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バレンタインデーの前に知っておきたい「チョコレートが体に良い5つの理由」

 日本のチョコレートの年間消費量の2割程度がこの日に消費されるというバレンタインデー。近年、チョコレートが健康に良いことを裏付ける研究結果が発表されているため、バレンタインデーのこの機会に少しまとめてみた。研究者らは、チョコレートのカカオに多く含まれるフラバノールによる抗酸化、抗凝固、抗炎症作用などが心血管疾患に良い効果をもたらしているのではないかと考えているようだ。1. 毎日少量のダークチョコレート摂取で血圧が低下1) ダークチョコレートによる降圧効果が小規模な無作為化比較試験により示された(2007年JAMA誌掲載)。この試験では高血圧前症または高血圧症(第I度)44例に、ダークチョコレートを毎日6.3g(30kcal)、もしくはホワイトチョコレートを摂取させた。その結果、18週間で、ダークチョコレート摂取群の収縮期血圧が平均2.9mmHg、拡張期血圧も1.9mmHg下がった(p<0.001)。体重、血漿中の脂質、ブドウ糖、8-isoprostaneのレベルに変化はなかった。高血圧有病率は86%から68%まで減少した。一方、ホワイトチョコレート摂取群では血圧、血漿中マーカーとも変化は見られなかった。2. チョコレートの消費量が多い人ほど心血管疾患リスクが低い2) チョコレート消費量と心血管疾患リスクに関するメタアナリシスの結果が2011年のBMJ誌に発表されている。この研究では2010年10月までに発表された文献のデータベースを検索し、選択基準を満たした7試験(11万4,009人)をメタアナリシスの対象としている。この解析の結果、チョコレートの消費量が最も多い群は最も少ない群に比べて、全心血管疾患リスクが37%低下(相対リスク:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90)し、脳卒中リスクが29%低下した(同:0.71、0.52~0.98)。しかし、心不全の抑制効果はみられなかった(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.61~1.48)。3. チョコレートを多く食べる男性で脳卒中リスクが17%低下3) スウェーデンのコホート研究によると、チョコレートの消費量が多い男性では脳卒中のリスクが17%低かったという(2012年Neurology誌掲載)。この研究では男性のチョコレート消費量と脳卒中リスクについて49~75歳のスウェーデン人男性3万7,103人を約10年間追跡した。その結果、チョコレートの消費量が最も多いグループ(中央値62.9g/週)は、最も少ないグループ(中央値0g/週)と比べて脳卒中のリスクが17%低下していた。 脳卒中既往例では再発率が19%低下 上記のスウェーデンのコホート研究を含む、5件の研究より脳卒中既往例に絞り込んだメタ解析を実施したところ、チョコレートの摂取量が最も多い被験者の脳卒中リスクはまったく食べない被験者より19%低かった。この解析結果より、著者はチョコレート摂取量50g/週につき脳卒中リスクが約14%低下したと試算している。4. チョコレート摂取頻度高いほどBMI低い4) チョコレートを頻繁に摂取する人ほどBMIが低い傾向にあることが2012年のArch Intern Med誌に発表されている。研究者らは心血管疾患、糖尿病、高LDL-C血症の既往のない男女(20-85歳)を対象に、チョコレートの摂取頻度とBMIとの関連を検討。週当たりのチョコレート摂取回数とBMIなどのデータが得られた972例を解析対象とした。その結果、年齢・性調整後、チョコレート摂取頻度が高い者ほどBMIが低い傾向にあった。5. チョコレートを多く食べる男性で糖尿病リスクが35%低下5) 岐阜県高山市におけるコホート研究によると、チョコレートの摂取頻度が1週間に1回以上の男性は糖尿病発症リスクが35%低下していた(ハザード比0.65、95%信頼区間0.43~0.97)。女性では糖尿病発症リスクの有意な低下は認められなかった(同0.73、0.48~1.13)。この結果は2010年のBritish Journal of Nutrition誌に発表されている。[番外編] チョコレートをたくさん食べる国ほどノーベル賞の受賞者も多い? 米国コロンビア大学のMesserli氏は、日本を含む世界22ヵ国の国民1人当たりのチョコレート消費量と、人口1,000万人当たりのノーベル賞受賞者数の相関関係を解析し、その結果が2012年のNEJM誌に発表されている。この解析結果によると、チョコレートの消費量とノーベル賞受賞者の数の間には、有意で強力な線形相関が認められた(相関係数r=0.791、p<0.0001)。チョコレート摂取量とノーベル賞受賞者の数がいずれも最高だったのはスイス。日本はチョコレートの消費量、ノーベル賞の受賞者数のいずれも22ヵ国中、中国に続いて低かった。(Messerli FH. N Engl J Med. 2012; 367: 1562-1564.)関連記事毎日少量のチョコレート摂取で血圧が低下(ジャーナル四天王)チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに(ジャーナル四天王)脳卒中予防でチョコレート好きに朗報

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石巻地域COPDネットワーク(ICON)の取り組み

喫煙に甘い地域特性とその対策石巻はCOPD、間質性肺炎、塵肺など重症の呼吸器疾患が多い地区です。タバコの購買量も多く、全国平均の1.5倍(2006年のデータ)でした。地域産業の影響もあります。石巻は漁業の街でもありますが、同時に喫煙に甘い地域でもありました。未成年の喫煙は大きな問題で、小学生高学年から中学生の時に吸い出し、高校生で常習喫煙となっている子どもも少なくありませんでした。さらに、公共施設での喫煙対策も立ち遅れており、2006年度のデータでは施設内完全禁煙率は55.4 %(宮城県平均73.9%)でした。このような問題の重大性を鑑み、地域の基幹病院として、2007年12月に石巻市や東松島市などの関係機関へ喫煙対策推進の要望書を提出しました。マスコミも巻き込み新聞などでアピールすることで要望は実現し、2008年4月から石巻市、東松島市の市立学校の敷地内禁煙と公共施設内禁煙などが始まりました。このほか、行政とともに市民医学講座などのイベント、小中学校、高校、大学での防煙教育を行いました。とくに、学校での防煙教室は今では年間20校程度に定着し、小中学生で有意な教育効果が認められるなど、子供たちの意識も確実に変わってきたといえます。学校での防煙教室の様子COPD dayの開催取り組みの一環として、一般市民に対するCOPD啓発イベント「石巻COPD day」を、宮城県、石巻市、石巻市医師会、GOLD、世界COPD Day日本委員会の後援を得て2006年より開始しました。このイベントは、震災のあった2011年を除き、本年まで最低年1回開催しています。お祭り会場、ショッピングセンター、病院などを会場とし、多い年には800名以上の参加者があります。この活動は、疾患啓発とともにCOPDの地域疫学調査の役割を担っています。COPD dayでは、参加市民全員に、質問票によるCOPDチェック(喫煙状態、COPD症状など)、COPDの認知調査、スパイロメトリー、COPD・禁煙のミニレクチャー、COPD疑いのある方には医師による医療相談などを行っています。COPD dayの疫学調査の結果、驚きの事実が明らかになりました。まず、喫煙率は男性41%、女性17%と高いものでした。なかでも20、30、40歳代の若い女性の喫煙率はそれぞれ32%、33%、39%と非常に高く、憂慮すべき事態でした。また、COPDの罹患も多く、スパイロメトリー検査による閉塞性障害は40歳代以上で13.4%(男性20%、女性6%)ということが明らかになりました。NICE study結果では40歳以上の8.6%ですので、タバコ購買量と同様これも全国の1.5倍という高いものでした。COPDの頻度画像を拡大する喫煙状況(2006年石巻COPD Dayでの調査)画像を拡大するICON立ち上げCOPDの罹患状態をそのままにしておくと、当地域での重症COPDは確実に増えてしまうと考えられました。しかし、石巻医療圏(石巻市、東松島市、女川町)は、呼吸器科医師が少ない地域で、人口22万人に対し、呼吸器内科医は当院(石巻赤十字病院)で4名、地域全体でも7名しかいません(2007年当時)。そこで、石巻COPDネットワーク「ICON(Ishinomaki COPD Network)」を2年間の準備を経て2009年10月に立ち上げました。これは石巻とその周辺においてCOPDの患者さんを、医師、看護師、リハビリ専門職、薬剤師、栄養士などが連携して支えるシステムで、ICONに登録したCOPD患者さんは登録医療機関で共通の治療を受けることができるというものです。COPDは糖尿病と同じように患者の自己管理が必須の疾患であり、医師だけでなく多くの医療従事者で診療・ケアにあたることが必要です。また、COPDは予防、早期発見、患者発掘が必要であるため、診療所との連携は不可欠だといえます。現在、基幹病院(石巻赤十字病院)、かかりつけ医、リハビリ病院、在宅医療、訪問看護、薬剤師会などの連携を始めています。医療機関の登録は60施設、うち診療所が49施設、病院が11施設です。東日本大震災で10施設ほど減りましたが(消失2件、廃業7件、脱退1件)、その後新たに7施設がICONに参加しています。登録患者数は299名です。ICONは、医療圏をはみ出し宮城県東北部の広い地域でCOPD連携し、医療資源の少なさをカバーしています。早期から在宅酸素療法も含め最重症の患者さんまでみており、基幹病院での定期的な教育と検査、増悪時の確実な入院も実現しています。さらに、吸入指導・禁煙指導での病薬連携も行っています。石巻赤十字病院ICONの活動COPD治療は、医師だけでは困難です。そのため、医師、看護師、薬剤師、療法士、栄養士という多職種でワーキンググループを作り、定期的に集まってアクションプランの作成、連携パス、教育プログラムなどを共同で作っています。ICON参加スタッフの教育も盛んで、定期的に講師を招いて講演会を実施しています。スタッフは非常に熱心で、講演会には多職種の医療従事者が100名前後集まります。テーマは広く、COPDの疾患理解、吸入指導、リハビリ、呼吸法、在宅酸素など医師以外の医療者も役立つ内容になっています。とくに吸入指導・禁煙指導については地域の保険薬局も積極的に参加していただけるようになり、効果も上がっています。ICON地域連携パスの作成ICON活動のひとつとして「ICON地域連携パス」を作成しました。専門医、プライマリケア医に加え看護師、薬剤師、療法士も加わって作っており、リハビリ、栄養・食事指導、訪問介護など広い範囲をカバーしたパスとなっています。ICON登録診療所の医師は、COPDが疑われる患者さんがいたら、基幹病院に紹介します。基幹病院に紹介された患者さんは検査を受け、COPDと診断された方はICONに登録され、治療導入や教育を受けます。その後、診療所に戻っていただきますが、診療所はICONパスに従って安定期治療を行います。その間、重症度や症状に応じて半年から1年ごとに基幹病院にて教育、COPDの状態チェック、併存症チェックが行われます。増悪時もICONパスに従い、診療所で初期診療を行い、必要と判断されれば基幹病院に紹介されます。入院が必要な場合は、必ず基幹病院(満床の場合はICON加盟の急性期病院)に入院させることを担保しています。増悪回復後は、診療所で引き続き外来治療を行う、必要ならばリハビリ病院で通院リハも行うという流れです。震災後はとくに、訪問看護ステーション、訪問診療医との連携が重要課題となっています。仮設住宅に移った後、身体活動性が低下したり、かかりつけ医が遠くなるなどの理由で医療機関の受診が減少した患者さんが多くなりました。COPDでは活動量の低下により増悪や死亡のリスクが増大することが知られており、継続的な治療や指導は重要なのです。この連携よって、病院は外来患者が減少し、増悪の入院治療や患者教育に専念できるようになり、看護師・薬剤師などメディカルスタッフ外来もできるようになりました。診療所は安定期治療と早期発見に専念でき、要入院の増悪患者さんをスムーズに基幹病院に送れるという安心感が得られるようになりました。患者さんは病・診連携により自分の病態に沿った適切な治療が受けられることとなり、お互いにメリットが共有されました。画像を拡大するICON COPDの地域連携パスICON外来前項で述べた定期的なICON登録患者さんのCOPDとその併存症の検査、ならびに自己管理項目の評価と再教育のために、「ICON外来」を行っています。石巻赤十字病院の健診センターで、患者さんの状態に応じて半年から1年ごとに予約診療されています。ここでは、低線量CTによる肺がんのスクリーニングと肺気腫病変の進行評価、肺機能、ADL(千住式)、 QOL(CAT)、6分間歩行などのCOPD関連のチェックだけでなく、心機能、糖尿病(HbA1c)、骨密度、うつ評価(HAD) 、認知機能(MMSE)など併存症の評価も行います。また、看護師による患者さんの疾患理解度の調査(LINQ*)とそれに基づく患者教育、薬剤師による吸入指導、療法士による呼吸リハビリテーション、栄養士による栄養指導も行っています。*LINQ : Lung Information Needs QuestionnaireCOPD患者が自身で管理・治療していくために必要としている情報量を測定する自己記入式質問票。疾患、自己管理、薬、禁煙、運動、栄養の6項目について、現在どの情報が不足しているのかを確認する画像を拡大するICON外来のプログラムICON手帳患者さん向けの「ICON手帳」も作成しました。これは患者さんが症状、運動量(万歩計歩数)、アクションプランなどを毎日記載していくものです。これにより患者さんは、客観的に症状の経過や運動量を確認することができます。また、ICON登録診療所を受診した際、この手帳をかかりつけ医に見せます。かかりつけ医は手帳の内容を確認し、治療介入することとなっています。医師が内容をチェックすることで、COPDの状態把握とともに増悪リスクも早期発見できる訳です。ICON手帳常に改良を続け、近々に改訂版がでる予定これらICON活動の結果はどのようなものでしょうか。当院に入院した増悪期患者さんの治療内容や転帰をみてみると、COPDの診断確定はICON登録施設からの紹介患者さんに多く、適切な治療の実施率もICON登録施設の方が高かったという結果が出ており、ICON活動が効果を現していることがわかりました。画像を拡大する禁煙を含む適切な安定期治療COPDの連携のノウハウCOPDには、GOLDや日本呼吸器学会COPDガイドラインなどの明確な指針があります。加えて、かかりつけ医、基幹病院、リハビリ病院などさまざまなスペシャリストが関与する循環型連携ですので、連携はやりやすいといえます。また、スタッフのモチベーションが上がります。教育は看護士、吸入指導は薬剤師、リハビリは療法士というように、それぞれの役割が必須かつ重要であるため張り合いがでるようです。また、潜在患者が多く、早期発見が容易で早期治療が効果的、診療所で定期的な治療されている疾患がCOPD併存症として多く存在するなど、連携は診療所にもメリットがあります。とはいえ、連携に対していくつかのコツはあると思います。私たちもICONの立ち上げにあたっては、先行してCOPD連携で成功していた前橋赤十字病院や草加市立病院の医師、看護師から連携立ち上げや運用のコツを学び、「石巻COPD Day」の結果報告会やわが国第一人者による複数回のCOPD講演会を開催するなど石巻地域におけるCOPD診療とその連携の重要性について医師の啓発を行いました。また、世話人の選出にあたっては、専門医・非専門医に加えて、看護師、療法士、薬剤師にその間口を広げています。さらに、さまざまな施策については、プレ運用を重ね時間をかけて作っていきました。COPDの連携では、地域特性に合わせた展開が重要だと思われます。石巻は呼吸器の医療資源が少ないため全面的な連携を行っていますが、増悪にポイントを絞った前橋の連携のように、東京や仙台などの都会でもそれぞれの連携方法があると思います。さらに、メディカルスタッフの役割が大きな疾患ですので、メディカルスタッフを信頼し、頼み、任せるという姿勢が重要だと思います。今後の課題60施設登録はあるものの、施設間の温度差はあります。ICON手帳のチェックなど診療所の介入が少ない患者さんは理解度が低く、再教育が必要になることも多く、医師の介入は重要です。いかにしてお忙しい診療所の先生方に介入していただくか、講演会参加の呼びかけ、かかりつけ医での待ち時間を利用した事務員、看護師による患者指導なども検討しています。なかなか進まない早期発見の対策も必要です。スパイロメトリー検査は医師だけでなく看護師への教育が重要であることから、希望する施設にはメーカーに教育に出向いてもらうなどの介入も検討しています。また、6秒量が測れる携帯型スパイロメトリーの活用も検討しています。この機器は診療点数がとれない反面、患者さんの金銭負担がなく医師も勧めやすいので、COPDが疑われる方にベッドサイドで手軽に使える呼吸機能検査にならないかと考えています。そして、現在IPAG質問表を用いていますが、もっと簡単な質問票を検討中です。看護師の指導に診療報酬がつかなかったり、COPD連携の診療報酬のメリットが多くないなど課題も多くあります。しかし、ICONではCOPDが疑われたら間違いを恐れず送っていただくようお願いしています。COPDでなくとも、間質性肺炎など重大な疾患や心臓疾患などが見つかることもあります。これからも、COPDの早期発見、早期介入が実現するよう間口を広げていきたいと思います。6秒量が測れる簡易スパイロメトリー写真は「ハイ・チェッカー」提供:宝通商株式会社

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抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は?

 統合失調症患者の治療において、2剤以上の抗精神病薬を併用することは少なくない。しかし、多剤併用による治療は単剤治療と比較し、副作用発現率の上昇などデメリットも大きい。このデメリットには、耐糖能異常やインスリン抵抗性などの薬剤性代謝関連の副作用も多く含まれるが、その生理メカニズムは十分に解明されていない。Heidi N. Boyda氏らは、抗精神病薬の多剤併用と代謝関連副作用との関係を検討するにあたり、動物実験での結果が実臨床に結び付くかを検証した。Experimental and clinical psychopharmacology誌オンライン版2013年1月28日号の報告。 試験には、成熟した雌ラットを用いた。第1試験では、クロザピン(5㎎/kg)群、リスペリドン(1㎎/kg)群、対照群、クロザピン+リスペリドン群を比較し、第2試験では、クロザピン(5㎎/kg)群、ハロペリドール(0.1㎎/kg)群、対照群、クロザピン+ハロペリドール群を比較した。各薬剤投与後、ブドウ糖負荷試験を行った。主な結果は以下のとおり。・リスペリドン、ハロペリドール各単独投与群は、対照群と比較し、代謝指標に影響を及ぼさなかった。・クロザピン+リスペリドン群では、クロザピン単独投与群と比較し、空腹時血糖、空腹時インスリン、インスリン抵抗性が有意に増加した。・クロザピン+ハロペリドール群では、クロザピン単独投与群と比較し、空腹時インスリンレベル、インスリン抵抗性、耐糖能異常が有意に増加した。・これらの動物実験の結果は臨床研究と一致していることから、抗精神病薬の代謝系副作用の研究は動物モデルにより正常に実施可能であることが示された。・今後の研究により、抗精神病薬と生理メカニズムの関係がさらに解明されることが望まれる。関連医療ニュース ・SSRI、インスリン抵抗性から糖尿病への移行を加速! ・第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・ ・学会レポート:抗精神病薬と副作用―肥満、糖代謝異常、インスリン分泌に与える影響

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抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮

 抗うつ薬の血中濃度は種類ごとに、性および年齢の影響を有意に受けている。このことが、ドイツ・ヴュルツブルク大学病院のS. Unterecker氏らによる自然条件下にて評価した治療薬物モニタリング(TDM)の結果、明らかにされた。抗うつ薬のTDMデータの評価は多くの場合、精神疾患の既往や身体的合併症のない均一サンプルを選択して行われており、日常診療では限界を有する可能性があることから、研究グループは自然条件下にての評価を行った。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2012年12月20日号の掲載報告。 研究グループは、自然条件下にて抗うつ薬のTDMデータを評価し、すべての臨床的関連を明らかにすることを目的とした。TDM解析はレトロスペクティブの手法にて、2008~2010年の3年間を対象とし、標準的な臨床設定における抗うつ薬の用量補正後血中濃度について、性と年齢の影響を調べた。 主な結果は以下のとおり。・TDM解析に組み込まれたサンプルおよび数は下記であった。  アミトリプチリンとノルトリプチリン(AMI+NOR)693例  シタロプラム(CIT)160例  クロミプラミンとN-クロミプラミン(CLO+N-CLO)152例  ドキセピンとN-ドキセピン(DOX+N-DOX)272例  エスシタロプラム(ESC)359例  フルオキセチンとN-フルオキセチン(FLU+N-FLU)198例  マプロチリン(MAP)92例  ミルタザピン(MIR)888例  セルトラリン(SER)77例・女性では、AMI+NOR(32%)、CIT(29%)、DOX+N-DOX(29%)、MIR(20%)の用量補正後血中濃度が有意に高かった。・60歳超では、AMI+NOR(21%)、CIT(40%)、DOX+N-DOX(48%)、MAP(46%)、MIR(24%)とSER(67%)の用量補正後血中濃度が有意に高かった。・両方の極値群の比較において、女性60歳超群の用量補正後血中濃度が、男性60歳以下群と比較してAMI+NOR(52%)、CIT(78%)、DOX+N-DOX(86%)、MIR(41%)と顕著に高いことが示された。・抗うつ薬の血中濃度は種類ごとに、性および年齢の影響を有意に受けており、相加効果を考慮しなければならない。・TDMは、自然な臨床設定下でも高用量治療による副作用リスクを低下するために推奨される。関連医療ニュース ・【ポール・ヤンセン賞2012】うつ病に対するミルタザピンvs他の抗うつ薬 ・SSRI、インスリン抵抗性から糖尿病への移行を加速! ・【学会レポート】抗うつ効果の予測と最適な薬剤選択

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SSRI、インスリン抵抗性から糖尿病への移行を加速!

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の長期使用では、肥満症および糖尿病のリスク増大が知られているが、これまで、SSRIがインスリン抵抗性の直接的な誘発因子であるのかといった病態生理学的意義については、ほとんど明らかとなっていなかった。今回、イスラエル・ワイツマン科学研究所のRoi Isaac氏らによるマウス試験の結果、SSRIが膵臓のβ細胞におけるインスリン・シグナル伝達を直接的に阻害している所見が示された。著者は、「SSRIはインスリン抵抗性の状態から顕性糖尿病への移行を加速している可能性がある」と結論している。SSRIがインスリン分泌を阻害 実証試験は、マウス膵島あるいはMin6β細胞の培養株(2時間)で、SSRIがインスリン受容体基質(IRS)-2のインスリン誘発チロシン・リン酸化反応を阻害し、その下流に位置するAktおよびS6K1の活性阻害が示されるかについて検証した。SSRIは、パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリンが用いられた。 SSRIに関する実証実験の主な結果は以下のとおり。・阻害は、用量依存的(最大半減期効果:~15-20μM)であり、IRSキナーゼGSK3βの急速リン酸化および活性との相関を示した。・GSK3β-siRNAsの投与により、SSRIの阻害効果は消失した。・30μMのSSRIによるIRS-2活性の阻害は、マウスおよびヒトの膵島からのグルコース刺激インスリン分泌の顕著な阻害と関連していた。・ベーシックなインスリン分泌促進薬(KCI、Arg)は、これらの薬品による影響を受けなかった。・Min6細胞のセルトラリン長期治療(16時間)は、iNOSを誘発した。すなわち、ERストレスの活性と小胞体ストレス応答(unfolded protein response:UPR)の惹起であり、それらはATF4とCHOPの転写の亢進によって示される。これによってアポトーシスが惹起され、カスパーゼ3/7を亢進し、β細胞死に至る。・以上の所見は、SSRIは、GSK3βの活性化によりIRSの機能とインスリン活性を阻害することを意味する。さらには、SSRIが、インスリン分泌を阻害し、UPRを惹起し、アポトーシスを引き起こして、β細胞の死滅を誘発することを示唆する。・SSRIは、インスリン抵抗性を促進する一方でインスリン分泌を阻害しており、インスリン抵抗性の状態から顕性糖尿病への移行を加速している可能性がある。

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医療の価値とは何か、本当の競争とは何かを考える3時間!

11月10日(土)東京女子医科大学・河田町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第7回(後期第2回)が開催された。前半では、山本氏が邦訳を行った『医療戦略の本質』(日経BP社)を題材としてディスカッションを行い、後半ではケーススタディとして「西ドイツ頭痛センター」(『The West German Headache Center: Integrated Migraine Care』)のケースを題材にディスカッションを行った。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。医療の価値とは何か?イントロダクションとして山本氏が、『医療の本質』の内容について概要を説明した。「現在は医療サービスが分断され、医療提供者側の論理だけで行われている。競争といっても同じ設備や同じ考え方では、競争が起ることは難しい」と説明した後、再度医療保険の三面構造(患者・支払側・提供者の関係)を詳しく解説、日本の国民皆保険だけでなく、海外の医療保険制度もレクチャーした上で、次の問題提起を行った。「あなたが、医療保険会社の社長だとして、収益を増やすために何をするか?」との山本氏からの問いかけに対し、ゼミ生からは次の様な回答が寄せられた。・近い将来疾病リスクのある人の除外(保険に加入させない)・支払いの項目の適正化(一定の上限や免責疾病事項を設ける)・病院の機能分化促進(病院へのアクセスの見直し)・医療サービスの単価の見直し(検査、手術の適正化)・保険料を上げる・加入者を増やすこれらの回答を踏まえた上で医療コストパフォーマンスの点に注目し、現在、医療経営や医療経済の世界に「HEOR(医療経済評価)」などの医療のアウトカムも含めた評価の実施しようという動きがある。アメリカでいうと、「現在は患者側と支払側で医療コストの押し付け合いの状況が続いていて、本当の意味での医療の価値を向上させる競争が起っていない(経済的な競争のみ)。本当の医療の価値すなわち、『コストあたりの健康上の成果』をきちんと訴求していくことが大事と本書では述べている」と解説した。「今後は、患者、提供側、支払い側の三者が意識変革をし、本当の意味での医療の価値での競争を考え、実行していくことが大切」と山本氏が述べ前半を終了した。ドイツ型改革を学ぶ!ケーススタディとして「西ドイツ頭痛センター」(『The West German Headache Center: Integrated Migraine Care』)を題材に、主に病院(提供者)と保険(支払い側)の関係について、ディスカッションを行った。「西ドイツ頭痛センター」(以下「WGHC」と略す)は、ドイツの医療保険制度改革を受けて、慢性疾患管理サービスを目的に生まれた医療施設である。WGHCは、エッセン大学付属病院の敷地内にあり、頭痛患者が必要とするサービス全般を提供している。頭痛に関する教育、入院、診療、慢性期のフォローなどの一連の流れを医師、看護師、理学療法士が診療チームとして提供する仕組みがあり、診療を受けた患者の約9割が診療に満足を示し、診療面では成功をしている。医療経営的には、当初1社のみの健康保険会社の保険料で採算割れだったが、後に複数の健康保険会社と契約を結ぶようになり改善傾向にある。はじめに山本氏より「WGHCの良い点・悪い点は何か?」という質問から始まり,現状を把握した上で,「頭痛診療は収益を生んでいるか?」と病院のシステムや収益に関しても,深く分析していった。次にドイツの大胆な医療保険改革について、被保険者、保険者、提供者の三面構造で考察。山本氏より「なぜ保険者や提供者は、他と差別化しないと生き残れないのか?」という問題に対し、ゼミ生からは、「良い競争が生れるから」や「被保険者より低コストで、良質なケアの提供が求められるから」などの回答がなされた。ここで山本氏のミニレクチャーとなり、「保険社間で競争が起これば(いい提供者を選ぶようになる)、被保険者は安くて良質なケアができる医療機関を選ぶようになり、医療の提供側も保険会社へのアピールのために、より質の高い医療を提供するようになる」という構造を押さえておく必要があると話した。ドイツでは、被保険者が自由に保険会社を選択できるようになった。その結果、被保険者がコストの低い医療ばかりを求め、保険者が支払いに疲弊し、これが原因で医療の質が低下しないように最小限の規制として保険料率の均てん化や保険会社への徴収強化や利益の再配分などの安全装置の施策が行われていると説明した。最後に、山本氏がまとめとして糖尿病患者を例にわが国の問題点を説明。日本の民間保険会社は、「病識のない患者予備軍」を将来の支払いコスト上昇を抑えるために、保険の加入には慎重な審査を課している。今後、「こうした患者群をどのように考え、公的私的保険を問わず加入させるのか、国民健康保険との開発も急がれる」と示唆を行い、ゼミを終えた。

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ネシーナほか2剤、米国FDAより販売許可を取得

 武田薬品工業と同武田ファーマシューティカルズUSA Inc.は26日、2型糖尿病治療剤NESINA(一般名:アログリプチン)、OSENI(アログリプチンとピオグリタゾン塩酸塩の合剤)、KAZANO(アログリプチンとメトホルミン塩酸塩の合剤)について、米国食品医薬品局(FDA)から、食事療法・運動療法で効果不十分な成人2型糖尿病の治療薬として販売許可を取得したと発表した。 NESINAは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬であり、血糖調節において重要な役割を担うインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の不活化を遅延させる2型糖尿病治療薬。OSENIは、米国において初めて承認されたDPP-4阻害薬とチアゾリジン系薬剤であるピオグリタゾン塩酸塩の合剤で、KAZANOは、2型糖尿病の治療薬として広く使用されているメトホルミン塩酸塩とNESINAの合剤である。  NESINAおよびOSENIは、日本ではぞれぞれ2010年4月および2011年7月に厚生労働省から承認されており、「ネシーナ錠」および「リオベル配合錠」として販売されている。

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日本BD、独自の技術で痛みを軽減するペン型インスリン注入器用注射針を開発

 2013年1月25日(金)、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(以下、BD社)の新製品に関する記者発表会が開催された。 まず、永寿総合病院糖尿病臨床研究センター長の渥美義仁氏より、糖尿病インスリン治療における注射針開発の課題について語られた。また、BD社ダイアベティーズケア事業部長の南湖 淳氏からは、新規のペン型注入器用注射針である「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」(本年1月末頃発売)の臨床上の意義について語られた。  渥美氏は「注射針に求められることは、医師にとって治療上重要な有効性・安全性だけではない。痛みの軽減、注入のしやすさなど、患者目線での使いやすさも重要である」と強調した。注射針の問題点 インスリン注入器用注射針の問題点としては、注射時の痛み、針が細くなったことによる注入のしにくさ、折れやすさ、曲がりやすさなどが挙げられる。また、通常、インスリン製剤は針を皮膚のすぐ下の皮下組織に挿入するため、その下にある筋肉内に入らないように、軽く皮膚をつまみあげて注射する。しかし、皮膚をつまみあげられる部位は限られており、同じ部位に注射を続けると皮下組織が硬結し、薬液が血中に到達せず低血糖を起こす原因となる。医師と患者、要望のずれ BD社のWEB調査によると、患者が注射針に最も期待することは、「注射の痛みが少なくなること」であり、患者にとってインスリン治療は注射の痛みに関連するイメージが強いことがうかがえる。 しかし、医師がインスリン治療に求めることは、2011年の糖尿病治療に関するアンケート調査(BD社調べ)によると、どの治療段階においても「血糖コントロールの改善や維持」が最重要であり、患者の要望とのずれが生じている。患者目線も含めた開発 新製品「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」は、従来からの問題点、ならびに医師と患者両方の要望を取り入れて開発された。 ストレート構造にすることで針先まで内腔が確保でき、薬液がスムーズに流れるため、注入しやすくなった。Micro-Bondingコーティング技術で穿刺・挿入が滑らかになり、先端を5面カットにすることで、従来品と比べ穿刺抵抗を23%軽減することに成功した。  また、4mm針にし、皮膚をつまみあげない手技を可能にしたことで、サイトローテーション(穿刺部位の移動)の範囲が広がり、同じ部位に何度も注射をする必要がなくなった。そのため、皮膚組織の硬結を防止し、低血糖を低減することが可能となり、注射手技の指導も楽になると考えられる。痛み、使用感の評価 臨床研究において、注射時の痛みを市販されている製品Aと比較したところ、32G×4mm針の方が痛みが弱いと感じる人が有意に多かったという。また、使用感評価においても、32G×4mm針は、製品Aよりも有意差を持って優れていたとの結果が報告されている(Miwa T,et al.Diabetes Technology & Therapeutics.2012;14:1084-1090.)。まとめ 「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」は、従来からの問題点に加え、「痛みを軽減したい」という患者の要望も取り入れて開発された。本製品の登場により、インスリン治療がより手軽なものになり、良好な血糖コントロールの維持が可能となるのではないだろうか。

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糖質制限食に警鐘?-20万人以上のメタアナリシスの結果がPLoS ONE誌に発表-

 血糖を上昇させる主たる栄養素は糖質であることから、糖質制限(低炭水化物)食が流行している。これまで糖質制限食が長期予後に及ぼす影響について不明であったが、糖質制限食が死亡リスクを上昇させる危険性を示唆するメタアナリシスの結果を国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科の能登洋氏らの研究グループがPLoS ONE誌に発表した。 能登氏らは2012年9月までに発表され、その中から該当した9件をメタアナリシスの対象とした。総死亡、心血管疾患死の解析対象例はそれぞれ227,216人、249,272人。総死亡者数は15,981人であり、糖質制限食により総死亡リスクは31%有意に増加した〔調整リスク比 1.31(95%信頼区間=1.08-1.59)、P=0.007〕心血管疾患死亡者数は3,214人であり、糖質制限群で10%増加したが、統計的有意差は認められなかった〔調整リスク比 1.10(95%信頼区間=0.98-1.24)、P=0.12〕。 世間では「糖質制限食」「糖質オフダイエット」など流行になっているが、本研究は長期的な視点で考えた場合、安易な糖質制限は死亡リスクを高める可能性があるという警鐘を鳴らしている。まずは患者さんの食事内容を把握することが肝要だ。 原著論文は下記よりPDFファイルでダウンロードできる。Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studieshttp://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0055030 論文が掲載される前に著者の能登氏に取材しているので、下記も合わせてご覧頂きたい。[関連コンテンツ]今、話題の糖質制限食は寿命を延ばすことができるのか?http://www.carenet.com/news/prognosis/carenet/33045

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双極性障害患者の長期健康状態の独立予測因子は肥満!

 双極性障害において、肥満が内科的、精神科的負担を増大させるというエビデンスが横断的研究で多く示されている。しかし、双極性障害と肥満の関係を検証する縦断的研究はほとんど行われていなかった。カナダ・トロント大学のBenjamin I Goldstein氏らは、肥満と双極性障害との関連を3年間にわたり検討した。その結果、肥満は双極性障害患者の長期的な健康状態を予測する独立した因子であり、肥満の治療は双極性障害患者の内科的、精神科的負担の軽減につながる可能性が示唆されたことを報告した。Bipolar Disorders誌オンライン版2013年1月3日号の掲載報告。 研究は、アルコールおよび関連障害全国疫学調査(National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions)の第1期および第2期の調査を完了した双極性障害患者1,600例を対象に、3年間にわたる肥満と双極性障害との関連を調べた。第1期の調査データを基に双極性障害と肥満との関連を検討したほか、第1期と第2期の間における双極性障害、精神科合併症、内科合併症の経過を検討した。 主な結果は以下のとおり。・肥満のある双極性障害患者(506例、29.43%)は、肥満のない双極性障害患者(1,094例、70.57%)と比べ、1)大うつ病エピソードの発現、2)うつ病に対するカウンセリング、3)自殺企図の報告、が有意に多かった。・肥満のある双極性障害患者は肥満のない双極性障害患者と比べ、アルコール使用障害の新規発症が有意に少なかった。・ベースラインの患者特性で調整した後、肥満の有無によるこれらの差は有意でなくなった。・新たなエピソードの発症、躁病/軽躁病の治療において有意な差はみられなかった。・患者特性で調整した後でも、内科合併症の新規発症[オッズ比(OR):2.32、95%信頼区間(CI):1.63~3.30]、高血圧の新規発症(OR:1.81、95%CI:1.16~2.82)、関節炎の発症(OR:1.64、95%CI:1.07~2.52)に関しては、肥満患者で有意に多かった。・肥満患者では、糖尿病(OR:6.98、95%CI:4.27~11.40)、脂質異常症(同:2.32、1.63~3.30)(第2期のみにおいて評価)と診断・報告された者が有意に多かった。・統計学的に有意ではなかったが、肥満患者では心臓発作の発生頻度が2倍であった。・肥満と将来的なうつ増加との関連は、ベースラインの患者特性に左右されると考えられた。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か? ・第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(47)〕 FREEDOM試験がもたらした「開放」とは?

複雑な冠動脈疾患患者にバイパス(CABG)か?PCIか?という問題は90年代のBARI試験から最近のSYNTAX試験まで、いろいろな側面から検討がなされ、さながら不整脈のreentry回路のように外科医と内科医の頭を悩ませてきた。だが、このFREEDOM試験はその回路(circuit)に楔を打ち込んだ研究といえるのではないか。【これまでに行われてきた研究との比較】糖尿病患者の再灌流療法に関しては、10年ほど前にBARI試験で単純なバルーン拡張術(Plain Old Balloon Angioplasty; POBA)が初めてCABGと比較された。さらに、5年ほど前にBARI-2D試験で非薬剤性のステント(Bare Metal Stent; BMS)がCABGと比較されている。周知のとおり、いずれの試験でも長期的にはCABGが予後改善効果に優れたという結果が得られている。FREEDOMは、PCIが薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent; DES)の時代を迎え、三度その長期的な予後の比較が糖尿病患者で行われたものであるが、端的に言うとこれまでの結果を覆すものではない。これは、POBAからBMS、そしてDESに至るまで、いずれも再狭窄の抑制のためのデバイスの進歩であり、明確なイベントの抑制(急性心筋梗塞や心臓突然死)がもたらされていないことを踏まえると、驚くにはあたらない。【SYNTAXによるスコア化について】また、糖尿病患者限定ではなかったが、最近行われたSYNTAX試験サブ解析の結果、リスク層別の有力なツールとしてSYNTAX スコアが提唱されている。三枝病変もしくは左主幹部病変患者で、その病変複雑性がSYNTAXスコアにして0~22の間であればおそらくはPCIとCABGは同程度に有効であり、22以上であれば、その点数の上昇にしたがって、CABGのほうがPCIよりも予後改善に有用となる。FREEDOMの平均のSYNTAX スコアは26であり、病変の複雑性というところからもCABGが有利な患者群を扱っている。しかも、標準偏差は8と枠は狭い。したがってFREEDOMでは、このSYNTAXスコア26±8というCABGに有利な枠内で、やはり予想通りの結果が得られたということになる。しかし、このように予想通りの結果であったからといってFREEDOMの価値が減じられるわけではない。BARIやSYNTAXとはまったく別のグループが組んだ臨床試験でその結果が検証された意義は大きい。しかも、個々の患者にとって大きな価値を持つ「長期的予後」という観点から、である。このことだけでも、やはりFREEDOMの結果は特筆に値する。言うまでもなく、糖尿病患者、あるいはそれに類する複雑な患者へのアプローチで推奨されているのは、外科医と内科医を含めたHeart Teamによる総合的な検討である。わが国でこの試験の結果を適用するためには注意点がいくつか存在するが(文末の三点)、FREEDOMは間違いなく患者サイドへのインフォームドコンセントに有用であり、医療者側からより強く自信をもった提言を行うことを可能とした。現場でこの試験の結果を公平な判断へとつなげて初めて、「無知から開放(FREEEDOM from ignorance)」は達成される。FREEDOM試験の注意点1.わが国の糖尿病患者の予後は、おそらくは欧米のそれよりも良好である可能性があり(Kohsaka S,et al.Diabetes Care. 2012 ;35:654-659.)、CABGによる予後改善効果が「薄まる」可能性も捨てきれない。2.さらにこの試験は二度にわたりプロトコールの変更を行い、かなり患者の登録に難渋した形跡がみられる。その影響か、最後まで(7年間)追跡することができた症例は200例強にすぎない。今後、他のデータで長期的な検証が必要である。3.さらに、MIとStrokeのイベントの「重さ」がこの試験では同等に扱われているが、これは現実のケースでは必ずしもイーブンではない。心筋梗塞エンドポイント定義(30日以内)myocardial infarction was defined as the presence of new Q waves in 2 or more contiguous leads on electrocardiography, as compared with baseline.脳梗塞エンドポイント定義Stroke was defined as the presence of at least one of the following factors: a focal neurologic deficit of central origin lasting more than 72 hours or lasting more than 24 hours with imaging evidence of cerebral infarction or intracerebral hemorrhage.(執筆協力:循環器内科CRC 植田育子)

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今、話題の糖質制限食は寿命を延ばすことができるのか?

 糖尿病の食事療法は、カロリー制限が標準的な治療として実践されている。しかし、継続できない患者が少なからずいることも事実だ。そこで、カロリー摂取量は無制限にして、糖質(炭水化物)だけを制限する『糖質制限食』が提唱され、昨今わが国でも話題となっている。糖質制限食は、短期的(数週間~数年間)な減量や動脈硬化リスクファクター改善に有効であることが臨床的に示されているが、長期的なアウトカムや安全性についてはこれまで明らかではなかった。 今回、国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝・内分泌科の能登洋氏らは、糖質制限食による死亡・心血管疾患イベントのメタアナリシスを行った。この結果が第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表される事前に、ケアネットでは単独インタビューを実施した。糖質制限食により総死亡リスクが有意に増加する 能登氏はMedline、EMBASE、ISI Web of Science、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、医中誌を用いて2012年9月12日までの検索を行い、その該当文献中の引用文献から適切な研究を選択し、システマティックレビューを実施した。その結果、492報が該当し、メタアナリシスに9報を精選した。 総死亡については4つのコホート研究(6サブグループ)が解析対象となった(追跡期間5~26年)。227,216人(女性66%)のうち、総死亡者数は15,981人であり、糖質制限食の遵守は、総死亡に対する有意なリスクファクターであった〔調整リスク比 1.31(95%信頼区間:1.08~1.59)、p=0.007〕。 また、心血管疾患死については3つのコホート研究(5サブグループ)が解析対象となった(追跡期間10~26年間)。249,272人(女性67%)のうち、心血管疾患死亡者数は3,214人であり、心血管疾患死に対して、糖質制限食遵守は有意なリスクファクターとして認められなかった〔調整リスク比 1.10(95%信頼区間:0.98~1.24)、p=0.12〕。同様に、心血管疾患発症に対しても有意なリスクファクターではなかった〔調整リスク比 0.98(95%信頼区間:0.78~1.24)、p=0.87〕。 能登氏らの研究結果は、糖尿病患者への影響は不明であるものの、糖質制限食の長期的な有用性は認められず、むしろ死亡リスクが有意に増加することを示唆した。米国糖尿病協会(ADA)のガイドラインにおいては「糖質制限食、低脂肪食、カロリー制限食、地中海食は短期間(2年まで)の減量には有効」と記述されており、能登氏は「短期間(2年まで)」と表記されていることが重要だと述べる。これは最近発表された2013年版においても変わっていない。すなわち、継続性や減量効果の持続性や長期アウトカムについては不明であったからだ。したがって、患者さんには「糖質制限食は短期的な(2年まで)減量効果や動脈硬化リスクファクターの改善効果があるものの、続けやすい食事療法ではなく、長期的には体重も戻りやすく生命の危険性の可能性もある」ことを伝えることが大事だとし、薬物治療を実施している糖尿病患者さんでは低血糖を回避するためにも、糖質制限食だけでなく、どのような食生活をしているかについて尋ねることも重要だと述べた。患者さんは食生活について(とくに遵守できていない場合)、主治医に自ら話したがらないことも多いので、医療スタッフが患者さんに尋ねることが、患者さんの食生活の把握には有効だとしている。

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第10回 療養指導義務:「何かあったら受診ください」ではダメ!どうする患者指導!!

■今回のテーマのポイント1.療養指導義務は説明義務の一類型であるが、治療そのものである2.「重大な結果が生ずる可能性がある」場合には、たとえ当該可能性が低くとも、療養に関する指導をしなければならない3.「何か変わったことがあれば医師の診察を受けるように」といったような一般的、抽象的な指導では足りず、しっかりと症状等を説明し、どのような場合に医師の診察が要するか等具体的に指導しなければならない事件の概要母X2は、Y産婦人科医院にて、妊娠34週に2200gの第3子(児X1)を出産(吸引分娩)しました。低出生体重児ではありましたが、出生時に児の異状は認められませんでした。しかし、出生後、X1には早期黄疸が認められるようになり、徐々に黄疸は増強してきました。第一子、第二子出産の際にも新生児期に黄疸が出ていたことから、母X2の依頼によりX1の血液型検査をしたところ、母X2と同じO型と判定されました(後に再検査したところX1の血液型はO型ではなくA型と判明しました)。そのため、医師Yは、母X2に対し、黄疸について、「大丈夫だ。心配はいらない」と伝え、退院時(出生より10日目)にも母X2に対し「血液型不適合もなく、黄疸が遷延しているのは未熟児だからであり、心配はない」、「何か変わったことがあったらすぐに当院あるいは近所の小児科の診察を受けるように」とだけ説明をしました。ところが、退院3日後(出生より13日目)より黄疸の増強と哺乳力の減退が現れました。母X2は、医師Yの退院時説明や、受診を急ぐことはないとの夫からの意見もあり、様子をみることとし、結局、外来受診したのは退院から8日後となりました。その結果、X1は核黄疸が進行し、治療を受けたものの、強度の運動障害のため寝たきりとなりました。X1及び両親は、医師Yに対し、X1に対する処置及び退院時の療養指導に不備があったとして約1億円の損害賠償請求を行いました。第1審では「X1に対する処置及び療養指導について過失はない」として原告の請求を棄却しました。同様に控訴審においても、「新生児特に未熟児の場合は、核黄疸に限らず様々な致命的疾患に侵される危険を常に有しており、医師が新生児の看護者にそれら全部につき専門的な知識を与えることは不可能というべきところ、新生児がこのような疾患に罹患すれば普通食欲の不振等が現れ全身状態が悪くなるのであるから、退院時において特に核黄疸の危険性について注意を喚起し、退院後の療養方法について詳細な説明、指導をするまでの必要はなく、新生児の全身状態に注意し、何かあれば来院するか他の医師の診察を受けるよう指導すれば足りる」として原告の請求を棄却しました。これに対し原告が上告したところ、最高裁は、療養指導義務につき過失を認め、原判決を破棄差し戻しとし、下記の通り判示しました(差し戻し審後の認容額約6400万円)。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過母X2は、Y産婦人科医院にて、妊娠34週に2200gの第3子(児X1)を出産(吸引分娩)しました。低出生体重児ではありましたが、出生時に児の異状は認められませんでした。しかし、出生後、X1には早期黄疸が認められるようになり、徐々に黄疸は増強してきました。母X2は、第一子、第二子出産の際にも新生児期に黄疸が出ており、知人からこのような場合には、黄疸が強くなると児が死ぬかもしれないと聞かされていたことから不安に思い、医師YにX1の血液型検査を依頼しました。検査の結果、X1の血液型は、母X2と同じO型と判定されました(後に再検査したところX1の血液型はO型ではなくA型と判明しました)。X1の黄疸は、生後4日目には肉眼的に認められるようになり、生後6日目に測定した総ビリルビン値は 2.5mg/dLでしたが、その後、X1が退院するまで肉眼的には黄疸が増強することはありませんでした。医師Yは、母X2に対し、血液型不適合はなく、黄疸が遷延するのは未熟児だからであり心配はないと伝えました。そして、退院時(出生より10日目)にも母X2に対し「血液型不適合もなく、黄疸が遷延しているのは未熟児だからであり、心配はない」、「何か変わったことがあったらすぐに当院あるいは近所の小児科の診察を受けるように」とだけ説明をしました。ところが、退院3日後(出生より13日目)より黄疸の増強と哺乳力の減退が現れました。母X2は、医師Yの退院時説明や、受診を急ぐことはないとの夫からの意見もあり、様子をみることとし、結局、A病院の小児科外来を受診したのは退院から8日後となりました。A病院受診時のX1は、体重2040gで顕著な肉眼的黄疸が認められ、自発運動は弱く、診察上、軽度の落葉現象が認められ、モロー反射は認められるものの反射速度は遅くなっており、総ビリルビン値は 34.1mg/dL(間接ビリルビン値 32.2mg/dL)でした。直ちに交換輸血が行われたものの、X1は強度の運動障害のため寝たきりとなりました。事件の判決「新生児の疾患である核黄疸は、これに罹患すると死に至る危険が大きく、救命されても治癒不能の脳性麻痺等の後遺症を残すものであり、生後間もない新生児にとって最も注意を要する疾患の一つということができるが、核黄疸は、血液中の間接ビリルビンが増加することによって起こるものであり、間接ビリルビンの増加は、外形的症状としては黄疸の増強として現れるものであるから、新生児に黄疸が認められる場合には、それが生理的黄疸か、あるいは核黄疸の原因となり得るものかを見極めるために注意深く全身状態とその経過を観察し、必要に応じて母子間の血液型の検査、血清ビリルビン値の測定などを実施し、生理的黄疸とはいえない疑いがあるときは、観察をより一層慎重かつ頻繁にし、核黄疸についてのプラハの第一期症状が認められたら時機を逸ずることなく交換輸血実施の措置を執る必要があり、未熟児の場合には成熟児に比較して特に慎重な対応が必要であるが、このような核黄疸についての予防、治療方法は、上告人X1が出生した当時既に臨床医学の実践における医療水準となっていたものである。・・・・(中略)・・・・そうすると、本件において上告人X1を同月30日の時点で退院させることが相当でなかったとは直ちにいい難いとしても、産婦人科の専門医である被上告人Yとしては、退院させることによって自らは上告人X1の黄疸を観察することができなくなるのであるから、上告人X1を退院させるに当たって、これを看護する上告人母X2らに対し、黄疸が増強することがあり得ること、及び黄疸が増強して哺乳力の減退などの症状が現れたときは重篤な疾患に至る危険があることを説明し、黄疸症状を含む全身状態の観察に注意を払い、黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務を負っていたというべきところ,被上告人Yは、上告人X1の黄疸について特段の言及もしないまま、何か変わったことがあれば医師の診察を受けるようにとの一般的な注意を与えたのみで退院させているのであって、かかる被上告人Yの措置は、不適切なものであったというほかはない」(最判平成7年5月30日民集175号319頁)ポイント解説今回は「療養指導義務」がテーマとなります。前回までのテーマであった説明義務には、大きく分類して2種類あり、一つはインフォームド・コンセントのための説明義務、もう一つが今回のテーマである療養指導義務です。糖尿病における食事療法、運動療法に代表されるように、疾患の治療は、医師のみが行うのではなく、患者自身が療養に努めることで、功を奏します。しかし、医療は高度に専門的な知識を必要としますので、患者自らが適切な療養をするために、専門家である医師が、患者がなすべき療養の方法等を指導しなければなりません。インフォームド・コンセントのための説明義務が患者の自己決定のために行われるのに対し、療養指導義務は、患者の疾病に対する治療そのものであることに大きな違いがあります。すなわち、インフォームド・コンセントのための説明義務違反があったとしても、通常は、自己決定権の侵害として、精神的慰謝料(数十~数百万円程度)が認められるにとどまりますが、療養指導義務違反においては、患者の身体に生じた損害(死傷)として場合によっては数千万~数億円単位の損害賠償責任を負うこととなります。療養指導義務が民事訴訟において争われる類型としては、(1)退院時の療養指導(2)経過観察時の療養指導(3)外来通院時の療養指導があります。特に注意が必要となるのが、本事例のように医師の管理が行き届きやすい入院から目の届かない外来へと変わる退院時の療養指導(1)及び、頭部外傷等で救急外来を受診した患者を帰宅させる際に行う療養指導(2)です。本事例以外に退院時の療養指導義務が争われた事例としては、退院時に処方された薬剤により中毒性表皮壊死症(TEN)を発症し死亡した事例で、「薬剤の投与に際しては、時間的な余裕のない緊急時等特別の場合を除いて、少なくとも薬剤を投与する目的やその具体的な効果とその副作用がもたらす危険性についての説明をすべきことは、診療を依頼された医師としての義務に含まれるというべきである。この説明によって、患者は自己の症状と薬剤の関係を理解し、投薬についても検討することが可能になると考えられる。・・・(中略)・・・患者の退院に際しては、医師の観察が及ばないところで服薬することになるのであるから、その副作用の結果が重大であれば、発症の可能性が極めて少ない場合であっても、もし副作用が生じたときには早期に治療することによって重大な結果を未然に防ぐことができるように、服薬上の留意点を具体的に指導すべき義務があるといわなくてはならない。即ち、投薬による副作用の重大な結果を回避するために、服薬中どのような場合に医師の診察を受けるべきか患者自身で判断できるように、具体的に情報を提供し、説明指導すべきである」(高松高判平成8年2月27日判タ908号232頁)と判示したものがあります。また、救急外来において頭部打撲(飲酒後階段から転落)患者の帰宅時の療養指導が争われた事例(患者は急性硬膜下血腫等により死亡)では、「このような自宅での経過観察に委ねる場合、診療義務を負担する医師としては、患者自身及び看護者に対して、十全な経過観察を尽くし、かつ病態の変化に適切に対処できるように、患者の受傷状況及び現症状から、発症の危険が想定される疾病、その発症のメルクマールとなる症状ないし病態の変化、右症状ないし病態変化が生起した場合に、患者及び看護者が取るべき措置の内容、とりわけ一刻も早く十分な診療能力を持つ病院へ搬送すべきことを具体的に説明し、かつ了知させる義務を負うと解するのが相当である」(神戸地判平成2年10月8日判時1394号128頁)と判示されています。本判決を含めた判例の傾向としては、1)「重大な結果が生ずる可能性がある」場合には、たとえ当該可能性が低くとも、療養に関する指導をしなければならないとしていること2)「何か変わったことがあれば医師の診察を受けるように」といったような一般的、抽象的な指導では足りず、しっかりと症状等を説明し、どのような場合に医師の診察が要するか等、具体的に指導することが求められています。患者の生命、身体に関する必要な情報は提供されるべきであることは当然ですが、この医師不足の中で医師は多忙を極めており、すべての患者に対し、上記内容を医師が直接、口頭で説明することは、残念ながら現実的には非常に困難であるといえます。だからといって、医師による直接、口頭にこだわる余り、説明、指導の内容を縮減することは患者のためになりません。したがって、療養指導義務の主体や方法については、第8回「説明義務 その2」で解説したように、書面による指導や他の医療従事者による指導を適宜用いることで、柔軟に対応すべきです。もちろん、このような方法により法的な療養指導義務や説明義務を果たした上で、医師患者関係の形成のための医師による直接、口頭の説明、指導を行うことは、法的責任とは離れた「医師のプロフェッションとしての責任」として、果たすべきであることも忘れてはなりません。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成7年5月30日民集175号319頁高松高判平成8年2月27日判タ908号232頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。神戸地判平成2年10月8日判時1394号128頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

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ネクサバール、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がん患者の無増悪生存期間の延長を達成

 ドイツのバイエル ヘルスケア社と米国オニキス・ファーマシューティカル社は3日、放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行性または転移性分化型甲状腺がん患者を対象としたネクサバール錠(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)の第III相臨床試験において、主要評価項目である無増悪生存期間の統計学的有意な延長が認められたことを発表した。バイエル薬品が10日に報告した。 DECISION (stuDy of sorafEnib in loCally advanced or metastatIc patientS with radioactive Iodine refractory thyrOid caNcer)試験は、無作為化プラセボ対照の国際多施設共同試験。 同試験では、化学療法やチロシンキナーゼ阻害剤、VEGFまたはVEGF受容体を標的としたモノクローナル抗体、またはその他の分子標的薬の前治療歴のない、放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行性または転移性分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん、低分化がん)の患者さん417名が登録され、ネクサバール400mgを経口で1日2回投与する群と、同量のプラセボを投与する群に、無作為に割り付けられた。プラセボ群の患者の病勢が進行した場合は、患者の状態を考慮した上で、治験責任医師の判断により、ネクサバールの投与に切り替えるとが可能であった。本試験の主要評価項目は、RECIST基準に基づいた無増悪生存期間で、副次評価項目は、全生存期間、無増悪期間、奏効率、奏効期間などであり、併せて安全性と忍容性も検討されたという。 試験の有効性および安全性に関する詳細な分析の結果は、今後開催される医学学会で発表される予定とのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://byl.bayer.co.jp/html/press_release/2013/news2013-01-10.pdf

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第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

 第二世代抗精神病薬(SGA)は2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。米国・ザッカーヒルサイド病院のPeter Manu氏らは、SGAであるクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンについて、インスリン分泌への影響を検討した。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 SGAは2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。SGAのインスリン分泌への独立した影響については、これまで動物モデルの試験においては示唆されていたが、臨床では実証されていなかった。研究グループは、SGA治療中の患者における負荷試験後インスリン分泌について評価することを目的に、単一施設で代謝評価を受けた連続する783例の成人精神疾患入院患者コホートのうち、520例の非糖尿病患者を対象とした試験を行った。インスリン分泌は、75gブドウ糖負荷試験後のベースライン、30分、60分、120分時点での記録を基に作成した曲線下面積[AUC(インスリン)]で評価し、インスリン分泌の独立予測因子について、サンプル全体で、または正常耐糖能(NGT)と糖尿病前症患者に分けて回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者520例の内訳は、クロザピンを服用する群が73例、オランザピン群190例、クエチアピン群91例、リスペリドン群166例であった。・負荷後AUC(インスリン)の独立予測因子は、AUC(グルコース)・腹囲・トリグリセリド値・低年齢(p<0.0001)、非喫煙(p=0.0012)、クロザピン治療(p=0.021)であった。・モデルが示すインスリン分泌バリアンスは、33.5%であった(p<0.0001)。・クロザピンの影響は、NGT群ではみられたが、糖尿病前症患者群では認められなかった。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・「糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度”

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糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度”

 糖尿病患者におけるうつ病発症は高頻度にみられ、不良な予後と関連する。ドイツ・フライブルグ大学のHarald Baumeister氏らは、うつ病を併発した糖尿病患者への、うつ病治療としての精神療法および薬物療法の効果について、システマティックレビューを行った。その結果、いずれもうつ病改善に中程度の有意な臨床的効果をもたらすことが示され、また血糖コントロールについても、薬物療法群では短期間での改善が認められたという。精神療法の血糖コントロールへの効果については確たるエビデンスが得られなかった。Cochrane Libraryオンライン版2012年12月12日号の掲載報告。 本研究は、糖尿病とうつ病を有する患者を対象に、うつ病治療としての精神療法と薬物療法の効果について評価することを目的とした。CENTRAL in The Cochrane Library、MEDLINE、EMBASEなどの電子データベースをソースとして2011年12月までに発行された論文(無作為化試験を適格)を検索した。参照リストも調べて著者と接触する機会も持った。主要アウトカムは、うつ病および血糖のコントロールであった。副次アウトカムは、糖尿病治療のアドヒアランス、糖尿病合併症の発症、全死因死亡、医療コスト、健康関連QOL(HRQoL)などであった。データ収集と解析は、2人の独立レビュワーにより行われた。全体の推定治療アウトカムの算出のため、ランダム効果モデルでのメタ解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・データベース検索により、3,963件の文献が同定された。そのうち、19試験、参加者計1,592例分のデータが解析に組み込まれた。【精神療法試験】・精神療法試験(8試験・被験者1,122例、治療期間3週~12ヵ月、治療開始後追跡期間0~6ヵ月)のレビューから、短期的(治療終了時など)・中期的(治療1~6ヵ月後など)・長期的(治療後6ヵ月超など)に、うつ病重症度の改善効果が認められた[8試験の標準化平均差の範囲(SMD):-1.47~-0.14]。しかし試験間の不均一性が大きく、精神療法試験の結果に関するメタ解析は行われなかった。・通常ケアと比較して精神療法群は、短期的うつ病寛解率(OR:2.88、95%CI:1.58~5.25、p=0.0006、4試験・被験者647例)、中期的うつ病寛解率(同:2.49、1.44~4.32、p=0.001、2試験・296例)の上昇がみられた。・精神療法試験の血糖コントロールに関するエビデンスは、不均一で不確定であった。・QOLについては3試験で、通常ケアと比較して有意な改善は認められなかった。・糖尿病およびうつ病の薬物治療のコストおよびアドヒアランスについては、検討されていたのが1試験のみで、信頼できる結論を導き出すことはできなかった。・糖尿病合併症および全死因死亡は、精神療法試験では検討項目に含まれたものがなかった。【薬物療法試験】・一方、薬物療法試験(対プラセボ8試験・被験者377例、治療期間3週~6ヵ月、治療後追跡なし)からは、抗うつ薬の中等度の効果が、短期的うつ病重症度の改善に認められた(7試験・被験者306例のSMD:-0.61、95%CI:-0.94~-0.27、p=0.0004/SSRIに関する5試験・241例は同-0.39、-0.64~-0.13、p=0.003)。・短期的うつ病寛解率は、抗うつ薬治療の試験で上昇が認められた(OR:2.50、95%CI:1.21~5.15、p=0.01、3試験・被験者136例)。・また短期間での血糖コントロールの改善がみられた[HbA1cの平均差(MD):-0.4%、95%CI:-0.6~-0.1、p=0.002、5試験・被験者238例]。・健康関連QOLおよびアドヒアランスは、検討されていたのが1試験のみであり、いずれの項目についても統計的有意差はみられなかった。・薬物療法試験では、中期および長期うつ病ならびに血糖コントロールのアウトカム、医療コスト、糖尿病合併症および全死因死亡について検討されていなかった。・異なる薬物療法を比較した試験間(3試験・被験者93例、治療期間12週、治療後追跡なし)の結果に有意差はみられなかった。ただし、フルオキセチン治療患者では、シタロプラム治療と比較して血糖コントロールの有意な改善がみられた(HbA1cのMD:-1.0%、95%CI:-1.9~-0.2、1試験・被験者40例)。関連医療ニュース ・うつ病に対するミルタザピンvs他の抗うつ薬 ・SSRIの短期治療、うつ症状改善に先立ち正常化する扁桃体機能 ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(46)〕 糖尿病・多枝病変患者ではDES-PCIはCABGと比較して4年の短期追跡でも心筋梗塞・死亡率は高い

糖尿病患者に対する冠動脈血行再建術選択に関しては、BARI studyの結果から冠動脈インターベンション(PCI)は冠動脈バイパス術(CABG)と比較すると糖尿病患者100人に対して5年間で15人、7年間で20人、10年間で22人死亡数が多いことが報告されているが、ランダム化試験のサブグループ解析結果でありエビデンスレベルはCであった。FREEDOM Trialは糖尿病管患者に対するDESを使用したPCIとCABGを比較した初のランダム化試験である。 冠血行再建術選択は、主として冠動脈狭窄病変の解剖学的条件に重点が置かれる傾向にあり、糖尿病合併の有無はその適応決定に影響しないという意見がある。実際に複雑病変(主幹部病変・3枝病変)を対象としたSYNTAX trialの結果では、4年の追跡期間でCABG群と比較してPCI群では死亡率、心筋梗塞発症率、再血行再建術率のすべてが高率であり、糖尿病の有無は予後に影響しなかった。 主幹部病変を含まない2枝病変のようなシンプルな冠動脈疾患の場合は、糖尿病合併の有無がPCIかCABGの選択に重要と思われる。Hlatkyらのメタ解析(主幹部病変を除外した2枝病変63%あるいは3枝病変37%)の結果で、糖尿病患者においてはPCIよりもCABGを選択する方が生命予後は良好であることが示されている。また、国内の多施設・大規模レジストリ研究であるCREDO-Kyoto研究でも、軽症冠動脈疾患(主幹部病変を除外した2枝病変49%または3枝病変51%)を対象とした場合、糖尿病患者ではPCIよりもCABGを選択した方が生命予後は良好であることが報告されている。さらに、糖尿病患者を対象としたBARI 2D試験では、積極的薬物治療下でも、CABGを施行することにより心筋梗塞発症率をさらに低下させることが示された。FREEDOM Trialの結果、追跡期間5年という短期間でもPCIはCABGと比較して死亡率、心筋梗塞発症率が高い結果となった。しかし、対象患者の80%以上が3枝病変であるので、「糖尿病・3枝病変ではCABGが有利[エビデンスレベルB]というのが冷静な解釈であると考える。Hlatkyらのメタ解析結果を超えるものではなく、今後糖尿病・シンプル病変におけるCABGの治療効果を評価するためのランダム化試験が必要である。

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世界中で起きている障害を有する人の高齢化/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の障害生存年(years lived with disability:YLD)について、オーストラリア・School of Population HealthのTheo Vos氏らがGlobal Burden of Diseases Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。その結果、10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であったが、年齢に伴う着実な上昇が認められたという。背景には人口増加と平均年齢の上昇があった。またYLDの最も頻度の高い原因(メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害など)の有病率は減少しておらず、著者は「各国のヘルスシステムは死亡率ではなく障害を有する人の増加について対処する必要があり、その上昇する負荷に対する効果的かつ可能な戦略が、世界中のヘルスシステムにとって優先すべきことだ」と提言した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の289の疾患・外傷の1,160の後遺症について系統的な解析を実施 研究グループは、GBD2010のデータを基に、その291の疾患・外傷リストのうち、障害をもたらす289の疾患・外傷の1,160の後遺症について、有病率、発生率、軽快した割合、障害持続期間、超過死亡率について系統的解析を行った。データは、公表されている研究、報告症例、住民ベースがんレジストリ、その他疾患レジストリ、マタニティクリニック血清サーベイランス、退院データ、外来ケアデータ、世帯調査、その他サーベイおよびコホート研究から構成された。 YLDを、シミュレーション手法により共存症について補正し、年齢、性、国、年度レベルで算出した。主因は、メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害、糖尿病や内分泌系疾患 解析の結果、2010年の全年齢統合の1,160の後遺症の世界的な有病率は、100万人当たり1例未満から35万例まで広範囲にわたった。有病率と健康損失をもたらす重症度との関連はわずかであった(相関係数:-0.37)。 2010年のあらゆるYLDの有病者は7億7,700万人で、1990年の5億8,300万人から増加していた。 YLDをもたらした主要な要因は、メンタル問題と行動障害、筋骨格系障害と糖尿病や内分泌系疾患であった。 YLDの主要な特異的要因は、1990年と2010年でほぼ同様であり、腰痛、大うつ病、鉄欠乏性貧血、頸痛、COPD、不安障害、偏頭痛、糖尿病、転倒であった。 年齢別YLD有病率は、全地域で年齢に伴う上昇がみられたが、1990年から2010年にかけてわずかだが減少していた。 10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であった。 YLDの主要な要因の地域別パターンは、早期死亡による生命損失年(YLL)とよく似ていた。サハラ以南のアフリカでは、熱帯病、HIV/AIDS、結核、マラリア、貧血がYLDの重大な要因であった。

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