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認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.1

第1回 呼吸器 第2回 感染症 第3回 アレルギー(※正誤表) 日本内科学会の認定内科医試験を受験する先生方、必見です。出題基準ランクAの疾患を中心に各領域の予想問題を作成、出題意図と関連知識を解説していく“完全対策”DVDができました(全4巻)。講師は、若手育成に定評があり数々の資格試験を突破してきた、聖マリア病院の長門直先生。総合内科専門医試験を受ける先生方にとっては、基礎固め、総復習に最適。これを見れば、勉強するポイント、頻出のトピックがわかります!第1回 呼吸器 出題される疾患が多い呼吸器の中でも、とくに結核は疫学・検査・診断・治療・感染予防と、押さえるところが多い重要疾患です。その他、喘息の重症度分類・治療ステップ、肺がんの病期決定と治療など、必ず出題されるポイントを押さえ、しっかりと整理しておきましょう。第2回 感染症 染色の種類や菌種など、細かいところまで出題が予想される感染症。尿路感染症で膿尿と判定する数値や、菌血症とみなす場合の細菌の名前など、細部までしっかり覚えることが重要です。また、感染症法1~5類指定の疾患はきちんと確認しておきましょう。5類のうち例外としてただちに届出が必要な疾患は?過去に出題されています!第3回 アレルギー 出題数の少ないアレルギーですが、病型や好発期など、疾患ごとにきちんと暗記する必要があります。鼻アレルギーの病型によって異なる投与薬剤の違いや、各食物アレルギー患者への禁忌医薬品など、よく出題されるポイントが明確なので、これを見ればどこを押さえればよいかがすぐにわかります。

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赤芽球癆〔PRCA : pure red cell aplasia〕

1 疾患概要■ 概念・定義正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著減を特徴とする造血器疾患である。再生不良性貧血が多系統の血球減少(ヘモグロビン濃度低下、好中球減少、血小板減少)を呈するのに対して、赤芽球癆では選択的に赤血球系のみが減少し、貧血を呈する。病因は多様であるが、赤血球系前駆細胞の分化・増殖障害によって発症する。病型・病因によって治療が異なるので、赤芽球癆の診断のみならず、病因診断がきわめて重要である。■ 疫学急性型赤芽球癆の発生頻度はわかっていない。慢性型赤芽球癆はまれな疾患で、発症頻度は再生不良性貧血の約10分の1である。厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班の患者登録集計から、年間発生率は人口100万人に対し0.3人と推定されている。日本血液学会2011年次血液疾患症例登録によれば、全国における1年間の新規発生例は100例に満たない。特発性造血障害調査研究班が2004年度と2006年度に行った全国調査により集積された特発性72例、胸腺腫関連41例、大顆粒リンパ球性白血病関連14例の計127例における解析によれば、年齢中央値は62歳(18~89歳)、男女比は51:76で女性にやや多かった。■ 病因造血障害の発生部位は、赤血球へと分化が運命づけられた赤血球系前駆細胞のレベルであると考えられている。赤血球系前駆細胞に障害が発生するメカニズムとして、ウイルスや薬剤、遺伝子変異、造血前駆細胞に対する自己傷害性リンパ球や抗体などによるものがある。さらに、内因性エリスロポエチンに対する自己抗体による赤血球系造血不全も報告されている。腎性貧血に対するヒトエリスロポエチン製剤投与の後に抗エリスロポエチン抗体が産生されて、赤芽球癆が発生することがある。赤芽球癆の発生メカニズムは多様であるが、赤芽球の減少に基づく網赤血球の減少と貧血が共通にみられる。■ 症状自覚症状は貧血による全身倦怠感、動悸、めまいなどである。通常白血球数や血小板数は正常であるが、続発性の場合には基礎疾患によって異常を呈することがある。続発性では、その基礎疾患に応じた症状と身体所見が認められる。■ 分類赤芽球癆は大きく先天性と後天性に分類される。先天性赤芽球癆としてDiamond-Blackfan貧血が有名である。後天性赤芽球癆には基礎疾患を特定できない特発性と、胸腺腫、リンパ系腫瘍、骨髄性疾患、感染症、自己免疫疾患、薬剤投与などに伴う続発性がある。発症様式により急性と慢性に分類される。前述の特発性造血障害に関する調査研究班の調査によれば、わが国の後天性慢性赤芽球癆の原因として最も多いのは特発性であり、次いで胸腺腫関連、大顆粒リンパ球性白血病を始めとするリンパ系腫瘍である。■ 予後急性赤芽球癆は急性感染症の治癒に伴い、あるいは薬剤性の場合には被疑薬の中止により貧血は自然に軽快する。ただし、外因性エリスロポエチンの投与に伴う抗エリスロポエチン抗体による赤芽球癆は自然治癒しないことが多い。特発性慢性赤芽球癆は、免疫抑制薬により貧血の改善が得られるが、治療の中止は貧血の再燃と強く関連することが知られている。また、胸腺腫関連および大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆においても、免疫抑制薬が有効であるが、治療の中止が可能であるとするエビデンスはない。免疫抑制薬によって寛解が得られた慢性赤芽球癆においては、免疫抑制薬による維持療法が必要な場合が多い。予測される10年生存率は、特発性赤芽球癆で95%、大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆で86%であり、胸腺腫関連赤芽球癆の予測生存期間中央値は約12年である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班により、赤芽球癆の診断基準が作成されている(図)。画像を拡大する診断基準の構成は、末梢血液学的検査および骨髄の形態学的検査所見に基づく赤芽球癆の診断基準と、病因・病型診断のための検査手順から成る。赤芽球癆は網赤血球数の著減が特徴的であり、通常1%未満である。2%を超える場合には、ほかの疾患を考慮すべきである。次いで、貧血の発症に先行する感染症の有無と薬剤服用歴の情報を収集する。後天性慢性赤芽球癆の多くは中高年に発症するが、妊娠可能年齢の女性が赤芽球癆と診断された場合、妊娠の有無を確認する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)初期治療の方針は、被疑薬の中止と、約1ヵ月間の経過観察である。薬剤や急性感染症による赤芽球癆は、通常3週間以内に改善する。ヒトパルボウイルスB19感染による赤芽球癆は、通常self-limitedであるが、HIV感染症のある患者では持続感染となりうるので、慢性型赤芽球癆であってもヒトパルボウイルスB19感染の有無はチェックするべきである。貧血が高度で日常生活に支障がある場合には赤血球輸血を行う。この経過観察期間中に病因診断のための検査を行い、基礎疾患があれば治療を行う。基礎疾患の治療を行っても貧血が軽快しない場合には、免疫抑制療法を考慮する。特発性赤芽球癆、胸腺腫関連赤芽球癆、大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆に対してシクロスポリン(商品名:サンディミュンほか)、副腎皮質ステロイド、シクロホスファミド(同:エンドキサン)などの薬剤が選択される。いずれの薬剤が最も優れているかについて検証した前向き試験は、海外を含めてこれまで行われていない。特発性造血障害調査研究班による調査研究によれば、特発性赤芽球癆に対する初回寛解導入療法の奏効率は、シクロスポリン74%、副腎皮質ステロイド60%、シクロスポリンと副腎皮質ステロイドの併用100%であり、胸腺腫関連赤芽球癆に対するシクロスポリンの奏効率は95%であった。大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆に対する初回寛解導入療法奏効率は、シクロホスファミド75%、シクロスポリン25%、副腎皮質ステロイド0%であった。したがって、後方視的疫学研究の結果ではあるが、特発性赤芽球癆および胸腺腫関連赤芽球癆に対する第1選択薬は、現時点においてはとくに禁忌がない限り、シクロスポリンであると考えられる。4 今後の展望後天性慢性赤芽球癆の主な死因は、感染症と臓器不全である。免疫抑制療法中の感染症の予防と治療、そして赤血球輸血依存性症例における輸血後鉄過剰症に対する鉄キレート療法は、予後を改善することが期待される。なお、平成27年7月1日から後天性慢性赤芽球癆は指定難病に認定され、所定の診断基準および重症度を満たすものについては医療費助成の対象となった。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター(後天性赤芽球癆)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報特定非営利活動法人血液情報広場つばさ(患者とその家族向けの情報)1)澤田賢一、廣川 誠ほか. 赤芽球癆.In:小澤敬也編.特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド 平成22年度改訂版.2011;38-52.2)廣川 誠、澤田賢一. 日本内科学会雑誌.2012;101:1937-1944.3)廣川 誠. 内科.2013;112:285-289.4)廣川 誠. 臨床血液(教育講演特集号).2013;54:1585-1595.4)廣川 誠. 臨床血液.2015;56:1922-1931.公開履歴初回2014年02月13日更新2016年05月10日

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封入体筋炎〔sIBM : Sporadic Inclusion Body Myositis〕

1 疾患概要■ 概念・定義封入体筋炎は中高年に発症する、特発性の筋疾患である。左右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。骨格筋には、縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ、炎症細胞浸潤を伴う。免疫学的治療に反応せず、かえって増悪することもある。嚥下障害や転倒・骨折に注意が必要である。■ 疫学厚生労働省難治性疾患克服研究事業「封入体筋炎(IBM)の臨床病理学的調査および診断基準の精度向上に関する研究」班(研究代表者:青木正志、平成22-23年度)および「希少難治性筋疾患に関する調査研究」班(研究代表者:青木正志、平成24-27年度)による調査では、日本には1,000~1,500人の封入体筋炎患者がいると考えられる。研究協力施設の146例の検討により男女比は1.4:1で男性にやや多く、初発年齢は64.4±8.6歳、初発症状は74%が大腿四頭筋の脱力による階段登りなどの障害であった。嚥下障害は23%にみられ、生命予後を左右する要因の1つである。顕著な左右差は、27%の症例でみられた。認知機能低下が明らかな症例はなかった。深部腱反射は正常または軽度低下する。約15%の封入体筋炎患者には全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、サルコイドーシスなどの自己免疫性の異常が存在するが、多発筋炎や皮膚筋炎と異なり、肺病変、悪性腫瘍の発生頻度上昇などは指摘されていない。血清のクレアチンキナーゼ(CK)値は正常か軽度の上昇にとどまり、通常は正常上限の10倍程度までとされる。研究班の調査ではCK値の平均は511.2±368.1 IU/Lで2,000 IU/Lを超える症例はまれであった。約20%の封入体筋炎患者は、抗核抗体が陽性とされるが、いわゆる筋炎特異的抗体は陰性である。■ 病因封入体筋炎の病態機序は不明である。筋病理学的に観察される縁取り空胞が蛋白分解経路の異常など変性の関与を、また細胞浸潤が炎症の関与を想起させるものの、変性と炎症のどちらが一次的でどちらが副次的なのかも明らかになってはいない。変性の機序の証拠としては、免疫染色でAβ蛋白、Aβ前駆蛋白(β-APP)、リン酸化タウ、プリオン蛋白、アポリポプロテイン E、α1-アンチキモトリプシン、ユビキチンやニューロフィラメントが縁取り空胞内に沈着していることが挙げられる。β-APPを筋特異的に過剰発現させたモデルマウスでは筋変性や封入体の形成がみられることも、この仮説を支持している。しかしながら、多発筋炎や皮膚筋炎の患者生検筋でもβ-APPが沈着していることから疾患特異性は高くない。筋線維の恒常性の維持は、蛋白合成と分解の微妙なバランスの上に成り立っていると想像される。封入体筋炎の病態として、Aβ仮説のようにある特定の蛋白が発現増強し、分解能力を超える可能性も考えられるが、一方で蛋白分解系が破綻し、異常蛋白が蓄積するという機序も考えられる。蛋白分解経路に重要なユビキチンE3リガーゼの1つであるRING Finger Protein 5(RNF5)の過剰発現マウスでは、筋萎縮と筋線維内の封入体形成が観察されている。骨格筋特異的にオートファジーを欠損させたマウスでは、ユビキチンE3リガーゼの発現上昇や筋変性・萎縮がみられることも報告されている。封入体筋炎の骨格筋に、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物であるTDP-43およびFUS/TLSが蓄積することも観察されている。TDP-43陽性線維は、封入体筋炎患者の生検筋線維の25~32.5%と高頻度に検出され、その頻度は封入体筋炎の病理学的指標とされてきた縁取り空胞やAβ陽性線維よりも高頻度である。家族性ALS関連蛋白の蓄積は、縁取り空胞を伴う筋疾患に共通する病理学的変化であり、封入体筋炎に対する疾患特異性は低いと考えられてきている。ユビキチン結合蛋白であるp62は、TDP-43以上の頻度で封入体筋炎の筋線維に染色性が認められる。近年、骨パジェット病と前頭側頭型認知症を伴う封入体性ミオパチーの家族例において、蛋白分解系の重要な分子であるVCPの遺伝子異常が見出されたが、このVCPも蛋白分解経路の重要な因子である。蛋白分解経路の異常は、封入体筋炎の病態の重要な機序と考えられる。封入体筋炎の病態として、炎症の関与も以前より検討されてきた。炎症細胞に包囲されている筋線維の割合は、縁取り空胞やアミロイド沈着を呈する筋線維よりも頻度が高いことから、炎症の寄与も少なくないと考えられる。ムンプスウイルスの持続感染は否定されたが、HIVやHTLV-1感染者やポリオ後遺症の患者で封入体筋炎に類似した病理所見がみられる。マイクロアレイやマイクロダイセクションを用いた検討では、CD138陽性の形質細胞のクローナルな増殖が、封入体筋炎患者の筋に観察され、形質細胞の関与も示されている。炎症細胞のクローナルな増殖は、細胞障害性T細胞が介する自己免疫性疾患である可能性を示唆している。ただ、封入体筋炎は、臨床場面で免疫抑制薬の反応に乏しいことから、炎症が病態の根本であるとは考えにくい。また、多発筋炎でも観察される現象であることから、疾患特異的な現象とも言いがたい。封入体筋炎は、親子や兄妹で発症したという報告も散見され、HLAなど遺伝的背景が推定されているが、元来は孤発性の疾患である。■ 症状封入体筋炎は慢性進行性で、主に50歳以上に発症する筋疾患であり、初発症状から5年以上診断がつかない例も多い。多発筋炎・皮膚筋炎が女性に多いのと対照的に、封入体筋炎は男性にやや多い。非対称性の筋脱力と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。肩の外転筋よりも手指・手首屈筋が弱く、膝伸展や足首背屈が股関節屈曲よりも弱いことが多い。■ 分類診断基準を参照されたい。■ 予後多くの症例では四肢・体幹筋の筋力低下や嚥下障害の進行により、5~10年で車いす生活となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1975年にBohanとPeterは炎症性筋疾患の診断基準を提唱したが、当時は封入体筋炎という概念が十分に確立されていなかった。1995年にGriggsにより封入体筋炎の診断基準が提唱され、2007年のNeedhamらの診断基準とともに国際的に広く用いられている。前述の難治性疾患克服研究事業の研究班では、全国の後ろ向き調査を基に、国内外の文献を検討し、診断基準を見直した(表)。本診断基準は、日本神経学会および日本小児神経学会から承認も受けている。表 封入体筋炎(Inclusion Body Myositis:IBM)診断基準(2013)(厚労省難治性疾患克服研究事業:希少難治性筋疾患に関する調査研究班)診断に有用な特徴A.臨床的特徴a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する※多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来す。数週間で歩行不能などの急性の経過はとらない。c.発症年齢は40歳以上d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない(以下は参考所見)嚥下障害がみられる針筋電図では随意収縮時の早期動員(急速動員)、線維自発電位/陽性鋭波/(複合反復放電)の存在などの筋原性変化(注:高振幅長持続時間多相性の神経原性を思わせる運動単位電位が高頻度にみられることに注意)B.筋生検所見筋内鞘への単核球浸潤を伴っており、かつ以下の所見を認めるa.縁取り空胞を伴う筋線維b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲(以下は参考所見)筋線維の壊死・再生免疫染色が可能なら非壊死線維への単核細胞浸潤は主にCD8陽性T細胞形態学的に正常な筋線維におけるMHC classⅠ発現筋線維内のユビキチン陽性封入体とアミロイド沈着過剰リン酸化tau、p62/SQSTM1、TDP43陽性封入体の存在COX染色陰性の筋線維:年齢に比して高頻度(電子顕微鏡にて)核や細胞質における15~18nmのフィラメント状封入体の存在合併しうる病態HIV、HTLV-I、C型肝炎ウイルス感染症除外すべき疾患縁取り空胞を伴う筋疾患※(眼咽頭型筋ジストロフィー・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー・多発筋炎を含む)他の炎症性筋疾患(多発筋炎・皮膚筋炎)筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病※Myofibrillar myopathy(FHL1、Desmin、Filamin-C、Myotilin、BAG3、ZASP、Plectin変異例)やBecker型筋ジストロフィーも縁取り空胞が出現しうるので鑑別として念頭に入れる。特に家族性の場合は検討を要する。診断カテゴリー:診断には筋生検の施行が必須であるDefinite Aのa-dおよびBのa、bの全てを満たすものProbable Aのa-dおよびBのa、bのうち、いずれか5項目を満たすものPossible Aのa-dのみ満たすもの(筋生検でBのa、bのいずれもみられないもの)注封入体筋炎の診断基準は国際的に議論がなされており、歴史的にいくつもの診断基準が提案されている。本診断基準は専門医のみならず、内科医一般に広くIBMの存在を知ってもらうことを目指し、より簡便で偽陰性の少ない項目を診断基準項目として重視した。免疫染色の各項目に関しては感度・特異度が評価未確定であり参考所見とした。ヘテロな疾患群であることを念頭に置き、臨床治験の際は最新の知見を考慮して組み入れを行う必要がある。臨床的特徴として、「a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮」、「b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する」とし、多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来すことを勘案した。「数週間で歩行不能」などの急性の経過はとらず、診断には病歴の聴取が重要である。また、遺伝性異常を伴う筋疾患を除外するために「c.発症年齢は40歳以上である」とした。そして、慢性の経過を反映し「d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない」とした。さらに診断には筋生検が必須であるとし、「筋内鞘への単核球浸潤を伴っており」、かつ「a.縁取り空胞を伴う筋線維」、「b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲」がみられるものとした。これらの臨床的特徴・病理所見の6項目すべてがみられる場合を確実例、臨床的特徴がみられるが、病理所見のいずれかを欠く場合を疑い例、病理所見が伴わないものを可能性あり、とした。欧米で取り入れられている免疫染色や電顕所見に関しては、縁取り空胞の持つ意義と同様と考え、診断基準には含めなかった。封入体筋炎の診断の際には、臨床経過が重要な要素であり、中高齢の慢性進行性の筋疾患では常に念頭に置くべきである。封入体筋炎症例の一部は病期が早いことにより、また不適切な筋標本採取部位などによって、特徴的な封入体を確認することができず、診断確定に至らない場合があると考えられる。最近、cN1Aに対する自己抗体との関連性が報告されているが、今後、病態解明の進展に伴い疾患マーカーが確立されることが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)封入体筋炎の治療は確立されていない。ほとんどの例でステロイドの効果はみられない。CK値が減少したとしても、筋力が長期にわたって維持される例は少ない。免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)は、封入体筋炎に対し、とくに嚥下に関して限定的な効果を示す例がある。しかし、対照試験では、一般的な症状の改善はわずかで、統計学的な有意差は得られず、治療前後の筋生検所見の改善のみが報告されている。根本的な治療がない現状では、運動療法・作業療法などのリハビリテーション、歩行時の膝折れ防止や杖などの装具の活用も有効である。さらに合併症として、致死的になる可能性のある嚥下の問題に関しては、食事内容の適宜変更や胃瘻造設などが検討される。バルーンカテーテルによる輪状咽頭部拡張法(バルーン拡張法)も封入体筋炎患者での嚥下障害改善に有効な可能性がある。4 今後の展望マイオスタチンの筋萎縮シグナル阻害を目的とした、アクチビンIIB受容体拮抗剤のBYM338を用いた臨床試験もわが国で行われている。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 封入体筋炎(医療従事者向けのまとまった情報)希少難治性筋疾患に関する調査研究班班員名簿(27年度)(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省のホームページ 指定難病 封入体筋炎の概要・診断基準(医療従事者向けのまとまった情報)1)青木正志編、内野誠監修. 筋疾患診療ハンドブック. 中外医学社; 2013: p.75-82.公開履歴初回2014年02月06日更新2016年05月03日

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急性前骨髄球性白血病〔APL : acute promyelocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病の1つで、FAB分類ではM3に分類される。大部分の症例でt(15;17)(q22;q12)を認め、15番染色体q22上のpromyelocytic leukemia(PML)遺伝子と17番染色体q12上のretinoic acid receptor α(RARA)遺伝子の融合遺伝子を形成するため、WHO分類ではt(15;17)(q22;q12); PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病という一疾患単位が設定されている。線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併し、脳出血など致命的な臓器出血を来しやすく、出血による早期死亡が寛解率を低下させていたが、ビタミンAの一種である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid: ATRA、一般名:トレチノイン、商品名:ベサノイド)を寛解導入療法に用いることで、APL細胞を分化させるとともにDICが軽減され、きわめて高い寛解率が得られるようになった。また、APL細胞はP糖蛋白の発現が低く、アントラサイクリン系薬をはじめ抗腫瘍薬に対する感受性も高い。したがって十分な寛解後療法を行えば再発の危険性も低く、急性白血病の中では化学療法により完治を得る可能性が最も高い疾患と認識されている。■ 疫学わが国において白血病は、年に10万人当たり男性で約6人、女性で約4人に発症し、その約60%が急性骨髄性白血病、さらにその10~15%がAPLといわれている。世界的にみると、イタリアやスペインなど南ヨーロッパで発症率が高い。ほかの急性骨髄性白血病よりも発症年齢が若い傾向がある。■ 病因15番染色体q22上のPML遺伝子と17番染色体q12上のRARA遺伝子は、骨髄系細胞の増殖抑制、分化の調整を行うが、相互転座の結果PML-RARA融合遺伝子が形成されると、骨髄系細胞の分化が抑制され、前骨髄球レベルで分化を停止した細胞が腫瘍性に増殖することで発症すると考えられる。■ 症状1)出血最も重要な症状は出血で、主としてDICに起因する。皮膚の紫斑・点状出血のほか、歯肉出血、鼻出血などを来す。抜歯など、観血的な処置後の止血困難もしばしば診断のきっかけになる。脳出血など、致命的な出血も少なくない。2)貧血骨髄での赤血球産生低下と出血のため貧血となり、動悸、息切れ、疲れやすさなどを自覚する。3)感染、発熱正常な白血球、とくに好中球数が低下し、発熱性好中球減少症を起こしやすい。病原微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌などの細菌、カンジダやアスペルギルスなど真菌が多い。感染部位として菌血症、肺炎が多いが、起因菌や感染部位が同定できないことも少なくない。■ 予後寛解導入療法に広くATRAが用いられるようになった1990年代以後、寛解率は90%を超えている。非寛解例の多くが出血による早期死亡であり、初期にDICをコントロールできるかどうかが生存に大きく影響する。いったん寛解に入り、十分な寛解後療法を行えば再発しにくく、70%以上の患者は無再発での長期生存が可能である。とくに白血球数が少なく(≦10,000/mm3)、血小板数が比較的保たれた(>40,000/mm3)症例では再発のリスクが低い1)。一方、地固め療法後にRQ-PCR法にてPML-RARAが消失しない、あるいはいったん消失したPML-RARAが再出現する場合は、血液学的再発のリスクが高い2)。ただし、再発した場合も多くは亜ヒ酸(一般名:三酸化ヒ素、商品名: トリセノックス)が奏効し、さらに自家造血幹細胞移植も有効であるため、急性白血病の中で最も予後良好といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査所見白血球数は減少していることが多い。APL細胞はアズール顆粒が充満しており、アウエル小体が束状に存在するFaggot細胞として存在するものもある。貧血もほぼ必発で大部分が正球性である。産生低下およびDICにより、血小板数は著しく低下する。DICのため、プロトロンビン時間(PT)延長、フィブリン分解産物(FDP)およびD-ダイマー高値、フィブリノーゲン低値を示す。DICは線溶亢進型で、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)ともに高値となる。アンチトロンビンは正常のことが多い。■ 骨髄所見骨髄は末梢血と同様の形態をもつAPL細胞が大部分を占め、正常な造血は著しく抑制される。APL細胞は、ペルオキシダーゼに強く染まり、細胞表面マーカーはCD13、CD33が陽性、CD34、HLA-DR陰性である。染色体および遺伝子検査では90%以上にt(15;17)(q22;q12)が、約98%にPML-RARA融合遺伝子が証明される。t(15;17)(q22;q12)以外の非定型染色体転座にt(5;17)(q35;q12); NPM1-RARA、t(11;17)(q23;q12); ZBTB16(PLZF)-RARA、t(11;17)(q13;q12); NUMA1-RARAなどがある。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ATRAを中心とした初回寛解導入療法、寛解導入後の地固め療法や維持療法、再発例に対する治療、造血幹細胞移植などがある。■ 初回寛解導入療法診断が確定したら、ATRAを寛解到達まで内服する。ATRA単独の寛解導入療法はATRAと従来の化学療法剤との併用療法に比べ寛解率に差はないが、再発のリスクが高いとする報告もあり3)、とくに診断時白血球数の多い症例、ATRA投与中に白血球数増加を来した症例、APL分化症候群を合併した症例では積極的にイダルビシン(商品名: イダマイシン)などのアントラサイクリンやシタラビン(同:キロサイド)を併用する。初回寛解導入療法中の重篤な合併症として、DICに伴う出血とAPL分化症候群がある。DICに伴う致命的な出血を予防するため、最低でも血小板数は50,000/mm3、フィブリノーゲンは150mg/dLを保つように血小板および新鮮凍結血漿の輸血を行うとともに、トロンボモジュリン(同:リコモジュリン)などDICに対する薬物療法を行う。APL分化症候群は、ATRAや亜ヒ酸の刺激を受けたAPL細胞から過剰産生される、さまざまな炎症性サイトカインやAPL細胞の接着分子発現増強などにより発症する。80%以上の患者に発熱や低酸素血症による呼吸困難が認められるほか、体重増加、浮腫、胸水、心嚢水、低血圧、腎不全などを来す。両側の間質性肺炎様のX線あるいはCT所見は診断に有用である。好発時期は寛解導入療法開始後1~2週間であり、ATRAや亜ヒ酸投与期間中に白血球数の増加を伴って発症することが多い。治療にはステロイドが有効で、重篤な場合はATRAや亜ヒ酸を中止するとともに、未投与であればアントラサイクリンやシタラビンを投与する。■ 地固め療法寛解導入後には、地固め療法としてイダルビシン、ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)などアントラサイクリンや同様の作用機序を有するミトキサントロン(同:ノバントロン)の3~5日間点滴を、約1ヵ月おきに2~4回繰り返す。シタラビンについては意見が分かれるが、診断時の白血球数が10,000/mm3未満の症例では、十分なアントラサイクリンが投与されればその意義は低く、むしろ再発を高める可能性もある一方で、10,000/mm3以上の症例では高用量での投与が有用と報告されている4)。■ 維持療法ATRAを中心とした維持療法は再発予防に有用である。通常、地固め療法終了後にATRA 14日間の内服を約3ヵ月間隔で2年間繰り返す。6-メルカプトプリン(同:ロイケリン)やメトトレキサート(同:メソトレキセート)の併用はさらに再発抑制効果を高める可能性がある5)。■ 再発例に対する治療亜ヒ酸が第1選択薬であり80%以上の再寛解が期待できる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(同:マイロターグ)や合成レチノイド、タミバロテン(同:アムノレイク)も有用である。なお、血液学的寛解中であってもRQ-PCR法でPML-RARA陽性となった場合は再発と判断し、上記の再寛解導入療法を開始する。■ 造血幹細胞移植本症はATRAを中心とした化学療法が有効であり、通常第1寛解期には造血幹細胞移植は行わない。第2寛解期では造血幹細胞移植が推奨される。第2寛解期での自家造血幹細胞移植は、同種造血幹細胞移植に比べ再発率は高いものの治療関連死が少なく、全生存率は同種造血幹細胞移植を上回っている6)。そのため、地固め療法後にRQ-PCR法でPML-RARA陰性例には自家移植、陽性例には同種移植を考慮する。4 今後の展望今後もATRAを中心とした化学療法が治療の主体であると考えられる。診断時の白血球数や地固め療法後のPML-RARA融合遺伝子の有無など、リスクファクターによる層別化治療を寛解導入療法のみならず寛解後療法においても広く用いることにより、再発リスクと有害事象の軽減が図れると期待される。さらに寛解導入療法でのATRAと亜ヒ酸の併用や、地固め療法での亜ヒ酸の積極的使用により、治療成績はさらに向上する可能性がある。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報JALSGホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がんプロ.comホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター「がん情報サイト」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさの広場(血液疾患患者とその家族の会)海好き(白血病患者とその家族の会)1)Sanz MA, et al. Blood. 2000; 96: 1247-1253.2)Gallagher RE, et al. Blood. 2003; 101: 2521-2528.3)Fenaux P, et al. Blood. 1999; 94: 1192-1200.4)Adès L, et al. Blood. 2008; 111: 1078-1084.5)Adès L, et al. Blood. 2010; 115: 1690-1696.6)de Botton S, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 120-126.公開履歴初回2014年03月20日更新2016年04月26日

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第29回

第29回:多関節炎の鑑別監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 関節炎の訴えは、日常生活でよく目にするものです。 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の統計によると、外来で医師に関節炎と診断される割合は18~44歳の7.3%、45~64歳の30.3%、65歳以上の49.7%となっており、より高齢者に多くみられる訴えです1) 。その影響は移動能力にも関わり、高齢者のADL低下の原因にもなります。急速に高齢化が進む日本でも、関節炎は日常外来で重要な問題です。 多関節炎の原因は、プライマリケアで管理ができる変形性関節症などから、頻度が低く、専門医に紹介を必要とすることが多い膠原病(強直性脊椎炎、関節リウマチなど)、感染症(B型肝炎、C型肝炎)までさまざまです。 適切な診断が肝要ですが、診断における病歴、身体所見、検査所見のポイントを列挙しています。もしアクセス可能であれば、表1の多関節炎の一覧表は必見です。 以下、American Family Physician 2015年 7月1日号2) より多関節炎は一般臨床現場で遭遇し、複数の病因を有しています。ここでは、5関節以上に所見を認めるものを多関節炎としています。多関節痛の診断プロセスは以下の順に行います。1)真の関節炎か関節周囲炎か2)炎症性か非炎症性か3)炎症性であれば罹患関節の状態(対称性、数、発症様式)で分類し、適切な身体所見評価や各種検査を行い、適宜専門家にコンサルトします。診断における病歴、身体所見、検査所見の重要項目を以下にまとめます。I.病歴のポイント罹患関節の対称性、罹患関節数、罹患関節部位を評価します。罹患関節数は2~4関節の少関節罹患パターン、5関節以上の多関節罹患パターンに分かれます。強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎を含む脊椎関節症は、古典的には少関節罹患パターン、関節リウマチは通常多関節罹患パターンとなります。脊椎関節症は脊椎、仙腸関節、肩関節、股関節、膝関節などが障害されます。関節リウマチや全身性エリテマトーデスは手関節、指関節、足趾関節などが障害されます。II.身体所見のポイント1)真の関節炎か関節周囲炎か両者とも自動運動にて痛みや運動制限が生じます。他動運動でも全方向性に痛みが生じるときは、真の関節炎を示唆します。関節周囲の構造物として、腱・靭帯・関節包が挙げられます。2)炎症性か非炎症性か安静時において、腫脹、発赤、長時間の朝のこわばり(1時間以上)、および対称性の疼痛の存在は、炎症所見を示唆します。(推奨レベルC※)ただし、非炎症性でも腫脹と圧痛は呈します。朝のこわばりが1時間未満で、非対称性のパターンを取るとき、非炎症性を考慮します。3)炎症性であれば罹患関節の状態(対称性、数、発症様式)で分類し、適切な身体所見評価や各種検査を行い、適宜専門家にコンサルトします。各関節炎における評価項目として、罹患関節の対称性・数・部位(頸胸腰椎、仙腸部、小関節(手、足、各指趾関節)、中大関節(肩、肘、股、膝)、全身症状(発熱、発疹、消化器症状など)が挙げられます。III.検査項目のポイント抗核抗体陰性の全身性エリテマトーデスは2%未満であり、ほかの診断基準の項目に乏しい時は測るべきではありません。ただし、抗核抗体は高力価であるほど自己免疫性疾患の可能性が高いです。非炎症性と炎症性の鑑別の際にCRPとESRは有用で、急性期においてはCRPの方が有用です。(推奨レベルC)ESRの正常上限は、女性では (年齢+10)÷2、男性では年齢÷2です。ESRが基準範囲内の関節リウマチ患者は3%存在します。RF(リウマチ因子)は特異性に乏しいですが、対称多発性関節炎で高力価だった場合、関節リウマチを高率に予測できます。痛風関節炎の発作時に、血清尿酸値は基準範囲や低値でも構いません。6mg/dlを目標に3~6ヵ月おきにフォローします。非炎症性とされる滑液所見は、一般的に白血球数2,000/mm3未満、多核白血球割合75%未満です。感染症では、第一に細菌性を考慮し、次にボレリア、B型肝炎、C型肝炎、パルボウイルスを想定します。強直性脊椎炎など仙腸関節の異常は、レントゲンよりもMRIのほうが早期に異常を確認できます。関節の小さなびらんは、超音波検査やMRIで可視化されます。関節リウマチでは、慢性痛風でみられるOverhanging edgeは認めません。組織生検:巨細胞性動脈炎(側頭動脈生検)、皮膚ループスまたは皮膚血管炎(皮膚生検)、糸球体腎炎(腎生検)、および肺血管炎(肺生検)を診断するために不可欠です。滑膜生検:肉芽腫(例えば、サルコイドーシス、真菌感染症、結核)疾患、ヘモクロマトーシス、ウィップル病、リウマチ結節といったとらえどころのない症例に役立つことがあります。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Barbour KE,et al. Morb Mortal Wkly Rep. 2013;62:869-873. 2) Geurge GA,et al. Am Fam Physician. 2015;92:35-41.

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黄熱に気を付けろッ!その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第20回となる今回は、蚊媒介感染症の古参、黄熱ですッ! 黄熱といえば誰もが一度はその病名を聞いたことがあるでしょう。英語で言うと“イエロー・フィーバー”という、まるでルー大柴のようなノリですが、実際そうなんだから仕方ありません。その黄熱が、今世界を騒がせているのですッ!そもそも黄熱ってどういう病気?黄熱という感染症は超有名ですが、おそらく黄熱の患者さんを実際に診られたことのある臨床医は、日本にはほとんどいないのではないでしょうか。自称・希少感染症ハンターの忽那も、黄熱の患者さんは診たことはありません。黄熱は、今世間を騒がせているデングウイルスやジカウイルスと同じ、フラビウイルス科に属する黄熱ウイルスによる感染症です。黄熱もデング熱やジカ熱と同じくシマカ(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)によって媒介されます。黄熱という名前は、感染すると黄色くなる、すなわち黄疸を呈することが由来です。しかし、黄熱に感染しても必ずしも黄疸を呈するわけではなく、黄熱患者の約85%は非特異的な発熱(頭痛、関節痛、嘔気、下痢など)を呈し、1週間以内に改善します。この辺は同じフラビウイルスであるデング熱に似ていますね。しかし、残りの約15%の患者が黄疸、腎不全、出血症状などを呈する重症型に移行するとされています。重症型に移行した患者の20~50%が死亡するとされています。黄熱、恐るべしッ!黄熱の流行地域は限られている黄熱がアウトブレイクしている地域は、アフリカと南米の一部に限られています。図1が黄熱の流行地域です。アフリカはサハラ以南と呼ばれる地域(マラリアと流行地域が重複しています)、図2の南米では内陸側のアマゾン川流域の地域です1)。南米よりもアフリカのほうが、感染者数が圧倒的に多く、アフリカでは年間13万人が感染し7万8千人が亡くなっていると推計されています2)。今回アウトブレイクが起こっているのは、アフリカのアンゴラという国です。3月30日までの時点で1,794人が黄熱と診断され、そのうち198人が亡くなっています3)。感染者が最も多く出ているのは首都のルアンダです。これまで黄熱の輸入例というのは10例程度しか報告されていなかったのですが、今回のアウトブレイクではすでに中国で6例、ケニアで2例、モーリタニアで1例の輸入例が報告されているのですッ! かつてない規模ッ! そしてさらには、コンゴ民主共和国でも疑い例を含めて151人の感染者と21人の死亡者が出ています。画像を拡大する画像を拡大する日本に黄熱患者が発生する可能性は!?さて、中国で輸入例が出ているので、日本にも輸入例が発生する可能性はあるのでしょうか? 可能性があるかないかということになると「ある」ということになりますが、決してその確率は高くはないと思われます。通常、アンゴラやコンゴ民主共和国に入国する際には、黄熱ワクチンの接種証明書の提示が求められますので、日本人が渡航する前には黄熱ワクチンを接種しているはずです(ごく一部の人は、免疫不全を理由に黄熱ワクチンを接種せずに、禁忌証明書を持って入国しているかもしれません)。ですので、日本人が現地で黄熱に感染して、黄熱ウイルスを持ち帰る可能性はきわめて低いと思われます(アンゴラで黄熱に感染した中国人は、なぜか黄熱ワクチンの接種歴がない人が大半とのことで…どうやってアンゴラに入国したんでしょうね…)。しかし、アンゴラやコンゴ民主共和国の人が日本に来て黄熱を発症する、という可能性はあるかもしれません。アンゴラ、コンゴ民主共和国渡航後に発熱を呈する患者さんに遭遇したら、とくに外国人では黄熱を想起するようにしましょう。ちなみに黄熱ウイルスはヒトスジシマカでも媒介されるので、ひとたび黄熱ウイルスが夏季に日本に持ち込まれれば、日本国内で流行する可能性はなくはありません。しかし、これまで黄熱の流行地域はこの数十年ほとんど変化がなく、その他の地域で流行したことがありません。同じフラビウイルスであるデングウイルスやジカウイルスが、これだけ流行地域を広げまくっているのに対して、なぜ黄熱は流行地域が広がらないのか不思議ではありますが、渡航者のワクチン接種などが関係しているのかもしれません。というわけで、アンゴラやコンゴ民主共和国に渡航する際は、普段にも増して黄熱ワクチン接種を推奨し(というか接種しないと入国できないんですけどね)、免疫不全のためにどうしても接種できないという方には、防蚊対策(チクングニア熱に気を付けろッ! その2参照)を徹底してもらうよう懇切丁寧に説明をしましょう。1)Yellow Book. Chapter 3 Infectious Diseases Related to Travel. Yellow Fever. Centers for Disease Control and Prevention. (accessed 2016-04-14).2)Garske T, et al. PLoS Med.2014;11:e1001638.3)Epidemiological update: outbreak of yellow fever in Angola 01 Apr 2016. European Centre for Disease Prevention and Control. (accessed 2016-04-14).4)Yellow Fever-Democratic Republic of the Congo. Disease Outbreak News 11 April 2016. World Health Organization. (accessed 2016-04-14).

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ニーマン・ピック病C型〔NPC : Niemann-Pick disease type C〕

1 疾患概要■ 概念・定義1, 2)ニーマン・ピック病は、多様な臨床症状と発病時期を示すがスフィンゴミエリンの蓄積する疾患として、1961年CrockerによりA型からD型に分類された。A型とB型はライソゾーム内の酸性スフィンゴミエリナーゼ遺伝子の欠陥による常染色体性劣性遺伝性疾患で、ニーマン・ピック病C型は細胞内脂質輸送に関与する分子の欠陥で起こる常染色体性劣性遺伝性疾患である。D型は、カナダのNova Scotia地方に集積するG992W変異を特徴とする若年型のC型である。■ 疫学C型の頻度は人種差がないといわれ、出生10~12万人に1人といわれている。発病時期は新生児期から成人期までと幅が広い。2015年12月の時点で日本では34例の患者の生存が確認されている。同時点での人口8,170万人のドイツでは101人、人口6,500万人の英国では86例で、人口比からすると日本では現在確認されている数の約5倍の患者が存在する可能性がある。■ 病因遺伝的原因は、細胞内脂質輸送小胞の膜タンパク質であるNPC1タンパク質をコードするNPC1遺伝子、またはライソゾーム内の可溶性たんぱく質でライソゾーム内のコレステロールと結合し、NPC1タンパク質に引き渡す機能を持つNPC2タンパク質をコードするNPC2遺伝子の欠陥による。その結果、細胞内の脂質輸送の障害を生じ、ライソゾーム/後期エンドソームにスフィンゴミエリン、コレステロールや糖脂質などの蓄積を起こし、内臓症状や神経症状を引き起こす。95%の患者はNPC1遺伝子変異による。NPC2遺伝子変異によるものは5%以下であり、わが国ではNPC2変異による患者はみつかっていない。■ 症状1)周産期型出生後まもなくから数週で、肝脾腫を伴う遷延性新生児胆汁うっ滞型の黄疸がみられる。通常は生後2~4ヵ月で改善するが、10%くらいでは、肝不全に移行し、6ヵ月までに死亡する例がある。2)乳児早期型生後間もなくか1ヵ月までに肝脾腫が気付かれ、6~8ヵ月頃に発達の遅れと筋緊張低下がみられる。1~2歳で発達の遅れが明らかになり、運動機能の退行、痙性麻痺が出現する。歩行を獲得できる例は少ない。眼球運動の異常は認められないことが多い。5歳以降まで生存することはまれである。3)乳児後期型通常は3~5歳ごろ、失調による転びやすさ、歩行障害で気付かれ、笑うと力が抜けるカタプレキシーが認められることが多い。神経症状が出る前に肝脾腫を指摘されていることがある。また、検査に協力できる場合には、垂直性核上性注視麻痺を認めることもある。知的な退行、けいれんを合併する。けいれんはコントロールしづらいこともある。その後、嚥下障害、構音障害、知的障害が進行し、痙性麻痺が進行して寝たきりになる。早期に嚥下障害が起こりやすく、胃瘻、気管切開を行うことが多い。7~15歳で死亡することが多い。わが国ではこの乳児後期型が比較的多い。また、この型では早期にまばたきが消失し、眼球の乾燥を防ぐケアが必要となる。4)若年型軽度の脾腫を乳幼児期に指摘されていることがあるが、神経症状が出現する6~15歳には脾腫を認めないこともある。書字困難や集中力の低下などによる学習面の困難さに気付かれ、発達障害や学習障害と診断されることもある。垂直性核上性注視麻痺はほとんどの例で認められ、初発症状のこともある。カタプレキシーを認めることもある。不器用さ、学習の困難さに続き、失調による歩行の不安定さがみられる。歩行が可能な時期に嚥下障害によるむせやすさ、構語障害を認めることが多く、発語が少なくなる。ジストニア、けいれんがみられることが多く、進行すると痙性麻痺を合併する。30歳かそれ以上まで生存することが多い。わが国でも比較的多く認められる。5)成人型成人になって神経症状がなく、脾腫のみで診断される例もまれながら存在するが、通常は脾腫はみられないことが多い。妄想、幻視、幻聴などの精神症状、攻撃性やひきこもりなどの行動異常を示すことが多い。精神症状や行動異常がみられ、数年後に小脳失調(76%)、垂直性核上性注視麻痺(75%)、構語障害(63%)、認知障害(61%)、運動障害(58%)、脾腫(54%)、精神症状(45%)、嚥下障害(37%)などがみられる。運動障害はジストニア、コレア(舞踏病)、パーキンソン症候群などを認める。■ 予後乳児早期型は5歳前後、乳児後期型は7~15歳、若年型は30~40歳、成人型は中年までの寿命といわれているが、気管切開、喉頭気管分離術などによる誤嚥性肺炎の防止と良好なケアで寿命は延長している。また、2012年に承認になったミグルスタット(商品名: ブレーザベス)によって予後が大きく変化する可能性がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ニーマン・ピック病C型の診断の補助のためにSuspicion Indexが開発されている。これらはC型とフィリピン染色で確定した71例、フィリピン染色が陰性であった64例、少なくとも症状が1つある対照群81例について、内臓症状、神経症状、精神症状について検討し、特異性の高い症状に高いスコアを与えたスクリーニングのための指標である。この指標は便利であるが、4歳以下で神経症状の出現の少ない例では誤診する可能性のあることに注意して使用していただきたい。現在、4歳以下で使えるSuspicion Indexが開発されつつある。このSuspicion Indexは、(http://www.npc-si.jp/public/)にアクセスして使用でき、評価が可能である。一般血液生化学で特異な異常所見はない。骨髄に泡沫細胞の出現をみることが多い。皮膚の培養線維芽細胞のフィリピン染色によって、細胞内の遊離型コレステロールの蓄積を明らかにすることで診断する。LDLコレステロールが多く含まれる血清(培地)を用いることが重要である。成人型では蓄積が少なく、明らかな蓄積があるようにみえない場合もあり注意が必要である。骨髄の泡沫細胞にも遊離型コレステロールの蓄積があり、フィリピン染色で遊離型コレステロールの蓄積が確認できれば診断できる。線維芽細胞のフィリピン染色は、秋田大学医学部附属病院小児科(担当:高橋 勉、tomy@med.akita-u.ac.jp)、大阪大学大学院医学系研究科生育小児科学(担当:酒井 規夫、norio@ped.med.osaka-u.ac.jp)、鳥取大学医学部附属病院脱神経小児科(担当:成田 綾、aya.luce@nifty.com)で対応が可能である。確定診断のためにはNPC1遺伝子、NPC2遺伝子の変異を同定する。95%以上の患者はNPC1遺伝子に変異があり、NPC2遺伝子に変異のある患者のわが国での報告はまだない。NPC1/NPC2遺伝子解析は鳥取大学生命機能研究支援エンター(担当:難波 栄二、ngmc@med.tottori-u.ac.jp)で対応が可能である。近年、遊離型コレステロールが非酵素反応で形成される酸化型ステロール(7-ケトコレステロール、コレスタン-3β、5α、6βトリオール)が、C型の血清で特異的に上昇していることが知られ、迅速な診断ができるようになっている1、2)。わが国では、一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療センター(担当者:藤崎 美和、衞藤 義勝、sentanken@mt.strins.or.jp、電話044-322-0654 電子音後、内線2758)で測定可能であり、連絡して承諾が得られるようであれば、凍結血清1~2mLを送る。さらに尿に異常な胆汁酸が出現することが東北大学医学部附属病院薬剤部から報告され9)、この異常も診断的価値が高い特異的な検査の可能性があり、現在精度の検証が進められている。診断的価値が高いと考えられる場合、また精度の検証のためにも、東北大学医学部附属病院へ連絡(担当者:前川 正充、m-maekawa@hosp.tohoku.ac.jp)して、凍結尿5mLを送っていただきたい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ミグルスタット の治療効果C型の肝臓や脾臓には、遊離型コレステロール、スフィンゴミエリン、糖脂質(グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド)、遊離スフィンゴシン、スフィンガニンが蓄積している。一方、脳では、コレステロールやスフィンゴミエリンの蓄積はほとんどなく、スフィンゴ糖脂質、とくにガングリオシッドGM2とGM3の蓄積が顕著である。このような背景から、グルコシルセラミド合成酵素の阻害剤であるn-butyl-deoxynojirimycin(ミグルスタット)を用いてグルコシルセラミド合成を可逆的に阻害し、中枢神経系のグルコシルセラミドを基質とする糖脂質の合成を減少させることで、治療効果があることが動物で確認された。さらに若年型と成人型のC型患者で、嚥下障害と眼球運動が改善することが報告され、2009年EUで、2012年わが国でC型の神経症状の治療薬として承認された。ミグルスタットは、乳児後期型、若年型、成人型の嚥下機能の改善・安定化に効果があり、誤嚥を少なくし、乳児後期型から成人型C型の延命効果に大きく影響することが報告されている。また、若年型のカタプレキシーや乳児後期型の発達の改善がみられ、歩行機能、上肢機能、言語機能、核上性注視麻痺の安定化がみられることが報告されている。乳児早期型では、神経症状の出現前の早い時期に治療を開始すると効果がある可能性が指摘されているが、乳児後期型、若年型、成人型の神経症状の安定化に比較して効果が乏しい。また、脾腫や肝腫大などの内臓症状には、効果がないと報告されている。ミグルスタットの副作用として、下痢、鼓腸、腹痛などの消化器症状が、とくに治療開始後の数週間に多いと報告されている。この副作用はミグルスタットによる二糖分解酵素の阻害によって、炭水化物の分解・吸収が障害され、浸透圧性下痢、結腸発酵の結果起こると考えられている。ほとんどの場合ミグルスタット継続中に軽快することが多く、ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミンほか)によく反応する。また、食事中の二糖(ショ糖、乳糖、麦芽糖)の摂取を減らすことでミグルスタットの副作用を減らすことができる。さらには、ミグルスタットを少量から開始して、増量していくことで副作用を軽減できる。■ ニーマン・ピック病C型患者のその他の治療について2)C型のモデルマウスでは、細菌内毒素受容体Toll様受容体4の恒常的活性化によって、IL-6やIL-8が過剰に産生され、脳内の炎症反応が起こり、IL-6を遺伝的に抑制することで、マウスの寿命が延長することが示唆されている5)。また、モデルマウスに非ステロイド性抗炎症薬を投与すると神経症状の発症が遅延し、寿命が延長することが報告されており6)、C型患者で細菌感染を予防し、感染時の早期の抗菌薬投与と抗炎症薬の投与によって炎症を抑えることが勧められる。また、教科書には記載されていないが、C型患者では早期に瞬目反射が減弱・消失し、まばたきが減少し、この結果眼球が乾燥する。この瞬目反射の異常に対するミグルスタットの効果は不明である。C型患者のケアにあたっては、瞬目反射の減弱に注意し、減弱がある場合には、眼球の乾燥を防ぐために点眼薬を使用することが大切である。4 今後の展望シクロデキストリンは、細胞内コレステロール輸送を改善し、遊離型コレステロールの蓄積を軽減させると、静脈投与での効果が報告されている3)。シクロデキストリンは、髄液の移行が乏しく、人道的使用で髄注を行っている家族もあるが、今後アメリカを中心に臨床試験が行われる可能性がある。また、組み換えヒト熱ショックタンパク質70がニーマン・ピック病C型治療薬として開発されている。そのほか、FDAで承認された薬剤のなかでヒストン脱アセチル化阻害剤(トリコスタチンやLBH589)が、細胞レベルでコレステロールの蓄積を軽減させること4, 7)や筋小胞体からCaの遊離を抑制し、筋弛緩剤として用いられているダントロレンが変異したNPCタンパク質を安定化する8)ことなどが報告され、ミグルスタット以外の治療薬の臨床試験が始まる可能性が高い。5 主たる診療科小児科(小児神経科)、神経内科、精神科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業 ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班 ライソゾーム病に関して(各論)ニーマン・ピック病C型(医療従事者向けのまとまった情報)鳥取大学医学部N教授Website(ニーマン・ピック病C型の研究情報を多数記載。医療従事者向けのまとまった情報)NP-C Suspicion Index ツール(NPCを疑う症状のスコア化ができる。提供: アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社)The NPC-info.com Information for healthcare professionals に入り、Symptoms of niemann pick type C diseaseにて動画公開(ニーマン・ピック病C型に特徴的な症状のビデオ視聴が可能。提供: アクテリオン株式会社)患者会情報ニーマン・ピック病C型患者家族の会(患者とその患者家族の情報)1)大野耕策(編). ニーマン・ピック病C型の診断と治療.医薬ジャーナル社;2015.2)Vanier MT. Orphanet J Rare Dis.2010;5:16.3)Matsuo M, et al. Mol Genet Metab.2013;108:76-81.4)Pipalia NH, et al. Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:5620-5625.5)Suzuki M, et al. J Neurosci.2007;27:1879-1891.6)Smith D, et al. Neurobiol Dis.2009;36:242-251.7)Maceyka M, et al. FEBS J.2013;280:6367-6372.8)Yu T, et al. Hum Mol Genet.2012;21:3205-3214.9)Maekawa M, et al. Steroids.2013;78:967-972.公開履歴初回2013年10月10日更新2016年04月19日

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食質の重要性と死亡リスクに的を絞り健康の原点を看破する!(解説:島田 俊夫 氏)-515

 先進国では高齢化が急速に進み、大きな社会問題となっている。わが国は、この点でいまや世界のトップランナーであり、深刻な社会問題を抱えている。わが国の国民皆保険制度は優れた点も多いが、社会構造の急激な変化に対応できず破綻寸前である。このような状況の中で生きていくための食事の質(食質)の重要性に、注目が集中している。 BMJ誌2016年3月22日号に掲載されたKurotani K氏らによる論文は、食質と死亡率について言及した医学研究で、わが国の保健所が多施設共同で行った興味深い前向きコホート研究である。本研究は、日本食事バランスガイドを使って食質を得点化し、日本食事バランスガイド(高得点であれば食質が良好、低得点であれば食質不良)による得点と死亡率との関係を、長期にわたり追跡調査した大規模前向きコホート研究である。 研究目的は、日本食事バランスガイドによる得点化と、総死亡率および原因別死亡率間の関係を調べることであった。 対象はがん、脳血管障害、虚血性心疾患、あるいは慢性肝疾患の既往歴のない45~75歳の男性3万6,624人、女性4万2,970人の合計7万9,594人。研究対象施設は、日本国内の11保健所。研究デザインは、中央値で15年間追跡できた大規模集団に基づく前向きコホート研究。 主要評価項目は、住民票および死亡診断書による確認済み死亡と死因であった。 食事バランスガイドに基づく高得点が総死亡率低下と関係しており、最高得点、最低得点に対する総死亡率の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、最低得点ハザード=基準ハザードとして、食事バランスガイド得点四分位数の増加に伴い、高得点になればなるほどハザード比(95%信頼区間)は、0.92(0.87~0.97)、0.88(0.83~0.93)および0.85(0.79~0.91)と低下し、食事バランスガイド得点10ポイントの増加で多変量調整ハザード比は0.93(0.91~0.95)に低下した。この得点は、心血管病死亡率と逆相関し(得点が上がれば死亡率は下がる)、10ポイントの増加でハザード比は0.93(0.89~0.98)に低下した。とりわけ脳血管障害と強い逆相関を示し、10ポイントの増加でハザード比は0.89(0.82~0.95)に低下した。がん死亡率に対しても逆相関する傾向を認めた[0.96(0.93~1.00)]が、統計学的有意に至らなかった。 日本食事バランスガイドを順守することは、日本成人の総死亡率、心血管死亡率、とりわけ脳血管病死亡率のリスク低下と密接に関連しており、がん死亡率に関しても同様の傾向を認めたが、本研究のみでは統計学的有意には至らなかった。 これまでの諸研究を加味すれば、食質はがん死亡率に関しても同様に、きわめて重要と考えられる。食質の重要性を前向き大規模研究により明らかにした、時宜にかなった研究で、健康の原点を食に回帰させる研究として興味深く、最近話題の腸内細菌の問題とも密接に関連する意義深い研究と理解する。

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アトピー性皮膚炎の免疫および炎症性因子発現のリスク因子とは?

 アトピー性皮膚炎(AD)のリスク因子と、免疫炎症性因子(免疫グロブリンE(IgE)およびインターロイキン(IL)-4、IL-18)の中国におけるAD有病率の関係を明らかにすることを目的とした出生コホート研究が中国で行われた。Molecular and Cellular Probes誌オンライン版2016年3月31日号の掲載報告。 幼児ADのリスク因子を評価するため、合計921組の母親-新生児ペアを2009~11年の間に実施したアンケート調査から登録した。静脈血は母親から出産入院中に、臍帯血は出産時に採取した。幼児AD-母親のペア35組をAD患者群、ランダムに選択した非ADペア35組をコントロール群とした。酵素免疫測定法(ELISA)でIgE、IL-4、およびIL-18値を検出し、AD有病率との関係を検討した。アレルギーのリスク因子は、IgE 陽性例で評価された。 主な結果は以下のとおり。・家族収入、親のアトピー既往歴、初潮年齢、妊娠前の住宅リフォーム、妊娠中のウイルス感染、妊娠中のカルシウム補給が幼児ADの発症率を決定する要因となる可能性がある。・コントロール群と比較して、AD患者群で母体血清と臍帯血のIgEとIL-4値がより高いレベルを示した(p<0.01)。・AD症例において、IL-8は母体血清中でのみ増加した(p<0.01)。・イエダニのアレルゲン、ヨモギ花粉、真菌胞子は、IgE陽性AD発生のリスク因子であった。

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<新規C肝治療薬>治験と実臨床のギャップはなぜ起こる?

 4月11日、都内にて「臨床試験結果と実臨床のギャップはなぜ生まれるのか」をテーマに、メディアラウンドテーブルが実施された(主催:アッヴィ合同会社)。演者は高口 浩一氏(香川県立中央病院 院長補佐 診療科長)。本ラウンドテーブルでは、C型肝炎の新規経口治療薬の話題を交えて、臨床試験データの持つ意味があらためて解説された。進化するC型肝炎治療、その臨床試験は C型肝炎ウイルスは1989年に米国で発見され、1992年からインターフェロンを用いた治療が開始、その後ペグインターフェロン療法が主体の時期が長く続いた。しかし、2014年のインターフェロンを使用しない経口薬のみのダクラタスビル/アスナプレビル併用療法の登場を境に、C型肝炎は経口薬で治療するという新しい時代に突入した。また、2015年にはオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合錠(商品名:ヴィキラックス配合錠)をはじめとした、インターフェロンが効きにくかったジェノタイプ1のC型肝炎患者のウイルス学的著効率(SVR12)が90%を超える薬剤が登場している。 しかし、実臨床では必ずしも臨床試験通りとはいかない。例えば、レジパスビル/ソホスブビル配合錠は臨床試験において日本人におけるSVR12が100%と報告されているが1)、高口氏の施設では投与した97例のSVR12は93.9%と、試験時と比較して低かった。この臨床試験と実臨床の差をどう捉えるべきだろうか? 高口氏は臨床試験の限界として、「5つのToo」を挙げた。臨床試験と実臨床の差、ポイントは「5つのtoo」 臨床試験の持つ問題点として、以下の5つが挙げられる2)。1.Too few:通常1,000例程度と、十分な症例数で検証されているわけではない2.Too simple:症例の年齢や併用薬、合併症などに制限がある3.Too brief:試験薬の投与期間が短い4.Too median-age:症例の年齢幅が狭く、小児や高齢者などへの適用例は少ない5.Too narrow:腎・肝機能障害のある患者や妊婦は対象から除かれている レジパスビル/ソホスブビル配合錠の場合も、実際に使用する患者は臨床試験時よりも高齢者が多いため、加齢に伴う生理機能の低下や併存疾患の存在が影響している可能性がある。また、病状の進行や服薬アドヒアランスが、効果や安全性に影響を与える点も注意が必要だ。新薬をより安全に使用するために、臨床試験データを活用 しかし、臨床試験データを用いることで、試験時より良い治療効果が出る場合もある。高口氏の施設では、ソホスブビル+リバビリンの治療を行った91例におけるSVR12は100%であり、これは臨床試験時の96.4%3)よりも良い結果であった。この点について、高口氏は「臨床試験での結果を基に、副作用対策を行ったためではないか。例えば、リバビリンは重症な貧血などの副作用が起こることもあり、そのため治療の継続が困難な患者もいる。実臨床ではこの点について、投与量を工夫し、より患者に合った量を投与するなど、専門医の臨床経験が治療成績に貢献した点もあるのではないか」と考察した。薬効を最大限に発揮させるために―早期発見の重要性 C型肝炎の治療は日々進化し、完治が望める疾患になりつつある。しかし、疾患が進行し、肝硬変になると薬剤が肝細胞に移行しづらくなるため、治療効果は低下する。高口氏は、現在のC型肝炎治療の問題点として、C型肝炎抗体検査の普及が不十分な点を指摘した。C型肝炎は検査によって容易に発見できるにもかかわらず、検査が普及していないため気付かれないことが多い。そのため、症状が出た時点ではかなり進行しており、薬が効きづらいケースもあるという。 高口氏は、「C型肝炎は簡単な検査で発見できるにもかかわらず、健康診断に組み込まれていない場合が多い。早期発見し、肝硬変に移行する前に治療を開始することは、患者さんにとって大きなメリットとなる。数千円程度の自己負担でできることが多いので、早期発見の重要性を再認識いただき、積極的に検査を実施していただきたい」と、抗体検査の持つ重要性も併せて強調し、セミナーを結んだ。参考文献1)ハーボニ―錠承認時評価資料・国内第III相臨床試験(GS-US-337-0113 試験)2)Rogers AS. Drug Intell Clin Pharm.1987;21:915-920.3)ソバルディ錠・国内第III相臨床試験(GS-US-334-0118 試験)

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双極性障害発症のリスク因子を解析

 双極性障害(BD)の発症に対する環境リスク因子については十分にわかっていない。イタリア・Centro Lucio BiniのCiro Marangoni氏らは、長期研究によりBDの有病率、罹病期間、環境曝露の予測値を評価した。Journal of affective disorders誌2016年3月15日号の報告。 著者らは、2015年4月1日までのPubMed、Scopus、PsychINFOのデータベースより、関連キーワード(出生前曝露、母体内曝露、トラウマ、児童虐待、アルコール依存症、大麻、喫煙、コカイン、中枢興奮薬、オピオイド、紫外線、汚染、地球温暖化、ビタミンD、双極性障害)と組み合わせて体系的に検索し、当該研究を抽出した。追加の参照文献は相互参照を介して得た。(1)長期コホート研究または長期デザインの症例対照研究、(2)初期評価時に生涯BDの診断がなく、フォローアップ時に臨床的または構造化評価でBDと診断された患者の研究が含まれた。家族性リスク研究は除外した。研究デザインの詳細、曝露、診断基準の詳細と双極性障害リスクのオッズ比(OR)、相対リスク(RR)またはハザード比(HR)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・2,119件中、22件が選択基準を満たした。・識別されたリスク因子は、3つのクラスタに分類可能であった。(1)神経発達(妊娠中の母体のインフルエンザ;胎児発育の指標)(2)物質(大麻、コカイン、その他の薬;オピオイド薬、精神安定剤、興奮剤、鎮静剤)(3)身体的/心理的ストレス(親との別れ、逆境、虐待、脳損傷)・唯一の予備的エビデンスは、ウイルス感染、物質またはトラウマの曝露がBDの可能性を高めることであった。・利用可能なデータが限られたため、特異性、感度、予測値を計算することができなかった。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害I型とII型、その違いを分析 双極性障害治療、10年間の変遷は

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フィーバー國松の不明熱コンサルト

第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」 第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」 第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」 第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」 第6回 神経内科「答えは脳ではない」 第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」 第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」 循環器、消化器、呼吸器…どんな臓器の専門医でも日々の専門診療のなかでなかなか原因が突き止められない「熱」に直面することがあります。そんな専門医が抱える不明熱を「熱」のスペシャリスト・フィーバー國松が徹底分析。各科で遭遇しやすいキホンの熱から、検査ではわからない困った熱まで、それらの鑑別方法、対処法を詳しく解説します。 国立国際医療研究センター病院で不明熱外来を担う講師は、院内外の各科からさまざまな不明熱のコンサルトを受け、日々、その発熱の原因究明に挑んでいます。本DVDで取り上げるのは、循環器、消化器、呼吸器、腎臓、血液、神経、膠原病、感染症の8領域。「熱」に自信を持って立ち向かえる!発熱診療の強力な手がかりをお届けします!第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」第1回は循環器内科編。循環器内科でみられるキホンの不明熱、検査ですぐにはわからない困った不明熱を解説します。「循環器疾患で来たはずなのに発熱が続いている…」「救命後に下がらない熱…」特に入院中の患者によくみられる不明熱のさまざまな可能性と、原因究明のためのアプローチを、熱のスペシャリスト・國松淳和氏がご紹介します。第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」第2回は消化器内科編。自己免疫疾患から機能性疾患まで、幅広くさまざまな疾患を扱う消化器内科医が、しばしば遭遇する不明熱について解説します。内視鏡や生検では診断のつかない、困った熱の原因を探るためのヒントを紹介します。10歳代から20年以上続く発熱と腹痛の原因疾患とは…!?第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」第3回は呼吸器内科編。不明熱のコンサルトを受けることも多い呼吸器内科医が、本当に困る不明熱について解説します。呼吸器という限られた臓器のなかで感染症から、まれな悪性疾患まで、さまざまな疾患の可能性がありうる領域です。特に混乱しやすいのが、原因が呼吸器疾患でなかった場合…肺炎と肺炎随伴胸水と考えていた患者が、実は横隔膜下膿瘍だったなど。見落としがちな疾患をリストアップして紹介します。第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」第4回は腎臓内科編。腎臓内科で不明熱に遭遇した場合、熱源が疑えても「造影剤を使用しにくい」「試験的な投薬をしにくい」という問題があります。腎機能障害患者の不明熱に対して想起すべき鑑別疾患、絶対に行うべき検査について解説します。また、長期透析という特別な背景を持つ患者の不明熱については、どうアプローチすべきなのか!? 國松氏がコンサルトを受けた実際の症例も紹介。 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」第5回は血液内科編。「不明熱と血球減少」は臨床内科医にとって鬼門!そのため血球減少の相談が血液内科の先生に集中しがちです。そんな他科からのコンサルトや、基礎疾患のわからない外来患者を効率よく診断するために、血球減少を来すキホンの疾患リスト、ウイルス性疾患の鑑別点を紹介します。抗体検査はもちろん必要ですが、時として素早い臨床診断も重要です。第6回 神経内科「答えは脳ではない」第6回は神経内科編。”Help me! Help me!” は神経内科医が押さえておきたい熱が出る12病態の頭文字!病態ごとに想起すべき疾患名をリストアップして解説します。また、「循環器内科のまれで重篤な疾患」と勘違いされがちな感染性心内膜炎(IE)についてもレクチャー。心原性脳塞栓症の患者が来たら、まずはIEのハイリスク群からチェックしましょう!よくある疾患でも、その裏に隠れている疾患を見逃さないための注意が必要です。第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」第7回は膠原病科編。発熱のコンサルトに慣れている膠原病科の先生は、その原因疾患が膠原病であれば困ることはありません。困るのはやはり、最大かつ永遠の好敵手であるリンパ腫!SLEや成人スティル病など、臨床診断を行う膠原病科医にとって、病理組織検査でなければ診断できないものこそ難問です。そんな膠原病科の不明熱について、熱のスペシャリスト國松淳和先生が、症例診断も交えて解説します。第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」日頃から不明熱の精査に慣れている感染症内科の先生方が困るのは、感染症を検討し尽くしても診断のつかない不明熱!皮疹、高サイトカイン、菌血症様という代表的な症候から臨床診断するコツや、不明熱精査と同時に始める「不明熱治療」という考え方と方法について解説します。症例検討は、ほぼ無症候で40度以上の発熱を2年間も繰り返す12歳女児。その最終診断とは?

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乳児期に抗菌薬投与すると幼児期に太るのか/JAMA

 生後6ヵ月以内の抗菌薬使用は、7歳までの体重増と統計的に有意な関連はみられないことが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らが行った後ろ向き縦断研究の結果、示された。マウスを用いた動物実験では、誕生後早期の抗菌薬使用は、腸内細菌叢を乱し炭水化物・脂質の代謝を変化させ肥満と関連することが示されている。一方、ヒトの乳児期抗菌薬使用と幼少期体重増との関連を検討した研究では、相反する報告が寄せられている。JAMA誌2016年3月22・29日号掲載の報告。6ヵ月以内の抗菌薬使用と、6ヵ月齢~7歳までの体重変化の関連を主要評価 研究グループは、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、デラウェア州にわたる30の小児プライマリケア診療所のネットワークから、人種や社会経済的背景が多様な20万例超の小児を集めて、後ろ向きに、単生児縦断研究および適合双生児による縦断研究を行った。 被験者は、2001年11月1日~11年12月31日に、在胎期間35週以上で、出生時体重2,000g以上または在胎期間基準体重の5パーセンタイル以上で誕生し、生後14日以内に予防接種・健康診査を受け1歳までにさらに少なくとも2回受診している小児であった。複合的慢性症状がある児、長期に抗菌薬を投与もしくは複数の全身性コルチコステロイド処方を受ける児は除外した。 検討には、単生児3万8,522例と、抗菌薬使用が不一致の双生児92例(46組)を包含。フォローアップの最終データ日は12年12月31日であった。 主要アウトカムは、生後6ヵ月間で全身性抗菌薬を使用した児の、月齢6ヵ月から7歳までの予防接種・健診時に測定した体重とした。乳児期抗菌薬使用と幼少期体重変化に有意な関連なし 単生児群は女児が50%、平均出生時体重は3.4kgであり、生後6ヵ月間の抗菌薬使用例は5,287例(14%)であった。使用時の平均年齢は4.3ヵ月であった。使用例の24%が広域スペクトラム抗菌薬、5%がマクロライド系抗菌薬の投与で、大半(79%)が1コースのみの投与であった。また、あらゆる抗菌薬の使用は、月齢24ヵ月では67%に増加しており、52%が広域スペクトラム、19%がマクロライド系であった。 解析の結果、生後6ヵ月の抗菌薬使用は体重変化率と、統計的に有意な関連はなかった(0.7%、95%信頼区間[CI]:-0.1~1.5、p=0.07)。2~5歳の体重変化率に相当する推定体重増は0.05kg(95%CI:-0.004~0.11)であった。サブ解析で、抗菌薬の投与コース数の違い(1、2、≧3コース)や種類別(狭域スペクトラム、広域スペクトラム、マクロライド系)にみた場合も、使用と体重変化に有意な関連はみられなかった。 双生児は女児38%、平均出生時体重2.8kgで、抗菌薬使用時の平均年齢は4.5ヵ月であった。 解析の結果、生後6ヵ月の抗菌薬使用と、体重変化の差と関連はみられなかった(使用双生児群と非使用双生児群の年当たりの差:-0.09kg、95%CI:-0.26~0.08、p=0.30)。 著者は、「低年齢の健康児では、抗菌薬使用を制限する多くの理由があるが、その1つに体重増は該当しないようだ」と述べている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第28回

第28回:子供の発疹の見分け方監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 小児科医、皮膚科医でなくとも、子供の風邪やワクチン接種の時などに、保護者から皮膚トラブルの相談をされることがあると思います。1回の診察で診断・治療まで至らないことがあっても、助言ぐらいはしてあげたいと思うのは私だけではないと思います。文章だけでははっきりしないことも多いため、一度、皮膚科のアトラスなどで写真を見ていただくことをお勧めします。 以下、American Family Physician 2015年8月1日号1) より子供の発疹は見た目だけでは鑑別することが難しいので、臨床経過を考慮することが大切である。発疹の外観と部位、臨床経過、症状を含め考慮する。発熱は、突発性発疹、伝染性紅斑、猩紅熱に起こりやすい。掻痒はアトピー性皮膚炎やばら色粃糠疹、伝染性紅斑、伝染性軟属腫、白癬菌により起こりやすい。突発性発疹のキーポイントは高熱が引いた後の発疹の出現である。体幹から末梢へと広がり1~2日で発疹は消える。ばら色粃糠疹における鑑別は、Herald Patch(2~10cmの環状に鱗屑を伴った境界明瞭な楕円形で長軸が皮膚割線に沿った紅斑)やクリスマスツリー様の両側対称的な発疹であり、比較的若い成人にも起こる。大抵は積極的な治療をしなくても2~12週間のうちに自然治癒するが、白癬菌との鑑別を要する場合もある。上気道症状が先行することが多く、HSV6.7が関与しているとも言われている。猩紅熱の発疹は大抵、上半身体幹から全身へ広がるが、手掌や足底には広がらない。膿痂疹は表皮の細菌感染であり、子供では顔や四肢に出やすい。自然治癒する疾患でもあるが、合併症や広がりを防ぐために抗菌薬使用が一般的である。伝染性紅斑は、微熱や倦怠感、咽頭痛、頭痛の数日後にSlapped Cheekという顔の発疹が特徴的である(筆者注:この皮疹の形状から、日本ではりんご病と呼ばれる)。中心臍窩のある肌色、もしくは真珠のようなつやのある白色の丘疹は伝染性軟属腫に起こる。接触による感染力が強いが、治療せずに大抵は治癒する。白癬菌は一般的な真菌皮膚感染症で、頭皮や体、足の付け根や足元、手、爪に出る。アトピー性皮膚炎は慢性で再燃しやすい炎症状態にある皮膚で、いろいろな状態を呈する。皮膚が乾燥することを防ぐエモリエント剤(白色ワセリンなど)が推奨される。もし一般的治療に反応がなく、感染が考えられるのであれば組織診や細菌培養もすべきであるが、感染の証拠なしに抗菌薬内服は勧められない。※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Allmon A, et al. Am Fam Physician. 2015;92:211-216.

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化学放射線療法適応の頭頸部がん、PET-CT監視の効果は/NEJM

 化学放射線療法が適応の頭頸部がん患者の頸部リンパ節転移の治療において、PET-CTによる注意深い監視(PET-CT-guided surveillance:PET-CT監視)は、事前に予定された頸部郭清術(planned neck dissection:planned ND)に比べ予後は劣らないことが、英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らPET-NECK Trial Management Groupの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年3月23日号に掲載された。頸部リンパ節転移の管理では、前向き無作為化試験が行われていないため、種々の対処法が採られているという。planned NDは、予後の改善効果が示唆されているが、不要な手術や合併症のリスクを伴う。PET-CTは、メタ解析で良好な陰性予測値(94.5~96.0%)が報告されており、不要な手術の適応を抑制し、合併症を回避できる可能性がある。PET-CT監視の有用性を無作為化非劣性試験で評価 研究グループは、化学放射線療法適応の頭頸部がんの頸部リンパ節転移に対する治療において、PET-CT監視とplanned NDを比較する前向き無作為化非劣性試験を行った(英国国立健康研究機構[NIHR]医療技術評価プログラムなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、Stage N2/N3のリンパ節転移を有する中咽頭、下咽頭、喉頭、口腔、原発巣不明の頭頸部の扁平上皮がんで、化学放射線療法の適応と判定された患者であった。 被験者は、化学放射線療法施行後にPET-CT監視を12週行う群、またはplanned NDの前後のいずれかに化学放射線療法を実施する群に無作為に割り付けられた。PET-CT監視群のうち、PET-CTで完全奏効が確証されないか、境界的と判定された患者には4週以内にplanned NDが行われた。 主要評価項目は、全生存期間(OS)であった。 2007年10月~12年8月までに、英国の37施設に564例が登録され、PET-CT監視群に282例、planned ND群にも282例が割り付けられた。約80%で頸部郭清術が不要に、費用対効果も優れる 平均年齢はPET-CT監視群が57.6±7.5歳、planned ND群は58.2±8.1歳で、男性がそれぞれ79.1%、84.0%を占めた。全体の84%が中咽頭がんで、79%がN2a/N2bであり、74%が喫煙者/元喫煙者であった。また、75%が、がんの原因がヒトパピローマウイルス(HPV)であることの指標であるp16蛋白が陽性であった。 頸部郭清術は、PET-CT監視群が54例に行われたのに対し、planned ND群は221例に施行された。合併症の発生率は、それぞれ42%、38%とほぼ同等であった。 2年OSは、PET-CT監視群が84.9%(95%信頼区間[CI]:80.7~89.1)、planned ND群は81.5%(同:76.9~86.3)であった。死亡のハザード比(HR)は0.92(同:0.65~1.32)とPET-CT監視群でわずかに良好であり、planned ND群に対する非劣性が示された(95%CIの上限値<1.50、p=0.004)。 疾患特異的死亡率や他の原因による死亡率も両群間に有意な差はみられなかった(それぞれ、p=0.80、p=0.41)。また、p16陽性例(HR:0.74、95%CI:0.40~1.37)および陰性例(同:0.98、0.58~1.66)のいずれにおいても、両群間にOSの差は認めなかった。 重篤な有害事象は、PET-CT監視群が113例、planned ND群は169例に発現した。また、EORTC QLQ-C30による全般的健康状態(global health status)スコアは、6ヵ月時はPET-CT監視群のほうが良好であった(p=0.03)が、この差は12ヵ月時には小さくなり(p=0.09)、24ヵ月時には消失した(p=0.85)。 試験期間中の1例当たりの医療費は、PET-CT監視群がplanned ND群よりも1,492ポンド(約2,190米ドル)安価であった。 著者は、「両群のOSはほぼ同等であったが、PET-CT監視群では約80%の患者で頸部郭清術が不要となり、郭清術の遅延による不利益もなく、費用対効果が優れていた。HPV陽性例と陰性例の効果は同じであった」としている。

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サルマラリアに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第19回となる今回は、前回のジカウイルス感染症との蚊つながりで、マラリアについてご紹介いたします。マラリアは古典?「おいおい、マラリアなんて超古典的な感染症じゃねえかよ、どこが新興再興感染症なんだよ」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今回取り上げるのはそのマラリア原虫の中でも、最近注目を集めているサルマラリアの1つPlasmodium knowlesiというものです(このP.knowlesi以外にもサルに感染するマラリアはたくさんあり、それらをひっくるめていわゆる「サルマラリア」と呼びます)。マラリアは、結核とHIVに並ぶ世界3大感染症の1つであり、今もアフリカを中心に2億人を越える感染者を出しています1)。その大半が熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum)または三日熱マラリア(Plasmodium vivax)によるものであり、残りの数%が四日熱マラリア(Plasmodium malariae)と卵形マラリア(Plasmodium ovale)によるものです。しかし、これまで4種類とされてきたヒトに感染するマラリア原虫に第5の刺客が登場したのですッ! それがP.knowlesiなのですッ! ちなみに“knowlesi”の発音ですが、「ノウレジ」と言う人もいますが、通は「ノウザイ」と発音するようです。“Dengue”を「デング」と呼ぶか、「デンギー」と呼ぶかと同じで、まあどっちでもいいかと思いますが。知っておきたいP.knowlesiの発生地域P.knowlesiは、アカゲザルやカニクイザルなどのサルを固有の宿主とするマラリア原虫の1種で、1965年にマレーシアでヒトへの自然感染例が初めて報告されましたが、ヒトに感染するのはきわめてまれな感染症であると考えられていました。しかし、マレーシアでこれまで四日熱マラリアと診断されていた症例の大部分が、実はどうやらP.knowlesi感染症であったことが近年明らかとなり、現在ではP.knowlesiはマレーシアの他、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、シンガポールなど東南アジアの森林地帯に分布していることがわかっています(図1)2)。すでに日本でも1例の輸入例が報告されています。これは国立国際医療研究センターで診断された症例で、私も診療に加わらせていただいた症例です3)。画像を拡大するP.knowlesiの症状と診断P.knowlesiの臨床症状は、他のマラリアと同じく非特異的な発熱であり、発熱以外には頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢などの症状を呈することがあります。卵形マラリアや三日熱マラリアは48時間、四日熱マラリアは72時間周期の発熱を呈することがありますが、P.knowlesiは24時間周期といわれています。これはマラリア原虫の体内での分裂周期が、この時間だから周期的な発熱になるわけですが、発症してしばらくは原虫の周期がそろわず、かならずしも周期的な発熱にならないこともしばしばです。周期性が出てくるのはだいたい発症から5~7日くらいとされています4)。マラリア原虫種の鑑別には、ギムザ染色による顕微鏡検査がゴールドスタンダードです。たとえば図2がP.knowlesiのギムザ染色での所見です。画像を拡大する感染赤血球の大きさが変化していないので熱帯熱マラリアか四日熱マラリアかP.knowlesiかということがわかりますし、環状体が少し変形しているので後期栄養体かな? とかまではわかりますが、P.knowlesiは後期栄養体の帯状体が四日熱マラリア原虫と類似していたり、早期栄養体の環状体が熱帯熱マラリア原虫との鑑別を要することもあるため、なかなかギムザ染色だけでは原虫種まではわかりません。確定診断のためにはPCR検査を依頼することが、望ましいとされます(マラリア原虫のPCR検査は、国立国際医療研究センター研究所 マラリア研究部で行うことができます)。P.knowlesiの治療と発熱渡航者に気を付けろP.knowlesi感染症はほとんどが軽症~中等症ですが、まれに重症化する症例が報告されており、注意が必要です。P.knowlesi感染症の治療としては、海外ではクロロキンが第1選択薬として使用されていますが、わが国ではクロロキンは使用できないため、本症例ではメフロキン(商品名:メファキン)またはアトバコン・プログアニル(同:マラロン)を使用することになります。ただし、重症例では他のマラリア原虫種同様、アーテミシニン併用療法による治療が推奨されます。幸いなことにアーテメーター・ルメファントリン合剤(同:リアメット)が国内でも承認されましたので、もうすぐ使用できるようになります。また、P.knowlesiは休眠体をつくらないため、プリマキンによる根治療法を行う必要はありません。P.knowlesi常在地から帰国後の発熱患者に血液塗抹標本で、四日熱マラリア原虫に似た原虫を認めたら、P.knowlesi感染症を疑うようにしましょう!次回は最近あまり注目されていないけれど、地味に感染者を出している「H7N9インフルエンザ」についてご紹介いたしますッ!1)World Health Organization. World Malaria Report 2015.(参照 2016.3.23).2)Singh B, et al. Clin Microbiol Rev. 2013;26:165-184.3)Tanizaki R, et al. Malar J. 2013;12:128.4)Taylor T, et al. Hunter's Tropical Medicine and Emerging Infectious Diseases. 9th ed. Philadelphia:Saunders Elsevier;2012. p.696-717.

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経口フルオロキノロン処方後10日間、網膜剥離リスク増大

 経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用と網膜剥離のリスクが注目され、その関連が議論されている。フランスNational Agency for Medicines and Health Products Safety(ANSM)のFanny Raguideau氏らは、医療データベースを用いた疫学研究により、経口フルオロキノロン服用開始後10日以内に網膜剥離を発症するリスクが有意に高いことを明らかにした。著者は、「経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離発症リスクとの関連について、さらに検討しなければならない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年3月10日号の掲載報告。 研究グループは、経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離(裂孔原性および滲出性)発症との関連を評価する目的で、フランスの医療データベースを用い、2010年7月1日~13年12月31日にかけて、網膜剥離の成人患者を対象に症例クロスオーバー研究を行った。網膜剥離発症の6ヵ月以内に網膜剥離や網膜裂孔、眼内炎、硝子体内注射、脈絡膜網膜硝子体内生検およびヒト免疫不全ウイルス感染症の既往歴または入院歴のある患者は除外された。 主要評価項目は、リスク期間中(網膜剥離の手術直前1~10日)の経口フルオロキノロンの服用で、対照期間(61~180日前)と比較した。また、中間リスク期間(最近[11~30日前]および過去[31~60日前])における服用との関連や、経口フルオロキノロンや網膜剥離の種類別についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした網膜剥離患者2万7,540例(男性57%、年齢[平均±SD]61.5 ±13.6歳)中、663例が経口フルオロキノロンを服用していた。リスク期間中の服用が80例、対照期間(61~180日前)中が583例であった。・経口フルオロキノロン処方後10日間に、網膜剥離発症リスクの有意な増大が認められた(調整オッズ比:1.46、95%信頼区間[CI]:1.15~1.87)。・裂孔原性(調整オッズ比:1.41、95%CI:1.04~1.92)および滲出性(同:2.57、95%CI:1.46~4.53)いずれの網膜剥離も、有意なリスクの増大が認められた。・経口フルオロキノロンの最近服用(調整オッズ比:0.94、95%CI:0.78~1.14)および過去服用(同:1.06、0.91~1.24)は、網膜剥離発症のリスクと関連していなかった。

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原発性胆汁性胆管炎〔PBC : Primary Biliary Cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、病因・病態に自己免疫学的機序が想定される慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中高年女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。しかし、多くの症例では無症候性の時期にたまたま発見され、長く無症候性のまま経過する。黄疸はいったん出現すると、消退することなく漸増することが多い。一部の症例では門脈圧亢進症状が高頻度に出現する(表1)。画像を拡大する従来、病名は「原発性胆汁性肝硬変」となっていたが、現在は早期に診断することができるようになり、またウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid;UDCA)の効果もみられることから、現在診断されている多くの患者は肝硬変には至っていない。実際は肝硬変ではないにもかかわらず「肝硬変」が病名に入っていることで、患者の精神的負担が大きい、との患者団体の要請に応じ、2016年より世界的に、英文字略語のPBCはそのまま残し、「Primary Biliary Cholangitis(PBC)」と改名された。日本語では、「原発性胆汁性胆管炎」と改名されることになった。■ 疫学男女比は約1:7、診断時平均年齢は50~60歳で、幼小児期での発症はみられない1)。発生数は1980年の調査開始以来増加傾向にあったが、1990年代以降は横ばいで推移している。新たに診断される症例のうち約70~80%は無症候性PBCである。無症候性PBCを含めた総患者数は全国で約5万~6万人と推計される1)。■ 病因本症は種々の免疫異常とともに、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibody:AMA)が特異的(90%)かつ高率(90%)に陽性化し、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすい。さらに、組織学的には障害胆管周囲にT細胞優位の高度の単核球浸潤がみられることなどから、病態形成には自己免疫学機序が強く関与していると考えられる。多くの疾患同様、本疾患も多因子疾患であり、遺伝学的要因を基盤に環境要因が作用することよって発症し、病態形成がなされることが想定されている。家族集積性のあることや一卵性双生児における一致率がきわめて高いことなどから、発症には遺伝的素因の関与が示唆される。HLA-DR8 (DRB1*08)が人種を超えて疾患感受性遺伝子として働いている可能性が想定され、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、HLA-DR以外の新たな疾患関連遺伝子多型の情報が集積されつつある2)。環境因子としては、大腸菌などの細菌からの感染が想定されている。また、工業地帯や汚染廃棄物処理施設の近郊で発症が多いとの疫学研究などより、大気汚染や化学物質、化粧品などによる抗原の修飾がPBC発症のきっかけとなっている可能性が想定されている。■ 症状本疾患にみられる症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状に分けて考えることができる。病初期は無症状であるが(無症候性PBC)、黄疸を呈する以前から胆汁うっ滞に基づく搔痒感が出現する。身体所見としては、症候性PBCでは黄疸のほか、掻痒のために生じた掻き傷、高脂血症に伴う眼瞼黄色腫が観察され、肝臓は腫大していることが多い。本疾患は他の自己免疫性疾患・膠原病を合併しやすく、なかでもシェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチの頻度が高い。門脈圧亢進症状を早期から呈しやすく、高齢者や進行例では肝細胞がんの併発も考慮する必要がある。■ 分類1)臨床病期分類皮膚搔痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく症候を伴う症候性PBC(sPBC)とこれらの症候を欠く無症候性PBC(aPBC)に分類される。症候性PBCはさらに、皮膚掻痒感のみ認め血清総ビリルビン値が2.0mg/dL未満のs1PBCと、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以上の黄疸を認めるs2PBCに細分される1)。2)組織学的病期分類わが国の診療ガイドラインでは、サンプリングエラーを最小限にするように工夫された中沼らによる新しい分類の使用が推奨されている。1期(no progression)、2期(mild progression)、3期(moderate progression)、4期(advanced progression)の4期に分類される。3)特殊型特殊なタイプとして、以下の病態がある。(1)PBC-AIHオーバーラップ症候群(PBC-AIH overlap syndrome)PBCの特殊な病態として、肝炎の病態を併せ持ちALTが高値を呈する本病態がある。副腎皮質ステロイドの投与によりALTの改善が期待できるため、PBCの亜型ではあるが、PBCの典型例とは区別して診断する必要がある。(2)AMA陰性PBC、自己免疫性胆管炎(AIC)AMAは陰性であるが、PBCに特徴的な臨床像と肝組織像を呈し、PBC症例の約10%を占める。これらのうち抗核抗体陽性を呈する病態に対しautoimmune cholangiopathyあるいはautoimmune cholangitis(AIC)などの名称が提唱された。副腎皮質ステロイドの投与が奏効する症例もあり、UDCAの効果がみられない症例に対して試みられる。■ 予後PBCの進展形式は、緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の大きく3型に分類される(図)。多くは長期間の無症候期を経て徐々に進行するが(緩徐進行型)、黄疸を呈することなく食道静脈瘤が比較的早期に出現する症例(門脈圧亢進症型)と早期に黄疸を呈し、肝不全に至る症例(黄疸肝不全型)がみられる。肝不全型は比較的若年の症例にみられる傾向がある。黄疸期(s2PBC)になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清総ビリルビン値が5.0mg/dLで55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、厚労省研究班の診断基準(表1)に則って行うが、(1)血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTPの上昇)(2)AMA陽性所見(間接蛍光抗体法またはELISA法)(3)肝組織学像で特徴的所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)の3項目が重要である1)。〔肝組織像が得られる場合〕(1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。(2)AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの。〔肝組織像が得られない場合〕AMAが陽性で、しかも臨床像および経過からPBCと考えられるもの。■ 臨床検査成績慢性の胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、血清IgMの高値、AMAの出現が特徴的である。■ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)と抗核抗体AMAの対応抗原として、ピルビン酸脱水素酵素E2コンポーネント(PDC-E2)をはじめとするミトコンドリア内膜に存在するオキソ酸脱水素酵素複合体を構成する蛋白が明らかになっている。PDC-E2反応性CD4陽性T細胞がPBC患者の肝臓、所属リンパ節および末梢血で有意に増加していることが示され、本疾患の成立・維持に重要な役割を果たしていることが想定される。PBCではAMAのほか、抗セントロメア抗体、抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)、抗multiple nuclear dot抗体(抗sp100抗体)など数種の抗核抗体も陽性化する。核膜孔の構成成分に対する抗gp210抗体は特異度ほぼ100%と疾患特異性が高く、PBC患者の約20~30%で陽性化する。本抗体は予後不良なPBC症例で陽性になる率が高く、PBCの臨床経過の予測因子として有用であることが示されている1)。■ 肝組織像自己免疫機序を反映する肝内胆管病変(CNSDC)がPBC肝の基本病理所見であり、肉芽腫の形成も特徴的である。肝内小型胆管が選択的に進行性に破壊される。その結果、慢性に持続する肝内胆汁うっ滞が出現し、肝細胞障害、線維化、線維性隔壁が2次的に形成され肝硬変に進行する。■ 鑑別診断・除外診断画像診断(超音波、CT)で閉塞性黄疸を完全に否定したうえで、慢性の胆汁うっ滞性肝疾患および自己抗体を含む免疫異常を伴った疾患という観点から鑑別診断が挙げられる(表2)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根治的治療法は確立されていないが、ウルソデオキシコール酸はPBC進展抑制効果を有し、現在第1選択薬である。予後の改善も期待でき、実際UDCAが投与される以前の時期と比較するとPBCの予後はかなり改善している。進行したPBCではUDCAで進展を止めることは難しく、肝硬変・肝不全に進行すれば肝移植が唯一の治療手段となる。血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上になると肝移植を考慮し、肝移植専門医へ紹介することが望まれる。■ 薬物療法1)ウルソデオキシコール酸(UDCA)(商品名:ウルソなど)胆道系酵素の低下作用のみでなく、組織の改善、肝移植・死亡までの期間の延長効果が確認されている1)。通常1日600mgが投与されるが、効果が不十分の場合は900mgに増量される。2)ベザフィブラート(同:ベザトールSR、ベザリップなど)UDCAの効果が乏しい症例でベザフィブラート(400mg/日)が有効な症例もみられる1)。UDCAとは作用機序が異なることから併用投与が望ましいとされる。3)副腎皮質ステロイド通常のPBCに対する投与は病態の改善には至らず、とくに閉経後の中年女性においては骨粗鬆症を増強する副作用が表面に出てくるので、むしろ禁忌とされている。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎所見が明瞭である場合は、本剤の投与が推奨される1)。■ 肝移植胆汁うっ滞性肝硬変へと進展した場合は、もはや内科的治療で病気の進展を抑えることができなくなるため、肝移植が唯一の救命法となる1)。肝移植適応時期の決定は、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。移植後は免疫抑制薬を投与し、術後合併症、拒絶反応、再発、感染に留意し経過を追う。4 今後の展望本疾患を含め、自己免疫疾患の病因および発症原因の早期解明は期待しがたい。したがって、根本治療の開発にはまだ長い期間がかかるものと思われる。しかし、UDCAについては確実に長期効果もみられており、また、ベザフィブラートについては長期効果のレベルの高いデータは得られていないものの、作用機序に関する基礎データを含め、臨床データも集積しつつあり、UDCAとの併用効果が確立するものと思われる。一方、細胞レベルでの解析や、疾患感受性および進行に関与する遺伝子の解析データも出つつあり、病因の解明とともに、個別化医療が可能となる日もそう遠いものではないと思われる。5 主たる診療科内科、肝臓内科、消化器内科、肝臓移植外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療ガイドライン厚生労働科掌研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン2012(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省難病情報センターホームページ 原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報難病情報センター 各相談窓口紹介(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会東京肝臓友の会(患者向けの情報)大阪肝臓友の会(患者向けの情報)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年). 肝臓. 2012; 53: 633-686.2)厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイド. 文光堂. 2010.3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・ご家族のための原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック. 研究班2013事務局. 2013.4)The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group supported by the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan Guidelines for the management of primary biliary cirrhosis. Hepatol Res. 2014; 44: 71-90.公開履歴初回2014年01月09日更新2016年03月29日

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ジカウイルスとギラン・バレー症候群の関連、初のエビデンス/Lancet

 ジカウイルスがギラン・バレー症候群を引き起こすという、初となるエビデンス報告が、Lancet誌オンライン版2016年2月29日号で発表された。仏領ポリネシアのタヒチにあるInstitut Louis MalardeのVan-Mai Cao-Lormeau氏らの研究グループが、症例対照研究の結果、報告した。Cao-Lormeau氏は、「ジカウイルス感染症が南北・中央アメリカ中に広がりをみせている。リスクに曝されている国では、ギラン・バレー症候群患者を集中的に治療するための十分なベッドを確保しておく必要がある」と警告を発している。仏領ポリネシアでは2013年10月~14年4月の間に、ジカウイルス感染症の大規模なアウトブレイクを経験。同期間中に、ギラン・バレー症候群の患者が増大したことが報告され、ジカウイルスとの関連が指摘されていた。アウトブレイク中の患者を対象に症例対照研究で関与を検証 研究グループは、ギラン・バレー症候群発症において、ジカウイルス感染症およびデング熱ウイルス感染症が関与しているかを調べる症例対照研究を行った。 症例は、前述したアウトブレイク期間中に、タヒチ島の首都パペーテにあるCentre Hospitalier de Polynesie Francaiseで、ギラン・バレー症候群と診断された患者とした(症例群)。 対照は、年齢・性別・住所でマッチした非発熱性疾患患者(対照群1:98例)、年齢でマッチした急性ジカウイルス感染症患者で神経症状はみられない患者(対照群2:70例)とした。 症例群、対照群の感染ウイルス特定には、RT-PCR法、蛍光抗体マイクロスフェア(microsphere immunofluorescent)法、血清中和アッセイ法などが用いられた。ギラン・バレー症候群の診断では、ELISA法および複合マイクロアッセイを用いて、血清糖脂質抗体の測定が行われた。ギラン・バレー症候群患者98%がジカウイルスIgM/IgG陽性 試験期間中にギラン・バレー症候群と診断された患者は42例であった。そのうち41例(98%)がジカウイルスIgMまたはIgG陽性であった。 症例群の全患者(100%)が、ジカウイルス中和抗体を保有していた。一方、対照群1(98例)における保有者は54例(56%)であった(p<0.0001)。 症例群のうちジカウイルスIgM陽性は39例(93%)で、また、37例(88%)は、神経症状発症の中央値6日(IQR:4~10)前に、ジカウイルス感染症に罹患したことを示唆する一過性の疾患を有していた。 症例群では、電気生理学的検査で軸索型(AMAN)の所見、および急速進行(急速進行初期[installation phase]中央値6[IQR:4~9]日、静止期[plateau phase]中央値4[3~10]日)の所見が認められた。呼吸補助を必要としたのは12例(29%)、死亡例はなかった。 ELISA法による血清糖脂質抗体陽性は、13例(31%)で認められた。そのうちGA1抗体保有者が最も多く8例(19%)の患者で認められた。また、入院時の糖アッセイでは19/41例(46%)が陽性を示した。なお、典型的なAMANに関連する抗糖脂質抗体を有していた患者はまれであった。 デング熱ウイルス感染症歴については、症例群(95%)と、2つの対照群(89%、83%)で有意差はみられなかった。

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コミュ障の克服【Dr. 中島の 新・徒然草】(108)

百八の段 コミュ障の克服コミュ障とは「コミュニケーション障害」の略で、いわゆるネットスラングです。人とうまく話をすることができないので、職場でもプライベートでも人間関係をうまく築くことができず、つい引き籠りになってしまう、というのが典型的なパターンですね。もちろん、コミュニケーションが苦手だと、就職にも結婚にも差し支えることが容易に想像できます。で、そんなコミュニケーション障害を持つ人が、どのようにしてそれを克服したか、という体験談がネットで披露されていました。なかなか示唆に富む記事だったのでここに紹介いたします。その人は20代の男性。自分で編み出した「高速音読」という方法でコミュ障を克服したそうです。ゆっくり読んでもダメだし、黙読でもダメで、とにかく高速で音読するのが大切だということです。高速音読の対象として何を選んだかは詳しくは書かれていませんでしたが、新聞もそのひとつだったようです。なんでも高速音読を行うと、滑舌が良くなって言葉による切り返しがうまくなるのだとか。「これは凄い!」と思った私は、さっそく女房に教えました。中島「高速音読をやると滑舌が良くなって、コミュ障を克服できるらしいぞ」女房「コミュ障ってのは滑舌だけの問題なの?」中島「そう言われれば、人と会話するという心理的障壁もあるし」女房「話題をみつけるのも苦手なんでしょ」中島「他にもいろいろありそうやなあ」確かに滑舌が良くなったからといって話題が豊富になるかというと、あまり期待できそうにありません。中島「でもな。ワシら全員、英語ではコミュ障やろ」女房「は?」中島「日本語でも英語でも、問題は一緒やと思うんやな。つまり外国人としゃべるという心理的障壁とか、話題をみつける難しさとか。それに込み入った話を英語で表現するのも大変やがな」女房「確かにそうかも」中島「第一、英語の滑舌なんか全然アカンし」女房「ずいぶん説得力あるわね、それ」ということで、自ら英語高速音読を始めてみました。やってみると黙読とはまったく違います。たとえば、アクセントの位置です。黙読なら曖昧なままで済みますが、音読ではそうもいきません。例を挙げましょう。勘違いしていたもの "politics" 長い間、pol-i-ticsの「i」にアクセントがあるものと思っていましたが、実は「pol」でした。すみません。複数あるもの "in detail"de-tailの「de」にアクセントを置く人と「tail」にアクセントを置くアナウンサーが同じ「NHK WORLD English News」でしゃべっていました。3通りあるもの "Clostridium difficile"皆さんおなじみの細菌の名前で、たぶん第1音節にアクセントを置く人が多いと思いますが、第2音節にアクセントを置く人も第3音節に置く人もいるようです。ということで、頑張って英語高速音読を毎日やっているところです。三日坊主にならないよう継続するコツについても同じ記事に出ていたので、広く応用可能な方法として次回に紹介したいと思います。とりあえず1句英語なら 貴方も私も コミュ障だ

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