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新型コロナが世界の死因の第2位に(GBD 2021)/Lancet

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏らGBD 2021 Causes of Death Collaboratorsは、「世界疾病負担研究(GBD)」の最新の成果としてGBD 2021の解析結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、長期にわたる平均余命の改善や多くの主要な死因による死亡の減少が妨げられ、このような悪影響が地域によって不均一に広がった一方、COVID-19の流行にもかかわらず、いくつかの重要な死因の減少には継続的な進展がみられ、世界的な平均余命の改善につながったことが明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年4月3日号に掲載された。1990~2021年の世界の原因別死亡率、YLLを評価 本研究では、1990~2021年の204の国と地域、および各国の811の地方(郡、州など)における288の死因による死亡率と損失生存年数(YLL)を、年齢、性、場所、年ごとに評価した(米国・ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。 解析には、人口動態登録や口頭剖検のほか、国勢調査やサーベイランス、がん登録など、5万6,604件のデータソースを用いた。平均余命や高死亡率の地理的な集中の解析も行った。COVID-19が2021年の死因の第2位に 2019年の世界の主要な年齢調整死因は1990年と同じであり、第1位が虚血性心疾患、次いで脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、下気道感染症の順であった。これに対し2021年には、COVID-19(年齢調整死亡率:人口10万人当たり94.0人[95%不確定区間[UI]:89.2~100.0])が脳卒中に代わって第2位となり、脳卒中は第3位、慢性閉塞性肺疾患は第4位であった。 2021年にCOVID-19による年齢調整死亡率が最も高かった地域は、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり271.0人[95%UI:250.1~290.7])と中南米・カリブ海諸国(195.4人[182.1~211.4])であった。 一方、2021年のCOVID-19による年齢調整死亡率が最も低かったのは、高所得地域(10万人当たり48.1人[95%UI:47.4~48.8])と東南アジア・東アジア・オセアニア(23.2人[16.3~37.2])であった。2019~21年に平均余命が1.6年短縮 世界の平均余命は、解析した22の死因のうち18について、1990~2019年の間に着実に改善した。この改善に最も寄与したのは腸管感染症による死亡数の減少で、平均余命が1.1年延長した。次いで下気道感染症で0.9年、脳卒中で0.8年、その他の感染性疾患、虚血性心疾患、新生物、新生児疾患でそれぞれ0.6年の延長が得られた。 一方、2019~21年の間に世界の平均余命は1.6年短縮したが、これは主にCOVID-19やその他の世界的流行に関連した死亡による死亡率の増加に起因するものであった。 また、平均余命の変動は地域によって大きく異なり、東南アジア・東アジア・オセアニアは全体で8.3年(95%UI:6.7~9.9)延長し、COVID-19による平均余命の短縮が最も小さかった(0.4年)。COVID-19により平均余命が最も短縮したのは中南米・カリブ海諸国だった(3.6年)。 さらに2021年の時点で、288の死因のうち53が世界人口の50%未満の地域に高度に集中しており、同様のパターンを示した死因が44だけであった1990年以降、これらの死因は徐々に地理的に集中するようになっていた。この集中現象は、腸管感染症、下気道感染症、マラリア、HIV/AIDS、新生児疾患、結核、麻疹について指摘されている。 著者は、「高死亡率の地理的な集中のパターンを調査することで、公衆衛生上の介入が成功した地域が明らかになり、このような成功例を特定の死因が強く残存する地域に適用することで、あらゆる地域の人々の平均余命を改善するための施策の立案に資する可能性がある」とし、「GBD 2021における死因推定の包括的な性質は、死亡率の改善と悪化から学ぶ貴重な機会を提供し、死亡率減少の進展を加速させる一助となるであろう」と述べている。

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口腔がんの非侵襲的な検査法の開発に成功

 口腔病変の検体を非侵襲的に採取し、そこに含まれる2種類のタンパク質の比率をもとにスコアを算出することで、口腔がんを迅速に診断できるようになる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学生物科学部門のAaron Weinberg氏らによるこの研究結果は、「Cell Reports Medicine」に3月4日掲載された。 現行の口腔がんの生検は、歯科医やその他の専門医が口の中の疑わしい病変部位の組織を採取し、それを研究所に送って検査してもらうのが通常のプロセスである。しかし、この方法は、侵襲的である上に費用もかかる。それに対し今回の研究では、綿棒で病変部位を軽くこすって検体を採取し、それを分析するだけで、従来の生検と同程度に機能することが示されたという。 その具体的な方法は、まず、綿棒で病変部位とその対側の正常部位の検体を採取し、ELISA法によりそれぞれの検体のヒトβディフェンシン(β-defensin;BD)-3(hBD-3)とhBD-2の比率を算出する。BDは、口腔や肺、腎臓などの粘膜上皮や皮膚に発現するペプチドで、細菌などの病原体に対する防御機能を持つことが知られている。早期口腔がんの場合、hBD-3の発現が急増するが、hBD-2は変化しないという。次いで、病変部位のhBD-3とhBD-2の比率を正常部位の同比率で割ることで、BD指数と呼ばれるスコアを算出する。このスコアが特定の閾値を超えた場合には、口腔がんの可能性が高いと判定される。BD指数に基づくこの方法の検査能を3つのコホートで検証したところ、全体の感度は98.2%、特異度は82.6%であることが示された。 Weinberg氏は、「われわれは当初、hBD-3は創傷治癒や微生物の死滅に関与する、良い影響をもたらすものだととらえていた。しかし、ある種の細胞が制御不能に増殖するのと同じように、hBD-3も制御不能に増殖し得ることが明らかになったことから、口腔がんに焦点を当ててhBD-3を調べることにした」と話す。 Weinberg氏は続けて、「ジキル博士だと思っていたhBD-3が、実はハイド氏だと判明したときのわれわれの驚きを想像してみてほしい。hBD-3は腫瘍の成長を促すだけでなく、がんの初期段階で過剰に発現するのに対し、hBD-2に変化は生じないことが判明したのだ。正常部位に比べて病変部位ではこれらのタンパク質の発現レベルに違いが認められたことが、BD指数によりがんと良性病変を区別できるかどうかを調べる今回の研究につながった」と説明している。 研究グループは、すでに特許を取得したこの新しい検査法を採用することで、検査室ベースの生検の必要性を95%減らすことができると推定している。また、研究論文の共著者である、ケース・ウェスタン・リザーブ大学工学部教授のUmut Gurkan氏は、この結果に刺激され、約30分以内に患者のBD指数を表示できるポイント・オブ・ケア装置(特許出願中)を開発したという。

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非高リスクコロナ患者、ニルマトレルビル・リトナビルvs.プラセボ/NEJM

 重症化リスクが高くない症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人外来患者において、COVID-19のすべての徴候または症状の持続的な緩和までの期間は、ニルマトレルビル/リトナビルとプラセボで有意差は認められなかった。米国・ファイザーのJennifer Hammond氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験「Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in Standard-Risk Patients trial:EPIC-SR試験」の結果を報告した。ニルマトレルビル/リトナビルは、重症化リスクがある軽症~中等症COVID-19成人患者に対する抗ウイルス治療薬であるが、重症化リスクが標準(重症化リスク因子のないワクチン未接種者)または重症化リスク因子を1つ以上有するワクチン接種済みの外来患者における有効性は確立されていなかった。NEJM誌2024年4月4日号掲載の報告。ワクチン接種済み重症化リスクあり、未接種で重症化リスクなしの外来患者に発症後5日以内に治療開始 研究グループは、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認され、COVID-19の症状発現後5日以内の成人患者を、ニルマトレルビル/リトナビル群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、12時間ごとに5日間投与した。 適格患者は、COVID-19の重症化リスク因子を少なくとも1つ有するCOVID-19ワクチン接種完了者、または、COVID-19重症化に関連する基礎疾患がなくワクチン接種を1回も受けていないか、過去12ヵ月以内に接種していない患者とし、参加者には電子日記を用いて1日目から28日目まで毎日、試験薬の服用時刻と事前に規定したCOVID-19の徴候または症状の有無および重症度を記録してもらった。 主要エンドポイントは、評価対象とするすべてのCOVID-19の徴候または症状の持続的な緩和が得られるまでの期間(28日目まで)、重要な副次エンドポイントは28日目までのCOVID-19関連入院または全死因死亡であった。主要エンドポイントを達成せず 2021年8月25日~2022年7月25日に、計1,296例がニルマトレルビル/リトナビル群(658例)またはプラセボ群(638例)に無作為化された(最大の解析対象集団:FAS)。このうち少なくとも1回、試験薬の投与を受けベースライン後に受診した1,288例(それぞれ654例、634例)が、有効性の解析対象集団となった。 有効性解析対象集団において、すべてのCOVID-19の徴候または症状の持続的な緩和が得られるまでの期間の中央値は、ニルマトレルビル/リトナビル群で12日、プラセボ群で13日であり、統計学的な有意差は認められなかった(log-rank検定のp=0.60)。 COVID-19関連入院または全死因死亡の発現割合は、ニルマトレルビル/リトナビル群で0.8%(5/654例)、プラセボ群で1.6%(10/634例)であった(群間差:-0.8%、95%信頼区間:-2.0~0.4)。 有害事象の発現率は、ニルマトレルビル/リトナビル群25.8%(169/654例)、プラセボ群24.1%(153/634例)で、両群間で同程度であった。また、治療関連有害事象の発現率はそれぞれ12.7%(83/654例)、4.9%(31/634例)で、この差は主にニルマトレルビル/リトナビル群においてプラセボ群より味覚障害(5.8% vs.0.2%)および下痢(2.1% vs.1.3%)の発現率が高かったためであった。

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RSウイルス感染症予防薬が乳児の入院を90%削減

 RSウイルス感染症から赤ちゃんを守るための予防薬であるベイフォータス(一般名ニルセビマブ)の入院予防効果は90%であることが、リアルワールドデータの分析から明らかになった。これは、在胎35週以上で生まれた乳児を対象にニルセビマブの有効性を検討し、RSウイルス感染による医療処置の必要性を79%、入院の必要性を81%防ぐことを示した第3相臨床試験の結果を上回る。米疾病対策センター(CDC)の研究チームが実施したこの研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に3月7日掲載された。 CDCは、生まれて初めてRSウイルスシーズンを迎える生後8カ月未満の乳児に対するニルセビマブの単回投与を推奨している。RSウイルスは乳幼児の入院の主な原因であり、米国では毎年、5〜8万人の5歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症により入院している。 ニルセビマブはRSウイルス感染に対する免疫系の働きを特異的に増強する長時間作用型のモノクローナル抗体である。ニルセビマブが、生後24カ月未満の乳幼児でのRSウイルス関連下気道感染症の予防薬としてFDAにより承認されたのは2023年7月のことであり、そのため、今シーズンはその効果が証明される最初のシーズンとなる。なお、RSウイルスに対してはワクチンも承認されているが、投与対象は高齢者と妊婦である。 今回の研究でCDCの研究チームは、CDCの新ワクチンサーベイランスネットワーク(New Vaccine Surveillance Network;NVSN)から抽出した、2023年10月1日時点で生後8カ月未満であるか、同年10月1日以降に生まれた乳児のうち、2023年10月1日から2024年2月29日の間に急性呼吸器感染症により入院した699人を対象に、ニルセビマブの有効性を調査した。対象乳児のうち、407人(58%)はRSウイルス検査で陽性と判定され(症例群)、残る292人(42%)は陰性だった(対照群)。 症例群では6人(1%)、対照群では53人(18%)がニルセビマブの投与を受けていた。医学的に見てリスクの高い乳児は、健康な乳児に比べてニルセビマブを投与済みの者が多かった(46%対6%)。多変量ロジスティック回帰モデルによる解析から、RSウイルス感染症関連での入院に対するニルセビマブの予防効果は90%(95%信頼区間75〜96%)であることが示された。 研究チームは、「ニルセビマブなどのRSウイルス感染症の予防薬は、今でもRSウイルスから乳幼児を守るための最も重要な手段であることに変わりはない」とCDCのニュースリリースで述べている。 ただしCDCは、今回の研究でのサーベイランス期間が通常より短かったとし、10月から3月までの全RSウイルスシーズンを通して見ると、ニルセビマブの有効性は今回の結果より低くなる可能性があることに言及している。なぜなら、モノクローナル抗体の予防効果は通常、時間の経過とともに弱まるからである。 CDCは、ニルセビマブが妊娠中にRSウイルスワクチンを接種しなかった母親から生まれた乳児のために使われる薬であることを述べ、母親がRSウイルスワクチンを接種することで防御抗体が子どもに移行することを強調している。

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亜鉛欠乏症、日本人の特徴が明らかに

 亜鉛欠乏症*は、免疫機能の低下、味覚障害、嗅覚障害、肺炎、成長遅延、視覚障害、皮膚障害などに影響を及ぼすため、肝疾患や慢性腎臓病などをはじめとするさまざまな疾患を管理するうえで、血清亜鉛濃度の評価が重要となる。今回、横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)らが日本人患者の特徴と亜鉛欠乏との相関関係を調査する大規模観察研究を行った。その結果、日本人の亜鉛欠乏患者の特徴は、男性、入院患者、高齢者で、関連する病態として呼吸器感染症や慢性腎臓病などが示唆された。Scientific reports誌2024年2月2日号掲載の報告。*「亜鉛欠乏症」は亜鉛欠乏による臨床症状と血清亜鉛値によって診断されるとされている。これに対し、「低亜鉛血症」は亜鉛欠乏状態を血清亜鉛値から捉えたもの。 研究者らは2019年1月~2021年12月の期間、メディカル・データ・ビジョン(MDV)が保有する日本全国のレセプトデータベースを使用して、遡及的かつ横断的観察研究を実施した。研究母集団のうち、20歳未満の患者、亜鉛含有薬剤の処方後に血清亜鉛濃度が評価された患者を除く、外来および入院患者1万3,100例の血清亜鉛データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は69.0歳、男性は48.6%であった。・血清亜鉛濃度の平均値±SDは65.9±17.6μg/dLで、4,557例(34.8%)が亜鉛欠乏症(60μg/dL未満)に、5,964例(45.5%)が潜在性亜鉛欠乏(60~80μg/dL)に該当した。・亜鉛欠乏症との有意な関連がみられたのは、男性(オッズ比[OR]:1.165)、高齢者(OR:1.301)、入院患者(OR:3.367)だった。男性の亜鉛欠乏症の割合は50代を境に高くなったが、80代では男女共に40%以上が亜鉛欠乏症であった。・亜鉛欠乏症の割合が高い併存疾患について、年齢と性別による多変量解析後の調整オッズ比(aOR)は、肺臓炎で2.959、褥瘡や圧迫で2.403、サルコペニアで2.217、新型コロナウイルス感染症で1.889、慢性腎臓病で1.835だった。・また、亜鉛欠乏症と有意な関連がみられた薬剤のaORは、スピロノラクトンが2.523、全身性抗菌薬が2.419、フロセミドが2.138、貧血治療薬が2.027、甲状腺ホルモンが1.864、と明らかになった。

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次世代コロナワクチン、第III相試験で良好な中間結果を達成/モデルナ

 米国・Moderna社は3月26日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「スパイクバックス」について、次世代の「mRNA-1283」が、第III相試験の結果、同社の既存のオミクロン株対応2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチン「mRNA-1273.222」と比較して、SARS-CoV-2に対するより高い免疫応答の誘導を示したこと発表した。この次世代コロナワクチン「mRNA-1283」は、より長い保存期間と保存上の利点をもたらす可能性があり、インフルエンザとCOVID-19の混合ワクチン「mRNA-1083」の構成要素となる予定だ。 次世代コロナワクチン「mRNA-1283」と既存の「mRNA-1273.222」とを比較した第III相ピボタル試験「NextCOVE試験(NCT05815498)」は、米国、英国、カナダの12歳以上の約1万1,400人を対象とした無作為化観察者盲検アクティブ対照試験だ。本試験の結果、「mRNA-1283」は、SARS-CoV-2のオミクロンBA.4/BA.5および起源株の両方に対して、より高い免疫応答を引き起こすことが認められた。とくにこの免疫応答は、COVID-19による重篤な転帰リスクが最も高い65歳以上の参加者に顕著にみられたという。主な局所有害事象は注射部位の疼痛で、主な全身性の有害事象は頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒だった。 「mRNA-1283」は、冷蔵庫での保存で安定するように設計されており、有効期限も従来のものよりも長くなっていることから、医療従事者の負担を軽減し、ワクチン接種へのアクセスを改善することで、公衆衛生に貢献する可能性があるという。

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新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)の有効性と安全性(解説:寺田教彦氏)

 ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスが中枢神経に感染し、運動神経細胞を不可逆的に障害することで弛緩性麻痺等を生じる感染症で、主に5歳未満の小児に好発するため「小児麻痺」とも呼ばれる感染症である。ウイルスは主に糞口感染で人から人に感染するが、そのほかに汚染された水や食べ物を介して感染することもあり、治療薬は存在しないため、ワクチン接種がポリオの感染対策において重要とされる。ポリオウイルスには、3つの血清型(1、2、3型)があり、1988年に世界保健機関がワクチン接種によるポリオ根絶計画を提唱し、2015年と2019年に野生型ポリオウイルス2型と3型がそれぞれ根絶認定された。残る野生型ポリオウイルス1型が流行しているのはパキスタンとアフガニスタンのみである。 ところで、今回の研究は新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)を対象としているが、2型は根絶認定されたのではないか? と疑問を持たれるかもしれない。これは先の根絶計画で用いられていた経口生ポリオワクチン(OPV)の欠点に、弱毒化変異を失った伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(circulating vaccine-derived poliovirus; cVDPV)が出現し、ワクチン接種者や接種患者から排出されたウイルスで感染症を発症する問題があったためである。cVDPVによるポリオ流行は、とくに2型cVDPVが問題で(Diop OM, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2015;64:640-6)、cVDPVの85%を占めていた。そのため、世界保健機関(WHO)は2016年前半に3価ポリオワクチン(tOPV)の接種を停止し、2型OPV成分を除いた2価経口生ポリオワクチン(bOPV)に切り替えを推奨した。しかし、2型OPVの接種中止は世界的に2型ポリオに対する著しい免疫低下をもたらし、2020年には伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)が24ヵ国で1,000例を超え、2型cVDPVへの対策を要する事態となった。 このような経緯から本研究のワクチン(nOPV)は、ワクチン由来ポリオウイルスの出現を抑制するために開発され、セービン株由来経口生ポリオウイルスワクチンの遺伝的安定性を改善し、2020年11月よりワクチンとして初めてWHOの暫定緊急使用リストに加えられていた。 本研究は2型cVDPVの被害が最も大きかったアフリカで初めて行われたnOPV2の臨床試験であり、目的はnOPV2の認可やWHOのワクチン選定に必要なデータを収集することであった。そのため、ガンビアの乳児と幼児のデータでnOPV2の安全性および忍容性データの拡充、および乳児における3種類のロットでnOPV2の免疫応答の一貫性を評価し、ワクチン投与後のセロコンバージョン率とポリオウイルス2型の排出についても調査が行われた。 本研究結果は、「新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)、有効性・安全性を確認/Lancet」で掲載されている通りで、nOPV2は、ガンビアの小児と乳児に免疫原性が確認され、安全性の懸念も特定されなかった。本研究で扱われたnOPV2は、以前のポリオワクチンよりcVDPVのリスクを減らすことが期待され、本論文で引用されている文献や本研究結果からもリスク低下が示唆されているが、nOPVも伝播による変異等によりnOPV2由来のアウトブレイクが発生する懸念は残るため、注意深い監視は引き続き必要になるだろう(Martin J, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71:786-790.)。 ところで、本邦で実施されているポリオワクチンについても言及すると、本邦では経口生ポリオワクチン(OPV)ではなく、不活化ワクチン(IPV)が使用されている。OPVの利点は、効果的な腸管免疫・血中中和抗体誘導能を有するうえ、安価で接種も容易なことだが、欠点として接種後に接種者あるいは接触者がワクチン関連麻痺を来すことや、伝播型ワクチン由来ポリオウイルスの原因となることがある。この欠点を避けるために先進国ではOPVからIPVに切り替えを行っており、日本では2012年9月より定期接種のワクチンは3価経口生ポリオワクチン(tOPV)からIPVに切り替えられていた。 2024年4月1日以降の現時点では、ポリオワクチンは5種混合(DPT-IPV-Hib)として定期接種に含まれているが、日本小児科学会からは任意接種としてポリオに対する抗体価が減衰する前に、就学前の接種も推奨されている(日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点)。 本邦では2013年に診断されたcVDPV 由来のワクチン関連麻痺症例以降、ポリオ確定症例の届けはされていないが、cVDPVはアフリカのみならず、欧州や米国、東南アジアからも報告されている。本邦ではIPVによる高いワクチン接種率の維持により海外からのポリオウイルス持ち込みを防いでいると考えられ、引き続き国内でもワクチン接種による予防は必要だろう。また、本邦からの海外渡航時で、出国時に1年以内のポリオワクチン接種証明書提示が必要な国に渡航する場合や、ポリオリスク国に渡航するが10年以内に接種歴がない場合などではポリオワクチンの追加接種が必要である。

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小林製薬サプリ摂取者、経過観察で注意すべき検査項目・フォローの目安

 小林製薬が販売する機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ(以下、サプリ)』による腎機能障害の発生が明らかとなってから約2週間が経過した。先生の下にも本サプリに関する相談が寄せられているだろうか。日本腎臓学会が独自で行った本サプリと腎障害の関連について調査したアンケートの中間報告1)から、少しずつサプリ摂取患者の臨床像が明らかになってきている。 そこで今回、日本腎臓学会副理事長である猪阪 善隆氏(大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学 教授)に、摂取患者を診療する際に注意すべき点、患者から相談を受けた場合の対応について緊急取材した。猪阪氏は全国の医師に対し、「医師が診療する際に注意すべき点として、電解質異常や腎機能障害が改善されない症例は専門医へ紹介してほしい。また、患者に対して、“過度な心配は不要”であることを伝えてほしい」と呼び掛ける。その理由は―。Fanconi(ファンコニー)症候群 日本腎臓学会のアンケート中間報告によると、今回報告された症例の多くにFanconi症候群を疑う所見が目立っていたと示唆されている。このFanconi症候群とは、腎臓専門医でも診療経験を有する医師は少ない、比較的まれな疾患だという。本疾患の概要を以下に示す。◆疾患概念・定義:近位尿細管の全般性溶質輸送機能障害により、本来近位尿細管で再吸収される物質が尿中への過度の喪失を来す疾患群で、ブドウ糖(グルコース)、重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などの溶質再吸収が障害され、その結果として代謝性アシドーシス、電解質異常、脱水、くる病などを呈する2)。◆原因:原因は多岐にわたり、発症年齢も乳児期から成人と多様。先天性のものではDent病、ミトコンドリア脳筋症をはじめ、原因不明の症例が国内では多く、後天性(二次性)のものとしては悪性腫瘍やネフローゼ症候群のほか、一部の抗腫瘍薬(シスプラチンなど)、バルプロ酸、抗ウイルス薬などの薬剤の使用が起因している2)。近年ではNSAIDsによる報告もみられる。◆主な症状:代謝性アシドーシスの特徴ともいえる疲労や頭痛のほか、筋力低下や骨の痛みなど。 猪阪氏は本病態とアンケートの中間報告を総合し、「今回寄せられた症例の場合、1/4の患者にステロイドが使用されていた。今回は専門医による対応であったことから、間質性腎炎の診断・治療に準じて腎生検を行い、炎症レベルを考慮しての治療であった。一般内科の医師の場合には、まず被疑薬の中止を行い、注意深く経過観察を続けてもらいたい」と治療方法について説明した。中間報告後に明らかになった電解質異常 上述したFanconi症候群のような所見を疑うには、日常診療で行っている尿検査や生化学検査、血液学検査をオーダーするなかで、電解質の項目に注意を払う必要があると同氏は強調した。「集まった症例をみると電解質異常が多くみられた。カリウム(K)値は本疾患においても低K血症による不整脈発症の観点から重要ではあるが、今回とくに注意が必要なのは、一般的な血液検査に含まれないリン(P)や重炭酸イオン(HCO3-)の変化」と同氏は話した。その理由として「ナトリウム(Na)値やK値は日頃から注意すべき項目として目が行きがちだが、血清P値や血液ガス分析によるHCO3-濃度の測定は、非専門科では日常的に行う検査ではないので、ぜひ意識してオーダーし、経過を診ていただきたい」と述べ、「サプリの摂取を中止しても代謝性アシドーシスの状態が続いている場合もあるため、その場合には専門医の診断が必要」と説明した。また、「電解質異常がどこまで完全に回復してくるのかは今後の検証が待たれる」ともコメントした。電解質異常が残るような症例は専門医へ 専門医へ紹介するタイミングについて、同氏は「本サプリの問題が報道される前の時点では、腹痛などの症状を訴える→症状に応じた検査を実施→問診でサプリ摂取が判明→腎機能検査という診断の流れもあったようだ。しかし、今はサプリの影響が強く疑われ、すでに不安を抱えた患者さんは一通り受診を終えられているかと思う」と前置きをしたうえで、「被疑薬を中止した場合、約2週間で改善する傾向にある。中止したことで腎機能の改善がみられる場合は、そのままかかりつけ医での経過観察で問題ないため、正常値まで改善するのをフォローしてほしい。しかし、腎機能が十分改善しない場合や、上述のとおり電解質異常が残る場合には、早めに専門医へ紹介してほしい。また、症状が重症と考えられる患者についても同様」と紹介すべき患者の見極め方を説明した。 このほか、アンケート結果では尿の異常として血尿が報告されているが、これについては「サプリ摂取による腎障害が原因で生じたものではなく、潜在的にあった原疾患による可能性も考えられる」と説明した。また、本サプリを服用して来院した患者であっても、それ以外のサプリや薬剤を服用している可能性の高い患者も多いため、「原因をサプリに絞り込まずに鑑別していくことが必要」とも補足した。 なお、アンケート結果は5月に取りまとめて報告する予定であり、今年6月28~30日に横浜で開催される第67回日本腎臓学会学術総会でも緊急シンポジウムの開催が検討されている。

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ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。 ニルセビマブは、重症化リスクの高い早産児、特定の疾患を有する新生児、乳幼児におけるRSウイルス感染による下気道疾患(LRTD)の発症抑制に加え、世界で初めて健康な新生児または乳児をRSウイルスから守るために承認された予防を効能・効果とする薬剤である。今回の承認は、ニルセビマブの3つの主要な後期臨床試験に基づく。すべての臨床評価項目において、ニルセビマブの単回投与は一般的なRSウイルス感染流行期間とされる5ヵ月間にわたり、RSウイルス感染によるLRTDに対して一貫した有効性を示した。 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 小児科学 主任教授の森内 浩幸氏は、「2歳までにほぼすべての子供が罹患し、その数十%は細気管支炎や肺炎を起こします。流行すると小児病棟はこの病気の患児が増加し場合によっては酸素が投与され、人工呼吸器装着や集中治療管理が必要なことも経験します。RSウイルスはずっと昔からいて、毎年多くの子供たちを苦しめてきました。元々健康な子を含むすべての乳児がこのウイルス、RSウイルスのリスクに曝されています。幸いRSウイルス感染症の重症化を防ぐ手段が登場し、小児科医にとって朗報です」と述べている。<製品概要>販売名:ベイフォータス筋注50mgシリンジ、ベイフォータス筋注100mgシリンジ一般名:ニルセビマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:1. 生後初回又は2回目のRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児及び幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制2. 生後初回のRSウイルス感染流行期の1. 以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防用法及び用量:生後初回のRSウイルス感染流行期には、通常、体重5kg未満の新生児及び乳児は50mg、体重5kg以上の新生児及び乳児は100mgを1回、筋肉内注射する。生後2回目のRSウイルス感染流行期には、通常、200mgを1回、筋肉内注射する。製造販売承認年月日:2024年3月26日 製造販売元:アストラゼネカ株式会社販売元:サノフィ株式会社

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再発性尿路感染症、治療後も続く痛みの原因を解明か

 尿路感染症(UTI)の再発を繰り返す人は、抗菌薬による治療後も骨盤部位の痛みや頻尿が続くことが多いが、その原因は不明だった。しかし、米デューク大学のByron Hayes氏らが実施した研究で、UTIの発症を繰り返すことで膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖することが、これらの症状を引き起こしている可能性のあることが明らかになった。この研究結果の詳細は、「Science Immunology」に3月1日掲載された。 この研究でHayes氏らは、尿検査では陰性であるが痛みが残存する再発性UTI患者とUTIではない対照の膀胱生検を行い、痛みや炎症の調節に関与する神経ペプチドのサブスタンスP(SP)レベルについて比較した。その結果、再発性UTI患者では対照に比べて、粘膜固有層でのSPレベルが有意に高いことが明らかになった。尿検査でも、再発性UTI患者ではSPレベルが高いことが示された。これらのことから、再発性UTI患者では感覚神経が高度に活性化しており、それが長引く痛みや頻尿の原因である可能性の高いことがうかがわれた。 次いで行ったマウスを用いた実験からは、マウスをUTIに繰り返し罹患させることで、感覚神経からの発芽(神経突起が伸びて成長する)が促され、その発芽は感染により呼び寄せられた単球と組織内在性のマスト細胞から産生された神経成長因子と関連していることが明らかになった。そこで、神経成長因子の活性を抑制する抗体をマウスに投与したところ、感覚神経の発芽が抑制され、腹部に機械的刺激を与えて評価した骨盤の過敏性が低下することが確認された。一方、未感染のマウスの膀胱に神経成長因子を注入すると、感覚神経の発芽が促され、骨盤の過敏性も亢進することが示された。 Hayes氏は、「UTIは通常、再発するたびに細菌が付着した上皮細胞が剥がれ落ち、近傍の神経組織が著しく破壊される。これにより、破壊された神経細胞の大規模な再生を伴う、損傷した膀胱の迅速な修復プログラムが作動する」と説明する。この反応はマスト細胞によって導かれるが、その過程でマスト細胞が神経成長因子を放出し、感覚神経が活性化される。その結果、SPが放出されて神経が過敏になり、患者はより多くの痛みを感じるようになるのだという。 論文の上席著者であるデューク大学病理学教授のSoman Abraham氏によると、UTIは女性での感染症の約25%を占めるという。同氏は、「その多くは再発性UTIであり、所定量の抗菌薬を服用しても、骨盤部位の慢性的な痛みや頻尿を訴える患者が多い」と説明し、「われわれの研究は、初めてUTIの治療後も続くこのような症状の根本的な原因を突き止め、新たな治療開発への道を切り開くものだ」と述べている。 Abraham氏はさらに、「この研究は、医療費を押し上げ、何百万人もの人(主に女性)の生活の質(QOL)に影響を及ぼしている不可解な臨床症状の解明に役立つ。マスト細胞と神経との間のクロストークを理解することは、再発性UTIに効果的な治療法を開発するために不可欠なステップなのだ」と話している。

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モデルナのコロナワクチン、通常承認を取得し、引き続き供給

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナは、2024年3月29日付のプレスリリースで、特例承認を受けていた「スパイクバックス筋注」の通常承認を3月27日付で取得したと発表した。 なお厚生労働省によると、2024年4月1日以降、65歳以上の人および60~64歳で対象となる人※には、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として秋冬に自治体による定期接種が行われ、費用は原則有料となる。ただし、定期接種以外の時期であっても接種を希望するすべての人が、自費による任意接種が可能である。※60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。 これについてモデルナは、「さまざまな理由で4月以降に任意接種を希望する方に対しても十分なワクチンを供給すべく体制を整えており、引き続き日本の国民の皆さまを新型コロナウイルスの脅威から守るため邁進していく」としている。

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抗IL-23自己抗体が日和見感染と関連/NEJM

 マイコバクテリア感染、細菌感染、真菌感染を有する患者では、抗インターロイキン-23中和抗体の存在が持続性の重症日和見感染と関連しており、その中和作用の強度が感染症の重症度と相関することが、米国国立アレルギー・感染症研究所のAristine Cheng氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年3月21・28日号に掲載された。日和見感染における抗インターロイキン-23の役割を検証 研究グループは、日和見感染において抗インターロイキン-23が役割を担っている可能性を検証する目的で検討を行った(米国国立アレルギー・感染症研究所などの助成を受けた)。 抗インターロイキン-12を有する患者コホート(多くが胸腺腫)において、インターロイキン-23に対する自己抗体(抗インターロイキン-23)のスクリーニングを行った。また、別の胸腺腫患者コホートと、胸腺腫も抗インターロイキン-12も持たないまれな感染を有する患者コホートで検査を実施した。胸腺腫の81%で感染と関連 抗インターロイキン-12を有し、重症のマイコバクテリア感染、細菌感染、真菌感染のいずれかに罹患している30例(発見コホート)のうち、15例(50%)はインターロイキン-23を中和する自己抗体も持っていた。この中和作用の強度は、これらの感染症の重症度と相関した。また、抗インターロイキン-12の中和活性だけでは、感染との関連はなかった。 胸腺腫患者91例の検証コホートでは、抗インターロイキン-23は74例(81%)で感染状態と関連していた。播種性/脳/肺感染の83%で検出 全体として、抗インターロイキン-23中和抗体は、胸腺腫患者116例のうち30例(26%)で検出され、播種性感染、脳感染、肺感染のいずれかの患者36例では30例(83%)で検出された。 また、抗インターロイキン-23は、重症細胞内感染を有する患者32例のうち6例(19%)に認め、Cladophialophora bantianaやMycobacterium avium complexなどによるまれな頭蓋内感染に罹患した患者16例のうち2例(12%)で発現していた。 著者は、「抗インターロイキン-23中和抗体の存在は、頭蓋内感染症の独立の、または付加的なリスク因子と考えられる」「抗インターロイキン-17の作用を上回る抗インターロイキン-23自己抗体のより包括的な役割は、炎症性大腸炎におけるインターロイキン-23と-17の遮断による多様な効果の説明に資する可能性がある」としている。

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コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。 コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。 この研究は、岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来を2021年2月15日~2023年3月31日に受診した、コロナ後遺症の女性患者(18~50歳)を対象に行われた。コロナ後遺症の定義は、感染から4週間以上にわたり何らかの症状が持続している状態とした。患者の診療記録より、月経情報、健康関連QOL、抑うつ症状、ホルモン検査などの臨床データが解析された。 研究対象の女性223人のうち、月経異常を訴える女性は44人(19.7%、年齢中央値42.5歳)で、月経異常のない女性(同38歳)よりも有意に年齢が高かった。44人中34人(77.3%)は、オミクロン株の流行期(2022年1月以降)に感染していた。月経異常の中で最も多い症状は月経周期の不順(63.6%)であり、次いで月経痛の悪化(25%)、過多月経(20.5%)、更年期症状(18.2%)、月経前症候群(15.9%)などの症状が見られた。 また、月経異常のある女性では月経異常のない女性に比べて、倦怠感(75対58.1%)や抑うつ気分(9.1対1.1%)を伴う人の割合が有意に高かった。さらに、健康関連QOLの評価指標(FASおよびEQ-5D-5L)による評価では、月経異常のある女性の方が、倦怠感やQOLが有意に悪化していた。 ホルモン検査では、月経異常のある女性の方が、血清コルチゾール値(中央値8.5対6.7μg/dL)が有意に高かった。その他の検査結果に有意差はなかったものの、月経異常のある女性の方が、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)値(同28.7対8.3mIU/mL)は高く、血清エストラジオール(E2)値(同12対17.95pg/mL)は低い傾向が認められた。 研究結果について著者らは、「コロナ後遺症は日本人女性の月経にも影響を及ぼし、QOLとメンタルヘルスの悪化につながるというエビデンスを提供するものである」と結論付けている。コルチゾール値が高かったことに関しては、月経異常などによるストレス状態が存在し、視床下部-下垂体-性腺軸を介してE2の産生障害につながる可能性を指摘。月経状態は心身の状態に影響を及ぼし得ることから、「正常な月経状態を維持することは重要である」と総括している。

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Long COVIDの原因は高レベルのサイトカイン産生?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)が生じている患者では、通常はウイルスの除去に伴い産生されなくなるサイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)-γが、長期にわたって高レベルで産生され続けていることが明らかになった。研究グループは、これがlong COVIDの根本的なメカニズムである可能性があると述べている。英ケンブリッジ大学医学部およびケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所のBenjamin Krishna氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月21日掲載された。 米疾病対策センター(CDC)が2023年9月に発表した最新データに基づくと、6.9%の米国人がlong COVIDを経験している。Long COVIDの症状として最も頻繁に挙げられるのは慢性的な倦怠感であるが、ブレインフォグや慢性的な咳などの症状も珍しくない。しかし、long COVIDがなぜ生じるのかについては解明されていない。 今回の研究でKrishna氏らは、新型コロナウイルスのRT-PCR検査で陽性と判定されて入院した患者111人の転帰を追跡した。これらの患者は、陽性判定から28日目(51人)、90日目(20人)、180日目(40人)のいずれかの時点で血液検体を採取されており、55人がlong COVIDを発症していた。これらの血液サンプルに、2019年10月以前に採取された新型コロナウイルスに曝露していない54人の血液サンプルを合わせて、解析を行った。 その結果、新型コロナウイルスに感染すると、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIFN-γの産生レベルが急上昇することが明らかになった。IFN-γのレベルは、COVID-19の症状が治まった患者では次第に減少していったが、症状が長引いたlong COVID患者では高いままであった。また、long COVID患者で新型ワクチンの接種前後でのIFN-γのレベルを比較したところ、ワクチン接種後にレベルが低下し、それが一部の症状の消失と関連することが示された。 Krishna氏は、「IFN-γはC型肝炎などのウイルス感染症の治療薬に使われているが、副作用として倦怠感、発熱、頭痛、筋肉痛、抑うつなどの症状を引き起こすことが知られている。これらの症状はlong COVIDに特徴的な症状でもある。われわれにとってこのことも、IFN-γの産生レベル上昇がlong COVIDの原因であることを支持する証拠だと思われた」と説明している。 では、何がIFN-γ産生レベルの上昇を引き起こすのだろうか。研究グループがさらに研究を進めたところ、CD8陽性T細胞とCD14陽性単球の2種類の免疫細胞の相互作用がIFN-γの過剰産生の鍵を握っていることが明らかになった。 こうした結果を受けてKrishna氏は、「われわれは、long COVIDの根底にあると思われるメカニズムを発見した。この発見がlong COVIDの治療法開発に道を開くとともに、一部の患者に確実な診断を下す一助となることを期待している」と話している。 ただしKrishna氏は、IFN-γの産生増加というメカニズムだけがlong COVIDの発症要因とは言い切れない点を強調している。例えば、先行研究では微小血栓の形成もlong COVIDの原因である可能性が示唆されている。Krishna氏は、「さまざまなLong COVIDの症状が全て同じ原因により引き起こされているとは考えにくい」として、微小血栓を原因の一つと見なすことは理にかなっていると述べている。 Krishna氏は、long COVID患者の血中のIFN-γ濃度を確認して、症状が長引くのか、徐々に回復するのかなどのサブタイプに分類することで、治療を個別化できる可能性があるとの考えを示している。

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新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

 イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。 対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。 まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。 さらに詳しく認知機能を見てみると、記憶、抽象思考、空間操作が新型コロナウイルスの影響が出やすい領域のようだ。抽象思考とは「高い/低いに対して速い/遅い。では、人間/猿に対して速い/遅いは正しい?」みたいな課題をさせられる。空間操作はロンドン塔ゲームをさせられる。なかなか大変である。また主観的な記憶の障害や、いわゆるブレインフォグを訴えている人は、直後再生、抽象思考、空間記憶に特に低下があるようだ。これらの症状は、「頭が回らない」というような表出がなされることが多いため、納得の結果であろう。 この研究が(あえて?)触れていないことにも触れておく。この研究の枠組みでは分析のしようもないが、認知機能は精神状態の影響を大きく受けることは指摘しておきたい。長期的に症状に苦しんでいる人(例えば息苦しさが続き生活や仕事に支障が出ている)では、当然の反応として抑うつ的になり、結果的に一時的に認知機能が低下している可能性があるだろう。あるいは、未知の感染症が世界を襲い多くの人が死んでいる中で感染した場合には、心的影響が大きく、やはり認知機能への影響が軽微に残っている可能性は十分にあるだろう。 最後に、新型コロナウイルスについて発言するのはとても難しいが、これを読んでいる人には、将来精神科領域で働くことを検討している人もいるだろうから、一人の精神科医にはパンデミックがどのように見えていたのかを記して、精神科医的な思考を体験していただこう(以下は筆者個人の意見であり、いかなる所属組織とも関係ない)。 パンデミックの初期は「人類はまた新しい感染症に遭遇したが、医学の進んだ現代でよかった」と認識していた。一方でそう語ると、『世界が破滅するかもしれない』と興奮している人達とは、会話にならないこともわかっていた。 さらに高齢者施設で感染が広がり、高齢者は面会が禁止され、認知機能低下が進んだ。高齢者施設で働く人への偏見も助長された。この時には「そもそも高齢者施設では毎年インフルエンザで感染対策を繰り返していたのに、一般の人は全く知らなかったんだな」と悲しくなったが、真面目にやれば感染は防げると思いこむクレーマーの人とはわかりあえないだろうとあきらめていた。 さて、現在は明らかに弱毒化しているが、患者さんは元気に歩き回るから、逆に感染コントロールが難しくなっている。引き続き淡々と注意が必要だ。 今後はいつかエボラ出血熱のようなものが、世界的に感染を起こすことがあるだろう。その日まで私が生きていたら、その時こそ本当に恐怖を感じることだろう。 とまあ、こんなふうに見てきた。精神科医になるということは、様々な主観世界を生きる人々と出会い、その世界を冒険することにほかならない。例えば統合失調症の症状に「世界没落体験」というのがあり、世界の終末を主観的には生きている人と話したこともある。このような仕事をしていると、執着が減り、先入観から徐々に自由になり、何が起きても淡々と対応できるようになってくる。あくまで個人的な意見だが、新型コロナウイルス感染症の社会的パニックにおいて、もっとも傷を負わなかったのは精神科医かもしれない。

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第204回 ワクチンマニアが最後の公費接種に選んだコロナワクチンメーカーは…

前回、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の無償ワクチン接種が3月31日で終了する件について書いた。私のような高齢者にも基礎疾患保有者にも該当しない人間が、接種が始まった2021年2月17日~2024年3月31日までの期間に新型コロナワクチンを接種できる最大回数は5回だ。やはり過去の連載でも触れたように、私は一昨年末に4回目のワクチン接種を完了。昨秋には5回目のオミクロン株XBB.1.5系統対応ワクチン接種券が届いていたが、ちょうど1年間隔、すなわち昨年12月末くらいに接種しようと考えていた。しかし、予定が合わず12月末の接種はお流れ。とりあえず年初の1月接種に計画を変更したが、能登半島地震の発生でそちらの取材に時間を割き、3月に入ってしまった。というわけで、今週前半に駆け込みで5回目接種を完了した。今回も前回と同じく東京都が開設した大規模接種会場の1つ、都庁北展望室会場を選んだ。前回は当時の最新流行変異株であるオミクロン株BA.4、BA.5系統対応ワクチンのうち、ファイザー製よりも承認が1ヵ月遅れたモデルナ製を接種できる数少ない会場の1つがここだった。モデルナ製にこだわったのは、接種後の抗体価がファイザー製より高めとの研究報告が多かったからである。そして今回再び同会場で接種したのは、昨年8月に承認された国産初のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである第一三共製での接種を望んだ結果、やはりここになったというわけだ。この選択は、1、2回目はファイザー製、3、4回目はモデルナ製を選択したので、とりあえず第一三共製も試してみたいという、自称「ワクチンマニア」の好奇心に過ぎない。前回は新型コロナの感染症法5類移行前であり、接種予約サイトにアクセスしても最短で空きがあったのは約2週間先だったが、今回はアクセスした日の翌日接種でも予約可能だった。ただし、実際の予約日は、業務の都合などを考慮し、アクセス日の1週間後にした。接種日には予約時間の20分前に都庁1階に到着。前回は北展望室行きのエレベーター脇に比較的大きな受付ブースが設置され、接種券を提示して予約確認と検温を経てエレベーターに乗る流れだった。今回はエレベーター前の案内担当者から口頭で予約有無の確認があり、さらにそこで接種券と予診票を見せて非接触式体温計を使って検温。そのまま45階への直通エレベーターに乗り込む形に簡素化されていた。ちなみにここでやや“失態”。エレベーター前の案内担当者から「マスク、お持ちですか?」と聞かれ、ハッとした。マスクは持ち歩いているものの、最近は医療機関に入る時しか着用していなかった。慌ててカバンから取り出そうとするも、担当者から「これ使って良いですよ」とマスクの入った箱を差し出されてしまい、恥ずかしながらそこから“税金”マスクを1枚頂戴することになった。45階でエレベーターを降りると、誘導に従い、受付ブースに並ぶ。前回は1階に設置されていたブースがこちらに移動した模様だ。そこで接種券と予診票を渡し、氏名と生年月日を言うように指示され、受付担当者は私が告げた内容を耳で聞きながら、接種券を凝視して確認していた。その後、ノートPCを操作し、予約を確認。第一三共製の接種希望者とわかると、「オミクロン 第一三共 XBB.1.5 3~7回目」と印字された緑の紙を予診票に貼りつけるとともに、同じ紙が挿入されたネックストラップ付カードホルダーを首から下げるように指示された。さらに受付担当者は接種券と予診票の目視確認を2回繰り返し行った。無事に受付が済み、背後の予診室のほうを振り返ると、後ろにいた誘導担当者がこちらを見ながら「はい、第一三共のワクチンはこちらです」と、予診室へ案内してくれた。どうやらカードの色で接種ワクチンを判別しているらしい。これも前回同様、通り抜け式になっている予診室に着席すると、医師から再び氏名、生年月日を告げるよう指示される。医師は私が告げた氏名、生年月日を接種券・予診票と照合し、さらに記入した予診票のチェック項目を指でなぞりながら確認した。そのうえで、今現在の不調や過去の新型コロナワクチンやそのほかのワクチン接種後の不調の有無、過去2週間のワクチン接種歴を尋ねた。「なし」と回答すると、「今回のワクチン接種で何かお尋ねになりたいことはありますか?」と返答がきた。これも「とくになし」と答えると、そのまま予診室を通り抜けて接種室に移動するよう告げられた。わずか5歩ほどで、接種室へ到着。再び氏名、生年月日、接種ワクチン種類の確認を受け、袖をまくった右腕を差し出すと、アルコール消毒によるアレルギーはないかと聴取された。それも「なし」と答えると、消毒後数秒で「ちょっとチクッとしますね」と言われ、軽い圧力を感じた直後に「はい終了です」。接種部分に絆創膏を張られ、目前の机の下にある段ボール箱に私に使用した注射器が放り投げられた。今度はアナフィラキシーチェックの待機ブースに移動。前回同様パイプ椅子が並べられた開放空間だが、着席人数は前回の3割程度だろうか。前回までの新型コロナワクチン接種では、アレルギー体質ということも考慮し、念のため30分待機をお願いしていたが、これまでとくに副反応経験がないことから、今回は15分待機組入り。スマホで仕事の資料を読んでいるうちに、待機時間を1分過ぎていたことに気付く。慌てて席を立ち、最後に予診票と接種券を記録するブースへ。ここでいつものごとくWHO版、米・CDC版の2種類のイエローカードの記入もお願いする。今回のイエローカード対応は「はいはい」という感じでシステマティックに進んだ。保管用の接種券記録、イエローカードを返却してもらい、再びエレベーターで1階に到着。時間を確認すると、展望室に向かった時から換算してわずか19分。なんとそんな短い時間だったかと驚いた。接種者の減少も影響しているだろうが、オペレーションも磨きがかかっていた感じだ。そして接種から丸1日以上経過しても接種部位の軽い圧痛以外は何の変化もなし。いつも通りか。しかし、今春以降、私が接種する場合は完全な自費。1回あたりセンベロ10回分以上かかるという野暮な算盤を弾いてしまう。痛い出費になるが、止むを得ないと考えるしかない。

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高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。2価コロナワクチン接種後に脳卒中を発症した65歳以上約1万例を検証 研究グループは、BNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273.222(モデルナ製)いずれかの2価コロナワクチン接種後に脳卒中を経験した65歳以上のメディケア受給者1万1,001例を含む、自己対照ケースシリーズ研究を行った。本研究の期間は2022年8月31日~2023年2月4日である。 主として着目したのは2価コロナワクチン後の脳卒中であったが、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンにも着目し、(1)いずれかの2価コロナワクチンを接種、(2)いずれかの2価コロナワクチンと同日に高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種、(3)高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種した場合における脳卒中リスク(非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合アウトカム、または出血性脳卒中)を、ワクチン接種後1~21日または22~42日のリスクウィンドウと、43~90日の対照ウィンドウとの間で比較した。 脳卒中リスクについて、主要解析として2価コロナワクチン接種と、副次解析として高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンとの関連を評価した。製品によらず2価コロナワクチン接種直後の脳卒中リスク上昇は認めず いずれかの2価コロナワクチンを接種したメディケア受給者は、539万7,278例であった(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:70~80]、女性56%)。BNT162b2接種者は317万3,426例、mRNA-1273.222接種者は222万3,852例。 いずれかのワクチン接種後に脳卒中を発症した1万1,001例において、製品の違い、リスクウィンドウ(1~21日または22~42日)と対照ウィンドウとの比較評価で、非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合、または出血性脳卒中との間に、統計学的に有意な関連は認められなかった(発生率比[IRR]の範囲:0.72~1.12)。高用量/アジュバント付加型インフルエンザワクチン併用接種者で有意な関連 いずれかのワクチン+高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンの併用接種後に脳卒中を発症した4,596例では、BNT162b2の場合、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.20[95%信頼区間[CI]:1.01~1.42]、接種10万回当たりのリスク差:3.13[95%CI:0.05~6.22])。mRNA-1273.222の場合、接種後1~21日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と一過性脳虚血発作との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.35[95%CI:1.06~1.74]、接種10万回当たりのリスク差:3.33[95%CI:0.46~6.20])。 また、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチン接種後に脳卒中を発症した2万1,345例において、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に有意な関連が確認された(IRR:1.09[95%CI:1.02~1.17]、接種10万回当たりのリスク差:1.65[95%CI:0.43~2.87])。

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シナジス、RSウイルス発症抑制で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジス」(一般名:パリビズマブ[遺伝子組換え])について、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児を新たに投与対象とする製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 RSウイルスは、乳幼児の気管支炎や肺炎を含む、下気道感染の原因となる一般的な病原体であり、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児に感染すると重症化しやすいとされている。シナジスは、これらの重症化リスクを有する乳幼児に対し発症抑制の適応としてすでに承認されている。 今回の承認は、森 雅亮氏(聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授)が実施した医師主導治験の結果に基づく。シナジスの投与対象としてすでに承認されている疾患以外にも、その病態からRSウイルス感染症に対し慢性肺疾患と同等の重症化リスクが存在する疾患の存在が指摘されていた。そこで、日本周産期・新生児医学会が中心となり、関連学会である日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会、日本小児呼吸器学会および日本小児外科学会から要望を集めた結果、換気能力低下および/または喀痰排出困難によりRSウイルス感染症が重症化するリスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症または神経筋疾患を伴う乳幼児への追加適応が望まれていることがわかった。これらの疾患は国内推定患者数が少なく大規模臨床研究が困難であるため、医師主導治験が実施された。医師主導治験では、今回承認された疾患群における有効性、安全性、および薬物動態を検討し、いずれの疾患においてもRSウイルス感染による入院は認められなかった。 本治験を率いた森氏は、「今回の承認の基となった治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、革新的な医薬品・医療機器の創出を目的とした臨床研究や治験のさらなる活性化を目的とした研究を推進する“臨床研究・治験推進研究事業”に採択されている。これまで薬事承認のなかった重症化リスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する患者に対して、ようやく臨床の場でシナジスを広く使用できることをうれしく思う」と述べている。 松尾 恭司氏(アストラゼネカ 執行役員ワクチン・免疫療法事業本部長)は、「シナジスは、今まで日本においてRSウイルス感染症による重篤な下気道疾患の発症抑制に対する唯一の抗体薬として、多くの早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児の医療に貢献してきた。今回の承認により、これまでシナジスを投与できなかったハイリスクの乳幼児とそのご家族に対しても貢献できることを大変うれしく思う」としている。

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乳児HIV感染予防、母親のウイルス量に基づくラミブジン単剤投与が有望/Lancet

 小児の新規HIV感染の半数以上が母乳を介したものだという。ザンビア・University Teaching HospitalのChipepo Kankasa氏らは「PROMISE-EPI試験」において、ポイントオブケア検査での母親のウイルス量に基づいて、乳児へのラミブジンシロップ投与を開始する予防的介入が、小児のHIV感染の根絶に寄与する可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月11日号で報告された。ザンビアとブルキナファソの無作為化対照比較第III相試験 研究グループは、母親への抗レトロウイルス療法(ART)に加えて、母親のウイルス量のポイントオブケア検査に基づく乳児へのラミブジンによる出生後予防治療の期間を延長することで、出生後の感染の抑制が可能との仮説を立て、これを検証する目的で、ザンビアとブルキナファソの8施設で非盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(英国保健省[DHSC]によるEDCTP2プログラムの助成を受けた)。 HIVに感染している母親と、Expanded Programme of Immunisation(EPI-2)に参加しており2回目の受診時にHIV未感染であった母乳による育児を受けている乳児(生後6~8週)を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。 介入群は、Xpert HIVウイルス量検査を用いて母親のウイルス量を測定し、即座に得られた結果に基づき、母親のウイルス量が1,000コピー/mL以上の乳児には12ヵ月間、または授乳中止後1ヵ月間、1日2回のラミブジンシロップの投与を開始した。 対照群は、出生後のHIV感染予防のための国のガイドラインに準拠して対応した。 主要アウトカムは、出生後12ヵ月の時点での乳児のHIV感染とし、6ヵ月および12ヵ月時にHIV DNAのポイントオブケア検査を行った。評価は修正ITT集団を対象に行った。介入群のHIV感染乳児は1例、有意差はなし 2019年12月12日~2021年9月30日に、3万4,054例の母親がHIV検査を受けた。このうち、HIVに感染している母親と感染していない乳児の組み合わせ1,506組を登録し、介入群に753組、対照群にも753組を割り付けた。 ベースラインの母親の年齢中央値は30.6歳(四分位範囲[IQR]:26.0~34.7)であった。1,504例の母親のうち1,480例(98.4%)がARTを受けており、1,466例の母親のうち169例(11.5%)はウイルス量が1,000コピー/mL以上だった。 追跡期間中にHIVに感染した乳児は、介入群が1例、対照群は6例であった。100人年当たりのHIV感染の発生率は、介入群が0.19(95%信頼区間[CI]:0.005~1.04)、対照群は1.16(0.43~2.53)であり、両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(p=0.066)。重篤な有害事象、HIV非感染生存にも差はない 重篤な有害事象を発症した乳児の割合は、介入群が8.2%、対照群は7.0%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.44)。また、12ヵ月時のHIV非感染生存割合は、介入群が99.4%(95%CI:98.4~99.8)、対照群は98.2%(96.8~99.1)で、有意差はみられなかった(p=0.071)。 一方、探索的解析では、乳児におけるHIV感染が高リスク(母親のウイルス量≧1,000コピー/mL、出生後に予防治療を受けていない状態)の累積期間は、100人年当たり対照群が6.38年であったのに対し、介入群は0.56年と有意に優れた(p<0.001)。 著者は、「これらの結果は、既存の方法の組み合わせによって、母乳を介した感染をほぼゼロにすることが可能であることを強く示唆する」と述べるとともに、「本試験により、受診時にウイルス量の結果が得られるポイントオブケア検査の重要性が示された。出生後の感染を実質的に防止することで、小児のHIV感染の根絶が手の届くところに来ている」としている。

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がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。23部位のがんの後ろ向き調査 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。男女とも胃がん死が著明に減少 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

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