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BRAF V600E遺伝子変異大腸がん、MAPK経路標的の3剤併用は?/NEJM

 BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者の治療では、エンコラフェニブ(BRAF阻害薬)+セツキシマブ(抗EGFRモノクローナル抗体)+ビニメチニブ(MEK阻害薬)併用療法およびエンコラフェニブ+セツキシマブ併用療法は標準治療と比較して、いずれも全生存(OS)期間を有意に延長し、奏効率も有意に高いことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏らが行ったBEACON CRC試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月30日号に掲載された。BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する大腸がんの予後は不良であり、初回治療不成功後のOS期間中央値は4~6ヵ月とされる。また、BRAFだけを阻害しても、上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達を介して伝達路が再活性化されるため、腫瘍縮小効果は限定的だという。この3剤併用レジメンは、MAPKシグナル伝達経路を最も効果的に阻害する併用療法としてデザインされた。BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者を3群で比較 研究グループ(日本を含む)は、BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者において、エンコラフェニブ+セツキシマブ±ビニメチニブの効果を標準治療と比較する目的で、非盲検無作為化第III相試験を実施した(Array BioPharmaなどの助成による)。 対象は、組織学的および細胞学的に確定されたBRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する大腸がんで、1または2レジメンの治療を受けた後に病勢が進行した患者であった。 被験者は、3剤併用群、2剤併用群、対照群(標準治療)に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。3剤併用群にはエンコラフェニブ(300mg/日)+セツキシマブ(初回400mg/m2、以降は250mg/m2/週)+ビニメチニブ(45mg、1日2回)が、2剤併用群にはエンコラフェニブ(300mg/日)+セツキシマブ(初回400mg/m2、以降は250mg/m2/週)が投与され、対照群では、治験責任医師の裁量でセツキシマブ+イリノテカンまたはセツキシマブ+FOLFIRI(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン)のいずれかが選択された。 主要エンドポイントは、3剤併用群の対照群と比較したOS期間および客観的奏効率とした。副次エンドポイントは、2剤併用群の対照群と比較したOS期間であった。今回は、事前に規定された中間解析の結果が報告された。 2017年5月~2019年1月の期間にBRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者665例が登録され、3剤併用群に224例(年齢中央値62歳[範囲:26~85]、女性53%)、2剤併用群に220例(61歳[30~91]、48%)、対照群には221例(60歳[27~91]、57%)が割り付けられた。客観的奏効率の評価は331例(3剤併用群111例、2剤併用群113例、対照群107例)で行われた。フォローアップ期間中央値は7.8ヵ月だった。OSは標準治療よりも3剤が48%、2剤は40%改善 対象となったBRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者のOS期間中央値は、3剤併用群が9.0ヵ月と、対照群の5.4ヵ月に比べ48%有意に延長した(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.39~0.70、p<0.001)。また、2剤併用群のOS期間中央値は8.4ヵ月であり、対照群の5.4ヵ月に比し40%有意に長かった(0.60、0.45~0.79、p<0.001)。 客観的奏効率は、3剤併用群が26%(完全奏効4%、部分奏効23%)と、対照群の2%(部分奏効2%)に比べ有意に高かった(p<0.001)。また、2剤併用群の客観的奏効率は20%(完全奏効5%、部分奏効15%)であり、対照群の2%よりも有意に高率であった(p<0.001)。 無増悪生存(PFS)期間中央値は、3剤併用群が4.3ヵ月、2剤併用群が4.2ヵ月、対照群は1.5ヵ月であった。対照群と比較した3剤併用群のHRは0.38(95%CI:0.29~0.49、p<0.001)、2剤併用群のHRは0.40(0.31~0.52、p<0.001)であり、いずれも有意な差が認められた。 3剤併用群のBRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者で頻度の高い有害事象は、消化器関連イベント(下痢62%、悪心45%、嘔吐38%)および皮膚関連イベント(ざ瘡様皮膚炎49%)であった。Grade3以上の有害事象は、3剤併用群が58%、2剤併用群が50%、対照群は61%で認められた。有害事象による治療中止はそれぞれ7%、8%、11%で、致死的有害事象は4%、3%、4%でみられ、治療関連死は3例が報告された(3剤併用群:結腸穿孔、対照群:アナフィラキシー、呼吸器不全)。 著者は、「対照群の結果は、最近の前向き研究のデータに基づき予測されたとおりであった。この試験は3剤と2剤を比較する検出力はなく、中間解析の性質上の限界もあるが、OSは3剤のほうが良好な傾向がみられた(HR:0.79、95%CI:0.59~1.06)。2つのレジメンの相対的な利益を明らかにするには、さらなるフォローアップが必要である」としている。

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小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+化学療法の成績(CASPIAN)/ESMO2019

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)においてデュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用を評価する第III相CASPIAN試験の結果が、世界肺がん学会(WCLC2019)で発表され、化学療法へのデュルバルマブの追加により、全生存期間(OS)の有意な改善が示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、最新の解析結果が、スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏により報告された。・対象:未治療のES-SCLC患者(WHO PS 0/1)・試験群: デュルバルマブ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群) デュルバルマブ+tremelimumab+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)・対照群:  エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(EP群)・評価項目: [主要評価項目]OS [副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、安全性、忍容性 ESMO2019での発表は、D+EP群とEP群における、臨床関連分析(Clinically relevant analysis)の結果である。 主な結果は以下のとおり。・2019年3月11日の時点で、D+EP群265例とEP群266例が各治療を受けた。・OS中央値はD+EP群13.0ヵ月、EP群10.3ヵ月で、D+EP群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.591~0.090、p=0.0047)・PFS中央値はD+EP群5.1ヵ月、EP群5.4ヵ月であった(HR:0.78、95%CI:0.645~0.936)・PD-L1評価可能な症例277例(D+EP群151例、EP群126例)のうちPD-L1発現が1%未満の症例は、TCで94.9%、ICで77.6%と、PD-L1発現症例は少なかった。・PD-L1発現とOSの関係は示されなかった(TCのp=0.54、ICのp=0.23)。・患者報告アウトカム(PRO)による症状悪化までの期間(TTD)は、すべての項目においてD + EP群が長かった。 ES-SCLCの1次治療におけるデュルバルマブのエトポシド+シスプラチン/カルボプラチンへの追加は、有意にOSを改善する一方、QOLを維持し、症状悪化までの時間を延長した。

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「病院のお金」を学ぶ本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第23回

【第23回】「病院のお金」を学ぶ本皆さん、考えてみたことはありませんか? なぜガッポリ儲かっている病院と、赤字で経営破綻する病院があるのか?私は、この本のタイトルにあるように、まぎれもなく“中堅どころ”の医師なのですが、この質問に答えられる自信がありません。病院経営について詳しくないからです。毎日の外来・入院業務に追われ、病床稼働率がどーのこーのなんて、ぶっちゃけ馬耳東風。しかし、将来みなさんが経営に携わる立場になるかどうかはともかく、中堅医師にとって避けて通れないのが、病院のお金の流れを勉強すること。筆者らは、総合病院における医療経営の入門本がないことを懸念して、この本を出版しました。実際、ちまたにあふれる病院経営本なんて、「開業医のための節税うんたら」みたいな本が多いです。ほとんど詐欺みたいな本もあります。おっと、口が滑った。『“中堅どころ”が知っておきたい 医療現場のお金の話』中西 康裕、今村 知明/著. メディカ出版. 2019さて、みなさんは「在院日数を短縮してください!」と言われたことはないですか? 中堅どころの勤務医ならば、看護師長に何度もこの話をされてきたのではないでしょうか。しかし、なぜ在院日数を短縮すれば経営に有利になるのか、わかっている人は多くないはずです。在院日数を短縮させることによって、病床回転率が上がります。入院初期の診療報酬が高い時点で、たくさん治療を適用して、ある程度落ち着けばすぐに退院させるという戦略です。これを繰り返せば、1ベッドあたりの診療報酬が高い状態が維持できるので、病院の経営が良くなるというロジックです。しかしこの本によれば、その考え方は半分誤りとのこと。診療報酬で得られる収益だけでなく、支出(材料費)も入院初期がもっとも高くなり、収益からコストを差し引いた利益額がさほど変わらないためです。国が推進する在院日数短縮を信じてきたがゆえに、赤字に転落している病院も多くあります。退院を促進し過ぎて、本末転倒なことに空床が出てしまっているからです(病床利用率の低下)。このほか、診療報酬、急性期一般入院料の話や、消費増税によって被る病院の打撃など、お金に関するテーマがたくさんあります。消費増税って、患者さんが支払う額が増えるんでしょ? と誤解している人も多いですが、消費増税でダメージをくらうのは、実は病院です。しかも、手術件数が多い大病院ほど増税による影響が大きいとのこと。なぜそういう仕組みになってるのか、図入りで詳しく解説されていますので、確認してみてください。この本の良いところは、図表がめちゃくちゃ見やすく、お金や経営の初心者でもわかりやすく読めるようになっていることです。上述したように、開業医の経営本とはまったく違って、あくまで総合病院の経営の舵取りがどのように行われてるかを、病院職員として知ってもらいたいという筆者の意図が、よく伝わります。ただただ、良本。『“中堅どころ”が知っておきたい 医療現場のお金の話』中西 康裕、今村 知明/著出版社名メディカ出版定価本体2,800円+税サイズB5判刊行年2019年

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自然呼吸で吸入可能な1回完結型インフル治療薬「イナビル吸入懸濁用160mgセット」【下平博士のDIノート】第35回

自然呼吸で吸入可能な1回完結型インフル治療薬「イナビル吸入懸濁用160mgセット」今回は、長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害薬「ラニナミビル(商品名:イナビル吸入懸濁用160mgセット)」を紹介します。本剤は、吸入力が弱く、既存の吸入粉末薬の使用が困難だった小児や高齢者などにも使える1回完結型のインフルエンザ治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年10月25日より発売される予定です。なお、既存の吸入粉末薬とは異なり、予防投与としては使用できません。<用法・用量>成人および小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与します。<副作用>国内で実施された第III相試験において、安全性評価対象症例441例中9例(2.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢・嘔吐が各2例(0.5%)、便秘・悪心・虚血性大腸炎が各1例(0.2%)でした。インフルエンザ異常行動・言動に該当する有害事象は1例(気分変化)に認められましたが、本剤との因果関係は「関連なし」と判定されています。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、気管支攣縮、呼吸困難、異常行動、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、多形紅斑(いずれも頻度不明)が吸入粉末薬で認められている重大な副作用として注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、インフルエンザの症状を緩和します。2.吸入時は、吸入マスクを口元にあててリラックスしながら、深く口で呼吸してください。3.小児が泣いたり暴れたりして吸入の継続が困難になった場合、いったん機械を止めて、落ち着いてから吸入を再開してください。霧が出なくなったら終了です。4.インフルエンザにかかった時は、薬の有無や種類を問わず飛び降りなどの異常行動を起こす恐れがあります。発熱から少なくとも2日間は、窓の鍵を確実にかけるなど、転落などの事故に対する防止対策を徹底してください。<Shimo's eyes>同成分の既存の剤形として吸入粉末薬がありますが、今回ネブライザで吸入するタイプの製剤が発売されます。本剤は、吸入力が弱い小児や高齢者でも十分量の吸入が期待できます。ジェット式ネブライザを使用して吸入するため、通常は吸入用機器(コンプレッサー)を設置している病院で使用されることが想定されます。凍結乾燥製剤の溶解に用いる生理食塩水、シリンジ、注射針などは、医療施設で用意する必要があります。吸入粉末薬と異なる点として、添加剤に乳糖が含まれないので、乳糖不耐症や乳製品アレルギーなどの患者に対しても使用できます。また、年齢に応じた用量の設定はありません。本剤は、従来の吸入容器による吸入手技を必要としないため、医療機関の感染予防対策にも有効と考えられます。

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アパルタミド、転移のない去勢抵抗性前立腺がんのOSを改善(SPARTAN試験)/ESMO2019

 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対する、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬であるアパルタミドの試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital Cancer Center and Harvard Medical SchoolのMatthew R. Smith氏より発表された。 本試験(SPARTAN試験)は、日本も参加した国際共同のプラセボコントロールの第III相試験である。過去に、1回目の中間解析が実施され、アパルタミドが有意に無転移生存期間を延長したことが報告されている。今回の報告は2回目の中間解析結果であり、全生存期間(OS)、化学療法施行までの期間(TTC)、安全性についての発表。・対象:PSA倍加時間が10ヵ月以下のnmCRPC患者1,207例(2cm未満の骨盤内リンパ節への転移は許容)・試験群:アンドロゲン除去療法(ADT)+アパルタミド240mg/日(APA群)・対照群:ADT+プラセボ(ADT群)・評価項目 [主要評価項目]無転移生存期間 [副次評価項目]OS、TTC、無増悪生存期間(PFS)、転移発現までの期間、症状発現までの期間 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値41ヵ月であった。・今回の解析では、OS中央値はAPA群ADT群ともに未到達。ハザード比(HR)は0.75(95%信頼区間[CI]:0.59~0.96)、p=0.0197であった。今回のOSの解析は、最終的なOS解析に必要な427イベントのうち285イベント(67%)の発生時点でのものであり、有意性のp値は0.0121と事前設定されていたため、統計学的な有意差が示せなかった。・4年OS率はAPA群72.1%、ADT群64.7%であった。・ADT群の19%(76例)は、アパルタミドのクロスオーバー投与を受けていた。・TTC中央値は、APA群ADT群ともに未到達であった。そのHRは0.60(95%CI:0.45~0.80)であった。化学療法剤の投与を受けた患者は、APA群で14%、ADT群で20%であった。・探索的解析のPFS2(割り付けから2次治療までで病勢進行もしくは死亡するまでの期間)中央値はAPA群55.6ヵ月、ADT群43.8ヵ月、HR0.55(95%CI:0.45~0.68)、p<0.0001であった。・2次治療を受けた患者はAPA群で40%、ADT群で69%、主な2次治療薬はアビラテロンであった。・Grade3/4の有害事象はAPA群で53.1%、ADT群で36.7%、重篤な有害事象は33.5%と24.9%であり、既報と同様であった。

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日本における認知症の重症度と社会的介護コスト

 アルツハイマー病患者への直接的な社会的支援のコストは高まっており、高齢化に伴い、今後さらに増加し続けると予想される。藤田医科大学の武地 一氏らは、日本における長期介護保険でのアルツハイマー病に対する直接的な社会的支援のコストを推定するため、検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年9月2日号の報告。 本研究は、メモリークリニックを受診したアルツハイマー病患者または軽度認知障害患者169例に対し、長期にわたるフォローアップを行った横断的研究である。認知症の重症度、介護サービスの利用、コストについて分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・軽度、中等度、重度の認知症患者の間で、直接的な社会的支援の利用およびコストの有意な増加が認められた(p<0.001)。・とくに、デイサービスとショートステイサービスの利用は、認知症の重症度とともに増加が認められた(p<0.001)。・対象患者を長期介護保険の介護レベルで層別化した場合でも、同様の結果であった。・169例中49例は長期介護保険の申請をしていなかったが、要支援1と要介護1では、認知症の重症度に違いは認められなかった。・申請しなかった群と申請および認定された群におけるロジスティック回帰分析では、認知症の重症度だけではなく、年齢(OR:1.112、95%CI:1.037~1.193、p=0.003)、居住形態(OR:0.257、95%CI:0.076~0.862、p=0.028)でも有意な差が認められた。 著者らは「アルツハイマー病の患者数が増加するにしたがって、直接的な社会的コストも増加する。本研究は、アルツハイマー病の診断後に提供される直接的な社会的支援のタイプを標準化することや、費用対効果の高い介護の開発に役立つであろう」としている。

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21遺伝子再発スコアが高いHR+早期乳がんでの術後化学療法の併用効果(TAILORx 2次解析)/ESMO2019

 リンパ節転移のないホルモン感受性(HR)陽性HER2陰性の早期乳がん患者で、21遺伝子アッセイによる再発スコアが高い(26〜100)場合、術後にタキサンとアントラサイクリン両方もしくはどちらかを含む化学療法と内分泌療法を併用したほうが、内分泌療法単独よりもアウトカムが良好であることが、TAILORx試験の2次解析で示唆された。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Albert Einstein College of MedicineのJoseph A. Sparano氏が発表した。この結果はJAMA Oncology誌オンライン版2019年9月30日号に同時掲載された。 乳がん組織の21遺伝子アッセイによる再発スコアが高い場合、化学療法によるベネフィットが得られることが予測され、低い場合は内分泌療法のみでも再発リスクが低いことが予測されている。しかし、再発スコアの高い患者にタキサンやアントラサイクリンを含むレジメンで治療した場合のアウトカムについて、前向き試験でのデータはほとんどない。今回、多施設無作為化試験であるTAILORx試験より、腋窩リンパ節転移のないHR陽性HER2陰性の早期乳がんのうち、再発スコアが26~100の患者を対象に、術後補助療法として内分泌療法と化学療法(レジメンは主治医選択)を実施した患者の無遠隔再発生存率(DRFI)と無浸潤疾患生存率(IDFS)が検討された。 主な結果は以下のとおり。・適格患者9,719例のうち再発スコア26~100の患者は1,389例(14%)で、年齢中央値は56歳(範囲:23~74歳)であった。・主な化学療法レジメンは、ドセタキセル+シクロホスファミド(TC)42%、アントラサイクリンのみ(A without T)24%、アントラサイクリン+タキサン(A and T)18%、シクロホスファミド/メトトレキサート/5-FU(CMF)4%で、その他 6%、化学療法なし 6%であった。・化学療法と内分泌療法で治療された患者のDRFIは、5年で93.0%(標準誤差[SE]:0.8%)、9年で86.8%(SE:1.7%)であったのに対し、内分泌療法単独では、B20試験における化学療法の治療効果に基づいて予測されたDRFIは5年で78.8%(SE:14.0%)、9年で65.4%(SE:10.4%)であった。・同様に、化学療法と内分泌療法で治療された患者のIDFSは、5年で88.1%(SE:0.8%)、9年76.28%(SE:1.7%)で、内分泌療法単独では、予測されたIDFSは5年で74.7%(SE:14.6%)、9年で55.3%(SE:8.9%)であった。・レジメン別にみると、5年DRFIは、TC 92.7%、A without T 92.3%、A and T 95.1%、CMF 88.5%、その他 95.5%、また、5年IDFSは、TC 88.1%、A without T 87.4%、A and T 88.6%、CMF 84.0%、その他 91.3%であった。 これらの結果から、Sparano氏は「術後化学療法の投与指針として21遺伝子アッセイの使用を支持するエビデンスが追加された」と述べた。

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東京2020で発生しうる患者とその対応策/日本救急医学会

 東京2020オリンピック・パラリンピックの開催まで300日を切った。この開催を迎える上で医学的に重要なのは、熱中症やインバウンド感染症、そしてテロへの対策ではないだろうか。そこで、医学系学会のうち25団体(2019年10月現在)が“2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体(コンソーシアム)”を結成。リスクを想定し、対策に取り組んでいる。 この構成団体の中のうち、日本救急医学会ほか5学会(日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本外傷学会、日本災害医学会、日本集中治療医学会)と東京都医師会の担当委員が、2019年10月2~4日に開催された第47回日本救急医学会総会・学術集会のパネルディスカッション8「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関わる救急・災害医療体制を検討する学術連合体の活動現状と今後の展開について」にて、各学会の委員会活動の進捗を報告した。オリンピックは特別な状況 日本臨床救急医学会の溝端 康光氏(大阪市立大学大学院医学研究科 救急医学)は、日本臨床救急医学会が昨年12月に『熱中症』ガイドラインと『訪日外国人医療』ガイドラインを発刊したことを報告。現在、熱中症に関する診療には日本救急医学会が作成した『熱中症診療ガイドライン2015』の利用が推奨されているが、新たに発刊された両ガイドラインは初期対応や救急外来受診時間の傾向、外国人対応医療機関の検索、医療通訳、宗教背景、帰国時手続きなど、オリンピックが終了した後でも問題になりうる内容も踏まえ、経験豊富な学会員によって執筆されたという。 日本感染症学会の佐々木 淳一氏(慶應義塾大学医学部 救急医学)は、過去の夏季オリンピックから実際の患者数を疾患別に分析し、「胃腸炎患者が最も多かった」と報告。感染症対策として、“救急外来部門における感染対策チェックリスト”やインバウンド感染症対応のための“感染症クイック・リファレンス”作成について説明した。銃創・爆傷患者が運ばれてきたら… オリンピックではテロの危険性も高まる。テロによる銃創や爆傷は1分1秒を争う状況を要するため初動がとくに重要である。日本外傷学会/日本災害医学会代表の大友 康裕氏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 救急災害医学)は、「地震などを想定して策定したBCP(事業継続計画)では不十分」とし、銃創におけるレントゲン活用の有用性、爆傷で生じる爆傷肺や眼の損傷への対処法を解説。国際的に使用されているタニケットによる止血法については、「病院での受入体制が遅れている」と危機感をあらわにした。また、災害やテロ被害時には「“重傷者が軽症者の後に運ばれてくる”ことを念頭に置くことが多くの救命につながる」ともコメントした。 そのほか、日本集中治療学会、日本麻酔学会や東京都医師会担当者からは、院内ICUを救急ICUと統合する拡張運用など、患者数増加を見込んだ措置を検討しているとの報告が挙がった。 なお、本コンソーシアムでは2016年の開設以降、現在35のマニュアルやガイドライン、提言などをホームページで発信し、各関連学会が作成したe-learningでの個人学習も推奨している。このサイトから関連学会のみならず官公庁にもアクセス可能なので、とっさの時の情報収集に有用かもしれない。

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胃がん周術期SOX、術後XELOXに対する優越性示す(RESOLVE)/ESMO2019

 局所進行胃がんに対する周術期(術前および術後)のオキサリプラチンとS-1の併用療法の有効性を検討した試験(RESOLVE試験)の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表された。中国・北京大学のJiafu Ji氏による発表。 RESOLVE試験は、術前および術後化学療法としてのSOX(S-1+オキサリプラチン)の有効性ならびに安全性を術後SOXおよび術後XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)と比較した第III相試験である。対象者は胃切除リンパ節郭清(D2)を受けたcT4a/N+M0またはcT4bNxM0の胃がん患者1,094例で、以下の3群に割り付けられた。・試験群:Arm A:D2郭清術後XELOX治療群(345例)Arm B:D2郭清術後SOX治療群(340例)Arm C:D2郭清術前・術後SOX治療群(337例)・評価項目:[主要評価項目]3年無病生存率(DFS)[副次評価項目]5年生存率(OS)、安全性 本試験ではArm CのArm Aに対する優越性、ならびにArm BのArm Aに対する非劣性が検証された。 主な結果は以下のとおり。・<Arm A vs. Arm C> 周術期SOX群(Arm C)は、術後XELOX群(Arm A)に比較して有意に3年DFSを延長した(Arm C:62.0%、Arm A:54.8%、ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.62~0.99、p=0.045)。・<Arm A vs. Arm B> 術後SOX群(Arm B)の術後XELOX群(Arm A)に対する3年DFSの非劣性が証明された(Arm B:60.3%、Arm A:54.8%、ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.67~1.07、p=0.162)。・周術期、術後SOX群のどちらにおいても、術後XELOXと比較して治療関連有害事象の増加は見られなかった。

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ニンテダニブ、進行性線維化を伴う間質性肺疾患に有効/NEJM

 進行性線維化を伴う間質性肺疾患の治療において、ニンテダニブはプラセボと比較して、努力性肺活量(FVC)の年間低下率が小さく、この効果は高分解能CT画像上の線維化のパターンとは独立に認められることが、米国・ミシガン大学のKevin R. Flaherty氏らが行ったINBUILD試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月29日号に掲載された。ニンテダニブは、細胞内チロシンキナーゼ阻害薬であり、前臨床データでは肺線維症の進行に関与するプロセスを阻害することが示唆されている。特発性肺線維症(IPF)および全身性強皮症を伴う間質性肺疾患患者では、ニンテダニブ150mgの1日2回投与により、FVCの低下が抑制されたと報告されている。年間FVC低下率を評価するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む15ヵ国153施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年2月~2018年4月の期間に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheimの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の線維化を伴う間質性肺疾患の患者であった。IPFはすでに検討が行われているため、IPF以外の進行性線維化の表現型を登録することとし、高分解能CT画像上で、線維化肺疾患が肺容量の10%超に及ぶと中央判定で確定された患者を登録した。また、患者は、治療にもかかわらず過去24ヵ月間、間質性肺疾患の進行の基準を満たし、FVCが予測値の45%以上、一酸化炭素肺拡散能(ヘモグロビン量で補正)が予測値の30~<80%であることとした。 被験者は、ニンテダニブ(150mg、1日2回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、52週の期間における年間FVC低下率とし、全体および通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)様の線維化パターンの集団で解析を行った。平均年間FVC低下率を107.0mL抑制 663例が1回以上の薬剤の投与を受けた。ニンテダニブ群が332例、プラセボ群は331例であった。412例(62.1%、両群206例ずつ)がUIP様線維化パターンだった。 全体の平均年齢は65.8±9.8歳、予測FVC値は69.0±15.6%、予測肺拡散能は46.1±13.6%であった。間質性肺疾患の最も多い診断名は、慢性過敏性肺炎(26.1%)と自己免疫性間質性肺疾患(25.6%)だった。ニンテダニブ群は252例(75.9%)、プラセボ群は282例(85.2%)が52週の治療を完了した。 52週時の補正平均年間FVC低下率は、ニンテダニブ群が-80.8±15.1mL/年、プラセボ群は-187.8±14.8mL/年であり、両群間の差は107.0mL/年(95%信頼区間[CI]:65.4~148.5)と、低下の程度がニンテダニブ群で有意に抑制されていた(p<0.001)。 また、UIP様線維化パターンの集団における補正平均年間FVC低下率は、ニンテダニブ群が-82.9±20.8mL/年と、プラセボ群の-211.1±20.5mL/年に比べ128.2mL/年(95%CI:70.8~185.6)低く、有意差が認められた(p<0.001)。 52週時のKing’s Brief Interstitial Lung Disease(K-BILD)質問票(3つのドメイン[息切れと活動性、心理学的因子、胸部症状]に関する15の質問項目から成る。0~100点、点数が高いほど健康状態が良好)の総スコアのベースラインからの平均変化は、全体ではニンテダニブ群が0.55±0.60点、プラセボ群は-0.79±0.59点(群間差:1.34、95%CI:-0.31~2.98)であり、UIP様線維化パターンの患者ではそれぞれ0.75±0.80点、-0.78±0.79点(1.53、-0.68~3.74)であった。 52週時の間質性肺疾患の増悪または死亡は、全体ではニンテダニブ群が7.8%、プラセボ群は9.7%(群間差:0.80、95%CI:0.48~1.34)、UIP様線維化パターンの患者ではそれぞれ8.3%および12.1%(0.67、0.36~1.24)であった。また、52週時の死亡は、全体ではそれぞれ4.8%および5.1%(0.94、0.47~1.86)、UIP様線維化パターンの患者では5.3%および7.8%(0.68、0.32~1.47)だった。 最も頻度の高い有害事象は両群とも下痢であり、ニンテダニブ群が66.9%、プラセボ群は23.9%で発現した。また、ニンテダニブ群で多い有害事象として、悪心(28.9% vs.9.4%)、嘔吐(18.4% vs.5.1%)、食欲減退(14.5% vs.5.1%)、肝機能異常(ALT上昇:13.0% vs.3.6%、AST上昇:11.4% vs.3.6%)が認められた。重篤な有害事象はそれぞれ32.2%、33.2%にみられた。 著者は「これらのニンテダニブの治療効果は、IPF患者を対象としたINPULSIS 1とINPULSIS 2試験の統合データで観察されたもの(平均年間FVC低下率の差 109.9mL/年)と類似していた」としている。

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高リスク大動脈弁狭窄症、自己拡張型TAVR vs.バルーン拡張型/Lancet

 高齢の症候性重症大動脈弁狭窄症患者への経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)では、早期の安全性および有効性に関して、自己拡張型TAVR(ACURATE neo)はバルーン拡張型TAVR(SAPIEN 3)に対する非劣性基準を満たさないことが、スイス・ベルン大学病院のJonas Lanz氏らが行ったSCOPE I試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月27日号に掲載された。症候性重症大動脈弁狭窄症の高齢患者にはTAVRが推奨されており、TAVRの特性の違いは臨床転帰に影響を及ぼすが、自己拡張型とバルーン拡張型のTAVRの比較はこれまで行われていなかったという。高齢患者で早期の複合エンドポイントを比較する非劣性試験 本研究は、ドイツ、オランダ、スイス、英国の20の心臓弁3次医療センターが参加した無作為化非劣性試験であり、2017年2月~2019年2月の期間に患者登録が行われた(Boston Scientific[米国]の助成による)。 対象は、年齢75歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症で、手術リスクが高いと考えられ、経大腿動脈TAVRの適応とされた患者であった。被験者は、自己拡張型TAVR(ACURATE neo)またはバルーン拡張型TAVR(SAPIEN 3)による治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 安全性と有効性の複合主要エンドポイントは、施術後30日以内の全死因死亡、脳卒中、出血(life-threatening/disabling)、主要血管合併症、介入を要する冠動脈閉塞、急性腎障害(ステージ2/3)、弁関連症状またはうっ血性心不全による再入院、再施術を要する弁関連機能障害、中等度~重度の人工弁逆流、人工弁狭窄とした。 エンドポイントの評価者には治療割り付け情報がマスクされた。有意水準5%の片側検定で、主要複合エンドポイントのリスク差のマージンを7.7%とし、intention-to-treat集団におけるACURATE neoのSAPIEN 3に対する非劣性の評価が行われた。早期複合エンドポイントはTAVRの評価に有用となる可能性 739例(平均年齢82.8[SD 4.1]歳、女性420例[57%]、STS-PROMスコア中央値3.5%[IQR:2.6~5.0])が登録され、ACURATE neo群に372例、SAPIEN 3群には367例が割り付けられた。30日間のフォローアップは、ACURATE neo群が367例(99%)、SAPIEN 3群は364例(99%)で可能であった。 30日以内の主要エンドポイントの発生は、ACURATE neo群が87例(24%)、SAPIEN 3群は60例(16%)であり、ACURATE neo群の非劣性基準は満たされなかった(絶対リスク差:7.1%、片側95%信頼区間[CI]上限値:12.0%、p=0.42)。 一方、主要エンドポイントの2次解析(優越性解析)では、ACURATE neo群に対するSAPIEN 3群の優越性が示された(リスク差の95%CI:-1.3~-12.9、p=0.0156)。 主要エンドポイントの構成要素のうち、全死因死亡(9例[2%]vs.3例[1%])および脳卒中(7例[2%]vs.11例[3%])は両群間に差がなかったのに対し、ステージ2/3の急性腎障害(11例[3%]vs.3例[1%]、p=0.0340)および中等度~重度の人工弁逆流(34例[9%]vs.10例[3%]、p<0.0001)はACURATE neo群で頻度が高かった。 著者は、「安全性と有効性に関する早期の複合エンドポイントは、個々のTAVRシステムの能力の識別に有用となる可能性がある」としている。

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179)患者さんが陥りやすい健康バラエティ番組の落とし穴【糖尿病患者指導画集】

患者さん用:患者さんが陥りやすい健康バラエティ番組の落とし穴説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者先生、この前テレビで、「○○は健康にいい」って言ってたんですが。医師ほお。どんな効果があるって言ってましたか?患者△△って番組で、〇〇はダイエットにもいいし、血管も若返るって・・・。医師なるほど。その番組は「健康番組」じゃなくて、「健康バラエティ番組」なので、内容には注意が必要みたいですよ。患者えっ、違いがあるんですか?(驚いた顔)医師健康番組の目的は正しい情報の提供ですが、健康バラエティ番組の目的は視聴率を上げることですからね。患者あ~…、だから、演出が大げさなんですね。医師そうなんです。本当に効果があるものなら、毎週、同じ食品を紹介しているはずですし、司会者やレギュラーは全員、スリムで健康なはずですよね。患者たしかに、よく考えればそうですね。●ポイント健康番組と健康バラエティ番組の違いを、番組の目的を例にして説明します。

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「薬剤師以外の者」への研修とはどんな内容?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第15回

厚生労働省から「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号 平成31年4月2日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長)が示されてから約6ヵ月が経過しました。この通知を前提にした運用の実施または検討をしている薬局も増えてきたのではないでしょうか。法的な観点から実施が求められる研修この通知に基づく運用についてはさまざまな議論があり、各薬局で検討を要する部分も多いかと思います。その中でも、以下の部分はよく議論になります。5 薬局開設者は、薬局において、上記の考え方を踏まえ薬剤師以外の者に業務を実施させる場合にあっては、保健衛生上支障を生ずるおそれのないよう、組織内統制を確保し法令遵守体制を整備する観点から、当該業務の実施に係る手順書の整備、当該業務を実施する薬剤師以外の者に対する薬事衛生上必要な研修の実施その他の必要な措置を講じること。このうち「法令遵守体制の整備」、「手順書の整備」が重要なのは言うまでもありませんが、「薬剤師以外の者に対する薬事衛生上必要な研修の実施」をどうするのかという議論も多いようです。調剤に関わる業務を行う以上、医療安全に関する研修等は必須でしょうし、そのほかにも検討を要するでしょう。法的な観点から見ても、薬剤師以外の者の医薬品、調剤に関わる法令への理解、薬局や薬剤師の責任、個人情報の取り扱い等に関する知識は法令遵守のために必要と考えます。「薬剤師以外の者」より先に、薬剤師自身の理解が必要「薬剤師以外の者に対する研修」については、この通知に明記されているものの、薬剤師が調剤に最終的な責任を有することを前提として、薬剤師の指示に基づき行うことと示されています。つまり、大前提として、調剤の責任を負い指示を行う薬剤師が、通知に従った運用の注意点についての理解をしておく必要があるでしょう。この通知には、薬剤師への研修の内容についての言及はありませんが、「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」には、「調剤の業務に係る医療の安全を確保するため、指針の策定、従事者に対する研修の実施その他必要な措置が講じられていること」(同省令第1条第1項第15号)が体制の基準として定められています。仮にこの通知に従って、薬剤師以外の者を業務において活用するのであれば、薬剤師に対しても運用に関する研修等の措置を行い、理解をしてもらう必要があると考えられます。薬局での新たな取り組みとして、薬剤師以外の者への研修が注目されていますが、医療安全の観点からは、薬剤師がこの通知に従いどのように運用していくのかをまず理解しておかなければなりません。参考資料1)厚生労働省 調剤業務のあり方について(薬生総発0402第1号 平成31年4月2日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長)2)薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令

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【荻野☓池野対談】第2回 米国にあって日本にないもの

日本の医学部を卒業した医師であり今は米国を拠点に活躍する、ハーバード大学の医学大学院および公衆衛生学大学院教授の荻野 周史氏とスタンフォード大学主任研究員の池野 文昭氏。ともに日米の大学・起業現場を熟知する教育者・研究者である2人の対談。第2回は、2人が留学時代と米国での仕事探しの苦労から考えた、今の日本と日本人に必要なマインドについて語ります。第1回はこちら早くからの「ゼロイチ経験」を荻野私のラボでは、10年以上、日本人のポスドクを受け入れています。例外はいるものの、彼らは総じて優秀で、指示したことはしっかりやってくれますが、創意工夫や新たなアイデアを生み出すことに弱い傾向があります。でも、それは仕方ないことですよね。小学校から10年以上、「指示されたことをやれ。みんなと同じでいろ」という教育を受けてきたのですから…。池野私も学生時代に悔しい思いをしました。研修先のワシントン大学で1ヵ月ほど教授のかばん持ちをしていたのですが、ある時、教授に呼び出されたのです。「君は何をしに米国に来たんだ? 僻地医療に問題意識があるなら、自分でリーダーシップをとって日米の家庭医学についてディスカッションでもすればいい。何をしにわざわざ来たんだか、さっぱりわからない!」。当時の私は「試験の成績がよければ問題なし」と考える甘ちゃん学生でしたので、それを聞いてびっくりしました。「そうか、学生でもそこまでやらないといけないんだ」と思ったものの、当時の私の語学力と人脈では行動に移せるはずもなく、むなしい気持ちのまま帰国しました。この時の悔しさは、今でもよく覚えています。荻野ゼロから1を生み出すことは、いきなりはできませんからね。先日、池野先生がいらっしゃるスタンフォード大学の学生グループから依頼され、講演をする機会がありました。各地から教授を招いて定期的に勉強会を開催しているのです。といっても手弁当の小規模な会ではなく、大学が後援する公式の講演会です。さすがトップ大学、学生の経験に対してしっかり投資をしているな、と感じました。小さなことからトライして、失敗しながら学んでいくプロセスを学生生活の中に組み入れる必要がありますね。池野日本企業と接していると変化も感じます。彼らは、従来の価値観のままでは優秀な人を採用できず、世界で戦えないことを体感していますから。採用基準を変えたり、若手をリーダーに据えたり、企業内ベンチャーをつくったり、いろいろな挑戦をしています。ビジネスは「負けたら退場」というシンプルな世界ですが、アカデミズムの世界は長く日本国内で完結していたため、研究成果や自大学の世界ランキングよりも、いかに上手な「作文」を書いて文部科学省から予算をもらうか、という点を重視してきた感が否めません。自分の「ユニークネス」を磨け荻野ここ数年、米国ではアカデミアのポジションを巡る競争が苛烈さを増しています。1つのポジションに数百の応募が来ることも当たり前。日本人は概して優秀ですが、語学力とコミュニケーション力の不足、そして何より「その人が持つオリジナリティ」の部分が足りず選考に残れないことが多い。「教授に言われたことをそのままやった」研究では、オリジナリティの出しようがないですよね。米国でも大半の人が平凡なのは同じですが、一握りの目をむくほどユニークな人がきちんと登用され、新たな価値を生み出してリーダーになるために、組織の活力が保たれています。研究者としての才能がいまひとつでもチームマネジメント力が突出していたり、政治力が抜群で外部から予算を取ってきたりなど、トップになる人には何らかの突出した能力があります。池野自分の「ユニークネス」を磨くには、「やりたいこと」よりも「今いる場所と周囲のニーズ」を起点に考えるとよいと思います。私の場合、「いる場所」は世界で最も優秀な人が集まるスタンフォードです。語学にハンディのある私がまともに戦っても勝ち目はない。ここで自分の居場所をつくるには「日本人」という彼らにない点を活かすしかない、と考えました。だから、日本に進出する米国ベンチャーの支援をしたり、米国の起業家育成プログラムを日本に持ち込んだりなど、両国をつなぐ役割を果たしてきたのです。私のキャリア選択には「日本をよくしたい」という思いとともに、「自分が米国で生き残るため」という側面も多分にありました。以前、ベンチャー支援の専門知識を蓄えるため、米国の大学院に通って監督省庁に当たるFDA(米国食品医薬品局)について学ぼうと考えました。その時、同僚から言われたのです。「お前よりもFDAに詳しいやつは、スタンフォードだけで100人はいるぞ。ここでのお前のユニークネスは『日本人』だろう? それならば、FDAよりもPMDA(医薬品医療機器総合機構)に詳しくなれ」と。確かにそのとおりだと納得し、方針を転換して毎週末、飛行機に乗って日本の社会人大学院に通い、医療行政を学びました。「今いる場所で役立つ、自分だけの付加価値は何か」、それを徹底的に考え抜いてきたのです。女性と若者への「フェアネス」荻野日本の停滞の要因には、「女性がフェアに扱われていない」ことも大きく影響していると思います。日本では人材プールが半分になっているわけです。米国に男女格差がない、とは言いませんが、それを是正するためのさまざまなアクションがあります。研究の世界でも、育児中の研究者のキャリアを職場がサポートする仕組みがあり、女性研究者を対象とした学会賞や補助金があり、組織のトップに女性が積極的に登用されています。一方、日本の学会に出向くと中心メンバーや重要な講演の発表者は年長の男性ばかり。女性や若手がなかなか増えていないのが気になります。池野米国では、そもそも採用時に年齢・性別を聞くことは法律で禁止されていますからね。もちろん写真や名前で判別はつくのですが、それでも「聞いたらアウト。そこで選別したら訴えられる」と強く意識します。ただ、日本でも女性の要職を増やそうという機運はあって、社外取締役に女性を登用する企業が急速に増えています。ある女性の友人は、「定年後に社外取締役を何社も掛け持ちして、以前よりも給与が増えた」と言っていました。荻野それはいい傾向ですね。でも、そこに至るまでの女性が少ないことの裏返しでもありますね。女性差別は少子化問題とも深く結び付いているでしょう。育児をしている人には重要なポジションを与えない、面白いプロジェクトに入れないというのでは、優秀な人は結婚しない、結婚しても子供を生まない、という選択をする。子供を持つ・持たないは個人の選択ですが、少子化が問題だというならば、子供を持つ人が被る不利益をわかりやすい形でなくさなければならないと思います。(第3回に続く)

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血糖降下薬ピオグリタゾンの肺がん予防効果?

 経口血糖降下薬にがん予防効果があるのか。米国・ロッキーマウンテン地方退役軍人医療センターのRobert L. Keith氏らは、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者や元喫煙者において、経口血糖降下薬ピオグリタゾンに肺がんの発症予防効果があるかを検討する第II相無作為化試験を行った。その結果、有意ではないがわずかに効果が期待できる所見や、特異的病変で組織学的改善が認められたという。著者は「さらなる試験を行い、反応性異形成の特徴を明らかにする必要がある」と述べている。これまでに、前臨床試験でチアゾリジン系薬が肺がんを予防することが、また同薬を服用する糖尿病患者で肺がんの割合が低いことが示唆されていた。Cancer Prevention Research誌2019年10月号掲載の報告。 研究グループは、喀痰細胞診で異型性または気管支鏡検査で異形成が認められた、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者または元喫煙者において、経口ピオグリタゾンの肺がん発症予防効果を検討する、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。 被験者は、試験登録時および6ヵ月の治療完遂後に気管支鏡検査を受け、生検組織スコアが記録された。 主要評価項目は、両群間の最も不良な生検スコア(Max)。副次評価項目は、異形成指標(DI)、平均スコア(Avg)の変化であった。また、炎症スコアも評価した。 主な結果は以下のとおり。・試験には92例(ピオグリタゾン群47例、対照群45例)が参加し、76例が2回の気管支鏡検査を完了した(ピオグリタゾン群39例、対照群37例)。・ベースラインで異形成が認められたのは現喫煙者で有意に多く、同被験者の64%が試験登録時に軽度以上の異形成を有していた。・ピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者は、わずかだがMax値の改善が認められた。一方、現喫煙者は、わずかだが増悪が認められた。・Avg値とDI値については、治療群で統計的に有意な変化は認められなかったが、元喫煙者では、両値ともにわずかな低下が観察された。また、現喫煙者では両値についてごくわずかな変化が認められた。・細胞増殖マーカーのKi-67値は、ベースラインで異形成が認められピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者で、減少の傾向がみられた。

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小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ+化学療法の成績(IMpower133)/ESMO2019

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133では、アテゾリズマブの追加による生存改善が、世界肺がん学会(WCLC2019)で示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、同試験の全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、奏効率(ORR)、安全性について最新のデータが発表され、ドイツ・Lung Clinic GrosshansdorのMartin Rech氏が報告した。 IMpower133は、未治療のES-SCLC患者403例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第I/III相試験。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(症状がない既治療のCNS病変を有する患者を含む、PS 0~1)・試験薬:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(アテゾリズマブ群)・対照薬:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(プラセボ群)・評価項目: [主要評価項目]OS、治験医師評価による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]ORR、DOR、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の追跡期間中央値は22.9ヵ月であった。・OS中央値はアテゾリズマブ群12.3ヵ月、プラセボ群10.3ヵ月と有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.95、p=0.0154)。・ORRはアテゾリズマブ群60.2%、プラセボ64.4%であった。・DORはアテゾリズマブ群4.2ヵ月、プラセボ3.9ヵ月であった。・PD-L1 1%以上(TC or IC)のOSはアテゾリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群10.6ヵ月(HR:0.87)、PD-L1 1%未満(TC or IC)OSはアテゾリズマブ群10.2ヵ月、プラセボ群8.3ヵ月(HR:0.51)であった。・Grade3/4の有害事象はアテゾリズマブ群67.7%、プラセボ群63.3%、Grade5は共に1.5%の発現率であった。

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初回エピソード統合失調症に対するコンピューター化認知機能改善療法~ランダム化比較試験

 統合失調症患者は、社会的機能低下に関連する認知機能障害を呈する。コンピューター化された認知機能改善療法は、慢性期統合失調症の認知機能と機能障害の両方に対する改善効果が知られているが、これらのアプローチを統合失調症の初期段階に用いた場合の効果については、あまり知られていない。スペイン・Universidad Miguel HernandezのLorena Garcia-Fernandez氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象にコンピューター化認知機能改善療法の効果について検証を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年9月7日号の報告。 特定のプログラムを受けている初回エピソード統合失調症患者86例を対象に、REHACOMのコンピューター化認知機能改善療法群またはアクティブ対照群(2回/週、24の1時間セッション)にランダムに割り付けた。臨床的特徴、認知機能および機能障害について、ベースライン時、治療介入後、介入完了6ヵ月後に評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・認知機能改善療法群36例、対照群50例が割り付けられた。・全体として神経認知機能および機能障害の有意な改善が認められ、治療介入後およびフォローアップ後で、両群間に差は認められなかった。・社会認知を除くすべての認知機能領域において、研究期間中にSD範囲0.5~1程度の改善が認められた。 著者らは「初回エピソード統合失調症外来患者に対するREHACOMのコンピューター化認知機能改善療法は、対照群と比較し、認知機能と機能障害の改善に効果的であることは証明されていない」としている。

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第30回 異常Q波の厳しいオキテ~存在=異常なんてある?~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第30回:異常Q波の厳しいオキテ~存在=異常なんてある?~胸痛あってのST変化や動悸ありきの不整脈…典型的な症状とともに心電図所見が出るだけだったら、世の中の“見逃し”は今よりもずっと少ないでしょう。患者さんは無症状であっても、時に心電図が強烈なメッセージを放っている場合があります。それをいかに“受信”できるか、それは系統的判読以外では難しいと思います。今回は「Q波」に関するそんな一例をDr.ヒロがレクチャーします!症例提示83歳、女性。両側膝関節置換術の既往あり(70歳時)。現在は骨粗鬆症と胃炎にて内服加療中。最近、物忘れや言動のつじつまが時折合わないことを心配した家族とともに認知症の専門外来を受診した。諸検査よりアルツハイマー型認知症が疑われ、投薬開始に伴って以下のようなコンサルトがあった。『今後、コリンエステラーゼ阻害剤を用いた治療を検討していますが、初診時検査の一環として施行した心電図にて異常を認めました。循環器科への受診指示がありました。心機能評価ほか貴科的御高診下さい』実際の心電図を示す(図1)。(図1)外来受診時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを選べ。1)異所性心房調律2)左軸偏位3)軽度ST-T変化4)左室高電位5)PR(Q)延長解答はこちら3)解説はこちら今回は抗認知症薬による治療が検討されている高齢女性です。こんな状況で心電図、心疾患が関係してくるって意外ですが、実に興味深いです。1問目では、“お決まり”の心電図所見を問うています。「系統的判読」ですよ、もちろんね(第1回)。1)×:型通り“レーサー(R3)・チェック”をして下さい。R-R間隔は整、心拍数は新・検脈法で60/分(従来法でも同値)(第29回)、そして調律は“イチニエフの法則”ですね。バッチリこれを満たすので、「異所性心房調律」ではなく、サイナス(洞調律)です。2)×:電気軸はI、aVF(またはII)誘導のQRS波の向きがポイント。今回はI、II、aVFすべて上向きですから、自信を持って「正常軸」と言いましょう。具体的な角度は“ちょいムズ”ですが、うまく工夫すると「+40°」までは迫れます*1。3)○:「ST-T部分」は“スタート”のチェックですね。V4~V6では、1mmに満たずとも、わずかに基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)よりST部分が低下しているように見えます。また、T波に関してもI、aVLは陰性、V3~V6でも陰性部分がありそう(二相性かな)です。両者“合わせ技”で「軽度*2ST-T変化」として指摘できます。4)×:V4ではR波が上に向かって“つんざく”勢いですが、V5、V6はおとなしめで「左室高電位」には該当しません。5)×:「PR(Q)部分」は“バランスよし!”の(波形同士の)“バランス”でチェックします。P波とQRS波との距離は、“くっつき過ぎず離れ過ぎない”の適度な距離感が大事で「120~200ms(0.12~0.20秒)」が正常と考えて下さい。1mm四方の目盛りで言ったら“3~5目盛り”以内-今回はその範囲ですから「PR(Q)間隔」はセーフです。*1:III誘導のQRS波が“わずかに上向き”と“わずかに下向き”とが混在して少し難しい。III誘導が“トントン”と考えて「+30°」でも悪くないが、その先の「-aVL」との間で“III寄り”が“トントン・ポイント”なら「+40°」で自動計測値(43度)にも近くなる。*2:「軽微な」という表現が用いられることも。【問題2】[A]自動診断は「軽度ST-T異常」となっているが、心電図診断はそれのみで良いか? 約9年前の心電図(図2)も参照して述べよ。[B]心エコーでは大きな異常はなかった。コンサルト返答のため、必要な追加検査はどうか。血清Creは1.17mg/dLであった。(図2)約9年前の心電図画像を拡大する解答はこちら[A]V2(V3)誘導の「異常Q波」[B]核医学(RI)検査、心臓MRI検査など解説はこちら心電図(図1)の右上部分のコメント欄は、『ST変化あり。循環器対診をご検討ください』となっています。前問で取り上げたように、ST変化は確かにあります。「軽度」と書いてありますね。しかし、注目すべきはそこでしょうか? 実はST-T変化以外に大事な所見が隠れており、それを問題[A]で問うています。過去の心電図を横において“間違い探し”の要領で異常を探しましょう。また問題[B]では、心精査についてです。“どこまでやるか”は医師個人や病院設備にも依存しますが、心エコーで左心機能に異常がない、との評価でも心電図から深い洞察ができる好例として取り上げてみました。“抗認知症薬と心疾患”いろいろな疾患に精通した先生方に笑われてしまいそうですが、正直、いきなり「コリンエステラーゼ阻害薬」とか言われると、浅学なボクは一瞬「んっ?」ってなります(笑)。えーっと、代表的な薬剤を一般名で言いますと、ドネペジル(商品名:アリセプト)、ガランタミン(同:レミニール)、リバスチグミン(同:リバスタッチ、イクセロン)の3種類になりましょうか。しかし、認知症でなぜ心臓病?…って思う方はいませんか?循環器医をしていると、実は今回のような相談は一度や二度ではありません。普段、あまり意識されずに使われているケースも目にしますが、代表的な抗認知症薬であるコリンエステラーゼ阻害薬は、時に心臓に悪さをする可能性があります。キーワードは「コリン作動性」。これは、心臓に関しては迷走神経機能を亢進させ、QT延長効果も相まって、心室不整脈(心室頻拍・細動)や徐脈性不整脈を惹起すると添付文書にも記載されています。ですから、こうした状況で大事なポイントは、おおむね次の3つです。■コリンエステラーゼ阻害薬の投与前に注意せよ!■(1)器質的心疾患(2)電解質異常(3)抗不整脈薬の使用(2)と(3)は催不整脈性に関連しますが、今回の患者さんにはなく(1)が問題となるわけです。“安静時ST低下は虚血じゃない”コンサルティ*3の先生は、『ST-T変化→何か背景に心疾患があるのかも?』と考えたのではないでしょうか(心電図判読医による勧めもあるでしょうが)。心電図(図1)に軽微ながら「ST-T変化」が見られるのは事実です。ただ…さかのぼること1年前、Dr.ヒロは言いました。「安静時に見られるST低下はほとんど(心筋)虚血じゃない!」と。「左室肥大」や「脚ブロック」に伴うニ次性変化を除けば、安静時に認められるST変化は非特異的所見なことが圧倒的に多いのです。今回もそうですが、無症状*4の場合はなおさらです。もっとも大きな原因は、ズバリ「非特異的変化」。とくに心疾患とリンクするわけでもなく、“あっても別に病的意義はない”っていうニュアンスでしょうか。とりわけ中高年女性に多い所見です。ですから、心疾患の既往も思わせぶりな自覚症状もないのであれば、このST-T変化を掘り下げても通常は何も出てきません。注目すべき点は別にあります。*3:コンサルト「した」側。*4:術前心電図の回(第13回)に述べた「心疾患の“5大症状”」のうち、動悸、息切れ、胸痛の3つがとくに大事。“どうなら「異常Q波」?”たまたま、この方には約9年前にとられた心電図(図2)が残っていました。「正常範囲」とされた図2と今回の図1の両者を比べてみてください。注目すべきは胸部誘導。確かにST部分やT波の様相もだいぶ変化しています。ただ、ボクが今回述べたいのはV1~V3誘導についてです。過去に比べてV1、V2誘導のR波がゴソッと削げています。よく見ないとわかりませんが、V2誘導は陰性波から始まっているのです(図3赤矢印)。しかも、通常はV1→V2→V3となるに従ってR(r)波は“徐々に伸びる”ものですが(R波増高:R-wave progression)、なんだかV2で凹んでいるのもオカシイです。この2点に気づけたヒトは鋭い! ボクは普段“スパイク・チェック”のR波の高さをチェックする際、“高すぎ・低すぎ”をチェックする以外に、このV1~V3誘導のR波の増高過程が正常かも確認することを推奨しています*5*5:異常な場合、「R波の増高不良」という所見になること多し。(図3)図1よりV1~V3誘導のみ抜粋画像を拡大するQRS波が陰性波からはじまる場合、それを「Q(q)波」というのでしたね(第17回)。この「Q(q)波」ですが、“異常”なものに関しては心筋梗塞をはじめ、壊死した心筋巣を反映する意味で重要でした。今回はV1~V3誘導に限って扱いますが、この3つの誘導については、「Q(q)波」は“ある”、つまり「存在」だけでアウトです。どんなに幅が狭くても、深さが浅くても、“any Q(q)”、つまりあったら常に異常だということ。これが今回、ボクが最も言いたかったことです。今回はラッキーなことに過去の心電図がありましたが、仮になくても同じく異常を指摘できないといけません。“正常QRS波の成り立ちを考えよ”「なぜ?」と思われる方も多いかもしれません。それには心室内を電気が流れる順番の理解が必要です。房室結節を越えた電気は、直下のヒス束から左右の「脚」へと続き、心室中隔を下行していきますが、両者は同時ではなく、左脚の興奮がわずかに先行します*6。正常だと電気は0.1秒(100ms)以内に心室の隅々にまで行き渡りますが、ごく初期(20ms)の時間帯には左脚から右脚に向かう、矢印で描くと「左→右」のような流れとなります(図4)。心電図の世界では、観察点に電気・興奮が向かってくるときに陽性(上向き)の波として描かれるルールを思い出しましょう。心臓の真ん中より右側にあるV1~V3誘導は“右”前胸部誘導と呼ばれ、心室中隔の初期興奮を迎え入れることになるため、QRS波は陽性波(R[r]波)からスタートするはずです。(図4)心室中隔の電気の流れ[等時相マップ]と胸部誘導波形画像を拡大するちなみに、反対に心臓を左側から眺めるI、aVL、V5、V6誘導(イチ・エル・ゴロク)などでは、逆にQRS波が小さな陰性波から始まり、その部分は「中隔性q波」と呼ばれます。今回は、だいぶはしょりましたが、この辺を詳しく知りたい方は拙著*7をどうぞ(笑)。*6:下手過ぎてダジャレにもなりませんが、ボクは「左脚が先」と覚えています(“「さ」つながり”)。*7:心電図のみかた、考え方[基礎編](中外医学社)のp.246~251を参照。“どこの心筋梗塞でしょう?”どうやら異常はV1~V3誘導あたりにありそうです。仮に心筋梗塞が昔起きていた場合、病変はどこにあるのでしょうか? それを探るには、胸部誘導の各電極の位置と対応する左室壁について説明した回(第17回)、を見返してみましょう(図5)。(図5)胸部誘導と両心室の位置関係(再掲)画像を拡大するR波が削げてもQ波にはなっていないので、V1誘導の担当する「(心室)中隔」はセーフです。しかし、V2、V3は小さいながら“異常”なQ波ということになります。こうした隣接2誘導で異常Q波があることは、梗塞(壊死)を示唆する有意な条件の一つであり、左室「前壁」にその可能性があるわけです。よく見るとV3誘導に関しては、以前から「q波」があるようですが、V2誘導は新しく生じた異常Q波。やはり、一部であっても左室「前壁」に心筋梗塞が起きたと考えるべきだと思います。以上から中隔よりの狭い範囲かもしれませんが、「陳旧性前壁心筋梗塞」を疑わせる心電図になるわけです。大丈夫そうに見えて、一気に心疾患の“黄信号”が点滅し出したのです。“事の顛末とコンサルト返答”最後に問題2に関する必要な追加検査を述べて終わります。心筋梗塞などの虚血性心疾患を疑ったとして、80歳以上で膝に人工関節の入った人に運動負荷心電図は難しいですよね? トレッドミル検査はいわんや、マスター階段試験もはばかられます。しかも、今回のように軽度でも既存のST-T変化がある場合、偽陽性が出やすいことも知っておくべきです。さらに腎機能も悪いときたら…残りは核医学(RI:radio-isotope)検査かMRIですよね。共にある程度以上の病院でないとできない検査ですから、代わりに十分な補液などを行って腎機能に配慮し、冠動脈造影CT検査などがなされるかもしれません。この辺のアレンジは担当医の裁量でしょう。実際には、アデノシン三リン酸(ATP)を静注して行う薬剤負荷シンチグラフィ検査が行われました。結果は、可逆性のある誘発性虚血はなく、一部ながら「陳旧性前壁梗塞」の所見がありました。駆出率(LVEF)は60%強と保持されていましたが、上記検査による評価では左室前壁の壁運動は低下していました。そうです、恐れていた器質的心疾患がこの女性にはあるのです! あくまでも「過去」の話で、患者さんは今現在に何の症状も訴えないのですが。で、でも見つけたぞ、“幽霊の正体”を(笑)。梗塞範囲が比較的小さかったためか、あるいは単純な見落としかは不明ですが、エコーでは異常が検出されていませんでした(検者や読影者にもよるでしょう)。しかし、RI結果の“真実”を心電図は実に見事に教えてくれています(実はエコーの検者にも心電図の読みが問われています)。その“ささやき”を受信できるか、かつて“星の王子さま”に例えましたが、今回も同じです(第10回)。最終的な返答として、以下のようでどうでしょうか?『20XX年の心電図と比較すると、前・側胸部誘導のST-T変化に加えてV1、V2誘導のR波減高(V2誘導は新出の異常Q波)を認めます。過去に胸痛イベントはなかったようですが、RI検査でも陳旧性前壁梗塞に合致する所見でした。したがって、不整脈(徐脈・頻脈性ともに)などに注意しながらコリンエステラーゼ阻害剤を使用してゆくべきだと思います』今回は“クルッと”の“ク”で、いの一番にチェックすべきV1~V3誘導の異常Q波について扱いました。“ある時点で即アウト”の厳しいオキテ、非常に大事なのでよく復習しておきましょうね。では、また!Take-home Message安静時ST-T変化は非特異的所見なことが多し~症状や臨床背景を加味しようV1~V3誘導はQ(q)波があれば「必ず」異常!前壁誘導(V1~V4)のうち隣り合う2つで異常Q波があったら陳旧性心筋梗塞を疑うべし!【古都のこと~百代通いの悲恋伝説~】随心院は小野小町と縁が深いことでも知られます。仁明天皇の崩御に伴い、宮仕えの職を辞した後、小町は山科小野と呼ばれるこの地に隠棲し、境内の一角に残る「化粧井戸(けわいのいど)の水で毎日“メイク”をしたそうです。小野小町のイメージといえば、六歌仙*1よりも“美女”という皆さんも多いのでは? 小町は800年代の前半に容貌秀絶の名を欲しいままにしたとされ、実際に貴公子たちから彼女宛に送られた数多くの“ラブレター”が埋められた文塚も残っています。ところで、この今風で言う“恋多き美人歌手”に心ときめいてしまった深草少将(ふかくさのしょうしょう)の「百夜通い(ももよがよい)」の伝説*2を知っていますか? ご存じの方はかなりのツウと見ました! 実際、この悲しい純愛ラブストーリーは後年「通小町(かよいこまち)」として能でも演じられているそうです(一度は見に行かなきゃ!)。また、現在でも3月末に行われる“はねず*3踊り”は、この伝説をモチーフにしており、カワイイ娘さんのいる方なら、一度は見に行って「小町絵馬」と「美心御守」も一緒にゲットしたいものですね。個人的には、いつぞや人気となった『電車男』よりも、“happy ending”でない深草少将の話のほうがジーンときます。現代風にアレンジしたら、どんなキャストになるのかなぁと、勝手に“監督面”してニヤケるDr.ヒロなのでした(笑)*1:「花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに」など小町は哀愁に富み情熱的な夢の歌を多く残したのはご存じの通り。*2:募る思いを胸に深草から求愛にやって来た少将を鬱陶しく思った小町は、「私のもとへ百夜通い続けたら、晴れて契りを結びましょう」と告げる。この大人の“塩対応”に気づかぬピュア少将は、「あなたの心が解けるまで幾夜でも参ります」と発言する。小町は門前の榧(かや)の実を取って日を数えたそう。ただ、通いつめて九十九夜目の雪の夜、病と寒さで少将は息絶える。小町はこれを悔い、晩年一つ足りない“榧の実リング”を地に播いたとされ、かつては99本の榧の木があったとされる。書院内で榧の切り株や実際のものとされる木の実も見ることができる。*3:随心院には有名な小野梅園がある。“はねず”とは梅の白みがかった薄紅色のこと。

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初回エピソードうつ病患者における発症年齢と皮質の厚さとの関連

 以前の研究で、早期発症成人うつ病(EOD)患者と遅発性成人うつ病(LOD)患者では、脳灰白質の体積変化に違いがあることが示唆されていた。中国・昆明医科大学のZonglin Shen氏らは、皮質の厚さ(CT)がうつ病の発症年齢の影響を受けるかについて検討を行った。Neuroreport誌オンライン版2019年9月9日号の報告。 EOD患者54例、LOD患者58例、若者対照群57例、高齢対照群58例の高解像度MRI画像より検討を行った。うつ病の重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS17)を用いて評価した。患者のCTと臨床スコアとの関連について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・診断における主要な影響は、左吻側前帯状皮質(rACC)、右下側頭回、右外側部前頭眼窩野(lOFC)、両側脳梁周において有意に認められた。・rACCおよび両側尾側前帯状皮質(cACC)において、CTに対する発症年齢の影響が顕著に認められた。・診断による発症年齢の相互作用の影響は、両側rACCおよび右lOFCで認められた。・EOD患者では、若者対照群と比較し、両側rACCにおけるCTの萎縮が観察された。・LOD患者では、高齢対照群と比較し、lOFCにおけるCTの肥大が観察された。・EOD患者では、LOD患者と比較し、右cACCおよび後帯状皮質(PCC)において皮質の萎縮が認められた。・右cACCまたはPCCと症状重症度または罹病期間との間に有意な関連は認められなかった。 著者らは「うつ病患者は、発症年齢が異なると、CT変化に明確な違いが生じており、EODとLODの病理学的メカニズムが異なる可能性が示唆された」としている。

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