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死亡例の約2割がCOVID-19、アフリカ・ザンビアの首都調査/BMJ

 アフリカでは、南アフリカ共和国を除き、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染範囲や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響についてほとんど知られていない。米国・ボストン大学公衆衛生大学院のLawrence Mwananyanda氏らは、ザンビア共和国のルサカ市でCOVID-19の死亡への影響についてサーベイランス研究を行った。その結果、予想に反して、同市の約3.5ヵ月間の死者の約2割がCOVID-19で、COVID-19が確認された死亡例の年齢中央値は48歳、66%が20~59歳であることなどが明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年2月17日号に掲載された。アフリカは、COVID-19のデータがないため、COVID-19はアフリカを飛び越えて伝播し、影響はほとんどないとの言説が広く醸成されている。これは、「エビデンスはない」が、「非存在のエビデンス」として広範な誤解を招く好例とも考えられている。アフリカの都市部での系統的死後サーベイランス研究 研究グループは、アフリカの都市部におけるCOVID-19の死亡への影響を直接的に評価する目的で、プロスペクティブな系統的死後サーベイランス研究を行った(Bill & Melinda Gates財団の助成による)。 対象は、ザンビアで最大規模の3次病院であるルサカ市のUniversity Teaching Hospital(UTH、他施設からの紹介を含め市の80%以上の死亡を登録)の死体安置所で、死後48時間以内に登録された全年齢層の死亡例であった。 死後の鼻咽頭拭い液を用いて、定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でSARS-CoV-2の検査を行った。死亡例は、COVID-19の状況、死亡場所(施設[UTH] vs.市中[UTH以外でのすべての死亡で、他施設からUTHへの紹介を含む])、年齢、性別、リスク因子としての基礎疾患で層別化された。 2020年6月15日~9月30日の期間に死亡した372例が試験に登録された。PCR検査の結果は364例(97.8%)で得られ、施設が96例(26.4%)、市中が268例(73.6%)であった。患者がまれではなく、検査が少ないから過少報告に SARS-CoV-2は、PCR法の推奨サイクル閾値(CT値)である<40サイクルによる測定では15.9%(58/364例)で検出された。CT値を40~45サイクルに拡張すると、さらに12例でSARS-CoV-2が同定され、死亡例の陽性率は19.2%(70/364例)となった。このうち69%(48/70例)が男性だった。 SARS-CoV-2陽性死亡例の死亡時年齢中央値は48歳(IQR:36~72)で、このうち市中死の患者は47歳(34~72)、施設死の患者は55歳(38~73)だった。COVID-19が確認された死亡例の割合は年齢が高くなるに従って上昇したが、76%(53例)は60歳未満であり、このうち46例(66%)は20~59歳だった。 COVID-19が確認された死亡例の多くは市中死(73%[51/70例])であり、このうち死亡前にSARS-CoV-2の検査を受けた患者はいなかった。施設死(27%[19/70例])では、死亡前にSARS-CoV-2検査を受けていたのは6例のみだった。 COVID-19が確認された死亡例の症状に関するデータは70例中52例で得られ、このうち44例(63%)でCOVID-19に典型的な症状(咳、発熱、息切れ)が認められたが、死亡前にSARS-CoV-2検査を受けていたのは5例のみだった。 19歳未満では、7例(10%)でCOVID-19が確認され、このうち死亡前に検査を受けたのは1例のみであった。年齢別の内訳は、1歳未満が3例で、3歳、13歳、16歳が1例ずつ(いずれも市中死)であり、1歳の1例のみが施設死だった。 COVID-19死亡例で最も頻度の高い合併症は、結核(22例[31%])、高血圧(19例[27%])、HIV/AIDS(16例[23%])、アルコール乱用(12例[17%])、糖尿病(9例[13%])であった。 著者は、「COVID-19が確認された死亡例のほとんどは、検査能力のない市中死であったが、施設死であっても、COVID-19の典型的な症状を呈しているにもかかわらず、死亡前に検査を受けた患者はほとんどいなかった。したがって、COVID-19患者がまれだったためではなく、検査がまれにしか行われなかったことが原因で、COVID-19の報告が過少であったと考えられる」とまとめ、「これらのデータが一般化可能であるとすると、アフリカにおけるCOVID-19の影響はかなり過小評価されていることになる」と指摘している。

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化膿性汗腺炎〔HS:Hidradenitis suppurativa〕

1 疾患概要■ 定義化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa:HS)は臀部、腋窩、外陰部、乳房下部などに有痛性の皮下結節、穿掘性の皮下瘻孔、瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で難治性疾患である。アポクリン腺が豊富に存在する部位に好発する。Acne inversa (反転型ざ瘡)とも呼ばれている。集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とともに毛包閉塞性疾患の1型と考えられている。従来からの臀部慢性膿皮症は化膿性汗腺炎に含まれる。■ 疫学発症頻度は報告者によってさまざまであるが、欧米では0.1~4%で平均約1%程度と考えられている。わが国では大規模調査が行われていないので、明らかではないが、日本皮膚科学会研修施設を対象とした調査で100例1)、300例2)の報告がある。性差については欧米からの報告では男女比が1:3で女性に多く3)、わが国では男女比が3:1で男性に多い1,2)。好発年齢は20~30歳代に発症し、平均年齢は海外で36.8歳、わが国では40.1歳である1)。発症から正しい診断に至るまでの罹病期間は約7年である1,2)。好発部位は臀部、外陰部、腋窩に多い。男性では肛囲、臀部に多く、女性では腋窩、外陰部に多い1,2)。■ 病因明らかな病因は不明であるが、遺伝、毛包の閉塞、嚢腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である。遺伝的因子について、海外では家族性の場合が多く、約30~40%に家族歴があるが3,4)、わが国では2~3%と海外に比べて、非常に低い1,2,4)。家族性HSの場合、γ-セクレターゼの欠損が関連していると考えられている3,4)。TNFα、IL-1β、IFN-γ、IL-12、IL-23、IL-36などのTh1細胞とIL-17を産生するTh17細胞が化膿性汗腺炎の病変部で発現し、これらのサイトカインが重要な役割を演じていることが明らかになってきている3,4)。二次的に細菌感染を合併することもある。悪化因子として喫煙、肥満、耐糖能異常、内分泌因子、感染、機械的刺激などが関連している1,2,3,4)。合併する疾患として、毛包閉塞性疾患である集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎、毛巣洞がある1,4)。併存疾患として糖尿病、壊疽性膿皮症、自己炎症症候群、クローン病、外痔瘻、有棘細胞がんがある4)。■ 症状多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる。皮下結節は増大、多発して、血性の排膿がみられる。皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。隣接する瘻孔は皮下で交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液、血性膿、粥状物質などを排出し、悪臭を伴う(図1)。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。瘻孔が破裂し、真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり、肥厚性瘢痕、ケロイドを形成する(図1)。重症では蜂巣炎から敗血症を合併することもある。生活のQOLが著しく低下し、疼痛、うつ、性生活、Dermatology Life Quality Index(DLQI)も低下する。図1 化膿性汗腺炎の臨床所見画像を拡大する腋窩に皮下瘻孔、肥厚性瘢痕がみとめられる■ 分類重症度分類として、Hurleyのステージ分類が重症度の病期分類として最も用いられて3期に分類される。第I期 単発、あるいは多発する皮下膿瘍形成。皮下瘻孔、瘢痕はなし。第II期再発性の皮下膿瘍、皮下瘻孔、瘢痕。 単発あるいは多発性の孤立した複数の病巣。第III期広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍。とされている。その他、修正Sartorius分類が用いられている。Sartoriusらは(1)罹患している解剖学的部位、(2)病巣の数とスコア、(3)2つの顕著な病巣間の最長距離、(4)すべての病巣は正常の皮膚から明確に離れているか否かという4項目について点数化する方法をHSの重症度として提唱している4)。治療の重症度スコアの評価指標として国際的HS重症度スコアリングシステム(IHS4)とHiSCR(Hidradenitis Suppurativa Clinical Response)がある。IHS4(International Hidradenitis Suppurativa Severity Score System)3)は炎症性結節、膿瘍、瘻孔・瘻管の数で評価される。中等度から重症の症例の鑑別、早期発見を可能にする。また、HiSCRと組み合わせて使いやすい。HiSCRは化膿性汗腺炎の薬物治療に対する“反応性”を数値化して指標で治療前後での12部位の炎症性結節、膿瘍、排膿性瘻孔の総数を比較する。HiSCRが達成されていれば、症状の進行が抑えられていると判定する。治療前の炎症性結節、膿瘍の合計が50%以上減少し、さらに膿瘍、排膿性瘻孔がそれぞれ増加していなければ、HiSCR達成となる。PGA(Physician Global Assessment)(医師総合評価)は薬物療法の臨床試験での効果判定に最も広く用いられている。■ 予後化膿性汗腺炎は慢性に経過し、治療に抵抗する疾患である。まれに有棘細胞がんを合併することもある。頻度は0.5~4.6%で男性に多く、臀部、会陰部の発症が多いとされている4)。化膿性汗腺炎の発症から平均25年を要するとされている4)。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)■ 確定診断化膿性汗腺炎の確定診断には以下の3項目を満たす必要がある。1)皮膚深層に生じる有痛性結節、膿瘍、瘻孔、および瘢痕などの典型的皮疹がみとめられる。2)複数の解剖学的部位に1個以上の皮疹がみとめられる。好発部位は腋窩、鼠径、会陰、臀部、乳房下部と乳房間の間擦部である。3)慢性に経過し、再発を繰り返す。再発は半年に2回以上が目安である。病理組織所見病初期は毛包漏斗部の角化異常より角栓形成がみられる。その後、好中球を主体として毛包周囲の炎症性細胞浸潤が起きる。毛包漏斗部の皮下瘻孔は次第に深部に進展し、皮膚面と平行に走り、隣接する皮下瘻孔と交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成する(図2)。炎症細胞浸潤が広範囲に及び、瘻孔壁が破裂すると、角質、細菌などの内容物が真皮に漏出して、異物肉芽腫が形成される。ときに遷延性の皮下瘻孔より有棘細胞がんが生じることがあるので、注意を要する。図2 化膿性汗腺炎の病理組織学的所見画像を拡大する一部、上皮をともなう皮下瘻孔がみとめられる(文献5より引用)。■ 鑑別診断表皮嚢腫:通常、単発で皮下瘻孔を形成しない。せつ:毛包性の膿疱がみられ、周囲の発赤、腫脹をともなう。よう:毛包性の多発性の膿疱がみられ、巨大な発赤をともなう結節を呈する。蜂巣炎、皮下膿瘍:発赤、腫脹、熱感、圧痛、皮下硬結をともなう。毛巣洞: 臀裂部正中に好発し、皮下瘻孔がみられる。皮下血腫:斑状出血をみとめ、穿刺にて凝固塊の排出をみとめる。クローン病による皮膚症状:肛門周囲に皮膚潰瘍をみとめ、皮下瘻孔を形成し、肛門との交通があることがある。■ 問診で聞くべきこと家族歴、喫煙、肥満、糖尿病の有無。■ 必要な検査とその所見採血(赤血球数、白血球数、白血球の分画、CRP、血沈、ASOなど)、尿検査を行う。蜂巣炎の合併の有無に必要である。 皮膚生検  有棘細胞がんの有無の確認に重要である。細菌検査  好気、嫌気培養も行う。蜂巣炎を合併している場合、細菌の感受性を検査して、抗菌剤の投与を行う。超音波エコー病巣の罹患範囲を把握し、手術範囲の確定に有用である。3 治療病初期には外用、内服の薬物療法が試みられる。局所的に再発を繰り返す場合は外科的治療の適応となる。病変部が広範囲に及ぶ場合には薬物療法の単独、あるいは外科的療法との併用が適している。薬物療法としては抗菌剤、レチノイド、生物学的製剤があるが、わが国において生物学的製剤で化膿性汗腺炎に保険適用があるのはアダリムマブだけである4)。■ 具体的な治療法抗菌剤の内服、外用、あるいは外科的治療と併用される。抗菌剤の外用は軽症の場合に有効であることがある。クリンダマイシン、フシジンレオ酸が用いられている4)。抗菌剤の内服は細菌培養で好気性菌と嫌気性菌が検出される場合が多いのでセフェム系、ペネム系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗薗剤が用いられる。ステロイド局所注射:一時的な急性期の炎症を抑えるのに有効である。デ・ルーフィング(天蓋除去):皮下瘻孔の屋根を取り除くことも有効である。局所の切開、排膿、生理食塩水による洗浄、タンポンガーゼによるドレナージも一時的に有効な処置である。 生物学的製剤としてアダリムマブが有効である。適応として既存の治療が無効なHurley stageII、IIIが対象となる。外科的治療:外科的治療は特に重症例に強く推奨される治療法である。病巣の範囲を正確に把握し,切除範囲を決めることが 重要である。CO2レーザーによる治癒も軽症~中等症に対して有効である。広範囲切除はHurleyの第III期が適応となる。切除範囲は病変部だけの限局した切除は十分でなく、周囲の皮膚を含めた広範囲な切除が必要である。有棘細胞がんが合併した場合は外科的切除が最優先される。■ その他の補助療法1)対症療法疼痛に対して、消炎鎮痛剤などの投与を行う。重複感染の管理を行う。生活指導:喫煙者は悪化因子である喫煙をやめる。肥満については減量、糖尿病があれば、原疾患の治療を行う。深在性の皮下瘻孔があり、入浴で悪化する場合、入浴を避け、シャワーにする。2)その他、治療の詳細については文献(4)を参照されたい。4 今後の展望今後、治験中の薬剤としてインフリキシマブ、IL-17阻害薬, IL-23阻害薬などがある。5 主たる診療科皮膚科、形成外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)皮膚の遺伝関連性希少 難治性疾患群の網羅的研究班1)Kurokawa I, et al. J Dermatol. 2015;42:747-749. 2)Hayama K, et al. J Dermatol. 2020;47:743-748.3)Zouboulis CC, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015;29:619-644.4)葉山惟大、ほか. 日皮会誌.2021;131;1-28.5)Plewig G, et al. Plewig and Kligman’s Acne and TRosacea. Springer.2019;pp.473.公開履歴初回2021年2月26日

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第46回 新型コロナの緊急事態宣言、感染拡大の二の舞を踏まないための最適な解除時期は?

今年1月7日、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言が首都圏の1都3県にて発令されてから7週間が経過しようとしている。1月13日には宣言対象地域を栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の2府5県に拡大。当初2月7日としていた期限は、栃木県を除き3月7日まで延長された。ただ、政府は延長当初から状況が改善された都府県に関しては、専門家の意見を聴取したうえで、3月7日を待たずに前倒しで宣言を解除する方針を明示。解除目安として昨年8月、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が提言した「今後想定される感染状況と対策について」で示された感染状況の分類、ステージI~IVのうちステージIIIになることとの方針も明らかにした。そして、ここにきて政府は関西3府県、中京2県について月内で宣言を解除する腹積もりがあるらしい。この記事が公開された頃には、たぶん5府県は宣言が解除されているのだろうと予想する。ちなみに前述の感染状況のステージとは、ステージIが「感染散発段階」、ステージIIが「感染漸増段階」、ステージIIIが「感染急増段階」、ステージIVが「感染爆発段階」のように分類され(カギカッコ内表記は分科会発表資料の趣旨を要約)、ステージIIIとステージIVは数値基準がある。ステージIIIは(1)入院者・重症者それぞれの病床使用率が20%以上、(2)10万人当たりの療養者数15人以上、(3)PCR陽性者率10%以上、(4)10万人当たりの新規感染報告数が1週間で15人以上、(5)直近1週間の新規感染者数が先週1週間の新規感染者数比で1倍以上、(6)新規感染者に占める感染経路不明率50%以上、となっている。ステージIVは、ステージIIIの(3)、(5)、(6)はそのままで、(1)が50%以上、(2)が25人以上、(4)が25人以上となった場合である。2月24日現在、関西3府県と中京2県の6指標はすべてステージIII以下である。具体的に説明すると、岐阜県は入院者の病床使用率が22%、愛知県は入院者病床使用率が30%で重症者病床使用率が25%、京都府は入院者病床使用率が30%で10万人当たりの療養者数16人、大阪府は入院者病床使用率が35%で重症者病床使用率が38%、兵庫県は入院者病床使用率が40%で重症者病床使用率が41%だ。これらがステージIIIに該当している以外は各項目ともステージII以下の水準である。確かに数字だけを見ればステージIII以下。ただ、改めて言うとステージIIIとは「感染急増段階」、あくまで一時的に最悪の状態を回避できているに過ぎない。ちょっとでも油断すれば、あるいは何かボタンを一つ押し間違えば一気にステージIVに達しかねないレベルである。たとえば、1日の感染者(PCR陽性者)報告で考えると、大阪府の場合、ステージIIIは189人、ステージIVが314人となる。大阪府の過去の数字に照らし合わせると、ちょうど昨年11月第1週がステージIIIに達したくらいだったが、11月第3週半ばにはステージIV水準になる。この間、要したのはわずか半月弱である。その後はスポットで感染者報告が減ることはあってもほぼステージIV水準を維持し続け、ステージIII水準に戻るのは1月第4週である。途中で緊急事態宣言という「劇薬」を使って、ざっと2ヵ月強かかっている。整理すると、わずか半月で起きた感染拡大を鎮火させるのに、半ば強制じみた措置を援用して2ヵ月以上かかったのだ。ちなみに現状の大阪府の1日当たりの新規感染者報告はすでに100人を切っているが、昨年この水準だったのは10月下旬である。そこから考えてもステージIV相当になるのに3週間である。しかも現状の大阪府の入院者、重症者の病床使用率はステージIIIの水準である。ここで感染者が増加に転じれば、感染者発生から重症者発生までの1週間強のタイムラグを考慮しても、最短で1ヵ月程度で病床使用率は再びステージIV水準に達してしまうだろう。すでに菅首相は高齢者のワクチン接種を4月12日には開始する旨を発表している。大阪府を例にとれば、いま宣言解除をすれば、下手をすると高齢者がワクチン接種のために出歩かなければならなくなる時期に感染爆発を招く恐れがある。その意味では、大阪府では1日の感染者報告数が50人前後、すべての指標がステージII水準になるぐらいが宣言解除時期としてより適切ということになるのではないだろうか?また、すべての指標がステージII段階とすれば、現時点で宣言解除の可能性が生まれ始めているのは、今の状態をあと1~2週間維持できれば、すべての指標がステージII入りすると推定できる愛知県、岐阜県ぐらいとなる。経済への影響を懸念する声があるのはもちろん承知しているが、現在の状況は1回目の緊急事態宣言発令時とは比較にならないほど感染が拡大している。1回目当時は最後まで緊急事態宣言が解除できずに残った5都道県のうち北海道と神奈川県は、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言を受けて策定した緊急事態宣言解除の数値基準を満たさなかったにもかかわらず、あれこれと理屈をつけて解除に踏み切った。結局その後2ヵ月足らずで第2波に突入し、それが収まるか収まらないかという綱引きが続くなかで、泥縄的に第3波入りし、今に至っている。もちろん緊急事態宣言が解除されたからと言って、自治体が飲食店の時短営業要請などを一気に緩和するわけではないことは百も承知している。しかし、宣言解除という事態が一般に与える心理的な効果、敢えて言えば気の緩みは小さくないものだと考えている。緊急事態宣言の解除が一部に見え始めている今だからこそ、情報を発信する側も気が抜けないと感じている。

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新型コロナ、消化管内視鏡検査で飛沫からの感染リスクは?

 消化管内視鏡検査(GIE)は、早期発見と多くの疾患の治療に有用である一方で、医療スタッフが患者の分泌物の飛沫によって感染するリスクがあり、COVID-19パンデミック下においては危険度の高い処置と考えられている。本研究は、横浜市立大学病院の研究チームが、検査を実施する医療スタッフが曝露する可能性のある唾液および消化液により、SARS-CoV-2陽性となる割合を検証した。Digestive endoscopy誌オンライン版2021年2月6日号に掲載。 本研究では、2020年6月1日~7月31日に横浜市立大学病院でGIEを受けたすべての患者が登録された。全員から3mL の唾液と共に、上部消化管内視鏡の場合は胃液10mLを、下部消化管内視鏡の場合は腸液10mLを採取した。主要評価項目は、唾液および胃腸液中のSARS-CoV-2陽性率で、SARS-CoV-2の血清抗体価や患者の背景情報についても併せて解析した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中、計783例の唾液および消化液(上部消化管内視鏡:560、下部消化管内視鏡:223)を採取、分析した。・唾液サンプルに対するRT-PCRは、いずれもSARS-CoV-2陽性を示さなかった。・消化液サンプルの2.0%(16/783例、上部消化管内視鏡:13/560例、下部消化管内視鏡:3/223例)において、SARS-CoV-2陽性反応を示した。・RT-PCR陽性症例と陰性症例との間において、年齢、性別、内視鏡検査の目的、投薬、抗体検査陽性率については、いずれも有意差が見られなかった。・血清抗体検査においては、被験者の3.9%がCOVID-19抗体を有していたが、消化液のRT-PCRとの間に関連は見出されなかった。 これらの結果について、研究チームは「唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者においても、消化管にSARS-CoV-2が存在するケースが確認された。内視鏡検査の医療スタッフは、処置を行う際に感染を認識する必要がある」と指摘。ただし、ウイルスが消化液中でどのくらいの時間留まり、感染性を保つかについてはデータが限られており、消化管におけるSARS-CoV-2の特徴や臨床的重要性を明らかにするにはさらなる研究が必要としている。

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中等~重症COVID-19に高用量ビタミンD3単回投与は有益か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、高用量のビタミンD3単回投与はプラセボと比較し、在院日数を有意に減少させることはないことが示された。ブラジル・サンパウロ大学医学部のIgor H. Murai氏らが、ブラジル・サンパウロの2施設で実施した無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。COVID-19に対するビタミンD3補給の有効性はこれまで不明であったが、結果を受けて著者は、「中等症~重症COVID-19患者の治療として高用量ビタミンD3の使用は支持されないことが示された」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年2月17日号掲載の報告。中等症~重症のCOVID-19入院患者でビタミンD3の有効性をプラセボと比較 研究グループは、2020年6月2日~8月27日の期間に中等症~重症COVID-19入院患者240例を登録し、ビタミンD3投与群(20万IU単回経口投与)(120例)またはプラセボ群(120例)に無作為に割り付け、2020年10月7日まで追跡した。 主要評価項目は在院日数(無作為化から退院までの期間と定義)、事前に設定した副次評価項目は在院死亡、集中治療室(ICU)への入室、人工呼吸器を必要とした患者の割合および人工呼吸器装着期間、血清25-ヒドロキシビタミンD値、総カルシウム濃度、クレアチニン、C反応性蛋白(CRP)などであった。両群で在院日数に有意差なし 無作為化された患者240例のうち、237例が主要解析に組み込まれた。解析対象患者の平均(±SD)年齢は56.2±14.4歳、女性が104例(43.9%)、ベースラインの平均(±SD)25-ヒドロキシビタミンD値は20.9±9.2ng/mLであった。 在院日数は中央値で、ビタミンD3群7.0日(四分位範囲[IQR]:4.0~10.0日)、プラセボ群7.0日(IQR:5.0~13.0日)で、両群間で差はなかった(log-rank検定p=0.59、退院の補正前ハザード比:1.07[95%信頼区間[CI]:0.82~1.39]、p=0.62)。 また、ビタミンD3群とプラセボ群との間で、在院死亡率(7.6% vs.5.1%、群間差:2.5%[95%CI:-4.1~9.2]、p=0.43)、ICU入室率(16.0% vs.21.2%、群間差:-5.2%[95%CI:-15.1~4.7]、p=0.30)、人工呼吸器装着率(7.6% vs.14.4%、群間差:-6.8%[95%CI:-15.1~1.2]、p=0.09)で有意差は確認されなかった。血清25-ヒドロキシビタミンD値は、ビタミンD3群においてプラセボ群より有意に増加した(44.4ng/mL vs.19.8ng/mL、群間差:24.1ng/mL[95%CI:19.5~28.7]、p<0.001)。 有害事象は確認されなかったが、介入と関連した嘔吐がみられた。

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COVID-19ワクチンの今と筋注手技のコツ/日本プライマリ・ケア連合学会

 今月より医療者を対象に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が開始された。開始されたワクチンは、ファイザーの「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注)であるが、今後別の種類のワクチンの承認追加も予定されている。 実際、これらワクチンの効果や安全性はどの程度わかっているのであろう。また、現状接種は、筋肉注射による接種であるがインフルエンザの予防接種などで広く行われている皮下注射とどう異なり、接種の際に注意すべきポイントはあるのだろうか。 今後、高齢者や基礎疾患を持つ一般人への接種も始まる中で、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)は、2月22日に同連合学会のホームページ上で2つのコンテンツを公開した(コンテンツは予防医療健康増進委員会 感染症プロジェクトチームが監修)。 1つは、2月17日にオンライン講演で行われたものを録画した『新型コロナウイルスワクチンについて いまわかっていること、まだわからないこと』であり、COVID-19ワクチンについて次の内容がレクチャーされている。概要1. ウイルスと免疫のしくみ2. 新型コロナワクチンのしくみ3. 新型コロナワクチンの効果4. 新型コロナワクチンの副反応5. 新型コロナワクチンの具体的な接種法6. 新型コロナワクチンについてまだわからないこと7. 新型コロナワクチンについての不安やデマ8. 新型コロナワクチンみんなで気を付けること質疑応答 全体で約2時間にわたる講演であるが、臨床に携わる医療者からの質疑応答には長時間を割き、丁寧かつコンパクトに説明を行っている。 また、もう1つは『新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ』の動画である。動画では、注射針の選定からシリンジの長さ別の注射のポイント、接種部位の指定、接種時の注意点などが約8分の動画でまとめられている。 いずれの動画も視聴のうえ、今後のワクチン接種時の参考にしていただきたい。【追記】 筋肉注射の解説動画については、公開後のさまざまな意見などを踏まえ、3月15日に「2021年3月版」として新たな接種部位の紹介と接種肢位の注意点などの情報を更新し、公開している。

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COVID-19入院患者への早期予防的抗凝固療法、30日死亡率を低下/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、早期予防的抗凝固療法は非投与と比較して、重大出血のイベントリスクを増大することなく30日死亡率を有意に低下することが示された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のChristopher T. Rentsch氏らが、4,297例の入院患者を対象に行った観察コホート試験の結果で、BMJ誌2021年2月11日号で発表した。COVID-19患者の死亡原因の一部として、静脈血栓塞栓症および動脈血栓症が報告されている。抗凝固療法は、血栓形成を予防し、抗ウイルス性および潜在的な抗炎症性作用も有し、COVID-19患者に有効であることが期待されている。今回の結果を踏まえて著者は、「今回の所見は、COVID-19入院患者の初期治療として、予防的抗凝固療法の実施を推奨するガイドラインを支持する、強力なリアルワールドのエビデンスを提供するものである」と述べている。抗凝固療法歴のない4,297例を対象に観察コホート試験 研究グループは、米国退役軍人省が運営する全米医療システムに加入し、2020年3月1日~7月31日に、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染が確認された入院患者で、抗凝固療法歴のない4,297例について観察コホート試験を行った。早期予防的抗凝固療法の実施と、死亡率との関連を検証した。 主要アウトカムは、30日死亡率だった。副次アウトカムは、入院死亡率、抗凝固療法の実施(血栓塞栓症など臨床的増悪の代用アウトカム)、輸血を要する出血だった。予防的抗凝固療法で輸血を要する出血リスクは増大せず 4,297例のCOVID-19入院患者のうち、入院後24時間以内に予防的抗凝固療法を行ったのは3,627例(84.4%)だった。そのうち99%超の3,600例が、ヘパリンまたはエノキサパリンの皮下投与を受けた。 入院後30日以内の死亡は622例で、うち予防的抗凝固療法群の死亡は513例だった。 inverse probability of treatment weighted解析にて、入院30日時点の累積死亡率は、予防的抗凝固療法群14.3%(95%信頼区間[CI]:13.1~15.5)、非予防的抗凝固療法群18.7%(95%CI:15.1~22.9)で、予防的抗凝固療法群の30日死亡率に関するハザード比(HR)は0.73(95%CI:0.66~0.81)と27%のリスク低下が認められた。同様の関連性が、入院患者の死亡率と予防的抗凝固療法の実施についても認められた。 一方で、予防的抗凝固療法による輸血を要する出血リスク増大は認められなかった(HR:0.87、95%CI:0.71~1.05)。 量的バイアス分析では、同試験結果は計測されない交絡因子に対してロバストであることが示された(30日死亡率に関するe値の95%CI下限値は1.77)。感度解析でも結果は維持された。

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第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が「大学病院に重症患者を受け入れさせよ」と都道府県に事務連絡

大学病院や基幹病院は、重症患者受け入れをこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。まだ2月ですが、すっかり春めいてきました。この土日は暖かさに誘われ、街にも結構な人が出ていたようです。私自身は先週、所用があって宮城と岩手に出かけました。2月13日の地震で東北新幹線が止まっており、どうしたものかと困っていたのですが、知人から「常磐線は去年から通っているよ」と言われ、高速バスは止めて「特急ひたち」で4時間40分かけて仙台入りしました。JR常磐線は東日本大震災と東京電力の福島第一原発事故の影響を受け、昨年まで福島県の富岡駅~浪江駅間で不通になっていました。かつての不通区間を車窓から眺めたのですが、とくに双葉~浪江間は人の気配がほとんどなく、震災で崩壊したと思われる家屋がまだ数多く残っていました。10年経ったとは思えない風景が続き、言葉を失くしました。さて、今回は改めて新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ体制について考えてみたいと思います。厚生労働省は2月16日、「新型コロナウイルス感染症の医療提供体制の整備に向けた一層の取組の推進について」と題する事務連絡を各都道府県等に発出しました。コロナ患者の受け入れについて、高度な医療を提供できる大学病院や地域の基幹病院が重症患者を、都道府県から指定を受けた「重点医療機関」は中等症患者を受け入れるなど、病院の役割分担を進めるよう、都道府県等に要請しました。とくに医療の需給が多い大都市圏を抱える都道府県では、公立・公的といった地域の中核病院の役割が重要で、こうした病院には必須の医療機能以外を他院と分担した上で新型コロナ対応を強化する、などの検討を求めました。一方、新型コロナの患者に応じていなかった回復期や療養型の病院も、中等症患者への対応を検討するよう要請しました。「大学病院を名指し」の背景第3波が落ちつき、病床に比較的余裕が出てきた今になっての事務連絡は遅過ぎる気もしますが、おそらく来るであろう「第4波」を想定してのことと考えれば納得できます。今回の事務連絡で注目されるのは、大学病院が重症患者を受け入れるよう都道府県等に要請している点です。その背景には、大学病院によって重症者の受け入れ患者数に大きな差があることなどが、マスコミや政治家などからの指摘があるようです。少し古くなりますが、2月9日の日本経済新聞朝刊は、「国立大の重症病床、コロナ活用半ば」という見出しで、国立大学病院が高度な技術を持つにもかかわらずコロナ重症患者の受け入れに活用されていない、という実態を報じています。同記事によれば、全国の重症者病床(ICU・ER・HCUの合計)は1万7,000床で、うち21%にあたる3,620床がコロナ患者用に確保されていたとのことです。これに対し、同紙の調査に回答した20の国立大学病院の重症者病床は計763床、コロナ患者用は131床と17%に留まっていました。同紙は回答のあった20病院のコロナ重症患者向け病床数も報じていますが、いろいろと話題となった旭川医大はわずか2床。緊急事態宣言下の府県の国立大としては京大が3床、患者数が最多の東京では東大が8床でした(東京医科歯科大は16床)。機敏に動く国立大病院もコロナ以外の高度医療への対応の必要性から、コロナ重症患者向け病床を抑える、という理屈はわかりますが、病床数が数床というのは気になります。国立大学病院は文部科学省管轄です。ただ、文科省から「病床を確保せよ」という命令が下されることはなく、基本的に都道府県の調整本部から依頼・要請があって対応することになります。数床しか確保していない大学病院は、何らかの理由をつけて、重症病床の確保を避けてきたとも考えられます。今回の事務連絡を機に、病床確保がスムーズに進むようになることを期待します。ちなみに、仙台にいる友人から聞いた話では、東北大学病院の場合、コロナ重症病床は5床ですが、東北大学診療所を院外に新設してドライブスルー方式のPCR検査外来に取り組んだり、軽症者等宿泊療養施設となったホテルへの医療支援(24時間オンコール対応)にも取り組んだりしているそうです。さらに東北大の医師が県の調整本部に入り、病床確保や入院調整なども担当しているとのこと。地方の国立大学病院は、各県にとっては最大規模かつ最高レベルの医療インフラと言えます。このコロナ禍の中、「うちは高度医療だから」とお高くとまらず、真に地域に役に立つ医療サービスの提供を行ってもらいたいものです。中身なし、医療関係団体の具体的方策ところで、1月に「第41回 コロナ対応病床増、感染症法改正か医療法改正か…。そこ結構大事では?」で書いた、医療関係団体の対策会議はどうなったのでしょう。日本医師会が中心となり、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)と全国自治体病院協議会と共に立ち上げた「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」は2月3日、「新型コロナウイルス感染症患者の病床確保等に向けた具体的方策」を取りまとめています。それによれば、「都道府県医師会、都道府県病院団体及び支部が連携して協議会を立ち上げ、都道府県行政との間で緊密な連携を取り」、受け入れ病床の確保策として、「協議会もしくは地域医療構想調整会議等にて都道府県調整本部等と連携し、受入病床の確保を行う」とのことです。大々的に対策会議を開いたにも関わらず、具体的方策の中身はあるようでない、というのが私の感想です。地域レベルでは病床確保がどうにもならなかったので中央の皆で検討したはずなのに、結局また各地域に丸投げする格好だからです。都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会において、猪口 雄二副会長はこの具体的方策について「日本医師会としても支援していくので、地域の事情に応じた対応をお願いしたい」と述べたとのことです。この「具体的方策」で果たして地域の医療機関が「よし、当院も」と動くでしょうか。西日本のある県では100近い民間病院がある中、コロナの軽中等症者を受け入れているのはわずか数院、という話もあります。感染者数が減少に転じ、民間病院へのバッシングも収まったことで、コロナ病床確保のための議論も中途半端ながらとりあえず終了と考えたのだとしたら、とても残念です。今の状況のまま、もし第4波が到来したら、次のバッシングはさらに厳しいものになるでしょう。

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第48回 コーヒーは血中脂質を増やす/イスラエル医療従事者のCOVID-19発症がワクチンで85%減少

コーヒーは血中脂質を増やす~飲むならカフェストールが抜ける濾過コーヒーが賢明重要な慢性疾患や怪我の要因を見つけることを主な目的1)とする観察試験UK Biobankの被験者36万2,571人の解析でコーヒーと血中コレステロール濃度上昇の関連が改めて示されました2,3)。コーヒーをより飲んでいる人ほど総コレステロール、それに悪名高いLDLコレステロール(LDL-C)やアポリポタンパク質B(apoB)の血中濃度がより高いという結果が得られており、コーヒーの飲みすぎを長く続けると脂質に障ってやがては心血管疾患を生じやすくする恐れがあると示唆されました。コーヒーを飲むこととコレステロール上昇の関連はノルウェーの街トロムソの住人を調べたおよそ40年前の試験(Tromso Heart Study)ですでに示されています。被験者はコーヒーといえば挽いたコーヒー豆を水で煮てその上澄みを濾過せずに飲むのを主とし、UK Biobankの試験と同様にコーヒーをより多く飲んでいる人ほど血清の総コレステロールやトリグリセリド値がより高めでした4)。それから7年後の1990年には冒頭のUK Biobank試験の著者の懸念を裏付ける中年男女およそ4万人の追跡調査結果がBMJ誌に掲載されています。Tromso Heart Studyと同様にノルウェーでの試験であり、非濾過コーヒーがしばしば飲まれていた同国でのコーヒー摂取と冠動脈心疾患による死亡の関連が示されました5)。非濾過コーヒーにはコレステロールを上げるコーヒー豆成分カフェストール(cafestol)が多く含まれます。たとえば豆の粗挽きを10分以上煮出すか熱湯で煎じた上澄みの非濾過コーヒーには紙フィルター濾過コーヒーに比べて30倍多く含まれます6)。コーヒー豆のカフェストールが血清コレステロールを上げることを発見した1994年の研究報告の引用文献によると、ノルウェーの隣国フィンランドでは非濾過から濾過コーヒーへの嗜好の変化が血清コレステロール低下に一役買い、7%の心血管疾患減少をもたらしました7,8)。上述のNEJM報告の筆頭著者Dag Thelle氏が率いたごく最近の試験9)でもどうやら非濾過コーヒーの飲み過ぎは心臓に悪そうなことが示唆されています。Thelle氏等のその新たな試験ではノルウェーの20~79歳の約51万人のデータを使ってコーヒーと心血管疾患や死亡率等との関連への抽出方法の影響が調べられました。その結果、コーヒー全般と死亡や心血管疾患を生じやすくなることの関連は認められませんでしたが、コーヒーを飲む人のうち1日に濾過コーヒーを1~4杯飲む人は死亡率が最も低く、非濾過コーヒーを1日に9杯以上飲む人は逆に死亡率が最も高くなっていました。ペーパーフィルター濾過コーヒーでもコレステロールが上昇しうることが示されている10)ので過信は禁物ですが、血中脂質にできるだけ障らないようにするにはコレステロール上昇成分カフェストールが抜ける濾過コーヒーを適度に飲むのが賢明なようです2)。イスラエルでPfizerワクチン1回目接種後15~28日間のCOVID-19発症が85%減ったPfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチンBNT162b2の接種が進むイスラエルの医療従事者およそ9,000人(9,109人)を調べたところ、その1回目接種後15~28日のCOVID-19発症は非接種に比べて85%少なくて済みました11,12)。接種から1~14日のCOVID-19発症も47%少なく、非接種のおよそ半分で済みました。PCR検査でのSARS-CoV-2検出率も非接種群に比べて低下しました。1回目接種から1~14日には30%、15~28日には75%低下しています。1回目接種からすぐにCOVID-19が減った今回の結果を受けて著者はワクチンや人手不足の国では2回目接種を遅らせてもよさそうだと示唆しています11)。参考1)Batty GD,et al. BMJ. 2020 Feb 12;368:m131. 2)Deja brew? Another shot for lovers of coffee / EurekAlert3)Zhou A, et al. Clin Nutr. 2021 Jan 11:S0261-5614,00014-5. [Epub ahead of print]4)Thelle DS, et al. N Engl J Med. 1983 Jun 16;308(24):1454-7.5)Tverdal A, et al. BMJ. 1990 Mar 3;300:566-9.6)Urgert R, et al. J R Soc Med. 1996 Nov;89:618-23.7)Weusten-Van der Wouw MP, et al.J. Lipid Res. 1994. 35: 721-733.8)Salonen JT, et al.Prev Med. 1987 Sep;16:647-58.9)Tverdal A, et al. Eur J Prev Cardiol. 2020 Dec;27:1986-1993. 10)Correa TA, et al. Nutrition. 2013 Jul-Aug;29:977-81.11)Amit S,Lancet. February 18, 2021. [Epub ahead of print]12)Study finds first COVID vaccine dose lowers disease risk 30% to 85% / University of Minnesota

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第43回 麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?

<先週の動き>1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?三重大学医学部付属病院において、2017年に麻酔科医が4件の手術をかけ持ちする「並列麻酔」を行い、手術中に患者1人が死亡する医療事故が発生していたことが発覚した。並列麻酔は、医療事故のリスクが高まることなどを理由に、日本麻酔科学会が原則的に禁止している。同院の医療事故調査委員会は、並列麻酔が患者の死亡につながった遠因である可能性を言及し、今年に入ってから並列麻酔は一切行っていないとしているが、2020年までは20%前後の手術で並列麻酔が行われていたことを明らかにしている。三重大学では、臨床麻酔部の元教授らが、不正な診療報酬請求による詐欺の疑いで逮捕され、昨年から麻酔科医の退職が相次いでおり、人手の足りない手術を他病院で実施するなどで対応している。今後、再発防止策を立案するとともに、信用回復と人員確保が最優先となるだろう。(参考)【三重】三重大「並列麻酔」約1〜2割で(NHK)資格医学部附属病院における不正事案について(三重大学)2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省厚生労働省は、18日に開催された専門家会議で、新型コロナウイルスの重症者について、軽症者らとは別の退院基準を設けることを決定した。これは、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な重症者は、他人に感染させる期間が長いと考えられるため。これまでの退院基準は、重症度にかかわらず、発症後10日間が経過し、かつ症状が軽快しており、72時間以上経過した者についてはPCR検査を実施せずに退院が可能であったが、今後は重症者に限って、発症から15日が必要だとした。近く、都道府県に通知する見込み。政府は、退院基準を満たした高齢の入院患者を介護施設が受け入れた場合、1日当たり5,000円相当の介護報酬を最大30日間加算することを決めている。全国老人保健施設協会によると、都内では36施設が、新型コロナ退院患者の受け入れ態勢をすでに整えているという。(参考)コロナ重症者の退院基準 発症から15日に 厚労省(朝日新聞)コロナ 退院基準満たした高齢患者 受け入れ施設に介護報酬加算(NHK)3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に厚労省は、非医療機関(老人ホームや介護施設、保育所など社会福祉施設)において、看護師らが日雇いで働けるように政令改正を決めた。これは新型コロナ流行に伴い、介護施設や障害者施設での看護師ニーズが高まる中、現状では原則禁止されている看護師らの日雇い派遣についての規制を緩和し、今年の4月以降認める方向で検討している。介護施設では、看護師の人員確保などの課題に直面しており、規制緩和によって、子育てや介護のため常勤していない「潜在看護師」の短時間労働が可能となる。なお、新型コロナウイルスワクチン接種などについては、医療行為であり、医療機関への派遣についても今回の改正対象とはならない。表:保健師・助産師・看護師・准看護師と労働者派遣の法規制(2021年2月21日時点の改正見込み)画像を拡大する(参考)看護師の日雇い派遣4月以降容認へ 厚生労働省(NHK)看護師、介護施設に日雇い派遣可能に 4月から(日本経済新聞)4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み21日にNHK報道番組に出演した河野 太郎規制改革担当相は、高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種開始について、4月はワクチンの輸入量が比較的限られるため、接種への実施が一部後ろ倒しになることを明らかにし、今週中には新たな接種計画をまとめると発表した。また同氏は、新型コロナウイルスワクチン接種について、当初は370万人程度と推計していた医療従事者が、100万人程度増えるとの見通しを明らかにしており、3月から開始される医療従事者の2回目の接種と並行して高齢者向けの接種が開始する見込みであることも併せて言及している。(参考)高齢者ら接種「週内に大枠」 企業にワクチン休暇要請も 河野氏(時事通信)ワクチン接種、遅れる可能性 河野氏言及、供給が限定的(朝日新聞)ワクチン医療従事者接種「100万人くらい増加」 河野氏 高齢者、4月開始は変更なし(日経新聞)5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医日本医師会は、17日に開催された定例記者会見で、医師の働き方改革の進捗について、松本 吉郎常任理事が報告した。医師の働き方改革については、昨年12月に厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が中間取りまとめを行い、今年2月に医療法等の改正法案が閣議決定され、2024年度からの医師の働き方の新制度施行からの制度の開始に向けた準備が進んでいる。今回、現場からの質問や意見の多い、(1)医療機関がおこなうべきこと、(2)2024年度からの医師の働き方の新制度施行、(3)2024年度の新制度施行に向けて取り組むこと、(4)コロナ禍と医師の働き方、(5)宿日直の許可、(6)医師の副業・兼業の取り扱い、(7)大学病院における働き方、(8)医師の働き方制度理解といった8項目についてそれぞれ説明を行った。今後、さらに医師の働き方改革を進める上でのポイントが記されており、2024年度を前に大学病院をはじめ医療機関が取り組む課題は大きいと考えられる。(参考)医師の働き方改革の進捗状況について(日医)資料 医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ(厚労省)

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新型コロナでマンモグラフィ2ヵ月中止、診断時の病期に影響/ESMO Open

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の影響を強く受けた北イタリアではマンモグラフィ検診が2ヵ月間中止となった。イタリア・Azienda Ospedaliero-Universitaria di ModenaのAngela Toss氏らが、検診中断後の乳がん診断時および初期治療時の病期を調査したところ、検診中断後にリンパ節転移陽性およびStage IIIの乳がんが増加していた。ESMO Open誌オンライン版2021年2月11日号に掲載。 本研究は単施設での後ろ向き研究で、2ヵ月間のマンモグラフィ検診中断後の2020年5~7月に乳がんと診断された177例(女性174例、男性3例)の臨床病理学的特徴について、定期的に検診を実施していた2019年の同時期に乳がんと診断された223例(女性221例、男性2例)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・2ヵ月間の検診中断により、非浸潤がんでの診断は有意に減少し(2019年17.2%→2020年6.87%、p=0.0021)、リンパ節転移陽性(2019年12.5%→2020年23.7%、p=0.0034)およびStage III(2019年2.2%→2020年12.5%、p=0.0001)での診断は有意に増加した。・増殖能が高い患者群(MIB-1≧20%)では、リンパ節転移陽性は18.5%増加し(p=0.0352)、Stage IIIは11.4%増加した(p=0.045)。・増殖能が低い患者群(MIB-1<20%)では、リンパ節転移陽性は変わらなかった(p=1)が、Stage IIIは9.3%増加した(p=0.0064)。

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『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』発刊―肝線維化の早期発見へ

 日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同制作した『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』が2020年11月に発刊された。今回5年ぶりの改訂を迎えたNAFLD/NASH診療ガイドラインには、非ウイルス性肝疾患、とくに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加を背景とした診療の進歩が取り入れられている。そこで今回、作成委員長を務めた徳重 克年氏(東京女子医科大学消化器病センター消化器内科 教授・講座主任)にNAFLD/NASH診療ガイドラインの改訂ポイントや活用方法を伺った。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020、非専門医にも活用意義あり 今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン改訂における注目ポイントは、NAFLDの進展に深く関わっている『肝線維化進展例の絞り込み』『脳・心血管系疾患リスクの絞り込み』に関するフローチャートやClinical Question(CQ)が追加された点である。 NAFLD/NASHの予後や肝硬変への病態進展に影響を及ぼす肝線維化は、診断時に肝生検を要するなど非専門医による診断が難しく取りこぼしの多い病態であった。しかし、肝線維化の有病率は日本でもNAFLDの増加に比例し、線維化ステージ3以上のNAFLDは2016年時点で66万人、2030年では99万人に達すると予測されているくらい深刻な状況である(BQ1-2:NAFLD/NASHの有病率は増加しているか?)。また、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病、高齢化が線維化進展のリスクであることから、このような患者を診察する非専門医にも「NAFLD/NASH診療ガイドラインを役立ててほしい」と徳重氏は話した。 そこで、今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン2020より肝線維化進展例の絞り込みフローチャートを非専門医向け(1)と専門医向け(2)の2種類設けることで、それぞれの視点で線維化を評価できるようになっている。今回のフローチャート作りでは「肝線維化を拾い上げ、早期治療に介入できることで肝硬変や肝がんへの進展を抑え込む」ことを目的としているため、非専門医と専門医の評価方法を分けることで評価時の負担軽減につながる工夫もなされている。たとえば、評価時のネックになっていたエラストグラフィや肝生検を、かかりつけ医らによる1次スクリーニングではFIB-4 indexや線維化マーカー(ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S…)に留めている。これについて、「FIB-4 indexは血液検査の4項目(AST、ALT、血小板数、年齢)から算出されたデータを基に線維化の進展を評価する方法。肝線維化の進展を調べるのに肝生検を全例に実施するのは現実的ではないが、このスコアリングシステムを用いれば、おおよその予後をステージ区分できたり、肝生検実施の絞り込みを行ったりするのに役立つ。さらには非専門医が専門医へコンサルテーションする手立てにも有用」と同氏はこの評価基準に期待を示した。一方で、「80歳以上の高齢者やアルコール性肝疾患はスコアの整合性がとれないためFIB-4 indexの使用は控えたほうが良い」とデメリットも挙げた(CQ3-3:NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステムは有用か?)。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では心血管リスク考慮のフローチャートが追加 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の第5章『予後、発癌、follow up』のBackground Question(BQ)で述べられているように、NAFLDでは心血管イベントのリスクが増加すると多数報告されている。これを踏まえ、肝線維化の程度に応じ、肝関連疾患(肝硬変・肝がん)だけではなく心血管イベントなどを考慮したフォローが必要であることが明記、フローチャートが追加された(CQ5-1 NAFLD/NASHのfollow upは、どのように行うのが適当か?)。これについては、「心血管リスクが現段階でなかったとしても、前述のFIB-4 indexを活用して2~3年ごとに確認を行ってほしい」と説明した。SGLT2阻害薬やGLP-1アナログほか、将来に期待する薬剤多数 NASH症例は患者の約50%以上が肥満である。それを逆手にとり、現在では体重減少作用のあるSGLT2阻害薬や糖尿病治療薬GLP-1アナログを使用したNAFLDに対する治験が進行中である。SGLT2阻害薬は血液生化学検査での改善や脂肪肝の減少が見られることからNAFLD/NASH患者に対し弱い推奨(CQ4-5 SGLT2阻害薬はNAFLD/NASHに有用か?)、GLP-1アナログは血液生化学検査や肝組織検査でも有用性が示されているもののデータ不十分なため、現時点では糖尿病を有するNASH患者において、弱い推奨となっている(CQ4-6 GLP-1アナログ、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬はNAFLD/NASHに有用か?)。今後、多数例での検討結果が期待される。 このほか、将来性のある薬剤として、高脂血症治療剤ペマフィブラート(商品名:パルモディア)をはじめ14品目の臨床研究が進行中である。同氏は「ペマフィブラートは国内治験のサブ解析でも肝機能改善効果が得られているので、脂質異常症を併存する患者に使用するのは有用ではないか」とコメントした。NAFLD/NASHの線維化が進行した肝がんスクリーニングに課題 NAFLD/NASHの線維化が進行すれば肝がんを発症しかねないが、その発症率の少なさや医療経済的な側面が壁となり全症例への肝がんスクリーニングはそぐわないという。それゆえ、これまで同氏が述べてきたような線維化の早期発見や線維化進展抑制のための治療が功を奏する。“沈黙の臓器”の所以ともいえる自覚症状なき肝臓の線維化。その進展食い止めの重要性を強調してきた同氏は、「ぜひ、肝線維化の理解を深めてもらいたい」と述べるとともに「より簡便な肝がんスクリーニング方法の確立を目指したい」と締めくくった。

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SGLT1/2阻害薬sotagliflozinに、蹉跌あり!(解説:石上友章氏)-1357

 近位尿細管に発現するナトリウム・グルコース共輸送体の90%がSGLT2であり、10%がSGLT1であるとされる。SGLT2が近位尿細管のS1セグメントに発現しているのに対して、SGLT1はS3セグメントに発現している。このSGLT1は小腸にも発現しており、小腸上皮細胞でのナトリウムとグルコースの吸収に働いている。SGLT1を阻害することで、グルコースやナトリウムの腸管での吸収が抑制される。食事制限と同等の効果を得ることができるのではないか。食生活をはじめとする、生活習慣が成因である糖尿病の治療薬としては、生理的に制御する理想の薬物かもしれない。 sotagliflozinは、SGLT2阻害に加えて、SGLT1を阻害する効果がある。心不全、腎不全への効果が証明されたことで、糖尿病薬としての価値を超え、評価がうなぎ上りのSGLT2阻害薬である。sotagliflozinはSGLT2とSGLT1を阻害する効果があることから、SGLT2阻害薬を凌駕する効果が期待される薬物だと考えられる。 米国のBrigham and Women's HospitalのBhattらが行ったSCORED試験は、2型糖尿病に慢性腎臓病が合併した患者を対象に、sotagliflozinがプラセボと比較して、心血管死を含む複合心血管エンドポイントに対して効果があるかを検討した試験である1)。本試験は残念ながら、研究資金が枯渇したために早期終了(premature cessation)を余儀なくされてしまった。主要評価項目については、実薬がプラセボに比較して、有意差をつけることができた。しかし、sotagliflozin群で性器真菌感染症(p<0.001)、糖尿病ケトアシドーシス(p=0.02)、脱水(p=0.003)ならびに下痢(p<0.001)の有害事象が多かった。この点に関して、著者らは“but was associated with adverse events”と否定的に結論付けており、有効性と安全性について、さらなる検討が必要としている。既述のように、SGLT1は小腸にも発現している。グルコースの吸収を遅延させるαグルコシダーゼ阻害薬と同様に、腸管レベルでのグルコースの吸収阻害作用には、共通する『蹉跌』があった。

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第45回 新型コロナワクチン承認の恩恵にあやかりたいHPVワクチンの今

「ワクチン、ようやくここまで来たか」との感慨に浸っている。そう書くと多くの皆さんは新型コロナワクチンのことだと思うだろう。もちろんそれもある。だが、それよりも感慨深いのは、9価のヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチン「シルガード9」が今月24日に正式に発売となることだ。ご存じのように日本では2013年4月にHPVワクチンが小学校6年生から高校1年生の女子を対象に予防接種法に基づく定期接種化されながら、それからわずか2ヵ月後の同年6月14日の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)で一部の接種者が訴えた接種後の疼痛などの報告を審議し、厚生労働省(以下、厚労省)が「積極的な接種勧奨の差し控え」を通達、現在に至っている。日本では定期接種化時点で、180種類以上のジェノタイプがあるHPVのうち、子宮頸がんになりやすいハイリスクな16型、18型への感染を防ぐ2価ワクチン「サーバリックス」と、この2つに加えて性感染症の尖圭コンジローマの原因である6型、11型への感染も防ぐ4価ワクチン「ガーダシル」が承認されていた。一方、海外の状況を見ると、2014年12月に4価のガーダシルに、さらに子宮頸がんハイリスクのジェノタイプである31型、33型、45型、52型、58型への感染を防ぐ9価ワクチン「ガーダシル9」がアメリカで承認され、同ワクチンは2015年6月に欧州連合(EU)とオーストラリアで承認され、現在までに全世界のうち70ヵ国以上で承認されている。今回、発売されることになるシルガード9はご覧のとおり商品名が違うだけで、ガーダシル9と同じものである。従来の2価、4価ワクチンが子宮頸がんの6~7割を防げると言われるのに対し、シルガード9では約9割の子宮頸がんが防げるといわれている。すでに日本同様の定期接種化が行われている国では、この9価ワクチンを接種するのが一般的となっている。しかし、日本での今回の発売に至るまでの道のりは異常なまでに長いものだった。すでに製薬企業側からの承認申請は2015年7月に行われていながら、まったく審議が行われない棚ざらしのまま時間が経過し、審議入りはようやく昨年4月で承認取得は昨年7月。そして発売は今年2月と実に5年7ヵ月も要した。厚労省側は表向きでは無関係と称しているものの、この背景には前述の副反応を訴える人々の一部が製薬企業や国を相手取って民事訴訟を起こしていることと無縁ではないと考えられている。もっともいま現在に至るまで「積極的な接種勧奨の差し控え」ではあっても定期接種対象であることに変わりはないわけで、国民全般への目配りが求められる中央官庁としては多方面に気を遣わねばならないのは分からないではないものの、この間の審議なき棚ざらし状態に対し私はサボタージュに等しいと考えている。さて、ただ正式にシルガード9が発売されたとしても、そこからはまた先の長いことになるかもしれない。まず、現在の積極的な接種勧奨の差し控え状態のまま定期接種のワクチンにシルガード9を加えることできるかどうかが第一関門である。すでにそれに関わる審議は昨年8月の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会)の「ワクチン評価に関する小委員会」でスタートしている。シルガード9を順調に定期接種へ加えることができたとしても、最大にして最後の難事業である「積極的な接種勧奨の差し控え」の中止、すなわち通常の定期接種に戻すことが残されている。ただ、厚労省関係者に定期接種の正常化に関して水を向けると、「そのためにはHPVワクチンに関して国民の理解がもう一歩進むことが必要」という答えが返ってくることがほとんど。中にはより慎重な「現在進行中の民事訴訟で原告側が副反応と訴えている症状とワクチンの因果関係が否定される判決が出ること」という意見まで出てくることさえある。本連載でも触れたように、この件では副反応を訴える人たちの登場とそれを検証不十分なまま報じたメディアの責任は問われて当然である。しかし、昨今の少なくとも大手の新聞社の報道を見る範囲では、HPVワクチンに関して接種者の一部が訴える症状をワクチンの副反応と捉えて煽るような報道は皆無に等しい。そしてたとえば全国紙4紙で「HPV」で検索し、HPVワクチンに関して直接的に報じている記事を最新から2本あげると次にようになる。<朝日新聞>「HPVワクチン接種、男性も」(2020年12月5日)「子宮頸がん死亡4千人増と推計 阪大、ワクチン接種減で」(2020年11月4日)<毎日新聞>「HPVワクチンへの不安を取り除き、女性を守りたい/上」(2021年2月18日)「子宮頸がん予防、拡充目指す 元俳優の三原じゅん子副厚労相」(2020月11月19日)<読売新聞>「HPVワクチン、男性への使用可能に…厚労省部会が了承」(2020年12月5日)「子宮頸がんワクチン 7割前向き…大阪府内の小児科医調査」(2020年11月21日、有料読者のみ閲覧可)<日本経済新聞>「子宮頸がんワクチン普及に光明、日本の接種率0.3%」(2020年11月15日)「子宮頸がんワクチン 発症リスク約6割減、スウェーデン」(2020年10月19日)見出しの一覧だけでもわかるとおり、ワクチンの否定的な記事は一本もなく、実際に各記事に目を通してもHPVワクチンに否定的な内容ではない、むしろ肯定的と言ってもいい。その意味ではHPVワクチンについては空気が大きく変わっているのが現状、あと一歩とも言える。そして個人的なことを話せば、私自身がシルガード9の定期接種ワクチンへの追加と定期接種の正常化を願う、現高校2年生の女子の父親である。前々回の連載でも書いたように私はワクチンというワクチンはほぼ打ち尽くしている自称「ワクチンマニア」だが、そんな私にある時、高校1年生当時の娘が相談してきた。「あのさ、自分もさ、あのなんていうの子宮頸がんのワクチンって言うの? 打ったほうがいいのかな?」私は娘にはHPVワクチンのことは一度も話したことはない。実はこれには明確な理由がある。別に接種させたくないわけではないし、むしろ接種させたい。ただ、それは9価ワクチン一択である。この時は娘には率直に4価ワクチンと9価ワクチンの医学的なメリットとデメリット、また現在のHPVワクチンをめぐる現状も話した。このHPVワクチンを巡る現状では、現在国内で騒がれている副反応と呼ばれる症状はこれまでの研究結果からはワクチンとの因果関係がないであろうと強く推認されるということも伝えた。そのうえで、娘には現時点であなたは定期接種対象者で4価ワクチンは無料で接種できることを話し、次の選択肢を提示した。(1)4価ワクチンを定期接種で接種してそれで終了にする(2)4価ワクチンを定期接種で接種し、9価ワクチンの承認後にそれを再接種(3)9価ワクチンの承認と定期接種組み入れを待って接種ちなみに最初にこの3つを話した段階で娘が即時に却下したのは(2)である。答えは簡単、「合計6回も注射はしたくない」ということだ。残るは(1)と(3)、娘は結構悩んでいいたが、ほぼ(3)を選びかけた。ところがこの時点で娘が私に聞いてきた。「あのさ、この9価ワクチンの承認とかが自分が高校2年生以上の時期になった場合、費用どうなるの?」おお、意外と勘が鋭い。そこでこのように説明した。「1回3万円強のワクチンを3回、合計10万円弱をお父さんが払うことになる」これには娘が絶句。ただ、私は「もし今後数年以内に9価ワクチンの承認と定期接種の組み入れ、さらには定期接種の正常化が実現すれば、高校2年生以降でも無料で受けられる可能性がある」と伝えた。なぜそう伝えたのか? これは日本脳炎ワクチンの事例を踏まえたものである。多くの医療従事者はご存じのように定期接種である日本脳炎ワクチンでは、重篤な副反応が発生した影響で、今回のHPVワクチンのように2005年度から2009年度までの間、積極的な接種勧奨が差し控えられた。その後、製法を改良して作られたワクチンで定期接種が正常化された際、この勧奨差し控え期間中に接種対象だった児童は、補償的な措置として20歳まで定期接種として無料接種が可能という措置が取られている。私はHPVワクチンについても同様の措置が取られると可能性が高いと踏んでいる。娘にもそのように伝えた。その結果、娘は(3)を選択し、私もそれを追認した。そしてこの選択にはさらに父親として「お父さん補償措置」を追加し、娘に伝えた。それは「9価ワクチンの承認と定期接種の組み入れ、さらには定期接種の正常化が実現した段階で補償措置がなかったり、その対象外となった場合、さらにはあなたが高校2年生以降、そうした政策的決定がなされる前に自分でやはり接種したいと思った時はすべてお父さんが費用を負担して9価ワクチンを接種すること」というものである。そんなこんなで私も娘も9価ワクチンの定期接種の組み入れと定期接種の正常化を待っている。いや、もしかしたら娘は待っていないかもしれない。というのも「ワクチンは痛いからなるべくなら打ちたくない」と言っているからである。実際、今回のコロナ禍に際してインフルエンザワクチンは接種しておこうと言った私に対してギリギリまで抵抗し、自分が欲しい宝塚のDVDを買うことをインフルエンザワクチン接種の条件として提示してきたくらいである(仕方なく了承したが)。まあ、そういう私も「9価ワクチン3回で10万円弱だと、居酒屋で何回飲めるだろう」と暗算したくらいなので、娘のことは非難できない。なお、もしかしたら「娘の健康のために10万円を惜しむのか?」というご批判もあるかもしれないが、緊急事態宣言下に会員クラブに行けるほどの余裕がある一部のお偉いさんと違って、ド庶民の私にとって10万円は超大金なのでご理解いただきたい、としか答えようがないのである。

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COVID-19の重症度、現在より過去の喫煙が関連か/日本疫学会

 喫煙者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクについては、海外から相反する結果が報告されている。また、過去喫煙者と現在喫煙者では重症化リスクが異なるとの報告もある。日本人COVID-19入院患者を対象に、喫煙歴と重症度の関連を検討した結果を、1月27~29日にオンライン開催された第31回日本疫学会学術総会で、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)が発表した。 解析に使われたのは、国立国際医療研究センターが中心となり日本全国の施設からCOVID-19入院症例を登録するレジストリ研究COVIREGI-JP1)のデータ。2021年1月12日時点で、872施設から2万4,017例が登録されている。このうち、日本国籍を有し、転院・転送例を除く20~89歳の患者1万853例が解析対象とされた。 重症度は入院中の治療等により0~5の6段階で定義された(重症度0:酸素投与なし、重症度1:非侵襲的な酸素投与、重症度2:ハイフロー・NIPPV、重症度3:侵襲的機械換気[ECMO以外]、重症度4:ECMO、重症度5:死亡[治療内容は問わず])。 主な結果は以下の通り。・解析対象患者の属性は、男性6,321例、女性4,532例。20代が2,091例と最も多く、50代(1,917例)、40代(1,729例)、30代(1,534例)と続く。・喫煙歴は、[男性]現在喫煙者:1,581例(28.8%)、過去喫煙者:1,717例(31.2%)、喫煙歴なし:2,198例(40.0%)[女性]現在喫煙者:574例(15.0%)、過去喫煙者:453例(11.8%)、喫煙歴なし:2,803例(73.2%)・重症度は、[男性]0:4,655例(73.6%)、1:1,186例(18.8%)、2:132例(2.1%)、3:100例(1.6%)、4:15例(0.2%)、5:233例(3.7%)[女性]0:3,783例(83.5%)、1:598例(13.2%)、2:40例(0.9%)、3:15例(0.3%)、4:0%、5:96例(2.1%)・男女ともに年齢が上がるほど重症化リスクが高い傾向がみられた。・年齢で調整後も、女性より男性で重症化リスクが高い傾向がみられた。・心血管疾患、COPD、糖尿病、肥満などの既報にて重症化との関連が指摘されている併存疾患を有する場合、併存疾患なしの場合と比較して重症化リスクが有意に増加していた。・男性では、とくに重症度1および4/5との比較において、過去の喫煙者で重症化リスクが高まる傾向がみられた(重症度0を対照群、喫煙歴なしを基準としたオッズ比):[重症度1(1,186例)]現在喫煙者:年齢調整後0.88(95%信頼区間:0.73~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.84(0.69~1.03)過去喫煙者:年齢調整後1.28(1.09~1.52)、年齢・併存疾患調整後1.23(1.04~1.46)[重症度2(132例)]現在喫煙者:年齢調整後0.62(0.36~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.60(0.35~1.04)過去喫煙者:年齢調整後1.14(0.76~1.71)、年齢・併存疾患調整後1.08(0.72~1.64)[重症度4/5(248例)]現在喫煙者:年齢調整後0.97(0.55~1.69)、年齢・併存疾患調整後0.88(0.48~1.62)過去喫煙者:年齢調整後1.61(1.11~2.33)、年齢・併存疾患調整後1.29(0.86~1.93)・女性では、男性でみられたような傾向はみられなかった。・現在喫煙者と比較して過去喫煙者のほうが、うっ血性心不全、脳血管障害、高血圧症、重症糖尿病などの併存疾患を有する割合が高かった。 これらの結果から、大曲氏は喫煙歴とCOVID-19重症化リスクについて、下記のように考察した:1.過去喫煙者は何らかの疾患に罹患したことで禁煙した可能性がある2.過去喫煙者は禁煙したものの、併存疾患により重症化リスクが高いのではないか3.現在喫煙者はまだこれらの疾患に罹患していないために、重症化リスクが上がらないのではないか4.現在の喫煙そのものは現在の重症化リスクとは直接関係しないが、他の疾患に罹患することで将来COVID-19に罹患した場合には重症化リスクが高まるのではないか また、女性では過去の喫煙と重症度との間に関連がみられなかったことについて、女性では全体として喫煙者が少なく、検出力が不足していた可能性を指摘した。

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「喘息患者の受診控え」に緊急提言、花粉時期はさらなる注意を

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、患者の受診控えの傾向が続いている。アストラゼネカは日本呼吸器学会と共同で「『喘息患者の受診控え』に緊急提言 ~コロナ禍が続く中で迎える花粉飛散シーズン、どう喘息悪化を防止するか~」と題したセミナーを開催した。 この中で、 高知大学の横山 彰仁氏(呼吸器・アレルギー内科学 教授)が「喘息における継続治療の重要性~ウイルスや花粉の影響~」と題した講演を行った。この中で横山氏は、・喘息は治療継続が必要な病気。受診控えや治療中断は悪化要因となる・喘息は、ウイルス感染やタバコの煙、花粉といった刺激で症状が悪化する。今年は多くの地域で昨年より花粉飛散量が大幅に増えると予測されており、注意が必要・COVID-19を理由とした受診控えが多いが、これまでの研究では喘息はCOVID-19の罹患因子でも重症化因子でもなく1)、COVID-19悪化入院患者のうち喘息患者の割合はインフルエンザ患者よりも低い2)、とし「喘息のコントロールができていればCOVID-19を過度に恐れる必要はない」と述べた。 さらに、今後予定されるCOVID-19のワクチン接種に関し、基礎疾患を持つ人は優先接種の対象となり、厚生労働省が発表した基礎疾患の基準には「慢性呼吸器疾患」が入っている。ただし、この基準に対する意見を求められた日本アレルギー学会・日本呼吸器学会は、下記の見解を伝えたことを紹介した。・気管支喘息患者は優先接種の対象とする必要はない。ただし、1)経口ステロイド薬使用患者、2)吸入ステロイド薬使用者のうち喘息コントロールが不良である(過去1年以内の入院歴がある)患者、3)過去1年以内に2回以上の予定外外来あるいは救急外来受診歴がある患者、は対象とする。・慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、喘息患者のうちCOPD併存患者は対象とする。 続いて、慶應義塾大学の福永 興壱氏(呼吸器内科 教授)が「新型コロナウイルス流行下での喘息患者の受診状況と受診控えが喘息患者に及ぼす影響」というテーマで講演を行った。この中で福永氏はCOVID-19流行が拡大した2020年4月から10月にかけて、喘息吸入薬の処方数が激減した3)。一方で、同じ慢性疾患である糖尿病薬剤は処方数が変わっておらず3)、受診控えがさほど起きていない状況を紹介し、「喘息は症状が治まると疾患の自覚が乏しく、受診控えが起きやすいのでは」と分析した。さらに、自院での感染防止対策を紹介したうえで「治療をせずに発作を繰り返すと、リモデリングといって気管が硬化し、喘息が重症化しやすくなる。今の時期は花粉をきっかけとした重症化も多い。電話診療等を行う医療機関も増えているので、適切な受診と治療継続をしてほしい」と呼びかけた。

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「新型コロナワクチンについて 第1版」を公開/国立感染研

 国立感染症研究所が、「新型コロナワクチンについて 第1版(2021年2月12日現在)」を公開した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの国内での接種開始にあたり、現在得られている知見を概要としてまとめたもの。これまで見つかっている3種類の変異株への効果についても考察されている。 本ページには、以下の内容が引用文献とともに掲載されている。・新型コロナウイルスの感染成立のメカニズムについて・日本で使用が検討されている3つの新型コロナワクチンの種類、組成、ベクターについて・海外での臨床試験における評価項目、臨床試験成績について・有効性の持続期間と今後の接種スケジュールの展望について・新規変異株に対するワクチン有効性について

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HCVワクチン第I/II相試験、慢性感染への予防効果認めず/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)に対する2種の遺伝子組み換えワクチンを接種するワクチンレジメン戦略について、重篤な有害事象は起きずレジメンの安全性は確認され、HCV特異的T細胞反応とHCV RNAピーク値の低下は認められたことが示された。一方で、HCVの慢性感染に対する予防効果は認められなかった。米国・ニューメキシコ大学のKimberly Page氏らが、第I/II相無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。HCV感染症に対しては、現在、安全で有効な治療法があるが、注射器で薬物を使用するHCV感染者がHCVの治療を求めることはまれであるという研究が示されており、HCV感染症を撲滅する取り組みにおいては、HCVの慢性感染を予防する安全で有効なワクチンが重要な要素になる。試験の結果を踏まえて著者は、「世界的な制御を成功させるには、HCV感染症予防のための他の戦略、スクリーニングおよび治療に加えて、予防的なワクチンが必要になるだろう」と述べている。NEJM誌2021年2月11日号掲載の報告。0日目、56日目に接種するワクチンレジメン 今回の検討では、HCVの感染リスクが高いが感染不明者へのワクチン接種の安全性を評価すること、およびワクチンレジメンがプラセボよりもHCV慢性感染に有効かどうかを確認することを主な目的とした。副次目的として、ワクチンの免疫原性を評価した。 研究グループは、2012~18年にジョンズ・ホプキンズ大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、ニューメキシコ大学で、無作為化前90日以内に薬物注射歴があるHCV感染不明の健康成人(18~45歳)548例を対象に試験を実施。遺伝子組み換えチンパンジーアデノウイルス3型ベクター(ChAd3)のプライミングワクチン接種と、遺伝子組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)のブースター接種のワクチンレジメンについて検討した。両ワクチンは、HCV非構造蛋白をコード化したものだった。 被験者を無作為に2群に分け、0日目と56日目に一方には前述のワクチンを、もう一方にはプラセボを接種した。 安全性の主要エンドポイントは、ワクチン関連の重篤な有害事象、重度の局所または全身性の有害事象、臨床検査値で認められる有害事象だった。有効性の主要エンドポイントは、HCV慢性感染で、6ヵ月持続するウイルス血症と定義した。per-protocol集団で両群のHCV慢性感染はいずれも14例 548例(78%が男性、61%が白人)は、ワクチン接種群、対照群それぞれ274例に無作為に割り付けられた。 HCV慢性感染の発生率について、両群に有意差は認められなかった。per-protocol集団(ワクチン群261例、プラセボ群259例)でHCV慢性感染が認められたのは、両群とも14例だった(ワクチン群vs.プラセボ群のハザード比[HR]:1.53[95%信頼区間[CI]:0.66~3.55]、ワクチン有効性:-53%[95%CI:-255~34])。 修正intention-to-treat集団(ワクチン群256例、プラセボ群257例)では、HCV慢性感染が認められたのは、ワクチン群19例、プラセボ群17例だった(HR:1.66[95%CI:0.79~3.50]、ワクチン有効性:-66%[95%CI:-250~21])。 一方、感染後HCV RNAのピーク値幾何平均には、ワクチン群とプラセボ群で差が認められた(それぞれ、152.51×103 IU/mL、1,804.93×103 IU/mL)。また、HCVに対するT細胞反応は、ワクチン群では78%で検出された。 重篤な有害事象の発現頻度は、両群で同程度だった。

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コロナワクチン「コミナティ」使用時の具体的な注意点

 「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果として2月14日に特例承認されたファイザーの「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注)について、同日、本剤の使用に当たっての具体的な留意事項の通知が、厚生労働省から都道府県などの各衛生主管部(局)長宛に発出された。 本通知には、薬剤調製、接種時の具体的な注意点が記載されており、以下に一部抜粋する。■解凍方法・冷蔵庫(2~8℃)で解凍する場合は、解凍および希釈を5日以内に行う・室温で解凍する場合は、解凍および希釈を2時間以内に行う・解凍後は再冷凍しない■希釈方法・希釈前に室温に戻しておく・本剤のバイアルに日局生理食塩液1.8mLを加え、白色の均一な液になるまでゆっくりと転倒混和する。振り混ぜない・希釈後の液は6回接種分(1回0.3mL)を有する。デッドボリュームの少ない注射針または注射筒を使用した場合、6回分を採取することができる。標準的な注射針および注射筒等を使用した場合、6回目の接種分を採取できないことがある。1回0.3mLを採取できない場合、残量は廃棄する・希釈後の液は2~30℃で保存し、希釈後6時間以内に使用する。希釈後6時間以内に使用しなかった液は廃棄する■薬剤接種時の注意・通常、三角筋に筋肉内接種する。静脈内、皮内、皮下への接種は行わない また本剤の適正使用として、本剤の成分に対して重度の過敏症の既往歴のある者等は予防接種を受けることが適当でないとし、本剤の成分を示している。・トジナメラン(有効成分)・[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸エステル)・2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド・1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン・コレステロール・精製白糖・塩化ナトリウム・塩化カリウム・リン酸水素ナトリウム二水和物・リン酸二水素カリウム そのほか、注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射としてあらわれる失神への対処、妊婦または妊娠している可能性のある女性への接種の考え方なども記載されている。

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COVID-19関連小児多系統炎症性症候群、IVIG+ステロイドが有効/JAMA

 小児多系統炎症性症候群(MIS-C)の初期治療は、免疫グロブリン静注療法(IVIG)とメチルプレドニゾロンの併用療法がIVIG単独と比較し有効であることが、フランス国内のサーベイランスシステムのデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果で明らかとなった。同国・パリ大学のNaim Ouldali氏らが報告した。MIS-Cは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染に関連する最も重症の小児疾患で、死に至る可能性もあるが、最適な治療戦略はわかっていない。JAMA誌オンライン版2021年2月1日号掲載の報告。フランス全例調査、IVIG+メチルプレドニゾロン併用療法vs.IVIG単独の有効性を比較 2020年4月に欧州と米国で小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と関連すると思われるMIS-Cが報告されて以降、フランスではMIS-Cが疑われる症例はすべて同国の公衆衛生局に報告された。 研究グループは、このサーベイランスシステムのデータを用い、MIS-Cの初期治療としてのIVIG+メチルプレドニゾロン併用療法とIVIG単独の有効性について、傾向スコアマッチング法により後ろ向きに解析した。研究期間は2020年4月1日~2021年1月6日。 主要評価項目は、初期治療開始2日後の発熱持続、または7日以内の発熱再発で、これらを治療失敗と定義した。副次評価項目は、2次治療、血行動態補助、初期治療後の急性左心室機能不全および小児集中治療室在室期間であった。併用療法群で治療失敗リスクが有意に低い MIS-Cが疑われる小児患者は181例で、このうち111例が世界保健機関(WHO)の定義を満たした(女児58例[52%]、年齢中央値8.6歳[四分位範囲:4.7~12.1])。111例中5例は、併用療法およびIVIG単独療法のいずれも受けていなかった。 治療失敗は、併用療法群34例中3例(9%)、IVIG単独群72例中37例(51%)に認められた。併用療法群はIVIG単独群と比較して、治療失敗のリスク低下と関連していた(絶対リスク差:-0.28[95%信頼区間[CI]:-0.48~-0.08]、オッズ比[OR]:0.25[95%CI:0.09~0.70、p=0.008])。 併用療法群はIVIG単独群と比較して、2次治療実施のリスクも有意に低下した(絶対リスク差:-0.22[95%CI:-0.40~-0.04]、OR:0.19[95%CI:0.06~0.61、p=0.004])。また、血行動態補助(同:-0.17[-0.34~-0.004]、0.21[0.06~0.76])、初期治療後の急性左心室機能不全(-0.18[-0.35~-0.01]、0.20[0.06~0.66])、および小児集中治療室在室期間(中央値4日vs.6日、群間日数差:-2.4、95%CI:-4.0~-0.7)についても同様であった。

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