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ガイドライン無料化を医師の3割が希望/1,000人アンケート

 診療の標準・均てん化とエビデンスに根ざした診療を普及させるために、さまざまな診療ガイドラインや診療の手引き、取り扱い規約などが作成され、日々の診療に活用されている。今春の学術集会でも新しいガイドラインの発表や改訂などが行なわれた。 実際、日常診療でガイドラインはどの程度活用され、医療者が望むガイドラインとはどのようなものなのか、今回医師会員1,000人にアンケートを行なった。 アンケートは、5月26日にCareNet.comはWEBアンケートで会員医師1,000人にその現況を調査。アンケートでは、0~19床と20床以上に分け、6つの質問に対して回答を募集した。【回答者内訳】・年代:20代(7%)、30代(17%)、40代(23%)、50代(26%)、60代(22%)、70代以上(5%)・病床数:0床(46%)、1~19床(4%)、20~99床(9%)、100~199床(3%)、200床以上(38%)・診療科[回答数の多い10診療科]:内科(247人)、外科・乳腺外科(76人)、研修医・その他(71人)、循環器内科・心臓血管外科(63人)、精神科(56人)、消化器内科(55人)、整形外科(40人)、皮膚科(39人)、小児科(37人)、糖尿病・代謝・内分泌科(32人)ガイドライン「無料化」「ダイジェスト版の作成」の声が多かった 質問1で「専門領域における日常診療でガイドラインなどを活用しているか」(単数回答)を尋ねたところ、回答者全体の集計では「部分的に活用」が51%、「大いに活用している」が40%、「あまり活用していない」が8%、「まったく活用していない」が1%の順だった。とくに19床未満と20床以上の比較では、20床以上所属の回答者の46%が「大いに活用している」に対し、19床未満では35%と医療機関の規模でガイドラインなどの活用の度合いが分かれた。 質問2で「ガイドラインなどの新規発行や改訂などの情報はどのように入手しているか」(複数回答)を尋ねたところ、全体で「所属学会の案内」が64%、「CareNet.comなどのWEB媒体」が52%、「学術集会の場」が18%の順だった。とくに規模別で「CareNet.comなどのWEB媒体」について、19床未満所属では59%であるのに対し、20床以上は45%といわゆるクリニックなどの医師会員ほどWEBなどをガイドラインの情報源にしていることがうかがわれた。 質問3で「ガイドラインなどはどの程度の領域を用意/集めているか」(単数回答)を尋ねたところ、回答者全体の集計では「自分の専門領域とその周辺領域すべて」が31%、「必要なときに入手」が27%、「自分の専門領域の一部」が20%の順だった。規模別に大きな違いはなかったが、診療で必要な都度にガイドラインを用意していることがうかがえた。 質問4で「ガイドラインなどで参考する項目について」(回答3つまで)を尋ねたところ、「治療(治療薬などの図表なども含む)」が75%、「診断(診断チャート含む)」が66%、「疾患概要(病態・疫学など)」が31%の順だった。とくに規模別でガイドラインの「クリニカルクエッション(CQ)」について全体では23%だったが、20床以上所属では27%であるのに対し、19床未満では19%と大きく差がひらいた。 質問5では「ガイドラインなどで今後改善すべきと思う点について」(複数回答)を尋ねたところ、「非学会員への配布無料化」が32%、「PDF・アプリなどへの電子化」が31%、「図表や臨床画像の多用」と「非専門医、一般向けのダイジェスト版の作成」がともに30%の順だった。とくに規模別では、「PDF・アプリなどへの電子化」について20床以上が36%と回答していたのに対し、19床未満は27%とガイドラインのデジタル化への要望につき差がでていた。 質問6では自由記載として「ガイドラインなどに関するエピソード」について尋ねたところ、ガイドラインの活用では、「診療で迷った際の指針」だけでなく、「患者への説明」や「後輩への指導の教材」などでの使用も多かった。また、ガイドラインなどの改善点として「無料化」「ダイジェスト版の作成」の声が多かった。参考診療ガイドラインを活用していますか?/会員医師1,000人アンケート

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熱中症の経験ありは35.7%、毎年経験は2.7%/アイスタット

 2022年の夏は、例年になく長く、猛暑になるとの予報がでている。そして、夏季に懸念される健康被害の代表として「熱中症」がある。厚生労働省から新型コロナウイルス感染症予防のマスクの着脱も夏を前に発表されたが、まだ時期早々という社会的な雰囲気からか浸透していない。実際、熱中症の経験や今夏のマスク着用の考え、熱中症の予防などについて、一般の人はどのよう考えているのだろうか。株式会社アイスタットは、6月13日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~69歳の有職者300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年6月13日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~69歳/全国の有職者)を対象アンケートの概要・熱中症の「経験あり」は35.7%、「経験なし」は64.3%。毎年経験は2.7%とわずか。・熱中症経験者の要因は、第1位「水分をこまめにとるのを忘れていた」の48.6%・熱中症の予防対策を行っている人は58%。熱中症の経験がある人ほど行っている。・「屋外でマスク着用を義務付けない」という新しい方針に対し、「常に着用する」が33%といまだ多い。・汗をかきやすいと回答した人の熱中症の経験有無は、大きな差がみられない。・熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の飲みものの違い、第1位「麦茶」・熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の生活習慣の違い、第1位「食欲不振が増える」・1年を通して健康障害が起りやすくなる時期は、第1位「8月」、第2位「7月」。熱中症経験者の夏季の水分補給は「麦茶」が人気 質問1で「今までに熱中症になったことがあるか」(単回答)を聞いたところ、「今までに一度もない」が64.3%、「今までに数回」が28.7%、「毎年ではないが経験したことは多い」が4.3%、「毎年、経験している」が2.7%の順だった。熱中症の経験の有無別に分類すると「経験あり」は35.7%、「経験なし」は64.3%で、3人に1人が熱中症を経験していた。また、「毎年、経験」を回答した人の属性をみると、「50代」「女性」「既婚」「関東地方」で多かった。一方、「今までに、一度もない」を回答した人の属性は、「60代」「男性」「未婚」「中国・四国・九州地方・沖縄」で多かった。 質問2で「(質問1で熱中症経験ありと回答した107名に対し)熱中症になったときの様子」(複数回答)を聞いたところ、「水分をこまめにとるのを忘れていた」が48.6%、同率で「寝不足や疲れなどで体調が悪かった」、「長時間、屋外にいた」、「真夏日・猛暑日であった」が41.1%だった。水分摂取不足だけでなく、複合的な要因で熱中症が起こることが示唆された。 質問3で「熱中症にならないように、毎年、予防対策を行っているか」(単回答)を聞いたところ、「どちらかといえば、行っている」が46.7%、「どちらかといえば、行っていない」が25.0%、「まったく行っていない」が17.0%、「常に行っている」が11.3%の順だった。熱中症の予防対策の有無別に分類すると、「行っている」は58%、「行っていない」は42%で、過半数を超える人が予防対策を行っている一方で、対策をしていない人も多く、これからの予防啓発の必要性をうかがわせる結果だった。 質問4で「夏シーズンが終わるまで、マスクの着用をどうするか」(単回答)を聞いたところ、「高温多湿の状況により、マスクの着用有無を使い分ける」が59%、「常にマスクを着用する」が33%、「常にマスクを着用しない」が8%の順だった。回答では状況を勘案して使い分ける人が多かったが、「常にマスクを着用」では、「熱中症経験なし」「20・30代」「男性」「北海道・東北地方」の回答者が多かった。その一方で「常にマスクを着用しない」では、「熱中症経験なし」「20・30代」「男性」「四国・中国・九州地方・沖縄」の回答者が多かったことから、回答に地域差がみられた。 質問5で「汗をかきやすいか」(単回答)を聞いたところ、「どちらかといえば、そう思う」が44.0%、「非常にそう思う」が28.0%、「どちらかといえば、そう思わない」が20.7%、「まったくそう思わない」が7.3%の順だった。汗のかきやすさ有無別に大きく分類すると、「そう思う」は72%、「そう思わない」は28%で回答者の約7割が「汗をかきやすい」と回答していた。 質問6で「夏の時期に毎日1回以上飲むもの」(複数回答)を聞いたところ、「水・ミネラルウォーター」が47.7%、「麦茶」、「緑茶・ウーロン茶など茶系統」が同率で35.7%だった。熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の飲みものの主な違いは何かを「ある人」を基準に調べたところ8.5ポイントで「麦茶」、8.0ポイントで「アルコール」だった。「麦茶」は熱中症予防に良いと言われており、熱中症を経験したからこそ、リスク回避(予防)のために回答数が多いものと予想された。 質問7で「夏の生活習慣で、あてはまること」(複数回答)を聞いたところ、「冷たい物や飲み物をとる機会が増える」が63.0%、「入浴はシャワーですませることが多い」が37.0%、「運動不足がちとなる」の30.3%と続いた。なお、熱中症の経験が「ある人」と「ない人」の生活習慣の主な違いは何かを「ある人」を基準に調べたところ、「食欲不振が増える」が10.9ポイント、「シャワーや入浴の温度設定は平均39℃以下」が8.7ポイント、「寝不足・睡眠不足を感じる日が増える」が8.5ポイントの差であった。 質問8で「1年を通して、気圧・気温などの理由で、健康に障害が起りやすくなることがあるか。また、起りやすい月について」(複数回答)を聞いたところ、「なし」が42.3%、「8月」が20.0%、「7月」が18.7%、「6月」が15.7%の順だった。いずれも上位の月が暑い時期に集中し、夏季に健康障害が起りやすい傾向がうかがえた。

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「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策

 日本救急医学会は熱中症予防の注意喚起を行うべく6月28日に緊急記者会見を実施した。今回、熱中症および低体温症に関する委員会の委員長を務める横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野教授)らが2020年に発刊された「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」に記された5つの提言を踏まえ、適切なエアコンの温度設定の考え方などについて情報提供した。クールビズと節電が苦しめる“エアコンの温度調節” 人間の身体が暑さに慣れるのには数日から約2週間を要する。これを暑熱順化と言うが、身体が暑さに慣れる前に猛暑日が到来すると暑熱順化できていない人々の熱中症リスクが高まる。今年は6月27日に関東甲信・東海・九州南部で梅雨明けが宣言され、しばらく猛暑日が続くと言われ、横堀氏は「身体が暑さに慣れていない今が一番危険」だと話した。 そんな日本にさらなる追い打ちをかけるのが電力不足であり、“エアコンの温度設定は〇〇℃にしないといけない”“エアコンではなく扇風機を使う”といった話題がワイドショーでもちきりだ。これに同氏は「『エアコンを28℃に設定しましょう』と言うけれど、それはクールビズの視点であり、室温を28℃設定にしても快適に過ごせるような軽装や取り組みを促すためのもの。エアコンを28℃に設定することを推奨するものではない」と指摘。また、全国の熱中症の48%が屋内で発症していること、発症者の半数以上が体温調節機能の低下している高齢者であることから、「エアコンの節電は後回しに」するよう訴えた。 また、近年では、環境省が発表している暑さ指数(WBGT)*や熱中症警戒アラート**が熱中症対策にも有用で、テレビの情報番組でも紹介されるようになっているので、「それに基づいて外出の判断をしたり、暑熱順化の期間は無理をしないように体調管理をしたりして欲しい」と話した。*暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標。日常生活に関する指針の場合、31以上は危険、28~31未満は厳重警戒で「すべての生活活動でおこる危険性」に該当。**熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症予防行動をとるよう促すための情報で、環境省と気象庁が発信。 さらに、コロナ禍ではこれまでの熱中症対策以外の問題も生じるため、2020年に「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を日本救急医学会ほか3学会合同で発表している。これには予防のための5つの提言(1:換気と室内温度、2:マスクと水分摂取、3:暑熱順化、4:熱中症弱者への対応、5:日頃の体調管理)が記載されており、同氏はこれを踏まえ「家庭用エアコンには換気機能がないものが多いため、部屋の窓を風の流れができるようにし、毎時2回以上は開放(数分程度/回)して換気を確保1)すること。ただし、頻回に窓を開けることで室温が上昇するため、すだれやレースカーテンなどで直射日光の照射を避け、部屋の温度をこまめに確認して欲しい」とコメントした。マスク着用習慣、熱中症への影響は? 厚生労働省でもマスク着脱のタイミングを公表しているが、日本では屋外でのマスク不要論がなかなか浸透しないのが現状である。しかし、マスクをしていると熱中症リスクも上がるのではという問題もある。これについてガイドライン編集委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター)は、「多数の論文をレビューして検討しているが、マスク着用により熱中症の発症が増えたという報告は現時点ではない。しかし、マスク着用が熱中症リスクになる可能性はあるため、人混みの中ではマスクを着用し、屋外で運動を行う際はマスクを外すなどのメリハリのある行動が良い」と説明した。熱中症という災害の再来か 今年5月時点ですでに全国の熱中症による救急搬送患者は前年を約1,000人も上回る2,668人に上り、東京・大阪・福岡などの都心部では前年の約2倍もの人が発症している。コロナ流行前の2018年にも同様の気候条件で、日本救急医学会が緊急宣言を発令するほどの災害レベルの酷暑が続き全国の熱中症による死者数が1,288人に上った。今夏はそれに匹敵もしくは上回る可能性も指摘されており、「医療者から患者への啓発も重要」と横堀氏らは訴える。熱中症リスクの高い熱中症弱者には高齢者はもちろんのこと、「既往歴や経済状況なども視野に入れて注意すべきなので見逃さないで欲しい」と同氏は強調した。<熱中症弱者>・既往歴:高血圧症(利尿薬を服用者[脱水を招く]、降圧薬[心機能抑制]、糖尿病[尿糖による多尿])、脳卒中後遺症を有する者、認知症患者[対応しない/できない]・日常生活にハンディキャップを有する者(活動性が低く暑熱順化が不十分)、独居・経済的弱者(エアコン設置なし、電気代の支払い、悪い住居環境、低栄養状態) 日本救急医学会では医療者向けに、判定が難しかった熱中症の重症度を正確化する重症度予測スコアを救急搬送トリアージアプリ『Join Triage』に組み込んだ熱中症応急処置・診断支援アプリを開発しHP上に公開しているほか、前述で紹介した「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」の作成や熱中症の実態調査を2005年より報告しているので、それらが診療時の一助になるのではないだろうか。

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ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第15回

第15回 ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?―Key Point―急性の単関節炎では、化膿性関節炎、結晶性関節炎(痛風/偽痛風)、関節内出血(外傷、血友病)を考える結晶性関節炎と化膿性関節炎は合併することがある関節液の白血球が5万/μL以上なら化膿性を示唆するが、それ以下でも否定はできない症例:81歳 男性主訴)左膝関節痛現病歴)2週間前に左肘関節痛あり。整形外科でシャント感染を疑われたが、治療ですぐに軽快。昨日深夜の転倒後から左膝関節腫脹を伴う関節痛あり。夕方からは発熱もあった。本日近医の検査でCRP 22だったため、救急室に紹介受診となった。既往歴)アルツハイマー型認知症、糖尿病腎症:3年前に血液透析を開始身体所見)意識清明、体温38.6℃、血圧149/61mmHg、脈拍108回/分、呼吸回数20回/分、SpO2 100%(室内気)眼瞼結膜は軽度の蒼白あり、胸腹部に異常所見なし、左膝関節に腫脹/熱感/圧痛あり経過)血液検査でWBC 12,000/μL、Hb 10.8 g/dL、Cr 6.15 mg/dL、CRP 23.9 mg/dLであった左膝関節のレントゲン写真では半月板に線状の石灰化を認めた関節穿刺を施行し、やや混濁した黄色の関節液を採取した(図1)。関節液のWBCは 9,000/μL(好中球86%)であった。白血球に貪食された菱形および長方形の結晶を認めた(図2)グラム染色および関節液培養では細菌を検出しなかった偽痛風と診断しNSAIDsにて軽快した画像を拡大する◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者における関節痛の訴えは多い化膿性関節炎を見逃すと関節の機能障害が起こる急性vs.慢性、単関節vs.多関節、炎症性vs.非炎症性を区別することで、鑑別診断を絞り込むことができる【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症か。急性は2週間以内、慢性は6週間以上の症状持続である単関節炎か多関節炎か。単関節炎は1つの関節、多関節炎は5関節以上の関節に炎症がある【STEP2-2】炎症性か非炎症性か炎症性では30分以上続く朝のこわばり(多くは1時間以上)、安静後に増悪、体を動かしていると次第に改善する関節に熱感、発赤、腫脹があれば炎症性である炎症性は血沈やCRP上昇を認める【STEP3】鑑別診断を絞り込む2)3)脊椎関節炎には反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、強直性脊椎炎、分類不能脊椎関節炎が含まれる(表1)画像を拡大する<参考文献・資料>1)MKSAP19. Rheumatology. 2022. p1-17.2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 21th edition. 2022 p2844-2880.3)山中 克郎ほか. UCSFに学ぶできる内科医への近道. 南山堂. 2012. p211-221.

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多発性骨髄腫患者におけるCOVID-19重症化のリスク因子の検討/ASCO2022

 米国立衛生研究所(NIH)のNational COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースを用いた解析により、肺疾患および腎疾患の既往、がん治療などが多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化リスクを高めることが示された。米国・Auburn大学のAmit Kumar Mitra氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 高齢者に発症頻度が高い形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫は、しばしば免疫不全を呈することから、COVID-19の重症化リスクを高める可能性がある。同研究では、NIHのNational Center for Advancing Translational Sciences(NCATS)が主導する全国一元公開データベースであるN3Cのデータセットを使用し、多発性骨髄腫患者のCOVID-19の重要化や死亡に関連するリスク因子について解析を行った。・対象:N3Cデータセットに登録された多発性骨髄腫患者26,064例の中で、COVID-19陽性が確認された8,588例・方法:多変量解析により多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化および死亡のリスク因子を検討・評価項目:COVID-19重症化、死亡に関するリスク因子 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢(中央値)は65.9歳、46.8%が女性であり、喫煙歴は25.0%にみられ、腎疾患、肺疾患、糖尿病の既往歴はそれぞれ26.7%、19.8%、27.0%であった。・対象患者の55.8%は入院または救急搬送を要し、12.2%は入院中に急性腎障害を発症、3.2%は人工呼吸器を装着した。また、COVID-19の重症度については、17.8%が軽症(うち3.7%が救急搬送)、18.3%が中等度、0.9%が重症であり、6.7%がCOVID-19により死亡した。・ロジスティック回帰分析からは、肺疾患や腎疾患の既往、多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などがCOVID-19の重症化リスクを高め、ワクチン接種が重症化リスクを低下させていた。また、糖尿病の既往や多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などが死亡リスクを高め、ワクチン接種は死亡リスクも減少させていた。なお、喫煙歴はいずれのリスクとも相関していなかった。・多発性骨髄腫の治療との関連については、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、デキサメタゾンがCOVID-19の重症化リスクを高め、プロテアソーム阻害薬は死亡のリスクも高めていた。一方で、骨髄移植はCOVID-19の重症化および死亡のリスクを低下させていた。

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筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。筋肉量は睡眠障害の自覚レベルと飲酒に有意に関連 本研究の対象は、2014年4月1日~2020年6月30日に東海大学医学部付属東京病院で抗加齢ドックを受診した成人男性160名のうち、睡眠時無呼吸症、脳血管障害、肝機能障害の治療中の5名を除いた155名。In-bodyによる筋肉量、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アディポネクチンを検査し、自記式質問票による睡眠時間(6時間未満/6時間以上)、睡眠障害の自覚レベル、喫煙習慣・飲酒習慣・運動習慣・朝食の有無、夕食開始時刻(18時以前/18~20時/20時以降)、入眠剤の服用の有無について、筋肉量との関係を相関分析および重回帰分析で検討した。さらに、60歳未満76名と60歳以上79名の2群に分け、各群において睡眠、朝食摂取、夕食時刻と筋肉量との関係を調べた。 筋肉量が睡眠などの生活習慣とどのように関連するのか調査し解析した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、入眠剤の服用、喫煙習慣を調整した場合、睡眠障害の自覚レベル(睡眠の満足感)、飲酒が筋肉量と有意に関連していた。・60歳未満では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また夕食開始時刻が遅いほど、筋肉量が有意に減少した。・60歳以上では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また朝食を毎日摂取していない場合に筋肉量が有意に減少した。 増田氏は、本研究の結果から良質な睡眠による筋肉疲労の回復を示唆する可能性、睡眠の満足感が睡眠リズムの障害を反映している可能性を考察している。睡眠リズムの障害があると成長ホルモンの分泌低下や、グリア細胞の機能低下があることが報告されているという。なお本研究の限界として、横断研究であり、対象者数が少なく、運動強度を設定していないことなどを挙げている。

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HER2陰性乳がん術後再発の2例、心機能回復困難なのはどっち?【見落とさない!がんの心毒性】第12回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》類似した患者特性と同種のがん薬物治療を受けたにも関わらず、極めて異なる心不全治療経過をたどったHER2陰性乳がん術後再発の2症例症例1年齢・性別50代・女性既往歴心疾患、糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。5年間のホルモン療法完遂後。術後9年目に多発他臓器転移、リンパ節に再発。再発乳がんに対してCEF (シクロフォスファミド[Cyclophosphamide]+エピルビシン[Epirubicin]+フルオロウラシル[Fluorouracil])を約半年間かけて計8クール実施(エピルビシン総積算量 800mg/m2)。積算アントラサイクリン量から心毒性を懸念しCEFを終了した。CEF終了時の左室駆出率 (LVEF)70%台と左室機能低下は認めず。パクリタキセル(PAC)+ベバシズマブ治療に移行した約1年半後にLVEFが低下した心不全 (HFrEF) を発症。急性期は肺うっ血を呈し、LVEF 20%台まで左室機能は低下しており各種検査からがん治療関連性心機能障害 (CTRCD)と診断した。HFrEF発症後は急性心不全治療および心保護治療を開始。その後の経過は良好で比較的速やかな経過をたどり、心不全治療開始後約1年の時点でLVEF 60%台とほぼ正常に回復を示した (症例1経過図)。心不全発症後最高BNP値:485 pg/mL、心不全発症後最高トロポニンI(TnI)値:20 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例1経過図画像を拡大する症例2年齢・性別50代・女性既往歴糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。術後ホルモン療法治療中にリンパ節および他臓器転移での再発を確認。PAC+ベバシズマブ治療を導入。治療後1年4ヵ月でPD判定、CEF治療へ移行した。CEF移行時のLVEFは 70%台と左室機能は維持されていた。CEF治療移行後の約半年後にHFrEF発症 (エピルビシン[EPI]600 mg/m2).HFrEF診断時、LVEF 20%台と左室機能は高度に低下し、BNP 664と上昇。速やかに利尿剤、心保護治療の導入と拡充を開始したがBNPは更に増悪傾向を示し、経過中は一時的にピモベンダン併用も余儀なくされた。その後、BNPおよびトロポニンは徐々に回復傾向を示したが、長期間に渡りLVEFの回復は極めて緩慢で、LVEF 20%前後が長期に渡り遷延し心不全治療導入後の約2年経過後もLVEF 42%程度の回復にとどまった(症例2経過図)。心不全発症後最高BNP値:1014 pg/mL、心不全発症後最高TnI値:96 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例2経過図画像を拡大する2症例の対比表画像を拡大する【問題】類似した患者特性を有し類似した薬物治療を受けた2症例にも関わらず、心不全治療後の心機能回復が極めて異なる転帰をたどった。その理由について、筆者が最も疑っている2つの理由はなにか?講師紹介

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事例002 リフィル処方箋に係る処方箋料の留意事項(メリット・デメリット)【斬らレセプト シーズン3】

解説2022年度改定から導入された「リフィル処方箋」とは、「医師の処方に基づいた調剤薬局の薬剤師による服薬管理の下で、最大3回まで反復使用して長期にわたる処方が可能な処方箋」のことです。この処方箋で患者にとっては、通院回数が減るというメリットがあります。実質的には長期処方ですが、1回の使用当たり29日分以内であれば、院外処方箋料の長期減算の対象外となります。患者にとって通院回数が減るということは、対面による患者の医学管理も定期的に行えなくなるデメリットが生じます。患者には、おかしいなと感じたら躊躇せずに当院を受診されるように伝えておくことが肝要です。60日分を超える長期処方の受診が多い医療機関にはメリットがありますが、毎月受診を奨励されている医療機関が導入されると診察料と指導管理料の減収にもつながります。毎月の受診をしていただくためには、医学的な管理と服薬状況の確認の必要性を患者に適切に伝え、毎月の受診が必要であることを理解していただけるように、さらなる工夫が必要となるでしょう。リフィル処方箋の最大の特徴と言えるのは、「調剤薬局の薬剤師による服薬管理」です。調剤薬局の薬剤師は、2回目以降の調剤時に患者の状態を確認して、医師の診察が必要と判断したら、患者に受診を促さなければなりません。医療機関では調剤薬局薬剤師の判断に誠実に対応しなければなりません。また、リフィル処方箋では投与できる薬剤が制限されています。療養担当規則で投薬量の限度が定められている医薬品(麻薬、向精神薬や抗不安薬など)と湿布薬です。これらの薬剤をリフィル処方箋に含めていると病院の診療報酬からの相殺が考えられます。処方箋は2枚発行する必要があります。さらに、リフィル対応薬剤であっても、投薬期間が異なる複数の薬剤を処方された場合には、期間に応じた枚数のリフィル処方箋に分ける必要があることを申し添えます。

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カナグル、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」の適応追加承認を取得/田辺三菱

 田辺三菱製薬は、6月21日、同社のSGLT2阻害薬カナグル(一般名:カナグリフロジン)が、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」の適応追加承認を取得したことを発表した。カナグルは、2型糖尿病治療薬として2014年に製造販売承認を取得し、販売を開始している。カナグルの適応追加で慢性腎臓病患者QOL向上に寄与 2型糖尿病は、慢性腎臓病の発症や進展のリスク因子であり、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者は多く存在する。病態の進行に伴い腎機能が低下し、腎不全に至った場合には透析療法への移行が必要となるが、透析療法は患者のQOLを低下させるだけでなく、医療経済的な観点からも重要な課題となっている。 同社は、「今回のカナグル錠の適応追加承認の取得は、これらの課題を解決する選択肢の1つとなり、2020年に発売した腎性貧血治療剤バフセオ錠と共に、腎臓疾患に苦しんでいる患者さんのQOL向上に寄与するものと考えている」としている。

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地域一般住民におけるフレイルな高齢者に対する多因子介入が運動機能障害を予防する(解説:石川讓治氏)

 日本老年医学会から提唱されたステートメントでは、Frailtyとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念であるとされている。わが国においてはフレイルと表現され、要介護状態や寝たきりになる前段階であるだけでなく、健康な状態に戻る可逆性を含んだ状態であると考えられている。フレイルの原因は多面的であり、運動、栄養改善、社会的なサポート、患者教育、ポリファーマシー対策といった多因子介入が必要であるとされているが、加齢という最大のフレイルのリスク要因が進行性であるため、フレイルの要介護状態への進行の抑制は困難を要する場合も多い。 SPRINTT projectは、欧州の11ヵ国16地域における1,519人の一般住民(70歳以上)を対象として、SPPBスコア3~9点、四肢骨格筋量低下、400m歩行機能などから身体的フレイルやサルコペニアと見なされた759人に対して、多因子介入(中等度の身体活動をセンターにおいて1週間に2回および家庭において週に4回、身体活動量の測定、栄養に関するカウンセリング)を行った群とコントロール群(1ヵ月に1回の健康的な老化に関する教育)を比較した。1次評価項目は運動機能低下(400mを15分未満で歩行困難)、副次評価項目は運動機能低下持続(400m歩行機能、身体機能、筋力、四肢骨格筋量の24~36ヵ月後の変化)であった。1次評価項目はSPPBスコア3~7の対象者において評価され、追跡期間中に身体機能低下は多因子介入群で46.8%、コントロール群で52.7%に発症し、多因子介入によって22%(p=0.005)の有意なリスク低下が認められた。運動機能低下持続は多因子介入群で21.0%、コントロール群で25.0%に認められ、多因子介入によって21%のリスク低下が認められる傾向があった(p=0.06)。 本研究の結果は、フレイルやサルコペニアを有する地域一般住民に対する多因子介入の有用性を示したものであり、地方自治体などが行っている“通いの場”、“集いの場”などでの運動教室や栄養教室をサポートするエビデンスになると思われる。またデイサービスなどの老人福祉施設においても、本研究の介入方法は参考になると思われる。比較的健康であると思われた地域一般住民のデータにおいても、約3年の間に対象者の約半数が運動機能低下を来しており、心不全(7.2%)、がん(13.4%)、糖尿病(22.4)など併存疾患の多いことが驚きであった。現在、病院に通院中で何らかの疾患を要するフレイル患者の場合、6ヵ月以上の慢性期リハビリ介入は、医療保険診療では困難な場合が多い。そのため、病院通院中の患者でありながら、フレイルに対する多因子介入は老人保健施設にお願いせざるを得ない状況がある。病院でフレイル患者を診療する医師としては、医療機関においても慢性期リハビリが継続できるような医療保険システムの構築を願っている。 本研究において、運動機能低下の発症がコックスハザードモデルで評価されているが、登録時はフレイルで、運動機能低下の発症後に、多因子介入で健常に戻った場合でも、運動機能低下発症ありと評価されていることに多少の違和感がある。フレイルは可逆性のある状態であるにもかかわらず、解析上はあたかもエンドポイントであるかのように評価されている。定義上、フレイルは可逆性で、要介護状態は非可逆の要素が多いとされているが、日常臨床では可逆性と非可逆の境界を見極めるのは困難な場合が多い。身体機能低下は悪化と改善を繰り返しながら、徐々に要介護状態へ進行していく。本研究の運動機能低下は、400m歩行が15分以内に困難な状態として定義されているが、これをもって運動機能低下(不可逆なポイント)と定義していいのかどうかも疑問が残った。日常臨床上における要介護状態は、介護保険制度の要介護度を用いて判断される場合が多いが、基本的ADLの低下をもって判断され、本研究の運動機能低下の判定基準とは異なることに注意が必要である。

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添付文書改訂:カナグルに2型糖尿病CKD追加/ツートラムにがん疼痛追加/コミナティ、スパイクバックスに4回目接種追加/エムガルティで在宅自己注射が可能に/不妊治療の保険適用に伴う追記【下平博士のDIノート】第100回

カナグル:2型糖尿病患者のCKD追加<対象薬剤>カナグリフロジン水和物(商品名:カナグル錠100mg、製造販売元:田辺三菱製薬)<承認年月>2022年6月<改訂項目>[追加]効能・効果2型糖尿病を合併する慢性腎臓病。ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬については近年、心血管予後・腎予後の改善効果を示した大規模臨床研究が次々と発表されています。本剤は2型糖尿病患者の慢性腎臓病(CKD)に対する適応追加で、用法・用量は既承認の「2型糖尿病」と同じとなっています。2022年6月現在、類薬で「CKD」に適応があるのはダパグリフロジン(同:フォシーガ)、「心不全」に適応があるのはダパグリフロジンおよびエンパグリフロジン(同:ジャディアンス)となっています。ツートラム:がん疼痛が追加<対象薬剤>トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ツートラム錠50mg/100mg/150mg、製造販売元:日本臓器製薬)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追加]効能・効果疼痛を伴う各種がん<Shimo's eyes>本剤は、速やかに有効成分が放出される速放部と、徐々に有効成分が放出される徐放部の2層錠にすることで、安定した血中濃度推移が得られるように設計された国内初の1日2回投与のトラマドール製剤です。今回の改訂で、がん患者の疼痛管理に本剤が使えるようになりました。本剤を定時服用していても疼痛が増強した場合や突出痛が発現した場合は、即放性のトラマドール製剤(商品名:トラマールOD錠など)をレスキュー薬として使用します。なお、レスキュー投与の1回投与量は、定時投与に用いている1日量の8~4分の1とし、総投与量は1日400mgを超えない範囲で調節します。鎮痛効果が不十分などを理由に本剤から強オピオイドへの変更を考慮する場合、オピオイドスイッチの換算比として本剤の5分の1量の経口モルヒネを初回投与量の目安として、投与量を計算することが望ましいとされています。なお、ほかのトラマドール製剤(商品名:トラマール注、トラマールOD錠、ワントラム錠)は、すでにがん疼痛に対する適応を持っています。参考日本臓器製薬 ツートラム錠 添付文書改訂のお知らせコミナティ、スパイクバックス:4回目接種が追加<対象薬剤>コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名:コミナティ筋注、製造販売元:ファイザー/商品名:スパイクバックス筋注、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追記]接種時期4回目接種については、ベネフィットとリスクを考慮したうえで、高齢者等において、本剤3回目の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を判断することができる。<Shimo's eyes>オミクロン株流行期において、ワクチン4回目接種による「感染予防」効果は短期間とはいえ、「重症化予防」効果は比較的保たれると報告されています。それを踏まえ、4回目の追加接種の対象は、60歳以上の者、18歳以上60歳未満で基礎疾患を有する者など、重症化リスクが高い方に限定されました。また、3回目以降の追加免疫の間隔はこれまで「少なくとも6ヵ月」となっていましたが、今回の改訂で「少なくとも5ヵ月」と短縮されました。追加免疫の投与量については、コミナティ筋注は初回免疫(1、2回目接種)と同じく1回0.3mL、スパイクバックス筋注の場合は、初回免疫は1回0.5mLですが、追加免疫では半量の1回0.25mLとなっています。参考ファイザー 新型コロナウイルスワクチン 医療従事者専用サイト武田薬品COVID-19ワクチン関連特設サイト<mRNAワクチン-モデルナ>エムガルティ:在宅自己注射が可能に<対象薬剤>ガルカネズマブ(遺伝子組み換え)注射液(商品名:エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追記]重要な基本的注意、副作用自己投与に関する注意<Shimo's eyes>薬価収載から1年が経過し、本剤の在宅自己注射が可能となりました。承認された経緯としては、日本頭痛学会および日本神経学会から要望書が出されていました。自己注射が可能になることで、毎月の通院が難しかったケースでも抗体医薬を用いた片頭痛予防療法を実施しやすくなることが期待されます。本剤の投与開始に当たっては、医療施設において必ず医師または医師の直接の監督の下で投与を行い、自己投与の適用についてはその妥当性を慎重に検討します。自己注射に切り替える場合は十分な教育訓練を実施した後、本剤投与によるリスクと対処法について患者が理解し、患者自らの手で確実に投与できることを確認したうえでの実施となります。参考日本イーライリリー 医療関係者向け情報サイト エムガルティフェマーラほか:不妊治療で使用される場合の保険適用<対象薬剤>レトロゾール錠(商品名:フェマーラ錠2.5mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<承認年月>2022年2月<改訂項目>[追加]効能・効果生殖補助医療における調節卵巣刺激[追加]用法・用量通常、成人にはレトロゾールとして1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与する。十分な効果が得られない場合は、次周期以降の1回投与量を5mgに増量できる。<Shimo's eyes>2022年4月から、不妊治療の経済的負担を軽減するために生殖医療ガイドライン等を踏まえて、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることになりました。アロマターゼ阻害薬である本剤は、従前の適応は閉経後乳がんでしたが、不妊治療に用いる場合、閉経前女性のエストロゲン生合成を阻害する結果、卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌が誘導され、卵巣内にアンドロゲンが蓄積し、卵巣が刺激されて卵胞発育が促進されます。ほかにも、プロゲステロン製剤(商品名:ルティナス腟錠等)は「生殖補助医療における黄体補充」、エストラジオール製剤(同:ジュリナ錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」「凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期」、さらに卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤(同:ヤーズフレックス配合錠、ルナベル配合錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」の適応がそれぞれ追加されています。バイアグラほか:男性不妊治療に保険適用<対象薬剤>シルデナフィルクエン酸塩錠(商品名:バイアグラ錠25mg/50mg、同ODフィルム25mg/50mg、製造販売元:ヴィアトリス製薬)タダラフィル錠(商品名:シアリス錠5mg/10mg/20mg、製造販売元:日本新薬)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追加]効能・効果勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持ができない患者)[追加]保険給付上の注意本製剤が「勃起不全による男性不妊」の治療目的で処方された場合にのみ、保険給付の対象とする。<Shimo's eyes>こちらも少子化社会対策として、従前の勃起不全(ED)の適応は変わりませんが、保険適用となりました。本製剤について、保険適用の対象となるのは、勃起不全による男性不妊の治療を目的として一般不妊治療におけるタイミング法で用いる場合です。参考資料 不妊治療に必要な医薬品への対応(厚労省)

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高血圧患者数約2,700万人の9割に治療薬が処方/日本高血圧学会

 日本高血圧学会、医療経済研究機構、東京大学は共同研究として、全国民のレセプトデータであるNDB(national database)の分析により、わが国の医療機関における高血圧性疾患受療者数と治療薬処方数を初めて明らかにし、その内容をHypertension Research誌オンライン版2022年6月10日号に公開した。 解析の結果、高血圧性疾患に罹患しているが実際に未受診の患者が多いこと、高血圧性疾患の受療者の多くは小規模な医療機関を受診していること、都道府県別での高血圧受療率の差などが本研究で明らかとなった。 高血圧性疾患の受療率・処方率の継続的な観察、加えて地域の特性に応じた高血圧医療の改善を進めることが、国民の循環器病予防と健康寿命延伸に不可欠であると考察している。高血圧患者数が東北地方、北関東には多い傾向【研究目的】医療機関における高血圧性疾患患者の受療者数や受療率ならびに高血圧治療薬の処方患者数や処方率の実態を明らかにすること。【方法】2014年のNBDから外来医科レセプト・調剤レセプトデータを用い、高血圧患者および高血圧治療患者の有病率などを調査した。【結果】・2014年に高血圧と判定された日本人患者の数は約2,700万人であり、そのうちの95%の診断名が「高血圧」だった。投薬を受けている高血圧患者数は受療者の89.6%に当たる約2,400万人だった。・高血圧性疾患患者の受療率(10万人当たり)は、女性で2万1,414人、男性で2万1,084人だった。高血圧治療薬の処方率(10万人当たり)は、女性で1万9,118人、男性で1万8,974人だった。・年齢階級別に比較すると年齢が高いほど高血圧患者の受療率は高く、80歳以上では人口の65.6%が受療していた。・都道府県別に高血圧患者の年齢調整受療率を比較すると、人口10万人当たり、女性では最小2万254人(京都府)/最大2万4,625人(栃木県)であり、男性では最小1万9,833人(神奈川県)/最大2万4,504人(福島県)だった。最大の府県は最小の府県の約1.2倍だった。・都道府県別に年齢調整処方率を比較すると、人口10万人当たり、女性では最小1万7,860人(京都府)/最大2万2,557人(栃木県)であり、男性では最小1万7,221人(神奈川県)/最大2万2,598人(福島県)だった。・高血圧性疾患患者の約59%が診療所(0〜19床)の小規模医療機関で受診していた。【考察】 研究グループは、今回の解析をうけ高血圧患者数約2,700万人と国民健康・栄養調査における推計有病患者約4,300万人との差、約1,600万人について未受診に患者が多いことを示唆している。また、高血圧のコントロールには小規模医療機関におけるかかりつけ医の診療が重要としている。 地域別では東北地方、北関東で高血圧受療率が高い傾向がみられ、これらの地方での高い脳卒中死亡率とも関連しているとともに、受療率の低い地域でも未受療患者が多い可能性があり、注意が必要と警鐘を鳴らしている。

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コロナワクチンの副反応疑い、長期観察での発生率は?ファイザーvs.モデルナ

 RCTではBNT162b2(ファイザー製)ワクチンおよびmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを接種した人の副反応疑い(有害事象)の発生率が低いことはわかっている。しかし、より長期フォローアップかつ大規模で多様な集団での、より広範囲の潜在的な有害事象に対する安全性は明らかになっていない。そこで、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBarbra A Dickerman氏らは、上記2剤のワクチン接種による有害事象リスクに関して直接の安全性を比較するための調査を実施。その結果、ファイザー製またはモデルナ製ワクチン1回目接種から14日以内では有害事象リスクにほとんど差がなかったものの、42日以内でわずかな差が生じることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版6月13日号掲載の報告。ファイザー製もモデルナ製も有害事象の38週間リスクは概して低かった 本研究は米国最大の統合医療システムであるアメリカ合衆国退役軍人省のデータベースを用い、2021年1月4日~9月20日の期間にファイザー製またはモデルナ製ワクチンの1回目接種を受けた退役軍人の潜在的な有害事象を評価した。その後に各ワクチン接種者を危険因子に応じて1:1でマッチングさせた。 評価に用いた大規模パネルには、神経学的イベント、血液学的イベント、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、心筋梗塞、そのほかの血栓塞栓性イベント、心筋炎または心膜炎、不整脈、腎機能障害、虫垂炎、自己免疫疾患、帯状疱疹/単純ヘルペス、関節炎/関節症、および肺炎が含まれた。1次分析では38週間リスクを、2次分析では14日間または42日間の有害事象リスクを分析した。なお、38週間リスクはカプランマイヤー推定量で推定した。 ファイザー製またはモデルナ製ワクチン接種による有害事象リスクを比較した主な結果は以下のとおり。・43万3,672例が評価の対象となり、うち男性が93%(20万908例)、黒人が20%(4万3,452例)だった。年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:60〜74歳)だった。・対象者の併存疾患で最も多かったのは高血圧症(ファイザー製群:63%[13万7,265例]、モデルナ製群:65%[14万774例])で、肥満(同:47%[10万885例]、同:47%[10万1,207例])、糖尿病(同:34%[7万2,895例]、同:37%[7万9,338例])と続いた。・過去5年間のインフルエンザワクチン接種回数は5回以上が最も多かった(ファイザー製群:37%[7万9,717例]、モデルナ製群:37%[8万792例])。・有害事象の38週間リスクは、ファイザー製またはモデルナ製のどちらを接種しても概して低かった。・1万人当たりのイベント発生のリスク差を見ると、ファイザー製群はモデルナ製群と比較し、虚血性脳卒中は10.9件(95%信頼区間[CI]:1.9~17.4件)、心筋梗塞は14.8件(同:7.9~21.8件)、そのほかの血栓塞栓イベントは11.3件(同:3.4~17.7件)、腎機能障害は17.1件(同:8.8~30.2件)と多かった。・上記に対応するリスク比(ファイザー製vs.モデルナ製)は虚血性脳卒中で1.17(同:1.03~1.28)、心筋梗塞で1.32(同:1.16~1.49)、そのほかの血栓塞栓イベントで1.20(同:1.05~1.32)、腎機能障害で1.16(同:1.08~1.29)だった。・上記の推定値は、年齢(40歳未満、40~69歳、70歳以上)と人種(黒人/白人)によるサブグループ間でもほぼ同様の値を示した。しかし、高齢者と白人では、虚血性脳卒中のリスク差は非常に大きく、高齢者間では腎機能障害が、黒人間ではほかの血栓塞栓性イベントのリスク差がより大きかった。・2つのワクチンのなかで有害事象の発生リスクにわずかな差が見られたのは1回目接種から42日間で、14日間ではほとんど違いが見られなかった。

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10~18歳2型DMにデュラグルチド週1回投与は有効か/NEJM

 10~18歳の2型糖尿病において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチドの週1回投与(0.75mgまたは1.5mg)は、メトホルミン服用や基礎インスリンの使用を問わず、26週にわたる血糖コントロールの改善においてプラセボよりも優れることが、米国・ピッツバーグ大学のSilva A. Arslanian氏らによる検討で示された。BMIへの影響は認められなかった。NEJM誌オンライン版2022年6月4日号掲載の報告。デュラグルチド0.75mg、1.5mgを週1回投与 研究グループは、10歳以上18歳未満の2型糖尿病で、BMIが85パーセンタイル超、生活習慣の改善のみ、もしくはメトホルミン治療(基礎インスリン併用または非併用)を受ける154例を対象に、26週にわたる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。 被験者を無作為に1対1対1の割合で3群に割り付け、それぞれプラセボ、デュラグルチド0.75mg、デュラグルチド1.5mgを週1回皮下注射で投与した。被験者はその後26週の非盲検の延長試験に組み込まれ、プラセボ群だった被験者に対し、デュラグルチド(0.75mg、週1回)を26週間皮下注射で投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週までの糖化ヘモグロビン値の変化だった。副次エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値7.0%未満達成、および空腹時血糖値とBMIのベースラインからの変化など。安全性についても評価が行われた。糖化ヘモグロビン値7.0%未満、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群51% 計154例が無作為化を受けた。26週時点の平均糖化ヘモグロビン値は、プラセボ群が0.6ポイント上昇したのに対し、デュラグルチド群では、0.75mg群で0.6ポイント、1.5mg群で0.9ポイント、いずれも低下した(対プラセボ群のp<0.001)。  また26週時点で、糖化ヘモグロビン値7.0%未満を達成した患者の割合は、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群では51%と有意に高率だった(p<0.001)。 空腹時血糖値も、プラセボ群で上昇(17.1mg/dL)したのに対し、デュラグルチド群では低下が認められた(-18.9mg/dL、p<0.001)。一方でBMIについては、両群間で差は認められなかった(プラセボ群0.0、デュラグルチド統合群-0.1、p=0.55)。 有害事象は、胃腸有害イベントの発生頻度が最も多く、26週にわたってデュラグルチド群でプラセボ群よりも高率に認められた。 デュラグルチドに関する安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していた。

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高齢者糖尿病患者の低血糖対策と治療/日本糖尿病学会

 5月12~14日に神戸市で「第65回 日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:小川 渉氏/神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授)が「知の輝きち技の高みへ」をテーマに開催された。 本稿では「シンポジウム 加齢を踏まえた糖尿病管理の最前線」より「高齢者糖尿病患者における低血糖の課題」(演者:松久 宗英氏/徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 教授)の概要をお届けする。高齢者は低血糖になりやすい 超高齢化が進むわが国では、高齢の糖尿病患者は適切な自己管理行動をなかなかとることができず、糖尿病治療のハードルは高い。とくにわが国では世界的にみて糖尿病関連死亡について、重症低血糖の割合が高いことが指摘されている。 過去に日本糖尿病学会の糖尿病治療による重症低血糖調査委員会が行った調査(193施設、798症例)によれば、重症低血糖の発生率は年間2万件と推計され、低血糖による死亡や重篤な合併症(認知症など)が約5%に合併することが報告されている。とくに前駆症状が6割の患者に発生しているのに低血糖が発生していることが問題となっている。 また、2型糖尿病で重症低血糖を発症した患者の臨床的特徴では、70歳以上、HbA1c7.5%を下回ることが示唆され、約6割以上の患者にインスリンが、約3割の患者にSU薬の使用が報告されている1)。 実際、リアルワールドでは、80歳以上の患者に対し約2割の患者にSU薬が使用され、リスクの高い治療がされているという報告がある。 低血糖状態になるとインスリン分泌が抑制され、アドレナリン/ノルアドレナリン分泌が亢進し、グルカゴン分泌も亢進され、高齢者では一気に自律神経症状(心悸亢進、発汗、蒼白など)、中枢神経症状(頭痛、眠気、痙攣・昏睡など)へと進展する。また、高齢者にインスリンを投与すると、低血糖応答の閾値が低下していることにより、容易に意識障害になりやすく、SU薬の服用では夜間低血糖の発生へとこれに伴う心機能の悪化も懸念されている。低血糖がもたらす併存症を悪化させるスパイラル 次に高齢者に多い認知症や心不全など併存症との関係について、糖尿病があることで低血糖などが併存症に影響を及ぼし、負のスパイラルに陥りやすく、健康寿命への影響を与えることが知られている。 海外のARIC研究などでは、ADLの悪化が高まるほど、重症低血糖の頻度が高まることが報告され、重症低血糖を起こした患者では腎機能の低下や心機能の低下も多いことが報告されている。 認知機能との関係を研究したACCORD-MINDでは、認知機能検査で指標とされるdigit symbol substituion test(DSST)が低い人ほど、重症低血糖を起こしやすいことが示唆されている。その他、重症低血糖では大腿骨骨折が増加することを示す研究もあり、加齢によるリスクの拡大が健康寿命や生命予後の短縮となることが知られている2)。低血糖対策はCGMで行い、治療ではさらなる適正化を 高齢者の低血糖対策としては、日本糖尿病学会で示している「高齢者糖尿病の血糖コントロール値(HbA1c値)」をもとに目標数値を目指し治療を行い、リスクが高い患者には持続グルコースモニタリング(CGM)を活用して治療を行うことが期待される。 CGMを利用すればTime in range(TIR)で日内・夜間の血糖動態の把握に有用であり、血糖変動を可視化して理解することができる。とくにTime below range(TBR)を可視化することで、低血糖の値や頻度を示すことは患者さんにとって日常生活で有用な指標となる。一方で、CGMの使用がインスリンやSU薬の使用を減少させるかという課題では、まだ到達できていないのが現状であり、インスリンの使用量は減少しなかったとされている。また、CGMは2022年の診療報酬改定で使いやすくなったとはいえ、アラート機能ある機器の使用には保険適応上の制約があることもあり、今後の課題である。 高齢者における糖尿病治療では、低血糖のリスク軽減、高血糖の抑制、インスリン減量、シンプル化をすることが重要である。同時に血糖自己測定(SMBG)からCGMへの変更を行い、基礎インスリンと経口血糖薬(DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬)、頻回インスリン療法を実施することで、治療の適正化を行っていきたい。

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第116回 男性の500人に1人が性染色体過剰で、より病気がち

英国の50万人ほどの匿名化情報を集めている医学データベースUK Biobankの参加男性およそ21万人を調べたところ356人がそうとはほとんどが知らずに性染色体(X染色体かY染色体)を余分に有しており、不妊などの生殖不調、2型糖尿病、動脈硬化や血栓症などをより被っていました1,2)。UK Biobankの男性が一般に比べてより高学歴で健康的というバイアスを考慮すると世間の男性では約500人に1人がXかY染色体を余分に有するようです。X染色体が1つ多い病態はクラインフェルター症候群として知られ、UK Biobankの性染色体過剰男性365人のうち213人がそうであり、残り143人はY染色体が1つ過剰でした。それらの性染色体異常が発見に至っていたのはわずかで、X染色体過剰(XXY)の診断率は4人に1人に満たない23%、Y染色体過剰(XYY)の診断率はたった1%未満(0.7%)でした。カルテ情報で行く末を調べたところXXYの男性は生殖困難をより生じており、性的成熟(思春期)の遅れが3倍、子供ができないことが4倍多く認められました。また、男性ホルモン・テストステロン血中濃度が低いことも示されました。対照的にXYY男性の生殖機能はどうやら正常です。ただしXYYの男性もXXYの男性と同様に病気がちであり、XYYかXXYだと静脈血栓症が約6倍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が約4倍、2型糖尿病・肺塞栓症(PE)・動脈硬化がいずれも約3倍多く生じていました。性染色体過剰の害は他の国でも調べられており、たとえばデンマークのXXY男性832人を検討したところ今回の試験と同様に静脈血栓症、PE、COPD、2型糖尿病、動脈硬化をより生じていました3)。英国での先立つ研究ではXXY男性の糖尿病、PE、慢性下気道疾患での死亡率がより高いことが確認されています4)。性染色体過剰でそれらの病気が生じやすくなる仕組みはよくわかっていません。また、過剰な性染色体がXであれYであれ生じやすくなる病気がなぜ似通うのかも不明です。代謝、血管、呼吸器のそれらの病気は仕組みがどうあれ性染色体過剰の診断を足がかりにして予防できる可能性があります。しかし相当数の男性が性染色体過剰であるにもかかわらず残念ながらそうと気付けることは今回の研究が示しているとおり稀です2)。男性のX染色体過剰は思春期の遅れや不妊でたまに判明しますが、ほとんどは無自覚なままです。Y染色体過剰の男性は身長がより高くなる傾向があるだけで他にこれといった身体的特徴はありません。見た目では発見しにくい染色体異常を検診で早くに検出すれば病気を未然に防ぐ手立てを講じうるようになるかもしれず、そういった可能性も含め、世間の男性の染色体異常をより手広く検出することにどれほどの価値があるかをこれから調べる必要があります。当然ながら女性にも性染色体異常はあり、X染色体が余分なトリプルX症候群は女性の1,000人に1人に認められ、言語発達の遅れや知能指数(IQ)が低い等の困難と関連しうることが示されています5)。参考1)Zhao Y,et al.Genet Med. 2022 Jun 9;S1098-3600. 00777-8. [Epub ahead of print]2)One in 500 men carry extra sex chromosome, putting them at higher risk of several common diseases / Eurekalert3)Bojesen A, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2006 Apr;91:1254-60. 4)Swerdlow AJ, et al.J Clin Endocrinol Metab. 2005; 90: 6516-6522.5)Otter M, et al. Eur J Hum Genet. 2010 Mar;18:265-71.

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肥満者への行動的体重管理介入で体重とウエスト減/BMJ

 プライマリケアにおける成人肥満者への行動的体重管理介入は、減量に有効で、ウエスト周囲長にも有意な減少効果が認められ、一般人への導入の可能性もあることが、英国・ラフバラー大学のClaire D. Madigan氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月30日号で報告された。1年の体重変化をメタ解析で評価 研究グループは、プライマリケアにおける成人肥満者への行動的体重管理介入(減量を目的とする行動的介入)の有効性の評価を目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューとメタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]レスター生物医学研究センターの助成を受けた)。 対象は、プライマリケアにおいて、年齢18歳以上でBMI≧25の集団への行動的体重管理介入を、無治療(通常ケアなど)や、同様の形式で強度だが内容の領域は異なる介入(他の行動に着目)、最小限の介入(印刷物などで通知)と比較し、12ヵ月以上の追跡期間で体重の変化を評価した無作為化対照比較試験とされた。 既報の系統的レビューに含まれた試験から本研究の適格基準に適合するものが選出され、加えて2018年1月1日~2021年8月19日の期間に医学・心理学文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、PubMed、PsychINFO)に登録された論文が新たに検索された。 2人の研究者により、別個に適格基準を満たす研究が特定され、データが抽出され、Cochrane risk of bias toolを用いてバイアスリスクの評価が行われた。メタ解析では変量効果モデルを用いて各試験のデータが統合され、体重(kg)およびウエスト周囲長(cm)の変化の平均差が算出された。 主要アウトカムはベースラインから12ヵ月の時点までの体重の変化で、副次アウトカムはベースラインから24ヵ月以上または最終追跡時までの体重の変化とされた。ウエスト周囲長の変化は、12ヵ月時に評価を行った試験のデータが使用された。介入群は3.7kg減量、ウエストが3.7cm減少 既報の2つのレビューに含まれた論文のうち22編と、新たに14編の論文が適格基準を満たし、合計36編(34試験、日本の1試験を含む)が解析の対象となった。女性限定の試験が4件あり、全体の65.9%が女性であった。ベースラインの平均BMIは35.2(SD 4.2)で、平均年齢は48(9.7)歳だった。追跡期間の範囲は12ヵ月~3年(中央値12ヵ月)。 34試験のうち27試験(参加者8,000例)が、追跡期間12ヵ月の時点で主要アウトカムであるベースラインからの体重の変化を報告し、13試験(5,011例)が追跡期間24ヵ月以上の時点での体重の変化を報告していた。12ヵ月時のウエスト周囲長の変化を報告していたのは18試験(5,288例)だった。 12ヵ月の時点での介入群と対照群の体重変化の平均差は-2.3kg(95%信頼区間[CI]:-3.0~-1.6、I2=88%、τ2=3.38、p<0.001)であり、対照群に比べ介入群で良好な体重減少が得られた。ベースラインからの平均体重変化は介入群が-3.7(SD 6.1)kg、対照群は-1.4(5.5)kgだった。 追跡期間24ヵ月以上の時点での体重変化の平均差は-1.8kg(95%CI:-2.8~-0.8、I2=88%、τ2=3.13、p<0.001)であり、介入群で有意に体重が減少していた。また、最終追跡時の体重変化の平均差は-1.9kg(-2.5~-1.3、I2=81%、τ2=2.15、p<0.001)で、ベースラインからの平均体重変化は介入群が-3.2(SD 6.4)kg、対照群は-1.2(6.0)kgであった。追跡期間24ヵ月以上と最終追跡時の体重変化のデータには差がなかった。 一方、ウエスト周囲長の平均差は、12ヵ月の時点で-2.5cm(95%CI:-3.2~-1.8、I2=69%、τ2=1.73、p<0.001)であり、介入群で減少効果が優れた。ベースラインからの周囲長の平均変化は介入群が-3.7(SD 7.8)cm、対照群は-1.3(7.3)cmであった。 著者は、「プライマリケアで行われる体重管理介入は有効であり、体重管理の支援対策の一環として一般人にも提供すべきと考えられる」とし、「今後、減量に、より効果的な介入法を特定するための研究が必要である」と指摘している。

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ヘルスケアベンチャー大賞への参加者募集【ご案内】

 日本抗加齢協会と日本抗加齢医学会は、今秋もヘルスケアベンチャー大賞を開催する。4回目を迎える同大賞は『アンチエイジングからイノベーションを!』をテーマに掲げ、アンチエイジングに資するヘルスケア分野のビジネスプランやアイデアを募集する。 新たなスタートアップを立ち上げることは並大抵のことではないが、近年、医師による起業や新規事業の立ち上げが増加しており、本大賞はそのような医師らの積極的な活動を応援するために2019年より始まった。起業準備中の個人や企業との連携を求める個人なども応募が可能で、1次書類審査にてファイナリスト8名(社)を選出し、10月の最終審査で受賞者が決定する。大賞・学会賞受賞者は賞金授与だけではなく、翌年6月に開催予定の第23回日本抗加齢医学会総会での発表機会や企業展示支援も与えられる。 開催概要は以下のとおり。[募集テーマ]アンチエイジングからイノベーションを!*アンチエイジングに資するヘルケア分野のビジネスプラン/アイデアを広く募集 生活習慣病の予防、老化による疾病予防、高齢者の自立、医療、介護、技術、 創薬、遺伝子治療、再生医療製品、食品、化粧品、AI、ヘルスケアIT、 ビッグデータ解析、ディープラーニング、ウェラブルデバイス、環境 など[募集期間] 2022年5月9日(月)~7月25日(月)[1次書類審査]2022年8月5日(金)~9月2日(金)[ファイナリスト発表]2022年9月5日(月)[最終審査会] 2022年10月21日(金)15:00〜17:00        開催形式:会場とWEBのハイブリッド[賞金]企業・団体応募 大賞:100万円 学会賞:30万円         ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞:20万円個人応募    最優秀アイデア賞:15万円 アイデア賞:10万円[副賞]ファイナリスト企業を「日本抗加齢協会認定スタートアップカンパニー」に認定/起業⽀援サービス/⼤学発新産業創出プログラム(START)への推薦 など実行委員会:日本抗加齢医学会イノベーション委員会

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薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)【知って得する!?医療略語】第13回

第13回 薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)最近、薬剤が原因のリンパ節腫脹が増えていると聞きました。そうなんです。近年、関節リウマチなどの自己免疫疾患に対する免疫抑制薬の使用に伴うリンパ増殖性疾患の報告が増えています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MTX-LPD【日本語】メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患【英字】Methotrexate-associated lymphoproliferative disorder【分野】膠原病・免疫・血液【診療科】耳鼻科・皮膚科【関連】リンパ増殖性疾患(LPD:lymphoproliferative disorder)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。内科の初診外来で鑑別に難渋しやすい症状の1つがリンパ節腫脹です。リンパ節腫脹は良性から悪性疾患まで、鑑別疾患が多く、診断に難渋することが多々あります。さらに患者本人は、悪性疾患のリンパ節転移を心配して来院することも少なくありません。そんなリンパ節腫脹の鑑別ですが、最近は薬剤によるリンパ節腫脹に留意しなけなければと感じています。その理由は、薬剤によるリンパ増殖性疾患(LPD)の存在です。関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の免疫抑制薬使用中に発生するリンパ増殖性疾患(LPD)は、WHO分類2017(第4版)において「他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患(OIIA-LPD:other iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders)」に分類されています。メトトレキサートによる免疫不全関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)もOIIA-LPDに属する病態ですが、近年はその症例報告が増えています。このため、リンパ節腫脹を訴える患者の診療では、使用薬剤の確認において、免疫抑制薬の使用有無に留意することがとても大切だと思います。この免疫抑制薬の治療に起因するリンパ増殖性疾患ですが、診療する医師が必ずしもその薬剤を処方した医師とは限りません。その理由は、医療機関の機能分化が進む中、患者が処方医とは別の医療機関を受診する可能性が多分にあるからです。また、免疫抑制薬を処方した医療機関を受診した際も、外来トリアージや総合案内で、患者を処方医の外来ではなく、初診外来等に回してしまうこともあります。さらに、リンパ増殖性疾患は、全身症状や口腔・咽頭症状、肺病変、皮膚病変を呈することが指摘されています。そのため、リンパ増殖性疾患を訴える患者が、内科だけではなくさまざまな診療科を受診する可能性があります。日常診療で免疫抑制薬を使用しない診療科の先生方も、薬剤によるリンパ増殖性疾患を認識しておくことは、とても意義があると考えます。1)得平 道英ほか. 臨床血液. 2019;60:p932-943.2)内田 雄大ほか. 臨床神経. 2018;58:p485-491.3)吉原 良祐ほか. 臨床リウマチ. 2017;29:p164-172.4)犬塚 絵里ほか. 口咽科. 2017;30:p51-59.5)西尾 綾子ほか. 耳鼻咽喉科臨床. 2011;104:p143-150.

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メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。4ヵ国の医師主導型無作為化第III相試験 MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~74歳、過去1年以内に診断されたT1~T3/N0~N3/M0(T1aN0とT1bN0を除く)の乳がんで、切除術後に標準的な術後補助療法を受けており、空腹時血糖値≦126mg/dLの患者であった。被験者は、メトホルミン(850mg、1日2回)またはプラセボを5年間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体[ER]またはプロゲステロン受容体[PgR]、あるいはこれら双方が陽性)例における無浸潤疾患生存とされた。無浸潤疾患生存は、無作為化の時点から、局所、領域、遠隔での浸潤性病変の再発、新規の原発性浸潤性病変(乳房または乳房以外)、死亡(乳がん、乳がん以外のがん、不明な原因)のうち、最も早く発現したイベントまでの期間と定義された。 また、8つの副次アウトカムのうち、3つ(全生存、遠隔無再発生存、乳がん無再発期間)の評価が行われた。中間解析で、ER/PgR陰性例での無益性を確認 3,649例(平均年齢52.4歳、女性3,643例[99.8%])が登録され、全例が解析に含まれた。2回目の中間解析で、ER/PgR陰性例における無益性が示されたため、主解析はER/PgR陽性例(2,533例)で行われた。ER/PgR陽性例の追跡期間中央値は96.2ヵ月(範囲:0.2~121)であった。 無浸潤疾患生存のイベントは、ER/PgR陽性例のうち465例で発現した。イベント発生率は、100人年当たりメトホルミン群が2.78と、プラセボ群の2.74と比較して有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.84~1.21、p=0.93)。また、死亡の発生率は、100人年当たりメトホルミン群が1.46、プラセボ群は1.32であり、全生存率にも両群間に差はなかった(1.10、0.86~1.41、p=0.47)。 一方、ER/PgR陰性例の追跡期間中央値94.1ヵ月の時点における無浸潤疾患生存イベントの発生率は、100人年当たりメトホルミン群が3.58、プラセボ群は3.60であった(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30、p=0.92)。全生存率にも差はなかった(0.89、0.64~1.23、p=0.46)。 また、ER/PgR陽性例における遠隔無再発生存率(HR:0.99、95%CI:0.80~1.23、p=0.94)、乳がん無再発期間(0.98、0.80~1.20、p=0.87)にも統計学的に有意な差はみられなかった。 なお、探索的解析では、ERBB2(以前はHER2またはHER2/neuと呼ばれた)陽性例で、無浸潤疾患生存率(HR:0.64、95%CI:0.43~0.95、p=0.03)および全生存率(0.54、0.30~0.98、p=0.04)が、メトホルミン群で有意に良好であった。 Grade3以上の非血液毒性が、メトホルミン群で高頻度に認められた(21.5% vs.17.5%、p=0.003)。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、高血圧(2.4% vs.1.9%)、月経不順(1.5% vs.1.4%)、下痢(1.9% vs.0.8%)であった。 著者は、「これらの知見を糖尿病患者へ外挿する際は、糖尿病と非糖尿病で代謝状態(たとえば、血糖コントロール、インスリン抵抗性、肥満)が異なるため注意を要する。また、メトホルミンは2型糖尿病に有効であるため、今回の結果は、乳がん患者における糖尿病治療薬としてのメトホルミンの使用には影響を与えないと考えられる」としている。

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