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加糖飲料と人工甘味飲料、認知機能との関連は

 砂糖入り飲料(SSB)および人工甘味料入り飲料(ASB)と認知機能低下との関連について結果が一致していない。ASBはカロリーが低く、砂糖の含有量が抑えられているため、SSBより健康的と思われているが、人工甘味料の摂取が認知症リスクと関連していたという報告もある。今回、スペイン・ナバラ大学のMariana I Munoz-Garcia氏らの縦断的な検討では、SSBの摂取で6年後の認知機能低下と有意に関連がみられたが、ASBでは有意ではなかったことが報告された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2019年2月22日号に掲載。 本研究では、55歳以上の大学卒業生のSeguimiento Universidad de Navarra (SUN)コホートのサブサンプルについて、「認知状態に関するスペイン語での電話インタビュー」(STICS-m)により6年の間隔で2回評価した。SSBとASBの摂取量は、食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価した。心血管代謝変数を含む潜在的な交絡因子を調整し、6年でのSTICS-mスコアの変化を従属変数として線形回帰モデルを当てはめた。 主な結果は以下のとおり。・全サンプルにおいて、SSBの摂取とSTICS-mにより評価された認知機能の変化との間に有意な関連が認められ、1杯/月を超えて摂取していた被験者では、摂取経験なし/ほとんどなしの被験者に比べ、−0.43(95%CI:−0.85~−0.02、p=0.04)の変化がみられた。・ASBの摂取との関連は有意でなかったが、ポイント推定値は認知機能低下を示唆する負の値を示した。

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人生を支配するホルモンとは

 『できる男』と言われて何を思い浮かべるだろうか?年収、地位や名誉、そして女性にモテること…。これらをすべてクリアするには何がカギなのだろうか。2019年2月18日、日本抗加齢医学会が主催するメディアセミナーに、井手 久満氏(獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授)が登壇し、「男性のための理想的なライフスタイル」について講演した。テストステロン値の高い男はなぜ成功するのか 井手氏によると、『できる男』の象徴は、冒頭でも述べた事柄のほか、「スポーツ万能」、「性機能が強い」、「健康寿命が長い」などであり、これらに共通するのがテストステロン値の高さだという。証券会社に勤務するイギリス人男性の年収を比較した研究によると、テストステロンが高い男性の年収は、低い男性と比較して3~5倍も多いことが明らかになった。また、テストステロン量は骨格でも判定が可能で、人指し指より薬指の長い男性で高値ということが、さまざまな人種のデータによって確証を得ている。 テストステロンは、造血作用や男性ホルモンを合成しているとされる海馬での認知機能制御など、多くの作用が報告されている。しかし、個人差や日内変動がとても大きく、ストレスや飲酒などにも左右される物質である。たとえば、恋愛過程でも、デートから真剣交際、婚約から結婚に至る過程で徐々に分泌が減少し、子供が生まれ、添い寝をするなどでも低下することが立証されている。メタボリックシンドロームとテストステロンの低下 近年、男性の更年期が取り沙汰されるようになり、うつとの関連が理解されるようになった。さらには、糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームや心筋梗塞にも影響を及ぼすことが徐々に明らかになってきている。 そこで、同氏は健康な中年男性のメタボリック因子と心血管疾患・心不全との関連について解説。メタボリック因子が多く、テストステロンが低下している症例にテストステロン補充療法を行った症例の体重、HbA1c、収縮期血圧などのデータを示した。「テストステロンの補充によって、それぞれが体重や腹囲の減少、血圧やHbA1cが有意に改善した。さらに骨密度や排尿状態の改善にも効果がある」とする一方で、「補充による有害事象として、多血症、睡眠時無呼吸症候群、肝障害、不妊症などが挙げられるので注意が必要」と、コメントした。アプリを活用した対策 テストステロンの管理にはメタボリックシンドローム予防が重要であることから、医療機関を介した食管理システム(ヘルスログ)の開発が進められている。患者には、活動量をチェックするためのUP2(ブレスレット型装置)を身に付けてもらい、日々の食事記録をスマートフォンで記録。写真から摂取カロリーが計算される。将来的にはLINEを活用することで、共有した情報を基に管理栄養士から食事アドバイスも受けられるようになるという。 このような背景を踏まえ、まずは、「自身によってテストステロンを低下させるリスク因子(喫煙や肥満)を理解し、リスク因子を排除することが大切である」と、同氏は締めくくった。(ケアネット 土井 舞子)■参考日本抗加齢医学会■関連記事うつ病や身体活動と精液の質との関連テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMA

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C型肝炎へのDAA、実臨床での有効性を前向き調査/Lancet

 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療に広範に使用されてきたが、その実臨床における有効性の報告は十分でなく、投与例と非投与例を比較した調査はほとんどないという。今回、フランス・ソルボンヌ大学のFabrice Carrat氏らの前向き調査(French ANRS CO22 Hepather cohort研究)により、DAAは慢性C型肝炎による死亡および肝細胞がんのリスクを低減することが確認された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年2月11日号に掲載された。ウイルス蛋白を標的とするDAA(NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬、NS5A複製複合体阻害薬)の2剤または3剤併用療法は、HCV感染に対し汎遺伝子型の有効性を示し、95%を超える持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成している。DAAの有無でアウトカムを比較するフランスの前向きコホート研究 研究グループは、DAA治療を受けた患者と受けていない患者で、死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生率を比較するコホート研究を実施した(INSERM-ANRS[France Recherche Nord & Sud Sida-HIV Hepatites]などの助成による)。 フランスの32の肝臓病専門施設で、HCV感染成人患者を前向きに登録した。慢性B型肝炎患者、非代償性肝硬変・肝細胞がん・肝移植の既往歴のある患者、第1世代プロテアーゼ阻害薬の有無にかかわらずインターフェロン-リバビリン治療を受けた患者は除外された。 試験の主要アウトカムは、全死因死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生の複合とした。時間依存型Cox比例ハザードモデルを用いて、DAAとこれらアウトカムの関連を定量化した。 2012年8月~2015年12月の期間に、1万166例が登録された。このうちフォローアップ情報が得られた9,895例(97%)が解析に含まれた。全体の年齢中央値は56.0歳(IQR:50.0~64.0)で、53%が男性であった。補正前は高リスク、多変量で補正後は有意にリスク低下 フォローアップ期間中に7,344例がDAA治療を開始し、これらの患者のフォローアップ期間中央値(未治療+治療期間)は33.4ヵ月(IQR:24.0~40.7)であった。2,551例は、最終受診時にもDAA治療を受けておらず、フォローアップ期間中央値は31.2ヵ月(IQR:21.5~41.0)だった。 DAA治療群は非治療群に比べ、年齢が高く、男性が多く、BMIが高値で、過量アルコール摂取歴のある患者が多かった。また、DAA治療群は、肝疾患や他の併存疾患の重症度が高かった。さらに、DAA治療群は、HCV感染の診断後の期間が長く、肝硬変への罹患、HCV治療中、ゲノタイプ3型の患者が多かった。 試験期間中に218例(DAA治療群:129例、DAA非治療群:89例)が死亡し、このうち73例(48例、25例)が肝臓関連死、114例(61例、53例)は非肝臓関連死で、31例(20例、11例)は分類不能であった。258例(187例、71例)が肝細胞がん、106例(74例、32例)が非代償性肝硬変を発症した。25例が肝移植を受けた。 未補正では、DAA治療群のほうが非治療群に比べ、肝細胞がん(未補正ハザード比[HR]:2.77、95%信頼区間[CI]:2.07~3.71、p<0.0001)および非代償性肝硬変(3.83、2.29~6.42、p<0.0001)のリスクが有意に高かった。 これに対し、年齢、性別、BMI、地理的発生源、感染経路、肝線維化スコア(fibrosis score)、HCV未治療、HCVゲノタイプ、アルコール摂取、糖尿病、動脈性高血圧、生物学的変量(アルブミン、AST、ALT、ヘモグロビン、プロトロンビン時間、血小板数、α-フェトプロテイン)、肝硬変患者の末期肝疾患モデル(MELD)スコアで補正したところ、DAA治療群では非治療群と比較して、全死因死亡(補正後HR:0.48、95%CI:0.33~0.70、p=0.0001)および肝細胞がん(0.66、0.46~0.93、p=0.018)のリスクが有意に低下し、未補正での非代償性肝硬変のリスクの有意差は消失した(1.14、0.57~2.27、p=0.72)。 また、全死因死亡のうち、肝臓関連死(0.39、0.21~0.71、p=0.0020)と非肝臓関連死(0.60、0.36~1.00、p=0.048)のリスクは、いずれもDAA治療群で有意に低かった。 著者は、「DAA治療は、あらゆるC型肝炎患者において考慮すべきである」と結論し、「今回の結果は、重症度の低い患者へフォローアップの対象を拡大し、DAAの長期的な臨床効果の評価を行うことを支持するものである」としている。

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糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明~国立国際医療研究センター

 肝臓での代謝は絶食時と摂食時で大きく変化するが、その生理的意義や調節機構、またその破綻がどのように種々の疾患の病態形成に寄与するのか、これまで十分解明されていなかった。今回、東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座 特任助教 笹子 敬洋氏、同糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授 門脇 孝氏、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター センター長 植木 浩二郎氏らのグループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、食事で発現誘導されるSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにした。2月27日、国立国際医療研究センターが発表した。Nature Communications誌に掲載予定。 同グループはまず、マウスの実験で、摂食によって肝臓で小胞体ストレスが一時的に惹起されることを見いだした。また、複数の小胞体ストレス関連遺伝子の中でも、とくにSdf2l1遺伝子の発現が大きく上昇していた。Sdf2l1は小胞体ストレスに応答して転写レベルで誘導を受けるが、その発現を低下させると小胞体ストレスが過剰となり、インスリン抵抗性や脂肪肝が生じた。また、肥満・糖尿病のモデルマウスでは Sdf2l1の発現誘導が低下していたが、発現を補充するとインスリン抵抗性や脂肪肝が改善した。加えてヒトの糖尿病症例の肝臓において、Sdf2l1の発現誘導の低下がインスリン抵抗性や脂肪性肝炎の病期の進行と相関することが示された。 これらの結果から、摂食に伴う小胞体ストレスに対する適切な応答が重要であるとともに、その応答不全が糖尿病・脂肪性肝炎の原因となることが示された。今後は、Sdf2l1が糖尿病・脂肪性肝炎の治療標的となること、その発現量が良いバイオマーカーとなることが期待されるという。■参考国立国際医療研究センター プレスリリース

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中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。 現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。 対象は40歳以上の利用者(46例)と非利用者(184例)で、性別、年齢、およびPAレベルをマッチさせた。参加者は、無作為に送られたアンケートに答えた横浜市民で、市から無料の歩数計が与えられた。また、プレイ状況はアンケートを通じて確認し、プレイ状況によるポケモンGO発売前後の歩数変化は、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)で調査。ゲーム発売前の1ヵ月間の歩数と発売8ヵ月後の歩数を比較した。さらに、性別、年齢、PAレベル、およびsubjective health statusに応じたサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・利用者と非利用者の平均年齢±SDは、それぞれ56.5±9.9歳、57.3±9.6歳だった。・利用者と非利用者のベースラインの平均歩数±SDは、それぞれ7,641.8±2,754.5歩、7,903.3±2,674.7歩だった。・両側検定によると、ベースラインの歩数には、年齢で有意差はなかった。・すべての対象を分析したところ、プレイ状況と時間による相互作用は、発売後8ヵ月のうち3ヵ月間で有意だった。・サブグループ解析の結果、相互作用はそれぞれ有意(男性:3ヵ月間、55~64歳のグループ:7ヵ月間、労働者:2ヵ月間、PAレベルが活発なグループ:4ヵ月間、主観的に健康な参加者:2ヵ月間)で、利用者は55歳未満の男性、労働者、活動的、そして主観的に健康である可能性がより高かった。・ほかのサブグループで相互作用が有意であったのは、たった1ヵ月間だった。・利用者群は冬季の間でも歩数を維持したが、非利用者では歩数は減少した。

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非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。 著者らは、Bypass Angioplasty Revascularization Investigation in type 2 Diabetes(BARI 2D)試験データを用いて、CADを有する2型糖尿病患者におけるアウトカムイベントについて、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した。また、BARI 2D試験の無作為化デザインを用いて、非肥満(1,021例)および肥満(1,319例)の患者それぞれにおいてIP群とIS群を比較した。主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を含む複合評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、非肥満患者231例と肥満患者295例で少なくとも1件の主要アウトカムイベントが確認された。・主要アウトカムイベントのリスクは、非肥満患者ではIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.30、95%CI:1.00~1.68、p=0.04)が、肥満患者では2群間に有意な差はなかった。・非肥満患者において、腹部肥満のない患者に限定しても主要アウトカムイベントのリスクはIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.51、95%CI:1.05~2.19、p=0.02)。・血糖コントロール戦略と非肥満患者のさまざまなサブグループとの間に有意な交互作用はみられなかった。

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第8回 呼吸の異常-1 頻呼吸の原因は?【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は呼吸の異常について取り上げたいと思います。前回お話しした救急のABCを覚えていますか?「気道(Airway)」「呼吸(Breathing)」「循環(Circulation)」でしたね。呼吸の異常に関係するAとBは、バイタルサインでいうと呼吸数です。患者さんを観察し、バイタルサインを評価することによって、気道・呼吸・循環の状態を考え、急を要するか否かを考えてみましょう。患者さんAの場合◎経過──186歳、男性。脳梗塞の既往があります。意思疎通をとることはできますが、左半身の不完全麻痺があり、ベッド上で過ごすことがほとんどです。全介助によって車いすに移乗できます。食事は、お粥と細かくきざんだ軟らかいおかずを何とか自分で食べることができますが、1か月ほど前から介助を必要とすることが多くなってきました。本日、定期の訪問日だったため、薬剤師であるあなたが患者さん宅を訪れると、「ハァハァ」と呼吸が速く、息苦しそうにしていることに気が付きました。家族(妻)から、「調子が悪そうなんですけど、お医者さんに行った方がよいでしょうか...」と相談されました。呼吸の調節さて、呼吸が速いことに気がついたあなたは、呼吸数が増加する原因を考えました。頻呼吸となる原因はいくつかあります。原因1●血液中の酸素濃度が低下、または二酸化炭素濃度が上昇したとき空気の通る気道に異常(気道異物や急性喉頭蓋炎※1など)を来したり、肺に異常(肺炎や心不全など)があると、酸素が取り込めなくなったり二酸化炭素を排出できなくなったりします。血液中の酸素濃度が低下すると、頸動脈や大動脈にある末梢化学受容器(頸動脈小体、大動脈小体)〈図1〉が刺激されます。一方、二酸化炭素濃度が上昇した時は、脳幹(延髄)にある中枢化学受容器が刺激されます。どちらも、頻呼吸となったり1回の呼吸が大きくなったりします。また、呼吸をしようとしても神経や筋の疾患(ギランバレー症候群※2や重症筋無力症、頸髄損傷など)のために、十分に胸が動かない状態でも同様です。原因2●代謝性アシドーシス腎不全などにより血液が酸性に傾いた状態を代謝性アシドーシスと言います。呼吸をすることによって、酸性の状態から正常のpHに戻そうとします。糖尿病性ケトアシドーシス※3が有名です。原因3●過換気症候群※4、ヒステリーなど精神的な問題でも呼吸が速くなります。※1 急性喉頭蓋炎細菌感染により喉頭蓋に炎症を起こす疾患。初発症状は発熱や喉の痛みだが、喉頭蓋が腫れるため気道狭窄を起こし、喘鳴や呼吸困難が現れることがある。※2 ギランバレー症候群筋肉を動かす運動神経の障害のため、手足に力が入らなくなる疾患。重症の場合には中枢神経障害性の呼吸不全が現れる。※3 糖尿病性ケトアシドーシス1型糖尿病患者ではインスリンが欠乏し、細胞は血液中からブドウ糖を取り込むことができない。そのため、脂肪酸からエネルギーを産生する。特にインスリンが絶対的に欠乏した場合(1型糖尿病発症時、インスリンの自己注射を中断した時など)は、脂肪酸代謝が亢進するためケトン体が生合成される。このケトン体により血液が酸性に傾く状態を糖尿病性ケトアシドーシスと呼ぶ。口渇、多尿、悪心・嘔吐、腹痛を引き起こし、脳浮腫、昏睡、死亡に至る場合もある。※4 過換気症候群心理的な原因により過呼吸(深く速い呼吸)となり、血液がアルカリ性に傾く。このため、眩暈、手足のしびれ、時には痙攣や意識障害が現れる。

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インスリン治療、認知症リスクに関連か

 糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。 本研究では、フラミンガム心臓研究、ロッテルダム研究、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究、Aging Gene-Environment Susceptibility-Reykjavik Study(AGES)およびSacramento Area Latino Study on Aging (SALSA)の5つの集団ベースのコホートの結果を統合した。各コホートにおけるインスリン、メトホルミン、SU類の使用者と非使用者との差について、認知および脳MRIを線形回帰モデルで、また認知低下および認知症/アルツハイマー病リスクを混合効果モデルおよびCox回帰分析を用いて、それぞれ評価した。結果はメタ解析手法を用いて統合され、前向き解析には糖尿病患者3,590例が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・血糖コントロール指標を含む潜在的な交絡因子を調整後、インスリン使用が、認知症発症リスクの増加(pooled HR(95%CI):1.58(1.18~2.12)、p=0.002)および全般的認知機能の大きな低下(β=−0.014±0.007、p=0.045)と関連していた。さらに腎機能を調整し、生活習慣の改善のみで治療された糖尿病患者を除いても、認知症発症との関連は変わらなかった。・インスリン使用とアルツハイマー病リスクとの間に有意な関連はみられなかった。・インスリン使用は認知機能および脳MRIに関連していなかった。・メトホルミンやSU類の使用と、脳機能および構造のアウトカムとの間に、有意な関連はみられなかった。・コホート間に有意な異質性は示されなかった。

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andexanet alfa、第Xa因子阻害薬による大出血に高い止血効果/NEJM

 andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の使用により急性大出血を来した患者において、抗第Xa因子活性を著明に低下させ、良好な止血効果をもたらすことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らが行ったANNEXA-4試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年2月7日号に掲載された。andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の中和薬として開発された遺伝子組み換え改変型ヒト第Xa因子不活性体で、2018年、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認プログラムの下、アピキサバンまたはリバーロキサバン治療中に出血を来し、抗凝固薬の中和を要する患者への投与が承認を得ている。本試験は2016年に中間解析の結果が発表され、現在、エドキサバン投与例を増やすために、継続試験としてドイツで患者登録が続けられ、2019年中には日本でも登録が開始される予定だという。andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化と止血効果を評価 本研究は、北米および欧州の63施設が参加した非盲検単群試験であり、2015年4月~2018年5月の期間に、中間解析の対象となった67例を含む352例が登録された(Portola Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、第Xa因子阻害薬投与から18時間以内に急性大出血を発症した患者であった。被験者には、andexanet alfaが15~30分でボーラス投与され、その後2時間をかけて静脈内投与された。 主要アウトカムは2つで、(1)andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化率、(2)静脈内投与終了から12時間後の止血効果が、事前に規定された基準で「きわめて良好」または「良好」と判定された患者の割合であった。 andexanet alfaの有効性の評価は、大出血が確認され、ベースラインの抗第Xa因子活性が75ng/mL以上(エノキサパリン投与例では0.25IU/mL以上)のサブグループで行った。andexanet alfaの止血効果は82%で良好以上、活性低下は効果を予測せず 対象の平均年齢は77歳で、48例(14%)が心筋梗塞、69例(20%)が脳卒中、67例(19%)が深部静脈血栓症、286例(81%)が心房細動、71例(20%)が心不全、107例(30%)が糖尿病の病歴を有していた。 また、128例(36%)がリバーロキサバン、194例(55%)がアピキサバン、10例(3%)がエドキサバン、20例(6%)がエノキサパリンの投与を受けていた。主な出血部位は、頭蓋内が227例(64%)、消化管が90例(26%)だった。254例(72%)が有効性評価の基準を満たした。 有効性評価では、アピキサバン群(134例)は抗第Xa因子活性中央値がベースラインの149.7ng/mLからandexanet alfaのボーラス投与終了時には11.1ng/mLへと、92%(95%信頼区間[CI]:91~93)低下し、リバーロキサバン群(100例)は211.8ng/mLから14.2ng/mLへと、92%(88~94)低下した。また、エノキサパリン群(16例)は0.48IU/mLから0.15IU/mLへと、75%(66~79)低下した。3剤とも、この効果が静脈内投与終了時まで、ほぼ維持されていた。 andexanet alfaの静脈内投与終了から4、8、12時間後の抗第Xa因子活性中央値のベースラインからの変化率は、アピキサバン群がそれぞれ-32%、-34%、-38%、リバーロキサバン群が-42%、-48%、-62%だった。 andexanet alfaの止血効果の評価は249例で行われた。このうち204例(82%)が、「きわめて良好」(171例)または「良好」(33例)と判定された。これには、アピキサバン群の83%、リバーロキサバン群の80%、エノキサパリン群の87%が含まれ、頭蓋内出血の80%、消化管出血の85%が該当した。 30日以内に49例(14%)が死亡し、34例(10%)に血栓イベントが認められた。全体として、抗第Xa因子活性の低下は止血効果を予測しなかった(AUC:0.53、95%CI:0.44~0.62)が、頭蓋内出血の患者ではある程度の予測因子であった(0.64、0.53~0.74)。 著者は、82%というandexanet alfaの止血効果は、ビタミンK拮抗薬治療に伴う大出血に対するプロトロンビン複合体製剤の試験で観察された72%に匹敵するとした。一方、抗第Xa因子活性低下は頭蓋内出血での臨床効果を予測したとはいえ、抗第Xa因子活性の測定は難しく、実臨床において有用となる可能性はほとんどないだろうと指摘している。

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会員医師の約6割が医師不足・偏在を実感(会員医師アンケート調査報告)

CareNet.comでは、過日、会員医師の方々に「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマにアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので報告いたします。2019年2月20日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上でアンケートを実施、回答者総数は340名でした。結果概要医師不足・偏在を実感している会員医師は約6割Q1 今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字は実感できますか。(回答は1つ)1 実感できる2 実感できない「医師の都会志向」「医局人事」など複雑に絡み合う理由Q2で「実感できる」・「実感できない」の具体的理由についてお聞きしたところ、「実感できる」と回答した会員医師のコメントでは「医師の都会志向」、「へき地人口のさらなる減少」、「医局人事が厳しい」などのコメントがあった。また、「実感できない」と回答した会員医師のコメントでは、「医師の絶対数よりも偏在」、「厚生労働省の統計への信頼性」、「医師の頭数ではなく緊急対応の有無」などのコメントが寄せられた。Q2 「Q1」の回答の理由をお聞かせください。「1 実感できる」回答のコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●地域偏在の問題都市部への集中、へき地医療の衰退医師の将来設計が都会志向地方に医師が残らず、内科志望者も激減都会での勤務を希望する医師が多いという実感地方中核都市でさえ医師が不足している東京への一極集中が問題医師不足地域で勤務しているが、医師1人に対する負担は東京での勤務時とは比べものにならないくらい大変●診療科偏在の問題主要診療科のなり手が減ってきた外科、小児科、産婦人科では医師不足が進むと思う外科や産婦人科の医師がどんどん疲弊している新専門医制度により、さらに内科系が減る可能性近隣の産科が閉院している診療科によって忙しさが違いすぎる内科、とくに循環器、糖尿病内分泌、脳神経内科の医師が少ないように感じる当地域ではマイナー科も不足し、皮膚科受診をする際は予約が3日後になっている近隣の小児科開業医の高齢化が顕著休日、夜間の救急体制では、顕著に医師数が不足当直勤務後に引き続き勤務する先生方が多い都心部では、皮膚科や耳鼻科が非常に多い印象●医学教育、行政の問題医局人事が大変厳しい将来の見通しが立っていたのに、厚生労働省の対応が遅すぎる自分の医療圏では公的病院の医師がどんどん辞めていくどこの医療機関も医師確保に苦労している地域枠で入学した医師はまず不足地域で働くべき身近で医療崩壊が起こっている若い医師の派遣がない●医療そのものの問題医師の就業環境が劣悪すぎるしばらくは高齢者が増加するため、医師が必要になるのは明らか医師の絶対数がやはり不足「2 実感できない」回答のコメント偏在は実感できるが、医師の絶対数が不足しているとは思えない医療の現場で感じる実感と違うが、将来は不足すると思う医師の不足よりも、フリーアクセスや自己負担が少ないことによる過剰受診が問題表面上の数字よりも医師の雑用や勤務内容などの改善が先だと考える厚生労働省の統計はうのみにできない人口過疎地に医療だけ充実させても解決にはならない人口そのものも偏在があるのではないか医師不足県にいるが、実際周囲で医師が不足しているとの声は聞かれない産婦人科や小児科は頭数ではなく、当直や緊急対応ができるか否かが問題コンビニ出店並のクリニック密集地域に住んでいるので実感がない意外にも「内科」も医師不足Q3で「医師不足だと思う診療科」を尋ねたところ、多い順番で「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)の順だった。「内科」の回答が多かった点、ひと頃問題になった「麻酔科」を挙げる会員医師が少なかった点から現場のニーズが垣間見られた。Q3 現在、医師が不足していると思う診療科をお選びください。(回答はいくつでも)1 内科2 小児科3 皮膚科4 精神科5 外科6 整形外科7 産婦人科8 眼科9 耳鼻咽喉科10 泌尿器科11 脳神経外科12 放射線科13 麻酔科14 病理科15 救急科16 形成外科17 リハビリテーション科18 その他19 不足していると思う診療科はない画像を拡大する必ずしも医師数増加だけでない解決策もあるQ4で「医師不足・偏在」への解決策について尋ねたところ、多い順に「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)の順だった。医師への待遇改善と偏在をなくすことで解決できる内容が多くを占めた。また、「8 その他」へ寄せられた提言として、「医師免許の全国区と地域区の2本立て化」、「女性医師の待遇改善」、「患者数の多い診療科の報酬減」、「患者の受診への意識改革と啓発」などの声が寄せられた。Q4 医師不足や偏在の解決には何が必要だと思われますか。(回答はいくつでも)1 医学部の定員増員2 医師の就業の流動性3 専門医制度の改革4 病院・診療所・クリニックの適正配置5 患者の診療抑制の実施6 診療報酬で地域差を設ける7 外国人医師や医師以外の医療者の活用8 その他画像を拡大する「8 その他」で寄せられたコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●医師や専門医資格への提言地方に魅力ある教育病院を設置し、若手医師を勤務させる地方医師の専門医更新の免除医師国家試験の合格基準を2段階とし、上位は全国区免許、下位は医師不足県限定免許とする。診療実績で全国区免許へ格上げする女性医師の待遇を改善する医師不足が指摘されている診療科へ進む医師へのメリットを増やす勤務医の所得を増やす医学部の地域合格枠の拡大と地域義務年限の引き上げ医師のボランティア的な仕事に対しての十分な報酬適切な人材を医師にすること●医療制度や診療報酬への提言地域枠への補助金制度を直接医師に支払う急性期病院の内科・外科の診療報酬を上げる患者数が多い診療科の診療報酬を削減する開業医を減らす方策、たとえば勤務医の給与控除を増やす医局制度の復活と強制的な医師のローテーション応召義務の廃止都会の大学医学部の統廃合または自治医大化医師の強制配置●社会への提言医師法など時代に合わせたフレキシブルな改正患者の受診への意識改革と啓発アンケート概要内容「現在・将来の医師不足、偏在についてお聞かせください」実施日2019年2月20日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師340名アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。関連記事推計1万6,226人の内科医が2030年に不足16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

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日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。 本研究では、40〜59歳の日本人1,145人のうち、106人(特別食、脂質異常症などの治療薬を使用、ホルモン補充療法の実施、およびデータ不足のため除外)を除く1,039人(男性:533人、女性:506人)を対象とした。食物からのコレステロール摂取は4回の24時間思い出し法(24HR)で評価、血清LDL-Cは酵素的分析法によって自動分析装置で測定した。アンケートでは、雇用形態と教育年数について回答を得た。 主な結果は以下の通り。・男性では、食事によるコレステロール摂取の1標準偏差(SD)上昇は、血清LDL-C濃度3.16mg/dL低下と関連していた(P=0.009;調整前モデル)。・共変量で調整後、血清LDL-Cは、被雇用者ではない男性(自営業者、専業主夫、農家、漁師、および定年退職者)、教育水準の低い男性では、コレステロール摂取量の1SD上昇ごとに、血清LDL-C濃度の上昇が認められた(β:+9.08[95%信頼区間【CI】:+0.90~+17.27]、β:+4.46[−0.97~+9.90])。これに対し、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関がみられた(β:−3.02[−5.49~−0.54]、β:−3.66[−6.25~−1.07])。■参考INTERRIPD

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重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。 主要な電子データベースより2018年11月までの研究を検索した。対象研究は、重度の精神疾患患者に対するSGAとFGAを直接比較し、脂質代謝異常を主要アウトカムまたは第2次アウトカムとして評価した横断研究、コホート研究、症例対照研究、介入研究のいずれかとした。エビデンスは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインに従ってレビュー、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究が抽出された。・SGAとFGAにおける脂質異常症の報告は矛盾しており、研究間のばらつきが大きく、完全な定性的合成のみが実行可能であった。・クロザピン、オランザピン、リスペリドンについては、限られたメタ解析を実施するに十分なデータがあった。各薬剤ともに、FGAと比較し、脂質異常症の事例性(caseness)との関連が少し高かったが、異質性の高さが認められた(すべてI2>50%、p<0.05)。 ●クロザピン(オッズ比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.16~1.38) ●オランザピン(オッズ比:1.29、95%CI:0.89~1.87) ●リスペリドン(オッズ比:1.05、95%CI:0.80~1.37)・クロザピンは、トリグリセリド増加とも関連が認められたが(標準平均差:0.51、95%CI:0.21~0.81、I2>=5.74%)、コレステロールとの関連は認められなかった。・オランザピンとリスペリドンは、ハロペリドールと比較し、コレステロールまたはトリグリセリドの統計学的に有意な増加との関連が認められなかった。 著者らは「研究デザインや方法論には、かなりの違いが認められた。抗精神病薬による脂質代謝異常への影響におけるSGAとFGAの相対リスクを決定するには、薬剤ごとにさまざまな悪影響を引き起こす可能性があるため、臨床的に明らかにすることは難しい可能性がある。したがって、SGAかFGAかの焦点を当てるよりも、特定の抗精神病薬の脂質代謝リスクを考慮することが重要である」としている。■関連記事非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析

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メトトレキサート、乾癬性関節炎のない乾癬にも有用

 乾癬患者では、乾癬性関節炎の有無においてもメトトレキサートの反応性を考慮することが必要である。中国・復旦大学のKexiang Yan氏らは、メトトレキサートの乾癬治療に対する有効性と忍容性について、乾癬性関節炎を有していない乾癬患者では有害事象が少なく有効であることを明らかにした。著者は「メトトレキサートは、関節炎のない乾癬に対する1次治療として推奨される」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年1月30日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者の乾癬性関節炎の有無におけるメトトレキサートの有効性と安全性を評価する目的で、2015年4月1日~2017年12月31日の期間に前向き単群試験を行った。対象者は中国の大学病院に外来通院中の乾癬患者235例で、乾癬性関節炎なし群107例、あり群128例を登録。その際、糖尿病の既往を除き、両群間での患者背景の差異はなく、それぞれに低用量メトトレキサート(7.5~15mg/週)を12週間経口投与した。主要評価項目は、乾癬の重症度、有害事象、血球数、肝機能および腎機能の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・235例(男性166例[66.0%]、平均年齢±SD:49.6±15.1歳)が治療を受けた。・8週時点で、乾癬重症度(Psoriasis Area Severity Index:PASI)スコアがベースラインから90%以上改善した患者(PASI 90達成率)は、関節炎あり群となし群ではそれぞれ4例(3.1%)vs.12例(11.2%)であった(p=0.02)。・12週時点ではそれぞれ19例(14.8%)vs.27例(25.2%)(p=0.049)であり、8週、12週時いずれも、関節炎あり群でPASI 90達成率は有意に低かった。・有害事象は、関節炎あり群と関節炎なし群でそれぞれ、めまい:12例(9.4%)vs.1例(0.9%)(p=0.007)、胃腸症状:32例(25.0%)vs.13例(12.1%)(p=0.01)、肝毒性:34例(26.6%)vs.16例(15.0%)(p=0.04)と、いずれも関節炎あり群で有意に多かった。・メトトレキサートによるアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇は、BMI(平均BMI±SD)と喫煙に有意に関連し、関節炎あり群ではそれぞれ26±4(p=0.04)、17/34例(50.0%、p=0.02)、関節炎なし群では26±4(p=0.005)、9/16例(56.3%、p=0.04)だった。

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腎疾患・CKDも遺伝子診断の時代へ!(解説:石上友章氏)-1006

 本邦でも、ミレニアム・プロジェクトと題した国家プロジェクトがあり、ヒト疾患ゲノム解析が、その中の1つのプロジェクトとして採用されていた(首相官邸「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」)。当時は、キャピラリー・シークエンサーの時代で、逐次処理的に塩基配列を解読するため、膨大な設備と長時間の解析が必要であった。当時筆者が勤務していた米国・ユタ大学エクルズ人類遺伝学研究所には、国際的なヒトゲノムコンソーシアムの拠点があり、広いフロア一面を占めるキャピラリー・シークエンサーに感動を覚えた記憶がある。技術は進歩し、1,000ドルゲノムの時代を迎えて、個別化した全ゲノム解析が視野に入ってきた。現在では、いわゆる次世代シークエンサー(NGS)が汎用化し、これまで研究レベルであった分子遺伝学の成果が、臨床医にも手が届く時代を迎えている。今では、がんクリニカルシークエンス検査が、原発不明がんや、既存の治療に応答しない難治性がんの診療に応用されている。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏は、エクソーム解析を既知のCKDコホート計3,315例に対して行い、腎疾患・CKDにおける遺伝子診断の可能性について検討した1)。その結果は、307例(9.3%)に遺伝子診断をつけることができた。既知の原因遺伝子と疾患表現型が、必ずしも一致しない症例も少なからず認められた。たとえば、原著Figure 1の臨床診断スペクトラムによると、先天性多発性嚢胞腎の原因遺伝子として知られるPKD1、PKD2の異常は、そのほとんどが嚢胞性腎疾患であるが、Alport症候群の原因遺伝子として知られるIV型コラーゲンのα鎖遺伝子の異常は、高血圧性・糖尿病性を含む、幅広い臨床スペクトラムを呈している。同様に、家族性若年性痛風腎症の原因遺伝子として知られるUMOD遺伝子の変異も、幅広い臨床スペクトラムを呈している。 これまでのCKD・腎疾患の診断は、マクロ・ミクロの形態による診断ないしは、血清クレアチニン値に基づいた診断に限定されていた。今後、遺伝子診断は、迅速化、低コスト化、正確化を実現し、臨床医に、より確度の高い疾患情報の提供を可能にすることは間違いない。とくにCKDは、これまでの腎疾患のように、病理学的所見、病態に基づいた疾患ではない。estimated GFRによって、重症度を定量的に評価することができるようになったが、血圧、脂質、血糖とは異なり、eGFRを特異的に制御する治療法については、未解決である。CKDの重要性についても、主要4医学誌での論文をみても、いまだに疫学的な研究成果にとどまっていることが実情である。遺伝子診断のような技術革新が、すぐに臨床応用されるというのは楽観的に過ぎるが、引き続きの進捗に注目したい。

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第13回 アナタはどうしてる? 術前心電図(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第13回:アナタはどうしてる? 術前心電図(後編)前回は非心臓手術として、整形外科の膝手術予定の患者さんを例示し、術前スクリーニング心電図のよし悪しを述べました。今回も同じ症例を用いて、Dr.ヒロなりの術前心電図に対する見解を示します。症例提示67歳、男性。変形性膝関節症に対して待機的手術が予定されている。整形外科から心電図異常に対するコンサルテーションがあった。既往歴:糖尿病、高血圧(ともに内服治療中)、喫煙:30本×約30年(10年前に禁煙)。コンサル時所見:血圧120/73mmHg、脈拍81/分・整。HbA1c:6.7%、ADLは自立。膝痛による多少の行動制限はあるが、階段昇降は可能で自転車にて通勤。仕事(事務職)も普通にこなせている。息切れや胸痛の自覚もなし。以下に術前の心電図を示す(図1)。(図1)術前心電図画像を拡大する【問題】依頼医に対し、心電図所見、耐術性・リスクをどのように返答するか。解答はこちら心電図所見:経過観察(術前心精査不要)。耐術性あり(年齢相応)、心合併症リスクも低い。解説はこちらまず、心電図所見。果たしてどのように所見に“重みづけ”をしたら良いのでしょう。どの所見ならヤバくて、どれなら安心なのか。外科医が(循環器)内科医に尋ねたいのは、主に耐術性とリスク(心臓や血管における合併症)の2点ではないでしょうか。耐術性は、合併疾患の状況はもちろん、“動ける度”(運動耐容能)で判定するのがポイント。決して心エコーの“EF”ではありませんよ(フレイル・寝たきりで手術がためらわれる方でも、左心機能が正常な方が多い)。今回のケースのように、高齢ではなく、心疾患の既往や思わせぶりな症状・徴候もなく 、そして何より心臓も血管もいじらない手術で「心血管系合併症が起きるのでは…」とリスクを考えるのは“杞憂”でしょう。誰も彼も術前“ルーチン”心電図を行うのは、ほとんど無意味で臨床判断に影響を与えないことは前回述べました。「どんな患者に術前心電図は必要なのでしょう?」「どんな所見なら問題視すべきでしょう?」このような問いかけに、アナタならどうしますか? Dr.ヒロならこうします。“心電図検査の妥当性はこれでチェック”ボクが術前コンサルトで心電図の相談を受けた時、参考にしているフローチャート(図2)を示します。(図2)術前心電図の要否をみるフローチャート画像を拡大するこれはもともと、術前心電図の要否を判断するものです。海外ではそもそも「検査すべきか・そうでないか」が重視されているんですね。ただ、日本では、“スクリーニング”的に術前心電図がなされるので、ボクはこれを利用して、コンサルトされた心電図に“意義がある”ものか“そうでない”ものかをまず考えます。ここでも、心電図を“解釈する”ための周辺情報として、心電図“以外”の情報とつけ合わせることが大切です。術前外来で言えば、患者さんの問診と診察ですね。一人の患者さんにかけられる時間は限られているので、術前外来で、ボクは以下の4つをチェックしています。“妥当性”からの判断◆心疾患の既往◆症状(symptom)・徴候(sign)◆手術自体のリスク(規模・侵襲性)◆Revised Cardiac Risk Index(RCRI)まず既往歴。これは心疾患を中心に聞きとります。続く2つ目は症状と症候です。症状は、ボクが考える心疾患の“5大症状”、1)動悸、2)息切れ、3)胸痛、4)めまい・ふらつき、5)失神を確認します。もちろん異論もあるでしょうし、100%の特異性はありません。1)や2)は年齢や運動不足、そのほかの理由で「ある」という人が多いですが、それが心臓病っぽいかそうでないかの判断には経験や総合力も必要です。あとは、聴診と下腿浮腫の症候を確認するだけにしています。聴診は心雑音と肺ラ音ね。この段階で心臓病の既往、症状や徴候のいずれかが「あり」なら、術前心電図をするのは妥当で、所見にも一定の“意義”が見込めます。でも、もし全て「なし」なら非特異的な所見である確率がグッと高くなるでしょう。次に手術リスクを考慮します。これは手術予定の部位(臓器)や所要時間、麻酔法、出血量などで決まるでしょう。リスト化してくれている文献*1もあります。これによると、心合併症の発生が1%未満と見込まれる低リスク手術(いわゆる“日帰り手術”や白内障、皮膚表層や内視鏡による手術など)の場合、心電図は「不要」なんです。一方、心合併症が5%以上の高リスク手術(大動脈、主要・末梢血管などの血管手術)なら、心電図は「必要」とされます。もともと、ベースに心臓病を合併しているケースも多いですし、その病態把握に加えて、術後に何か起きた時、術前検査が比較対象としても使えますからね。残るは、心合併症が1~5%の中リスク手術。全身麻酔で行われる非心臓手術の多くがここに該当します。今回の膝手術もまぁここかな。ここで、「RCRI:Revised Cardiac Risk Index」という指標*2を登場させましょう。非心臓手術における心合併症リスク評価の“草分け”として海外で汎用されているもの(図3)で、中リスク手術における術前心電図の妥当性が「あり」か「なし」を判定する重要なスコアなんです!(図3)Revised Cardiac Risk Index(RCRI)画像を拡大するRevised Cardiac Risk Index(RCRI)1)高リスク手術(腹腔内、胸腔内、血管手術[鼠径部上])*2)虚血性心疾患(陳旧性心筋梗塞、狭心痛、硝酸薬治療、異常Q波など)3)うっ血性心不全(肺水腫、両側ラ音・III音、発作性夜間呼吸困難など)4)脳血管疾患(TIAまたは脳卒中の既往)5)糖尿病(インスリン使用)6)腎機能障害(血清クレアチニン値>2mg/dL)*:RCRIでは血管手術以外に、胸腔・腹腔内の手術も含まれる点に注意1)のみ手術側、残り5つが患者側因子の計6項目からなり、ボクもこのページをブックマークしています(笑)。たとえば、全て「No」を選択すると、主要心血管イベントの発生率が「3.9%」と算出されます(注:2019年1月から数値改訂:旧版では「0.4%」と表示)。中リスク手術ならRCRIが1項目でも該当するかどうかがが大事ですが、今回の男性は全て「No」。つまり、チャートで「No ECG(術前心電図をする“意義はない”)」に該当しますから、たとえいくつか心電図所見があっても基本は重要視せず、これ以上の検査を追加する必要もないと判断してOKではないでしょうか。“active cardiac conditionの心電図か?”術前心電図としての妥当性の観点から、今回の症例は精査が不要そうです。では、仮にチャートで「ECG」(“意義あり”)となった時、2つ目のクエスチョン「問題視すべき所見は?」はどうでしょうか。患者さんは“非心臓”手術を受けるのが真の目的ですから、その前にボクらが“手出し”(精査や加療)するのは、よほどの緊急事態ととらえるのがクレバーです。そこでボクが重要視しているのは、“active cardiac condition”です。実はこれ、アメリカ(ACC/AHA)の旧版ガイドライン(2007)*3で明記されたものの、最新版(2014)*4では削除された概念なんです(わが国のガイドライン*5には残ってます)。active cardiac condition=緊急処置を要するような心病態、のような意味でしょうか。これを利用します。“緊急性”からの判断~active cardiac condition~(A)急性冠症候群(ACS)(B)非代償性心不全(いわゆる“デコった”状況)(C)“重大な”不整脈(房室ブロック、心室不整脈、コントロールされてない上室不整脈ほか)(D)弁膜症(重症AS[大動脈弁狭窄症]ほか)もちろん、ここでも心電図以外の検査所見も見て下さい。心電図の観点では、(A)や(C)の病態が疑われたら“激ヤバ”で、早急な対処、場合によっては手術を延期・中止する必要があります。既述のチャートで“全て「No」だった心電図”でも無視できず、むしろ、至急「循環器コール」です(まれですが術前にそう判明する患者さんがいます)。ただ、「左室肥大(疑い)」や「不完全右脚ブロック」などの波形異常の多くはactive cardiac conditionに該当せず、術前にあれこれ検索すべき所見ではありません。つまり、患者さんに対し、「手術を受けるのに、この心電図なら大丈夫」と“太鼓判”を押し、追加検査を「やらない」ほうがデキる医師だと示せるチャンスです!もちろん、コンサルティ(外科医)の意向もくんだ上で最終判断してくださいね。れっきとしたエビデンスがない分野ですが、このように自分なりの一定の見解を持っておくことは悪くないでしょう(気に入ってくれたら、今回の“Dr.ヒロ流ジャッジ”をどうぞ!)。今回のように必要ないとわかっていても、万が一で責任追及されては困ると“慣習”に従う形で、技師さんへ詫びながら心エコーを依頼する、そんな世の中が早く変わればいいなぁ。いつにも増して“熱く”なり過ぎましたかね(笑)。Take-home Message1)心電図所見に対して精査を追加すべきかどうかは、術前検査としての「妥当性」を考慮する2)Active Cardiac Conditionでなければ、非心臓手術より優先すべき検査・処置は不要なことが多い*1:Kristensen SD, et al.Eur Heart J.2014;35:2383-431.*2:Lee TH, Circulation.1999;100:1043-9.*3:Fleisher LA, et al.Circulation.2007;116:e418-99.*4:Fleisher LA, et al.Circulation.2014;130:e278-333.*5:日本循環器学会ほか:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン2014年改訂版【古都のこと~天橋立~】「日本三景ってどこ?」松島、宮島、そして京都にある「天橋立」です。前回の京丹後の旅の帰りに寄りました。「オイオイ、っていうか写真、逆では?」とお思いでしょ? 実は、2016年のイグノーベル賞で有名になった“股のぞき効果”(股のぞきで眺めると、風景の距離感が不明瞭になり、ものが実際より小さく見える効果)を体験しながら撮影したんです。絶景に背を向け、股下から天橋立をのぞき込むと、そこは“天上世界”。海と空とが逆転し、天に舞い上がる龍のように見えるそうです(飛龍観)。ボクの想像力が豊かで、しかも、もっと雲が少なかったら…見えなくもないかな? ボクは天橋立ビューランドからでしたが、傘松公園バージョンもあるそうで。また今度行ってみようかなぁ。

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志水太郎の診断戦略ケーススタディ

第1回 隠された病変(The Hidden Lesion)第2回 一周回って確診に(Circling Back for the Diagnosis)第3回 Aから始まりZで終る(Going from A to Z)第4回 眠れる巨人(A Sleeping Giant) 診断のメカニズムを解き明かした名著「診断戦略」。そこで示された戦術や技法を、臨床でどのように使えば効率的かつ正確な診断が行えるのか、ケーススタディ形式で解説します。扱う症例はNEJM(The New England Journal of Medicine)の名物コーナー「Clinical Problem-Solving」に掲載されたもの。難症例を前に、直観的思考はどうひらめくのか、どのタイミングでどんな鑑別のクラスターを開くのか、そして正解の疾患はそこにあるのか。普段は決して覗くことのできない“名医の診断過程”は必見です。「診断戦略」を使いこなすことができれば、あなたの診断も劇的に変わります!第1回 隠された病変(The Hidden Lesion)NEJMに掲載された「The Hidden Lesion」を題材に、診断戦略の扱い方をケーススタディ形式で解説。番組では症例の第1段落にあたる病歴と身体診察のみの情報から診断へ迫ります。第2回 一周回って確診に(Circling Back for the Diagnosis)NEJMのClinical Problem-Solvingから、28歳男性の右上・下腹部痛の症例を扱います。病歴と身体所見の限られた情報から、直観的思考と分析的思考を使って診断に迫っていく過程は必見!「前医の情報を鵜呑みにしてはいけない」、新たな診断戦略「EHTL」も登場します。第3回 Aから始まりZで終る(Going from A to Z)今回はNEJMのClinical Problem-Solvingから、3ヵ月間続く下痢を訴える70歳男性の症例を扱います。突如判明する南アジアへの渡航歴に戸惑いながらも、わずかな病歴から直観的思考と分析的思考を使って診断に迫っていく過程は必見です!A(abdominal pain)で始まるこの症例が行き着くZとは?第4回 眠れる巨人(A Sleeping Giant)最終回はNEJMのClinical Problem-Solvingから、腹痛と寝汗が主訴の71歳女性の症例を扱います。副鼻腔炎の既往、寝汗、体重減少などそれぞれの情報から「分析的思考」を展開して鑑別診断を列挙。最終診断にたどり着くと、すべての謎が解けるはずです。

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第5回 全身痛と関連痛【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第5回 全身痛と関連痛痛みは病気の兆候として最も多く、誰もが苦しむ原因となっています。そのために、患者さんは病院や診療所などを受診されます。血圧、脈拍、呼吸数、体温と共に、痛みは「第5のバイタルサイン」とも呼ばれております。近年、全身に痛みを訴えられる患者さんが増えておられます。全身痛と呼んでおりますが比較的若い患者さんが多くなってきたように感じられます。今回は、この全身痛を取り上げ、付随して関連痛を説明したいと思います。全身痛とは全身的に痛みを訴えられる患者さんの痛みを「全身痛」と呼んでいます。いろいろな部位に痛みを訴えられる患者さんや、全身にわたって痛みを訴えられる患者さんなど、その形態はさまざまです。また、重篤な身体疾患を持っていることもあるので注意が必要です。その中で全身痛から発見される疾患としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性強皮症、リウマチ性多発筋痛症などの膠原病があります。甲状腺機能低下症や有痛性糖尿病性ニューロパチーなどの内分泌疾患もあります。そのほか、ポストポリオ症候群や横紋筋融解症などの神経筋疾患も認められます。横紋筋融解症は、脂質異常症治療薬や抗神経病薬などによる薬剤性疾患によっても生じます。そして、悪性腫瘍では多発性骨髄腫、多発性転移、何より増して全身の骨関節痛、腰背部痛などが生じます。インフルエンザ、ウイルス性肝炎では全身の関節痛や筋肉痛、神経痛がみられます。うつ病、身体表現性疼痛(疼痛性障害、身体化障害など)、自律神経失調症などの精神・神経疾患でも全身痛を訴えます。とくにうつ病では、痛みの部位が変動するのが特徴です。その他、難治性疼痛疾患としての線維筋痛症(FM)(図1)や慢性疲労症候群(CFS)も現在、話題になっています。FMの診断では、(1)広範囲(右半身/左半身、上半身/下半身、体軸という身体の真ん中)の痛みが3ヵ月以上続いていること、(2)図1に示した18ヵ所(圧痛点といいます)を指で押して、11ヵ所以上で痛むことが条件となります。図1 FMの診断における18ヵ所の圧痛点画像を拡大する関連痛とは表層筋膜、アキレス腱、前脛骨筋腱、表在関節、靭帯、脛骨のような表在性の骨などの痛みは、局在性の痛みとして感じます。これに対してより深い部位にある腱、関節、骨などや筋肉内にあるような組織からの痛みは、遠く隔たった皮膚に投射されます。たとえば、上部胸椎の骨膜に刺激を受けた場合には、肩の上部にびまん性の痛みを感じます。また、内臓痛には関連痛が伴います。内臓痛そのものの局在性は不明確ですが、「関連痛」といって、同じ脊髄節支配の皮膚に投射されて痛む部位が明確に示されます。そして、この皮膚におきましては、疼痛過敏や異常知覚を伴ったり、筋肉の緊張、自律神経の異常興奮がみられることもあります(図2)。図2 内臓痛に伴い現れる関連痛の部位画像を拡大するいずれも痛みの部位と性質、随伴症状や検査所見などによって鑑別診断します。そして原疾患が疑われるようであれば、その治療を最重要として、それぞれの専門医に紹介します。原疾患が治癒しても痛みが持続する場合やとくに原疾患がない場合には、痛み治療が必要となります。次回は頭・頸部痛を取り上げます。1)花岡一雄ほか監修.日本医師会雑誌. 2014;143:120-121.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.20-38.

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