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高血圧:脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q6

高血圧:脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子Q6高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)とJSH2019で、脳心血管疾患のリスク層別化に用いる予後影響因子に変更があった。JSH2019で示された予後影響因子に含まれないのは、下記危険因子のうちどれか。高齢(65歳以上)男性喫煙肥満(BMI≧25kg/m2) とくに内臓脂肪型肥満若年(50歳未満)発症の脳心血管疾患の家族歴脂質異常症糖尿病

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統合失調症の再発予防、薬剤30種に有効性の差はない!? /Lancet

 統合失調症の成人患者における抗精神病薬による維持療法では、再発予防に関して30種の薬剤の有効性に明確な差はなく、治療薬の選択は主に忍容性を考慮して行うべきであることが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年2月26日号に掲載された。無作為化プラセボ対照比較試験のベイジアンネットワークメタ解析 研究グループは、統合失調症成人患者における抗精神病薬による維持療法の有効性と忍容性を評価する目的で、文献を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(ドイツ教育科学研究技術省などの助成を受けた)。 Cochrane Schizophrenia Groupの専門登録(開設時~2020年4月27日)、PubMed(2020年4月1日~2021年1月15日)、関連のある系統的レビューで対象とされた試験リストの検索が、記述言語に制限を設けずに行われた。 対象は、抗精神病薬(単剤療法、経口薬または長時間作用型注射薬)またはプラセボの投与を受け、症状が安定した統合失調症または統合失調感情障害の成人患者を募集した無作為化対照比較試験(追跡期間12週以上)とされた。特定の併存疾患や治療抵抗性を有する参加者の試験は除外された。 主要アウトカムは再発した参加者数とされ、変量効果を用いてベイジアンネットワークメタ解析が行われた。忍容性アウトカムは薬剤によって明らかな差 系統的レビューには32種の抗精神病薬の127試験(1万8,152例)に関する501編の文献が、メタ解析には31種の抗精神病薬の115試験(1万7,594例)が含まれた。115試験の年齢中央値は40歳(IQR:38~43)、女性の割合の中央値は40%(IQR:30~50)、試験期間中央値は34週(IQR:24~52)で、99試験(86%)が二重盲検試験だった。主要アウトカムのネットワークメタ解析は、30種の抗精神病薬の100試験(1万6,812例)に関して実施された。 プラセボとの比較における抗精神病薬の再発のリスク比(RR)は、すべての薬剤で1.00未満であった。95%信用区間(CrI)は、cariprazine経口薬(RR:0.65、95%CrI:0.16~1.14)、ルラシドン経口薬(RR:0.63、95%CrI:0.25~1.02)、clopenthixol長時間作用型注射薬(RR:0.51、95%CrI:0.02~1.18)は「無効」の範囲内であったが、これら以外の薬剤の95%CrIは「無効」の範囲内ではなかった。 プラセボとの比較で再発のRRが最も小さいのは、zuclopenthixol長時間作用型注射薬(RR:0.07、95%CrI:0.00~0.34)であったが、これは2つの小規模試験(合計56例、イベント1件)に基づくもので不確実性が高かった。これを除くRRの範囲は、パリペリドン経口薬の0.20(95%CrI:0.05~0.41)からcariprazine経口薬の0.65(95%CrI:0.16~1.14)までであった。 全般に、抗精神病薬間の比較のほとんどでは差がない可能性があることから、再発予防に関して、特定の抗精神病薬の優越性の明確なエビデンスはないと考えられた。 症状全般、再入院、寛解、回復、生活の質、全体的な機能の結果は、主要アウトカムとほぼ同様であった。すなわち、ほとんどの抗精神病薬はプラセボに対し優越性を有し、薬剤間の差には明確なエビデンスはなかった。 忍容性のアウトカム(抗パーキンソン病薬の使用、遅発性ジスキネジア、QTc間隔延長、体重増加、血漿プロラクチン濃度上昇、鎮静)については、抗精神病薬間で明らかな差が認められた。 著者は、「治療薬の選択では、糖尿病患者では体重増加をもたらす抗精神病薬は避けるなど、個々の患者の必要や嗜好を考慮すべきである。また、急性期治療で重要な副作用が発現しなかった患者では、同じ薬剤の使用を続けるのが賢明かもしれない。この点は、維持療法は何年も継続しなければならない場合が多く、副作用が蓄積する可能性があるため、とくに重要である」としている。

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口の中が燃えるように痛い!?口腔内灼熱症候群(BMS)【知って得する!?医療略語】第7回

第7回 口の中が燃えるように痛い!?口腔内灼熱症候群(BMS)最近、口の中が燃えるように痛い病気があると聞きました。本当にそんな病気があるのですか?そうなんです、本当にあるんです!文字通り、口の中の灼熱感を特徴とする口腔内灼熱症候群(BMS)という疾患があります。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】BMS【日本語】口腔内灼熱症候群【英字】burning mouth syndrome【分野】脳神経【診療科】耳鼻科・歯科口腔外科・疼痛治療科・心療内科【関連】一次性BMS・二次性BMS・舌痛症※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。口腔内のヒリヒリ、ピリピリした不快な灼熱感を訴える患者さんは、口腔内灼熱症候群(BMS:Burning mouth syndrome)を想定する必要があるかもしれません。恥ずかしながら、筆者が最近まで知らずに過ごしてしまった疾患の1つです。BMSは、幅広い診療科の医師が遭遇する可能性があるため、今回紹介いたします。BMSは国際頭痛分類第3版において、「3ヵ月を超えて、かつ1日2時間を超えて連日再発を繰り返す、口腔内の灼熱感または異常感覚で、臨床的に明らかな原因病巣を認めないもの」と定義されており、口腔粘膜は外見上正常、感覚検査を含めた臨床診察は正常とされています。BMSの原因は、歯科処置や口内炎などの局所的異常が原因とされていますが、発症契機が不明な場合も多いようです。また、BMSは心理社会課題や精神疾患の合併が多いことを指摘する研究報告がある一方、BMS患者の舌生検で粘膜上皮の神経線維に器質的変化を認めたことが報告され、近年はfMRIによる研究も進められています。さらに近年、BMSは一次性BMSと二次性BMSに区別される傾向にあります。二次性BMSの原因は、全身疾患と局所疾患に分類され、全身疾患に伴う二次性BMSの基礎疾患には薬剤誘発性、貧血(Plummer Vinson症候群)、シェーグレン症候群、糖尿病が挙げられており、BMS患者の診療では、血液検査による貧血、ビタミンB12、葉酸、微量金属(亜鉛・銅)のスクリーンニングの必要性が指摘されています。なお、BMSの口腔内疼痛症状は、日内変動も報告され午前より午後に強くなる傾向があるそうです。筆者が遭遇したBMS患者さんも同様の傾向が見られ、灼熱感を和らげるため冷水の多飲がみられたことを付記します。近年、増加傾向が指摘されているBMS。お時間が許せば、以下の論文をご一読ください。1)羽藤 裕之他. 1次性burning mouth syndrome患者の臨床的検討. 日口内誌. 2020;26:8-15.2)山村 幸江. 口腔灼熱症候群・舌痛症の診療. 耳鼻臨床. 2018;111:148-149.3)任 智美. 舌痛症の取り扱い. 日耳鼻. 2016. 119-144.4)日本頭痛学会:国際頭痛分類第3版(第3部)

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「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」成果発表シンポジウム開催【ご案内】

 2022年3月24日、日本医療研究開発機構の研究開発推進ネットワーク事業が作成している「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」について、成果発表を行うためのシンポジウムが開催される。 国民が健康な生活を送り、医学系研究を促進するためには、研究者と一般市民の間にある研究に関する理解のギャップを減らすことが重要だ。しかし、医学系研究の理解には業界特有の用語の難解さや、研究に関する知識が一般的でないことを認識しておかなければ、研究者と情報の受け手側との間にコミュニケーションギャップが生じてしまう。日本医療研究開発機構はこの課題に対し、研究者が研究成果をわかりやすく発信するために配慮すべき観点と、用語の理解に関する実態調査に基づいた対処法を検討し、このたび「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」にまとめた。 シンポジウムでは、市民、メディア、研究者といった多様なステークホルダーがそれぞれの立場から意見を述べ、手引きの活用法や、継続的な課題改善について議論を交わす。 本シンポジウムは、Zoomウェビナーによるオンライン開催で、医師のみならず誰でも視聴できる。参加には事前の予約申し込みが必要で、ウェブの専用ページで受け付けている。【開催概要】「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」 成果発表シンポジウム〜研究成果を確かに発信する工夫〜開催日時:2022年3月24日(木)14:00~15:30(13:45開場)開催方法:Zoomウェビナーによるオンライン開催(視聴参加は事前登録制)参加(視聴)対象:臨床研究支援病院、大学等研究機関、大学病院、患者団体、一般定員:500名(定員になり次第、受け付け終了)参加(視聴)料:無料申し込み方法:参加申し込みフォームより事前登録【問い合わせ先】東京大学未来ビジョン研究センター データヘルス研究ユニット事務局(dh-jimu@ifi.u-tokyo.ac.jp)【プログラム】・開会・事業成果の説明井出 博生氏(東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授)・それぞれの立場からのコメント山口 育子氏(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)田中 牧郎氏(明治大学国際日本学部専任教授)市川 衛氏(一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会研究開発部長)杉山 雄大氏(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター医療政策研究室室長) ・パネルディスカッション「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」の活用についてコーディネーター:山田 恵子氏(東京大学医学部附属病院助教)・閉会

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NAFLDを併存する糖尿病患者の重症低血糖リスクは?

 2型糖尿病と併存する肝硬変では低血糖が起こりやすいことが知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)ではどうなのだろうか。今回、韓国・延世大学校医療院のJi-Yeon Lee氏らの研究によって、2型糖尿病患者におけるNAFLDと重症低血糖との関連が調査された。その結果、2型糖尿病を有するNAFLD患者は、肥満かどうかにかかわらず、救急搬送または入院を必要とする重症低血糖のリスクが26%増加することが報告された。2月23日、JAMA Network Openに掲載。 韓国の国民健康保険制度を用いた人口ベースの後ろ向きコホート研究において、2009年1月1日~2012年12月31日までの間に健康診断を受け、2型糖尿病と診断された20歳以上の個人が登録された。対象者は2015年12月31日まで追跡され、データは2019年1月1日~2021年2月2日に分析された。なお、B型・C型肝炎キャリア、肝硬変または肝臓・膵臓がん患者、アルコールの過剰摂取者は除外された。 重症低血糖は、低血糖の一次診断を伴う入院および救急科の受診として判断された。ベースラインの脂肪肝指数(FLI)を、NAFLDの代理マーカーとして使用した。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病の参加者194万6,581例のうち、112万5,187例(57.8%)が男性だった。・追跡期間の中央値5.2年(IQR:4.1~6.1)の間に、4万5,135例(2.3%)が1回以上の重症低血糖イベントを経験した。・重症低血糖を起こした患者は、起こしていない患者に対して年齢が高く(平均年齢67.9歳[SD:9.9]vs.57.2歳[12.3]、p<0.001)、平均BMIが低かった(24.2[3.43]vs.25.1[3.4]、p<0.001)。・NAFLD患者は肥満状態を考慮しなくとも低血糖になる傾向があったが、BMIを含む複数の共変量調整をしたところ、FLIと重症低血糖の間にJ字型の関連があった(第5十分位数:調整されたハザード比[aHR]=0.86、95%CI:0.83-0.90/第9十分位数:aHR=1.02、95%CI:0.96-1.08/第10十分位数:aHR=1.29、95%CI:1.22-1.37)。・低血糖の推定リスクは、NAFLD患者でより高かった(aHR=1.26、95%CI:1.22-1.30)。また、この関連性は女性(aHR=1.29、95%CI:1.23-1.36)および低体重(aHR=1.71、95%CI:1.02-2.88)でより顕著だった。 研究者らは、「2型糖尿病を有するNAFLD患者は、肥満状態とは無関係に重症低血糖の高リスクと関連していた。2型糖尿病患者の低血糖に対する脆弱性を評価する場合は、NAFLDの存在を考慮する必要がある」と結論付けた。

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第101回 COVID-19入院患者の新たな糖尿病はたいてい一過性らしい

米国のマサチューセッツ総合病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者およそ2千人(1,902人)の電子カルテ情報を遡って調べたレトロスペクティブ試験結果によると、その入院時に新たに診断された糖尿病(NDDM;newly diagnosed diabetes mellitus)はたいてい一過性らしく、退院後間もなくおよそ正常な血糖値に多くの場合回復するようです1,2)。1,902人のうち約3人に1人(594人)に糖尿病が認められ、それらのうち77人(全被験者1,902人の4%、糖尿病患者594人の13%)の糖尿病は入院前には認められなかったもの、すなわちNDDMでした。NDDMのそれら77人のうち入院中に死亡した10人と消息が絶えた3人を除く64人のその後を調べたところ約1年時点(中央値323日)で半分に近い26人(41%)の血糖値は糖尿病の水準未満(正常か前糖尿病レベル)に落ち着いていました。追跡された64人のうち39%(25/64人)はインスリン投与頼りで退院しましたが約1年後のインスリン投与患者は僅か5人(7.8%)に減っていました。それに8割方のHbA1cは7%以下になっていました(HbA1c測定患者41人中33人)。NDDMの77人の半数近い33人(43%)は入院前の記録で前糖尿病が見つかっており、そのような前糖尿病患者の高血糖は比較的軽度でした。一方、入院前に医療と縁遠かったNDDM患者はより重度の高血糖を呈しました。それら所見によると、COVID-19入院患者の新たな糖尿病は新たに発症したものか単に新たに把握されたものか多くの場合不明瞭かもしれず、新たに発症した糖尿病というより新たに診断に至った糖尿病と捉えるほうがより適切なようです。実際今回の研究ではそう位置づけられています。NDDMに至った経緯はどうあれNDDM患者は入院前からの糖尿病患者に比べてC反応性タンパク質(CRP)等の炎症マーカーの値が高く、集中治療室(ICU)をより必要としました。それらに加えてNDDM患者の血糖値は退院後に改善していることも踏まえるとNDDMの後ろ盾はどうやら炎症反応であり、インスリンを分泌するβ細胞の破壊ではなくインスリンに細胞が反応し難くなるインスリン抵抗性がCOVID-19入院に伴うNDDMの主因らしきことを物語っています。ただし、インスリン不足を意味する糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が糖尿病を新たに生じた患者と以前からの糖尿病患者の両方で多いことが複数の試験で示されており、インスリン抵抗性のみならず急なインスリン欠乏もまたNDDMの片棒を担いでいるかもしれません。今回の報告でのDKA発現率はNDDM患者では6.5%、以前からの糖尿病患者では11%であり、著者によると同等(comparable)でした。今回の報告はCOVID-19入院時のNDDMを長く追跡した研究のさきがけの一つであり、更なる試験で検証が必要です。また、COVID-19で急な高血糖が生じる仕組みを掘り下げていかねばなりません。参考1)Cromer SJ,et al. J Diabetes Complications. 2022 Feb 4:108145. [Epub ahead of print]2)Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder / Eurekalert

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3【「実践的」臨床研究入門】第17回

検索データベースの違いを知る前回は“CONNECTED PAPERS”を用いて、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)の「Key論文」1)であるコクラン・システマティック・レビュー(SR:systematic review)以降に出版された関連研究論文について概観しました。今回からは、これらの関連研究を個別に見ていきたいと思います。前回、「Key論文」1)以降に出版された、糖尿病性腎疾患患者における低たんぱく食療法の臨床効果を検証したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)を対象とした非コクランSR5編の結果を表にまとめて比較しました(連載第16回参照)。O(アウトカム)である推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化のメタ解析の結果が、個々のSR論文によって異なることに疑問を持たれた読者の方もいらっしゃると思います。これらの差異はそれぞれのSR論文の対象論文検索戦略(検索日、使用したデータベース、検索式、など)の違いに依るところが大きいと考えられます。下の表は、これら5編のSRの検索日、使用したデータベース、eGFR低下速度の変化というOのメタ解析に組み入れたRCT数、および解析対象患者数をまとめたものです。画像を拡大するISRCTNInternational Standard Randomized Controlled Trial NumberUMIN-CTRUniversity Hospital Medical Information Network-Clinical Trials RegistryCNKIChina National Knowledge Infrastructure個々の非コクランSRの“Methods”に記述されている論文検索戦略をよく読んで比較してみると、検索日はもちろん違いますが、使用したデータベースもかなり異なることがわかります。以下に、個別の論文(1次情報)(連載第3回参照)を調べるときに有用な代表的な検索データベースの違いを整理してみました。画像を拡大するMEDLINE、 EMBASEはこれまで取り上げた上記5つすべての非コクランSRで、CENTRALはひとつのSR4)以外すべてで使用されています。非コクランSR3編2-4)では米国の臨床試験登録データベースであるClinicalTrials.govも検索されています。 わが国から発信された非コクランSR3)ではClinicalTrials.govに加えて、日本の国立大学病院医療情報ネットワーク(University Hospital Medical Information Network:UMIN)が運営する臨床試験登録システムやGoogle Scholarも使用しています。一方、中国からの非コクランSR5)では、中国の電子ジャーナル検索データベース(CNKI、VIP Information、Wanfang Data)が使用されており、解析組み入れRCT数と解析対象患者数が突出して多いことが見て取れます。1)Robertson L, et al. Cochrane Database Syst Rev.2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Pan Y, et al. Am J Clin Nutr. 2008 Sep;88:660-6.3)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28;3:e002934.4)Zhu HG, et al. Lipids Health Dis. 2018 Jun 19;17:141.5)Li XF, et al. Lipids Health Dis.2019 Apr 1;18:82.6)Li Q, et al. Diabetes Ther. 2021 Jan;12:21-36.

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マルモと認知症(解説:岡村毅氏)

 医学界は常に移ろいでいる。社会は高齢化し、重視するものが根治から生活の質へと変わり、プライマリケアの存在感がじわじわと向上している。そのなかで近年注目されてきたのがマルチモビディティ(多疾患併存)である。通常は2つ以上の慢性疾患を持つことを指す。ちなみに「マルモ」などと呼ばれることもあるとかないとか。 マルチモビディティを持つ「高齢者」が認知症になりやすいという報告はある。では、若いころのマルチモビディティも認知症のリスク因子であるのでは、と考えるのは自然だ。 そうすると長い歴史のあるコホートを戦略的に持っている英国が断然有利だ。あらゆる仮説を、時代をさかのぼってある程度検証できるのだから。ジェームズ・ボンドの国だけあって情報戦に強い、ということか。 ここでマルチモビディティに使われている慢性疾患は、心筋梗塞、脳梗塞、心不全、糖尿病、高血圧、がん、腎不全、閉塞性肺疾患、肝疾患、うつ、精神疾患(うつ以外)、パーキンソン病、膠原病であり、ICD10のコードに準拠している。 さて、その結果は、若いころからマルチモビディティがあると、加齢に伴い、認知症を発症するリスクはどんどんと増えていく、というものであった(50代前半でマルチモビディティがあった人は、50代後半で初めてあった人よりリスクは高い。50代後半は60代前半よりリスクが高い…つまり若くして持っているほど危険)。 若いころからマルチモビディティがある人はヘルスリテラシーが低い可能性が高いが、学歴や健康行動で調整したモデルでも結果は同じであった。 プライマリケアの重要性を示す論文と言えよう。 以下、2点ほどコメントしよう。 第1点はポリファーマシーとの関連である。マルチモビディティを持つ人は増えているし、時代の変化を見誤って愚直に薬を出すと、ポリファーマシー(多剤併用)になる。ポリファーマシーはかかりつけ医の利益にはまったくならないのであるから、ポリファーマシーの原因は(1)あまりにも多くの疾患がありすぎる場合、(2)真面目に(愚かに?)処方し過ぎている場合、(3)患者さんが求めている場合、のどれかだろう。 ちなみに精神科病床に入院するBPSD(たとえば不穏)の著しい認知症患者さんでは、整形外科や内科など各所から鎮痛薬が大量に出ていることが多い。痛みを激しく訴える患者さんが外来に来たら鎮痛薬を出してしまうのはよくわかるし、批判するつもりはない。ただ「痛み」とは精神的なものであり、認知症のために頭がうまく回らない、体がうまく動かないといったことは変換されて「痛み」になる。 入院したら、多くの場合はほぼすべて切ってしまう。同時に内科薬も、重要な疾患のみに対してそれぞれ1剤にえいやっと整理する。するとあら不思議、患者さんの不穏は結構改善する。薬でぼんやりしていたのも一因だったのだ。私にできるのだから優秀な内科医にできないわけがない。これは入院しないと難しいのも事実で、認知症の人を入院させることは悪行のように言われるが、こういう場合もあるという例として出した。 ポリファーマシーがマスコミでこれほど有名になったのだから、次はマルモかなと、個人的には思っている。 第2点として、認知症の専門家として少し批判的にコメントしてみよう。「慢性疾患のうちどの組み合わせが高リスクなのか」というタッグマッチのような分析では、パーキンソン病が抜きんでて強い(心筋梗塞、糖尿病、高血圧、がん、うつ、精神疾患とのタッグが高リスク)。これには少し鼻白んでしまった。そもそもパーキンソン病は認知症に移行する(Parkinson's disease dementia:PDD)が、診断基準が確立したのが近年であり、古い記録では信頼性が低いのではないか。また、進行したパーキンソン病ではうつが合併するし、幻視なども出現するので精神疾患の診断もつきやすいだろう。また、パーキンソン病とされた人の中には血管性パーキンソン症候群もおそらく隠れているだろうから、心筋梗塞、糖尿病、高血圧との組み合わせは血管性認知症の高リスクの人を拾っているのではないか。一方で脳梗塞との組み合わせが関連なしになっているのも理由は明確で、G21(血管性パーキンソン)が今回の解析から外れているからだ。 要するにパーキンソン病が微小脳梗塞によるものである場合、この解析では丁度見えない位置にあることが、パーキンソン+脳梗塞が高リスクになっておらず、パーキンソン+生活習慣病(糖尿病、高血圧、心筋梗塞)が高リスクになっている原因だろう。 と、探偵みたいなコメントをしてしまったが、まあ当然著者たちも承知だろう。私も研究者なのでわかるが、昔のデータは不十分で解析が難しいこともある。有名ジャーナルであろうと、疑って読めという例として書きました。

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特発性冠動脈解離(SCAD)による急性心筋梗塞【知って得する!?医療略語】第6回

第6回 特発性冠動脈解離(SCAD)による急性心筋梗塞急性心筋梗塞の原因に動脈硬化以外の原因もあるのですか?そうなんです。「非動脈硬化性心筋梗塞」の発症原因の1つに特発性冠動脈解離(SCAD)があります。今回は近年に報告が目立つSCADを見ていきましょう。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】SCAD【日本語】特発性冠動脈解離【英字】spontaneous coronary artery dissection【分野】循環器【診療科】循環器内科・心臓血管外科・救急【関連】非動脈硬化性心筋梗塞・若年性心筋梗塞実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。若年女性の急性心筋梗塞と聞くと、筆者は冠攣縮や凝固異常の病態を連想してしまいます。しかし、近年は特発性冠動脈解離(SCAD:spontaneous coronary artery dissection)による若年女性の急性心筋梗塞の報告が目立ちます。この背景には、冠血管内超音波(IVUS:intravascular ultrasound)や光干渉断層法(OCT:Optical Coherence Tomography)の普及に伴い、冠動脈内の観察が容易になり、特発性冠動脈解離を診断しやすくなったと推測されます。特発性冠動脈解離の病因は妊娠、結合組織異常、女性ホルモン、動脈炎、冠攣縮、動脈硬化、薬物中毒、過度の運動などが指摘され、50歳未満の女性の急性心筋梗塞は、その24.2%~35%が特発性冠動脈解離であったとする報告があります。特発性冠動脈解離は通常の冠動脈造影では動脈硬化性病変との鑑別が困難で、IVUS、OCTによりはじめて特発性冠動脈解離と診断される症例もあるようです。以下のグラフは国内の年齢別急性心筋梗塞の発症人数に関するグラフです。調査期間は2020年1月~12月の1年間、448医療機関、1,153万人のデータから急性心筋梗塞患者(ICD10コード:I21)を分析しました。表)年齢別、急性心筋梗塞の発症人数[調査期間:2020年1月~12月]画像を拡大するその結果、対象期間の急性心筋梗塞は総数8万254人、そのうち女性は2万2,986人(28%)と圧倒的に男性のほうが急性心筋梗塞を発症しやすい傾向が読み取れます。今度は女性だけに注目し、急性心筋梗塞総数に対する50歳以下の発症割合をみると5.1%でした。これは女性の急性心筋梗塞発症者の20人に1人は50歳以下であるということを示しています。筆者は動脈硬化リスクのない女性の胸痛に対し、急性心筋梗塞の鑑別順位を低く見積もりがちでした。しかし、上記の結果や特発性冠動脈解離による非動脈硬化性の心筋梗塞が存在することを踏まえると、若年女性で動脈硬化リスクがない患者さんでも、胸痛を呈した場合には先入観にとらわれず、急性心筋梗塞をしっかり鑑別する必要性を感じました。1)森 隆浩ほか. 日内会誌. 2015;104:2563-2570.2)坂田 鋼治ほか. 心臓. 2015;47:85-90.3)下野 洋和ほか. 心臓. 2018;50:742-749.

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GIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatide併用で、血糖コントロール改善/JAMA

 インスリン グラルギンで血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の治療において、インスリン グラルギンにデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideを追加する治療法はプラセボの追加と比較して、40週後の血糖コントロールが統計学的に有意に改善し、用量により5~9kgの体重減少が得られたとの研究結果が、ドイツ・Gemeinschaftspraxis fur innere Medizin und DiabetologieのDominik Dahl氏らによって報告された(SURPASS-5試験)。研究の成果は、JAMA誌2022年2月8日号に掲載された。8ヵ国45施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者におけるインスリン グラルギンへのtirzepatide追加の有効性と安全性の評価を目的に、二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施し、2019年8月~2020年3月の期間に、日本を含む8ヵ国45施設で患者の登録を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病の成人患者で、一定用量のインスリン グラルギン(>20 IU/日または>0.25 IU/kg/日)±メトホルミン(≧1,500mg/日)の投与を受け、ベースラインの糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が7.0~10.5%(53~91mmol/mol)、BMIが≧23の集団であった。 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mg、プラセボを週1回、40週間皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。tirzepatideの初回投与量は2.5mg/週とされ、割り付けられた用量に達するまで4週ごとに2.5mgずつ増量された。すべての患者が、インスリン グラルギンの1日1回の投与を継続した。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから40週までの変化量とされた。HbA1c値<7%達成率8割以上、インスリン用量も少ない 475例(平均年齢[SD]60.6[9.9]歳、女性211例[44%])が無作為化の対象となり、全例が試験薬の投与を少なくとも1回受けた(tirzepatide 5mg群116例、同10mg群119例、同15mg群120例、プラセボ群120例)。全体のベースラインの平均HbA1c値(SD)は8.31(0.85)%、平均BMIは33.4、平均糖尿病罹患期間は13.3年、インスリン グラルギンの投与量中央値は30.0 IU/日で、394例(82.9%)がメトホルミンの投与を受けていた。 451例(94.9%)が試験を完遂し、424例(89.3%)が試験治療をすべて終了した。早期の投与中止は、tirzepatide 5mg群が10%、同10mg群が12%、同15mg群が18%、プラセボ群は3%で発生した。 40週時の平均HbA1c値のベースラインからの変化量は、tirzepatide 10mg群が-2.40%、同15mg群は-2.34%であり、プラセボ群の-0.86%に比べいずれの用量とも有意に低下した(プラセボ群との差 10mg群:-1.53%[97.5%信頼区間[CI]:-1.80~-1.27]、15mg群:-1.47%[-1.75~-1.20]、いずれもp<0.001)。また、5mg群の平均HbA1c値のベースラインからの変化量は-2.11%であり、プラセボ群に比し有意に改善した(群間差:-1.24%、95%CI:-1.48~-1.01、p<0.001)。 平均体重のベースラインからの変化量は、tirzepatide 5mg群が-5.4kg、同10mgが-7.5kg、同15mg群は-8.8kgであり、プラセボ群の1.6kgに比べいずれも有意に減少した(プラセボ群との差 5mg群:-7.1kg[95%CI:-8.7~-5.4]、10mg群:-9.1kg[-10.7~-7.5]、15mg群:-10.5kg[-12.1~-8.8]、すべてp<0.001)。 40週時にHbA1c値<7%を達成した患者の割合は、tirzepatide 5mg群が87.3%、同10mgが89.6%、同15mgは84.7%であり、プラセボ群の34.5%と比較していずれも有意に高かった(すべてp<0.001)。また、空腹時血糖値のベースラインからの変化量は、tirzepatide群はそれぞれ-58.2mg/dL、-64.0mg/dL、-62.6mg/dLであり、プラセボ群の-39.2mg/dLに比べいずれも有意に低下した(すべてp<0.001)。インスリン グラルギンの用量の変化量も、3つの用量のtirzepatide群で有意に低かった(5mg群:4.4 IU、10mg:2.7 IU、15mg群:-3.8 IU、プラセボ群:25.1 IU、プラセボ群との差は3つの用量群のすべてでp<0.001)。 治療下で発現した有害事象が少なくとも1件認められた患者の割合は、tirzepatide 5mg群が73.3%、同10mg群が68.1%、同15mg群が78.3%、プラセボ群は67.5%であった。 最も頻度が高かったのは消化器症状で、下痢がtirzepatide 5mg群12.1%、同10mg群12.6%、同15mg群20.8%、プラセボ群10.0%で発現し、吐き気がそれぞれ12.9%、17.6%、18.3%、2.5%でみられたが、ほとんどが軽度~中等度であった。 重篤な有害事象は、tirzepatide 5mg群7.8%、同10mg群10.9%、同15mg群7.5%、プラセボ群8.3%で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ6.0%、8.4%、10.8%、2.5%で認められた。低血糖(血糖値<54mg/dL)の発現率は、15.5%、19.3%、14.2%、12.5%であり、重症低血糖は3例(10mg群2例、15mg群1例)で報告された。 著者は、「本試験の結果は、基礎インスリンとtirzepatideの併用に関する臨床的に重要な情報をもたらし、この治療選択肢を考慮する際に、臨床医にとって有用なものとなるだろう」としている。

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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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ステロイド配合錠の減薬提案時にヒヤッとした事例【うまくいく!処方提案プラクティス】第45回

 今回は、ステロイド・抗ヒスタミン配合錠を中止する際に注意すべきポイントを紹介します。ステロイドを長期投与中に急激に減量・中止した場合、コルチゾールの需要増大により急性副腎不全に似た離脱症状(withdrawal症候群)が出現する恐れがあります。ステロイド配合錠でも同様に考える必要がありますが、減薬提案時にそれを見落としており、ヒヤッとした事例でした。患者情報69歳、男性(介護施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、うっ滞性皮膚炎服薬管理施設職員処方内容1.クエチアピン錠25mg 1錠 分1 就寝前2.チアプリド錠25mg 6錠 分3 毎食後3.クエチアピン錠12.5mg 3錠 分3 毎食後4.ルパタジン錠10mg 1錠 分1 就寝前5.ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 4錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんの2回目の訪問診療時の血液検査結果はHbA1c:7.5%で、初回介入時よりも上昇していました。医師は糖尿病の基礎疾患こそないものの、長期的なステロイド使用により血糖異常に至っていると判断しました。うっ滞性皮膚炎の掻痒感も安定していたことから、医師と相談し、ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止し、炎症や掻痒感の強い部分に関しては外用ステロイド薬の塗布で対応することになりました。薬局に戻り、同行時の記録を見直していたところ、以前書籍1)で読んだベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠(ベタメタゾン0.25mg/錠)の中止により離脱症状を来した事例を思い出し、今回の急激な中止は問題ではないかと気付きました。ベタメタゾン1mg(4錠分)=プレドニゾロン換算約6mgに相当し、数年間服用していたことから、この患者さんは副腎が萎縮(副腎機能低下)している可能性があります。もしこのまま急に中止した場合、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などのステロイド離脱症候群が生じ、患者さんの負担になる恐れがあると考えました。漸減するにしても、副腎の回復を念頭に置いて時間をかけて慎重に行う必要があるため、トレーシングレポートとしてまとめることとしました。処方提案と経過下記のトレーシングレポート内容を医師に提出し、医師が話せる時間帯に電話で指示を確認することにしました。対象薬剤ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠報告内容本剤の急激な中断で副腎不全による離脱症候群が出現し、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などの症状が生じる懸念があります。過去に別の事例で、長期的に服用していたプレドニゾロン換算5mgの中止に伴う下痢と食思不振が副腎不全の影響であったことを思い出しました。本件の現行量がプレドニゾロン換算約6mgに相当しますので、長期投与していることから副腎萎縮の可能性があります。訪問診療時にお伝えできず申し訳ございません。提案内容副腎不全の懸念から、下記(1)→(3)の段階的な減量はいかがでしょうか。(1)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 2錠 朝食後に減量。2週間様子見。(2)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 1錠 朝食後に減量。2週間様子見。(3)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 中止。その後、トレーシングレポートを確認した医師より電話があり、提案の内容で指示変更の承認を得ることができました。その後の患者さんの様子ですが、リバウンドで皮膚炎の症状が悪化することはなく、また離脱症状の出現もなく無事にベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止することができました。1)矢吹拓. 薬の上手な出し方&やめ方. 医学書院;2020.2)PfizerPRO「ステロイド・プラクティス」

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添付文書改訂:アクテムラが新型コロナ中等症II以上に適応追加/ジャディアンスに慢性心不全追加/エフィエントに脳血管障害の再発抑制追加/アジルバに小児適応追加/レルミナに子宮内膜症の疼痛改善追加【下平博士のDIノート】第92回

アクテムラ点滴静注用:新型コロナ中等症II以上に適応追加<対象薬剤>トシリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:アクテムラ点滴静注用80mg/200mg/400mg、製造販売元:中外製薬)<承認年月>2022年1月<改訂項目>[追加]効能・効果SARS-CoV-2による肺炎酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。[追加]用法・用量通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注します。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、同量を1回追加投与できます。<Shimo's eyes>本剤は、国産初の抗体医薬品として、2005年にキャッスルマン病、2008年に関節リウマチの適応を取得して、現在は世界110ヵ国以上で承認されているヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体です。今回、新型コロナによる肺炎の効能が追加されました。これまで中等症II以上の患者に適応を持つ、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用)、バリシチニブ(同:オルミエント錠)、デキサメタゾン(同:デカドロン)の3製剤に本剤が加わり、新たな治療選択肢となります。新型コロナ患者の一部では、IL-6を含む複数のサイトカインの発現亢進を特徴とする炎症状態により呼吸不全を起こすことが知られており、同剤投与による炎症抑制が期待されています。参考中外製薬 薬剤師向けサイト アクテムラ点滴静注用80mg・200mg・400mgジャディアンス:慢性心不全(HFrEF)の適応追加<対象薬剤>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)<承認年月>2021年11月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。[追加]用法・用量通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬としては、すでにダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が慢性心不全の適応を2020年11月に追加しており、本剤は2剤目の薬剤となります。2022年1月現在、添付文書には「左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者(HFrEF)に投与すること」と記載されていますが、HFpEF患者を対象とした第III相試験においても、2021年8月に良好な結果1)が報告されています。なお、本剤25mg錠には慢性心不全の適応はありません。参考エンパグリフロジンの慢性心不全への承認取得/日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー1)エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJMエフィエント:脳血管障害後の再発抑制が追加<対象薬剤>プラスグレル塩酸塩(商品名:エフィエント錠2.5mg/3.75mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化または小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)[追加]用法・用量通常、成人には、プラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する。<Shimo's eyes>『脳卒中治療ガイドライン2021』では、非心原性脳梗塞の再発抑制に対しては抗血小板薬(クロピドグレル、アスピリンまたはシロスタゾール)の投与が勧められていますが、本剤の適応は、「大血管アテローム硬化または小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後の再発抑制」に限定されました。なお、適応追加の対象は2.5mg錠および3.75mg錠のみです。今回の改訂で、空腹時は食後投与と比較してCmaxが増加するため、空腹時の投与は避けることが望ましい旨の記載が追記されました。用法に「食後投与」は明記されていないので注意しましょう。既存薬のクロピドグレルは、主にCYP2C19によって代謝されるため、遺伝子多型による影響を受けやすいことが懸念されていますが、本剤は、ヒトカルボキシルエステラーゼ、CYP3AおよびCYP2B6などで代謝されて活性体となるプロドラッグであり、遺伝子多型の影響を受けにくいとされています。参考第一三共 医療関係者向けサイト エフィエント錠アジルバ:小児適応追加、新剤型として顆粒剤が登場<対象薬剤>アジルサルタン(商品名:アジルバ顆粒1%、同錠10mg/20mg/40mg、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]用法・用量<小児>通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgを1日1回経口投与から開始します。なお、年齢、体重、症状により適宜増減が可能ですが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgです。<Shimo's eyes>アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるアジルサルタンに、小児に対する用法および用量が追加されました。また、新剤型として顆粒剤も発売されました。顆粒剤は、成人にも小児にも適応がありますが、小児の開始用量である2.5~5mgを投与する際に便利です。参考武田薬品工業 医療関係者向けサイト アジルバレルミナ:子宮内膜症に基づく疼痛改善の適応が追加<対象薬剤>レルゴリクス(商品名:レルミナ錠40mg、製造販売元:あすか製薬)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果子宮内膜症に基づく疼痛の改善<Shimo's eyes>本剤は、経口GnRHアンタゴニストであり、2019年1月に子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善で承認を取得しています。子宮筋腫に続き、子宮内膜症患者を対象とした第III相試験の結果が報告されたことから、今回新たな適応が承認されました。本剤は下垂体のGnRH受容体を阻害することにより、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害します。その結果、エストロゲンおよびプロゲステロンが抑制され、子宮内膜症の主な症状である骨盤痛を改善します。参考あすか製薬 医療関係者向け情報サイト レルミナ錠40mg

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英語で「体重が増えました」は?【1分★医療英語】第15回

第15回 英語で「体重が増えました」は?How’ve you been since the last time I saw you?(その後いかがですか?)I’ve put on loads of weight in the last few months.(この数ヵ月でだいぶ体重が増えました)《例文1》I gained some weight during lockdown.(ロックダウン中に太りました)《例文2》Changing your eating habits is the best way to lose weight.(食習慣を変えるのが、一番良い体重の減らし方です)《解説》「体重が増えた」という表現は、“put on weight”や“gain weight”、“grow heavier/fatter”などと表現されます。一方で「体重が減った」場合には、“lose weight”や“slim down”、“become thinner”などの表現があります。米国、英国では、体重や身長を“pound”、“feet”、“inch”を使って表現します。1ポンド=約0.45kg、1フィート=30.48cm、1インチ=2.54cmです。また、とくに体重を表すときに、“stone”という単位もよく使われます。“stone”は14ポンド(約6.36kg)のことで、“To lose a stone”で「6.36kg減る」という意味になります。“I’ve put on 2 stones in the last year.”(ここ1年で約13キロ増えました)という感じで使います。講師紹介

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治療抵抗性うつ病の負担と課題

 治療抵抗性うつ病は、公衆衛生上の重大な問題である。ギリシャ・Psychiatric Hospital of AtticaのCharalampos Touloumis氏は、治療抵抗性うつ病に関する現状や課題についての報告を行った。Psychiatriki誌2021年12月号の報告。 主な報告は以下のとおり。・うつ病エピソード(単極性または双極性)を有する患者の約20~40%は、抗うつ薬治療に臨床的な治療反応(症状スケール50%以上低下)を示さないと考えられる。・症状が改善した患者の約半数は、機能の悪影響や再発の可能性が高まる残存症状が認められる。・うつ病エピソードの初回治療を受けた患者の20~40%は寛解が認められる(STAR*D研究では36.8%)。・治療目標として、症状重症度70%以上の低下またはHAMDスコア7以下/MADRSスコア10以下を目指す必要がある。・うつ病患者は、寛解達成後も回復や病前の職業的および社会的状態に戻るまでには、長い期間を有することが少なくない。また、良好な状態を維持するためには、長期にわたる治療が必要となる。・治療抵抗性うつ病は、高血圧、糖尿病、心不全などの併存疾患発生率が高く、入院率が2倍、入院期間が36%延長される。・治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクは、治療反応が認められるうつ病患者と比較し、7倍であった。・治療抵抗性うつ病患者は、治療反応が認められるうつ病患者と比較し、死亡率が高く、すべての原因による死亡率は、29~35%上昇する。死亡率の高さは、13歳以上および非うつ病患者との比較でも同様であった。・治療抵抗性うつ病は、その発生率やうつ病治療において重要な問題であるにもかかわらず、専門家の考える基準は明確ではない。・治療抵抗性うつ病の最も一般的な基準は、コンプライアンスを確認したうえで、適切な用量および期間による2種類以上の異なる抗うつ薬(同クラスまたは異なるクラス)による治療に対して抵抗性を示すとされるが、有意な臨床的な結果を示すことはできない。・虚無主義を改善するための難治性うつ病、心理療法やECTなどの非薬物療法を併用する必要がある薬物治療抵抗性うつ病、複数の治療抵抗性うつ病、致死的なうつ病などを治療抵抗性うつ病として考える場合もある。・治療抵抗性うつ病に対する治療は、すべての臨床医にとって課題である。・治療抵抗性に対し不十分な治療レジメン、併存疾患(不安障害、摂食障害、パーソナリティ障害、薬物乱用や依存、PTSDなど)、治療不適合、未確認の有機的および慢性期的なストレス原因を除外した後、利用可能な治療法は、治療の最適化、注意深い経過観察、過去の治療反応、併用療法、追加療法、ECT、TMS、迷走神経刺激、光線療法、心理療法、脳神経外科的治療である。

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多疾患罹患、中年期の発症で認知症リスク増加 /BMJ

 多疾患罹患(multimorbidity)は、高年期よりも中年期の発症で認知症との関連が強く、併存する慢性疾患の数が多いほど認知症のリスクが高くなることが、フランス・パリ大学のCeline Ben Hassen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月2日号で報告された。Whitehall II研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、中年期および高年期の多疾患罹患と、認知症の新規発症との関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。 解析には、進行中のWhitehall II研究のデータが用いられた。Whitehall II研究には、ベースライン時(1985~88年)に35~55歳のロンドン市の公務員が登録され、約4~5年ごとにフォローアップの調査が行われている。 主要アウトカムは、1985~2019年におけるフォローアップ時の新規発症の認知症とされた。原因別Cox比例ハザード回帰を用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、全体、55歳、60歳、65歳、70歳の時点での多疾患罹患とその後の認知症との関連が評価された。55歳時の多疾患罹患で、認知症リスクが2.44倍に 1万95例が解析に含まれた。多疾患罹患(13の慢性疾患のうち2つ以上)の有病率は、55歳時が6.6%(655/9,937例)、70歳時は31.7%(2,464/7,783例)であった。フォローアップ期間中央値31.7年の時点で、639例(平均年齢49.9[SD 4.9]歳、男性58.5%)が新規の認知症に罹患した。 認知症罹患者で最も頻度の高い慢性疾患は高血圧症(77.9%)で、次いで冠動脈疾患(27.7%)、抑うつ(27.2%)、糖尿病(24.7%)の順であった。がんを除く12の慢性疾患は、認知症罹患と関連が認められた。 社会人口学的因子と健康行動(喫煙、身体活動、飲酒、果物/野菜摂取)で補正すると、慢性疾患がないまたは1つの集団と比較して、55歳時の多疾患罹患はその後の認知症のリスクと関連が認められた(1,000人年当たりの罹患率の差:1.56、95%信頼区間[CI]:0.62~2.77、ハザード比[HR]:2.44、95%CI:1.82~3.26)。 この関連性は、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って徐々に弱くなった。たとえば、55歳以前に多疾患罹患を発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は3.86(95%CI:1.80~6.52)であった(HR:2.46、95%CI:1.80~3.36)のに対し、60~65歳時に発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は1.85(95%CI:0.64~3.39)であった(HR:1.51、1.16~1.97)。 70歳時の多疾患罹患の状態の解析では、多疾患罹患の発症年齢が5歳若くなるごとに、認知症リスクは18%ずつ高くなった(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)。 また、55歳時に3つ以上の慢性疾患を有する多疾患罹患の場合は、1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は5.22(95%CI:1.14~11.95)であった(HR:4.96、95%CI:2.54~9.67)。一方で70歳時の同様の解析では、1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は4.49(95%CI:2.33~7.19)であり(HR:1.65、95%CI:1.25~2.18)、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って関連性が徐々に弱くなった。 著者は、「多疾患罹患は発症年齢の若年化が進んでいるため、初発の慢性疾患を有する集団における多疾患罹患の予防が重要である」としている。

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第89回 経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?

<先週の動き>1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?厚生労働省は10日、米・ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を特例承認した。日本国内では軽症者向けの経口薬としてモルヌピラビルに次ぐ2剤目となるが、作用機序は異なり、本剤は12歳以上で使用可能。臨床試験において、重症化リスクのある患者に投与した場合、非投与群に比べて入院・死亡リスクが88%減少したと報告されている。発症後5日以内の使用が推奨され、オミクロン株への効果も期待される。パキロビッドパックには5シートのPTP包装が含まれ、1シートに朝・夕服用分としてニルマトレルビル錠150mgが4錠(1回2錠)およびリトナビル錠100mgが2錠(1回1錠)で構成されている。2剤のうち、ニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬であり、HIV治療薬としても使用されるリトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示さないが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持させる。リトナビルは各薬物代謝酵素やトランスポーターの強力な阻害作用を有するため、パキロビッドパックでは降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬など38成分と食品1つ(セイヨウオトギリソウ)が併用禁忌とされる。しかし、注意すべき薬剤はこれにとどまらず、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しており、当面の参考になるだろう。なお、今月27日までは全国約2,000医療機関での院内処方を原則として提供され、その間で適正使用の推進に向けた情報収集が行われる見込み。配分を希望する対象の医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行う必要がある。(参考)新型コロナウイルス治療薬の特例承認について(厚労省)厚労省 ファイザーの経口新型コロナ治療薬パキロビッドを特例承認 段階的に医療現場に提供(ミクスonline)ファイザー新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに今年度の診療報酬改定について、処方箋を3回まで繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入が決定した。高血圧や糖尿病などの慢性疾患において、症状が安定した患者が継続服用している場合に対応して、医師の診療なしで薬の受け取りが可能となる。一方で、投与量に限度がある湿布薬や向精神薬などは対象外となる。なお、今回の改定では湿布の処方上限が70枚から63枚に引き下げられた。また、紹介状を持たずに大学病院などを受診した患者に対する特別負担徴収の拡大についても、初診の場合は現在の5,000円から7,000円に、再診の場合は2,500円から3,000円にそれぞれ引き上げる方針となった。実施は10月1日から。対象となる医療機関は、これまでと同様に大学病院などの特定機能病院に加えて、地域医療支援病院のうち200床以上の病院も徴収の対象となる。わが国は国際的に見ても外来受診回数が多いとされるが、高度医療を担う外来にかかりつけ医を持たない患者が受診するのを抑制するとともに、来年度から開始される外来機能報告制度を用いて基幹病院を明確化し、機能分化を促進するのが狙いと考えられる。(参考)リフィルは1回29日以内で処方箋料の減算なし(日経ドラッグインフォメーション)大病院、紹介状なしなら初診7000円 診療報酬改定(日経新聞)外来機能報告制度 高度な外来を担う基幹病院を明確化し機能分化を促進(Beyond Health)3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2022年度診療報酬改定の答申が行われ、焦点の1つだったオンライン診療の初診料は251点と、特例的対応の214点から対面診療の水準との中間程度まで引き上げられた。同様に、電話など情報通信機器を用いた再診料・外来診療料はいずれも73点とされた。これに伴い、現行のオンライン診療料(月1回71点)は廃止となる。通常診療の初再診料は据え置きとなった。これに対して、日本医師会の中川会長は「対面診療を提供できる体制を有すること」「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたことに言及。オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視していくとするとともに、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には、期中であっても、すみやかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。(参考)オンライン初診料、4月から値上げへ 厚労省「診療報酬」見直し案(朝日新聞)オンライン診療に係る診療報酬について(日本医師会)中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も(ミクスonline)4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁視覚障害者の就労先を保護するために、健常者向けの「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないとする厚労省の規制について、違憲性を争った訴訟の上告審の判決で、最高裁第2小法廷は7日に、視覚障害者の「自立と社会経済活動への参加を促す積極的な意義がある」として合憲であるとした。視覚障害者の団体は判決後、記者会見において「あん摩マッサージ指圧師の職は自立した社会参加の命綱。それを残すような判断が示されたことに大きな意味がある」と話した。厚労省の統計では、2020年末のあん摩マッサージ指圧師は約11万8,000人、うち視覚障害者は約2万6,000人となっている。(参考)指圧師養成、新設規制は「合憲」 最高裁初判断(日経新聞)指圧師 養成施設の設置規制 最高裁「憲法違反とはいえない」(NHK)5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ厚労省は10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、5~11歳の小児に対する新型コロナワクチン接種について議論を行い、ファイザー製ワクチンは一定の有効性が期待できるとしながらも、最終的に「努力義務」を課さない方針を正式に決めた。小児に対するファイザー製ワクチンの接種について、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではすべての小児に対して接種を推奨している。わが国では予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、小児用ワクチンは21日から各自治体に配布される。一方で、以前から努力義務の適応外とされていた妊婦への接種については、有効性や安全性のデータが確認され、妊娠後期に感染すると早産率が高くなったり、重症化リスクが高いとする報告もあることから、新たに努力義務の適用となった。(参考)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)小児は努力義務適用外 コロナワクチン、妊婦は対象に―厚労省(時事通信)5~11歳の接種「努力義務の対象外」了承 厚労省分科会(毎日新聞)

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糖尿病肥満患者に対するセマグルチド2.4mg/週の体重減少作用はリラグルチド3.0mg/日より優れている(解説:住谷哲氏)

 STEPは抗肥満薬としてのセマグルチド2.4mg/週の臨床開発プログラムである。セマグルチド1.0mg/週を対照薬としたSTEP 2を除いて、STEP 1~7はすべてプラセボ対照試験であったが、本試験STEP 8ではリラグルチド3.0mg/日がactive comparatorに設定された。試験デザインも他のSTEPと同様で観察期間は68週とされた。 結果は68週後の体重減少率はセマグルチド2.4mg/週の-15.8%に対してリラグルチド3.0mg/日では-6.4%であり、セマグルチド2.4mg/週群が有意に優れていた。一方、治療中断率はセマグルチド群13.5%に対してリラグルチド群27.6%であった。 セマグルチドとリラグルチドとの体重減少作用は、両者ともに摂取カロリーの減少によることが報告されている。しかしfood cravings(適当な訳語が見当たらないが、単なる空腹感hungerとは異なり、特定の食物に対する異常な空腹感を指す)を抑制する作用はリラグルチドよりもセマグルチドがより強力であることも知られている。本試験の結果だけを見ると、抗肥満薬としてセマグルチドではなくリラグルチドを選択する理由は見当たらないが、food cravingsがあまりない患者ではリラグルチドが有用である場合もあるかもしれない。 肥満が重大な健康問題である米国では、リラグルチド3.0mg/日およびセマグルチド2.4mg/週はそれぞれ抗肥満薬Saxenda®、Wegovy®として認可されている。英国でも近々Wegovy®が認可されるようであるが1)、英国での適応は米国よりも厳格で、BMI≧35kgm2で肥満関連健康障害を有する患者で、使用は2年以内に限定される。著明な肥満患者が増加しつつあるわが国においても、GLP-1受容体作動薬が抗肥満薬として認可されることが期待される。

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