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良い睡眠には就寝環境も関係する/アイスタット

 世界的にみてもわが国の睡眠時間、睡眠の質は低いといわれている。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍の中で、私たちの睡眠環境に変化はあったのであろうか。 3月19日の「春の睡眠の日」に合わせ、「睡眠が快適な人とそうでない人は何が違うのか」また「昼間の眠気は、睡眠事情が関係しているものなのか」を知る目的で、株式会社アイスタットは睡眠に関するアンケートの調査を行った。 アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年3月16日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~59歳/全国地域/有職者)を対象アンケート結果の概要・最近1ヵ月間の睡眠状況が快適な人は34%。若い世代ほど快適が多い・平日の平均睡眠時間は5~6時間未満(35%)が最多。対象が有職者のため短い傾向・睡眠時間数が満足の割合は約30%で、睡眠時間が長い人ほど満足の人が多くなる傾向・睡眠が快適・そうでない人の違いは、睡眠時間が6時間以上で満足、6時間未満で満足ではない・日中の睡魔、居眠り、昼寝は、「たまにある(50%)」が最多。睡眠時間数が長い人ほど「ほとんどない」が多く、短い人ほど「頻繁にある」傾向・日中の睡魔・居眠り・昼寝が頻繁・たまにある人とほとんどない人の違いは、睡眠時間が6時間以上か未満・調査結果から、健康推進のためにいかに快適な睡眠をとることが大切か示唆された健康のために確保したい7時間の睡眠時間 「最近1ヵ月間の睡眠状況は、快適(ぐっすり眠れている、睡眠で身体の休養がとれるなど)かどうか」を聞いたところ、「非常に」「やや」を足し合わせた「快適」は34.0%、「あまり」「まったく」を足し合わせた「快適でない」は37.0%で「快適」が下回る結果となった。年代別では、「快適」と回答した人は「20・30代」(38.9%)で最も多く、年代が高くなるにつれ、快適の割合が低くなる傾向だった。また、睡眠時間別では、「快適」と回答した人は「7時間以上」(54.2%)が最も多く、睡眠時間が短くなるほど、快適の割合が低くなる傾向だった。 「最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間」について聞いたところ、最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間では、「5~6時間未満」(35.0%)が最も多く、次に「6~7時間未満」(29.0%)と続いた。回答者が有職者対象のため、睡眠時間数が短い傾向がうかがえた。年代別では、「5時間未満」と回答した人は「50代」(24.1%)で最も多く、「5~6時間未満」では「40代」(38.1%)、「6~7時間未満」では「20・30代」(33.3%)、「7時間以上」では「20・30代」(20.4%)で最も多かった。 先の質問と関連し、「睡眠時間数の満足度について」聞いたところ、「非常に満足」「やや満足」を足し合わせた「満足」は29.3%、「やや睡眠不足」「非常に睡眠不足」を足し合わせた「睡眠不足」は43.3%で、「睡眠不足」と回答した人の方が多かった。年代別では、「満足」と回答した人は「20・30代」(35.2%)で最も多く、「睡眠不足」と回答した人は「50代」(47.5%)で最も多い結果だった。また、睡眠時間別でみると、「満足」と回答した人は「7時間以上」(58.3%)だった。 「休日以外の日中で、睡魔に襲われる、居眠り、昼寝をすることがあるか」と聞いたところ、「たまにある」(50%)が最も多く、次に「ほとんどない」(35%)、「頻繁にある」(15%)と続いた。年代別では、「頻繁にある」と回答した人は「50代」(17.0%)で最も多く、「たまにある」と回答した人は「20・30代」(57.4%)で、「ほとんどない」と回答した人は「40代」(37.1%)で最も多い結果となった。睡眠時間別では「頻繁にある」と回答した人の睡眠は「5時間未満」(35%)で最も多く、「ほとんどない」と回答した人の睡眠は「7時間以上」(56.3%)で最も多い結果だった。睡眠時間の長短だけでなく、中年期以降では睡眠時無呼吸症候群などの慢性疾患も併存している可能もあり、必要によっては治療の必要性も示唆される結果となった。 「最近1ヵ月間の起床の仕方について(平均して最も多い起床の仕方なども含む)」を聞いたところ、「自然に目が覚める(体内時計)」が35.7%で最も多く、次に「携帯電話や目覚まし時計などのアラーム1回で起きる」の33.3%が続いた。年代別では「自然に目が覚める」は「50代」(39.7%)で最も多く、「携帯電話アラーム1回」は「20・30代」(35.2%)で最も多い結果だった。 「最近1ヵ月間の睡眠について、11個の選択肢であてはまるもの」を聞いたところ、第1位は「トイレで起きることがある」(47.3%)、第2位は「眠りが浅い」(26.7%)、第3位は「朝起きても眠気を感じる、毎朝スッキリしない」(26.0%)だった。年代別では、睡眠にマイナスと思われる選択肢11個のうち、50代は「トイレで起きることがある」「眠りが浅い」「寝ているのに疲れが残っていてだるい」「寝付きが悪い」「朝早くに目覚めてしまう」「いびきをかいているとよく言われる」「睡眠導入剤や快眠サプリメントを服用している」「寝相が悪い」の8個が最も多かった。 「就寝する部屋の状況」について7個の選択肢からあてはまるものを聞いたところ、「部屋は一人で寝ている」が44.7%で最も多く、次に「ベッドや布団の周りには物があまりなく、整理整頓されている」が33.7%と続いた。年代別では、睡眠にプラス的と思われる選択肢7個のうち、50代は「部屋は一人で寝ている」「外部の騒音など気にならない・静かである」「日当たりが良い部屋である」「部屋は日々、掃除機をかけたり、換気をしてキレイである」「就寝前、就寝中の部屋の温度、湿度は常に快適である」の5個が最も多く、快眠のための工夫がされている傾向がうかがえた。 「最近1ヵ月間の日々の生活状況」について15個の選択肢からあてはまることを聞いたところ、「ストレスがある」(36.7%)が最も多かった。睡眠時間別では、「ストレスがある」「仕事が忙しい」「コロナ禍により、収入面・雇用面・生活面で大きなダメージを受けている」「肥満傾向である」「栄養バランスの良い食事を摂取していない」「規則正しい生活を送っていない」「持病がある」と回答した人の睡眠時間は、「5時間未満」が最も多かった。一方、「どれもあてはまらない」と回答した人は「7時間以上(35.4%)」が最も多い結果だった。睡眠時間の長さが、ストレスの軽減に役立つことが示唆された。

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AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。NAAT陽性サンプルをシークエンシング 試験は18歳以上のボランティアを登録して行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)が投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱といったCOVID-19症状を呈した際にも実施された。 採取したスワブについては、SARS-CoV-2に関する核酸増幅検査(NAAT)を行い、陽性サンプルは、COVID-19ゲノム英国コンソーシアムでシークエンシングを行った。生ウイルス・マイクロ中和抗体測定法によりB.1.1.7系統ウイルスに対する中和抗体反応と、標準的な非B.1.1.7系統ウイルス(Victoria)に対する中和抗体反応を測定した。 有効性の解析では、血清反応陰性でNAAT陽性者の、ワクチン2回目接種後14日以降の症候性COVID-19などが評価された。被験者が接種を受けたワクチン別の解析も実施。ワクチン有効性については、ポアソン回帰モデルを用いて算出した1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19群vs.MenACWY群)で評価した。実験室でのウイルス中和活性、B.1.1.7系統は非B.1.1.7系統より低値 有効性コホートの被験者は2020年5月31日~11月13日に集められ、同年8月3日~12月30日に2回目のワクチン接種を受けていた。主要有効性コホートの被験者数は8,534例で、うち6,636例(78%)が18~55歳、5,065例(59%)が女性だった。 2020年10月1日~2021年1月14日に、520例がSARS-CoV-2感染を呈した。これら感染者から1,466個のNAAT陽性スワブが採取され、401個のスワブ(311例)について、シークエンシングに成功した。 実験室でのワクチン誘導抗体に対するウイルス中和活性は、Victoria系統よりもB.1.1.7系統は低値だった(幾何平均値の比:8.9、95%信頼区間[CI]:7.2~11.0)。 症候性NAAT陽性感染者に対する臨床的ワクチン有効性は、B.1.1.7系統で70.4%(95%CI:43.6~84.5)、非B.1.1.7系統では81.5%(67.9~89.4)だった。

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新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

 当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。 欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。 新型コロナウイルスの血栓形成メカニズムはわからない。動脈硬化も経過の長いimmunothrombosisと考えれば、心筋梗塞などの動脈硬化・血栓性疾患の発症予防・治療に有効なスタチンも新型コロナウイルス感染のimmunothrombosisに有効かもしれない。このスタチンの有効性も探索的に検討された。 日本以外の諸国では静脈血栓症予防・治療の標準治療として低分子ヘパリンが確立されている。低分子ヘパリンのうち、エノキサパリンを1日40mgの固定用量として使用する群と、体重1kg当たり1mgにて使用する群にランダムに振り分けた。有効性の1次エンドポイントとして静脈あるいは動脈血栓症・ECMO使用・死亡の複合エンドポイントを用いた。ICUに入院する新型コロナウイルス感染は怖い。30日以内の1次エンドポイント発現率は予防量低分子ヘパリン群にて44.1%、用量を増やしても発現率は45.7%であった。圧倒的多数の有効性1次エンドポイントは死亡に直結した。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓が多いわけではない。病態の主因がimmunothrombosisであっても、現在われわれがもっている抗凝固介入では予後を大きく改善できない。 遠回りかもしれないが、新型コロナウイルス感染によるimmunothrombosisのメカニズムを解明し、予後不良に寄与する因子を解明し、その因子に対する選択的治療薬の開発が必要である。抗血栓薬開発は既存の心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓に対しては出揃った感があるが、新型コロナウイルスに対しては基本に立ち返って革新的創薬が必須であることを本研究は示したことになる。

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がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開

 2021年3月29日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。昨年に公開された新型コロナとがん診療に関するQ&Aに付随した「ワクチン版」となる。 「Q1:がん患者はワクチンを受けた方がよいのですか」 「A:前向きに検討しましょう。ベネフィットとリスクを理解し、主治医の先生と相談して判断することが大切です」 ワクチン開発段階の臨床試験では、がん患者が対象に組み入れられることは少なかったが、世界各国で接種が進み、がん患者に関するエビデンスが集まりつつある現状を紹介。現状国内で承認された唯一のワクチンであるファイザー製のワクチン(BNT162b2)について、「イスラエルで実際に多くの人にBNT162b2が接種され、60万人と非接種者60万人と比較し報告されていますが、両群にはがん患者さんが2%、約12,000人が含まれています1)。全体として90%以上の発症予防効果示され、併存疾患に関する検討では、がん患者さんだけのデータは示されていませんが、3つ以上の併存疾患を有する場合の予防効果は86~89%でありその差はごくわずかです」と解説している。 「COVID-19ワクチンには予防効果というベネフィットと様々な副反応が生じるかもしれないというリスクがあります。がん患者さんのワクチン接種のベネフィットとして、発症や重症化の予防、検査やがん治療を遅滞なくより安全に進められることがあります」としたうえで、「がん患者さんにおける副反応についての調査や報告はありませんが、がん患者さんにおける重症化の可能性を考慮すると、ベネフィットがリスクを上回ると思われ接種が推奨されます。がん患者さん一人一人がそのベネフィットとリスクを正しく理解して、主治医の先生と相談して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」としている。 その他、放射線や薬物など治療ごとに考慮すべき点や、接種後の注意点などがまとめられている。

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子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーする「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ」【下平博士のDIノート】第71回

子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーする「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ」今回は、「組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス(HPV)様粒子ワクチン(商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ、製造販売元:MSD)」を紹介します。本剤は、子宮頸がんなどの原因となる7つのHPV型と、尖圭コンジローマなどの原因となる2つのHPV型の感染を予防する9価のHPVワクチンです。<効能・効果>本剤は、HPV6、11、16、18、31、33、45、52および58型の感染に起因する以下の疾患の予防の適応で、2020年7月21日に承認され、2021年2月24日より発売されています。なお、本剤の予防効果の持続期間は確立していません。子宮頸がん(扁平上皮細胞がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍[CIN]1、2および3ならびに上皮内腺がん[AIS])外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3ならびに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3尖圭コンジローマ<用法・用量>9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回(2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後)、筋肉内に注射します。1年以内に3回の接種を終了することが望ましいですが、2回目は初回から少なくとも1ヵ月以上、3回目は2回目から少なくとも3ヵ月以上の間隔を置いて接種することとされています。9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔をおいた合計2回の接種とすることができます(2023年3月改訂)。9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましいとされています。なお、医師が必要と認めた場合には、他ワクチンと同時に接種することができますが、本剤と他ワクチンを混合して接種することはできません。<安全性>日本人を含む後期第II相/第III相国際共同試験(001試験)において、注射部位の副反応は、本剤接種後5日間で7,071例中6,414例(90.7%)に認められ、主なものは疼痛6,356例(89.9%)、腫脹2,830例(40.0%)、紅斑2,407例(34.0%)、そう痒感388例(5.5%)、内出血137例(1.9%)、腫瘤90例(1.3%)、出血69例(1.0%)でした。また、全身性の副反応は、本剤接種後15日間で7,071例中2,090例(29.6%)に認められ、主なものは頭痛1,033例(14.6%)、発熱357例(5.0%)、悪心312例(4.4%)、浮動性めまい211例(3.0%)、疲労166例(2.3%)、下痢87例(1.2%)、口腔咽頭痛73例(1.0%)、筋肉痛69例(1.0%)でした。日本人を対象とした国内第III相臨床試験(008試験)では、注射部位の副反応は、本剤接種後5日間で100例中95例(95.0%)に認められ、主なものは疼痛93例(93.0%)、腫脹42例(42.0%)、紅斑33例(33.0%)、そう痒感4例(4.0%)、出血3例(3.0%)、熱感3例(3.0%)でした。また、全身性の副反応は、本剤接種後15日間で100例中14例(14.0%)に認められ、主なものは発熱3例(3.0%)、頭痛2例(2.0%)、悪心2例(2.0%)、感覚鈍麻2例(2.0%)、腹痛2例(2.0%)でした。なお、重大な副作用として、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹)、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(いずれも頻度不明)が設定されています。国内外の臨床試験における安全性検討対象1万3,408例では、過敏症3例および蕁麻疹20例が副反応として報告されています。ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病およびADEMは臨床試験において認められていませんが、本剤と同一の有効成分を含むワクチン(商品名:ガーダシル)と同様に設定されました。<患者さんへの指導例>1.ワクチン接種により、子宮頸がんや尖圭コンジローマなどの原因となる9つのHPV型に対する抗体ができ、今後の感染を予防します。2.接種後に血管迷走神経反射として失神が現れることがあります。接種後30分程度は、背もたれや肘掛けのある安全ないすに座っていてください。3.本剤接種後に、注射部位だけでなくほかの部位に激しい痛み(筋肉痛、関節痛、皮膚の痛みなど)やしびれ、脱力などが現れて長時間持続する場合は、速やかに医師に相談してください。4.十分な予防効果を得るために、必ず本剤を3回接種してください。通常の接種スケジュールは、初回接種の2ヵ月後に2回目、初回接種の6ヵ月後に3回目となります。<Shimo's eyes>わが国において、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、毎年約2,900人が死亡しています。患者数・死亡者数ともに近年増加傾向にあり、子宮頸がん発症のピークが出産年齢と重なることが問題となっています。子宮頸がんの95%以上はHPV感染が原因で、感染経路は主に性的接触です。性交渉の経験がある女性のうち、50~80%が生涯で一度以上の感染を経験すると推計されていて、そのうちの一部が将来的に高度前がん病変や子宮頸がんを発症します。本剤は、わが国で3番目に発売されたHPVワクチンです。いずれの製剤も筋肉内注射で、計3回接種が必要です。既存薬の1つである2価ワクチン(商品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染を予防します。もう1つの既存薬である4価ワクチン(同:ガーダシル)は、上記に加えて尖圭コンジローマなどの原因となる6型と11型の感染も予防します。4価ワクチンは、2020年12月に男性も接種が可能となりました(公費助成の対象外)。本剤は、2021年2月に発売された9価ワクチンで、前述の4つのHPV型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型の5つのHPV型のウイルス様粒子も含有することで、約90%の子宮頸がんを予防することが期待されています。既存2剤は定期接種の対象で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費助成によって無料で接種を受けることができます。発売当初は本剤は任意接種でしたが、2023年4月から本剤についても定期接種の対象となりました。HPVワクチンは、今後のHPVの感染を予防するものであり、すでにHPVに感染している細胞からのウイルス排除や進行抑制には効果はありません。したがって、性交渉を経験する前に接種することが最も効果的ですが、性交渉の経験があっても、予防対象のHPV型に感染していなければ効果が期待できます。HPVワクチンについては、過去に疼痛や運動障害などの副反応が大きく報道され、2013年6月に厚生労働省より「積極的な勧奨の一時差し控え」が発表されました。世界では接種完遂率が80%を超える国もある中、わが国の接種率は0.3%と非常に低い水準にとどまっています。一方で、2017年11月に、厚生労働省専門部会は、HPVワクチン接種後に報告された多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されていないと発表しています。近年、国が地方自治体に定期接種対象者への周知を徹底するよう求めるなど、接種率向上に向けた動きがみられています。※2023年8月、厚生労働省の情報などをもとに、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 シルガード9水性懸濁筋注シリンジ2)子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために(日本産科婦人科学会)3)海外のHPVワクチンの現状(MSD)

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ワクチン接種で役立つ筋肉注射の手技とコツ【今、知っておきたいワクチンの話】特別編

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、3月より医療者から始まり、4月からは高齢者、基礎疾患のある方、一般の方へと開始される予定です。現在、承認され接種可能なワクチンはファイザーの「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注)のみであり筋肉注射となっております。今後追加承認が予想されるモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンも筋肉注射による接種となっています。その理由として、「不活化ワクチンによる局所反応は、皮下注射より筋肉注射の方が腫れにくいこと」、「皮下注射よりも筋肉注射の方が痛みが少ないこと」、「皮下注射より血流が豊富な筋肉注射の方が免疫が付きやすいこと」などがあげられています。そこで、本稿では、日本プライマリ・ケア連合学会 予防医療・健康増進委員会ワクチンチームの協力により、同委員会の中山 久仁子氏の解説でこれから実際に臨床現場で接種する際の筋肉注射の手技について、その手順を動画で説明します。また、新型コロナワクチンでは、接種後に懸念されているアナフィラキシーショックでのアドレナリン注射の対応を説明いただきます。筋肉注射は、今回のCOVID-19ワクチンなど特別なものではなく、HPVワクチン、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどでも行われるものです。この機会に手技に慣れていただき、経験を深めてください。筋肉注射の接種方法のコツ筋肉注射の部位などについて部位:上腕三角筋(1)肩峰から下ろした線(2)前後の腋窩線の頂点を結んだ線(1)と(2)が交わる点または肩峰から3横指下針の長さ:長さ25mmの針を基本的に根元まで刺して注入する痩せ形の体形:ゆっくりと針を進め、確実に筋肉内に注入、または長さ16mmの針に付け替えて根元まで刺して注入高度肥満:長さ38mmの針に付け替えて根元まで刺して注入針の角度:90度、垂直吸引確認:不要筋肉注射の穿刺部位画像を拡大する筋肉注射の手順※接種では、接種者・被接種者ともに座位で行う1)シリンジにワクチンを入れ、溶液に異常がないか目視2)手を下に下ろしていただく(リラックス)3)三角筋の位置を確認する4)三角筋の辺縁を触って確認する注:筋肉をつままない5)アルコールで接種する部位を消毒する6)注射針を皮膚面に対して垂直(直角)に刺入する7)内筒を押しワクチン溶液を全量注入する注:内筒を引かない8)針を抜き、軽く圧迫する。揉まない注:抗凝固薬・抗血小板薬内服中の方は2分間圧迫対象者に痛みを感じさせない接種のために1)筋注は筋肉内に打つ(一般的に不活化ワクチンを皮下に打つと痛い)2)内筒(プランジャー)を引かない(逆血確認不要)3)ワクチンを素早く注入し、刺入中は針の先を動かさない4)接種後に接種部位を圧迫する5)気を紛らわせるように話しかけたり、演技する。接種者は笑顔で!アナフィラキシーショックでの対応:アドレナリン注射(商品名:エピペンなど)の使い方【注射部位】アドレナリンの筋肉注射は患者を横臥位で施行アドレナリンの筋肉注射の部位は大腿中央前外側【エピペン筋肉注射の手順】1)カバーキャップを指で押し開け、注射器を取り出す2)ニードルカバー(オレンジ色)を下に向け、注射器の真ん中を片手で保持、もう片方の手で青色の安全キャップを外し、ロックを解除3)注射器を太ももの前外側に垂直になるようにし、ニードルカバーの先端を「カチッ」と音がするまで強く押し付ける4)太ももに押し付けたまま、5まで数を数える5)注射器を太ももから抜き取る6)注射後、ニードルカバーが伸びているかどうか確認。ニードルカバーが伸びていれば注射は完了アドレナリン注射での注意1)アドレナリンの筋肉注射については、下記の厚生労働省の通知をご参照ください。「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について」「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について(その2)」2)エピペンの処方または使用する医師はマイランEPD合同会社が提供するエピペン登録医講習の受講が必要です。詳しくは「エピペンサイト」をご参照ください。使用に関して動画の解説もあります。参考となるサイト「新型コロナワクチン 今わかっていること まだわからないこと」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム制作)同講演 解説資料(PDF)「新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版 ダイジェスト版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)講師紹介

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第54回 AZ社COVID-19ワクチン後の普通じゃない血栓症はヘパリン起因性血小板減少症に類似

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質抗原を作るアデノウイルスを下地とするAstraZenecaのワクチンAZD1222を今年2月中頃に欧州で接種した49歳の健康な女性看護師が内臓・大動脈・脳静脈の血栓症や血小板減少を呈し、残念ながら治療の甲斐なく死亡しました。女性の治療にあたった医師らの病院で3月中旬までにさらに8人に同様の症状が認められ、AZD1222接種4~16日後に血栓症を呈し始めたそれらの9人の病態は血小板活性化抗体を原因とするヘパリン起因性血小板減少症(HIT)にはっきり似通っていました1)。HITは血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を認識する血小板活性化抗体によって生じる血栓促進性の血小板減少疾患です。9人のうち1人を除く8人は女性で、年齢は比較的若く22~49歳(中央値36歳)でした。7人は脳静脈血栓症、1人は肺塞栓症、最初の検出例である1人は上述の通り内臓や脳などの複数の組織に血栓症を呈し、9人中4人が亡くなりました。9人のうち4人の血清を調べたところどの人の血清もPF4存在下でヘパリンがなくとも血小板を強く活性化しました。誰も発症前にヘパリンを使っておらず、AZD1222接種者の血小板活性化抗体は複合体を形成していない単独のPF4にどうやら結合するようです。欧州医薬品庁(EMA)や世界保健機関(WHO)はAZD1222使用継続を支持していますが2,3)、欧州のいくつかの国やカナダでは血栓症の懸念を受けてその使用を控えています4,5)。9例の検討結果を今回報告した著者は、特に脳や腹部などでの“普通じゃない(unusual)”血栓症や血小板減少がワクチン接種からおよそ5~14日後に稀に生じることを知っておく必要があると言っています。また、その病態をvaccine induced prothrombotic immune thrombocytopenia(VIPIT) と呼ぶことを提案しています。いまのところAstraZenecaワクチンAZD1222でのみ認められているVIPITが生じたならリバーロキサバンやアピキサバンなどのヘパリン以外の抗凝固薬をまずは使ったらよさそうです1)。脳静脈洞血栓症(CVST)などの致死リスクがある血栓症に陥ったワクチン接種者には高用量免疫グロブリン静注が助けになりそうです。インフルエンザワクチンとナルコレプシーワクチンの稀な深刻な有害事象といえば10年以上前のH1N1(ブタ)インフルエンザワクチンPandemrix(AS03アジュバント添加)接種小児の慢性睡眠疾患・ナルコレプシー発現率上昇が思い出されます。発現率は投与1万8,400回あたり約1例と稀ですが、小児の発現がワクチン接種後にとくに増えました6)。AS03アジュバントとナルコレプシー発現率上昇の関連は否定されているものの7)10年以上経た今となってもPandemrixとナルコレプシーの関連性はいまだに結論がでていません8)。しかし疫学やワクチンの研究者などが集まってベルギーで3年前の2018年3月末に開催された検討会ではPandemrix接種後の一貫したナルコレプシーリスク上昇が認められていると結論され9)、同ワクチンとH1N1インフルエンザウイルスの相互作用に帰するナルコレプシーは恐らくあるようだと参加者は考えています8)。参考1)A Prothrombotic Thrombocytopenic Disorder Resembling Heparin-Induced Thrombocytopenia Following Coronavirus-19 Vaccination. Research Square. Posted 28 Mar, 20212)Statement of the WHO Global Advisory Committee on Vaccine Safety (GACVS) COVID-19 subcommittee on safety signals related to the AstraZeneca COVID-19 vaccine / WHO3)AstraZeneca COVID-19 vaccine: review of very rare cases of unusual blood clots continues / EMA4)AstraZeneca COVID Vaccine: Clotting Disorder Mechanism Revealed? / Medscape5)Germany suspends use of AstraZeneca’s Covid shot for the under-60s, dealing another blow to drugmaker / CNBC 6)Sarkanen TO, et al. Sleep Med Rev. 2018 Apr;38:177-186. 7)Weibel D, et al.Vaccine. 2018 Oct 1;36:6202-6211. 8)Why is it so hard to investigate the rare side effects of COVID vaccines? / Nature9)Edwards K, et al. Biologicals. 2019 Jul;60:1-7.

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ナノミセルを使った効率的なゲノム編集法の開発に成功

 公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の副主幹研究員、内田 智士氏(京都府立医科大学准教授)らの研究グループは、ナノミセルを用いたCRISPR/Cas9の送達手法を開発し、世界で初めてRNAを基盤としたマウス脳内でのゲノム編集に成功したことを3月10日付けのプレスリリースで発表した。本研究の成果は2021年3月4日にJournal of Controlled Release誌に掲載された。 ゲノム編集技術は、遺伝子異常が原因の疾患に対して、ヒトの遺伝子を自由に改変することで異常が起こった遺伝子を修復し、永続的な効果が期待できる治療法である。その中でも2020年ノーベル化学賞を受賞したCRISPR/Cas9を用いた手法では、Cas9タンパク質とガイドRNA(sgRNA)を組み合わせることで、標的の遺伝子を認識し切断を行う。この手法では標的遺伝子ごとのタンパク質の設計は不要で、合成が容易なsgRNAの設計だけで切断箇所を自由に選択できるため、コストや手間を抑えることができる。 Cas9タンパク質とsgRNAの導入方法としては、アデノ随伴ウイルスを用いてCas9タンパク質とsgRNAを作る遺伝子を生体に送る方法やCas9タンパク質/sgRNA複合体をそのまま生体に送る方法がある。しかし、前者は搭載できる遺伝子のサイズの制限や非特異的な遺伝子の切断が課題となり、後者は経済的に高価な点や大量製造が困難な点が課題となる。 内田氏らの研究グループが開発した手法は、Cas9タンパク質のmRNAとsgRNAを1つのナノミセルに搭載して生体へ送るものである。mRNAをそのまま生体へ送ろうとすると細胞外で分解されてしまったり炎症反応を起こしてしまったりすることがあるため、ポリエチレングリコールとポリカチオンで構成されたナノミセルにmRNAとsgRNAを同時に搭載することで、安全かつ容易に生体に送達することができるようになったという。さらに、この手法では、搭載できる遺伝子サイズに制限がないほか、Cas9タンパク質の発現が一過性であるため非特異的切断も起こりにくいと考えられる。 今回の研究では、遺伝子編集が起こった場合にのみ特定の色の蛍光タンパク質が発現するような遺伝子改変マウスを用いて、脳内の遺伝子編集が起こったかどうかを蛍光観察によって評価した。その結果、Cas9タンパク質のmRNAとsgRNAを搭載したナノミセルをマウスの脳内に投与することで、神経細胞やアストロサイト、ミクログリアといった広範囲な細胞種で蛍光が確認され、遺伝子編集が行われたことが示された。本研究の成果について、内田氏は「今後はハンチントン病やアルツハイマー病といった神経系難治疾患への応用が期待される」と語った。

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新型コロナワクチン、予診票で確認すべきポイントは?/厚労省

 4月12日以降に予定されている高齢者への新型コロナワクチン接種開始を前に、厚生労働省は3月26日、新型コロナワクチン「予診票の確認のポイント」を公開した。予診票記載の14項目について接種前に確認すべき点がまとめられている。事務職員が確認可能な項目、最終的に医師の確認が必要な項目についても整理されている。既往症、現在の治療内容についての確認ポイント 予診票には、「現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか」という問いが設けられ、抗凝固薬(血をサラサラにする薬と表記)の利用状況を問う項目が設けられている。確認ポイントとしては、とくに以下に該当するかに注意して接種の判断をするよう求めている:・基礎疾患の状態が悪化している場合や全身状態が悪い場合 体調が回復してから接種することが大切なため、体調が悪いときの接種は控える。体調がよくなった頃に、改めて次の接種を相談するよう説明する。接種後の軽度の副反応が重篤な転帰に繋がることのないよう、とくに慎重に予防接種の適否を判断する必要がある。・免疫不全、血が止まりにくい病気のある場合や、抗凝固薬を服用している場合 免疫不全のある方は、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクが高いとされている。米国CDCの見解では、現時点で、有効性と安全性に関する確立されたデータはないが、他の接種不適当者の条件に該当しなければ、接種は可能としている。 血が止まりにくい病気のある方や、抗凝固薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクがあるため、接種後2分以上、強めに接種部位を圧迫してもらう必要はあるが、接種は可能(なお、抗血小板薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクではないとされているので、接種は可能。ただし、止血に時間がかかる可能性があることに留意が必要)※なお厚労省では、「血をサラサラにする薬を飲まれている方へ」と題した情報提供用資料も公開している。・アレルギー疾患のある方 アレルギー歴についての確認ポイントを参照。アレルギー歴についての確認ポイント 予診票には、「薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか」という問いが設けられ、「薬・食品など原因となったもの」が記載できる。ここでの確認のポイントとしては、下記のようにまとめられている:・接種するワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往のある人は、接種不適当者に該当・1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は、2回目の接種はできない・食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症含む)、蕁麻疹、アレルギー体質等だけでは、接種不適当者にはならず、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能・ただし、即時型のアレルギー反応の既往歴がある人は、接種要注意者として、接種後30分間の経過観察をする さらに、「接種するワクチンの成分」について、ファイザー社のワクチンに含まれるポリエチレングリコールや、交差反応性が懸念されているポリソルベートが含まれる製品例や、接種判断の考え方が解説されている。 今回発表された「予診票の確認のポイント」では、上記2項目を含め、下記の全14項目について、確認のポイントとその解説がまとめられている。1~4、13は事務職員等が確認可能とされ、その他の項目も、記入の有無などの確認は事務職員等が行うことができるとされている。5~12、14については、最終的に医師が確認した上で接種を判断する必要があるとしたうえで、これらの項目も、記載内容を医師以外の医療従事者があらかじめ確認することで、医師の予診の時間が短縮されると考えられるとしている。[確認のポイントが示された予診票記載の14項目]1.新型コロナワクチンの接種を初めて受けますか。2.現時点で住民票のある市町村と、クーポン券に記載されている市町村は同じですか。3.「新型コロナワクチンの説明書」を読んで、効果や副反応などについて理解しましたか。4.接種順位の上位となる対象グループに該当しますか。5.現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか。6.その病気を診てもらっている医師に今日の予防接種を受けてよいと言われましたか。7.最近1か月以内に熱が出たり、病気にかかったりしましたか。8.今日、体に具合が悪いところがありますか。9.けいれん(ひきつけ)を起こしたことがありますか。10.薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか。11.これまでに予防接種を受けて具合が悪くなったことはありますか。12.現在妊娠している可能性(生理が予定より遅れているなど)はありますか。または、授乳中ですか。13.2週間以内に予防接種を受けましたか。14.今日の予防接種について質問がありますか。

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うつ病に対するプロバイオティクスの有効性、安全性

 プロバイオティクス(腸内細菌叢)は、脳腸軸の活性を通じて、気分障害や不安症に関連する症状を改善することが、多くの研究で報告されている。しかし、治療歴のないうつ病患者を対象としてプロバイオティクスの効果を検討した試験は行われていなかった。カナダ・クイーンズ大学のCaroline J. K. Wallace氏らは、治療歴のないうつ病患者10例を対象にプロバイオティクス投与前後の抑うつ症状の変化を調査するため、8週間オープンラベル試験を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年2月15日号の報告。 対象患者は、カナダ・オンタリオ州キングストンの住民より募集した。プロバイオティクス製剤(Cerebiome)を3×109CFUで1日1回、8週間投与した。うつ症状は、検証済みの臨床尺度と自己報告アンケート(CAN-BINDプロトコール)を用いて評価した。データは、ベースライン時、4、8週目に収集した。 主な結果は以下のとおり。・感情障害の改善は、投与4週目で観察され、8週目まで持続した。・主観的な睡眠の質の改善は、8週目までに認められた。・プロバイオティクスに関連した有害事象は認められなかった。 著者らは「本研究では、治療歴のない中等度のうつ病患者に対するプロバイオティクスの有効性および忍容性が示唆されが、さらに包括的な研究を通じて、結論を導き出す必要がある」としている。

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COVID-19施設内感染対策案を発表/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療では、医療機関の施設内感染対策は重要な課題である。実際、院内感染によるクラスターの発生により通常の診療ができなくなった医療機関も全国に存在する。 こうした状況を鑑み、日本感染症学会(理事長:東邦大学医学部教授 舘田 一博氏)は、3月29日に「COVID-19施設内感染アンケート調査を踏まえた施設内感染対策案」を同学会のホームぺージで発表、公開した。 本対策案では、263施設(追加288施設)にアンケートを行い、実際に施設内伝播のあった42施設の回答をまとめた。この回答結果から反省点や今後の対策が示唆されている。8割の医療機関が2週間でクラスターを収束・500床以上の施設が40.5%を占め、COVID-19の入院管理を行っている施設が78.6%。COVID-19に対する基本的な院内感染対策のマニュアルの整備や教育などはほぼすべての施設で実施されていた。・院内伝播事例の発端者は、患者、職員の順。院内伝播に関連した罹患者は、看護師、患者、医師の3者が大半を占めた。・発端者の覚知から1日で感染対策を行ったのは19施設(45.2%)、3日以内が32施設(76.2%)。・発端者の確認から最終発症者までの数は、85%の施設で2週間以内に収まっていた。・施設内伝播の推定された要因は、患者-職員間、職員間、患者間が上位を占めた。・濃厚接触者からの発症のみでなく、それ以外からの発症者もみられた。・施設内伝播時の感染対策としては、患者および職員など接触者へのPCR検査が約90%の施設で実施され、職員の感染対策の徹底(マスク、手指衛生、食事など)も80%以上の施設で実施されていた。また、患者の感染対策(マスク、手指衛生)、環境整備の徹底(高頻度接触面の消毒)は半数以上の施設で実施された。新規入院や外来診療の制限は半数程度であった。「感染対策マニュアル」の整備、遵守、見直しが大事 COVID-19施設内感染アンケート結果からの考察として、1)施設内伝播を経験している施設は、COVID-19患者の入院管理を行い、感染対策マニュアルをすでに整備している施設が多いことから、マニュアル内容の見直し(クラスター発生時の対応が含まれているかなど)、マニュアルが形骸化していないか、遵守されているか定期的なチェックが必要2)施設内伝播事例での罹患者は医師、看護師、患者が大半であり、日頃からの症状サーベイランスが重要3)感染経路の大半は職員間、患者間、職員-患者間であり、濃厚接触者でなくとも感染伝播事例があることから、接触者でも濃厚接触者と同等の対応が必要である。また、誰が発症しても濃厚接触者とならないような対策が必要4)発端者を覚知後、即日に感染対策を行えている施設は半数にも満たない。COVID-19の特性から発端者を覚知した段階ですでに感染が広がっている可能性があるため、事前に初動をシミュレーションしておくとともに、施設内で発端者を覚知した時点で迅速な対応が必要5)施設内伝播覚知後の新型コロナウイルス感染症検査は、無症状の接触者(職員・患者とも)に実施している施設が大半であり、無症状感染者がいることや潜伏期間を考慮すると濃厚接触者に限らず広く接触者を対象とし、施設および施設規模に応じて適切なタイミングで新型コロナウイルス感染症検査(PCR検査や抗原定量検査)を行うことが有用の5点を列挙し、注意を喚起している。院内感染対策は「事前準備と発生時」の2本柱で 施設内クラスター発生時の行動として「事前準備」と「クラスター発生時」に分けて説明している。 事前準備としては、「職員・患者ともに手指衛生やサージカルマスク着用の徹底。職員は食事時間の個食を徹底し、食器やリネンなどの共有を避ける」、「施設内のCOVID-19感染対策マニュアルを策定する」、「COVID-19感染対策マニュアルが遵守できているか確認する」などを提案している。 また、クラスター発生時としては、「平日・休日・夜間に関わらず事例覚知後、直ちに疫学調査を行い、対応策を検討」、「施設内対策本部の設置、感染防止策の再確認ならびに強化、院内での情報共有、保健所と密に連携を取りつつ日々の方針を決定する」、「外来診療や入院の制限を検討する」などを提案している。今後の課題は「収束の目安」や「ワクチン接種」 最後に「COVID-19施設内クラスター発時の対応でわかっていないこと、これから解決すべきこと」として未解決の項目として「外来診療、リハビリ外来、外来透析、新規院診療をどの程度停止すべきか。停止した場合はいつまで停止とすべきか」、「クラスター収束の定義」「施設状況やフェーズに応じた職員の定期的なスクリーニング検査を行うべきか」、「ワクチンを接種していれば濃厚接触者とならないのか」などを列挙し、今後の課題と位置付けている。

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第49回 ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ

<先週の動き>1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ新型コロナウイルスワクチンの接種要員として、政府が注射を打てる職種の拡大を検討していることが明らかとなった。予防接種は医療行為にあたるため、接種は医師と看護師に限定されているが、現行法の規制を緩和し、海外の取り組みなどを参考に接種拡大を目指す。厚生労働省は、対象として歯科医師を筆頭に挙げ、法解釈変更の通知により、歯科医師が筋肉注射を打てる体制を検討している。なお、歯科医師には昨年4月にPCR検体採取を認める通知が出されており、同様の対応と考えられる。海外の事例として、アメリカの一部の州やイギリスでは歯科医師や薬剤師、救急救命士にもワクチン接種を認めている。国内のワクチン接種の進行状況は海外と比較して遅れをとっていることからも、今後、具体的な方針が決められるだろう。(参考)ワクチン注射の職種拡大 政府、歯科医など検討 接種推進に向けて(日経新聞)職種拡大巡り法改正議論を 厚労省の元医系技官、自民・国光氏 有事対応「早く安全に」(同)2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に厚労省は、感染拡大が続く新型コロナウイルス変異株について、3月31日付けで、これまで原則入院としてきた対応を、地域の感染状況などに応じて、医師が入院の必要がないと判断した無症状病原体保有者や軽症者については、宿泊療養施設において丁寧な健康観察が行うことができるとした。また、入院中においては、変異株ごとに対応が異なり、イギリス型変異株である場合は従来の感染者と同室でも差し支えないが、南アフリカおよびブラジル型変異株患者においては、原則として個室での時間的・空間的な分離などの対応が求められている。(参考)変異型、宿泊療養も可 厚労省、「原則入院」から転換(日本経済新聞)資料 新型コロナウイルス変異株流行国・地域に滞在歴がある入国者の方々の健康フォローアップ及び SARS-CoV-2陽性と判定された方の情報及び検体送付の徹底について(厚労省 事務連絡最終改訂)3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁消費者庁は、3月26日までに新型コロナウイルス検査キットを販売する業者5社に対して、行政指導を行ったことを明らかにした。「研究用」として流通する新型コロナウイルス抗原・抗体検査キットを「厚労省承認済み」「国内唯一」と表記し、検査キットがあたかも公的に承認され、品質、性能が著しく優良であるかのように表示することで、一般消費者が研究用検査キットの効果について誤認し、誤った対応をしてしまうことを防止する観点から。消費者庁はSNSを通じて、研究用の抗原・抗体検査キットは、国が認めた体外診断用医薬品ではないため、自己判断で使用せず、感染が疑われる場合には医療機関などに相談するよう、一般消費者に対しても注意喚起を行っている。(参考)新型コロナウイルスの検査キットの販売事業者5社に対する行政指導について(消費者庁)「厚労省が承認」検査キット虚偽 消費者庁、5社を指導(日本経済新聞)4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ国立感染症研究所によれば、2020年度はインフルエンザの流行もなく、新型コロナウイルス感染拡大による影響としては、むしろ過少死亡が報告されていることが明らかとなった。感染症疫学センターが2012~20年の人口動態統計データを用いて、2020年1月~11月29日における超過および過少死亡数を、週別、都道府県別に算出した結果、全国47都道府県の超過死亡数の積算は77~1,954人、過少死亡数の積算は367~3,035人だった。これに対し、同センターは「すべての死因を含む超過死亡数は、おおよそ同時期の米国およびヨーロッパにおけるそれよりも相対的に小さい可能性がある。一方で、同時点の過少死亡数は例年より大きく、感染症対策や健康管理が行われている状況で正の影響が考えられるが、2020年の過少死亡数が偶然起こりうる範囲のものかどうかも含め、今後死因別の詳細なデータ解析が必要になる」とコメントしている。引き続き徹底した感染予防対策が求められる。(参考)20年死亡者、11年ぶり減 出生数は最少87万人―人口動態統計速報(時事通信)我が国におけるすべての死因を含む超過死亡数および過少死亡数 (2020年11月までのデータ分析)(国立感染症疫学センター)5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省厚労省は、2021年度介護報酬改定において、自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進を目的に立ち上げた科学的介護情報システム(LIFE)を活用して、高齢者向け住宅で過剰介護の防止に向けた監視を開始することを明らかにした。高齢者向け住宅を運営する介護事業者の中には、入居中の要介護者に対し、自社の介護サービスを必要以上に利用させて、介護報酬を多く受けとる「囲い込み」の問題が指摘されており、今回の介護報酬改定でメスが入れられた。厚労省へのデータ提出をしないと、ADL維持等加算や、自立支援促進加算、栄養アセスメント加算の算定を認めないこととなった。(参考)過剰介護の監視強化、高齢者住宅向け 囲い込み対策で(日経新聞)高齢者住宅の「囲い込み」、厚労省が監視強化へ…「過剰」介護防ぐ(読売新聞)「科学的介護情報システム(LIFE)」の活用等について(厚労省 事務連絡)資料 LIFEの活用等が要件として含まれる加算一覧(施設・サービス別)(厚労省)

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COVID-19ワクチン接種の準備状況は?医師アンケート

 有効な対応策が打ち出せない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、ワクチンの接種は重症化や死亡の予防に期待がもたれている。わが国でも2月から医療従事者にCOVID-19ワクチンの接種が行われている。 今後、一般向けに接種が拡大する中で、クリニックや病院などの医療機関ではどのような準備をし、どころからワクチンに関する情報を入手しているのか、3月11日にCareNet.comはWEBアンケートで会員医師500名にその現況を調査した。アンケートでは、0~19床と20床以上に分け、4つの質問に対して回答を募集した。76%の医療機関はワクチンを実施するまたはその予定 質問1として「勤務する病・医院ではCOVID19ワクチン接種を実施もしくは予定していまか」たずねたところ「実施するまたは実施予定」と回答した会員医師は76%、「実施予定はない」と回答した会員医師は24%だった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師で「実施予定はない」が42%に対し、20床以上のそれでは「実施予定はない」が6%と規模の差で大きく分かれた。 質問2として「勤務する病・医院では、COVID19ワクチン接種のためにどのような準備を実施もしくは予定されているか(複数回答)」たずねたところ全体で「自分を含めたスタッフへの教育」(226名)、「接種専用部屋の設置」(213名)、「冷凍庫の用意」(210名)の順で多かった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師では「接種実施予定がないため何もしていない」(105名)という回答が1位であり、ワクチン接種は比較的規模のある医療機関でなされることがうかがえた。 質問3として「COVID19ワクチンの接種関連情報を主にどこから入手しているか(3つまで選択)」とたずねたところ全体で「保健所などの行政機関」(266名)、「勤務先病院や医師会」(257名)、「CareNet.comなどのWEBサイト」(194名)の順で多かった。上位3つは病床数に関係なく同じであり、こうした社会情勢下では厚生労働省、保健所や行政機関からの連絡が第一義的にあり、速報性のある医療系WEBメディアで補完されている様子がうかがえた。 質問4では「COVID19の診療やワクチンの接種における当院の工夫」を自由記載でたずねたところ「職員がワクチン接種を受けた当日は特別休暇とする」、「患者向けの教育パンフレットの作成」、「アナフィラキシーショック対策として気管内挿管などの訓練、看護師への講義を実施」、「COVID19ワクチンに関するQ&Aを作成」、「職員全員へのワクチン接種訓練を実施」など患者、自院職員への啓発だけでなく、接種のエクササイズも実施している医療機関が見受けられた。

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COVID-19の低酸素血症にヘルメット型マスクは有用か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で中等度~重度の低酸素血症患者において、ヘルメット型非侵襲的換気法は高流量経鼻酸素療法と比較して、28日間のうち呼吸補助が不要だった日数について有意差はないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのDomenico Luca Grieco氏らによる無作為化試験「HENIVOT試験」の結果で示された。急性低酸素呼吸不全の初期治療に推奨されている高流量経鼻酸素療法は、COVID-19患者に広く適用されている。ヘルメット型非侵襲的換気法は最近提唱された急性低酸素呼吸不全の代替管理法だが、有効性に関するエビデンスはなく使用は限定的とされていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で、気管挿管の必要性など、その他のアウトカムへの影響も確認する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月25日号掲載の報告。28日間で呼吸補助が不要だった日数を主要アウトカムに評価 研究グループは、ヘルメット型マスクによる非侵襲的換気が高流量経鼻酸素療法単独と比較して、COVID-19患者の呼吸補助のない日数を増やせるか否かを評価するため、2020年10月~12月にイタリアの4つの集中治療室(ICU)で多施設無作為化臨床試験を実施した(フォローアップ終了は2021年2月11日)。対象は、COVID-19で中等度~重度の低酸素呼吸不全(動脈血分圧/吸気酸素濃度比が200以下)の患者109例。 参加者は、ヘルメット型非侵襲的換気(呼気終末陽圧10~12cm H2O、プレッシャーサポート10~12cm H2O)による継続治療を少なくとも48時間受け、その後に高流量経鼻酸素療法を受ける群(ヘルメット群:54例)、または高流量経鼻酸素療法(60L/分)のみを受ける群(高流量経鼻酸素群:55例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、登録後28日間で呼吸補助が不要だった日数とした。副次アウトカムは、登録後28日以内で気管挿管を必要とした患者の割合、28日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、60日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、ICU内死亡率、入院中死亡率、28日死亡率、60日死亡率、ICU入室期間、および入院期間などであった。高流量経鼻酸素療法と有意差なし 無作為化を受けた110例のうち、109例(99%)が試験を完了した(年齢中央値:65歳[IQR:55~70]、女性21例[19%])。 無作為化後28日間で呼吸補助が不要だった日数の中央値は、ヘルメット群20日(IQR:0~25)、高流量経鼻酸素群18日(IQR:0~22)であり、統計学的有意差はなかった(平均差:2日[95%信頼区間[CI]:-2~6]、p=0.26)。 事前規定の9つの副次アウトカムのうち7つで有意差はなかったが、気管挿管率は、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に低かった(30% vs.51%、群間差:-21%[95%CI:-38~-3]、p=0.03)。また、28日間で侵襲的人工換気を不要とした日数の中央値も、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に多かった(28日[IQR:13~28]vs.25日[4~28]、平均群間差:3日[95%CI:0~7]、p=0.04)。有意差はなかったが、院内死亡率はヘルメット群24%、高流量経鼻酸素群25%だった(絶対群間差:-1%[95%CI:-17~15]、p>0.99)。

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第51回 コロナ禍は制限あっても対策なし、専門家の在り方とは

このような仕事をしていると、昨今は医療と関係のない友人と電話やオンラインでやり取りする時も、話題の中心は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)になりがちだ。つい先日も友人と電話でやり取りしていると、その友人が「あの新型コロナの専門家のおじさん、いきなり国会で魚の話始めちゃったよね。大丈夫かね?」と言い出した。こっちは「は?魚?なにそれ」と返すと、「だってさ、コロナの話の最中にマンボウの話なんてさ」ときた。これには久々に大声をあげて笑ってしまった。思わず「大丈夫と心配しなきゃならないのはどっちか?」と言いそうになったが、その言葉はぐっと飲み込んだ。このサイトの読者ならこうした勘違いはほぼないだろうと思う。友人が言っていたのは、国会の委員会審議に出席した政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長が、改正新型インフルエンザ等特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」の略称「まん防」に関して言及していたことを指す。この「まん防」を感染者が急増する大阪府、兵庫県、宮城県に4月5日から初めて適用されることが決定した。ここで「緊急事態宣言」と「まん防」がどう違うのかを改めて整理しておきたい。まず、どの時点で発令するかは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が定義した市中の感染状況を示すステージ1~4が目安といわれる。前者が感染爆発段階とも称されるステージ4、後者が感染急増段階のステージ3である。つまり「まん防」は感染急増の初期でステージ4となるのを食い止める措置。炎症性疾患の制御での経口ステロイド薬の服用開始が「まん防」、それでも制御不能な際の静注ステロイドの投与開始が「緊急事態宣言」と例えても良いかもしれない。その上で「緊急事態宣言」では対象地域は都道府県単位全体となるのに対し、「まん防」は対象都道府県の知事がそのなかで特定地域に指定を限定できる。いわば理論上は局地的対策で、都道府県単位全体に及ぶ甚大な影響を回避できる。また、「緊急事態宣言」では、飲食店などに時短と休業を要請できるのに対し、「まん防」では時短要請のみが可能。ともに要請に従わない場合に命令を出すことができ、従わない事業者への過料は前者が30万円以下、後者が20万円以下。ちなみにまん防では、都道府県が飲食店などに対し、従業員への検査受診の勧奨や発熱などの症状がある人の入場の禁止を要請するなどの措置も可能である。今回のまん防適用のきっかけは大阪府で感染者が急増し、時には東京都を上回る感染者数が報告される事態となり、吉村 洋文知事がその適用を要請したからである。その吉村知事は緊急事態宣言中の2月1日に宣言解除を政府に求める独自基準を知事主導で唐突に発表し、府の行政幹部や大阪府の対策本部会議に参加する専門家などを唖然とさせた。その後、基準を満たしたか否か、政府への解除要請の是非を巡って対策本部と丁々発止を繰り広げ、2月23日には京都府、兵庫県とともに宣言解除を政府に要請。その結果、2月末で大阪府を含む6府県では緊急事態宣言は解除となった。当時は「新しい波をできるだけ回避する。併わせて社会経済活動を維持する。難しい判断だが、それを模索していきたい」と語っていた吉村知事だが、その「理想」は約1ヵ月であっけなく潰えたことになる。とはいえ宣言解除後も大阪市内の飲食店への時短要請は1時間緩和されたに過ぎず、実質的には制限された生活が続いている。そして今回のまん防の適用により、大阪市の飲食店では緩和を解除して再び夜8時まで、その他の府内全域では夜9時まで時短を要請する見込みだ。ただ、実質的には大阪府全体の3分の1の人口(もちろん流入人口が別途あることは承知している)の大阪市で、飲食店の営業時間を1時間短縮させる程度ではどう考えてもその効果はかなり限定的になると考えられる。その意味で既存の対策をさまざまな観点から見直す時期に来ているのではないかと考えている。まず、感染のきっかけになりやすい「会食」の自粛を今以上にどう進めたらよいかだが、私個人は今以上にこれを推し進めるのはかなり難しいと考えている。そもそも人は食事をしなければ生物学的な生存は不可能である。ならば他人との会食に限って減らせばいいだろうという指摘は可能だが、それとて限界はある。そもそもヒトが他の哺乳類と明確に違うのは言語を有してコミュニケーションする生き物であるということ。たとえば、短命の最大のリスクファクターの一つが独身であるとの研究は数多く見かけるし、最近では家族と同居状態であっても「孤食」の人は死亡リスクが5割高いとの報告もある。これらの研究の多くは、この傾向は男性に顕著だと指摘しているが、ここで性差を深く追求するつもりはない。要は他人とのコミュニケーションや会食機会の有無はヒトの寿命にも影響しうる重要なファクターであるということだ。そのような背景を考えれば、そもそも他人との会食制限には倫理的にも問題を含むものであり、加えて今のように会食自粛が叫ばれて約1年が経過して不満が鬱積している人も少なくないと考えられるなかで、これ以上の自粛効果を得られる手法はほとんどないのではなかろうか?先ごろ厚生労働省の職員23人が時短要請を破っている飲食店で夜遅くまで会食していたことが明らかになり批判を浴びている。もちろんこの状況下では言語道断だが、そもそも事態の深刻さを最も認識しているはずの人たちですらこの事態ということは、もはや市中の我慢は限界に達している証左でもある。また、たとえ夜の営業時間を短縮したとしても、昼間に会食すればそれなりにリスクはある。さらにこういう事態になってから、市中で「昼飲みできマス」という看板が散見されるようになっている。今は飲食店も感染対策に気を配り、入口で検温、アルコール消毒、カウンターに着席すると隣との間に飛沫拡散防止用のアクリル板設置、隣席との間隔を空ける、隣席とのビニールカーテン設置、窓や扉を開けた換気などは日常的になってきた。とはいえ、これが穴だらけの対策であることは多くの専門家が同意することだろう。しかし、この穴をどう補完することでリスクを下げられるかを提言する専門家は少ない。そもそも専門家は何らかのリスク回避のための制限を提言することは得意だが、科学的に厳格であればあるほど制限緩和に後ろ向きになってしまうきらいがあるのは確かだ。そして専門家の中には「そうした提言をすることは、対策をやれば会食の機会を減らさなくともよいとの誤ったメッセージを伝えることになる」との懸念の声があるのは承知している。しかし、繰り返しになるが、もはや会食の自粛要請、時短要請の効果は限界が見えてきているといって差し支えない状況ではないだろうか。その意味ではこの飲食問題については、スイスが1994年に開始した重度のヘロイン中毒患者対策、つまり医師らのコントロール下でヘロインを使用させ、注射器の使い回しによる感染症や過剰摂取のリスクを減少させた経験と似たような考え方が必要な段階ではないかと個人的には感じている。

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循環器疾患合併COVID-19入院患者の予後規定因子を検討/日本循環器学会

 循環器疾患およびリスク因子を合併している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の臨床的背景や転帰を明らかにすることを目的としたレジストリ研究「CLAVIS-COVID」の結果の一部について、第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)で松本 新吾氏(東邦大学医療センター大森病院)が発表した。循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が増加していることから、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることが示唆された。 COVID-19患者の予後については、昨年、中国から循環器疾患合併かつトロポニン陽性の患者の予後が悪いとの報告がJAMA Cardiology誌に掲載され、米国からは年齢・性別に加えて冠動脈疾患・心不全・不整脈などの循環器疾患合併患者で予後が悪いという論文がNEJM誌に掲載された。このような中、松本氏らは昨年3月時点で、わが国で進行しているレジストリ研究が見当たらなかったことから、循環器疾患およびリスク因子(CVDRF)合併COVID-19入院患者に関する多施設共同観察研究であるCLAVIS-COVIDを立ち上げ、日本循環器学会の公式なレジストリ研究として実施している。 本研究は後ろ向き観察研究で、2020年1月1日~5月31日にCOVID-19により入院した患者のうち、循環器疾患およびリスク因子(高血圧、糖尿病、高脂血症)を合併した患者を対象とし、主要エンドポイントは院内死亡とした。 最終的に国内49施設の1,518例のデータが解析対象となり、平均年齢は57±19歳、男性が58%、全体の死亡率は9.2%、CVDRF合併症例は693例(45.7%)であった。生存退院群(1,378例)と院内死亡群(140例)で比較すると、患者背景については、年齢、男性比率、ECMO使用、ICU入室、挿管管理で有意に院内死亡群が高かった。カプランマイヤー曲線は、CVDRF合併症例が非合併症例に比べて有意に死亡率が高く、海外と同様の傾向がみられた。 CVDRF合併症例について、生存退院例(585例、84.4%)と院内死亡例(108例、15.6%)で比較すると、患者背景については、院内死亡例でより高齢で、転院・介護/療養型施設からの入院が多かった。入院時に認められた合併症については、院内死亡例では慢性/急性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、中等度以上の弁膜症、不整脈、COPD、慢性腎臓病、がんの合併割合が有意に高かった。入院時の自覚症状については、全体で一番多かったのは咳嗽(52.0%)で、息切れ/呼吸困難、悪寒、心不全症状(末梢浮腫、肺うっ血)の発現割合が院内死亡例で有意に高い一方、咽頭痛、嗅覚異常、頭痛の発現割合は生存退院例で有意に高かった。バイオマーカーについては、CRP、D-ダイマー、プロカルシトニン、KL-6、トロポニンもしくは高感度トロポニン陽性、BNP、NT-proBNPが院内死亡例で有意に高かった。このバイオマーカーの結果について松本氏は、「日本のように日常臨床で細かく繰り返し数値を取得できる国は珍しいため、貴重なデータである」と述べた。 本研究の最終的な解析結果の論文は現在レビュー中で、まずは年齢に着目して報告をまとめているという。その中でもインパクトのある結果として松本氏は、循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が急増しているグラフを示し、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることを指摘した。

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武漢の新型コロナ抗体陽性率は約7%/Lancet

 中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アウトブレイクの発生地である武漢市において、無作為抽出した住民のSARS-CoV-2抗体陽性率は6.92%で、このうち39.8%が中和抗体を保有していた。中国・武漢疾病管理予防センターのZhenyu He氏らによる血清疫学調査の結果、明らかとなった。調査は、ワクチン接種戦略の進展に役立てる目的で実施したものだという。著者は、「今回の結果は、再流行を防ぐためには集団免疫をもたらす集団ワクチン接種が必要であることを示唆している」とまとめている。Lancet誌2021年3月20日号掲載の報告。無作為抽出で約1万人を対象に、2020年4月、6月および10~12月の3回調査 研究グループは、多段階層別クラスター抽出法を用い武漢市13地区から100のコミュニティを選択し、縦断的・横断的研究を実施した。各コミュニティから体系的に選択された対象世帯の家族全員が研究に参加することとし、2019年12月1日以降に14日間以上、武漢市に居住していた人を適格とした。 研究に同意した参加者は、人口統計学的および臨床的な質問からなる標準化された電子調査票に記入し、COVID-19関連症状とCOVID-19診断歴を自己報告した。 2020年4月14日~15日に免疫学的検査のため血液を採取し、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質に対する全免疫グロブリン(Ig)、IgM、IgAおよびIgG抗体の有無ならびに中和抗体について評価した。また、同年6月11日~13日および10月9日~12月5日にも血液を採取し、2回連続して追跡調査を実施した。 無作為抽出された4,600世帯のうち、3,599世帯9,702例が初回調査に参加し、十分な検体が得られた3,556世帯9,542例が解析対象となった。2020年4月の抗体陽性率は6.92%、うち中和抗体陽性率は39.8% 9,542例中532例(5.6%)がSARS-CoV-2に対する全Ig陽性で、母集団のベースラインにおける補正後血清抗体陽性率は6.92%(95%信頼区間[CI]:6.41~7.43)であった。全Ig陽性者532例のうち、437例(82.1%)は無症状であった。また、532例中IgM抗体陽性は69例(13.0%)、IgA抗体陽性は84例(15.8%)、IgG抗体陽性は532例(100%)、中和抗体陽性は212例(39.8%)であった。 2020年4月に中和抗体を有していた全Ig陽性者の割合は、2回の追跡調査において安定していた(同年6月:363例中162例44.6%、同年10月~12月:454例中187例41.2%)。 3回の調査すべてに参加した全Ig陽性者335例においても、中和抗体レベルは調査期間中に有意な低下を認めなかった(中央値:ベースライン時1/5.6[IQR:1/2.0~1/14.0]vs.初回追跡調査時1/5.6[IQR:1/4.0~1/11.2]、p=1.0、vs.2回目追跡調査時1/6.3[IQR:1/2.0~1/12.6]、p=0.29)。ただし、無症状者のほうが、感染者および有症状者と比較して中和抗体価が低下した。 IgG抗体価は経時的に減少したが、IgG抗体陽性率はあまり減少しなかった(感染者:ベースライン100%[30/30例]→2回目追跡調査時89.7%[26/29例]、有症状者:同100%[65/65例]→同92.1%[58/63例]、無症状者:同100%[437/437例]→同90.9%[329/362例])。

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新型コロナワクチン、12~15歳に100%の有効性/ファイザー・BioNTech

 米国・Pfizerとドイツ・BioNTechは3月31日、両社の新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の12~15歳の青年を対象とした第III相試験で、以前報告された16~25歳を対象とした試験結果を超え、100%の有効性と強力な抗体反応を示したという速報をプレスリリースで発表した。両社は、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)に緊急使用許可を申請する意向を示している。  本試験には、米国で12~15歳の青年2,260例が登録された。結果は、プラセボ群(1,129例)で18例の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が観察されたのに対し、ワクチン接種群(1,131例)では観察されなかった。また、ワクチン接種は、SARS-CoV-2中和抗体の幾何平均抗体価(GMT)1,239.5を誘発し、2回目の投与から1ヵ月後のサブセットで強い免疫原性を示した。これは、以前の分析で16~25歳の参加者に誘発されたGMT(705.1)に劣っていなかった。さらに、副反応は16~25歳の参加者で観察されたものとおおむね一致しており、良好な忍容性が示された。すべての参加者は、2回目の投与後さらに2年間、長期的な予防効果と安全性について引き続き観察される。 なお、両社はさらに、6ヵ月~11歳の子供を対象としたワクチンの安全性、忍容性、免疫原性を評価するために、国際共同シームレス第I/II/III相試験を計画している。この研究では、6ヵ月~2歳、2~5歳、5~11歳と3つの年齢グループに分け、2回投与スケジュール(約21日間隔)で評価する。5~11歳のコホートではすでに先週投与が開始されており、来週にも2~5歳のコホートで投与を開始する予定だ。

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