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成人の8割が感染、歯周病予防に効く「ロイテリ菌」とは

 5月30日、オハヨー乳業・オハヨーバイオテクノロジーズは「歯周病への新たな良化習慣」をテーマとしたプレスセミナーを開催した。国内の歯周病(歯肉炎および歯周疾患)患者数は330万人を超え、30~50代の約8割が罹患するなど、最も罹患率の高い疾患とされる。本セミナーでは、若林 健史氏(日本歯周病学会理事・専門医・指導医/日本大学 客員教授)と坂本 紗有見氏(銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81 院長)が講演し、ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)の「バクテリアセラピー」によって歯周病予防効果が期待できる、との研究内容を発表した。歯磨き・歯科検診に続く予防策「バクテリアセラピー」 歯周病の治療を専門とする若林氏は、口腔内に生息する細菌が全身の健康に影響する、歯周病もむし歯も子供の頃からの感染予防が重要、という前提を説明した。また、最近の研究では、歯周炎によってアルツハイマーの発症リスク増加の示唆1)や介護施設で口腔ケアを徹底することで肺炎の発症・死亡者数が低下する報告2)がされるなど、「口腔内だけに留まらない疾患との関連性も指摘されている」とした。若林氏はこうした歯周病と全身疾患の関わりを「ペリオドンタルシンドローム」と名付け、啓蒙活動を行っている。次に、歯磨き・歯科定期検診に続く第3の歯周病予防策として注目される手法として「バクテリアセラピー」を紹介。バクテリアセラピーとは、“口の中にいる善玉菌を増やし、むし歯菌・歯周病菌を減らす”もので、抗菌薬による薬物治療と比較した場合、1)効果が持続する、2)耐性フリー、3)安全である、という優位点があるという。「ロイテリ菌」の歯周病予防効果に着目 続いて坂本氏が、「バクテリアセラピーにはロイテリ菌が有用である」と提唱。ロイテリ菌は、バクテリアセラピー研究で有名なスウェーデンのカロリンスカ研究所・医科大学と特許を持つBio Gaia社が、提携して研究を進めている。ロイテリ菌は1980年代にペルー人の母乳から発見されたもので、日本人は7人に1人が保有するが、そのほかの先進国のヒトから検出されることは少なく、米国人はまったく保有していない。世界100以上の国と地域で使用実績があり、200以上の臨床研究が発表される一方、副作用の報告は1件もないという。ロイテリ菌は体内で「ロイテリン」という有害な菌を抑える物質を生成し、歯周病菌の増殖を抑制する効果が期待できる。歯周病患者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験において、ロイテリ菌とプラセボをそれぞれ30日間摂取した群を比較したところ、ロイテリ菌摂取群は、プラーク有りの患者数、歯茎の出血有りの患者数などが減少し、プラセボ摂取群に対し有意差が認められた3)。坂本氏は「安全性が高く、データも豊富なロイテリ菌を長年注目してきた。日本は平均寿命と健康寿命の差が最も大きい国。バクテリアセラピーで歯周病を予防することが、この差を縮めることに役立つはず」とコメントした。 ロイテリ菌関連商品としては、ヨーグルト・サプリメントが市販されている。

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1型糖尿病治療におけるSGLT1/2阻害薬sotagliflozinの可能性(解説:住谷哲氏)-1061

 インスリン非依存性に血糖降下作用を発揮するSGLT2阻害薬が、インスリン分泌不全が主病態である1型糖尿病患者の血糖コントロールに有効であることは理解しやすい。わが国ではイプラグリフロジンが最初に1型糖尿病患者に対する適応を取得し、次いでダパグリフロジンも1型糖尿病患者に対して使用可能となった。SGLT2阻害薬は近位尿細管に存在するSGLT2を特異的に阻害することによって尿糖排出を増加する。それとは異なりsotagliflozinはSGLT2のみならず腸管に存在するSGLT1も阻害するdual inhibitorであり、尿糖排泄に加えて腸管からのグルコース吸収をも阻害する。 本論文は、これまでに実施された1型糖尿病患者におけるsotagliflozinの有効性を検討した6つのRCT(3,238例)のメタ解析である。有効性の指標としてはHbA1c、空腹時血糖、各種CGMパラメータ、インスリン投与量、重症低血糖、体重などが検討された。有害事象としてはDKA、性器感染症、尿路感染症、下痢、体液量減少イベントなどが評価された。その結果はSGLT2阻害薬のダパグリフロジンを用いたDEPICT-1試験とほぼ同様であったが1)、注目すべきは、低血糖(-9.09イベント/人年、95%CI:-13.82~-4.36)および重症低血糖(相対リスク[RR]:0.69、95%CI:0.49~0.98)のリスクがsotagliflozinの投与により減少した点である。DKAとりわけeuglycemic DKAがSGLT2阻害薬を併用した1型糖尿病患者で懸念されるが、sotagliflozin投与によるDKAのリスクは治療開始時のHbA1cおよび基礎インスリン量の減少量と関連していることが明らかとなった。 SGLT2阻害薬のメタ解析ではSGLT2阻害薬の投与により重症低血糖の頻度は減少しないと報告されている2)。これはsotagliflozinのSGLT1阻害作用により食後血糖上昇が抑制され、それが追加インスリン量の減少につながった結果ではないかと推測される。低血糖に対する懸念から血糖コントロールが不十分なまま経過している1型糖尿病患者は少なくない。HbA1cの低下、インスリン投与量の減少、体重減少、重症低血糖リスクの減少が期待できるSGLT1/2阻害薬sotagliflozinは、1型糖尿病治療におけるunmet needsに応える新たな血糖降下薬となるかもしれない。

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脳心血管病予防策は40歳からと心得るべき/脳心血管病協議会

 日本動脈硬化学会を含む16学会で作成した『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019』が日本内科学会雑誌第108巻第5号において発表された。2015年に初版が発行されてから4年ぶりの改訂となる今回のリスク管理チャートには、日本動脈硬化学会を含む14学会における最新版のガイドラインが反映されている。この改訂にあたり、2019年5月26日、寺本 民生氏(帝京大学理事・臨床研究センター長)と神崎 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学 教授)が主な改訂ポイントを講演した(脳心血管病協議会主催)。脳心血管病予防が今後はますます求められる  2018年12月、「健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立した。2015年度国民医療費1)は42兆円を超え、内訳を見ると循環器疾患に対する医療費は全体の19.9%(5兆9,818億円)、次いで、悪性新生物が13.7%(4兆1,257億円)を占めていた。近年では医療の発展に伴い、病態の発症から死亡に至るまでの期間が伸びているものの、平均寿命と健康寿命の差はまだ大きい。死亡までに介護が必要となった主たる原因も、認知症を上回り、脳血管疾患が1位にランクインしている2)。このように、そのほか問題視されている肥満、糖尿病、喫煙などの現状を踏まえると、今後ますます、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの活用が求められるようになる。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象 厚生労働省による“人生100年時代構想”や高齢者のフレイル・介護問題を受け、今回の改訂でも高齢者の留意点が多く盛り込まれた。健康寿命を伸ばして要介護期間を短くする、つまり“不健康な期間”を短縮することがわれわれの使命、と考える両氏。神崎氏は、「65歳以上になってから努力するのではなく、中年期から努力することが健康寿命を延ばすためには必要。高齢者の場合は生活習慣病を管理しながら、多病に基づくポリファーマシーやサルコペニア/フレイルの発生にも注意する必要がある」とし、寺本氏は「高血圧などの危険因子を持たない段階での予防(0次予防)の患者に啓発することが重要」と、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象者について言及。また、寺本氏は「定期的にチェックするために誕生日月に実施するのが有用。その旨を事前に患者に伝えておくと、患者自身も覚えている」と活用時期やその方法についてコメントした。脳心血管病リスクの管理状態の評価ツールとして活用可能 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、臨床現場で使用しやすいようにStep1~6までの順に従って診断・診療できるように設計されている。また、健康診断などで偶発的に脳心血管病リスクを指摘されて来院する患者を主な対象者とし、既に加療中の患者に対しても、管理状態の評価ツールとして活用可能になるようにも作成されている。 以下に脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート各Stepにおける留意点を示す。◆Step1:スクリーニングと専門医等への紹介の必要性の判断基準a~cに分類。aでは家族歴や脈拍について重視、bの場合は空腹時血糖の測定が必要になるため、空腹時での来院を求める必要がある。また、アルドステロン症の見落としが散見されるため、この段階でしっかりチェックする必要がある。cでは、各専門医への紹介の必要性がある対象者を明確にしている。また、慢性腎臓病(CKD)の記載方法が変更している。◆Step2:各リスク因子の診断と追加評価項目脳心血管病の各リスク因子の診断と追加評価項目は各学会のガイドラインに準拠。◆Step3:治療開始前に確認すべきリスク因子喫煙リスクがある患者での禁煙指導が重要で、1回/年の確認が鍵となる。また、個々の病態に応じた管理目標について高齢者について加味している点がポイント。◆Step4:リスクと個々の病態に応じた管理目標の設定改訂前はリスク層別にNIPPON DATA80を使用していたが、今回は「吹田スコア」の使用を推奨。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートには危険因子を用いた簡易版が載っているので、それを基にリスクスコアを算出することが可能。◆Step5:生活習慣の改善食事摂取量は、日本人の食事摂取基準を参考にし、これまでのkcal重視からBMI重視に変更。身体活動を患者と共有できるよう詳細に記述。◆Step6:薬物療法の紹介と留意点実際の薬物療法については各疾患のガイドラインに従い、導入前には生活習慣の改善を基盤に患者とのコンセンサスを得ることが重要。 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、5年に1回のタイミングで更新を目指しており、大きな改訂はできなくとも各学会で改訂事項が発表された際には、それらを脳心血管病協議会で話し合い、対策を講じるという。最後に寺本氏は「このような類いの包括的な管理チャートは海外では作成されておらず、世界に一歩先立った活動である」と締めくくった。■「日本人の食事摂取基準」関連記事日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

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2型糖尿病への強化療法vs.標準療法、15年追跡結果/NEJM

 2型糖尿病の患者に対する強化血糖コントロールを中央値5.6年間行い、合計で15年間追跡したところ、標準療法を受けて追跡を受けた参加者と比べて、主要心血管イベントリスクは、両群の糖化ヘモグロビン値曲線の分離が持続していた期間(オリジナル試験中の中央値約7.1年間)に限り有意な低下が認められ、強化血糖コントロールの遺産効果(legacy effect)や死亡率への有益性を示す知見は認められなかったことが明らかにされた。米国・フェニックス退役軍人(VA)ヘルスケアシステムのPeter D. Reaven氏らによる検討で、NEJM誌2019年6月6日号で発表された。同試験のオリジナルの介入・観察試験(合計10年間追跡)では、強化血糖コントロール群の同リスクが有意に17%低下したことが報告されていた。通算15年追跡し、主要心血管イベントリスクを比較 オリジナル試験では、2型糖尿病の退役軍人1,791例を対象に中央値5.6年間の強化血糖コントロール(介入群)vs.標準療法(対照群)で比較する試験を行い、合計10年間追跡した。試験終了後、登録被験者(完全コホート1,655例)について、中央データベースを用いて心血管イベント、入院、死亡を特定しながら観察を継続。さらに同意を得た被験者(調査コホート1,391例)について、調査とカルテレビューによる追加データの提供を受けて分析を行った。 事前規定の主要アウトカムは、主要心血管イベントの複合(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、うっ血性心不全の新規発症または悪化、虚血性壊疽による切断、心血管死)だった。副次アウトカムは、全死因死亡とした。糖化ヘモグロビン値曲線の分離持続期間のみCVイベントリスクが有意に低下 オリジナル試験(1,791例を対象)の期間中、強化血糖コントロール群(892例)と標準療法群(899例)では、糖化ヘモグロビン値曲線に平均1.5ポイントの差が認められた。しかし、同差は試験終了後3年間で0.2~0.3ポイントまで縮小した。 合計15年の追跡期間において、強化血糖コントロール群の主要心血管イベントリスクの有意な低下は認められなかった(ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、p=0.23)。また、副次アウトカムの全死因死亡リスクについても、低下は認められなかった(同:1.02、0.88~1.18)。 ただし、糖化ヘモグロビン値曲線の分離が持続している間(オリジナル試験中の中央値約7.1年間)は、強化血糖コントロール群の主要心血管イベントリスクの低下が認められた(HR:0.83、95%CI:0.70~0.99)。しかし、そのベネフィットは持続せず、同値が等しくなった後は同リスクの低下は認められなかった(同:1.26、0.90~1.75)。

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第23回 心肺停止の症例から考えるバイタルサイン1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

最終回は「心肺停止」の症例です。文字通り、心臓と肺の機能が停止した(心停止・呼吸停止)状態です。病院の救急外来には心肺停止の患者さんが搬送されてくることがありますが、搬送される前の状態を思い浮かべてください。もしも人が倒れたその時、その場所にあなたが居合わせたら...。もしもその人があなたの大切な人だったら...。そんなことを想像しながら読んでみてくださいね。プロローグ「最近、私の行く先々で患者さんの具合が悪くなるわ...」そう思っていた薬剤師のあなたは先日、近隣の消防署で心肺蘇生法の講習会を受けてきました。さて、今日はお母さんと一緒にレストランに来ています。「ここのパスタ、おいしいのよ」 「へぇ!そうなの?」と、お母さんは喜んでくれています。「お母さん、最近調子はどう?」お母さんは数年前から高血圧で降圧薬を内服しています。さらに1年位前の血液検査で糖尿病と診断され、糖尿病治療薬が追加となり、真面目なお母さんは大好きなおまんじゅうやおせんべいをきっぱりやめて食事療法に取り組んでいます。「間食しないように気を付けているわよ。おじいちゃん(お母さんの父親)は心臓病で亡くなったから、私も気を付けないとね。でも、たまには外食もいいわね」患者さんIの場合◎経過──1ミートソースとカルボナーラを注文してトイレに行って戻ってきたあなたは、お母さんの具合が悪そうなのに気が付きました。顔色が悪く、ジトッと汗をかいています。「どうしたの?」 「ちょっと胸のあたりがね...」 「大丈夫?帰って休む?」そう尋ねると、「うぅぅ...」 「え?ちょっと...」お母さんは突然崩れ落ち、 椅子から横に倒れました。すると、「どうされました!?」すぐに店員さんが気付き、近寄ってきました。倒れたお母さんを見た店員さんは「大丈夫ですか!?」と叫びますが返事はありません。「え?え?」あなたの頭の中は真っ白になっています。◎経過──2「だれか!救急車呼んで!」 その若い店員さんは叫びました。近づいてきた他の店員さんには、「向かいにある駅にAED(自動体外式除細動器)が置いてあったと思う。借りてきて!」と言いました。レジ付近の店員さんは119番通報しているようです。「大丈夫ですか?」 お母さんに向かって再度そう言いますが反応がありません。右手はそっとお母さんの首を触れています。そしてあなたに、「ご家族の方ですか?」 あなたの頭は真っ白なままです。「え?ええ。...、今、急に倒れてしまって...」 うまく言葉が出ません。「救急車は呼んでもらいました。意識がないようですが...」目の前に倒れたお母さんは呼吸をしていないように見えました〈表1〉。「心臓マッサージ...、しなきゃ!」 そうつぶやくと、店員さんが心臓マッサージを開始しました。その時ハッとあなたの頭に先日の心肺蘇生法の講習会の光景が思い浮かびました。あなたは少しずつ周りの状況が見えるようになってきました。心肺停止、そして心肺蘇生と一次救命処置「心肺停止である」と判断されるのは、(1)意識がなく、(2)呼吸しておらず(または通常の呼吸をしていない状態、あえぎ呼吸とか死戦期呼吸と言われます)、(3)脈が触れない時です。どんな医療機器もいりません。私たちの五感で心肺停止であることを判断するのです。読者のみなさんは血圧計などの機器を用いてバイタルサインをチェックできるだけでなく、患者さんの状態を五感で感じとることができますね。心肺停止であると判断したら、大声で叫び応援を求め、救急車を呼んで、AEDを依頼して直ちに心肺蘇生を開始します。胸骨圧迫や人工呼吸を行うことを「心肺蘇生」と言い、心肺蘇生・AEDを用いた除細動・気道異物除去の3つをあわせて「一次救命処置」といいます〈図1〉。図2に主に市民が行う一次救命処置の手順を示します。

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超加工食品の高摂取で死亡リスク増大/BMJ

 超加工食品を1日4サービング以上摂取すると、死亡のハザードが相対的に62%増加し、1日1サービング増えるごとに死亡リスクが18%増加することが、スペイン・ナバラ大学のAnais Rico-Campa氏らの調査で示された。研究の成果はBMJ誌2019年5月29日号に掲載された。既報の成人を対象とした前向きコホート研究により、超加工食品の摂取は、がん、過敏性腸症候群、肥満、高血圧のハザードの上昇と関連することが知られている。約2万例を2年ごとに観察 研究グループは、超加工食品の摂取と全死因死亡の関連を評価する目的で、前向きコホート研究を行った(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成による)。 解析には、スペインの大学卒業生が登録されたSeguimiento Universidad de Navarra(SUN)の1999~2018年のデータを用いた。1999~2014年の期間に、20~91歳の1万9,899例を2年ごとにフォローアップした。食品と飲料の摂取状況を、NOVA分類による加工の程度で分類し、妥当性が確認された136項目の食品頻度質問票を用いて評価した。 主要アウトカムは、4段階の超加工食品の1日摂取量(低[<2サービング/日]、低~中[2~<3サービング/日]、中~高[3~≦4サービング/日]、高[>4サービング/日])で調整したエネルギー消費量と全死因死亡の関連とし、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。加工肉と砂糖入り飲料が最も多い 1万9,899例のうち、女性が1万2,113例、男性は7,786例で、ベースラインの全体の平均年齢は37.6(SD 12.3)歳、フォローアップ期間中央値は10.4年であった。観察人年20万432人年に、335例が死亡した(がん死164例、心血管死71例)。 超加工食品の平均1日摂取量は、低摂取群(4,975例)が1.4(SD 0.8)サービング、低~中摂取群(4,975例)が2.7(0.2)サービング、中~高摂取群(4,975例)が3.5(0.3)サービング、高摂取群(4,974例)は5.3(1.4)サービングであった。 高摂取群は平均BMI(23.8)が高かった。また、高摂取群は低摂取群と比較して、現喫煙者が多く、大学教育レベルが高く(大学院、博士号取得者が多い)、心血管疾患・がん・糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・うつ病の家族歴を持つ者が多かった。 高摂取群は低摂取群に比べ、間食や1日3時間以上のテレビ視聴の割合が高く、1日のコンピュータ使用時間や昼寝の時間が長く(座位行動が多い傾向)、総脂肪摂取が多く、タンパク質や炭水化物の摂取は少なかった。高摂取群は他の群に比し、ファストフード、揚げ物、加工肉、砂糖入り飲料の摂取量が多く、野菜、果物、オリーブ油、アルコール飲料、総食物繊維の摂取量が少なかった。超加工食品の摂取量が多くなるほど、地中海食のアドヒアランス・スコア(0~9点、点数が高いほど伝統的地中海食へのアドヒアランスが高い)が低下した。 超加工食品のうち、最も多かったのは加工肉(15%、ハム、ソーセージ、チョリソ、サラミ、モルタデッラ、ハンバーガーを含む)と砂糖入り飲料(15%)で、次いで乳製品(12%、カスタード、アイスクリーム、ミルクシェイク、プチスイスを含む)、フレンチフライ(11%)、ペストリー(10%、マフィン、ドーナツ、クロワッサンや他の非手作りペストリー、菓子類を含む)、クッキー(8%、ビスケット、チョコレートクッキーを含む)の順であった。 超加工食品の高摂取群は低摂取群に比べ、全死因死亡のハザードが62%有意に高く(多変量で補正後のハザード比[HR]:1.62、95%信頼区間[CI]:1.13~2.33)、有意な用量反応関係が認められた(線形傾向のp=0.005)。がん死(1.22、0.70~2.12、p=0.42)および心血管死(2.16、0.92~5.06、p=0.11)には有意差はなかった。また、超加工食品が1サービング増えるごとに、全死因死亡が相対的に18%有意に増加した(補正後HR:1.18、95%CI:1.05~1.33)。 著者は、「超加工食品の摂取を抑制し、製品への課税や売買制限を目標とし、新鮮な最小限の加工食品(地中海食の重要な側面)の摂取を促進することは、世界の公衆衛生の改善において重要な健康施策の一環と考えるべきである」としている。

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肝性脳症〔Hepatic encephalopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義意識障害には脳機能障害以外に多くの原因があるが、肝機能低下に伴う意識障害が肝性脳症とされている。肝性脳症は多くの場合、肝硬変や劇症肝炎患者などの肝障害が進行した状況において発生する。傾眠傾向といった軽度のものから、重度の深昏睡に至るまで多様な精神神経症状を来す合併症で、肝不全の特徴的徴候の1つである。顕性肝性脳症の臨床病型は急性型、慢性型、および先天性尿素サイクル異常症など代謝異常に伴う特殊型に大別される。また、顕性の意識障害はないが、精神神経機能検査で異常を認める状態を「ミニマル脳症」と呼ぶ。■ 疫学わが国では数十万人の肝硬変患者が存在するとされており、病状の悪化に伴い、いずれの患者においても肝性脳症を発症しうる。ミニマル脳症については、肝硬変患者の1/3が有しているとの報告もあり、ミニマル脳症患者のうち約20%が半年以内に顕性脳症に移行するとされている。急性型の劇症肝炎の発症数は減少しているものの、肝硬変を基礎疾患として急性増悪を来す“Acute-on chronic liver failure(ACLF)”がアルコールを原因とするものとして近年増加している。■ 病因急性型では劇症肝炎が代表的原因である。先行する慢性肝疾患が存在しない患者において、さまざまな原因により広範な肝細胞壊死を来し肝不全に至る。以前はB型肝炎ウイルスによるものが多かったが、近年は減少傾向にある。最近では肝硬変などの慢性肝疾患が急性増悪して、急激に肝不全症状を呈した場合を“Acute on chronic”と呼ぶことが提唱されている。慢性型では肝硬変によるものが臨床的に最も多い。肝硬変では、門脈大循環短絡路を形成していることが多く、その程度により治療反応性と予後が異なることから、短絡路の評価を行ったうえで治療法を決定する。頻度は高くないものの、先天性尿素サイクル異常症も、念頭において診療に当たることが必要である。アンモニア高値のみを示す成人では、オルニチントランスカルバミラーゼ (OTC)欠損症とシトルリン血症などの可能性が考えられる。■ 症状肝性脳症は、傾眠傾向といった軽度のものから重度の深昏睡に至るまで多様な精神神経症状を来す。わが国で広く使用されている犬山シンポジウムの分類を表1に示す。先に述べたミニマル脳症は、臨床的には診断できないためナンバーコネクション(数字追跡)試験などの精神神経学的テストで判断する。なお、このテストはiPadなどにダウンロードして使用でき、日本肝臓学会のホームページから無料でダウンロードできるようになっている。表1 肝性脳症の犬山分類画像を拡大する■ 分類顕性肝性脳症の臨床病型は急性型、慢性型、および先天性尿素サイクル異常症など代謝異常に伴う特殊型に大別される。また、顕性の意識障害はないが、精神神経機能検査で異常を認める状態をミニマル脳症と呼ぶ(表2)。欧米での肝性脳症の分類を表3に示す。表2 臨床病型分類画像を拡大する表3 欧米における肝性脳症の分類画像を拡大する表3に示したように、肝性脳症は大きく(A)急性型、(B)バイパス型、(C)肝硬変型に分けられる。型別頻度は、急性型28%、慢性型のうち再発型54%、末期昏睡型18%といわれており、初回脳症時の生存率は慢性再発型で76%であるのに対し、末期昏睡型では23%と報告されている。救急外来を受診した意識障害患者において、肝性脳症の頻度は約2%とされており、頻度が高いものではないが常に念頭に置くべき疾患の1つである。急性型では劇症肝炎が代表的原因である。先行する慢性肝疾患が存在しない患者において、さまざまな原因により広範な肝細胞壊死を来し肝不全に至る。以前はB型肝炎ウイルスによるものが多かったが、近年は減少傾向にある。■ 予後肝性脳症が出現した患者の予後は悪いことが知られている。海外の報告では脳症出現後の1年生存率は約35%、2年で30%、3年で20%、5年で15%とされている。慢性型では肝硬変によるものが最も多いが、脳症の出現は予後を悪化させる合併症であり、脳症の出現した肝硬変患者の生存率は30~40%と考えられる。また、ACLFに関しても、脳症出現が重症度分類に加えられていることから、脳症の出現は肝疾患全体に関する予後決定因子の1つと考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)臨床症状に加えて検体検査、画像検査、精神神経機能検査などを行って総合的に診断する。身体所見としては肝不全に伴う皮膚黄染(黄疸)、浮腫、腹部膨隆(腹水貯留)を認める場合が多い。羽ばたき振戦や、肝性口臭などは急性型、慢性型のいずれにもみられるが、手掌紅斑、くも状血管腫、腹壁静脈怒張などは慢性型を疑う所見となる。ミニマル脳症は臨床的所見による診断が困難である。わが国では顕性脳症の昏睡度分類として主に表1の犬山分類が用いられる。脳症の昏睡度I度は臨床的には判定困難なことが多く、振り返って初めて診断できることも少なくない。II度になると、羽ばたき振戦など診断は比較的容易であるが、羽ばたき振戦は尿毒症や低血糖症でも出現することがあるので鑑別が必要である。1)検体検査肝不全を判定するため、一般肝機能検査、肝予備能(アルブミン、プロトロンビン時間、コリンエステラーゼなど)とともにアンモニア値を測定する。シトルリン血症などの尿素サイクル異常症では、アンモニア以外の肝機能は正常であることが多い。BCAA/AAAモル比(フィッシャー比)の低下を認めるが、最近では簡便な指標としてBCAA/チロシン比であるBTRが用いられることが多い。また、脱水や消化管出血が誘因となっている場合は、BUN(血液尿素窒素)/Cr(血中クレアチニン)比の上昇がみられ、利尿剤使用による低カリウム血症などの電解質異常を認める場合も多い。2)画像検査腹部超音波、CT検査などで慢性肝疾患や脾腫、短絡路の有無などを検索する。また、頭部MRI検査などで中枢神経系の疾患を除外する。深昏睡では脳浮腫の有無も評価する。慢性再発型ではMRI T1強調検査で淡蒼球の高信号が特徴的とされている。3)精神神経機能検査症状に乏しいミニマル脳症を疑う患者に対しては数字追跡試験、WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)式成人知能検査などによる評価を行う。脳波は三相波が出現し、進行とともに低振幅徐波となっていく。意識障害を伴っている患者の場合、頭部CT、MRI検査や髄液検査などの検査を行い、中枢神経系の疾患を除外することが大切である。さらに、糖尿病性ケトアシドーシスや低血糖症など代謝性疾患の除外のため、血糖、尿中ケトン体、血液ガス検査なども行う。肝性脳症初期の症状は、睡眠パターン変化、人格変化、被刺激性、精神反応の鈍化など軽微で非特異的な症状であり、臨床的診断は困難である。必要に応じて、定量的精神神経機能検査(数字追跡試験、WAIS式成人知能検査など)や電気生理学的神経検査(脳波[三相波がみられる]、大脳誘発電位など)を組み合わせて診断を試みる。アンモニア値が低いからといって肝性昏睡を否定できないことに注意が必要である。逆にアンモニア値が高くても意識障害を認めない症例も多数あるため、肝性脳症の診断には家人を含めた詳細な問診が必要となる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)肝性脳症の治療は、誘因の除去および食事療法による一般療法と薬物療法に分けられる。1)誘因の除去タンパク質の過剰摂取、便秘、下痢などの便通異常、脱水、感染症、利尿剤や睡眠剤、安定剤の過剰投与などは、非代償性肝硬変患者において容易に肝性脳症を誘発するため、普段より生活指導を行うことが重要である。2)食事療法肝性脳症時の食事療法は、低タンパク食(0.4~0.6kg/標準体重)が基本であるが、長期間のタンパク制限は栄養不良を助長し、予後に悪影響を及ぼすことが懸念されるため、漫然と継続しないことに注意する。3)薬物療法アンモニアの生成および吸収抑制のため(1)合成二糖類、(2)難吸収性抗生物質を用いる。(2)に関して、これまではカナマイシンや硫酸ポリミキシンBが使われてきたが、いずれも保険適用外であり、長期投与による聴力障害や腎機能障害を生じるなどの問題があった。2016年に、海外では30年以上前から使用されていたリファキシミン(商品名:リフキシマ)が、肝性脳症に対してわが国でも使用が認可された。海外のガイドラインでは難吸収性抗生物質は、合成二糖類に併用投与が推奨されている。リファキシミンに関しては、長期投与の安全性が認められていることから第1選択薬としての可能性もあり、今後わが国における検証が期待される。亜鉛補充やカルニチン製剤が、単独投与あるいは合成二糖類や分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤との併用投与により高アンモニア血症を改善するとの報告がある。亜鉛補充は、これまで各施設で硫酸亜鉛などを調剤していたが、ウイルソン病治療薬である酢酸亜鉛(同:ノベルジン)が肝疾患の低亜鉛血症に対して適応拡大となった。4 今後の展望最新の認知症ガイドラインにおいて、早期認知症との鑑別すべき疾患の1つとして肝性脳症が挙げられている。最近問題となっている車の運転における逆走などは、ミニマル脳症の患者も同様のハイリスクを有していることから、ミニマル脳症を含めた早期治療介入の重要性が今後注目されると思われる。さらにリファキシミンに関しては、長期投与の安全性が認められていることから、第1選択薬としての可能性もあり、今後わが国における検証が期待される。亜鉛補充やカルニチン製剤が、単独投与あるいは合成二糖類やBCAA製剤との併用投与により高アンモニア血症を改善するとの複数の報告もなされている。肝性脳症を含めて肝硬変領域においては、この数年間で多くの新薬が上市された。2019年には非代償期のC型肝硬変患者に対する直接的抗ウイルス治療薬(DAA)製剤も認可されており、今後肝硬変診療は新たなパラダイムシフトに向かっていくと思われる。5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本消化器病学会ガイドライン閲覧サイト(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本肝臓学会肝性脳症診断ツールダウンロード(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2019年6月11日

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かかりつけ医のための適正処方の手引き(糖尿病)が完成/日本医師会

 2019年6月4日、日本医師会の江澤 和彦氏(常任理事)が、『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(3)糖尿病』の完成を記者会見で発表した。高齢者糖尿病の現状をふまえたかかりつけ医のための手引きの作成 厚生労働省から発表された平成28年国民健康・栄養調査結果の概要によれば「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人と推定され、その中で、65歳以上の高齢者が占める割合は約60%以上となっている。今後も高齢化に伴い65歳以上の糖尿病患者の増加が予想される。 高齢者糖尿病では、一般的に老化の特徴としての身体機能、認知機能などの個人差が大きくなる。また、75歳以上の高齢糖尿病患者ではとくに認知機能障害、ADL低下などの老年症候群や重症低血糖、脳卒中の合併症などを起こしやすいと言われている。 『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(3)糖尿病』では、75歳以上の高齢者と老年症候群を合併した65歳から74歳の前期高齢者を「高齢者糖尿病」と想定し、日本老年医学会の協力により作成された。 今回のかかりつけ医のための適正処方の手引きは、2017年『(1)安全な薬物療法』、2018年『(2)認知症』に続く第3弾としての発刊。いずれも日本医師会のサイトに全ページがpdfで掲載されており、ダウンロード可能。超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(3)糖尿病《目次》1.糖尿病の現状と治療総論2.高齢者糖尿病における認知機能障害と身体機能障害(ADL低下、サルコペニア、フレイル)3.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標設定4.高齢者糖尿病の治療 1)総論 2)高齢者糖尿病の食事療法 3)高齢者糖尿病の運動療法 4)シックデイの対策5.高齢者糖尿病の薬物療法(総論)6.高齢者糖尿病の薬剤使用の注意点7.高齢者糖尿病の低血糖 1)低血糖の特徴  2)低血糖の対策 8.糖尿病における高齢者総合機能評価(CGA)

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第21回 “お上品”な期外収縮の特徴は?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第21回:“お上品”な期外収縮の特徴は?少し間が開きましたが、第16回で扱った「期外収縮」を再登場させます。起源が心房か心室か考える際には、QRS波形や先行P波の有無を確認する方法のほかに、前後の収縮間隔に着目する方法があります。心室期外収縮に備わった、期外収縮後の洞調律の収縮ペースを乱さない“スマート”な性質。これについて、Dr.ヒロが解説しましょう。症例提示62歳、男性。糖尿病性腎症にて血液透析を行っている。心疾患の既往もあり、抗血小板薬を2剤内服中。数週間前から心窩部不快感、悪心を訴え受診した。血圧147/84mmHg(非透析日)、脈拍88/分・不整、低血糖なし。以下に来院時の心電図を示す(図1)。(図1)来院時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として誤っているものを2つ選べ。1)心房細動2)右軸偏位3)ST低下4)ST上昇5)異常Q波(前壁誘導)解答はこちら1)、2)解説はこちら今回は心疾患の既往もある血液透析患者さんの胸部不快を扱いましょう。受診時心電図の読みを問うものですが、ボクらがすべきことは…そう、いつも変わらぬ“系統的判読”ですね!(第1回)1)×:“レーサー(R3)・チェック”していきましょう。R-R間隔は不整ですが、ほかと波形の異なる肢誘導3拍目、胸部誘導6拍目(中央付近の“半切れ”な波形も数える)以外は基本的に整に見えます。こういう場合、“時に不整”と言うとしっくりきますね。そして、問題の「調律」については“イチニエフの法則”の活用でしたね。R-R間隔が整な部分にコンスタントにあるP波の向きを見れば、「心房細動」ではなく「洞調律」です(第2回)。2)×:電気軸は、“スパイク・チェック”でQRS波の向きを見るのでした。I誘導:上向き、II誘導:上向きでも安心しないで。もう一つ、II誘導のご近所さんのaVF誘導が“トントン”よりやや下向きですね。このパターンは「“軽度の”左軸偏位」でした(第8回)。“トントン法Neo”を習得した人なら、「-10°」と数値で求められますね(第11回)。電気軸が-30~0°のゾーンに入るのが特徴です。3)○:次の4)ST上昇も含めて考えましょう。「ST部分」をチェックするのは、“スタート”の部分です。基線とJ点を眺めて「ST偏位」をすべて拾うと…II、aVF誘導は1mm以上の有意な「ST低下」で、I、V5、V6誘導にはそれに満たない「(軽度)ST低下」があります。4)○:V1~V3誘導に「ST上昇」がありそうだな、と読めた人は素晴らしい。でも、右前胸部誘導(V1~V3)の場合は、正常でも「ST上昇」のある「男性型」STパターンの人がいることに注意してくださいね。この方は40歳以上ですから、“ニッコリ兄さん”のほうではなく、「V2・V3のみ2mm、そのほかは1mm」が正常上限です(第14回)。ですから、自信を持ってV1~V3誘導に「ST上昇」ありと言えます。5)○:「Q波」は“クルッと”の“ク”部分です。QRS波が下向きの波で始まっているものが「Q波」でした。V1~V3誘導はいずれもR波のない「QS型」、V4誘導にもそれに準じる“おデブ”なQ波があります。よって、この方の“心疾患”は、「陳旧性(前壁中隔)心筋梗塞」と考えられ、ステント治療後のためか抗血小板薬が2剤使用されていることにも合致します。心電図(図1)がキチッと読めたのなら、「ST変化」と「異常Q波」がある患者の胸部症状であることに気づくはず。透析患者さんですから、胸部症状があって、ST上昇・低下とくれば…一度は「STEMI」(ST上昇型急性心筋梗塞)などの急性冠症候群(ACS)の可能性は鑑別すべきです。では、次に見るのは心筋バイオマーカーですか?…ノン、ノン。まずは過去の心電図との比較です。ただ、この方は以前から同様のSTレベルでしたので、急性期の変化ではないと判断できます。透析の方は心筋トロポニンも偽陽性(非特異的上昇)になるので、浮き足立たないように注意が必要です。【問題2】肢誘導波形の一部抜粋を以下に示す(図2)。収縮波形Aおよび間隔B、Cの名称を答えよ。また、波形Aをはさむ収縮間隔(B+C)と、正常波形の間隔Dとの関係についても述べよ。(図2)肢誘導の一部を抜粋画像を拡大する解答はこちら波形A:心室期外収縮(PVC)間隔B:連結期間隔C:回復周期(または休止期)関係性:B+C=2×D解説はこちら3拍目の波形Aは、ほかの洞収縮のタイミングと比べると早く出ていますから、「期外収縮」です(第16回)。間隔B、間隔Cの表現に関しては、循環器が専門ではない人にとって、少し難しいかもしれません。連結期(coupling interval):洞収縮から期外収縮までの時間休止期*(pause)または回復周期(return cycle):期外収縮から次の洞収縮までの時間※「休止期」の正式な英語表記は「postextrasystolic pause」のようです間隔Bと間隔Cの名称は期外収縮の心電図を理解する上で大事な用語です。「連結期」(間隔B)は“先行度合い”とでも言い換えてもらうとわかりやすいかな? もう一方の間隔Cは、「休止期」という表現のほうが「~期」つながりで「連結期」と統一感がでるのですが、心臓が2~3秒以上止まる心停止、いわゆる「ポーズ」(pause)の和訳とやや紛らわしい面があります。その意味では「回復周期」を用いたほうが無難でしょうか。非専門医にはハードルが高い「連結期」と「回復周期(休止期)」という用語をわざわざ登場させたのは、両者の和(間隔B+間隔C)、すわなち、期外収縮を挟む洞収縮の間隔と洞周期(連続する洞収縮時のR-R間隔:図2の間隔D)との間に存在する“美しい関係”を紹介したいからなんです。“期外収縮の出どころ、どーこだ?”ボクのレクチャーで「期外収縮」を学ぶときは、お得意(?)の“Dr.ヒロ謹製”語呂合わせが登場します(図3)。(図3)期外収縮のポイント画像を拡大するどうして“線香”なのか、はたまた“法被(はっぴ)”って何なんだ?というご批判は甘んじて受け入れましょう(笑)強いて言えば、それがDr.ヒロ流ってこと。先行度合いが“線香”です。洞周期から予想されるタイミングより早いことが必須条件です。次に、“カタチと法被が大事よ”は、期外収縮の起源(origin)、すなわち“出どころ”を知るためのチェック項目です。心電図から「どこ起源の期外収縮か?」を判定するのです。通常は「心房」か「心室」なことが大半であり、ごくまれに両者の“中間”の「房室接合部」からも出ることがありますよ。“起源は心房?それとも心室?”どんな教科書にも書いてありますが、期外収縮を見たとき、そのQRS波形と先行P波を見ます。波形については、QRS幅と洞収縮波形とが同じか(相同性)に注目しましょう。起源が「心房」なら房室結節~心室内の電気の流れが通常と同一ですから、QRS波形は洞調律の時と同じで、ふつうは幅も狭い(narrow)はずです。一方、「心室」起源の場合、正常刺激伝導系を“高速道路”とすれば“下道”を逆行するようなものですから、おかしな電気の流れは正常と似ても似つかない幅広(wide)なQRS波を形成します(第16回)。もう一つは、QRS波に先立つP波があるかないか。「心室」起源の場合、意味を考えればP波が先行しないことが心室収縮の早期性を示す特徴のはずです。逆に「心房」なら、必ず「P’波」(洞性P波と区別するためダッシュをつけました)が先行し、心房の早期収縮を示しています。今回の心電図(図2)の場合、洞収縮とは明らかに違うwideなQRS波形ですから、「心室期外収縮」(PVC)と判別できます。本症例では、このPVCの頻発が胸部症状の主因でした。“知っておきたいスマートな性質”大半の期外収縮は、“カタチと法被“の3条件の確認で心房または心室が起源と判定できます。でも、もともと脚ブロックがある人では、「心房期外収縮」(PAC)でも当然QRS幅がwideになりますね? 逆に「心室」起源でQRS幅がnarrowに見えるケースもごくまれにあります。また、P’波もしばしばT波に埋もれてしまい、見つけるのにはある程度コツと経験が要ります。こうした非典型例で参考にすると良い“第4の条件”を伝授しましょう。端的に言うと、PVCでは期外収縮を挟む洞収縮の間隔が洞周期の2倍になるんです。しかも“ピッタリ”「2倍」ね。「期外収縮を挟む洞収縮の間隔」というのは、(図2)なら3拍目のPVC波形Aを飛ばした2拍目と4拍目のR-R間隔です。つまり、連結期と回復周期の和(図2の間隔B+間隔C)に相当します。波形AがPVCであるならば、間隔B+間隔Cは洞周期(間隔D)のピッタリ2倍になるのです。PACでは2倍よりわずかに短くなるんです。この関係をチェックするには、メディカル・デバイダーと呼ばれる器機が便利です。片足が針で、もう片足が鉛筆なのが普通のコンパスですが、両足とも針な“医療用コンパス”のことです。廉価なものは2,000円ほどで売っていて、一般的な不整脈解析が用途であれば、それで十分だと思います。実際にデバイダーでクルックルッとDr.ヒロが解析している様子を示すと、次のようなイメージです(図4)。うーん、“ピッタリ”って気持ちいいなぁ!(図4)デバイダーで実感するPVCの“上品さ”画像を拡大するこの関係、Dr.ヒロ的には“ニバイニバーイの法則”と言っています。その昔、布団のCMで力士が“ニバイニバーイ”と言っていたのが妙に頭に残っています。またオッサンって言われそう…。このような時、期外収縮後の休止期(回復周期)は「代償性」(compensatory)であると表現されます。これが“大事よ”の種明かしです。なお、厳密に言うと、2倍かどうかの確認はR-R間隔ではなく、洞性P波を結ぶP-P間隔で測るべきですが、通常は測りやすいR-R間隔で代用してOKです。こうなる理由については今回割愛しますが、PVCは不意な“しゃっくり”の一種ですが、洞結節の活動性には干渉しない“上品さ”を有しているためと考えてください。「代償性」という専門用語までは覚えなくとも、この“美しい関係”は知っておくと良いでしょう。PVCは上品な期外収縮で、まれな例外*を除いて“ニバイニバーイの法則”を満たすのです。*:「間入性」パターンや室房伝導を有する特殊なPVCの場合などちょっとだけハイレベルな話もしましたが、最後にまとめの表を示して終わります(図5)。ぜひ実践してみてくださいね。(図5)期外収縮の起源判定の原則画像を拡大するTake-home Message期外収縮の起源は、QRS波形と先行P波の有無で判定せよ(“カタチと法被”)期外収縮を挟む洞収縮の間隔が洞周期の2倍ならPVC(“ニバイニバーイの法則”)【古都のこと~宇治平等院】平等院(宇治市)は、京都駅から30分圏内の国宝・世界遺産です。多くの方は、一度は訪れたことがあると思いますが、ボクは高校の修学旅行以来でした。阿字池(あじいけ)に囲まれた鳳凰堂は、以前より輝きを増したように感じられました。それもそのはず、平成の大修理(2012~14年)により、外観は丹土(につち)色と呼ばれる黒みのある赤に塗装され、瓦もシックな墨色となり、平安時代の様子に近づいたそう。阿弥陀如来坐像のある中堂、左右の翼廊、そして中堂の背後に延びる尾廊。藤原頼通による“極楽浄土”の体現には、どこからどう見ても“見事”以外の言葉が出てきません。でも、平等院にわれわれが親しみを感じるのは、いつの世も変わらぬ浄土への憧れ、というよりは10円玉のせいでしょうか? 先日、紙幣と500円硬貨の新デザインが発表されましたが、平等院とは当分お付き合いが続きそうで安心しました。

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臨床研究法、J-CLEARメンバーも対応に苦戦

 臨床研究法が施行されて早1年。2019年3月までは移行期間ということもあり、倫理委員会への登録などで忙殺された方が多かったようだ。本年4月からの新たな申請はこれまでに比べ、少ないというが、日本の臨床研究は法律に則り、滞りなく進んでいるのだろうか。NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は2019年4月20日、都内においてJ-CLEAR講演会を開催。6名の先生が特定臨床研究の現状や糖尿病領域の臨床試験の変遷などについて発表した。 本稿では、第1部「特定臨床研究法施行のあとさき」の話題をお届けする。“医の倫理”は産業としての医療から生まれた 「特定臨床研究法、ここが問題-現場から」について発表した植田 真一郎氏(琉球大学医学研究科臨床薬理学講座 教授)は、世界初の倫理委員会発足から日本で臨床研究法が施行するまでの変遷について紹介。 天然痘が流行した時代、被験者保護の概念は乏しく、脆弱な人々は研究者自身の好奇心を満たす対象とされていた。これに対し、ヘンリー・K・ビーチャーが臨床研究における倫理指針を提唱、臨床研究を規制するためのNational Research Act(1974年)やベルモント・レポート(1979年)が作成されるようになり、医療の産業化と共にCOIの概念が発達していった。 ところが、産業としての医療が発達していく中でCOIの問題がますます表面化し、さらには「me too drug」の概念から企業による販売促進のための研究が拡大していったという。近年の日本の現状として、「倫理審査委員会を通過すればなんとかなると考え、“研究計画書の改定を倫理委員会に届けない”人々」の存在についてコメント。これを問題視した植田氏は、「臨床研究法施行によって計画書の改訂報告が義務付けられたことは良い」と述べた。“臨床研究法”はCOIを守り患者を保護する法律なのか? 臨床研究法が策定された背景には、未承認薬・適応外薬の臨床試験の枠組みはもちろんのこと、「臨床研究として有効性や安全性に対する試験デザインが適切になされているか、将来の患者さんを守るためのものになっているかが一番重要なことである」と植田氏は述べ、「最善の研究デザイン、研究計画について思考停止せずに考え続けること」を強調した。 臨床研究法を守ればなんでもやって良いわけではないことを再認識する必要がありそうだ。臨床研究法の矛盾 山本 晴子氏(国立循環器病研究センター・臨床試験推進センター長)は医療機器における観察・介入研究の判別の難しさについて、ロボットスーツを例に示した。このロボットスーツは医療機器としても福祉用具としても販売されているが、福祉用具としてのロボットスーツを脳梗塞患者のリハビリに診療で使用するとなると、特定臨床研究が必要になるのだという。これに対し山本氏は、「研究の“意図”に少しでも“治療”の匂いがすると法律を適用するのは、過剰規制ではないか?」と問題提起。このほか、医薬品と医療機器を同列に扱う点についても“国際的なズレ”を指摘し、「臨床研究法は『臨床指針』と隔絶しており、研究者が理解に苦しい」といった点を強く訴えた。コホート研究の本来の意味とは? 近年、なぜここまで多くの臨床試験が糖尿病領域においてなされているのか。景山 茂氏(東京慈恵会医科大学 特命教授)は、「患者の選択基準において、さまざまな薬剤を服用している患者やハイリスク患者を除外してはいけない」などの2008年にFDAが提言した5TOOsを挙げ、臨床研究に対する歴史的背景から覚えきれない程の臨床試験で溢れるようになった現況を説明し、臨床研究法の演題から第2部の「相次ぐ糖尿病新規治療薬:助っ人、それとも敵?」に繋げる役割を担った。

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老化細胞を除去して病気を治す未来が来る

細胞の老化が、がんをはじめとするさまざまな疾患の「根本的な原因」であることがわかってきた。20年来この研究を続ける新潟大学循環器内科教授の南野 徹氏に、老化細胞を除去する治療法の可能性や、次期大会長としての学会の今後の方向性などを聞いた。細胞そのものの老化のメカニズムがわかれば、循環器疾患を根本的に防げる可能性があるのではないかと考え、20年ほど前から、細胞の老化の研究を行っています。当時は、循環器の領域でそうした研究をしている医師はほとんどいませんでしたが、その後、細胞の老化の研究が進み、徐々に循環器内科の研究者が増えています。私がその研究を始めたのは、細胞のテロメアの長さが寿命に関わっており、テロメアーゼという酵素にテロメアを伸ばす働きがあるということがわかり始めたころです。その後、循環器関連では、たとえば、血圧が高い人はテロメアが短い、動脈硬化が進んでいる人はテロメアが短い、などいろいろなことが医学的に証明されてきています。テロメアが短い老化した細胞はがん化しやすい今、この領域での一番のトピックは、老化した細胞を取り除くことで、病気を治療できるのではないか、という考え方だと思います。テロメアの長さや細胞の老化は、バイオマーカーとしては臨床でも少しずつ使われてきていますが、それをもう一歩進めたものです。細胞は普通50回くらい分裂するのですが、テロメアが短くなったり、細胞が老化したりすると、分裂できなくなります。細胞の老化は、テロメアの短縮だけでなく、紫外線や酸化ストレスなど外的要因で染色体に傷が入ることでも進みます。そして、そうした老化した細胞は一般にがん化しやすく、溜まっている場所によって、心不全、糖尿病などほかの疾患の原因にもなり得るのです。つまり、抗がん剤治療のように、老化した細胞だけを標的にして殺す薬剤ができれば、がんをはじめとする疾患を予防できたり、治療したりすることができると考えられます。老化細胞除去薬の開発は、まだ動物実験の段階ですが、一部で臨床試験が始まっていて、そう遠くない将来、さまざまな疾患で臨床応用される可能性が高いと思っています。循環器領域に限れば、たとえば、運動の効果なども一つのトピックです。適度な運動が循環器疾患の予防になるというのは常識ですが、それが細胞レベルでどのような機序で起こるのか、実は正確にはわかっていない。最近いくつかの研究で、運動すると筋肉からさまざまな物質が出ることがわかってきて、それらが体をめぐって細胞の老化を遅らせていると考えられるようになっています。理論的には、そのような物質を薬物として投与すれば、運動しなくても運動したのと同様の効果を体に与えることができるかもしれないわけです。抗加齢医学は日本が世界をリードできる分野今回の学術総会ではプログラム委員長を務めさせていただいていますが、筋肉と抗加齢についてもシンポジウムを組んでいます。また、私が座長を務めるInternational Joint Symposium では、海外から演者を招き、細胞老化のバイオマーカー、カロリー制限と抗加齢といったテーマでも講演いただきます。実は、抗加齢という切り口でこれだけ広範な領域をカバーし、これだけ規模の大きい学会は世界的に例がありません。抗加齢医学に関しては、日本が世界で最も進んでいると自負しています。なので、今後は世界の関連学会を巻き込んで、日本から世界に発信し、われわれが世界の抗加齢医学をリードする存在になりたいと考えています。私は学会の国際委員長でもあり、今回は、そうした観点からこれまで以上に海外から数多くの演者を招聘していますが、大会長を仰せつかっている来年の学術総会では、さらに国際色を高めたいと思っています。新潟という久しぶりの地方開催なので、地方ならではの楽しい企画も構想中です。今回はもちろん、次回の学術総会もご期待いただければと思います。メッセージ(動画)

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高齢者診療の新たな概念“multi-morbidity”とは

 近年、注目されるようになった“multi-morbidity(マルチモビディティ)”という概念をご存じだろうか。multi-morbidityの明確な定義はまだ存在しないが、「同時に2種類以上の健康状態が併存し、診療の中心となる疾患が設定し難い状態」を示し、数年前から問題視されてきている。 このmulti-morbidityについて、2019年5月23日から3日間、仙台にて開催された第62回 日本糖尿病学会年次学術集会のシンポジウム12「糖尿病合併症 co-morbidityかmulti-morbidityか」で行われた竹屋 泰氏(大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学講師)の発表が参考になるので、以下に紹介する。multi-morbidityは「老年症候群」と共通する部分も多い multi-morbidityは、複雑で持続的なケアを要する状態で、基本的には、高齢者に特有な健康状態を示す「老年症候群」と共通する部分も多い。 multi-morbidityをわかりやすく例えると、めまいを主訴とする患者について考えたとき、患者が若年者や中年者であれば、めまいを起こす原因がいくつか特定できるだろう。しかし、加齢による生理的・病的・社会的な機能低下を伴う高齢者では、複数の小さな原因が複雑に交絡し合った結果、それらが収束され「めまいという一つの不調」を呈していることがある。 こういったケースの場合、原因を特定しづらく、対症療法として薬を処方した結果、いつの間にかポリファーマシーにより新たな不調を生じる恐れまで出てくるのが、主たる問題となるところだ。multi-morbidityの具体的な症例 高血圧、2型糖尿病、慢性心房細動、慢性心不全、COPDの診断を受け、通院中の88歳女性。3ヵ月前に転倒が原因と思われる硬膜下血腫に対し、血腫除去術を行っている。この際、服用していた抗凝固薬を休薬している。そのほかに、整形外科から鎮痛薬と骨粗鬆症薬、かかりつけ医(内科)からインスリンを含む9種、計12種類の薬剤が処方されている。一人暮らしで、要介護1。認知機能の低下も見られ、ケアマネジャーからは大量の残薬があると報告を受けている。 抗凝固薬を再開する益と害を考えると、CHADS2スコア:4点(脳卒中の年間発症リスク:高)、HAS-BLEDスコア:4点(重大な出血の年間発症リスク:高)だった。multi-morbidityの難しさ~休薬中の抗凝固薬を再開するか? この症例について、生命予後、QOL、患者の希望、医療経済なども加味して、患者本人、家族、薬剤師、ケアマネジャーなどと相談し、非常に悩んだ結果、抗凝固薬の再開について決断しなくてはならないとする。竹屋氏は、2つの選択肢を提示した。(1)抗凝固薬は害のほうが大きいと判断し、休薬を続行(2)抗凝固薬は益のほうが大きいと判断し、再開 (1)の休薬を続行した場合、この患者は1年後、心原性脳梗塞により左半身麻痺、寝たきりとなり、さらに1年後死亡した。こうなると、「あのとき、抗凝固薬を再開していればよかった」と思うかもしれない。では、もう一方の結末はどうなのだろうか。 (2)の抗凝固薬を再開した場合、1年後、患者が自宅で転倒し動けずにいるところをヘルパーが発見。脳出血により意識不明となり、そのまま9ヵ月後に死亡した。そうなると、「抗凝固薬を再開するべきではなかった」と思うだろう。とはいえ、選ばなかったほうの結末は誰にもわからない。 「こういった難しさがあるのが、multi-morbidity。現行の疾患別診療ガイドラインですべてに対応することは困難だ」と竹屋氏は指摘した。multi-morbidityに対しては治療方針の決定が容易でない 高齢者の複雑性(=multi-morbidity)に対しては、疾患ごとのガイドラインに従って薬物介入を行えばあっという間にポリファーマシーになってしまう。あるいは、ある疾患に対する有益な治療が、別の疾患に対して有害な治療になってしまうなど、治療方針の決定が容易でない。 このような状況にどう対応すべきか明確な答えはなく、エビデンスがあるものについては従来の疾患別ガイドラインを用い、ない場合は『高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン1)』などを参考に適切なプロセスを実践していくしかないのが現状だ。 竹屋氏は、「高齢者の治療では、一つ一つの検査値やスコアなどの単純な足し算だけでなく、体重の変化、握力、歩行速度など患者の全体像(phenotype)を把握し、個別に介入していくことが有用であるかもしれない」と語った。亡くなった患者(症例)の本当の結末は… 今回のケースにおいて、2つの選択肢はいずれも、患者の死という一つの結末に帰結する。この症例は実際にあったことで、通夜には家族や担当した薬剤師、ケアマネジャーなどが集まり、故人の昔話に花を咲かせた。最期まで介護を続けた長女からは「先生のおかげで悔いはないです。精一杯看取りました」と言われたという。多職種で一生懸命考えた努力が報われた結果となった。 竹屋氏は、「真摯に取り組んだつもりでも、多少の悔いは残る。患者さんはどう思っていたのか? 本当のところはわからないが、今でも時々自問自答する。私たちの判断は正しかったのか? まずは、われわれ医療者の1人ひとりが、このような症例にどう向き合うかを考えていくことが大切かもしれない」と締めくくった。

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第15回 いい油を使おう~身近にある油とその特徴~【実践型!食事指導スライド】

第15回 いい油を使おう~身近にある油とその特徴~医療者向けワンポイント解説脂質は三大栄養素のひとつであり、体内で重要な働きをしています。また、油脂の種類や酸化の状態によっても、カラダに対する影響が異なります。今回は、日常でよく使われる植物油の種類と特徴についてまとめました。油の働き脂質は、9kcal/gと、三大栄養素の中では一番効率的にカロリーを補給できる栄養素です。そのため、「太る」という印象を持っている方が多くいますが、脂質の働きはそれ以外にもあります。細胞膜やホルモンなどの材料になるほか、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助ける働きもあります。脂肪酸の種類によっては、コレステロールバランスの改善、血流改善、炎症予防などの働きもあります。また、胃への滞在時間が長く、消化に時間がかかるため、油脂を入れた食事のほうが、腹持ちが良く 、便通の改善効果に期待できます。油脂の取り過ぎは肥満を招く要因にもなりますが、いい油を適量摂取することは、カラダを健康に保つための重要なポイントになります。1)キャノーラ油原料はアブラナ(菜の花)の種子。ナタネ油とも呼ばれ、世界でも生産量が多い植物油。透明で無臭のため、いろいろな料理に活用ができ、日本でも一番使われている。人体に悪影響を及ぼすエルカ酸やグルコシノレートが多く含まれていたが、最近では、オレイン酸を多く含むハイオレイックタイプなどが増えている。2)ゴマ油原料はゴマの種子。オレイン酸とリノール酸をそれぞれ40%程度含む。強い抗酸化物質セサミンを含んでいる。焙煎したゴマを使い、精製しないのが茶色のゴマ油。焙煎せずに精製した透明のゴマ油もある。日本では、中華料理、天ぷらなどに用いることが多い。3)ヒマワリ油原料はヒマワリの種子。品種改良されたハイオレイックタイプ(オレイン酸75〜85%)などが流通している。サンフラワーオイルとも呼ばれ、似たような名称のサフラワーオイルと混同しがちだが、サフラワーはベニバナ油をさす。4)エキストラバージンオリーブオイルオリーブの実を絞っただけのものをエキストラバージンオリーブオイルという。精製したオリーブオイルにエキストラバージンオリーブオイルを加え、加工した油をピュアオイルという。オレイン酸を主体とし、酸化に強くコレステロール改善効果が期待できる。独特の風味や色、香りを持ち、ミネラルやポリフェノールを豊富に含む。和食、イタリアン、フランスパンなどと相性が良い。5)グレープシードオイル原料はぶどうの種子。オリーブオイルと混同されがちだが、オレイン酸は20%、リノール酸が70%の割合。ビタミンEがオリーブオイルの2倍以上含まれている。グリーンの天然色素には、ポリフェノールが豊富。クセがなく和食や卵料理にも相性が良い。6)ココナッツオイル原料はココナッツ。ほかの植物油と違い、消化の早い中鎖脂肪酸が含まれ、エネルギーに変換しやすいと話題になった。メインの脂肪酸は肉などに多く含まれる飽和脂肪酸である。また、1gあたりのカロリーは、ほかのものと同じ9kcal。独特の風味があり、カレー、コーヒーやお菓子などと相性が良い。7)エゴマ油原料はシソ科エゴマの種子。体内でDHAやEPAに変換されるオメガ3系脂肪酸を多く含む。血流改善や炎症予防などに効果が期待できる。酸化に弱く加熱調理不可。開封後は早めに使うことが必須。

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双極性障害に対するアリピプラゾールの安全性評価

 双極性障害患者に対する治療法を選択するうえで、薬物療法の安全性および忍容性は重要な因子となる。イタリア・シエナ大学のAlessandro Cuomo氏らは、双極性障害に対するアリピプラゾール治療の全体的な忍容性および安全性プロファイルに焦点を当て、レビューを行った。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2019年5月9日号の報告。 レビューの対象は、躁病および混合エピソードの急性期治療および双極I型障害の維持療法に対するアリピプラゾール経口剤治療、双極性躁病に関連する興奮に対するアリピプラゾール即放性注射剤、双極I型障害の維持療法に対するアリピプラゾール持効性注射剤(AOM)とした。双極性障害に対するアリピプラゾールの安全性は、添付文書に従って検討を行った。PubMed検索より得られた英語の報告およびFDA、EMAのウェブサイトより入手可能な情報を用いて、アリピプラゾールの安全性および忍容性に焦点を当て、検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールは、他の抗精神病薬と比較し、体重増加、脂質異常症、糖尿病、高プロラクチン血症のリスクが低く、良好な忍容性プロファイルを有していた。・また、アリピプラゾールは、多くの第2世代抗精神病薬と同様に、第1世代抗精神病薬と比較し、錐体外路系副作用が少なく、心血管に対する安全性が良好であった。

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新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(1)【新型タバコの基礎知識】第1回

第1回 新型タバコ時代!電子タバコと加熱式タバコは何が違う?(1)Key Points新型タバコとは、加熱式タバコと電子タバコのことを指す。加熱式タバコと電子タバコは別物だが、患者さんや一般の人は、加熱式タバコも電子タバコだと思っていることが多い。世界的には電子タバコはe-cigaretteであり、タバコではないものとして扱われる。英語論文を読む場合には要注意。タバコを吸うことは、肺がん、胃がん、大腸がんなどの多くのがん、心筋梗塞、脳卒中などの循環器疾患、COPDや糖尿病に加え、関節リウマチ、不妊や勃起不全など非常に多くの病態と関連することがわかっています。そしてタバコといえば、これまでずっとライターやマッチで火をつけて使う、紙巻タバコでした。本連載では、加熱式タバコと電子タバコを合わせて、新型タバコと呼びます。加熱式タバコは、海外ではheated tobacco productsと呼ばれ、日本語では加熱式タバコとなります。加熱式タバコという呼び名よりも、商品名であるアイコスやプルーム・テック、グローと言ったほうが伝わりやすいかもしれません。2014年にタバコ会社フィリップモリス・インターナショナルは世界に先駆けて、日本でアイコスの販売を開始しました。日本たばこ産業(JT)およびブリティッシュ・アメリカン・タバコは2016年からプルーム・テックおよびグローをそれぞれ販売開始しました。電子タバコは英語ではelectronic cigarettes(e-cigarettes)またはvapor(ベイパー)と呼ばれます。日本では、e-cigarettesに対する訳語として電子タバコという“タバコ”という表現を含む言葉が一般に使用されており、文字通り「電子タバコ」はタバコの一種だと考えている日本人が多いようです。私も日本の多くの人々と同様に、電子タバコはタバコの一種として扱えばよいのではないかと考えていますが、世界的にはその解釈は簡単には受け入れられないものと言えるでしょう(図)。画像を拡大する電子タバコの英語の名称(e-cigarettes)には、タバコ(tobacco)という文字は含まれていません。世界的には、英国などでは紙巻タバコに替えて電子タバコを使用することをハームリダクション*になるとして推奨している現状があるのです。いわゆるタバコは悪いものであるが、電子タバコ(e-cigarettes)は悪いものではなく、電子タバコ(e-cigarettes)はいわゆるタバコ製品ではない、とタバコ研究業界の権威者が主張しているのです。そのため、たとえば論文で電子タバコ(e-cigarettes)をタバコ製品として記述すると、「電子タバコはタバコではない」という指摘を受けることとなります。本連載では、加熱式タバコと電子タバコを合わせて新型タバコと呼びますが、世界的な英語論文ではこのようには定義されていません。新型タバコに関する英語論文や海外からの情報を読む場合には、ご注意ください。第2回では、「加熱式タバコと電子タバコの構造」についてお伝えします。*ハームリダクション:大きな害のある行動をそれよりも小さな害の行動に置き換えることで、害を完全にはなくせないが、少なくさせるという考え方。タバコ問題の場合、どうしてもタバコを止められない人に対して、代わりにニコチン入り電子タバコを吸ってもらえば、有害物質への曝露を減らせるのではないかという戦略。電子タバコがハームリダクションになるのかどうか、世界的に、専門家の間でも意見が割れている。

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脳内出血生存例への抗血小板療法は安全か/Lancet

 脳内出血の生存例は、出血性および閉塞性の血管疾患イベントのリスクが高いが、これらの患者で抗血小板薬が安全に使用可能かは明らかでないという。英国・エジンバラ大学のRustam Al-Shahi Salman氏らRESTART試験の研究グループは、抗血栓療法中に脳内出血を発症した患者への抗血小板療法は、これを行わない場合と比較して脳内出血再発率が低い傾向にあり、安全性は保持されることを示した。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年5月22日号に掲載された。再発リスクが閉塞性血管イベント抑制効果を上回るかを検証 研究グループは、脳内出血の再発予防における抗血小板薬の有効性を評価し、再発のリスクが閉塞性血管イベントの抑制効果を上回るかを検証する目的で、非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験を行った(英国心臓財団の助成による)。 対象は、抗血栓療法中に脳内出血を発症したため治療を中止し、その後、発症から24時間以上生存し、閉塞性血管疾患の予防のために抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)の投与を受けている年齢18歳以上の患者であった。 被験者は、抗血小板療法を行う群と行わない群に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、最長5年の症候性脳内出血の再発とした。再発率:4% vs.9%、閉塞性血管イベント発生率:15% vs.14% 2013年5月~2018年5月までに、脳内出血生存例537例(発症からの期間中央値76日[IQR:29~146])が登録された。抗血小板療法群に268例、非血小板療法群には269例(1例が脱落)が割り付けられた。追跡期間中央値は2.5年(IQR:1.0~3.0、追跡完遂率:99.3%)だった。 ベースラインの全体の平均年齢は76歳、約3分の2が男性で、92%が白人であった。62%が脳葉出血で、88%に1ヵ所以上の閉塞性血管疾患(ほとんどが虚血性心疾患、脳梗塞、一過性脳虚血発作)の既往があり、割り付け時に約4分の3が高血圧、4分の1が糖尿病や心房細動を有していた。 脳内出血再発率は、抗血小板療法群が4%(12/268例)と、非血小板療法群の9%(23/268例)に比べ低い傾向がみられたものの、有意な差はなかった(補正後ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.25~1.03、p=0.060)。 主な出血イベント(再発性症候性脳内出血[主要アウトカム]、外傷性頭蓋内出血など)の発生率は、抗血小板療法群が7%(18例)、非血小板療法群は9%(25例)であり、有意差は認めなかった(補正後HR:0.71、95%CI:0.39~1.30、p=0.27)。また、主な閉塞性血管イベント(脳梗塞、心筋梗塞、腸間膜虚血、末梢動脈閉塞、深部静脈血栓症など)の発生率は、それぞれ15%(39例)および14%(38例)と、こちらも両群に有意差はみられなかった(1.02、0.65~1.60、p=0.92)。 著者は、「脳内出血例における閉塞性血管疾患の予防ための抗血栓療法では、抗血小板療法による脳内出血の再発リスクの増加はきわめてわずかであり、おそらく2次予防において確立された抗血小板薬の有益性を超えるものではない」とまとめ、「現在、別の無作為化試験が進行中であり、本試験と合わせたメタ解析や、適切な検出力を持つ信頼性の高い無作為化試験が求められる」としている。

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学会員のゲノム解析から成果を発信

日本人のアンチエイジングのために学会員の遺伝子解析に乗り出した日本抗加齢医学会。本学会の理事長である堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)に研究目的やアンチエイジングの展望について聞いた。遺伝子研究はアンチエイジングの第一歩老化のメカニズム解明は、この10年で飛躍的な進化を遂げています。われわれの課題は、その成果を老化予防に活用できる医療へ変換していくことです。性格や骨格、顔貌などは、ゲノムによって支配されています。テクノロジーによってゲノムに介入できれば、根本的なアンチエイジングが達成できるはずですが、そのためにはゲノム医療を「使える医療へ発展させていく」ことが求められます。アンチエイジングにおけるゲノム医療の発展を目指すため、日本抗加齢医学会はジェネシスヘルスケア株式会社と提携し、「アンチエイジング全ゲノム解析」臨床研究プロジェクトを立ち上げました。20年前、1人の全ゲノムをシークエンスするためには、200億円もの費用と10年の歳月が必要でした。それが今では10万円、約1日で解析が可能なところまできました。半導体開発の高速化と低価格化が寄与しています。この研究では、加齢度の生理データと病歴・食事・運動習慣などの加齢調査票を組み合わせて解析することで、アンチエイジングと関連する遺伝子群を探索します。また、全ゲノム解析に加えて、エピゲノム(遺伝子修飾)による日本人の遺伝子年齢時計も作成していきます。このプロジェクトのユニークな点は、学会員自らの全ゲノムを解析することです。本学会員はさまざまな医療従事者が約9,000人加入していますが、この研究プロジェクトには主に医師が参加する予定です。抗加齢に関する指標を推定した後に、自身の遺伝子情報が含まれたデータを解析します。およそ1,000人のゲノム解析を行うことで、「ハツラツ」とした健康長寿を国民が享受し、社会貢献できる人口の増大と医療費抑制に貢献することを目標としています。抗加齢医学にテストステロンは不可欠アンチエイジングに関係するホルモンの1つにテストステロンがあり、もともとは獲物を取る意欲を高めるために必要なホルモンでした。現代で言えば、社会で活躍し健康に楽しく暮らすために必要な物質ですが、テストステロンとその受容体は加齢に伴い減少していきます。生活習慣病や加齢による筋力低下を防ぐために運動療法が推奨されますが、テストステロンが減少している状態で運動を行っても筋肉はつかず、むしろ転倒してけがの原因になってしまいます。テストステロンを補充してから運動してこそ筋肉がつき、運動の価値も高まるわけです。現在、テストステロンの低下は病気と判断されず、テストステロン補充療法は保険上認められていません。しかし、このような背景をしっかり踏まえた上でテストステロン補充の保険収載が認められるべきだと考えています。近年、遺伝子の老化度を示すものとして、テロメアの長さが注目されています。テロメアは染色体のなかでタンパク質をコードしていない部分で、細胞分裂により長さが変化します。テロメアは生まれたときから短い人もいれば生活環境や病気などで長短が変動する場合もあり、寿命に影響を及ぼします。テロメアは、テロメアーゼという逆転写酵素の働きによって伸長することが明らかになっており、驚くことに、テストステロンにはテロメアーゼを活性化させる効果があります。テロメアの長さを遺伝子解析と同時に調べて、テストステロンを含む最も効果的な延伸方法を考えるのが、遺伝子のアンチエイジングではないでしょうか。「人間とはなんだ」という根底にある考え方に基づきアンチエイジングを理解し、実践していくことが本学会の役割であると考えています。今回の学術総会では、理事長提言の場で学会員の遺伝子研究についてお話する予定です。ぜひ、学会員以外の方もお越しください。メッセージ(動画)

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食塩摂取と肥満の関連~日本と中国・英国・米国

 食塩摂取が過体重や肥満の独立した危険因子である可能性が、いくつかの研究で報告されている。しかし以前の研究では、1日食塩摂取量を推定するために24時間蓄尿ではなく単回尿や食事思い出し法を用いていること、単一国や単施設のみの集団でのサンプルといった限界があった。今回、中国・西安交通大学のLong Zhou氏らは、International Study of Macro-/Micro-nutrients and Blood Pressure(INTERMAP研究)のデータから、日本、中国、英国、米国における、2回の24時間蓄尿で推定した食塩摂取量とBMI(kg/m2)および過体重/肥満の有病率の関係を調査した。その結果、日本、中国、英国、米国のすべてで、食塩摂取量がBMIおよび過体重/肥満の有病率と関連することが示された。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2019年5月21日号に掲載。 本研究は、日本(1,145人)、中国(839人)、英国(501人)、米国(2,195人)における40~59歳の男女4,680人の横断研究のデータを用いた。食塩摂取量とBMIの関連における回帰係数(β)の計算は一般線形モデルを使用した。食塩摂取量が1日当たり1g多い場合の過体重/肥満のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・エネルギー摂取量を含む潜在的な交絡因子を調整した場合、食塩摂取量が1日当たり1g多いとBMIは日本で0.28、中国で0.10、英国で0.42、米国で0.52高かった。・食塩摂取量が1日当たり1g多いと、過体重/肥満のオッズは日本で21%、中国で4%、英国で29%、米国で24%高く、すべてp<0.05であった。

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