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SB623、外傷性脳損傷による慢性期運動機能障害の第II相試験で良好な結果/サンバイオ

 サンバイオは2024年9月5日、2016~19年に実施した外傷性脳損傷に起因する慢性期運動機能障害を有する患者を対象に、ヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞SB623の有効性および安全性を検討する第II相多施設共同無作為化二重盲検比較試験(STEMTRA試験)の48週(最終)までの最新の結果がNeurology誌に掲載されたと発表した。SB623の新たな安全性上の懸念は認められなかった STEMTRA試験では、適格患者63例がSB623低用量群(2.5×106個群)、中用量群(5.0×106個群)、高用量群(10.0×106個群)および偽手術群に1:1:1:1で無作為化され、46例にSB623が投与され15例が対照群として偽手術を受けた。 主要評価項目である24週時点のFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの改善は、SB623移植後または偽手術実施後24週目に評価され、SB623投与群では偽手術を受けた対照群と比較して有意な改善が認められた(SB623投与群8.3点、対照群2.3点、p=0.04)。48週時点のFMMSのベースラインからの改善は、SB623投与群全体では偽手術を受けた対照群と比較して有意差が認められなかったものの、中用量群では、有意な改善が認められた(中用量群10.5点、対照群4.1点、p=0.02)。さらに、SB623投与群では48週時点のAction Research Arm Test(ARAT)、歩行速度、NeuroQOL上肢・下肢機能評価で運動機能および日常生活動作のベースラインからの改善がみられた。SB623の新たな安全性上の懸念は認められなかった。 SB623は、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定され、日本では「アクーゴ脳内移植用注」として2024年7月に外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善治療薬の条件及び期限付き承認を得た。米国では、米国食品医薬品局(FDA)よりRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定を、欧州では欧州医薬品庁(EMA)より先端医療医薬品(ATMP)の指定を受けている。

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あいまいな診断を巡るモノローグ(解説:岡村毅氏)

 アルツハイマー病を明確に診断するための血液バイオマーカーに関する重要なポジションペーパーである。その意義を記す前に、精神医学の診断についてちょっとお話をしよう。 その昔、精神医学の診断はきわめてあいまいだった。うつ病の人が妄想を持つことはよくあることは知っているだろうか? そして妄想性障害や統合失調症の人がうつ状態になることもある。すると、「どちらを本体とみるか」というのは人間観や疾病観による。というわけで、その昔、精神科医の診断は学派によって異なることもあった。 これでは会話できないということで、最低限の共通認識として出来上がったのが操作的診断(DSMやICD)である。この症状がいくつある状態を、○○と定義しよう、というものである。ネット上にもたくさん落ちているのでご覧になった方も多いだろう。 なんだ、精神科の診断なんて簡単だ、というのはちょっと待ってほしい。文章を理解できても、実際に疾患の人を何人も診たことがなければ実際の診断は不可能だ。「飛行機を操縦するための本」をいくら読んでも、実際には操縦できないのと同じである。 とはいえ研修を終えるころには、こうした操作的診断に従って正しい診断はできるようになる。ところが、操作的診断ができるようになると、その限界も見えてくる。人生は多様であり、患者さんの人生(ライフコースなどという)から見ると、症状の配置も一回きりの人生のさまざまな経路を経た結果である(記述精神医学などともいう)。「操作的診断なんて浅いなあ」と思うのが若い精神科医の普通の成長過程だ。 とはいえ、操作的診断をばかにし続けていたら、それは思春期をこじらせたようなものである。操作的診断がなければ業界は回らない、というのもまた事実だ。 もっと正確な、科学的な診断はできないだろうか。精神医学でも、血液バイオマーカーとか、脳画像とか、体の動きとかで精神疾患を診断するという研究も行われている。生物学的精神医学の重要性を十分わかったうえで言うが、きわめて危険な研究であることも確かだ。心の中のことは誰にもわからないが、外に表出されたときに、たとえば統合失調症などと診断される。しかし、まったく症状もないのに「あなたの血液、あるいは脳画像は、統合失調症の特徴があるので、あなたは統合失調症だ」と診断されたらどうだろうか。 このように整理するとわかりやすいだろう。心は、脳や血液や遺伝子といったものと同じ次元にはない。したがって、脳や血液や遺伝子で心に「迫る」ことはできるが、明確に心の病を診断することはできない。あくまで別のものなのだ。ゴッホの絵を精密に分析しても、ゴッホの絵の価値を科学的に明らかにできないのと同じである。ちなみにゴッホは、後世の学者によれば妄想を伴う双極性感情障害とも、気分の変調を伴う統合失調症とも診断されている。 さて、本論文に戻ると、脳内のアミロイドやタウの変化を末梢血液で調べることができるようになったという重要な結果である。実は私は最初、この論文の意義がいまいちぴんときていなかったが、正直に書くと、友人の脳神経内科医に聞いて初めてわかった。 現代のアルツハイマー病の診断には、臨床診断と脳病理(髄液かアミロイドペット)が必要である。しかし、かかりつけ医では髄液検査やアミロイドペットはなく、かかりつけ医から専門医へのルートには壁があった。本研究により、壁がなくなり、道が広がったといえる。国際アルツハイマー病学会でも血液バイオマーカーの話題で持ちきりだったとのことである。アルツハイマー病の診断学は、恐るべき速度で正確さを獲得している。ここには「あいまいもまたいい」などと言う余地はなさそうである。

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認知症は夏に悪化する!?脳の夏バテに注意【外来で役立つ!認知症Topics】第21回

脳の夏バテも彼岸まで診療所を10年前に開業して、それまでよりたくさんの認知症の患者さんを診るようになった。その頃から、7~9月にかけて「この頃、具合が悪い、進行した」という介護者からの訴えが多いことに気づき始めた。具体的には、「繰り返しの質問が増えた、亡くなった人が今そこにいるかのような発言をする、また自宅にいながら家に帰るという発言・行動など」である。そこで理由を考えても、これというものはなかった。ところが、1、2ヵ月後に診察すると、大多数のケースで、「元に戻ったみたい」と介護者はおっしゃる。これを2、3年繰り返したときに「こうしたケースは、どうも9月下旬には改善するようだ」と思った。加えて、毎年夏には当院の患者さんの少なくとも3、4人、多いと10人以上が熱中症で、救急受診や入院することも繰り返し経験するようになった。こうしたケースもまた、9月下旬にはほぼなくなる。こうした人には共通する3つの特徴があった。極端な寒がり(重ね着、エアコン切り、窓閉め)、水分を飲まない、でも汗はダラダラである。なお救急医療の資料では、熱中症で救急搬送される人は毎年約10万人いる。そのうち7月と8月の搬送が大部分を占め、とくに梅雨寒から急に暑くなる梅雨明け1週間が最多だそうだ。こうした経験から、「認知症者は認知・精神機能や行動面の悪化という脳の夏バテの症状を示しやすいのでは? また多くは可逆的で、涼しくなる9月下旬、彼岸の頃には改善するようだ」と考えた。そして医学的には次の2点を確認したいと思った。つまり認知症者は夏の間、1)熱中症を呈しやすいのか?、2)熱中症に至らなくても認知・精神機能等が悪化しやすいのか? である。ところで熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をいう。その結果、めまいや吐き気、失神など多彩な症状が出て、死亡することさえある。認知症者がこうなる背景はなんだろうか。喉が渇かない、暑くないまず高齢者一般では、喉の渇きに鈍感になる。それが認知症では顕著のようだ。確かに乾かないという人は、水分を飲むように勧めても、まず実行してもらえない。また水分の出納やホルモン反応に関わる腎機能が低下する。さらに脳では、認知症者において、温度に関する脳の反応に異常があると報告されている1)。つまり対象としたアルツハイマー病患者の78%に過敏な温度感覚が認められたとある。また患者の脳においては、温度調節の恒常性に関わる右の島回と側頭葉前方からなる神経回路に異常があるとしている。認知症者と高温の医学的な関係外界が高温になると高齢者では認知機能低下が起こるという報告がある2)。とすると、上記の脳の夏バテは確かな現象のようだ。とくに環境科学領域では、これが緑地の減少と大気汚染と結びつけられ、これら3者の相乗効果が指摘されている。ところで2017年にLancet誌は、大気汚染を認知症の危険因子として示した。当初は不思議だったが、こういうことかもしれないと思った。英国の救急部門における認知症者の入院と外気温との関係を示した報告があった3)。それによれば、外気温が17℃以上なら、1℃高まるたびに入院数は4.5% (95%信頼区間[CI]:2.9~6.1) 増えるとされる。驚いたのは、このまま温暖化が続くと、2040年には300%も上昇するとの記述である。中国から高温と認知症者の死亡を調査した大規模調査4)が最近発表されている。対象は13万人余り、年齢は82.5±22.5歳、女性55.1%。定義として、猛暑日の夜間の温度の閾値を24.5℃、昼間の温度の閾値を33.3℃とした。夜間が24.5℃以上だと死亡の相対リスクが1.38(95%CI:1.22~1.55)になる。また昼間に33.3℃以上では1.46(95%CI:1.27~1.68)になる。さらに、女性、75歳以上、低学歴だと危険性が高いとしている。認知症者の熱中症対策大切なことは、環境温度を下げること、そして十分な水分摂取である。ところが既述のように認知症、とくにアルツハイマー病者は異常に寒がり、喉が渇かないから、少々勧めても聞いてもらえない。前者に対しては、どうしてもエアコンがだめなら、せめて窓開け、また直接本人に当たらないような扇風機の送風を勧める。ご家族には、気付いたらすぐに薄着にさせ、また冷やしたペットボトルを数分間以上握り締めてもらうように伝えておく。これは夏の間、たびたびテレビでも紹介される体温低下法である。手掌や足の裏には、動静脈吻合と呼ばれる動脈と静脈を直接結ぶ血管部位があり、そこへの冷却刺激で深部体温が下がるとされる。アルツハイマー病者に対して、水分は水に限らないと説明する。お茶、紅茶、コーヒー、ジュース、またスイカなど果物も良いと言う。なお、よくある質問に、「ビールはどうか?」がある。言うまでもなく、「ビールは脱水作用のためかえって悪いよ」と答えている。参考1)Fletcher PD, et al. Pain and temperature processing in dementia: a clinical and neuroanatomical. Brain. 2015;138:3360-3372.2)Zhou W, et al. The effects of heatwave on cognitive impairment among older adults: Exploring the combined effects of air pollution and green space. Sci Total Environ. 2023;904:166534.3)Gong J, et al. Current and future burdens of heat-related dementia hospital admissions in England. Environ Int. 2022;159:107027.4)Gao Y, et al. Heat Exposure and Dementia-Related Mortality in China. JAMA Netw Open. 2024;7:e2419250.

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第77回 ポアソン分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第77回 ポアソン分布とは?ポアソン分布(Poisson distribution)は、まれな事象が起こる回数の確率分布を表す確率分布です。たとえば、1ヵ月間当たりの交通事故の発生件数や国道1km当たりのレストラン数などがポアソン分布に従うことがあります。では、身のまわりでよくある確率の問題で考えてみましょう。(1)ある交差点で1ヵ月間に起きる交通事故の死者数が平均1.2人であるとき、1ヵ月間の死者の数が0人である確率は?(2)国道200km当たりのレストラン数は10軒であるとき、国道1km当たりのレストラン数が1軒以上ある確率は?これらのテーマは、時間(たとえば1日当たり)、距離(たとえば1km当たり)などある一定区間の中で、偶然起こる事象の確率を考える問題です。ポアソン分布は、このように一定の長さの期間や距離において、ごくまれに起こる事象の数の分布です。前回第76回「二項分布とは?」で解説した二項分布と違って、nは必要ありません。たとえば交差点での交通事故の件数は極めてまれですが、その対象となる運転者や通行人のnはとても大きく、日々変化するなどで決められないのが通常です。このように、ポアソン分布は起こる確率の低い事象に対する分布であり、別名「少数の法則」とも呼ばれています。■ポアソン分布における確率分布と確率の求め方(1)の事例でポアソン分布を作成し、ポアソン分布を用いて確率分布を求めてみましょう。二項分布では、ある事象の起こる確率をP、この事象の試行回数をn回としてX回起こる確率を求めました。しかし、この(1)の事例ではPやnはわかりません。わかっているのは平均の1.2人のみです。この例では二項分布は適用できません。この問題を解決してくれるのがポアソン分布です。ある事象における平均値をmとします。この事象がX回起こる確率をP(X)で表すと、ポアソン分布におけるP(X)は次の公式によって求められます。ただ、この式の計算は煩雑なので、Excel関数によって計算してみましょう。算出された確率分布(表1)とそのグラフ(図1)を示します。表1 ポアソンの確率分布(左)図1 ポアソンの確率分布グラフ(右)画像を拡大するポアソン分布を用いて(1)の事例の確率を求めます。ある交差点で1ヵ月間に起きる交通事故の死者数が平均1.2人であるとき、1ヵ月間の死者の数が0人である確率は、上記の確率分布表より、0.3012(約30%)となります。それでは次にある交差点で1ヵ月間に起こる事故の件数が2、3、4、5件として、ポアソン分布のグラフを作成してみましょう(件数のことを“μ”と呼びます。この場合μ=2、3、4、5件となります)表2 ポアソンの確率分布の比較表(左)図2 ポアソンの確率分布の比較グラフ(右)画像を拡大する事故の件数(μ)が大きくなるほどグラフは右側へスライドし、右に裾を引いているグラフがだんだん左右対称に近付いていることがわかります。ポアソン分布はμが大きくなるにつれて、正規分布に近付いていきます。■二項分布とポアソン分布の比較前回第76回で適用したコイントスの事例をポアソン分布で計算してみましょう。「オモテの出る確率が0.5のコインを3回投げたとき、オモテが2回以上出る確率は?」でした。ポアソン分布は平均値を用いますので、この事例における平均値をまず算出します。平均値はn×Pで求められますので、平均値=n×P=3×0.5=1.5となります。Excel関数より下記のようになります。X=2の場合 =POISSON(X,m,0)→POISSON(2,1,5,0)→0.2510X=3の場合 =POISSON(X,m,0)→POISSON(3,1,5,0)→0.1255以上からオモテが2回以上の確率は、0.2510+0.1255=0.3765となり、二項分布における確率は0.5で、ポアソン分布の0.3765と異なる値となりました。ポアソン分布は別名「少数の法則」というように確率が低い事象についての確率分布ですので、50%の確率がある事象については、ポアソン分布を当てはめることに無理があったということになります。医療の領域でポアソン分布は、疫学調査における疾患発生率の推定にも用いられます。たとえば、ある地域におけるある疾患の発生数が、1年間平均で10例だった場合、その疾患の発生数はポアソン分布に従うことがあります。このとき、ポアソン分布の式を使って、ある年にその疾患にかかる人数が5例以下である確率を求めることができます。■二項分布とポアソン分布を使い分けるときの注意点二項分布とポアソン分布は、いずれも離散確率分布ですが、使い分けには以下のような注意点があります。まず、二項分布は、試行回数が固定された独立な試行で成功確率が一定の場合に適用されます。一方、ポアソン分布は、時間や面積などの連続的な空間において、単位時間当たりや単位面積当たりに発生する現象のような、成功回数がまれである(平均値が小さい)場合に適用されます。つまり、二項分布は、離散的な試行で確率を求める場合に適しており、ポアソン分布は、連続的な現象で発生回数がまれな場合に適しています。また、ポアソン分布は、平均値が大きくなると正規分布に近付くため、平均値が大きい場合には正規分布を用いることが一般的です。たとえば、ある病院において、手術中に合併症が生じる確率が0.1%(成功率が99.9%)であるとして、その手術を10回実施する場合、二項分布を用いて、2回以上合併症が生じる確率を求めることができます。一方、ある病院における1日当たりの入院患者数が、平均で5人である場合、ポアソン分布を用いて、ある日に入院患者が3人来る確率を求めることができます。以上のように、二項分布とポアソン分布は、適用する現象が異なるため、使い分けには注意が必要です。次回は「4種類あるエラーバー」について解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?第58回 標準正規分布とは?

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SGLT2阻害薬による長期治療、2型DMの認知症予防に有効/BMJ

 年齢40~69歳の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬と比較してSGLT-2阻害薬は認知症の予防効果が高く、治療期間が長いほど大きな有益性をもたらす可能性が、韓国・Seoul National University Bundang HospitalのAnna Shin氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年8月28日号に掲載された。傾向スコアマッチング法を用いた韓国のコホート研究 研究グループは、中高年の2型糖尿病患者における認知症リスクと、SGLT-2阻害薬およびDPP-4阻害薬との関連を比較する目的で住民ベースのコホート研究を行った(韓国保健産業振興院[KHIDI]の助成を受けた)。 解析には、2013~21年の韓国の国民健康保険サービスのデータを用いた。対象は、SGLT-2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を開始した40~69歳の2型糖尿病患者で、傾向スコアでマッチさせた11万885組(22万1,770例、平均年齢61.9歳、男性55.7%)であった。 主要アウトカムは、認知症の新規発症とし、副次アウトカムは、薬物療法を要する認知症および認知症の個々の型(アルツハイマー病、血管性認知症など)とした。アルツハイマー病、血管性認知症のリスクもSGLT-2阻害薬で低い 平均追跡期間670(SD 650)日において、11万885組のうち1,172例が新規に認知症と診断された。As treated解析による100人年当たりの認知症発症率は、SGLT-2阻害薬群が0.22、DPP-4阻害薬群は0.35であり、ハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]:0.58~0.73)とSGLT-2阻害薬群でリスクが低かった。 また、100人年当たりの薬物療法を要する認知症の発症率は、SGLT-2阻害薬群0.12、DPP-4阻害薬群0.21(HR:0.54、95%CI:0.46~0.63)、100人年当たりのアルツハイマー病の発症率はそれぞれ0.17および0.28(0.61、0.53~0.69)、100人年当たりの血管性認知症の発症率は0.02および0.04(0.48、0.33~0.70)といずれもSGLT-2阻害薬群で良好だった。今後、無作為化対照比較試験が必要 性器感染症のHRは2.67(95%CI:2.57~2.77)、変形性関節症のHRは0.97(0.95~0.98)、白内障手術のHRは0.92(0.89~0.96)であった。白内障手術によって測定された残余交絡を補正すると、認知症のHRは0.70(0.62~0.80)となった。 治療期間が2年以内の場合の認知症のHRは0.57(95%CI:0.46~0.70)であったのに対し、2年以上の場合は0.52(0.41~0.66)であり、治療期間が長いほうがSGLT-2阻害薬群の有益性が高い可能性が示唆された。 著者は、「本研究は観察研究であるため、残余交絡や打ち切りが起こりやすく、効果量が過大評価された可能性がある」と指摘したうえで「これらの知見は、今後の無作為化対照比較試験の必要性を強調するものである」としている。

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第227回 Nature誌の予言的中?再生医療の早期承認の現状は…

科学誌「Nature誌」の“予言”は正しかったのか? 2015年12月、同誌のエディトリアルに「Stem the tide(流れを止めよ)」というやや過激なタイトルの論評が掲載されたことを覚えている人もいるのではないだろうか?ちなみにこの論評には「Japan has introduced an unproven system to make patients pay for clinical trials(日本は臨床試験費用を患者に支払わせる実績のない制度を導入)」とのサブタイトルが付け加えられていた。Nature誌が批判した日本の制度とは、2014年11月にスタートした再生医療等製品に関する早期承認(条件および期限付承認)制度のことである。同制度はアンメットメディカルニーズで患者数が少なく、二重盲検比較試験実施も困難な再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められたものを、条件や期限を設けたうえで早期承認する仕組み。承認後は製造販売後使用成績調査や製造販売後臨床試験を計画・実施し、7年を超えない範囲で有効性・安全性を検証したうえで、期限内に再度承認申請して本承認(正式承認)を取得する。Nature誌の論評の直前、厚生労働省(以下、厚労省)の中央社会保険医療協議会は、同制度での承認第1号となった虚血性心疾患に伴う重症心不全治療のヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」(テルモ)の保険償還価格を決定していた。ハートシートは患者の大腿部から採取した筋肉組織内の骨格筋芽細胞を培養してシート状にし、患者の心臓表面に移植する製品。念のために言うと、Nature誌による批判の本丸は、同制度の承認の仕方そのものというよりは保険償還に関する点である。通常、製薬企業などが新たな治療薬や治療製品を開発する際は、開発費用は当然ながら企業側が全額負担する。しかし、条件付き承認制度では、企業は暫定承認状態で販売が可能になり、最低でも本承認の可否が決定するまでの期間、保険診療を通じた公費負担と患者の一部自己負担が製品の販売収益となる。そしてこの間にも企業側は本承認に向けた臨床試験を実施する。つまるところ、暫定承認期間中に、本来、企業負担で行うべき臨床試験費用の一部を事実上患者が負担し、効果が証明できずに本承認を得られなかったとしても過去の患者負担が返還されるわけでもない。企業が負うべきリスクを患者に付け回している、というのがNature誌の主張だ。そしてNature誌の論評では「条件付きかどうかに関わらず、すでに承認された医薬品を制御するのは容易ではないだろう。評価が甘く、医薬品の効果が明らかにされない、あるいは流通から排除されないなど生ぬるい評価が行われれば、日本は効果のない治療薬であふれてしまう国になる可能性がある」とまで言い切った。2014年から10年、制度利用の状況このハートシート以降、条件付き早期承認制度を利用して承認を取得したのは、脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善を適応としたヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞「ステミラック」(ニプロ)、慢性動脈閉塞症での潰瘍の改善を適応とする「コラテジェン(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)」(アンジェス)、悪性神経膠腫を適応とする「デリタクト(一般名:テセルパツレブ)」がある。そして今年7月19日に開催された厚労省の薬事審議会の下部会議体である再生医療等製品・生物由来技術部会は、ハートシートについてメーカーが提出した使用成績調査49例とハートシートを移植しない心不全患者による対照群の臨床研究102例の比較検討から、主要評価項目である心臓疾患関連死までの期間、副次評価項目である左室駆出率(LVEF)のいずれでもハートシートの優越性は確認できなかったと評価し、「本承認は適切ではない」との判断を下した。また、これに先立つ6月24日、同じく条件付き早期承認を取得していた前述のコラテジェンでも動きがあった。製造・販売元のアンジェスが「HGF 遺伝子治療用製品『コラテジェン』の開発販売戦略の変更に関するお知らせ」なるプレスリリースを公表。同社はすでに2023年5月に本承認に向けた申請を行っていたが、プレスリリースでは「非盲検下で実施した市販後調査では、二重盲検の国内第III相臨床試験成績を再現できなかったことから上記申請を一旦取り下げ」と述べ、6月27日付で本承認申請を取り下げた。率直に言って、データを提出して本承認への申請を行っていながら、1年後には第III相試験成績を再現できなかったと申請を取り下げるのはかなり意味不明である。厚労省側は前述の7月19日の部会にコラテジェンに対するアンジェスの対応を報告。結果としてハートシートとコラテジェン共に暫定承認が失効した。制度発足から10年で、条件付き早期承認制度を利用して承認を受けた4製品のうち2製品が市場から姿を消したことになる。つまり同制度の暫定“打率”は5割という、医療製品としてはあまり望ましくない数字だ。薬事審議会後の厚労省医薬局の医療機器審査管理課の担当者による記者ブリーフィングでは、審議会委員から「今後こういったことが続かないように制度運用での有効な措置を考えるべきだ」との意見も出たことが明らかにされた。ある意味、当然の反応だろう。もっとも今回、医療機器審査管理課が公表したハートシート、コラテジェンの審議結果では、いずれも「有効性が推定されるとした条件及び期限付承認時の判断は否定されないものの」とのただし書きが付いた。さて、そのハートシートが条件付き期限付き承認を受けた当時の審査報告書に今回改めて目を通してみた。当時の審査報告何とも評価が難しいのは、承認の前提になった国内臨床試験が症例数7例の単群試験である点だ。この7例は▽慢性虚血性心疾患患者▽NYHA心機能分類III~IV度▽ジギタリス、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬、経口強心薬といった最大限の薬物療法を行っているにもかかわらず心不全状態にある▽20歳以上▽標準的な治療法に冠動脈バイパス術(CABG)、僧帽弁形成術、左室形成術、心臓再同期療法(CRT)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施して3ヵ月以上経過しているにもかかわらず心不全の悪化が危慎される▽エントリー時の安静時LVEF(心エコー図検査) が35%以下、を満たす重症心不全患者である。実際の7例の詳細を見ると、年齢は35~71歳、NYHA心機能分類は全員がIII度、LVEFが22~33%。治療では全例がPCIかCABGを施行し、5例はその両方を施行していた。薬物治療では利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬のうちどれか2種類は必ず服用しており、心不全治療目的の治療薬は3~7種類を服用していた状態である。ハートシートによる治療は、開胸手術が必要になるが、この7例の状態はそれを行うだけでもかなりリスクの高い症例であることがわかる。同時にこれらの症例では、意図して対照群を設定して比較試験を行うことは、現実的にも倫理的にもかなり困難だろう。国内臨床試験の主要評価項目はLVEFの変化量である。ハードエンドポイントを意識するならば、心疾患関連死を見るべきかもしれないが、やはりこの試験セッティングでは難しいと言わざるを得ない。こうしたさまざまな制約の中で行われた臨床試験結果はどのようなものだったのか?まず、LVEFだが、ご存じのようにこの数値の算出には、心プールシンチグラフィ、心エコー、心臓CTなどの検査を行う必要があり、この中で最もバイアスが入りにくいのは心プールシンチグラフィである。臨床試験では、心プールシンチグラフィのデータでメインの評価を行っており、事前に設定したLVEFの変化量に基づく改善度の判定基準は、「悪化」が-3%未満、「維持」が-3%以上+5%未満、「改善」が+5%以上。ハートシート移植後26週時点での結果は「悪化」が2例、「維持」が5例、「改善」が0例だった。ちなみの副次評価項目では心エコー、心臓CTによるLVEF変化量も評価されており、前述の改善度判定基準に基づくならば、心エコーでは全例が「改善」、心臓CTでは「維持」が5例、「改善」が1例、残る1例はデータなし。LVEF算出において、心エコーはもっともバイアスが入りやすいと言われているが、さもありなんと思わせる結果でもある。ちなみに試験の有効性評価の設定では、試験対象患者が時問経過とともに悪化が危慎される重症心不全患者であったことから、「維持」以上を有効としたため、心プールシンチグラフィの結果では7例中5例が有効とされた。もっともここに示したデータからもわかるように、評価結果に一貫性があるとは言い難い。この点はメーカー側も十分承知していたようで、心臓外科医1名、循環器内科医2名の計3名からなる第三者委員会を組織し、各症例のデータなどを提供して症例ごとの評価を仰いでいる。審査報告書にあるその評価は「有効」が5例、「判定不能」が2例。とはいえ、有効と評価されていた症例でも、その評価にはある種の留保条件的なものが提示されたものもあった。そして最終的な医薬品医療機器総合機構(PMDA)の評価は「国内治験における本品の有効性の評価は限定的であるものの、個別症例に対する総合的な評価に基づき、標準的な薬物療法が奏効しない重症心不全患者に対して本品は一定の有効性が期待できると考える」とした。申請者、評価者、それぞれの努力がにじむ結果であり、今から振り返ってこの評価が妥当ではなかったとは言い切れないだろう。しかしながら、審査報告書を事細かに読むと、たとえば国内臨床試験の主要評価項目であるLVEF変化量についてPMDAは「申請者が設定した『悪化』、『維持』及び『改善』の各判定基準の臨床的意義は必ずしも明確ではないが」などと表現しており、あえて私見を言うならば、「第1号」ゆえの期待、もっと言えば“ご祝儀“意識も何となく感じてしまうのである。もっともNature誌のような酷評まではさすがに同意はしない。今回、薬事審議会が不承認の判断を下したことで「効果のない治療薬であふれてしまう国」という“最悪“の状況は回避されている。とはいえ、今後の同制度の運用にはかなり課題があることを示したのは確かだろうというのは、ほぼ万人に共通する認識ではないだろうか?

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危険なめまいを患者に伝える

患者さん、その症状はめまい ですよ!めまい(目眩)とは、以下のような症状を伴います。□自分やまわりがぐるぐる回る□物が二重に見える□ふわふわしている□不安感□気が遠くなりそうな感じ□動悸□眼前暗黒感□吐き気◆とくに注意‼ 脳梗塞が疑われる「めまい」• まわりの景色がぐるぐる回る(回転性めまい)症状が続き、まったく歩けなければ、病院の救急科への受診が必要です• 動脈硬化のリスク(高齢、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、喫煙)や血栓症のリスク(心房細動…)がある• 物が二重に見える(複視)、話しにくい(構音障害)、飲み込みにくい(嚥下障害)、意識が悪い(意識障害)などの症状がある出典:日本神経学会:脳神経内科の主な病気(症状編)めまい監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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緑内障患者では皮膚カロテノイドレベルが認知機能と関連している

 強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの体内レベルが低いことが、緑内障患者の認知機能低下と関連がある可能性を示すデータが報告された。島根大学医学部眼科学講座の谷戸正樹氏らが、皮膚で非侵襲的に測定したカロテノイドレベルと認知機能テストの結果との関連を解析した結果であり、詳細は「Current Issues in Molecular Biology」に7月3日掲載された。 緑内障は視神経の障害によって視野の不可逆的な異常が進行する疾患で、高齢化を背景に患者数が増加しており、国内の失明原因のトップを占めている。認知症も高齢化を背景に患者数が増加しており、両者ともに神経変性疾患であるという共通点があって、発症や進行に活性酸素の関与が想定されている。一方、野菜や果物に豊富に含まれているカロテノイドは強い抗酸化作用があり、これらの神経変性疾患に対して保護的に働く可能性が示唆されている。とはいえ、体内のカロテノイドの測定には採血が必要なこともあり、眼科領域での研究はあまり進んでいない。しかし近年、反射分光法を用いて体内のカロテノイドを皮膚レベルで測定する技術が確立され、新たな展開を迎えている。 谷戸氏らはこの測定法を用いて、緑内障患者のカロテノイドレベルと認知機能や眼科所見との関係性を検討した。解析対象は、同大学医学部附属病院眼科外来の緑内障患者406人(812眼)。緑内障以外の眼底疾患が併存している患者は除外されている。主な特徴は、平均年齢が79.5±7.6歳、男性56.2%で、病型は約6割(57.6%)が原発開放隅角緑内障であった。皮膚カロテノイド(SC)レベルは0~1,200au(任意単位)の間で評価され、研究参加者の平均は325.1±19.3auだった。 認知症のスクリーニングに用いられているMini-Cogというテストで、5点中2点以下の場合を「認知症の疑いあり(陽性)」と判定したところ、28人(6.9%)がこれに該当した。認知症の疑いの陽性群と陰性群を比較すると、年齢は陽性群が高く有意差が認められ(79.5±7.6対69.0±11.3歳、P<0.0001)、SCレベルも前者が低値という有意差が認められた(269.5±86.5対329.2±120.4au、P=0.01)。性別の分布やBMI、血圧、喫煙者率などには有意差がなかった。陽性群の眼科所見(56眼)を陰性群(756眼)と比較すると、陽性群は眼圧が高く、視力と視野感度は低く、有水晶体眼が少ない(白内障手術後が多い)という有意差が認められた。緑内障のタイプの分布は差がなかった。 次に、SCレベルを従属変数として混合回帰モデルで検討した結果、現喫煙、心拍数高値とともに、認知症の疑いが陽性であることが、SCレベルが低いことの独立した関連因子として特定された。反対に女性であることはSCレベルが高いことの独立した正の関連因子として特定された。年齢やBMI、血圧、視力、視野感度などは、SCレベルの独立した関連因子ではなかった。 続いて視野感度を従属変数とする検討を施行。その結果、眼圧高値、有水晶体眼、眼科手術の既往などとともに、認知症の疑いが陽性であることが、視野感度の独立した負の関連因子として特定された。年齢や性別、現喫煙、BMI、血圧、心拍数、およびSCレベルは、視野感度の独立した関連因子ではなかった。 著者らは本研究が横断的デザインで行われているという限界点を述べた上で、「緑内障患者において、Mini-Cogで評価した認知機能の低下がSCレベルの低下と関連していた。これは、認知機能低下抑制のため、カロテノイドレベルを維持するという戦略に潜在的なメリットがあることを示唆している」と総括している。一方、本研究ではカロテノイドの視野感度に対する保護的作用は示唆されなかったが、カロテノイドの神経保護作用の報告もあることから、「さらなる研究が求められる」としている。

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メマンチン+ドネペジル併用療法の有害事象プロファイル~FDAデータ解析

 中等度~高度な認知症に対し、ドネペジルとメマンチンの併用療法は、臨床的に広く用いられている。しかし、ドネペジルとメマンチン併用による長期安全性に関するデータは、不十分であり、報告にばらつきがある。中国・福建中医薬大学のYihan Yang氏らは、米国FDAの有害事象報告システム(FAERS)のデータを用いて、ドネペジルとメマンチンの併用による有害事象を分析し、併用療法の安全性モニタリングに関するエビデンスの作成を目指した。Frontiers in Pharmacology誌2024年7月17日号の報告。 2004~23年に報告されたドネペジルとメマンチンの併用に関連する有害事象をFAERSデータベースより抽出し、レトロスペクティブに分析した。併用療法と有害事象との関連性を評価するため、4つの不均衡分析法(報告オッズ比、比例報告比、BCPNN[Bayesian confidence propagation neural network]、MGPS[multi-item gamma Poisson shrinker])を用いた。潜在的な安全性をさらに評価するため、性別による発生時期と発生率の違い、年齢による発生率の違いも分析した。 主な結果は以下のとおり。・ドネペジルとメマンチンの併用が原因である可能性が疑われた有害反応報告は2,400例で、女性が54.96%、65歳以上が79.08%であった。・めまいや心電図PR延長( PR prolongation)などの一般的な有害事象を含む100例の有害事象を網羅した22の器官別分類が特定された。転倒、Pisa症候群、ミオクローヌスは添付文書に記載されていない有害事象であった。・有害事象は男性で88例、女性では100例の報告があり、眠気は男女共に一般的な有害事象で、とくに女性に多く認められ、男性ではPisa症候群が多かった。・年齢別では、18歳未満12例、18~65歳16例、66歳以上113例の有害事象を分析した。3群間で異なる有害事象が認められたが、嗜眠はすべての群に共通してみられた。・有害事象発生までの期間の中央値は、全例で19日であった。・男女共に、多くの有害事象はドネペジルとメマンチンの併用療法開始1ヵ月以内に発生しており、1年間の治療後も継続する有害事象もあった。 著者らは「ドネペジルとメマンチンの併用療法による潜在的および新規の有害事象が特定された。また、一部の有害事象は、年齢や性別による違いも確認された。本研究結果が、実臨床においてドネペジルとメマンチンの併用療法を行う際、より安全に使用するための一助となることが期待される」としている。

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認知症リスクを高める修正可能な因子、2つが追加

 新たな研究により、認知症発症のリスクを高める修正可能なリスク因子のリストに、視力喪失と高コレステロールの2つが加えられた。研究グループは、いずれの因子も予防が可能であるとし、その具体的な方法もアドバイスしている。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のGill Livingston氏らが中心となって、認知症の予防や介入、ケアに関する最新の研究や取り組みを取りまとめた、今回で3報目となるこの報告書は、「Dementia prevention, intervention, and care 2024」として、「The Lancet」に7月31日掲載された。 Livingston氏は、「本研究は、認知症リスクを抑制するためにできることやするべきことは、まだたくさんあることを明らかにした。行動を起こすのに早過ぎることも遅過ぎることもない。人生に影響を与えるチャンスは常にある」とUCLのニュースリリースで述べている。さらに同氏は、「リスクにさらされる時間が長ければ長いほど、その影響は大きくなること、また、リスクは脆弱な人においてより強く作用するということに関するさらに強力なエビデンスが得られた。だからこそ、予防を最も必要とする人に対して、予防の努力を倍加させることが不可欠なのだ」と主張している。 前回の2020年の報告書では、認知症のリスク因子として12因子が特定されていた。それらは、教育不足、頭部外傷、運動不足、喫煙、過度の飲酒、高血圧、肥満、糖尿病、難聴、うつ病、社会的孤立、大気汚染である。今回は、最新のエビデンスに基づき、これらの12因子に新たに40代頃からの高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値と視力喪失が追加された。 今回の研究では、世界中で認知症発症との関連が最も強いのは難聴と高LDLコレステロール値であり、これらの因子を予防することで、それぞれ認知症の発症を7%ずつ予防できるものと推定された。次いで関連が強かったのは、人生早期における教育不足と社会的孤立で、それぞれ認知症の発症を5%ずつ予防できると推定された。 Livingston氏は、「定期的な運動、禁煙、中年期の認知活動(正式な教育以外も含む)、過度の飲酒を避けるなどの健康的なライフスタイルは、認知症リスクを低下させるだけでなく、認知症の発症を遅らせる可能性がある。つまり、いつか認知症を発症するにしても、認知症患者として生きる年数を短くできる可能性が高いということだ。このことは、個人の生活の質(QOL)に対して大きな影響を及ぼすだけでなく、社会的に見ても大幅なコスト削減につながる」と話す。 一方、新たに加わった2つのリスク因子について研究グループは、医師に対し、中年期以降にコレステロール値が上昇する人を見つけ出して治療することを促すとともに、視力低下のスクリーニングと治療をより身近なものにするよう求めている。 大気汚染が認知症のリスク因子であることはあまり知られていないが、2023年に発表された研究では、米国で毎年18万8,000件近くの認知症が大気汚染によって引き起こされている可能性があると推定されている。さらに、山火事の煙に曝露すると認知症の診断リスクが高まる可能性があるとする研究結果も、米フィラデルフィアで開催されたアルツハイマー病協会年次総会で発表されている。この研究を率いた米ペンシルバニア大学神経学分野のHolly Elser氏は、「山火事は日常生活を大混乱に陥れるため、そのストレスや不安、日常生活の崩壊が、未診断の認知症を露わにすることがあるのではないか」とCBSニュースに対して語っている。

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アポを取るべし【Dr. 中島の 新・徒然草】(544)

五百四十四の段 アポを取るべし台風の季節になりました。まだ遠くの海上にいても、何かと影響があるのでしょうか。大阪でも突然の激しい夕立に見舞われたりします。進路も気まぐれで、いつ来るかわかったもんじゃありません。困ったものです。さて、先日の総合診療科外来にやってきた男性。年齢は75歳くらいだったかな。3ヵ月ごとの通院患者さんです。患者「気がついたら首を吊っていて」中島「でも……生きてますよね」患者「紐が切れましてん」これはご本人に原因を語ってもらう必要がありそうです。中島「何でまた首なんか吊るんですか?」患者「どうも人と喋ることがないんで」この方は独居です。患者「誰かと喋るのは3ヵ月に1回、中島先生の外来に来たときだけですねん」そうでしたか。患者「それでワシは施設に入ったほうが、ええのとちゃうやろか」中島「……」患者「担当者に中島先生から電話してくれまへんか?」中島「電話ですか。担当者のお名前は何と仰るのでしょうか」そうすると何やら黄色いカードが出てきました。ケースワーカー○○と書いてあります。「この○○さんが担当で、電話番号はこれこれ」××区福祉課とあります。中島「なるほど」患者「ほな、電話してくれまっか?」中島「いやいや、電話はご本人がしたほうがいいですね」患者「ワシがやるんでっか」中島「そうです。ご自分で○○さんに電話して、何月何日何時に会うという約束をするんですよ」本当は「アポを取る」と言うべきなんでしょうけど、この患者さんに通じるかどうかわからないので、わかりやすく言いました。患者「いつも『忙しい、忙しい』と言われるからなあ」中島「そりゃあ忙しいでしょう。○○さんは、たぶん100人も200人も担当しているはずだし」患者「そんなにでっか!」中島「当たり前じゃないですか。だから電話した時には『15分で済みます』と言ってください。じゃないと、会ってくれないかもしれませんよ」患者「それで、この前に首を吊って、中島先生に『人と喋らなあかん』と言われた、と言ったらええんでっか?」中島「『首を吊った』とか『中島先生に言われた』とかは、やめておいたほうがいいですね」そんな話を○○さんが聞かされて「そりゃ大変だ!」となるとは思えません。それよりも端的に「人と話す機会が欲しい」と言うべきでしょう。中島「それと『施設に入れてくれ』というよりも、今の家に住んだままで参加できるような活動のほうがいいと思いますけど」患者「サークルとかそんなものでっか?」中島「そうそう、サークルみたいなのがあったら一番いいと思いますよ」患者「サークルかあ」この人、誰かと会うときはアポを取るという社会人としての振る舞いを、学ぶ機会がなかったのかもしれません。でも、そういった機会がなかったのなら、この場で学んだらいいことです。たとえ75歳であったとしても。とにかく、ケースワーカーの○○さんに相談する場合、電話でアポを取ること手短に用件を言って話を15分で終わらせること提案してもらった事には積極的に挑戦することを繰り返し強調しました。その上で、もし中島が支援することができるとしたら、○○さんが中島に連絡してきたら状況を説明する診断書など必要な書類があれば作成するということも説明しました。実際、私との会話を通じて、多少は前向きになってくれるのか、ちゃんと言われたことを実行したのか。それは次回に確認したいと思います。最後に1句台風と ともに学ぼう アポ取りを

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ジャガイモ料理を食べて嘔吐・下痢、対処法は?【これって「食」中毒?】第4回

今回の症例年齢・性別34歳・男性、28歳・女性患者情報新婚の夫婦は新居の庭に菜園を作り、手始めにジャガイモを栽培した。7月上旬に地上の茎の刈り取り(写真1)を行った後、イモ堀りをしてジャガイモをたくさん収穫した(写真2)。画像を拡大する早速、ジャガイモを煮たり、茹でたりして肉じゃがやポテトサラダにして夕食で食べた(写真3、4)。画像を拡大する夫はビールによる酔いも手伝って、妻よりも多量に摂取した。翌朝、激しい嘔気で目が覚め、トイレで嘔吐した。その後も嘔吐、下痢を繰り返し、腹痛や強い倦怠感も生じたため救急要請し、嘔気を訴えていた妻と一緒に某病院救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数24/分、SpO2 98%(室内気)、血圧92/60mmHg、心拍数120bpm(整)、意識レベルJCS 0、体温37.8℃であった。頭痛、嘔気、腹痛、強い倦怠感を訴えていた。検査値・画像所見血液検査では白血球増多(8,900/µL)以外に特記すべき異常を認めなかった。胸腹部造影CTでは腸管の浮腫を認めた。問題

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BPSD治療における第2世代抗精神病薬5剤の比較~ネットワークメタ解析

 認知症患者で頻繁にみられる認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療において、第2世代抗精神病薬がよく用いられるが、その相対的な有効性および忍容性は明らかになっていない。中国・四川大学のWenqi Lu氏らは、BPSDに対する5つの第2世代抗精神病薬の有効性、許容性、忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2024年7月30日号の報告。BPSD治療で第2世代抗精神病薬のブレクスピプラゾールが優れた有効性 標準平均差(SMD)を用いて、連続アウトカムの固定効果をプールした。カテゴリ変数に対応したオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。有効性の定義は、標準化された尺度によるスコア改善とした。許容性は、すべての原因による脱落率とし、忍容性は、有害事象による中止率と定義した。相対的な治療順位は、SUCRAにより評価した。有害事象アウトカムには、死亡率、脳血管有害事象、転倒、過鎮静、錐体外路症状、排尿症状を含めた。 BPSD治療における第2世代抗精神病薬の有効性を比較した主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析には、介入期間が6~36週で5つの第2世代抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール)について検討を行ったランダム化比較試験20件、6,374例を含めた。・有効性アウトカムは、プラセボと比較し、ブレクスピプラゾールのほうが高かった(OR:−1.77、95%CI:−2.80~−0.74)。また、ブレクスピプラゾールは、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールよりも優れていた。・許容性に関しては、アリピプラゾールのみがプラセボよりも良好であり(OR:0.72、95%CI:0.54~0.96)、アリピプラゾールはブレクスピプラゾールよりも優れていた(OR:0.61、95%CI:0.37~0.99)。・忍容性に関しては、オランザピンはプラセボ(OR:6.02、95%CI:2.87~12.66)、リスペリドン(OR:3.67、95%CI:1.66~8.11)、クエチアピン(OR:3.71、95%CI:1.46~9.42)よりも不良であり、アリピプラゾールはオランザピンよりも優れていた(OR:0.25、95%CI:0.08~0.78)。・クエチアピンは、脳血管有害事象について良好な安全性が示唆された。・ブレクスピプラゾールは、転倒についてより安全性が高く、過鎮静についても同様の安全性が示唆された。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、BPSD治療において優れた有効性を示し、アリピプラゾールは最も許容性が高く、オランザピンは最も忍容性が低いことが示された。本結果は、意思決定の指針として利用可能であると考えられる」とまとめている。

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ミロガバリン、ペマフィブラートなど4剤に「重大な副作用」追加/厚労省

 厚生労働省は8月27日、ミロガバリン、ペマフィブラートなどの添付文書について、「重大な副作用」の新設などに伴い、使用上の注意改訂指示を発出した。タリージェ「腎機能障害」、パルモディア「肝機能障害、黄疸」が重大な副作用に追加 神経障害性疼痛治療薬であるミロガバリンベシル酸塩(商品名:タリージェ、タリージェOD)の重大な副作用として、新たに「腎機能障害」が新設された。これは、MID-NET(R)を用いた腎機能検査値異常リスクに関する調査結果の概要1,2)、市販後の腎機能障害関連症例および同作用機序を有する薬剤の国内外の注意喚起状況を踏まえ、当該リスクがあると判断されたためである。◯腎機能障害関連症例*†の国内症例の集積状況【転帰死亡症例】 26例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例3例)【死亡3例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例)】 *:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例 †:以下の条件にて抽出した症例  ・MedDRA ver.27.0 SMQ「急性腎不全」(広域)またはSOC「腎および尿路障害」に該当する症例  ・本剤投与期間の記載がある症例  ・本剤投与開始後の血清クレアチニン値が男性1.07mg/dL、女性0.79mg/dL以上、GFR推定値/クレアチニンクリアランスが90mL/min/1.73m2未満、蛋白尿2+または尿蛋白/クレアチニン比>0.5(有害事象共通用語規準[CTCAE] ver.5.0のGrade1相当以上)に該当する症例 高脂血症治療薬のペマフィブラート(同:パルモディア、パルモディアXR)については、肝機能障害関連の症例を評価し、症例の因果関係評価および使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見を聴取。その結果、本剤と肝機能障害との因果関係が否定できない症例が集積し、当該症例に黄疸を認める症例が含まれていることから、使用上の注意を改訂し、「肝機能障害、黄疸」を追記することが適切と判断された。◯肝機能障害関連*†の国内症例の集積状況【転帰死亡症例】 25例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例9例。当該9例のうち3例は黄疸も認めた症例)【死亡0例】 *:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例 †:MedDRA ver.27.0 SMQ「薬剤に関連する肝障害-包括的検索(SMQ)」で抽出した症例のうち、CTCAE ver.5.0 Grade3以上に該当する症例を抽出 このほかに、パイナップル茎搾汁精製物(同:ネキソブリッド)には「適用部位出血」が、イオジキサノール(同:ビジパーク)には「急性汎発性発疹性膿疱症」が新たに重大な副作用として追加された。

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コロナ後遺症、6~11歳と12~17歳で症状は異なるか/JAMA

 米国・NYU Grossman School of MedicineのRachel S. Gross氏らは、RECOVER Pediatric Observational Cohort Study(RECOVER-Pediatrics)において、小児(6~11歳)と思春期児(12~17歳)の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)を特徴付ける研究指標を開発し、これらの年齢層で症状パターンは類似しているものの区別できることを示した。これまでPASC(またはlong COVID)に関する研究のほとんどは成人を対象としたもので、小児におけるPASCの病態についてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。6~11歳の約900例と12~17歳の約4,500例について解析 RECOVER-Pediatricsコホート研究は、4つのコホートで構成され、前向き研究と後ろ向き研究を併合して解析した。今回は、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず医療機関および地域から新規に募集した0~25歳の参加者を含むde novo RECOVERコホートと、米国最大の思春期の脳の発達に関する長期研究であるAdolescent Brain Cognitive Development(ABCD)コホートのデータの解析結果が報告された。 対象は2022年3月~2023年12月に登録された6~17歳の、初感染日が明らかなSARS-CoV-2感染既往者(感染群)と、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体陰性が確認された非感染者(非感染群)であった。 9つの症状領域にわたる89の遷延症状に関する包括的な症状調査を行った。 主要アウトカムは、COVID-19パンデミック以降に発症または悪化した、調査完了時(感染後少なくとも90日以上)の4週以上持続する症状とした。4週以上続く症状を有していたが調査完了時に症状がなかった場合は、対象に含まなかった。 小児898例(感染群751例、非感染群147例)および思春期児4,469例(感染群3,109例、非感染群1,360例)が解析対象集団となった。背景は、小児が平均年齢8.6歳、女性49%、黒人またはアフリカ系アメリカ人11%、ヒスパニック系、ラテン系またはスペイン人34%、白人60%、思春期児がそれぞれ14.8歳、48%、13%、21%、73%であった。初感染から症状調査までの期間の中央値は、小児で506日、思春期児で556日であった。小児は神経認知症状、疼痛、消化器症状、思春期児は嗅覚/味覚障害、疼痛、疲労が多い 小児では感染者の45%(338/751例)、非感染者の33%(48/147例)、思春期児ではそれぞれ39%(1,219/3,109例)、27%(372/1,369例)が、持続する症状を少なくとも1つ有していると報告した。 性別、人種、民族で調整したモデルにおいて、小児と思春期児の両方で非感染者と比較して感染者で多くみられた症状(オッズ比の95%信頼区間下限が1を超えるもの)は14個あり、さらに小児のみでみられた症状は4個、思春期児のみでみられた症状は3個であった。これらの症状はほとんどすべての臓器系に影響を及ぼしていた。 感染歴と最も関連の高い症状の組み合わせを特定し、小児と思春期児のPASC研究指標を作成した。いずれも、全体的に健康や生活の質の低下と相関していた。小児では神経認知症状、疼痛、消化器症状、思春期児では嗅覚や味覚の変化や消失、疼痛、疲労に関連する症状が多かった。 クラスタリング解析により、小児では4個、思春期児では3個のPASC症状表現型(クラスター)が同定された。両年齢群ともに症状の負荷が大きいクラスターが1個存在し(成人と同様)、疲労と疼痛の症状が優勢なクラスターも同定された。その他のクラスターは年齢群で異なり、小児では神経心理および睡眠への影響を有するクラスター、消化器症状が優勢なクラスターが、思春期児では、主に味覚と嗅覚の消失を有するクラスターが同定された。

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コーヒーや紅茶の摂取と認知症リスク~メタ解析

 コーヒー、紅茶、カフェイン摂取と認知症およびアルツハイマー病リスクとの関連性は、限定的で相反する結果が示されている。中国・汕頭大学のFengjuan Li氏らは、これらの関連性を明らかにするため、潜在的な用量反応関係を定量化することを目指し、メタ解析を実施した。Food & Function誌2024年8月12日号の報告。 2024年6月11日までの公表されたコホート研究を、PubMed、EMBASE、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、プールされた相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。用量反応関係の評価には、制限付き3次スプラインを用いた。バイアスリスクの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・38件のコホート研究より、合計75万1,824人(認知症:1万3,017人、アルツハイマー病:1万7,341人)の対象者が抽出された。・認知症の場合、紅茶、コーヒー、カフェイン摂取の最低群と比較した最高群のプールされたRRは、次のとおりであった。【紅茶】RR:0.84、95%CI:0.74~0.96、6件、確実性:低い【コーヒー】RR:0.95、95%CI:0.87~1.02、9件、確実性:低い【カフェイン】RR:0.94、95%CI:0.70~1.25、5件、確実性:低い・同様に、アルツハイマー病のプールされたRRは、次のとおりであった。【紅茶】RR:0.93、95%CI:0.87~1.00、6件、確実性:低い【コーヒー】RR:1.01、95%CI:0.90~1.12、10件、確実性:低い【カフェイン】RR:1.34、95%CI:1.04~1.74、2件、確実性:非常に低い・用量反応分析では、コーヒー摂取量と認知症リスクとの間に、非線形関係が認められ(Poverall=0.04、Pnonlinear=0.01)、1日当たり1~3杯のコーヒー摂取と認知症リスクとの保護的な関連が示唆された。・紅茶の摂取量と認知症リスクとの間には、線形関係が認められ、紅茶の摂取量が1日1杯増加するごとに認知症リスクの有意な低下が認められた(RR:0.96、95%CI:0.94~0.99、Poverall=0.01、Pnonlinear=0.68)。 著者らは「紅茶の摂取量増加は、認知症およびアルツハイマー病リスクの低下と関連しており、コーヒーでは非線形の関連が認められた。これは、認知症予防に関する公衆衛生の推奨事項を裏付けている」とまとめている。

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アルツハイマー病、生存期間・悪化速度・入院/入所までの期間は?【外来で役立つ!認知症Topics】第20回

アルツハイマー病(AD)者に関わる臨床医なら、自分の治療は本当にうまくいっているのかと、時に心配になるのではなかろうか? 少なくとも筆者はそうである。たとえば「どんどん進行している」とか「一向に良くならないばかりか悪化した」などの訴えがあると、「むむっ!」と口元がゆがむ。ご家族は、医療者が思うような認知機能テストやADLなど数値化できるものの変化でなく、暴言・暴力、幻覚や妄想、衝動性、BPSDなど出れば、ひどく悪化したと思いがちだ。だから、その訴えと医師側の評価とが乖離することは稀でない。とはいえ、何が臨床経過の客観的な指標であり、それぞれの指標はどの程度の率で変化するかを知っていることは、認知症治療者にとっての素養かもしれない。そこで成書やレビューなどに当たってみた。結果として、生存期間、認知機能の悪化速度、そして入院・入所までの期間が3大ポイントと考えた。認知症と生存期間認知症性疾患全体の生命予後のメタアナリシス1)によれば、認知症全体としての死亡率は、認知症のない者に比べて5.9倍も高い。認知症全体の平均では、発症年齢が68.1±7.0歳で、診断された年齢は72.7±5.9歳。そして、初発から死亡まで7.3±2.3年で、診断から死亡まで4.8±2.0年との由。ADでは、初発から死亡まで7.6±2.1年、診断から死亡までが5.8±2.0年とされる。注目すべきは、いわゆる4大認知症性疾患の中で、ADの生命予後が一番良いことだ。もっともメタアナリシスの対象は、私が対応する患者さんの年齢より、少し若いかなという印象がある。それはさておき、ADの診断がついた患者さんやその家族から、余命は何年か?の質問を筆者が受けたなら、以上のメタアナリシスの結果を参考にして4~8年程度と答える。MMSEやADAS-cogで認知症の進行速度を評価認知機能の評価尺度として、ミニメンタルステート(MMSE:30点満点)が最もよく研究されている。ある教科書2)によると、年間の点数変化は1.8から4.2と幅が大きい。その理由は、観察開始時の重症度がどうだったかによる。つまり開始時に軽度なら点数変化は小さく、重度なら大きい。最近の研究で、MMSE、ADAS-cogについて大人数(開始時769例)のMCI者を対象にした報告を読んだ3)。開始時のMMSE得点は平均で27.3±1.9であった。これが3年後には、対象が473例になり、そのMMSE得点は25.3±4.8になった。3年で300例ものドロップアウトがあるが、以上の結果を分析して、MMSEについて低下が小さい群では年間2~3点の低下、中程度低下群では年間6~7点としている。この結果は従来の報告をほぼ支持すると思われる。次にADAS-Cogが注目される。このオリジナル版は11項目により、総合的にADの認知機能を評価する70点満点の尺度であり、問題なしが0点、最重度が70点である。従来のAD治療薬の治験においては、一番よく用いられてきた。ADAS-Cogが公表された頃の中等度のADを対象にした研究によれば、本尺度の年間変化は平均8点前後とまとまっている。なお上記したMCI者を対象にしてMMSE、ADAS-cogを詳細に検討した研究3)では、ADAS-Cogの研究開始時の平均得点は14.1±8.8である。3年の追跡結果から、ADAS-Cogについて、小変化群で年間2点の増加、中程度の群で年間3~4点の増加としている。はじめはゆっくり、途中で加速、再びゆっくり以上より、MMSEとADAS-Cogの成績推移では、当初ADが軽度なら両者における得点変化も少ないが、進行すれば大きくなるとまとめられる。これに関して2点の追記が欠かせない。まずこれらの経時的な変化の仕方(形状)は直線的なものではない。図に示すようなシグモイド、すなわち当初ゆっくりと、途中から直線的に加速し、末期は再度ゆっくりと変化する形状と考えられている。次に臨床経過を考えるとき、Rapid Declinerと言われる悪化速度の速いAD患者の一群が存在することは以前から注目されてきた。そのような患者を捉えるうえで、たとえばMMSEが半年で3点(年間6点)以上の低下をしていくことと提案したものがある。このような進行の予測因子を知ることは、臨床家が患者・家族にアドバイスするうえで重要である2)。まず教育年数が高いと進行が速いと考えられている。次に幻覚や妄想など神経精神医学的な症状があると進行が速くなるとする意見が多い。もっとも、こうした症状自体ではなく症状に対して処方される抗精神薬等が問題ではないかという意見がある。一方で、発症年齢が若いほど進行も速いと考えられがちだが、これは確立していない。性別も確立したものではない。アポリポ蛋白E4(APOE4)があるとAD発症のリスクが高くなり、発症年齢も早まることは有名だが、進行予測の要因としては確立していない。また合併症の脳血管障害も確立していない。なお錐体外路徴候も以前は検討されたが、今日ではレビー小体型認知症(DLB)の疾患概念が浸透してADと鑑別がかなり正確になった。それだけに従来の知見はADとDLBの進行の差異を論じていたのかもしれない。入院・入所までの期間は?入所予測因子について80の報告をレビューしたものによれば、施設入所を予測する因子として、患者要因では認知機能の重篤度、日常生活動作の自立と依存の度合い、BPSD、そしてうつ病が重要であった4)。介護者要因として、情緒的ストレスの高さが指摘されている。系統的な報告ではないが、失禁、焦燥、歩行困難、徘徊と過活動そして夜間の不穏などが、介護者が述べる入所の決定要因として最も多いと述べた報告があった。この意見は臨床の場でわかりやすく、筆者は大いに頷く。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021 Aug;2(8): e479-e488.2)Fleisher AS, Corey-Bloom J. The natural history of Alzheimer’s disease. In Ames D, Burns A, O’Brien J. Dementia 4th ed. Boca Raton:CRC Press;2010.p.405-416.3)Lansdall CJ, et al. Establishing Clinically Meaningful Change on Outcome Assessments Frequently Used in Trials of Mild Cognitive Impairment Due to Alzheimer's Disease. J Prev Alzheimers Dis. 2023;10:9-18.4)Gaugler JE, et al. Predictors of nursing home admission for persons with dementia. Med Care. 2009;47:191-198.

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スピーチ・ニューロプロテーゼ、ALS患者の発話を実現/NEJM

 米国・カリフォルニア大学デービス校のNicholas S. Card氏らは、重度の構音障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者1例において、皮質内に埋め込んだ電極を介して発話の神経活動を文字に変換し出力するスピーチ・ニューロプロテーゼ(speech neuroprosthesis)が、短時間のトレーニングで会話に適したレベルの性能に達したことを報告した。ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は、発話に関連する皮質活動を文字に変換しコンピュータの画面上に表示することにより、麻痺を有する人々のコミュニケーションを可能にする。BCIによるコミュニケーションは、これまで広範なトレーニングが必要で精度も限られていた。NEJM誌2024年8月15日号掲載の報告。発症後5年の45歳ALS患者に、微小電極4個を左中心前回に埋め込み 研究グループは、ALS発症から5年、四肢不全麻痺と重度の運動障害性構音障害を有する45歳の男性(ALS機能評価スケール改訂版スコア[範囲:0~48、高スコアほど機能は良好]は23)の左中心前回(発話に関連する運動活動を調整する重要な大脳皮質領域)に、4個の微小電極アレイを外科的に埋め込み、256個の皮質電極を介して神経活動を記録した。 微小電極アレイは、1個の大きさが3.2mm×3.2mmで、64個の電極が8×8のグリッド状に配置されており、専用器を用いて大脳皮質に1.5mm埋設された。 2023年7月に手術(埋め込み)が行われ、25日後から32週間にわたり84回のセッション(1日1セッション)でデータを収集した。 各セッションでは、指示された課題(患者が視覚的または音声的な合図の後に単語を言おうとする)および会話モード(患者が好きなことを言おうとする)において、患者が何かを言おうとしたときの神経活動を解読し、解読した単語をコンピュータの画面上に表示した後、テキスト読み上げソフトウェアを用いてALS発症前の患者の声に似せた音声で発声された。最終的に97.5%の精度を達成 使用初日(手術後25日)において、患者が50単語から構成された文の発話を試みた結果、スピーチ・ニューロプロテーゼは99.6%の精度を達成した。 2回目のセッションでは、スピーチ・ニューロプロテーゼの語彙を50単語からほぼすべての英語を網羅する12万5,000単語以上に増やし、1.4時間のシステムトレーニングを行ったところ、患者の発話を90.2%の精度で解読した。 さらにトレーニングデータを追加した結果、スピーチ・ニューロプロテーゼは埋め込み後8.4ヵ月にわたって97.5%の精度を維持した。この間に患者は合計248時間以上、1分当たり約32単語の速度で会話をした。

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AIが医師による重要な脳波検査の判読をサポート

 人工知能(AI)が100年の歴史を持つ脳波(EEG)検査の潜在的な有用性を高め、この昔ながらの検査に新たな輝きを与えつつあると、米メイヨー・クリニック神経学AIプログラムのディレクターであるDavid Jones氏らが報告した。EEG検査は頭部に取り付けた十数個の電極を通して脳の活動を測定する検査で、てんかんの検査によく使われている。しかし、EEG検査で記録された波形は判読が難しいため、医師は、認知症やアルツハイマー病の初期兆候を見つけ出すために、より高額な費用がかかるMRIやCTなどの選択肢に頼ってきたという。こうした中、AIにより、人間には検出が難しいかすかなEEGの異常を検出できる可能性のあることが新たな研究で示されたのだ。詳細は、「Brain Communications」に7月31日掲載された。 今回の研究では、メイヨー・クリニックで10年にわたってEEG検査を受けた1万1,001人の患者の1万2,176件のEEGデータが使用された。Jones氏らは、機械学習とAIを使用して、複雑なEEGパターンから無視すべき要素を自動的に排除してデータを簡素化し、アルツハイマー病などの認知症に特徴的な6つのパターンを抽出。これらのパターンに焦点を合わせた解析を行えるモデルを設計した。 Jones氏らは、「AIを活用したEEG検査は、医師によるアルツハイマー病やレビー小体型認知症のような認知症の判別に役立つ日が来るかもしれない」と述べている。同氏は、「EEGには脳の健康状態に関する多くの医学的な情報が含まれている。認知機能に問題がある人ではEEGが遅くなり、わずかな違いが見られることは広く知られている」とニュースリリースの中で説明している。 論文の筆頭著者で、メイヨー・クリニック臨床行動神経学フェローのWentao Li氏は、「ベッドサイドでの認知機能検査や体液バイオマーカーの検査、脳画像検査といった従来の認知症の評価方法と比べると、EEGパターンを迅速に抽出するこの技術の有用性は驚くべきものだった」とニュースリリースの中で述べている。 この種のコンピューター支援による分析が、医師によるEEGの判読を後押しする可能性があると、Jones氏は言う。同氏は、「現在、医療データのパターンを定量化する一般的な方法の一つは、専門家の意見によるものだ。では、そのパターンが実際に存在しているということは、どうして分かるのか。専門家が『存在する』と判断したから、というのがその答えだ。しかし、AIと機械学習によって専門家には見えないものが見えるようになっただけでなく、専門家に見えるものを正確に数値化できるようになった」と説明する。 とはいえ、EEG検査は必ずしもMRIやPET、CTといった他のタイプの検査の代わりとなるものではないとJones氏らは言う。ただ、EEG検査はより多くの場所で受けられる検査であり、他の検査よりも費用がかからず、侵襲性も低い。例えば、EEG検査であれば脳活動をスキャンするためのX線や磁場は必要ない。Jones氏は、「専門科のクリニックやハイテクな装置には簡単にアクセスできない地域において、AIを活用したEEG検査は、脳の問題を早期の段階で発見するためのより経済的でアクセスしやすいツールとなり得る」と話す。 Jones氏は、「記憶力の問題を、それが明確になる前の段階で見つけることは極めて重要だ」と指摘。その上で、「早期段階での正確な診断は、患者に適切な見通しを与え、最善の治療を施す助けとなる。われわれが検討している方法は、髄液検査や脳グルコース代謝を調べる画像検査、記憶力検査といった現行の検査と比べて早期の記憶障害や認知症がある人を特定できる、より低コストの方法となり得る」と述べ、期待を示している。 ただし、AIを微調整してEEG分析を向上させるには、さらに数年の研究が必要になると、Jones氏は話している。

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