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認知症の7つの危険因子、発生リスクへの影響は

 認知症発生の主要な危険因子として、糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、重度の精神的苦痛、喫煙、低学歴がある。東北大学の小瀧 由美香氏らは、大崎コホート2006研究において、これら認知症の7つの危険因子の総数で人口寄与割合(PAF)を推定した。その結果、危険因子総数を減らすことが認知症発生リスクの減少に有意に寄与することが示唆された。Journal of Neurology誌オンライン版2019年3月2日号に掲載。危険因子の総数と認知症発生との間に用量反応関係 本研究は65歳以上の8,563人の地域在住者が対象のコホート研究である。ベースライン調査(2006年)では、認知症の7つの主要な危険因子(糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、重度の精神的苦痛、喫煙、低学歴)に関するデータを収集した。危険因子の総数を曝露変数とし、危険因子の総数(0、1、2、3以上)により参加者を4群に分類した。認知症発生に関するデータは、介護保険データベースを参照した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)は、Cox比例ハザードモデルを使用して推定した。さらに、HRとコホートデータにおけるリスク保有割合からPAFを計算した。 認知症の危険因子と発生データを分析した主な結果は以下のとおり。・577人(6.7%)で認知症が発生した。・危険因子の総数と認知症発生との間に用量反応関係が観察された。・年齢・性別で調整したHR(95%CI)は、危険因子がなかった群と比べ、危険因子が1つの群で1.25(0.92~1.70)、2つの群で1.59(1.18~2.15)、3つ以上の群で2.21(1.62~3.01)であった(傾向性のp<0.001)。・参加者の危険因子の総数が全員0個になった場合、PAFは32.2%となる。・参加者の危険因子の総数の分類が全体的に1段階改善した場合、PAFは23.0%となる。

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第7回 目標下限値と減薬の考え方、認知機能・ADL簡易評価法の活用術【高齢者糖尿病診療のコツ】

第7回 目標下限値と減薬の考え方、認知機能・ADL簡易評価法の活用術Q1 目標下限値を下回った場合はどのようにしますか? 減薬すべきですか?HbA1c値が目標下限値を下回った場合は、まず低血糖が起きていないかをチェックすることが大切です。体のふらふら感、頭のくらくら感、めまい、脱力感など低血糖症状が食前にないかどうかを問診します。血糖自己測定ができる場合は、いつもと違った症状がある場合も血糖を測定します。できない場合は、ブドウ糖をとって症状が改善するかどうかをみます。また、低血糖は朝5~6時に起こりやすいと報告されていますので、この早朝の時間に血糖をチェックすることを勧めます。これらをチェックした結果低血糖がなければ、現在の処方を継続する形でいいと思います。ただし、目標下限値を下回った場合、SU薬は半分に減量すること、インスリンの場合は1~2単位減量できないかを検討します。低血糖リスクのある薬剤を減らすことは、将来の重症低血糖のリスクを減らすことにつながります。また、下限値を下回った場合は、HbA1c値が血糖を反映できているかどうかを調べます。腎不全などがある場合、HbA1cは、赤血球の代謝に変化が起こり、低めになりやすくなります。この場合、グリコアルブミンを一度測定し、解離がないかどうかをみるとよいでしょう。Q2 血糖コントロール設定のための認知機能・ADL評価を、もっと簡単に行う方法はありますか?血糖コントロール目標を設定するために、認知機能はMMSEや改訂長谷川式認知症スケール、手段的ADLはLawtonの指標または老研式活動能力指標、基本的ADLはBarthel の指標などを使って評価することが理想ですが、外来診療においてこうした評価を短時間で、かつ同時に行うことは難しいことも多いと思われます。そこで、簡単な21の質問で認知機能と生活機能をできる質問票であるDASC-21(地域包括ケアのための認知症アセスメントシート)の短縮版として、血糖コントロール目標設定のためのカテゴリー分類が可能な認知・生活機能質問票(DASC-8)を開発しました1)。DASC-8は記憶、時間見当識、手段的ADL(買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理)、基本的ADL(トイレ、食事、移動)の8つの質問からなっています。また、MMSE、Lawton指標、Barthel の指標で評価した場合を基準としたROC解析でも、カテゴリーIとII+III、またはカテゴリーI+IIとIIIをそれぞれカットオフ値:10/11点、16/17点で高い精度で弁別できることが示されました(ROC面積>0.90、感度>0.80、特異度>0.80)。DASC-8の8つの質問を4段階で評価して合計点を出し、10点以下はカテゴリーI、11~16点はカテゴリーII、17点以上はカテゴリーIIIと分類できます(表1)。このようにDASC-8を用いて簡易に高齢者糖尿病のカテゴリー分類を行い、血糖コントロール目標を設定できるようになりました。画像を拡大するDASC-8の質問票(表2)とその使用マニュアルは日本老年医学会ホームページのお役立ちツールに掲載されており、臨床または研究に使用する場合は自由にダウンロードすることが可能です。画像を拡大するDASC-8は原則、メディカルスタッフ、介護職、または医師が、対象の方をよく知る家族や介護者に、患者さんの日常生活の様子を聞きながら、認知機能障害や生活機能障害に関連する行動の変化を評価します。家族や介護者に質問することができない場合には、患者さんに日常生活の様子を質問しながら、実際の場面を想定した追加の質問をしたり、様子を観察したりしながら患者さんの状態を評価します。したがって、DASC-8は、メディカルスタッフが医師の診察前に患者さんの生活のことを聞きながら行うのがいいと思います。こうした質問の仕方も含めて、DASC-8の使用マニュアルに記載されていますので、必ず使用マニュアルを読んでから、活用していっていただきたいと思います。Q3 DASC-8による分類は血糖コントロール目標の設定以外にも使えますか?DASC-8は認知・生活機能質問票であり、高齢者を認知機能とADLの評価に基づいて3つのカテゴリーに分類している、という点を改めて考えると、さまざまなことに応用することができます。カテゴリーIIは手段的ADL低下の状態なので、買い物や食事なども障害されている可能性もあり、食事療法を見直すきっかけになります。手段的ADL低下はフレイルが進行する段階で起こってくることが多いので、フレイルがあるかどうかをJ-CHS基準または基本チェックリストで調べることもできます(第5回参照)。フレイルがある場合には、レジスタンス運動を含む運動療法や、タンパク質を十分に摂取する食事療法などの対策を講じます。また、外出をしなくなっている場合はうつ状態かどうかもチェックする必要があります。カテゴリーIIでは軽度認知障害(MCI)以上の認知機能障害がある可能性があります。したがって、服薬やインスリン注射などのアドヒアランスをチェックすることが大切です。アドヒアランス低下がある場合には、治療の単純化を行います。すなわち、多剤併用の場合は薬剤の種類を減らすだけでなく、服薬回数を減らしたり、服薬タイミングをそろえたりすることを行います。カテゴリーIIIでは、中等度以上の認知症があることが考えられるので、減薬・減量の可能性を考慮します。とくに食事が不規則な場合、厳格すぎる血糖コントロール(HbA1c 6.5%未満)や体重減少がある場合は服薬数を減らしたり、SU薬やインスリンなどを減量したりすることができないかを検討したほうがよいでしょう。社会サポートの有無や介護保険認定の有無を調べることも大切です。介護認定を申請するとカテゴリーIIは要支援、カテゴリーⅢは要介護と認定され、デイケアなどの運動のサービスなどを受けることができる場合があります。このように、DASC-8による評価は、認知機能やADLの評価に加えて、フレイル、うつ、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会サポート低下をさらにチェックすることで、高齢者総合機能評価(CGA)に役立てることができます。1)Toyoshima K, et al. Geriatr Gerontol Int 2018;18:1458-1462.

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肥満と認知症リスク

 65歳未満での過体重や肥満は、認知症発症率の増加に影響することが示唆されているが、65歳以上での過体重や肥満では、逆説的であるといわれている。認知症診断前の体重減少、喫煙や体重減少を引き起こす疾患の影響が、相反する結果をもたらしている可能性がある。英国・エクセター大学のKirsty Bowman氏らは、65~74歳の英国プライマリケア集団における認知症診断前の体重減少、短期または長期のBMIとの関連について検討を行った。Age and Ageing誌オンライン版2019年2月6日号の報告。 認知症と診断されていない、ベースライン時にがん、心不全、合併症のない非喫煙者25万7,523例(A群)およびこれらの交絡因子を有する16万1,927例(B群)を対象に14.9年までフォローアップを行った。死亡率は、競合ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・A群では、9,774例が認知症と診断された。繰り返し体重測定を行っていた患者の54%において、診断前までの10年間で2.5kg以上の体重減少が認められた。・10年未満の肥満(30.0kg/m2以上)または過体重(25.0~29.9/m2)は、22.5~24.9/m2と比較し、認知症発症率の減少が認められた。・しかし、10~14.9年までの肥満は、認知症発症率増加と関連が認められた(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.03~1.32)。・長期の分析では、過体重の保護的関連は消失した(HR:1.01、95%CI:0.90~1.13)。・B群では、6,070例が認知症と診断されており、肥満は、短期または長期の認知症リスク低下との関連が認められた。 著者らは「喫煙、がん、心不全、多発性疾患のない65~74歳における肥満は、長期の認知症発症率の増加との関連が認められた。短期間では、逆説的な関連が認められたことが、相反する結果をもたらした可能性であると考えられる。高齢者の認知症リスクに対する肥満や過体重の保護効果に関する報告は、とくに認知症診断前の体重減少を反映している可能性がある」としている。■関連記事レビー小体型認知症とアルツハイマー病における生存率の違い~メタ解析脂肪摂取と認知症リスクに関するメタ解析中年期以降の握力低下と認知症リスク~久山町研究

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GLP-1分泌をより増加させる食事/糖尿病学の進歩

 食事内容の選択や食事量を考えることは重要である。同様に “食べるタイミング”も吸収時間の影響から注目されているが、実は、体内物質の分泌が深く関わっているという。2019年3月1~2日に第53回糖尿病学の進歩が開催され、田中 逸氏(聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科教授、糖尿病センター長)が「GLP-1に着目した食事療法の時間代謝学を考える」と題して講演した。食事時間とGLP-1を考える 糖尿病食事療法の基本は個別的に適正な総エネルギー量と栄養バランスである。田中氏は「そこに、時間の概念を取り入れた代謝学(食事の時刻、摂食速度、食べる順序など)を実践することも大切」とし、「Second and third meal phenomenonには、GLP-1が関与している」と、GLP-1と食事療法の深い関わりを作用機序から提唱した。 GLP-1には、インスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制以外にも、脂肪分解や脂肪肝の減少を促進したり、心機能を保護したりする効果がある。また、SGLT2阻害薬とは異なり、GLP-1は骨格筋における筋組織の血流増加やGLUT4の発現増加を促し、脂肪異化は促進するものの筋肉異化は起こさない。これより、「脂肪は落としたいけど筋肉は維持させたい患者に対しても効果がある」と、GLP-1がサルコペニアの観点からも有用であることを示した。GLP-1の分泌を促す食事とは? GLP-1は小腸下部のL細胞と呼ばれる細胞に存在し、ブドウ糖やタンパク質、脂肪など様々な食事成分の刺激を受けて分泌が促されるものであり、普通に食事をとっても分泌される。そこで、同氏はそのメカニズムを有効活用すべく「さらに分泌量を増加させる食事のとり方」について、2008年に発表されたDIRECT試験における地中海式ダイエットを用いて解説。地中海式料理はオリーブオイル、魚介類、全粒穀物、ナッツ、ワインなどを多く含むのが特徴的で、これらには1)一価飽和脂肪酸、2)多価不飽和脂肪酸、3)食物繊維が豊富である。同氏は、“先生方から地中海式料理とはなにか?”という質問をよく受けるそうだが、「上記3つの栄養素を多く含みGLP-1の分泌を高める食事」と答えているという。朝食がGLP-1分泌に重要 インスリンの働きを妨害する因子である遊離脂肪酸(FFA:free fatty acid)は朝食前に最も高値を示す。そのため、朝食後は血糖値も上昇する。しかし、2回目の食事となる(1日3食きちんと食べている場合)昼食時には、朝食後に追加分泌されたインスリンのおかげでFFAが低下し、インスリンの効きが良くなっているため、食後血糖値の上昇が抑えられる。ところが、朝食をとらずに昼食をとると、FFAは高値のままであるため、食後血糖値が上昇してしまう。また、糖尿病患者の多くはインスリン分泌速度が遅いが、朝に分泌されたGLP-1が昼食時のインスリン分泌速度を高めるという研究1)結果もある。これを踏まえ、「朝食の摂取が昼食前と夕食前のGLP-1濃度を上昇させ、昼食後、夕食後のインスリン分泌も速める。したがって、昼食後と夕食後の血糖値改善のためにも朝食をとるのは重要である」と同氏は朝食の重要性を強調した。GLP-1濃度と朝食後の血糖上昇抑制の関係 朝食をとることで昼食前と夕食前のGLP-1濃度がかさ上げされることは前述の通りである。ここで“朝食前の時点からすでにGLP-1が高ければさらに有利では?”という疑問が湧いてくるのではないだろうか?朝食後の血糖改善には乳清タンパク(whey protein)が効果的であるという報告2)がある。乳清タンパクは牛乳内に20%程度含まれている物質で、これをSU剤もしくはメトホルミン服用中の2型糖尿病患者を対して、朝食30分前に50g投与したところ、朝食前からインスリンや活性型GLP-1の分泌量が上昇して血糖が改善した。また、ほかの試験報告3)からは、朝食中より朝食前の摂取が効果的であることも明らかになった。 朝食前の乳清タンパク摂取の効果は今後さらに検討する必要がある。最近の同氏の検討では、『もち米玄米』などの全粒穀物を日々の食事に取り入れることも朝食前のGLP-1を上昇させる可能性があるという。 最後に、同氏は「食事療法の基本は適正なエネルギー量と適正な栄養素のバランスであるが、GLP-1など体内ホルモンの分泌量をより増加させることも重要と考えられる。その意味でも朝食をしっかり摂取することが、昼食・夕食時の血糖上昇に影響を及ぼし、1日の血糖改善につながる」と締めくくった。

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第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?Q1 なぜ、高齢者の血糖コントロール目標が発表されたのですか?糖尿病の血糖コントロールに関しては、かつては下げれば下げるほどよいという考え方でした。ところが、ACCORD試験などの高齢者を一部含む大規模な介入試験によって、厳格すぎる血糖コントロールは細小血管症を減らすものの、重症低血糖の頻度を増やし、死亡に関してはリスクを減らさずに、むしろ増やすことが明らかになりました。さらに、重症低血糖は、死亡だけでなく、認知症、転倒・骨折、ADL低下、心血管疾患の発症リスクになることがわかってきました。また、軽症の低血糖でもうつ状態やQOL低下をきたすことも報告されています。すなわち、低血糖は老年症候群の一部を引き起こすのです。また、低血糖は高齢者で起こりやすくなり、とくに重症低血糖は80歳以上の高齢者でさらに増えることがわかっており、低血糖の弊害の影響を大きく受けるのは高齢者ということになります。生物学的には高齢者においても血糖コントロールは糖尿病合併症を減らすと考えられますが、心血管を含めた合併症を予防するためには少なくとも10年間以上の良好な血糖コントロールを要すると思われます。とすると、平均余命が短い高齢者では厳格な血糖コントロールの意義が相対的に小さくなることになります。平均余命の推定は困難なことが少なくありませんが、高齢者の死亡リスクは疾患やそのコントロール状況よりもむしろ機能状態、すなわち認知機能やADLの状態によって決まることがわかっています。認知機能、ADL、併存疾患などで糖尿病を3つの段階に分けると、機能低下の段階が進むほど、死亡リスクが段階的に増えていくので、血糖コントロール目標は柔軟に考えていく必要があるのです。また、高齢者に厳格なコントロールを行うと、重症低血糖のリスクだけでなく、多剤併用や治療の負担も増えることになります。一方、血糖コントロール不良(HbA1c 8.0%以上)は網膜症、腎症、心血管死亡だけなく、認知症、転倒・骨折、サルコペニア、フレイルなどの老年症候群のリスクにもなることにより、高齢者でもある程度はコントロールしたほうがいいことも事実です。こうしたことから、米国糖尿病学会(ADA)、国際糖尿病連合(IDF)は平均余命や機能分類を3段階に分けて設定する高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を発表しました。本邦でもこうした高齢者糖尿病の種々の問題から、高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が発足し、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)が発表されました(第4回参照)。Q2 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」のわかりやすい見かたとその意味について教えてください。日常臨床において、上記の図を見ながら高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)を設定するのは複雑で大変であるという意見もあります。そこで、私たちが行っている方法を紹介します。図1の簡単な血糖コントロール目標の設定を参照してください。1)まず、75歳以上の後期高齢者でインスリン、SU薬など低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合を考えます。この場合、カテゴリーIの認知機能正常で、ADLが自立している元気な患者と、カテゴリーIIの軽度認知障害または手段的ADL低下の患者の目標値は全く同じで、HbA1c 8.0%未満、目標下限値はHbA1c 7.0%。この数字だけでも覚えておくといいと思います。目標下限値がHbA1c7.0%というのはIDFの基準と全く同じであり、HbA1c 7.0%をきると重症低血糖、脳卒中、転倒・骨折、フレイル、ADL低下または死亡のリスクが高くなるという疫学データに基づいています。2)つぎに中等度以上の認知症または基本的ADL低下があるカテゴリーIIIの患者の場合は、(1)に+0.5%で、HbA1c 8.5%未満で目標下限値はHbA1c 7.5%です。中等度以上の認知症とは、場所の見当識、季節に合った服が着れないなどの判断力、食事、トイレ、移動などの基本的ADLが障害されている場合で、誰がみても認知症と判断できる状態の患者です。HbA1c 8.5%未満としているのは、8.5%以上だと、肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症のリスクが上昇し、さらに上がると高浸透圧高血糖状態(糖尿病性昏睡)のリスクが高くなるからです(第3回参照)。3)65~75歳未満の前期高齢者で、低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合は、まず元気なカテゴリーIの場合を考えます。この場合は(1)から-0.5%で、HbA1c 7.5%未満、目標下限値はHbA1c 6.5%となります。すなわち、7.0%±0.5%前後です。前期高齢者では、カテゴリーが進むにつれて0.5%ずつ目標値が上昇していき、カテゴリーIIIでは後期高齢者と同じHbA1c 8.5%未満、目標下限値はHbA1c 7.5%です。4)つぎは低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用していない場合で、DPP-4阻害薬、メトホルミン、GLP-1受容体作動薬などで治療している場合です。この場合、血糖コントロール目標は従来の熊本宣言のときに出された目標値と同様で、カテゴリーIとIIの場合はHbA1c 7.0%未満、カテゴリーIIIの場合はHbA1c 8.0%未満で、目標下限値はなしです。このように、低血糖のリスクの有無で目標値が異なるのはわが国独自のものです。わが国では医療保険などでDPP-4阻害薬などが使用できる環境にあるので、低血糖のリスクが問題にならない場合は、「高齢者でも良好なコントロールによって合併症や老年症候群を防ごう」という意味だと解釈できます。

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血糖コントロールに有効な携帯型デバイス/Lancet

 d-Navインスリン・ガイダンス・システム(Hygieia)は、血糖値を測定してその変動を記録し、自動的に適切なインスリン量を提示する携帯型デバイス。2型糖尿病患者では、医療者による支援に加えてこのデバイスを用いると、医療支援のみの患者に比べ良好な血糖コントロールが達成されることが、米国・国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月23日号に掲載された。インスリン療法は、用量の調整を定期的かつ頻回に行えば、最も有効な血糖コントロールの方法とされるが、多くの医師にとってほとんど実践的ではなく、結果としてインスリン量の調整に不均衡が生じているという。米国の3施設が参加、デバイスの有無でHbA1cの変化を比較 本研究は、血糖コントロールにおけるd-Navの有用性の検証を目的とする無作為化対照比較試験であり、2015年2月~2017年3月の期間に米国の3つの糖尿病専門施設で患者登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所のプログラムの助成による)。 対象は、年齢21~70歳、2型糖尿病と診断され、HbA1c値が7.5~11%、直近の3ヵ月間に同一のインスリン療法レジメンを使用している患者であった。BMI≧45、心臓・肝臓・腎臓の重度の障害、過去1年以内に2回以上の低血糖イベントを認めた患者は除外された。 被験者は、d-Navと医療者による支援を併用する群(介入群)または医療者による支援のみを行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、6ヵ月のフォローアップ期間中に、3回の面談による診察と4回の電話による診察を受けることとした。 主要目標は、ベースラインから6ヵ月までのHbA1c値の変化の平均値とした。安全性については、低血糖イベントの頻度の評価を行った。HbA1c値の低下:1.0% vs.0.3% 2型糖尿病患者181例が登録され、介入群に93例(平均年齢61.7[SD 6.9]歳、女性52%)、対照群には88例(58.8[8.5]歳、45%)が割り付けられた。平均罹病期間はそれぞれ16.1(SD 7.3)年、15.3(6.0)年で、ベースラインのHbA1c値は8.7%(SD 0.8)、8.5%(0.8)、体重は100.2kg(SD 17.1)、101.1kg(17.2)だった。 HbA1c値のベースラインから6ヵ月までの変化は、介入群が1.0%低下したのに対し、対照群は0.3%の低下であり、両群間に有意な差が認められた(p<0.0001)。 6ヵ月時にHbA1c<7%を達成した患者の割合は、介入群が22%と、対照群の5%に比べ有意に良好であった(p=0.0008)。また、ベースライン時のHbA1c<8%の患者の割合は、介入群が23%、対照群は32%とほぼ同等であったが(p=0.16)、6ヵ月時にはそれぞれ62%および33%に増加し、有意な差がみられた(p<0.0001)。 低血糖(<54mg/dL)の頻度は、介入群が0.29(SD 0.48)イベント/月、対照群は0.29(1.12)イベント/月であり、両群で同等であった(p=0.96)。重症低血糖は、6ヵ月間にそれぞれ3イベント(介入との関連の可能性が示唆されるのは1イベント)および2イベント(いずれも介入との関連はない)が認められた。 体重は、6ヵ月間に介入群で平均2.3%増加し、対照群の0.7%の増加に比べ増加率が高かった(p=0.0001)。 著者は、「この携帯デバイスは、2型糖尿病患者において安全かつ有効なインスリン量の調整を可能にすることが示された。今後、これらの知見の確証を得て、その費用対効果を検討するために、大規模な医療システムにおいて評価を行うためのアプローチが求められる」としている。

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第10回 意識障害 その8 原因不明の意識障害の原因の鑑別に「痙攣」を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)原因不明の意識障害では“痙攣”の可能性を考えよう!2)“痙攣”の始まり方に注目し、てんかんか否かを見極めよう!3)バイタルサイン安定+乳酸値の上昇をみたら、痙攣の可能性を考えよう!【症例】80歳男性。息子さんが自宅へ戻ると、自室の机とベッドとの間に挟まるようにして倒れているところを発見した。呼び掛けに対して反応が乏しいため救急要請。●搬送時のバイタルサイン意識100/JCS血圧142/88mmHg脈拍90回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3mm+/+今回は“痙攣”による意識障害に関して考えていきましょう。痙攣というと、目の前でガクガク震えているイメージがあるかもしれませんが、臨床の現場ではそう簡単ではありません。初療に当たる時には、すでに止まっていることが多く、痙攣の目撃がない場合には、とくに診断が難しいのが現状です。そのため、意識障害の原因が「痙攣かも?」と疑うことができるかが、初療の際のポイントとなります。痙攣の原因として、大きく2つ(てんかんor急性症候性発作)があります。ここでは、わが国でも100人に1人程度認める、てんかん(症候性てんかん含む)の患者さんの痙攣をいかにして見抜くかを中心に考えていきましょう。いつ痙攣を疑うのか?皆さんは、いつ意識障害の原因が痙攣と疑うでしょうか? 今まで述べてきたとおり、意識障害を認める場合には、ABCの安定をまずは目標とし、その後は原則として、低血糖、脳卒中、敗血症を念頭に対応していきます。これらは頻度が高いこと、血糖測定や画像検索で比較的診断が容易なこと、緊急性の高さが故の順番です。痙攣も今まさに起こっている場合には、早期に止めたほうがよいですが、明らかな痙攣を認めない場合には時間的猶予があります。痙攣の鑑別は10's rule(表)の9)で行います1)。●Rule9 疑わなければ診断できない! AIUEOTIPSを上手に利用せよ!AIUEOTIPSを意識障害の鑑別として上から順に鑑別していくのは、お勧めできません。なぜなら、頻度や緊急度が上から順とは限らないからです。また、患者背景からも原因は大きく異なります。そのため、AIUEOTIPSは鑑別し忘れがないかを確認するために用いるのがよいでしょう(意識障害 その2参照)。見逃しやすい原因の1つが痙攣(AIUEOTIPSの“S”)であり、採血や画像検査で特異的な所見を必ずしも認めるわけではないため、原因が同定できない場合には常に考慮する必要があるのです。「原因不明の意識障害を診たら、痙攣を考える」、これが1つ目のポイントです。画像を拡大する目撃者がいない場合痙攣を疑う病歴や身体所見としては、次の3点を抑えておくとよいでしょう。「(1)舌咬傷、(2)尿失禁、(3)不自然な姿勢で倒れていた」です。絶対的なものではなく、その他に認める所見もありますが、実際に救急外来で有用と考えられるトップ3かと思いますので、頭に入れておくとよいでしょう。(1)舌咬傷てんかんによる痙攣の場合には、20%程度に舌外側の咬傷を認めます。心因性の場合には、舌咬傷を認めたとしても先端のことが多いと報告されています2)。(2)尿失禁心因性や失神でも認めるため絶対的なものではありませんが、尿失禁を認める患者を診たら、「痙攣かも?」と思う癖を持っておくと、鑑別し忘れを防げるでしょう3)。(3)不自然な姿勢で倒れていたてんかん、とくに高齢者のてんかんは局在性であるため、痙攣は左右どちらかから始まります。左上肢の痙攣が始まり、その後全般化などが代表的でしょう。意識消失の鑑別として、失神か痙攣かは、鑑別に悩むこともありますが、失神は瞬間的な意識消失発作で姿勢保持筋が消失するため、素直に倒れます。脳血流が低下し、立っていられなくなり倒れるため、崩れ落ちるように横になってしまうわけです。それに対して、痙攣を認めた場合には、左右どちらかに引っ張られるようにして倒れることになるため、素直には倒れないのです。仰向けで倒れているものの、片手だけ背部に回っている、時には肩の後方脱臼を認めることもあります。「なんでこんな姿勢で? なんでこんなところで?」というような状況で発見された場合には、痙攣の関与を考えましょう。その他、痙攣を認める前に、「あー」と声を出す、口から泡を吹いていたなどは痙攣らしい所見です。そして、時間経過と共に意識状態が改善するようであれば、らしさが増します。目撃者がいる場合患者が倒れる際に目撃した人がいた場合、(1)どのように痙攣が始まったのか、(2)持続時間はどの程度であったか、(3)開眼していたか否かの3点を確認しましょう。(1)痙攣の始まり方この点はきわめて大切です。失神後速やかに脳血流が回復しない場合にも、痙攣を認めることがありますが、その場合には左右差は認めません。これに対して、てんかんの場合には、異常な信号は左右どちらかから発せられるため、上下肢左右どちらかから始まります。「痙攣は右手や左足などから始まりましたか?」と聞いてみましょう。(2)持続時間一般的に痙攣は2分以内、多くは1分以内に止まります。これに対して心因性の場合には2分以上続くことが珍しくありません。(3)開眼か閉眼かてんかんの場合には、痙攣中は開眼しています。閉眼している場合には心因性の可能性が高くなります4,5)。痙攣を示唆する検査所見痙攣の原因検索のためには、採血や頭部CT検査、てんかんの確定診断のためには脳波検査が必須の検査です。ここでは、救急外来など初療時に有用な検査として「乳酸値」を取り上げておきましょう。乳酸値が上昇する原因として、循環不全や腸管虚血の頻度が高いですが、その際は大抵バイタルサインが不安定なことが多いです。それに対して、意識以外のバイタルサインは安定しているにもかかわらず乳酸値が高い場合には、痙攣が起こったことを示唆すると考えるとよいでしょう。原因にかかわらず、乳酸値が高値を認めた場合には、初療によって改善が認められるか(低下したか)を確認しましょう。痙攣が治まっている場合には30分もすれば数値は正常化します。さいごに痙攣の原因はてんかんとは限りません。脳卒中に代表される急性症候性発作、アルコールやベンゾジアゼピン系などによる離脱、ギンナン摂取なんてこともあります。痙攣を認めたからといって、「てんかんでしょ」と安易に考えずに、きちんと原因検索を忘れないようにしましょう。ここでは詳細を割愛しますが、てんかんを適切に疑うためのポイントは理解しておいてください。本症例では、病歴や経過から痙攣の関与が考えられ、画像診断では陳旧性の脳梗塞所見を認めたことから、症候性てんかん後のpostictal stateであったと判断し対応、その後脳波など精査していく方針としました。次回は「原因が1つとは限らない! 確定診断するまでは安心するな!」を解説します。1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中!. 中外医学社;2015.2)Brigo F, et al. Epilepsy Behav. 2012;25:251-255.3)Brigo F, et al. Seizure. 2013;22:85-90.4)日本てんかん学会ガイドライン作成委員会. 心因性非てんかん性発作に関する診断・治療ガイドライン.てんかん研究. 2009;26:478-482.5)Chung SS, et al. Neurology. 2006;66:1730-1731.

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糖尿病患者への禁煙指導/糖尿病学の進歩

 喫煙は、血糖コントロール悪化や糖尿病発症リスク増加、動脈硬化進展、がんリスク増加などの悪影響を及ぼす。禁煙によりこれらのリスクは低下し、死亡リスクも減少することから禁煙指導は重要である。3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登 洋氏が「喫煙と糖尿病合併症」と題して講演し、喫煙と糖尿病発症・糖尿病合併症・がんとの関連、禁煙指導について紹介した。タバコ1日2箱で糖尿病発症リスクが1.5倍 糖尿病患者の喫煙率は、日本の成人における喫煙率とほぼ同様で、男性が31.9%、女性が8.0%と報告されている。男女ともに30代がピークだという。喫煙は、血糖コントロール悪化、糖尿病発症リスク増加、HDL-コレステロール低下、動脈硬化進展、呼吸機能悪化、がんリスク増加、死亡リスク増加といった悪影響を及ぼす。喫煙による糖尿病発症リスクは用量依存的に増加し、国内の研究では、1日当たり1箱吸う人は1.3倍、2箱吸う人は1.5倍、発症リスクが増加すると報告されている。また、受動喫煙でも同様の影響があり、受動喫煙による糖尿病発症リスクは、国内の研究ではオッズ比が1.8と報告されている。 喫煙による糖尿病発症機序としては、コルチゾールなどのインスリン抵抗性を増やすホルモンの増加や、不健康な生活習慣(過食や運動不足)で内臓脂肪の蓄積を引き起こしインスリン抵抗性が惹起されることが想定されている。さらに、喫煙者は飲酒する傾向があるため、それも発症に関わると考えられる。また喫煙は、脂肪組織から分泌されるサイトカインやリポプロテインリパーゼに影響を与え、糖代謝や脂質代謝にも直接悪影響を与える。さらに、ニコチンそのものがインスリン抵抗性を惹起することが想定されている。禁煙後の糖尿病発症リスクの変化、体重増加の影響は? では、禁煙した場合、糖尿病発症リスクはどう変化するのだろうか。禁煙後半年から数年は、ニコチンによる食欲抑制効果の解除、味覚・嗅覚の改善、胃粘膜微小循環系血行障害の改善により体重が増加することが多く、また数年後には喫煙時の体重に減少することが多い。体重増加は糖尿病のリスクファクターであるため、禁煙直後の体重増加による糖尿病リスクへの影響が考えられる。実際に禁煙後の糖尿病発症リスクを検討した国内外の疫学研究では、禁煙後5年間は、糖尿病発症リスクが1.5倍程度まで上昇するが、10年以上経過するとほぼ同レベルまで戻ることが報告されている。さらに、禁煙後の体重変動と糖尿病発症リスクを検討した研究では、禁煙後に体重が増加しなかった人は糖尿病発症リスクが減少し続け、体重が10kg以上増えた人は5年後に1.8倍となるも、その後リスクが減少して15~30年で非喫煙者と同レベルにまで下がること、また禁煙後の体重増加にかかわらず死亡率が大幅に減少することが示されている。能登氏は「禁煙して数年間は糖尿病が増加するリスクはあるが体重を管理すればそのリスクも減少し、いずれにしても死亡リスクが減少することから、タバコをやめるのに越したことはない。禁煙するように指導することは重要であり、禁煙直後は食事療法や運動療法で体重が増えないように療養指導するべき」と述べた。 喫煙と糖尿病合併症との関連をみると、とくに糖尿病大血管症リスクとの関連が大きい。また、糖尿病によってがんリスクが増加することが報告されているが、喫煙によって喫煙関連がん(膀胱、食道、喉頭、肺、口腔、膵臓がん)の死亡リスクが4倍、なかでも肺がんでは約12倍に増加するため、糖尿病患者による喫煙でがんリスクは一層高まる。また、糖尿病合併症である歯周病、骨折についても喫煙と関連が示されている。禁煙は「一気に」「徐々に」どちらが有効か 禁煙のタイミングについては、喫煙歴が長期間であったとしても、いつやめても遅くはない。禁煙半年後には、循環・呼吸機能の改善、心疾患リスクが減少し、5年後には膀胱がん、食道がん、糖尿病の発症リスクが減少することが示されている。 では、どのような禁煙方法が有効なのだろうか。コクランレビューでは、断煙法(バッサリやめる)と漸減法(徐々にやめる)の成功率に有意差はなかった。短期間(6ヵ月)に限れば断煙法の禁煙継続率が高いという報告があるが、個人差があるため、まず患者さんの希望に合わせた方法を勧め、うまくいかなければ別法を勧めるというのがよいという。代替法としてはニコチンガムやパッチなどがあるが、近年発売された電子タバコ*を用いる方法も出てきている。最近、禁煙支援で電子タバコを使用した場合、ニコチン代替法より禁煙成功率が1.8倍高かったという研究結果が報告された。能登氏は、「煙が出るタバコの代わりに電子タバコを吸い続けるというのは勧めないが、禁煙するときに電子タバコを用いた代替法もいいかもしれない」と評価した。 能登氏は最後に、「糖尿病とがんに関する日本糖尿病学会と日本癌学会による医師・医療者への提言」から、日本人では糖尿病は大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク増加と関連があること、糖尿病やがんリスク減少のために禁煙を推奨すべきであること、糖尿病患者には喫煙の有無にかかわらず、がん検診を受けるように勧めることが重要であることを説明した。がん検診については、聖路加国際病院では患者さんの目につく血圧自動測定器の前に「糖尿病の方へ:がん検診のお勧め」というポスターを貼っていることを紹介し、講演を終えた。*「電子タバコ」は「加熱式タバコ」(iQOS、glo、Ploom TECHなど)とは異なる

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ナッツ摂取、糖尿病患者でCVD・全死亡減:大規模前向きコホート

 心血管疾患(CVD)合併や早期死亡の予防に、ナッツ類(とくに木の実)の摂取を増やすことは、糖尿病診断後いつからでも遅くはないのかもしれない―。これまで、CVDをはじめとした慢性疾患発症に対するナッツ摂取の効果が報告されてきたが、2型糖尿病とすでに診断された患者に対するナッツ摂取の長期的ベネフィットについては、エビデンスが十分ではなかった。米国・ハーバードT.H.Chan公衆衛生大学院のGang Liu氏らが、看護師健康調査(1980~2014年)と医療従事者追跡調査(1986~2014年)の参加者のうち、ベースライン時あるいは追跡期間中に2型糖尿病と診断された1万6,217例について行った試験で明らかにしたもので、Circulation Research誌オンライン版2019年2月19日号で発表した。 本研究は、ナッツ摂取量と冠動脈疾患(CHD)や脳卒中を含むCVDリスク、全死因死亡率と疾患特異的死亡率の関連を調べることを目的として行われた。ナッツ摂取は総量のほか、木の実やピーナッツといった、特定種類の摂取量についても検討された。なお、ナッツ摂取量は食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価され、2~4年ごとに更新された。 主な結果は以下のとおり。・延べ追跡期間は22万3,682~25万4,923人年。その間に3,336例がCVDを発症し、5,682例が死亡した。・総ナッツ摂取量の増加は、CVD発生率および死亡率低下と関連した。・週5サービング(1サービング=28g)以上のナッツ摂取量が多い参加者は、月に1サービング未満の少ない参加者と比較して、総CVD発生率(多変量調整後のハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[95%CI]:0.71~0.98、傾向のp=0.01)、CHD発生率(HR:0.80、95%CI:0.67~0.96、傾向のp=0.005)、CVD死亡率(HR:0.66、95%CI:0.52~0.84、傾向のp<0.001)、全死因死亡率(HR:0.69、95%CI:0.61~0.77、傾向のp<0.001)が低かった。・総ナッツ摂取量は、脳卒中発症やがんによる死亡率と有意な関連はみられなかった。・木の実(クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミア、ヘーゼルナッツなど)の摂取量が多いほど、総CVDおよびCHD発生率、CVDとがんによる死亡率、全死因死亡率が低下していた。一方、ピーナッツ摂取量の増加は、全死因死亡率の低下のみと関連していた(すべて、傾向のp<0.001)。・糖尿病と診断後に総ナッツ摂取量を変えなかった参加者と比較して、診断後に摂取量を増やした参加者は、CVDリスクが11%、CHDリスクが15%低かった。また、CVD死亡率は25%、全死因死亡率は27%低かった。・これらの関連は、性別/コホート、糖尿病診断時のBMI、喫煙状態、糖尿病罹患期間、糖尿病診断前のナッツ摂取量、または食事の質によって層別化されたサブグループ分析においても持続した。■関連記事ナッツを毎日食べる人ほど健康長寿/NEJM本当にナッツが血糖改善するか?

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第12回 毎日簡単! 料理をしないでちょい足し「お手軽タンパク質」【実践型!食事指導スライド】

第12回 毎日簡単! 料理をしないでちょい足し「お手軽タンパク質」医療者向けワンポイント解説日本の総人口1億2,671万人(平成29年10月1日現在)のうち、65歳以上人口は、3,515万人で、総人口の27.7%を占めています。また、65歳以上人口は、平成37年(2025年)には、3,677万人に達し、平成54年(2042年)に3,935万人でピークを迎え、そのあとは減少に転じると推計されています。さらに、平成48年(2036年)には、3人に1人が、平成77年(2065年)には、2.6人に1人が65歳以上の社会になると推測されています*。高齢化に向けて問題になっているのが、サルコペニア、フレイルです。サルコペニアは加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下、フレイルは高齢期におけるさまざまな生理的予備能が低下したことで健康障害が起こりやすい状態のことを示します。サルコペニアは、フレイルの要因の一つでもあり、この状態に繋がる原因として、栄養不良、タンパク質不足などが挙げられます。1日のタンパク質の摂取量について、日本人の食事摂取基準(2015年版・最新版)によると、18〜70歳以上のタンパク質の推奨量は、男性:60g、女性:50gと明記されています。また、平成29年国民健康・栄養調査の結果では、たんぱく質の摂取量は60歳代で最も多いことが明らかになりました。65歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20kg/m2)の割合は、全体:16.4%、男性:12.5%、女性:19.6%であり、ここ10年間での有位な増減は見られません。しかし、人口全体が高齢化に向かっていくことや、年齢と共に食事量が減ること、嗜好によるタンパク質不足、吸収率の低下などを考慮すると、元気なうちからタンパク質を意識することが大切です。今回は、栄養不足の方、高齢者の方が元気に過ごすために、意識してもらいたい「簡単にちょい足しできる調理不要のタンパク質」についてご紹介します。まずは、タンパク質の意識・取り入れ方法について説明します。1)食事にプラスしてタンパク質を意識しようタンパク質の摂取が不足する要因として、a)食事量が少ない b)欠食 c)嗜好がご飯やパン、麺類などの炭水化物に偏る、などがあります。普段からタンパク質が不足しているような患者さんには、『お手軽タンパク質』をプラスして摂取するよう伝えてみましょう。2)調理しなくていい「お手軽タンパク質」を常備しようタンパク質をプラスするには献立に取り入れることも大切ですが、普段から食べているものにプラスする意識を持つと、摂取量を安定的に増やすことができます。ほかの栄養素を合わせて摂るメリットも伝え、常備を心がけてもらいましょう。3)分けて食べようタンパク質は、消化に負担がかかること、エネルギー不足と共に少しずつ分解されていくことをふまえ、まとめて食べるのではなく、こまめに取り入れることがオススメです。三度の食事のほか、間食、飲み物、夜食などに加えると良いでしょう。【調理をしないでとりやすい「お手軽タンパク質」】卵茹でる、炒める、味噌汁に加えるなど、調理が簡単で、手軽に食べられるタンパク質源。アミノ酸バランスも理想的なタンパク質。ツナ缶マグロやカツオの油煮または水煮。米、パン、麺など何にでも相性がよい。サバ缶安くて、栄養価が豊富と大人気のタンパク質源。オメガ3系脂肪酸のDHA、EPAが豊富であり、血管の炎症などを抑える働きがある。イワシ缶サバ缶より脂質が少なく、タンパク質も豊富。サバと同じくDHA、EPAが豊富。納豆低脂肪、発酵食品。腸内環境を整えるほか、骨粗鬆症の予防効果が期待できるビタミンKが豊富に含まれている。チーズおやつとしても手軽に食べられることが魅力的なタンパク質源。豆腐木綿のほうがタンパク質はやや多い。絹ごし豆腐は、コンビニなどでも多く扱っているため購入しやすいタンパク質。低脂肪であり、柔らかい食感は、どの世代にも取り入れやすい。ヨーグルト発酵食品であり、ヨーグルトによって菌の種類、働き、味わいが異なるため、いろいろなヨーグルトで変化をつけられる。間食としても良い。パルメザンチーズチーズの中で一番タンパク質の含有量が高い。パスタや炒め物にかけるだけではなく、味噌汁やサラダなどに簡単に加えることができる。◆きな粉1回に食べられる量は少ないが、大豆の粉なのでタンパク質は豊富。ヨーグルトやアイスなどのデザート類にかけたり、料理に加えても美味しい。*:平成30年版高齢者社会白書

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加糖飲料と人工甘味飲料、認知機能との関連は

 砂糖入り飲料(SSB)および人工甘味料入り飲料(ASB)と認知機能低下との関連について結果が一致していない。ASBはカロリーが低く、砂糖の含有量が抑えられているため、SSBより健康的と思われているが、人工甘味料の摂取が認知症リスクと関連していたという報告もある。今回、スペイン・ナバラ大学のMariana I Munoz-Garcia氏らの縦断的な検討では、SSBの摂取で6年後の認知機能低下と有意に関連がみられたが、ASBでは有意ではなかったことが報告された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2019年2月22日号に掲載。 本研究では、55歳以上の大学卒業生のSeguimiento Universidad de Navarra (SUN)コホートのサブサンプルについて、「認知状態に関するスペイン語での電話インタビュー」(STICS-m)により6年の間隔で2回評価した。SSBとASBの摂取量は、食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価した。心血管代謝変数を含む潜在的な交絡因子を調整し、6年でのSTICS-mスコアの変化を従属変数として線形回帰モデルを当てはめた。 主な結果は以下のとおり。・全サンプルにおいて、SSBの摂取とSTICS-mにより評価された認知機能の変化との間に有意な関連が認められ、1杯/月を超えて摂取していた被験者では、摂取経験なし/ほとんどなしの被験者に比べ、−0.43(95%CI:−0.85~−0.02、p=0.04)の変化がみられた。・ASBの摂取との関連は有意でなかったが、ポイント推定値は認知機能低下を示唆する負の値を示した。

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人生を支配するホルモンとは

 『できる男』と言われて何を思い浮かべるだろうか?年収、地位や名誉、そして女性にモテること…。これらをすべてクリアするには何がカギなのだろうか。2019年2月18日、日本抗加齢医学会が主催するメディアセミナーに、井手 久満氏(獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授)が登壇し、「男性のための理想的なライフスタイル」について講演した。テストステロン値の高い男はなぜ成功するのか 井手氏によると、『できる男』の象徴は、冒頭でも述べた事柄のほか、「スポーツ万能」、「性機能が強い」、「健康寿命が長い」などであり、これらに共通するのがテストステロン値の高さだという。証券会社に勤務するイギリス人男性の年収を比較した研究によると、テストステロンが高い男性の年収は、低い男性と比較して3~5倍も多いことが明らかになった。また、テストステロン量は骨格でも判定が可能で、人指し指より薬指の長い男性で高値ということが、さまざまな人種のデータによって確証を得ている。 テストステロンは、造血作用や男性ホルモンを合成しているとされる海馬での認知機能制御など、多くの作用が報告されている。しかし、個人差や日内変動がとても大きく、ストレスや飲酒などにも左右される物質である。たとえば、恋愛過程でも、デートから真剣交際、婚約から結婚に至る過程で徐々に分泌が減少し、子供が生まれ、添い寝をするなどでも低下することが立証されている。メタボリックシンドロームとテストステロンの低下 近年、男性の更年期が取り沙汰されるようになり、うつとの関連が理解されるようになった。さらには、糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームや心筋梗塞にも影響を及ぼすことが徐々に明らかになってきている。 そこで、同氏は健康な中年男性のメタボリック因子と心血管疾患・心不全との関連について解説。メタボリック因子が多く、テストステロンが低下している症例にテストステロン補充療法を行った症例の体重、HbA1c、収縮期血圧などのデータを示した。「テストステロンの補充によって、それぞれが体重や腹囲の減少、血圧やHbA1cが有意に改善した。さらに骨密度や排尿状態の改善にも効果がある」とする一方で、「補充による有害事象として、多血症、睡眠時無呼吸症候群、肝障害、不妊症などが挙げられるので注意が必要」と、コメントした。アプリを活用した対策 テストステロンの管理にはメタボリックシンドローム予防が重要であることから、医療機関を介した食管理システム(ヘルスログ)の開発が進められている。患者には、活動量をチェックするためのUP2(ブレスレット型装置)を身に付けてもらい、日々の食事記録をスマートフォンで記録。写真から摂取カロリーが計算される。将来的にはLINEを活用することで、共有した情報を基に管理栄養士から食事アドバイスも受けられるようになるという。 このような背景を踏まえ、まずは、「自身によってテストステロンを低下させるリスク因子(喫煙や肥満)を理解し、リスク因子を排除することが大切である」と、同氏は締めくくった。(ケアネット 土井 舞子)■参考日本抗加齢医学会■関連記事うつ病や身体活動と精液の質との関連テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMA

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C型肝炎へのDAA、実臨床での有効性を前向き調査/Lancet

 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療に広範に使用されてきたが、その実臨床における有効性の報告は十分でなく、投与例と非投与例を比較した調査はほとんどないという。今回、フランス・ソルボンヌ大学のFabrice Carrat氏らの前向き調査(French ANRS CO22 Hepather cohort研究)により、DAAは慢性C型肝炎による死亡および肝細胞がんのリスクを低減することが確認された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年2月11日号に掲載された。ウイルス蛋白を標的とするDAA(NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬、NS5A複製複合体阻害薬)の2剤または3剤併用療法は、HCV感染に対し汎遺伝子型の有効性を示し、95%を超える持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成している。DAAの有無でアウトカムを比較するフランスの前向きコホート研究 研究グループは、DAA治療を受けた患者と受けていない患者で、死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生率を比較するコホート研究を実施した(INSERM-ANRS[France Recherche Nord & Sud Sida-HIV Hepatites]などの助成による)。 フランスの32の肝臓病専門施設で、HCV感染成人患者を前向きに登録した。慢性B型肝炎患者、非代償性肝硬変・肝細胞がん・肝移植の既往歴のある患者、第1世代プロテアーゼ阻害薬の有無にかかわらずインターフェロン-リバビリン治療を受けた患者は除外された。 試験の主要アウトカムは、全死因死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生の複合とした。時間依存型Cox比例ハザードモデルを用いて、DAAとこれらアウトカムの関連を定量化した。 2012年8月~2015年12月の期間に、1万166例が登録された。このうちフォローアップ情報が得られた9,895例(97%)が解析に含まれた。全体の年齢中央値は56.0歳(IQR:50.0~64.0)で、53%が男性であった。補正前は高リスク、多変量で補正後は有意にリスク低下 フォローアップ期間中に7,344例がDAA治療を開始し、これらの患者のフォローアップ期間中央値(未治療+治療期間)は33.4ヵ月(IQR:24.0~40.7)であった。2,551例は、最終受診時にもDAA治療を受けておらず、フォローアップ期間中央値は31.2ヵ月(IQR:21.5~41.0)だった。 DAA治療群は非治療群に比べ、年齢が高く、男性が多く、BMIが高値で、過量アルコール摂取歴のある患者が多かった。また、DAA治療群は、肝疾患や他の併存疾患の重症度が高かった。さらに、DAA治療群は、HCV感染の診断後の期間が長く、肝硬変への罹患、HCV治療中、ゲノタイプ3型の患者が多かった。 試験期間中に218例(DAA治療群:129例、DAA非治療群:89例)が死亡し、このうち73例(48例、25例)が肝臓関連死、114例(61例、53例)は非肝臓関連死で、31例(20例、11例)は分類不能であった。258例(187例、71例)が肝細胞がん、106例(74例、32例)が非代償性肝硬変を発症した。25例が肝移植を受けた。 未補正では、DAA治療群のほうが非治療群に比べ、肝細胞がん(未補正ハザード比[HR]:2.77、95%信頼区間[CI]:2.07~3.71、p<0.0001)および非代償性肝硬変(3.83、2.29~6.42、p<0.0001)のリスクが有意に高かった。 これに対し、年齢、性別、BMI、地理的発生源、感染経路、肝線維化スコア(fibrosis score)、HCV未治療、HCVゲノタイプ、アルコール摂取、糖尿病、動脈性高血圧、生物学的変量(アルブミン、AST、ALT、ヘモグロビン、プロトロンビン時間、血小板数、α-フェトプロテイン)、肝硬変患者の末期肝疾患モデル(MELD)スコアで補正したところ、DAA治療群では非治療群と比較して、全死因死亡(補正後HR:0.48、95%CI:0.33~0.70、p=0.0001)および肝細胞がん(0.66、0.46~0.93、p=0.018)のリスクが有意に低下し、未補正での非代償性肝硬変のリスクの有意差は消失した(1.14、0.57~2.27、p=0.72)。 また、全死因死亡のうち、肝臓関連死(0.39、0.21~0.71、p=0.0020)と非肝臓関連死(0.60、0.36~1.00、p=0.048)のリスクは、いずれもDAA治療群で有意に低かった。 著者は、「DAA治療は、あらゆるC型肝炎患者において考慮すべきである」と結論し、「今回の結果は、重症度の低い患者へフォローアップの対象を拡大し、DAAの長期的な臨床効果の評価を行うことを支持するものである」としている。

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糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明~国立国際医療研究センター

 肝臓での代謝は絶食時と摂食時で大きく変化するが、その生理的意義や調節機構、またその破綻がどのように種々の疾患の病態形成に寄与するのか、これまで十分解明されていなかった。今回、東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座 特任助教 笹子 敬洋氏、同糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授 門脇 孝氏、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター センター長 植木 浩二郎氏らのグループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、食事で発現誘導されるSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにした。2月27日、国立国際医療研究センターが発表した。Nature Communications誌に掲載予定。 同グループはまず、マウスの実験で、摂食によって肝臓で小胞体ストレスが一時的に惹起されることを見いだした。また、複数の小胞体ストレス関連遺伝子の中でも、とくにSdf2l1遺伝子の発現が大きく上昇していた。Sdf2l1は小胞体ストレスに応答して転写レベルで誘導を受けるが、その発現を低下させると小胞体ストレスが過剰となり、インスリン抵抗性や脂肪肝が生じた。また、肥満・糖尿病のモデルマウスでは Sdf2l1の発現誘導が低下していたが、発現を補充するとインスリン抵抗性や脂肪肝が改善した。加えてヒトの糖尿病症例の肝臓において、Sdf2l1の発現誘導の低下がインスリン抵抗性や脂肪性肝炎の病期の進行と相関することが示された。 これらの結果から、摂食に伴う小胞体ストレスに対する適切な応答が重要であるとともに、その応答不全が糖尿病・脂肪性肝炎の原因となることが示された。今後は、Sdf2l1が糖尿病・脂肪性肝炎の治療標的となること、その発現量が良いバイオマーカーとなることが期待されるという。■参考国立国際医療研究センター プレスリリース

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中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。 現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。 対象は40歳以上の利用者(46例)と非利用者(184例)で、性別、年齢、およびPAレベルをマッチさせた。参加者は、無作為に送られたアンケートに答えた横浜市民で、市から無料の歩数計が与えられた。また、プレイ状況はアンケートを通じて確認し、プレイ状況によるポケモンGO発売前後の歩数変化は、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)で調査。ゲーム発売前の1ヵ月間の歩数と発売8ヵ月後の歩数を比較した。さらに、性別、年齢、PAレベル、およびsubjective health statusに応じたサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・利用者と非利用者の平均年齢±SDは、それぞれ56.5±9.9歳、57.3±9.6歳だった。・利用者と非利用者のベースラインの平均歩数±SDは、それぞれ7,641.8±2,754.5歩、7,903.3±2,674.7歩だった。・両側検定によると、ベースラインの歩数には、年齢で有意差はなかった。・すべての対象を分析したところ、プレイ状況と時間による相互作用は、発売後8ヵ月のうち3ヵ月間で有意だった。・サブグループ解析の結果、相互作用はそれぞれ有意(男性:3ヵ月間、55~64歳のグループ:7ヵ月間、労働者:2ヵ月間、PAレベルが活発なグループ:4ヵ月間、主観的に健康な参加者:2ヵ月間)で、利用者は55歳未満の男性、労働者、活動的、そして主観的に健康である可能性がより高かった。・ほかのサブグループで相互作用が有意であったのは、たった1ヵ月間だった。・利用者群は冬季の間でも歩数を維持したが、非利用者では歩数は減少した。

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非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。 著者らは、Bypass Angioplasty Revascularization Investigation in type 2 Diabetes(BARI 2D)試験データを用いて、CADを有する2型糖尿病患者におけるアウトカムイベントについて、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した。また、BARI 2D試験の無作為化デザインを用いて、非肥満(1,021例)および肥満(1,319例)の患者それぞれにおいてIP群とIS群を比較した。主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を含む複合評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、非肥満患者231例と肥満患者295例で少なくとも1件の主要アウトカムイベントが確認された。・主要アウトカムイベントのリスクは、非肥満患者ではIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.30、95%CI:1.00~1.68、p=0.04)が、肥満患者では2群間に有意な差はなかった。・非肥満患者において、腹部肥満のない患者に限定しても主要アウトカムイベントのリスクはIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.51、95%CI:1.05~2.19、p=0.02)。・血糖コントロール戦略と非肥満患者のさまざまなサブグループとの間に有意な交互作用はみられなかった。

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第8回 呼吸の異常-1 頻呼吸の原因は?【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は呼吸の異常について取り上げたいと思います。前回お話しした救急のABCを覚えていますか?「気道(Airway)」「呼吸(Breathing)」「循環(Circulation)」でしたね。呼吸の異常に関係するAとBは、バイタルサインでいうと呼吸数です。患者さんを観察し、バイタルサインを評価することによって、気道・呼吸・循環の状態を考え、急を要するか否かを考えてみましょう。患者さんAの場合◎経過──186歳、男性。脳梗塞の既往があります。意思疎通をとることはできますが、左半身の不完全麻痺があり、ベッド上で過ごすことがほとんどです。全介助によって車いすに移乗できます。食事は、お粥と細かくきざんだ軟らかいおかずを何とか自分で食べることができますが、1か月ほど前から介助を必要とすることが多くなってきました。本日、定期の訪問日だったため、薬剤師であるあなたが患者さん宅を訪れると、「ハァハァ」と呼吸が速く、息苦しそうにしていることに気が付きました。家族(妻)から、「調子が悪そうなんですけど、お医者さんに行った方がよいでしょうか...」と相談されました。呼吸の調節さて、呼吸が速いことに気がついたあなたは、呼吸数が増加する原因を考えました。頻呼吸となる原因はいくつかあります。原因1●血液中の酸素濃度が低下、または二酸化炭素濃度が上昇したとき空気の通る気道に異常(気道異物や急性喉頭蓋炎※1など)を来したり、肺に異常(肺炎や心不全など)があると、酸素が取り込めなくなったり二酸化炭素を排出できなくなったりします。血液中の酸素濃度が低下すると、頸動脈や大動脈にある末梢化学受容器(頸動脈小体、大動脈小体)〈図1〉が刺激されます。一方、二酸化炭素濃度が上昇した時は、脳幹(延髄)にある中枢化学受容器が刺激されます。どちらも、頻呼吸となったり1回の呼吸が大きくなったりします。また、呼吸をしようとしても神経や筋の疾患(ギランバレー症候群※2や重症筋無力症、頸髄損傷など)のために、十分に胸が動かない状態でも同様です。原因2●代謝性アシドーシス腎不全などにより血液が酸性に傾いた状態を代謝性アシドーシスと言います。呼吸をすることによって、酸性の状態から正常のpHに戻そうとします。糖尿病性ケトアシドーシス※3が有名です。原因3●過換気症候群※4、ヒステリーなど精神的な問題でも呼吸が速くなります。※1 急性喉頭蓋炎細菌感染により喉頭蓋に炎症を起こす疾患。初発症状は発熱や喉の痛みだが、喉頭蓋が腫れるため気道狭窄を起こし、喘鳴や呼吸困難が現れることがある。※2 ギランバレー症候群筋肉を動かす運動神経の障害のため、手足に力が入らなくなる疾患。重症の場合には中枢神経障害性の呼吸不全が現れる。※3 糖尿病性ケトアシドーシス1型糖尿病患者ではインスリンが欠乏し、細胞は血液中からブドウ糖を取り込むことができない。そのため、脂肪酸からエネルギーを産生する。特にインスリンが絶対的に欠乏した場合(1型糖尿病発症時、インスリンの自己注射を中断した時など)は、脂肪酸代謝が亢進するためケトン体が生合成される。このケトン体により血液が酸性に傾く状態を糖尿病性ケトアシドーシスと呼ぶ。口渇、多尿、悪心・嘔吐、腹痛を引き起こし、脳浮腫、昏睡、死亡に至る場合もある。※4 過換気症候群心理的な原因により過呼吸(深く速い呼吸)となり、血液がアルカリ性に傾く。このため、眩暈、手足のしびれ、時には痙攣や意識障害が現れる。

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インスリン治療、認知症リスクに関連か

 糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。 本研究では、フラミンガム心臓研究、ロッテルダム研究、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究、Aging Gene-Environment Susceptibility-Reykjavik Study(AGES)およびSacramento Area Latino Study on Aging (SALSA)の5つの集団ベースのコホートの結果を統合した。各コホートにおけるインスリン、メトホルミン、SU類の使用者と非使用者との差について、認知および脳MRIを線形回帰モデルで、また認知低下および認知症/アルツハイマー病リスクを混合効果モデルおよびCox回帰分析を用いて、それぞれ評価した。結果はメタ解析手法を用いて統合され、前向き解析には糖尿病患者3,590例が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・血糖コントロール指標を含む潜在的な交絡因子を調整後、インスリン使用が、認知症発症リスクの増加(pooled HR(95%CI):1.58(1.18~2.12)、p=0.002)および全般的認知機能の大きな低下(β=−0.014±0.007、p=0.045)と関連していた。さらに腎機能を調整し、生活習慣の改善のみで治療された糖尿病患者を除いても、認知症発症との関連は変わらなかった。・インスリン使用とアルツハイマー病リスクとの間に有意な関連はみられなかった。・インスリン使用は認知機能および脳MRIに関連していなかった。・メトホルミンやSU類の使用と、脳機能および構造のアウトカムとの間に、有意な関連はみられなかった。・コホート間に有意な異質性は示されなかった。

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