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COVID-19対策のうがいは是か非か

 8月上旬、大阪府知事の吉村 洋文氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策にうがい薬ポビドンヨード液を推奨する緊急記者会見を開いた。この会見の報道を受け、うがいは新型コロナ感染症対策として優先順位は低いなどと発言する一部の専門家もいたが、やはり口腔ケアは感染症対策として重要なのではないだろうかー。2020年8月5日に開催された第2回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーで、阪井 丘芳氏(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室教授)が「COVID-19と唾液腺~重症化予防のための新たな口腔ケア」について講演し、口腔の衛生管理の重要性について語った。COVID-19拡大予防にうがいは重要 COVID-19流行前から口腔ケアと感染症に関連した研究を実施している阪井氏は、1)高齢者の誤嚥性肺炎と窒息のリスクの緩和、2)口腔ケアを行う医療従事者の効率化と安全性の向上、3)口腔ケア製品の抗菌性を高め、ウイルス性・細菌性肺炎を予防、4)現場のニーズに合った優れた口腔ケア用品の開発と普及を目標に活動を行っている。 今回のポビドンヨード液の報道時には、うがいの根拠について議論が巻き起こったものの、口腔ケアにより要介護高齢者の発熱・肺炎発生率が低下することは約20年前の論文1)ですでに裏付けされていた。また、感染には体内の2大細菌叢である腸内細菌叢と口腔細菌叢が影響するが、「後者はう蝕や歯周病の原因になり、口腔細菌が肺へ移行し肺炎リスクに繋がる」と説明。また、インフルエンザなどウイルスによる肺炎は上気道から侵入するケースが多い点にも触れた。 COVID-19の場合、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が肺に存在する受容体であるACE2に結合するため、肺へ直接侵入する可能性が高いと言われている。しかし、ACE2の発現量は肺よりも唾液腺にやや多いことが報告されている。これを踏まえて、同氏は「健康な肺にはもともと防御機構があるので、ある程度口腔細菌の制御は可能だが、SARS-CoV-2によって上皮細胞が損傷すると、細菌感染が生じる可能性がさらに高まる。現在までの研究報告によると、SARS-CoV-2自体単独では強毒性ではないかもしれないが、重症化因子として口腔細菌が関与している可能性もある。2次性細菌性肺炎を防ぐためにも口腔衛生の徹底が必要」と強調した。また、COVID-19の高齢患者の死亡率が高い理由として、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん:気付かないうちに生じる誤嚥)をきっかけとして、2次性細菌性肺炎が重症化したのが原因では」と推測し、今後の検証の必要性を述べた。 新型コロナ感染対策でうがいは唾液中のウイルスを一時的に減少 現在、唾液を用いたCOVID-19のPCR検査が実施可能である。鼻咽頭ぬぐい液による検査では患者の負担だけではなく、医療者への感染リスクが問題とされたが、唾液PCR検査はそれらの問題解決に繋がるばかりか、無症状者への対応も可能となった。他方で、同氏は口腔・咽頭粘膜はSARS-CoV-2の侵入経路だけではなく、付近の唾液腺がその貯蔵庫になる可能性が示唆2)されていることに着目し、「効果的な口腔ケアと生活様式での対応の両者が必要」とコメント。しかし、現時点で口腔内の消毒薬として認められているのは、10%ポビドンヨード液と0.01~0.025%塩化ベンザルコニウム液のみであることから「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液(MA-T:Matching Transformation system)などを用いた新たな口腔用消毒薬の確立に努めたい」と話した。 最後に同氏は「学校や会社を休みたくないがゆえに、ヨード系うがい薬でうがいをしてから唾液PCR検査を受けて偽陰性の結果や診断を得るような、社会的に逆効果になる問題も予想される」としつつも、「誰が感染しているかわからない状況下において、うがいは唾液中のウイルスを一時的に減少させるため、会話や会食前・最中のうがいは人にうつす可能性を減らすかもしれない。効果の持続時間やうがい方法、吐き出した液による洗面台周囲のウイルス汚染など、検証すべき事項が多数あり、結論を導くには時間を要するが、感染対策として口腔衛生管理を行うことは大切である」と、口腔ケアの必要性について言及した。

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第20回 新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定2.接触アプリCOCOA、濃厚接触の通知で検査対象に DL数は人口の1割3.公立・公的病院の再編スケジュール、10月以降期限に見直しへ4.来年から通年化される病床機能報告制度、今年度の診療実績報告は不要に5.職員感染発生などはコロナ患者受け入れ医療機関と見なす提案、保留に/中医協1.新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定新型コロナによる死亡者や重症者をできる限り抑制するため、ワクチン接種の実施体制を整えていく必要がある。21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策分科会では、下記の検討が続く。接種の優先順位特定接種の実施実施体制国民の声現在、優先順位としては医療従事者、高齢者および基礎疾患を有する患者が挙げられており、感染リスクが高い人などを想定している。ただし、新型コロナウイルスワクチンはまだ開発中であり、現時点では安全性や有効性についてわかっていない点も多く、科学的な不確実性もある。一方で、国民の期待が極めて大きいため、しっかりと正確な情報提供が必要となる。来年初頭から国内で開始される見込みのワクチン接種を前に、今秋にも接種の基本方針を策定したい考え。ワクチンに対する懸念も踏まえ、有害事象の監視体制の整備や健康被害が生じた場合の賠償方針を固め、次の国会に新法を提出して早期成立を目指す。(参考)新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方(新型コロナウイルス感染症対策分科会)コロナワクチンの賠償、国が責任 海外製薬から調達促進 政府、次期国会に新法(日本経済新聞)2.接触アプリCOCOA、濃厚接触の通知で検査対象に DL数は人口の1割現在、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の通知で濃厚接触をした可能性のある人が、PCR検査を受けられないケースが発生している。厚労省は、全国の保健所に対して、COCOAの通知を受けた人については、症状の有無などにかかわらず検査の対象にするよう21日の事務連絡であらためて周知した。なお、COCOAについては、21日17時時点で、およそ1,416万件がダウンロードされている。(参考)事務連絡 令和2年8月21日 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)で通知を受けた者に対する行政検査等について(厚労省)接触確認アプリ 通知受けた人は検査対象 保健所に周知 厚労省(NHK)3.公立・公的病院の再編スケジュール、10月以降期限に見直しへ地域医療構想に向けて、各都道府県に求められていた公立・公的医療機関などにおける具体的対応方針の再検証について、当初は2020年9月末期限とされていたが、新型コロナ感染拡大に伴い、10月以降に延期される見込み。もともと再検証については、「骨太の方針2019」にて2020年秋頃とされていたが、「骨太の方針2020」ではこの点に触れられておらず、新型コロナ対策が優先されたと言える。なお、再検証の対象となっている医療機関数は昨年9月時点では424施設であったが、その後の精査により約440施設となっている。(参考)具体的対応方針に係る再検証の要請等、診療実績データ分析等の活用について(第24回地域医療構想に関するワーキンググループ)公的病院の再編・統合、スケジュール見直しへ コロナ影響、国への報告期限延期(毎日新聞)4.来年から通年化される病床機能報告制度、今年度の診療実績報告は不要に14日、厚労省は第26回 地域医療構想に関するワーキンググループを持ち回り開催で行った。来年度の病床機能報告では診療実績の報告を通年化することを踏まえ、今年は6月分のレセプト情報による診療実績の報告を不要としている。これは新型コロナウイルス感染症への対応で、病床機能報告対象病院に対する負担軽減を目的とされる。併せて、例年の報告項目の追加、変更についても行わないこととなった。(参考)令和2年度病床機能報告の実施について(第26回地域医療構想に関するワーキンググループ)5.職員感染発生などはコロナ患者受け入れ医療機関と見なす提案、保留に/中医協19日に開催された中央社会保険医療協議会総会で、新型コロナ患者の受け入れがなくても、職員の感染(疑い含む)が発覚した場合には、受け入れ医療機関と同様の取り扱いとすること、緊急事態宣言の発令期間にはすべての医療機関を「新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた医療機関」に該当するものと見なす提案があった。これは新型コロナの影響で受診抑制が続く中、厳しい経営状態に直面している医療機関を支援する側面もあるが、支払い側からは賛成が得られず、会長預かりとなった。厚労省では、2020年度診療報酬改定における経過措置の取り扱いについて議論された。急性期一般入院基本料や7対1入院基本料、看護必要度加算などの算定要件となっている「重症度、医療・看護必要度」について、2020年9月30日までの経過措置期限を、2021年3月31日まで延長することが提案され、了承された。なお、受診控えの傾向が今後も続くことを考慮して、経営支援策については厚労省により検討が着手されたことが報道された。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて(中医協)感染恐れて受診控える傾向 医療機関の経営支援策検討へ 厚労省(NHK)

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新型コロナ、前立腺がん患者でアンドロゲン除去療法が感染を抑制か

 イタリアで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により最も影響を受けた州の1つであるヴェネト州における集団ベースの研究で、アンドロゲン除去療法(ADT)を受けている前立腺がん患者では新型コロナウイルス感染が抑制された可能性が示唆された。イタリア・パドヴァ大学のM. Montopoli氏らが報告した。Annals of Oncology誌2020年8月号に掲載。ADTを受けている前立腺がん患者は新型コロナ感染リスクが有意に低かった 新型コロナウイルスは、ウイルスのスパイク(S)蛋白であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2への結合とTMPRSS2によるS蛋白のプライミングにより細胞に侵入する。そのため、TMPRSS2を阻害すれば、新型コロナウイルス感染を阻害または軽減する可能性がある。一方、TMPRSS2はアンドロゲン制御遺伝子であり、第1世代もしくは第2世代のADTはTMPRSS2レベルを低下させる。そこで著者らは、ADTが前立腺がん患者を新型コロナウイルス感染から保護するという仮説を立てた。本研究では、ヴェネト州の68病院から2020年4月1日時点の新型コロナウイルス陽性者9,280例(男性4,532例)のデータを収集し、性別、入院、ICU入室、死亡、がん診断、前立腺がん診断、ADTのパラメータを用いて検討した。 ADTが前立腺がん患者を新型コロナウイルス感染から保護する、という仮説検証の主な結果は以下のとおり。・男性は女性に比べ、より重症で入院が多く臨床転帰が悪かった。・ヴェネト州の男性の人口(240万人)でSARS-CoV-2陽性率を計算すると、全体で0.2%、がん患者で0.3%であった。・新型コロナウイルス陽性者数は、ADTを受けている前立腺がん患者に対して、受けていなかった患者のオッズ比は4.05(95%CI:1.55~10.59、p=0.0043)で、ADTを受けている前立腺がん患者では新型コロナウイルス感染リスクが有意に低かった。また、他の種類のがん患者のオッズ比は4.86(95%CI:1.88~12.56、p=0.0011)で、より大きな差が見られた。

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偶然おもしろいことに出会える、こんな学会ほかにない

2020年9月25~27日の3日間、第20回日本抗加齢医学会総会がWEB開催(一部会場開催)される。今回は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、初めてのWEB開催となるが、第18、19回総会のプログラム委員長を務め、本大会長としてプログラムの選定に携わった南野 徹氏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科教授)に、本総会をどのように盛り上げていくのか話を聞いた。日本のアンチエイジング、老年・予防医学が主体『抗加齢』という言葉はアンチエイジングと英訳されます。その影響なのか、日本では医学的根拠のない一般向け情報と捉える方が多いようで、この印象を覆すことがわれわれの使命の1つであると考えています。たとえば、本学会の総会が今年で20回目を迎えるにあたり、診療所の医師に患者指導時に活用してもらえるようなステートメントの作成を開始します。これまで、抗加齢医学の分野において高血圧症などのように診療ガイドラインが策定されておらず、研究成果のほとんどが実臨床で活用されていなかった点もアンチエイジングのイメージを印象付けているのかもしれません。この取り組みは世界初ですが、本学会は世界の抗加齢医学の組織と比べ、各分野の枠を越えて医師たちが集い、協力し合える強みが作用しています。海外の場合、大きな美容系集団といくつかの小さな診療科系集団に分かれているため、さまざまな診療科の先生の意見を踏まえた研究を行うことが難しいと言われています。一方、本学会は老年医学と若さを保つ・美を追求する医学の間に位置し、病気や加齢から身体を守る予防医学の概念を持って活動する、世界的にもまれな学会として、この組織力を活かし、抗加齢に関するさまざまな研究を行うことで、成果を発揮しています。Healthy Agingのためのステートメントその成果の1つとして、ガイドラインの前進となるステートメントの作成を行うわけですが、まずは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)の内容が検討されています。本総会の会長特別プログラムとして「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」を開催し、各分野のステートメント進捗状況や今後の方針について発表する予定です。アカデミア×臨床医、内科医×歯科医…が混じり合える学会また、研究内容がとても彩り豊かな本学会の総会の一番の魅力は、面白いことが学べる機会やアイデアを見つけ出すチャンスに出会えることだと自負しています。研究範囲は基礎から臨床まで、その内容は内科領域のみならず、整形外科、皮膚科、歯科領域などと多岐にわたります。一般的な学術集会は専門医や専門領域に従事する医療者を対象として行われるため、診療科に特化した内容に絞って情報提供される傾向があります。それと比べ、つい自分の興味分野にだけ注目してしまう方でも、本総会に参加することで「興味がなかった」「考えてもみなかった」ようなワクワクする新しい関心事に、偶然遭遇するかもしれません。言うならば、新聞で医療面を読むためにページをめくっていた時にテクノロジーの記事に目が留まり、新しい発見に心が弾んだ-そんな感覚でしょうか。プログラムを選定する上では、プログラム委員長の経験を踏まえて工夫を凝らしました。臨床医とアカデミアの双方が楽しめるよう、1日目にはアカデミアの方を対象とした演題を多く盛り込みました。実地医家の方が参加しやすい3日目の日曜日には、実臨床ですぐ実践できる演題を準備しています。3密回避を確保した会場セッティングや3ハイブリッド会議(ライブ配信、オンタイム配信、オンデマンド配信)形式の導入により、これまでにないくらい多くのプログラムが受講しやすくなっています。多分野の医師、薬剤師や看護師などの医療者が垣根を超えて交流を深められるという本学会ならではの総会作りも目指していますので、ぜひ、第20回日本抗加齢医学会総会のWEB聴講へのご参加、浜松町コンベンションホールへのご来場をお待ちしております。

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HIV患者の多剤耐性結核、ART実施で死亡リスク大幅減/Lancet

 抗レトロウイルス治療(ART)とより効果的な抗結核薬の使用が、HIV陽性の多剤耐性結核患者の死亡率の低下と関連していることが、米国・ペンシルベニア大学のGregory P. Bisson氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。HIV感染症が多剤耐性結核治療中の死亡リスクを増大することは知られているが、これまでARTや抗結核薬の使用が同リスクに影響するのかは不明だった。結果を踏まえて著者は、「これらの治療へのアクセスを強く求めるべきだろう」と述べている。Lancet誌2020年8月8日号掲載の報告。1993~2016年に多剤耐性結核で治療受けた患者を解析 研究グループは、1993~2016年にかけて、多剤耐性結核が確定または推定診断され、結核の治療を開始した18歳以上の成人患者個々のデータについてメタ解析を行った。分析したデータには、ART使用データおよびWHOの分類に基づく抗結核薬治療のデータが含まれていた。 主要解析では、多剤耐性結核治療中の死亡についてART実施により層別化し、HIV陽性患者をHIV陰性患者と比較(追跡不能データは除外)。世界銀行による国別の所得分類と薬剤耐性で厳密にマッチングし、年齢や性別、地域、多剤耐性結核治療の開始年、結核治療歴、直接監視下療法、抗酸菌塗抹陽性について傾向スコアマッチング後、ロジスティック回帰法を用いて補正後オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を求めて評価した。2次解析はHIV感染症患者を対象に行われた。HIV陽性・ART使用の死亡オッズ比1.8、同非使用は4.2 多剤耐性結核患者1万1,920例を包含して解析が行われた。うちHIV陽性・ART使用は2,997例(25%)、HIV陽性・ART非使用は886例(7%)。また、広範囲薬剤耐性結核患者は1,749例(15%)だった。 HIV陰性患者を基準とした、HIV陽性・多剤耐性結核患者全体の死亡に関するaORは2.4(95%CI:2.0~2.9)、そのうち、ART使用患者の同aORは1.8(1.5~2.2)、ART非使用または不明患者の同aORは4.2(3.0~5.9)だった。 HIV陽性患者において、WHO分類のグループA治療薬、またはモキシフロキサシン、レボフロキサシン、ベダキリン、リネゾリドの使用は、死亡オッズ比の有意な低下と関連していた。

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日本人COVID-19死亡例、80代と2型糖尿病併存で最多

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、自社診療データベースから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡事例を調査。その結果、2020年2月~5月までの期間の死亡者は110例(男性:77例 、女性:33例)で、年代別では80代が4割超を占めていることが明らかになった。また、併存疾患では2型糖尿病が最も多かった。 主な結果は以下のとおり。・年代別では、90代が17例(15.5%)、80代が48例(43.6%)、70代が33例(30%)、60代が7例(6.4%)、50代が5例(4.5%)だった。100歳以上と40代から下の年齢層はいなかった。・死亡例の中で、併存疾患を有した95例を解析したところ、慢性疾患で最多は2型糖尿病の25例(26%)、その次に高血圧症が22例(23%)、心房細動/心房粗動が9例(9%)と続いた。・また、死亡例の喫煙歴を調べたところ、110例のうち喫煙歴「あり」*は40例、喫煙歴「なし」は41例、喫煙歴「不明」は29例だった。*現在、非喫煙者でも過去に実績があれば「あり」とカウント 今回の調査には、全国の急性期医療を提供する419施設からの診療データベース(実患者数3,257万人、2020年7月末日集計)を用い、その診療データベースのうち402施設の約550万人を対象に、退院日が同年2月1日以降のCOVID-19死亡例を抽出した。なお、厚生労働省が公表した5月31日までの死亡者数は891例だった。

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双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」【下平博士のDIノート】第56回

双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」今回は、抗精神病薬/双極性障害のうつ症状治療薬「ルラシドン塩酸塩(商品名:ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、長期間の治療が必要な統合失調症や双極性障害のうつ症状の患者に対し、忍容性を保ちながら適切な治療効果を維持することが期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月11日より発売されています。<用法・用量>《統合失調症》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回、食後に経口投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は80mgを超えることはできません。《双極性障害におけるうつ症状の改善》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20mgから開始し、1日1回、食後に経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、増量幅は20mgとして、1日量60mgを超えることはできません。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象876例中338例(38.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、アカシジア75例(8.6%)、悪心40例(4.6%)、統合失調症29例(3.3%)、傾眠28例(3.2%)、頭痛、不眠症各25例(2.9%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、遅発性ジスキネジア、高血糖、白血球減少(いずれも1%未満)、悪性症候群、痙攣、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、肺塞栓症、深部静脈血栓症、横紋筋融解症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻覚、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげ、また、双極性障害におけるうつ症状を改善します。2.薬の飲み始めや増量した時期に低血圧が起こることがあります。眠気が出たり、注意力・集中力・反射運動能力が低下したりすることもあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.薬を飲み始めてから、じっとしていられない、興奮が強くなる、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなど、普段と異なる様子がみられた場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.血糖値が上がることがあるので、本剤を服用後に激しい喉の渇きを感じたり、尿の回数や量が増えたりしたら連絡してください。5.動きが遅い、手足の震えやこわばり、呼吸回数の減少、低血圧などが現れたらご相談ください。6.アルコールは薬の効果を強めることがあるので、本剤を服用中は飲酒を控えてください。また、グレープフルーツを含む飲食物によっても、薬の作用が強く現れることがあるので、本剤を服用中は摂取しないよう気を付けてください。<Shimo's eyes>本剤は第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。既存のSDA内服薬としては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、ブロナンセリン(同:ロナセン)、パリペリドン(同:インヴェガ)の4剤があり、本剤が5番目となります。本剤は、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用する一方で、抗ヒスタミン作用や抗コリン作用は少ないと考えられています。そのため、本剤は既存のSDAにはない、統合失調症における幻聴や妄想といった陽性症状、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状の改善のほか、不安や落ち込みといったうつ症状の改善も期待できます。統合失調症患者もしくは双極I型障害うつ患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の忍容性に関して大きな問題は認められませんでした。また、長期投与試験において、統合失調症患者の精神症状に対する効果および双極性障害患者のうつ症状に対する効果は、それぞれ52週にわたり維持されたことが確認されています。2020年5月現在、統合失調症治療薬として、欧米を含む47の国と地域で承認されており、また、双極I型障害のうつ症状治療薬としては米国を含む7つの国と地域で承認されています。海外の最新治療ガイドラインでは、体重増加、糖代謝異常などの代謝系副作用が少ないなどの観点から統合失調症に対して推奨され、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬の1つとして推奨されています。処方時の注意点として、中等度以上の腎機能・肝機能障害のある患者では、投与量の制限があるため、投与量を適宜減量し、慎重に投与することとされています。また、本剤は、1日1回食後に服用することで最高血中濃度が引き上げられ、効果が継続するため、食後投与を厳守する必要があります。なお、本剤と同様に「双極性障害におけるうつ症状」の適応を有するクエチアピンフマル酸塩徐放錠(商品名:ビプレッソ)は就寝前投与なので、服用時点を混同しないように注意しましょう。相互作用としては、CYP3A4の基剤であるため、クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬などのCYP3A4を強く阻害する薬剤や、リファンピシンなどのCYP3A4を強く誘導する薬剤は禁忌です。アルコールやグレープフルーツ含有食品も併用注意になっており、摂取には注意が必要であることを伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ラツーダ錠20mg/ラツーダ錠40mg/ラツーダ錠60mg/ラツーダ錠80mg

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第21回 アフリカはCOVID-19流行をうまく切り盛りしている~集団免疫が可能か?

アフリカ大陸での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数は8月6日に100万人を超えましたが勢いは衰えており、以降13日までの一週間の増加率はその前の週の11%より低い8%でした1)。アフリカの国々は最初のSARS-CoV-2感染が同大陸で確認されてから8月14日までの6ヵ月間に多くの手を打ちました2)。速やかにロックダウンを実行し、診断や治療体制を整え、いまやすべての国で人口1万人あたり100の検査を提供しています。重篤な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に必要となる酸素もより供給できるようになっており、最初は69棟だった酸素プラントは倍近い119棟に増えています。酸素濃縮器も2倍を超える6,000台超を備えます。世界保健機関(WHO)がアフリカのデータを解析したところ2)、最初の感染発見からおよそ2~3週間後の感染急増は生じておらず、ほとんどの国での増加はゆっくりであり、増加の山場ははっきりしていません。どうやらアフリカはCOVID-19流行をいまのところうまく切り盛りしているようです3)。先月7月末のmedRxiv報告4)によると、ケニアの15~64歳の実に20人に1人、数にして160万人がSARS-CoV-2感染指標の抗体を有していると約3,000人の献血検査結果から推定されました。しかしケニアの病院でCOVID-19発症患者は溢れかえってはいません。モザンビークの2都市・ナンプラやペンバでおよそ1万人を調べた調査では、職業によって3~10%がSARS-CoV-2への抗体を有していましたが、診断数はずっと少なく、およそ75万人が住むナンプラでその時点で感染が確定していたのはわずか数百人ほどでした3)。マラウィでの試験でも同様に驚く結果が得られています5)。同国の大都市ブランタイアの無症状の医療従事者500人を調べたところ10人に1人を超える12.3%がSARS-CoV-2への抗体を有していると判断され、その結果や他のデータに基づくと、その時点でのブランタイアでのCOVID-19による死亡数17人は予想の1/8程でしかありませんでした。そのように、アフリカの多くの国の医療は不自由であるにもかかわらずCOVID-19死亡率は他の地域を下回ります。最近の世界のCOVID-19感染者の死亡率は3.7%ですが6)、アフリカでは2.3%(8月16日時点で死亡数は2万5,356人、感染例数は111万53人)7)です。より高齢の人ほどCOVID-19による死亡リスクは高まりますが、アフリカの人々の6割以上は25歳未満と若く、そのことがCOVID-19による死亡が少ないことに寄与しているかもしれないとWHOは言っています1)。それに、COVID-19の重症化と関連する肥満や2型糖尿病等の富裕国に多い持病がアフリカではより稀です。また、風邪を引き起こす他のコロナウイルスにより接していることや、マラリアやその他の感染症に繰り返し曝されていることでSARS-CoV-2を含む新たな病原体と戦える免疫が備わっているのかもしれません3)。ケニア人が重病化し難いことに生来の遺伝的特徴が寄与していると想定している研究者もいます。これからアフリカではギニア、セネガル、ベニン、カメルーン、コンゴ共和国の数千人のSARS-CoV-2抗体を調べる試験が始まります。WHOの指揮の下での国際的な抗体検査にはアフリカの11ヵ国の13の検査拠点が参加しています。抗体は感染しても備わらない場合もありますし、備わっても徐々に失われるとの報告もあるので抗体保有率は真の感染率を恐らく下回るでしょうが、得られたデータはアフリカでの感染の実態の把握を助けるでしょう。もしアフリカで数千万人がすでにSARS-CoV-2に感染しているとするなら、ワクチンに頼らず感染に身を任せて集団免疫を獲得して流行を終わらせることに取り組んでみたらどうかという考えが浮かぶと国境なき医師団の研究/指導部門Epicentre Africaで働く微生物/疫学者Yap Boum氏は言っています3)。経済を停滞させ、長い目で見るとむしろ人々の健康をより害しかねない制約方針よりも集団免疫を目指すほうが良い場合もあるかもしれません。感染数に比して死亡数が明らかに少ないアフリカなら集団免疫の取り組みが許されるかもしれず、真剣に検討してみる必要があるとBoum氏は話しています。参考1)Coronavirus: How fast is it spreading in Africa? /BBC2)Africa marks six months of COVID-19/WHO3)The pandemic appears to have spared Africa so far. Scientists are struggling to explain why/Science 4)Seroprevalence of anti-SARS-CoV-2 IgG antibodies in Kenyan blood donors. medRxiv. July 29, 20205)High SARS-CoV-2 seroprevalence in Health Care Workers but relatively low numbers of deaths in urban Malawi. medRxiv. August 05, 20206)Situation reports, WHO African Region/12 August 20207)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) / Africa Centres for Disease Control and Prevention

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第19回 15分で結果が出る新型コロナ抗原検査キットが保険適応に

<先週の動き>1.15分で結果が出る新型コロナ抗原検査キットが保険適応に2.クラスター解析、典型的なケースを国立感染症研究所が公表3.コロナと闘う病院を支援する超党派議員連盟が、首相官邸に提言を提出4.オンライン診療、新型コロナ感染拡大で特例措置延長/厚労省5.初の国産手術支援ロボット「メディカロイド」が発売開始1.15分で結果が出る新型コロナ抗原検査キットが保険適応に厚生労働省は、8月11日に事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その25)」を公表し、同日に薬事承認された「クイックナビ-COVID19 Ag」(デンカ)が保険適用されたことを明らかにした。同社プレスリリースによると、同キットはラテックス凝集法を原理としたイムノクロマト法を用いて、鼻咽頭ぬぐい液中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原を検出し、約15分で診断する。特別な検査機器を必要としないため、一般の医療機関でも短時間で簡便に検査できる。最大1日10万件分の検査キットが生産される見込みで、希望価格は10回用で6万円となっている。(参考)事務連絡 令和2年8月11日 疑義解釈資料の送付について(その25)(厚労省)新型コロナウイルス抗原迅速診断キットの国内製造販売承認を取得~「クイックナビ-COVID19 Ag」として8月13日から医療機関へ販売開始~(デンカ株式会社)2.クラスター解析、典型的なケースを国立感染症研究所が公表国立感染症研究所の感染症疫学センターは、院内感染クラスターや昼カラオケクラスター、職場会議クラスターなど、新型コロナウイルスの集団感染が発生した典型的なケースを分析した事例集を13日に公表した。院内感染クラスターの事例では、以下の点が指摘されている。処置やリハビリ時の感染対策の不徹底による職員の感染休憩室など換気が悪く、密な場所での感染から別病棟への広がり感染に気付かないまま、施設へ退院、退院先で感染波及対策としては以下が挙げられる。標準予防策、経路別感染、予防策の徹底有症状者の早期探知院内の3密を減らす工夫転院、退院時の情報共有各クラスターの事例により、マスクを着用していない、3密回避ができていないなどの、従来から指摘されていた共通点が明らかとなった。感染研は、「日常生活で3密回避とマスク、手洗いを徹底してほしい」と引き続きの対応を求めている。(参考)クラスター事例集(国立感染症研究所 感染症疫学センター)3.コロナと闘う病院を支援する超党派議員連盟が、首相官邸に提言を提出11日、超党派による国会議員の「コロナと闘う病院を支援する議員連盟」共同代表の自民党・中谷 元元防衛相らが、首相官邸の菅 義偉官房長官を訪ね、新型コロナウイルス感染を受け入れている医療機関の収益悪化を補填するよう国に求める提言を提出した。これには、医療機関の減収補填や病床確保支援、院内感染防止支援、臨時診療報酬改定のほか、介護施設版の持続化給付金の創設などが盛り込まれている。(参考)「コロナと闘う病院を支援する超党派議員連盟」提言(コロナと闘う病院を支援する議員連盟)4.オンライン診療、新型コロナ感染拡大で特例措置延長/厚労省厚労省は、6日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催し、4月から開始した電話やオンラインによる診療に対する初診制限緩和の時限的な特例措置について、当面は引き続き現行通りに継続することを決めた。併せてこの3ヵ月間のオンライン診療について検証が行われた。これによると、6月末時点でオンライン診療に対応する医療機関は1万6,095施設となり、うち初診のオンライン診療に対応する医療機関は6,761施設と徐々に増えていた。ただ、中には特例措置でも処方が制限されている抗精神薬などが処方されていたケースなども認められたため、引き続き医療機関への指導が必要とされた。(参考)第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(厚労省)5.初の国産手術支援ロボット「メディカロイド」が発売開始川崎重工業とシスメックスが折半出資するメディカロイド(神戸市)は11日、国産メーカーとして初めての手術支援ロボット製造販売承認を厚労省から受けたと発表した。承認は7日付。腹腔鏡手術向けで、月内をめどに国内で販売を始める。同社は2013年に設立され、2015年度から医療用ロボットの開発をしてきた。今回承認された手術支援ロボットシステム「hinotori サージカルロボットシステム」は、執刀医が3Dビューアを覗き込みながら、手足で3Dビデオスコープや治療機器を操作するサージョンコックピット、実際の手術を行うオペレーションユニット、映像や音声をコントロールするビジョンユニットの3ユニットから構成される。本システムの名称「hinotori」は、手塚 治虫氏の名著「火の鳥」より採用された。(参考)国産初、手術支援ロボットシステム「hinotori サージカルロボットシステム」が製造販売承認を取得(株式会社メディカロイド)

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第19回 炎上したLINE健康相談の件、広報からのモヤモヤ回答を一挙公開!

新型コロナウイルス感染症パンデミックの結果、日本国内の医療の中でやや前進を見せていることがあるとするならば、オンライン診療の拡大傾向である。4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」では、感染拡大防止の観点から、「非常時対応」と断りながらも電話やオンラインによる診療・服薬指導の活用を促した。これに対応し、厚生労働省(以下、厚労省)の医政局医事課と医薬・生活衛生局総務課は連名で4月10日付の事務連絡を発出し、初診を含むオンライン診療・服薬指導を時限的・特例的に容認している。同事務連絡は感染拡大動向を踏まえて3ヵ月に1度の見直しを行っているが、今のところは継続されている。あくまで時限的・特例的措置だが、今後これをきっかけに診療報酬上のオンライン診療の条件緩和などが進められる可能性は否定できない。このオンライン診療は厚労省が作成した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて行われる。そして同指針ではオンライン診療と似て非なる「遠隔(オンライン)健康医療相談」を定義している。これは、医師がパソコンやスマホなどの通信機器を利用して医学的な助言を行うもの、医師以外が一般的な医学情報の提供や受診勧奨を行い、いずれも相談者個人の状況に応じた具体的な判断を行わないものを指す。ちなみに厚労省指針では「遠隔健康医療相談」について詳細な規定はしていない。ただ、今回のコロナ禍を反映し経済産業省の主導下で「遠隔健康相談事業」が開始され、メドピアの連結子会社Mediplat社、コミュニケーションアプリLINEで有名なLINE株式会社の連結子会社LINEヘルスケアが受託し、8月末まで無料の健康相談を提供している。ところが今月2日、LINEヘルスケアの遠隔健康相談を利用した人が相談対応医師から罵倒されたというチャット内容がTwitter上に投稿され炎上。この結果、同社はこの事例が規約違反の不適切事例に当たるとしてホームページ(HP)に謝罪文を公表した。この件、端的に言うならば、ごく1人のアウトサイダー医師がやったことで終わりになるはずだが、このLINEヘルスケアのHPでの規約、医師募集の要綱などを見ると、いくつかの疑問が浮かんできた。まず、このオンライン健康相談は、対応診療科が内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科の6診療科である。ところがこの募集要項では「これらの科目における専門医資格等は必要ございません」「相談対応可能な診療科は自己申告いただきます」とのこと。たぶん多くの利用者は、対応診療科の専門家から回答が得られると期待しているはずだ。また、利用規約では相談でのやり取りを「コンテンツ」と規定し、再利用の可能性があることを表記している。今回の不適切事例でモニタリングを強化すると同社は謝罪文に記載しているが、それがどのような形で行われるのかが想像しにくい。ということで、4点の質問を送ったところ広報部門であるPR室からは次のような回答が返ってきた。▽今回の遠隔健康相談に関して、医師募集要項では対応診療科の専門医資格などは要らない旨を明記しておりますが、これはどういう理由からそのような規定としたのでしょうか?回答LINEヘルスケア社では、医師免許および本人確認を徹底し、当社所定の基準を満たした医師に参加いただいております。さらに、参加する医師には当社ガイドライン、各種法規制の遵守する事に同意いただいております。LINEヘルスケアの健康相談サービスには医行為は含まれませんが、対応科目については、医師自身が対応可能と判断したものを標榜いただいております。▽相談内容と回答内容を「コンテンツ」として、再頒布を可能としたのはなぜでしょうか?回答利用規約7.4及び7.5については、知的財産その他のプライバシー以外の観点から、弊社が、医師と相談者の間で交わされた健康相談の内容について、本人を識別しうる情報を削除した上で二次利用を行う上で必要な許諾等を得るためのものです。同規定に基づく許諾にかかわらず、医師と相談者間の健康相談の内容については、通信の秘密であり、かつ個人情報にあたることから、個別かつ明示的な同意を相談者から取得した上で利用させていただいており、無制限に弊社が相談内容を利用しうることを予定したものではありません。▽お詫びのページに追記した、「モニタリング」とは具体的にどのように行うのでしょうか?回答厚労省のオンライン診療ガイドラインを基にLINEヘルスケア社独自の医師向けガイドラインを作成しており、24時間365日モニタリングを実施しております。しかしながら、医師と相談者の間のコミュニケーションは、電気通信事業法上の通信の秘密に当たり、また医師法上も医師の守秘義務の対象として、弊社を含む第三者がみだりに内容を閲覧することは制限されております。そのため、弊社では、双方の事前同意の範囲内で、リアルタイムでの監視については自動モニタリングを実施しております。今後は、キーワードの見直しを含むモニタリング体制等の見直しを図り、再発防止策を検討、対応してまいります。▽(健康相談で)「おすすめ医師」として推奨表示される医師は、科目×回答数の多さのようですが、回答が多い医師は専門性が高いとはいえますか?回答おすすめ医師のレコメンドのロジックについては、公表していないため、お応え出来かねます。個人的な感想を言うと、どの回答もすっきりと腹落ちはしない。ちょうどこの件については私も発起メンバーの一人でもある「医薬品産業イノベーション研究会」で8月5日に緊急オンライン講演会を開催した。演者はこれまで複数の医療者向けあるいは患者向けの医療情報サイトに携わった編集者の田中 智貴氏(元QLife編集長)だ。今回の問題の根底について田中氏は「LINEヘルスケアではB to Cのサービスとして考えているのに対し、相談者側はD(Doctor) to P(Patient)と考え、双方の期待値に差異があった」と指摘する。いわゆる診断のような医学的判断を伴うオンライン診療、オンライン受診勧奨をメディカル領域、今回のLINEヘルスケアによる健康相談をヘルスケア領域と分類した場合、田中氏は「へルスケア領域はメディカルと同等の権威付けをしたがる」との見解示す。具体的に言うと、たとえば健康食品の宣伝で「○○学会で効果に関して発表」のようなもの。今回の件で言うと、オンラインの健康相談は医師でなくとも可能だが、それを医師がやることを強調する点だ。実際、LINEヘルスケアのHPでは今回のサービスについて「さまざまな不安に医師が直接お答えします」と銘打っている。ただ、そのHPをスクロールして最後になるとようやく注意事項として「本サービスは医師による健康相談のサービスです。症状の診断や治療といった判断を医師に求めることはできません」と表記してある。結果として、この辺はサービス利用者自身の不注意・誤解も含め、期待値の齟齬を起こしてしまう可能性があるということだ。また、田中氏は前述のような回答診療科医師をあくまで自己申告制で募集している背景には、昨年12月のサービススタート以降、LINEヘルスケア公式アカウントの友だち数や相談件数の急増により、回答医師を急募して今回のような利用者に暴言を吐くような医師まで参加する質の低下を招いているのではないかと分析。さらに今回の健康相談サービス全般を見た印象としてIT系のB to C企業によくみられる、ベーシックな機能を備えた段階でとりあえずサービスをスタートさせ、その後、要所要所でユーザーの反応などを見ながら改修していくアジャイル的手法が見受けられると指摘。「医療に関しては軽微でもトラブルがあってはならない」と述べて、そもそもIT系企業お得意の手法がこの領域では馴染まないとの認識を示した。こうした田中氏の指摘、LINEヘルスケアのアカウントを友だち追加後に中を見て発見した疑問点、第一弾の問い合わせの回答に対する疑問点などを含め、再度LINEのPR室に質問を送付し、回答を受け取った。▽前回の回答で登場する厚労省のオンライン診療ガイドラインを参考にした医師向けの自社のガイドラインは、厚労省ガイドラインとどのような違いがあるのでしょうか?回答医師向けのガイドラインは一般向けに公表しておりませんので、お応えしかねます。▽健康相談の回答医師の「資格」の欄には学会しか明記されておらず、単に学会員としての登録なのか、専門医・指導医なのか、会員資格などが更新されているかどうかのチェックは御社では行われているのでしょうか?回答一部ユーザーの方に誤解を招く可能性も勘案し、ご指摘の箇所についての対応の見直しを検討いたします。▽相談可能な診療科が自己申告であり、かつ一般的な医師の専門診療科数が1~2科である中で、御社サービスのおすすめ医師として表示された32人中20人が6診療科対応となっており、御社がコンテンツと定義する医師側の相談対応内容のクオリティコントロールが適正とは言えないかと思います。回答本サービスにて健康相談を実施するのは医師であり、医師自らの責任で相談がなされるサービスです。他方、クオリティコントロールをプラットフォーム提供事業者としてどのようにしていくのかという点については検討のうえ、対応していければと思います。▽サービス利用者は各診療科の専門医に相談ができるとの期待値を持って相談しているケースは少なくないと思われます。結果として「錯覚商法」のようになっていますが、この点について御社ではどのようにお考えでしょうか?回答遠隔健康相談は、個別具体的な症状に対する診断を下すものでなく、医学的知見を用いて医師が一般的な助言をするにとどまるものであり、LINEヘルスケアとしては特段専門医とつながるサービスを標榜してはおりません。専門分野の標榜の箇所もあるので、診療科の標榜が必ずしもユーザーの誤解を招くものではないと認識しております。▽登録医師の中には医療法上広告が認められていない診療科を標榜したり、自由診療を行っている旨の記載など自院誘導ともとられかねないプロフィール表記も認められます。また、登録を禁止している海外勤務医も存在します。法令や規約に基づくチェック体制が不十分と思われますが、この点についてのご見解をお聞かせください。また、現状このチェック体制がどのようになっているかも合わせてご回答お願い致します。回答LINEヘルスケアにおける医師の表記については、医療広告ガイドラインの適用は受けないと判断しております。しかしながら、ご指摘の「自院誘導ととらえられかねないプロフィール表記」については、場合によっては同ガイドラインの適用を受けることはあるものと存じます。もっとも、このような表記は、利用規約において禁止される行為となっています。現在のプロフィールチェック体制につきましては、回答を控えさせていただきます。ただし、今後は、ユーザーの皆さまに誤解を招く可能性があることを勘案し、ご指摘いただいている内容の見直しは検討してまいります。▽今回の不適切事例は相談内容が対応診療科ではない精神科のものでしたが、これまでのモニタリングではこのようなものの検出は不可能だったのでしょうか? また、キーワードによるモニタリングを行っているようですが、モニタリングキーワードは何件くらい設定しているのでしょうか? 今後の強化でこの件数はどのくらい増加する見込みでしょうか?回答モニタリング体制については、先日ご回答をさせていただきました内容以上の開示をしておりません。今後の見直しにつきましても、詳細が確定しましたらご案内とさせていただきます。▽他の医療相談サービスでは規約に含まれていない「コンテンツ」を定義した目的を教えてください。また、コンテンツの再頒布はどのような事例を念頭に置いてのことかを具体例をお教えください。回答おそらく指摘いただいているものと思われる規定は、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の取扱いに係るものであり、一般的な規定と考えます。現に、他社の同種サービスの規約にもUGCの取扱に係る規定があることはご指摘を受けて確認しておりますので、貴社にて改めてご確認ください。なお、繰り返しになりますが、コンテンツの利用に係る規定は、ご指摘の規定以外にもプライバシーポリシー等に従う必要があり、弊社がコンテンツを自由に扱うことを目的としたものとはならないため、ご留意ください。*注:LINEのPR室によるとUGCのユーザーに医師は該当していないとのこと▽「令和2年度補正遠隔健康相談体制強化事業」として税金補助を受けており、「オンライン遠隔健康相談サービス」において、主導的な役割を果たす立場でありながら、「回答は一般的なアドバイスであること」や「診断・治療行為ではないこと」を発見性が低い、ページ下部に表記することなど、消費者の有利誤認を誘うようなサービスデザインを行っていることについて、企業姿勢としてどのようにお考えでしょうか?回答本件につきましては、利用いただく際に誤認が生じないよう、利用開始時冒頭に注意事項の情報が必ず表示されるようになっております。残念ながら個人的なもやもや感はこの2回目の回答を受けても解消されてはいない。結局、最終的には遠隔(オンライン)健康相談そのものについても厚労省による指針作成が必要になるということだろうか?

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。コロナ禍の診断遅延によるがんの5年間の追加死亡は3,291~3,621例 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。 コロナ禍の診断遅延による診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡を算出した主な結果は以下のとおり。・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。・同様に、診断後5年時までの大腸がん死は15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がん死は4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がん死は5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

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新型コロナ、無症状者のウイルス排出量と臨床経過

 無症状の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の臨床経過とウイルス量に関する情報は少ない。今回、韓国・天安の地域治療センターに隔離されたSARS-CoV-2感染者のコホート研究で、感染者のウイルス排出を定量的に調べたところ、多くの感染者が長期間無症状で、無症状者のウイルス量は有症状者と同等であることが示唆された。報告した韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのSeungjae Lee氏らは、この結果から「SARS-CoV-2の蔓延を防ぐために、無症状感染者の隔離が必要」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年8月6日号に掲載。新型コロナの無症状患者の下気道検体でのウイルス量は有症状患者よりもゆっくり減少 本研究は、2020年3月6日~26日にSARS-CoV-2感染が認められ、韓国・天安の地域治療センターで隔離された無症状または有症状の303例を対象とした後ろ向き研究である。著者らは、人口統計学的特性、併存症、症状に関するデータとSARS-CoV-2の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果を収集し分析した。隔離の終了については、上気道検体(鼻咽頭および中咽頭スワブ)と下気道検体(喀痰)のRT-PCR検査の結果に基づき、隔離から8、9、15、16日目に決定した。医師の裁量で10、17、18、19日目に上気道または下気道検体のRT-PCR検査を行った。RT-PCR検査におけるCycle threshold(Ct)値を無症状患者と有症状患者の両方で測定した。 無症状または有症状の新型コロナ感染者のウイルス排出を定量的に調べた主な結果は以下のとおり。 ・SARS-CoV-2感染者303例のうち、年齢中央値(四分位範囲)は25(22~36)歳、女性が201例(66.3%)であった。・併存症を有する感染者は12例(3.9%)で、高血圧10例、がん1例、喘息1例であった。・SARS-CoV-2感染者303例のうち193例(63.7%)は隔離時に症状があった。・無症状患者110例(36.3%)のうち21例(19.1%)が隔離中に症状が出現した。これらの患者におけるSARS-CoV-2検出から発症までの期間の中央値(四分位範囲)は15(13~20)日であった。・診断から14日目と21日目に陰性になった感染者の割合は、無症状患者ではそれぞれ33.7%と75.2%、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)ではそれぞれ29.6%と69.9%であった。・診断から最初に陰性となるまでの中央値(SE)は、無症状患者で17(1.07)日、有症状患者で19.5(0.63)日であった(p=0.07)。・下気道検体のエンベロープ(env)遺伝子のCt値から、無症状患者における診断から退院までのウイルス量は、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)よりもゆっくり減少する傾向があることが示された(β=-0.065[SE:0.023]、p=0.005)。

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妊娠初期のジカウイルス感染で児の脳・眼の異常が増加/NEJM

 コロンビアでは、2015~16年にジカウイルス感染症(ZVD)のアウトブレイクが発生した。コロンビア・Instituto Nacional de SaludのMartha L. Ospina氏らは、同国内のサーベイランスシステムのデータを用い、ZVDのアウトブレイクが妊娠アウトカムに与えた影響について分析し、乳児/胎児の脳・眼障害有病率はアウトブレイク期間中のほうがアウトブレイク直前や発生後より高く、ジカウイルスRNA検査で陽性が確認された妊婦における乳児/胎児の脳・眼障害有病率は妊娠初期のZVD発症で増加したことを報告した。NEJM誌2020年8月6日号掲載の報告。ジカウイルス感染症を発症した妊婦約1万8,000例について調査 研究グループは、2015年6月~2016年7月に報告された、ZVDの臨床症状を有する妊婦に関する全国的なサーベイランスデータを収集した。これら妊婦のサブグループでは、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(rRT-PCR)によるジカウイルスRNA検査が行われた。 検査でジカウイルスRNAが確認され、妊娠アウトカムに関するデータを入手できた妊婦について、乳児/胎児における脳または眼の異常と他の有害な妊娠アウトカムについて検討した。 また、アウトブレイク中の2015年9月~2017年4月における全国的な乳児/胎児の脳・眼障害有病率を、アウトブレイク期間前後(2014年および2018年)の有病率と比較した。 調査期間にZVDを発症した妊婦は1万8,117例で、このうち8,215例がrRT-PCR検査を受け、5,926例(33%)がジカウイルス陽性であった。乳児/胎児の脳・眼障害を2%に認め、妊娠初期の感染で高率 ジカウイルス陽性が確認され、ZVD発症時の妊娠期間や妊娠転帰が報告された5,673例において、乳児/胎児93例(2%)に脳・眼障害が認められ、生児は75例であった。脳・眼障害の発生率は、ZVDを妊娠第1期で発症した妊婦のほうが、第2期または第3期に発症した妊婦よりも高かった(3% vs.1%)。 妊婦5,673例中172例(3%)が妊娠喪失に至った。先天異常が認められた妊娠を除外した5,426例では、409例(8%)が早産、333例(6%)が低出生体重であった。 全国における脳・眼障害有病率(妊娠中のZVDの有無を問わない)は、アウトブレイク期間中が13例/出生1万人であったのに対し、アウトブレイク前は8例/出生1万人、アウトブレイク後は11例/出生1万人であった。

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第19回 医療倫理なおざりに?政治主導の「大阪発ワクチン」開発は「人体実験」との批判

新型コロナウイルス対策を巡り、その決断力と実行力がたびたび称賛されてきた吉村 洋文・大阪府知事だが、ここに来て迷走気味である。先日、ヨウ素系うがい薬の推奨で品薄状態を招いたのは記憶に新しいが、6月に発表したワクチン開発を巡り、臨床試験を医療従事者対象に実施すると発言。医療従事者からは「人権侵害」「人体実験」との批判の声が相次いだのだ。吉村知事は8月4日の記者会見で、「うがい薬でうがいをすると、新型コロナの陽性者が減っていくのではないかという研究結果が出た」と述べ、20日までを強化月間として、ポビドンヨード液を使ってうがいするように呼び掛けた。会見の直後から、各地の店舗で当該製品の売り切れが続出し、ネットでは高額転売も見られた。これに対し、日本医師会の中川 俊男会長は「エビデンスとして十分ではない」と批判。大阪府保険医協会は「ポビドンヨードを使い過ぎると、かえって甲状腺機能を低下させる。感染予防には水うがいのほうが優れている」と懸念を示した。また、大阪府・市や大阪大、医療ベンチャー企業などが連携して開発を進めている「大阪発ワクチン」を巡っては、6月17日の記者会見で「今月末に大阪市立大学医学部附属病院の医療従事者に、まずは20~30例に投与予定」と話した。知事だけではない。その前日、16日には松井 一郎・大阪市長も同様の発言をしている。18日には、ワクチン開発に携わる森下 竜一・大阪大学寄附講座教授が日本抗加齢医学会のWEBメディアセミナーで、「秋に大阪大学医学部附属病院でも医療従事者を対象とした400人規模の臨床試験を実施する予定」と述べた。これに対し、医療従事者からは「病院の職員に検査を強制する人権侵害ではないか」といった批判や、「人体実験にならないか」との指摘が出ている。大阪府保険医協会は7月25日、吉村知事らの発言に対し声明を発表。最も問題視したのは「知事および市長が治験開始を発表した6月16、17日には、まだ大阪市立大学の審査委員会は開かれていなかった」ことだ。治験は、医薬品医療機器総合機構が調査を行った上で、実施医療機関の審査委員会による審査・承認を経なければスタートできない。専門家が誰からの干渉も受けず、効果と安全性を客観的、科学的に検証する必要がある。にもかかわらず、「治験を行う大阪市立大学の審査の1週間も前に知事や市長が公表したことは、厳正であるべき医薬品審査の手続きを完全に無視する非常に危険な行為である」と同協会は指摘。さらに、市大に予算や人事で大きな影響力を持つ知事や市長が先んじて公表することにより、「審査側が治験を認める方向に進むのは避けられず、本来指摘されるべき危険性が見逃されてしまう可能性もある」と懸念している。政治主導で推し進められている感のある「大阪発ワクチン」の開発。ワクチン自体、実現すれば大きな希望になることは間違いないが、あくまで政治家である吉村・松井両氏の胸の内にあるのは医療倫理よりも功名心なのではなかろうか。

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COVID-19罹患の精神疾患患者に対する推奨治療

 精神疾患患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のマネジメントでは、とくに薬物相互作用に関して、いくつかの課題がある。スペイン・バルセロナ大学のG. Anmella氏らは、COVID-19に罹患した精神疾患患者に関する代表的な3つのケースと、既知の文献およびコンサルテーション・リエゾン精神科の専門家チームの臨床経験に基づいた実践的なアプローチの報告を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年9月1日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ロピナビル・リトナビル治療を受けている患者の場合には、継続中の精神薬理学的治療が優先されるべきであり、多くの薬剤においてその投与量は25~50%減量すべきである。例外として、クエチアピン、アセナピン、オランザピン、セルトラリン、ラモトリギン、bupropion、メサドンなどが挙げられる。・精神薬理学的治療の通常の投与量が低~中程度の範囲にある場合には、COVID-19治療薬併用中の用量変更は推奨されない。ただし、必要に応じてECG、副作用および薬物レベルの臨床モニタリングのみ推奨される。・精神薬理学的治療を開始する場合には、心毒性の相互作用の有無をECGでモニタリングしながら漸増しなければならない。(A)興奮性せん妄に対しては、第1選択の抗精神病薬としてオランザピンが推奨され、クエチアピンは避けるべきである。(B)重度の精神疾患に対しては、基本的な治療を維持する必要がある。(C)抑うつ/不安症状を有する重度でない精神疾患に対しては、心理的サポートを実施し、症状を特定したうえで治療を行う必要がある。 著者らは「薬理学的相互作用に関する推奨事項は、限られた定性的なアプローチのみを提供している」としながらも、「COVID-19に罹患した精神疾患患者は、いくつかの臨床基準を考慮し個別にマネジメントするべきであり、COVID-19治療の対象から除外すべきではない。薬理学的相互作用のリスクは絶対的ではなく、状況に応じて対応する必要がある。ほとんどの精神薬理学的治療では、QTc間隔にとくに注意し、ECGを検討すべきである」としている。

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COVID-19に有効な薬剤は?RCT23報のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者への薬物治療の有効性について比較検討したところ、グルココルチコイド投与は標準治療と比べて、死亡率および人工呼吸器リスクを減少する可能性が示されたという。カナダ・マックマスター大学のReed A. C. Siemieniuk氏らが、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19試験結果データベースを基に、システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行い明らかにした。なお、有症状期間を短縮する可能性がある薬物治療として、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、ロピナビル・リトナビルが挙げられたが、著者は、「ほとんどの試験が小規模でエビデンスの質は低く、治療薬の有効性については確定できないままだ」と述べている。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。7月20日時点でのシステマティック・レビュー 研究グループは2020年7月20日時点で、電子データベース25件と中国のデータベース6件を含む、CDCのCOVID-19試験結果データベースを基に、システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。COVID-19の疑いや可能性が高い患者、また確定診断を受けた患者を対象に、薬物治療と標準治療、またはプラセボ投与を比べた無作為化比較試験を抽出した。 2人組のレビュアーによってデータが抽出。重複データを削除後、ベイズ変量効果ネットワークメタ解析を行った。各試験のバイアスリスクは改訂版コクラン・バイアスリスク2.0ツールを用い、エビデンスの質(確実性)は、GRADEシステムでそれぞれ評価した。グルココルチコイドは標準治療と比べて死亡を37/1,000人減 2020年6月26日までに行われた23件の無作為化比較試験を包含しメタ解析が行われた。試験が盲検化されていないというバイアスリスクのために、ほとんどの治療薬の比較に関するエビデンスの確実性は非常に低かった。 その中で唯一、グルココルチコイドによる治療は標準治療に比べ、死亡および人工呼吸器リスクを減少することに関してエビデンスが得られた。死亡リスクの群間差は37/1,000人(95%信頼区間[CI]:63~11/1,000人)、人工呼吸器リスクは同31/1,000人(47~9/1,000人)だった(いずれも中等度の確実性)。これらの予測値は、直接的エビデンスに基づくもので、ネットワーク・エビデンスでは異質性により同予測値の正確性は低下した。 また、有症状期間を短縮する可能性があった治療薬(標準治療との比較において)は、ヒドロキシクロロキン(平均群間差:-4.5日、低度の確実性)、レムデシビル(-2.6日、中等度の確実性)、ロピナビル・リトナビル(-1.2日、低度の確実性)だった。 ヒドロキシクロロキンはその他の薬物治療と比べ、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。レムデシビルは、おそらく投与を中断するに至る有害事象リスクは、実質的に増大しないと考えられることが示された。その他については、投与の中断に結びつく有害事象について解釈するだけの十分な患者が試験に組み込まれていなかった。

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第19回 医師の質・能力、実はどうでもいい? LINEヘルスケア事件の先にある世界

「ガキンチョ」「死ぬのが正解」などと応じる こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。やっと関東に夏本番がやって来ました。またしても愛知の実家から「しばらく帰ってこんでええ!」と言われたので、この週末、帰省は止めにして懸案の越後駒ヶ岳に山仲間と行ってきました。自粛期間中にもかかわらず、ピーク直下の駒の小屋の狭いテントサイトはほぼ満床で、密を避けるのに苦労しました。さて、今週気になったのは、IT企業、LINE(ライン)傘下のLINEヘルスケアが展開する、医師にLINEで相談できるサービス「LINEヘルスケア」で、相談を担当した医師がユーザーに対して不適切な対応をし、その内容がSNSで拡散、炎上したというニュースです。医師はユーザーからの相談に、「リスカやOD(オーバー・ドーズ)で発散するのは低レベル」「診断なんかいくらでも付けられますよ。よくいる世間知らずの10代の女の子」「言葉にできないやつはガキンチョ」「深く考えすぎると結論としては、死ぬのが正解となりますし、たぶん正解なんでしょう」などと回答。この一連のやりとりのスクリーンショットが流出し、“事件”になってしまいました。8月2日、同社はこの事態を受けて「LINEヘルスケアに登録している医師1名において、お客様に対して、利用規約違反の行為が確認されました」とした上で、この医師を利用停止処分としたことを発表。「お客様のお心を傷つけ、多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。同社はモニタリング体制を強化することで再発防止策を徹底していく、としています。LINEのトーク画面で医師に直接相談できる「LINEヘルスケア」は、LINEと医療情報専門サイト「m3.com」のエムスリーによる合弁会社であるLINEヘルスケアが運営する、LINE上で利用できるオンラインの健康相談サービスです。内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科に対応しており、利用者は相談内容や診療科から医師を選んだ上で、「いますぐ相談する」か、「あとから回答をもらう」か相談方法を選択、体の不調などについてLINEのトーク画面で医師に直接相談する、という仕組みです。「いますぐ相談する」の利用料金は2000円、「あとから回答をもらう」の1000円です。昨年12月からサービスをスタートしていますが、経済産業省の「令和2年度補正遠隔健康相談事業体制強化事業」(上限1億円/件)に採択されており、2020年8月31日までは無料となっています。「遠隔健康医療相談」がカテゴライズされたのは2年前このニュース、対応した医師の”暴言”に目が向きがちですが、こうした人間はどんなプロフェッションでも一定数はいるものです。ここでは、もう一つの側面である「医師による医療相談」について少し考えてみたいと思います。そもそも、医師などが健康相談に乗る、というサービスは、カード会社や生命保険会社などの付帯サービスとして従来から行われてきました。ただ、国がこうしたサービスをきちんとカテゴライズしたのはつい最近のことです。2018年度の診療報酬改定でオンライン診療に対する評価が新設されました。これを受け厚生労働省は同年3月、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、ガイドライン)を公表しました。その中で情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為を「遠隔医療」と定義し、さらに「オンライン診療」「オンライン受診勧奨」「遠隔健康医療相談」の3つに区分したのです。本ガイドラインでは「遠隔健康医療相談」について、医師が行うものと、医師以外が行うものに分けて次のように定義しています。・遠隔健康医療相談(医師)遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。・遠隔健康医療相談(医師以外)遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。つまり、「遠隔健康医療相談」とは、医師など(必ずしも医師限定ではない)が遠隔地(その場にいない)の患者に対して医療・健康に関連する相談を行うもので、医療行為(診察や治療)は伴わず、相談行為だけを行うもの、という位置づけなのです。というわけで、LINEヘルスケアの事業は「遠隔健康医療相談(医師)」にあたります。ちなみに、医師法第20条は「医師は自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付」することを禁止していますが、「遠隔健康医療相談(医師)」の定義(医学的助言にとどめ、相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は行わない)に則った運用を守れば、医師法には抵触しないことになります。LINEで“自費診療”を受けさせてみる大実験さて、LINEヘルスケアが、従来のカード会社などが提供する限定的な特別サービスと一線を画するのは、LINEという8,400万人(2020年4月現在)のユーザー数を持つソーシャルメディアの世界での事業展開という点です。さらに、前述したように、新型コロナウイルス感染症の流行で患者の医療機関の受診控えが進む中、国民がスマートフォンやパソコンを通じて医師に手軽に相談できるよう経済産業省がスタートさせた事業に採択(同社は3月にこの事業を受託、一度途切れた後、再び5月から8月まで受託しています)された点も注目に値します。国(厚生労働省ではなく経済産業省ですが)のお墨付きをもらった事業という見方もできるからです。そう考えるとこの事業、極端なことを言ってしまえば、コロナ禍で医療機関に行きづらくなった国民のうち、軽症者や自然に治るような病気の人についてLINEで“自費診療”を受けさせてみる大実験…と解釈することもできそうです。もちろん、サービス提供者側は「医学的助言にとどめ、相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は行わない」ことで、医療行為ではないという厳格な線引きを守っているとは思いますが、ユーザー側から見れば、医療機関の代替機能であることは間違いありません。政府は国民に、軽度の病気や怪我の患者にOTCを用いたセルフメディケーションを勧めています。背景には医療リソースの効率的利用と医療費削減があります。同様のことは「遠隔健康医療相談」にも言えるでしょう。受診前の相談の段階で、患者(や健常者)が無駄な受診を思い留まったとしたら、国や保険者は大喜びでしょう。一部の医療機関は困るかもしれませんが…。「遠隔健康医療相談」はAIに取って代わられる仮に大実験だとしたら、この事件後ネット上でも話題となった、登録医師のクオリティや、医師の取り分が安価過ぎる(いますぐ相談/予約相談で1件あたり30分1,400円、あとから回答で1件あたり700円らしいです)ことなどは、あまり大きな問題ではなくなります。なぜならば、「遠隔健康医療相談」はやがてAIに取って代わられるに違いないからです。私はAIについては詳しくありませんが、軽症疾患やコモンディジーズを患者の訴えなどから推察し、療養のアドバイスや受診勧奨をすることは、学習を積んだAIにとっては容易いことのように思えます。ここからは全くの想像です。ひょっとしたらLINEヘルスケアは、法律と規制が許せば「遠隔健康医療相談」をAIに任せようとしているのではないでしょうか(表向きは絶対に言えないとは思いますが)。AIならば相談業務を無難にこなすのはもちろん、「ガキンチョ」とか「死ぬのが正解」と言ったセリフを吐くこともおそらくありません。顧客対応も万全で、「寄り添い、共に考える医師」のフリもしてくれるでしょう。さらに、運営企業の医師への支払いも必要なくなります。もし、利用者が増えていけば、医療財政的にもそれなりの効果が期待できるでしょう。うまく運営すれば、医療機関以外にはいいことづくしです。もっとも、法律と規制を乗り越えるのはなかなか大変です。オンライン診療の規制緩和に対して、一貫して慎重姿勢をとってきた日本医師会の存在もあります。新型コロナ感染症で「オンライン診療」が進みましたが、ポストコロナの時代の“新しい生活様式”におけるダークホースとして、「遠隔健康医療相談」の行方にも、目を配っておいたほうがいかもしれません。

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COVID-19、小児は軽症でもウイルス量が成人の10~100倍

 子供がCOVID-19に罹患した場合、一般的には成人に比べて比較的軽度の症状を示す。米国・イリノイ州シカゴAnn & Robert H. Lurie Children's HospitalのTaylor Heald-Sargent氏らが、軽~中等症のCOVID-19患者におけるウイルス量を年齢との相関で調べたところ、5歳未満の小児では症状が軽くてもウイルス保有量が多く、とくに上気道から検出されたSARS-CoV-2は成人の10~100倍にも相当することがわかった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2020年7月30日号のリサーチレターに掲載。 本研究では、2020年3月23日~4月27日の期間、シカゴの3次医療機関においてCOVID-19の症状発症から1週間以内の入院および外来、救急部門、ドライブスルーで収集された145例の鼻咽頭スワブから検体を採取し、PCR検査を実施。cycle threshold(Ct)値を記録し、SARS-CoV-2 RNAウイルス量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者はいずれも軽~中等症で、5歳未満が46例、5~17歳が51例、18~65歳が48例。いずれも発症から1週間以内に検体を採取した。・5~17歳のグループのCt値は、18~65歳のグループとほぼ同等であった(中央値[四分位範囲]:11.1[6.3~15.7] vs. 11.1[6.9~17.5])。・一方、5歳未満のグループのCt値は有意に低かった(同:6.5[4.8~12.0])。・5歳未満の小児とその他2つのグループのCt値の差異により、小児においては、とくに上気道のSARS-CoV-2が約10~100倍多いことが示唆される。 著者らは、本研究で明らかになったのはあくまで小児における高いウイルス核酸の検出量であると断っているが、これまでのSARS-CoV-2の研究では、より高い核酸レベルと感染力のあるウイルスの培養能力との相関が報告されている。このため著者らは、公衆衛生対策を進めるうえで小児の感染および拡散リスクを理解することが重要であると述べている。

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