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日本人の認知症予防に有効な緑茶やコーヒーの摂取量は

 緑茶やコーヒーには認知機能低下の予防効果があることが報告されているが、認知機能に対する長期的な影響は、よくわかっていない。慶應義塾大学の是木 明宏氏らは、中年期における緑茶やコーヒーの摂取が認知症予防に及ぼす影響を調査した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年1月8日号の報告。 JPHC佐久メンタルヘルスコホートには、1,155人(1995年時点の年齢:44〜66歳)の参加者が含まれた。参加者の緑茶およびコーヒーの摂取量は、1995年と2000年のアンケートにより評価した。認知機能レベルは、2014〜15年に神経心理学的評価を行った。有意な認知機能低下(マルチドメイン認知機能低下およびより重篤な状態と定義)を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。性別および年齢による層別化解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・毎日2〜3杯の緑茶を摂取した人は、潜在的な交絡因子で調整した後、認知機能低下リスクの有意な減少が認められた(オッズ比[OR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.35〜0.91)。・4杯以上の緑茶の摂取により、統計学的に有意な差は消失した。・緑茶による認知機能保護効果は、とくに男性で確認された(OR:0.38、95%CI:0.19〜0.76)。・完全に調整された同モデルにおいて、高齢者(1995年時点の平均年齢:53歳以上)では、毎日1杯以上のコーヒー摂取により認知機能低下リスクの有意な減少が確認された(OR:0.54、95%CI:0.34〜0.84)。ただし、サンプル全体では、有意な差は認められなかった。 著者らは「中年期における適度な緑茶摂取は、とくに男性において、認知症予防に有効である可能性が示唆された。また、コーヒーによる認知症予防効果は、高齢者においてより有益であろう」と結論付けている。

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見直されるガバペンチンの転倒リスク、安全性に新知見

 ガバペンチンは、オピオイド系鎮痛薬の代替薬として慢性疼痛や神経痛の緩和に広く用いられているが、高齢者に投与した場合、転倒リスクを高めるという報告もある。このような背景から高齢者へのガバペンチンの処方には慎重になるべき、という意見もある。しかし、米ミシガン大学医学部内科のAlexander Chaitoff氏らの最新の研究で、この鎮痛薬が当初考えられていたよりも高齢者にとって安全である可能性が示唆された。 研究を主導したChaitoff氏は、「ガバペンチンは、軽度の転倒による医療機関への受診回数を減少させる傾向を示したが、重症度のより高い転倒関連事象(股関節骨折や入院など)リスクとの関連は確認されなかった」と述べている。同氏らの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に1月7日掲載された。 ガバペンチンの処方件数は2020年には5000万件近くに達したが、この薬が高齢者の転倒リスクを高める可能性を指摘した複数の研究の影響で、2022年には処方件数が20%減少した。しかし、研究グループは、適応となる疼痛疾患自体も転倒リスクを高めることから、ガバペンチンによる転倒リスクが誇張されている可能性があると考えた。このような背景から、研究グループは、ガバペンチンと、転倒リスクを高めるとの報告がない神経痛治療薬デュロキセチンの転倒リスクを比較検討することとした。 この研究では、2014年1月から2021年12月の間に糖尿病、帯状疱疹、線維筋痛症に関連する神経痛のためにガバペンチンまたはデュロキセチンを処方された65歳以上の高齢者5万7,086人(ガバペンチン5万2,152人、デュロキセチン4,934人)のデータを収集・分析した。主要評価項目は、薬剤の投与開始後6カ月以内の、あらゆる転倒による受診リスクとした。副次評価項目は重度の転倒関連イベント(転倒による股関節骨折、救急外来受診、または入院と定義)の発生リスクとした。 その結果、ガバペンチンを処方された患者では、デュロキセチンを処方された患者に比べて、あらゆる転倒のリスクが全体で48%(ハザード比0.52、95%信頼区間0.43~0.64)低いことが判明した。しかし、重度の転倒関連イベントの発生リスクに関しては、両群に違いは認められなかった。 研究グループは、「高齢者において、ガバペンチンが転倒リスクを高めないとは断言できない。しかし、ガバペンチンの投与開始から6カ月間における転倒リスクは、他の代替薬と比較して高いわけではなく、むしろ安全性の面ではより適している可能性がある」と結論付けた。 また、研究グループは、今回の研究の限界点として、対象者にフレイルの高齢者が少なかったため、転倒件数が過小評価された可能性があることを挙げている。

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「ニラ」と思って食べたら“悪心・嘔吐”、何の中毒?【これって「食」中毒?】第8回

今回の症例年齢・性別56歳・女性患者情報2月上旬に自宅の庭で栽培していた「ニラ」だと思って採取した植物の葉を、キャベツと一緒にみじん切りにして、豚の挽肉、摺り下ろしたニンニクやショウガ、調味料と混ぜて餃子にし、フライパンで焼いた。19時頃に食べ始めると、19時30分頃より口腔内が唾液で溢れ、嘔気が生じて、嘔吐を繰り返したため、20時50分に救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数20/分、SpO2 98%(室内気)、血圧122/76 mmHg、心拍数84 bpm(整)、意識レベルJCS 0、瞳孔 左右3.5 mm同大、対光反射 迅速、体温36.6℃であった。発汗、流涎、悪心・嘔吐を認めた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 6.40x103/mm3、Hb 11.8g/dL、Ht 34.6%、Plt 180x103/mm3、生化学検査では、TP 6.4g/dL、GOT(AST) 22IU/L、GPT(ALT) 18IU/L、LDH 284IU/L、CPK 98IU/L、AMY 326IU/L、Glu 106mg/dL、BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.4mEq/L、Cl 106mEq/Lであった。胸腹部CTでは異常所見を認めなかった。問題画像を拡大する

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第246回 WHOが封じ込めてきた“ある感染症”、アメリカの脱退で水の泡か?

1月20日、アメリカではドナルド・トランプ氏がついに第47代大統領に就任した。就任前から大統領令を乱発するだろうと予想されていたが、就任当日いきなり世界保健機関(WHO)から脱退することを定めた大統領令に署名した。もっともご存じのように、トランプ大統領のWHO脱退宣言は今回が初めてではない。前回の第45代大統領期(2017~2021)の2020年4月、新型コロナウイルス感染症に関連し、WHOが意図して中国寄りの姿勢をとっていると批判。その姿勢が対応の遅れと全世界的なパンデミックを招いたとして同年7月、1年後の2021年7月にWHOから脱退する大統領令に署名した。だが、この年に行われた大統領選でジョー・バイデン氏に敗退し、翌2021年1月にバイデン大統領が就任すると、トランプ氏によるWHO脱退の大統領令は即刻撤回され、実現には至らなかった。ちなみに、なぜトランプ氏の大統領令が1年後の脱退だったかというと、1948年に米国連邦議会上下両院合同会議で採択されたWHOからの脱退については、1年前の通告と分担金の支払いを終えることが条件となっていたからだ。さすがのトランプ氏も過去の決議を破ることまではできなかったということだ。しかし、今回はこれから4年の大統領任期があるため、脱退が現実のモノとなるのは必至の情勢である。トランプ大統領が新型コロナ対応でWHOの姿勢を非難した根拠となったのが、2019年12月末という早い段階で台湾当局がWHOに提供していた中国・武漢での新型コロナ発生状況の文書だ。2020年4月に台湾当局はこの文書を公開したが、そこには確認された患者が隔離措置を受けていると記述されていた。これについてWHOは「ヒトからヒトへの感染について言及はなかった」とし、一方の台湾当局は「隔離措置を受けているという情報からヒト・ヒト感染は容易に想像できたはず」と主張。ほぼ水掛け論となっている。結果責任だけを問うならば、少なくとも3月までパンデミック宣言を行わなかったWHOの危機意識は適切でなかったと言えるが、実のところ当時のトランプ大統領も新型コロナの脅威を意図的に軽視していたことは、後に米紙ワシントン・ポストの編集委員であるボブ・ウッドワード氏が本人にインタビューして出版した書籍で明らかにされている。そもそも2020年2月段階では中国の対応を半ば評価していたトランプ大統領が“豹変”するのは、アメリカに感染が拡大して大混乱となった2020年4月以降で、どうみても他責である。アメリカのWHO脱退が招く問題さて今回、アメリカのWHO脱退が現実になると、まず予算が直撃を受ける。WHOの予算は各国の分担金と任意の拠出金などから構成されているが、アメリカから提供された資金は22~23年時を見ると予算総額の約15%にあたる12億8,400万ドル(日本円でおよそ2,000億円)。これがなくなると多方面に影響が出ると考えられるが、その際たるものとして個人的に危惧するのが、「ポリオウイルス封じ込めのための世界的行動計画(GAP)」への影響である。GAPはWHOでもっとも多くの予算がつぎ込まれている事業の1つだ。すでにポリオ撲滅に関しては、ほぼ最終段階にきている。現時点で野生株ポリオウイルス(1型)の常在国はアフガニスタンとパキスタンの2ヵ国のみ。2022年の両国での野生株による発症確認はアフガニスタンが2例、パキスタンが20例で、ほかにこの地域から伝播したとみられる症例がアフリカのモザンビークやマラウイでごく少数確認されたのみ。むしろ全世界的に見ると、現在は生ワクチン由来のウイルス株による感染確認のほうが多く報告されている。このため現在のポリオ撲滅作戦は常在2ヵ国での封じ込めと各国での不活化ワクチンへの切替えや保管中の不要なウイルス株の廃棄に移行している。しかし、ここでの不安要素は少なくない。まず、常在国のアフガニスタンは今も政情不安定で、疫学データの信頼性にも疑問符が付く。さらにワクチン株の感染者が多数報告されている中部・南部アフリカの各国は、公衆衛生関連の行政機関はまだ脆弱である。その意味でいずれも先進国が提供する資金と人材は欠かせない。こうした最終局面でアメリカの資金がWHOに入らなくなれば、GAPが行う事業は先細りしかねない。そんなこんなもあり、私自身は胸騒ぎがしてならないし、今後ポリオの感染動向は今まで以上に注視していこうと考えている。

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米アルツハイマー病協会が新たな診療ガイドラインを作成

 アルツハイマー病(AD)の専門家グループが、新たに包括的な診療ガイドラインを作成し、家庭医や脳専門医がADおよびAD関連疾患(ADRD)を最も効果的に検出する方法を提示した。この新ガイドラインは、「Alzheimer’s & Dementia」に12月23日掲載された。 このガイドラインでは、次に挙げる3つの一般的な基準に従い脳の健康状態を評価することを推奨している。それは、1)患者の全体的な認知障害のレベル、2)記憶、推論、言語、気分などに関わる特定の症状の有無、3)症状を引き起こしている可能性のある脳疾患の有無。 本ガイドラインの筆頭著者である、米アルツハイマー病協会および米ハーバード大学医学大学院神経学分野のAlireza Atri氏は、「これらの診断領域は、ADをはじめとする認知症に関する新たな研究成果が得られるたびに、新しい検査方法をガイドラインに組み込むことができるよう、意図的に広く定義されている」と話す。また同氏は、「本ガイドラインは、米国初の学際的なガイドラインとして広範な臨床状況で利用できるように設計されており、高品質で個別化された診断プロセスを体系的にまとめた包括的な基盤を提供する。このプロセスには特定の検査が組み込まれており、分野の進展に応じて更新することが可能だ」と説明する。さらに、「新しいツールやバイオマーカーが十分に検証され、実臨床で使用されるようになれば、本ガイドラインも、細部で部分的な修正が必要になるだろう」と付け加えている。 ADをはじめとする認知症の研究は着実に進展しているが、認知機能低下の診断に関する現在のガイドラインは20年以上も前に作られたものだと専門家は指摘する。さらに、これらのガイドラインは神経学や認知症の専門医を対象としたものであり、脳の健康に不安のある患者を診察する家庭医に対する指針は示されていなかった。こうした現状を踏まえて、アルツハイマー病協会は今回のガイドライン作成に当たり、脳の健康の評価プロセスを刷新するために、プライマリケア医や専門医など、複数の医療分野の専門家から成るワーキンググループを招集した。 新ガイドラインの上席著者でアルツハイマー病協会の最高科学責任者であるMaria Carrillo氏は、「新ガイドラインは、記憶に関する訴えを評価する際の指針を医師に提供する重要なものだ。記憶の問題の根底にはさまざまな原因が関与している可能性がある。そのため、そのような訴えの評価は、ADを早期かつ正確に診断するための出発点となる。さらに、このガイドラインは、記憶障害の一因となる可能性のある他の根本的な原因に関する情報を臨床医に提供する」とアルツハイマー病協会のニュースリリースの中で述べている。 脳の健康状態の総合的な評価には、次のようなことが含まれている。・記憶力と思考力のテスト・年齢、認知症の家族歴、高血圧、喫煙などのリスク因子の評価・認知機能の低下を反映している可能性のある日常生活の症状の評価・MRIまたはCTによる脳の検査、およびその他の臨床検査 ワーキンググループによれば、新しい検査やスキャンは、開発され次第、このフレームワークに追加される可能性があるという。本ガイドラインの共著者である米マサチューセッツ総合病院前頭側頭葉疾患ユニットのBradford Dickerson氏は、「このガイドラインは、従来のガイドラインの範囲を拡大し、診断プロセス全体にわたる推奨事項を臨床医に提供する」と述べる。同氏はまた、「われわれは医療専門家に対して、認知症評価の目標についての自分の考えが患者と一致しているかを確認することから始めることを推奨している。そのためには通常、プロセスの具体的な手順について患者に説明し、理解を得るための話し合いが必要になる。その後、症状や検査に関する情報の取得に必要な手順を概説し、患者に合わせたさまざまな診断テストを行い、診断開示プロセスに関するベストプラクティスをまとめると良い」と話している。

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日本における片頭痛診療の現状、今求められることとは

 日本では、片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野における実際の治療パターンに関する調査は十分に行われていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、日本の片頭痛患者の実際の臨床診療および治療パターンを医療機関や医師の専門分野別に評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。PLoS One誌2024年12月19日号の報告。 2018年1月〜2023年6月のJMDC Incより匿名化された片頭痛患者のレセプトデータを収集した。片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野別に患者の特性や治療パターンを評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象は、片頭痛患者23万1,156例(平均年齢:38.8±11.8歳、女性の割合:65.3%)。・クリニックで初回処方を受けた患者は81.8%、画像検査を行った患者は42.5%、初回診断時に一般内科を受診した患者は44.4%、脳神経外科を受診した患者は25.9%。・画像検査の実施率は、専門医のいるクリニックで59.4%、専門医のいる病院で59.1%、専門医のいない病院で32.9%、専門医のいないクリニックで26.9%。・全体として、急性期治療を受けた患者は95.6%、予防治療を受けた患者は21.8%。・専門医のいる施設といない施設を比較すると、専門医のいる施設ではトリプタンの処方頻度が高く(67.9% vs.44.9%)、アセトアミノフェンおよびNSAIDsの処方頻度が低かった(52.4% vs.69.2%)。・予防治療の頻度は、専門医がいる施設(27.4%)のほうがいない施設(15.7%)より高く、医療機関の種類を問わず年々増加していた。 著者らは「日本の片頭痛患者のうち、初回診断時に専門医のいる施設を受診した患者は半数のみであり、専門医は非専門医よりも、片頭痛特有の薬剤および予防薬を使用する傾向が高かった」とし「片頭痛患者に対し専門医受診の必要性を広め、専門医と非専門医の医療連携を強化することが求められる」と結論付けている。

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高齢患者の抗菌薬使用は認知機能に影響するか

 高齢患者の抗菌薬の使用は認知機能の低下とは関連しないことが、新たな研究で明らかにされた。論文の上席著者である米ハーバード大学医学大学院のAndrew Chan氏は、「高齢患者は抗菌薬を処方されることが多く、また、認知機能低下のリスクも高いことを考えると、これらの薬の使用について安心感を与える研究結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Neurology」に12月18日掲載された。 研究グループは、人間の腸内には何兆個もの微生物が存在し、その中には認知機能を高めるものもあれば低下させるものもあると説明する。また、過去の研究では、抗菌薬を使用すると、腸内細菌叢のバランスが崩れる可能性のあることが示されているという。Chan氏は、「腸内細菌叢は、全体的な健康の維持だけでなく、おそらくは認知機能の維持にも重要とされている。そのため、抗菌薬が脳に長期的な悪影響を及ぼす可能性が懸念されている」と話す。 今回の研究でChan氏らは、低用量アスピリンの毎日の使用が健康に与える影響を検証する臨床試験のデータを用いて、抗菌薬の使用と認知機能との関連を検討した。対象は、最初の2年間の追跡期間中に認知症を発症しなかった70歳以上の健康なオーストラリア人高齢者1万3,571人(平均年齢75.0歳、女性54.3%)。Anatomical Therapeutic Chemical(ATC)コードを基に、対象者の追跡期間中における抗菌薬の使用を特定したところ、約63%が2年間に少なくとも1回は抗菌薬を使用していた。 2年間の追跡調査終了後、対象者は中央値で4.7年間追跡された。その間に、461人が認知症を発症し、2,576人が認知機能障害はあるが認知症ではない状態を指すCIND(cognitive impairment, no dementia)と診断されていた。社会人口統計学的特徴やライフスタイル因子、認知症の家族歴、試験開始時の認知機能、認知機能に影響を与えることが知られている薬剤の使用を考慮して解析した結果、抗菌薬使用者では非使用者に比べて、認知症リスク(ハザード比1.03、95%信頼区間0.84〜1.25)やCINDリスク(同1.02、0.94〜1.11)の有意な上昇や認知機能スコアの有意な低下は認められなかった。また、抗菌薬の累積使用頻度、長期使用、特定の抗菌薬クラス(β-ラクタム系、テトラサイクリン系、サルファ剤など)や、リスク因子に基づき分類されたサブグループにおいても、抗菌薬の使用と認知機能との間に有意な関連は認められなかった。 このような結果が示されたとはいえ、Chan氏および付随論評の著者である米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のWenjie Cai氏とAlden Gross氏は、「さらなる研究で、抗菌薬の使用と認知機能低下との間に関連性はないことを確かめる必要がある」と述べている。Chan氏は、今回の研究の限界点として、対象者の追跡期間が短期間であった点を挙げ、より長期間の研究を実施して、抗菌薬の使用が長期的に脳の健康に悪影響を及ぼさないことを確認する必要があるとしている。 また、Cai氏らは、「この研究は処方箋の記録に依存しているため、対象者の実際の抗菌薬の使用状況を正確に追跡することはできなかった」ことを別の限界点として挙げている。その上で同氏らは、今後の研究では、抗菌薬の正確な投与量と使用期間を記録し、潜在的な用量反応関係を調査すること、また、異なるクラスの抗菌薬とその相互作用が認知機能に与える影響を調査することの必要性を強調している。

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新しい認知症観と疫学(解説:岡村毅氏)

 「新しい認知症観」という言葉がキーワードになっている。昨年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画」には、お役所とは思えない情熱的な表現がちりばめられている。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ……「新しい認知症観」とは、認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人一人が個人としてできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方…… 認知症の人を含めた国民一人一人が「新しい認知症観」に立ち……共生社会を創り上げていく…… 認知症の人が……最期まで自分らしく暮らせるよう……認知症の人の尊厳を保持できるようにすることが重要……―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― このような熱い思いで国の方針を考えている人がいることに胸が熱くなる。なぜ「新しい認知症観」かというと、認知症ほど、概念が変化しているものはないからだ。近年では「疾病ですらない」というやや極端な意見もある。 私の理解する歴史的変遷を簡単に述べよう。(1)昔の人は認知症になる前に死んでしまったので、多くの人にとって認知症は興味の対象ではなかった。(2)豊かな社会が到来し、認知症の人が増え始めた。人々はパニックになり、「痴呆」と呼び、酷い扱いを受けた。(3)これに対して「認知症は病気である、本人の落ち度でなったわけじゃない、病院で優しく保護しよう」という医学モデルの啓蒙が行われた。病院や施設での「保護」もまた排除であった。(4)認知症は病気であるならば、予防できるはずだ、根絶できるはずだという牧歌的な認知症観が日本でまったりと続いた。(5)スコットランドで認知症の当事者が声を上げ、本人なしに決めないでほしい、という主張が徐々に広まり、認知症国家戦略が世界各地で策定された。(6)日本でも多くの勇気ある当事者が声を上げた。彼らは一様に「自分は認知症と診断されたとき情報を集めたら、数年で何もわからなくなると書いてあって絶望した。しかしいろいろ工夫して楽しく生きているし、仲間と出会って、認知症と共に普通の生活を続けることもできるのだとわかった」と述べている。(7)アルツハイマー型認知症の神経病理学の研究が粛々と進み、プレクリニカル期に介入することで、進行を大幅に遅らせる時代がもうすぐ来そうだ。 認知症観の変革が速すぎて、専門家のはずの私もめまいがしそうだ。高齢化のトップランナーである日本ではなく、スコットランドで21世紀初頭に改革が起きた。しかし認知症基本法も成立し、日本の社会もものすごい勢いで変わっている。素直に政府を評価するべきだろう。 さて、熱く盛り上がったところで、この論文を読んでみよう。非常にがっかりする人も多いのではないか。65歳で診断された人の余命は、男性は5.7年、女性は8年である。85歳だと男性は2.2年、女性は4.5年である。またおよそ3.3年で施設に入所すると淡々と書いてある。これでは、日本の勇気ある当事者の皆さんが戦った、「認知症と診断されたら早期に何もできなくなる」というナラティブそのものではないか。 注意しなければならないのは、これは過去の縦断研究のシステマティックレビューであり、これが正しいとは限らないということだ(逆に間違っていると決めつけてもだめだ)。喜んだり悲しんだりするようなことではなく、過去の知見の集積がこうなっているということだ。 コロンブスがアメリカ大陸を「発見」する前にシステマティックレビュー的なことをしたら、おそらく「大西洋を西のほうに行くと滝がある」と書かれていることだろう。 たとえば、東京都健康長寿医療センターの高島平フィールドから出た論文では、地域の認知症の人のうち、病院で診断を受けていた人は半数以下であった。また、専門医であれば気が付いているはずだが、認知症と診断しても、その後ほとんど変わらない人もそれなりにいる。ただし、今後アミロイドペットなどにより、アルツハイマー型認知症の診断が正確にできるようになると、状況は変わるかもしれない。 予後は、認知症の人を支える社会の仕組みにも大いに影響を受けるだろう。国民皆保険、介護保険制度という世界で最も手厚い制度を擁するわが国で、診断後に数年で亡くなるということはありえない。実際にこのシステマティックレビューでもアジアのデータでは欧米より長生きだそうだ。 私は臨床医であり、同時にコミュニティで社会医学的研究をしている。両方知っている者として少し語らせてもらうならば、「医療から見える人はやはりニーズがあり、それなりの症状がある人が多く、いわば重たいケースが多い」「コミュニティには定義上は認知症になりそうだが楽しく生活している人もいて、こういう人は医療や研究には縁のない人生を歩みそうだから、現在の知見は重たい人に多少引っ張られているようには見える」と考えている。とはいえ、これはあくまで印象である。 認知症観は大きく変革している。疫学はどうしても過去にデザインされたものであり、過去にデータ測定されたものだ。遅れるのは仕方がないだろう。 臨床において大事なことは自分の頭で考えること、患者さんから学ぶこと、そして論文もしっかり読むことだ。いろいろと考えさせられる論文である。

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緑茶に認知症予防効果?~65歳以上の日本人約9千人の脳を解析

 緑茶の摂取が認知症の予防につながる可能性が報告された。柴田 修太郎氏(金沢大学医薬保健学総合研究科 脳神経内科学)らの研究グループは、認知症のない65歳以上の日本人を対象として、緑茶およびコーヒーの摂取量と脳MRIの関係を検討した。その結果、緑茶の摂取量が多いほど、脳白質病変容積が小さい傾向にあった。一方、コーヒーには脳MRIの解析結果との関連はみられなかった。本研究結果は、npj Science of Food誌2025年1月7日号に掲載された。 健康長寿社会の実現を目指し、65歳以上の1万人超を対象として実施されている認知症コホート研究「JPSC-AD研究」の参加者のうち、認知症がなく脳MRIデータを取得できた8,766人を対象として、本研究を実施した。対象者を緑茶、コーヒーの1日当たりの摂取量(200mL以下、201~400mL、401~600mL、601mL以上)で分類し、脳白質病変、海馬、全脳の容積との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析の結果、緑茶の摂取量が多いほど脳白質病変容積が小さい傾向にあった(p for trend=0.007)。・緑茶の摂取量と海馬、全脳の容積には関連がみられず、コーヒーの摂取量は脳白質病変、海馬、全脳の容積のいずれとも関連がみられなかった。・抑うつを有する集団、APOEε4アレルを有する集団では、緑茶の摂取量と脳白質病変の関連はみられなかった。 本研究結果について、著者らは緑茶にはエピガロカテキンガレートが含まれており、抗酸化作用や血圧低下作用などにより、脳白質病変が縮小した可能性があると考察している。また、脳白質病変は血管性認知症やアルツハイマー型認知症と密接な関係があることから、緑茶の摂取が認知症予防に役立つ可能性があるとまとめている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その1)【なんで精神科病院に入院しなきゃいけないの?なんで閉じ込められたり縛られたりするの?(強制入院)】Part 1

今回のキーワード医療保護入院措置入院行動制限身体拘束隔離通信制限皆さんは、強制入院と聞くと何をイメージしますか? ちょっと怖いイメージでしょうか? それでは、なぜ強制的に入院させられるのでしょうか? さらに、なぜ病室に閉じ込められたり縛られたりするのでしょうか?今回は、強制入院をテーマに、映画「クワイエットルームにようこそ」を取り上げます。この映画は、精神科病院での入院生活の日常をポップでコミカルに描きながらも、実はさりげなく強制入院のあり方への疑問も投げかけています。まずは、医療監修の視点も加えて、ツッコミを入れながら解説してみましょう。なんで強制的に入院させられるの?主人公は明日香。28歳のフリーライター。ある時、目が覚めると、知らない白い部屋で自分が縛られていることに気付きます。そして、遠くで女性の叫び声が聞こえてきます。いきなり、ホラーな展開です。彼女はわけがわからず、不安におののきます。しばらくして看護師がやってきて、そこが精神科病院の閉鎖病棟であり、彼女は強制入院をさせられ、身体拘束をされていると聞かされます。まず、なぜ彼女は強制的に入院させられているのでしょうか? その理由(要件)を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)自他への不利益が差し迫っている明日香は、担当看護師から「アルコールと睡眠薬の過剰摂取によって昏睡状態になっているところを、同居人の方に発見されて、ここに来たんです」と聞かされます。1つ目の理由は、自他への不利益が差し迫っていることです。このような自分を傷つけること(自傷)のほかに、暴力など他人を傷つけること(他害)、摂食や排泄などの身辺自立が困難であること(自立不全)が挙げられます。(2)精神障害がある明日香は、酔った勢いで「私はひどい女」「私には価値なんかないんだから」と泣き叫び、同居人宅の2階から飛び降りようとしていました。また、救急病院で胃洗浄をされている時、「死なせてください」と言っていました。その後、意識が戻ったところで、担当看護師から「希死念慮にとらわれた気分変調症の疑いがあるって聞きましたけど。簡単に言えば、自殺願望ですね」と説明されます。2つ目の理由は、精神障害があることです。気分変調症は、うつ病や双極性障害と同じ気分障害の1つです。このほかに、統合失調症や認知症などが挙げられます。逆に言えば、ただの酔っ払い、ハンガーストライキ、純粋な犯罪など合理的な理由がある場合は、精神障害によるものではないため、強制入院の対象にはなりません。(3)判断能力が著しく低い明日香は、救急病院で胃洗浄の処置を受けますが、ベッドの空きがなかったために、意識が戻る前に精神科病院に転院となります。これは、かなりレアケースです。本来は、意識が戻ったところで、医師(多くは精神科医)が判断能力を評価し、精神科病院への転院が必要か判断します。3つ目の理由は、判断能力が著しく低いことです。これは自他に不利益となっている自覚がないことであり、明日香のような意識障害のほかに、認知機能障害、病識欠如が挙げられます。逆に言えば、自覚できて入院に同意している場合は、任意入院となり、強制入院にはなりません。また、たとえばリストカット(自傷)をするのはすっきりするだけのためと自覚して常習的にやっている場合(情緒不安定性パーソナリティ障害)や、悪酔いから覚めて我に返り謝罪や反省の弁を述べている場合(アルコール依存症)は、判断能力が保たれているため、外来通院は勧められますが、強制入院の対象にはなりません。次のページへ >>

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血圧の経時的変動は高齢者の認知機能に悪影響を及ぼす

 血圧の管理は、心臓の健康のためだけでなく、加齢に伴い低下する頭脳の明晰さを保つ上でも重要であるようだ。時間の経過に伴い血圧が大きく変動していた高齢者は、思考力や記憶力が低下する可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。米ラッシュ大学のAnisa Dhana氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月11日掲載された。Dhana氏は、「これらの結果は、血圧の変動が高血圧自体の悪影響を超えて認知障害のリスク因子であることを示唆している」と述べている。 この研究では、白人と黒人を対象に実施されたシカゴ健康と加齢プロジェクト(1993〜2012年)への65歳以上の参加者4,770人(平均年齢71.3歳、女性62.9%、黒人66.0%)を対象に、経時的な血圧変動と認知機能との関連が検討された。試験参加者は、3年ごとに18年間にわたって血圧測定を受けていた。収縮期血圧と拡張期血圧は、前回の測定値との差の絶対値を全て合計し、それを測定回数から1を引いた数(n−1)で割って算出した。認知機能は、標準化された認知テストで評価して総合スコアを算出し、zスコアとして表した。 収縮期血圧の変動幅の平均値は、黒人で17.7mmHg、白人で16.0mmHgであった。解析の結果、収縮期血圧および拡張期血圧の変動幅が大きいほど、追跡終了時の認知機能の低下が大きいことが示された。収縮期血圧の変動幅が小さい(第1三分位)群と比較して、変動幅が大きい(第3三分位)群では認知機能のzスコアが0.074低かった(β=−0.074、95%信頼区間−0.131〜−0.018)。これは脳年齢に換算すると、約1.8歳の加齢に相当するという。血圧の変動と認知機能との関連を人種別に検討すると、有意な関連が認められたのは黒人のみであり、収縮期血圧の変動幅の第1三分位群では第3三分位群と比較すると認知機能のzスコアが0.115低く、これは脳年齢で2.8歳の加齢に相当すると推定された。これに対し、降圧薬による血圧コントロールを行っている人では、追跡終了時に認知機能に低下は認められなかった。 以上のような結果が示されたものの、Dhana氏は、「この研究は観察研究であり、血圧と認知機能との間に直接的な因果関係があることを明らかにしたわけではない。この点に留意することは重要だ」と話している。 Dhana氏は、「高齢者の血圧を定期的に測定して、その経時的な変化をモニタリングするべきだ。それにより、血圧の変動が大きく認知機能に問題が生じる可能性のある人を特定でき、それを軽減するための対策を講じることが可能になる。それが、認知機能の問題を予防または遅延させるのに役立つ可能性がある」と話している。さらに同氏は、「高齢化社会とアルツハイマー病の蔓延に対応して、高齢者の認知機能の低下を遅らせる予防戦略を特定することが、公衆衛生上の優先事項となっている。血圧とその変動の管理は、そのような予防戦略において、修正可能で重要なリスク因子として浮上しつつある」と話している。

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MCI温故知新:「知情意」のほころび【外来で役立つ!認知症Topics】第25回

MCIとは「軽度の認知症」か?認知症の臨床現場における「あるある誤解」の一つに「MCIとは軽度の認知症か?」があるもしれない。確かにMCI(Mild Cognitive Impairment)とは「軽度認知障害」と訳されているから、その字面からしてそう思われても仕方がない。またMCIになるとMRI画像に海馬萎縮が現れてアルツハイマー病の診断がなされると思っている人も少なくない。実際には、この時期の海馬は多くの場合は萎縮しておらず、局所脳血流(rCBF)はむしろ増加していることもあるのだが。早期診断への壁:受診の遅れと心理的バイアス近年MCIが注目される最大の理由は、抗アミロイドβ抗体薬を皮切りに、今後の承認が期待される疾患修飾薬(Disease Modifying Drugs)のターゲットがこれだからだろう。ところがこうした治療適齢期に医療機関を受診する人が少ないのである。これに関して、最初の認知症の気付きから医療機関受診までに平均で4年を要するというLancet誌のレビューがある1)。経験的には、本人、家族共に、診断されるのが怖いのはわかる。心理学用語で「確証バイアス」と言われるように、人は自分に都合の良い情報を集める性癖がある。たとえば、「年を取ればこんなもの」「家系に認知症はいない」「かかりつけ医が『あなたはうつだから、大丈夫』と言った」などである。逆にネガティビティバイアスといって悪いイメージが強く残っていると恐怖が強すぎて、他のプラスの情報をすっかり忘れ去ることもある。悪いイメージとは、たとえば、頭部外傷や大腿骨頸部骨折、また重症肺炎などの合併症が重なり急速に死に至ったアルツハイマー病の患者さんといった、特別に不運なケースを身近に経験したような場合である。つまりアルツハイマー病と診断された時、そうした極端な例が心を占めて、一般的なアルツハイマー病の経過を説明しても耳を貸さない人もいる。さて新薬の恩恵にあずかるには、MCIの時期に的確にそれに気付かなくてはならない。以下に述べるように、MCIと診断される頃には、実は行動や感情面でも変化が表れているのだが、MCIとは記憶の障害であり、それはMMSEや長谷川式の記憶項目などの失点として現れると思い込んでいる人が多い。MCIの概念の歴史的変遷MCIというとRonald C. Petersen氏らの定義2)有名だが、実はこの用語は彼のオリジナルではない。というのは、このMCIという術語を用いて複数の学者がそれぞれに異なる定義をしているのである。歴史的にみて、このMCIの始まりは、1991年にBarry Reisberg氏らがアルツハイマー病のステージ判定のために彼らが開発したFAST尺度でStage3を意味する表現としてMCIを用いたことにある3)。次に、Michael Zaudig氏らが現在も抗アルツハイマー病薬の効果判定でもよく使われるClinical Dementia Rating(CDR):0.5に相当するとされる別のMCIを提唱した4)。この2つは行動などを含めて生活機能全般に注目して認知症の前駆期を捉えようとしている。一方で、現在最も注目されているMCIは1996年にPetersen氏らによって定義されたものだが、これは記憶障害に重点の置かれた診断基準であった。行動・感情面の評価が重要にこのようなMCIの概念の歴史からもわかるように、認知症の前駆・初期症状は記憶などの認知機能障害ばかりではない。たとえば近年では、道具的ADL(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)の失敗が始まる時期はMCI期に重なるという指摘がある。具体的には料理、掃除、移動、洗濯、金銭管理などであり、日常生活動作(ADL)よりも複雑で神経心理学的能力が求められるものである。それだけに認知機能の衰退が始まるとIADLの障害は露呈しやすいのも納得できる。そこで「IADL障害は認知症発症に先立つのでMCIの診断でこれを考慮すべき」とまとめられている5)。また、客観的に観察される日常的な行動面での変化も病初期から認められやすい。認知症の前駆期やMCI期にみられる特有の行動症状として、近年ではMild Behavioral Impairment(MBI)の概念やその定義が提唱され、多くの質問項目も作成されている6)。その内容は、意欲低下、情緒不安定、衝動の制御困難、社会的に不適切な言動、知覚・思考の異常という5つのカテゴリーになっている。自身の臨床の場を思い出してみると、何でも面倒臭くなって長年の習慣が廃れる高齢者は枚挙にいとまない。また些細なことで怒り炸裂の「怒りん坊」になる人はとくに男性で多い。そうした方々に見られる言動を仔細に思い出してみると、確かにこの5つのカテゴリーのすべてに該当する何らかの問題がありそうだとも思えてくる。ところで、人の精神活動を「知情意」とまとめる言葉がある。MCI に関して言えば、この3つの中で「知」ばかりが重んじられていたのだが、最初期のMCIの概念やMBIの考え方に代表されるように、実は「情意」の異常も初期から見られるということだ。さて、これからの認知症の治療におけるキーワードであるMCI。多くの人々にこれに気付いてもらうためには、認知機能のみならずIADL、客観的な行動、そして情意という点にも心を向けていただけるような医療的な指導が必要になると思う。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.2)Petersen RC, et al. Mild cognitive impairment: clinical characterization and outcome. Arch Neurol. 1999;56:303-308.3)Reisberg B, et al. Clinical Stages of Alzheimer’s disease. In:de Leon MJ, editor. The Encyclopedia of Visual Medicine Series, An atlas of Alzheimer’s disease. Pearl River (NY):Parthenon;1999.p.11-20.4)Zaudig M. A new systematic method of measurement and diagnosis of "mild cognitive impairment" and dementia according to ICD-10 and DSM-III-R criteria. Int Psychogeriatr. 1992;4 Suppl 2:203-219.5)Nygard L. Instrumental activities of daily living: a stepping-stone towards Alzheimer's disease diagnosis in subjects with mild cognitive impairment? Acta Neurol Scand Suppl. 2003;179:42-46.6)Ismail Z, et al. The Mild Behavioral Impairment Checklist (MBI-C): A Rating Scale for Neuropsychiatric Symptoms in Pre-Dementia Populations. J Alzheimers Dis. 2017;56:929-938.

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認知症診断後の余命と施設入所までの期間~メタ解析/BMJ

 認知症と診断された人々の平均余命は、男性では5.7(診断時65歳)~2.2年(診断時85歳)であり、女性は同年齢で8.0~4.5年であった。また、余命の約3分の1はナーシングホームで過ごしており、半数以上の人が認知症の診断後5年以内でナーシングホームに移っていた。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのChiara C. Bruck氏らが、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究を対象に、認知症の人々のナーシングホーム入所および死亡までの期間に関するエビデンスを要約し、予後指標を探ることを目的として実施したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「このシステマティックレビューでは、認知症診断後の予後は、患者、疾患、研究の特性に大きく依存していた。これらの知見から、個別化された予後情報とケアプランを提供できる可能性が示唆された。今後の研究では、診断時の患者を対象として、個別的要因、社会的要因、疾患ステージ、併存疾患を考慮し、生存だけでなく関連する機能的アウトカム指標を評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2025年1月8日号掲載の報告。適格研究261件を対象にシステマティックレビューおよびメタ解析 研究グループは、2024年7月4日までにMedline、Embase、Web of Science、Cochrane、Google Scholarへ登録された文献を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。適格条件は、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究で、被験者が150例未満、急性期病院入院中に募集が行われた研究、または追跡調査期間が1年未満の研究は除外した。 検索により論文1万9,307本が特定され、適格研究261件を対象に含んだ。生存に関する報告が235件(555万3,960例)、ナーシングホーム入所に関する報告が79件(35万2,990例)であった。診断後余命中央値は4.8年、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長い 診断後余命中央値は4.8年(四分位範囲[IQR]:4.0~6.0、66研究)で、全体的な5年生存率は51%であった。すでに認知症と診断されている人々を対象とした53研究では、診断後余命中央値は3.1年(IQR:2.4~5.6)であった。 余命中央値は年齢に強く依存していることが見受けられ、研究開始時の年齢が高いほど短かった。診断後平均余命は、男性では5.7年(診断時65歳)から2.2年(診断時85歳)にわたっており、女性の場合は同年齢で8.0年から4.5年にわたっていた。全体的に女性の診断後平均余命は男性よりも短かった(平均差:4.1年、95%信頼区間[CI]:2.1~6.1)。これは女性のほうが診断時の年齢が高いことに起因していた。 診断後余命中央値は、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長く、アルツハイマー病では認知症の他のタイプと比べて1.4年長かった。また、2000年以前の研究と比較して、現在のクリニックベースの研究では余命が延長していたが(傾向のp=0.02)、地域ベースの研究ではそのような傾向はみられなかった。 総合すると、余命に関する不均一性の51%は、報告された臨床特性と研究方法のばらつきによるものであった。 ナーシングホーム入所までの期間中央値は、3.3年(IQR:1.9~4.0)であった。診断から1年以内に入所した人は13%で、5年後には57%まで増加していた。ただし、入所率の評価の際に競合死亡リスクを適切に考慮していた研究はわずかであった。

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てんかん患者は網膜の神経軸索脱落が速い

 てんかんは、光干渉断層撮影(OCT)で観察される網膜神経軸索の脱落と関連しており、若年患者でも明らかな網膜の変化が見られることが知られている。また、てんかん患者における網膜神経軸索脱落の程度が、発作頻度や多剤併用療法と関連するとの報告もある。しかし縦断的研究が少ないことから、網膜変化の進行速度や発作頻度が与える影響については不明な点が多かった。ミュンヘン大学病院(ドイツ)のLivia Stauner氏らは、てんかん患者と健常者を対象に網膜の神経軸索脱落に関する追跡調査を実施。その結果の詳細が10月9日、「Epilepsia」に掲載された。 この研究の対象は、18~55歳のてんかん患者44人と健常者56人。加齢変化の影響を除外するため、年齢範囲の上限を55歳とした。患者群は平均年齢35.6±10.9歳、女性21人、健常者群(対照群)は32.7±8.3歳、女性37人であり、それぞれベースラインと7.0±1.5カ月後、6.7±1.0カ月後にOCT検査を行った。評価項目は、乳頭周囲網膜神経線維層(pRNFL)、黄斑部網膜神経線維層(mRNFL)、神経節細胞-内網状層(GCIP)、内顆粒層(INL)の厚み、および黄斑体積(TMV)であり、その変化と臨床パラメーターとの関連を検討した。 解析の結果、患者群では前記の全ての指標が追跡期間中に有意に低下しており、菲薄化や萎縮の進行が認められた。対照群もpRNFL以外の指標が有意に低下していた。一方、これらの変化を年率換算して比較すると、pRNFLでは患者群が-0.98±3.13%/年、対照群は0.42±2.38%/年(P=0.01)、GCIPでは同順に-1.24±2.56%/年、-0.85±1.52%/年(P=0.046)で、いずれも患者群の変化が速いことが示された。その他の指標の年変化率は、両群間に有意差がなかった。 サブグループ解析から、患者群のうち、pRNFLの年変化率が年齢と性別の一致する対照群より有意に大きかったのは、追跡期間中に1回以上の強直間代発作があった患者(P=0.03)のみであることが示された。追跡期間中に焦点発作のみが生じた患者(P=0.24)や発作を来さなかった患者(P=0.2)は、対照群と年変化率の有意差がなかった。 年変化率と関連のある臨床パラメーターを多重回帰分析で検討した結果、mRNFLの菲薄化は、併用している抗てんかん薬の数(β=-2.27、P=0.047)や年齢(β=-0.22、P=0.03)と有意な関連が認められた。 Stauner氏らは、併用している抗てんかん薬の数がmRNFLの菲薄化と関連していることについて、疾患活動性が反映された結果の可能性もあるとした上で、「より多くの抗てんかん薬を服用している患者は神経軸索脱落が加速するリスクがあるとも考えられ、よく考慮された効果的な薬物療法の重要性を示す結果と言える」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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日本初、認知症診療支援のための神経心理検査用プログラム発売

 大塚製薬とアイ・ブレインサイエンスは、認知症の診療支援のための神経心理検査用プログラム(商品名:ミレボ)について、2025年1月1日付で認知症領域のSaMD(Software as a Medical Device、プログラム医療機器)として初めて保険適用を取得し、1月14日より販売を開始した。 ミレボは、アイトラッキング(視線計測)技術を用いて行う神経心理検査用プログラムである。タブレット端末にインストールしたアプリ「ミレボ」を用いることにより、約3分で簡便に検査を行い、客観的な検査結果を得ることができる。また、画面に表示される質問に沿って被検者が正解の箇所を見つめることにより、データが自動的にスコア化され、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能になる。 なお、従来の認知機能検査は、患者の心理的負担(緊張、焦り、落胆、怒りなど自尊心を傷付け心理的ストレスを招きやすい)、医療者負担(時間的制約、専門スタッフの在籍)、検査者間変動(採点のバラツキ)などが課題になっているが、本プログラムはこれらを解決し、認知症の早期発見の一助になるものとして期待される。

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運動による脳の活性化は翌日まで続く

 運動による脳の機能に対する急性効果は、従来考えられていたよりも長く続く可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMikaela Bloomberg氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に12月10日掲載された。 これまでに、運動後の数分から数時間ほどの間、認知機能に対する急性効果が生じることが報告されてきている。しかし、その効果が運動を行った翌日まで持続するのか、また、睡眠不足などの影響はあるのかという点はよく分かっていない。Bloomberg氏らは、加速度計を用いて身体活動量や睡眠時間、睡眠の質を把握し、翌日の認知機能との関連性を検討した。 研究参加者は、認知機能障害や認知症の兆候のない50~83歳の成人76人で、8日間にわたり加速度計を装着して生活。注意力、記憶力、精神運動速度(思考・判断およびそれに基づく身体反応の速さ)などの認知機能を評価するためのテストが毎日実施された。加速度計のデータは、中~高強度身体活動(MVPA)、軽強度身体活動、座位行動、睡眠時間、レム睡眠(脳は覚醒状態に近く、体動はほとんどない睡眠)、徐波睡眠(深い睡眠である一方、体動が生じることもある睡眠)の時間の把握に用いられた。 解析の結果、前日のMVPAの時間が30分長いと、エピソード記憶(ある出来事とその時間や場所の記憶)のスコア(P=0.03)と作業記憶(何かの作業をするための短期的な記憶)のスコアが(P=0.01)有意に高いという関連が認められた。反対に、座位行動時間が30分長いと、作業記憶スコアが有意に低下していた(P=0.03)。前夜の睡眠時間や睡眠の質を調整しても、これらの結果は変わらなかった。 他方、前日のMVPAの時間とは関係なく、前夜の睡眠時間が6時間以上の場合、6時間未満と比較してエピソード記憶のスコアが有意に高く(P=0.008)、精神運動速度が有意に速い(P=0.03)という関連が観察された。また、前夜のレム睡眠が30分長いごとに注意力スコアが有意に高く(P=0.04)、徐波睡眠が30分長いごとにエピソード記憶スコアが高い(P=0.008)という関連も認められた。 MVPAの具体的な運動としては、Bloomberg氏によると、「心拍数が上がるような運動のことであり、早歩き、ダンス、階段を上がることなど」であって、「計画的な運動である必要はない」という。そして同氏は、「われわれの研究は、このようなMVPAの認知機能に対する効果発現時間はこれまで考えられていたよりも長く、運動後の数時間だけでなく翌日まで続く可能性があることを示唆している」と述べている。 この関連のメカニズムについて論文には、「運動は脳への血流を増加させ、さまざまな認知機能をサポートする神経伝達物質の放出を刺激することで、脳を活性化させることが知られている。神経伝達物質に対する影響は運動後少なくとも数時間は持続することが報告されているが、運動に伴う他の影響は、より長期間持続するのではないか」という考察が加えられている。ただし、論文の上席著者であるUCLのAndrew Steptoe氏は、「本研究のみでは、運動による脳に対する急性効果が、脳の長期的な健康に寄与するかどうかは分からない。運動が認知機能の低下を遅らせ、認知症のリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスは少なくないが、いまだ議論の余地が残されている」と、慎重な姿勢を取っている。

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片頭痛の引き金となる食べ物は?

 片頭痛は、激しい頭痛と一時的な運動および感覚障害を呈する神経疾患である。片頭痛の誘因には、発作に影響を及ぼす可能性のある内的および外的因子が関連している。片頭痛患者の中には、特定の食品摂取により発作が発現する患者も存在するが、アイスランドではこれらの関連は、これまで調査されていなかった。アイスランド・Landspitali National University HospitalのHadda Margret Haraldsdottir氏らは、アイスランドにおける片頭痛の症状と特定の食品摂取との関連を示す患者の割合を推定するため、本検討を実施した。Laeknabladid誌2024年12月号の報告。 アイスランドのFacebookグループ「Migreni」のメンバー(Facebook群)395人(回答率:Facebook群の19.6%)および神経内科医から治療を受けている患者(神経内科治療群)108人(回答率:神経内科治療群の65%)を対象に、電子アンケートを実施した。アンケートでは、特定の食品が片頭痛発作の引き金となる可能性があると思うかを調査した。アンケート回答の選択肢は、「全く/滅多にない」、「時々ある」、「頻繁にある」、「常にある」とした。その他の質問には、片頭痛の種類、薬物治療の有無、背景などを含めた。 主な結果は以下のとおり。・参加者466人中354人(76%)は、特定の食品摂取により片頭痛を引き起こすことが「頻繁にある」または「常にある」と回答した。・この割合は、Facebook群のほうが神経内科医治療群よりも高かった(78% vs.66%、p=0.007)。・最も一般的な食物関連の引き金は、赤ワインおよび食事を抜くこと(空腹)であり、50%以上で「頻繁にある」または「常にある」と回答した。・その他の食物関連因子として、白ワイン、リコリス、燻製肉などが報告され、参加者の20〜50%が回答した。 著者らは「これまで行われた他の研究と同様に、食物摂取は片頭痛の引き金となっている可能性が示唆された。しかし、これまでの研究では、食物関連因子としてリコリスの報告はなく、燻製肉はより一般的な因子であることが明らかとなった」と結論付けている。

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生成AIにも認知機能障害!?/BMJ

 主要な大規模言語モデル(LLM)の認知機能についてモントリオール認知評価(MoCA)テストなどを用いて評価した結果、ChatGPT-4oを除いたLLMで軽度認知機能障害の兆候が認められたことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのRoy Dayan氏らが報告した。人間と同様に年齢が認知機能低下の重要な決定要因であり、「高齢」すなわちバージョンが古いチャットボットはMoCAテストの成績が不良である傾向がみられたという。著者は、「これらの結果は、近くAIが人間の医師に取って代わるという想定に疑問を投げ掛けるものであり、主要なチャットボットの認知機能障害は医療診断の信頼性に影響を与え、患者の信頼を損なう可能性がある」と述べている。これまで複数の研究により、LLMはさまざまな診断において人間の医師よりも優れていることが示されているが、AI自体が認知機能低下を来すかどうかは評価されていなかった。BMJ誌2024年12月20日号掲載の報告。ChatGPT、Claude、Geminiの認知機能をMoCAテストなどで評価 研究グループは、公開されているLLMまたはチャットボットのChatGPT-4および4o(開発:OpenAI)、Claude 3.5 Sonnet(Anthropic)、およびGemini 1.0および1.5(Alphabet)を対象とし、テキストベースのプロンプトを介したLLMとのオンラインの対話について検証した。 MoCAテスト(バージョン8.1)を用い、患者に与える課題と同じ課題をLLMに与え、公式ガイドラインに従い神経科医が採点し評価した。追加の評価として、Navon図形、Cookie Theft Picture Test、Poppelreuterの錯綜図、Stroop testも実施した。 主要アウトカムは、MoCAテストの総合スコア・視空間認知/実行機能およびStroop testの結果であった。MoCAスコアが最も良好なのはChatGPT-4o、30点満点で26点 MoCAテストの総合スコア(30点満点)は、ChatGPT-4oが26点で最も高く、次いでChatGPT-4およびClaudeが25点であり、Gemini 1.0は16点と最も低かった。 MoCAテストの視空間認知/実行機能の成績は、すべてのLLMで低いことが示された。すべてのLLMがTrail Makingの課題および視空間認知機能の時計描画を失敗し、ChatGPT-4oのみアスキーアートを使用するよう指示された後で立方体の書き写しに成功した。そのほかの主な課題である命名、注意、言語、抽象的思考などはすべてのLLMで良好であったが、Geminiは1.0および1.5ともに遅延再生の課題に失敗した。 Navon図形では、すべてのLLMが小さな「S」を認識したが、大きな「H」の構造を特定したのはChatGPT-4oとGeminiのみであった。 Cookie Theft Picture Testでは、すべてのLLMがクッキーの盗難の場面を正しく解釈できたが、前頭側頭型認知症でみられる共感の欠如が示唆された。 Poppelreuterの錯綜図では、すべてのLLMがオブジェクトを認識できなかったが、ChatGPT-4oとClaudeはほかのモデルよりわずかに良好であった。 Stroop testでは、すべてのLLMが第1段階を成功したが、第2段階を成功したのはChatGPT-4oのみであった。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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体脂肪率が片頭痛の重症度と関連、とくに女性で顕著

 片頭痛は、悪心、光恐怖症、音恐怖症を頻繁に伴う反復性頭痛を特徴する疾患であり、その有病理は非常に高く、社会経済的負担の増大と関連している。近年、一般人口における肥満の割合は増加しているが、体脂肪率と重度の頭痛や片頭痛の発症率との関連は、あまり研究されていなかった。中国・重慶医科大学のRongjiang Xu氏らは、この課題を明らかにするため、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。Cureus誌2024年10月26日号の報告。 対象は、1999〜2004年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した5,060例。性別、貧困所得比(PIR)、学歴、喫煙状況、中程度の身体活動、高血圧で調整した後、制限付き3次スプライン(RCS)曲線およびロジスティック回帰を用いて、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、重度の頭痛または片頭痛が認められた患者は1,289例(25.5%)。・重度の頭痛または片頭痛を有する患者は、そうでない患者と比較し、女性の割合が高く、学歴、世帯収入、喫煙、アルコール摂取、糖尿病、高血圧が低い傾向であった。・とくに女性では、モデルにおいて体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に有意な関連が認められたが、男性では認められなかった。・体脂肪率の四分位を用いた多変量ロジスティック回帰分析でも、同様の結果であった。 著者らは「関連変数で調整した後、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に正の相関が認められた。この関連は、とくに女性で強かった」としたうえで「肥満と片頭痛との関連は複雑であり、体脂肪率が片頭痛の悪化に及ぼす影響を明らかにするためにも、さらなる研究が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。

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