サイト内検索|page:893

検索結果 合計:35672件 表示位置:17841 - 17860

17841.

アルツハイマー病を防ぐ変異を持つ症例

 アミロイドβの高度な沈着は見られるが、アルツハイマー病を発症しない…。そんなまれな症例を、米国・ハーバード大学医科大学院のJoseph F. Arboleda-Velasquez氏らが Nature Medicine誌2019年11月号に報告した。今回の発見により、アルツハイマー病の予防や治療に、新たな選択肢がもたらされるかもしれない。 報告された症例は、アルツハイマー病になりやすい変異(E280A プレセニリン-1)を持つ家系から見つかった。対象症例の患者の家系では、軽度認知症を中央値44歳(95%CI:43~45)、認知症を中央値49歳(95%CI:49~50)で発症することが報告されているが、今回の症例は70歳まで軽度認知症を発症しなかった。 アルツハイマー病は、アミロイドβの脳への沈着が引き金となり、タウタンパク質が凝集し、神経細胞死に至ることで発症すると考えられている。著者らは脳画像検査を実施し、所見を確認した。すると、アミロイドβの沈着は非常に高度にもかかわらず、タウタンパク質の凝集や神経変性はあまり見られなかった。 症例のゲノムを調べたところ、プレセニリン-1のほかに、アルツハイマー病との関連が知られるAPOE3タンパク質に変異があった。このAPOE3タンパク質の変異が、アルツハイマー病の発症に関わる糖タンパク質との結合を阻害することも突き止められた。 これらの結果から、APOE3タンパク質の変異によって、APOE3タンパク質と糖タンパク質の結合が阻害されたことで、アミロイドβ沈着が高度でもアルツハイマー病が発症しなかった可能性が示唆された。著者らは、APOEタンパク質の発現抑制や、糖タンパク質の結合部位の調節が、アルツハイマー病の予防や治療に貢献できるのでは、と期待を示している。

17842.

日本人うつ病患者に対するボルチオキセチンの有効性、安全性

 日本において、うつ病は大きな影響を及ぼす疾患である。東京医科大学の井上 猛氏らは、日本人うつ病患者に対する抗うつ薬ボルチオキセチンの有効性および安全性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年11月14日号の報告。 本研究は、再発性うつ病およびMontgomery-Asberg Depression Rating Scale(MADRS)スコア26以上の日本人うつ病患者(20~75歳)を対象とした、8週間の二重盲検プラセボ対照ランダム化第III相試験である。対象患者は、ボルチオキセチン10、20mg群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、ベースラインからのMADRS合計スコアの変化とした。副次的エンドポイントは、MADRSの治療反応と寛解率、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D17)、臨床全般重症度(CGI-S)、臨床全般印象度(CGI-I)、シーハン障害尺度(SDS)の変化とした。認知機能は、Digit Symbol Substitution Test(DSST)スコア、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)スコアを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・MADRS合計スコアは、プラセボ群(161例)と比較し、ボルチオキセチン10mg群(165例)で2.66、ボルチオキセチン20mg群(163例)で3.07の減少が認められた(各々p<0.01)。・MADRSの治療反応と寛解率は、プラセボ群と比較し、ボルチオキセチン10、20mg群で有意な改善が認められた(各々p<0.05)。・ボルチオキセチン10、20mg群では、8週間後のHAM-D17スコア、CGI-Iスコア、SDS合計スコアの有意な改善が認められた。・ボルチオキセチン群では、PDQ-5スコアの有意な改善が認められたが、DSSTスコアでは有意な差は認められなかった。・ボルチオキセチン群の忍容性は、良好であった。 著者らは「日本人うつ病患者に対し、ボルチオキセチン10mg/日および20mg/日による治療は、抗うつ効果が期待でき、8週間にわたる忍容性も良好であった」としている。

17843.

爆発的流行中のエボラ出血熱に、MAb114とREGN-EB3が有効/NEJM

 2018年8月に発生したコンゴ共和国におけるエボラウイルス病(EVD)の爆発的流行(outbreak)中に行われた治療において、MAb114とREGN-EB3はいずれも、ZMappに比べ死亡率が有意に低かったことが、同国Institut National de Recherche BiomedicaleのSabue Mulangu氏らが行ったPALM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月27日号に掲載された。2018年8月、同国北キブ州とイトゥリ州において、同国で10回目のEVDの爆発的流行が発生し、2番目に大きな規模に達した。EVDの実験的な治療法がいくつか開発されており、最も有望な治療法に関する無作為化対照比較試験の実施が求められていた。爆発的流行中に4薬を比較する無作為化試験 研究グループは、2018年8月のコンゴ共和国におけるEVDの爆発的流行中に、4つの治療薬を比較する無作為化試験を行った(米国国立アレルギー・感染症研究所[NIAID]などの助成による)。 対象は、年齢を問わず、RT-PCR法でエボラウイルス(EBOV)の核タンパク質RNAが陽性の患者であった。妊婦も含まれ、母親のEVDが確認されている場合は、生後7日以内の新生児も含まれた。 全例が標準治療を受け、ZMapp(3種類のモノクローナル抗体製剤、対照)、remdesivir(抗ウイルス薬)、MAb114(1種類のモノクローナル抗体製剤)、REGN-EB3(3種類のモノクローナル抗体製剤)のいずれかを静脈内投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。REGN-EB3群は、プロトコルの後期のバージョンで加えられたため、ZMapp群のうちREGN-EB3群の登録開始以降に登録された患者(ZMapp群サブグループ)と比較した。 主要エンドポイントは、28日の時点での死亡とした。28日死亡率:MAb114(35.1%)vs.REGN-EB3(33.5%)vs.ZMapp(49.7%) 患者登録は、2018年11月20日に開始された。681例が登録された2019年8月9日の時点で、データ安全性監視委員会は499例のデータの中間解析を行った。その結果、死亡率に関して、MAb114群とREGN-EB3群は、ZMapp群とremdesivir群よりも優れたため、同委員会はZMapp群とremdesivir群への割付を終了するよう勧告を行った。 673例(平均年齢 28.8±17.6歳、女性 55.6%)が、今回の解析の対象となった。ZMapp群に169例、remdesivir群に175例、MAb114群に174例、REGN-EB3群には155例が割り付けられた。ZMappサブグループは154例だった。 28日死亡率は、MAb114群が35.1%(61/174例)と、ZMapp群の49.7%(84/169例)に比べ有意に低かった(群間差:-14.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-25.2~-1.7、p=0.007)。また、REGN-EB3群の28日死亡率は33.5%(52/155例)であり、ZMappサブグループの51.3%(79/154例)と比較して、有意に良好であった(-17.8ポイント、-28.9~-2.9、p=0.002)。remdesivir群とZMapp群の差は、3.4ポイント(-7.2~14.0)だった。 RT-PCR測定で最初の陰性結果が示されるまでの期間は、MAb114群(中央値16日)およびREGN-EB3群(15日)が、ZMapp群(27日)よりも短かった。 予後因子の解析では、入院前の有症状期間が長い患者は予後不良であった。症状発現から1日以内に治療施設を受診した患者の死亡率は19%であったが、5日以上を要した患者は47%が死亡した。 また、ベースラインのウイルス量が少ない患者(オッズ比[OR]:0.66、95%CI:0.62~0.71)は予後良好で、血清クレアチニン値が高い患者(1.43、1.31~1.56)、AST値が高い患者(1.15、1.11~1.20)、ALT値が高い患者(1.43、1.33~1.54)は予後が不良であった。 重篤な有害事象が3例(いずれも死亡)で4件認められ、いずれも試験薬に関連する可能性があると判定された。 著者は、「EVDの爆発的流行中にも、科学的で倫理的に健全な臨床研究の実施は可能であり、爆発的流行への対応に関する情報を得るのに役立つ可能性がある」としている。

17844.

FLAURA試験における日本人肺がん患者のOS事後解析/日本肺学会

 オシメルチニブによるEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療を評価するFLAURA試験では、全集団における、無増悪生存期間(PFS)および全生存(OS)の有意な改善(それぞれHR:0.46、p<0.001、HR:0.80、p=0.046)が報告されている。日本人患者においても主要評価項目であるPFSでオシメルチニブに良好な結果が報告されている(HR:0.61、p=0.0456)。2019年12月に開催された、第60回日本肺学会学術大会では、副次評価項目であるOSの探索的事後解析の結果が、四国がんセンター野上 尚之氏により報告された。FLAURA試験での日本人患者のOS中央値はオシメルチニブ群39.3ヵ月vs.対照群未達(HR:1.390) 日本人患者の無作為割り付けは、オシメルチニブ群65例、第1世代EGFR-TKI群(以下、対照群、すべてゲフィチニブ)55例であった。患者背景はほぼ同等であったが、PS0の割合、診断時Stage I/IIの患者の割合が対照群に多いなど、事後解析のため一部群間差があった。 FLAURA試験の日本人患者におけるOSの探索的事後解析の主な結果は以下のとおり。・FLAURA試験でのアジア人のOS中央値はオシメルチニブ群37.1ヵ月に対し、対照群35.8ヵ月であった(HR:0.995、95%CI:0.752~1.319)。・日本人を除くアジア人のOS中央値はオシメルチニブ群34.5ヵ月に対し、対照群29.7ヵ月であった(HR:0.89、95%CI:0.64~1.24)。・日本人患者のOS中央値はオシメルチニブ群39.3ヵ月に対し、対照群未達と、対照群で良好であった(HR:1.390、95%CI:0.8259~2.3381)。カプランマイヤー曲線は27ヵ月付近で逆転していた。・FLAURA試験治療継続中の患者はオシメルチニブ群17%、対照群5%であった。・オシメルチニブ群で後治療を受けた患者は62%(そのうち63%が化学療法、35%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI)、対照群で後治療を受けた患者は71%(そのうち49%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、31%がオシメルチニブ)であり、オシメルチニブ群は後治療でEGFR-TKI関連レジメンの頻度が低かった。・有害事象(AE)により投与中止となった患者の後治療をみると、オシメルチニブ群では46%が化学療法、54%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、対照群では93%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、7%がオシメルチニブであった。・病勢進行(PD)により投与中止となった患者の後治療をみると、オシメルチニブ群では73%が化学療法、15%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、対照群では33%が化学療法、46%がオシメルチニブ、21%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKIであった。・日本人患者での安全性プロファイルは従来の報告と一貫していた。Grade3以上のAEはオシメルチニブ群32%、対照群49%で、その頻度は全集団より高かった。

17845.

FDA、非扁平上皮NSCLCの初期治療にアテゾリズマブ+化学療法を承認/Roche

 Roche社は、2019年12月4日、米国食品医薬品局(FDA)が、EGFRまたはALK遺伝子異常を伴わない非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の初期治療に対して、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用を承認したことを発表した。 今回の承認は、化学療法未治療のIV期非扁平上皮NSCLC患者を対象に、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)単独を比較した第III相IMpower130試験の結果に基づいている。IMpower130試験において、アテゾリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して有意に全生存期間(OS)を延長することが示された(OS中央値:18.6対13.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.64~0.99、p=0.0384)。また、無増悪生存(PFS)のリスクも化学療法単独と比較して有意に低減した(PFS中央値:7.2対6.5ヵ月、HR:0.75、95%CI:0.63~0.91、p=0.0024)。 アテゾリズマブと化学療法の併用の安全性は、個々の薬剤の既知の安全性プロファイルと一致しており、併用による新しい安全性シグナルは確認されなかった。Grade3/4の治療関連有害事象は、化学療法単独群では60.3%、アテゾリズマブ・化学療法併用群では73.2%で報告された。

17846.

一発診断

第1回 歩くと足がしびれる70歳男性第2回 右季肋部に圧痛がある26歳女性第3回 左胸に突き刺すような痛みの18歳男性第4回 腹部膨満感を訴える寝たきりの80歳男性第5回 右第3指の痛みとしびれを訴える52歳女性第6回 両側の手足に皮疹、むくみ、関節痛を訴える28歳女性第7回 左下腿に腫れと痛みがある74歳男性第8回 激しい胸痛を訴える28歳女性第9回 頭頂部に針で刺されるような痛みを訴える36歳女性第10回 39℃の発熱と右頸部に痛みと腫脹がある33歳男性第11回 突然真っ赤な下血を認めた寝たきりの80歳男性第12回 両手足のむくみ・かゆみと膝関節痛の26歳女性第13回 股関節痛のため跛行の6歳男児第14回 右膝に思い当たらないあざができた30歳女性第15回 体動で悪化する右胸の痛みを訴える50歳男性 人気書籍「プライマリ・ケアの現場で役立つ 一発診断100」「プライマリ・ケアの現場で役立つ もっと!一発診断100」を映像化!番組では、まず、症例を提示します。そこに示された症状、所見などから一発診断してみてください。その後、その診断は正しかったのか、どのようなテクニックでその診断に素早くたどり着けるのか、そしてその疾患の関連知識などを確認し、一発診断のスキルを磨いていきましょう!今シリーズでは30症例を厳選!さあ、あなたは閃けるか!該当書籍は以下でご確認ください。amazon購入リンクはこちら ↓【プライマリ・ケアの現場で役立つ 一発診断100】【もっと! 一発診断100】【プライマリ・ケアの現場で役立つ さらに!一発診断100】 ←新作!第1回 歩くと足がしびれる70歳男性今回取り上げるのは、「健診で血圧と血糖値が高いと指摘された50歳男性」「歩くと足がしびれる70歳男性」の2症例。さあ、あなたの一発診断は?第2回 右季肋部に圧痛がある26歳女性今回は「3年以上前から左下腹部痛が続く70歳男性」と「数日前から右季肋部痛が続く26歳女性」の2症例。痛みを訴える患者の数ある所見の中からどこに注目すれば、一発診断を下すことができるのか。第3回 左胸に突き刺すような痛みの18歳男性今回は「手のこわばりと痛み、両手両足背のむくみを訴える72歳男性」「左胸に突き刺すような痛みを訴える18歳男性」の2症例。これらの症例で注目すべき所見は何か?そしてその診断は?第4回 腹部膨満感を訴える寝たきりの80歳男性今回は「腹部膨満感を訴える寝たきりの80歳男性」「咳がおさまらない34歳女性」の2症例を取り上げます。画像や病歴聴取、身体診察を行ったうえで、診断に必要な情報はなにか?一緒に考えてみましょう。第5回 右第3指の痛みとしびれを訴える52歳女性今回は、「右第3指の痛みとしびれを訴える52歳女性」と「発熱、ひどい腹痛、軽い嘔気、下痢の28歳女性」の2症例を取り上げます。診断の切り札となる所見に気付くことができるのか。さあ、あなたの一発診断は?第6回 両側の手足に皮疹、むくみ、関節痛を訴える28歳女性今回は「発熱・嘔気・下痢を訴え、眼球結膜に軽度黄染を認める36歳男性」と「両側の手足に皮疹、むくみ、関節痛を訴えるの28歳女性」の2症例。いずれの症例も決め手になるのは「問診」。診断の決め手となる重要な情報をどのように探し出せるのか!第7回 左下腿に腫れと痛みがある74歳男性今回は「サバを食べてから体中が痒くなった75歳男性」と「左下腿に腫れと痛みがある74歳男性」の2症例を取り上げます。診断の決め手は既往歴と現病歴。安易に診断を下さず、しっかりと確認しましょう!第8回 激しい胸痛を訴える28歳女性今回は「激しい胸痛を訴える28歳女性」「左胸に痛みを伴うミミズ腫れがある50歳男性」の2症例を取り上げます。いずれの症例も「胸痛」を訴えています。ただし、心血管系の痛みではなく、体動などで悪化する痛みです。さあ、診断の手がかりはどこにあるのか!第9回 頭頂部に針で刺されるような痛みを訴える36歳女性今回は「頭頂部に針で刺されるような痛みを訴える36歳女性」と「太ももがピリピリとしびれる50歳女性」の2症例。これらの症例で注目すべき所見は何か?そしてその診断の決め手となるポイントは?これらの疾患の治療についても解説します。第10回 39℃の発熱と右頸部に痛みと腫脹がある33歳男性今回の症例は「右横腹が膨らみ、便秘になったと訴える68歳男性」と「39℃の発熱と右頸部に痛みと腫脹がある33歳男性」の2症例。68歳男性の症例は、実は数週間前に罹患した疾患が重要なヒントに!さあ、あなたの一発診断は?第11回 突然真っ赤な下血を認めた寝たきりの80歳男性今回の症例は「突然真っ赤な下血を認めた寝たきりの80歳男性」と「左耳の後ろの痛みを訴える76歳男性」の2症例。病歴聴取、身体診察、画像など、さまざまな情報の中から、どれが診断の決め手となるのか?第12回 両手足のむくみ・かゆみと膝関節痛の26歳女性今回は、「両手足のむくみ・かゆみと膝関節痛の26歳女性」と「部活中に胸痛・呼吸苦が出現した15歳男性」の2症例を取り上げます。さまざまな鑑別疾患が想起されますが、どこが診断の決め手となるのか。そして、その治療についても解説します。さあ、あなたの一発診断は?第13回 股関節痛のため跛行の6歳男児今回は「後頸部痛のため首を回せない48歳女性」と「股関節痛のため跛行の6歳男児」との2症例を取り上げます。症状からある疾患を疑い、画像を撮影。その画像に答えはあるのか?さあ、あなたの下す診断は?第14回 右膝に思い当たらないあざができた30歳女性今回は「膝に思い当たらないあざができた30歳女性」と「嘔気・嘔吐および腹痛を繰り返す26歳女性」の若年女性に関する2症例。ともに、鑑別診断も多く、どのようにして診断に到達できるのか!診断の決め手は?第15回 体動で悪化する右胸の痛みを訴える50歳男性最終回となる今回は、「嘔気・嘔吐と太もものしびれを訴える84歳女性」と「体動で悪化する右胸の痛みを訴える50歳男性」の2症例を一発診断。いずれの症例も身体診察がポイントでとなります。あなたはどのような問診と診察で、この患者を診断できるのか!さあ、一発診断してみてください!

17847.

後期早産・妊娠高血圧腎症妊婦は即時分娩・待機ともに一長一短、新生児の長期予後には注意が必要(解説:前田裕斗氏)-1151

 妊娠高血圧腎症(Pre-eclampsia)を発症した妊婦の至適分娩時期の決定においては、胎児の未熟性と母体合併症(脳血管障害や肝・腎機能障害)のバランスをとる必要に迫られる。34週0日〜妊娠36週6日までのLate-pretermと呼称される時期では胎児臓器が一通りできていることから重症妊娠高血圧腎症の妊婦については即時分娩が望ましいと考えられ、実際に多くの先行文献で確かめられてきた。今回の論文は重症の徴候がない妊娠高血圧腎症(臓器障害がなく血圧が160/110mmHgを上回らない)の妊婦について即時分娩と待機方針を比較したRCTである。主要エンドポイントは母体・新生児ともに合併症の複合アウトカムであり、詳細は別記事を参照されたい。 結果は即時分娩群で有意に母体合併症が少なく(リスク比[RR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.79~0.94)、有意に新生児合併症は多かった(RR:1.26、95%CI:1.08~1.47)。著者らは母体と新生児アウトカムはトレードオフの関係にあり、妊婦との共同意思決定のためにこうした情報を共有すべきだとしている。 この論文を臨床に適用するうえで注意すべき点は2つある。(1)具体的にどんな合併症が増えているのか、(2)母体・新生児の長期予後についての影響はないのか。(1)については、母体合併症では重症域の高血圧、肝機能異常の2つが待機群で有意に上昇している。肝機能異常については、最も重症型であるHELLP症候群の頻度には差がないことから比較的軽度のものであると予測される。これら2つは確かに重症妊娠高血圧腎症の診断基準であるが、生じた時点での即時分娩で臨床的には十分対応可能、短期予後にも大きな問題はない。一方、新生児合併症についても両群の差はほぼ未熟性のみでついており、呼吸障害を含む臓器障害では差がない。呼吸障害についてはサンプルサイズの問題があるため結論は出せないが、即時分娩群で生じる新生児合併症は待機群と比較して重篤なものではない可能性は示唆される。 次に長期予後に目を向けてみよう。重症域の高血圧を短時間経験することや、軽度の肝機能異常が将来母体の予後を左右するかについては不明瞭だ。しかしながら後期早産児ではすでに正期産児と比較して新生児死亡率は高く、神経発達が遅れるリスクが高いという疫学データが出ている。また、出生体重が欧米と比較して低い日本では低出生体重児となるリスクも高く、将来の生活習慣病罹患のリスクも気になるところだ。 以上のことから、短期予後については即時分娩・待機方針ともに一長一短ではあるが、長期予後としてすでに後期早産児の新生児合併症リスクについて判明しているデータがある以上、即時分娩の方針は依然として取りにくいと考えられる。もちろん重症域の高血圧や軽度の肝機能異常を少しでも経験することで母体の将来的な何らかの疾患発症リスクが高まる可能性もあり、この点で長期予後を追跡した研究結果が待たれる。

17848.

ループス腎炎〔LN : lupus nephritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義ループス腎炎(lupus nephritis: LN)は、全身性エリテマトーデス(SLE)患者でみられる腎炎であり、多くは糸球体腎炎の形をとる。蛋白尿や血尿を呈し、ステロイド療法、免疫抑制薬に反応することが多いが、一部の症例では慢性腎不全に進行する。SLEの中では、中枢神経病変と並んで生命予後に影響を及ぼす合併症である。■ 疫学SLEは人口の0.01~0.1%に発症するといわれ、男女比は約1:9で、好発年齢は20~40歳である。そのうち明らかな腎症を来すのは50%程度といわれている。通常の慢性糸球体腎炎では、尿所見や腎機能異常が発見の契機となるが、SLEでは発熱、関節痛や顔面紅斑、検査所見から診断されることが多い。しかし、尿所見や腎機能異常がない段階でも、腎生検を行うと腎炎が発見されることが多く(silent lupus nephritis)、程度の差はあるが、じつはほとんどの症例で腎病変が存在するという報告もある。■ 病因SLEにおける臓器病変は、DNAと抗DNA抗体が結合した免疫複合体が組織沈着するために起こる。しかし、その病因は不明である。LNでは、補体の活性化を介して免疫複合体が腎糸球体に沈着する。■ 症状SLE患者では、発熱、関節痛、皮疹、口腔内潰瘍、脱毛、胸水や心嚢水貯留による呼吸困難などを来すが、LNを合併すると蛋白尿や血尿が認められ、ネフローゼ症候群に進展した場合は、浮腫、高コレステロール血症が認められる。しかし前述のように、まったく尿所見、腎機能異常を示さない症例も存在する。LNが進行すると腎不全に陥ることもある。■ 分類長らくWHO分類が使用されていたが、2004年にInternational Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が採用された1)(表1)。IV型の予後が悪いこと、V型では大量の蛋白尿が認められることなど、基本的にはWHO分類を踏襲している。画像を拡大する■ 予後早期に診断し治療を開始することで、SLEの予後は飛躍的に改善しており、5年生存率は95%を超えている。しかし、LNに焦点を絞ると、2013年の日本透析医学会の統計報告では、新規透析導入患者では、年間258人がLNを原疾患として新規に透析導入となっている。しかも、導入年齢がそれ以前よりも3~4歳ほど高齢化している2)。生命予後のみならず、腎予後の改善が望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)SLEの診断は、1997年に改訂された米国リウマチ学会の分類基準に基づいて行われていた3)。しかし、SLEの治療を行った患者で、この分類ではSLEとならず、米国では保険会社が支払いを行わないという問題が生じ、SLICC(Systemic Lupus lnternational Collaborating Clinics)というグループが、National Institute of Health (NIH)の支援を受けて、より感度の高い分類基準を提案したが4)、特異度は低下しており、慎重に使用すべきと考えられる。この度、米国リウマチ学会、ヨーロッパリウマチ学会合同で、SLE分類基準が改訂されたため、今後はこの分類基準が主に使用されることが予想される(表2)5,6)。日常診療で行われる検査のほかに、抗核抗体、抗二本鎖DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント)を検査する。さらにLNの診断には、尿沈渣、蓄尿をしての蛋白尿の測定や、クレアチニンクリアランス、腎クリアランスなどの腎機能検査を行うが、可能な限り腎生検によって組織的な診断を行う。図に、ISN/RPS分類class IV-G(A)の症例を示す7)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ステロイド1)経口ステロイド0.8~1.0mg/kg/日 程度のプレドニゾロン(PSL)〔商品名:プレドニゾロン、プレドニン〕が使用されることが多いが、とくに抗DNA抗体高値や低補体血症の存在など、疾患活動性が高い場合、ISN/RPS分類のIV型の場合、あるいはネフローゼ症候群を合併した場合などは、1.0mg/kg/日 の十分量を使用する。初期量を4~6週使用し、その後漸減し、維持量に持っていく。維持量については各施設で見解が異なるが、比較的安全な免疫抑制薬であるミゾリビン(商品名:ブレディニン)やタクロリムス(同:プログラフ)の普及により、以前よりも低用量のステロイドでの維持が可能になっているものと考えられる。2)メチルプレドニゾロン(mPSL)パルス療法血清学的な活動性が高く、びまん性の増殖性糸球体腎炎が認められる場合に行われる。長期的な有効性のエビデンスは少なく、またシクロホスファミドパルス療法(IVCY)の方が有効性に優るという報告もあるが、ステロイドの速効性に期待して、急激に腎機能が悪化している症例などに行われる。感染症や大腿骨頭壊死などの副作用も多く、十分な注意が必要である。mPSLパルス療法は各種腎・免疫疾患で行われるが、LNでは1日1gを使用するパルス療法と、500mgを使用するセミパルス療法は同等の効果を示すという報告もある。■ 免疫抑制薬1)シクロホスファミド静注療法(IVCY)1986年に、National Institute of Health(NIH)グループが、LNにおけるIVCYの報告を行ってから、難治性LNの治療として、IVCYは現在まで世界各国で幅広く行われている。NIHレジメンは、シクロホスファミド0.5~1.0g/m2を、月に1回、3~6ヵ月間投与するものであるが、Euro Lupus Nephritis Trial(ELNT)のレジメンは、500mg/日を2週に1回、6回まで投与するものである。シクロホスファミドの経口投与では、不可逆性の無月経が重大な問題であったが、IVCYとすることでかなり減少したとされる。しかし、20代の女性で10人に1人程度の不可逆性無月経が出現するとされており、年齢が上がるとさらにそのリスクは増大する。挙児希望のある場合は、十分なインフォームドコンセントが必要である。長らく保険承認がない状態で使用されていたが、2010年に公知申請が妥当と判断され、同時に保険償還も可能となった。2)アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)LNの治療に海外、国内ともに幅広く使用されているが、シクロホスファミド同様長らく保険承認がない状態で使用されていた。やはり2010年に公知申請が妥当と判断され、同時に保険償還も可能となった。シクロホスファミドに比べ骨髄障害の副作用が少なく、また、妊娠は禁忌となっていたが、腎移植などでの経験から大きな問題はないと考えられ、2018年に禁忌が解除された。3)シクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)“頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合のネフローゼ症候群”の病名で保険適用がある。血中濃度測定が保険適用になっており、6ヵ月以上使用する場合は、トラフ値を100ng/mL程度に設定する。投与の上限量が定められていないので、有効血中濃度が得られやすいことが利点である。トラフ値を測定するには、入院時は内服前の早朝に採血し、外来では受診日だけは内服しないように指導することが必要である。アザチオプリン同様、2018年に妊娠時の使用禁忌が解除された。4)ミゾリビン(同:ブレディニン)1990年にLNの病名で保険適用が追加された。最近は血中濃度を上昇させることの重要性が提唱され、150mgの朝1回投与や、さらに多い量を週に数回使用するパルス療法などが行われているが、「保険で認められている使用法とは異なる」というインフォームドコンセントが必要である。比較的安全な免疫抑制薬であるが、妊娠時の使用は禁忌であることに注意する必要がある。5)タクロリムス(同:プログラフ)LNの病名で保険適用がある。血中濃度測定が保険適用になっており、投与12時間後の濃度(C12)をモニタリングし、10ng/mLを超えないように留意する。しかし、LNでの承認最大用量3mg/日を使用しても、血中濃度が上昇しないことの方が多い。臨床試験において、平均4~5ng/mL(C12)で良好な成績を示したが、5~10ng/mLが至適濃度との報告もある。内服が夕方なので、午前の採血で血中濃度を測定するとC12値が得られる。併用禁忌薬、慎重投与の薬剤、糖尿病の発症や増悪に注意をする。アザチオプリン同様、2018年に妊娠時の使用禁忌が解除された。6)ミコフェノール酸モフェチル(MMF)〔同:セルセプト〕MMFは生体内で速かに加水分解され活性代謝物ミコフェノール酸(MPA)となる、MPAはプリン生合成のde novo 経路の律速酵素であるイノシンモノホスフェイト脱水素酵素を特異的に阻害し、リンパ球の増殖を選択的に抑制することにより免疫抑制作用を発揮する。海外では、ACR(American College of Rheumatology)、EULAR(European League Against Rheumatism)、KDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)LN治療ガイドラインにおいて、活動性LNの寛解導入と寛解維持療法にMMFを第1選択薬の一つとして推奨され、標準薬として使用されている8,9)。わが国では、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において検討された「ループス腎炎」の公知申請について、2015年7月31日の薬事・食品衛生審議会の医薬品第一部会で事前評価が行われ、「公知申請を行っても差し支えない」とされ、保険適用となった。用法・用量は、成人通常、MMFとして1回250~1,000mgを1日2回12時間毎に食後経口投与する。なお年齢、症状により適宜増減するが、1日3,000mgを上限とする。副作用には、感染症、消化器症状、骨髄抑制などがある。また、妊娠時は禁忌であることに注意が必要である。2019年に日本リウマチ学会から発行された、SLEの診療ガイドラインでは、MMFがLNの治療薬として推奨された10)。7)multi-target therapyミゾリビンとタクロリムスの併用療法の有効性が報告されている11,12)。両剤とも十分な血中濃度を確保することが重要な薬剤であるが、単剤での有効血中濃度確保ができないような症例に有効である可能性がある。また、海外を中心にMMFとタクロリムスの併用療法の有効性も報告されている13-15)。■ ACE阻害薬(ACEI)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)LNでの難治性の蛋白尿にACEIやARBが有効であるとの報告がある。筆者らは両者の併用を行い、さらなる有効性を確認している。特に、ループス膜性腎症で免疫抑制療法を行っても、難治性の尿蛋白を呈する症例では試みてもよいのではないかと考えている。4 今後の展望世界的に広く使用されていたシクロホスファミドとアザチオプリンが保険適用となり、使用しやすくなったため、わが国でのエビデンスの構築が望まれる。公知申請で承認されたMMFの効果にも、期待がもたれる。SLEに対する新規治療薬としては、BLysに対するモノクローナル抗体のbelimumabが非腎症SLEに対する有効性が認められFDAの承認を受け、さらにわが国でも使用可能になった。しかし、LNでの有効性についてはいまだ明らかではない。さらに、海外ではSLEの標準的治療薬であるハイドロキシクロロキンもわが国で使用可能になった。LNに対する適応はないが、再燃予防効果やステロイド減量効果が報告されており、期待がもたれる。5 主たる診療科リウマチ科・膠原病内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報全身性エリテマトーデス(難病情報センター)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ACRガイドライン(WILEYのオンラインライブラリー)EULAR/ERA-EDTAリコメンデーション(BMJのライブラリー)KDIGO Clinical Practice Guideline for Glomerulonephritis(International Society of Nephrologyのライブラリー)公的助成情報全身性エリテマトーデス(難病ドットコム)(患者向けの医療情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者と家族の会)参考文献1)Weening JJ, et al. Kidney Int. 2004;65:521-530.2)日本透析医学会統計調査委員会. 図説 わが国の慢性維持透析療法の現況(2013年12月31日現在);日本透析医学会.2014.3)Hochberg MC. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.4)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686. 5)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.6)Aringer M, et al. Arthritis Rheumatol. 2019;71:1400-1412.7)住田孝之. COLOR ATLAS 膠原病・リウマチ 改訂第3版. 診断と治療社;2016.p.30-53.8)Appel GB, et al. J Am Soc Nephrol. 2009;20:1103-1112.9)Dooley MA, et al. N Engl J Med. 2011;365:1886-1895.10)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等 政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班.日本リウマチ学会編. 全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン. 南山堂;2019.11)Kagawa H, et al. Clin Exp Nephrol. 2012;16:760-766.12)Nomura A, et al. Lupus. 2012;21:1444-1449.13)Bao H, et al. J Am Soc Nephrol. 2008;19:2001–2010.14)Ikeuchi H, et al. Mod Rheumatol. 2014;24:618-625.15)Liu Z, et al. Ann Intern Med. 2015;162:18-26.公開履歴初回2013年05月02日更新2019年12月10日

17849.

第17回 本当に過換気症候群?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)過換気症候群の満たすべき条件を知ろう!2)過換気症候群と誤診しやすい疾患を知ろう!3)過換気症候群の対応を知ろう!【症例】24歳女性。仕事中に息が吸えないような感覚に陥り、その後両手の痺れを自覚した。苦しそうにしていたため同僚が心配し、救急要請。病着時にはだいぶ落ち着き症状は改善傾向にあった。担当した研修医は、過換気症候群だったのだろうと判断し、とくに精査せずに帰宅可能と考えたが…。●搬送時のバイタルサイン意識清明血圧122/76mmHg脈拍100回/分(整)呼吸22回/分SpO299%(RA)体温36.0℃瞳孔2.5/2.5mm+/+既往歴虫垂炎(18歳時に手術)内服薬定期内服薬なし過換気症候群の定義と診断基準臨床現場で過換気症候群を疑うことは難しくありません。呼吸回数が非常に多く、それに伴い手足の痺れ、助産師の手などを認めれば、誰もが疑うことでしょう。しかし、過換気だろうと思ったら実は…という経験がある方も少なくないはず。過換気になるには何かしらの理由があるのですから。過換気症候群とは、「代謝的な要求を超える不適切な分時換気量がもたらす呼吸性アルカローシスが、明らかな臓器障害を伴わずに、さまざまな症候をもたらす病態」とされます1)。「明らかな臓器障害を伴わない」ここが大切です。以下、過換気症候群は原発性のものとして話を進めます。確立された診断基準は存在しませんが、臨床症状による診断基準として表を頭に入れておくとよいでしょう。「(2)自然に、または何らかの処置による症状の急速な改善」、「(3)過換気を生じる器質的疾患の除外」の2点からもわかるように、救急外来など初療の際に、比較的速やかに症状が改善すること、その原因が過換気症候群以外に存在しないことを確認する必要があるのです2)。表 過換気症候群の診断画像を拡大する過換気症候群の疫学どのような患者さんが過換気症候群になるのでしょうか。これは、みなさんが現場で感じていることだと思いますが、女性に多く、年齢は20歳代が最多、平均36.5歳といわれ、高齢者初発はまれです3)。約50%に精神疾患があり、パニック障害の方が最多です。3人に1人には過換気症候群の既往があります3)。過換気症候群の症状とバイタルサイン主訴では不安、恐怖が最多、その他、痺れなどの感覚異常やめまいを訴えます。胸痛を訴えることもありますが、それのみで来院することはまれです。バイタルサインは、呼吸数の増加以外に頻脈や意識障害を認めることもありますが、速やかに改善します。改善しない場合や、意識消失を認める場合には、二次性を考え精査するようにしましょう。呼吸を促し、止めることができれば過換気症候群の可能性が高いとされます。二次性ではない、原発性の過換気症候群であれば、通常SpO2は95%を切ることはありません。成人であればほぼ100%です。過換気症候群の検査来院時に症状が治まっていれば、検査不要なことも多いですが、症状が残存している場合には、血液ガスがもっともらしさを評価できるでしょう。過換気症候群の患者244例の解析では、pH7.47、pCO228.91mmHg、pO297.41mmHgが平均値でした。当たり前ですが通常酸素化は落ちません。もし、酸素化が低下している場合には、何らかの疾患が原因で呼吸が苦しくなり、過換気様になっていると考えましょう。低酸素血症であれば、呼吸性アルカローシスになりえますから。過換気症候群と誤診されやすい疾患正確なデータはありませんが、代表的な疾患は肺血栓塞栓症です。以前に連載で取り上げましたね(第12回 意外に多い呼吸困難の原因とは?)。見逃さないためのポイントは、高齢者では過換気らしくても、背景に精神疾患や既往がなければ通常起こり得ないと心得ておくこと(ただしゼロではありません)、そして、普段と同様のADLで症状の再燃がないかを確認することです。ストレッチャーや車椅子で安静にしている状態では、呼吸数や酸素化は改善し、酸素は不要であっても、通常どおり歩行してみると、労作時呼吸困難や頻呼吸が再燃する場合には、過換気ではありません。その他、くも膜下出血、妊娠(異所性妊娠)、薬物乱用、急性冠症候群、髄膜炎など多岐にわたりますが、過換気症候群であれば、症状は速やかに改善するはずですから、その後にどうしてそのようになったのか、病歴をきちんと確認すれば見逃しは防げるでしょう。さいごに過換気症候群の患者を診療する際、医療者は陰性感情をぐっとこらえ、きちんと会話をしながら対応しましょう。会話をしながら病歴やバイタルサイン、身体所見を評価していれば、呼吸を何度もする暇を与えず、症状はだんだん落ち着きます。「ゆっくり呼吸しましょう」、「そんなにハァハァしたらつらくなってしまいますよ」と声をかけても、患者さんは「(わかっているよ! でも、できないんだ)」と思っていることでしょう。過換気症候群の予後は良好ですが、時に過換気後無呼吸(post-hyperventilation apnea)といって、呼吸が止まり低酸素になることがあります4)。過換気と判断しても、きちんと症状が改善するまでは経過を確認し、場を離れる場合にはモニタリングなどを怠らないようにしましょう。低酸素を回避すれば基本的に予後は良好です。1)Lewis RA, et al. Bull Eur Physiopathol Respir. 1986;22:201.2)廣川豊ほか. 日胸疾患会誌. 1995;33:940-946.3)Pfortmueller CA, et al. PLoS One. 2015;10:e0129562.4)Munemoto T, et al. BioPsychoSocial Medicine. 2013;7:9.

17850.

10代の市販薬乱用問題で日薬が通知【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第37回

以前のコラムで、10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用しているというセンセーショナルな調査結果をお伝えしました。これは市販の中枢性麻薬性鎮咳薬などを、本来の咳止め目的以外で乱用していることを明らかにしたもので、一般紙でも広く報じられました。乱用者は複数の薬局やドラッグストアを回って購入したり、インターネットサイトなどで購入したりしているのでしょうが、副作用や依存性が大変危惧されます。そこで、この調査結果を受け、日本薬剤師会が各都道府県薬剤師会に通知を発出しました。その中では、以下のような販売に関する対策が求められています。1.複数個購入の防止乱用のおそれのある医薬品は複数個販売しない。来局者の直接手の届かない位置に陳列する。または、陳列は空箱、商品カードで対応する。2.頻回購入の防止乱用のおそれのある医薬品を販売する場合は、要指導医薬品・第一類医薬品等の販売記録に記入するとともに、薬局および店舗内での情報連携・販売管理を徹底する。3.複数薬局および店舗での購入防止乱用のおそれのある医薬品の販売を行う際には、他薬局や他店舗での購入状況、保有状況を確認し、その内容を販売記録に記載する。購入状況に応じて、適切な指導等を行う。4.若年者への不適切な販売の防止乱用の事例が多いとされる若年者には、氏名・年齢を身分証明書で確認し、必要に応じて販売しない。その旨を薬局および店舗内に掲示する。「濫用等のおそれのある医薬品の取扱いについて(お願い)」(2019年11月20日付 日本薬剤師会発)より抜粋対応としては、「まさにそのとおり!」という感じではあるのですが、この通知には具体的な商品名の記載はありません。乱用のおそれのある成分としては、エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち内用液剤に限る)の6成分が挙げられています。皆さんの薬局で扱っている一般用医薬品にこれらの成分が含まれているものがあるかどうかは、各店舗で確認する必要があります。通知まで出したのに市販薬を用いた若年層の薬物依存患者がさらに増えたとなったら、それはもう薬局や薬剤師は何をしていたのかと責められても仕方ありません。この対策をどのように運用していくのか考え、薬事の門番として毅然とした態度で対応することが求められています。濫用等のおそれのある医薬品の取扱いについて(お願い)

17851.

コーヒーや紅茶、牛乳など飲料別の胃食道逆流リスク~初の前向き研究

 胸焼けなどの胃食道逆流症状を軽減するために、コーヒーや紅茶、炭酸入り飲料を避けることが推奨されるが、この推奨をサポートする前向き研究データはなかった。今回、米国マサチューセッツ総合病院のRaaj S. Mehta氏らが、前向き研究のNurses' Health Study IIで検討した結果、コーヒーや紅茶、炭酸入り飲料の摂取により胃食道逆流症状のリスクが26~34%増加し、水や牛乳、ジュースの摂取ではリスク増加がみられないことが示された。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年11月28日号に掲載。胃食道逆流症状のハザード比はコーヒーで1.34、紅茶で1.26 著者らは、Nurses' Health Study IIで「習慣的な胃食道逆流症状がない」「がんではない」「プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬を服用していない」の条件を満たした42〜62歳の女性4万8,308人のデータを収集した。飲料摂取と胃食道逆流症状リスクとの関連は多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。 コーヒーや紅茶、牛乳などの飲料摂取と胃食道逆流症状との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・26万2,641人年の追跡期間中に、胃食道逆流症状を週1回以上報告した7,961人の女性を特定した。・多変量調整後、各飲料について摂取量が最も多い女性(1日6杯以上)の最も少ない女性(1日0杯)に対する胃食道逆流症状のハザード比(HR)は、コーヒーで1.34 (95%CI:1.13~ 1.59、傾向のp<0.0001)、紅茶で1.26(95%CI:1.03~1.55、傾向のp<0.001)、炭酸入り飲料で1.29(95%CI:1.05~1.58、傾向のp<0.0001)であった。・カフェインの有無で層別化しても同様の結果が得られた。・水、牛乳、ジュースの摂取と胃食道逆流症状リスクとの関連は認められなかった。・1日2杯のコーヒー、紅茶、炭酸入り飲料を水に置き換えた場合、胃食道逆流症状のHRはコーヒーで0.96(95%CI:0.92~1.00)、紅茶で0.96(95%CI:0.92~1.00)、炭酸入り飲料で0.92(95%CI:0.89~0.96)であった。

17852.

慢性疼痛の“記憶された痛み”をうまく取り除くには?

 国が主導となって研究チームを発足するくらい、日本人は慢性的な痛みに日々悩まされている。おまけに、なかなか症状改善しない患者がドクターショッピングに陥ることで、国の医療費はますます圧迫されてしまう。そんな負の連鎖を断ち切り、臨床現場での正確な病態把握を求めるべく、昨年、厚生労働省「慢性の痛み対策」研究班と痛み関連の7学会が連携して『慢性疼痛治療ガイドライン』を発刊した。 このガイドライン作成にも携わり、上記研究班で中心的な役割を担っている牛田 享宏氏(愛知医科大学医学部学際的痛みセンター 教授)と伊達 久氏(仙台ペインクリニック院長)が、2019年10月31日に開催されたボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社主催のメディアセミナー「『難治性慢性疼痛』による経済的・社会的影響と日本の『難治性慢性疼痛』治療の最新動向~病診連携モデルと臨床データの構築~」に登壇し、慢性疼痛対策の現状を語った。運動器慢性疼痛における日本の現状 日本での慢性疼痛疫学調査1,2)によると、痛みの訴え部位は腰痛が大半(58.6%)を占め、次いで肩:38.7%、下肢部:37.9%と続き、筋骨格系=運動器に引き起こされることが多い。驚いたことに、その年齢分布を見ると高齢者よりも30~50代の訴えが多い。自己負担の治療費は年間4,000億円以上、患者の15%以上が仕事への影響を抱えていた。牛田氏は「調査結果を見ると、患者の治療満足度は非常に低く、慢性疼痛を訴えた患者の1/3しか満足していない。結果、患者の半数が治療機関を変更している」と、実態を説明した。 また、このような慢性疼痛に悩む患者を精神科医が見た場合、線維筋痛症の有無を問わず約半数に身体表現性障害があり、患者の約95%には何かしらの精神疾患名(気分変調障害、大うつ病など)が付くことが明らかになった3)。慢性疼痛では“痛みは記憶される”ことを理解する このように慢性疼痛患者が精神疾患を抱える理由について、同氏は「痛みは頭で経験しているため」とコメントした。頭では痛み自体を感じる感覚体験と、辛さや苦しさを感じる情動体験が同時に生じているため、国際疼痛学会では痛みを“不快な情動体験”と定義している。これを踏まえて同氏は「なかなか治らない痛みの原因は情動の要素が大きい」と、話した。 治りにくい痛みの代表例として神経性障害疼痛がある。これは体性感覚神経系の損傷や疾患により引き起こされる痛みであり、罹患者数は日本人人口の1~3%に上る。脳梗塞患者の痛みもこれに該当し、患者にはうつや睡眠障害の併発、医療機関受診件数が3件以上になるケースが多くなるなどの特徴がある4)。 このほかにも、通常では痛みを伴わないような微小刺激が疼痛として認識される感覚異常をきたすアロデニアという病態の研究報告5)から、同氏は痛みが記憶されていることを説明。痛みが感覚だけではなく情動によっても悪化することに対し理解を求めた。さらに、「慢性疼痛患者は整形外科と精神科のどちらに行くべきか、診療における境界線によって悩まされている」とし、患者をチームで診るために厚生労働省による集学的痛みセンターが構築されたことを説明した。 集学的痛みセンターとは、医科だけではなく歯科も含めたシステム構築、地域医・在宅医療の連携モデル構築、を目指した厚生労働省政策研究班による事業である。系統的に改善しない患者を分析することで、治療方針やゴールの方向性を検討し、自宅でのコントロールを目的としているが、「慢性疼痛の診断法の確立のために主観的な痛みを客観的に見える化して評価する方法の構築が必要」と、同氏は今後の課題を語った。慢性疼痛患者が患者が痛みを強く感じているのは30分だけ 続いてペインクリニックの視点から、伊達氏が慢性疼痛治療ガイドラインでの推奨内容について解説した。本ガイドラインでは、推奨度を「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示し、エビデンスレベルを「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定している。 たとえば、運動療法の有効性はエビデンスレベル・推奨度が慢性腰痛:1A、変形性膝関節炎:1A、慢性頸部痛:1Bであり、身体を直接動かすことは慢性疼痛に効果的と示されている。同氏はこれらの根拠となる海外文献6,7)を紹介し、「運動療法は筋トレではなく血流改善を促すストレッチが中心なので、痛みがある時こそ有用。ストレッチはドパミン遊離にも影響を及ぼすため、痛みの蔓延化につながる心理社会的要因(不安、抑うつ、破局化思考)も解消される。また、慢性疼痛患者の突発痛は30分すると軽減することが多いため、痛い時にストレッチを行えば薬の依存から脱却できるかもしれない」とコメント。「心理社会的要因からくる痛みには認知行動療法が有効とされ、マインドフルネスなどの導入もガイドラインでは推奨(1A)している。しかし、現時点で保険適用外のため、診療報酬に対する要望を複数の学会が行っている」と、補足した。 最後に、痛みを直接除去する視点からインターベンショナル治療について説明。ガイドラインではパルス高周波神経根ブロック、末梢神経パルス高周波などが推奨度1A、脊髄刺激療法や肩甲上神経パルス高周波などが推奨度1Bに設定されている。なかでも脊髄刺激療法システムはほかの治療法と比較して、中枢感作、痛みのいずれにおいても効果が得られたことから、同氏は「運動療法や認知行動療法に加え、脊髄刺激療法も慢性疼痛治療の1つになり得る」と締めくくった。■参考1)服部政治.ペインクリニック. 2004;25:1541-1551.2)Nakamura M, et al. J Orthop Sci. 2011;16:424-32.3)Miki K, et al. Neuropsychopharmacol Rep. 2018;38:167-174.4)Inoue S, et al. Eur J Pain. 2017;21:727-737.5)Ushida T, et al. Brain Topogr. 2005;18:27-35.6)Goh SL et al, Ann Phys Rehabil Med. 2019 May 21.[Epub ahead of print]7)Gavi MB et al, PLoS One. 2014 mar 20. [Epub ahead of print]

17853.

乳がんになりやすい血液型

 ABO/Rh式血液型と乳がんの関連について、これまでの研究では結果が分かれている。今回、ギリシャ・Democritus University of ThraceのAnastasia Bothou氏らが実施したギリシャ人女性における症例対照研究では、乳がんとA型の女性の間に有意な関連を示すことが報告された。Journal of B.U.ON.誌2019年9-10月号に掲載。 本研究には、2016~19年にギリシャの2つの病院で診察を受けた女性341例が参加した。症例群は乳がん切除術後に病理学的に乳がんと確認された女性202例、対照群は臨床検査と超音波検査/デジタルマンモグラフィで乳がんではなかった女性139例。 血液型の調査の結果、症例群ではA型61.9%、B型5.5%、O型26.7%、AB型5.9%、対照群ではA型31.6%、B型13.7%、O型47.5%、AB型7.2%であった。これらの結果をIBM SPSSソフトウェアを用いて解析したところ、カイ二乗検定とピアソンの相関係数の検定から、乳がんとA型に有意な相関が示され(p<0.01)、A型の女性はB、O、AB型の女性より乳がんリスクが高いことが示された。

17854.

EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブがOS延長/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、オシメルチニブは他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に比べ、全生存(OS)期間を有意に延長することが、米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏らが行った「FLAURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月21日号に掲載された。第3世代の不可逆的EGFR-TKIであるオシメルチニブは、EGFR活性型変異およびEGFR T790M抵抗性変異の双方を選択的に阻害する。本試験の主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間はすでに報告されており、オシメルチニブ群で有意に延長した(18.9ヵ月vs.10.2ヵ月、ハザード比[HR]:0.46、p<0.001)。主な副次評価項目であるOSの結果を報告 本研究は、日本を含む29ヵ国132施設が参加した二重盲検無作為化第III相試験であり、2014年12月~2016年3月の期間に患者の割り付けが行われた(AstraZenecaの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上(日本は20歳以上)、EGFR変異陽性(エクソン19欠失変異、L858R変異)の局所進行または転移を有する未治療のNSCLC患者であった。中枢神経系への転移が確認または疑われる患者も、神経学的に病態が安定している場合は組み入れられた。 被験者は、オシメルチニブ(80mg、1日1回、経口)または他の経口EGFR-TKI(ゲフィチニブ[250mg、1日1回]、エルロチニブ[150mg、1日1回])を投与する群(比較群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行、許容できない毒性または患者の同意が撤回されるまで継続された。比較群は、病勢が進行した場合、非盲検下にオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。死亡リスクが20%低下、アジア人では有意差なし 556例が登録され、オシメルチニブ群に279例、比較群には277例(ゲフィチニブ183例[66%]、エルロチニブ94例[34%])が割り付けられた。治療期間中央値はオシメルチニブ群20.7ヵ月(範囲:0.1~49.8)、比較群11.5ヵ月(範囲:0.0~50.6)であった。データカットオフの時点で、それぞれ22%、5%の患者が治療を継続していた。 データカットオフ時に321例が死亡していた。OSの追跡期間中央値は、オシメルチニブ群35.8ヵ月、比較群27.0ヵ月であった。OS期間中央値は、オシメルチニブ群が38.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:34.5~41.8)と、比較群の31.8ヵ月(26.6~36.0)と比較して有意に延長した(死亡のHR:0.80、95.05%CI:0.64~1.00、p=0.046)。 1年OS率は、オシメルチニブ群が89%、比較群は83%、2年OS率はそれぞれ74%、59%、3年OS率は54%、44%であった。また、試験薬の投与を継続していた患者の割合は、1年時がオシメルチニブ群70%、比較群47%、2年時はそれぞれ42%、16%、3年時は28%、9%であった。 OSのサブグループ解析では、事前に規定されたサブグループのほとんどで、オシメルチニブ群の利益が一貫して大きかった。アジア人(1.00、95CI:0.75~1.32)と非アジア人(0.54、0.38~0.77)は、HRの差が最も大きかった。 治療中止後の1回目の後治療は、オシメルチニブ群が48%、比較群は65%が受けていた。比較群の治療中止例の47%(85/180例)がオシメルチニブの投与を受けており、これは全体では31%(85/277例)に相当した。 Grade3以上の有害事象の発生率は、オシメルチニブ群が42%、比較群は47%であった。重篤な有害事象は両群とも27%で認められた。駆出率低下がオシメルチニブ群14例(5%)、比較群5例(2%)で、心電図上のQT延長がそれぞれ40例(14%)、14例(5%)で報告された。前回の解析以降に、新たな間質性肺疾患および肺臓炎の報告はなかった。致死的有害事象は、オシメルチニブ群9例(3%)、比較群10例(4%)に認められ、このうち担当医が治療関連と判定したのはそれぞれ0例、2例だった。 著者は、「比較群の約3分の1が、オシメルチニブへクロスオーバーしたにもかかわらず、オシメルチニブ群でOS期間中央値が6.8ヵ月延長し、死亡リスクが20%低下した。また、治療期間はオシメルチニブ群のほうが長かったにもかかわらず、安全性プロファイルは両群でほぼ同等であった」としている。

17855.

治療抵抗性統合失調症患者の特徴や薬物療法

 統合失調症患者では、抗精神病薬治療に対する反応が弱いまたは無反応で、陽性症状が持続するケースが見受けられる。米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、米国における治療抵抗性統合失調症(TRS)患者の人口統計、症状、治療歴、治療選択肢に影響を及ぼす要因について検討を行った。BMC Psychiatry誌2019年11月14日号の報告。 精神科医204人を対象にオンライン調査を行った。医師は、TRS患者2例および非TRS患者1例を自己選択し、患者情報を記入した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のうち、TRSの割合は29.5%と回答された。・TRS患者408例は、非TRS患者204例と比較し、以下の特徴が認められた。 ●失業率が高い(74.5% vs.45.1%、p<0.001) ●1回以上の入院歴(93.4% vs.74.0%、p<0.001) ●肥満を含む身体的併存疾患を有する(40.2% vs.23.5%、p<0.001) ●うつ病併存(38.7% vs.25.0%、p=0.001)・TRS患者は精神症状がより頻繁かつ重度であり、社会的および機能的な影響が認められた。・長期予後を改善させるために最も重要な要因は、陽性症状のうち幻覚、妄想を改善させることであった。・TRSに対するクロザピン単独療法は15.9%であったが、これはTRSを治療する10種類の選択肢のうち、5番目であった。・通常、クロザピン開始または抗精神病薬切り替え前に、現治療薬の増量または他の抗精神病薬の併用が行われていた。・抗精神病薬の切り替え理由は、現治療薬の有効性不十分(71.4% vs.54.3%、p<0.001)および忍容性不十分(34.4% vs.38.4%、p=0.22)であった。・TRSの治療切り替えにつながる症状は、幻覚行動の持続であった(63.9% vs.37.1%、p<0.001)。 著者らは「TRS患者は、一般的に抗精神病薬の増量や併用により対処されることが多く、唯一の承認薬であるクロザピン使用の優先順位は、5番目であった。抗精神病薬に治療反応が認められないTRS患者に対する新たな治療法が求められる」としている。

17856.

低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は周産期予後を改善せず(解説:前田裕斗氏)-1152

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期にルーチンで超音波検査を行うことで重度有害周産期アウトカムを減少できるかどうかをみたRCTである。研究理解のためにはまず日本との違いを押さえることが必要だ。本研究の通常診療群では毎回子宮底長測定のみを行い、臨床的に必要と判断された場合のみ超音波検査を行い、介入群では28~30週、34~36週の間に1回ずつ計2回の超音波検査を追加している。一方日本では28~36週まで2週間ごと、37週以降は1週間ごとに健診を行う。健診ごとに毎回超音波検査を行う施設も多い。健診回数や毎回超音波検査が有害アウトカムを減らす確固たるエビデンスはないが、4回を下回る健診回数では周産期死亡率が増えるとコクランのSystematic Reviewでは報告されている。 結果は介入群では出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率は高いが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結び付かなかった。著者らは考察で今回の結果を説明しうる可能性について複数挙げているが、なかでもSGA胎児の中で健康な小さいだけの胎児と病的な発育不全を見分ける方法が確立されていないことは大きいだろう。もちろん、低リスク患者ではそもそも病的な発育不全の頻度が低いことも有害アウトカムの減少を認めなかった一因である。10パーセンタイルを下回る/上回ることのない限り胎児推定体重によって分娩時のマネジメントはさほど変わらない。今回の研究結果で認めた分娩誘発やSGAの診断(周産期アウトカムの改善を伴わない)の増加による母体へのストレスを考えれば、妊娠第3期でのルーチン超音波検査は不要とする考えもあるだろう。 一方日本の現状に照らしてみれば、今回の研究結果を活かすにはいくつか問題がある。まず外的妥当性の問題がある。参加者の平均年齢が31歳であるため、より高齢妊娠の割合が高い施設には適応し難い。さらに日本は欧米と比べ出生体重が小さいため、より低出生体重児の検出が求められる可能性もある。次に、実務上の問題として現在日本ではほぼ毎回か、隔週で超音波検査を行う施設がほとんどであるため、他施設と比較されることになる超音波検査をルーチンで使用しないという方針は実質取りえない。 本研究の結果を日本で活かすとすれば、健診の一部を助産師による外来とする、超音波検査での評価を毎回でなく1回おきにするなどで健診による医療者負担を軽減することが挙げられる。有害な周産期アウトカムを増やさず、医療者負担を軽減できればハイリスク症例へ割く時間を増やすことや持続可能な周産期医療の達成にもつながる。さらに、今後分娩施設の集約化に伴い地域によっては助産師が主体的に分娩を管理する必要が出てくる可能性もあるが、その際の安全性を支持した論文ともいえるだろう。しかし、本研究は自宅や助産施設での分娩がほとんどを占めるオランダからの論文であり、あくまで訓練を受けた助産師による管理、そして必要があれば超音波検査を行うという前提があることに注意が必要だ。

17857.

第20回 カプランマイヤー法を用いない生存曲線はあるのか?【統計のそこが知りたい!】

第20回 カプランマイヤー法を用いない生存曲線はあるのか?生存率の分析の手法としてよく用いられているのは、カプランマイヤー(Kaplan-Meier)法ですが、他の分析の手法はないのでしょうか。カプランマイヤー法以外の手法として「直接法」があります。■被験者全員を網羅する直接法仮に3年後の生存率を算出するには、本来、薬剤を投与した患者全員について、3年後の生死を把握することができればベストです。たとえば、A薬の臨床試験で観察開始日から3年が経過した症例のみを集計対象とし、その中の生存患者の割合を求めるなどのケースでは、A薬を投与した患者全員を3年間追跡すればよいのです。このような方法を「直接法」といいます。つまり、直接法により3年生存率を計算する場合は、開始日から3年が経過した症例のみを集計対象とし、その中の生存患者の割合を求めます。集計対象者の中に中途打ち切りがあると、生存率の評価が困難になります。中途打ち切りとなった理由が、患者の予後に影響する場合、それを集計対象から除外して計算すると、偏った生存率を導くことになります。真の生存率は、中途打ち切りを全員生存とみなした値と、全員死亡とみなした値の間とみなさなければなりません。しかし、実際の臨床試験では、このように患者さんをきちんとエントリーし、フォローすることはほとんどできません。■症例数が多いときには生命保険数理法という方法もあった直接法のほかにも、中途打ち切り例も集計対象に含めることのできる実測生存率の計算方法の1つとして「生命保険数理法」という手法もあります。以前は、症例数が多いときには生命保険数理法、少ないときにはカプランマイヤー法が推奨されていました。しかし、現在ではコンピュータの集計機能も著しく向上し、症例数が何万件あっても、カプランマイヤー法で簡単に計算することができてしまいます。統計学的にもカプランマイヤー法のほうが優れている点から、今ではカプランマイヤー法を用いることが推奨されています。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション1 生存率を算出する方法第4回 ギモンを解決!一問一答質問4 カプランマイヤー法では、なぜ経時的に症例数が減少するのか?

17858.

第34回 「Q波探し」の実践訓練~めざせ“名探偵”~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第34回:「Q波探し」の実践訓練~めざせ“名探偵”~“壊死して機能しなくなった心筋の存在を示唆する心電図波形”と言えば「異常Q波」であり、前回は12誘導を「V1~V3」と「それ以外」に分けて診断する手法を学びました。今回はDr.ヒロが用意した2症例を用いて、その知識が定着しているかを確認してみましょう。早速、チャレンジ!症例提示174歳、男性。糖尿病と高血圧症に対し内服加療中である。心筋梗塞の既往があり、何度かカテーテル治療(PCI)を受けている。以下に外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)で「異常Q波」を指摘せよ。また、心筋梗塞はどこの部位で発生したか?解答はこちら異常Q波:I、aVL、(V1)V2~V4梗塞部位:(左室)前壁、前壁中隔、高位側壁解説はこちら心電図(図1)を見ると、前壁誘導(V1~V4)の「ST上昇」と「QS型」(QS complex)が目を引くでしょう。それだけに目を奪われたら“半人前”ですよ。Dr.ヒロ流の語呂合わせ(第1回)では、“クルッと”の“ク”が「異常Q波」を抽出するプロセスです。前回は「V1~V3」と「それ以外」で読むことをお伝えしましたよね。「それ以外」では、肢誘導を上からI→II→III、そして、aVRは除外してaVL、aVF、そして右方に目を移して胸部誘導の下半分(V4→V5→V6)を読んで、初めてコンプリートです。『“ジグザグ運動”とほとんど同じだから、ST変化と同時にチェックしたら一気にできるなぁ』そう思う方、ブラボーです。“慣れ”もさることながら、Dr.ヒロの世界観にだいぶ染まった証拠です(笑)。“「異常Q波」を拾い出そう! 周囲を見渡すのが吉”さぁ皆さん、今回のメインテーマはズバリ「異常Q波を探せ」。“名探偵”になった気分で「Q波」を探し出し、病変(心筋梗塞)の場所を推測するという練習です。これは実臨床においても非常に役立つテクニックだと思います。前回紹介した「異常Q波」の“最新定義”を覚えていますか? 12誘導を「V1~V3」と「それ以外」に分けて考えるのでした。さらに、前者では「存在」、後者では「幅・深さ」の“1mm基準”(または“1ミリの法則”)、そして隣接誘導での連続性(“お隣ルール”)がキーでしたね。早速、問題の心電図(図1)を眺めてみましょう。まず「V1~V3」から。V2、V3はちゅうちょなく完全に「QS型」ですが、V1はちょびっと「r波」があるように見えます。でも、“一昔前”の「1mmなかったらr波が“ない”のと同じ」の考え方を拝借し、“見なしQ波(QS型)”として悪くないレベルでしょう。つまり、V1~V3すべてに「異常Q波」があるということ。次に「それ以外」の誘導。肢誘導では、I、aVLが陰性波から始まっているので「q波」です。そして、胸部誘導ではV1~V3に連続する形でV4に「QS型」がありますね。aVLは“1mm基準”を満たし、V4もかなり幅広な「QS型」ですから、どちらも文句なく「異常Q波」と考えられます。ではIのほうはどうでしょう? こちらは「幅1mm・深さ1mm」と、ともに微妙だなぁと思いませんか? こういう場合には鉄則があります。■「異常Q波」か悩んだら■視点をずらして同じ誘導の「ST-T変化」の有無を見よボクの流儀では「“周囲”を見渡せ」―これが鉄則です。言うなれば“周囲確認法”でしょうか。工事現場のように、常に周りの様子に気を配ることが大事なので、単視眼的にQ波を眺めていても正解は見えてこないのです。心筋梗塞の“爪痕”的な所見として、「異常Q波」以外に「ST-T変化」が知られています。ST変化は「ST上昇」、T波は「陰性T波」が主なものです。通常は同一の誘導で見られますから、悩ましいQ波でも「ST-T変化」を伴っていたら「異常Q波」なほうにbetするのです。心電図(図1)のaVL同様、I誘導にも「陰性T波」がありますね? そして、この2つはイチエル(I・VL)を構成し、肢誘導界では“お隣”の関係です。I誘導は幅も深さも微妙ですが、陰性T波を伴い、かつ隣接するaVLでのQ波の存在を総合的に考慮すると、“合わせ技”1本で「異常Q波」と判定できるのです! ちなみに、先ほど若干悩んだV1についてもST-T部分がV2~V4に類似しており(ST上昇、2相性[陽性-陰性]T波)、その意味でも異常Q波「あり」とボクは考えます。この単一の波形要素だけで考えず、そのほかの部分も合わせて考えることは、Q波に限らず心電図を読む上で大事だと思っています。“Q波の分布パターンから梗塞部位がわかる!”以上のことから心電図(図1)では、I、aVL、そしてV1~V4に「異常Q波」があると判明しました。次にすべきは「どこの心筋梗塞か?」…つまり“梗塞部位”を考えることです。心電図のスゴイところは、「異常Q波」の分布から、心筋梗塞を起こした部位が推定できることです。次の表1は拙著からの引用です。(表1)異常Q波分布と梗塞部位の関係画像を拡大するここでは、心臓を水平面で切ったCT画像を“宇宙人”が眺めている様子で解説した図を復習しましょう(第17回)。まず、V1~V4誘導には「前壁誘導」という別称がありましたね。細かく言うと、V1は「前壁中隔*」、V2~V4が真の「前壁」なので、この領域の心筋梗塞が疑われます。*:ここでは「前壁+心室中隔」ではなく、「“前側の”心室中隔」という意味。では、I、aVLのほうはどうでしょう? これは、イチエルの組み合わせでエルを含むので、心臓の「左」、すなわち「側壁」と考えて下さい。表を見ると、「高位側壁」(high lateral)となっていて、“上のほう”の「側壁」という意味です。ですから、今回の異常Q波の分布様式からは(前側の)「心室中隔」「前壁」、そして「高位側壁」が梗塞領域だと推定されます。ここまででお腹いっぱいかもしれませんが、最後の最後。われわれ循環器のプロは、ここからもう一歩先の「冠動脈のどこがつまったのか?」(梗塞責任血管)を考えています。「前壁中隔・前壁・高位側壁」のパターンでは、冠動脈閉塞部位は左冠動脈前下行枝の近位部でほぼ決まりです。循環器お得意の“番地”で言うと“6番”(LAD#6)ね。非専門医でこんな事が言えるならば、それはもはや“セミプロ”の証拠です。■心電図診断■洞調律(63/分)異常Q波(I、aVL、[V1]V2~V4)ST上昇(V1~V4)陰性T波(I、aVL、V2~V5)時計回転では、この調子でもう一問やってレクチャーを終わりましょう。症例提示254歳、男性。心筋梗塞の既往あり。虚血性心筋症による慢性心不全でフォロー中。冠動脈造影(CAG)のため入院時検査として行った心電図を示す(図2)。(図2)検査入院時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図2)で「異常Q波」を指摘せよ。また、心筋梗塞はどこの部位で発生したか?解答はこちら異常Q波:II、III、aVF、V5、V6梗塞部位:(左室)下壁、側壁解説はこちらこれも前問とまったく同じ考え方で臨みましょう。「V1~V3」は陽性波から始まっていて「Q波」はないですが、「それ以外」にはたくさんのQ(q)波が…どれが「異常」で、どれが「セーフ」なのでしょう? ここでも幅・深さの“1mm基準”と“周囲確認法”、そして”お隣ルール”をフル活用すれば正解は見えてくるでしょう。“知識の総ざらいをしましょう―Q波の仕分け”この問題で「異常Q波」の知識の総ざらいをして、今回は終わりましょう。心電図(図2)では「V1~V3」にはQ波はなく、「それ以外」では、I、II、III、aVF、V4~V6と、実に7つの誘導でQ(q)波が認められます。こういう時、まずは隣接誘導ごとに仕分けることから始めましょう。「異常Q波」は常にグループで考えていくことが大事です。すると…まずはニサンエフ(II、III、aVF)そしてブイゴロク(V5、V6)に気付くでしょう。残るIとV4は“宙ぶらりん”状態となっています。このうち、V4誘導は“玉虫色”なので注意して下さい。というのも「V1~V4」と「前壁誘導」のメンバーになったり、症例によっては「V4~V6」で「側壁誘導」を形成したりするのです。いるでしょ、こういう人って周りにも(笑)。でも、こういう時に役立つのが“周囲確認法“です。「ST-T変化」はどうでしょうか? V5、V6には「ST低下」と「陰性T波」があるのに、V4にはありません。『ブイゴロクに比べてQ波の幅も深さも軽めだなぁ…これは“除外“と考えよう』そう思えたアナタはボクと気が合います。ではIのほうはどうでしょう? すぐ“お隣”のエル(aVL)にはQ波がないですが、より広い視点でイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)の側壁誘導なら4つ中3つだから「隣接2つ以上」という基準にも該当するかもしれません。でも、やはり決め手は「ST-T変化」です。ST部分は基線上で「陰性T波」もありません。ですから、これは「なし」でいいと思います。単純に「Q波」だけを見ているとわかりませんが、このように考えると、最終的にはII、III、aVF、V5、V6が「異常Q波」で、表1を参考にすると梗塞巣は左室の「下壁」と「側壁」となるでしょうか。ところで、イチエルは「高位側壁」でしたが、ブイゴロクについては“低位”側壁とは言わず、単に「側壁」でOKです。個人的には言ってもいい気がしますが…「側壁」の正式な呼称は“前”や“下”という枕詞が付くため、かなりわかりづらいと思っています。(主に心エコーや核医学[RI]での呼び方で、心電図の世界ではあまりこの言い方は好まれません)なお、閉塞血管についてはマニアックなので簡単に触れるに留めますが、「下壁+側壁」のパターンの責任血管が右冠動脈か左冠動脈回旋枝かを区別するのはなかなか難しいとされます。この方は立派な右冠動脈近位部閉塞による陳旧性心筋梗塞でした。冠動脈の解剖・走行を熟知した人であれば、右冠動脈が高位側壁領域を灌流することはかなり稀と思われますから、その意味でもI誘導のq波は異常「ではない」と言えます。循環器専門医は、このように臨床的にさまざまな洞察を加えて一枚の心電図を眺めているんです。いや、もちろん慣れたら別にたいしたことじゃないんですけどね(笑)。最後はちょっとだけ難解な話もしましたが、“Q波探偵”の推察の基本がわかってもられば十分です。■心電図診断■洞調律(63/分)異常Q波・陰性T波(II、III、aVF、V5、V6)ST上昇(V1~V3)Take-home Message微妙なQ波は、同誘導のST-T変化の有無と隣接誘導の様子から「異常」と言えるか判定する。「異常Q波」の誘導分布から心筋梗塞の部位診断ができる!杉山裕章. 『心電図のみかた・考え方(応用編). 中外医学社;2014.p.80-124.【古都のこと~常照皇寺】就寝前、ベッドで庭園の写真集を見るのがボクのお気に入りの一つ。関西に移住してだいぶと日が経ちましたが、京都の良所は、歴史が育んだ名庭を実際に自分の目で楽しめることだと思います。常照皇寺(右京区)もその一つ。皆さんはこの寺をご存じですか? 周囲の京都人に聞いても「YES」はあまり多くない印象です。そもそも何と読むのでしょう? …正解はジョウショウコウジ*1。京都の庭園を紹介しているたいがいの書籍で、この寺が市内中心から最遠と書かれています。初秋の休日に訪れて最初の感想は、“最果て”かと思うほど山奥にあるなぁ、でした。山門から長い石段を登り、静寂が支配するその空間を進むと、方丈の間の向こう側にお目当ての庭が! 裏山を借景してデザインされた庭の存在感に圧倒され、寂しさの中に見え隠れする荒々しさ・力強さを言葉で表現するのはボクにとって容易ではありません(ぜひとも本物をご覧いただきたい!)。秋の紅葉時期はもちろん、天然記念物の九重桜など、春にも訪れたい“かくれ里”*2です。皆さんも京都の“秘密の山寺”を訪れてみませんか?*1:漢字4文字も珍しいが、詳名は「大雄名山万寿常照皇寺」とさらに長い。臨済宗京都嵯峨天龍寺派に属する。「常照寺」と呼ばれていた時期もある。南北朝の動乱期の貞治元年(1362年)、この地に隠棲した光厳天皇(北朝初代)の開創と伝わる。*2:白洲次郎の妻で随筆家の白洲正子の『かくれ里』にも常照皇寺が登場する。

17859.

第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」

第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」―医師との関わり方で注意している点はありますか?鈴木:医師の性格や関係性によって伝え方は異なりますが、ざっくばらんに話せる先生では、「抗菌薬のターゲットは何にしていますか?」ということから始まり、「それなら抗菌薬はこっちのほうがいいんじゃないですか? なぜなら~」と自分の意見を率直に伝えています。あまり関係性ができていない先生では、「こういう選択肢もあるんですがどう思いますか?」とお伺いを立てるようにしています。あと、顔のわからない関係で話すとうまくいかないので、挨拶に行ったり、抗菌薬の使い方の方針を聞きに行ったりして、知識共有してから疑義照会や処方提案をするようにしています。前医から引き継いだ処方をそのまま継続している医師も多いので、知識共有するのは大切だと思っています。笹川:今の若い子たちは、みんな真面目過ぎてポリファーマシーとかを印籠のように医師にかざして説得しようとしてトラブルになるっていうのはよく聞きますね。山﨑:ポリファーマシーの種々の判断基準は絶対的なものではないのですけどね。それは参考としつつ、患者情報を踏まえてどう考えるかということなのだろうとは思いますが。鈴木:個々の患者さんには当てはまらない判断基準に飛びついて、判断基準で推奨されていないからこの処方はダメだ、という薬剤師は何もわかっていないですよね。笹川:あと、薬剤師のよくない点は白か黒かで判断しようとするところ。灰色のときもあるっていうことを知っていてほしいですね。あいまいなのが嫌でやめる薬剤師もいるそうですが、そのあいまいさを受け入れて楽しむくらいでいいんじゃないでしょうか。山﨑:確かに、論文を読んでいくら調べてもわからないことはわからないんですよ。あいまいなことがあるということがわかるだけでもいいと思います。鈴木:あいまいなことが実は正解だったということもありますよね。そもそもポリファーマシーに行きつく前にワンステップあって、患者さんの基礎疾患などの基本情報を把握するのがベースと考えています。薬歴で患者さんの治療の流れや個別に抱えている問題が見えないままポリファーマシーの話をしても、医師からしたら患者の現病歴や既往歴をどこまで把握して意見してるの? なんの根拠があるの? っていう感じでしょう。基礎疾患などの基本情報を把握する力が必要です。笹川:すぐに薬のことにはいかずに、体の仕組み、生理学とか、解剖学とかから入るのも一手です。解剖学などは医師や看護師の共通言語ですが、薬剤師はその共通言語を知らないまま薬の話をするので医療者の中で浮いてしまうことがあります。医師向けや看護師向けの書籍はとても勉強になりますよ。共通言語を学べばコミュニケーションがうまくいきますので、そのうえで薬の話をするとよいと思います。山﨑:適切に提案できるのであれば、医師の診療報酬上のインセンティブもあるので、積極的に提案したほうがいいでしょうね。ただ、疑義照会に怒る医師に出会ったりして、怖くてできなくなるという話も聞きます。薬剤師の伝え方が悪かったのかもしれませんが、疑義照会が薬剤師の義務だと知らなかったという医師や疑義照会で助かったという経験の少ない医師にもお会いしたことがあります。そういう場合は医師も対応がきつくなるかもしれません。ただ、医師が怖くて疑義照会を避けるという薬剤師と会ったこともありますが、何かあったときに不利益を被るのは患者さんなので、そこは信念をもってやっていただけたらとも思いました。鈴木:患者さんを守らずに自分を守るっていうのはどうなんでしょうね。処方箋枚数とスピード調剤の薬剤師は淘汰される―疑義照会しない理由はほかにもありますか?笹川:私は調剤報酬にも問題があるのではないかと思います。できる薬剤師とできない薬剤師の報酬が同じっていうのは疑問です。できる薬剤師の評価っていうのは難しいので、かかりつけ薬剤師制度でカバーしようとしたのでしょうが、かかりつけに同意すると安くなるほうが良かったのではないかと思います。安いから同意するっていうのもあるかもしれませんが、待ってでもその薬剤師から指導を受けたいと思ってもらえるようになりたいんですよ。報酬が同じだとどうしてもスピード重視になりますよね。質よりも量・スピードを求め過ぎたのでは?山﨑:即座にそうなるというわけではないですが、アマゾンなどECサイトでの薬剤購入が普及したり、遠隔服薬指導や「調剤ハブ」(多店舗の調剤を集約して行うことができる薬局)などが現実化した場合に、スピード勝負だけでほかの要素でファンを獲得できていないと選ばれる理由がなくなってしまいます。笹川:みんな学校を卒業したときは意識が高かったはずです。なのに、置かれた環境がやりがいのある環境ではなかったので心が折れていくのかもしれません。―薬剤師ごとに評価が変わるシステムはできないのでしょうか?山﨑:システム畑の人と冗談交じりで話していたら、何らかの基準をもって良い服薬指導ができる薬剤師のデータが取れるのであれば、できる薬剤師にインセンティブを与える設計ができるのではないかという話題になったことがあります。MRの知人に聞くと、医師は患者さんが離れていかないように一定の競争をしている部分もあるとのことですが、薬剤師は頑張っても一定のパイの中で決まった報酬を得るという構造にあらがいづらいので、優秀な薬剤師が自然に評価され、能力の低い薬剤師は評価が低いという形になりにくい。なので、服薬指導の質やリピーター率などを数値化して、薬剤師の評価設計をしていくというのはアリかもしれません。鈴木:現状はさばいた処方箋の枚数で評価するしかないですからね。これだけ頑張っているのに、頑張っていない薬剤師や薬局と同じ扱いをされたくないですよ。山﨑:きちんと勉強してコミュニケーション能力も高い優秀な薬剤師から不満が出やすい状況は健全ではないですね。鈴木:たとえばの話ですが、重複投薬・相互作用等防止加算の40点は薬剤師の処方提案が評価される点数ですので差をつけられそうかなって思っています。残薬調整は誰でもできますが、この点数は、腎機能を評価して、投与量を調整・中止したり、新しい薬を提案したりするなどしっかりした知識が必要なものなので、もっと区分けしたり、報酬を高くしたりしてもいいと思います。提案した内容をレセプトに記入する必要があれば、それができるようになるために勉強もするでしょうし。いいことやっているのに、現状では残薬調整の30点と10点しか違わないんですよね。またまた感染症領域の話で申し訳ないですけど、患者さんの原因菌を想定した薬剤への処方提案をしてもただの日数調整と同じ点数というのは納得がいかないですよ。重複投薬・相互作用等防止加算は幅広く評価されますが、頑張っている薬剤師が評価される点数になったらいいなと思います。笹川:みんなが頑張っていることを学会などでも発信したら、知らない薬剤師にも広がっていきますし、どんどん知識やデータがたまれば厚生労働省に届く可能性はあると思います。そういう意味でも情報を発信することの重要性を感じます。―最後に若手薬剤師に向けてエールをお願いいたします。笹川:現場で患者さん、そしてその家族、医療者と一緒に悩みましょう。悩んだ数が、薬剤師としてのやりがいです。さあ、一緒に一歩踏み出しましょう。鈴木:目の前にいる患者さんにとってなくてはならない存在になって、患者さんの健康サポートのために惜しまず支援してみませんか? 薬剤師の仕事って、深掘りすればするほど楽しくこなすことができますよ。大学でやってきたことをさらにアップデートしてよりよい薬学的ケアを目指しましょう! 薬剤師のソコジカラを思う存分発揮して、一緒に頑張っていきましょう!山﨑:日々薬局の現場を支援する中で、薬局・薬剤師のポテンシャルや既得権益の枠を越えた職能の広がりを強く感じています。生き生きと働きながら患者さん、ひいては地域に貢献できる舞台はあります。一緒に頑張っていきましょう。

17860.

飲酒・喫煙と家族性乳がんリスクの関連

 飲酒および喫煙は乳がんリスクの増加と関連しているが、家族性乳がんのリスクによってその関連性は変わるのだろうか。今回、米国コロンビア大学のNur Zeinomar氏らが検討したところ、適度な飲酒は、とくにエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの女性において乳がんリスクの増加と関連するが、それは家族性乳がんリスクが低いと予測される女性においてのみであることがわかった。また、家族性乳がんリスクが高く、飲酒する女性では、現在の喫煙が乳がんリスク増加と関連することが示された。Breast Cancer Research誌2019年11月28日号に掲載。 本研究は、Prospective Family Study Cohortを用いて、飲酒、喫煙、乳がんリスクの関連を評価した。多変量Cox比例ハザードモデルを使用して、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定し、家族性リスクプロファイル(familial risk profile:FRP)によって関連性が変わるかどうかを検討した。FRPは、家系ベースのアルゴリズムであるBreast Ovarian Analysis of Disease Incidence and Carrier Estimation Algorithm(BOADICEA)により予測される乳がんの1年発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.4年の間に、1万7,435人の女性のうち1,009人が乳がんを発症した。・喫煙または飲酒と乳がんリスクとの間に、全体として関連は認められなかった(非喫煙者に対する現在喫煙者のHR:1.02、95%CI:0.85~1.23、非常習飲酒者に対する週7杯以上の飲酒者のHR:1.10、95%CI:0.92~1.32)。・FRPの低い女性では、週7杯以上の飲酒者は非常習飲酒者に比べてER陽性乳がんのリスクが増加したが、FRPの高い女性では関連がなかった。例として、FRPの10パーセンタイル(5年BOADICEA:0.15%)の女性の推定HRは1.46(95%CI:1.07~1.99)だが、90パーセンタイル(5年BOADICEA:4.2%)の女性では関連がなかった(HR:1.07、95%CI:0.80~1.44)。・喫煙との関連はFRPによって変わらなかったが、飲酒する女性では喫煙状況についてFRPによる正の乗法的相互作用が認められた(相互作用のp=0.01)。ただし、非常習飲酒者については認められなかった。

検索結果 合計:35672件 表示位置:17841 - 17860