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統合失調症や双極性障害の認知機能に対する睡眠の影響

 精神疾患患者では、精神病性障害だけでなく睡眠障害や認知機能障害を併発し、機能やQOLに影響を及ぼす。ノルウェー・オスロ大学のJannicke Fjaera Laskemoen氏らは、統合失調スペクトラム障害(SCZ)および双極性障害(BD)において睡眠障害が認知機能障害と関連しているか、この関連性が睡眠障害のタイプ(不眠症、過眠症、睡眠相後退[DSP])により異なるか、この関連性が健康対照者と違いがあるかについて検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2019年10月5日号の報告。 対象は、ノルウェー精神障害研究センター(NORMENT)研究より抽出された797例(SCZ457例、BD340例)。睡眠障害は、うつ病症候学評価尺度(IDS-C)の項目に基づき評価した。いくつかの認知ドメインとの関連は、別々のANCOVAを用いてテストした。認知障害との関連性が睡眠障害のタイプにより異なるかをテストするため、three-way ANOVAを実施した。 主な結果は以下のとおり。・いくつかの共変量で調整した後、睡眠障害を有する患者では、睡眠障害のない患者と比較し、処理速度や認知抑制が有意に低いことが明らかとなった。・睡眠障害と認知機能との関連性は、SCZとBDで類似しており、不眠症と過眠症のいずれにおいても、処理速度や認知抑制への有意な影響が認められた。・健康対照者では、睡眠障害と認知機能に関連性は認められなかった。 著者らは「精神疾患患者における睡眠障害は、認知機能障害の一因となりうる。精神疾患患者の治療では、睡眠障害の治療が認知機能を保護するために重要であることを示唆している」としている。

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メラノーマ・腎がん・肺がんに対するニボルマブの5年生存率/JAMA Oncol

 進行メラノーマ、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体ニボルマブ治療の5年生存率が報告された。米国・Johns Hopkins Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのSuzanne L. Topalian氏らが米国内13施設270例の患者を包含して行った第I相の「CA209-003試験」の2次解析の結果で、著者は「長期生存と関連する因子を明らかにすることが、治療アプローチおよびさらなる臨床試験開発の戦略に役立つだろう」と述べている。ニボルマブは進行メラノーマ、RCC、NSCLCおよびその他の悪性腫瘍に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、これまで長期生存に関するデータは限定的であった。JAMA Oncology誌2019年10月号(オンライン版2019年7月25日号)掲載の報告。 研究グループは、ニボルマブ投与を受ける患者の長期の全生存(OS)を分析し、臨床的および検査所評価で腫瘍部位とOSの関連を明らかにするため、第I相の「CA209-003試験」の2次解析を行った。同試験は米国内13の医療センターで行われ、2008年10月30日~2011年12月28日に登録された、ニボルマブ投与を受ける進行メラノーマ、RCC、NSCLCの患者270例が包含された。 被験者は、ニボルマブ(0.1~10.0mg/kg)を2週間ごとに8週間のサイクルで投与され、完全奏効した場合、容認できない毒性作用が認められた場合、患者が中止を申し出た場合を除き、病勢進行まで最長96週間投与された。 解析は、オリジナルのプロトコールの規定、およびその後の2008~12年にプロトコール改正で組み込まれた方法に基づき、統計的解析は、2008年10月30日~2016年11月11日に行われた。安全性とニボルマブの活性を評価。OSは、最短フォローアップ期間58.3ヵ月の事後解析のエンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・解析に含まれた270例のうち、107例(39.6%)がメラノーマ(男性72例[67.3%]、年齢中央値61歳)、34例(12.6%)がRCC(26例[76.5%]、58歳[35~74])、129例(47.8%)がNSCLC(79例[61.2%]、65歳[38~85])の患者であった。・推定5年OS率は、メラノーマ患者34.2%、RCC患者27.7%、NSCLC患者15.6%であった。・多変量解析の結果、肝臓転移(オッズ比[OR]:0.31、[95%信頼区間[CI]:0.12~0.83]、p=0.02)、骨転移(0.31[0.10~0.93]、p=0.04)が5年生存率の低下と独立して相関する可能性が示された。一方で、ECOG PSの0が、独立的に5年生存率の上昇と関連していた(2.74[1.43~5.27]、p=0.003)。・OSは、治療関連有害事象のない患者(OS中央値5.8ヵ月[95%CI:4.6~7.8])と比較して、あらゆるGradeの治療関連有害事象を有する患者(19.8ヵ月[13.8~26.9])およびGrade3以上の患者(20.3ヵ月[12.5~44.9])において、有意な延長が認められた(ハザード比に基づく両群間比較のp<0.001)。

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日本人高齢者のてんかん有病率は中年の約3倍、その原因は~久山町研究

 てんかんは小児期から老年期まで、すべての年齢層でみられる一般的な慢性神経疾患である。運転中にドライバーが発作を起こせば重大事故につながるリスクがあり、たびたび社会問題としても報じられている。米国・ロチェスターにおける研究では、てんかんの発生率が乳児と高齢者で高く、有病率が加齢と共に増加することが報告されているが、国内における人口ベースの研究はほとんどない。今回、京都府立医科大学の田中 章浩氏らが久山町研究で調べたところ、高齢者におけるてんかん有病率は中年の約3倍であり、症例の半数以上が高齢で最初の発作を経験していることがわかった。研究結果は、Epilepsia誌に掲載され、現在、神戸市で開催されている第53回日本てんかん学会でも報告された。 本研究は、久山町研究のサブスタディとして実施。2012年6月~13年11月の期間に、地域居住の40歳以上(4,679例)を対象に、心血管リスク因子とてんかん発作の経験の有無についての調査を実施し、このうち3,333例(居住者の71.2%)が登録された。 調査は対面のインタビュー形式で、てんかんの既往歴の有無および現在抗てんかん薬を服用しているか否かについて聞き取りが行われた。既往歴の定義は、過去5年以内に少なくとも1回の発作を起こし、神経科医の医師などによって診断された活動性てんかんのエピソードを有するか、抗てんかん薬を使用し、治療を受けていることとした。 調査の結果、23例がてんかんと診断され、有病率は1,000人あたり6.9症例(95%信頼区間[CI]:4.1~9.7)であった。この結果に有意な性差は認められなかった(p=0.23)。年齢層でみると、40~64歳の中年層(1,000人あたり3.6症例、95%CI:0.7~6.4)よりも、65歳以上の高齢層(1,000人あたり10.3症例、95%CI:5.4~15.1)で有意に高く、その差は約3倍の開きがあった(p=0.02)。てんかんの主な原因は脳血管疾患であった(n=11、てんかん症例の48%)。また、症例の半数以上が、65歳以上で初回エピソードを経験していることもわかった(n=13、同57%)。 著者らは、「今回の研究結果は、高齢者の脳血管疾患と関連して、てんかんの有病率が増加することを示唆している。将来的なてんかんリスクを軽減するためにも、脳血管疾患の予防が非常に重要である」と述べている。

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大手術時の麻酔深度、1年死亡率と関連する?/Lancet

 大手術後の合併症リスクが高い患者において、浅い全身麻酔は深い全身麻酔と比較して1年死亡率を低下しないことが示された。ニュージーランド・Auckland City HospitalのTimothy G. Short氏らによる、高齢患者を対象に検討した国際多施設共同無作為化試験「Balanced Anaesthesia Study」の結果で、著者は「今回の検討で、処理脳波モニターを用いて揮発性麻酔濃度を調節した場合、広範囲にわたる麻酔深度で麻酔は安全に施行できることが示された」とまとめている。麻酔深度の深さは、術後生存率低下と関連することがこれまでの観察研究で示されていたが、無作為化試験でのエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2019年10月20日号掲載の報告。術後合併症リスクが高い高齢者で、浅麻酔と深麻酔での1年全死因死亡率を比較 研究グループは7ヵ国73施設において、明らかな併存疾患を有し手術時間が2時間以上かつ入院期間が2日以上と予想される60歳以上の患者を登録し、大手術後の合併症リスクが高い患者を、bispectral index(BIS)を指標として浅い全身麻酔(浅麻酔群:BIS値50)または深い全身麻酔(深麻酔群:BIS値35)の2群に手術直前に無作為に割り付けた(地域別の置換ブロック法)。なお、患者および評価者は、割り付けに関して盲検化された。また、麻酔科医は、各患者の術中の平均動脈圧を適切な範囲に管理した。 主要評価項目は、1年全死因死亡率で、解析にはlog-rank検定およびCox回帰モデルを使用した。1年全死亡率は両群で有意差なし 2012年12月19日~2017年12月12日の期間に、スクリーニングされ適格基準を満たした1万8,026例中、6,644例が登録および無作為化された(intention-to-treat集団:浅麻酔[BIS50]群3,316例、深麻酔[BIS35]群3,328例)。 BIS中央値は、浅麻酔群で47.2(四分位範囲[IQR]:43.7~50.5)、深麻酔群で38.8(36.3~42.4)であった。平均動脈圧中央値はそれぞれ84.5mmHg(IQR:78.0~91.3)および81.0mmHg(75.4~87.6)であり、浅麻酔群が3.5mmHg(4%)高かった。一方、揮発性麻酔薬の最小肺胞濃度は、それぞれ0.62(0.52~0.73)および0.88(0.74~1.04)であり、浅麻酔群が0.26(30%)低かった。 1年全死因死亡率は、浅麻酔群6.5%(212例)、深麻酔群7.2%(238例)であった(ハザード比:0.88[95%信頼区間[CI]:0.73~1.07]、絶対リスク低下:0.8%[95%CI:-0.5~2.0])。 Grade3の有害事象は、浅麻酔群で954例(29%)、深麻酔群で909例(27%)に、Grade4の有害事象はそれぞれ265例(8%)および259例(8%)に認められた。最も報告が多かった有害事象は、感染症、血管障害、心臓障害および悪性新生物であった。 なお、著者は、両群で目標BIS値に到達していなかったこと、1年全死因死亡率が予想より2%低かったこと、揮発性麻酔薬で維持した全身麻酔に限定され、プロポフォール静脈投与による麻酔の維持に関する情報がないことなどを研究の限界として挙げている。

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早産児、主要併存疾患なし生存の割合は?/JAMA

 スウェーデンにおいて、1973~97年に生まれた早産児のほとんどは、成人期初期から中年期まで主要併存疾患を伴わず生存していたが、超早産児については予後不良であった。米国・マウントサイナイ医科大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンのコホート研究の結果を報告した。早産は、成人期における心代謝疾患、呼吸器疾患および神経精神障害との関連が示唆されてきたが、主要併存疾患を有さない生存者の割合については、これまで不明であった。JAMA誌2019年10月22日号掲載の報告。1973~97年に生まれた約260万人を18~43歳まで追跡 研究グループは、1973年1月1日~1997年12月31日の期間にスウェーデンで生まれ、妊娠週数のデータがあり、2015年12月31日(18~43歳)まで生存と併存疾患に関する追跡調査を受けた全国住民256万6,699例について解析した。 主要評価項目は、超早産(22~27週)、極早産(28~33週)、後期早産(34~36週)、早期正期産(37~38週)で生まれた人と、満期正期産(39~41週)で生まれた人の主要併存疾患のない生存率であった。 併存疾患は、思春期および若年成人に一般的に現れる神経精神障害等を評価するAdolescent and Young Adult Health Outcomes and Patient Experience(AYA HOPE:思春期および若年成人の健康転帰と患者の体験)Comorbidity Indexを用いて定義するとともに、成人期の死亡率を予測する主要慢性疾患等を評価するCharlson Comorbidity Index(CCI)を用いて定義した。AYA HOPE併存疾患なし54.6%、CCI併存疾患なし73.1% 解析対象集団のうち、48.6%が女性、5.8%が早産で、追跡期間終了時の年齢中央値は29.8歳(四分位範囲12.6歳)であった。 追跡期間終了時でのAYA HOPE併存疾患なしの生存者の割合は、全早産出生者で54.6%(超早産22.3%、極早産48.5%、後期早産58.0%)、早期正期産で61.2%、満期正期産で63.0%であった。この割合は、満期正期産出生者と比較して全早産出生者で有意に低下した(補正後率比:超早産0.35[95%信頼区間[CI]:0.33~0.36、p<0.001]、全早産0.86[95%CI:0.85~0.86、p<0.001]、補正率比の差:超早産-0.41[95%CI:-0.42~-0.40、p<0.001]、全早産-0.09[95%CI:-0.09~-0.09、p<0.001])。 また、CCIで評価した併存疾患を有することなく生存していた人の割合は、全早産73.1%、超早産32.5%、極早産66.4%、後期早産77.1%、早期正期産80.4%、満期正期産81.8%であった(補正後率比 超早産:0.39[95%CI:0.38~0.41、p<0.001]、全早産:0.89[95%CI:0.89~0.89、p<0.001]、補正後率比の差 超早産:-0.50[95%CI:-0.51~-0.49、p<0.001]、全早産:-0.09[95%CI:-0.09~-0.09、p<0.001])。

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遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本治療学会

 進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMD(NOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDやHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。 対象は、がん研有明病院で原発性乳がんの手術を受け2005~14年に遠隔再発を来した患者612例のうち、重複がん、両側乳がん、追跡不能例を除いた437例。ABCのガイドラインに基づき分類したOMDとNOMDの予後を比較し、さらにOMDの予後因子を分析した。脳転移および転移個数5個以下でも根治切除不能と判断した症例はNOMDに分類した。 主な結果は以下のとおり。・OMDは133例、NOMDは304例であった。・再発時年齢中央値、DFI中央値、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体、HER2の発現は両群に有意差はなかった。・サブタイプ別では全体として両群に有意差はなかったが、トリプルネガティブ(TN)についてOMDが10.5%、NOMDが20.4%と、OMDのほうが少なかった。・転移部位について、肝転移、肺転移では両群に差はなかったが、骨転移、遠隔リンパ節転移はNOMDよりOMDで少なかった(どちらもp<0.01)。・再発後の初回全身療法はNOMDで化学療法が有意に多く(p<0.01)、OMDは内分泌療法が有意に多かった(p<0.01)。・OMD症例の14例(10.5%)に遠隔転移巣の根治切除術が実施されており、14例中13例が1臓器のみの転移であった(肺転移:9例、肝転移:3例、骨転移:1例、子宮・卵巣:1例)。・追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~150)、遠隔再発後の全生存期間(OS)中央値は、OMD(76ヵ月)がNOMD(33ヵ月)よりも有意に予後が良好だった(p<0.01)。・OMDにおけるサブタイプ別のOS中央値は、luminalが92ヵ月、luminal/HER2が126ヵ月と、HER2の59ヵ月、TNの52ヵ月より予後良好な傾向が認められた。・OMDにおけるOSに関する単変量比例ハザードモデル解析によると、ER陽性(p=0.02)、周術期の化学療法なし(p=0.01)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.04)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.04)、サブタイプがluminalもしくはluminal/HER2(p=0.03)が有意な予後良好因子であった。再発時年齢が50歳未満も予後良好な傾向がみられた(p=0.07)。・多変量比例ハザードモデル解析によると、周術期の化学療法なし(p=0.04)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.03)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.05)が有意な予後良好因子であった。・予後良好因子が2個以下と3個以上で分類すると、遠隔転移後のOS中央値は3個以上が106ヵ月で、2個以下の34ヵ月に比べて有意に予後が良好であった(p<0.01)。 藤島氏は、「ABCのガイドラインに基づいてOMDとNOMDに分類すると、OMDは有意に予後良好である。しかし、OMD患者の予後は臨床的因子によって異なるため、OMD患者の中でも臨床的因子を考慮した異なる治療戦略が必要ではないか」と述べた。

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【GET!ザ・トレンド】ニューモシスチス肺炎の今日的意義(後編)

前回は、非HIV感染例が発症するPCP(non-HIV PCP)が、HIV例のPCP(HIV-PCP)と病態進行や予後、診断について取り上げました。今回はnon-HIV PCPの治療、そして予防の重要性について解説します。non-HIV PCPが鑑別疾患に残ったらnon-HIV PCPの可能性が除外できない場合、まず、「厳しい戦いになる可能性」を患者さんや家族に伝えましょう。また医療従事者は、状態の増悪に備える必要があります。たとえば、呼吸器内科医のいない施設なら、他院の呼吸器内科医にアクセスを始める、あるいは自施設の集中治療の先生に声を掛ける。また、増悪時に必要となる薬剤がそろっているかどうかも、事前に確認します。治療薬は基本的にHIV PCPと同じで、ST合剤が第1選択薬です。ただし、non-HIV PCPではHIV PCPに比べ、先述のとおり、菌体量が少ないため、低用量でもよいとの考え方もあります。なお、HIV PCPではステロイド併用も一般的ですが、non-HIV PCPに対して必要かどうか、まだはっきりしていません。ST合剤に忍容性がない、あるいは無効だった場合は、ペンタミジンかアトバコンに変更します。ペンタミジンは吸入剤と点滴静注がありますが、有害事象の発現するケースが多く、発熱、腎障害、肝障害が頻発します[藤井毅. 日本臨床微生物学雑誌. 2016;26:195-201.]。アトバコンは、治療効果の高さではST合剤に劣るものの効果はあり、ST合剤やペンタミジンに比べて副作用が少なく使いやすい薬剤です[Hughes W, et al. N Engl J Med. 1993;328:1521-1527.]。感染予防よりも発症予防次に、non-HIV PCPの予防について考えてみたいと思います。ステロイド剤や免疫抑制剤の投与を受けている症例は、その投与量や期間により予防投薬が必要と考えられます。その条件については諸説があります。non-HIV PCPは、空気感染の可能性が示唆されています [Choukri F, et al. Clin Infect Dis. 2010;51:259-265.]。しかし日和見感染症ですので、高リスク例が集中する病棟を除いて、隔離の必要性は低く、かつ非効率的だと考えられます。加えて空気感染であれば、外来患者が市中感染するリスクもあります。そのため、基本的には1次予防(予防投薬)が中心とならざるを得ません。予防投薬でも、第1選択薬はST合剤です。コクランレビューでは、1~2錠を1日1回、それを週3回でも連日投与と有効性に有意差はないとされています[Stern A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Oct 1. CD005590.] 。ただし、有害事象として高カリウム血症が起こりえますので、定期的なモニタリングが必要です。もっとも、有害事象として経験するのは、皮疹や発熱のほうが多いというのが実感です。また、アトバコンは予防投薬の場合、1回10mLを1日1回、食後に経口投与します。安全性に関しては、下痢・悪心や発疹などに注意が必要です。予防投薬の期間ですが、先述の様に諸説はありますが、一定量以上の免疫抑制薬やステロイドを使用している例では、中止することなく継続すべきでしょう。こうした条件において予防投薬をしない場合、10%以上がPCPを発症したという報告もあります [大曲貴夫ほか編. 免疫不全者の呼吸器感染症. 南山堂;2011.p.330.]。さらに非常に興味深いデータとして、腎移植後24年間予防投薬を続けていた例が、4ヵ月間予防投薬を中止しただけで、non-HIV PCPを発症したという報告があります [Kono M et al. Transplant Direct. 2018; 4: e359.] 。後者は、長期にわたる予防投薬継続の実行可能性、ならびに必要性を示すデータだと考えられます。以上、non-HIV PCPへの対応と、高リスク例1次予防の重要性について概説しました。日々の臨床にお役立ていただければ幸いです。

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ラグビーワールドカップ【Dr. 中島の 新・徒然草】(296)

二百九十六の段 ラグビーワールドカップ総合診療部のカンファレンス中のこと。いきなり私の院内PHSが鳴りました。ディスプレイには「受付」と表示されています。ぬぬぬ、これは一体!受付「外国人の患者さんがやってきて『腎臓が悪いから診てくれ』と言ってるんですけど」中島「なにそれ?」私の頭の中に浮かんできたのは、大阪城公園でビールを飲み過ぎたオッチャンが、ワーワーわめいて受付を困らせているイメージです。中島「じゃあ、手の空いている人間に行ってもらうから」受付「わかりました。内科外来に案内しておきます」カンファレンス後に様子を見に行くと、案に相違して診察室にいたのは、爽やか青年2人組でした。痛いのは腎臓ではなく喉なのだとか。中島「どこから来たわけ?」青年「イングランドだよ」看護師「このあと横浜に行って、ラグビーの応援をするそうです」ということは、関西空港経由で大阪に来たのかも。中島「へえ、イングランドとどこが戦うの?」青年「ニュージーランドさ」中島「イングランド対ニュージーランドか、それは楽しみだね」青年「そうなんだ」中島「トーナメントの反対側はどこだったかな」青年「ウェールズと南アフリカだよ」そういや、日本は南アフリカに敗けていたのでした。中島「じゃあ4つともコモンウェルス(旧大英帝国)だね」青年「ああ、ラグビーは colonial sports だからね」colonial sports という表現があるんですね、初めて聞きました。中島「だから強いんだ」青年「日本もアイルランドやスコットランドに勝ったじゃないか」中島「ラッキーだったのかな」青年「いやいや実力だよ」中島「そう言ってくれてありがとう。とにかく旅行を楽しんでくれ」青年「ありがとう、そうするよ」こんなやりとりがあると、急にイングランドが身近なものに感じられます。後日、イングランドが前回覇者のニュージーランドを破ったことを知りました。さぞや青年たちも狂喜したことでしょう。イングランドの決勝の相手は南アフリカ、果たして勝者はどちらに?最後に1句健全な ナショナリズムは ラグビーで

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EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第10回

第10回 EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ1)Stinchombe TE, Janne PA, Wang X, et al. Effect of Erlotinib Plus Bevacizumab vs Erlotinib Alone on Progression-Free Survival in Patients With Advanced EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2019 Aug 8. [Epub ahead of print]2)Noronha V, Patil VM, Joshi M, et al. Gefitinib Versus Gefitinib Plus Pemetrexed and Carboplatin Chemotherapy in EGFR-Mutated Lung Cancer. J Clin Oncol. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]3)Nakagawa K, et al. Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019 Oct 4.[Epub ahead of print]EGFR変異陽性例に対する初回治療は、オシメルチニブがOSでも有効性を示した(Ramalingam S, ESMO2019)ことでおおむね片が付いたとみる向きが多いが、次なる方向性として併用療法やcell-free DNAを組み合わせたアプローチなどが模索されている。今回は最近の報告を基に併用療法についてまとめてみた。1)について米国から報告された第II相試験。88例をエルロチニブ+/-ベバシズマブに1:1で無作為化。プライマリーエンドポイントであるPFSは17.9ヵ月 vs.13.5ヵ月と併用群で延長していたが、統計学的な有意差なし(HR:0.81、p=0.39)。ORRは同等(81% vs.83%)、驚くべきことにOSは併用群で劣る傾向(32.4ヵ月 vs.50.6ヵ月、HR:1.41、p=0.33)であった。後治療としてオシメルチニブが併用療法群で10例・単剤群で13例投与されている(これらを省いたOSデータは示されていない)。2)について細胞傷害性抗がん剤との併用インドから報告された単施設の(!)第III相試験。350例をゲフィチニブ+/-化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)に1:1で無作為化。PS 2が21%と多く含まれている。プライマリーエンドポイントであるPFSは16ヵ月 vs.8ヵ月と併用群で有意に延長していた(HR:0.51、p<0.001)。ORR(75% vs.63%)、OS(中央値未到達vs.17ヵ月、HR:0.45、p<0.001)も併用群で有意に上回っていた。後治療として単剤群のうち、カルボプラチン+ペメトレキセドを受けたものは32.4%とやや低めである。解説血管新生阻害薬との併用については、本邦から報告されたゲフィチニブ+/-ベバシズマブの第II相試験(JO25567)での良好なPFSを基に複数の第III相臨床試験が計画された。昨年・本年のASCOで本邦からの第III相試験が報告され、PFS延長が確認されたことは周知のとおり(Saito, Lancet Oncol. 2019、Nakagawa, Lancet Oncol. 2019)。今後、中国やEUからも第III相試験の報告が予想されている。今回の第II相試験は残念ながらnegativeな結果に終わったが、著者らも触れているように単剤群の治療成績が予想よりよかったことも影響しており、血管新生阻害薬併用によるPFS延長は十分確認されたと考えられる。ただし、より重要なのは、JO試験に引き続いてOSの延長が認められなかったことであろう。それほど毒性の強い治療でもないので後治療に差があるわけではないと思うのだが、この理由は明らかになっておらず、今後の開発にやや不安を残したといえる。オシメルチニブとの併用を含めた主だった試験のまとめは以下のとおり。細胞傷害性抗がん薬との併用は、古くTRIBUTE試験などで検討されてきたが、EGFR変異陽性例に絞った検討はNEJグループが牽引してきた経緯がある(Sugawara S, Ann Oncol2015, Oizumi S, ESMO Open2018)。第III相試験については昨年のASCOで報告され(Furuya N, ASCO2018)、本年インドからも同様の結果が示された。PFSは延長して当然な一方で、2つの第III相試験ともにOS延長が示されたことは重要である(ただしインドの試験では低い後治療の割合がOSの大きな差に影響している可能性はあり)。主だった試験のまとめは以下のとおり。以上が現状のまとめとなる。元々のコンセプトとして、前者はEGFR-TKIの効果増強を意図している一方で、後者は腫瘍のheterogeneityに対して異なる機序の薬剤の相乗効果を狙っている。また、血管新生阻害剤併用の場合には後治療として化学療法(+免疫チェックポイント阻害剤)が使用可能であるのに対して、細胞傷害性抗がん剤併用後の増悪に対しては単剤化学療法が標準と考えられることから、これら併用療法のPFSを単純に比べることはあまり意味がなさそうである。一方でこれら試験結果を待っている間に、オシメルチニブというgame changerが登場したため、結果の解釈はより難しくなった。現在、オシメルチニブを用いても同様の治療戦略が成り立つのかを検討すべく、さまざまな計画がなされている(Yu H, ASCO2019)。以上、簡単にEGFR-TKI併用療法の現状をまとめた。今後オシメルチニブを軸に治療開発がなされると考えられるが、エンドポイントをどう設定するかは非常に重要な問題である。クロスオーバーの影響を考慮すべき治療の場合、PFSでは不十分な可能性があるが、そうなると相当大規模な症例数が必要となる。長期奏効の指標としてX年無再発率のような新しい指標を検討すべきなのか、乳がんのホルモン治療やICIで近年検討されているように「試験治療開始から化学療法開始までの期間(=どの程度の期間化学療法を回避できたか)」や「治療休止期間」のような患者のQOLをより反映したソフトエンドポイントも興味深く、ドライバー変異陽性肺がんもこうした新規エンドポイントを検討すべき時代になっているのかもしれない。また、オシメルチニブ単剤でも良好なPFSが得られる状況において、果たして併用療法が本当に意義のあるPFS延長を示せるのかも気になる点である(実際、オシメルチニブ+ベバシズマブの試験ではPFSはそれほど延びていない)。図表(ppt)はこちら。右クリックでダウンロードできます。

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肝がんの1次療法、ニボルマブとソラフェニブの比較第III相試験(CheckMate-459)/ESMO2019

 香港大学医学部のThomas Yau氏は進行肝細胞がんに対する1次治療として従来の標準治療薬のソラフェニブとニボルマブの効果を比較する第III相試験CheckMate-459の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 CheckMate-459試験は切除不能な未治療の進行肝細胞がん患者743例が対象。この登録患者にソラフェニブとニボルマブを無作為に割り付けた。各群の詳細は以下のとおり。・試験群:ニボルマブ240mg、2週ごと(372例)・対照群:ソラフェニブ400mg、1日2回(371例)・投与期間:病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、PD-L1発現と有効性の関連など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ群が16.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.9~18.4)、ソラフェニブ群が14.7ヵ月(95%CI:11.9~17.2)と両群間で有意差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.72~1.02、p=0.0752)。・PFS中央値はニボルマブ群が3.7ヵ月(95%CI:3.1~3.9)、ソラフェニブ群が3.8ヵ月(95%CI:3.7~4.5)であった。・奏効率(ORR)はニボルマブ群が15%、ソラフェニブ群が7%であった。・完全奏効(CR)率はニボルマブ群が4%、ソラフェニブ群が1%であった。・PD-L1発現率1%以上でORRはニボルマブ群が28%、ソラフェニブ群が9%であった。・治療薬に関連した深刻な有害事象(AE)に関してニボルマブ群で新たな懸念は認められなかった。・Grade3以上の治療関連AE発現率はニボルマブ群が22%、ソラフェニブ群が49%であった。 OSで有意差は示せなかったものの、今回の結果についてYau氏は「OS、ORR、CRでニボルマブ群はソラフェニブ群と比べ改善傾向を示した」と評した。

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性機能に対するボルチオキセチンの影響~ランダム化比較試験

 性機能障害はうつ病患者においてよくみられるが、抗うつ薬の一般的な副作用として認められるtreatment-emergent sexual dysfunction(治療に起因する性機能障害)の評価は、一部の患者において抑うつ症状の治療と混同される可能性がある。米国・Takeda Development Center AmericasのPaula Jacobsen氏らは、ボルチオキセチンの性機能に対する影響を評価するため、健康なボランティアを対象に、性機能障害を誘発することが知られているパロキセチンおよびプラセボとの比較を行った。The Journal of Sexual Medicine誌2019年10月号の報告。 本研究は、フェーズIVランダム化多施設二重盲検プラセボ対照4アーム固定用量head-to-head試験として実施された。性機能が正常な18~40歳の健康なボランティア(自己報告によるChanges in Sexual Functioning Questionnaire Short-Form[CSFQ-14]において男性は47点超、女性は41点超)に、ボルチオキセチン(1日1回10mgおよび20mg)、パロキセチン(1日1回20mg)、プラセボを5週間投与し、性機能障害の比較を行った。治療コンプライアンス不良を調整する2つの修正された完全分析セットを事前に指定した。主要エンドポイントは、5週間後のパロキセチンと比較したボルチオキセチンのCSFQ-14総スコアの変化とした。副次エンドポイントは、プラセボと比較したボルチオキセチンのCSFQ-14スコアの変化、CSFQ-14サブスケール、患者の全体的な印象度とした。 主な結果は以下のとおり。・対象は361例(平均年齢:28.4歳)。内訳は、白人約57%、黒人またはアフリカ系米国人34%、アジア系4%であった。・ボルチオキセチン10mgでは、パロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が有意に少なかった(平均差:+2.74点、p=0.009)。・ボルチオキセチン20mgでは、パロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が少なかったが(平均差:+1.05点)、統計学的に有意な差は認められなかった。・とくにパロキセチンおよびボルチオキセチン20mgでは、コンプライアンス不良が結果に影響を及ぼしている可能性が示唆された。・パロキセチンは、プラセボよりも治療に起因する性機能障害が有意に多かったが、ボルチオキセチンでは認められなかった。・ボルチオキセチンは、パロキセチンよりもCSFQ-14で測定した性機能障害の3つのフェーズおよび5つのディメンションにおいて良好な結果が認められた。・本試験では、健康なボランティアを対象とすることにより、結果に影響を及ぼすうつ症状の状態などのリスクが軽減された。 著者らは「健康なボランティアにおいて、ボルチオキセチンはパロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が少なく、性機能障害が懸念されるうつ病患者のマネジメントにおいてボルチオキセチンが選択薬となりうることが示唆された」としている。■「ボルチオキセチン」関連記事ボルチオキセチン治療中のうつ病患者における睡眠と抑うつ症状との関係

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HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本治療学会

 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。 主な結果は以下のとおり。・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

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今季インフルエンザ治療のポイントとは?

 今季インフルエンザは沖縄県での発生を皮切りに早くも流行が始まっているが、今年はどのような対策を講じればよいのだろうか? 2019年10月23日、塩野義製薬株式会社主催のメディアセミナー「インフルエンザの疫学と臨床」が開催。池松 秀之氏(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 リサーチディレクター)がインフルエンザ疫学や薬剤耐性の現況について報告した。今年の流行時期とインフルエンザ型は? 人間に影響を及ぼすインフルエンザウイルスにはA型(亜型としてH1N1[ソ連型]、H1N1pdm、H3N2[香港型]など)とB型がある。そのうちどちらが流行するかで流行時期は毎年異なるのだが、基本的には1月下旬~2月上旬にA型が、それに遅れてB型がピークを迎える。池松氏は各年度でのインフルエンザの流行型・亜型の内訳を提示し過去の動向について解説。2008~09年はインフルエンザのH275Y変異株H1N1(ソ連型)が大流行したものの翌年には消失。新型インフルエンザと呼ばれたH1N1pdm09が出現し、 以降はH1N1pdm09とH3N2が交互に、同様にA型とB型も交互に流行した。この状況を踏まえ、流行の予測は困難であるが、これまでの流行を参照にすると「今年は2010~11年、もしくは2012~13年のようにB型が流行、A型はH1N1が多く発生するのではないか」と述べ、「今年は例年より流行が早く、ピークが年明けになるかどうかはわからない。気温や気候による研究もたくさん実施されているが、それらは明確な予測指標に至っていない」と語った。ウイルス残存率や耐性株からみる今年の注意点とは 昨年はバロキサビルの発売年だったこともあり、多くの医師がバロキサビルを処方したことで耐性株出現などの研究報告が世間を賑わせた。このことから、今年はバロキサビル耐性株に対する治療薬選択への懸念が広がっているが、同氏の所属するインフルエンザ研究班が2018~19年に実施した臨床現場における成人での発熱や症状の改善やウイルスの残存率に関する調査によると、バロキサビルでは治験時と同様の成績(バロキサビルとオセルタミビルでは前者のほうが早くウイルスが消失した)が得られたという。これより同氏は、「治験成績が臨床現場と相違なかったことから、われわれはバロキサビルの治験時データは信頼できると考えている」と述べた。加えて、5種類のインフルエンザ治療薬での平均解熱時間に差がなかったことから、「成人の場合、どの薬剤を選択するかは各医師の患者に適切と思われる薬剤の選択で良い」と、研究班の見解を示した。また、日本感染症学会の提言で話題となった12歳未満への投与については「バロキサビルを絶対使ってはいけないと制限するものではないと受け取っている」とコメントした。 第III相無作為化プラセボ対照予防投与試験であるBLOCKSTONE試験の結果によると、プラセボ群(バロキサビル以外の治療群、n=375)で2例の同居家族がアミノ酸変異(I38変異)を認めた。しかし、この同居家族はその後インフルエンザを発症し、バロキサビルを服用したためI38変異が検出されたという。学会が提言した“慎重投与”が意味することとは? 過去に研究班の症例でもオセルタミビル治療後の成人にて感受性低下ウイルスが分離された例があったが、この時、重症化や周囲への蔓延はなかったという。これを踏まえ、「今後、バロキサビル耐性ウイルスが“治療前”にどれだけ広がるか、バロキサビルの治療にどれくらい影響があるのかは、注意深く見ていく必要がある」と述べ、「成人での感染実験や症状の程度とウイルス量の関係性をみた試験の結果1)、2)を参考に、ウイルス量を早く減らすことで重症化を防げるならば、(ウイルス量を早く消失させることができる)バロキサビルの価値が見いだせるのではないか」とも語った。 耐性に関しては、「小児ばかりがクローズアップされているが、高齢者でも変異ウイルスが一定の頻度で出ているので、高齢者に対しても今後注意を払っていく必要がある」と述べ、「これまではバロキサビル服用後の患者の変異株検出が取り上げられていたが、これは驚くことではない。今年、国立感染症研究所によって未投与患者における耐性株の検出が報告された。耐性株がどの程度伝播していくのかなど、臨床的影響に対して不明点が多いので非常にインパクトがある」とコメントした。さらに「インフルエンザウイルスが免疫機構を免れる新たな手段を手に入れる気配を見せるならば十分注意が必要」と注意点を示した。 最後に同氏は「作用機序やこれまでの試験から推察するに、鳥インフルエンザなどを含め受診が遅れた重症患者のウイルス量低下においてバロキサビルは貢献できるかもしれない」と、締めくくった。 なお、塩野義製薬株式会社によると、今年の9月末までに得られた検体におけるサーベイランススタディは日本小児感染症学会、日本ウイルス学会の両学術集会にて報告された。(11月7日 記事内容を一部修正いたしました)

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β遮断薬によるCOPD増悪抑制、初の無作為化試験/NEJM

 中等度~重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、β遮断薬メトプロロールの増悪予防効果は、プラセボと同等であることが判明した。米国・アラバマ大学バーミングハム校のMark T. Dransfield氏らが、532例の患者を対象に行った前向きプラセボ対照無作為化試験の結果で、増悪による入院の頻度がメトプロロール群のほうが高かったことも示されたという。これまで観察試験では、β遮断薬が中等度~重度COPD患者の増悪および死亡リスクを低減することが示されていたが、無作為化試験では検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2019年10月20日号掲載の報告。初回COPD増悪までの日数をプラセボと比較 研究グループは、米国26ヵ所の医療機関を通じて、40~85歳のCOPD患者を対象に試験を行った。被験者は、中等度気流制限があり増悪リスクが高い(前年に増悪歴または酸素補給処方歴があることを根拠として判定)患者で、β遮断薬の服用歴がある患者、あるいは使用の適応がある患者は除外した。 被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはメトプロロール徐放錠を、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。投与量は最終的に1日25mg、50mgまたは100mgに調整された。 主要エンドポイントは、治療期間中の初回COPD増悪までの日数だった。治療期間は最終投与量により異なり、25mgの患者は336日間、50mg、100mgだった患者は350日間だった。メトプロロール群202日、プラセボ群222日で有意差なし 計532例の患者が無作為化を受けた。平均年齢65.0±7.8歳、平均FEV1値は41.1±16.3%だった。 本試験は、主要エンドポイントに対する無益性と安全性の観点から、予定より早期に中止となった。 初回増悪までの日数中央値は、メトプロロール群202日に対しプラセボ群222日と、両群で有意差はなかった(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.84~1.32、p=0.66)。入院を要する増悪リスクは、メトプロロール群がプラセボ群よりも高いことが認められた(HR:1.91、95%CI:1.29~2.83)。 メトプロロールに関連していると思われる副作用の発現頻度、および全非呼吸器系の重篤有害イベントの発生率は両群間で差はなかった。治療期間中の死亡は、メトプロロール群11例、プラセボ群5例が報告された。

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元プロサッカー選手、神経変性疾患死3.45倍/NEJM

 元プロサッカー選手は、神経変性疾患による死亡率が高く、一般的な疾患での死亡率は低いことが示された。英国・グラスゴー大学のDaniel F. Mackay氏らによる、スコットランドの元プロサッカー選手7,676例を対象とした後ろ向き適合コホート研究の結果で、元選手は認知症関連治療薬の処方率も高かったという。神経変性疾患は、コンタクトスポーツのエリート選手で報告されている。元プロサッカー選手の神経変性疾患の発症率については明らかにされていなかった。著者は、「今回観察された結果について、前向き適合コホート研究を行い確認する必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2019年10月21日号掲載の報告。スコットランドの元プロサッカー選手と適合コホートを比較分析 研究グループは、スコットランドの選手データベースから、元プロサッカー選手7,676例と、性別、年齢、社会的剥奪(social deprivation)の程度で適合した一般住民の対照コホート2万3,028例について、後ろ向きコホート研究を行い、神経変性疾患死亡率を比較した。 死因については、死亡診断書で特定した。また、認知症治療薬の処方データについても比較した。処方情報は、全国処方情報システムから入手した。アルツハイマー病死のリスクが最も高く5.07倍 中央値18年以上の追跡において、元サッカー選手群では1,180例(15.4%)が、対照群では3,807例(16.5%)が死亡した。全死因死亡率は、70歳までは元サッカー選手群が対照群よりも低かったが、その後は逆に高かった。 虚血性心疾患による死亡リスクは、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.02)。また、肺がんによる死亡リスクも、元サッカー選手群で有意に低かった(同:0.53、0.40~0.70、p<0.001)。 一方で神経変性疾患による死亡率は、元サッカー選手群1.7%、対照群0.5%で有意に高率だった(虚血性心疾患死・全がん死の競合リスク補正後HR:3.45、95%CI:2.11~5.62、p<0.001)。元サッカー選手において、死亡診断書で神経変性疾患が死因・要因と記述されていた死亡は、疾患のサブタイプによってばらつきがあった。最も頻度が高かったのはアルツハイマー病で(元サッカー選手群vs.対照群のHR:5.07、95%CI:2.92~8.82、p<0.001)、最も低かったのはパーキンソン病だった(2.15、1.17~3.96、p=0.01)。 認知症関連治療薬の処方率も、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に高率だった(オッズ比[OR]:4.90、95%CI:3.81~6.31、p<0.001)。 元サッカー選手の中で、神経変性疾患が死因・要因の割合は、元ゴールキーパーと元フィールド・プレーヤーで有意差はなかった(HR:0.73、95%CI:0.43~1.24、p=0.24)。しかし、認知症関連治療薬の処方率は、元ゴールキーパーが元フィールド・プレーヤーより有意に低率だった(OR:0.41、95%CI:0.19~0.89、p=0.02)。

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万引き家族(前編)【年金の財源を食いつぶす!?「障害年金ビジネス」とは?どうすればいいの?】Part 1

今回のキーワード年金不正受給社会保険労務士疾病利得詐欺罪モラルハザード信書開封罪ノーリスクハイリターンシックロール「年金2000万円問題」が話題になりました。かつての「消えた年金」のように、年金政策は、一歩間違えれば、政権を揺るがす大問題に発展します。それだけ年金にまつわる不祥事は、国民にとって敏感な社会問題です。そんな中、皆さんは、精神障害年金というものがあるのを知っていますか? それが今、危うい「ビジネス」になっているかもしれないということも? そして、それが年金の財源を食いつぶすかもしれないということも? 実際に、インターネットで「障害年金」と検索すると、「受給成功率を上げる」「完全成功報酬制」などとのうたい文句が並ぶ精神障害年金の相談の広告があふれ出てきます。今回のテーマは、精神障害年金の不正受給です。これは一体、何なんでしょうか?不正受給はどうやって起きるのでしょうか? そして、どうすれば良いでしょうか?これらの問いへの答えを探るために、映画「万引き家族」の登場人物を再び取り上げます。以前は「万引き」を精神医学的に解説しました。今回は、社会医学的な視点で、精神障害年金にまつわる「ブラックボックス」を明らかにします。そして、障害年金が「ビジネス」として悪用されることなく、本当に必要な人に行き届く運用のあり方とその限界について一緒に考えていきましょう。年金の不正受給とは?「万引き家族」の登場人物の1人の初枝は、月に6万円近くの年金を得ていました。これは、65歳を目安とする老齢(高齢)の時期から支給される老齢年金です。その後に、初枝は急死します。しかし、同居している治と信代はその遺体を床下に埋めて、本人が「生きている」ことにして、初枝の年金の支給を代わりに受け続けます。これが、年金の不正受給です。年金の不正受給は、老齢年金だけでなく、障害年金でもありえます。障害年金とは、その障害によって、日常生活や就労に制限が生じている場合に支給されます。この障害年金の不正受給は、本人が「障害がある」ふりをして、可能になります。なお、この記事で「障害がある」とは、日常生活や就労に制限が生じるレベルとします。ただし、身体障害の場合、その認定には、客観的な検査による根拠が必要になるため、不正受給は起こりにくいです。一方、精神障害の場合、その認定には、必ずしも客観的な検査は必要ありません。患者の訴えをもとに、精神科医が「障害がある」と判断すれば、ほぼ認定されます。ここに、不正受給の「ブラックボックス」があります。さらに、昨今ではインターネットによる精神障害年金の相談対応で、障害年金に詳しい社会保険労務士(以下、社労士)が介入することが増えています。ここに、不正受給がビジネスになりうる「ブラックボックス」があります。なお、紹介する事例については、精神科医や患者からの聞き取り調査に基づいています。不正受給はなぜ起きるの?ここから、精神障害年金の不正受給が起きる原因を、患者、社労士、精神科医の3つの立ち位置に分けて、ぞれぞれの「ブラックボックス」を明らかにしてみましょう。ただし、ここで誤解がないようにしたいのは、これから解き明かす「ブラックボックス」はすべての患者、社労士、精神科医に当てはまるわけでは決してないということです。あくまで彼らの一定数に当てはまるということです。そして、その数が今後に増えていく危うさがあるということです。 患者の「ブラックボックス」治と信代は初枝の老齢年金を不正受給する際に、葛藤ありません。その原因については、以前すでに説明しました。これは、障害年金の不正受給をする心理にも当てはまります。この心理を前回の原因の状況に重ね合わせながら、まず患者の「ブラックボックス」を3つに分けてみましょう。(1)もらえるものはもらいたい-過剰な権利主張精神障害年金の受給金額は、基礎年金2級で月に6万5千円程度です。5年前までさかのぼった請求(遡及請求)をすれば、390万円が一気に手に入ります。これは、収入としてはかなりの額です。精神障害によって日常生活能力が下がっている場合には、非常にありがたく、この経済的なサポートによって、安心が得られ、病状を安定させる一因になることもあるでしょう。しかし、問題は、薬やリハビリなどの治療により病状が改善し、日常生活への制限がなくなった場合です。さらには、就労を始めた場合です。次の更新の時に、その状況を精神科医に報告できるでしょうか? 正直に報告してしまうと、「障害がある」と判断されず、受給が減額されたり、停止してしまいます。本人は、この事実に気付きます。すると、本人にはどういう心理が芽生えるでしょうか?1つ目は、お金を減らされたくない、もらえるものはもらいたいという心理です(過剰な権利主張)。つまり、「障害がある」ままにしておこうという心理です。この心理は、意識的ではありますが、無意識的な疾病利得の心理にもつながっています。これを強めるのは、以前解説した「やってはいけないことの意味がよく分かっていない」という状況です。うそをつくことは良くないことだというモラルが働かなくなっていることです。たとえば、障害年金の診断書の更新日が近付くと、急に不調を訴えます。「お金が減らされないように書いてください」と最初から本音を言う人もいます。また、正直に病状の改善を報告してしまい、実際に受給が減額されたり停止した場合には、その時になって、本人は不調を再度訴えます。実は具合が悪すぎて、そのことすら言えなかったと苦しい理屈を言う人もいます。怒り出す人もいます。せっかく始めた就労を中断するという実力行使に出る人もいます。そして、診断書の再作成を要求します。これは、ちょうど生活保護を受給している人がなかなか就労しようとしない心理に似ています。ちなみに、2016年に障害年金の等級判定ガイドラインが改定されてから、それ以前と同じ診断書の内容でも等級が下がったり、受給期間が短くなることで次回更新が早まるようになりました。本人たちがますます警戒する事態になっています。(2)自分だけ損したくない-損失回避障害年金を受給する前はどうでしょうか? 本人は、すでに受給している知人、インターネットの案内や個人のブログなどから、障害年金についての「裏ワザ」情報を得ます。そして、自分も病状を大げさに言えば、障害年金を得ることができることに気付きます。すると、本人にはどういう心理が芽生えるでしょうか?2つ目は、みんなやっている、自分だけ損したくないという心理です(損失回避)。つまり、「自分も障害者になったんだから、もらって当然だ」という心理です。これを強めるのは、以前解説した「やってはいけないことをする親(周り)がいた」という状況です。たとえば、「自分と同じ病気の友達はもらっているのに、なんで自分はもらえないんですか?」と精神科医に迫ります。これは、ちょうど給食費の未納問題やNHKの受信料問題にも通じる心理です。(3)バレても損しない-モラルハザード障害年金を受給しながら、実は「障害がある」ふりをしていたことや、就労の事実を隠していたことがバレた場合、どうなるでしょうか? 実際は、現時点で摘発されるということはないです。また、バレたとしても、それまでの受給金額の返金は求められる場合はありますが、よほど悪質でない詐欺罪(刑法246条)には問われないでしょう。本人は、この事実に気付きます。すると、本人にはどういう心理が芽生えるでしょうか?3つ目は、バレない、バレても損しないという心理です(モラルハザード)。つまり、「言ったもん勝ち」という心理です。これを強めるのは、以前解説した「やってはいけないことを刺激する社会がある」という状況です。世の中は、格差が開くのと相まって、価値観が多様化しました。これは、個人の権利意識が強まることであり、その分、他者(社会)への配慮が弱まることでもあります。それは、周り(社会)からどう思われるかを気にしなくなり、「やってはいけない」という心理が希薄になることでもあります。本来、障害年金は、障害が原因で働けない人のためにある制度です。それが、「障害」を理由に働かない人によって悪用されるという事態が起きています。 次のページへ >>

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万引き家族(前編)【年金の財源を食いつぶす!?「障害年金ビジネス」とは?どうすればいいの?】Part 2

社労士の「ブラックボックス」治は日雇いの建築作業員ですが、実際はほぼ働いていません。信代はクリーニング工場のパートをリストラされてからは無職のままです。ここで、仮定の話です。もし信代がリストラのストレスから不眠になり、睡眠薬をもらうために心療内科にしばらく通院しているとしましょう。そして、インターネットで精神障害年金の受給の仕方を指南する社労士の存在を知ったとしたら? 信代は治を引き連れて、一緒にその無料相談に飛びつくでしょう。次に、社労士の「ブラックボックス」を3つに分けてみましょう。(1)権利を勝ち取る-過剰な権利擁護障害年金の等級が得られるかどうかは、精神科医がどう診断書を書くかでほぼ決まってしまうのを、社労士は熟知しています。よって、年金が得られるように、社労士は精神科医に働きかけます。たとえば、本人の日常生活の困難な状況を具体的に記載した「病状報告書」と日常生活能力の判定と程度についての「診断書原案」を医療機関に送り付けます。さらに、診断書が作成され厳封されたあとの場合でも、その診断書を年金事務所に提出する前に本人に開封させ、「もっと病状が重い」との理由で、日常生活能力の判定と程度についての「診断書訂正案」を送り付けます。5年前までさかのぼった請求(遡及請求)の場合、5年前の病状について作成した診断書にも介入してきます。医療機関に直接電話をかけてきたり、患者に代行や同行をして、精神科医と直接交渉する社労士もいます。精神科医が少なくとも1年半以上継続して患者を診ているのに対して、社労士は医療関係者でも専門医でもなく、障害年金の申請前にせいぜい数回しか本人の病状を確認していないにもかかわらずです。社労士は患者にも働きかけます。たとえば、精神科医が4週間ごとの通院で良いと患者に言っても、患者は2週間ごとの通院を希望します。これは、患者が精神科医に「社労士からそう言われたから…」とうっかり漏らすことで判明します。もはやどちらが主治医か分からなくなります。ここまで徹底する社労士には、一体どういう心理があるのでしょうか?1つ目は、権利を守る、権利を勝ち取るという心理です(過剰な権利擁護)。社労士の仕事は、本来、患者の「権利を守る」ことです。しかし、この「権利を守る」は、行き過ぎれば「権利を勝ち取る」にすり替わります。さらには、「(病状が良くなることで)失うはずの権利を勝ち取り続ける」ことを目指すようになります。つまり、社労士は、年金の受給を確実にするために、あらゆる手を尽くすわけです。社労士は、権利を勝ち取ること、つまり患者に「障害がある」ことを認めさせることを目指します。その立ち位置は、弁護士と同じです。一方、医師は、病状が良くなる、つまり患者に「障害がなくなる」ことを目指します。ゴールが真逆であることを理解する必要があります。(2)一気にもうかる-ハイリターン社労士は、合格率が数%と極めて低い難関資格であるにもかかわらず、その独占業務は社会保険などの手続きの代行や企業の労務管理の作成など極めて限定的です。しかも、社会保険などの手続きについては、代行ソフトが出回っており、独占業務のニーズはますます減ってきています。つまり、「資格貧乏」です。この状況は、弁護士をはじめとする士業全般に言えます。率直に言うと、社労士は、独占業務だけでは「割に合わない」「食えない」資格になりつつあります。一方、もともと独占業務ではない障害年金の相談は、専門知識を駆使することができます。相談費用や着手金を0円として、年金の受給金額の2ヵ月分と遡及請求金額の10%~15%を成功報酬にすると、年金が通らなければ0円ですが、通った場合は1件あたり10万~50万円の高額報酬を一気に手にすることができます。そして、その後の年金の更新のたびに、その患者から相談を受けるようにすれば、事前に数回の相談を受けるだけで毎回高額報酬を手にすることができます。すると、社労士にはどういう心理が沸き起こるでしょうか?2つ目は、一気にもうかるという心理です(ハイリターン)。だからこそ、彼らが作成する「病状報告書」や「診断書原案・訂正案」には、改善した病状や、本人ができることについては一切触れません。よくよく考えると、彼らにとっては当たり前です。病状が良くなってもらっては、年金の権利が得られなくなり、自分たちの収益が減って困るからです。彼らが、患者に「主治医」のように振る舞い、精神科医にしつこく食い下がってくるのも納得がいきます。(3)責任がない-ノーリスク社労士は、病状を「盛る」だけでなく、「足す」こともあります。たとえば、患者が初診から一度も訴えたことがない病状まで、社労士が作成する「病状報告書」には記載されています。そして、その「病状報告書」は、ほかの患者のとも似通っています。まるで、専用のテンプレートが存在するかのように同じ内容が記載されています。また、患者は「社労士の先生から『年金はもらえるはずだ。でも、この診断書ではもらえない』と言われました。ひどいじゃないですか!?」と精神科医に迫ってきます。明らかに吹き込まれています。そして、もし精神科医が診断書を社労士の「訂正案」通りに訂正しないなら、社労士は患者に精神科医を代えるよう薦めます。これは、ほかの精神科医を探して、再チャレンジするためです。この方法は、社労士による指南書にも書かれています。この真の目的は、転医によって、社労士の思い通りになる診断書を手に入れるためです。転医すると、患者は病状を大げさに訴えるようになります。なぜなら、転医の目的が、より重い病状が記載された年金診断書を手に入れるためだからです。しかも、転医後は、初診から社労士がかかわっているので、抜かりないでしょう。もちろん思い通りにならなかった前医の診断書は破棄して無効にします。ここで法律的な疑問です。厳封された年金診断書を開封することは、信書開封罪(刑法133条)に当たらないでしょうか? 社労士が書いた指南書によると、当たらないと主張しています。その理由は、患者がその信書の「特定の受取人」である、患者が費用を負担している、そしてそもそも患者は自分の医療情報を見る権利があるとのことです。これは、法の解釈の間違いで、実際は信書開封罪に当たると考えられます。その理由は、まず、信書の「特定の受取人」は、厳密には提出先の年金事務所です。差出人である精神科医は、そのつもりで信書(診断書)を作成しており、患者を「特定の受取人」と認識していません。患者は信書(診断書)を運ぶだけの役割にすぎず、「特定の受取人」に当たりません。また、患者が負担する費用は、医療情報を信書(診断書)にするため精神科医の労力に当たります。そして、その信書(診断書)は公文書扱いです。費用を負担しているからといって、患者が受け取って自由にして良いものではありません。さらに、確かに患者が自分の医療情報を見る権利はありますが、それは、カルテ開示請求という正当な手続きを踏むことによって可能になります。厳封された封筒を開封することによってではないです。また、厳封する理由について考えてみましょう。社労士が書いた指南書によると、「診断書の内容を本人(患者)が見てショックを受けたり、余計な詮索をされたりすることを(精神科医が)懸念して、患者への配慮(があるから)」とのことです。確かに、そう思う精神科医もいるでしょう。しかし、それは大きな理由ではないです。なぜなら、先ほど触れたように、そもそもカルテ開示請求をすれば、患者は診断書を見ることができるからです。厳封する最大の理由は、診断書の書き換えによる不正の防止です。これは、公文書全般に言える当たり前のことです。年金診断書の原本が「丸裸」で患者に持ち運びされていること事態が、そもそも異常です。社労士は、確信犯的に「精神科医の配慮」などとのすり替えによって、厳封の理由を矮小化して患者に伝え、開封を正当化しています。なぜなら、そうしないと、彼らのビジネスが成り立たなくなってしまうからです。さらに、思い通りにならなかった前医の年金診断書を意図的に破棄して無効にすることは、実際には文書等毀棄罪(刑法258条、刑法259条)に当たると考えられます。このように、患者は社労士にそそのかされるのです。このやり口は、精神科医と患者の信頼関係を揺るがします。なぜ社労士はそこまで手を染めてしまうのでしょうか?3つ目は、責任がないという心理です(ノーリスク)。まず、診断書の内容について責任があるのは、診断書を作成する精神科医です。社労士は、あくまで「相談者」という立ち位置です。精神科医が作成する診断書は公文書扱いになりますが、社労士が作成する「病状報告書」と「診断書原案・訂正案」はあくまで一方的に送り付けた参考資料の扱いになります。また、厳封された診断書を開封したり破棄することについて責任があるのは、その行為をする患者です。社労士は、あくまで「助言者」という立ち位置です。つまり、社労士がやっていることは、違法とまでは言えないです。社労士の立ち位置は、権利を勝ち取る点では弁護士と同じですが、発言や文書に責任がない点では弁護士と違います。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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万引き家族(前編)【年金の財源を食いつぶす!?「障害年金ビジネス」とは?どうすればいいの?】Part 3

精神科医の「ブラックボックス」治は捕まった後に取り調べの刑事にのらりくらりと答えます。信代はいかに自分たちが悪くないかを刑事に切々と語ります。しかし、刑事たちは彼らの矛盾点を突き、思惑をすべて見破っています。ここでまた仮定の話です。治と信代が、社労士の指南のもと、精神科医に年金の診断書の作成を迫った時、精神科医はどうするでしょうか? 刑事と同じことができるでしょうか?最後に、精神科医の「ブラックボックス」を3つに分けてみましょう。(1)確かめようがない-良識年金の等級を決定付けるのは、日常生活能力がどれくらい落ちているかでほぼ決まります。これは、食事管理、清潔管理、金銭管理などの生活面で、どれくらいできないことがあるかで判定されます。ここで、患者が「できないことばかりだ」と言い張り、具体的にできないことを社労士がリストアップした「病状報告書」を持ってきたら、精神科医はどう思うでしょうか?1つ目は、確かめようがないという心理です。身体障害と違って、精神障害は、客観的な検査による根拠が基本的にありません。診断基準は、数値化されておらず、明確になっていません。どうしても、患者の訴えを根拠にするウェートが大きくなります。もちろん、明らかに矛盾した病状は却下できます。しかし、「できない」と言い張る患者に対して、「できる」と精神科医が言い返すには、実際に患者の自宅に精神科医が住み込んで、その様子を確かめるしかありません。また、患者の発言が90%の可能性で虚偽だと思っても、残りの10%で真実の可能性もあります。精神科医が責任を問われるのは、圧倒的に、患者を信じてだまされることよりも、だまされまいとして患者を信じないことです。なぜなら、患者は「弱者」だからです。そして、医師をはじめとする援助職は、基本的に「性善説」のスタンスで仕事をするべきと思われているからです。逆に言えば、これが精神科医の「弱み」です。つまり、良識的な精神科医ほど、なかなか患者の訴えを否定しないです。(2)争いたくない-平和主義精神科医は、どんな患者もどんな状況をも受容する姿勢で診療を行っています。つまり、基本的に患者の味方で、物ごとの白黒をはっきり付けないかかわりを好みます。なぜなら、それが病状を良くするからです。しかし、一方で、急に患者が社労士とタッグを組んで、障害年金を必死にとりにやって来たら、精神科医はどう思うでしょうか?2つ目は、争いたくないという心理です。なぜなら、精神科医は、白黒はっきりさせる刑事ではないからです。もともと味方に徹していただけに、年金の話になると、急に敵対的になるのは、やるせないです。そして、何より、その切り替えが難しいです。また、精神科医は、「心」を扱うだけに、明らかなウソを除いて、ウソっぽく聞こえても、表向きだけでも信じたふりをします(受容)。なぜなら、信頼関係を損ねたくないからです。そして、信頼関係が病状の安定につながるからです。とくに、開業医の場合は、「患者を失いたくない」「悪い噂を立てられたくない」「トラブルを避けたい」という心理もあるでしょう。これは開業医の「泣き所」です。つまり、平和主義の精神科医ほど、なかなか患者の訴えの真偽の白黒を付けないです。(3)時間がない-事なかれ主義精神科医は、ほかの科の医師と比べると、比較的に診療の時間に余裕があります。しかし、カルテをはじめとする書類作成は、ほかの科の医師と比べて、圧倒的に多いです。そんな中、患者と押し問答となり、何度も説明の時間を取られたり、何度も社労士から診断書の書き直しを迫られたら、精神科医はどう思うでしょうか?3つ目は時間がないという心理です。持久戦に持ち込まれると、精神科医は、これ以上時間を取られたくないので、確信犯的に「患者を信じる」という大義名分に逃げてしまうのです。なぜなら、先ほど説明した平和主義は、裏を返せば、事なかれ主義だからです。これでは社労士の粘り勝ちです。とくに、開業医は狙われます。なぜなら、もともと時間がないからです。開業医によっては、最初からスタッフに診断書の作成を任せて、最後にサインをするだけの場合もあります。この状況で、社労士から「診断書原案」が送られてきたら、ありがたくいただき、丸写しさせるでしょう。これは、社労士の「思うつぼ」です。つまり、事なかれ主義の精神科医ほど、患者の訴えを鵜呑みにしてしまいます。「障害年金ビジネス」の問題点は?精神障害年金の不正受給は、不正に年金を手に入れたい患者がいて、それを指南する社労士がいて、それに言いなりになる精神科医がいることで成り立つことが分かりました。これは、もはや「障害年金ビジネス」と呼べるでしょう。「貧困ビジネス」や「自立支援ビジネス」とからくりは同じです。これらが、表向きには「貧困をなくす」「ひきこもりを脱する」と言っておきながら、貧困者を貧困のままに、ひきこもりをひきこもりのままにすることで利益を追求します。これと同じように、「障害年金ビジネス」は、表向きには「障害者の権利を守る」と言っておきながら、障害者を「障害がある」ままにすることで利益を追求しています。このビジネスの問題点を、大きく3つあげてみましょう。(1)結局、患者のためにならない1つ目は、結局、患者のためにならないことです。たとえば、精神科医と患者の信頼関係を揺るがすことはすでに説明しました。これは、精神科医だけでなく、患者にとってもマイナスです。また、精神科医が言いなりにならなければ、その精神科医を代えるよう社労士が薦めることもマイナスです。そして何より、患者は、実は「障害がある」わけではなくなっているのに、「障害がある」ままにされることで、「病気だからしかたない」「障害があるから働かない」などと病人になりきってしまう心理を強め、その状況に甘んじて、リハビリや就労に消極的になることです(シックロール)。また、このビジネスモデルは、「もらえないはずの年金をもらえるようにしてあげますよ(だって精神科医の診断書に働きかけるから)」と患者の欲をあおることですが、実はもう1つあります。それは、「このままではもらえるはずの年金がもらえないかもしれないですよ(だって精神科医の診断書はいい加減だから)」と患者の不安をあおることです。つまり、もともと社労士の介入がなくても、もらえるはずの年金についても、あたかも社労士の介入によって「勝ち取った」という体裁にすれば、「成功報酬」を堂々と受け取ることができます。精神科医が障害年金についての理解や関心が乏しいとの指摘は、社労士による指南書に書かれています。確かに、この指摘は、精神科医が肝に命じるべきことです。しかし、両方とも、患者に揺さぶりをかけるという点では、やはり不適切であり、患者のためになりません。(2)不正で不公平である2つ目は、不正で不公平であることです。これは、当たり前の話になります。たとえば、「障害がある」ふりをする患者は、そうしない患者よりも、毎月6万5千円(基礎年金2級相当)を手にします。「障害がある」よう指南する社労士は、そうしない社労士よりも、1件あたり10万~50万円の高額報酬を手にします。そして、「障害がある」ことに言いなりになる精神科医のクリニックには、そうしない精神科医のクリニックから、不正に年金を手に入れたい患者が流れて増えていきます。これまで、社労士は、インターネットなどで知ってやってきた患者にしか介入してきませんでした。しかし、最近では、社労士が精神科クリニックに直接提携を持ちかけるという話を耳にします。これは、精神科医が年金診断書を希望する患者を社労士に紹介する見返りに、社労士が精神科医に紹介料を支払うというシステムです。そうすることで、社労士はこのビジネスの「取りこぼし」を減らすことができます。精神科医は、年金診断書の作成代行をしてもらえるばかりか、紹介料をもらえます。この提携は、精神科医が虚偽記載のリスクが高まる一方、社労士は「ノーリスクハイリターン」のままになります。これは、社労士にとって新たなビジネスモデルになりうるでしょう。(3)年金の財源を圧迫する現時点で、障害年金の受給者は、老齢年金に比べると、かなり少ないです。ただし、年金の財源が、危ういのは周知の通りです。今後、この「障害年金ビジネス」が広がったら、どうなるでしょうか?3つ目は、年金の財源を圧迫することです。端的に言えば、財源を食いつぶすことです。このビジネスの次のマーケットとして掘り起こされる可能性が高いのは、ひきこもりです。ひきこもりは、それ自体は精神障害とは認められておらず、年金の受給対象ではありません。働いていないとは言っても、日常生活に取り立てて制限はありません。ただし、社労士が指南をすれば、「うつ病」の診断で、2級(毎月6万5千円)が取れるでしょう。精神科医にとって、この「患者」の手ごわい点は、もともと就労していないこと、そして長年自宅にこもっているという状況証拠があることです。それに加えて、初診から、「うつ病」の症状を一貫して訴えられたら、そして実際には内服しないであろう抗うつ薬の処方をその「患者」が希望し続けたら、年金診断書を書かないわけには行かなくなります。つまり、このビジネスで圧倒的に損をするのは、国です。なぜなら、本来ないはずの支出が、「障害がある」ふりをした患者に支払った分(その一部はそれを指南した社労士に間接的に支払われるわけですが)、増えていくからです。また、一方で本当に「障害がある」患者は損をします。なぜなら、本来あるはずの受給金が、社労士に支払った分、減ってしまうからです。果たして、このような状況は、障害年金の制度として成り立つと言えるでしょうか? どうすれば良いの?それでは、一体どうすれば良いでしょうか? 今度は、精神科医、年金制度、社会の3つの立ち位置に分けて、それぞれの取り組みを一緒に考えてみましょう。<< 前のページへ

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第16回 その腹痛、重症?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)発症様式に要注意! 安易に胃腸炎と診断するな!2)お腹が軟らかくても安心するな! 血管病変を見逃すな!3)陥りやすいエラーを知り、常に意識して対応を!【症例】66歳女性。来院当日の就寝前に下腹部痛を自覚した。自宅で様子をみていたが、症状改善せず救急外来を受診。担当した医師は、お腹は軟らかいので消化管穿孔はないと判断し一安心。しかし、痛みの訴えが強いためルートを確保し、アセトアミノフェンを点滴から投与し、まずは腹部単純CT検査をオーダーし、ほかの患者を診ることとしたが…。●搬送時のバイタルサイン意識1/JCS血圧148/92mmHg 脈拍102回/分(整) 呼吸24回/分 SpO298%(RA)体温35.9℃ 瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧、脂質異常症内服薬アムロジピン(商品名:アムロジン)、アトルバスタチン(同:リピトール)腹痛診療は難しい!?腹痛は、救急外来、一般外来どちらでも頻度の高い症候です。ところが、問題なく帰宅とした患者さんが再受診することも珍しくありません。救急外来を受診し、72時間以内に再受診した患者のうち、最も頻度の高い症候が「腹痛」であったと報告されています1)。「心窩部痛で来院して、その後虫垂炎と判明した」「胃腸炎だと思ったら糖尿病ケトアシドーシスだった」「急性膵炎だと思ったらアルコール性ケトアシドーシスだった」など、誰もが経験あるでしょう。さらに、急性心筋梗塞、大動脈解離、腹部大動脈瘤切迫破裂、上腸間膜動脈塞栓症、精巣捻転、女性であれば異所性妊娠や卵巣捻転など、見逃してはならない疾患も複数存在するため、心して診療する必要があります。重篤な腹痛の見極め方救急外来など、発症早期に受診する場において、確定診断するのは簡単ではありませんが、目の前の患者が重篤なのか、緊急性が高いのかを判断することは、意外と難しくありません。危険な疼痛を見逃さないために着目するポイントは、表の6つです。腹痛を例に1つずつ確認していきましょう。表 危険な疼痛を見逃すな ―常に意識すべき6つのこと―1)痛みの訴えが強い場合は要注意!患者さんが痛みを強く訴えている場合には、慎重に対応する必要があります。当たり前のようですが、バイタルサインが安定しているケースで、検査で異常を見いだせない場合は、「大げさだなぁ」と思ってしまいがちです。また、発症早期の場合には検査上、異常がないことはよくあることです。さらに、今回の症例のように、単純CT検査ではなかなか腸管や血管の病変の詳細な評価が困難なことは容易に想像がつくでしょう。初療をしつつ、痛みはなるべく早期に取り除くようにしましょう。苦痛を取り除き、詳細な病歴を聴取し、十分な身体所見をとるのです。鎮痛薬を使用することで診断が遅れることはありません。むしろ適切な判断ができるでしょう2,3)。絞扼性腸閉塞、上腸間膜動脈塞栓症は、単純CTや造影CT検査で異常がなく問題なしと判断され、見逃される典型です。患者さんの訴えを重視し、対応しましょう。2)突然発症の疼痛は要注意!Sudden onsetの病歴はきわめて重要です。腹痛では大動脈解離、上腸間膜動脈閉塞症、腹部大動脈瘤切迫破裂などが代表的です。来院時にバイタルサインや痛みが安定しているようでも、発症様式が“突然”であった場合には、注意する必要があることはあらためて理解しておきましょう。大動脈解離や腹部大動脈瘤切迫破裂では、失神を主訴に来院することもあります。失神は瞬間的な意識消失発作でしたね(第13~15回を参照)。どちらの疾患も裂け止まっていると、バイタルサインも症状も落ち着いているものです。発症様式から具体的な疾患を想起し、意識して所見をとりにいきましょう。鑑別に挙げなければ、血圧の左右差を確認することもないですし、腹部の拍動、さらにはエコーで見るべきところを見忘れてしまいます。3)増強する疼痛は要注意!アセトアミノフェンの静注薬が使用可能となり、来院早期から鎮痛薬を使用することが多くなったのではないでしょうか。患者さんの痛みを早期に取り除くことは、望ましい対応ですが、1つ注意点があります。“鎮痛薬の使用は原則1回まで!”、これを意識しておきましょう。使いやすく投与時間が短い(15分)ため、繰り返し使用したくなりますが、一度使用し効果が乏しい場合には、その時点で“まずい”と判断し、対応する必要があります。もちろん、鎮痛薬使用前に評価は行いますが、同時に複数の患者を診ることが多いのが通常でしょうから、痛みは速やかにとりつつ、効果が乏しければ1時間様子をみるなどせず、次のアクションに移りましょう。絞扼性腸閉塞や上腸間膜動脈閉塞症では、痛みが持続し、増強していきます。時間が経てば誰でも判断可能ですが、その前の状態で拾い上げるためには、「経静脈的な鎮痛薬でも効果が乏しい」ということを意識しておくとよいでしょう。4)非典型的な経過は要注意!腹痛で見逃されやすい代表疾患の1つに虫垂炎があります。発症早期で疑いながらも診断へ至らないことも多いですが、胃腸炎と誤診されることも少なくありません。異所性妊娠も同様に胃腸炎と誤診されやすいことも合わせて覚えておいてください。これを防ぐのは意外と簡単です。胃腸炎の典型例を知ること、これだけでだいぶ違うでしょう。胃腸炎には満たすべき条件が3つ存在します。それが(1)嘔吐・腹痛・下痢の3症状あり、(2)上から下の順に(1)の症状が出現、(3)摂取してからの時間経過が合致、です4)。虫垂炎は心窩部痛→嘔気・嘔吐→右下腹部痛が典型的です。異所性妊娠も腹痛の後に嘔吐を認めることが多いでしょう。その他、腸閉塞や急性膵炎、胆管炎や尿管結石などなど、意識すれば拾い上げられる疾患は多岐にわたります。(3)は中毒との鑑別に有用です。食べた物によって消化管の症状が生じるには最低でも30分、通常数時間のタイムラグが生じます。食事中に、または食べてすぐに嘔吐などの症状を認める場合には、中毒を疑い、混入物などに気を配ったほうがいいでしょう。5)Common is common!腹痛を訴える30代の女性が、顔面に蝶形紅斑様、四肢の関節痛の症状を認めたら何を考えるでしょうか。蝶形紅斑とくれば全身性エリテマトーデス(SLE)と考えがちですが、それ以上に頻度の高い疾患が存在します。それが伝染性紅斑、いわゆる「りんご病」です。疫学は非常に重要であり、それを無視してしまうと、診療は複雑化し、さらに患者は不安をあおられます。頻度の高い疾患の非典型的症状と、頻度の低い疾患の典型的症状は、どちらが遭遇する頻度が高いかといえば、一般的には前者です。今回の例でいえば、伝染性紅斑は成人に起こると、発熱、関節痛がメインに出て、小児で認められるようなレース状皮疹を認める頻度は下がります。子供の間で流行していると、そこから接触時間の長い母親や保育士さんへ感染するのです。それに対して、SLEは名前こそ有名ですが、救急外来でSLEの初発症状に出くわすことはまれです。頻度の高い疾患から考え、対応し、確定できれば、重篤な疾患もルールアウトできるのですから、きちんと“common disease”を理解しておくことは重要なのです。「お子さんの学校で、りんご病流行っていませんか?」「息子さん、最近りんご病にかかりませんでしたか?」と問診し、「YES」と回答があればその時点で診断確定でしょう。抗核抗体をとりあえず提出、膠原病の可能性を患者に伝えてしまうと、患者は不安で仕方なくなってしまうでしょう。腹痛患者に皮疹を認める場合には、網状皮斑(livedo)であれば、ショックと考え焦る必要があります。その他、腹痛に加え関節痛、紫斑を認めれば、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)も考えましょう。6)病歴・身体診察・Vital signsは超重要!病歴(History)、身体診察(Physical)、Vital signs、これらは常に超重要です。Hi-Phy-Vi(ハイ・ファイ・バイ)を軽視し、検査を行うとまず見逃します。意識すべき病歴は前述のとおりであり、ここでは身体診察、Vital signsのポイントをコメントしておきましょう。(1)身体診察診察上、腹膜炎を示唆するカッチカチの腹部所見であれば、悩むことは少ないでしょう。それに対して、本症例のように腹部が軟らかい場合には判断を誤りがちです。漏れているのが消化液の場合(消化管穿孔など)には腹部がカッチカチとなりますが、血液の場合(腹部大動脈瘤切迫破裂や異所性妊娠)には軟らかいままです。腹部が軟らかいのに反跳痛を認める場合には、これらの疾患を積極的に疑い、エコーなど精査を迅速に進めましょう。(2)Vital signs呼吸数、意識にとくに注目しましょう。発熱がないから、頻脈でないから、血圧が保たれているからと、重症度を見誤ることがあります。内服薬の影響、糖尿病・アルコール多飲者・パーキンソン病などでは、自律神経障害の影響などによって、見た目の重症度がマスクされることがあります。呼吸数や意識状態に影響する薬剤を常時内服している人はまれであるため、頻呼吸を認める、意識障害を認める場合には“まずい”サインと認識し、精査を進めましょう。本症例の66歳の女性は、突然発症ではなかったものの、痛みの程度は強く、アセトアミノフェン投与後も症状は大きく変化しませんでした。単純CT検査では明らかな閉塞機転は見いだすことができず、対応に困って研修医から相談があった一例です。エコーでは、初診時に認めなかった少量の腹水を認め、その他腹痛を説明しうる所見が認められなかったため、来院後の経過から「絞扼性腸閉塞の疑い」として外科へコンサルトし緊急手術となりました。検査は以前と比較しオーダーしやすくなりました。しかしそのために、検査で異常を見いだせないと患者の訴えを無視してしまいがちです。Hi-Phy-Viに重きを置き、検査前確率を意識して適切な検査のオーダーと解釈を心掛けましょう。1)Soh CHW, et al. Medicina (Kaunas). 2019;55. pii:E457. doi:10.3390/medicina55080457.2)Ranji SR, et al. JAMA. 2006;296:1764-1774.3)坂本 壮. medicina.2019;56:1620-1623.4)坂本 壮. 見逃せない救急・見逃さない救急. プライマリ・ケア. 2019;4.(in press)

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USMLE Step1、あなどれない基礎医学【臨床留学通信 from NY】第3回

第3回:USMLE Step1、あなどれない基礎医学今回から、USMLEのStepについてそれぞれ具体的な対策に触れていきます。まずはStep1です。この試験は基礎医学からの出題となりますが、その内容は臨床に必要な基礎医学を問うもので、いわゆる医学部低学年で基礎医学の試験を受けるのとは異なる印象でした。ただ、臨床をやりながら英語に興味があって英文の医学雑誌が読めたとしても、基礎医学の英語については馴染みがないのが普通です。そのため、Step1の問題に出てくる英語を逐一覚えていく(というより、問題を解きながら内容と共に頭に入れていく)という点で、Step2 CKとは大きく異なり、労力を要する試験と言えます。さらに私の場合、前述した通り、医学部時代の大部分をテニスに費やしたため、基礎医学の内容が日本語でもよくわかっていませんでした。早い段階で受験を考えていれば、学生のうちにStep1に挑戦する人もいますが、臨床をやりながら受験する際には、その時の忙しさ等も鑑みて、半年以上の時間を割けるタイミングでの受験となります。具体的な試験対策としては、First Aidを一度通読した後、オンライン問題集のUSMLE worldを解き始めるわけですが、1回目は辛うじて理解するのがやっとであり、各セクションの参考書で知識を補完していく形で進めることになると思います。ちなみに、USMLE worldの解説は、かなり丁寧でわかりやすいです。以下に私が使用した参考書を列挙します。Behavioral scienceこの分野は日本にはなく、Board Review Series (BRS Behavioral Science)を一読しました。Biochemistry配点が高いとされるBiochemistryについては、Lippincottで勉強はしましたが、通読はハードルが高く、わからないところは問題を解きながらその都度つぶしていくのがいいと思います。単語を覚えるのにも苦労しました。Microbiology臨床で感染症が得意であれば、さほど難しくはないと思います。日々の臨床で、Bacteria等の分類などを意識するようにしましょう。Lippincottを持ってはいましたが、どんどん問題を解いていくのがいいでしょう。PathologyこちらもBRSを一読しました。そこまで難しくない分野かと思います。Pharmacologyこちらも、薬理学的作用を日頃から意識するようにしておけば、難しくはないと思います。Lippincottを持ってはいましたが、こちらも問題をどんどん解いていくのがいいと思います。その他、physiologyなどの分野に関しては、First AidとUSMLE worldのみで勉強しました。やはり徹底した問題集研究こそが王道!とにもかくにも興味がある人は、教科書から入るのではなく、First Aidをざっと見終わったら、思い切ってUSMLE worldを解いてみるのがいいでしょう。医学部の試験も、専門医の試験も過去問から、と言われている通り、いくら教科書を読み込んでも、すぐさまアウトプットに結びつかないものなのです。Column画像を拡大する先月(9月)は、サンフランシスコでTCTというカテーテルの学会に参加してきました。ポスターではありますが、登壇し、口頭の発表と質問応答をする必要がありました1)。渡米して1年を超えましたが、まだまだ英語力が足りていないのを痛感しました。1)http://www.onlinejacc.org/content/74/13_Supplement/B305

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