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スティーブンス・ジョンソン症候群〔SJS : Stevens-Johnson Syndrome〕、中毒性表皮壊死症〔TEN : Toxic Epidermal Necrolysis〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬疹(薬剤性皮膚障害)は軽度の紅斑から重症型までさまざまであるが、とくにスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome:SJS)型薬疹と中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:TEN)型薬疹は重篤な経過をたどり、死に至ることもある。両疾患はウイルス感染症や細菌感染症に続発して生じることもあるが、原因の大半は薬剤であるため、本稿では両疾患をもっぱら重症型薬疹の病型として取り扱う。■ 疫学近年、薬剤による副作用がしばしばマスコミを賑わせているが、薬疹は目にみえる副作用であり、とくに重症型薬疹においては訴訟に及ぶこともまれではない。重症型薬疹の発生頻度は、人口100万人当たり、SJSが年間1~6人、TENが0.4~1.2人と推測されている。2009年8月~2012年1月までの2年半の間に製薬会社から厚生労働省に報告されたSJSおよびTENの副作用報告数は1,505例(全副作用報告数の1.8%)で、このうち一般用医薬品が被疑薬として報告されたのは95例であった。原因薬剤は多岐にわたり、上記期間にSJSやTENの被疑薬として報告があった医薬品は265成分にも及んでいる。カルバマゼピンなどの抗てんかん薬、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛消炎薬、セフェム系やニューキノロン系抗菌薬、アロプリノールなどの痛風治療薬、総合感冒薬、フェノバルビタールなどの抗不安薬による報告が多いが、それ以外の薬剤によることも多く、最近では一般用医薬品による報告が増加している。■ 病因薬疹は薬剤に対するアレルギー反応によって生じることが多く、I型(即時型)アレルギーとIV型(遅延型)アレルギーとに大別できる。I型アレルギーによる場合は、原因薬剤の投与後数分から2~3時間で蕁麻疹やアナフィラキシーを生じる。一方、大部分を占めるIV型アレルギーによる場合は、薬剤投与後半日から2~3日後に、湿疹様の皮疹が左右対側に生じることが多い。薬剤を初めて使用してから感作されるまでの期間は4日~2週間のことが多いが、場合によっては10年以上安全に使用していた薬剤でも、ある日突然薬疹を生じることがある。患者の多くは薬剤アレルギーの既往がなく突然発症するが、重症型薬疹の場合はウイルスなど感染症などが引き金になって発症することも多い。男女差はなく中高年に多いが、20~30代もまれではない。近年、免疫反応の異常が薬疹の重症化に関与していると考えられるようになった。すなわち、免疫やアレルギー反応は制御性T細胞とヘルパーT細胞とのバランスによって成り立っており、正常な場合は、1型ヘルパーT細胞による免疫反応を制御性T細胞が抑制している。通常の薬疹では(図1)、1型ヘルパーT細胞が薬剤によって感作されて薬剤特異的T細胞になり、同じ薬剤の再投与により活性化されると薬疹が発症する。画像を拡大するしばらく経つと制御性T細胞も増加・活性化するため、過剰な免疫反応が抑制され、薬疹は軽快・治癒する。ところが、重症型薬疹の場合(図2)は、ウイルス感染などにより制御性T細胞が抑制され続けているため、薬疹発症後も免疫活性化状態が続く。薬剤特異的T細胞がさらに増加・活性化しても、制御性T細胞が活性化しないため、薬剤を中止しても重症化し続ける。画像を拡大する細胞やサイトカインレベルからみた発症機序を示す(図3)。画像を拡大する医薬品と感染症によって過剰な免疫・アレルギー反応を生じ、活性化された細胞傷害性Tリンパ球(CD8 陽性T細胞)や単球、マクロファージが表皮細胞を傷害してネクロプトーシス(ネクローシスの形態をとる細胞死)を誘導し、表皮細胞のネクロプトーシスが拡大することによりSJSやTENに至る、と考えられている。■ 症状重症型薬疹に移行しやすい病型として、とくに注意が必要なのは多形滲出性紅斑で、蕁麻疹に似た標的(ターゲット)型の紅斑が全身に生じ、短時間では消退せず、重症例では皮膚粘膜移行部にびらんを生じ、SJSに移行する。SJSは、全身の皮膚に多形滲出性紅斑が多発し、口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部や口腔内の粘膜にびらんを生じる。しばしば水疱や表皮剥離などの表皮の壊死性障害を来すが、一般に体表面積の10%を超えることはない。38℃以上の発熱や全身症状を伴うことが多く、死亡もまれではない。TENは最重症型の薬疹で、全身の皮膚に広範な紅斑と、体表面積の30%を超える水疱、表皮剥離、びらんなど表皮の重篤な壊死性障害を生じる。眼瞼結膜や角膜、口腔内、外陰部に粘膜疹を生じ、38℃以上の高熱や激しい全身症状を伴い、死亡率は30%以上に及ぶ。救命ができても全身の皮膚に色素沈着や視力障害を残し、失明に至ることもある。また、皮膚症状が軽快した後も、肝機能や呼吸器などに障害を残すことがある。なお、表皮剥離が体表面積の10%以上30%未満の場合、SJSからTENへの移行型としている。■ 予後SJS、TENともに、薬剤を中止しても適切な治療が行われなければ非可逆的に増悪し、ステロイド薬の全身投与にも反応し難いことがある。皮疹の経過は多形滲出性紅斑 → SJS → TENと増悪していく場合と、最初からSJSやTENを生じる場合とがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)薬疹は皮疹の分布や性状によってさまざまな病型に分類されるが、重症型薬疹は一般に、(1)急激に発症し、急速に増悪、(2)全身の皮膚に新鮮な発疹や発赤が多発する、(3)結膜、口腔、外陰などの粘膜面や皮膚粘膜移行部に発赤やびらんを生じる、(4)高熱を来す、(5)全身倦怠や食欲不振を訴える、などの徴候がみられることが多い。皮膚のみならず、肝腎機能障害、汎血球・顆粒球減少、呼吸器障害などを併発することも多いため、血算、白血球分画、生化学、非特異的IgE、CRP、血沈、尿検査、胸部X線撮影を行う。また、ステロイド薬の全身投与前に糖尿病の有無を調べる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療の実際長年安全に使用していた薬剤でも、ある日突然重症型薬疹を生じることもあるため、基本的に全薬剤を中止する。どうしても中止できない場合は、治療上不可欠な薬剤以外はすべて中止するか、系統(化学構造式)のまったく異なる、患者が使用した経験のない薬剤に変更する。急速に増悪することが多いため、入院させて全身管理のもとで治療を行う。最強クラスの副腎皮質ステロイド薬(クロベタゾールプロピオン酸など)を外用し、副腎皮質ステロイド薬の全身投与(プレドニゾロン 30~60mg/日)を行う。治療効果が乏しければ、ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン 1,000mg/日×3日)およびγグロブリン(献血グロベニン 5g/日×3日)の投与を早急に開始する。反応が得られなければ、さらに血漿交換や免疫抑制薬(シクロスポリン 5mg/kg/日)の投与も検討する。■ 原因薬剤の検索治癒した場合でも再発予防が非常に重要である。原因薬剤の検索は、皮疹の軽快後に再投与試験を行うのが最も確実であるが、非常にリスクが大きい。入院させて通常処方量の1/100程度のごく少量から投与し、漸増しながら経過をみるが、薬疹に対する十分な知識や経験がないと、施行は困難である。再投与試験に対する患者の了解が得られない場合や、安全面で不安が残る場合は、皮疹消退後にパッチテストを行う。パッチテストは非常に安全な検査で、しかも陽性的中率が高いが、感度は低く60%程度しか陽性反応が得られない。また、ステロイド薬の内服中は陽性反応が出にくくなる。In vitroの検査では「薬剤によるリンパ球刺激試験」(drug induced lymphocyte stimulation test:DLST)が有用である。患者血清中のリンパ球と原因薬剤を反応させ、リンパ球の幼若化反応を測定するが、感度・陽性的中率ともにパッチテストよりも低い。DLSTは薬疹の最盛期にも行えるが、発症から1ヵ月以上経つと陽性率が低下する。したがって、再投与試験を行えない場合はパッチテストとDLSTの両方を行い、両者の結果を照合することにより原因薬剤を検討する。現在、健康保険では3薬剤まで算定できる。4 今後の展望近年、重症型薬疹の発症を予測するバイオマーカーとして、ヒト白血球抗原(Human leukocyte antigen:HLA)(主要組織適合遺伝子複合体〔MHC〕)の遺伝子多型が注目されている。すなわち、HLAは全身のほとんどの細胞の表面にあり免疫を制御しているが、特定の薬剤による重症型薬疹(SJS、TEN)の発症にHLAが関与しており、とくに抗痙攣薬(カルバマゼピンなど)、高尿酸血症治療薬(アロプリノール)による重症型薬疹と関連したHLAが相次いで発見されている。さらに、同じ薬剤でも人種・民族により関与するHLAが異なることが明らかになってきた(表)。画像を拡大するたとえば、日本人のHLA-A*3101保有者がカルバマゼピンを使用すると、8人に1人が薬疹を発症するが、もしこれらのHLA保有者にカルバマゼピン以外の薬剤を使用すると、薬疹の発症頻度が1/3になると推測されている。また、台湾では、カルバマゼピンによる重症型薬疹患者のほぼ全員がHLA-B*1502を保有しており、保有者の発症率は非保有者の2,500倍も高いといわれている。そのため台湾では、カルバマゼピンとアロプリノールの初回投与前には、健康保険によるHLA検査が義務付けられている。このようにあらかじめ遺伝子多型が判明していれば、使用が予定されている薬剤で重症型薬疹を起こしやすいか否かが予測できることになる。5 主たる診療科複数の常勤医のいる基幹病院の皮膚科、救命救急センター※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報医薬品・医療機器等安全性情報 No.290(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.293(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.285(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SJS患者会(SJSの患者とその家族の会)1)藤本和久. 日医大医会誌. 2006; 2:103-107.2)藤本和久. 第5節 粘膜症状を伴う重症型薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症). In:安保公介ほか編.希少疾患/難病の診断・治療と製品開発.技術情報協会;2012:1176-1181.3)重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会. 日皮会誌. 2016;126:1637-1685.公開履歴初回2014年01月23日更新2019年10月21日

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第12回 痛みの治療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第12回 痛みの治療法これまで11回にわたって、痛みの基本的概念から身体各部の痛みについて述べてまいりました。この<痛み>シリーズの最終回として、今回は痛みの治療法を概説いたします。痛み治療は末梢→中枢が原則、治療法は多岐に基本的な痛みの治療方針としては、神経の末梢部位から攻めていきます。たとえば神経ブロックにおきましても、罹患部分が末梢であれば痛みのトリガーポイントからブロックしていきます。効果が見られなければ、順次中枢部へと進んでいきます。末梢神経ブロックの次には、硬膜外ブロックが適応となります。その次には、脊髄や脳組織もターゲットとなります。電気神経刺激療法におきましても、体表の末梢神経から始めまして、脊髄電気刺激、脳電気刺激などへ移行し、鎮痛効果が見られなければ、神経ブロック同様に刺激部位を上位中枢へと移動していきます。大脳皮質を刺激する電気痙攣療法(ECT)は、うつ病に効果が認められておりますが、難治性慢性疼痛の治療にも応用されています。ECTによって嫌な記憶を忘れることも、疼痛の緩和をもたらすからです。低出力レーザー治療を含む光線療法も広く応用されてきております。レーザー治療は、神経ブロックの効果には多少及ばないものの、高齢患者を想定すると副作用が少ないために安全で有用性も高いと考えられております。患者参加型の疼痛治療法も試みられております。痛みは患者本人にしかわからないために、患者が痛みを感じた時に痛み治療薬を患者自身で投与する方法です。Patient Controlled Analgesia (PCA:自己調節鎮痛法)と呼ばれておりますが、ディスポーザブルセットからコンピュータ内蔵機器まで様々な装置が使用されております。主として鎮痛薬の静脈投与ですが筋肉投与も可能です。経口投与による頓服投与スタイルもPCAの一種ですが、あらかじめ基本となる鎮痛薬をベースとしまして、痛い時に使用する頓服用の鎮痛薬を、痛みが強くなるようであれば患者自身の判断で服用してもらいます。インターベンショナルな痛みの治療法も様々考案されております。そのうち、仙骨硬膜外腔癒着剥離術は腰痛治療にも応用されております。ビデオガイドカテーテルを仙骨裂孔から挿入し、ディスプレイ画面にて、癒着部を確認しながら、剥離を行っていきます。それと同時に生理食塩水で炎症部を洗浄し、発痛物質を洗い出すことによって、鎮痛を得る方法です。近年、分子生物学的手法の進展によって、痛みに関連する神経の受容体が次々と発見され、複雑な痛みの機序が徐々に解明されてきております。また、個々の患者さんによって、その疼痛機序は異なっておりますので、責任受容体や痛みの機序を容易に見つけ出すためのテストが必要になってきました。このためにドラッグチャレンジテスト(DCT)を活用することによって有効的な薬物を見出して、より効果的な薬物療法を施行していくことが大切です。使用される薬物としては、ケタミン、ATP(アデノシン3燐酸)、チオペンタール、ミダゾラム、モルヒネ、リドカイン、フェントラミンなどです。ケタミンはN-メチル‐D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬であり、NMDA受容体の活性化が原因の痛みに効果的です。ATPは脊髄A1受容体を介する神経調節機構に働きます。チオペンタールは、抗痙攣作用や精神的原因などの中枢神経抑制作用によって、痛みを軽減する効果を持っています。ミダゾラムも、チオペンタールと同様の作用を持っておりますが、筋緊張の改善作用もありますので、疼痛も緩和されます。モルヒネは、脊髄オピオイド受容体に作用するとともに、下行性抑制系も賦活して、強い鎮痛効果を発揮します。リドカインは、痛み神経の異常興奮を抑制する作用を有しておりますので、神経が原因となる神経障害性疼痛に効果がみられます。フェントラミンは、痛みの機構に交感神経系の関与があるときに効果があります。このようにして、それぞれの患者の痛みの機構を解明することによって、関連する薬物の投与や、脊髄・脳電気刺激療法などの適応が考慮され、治療法が重点的に応用されるために患者の負担が少なくなる上、より良い効果が早く得られるため、有効率もそれだけ高くなります。難治性疼痛の患者さんには、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法も活用されております。運動療法を含む理学療法にも効果が見られております。最近、痛み患者の遺伝子の解析も試みられております。痛みが残存する人、しない人などの遺伝子の違いが解明されれば、痛み治療対象者や治療対象薬の選定にも有用となります。人生100年時代への対策の一つとして、2,000万人と言われる慢性疼痛の患者さんが、痛みを軽減することによって、患者さん自身で完結できる人生を歩んでいただければ、この上ない喜びです。<CareNet.com編集部よりお知らせ>本連載は、今回でいったん完結となります。2020年1月より、花岡一雄先生執筆による新連載を開始予定です。痛みの治療法をより具体的に掘り下げ、密度の濃い内容でお届けいたします。ぜひ、ご期待ください!

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【荻野☓池野対談】第3回 思い切った改革と地道な改革を両輪で

日本の医学部を卒業した医師であり今は米国を拠点に活躍する、ハーバード大学の医学大学院および公衆衛生学大学院教授の荻野 周史氏とスタンフォード大学主任研究員の池野 文昭氏。ともに日米の大学・起業現場を熟知する教育者・研究者である2人の対談。最終回は、今の日本と教育現場を変える、具体的な改革案を語ります。第1回はこちら / 第2回はこちら英語特区&子供世帯優遇荻野日本の方によく言っているのが「国家戦略特区を使って、日本語と英語両方を公用語とする小都市をつくればいい」という提言です。詳しくは私のブログ1)で説明していますので、ぜひご覧ください。私自身、長年英語で苦労してきて、その根本的原因は日本語にはない音を聞き取りにくいからでは、と考えるに至りました。視覚に頼り過ぎていた英語教育のツケを払っているのです。この問題を解決するには、聞き取りの能力が発展しつつある幼少期から、英語の音に慣れるのが理想です。若ければ若いほど脳は柔らかく、柔軟性・可塑性が高いほど、英語の音に慣れるのに苦労しないでしょう。一部のインターナショナルスクールなどではそうした環境があるのでしょうが、もっと大規模に、経済的な負担を少なく、同様の環境をつくれないでしょうか。国民の20%、いえ10%でも英語を苦にしなくなれば、日本の世界での地位の向上に大きく役に立つはずです。ほぼすべての国民が6年以上も英語を一生懸命勉強しているのに、英語を日常で使えないのはおかしいと気付いていない、あるいは気付いていても対策を取っていないのが問題です。そのための提案が、この「英語公用特区」なのです。ここでは官公庁や学校、病院などのすべての公共機関およびテレビ、ラジオなどのメディアが2ヵ国語を使います。海外からの移住者も呼び込みやすいですし、教育熱心なファミリー世帯の増加も見込めるでしょう。大都市では難しいでしょうから、アカデミズムに理解のある、地方の学園都市などでスタートするとよいのではと思います。例を挙げれば、茨城県つくば市、千葉県成田市、沖縄県の那覇近郊地区などです。池野実現は少しハードルが高そうですが、確かに高齢化・過疎化が進む地方都市では、関心を持つ首長がいそうですね。荻野もちろん、「幼少のころから多言語の環境下にいると、母国語の習得に弊害が出る」「バイリンガルは、母国語も第二言語も中途半端になる児童が多い」といったご批判があることは承知しています。それでも、苦もなく英語ができなければ、情報を手に入れるのが遅れ、研究者は研究を売り込めず、ビジネスでは商品を売り込めない。せめて国民の10%でいいから、バイリンガルを増やすべきなのです。英語ができれば世界中で仕事ができます。世界で活躍する日本人が増えれば、情報はもっと日本に入ってくるし、日本が活性化します。私の研究室にもよく日本から若い学生が見学に来ますが、彼らの多くは目を輝かせて私の話を聞きます。かつて日本にいた私には、そんなチャンスはありませんでした。日本の未来はまだまだ明るいと感じますが、そうした人は少数派であることも事実。日本の学校教育は多数派主義なのがいけません。飛び級制度なども含めて、少数の精鋭をもっと磨くことも重要だと思います。海外の学会で日本人同士のみでつるんでいたり、Facebookでよい発言をしているのに言語が日本語だけだったり、といった世界における日本人のコミュニケーション力のなさを見て歯がゆい思いをすることがあります。英語によるコミュニケーションは最初の一歩が大事なのに、そこにすら行き着けないのですから。実際、シンガポールは英語公用語化で高い国際競争力を手に入れました。香港は言うまでもありません。凋落しつつある日本が再び世界で存在感を示すには、そのくらい思い切ったやり方が必要では、と思うのです。もう1つ、子供を生んだ世帯にはもっと思い切った支援があるべきではないでしょうか?フランスで少子化が改善したのは、子供を生むほどに税負担が軽減する制度を導入したことが大きい、と聞いています。池野日本では自治体によって出産時にまとまった一時金を出したり、幼保教育や高校の無償化で負担を軽減したり、という方向での支援はありますね。恒久的な減税となると、国のデザインそのものを変える必要があり、ようやく消費税増税を実現した今の状況下では、政府もそちらにかじを取りにくいのではないでしょうか。荻野難しい点は承知しています。でも、次の世代の国民を育てているのですから、国からサポートがあることは当然だと思います。一人親でも、結婚していない人でも、いっときの給付金ではなく国がずっと子育てを支援してくれる。その安心感がなければ、子供を生み育てる気にはなれないでしょう。身近な成功モデル&トライアル・アンド・エラー文化池野大組織や教育・行政が変わるためには時間を要します。だからこそ、私は日本で若い人の起業支援に力を入れています。起業は、学生や若者の選択肢としてずいぶん身近なものとなってきました。ただ、米国と比べるとまだ周回遅れの感があります。米国では、起業は一般的な選択肢であり、事例も身近に山ほどあります。その中で、新たな方法で社会問題を解決し、経済的にも成功して初めて評価される。日本ではまだ成功例が少ないので、起業すること自体を目指したり、評価したりする傾向がある。ただ、これは時間が解決する問題でしょうから、日本のやる気と能力がある人をサポートすることで、身近な成功例を増やしたいと考えています。荻野そう、こちらでは、世界的な起業家、ノーベル賞受賞者や候補者がその辺を歩いていて、話し掛けてみると「おお、意外と普通やな」と思えたりする。そうした環境が大切ですね。池野もう1つ気になるのが、我慢を美徳とし、失敗に不寛容な日本の文化です。典型的なのが就職で、転職は昔に比べて一般的になったとはいえ、転職を重ねる人はあまりよい目で見られない傾向があります。米国人はキャリアアップのための転職は当たり前で、数年おきに仕事を変える人が珍しくありません。給与アップはもちろん動機の1つですが、「もっと面白そうな仕事を見つけたから」という動機の人も多い。荻野「とにかくやってみよう」という意識が強いですよね。「ダメだったらまた次に行けばいい」とカジュアルに転職するし、周囲もそれを当然と受け止めます。私は「実験」が仕事なので、「失敗なんて当たり前」と体感していますし、「失敗しないように、と思い過ぎて挑戦しないことこそが失敗」という価値観を皆さんにもっと知ってほしい。幼少期、学童期からもっとやってみさせて、「失敗してもまったくOKだよ、チャレンジするのが一番大事だよ」というメッセージを送らないといけません。池野私は日本の地方都市で起業支援や教育改革のプロジェクトに参加する機会があるのですが、旗振り役になる人がなかなか出てこないのです。「失敗したら何を言われるか」「この土地にいられない」と言って尻込みする。だから「では、私がまとめ役をやりましょうか」と手を挙げると、その後は案外スムーズに事が進む。私の場合は、失敗したところで米国に帰ればいいだけですから(笑)。「矢面に立たないで済むなら改革に参加したい」と考える人は実はたくさんいるのです。本来であれば、彼ら自らがリーダーとなり、失敗してもまた挑戦すればいい、と言える環境であってほしいと思います。米国は「落ちぶれることも自由」荻野日本に対していろいろ言ってきましたが、米国にも問題点は多い。私も長く身を置いてきた競争社会が、最近はちょっと行き過ぎているように感じます。研究の世界でもポジションや予算の奪い合いが年々激化し、研究の道を諦める人も増えました。つい最近も、一緒に研究していた有望な若手研究者が、大学を辞め製薬会社に就職してしまいました。私が来た当初より、生き残るのが数倍大変になっている、という実感があります。池野こちらは成功するのも自由だが、落ちぶれるのも自由、という厳しさがありますね。私は渡米3年目の時、仕事が途切れて貯金が底を突きかけたことがあります。保険の掛け金も払えない状況に、妻は「身の危険を感じる」と言って4人の子供を連れて日本に帰ってしまいました。そんな中でも、私はどこかで「いざとなれば、誰かがなんとかしてくれる」と信じていました。それまでの公務員気質が抜けていなかったのです。もちろん、誰も助けてはくれませんでした。そこでようやく理解したのです。この国では、何もしなければ落ちぶれるだけ、それが自由の怖さであり代償なのだと。米国は、サバイブ能力のある人は高く羽ばたけますが、それ以外の人は高過ぎる生活費や医療費などであっという間に生きることすら困難になることも、また事実です。「外からの風」になる池野戦後の日本が急速に経済発展した背景には、上の世代の多くが戦争でいなくなったために、若い世代が先入観なく自由に物事に取り組めた、という点もあるでしょう。現在、上の立場にいる方がすぐに立場を譲ることは難しいかもしれませんが、若手の方が自由に動ける環境をつくったり、組織として学びを支援したりすることはできるでしょう。荻野大学や研究機関のトップに外部の人を招聘することも重要だと思います。組織が変わるのはやはりトップの力が大きい。内部昇格者だけでは視点に多様性が生まれず、新しい発想が生まれにくい。組織のトップにもっと若い人を登用したり、5年や10年など任期を設けたりなど、無理やり変化を促すことも必要でしょう。人は皆、トップのポジションにはいたがるものですから。池野実は、数年前に、本気で政治家になって日本を変えようと考えたことがあるのです。知り合いの政治家に相談したところ、「あなたは絶対に選挙に勝てない」と言われました。その理由は「見てくれが悪い・年を取り過ぎている・政治家の親戚がいない(地盤がない)」。あんまりな物言いですが、「確かに」と納得しました。続けて「本当に政治家になったら、地元の住民に忖度して、自分の関心のない政策に振り回される。あなたのような人は、自分で政治家になるよりも、政治家を動かす立場になったほうがいい」とも。そのアドバイスが非常に腑に落ちたので、外から冷静に日本を見つつ官僚や政治家にアドバイスする、という今の立場に落ち着きました。私は今52歳ですが、日米を月3回は往復するハードな日々を送っています。体力的にはつらいですが、やりたくない仕事は1つもないので、非常に充実しています。以前、公務員として働いていた時には、日曜の夜から憂鬱になる「サザエさん症候群」に悩まされたこともありました。でも、渡米してからはそうしたことが一切ありません。夢を追い求めているからか、組織内の変な気遣いが要らないからか、はっきりとはわかりませんが。日本に帰ってきて高校時代の同級生と会うと、「定年までどう勤め上げるか」といった後ろ向きの話が多くてちょっとげんなりします。日本でも、いくつになっても目をキラキラさせて働く人が増えてほしいと思います。荻野私も渡米してから今に至るまで、ずっといつも「今が一番楽しい」と感じています。日本と比べ、こちらの人は一般的に仕事だけでなく趣味も含めて人生を丸ごと楽しむ術を知っている。それに倣い、ずっと次のステージを追い求めてきました。ここ数年は、自分の経験を日本に還元したいという思いが強まり、ボストンで日本人研究者の交流会に関わったり、日本語のブログを始めたりしました。こうした活動を通じ、今後も日本に貢献できる機会をつくりたいと思っています。参考1)https://www.ogino-mpe.org/

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がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

日本のがん患者の静脈血栓塞栓症合併率は欧米並み 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(cancer-associated venous thromboembolism:CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。 対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。 がん種別のCA-VTE合併率は、肺がん12.0%、甲状腺がん5.0%、原発不明がん4.4%、肉腫4.2%、膵臓がん3.8%、乳がん3.8%、大腸がん3.7%、胆道がん3.3%、胃がん3.3%、食道がん2.3%などであった。固形がん患者のAF並存は約10%、循環器医の介入で予後改善 がん患者の予後は改善し、高齢化や治療による心血管疾患の予後への影響が無視できなくなっている。心房細動(AF)は頻度が高く、また脳梗塞のリスクなどがん治療へ悪影響を与える。しかし、進行がん患者におけるAFの併存頻度や、予後に与える影響については明らかでない。聖路加国際病院の佐藤 岳史氏らは、自施設における進行固形がん患者を対象に後方視的コホート研究を行い、AF併存の有無、循環器医の介入の有無による予後の違いを比較し、予後不良因子を検討した。 対象は1,879例、年齢中央値は66歳であった。AF併存患者は、9.9%(186例)であった。がん種別の併存率は、肺・縦隔がん16%、消化器がん10.6%、泌尿器がん10.6%、肝胆膵がん8.1%、婦人科がん7.1%、乳がん3.9%であった。抗がん治療を受けた患者1,349例のうち、AF併存なし患者の生存期間中央値は1.8年、AF併存患者は1.5年で生存期間に統計学的な差はなかった。AF併存群を循環器医の介入の有無で分けたところ、循環器医介入群(75例)の生存期間は1.7年、循環器医非介入群(50例)は1.1年であった。AF併存なしとの3群の多変量解析において、循環器医非介入のAF併存は独立した予後不良因子であった(HR:1.40、95%CI:1.01~1.95、p=0.04)。

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男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。 研究グループは、乳がんの男性患者と女性患者の死亡率を比較し、死亡率の性差に関連する要因を定量的に評価する目的で、National Cancer Databaseを用い、2004年1月1日~2014年12月31日までに乳がんと診断された患者を特定しデータを収集した。解析対象集団は181万6,733例で、2018年9月1日~2019年1月15日に解析を行った。 主要評価項目は全生存率、副次評価項目は3年および5年死亡率であった。 主な結果は以下のとおり。・全181万6,733例中、男性は1万6,025例(平均年齢63.3歳)、女性は180万708例(平均年齢59.9歳)であった。・女性患者と比較し男性患者は、すべてのStageで死亡率が高かった。・男性患者では、全生存率は45.8%(95%信頼区間[CI]:49.5~54.0)、3年生存率は86.4%(85.9~87.0)、5年生存率は77.6%(76.8~78.3)であった。・女性患者では、全生存率は60.4%(95%CI:58.7~62.0)、3年生存率は91.7%(91.7~91.8)、5年生存率は86.4%(86.4~86.5)であった。・男性患者の超過死亡率の63.3%は、臨床的特徴と過少治療が関連していた。 ・性別は、臨床的特徴・治療因子・年齢・人種/民族・治療を受ける機会に関して補正後も、全死亡率(補正後ハザード比[aHR]:1.19、95%CI:1.16~1.23)、3年死亡率(aHR:1.15、1.10~1.21)、5年死亡率(aHR:1.19、1.14~1.23)と有意に関連した。(ケアネット)

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わが国の肺がんの静脈血栓塞栓症の発生率(Rising-VTE)/WCLC2019

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、悪性腫瘍でよくみられる合併症である。しかし、肺がんの診断時のVTEの発生率についてはほとんど知られていない。日本の40施設を対象とした多施設前向き観察研究Rising-VTE/NEJ037について、県立広島病院の濱井 宏介氏が世界肺学会(WCLC2019)で発表した。 Rising-VTE/NEJ037の対象は、切除または放射線治療不能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者。VTEは造影CTまたは下肢エコー検査に基づき診断された。試験の主要評価項目は、中央判定委員会が評価する登録後2年間の症候性および無症候性の再発または新たに診断されたVTEの発症率である。  主な結果は以下のとおり。・2016年6月〜2018年8月に手術または放射線療法不能なNSCLC患者1,021例が登録され、ベースラインデータとして1,013例の患者のデータが利用可能であった。・年齢の中央値は71歳、組織型は、腺がん(63.7%)、扁平上皮がん(17.8%)、小細胞肺がん(13.5%)、その他(5.1%)であった。・VTEの発生は6.0%(61例)であった。・VTEの内訳は、深部静脈血栓症(DVT)が47.5%、肺塞栓症(PE)が12.1%、DVTとPEの併存が27.9%であった。・ VTEの90.2%は腺がんであった。 同研究の主要評価項目は、登録から2年間の症候性/非症候性VTEの再発または新規発症率。最終結果は2021年の予定で、現在追跡調査が進行中。

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スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

 不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterのChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2019年9月15日号の報告。 不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db、90db)を用いて感度分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・スボレキサント群は、プラセボ群と比較し、平均AATに有意な差は認められなかった。・AAT85dbで覚醒しなかった患者の割合についても、差は認められなかった。・スボレキサント20mg群では、プラセボ群と比較し、中途覚醒の減少および総睡眠時間の増加が認められた。 著者らは「スボレキサントのようなDORAは、不眠症改善効果が期待できる一方で、夜間の聴覚刺激に対する覚醒を可能とすることが示唆された」としている。

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日本高血圧学会、台風19号被災者向けのQAと総会概要を発表

 10月15日、特定非営利活動法人日本高血圧学会(JSH)は、10月25-27日に開催される第42回日本高血圧学会総会に先立ち、プレスセミナーを開催した。 冒頭に、理事長の伊藤 裕氏が、台風19号による甚大な被害を踏まえ、学会としての対応を発表した。「甚大な被害が広範囲に広がり、避難生活が長引く被災者も多くなると考えられる。ストレスや血圧の管理が不十分となり、いわゆる『災害高血圧』が生じて、脳卒中や心疾患につながることを懸念している」と述べた。最初の対応としては、被災地の高血圧患者から多く寄せられる質問と回答をまとめ「台風19号により被害を受けられた皆さまへ」と題して学会サイトに発表した。もう一つ、気づかれにくい問題として、支援物資について注意喚起を求めた。「今回の台風は物流の問題は限られ、薬不足は回避できそうだ。問題は食料で、被災地に送られる支援物資は調理の簡単なカップラーメンやパンなどに偏り、塩分過多と高血圧につながりがち。送る方は減塩食品を選ぶなどの配慮をして欲しい」と訴えた。今後も被災者に向け、即時性をもって情報を発信していく、とした。「早期介入」「精密医療」「モデルタウン」を柱に活動 続いて、学会の最新の活動内容が発表された。世界保健機構(WHO)による健康調査で提唱される「疾患負荷(disease burden:経済的コスト、死亡率、疾病率で計算される特定の健康問題の指標)」において、高血圧の死亡への寄与割合は女性で1位、男性で喫煙に次いで2位と非常に大きい。一方で、日本国内の高血圧患者は4300万人を超えるものの、きちんと疾病コントロールがされているのは3割の1300万人程度に満たない。この状況を踏まえ、JSHは2018年に「高血圧の国民を10年間で700万人減らし、健康寿命を延ばす」との声明を発表している。今後の具体的な活動としては、以下の3点を重点施策とした。1)2019年4月に新「高血圧治療ガイドライン」を刊行。診断基準値は従来通りとしものの降圧目標を引き下げ、早期からの生活習慣への介入を呼びかける。2)デジタルデバイス等を利用し、ビッグデータやAIによる「プレシジョンメディシン(精密医療)」を高血圧対策に応用する研究を進める。3)患者個人だけではなく、家族や地域、自治体を含めた規模で対策をとることが重要とする「集団健康管理」の考えのもと、協力自治体を募り、学校教育や企業への働きかけを行っている「モデルタウン」事業を行う。2019年日本高血圧学会総会の概要発表 10月25-27日に東京・新宿で開催される第42回日本高血圧学会総会は、テーマを「未来を支える血圧管理」とし、総会の開会式では「JSH東京減塩宣言」が行われる予定。310の一般演題(口演177・ポスター133)のほか、カリフォルニア大学教授Theodore W. Kurtz 氏による「食塩感受性高血圧」をはじめとした特別講演、シンポジウム、市民公開講座などが予定される。さらに「デジタルハイパーテンションカンファレンス」と題し、ビッグデータ・ICT・AI等の技術を高血圧対策にどうつなげていくか=高血圧の精密医療について議論も行われる。■「食塩感受性高血圧」関連記事塩分摂取によって血圧が上昇しやすい人と、そうでない人が存在するのはなぜか?―東大 藤田氏らが解明―

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COPD入院患者へ3ヵ月間の支援介入、QOLを改善せず/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院した患者に対し、入院中から開始する在宅移行支援と長期自己管理支援を組み合わせた、COPD看護師による3ヵ月間の介入プログラムは、通常ケアと比較してCOPD関連の入院や緊急部門(ER)受診を有意に増大し、QOLの改善は認められなかったことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のHanan Aboumatar氏らが、同大で開発した「BREATHE Program」を検証した単施設無作為化試験の結果で、「今回示された予想外の結果の理由を明らかにするために、さらなる試験を行う必要がある」と述べている。COPDの増悪による入院患者は、再入院率が高く、QOLの低下が認められる。これまでに、退院時介入(退院支援)が再入院を低減することは報告されているが、死亡やQOLへの影響は示されていない。在宅移行支援に関しては研究例が少なく、焦点も回復期ケアや退院後30日間に限られ、長期の慢性疾患自己管理のスキルに着目した研究例はなかった。そうした中で、これらの支援介入は、患者のアウトカム改善や急性期ケアの利用低減に不十分ではないかとする見方もあった。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。専門看護師による3ヵ月間の在宅移行支援と長期自己管理支援を検証 研究グループは、開発した「BREATHE Program」を評価する単施設無作為化臨床試験を、メリーランド州ボルティモアにある同大医療センターで行った。被験者はCOPDで入院した患者240例で、介入群と通常ケア群に無作為に割り付けられ、退院後6ヵ月間追跡を受けた。登録期間は2015年3月~2016年5月で、追跡終了は2016年12月であった。 介入群(120例)には、COPDの長期自己管理を有する患者と家族介護者を支援する3ヵ月間の統合プログラムが提供された。担当した看護師は、標準化されたツールを用いてCOPD患者を支援する専門的なトレーニングを受けていた。通常ケア群(120例)には、退院計画の順守と外来受診への誘導を確実なものとするため、退院後30日間の移行支援が提供された。 主要アウトカムは2つで、1つは、6ヵ月時点で評価した被験者当たりのCOPD関連の急性期ケアを要したイベント(入院、ER受診)。もう1つは、退院後6ヵ月時点でSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いて評価した健康関連QOLの変化(スコア0[最良]~100[最悪]:臨床的意味のある差は4ポイント)であった。急性期ケアイベント発生が有意に増加し、QOLは悪化 無作為化を受けた240例は、平均年齢64.9(SD 9.8)歳、女性が61.7%で、試験を完遂したのは203例(85%)であった。ベースラインのSGRQ平均スコアは、介入群62.3(SD 18.8)、通常ケア群63.6(17.4)であった。 6ヵ月時点の被験者当たりCOPD関連の急性期ケアイベント数は、介入群1.40(95%[CI]:1.01~1.79)、通常ケア群0.72(0.45~0.97)であった(両群差:0.68[95%CI:0.22~1.15]、p=0.004)。 6ヵ月時点の被験者SGRQ総スコアの平均変化は、臨床的意味のある変化はみられなかったが、介入群は2.81(95%CI:-3.73~9.34)と悪化が認められ、通常ケア群は-2.69(-9.34~3.96)と改善していた。両群間に有意差はなかった(両群差:5.18[-2.15~12.51]、p=0.11)。 試験期間中の死亡は15例(介入群8例、通常ケア群7例)、入院は339例(介入群202例、通常ケア群137例)であった。

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咽頭・扁桃炎へのペニシリンV、1日4回×5日間の効果/BMJ

 A群レンサ球菌に起因する咽頭・扁桃炎のペニシリンVによる治療について、現在推奨されている1日3回×10日間療法に対して、1日4回×5日間療法が臨床的アウトカムに関して非劣性であることが示された。再発と合併症の発生数は、両群間で差はみられなかったという。スウェーデン公衆衛生局のGunilla Skoog Stahlgren氏らが行った無作為化非盲検非劣性試験の結果で、著者は「ペニシリンVの1日4回×5日間療法は、現在の推奨療法に代わりうるものとなるかもしれない」とまとめている。抗菌薬への耐性増加と新しい抗菌薬の不足もあり、既存の抗菌薬の使用を最適化することの重要性が強調されている。咽頭・扁桃炎はプライマリケアで最も頻度の高い感染症の1つで、スウェーデンおよび欧州諸国の処方薬に抗菌薬が占める割合はかなり高いという。研究グループは、ペニシリンVの総投与を、臨床的有効性を十分に維持したまま低減できるか調べるため本検討を行った。BMJ誌2019年10月4日号掲載の報告。1日4回×5日間(計16g)vs.1日3回×10日間(計30g) 試験は2015年9月~2018年2月に、スウェーデン国内の17のプライマリ医療センターで行われた。対象は、6歳以上で、A群レンサ球菌による咽頭・扁桃炎を呈し、Centor criteria(発熱38.5度超、圧痛を伴うリンパ節腫脹、白苔を伴う扁桃腺炎、咳の欠如)を3または4つ満たす患者とした。 被験者は、ペニシリンV 800mgを1日4回5日間(計16g)投与する群(5日間療法群)、または同1,000mg用量を1日3回10日間(計30g)投与する群(10日間療法群)に無作為に割り付けられ、追跡評価が行われた。 主要アウトカムは、抗菌薬療法終了後5~7日間の臨床的治癒(主要な残存症状や咽頭扁桃炎または再発症候性の臨床的所見がみられない完治と定義)の達成率。非劣性マージンは10ポイントと事前に規定した。副次アウトカムは、細菌の消滅、症状軽減までの期間、再発・合併症・扁桃腺炎の発現頻度、および有害事象パターンなどであった。主要アウトカムの臨床的治癒率、5日間療法群の非劣性を確認 433例が無作為に、5日間療法群(215例)または10日間療法群(218例)に割り付けられた。修正intention-to-treat集団には422例が包含され、各群の年齢中央値は30.0歳、31.0歳で、女性の割合が65.1%、62.9%であった。また、per protocol集団は397例が包含された。 per protocol集団当たりでの臨床的治癒率は、5日間療法群89.6%(181/202例)、10日間療法群93.3%(182/195例)であった(両群差:-3.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-9.7~2.2)。 細菌消滅の割合は、5日間療法群80.4%(156/194例)、10日間療法群90.7%(165/182例)だった(両群差:-10.2ポイント、95%CI:-17.8~-2.7)。1ヵ月以内の再発はそれぞれ8例と7例(0.6、-4.1~5.3)、追跡3ヵ月までの合併症は0例と4例(-2.1、-4.7~0.5)、同じく新たな扁桃腺炎は6例と13例(-3.8、-8.7~1.0)であった。症状軽減までの期間は、修正intention-to-treat集団、per protocol集団における検討のいずれにおいても、5日間療法群のほうが有意に短期であった(log rank検定のp<0.001)。 有害事象は主に下痢、悪心、外陰膣炎で、10日間療法群で発生率が高く、事象期間が長期であった。

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自殺する人は破産リスクが高い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第149回

自殺する人は破産リスクが高いいらすとやより使用今回は、お金にまつわる論文を紹介したいと思います。経験上、あまり医学の分野で、お金に関する論文というのはヒットしません。あったとしても、ギャンブルに関する研究ですね。Kidger J, et al.The association between bankruptcy and hospital-presenting attempted suicide: a record linkage study.Suicide Life Threat Behav. 2011 Dec;41(6):676-84.これは英国ブリストル大学で行われた研究で、自殺未遂を試みた患者が、救急部門へ入院した際にデータベースに登録し、その前後2年間に「破産したかどうか」を評価しました。米国ワシントン州シアトルの外傷センターの記録と、地元の裁判所の破産記録から調べたそうです。それにしても、よくこんなヘビーな研究を思いつきましたね……。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、自殺未遂以外の理由で入院した患者さんと、破産のリスクについて比較しました。いくつかの交絡因子で補正すると、自殺を試みた患者さんでは、コントロール患者さんと比較して、過去2年間の破産において関連が観察されました(オッズ比:1.68、95%信頼区間:1.06~2.67)。また、入院後2年間で破産する可能性が高いことがわかりました(オッズ比2.10、95%信頼区間1.29-3.42)。ゆえに、自殺未遂する患者さんは破産リスクが高いということが言えます。自殺未遂をするから経済的問題を抱えてしまう(引きこもってしまう・働けないなど)のか、経済的問題を抱えているから自殺未遂をするのか、はっきりと断言はできませんが、自殺未遂者が社会的に厳しい状況に追いやられているのは事実であり、医療従事者が社会的な背景を汲み取る必要がありますね。

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WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019 レポート

レポーター紹介世界肺がん学会WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月7~10日の期間に行われた。今年は9月末に欧州臨床腫瘍学会が同じスペインのバルセロナで行われることもあり、例年のWCLCと比べるとトピックスが少ない印象ではあったが、公式発表では100ヵ国以上から7,000例以上がWCLCに参加し、多くの演題(2,853演題)が報告された。学会初日の印象では参加人数が例年よりも少なそうで寂しい印象を受けたが、Presidential Symposiumの発表時には、会場はほぼ満席であり活気に満ちたものであった。このレポートでは、私的に選んだ今学会でのトピックスをいくつか紹介する。外科手術のトピックVIOLET試験の効果と安全性に関する探索的検討clinical stage cT1~3、N0~1、M0の肺がん、もしくは肺がんが強く疑われる患者を対象に、開胸手術とVATSを比較する第III相試験における早期の効果と安全性の結果が報告された。入院中の死亡率は、VATS群で1.4%(VATS治療から開胸手術の移行率5.7%)であった。また、完全切除率については、VATS群で98.8%、開胸切除で97.4%であり、有意差を認めなかった(p=0.839)。術後の疼痛についてmedian(visual analogue)pain scoreで評価が行われており、術後1日では術後疼痛についてmedian scoreに差を認めなかったが、術後2日では術後疼痛の強さがVATS群で有意に改善され、入院期間についてもVATS群が4日、開胸手術群が5日と有意に短くなる(p=0.008)ことが報告された。また、入院中の術後合併症がVATS群で32.8%、開胸手術群で44.3%と有意に低下する(p=0.008)という結果であった。今回の報告では、VATSと開胸手術において、侵襲の少ないVATSが開胸手術と比較しても根治率が変わらないことが報告され、合併症や入院期間、術後疼痛が良好であることが報告され、日常臨床で広く浸透しているVATSが短期的な指標では有用であることが検証された試験である。今後の長期予後データなどの報告が待たれる。(Lim E, et al. PL 02-06)分子標的療法におけるトピックスLIBRETTO-001 study進行非小細胞肺がんのRET-fusion遺伝子変異に対する分子標的療法で、保険償還承認が得られた治療はまだ存在しない。LIBRETTO-001試験で使用されたLOXO-292はRETを選択的に強く阻害する分子標的薬であり、脳への移行性も高く、RET-fusion遺伝子変異に対する治療薬として期待されている。今学会ではLIBRETTO-001試験における、LOXO-292療法の効果と安全性についての第I/II相試験の結果が報告された。253例のRET-fusion陽性の非小細胞肺がんの患者が参加し、うちprimary analysis set (PAS) に139例が登録された。105例が初回にプラチナ製剤併用化学療法を受け、58例がPD-1/PD-L1阻害薬療法を受けていた。奏効率(ORR)は68%(95%CI:58~76%、n=71/105)であり、RET fusionのパートナーにかかわらず治療効果を認めた。また治療奏効期間は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0ヵ月)であり、脳転移のある患者における脳転移のORRは91%(n=10/11:2 confirmed CRs、8 confirmed PRs)であった。さらに未治療のRET-fusion陽性の患者ではORR85%(95%CI:69~95%、n=29/34)であった。毒性(AEs)は、ほとんどがGrade1/2と軽微であり、頻度では口腔内乾燥、下痢、高血圧、AST/ALTの上昇が多かった。今回のLOXO-292のデータは非常に良好であり、RET-fusion陽性肺がんの標準療法になりうると考えられ早期での臨床導入が期待される。(Drilon A, et al. PL 02-08)免疫チェックポイント阻害薬のトピックスCASPIAN study進展型小細胞肺がんに対し、初回治療でのプラチナ(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド(EP)療法の標準療法と、デュルバルマブもしくはデュルバルマブ+tremelimumabの上乗せ治療を比較するオープンラベル下での第III相試験である。この試験はプレスリリースにおいて、デュルバルマブ上乗せ群が標準療法群に対してOSを有意に改善したと発表しており、今学会の最注目演題であった。今学会ではCASPIAN試験における、標準療法群とデュルバルマブ併用療法群の結果が報告された。PS 0~1の未治療進展型小細胞肺がんの患者を対象に、デュルバルマブ1,500mg+EP療法を3週ごと、デュルバルマブ1,500mg+tremelimumab 75mg+EP療法を3週ごと、もしくはEP療法を3週ごと4コースの治療を行った。免疫療法群では、4コース終了後のデュルバルマブ維持療法が認められており、EP療法では6コースまで投与をすることが認められていた。また、主治医判断での予防的全能照射(prophylactic cranial irradiation [PCI])も認められていた。EP+デュルバルマブ療法群に268例、EP療法群に269例が割り付けられ、56.8%の患者が6コースのEP療法を受けていた。全生存期間においてEP+デュルバルマブ群がEP療法群と比較して、HR0.73、95%CIは0.591~0.909、p=0.0047と生存期間を有意に延長し、生存期間中央値(mOS)はEP+デュルバルマブ療法群で13ヵ月、EP療法群で10.3ヵ月であった。また18ヵ月の時点で、EP+デュルバルマブ療法群では33.9%の患者が生存しており、EP療法群では24.7%の患者が生存していた。無増悪生存期間(PFS)や奏効率(ORR)においてもEP+デュルバルマブ療法群がEP療法群よりも優れた結果であった。EP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でそれぞれ、mPFSが5.1ヵ月と5.4ヵ月、PFSはHR0.78、95%CIは0.645~0.936、12ヵ月PFS rateが17.5%と4.7%、ORR(RECIST v1.1:unconfirmed)が79.5%と70.3%(odds ratio:1.64、95%CI:1.106~2.443)であった。毒性(AEs)ではEP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でGrade3/4 AEsが61.5%と62.4%、AEsによる治療中断率は各9.4%と差を認めなかった。この試験では、先行するIMpower133試験(カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの上乗せの有効性が証明された)と同様にPD-L1阻害薬の標準療法への上乗せが証明された。この試験では、EP+デュルバルマブ+tremelimumab療法群の結果、すなわちPD-L1阻害薬+CTLA-4阻害薬の標準療法への上乗せ効果は公表されておらず、いまだ不明のままである。(Luis Paz-Ares, et al. PL 02-11)CheckMate 817試験(Cohort A1)PS 2や肝障害やHIV感染症を持つPS 0~1(all other special population:AOSP)のIV期非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ(PD-1阻害薬)+イピリムマブ(CTLA-4阻害薬)併用療法の効果と安全性を確認する第IIIb/IV相試験の結果が報告された。この試験での治療方法はニボルマブ240mg(2週ごと)、イピリムマブ1mg/kg(6週ごと)の固定容量での治療である。この試験ではPS 2の患者139例とAOSPの患者59例が試験に登録された。安全性についてはPS 2の患者でも、AOSPの患者でも、通常のPS 0~1の患者と比較して、治療関連有害事象や治療関連有害事象による治療中断、治療関連死に差がないことが示された。奏効率は、PS 2で20%、AOSPで37%であり、PS 0~1で35%であったが、PFSはPS 2やAOSPの患者で、PS 0~1の患者より有意に短かった。免疫チェックポイント阻害薬の併用において、PS不良の患者でも安全性はPS良好な患者と同様であり、初回治療の選択肢となりうることが示されたと考えてよいだろう。(Valette CA, et al. OA 04-02)その他の免疫チェックポイント阻害薬のトピック今回の学会では、以前に発表された第III相試験の長期予後データについていくつかの報告があった。PD-L1 50%陽性、EGFRやALK変異陰性の患者で行われた第III相試験であるKEYNOTE-024試験の3年目解析データが報告された。生存期間中央値(mOS)はペムブロリズマブ群26.3ヵ月(18.3~40.4)、殺細胞性抗がん剤治療群14.2ヵ月(9.8~18.3)で、OSはHR0.65、95%CIは0.50~0.86、p=0.001であり、長期間の観察期間でも有意にOSを延長していることが報告された。また、この発表では抗がん剤治療群からのペムブロリズマブのクロスオーバーしたペムブロリズマブの治療成績が報告されており、奏効率(ORR)は20.7%であり、治療奏効期間の中央値は20.9ヵ月と報告された。(Reck M, et al. OA 14-01)また、扁平上皮がんに対するプラチナ+タキサン療法へのアテゾリズマブの上乗せを検討しているIMpower131試験の最終解析結果も報告された。この試験は、ASCO2018においてOSの有意な延長が示されておらず、PD-L1 1~49%群でのOSがプラチナ製剤併用療法群と比較してクロスすることが報告されていた。今回の最終解析において、カルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ群とカルボプラチン+nabパクリタキセル群の生存期間中央値(mOS)は14.2ヵ月vs.13.5ヵ月で、OSはHR0.88、95%CIは0.73~1.05、p=0.158で、OSの延長効果は示されなかった。ただし、PD-L1TPS 50%以上の高発現群においては、mOSは23.4ヵ月vs.10.2ヵ月、OSはHR0.48、95%CIが0.29~0.81とサブグループ解析ではあるが有意に延長していることが報告された。同じ扁平上皮がんを対象としたプラチナ+タキサン療法へのペムブロリズマブの上乗せを検討したKEYNOTE-407試験では、ペムブロリズマブの上乗せの生存延長効果が示されているだけに、PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬で扁平上皮がんに効果に違いが出るのか興味深いところではある。(Cappuzzo F, et al. OA 14-02)小細胞肺がんのトピックスSensitive Relapse小細胞肺がんを対象にカルボプラチン+エトポシドとトポテカンを比較した第III相試験トポテカンはヨーロッパでは小細胞肺がんの2次療法で承認されている数少ない抗がん剤であり、ヨーロッパだけでなく本邦含めグローバルで標準療法として広く用いられている。この試験では、初回治療から90日以上たってから再燃してきた小細胞肺がんをsensitive relapse小細胞肺がんとして定義しており、この対象を満たし初回治療でプラチナ+エトポシド療法が施行されている患者に対して、カルボプラチン+エトポシドとトポテカンの比較試験が行われた。この試験での意義は初回治療のre-challengeと標準療法であるトポテカンのどちらが良いかを比較している点で、今までのクリニカル・クエスチョンを確認する試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、中央値がre-challenge群で4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.5)、トポテカン群で2.7ヵ月(95%CI:2.3~3.2)、PFSがHR0.6、95%CIは0.4~0.8、p<0.002であり、re-challenge群が有意にPFSを延長していた。またre-challenge群とトポテカン群の比較において、他の主な評価項目では、奏効率が49% vs.25%(p<0.002)とre-challenge群で有意に奏効率が高かったが、全生存期間ではmOSが7.5ヵ月(95%CI:5.4~8.7)vs.7.4ヵ月(95%CI:6.0~9.3)であり、両群で有意な差を認めなかった。毒性では、トポテカン群はGrade3/4の好中球減少が35.8% vs.19.7%(p<0.001)と有意に高かったが、発熱性好中球減少症が13.6% vs.6.2% (p=0.19)で両群に有意な差を認めず、その他の毒性も両群で差を認めなかった。この試験の結果からは、日常臨床で行われることが多いsensitive relapse小細胞肺がんにおけるre-challenge療法を、標準療法の一つとして考えてもよいのかもしれない。(Monnet I, et al. OA 15-02)

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双極性障害における認知パフォーマンス~メタ解析

 神経認知障害は、寛解期の双極性障害患者において多く報告されており、機能障害に影響を及ぼしている。しかし、これらの障害に関する縦断的な軌跡は、よくわかっていない。これまでの研究で、中年期双極性障害患者では神経認知障害が安定化する傾向が示唆されていたが、この状態は初期または後期で悪化する可能性がある。米国・ハーバード大学T. H. Chan公衆衛生大学院のAlejandro Szmulewicz氏らは、発症初期または後期の双極性障害患者における神経認知パフォーマンスの縦断的分析を行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年9月21日号の報告。 双極性障害の診断から1年以内または後期の双極性障害患者を対象に、縦断的な神経認知パフォーマンスを検討した研究について、包括的なメタ解析を行った。フォローアップ期間中の神経心理学的スコアの変化に対する標準化平均差(SMD)のプールされた効果を、ランダム効果モデルを用いて推定した。また、フォローアップ期間、気分の状態、薬理学的負荷などの効果モデレーターについても調査した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の研究数は、初期双極性障害8件(284例)、後期双極性障害4件(153例)であった。・初期(SMD:0.12、95%CI:-0.06~0.30、平均フォローアップ期間:17ヵ月)および後期(SMD:-0.35、95%CI:-0.84~0.15、平均フォローアップ期間:33ヵ月)の双極性障害患者において、神経認知機能の悪化を示唆するエビデンスは観察されなかった。・有意なモデレーターも観察されなかった。 著者らは「中年期双極性障害患者および遺伝的リスクを有する人での所見とともに評価すると、神経発達因子が認知障害に重要な役割を果たしている可能性が示唆され、多くの双極性障害患者において、進行性の認知機能低下の概念は支持されないと考えられる」としている。

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アテゾリズマブ+T-DM1、HER2+/PD-L1+乳がんでのOSの結果(KATE2)/ESMO2019

 HER2陽性の進行・再発乳がん(mBC)に対する、PD-L1抗体のアテゾリズマブとT-DM1との併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏より発表された。 KATE2試験は、国際共同の二重盲検比較の第II相試験である。2017年12月データカットオフ時点での1回目の無増悪生存期間(PFS)に関する解析は、2018年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で両群間には有意差がないという発表がなされている。今回は2018年12月のデータカットオフ時点の最終解析としての全生存期間(OS)や安全性の発表となる。・対象:HER2陽性mBC(mBCに対する治療中の病勢進行患者、または術後療法終了後6ヵ月以内の再発患者)202例、ぺルツズマブとタキサン系薬剤の投与は許容・試験群:T-DM1 3.6mg/kg+アテゾリズマブ 1,200mg/回3週ごと(アテゾリズマブ群)・対照群:T-DM1 3.6mg/kg+プラセボ3週ごと(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]全症例対象(ITT)の主治医判定のPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)[探索的検討項目]PD-L1陽性集団のPFS、免疫関連バイオマーカーの予後に与える影響[事後解析項目]PD-L1陽性集団のOS 主な結果は以下のとおり。・PD-L1陽性(免疫細胞1%以上の染色)集団におけるPFS中央値は、アテゾリズマブ群8.5ヵ月、プラセボ群4.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:032~1.11)であった。・ITTのOS中央値は、アテゾリズマブ群、プラセボ群ともに未到達でHRは0.74(95%CI:0.42~1.30)であった。・PD-L1陽性集団におけるOS中央値も、両群とも未到達で、HRは0.55(95%CI:0.22~1.38)。1年生存率は94.3%対87.9%であった。また、PD-L1陰性集団におけるOS中央値も、両群とも未到達であり、HRは0.88(95%CI:0.43~1.80)であった。・Grade3以上の有害事象は、アテゾリズマブ群で53%、プラセボ群で45%であり、重篤な有害事象は、36%と21%、有害事象による治療中止は29%と15%であった。アテゾリズマブ群におけるGrade3以上の主な有害事象は血小板減少13%、AST上昇9%、貧血8%などであった。これらは、既知の両剤の安全性プロファイルと違いはなかった。

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局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシンC+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによる化学放射線療法(CRT)は切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。・対象:切除不能Stage IIIA/B NSCLC(70歳未満、PS 0~1)・対照群[A群]シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)+TRT(60Gy)→シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)・試験群[B群]イリノテカン+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→カルボプラチン+イリノテカン(3週ごと2サイクル)[C群]パクリタキセル+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→パクリタキセル+カルボプラチン(3週ごと2サイクル)。・評価項目:5年および10年の全生存(OS)率、晩期毒性(CRT開始後90日以降に発生) 主な結果は以下のとおり。・2001年9月~2005年9月に440例が登録され、A群(n=146)、B群(n=147)、C群(n=147)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は140ヵ月であった。・OSはA群20.5ヵ月に対しB群19.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.82~1.51)、C群22.0ヵ月(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30)であった。・5年OS率はA群20.8%、B群16.0%、C群18.3%、10年OS率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。・5年無増悪生存(PFS)率はA群10.2%、B群10.8%、C群12.3%、10年PFS率はそれぞれ8.5%、5.9%、11.1%であった。・Grade3/4の晩期毒性はA群3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、B群で3.4%(肺のみ)、C群4.1%(肺のみ)、Grade5は、C群で0.7%(肺のみ)であった。 C群のカルボプラチン+パクリタキセルは、A群と同程度の効果と毒性プロファイルを有していることが示された。10年OS率15%、PFS率11%という結果から、免疫療法を含めた新たな治療戦略が必要だとしている。 発表者の善家義貴氏との1問1答はこちら。この試験を行った背景について教えてください。 Stage IIIのCRTは従来5年生存をcureの指標としていましたが、がん患者さんの生存が延長した現在、cureは10年生存でみるべきだといえます。しかし、CRTを10年間観察した大規模研究はありませんでした。そこで、今回初めて、CRTが10年という長期のcureを実現しているのかを追跡評価しました。この結果をどう評価されますか。 今までCRT後の生存率は5年で20%と言われていましたが、その後はどのようになるのか明らかになっていませんでした。今回の試験で、10年で15%というデータが出たことは重要だと思います。 また現在、実臨床で使われているCRTの化学療法は、ほとんどがC群のカルボプラチン+パクリタキセルだと思います。当試験の結果からも、このレジメンが効果、安全性ともにスタンダードであると言えると思います。この試験で苦労されたことは? 10年間、患者さんの生存調査をすることは大変な作業でした。しかし、この難しい作業を研究者の先生方は快く協力していただけました。その背景には、この研究の結果をぜひ知りたいという強い興味が、肺がん診療医にあったのではないかと思います。 CRTはcureを目指す治療です。10年生存15%は満足な数字だとは言えません。今後は免疫療法などで、どこまで引き上げられるかが課題です。

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進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法による初回治療はPD-L1発現レベルを問わず、化学療法と比較して全生存(OS)期間を延長することが認められた。また、長期追跡において新たな安全性の懸念は生じなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMatthew D. Hellmann氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CheckMate-227試験」の結果を報告した。進行NSCLC患者を対象とした第I相試験において、とくにPD-L1陽性患者で、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりも奏効率が良好であることが示され、NSCLC患者におけるニボルマブ+イピリムマブの長期的な有効性を評価するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。進行NSCLC患者約1,700例についてOSで評価 研究グループは2015年8月~2016年11月に、StageIVまたは再発NSCLCでPD-L1発現率1%以上の患者1,189例を、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ単剤群、化学療法群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。また、PD-L1発現率1%未満の患者550例について、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ+化学療法併用群、化学療法単独群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。患者は全例、化学療法歴がなかった。 主要評価項目は、PD-L1発現率1%以上の患者における化学療法群と比較したニボルマブ+イピリムマブ併用群のOSであった。PD-L1発現率を問わず、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法でOSが延長 PD-L1発現率1%以上の患者において、OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.0~20.1)、化学療法群14.9ヵ月(95%CI:12.7~16.7)であった(p=0.007)。2年OS率は、それぞれ40.0%および32.8%、奏効期間中央値は23.2ヵ月および6.2ヵ月であった。 OSの延長は、PD-L1発現率1%未満の患者においても確認され、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.2ヵ月(95%CI:12.8~22.0)、化学療法群12.2ヵ月(95%CI:9.2~14.3)であった。 本試験に組み込まれた全患者のOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%CI:15.2~19.9)、化学療法群13.9ヵ月(95%CI:12.2~15.1)であった。 Grade3/4の治療関連有害事象が発現した患者の割合は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群32.8%、化学療法群36.0%であった。

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NIRS-IVUS、不安定プラークと患者のイベントリスクを特定/Lancet

 心臓カテーテル検査を行い即時の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者に対する血管内超音波(IVUS)イメージングについて、近赤外線分光法(NIRS)によるイメージングの非閉塞領域に対する安全性が確認され、また、その後の非責任病変部の主要有害心血管イベント(NC-MACE)のリスクが高い患者、および発生の可能性がある部位の特定に役立つことが示された。米国・MedStar Washington Hospital CenterのRon Waksman氏らが、前向きコホート試験「Lipid-Rich Plaque:LRP試験」の結果を報告した。NIRS-IVUSイメージングは、急性冠症候群または心筋梗塞に関連し血行再建あるいは心臓死につながる脂質に富むプラーク(lipid-rich plaque:LRP)を検出できるが、将来的にイベントを呈する可能性がある冠動脈や患者を予測する検討は小規模で、プラークに立脚した仮説は検証されていなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「NIRS-IVUSは、臨床診療で不安定プラークを有する患者およびそのプラークを検出できる初回イメージングツールとして、考慮すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。冠動脈疾患疑い患者約1,500例の前向きコホート研究 研究グループは、イタリア、ラトビア、オランダ、スロバキア、英国、米国の44施設において、ad hoc PCI(病変評価後にそのままPCI)となりうる、心臓カテーテル検査を受ける冠動脈疾患疑いの患者を登録し、NIRS-IVUSを用いた非責任病変部のスキャンを実施した。 本試験には患者とプラークの2つの階層的な主要仮説があり、それぞれLipid Core Burden Index最大値4mm(maxLCBI4mm)とNC-MACEとの関連性を検証した。LRPが大きな患者(≧250 maxLCBI4mm)とLRPが小さな患者(<250 maxLCBI4mm)の半数を無作為に抽出し、24ヵ月間追跡した。 2014年2月21日~2016年3月30日の期間で計1,563例が登録された。将来的なリスクが高い不安定プラークの部位と患者の特定に成功 NIRS-IVUSデバイス関連事象は、6例(0.4%)で確認された。maxLCBI4mmが解析可能な患者1,271例(平均[±SD]年齢64±10歳、男性883例[69%]、女性388例[31%])が追跡調査に組み込まれ、NC-MACEの2年累積発生率は9%(103例)であった。 患者レベルの解析では、maxLCBI4mmが100単位増加するごとのNC-MACE発生の補正前ハザード比(HR)は1.21(95%信頼区間[CI]:1.09~1.35、p=0.0004)、補正後HRは1.18(95%CI:1.05~1.32、p=0.0043)であった。maxLCBI4mmが400を超える患者では、NC-MACEの補正前HRは2.18(95%CI:1.48~3.22、p<0.0001)、補正後HRは1.89(95%CI:1.26~2.83、p=0.0021)であった。 プラークレベルの解析では、maxLCBI4mmが100単位増加するごとのNC-MACE発生の補正前HRは1.45(95%CI:1.30~1.60、p<0.0001)であった。maxLCBI4mmが400を超える部位では、NC-MACEの補正前HRは4.22(95%CI:2.39~7.45、p<0.0001)で、補正後HRは3.39(95%CI:1.85~6.20、p<0.0001)であった。

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BRAF V600E変異大腸がんに対するビニメチニブ、エンコラフェニブ、セツキシマブの3剤併用(BEACON CRC)/ESMO2019

 スペイン・Vall d’Hebron 大学病院のJosep Tabernero氏は、転移のあるBRAF V600E変異大腸がんに対する、BRAF阻害薬エンコラフェニブ、MEK阻害薬ビニメチニブ、抗EGFR抗体セツキシマブの3剤併用療法を検証した無作為化非盲検の第Ⅲ相試験BEACON CRCの結果を発表。この3剤併用療法あるいはエンコラフェニブとセツキシマブの併用療法は、従来のFOLFIRI療法あるいはイリノテカンにセツキシマブを加えた治療法に比べ、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善すると報告した。 BRAF V600E変異型は転移を有する大腸がんの10~15%に認められ、予後不良因子とされている。ただ、こうした症例ではBRAFのみを阻害しても効果は限定的で、逆にEGFRに急なフィードバックがかかり、MAPKシグナル伝達経路を活性化し、がん細胞増殖が促進されるとされている。BRAF阻害薬のエンコラフェニブ、MEK阻害薬のビニメチニブは共にMAPKシグナル伝達経路での酵素を阻害する薬剤である。・対象:1次治療あるいは2次治療後に進行したPS 0~1のBRAF V600E変異型を有し、BRAF阻害薬、MEK阻害薬、EGFR阻害薬のいずれの治療も受けたことがない転移を有する大腸がん患者665例・試験群1(3剤療法):エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ(224例)・試験群2(2剤療法):エンコラフェニブ+セツキシマブ(220例)・対照群:FOLFIRI療法+セツキシマブまたはイリノテカン+セツキシマブ(221例)・評価項目:[主要評価項目]3剤療法vs.対照群でのOS、盲検化中央判定でのORR[副次評価項目]2剤療法vs.対照群、3剤療法vs. 2剤療法でのOS、無増悪生存期間(PFS)、ORR、安全性 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は3剤療法群が9.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.0~11.4)、対照群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.6)であった(ハザード比[HR]:0.52、95%CI:0.39~0.70、両側検定p<0.0001)。・2剤療法のOS中央値は8.4ヵ月(95%CI:7.5~11.0)であった(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79、両側検定p=0.0003)。・PFS中央値は3剤療法群が4.3ヵ月(95%CI:4.1~5.2)、対照群が1.5ヵ月(95% CI:1.5~1.7)であった(HR:0.38、95%CI:0.29~0.49、両側検定p<0.0001)。・2剤療法群のPFS中央値は4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.4)であった(HR:0.40、95%CI:0.31~0.52、両側検定p<0.0001)。・無作為化割り付けが最初に行われた331例でのORRは3剤療法群が26%、2剤療法が20%、対照群が2%(対照群との比較で3剤療法、2剤療法は共にp<0.0001)であった。・全有害事象(AE)発現率は3剤療法群が98%、2剤療法が98%、対照群が97%、Grade3以上のAE発現率はそれぞれ58%、50%、61%であった。・Grade3以上の主なAEは3剤療法群が下痢、腹痛、ヘモグロビン値上昇、2剤療法が腸閉塞、疲労感、ヘモグロビン値上昇、対照群が下痢、腹痛、無力症であった。・QLQ-c30によるQOL評価では3剤療法と2剤療法はほぼ同等だった。 この結果についてTabernero氏は3剤療法は2剤療法を超える臨床的に妥当なアドバンテージを得られる可能性が示唆され、有害事象も管理可能であると指摘。「既治療のBRAF V600E変異型の転移を有する大腸がんに対する新たな標準治療になりえる」と述べた。

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進行肺がん患者への緩和ケアは生存ベネフィットあり/JAMA Oncol

 緩和ケアは進行肺がん患者の生存ベネフィットと関連していることが、米国・オレゴン健康科学大学のDonald R. Sullivan氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示唆された。緩和ケアは患者中心のアプローチでQOL改善と関連するが、これまで生存ベネフィットとの関連については、さまざまな結果が示されていた。また、そのことが、緩和ケアが十分活用されない要因ともされている。今回の結果を踏まえて著者は、「緩和ケアは、進行肺がん患者において、疾患修飾治療を補完するアプローチとして考慮されるべきである」と述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。 研究グループは、早期の緩和ケアが進行肺がん患者の生存利益と関連しているかどうかを評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った。対象は、2007年1月1日~2013年12月31日までに肺がんと診断され、退役軍人ヘルスシステムで治療を受けた進行肺がん(StageIIIB/IV)患者2万3,154例で、2017年1月23日まで追跡した。解析は、2019年2月15日~4月28日に行った。 緩和ケアは、肺がん診断後に受けた専門医による緩和ケアと定義し、主要評価項目は生存とした。緩和ケアと死亡した場所との関連も解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象2万3,154例のうち、57%が緩和ケアを受けた。・患者背景は、平均年齢68歳、98%が男性であった。・がんの診断と緩和ケアの受診のタイミングを調査した結果、緩和ケアを受けなかった患者と比較して、診断後0~30日での緩和ケア受診は生存率の低下と関連し(補正後ハザード比[aHR]:2.13、95%信頼区間[CI]:1.97~2.30)、診断後31~365日の緩和ケア受診は生存率の増加と関連し(0.47、0.45~0.49)、診断後365日以降では生存率に差は認められなかった(1.00、0.94~1.07)。・緩和ケアの受診は、救急受診での死亡リスク低下とも関連していた(補正後オッズ比:0.57、95%CI:0.52~0.64)。

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