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自分の動脈硬化病変を見せられると生活習慣病が改善する(解説:佐田政隆氏)-994

 急性心筋梗塞は、狭心症を生じるような高度の冠動脈の動脈硬化病変が進行して完全閉塞することで生じると従来考えられていた。しかし、最近の研究によると、6~7割の急性心筋梗塞の原因は、軽度な内腔の狭窄しか来さない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞であるとされている。急性心筋梗塞は発症してしまうと突然死につながる怖い病気であるが、その多くは前兆がなく、発症を予知することは困難である。 ヒトの動脈硬化は、従来考えられていたよりかなり早期に子供の頃から始まり、生活習慣病のコントロールが悪いと無症状のうちに進行して、突然心血管イベントを誘発することが多くの研究で示されている。そこで、将来の心筋梗塞の発症を防ぐためには、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のコントロールや禁煙といった1次予防が重要である。しかし、多くの人は、食事などの生活指導、運動指導、場合によっては薬物療法を行っても、現在は痛くも痒くもないため、アドヒアランスは悪く改善に結びつかない。 そこで、現場の先生方にお尋ねすると、発症してしまうと突然死になることを話したり、実際の頸動脈エコーでプラークの存在を見せるなど、工夫を凝らしておられる経験をお聞きする。しかし、どのような生活指導、服薬指導が効果的であるのか、エビデンスがないのが現状であった。 このスウェーデンで約3,500例を対象に1年追った、オープンラベルの無作為化比較試験では、介入群では、頸動脈の中膜複合体や無症候性のプラークといった頸動脈エコー所見を、血管年齢を色分けするわかりやすい図を用いて説明して、看護師が電話で理解していることを確認した。一方、対照群では通常の方法で生活指導、服薬指導をした。1年後のフラミンガム・リスクスコア(FRS)と、欧州のSCORE(systematic coronary risk evaluation)は、介入群で有意に改善していた。生活習慣の改善もあったと思われるし、服薬のアドヒアランスも向上したと思われる。 やはり、無症状でも自分の動脈硬化が思いのほか進行しているのを見せつけられると、生活習慣病治療へのモチベーションが上がると思われる。日本では、日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のために、40~74歳までの人を対象に特定健診が行われて、特定保健指導が行われている。しかし、必ずしも効果を上げているとは言えない。生活習慣病に有効に介入することで、心筋梗塞の発症はもっと低下させることができるはずである。今回の研究などが積み重なって、有効な1次予防の方法が確立することを期待する。

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心房細動は待つのではなく見つけに行く時代(解説:矢崎義直 氏)-993

 心房細動は最もメジャーな不整脈の1つであるが、無治療だと塞栓症のリスクが高く、とくに心原性脳梗塞は重症化し死亡率も高い。心房細動を早期に診断し、適切な抗凝固療法を行うことが重要であるが、症状のない心房細動も多く、定期的な通常の心電図検査では検出が困難なこともある。そこで、心房細動のスクリーニングとして長時間の心電図モニタリングが可能なシステムの開発が進んでいる。 mSToPS試験(mHealth Screening to Prevent Strokes trial)は自己装着型の2週間記録可能なパッチ型心電計を使用し、心房細動の新規検出率を検討した。対象は年齢が75歳以上、もしくは高血圧や糖尿病などのリスクを1つ以上持った55歳以上の男性か65歳以上の女性とし、過去に心房性不整脈の既往があれば除外した。被験者の募集はAetnaやMedicareなどの医療保険システムに登録されている対象者に、郵便もしくはeメールで試験参加を勧誘した。オンラインで同意が得られれば試験に登録され、患者データなどはネット経由で得るという、登録が完全にデジタル化された新しい試みと言える。この方法により、通常の治験登録よりも登録時間を短縮でき、コストも抑えられ、普段治験とは疎遠なpopulationにもアプローチでき、よりリアルワールドに近い対象を選出できるという利点がある。 最終的に2,659例(平均年齢72.4歳、38.6%が女性)が選出され、パッチ型心電計を早期に装着する群(先行開始群)と4ヵ月遅らせて装着する群(遅延開始群)に無作為に割付をした。登録後4ヵ月の時点では、先行開始群が遅延開始群と比較し、心房細動の検出率が有意に高かった(3.9% vs.0.9%、絶対差:3.0%、95%信頼区間:1.8~4.1%)。また、この先行開始群と遅延開始群を合わせた症例の中で合計30分以上パッチ型心電計を使用し、解析ができた1,738例(全体の65.4%)を1年間フォローした。これらとマッチさせたコホート群3,476例と心房細動の検出率を比較しところ、パッチ型心電計使用群の方が、心房細動を多く検出した(6.7/100人年 vs.2.6/100人年、絶対差:4.1、95%信頼区間:3.9~4.2)。そのほか、パッチ型心電計使用群で抗凝固薬開始率、循環器科外来受診率が高かったが、心房細動による救急外来受診や入院率に差はなかった。 本試験の結論として、パッチ型心電計は心房細動発症のハイリスク群において、心房細動の検出に有用である事が示された。このように今後、長時間心電図モニタリングにより早期の心房細動の診断が可能となり、適切な治療が行われれば、脳梗塞や死亡率の減少など、clinical outcomeの改善も期待される。 一方、長時間心電図モニタリングにはまだ課題も残されている。1つは、心電計の装着率の問題である。本試験中にパッチ型心電計を少しも使用しなかった症例が917例、全体の34.5%に及ぶ。また心電計を装着した症例のうち40例がパッチによる皮膚炎を起こし、うち32例が装着中止を余儀なくされている。モニタリング期間は長ければ長いほど、当然心房細動の検出率は上がってくるが、アドヒアランスの問題も念頭に置かなければならない。 また、本試験では、長時間のモニタリングのおかげで、通常の心電図検査では到底捉えることのできなかったであろう短い持続時間の心房細動が多く検出されている。何分以上、もしくは何時間以上持続した心房細動を塞栓症のリスクと考えるかまだ明確な答えはない。 このように長時間心電図モニタリングならではの課題もあるが、その症例の塞栓症のリスク、出血のリスク、年齢、心房細動の持続時間を考慮し、抗凝固療法の適応を決める必要がある。

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英外食チェーン、推奨エネルギー量の料理は9%のみ/BMJ

 英国の主要外食チェーンで提供される主な食事のうち、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量が600kcal以下の食事はわずか9%である一方、47%に及ぶかなり多くの食事が1,000kcal以上とエネルギー量が過度であることが明らかになった。英国・リバプール大学のEric Robinson氏らが、英国の外食チェーン27社の食事を調査した結果で、著者は「ファストフード店の食事の栄養価は不十分だがきちんと表示はされている。一方で、英国のフルサービスで提供するレストランの食事のエネルギー量は過度な傾向がみられ、懸念の元である」と述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。レストラン21社とファストフード6社を調査 研究グループは、英国の主要外食チェーン27社を対象に、主な食事1万3,396種のエネルギー量を調査した。調査対象とした外食チェーンのうち、21社がフルサービスレストラン、6社がファストフード店を展開していた。 主要評価項目は、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量600kcal以下の食事の割合と、1,000kcal以上と過度なエネルギー量の食事の割合だった。レストランの食事のほうがファストフードより平均268kcal高い 計1万3,396種の食事の平均エネルギー量は、977kcal(95%信頼区間[CI]:973~983)だった。 英国公衆衛生局の推奨エネルギー量600kcal以下の食事の割合は9%(1,226種)だったが、1,000kcal以上のエネルギー量過多な食事の割合は47%(6,251種)とかなり多かった。 また、ファストフード店に比べてフルサービスレストランの食事は、エネルギー量が有意に過度であり、その差は平均268kcal(95%CI:103~433)だった。

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高血圧の定義、現状維持であれば1万人あたり5人の脳心血管イベントが発症するという警鐘(解説:桑島巖氏)-989

 2017年に発表された米国ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧基準がJNC7に比べて、収縮期、拡張期とも10mmHg下がり130/80mmHgとされた。この定義変更はSPRINT研究の結果を大幅に取り入れたものであるが、果たしてこの新しい高血圧基準をアジア住民に当てはめた場合、どの程度が脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患から免れるのであろうか。その課題に対する答えを示したのがこの論文である。 本論文は、韓国国民健康保険サービスに参加した20~39歳までの約250万人について2006年から10年間追跡し、その間に発生した4万4,813件の脳血管障害、脳心血管死についてACC/AHA定義に従って分析したものである。 それによると、130~139/80~89mmHgのステージ1レベルの高血圧でも<120/80mmHgの正常血圧に比較すると10万人当たり年間51人多く、脳心血管疾患が発生していたという。なかでもアジア人の特性として脳卒中発症が冠動脈疾患発症の2倍多いことも明らかにしており、日本人にとっても参考になるデータである。 わが国でも策定中の高血圧治療ガイドライン2019では、混乱を招くという意味から高血圧の定義を変更する予定はないようであるが、このようなデータを見ると混乱を招くことを恐れるより、国民の脳卒中や心筋梗塞発症をこそ恐れるべきであり、高血圧の定義も米国にならって130/80mmHgとすべきである。

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リナグリプチンのCARMELINA試験を通して血糖降下薬の非劣性試験を再考する(解説:住谷哲氏)-991

 eGFRの低下を伴う腎機能異常を合併した2型糖尿病患者における血糖降下薬の選択は、日常臨床で頭を悩ます問題の1つである。血糖降下薬の多くは腎排泄型であるため腎機能に応じて投与量の調節が必要となる。DPP-4阻害薬の1つであるリナグリプチンは数少ない胆汁排泄型の薬剤であり、腎機能に応じた投与量の調節が不要であるため腎機能異常を合併した患者に投与されることが多い。 これまでにDPP-4阻害薬の安全性を評価した心血管アウトカム試験CVOTでは、サキサグリプチンのSAVOR-TIMI 53、アログリプチンのEXAMINE、シタグリプチンのTECOSが発表されている。リナグリプチンの安全性を評価した本試験の報告により、DPP-4阻害薬の安全性を評価したすべてのCVOTが出そろったことになる。本試験の最大の特徴は、リナグリプチンが胆汁排泄型であることに基づいて、これまで報告されたCVOTの中で最多の腎機能異常合併2型糖尿病患者を組み入れた点にある。 6,979例がエントリーされたが、その半数以上がeGFR<60mL/min/1.73m2であり、eGFR<30mL/min/1.73m2の患者も約15%含まれていた。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中からなる3-point MACEであったが、副次評価項目にはESRDへの移行、腎関連死、ベースラインから40%以上のeGFRの低下の持続からなる腎複合エンドポイントが含まれている。中央値2.2年の観察期間において、プラセボ群の3-point MACE発症率は5.63/100人年であり、これまで実施されたCVOTの中で最も高リスクであった。このことは腎機能異常合併2型糖尿病患者の心血管リスクがきわめて高いことを示している。既報のDPP-4阻害薬のCVOTと同様に、主要評価項目ではプラセボ群に対する非劣性が証明されたが優越性は証明されなかった。期待された腎複合エンドポイントでも優越性は証明されなかった。多くの探索的アウトカムexploratory outcomeの中でプラセボ群と有意差を認めたのはアルブミン尿の進展HR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)、複合細小血管エンドポイントHR 0.86(0.78~0.95、p=0.003)のみであった。重症低血糖の頻度もプラセボ群との間に有意差を認めなかった。また観察期間中のHbA1cはリナグリプチン群で0.36%有意に低下した。 本試験も含めて既報のCVOTはすべて非劣性試験non-inferiority trialであり、その結果をどのように解釈して日常臨床に適用すればよいのだろうか? 確かにすべての非劣性試験は製薬企業が新たな薬剤を販売するための臨床試験であり、われわれ臨床家にとっても患者にとってもメリットはないとの指摘にも一理ある1)。非劣性試験で証明されるのは、対象である新たな血糖降下薬(試験薬)が既存の血糖降下薬と比較して3-point MACEなどの心血管イベントを非劣性マージン(多くはハザード比の95%信頼区間の上限が1.3に設定される)を超えて増加させないことのみである。これをクリアすればその試験薬は「安全な血糖降下薬」としてのお墨付きを当局から得られる。つまり心血管イベントを29%増加させる可能性があっても血糖降下薬としては許容されることになる(この点については議論があるが本稿では割愛する)。そうであれば何も高価な新薬(試験薬)を使う必要はなく、プラセボ群で使用された従来の安価な血糖降下薬を使えばよいではないか、との反論も当然あるだろう。 血糖降下薬を投与する目的は心血管イベントなどの真のアウトカムを改善することにあり、HbA1cなどはあくまで代用のアウトカムsurrogate outcomeである。HbA1cを低下させれば腎症を含めた細小血管障害リスクが低下することはこれまでに証明されている。つまり将来の細小血管障害リスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは正当化される。本試験においてリナグリプチンは代用のアウトカムであるHbA1cと、同じく代用のアウトカムである尿アルブミンを有意に減少させたが、これはHbA1cの低下による可能性が高い。一方、心血管イベントについては、RCTのメタ解析によると厳格な血糖管理により非致死性心筋梗塞を含めた冠動脈疾患は減少するが、脳卒中、全死亡は減少しないと報告されている2)。つまり将来の心血管イベントリスクを低下させるためにHbA1cを低下させることは、細小血管障害の場合と同じ程度に正当化されるとは言い難い。 CVOTでは、血糖降下作用とは独立した心血管イベントリスクの上昇の有無を検証するために、試験デザインとしてプラセボ群と試験薬群とのglycemic equipoise(血糖コントロールつまりHbA1cが両群で試験期間中に同等であること)が要求されている。しかし本試験も含めた既報のすべてのCVOTにおいては試験薬群のHbA1cが有意に低下している。この点について、プラセボ群で血糖管理が強化されなかったのは倫理的に問題であるとの意見もあるが、筆者の見解は少しく異なる。実際にはCVOTに組み入れられたようなきわめて心血管イベント高リスクの患者で、かつ、すでに複数の血糖降下薬を併用してHbA1cが8.0%程度の患者において、インスリンを増量、SU薬を増量、他の血糖降下薬を追加することはACCORDの結果が報告されて以降、容易ではないのが現実ではないだろうか。血糖降下薬を増量、追加して血糖管理を強化するbenefitとharmを天秤に掛けると、clinical inertiaとの批判もあるが、現状維持を選択する判断になることが多い。さらに本試験に組み入れられたような腎機能異常を合併した患者においては、より一層その傾向が顕著である。つまりプラセボ群では血糖管理を強化しなかったのではなく、従来の血糖降下薬では強化できなかったのが事実に近いだろう。言い方を変えれば、試験薬により血糖管理を少しではあるが強化できたと言ってよい。そのような条件下においても、リナグリプチンが心血管イベントリスクを増加させずに血糖降下作用を発揮できることは本試験において証明されたと考えてよい。 非劣性試験は前述したように、患者にとって真のアウトカムの改善をもたらす薬剤を生み出す試験ではない。CVOTにおいて優越性を示した血糖降下薬はこれまでに複数存在するが、特殊な対象患者群、短い観察期間を考えるとすべての2型糖尿病患者にbenefitをもたらすかは不明である。今後はCVOTで優越性を示した薬剤を用いて、幅広い患者群に対する長期間の優越性試験superiority trialが実施されることを期待したい3)。

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第10回 カラダを温める食べ方【実践型!食事指導スライド】

第10回 カラダを温める食べ方医療者向けワンポイント解説カラダを温めることは、寒い冬の中で快適に毎日を送るための重要なポイントです。血流が悪くなると、代謝量が落ちる原因になるばかりか、冷えることで、「外出が億劫になる」「部屋の中でじっとして動かない」など活動量も落ちていきます。その結果、体重増加や食べ過ぎなどにつながってしまいます。また、カラダが冷えると筋肉も固くなり、けがや転倒のきっかけにもなります。寒い冬こそ代謝量や活動量が上がるよう、カラダを温める食べ方を意識してもらいましょう。以下ポイントについて解説をします。■ポイント1:肉や魚を食べる食事を摂取すると、消化の際に熱が産み出され、その一部が体熱となって消費されます。その結果、食事の後はカラダが温かくなり、安静時においても代謝量が増えます。これを『食事誘発性熱産生』(DIT:Diet Induced Thermogenesis)と言います。栄養素によって、このエネルギー量は異なり、タンパク質のみ摂取の場合は、摂取エネルギーの約30%、糖質のみ摂取では約6%、脂質のみ摂取では約4%と言われています。つまり、肉や魚、卵、大豆製品といったタンパク質の摂取は、ほかの栄養素と比べてカラダを温める働きが強いと言えます。また、筋肉量を増やすと体温はより高まるので、タンパク質の中でも脂肪が少なく、筋肉を作るのに適した栄養成分で組成されているヒレ肉や赤身肉、魚、卵などを、毎食意識して食べてもらうのが良いでしょう。■ポイント2:温かい汁物を食べる温かい汁物や食物の摂取には、カラダを直接温める働きがあります。とくに汁物など液状のものは、喉から胃に流れる過程で温かさを長く感じることができます。また、胃は冷たいものが入ると収縮し、動きが緩慢になりますが、温められることで動きが活発になり、消化促進にもつながります。■ポイント3:ショウガを食べるショウガの成分には6-ジンゲロール、6-ショウガオール、ジンゲロンなどがあります。生の状態で多く含まれる6-ジンゲロールを加熱または乾燥させることで、6-ショウガオールへ変化します。6-ショウガオールは内側からカラダを温める働きがあるので、スープや味噌汁など汁物や炒め物に加えるなどの加熱調理による食べ方を意識すると、より効果的です。また、残ったショウガをスライスして、乾燥させておくと無駄なく利用できるのでおすすめです。■ポイント4:辛い料理を食べるカプサイシンは、末梢血管を広げ、血流を改善する働きが期待できます。血流がスムーズになることで、指先やつま先など末端の循環を高め、酸素や栄養素の運搬を促し、カラダを温める働きがあります。辛い料理を食べることも良いですが、苦手な方は、炒め物や煮物に輪切り唐辛子を少し加える、うどんなどに七味唐辛子や一味唐辛子をふるなど、一手間加えてみることもおすすめです。■ポイント5:生野菜より茹で野菜野菜は水分を多く含むため、生野菜の多量摂取は、冷たい水分を摂取し、カラダを冷やす要因となります。「生野菜を食べないと、ビタミンやミネラルが摂取できない」と考える方も多いですが、茹で野菜でもビタミンやミネラルは摂取できます。生野菜から流出するのは水溶性のビタミンやミネラルの一部であり、すべてがなくなるわけではありません。刻んで水につけた葉物からは、ビタミンCが約50%減少するというデータもありますが、50%は残存します。生野菜はかさがあるため、サラダでは大量に食べるのは難しいです。しかし、茹でることで、かさが減り、一度に食べられる量が増えるので、かえって効率的にビタミンやミネラルが摂取できます。また、ビタミンやミネラルの流出を減らすには、生で食べる場合は“洗ってから切る”、加熱して食べる場合は“茹でてから切る”がポイントです。カラダを温めることは、環境整備や運動だけでなく、食事でも対策ができます。『寒い時期こそ、カラダを温めることを意識し、活動量を上げましょう』と、患者さんにお伝えすると良いでしょう。

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SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患を合併した2型糖尿病には有用かもしれないが日本人では?(解説:桑島巖氏)-988

 今、2型糖尿病の新規治療薬SGLT2阻害薬の評価が医師の間で大きく分かれている。一方は積極的に処方すべしという循環器科医師たち、もう一方は慎重であるべきという糖尿病治療の専門医師たちである。 自らの専門の立場によって分かれる理由は、このレビューを読み込むとよくわかる。そして一般臨床医は個々の症例にどのように処方すべきか、あるいは処方すべきでないかが理解できる内容である。 このレビューはSGLT2阻害薬に関して、これまでに発表された3つの大規模臨床試験、EMPA-REG、CANVAS Program、DECLARE-TIMI58を結果について独立した立場から俯瞰し、レビューした論文である。 総じて、SGLT2阻害薬は動脈硬化疾患既往例における心血管イベント抑制には効果が期待でき、とくに心不全や腎疾患例では動脈硬化疾患の有無にかかわらず、再入院予防や末期腎不全への進展予防に有用である可能性が示されている。 しかし半面、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化性疾患の既往のない例では、心血管イベントや心血管死の予防には有用性が認められないことも明らかにしている。 3つのトライアルには、以下のような違いがある。1.EMPA-REG試験は動脈硬化性疾患(脳卒中や虚血性心疾患)既往例が100%を占めているのに対して、DECLAREは40.6%にすぎない。このバックグラウンドの違いは結果に大きく影響している。2.そして、EMPA-REG試験では動脈硬化性疾患既往での心不全入院、心血管死予防における効果がDECLARE試験よりも2倍も大きい。3.EMPA-REG試験とCANVAS試験では動脈硬化疾患既往例のMACE(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)予防効果は認められたのに対して、DECLARE試験では認められなかった。 上記3項目は各々の試験の対象バックグラウンドの違いと、後で述べる用量の違い*がこの結果に影響していると思われる。4.心不全入院、心血管死予防効果は、EMPA-REG試験では、心不全既往のない例で顕著だったが、心不全既往例では認められなかった。一方、DECLARE試験では心不全既往のあるなしにかかわらず予防効果はあってもわずかである。5.腎機能障害例での心不全入院予防効果はEMPA-REG試験とCANVAS試験では認められたが、DECLARE試験ではみられなかった。6.AMPUTATIONと骨折のリスク増加はCANVAS(カナグリフロジン)のみにみられ、他の2剤ではみられなかった。共通点1.動脈硬化疾患既往を有さない2型糖尿病では、いずれの薬剤もMACEの予防効果や心不全入院、心血管死の抑制効果はなかった。つまり再発予防にのみ有用であって、脳卒中や心筋梗塞既往のない例でのMACE予防にはあまり効果は期待できない。2.動脈硬化疾患既往例での腎機能悪化予防と腎臓死抑制効果は3剤とも非常に大きい。心不全入院予防と腎不全悪化予防効果は、心不全や腎不全の既往にかかわらず3剤とも認められる傾向がある。3.心不全入院、腎不全の悪化予防効果の機序としては、HbA1c低下作用は、いずれのSGLT2阻害薬もプラセボ群との間の差が0.4~0.6%にすぎないことから、血糖抑制作用よりも、SGLT2阻害薬が有するナトリウム利尿作用が大きく関与していると思われる。まとめ SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患既往例では、心不全入院と心血管死の予防効果とMACEの発症予防に対して有用性は期待できるが、すべての試験が日本での適用用量でのエビデンスではない。 動脈硬化性疾患既往のない高リスクだけの2型糖尿病例では、有用性は期待できない。このことは、動脈硬化性疾患既往歴が半数以下しか含まれていないDECLARE試験では、MACE予防効果は認められず、心不全入院や心血管死の予防効果も軽度にとどまることから明らかである。*用量についての補足説明 CANVAS試験で用いられた薬剤用量が、わが国の最大適用用量をかなり上回っていることは注意すべきである。すなわち、CANVAS試験ではカナグリフロジン300mg/日まで用いられており、日本で保険収載の最大用量(100mg)を大幅に超えている。

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加齢黄斑変性、酸化LDLと関連なし

 血清中の酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)は、加齢黄斑変性(AMD)の発症または悪化において統計学的に有意な関連は認められないことが示された。米国・ウィスコンシン大学マディソン校のRonald Klein氏らが、ビーバーダム眼研究(BDES:Beaver Dam Eye Study)のデータを解析、報告した。Ophthalmology誌オンライン版2018年12月17日号掲載の報告。 BDESは、1988年にウィスコンシン州ビーバーダム市在住の43~84歳の住民を対象とする前向き観察研究として開始された。研究グループは、血清中の酸化LDLとAMDとの関連を調べる目的で、BDESにおいて1988~2016年に約5年間隔で行われた6回の調査期のうち1回以上の調査期に診察を受けた4,972例から、50%(2,468例)を無作為に抽出し、各調査期に保管された凍結検体についてELISA法を用いて酸化LDLを測定した。1人が複数回の調査期に診察を受けているため、合計6,586件の結果が含まれている。 AMDはWisconsin Age-related Maculopathy Grading Systemにより評価し、重症度を5段階に分類して調査した。あらゆるAMDや後期AMDの発生率、および25年にわたるAMDの悪化・改善など、AMDの推移と酸化LDLとの関連を、Multi-State Markov(MSM)modelを用いて同時解析した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける酸化LDL値(平均±SD)は、75.3±23.1U/Lであった。・年齢、性別、ARMS2と補体H因子(CFH)の対立遺伝子、および調査期で補正すると、調査期間初期の酸化LDLは、あらゆるAMDの発生率において統計学的に有意な関連は認められなかった(酸化LDL 10U/L当たりのハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.98~1.09)。・酸化LDLは単独で、AMD重症度の悪化や、後期AMDの発生率とも関連を認めなかった。・スタチン使用歴、喫煙状況、BMIおよび心血管疾患既往歴に関して補正後も、酸化LDLは、あらゆるAMDの発生率あるいはAMDの悪化と関連を認めないままだった。

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第10回 初心忘るべからず~心電図に先入観は禁物~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第10回:初心忘るべからず~心電図に先入観は禁物~新年、明けましておめでとうございます。2019年が皆さまにとって素敵な1年になるといいですね。おかげさまで、本連載も10回目を迎えることができ、今後ますます、心電図に関するわかりやすく有益な情報発信をしてゆく所存です。さて、新年一発目は初心にかえるべく大事な症例を扱いましょう。症例提示67歳、男性。糖尿病、高血圧で治療中。10年前に冠動脈インターベンション(PCI)実施の既往あり。4ヵ月前にも急性冠症候群(ACS:Acute Coronary Syndrome)で入院し、再狭窄(ステント内高度狭窄病変)の治療がなされていた。1ヵ月前から明け方の胸部不快・倦怠感が出現し、2週間前に救急外来を受診。諸検査結果から“帰宅可”とされた。今回は定期外来で受診し、以下のように症状を訴え、緊急入院となった。『今朝もまた調子が悪かったです。こないだ救急で来たときは大丈夫って言われました。前回の狭心症の時より軽いような気がするんですけど、なーんかやっぱり変なんです』定期外来時(図1)および救急外来時(図2)の心電図を以下に示す。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する(図2)救急外来時の心電図(2週間前)画像を拡大する【問題1】外来時の心電図(図1)の所見として正しくないものを2つ選べ。1)心室期外収縮2)心房細動3)ST低下4)異常Q波5)房室ブロック解答はこちら2)、4)解説はこちら1)×:肢誘導3拍目はワイドで洞周期のタイミングよりも早期に出ており、「心室期外収縮(PVC)」で間違いありません2)○:自動診断下部のコメントを見ると「心房細動が疑われます」となっていますね。でもこれは誤り。“悪魔のささやき”です(笑)。期外収縮の部分を除いてR-R間隔も整で、特徴的なf波(細動波)もありません(第4回)3)×:目を皿のようにして眺めると、I、II、そしてV2~V6誘導で「ST低下」があります。しかも、心筋虚血ありの時に多い“悪性”な「水平型」のようです4)○:aVR誘導を除き、最初に陰性に振れているQRS波はどこにもありません5)×:自動診断の「房室ブロックII度(Mobitz)」は×ですが、選択肢の「房室ブロック」は正しいです。これが最初から一人で見抜けたのなら、今回ボクから学ぶことはあまりないかも!?お決まりの読み“型”を思い出せ!さぁ、2019年はじめの症例は、冠危険因子リッチで、実際に心カテ治療歴もある男性です。ただ、今回は循環器外来での一場面。4ヵ月前に緊急PCIをされた時とは性状が少し違う、弱い胸部症状を訴えています。まずは、心電図(図1)を系統的な読み“型”(第1回)で判断すると、R-R間隔は不整、心拍数は期外収縮がない右側(胸部誘導)に対して検脈法を用いると48/分ですし、また、全体の10秒間の記録からは60/分(QRS波が10個)と算出できます(第3回)。ちなみに、どうしても最初に自動診断に目がいく人! それ自体は別に構いませんが、できれば自分で系統的な読みをした上での“たしかめ”に活用するほうが良いでしょう。次に、“ピッタリ”のP波はカタチがやや気になりますが、「向き」的には洞調律ですかね(第2回)。以下“クルッとスタート バランスよし!”でひっかかるのは、“スター”部分のST変化。なんだかST低下がありそうです。ここで、なーんかオカシイナと思ったら…過去の心電図との比較が重要です。この人の場合、2週間前にも同じような症状で救急受診しているので、その際の心電図(図2)と比べてみます。冠動脈疾患の既往がガッツリある人なので、どうしてもST変化に目がいってしまうのは医師の“性”でしょうか。現場では2枚の心電図を横に並べて、どこが変化したのかを見るのでしょう(そんなクイズも世間にありますね)。すると新規にST低下が出現しており、しかも虚血性ST変化としては“ホンモノ”を示唆することが多い「水平型」ではないですか! 左室肥大で見られるV5・V6誘導でのQRS高電位所見を伴わないST低下であることも重要だとボクは考えます。つまり、 このST変化は左室肥大では説明できないわけです。また、ST変化以外に今回問題となるのは、自動診断でも挙げられている「房室ブロック」です。細かく言うと「房室ブロックII度(Mobitz)」なので間違いもありますが、心電計がP波をきちんと認識できているということですから、ある意味スゴいです。これらの問題点を踏まえて次の問題をどうぞ。【問題2】心筋トロポニン、CK・CK-MBの上昇はなく、心エコーでの左室壁運動異常もなかった。以上のことからどんな病態を想定し、どうマネジメントするか?解答はこちら病態の想定:ACSや有症候性徐脈(房室ブロック)、冠攣縮性狭心症などマネジメント:冠動脈造影、房室ブロックの精査・加療を行う解説はこちらこの問題は、今回ボクが最も伝えたいことに関係します。この方は採血や心エコーでの異常はないようです。でも、濃厚な狭心症治療歴、加えて新出のST変化、とくに水平型ST低下ですから、冠動脈病変、なかでもACS再発を第一に疑うこと自体は悪くありません。“早朝だけ”のようなキーワードから「冠攣縮性狭心症」を思い浮かべた人もセンス良しです。また、既往にも以前の心電図にもない「房室ブロック」が認められていますので、これに関連した胸部症状ではないかどうかも疑うべきです。マネジメントとしては…狭心症を疑い、冠動脈造影を実施。また、房室ブロックについても精査する必要がありますね。実際、この方は「不安定狭心症(急性冠症候群)」の疑いで緊急入院となりました。これはGood-Jobだったのですが、まずかったのは、“その他”の選択肢を考えるのをやめてしまったこと。心臓カテーテル検査を行って冠動脈狭窄(動脈硬化症)や冠攣縮を評価し、場合によっては血行再建治療をすると同時に、もう一つの大きな異常である「房室ブロック」への対処も想定してこそデキるドクターです。徐脈に関連した症状や心不全徴候ありと考えればペースメーカー植え込みの適応がありますし、その前に一時ペーシングを行う必要性はありませんか…?ST部分にばかり気をとられて、心電図から「房室ブロック」を指摘できない人は、その先に進みようがありません。ST変化のほかに不整脈もあるぞ!病歴や背景因子からして、患者さんの胸部症状の原因として、冠動脈疾患(虚血性心疾患)を疑うのは定石ですし、できて当然だと思います。この方は左冠(状)動脈(前下行枝)に治療歴があり、心電図(図1)をよく見るとaVR誘導でST上昇もあるので、『かなり上流でのヤバイ病変なのでは…』と、とらえる人もいるかもしれません。もちろん、悪くないでしょう。同日に入院後、“準緊急”でなされた冠動脈造影では、ステント狭窄やほかの新規病変もありませんでした。そのためか、この時点で担当医は、心電図(図1)に心室期外収縮以外の大事な不整脈があるということを完全に見落とし、安心しきってしまいました。たしかに、心拍数もメチャクチャ遅いわけでもない、期外収縮もある、「心拍数62/分」と表示されていた…そのため「徐脈性不整脈」の存在と影響を頭に思い描くことができなかったのでしょう。ここで、心電図(図1)より抜粋したV1誘導(あるいは“僧帽性P”に見えるII誘導)を見て下さい(図3)。(図3)心電図(図1)よりV1誘導のみ抜粋画像を拡大する左から奇数個目のP波はブロックされており、QRS波は続きません。つまり、2:1房室ブロックと診断できるんです。自動診断の言う「II度(Mobitz)」ではなく、「2:1房室ブロック」。これが正しい心電図診断です。「2:1」というのは、“つながる”(房室伝導できる)と“落ちる”(房室伝導できずにQRS波が脱落する)が交互にくるという意味です。担当医はまず、2週間前の心電図(図2)のV1誘導と比べて、明らかにT波のカタチが変わっている(おかしい)ことに気づくべき(クルッ“ト”チェックの時点でね)。図中の矢印はP波ですよ! QRS波の直前にコンスタントにあるP波とまったく同じ波形がT波終末部に重なっているのです。このようにV1誘導のP波は、“2相性”であるなど目立つ形状のことも少なくありません。なので、P波の認識が外せない不整脈解析において、ほかよりもV1誘導が不整脈を読み解くのに適している理由の一つなんです。心電図のメッセージは漏れなく受信したい実際のカルテには「洞調律、以前にないST低下」という記載のみで、カテの翌日に退院可とされていました。サマリーにも房室ブロックに関する言及はありませんでした。この房室ブロックは間欠的(一過性)だったため、めまいやふらつき、息切れなどの典型的な徐脈症状もこの患者さんにはありませんでした(その後しばらく外来心電図でも房室ブロックなし)。そのためか、退院後も不定期に続く類似の訴えが問題提起されませんでした(外来担当医には“真実”が見えてなかったためでしょう)。そして緊急入院から半年以上も後のこと。患者さんは『以前は、時折、朝だけ出現していた症状が、最近は1日中になって身体全体が重くてだるい』と訴えて、再び救急受診することになります。この時に担当した別の医師は、「2:1房室ブロック」に気づき、最終的にペースメーカー植え込みがされました。幸い、術後は胸部症状と倦怠感が完全に消失(主訴が房室ブロックによるものであることを示唆しています)したそうです。めでたし、めでたし。ちなみに、心電図(図1)で認められたST低下についてはどうでしょう?血行再建を要するほどではない狭窄が数カ所あり、それが房室ブロックに伴う徐拍化で相対的に心筋虚血を生じた可能性などを考えますが、正確な機序に関しては難しいように思います。最後に述懐。当初、入院担当医、そして心カテも含め指導した上級医(外来医)は共に循環器医でした。彼らを笑う、あるいは責めたところで、何も問題は解決しませんし、ボクが最も嫌いなことです。むしろ“人の振り見て我が振り直せ”。先入観は時に“プロ”であっても盲目にさせるもの。担当者が心電図の放つメッセージをすべて受信できていたら、今回のようなジャッジには絶対ならなかったはずですし、どんな立場の医師であろうと、患者さん本人や家族にとっては“ヤブ医者”と感じるかもしれません。でも、もし半年前にペースメーカーを入れてあげられていたら、患者さんをもっと早く快適にできたわけですし、もしも「冠動脈狭窄なし=冠攣縮」のような短絡的思考でジルチアゼムなどを処方していたら、医原性に完全房室ブロックを作っていた可能性もあります。すべてがすべて、心電図の“読み落とし”に起因する結果と考えられませんか…?もちろん仮定の話で、悲観しすぎかもしれませんが。『この患者さんは“冠疾患の人”だから…』だと決めつけて、心電図でST変化だけしか見ない医師に“正解”は見えません。心電図を読む時は、まず先入観なく真っ白な気持ちで読むのです。その上で所見を解釈し、行動に移す段階で患者背景などの追加情報を乗せるのが正しい“順序”なのです。過剰な先入観の怖さ、そして系統的な心電図判読の重要さ…それを本症例が教えてくれている気がします。サン=テグジュペリの星の王子さまは、「大切なものは目に見えない」と言いました。ただ、心電図の場合には少し違います。すべて“見えてる”んです。でも、読む側の頭と心とが整わないと消えてしまうだけ。「心電図は漏れなく系統的に読むぞ!」皆さんが新年にDr.ヒロと改めてそう誓ってくれることを祈りたいと思います。Take-home Message1)「異常かな?」と思う所見があったら、必ず過去の心電図と比較せよ!2)強すぎる先入観は、心電図を読む上では障害! まずは頭を“真っ白”にして読もう3)不整脈解析にはV1誘導が最適な判断材料となることが多い【古都のこと~下鴨神社~】ボクの初詣といえば下鴨神社。この名前、実は通称で、本当は賀茂御祖(かもみおや)神社と言うそうです。1994年(平成6年)、世界遺産に登録されたこともあり、今年も全国からの参拝客で大賑わいでした(写真は早朝に撮影)。ボクの元日は家族とともにご祈祷を受けることから始まるのですが、このご祈祷、国宝の本殿に通されてさい銭を投げる参拝客の真ん前で執り行われるのです。そんな気恥ずかしさや足に心地よい玉砂利の感覚を味わうのが、ここ数年恒例の醍醐味なのです。

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高齢者の肥満診療はどうすべきか

 2018年12月18日に一般社団法人 日本老年医学会(理事長:楽木 宏実氏)は、同会のホームページにおいて『高齢者肥満症診療ガイドライン2018』(作成委員長:荒木 厚氏)を公開した。 本ガイドラインは、同会が作成方針を打ち出している「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」、すなわち 「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満症」のガイドラインの第4弾にあたり、日本肥満学会の協力を得て作成されたものである。作成では既刊の『肥満症診療ガイドライン2016年版』を参考に、認知症・ADL低下の観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューを実施したものとなっている。 17のCQで肥満症診療に指針 ガイドラインでは、「肥満または肥満症の診断」「肥満症の影響」「肥満症の治療」と全体を3つに分け、各項目でCQを設定している。とくに「肥満症の影響」は厚く記載され、肥満と認知症リスク、運動機能低下、循環器疾患との関係が記されている。 具体的に「肥満または肥満症の診断」では、肥満症の特徴について「高齢者ではBMIが体脂肪量を正確に反映しないことが少なくないこと」「BMIよりもウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比が死亡リスクの指標となること」「内臓脂肪が加齢と共に増加すること」などが記されている。 「肥満症の影響」では、「高齢期の認知症のリスク」について、「中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意(推奨グレードA)」とする一方、「高齢者の肥満は認知症発症リスクとはならず、認知症発症リスクの低下と関連する」としている。また、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べ、ADL低下・転倒・骨折、死亡のリスクとなるか」では、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べてよりADL低下・転倒・骨折、死亡をきたしやすいので注意する必要がある(推奨グレードA)」とし注意を促している。 「肥満症の治療」では、「生活習慣の改善で体重、BMIを是正することでADLや疼痛、QOLは改善するか」について、「ADL低下、疼痛、QOLを改善することができる(推奨グレードB)」としているほか、「肥満症を治療すると認知機能は改善するか」では、「認知機能は改善する可能性がある(推奨グレードB)」などが記されている。 本ガイドラインの詳細については、同会のホームページで公開されているので参照にしていただきたい。

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第8回 冬の救急編:心筋梗塞はいつ疑う!?【救急診療の基礎知識】

12月も終盤。最近では都内も一気に冷え込んできました。毎朝布団から出るのが億劫になってきた今日この頃です。救急外来では急性冠症候群や脳卒中の患者数が上昇しているのではないでしょうか?ということで、今回は冬に多い疾患にフォーカスを当てようと思います。脳卒中は第5回までの症例で述べたため、今回は急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)に関して、初療の時点でいかにして疑うかを中心に考えていきましょう。●今回のPoint1)胸痛を認めないからといって、安易に否定してはいけない!?2)急性冠症候群?と思ったら、常に大動脈解離の可能性も意識して対応を!?3)帯状疱疹を見逃すな! 必ず病変部を目視し、背部の観察も忘れるな!?はじめに急性冠症候群は、冠動脈粥腫の破綻、血栓形成を基盤として心筋虚血を呈する症候群であり、典型例は胸痛で発症し、心電図においてST上昇を認めます(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)。典型例であれば誰もが疑い、診断は容易ですが、そればかりではないのが現実です。高感度トロポニンなどのバイオマーカーの上昇を認めるものの、ST変化が認められない非ST上昇型心筋梗塞(non-ST elevation myocardial infarction:NSTEMI)、バイオマーカーの上昇も伴わない不安定狭心症(unstable angina pectoris:UAP)の診断を限られた時間内で行うことは難しいものです。さらに、胸痛が主訴であれば誰もがACSを疑うとは思いますが、そうではない主訴であった場合には、みなさんは疑うことができるでしょうか。STEMI患者であれば、発症から再灌流までの時間を可能な限り短くする必要があります。そのためには、より早期に疑い対応できるか、具体的にはいかにして疑い心電図をとることができるかがポイントとなります。今回はその辺を中心に一緒に考えていきましょう。急性冠症候群はいつ疑うべきなのか?胸痛を認める場合「胸痛を認めていれば10分以内に心電図を確認する」。これは救急外来など初療に携わる人にとって今や常識ですね。痛みの程度がたいしたことがなくても、「ACSっぽくないなぁ」と思っても、まずは1枚心電図検査を施行することをお勧めします。何でもかんでもというのは、かっこ悪いかもしれませんが、非侵襲的かつ短時間で終わる検査でもあり、行うことのメリットが大きいと考えます。胸痛を認めACSを疑う患者においては、やはり大動脈解離か否かの鑑別は非常に重要となります。頻度は圧倒的にACSの方が多いですが、忘れた頃に解離はやってきます。まずはシンプルに理解しておきましょう。突然発症(sudden onset)であった場合には、大動脈解離をまず考えておいたほうがよいでしょう。ACSも急性の胸痛を自覚することが多いですが、大動脈解離はそれ以上に瞬間的に痛みがピークに達するのが一般的です。数秒内か数分内かといった感じです。「なんだか痛いな、いよいよ痛いな」というのがACS、「うわぁ!痛い!」というのが解離、そんな感じでしょうか。皮膚所見は必ず確認ACSを数時間の診療内にカテーテル検査を行わずに否定することは意外と難しく、HEART score(表1)1)などリスクを見積もるスコアリングシステムは存在しますが、低リスクであってもどうしても数%の患者を拾いあげることは難しいのが現状です。しかし、胸痛の原因となる疾患がACS以外に確定できれば、過度にACSを心配する必要はありません。画像を拡大する画像を拡大する高齢者の胸痛の原因として比較的頻度が高く、発症時に見逃されやすい疾患が帯状疱疹です。帯状疱疹は年齢と共に増加し、高齢者では非常に頻度の高い疾患です。痛みと皮疹のタイムラグが数日存在(長ければ1週間程度)するため、発症時には皮疹を認めないことも多く診断では悩まされます。胸痛患者では心電図は必須であるため、胸部誘導のV6あたりまでは皮膚所見が勝手に目に入ってくるとは思いますが、背部の観察もきちんと行っているでしょうか。観察を怠り、ACSの可能性を考えカテーテル検査が行われた症例を実際に耳にします。皮疹がまったくない状態でリスクが高い症例であれば、カテーテル検査を行う状況もあるかもしれませんが、明らかな皮疹が支配領域に認められれば、帯状疱疹を積極的に疑い、無駄な検査や患者の不安は回避できますよね。疼痛部位に加えて、神経支配領域(胸痛であれば背部、腹痛であれば背部に加え臀部)は必ず確認する癖をもっておくとよいでしょう。胸痛を認めない場合ACSを疑うことができなければ、心電図をオーダーしないでしょう。いくら高感度トロポニンなど有効なバイオマーカーが存在していても、フットワークが軽い循環器医がいても、残念ながら目の前の患者さんを適切にマネジメントできないのです。胸痛を認めない患者とは(1)高齢、(2)女性、(3)糖尿病、これが胸痛を認めない心筋梗塞患者の3つの代表的な要素です。2型糖尿病治療中の80歳女性の約半数は痛みを認めないのです2,3)。これがわずか数%であれば、胸痛がないことを理由にACSを否定することが可能かもしれませんが、2人に1人となればそうはいきません。3大要素以外には、心不全や脳卒中の既往症がある場合には、痛みを認めないことが多いですが、これらは普段のADLの低下や訴えが乏しいことが理由でしょう。既往症から心血管系イベントのリスクが高い患者ということが認識できれば、虚血性病変を疑い対応することが必要になります。胸痛以外の症状無痛性心筋梗塞患者の入口はどのようなものでしょうか。言い換えれば、胸痛以外のどのような症状を患者が訴えていたら疑うべきなのでしょうか。代表的な症状は表2のとおりです。これらの症状を訴えて来院した患者において、症状を説明しうる原因が同定できない場合には、ACSを考え対応する必要があります。65歳以上の高齢者では後述するcoronary risk factorが存在しなくても心筋梗塞は起こりえます。年齢が最大のリスクであり、高齢者ではとくに注意するようにしましょう。画像を拡大するたとえば、80歳の女性が嘔気・嘔吐を主訴に来院したとしましょう。バイタルサインは意識も清明でおおむね安定しています。高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症の指摘を受け内服加療中です。さぁどのように対応するべきでしょうか。そうです、病歴や身体所見はもちろんとりますが、それと同時に心電図は一度確認しておきましょう。症状が数日持続している、食欲は通常どおりあるなど、ACSらしくないなと思ってもまずは1枚心電図を確認しておくのです。入口を広げると、胸痛ではなく失神や脱力、冷や汗などを認める患者においても「ACSかも!?」と思えるようになり、「胸痛はありませんか?」とこちらから問診できるようになります。患者は最もつらい症状を訴えるのです。胸痛よりも嘔気・嘔吐、脱力や倦怠感が強ければ、聞かなければ胸痛を訴えないものなのです。Coronary risk factorACSを疑った際にリスクを見積もる必要があります。冠動脈疾患の家族歴、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙者、慢性腎臓病などはリスクであり、必ず確認すると思いますが、これらをすべて満たさない場合にはACSは否定してよいのでしょうか。答えは「No」です。 年齢が最大のリスクであり、65歳以上の高齢者では、前述したリスクファクターのどれも該当しなくても否定してはいけません。逆に40~50代で該当しなければ、可能性はきわめて低くなります。ちなみに家族歴はどのように確認していますか? 「ご家族の中で心筋梗塞や狭心症などを患った方はいますか?」と聞いてはいませんか。この問いに対して、「私の父が80歳で心筋梗塞にかかった」という返答があった場合に、それは意味があるでしょうか。わが国における心筋梗塞の平均発症年齢は、男性65歳、女性75歳程度です。ですから年齢を考慮すると心筋梗塞にかかってもおかしくはないなという、少なくともそれによって診療の方針が変わるような答えは得られませんね。ポイントは「若くして」です。先ほどの問いに対して「私の父は50歳で心臓の病気で亡くなりました」や、「私の兄弟が43歳で数年前に突然死して、不整脈が原因と言われました」といった返答があれば、今目の前にいる患者さんがたとえ若くても、家族歴ありと判断し、慎重に対応する必要があるのです。さいごに胸痛を認めればACSを疑い、対応することは誰もができるでしょう。しかし、そもそも疑うことができず、診断が遅れてしまうことも一定数存在するはずです。高齢者では(とくに女性、糖尿病あり)、入口を広げること、そして帯状疱疹に代表される心筋梗塞以外の胸痛疾患もきちんと鑑別に挙げ、対応することを意識してください。次回は、意識障害のピットフォールに戻り、アルコールによる典型的な意識障害のケースを学びましょう。1)Poldervaart JM, et al. Ann Intern Med. 2017;166:689-697.2)Canto JG, et al. JAMA. 2000;283:3223-3229.3)Bayer AJ, et al. J Am Geriatr Soc.1986;34:263-266.

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GIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストLY3298176は第3のインクレチン関連薬となりうるか?(解説:住谷哲氏)-986

 インクレチンは食事摂取に伴って消化管から分泌され、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり、GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)の2つがある。GIPおよびGLP-1は腸管に存在するK細胞、およびL細胞からそれぞれ分泌され、インスリン分泌促進以外の多様な生理活性を有している。しかしGIPは高血糖状態においてはインスリン分泌作用が弱いこと、脂肪細胞に作用して脂肪蓄積につながることから、現在はGLP-1のみがGLP-1受容体作動薬として臨床応用されている。しかし生理状態では両者は同時に分泌される、いわば双子の腸管ホルモンであり、この両ホルモンの受容体を同時に刺激する目的で開発されたのがGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストLY3298176である。 LY3298176はGIPに類似した39個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、20番目のリジンに脂肪酸側鎖を結合することで週1回投与を可能とした。GIP受容体とGLP-1受容体の両者に高い親和性で結合して細胞内シグナル伝達を惹起することが基礎実験で確認されている1)。基礎実験から臨床への橋渡しとなるproof of concept試験をクリアした後に実施されたphase 2 trialが本試験である。プラセボ群に加えて、実薬群としてはすでに発売されているデュラグルチド1.5mgが用いられて、1mg、5mg、10mg、15mgの4用量が検討された。 26週にわたり血糖降下作用、体重減少作用に対する有効性、および有害事象を検討したが、その結果は非常にimpressiveであった。試験開始時の平均HbA1cは8.1%、BMIは32.6kg/m2であったが、15mg投与群におけるHbA1cの低下はプラセボ群と比較して-1.94%、デュラグルチド群と比較しても-0.73%であった。さらにデュラグルチド群の2%に対して、10mg投与群の18%、15mg投与群の30%は正常血糖値とされるHbA1c<5.7%を達成した。体重減少についてもデュラグルチド群の-2.7kgに対して、-11.3kgであった。予想されたように消化器系の有害事象は用量依存性に増加したが多くは一過性であった。また重症低血糖は1例もなかった。 LY3298176による血糖降下作用および体重減少作用が、GLP-1受容体またはGIP受容体のいずれを介した作用なのかは、本試験の結果からは明らかではない。デュラグルチド群と比較してLY3298176の作用はより強力であることからGIP受容体を介した作用がdominantであると考えるのが妥当と思われるが、これまでの報告ではGIPの単独投与による血糖降下作用および体重減少作用はこれほど著明ではない。いずれにせよ本薬剤の投与により30%の患者の血糖値がほぼ正常化し、著明な体重減少が得られた結果から、非常にpromisingな薬剤であり第3のインクレチン関連薬となりうる可能性は高い。やはり双子のインクレチンはtwincretinとして作用するのが本来の姿であるのかもしれない。

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ダパグリフロジンと心疾患予防の関係は

 11月26日、アストラゼネカ株式会社と小野薬品工業株式会社は、アメリカ心臓協会(AHA)でDECLARE‐TIMI 58 試験(以下「本試験」と略す)の発表が行われたのを期し、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、糖尿病領域と循環器領域の2つの視点から試験結果に対し説明が行われた。DECLARE‐TIMI 58 試験概要 複数の心血管リスク因子、心血管疾患の既往歴を有する患者を含む、CVイベントリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象に、ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の治療が及ぼす影響をプラセボとの比較で評価した試験。患者登録では、日本を含む世界33ヵ国882施設から1万7千例超の患者が参加。無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。実施はアストラゼネカ株式会社。高血糖の人は心不全リスクが高い 糖尿病領域では、門脇 孝氏(一般社団法人 日本糖尿病学会 理事長、東京大学大学院医学系研究科 特任教授、帝京大学医学部附属溝口病院 常勤客員教授)を講師に迎え、本試験の意義を確認した。 最近の調査から糖尿病患者と一般の健康な人との間では、平均寿命の差に約8~11年の隔たりがあること(2001~10年)、心不全合併症の糖尿病患者は心不全の既往がない糖尿病患者と比較して生存率が低いこと1)などを指摘、糖尿病患者の心血管イベントリスクへ警鐘を鳴らした。 本試験では、対象に2型糖尿病で「40歳以上および虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患のいずれか1つ以上を有するもの」(2次予防)または「男性55歳以上、女性60歳以上で脂質異常、高血圧、喫煙のいずれか1つ以上のリスク因子を有するもの」(1次予防)を組み入れ、最長6年、平均追跡期間4.2年と長いスパンでみたものであると解説。なかでも「対象者に複数のリスク因子保有者が組み入れられている点は、臨床での実患者像に近い」と同氏は試験の意義を強調した。 本試験の結果につき、48ヵ月経過後プラセボ群のHbA1cが8.3%→8.1%だったのに対し、ダパグリフロジン群は8.3%→7.7%(最小二乗平均の差における95%CI 0.40~0.45)と有意に低下し、体重も同期間でプラセボ群が91kg→89kgだったのに対し、ダパグリフロジン群は91kg→87kg(最小二乗平均の差における95%CI 1.7~2.0)と有意に減少していた。 有効性に関し、主要心血管イベント(MACE)のイベント発生率ではプラセボ群が9.4%だったのに対し、ダパグリフロジン群は8.8%で有意差は認められなかった(HR 0.93[信頼区間0.84~1.03])一方で、心不全による入院と心血管死では、プラセボ群が5.8%だったのに対し、ダパグリフロジン群は4.9%と有意な減少(HR 0.83[信頼区間0.73~0.95])を認め、腎複合評価項目ではプラセボ群が5.6%だったのに対し、ダパグリフロジン群は4.3%と同じく有意な減少(HR 0.76[信頼区間0.67~0.87])を認めた2)。 安全性では、重篤な有害事象、重症低血糖、急性腎障害、膀胱がんでプラセボに非劣性だったのに対し、投与中止の有害事象、糖尿病性ケトアシドーシス、性器感染症はプラセボよりも高い数値だった。 以上の本試験の結果から同氏は「高血糖とリスクファクターを持つ人は症状こそ見えないが、心不全、腎不全の病態が進行していることが示唆された。また、心血管イベントの既往がない患者さんに対して、心不全・腎イベントの発症を抑制できることが初めて示唆され、今後は、健康な人と変わらないQOLの確保と寿命の維持のためにも、患者個々の背景と合ったエビデンスを持つ薬剤を使用していくべきと考える」と展望を語り、レクチャーを終えた。糖尿病患者は心不全の際に立っている 続いて小室 一成氏(一般社団法人日本循環器学会 代表理事、東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授)を講師に迎え、循環器領域から本試験結果への考察を説明した。 循環器疾患では、「心不全」が増加傾向にあり、重要な疾患と位置づけられている。心不全は、徐々に悪化するので早期から急性イベントや入院を防止することが大切だが、糖尿病患者では主要な合併症であることが知られている。糖尿病患者の生存率は、前述の講演の内容通りだが、「糖尿病患者は、心不全を起こす際に立っているようなものであり、いかに進行の傾斜を緩やかにするのかが重要だ」と指摘する。そのため、糖尿病患者では心不全を発症させないことが大事であり、予防では、糖尿病発症、左室リモデリング、左室機能障害、心不全の診断の4つの予防機会があるという。 その他、本試験のほかEMPA-REG OUTCOME、CANVAS Programの3試験の解析から本試験の対象者のハザード比が低いことも報告された。 実際、これらの試験成績を受けて小室氏は、「SGLT2阻害薬には、心血管既往歴のある2型糖尿病患者の心不全予防に有効だとしながらも、一次予防症例や後期高齢者などへの有効性についてはこれからの課題」である。「今後、治療に関するガイドラインなども議論が活発になると考えている」と述べ、講演を終えた。※ダパグリフロジンは2型糖尿病のみ承認取得した薬剤であり、心不全や心血管死などへ効能効果はない。また、わが国での開始使用量は5mg/日で、効果不十分などの場合は最大10mg/日まで増量可能。■関連記事CV高リスク2型DMへのSGLT2iのCV死・MI・脳卒中はプラセボに非劣性:DECLARE-TIMI58/AHA

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新たなNASH治療薬、肝脂質比を有意に減少/Lancet

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者に対する、開発中のpegbelfermin(BMS-986036)の16週間皮下投与は、概して忍容性は良好で、肝脂質比を有意に減少したことが、米国・バージニア・コモンウェルス大学のArun Sanyal氏らによる第IIa相試験の結果、示された。pegbelferminは、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)のPEG化アナログで、これまでに2型糖尿病を有する肥満症患者において、代謝および肝線維化マーカーを改善したことが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年12月13日号掲載の報告。pegbelfermin 10mgを毎日、または同20mgを毎週投与 研究グループは、第IIa相試験においてNASH患者におけるpegbelferminの安全性と有効性を評価するため、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照平行群比較試験を行った。 米国17ヵ所の医療センターで、BMI値25以上、生検でNASH(線維化ステージ1~3)が確認され、MRI-PDFF(MRIによるプロトン密度脂肪画分測定法)で肝脂質比10%以上だった成人(21~75歳)を集めた。 適格患者を2型糖尿病の有無により層別化したうえで1対1対1の割合で無作為に3群に分け、(1)プラセボを1日1回、(2)pegbelfermin 10mgを1日1回、(3)pegbelfermin 20mgを週1回、16週にわたってそれぞれ皮下投与した。被験者、治療を行う試験チーム、アウトカムを分析する研究者(試験チームとは独立しており、分析以外は関与しない)は治療群に対してマスキングされた。 主要評価項目は、治療16週間後の安全性と肝脂質比の絶対変化だった。主要解析には、無作為化を受け試験薬またはプラセボの投与を受けた全患者を包含した。肝脂質比減少率、pegbelfermin 10mg群-6.8%、同20mg群-5.2% 2015年5月12日~2016年8月4日にNASHを有する過体重または肥満患者184例がスクリーニングを受けた。このうち、95例(52%)は試験基準を満たすことができず除外され、80例(43%)が、プラセボ導入フェーズに登録された。 さらなる除外を行い、無作為化を受け試験薬を1回以上投与された75例を主要解析に包含した。pegbelfermin 10mg群は25例、20mg群は24例、プラセボ群は26例だった。 事前に規定した8週時の中間解析で、主要解析について予想以上の変化量が認められ、計画したサンプルサイズを必要としないことが示されたため、被験者登録を早期に終了した。 プラセボ群と比較して両pegbelfermin群において、絶対肝脂質比の有意な減少が認められた。プラセボ群-1.3%に対し、pegbelfermin 10mg群は-6.8%(p=0.0004)、同20mg群は-5.2%(p=0.008)だった。 大半の有害事象は軽度だった。最も頻度が高かったイベントは下痢で、pegbelfermin治療を受けた49例中8例(16%)、プラセボ群は26例中2例(8%)、次いで悪心がそれぞれ7/49例(14%)、2/26例(8%)だった。死亡例はなく、有害事象による試験中断、あるいは治療関連の重篤有害事象もなかった。 今回の結果を受けて著者は、「NASH患者に対するpegbelfermin治療について、さらなる試験を行う根拠が示された」と述べ、「pegbelferminの肝組織への効果を評価するため肝生検を用いた付加的試験が必要だろう。さらに、より多くの被験者を対象とした、pegbelferminの安全性と有効性を評価する試験も考慮すべきである」とまとめている。

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心代謝特性はBMIと関連するか

 BMIは脂肪を非脂肪と区別せず、脂肪分布を無視し、健康への影響を検出する能力が不明とのことで批判されている。今回、英国・ブリストル大学のJoshua A. Bell氏らは、心代謝特性との関連においてBMIと二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による全身および局所の脂肪指数(fat index)を比較した。その結果から、腹部の肥満が心代謝障害の主因であり、その影響の検出にBMIが有用なツールであることが支持された。Journal of the American College of Cardiology誌2018年12月18日号に掲載。 著者らは、英国での親と子供の縦断研究Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenの子供2,840人において、10歳時と18歳時にBMIおよびDXAによる全身・体幹・腕・脚の脂肪指数(kg/m2)を測定し、18歳時の230種類のメタボロミクスの項目との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・10歳時に全身脂肪指数およびBMIが高値であることが、18歳時に収縮期および拡張期血圧高値、高VLDLおよび高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセライド、高インスリンおよび高アセチル糖タンパク質といった心代謝特性と関連することが示された。・18歳時の全身脂肪指数とBMIの関連は強く、10歳から18歳までの各指標の増加も強く関連した(例 アセチル糖タンパク質の増加は、全身の脂肪指数のSD単位増加当たり0.45SD[95%信頼区間:0.38~0.53]vs. BMIのSD単位増加当たり0.38SD[同:0.27~0.48])。・心代謝特性との関連は、BMI・全身の脂肪指数・体幹の脂肪指数で類似していた。・非脂肪指数(lean mass index)高値は心代謝特性との関連は弱く、脂肪指数高値に防御的ではなかった。

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乾癬患者は甲状腺疾患のリスクが高い

 これまで、乾癬と甲状腺疾患との関連はよくわかっていなかった。乾癬患者では、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、バセドウ病および橋本病などの甲状腺疾患リスクの増加が認められると、台湾・輔仁大学のShu-Hui Wang氏らによるコホート研究で明らかになった。著者は、「乾癬患者が甲状腺疾患の症状を呈した場合は、内分泌科への紹介を考慮したほうがいいだろう」とまとめている。なお、研究の限界として乾癬患者の重症度のデータが不足していた点を挙げている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者における甲状腺疾患のリスクを検討する目的で、台湾の全民健康保険データベースを用い、乾癬および乾癬性関節炎に関連する甲状腺疾患発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・乾癬性関節炎患者1万3,266例(乾癬性関節炎群)、乾癬のみの患者14万9,576例(乾癬群)、非乾癬患者16万2,842例(対照群)が解析に組み込まれた。・対照群と比較した、乾癬性関節炎群および乾癬群の甲状腺機能亢進症発症に関する補正後ハザード比は、1.32(95%CI:1.07~1.65)、1.22(95%CI:1.11~1.33)。バセドウ病では、1.38(1.07~1.79)、1.26(1.13~1.41)と、それぞれで発症リスクは高かった。・同様に両群では、甲状腺機能低下症(補正後HR:1.74[95%CI:1.34~2.27]、同:1.38[95%CI:1.23~1.56])、橋本病(2.09[1.34~3.24]、1.47[1.18~1.82])のリスクも高かった。

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食事療法の見直しへ日本糖尿病学会が動き出す

 食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人における食事療法の見直しが迫られている。2018年11月5日、日本糖尿病学会が主催する「食事療法に関するシンポジウム」が、5年ぶりに開催された。講演には、座長に羽田 勝計氏(「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会委員長)と荒木 栄一氏(「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会委員長)を迎え、5名の糖尿病専門医らが登壇した。 また、パネルディスカッションには、さまざまな観点からの意見を求めるべく、5つの団体(日本老年医学会、日本腎臓学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本病態栄養学会、日本糖尿病協会)の代表が参加した。 本稿では講演の概要をお届けする。糖尿病食事療法でのBMI 22を基準としたエネルギー設定の問題点 宇都宮 一典氏(食事療法に関する委員会委員長)は「総エネルギー摂取量設定法をめぐる課題」をテーマに講演を行った。宇都宮氏は、食事療法の目的は、糖尿病の代謝異常の是正による合併症の抑制にあるとし「患者の条件を考慮した個別化の検討が必要」と述べた。なかでも、エネルギー設定が最も重要であることから、「これまで、標準体重を基に一律に総エネルギー摂取量を設定してきたが、エネルギー必要量には個人差が著しく、個々のさまざまなデータ(脂質、血圧など)の改善度を評価し、順守性もみながら設定すべき」と、改めて強調した。 また、死亡率の低いBMI 22を、標準体重としてエネルギー設定することの問題点として、海外と日本のデータを基にコメント。1)患者の死亡率が低いBMIは20~25の幅があり、また、75歳以上の後期高齢者の場合、そのBMIは25以上2)体重が増えるほど消費エネルギーは増加し、肥満者ほどエネルギー設定との乖離が増す3)国際的には実体重当たりで表記されており、比較することが難しいなどを挙げた。ただし、日本ではBMI 22を標準体重とすることが広く普及しており、十分なコンセンサスの形成が必要、と結んだ。糖尿病患者の食事療法におけるエネルギー必要量は? 勝川 史憲氏(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)は「糖尿病患者のエネルギー必要量:エビデンスと歴史的経緯について」を講演した。 糖尿病患者の体重当たりの総エネルギー必要量に対して、「根拠となるデータが公表されていない」と指摘する勝川氏は、エネルギー消費量の計算においてゴールデンスタンダードな二重標識水法について解説。この方法は、自由行動下のエネルギー消費量を精度高く測定する方法であるが、コストが高く多人数の測定が困難であるという。 同氏がこの方法を用いた海外を含む4つの文献データを基に、総エネルギー消費量とBMIをプロットしたところ、「糖尿病患者のエネルギー必要量は健康な人と差がない、もしくは5~6%程度高め」という結果となった。これを踏まえ、食事療法における過少なエネルギー処方が、減量の不良や高齢者の虚弱に繋がることを指摘した。また、種々の食事調査と二重標識水法による総エネルギー消費量を評価した研究結果を挙げ、「太った人の食事調査ほど当てにならない」とコメントした。 最後に、時代変遷と食品の変化について語った同氏は、「昭和から平成にかけて食事のポーションサイズが大きくなっている」と述べ、「戦後間もない時代はMサイズの卵が80kcal/個だったのが、現在は同サイズが100kcal/個へと大きくなっている」と現状に適したわかりやすいエネルギー単位の検討について訴えた。高齢者糖尿病の食事療法の目的にフレイル・サルコペニアの予防 荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター/日本老年医学会)は「健康寿命を目指した高齢者糖尿病の食事療法」について、J-EDIT試験を中心に講演を行った。 高齢者糖尿病の食事療法の目的は、過剰摂取だけではなく、合併症予防やQOLの維持・向上、そして、これからは老年症候群と言われる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防が重要となる。荒木氏はさまざまな国内外の文献を示しながら、糖尿病患者のフレイル・サルコペニアのリスクを提示し、筋肉量、筋力や歩行速度の低下を指摘。同氏は、「ビタミンD低下はサルコペニア、ビタミンB2やカロチン摂取低下は認知機能低下、タンパク質摂取低下は筋肉量および下肢機能低下などのフレイルに関連する」と述べ、「タンパク質1.0g~1.5g/kg体重の摂取がサルコペニアの予防に大切である」と解説した。このほか、ロイシンを考慮した食事療法も推奨した。 J-EDIT試験の結果を踏まえ同氏は、「後期高齢者はタンパク質摂取が低い群で死亡リスクが高くなる。さらに、「緑黄色野菜の摂取量がHbA1cや中性脂肪値にも影響する」と、栄養成分ごとのリスクについて訴えた。糖尿病の食事療法で肥満患者以外へのカロリー制限を中止 “現在の糖尿病診療ガイドラインの食事法は根拠がない”と訴える山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター)は「エビデンスで考える(日本人)2型糖尿病の食事療法」をテーマに講演した。 かつて、同氏が所属する病院でも、カロリー制限や脂質制限を推奨してきた。しかし、2016年にカロリー食によるサルコペニアリスクを示す論文報告を受けたのを機に、肥満患者以外へのカロリー制限を中止したという。 そもそも、欧米の糖尿病患者は太っていることが多い。一方で、日本人の糖尿病患者はBMI 24前後の患者が多く、体重管理のためのエネルギー処方は不要と考えられる。同氏は、「現在の治療法は、高血糖ではなく肥満の治療法である。非肥満患者に肥満治療食が提供されていてナンセンスである」とコメント。また、カロリー制限では脂質・タンパク質摂取によるインクレチン分泌を利用できないため、血糖管理には向かない。「理論的意義も実際の有効性も安全性も担保されていない」と、指摘した。 現在、ハーバード大学におけるメタボリックドミノの新モデルでは、糖質の過剰摂取が最上流として着目されており、実際、日本国内外で糖質制限食のエビデンスはそろっている。今後の糖尿病診療ガイドライン改訂に向けて同氏は、「日本人の糖尿病食事療法にエビデンスのある、多様な食事法の導入を目指していくべき」と提言した。糖尿病食事療法のための食品交換表は食事の実態と乖離 綿田 裕孝氏(「食品交換表」編集委員会委員長)が「糖尿病食事療法の指導状況の調査ー食品交換表の使用実態を中心にー」をテーマに講演した。 2013年11月に改訂された「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」は、現在の食品成分を緻密に反映した内容となっており、患者が摂取した食品を正確に把握すれば食事療法の実践に有効である。一方で、「現代社会において簡単に使いやすい、いろいろな食習慣・環境の人が使えるという定義どおりのものになっているかどうかは疑問が残る」と同氏は指摘。 この食品交換表の活用における実態を把握するために、今年6月に日本糖尿病学会に所属する管理栄養士らを対象にアンケート調査が行われた。その結果、食品交換表をあまり使用しない、まったく使用しないと回答した人が約40%に上り、その理由として、食事療法の対象となる患者のうち、調理する習慣がない、調理ができなくなった、中食・外食・コンビニ利用者が約90%占めるなど、現代の患者背景を考えると、調理を基盤とした食品交換表を使用するのが困難である、といった問題が浮き彫りとなった。 この結果より、同氏は、「食品交換表が食事の実態や指導したい内容と乖離している点が問題である。一方、写真が多い表は好まれて使用されているので、これらの結果を踏まえて検討していきたい」と締めくくった。■関連記事糖尿病発症や最適な食事療法を個別提示糖尿病食事療法の選択肢を増やす「緩やかな糖質制限」ハンドブック

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1年で心筋梗塞のリスクが最も高い日/BMJ

 スウェーデンでは、クリスマスや夏至の祝日(夏至祭[夏至とその前日]と呼ばれ、クリスマスを除くとスウェーデンで最も盛況な休日、St John's Dayとしても知られる)は心筋梗塞のリスクが高く、とくにクリスマスイブが高リスク(37%増)であり、高齢患者や糖尿病を合併する患者など脆弱な状態にある集団では、これらの期間が心筋梗塞の外的な引き金の役割を担う可能性があることが、スウェーデン・スコーネ大学病院のMoman A. Mohammad氏らが行ったSWEDEHEART試験で示された。西欧諸国では、心筋梗塞による心臓死や入院は、クリスマスや新年の休日にピークに達することが観察されている。また、心筋梗塞のリスクは、フットボールの優勝決定戦やハリケーン、株式市場の暴落とも関連する。そのため、感情的なストレスや身体活動、生活様式の変化に関連する因子が、短期的な引き金として作用することで、心筋梗塞の発症に影響を及ぼす可能性があると推測されている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。休日やスポーツイベントとの関連を後ろ向きに解析 研究グループは、心筋梗塞の引き金としての国民の休日、主要なスポーツイベントについて検討する後ろ向き観察研究を実施した(スウェーデン心肺財団などの助成による)。 解析には、スウェーデンの全国冠動脈ケアユニットレジストリー(SWEDEHEART)のデータを用いた。1998~2013年の16年間に、28万3,014例が心筋梗塞で入院した。 クリスマス/新年、復活祭、夏至の祝日の期間中に発症した心筋梗塞を同定した。同様に、国際サッカー連盟(FIFA)世界選手権、欧州サッカー連盟(UEFA)優勝決定戦、夏期および冬期オリンピック大会中に発症した心筋梗塞を同定した。 休日は、その前後2週間をコントロール期間とし、スポーツイベントのコントロール期間は、競技会前後の1年の同じ時期とした。休日およびスポーツイベント期間中の発生率をコントロール期間と比較し、発生率比を算出した。午前8時、月曜日が最も高リスク、イブは午後10時がピーク 28万3,014例のうち9万5,176例がST上昇型心筋梗塞(STEMI)、18万7,838例は非ST上昇型MI(NSTEMI)であった。STEMI患者は非STEMI患者に比べ、平均年齢が4歳若く(69.1 vs.73.0歳)、男性が多く(66 vs.62%)、現喫煙者が多かった(26 vs.17%)。 クリスマス/新年(発生率比:1.15、95%信頼区間[CI]:1.12~1.19、p<0.001)および夏至の祝日(1.12、1.07~1.18、p<0.001)の期間中は、心筋梗塞のリスクが有意に高かった。最もリスクが高い日は、クリスマスイブだった(1.37、1.29~1.46、p<0.001)。 復活祭やスポーツイベントの期間中は、リスクの増加は認めなかった。夏期オリンピック期間中は、男性でリスクが増加する傾向がみられたが、多変量で補正すると有意な差はなかった。 日内変動の解析では早朝のリスクが高く、午前8時が心筋梗塞発症のピークであり、とくにNSTEMI患者で高かった。なお、クリスマスイブのピークは、午後10時だった。また、週内変動の解析では、STEMI、NSTEMI患者とも、月曜日のリスクが顕著に高かった。 クリスマス休暇および月曜日は、喫煙者を除くすべてのサブグループで心筋梗塞のリスクが高かった。また、糖尿病や冠動脈疾患の既往歴を有する75歳上の患者は、顕著にリスクが高かった。復活祭や夏至の祝日に、とくにリスクの高いサブグループは認めなかった。 著者は、「この研究は、われわれの知る限り、よく知られたレジストリーに登録された、心電図やバイオマーカーで確認された心筋梗塞患者のデータを活用した最大規模の調査であり、今回の結果は管理データを用いて行われた既報と一致する」としている。

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第6回 腎症でシスタチンCの検査が査定/心不全の各種検査での査定/リーバクト配合顆粒処方での査定/ミカルディス錠処方での査定【レセプト査定の回避術 】

事例21 腎症でシスタチンCの検査が査定糖尿病性腎症でシスタチンCの検査を請求した。●査定点シスタチンCの検査が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の血液化学検査に、「シスタチンCは、『1』の尿素窒素又は『1』のクレアチニンにより腎機能低下が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる」となっています。そのため確定病名で請求すると査定の対象となります。とくに確定病名にするかどうかの判断では、疑い病名から確定病名に変更する請求月の検査内容を確認してから変更するなどの注意が必要です。事例22 心不全の各種検査での査定心不全で同時に脳性Na利尿ペプチド(BNP)136点と脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)140点の検査を施行したため、点数の高い脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)で検査を請求した。●査定点脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の内分泌学的検査に「『16』の脳性Na利尿ペプチド(BNP)、『18』の脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)及び『43』の心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上を実施した場合は、各々の検査の実施日を「摘要」欄に記載する」となっています。レセプトの摘要欄に必要な「検査実施日」が記載されていなかっため、査定となりました。事例23 リーバクト配合顆粒処方での査定低アルブミン血症で紹介された患者にイソロイシン・ロイシン・バリン(商品名:リーバクト配合顆粒)3包30日分を処方した。●査定点リーバクト配合顆粒3包30日が査定された。解説を見る●解説リーバクト配合顆粒の添付文書「効能又は効果」に「食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善」となっています。そのため「低アルブミン血症」と「肝硬変」の病名が求められています。事例24 ミカルディス錠処方での査定高血圧症、肝障害でテルミサルタン(商品名:ミカルディス錠)20mg 3Tを処方した。●査定点ミカルディス錠20mg 1Tが査定された。解説を見る●解説添付文書の「用法・用量」に「通常、成人にはテルミサルタンとして40㎎を1日1回経口投与する。ただし、1日20㎎から投与を開始し漸次増量する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、1日最大投与量は80㎎までとする」となっています。「用法・用量に関連する使用上の注意」として「肝障害のある患者に投与する場合、最大投与量は1日1回40㎎とする」となっています。適宜増減に対する症状詳記がなかったことと、肝障害の病名があるため1日1回40㎎の上限として査定されました。

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クリスマスの体重増加は予防できるか/BMJ

 年々増える体重の大部分は、クリスマスなどの祝祭日の食べ過ぎに原因があるという。英国・バーミンガム大学のFrances Mason氏らWinter Weight Watch Studyの研究グループは、定期的な体重測定、体重管理に関する助言、お祝いの食事のカロリーの消費に要する身体活動量の情報から成る簡易行動介入により、クリスマス休暇中の体重増加を予防できることを示し、BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)で報告した。英国など多くの国では、お祝いの季節が国民の休日と重なり、長期の過剰な摂食や座位行動の機会をもたらしており、クリスマス1日の摂取熱量は6,000カロリーと推奨の約3倍にも達するとの報告もある。これによる体重増加は、その後、完全には解消されず、わずかな体重の増加が毎年積み重なって10年で5~10kg増えることで、将来の肥満につながるとされる。休暇中の体重増加の予防効果を評価する無作為化試験 本研究は、クリスマス休暇中の体重増加の予防における簡易行動介入の有効性を評価する二重盲検無作為化対照比較試験である(研究費の一部としてバーミンガム大学の助成を受けた)。 2016年および2017年のクリスマスの前に、職場やソーシャルメディアのプラットフォーム、学校で参加者の登録を行った。年齢18歳以上、BMI≧20の272例が登録され、簡易行動介入群に136例、介入を行わない対照群に136例が割り付けられた。ベースラインの評価は11~12月に行われ、4~8週間後の翌年1~2月の期間にフォローアップが実施された。 介入群は、(1)定期的に自己体重測定を行って記録し、その推移について考えることで食事や飲み物の制限を増やすよう努め、(2)クリスマス期間中の良好な体重管理戦略に関する情報と、(3)摂食したお祝いの食事について、身体活動量に相当するエネルギー消費量(PACE)に関する視覚的な情報が提供された。対照群には、健康な生活に関する小冊子が提供された。ベースラインの体重が、0.5kg以上増加しないことを目標とした。 主要アウトカムはフォローアップ時の体重とし、副次アウトカムは体重増加0.5kg以下、自己報告による体重測定の回数(週2回以上vs.2回未満)、体脂肪率、自発的食事制限、情動的摂食、自制不能な摂食であった。体重測定回数、食事制限も良好 全体の平均年齢は43.9(SD 11.7)歳、女性が78%で、白人が78%を占めた。平均BMIは28.8、平均試験期間は45.3(SD 5.7)日だった。 平均体重変化量は、介入群が-0.13kg(95%信頼区間[CI]:-0.4~0.15)、対照群は0.37 kg(0.12~0.62)であり、体重の補正平均差(介入群-対照群)は-0.49kg(-0.85~-0.13)と、介入群で有意に良好であった(p=0.008)。 体重増加0.5kg以内の達成のオッズは介入群のほうが高かったが、有意差は認めなかった(オッズ比[OR]:1.22、95%CI:0.74~2.00、p=0.44)。週2回以上の体重測定のオッズは、介入群が有意に高かった(55.93、22.15~141.24)。体脂肪率の低下には両群間に有意な差はなかった(補正後平均差:-0.02、95%CI:-0.51~0.48、p=0.95)。 自発的食事制限(補正後平均差:0.64、95%CI:0.08~1.20、p=0.03)は介入群で有意に良好であったが、情動的摂食(-0.06、-0.43~0.30、p=0.73)および自制不能な摂食(-0.49、-1.25~0.26、p=0.20)は両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「休暇などの高リスクな時期における体重増加を防止するために、医療政策立案者はこれらの結果を考慮すべきだろう」としている。

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