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抗VEGF薬、全身性有害事象リスクの増加はなし

 フランス・Bretonneau HospitalのMarie Thulliez氏らは、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫または網膜静脈閉塞患者において、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射と全身性有害事象との関連を評価するため、それらを検討したシステマティックレビューおよびメタ解析について要約を行った。「抗VEGF療法は全身性有害事象のリスクを増加することはない。しかし、出血リスクの高い加齢黄斑変性の高齢患者に、ラニビズマブを投与する際には注意をすることが望ましい」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年3月22日号掲載の報告。 研究グループは、PubMedおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsデータベースを用い、システマティックレビューおよびメタ解析を検索し、抗VEGF療法と各システマティックレビューで報告された結果についてまとめた。 システマティックレビューの質は、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)チェックリストおよびAMSTAR(A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews)チェックリストver.1を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2011年1月1日~2016年6月30日に発表された21報のシステマティックレビューについて検討した。・21報中11報が、主要評価項目として全身性有害事象について解析していた。・PRISMA(27項目)およびAMSTARスコア(0~11)の中央値(四分位範囲)は、それぞれ23(15~27)および8(5~11)であったが、5報はPRISMAが20未満、AMSTARスコアが7未満であった。・すべてのレビューは、それらに組み込んでいる研究の方法論的なバイアスリスクを客観的なスケールで評価していた。最もよく用いられていたのは、Cochrane Risk of Bias Toolであった(21報中16報、76%)。・抗VEGF薬は対照と比較し、全身性有害事象のリスクを増加させなかった。また、抗VEGF薬の月1回の計画投与と必要時投与との比較でも同様であった。・最新の網羅的に行われたレビューでは、ベバシズマブはラニビズマブと比較し全身性有害事象のリスク増加と関連していなかったが、ラニビズマブは対照と比較して、加齢黄斑変性患者における非眼性出血リスクの増大と関連している可能性が示された。

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簡単な便秘対策は、トイレを我慢しない

 2018年3月27日、株式会社ツムラ後援による第4回Kampo Academiaプレスセミナーが都内において開催された。今回のテーマは「便秘における漢方薬の再認識」。セミナーでは、日常診療で見過ごされやすい便秘の機序、影響、治療での漢方薬の役割、対策についてレクチャーが行われた。思い当たる? 7~8人に1人は便秘症状 セミナーでは、中島 淳氏(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)を講師に迎え、「~腸内環境は気になるけれど、“たかが便秘”と自己流の対策で悪化させていませんか?~便秘における漢方薬の再認識」をテーマに講演が行われた。 便秘の中でも、慢性の便秘は日本人の7~8人に1人は症状があるとされている(厚生労働省「平成25年(2013年)国民生活基礎調査」)。 そして、便秘とは、「排便回数の減少」と「排便困難症」が相まった病態であるとされ、ホルモンの関係から患者は女性で圧倒的に多い(ただし高齢になるにつれ性差は縮小)。長期間にわたり罹患し、治癒することは難しいとされる。その原因として、一番問題となるのは「便意の我慢」であり、そのほか間違えたダイエットや加齢による大腸運動の低下、薬剤によるものなどがあるという。 便秘が日常生活に及ぼす影響として、放置により疾患の原因となる可能性があり、便秘が続くと腸内環境はどんどん悪化する。また、便秘はQOLを下げるので、日常活動性や労働生産性の低下を招き、職場の欠勤率を上昇させるという報告もある。 慢性便秘症の分類には、「便秘型IBS」「機能性便秘」「薬剤性便秘」「症候性便秘」「器質性便秘」の5つがあり、薬剤性では抗うつ薬や抗コリン薬など、症候性では糖尿病、パーキンソン病など、器質性では大腸がん、炎症性腸疾患などに、とくに注意が必要だという。患者が満足する便秘治療とは 便秘の治療としては、かかりつけ医、消化器内科、胃腸科、肛門科、内科が主診療科となるが、「医療者の意識改革も必要であり、便秘の治療では、単に排便ができるようになるだけでなく、患者満足度の高い治療を行うことが重要」と中島氏は指摘する。たとえば、刺激性下剤により排便がされたとしても、水様便で下痢のままでは、患者満足度は低いままである。そうならないためには、「完全排便を目指す」「便形状の正常化(ブリストルスケールで“4”)」「初診で刺激性下剤を出さない」の3点に加え、便形状の聞き取りなどの外来でのフォローが重要だという。 現在、便秘で処方される治療薬としては、緩下剤(便をやわらかくし、排便促進作用)、刺激性下剤(腸を刺激し、強制的に排便させる作用)、漢方薬(体質や症状に合わせて選択できる)の3種類がある。緩下剤では、酸化マグネシウムがわが国では広く処方されているが、高マグネシウム血症への注意や併用注意薬の多さが短所であり、刺激性下剤であるセンノシドなどでは、連用することで習慣性、依存性が生じ、効果が低下することが指摘されている(海外では頓用で使用される)。 その点、漢方薬は、患者の安心感が高く、作用の強弱が選択でき、便秘周辺症状(腹部膨満など)にも対応できることで最近見直されているという。 具体的には、「大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)」「麻子仁丸(マシニンガン)」「潤腸湯(ジュンチョウトウ)」「桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)」「防風通聖散(ボウフウツウショウサン)」「大建中湯(ダイケンチュウトウ)」の6種類が、便秘の治療で使われる代表的な漢方薬である。 各漢方薬の特徴として、次の点が挙げられる。「大黄甘草湯」は、比較的作用が強くエビデンスもあるが、高齢者には注意が必要である。「麻子仁丸」は、高齢者に適している。「潤腸湯」は効果がマイルドで軽症から中等症の患者や高齢者に適している。「桂枝加芍薬大黄湯」は、腹部膨満感や腹痛、ガス排出など便秘周辺症状にも効果がある。「防風通聖散」は、作用が弱いもののゆっくりと効果を発揮し、中高年に適している。「大建中湯」は、作用が弱いものの、下腹部の重さ、痛みなどの便秘周辺症状にも適している。「このように多種の漢方薬をうまく使いこなすことで、患者のさまざまな訴えに対応することができる。ただし、妊婦、産婦、授乳婦への投与について安全性が確立されていないので処方には慎重な判断が必要」と、同氏は注意を促す。便秘対策は生活習慣の改善と排便姿勢から 便秘対策としては、食物繊維・運動・水分不足といった生活習慣の是正が重要であり、子供のころからトイレを我慢しない行動も大事だという。また、排便の姿勢について、和式トイレのしゃがんだ姿勢が理想だが、洋式トイレが主流の現代では、前かがみ35度の前傾姿勢で排便するのが望ましいとしている。 まとめとして同氏は、「患者の半分以上が便秘治療に不満足の今、満足度の向上が必要である。自己流ではなく自分に適した対策のため、便秘は放置せずに医師に相談する。漢方薬を服用する際は、正しく理解して服用し、自己判断せずに専門医に処方してもらうことが大切だ」と語り、レクチャーを終えた。■参考日本東洋医学会漢方のお医者さん探し

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心不全ガイドラインを統合·改訂(後編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会が、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。今回は後編。(前編はこちら)新たな心不全ガイドラインは診断フローチャートを簡略化 慢性心不全診断のフローチャートは、2010年版ガイドラインから大幅に簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドライン(Ponikowski P, et al. Eur Heart J.2016;37:2129-2200)を下敷きとしながらも、わが国の実態を踏まえ、画像診断を重視するチャートになっている。急性心不全治療のフローチャートも新規作成 「時間経過と病態を踏まえた急性心不全治療フローチャート」や、「重症心不全に対する補助人口心臓治療のアルゴリズム」の作成、「併存症の病態と治療」に関する記載の充実も新たな心不全診療ガイドラインの主要な改訂ポイントのひとつである。併存症は、心房細動、心室不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症・痛風、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害について記載されている。心不全合併高血圧には、4種薬剤が推奨クラスI、エビデンスレベルA 新たな心不全診療ガイドラインでは、高血圧を合併したHFrEFに対する薬物治療は、ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の[推奨クラス、エビデンスレベル]が[I、A]、利尿薬が同上[I、B]、カルシウム拮抗薬が同上[IIa、B]とされた。なお、長時間作用型のジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は陰性変力作用のため使用を避けるべきと注記されている。 高血圧を合併したHFpEFに対する治療は、適切な血圧管理が同上[I、B]、基礎疾患の探索と治療が同上[I、C]とされた。心不全合併糖尿病には、包括的アプローチとSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)を推奨 心不全を合併した糖尿病に対する治療は、食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的アプローチが同上[I、A]、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が同上[IIa、A]、チアゾリジン薬が同上[III、A]とされた。CKD合併心不全は、CKDステージで推奨レベルが異なる CKD合併心不全に対する薬物治療は、CKDステージ3とステージ4~5に分けて記載されている。 CKDステージ3においては、β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが同上[I、A]、ARBが同上[I、B]、ループ利尿薬が同上[I、C]となっている。CKDステージ4~5においては、β遮断薬が同上[IIa、B]、ACE阻害薬が同上[IIb、B]、ARB、MRAが同上[IIb、C]、ループ利尿薬が同上[IIa、C]とされた。新たな心不全ガイドラインでは血清尿酸値にも注目 心不全を伴う高尿酸血症の管理においては、血清尿酸値の心不全の予後マーカーとしての利用が[IIa、B]、心不全患者における高尿酸血症への治療介入が[IIb、B]とされた。国内未承認の治療法も参考までに紹介 海外ではすでに臨床応用されているにもかかわらず、国内では未承認の治療薬やデバイスがある。ARB/NEP阻害薬(ARNI)や、Ifチャネル阻害薬などだ。これらの薬剤は「今後期待される治療」という章で、開発中の治療と並び紹介されている。

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DPP-4阻害薬で炎症性腸疾患リスク増大/BMJ

 2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬は、炎症性腸疾患(IBD)のリスク増大と関連することが、カナダ・Jewish General HospitalのDevin Abrahami氏らによる住民コホート研究の結果、明らかにされた。著者は「結果について再現性があるのかを確認する必要があるが、医師はこうした関連の可能性があるということを念頭に置くべきであろう」と指摘している。IBDのような自己免疫疾患における、DPP-4酵素が及ぼす影響は解明されていない。しかし、低濃度のDPP-4酵素がIBDの疾患活動度を高めることは知られている。これまで、DPP-4阻害薬とIBD発症との関連を検討した観察研究は行われていなかったという。BMJ誌2018年3月21日号掲載の報告。英国14万1,170例の住民コホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬の使用がIBD発症と関連しているかを、住民コホート研究にて評価した。 700ヵ所以上の一般診療所(GP)が関与している英国の医療関連データベース(UK Clinical Practice Research Datalink)を用いて、2007年1月1日~2016年12月31日の間に抗糖尿病薬の服用を開始し、2017年6月30日までフォローアップが行われていた、18歳以上の14万1,170例について検討した。 主要評価項目は、DPP-4阻害薬使用と関連したIBD発症の補正後ハザード比で、使用について全体的な評価と、累積使用期間ごと、および使用開始からの期間別に、時間依存的Cox比例ハザードモデルを使用して推定評価した。DPP-4阻害薬の使用(単独または他の抗糖尿病薬と併用)は時変変数(time varying variable)としてモデル化し、他の抗糖尿病薬の使用と比較、また、6ヵ月の遅延曝露を用いてIBDの潜在性と診断遅延について明確にした。他の抗糖尿病薬と比較して発症リスクは1.75倍、3~4年使用後がピークで2.90倍 追跡期間55万2,413人年に、208例のIBDイベントが発生した(粗発生率:10万人年当たり37.7[95%信頼区間[CI]:32.7~43.1])。 全体として、DPP-4阻害薬の使用とIBDのリスク増大との関連が認められた(10万人年当たりDPP-4阻害薬使用群53.4 vs.他の抗糖尿病薬使用群34.5、HR:1.75[95%CI:1.22~2.49])。HRは、使用期間が長いほど段階的に上昇し、3~4年使用後にピークに達し(HR:2.90、95%CI:1.31~6.41)、4年超になると低下が認められた(1.45、0.44~4.76)。 同様のパターンは、DPP-4阻害薬使用開始からの期間で評価した場合にも観察された。また複数行った感度解析でも、一貫した所見が認められた。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(前編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会から新たな心不全診療ガイドラインが公表された。本ガイドラインは、11学会(日本循環器学会、日本心不全学会、日本胸部外科学会、日本高血圧学会、日本心エコー図学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本超音波医学会、日本糖尿病学会、日本不整脈心電学会)、班員31名、協力員25名、外部評価員6名という巨大な組織により策定されたものである。 公表を受け、日本循環器学会学術集会(3月23~25日、大阪)では、ガイドライン作成班による報告セッションが組まれ、班長を務めた筒井裕之氏(九州大学)が説明した。講演内容を含め、本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。心不全の定義を明確化 まず、これまで不明確であった心不全の定義が明確化された。新しい定義は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」というものである。 加えて、非医療従事者向けの定義も書き込まれた。「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というものである。心不全という疾患は不可逆性に進行し、命に関わる状態である点が明記されている。進行過程を4つのステージに区分。ステージごとの治療最適化を目指す 心不全が進行性の疾患である点も強調され、発症前から治療抵抗性に至るまでの過程が「A」から「D」の4ステージに分けられた(A:器質的心疾患がなく危険因子のあるステージ、B:器質的心疾患があるステージ、C:心不全症候のある(既往も含む)心不全ステージ、D:治療抵抗性心不全ステージ)。2001年に、米国ガイドラインが導入した捉え方である(Yancy CW, et al. Circulation.2013;128:e240)。また、ステージごとに治療目標が設定された。これにより、ステージごとに適切な治療が提供されることが期待されている。心不全発症前から積極介入。「予防」に注力 前回ガイドラインとの最大の違いは、まだ心不全を発症していないステージ「A」と「B」が治療対象となっている点である。心疾患危険因子のみを有する「ステージA」では、それら危険因子の管理により、心不全発症のリスク因子である器質的心疾患発症の「予防」を図り、虚血性心疾患や左室肥大など器質的病変が生じている「ステージB」では、心不全発症の「予防」が推奨されている。 このように新ガイドラインは、心不全の「発症予防」にも力をいれている。「心不全予防」という章も、「心不全治療の基本方針」の前に新設された。その中には、高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動の項が設定され、心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が推奨クラスI、エビデンスレベルAとして推奨された理由が特筆されている。薬剤治療はEFの高低で3類型に分けて整理 心不全に対する治療の考え方も、大きく変わった。「ステージC」心不全例に対しては、左室収縮能(EF)に応じた治療の選択が推奨されるようになった。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40-50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」ごとに治療方針は異なる(なお心不全の「分類」の項では、この3類型に、HFrEFから治療によりEFが40%以上に回復した「HFpEF improved、HFrecEF」という類型を加えた4類型が示されている)。 もっともHFpEFとHFmrEFに関しては、現時点では予後改善の確たるエビデンスがない。そのため、HFpEFに対しては「心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療」が基本とされ、HFmrEFについては「この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する」と記載するに留まっている。「緩和ケア」を初めて明記·詳述 心不全発症例に対する「緩和ケア」の推奨も、今回改訂の大きな目玉である。この「緩和ケア」に関し筒井氏は、同日夕方に行われたガイドライン記者会見において、「心不全患者への緩和ケアは終末期医療に限定されない」点を強調した。緩和ケアは「ステージC」の段階から推奨されている。つまり、病状末期の「ステージD」に限定されていない。これは心不全の進展はさまざまな因子に影響を受けるため個人差が大きく、「終末期」がいつ訪れるか予知が困難なためである。この点は、経過の予想が比較的容易ながん治療と大きく異なる。そのため心不全では、発症直後から緩和ケアを行うべきだというのが、新ガイドラインの立場である。

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血清尿酸値上昇は高LDL-C/高TG血症リスク~日本人コホート研究

 高い血清尿酸(SUA)値は脂質異常症と関連するが、高尿酸血症がLDLコレステロールを増加させるかどうかは不明である。今回、コロラド大学の桑原 政成氏らが行った日本人のコホート研究により、SUA値の上昇が高LDLコレステロールおよび高トリグリセライド血症の発症リスクを増加させたことが初めて報告された。著者らは「この結果は心血管疾患におけるSUAの役割を解明するかもしれない」としている。International Journal of Cardiology誌オンライン版2018年3月13日号に掲載。 本研究は、2004年に聖路加国際病院(東京)で健康診断を受診し、2009年に再評価された健康な日本人成人6,476人(年齢:45.7±10.1歳、男性:2.243人)の後ろ向き5年コホート研究である。被験者には、ベースラインの検査で高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病ではなかった人、高尿酸血症/痛風の治療薬を投与されていた人が含まれた。年齢、BMI、喫煙・飲酒習慣、ベースラインの推定糸球体濾過率(eGFR)、ベースラインのSUA、5年間のSUAの変化について調整し分析した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの高SUAは、男性(OR:1mg/dL増加当たり1.159、95%CI:1.009~1.331)、女性(OR:同1.215、95%CI:1.061~1.390)とも、高LDLコレステロール発症の独立したリスクであった。・その他の危険因子として、ベースラインの高LDLコレステロール、高BMI、ベースラインの高eGFRが認められた(女性では後者の2因子)。・5年間のSUAの増加は、高LDLコレステロールおよび高トリグリセライド血症発症の独立したリスクであったが、低HDLコレステロールについてはそうではなかった。■関連記事LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!?

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GLP-1受容体作動薬セマグルチドが承認取得

 ノボ ノルディスク社は3月23日、週1回投与のGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が、2型糖尿病の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を受けたことを発表した。 セマグルチドは、血糖値に応じてインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制し、食欲を抑制して食物摂取量を減らす効果を持つ。今回の承認は、8,000例以上の2型糖尿病患者を対象とした8つの第3a相臨床試験からなるグローバル臨床試験プログラムSUSTAINに基づくもので、このうち5つの臨床試験に約1,200例の日本人2型糖尿病患者が含まれている。本プログラムでは、セマグルチドによる治療の対照薬と比較して優れたHbA1c改善効果、体重減少効果が認められている。

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1型糖尿病患者の低血糖回避にリアルタイムCGM(Dexcom G5)は有用である(解説:住谷哲氏)-832

 インスリン治療を必須とする1型糖尿病患者において低血糖は避けては通れない。健常人の場合、低血糖は動悸や異常な空腹感などの交感神経刺激症状の出現によって自覚されるが、多くの1型糖尿病患者はこの自覚が障害された状態(impaired awareness of hypoglycemia[IAH]:適切な訳語がないのでこのままで使用する)を合併している。低血糖無自覚症(hypoglycemia unawareness)とこれまで呼ばれてきたが、無自覚の程度まで至る患者は少なく、軽度の障害の場合が多いので最近はIAHが用いられることが多い。前向きコホート研究の結果、IAHを合併した患者は合併しない患者に比較して、重症低血糖の頻度が約6倍に増加することが明らかにされている1)。 本研究はMDI:multiple daily insulin injections(強化インスリン療法に相当する)を実施中で、IAHまたは過去1年以内の重症低血糖の既往のいずれかがある1型糖尿病患者を対象として、リアルタイムCGM(rtCGM)が低血糖イベント(CGMにおいて54mg/dL未満が20分以上持続する状態と定義)の頻度を減少させるか否かを検討した。結果は通常のSMBGに比較してrtCGMの使用により、低血糖イベントの頻度が72%減少することが明らかとなった(ハザード比:0.28、95%信頼区間[CI]:0.20~0.39、p<0.0001)。 本研究で用いられたrtCGMはDexcom G5 Mobile System(本邦未認可)である。1週間ごとにセンサーを交換し、最低でも1日2回のSMBGによる較正が必要である。さらにalert and alarm機能を備えている点が、現在使用が増加しているFreeStyle Libreと異なっている。FreeStyle LibreはSMBGによる較正が不要であり、服の上からスキャンするだけで血糖値(正しくは間質液グルコース濃度)がわかり、血糖推移のトレンドも表示されるので、低血糖のリスクを減少させることが期待される。実際、FreeStyle Libreの使用により、1型糖尿病患者において低血糖の頻度の減少がIMPACT試験で明らかにされた2)。しかしIMPACT試験ではIAHの患者は最初から除外されており、IAHを合併した1型糖尿病患者において、同様の結果が得られるかは不明である。IAHまたは重症低血糖の既往を有する1型糖尿病患者において、本研究で用いられたrtCGMであるDexcom G5とFreeStyle Libreを直接比較したパイロット試験の結果が報告されているが3)、低血糖の持続時間はDexcom G5を用いたrtCGMで有意に減少していた。その理由としてはalert and alarm機能の有無による違いが考えられた。 本研究の結果からIAHの合併または重症低血糖の既往を有する、MDI実施中の1型糖尿病患者において、rtCGM(Dexcom G5)が低血糖イベントを減少させることが明らかとなった。今後はIAHの合併または重症低血糖の既往の有無によって患者を層別化することで、Dexcom G5またはFreeStyle Libreのいずれが適切か判断することが必要となるかも知れない。

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CVD-REAL2試験、SGLT2阻害薬で心血管リスク低下

 アジア太平洋、中東、北米の6ヵ国の40万例超の2型糖尿病患者を対象としたCVD-REAL試験の新たな解析(CVD-REAL2)により、SGLT2阻害薬投与患者は他の血糖降下薬と比べて、患者特性にかかわらず心血管イベントリスクが低いことが示された。本結果は第67回米国心臓病学会年次学術集会(ACC2018)で発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2018年3月7日号にも掲載された。CVD-REAL2試験でのSGLT2阻害薬のHRは全死亡で0.51 これまでに無作為化試験で、心血管リスクの高い2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬治療により心血管イベントリスクが低下することが示されている。また、リアルワールドデータでも、広範なリスクプロファイルを有する2型糖尿病患者において同様の効果が示唆されているが、評価項目は心不全と全死亡に焦点が当てられ、また欧米に限られていた。 CVD-REAL2試験では、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、イスラエル、カナダにおけるレセプトデータベース、診療記録、国家レジストリから、SGLT2阻害薬および他の血糖降下薬の新規使用者を特定した。それぞれの国で、SGLT2阻害薬開始の傾向スコアを用いて1:1でマッチングさせた。全死亡、心不全による入院(HHF)、全死亡もしくはHHF、心筋梗塞、脳卒中のハザード比(HR)を国ごとに評価し、重み付きメタ分析を用いて統合した。 CVD-REAL2試験の主な結果は以下のとおり。・傾向スコアによるマッチングにより各群23万5,064例となった。うち74%は心血管疾患の既往がなかった。両群で患者特性のバランスがとれていた。・SGLT2阻害薬の使用薬剤の割合は、ダパグリフロジン75%、エンパグリフロジン9%、イプラグリフロジン8%、カナグリフロジン4%、トホグリフロジン3%、ルセオグリフロジン1%であった。・他の血糖降下薬と比較したSGLT2阻害薬のHRは以下のようであった。  全死亡:0.51(95%CI:0.37~0.70、p<0.001)  HHF:0.64(95%CI:0.50~0.82、p=0.001)  全死亡もしくはHHF:0.60(95%CI:0.47~0.76、p<0.001)  心筋梗塞:0.81(95%CI:0.74~0.88、p<0.001)  脳卒中:0.68(95%CI:0.55~0.84、p<0.001)・結果は、国によらず、心血管疾患の有無などの患者サブグループにかかわらず、方向性は一致していた。

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低脂肪食でも低炭水化物食でも減量効果は変わらない(解説:吉岡成人 氏)-830

 体重を減らすために有効なのは、低脂肪食なのか、低炭水化物食なのか…、多くの臨床研究が行われ、いまだ意見の一致が得られていない。 今回紹介する臨床研究では、肥満者における遺伝子多型と減量の関連に注目し、PPARG、ADRB2、FABP2の遺伝子多型を組み合わせて、脂質制限に対する感受性が高いと想定される低脂肪遺伝子型、炭水化物に対する感受性が高い低炭水化物遺伝子型、どちらに対しての感受性も高くない遺伝子型をもつ3群に分類したうえで、食事の組成と減量の効果を検討し、さらに、75gOGTTにおける30分後のインスリン分泌能と食事の組成、減量効果の関連の有無にも検討を加えた臨床試験である。青壮年の非糖尿者が対象 対象者は609人、BMIは28~40(平均33)m/kg2、18~50(平均40)歳、女性が57%を占めていた。対象者を無作為に低脂肪食群、低炭水化物食群に分類し、前者では調理や味付けに使用する油、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品(低脂質ではない牛乳やヨーグルトなどの乳製品)、ナッツなどを制限し、後者ではシリアル、穀類、米、イモ類などの炭水化物の多い野菜、豆類を制限し、それぞれを1日20g程度まで抑えたうえで、定期的に1年間に22回の食事介入を行いつつ脂質や炭水化物の摂取量を漸増させて、2群間での脂肪摂取と炭水化物摂取の差が最大となるようにデザインして実施された。主要エンドポイントは12ヵ月間における体重の減少であり、食事組成と減量の程度、遺伝子多型、インスリン分泌能の関連について検討している。低脂肪食でも低炭水化物食でも体重の減少は同様であった 12ヵ月間における炭水化物、脂質、たんぱく質の摂取比率は、低脂肪食群でそれぞれ、48%、29%、21%、低炭水化物食群では30%、45%、23%であり、体重は低脂肪食群で5.3㎏、低炭水化物食群で6.0㎏とそれぞれ減少し、群間では差がなかった。遺伝子多型やインスリン分泌能と、食事の内容、体重減少の程度とも有意な関連はなかったと報告されている。脂質プロフィールに関しては、低脂肪食群でLDL-コレステロールが減少、低炭水化物食群ではHDL-コレステロールが上昇し、トリグリセライドが減少した。群間におけるLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライドの差はそれぞれ5%、5%、15%であった。 総エネルギー摂取量は各群ともに平均で2,200kcalから1,700kcalまで減少させることができており、低脂肪食であっても低炭水化物食であっても、食品の組成や遺伝因子、インスリン分泌能に関係なく減量が可能であるというこの試験の結果は、痩せることに最も重要なのは、エネルギーの総摂取量を減らすことであるというきわめてシンプルなことを科学的に示している。

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緑内障のディープラーニングによる検出、感度良好

 中国・中山大学のZhixi Li氏らは、ディープラーニングを用い、カラー眼底写真で緑内障性視神経症を自動的に分類するシステムの開発、検証を行い、高い感度と特異度で緑内障性視神経症を検出できることを示した。偽陰性の主な原因は、強度または病的近視の合併であり、偽陽性となった理由で最も多かったのは生理的陥凹と病的近視であることも明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2018年3月2日号掲載の報告。 研究グループは、カラー眼底写真4万8,116枚を後ろ向きに集め、カラー眼底写真から緑内障性視神経症として検出するディープラーニングアルゴリズムを開発し、性能を検証した。 写真を分類するために、訓練された眼科医21人が参加した。視神経乳頭陥凹(Cup)と視神経乳頭(Disc)の垂直方向における最大径比(垂直C/D比)が0.7以上、およびその他の緑内障性視神経症の典型的な変化が認められた場合に、緑内障性視神経症として分類された。 3人の評価者が合意に達したものを標準とした。完全に評価できる眼底写真8,000枚を検証データセットとして別に分け、アルゴリズムの性能の評価に用いた。ディープラーニングアルゴリズムの有効性は、感度と特異度の受信者動作特性曲線下面積(AUC)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・検証データセットにおいて、このディープラーニングシステムの検出能は、感度95.6%、特異度92.0%で、AUCは0.986に達した。・偽陰性は87件で、主な理由は、病的または高度な近視(37件、42.6%)、糖尿病性網膜症(4件、4.6%)および加齢黄斑変性(3件、3.4%)などの合併(計44件、50.6%)であった。・偽陽性(480件)となった主な理由は、生理的陥凹(267件、55.6%)などその他の眼の状態(458件、95.4%)であった。・正常に見える眼底で偽陽性と誤って分類されたのは、22眼(4.6%)のみであった。

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議論が続く多枝疾患患者への冠血行再建法、CABGかPCIか?(中川義久 氏)-829

 これまでも、多枝冠動脈疾患患者における長期成績は、CABGのほうがPCIよりも良好であることが複数の無作為化比較試験および患者登録研究の結果から示されてきた。しかし、その優位性は真のエンドポイントである死亡の差としてではなく、新規心筋梗塞発生リスクや、再血行再建リスクなども含めて解析した場合にCABGのほうが勝るという結論にとどまっていた。死亡に差がないのであれば、侵襲度の違いを念頭に置けばPCIの立ち位置を高く考慮してもよいという意見もあった。 今回、ここに新しい知見が加わった。オランダ・エラスムス大学のStuart J. Head氏らが、11の無作為化比較試験の総数約11,500例を対象に行ったプール解析の結果から、CABGがPCIよりも死亡に関して優位性があることをLancet誌で報告した。とくに、糖尿病を持つ患者や、冠動脈の病変が複雑でSYNTAXスコアが高値である患者ほど、その傾向は強かったという。 死亡という真のエンドポイントで差を示したことは、インパクトがある。一方で、このような過去のデータからのプール解析で常に問題になるのは、データの陳腐化という問題である。PCIの治療成績は常に改善してきている。SYNTAX II study1)は、PCIの治療成績の改善を印象付けた代表的な報告である。ステントの進化だけではなく、PCI治療成績向上の原動力として大きいのは、PCIの適応決定にFFRやiFRなどの生理学的評価を用いること、PCI手技の質をIVUSなどのイメージングデバイスを駆使することである。さらに、冠危険因子を管理する内科的治療の進歩も大きい。もちろんCABGにおいても、心臓血管外科の手術技術の進化がある。 現在、日本循環器学会/日本心臓血管外科学会の合同で、冠動脈血行再建ガイドライン改訂が進行中である。今回のStuart J. Head氏らの解析の結果は、このガイドライン策定作業においても議論の俎上に載ることであろう。日常臨床においては、これらのエビデンスを考慮しつつ個々の患者の病態や希望を含め、ハートチームとして循環器内科医・心臓外科医で共に議論していくことが肝要であろう。

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満腹になるまで食べてしまう患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第17回

■外来NGワード「腹八分目にしなさい!」「満腹になるまで食べないようにしなさい!」「そんなに食べているから太るんです!」■解説 『糖尿病治療ガイド2016-17』によると、初診時の食事指導のポイントとして、「腹八分目にする」「食品の種類はできるだけ多くする」「脂肪は控えめに」「食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる」「朝食、昼食、夕食を規則正しく」「ゆっくりよくかんで食べる」の中で、「腹八分目にする」は最初の項目に挙げられています。確かに、カロリー制限を行うことは、ハエ、マウス、トリ、サルなどでの研究からアンチエイジングにつながることが示されています1,2)。しかし、ご飯やおかずを残せなくて、満腹になるまで食べてしまう肥満を伴う生活習慣病の患者さんがいます。そういった患者さんに対して、いくら「腹八分目にしなさい!」と指導しても、あまり効果は上がりません。なぜなら、腹八分目の定義が医師と患者の間で違っているからです。腹八分目では食事制限の意図が伝わらないと考えられたのか、以前には「腹七分目にする」などの記載もありました(『糖尿病治療ガイド2002-03』参照)。まずは、腹八分目の定義を、医師と患者の間ですり合わせて、具体的な腹八分目対策を患者さんと一緒に立てることができるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師食事の方はいかがですか?患者腹八分目を心掛けているつもりなんですが…。医師それはよかったです。食事を意識して頂いて…。患者けど、満腹になるまで食べてしまって…後で、お腹がパンパンになっていて、食べ過ぎたと後悔したりするんですけど…。医師なるほど。そのときはいいんですが、満腹まで食べると、後で後悔することになりますね。患者そうなんです。腹八分目って、難しいですね。医師腹八分目とは、どのくらいなのか整理してみましょう。夕食なら、腹八分目にしておくと、寝る前はお腹がすっきりとしています。次の日の朝食が待ち遠しい状態です。患者なるほど。医師腹十分目だとお腹は全然空いていません。逆に、腹六分目にすると、お腹が空きすぎて、寝られなかったりします。患者なるほど。医師腹十二分目だと、寝る前に、食べ過ぎの状態ですね。患者私の場合は、腹十二分目になっていますね。医師ハハハ。腹八分目にするために、どんな工夫がありますか?患者そうですね…自分のものを食べ終わったら、テーブルから離れて、余分なものは食べないようにします。医師それは、いいアイデアですね。患者頑張って、やってみます。■医師へのお勧めの言葉「夕食の場合、腹八分目とは寝る前にこころもちお腹が空いていて、次の日の朝食が待ち遠しい状態のことです」1)Colman RJ, et al. Science. 2009;325:201-204.2)Colman RJ, et al. Nat Commun. 2014;5:3557.■参考資料

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ビタミンDのがん予防効果、日本人で確認/BMJ

 血中ビタミンD濃度が高い集団は男女とも、がん全体の罹患リスクが低いことが、日本人を対象に国立がん研究センターのSanjeev Budhathoki氏らが実施したJapan Public Health Center-based Prospective(JPHC)研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年3月7日号に掲載された。ビタミンDは、さまざまな抗腫瘍性の特性を持つ強力な生物活性化合物の前駆物質として、がんの予防効果をもたらすとの説がある。血中ビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんの罹患リスクが低下する傾向がみられることが報告されているが、他の部位のがんやがん全体のエビデンスには一貫性がなく、アジア人のデータは十分でないという。血中濃度別の罹患リスクを評価するネステッドケースコホート研究 研究グループは、JPHC研究のデータを用いて、診断前の血中ビタミンD濃度と、がん全体および部位別のがん罹患リスクの関連を評価するネステッドケースコホート研究を行った(国立がん研究センターなどの助成による)。 JPHC研究の参加者(40~69歳)のうち、ベースラインの質問票に回答し、血液サンプルが得られた3万3,736人をベースコホートとした。このうち、3,301人が2009年12月31日までにがんに罹患した。また、ベースコホートからランダムに選択した4,044人をサブコホートとした。サブコホートには、がん患者が450人含まれた。 血漿25-ヒドロキシビタミンD(25-OHビタミンD)濃度の季節による変動を考慮して、サブコホートを男女別に4分位に分けた(罹患数が130未満のがんは3分位)。重み付きCox比例ハザードモデルを用い、血漿25-OHビタミンD濃度が最も低い集団を基準として、血漿濃度別のがん全体および部位別のがんに関して、多変量で補正したハザード比(HR)を算出した。ほぼすべての部位の罹患リスクが低下傾向 がん患者はサブコホートに比べ、平均年齢が高く(56.2[SD 7.5] vs.53.7[7.9]歳)、男性が多く(52.4 vs.34.2%)、重度喫煙者や重度飲酒者が多く、糖尿病既往歴やがん家族歴の頻度が高かった。また、サブコホートでは、血漿サンプルの採取時期が夏/秋の集団のほうが冬/春に比べ、25-OHビタミンD濃度中央値が高く、濃度が高い集団のほうが低い集団に比べ高齢で、余暇身体活動量が多く、がん家族歴の頻度が低いなどの傾向がみられた。 血漿25-OHビタミンD濃度とがん全体の罹患リスクには逆相関の関係が認められ、血漿濃度が最も低い集団と比較した2番目に低い集団、3番目に低い集団、最も高い集団の多変量補正HRは、それぞれ0.81(95%信頼区間[CI]:0.70~0.94)、0.75(0.65~0.87)、0.78(0.67~0.91)であった(傾向検定:p=0.001)。 部位別のがんのうち、肝がんで血漿濃度と罹患リスクに逆相関の関係がみられ、血漿濃度が最も低い集団と比較した多変量補正HRは0.70(95%CI:0.44~1.13)、0.65(0.40~1.06)、0.45(0.26~0.79)と、濃度が高くなるほど低下した(傾向検定:p=0.006)。ほぼすべての部位のがんで、罹患リスクが低下する傾向がみられた。 サブグループ解析では、男女の間に、25-OHビタミンDの効果の差はなかった。また、感度分析では、がん患者全体から部位別のがん患者を1部位ずつ交互に除外して再解析を行ったところ、いずれの解析でも、HRはがん全体と比較してほとんど変化せず、25-OHビタミンDによるがん全体の罹患リスク低減効果は、個々の部位のがんに対する小さな効果の積み重ねの結果である可能性が示唆された。 著者は、「これらの知見は、ビタミンDがさまざまな部位のがんの予防効果を有するとの仮説を支持するものである」としている。

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米国人の1日Na摂取量は何グラム?/JAMA

 先行研究でナトリウム摂取の90%が尿として排出されると示されたことから、米国医学研究所(現・米国医学アカデミー)は2010年に、24時間蓄尿でナトリウム摂取量を推定するよう推奨を始めた。米国疾病予防管理センターのMary E. Cogswell氏らは、2014年のサンプルを調査し、少なくとも1回の24時間蓄尿検査を受けたことがある70歳未満の成人のデータを分析。その結果、推定平均ナトリウム摂取量は3,608mg/日であることが示されたという。JAMA誌オンライン版2018年3月7日号掲載の報告。国民健康栄養調査の24時間蓄尿検査データを解析、カリウム排出量も調査 研究グループは、米国成人集団の平均ナトリウム摂取量を推定し、カリウムの尿排出について明らかにするため、施設入所者を除く代表的な米国人集団を対象とした全米規模の断面サーベイを行った。 具体的には、米国国民健康栄養調査(NHANES)の調査項目において、2014年に少なくとも1回の24時間尿検体を集められていた20~69歳の非妊娠者のデータについて調べた。 主要評価項目は、平均24時間尿中ナトリウム(Na)値とカリウム(K)値。サーベイデザインの複雑性、選択の蓋然性、ノンレスポンスを考慮して、人口統計学的/健康特性は加重全米推定値を算出、電解質排出量は平均値を算出した。24時間尿中Na値:男性4,205mg、女性3,039mg NHANESから無作為に選択した1,103例のうち、対象者の基準を満たした827例(75%、男性421例、女性406例)について調べた。63.7%が非ヒスパニック系の白人、15.8%がヒスパニック系、11.9%が非ヒスパニック系黒人、5.6%が非ヒスパニック系アジア人であった。43.5%が高血圧症(2017年の高血圧症ガイドライン準拠)を有し、10.0%が糖尿病歴を報告した。 24時間蓄尿に関するサーベイ全体の回答率は、約50%と推定された(75%[24時間蓄尿の調査項目完遂率]×66%[NHANES調査項目回答率])。 全体の平均24時間尿中Na値は3,608mg(95%信頼区間[CI]:3,414~3,803)であった。全体の中央値は3,320mg(四分位範囲:2,308~4,524)であった。 性別にみた副次解析での平均Na値は、男性は4,205mg(95%CI:3,959~4,452)、女性は3,039mg(2,844~3,234)であった。また年齢群別にみた平均Na値は、20~44歳(432例)3,699mg(3,449~3,949)、45~69歳(395例)3,507mg(3,266~3,748)であった。 全体の平均24時間尿中K値は2,155mg(95%CI:2,030~2,280)であった。性別では、男性2,399mg(2,253~2,545)、女性1,922mg(1,757~2,086)。また年齢群別では、20~44歳1,986mg(1,878~2,094)、45~69歳2,343mg(2,151~2,534)であった。 著者は、「これらの結果は、今後の試験のベンチマークとなりうるものである」とまとめている。

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NASHの肝脂質を迅速かつ有意に減少した新薬/Lancet

 NGM282が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)において、容認できる安全性プロファイルで肝脂質を迅速かつ有意に減少したことが報告された。英国・オックスフォード大学のStephen A. Harrison氏らによる第II相試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月5日号で発表された。NGM282は、胆汁酸合成とブドウ糖恒常性を調節する内分泌消化管ホルモンFGF19の、非腫瘍形成性異型として開発された組み換えタンパク質である。NASHには現状、米国FDA承認の治療は存在しないが、今回の結果を踏まえて著者は、「NGM282のNASH治療の安全性と有効性についてさらなる探索を支持するものであった」としている。第II相試験で肝脂肪分の絶対変化について検討 試験は2015年7月14日~2016年8月30日に多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照にて、オーストラリアと米国の、病院および消化器/肝クリニック18ヵ所で、生検によりNASHと確認された18~75歳の患者を集めて行われた。NASHの定義は、臨床研究ネットワークの組織学的評価法に準拠。主な適格基準は、疾患活動度がスコア4以上、線維化ステージ1~3、肝脂肪分8%以上であった。 被験者は、ウェブベースシステムを介して1対1対1の割合で無作為に、3mgまたは6mgのNGM282皮下投与を受ける群とプラセボ群に割り付けられた。糖尿病の状態による層別化も行われた。 主要エンドポイントは、ベースラインから12週時点までの、肝脂肪分の絶対変化。奏効者の定義は、MRI-PDFF(proton density fat fraction)測定で、肝脂肪分の5%以上の減少を達成したことが認められた患者とし、intention to treat法にて有効性を解析した。3mg、6mg投与群ともにプラセボと比較し、12週で5%以上の減少を有意に達成  166例がスクリーニングを受け、82例が無作為化を受けた(3mg群27例、6mg群28例、プラセボ群27例)。 12週時点で、3mg群20例(74%)、6mg群22例(76%)が、奏効者の定義を満たした。プラセボ群は2例(7%)で、相対リスク(RR)は、3mg群 vs.プラセボ群が10.0(95%信頼区間[CI]:2.6~38.7)、6mg群 vs.プラセボ群は11.4(同:3.0~43.8)であった(両比較ともp<0.0001)。 全体で、76/82例(93%)が少なくとも1つの有害事象を経験したが、Grade1の有害事象が最も多く(55例[67%])、Grade3以上はわずか5例(6%)であった。最も多かった有害事象は、注射部位反応(28例[34%])、下痢(27例[33%])、腹痛(15例[18%])、悪心(14例[17%])。また発生頻度は、プラセボ群よりもNGM282投与群で高かった。

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脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

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健康状態に関係なく余暇身体活動で死亡率低下~アジア50万人調査

 余暇身体活動(LTPA)と死亡リスクの関連を評価する研究は、ほとんど欧州系の健康人で実施されている。今回、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのYing Liu氏らが東アジアの健康人および慢性疾患患者のコホートで調査を実施し、アジアの中高齢者において、定期的なLTPAが健康状態にかかわらず死亡率低下と関連していることが示唆された。International journal of epidemiology誌オンライン版2018年2月27日号に掲載。 本研究では、アジアコホートコンソーシアムに含まれる9件の前向きコホートに参加した東アジアの46万7,729人でプール解析を行い、LTPAと全死因および原因別死亡率の関連を調べた。年齢、性別、教育、婚姻状況、喫煙状況の調整後、Cox比例ハザード回帰を用いてLTPAに関連するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間の13.6年に、6万5,858人の死亡が確認された。・LTPAが1時間/週未満の人と比較したところ、LTPA量と全死因および原因別死亡率との間に逆相関が認められた(傾向のp<0.001)。・逆相関は、心血管疾患による死亡、がん以外による死亡で強かった。・LTPAと全死因死亡率との逆相関については、重度でしばしば生命を脅かす疾患である、がん、脳卒中、冠動脈疾患の患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.81、95%CI:0.73~0.89)と、糖尿病や高血圧などのその他慢性疾患患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.86、95%CI:0.80~0.93)で認められた。・性別、BMI、喫煙状況による明らかな修飾効果は確認されなかった。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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意外にも中高齢層にフィット、糖尿病診療でのスマホアプリ活用

 糖尿病患者の“自己管理ノート”としてのスマホアプリの活用は、医療者・患者双方にとってどのようなメリットがあるのか。2018年3月3日、「第52回 糖尿病学の進歩」において「リアルワールドデータによる糖尿病治療の最前線~PHR(パーソナルヘルスレコード)や検査データを活用した新しい診療の実際と展望~」と題したランチョンセミナーが開催された(共催:株式会社ウェルビー/株式会社エスアールエル)。セミナーでは木村 那智氏(医療法人純正会ソレイユ千種クリニック 院長)が登壇。アプリ「Welbyマイカルテ」を主に2型糖尿病患者の診療に取り入れ約3年が経過した中での、使用感やメリットについて紹介した。スタンプ機能で、負担感なく密にコミュニケーション 「Welbyマイカルテ」は、生活習慣病患者を対象とした、血糖値や血圧などの自己管理を支援するスマートフォン向けアプリ。データは手入力のほか、カメラを使った撮影や、血圧計、血糖測定器、体組成計など主要メーカーの機器からの自動取得が可能だ。これらのデータは患者、患者家族、医療者の間で共有でき、コメント機能やスタンプによるコミュニケーションが可能となっている。 2015年の提供開始以来、約22万人が登録しており、木村氏は「患者さんは無料でダウンロード・利用開始でき、使い方も薄いパンフレットで理解できる簡単なもの」と語る。木村氏のクリニックでは、患者が記録した内容を見た医師や看護師がコメントを返すほか、「がんばったね!」という意味でスタンプを送信することも多いという。「LINEのスタンプ機能と同じで、医療者側は一つひとつコメントを入力しなくても簡単に声掛けができ、患者さんにとってはちゃんと見守ってもらえているという安心感につながる」と話した。 同アプリは医療機関との連携を行わず、患者個人として利用することもできるが、ウェルビー社が行った調査によると、医療機関と連携している場合、3ヵ月後の継続率が約5倍となったという。木村氏は「もちろん、“監視されているようでいや”という人もいるので、全員にフィットするわけではない。しかし、患者さんのモチベーションが治療に大きな影響を及ぼす糖尿病診療において、モチベーション維持や行動変容を促す有効なツールの1つであることは間違いない」と語り、食事内容を毎回撮影するなどアプリの使用に“ハマり”、生活習慣が改善されて結果的に体重減少、血糖値低下につながった40代男性の症例を紹介した。継続率が高いのは中高齢層 スマホアプリというと、どうしても若い人向けという印象を持たれがちだが、木村氏は「逆に若い人のほうが続かない傾向がある。“これを機にスマホに変えた”という中高齢層は、孫や子供たちとの会話のきっかけにもなり、嬉々として使ってもらえることが多い」と話す。実際に同社が行った調査では、年齢が上がるほど継続率が高まり、50代以上のユーザーの利用率が高かった。聴取時間は圧倒的に短縮、思いがけない問題点がみつかることも もう1つ、アプリを診療へ取り入れることへの懸念としてよく聞かれるのは、「使い方を教える手間や時間が掛かるし、病院側のメリットがないのでは」というものだが、木村氏は「あらかじめ生活習慣や食事内容がわかるため、聴取時間は短縮し、栄養指導や診察が効率化する」と話す。また、本人はよかれと思ってやっていることが、実は間違った知識だったということも多く、「診察室での聴取だけでは見えてこない改善点がみつかる場合もある」と話した。 同社は今回、株式会社エスアールエルが提供する医師向け検査結果参照システム「PLANET NEXT」と同アプリの連携をスタートさせ、医師は検査結果とPHRを参照できるようになった。また今後、患者もスマートフォンのアプリで検査結果を参照できるようになることから、木村氏は「患者さんがほかの病院や薬局で自分の検査値と自己管理データを見せられるようになると、より効率的な治療が可能になり、患者さん自身の行動変容にもつながるだろう」と述べ、期待感を示した。「通常、次は数週間、数ヵ月後の診察予約となるところを、こういったツールの活用で頻繁に状況をモニタリングできる。対面診療にオンラインツールを加えることは難しいことではなく、いまや普通の道具を、普通に活用することに過ぎない。正確な情報と適切なフォローアップで患者さんはどんどん進化していくので、積極的に活用していってほしい」とまとめた。■参考株式会社ウェルビー「Welbyマイカルテ」

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