定した。 アビガン錠は、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が開発した抗インフルエンザウイルス薬であり、エボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとのマウス実験の結果が公表されている。すでに、日本政府と協議のうえ、緊急搬送先の政府機関および医療機関から提供の要請に応え、西アフリカや欧州に搬送されたエボラ出血熱患者複に対し投与されている。 フランス政府とギニア政府はギニアにおいて、11月中旬よりエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を始める予定。同社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有している。また、今後のさらなる臨床使用に備え、エボラ出血熱向けとしてのアビガン錠の生産を11月中旬より行う。 日本政府は、感染が広がるエボラ出血熱に対して、日本の企業が開発した治療に効果の見込める薬を提供する準備があることを表明しており、同社は日本政府と協議しながら、各国からの要請に応えていくという。富士フィルムのプレスリリースはこちら

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肛門性器疣贅の治療、ワクチンvs. 従来療法

 肛門性器疣贅(Anogenital Warts:AGW)の治療について、病巣内Mycobacterium w(Mw)ワクチン接種と従来療法である5%イミキモドクリーム塗布を比較した無作為化試験の結果、HPV-6に対する有効性は同等であることなどが示された。インド・All India Institute of Medical SciencesのPankaj Kumar氏らによる報告で、これまで両者の比較は行われておらず、有効性のエビデンスは不確かであった。今回の結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性は両治療で同等である」とまとめている。JAMA Dermatology誌2014年10月号(オンライン版2014年8月6日号)の掲載報告。 検討は、二重盲検無作為化臨床試験にてニューデリーで2009年2月から2012年7月に行われた。フォローアップは3ヵ月間行われた。 159例のAGW患者をスクリーニングし、89例を無作為に割り付け、一方には5%イミキモドクリーム塗布とプラセボ接種を(44例)、もう一方にはMwワクチン接種とプラセボクリーム塗布を行った(45例)。 主要エンドポイントは、可視によるAGWの臨床的治癒とし、副次評価は、AGWの表面積の縮小割合、HPV-6およびHPV-11のウイルス量減少などであった。 主な結果は以下のとおり。・intention-to-treat解析において、イミキモド群患者59%(26例)、Mw群患者の67%(30例)が、完全な治癒を達成した(p=0.52)。・高リスク遺伝子型を含む18のHPV遺伝子型が検出されたが、治療群間で有意差はなかった(すべてのp>0.05)。・Mw群は、HPV-6およびHPV-11の平均ウイルス量が、有意に低下した(p=0.003、p=0.03)。・しかし、イミキモド群は、HPV-6のみ有意に低下した(p=0.01)。・フォローアップ3ヵ月時点で完全に治癒し重大有害イベントのなかった患者では、AGWの再発はみられなかった。

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世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見

 今夏、日本国内で、海外渡航歴がないにもかかわらずデング熱を発症した患者が発見された。日本国内での感染は1940年代前半の流行以来、実に約70年ぶりであり、患者数は158人に上った(2014年10月14日現在)。全世界では、現在25億人以上がデング熱流行地で生活している。そして、年間5,000万人以上がデング熱を発症しており、近年急速な広がりをみせている。 今回、デング熱に関する世界中の最新知見を、キューバのペドロ・コウリ熱帯医学研究所のMaria G Guzman氏らがまとめた。Lancet誌オンライン版2014年9月12日号の掲載報告。●世界中で急速な広がりをみせるデング熱 デングウイルスは過去20~30年間で、国内そして国境を越えて急速な広がりを見せており、今日では、蚊が媒介するウイルス性疾患の中で、最も流行し急速に拡大する疾患と考えられている。 デングウイルスは4つの抗原型(DENV1-4)に分類され、ヒトスジシマカを媒介として感染する。感染地域の広がりや感染例の増加、疾患の重症化に伴い、デング熱は社会的・経済的に重大な影響を持つ公衆衛生上の問題に発展してきた。●デング熱の発生率は過去50年で30倍に デング熱は、南アジアやアメリカ、大西洋、アフリカ、東地中海沿岸地域など100以上の国でみられる風土病であり、その発生率は過去50年間で30倍にも増加している。2013年の研究結果によると、年間3.9億人の感染者が発生し、そのうち、はっきりとした症状がみられたのは9,600万人であった(感染者数は2012年WHO予測の3倍以上)。●世界ではどのような策が講じられているか 現在、デング熱には有効な治療薬が存在しないため、対症療法を行っているのが現状である。そのため、世界各国で、デングウイルス学・病因学・免疫学の研究、抗ウイルス薬・ワクチンの研究・開発が行われてきた。さらに、デング熱のコントロールと予防に対して明らかに効果がある新たなベクターコントロール戦略が立案されるなど、各国で対策が進められている。しかし、このような対策が世界中で行われているにもかかわらず、実用化には至っていないのが現状である。●デング熱流行阻止に向け国際的な結束を 世界中でデング熱の予防・治療に対する基礎研究や橋渡し研究が行われてきた結果、確かに情報は蓄積されてきた。しかし、その一方で、デング熱の流行は依然として世界的な広がりをみせている。今後の流行を阻止するためにも、さらなる努力が求められる。 WHOによるデング熱予防・コントロールの世界的戦略では、2012年から2020年にかけて、少なくとも罹患率を25%、死亡率を50%減らすことを目標としている。しかし、この目標を達成するためには、デング熱の重大さを世界各国が真摯に受け止め、政府機関・地域社会・国際組織などが結束する必要がある。 以上が著者らによりまとめられた、デング熱の最新知見である。わが国でも、政府が定期的な情報発信や、徹底した予防・制御に努めたこともあり、次第にデング熱の流行は収まりを見せている。しかし、世界中でデング熱が急増している現状を鑑みると、来年も流行する可能性は否定できない。今後、デング熱に対し、国を挙げて何らかの対策を講じていく必要があるであろう。

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