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第1回 AIで薬剤師はいらなくなる?

第1回 AIで薬剤師はいらなくなる?―「0402通知」をどのように思いましたか?鈴木:個人的には0402通知には反対です。もう少し段階を踏んでから行うべきものだったと思います。「物から人へ」の流れで、健康サポート薬局が推進されていますが、健康サポート薬局の業務には臨床推論とかOTCの知識などが必須なはずです。現状は基本となる「物」の部分もまだまだ不十分なのに、基本的な部分が抜けた状態で次のステップに進むのを危惧しています。それなのに通知には「調剤は薬剤師でなくてもできますよね?」のように書かれていたことには思うところもあります。ただ、薬剤師が調剤に従事していればいいという考えはないですね。行き着く先は、薬学的ケアの充実だと思っているので。山﨑:以前私が勤めていた薬局では、0402通知の以前から専従のテクニシャンを組み込んだ業務設計をしていましたのでスッと入ってきました。エラー率の統計を出すと、純粋にピッキングという行為にフォーカスすれば、薬をみていろいろ思い浮かべてしまう薬剤師よりも調剤補助者がフラットな目線で棚番に基づいて収集するほうがエラー率が低い傾向にあるというのもあったかと思います。そのおかげで薬剤師は勉強時間を確保して、患者さんに専念することができました。ただ、そういうオペレーションを組めていない薬局がいきなり始めろ、って言われたら、採用や手順など考えることが多そうです。徹底してやるには手順を構築することが重要で、人間はミスをする生き物であるということを前提に業務を設計することも必要です。鈴木:確かに通知は「各自でやってね」という感じでしたからね。リーダーのような薬局がやり方を提示して、わかりやすく伝えられる通知にしたほうがよかったと思います。笹川:私は通知には賛成です。調剤は仕事か作業かという面で考えると、作業だと思うんです。しっかりとマニュアルを組んで教えれば誰でもできることですので、そのような作業は必ずしも薬剤師でなくてもいいのではないでしょうか? 一方で、処方監査は時間と頭を使って行う必要があります。それは仕事なので薬剤師が行い、指示出しをする必要があると思います。―将来的に薬剤師の仕事はどうなると思いますか?山﨑:服薬指導など付加価値を生む業務に再配分されていくように思います。調剤や監査の一部はすでに機械化されています。例としてシンガポールの国営病院でロボットアームによる調剤が行われていて、待ち時間が半減したという実績もあります。本邦だと抜本的な機械化には包装の規格化が必要かもしれませんが。また、添付文書レベルの相互作用や用量などの監査や、入力された処方のビッグデータから傾向分析をしてまれな処方パターンにアラートをかけるなどはシステムで可能ですが、その先は薬剤師判断であり説明の応酬は残っていくと思います。笹川:機械が発達しているので、現在では散剤とか軟膏とかの調剤に職人の技というものはなくなりましたね。これだけ機械化が進んでくれば調剤の主役はいずれ置き換わるでしょう。もっとも、在宅業務は無理でしょうが。鈴木:在宅はいろいろな問題が潜伏していますからね。生活状況、現病歴・既往歴、経済的な部分など多岐にわたる分析が必要です。AIでは無理ですよ。患者さん個々で差があるので、人である薬剤師が関わる意義はそこにこそあるのだと思います。機械でできることは薬剤師が力を入れなくてもいいと思うので、空いた時間を薬の本質的な部分とか病気のこととか、人をみるうえで必要な学術的な部分に充てて磨いていくべきではないでしょうか?山﨑:AIに知見のある社内エンジニアと話をしていると、今の調剤プロセスで機械による代替が難しいのは、会話の応酬や患者周辺の情報を把握しての対応のようです。とくに在宅は周辺の環境要素が増えるのでシステム化が難しいようです。だからこそやりがいもあると思います。鈴木:在宅とか一歩踏み込んだ指導を日頃からしていないと、そういう発想が出てこないと思うんですよ。今もこれからも、やっぱり薬剤師が個々の患者さんの実際の生活や服薬状況など今より一歩踏み込んでいく必要があると思います。在宅に出て臨床的想像力が広がった―現在の在宅への取り組みを教えてください。笹川:現在、個人宅で7~8人の在宅患者さんがいます。在宅に行くと、外来では全然みることができていなかったんだなということがよくわかります。残薬も大量にありますし。患者さんの動線や倒れる可能性のあるポイントを見たくてトイレを借りてチェックさせてもらったり、仏壇を拝見してキーパーソンを探したりしています。鈴木:在宅では患者さんがご家族と疎遠なのか親密なのかよく見えてきますよね。契約のときに同席しているか、ご家族の写真は飾られているか、などから普段の様子がわかります。家族と疎遠で誰もキーパーソンがいないということを行って初めて知ることもあります。山﨑:私は外来メインで勤務していたため、在宅の経験はさほど多くはありません。ただ、現職では在宅を含む多くの現場を見る機会が増えているので改めて勉強しているところです。外来においても薬歴を見て、何の確認が必要で何を話したら喜んでもらえるか考えながらやっていましたが、在宅もそれが外に出ただけというスタンスでやっていました。ただ、訪問すると薬剤管理を含め想像以上にカオスなことも多かったですね。それもあって、生活背景をおもんぱかる想像力が養われ、外来の役にも立ったと思います。笹川:確かに、想像力が豊かになったのは在宅に行き始めてからかもしれません。それまでは高齢患者さんの生活を思い浮かべる際に、自分の祖父母宅の平屋を想像していたのですが、実際の患者さん宅はエレベーターのない団地の3階ということもあり、ギャップがありました。鈴木:患者さん宅の構造を考えて、重い栄養剤をどうやって持って帰るんだろう、薬剤師として何ができるんだろう、という発想はAIではできないでしょうね。外来と在宅がまったく違うとは思っていませんが、在宅を担当することで外来の患者さんとの関わり方は少し変わりました。個々の患者さんの実際の生活や服薬状況をイメージして、一歩踏み込んだ指導を日頃からする必要があると痛感しています。―次回は、激変している薬局の環境について話を伺います。

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せん妄経験と退院後の認知症発症との関連

 高齢者の急性疾患におけるせん妄発症は、退院後の認知症発症と関連があるかについて、ブラジル・サンパウロ大学のFlavia Barreto Garcez氏らが調査を行った。Age and Ageing誌オンライン版2019年9月30日号の報告。 2010~16年に3次医療の大学病院老年病棟に連続的に入院した60歳以上の急性疾患高齢者を対象に調査を行った。包括基準は、入院時のベースライン認知機能に低下が認められず、退院後12ヵ月間の臨床的フォローアップを実施した患者とした。すべての患者について標準化された包括的な高齢者評価結果を含む入院データは、ローカルデータベースより収集した。事前の認知機能低下は、病歴、CDR、IQCODE-16に基づき特定した。せん妄の評価には、簡易版CAMを用い、退院後12ヵ月後の認知症発症は、医療記録のレビューに基づいて特定した。せん妄と退院後の認知症発症との関連は、競合リスク比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は309例(平均年齢:78歳、女性:186例[60%])、そのうち66例(21%)でせん妄が発症していた。・24ヵ月(フォローアップ中央値)後、認知症を発症した患者は、せん妄経験患者で21例(32%)、せん妄未経験患者で38例(16%)であった(p=0.003)。・可能性のある交絡因子で調整した後、せん妄は、退院後の認知症発症と独立して関連が認められた(サブハザード比:1.94、95%CI:1.10~3.44、p=0.022)。 著者らは「入院中にせん妄を経験した急性疾患高齢者の3人に1人は、退院後のフォローアップ期間中に認知症を発症していた。せん妄は、予防可能な認知機能低下の独立したリスク因子であり、せん妄予防の重要性が示唆された」としている。

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成人期の体重変動が死亡リスクと関連/BMJ

 成人期を通じた肥満持続、成人初期から中期の体重増加、および成人中期から後期の体重減少は、いずれも死亡リスクの増加と関連することが、中国・華中科技大学のChen Chen氏らが米国のデータを用いて行った検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月16日号に掲載された。高BMIの成人は早期死亡のリスクが高いが、成人初期から後期あるいは成人中期から後期の体重の変化と死亡リスクとの関連の科学的エビデンスは、必ずしも一貫していない。また、成人の中でも、とくに初期から中期までの体重変動と、全死因および原因別の死亡率との関連はほとんど知られていないという。3つの期間のBMI変動パターンと死亡リスクの関連を評価 研究グループは、成人期の体重の変動と死亡の関連を調査する目的で、前向きコホート研究を行った(中国国家重点研究開発プログラムの助成による)。 解析には、米国の全国健康栄養調査(NHANES)の1988~94年および1999~2014年のデータを用いた。対象は、ベースラインで体重と身長の測定が行われた40歳以上の3万6,051例であり、成人初期(25歳)と成人中期(ベースラインの10年前)の体重のデータを収集した。 BMI<25を低体重/正常体重、25.0~29.9を過体重、≧30.0を肥満とした。25歳時、ベースラインの10年前(平均年齢47歳)、ベースライン(平均年齢57歳)のBMIを算出し、3つの期間(25歳~ベースラインの10年前、25歳~ベースライン、ベースラインの10年前~ベースライン)のBMIの体重変動パターンを評価した。 2つの時点のBMIにより、3つの期間を次の5つの変動パターンに分類した。「正常体重維持」(2時点ともBMI<25)、「最大限で過体重」(一方の時点のBMIが25.0~29.9で、もう一方が≧30.0でない)、「肥満から非肥満」(年齢が若い時点のBMIが≧30.0で、後に<30.0に低下)、「非肥満から肥満」(年齢が若い時点のBMIが<30.0で、後に≧30.0に増加)、「肥満持続」(2時点ともBMI≧30.0)。 主要アウトカムは、ベースラインから2015年12月31日までの全死因および死因別の死亡とした。成人初~後期に13.4kg、初~中期に8.8kg、中~後期に4.4kg増加 平均体重は、25歳~ベースラインまでに13.4kg、25歳~ベースラインの10年前までに8.8kg増加し、ベースライン前の10年間で4.4kg増加した。また、25歳~ベースラインまでに、26.9%が非肥満から肥満へ移行し、この間の体重増加は平均28.2kgであったのに対し、肥満から非肥満へ移行したのは1.4%であり、この間に体重は平均18.6kg減少した。 平均12.3年の追跡期間中に、1万500例(心疾患死2,287例、がん死2,316例を含む)が死亡した(35万8,980人年)。 成人初期~中期では、「正常体重維持」群と比較して「非肥満から肥満」群は、全死因死亡のリスクが22%増加(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.11~1.33)、心疾患死のリスクは49%増加(1.49、1.21~1.83)した。この間に、「肥満から非肥満」群には死亡リスクと有意な関連は認めなかった。 成人中期~後期では、「肥満から非肥満」群は全死因死亡のリスクが30%増加(HR:1.30、95%CI:1.16~1.45)、心疾患死のリスクは48%増加(1.48、1.14~1.92)したのに対し、「非肥満から肥満」群には死亡リスクと有意な関連はみられなかった。 成人期を通じた「肥満持続」群は、3つの期間のいずれにおいても全死因死亡のリスクが有意に高く、HRは成人初期~中期が1.72(95%CI:1.52~1.95)、成人初期~後期が1.61(1.41~1.84)、成人中期~後期は1.20(1.09~1.32)であった。 「最大限で過体重」群は、成人期を通じて死亡との関連はきわめてわずかか、まったくなかった。また、3つの期間のいずれの変動パターンにも、がん死との関連はなかった。 著者は「これらの知見は、成人期を通じて正常体重を維持すること、とくに成人初期の体重増加の予防が、その後の早期死亡リスクの抑制において重要であることを示唆する」としている。

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家族性高コレステロール血症患児へのスタチン、成人期の心血管リスク低減/NEJM

 小児期にスタチン治療を開始した家族性高コレステロール血症患者は、成人期の頸動脈内膜中膜肥厚の進行が抑制され、心血管疾患のリスクが低減することが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのIlse K. Luirink氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値の著しい増加と心血管疾患の早期発症を特徴とする。小児へのスタチン治療の短期的効果は確立されているが、心血管疾患リスクの変動を評価した長期的な追跡研究は少ないという。20年後に、患児を非罹患同胞および罹患親と比較 研究グループは、家族性高コレステロール血症小児患者へのスタチン治療に関する20年間の追跡調査の結果を報告した(オランダAMC Foundationの助成による)。 過去に、プラバスタチンの2年投与の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(1997~99年、単施設)に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(98%は遺伝学的に確認)に対し、同症に罹患していない同胞95例とともに、追跡調査への参加を依頼した。 参加者は、質問票に回答し、血液検体を提供し、頸動脈内膜中膜肥厚の測定を受けた。家族性高コレステロール血症患者の心血管疾患の発生率を、同症に罹患している親156例と比較した。39歳時の心血管イベント:患者1% vs.罹患親26%、心血管死:0% vs.7% 当初の試験に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(平均年齢13.0±2.9歳、男性47%)のうち、試験開始から20年の時点で追跡調査に応じたのは184例(86%)(31.7±3.2歳、48%)で、非罹患同胞は95例(12.9±2.9歳、53%)のうち77例(81%)(31.6±3.0歳、56%)が調査に参加した。 214例の患者のうち、203例(95%)で心血管イベントのデータが、214例(100%)で心血管系の原因による死亡のデータが得られた。追跡調査時に、184例のうち146例(79%)がスタチンを使用していた。 患者の平均LDLコレステロール値は、237.3mg/dLから160.7mg/dL(6.13mmol/Lから4.16mmol/L)に低下し、ベースラインからの低下率は32%であった。治療目標(LDLコレステロール値<100mg/dL[2.59mmol/L])は37例(20%)で達成され、このうち8例は<70mg/dLに低下していた。一方、非罹患同胞の平均LDLコレステロール値は、98.5mg/dLから121.9mg/dL(2.55mmol/Lから3.15mmol/L)に増加し、増加率は24%だった。 全追跡期間における頸動脈内膜中膜肥厚の進行の平均値は、家族性高コレステロール血症患者が0.0056mm/年、同胞は0.0057mm/年であった(性別で補正後の平均差:-0.0001mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.0010~0.0008)。 39歳時の心血管イベント累積発生率は、家族性高コレステロール血症患者が、罹患している親よりも低かった(1% vs.26%、性別と喫煙状況で補正後の無イベント生存率のハザード比[HR]:11.8、95%CI:3.0~107.0)。また、39歳時の心血管系の原因による死亡の累積発生率も、家族性高コレステロール血症患者のほうが罹患親よりも低かった(0% vs.7%)。 著者は、「LDLコレステロールは、アテローム硬化性心血管疾患をもたらす経路における主要な因子と考えられ、LDLコレステロール値を低下させる治療は、アテローム硬化性心血管疾患の進行の予防あるいは緩徐化において重要であることが明らかとなった」としている。

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レンバチニブ、胸腺がん2次治療以降に有望(REMORA)/ESMO2019

 胸腺がんは10万人年に0.02という希少悪性疾患である。プラチナベース化学療法が1次治療であるが、プラチナベース化学療法後の標準治療は確立していない。いくつかの試験では、スニチニブなど血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を主な標的とするマルチキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)においては、前臨床試験でスニチニブと同等かそれ以上の阻害活性を示している。兵庫県立がんセンターの伊藤 彰一氏らは、進行または転移のある胸腺がん患者におけるレンバチニブの有効性と安全性を検討する多施設オープンラベル単群第II相REMORA試験を実施。その中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 REMORA試験では、プラチナベース化学療法後に進行した転移を有する胸腺がん患者(ECOG PS 0~1)を対象に、レンバチニブ(24mg/日)を増悪または忍容できない有害事象発現まで投与した。主要評価項目は独立放射線審査委員会(IRR)評価による全奏効率(ORR)であった(ORR閾値10%、期待値25%)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・2017年4月~2018年2月、日本の8施設から42例の患者が登録された。・追跡期間の中央値は15.5ヵ月であった。・ORRは38.1%(90%信頼区間[CI]:25.6~52.0)で、主要評価項目を達成した。・病勢制御率は95.2%(PR16例[38.1%]16例、SD24例[57.1%])であった。・PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:7.7~13.9)であった。・OS中央値は未達、12ヵ月OS率83.3%であった。・頻度の高い治療関連有害事象は、高血圧(88.1%)、手足症候群(69.0%)、タンパク尿(66.7%)、甲状腺機能低下症(64.3%)などであった。治療関連死はなかった。 発表者は、レンバチニブはプラチナベース化学療法で増悪した胸腺がん患者の標準治療選択肢の1つになりうるとしている。

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新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)【新型タバコの基礎知識】第10回

第10回 新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)Key Points米国では、電子タバコによる急性肺障害が報告され、症例数は1,000例を超え、死亡が18例に達している。電子タバコがハーム・リダクションとなるために必要な前提条件はまだ揃っていない。電子タバコによる急性肺障害が話題になっています。米国での発見例は氷山の一角だと考えられていますが、2019年10月4日までの米国CDCによる報告1)で、症例数は1,000例を超え、死亡が18例に達しています。病態としては、リポイド肺炎、急性好酸球性肺炎や間質性肺炎、過敏性肺臓炎などが考えられています。電子タバコの多様な使用方法やさまざまなフレーバー、大麻由来成分(Tetrahydrocannabinol;THC)の添加など、患者背景に多くの違いがあり、単一の病態でもないことから、現時点での原因の特定は困難です。NEJM誌では17例(死亡例2例含む)における病理像の報告がなされ2)、外来性の油成分によるリポイド肺炎はほとんどみられなかったとのことです。原因物質は不明ですが、新型タバコに含まれる未知の物質の可能性も示唆されています。日本では電子タバコ使用者は比較的少なく、加熱式タバコを使っている人が非常に多くなっています。新型タバコによる急性健康障害に関する実態把握が必要ですが、研究体制は整備できていません。肺炎や喘息等の呼吸器疾患の臨床研究や観察研究を実施している研究者グループの方々と、新型タバコ研究のセットアップおよび支援・協働をしたいと考えていますので、該当の方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。さて、今回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」のパート2です。今回は新型タバコのなかでも電子タバコに注目します。実は、電子タバコについてだけでも本が一冊書けてしまうぐらい情報が集積してきており、問題も複雑化しています。世界的には、加熱式タバコよりも電子タバコが普及しているのです。日本では、ニコチン入りの電子タバコの販売が許可されていない事情もあり、電子タバコはあまり普及していません。しかし、2018年以降電子タバコブランドBluの積極的な販売キャンペーンが展開されるなど、日本でも普及してくる可能性もあるでしょう。電子タバコは製品間の品質のばらつきが大きく、健康被害を一律に評価するのは難しい状況です。冒頭で言及したような急性影響についても分かっていないことばかりであり、長期使用による健康影響はもちろんわかっていません。一方で、電子タバコでは吸引することとなる有害化学物質が紙巻タバコよりも少ないという点に着目して、“ハーム・リダクション(害の低減)”に電子タバコが活用できると訴えている専門家もいます。タバコ問題の場合のハーム・リダクション戦略としては、どうしてもタバコをやめられない人に対して、タバコの代わりにニコチン入り電子タバコを吸ってもらったら、有害物質への曝露を減らせるのではないか、というものです。しかし、この通りにうまくいくのか、世界的に専門家の間でも意見が割れていて、決着がついていません。なぜなら、ハーム・リダクションとなるためのそもそもの前提事項がまだ分かっていないからです。以下に、まだ決着のついていない前提事項を整理します。(1)電子タバコは、紙巻タバコと比べて害が少ないと確定していない電子タバコでは、有害物質の多くが紙巻タバコよりも少ないことは確かですが、一部の化学物質は紙巻タバコよりも多く、総合した場合の有害性が本当に電子タバコの方が低いのか、製品が新しく追跡期間も短いことから、十分に検証できていません。2015年に英国の公衆衛生専門機関が「電子タバコは喫煙よりも約95%害が少ない」と報告しましたが、これに対してはLancet誌等で根拠が十分でないとの反論が起きるなど、論争が巻き起こっています。現在の米国での事態を受けて、よりいっそう議論は複雑化しています。(2)電子タバコによって紙巻タバコがやめられるのか分かっていない電子タバコに紙巻タバコをやめられるようにする禁煙効果があるのかについて、世界的に論争が起きています。まだ実験的研究の段階で、その効果を検証した研究が少なく、結論が出るには至っていません。多くの現場からの研究結果を統合した研究も実施されてきていますが、禁煙効果を支持する結果と支持しない結果がさまざまな研究グループから報告されており、まだしばらく決着はつきそうにありません。(3)電子タバコによる他の問題も指摘されている世界的にはオシャレでカッコいいデザインの電子タバコが若者を中心として普及してきています。電子タバコがもともとタバコを吸わない人へと広がり、ニコチン依存への入り口(ゲートウエイ)として機能してしまうと懸念されているのです。ほかに、電子タバコのデバイスが爆発して大けがを負った事例や、火災となってしまった事例も報告されています。総合的に比較して電子タバコの導入のメリットがデメリットよりも大きくないと、ハーム・リダクションとはなりえません。もし、導入によってハーム(害)が総合して増えるようなこととなれば、単に問題を増やしただけになってしまいます。分かっていないことが多い中で、われわれの社会は難しい判断を迫られているといえるでしょう。タバコ問題においてハーム・リダクションが可能となるための理論的根拠として、根拠(1):タバコやニコチンを使用し続ける人々がどうしてもいるであろうと考えられること根拠(2):ニコチン依存がほとんどのタバコの使用の根底にある一方で、ほとんどの健康被害を引き起こすのは、タバコ煙のニコチン以外の成分だと考えられていることの2つがよく挙げられます。筆者は根拠(1)については同意します。たとえ、タバコを法律で禁止することができたとしても、タバコを使い続ける人はいるでしょう。ただし、法律で禁止することができれば、タバコを吸う人の数は大幅に減らせるものと考えられ、ゆくゆくはそうなってほしいと願っています。しかし一方で、根拠(2)については同意しません。なぜなら、ニコチン依存の害を軽視した考え方だからです。ニコチン依存症の恐ろしさについては、第9回記事を参照ください。第11回は、「新型タバコの発がんリスク」です。1)US Centers for Disease Control and Prevention (CDC)「Outbreak of Lung Injury Associated with E-Cigarette Use, or Vaping」2)Butt YM,et al. N Engl J Med. 2019 Oct 2. [Epub ahead of print]

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急性期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール切り替え療法

 他の抗精神病薬からブレクスピプラゾールへの切り替え時のクロスタイトレーションスケジュールの忍容性および有効性を評価するため、米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らは、ブレクスピプラゾール試験のデータを用いて比較検討を行った。CNS Spectrums誌2019年10月号の報告。 対象の統合失調症患者は、1~4週間の非盲検期間中に、他の抗精神病薬からブレクスピプラゾールへクロスタイトレーションされ、その後、単盲検ブレクスピプラゾール治療試験に移行した。切り替え期間に応じて、対象患者を4群に分類した。中止率、治療により発生した有害事象(TEAE)、効果(PANSS)について、群間比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール治療を行った404例のうち、72%は切り替え期間が22~33日であった。・効果不十分または有害事象による中止率は、いずれの切り替え期間においても低かった。・8週間のブレクスピプラゾール治療へ切り替えが完了した292例における切り替え期間の内訳は、1~7日が2.4%、8~14日が6.5%、15~21日が11.0%、22~33日が80.1%であった。・8週間のTEAE発生率は、22~33日で切り替えを行った群(44.4%)が他群(62.5~84.2%)よりも低かった。しかし、切り替え期間の短い群は症例数が少ないため本知見は制限される。・各群において、PANSS合計スコアの改善が認められた。 著者らは「ブレクスピプラゾールへの切り替えは、多くの患者において22~33日間かけて行われていた。患者のニーズに対する最適な切り替え方法を選択するうえで、短期切り替えに関する追加データが役立つと考えられる」としている。

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家族歴が発症リスクに関連するがん種~日本人10万人の前向き研究

 がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と、遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高 章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年10月8日号に掲載。 本研究は、日本の集団ベースの前向き研究であるJPHC研究において、がんの家族歴と遺伝的に一致するがんリスクとの関連を調査した。対象は、がんの既往がなく、ベースライン時にがんの家族歴などの自記式調査票に回答した10万3,707人の適格な被験者で、2012年まで追跡し、多変量調整Cox比例ハザード回帰モデルを使用して分析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査した180万2,581人年で、合計1万6,336人が新規にがんと診断された。・がんの家族歴がない人に対して、家族歴がある人におけるがん発症のハザード比は、すべてのがんで1.11(95%信頼区間:1.07~1.15)、食道がん2.11(同:1.00~4.45)、胃がん1.36(同:1.19~1.55)、肝がん1.69(同:1.10~2.61)、膵がん2.63(同:1.45~4.79)、肺がん1.51(同:1.14~2.00)、子宮がん1.93(同:1.06~3.51)、膀胱がん6.06(同:2.49~14.74)であった。

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ペムブロリズマブのMSI-High固形がんに対する第II相試験(KEYNOTE-164、158統合解析)/ESMO2019

 米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター固形がん腫瘍学部門のLuis Diaz氏は、局所進行・転移のあるミスマッチ修復(MMR)欠損または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに対するペムブロリズマブの第II相試験KEYNOTE-164とKEYNOTE-158の統合解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表。MMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんでは、がん種にかかわらずペムブロリズマブが安定した効果を示し、安全性も管理可能なものであると述べた。ペムブロリズマブの奏効率は34% KEYNOTE-164とKEYNOTE-158は共に化学療法で既治療の切除不能な局所進行・転移のあるMMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんの患者で行われた非無作為化非盲検第II相試験。KEYNOTE-164の対象は大腸がん患者124例。KEYNOTE-158は子宮内膜がん49例、胆管がん22例、膵がん22例、小腸がん19例、卵巣がん15例、脳腫瘍13例、肉腫9例、子宮頸がんと前立腺がんが6例などを含む合計233例。両試験ともペムブロリズマブ200mg、3週ごと最長約2年間投与した。 ペムブロリズマブの第II相試験を解析した主な結果は以下のとおり。・ペムブロリズマブの奏効率(ORR)は34%、CRは8%であった。・ペムブロリズマブの奏効期間(DOR)中央値は未到達。54%の患者でDORは18ヵ月以上であった。・ペムブロリズマブの全生存期間(OS)中央値は27.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.3~未到達)。患者の52%はOSが2年以上であった。・ペムブロリズマブの無増悪生存期間(PFS)中央値は4.0ヵ月(95%CI:2.5~4.3)。31%の患者ではPFS中央値が2年以上であった。・AEはペムブロリズマブで既知のものだった。 この結果からLuis Diaz氏は「ペムブロリズマブはMMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんで永続性のある強力な効果を示し、安全性は管理可能なものであった」と述べた。

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日本の進行胃がんに対するニボルマブのリアルワールドでの成績(JACCRO GC-08: DELIVER)/ESMO2019

 第III相ATRRACTION-2試験において、ニボルマブは3次治療以降の胃がんに対する有効性を示しているが、PS不良例、腹膜播種例などが含まれるリアルワールドでのデータはない。聖マリアンナ医科大学の砂川 優氏らは、リアルワールドでの進行胃がんに対するニボルマブの効果と安全性、そして腸内マイクロバイオームを含む宿主免疫バイオマーカーを検証した前向き観察研究JACCRO GC-08(DELIVER)の中間成績を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。 JACCRO GC-08試験は、組織学的に腺がんであることが確認されたPS 0~2の食道胃接合部がんを含む切除不能な進行胃がんでニボルマブでの単剤治療を行う症例を対象とし、治療前後での便や血液を採取し、腸内細菌種・ゲノム情報、遺伝子多型、遺伝子発現、メタボロームを測定し、ニボルマブの有効性・安全性の予測因子を探索・検証する研究。 試験は2018年3月から開始され、目標症例数は500例。当初の200例で、予測因子を探索し、そこで得られた予測因子候補を300例で検証する計画。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は全奏効率(ORR)、病態制御率(DCR)、腫瘍縮小率、腫瘍増大率(TGR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性、バイオマーカー解析。今回発表されたのは前半200症例の患者背景と臨床結果。 主な結果は以下のとおり。・解析可能症例は198例、年齢中央値は70歳、男性が75%であった。・PSは0が47%、1が39%、2が14%であり、腹膜転移は45%にみられた。・腫瘍径が測定可能だった124例でのORRは5.6%(95%信頼区間[CI]:2.3~11.3)、DCRは33.1%(95%CI:24.9~42.1)であった。・投与開始1ヵ月間のTGRが測定できた105例では、58.4%でニボルマブ投与開始後にTGRの減少が認められたが、24.8%では投与開始前と比較してTGRが2倍以上になる高度進行と判定された。・PS別のDCRはPS 0が38%、PS 1が35%、PS 2が22%であった。・DCRは印環細胞がん、腹膜播種性転移、腹水の因子を持つ症例で低率だった。・HER2発現状況あるいは好中球/リンパ球比でDCRに差は認めなかった。

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左冠動脈主幹部病変の5年転帰、PCI vs.CABG/NEJM

 解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。左冠動脈主幹部病変患者1,905例で、5年間評価 研究グループは2010年9月29日~2014年3月6日に、解剖学的複雑度が低度~中等度(各参加施設の評価)の左冠動脈主幹部病変患者1,905例を、フルオロポリマーベースのエベロリムス溶出コバルトクロムステント留置群(PCI群948例)、またはCABG群(957例)に無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイント。intention-to-treat集団を対象に、ロジスティック回帰分析を用いて解析した。複合エンドポイント、心血管死および心筋梗塞の発生に両群で有意差なし、ただしPCIは全死因死亡が多く、脳血管イベントは少ない 5年時点で、主要評価項目である複合エンドポイントのイベント発生率はPCI群22.0%、CABG群19.2%であった(群間差:2.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.9~6.5、p=0.13)。 全死因死亡の発生は、PCI群がCABG群よりも高率であった(13.0% vs.9.9%、群間差:3.1ポイント[95%CI:0.2~6.1])。一方、心血管死(definite)(5.0% vs.4.5%、0.5ポイント[-1.4~2.5])、および心筋梗塞(10.6% vs.9.1%、1.4ポイント[-1.3~4.2])の発生は両群で有意差はなかった。脳卒中の発生は、両群で有意差はなかったが(2.9% vs.3.7%、-0.8ポイント[-2.4~0.9])、全脳血管イベントはPCI群がCABG群よりも低率であった(3.3% vs.5.2%、-1.9ポイント[-3.8~0])。 虚血による血行再建術は、PCI群がCABG群よりも高頻度であった(16.9% vs.10.0%、6.9ポイント[3.7~10.0])。 著者は研究の限界として、非盲検試験であること、追跡期間が5年と限られていたことなどを挙げたうえで、「PCIおよびCABGの長期的な安全性プロファイルを明らかにするためには、10年あるいはそれ以上の追跡調査が必要である」と述べている。

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1型DMにはクローズドループシステムが有用/NEJM

 1型糖尿病患者において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)の利用は、リアルタイム持続血糖モニター(CGM)機能付きインスリンポンプ(CSII)の利用と比較して、血糖値が目標範囲内であった時間の割合を増加させることを、米国・バージニア大学のSue A. Brown氏らが、6ヵ月間の多施設共同無作為化試験「International Diabetes Closed Loop trial:iDCL試験」で明らかにした。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性があり、これまでのメタ解析ではその有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。リアルタイムCGM機能付きCSIIと比較、血糖値目標範囲内の達成時間を評価 研究グループは、2018年7月12日~10月9日の期間で、1型糖尿病患者をクローズドループ型インスリン注入システムで治療を受けるクローズドループ群またはリアルタイムCGM機能付きCSIIで治療を受ける対照群のいずれかに、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CGMで測定される血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)であった時間の割合。intention-to-treat集団を対象として線形混合効果回帰モデルを用いて解析した。 合計168例が無作為にクローズドループ群(112例)、対照群(56例)に割り付けられた。患者の平均年齢は33歳(範囲:14~71)、糖化ヘモグロビン値は5.4~10.6%であった。全168例が試験を完遂した。クローズドループシステムのほうが血糖コントロール良好 血糖値が目標範囲内であった平均(±SD)時間割合は、クローズドループ群でベースライン時61±17%から6ヵ月間で71±12%まで上昇したが、対照群はいずれも59±14%で変化しなかった(補正後群間差:11ポイント、95%信頼区間[CI]:9~14、p<0.001)。 副次評価項目(血糖値が>180mg/dLであった時間割合、平均血糖値、糖化ヘモグロビン値、血糖値が<70mg/dLまたは<54mg/dLであった時間割合)に関しては、いずれも事前に定義した有意差の階層的基準をすべて満たし、クローズドループ群が良好であることが認められた。 6ヵ月間で血糖値が<70mg/dLであった時間割合の補正後群間差(クローズドループ群-対照群)は-0.88ポイント(95%CI:-1.19~-0.57、p<0.001)、6ヵ月時の糖化ヘモグロビン値の補正後群間差は-0.33ポイント(-0.53~-0.13、p=0.001)であった。クローズドループ群において、システムがクローズドループ・モードであった時間の割合(中央値)は、6ヵ月間にわたり90%であった。 両群とも重篤な低血糖イベントの発生は認めなかった。クローズドループ群で糖尿病性ケトアシドーシスが1例報告された。

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LOXO-292、RET異常甲状腺がんに有望(LIBRETTO-001)/ESMO2019

 RET異常を有する甲状腺がんに対する新規治療薬のselpercatinib(LOXO-292)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのLori Wirth氏より発表された。 本試験は、RET異常を有する甲状腺がんと非小細胞肺がんを対象にした国際共同のオープンラベル・シングルアームの第I/II相試験である。selpercatinibはRETタンパクに高い選択的親和性を有するTKIであり、今回は全甲状腺がんの10~20%に存在するRET変異甲状腺がんに関する発表である。・対象:試験に登録されたRET点変異を有する甲状腺髄様がん(MTC)226例と、RET融合遺伝子を有する甲状腺がん27例のうち、cabozantinib(Cabo)とバンデタニブ(Vande)の治療歴のあるMTCの55例を初回解析対象とした・試験群:selpercatinib 20~480mg/日(第I相試験)、320mg/日(第II相試験)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・RET点変異のある症例143例のうち、57%はM918Tで、V804M/Lは8%、細胞外システイン変異は19%であった。・RET融合のパートナー遺伝子は、CCDC6が52%、NCOA4が33%であった。・今回解析対象55例は65%が男性、年齢中央値は57歳、前治療歴は中央値2ライン、脳転移あり7%、全例でCabo、Vande、それ以外のTKIの既治療歴があった。・主治医判定によるORRは56%(CRは6%)で、CaboやVandeの治療歴による差はみられなかった。・Cabo/Vandeの治療歴を持たないMTC76例では、ORR:59%(CRは1%)であった。・追跡期間中央値(mFU)10.6ヵ月時点でのDOR中央値は未到達(イベント数は6例/29例)であった。・mFU11.1ヵ月時点でのPFS中央値も未到達(イベント数は18例/55例)であった。・RET融合遺伝子を有する甲状腺がんのORRは62%であった。・Grade3/4治療関連有害事象は、高血圧9%、ALT上昇7%、AST上昇5%、下痢1%、有害事象による治療中止は1.7%と忍容性が認められ、多くの有害事象はGrade1/2であった。 Wirth氏は「RET異常を有する甲状腺がんに対する治療薬として現在承認されているTKI後の治療薬として、本剤は期待が持てる。2019年中には米国FDAに本剤の承認を申請する予定である」と述べている。

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悪い芽は早めに摘んでとりあえずコンプリートしておきますか!?:多枝病変を有するSTEMIへの戦略(解説:中野明彦氏)-1123

【背景】 STEMIにおける多枝病変の確率は40~50%で、STEMI責任病変のみの一枝疾患に比べ予後不良かつその後の非致死性心筋梗塞が多いことが報告されている。心原性ショックを合併していないSTEMI急性期に責任病変以外の“病変”に手を加えるべきかどうか、一定の見解は得られていても明確な回答が得られていない命題である。急性期介入の期待される利点は、STEMIによる血行動態の悪化が他病変灌流域の局所収縮性を障害することへの予防的措置、あるいはhibernation(冬眠心筋)を来している領域の心機能改善が結果としてSTEMIの予後を改善する可能性、などが挙げられる。一方その弊害として想定されるのは、他枝へのPCIが側枝閉塞や遠位塞栓を合併した場合の余計な心筋障害や造影剤増量による心負荷、腎障害などであろう。 これまでこの命題に挑んだランダム化試験は、知る限り2013年から2017年に報告されたPRAMI(n=465)、CvLPRIT(n=296)、DANAMI-3-PRIMULTI(n=627)、Compare-Acute(n=885)の4つである。多くの試験で観察期間中の再血行再建術が有意に減少、これらを包括した最新の日本循環器学会・ESCガイドラインでは入院中の非梗塞責任血管へのPCIをクラスI~IIaに設定している。しかし期待された予後改善効果は全試験で否定され、また多くの試験で新規MI発症も抑制されなかった。【COMPLETE試験について】 本試験は同じ命題に取り組んだ最新かつ最大規模(n=4,041)、さらに最長の観察期間(約3年)を設定したランダム化試験で、議論決着への期待も大きかった。残枝PCIの適応は虚血の有無にはこだわらず視覚的な70%狭窄以上に設定(70%未満+FFR≦0.80でのエントリーは1%以下とわずか)、PCIのタイミングはad-hoc(single-stage)やimmediate(multi-stage)だったこれまでの試験と異なり、入院中および45日以内までのdelayed PCIを許容し、サブ解析で両者の差異も検証した。 主たるエンドポイントの結果は、心血管死亡に差はなく、MI発症・虚血による血行再建(IDR)は血行再建群で有意に抑制された。懸念された大出血や腎障害などの弊害は増えなかった。 これらの結果をどう解釈すべきか:少し単純化して考えてみる。心血管死亡(2.9% vs.3.2%、HR:0.93)を「STEMIの重症度」、MI(自然発症は3.9% vs.7.0%)を「非責任病変以外の不安定プラーク」、IDR(1.4% vs.7.9%、HR:0.18)を「残存病変の重症度」に置き換えてみると…。・予後への影響:今回もまた他枝へのPCIがSTEMIの重症度を覆すほどのインパクトはないことが示された。immediateでもdelayed PCIでも差がなかったことが象徴的である。・MI発症抑制:ACS症例ではほかにも多くの不安定プラークを有し、特に急性期は内皮障害や炎症が亢進しやすいこと、他方でMIは非有意狭窄から発症する確率が高いことは以前から指摘されている。本試験では有意差はついたものの、70%以上の狭窄性病変を処理してもMI発症が半減すらしなかったことは、lesion severityとlesion instabilityが別物と改めて印象付けた。一方、有意差がつかなかった他の試験(CvLPRIT、Compare-Acute)でのHRは実は本試験より小さい。少ない症例数が影響した可能性が大きく、狭窄病変を潰しておけばある程度のMIは予防できるとも言える。・IDR:非血行再建群で多いのは当然だが、基準がさほど厳しいとも思えないのに非血行再建群のIDRが年率3%に満たない理由は不明である。他試験と比較しても明らかに低率で「そもそもホントに多枝病変?」と突っ込みたくもなる。やはり血管造影では残存病変の重症度を規定するのは難しいと言わざるを得ない。【議論に決着は着いたのか?】 一方は“yes”である。やはり予後は変えないのである。 他方、MI発症抑制・IDR予防についてはどうだろうか? 多枝病変を血管造影で定義した本試験において、完全血行再建が防いだのは1年間で1%のMIと2.3%のIDA…。果たしてコンプリートを目指す“preventive-PCI”は許容されるかどうか。 次のガイドラインはこの試験をどう解釈するだろう?

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ソシオパスの告白【Dr. 中島の 新・徒然草】(295)

二百九十五の段 ソシオパスの告白最近読んで面白かった本の1つが、『ソシオパスの告白』です。著者はM・E・トーマスという米国人で、30代の女性弁護士。御自身がソシオパスなので、いわゆる当事者研究になります。ソシオパスとは、良心を持たず、他人に対する共感という感情が全くない人です。よく言われるサイコパスとほぼ同義語です。彼女が、あえて自分のことをソシオパスと呼んでいる理由は、サイコパスには否定的な意味があるからだということです。つまり、彼女自身はサイコパスを必ずしも否定的にとらえていないのです。さて、ソシオパスといえば、平気で嘘をついたり人を殺したりする乱暴者、というイメージがあります。トーマス嬢によれば、これはとんでもない誤解です。良心がなくても、社会的に成功しているソシオパスが沢山いるのだとか。彼女の勤めていた法律事務所にも、どうみてもソシオパスとしか思えない同僚弁護士がいたそうです。では、なぜソシオパスに悪いイメージがつきまとうのか? それは、ソシオパス研究の多くが刑務所に入っている囚人を対象にしたものだからです。つまりは、サンプリングバイアスですね。ある統計によれば、刑務所の中にいるソシオパスの割合はわずかに20%に過ぎず、この数字は、一般社会に占めるソシオパスの割合である1~4%よりも多いものの、囚人の全員がソシオパスではない、ということがわかります。良心を持っていながら犯罪に手を染める人が多い一方、どんなに良心を持っていなくても、損得勘定ができれば刑務所に行く羽目にはなりません。トーマス嬢のお仲間のソシオパスが、次のような意味の事を言っています。「俺は人を殺しても良心の呵責とやらに悩まされることはない。だからといって人を殺したりはしないよ。人を殺したって何の得にもならないし、それがバレたら大変な罰が待っている。法律を守っている方がこの世は楽しく暮らせるんだ」とはいえ、ソシオパスには良心がないので、社会における善悪をいちいち学ばなくてはならない、という不自由さはあるようです。普通の人には良心があるので、自分の良心に従ってさえいれば、罪を犯す可能性は極めて低いわけですから。さて、トーマス嬢の分析によれば、ソシオパスはリスクに対する感覚が人とは大きく違っているそうです。彼女自身もバイクの運転や素手の喧嘩、バンジージャンプなんかが大好きで、恐怖心というものが全くないのだとか。なので、ソシオパスが向いている仕事として、兵士(特に爆弾処理班)、スパイ、ヘッジファンド運用者、政治家、パイロット、水中溶接工、消防士などを挙げていますが、なんと外科医もソシオパスが能力を発揮できる仕事の1つに入れられていました。確かに、外科医はリスクテイカーのほうが成功しているような気がします。もちろん、リスクを完全に無視してしまったら単なるアホウであり、外科医にもある程度の慎重さは必要です。この本の著者は、仮名で出版したにもかかわらず本名がバレてしまい、法律を全く破っていないのに、教鞭をとっていた大学から追放されたばかりか、キャンパスの1,000ヤード以内に接近することが禁止されてしまいました。この接近禁止エリアの中には、自分の銀行の支店、ジム、よく使う公共交通機関の停留所の半分が含まれているといって著者は憤慨しています。面白いのは、生活が不自由になったのが著者の不平の理由であって、自分が差別されて悲しんでいるのでもなさそうなところです。ちょっとズレていますね。ということで、この『ソシオパスの告白』。ソシオパス本人の視点で見た世界が面白く、また彼らの独特の考え方を知っておくのも役に立ちそうなので、皆さまにもお勧めする次第です。ぜひ読んでみて下さい。最後に1句ソシオパス 理屈が人と 違うだけ

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第30回 抗精神病薬による体重増加、薬剤ごとに差【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗精神病薬による体重増加、脂質異常症や高血糖などの代謝障害は比較的よく知られている副作用で、とくに第1世代に比べて第2世代の抗精神病薬で高頻度に報告されています。治療継続の妨げになったり、長期的な心血管イベントのリスクが上昇したりすることがあるため、長期間服用するためには体重や検査値のチェックが欠かせません。今回は、体重増加の機序や薬剤による違い、対処方法について紹介します。体重増加の機序体重増加の原因は特定されておらず、薬剤の影響で食欲が亢進して過剰に摂食したというだけでなくさまざまな説があります。実際、自覚的な食事量が変わらなくても体重が増加しているケースもあるように思います。その機序として、脂質酸化の減少と炭水化物酸化の増加、セロトニン/ドパミン/ヒスタミンなどの各種受容体への作用、視床下部ペプチドによって食欲亢進や満腹感低下が生じる可能性が指摘されています。さらに、摂食やエネルギー代謝に関わるペプチドであるアディポネクチンの減少、抗精神病薬により脂肪組織から放出されるホルモンであるレプチンに対する耐性がカロリー摂取量の増加と脂肪組織の増加の機序として考えられています1)。ダイエットに関心がある患者さんで、アディポネクチンやレプチンを知っている方にお会いしたことがありますので、そういう患者さんに詳しく説明し過ぎるとアドヒアランスに影響しかねないため注意が必要な場合もあると思います。総脂肪率増加の程度1つ以上の精神障害や攻撃性のため精神病薬を検討している6~18歳の患者144例を、経口アリピプラゾール(49例)、オランザピン(46例)またはリスペリドン(49例)にランダムに割り付けて12週間治療し、総体脂肪率およびインスリン感受性を調べた試験があります。12週時点で、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定した総脂肪率は、リスペリドンで1.18%増加、オランザピンで4.12%増加、アリピプラゾールで1.66%増加しました。インスリン刺激によるグルコース消失率の変化は、リスペリドンで2.30%増加、オランザピンでは29.34%減少、アリピプラゾールで30.26%減少となっており、薬剤間で有意差はありませんでした。MRIによる腹部脂肪測定では、皮下脂肪はリスペリドンまたはアリピプラゾールよりもオランザピンで有意に増加していました。なお、すべての治療群で行動の改善がみられています2)。体重増加の薬剤間比較体重増加の程度は薬剤によって異なりますが、とくにクロザピンやオランザピンでその程度が大きいことが示唆されています。第2世代抗精神病薬で治療された患者の体重、コレステロールおよびグルコースの変化を評価した48のランダム化比較試験のシステマティックレビューの結果は次のとおりです3)。クロザピンはリスペリドンと比較して体重が増加した(平均差[MD]:2.86kg、95%信頼区間[CI]:1.07~4.65、459例の患者を対象とした4試験の分析)。オランザピンは以下の薬剤よりも有意に体重が増加した。○アミスルプリド※(MD:2.1kg、95%CI:1.29~2.94、671例の患者を対象とした3試験の分析)○アリピプラゾール(MD:3.9kg、95%CI:1.62~6.19、患者656例を対象とした2試験の分析)○クエチアピン(MD:2.68kg、95%CI:1.1~4.26、患者1,173例を対象とした7試験の分析)○リスペリドン(MD:2.44kg、95%CI:1.61~3.27、2,302例の患者を対象とした16試験の分析)○ジプラシドン※(MD:3.82kg、95%CI:2.96~4.69、1,659例の患者を対象とした5試験の分析)※国内未承認体重増加の対処方法日本神経精神薬理学会が作成した『統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー』において、体重増加の対処方法の例として薬剤変更が挙げられています4)。実際に、心血管疾患の危険因子を改善するために、オランザピン、クエチアピンまたはリスペリドンからアリピプラゾールに切り替えた非盲検のランダム化比較試験がありますので見てみましょう5)。上記3剤のいずれかにより治療されている統合失調症ないし統合失調感情障害を有する患者215例(平均年齢41歳)を、アリピプラゾールへの切り替え群(109例)またはそのまま継続した群(106例)にランダムに割り付けて24週間経過をみています。全患者が、BMI≧27kg/m2および非HDLコレステロール≧130mg/dLで、プライマリアウトカムは非HDLコレステロール値の変化です。両群を比較した結果は、平均体重減少は3.6kg対0.7kg(p<0.001)、平均非HDLコレステロール減少は20.2mg/dL対10.8mg/dL(p=0.01)、トリグリセライドは25.7mg/dL減少対7mg/dL増加(p=0.002)であり、切り替えに一定の効果を認めています。安易に薬剤を切り替えたり中止したりすることは避けなければなりませんが、体重や体脂肪率増加の理由、程度、発現時の代替案などを聞かれる機会もあるかと思いますので、参考にしていただければと思います。1)Maayan L, et al. Expert Rev Neurother. 2010;10:1175-1200.2)Nicol GE, et al. JAMA Psychiatry. 2018;75:788-796.3)Rummel-Kluge C, et al. Schizophr Res. 2010;123:225-233.4)日本神経精神薬理学会編. 統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー. 日本神経精神薬理学会;2018.5)Stroup TS, et al. Am J Psychiatry. 2011;168:947-956.

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魚類や多価不飽和脂肪酸摂取と産後うつ病リスク~JECS縦断研究

 妊婦は、胎児の成長に必要なn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)のレベルを高める必要がある。母親の魚類やn-3 PUFAの摂取が、産後うつ病リスクを低下させることを示唆するエビデンスが報告されているが、その結果に一貫性はない。富山大学の浜崎 景氏らは、日本人女性における妊娠中の魚類やn-3 PUFAの摂取と産後うつ病リスクとの関連について調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年9月19日号の報告。 日本人集団において、出産後6ヵ月までの母親の産後うつ病リスクおよび1年間の重篤な精神疾患リスクの低下に、妊娠中の魚類やn-3 PUFAの食事での摂取が関連しているかについて調査を行った。JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)の10万3,062件のデータより除外と重複処理を行った後、出産後6ヵ月は8万4,181人、1年間は8万1,924人について評価を行った。リスク低下の評価には、多変量ロジスティック回帰および傾向テストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月間では、産後うつ病リスクの低下が認められ(魚類およびn-3 PUFA摂取の五分位:第2~第5五分位)、傾向テストでも有意な線形関連が認められた。・1年後では、重篤な精神疾患リスクの低下が認められ(魚類の五分位:第2~第5五分位、n-3 PUFAの五分位:第3~第5五分位)、傾向テストでも有意な線形関連が認められた。 著者らは「魚類やn-3 PUFA摂取量の多い女性では、出産後6ヵ月間の産後うつ病リスクおよび1年間の重篤な精神疾患リスクの低下が認められた」としている。

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日本で広域抗菌薬が適正使用されていない領域は?

 抗菌薬の使用量は薬剤耐性と相関し、複数の細菌に作用する広域抗菌薬ほど薬剤耐性菌の発生に寄与する。日本の抗菌薬使用量は他国と比べ多くはないが、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドといった経口の広域抗菌薬の使用量が多い。AMR臨床リファレンスセンターは9月24日、11月の「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」を前にメディアセミナーを開催。日馬 由貴氏(AMR臨床リファレンスセンター 薬剤疫学室室長)、具 芳明氏(同 情報・教育支援室室長)らにより、最新の使用量データや市民の意識調査結果が報告された。2020年までに“経口の広域抗菌薬半減”が目標 国主導の「AMR対策アクションプラン」は、2013年比で2020年までに(1)全体で抗菌薬を33%減少、(2)経口の広域抗菌薬を半減、(3)静注薬を20%減少、を目標として掲げている1)。実際の使用量データをみると、人口千人当たりの1日抗菌薬使用量は、2013年と比較して2018年で10.6%減少している。このうち、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドはそれぞれ17~18%ほど減少がみられる。 一方で、内服用抗菌薬と静注用抗菌薬に分けてみると、この減少は内服用抗菌薬によるもので、静注用抗菌薬の使用量は全く減っていない。日馬氏は、「全体として目標達成にはさらなる努力が必要だが、とくに静注用抗菌薬の使用削減については今後の課題」とし、その多くが高齢者で使用されていることを含め、効果的な介入方法を探っていきたいと話した。本来不要なはずの処方にかかる費用の推計値は年10億円超 非細菌性急性上気道炎、いわゆるかぜには本来抗菌薬は不要なはずだが、徐々に減少しているものの、2017年のデータでまだ約3割の患者に処方されている。セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドがその大部分を占め、費用に換算すると年10億円を超えると推定される2)。非細菌性急性上気道炎への抗菌薬処方率を患者の年齢別にみると、19~29歳で43.26%と最も高く、次いで30~39歳が42.47%であった。日馬氏はまだ推測の域を出ないとしたうえで、「就労世代でとくに使われがちということは、仕事を休めないなどの事情から患者側からの求めがあるのかもしれない」と話した。 もう1領域、課題として挙げられたのが急性膀胱炎に対する抗菌薬使用だ。2016年のデータで、急性膀胱炎に対する抗菌薬処方はフルオロキノロンが52.4%と最も多く、第3世代セファロスポリンが38.9%と、広域抗菌薬がほとんどを占める2)。実際、日本のガイドラインではフルオロキノロンが第1選択になっている。しかし、欧米ではST合剤などが第1選択で、フルオロキノロンは耐性への懸念から第1選択薬としては推奨されていない。同氏は、「使用期間は長くないものの患者数が多いため、広域抗菌薬全体の使用量に対する寄与が大きい」とし、「必ずしも欧米との単純比較ができるものではないが、日本でも広域抗菌薬から狭域抗菌薬にスイッチしていく何らかの方策が必要ではないか」と話した。薬剤耐性=体質の変化? 患者との認識ギャップを埋めるために AMR臨床リファレンスセンターでは、毎年市民を対象とした抗菌薬に関する意識調査を行っている。2019年はEU諸国でのデータとの比較などが行われ、具氏が最新の調査結果を解説した。「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」という項目に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は35.1%、「あてはまる」と誤った認識を持っている人が45.6%に上った。EU28ヵ国で同様の質問をした結果は正しい回答が66.0%となっており、日本では誤った認識を持つ人が多いことが明らかとなった。 「今後かぜで医療機関を受診した場合にどんな薬を処方してほしいですか?」という問いに対しては、31.7%の人が「抗菌薬・抗生物質」と回答。「だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱は37℃、あなたは学校や職場を休みますか?」という問いには、24.4%が「休まない」、38.5%が「休みたいが休めない」と答えており、働き方改革が導入されたとはいえ、休みたくても休めない実情が明らかになっている。 また、薬剤耐性という言葉の認知度について聞いた質問では、50.4%が「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがない」と回答している。「薬剤耐性とは病気になる人の体質が変化して抗菌薬・抗生物質が効きにくくなることである」という誤った回答をした人も44.3%存在した。具氏は、AMR臨床リファレンスセンターのホームぺージ上で患者説明用リーフレットの公開がはじまったことを紹介。「抗菌薬は必要ないと判断した急性気道感染症の患者に、医師が診察室で説明に用いることを想定したリーフレットなどを公開しているので活用してほしい」と話して講演を締めくくった。

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