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便失禁を起こしやすい患者とは?便失禁診療ガイドライン改訂

 日本大腸肛門病学会が編集を手掛けた『便失禁診療ガイドライン2024年版改訂第2版』が2024年10月31日に発刊された。2017年に発刊された初版から7年ぶりの改訂となる。今回、便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療に至るまでの基本的知識がアップデートされ、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載が拡充された。また、治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはClinical Question(CQ)で推奨を示し、すべての医療職にとっての指針となるように作成されている。 便失禁の定義とは「無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状」である。このほかに「無意識または自分の意思に反して肛門からガスが漏れる症状」をガス失禁、便失禁とガス失禁を合わせて肛門失禁と定義される。国内での有病率について、65歳以上での便失禁は男性8.7%、女性6.6%である。一方、ガス失禁を含む肛門失禁は34.4%であるが、男性15.5%に対して女性42.7%と性差が見られる。主な便失禁の発症リスク因子として、年齢・性別などの身体的条件や産科的条件に加え、BMIが30を超える肥満、全身状態不良、身体制約などが報告されている。また、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、糖尿病、過活動膀胱、骨盤臓器脱、認知症や脊髄損傷といった疾患もリスク因子となる。直腸がんも便失禁の原因になりうるが、とくに直腸がんに対する肛門温存手術後の排便障害である低位前方切除後症候群の発生率は高率で、主訴の直腸がんが根治した後に排便障害を抱えて生活している患者は増加傾向であるという。 このような病態背景があるなか、本診療ガイドラインは「便失禁診療・ケアを普及することで、便失禁症状を改善し、便失禁を有する患者の生活の質の改善」を目的として、便失禁の診断・治療とともに便失禁の程度とその状態の評価、便失禁に伴う皮膚症状や生活の質への評価と対応、寝たきりとなっている患者への介護などの側面からも捉え、8つの重要臨床課題と5つのClinical Question(CQ)が設定されている。<重要臨床課題>(1)便失禁の臨床評価(2)特殊病態の臨床評価(3)治療方針決定に必要な検査(4)食事・生活・排便習慣指導の有用性(5)薬物療法の適応と有用性(6)骨盤底筋訓練・バイオフィードバック療法の適応と有用性(7)洗腸療法の適応と有用性(8)手術療法の適応と有用性<Clinical Question>CQ1:便失禁の薬物療法において、ポリカルボフィルカルシウムとロペラミド塩酸塩はどのように使い分けるか?CQ2:出産後に便失禁が発症した場合、専門施設への最適な紹介時期はいつか?CQ3:分娩時肛門括約筋損傷の既往を有する妊婦の出産方法として、経腟分娩と帝王切開のどちらが推奨されるか?CQ4:肛門括約筋断裂による便失禁に対して、肛門括約筋形成術と仙骨神経刺激療法のどちらを先行すべきか?CQ5:脊髄障害を原因とする便失禁の治療法として、仙骨神経刺激療法は有用か? なお、日本大腸肛門病学会は本ガイドラインの使用について、便失禁を診療する医師だけではなくケアを行う介護者や一般市民も想定しており、便失禁診療の一助となることを願っているという。

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新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」【最新!DI情報】第28回

新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」今回は、筋萎縮性側索硬化症用剤「メコバラミン(商品名:ロゼバラミン筋注用25mg、製造販売元:エーザイ)」を紹介します。本剤は、治療薬が限られている筋萎縮性側索硬化症の新たな選択肢として、運動機能の低下抑制が期待されています。<効能・効果>筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得し、11月20日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射します。本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師または医師の直接の監督の下で行います。在宅自己注射は、医師がその妥当性を慎重に検討し、患者またはその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用されます。<安全性>重大な副作用には、アナフィラキシー(頻度不明)があります。本剤の臨床試験ではアナフィラキシーの副作用報告はありませんでしたが、低用量メコバラミン製剤でアナフィラキシーが報告されています。その他の副作用は、白血球数増加、注射部位反応(いずれも1%以上)、発疹、頭痛(いずれも1%未満)、発熱感、発汗(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.筋委縮性側索硬化症(ALS)の進行によって生じる運動機能の低下を抑制する薬です。2.1日1回、週2回、筋肉内に注射します。3.注射は、医療関係者や医師の指導を受けた上で、患者本人またはご家族が行うことができます。4.在宅自己注射のために処方された薬剤の入ったバイアルは、処方された際に入っていた外箱や遮光した箱に入れた状態で保管してください。5.自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。<ここがポイント!>筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが変性する進行性の難治性神経変性疾患です。症状は一般的に四肢の筋力低下から始まり、構音障害(発音困難)や嚥下障害が生じます。発症から2〜4年で呼吸筋麻痺による呼吸不全に進行し、人工呼吸器の装着で延命が可能ですが最終的には死に至ります。治療薬としては、ALSの機能障害の進行を抑制するリルゾールやエダラボンが使用されていますが、現在のところ確立された根治療法はありません。メコバラミンは、活性型ビタミンB12の一種であり、末梢神経障害やビタミンB12欠乏症による巨赤芽球性貧血の治療薬として使用されてきました。一方、以前より高用量のメコバラミンがALS患者に対し有効である可能性が示唆されていました。このため、エーザイはALS患者を対象に治験を実施し、2015年5月に新薬承認申請を行いましたが、追加試験が必要と判断されて2016年3月に申請を取り下げました。その後、医師主導治験として実施された高用量メコバラミンのALS患者に対する第III相試験において、高用量メコバラミンの有効性、安全性および忍容性が確認されたことから、再度承認申請が行われました。ALSに対するメコバラミンの作用機序の詳細は解明されていませんが、ホモシステイン誘発細胞死の抑制によるものと考えられています。孤発性または家族性ALS患者を対象とした医師主導の国内第III相試験(国内763試験)において、主要評価項目であるベースラインから治療期16週目までの日本語版改訂ALS Functional Rating Scale(ALSFRS-R)の合計点数の変化量は、プラセボ群が-4.6、本剤50mg群が-2.7でした。群間差(本剤50mg群-プラセボ群)は2.0(95%信頼区間:0.4~3.5、p=0.012)であり、本剤50mg群のプラセボに対する優越性が検証されました。

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第243回 ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連

ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連勃起不全(ED)薬としてよく知られるタダラフィルやシルデナフィル使用と死亡、心血管疾患、認知症の減少との関連がテキサス大学医学部(UTMB)のチームの研究で示されました1,2)。タダラフィルとシルデナフィルはどちらもPDE5阻害薬であり、血流改善・血圧低下・内皮機能向上・抗炎症作用により心血管の調子をよくすると考えられています。それら成分は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療にも使われ、タダラフィルは前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療薬としても発売されています。UTMBのDietrich Jehle氏らの今回の研究は世界中の2億7,500万例超の臨床情報を集めるTriNetXに収載の米国男性5千万例の記録を出発点としています。それら5千万例から、ED診断後のタダラフィルかシルデナフィル処方、または下部尿路症状診断後のタダラフィル処方があった40歳以上の男性が同定されました。3年間の経過を比較したところ、タダラフィルかシルデナフィルが処方されたED患者は、非処方患者に比べて死亡、心血管疾患、認知症の発生率が低いことが示されました。具体的には50万例強の解析で以下のような結果が得られており、血中でより長く活性を保つタダラフィルがシルデナフィルに比べて一枚上手でした。全死亡率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは24%低下心臓発作発生率タダラフィルは27%低下、シルデナフィルは17%低下脳卒中発生率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは22%低下静脈血栓塞栓症(VTE)発生率タダラフィルは21%低下、シルデナフィルは20%低下認知症発生率タダラフィルは32%低下、シルデナフィルは25%低下下部尿路症状患者のタダラフィル使用は一層有益でした。40歳以上の下部尿路症状患者100万例超のうち、タダラフィル使用群の死亡、心臓発作、脳卒中、VTE、認知症の発生率はそれぞれ56%、37%、35%、32%、55%低くて済んでいました。やはり米国のED男性を調べた別の観察試験3,4)でもPDE5阻害薬やタダラフィルと死亡や心血管疾患の減少の関連が示されています。今春2月にClinical Cardiology誌に結果が掲載されたその1つ3)ではEDと診断されてタダラフィルが処方された男性8千例強(8,156例)とPDE5阻害薬非処方の2万例強(2万1,012例)が比較され、タダラフィル使用群の心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症、心不全、脳卒中)の発生率がPDE5阻害薬非使用群に比べて19%低いことが示されました。また、タダラフィル使用患者の死亡率は44%低くて済んでいました。タダラフィルと心血管転帰の発生率低下の関連は用量依存的らしく、同剤の使用量が上位4分の1の患者は心血管転帰の発生率が最小でした。有望ですがあくまでもレトロスペクティブ試験の結果であり、次の課題として男性と女性の両方でのプラセボ対照無作為化試験が必要だと著者は言っています3)。参考1)Jehle DVK, et al. Am J Med. 2024 Nov 10. [Epub ahead of print]2)Study finds erectile dysfunction medications associated with significant reductions in deaths, cardiovascular disease, dementia / The University of Texas Medical Branch 3)Kloner RA, et al. Clin Cardiol. 2024;47:e24234.4)Kloner RA, et al. J Sex Med. 2023;1:38-48.

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飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

 食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。 UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・総脂肪、飽和脂肪酸の摂取量の標準偏差当たりの遺伝的に予測される増加率は、遅発性アルツハイマー病で、それぞれ44%(オッズ比[OR]:1.44[95%信頼区間[CI]:1.03〜2.02])、38%(OR:1.38[95%CI:1.002〜1.90])高いこととの関連が認められた(p=0.049)。・MVMR分析でも、この関連性は有意なままであった(総脂肪のOR:3.31[95%CI:1.74〜6.29]、飽和脂肪酸のOR:2.04[95%CI:1.16〜3.59])。・MVMR分析では、総脂肪および飽和脂肪酸の摂取は、すべてのアルツハイマー病リスク上昇との関連が認められた(総脂肪のOR:2.09[95%CI:1.22〜3.57]、飽和脂肪酸のOR:1.60[95%CI:1.01〜2.52])。・多価不飽和脂肪酸の摂取量は、遅発性アルツハイマー病およびすべてのアルツハイマー病との関連が認められなかった。 著者らは「食事中の総脂肪摂取、とくに飽和脂肪酸の摂取は、アルツハイマー病リスクに寄与し、その影響は他の栄養素とは無関係であることが示唆された。食事中の飽和脂肪酸摂取量を減らすことは、アルツハイマー病の予防戦略およびマネジメントに役立つであろう」と結論付けている。

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日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。 今回の研究でLeroy氏らは、認知症のない65歳以上の高齢者445人(平均年齢75.9歳、女性56.9%)を対象に、悪い睡眠の質とMCRとの関連を調査した。MCRは、標準化された質問票を通じて報告された認知機能の低下と、電子トレッドミルで記録された歩行速度の低下が同時に認められる場合と定義し、試験開始時と年に1回の追跡調査時に評価された。睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価し、5点以下の「良い睡眠の質」と5点超の「悪い睡眠の質」に分類した。 試験開始時にMCRが認められなかった対象者は403人だったが、そのうちの36人が、中央値2.9年の追跡期間中にMCRに該当すると判定された。解析の結果、睡眠の質が悪い人は、睡眠の質が良い人と比べてMCRリスクが2.7倍高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕2.7、95%信頼区間〔CI〕1.2〜5.2)。しかし、抑うつ症状を考慮すると、この関連は統計学的に有意ではなくなった(調整HR 1.6、95%CI 0.7〜3.4)。完全調整モデルを用いた解析では、PSQIを構成する7つの要素のうち、日中の機能障害(過度の眠気と熱意の低下)だけが、MCRリスクと有意な関連を示した(調整HR 3.3、同1.5〜7.4)。一方、試験開始時にすでにMCRが認められた人では、MCRと悪い睡眠の質との間に有意な関連は認められなかった(オッズ比1.1、95%CI 0.5〜2.3)。 研究グループは、この研究では睡眠障害とMCRとの関連が示されただけで、因果関係が証明されたわけではないと指摘している。また、Leroy氏は、「さらなる研究により、睡眠障害と認知機能低下との関係、およびその関係にMCRが果たしている役割を調べる必要がある。さらに、睡眠障害をMCRおよび認知機能低下に結び付けるメカニズムを説明するための研究も必要だ」と述べている。 その一方で研究グループは、「それでも本研究結果は、良質な睡眠により老後の脳の健康が守られる可能性が高いことを示している」との見方を示す。Leroy氏は、「われわれの研究結果は、睡眠障害のスクリーニングの必要性を強調するものだ。睡眠に問題がある人は、その治療を受けることで、老後の認知機能低下を予防できる可能性がある」と話している。

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第239回 「遺伝子治療」を正しく説明できる?~コロナワクチンを遺伝子組み換えと呼ぶなかれ

SNS上では相も変わらず新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して、まあどこをどう突けばそんな話が出てくるのかと思うような言説が飛び交っている。その中で結構目立つのがmRNAワクチンを“遺伝子組み換えワクチン”と呼ぶことである。遺伝子組み換えとは、厳密に言えば「ある種の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせること」ことを指すため、まったく的外れな呼称である。多くの人がご存じのように、遺伝子組み換え技術はすでに食品などで使用されている。これまで農作物などでは人にとって好ましい新品種を交配で作り出してきたが、遺伝子組み換え技術により、新品種を作り出す期間が短縮されたのである。しかし、今でもこうした食品は危険だと主張する人は一部にいる。そして最近公開されたある調査を見て、どうやら人は「遺伝子」という言葉にやや過敏に反応するのではないかと思いつつある。調査とはファイザー社が2024年9月に国内の20代以上の男女(スクリーニング調査1万人、本調査829人)に行った遺伝子治療に関する一般向け意識調査である。結果を要約すると、▽「遺伝子治療」という言葉を聞いたことのない人は30% (n=10,000)▽ 遺伝子治療への「誤解や理解不足がある人」は98.4% (n=829)▽遺伝子治療に対し、「怖い、危険、不安」というネガティブな印象を持つ人は46%(n=829)、というものだ。ちなみ2番目の「誤解や理解不足がある人」とは、アンケートで用意された遺伝子治療に関する質問6つを1つでも正答できなかった、あるいはわからなかった人を指し、これは一般向けにはなかなか厳しいと感じる。むしろ「怖い、危険、不安」が5割弱という結果がやや驚きだった。釈迦に説法は承知で、ここで遺伝子治療について簡単に整理しておきたい。遺伝子治療とは「治療用遺伝子をベクターに乗せて標的細胞内に導入する治療法」だが、概論的な作用機序は(1)治療遺伝子を病的細胞内で働かせて細胞を改変(2)治療用遺伝子が宿主細胞内に取り込まれタンパク質を発現し、それらが分泌・全身を循環して遺伝子の欠損や異常を補完、に大別される。また、この標的細胞の遺伝子導入法は、標的細胞を体外に取り出してベクターで遺伝子を導入し、品質チェックをしながら培養して患者の体内に戻す体外法(ex vivo法)、治療遺伝子を乗せたベクターを直接体内に投与して遺伝子導入を起こさせる体内法(in vivo法)の2つがある。私自身は遺伝子治療に拒否感はないが、記者2年目の1995年にアデノシンアミナーゼ(ADA)欠損症に対して北海道大学が行った日本初の遺伝子治療以降は、昨今のCAR-T細胞療法(商品名:キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)や脊髄性筋萎縮症(SMA)に対するオナセムノゲンアベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)まで知識も記憶も抜け落ちている。ということで、日本遺伝子細胞治療学会理事の山形 崇倫氏(栃木県立リハビリテーションセンター 理事長/自治医科大学小児科学講座 客員教授)に遺伝子治療の現在地について聞いてみた。医師でも「遺伝子治療が怖い」と思う理由山形氏は前任の自治医科大学小児科教授時代の2015年、小児神経難病の1種である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症を対象にAADCを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療を国内で初めて行った経験を有する。前述のファイザーによる一般向けアンケートの結果に講評も寄せている山形氏だが、正直結果はやや意外だったようで、「十分に情報が伝わっていない現実は否定しがたいと思う。結局は『知らないから怖い』という心理ですね。実際に遺伝子治療が対象になる可能性がある患者やその家族が遺伝子治療の効果を知ると、『ぜひやってほしい』と積極的な姿勢に変わることが多い」と語る。これを裏付けるかのように、遺伝子治療について「怖い、危険、不安」と回答した人(381人)でも、「もしあなたが遺伝子が原因の疾患に罹患して、治療法の選択肢の1つとして遺伝子治療があった場合、遺伝子治療を受けてみたいと思いますか」との問いに、「ぜひ受けてみたい」「やや受けてみたい/受けてみてもよい」の回答合計は3分の1の33.6%に上る。要は背に腹は代えられぬということなのだろう。もっとも山形氏は、1990年代に遺伝子治療が行われた患者では、後に副作用として白血病の発症に至った例があることなどから、医師の中でもその時代の認識で止まっていることも少なくないと考える。「現時点で最先端の遺伝子治療の対象は小児の難病・希少疾患が多く、これらは医師でも診療経験がある人は少ない。結果的に遺伝子治療に関して教科書的な知識はあるものの、それ以上はあまり知らないことも多い。先日、医師向けに遺伝子治療の講演をしたが、反応の大半は『難しそうだね』と。私が示したAADC欠損症患者の治療後の動画を見せたら『すごいな』とは思ったようですが」と同氏はコメントした。昨今の医学部教育ではカリキュラムに組み込まれるようになっているものの、山形氏は「すべての大学がきちんとした講義を行っているかはわからない。基礎医学や病態生理学の一部で触れられる程度のところもある」との認識を示す。さて国立医薬品食品衛生研究所遺伝子治療部がまとめた日本国内での遺伝子治療薬の開発状況1)を見ると、後期開発品はin vivo法ではほぼ単一遺伝子疾患、ex vivo法では血液がんで占められている。これは標的が絞り込みやすいからだと思われる。もっとも、標的が決定しても遺伝子導入方法が今も大きな課題として残る。同氏が取り組んだAADC欠損症の場合は局所投与という形で行ったが、「ほとんどの遺伝性疾患の場合は、全身的な細胞への遺伝子導入が必要になるのが実際」と語った。現時点で明らかになっているウイルスベクターの安全性ここで問題になるのがベクターの効率性と安全性である。ベクターに関しては、使われるウイルスベクターが初期のガンマレトロウイルスからレンチウイルス、さらに現在ではAAVへと変化してきた。そもそもガンマレトロウイルスの場合、マウスで白血病を起こすウイルスということ自体が問題だったが、AAVはヒトでの病原性はないため、かなり安全性は改善されたと言える。ただ、静注での全身投与が必要な場合は要注意だという。同氏は「静注による大量投与では、細胞に取り込まれずに循環するベクターが肝細胞表面や血管内皮に結合し、そこで起きる免疫反応で肝障害・血管内皮障害などの副作用を起こすことがわかり、絶妙な投与量の調節が求められることがわかった」と指摘する。この問題を解決するため、現在では(1)遺伝子治療薬の投与時に免疫抑制薬の併用、(2)肝細胞に結合親和性の低いベクターを開発、(3)免疫発達途上の乳幼児期に発症する疾患ではできるだけ早期に治療開始、が考えられるという。とりわけ(3)は副作用だけではなく、治療効果の面からも重要なファクターだ。たとえば、前述のSMAでのオナセムノゲンアベパルボベクによる治療は、治療開始時期が早いほど健常者との運動機能発達レベルの差が少ないことがわかっている。そこでカギとなるのが、まず現時点で先天代謝異常20疾患が対象となっている新生児マススクリーニングの徹底とその拡大である。現状では新生児の親が支払う費用負担が地域によって異なることが影響してか、受診率に地域格差が存在する。また、新たに治療法が登場したSMAや造血幹細胞移植により治癒の可能性がある重症複合免疫不全症に関しては、2023年からこども家庭庁の旗振りにより国と都道府県・指定都市の折半による全額無料検査の実証事業が決定した。2024年10月時点で27都府県・10政令指定都市が事業に参加したが、「財政基盤の弱い県などは参加を控えている」(山形氏)と、ここでも地域格差が生まれている。同氏は「いっそ新生児に一律でスクリーニングの遺伝子検査をすればいいという意見もあるが、実はそれのみでは発見しにくい疾患もある。その意味ではマススクリーニングの受診率向上、対象疾患の拡大とともに、学会などの協力の下、乳幼児の健診などを担う一般内科医の知識向上に尽力して総出で臨床的な異常を早期に発見していくというアナログな対応も現状では必要」とも語る。一方で遺伝子治療に関しては、日本では必ずしも研究開発が活発ではないとの指摘もある。実際、「The Journal of Gene Medicine」の調べ2)による2023年3月時点での世界各国の遺伝子治療の臨床試験数で日本は世界第6位の55件。1位であるアメリカの2,054件、2位の中国の651件と比較して大きく水をあけられている。山形氏は自身が遺伝子治療に取り組んだ際、「高い基準を満たしたベクター製造が必要かつその費用が非常に高額で、研究費を得るために厚生労働省に何度も足を運んだ」と振り返る。この経験を踏まえ、日本での遺伝子治療の進展のためには、国が旗振り役となり、資金調達を中核としたエコシステムの構築が必要だと主張する。また、「新型コロナワクチンでは変異株対応でmRNA部分以外はプラットフォームとみなして審査を簡略化する措置が常態化しているが、これと同じように遺伝子治療では、対象疾患や導入遺伝子の違いがあってもベクターが同一の場合は、ベクター部分の審査を簡略化する仕組みは導入できるはず」と提言する。新型コロナの治療薬・ワクチンで世界に遅れをとった日本。岸田前政権の末期には日本発の創薬エコシステム確立を声高に掲げ、どうやら石破政権でもこの方針を引き継ぐと言われている。そこを基軸に遺伝子治療分野で勝ち目を見いだせるのだろうか?参考1)国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部ホームページ:国内企業あるいは日本で臨床開発中の主な遺伝子治療製品(2024年11月20日更新)2)Ginn SL, et al. J Gene Med. 2024;26:e3721.

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第124回 自己負担増か?「高額療養費制度」の見直し 

高額療養費制度が変わって10年…皆さんが診療している患者さんで「高額療養費制度」を導入されている方は多いと思います。抗がん剤などはその最たるものでしょう。この制度、ご存じのように収入が少ない世帯だと自己負担額が安く、収入が多い世帯だと自己負担額が高くなる仕組みです。平均的なサラリーマンで上限が月8~10万円※1、所得が多いドクターの皆さんは、25~28万円※2くらいになります。40代を超えてきて、「病気した」「入院した」という知り合いの医師が増えてきたのですが、耳にするのは自己負担額が高いという嘆きの声です※3。※1)8万100円+追加自己負担分、4回目からは多数該当が適用され3万5,700円減る。※2)25万2,600円+追加自己負担分、4回目からは多数該当が適用され11万2,500円減る。※3)健康組合や共済組合において、1ヵ月間の医療費の自己負担限度額を決め、限度額を超過した費用を払い戻す付加給付制度がある職場なら月2万円くらいで済むこともある。現在の上限額は、たとえば70歳未満だと5区分に分かれています。医師の平均年収は1,500万円くらいなので、おおむね最上位層に入ります。この層の自己負担額のベース上限額が25万円2,600円というヤバイ水準になったのが2015年です。「とはいえそんなに高額になることはないっしょ」と思っていたら、最近登場する薬剤の高いこと。アベノミクス以降、日本はデフレを脱却し、賃金と物価を増加させています。厚生労働省は、11月21日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会において、自己負担額の上限額の引き上げが必要と言及しました1)。来た。ついに来た。本当に平等な自己負担になるのか?まだ具体案は示されていませんが、全体の上限額を7~16%上げて、その後所得に応じた区分をさらに細分化するというのが想定案です。所得の多い医師は、表の3.8%のところに入っていると思いますが、これ以上負担増はカンベンしてほしいところです。なんせ前回の改正で、この層は10万円も増えたんですよ。画像を拡大する表. 70歳未満における医療保険区分と自己負担上限額(筆者作成)「年間薬価300万円の認知症治療薬が、高齢者では月8,000円で済むこともある」というのがSNSで話題になりました。実は今回、11月21日の医療保険部会でもそのことに触れられています。確かに現在、高齢者や非課税世帯が高額な薬価の最高水準の医療を受けられるのに、社会に出たばかりの若者や子育て世代が高額な自己負担のために治療を辞退せざるを得ないという構図もあります。「高所得者は多く負担してもらうが少なく給付を出す」というのは公的医療保険の不平等です。高齢者の自己負担3割や安易な受診を抑制するといった、本来の医療政策でクリアされるべきで、セーフティネットになっている高額療養費制度を今以上にキツくしてほしくないですね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:第186回社会保障審議会医療保険部会【資料2】医療保険制度改革について(2024年11月21日)

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「聴こえ8030運動」を加齢性難聴予防に推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。「聴こえ8030運動」は「予防、受診、介入」が柱 「加齢性難聴対策を介した共生社会の実現への取り組み」をテーマに和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授)が、現在の難聴対策の現状と問題点などについて講演を行った。 わが国は世界一の高齢化社会であり、加齢性難聴の放置は認知症の最大のリスクとなることが知られている1)。2024年の研究報告でも「難聴治療は老年期の認知症の予防に寄与する」という報告も出されている2)。こうした研究結果を踏まえ、日本医学会連合では2023年度よりさまざまな学会と連携し、難聴・聴覚補償機器に関する啓発活動を実施し、難聴への取り組みを行っている。 年代別の聴力レベルの変化について、高齢になればなるほど言葉の聞き取り力は有意に低下し、80代では半数が中等度の難聴となる3)。こうした加齢性難聴対策として「予防、受診、介入」を柱とした「聴こえ8030運動」が始められた。 難聴の原因には、加齢を筆頭に感染症、環境、薬剤など多彩な要因があり、最近では若年者の聴力は悪化傾向にあるという。こうした原因を啓発し、防止することが難聴予防につながると語る。また、わが国の耳鼻科への受診について、「聞こえに不自由を感じている人の受診率」が4割程度と先進国の中でもかなり低い割合であり、若年・中年期の難聴は健康診断などで発見されにくく、後期高齢者保健事業でも聴力検査が採り入れられていない課題があると指摘する。 おわりに和佐野氏は、「今後は適切な聴覚管理での早期介入のためにも、聞こえにくさを感じたら気軽に耳鼻科で聴力検査を受診できるよう、検査のハードルを下げる啓発活動を行っていきたい」と抱負を述べた。宮城県における加齢性難聴対策の取り組み 「言語聴覚士による加齢性難聴対策」をテーマに佐藤 剛史氏(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学/日本言語聴覚士協会)が、言語聴覚士(ST)の立場から高齢者や行政の支援者などへの難聴啓発事業について説明した。 佐藤氏の所属する東北大学と宮城県、仙台市では三者が連携し「高齢者の難聴および誤嚥性肺炎の理解と対応に関する普及啓発モデル事業」を行っている。 本事業は、高齢者の通いの場を中心とした啓発事業であること、行政・大学・地域が役割分担をして運営すること、啓発事業の対象は高齢者だけでなく地域の支援センターの福祉担当者や保健師、職員なども参加すること、自身の「聞こえ」状態が体感できる参加型講習であることを特徴としている。 市町村の職員など支援者向けの研修会は2022年から開催され、過去3回で248人が参加し、研修では耳の解剖や聴力の仕組みなどの講演会が行われている。また、高齢者向けの啓発活動では、加齢性難聴の病態と治療、体験プログラムが行われている。2022~23年の実施状況として、全41会場で合計1,395人が受講した。受講した高齢者へのアンケートでは、965人(平均年齢76歳)から回答を得た。対象者の聞こえの状態では、約7割弱の人が聞こえの不自由さを感じており、補聴器の装着は約2割に止まっていた。受講後に耳鼻科受診について聞いたところ約5割の受講者が「受診をしたい」と回答した。 佐藤氏は、今後の課題としては、「受診につながる長期のフォローアップや『通いの場』に参加できない人への啓発、『聞こえチェック方法』の検討などが必要であり、STの役割としては住民・行政などへの啓発活動や地域作り、高齢者への地域での難聴への支援、健診活動や補聴器装用の専門支援などが考えられる」と提言を行った。加齢性難聴への補聴器装用は認知症予防に寄与 「加齢性難聴と認知症」をテーマに下畑 享良氏(岐阜大学脳神経内科学 教授/日本神経学会 理事)が、難聴と認知症の関連について講演した。 わが国の認知症高齢者は2040年に約580万人(約15%)と推定されている。認知症では、アルツハイマー型認知症が1番多く、同症はアミロイドβが脳に沈着することで発症する。近年の研究では、この沈着に影響する因子に関し「高血圧」「喫煙」「睡眠」など多数の因子が関連していることが指摘されている。そして、先述の研究でも2)難聴が最大の修正可能因子であり、認知症の発症ないし遅延ができる可能性がある。 南デンマーク・57万例を対象とした約9年間の研究では、難聴があって補聴器をしていない人の認知症発症のハザード比は1.20であった一方で、補聴器を装用している人のハザード比は1.06だった結果から補聴器は認知症発症リスクを減少させる可能性があると指摘する4)。 アメリカからも同様の研究報告があり、認知症予防に難聴の人では、補聴器の装用が有効である可能性が示唆されることから、「認知症予防のために今後啓発していく必要がある」とその重要性を下畑氏は語った。「聴こえ8030運動」は80歳で30dBの聴力を保つ国民啓発運動 「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が取り組む『聴こえ8030運動』」をテーマに羽藤 直人氏(愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 理事)が「聴こえ8030運動」について説明した。 聴こえ8030運動は、80歳で30dB(聞こえの閾値)の聴力を保つ国民啓発運動であり、全年代に加齢性難聴の周知、聴力検査などの耳鼻科への受診啓発、補聴器装用率の向上を目指すものである。加齢性難聴者数は1,437万人と推定され、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当するとされている。その一方で耳鼻科受診率は低く、加齢性難聴が疾病であるという認識が不足しているとされる。また、先進国と比較して補聴器装用率もわが国は約1/3、人工内耳普及率も約1/2と低い数字に止まっている。 そこで、日本歯科医師会推進の「8020運動(80歳で20本以上の歯の維持を目標)」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命をサポートする目的で「聴こえ8030運動」を実施した経緯を説明した。運動の目標数字として、80歳で30dBの聞こえを維持している割合が現状30%から20年後には50%への伸長を謳っている。 加齢性難聴対策としては、「大音量で音楽などを聴かない」、「騒音の場所を避ける」、「騒音下の仕事では耳栓」、「静かな場所で耳を休ませる」などがあり、聞こえが悪くなったら補聴器の装用などが勧められる。 おわりに羽藤氏は、「こうした情報を手軽に入手できるように聴こえ8030運動専用のウェブサイトを開設した。加齢性難聴という疾患の周知から聴力検査での耳鼻科受診、そして難聴カウンセリング、補聴器の適合診断を経て、適切な補聴器、人工内耳の普及へとつなげていくことで、認知症の抑制につなげていきたい」と展望を述べた。 講演後に「聴こえ8030運動が拓く加齢性難聴の未来」をテーマに、内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 特任教授)の進行で総合討論が行われた。総合討論では、残置聴力と補聴器の相性や聴こえ8030運動での医師以外の医療従事者の役割と連携、補聴器装用とSTの役割、非専門医への啓発、耳鼻科への診断はいつ行うかなどを話題に活発な議論が行われた。

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日本におけるアルツハイマー病への多剤併用と有害事象との関連〜JADER分析

 アルツハイマー病は、世界的な健康関連問題であり、有病率が増加している。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)やNMDA受容体拮抗薬などによる現在の薬物治療は、とくに多剤併用下において、有害事象リスクと関連している。香川大学の大谷 信弘氏らは、アルツハイマー病治療薬の組み合わせ、併用薬数と有害事象発生との関係を調査した。Medicina誌2024年10月6日号の報告。 日本の医薬品副作用データベース(JADER)より、2004年4月〜2020年6月のデータを分析した。対象は、AChEI(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)またはNMDA受容体拮抗薬メマンチンで治療された60歳以上のアルツハイマー病患者2,653例(女性の割合:60.2%)。有害事象とアルツハイマー病治療薬の併用および併用薬数との関連を評価するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・JADERに報告されたアルツハイマー病治療薬の使用状況は、ドネペジル単剤療法41.0%、リバスチグミン25.0%、ガランタミン17.3%、メマンチン7.8%、メマンチン+AChEI 8.9%であった。・併用薬数は、併用薬なし17.5%、1種類10.2%、2種類8.6%、3種類10.0%、4種類6.1%、5種類以上47.7%であった。・主な併存疾患の内訳は、高血圧35.2%、脂質異常症13.6%、糖尿病12.3%、脳血管疾患10.7%、睡眠障害7.4%、虚血性心疾患6.1%、うつ病4.7%、パーキンソン病4.3%、悪性腫瘍3.1%。・有害事象の頻度は、徐脈6.4%、肺炎4.6%、意識変容状態3.6%、発作3.5%、食欲減退3.5%、嘔吐3.5%、意識喪失3.4%、骨折3.4%、心不全3.2%、転倒3.0%。・メマンチン+AChEI併用療法は、徐脈リスク上昇と関連していた。・ドネペジル単独療法は、骨折、転倒リスク低下との関連が認められた。・多剤併用療法は、有害事象、とくに意識変容状態、食欲減退、嘔吐、転倒の発生率上昇と有意な相関が認められた。・5種類以上の薬剤を使用した場合としなかった場合の調整オッズ比は、意識変容状態で10.45、食欲減退で7.92、嘔吐で4.74、転倒で5.95であった。 著者らは「アルツハイマー病治療における有害事象発生率は、アルツハイマー病治療薬の既知の有害事象や併用パターンとは無関係に、併用薬数と関連している可能性が示唆された」と結論付けている。

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世界初の軟骨伝導集音器、補聴器との違いや利便性とは

 世界初の軟骨伝導集音器に関する特許を有し、販売を行っているCCHサウンド(以下、CCH)が第6回ヘルスケアベンチャー大賞に輝いた―。CCHは細井 裕司氏(奈良県立医科大学 学長)が発見した“軟骨伝導”という聴覚技術を応用し、役所や金融機関での円滑なコミュニケーションを支援する『窓口用軟骨伝導イヤホン』や日常生活で会話を促進し認知症予防に役立つ『軟骨伝導集音器』を発売しているベンチャー企業である。本稿では、10月25日に開催されたヘルスケアベンチャー大賞の最終審査会におけるCCH代表取締役社長の中川 雅永氏によるプレゼンテーション内容を交えて、補聴器との違いや利便性についてお伝えする。軟骨伝導、第3の聴覚として医学的に認められる これまでの聴覚技術は、通常の聞こえである気導と500年前に発見された骨伝導*技術の応用で成り立っていた。しかし、2004年に細井氏が耳軟骨に音声情報を含む振動を与えると気導や骨伝導と同程度に音声情報が明瞭に内耳に伝えられることを発見、これを「軟骨伝導(Cartilage Conduction)」と命名した。軟骨伝導は骨伝導の一種と捉えられがちだが、聞こえのメカニズムや音伝達の性質・特徴はまったく異なり、軟骨伝導では頭蓋骨の振動を必要としないという特徴がある。その理由について、中川氏は「軟骨伝導は音(振動)エネルギーが筒状の外耳道の外半分を形成する外耳道軟骨を振動させて外耳道内に気導音(空気の疎密波)を生成し、その気導音が鼓膜や中耳を介して内耳に達することによる聞こえの現象であるため」と説明した。一方、骨伝導音は、音(振動)エネルギーが頭蓋骨を介して内耳に伝わることにより聞こえる音で、鼓膜や中耳を介しないという。*音が聞こえる経路として空気中の振動を聞く気導と骨から伝わる骨導の2経路を利用 軟骨伝導集音器は加齢性難聴の軽度・中等度の人を対象とし、左右で音量調節が可能、キーン音(ハウリング)がない、長時間利用可能、清潔で衛生的などの製品特徴がある。これについて、同氏は「最も有利な点は、外耳道内に音が生成されるので聞きやすい音を提供できる点にある」とコメントした。また、骨伝導イヤホンに対し、(1)振動子による圧迫、(2)消費電力、(3)音漏れ、(4)両耳聴(ステレオ感、方向感など)における優位性が認められることから「将来的に骨伝導イヤホンは軟骨伝導イヤホンに切り替わっていくだろう」と語った。各自治体で導入が進む窓口用軟骨伝導イヤホン これまで、役所や金融機関の窓口には老眼鏡は設置されているが、聴覚補助に関するものは、スピーカーでは他人に聞かれてしまう、通常のイヤホンは穴があるため衛生面などの観点から使用が難しいなどの課題があった。しかし、CCHが考案し、販売を行っている窓口用軟骨伝導イヤホンは、高齢者をはじめとする耳が不自由な人の対話をサポートすることが可能であることに加え、穴がない、きれいな球体、凹凸がない、表面平滑、清拭できるというメリットが評価され、2024年9月時点で全国の市区町村役場をはじめとする250施設以上の窓口での導入・利活用が進んでいる。また、2025年に開催される大阪・関西万博での導入も決定しているという。 このほか、集音器を使用することで認知症リスクを回避できる可能性があることがLancet国際委員会レポート2017などで報告されているが、「本製品を活用して会話を促進し、脳の活性化を測ることで認知症予防につながる」と説明した。 最後に、今回の受賞を受けて中川氏は「窓口用軟骨伝導イヤホンにより高齢者が生き生きと活躍する社会の実現と難聴者対策を通じて認知症予防に貢献したい。そして、軟骨伝導技術を種々の音響機器に導入して世界初のイノベーションを起こしていきたい」と熱い言葉で話を締めくくった。ヘルスケアベンチャー大賞とは ヘルスケアベンチャー大賞とは、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を開き、社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げ、今年で6回目の開催を迎えた。今回の受賞者は以下のとおり。〇大賞株式会社CCHサウンド/プレゼンター:中川 雅永氏「軟骨伝導による高齢者が生き生きと活躍するための窓口の実現と認知症の予防」◯学会賞tantore株式会社/プレゼンター:中河原 毅氏「舌筋トレーニング向けシート状グミ「tantore sheet」の開発で無呼吸症候群と誤嚥性肺炎の予防」◯ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞(アルファベット順)株式会社Genics/プレゼンター:栄田 源氏「全自動歯ブラシによる口腔および全身の健康維持支援事業」株式会社レナートサイエンス/プレゼンター:長谷川 雪憲氏「人工脂肪を活用した乳房再建・豊胸の実現」株式会社Rhelixa/プレゼンター:松野 智行氏「日本人の遺伝的背景に適合する第2世代エピジェネティック・クロックを利用した生物学的年齢評価および抗老化ソリューション開発事業[エピクロック(R)事業]」

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組織のための老年医学の型―AFHS【こんなときどうする?高齢者診療】第7回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年10月に扱ったテーマ「複雑な問題に落としどころを見つけるには?」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。組織全体で高齢者ケア向上を目指す5つのMの考え方を駆使して患者・家族に適切なケア提供の方法を見出したとしても、組織としてスキルを持つスタッフが十分にいない、予算が足りないなどのリソース不足により、最適なケアを実現できないという状況が多くの施設で起こっています。そこで今回は、組織全体で高齢者医療を改善するための視点を考えてみましょう。まず初診で来院した高齢男性のケースをイメージしてください。例えば、5つのMの1つである「薬(Medication)」に注目すると、服薬情報や高齢者に有害事象を引き起こしやすい薬について確認することが重要になります。80歳男性 初診時の服薬アセスメントいつ行うか誰が行うか何を行うかアセスメント結果の記録方法 どこに、何を記載するのか高リスク薬服用時のアクションプラン 誰に情報共有し、次のアクションにつなげるのか皆さんの施設では、上記のような項目は明確に定められていますか? 病棟ごとに、診療科ごとに、担当者ごとにばらつきはありませんか?もし定まっていない場合、適切な介入がなされる患者もいれば、アセスメントや介入から漏れ、リスクの高い薬を継続して服用している患者もいる可能性があります。医療者が「薬が高齢者に与える影響やリスクを理解している」という段階と、実際にアセスメントや介入が患者に届いている段階には大きな隔たりがあります。同一施設内で一貫して適切な医療が提供されるよう、組織的な対策が必要です。対策の一例として、北米を中心に導入されているシステムをご紹介します。組織のための老年医学の型:エイジフレンドリ・ヘルスシステムの利点Age Friendly Health System(AFHS)は、施設全体で高齢者に安全で適切な医療を提供するためのフレームワークで、属人性を減らし、標準化されたケアを実現するための取り組みです。2018年に始まり、北米では約4,000施設が認証を取得し、300万人以上の患者がこの仕組みの恩恵を受けているといわれています。AFHS導入により、入院期間の短縮、手術時間の短縮、コスト削減、再入院率の低下、転倒予防スクリーニングの実施率向上といったメリットが報告されています1,2)。現状を見つめる:自施設でできていることを見つけよう!AFHSは日本でも十分に応用可能なスキームです。まずは施設内ですでに行われている取り組みを俯瞰し、どこがうまく機能しているかを見つけることが重要です。AHFS実践のポイント(1)自施設でできていることを確認する(2)不十分な点を見つけて補強する(3)外部評価を活用するお気付きの方もいるかもしれませんね!AFHS は、5つのMからMulti complexityを除いた4つのM(認知・身体機能・薬・大切なこと)のアセスメントと介入の標準化を目指しています。ですから、薬に限らず、転倒リスクや認知機能、本人が大切にしていることについても、アセスメントの時期、担当者、方法、記録方法を見直してみてください。そうすることにより、各分野の優先順位が整理され、チーム全体で適切な資源配分をしやすくなります。すべての施設において、すでにうまくできている部分が必ず存在します。まずその強みを認識し、次に改善が必要な部分を見つけましょう。外部からのフィードバックも含め、小さな改善から始めることで、自施設の強みをさらに引き出すことが大切です。最初から大きな改善をする必要はありません。自施設の強みを活かし、持続的なケアの向上を目指しましょう! オンラインサロンではもやもや症例検討会とAHFSの実践のコツをシェアオンラインセッションでは、理学療法士のサロンメンバーから寄せられたもやもや症例ディスカッション、そしてAFHSを自施設で活用するためのさらに細かなコツをお話いただいています。参考1)The John A.Hartford Foundation.Age-Friendly Health Systems in Action.2)樋口雅也. 医学のあゆみ 291巻3号.医歯薬出版;2024. p222-227.

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「週末戦士」でも脳の健康に利点あり

 週に1〜2回しか運動をしない「週末戦士」でも、運動を全くしない人に比べると、高齢になったときの頭の回転の速さは定期的に運動をしている人と同等であることが、新たな研究で明らかになった。ロス・アンデス大学(コロンビア)スポーツ科学分野のGary O’Donovan氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に10月29日掲載された。研究グループは、「本研究は、週末戦士の運動パターンと定期的な運動パターンの双方が、軽度認知症(MCI)のリスク低下に同程度の効果があることを示した初の前向きコホート研究だ」と述べている。 この研究でO’Donovan氏らは、メキシコシティ前向き研究の参加者から抽出した1万33人(平均年齢51±10歳)のデータを分析した。これらの研究参加者は、1998年から2004年のベースライン調査と2015年から2019年の追跡調査を受けていた。参加者を、ベースライン時の週当たりの運動頻度(1回未満、1〜2回、3回以上)に基づき、運動をしない群(1回未満、7,945人)、週末戦士群(1〜2回、726人)、定期的運動群(3回以上、1,362人)の3群に分類した。また、2回目の調査時に参加者のMCIをミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination;MMSE)で評価し、「週末戦士」の運動パターンとMCIとの関連を検討した。MMSEでは、一般の人におけるMCIのカットオフ値とされる22点以下と、高齢者におけるMCIのカットオフ値とされる23点以下の2つの基準を用いた。 平均追跡期間16.2年の間に、運動をしない群で2,045人(25.74%)、週末戦士群で103人(14.19%)、定期的運動群で252人(18.50%)がMMSEのスコア22点以下で定義されるMCIと判定されていた(計2,400人)。解析の結果、MCIリスクは、運動をしない群に比べて、週末戦士群で25%(ハザード比0.75、95%信頼区間0.61〜0.91)、定期的運動群で11%(同0.89、0.78〜1.02)、週末戦士群と定期的運動群を合わせた場合で16%(同0.84、0.75〜0.95)、それぞれ低いことが示された。この結果から、理論的には、もし全ての中年期の人が週に1〜2回、運動やスポーツを行った場合には、MMSEのスコア22点以下で定義されるMCIの13%、23点以下で定義されるMCIの10%が回避されると推定された。 このような結果を受けて研究グループは、「この研究結果は、忙しい人でも週に1~2回のスポーツや運動のセッションに参加することで認知機能の維持にメリットが得られることを示唆するものであり、重要だ」と結論付けている。また、運動が脳の健康にもたらすベネフィットについては、「運動は、脳の健康維持に有益な神経化学物質の分泌を促進し、脳の変化と適応の能力をサポートすることで、脳に良い影響を与える可能性がある」との見方を示している。 さらに研究グループは、「週末戦士の運動パターンは、忙しい人にとってより便利な選択肢となる可能性があるため、本研究は政策と実践に重要な意味を持つ」と述べている。

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抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連

 抗てんかん薬が早期に処方されていた患者は、そうでない患者に比べて認知症発症リスクが低下する可能性を示唆するデータが報告された。横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科学の池谷直樹氏らが国内のレセプトデータを用いて行った解析の結果であり、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に9月10日、短報として掲載された。 アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患による認知症(変性性認知症)は、脳内でのアミロイドβやタウタンパク質の蓄積が主要な原因と考えられており、それらの変化は変性性認知症発症のかなり以前から生じていることが知られている。また、変性性認知症と関連しててんかん様の症状を来すことがあり、そのような病態に対しては抗てんかん薬が変性性認知症治療に対して現在使われている薬剤とは別の機序で、進行抑制に寄与する可能性が、基礎実験や小規模な症例報告で示されている。しかし、これまで大規模なデータを用いた研究で、その効果が示されたことがなかった。これを背景として池谷氏らはレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いたコホート研究を行った。 2014年8月と5年後の2019年8月の外来患者データから、年齢が55~84歳で、2019年時点でてんかんと診断されているが、2014年時点ではてんかんと診断されていない(=新たにてんかんを発症した)患者を抽出した上で、2014年時点で認知症と診断されている患者を除外。その患者群から、傾向スコアマッチングにより背景因子(年齢や性別、併存疾患)を調節し、抗てんかん薬の処方の有無が異なるデータセットを作成した。 評価項目は2019年時点での変性性認知症の診断とし、血管性認知症は評価対象から除外した。なお、データセットは2件作成され、主要解析(コホート1)には、新たにてんかんを発症し、2014年時点で抗てんかん薬が処方されていた患者を含め、抗てんかん薬早期処方の影響の評価を可能とした。二つ目のデータセット(コホート2)は感度分析に用いられ、2014年と2019年のいずれか、あるいは両時点でてんかんの診断がある患者を含めた。 コホート1は各群4,489人(両群ともに女性48.0%)であり、2019年時点で変性性認知症と診断された患者は、抗てんかん薬処方あり群が340人(7.6%)、処方なし群が577人(12.9%)であって、オッズ比(OR)0.533(95%信頼区間0.459~0.617)と、抗てんかん薬処方あり群において変性性認知症の診断が有意に少なかった。コホート2は各群2万3,953人(両群ともに女性48.3%)であり、2019年時点で変性性認知症と診断された患者は、抗てんかん薬処方あり群1,128人(4.7%)、処方なし群1,906人(8.0%)であって、OR0.556(同0.514~0.601)と、コホート1同様に抗てんかん薬処方あり群において変性性認知症の診断が有意に少なかった。 なお、探索的分析として、処方されていた抗てんかん薬のタイプ(広域スペクトルと狭域スペクトル)別に変性性認知症の診断率を比較した結果、明確な違いは認められなかった。 著者らは、NDBを用いた観察的横断研究であることを解釈上の留意点として述べた上で、「てんかん診断前の抗てんかん薬の使用はその後の変性性認知症の発症率の低さと関連していた。これは、てんかんの早期症状(脳波異常などを含む)を基に、認知症の発症を抑える目的で、抗てんかん薬を早期処方することを正当化する根拠となり得る」と結論付け、「前向き研究が必要とされる」と付け加えている。 なお、本研究結果は匿名レセプト情報等を基に、著者らが独自に解析・作成した結果であり、厚生労働省が作成・公表している統計等とは異なる。

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最新 神経眼科エッセンスマスター-診察の基本と疾患別の診療の実際

神経眼科のエキスパートが最新の内容で“わかりやすく”解説「眼科診療エクレール」第5巻神経眼科診療において、(1)疑問に思ったことが直ぐ参照できる、(2)実際の診療に即した内容で臨床に役立つ、(3)患者に説明できる、の3点をコンセプトとして、神経眼科のエキスパートが、最新の内容でわかりやすく解説した極めて良質な参考書。高度な専門的知識と診療技術が必要なために「難解」とされる神経眼科診療に必要な神経機能解剖の知識、問診・視診の技術、さらに検査法を詳しく解説。そのうえで、視神経・視路疾患、眼球運動障害、眼振、瞳孔異常/眼瞼機能異常、そして眼窩および全身疾患まで、神経眼科疾患を網羅的に取り上げて、疾患の背景、病態生理、典型的所見、実際の治療法について解説。非常に高い死亡率の急性浸潤性副鼻腔真菌症、視力予後や生命予後不良の疾患、視神経先天異常や腫瘍との鑑別、高次視覚情報処理機構の障害なども盛り込まれており、神経眼科への興味と理解が深まる絶好の書。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新 神経眼科エッセンスマスター -診察の基本と疾患別の診療の実際定価16,500円(税込)判型B5判頁数384頁発行2024年8月担当編集澤村 裕正(帝京大学)相原 一(東京大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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中年初期の質の低い睡眠は中年後期の脳の老化と関連

 入眠困難や睡眠維持困難などの睡眠の質の低下が認められる中年初期の人は、中年後期になると脳の老化が進んでいる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のClemence Cavailles氏は、「脳スキャンを用いて試験参加者の脳年齢を測定したわれわれの研究から、質の低い睡眠は、中年期の段階で、脳年齢の3年近くの加齢と関連していることが示唆された」と述べている。米国立老化研究所の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Neurology」に10月23日掲載された。 本研究では、589人の成人(平均年齢40.4±3.4歳、女性53%)を対象に、中年初期の睡眠と脳の老化の進行との関連が検討された。これらの参加者は、試験開始時とその5年後に睡眠パターンに関する質問票に回答しており、試験開始から15年後に脳スキャンを受けていた。Cavailles氏らは、質の低い睡眠を、「短い睡眠時間」「悪い睡眠の質」「入眠困難」「睡眠維持困難」「早朝覚醒」「日中の眠気」の6個の特徴に分類し、参加者をこれらの特徴が該当する数(0〜1個、2〜3個、4個以上)に応じて3群に分けた。 年齢、性別、高血圧、糖尿病などの潜在的な交絡因子を調整して解析した結果、質の低い睡眠の特徴が2〜3個該当した人と4個以上該当した人では0〜1個該当した人と比べて、脳年齢がそれぞれ1.6歳と2.6歳高いことが明らかになった。また、5年間の追跡期間を通じて、「悪い睡眠の質」「入眠困難」「睡眠維持困難」「早朝覚醒」が持続していた場合には、脳年齢の増加と関連していることも示された。 ただし、この研究では関連性が示されただけであり、質の低い睡眠が脳の老化の原因であることが証明されたわけではない。しかし、論文の上席著者であるUCSF精神医学分野のKristine Yaffe氏は、「われわれの研究結果は、脳の健康を維持するために、若いうちから睡眠問題に対処することの重要性を強調するものだ。例えば、一貫した睡眠スケジュールの維持、運動の実施、就寝前のカフェインやアルコール摂取の回避、リラクゼーションテクニックの使用などがそうした対処法の例だ」と述べている。 Yaffe氏はさらに、Neurology誌のニュースリリースの中で、「今後の研究では、質の低い睡眠を改善する新しい方法を見つけ、若い人の脳の健康に対する睡眠の長期的な影響を調査することに焦点を当てるべきだ」と述べている。

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致死性不整脈を起こす、植物界最強の猛毒【これって「食」中毒?】第6回

今回の症例年齢・性別45歳・男性患者情報5月上旬に自宅の裏山で山菜を採取して、お浸しや天ぷらにして19時頃に食べた。19時半頃より口唇周囲・舌・口腔内にしびれ感が生じ、20時頃より悪心・嘔吐が生じた。次第に顔面・前胸部・四肢にしびれ感が広がり、21時頃には四肢の脱力のため歩行不能となった。21時半に帰宅した長女により発見されて、22時15分に救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数34/分、SpO2 98%(フェイスマスクにて酸素1L/分)、血圧72/40mmHg、心拍数152bpm(不整)、意識レベルJCS 10、瞳孔 左右6.0mm同大、対光反射 緩慢、体温35.6℃であった。心電図モニターでは非持続性心室頻拍(図1)を認めた。また、四肢の筋力低下、および四肢末梢の冷感・湿潤を認めた。(図1)心電図で非持続性心室頻拍を認める画像を拡大する検査値・画像所見末梢血では、WBC 4.80x103/mm3、Hb 12.8g/dL、Ht 37.9%、Plt 162x103/mm3、生化学検査では、TP 6.2g/dL、AST(GOT) 18IU/L、ALT(GPT) 17IU/L、LDH 314IU/L、CPK 112IU/L、AMY 340IU/L、Glu 128mg/dL、BUN 12mg/dL、Cr 0.9mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 108mEq/L、動脈血ガス(フェイスマスクにて酸素1L/分)では、pH 7.335、PaCO2 32.4Torr、PaO2 148.5Torr、HCO3- 17.0mmol/L、BE -4.2mmol/L、乳酸値 4.2mmol/Lであった。頭部および胸腹部CTでは異常所見を認めなかった。問題画像を拡大する

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高齢者の認知症予防に最も有用な野菜の種類は?

 オーストラリア・エディスコーワン大学のNegar Ghasemifard氏らは、オーストラリアの高齢女性における、特定の野菜を含む総野菜摂取量と長期の老年性認知症リスクとの関連を調査した。Food & Function誌2024年10月28日号の報告。 対象は、地域在住の70歳以上の高齢女性1,206人。ベースライン時(1998年)、検証済みの食物摂取頻度調査票を使用して、野菜の総摂取量、野菜の種類別摂取量(黄/オレンジ/赤い野菜[YOR]、アブラナ科、ネギ科、緑色の葉野菜[GLV]、豆類)を推定した。老年性認知症は、80歳以降に発症するすべての認知症と定義した。入院およびまたは死亡を含む老年性認知症イベントは、リンクした健康記録より収集した。関連性の評価には、多変量調整(APOE4遺伝子を含む)Cox比例ハザードモデルの制限付き3次スプラインを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14.5年間のフォローアップ期間中(約1万5,134人年)の、老年性認知症イベントは207件(17.2%)、老年性認知症による入院は183件(15.25%)、死亡は83件(6.9%)であった。・野菜総摂取量が最低四分位(Q1)の女性と比較し、摂取症の多い女性(Q3、ただしQ4ではない)では、老年性認知症による死亡リスクが39%低下した。・Q1と比較し、YOR摂取量がQ4の女性は、老年性認知症イベント(47%)、入院(46%)、死亡(50%)のリスクが一貫して低かった。・同様に、ネギ科の摂取量が最も多い(Q4)女性は、Q1と比較し、老年性認知症イベント(36%)、死亡(49%)のリスクが低かった。・GLV摂取量が最も多い(Q4)女性では、老年性認知症による死亡が45%低下していた。 著者らは「認知症予防に対し、野菜総摂取量は重要であるが、老年性認知症リスクを考慮すると、ネギ科、GLV、とくにYORが最も有用である可能性が示唆された。これらの結果が、男性にも当てはまるかについては、男性を含むコホートでの検証が必要とされる」としている。

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新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第269回

新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク疾患によっては、罹病中に運転することが交通事故のリスクとされるものがあります。たとえば、糖尿病でインスリン治療を受けている人は、無自覚低血糖によって運転の支障を来すことがあります。そのため、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が設けられています。運転前に血糖測定を行うように指導することが重要です。発熱していて、医療機関を受診する場合、公共交通機関を使うと他人に感染を広げてしまうので、自家用車を自分で運転して受診する人が多いでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、どうも交通事故のリスクが高くなるようで…。Erdik B, et al. Driving Under the Cognitive Influence of COVID-19: Exploring the Impact of Acute SARS-CoV-2 Infection on Road Safety. Neurology, 2024;103 (7_Supplement_1):S46-S47.この論文は、COVID-19の急性発症と交通事故数の関連性を調査したものです。2020~22年のデータを用いて、米国7州での交通事故記録とCOVID-19の統計を比較分析しました。結果、急性のCOVID-19と交通事故増加の関連性が観察されました(オッズ比:1.5)。つまり、急性期のCOVID-19で運転すると、交通事故のリスクが高くなるということです。ちなみに、この交通事故リスクは、飲酒運転やてんかんを持っている場合のリスクと同程度であったと考察されています。これを受けて筆者らは、COVID-19は、その後の後遺症(Long COVID)だけでなく、急性期の交通事故リスクを高める可能性があると指摘しています。熱があればそりゃしんどいだろうと思いますが、機序としてはウイルスの神経系への影響とも述べられています。医療従事者は、COVID-19の患者を診療する際、認知・運転の低下の可能性を考慮する必要があります。できるなら、家族が運転する車で来院いただきたいところですね。

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日本の頭痛外来受診患者、頭痛の種類や特徴は?

 頭痛外来を受診した患者に関する単一施設研究の報告は行われているものの、日本で実施された多施設共同研究は、これまでほとんどなかった。静岡赤十字病院の今井 昇氏らは、日本において頭痛外来を受診した患者の臨床的特徴、頭痛の種類、重症度、精神疾患の併存について多施設分析を実施し、ギャップを埋めることを目指し、本研究を実施した。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2024年10月15日号の報告。 3ヵ所の頭痛外来を受診した頭痛患者2,378例を対象に、臨床的特徴をプロスペクティブに評価した。視覚的アナログスケール(VAS)などのベースライン時の人口統計学的特徴、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)やこころとからだの質問票(PHQ-9)などの精神疾患の評価を行った。頭痛の種類は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)、その他の一次性頭痛疾患、二次性頭痛に分類した。頭痛の種類間でのパラメータを比較するため、必要に応じてKruskal-Wallis検定または共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・最も多かった頭痛の種類は、片頭痛(78.8%)であり、次いで緊張型頭痛(12.2%)、二次性頭痛(5.5%)、その他の一次性頭痛疾患(2.1%)、TAC(1.6%)であった。・片頭痛患者は、初診時の年齢が他の頭痛患者よりも有意に若年であった。【片頭痛】年齢中央値:32.0歳【緊張型頭痛】年齢中央値:47.0歳【二次性頭痛】年齢中央値:39.0歳【その他の一次性頭痛疾患】年齢中央値:49.5歳【TAC】年齢中央値:47.0歳・TAC患者は、重症度と精神症状が最も重度であり、VAS(p<0.001)、GAD-7(p=0.019)、PHQ-9(p<0.001)のスコア中央値が、他の頭痛患者よりも有意に高かった。【TAC】VAS:90.0、GAD-7:7.0、PHQ-9:7.5【片頭痛】VAS:70.0、GAD-7:5.0、PHQ-9:5.0【緊張型頭痛】VAS:50.0、GAD-7:4.0、PHQ-9:4.0【その他の一次性頭痛疾患】VAS:65.0、GAD-7:4.0、PHQ-9:3.5【二次性頭痛】VAS:60.0、GAD-7:3.0、PHQ-9:3.5 著者らは「頭痛外来を受診した患者の多くは、片頭痛患者であった。TAC患者は、他の頭痛患者よりも頭痛の重症度および精神症状が有意に高いことが確認された」とまとめている。

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epilepsy(てんかん)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第15回

言葉の由来「てんかん」の英名は“epilepsy”(エピレプシー)といいます。この言葉は、ギリシャ語の“epilambanein”(取りつかれる)から派生したもので、古代ギリシャの魔術的な信仰を反映しています。当時、てんかんは悪霊に取りつかれて起こると考えられていたようです1)。そして、この言葉は、ラテン語を経て現代の英語にまで引き継がれています。言葉にも現れているとおり、古代から中世にかけて、てんかんの患者は不浄や悪と見なされており、てんかんに関連した差別も生み出されました。てんかんの発作も悪霊によるものと信じられていたため、治療として儀式やおはらいが行われました。18世紀に入って、てんかんが脳の異常な電気活動によるものであるという認識が広まり、現代の医学では、てんかんは脳の神経細胞の異常な放電が原因であることが明らかになっています。併せて覚えよう! 周辺単語けいれんseizure神経内科neurology異常な電気活動abnormal electrical activity抗てんかん薬antiepileptic drugs(AED)脳波electroencephalogram(EEG)この病気、英語で説明できますか?Epilepsy is a neurological disorder characterized by recurrent seizures caused by abnormal electrical activity in the brain. Seizures can vary in intensity and frequency and may include convulsions or loss of consciousness.参考1)Patel P, et al. Epilepsia Open. 2020;5:22-35.講師紹介

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