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新たなインクレチン関連薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)がもたらす効果(解説:安孫子亜津子氏)

 わが国の2型糖尿病は欧米に比較してインスリン分泌能低下がメインの病態である患者が多いことが知られている。以前はSU薬中心であった2型糖尿病の治療が、2009年にDPP-4阻害薬が上梓されてからは、かなり多くの患者で使用され、SU薬の使用量が大きく減少した。さらにGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬に比較して、より血糖低下効果が大きく、食欲抑制効果なども併せ持っていることから、その使用患者は増加してきており、とくに週1回注射のGLP-1受容体作動薬の登場後は、幅広い患者で使われるようになってきている。このようにインクレチン関連薬の有用性が認知されている中、新たなインクレチン関連薬としてGIP/GLP-1受容体作動薬「tirzepatide」が登場し、現在次々と臨床試験の結果が報告されてきている。 今回の論文はtirzepatideのインスリンへの追加の有効性、安全性を検証した第III相試験「SURPASS-5」である。40週でのHbA1cの低下効果は2%以上であり、現在使用されているGLP-1受容体作動薬の臨床試験結果と比較しても大きな低下効果である。これまでGIPは脂肪細胞に作用し体重を増加させる方向に働くと考えられていたが、tirzepatideでは用量依存性に5~8kg台の体重減少効果が認められた。もちろんインスリン使用量の減量も認められている。週1回投与であることも本剤の魅力である。消化器症状を主体とした有害事象は、GLP-1特有のものであり、一定数の出現が認められている。投与量増量のタイミングなどをうまく調整することで、より安全に本剤の有効性を引き出せる可能性がある。本論文の結果から、新たなインクレチン関連薬tirzepatideが本邦でも使用できるようになれば、さらに幅広い患者での良好な血糖および体重コントロールに寄与できることが期待できると考える。

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英語で「~だとわかった」は?【1分★医療英語】第21回

第21回 英語で「~だとわかった」は?I’d like to hear about the result of the blood test...(血液検査の結果を聞きたいのですが…)It turned out that you have diabetes.(検査の結果、あなたは糖尿病だとわかりました)《例文1》It turned out that the patient has lung cancer.(その患者は肺がんに罹患しているとわかった)《例文2》The blood test has turned out/come out to be negative.(血液検査の結果は陰性でした)《解説》“turn”という動詞には、単独では「向きを変える」などの意味がありますが、“I’m turning 40 next month.”(私は来月40歳になる)の使い方のように、「ある状態になる」といった意味もあります。“turn out”で、「〜だとわかる」「〜という結果になる」という意味になりますが、ここには「予想していた結果と異なる」というニュアンスが含まれます。同様に、“The patient turned out to be allergic to dye.”(その患者は造影剤にアレルギーがあることがわかった)などのように、対象を主語にして用いることもできます。用例としては、“The chemotherapy turned out to be effective for the patient.”([予測に反して]化学療法はその患者には有効であることがわかった)、“The patient, as it turned out, hadn’t taken his insulin for the last couple of days.”(その患者は[期待に反して]、この数日間インスリンを打っていなかったことがわかった)などもあります。一方、“come out”も「何かが明らかになる」という意味があり、こちらは予測と結果の関係によらずに使うことができます。“The result has just come out.”(ちょうど結果が出たところだ)のように使われます。講師紹介

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経口困難になったがん末期患者のモルヒネを持続皮下注へ切り替え【うまくいく!処方提案プラクティス】第46回

 今回は、がん末期患者の服薬負担を考慮して、モルヒネの内服薬から持続皮下注へ切り替えた症例を紹介します。一度は疼痛および服薬負担が解消され、患者さんに安心していただくことができましたが…。患者情報70歳、男性(施設入居)基礎疾患咽頭がん(骨転移、肺内転移)、糖尿病、脊柱管狭窄症、末梢動脈硬化症服薬管理施設管理処方内容1.モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル30mg 2カプセル 朝夕食後2.ベタメタゾン錠0.5mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠30mg 1錠 朝食後4.ジアゼパム錠2mg 3錠 毎食後5.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 毎食後6.ナルデメジントシル酸塩錠0.2mg 1錠 夕食後7.エスゾピクロン錠1mg 1錠 就寝前8.モルヒネ塩酸塩水和物内服液10mg/5mL 疼痛時 1回1包本症例のポイントこの患者さんは、咽頭がんの進行に伴う突発的な疼痛と呼吸苦がありました。レスキュー薬としてモルヒネ塩酸塩水和物内服液を5〜6回/日服用していて、痛みはNRS(Numerical Rating Scale)6〜7から3程度まで改善していました。しかし、咽頭の閉塞による通過障害があり、内服薬を服用するのが心身共に苦しいという状態が続いていました。訪問診療の前日にこれらの訴えを本人からヒアリングし、現況の痛みも服薬の苦痛も緩和したい、そして施設で最期を迎えたいという希望を確認しました。訪問看護師やケアマネジャーと注射薬への切り替えも手ではないかと話し合い、現行のオピオイド内服薬から持続皮下注へのスイッチをどのように提案するかを検討しました。オピオイドの換算<現行>ベース薬モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 60mg/日レスキュー薬モルヒネ塩酸塩水和物内服液 50〜60mg/日1日オピオイド総量目安110〜120mg/日単純な等価換算では、モルヒネ注50〜60mg/日相当となりますが、この等価換算はあくまで目安です。切り替え後のコントロール目標や副作用の懸念、24時間サイクルでの投与設計の都合で約50mg/日を提案することとしました。<切り替え提案内容:モルヒネ塩酸塩注射液48mg/日>モルヒネ塩酸塩注射液200mg/5mL 2管 10mLモルヒネ塩酸塩注射液50mg/5mL 2管 10mL生理食塩液 28mL総量48mL 0.2mL/時間、LOT15分、レスキュー0.2mL/回、10日間相当*1日量4.8mL→モルヒネ約10mg/mL<切り替えタイミング>モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 夕方服用時刻から切り替え処方提案と経過翌日の訪問診療に同行し、患者は通過障害から内服が困難な状況にあり、心身共に苦痛があることを医師に共有しました。そこで、内服薬から持続皮下注への切り替えについて意向を確認しました。医師も介護士や訪問看護師の報告から切り替えを検討していたようですが、具体的に何をどの程度投与するのがよいか頭を悩ませていたところだったそうです。上記の処方提案を文書で提示したところ、選択薬剤、用量も含めて提案の内容で始めることになりました。また、内服薬に関してはすべて中止し、持続皮下注のモルヒネのみの管理とする指示もありました。すぐに訪問看護師とPCAポンプの手配と接続時間を確認し、当日の夕方から切り替えたところ、レスキューボタンの使用回数は平均4〜5回/日で、患者さんも内服時の苦痛がなくなり安心している様子でした。しかし、切り替えから1週間経過するとせん妄が強くなりました。PCAポンプの接続チューブを自己抜去するなどの危険行動があったため中止となり、外用薬での治療コントロールに切り替えることになりましたが、切り替えの翌日にお亡くなりになりました。一度は疼痛コントロールができ、服薬の負担も解消することができましたが、せん妄について十分な管理ができず、反省点の残る事例でした。日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編. がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン.金原出版株式会社;2020.

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COVID-19ワクチンの免疫性神経疾患リスクを検証/BMJ

 4種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種後には、免疫性神経疾患(Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎)の安全性シグナルは認められないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したワクチン未接種者ではBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群のリスクが増大していることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月16日号で報告された。英国とスペインの接種者800万人以上のコホート研究 研究グループは、COVID-19ワクチン、SARS-CoV-2感染症と免疫性神経疾患の関連の評価を目的に、人口ベースのコホート研究と自己対照ケースシリーズ研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 解析には、英国とスペインのプライマリケア診療記録のデータが用いられた。対象は、年齢18歳以上、ワクチン接種キャンペーンの開始日(英国2020年12月8日、スペイン2020年12月27日)から、データベースの利用終了日の1週間前(英国2021年5月9日、スペイン2021年6月30日)までの期間に、COVID-19ワクチンの初回接種を受け、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。さらに、2020年9月1日以降に初めて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法でSARS-CoV-2陽性となったワクチン未接種者と一般人口も、解析に含まれた。 主要アウトカムは、Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎とされた。アウトカムは、初回ワクチン接種から21日とSARS-CoV-2検査陽性から90日までの発生率、および一般人口における2017~19年の自然発生率が推定された。間接的標準化罹患比を用いて観測値と予測値の比較が行われ、自己対照ケースシリーズでは補正後罹患率比が算出された。 ChAdOx1 nCoV-19(Oxford/AstraZeneca製)接種者437万6,535例、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)接種者358万8,318例、mRNA-1273(Moderna製)接種者24万4,913例、Ad26.CoV.2(Janssen/Johnson & Johnson製)接種者12万731例と、SARS-CoV-2陽性ワクチン未接種者73万5,870例および一般人口1,433万80例が、解析の対象となった。横断性脊髄炎は解析不可能 ワクチンの初回接種を受けた参加者(年齢中央値の幅:英国56~64歳、スペイン51~62歳)は、一般人口(年齢中央値:英国48歳、スペイン47歳)よりも高齢で、英国のSARS-CoV-2感染者(年齢中央値:41歳)はワクチン接種者よりも若かった。また、ワクチン接種者は一般人口に比べ、併存疾患(自己免疫疾患、がん、糖尿病、肥満、心疾患、腎不全)の割合が高かった。 全体として、ワクチン接種後のBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群の発生率は、一般人口で予測された自然発生率と一致しており、免疫性神経疾患のリスクの増大は認められなかった。また、自己対照ケースシリーズ研究は、統計学的検出力が限定的であったためBell麻痺についてのみ行われ、どのワクチンでも安全性シグナルはみられなかった。 一方、SARS-CoV-2感染者では免疫性神経疾患の発生率が予想以上に高く、標準化罹患比は、英国ではBell麻痺が1.33(95%信頼区間[CI]:1.02~1.74)、脳脊髄炎が6.89(3.82~12.44)、ギラン・バレー症候群は3.53(1.83~6.77)であり、スペインでは、それぞれ1.70(1.39~2.08)、3.75(2.33~6.02)、5.92(3.68~9.53)であった。 横断性脊髄炎はまれで(すべてのワクチン接種コホートで5件未満)、解析は不可能だった。 著者は、「これらの知見と同様に、SARS-CoV-2感染後に免疫性神経疾患のリスクが増大したとの報告がいくつかあるが、今回の結果は、どの先行研究よりもリスクが大きかった」としている。

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事例046 糖尿病における在宅自己注射指導管理料で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説他院で糖尿病治療中でしたが、血糖コントロール不良にてインスリンなどの自己注射の適応であると紹介を受けた患者です。初診時から自己注射の必要性などを説明されています。3回目の診察にて、自己注射を導入、「C101 在宅自己注射指導管理料」(以下「同管理料」)にかかる一連の項目を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて、同管理料と「C150 血糖自己測定器加算」が査定となりました。同様条件の初診事例で初めての査定でした。査定事由が「D」であったことから、再度、同管理料の算定要件を確認してみました。留意事項(9)に「医師が当該月に在宅で実施するよう指示した注射の総回数に応じて所定点数を算定する。(中略)あらかじめ在宅で実施されないことが明らかな場合は、当該期間中の指示回数から実施回数を除して算定する」とあります。診療報酬の算定ルールの当該月とは、1日から末日までと規定されています。その間の実際に指示した回数で算定することになります。同管理料の算定開始は「11月20日」と表示されています。当該月は11月30日までです。医師が指示した該当月中の総回数は1日2回×11日分=22回となります。したがって、同管理料の算定区分は「月27回以下」の区分に、血糖自己測定器加算は「月20回以上30回未満」の区分に査定となったものと考えられました。次月からは、継続的な指導を行う限り、1ヵ月分の指示回数に応じた同管理料と血糖自己測定器加算が算定できます。コンピュータ査定が進むにつれ、本例のような厳密な査定が増える傾向にあります。同じ査定が増えてきたら審査基準が変更されたものと考えて対処すると良いでしょう。

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一般的な指標だけから急性腎障害を予測できるか?(解説:今中和人氏)

 急性腎障害(AKI)発生の影響は大きい。複数の新規バイオマーカーと開心術後AKIとの関連が報告されているが、実用面のハードル(結果判明の迅速さ、検体の取り扱い、コストはスクリーニング検査として容認可能か、など)があるのか、あまり普及していない。確かに、たとえば無尿になった後に結果が出るのでは実臨床では使い物にならないが、術前血清クレアチニン(Cr)などの一般的な指標のAKI予測力は不十分である。 本論文は2000~19年のクリーブランド・クリニック本院における成人開心術5万8,526例からAKI予測モデルを作成し、その有用性を3つの関連市中病院の4,734例で確認した(術前Cr 4mg/dl以上や透析患者は除外。術中も含め早々にAKIが明らかな患者も除外)。患者背景は似通っており、年齢中央値60代後半、男性70%前後、白人が90%前後、体重は82~85kg、糖尿病は20%台で、96%が人工心肺下の手術であった。 対象アウトカムは4つで、術後72時間以内または14日以内に生じた、stage 2以上のAKIまたは透析実施とし、説明変数に術前Cr、術後1回目の採血でのCrの変動、血清アルブミン、ナトリウム、カリウム、重炭酸、尿素窒素と、手術終了から1回目の採血までの時間、を採用した。4つのアウトカムそれぞれについて係数の異なる予測数式を作成し、対象アウトカムの発生リスク1%、5%、10%、20%をメルクマールに的中率も検討した。 クリーブランド・クリニック本院では、術後72時間以内に生じたstage 2以上のAKIが4.6%、透析実施が1.48%、14日以内ではそれぞれ5.4%、1.74%であり、関連病院でもほぼ同等のアウトカム発生率だった。術後1回目の採血は、本院では中央値10時間後、関連病院では6時間後に行われた。本論文の主題である予測モデルは、本院症例で術後72時間以内のイベント発生のAUCがそれぞれ0.876、0.916、14日以内発生ではAUC 0.854、0.900で、クリーブランド・クリニックが過去に発表した予測モデル以上に精度が高かった。このモデルを関連病院症例に適用したところ、72時間以内のAUCが0.860、0.879、14日以内だとAUC 0.842、0.873と、良好な予測識別力が実証された。 そもそもAKIは主に術後のCr上昇で定義されるが、これと独立していない説明変数(もちろん、ナトリウムや重炭酸とはオッズ比が桁違い)が含まれること、本モデルはほぼ腎要因だけで構成されているが、AKI発生には人工心肺時間やカテコラミン量など、術中要因・腎前性要因の影響も大きいこと、透析開始の基準が詳述されていないこと、陰性的中率は95%以上、透析に限定すると99%以上と非常に高いが、そもそも事象発生が2%未満と少なく陽性的中率はいま一歩なことなど、気になる点は若干ある。しかし開心術後に必ずチェックし、迅速に結果が得られる指標のみで高精度にAKI発生を予測できた意義は大きい。なお近年は薬剤で尿量を確保することで、AKIはともかく透析は回避できるケースが増えているので、遠からず新バージョンが登場すると思われる。

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糖尿病の合併症を「線」の血糖管理で防ぐ/アボットジャパン

 アボットジャパン合同株式会社は、同社が製造・販売する持続血糖測定器(CGM)の「FreeStyle リブレ」(以下「リブレ」と略す)が、2022年4月より「インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っている入院中の患者以外の患者」にも保険適用が拡大されることを受け、オンラインでメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、CGMの使用で把握できる血糖スパイクや夜間低血糖への対応のほか、糖尿病の合併症予防への効果、日常の糖尿病管理での活かし方などが説明された。思わしくない糖尿病患者の血糖コントロール セミナーでは、小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学部門 教授)を講師に迎え、「糖尿病治療が変わる-技術が可能にする新しい糖尿病管理」をテーマに行われた。 糖尿病の患者数(強く疑われる者、可能性を否定できない者含む)は2016年時点で2,000万人と推定され、合併症予防のための血糖コントロール目標値をHbA1c7.0%未満として診療が行われている。ただ、実際わが国のHbA1cの分布では、1型糖尿病では平均7.77%、2型糖尿病では平均7.1%と達成が難しい現状である(2019年)。 糖尿病の治療は、食事・運動療法などの生活習慣改善から始まり、血糖コントロールがうまくいかない場合、経口薬(メトホルミン、DPP-4阻害薬など)、注射薬(GLP-1受容体作動薬など)、インスリン注射へと進展していく。そして、注射薬になると血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり、インスリンを1日3~4回注射している患者ではCGMも保険適用となる。 インスリン治療の課題として「低血糖」が指摘されている。低血糖は、短期的には意識障害などをもたらし、長期的には心血管障害の増加や認知機能への悪影響をもたらす。そして、インスリン治療に伴う「重症低血糖」への影響は60%以上との研究報告もあり、低血糖の発生をいかに抑えるかがインスリン治療での課題とされている。 実際、インスリン使用患者では保険適用としてSMBGで血糖変動を追うことができるが、1日数回のSMBGでは食後高血糖や夜間低血糖などを十分評価することが難しいとされている。また、SMBGは患者にとって大きな手間であり、ハードルの高い手技とされている。 そこでCGMが登場し、センサーが細胞間質液中のグルコース濃度を測定、血糖値に換算することで、血糖の推移を点ではなく、連続した「線」で表すことができるようになった。CGMにより、気付かれていなかった高血糖や低血糖が認識できるようになり、適切な治療法の選択や患者自身のより良い治療行動への進展ができるようになった。CGMの使用で適切な治療ができ、患者QOLも改善 今回保険適用が拡大されるリブレは、2016年5月に薬事承認を取得し、2017年1月より発売されている間歇スキャン式持続グルコース測定器。腕に500円玉大のセンサーを装着し、「かざす」だけで1日何度でも血糖値(グルコ―ス値)を確認し、「かざしていないとき」もセンサーは血糖値を連続して測定・記録する。センサーは14日間装着でき、容易に装着ができる。 発売後、国内外で臨床エビデンスがまとめられている。たとえば2型糖尿病患者の介入試験“REPLACE試験”では、HbA1cに変化はなかったものの、低血糖発現時間の短縮がみられた。また、日本人2型糖尿病患者を対象とした“SHIFT試験”では、ベースラインからの平均HbA1cの減少、血糖が好ましい範囲に入っている時間の割合(Time in range)の増加、患者満足度の向上もみられた。とくに患者のSMBGの回数が減り、リブレのスキャン回数が増加したほか、インスリンの使用量の増加も抑えられていた。 以上からリブレの臨床での使用により、低血糖の減少、血糖コントロールの改善、急性糖尿病関連イベントの改善、患者QOLの改善につながる効果が期待されている。また、2022年4月の保険改定でCGMが「インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っている」と条件が緩和されることで、より使用できる対象が拡大する。 最後に小川氏は、「こうした新しい診療機器の使用により、適切な薬剤、治療法の選択、血糖状況の把握による患者の療養行動の変化により、低血糖など短期イベント、慢性合併症など長期イベントの軽減ができ、患者の健康寿命の延伸と良好なQOLの実現ができる」と糖尿病診療の展望を語り、講演を終えた。

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腎不全患者の腎移植は特定の背景因子の違いに大きく影響されることなく、透析継続例の生命予後に勝る(解説:浦信行氏)

 BMJ誌に掲載された本論文のメタ解析の結果は大方の予想どおり、腎移植例の生命予後が透析継続例に勝るとの結論であり、そのハザード比(HR)は0.45ときわめて高いものであった。このような報告は従来も数多くあったが、比較的最近の2011年に発表されたシステマティックレビューは192万2,300例の解析であり、本研究より多数例の報告である。しかし、従来のものは対象の透析例が移植待機例以外も含んでおり、本来移植非適応の症例を含んでおり、対象の選択バイアスを含むものである。したがって本研究の症例の選択バイアスを除去した意義は大きい。 ところで、48の報告のうち11件が有意性を認めない層が特定されたと報告しているが、その11の報告の内容には一貫性がない。たとえば年齢層であるが、報告によって65~70歳、70歳以上、基礎疾患は糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症もしくは遺伝性疾患、糖尿病性腎症、また基礎疾患ではないがCOPD合併例など、まったく一定の傾向がない。移植後各時期の生命予後に関しては、術後3ヵ月目までは、手術そのものの影響や、化学療法開始時のリスク、麻酔のリスクなどでむしろ悪いが、その後は一貫して移植例の予後は良い。 メタアナリシスでは18の研究を対象としているが、地域性に関しては、南米の報告は研究が2報のみで統計学的な有意差はなかったが、他の地域との成績の有意差もなかった。また、生体腎移植と死体腎移植との成績の差はなく、60歳未満と60歳以上との差もなかったとのことである。腎移植も透析も技術的進歩は目覚ましいものがあるが、西暦2000年以前と以後を比較しても、やはり同様に腎移植例優位の結果であった。 やはり、腎移植希望例に対する移植腎の、確保、供給の困難性が最大の障害である。

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アンチエイジングを“アンチ”から学ぶ!抗加齢の原点回帰

『心身ともに若々しさを保つ アンチエイジング科学とエビデンス』をテーマに掲げ、第22回日本抗加齢医学会総会が2022年6月17日(金)~19日(日)に大阪国際会議場(グランキューブ大阪)とWEB併用のハイブリッド形式で開催される。脳の専門家として初の大会長を務める阿部 康二氏(国立精神・神経医療研究センター病院長)に、脳と抗加齢の関係や一押しのシンポジウムについて話を聞いた。“究極のアンチエイジングは脳”、血管内皮細胞の炎症抑制が課題老化現象の現れ方は個々で異なり、老化=酸化と言っても過言ではありません。たとえば、ピカピカだった鉄パイプが経年劣化して錆びるように、人間の体も酸素を利用することで酸素の毒性にもさらされ続け、年齢とともにそれが蓄積した結果、老化に至ります。毒性面を最小限に抑え、酸素のいいとこ取りをすることが老化予防の最大のコツですが、近年、血管内皮細胞の炎症抑制がアンチエイジングの1つであることが明らかにされています。この血管内皮細胞の保護の観点からも、脳の専門家である私としては、“究極のアンチエイジングは脳”だと自負しており、いくら見た目や皮膚が若々しくても、脳が老化していれば本当の若々しさを維持すること、表面化することは難しいと考えています。昨今、治療薬が国内承認の是非で話題を集めたアルツハイマー病も実は血管内皮細胞の酸化が原因の1つであり、それをターゲットとした治療薬の開発が急がれています。これまではアミロイドβの蓄積が問題だとされてきたため、何十年もの間、それをターゲットとした治療薬の開発が進められてきました。ところが、超高齢化社会におけるアルツハイマー病はアミロイドβに加えて血管そのものの老化が影響しているため、血管内皮細胞を同時にターゲットにする必要があるんです。治療薬開発から30年が経過し、その間に日本の超高齢化も進行してしまい、今後の治療薬開発において、脳の血管内皮細胞を若々しくするというようなコンセプトの転換が求められています。たとえば、結婚当初は10万円の指輪で喜んでいた妻が、何十年か連れ添うと10万円の指輪では喜んではくれず、100万円の指輪でないと喜んでくれないというように、妻の名前は同じでも中身が変わってしまう。それと同じ状況が医学でも起こっているのです。今の妻が喜ぶようなプレゼントを見定めるように、アルツハイマー病という疾患名は昔と同じでも、その治療ニーズが時代に伴い変化することを忘れてはならないのです。そもそも抗加齢医学の概念は正しいの?アーミッシュの考えにヒントが…話は変わりますが、これまで、“老化は悪、老化予防が善”という定説の下で抗加齢医学(アンチエイジング)の研究が進められてきましたが、それは本当に正しいのでしょうか。それを振り返るため、今回の特別講演には『アーミッシュの生活とアンチエイジング』という演題を盛り込みました。アーミッシュとは、「イエスやアマンの時代の生活を実践しようとする復古主義を特徴」とし、「現代文明を拒否して電気や車を使わず、馬車を用いて、おもに農業を営む」1)人々のことを指します。時の流れに身を任せようとする、つまり、アンチエイジングにアンチな人たちです。それゆえ、「アーミッシュから抗加齢のヒントになる学びがあるのでは!」「アンチエイジングの根本に立ち返れるいい機会になるのでは?」という思いが募り、企画しました。アンチエイジングが本当に正しいのかを問い直し、双方の意見がぶつかり合うなかで得るものがあるのでは、と期待を寄せています。阿部氏がお奨めする演題<会長講演>脳のアンチエイジングと見た目のアンチエイジング<特別講演>アーミッシュの生活とアンチエイジング<シンポジウム>中高年女性へ適応可能なサプリメントアンチエイジングと認知症予防メンタルヘルスとエクササイズ腸内細菌x新テクノロジーコロナ禍により一層孤独を強め、コミュニケーション力の低下、身体能力の低下を訴える人が増加しています。また、メンタルの破綻などにも影響しているためか凶悪事件が後を絶ちません。フレイルを助長、認知症や糖尿病などの持病を悪化させ、それに加えて新型コロナウイルス自体がもたらす血管内皮細胞への影響により脳出血や脳梗塞患者の増加も問題視されています。コロナ禍は外出規制による影響ばかりか、生物学的な血管内皮細胞の炎症においても抗加齢に逆行するパンデミックであることから、いかにこの負の連鎖から脱却できるか、その足掛かりになるような演題も豊富に取り揃えています。日本は世界で類を見ない超高齢社会となり、これまで以上に超高齢者と向き合う必要があります。そのため、若い医師には老化のメカニズムに関する基本的な理解、老化にどう立ち向かっていくのか、などを医師の基本的な心構えとして医業に取り組んでもらいたいと考えています。そのため、本学会では若手のための発表の場も多数用意していますし、病気と健康ひいては若々しさと老化の橋渡しになる学会として、健康産業など医療者以外の参加者との交流も積極的に行っています。ぜひ、皆さま奮ってご参加ください。第22回日本抗加齢医学会総会1)日本大百科全書(ニッポニカ)

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甲状腺がん、術後放射性ヨウ素内用療法vs.経過観察/NEJM

 甲状腺全摘術後の低リスク甲状腺がん患者において、放射性ヨウ素内用療法を行わないフォローアップ戦略は、3年時の機能的、構造的および生物学的異常の発生に関して、放射性ヨウ素内用療法によるアブレーション戦略に対し非劣性であることが、フランス・パリサクレー大学のSophie Leboulleux氏らが実施した前向き無作為化第III相試験「Essai Stimulation Ablation 2 trial:ESTIMABL2試験」の結果、示された。甲状腺切除術を受けた低リスク分化型甲状腺がん患者において、術後の放射性ヨウ素(ヨウ素131)の投与は有益性が実証されておらず議論の的であった。NEJM誌2022年3月10日号掲載の報告。術後低リスク分化型甲状腺がん患者776例を対象に 研究グループは2013年5月~2017年3月にフランスの35施設において、甲状腺全摘術を受けた低リスク分化型甲状腺がん患者776例を、術後放射性ヨウ素内用療法群(遺伝子組み換えヒト型甲状腺刺激ホルモン[ヒトチロトロピン アルファとして0.9mg]を24時間間隔で2回筋肉内投与し、最終投与24時間後に1.1GBq[30mCi]の放射性ヨウ素を投与)、または経過観察群(放射性ヨウ素内用療法を行わない)に、施設およびリンパ節転移の有無(N0またはNx)で層別化して無作為に割り付けた。 主要評価項目は、3年後の機能的、構造的および生物学的異常の複合エンドポイントである。複合エンドポイントの発生がないことに関する経過観察群の放射性ヨウ素内用療法群に対する非劣性の検証が主要目的であった。非劣性マージンは、複合エンドポイントのイベント(その後の治療を要する放射性ヨウ素取り込みを認める病巣の全身スキャンによる検出[放射性ヨウ素内用療法群のみ]、頸部超音波検査での異常所見、サイログロブリンまたはサイログロブリン抗体の上昇)が発生しなかった患者の割合の群間差が5ポイント未満とした。 副次評価項目は、イベントの予後因子および分子学的特性などであった。3年時の無イベント率に差はなく、経過観察群の非劣性を確認 無作為化後3年時に評価することができた患者は730例(放射性ヨウ素内用療法群363例、経過観察群367例)で、このうち主要評価項目のイベントが発生しなかった患者の割合は、経過観察群95.6%(95%信頼区間[CI]:93.0~97.5)、放射性ヨウ素内用療法群95.9%(95%CI:93.3~97.7)であった。群間差は-0.3ポイント(両側90%CI:-2.7~2.2)であり、結果は非劣性基準を満たすものであった。 イベントの発生は、構造的または機能的異常が8例、生物学的異常が23例に25件認められた。イベントの発生頻度は、術後甲状腺ホルモン療法中に血清サイログロブリン値が1ng/mL超の患者で高かった。分子生物学的異常は、イベントの有無で差はなかった。治療関連有害事象は報告されなかった。

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高血圧:脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q6

高血圧:脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子Q6高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)とJSH2019で、脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子に変更があった。JSH2019で示された予後影響因子に含まれないのは、下記危険因子のうちどれか。高齢(65歳以上)男性喫煙肥満(BMI≧25kg/m2) とくに内臓脂肪型肥満若年(50歳未満)発症の脳心血管疾患の家族歴脂質異常症糖尿病

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統合失調症の再発予防、薬剤30種に有効性の差はない!? /Lancet

 統合失調症の成人患者における抗精神病薬による維持療法では、再発予防に関して30種の薬剤の有効性に明確な差はなく、治療薬の選択は主に忍容性を考慮して行うべきであることが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年2月26日号に掲載された。無作為化プラセボ対照比較試験のベイジアンネットワークメタ解析 研究グループは、統合失調症成人患者における抗精神病薬による維持療法の有効性と忍容性を評価する目的で、文献を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(ドイツ教育科学研究技術省などの助成を受けた)。 Cochrane Schizophrenia Groupの専門登録(開設時~2020年4月27日)、PubMed(2020年4月1日~2021年1月15日)、関連のある系統的レビューで対象とされた試験リストの検索が、記述言語に制限を設けずに行われた。 対象は、抗精神病薬(単剤療法、経口薬または長時間作用型注射薬)またはプラセボの投与を受け、症状が安定した統合失調症または統合失調感情障害の成人患者を募集した無作為化対照比較試験(追跡期間12週以上)とされた。特定の併存疾患や治療抵抗性を有する参加者の試験は除外された。 主要アウトカムは再発した参加者数とされ、変量効果を用いてベイジアンネットワークメタ解析が行われた。忍容性アウトカムは薬剤によって明らかな差 系統的レビューには32種の抗精神病薬の127試験(1万8,152例)に関する501編の文献が、メタ解析には31種の抗精神病薬の115試験(1万7,594例)が含まれた。115試験の年齢中央値は40歳(IQR:38~43)、女性の割合の中央値は40%(IQR:30~50)、試験期間中央値は34週(IQR:24~52)で、99試験(86%)が二重盲検試験だった。主要アウトカムのネットワークメタ解析は、30種の抗精神病薬の100試験(1万6,812例)に関して実施された。 プラセボとの比較における抗精神病薬の再発のリスク比(RR)は、すべての薬剤で1.00未満であった。95%信用区間(CrI)は、cariprazine経口薬(RR:0.65、95%CrI:0.16~1.14)、ルラシドン経口薬(RR:0.63、95%CrI:0.25~1.02)、clopenthixol長時間作用型注射薬(RR:0.51、95%CrI:0.02~1.18)は「無効」の範囲内であったが、これら以外の薬剤の95%CrIは「無効」の範囲内ではなかった。 プラセボとの比較で再発のRRが最も小さいのは、zuclopenthixol長時間作用型注射薬(RR:0.07、95%CrI:0.00~0.34)であったが、これは2つの小規模試験(合計56例、イベント1件)に基づくもので不確実性が高かった。これを除くRRの範囲は、パリペリドン経口薬の0.20(95%CrI:0.05~0.41)からcariprazine経口薬の0.65(95%CrI:0.16~1.14)までであった。 全般に、抗精神病薬間の比較のほとんどでは差がない可能性があることから、再発予防に関して、特定の抗精神病薬の優越性の明確なエビデンスはないと考えられた。 症状全般、再入院、寛解、回復、生活の質、全体的な機能の結果は、主要アウトカムとほぼ同様であった。すなわち、ほとんどの抗精神病薬はプラセボに対し優越性を有し、薬剤間の差には明確なエビデンスはなかった。 忍容性のアウトカム(抗パーキンソン病薬の使用、遅発性ジスキネジア、QTc間隔延長、体重増加、血漿プロラクチン濃度上昇、鎮静)については、抗精神病薬間で明らかな差が認められた。 著者は、「治療薬の選択では、糖尿病患者では体重増加をもたらす抗精神病薬は避けるなど、個々の患者の必要や嗜好を考慮すべきである。また、急性期治療で重要な副作用が発現しなかった患者では、同じ薬剤の使用を続けるのが賢明かもしれない。この点は、維持療法は何年も継続しなければならない場合が多く、副作用が蓄積する可能性があるため、とくに重要である」としている。

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口の中が燃えるように痛い!?口腔内灼熱症候群(BMS)【知って得する!?医療略語】第7回

第7回 口の中が燃えるように痛い!?口腔内灼熱症候群(BMS)最近、口の中が燃えるように痛い病気があると聞きました。本当にそんな病気があるのですか?そうなんです、本当にあるんです!文字通り、口の中の灼熱感を特徴とする口腔内灼熱症候群(BMS)という疾患があります。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】BMS【日本語】口腔内灼熱症候群【英字】burning mouth syndrome【分野】脳神経【診療科】耳鼻科・歯科口腔外科・疼痛治療科・心療内科【関連】一次性BMS・二次性BMS・舌痛症※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。口腔内のヒリヒリ、ピリピリした不快な灼熱感を訴える患者さんは、口腔内灼熱症候群(BMS:Burning mouth syndrome)を想定する必要があるかもしれません。恥ずかしながら、筆者が最近まで知らずに過ごしてしまった疾患の1つです。BMSは、幅広い診療科の医師が遭遇する可能性があるため、今回紹介いたします。BMSは国際頭痛分類第3版において、「3ヵ月を超えて、かつ1日2時間を超えて連日再発を繰り返す、口腔内の灼熱感または異常感覚で、臨床的に明らかな原因病巣を認めないもの」と定義されており、口腔粘膜は外見上正常、感覚検査を含めた臨床診察は正常とされています。BMSの原因は、歯科処置や口内炎などの局所的異常が原因とされていますが、発症契機が不明な場合も多いようです。また、BMSは心理社会課題や精神疾患の合併が多いことを指摘する研究報告がある一方、BMS患者の舌生検で粘膜上皮の神経線維に器質的変化を認めたことが報告され、近年はfMRIによる研究も進められています。さらに近年、BMSは一次性BMSと二次性BMSに区別される傾向にあります。二次性BMSの原因は、全身疾患と局所疾患に分類され、全身疾患に伴う二次性BMSの基礎疾患には薬剤誘発性、貧血(Plummer Vinson症候群)、シェーグレン症候群、糖尿病が挙げられており、BMS患者の診療では、血液検査による貧血、ビタミンB12、葉酸、微量金属(亜鉛・銅)のスクリーンニングの必要性が指摘されています。なお、BMSの口腔内疼痛症状は、日内変動も報告され午前より午後に強くなる傾向があるそうです。筆者が遭遇したBMS患者さんも同様の傾向が見られ、灼熱感を和らげるため冷水の多飲がみられたことを付記します。近年、増加傾向が指摘されているBMS。お時間が許せば、以下の論文をご一読ください。1)羽藤 裕之他. 1次性burning mouth syndrome患者の臨床的検討. 日口内誌. 2020;26:8-15.2)山村 幸江. 口腔灼熱症候群・舌痛症の診療. 耳鼻臨床. 2018;111:148-149.3)任 智美. 舌痛症の取り扱い. 日耳鼻. 2016. 119-144.4)日本頭痛学会:国際頭痛分類第3版(第3部)

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「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」成果発表シンポジウム開催【ご案内】

 2022年3月24日、日本医療研究開発機構の研究開発推進ネットワーク事業が作成している「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」について、成果発表を行うためのシンポジウムが開催される。 国民が健康な生活を送り、医学系研究を促進するためには、研究者と一般市民の間にある研究に関する理解のギャップを減らすことが重要だ。しかし、医学系研究の理解には業界特有の用語の難解さや、研究に関する知識が一般的でないことを認識しておかなければ、研究者と情報の受け手側との間にコミュニケーションギャップが生じてしまう。日本医療研究開発機構はこの課題に対し、研究者が研究成果をわかりやすく発信するために配慮すべき観点と、用語の理解に関する実態調査に基づいた対処法を検討し、このたび「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」にまとめた。 シンポジウムでは、市民、メディア、研究者といった多様なステークホルダーがそれぞれの立場から意見を述べ、手引きの活用法や、継続的な課題改善について議論を交わす。 本シンポジウムは、Zoomウェビナーによるオンライン開催で、医師のみならず誰でも視聴できる。参加には事前の予約申し込みが必要で、ウェブの専用ページで受け付けている。【開催概要】「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」 成果発表シンポジウム〜研究成果を確かに発信する工夫〜開催日時:2022年3月24日(木)14:00~15:30(13:45開場)開催方法:Zoomウェビナーによるオンライン開催(視聴参加は事前登録制)参加(視聴)対象:臨床研究支援病院、大学等研究機関、大学病院、患者団体、一般定員:500名(定員になり次第、受け付け終了)参加(視聴)料:無料申し込み方法:参加申し込みフォームより事前登録【問い合わせ先】東京大学未来ビジョン研究センター データヘルス研究ユニット事務局(dh-jimu@ifi.u-tokyo.ac.jp)【プログラム】・開会・事業成果の説明井出 博生氏(東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授)・それぞれの立場からのコメント山口 育子氏(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)田中 牧郎氏(明治大学国際日本学部専任教授)市川 衛氏(一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会研究開発部長)杉山 雄大氏(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター医療政策研究室室長) ・パネルディスカッション「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」の活用についてコーディネーター:山田 恵子氏(東京大学医学部附属病院助教)・閉会

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NAFLDを併存する糖尿病患者の重症低血糖リスクは?

 2型糖尿病と併存する肝硬変では低血糖が起こりやすいことが知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)ではどうなのだろうか。今回、韓国・延世大学校医療院のJi-Yeon Lee氏らの研究によって、2型糖尿病患者におけるNAFLDと重症低血糖との関連が調査された。その結果、2型糖尿病を有するNAFLD患者は、肥満かどうかにかかわらず、救急搬送または入院を必要とする重症低血糖のリスクが26%増加することが報告された。2月23日、JAMA Network Openに掲載。 韓国の国民健康保険制度を用いた人口ベースの後ろ向きコホート研究において、2009年1月1日~2012年12月31日までの間に健康診断を受け、2型糖尿病と診断された20歳以上の個人が登録された。対象者は2015年12月31日まで追跡され、データは2019年1月1日~2021年2月2日に分析された。なお、B型・C型肝炎キャリア、肝硬変または肝臓・膵臓がん患者、アルコールの過剰摂取者は除外された。 重症低血糖は、低血糖の一次診断を伴う入院および救急科の受診として判断された。ベースラインの脂肪肝指数(FLI)を、NAFLDの代理マーカーとして使用した。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病の参加者194万6,581例のうち、112万5,187例(57.8%)が男性だった。・追跡期間の中央値5.2年(IQR:4.1~6.1)の間に、4万5,135例(2.3%)が1回以上の重症低血糖イベントを経験した。・重症低血糖を起こした患者は、起こしていない患者に対して年齢が高く(平均年齢67.9歳[SD:9.9]vs.57.2歳[12.3]、p<0.001)、平均BMIが低かった(24.2[3.43]vs.25.1[3.4]、p<0.001)。・NAFLD患者は肥満状態を考慮しなくとも低血糖になる傾向があったが、BMIを含む複数の共変量調整をしたところ、FLIと重症低血糖の間にJ字型の関連があった(第5十分位数:調整されたハザード比[aHR]=0.86、95%CI:0.83-0.90/第9十分位数:aHR=1.02、95%CI:0.96-1.08/第10十分位数:aHR=1.29、95%CI:1.22-1.37)。・低血糖の推定リスクは、NAFLD患者でより高かった(aHR=1.26、95%CI:1.22-1.30)。また、この関連性は女性(aHR=1.29、95%CI:1.23-1.36)および低体重(aHR=1.71、95%CI:1.02-2.88)でより顕著だった。 研究者らは、「2型糖尿病を有するNAFLD患者は、肥満状態とは無関係に重症低血糖の高リスクと関連していた。2型糖尿病患者の低血糖に対する脆弱性を評価する場合は、NAFLDの存在を考慮する必要がある」と結論付けた。

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第101回 COVID-19入院患者の新たな糖尿病はたいてい一過性らしい

米国のマサチューセッツ総合病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者およそ2千人(1,902人)の電子カルテ情報を遡って調べたレトロスペクティブ試験結果によると、その入院時に新たに診断された糖尿病(NDDM;newly diagnosed diabetes mellitus)はたいてい一過性らしく、退院後間もなくおよそ正常な血糖値に多くの場合回復するようです1,2)。1,902人のうち約3人に1人(594人)に糖尿病が認められ、それらのうち77人(全被験者1,902人の4%、糖尿病患者594人の13%)の糖尿病は入院前には認められなかったもの、すなわちNDDMでした。NDDMのそれら77人のうち入院中に死亡した10人と消息が絶えた3人を除く64人のその後を調べたところ約1年時点(中央値323日)で半分に近い26人(41%)の血糖値は糖尿病の水準未満(正常か前糖尿病レベル)に落ち着いていました。追跡された64人のうち39%(25/64人)はインスリン投与頼りで退院しましたが約1年後のインスリン投与患者は僅か5人(7.8%)に減っていました。それに8割方のHbA1cは7%以下になっていました(HbA1c測定患者41人中33人)。NDDMの77人の半数近い33人(43%)は入院前の記録で前糖尿病が見つかっており、そのような前糖尿病患者の高血糖は比較的軽度でした。一方、入院前に医療と縁遠かったNDDM患者はより重度の高血糖を呈しました。それら所見によると、COVID-19入院患者の新たな糖尿病は新たに発症したものか単に新たに把握されたものか多くの場合不明瞭かもしれず、新たに発症した糖尿病というより新たに診断に至った糖尿病と捉えるほうがより適切なようです。実際今回の研究ではそう位置づけられています。NDDMに至った経緯はどうあれNDDM患者は入院前からの糖尿病患者に比べてC反応性タンパク質(CRP)等の炎症マーカーの値が高く、集中治療室(ICU)をより必要としました。それらに加えてNDDM患者の血糖値は退院後に改善していることも踏まえるとNDDMの後ろ盾はどうやら炎症反応であり、インスリンを分泌するβ細胞の破壊ではなくインスリンに細胞が反応し難くなるインスリン抵抗性がCOVID-19入院に伴うNDDMの主因らしきことを物語っています。ただし、インスリン不足を意味する糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が糖尿病を新たに生じた患者と以前からの糖尿病患者の両方で多いことが複数の試験で示されており、インスリン抵抗性のみならず急なインスリン欠乏もまたNDDMの片棒を担いでいるかもしれません。今回の報告でのDKA発現率はNDDM患者では6.5%、以前からの糖尿病患者では11%であり、著者によると同等(comparable)でした。今回の報告はCOVID-19入院時のNDDMを長く追跡した研究のさきがけの一つであり、更なる試験で検証が必要です。また、COVID-19で急な高血糖が生じる仕組みを掘り下げていかねばなりません。参考1)Cromer SJ,et al. J Diabetes Complications. 2022 Feb 4:108145. [Epub ahead of print]2)Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder / Eurekalert

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