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ファイザー社コロナワクチン、3回接種で「デルタ株」抗体が大幅増強/ファイザー

 米国・ファイザー社は、7月28日に発表した第2四半期決算報告会議で、同社の新型コロナワクチンについて、3回接種により、デルタ変異株に対する中和抗体価が大幅に増強されることを示した研究データを公表した。同社は、現在推奨されている2回接種後6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いと説明しており、8月中にも米食品医薬品局(FDA)に対し、追加接種の緊急使用許可の承認申請を行う方針だ。 ファイザー社が明らかにした研究データは、ごく少人数のコホート(18~55歳:11例、65~85歳:12例)ながら、3回目のブースター接種を受けることで、「デルタ株」への中和抗体価が2回接種と比べ、18~55歳では5倍以上、65~85歳では11倍以上に高まっていることを示した。同社では、2回接種から8ヵ月後には抗体レベルがピークアウトするため、2回目接種から6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いとの見立てだ。本研究では、2回目接種から6ヵ月以上経過した後、保護効果が減弱し始めているときに3回目を接種することで、中和抗体価を最大100倍にまで高める可能性が推定されるとしている。 デルタ株を巡っては、国民の大部分でワクチン接種が進んだ国々でも感染拡大が喫緊の課題になっている。米国では、今年5月にワクチン接種済みならばマスク不要としていたCDCの指針が、7月28日付で発表された改訂により、接種済みであっても屋内のマスク着用を求める内容に再び変更された。一方イスラエルでは、疾患や治療により免疫系が低下した人を対象に、すでに3回目のブースター接種を開始しており、高齢者への対象拡大も検討している。

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第68回 新たなコロナ治療薬ロナプリーブ、注視すべきは日本での効果と供給・配分

緊急事態宣言下にもかかわらず、都内で過去最多の2,848人の新型コロナウイルス感染者が確認された7月27日、菅 義偉首相は「重症化リスクを7割減らす新たな治療薬を政府で確保しているので、徹底して使用していく」と胸を張った。新たな治療薬とは、7月19日に国内初の軽症者向け治療薬として承認された「抗体カクテル療法」(商品名:ロナプリーブ)のことを指している。国内のコロナ治療薬としては4つ目。トランプ前米大統領が感染時に特別投与を受けたことでも知られるが、医療現場からは課題を指摘する声が上がっている。抗体カクテル療法は米バイオ企業のリジェネロン・ファーマシューティカルズが作った新薬で、中外製薬の親会社、スイスのロシュが開発に協力。米国食品医薬品局(FDA)が昨年11月に「緊急使用許可」を出した。日本では、国内の治験や販売を担う中外製薬が今年6月に薬事申請し、海外で先行する医薬品の審査を簡素化する「特例承認」を希望していた。日本政府は中外製薬と1年分の供給契約を結び、国が買い上げて医療機関に供与。基本的には入院患者に無料で投与される。価格は公表されていないが、米国での価格は25万円程度という。抗体カクテル療法は新型コロナの抗体薬の「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を同時に点滴投与するもので、対象は持病や肥満などの重症化リスクの高い軽症者や、中等症の中でも症状の軽い人だ。新型コロナの重症度は「軽症」「中等症I」「中等症II」「重症」の4つに分けられており、抗体カクテル療法は「軽症」「中等症I」の治療薬に該当する。先行して承認されている3つの治療薬が「中等症I」「中等症II」「重症」をカバーしていることから、今回の承認で4分類すべてをカバーすることになる。注視すべきは日本での効果と医療機関への供給量・配分海外の臨床試験では、抗体カクテル療法が入院・死亡リスクを7割低下させる結果が報告されている。また、添付文書ではインド型(デルタ株)などの変異ウイルスにも効果があることが示唆されるとの見解を示しているという。さらに、海外の臨床治験では濃厚接触者に対する予防的な効果も報告されており、今後研究が進めば抗体カクテル療法の使われ方の幅も広がってくる可能性がある。変異ウイルスが広がる中、予防や重症化抑制ができることで、医療現場の負担軽減も期待されている。ただ、諸手を挙げて喜んでばかりもいられない。医療現場からは「海外の臨床試験での入院・死亡リスクを7割減らす効果を日本でも再現できるのか注視しなくてはならない」との慎重な意見もある。また、抗体カクテル療法が日本で製造していない治療薬であることから、「しっかりと量的な確保をしておかないといけない」との要望や「クリニックや軽症者が入院している民間病院に重点的に配分すべき」という声も挙がっている。薬剤の極端な迅速承認に潜む危うさ軽症から中等症の感染者向けの治療薬としては、グラクソ・スミスクラインの点滴薬「ソトロビマブ」や、中外製薬の経口薬「AT-527」が開発中で、国が補助金を出して後押ししている。また、塩野義製薬も経口治療薬を開発中だ。これらの新薬を、日本も米国同様、「緊急使用許可」として迅速承認するため、早ければ秋の国会、遅くとも2022年1月の通常国会で、従来の薬事承認に代わる仕組みを内容とする法案が出される見通しだ。これに対し、医療現場から「治験はきちんとやらないと薬害を引き起こす。手続きを簡略することはいくらでもできるので、科学的な審査で効果を確認できなければ、かえって薬の開発を遅らせることになるのでは」と懸念の声も聞こえてくる。現場が安心して薬剤を患者に投与するには、エビデンスに基づいた評価が必須。とにかく承認ありきの極端な迅速承認は問題だろう。政権支持率の浮揚策かと勘ぐりたくなるような政策では、逆に医療界の不信を招くだけである。

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コロナワクチン接種後の中和抗体価、ウイルス株や年齢での違いは?/JAMA

 ファイザー製ワクチン(BNT162b2)を2回接種すると、有効率は約95%だと言われている。その一方で、患者の年齢が新型コロナウイルス感染症の発生率や重症度のリスクに寄与することも知られている。そこで、オレゴン健康科学大学のTimothy A Bates氏らはファイザー製ワクチン2回接種後のUSA-WA1/2020株とP.1系統の変異株(γ株、以下、P.1変異株)に対する年齢と中和抗体価の関係を調べた。その結果、USA-WA1/2020株に対するワクチン接種後の中和抗体価は年齢と負の相関が見られた。一方で、P.1変異株に対する中和抗体価はすべての年齢で減少したが、年齢による差は小さく、全体的にワクチンの有効性に寄与する要因として年齢を特定することができなかった。JAMA誌オンライン版2021年7月21日号リサーチレターでの報告。 研究者らは、2020年12月~2021年2月、オレゴンワクチン接種ガイドラインに従って実施されたワクチン接種の参加者を対象に調査を行った。参加者はファイザー製ワクチン1回目接種の時点で本研究に登録され、血清サンプルはワクチン1回目を受ける前と2回目を受けてから14日後に収集された。SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン特異的抗体レベルを酵素免疫測定法で測定し、中和抗体50%効果濃度(EC50、ウイルス中和アッセイで50%の感染を阻害する血清希釈)を計算した。新型コロナウイルスの50%中和力価は、USA-WA1/2020株とP.1変異株の生きた臨床分離株を使用した焦点還元中和試験(FRNT50、焦点減少中和検査で50%のウイルスを中和する血清希釈)で決定した。 主な結果は以下のとおり。・50例がこの研究に登録された(女性:27例[54%]、年齢の中央値[範囲]:50.5歳[21~82])。・すべての参加者において、ワクチン接種前のEC50は事前曝露がないことを示す定量限界未満だった。・ワクチン接種後のEC50は、年齢と有意な負の関連を示した(R2=0.19、p=0.002)。・USA-WA1/2020株に対しては、全参加者で中和抗体の強い活性が観察され、幾何平均抗体価(GMT:geometric mean antibody titer)は393(95%信頼区間[CI]:302~510)だった。一方、P.1変異株に対しての免疫応答は低く、GMTは91(95%CI:71~116)で、76.8%の減少を示した。・USA-WA1/2020株とP.1変異株の両方において、年齢はFRNT50と有意に負の相関があった(p<0.001およびp=0.001)。・USA-WA1/2020株の場合、年少参加者ら(20~29歳、n=8)のGMTは938(95%CI:608~1447)に対し、年長参加者ら(70~82歳、n=9)のGMTは138(95%CI:74~257)と85%の減少を示した(p<0.001)。・P.1変異株の場合、年少参加者らのGMTは165(95%CI:78~349)に対し、年長参加者らのGMTは66(95%CI:51~86)と60%の減少を示した(p=0.03)。 研究者らは「中和抗体価は感染からの保護と強く相関していると考えられる。ただし、今回の研究ではサンプル数が少ないこと、閾値がまだ正確に決定されないことを踏まえ、今後の研究では、ワクチン接種を受けた高齢者に見られる抗体レベルの低下が、同時に防御機能の低下につながるかどうかを具体的に取り上げる必要がある」としている。

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日本のウイルス肝炎診療に残された課題~今、全ての臨床医に求められること~

COVID-19の話題で持ち切りの昨今だが、その裏で静かに流行し続けている感染症がある。ウイルス肝炎だ。特に問題になるのは慢性化しやすいB型およびC型肝炎で、世界では3億人以上がB型、C型肝炎ウイルスに感染し、年間約140万人が死亡している。世界保健機関(WHO)は7月28日を「世界肝炎デー」と定め、ウイルス肝炎の撲滅を目的とした啓発活動を実施している。検査方法や治療薬が確立する中、ウイルス肝炎診療に残された課題は何か?今、臨床医に求められることは何か?日本肝臓学会理事長の竹原徹郎氏に聞いた。自覚症状に乏しく、潜在患者が多数―日本の肝がんおよびウイルス肝炎の発生状況を教えてください。日本では、年間約26,000人程度が肝がんで死亡しているという統計があります。その大半はウイルス肝炎によるもので、B型肝炎は約15%、C型肝炎は約50%を占めています。B型およびC型肝炎ウイルスに感染して慢性肝炎を発症しても、自覚症状はほとんど現れません。気付かぬうちに病状が進行し、肝がん発症に至るわけです。日本においてB型、C型肝炎ウイルスの感染に気付かずに生活している患者さんは数十万人程度存在すると考えられています。こうした患者さんを検査で拾い上げ、適切な医療に結び付けることが、肝がんから患者さんを救うことにつながります。検査後の受診・受療のステップに課題―臨床では、どのような場面で肝炎ウイルス検査が実施されるのでしょうか。臨床で肝炎ウイルス検査が実施される場面は様々ですが、(1)肝障害の原因を特定するために行う検査、(2)健康診断で行う検査、(3)手術時の感染予防のために行う術前検査などが挙げられます。(1)はそもそも肝障害の原因を特定するために行われているので問題ないのですが、(2)では、検査で異常が指摘されても放置される場合がありますし、(3)では、陽性が判明してもその後の医療に適切に活用されないことがあり、課題となっています。その要因は様々ですが、例えば他疾患の治療が優先され、検査結果が陽性であることが二の次になるケースや、長く診療している患者さんでは、変にその結果を伝えて不安にさせなくても良いのではないか、とされるケースもあるでしょう。また患者さんの中には、検査結果を見ない、結果が陽性であっても気にしない、陽性であることが気になっていても精密検査の受診を躊躇する、といった方も多いです。そのため医療者側にどのような事情があっても、陽性が判明した場合はその結果を患者さんに伝え、精密検査の受診を促すことが大事です。非専門の先生で、ご自身では精密検査の実施が難しいと思われる場合は、ぜひ近隣の肝臓専門医に紹介してください。そのうえで、最終的に治療が必要かどうかまで結論付け、治療が必要な場合には専門医のもとでの受療を促すことが重要です。目覚ましい進歩を遂げる抗ウイルス治療―ウイルス肝炎の治療はどのように変化していますか。近年、ウイルス肝炎の治療は劇的に変化しています。特にC型肝炎治療の進歩は目覚ましいものがあります。従来のC型肝炎治療はインターフェロン注射によるものが中心で、インターフェロン・リバビリン併用でウイルスを排除できる患者さんの割合は50%程度でした1)。また、インフルエンザ様症状やその他の副作用が多くの患者さんで出現し、治療対象の患者さんも限られていました1),2)。しかしここ数年、経口薬である直接作用型抗ウイルス剤(DAA)が複数登場し、その様相は変化しています。まず治療奏効率は格段に向上し、ほとんどの患者さんでウイルスが排除できるようになりました。そして従来ほど副作用が問題にならなくなり3)、患者さんにとって治療がしやすい環境になっています。治療対象が高齢の患者さんや肝疾患が進行した患者さんに広がったことも、大きな変化です。B型肝炎治療では、まだウイルスを完全に排除することはできないものの、抗ウイルス治療によってウイルスの増殖を抑え、肝疾患の進行のリスクを下げることができます。このように、現在は治療に進んだ後のステップにおける課題はクリアされてきています。そのため、日本のウイルス肝炎診療の課題は、やはり検査で陽性の患者さんを受診・受療に結び付けるまでのステップにあるといえるでしょう。術前検査などで陽性が判明した患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ検査結果を患者さんに適切に伝え、受診・受療を促すと共に、近隣の肝臓専門医に紹介していただきたいと思います。日本肝臓学会のウイルス肝炎撲滅に向けた取り組み―日本肝臓学会では、ウイルス肝炎撲滅に向けてどのような取り組みを実施されていますか。日本肝臓学会では「肝がん撲滅運動」という活動を20年以上にわたって行ってきています。具体的には、肝炎や肝がん診療の最新情報を患者さんや一般市民の皆さまに知っていただくための公開講座を、毎年全国各地で開催しています。3年ほど前からは、肝炎医療コーディネーターを育成するための研修会も設けています。肝炎医療コーディネーターとは、看護師、保健師、行政職員など多くの職種で構成され、肝炎の理解浸透や受診・受療促進などの支援を担う人材です。また最近では、製薬企業のアッヴィ合同会社と共同で、「AbbVie Elimination Award」を設立しました。肝臓領域の臨床研究において優れた成果を上げた研究者を表彰する、研究助成事業です。「Elimination」は「排除」という意味で、一人でも多くの患者さんから肝炎ウイルスを排除したい、という意図が込められています。このように、日本肝臓学会ではウイルス肝炎撲滅に向けて、啓発活動や研究助成事業など、様々な活動に取り組んでいます。世界の先陣を切ってWHOが掲げる目標の達成を目指す―ウイルス肝炎の治療にあたる肝臓専門医の先生方に向けて、メッセージをお願いします。WHOはウイルス肝炎の撲滅に向けて「2030年までにウイルス肝炎の新規患者を90%減らし、ウイルス肝炎による死亡者を65%減らすこと」を目標に掲げています。COVID-19の流行によって、受診控えや入院の先送りなどの問題が発生し、この目標への到達は困難に感じられることもあるかもしれません。しかし、日本のウイルス肝炎診療には、国民の衛生観念がしっかりしている、肝臓専門医の数が潤沢である、行政的な施策が整備されている、など様々なアドバンテージがあります。世界の先陣を切ってWHOが掲げる目標を達成できるよう、今後も取り組んでいきましょう。肝炎ウイルス検査で陽性の患者さんは、肝臓専門医に紹介を―最後に、非専門の先生方に向けてメッセージをお願いします。従来のウイルス肝炎の治療は、副作用が問題になる、高齢の患者さんでは治療が難しい、といったイメージがあり、現在もそのように思われている先生がいらっしゃるかもしれません。患者さんも誤解している可能性があります。しかし、ウイルス肝炎の治療はここ数年で劇的に変化しています。肝炎ウイルス検査を実施して陽性が判明した場合は、患者さんにとって良い治療法があるかもしれない、と思っていただいて、ぜひ近隣の肝臓専門医に紹介してください。日本肝臓学会のHPに、肝臓専門医とその所属施設の一覧を都道府県別に掲載していますので、紹介先に迷われた際は、参考にしていただければと思います。1)竹原徹郎. 日本内科学会雑誌. 2017;106:1954-1960.2)日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編「 C型肝炎治療ガイドライン(第8版)」 2020年7月, P16.3)日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編「 C型肝炎治療ガイドライン(第8版)」 2020年7月, P57,63.

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妊婦への新型コロナワクチン、有効性と安全性/JAMA

 妊婦において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ワクチン非接種と比較してSARS-CoV-2感染リスクを有意に低下させることが確認された。イスラエル・テルアビブ大学のInbal Goldshtein氏らが、妊婦を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊婦におけるBNT162b2ワクチンの有効性と安全性については、第III相試験において妊婦が除外されたためデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2021年7月12日号掲載の報告。ワクチン接種妊婦vs.非接種妊婦、各7,530例でSARS-CoV-2感染を比較 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesのデータベースを用い、2020年12月19日~2021年2月28日に、妊娠中に1回目のBNT162b2 mRNAワクチン接種を受けた妊婦を特定し、2021年4月11日まで追跡した。また、ワクチン接種妊婦と年齢、妊娠週数、居住地域、民族、経産歴、インフルエンザ予防接種状況などについて1対1の割合でマッチングさせたワクチン非接種妊婦を対照群とした。 主要評価項目は、初回ワクチン接種後28日以降におけるPCR検査で確定したSARS-CoV-2感染であった。 解析対象はワクチン接種群7,530例、対照群7,530例で、妊娠第2期が46%、妊娠第3期が33%、年齢中央値は31.1歳(SD 4.9)であった。初回ワクチン接種後28日以降のSARS-CoV-2感染が約80%低下 主要評価項目の追跡期間中央値は37日(四分位範囲:21~54、範囲:0~70)であった。ワクチン接種群で追跡期間が21日以上の妊婦は、ほとんどが追跡期間終了までに2回目の接種を受けていた。 追跡期間終了時までのSARS-CoV-2感染者は、合計でワクチン接種群118例、対照群202例であった。感染者で症状を有していたのは、ワクチン接種群で105例中88例(83.8%)、対照群で179例中149例(83.2%)であった(p≧0.99)。 初回ワクチン接種後28~70日にSARS-CoV-2感染が確認されたのは、ワクチン接種群10例、対照群46例であった。感染のハザードはそれぞれ0.33%および1.64%、絶対群間差は1.31%(95%信頼区間[CI]:0.89~1.74)であり、ワクチン接種群は対照群と比較して統計学的に有意にハザード比が低下した(補正後ハザード比:0.22、95%CI:0.11~0.43)。 ワクチン接種群におけるワクチン関連有害事象は68例報告され、重篤な副反応はなかった。68例中3例は、ワクチン接種の直近にSARS-CoV-2に感染しており、症状はワクチンではなく感染に起因する可能性が示唆された。主な症状は、頭痛(10例、0.1%)、全身の脱力感(8例、0.1%)、非特異的な疼痛(6例、<0.1%)、胃痛(5例、<0.1%)であった。

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コロナワクチンで注目される解熱鎮痛薬への2つの懸念【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第72回

新型コロナウイルスワクチンの接種が若年層へ拡大する中、副反応に対する不安をよく耳にします。接種後に発熱や痛みが生じやすいというのはよく報告されていますが、それ以外にも根拠が不明な眉唾物の副反応情報が拡散していて、接種を躊躇する方もいらっしゃいます。逆に、接種後の発熱や痛みが少なかった高齢者の方が、「私には効いているのか?」と不安になって薬局に尋ねてくることもあったと聞きます。回答に困る質問は多々あると思いますが、厚生労働省が3月末に開設した「新型コロナワクチンQ&A特設サイト」では随時新たな情報が更新されているため、そのような際に参考になります。このサイトのQ&Aでは、ワクチン接種後の発熱や接種部位の痛みは高齢者では少し発症頻度が低いものの、しっかりと有効性が確認できている旨が掲載されています。先述の高齢者の方にはこの回答をお伝えしたいですね。また、副反応への対処法の1つとして、「市販の解熱鎮痛薬で対応することも考えられる」とし、「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただける」といったように、成分名も記載した回答を掲載しています。さて、このワクチン接種後の発熱や痛みの対応について、2つの懸念が生じています。1つ目は、このような情報を見て、「ワクチン接種には解熱鎮痛薬の準備が必要!」と解釈された可能性があることです。薬局では一時的にOTC薬の解熱鎮痛薬が品薄になり、解熱鎮痛薬を配布した接種会場もあったと聞きます。OTC薬を1箱購入して家族で使いまわすこともあると思いますが、アレルギー歴のある方や病気治療中の方の服用に薬剤師は関わることができているでしょうか。そして、緊急時といえども、医薬品の販売および譲渡のルールに変更はありませんので、医薬品の販売に当たっては医薬品販売業の許可が必要で、原則として無償での譲渡はできません。患者さんのことを思ってのことでしょうが、医薬品の提供については通常時と変わらないことに注意が必要です。2つ目としては、副反応の症状が出る前に解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服している人がいることです。これについては現在のところ推奨されていません。予防的な服用を希望する患者さんには、解熱鎮痛薬の副作用の説明をするとともに、Q&Aを参考に「副反応の大部分は接種後数日以内に回復することがわかっている」と過度に心配する必要はないことを説明して安心してもらいましょう。このサイトを見ると、その回答自体はやわらかい言葉で書いてあるのですが、その根拠としてワクチンの審査報告書が閲覧できたり、CDC(米国疾病予防管理センター)の論文へのリンクが貼り付けてあったりと、一般の方向けとしてはかなり専門的な内容だなぁと思います。ぜひ一度ざっと見て、一般の方がどのような疑問を持つ可能性があるのか予習してみてはいかがでしょうか。

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第70回 Pfizerワクチン2回目接種後に自然免疫が大幅増強

インドで見つかって世界で広まるデルタ変異株にもPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2が有効なことが先週21日にNEJM誌に掲載された英国Public Health Englandの試験で示されました1)。その効果を得るには決まりの2回接種が必要であり、デルタ変異株感染の発症の予防効果はBNT162b2接種1回では僅か36%ほどでした。2回接種の予防効果は大幅に上昇して88%となりました。一方、イスラエル保健省の先週木曜日の発表によると、デルタ変異株が広まる同国でのBNT162b2のここ最近1ヵ月程のCOVID-19発症予防効果は心配なことに約41%(40.5%)に低下しています2)。ただし、被験者数が少なくて対象期間も短いためかなり不確実な推定であり、今後更なる慎重な解析が必要です3)。仮に感染予防効果が落ちているとしても重症化は防げており、COVID-19入院の88%と重度COVID-19の91%を予防しました。BNT162b2はデルタ変異株感染による重症化を予防する効果も恐らく高く、先月発表された英国Public Health Englandの報告によるとデルタ変異株COVID-19入院の96%を防いでいます4)。BNT162b2は中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株を起源とするにも関わらず少なくとも変異株感染重症化を確かに防ぎ、2回接種すると効果が跳ね上がるのはなぜなのか? 抗体やT細胞などの標的特異的な免疫反応のみならず感染源に素早く手当たり次第より広く攻撃を仕掛ける自然免疫を引き出す力がその鍵を握るのかもしれません。SARS-CoV-2への免疫の研究やニュースといえば主に抗体で、T細胞がたまに扱われるぐらいです。スタンフォード大学の免疫学者Bali Pulendran氏のチームはそういう免疫のパーツではなくそれらを含む免疫系全体に目を向け、BNT162b2が接種された56人の血液検体を調べてみました。その結果、抗体やT細胞の反応が他の研究と同様に認められたことに加え、強力な抗ウイルス防御を担うにもかかわらずワクチン開発で見過ごされがちな効果・自然免疫の増強が判明しました5)。自然免疫の大幅な増強は2回目の接種後のことであり、インターフェロン応答遺伝子(ISG)を発現する単球様の骨髄細胞の一群・C8細胞が1回目接種1日後には血液細胞の僅か0.01%ほどだったのが2回目接種1日後には100倍多い1%ほどに増えていました。2回目接種1日後の血中インターフェロンγ(IFN-γ)濃度は高く、C8細胞の出現と関連しており、C8細胞の誘導にはIFN-γが主たる役割を担っているようです。SARS-CoV-2のみならず他のウイルスの防御にも働きうるC8細胞は新型コロナウイルス感染自体ではどうやら生じないようです5,6)。C8細胞を引き出すためにも1回のBNT162b2接種で十分とは思わず、他の多くの試験でも支持されている通り2回目も接種すべきでしょう7)。ModernaのワクチンもBNT162b2と同様にmRNAを中身とします。Modernaのワクチンも恐らくはBNT162b2と同様の反応を引き出すと想定されますが定かではありません。実際のところどうかを調べるべくPulendran氏はそれらワクチン2つの比較研究を始めています7)。参考1)Lopez Bernal J,et al.N Engl J Med. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print] 2)Concentrated data on individuals who have been vaccinated with two vaccine (HE) doses before 31.1.2021 and follow up until 10.7.2021 / gov.il 3)Israeli Data Suggests Possible Waning in Effectiveness of Pfizer Vaccine / New York Times4)Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant / PHE5)Arunachalam PS, et al.. Nature . 2021 Jul 12. [Epub ahead of print]6)Study shows why second dose of COVID-19 vaccine shouldn't be skipped / Eurekalert.7)How the Second mRNA Vaccine Bolsters Immunity / TheScientist

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クラスター発生の飲食店と発生していない飲食店、違いはどこに?/厚労省アドバイザリーボード

 7月14日開催の第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、飲食店における国推奨の感染対策チェックリストの遵守状況とクラスター発生との関連についての調査結果が公表された。感染対策の遵守率はクラスター発生店で低く、個別の感染対策としては、アクリル板の設置や他グループと1m以上の距離をとること、トイレ等への消毒設備の設置のほか、就業時の検温などスタッフ側の対応もクラスター発生防止との関連性が高いと考えられた。[調査概要] 2020年10月~2021年5月に国内でクラスター(※1)の発生した12施設(和歌山県8施設、岐阜県2施設、沖縄県[宮古島]2施設)および対照群(※2)19施設(すべて宮古島)に対し、有症者・接触・飛沫・エアロゾル感染対策を中心として、計18問(※3)の質問アンケート調査を実施。※1:クラスターは、上記期間中に8人以上の感染者が生じた施設とする。※2:対照群は、同期間中に感染者数2人以下の施設で、クラスターの発生した施設と規模や業務形態が同程度の施設を抽出した。※3:有症者対策3項目、接触感染対策6項目、飛沫感染対策5項目、エアロゾル感染対策4項目の計18項目[クラスターの有無における感染対策の遵守率]・18項目のうち、対策を行っていると答えた割合(感染対策遵守率)は、クラスター発生群44.4%に対し、対照群では85%であった(p<0.001)。[18項目のうちクラスターとの関連性が考えられた感染対策]・トイレなど公共の場に消毒設備を設置:クラスター発生群(該当対策を行っていた施設の割合)50% vs. 対照群100%(p<0.001)・他のグループとの距離を1メートル以上とっている:18.2% vs.94.7%(p<0.001)・他のグループとの間にアクリル板が設置されている:9.1% vs.89.5%(p<0.001)・スタッフは就業時に体温測定と体調確認をしている:54.5% vs.100%(p=0.001)・飲食時以外はマスクを着用するよう客に促している:33.3% vs.89.5%(p=0.001)・客が入れ替わるタイミングでテーブル等を消毒している:60% vs.100%(p=0.003)・スタッフは客が触れた物を扱ったあと手指衛生を行っている:60% vs.100%(p=0.003)・スタッフは常にマスクを着用して接客している:50% vs.94.7%(p=0.004)・カラオケを提供していない:16.7% vs.68.4%(p=0.005)・窓やドアを開けて定期的に換気している:60% vs.94.7%(p=0.019)・スタッフに症状を認めるときは検査を受けさせている/保健所の指示に従っている/休ませている:40% vs.90.9%(p=0.040)・トイレにペーパータオルを設置している:80% vs.100%(p=0.043)

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第64回 米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC

<先週の動き>1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC米国疾病予防管理センター(CDC)は、2020年のアメリカ人の平均寿命が77.3歳と、2019年から2020年にかけて1.5歳短くなったことを公表した。最大の要因は、新型コロナウイルスによる死者数の増加である。平均寿命が短縮したのは、第二次世界大戦中の1943年(2.9歳短縮)以来のこと。これまで延長していた平均寿命は、20年近くも後退した。また、今回の平均寿命短縮を人種別で見ると、ヒスパニック系は81.8歳から78.8歳と-3.0歳、黒人は74.7歳から71.8歳と-2.9歳でそれぞれ短くなった一方、白人は78.8歳から77.6歳と1.2歳の短縮に留まり、人種差が再び広がる傾向が見られた。(参考)新型コロナの影響で米国の平均寿命が1.5歳短く 第2次大戦以来の落ち込み(東京新聞)米CDC “平均寿命1歳半短く 新型コロナによる死者増が主要因”(NHK)Provisional Life Expectancy Estimates for 2020(CDC)2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続政府は、7月末までに新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、これまで診療所に支援してきた特例加算を継続することとした。8月以降も、週100回以上の接種を4週間以上行う診療所には1回につき2,000円、週150回以上の場合は3,000円を上乗せして補助する。11月までに、希望者全員にワクチン接種の完了を目指す。(参考)ワクチン接種 診療所への費用上乗せ支援策 来月以降も継続へ(NHK)3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み政府は、7月19日時点で、国内の新型コロナウイルスワクチンの総接種回数が7,000万回を超えたと公表した。1回の接種を受けた人の割合は総人口の33.5%となり、65歳以上の高齢者では81.7%、2回目まで完了した高齢者は57.9%となった。なお、7月23日時点で、2回目の接種率は総人口の19.6%であり、欧米と比べた遅れがまだ挽回できていない。また、都道府県別の接種率を見ると、上位は25%を超える中、下位には千葉県17.4%、埼玉県16.7%、東京都16.6%、栃木県16.4%、沖縄県14.5%など、感染拡大が続いている大都市圏が並び、さらなる接種の推進が求められる。(参考)新型コロナワクチンについて(内閣府)ワクチン接種1回目終了 高齢者全体の8割超(NHK)国内ワクチン接種、7000万回超す 7月19日公表分までで(日経新聞)4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ厚労省は20日、新型コロナウイルスワクチンについて、2022年の初頭から5,000万回分の追加供給を受けることをモデルナと正式契約したことを明らかにした。また、菅 義偉首相は23日に、来日しているファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と会談し、10月以降に予定していたワクチン供給の前倒しを要請した。さらに、米・ノババックスとも、来年前半から1億5,000万回分のワクチン供給について協議を進めている。政府は、ワクチン供給不足による接種計画の遅れに対する国民の声に対して、早期のワクチン接種完了を急ぐ。(参考)米モデルナとワクチンの追加契約 22年以降の5000万回分(毎日新聞)ワクチン供給、前倒し要請 首相、ファイザーCEOと会談(日経新聞)5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始政府は、海外へ渡航する人が新型コロナウイルスワクチンの接種済みを証明する「ワクチンパスポート(予防接種証明書)」の申請受け付けを、26日から各市町村で開始することを明らかにした。イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5ヵ国に入国する際に利用可能となる。なお、発行に当たっては、海外渡航にワクチンパスポートが必要な場合に限って申請が認められ、国内での使用は想定していない。(参考)ワクチン接種証明書 発行手続 第1回自治体向け説明会(内閣官房副長官補室)同 第2回自治体向け説明会(同)「ワクチンパスポート」26日から受け付け開始 「経済活動再開の第一歩」「差別につながる」と賛否渦巻く(J-CAST)「ワクチンパスポート」発行テスト 26日から申請受け付け(NHK)6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省厚労省は、後発医薬品の出荷調整や回収による欠品発生を防止する目的で、薬価収載日から5年経過していない後発品で供給不足を起こした企業が新たな薬価基準収載希望書を提出する際には、「安定供給義務が守れない品目があった場合には以後2回分の収載を見送る」との念書を提出するよう求めた。今回の通知は8月16日までに製造販売承認を受け、20日までに薬価収載希望書の受け付けが済んだ医薬品が対象となる。今年12月収載予定からの運用となる見込み。これにより、医療機関や調剤薬局が直面している欠品による調達困難の改善や後発品への不安を取り除くのが狙い。(参考)欠品で1年間の収載見送り~後発品に対する規制強化【厚生労働省】(薬読)

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第26回 アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーか否かを迅速に判断!2)アドレナリンの投与は適切に!アナフィラキシーに関しては以前(第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?)も取り上げましたが、大切なことですので、今一度整理しておきましょう。今回の症例は、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーとして報告された事例*からです。この経過をみて突っ込みどころ、ありますよね?!*第53回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会令和2年度第13回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会【症例】30歳女性。ワクチン接種後待機中、呼吸困難を自覚。咳嗽が徐々に増悪し、体中の掻痒感を自覚した。接種5分後、SpO2が85~88%まで低下。酸素負荷、その後ネオフィリン注125mg、リンデロン注2mg点滴を開始。接種後20分緊急入院。眼瞼浮腫、喘鳴、SpO2100%(酸素4L)、血圧収縮期150mmHg程度、脈拍70~80/分、体幹に丘疹。接種55分後、アドレナリン0.3mL皮下注。その後、喘鳴は徐々に改善。接種4時間後酸素負荷終了。翌日午前中に一般病棟に転出。午後になり呼吸困難を自覚、サルブタモール吸入も効果なし。喘鳴は徐々に増強。その後も、リンデロン1.0mg投与効果なし、SpO2は98~100%、心拍70~80/分であった。オキシマスク2L投与併用。意識障害はなかったが、発語は困難であった。数時間後にリンデロン3mgを投与したところ、徐々に呼吸状態は改善。その後会話が可能な程度にまで回復した。翌朝、意識清明、会話可能、喘鳴なし、SpO2低下なし、リンデロン投与を継続し、経過観察したところ再燃なし、数日後自宅退院とした。はじめにアナフィラキシーは、どんな薬剤でも起こりえるものであり、初期対応が不適切であると致死的となるため、早期に認識し、適切な介入を行うことが極めて大切です。救急外来で診療をしているとしばしば出会います。また、院内でも抗菌薬や造影剤投与後にアナフィラキシーは一定数発生するため、研修医含め誰もが初期対応を理解しておく必要があります。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種も全国で進んでおり、勤務先の病院やクリニック、大規模接種センターなどでアナフィラキシーに対して不安がある医療者の方も多いと思います。今回はアナフィラキシーの初期対応をシンプルにまとめましたので整理してみてください。アナフィラキシーを疑うサインとはアナフィラキシーか否かを判断できるでしょうか。そんなの簡単だろうと思われるかもしれませんが、意外と迷うことがあるのではないでしょうか。薬剤投与後に皮疹と喘鳴、血圧低下を認めれば誰もが気付くかもしれませんが、皮疹を認め喉の違和感や嘔気を認めるもののバイタルサインは安定している、皮疹は認めないが投与後に明らかにバイタルサインが変化しているなど、実際の現場では悩むのが現状であると思います。アナフィラキシーの診断基準は表の通りですが、抗菌薬や造影剤、さらにワクチン接種後の場合には、「アレルゲンと思われる物質に曝露後」に該当するため、皮膚や呼吸、循環、消化器症状のうち2つを認める場合にはアナフィラキシーとして動き出す必要があります。「血圧が保たれているからアドレナリンまでは…」「SpO2が保たれているからアドレナリンはやりすぎ…」ではないのです。皮膚症状もきちんと体幹部や四肢を直視しなければ見落とすこともあるため、薬剤使用後に呼吸・循環・消化器症状を認める場合、さらには頭痛や胸痛、痙攣などを認めた場合には必ず確認しましょう。表 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する(Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.より引用)ワクチン接種後のアナフィラキシーは、普段通りの全身症状で打つことに問題がない方が打っているわけですから、より判断がしやすいはずです。抗菌薬や造影剤の場合には、細菌感染や急性腹症など、全身状態が良好とはいえない状況で使用しますが、ワクチンは違いますよね。筋注後に何らかの症状を認めた場合にはアナフィラキシーを念頭にチェックすればいいわけですから、それほど判断は難しくありません。痛みや不安に伴う反射性失神によるもろもろの症状のこともありますが、皮疹や喘鳴は通常認めませんし、安静臥位の状態で様子をみれば時間経過とともによくなる点から大抵は判断が可能です。ここで重要な点は、「迷ったらアナフィラキシーとして対応する」ということです。アナフィラキシーは1分1秒を争い、対応の遅れが病状の悪化に直結します。アナフィラキシー? と思ったらアナフィラキシーと判断したらやるべきことはシンプルです。患者を臥位にしてバイタルサインの確認、そしてアドレナリンの投与です。アナフィラキシーと判断したらアドレナリンは必須なわけですが、投与量や投与方法を間違えてしまっては十分な効果が得られません。正確に覚えているでしょうか?アドレナリンは[1]大腿外側に、[2]0.3~0.5mg、[3]筋注です。肩ではありません、1mgではありません、そして皮下注ではありません。OKですね? アドレナリンの投与量に関しては、成人では0.5mgを推奨しているものもありますが、エピペンは0.3mgですから、その場にエピペンしかなければ0.3mgでOKです。何が言いたいか、「とにかく早期にアナフィラキシーを認識し、早期にアドレナリンを適切に投与する」、これが大事なのです。救急医学会が公開した、アナフィラキシー対応・簡易チャート(図)を見ながらアプローチをきっちり頭に入れておいて下さい。アナフィラキシー対応・簡易チャート画像を拡大する間違い探しさぁそれでは今回の症例をもう1度みてみましょう。この患者は基礎疾患に喘息などがあり、現場での対応が難しかったことが予想されますが、ちょっと突っ込みどころがあります。まず、ワクチン接種後、掻痒感に加え呼吸困難、SpO2も低下しています。この時点でアナフィラキシー症状の所見ですから、なる早でアドレナリンを投与する準備を進めなければなりません。よくアナフィラキシーに対して抗ヒスタミン薬やステロイドを投与しているのをみかけますが、これらの薬剤は使用を急ぐ必要は一切ありません。そして、アドレナリンは皮下注ではありません、筋注です! 重症喘息の際のアドレナリン投与は、なぜか皮下注も選択肢となっていますが筋注でよいでしょう。本症例では特にアナフィラキシーが考えられるため0.3~0.5mg筋注です。位置は大腿外側ですよ!さいごにアナフィラキシーはどこでも起こりえます。アナフィラキシーショックや死亡症例の多くは、アドレナリンの投与の遅れが大きく影響しています。迅速に判断し、適切なマネジメントができるように、今一度整理しておきましょう。1)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.2)救急医学会. ワクチン接種会場におけるアナフィラキシー対応簡易チャート

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新型コロナ外来患者へのbamlanivimab+etesevimab、第III相試験結果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクが高い外来患者において、bamlanivimab+etesevimab併用療法はプラセボと比較して、COVID-19関連入院および全死因死亡の発生率を低下し、SARS-CoV-2ウイルス量の減少を促進することが示された。米国・ハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院のMichael Dougan氏らが、同併用療法の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「BLAZE-1試験」の結果を報告した。基礎疾患を有するCOVID-19患者は重症化リスクが高い。ワクチン由来では時間をかけて免疫がつくのに対し、中和モノクローナル抗体は即時に受動免疫をもたらし、疾患の進行や合併症を抑制できる可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2021年7月14日号掲載の報告。軽症~中等症外来患者、bamlanivimab 2,800mg+etesevimab 2,800mgをプラセボと比較 研究グループは、12歳以上で重症化リスクが高い軽症~中等症のCOVID-19外来患者を、SARS-CoV-2陽性判明後3日以内に中和モノクローナル抗体bamlanivimab(2,800mg)とetesevimab(2,800mg)の併用療法群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回静脈内投与した。 主要評価項目は、29日目までのCOVID-19に関連した入院または全死因死亡であった。29日目までのCOVID-19関連入院および全死亡は併用療法群で有意に減少 計1,035例が無作為化を受けた(併用療法群518例、プラセボ群517例)。患者の平均(±SD)年齢は53.8±16.8歳で、52.0%が女性であった。 29日目までのCOVID-19関連入院または全死因死亡は、併用療法群で11例(2.1%)、プラセボ群で36例(7.0%)に認められ、絶対リスク差は-4.8%(95%信頼区間[CI]:-7.4~-2.3、相対リスク差:70%、p<0.001)であった。 併用療法群では死亡例の報告がなく、プラセボ群のみ10例が報告され、そのうち9例は治験責任医師によりCOVID-19関連死と判定された。 7日目におけるSARS-CoV-2ウイルス量(log)のベースラインからの減少は、併用療法群がプラセボ群より大きかった(ベースラインからの変化量のプラセボ群との差:-1.20、95%CI:-1.46~-0.94、p<0.001)。

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第67回 例外だらけのコロナ治療、薬剤費高騰と用法煩雑さの解消はいずこへ?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている陰で、治療薬開発もゆっくりではあるが進展しつつある。中外製薬が新型コロナの治療薬として6月29日に厚生労働省に製造販売承認申請を行ったカシリビマブとイムデビマブの抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)が7月19日に特例承認された。この抗体は米国のリジェネロン・ファーマシューティカルズ社が創製したものを提携でスイス・ロシュ社が獲得、ロシュ社のグループ会社である中外製薬が日本国内での開発ライセンスを取得していた。両抗体は競合することなくウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位に結合することで、新型コロナウイルスに対する中和活性を発揮する薬剤。日本での申請時には、昨年11月に米国食品医薬品局(FDA)で入院を要しない軽度から中等度の一部のハイリスク新型コロナ患者に対する緊急使用許可の取得時にも根拠になった、海外第III相試験『REGN-COV 2067』と国内第I相試験の結果が提出されている。「REGN-COV 2067」は入院には至っていないものの、肥満や50歳以上および高血圧を含む心血管疾患を有するなど、少なくとも1つの重症リスク因子を有している新型コロナ患者4,567例を対象に行われた。これまで明らかになっている結果によると、主要評価項目である「入院または死亡のリスク」は、プラセボ群と比較して1,200mg静脈内投与群で70%(p=0.0024)、2,400mg静脈内投与群で71%(p=0.0001)、有意に低下させた。また、症状持続期間の中央値は両静脈内投与群とも10日で、プラセボ群の14日から有意な短縮を認めた。安全性について、重篤な有害事象発現率は1,200mg静脈内投与群で1.1%、2,400mg静脈内投与群で1.3%、プラセボ群で4.0%。投与日から169日目までに入手可能な全患者データを用いた安全性評価の結果では、新たな安全性の懸念は示されなかったと発表されている。今回の承認により日本国内で新型コロナを適応とする治療薬は、抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブに次ぐ4種類目となった。従来の3種類はすべて既存薬の適応拡大という苦肉のドラッグ・リポジショニングの結果として生み出されたものであったため、今回の薬剤は「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える。「統計学的に有意に死亡リスクを低下させる」とのエビデンスが示されたのはデキサメタゾンについで2種類目であり、これまでに行われた臨床試験の結果からは、なんと家族内感染での発症予防効果も認められている。発症予防効果は米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と共同で実施した第III相試験『REGN-COV 2069』で明らかにされた。本試験は4日以内に新型コロナ陽性と判定された人と同居し、新型コロナウイルスに対する抗体が体内に存在しない、あるいは新型コロナの症状がない1,505例が対象。プラセボと1,200mg単回皮下注射で有効性を比較したところ、主要評価項目である「29日目までに症候性感染が生じた人の割合」は、プラセボ群に比べ、皮下注射群で81%減少したことが分かった。また、皮下注射群で発症した人の症状消失期間は平均1週間以内だったのに対し、プラセボ群の3週間と大幅な期間短縮が認められている。死亡率低下効果に予防効果もあり、なおかつ限定的とはいえ軽度や中等度の患者にも使用できるというのは、やや手垢のついた言い方だが「鬼に金棒」だ。もっとも冷静に考えると、そう単純に喜んでばかりもいられない気がしている。まず、そもそも今回の抗体カクテル療法も含め、新型コロナを適応として承認された治療薬は、いずれも従来の感染症関連治療薬とは毛並みが異なり、現実の運用では非専門医が気軽に処方できるようなものではない。今後承認が期待される薬剤も含めてざっと眺めると、もはや従来の感染症の薬物治療からかけ離れたものになりつつある。もちろん現行では非専門医がこうした薬剤を新型コロナ患者に処方する機会はほとんどないが、専門医でも慣れない薬剤であるため、それ相応に臨床現場で苦労をすることが予想される。その意味では治療選択肢の増加にもかかわらず、新型コロナの治療自体は言い方が雑かもしれないが、徐々にややこしいものになりつつある。一方、隠れた問題は治療費の高騰である。現在、新型コロナは指定感染症であるため、医療費はすべて公費負担である。そうした中でデキサメタゾンを除けば、薬剤費は極めて高額だ。レムデシビルは患者1人当たり約25万円、バリシチニブも用法・用量に従って現行の薬価から計算すると最大薬剤費は患者1人当たり約7万3,900円。今回の抗体カクテル療法は薬価未収載で契約に基づき国が全量を買い取り、その金額は現時点で非開示だが、抗体医薬品である以上、安く済むわけはない。しかも、これ以前の3種類がいずれも中等度以上であることと比べれば、対象患者は大幅に増加する。本来、疾患の治療は難治例の場合を除き、疾患の解明が進むほど、選択肢が増えて簡便さが増し、時間経過に伴う技術革新などで薬剤費や治療関連費は低下することが多い。ところが新型コロナでは世界的パンデミックの収束が優先されているため、今のところ治療が複雑化し、価格も高騰するというまったく逆を進んでいる。そうした現状を踏まえると、やはりワクチン接種のほうがコストパフォーマンスに優れているということになる。こうした時計の針がどこで逆に向くようになるのか? 個人的にはその点を注目している。

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「ワクチンで不妊、流産」に科学的根拠なし、婦人科系3学会が一般向けQ&A

 7月19日、婦人科系三学会(日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会)は合同で「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A」と題した資料を公開した。 3学会はこれまでも妊産婦や妊娠を希望する女性に対して、新型コロナワクチン接種にあたっての不安を解消するための声明を発表してきた1)2)。しかし、SNS上では「ワクチンを打つと不妊になる」「ワクチンによって月経不順になる」といったエビデンスを欠いた情報が現在も多く流布されており、そうした情報に触れることで不安を持ち、ワクチン接種を見合わせる女性が存在する。ワクチン忌避者の割合は若年女性が年配の男性の3倍程度多い、という調査結果も出ており3)、若年者、とくに女性を対象とした正しいワクチン接種の情報提供が急務となっている。 今回の資料はこれまでの学会声明等を基に、多くの女性が持つ不安や疑問に答えるQ&A形式を採用、一般向けにわかりやすい用語を使い、医療者が印刷してそのまま患者に渡せる資料形式でつくられた。 計15問のQAの一部は以下のとおり。Q1)ワクチンで不妊になることはありますか?これから妊娠を考えているのですが、mRNA ワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?A1)新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)で不妊になるという科学的な根拠は全くありません。Q2)妊娠中の女性は mRNA ワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?流産することはありますか?A2)妊娠中の女性でも mRNA ワクチンを接種して大丈夫です。すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対するワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに流産などの何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A/日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会

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第67回 コロナパンデミックの懸念はらむ東京五輪、尾身会長の懸念

東京オリンピック・パラリンピックの開幕を前に、来日した選手や大会関係者の間で新型コロナウイルス陽性者や濃厚接触者が出ていることが連日ニュースとなっている。選手らが外部との接触を断つ「バブル方式」の破綻や、大会の感染対策をまとめた「プレーブック(規則集)」の形骸化を指摘する声が上がっている。国内の感染者数は右肩上がりに増え、東京都のモニタリング会議では、1週間平均の新規感染者数は五輪閉幕(8月8日)後の8月11日には、約2,400人に達すると試算。また、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身 茂会長は「今の状況でやるのは、普通はない」と発言する事態に。コロナ第5波の到来だけでなく、「トーキョー・パンデミック」の懸念もはらみながら、五輪は明日7月23日に開幕する。重症者が増加すればたちまち医療崩壊も現実となりかねず、もはや「安心安全の五輪」とは言い難いが、今からでもできることは少しでも実行したいものだ。国内においては、自粛疲れと緊急事態宣言慣れによる緩みが感染を拡大。五輪に関しては「バブルの穴」が指摘される。具体的には、▽空港における五輪関係者と一般客の導線の乱れなど水際対策の破綻 ▽選手村(東京・晴海)の滞在者(選手・スタッフ)に新型コロナ陽性者が判明 ▽行動制限が守られていない―などだ。プレーブックの徹底はもちろん必要だ。今回は選手が感染した国が発表したが、疑心暗鬼を招かないようにどの国で何人の感染が発生したのかなど、選手村の正確な状況を日々公表することも必要だろう。日医と都医師会が共同で要望書を提出日本の医療界は五輪に向けてどのような対応をしているのか。日本医師会(日医)は7月12日、五輪会場のある北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県の9都道県医師会を中心に「東京オリンピック・パラリンピックに関する都道府県医師会連絡協議会」をオンラインで開催。この中で、バブル方式がうまく機能するのかといった懸念や、全国のホストタウンにおいて新型コロナ感染症の拡大を心配する声が挙がった。こうした声を受け、日医と東京都医師会は7月19日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の橋本 聖子会長に、以下の内容を記した要望を提出した。要望は、▽午後9時以降の競技開催に伴い夜間の人流が増加しないよう、国民に外出自粛の徹底を求めていく ▽選手団などの入国に際して水際対策の万全を期すよう、課題点の改善とルールの再徹底に取り組む ▽大会関係者、マスコミ等の競技会場への来場をできるだけ減員する ▽各国が任命するCLO(コロナ対策責任者)に関する情報を取りまとめ、ホストタウンや競技開催地域の関係各所に事前に共有する―といった内容だ。また日医は、大規模クラスターやテロ、自然災害が発生した場合に備え、9都道県や周辺地域の医師会と情報共有するため、SNSを活用したシステムを休日・夜間問わず運用するという。尾身分科会長は「最大の医療逼迫招く可能性」を指摘4連休、夏休み、五輪、お盆が重なる中、新型コロナの新規感染者数が現状のペースで増え続けるとどうなるのか。分科会の尾身会長は7月20日、民放のニュース番組で「今までの中で最も厳しい時期。医療の逼迫がまた起きてくる可能性が極めて高い」と指摘。ワクチン接種率の高い欧米でも感染者が増えている状況を踏まえ、「したたかなウイルスなので、ワクチン接種率が6〜7割でも完全に防げるわけではない」と述べる一方、緊急事態宣言が解除される8月22日前後に、人々の行動緩和の目安を示したいとした。このような日本の状況を海外メディアはどう見ているのか。日本が緊急事態宣言下にあること、ワクチン接種率が先進国の中でも低いことを“2つの困難”と捉えているようで、米ワシントン・ポストは「世界の人々の興味は、もはや競技ではなく、コロナの感染状況を確認することが焦点になるだろう」とシニカルに報じ、「今回の東京大会の本当のスターはコロナウイルスになるかもしれない」と結んでいる。海外から皮肉や冗談交じりに“対岸の火事”を眺めるのは勝手だが、自国で起こっているわれわれはそうはいかない。コロナウイルスをスターにするわけにはいかないのだ。

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コロナウイルスのデマを斬る!マスク怖い、サングラス怖い、シッポ大好き!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第38回

第38回 コロナウイルスのデマを斬る!マスク怖い、サングラス怖い、シッポ大好き!新型コロナウイルス感染症をめぐる混乱は続いています。ワクチン接種はスピード感をもって進捗していますが、さまざまなデマが流布しているようです。具体的なものを挙げてみます。「ワクチン接種された実験用のネズミが2年ですべて死んだ」そもそもネズミの寿命が2年程度です。デマというよりも当然の真実で、不安をあおるためだけの流言です。災害や疫病の発生時にはデマや流言が流布しやすいといわれています。その背景が、不安です。人は情報不足あるいは情報が不確かな状況で不安を感じるのです。欧米人と日本人では不安を感じるメカニズムも異なるようです。日本人は目を隠している人に不安を感じ、欧米人は口元を隠している人に不安を感じます。つまり、日本人は「サングラスしてる人怖い」となり、欧米人は「マスクしてる人怖い」となります。欧米の映画やアニメのヒーローは、目元を隠して口元は隠さないのが普通です。バットマン&ロビンが代表です。ヒーローは口元を隠さない、口元を隠すのはだいたい悪いやつ、だからマスクをしたくない。これが、新型コロナウイルス感染症が流行してもマスクをしたくない欧米人の深層心理なのでしょう。一方で、日本では忍者装束のように鼻と口を隠して目は剥き出しが多いようです。コロナの流行がなくともマスクをしている人を街でよく見かけたのが日本です。日本の少女漫画のキャラクターは目が極端に大きいです。アメリカのアニメキャラは口が大きいです。相手の感情を目で読み取る日本人と、口元で読み取る欧米人といえます。メールなどに用いる絵文字にも、その違いは表れています。日本の顔文字の代表は、(^_^) です。目で笑っています。欧米の顔文字の代表のスマイリーフェースは、:-)です。これは英語の書籍の背文字のように横向きに表記されていますが、口で笑っています。そもそもマスクという言葉を考えてみれば、「mask」には「仮面」「覆面」のほかに「ごまかし」「見せかけ」「隠す」などの意味があります。飛沫感染を防ぐための衛生管理の道具がマスクではなく、「正体を隠す」という意味がマスクなのです。ここに欧米人のマスクへの不安感の本質があるのではないでしょうか。目で感情を表す日本人、口で感情を表す欧米人、これを超える素晴らしい感情表現法をもつのが猫です。猫はシッポで感情を表現します。猫がシッポをピンと立てるのは、嬉しい時や甘えたい時です。基本的に機嫌がいい時で、ウキウキしている証拠です。シッポがピンと立っている状況は、子猫時代に母猫にお尻をキレイになめてもらっていた名残です。母猫や心を許した人だけへの表現です。思い切り可愛がりましょう。シッポの毛を逆立てて膨らませているのは、相手を威嚇している時です。自宅に知らない人が突然現れた時や、不意打ちで怖い思いをした時には、うずくまってシッポを足の間にしまって体を小さくします。攻撃しないでと訴えているのです。シッポをパタパタと左右に大きく振っている時は、ご機嫌が斜めの時です。放置しておきましょう。猫を呼んだ時に、シッポの先だけ、ちょこっと振られることがあります。これは、猫が「めんどくさい」と感じている時です。飼い主の声は聞こえているけど、面倒な気持ちの時に行うしぐさです。自分は猫と会話できることを自認しています。鳴き声に加えて、このようなシッポの動きから猫の感情を読み取ります。私ほどの上級者になれば、シッポだけでなく、猫の耳の傾き具合や、ひげ袋の膨らみ具合、目の見開き方、ヒゲの向きなどの情報を網羅的に収集し解析します。エッヘン!コロナウイルスへのデマを排除し不安を払拭しようという文章が、猫自慢になってしまいました。それにしても自分にシッポがないのが残念です。シッポくれ!

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第67回 針刺し事故頻発中!コロナワクチン接種進む中、肝炎、HIVの感染リスクにも重々注意を

一度使った注射器を別の人に再度使用こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京都の新型コロナ感染者の増加が止まらない中、とうとう今週末、オリンピックが開催されます。そこで先週の日曜(7月18日)は選手村がどんな状況か視察するため、ではなく豊洲にあるライブ会場で開かれた、福岡市博多区出身のバンド、NUMBER GIRLのライブを観るために、東京・湾岸エリアの選手村近くまで出かけました(そもそも選手村は交通規制で近づけませんでした)。NUMBER GIRLは、8月に茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で開催予定だった「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」にも出演予定でした。しかし、茨城県医師会の要請で同イベントは中止が決定、NUMBER GIRLのファンのみならず多くの夏フェスファンを失望させました。この夏、NUMBER GIRLをライブで聴くことができるのは、今回の豊洲PITの単独と、「FUJI ROCK FESTIVAL’21」、山中湖のフェスだけという状況です。猛暑の中、選手村と海を挟んではす向いにある豊洲PITで1年半ぶりに観客を入れて敢行されたNUMBER GIRLのライブ。椅子に座って静かに“鑑賞”という、およそロックのライブとは思えないものでしたが、久しぶりの爆音が身体に沁み渡り満足の1日でした。終演後、勝鬨橋を歩いて渡り地下鉄の駅まで歩いたのですが、営業中の居酒屋の中にオリンピック関係者と思しき外国人2人(大胆にも同じユニフォームを着てました)が日本人に混じって飲んでいるのが見えました。“バブル方式”と言ってはいますが、彼らがもし選手だとしたら、選手村のバブルは針で穴を開けたかのように、既に弾けてしまっているのかもしれません。さて、今週はコロナワクチンの接種が各地で進む中、頻発している「針刺し事故」について書いてみたいと思います。7月13日のNHKニュースによれば、群馬県沼田市は、12日の新型コロナウイルスワクチン接種において、一度使った注射器(注射針とシリンジ)を別の人に再度使用した可能性があることを明らかにした、とのことです。ディスポなのに“2度刺し”の余地はどこに?最初、このニュースを聞いて疑問に思いました。私自身も先日1回目の接種を終えたのですが、注射針・シリンジはディスポーザブルなので接種後すぐに廃棄されていました。沼田市の事故において、“2度刺し”の余地がどこにあったのか、わからなかったのです。同ニュースによれば、一度使った注射器を別の人に使用したのは12日午後6時から市の保健福祉センターで行ったワクチンの集団接種においてのこと。ここでは108人が2度目の接種を受けましたが、終了後に注射器が1人分余り、使用済みで廃棄した注射器を確認したところ107本しかなかったということです。市によれば、この日は歯科医師が接種を担当しており、一度打った注射器を廃棄せず空の状態で再度使ってしまった可能性が高いということでした。同ニュースでは、「接種を受けた人に確認を進めていて現時点で、健康面の被害は報告されていない」「誤って使用済みの空の注射器を打たれた人は抗体ができていないことが想定されるため、1週間後をめどに全員に抗体検査を行って特定したいとしている」と報道していますが、そんなことより、2度刺しが起きた原因や、針刺し事故では肝炎やHIVに感染するリスクがあることも、きちんと伝えるべきではないかと感じました。使用注射器と未使用注射器を同じ机の同じ形状のトレーにいったいどういう経緯でこんな“古典的”な医療事故が起こったのでしょうか?ひょっとしたら他でも起きているのではないかと考え、ネットで検索してみると、あるわあるわ…。ワクチン接種に絡む事故が頻発していました。6月11日には、宮崎市で市内の高齢者施設において医療機関が実施した新型コロナワクチン接種において、医師が誤って使用済み注射器の針を施設従事者の60代女性に刺す事故が起こっています。この事故については、宮崎市のホームページに事故の概要が報告されています。それによれば、事故発生の原因は、「医師が受傷者の直前に使用した注射器と未使用の注射器を、同じ机の同じ形状のトレーに置いたため、誤って使用済みの注射器を使用して受傷者に刺した」とのことです。この他、同様の事故は、岡山県浅口市、滋賀県湖南市、奈良県五條市、埼玉県上里町などでも発生しています。いずれも現段階で受傷者に健康被害は起きていないようです。医療廃棄物での事故も多発中接種後、医療廃棄物になってからの事故も頻発しています。6月1日、北九州市は新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で、誤った方法で廃棄された注射針がゴミ回収業者の女性の足に刺さる事故があった、と発表しました。注射針は使用済みとみられ、女性は血液検査を受け、血液感染する可能性がある感染症のワクチン(おそらくB型肝炎ワクチン)を接種したそうです。西日本新聞の報道によれば、本来は専用ボックスに捨てなければならない注射針をガウンなどの医療用廃棄物の袋に捨てた上、それを一般廃棄物用の場所に誤って置いていたとのことです。また、6月7日、石川県小松市の新型コロナワクチンの集団接種会場では使用済みの注射針が会場の準備などを行うスタッフに刺さる事故が発生しています。石川テレビの報道によると、集団接種終了後、スタッフが接種の片づけを行っていたところ、ゴミ袋に入っていた注射針が相次いで2人に刺さった、とのことです。接種ブースには使用済みの注射針を捨てる医療廃棄物用のゴミ箱とガーゼの包装紙など一般ゴミを捨てるゴミ袋が置かれていましたが、今回の事故は誤って通常のゴミを集める袋に注射針が捨てられたことが原因とみられています。予防接種のフローに慣れていなかったことも一因か2度刺し事故や、廃棄物になってからの事故は、医療現場から遠ざかっていた医療スタッフや、注射針による医療事故の怖さを知らない事務方スタッフのケアレスミスで起こっているようです。中でも医療廃棄物の処理の杜撰さは、ワクチン接種を専門業者に丸投げ(その業者もまた関連業者に再丸投げのケースも)したことで、事故防止策が疎かになっていることも一因と言えるでしょう。2度差し事故については、いくつかの報道を見ると、宮崎市のケースのように、一度刺した注射針とシリンジを、未使用の注射が置いてあるトレーに戻したり、同じ形のトレーに置いたりしたため、未使用か使用済みかわからなくなってしまうことで起こっています。岡山県浅口市の個別接種で起きた事故でも、通常はトレーに注射器を1本ずつ置いて管理するところを、なぜか2本(未使用と使用済み)置いてあり、直前の接種で使った注射器を使用してしまったようです。集団予防接種に慣れている医療スタッフではまず考えられないミスだと言えるでしょう。沼田市のケースでは打ち手が歯科医だったようですが、2度刺しは予防接種のフローやリスク管理に慣れていないスタッフで起こりやすいのかもしれません。打ち手が自分に刺してしまう事故の可能性もここまで見てきたのは、新聞やテレビで報道された事故ばかりですが、おそらくこれらは氷山の一角で、針刺し事故はもっと頻繁に起こっているのではないでしょうか。なにせ、1日150万回近くの接種が行われているのですから。今のところ、致命的な劇症肝炎が発生していないだけでも幸いと言えます。ところで、こうした事故の中で、うやむやにされがちなのは、医療スタッフ自身がワクチン接種後の注射針を、自分の腕や腿などに誤って刺してしまう事故です。ミスしたことがバレるとカッコ悪いので、その事実を黙っている人も、ひょっとしたらいるかもしれません。医療者であればご存知でしょうが、針刺し事故後はすぐに打った相手の感染症情報(HBs抗原、HBs抗体、HCV 抗体、HIV 抗体)を調べることと、自分自身の血液検査が必要です。場合によっては、乾燥抗HBsヒト免疫グロブリン投与(HBIG)とB型肝炎ワクチンの接種や、抗HIV薬服用も考えなければなりません。針刺し事故の思い出…「SASU-ME」にも気を付けて実は私自身も針刺し事故に遭遇したことがあります。今から15年ほど前、ある病気で診療所を受診し血液検査を受けることになりました。院長が採血をしたのですが、採血後の注射を持った右手がぶれて、あろうことか院長自身の左手を刺してしまったのです。院長は一瞬焦った表情をしたものの、「大丈夫、大丈夫。萬田さん、肝炎のキャリアじゃないですよね?」と言って、その時の診療は終わりました。私自身は「大丈夫って。まあ私は大丈夫だけど」と思い帰宅したのですが、すぐに診療所から電話がかかってきて、その日のうちに再度受診することになりました。診療所では肝炎やHIVの検査の同意を取られ、再び採血、検査される羽目となりました。その後、院長には何の健康被害も起きませんでしたが、日常診療の中でのちょっとした気の緩みやミスで針刺し事故は起こるんだ、と実感したことを覚えています。これまでの報告1)からHIV汚染血液による針刺し事故の感染率は0.3%、粘膜の曝露による感染率は0.09%とのことです。また、C型肝炎ウイルスは約2%、HBe抗体陽性ウイルスは約10%、HBe抗原陽性ウイルスは約40%とされています。HBe抗原陽性ウイルスの場合の感染率の高さが際立っており、劇症肝炎を発症する危険性もあります。そう言えば、NUMBER GIRLには「SASU-YOU」という名曲があります。医療スタッフの多くはB型肝炎ワクチンを接種済だとは思いますが、ワクチン接種に関わる方は、肝炎、HIVの感染リスクも念頭に、「SASU-“YOU”」に加え、「SASU-“ME”」にも気を付けていただきたいと思います。参考1)針刺し事故後の対応について/国立病院機構 名古屋医療センター

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新型コロナとしもやけ様の皮膚疾患、関連性は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック当初、同疾患の特徴の1つとしてしもやけ様の皮膚疾患の増大が盛んに報じられた。米国・Permanente Medical GroupのPatrick E. McCleskey氏らは、COVID-19罹患率としもやけ罹患率の相関性について、これまで疫学的な検討がされていなかったとして、北カリフォルニアの大規模集団を対象に評価した。23地点・9ヵ月間にわたって集めたデータを分析した結果、パンデミック中にしもやけ罹患率は増大したが、COVID-19罹患率との相関関係は弱いことが示されたという。著者は、「今回の研究結果は、COVID-19との因果関係による結果であると思われる。パンデミック中にしもやけを有した患者の受診機会が増えたことや、外出制限の措置中の行動変化による可能性が示唆される」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年6月23日号掲載の報告。 研究グループは、COVID-19罹患率としもやけ罹患率に相関性があるかを後ろ向きコホート研究にて評価した。2016年1月1日~2020年12月31日(パンデミック前およびパンデミック中)における、440万人が加入するカイザーパーマネンテ北カリフォルニア(健康保険システム)の全年齢加入者データを集めて行われた。COVID-19罹患率は、北カリフォルニアの207地点月(location-months)のデータ(23地点・9ヵ月間)を集めて解析した。 主要評価項目は、しもやけ罹患率とし、207地点月のCOVID-19発生率との関連性を、Spearman順位相関係数を用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・パンデミック中に報告されたしもやけ患者は780例で、パンデミック前と比較し罹患率は上昇した。うち464例が女性(59.5%)、平均年齢は36.8(SD 21.8)歳であった。・COVID-19罹患率としもやけ罹患率に相関性は認められた(Spearman係数は0.18、p=0.01)が、パンデミック中にしもやけを有し、検査でSARS-CoV-2陽性だった患者は17/456例(3.7%)のみで、しもやけを診断されてから6週間以内にSARS-CoV-2陽性だった患者は9/456例(2.0%)のみだった。・検査でSARS-CoV-2 IgG抗体陽性だった患者は、1/97例(1.0%)であった。・人種年齢性別の層別解析においては、中南米系の患者がCOVID-19症例の46%を占めたが、しもやけ症例では9%と影響を認められなかった。

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コロナ感染者の脈拍をウェアラブルデバイスで追跡、その結果は?

 新型コロナに感染すると、その後も自律神経の機能障害から心筋損傷までさまざまな後遺症に悩まされる。長期にわたる新型コロナ症状は発症後最大6ヵ月間認められるとも言われるが、これまでのところ定量化はされていない。 今回、米国・Scripps Research Translational InstituteのJennifer M Radin氏らはこの問題解決のために、ウェアラブルデバイスのデータを利用し感染後の症状回復に関する調査を実施した。近年では日頃からスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを使い、心拍数などのデータ測定を行う人が増えているため、(感染前の)健康な状態から感染の過程、ベースラインに戻るまでの個人の生理学的および行動的指標を継続的に追跡することができる。この調査の結果、一過性の徐脈は、症状の発症から約9〜15日後に認められ、新型コロナ感染による初期症状と初期の安静時心拍数(RHR)の変化が、このウイルスからの回復時間に関連している可能性があることを示唆した。JAMA Network Open誌2021年7月7日号リサーチレターでの報告。 本研究は、新型コロナ陽性者と陰性者の回復期間や変動を調べることを目的とし、2020年3月25日~2021年1月24日までの期間に登録された3万7,146例を調査した。RHRは、ベースラインからの偏差=毎日のRHR-ベースラインの平均RHRで求めた。また、陽性者は症状発現後28~56日のベースラインからのRHRの平均偏差(一分間の拍動数[bpm]が1未満、1~5、5超)によってもグループ化された。 主な結果は以下のとおり。・対象者875例で、そのうち新型コロナの陽性者は234例(平均年齢:45.3歳[範囲:18~76歳]、女性:164例[70.9%])、陰性者は641例(平均年齢:44.7歳[同:19~75歳]、女性:455例[71.1%])だった。・陽性者と陰性者を比較すると、RHRで最も顕著だった。陽性者は平均して最初に一過性の徐脈を経験後、症状発症後79日までベースラインに戻らず、相対的に頻脈を経験した。・歩数と睡眠量は、RHRよりも早くベースラインに戻った(陽性:32日vs.陰性:24日)。・回復期間中、陽性者は陰性者と比較して、RHRが正常に戻る際に異なる臨床経過をたどり、陽性者のサブグループ32例(13.7%)は、133日以上正常に戻らず、RHRのbpmが5超のままだった。・新型コロナの急性期において、このサブグループ32例の患者は咳を訴える者が多かった。なお、一分間の拍動数[bpm]1未満、1~5、5超で比較すると、咳(57例[55.3%]vs. 57例[57.6%]vs. 27例[84.4%])、体の痛み(42例[40.8%]vs. 35例[35.4%]vs. 20例[62.5%])、息切れ(9例[8.7%]vs. 6例[6.1%]vs. 9例[28.1%])だった。 研究者らは「これは長期間のウェアラブルセンサーデータを調査した最初の研究である。新型コロナ感染の長期的な生理学的影響は、平均して約2〜3ヵ月続くが、自律神経系のさまざまなレベルの機能障害や進行中の炎症を反映している可能性があり、かなりの個人内変動が見られた」とし、「将来的には、より大きなサンプルサイズと包括的な参加者報告の結果から、新型コロナからの回復における個人内変動の要因をよりよく理解することが可能になるだろう」と結論付けた。

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新型コロナ抗原迅速検査、無症状病原体保有者の特定に有用か/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のイムノクロマト法による抗原迅速検査(LFT)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状病原体保有者、とくに他者へ感染させる可能性が高い、高ウイルス量の無症状病原体保有者の特定に有用である可能性が示された。英国・リバプール大学のMarta Garcia-Finana氏らが、リバプール住民を対象にInnova LFTとRT-qPCR法を比較した大規模パイロット試験の結果を報告した。BMJ誌2021年7月6日号掲載の報告。RT-qPCR法と比較したLFTの感度、特異度、予測値を評価 研究グループは、症候性の人の検査精度の評価報告は充実しているが、無症候性の人への使用に関するデータは入手が限られていることから、リバプールのCOVID-19検査センターで、コミュニティLFTパイロット試験を実施。2020年11月6日~29日に48ヵ所の検査センターを訪れた一般成人集団(18歳以上の無症状ボランティア)5,869例を対象に、LFTとRT-qPCR法の性能を評価する観察コホート試験を行った。 被験者は、検査センターで、監視下自己スワブにて検体を採取し、Innova LFTおよびRT-qPCR法の両検査を受けた。 主要評価項目は、COVID-19の典型的症状のない被験者について、COVID-19流行期におけるRT-qPCR法と比較したLFTの感度、特異度および予測値とした。感度40.0%、Ct<18.3では同90.9%、<24.4では69.4%、≧24.4では9.7% 5,869例の検査結果のうち、LFTの結果22例(0.4%)、RT-qPCRの結果343例(5.8%)が無効(30分以内に検査キットにコントロールラインが表示されない)であった。 無効データを除外したRT-qPCRと比較したLFTの感度は40.0%(95%信頼区間[CI]:28.5~52.4、28/70例)、特異度は99.9%(99.8~99.99、5,431/5,434例)、陽性的中率90.3%(74.2~98.0、28/31例)、陰性予測値は99.2%(99.0~99.4、5,431/5,473例)であった。 無効とした結果は陰性であったと仮定した場合、感度は37.8%(95%CI:26.8~49.9、28/74例)、特異度は99.6%(99.4~99.8、5,431/5,452例)、陽性的中率84.8%(68.1~94.9、28/33例)、陰性予測値は93.4%(92.7~94.0、5,431/5,814例)であった。 RT-qPCRサイクル閾値(Ct)が18.3未満(おおよそのウイルス量>106RNAコピー/mL)の被験者において、感度は90.9%(95%CI:58.7~99.8、10/11例)、Ctが24.4未満(>104RNAコピー/mL)では同69.4%(51.9~83.7、25/36例)であり、Ctが24.4以上(<104RNAコピー/mL)では同9.7%(1.9~23.7、3/34例)であった。 LFTは、RT-qPCR検査結果が陽性でウイルス量高値1,000人のうち、少なくとも5分の3、最大で998例を検出できることが示唆された。 これらの結果について著者は、「陽性者が多い状況での単独LFTの使用は、Ct低値の無症状の成人について、数は少ないけれども見逃しがあると見なす必要がある。また高ウイルス量の症例についても、一部は見逃される可能性があり、検査結果をどのように解釈するのか、一般市民との明解で正確なコミュニケーションが重要になる」と述べ、最後に「LFTによるウイルス抗原の検出とRT-qPCRの概算ウイルス量から、感染状況を読み解くためのさらなる研究が必要である」とまとめている。

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軽度~中等度コロナ治療薬「ロナプリーブ」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は7月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同1332」(一般名:カシリビマブ[遺伝子組換え]/イムデビマブ[遺伝子組換え])の国内における製造販売を承認した。COVID-19患者を対象とした海外臨床第III相試験(REGN-COV 2067)の成績と、日本人における安全性・忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第I相臨床試験の成績に基づき、国内開発権および独占的販売権を取得した中外製薬が特例承認の適用を求め、申請していた。国内におけるCOVID-19治療薬としては、レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブに続き、4例目となり、軽度~中等度の治療薬では初となる。 ロナプリーブは、SARS-CoV-2に対する2種類のウイルス中和抗体(カシリビマブ+イムデビマブ)を組み合わせ、COVID-19に対する治療および予防を目的として、米国・リジェネロン社などが開発したもの。先述のREGN-COV 2067においては、本抗体カクテル療法はプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを70%(1,200mg静脈内投与)および71%(2,400mg静脈内投与)と有意に低下させた。米国では2020年11月、成人および小児患者(12歳以上で体重が40㎏以上)で軽度~中等度のCOVID-19外来患者への治療薬として、FDAから緊急使用の許可を取得している。 中外製薬によると、国内におけるロナプリーブの供給量は、日本政府との取り決めにより詳細は非開示だが、合意内容に基づき、2021年分を確保しているという。医療機関への供給については、厚労省から20日付で発出される事務連絡において具体的な発注方法などを指示している。<製品概要>販売名:ロナプリーブ点滴静注セット300、同点滴静注セット1332一般名:カシリビマブ(遺伝子組換え)/イムデビマブ(遺伝子組換え)効能・効果:SARS-CoV-2による感染症用法・用量:通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)およびイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注

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