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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第25回

第25回:HbA1cだけではなく、患者もみるべし監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 ここ数年、糖尿病をめぐる状況は大きな変化を迎えています。治療目標を個別化することが世界的な流れとなり、日本糖尿病学会のガイドライン1)でも治療目標を患者の状況によって個別に設定することが明記されました。また複数の新薬も登場しています。 普段の診療でも、とくに高齢者では、HbA1cが高めであってもあまり全身状態が悪化しない例を多くの方が経験しているだろうと思います。欧米のガイドラインも含めた世界的な流れを確認しておきたいと思います。 Individualizing Target Goals and Treatment in Patients with Type 2 Diabetes2型糖尿病患者の個別化された治療目標と治療法以下、American family physician 2015年6月1日号1)より抜粋【治療目標について】アメリカとヨーロッパの糖尿病研究学会は、2型糖尿病患者に対して、いつどのように個別化された治療を行うかに焦点をあてたposition statement第2版を発表している。これまで同様に、治療法と治療目標の個別化が提案されている。次のような場合はあまり厳格なコントロールを行うべきではない(訳者注:厳格な目標とは、「HbA1c<7%」のこと)。 低血糖のリスクが高い 疾患の罹患期間が長い 生命予後が短い 進行した血管合併症を含む重大な併存疾患の存在 アドヒアランスの欠如やモチベーションの低さ 資源やサポートシステムが限られている【治療法について】メトホルミンは治療の基礎である。もし有効でなかった場合、ガイドラインでは他の6種類(訳者注:SU薬、チアゾリジン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体拮抗薬、インスリンの6種類)の薬のどれかの併用を提案しており、有効性の差は臨床上問題にならないとしている。必要なら3剤目も同様であり、患者の好みなどによって個別に調整する。抜粋ここまで。厳しい目標を適用する患者を限定すべきという方向性が強く現れている反面、どの程度の目標が良いのかについては明確にされていません。複数の組織からいくつかの具体的な治療目標の提案がされていますが2)、内容も相互に異なっており、今後の検証が待たれます。肥満の少ない日本人の2型糖尿病患者に対するメトホルミンの血糖コントロール改善についてはMORE studyで検証されており、メトホルミンを第1選択とする本論文の提案は、日本人においても同様に考えてよいと思います。いずれにしろ、機械的にHbA1cの数値だけをみてコントロールをしてはいけないということをあらためて肝に銘じたいと思います。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Shaughnessy AF. Am Fam Physician. 2015;91:788. 2) 日本糖尿病学会. 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013.(参照2015.11.26) 3) M. Sue Kirkman, et al. Consensus Report: Diabetes in Older Adults. 2012 Oct 25.

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発症年齢、HbA1c、CKDが2型糖尿病患者の生命予後を規定する(解説:住谷 哲 氏)-453

 2型糖尿病患者の生命予後を改善するためのアプローチとしては、(1)2型糖尿病発症予防、(2)多因子介入(multifactorial approach)、(3)診断直後からの介入(legacy effect)が有用と考えられてきた。スウェーデンにおけるコホート研究である本論文は、これらのアプローチが正しかったことを支持すると同時に、その限界をも明らかにした点で重要である。 スウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者約40万例と、年齢・性別・居住地をマッチさせた対照患者約200万例を約5年間追跡した。これにより、スウェーデンにおけるほとんどの2型糖尿患者が網羅された。追跡期間中の総死亡率および心血管死亡率が比較されたが、重要なのは登録時の年齢、追跡期間中のHbA1c、アルブミン尿、eGFRによる層別解析がなされている点である。 2型糖尿病患者において、総死亡率の増加は年齢に関係なくHbA1cの上昇と単調に相関しており、全体ではHbA1cが1%上昇するごとに総死亡率は12%増加した。これはUKPDS35における疫学的検討の結果(総死亡率はHbA1c 1%の上昇につき14%増加)1)と一致していた。さらに総死亡率に関して、年齢とHbA1cとの間には交互作用を認めたが(p<0.001)、性別とHbA1cとの間には交互作用を認めなかった(p=0.21)。つまり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響は、年齢により異なるが性別による差はないことになる。表(原著Table 3)を詳細にみると、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロールが良好群(HbA1c<7.0%)の総死亡率のハザード比(HR)が1.92(95%信頼区間1.75~2.11)であり、不良群(HbA1c≧9.7%)では同4.23(3.56~5.02)であった。一方、高齢(≧75歳)2型糖尿病患者においてはそれぞれ0.95(0.94~0.96)、1.55(1.47~1.63)であり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響が、若年者に比較して減弱していることが示唆された。アルブミン尿、eGFRについても同様の解析がなされたが、HbA1cと同様に、高齢者においては若年者に比較して両者が総死亡率に及ぼす影響は減弱していた。 高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を、どこに設定すべきか現時点でコンセンサスはない。この問題に対して、本論文は1つの答えを与えてくれると思われる。HbA1c 7.9~8.7%群における総死亡率のHRは、正常アルブミン尿群では1.01(0.97~1.05)、eGFR>60mL/min群では1.00(0.97~1.04)であり、対照群と差はなかった。したがって、正常アルブミン尿かつeGFR>60mL/minの高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を8.7%以下とするのが1つの基準となるだろう。 これに反して、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロール良好(HbA1c<7.0%)かつ正常アルブミン尿群における総死亡率のHRは1.60(1.40~1.82)、HbA1c<7.0%かつeGFR>60mL/min 群においては1.73(1.55~1.92)であり、対照群に比較して有意に高値であった。この理由は明らかではないが、若年2型糖尿病患者群におけるスタチンおよびレニン・アンジオテンシンン・アルドステロン系阻害薬の服用率が、対照群に比較してそれぞれ8倍および5倍であったことを考慮すると、冒頭に述べた多因子介入のみでは、若年2型糖尿病患者における総死亡率抑制には不十分であることが示唆される。著者らが述べているように、禁煙の徹底、身体活動量の増加、新しい心血管保護薬の開発が必要であろう。 2型糖尿病患者の総死亡率は、対照群と比較して依然として高い。本論文により2型糖尿病発症年齢、血糖コントロール、アルブミン尿およびeGFRで規定される慢性腎臓病CKDが総死亡率の増加に関連することが再確認された。したがって2型糖尿病の発症をできるだけ遅らせること、早期からの多因子介入により良好な血糖コントロールを維持するとともに、CKD発症を予防することがきわめて重要であることも再認識する必要があろう。

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厳格降圧のベネフィットは高リスク患者ほど大きい/Lancet

 中国・北京大学第一病院のXinfang Xie氏らは高血圧治療に関する最新のシステマティックレビューとメタ解析を行い、厳格降圧療法は標準降圧療法と比べて血管保護効果が大きいことを報告した。最近改訂された現行の高血圧ガイドラインは、心血管疾患や腎疾患、糖尿病などを有する高リスク患者の降圧目標について、以前とは推奨を逆転させている。検討グループは、このガイドラインの変化が厳格降圧療法戦略に対する疑念を提示したものとして、厳格降圧療法の有効性と安全性を評価するため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年11月7日号の掲載報告より。メタ解析で、降圧の重大心血管イベントなどへの影響を評価 検討は、1950年1月1日~2015年11月3日のMEDLINE、Embase、Cochrane Libraryを検索し無作為化対照試験を包含して行った。適格条件は、フォローアップ6ヵ月以上、目標降圧値やベースラインからの血圧変化値は問わず、被験者を厳格降圧療と非厳格降圧療法に無作為に割り付けた試験とした。被験者の年齢、また論文の言語は問わなかった。 メタ解析で、降圧の重大心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死の各発生および複合発生)への相対リスク(RR)を評価した。また、非血管死および全死因死亡、末期腎臓病、有害事象についても評価し、糖尿病患者参加試験ではアルブミン尿、網膜症の進行についても調べた。140mmHg未満への降圧ベネフィットも確認 19試験、4万4,989例のデータを特定した。重大心血管イベントは、フォローアップ平均3.8年(範囲:1.0~8.4年)で2,496例が記録されていた。 メタ解析において、厳格降圧療法群の平均血圧値は133/76mmHg、非厳格降圧療法群は140/81mmHgであった。 厳格降圧療法群におけるRR抑制は、重大心血管イベントは14%(95%信頼区間[CI]:4~22%)、心筋梗塞13%(同:0~24%)、脳卒中22%(10~32%)、アルブミン尿10%(3~16%)、網膜症進行19%(0~34%)であった。 一方で、心不全(RR:15%、95%CI:-11~34%)、心血管死(9%、-11~26%)、総死亡(9%、-3~19%)、末期腎臓病(10%、-6~23%)については、厳格降圧療法の明確な効果は認められなかった。 重大心血管イベントの抑制は、患者群を問わずみられ、収縮期血圧140mmHg未満患者へのさらなる降圧についても、明確なベネフィットが認められた。最も大きな絶対ベネフィットは、心血管疾患、腎疾患、糖尿病を有する患者が参加した試験でみられた。 重大有害事象は、降圧と関連していたが、報告は6試験のみであり、年当たりのイベント発生率は、厳格降圧療法群1.2%、非厳格降圧療法群は0.9%であった(RR:1.35、95%CI:0.93~1.97)。厳格降圧療法群のほうが重大低血圧症の発生頻度が有意に高かったが(RR:2.68、95%CI:1.21~5.89、p=0.015)、過剰絶対リスクは小さかった(追跡期間中の人年当たり0.3% vs.0.1%)。 これらの結果を踏まえて著者は、「厳格降圧療法は、標準降圧療法よりも血管保護効果が大きいことが示された。また、高リスク患者では、140mmHg未満患者も含めて降圧が厳格なほどベネフィットは大きかった」と述べ、「厳格降圧のネット絶対ベネフィットは、高リスク患者ほど大きい」とまとめている。

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糖尿病治療中こそ禁煙が大事!

糖尿病とタバコの関係 喫煙により、インスリンの効きが悪くなること(インスリン抵抗性)が知られています。 現在は糖尿病でない方も、糖尿病になる可能性も上がります。 血管に負担がかかるため、腎機能障害が進みやすく透析になってしまう確率も上がります。2 糖尿病患者が喫煙をすると、喫煙をしない場合に対して死亡率が1.55倍に上昇するという結果が報告されました。1-糖尿病患者の死亡リスク1.55非喫煙者喫煙者Pan A, et al. Circulation. 2015 Aug 26. [Epub ahead of print]糖尿病治療中の方こそ、禁煙が大事です!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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糖尿病トライアルデータベース」がリニューアル

 ライフサイエンス出版株式会社は、約1,000報の糖尿病関連トライアルを収載した日本最大級の糖尿病研究データベース「糖尿病トライアルデータベース」を11月にリニューアルした。  目まぐるしく新薬ラッシュが続く糖尿病領域において、試験概要をもう一度詳しく調べたい場合や研究内容のチェックに活躍する。検索しやすく、編集委員のコメント付き 特長として、糖尿病のトライアルに関し、さまざまな方法で検索できることが挙げられる。たとえば、トップページの検索窓に任意の検索語を直接入力する方法や、トライアル名や著者名の頭文字がわかっている場合は、検索窓の下に並ぶアルファベットをクリックするだけで、表示された一覧から目的のトライアルを探すことができる。 トライアルの詳細は、抄録が項目(目的/試験デザイン/対象患者/方法/結果/結論)ごとにコンパクトかつ必要十分にまとめられているので、短時間で必要とする情報にたどり着くことができる。さらに、片山 茂裕氏(埼玉医科大学かわごえクリニック・埼玉医科大学)をはじめとする、糖尿病領域のオピニオンリーダー6人の編集委員による各トライアルについてのコメントも付いている。それぞれのトライアルの重要度を4段階で評価し、「研究結果の捉え方」や「今後の糖尿病治療への影響」など、さまざまな側面からの解説がなされている。 また、糖尿病治療に大きなインパクトを与えた研究(例:ACCORD、ADVANCE、UKPDS 80、久山町研究、熊本スタディなど)は「おさえておきたい重要トライアル」のコーナーにまとめられており、利便性も図られている。データベースは無料かつ会員登録不要 同データベースの閲覧はすべて無料であり、会員登録も不要としている。定期的にサイトにアクセスするだけで、新しいエビデンスに触れることができる。なお、データベース更新のお知らせはtwitter「@EBM_Library」でもツイートされている。「糖尿病トライアルデータベース」は、こちら詳しくは、ライフサイエンス出版株式会社まで。

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英国プライマリケアでの処方の安全性、施設間で差/BMJ

 英国一般診療所の代表サンプル526施設を対象に処方の安全性について調べた結果、患者の約5%に不適切処方がみられ、また約12%でモニタリングの記録が欠如していることが、英国・マンチェスター大学のS Jill Stocks氏らによる断面調査の結果、明らかになった。不適切処方のリスクは、高齢者、多剤反復処方されている患者で高く、著者は、「プライマリケアにおいて、とくに高齢者と多剤反復投与患者について処方のリスクがあり適切性について考慮すべきであることが浮かび上がった」と述べている。英国では、プライマリケア向けに処方安全指標(prescribing safety indicator)が開発されているが、これまで試験セットでの検討にとどまり、大規模なプライマリケアデータベースでの評価は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年11月3日号掲載の報告。英国一般診療所526施設のデータを分析 研究グループは、英国一般診療所における複数タイプの潜在的有害処方の有病率を調べ、また診療所間にばらつきがあるかどうかについて調べた。2013年4月1日時点でClinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録された526施設において、診断と処方の組み合わせで特定した潜在的処方リスクやモニタリングエラーの可能性がある全成人患者を包含した。 主要アウトカムは、抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs、β遮断薬、glitazone(チアゾリジン系糖尿病薬:TZD)、メトホルミン、ジゴキシン、抗精神病薬、経口避妊薬(CHC)、エストロゲンの潜在的に有害な処方率。また、ACE阻害薬およびループ利尿薬、アミオダロン、メトトレキサート、リチウム、ワルファリンの反復処方患者の、血液検査モニタリングの頻度が推奨値よりも低いこととした。不適切処方、モニタリング欠如は指標によりばらつき、診療所間のばらつきも高い 全体で94万9,552例のうち4万9,927例(5.26%、95%信頼区間[CI]:5.21~5.30%)の患者が、少なくとも1つの処方安全指標に抵触した。また、18万2,721例のうち2万1,501例(11.8%、11.6~11.9%)が、少なくとも1つのモニタリング指標に抵触した。 同処方率は、潜在的処方リスクタイプの違いでばらつきがみられ、ほぼゼロ(静脈または動脈血栓症歴ありでCHC処方:0.28%、心不全歴ありでTZD処方:0.37%)のものから、10.21%(消化器系潰瘍または消化管出血歴ありで消化管保護薬処方なし、アスピリンやクロピドグレル処方あり)にわたっていた。 不十分なモニタリングは、10.4%(75歳以上、ACE阻害薬やループ利尿薬処方、尿素および電解質モニタリングなし)から41.9%(アミオダロン反復処方、甲状腺機能検査なし)にわたっていた。 また、高齢者、多剤反復処方患者で、処方安全指標の抵触リスクが有意に高かった一方、若年で反復処方が少ない患者で、モニタリング指標の抵触リスクが有意に高かった。 さらに、いくつかの指標について診療所間での高いばらつきもみられた。 なお研究グループは、処方安全性指標について、「患者への有害リスクを増大する回避すべき処方パターンを明らかにするもので、臨床的に正当なものだが例外も常に存在するものである」と述べている。さらに、検討結果について「いくつかの診療について、CPRDで捕捉できていない情報がある可能性もあった(ワルファリンを投与されている患者のINRなど)」と補足している。

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SPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行 氏)-450

 最近の各国の高血圧ガイドラインにおいては欧米のそれを中心に、従来の降圧目標値を上方修正する傾向にある。今回の解析対象には含まれていないが、より心血管疾患のリスクの高い糖尿病合併例においては、ACCORD-BP試験の結果から、わが国以外ではおしなべて降圧目標値を上方修正した経緯がある。米国では2016年秋に改訂ガイドラインが公表される予定だが、このSPRINT試験はその傾向に再考を促す結果となり、大なり小なりこの試験の結果を包含した内容になると考えられる。 ところで、厳格降圧群の平均収縮期血圧(SBP) は121.5mmHg未満と、半数は120mmHg未満を達成していない。IDNT試験の層別解析では、腎イベントはSBPが120mmHg未満を達成しても一層の効果はなく、全死亡はSBP 120mmHg以下でむしろ増え、Jカーブとなっている。SBPの達成血圧値による、より詳細な分析が必要と考える。桑島氏も指摘のとおり、SPRINT試験では心不全に対する効果が、結果に大きく影響していると思われる。使用薬剤は、RA系抑制薬使用が厳格治療群76.7%に対して標準治療群で55.2%、サイアザイド系利尿薬が54.9%対33.3%、β遮断薬が41.1%対30.8%、アルドステロン拮抗薬が8.7%対4.0%と、降圧作用だけではなく心不全治療としてもかなり濃厚なものとなっている。そして、高齢者の血圧管理についても厳格降圧群で優れる結果となっている。 しかし、75歳以上の後期高齢者での両群の達成血圧値が提示されておらず、この群においても実際にSBP 120mmHg未満を達成した例がどれだけいたかは不明である。また、施設入所の高齢者は含まれておらず、ADLの保たれている高齢者のみが対象である。重篤な合併症は低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害が厳格降圧群で有意に多く、限られた例数の75歳以上の後期高齢者群でも、低Na血症と急性腎障害が有意に多かった。著者らはこの結果から“メリットとデメリットをはかりにかけて目標値を考慮”との表現をしているが、はたして75歳以上の後期高齢者の高血圧に対し、降圧薬を増量してSBP 120mmHg未満を目指すことを、実地臨床で踏み切れるだろうか。 わが国では、高齢者高血圧の治療介入試験でJATOS試験やVALISH試験の成績があり、今回のSPRINT試験とは違う結果である。欧米との病態の違い、背景因子の違いなどがあり、必ずしもSPRINT試験の結果をそのまま演繹する必要はないと考える。日本人を対象とした同様の研究を考慮する必要があると考える。関連コメントSPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)SPRINT試験:絶対リスクにより降圧目標を変えるべきか?(解説:有馬 久富 氏)

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循環器内科 米国臨床留学記 第3回

第3回:米国の循環器フェローの生活 今回は米国における循環器フェローシップのトレーニングや生活を具体的にみてみたいと思います。2015年、CORECATS(Core Cardiovascular Training Statement)と呼ばれる循環器トレーニングの指針が改訂され、JACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer)で発表されました1)。186ページにもわたる大ボリュームです。この内容も踏まえながら、今回は米国のトレーニングをもう少し詳しくみてみたいと思います。待遇:苦しいフェロー生活! フェローシップにおいてお金の話は避けて通れません。まずはここから始めましょう。 一般に、米国の循環器フェローの給料は6万ドル、税金を引くと月給にして4,000ドル前後です。NYや西海岸などでは、家賃だけで給料の6割から7割近くを占めますし、幼稚園などはすごく高く、私の住むアーバイン(カリフォルニア州)では1人当たり1,000ドルを超えます。ですから、この給料でやっていくのは家族連れには不可能です。ですから、日本人の臨床留学の仲間が集まると、たいていどれだけ貧乏かという話に落ち着きますし、家族の理解なしでは米国での臨床留学は成り立ちません。 米国人のレジデントは、医学部卒業時で10万ドル(1,200万円)を超える借金、なんと36%が20万ドルを超えた借金を抱えています。(Leslie Kane and Carol Peckham. Residents Salary and Debt Report 2014. Medscape, FAMILY MEDICINE.) 結果、多くのフェローがmoonlighting(当直バイト)をして、収入を補っています。時間当たり100ドルぐらいが相場ですが、moonlightingの時間も労働時間にカウントされ、週80時間を超えて労働すると、プログラムの規則違反となり、解雇されることもあります。 日本では3年目から市中病院で勤めると年収も1,000万円近くになることが多いと思いますので、収入に困るということはないと思いますが、大学や国立病院に勤務すると、バイトをしないと家族を支えるのは難しいかもしれません。私も6年目で国立循環器病センターに移った際に、給料が半分に下がり、それを補うべく大阪のさまざまな病院で当直バイトに明け暮れていました。1年目は忙しいCCUローテーションなどが中心、比較的楽な3年目 1年目はCCUなどのローテーションが多く、学年が上がるにつれて楽なローテーションが増え、また、その後に進むサブスペシャルティーを重点的にローテートしたりもできます。CCUでは10人前後の患者を2、3人のレジデントと一緒に担当します。朝7時半ぐらいから、レジデントと新しい患者の申し送り事項を確認し、前日からいる患者と合わせて治療方針を確認します。9時から指導医との回診が始まります。私の所属するカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)では、指導医は週単位で変わり、インターベンショニスト(冠動脈疾患専門医)やEP(Electrophysiologist:不整脈専門医)の指導医も回診を担当しなければなりません。UCIではCCUをICUの当直がカバーするので、フェローは病院に残る必要はありませんが、18時以降でもST上昇心筋梗塞、心タンポナーデなどの患者が来れば、オンコールのフェローは病院に戻らなければなりません(プログラムによってはCCU当直を担当する循環器フェローが病院に泊まるようです)。CCUローテーションは週末を除いて月曜日から木曜日までは当直が続きます。週末は、4~5週間に1回、当直を担当します。結果的に、当直を挟むと最長で11日間連続当直となりますので、体力的に結構きついです。週末の当直は通常業務に加えて、金曜日の夜以降にやってきた患者のストレステストも担当しなければなりませんので、かなり忙しくなります。ローテーションの内容:雑用は少ない?? 米国では基本的に月単位のローテーションです。米国では小さなプログラムでも最低3人つまり3学年で9人以上、多くの場合15人ほどのフェローがいますので、月ごとのローテーションが可能です。基本的には心カテ、EP、心不全、心エコー、CCU、コンサルト、リサーチの繰り返しとなります。前回のコラムで雑用は少ないと書きましたが、最近はそうでもないなと感じています。雑用の一つとして、ストレステストがあげられます。 心筋シンチや負荷エコーなどができる米国の病院に胸痛を主訴に来ると、ストレステストなしで帰宅できる可能性はきわめて低いです。ER(救急外来)の医師は、冠動脈疾患の可能性が低いと診断した胸痛患者も責任の回避のためにストレステストへ患者を回します。ストレステストに現れた患者と話をして、どうみても筋肉か骨の痛みだろうと思っても、やらざるを得ないということが良くあります。お金と時間の無駄だなと分かっていても、ストレステストをオーダーされる側は黙ってやるのみです。まあ、実際、肥満や糖尿病患者が多いので筋肉の痛みで来たとしても、冠動脈疾患を持っている患者は多そうですが。こういう考えで医療を行うことをdefensive medicineと呼びますが、米国はこれがひどいです。99.9%冠動脈疾患じゃないとわかっていても、見逃した0.1%つまり1,000回に1回でも見逃すと訴えられる可能性が高いわけです。毎日、何十人も見知らぬ患者をみている救急医からすると、1,000回に1回訴えられるリスクを取るよりも、ワンクリックでストレステストをオーダーしたほうが間違いがないし、簡単なわけです。病院も儲かります。 UCIでは、負荷心エコーもしくは心筋シンチを受けることとなります。日中はナースプラクティショナーが行ってくれることが多いのですが、彼らは何件残っていても、容赦なく夕方4時などで帰宅します。残ったストレス負荷は、フェローが残って行うため、夜8時までストレス負荷をやるはめになることもあります。目標症例数に応じたトレーニングレベル 米国では冠動脈造影、エコーなどに必要症例数や必要なトレーニング期間が設けられており、それに応じてレベル1~3の到達度が決まります。(表1 論文1より翻訳、改訂)1)レベル1が循環器のコンサルタントとして必要とされる基礎の循環器トレーニングです。 表2、3に冠動脈造影、心エコーにおける到達度の例を示します。フェローシップの間、ログブックに症例数を書き込み、フェロー修了時に冠動脈造影や心エコーの到達度を各自が把握します。たとえば、心エコーのレベル3は12ヵ月のトレーニング、300症例のエコーの施行、750症例のエコーの画像診断が必要になります。就職の際に、エコーについてはレベル2が必要、エコーの専門医資格が必要となることもあり、レベルを上げるモチベーションにもなります。 運動負荷心エコーや経食道心エコー(TEE)についても細かく症例数が決められています。たとえば、TEEは年間500症例以上を行う施設でトレーニングを行うのが最良とされており、3年間で50症例、できれば100症例を施行することと記載があります。日本でこれだけの数を行える施設では大学や一部の循環器センターを除くと少ないと思います。実際、1ヵ月のエコーローテーションで日本の3年間の循環器トレーニングのTEEの症例数を上回りました。静脈薬物使用患者が多く、感染性心内膜炎疑いが多いことも一因と考えられます。 また、症例数に応じてフェローの数が決められているため、自分が3年間で経験できる症例数が保障されます。何らかの理由で経験症例数が減ると、フェローからの苦情がACGME(トレーニングを統括する団体)に入り、最悪の場合、プログラムの停止や廃止につながります。進路:Subspecialty or General Cardiologist (一般循環専門医) 米国ではサブスペシャルティーのトレーニングが明確化しているため、general cardiologist、インターベンショニスト、EPなどの境界が明確です。2008年のデータ2)ですが循環器医の60%がgeneral cardiologistでした。最近の若い循環器医はどうでしょうか。毎年850人近い循環器専門医が誕生します。そのうち、インターベンションに300人(35%)、EPに130人(15%)、心不全に100人(12%)*前後が進んでいますので、4割ぐらいがgeneral cardiologistになっているということになります。日本では、大学などで一般循環器のトレーニングを受けた後、冠動脈、不整脈、心不全(心エコー)、基礎研究などのサブスペシャルティーを選択することがほとんどで、general cardiologistという概念は浸透していないような気がします。また、日本の市中病院で心臓カテーテルをしないという若い循環器医は少ないように思います。米国のgeneral cardiologistは心エコーや核医学診断などが中心で、一般的には冠動脈造影は行いません。給料はインターベンショニストなどに比べると若干落ちますが、危険な手技がない分、訴訟のリスクも低く、好んでgeneral cardiologistになる人も多いです。どのサブスペシャルティーが多いかは、給料の変化や需要と供給のバランスで毎年変わっていきます。このあたりもアメリカらしいところです。 次回は、米国のフェローシップ中に勤務する、大学病院、軍人病院(VA)、プライベートホスピタルの違いを述べたいと思います。 参考文献 1) Sinha SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;65:1907-1914. 2) Rodgers GP, et al. J Am Coll Cardiol. 2009;54:1195-1208.

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日本糖尿病学会:ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」を開催【ご案内】

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医をpromoteする委員会」は11月27日、福岡で行われる第53回九州地方会内で、ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」を開催する。ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」 開催概要 【日時】  11月27日(金) 14:00 ~ 15:30 【会場】  アクロス福岡 1F 円形ホール  (日本糖尿病学会 第53回九州地方会:D会場)  交通アクセス情報はこちら 【座長】  南 昌江氏(南昌江内科クリニック)  中山 ひとみ氏(久留米大学)【講演】「医師として、母として、一人の女性として」  江頭 絵里奈氏(九州大学)「妻として、母として、医者として」  柿野 聡美氏(久留米大学)【特別講演】「女性糖尿病に向けたエール ~何よりも大切な周囲からの理解と支援~」  田嶼 尚子氏(東京慈恵会医科大学) 【主催】   日本糖尿病学会「女性糖尿病医をpromoteする委員会」 【共催】   日本医師会 なお、同学会ホームページ内「女性糖尿病医サポートの取り組み」では、同ワークショップ開催にあたり「企画者からのメッセージ」を掲載している。以下「関連リンク」より閲覧可能。関連リンク「おすすめのイベント情報 :第53回九州地方会」(日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」内)

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降圧目標120mmHg vs.140mmHgの結果:SPRINT/NEJM

 50歳以上で非糖尿病・心血管イベント高リスクの患者について、収縮期血圧目標120mmHg未満の厳格降圧療法が同140mmHg未満の標準降圧療法よりも、致死的・非致死的重大心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に抑制したことが、米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のJackson T. Wright氏らによるSPRINT試験(米国立衛生研究所[NIH]助成)の結果、示された。一方、厳格降圧療法群では、低血圧症、失神、電解質異常、急性腎障害/腎不全といった重度有害事象の有意な増大がみられた。NEJM誌オンライン版2015年11月9日号掲載の報告。9,361例を対象に無作為化試験 本検討は、非糖尿病患者の心血管疾患の罹患および死亡を抑制するための至適降圧目標値を明らかにすることを目的に行われた。 被験者は、50歳以上、収縮期血圧130~180mmHg、心血管イベント高リスク(脳卒中以外の臨床的/不顕性心血管疾患、CKD、フラミンガム10年冠動脈疾患リスク15%以上、75歳以上のいずれか1つ以上に該当)を適格とした。糖尿病または脳卒中既往の患者は除外した。 2010年11月~2013年3月に9,361例を登録し、厳格降圧療法群(4,678例)、標準降圧療法群(4,683例)に無作為に割り付けて、当初3ヵ月間は月に1回、その後は3ヵ月ごとにフォローアップを行った。 主要アウトカムは、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、またはあらゆる心血管死の複合とした。 両群のベースライン特性は類似していた。厳格降圧療法群について、平均年齢67.9歳、女性比36.0%、心血管疾患20.1%、CKD 28.4%、フラミンガム10年冠動脈疾患リスク15%以上61.4%、75歳以上28.2%、またベースライン血圧値139.7/78.2mmHg、非喫煙43.8%/元喫煙42.3%、BMI値29.9、降圧薬数1.8などであった。120mmHg群で主要複合アウトカム、全死因死亡の発生が有意に低値 試験は当初、平均追跡期間5年を予定していたが、中央値3.26年で厳格降圧療法群の主要複合アウトカム発生が有意に低いことが確認され、早期に中断となった。 両治療戦略による収縮期血圧値の差は、急速かつ持続的に認められた。追跡1年時点の評価における平均収縮期血圧値は、厳格降圧群121.4mmHg、標準群136.2mmHg、追跡期間中の平均値は121.5mmHg、134.6mmHgであった。平均降圧薬数は2.8、1.8であった。 主要複合アウトカム発生は、厳格降圧群1.65%/年、標準群2.19%/年で、厳格降圧療法による有意な抑制が確認された(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p<0.001)。 全死因死亡の発生も、厳格降圧群(1.03%/年)が標準群(1.40%/年)よりも有意に低かった(HR:0.73、95%CI:0.60~0.90、p=0.003)。 重度有害事象の発生は、厳格降圧群1,793例(38.3%)、標準群1,736例(37.1%)で有意差はなかった(HR:1.04、p=0.25)。しかし、個別にみた場合に厳格降圧群で、低血圧症(2.4%、HR:1.67、p=0.001)、失神(2.3%、1.33、p=0.05)、電解質異常(3.1%、1.35、p=0.02)、急性腎障害/腎不全(4.1%、1.66、p<0.001)の発生頻度の有意な増大が認められた。転倒外傷(2.2%、0.95、p=0.71)、徐脈(1.9%、1.19、p=0.28)の有意差はみられなかった。また、これら重度有害事象の発生パターンの差は、75歳以上被験者についてみた場合も同様であった。

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日本COPDサミット~健康寿命延長に向けて変わるCOPD予防・治療の最前線~

 11月5日都内(文京区)にて、2015年度日本COPDサミットが開催された(主催:一般社団法人GOLD日本委員会/一般社団法人日本呼吸器学会/公益財団法人日本呼吸器財団)。 本年の世界COPDデーは11月18日であり、この日に向け、世界各国でさまざまな啓発イベントが実施されている。本サミットもその一環として企画された。 冒頭、三嶋 理晃氏(日本呼吸器学会 理事長)は、「各団体がタッグを組むことにより、インパクトある啓発活動につなげ、各メディア・自治体・医療関係者・一般市民への情報発信を高める後押しをする」と本サミットの目的を述べた。 以下、当日の講演内容を記載する。COPDはもはや肺だけの疾患ではない COPDはタバコの煙を主因とする閉塞性の肺疾患であるが、近年COPDは全身性の炎症疾患と考えられるようになってきた。実際、COPDは肺がん・肺炎・肺線維症などの肺疾患だけでなく、糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症、消化器病、うつ・記銘力低下などへの影響が報告されている。 この点について、長瀬 隆英氏(GOLD日本委員会 理事)は、なかでも糖尿病には注意が必要だと述べた。糖尿病患者がCOPDを併存すると生命予後が悪くなること1)、反対に、血糖コントロールが不良であると肺機能が有意に低下することが報告されているからである2)。しかしながら、COPDがさまざまな疾患に影響を及ぼす理由については、いまだ不明な点もあるため、今後さらなる研究が必要といえそうだ。受動喫煙は他人をむしばむ深刻な問題 受動喫煙のリスクについては、これまでも問題となってきた。加藤 徹氏(日本循環器学会禁煙推進委員会 幹事)は、「さらなる受動喫煙の問題は、分煙では防ぐことができない点である」と強調した。その理由は、「受動喫煙」の10%はPM2.5粒子成分(径<2.5μm)と同じくらいの非常に小さな粒子であるため、分煙してもドアなどの隙間から漏れ出るからである。さらに、この小さな粒子は、一度肺内に侵入すると肺胞の奥深くにまで到達し、一部は呼出されるが、大部分が湿った空気で膨張して居座り、悪さをする。仮に煙を直接吸わなかったとしても、喫煙後3~5分間は喫煙者からこれらの粒子が呼出されることがわかっているため、注意が必要である。 加藤氏は「喫煙をしなくても受動喫煙に曝露することで、心筋梗塞や脳卒中、喘息、COPDになりやすくなる」と述べ、屋内全面禁煙の重要性を強調した。すでに禁煙推進学術ネットワーク(2015年10月現在、27学会が参加)から2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例」制定の要望書が東京都に提出されている。今後、受動喫煙を防止するための積極的な対策が望まれる。COPDで注意すべき3つの合併症 COPDではさまざまな合併症が存在するが、石井 芳樹氏(日本呼吸器財団 理事)は「肺がん、気腫合併肺線維症、喘息にはとくに注意が必要」と述べた。【肺がん】 COPDは喫煙とは独立した肺がん発症のリスク因子であり、10年間の肺がん発生率は約5倍にもなるという3)。さらに、COPD患者では、喫煙量が同等であっても肺がんによる死亡率が7倍も増加すると報告されている4)。これに対し加藤氏は、「早期にCOPDを発見し、禁煙をすることが死亡率を低下させるうえで何より重要」と述べた。【気腫合併肺線維症】 気腫合併肺線維症の特徴は、肺気腫による閉塞性障害と肺線維症による拘束性障害が合併すると、呼吸機能の異常が相殺されマスクされる点にあるという。2つの病態が重複することで一酸化炭素拡散能の低下がさらに増強され、低酸素血症や肺高血圧が悪化する。COPDは肺がんとの合併率が高いが、肺線維症が合併すると肺がん発症率がさらに高くなるため5)、慎重な経過観察が重要である。【喘息】 近年、COPDと喘息を合併する、オーバーラップ症候群が問題となっている。COPDと喘息は異なる病態の疾患であるが、咳、痰、息切れ、喘鳴など症状の鑑別が、とくに喫煙者と高齢者においては難しい。このオーバーラップ症候群は、年齢とともに合併率が増加するといわれている6)。喘息を合併することで、COPD単独の場合よりも増悪頻度は高くなり、重症な増悪も多くなるという7)。加藤氏は、それにもかかわらず喘息患者が喫煙をしているケースが散見される、として「とくに喘息患者では禁煙指導を徹底して、オーバーラップ症候群への進展を防ぐことが重要である」と述べた。COPDにおける地域医療連携のあり方 COPDの診断には呼吸機能検査が必須であるが、一般の開業医では難しいのが現状である。このことに関して、中野 恭幸氏(滋賀医科大学内科学講座 呼吸器内科 病院教授)は、「手間がかかる」、「検査時に大きな声を出さないといけない」、「数値が多すぎて理解が難しい」などを理由として挙げた。こうしたことも相まって、COPD患者の多くが未診断・未治療であることが問題となっているが、呼吸器専門医だけでは、多くのCOPD患者を管理することは難しい。 このような事態を受けて、滋賀県では数年前から地域医療連携への取り組みを始めた。専門医が病院で呼吸機能検査やCTを行い、その結果を基に標準的治療方針を決定し、その後は、一般開業医が担当する。さらに、急性増悪で入院が必要な際には専門医が引き受ける、などの体制を整えている。 しかしながら、専門医に紹介するときには、COPDがかなり進行している場合も多く、いかに早い段階で専門医に紹介するかが焦点となりそうだ。中野氏は「この取り組みは現在、大津市医師会で実施しているが、今後は滋賀県全体のパスになることが望まれる」と述べ、そのためには医師会主導で進めることも重要だとした。 その他、滋賀県では、医薬連携にも力を入れている。近年、COPDには、さまざまな吸入デバイスが登場し、デバイス指導がより一層重要な意味を持つようになった。そのため滋賀県では、地域の関係者が連携し、吸入療法の普及と質的向上を図ることを目的として、滋賀吸入療法連携フォーラム(SKR)が結成された。本フォーラムは年7~8回開催され、会場ではさまざまなデバイスに触れることができる。その他の医療従事者に対しても講習会を開くなどして、多職種でチームとなってCOPDに向き合う体制づくりを行っている。COPDにおける運動療法の役割 「重度のCOPD患者では、呼吸機能だけでなく、精神的な悪循環にも焦点を当て、QOLを重視することが大切」と黒澤 一氏(日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会 部会長)は述べた。そのうえで、日本での普及が十分とはいえない呼吸リハビリテーション(運動療法)の有用性について触れた。 黒澤氏は「強化リハビリテーションにより筋肉がついたり、関節が柔らかくなることにより、体を動かすときの負荷が減り、呼吸機能的にも精神的にも余裕ができる」と述べた。しかしながら、問題は、強化リハビリテーションにより一時的に改善がみられても、飽きてしまい続かないケースが多いことだという。これらのことから、「負荷の大きいリハビリテーションではなく、活動的な生活習慣を送ることを意識すべき」と黒澤氏は述べた。そのうえで、自分のペースで動作をすることができるスポーツが有効として、例として「フライングディスク」を挙げた。フライングディスクを行うことによって、身体活動性が向上し身体機能の強化にもつながるという。さらに生きがいや仲間ができることによって前向きになり、呼吸機能にも良い影響が及ぶようだ。だが、この競技へのサポート体制はまだ十分ではなく、今後の課題と言えそうだ。 最後に、福地 義之助氏(GOLD日本委員会 代表理事)は、「今後COPDの一般国民への認知率向上を推し進めていくとともに、臨床医師の疾患に対する理解や診断・治療力の向上が必要である。さらに、COPDは全身に及ぶ疾患であることから、他の診療科との連携強化にも力を入れていく」と締めくくった。(ケアネット 鎌滝 真次)参考文献1)Gudmundsson, et al. Respir Res. 2006;7:109.2)Yeh HC, et al. Diabetes Care. 2008;31:741-746. 3)Skillrud DM, et al. Ann Intern Med. 1986;105:503-507. 4)Kuller LH, et al. Am J Epidemiol. 1990;132:265-274.5)Kitaguchi Y, et al. Respirology. 2010;15:265-271.6)Soriano JB, et al. Chest. 2003;124:474-481.7)Hardin M, et al. Respir Res. 2011;12:127.

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米国における主要6要因の死亡率の変化/JAMA

 1969~2013年の米国死亡統計データを分析した結果、全死因(心疾患・がん・脳卒中・不慮の外傷・糖尿病の統合)の年齢標準化死亡率は減少の傾向が認められたという。米国がん協会のJiemin Ma氏らが報告した。ただし、心疾患、脳卒中、糖尿病の減少割合は鈍化がみられ、また同期間中COPDの死亡率は増大していた。JAMA誌2015年10月27日号掲載の報告。1969~2013年の全死因、主要6死因死亡率の経時的変化を調査 本検討は、米国における全死因および主要6要因(心疾患、がん、脳卒中、COPD、不慮の外傷、糖尿病)の死亡率について、経時的変化の傾向を調べることを目的とし、1963~2013年の全米人口動態統計データをjoinpoint分析して行われた。 主要評価項目は、年齢標準化死亡率と75歳未満の損失生存可能年数(years of potential life lost:YPLL)の総計および年間割合の変化で、全死因統合および各死因について評価した。COPDのみ増大、また近年は心疾患、脳卒中、糖尿病の死亡率低下が鈍化 1969~2013年の年齢標準化死亡率(人口10万当たり)は、全死因は1,278.8から729.8に減少していた(減少率42.9%、95%信頼区間[CI]:42.8~43.0%)。脳卒中は156.8から36.0に(77.0%、76.9~77.2%)、心疾患は520.4から169.1(67.5%、67.4~67.6%)、不慮の外傷65.1から39.2(39.8%、39.3~40.3%)、がんは198.6から163.1(17.9%、17.5~18.2%)、糖尿病は25.3から21.1(16.5%、15.4~17.5%)に減少していた。 一方で、COPDは21.0から42.2に増大していた(増加率100.6%、95%CI:98.2~103.1%)。 しかし、joinpoint分析により、直近期間において、男性COPD死亡率の低下が始まっていることが、また心疾患、脳卒中、糖尿病の死亡低下率が鈍化していることが判明した。たとえば、心疾患死亡の年間低下率は、2000~10年では3.9%(95%CI:3.5~4.2%)であったが、2010~13年では1.4%(同:0.6~3.4%)であった(傾斜差p=0.02)。 また、1969~2013年の年齢標準化YPLLは、糖尿病は1.9から1.6に(減少率14.5%、95%CI:12.6~16.4%)、がんは21.4から12.7に(40.6%、40.2~41.1%)、不慮の外傷は19.9から10.4に(47.5%、47.0~48.0%)、心疾患は28.8から9.1に(68.3%、68.1~68.5%)、脳卒中は6.0から1.5に(74.8%、74.4~75.3%)それぞれ有意に減少していた(p<0.05)。一方で同一期間中、COPDのYPLLは有意な減少はみられなかった。

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肝炎は全例が“治る”時代、では今後の対策は?

 ギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)の主催により、“新薬「ソバルディ」「ハーボニー」登場で変わる肝炎治療 臨床現場のいま”をテーマに、C型慢性肝炎プレスセミナーが2015年10月27日、東京都中央区で開催された。肝炎ウイルス感染対策、これまでと今後 始めに、田中 純子氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学 医学部 衛生学講座 教授)より「疫学的視点からみたウイルス性肝疾患患者数の経年推移」と題した講演が行われた。 わが国における肝がんの死亡者数は、2000年頃から緩やかに減少しつつあるが、いまだに年間死亡者数は3万人を超えており、対策が望まれる疾患の1つである。 これまで、住民健診における肝炎ウイルス検査の追加(2002年)や、肝炎無料検査の実施(2007年)、肝炎対策基本法の施行(2010年)などにより、世界の中でも早期に肝炎ウイルス対策に取り組んできた。田中氏は、「検査強化を施策として行ってきた結果、肝炎ウイルスの潜在キャリア数は、推定240~305万人(2000年)から、推定77.7万人(2011年)に減少することができた」と述べた。しかし、感染を知ったものの、(継続的な)受診をしないキャリアが、いまだに推定53~118万人存在するため、受診勧奨や受療継続といった課題が残されているという1)。田中氏は、今後の肝炎・肝がん対策について、「すでに通院中の人には、適切な治療を受けられるようにすること、肝がんの自覚症状がなく、病院受診に至っていない人には、治療に結び付くよう工夫することが、肝炎・肝がん死亡減少のため重要となる」と指摘した。肝炎治療、油断は禁物 次に、榎本 信幸氏(山梨大学 医学部内科学講座第一教室 教授)より「C型慢性肝炎の最新治療」と題した講演が行われた。 これまでC型肝炎治療は、ペグインターフェロン・リバビリン療法が一般的であったが、副作用の問題や、患者の高齢化(すでに治療経験があり、インターフェロンが使えないケースや、効かないケースが増加)といった問題から、投与方法や副作用管理が簡便な治療が望まれていた。こうした背景の下、インターフェロンフリーの治療薬発売が続いているなかで、今年9月、新たに1日1回1錠、12週間の経口投与で治療を完了するジェノタイプ1型 C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠、以下ハーボニー)が発売された。ハーボニーは、治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢および投与前のNS5A耐性変異の有無にかかわらず、SVR12率は100%を達成している。 このように一見、C型肝炎は解決したように思えるが、榎本氏は、「C型肝炎ウイルスが消えても肝がんができることがあるため油断はできない」と警鐘を鳴らす。とくに「高齢」、「男性」、「γGTP上昇」、「AFP上昇」では肝がんリスクが高くなるため、ウイルス排除後のフォローが重要だという。榎本氏は、「“肝がん予防のABC”という考え方、すなわち、A:Age(65歳以上)、B:B型肝炎、C:C型肝炎、D:DM(糖尿病、血糖値が高い)、E:Ethanol(アルコールを毎日飲む)、F:Fibrosis(線維)、Fat(脂肪)、Fe(鉄)、G:Gender(男性)のすべてに注意を払うことが大切、BやCだけを治すようでは手遅れとなることもある」と注意を促した。費用対効果の判断は冷静に 最後に、五十嵐 中氏(東京大学大学院 薬学系研究科 特任准教授)より「ソバルディ・ハーボニーの医療経済的な価値」と題した講演が行われた。 新薬の医療経済評価を行うには、原則として「増分費用効果比(コスト増加分の質調整生存率に対する割合)」を考慮し、増大した分のコストが、健康で過ごせる期間に見合っているかを判断する。五十嵐氏は、「“ソバルディ”、“ハーボニー”は、価格だけみれば確かに高価だが、コスト増大分に見合った効果の改善があれば良いのではないか」と述べた。 肝炎から肝硬変、肝がんに進行してしまった場合、難しい治療や多額の治療費用が必要になることも珍しくはない。五十嵐氏は、「高額な薬代であっても、健康に過ごせる期間の延長や、将来的な治療費削減効果を考えれば、妥当ではないか」と説明し、講演を締めくくった。 ソバルディ、ハーボニーの登場により、肝炎治療の未来は明るくなった。だからこそ、今後、ウイルス排除後のフォローなど、肝炎・肝がん死亡減少のための対策が重要となってくるのではないか。(ケアネット 佐藤 駿介)参考1)田中純子ほか. a肝炎ウイルス感染状況に関する疫学基盤研究. In:急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究. 肝炎等克服政策研究事業.

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SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)-446

 これまで、フラミンガム研究あるいはわが国の久山町研究、HOMED-BP研究などの観察研究では、収縮期血圧120mmHg以上から心血管合併症が増えてくることが明らかにされており、120mmHgが至適血圧値とされてきた。しかし、降圧薬治療でこのレベルまで下げることの是非については、多くの議論があった。とくに、高齢者では降圧目標値は高めにすべき、という意見は少なくなかった。しかし、本研究は、高齢者や冠動脈疾患の高リスク症例ほど収縮期血圧120mmHgという厳格な降圧が、140mmHgというこれまでの標準値とされたレベルまでの降圧治療よりも、心不全発症を含む心血管合併症の発症予防効果が大きく、生命予後を改善することを示し、J曲線の存在を否定した点で意義がある。決め手は心不全発症が少なかったこと。しかし、なぜ心不全なのか 注目すべきは主要評価項目の中でも、心不全発症と心血管死のみが有意かつ大幅に減少しており、これが全体の主要評価項目を、厳格降圧治療群が好ましいという結果に導いていることである。 このような心不全発症の抑制効果が全体の流れに大きく影響するという現象は、かつてのALLHAT試験でも観察され、最近では糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の有用性を検証したEMPA-REG OUTCOME試験でもみられている。前者では降圧薬としてのサイアザイド系利尿薬、後者ではSGLT2阻害薬の利尿作用が、心不全発症の抑制に大きく貢献したと考えられている。 心不全発症を複合エンドポイントに含めるか否かは、結果に大きく影響する。たとえば、糖尿病症例における降圧目標値を120mmHgと140mmHgで比較したACCORD試験では、両群で主要エンドポイントに有意差がなかったが、そのエンドポイントに心不全は含まれておらず、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のみである。複合エンドポイントに心不全を含めるか否かの基準が一定していない。 とくに、SPRINT試験のように非盲検法で行われた試験において、急性心不全発症をどのように客観的に定義したかが知りたいところである。 今回のSPRINT試験でも、サイアザイド類似薬を優先的に使うことが推奨されていることから考えると、やはり心血管合併症を構成する重要な要素である心不全の抑制には利尿薬が不可欠であることを示唆している。この結果を日常診療に反映することは、慎重に~血圧測定環境の違い しかし、SPRINT研究の結果を、そのまま臨床に適応することには慎重であるべきである。血圧測定環境が、医師のいない場所で自動血圧計による3回血圧測定の平均値であることは注目すべきである。すなわち、白衣高血圧を徹底的に除外している状態での血圧評価である。わが国の家庭血圧計を用いた観察研究でも、収縮期血圧がほぼ120mmHg以上から心血管イベントが上昇することをすでに発表していることから、実際の臨床応用に当たっては家庭血圧で静かな環境での収縮期血圧120mmHgを目標とすべきと思われる。 もう1つ注意が必要なことは、今回の結果は血圧が安定するまで1ヵ月ごとの受診という細かい観察を伴う、しかも臨床研究という究極の適正治療の場での結果であることに留意すべきである。 とくに今回明らかになったように、腎機能の悪化、電解質異常の悪化は重篤な病態を招きかねない。低ナトリウム血症、低カリウム血症が厳格降圧群で多いことは、サイアザイド類似降圧薬の影響と思われる。本剤は非常に強力である反面、電解質異常にはくれぐれも注意が必要である。糖尿病合併例や脳卒中既往例は除外されている 糖尿病合併例や脳卒中既往例は対象から除外されている点は、注意が必要である。糖尿病合併高血圧例の降圧レベルに関してはACCORD試験で、脳卒中合併例ではSPS3試験で決着済みという考えからであろうか。今回は、あくまでもJカーブ論争で問題になった冠動脈疾患での降圧レベルの検証ということであろう。 あくまでも臨床研究という適正治療下での結果であり、わが国の一般診療で行っている医師による1回測定ではなく、血圧安定までは毎月の受診という慎重な高血圧診療での結果であることは留意すべきである。 予後を改善することが示されたが、血圧測定環境が日本の一般臨床とは異なること、臨床研究という慎重な観察の下で行われた降圧治療であることを念頭に置くべきである。関連コメントSPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行 氏)SPRINT試験:絶対リスクにより降圧目標を変えるべきか?(解説:有馬 久富 氏)

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11月12日は患者さんと肺炎を話題に

 10月29日、ファイザー株式会社は、岩田 敏氏(慶應義塾大学医学部 感染症学教室 教授)を講師に迎え、「長寿社会ニッポンにおける感染症の潜在リスクと最新対策」をテーマにプレスセミナーを開催した。ワクチンで防ぐ感染症 男女ともに平均寿命が80歳を超えるなかで、今後いかに健康寿命を延伸させ、健康な期間を延ばしていくかが重要となる。その際、わが国の主な死亡原因が、悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患と続くなかで、65歳以上の高齢者では、96.8%が肺炎で亡くなっていることから、肺炎をいかにワクチンなどで予防するかがカギとなる、と岩田氏は説明した。高齢者の半数以上がワクチン接種歴なし 実際、ワクチン接種がどのくらい浸透しているのかを調査した資料がある。同社が全国の60歳以上の男女、7,050人に実施した「全国47都道府県“大人の予防接種”意識調査」によれば、「成人になってワクチンを接種したことがあるか」との問いに、「ある」と回答した人が42.5%(n=2,998)、「ない」と回答した人が50.9%(n=3,585)と、高齢者の半数以上がワクチン接種を受けていない現実が明らかとなった。また、「ある」と回答した人が受けたワクチンの種類では、インフルエンザ(76.8%)が最も多く、次いで肺炎球菌感染症(50.1%)、次に風疹・麻疹(13.8%)となっていた。肺炎に一度かかると… 肺炎球菌の血清型は現在90種類以上が報告され、侵襲性肺炎球菌感染症では5歳未満の小児と65歳以上の高齢者に患者が多く分布している。そして、重要なことは、2013年4月~2014年8月まで肺炎での死亡例154例のうち112例が65歳以上の高齢者ということである(IASR資料より)。高齢者が肺炎にかかるとADLの低下を招き、心身機能の低下が起こる。その結果、廃用症候群が進み、嚥下機能が弱くなることで、さらに肺炎にかかるという負のスパイラルに入ると指摘する。高齢者にとっては、肺炎にかかること自体がリスクであり、これをいかに防ぐかが、長く健康に過ごすための課題となる。今できる対策はワクチンの早期接種 肺炎球菌に対し、わが国で接種できるワクチンは2種類ある。1つは、PCV13(商品名:プレベナー13)であり、もう1つはPPV23(同:ニューモバックスNP)である。 PCV13は、結合型ワクチンであり、適応年齢は2ヵ月以上6歳未満と65歳以上で、小児にも適応があるのが特徴。また、接種経路は小児であれば皮下に、成人であれば筋肉内となる。本ワクチンとプラセボを比較した市中肺炎の累積発症数の研究によれば、その効果は4年以上持続する1)。 PPV23は、多糖体ワクチンであり、適応年齢は2歳以上である。接種経路は筋肉内または皮下であり、昨年より施行されたわが国の65歳以上の高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象ワクチンである。インフルエンザワクチンとの両剤接種で軽症化の効果が報告されている2)。 前述の「“大人の予防接種”意識調査」によれば、「医師から肺炎球菌ワクチンの接種について詳しい説明を受けたいと思うか?」という問いに対し、「説明を受けたいと思う」と回答した人が66.6%(n=4,694)に上る一方、「受けたいと思わない」(18.1%/n=1,274)、「わからない」と回答した人も15.3%(n=1,082)おり、浸透度の足踏みが懸念されている。 肺炎のリスクは、5歳未満(とくに2歳未満)の小児と65歳以上の高齢者、そして、糖尿病、心疾患などの基礎疾患のある人、療養中で免疫力が低下している人、脾臓を摘出した人、喫煙をしている人などに高い。とくに高齢者は、前述の負のスパイラルにならないためにも、場合によっては定期接種を待たずに接種を受けさせることも大切だという。 最後に、「11月12日は『世界肺炎デー』である。こうした機会に、医療者と患者の間で肺炎やワクチンが話題になることで、さらに感染症予防が進むことが重要」とレクチャーを終えた。ファイザー株式会社の「“大人の予防接種”意識調査」はこちら。(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツケアネット・ドットコム 特集「肺炎」はこちら。参考文献1)Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015;372:1114-11252) Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069.

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インスリン複数回/日投与患者にGLP-1製剤は有効か/BMJ

 インスリン複数回/日治療中の血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者に対し、GLP-1製剤リラグルチド(商品名:ビクトーザ)を併用することで、低血糖リスクを増大することなく血糖コントロールを改善し、体重減少およびインスリン投与量を減らせることが報告された。スウェーデン・イエーテボリ大学のMarcus Lind氏らが、124例対象の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い明らかにした。2型糖尿病患者へのインクレチンベースの製剤の有効性は、経口糖尿病薬または基礎インスリンのみ服用の早期ステージ患者については示されているが、インスリン複数回/日投与を必要とする患者については不明であった。BMJ誌オンライン版2015年10月28日号の掲載報告。124例を登録し無作為化二重盲検プラセボ対照試験 試験は、スウェーデン国内の13病院と1プライマリケア・ユニットで行われた。 被験者は、2型糖尿病で血糖コントロールが不十分(HbA1c値7.5%~11.5%)、BMI値27.5~45、インスリン複数回/日投与を必要とする患者を適格とし包含。最小化割り付けにて、リラグルチド皮下注群またはプラセボ群に割り付け、6、12、18、24週時点でフォローアップ評価を行った。 主要評価項目は、ベースラインから24週までのHbA1c値の低下であった。 2013年2月~14年2月に被験者登録を行い、試験は同年8月に完了。総計124例が無作為化を受け、少なくとも1回のフォローアップ評価を受けた122例を全解析に組み込み、主要有効性解析を行った。低血糖リスクを増大せず血糖コントロール改善、体重やインスリン投与量も減少 全解析コホートのベースラインでの両群特性は類似していた。HbA1c値はリラグルチド群8.98%(74.6mmol/mol)、プラセボ群8.96%(74.4mmol/mol)で、年齢(63.8、63.6歳)、性別(男性63.5、66.1%)、BMI値(33.7、33.5)、インスリン投与量/日(105.3、105.6単位)、接種回数/日(4.5、4.4回)、罹病期間(17.3、17.0年)などであった。 結果、24週時点までのHbA1c値低下は、リラグルチド群1.55%、プラセボ群は0.42%で、前者の有意な低下が認められた(p<0.001)。両群差は-1.13%(95%信頼区間[CI]:-1.45~-0.81)であった。 また、体重がリラグルチド群で有意に低下し(3.8 vs.0.0kg、両群差:-3.8、95%CI:-4.9~-2.8)、インスリン投与量/日も有意に低下した(18.1 vs.2.3単位、両群差:-15.8、95%CI:-23.1~-8.5)。 盲検下での血糖値連続モニタリングの結果もリラグルチド群で有意な低下が認められた(平均値:-1.9mmol/L、SD値:-0.5mmol/L)。 重症低血糖例や、症候性または無症候性の非重症低血糖(<4.0または<3.0mmol/L)エピソードについて、いずれも両群間で有意な差はみられなかった。フォローアップ中の症候性非重症低血糖(<4.0mmol/L)エピソードは、リラグルチド群1.29例、プラセボ群1.24例であった(p=0.96)。 また、悪心がリラグルチド群で21例(32.8%)報告された。プラセボ群は5例(7.8%)であった。なお、重篤な有害事象の報告はそれぞれ3例(5%)、4例(7%)であった。 試験は相対的に短期間であり限界があったが、著者は、「リラグルチドの持続的な効果は、他の治療レジメンとの関連で長期にわたることが見て取れた」と述べている。一方で「リラグルチドの長期曝露による心血管系の安全性および潜在的有害事象についての評価が必要である」と指摘している。

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2型糖尿病の超過死亡リスクは多様/NEJM

 2型糖尿病患者は一般集団よりも全死因死亡率が15%、心血管死亡率は14%高く、55歳未満では血糖値が目標値内であっても死亡リスクが約2倍に上昇するなど、超過リスクはきわめて多様であることが、スウェーデン・イエーテボリ大学のMauro Tancredi氏らの調査で示された。2型糖尿病患者の最も頻度の高い死因は心筋梗塞であり、そのリスクは脂質低下薬や降圧薬、良好な血糖コントロールにより低減するが、それでも一般集団に比べ死亡の超過リスクが残存する。同氏らは最近、1型糖尿病患者において、HbA1c値が目標値(≦6.9%)でも死亡リスクが2倍に達することを報告していた。NEJM誌2015年10月29日号掲載の報告より。約255万例で死亡の超過リスクを評価 研究グループは、血糖コントロールや腎合併症の病態が異なる2型糖尿病患者において、全死因死亡および心血管系の原因による死亡の超過リスクを評価するレジストリベースの検討を行った(スウェーデン政府などの助成による)。 対象は、1998年1月1日以降にスウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者であった。1人の患者に対し、一般集団から5人の対照を無作為に選び、年齢、性別、居住県を適合。全参加者は、スウェーデン原因別死亡登録により2011年12月31日まで追跡された。 255万2,852例(糖尿病群:43万5,369例、対照群:211万7,483例)が解析の対象となった。平均年齢は糖尿病群が65.8±12.6歳、対照群は65.5±12.5歳、女性はそれぞれ44.5%、45.1%であった。糖尿病群でスウェーデン生まれ(82.9 vs.87.6%)、大学卒以上(15.7 vs.23.4%)が少なかった。 糖尿病群の平均HbA1c値は7.1%、罹患期間は5.7年であった。平均フォローアップ期間は、糖尿病群が4.6年、対照群は4.8年だった。75歳以上の血糖コントロール良好例ではリスクが低下 全体の死亡率は糖尿病群が17.7%(7万7,117/43万5,369例)であり、対照群の14.5%(30万6,097/211万7,483例)に比べ有意に高かった(補正ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.14~1.16)。 心血管死亡率も、糖尿病群が7.9%と、対照群の6.1%に比し有意に高かった(補正HR:1.14、95%CI:1.13~1.15)。 全死因死亡および心血管死の超過リスクは、年齢がより低いほど、血糖コントロールが不良なほど、腎合併症が重度であるほど増加した。 対照群と比較して、血糖コントロールが良好な糖尿病患者(HbA1c値≦6.9%)の全死因死亡HRは、55歳未満の患者では1.92(95%CI:1.75~2.11)と約2倍高かったが、75歳以上の患者では0.95(95%CI:0.94~0.96)と低かった。 また、正常アルブミン尿の患者では、対照群と比較した死亡のHRは、HbA1c値≦6.9%・55歳未満の患者が1.60(95%CI:1.40~1.82)と高リスクであったのに対し、75歳以上の患者は0.76(95%CI:0.75~0.78)と低リスクであり、65~74歳の患者もリスクが低かった(HR:0.87、95%CI:0.84~0.91)。 著者は、「一般集団と比較した2型糖尿病患者の死亡率はきわめて多様であった。大規模な患者群では著明な超過リスクが認められたが、年齢層や血糖コントロール、腎合併症の病態の違いによっては、死亡リスクが低下する場合もあった」としている。

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脳出血再発予防における積極的降圧の可能性(解説:有馬 久富 氏)-442

 脳出血再発予防における血圧コントロールの重要性を示す報告が、JAMA誌に掲載された。本研究は、脳出血生存者を対象とした前向きコホート研究である。1994~2013年にマサチューセッツ総合病院へ入院した脳出血患者のうち、90日以上生存した1,145例を平均約3年間追跡し、血圧コントロール状況および到達血圧と脳出血再発との関連を検討している。その結果、治療中の血圧が140/90mmHg以上(非糖尿病)あるいは130/80mmHg以上(糖尿病)であったコントロール不良例では、脳出血再発のリスクが3.5~4.2倍上昇していた。到達血圧と脳出血再発の検討では、再発の最も少ない至適血圧レベルは120/80mmHg未満であった。 本研究は、脳出血生存者に限定して血圧と再発との関連を検討した研究の中では、対象者数が最も多い。また、追跡不能例も約2%と少ないため、精度の高い研究といえるであろう。 しかしながら、本研究には、さまざまなlimitationがある。まず、マサチューセッツ総合病院へ入院した者のみを対象としているため、本研究の結果が米国内外の脳出血患者全般に当てはまるかどうかはわからない。次に、リクルート期間が1994~2013年と長期間にわたっているが、この間に脳出血の急性期治療および再発予防対策は、大きな変遷を遂げている。このような時代の影響は、解析の中で考慮されていない。また、血圧は、統一された方法で測定されておらず、通院中の医療機関で測定した血圧値を解析に用いている。追跡期間が10ヵ月から20年までばらついていることも、結果に影響を与えているかもしれない。さらに、多変量解析において調整項目を数学的に選択しているが、このようなアプローチに対しては近年批判も多い。 このようなlimitationはあるものの、本研究から得られた結果は過去の研究結果と一致しているため、外的妥当性が保たれていると考えられる。脳卒中2次予防における降圧療法の有用性を確立した無作為化比較試験PROGRESSのサブ解析では、治療中の血圧レベルと脳出血再発との間に直線的な関係を認め、脳出血再発が最も少ない至適血圧レベルは115/75mmHg以下であった1)。ラクナ梗塞生存者において、収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする積極的降圧療法の効果を検討した無作為化比較試験SPS3では、積極的降圧療法により脳出血再発が有意に63%減少した2)。 「高血圧治療ガイドライン2014」および「脳卒中治療ガイドライン2015」は、脳出血生存者における再発予防のための降圧目標として、140/90mmHg未満(可能であれば130/80mmHg未満)を推奨している。しかし、本研究および過去の研究結果を考え合わせると、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする積極的降圧療法により、脳出血再発をさらに抑制することができるかもしれない。   このような仮説を基に、わが国では、脳卒中2次予防において降圧目標を120/80mmHg未満とする積極的降圧療法の効果を検討する、無作為化比較試験RESPECTが進行中である。また、ヨーロッパでは、脳卒中2次予防における積極的降圧療法、および積極的脂質低下療法の効果を検討する無作為化比較試験ESH-CHL-SHOTも進行中である。さらに、脳出血生存者のみに対象者を限定して、降圧薬トリプル合剤を用いた積極的降圧療法の再発予防効果を検討する無作為化比較試験TRIDENTも、オーストラリアで開始される予定である。これらの臨床試験により、脳出血再発予防における至適降圧目標が明らかになるものと期待される。

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114)認知症にならない退職後の過ごし方【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、来年で退職をする予定にしています。 医師そうですか。長い間、お疲れ様でした。退職後はどうされるんですか? 患者まだ、具体的には考えていないんですけど……。 医師なるほど。セカンドライフの過ごし方も、人それぞれですからね。同じ様な仕事を続ける方、違う仕事を探す方、趣味やボランティア活動をされる方、中にはいつも家にいて奥様に煙たがられている人もいます。 患者ハハハ……私も煙たがられないようにしないと。 医師最近の研究では、何か目的意識や生きがいがある人の方が、脳梗塞やアルツハイマー病になるリスクが低くなるそうですよ。 患者そうですか。家でゴロゴロしていては、ボケてしまうんですね。何か目標になることを探します(うれしそうな顔)。●ポイント目的意識や生きがいが、健康寿命を延伸させることをわかりやすく伝えます 1) Yu L, et al. Stroke.2015;46:1071-1076. 2) 中原 純.生老病死の行動科学.2008;13:45-52. 3) Boyle PA, et al. Arch Gen Psychiatry. 2010;67:304-310.

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