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地政学時代のメンタルヘルス(解説:岡村毅氏)-1171

 現代は地政学の時代などともいわれるが、香港の動乱において住民のメンタルヘルスが悪化しているという報告である。 はじめに私の立場を申し上げると、科学に関していろいろ述べるが、政治に対しては一切述べるつもりはない。なお前提として本論文も政治的には中立で抑制がきいていると思われる。 さて、本論文は住民の長期縦断研究の解析であるが、2014年の反政府デモ(雨傘運動/オキュパイセントラル運動)、2019年の「民主化デモ」と動乱が続き、depressionが5倍に増え、PTSDが戦時にも匹敵するレベルであることが報告されている。また、世界のその他の大都市でも動乱が起きる中で(たとえばパリの黄色いベスト運動)、この研究の科学的価値があるとしている。 この論文を読んでどのように考えるか? これほどまでに住民のメンタルヘルスを破壊する圧政はとんでもないと感じるか、平和が一番なのだからデモはやめようと思うかは、個人の自由である。合理的に考えても理解できない現象が多くなってきており、思考力が試される時代である。いずれにしても考える材料をたくさん与えてくれる論文といえよう。 ここから下は私の意見であるが、本来社会の闇を照らし、見えない人に光を当て、声なき人の声を聴くことも科学の役割であるはずだ。たとえば米国からは、(私の専門である貧困研究との絡みでいうと)アフガニスタンとイラクの退役軍人のホームレスリスクの研究などもなされているし(Metraux S, et al. Am J Public Health. 2013;103 Suppl 2:S255-261.)、欧州に移動したシリアからの難民のメンタルヘルスの研究も多く報告されている。本論文も含めて、こうした現実を厳しく評価する報告を読めば、あなたが自分の頭で考えることができる人であれば、世界の真実をかなり正しく知り、妥当に行動することができるのではないだろうか? 本論文を読んであらためて思ったが、その他大勢のつまらない研究ではなく、現実世界に鋭く迫る研究をしたいものである。

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骨髄異形成症候群〔MDS : myelodysplastic syndromes〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes: MDS)は、造血幹細胞のクローン性の後天的な疾患で、造血細胞(リンパ球を除く)の異形成と呼ばれる形態異常を特徴とする。末梢血ではさまざまな程度の血球減少を来すが、(1)1血球系統以上に10%以上の異形成像が見られる、(2)特徴的な染色体異常を有する、(3)骨髄での芽球比率は20%未満の、いずれかあるいは1つ以上を認めるものと定義される。■ 疫学1)MDSの発症頻度わが国では発病者数は年間に10万人あたり3~10人とされ、患者数は平成10年の厚生労働省の特発性造血障害調査研究班の報告では7,100人で、年齢の中央値は欧米と比較して若干若年層に多く、64歳である。男女比は1.9:1。2)MDSの病型MDSは一般的に骨髄の芽球比率および異形成により分類される(表1、変更点は後述)。わが国での特徴的なところは「単独del(5q)の骨髄異形成症候群」および「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」とWHO分類で定義されている病型が欧米に比べ少ない点である。画像を拡大する■ 病因最近までMDSの原因は不明とされてきたが、ゲノム解析により病型に偏った遺伝子変化が報告されつつあり、たとえば「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」におけるSF3B1やMDSの白血病化に伴うSETBP1の変化が知られつつある。一般的には表2に示すように、エピジェネテイックな変化に関係する遺伝子変化が、MDS発症と深くかかわっていることが知られつつある。また、染色体変化は予後を推定する重要な因子である。画像を拡大する■ 症状血球減少による症状が中心であり、貧血はほぼ必発で、48%は汎血球減少、18%が貧血+血小板減少、17%が貧血+白血球減少、13%は貧血のみである。血球減少により、出血傾向(血小板減少)、易感染(好中球減少)、貧血症状(赤血球減少)がさまざまな程度でみられる。■ 分類MDSの分類は骨髄での芽球比率、環状鉄芽球の頻度および異形成が多血球系統に及ぶか否かにより分類されるが、異形成の頻度は血液専門家によっても判読が異なることがある。単独del(5q)の骨髄異形成症候群は5q-染色体異常による。従来の分類からの名称変更は以下の通りである。従来のWHO-2008からの名称変更点は、RCUDはMDS-SLD(MDS with single lineage dysplasia)、RCMDはMDS-MLD(MDS with multi-lineage dysplasia)、RAEBはMDS-EB(MDS with excess blasts)に変更され、暫定病型として小児不応性血球減少症が設定された。これにより、2008年WHO分類のRCUDの一部はMDS-RSとして判定される例がある(表1、3)。これらのMDS分類とは別に、放射線治療や他の悪性腫瘍などに対する抗がん剤投与後にみられるものは治療関連骨髄系腫瘍として急性骨髄性白血病の分類として扱われる。画像を拡大する■ 予後予後は減少血球数、骨髄での芽球比率、染色体異常の様式による(表4)。なお、簡便にMDS FoundationのHP(http://www.mds-foundation.org/ipss-r-calculator/)にて計算できる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血球減少、とくに貧血がみられた場合にはMDSも念頭に置く。通常、軽度の高色素性大球性貧血を呈し、さまざまな頻度で好中球減少や血小板減少を伴う。MDSが疑われたならば、骨髄穿刺にて血球の異形成像および芽球比率を検討し病型診断を行うとともに(表1)、染色体異常を調べ、予後を検討する。さらに、MDSの診断基準を満たさない血球減少については最近提唱されている分類も参考にする(表5)。従来用いられていたIPSSでは、治療選択に重要な役割を持つことを期待して考案されたが、2012年に提唱されたIPSS-R(表4)では、個々の患者における予後がより詳細に検討できる。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は従来のIPSSによる大まかな治療方針が推奨される。IPSSのLowおよびIntermediate-1は低リスクMDSとして、Intermediate-2およびHighは高リスクMDSの治療が行われる(図1、2)。低リスクMDSにおける造血幹細胞移植術は、反復する感染症や輸血依存の患者が対象となる。治療は従来のIPSSによる大まかな治療方針が推奨される。IPSSのLowおよびIntermediate-1、IPSS-RではVery Low、LowおよびIntermediateは低リスクMDSとして、高リスクMDSはIPSSでIntermediate-2およびHigh、IPSS-RではIntermediate、High、Very Highの分類に基づき治療が行われる(図1、2)。IPSS-R Intermediate に分類された患者については、年齢、performance status、血清フェリチン値、血清LDH値などの追加の予後因子を評価することにより、2つのリスク群のどちらで管理してもよい。低リスクMDSにおける造血幹細胞移植術は、反復する感染症や輸血依存の患者が対象となる。■ 低リスクMDSに対する治療(図1)この群では5q-染色体異常がみられたならば免疫調整薬であるレナリドミド(商品名:レブラミド)が第1選択となる。単独の5q-MDSに対しては貧血の改善は90%以上が期待され、さらに一部の患者では染色体異常の消失を含む寛解が望める。血清エリスロポエチン濃度が500mU/mL 未満の患者ではエリスロポエチン投与も効果が期待される。また、免疫抑制剤のシクロスポリンの有効性も確認されている(保険適用外)。これらの治療に無効で輸血依存の場合は脱メチル化薬であるアザシチジン(同:ビダーザ)も考慮される。低リスク患者の治療目標は輸血依存からの回避である。画像を拡大する■ 高リスクMDSに対する治療(図2)この群の治療では、造血幹細胞移植術の適応となるか(一般的に65歳未満)、強力化学療法が可能であるかにより、治療法が設計される。これら以外および移植後の再発に対してアザシチジンを用いることもある。MDSの輸血依存例では、鉄過剰症の治療として血清フェリチンおよび輸血量を勘案し、腎機能が許す範囲で経口除鉄剤が用いられる。貧血および血小板減少例では、その程度(年齢による違いあり)により適宜輸血療法が行われ、低リスクMDS患者で好中球減少に伴う感染症に対し顆粒球コロニー刺激因子を用いることもある。治験段階として免疫療法であるWT1ワクチン療法が行われているが、HLA抗原が一致しないと用いることができない。高リスク患者の治療目標は白血病移行からの回避(あるいは無白血病期間の延長)である。画像を拡大する4 今後の展望一般的にMDS患者は高齢者が多い。徐々に骨髄非破壊的造血幹細胞移植術を用いた移植が比較的高齢者にも試みられているが、感染症を含む移植合併症や再発を克服する試みもある。また、アザシチジン無効例に対する新たな治療薬や経口アザシチジンの開発も進められ、さらなる治療法の開拓が期待される疾患である。2012年に発表されたIPSS-Rによる個別化治療が推進されるとともに、病型の進展に伴う遺伝子変化が次々と報告され、これらの遺伝子変化を標的とする治療法の開発が期待される。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)がん情報サービス 骨髄異形成症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報Japan MDS Patient Support Group(患者とその家族および支援者の会)1)NCCN guideline. Myelodysplastic Syndromes V.2. 2018.骨髄異形成症候群(日本語版PDF)公開履歴初回2013年02月28日更新2020年01月28日mds_00

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034)患者さんの言葉、うのみにするべからず!【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第34回 患者さんの言葉、うのみにするべからず!しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科医は、病変部である皮疹を見れば、だいたいのことはわかります。患者さんが、たとえ問診でごまかそうとしても、皮膚は正直なのです。その人の受診までの経時的な変化が見えてくるような気さえします。私がまだ駆け出しの医者だった頃、患者さんに「よくならない」と言われると、何とかしてその訴えをなくそうと、薬を変えることで解決しようとしていました。今思えば、ただやみくもに処方を変更する前に、できることがたくさんありました。たとえば、外用薬をきちんと塗れているか聞いて、再度塗り方の指導を行ったり、皮疹の状態をきちんと評価し、前回と比べてよくなっていることなどを伝えて、患者さんの認識と擦り合わせたりなど。若い頃は、患者さんの表面的な発言の枝葉末節に囚われていて、生活背景にまで目を向けられていなかったのだな、と今さらながらに反省です。まさに木を見て森を見ず。大切なのは、目の前の状態だけでなく、疾患の全体像。全体を見ようとすれば、おのずと生活背景にも意識が向きます。皮膚科医としての経験を積む中で、ようやくそのことがわかってきたような気がします(まだまだ私も未熟者で、先輩方から学ぶ面も多い身ですが…)。もちろん、患者さんから学ぶ面も少なからずあるので、おごらず日々の診療にまい進したい所存です!それでは、また~!

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医師の働き方改革で薬剤師の権限が拡大?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第40回

日本各地で「働き方改革」が叫ばれてきましたが、医師を中心とする医療者の働き方については根本的な取り組みは後回しにされてきました。しかし、もはや医師の働き方改革も待ったなしの状態となり、積極的な議論がなされています。医師の働き方改革の始まりは、政府が掲げた「一億総活躍社会の実現」のために、2017年3月にまとめられた「働き方改革実行計画」でした。その中で医師も時間外労働規制の対象となりましたが、罰則がないことから強制力はありませんでした。その後、2019年3月末に厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」において、時間外労働の上限時間は「年960時間以下、月100時間未満」が原則とされました。地域医療確保のためにやむを得ないと認められた場合や研修医などの例外的な場合には「年1,860時間以下、月100時間未満」と緩和されますが、勤務間インターバルなどの追加的健康確保措置を組み合わせることが求められました。ちなみに、同時期の2019年3月にケアネットが実施した医師を対象とした働き方に関するアンケートでは、年1,860時間を超える時間外労働をしていると答えた医師は6.5%であり、「特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない」など、特例の上限として提案されている年1,860時間に対する懸念の声が多く上がりました。医師の業務を他職種へタスク・シフトもし、医師の働き方改革が実行された場合には、薬剤師や他の医療者への影響は必ず生じるでしょう。その影響の1つが以前から議論されていたタスク・シフトです。先日、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、医師事務作業補助者、救急救命士へのタスク・シフトについて、四病院団体協議会から要望が出ました。薬剤師に関しては下記のとおりです。薬剤師へのタスク・シフト医師等との協働により作成した包括的指示に基づいた投薬の実施、持参薬の継続提案、多剤併用薬に対する処方提案等、現行法の下で可能なタスク・シフトを確認し、医療機関内において薬剤師が主体的に業務を行えるようにすること。(2020年1月15日付四病院団体協議会「要望書 ~医師のタスク・シフティング/シェアリングについて~」より抜粋)薬剤師へのタスク・シフトに関わる内容としては、厚生労働省が2019年11月に設置した「医師等医療機関職員の働き方改革推進本部」の議論において、とくに進めるべき業務として「持参薬の入力などを含む術前服薬指導」「薬物療法のモニタリングの実施とその結果に伴う処方内容の見直しの提案」「プロトコールに基づいた投薬」などがあります。プロトコールに基づいた投薬については、医師の包括的指示と同意がある場合には、医師の最終確認・再確認を必要とせずに投薬することが可能です。保険薬局についても多少の議論があり、「処方医の事前の指示に基づき、問題が認められない場合は薬局薬剤師が分割調剤を実施」「定期的な分割調剤の都度、副作用の発現状況や服薬状況の確認」などが現行制度上可能であるとされています。分割調剤や多剤併用薬に対する処方提案については、現行法で可能なタスクです。しかし、すでに可能であるにもかかわらず現実的には行われていません。それによって医師の過重労働が発生しているのだとすれば、薬剤師側に何らかのアクションが強く求められる可能性もあります。正直「この議論で本当に変わるのか?」という疑問もありますが、着々と議論は進んでいます。とにもかくにも、医療者が継続可能な業務を行える環境が整うことが期待されます。

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第16回 新ガイドラインで総エネルギー摂取量の設定法はどう変わったか【高齢者糖尿病診療のコツ】

第16回 新ガイドラインで総エネルギー摂取量の設定法はどう変わったかQ1 高齢糖尿病患者の総エネルギー摂取量の決め方は?1)高齢者の栄養状態をどうとらえるか高齢糖尿病患者の栄養状態は個人差が大きく、低栄養と過栄養が混在しています。J-EDIT研究によると、高齢糖尿病患者の実際の総エネルギー摂取量は、男性で1,802±396kcal(31.0±6.8 kcal/kg体重)、女性で1,661±337kcal(33.7±6.9kcal/kg体重)であり、指示量よりも多くとっていました1)。この値は、これまで高齢者に指示していた標準体重当たりエネルギー指示量の25~30kcal/kg体重と乖離しています。一方、高齢糖尿病患者は低栄養を起こしやすく、体重減少やBMI低値となり、総エネルギー摂取量が低下している人もいます。これまでの考え方では、(身長)2×22で求めた標準体重に活動係数をかけて総エネルギー量を求めていました。その根拠は、高齢者を除いた一般住民の疫学調査から、死亡のリスクが最も低いBMIが22であることに基づいています。また、JDCSとJ-EDITの糖尿病患者のプール解析では、最も死亡リスクが低いBMIは22.5以上、25前後であるという結果でした。一方、75歳以上ではBMI 18.5未満の群の死亡リスクが8.1倍と75歳未満と比べて高くなり、後期高齢者では低栄養が死亡リスクに及ぼす影響が著しいことが示されました2)。高齢糖尿病患者ではサルコペニアやフレイルをきたしやすくなりますが、これらの成因には低栄養が大きく関わっており、とくにエネルギー摂取量とタンパク質摂取量の低下が関係しています。2)総エネルギー摂取量の設定の仕方は?上記のことから、高齢糖尿病患者の総エネルギー摂取量は過栄養だけでなく、低栄養やサルコペニア・フレイル予防の観点も考慮しながら決める必要があります。日本糖尿病学会は「糖尿病診療ガイドライン2019」で食事療法について改訂を行い、標準体重ではなくて、年齢を考慮した目標体重を用いた新たな総エネルギー摂取量の設定法を提案しました3)。総エネルギー摂取量(kcal/日)は目標体重(kg)にエネルギー係数(kcal/kg)をかけて求めます(表1)。目標体重の目安は65歳未満では従来通り[身長(m)]2×22ですが、前期高齢者は[身長(m)]2×22~25、後期高齢者も[身長(m)]2×22~25となっています。身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)は、(1)軽い労作:25~30、(2)普通の労作:30~35、(3)重い労作:35~のように設定します。肥満症やフレイルがある場合は、エネルギー係数を柔軟に変えることができるとされています。画像を拡大する3)目標体重当たりのエネルギー摂取と死亡の関係高齢糖尿病患者の追跡調査であるJ-EDIT研究では、目標体重当たりのエネルギー摂取量と6年間の死亡リスクとの間にU字型の関連が認められました(図1)4)。すなわち、約25kcal/kg体重未満の群と約35kcal以上の群で死亡リスクが上昇し、高齢糖尿病患者のエネルギー摂取量は25~35kcal/目標体重が最も死亡のリスクが低いという結果です。目標体重にかけるエネルギー係数は高齢者では25~35になることがほとんどですので、この結果は目標体重をもとにしたエネルギー量の設定が妥当であることを示唆しています。標準体重当たりの摂取エネルギー量の場合も、同様にU字型の関係が認められました。しかし、最も死亡リスクが小さい摂取エネルギー量は31.5~36.4kcal/kgであり、25~30kcal/kg標準体重で摂取エネルギー量を設定すると、摂取量不足になる可能性があります。また、目標体重当たりのエネルギー摂取と死亡の関係は、実体重と死亡との関係に近似していますので、これも目標体重当たりで考えた方がいいという理由の1つになります。画像を拡大する4)従来よりも指示量は増える? 実際に総エネルギー量を算出してみる目標体重による計算法では、従来の標準体重による計算法と比べて総エネルギー摂取量の指示量が多くなることが予想されます。身長150cm、体重53kgの76歳の女性で、目標体重が1.5×1.5×24=54.0kgとなったとき、軽い運動を行っている場合には30をかけてエネルギー摂取量は1,620kcalとなり、1,600kcalを処方することになります。従来であれば標準体重49.5 kgから28をかけて1,386kcalとなり、1,400kcalの食事を処方したと思われ、200~300kcal多い食事を処方することになります。こうした目標体重によるエネルギー量の設定法は、高齢者においてメタボ対策から低栄養・フレイル対策にシフトしていく観点からみると有用である可能性があります。しかし、現在の食事量や体重をみながら段階的に設定することと、身体機能、心理状態、体重、血糖コントロール状況、食事内容などの推移を見ながら、適宜変更していく必要があります。また、十分に摂取できない高齢者に対して、エネルギー摂取量を増やす方法についても個別に検討すべきであると思います。Q2 タンパク質摂取量はどのように決めますか?1)フレイル・サルコペニア予防の観点からは?フレイルやサルコぺニアの発症や進行を予防するためには、十分なタンパク質の摂取が大切です。欧州栄養代謝学会(ESPEN)のガイドラインでは、高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには少なくとも1.0~1.2 g/kg体重/日のタンパク質摂取が推奨されています5)。また、急性疾患または慢性疾患がある高齢者では1.2~1.5 g/kg体重のタンパク質摂取が勧められています。高齢糖尿病女性の3年間の追跡調査でも1.0g/kg体重以上のタンパク質摂取の群の方が1.0g/kg体重未満の群と比べて膝進展力低下や身体機能低下が少ないという結果が得られています6)。2)タンパク質摂取を勧める理由タンパク質を十分にとる理由は、タンパク質中のアミノ酸であるロイシンが、筋肉のタンパク質合成に働くためです。ロイシンは肉類だけでなく、魚、乳製品、卵、大豆製品にも多いので、さまざまなタンパク質をバランス良くとるよう勧めることが大切です。なかなかタンパク質がとれない高齢者には、温泉たまご、魚の缶詰、プロセスチーズなどタンパク質やロイシンの多い食品を付加するような指導を行います。朝のタンパク質摂取の割合が低いとフレイル・サルコペニアになりやすいという報告もあるので、朝にタンパク質をとることを勧めるといいと思います。3)タンパク質摂取と腎機能との関係一方、タンパク質の摂取量を増やした場合には腎機能の悪化が懸念されます。しかしながら、高齢者のタンパク質摂取増加と腎機能低下との関係は明らかではありません。高齢者の追跡調査ではタンパク質摂取量とシスタチンCから求めたeGFRcys低下との関連は認められませんでした7)。顕性アルブミン尿がない2型糖尿病患者6,213人(平均年齢65歳)の追跡調査でもタンパク質摂取の最も低い群ではむしろ、CKDの悪化が見られています8)。高齢者のタンパク質制限に関してもエビデンスが乏しく、13のRCT研究のメタ解析ではタンパク質制限がeGFR低下を抑制しましたが9)、うち高齢者の研究は2件のみです。進行したCKDを合併した糖尿病患者のタンパク質制限は腎機能の悪化を抑制したという報告もありますが10)、MDRD trialのようにタンパク質制限群では死亡率の増加が認められた報告もあります11)。また、本邦の糖尿病を含むCKD患者にタンパク質制限を行った報告では65歳以上ではタンパク質摂取が最も多い群で死亡リスクが減少しています12)。したがって、重度の腎機能障害がなければ、フレイル・サルコぺニア予防のためには充分なタンパク質を摂ることが望ましいように思われます。腎症4期の患者では腎機能、骨格筋量、筋力などの変化をみながら、タンパク質制限か十分なタンパク質摂取の確保かを個別に判断する必要があります。また、高齢者ではタンパク質制限のアドヒアランスが不良であることが多いことにも注意する必要があります。1)Yoshimura Y, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012; Suppl: 29-40.2)Tanaka S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99: E2692-2696.3)日本糖尿病学会 編著.糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂,東京, 31-55, 2019.4)Omura T, et al. Geriatr. Gerontol. Int. 2019;1–7.5)Deutz NE, et al. Clin Nutr. 2014; 33:929-936.6)Rahi B, et al. Eur J Nutr. 2016; 55:1729-1739.7)Beasley JM, et al. Nutrition. 2014; 30:794-799.8)Dunkler D, et al. JAMA Intern Med. 2013; 173:1682-1692.9)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28 [Epub ahead of print].10)Giordano M, et al. Nutrition. 2014 Sep;30:1045-9.11)Menon V, et al. Am J Kidney Dis. 2009 Feb;53:208-17.12)Watanabe D, et al. Nutrients. 2018 Nov 13;10: E1744.

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不飽和脂肪酸が認知機能の低下を抑制?

 これまでの研究では、高齢者の食事脂肪摂取と認知機能の関係について、一貫性のない結果が示されてきた。今回、中国・華中科技大学同済医学院のYi-Wen Jiang氏らの研究で、総炭水化物または飽和脂肪酸(SFA)を、一価不飽和脂肪酸(MUFA)や多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにn-6 PUFAへ置き換えることが、高齢者の認知機能障害のリスク低下に関連していることが明らかとなった。さらに、植物性脂肪では認知機能障害との逆相関が示された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2019年12月25日号に掲載。 本研究では、中年期の脂肪摂取量と高齢者の認知機能障害リスクとの関連を調べることを目的として、Singapore Chinese Health Studyの1万6,736人の参加者を対象に前向きコホート研究を実施。参加者の年齢は45〜74歳(平均年齢±SD:53.5±6.22歳)、ベースラインは1993〜98年の登録時点とし、食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して食事情報を評価した。認知機能障害の有無は、参加者が61~96歳(平均年齢±SD:73.2±6.41歳)の3回目のフォローアップ時(2014~16年)にシンガポール版のミニメンタルステート試験を使用して特定した。多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者2,397人で認知機能障害が確認された。・総炭水化物の代わりに食事脂肪を摂取した場合、認知機能障害の進行に逆相関した(OR:0.80、95%CI:0.67~0.94、傾向のp=0.003)。食事脂肪を分類した場合の各ORと95%CIは、SFAでOR:1.08、95%CI:0.89~1.31(傾向のp=0.51)、MUFAは同:0.80、95%CI:0.64~0.99(傾向のp=0.02)、PUFAは同:0.84、95%CI:0.72~0.99(傾向のp=0.02)であった。また、n-3 PUFAの場合、同:0.92、95%CI:0.77~1.09(傾向のp=0.49)、n-6 PUFAの場合は同:0.83、95%CI:0.70~0.98(傾向のp= 0.01)であった。・植物性脂肪の摂取(OR:0.84、95%CI:0.72~0.98、傾向のp=0.02)では逆相関がみられたが、動物性脂肪の場合は(同:0.96、95%CI:0.81~1.15、傾向のp=0.76)みられなかった。・SFAの代わりにMUFAやPUFAを摂取した場合、それぞれ、OR:0.77、95%CI:0.61~0.97(傾向のp=0.02)、同:0.82、95%CI:0.70~0.95(傾向のp=0.003)であった。

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心房細動後1年間の出血リスク、AIによる新予測モデルが有望(GARFIELD-AF)

 脳卒中リスクを有する心房細動患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)治療開始後1ヵ月のPT-INR連続測定値を使用したAIによる新予後予測モデルが、至適範囲内時間(TTR)による予測と比較して高い精度を有する可能性が示唆された。東海大学の後藤 信哉氏らが、GARFIELD-AFレジストリのデータにより検討した。Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。 GARFIELD-AFレジストリは、脳卒中リスクのある心房細動患者における抗血栓療法のアウトカムを検討する、最大規模の国際的な多施設共同前向き観察研究。今回、研究者らは同レジストリのデータにおける、登録後30日以内のPT-INRの連続測定値を用いて、31日目から1年までの臨床転帰を予測するための新たなAIモデルを開発した。従来の多くの臨床リスク層別化モデルは、連続測定ではなく単一時点での測定に基づいているが、AIは多次元データセットから1次元の結果を予測することができる。このモデルは、長・短期記憶と1次元の畳み込み層を含む多層ニューラルネットワークで構築されている。 本解析では、VKAで治療され、処方が確認されてから最初の30日間に少なくとも3回PT-INRの測定が行われた、AFと新たに診断された患者が対象。アウトカムとして、31~365日の間に発生した大出血、脳卒中/全身性塞栓症(SE)、全死因死亡が用いられた。 主な結果は以下の通り。・ニューラルネットワークは、治療開始後0〜30日以内のPT-INR測定値によりトレーニングされ、解析コホート(3,185例)で31〜365日にわたって臨床アウトカムが得られた。・AIモデルの精度は、検証コホートで評価された(1,523例)。・大出血、脳卒中/SE、および全死因を予測するためのAIモデルのC統計量は、それぞれ0.75、0.70、および0.61であった。TTRでは、有意な差がみられなかった。

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パニック症患者におけるアルコール依存症発症率に関する性差研究

 パニック症患者におけるアルコール依存症発症率に性差があるかについては、よくわかっていない。台湾・台北市立連合医院のHu-Ming Chang氏らは、この疑問を明らかにするため、調査を行った。Drug and Alcohol Dependence誌オンライン版2019年12月23日号の報告。 対象は、台湾全民健康保険研究データベースより抽出したパニック症患者9,480例。このうち、フォローアップ期間中にアルコール依存症を発症した患者は169例(男性:89例、女性:80例)であった。アルコール依存症発症の相対リスクを一般集団と比較するため、標準化罹患比(SIR:standardized incidence ratio)を用いた。ネステッドケースコントロール研究デザインに基づき、各ケースについてコントロール10例を選択した。アルコール依存症診断前の診療や精神医学的併存疾患を分析するため、条件付きロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・アルコール依存症発症のSIRは、男性で3.36、女性で6.29であった。・アルコール依存症を発症した女性パニック症患者は、対照群よりも、外来受診が多かった。男性では、有意な差は認められなかった。・アルコール依存症を発症した女性では、以下を併発する可能性が高かった。 ●うつ病(調整リスク比[aRR]:2.94) ●人格障害(aRR:5.03) ●睡眠障害(aRR:1.72)・アルコール依存症を発症した男性では、以下を併発する可能性が高かった。 ●睡眠障害(aRR:1.85) ●その他の物質使用障害(aRR:3.08) 著者らは「パニック症患者は、一般集団と比較し、アルコール依存症発症リスクが高く、女性のほうがリスクが高かった。アルコール依存症発症前の精神医学的な併存疾患は、性差が認められたことから、予防的介入を検討する際には、性別を考慮する必要がある」としている。

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早期前立腺がん、野菜摂取量増加で進行リスクへの影響は/JAMA

 監視療法で管理されている早期前立腺がん男性では、野菜摂取量を増やす行動的介入により、前立腺がんの進行リスクは抑制されないことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のJ Kellogg Parsons氏らが行った「MEAL試験」(CALGB 70807[Alliance])で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年1月14日号に掲載された。米国臨床腫瘍学会の診療ガイドラインでは、野菜が豊富な食事は前立腺がんサバイバーの転帰を改善するとして積極的な摂取が推奨されている。一方、この推奨は専門家の意見や前臨床研究、観察研究のデータに基づいており、実践的な臨床エンドポイントに重点を置いた無作為化臨床試験は行われていなかった。TTPを評価する米国の無作為化試験 本研究は、米国の91の泌尿器科および腫瘍内科クリニックが参加した無作為化第III相試験であり、2011年1月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、年齢50~80歳、ベースライン前の24ヵ月以内に前立腺生検(≧10コア)で前立腺腺がん(70歳未満:国際泌尿器病理学会[ISUP]のgrade group=1、70歳以上:ISUPのgrade group≦2)が証明され、ステージは≦cT2aで、血清前立腺特異抗原(PSA)<10ng/mLの男性であった。 被験者は、電話で毎日7サービング以上の野菜の摂取を促す行動的介入を受ける群(介入群)、または食事と前立腺がんに関する書面による情報を受け取る対照群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは無増悪期間(TTP)とした。増悪は、PSA≧10ng/mL、PSA倍加時間<3年、フォローアップ中の前立腺生検で悪性度の進行(腫瘍量の増加またはグレードの進行)と定義された。影響みられず、ただし検出力が不十分であった可能性も 478例(平均年齢64[SD 7]歳、平均PSA 4.9[2.1]ng/mL)が登録され、443例(93%、介入群226例、対照群217例)が主解析に含まれた。TTPイベントは245例(介入群124例、対照群121例)で発生した。 TTPには、両群間で差は認められなかった(補正前ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.75~1.24、p=0.76、補正後HR:0.97、95%CI:0.76~1.25、p=0.84)。24ヵ月時のKaplan-Meier法による無増悪率は、介入群が43.5%(95%CI:36.5~50.6)、対照群は41.4%(34.3~48.7)であった(群間差:2.1%、95%CI:-8.1~12.2)。 24ヵ月のフォローアップ期間中に積極的な前立腺がん治療へ移行した患者は、介入群が6例(2.7%)、対照群は4例(1.8%)であった(p=0.75)。治療期間のHRは1.38(95%CI:0.39~4.90、p=0.61)だった。 フォローアップ期間24ヵ月の時点で、ベースラインからの全体の野菜サービング数(/日)の平均変化は、介入群が2.01と、対照群の0.37に比較して有意に増加した(p<0.001)。また、アブラナ科野菜のサービング数(0.50 vs.0.01/日、p<0.001)および食事中の総カロテノイド量(9,687.87 vs.324.73μg/日、p<0.001)の平均変化も、介入群で増加の程度が大きかった。 著者は、「これらの知見は、監視療法で管理されている早期前立腺がん患者では、前立腺がんの進行を抑制する目的での野菜摂取量を増やす行動的介入の使用を支持しないが、臨床的に重要な差を同定するには、この試験の検出力は不十分であった可能性がある」としている。

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新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が、急速に拡大している。中国・金銀潭医院のChaolin Huang氏らは、2020年1月2日までに新型コロナウイルスの感染が確認された入院患者について、現段階で判明している疫学的特徴と臨床転帰について前向きに調査、分析した。Lancet誌オンライン版1月24日号掲載の報告。 調査対象は、新型コロナウイルス感染が疑われ、武漢市内の指定病院に入院した患者のうち、RT-PCR法および次世代シーケンシングによって同症と特定された41例で、国際重症急性呼吸器・新興感染症協会(ISARIC)のデータを基に分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・41例中30例(73%)が男性であった。・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)。・13例(32%)が何らかの基礎疾患を有していた(糖尿病:8例、高血圧:6例、心血管疾患:6例)。・27例(66%)が海鮮市場(華南海鮮城)に何らかの直接的関係があった。・最初に特定された症例の発症日は2019年12月1日で、当該例ではほかの家族に発熱や呼吸器症状は見られなかったが、その後1例の家族クラスターが判明している。・発症時の一般的症状は、発熱(98%)、咳(76%)および筋肉痛または疲労(44%)で、喀痰や頭痛、喀血および下痢などもわずかに見られた。・全症例で肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められ、98%で両側性病変を有していた。・40例中22例(55%)で呼吸困難が見られ、発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(四分位範囲:5.0~13.0)。・合併症として、急性呼吸促迫症候群(29%)、RNAaemia(15%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などが見られた。・32%がICUに入り、15%が死亡した。 著者らは、本研究以降も感染者および死亡者数が急速に増加していることを踏まえ、「今回の新型コロナウイルスが効率的なヒト-ヒト感染能力を獲得したのではないかと懸念している」とし、「パンデミックの可能性があるため、今後の宿主適応、ウイルスの進化、感染性、伝染性および病原性を注意深く監視しなければならない」と述べている。

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去勢抵抗性前立腺がんにダロルタミド国内承認/バイエル

 バイエル薬品は、2020年1月23日、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、ダロルタミド(商品名:ニュベクオ)の製造販売承認を厚生労働省より取得した。ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法で無転移生存期間が有意に延長 今回の承認は、ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT: androgen deprivation therapy)の有効性と安全性をプラセボ+ADTとの比較において評価した第III相 ARAMIS試験に基づくもの。ARAMIS試験では、有効性の主要評価項目である無転移生存期間(MFS: metastasis-free survival)中央値がプラセボ+ADTの18.4ヵ月に対し40.4 ヵ月と有意に延長した(HR:0.41、95% CI: 0.34~0.50、p

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医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)【新型タバコの基礎知識】第15回

第15回 医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(1)Key Points改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされている屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルール屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきWHOも日本呼吸器学会も同様の見解を提示している今回は、全面施行を目前に控えた改正健康増進法での新型タバコの扱いから、社会全体としてどのように新型タバコに対処すればよいのかについてお伝えしたいと思います。4月全面施行! 改正健康増進法での加熱式タバコの位置付けは?新型タバコの登場はすでに社会に悪影響を与えています。2018年に成立し、2020年4月1日に全面施行される改正健康増進法では、加熱式タバコは紙巻タバコとは異なる例外的な扱いとされています。屋内は原則禁煙としながらも、加熱式タバコ専用の喫煙ルームでは、飲食などのサービスを提供することが例外的に認められているのです。屋内でのタバコを禁止するという政策には、単に受動喫煙を防ぐという目的だけではない意義があります。屋内からタバコをなくし、タバコは社会的に認められないというメッセージを届ける効果や、禁煙したい喫煙者がより吸いにくくなり、禁煙が促進される効果が期待されます。しかし、今回の法律のように加熱式タバコの分煙を認めてしまうと、「新型タバコは認められている」というメッセージとなって伝わる可能性もあるでしょう。タバコ会社はすでに全面禁煙となっている飲食店に対して、加熱式タバコを認めさせようと積極的なロビー活動を展開しています。加熱式タバコを特別扱いすることは、タバコ産業の思惑通りともいえます。リスクが分からないとき、どう捉えるか多くの先人たちがこれまでに実施してきたタバコ問題に関する研究の成果として、受動喫煙を防止するためには、例外なく屋内を全面禁煙にすることが最も有効だと分かっています。屋内全面禁煙が、受動喫煙防止対策における世界基準のルールなのです。受動喫煙防止のための法律や条例を成立させることができたこと自体は、すばらしいことだと思います。日本におけるタバコ対策の前進であり、まずはその意義を強調したいです。この法律や条例の成立に努力された方々に感謝します。しかし、この加熱式タバコに対する特別扱いについては賛成しかねます。まだ情報が少なかったためにそうするしかなかったとも解釈できますが、情報が十分にない事柄に対してどのように対処するべきなのでしょうか? 今回の法律では、「リスクが分からないので禁止できない」としてしまっています。ここでは予防原則により「リスクがないと分かるまでは禁止する」とするべきだろうと公衆衛生学の観点からは考えます。予防原則の考え方は、経済というよりも人を大切にする考え方だとも言えるのではないでしょうか。現在は経済的メリットが優先された状況だとも考えられるでしょう。加熱式タバコは、従来からの紙巻タバコと同様、有害物質・発がん性物質が発生する明らかに有害なタバコ製品です。さらなる研究は必要ですが、今ある情報からでも、加熱式タバコによる健康影響は決して小さくないと推測されます(第7回記事参照)。社会におけるルール・規制において、加熱式タバコを特別扱いするのではなく、紙巻タバコと同等にタバコとして扱うべきだと考えます。たばこ事業法では、はじめから加熱式タバコはタバコとして扱われているのです。屋内全面禁煙で禁止されるタバコには加熱式タバコも含まれるべきだと考えます。WHOや呼吸器学会の見解は?なにも筆者だけがこう主張しているわけではありません。世界保健機関(WHO)もこの考え方を支持しています。WHOの加熱式タバコに関する考え方をみてみましょう。2018年に公開されたWHOによる加熱式タバコの情報シート1)には、以下のように書かれています。加熱式タバコは従来のタバコより安全だろうか?現在、加熱式タバコが従来のタバコ製品よりも有害性が低いことを示す証拠はない。タバコ業界が資金提供する研究は、基準となる紙巻タバコと比較して、有害性物質への曝露が著しく減少していると主張している。しかし、現在のところ、これらの化学物質への曝露の減少がヒトにおけるリスクの減少につながることを示唆する証拠はない。WHOはどのように推奨するか?加熱式タバコを含む、すべての形態のタバコが有害である。もともとタバコは有毒であり、天然の形態でも多くの発がん性物質を含む。したがって、加熱式タバコは、タバコ規制条約に基づき、他のすべてのタバコ製品に適用される政策および規制措置の対象となるべきである。さらに、日本呼吸器学会の見解をみてみましょう。2017年10月に公開された日本呼吸器学会による、加熱式タバコや電子タバコに対する見解は次のとおりです。日本呼吸器学会は、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコについて以下のように考えます。1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来のタバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。このステートメントは、2019年12月11日に改訂され、日本呼吸器学会による更新された見解と提言が下記のとおり提示されています2)。見解1.加熱式タバコや電子タバコが産生するエアロゾルには有害成分が含まれており、健康への影響が不明のまま販売されていることは問題である。2.加熱式タバコの喫煙者や電子タバコの使用者の呼気には有害成分が含まれており、喫煙者・使用者だけでなく、他者にも健康被害を起こす可能性が高い。提言1.加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない。2.加熱式タバコの喫煙や電子タバコの使用の際には紙巻タバコと同様な二次曝露対策が必要である。※「非燃焼・加熱式タバコ」という名称は、燃焼が全くないわけではないこともあり、「加熱式タバコ」と修正されている。こういった情報を参考にして、医療従事者のみなさん1人ひとりが正しい情報をもとに考えていただき、各職能団体や学会などでの大きな動きにつながっていけば、政治家・行政担当者の方々にも波及していき、今後のタバコ対策を改善し、社会をよりよい形に導いていっていただくことができるのではないかと考えます。第16回は、「医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)」です。1)世界保健機関.加熱式タバコ製品情報シート2)日本呼吸器学会.加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解と提言

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2月4日は「風疹の日」、風疹排除のために医療者ができること

 2月4日は日本産婦人科医会などが定めた「風疹(予防)の日」。長年、感染症対策に取り組んでいる多屋 馨子氏(国立感染症研究所 感染症疫学センター[感染研]第三室 室長)に「風疹排除のために医療者ができること」をテーマに話を聞いた。子供の風疹はワクチン接種により激減――風疹の流行は、国のワクチン接種戦略と密接に関わりあっています。風疹の定期接種が始まったのは1977年のことで、対象は女子中学生でした。妊娠中の胎児への影響、いわゆる先天性風疹症候群(CRS)予防を最大の目的としたためです。しかし、女性限定の接種では流行をコントールできず、定期接種の開始後も数年ごとに大きな流行を繰り返しました。このため、1995年4月からは1~7歳半の男女を対象にワクチン接種が行われるようになり、接種歴のない中学生男女への経過措置もとられました。こうした施策によって、長く風疹患者の多数を占めていた小児の感染は激減したのです。今では風疹患者の95%が成人――ここ20年ほどのあいだ、小児に代わって風疹患者の大半を占めているのは成人です。中でも、ワクチン接種制度の狭間となり、1回もワクチンを接種したことのない「1962年(昭和37年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日生まれの男性」が新規罹患者の大きな割合を占めています。この世代の男性は、自身がワクチンを受ける機会がなかったうえ、同世代の女性はワクチンを受けているために、上の世代に比べ風疹の罹患を免れた人が多く、十分な抗体価を有しないままの人がほかの年代よりも多いのです。具体的には、この世代の男性の約20%、5人に1人が十分な抗体価を持ちません。女性の6%と比べるとその比率の高さがわかりますいったん減少も2018年から再度増加――抗体価の低い成人が中心となった風疹の流行は繰り返し起こっています。とくに2012~2013年は計1万6,730人の患者を出す大流行となり、45人のCRSが報告される事態になりました。厚労省と感染研は「次の流行はなんとしても食い止めたい」と対策を講じ、2014年以降の患者数は減少を続けました。しかし、2018年に再び増加に転じ、2019年も約3,000人と再び増加の傾向にあり、この事態を憂慮しています。患者の内訳を見ると95%が成人、男性が女性の4倍近くと2013年の大流行時から状況は何ら変わっていないことを歯がゆく感じます。 こうした状況を受け、2019年に厚労省は「風しんの追加的対策」を発表しました。これまで「抗体検査のみ無料」としていたターゲット世代に対し、ワクチン接種まで公費で賄う、という内容です。 以下、今回の対策の具体的な内容です。・対象:1962年(昭和37年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日生まれの男性・期間:2019年~2022年3月末・方法:居住自治体から、抗体検査とワクチン接種が無料で受けられるクーポン券を郵送。医療機関の混雑を避けるため、クーポン発送は年齢別に2回に分けて実施。但し、クーポンが届かなくても自治体に請求することで入手可。2019年度/1972年(昭和47年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日生まれ2020年度/1962年(昭和37年)4月2日~1972年(昭和47年)4月1日生まれ「全額無料」でも伸びない受診率――数千円の抗体検査と1万円程度のMRワクチンを全額無料にするのですから、「今度こそ受診率が一気に伸びるだろう」と期待していたのですが、残念ながらまだそこまでの成果は出ていません。 2019 年度内にクーポン券を発送予定の約 646 万人のうち、2019年4~11月に抗体検査を受けた人は 97万8,422 人(対象者の約 15.1%)、ワクチン接種を受けた人は 19万7,572 人(同約 3.1%)でした。厚労省は東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年7月までに現状79%程度のターゲット世代の抗体保有率を85%に、2022年3月までに90%程度に引き上げることを目標としていますが、このままの受診ペースでは難しいのが現状です。患者に「クーポン来るから受けてね」と伝えてください――この状況を踏まえ、医療者の皆様にお願いです。診療した男性患者さんの生年月日を見て、対象世代の男性であれば「風疹のクーポンは来ましたか? ぜひ抗体検査を受けてくださいね」と一言伝えていただきたいのです。もちろん、医療者の皆さん自身も率先して抗体検査とワクチン接種をお願いします。私は仕事でもプライベートでも、男性と会うたびクーポン券の紹介をしています。受診率が低い理由は、ひとえに風疹の怖さと今回の対策が知られていないことに尽きるかと思います。信頼する医療者から聞いた情報であれば、患者さんも「それなら行ってみようか」と考えることでしょう。国の予算を割いて実施された今回の対策が成果に結びつくよう、ぜひともご協力をお願い致します。成人男性に多い誤解について――成人男性の皆さんと風疹について話していると、よく出てくる誤解があります。誤解1)風疹は子供のときにかかったから大丈夫だよ すでに風疹にかかったとの記憶のある人達に血液検査を行ったところ、約半分は抗体陰性で、風疹は記憶違い、または風疹に似た他の病気にかかっていたという調査結果があります。風疹はよく似た症状の病気が非常に多いです。「かかったから」と言う方にこそ、「過去の記憶に頼らず、しっかり抗体検査を受けて」とアドバイスしてください。誤解2)風疹って死ぬような病気じゃないからいいんじゃない? 風疹は通常あまり重くない病気ですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの軽視できない合併症を起こすことがあり、実際、毎年入院する人も出ています。そして、もっとも怖いのがCRSです。感染者が免疫の不十分な妊娠初期の女性と飛沫が飛ぶ範囲(1~2m以内)で接触することで感染が生じ、高確率でお腹の赤ちゃんに障害を負わせてしまいます。この「自分が加害者になる怖さ」をしっかり説明することで、納得して受診くださる方が多くいます。誤解3)風疹になったら家にいるから他人には伝染させないよ 風疹は発症する1週間前から他人に感染します。自覚症状のないまま職場や公共の場に出ることがどれだけ危険なことか、これも直接伝えると理解していただけます。 最近は、企業単位で風疹対策取り組む例も出ています。先日、ある企業で全社員対象に風疹の講演をしてきました。こうした企業からの発信もぜひ広げていただきたいと思います。ターゲット世代の男性が多く集まる場所、たとえば献血ルームなどの場所での情報提供や予防啓発にも力を入れていきたいと考えています。志を同じくする医療者の方のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

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NSCLC維持療法、ベバシズマブ+ペメトレキセドでPFS延長(COMPASS)/JCO

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者について、初回薬物治療が奏効した後の維持療法の選択肢は何か。九州がんセンターの瀬戸 貴司氏らは、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用導入療法後の維持療法におけるベバシズマブ+ペメトレキセドの有効性と安全性を評価する「COMPASS試験」(WJOG5610L)を行った。主要評価項目である全生存(OS)期間は統計学的有意差が認められなかったものの、無増悪生存(PFS)期間およびEGFR野生型患者におけるOSはベバシズマブ+ペメトレキセド併用維持療法で有意に延長することを示した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月27日号掲載の報告。 研究グループは、EGFR19欠失またはL858R変異のない未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者を対象に検討を行った。導入療法としてカルボプラチン(AUC6)+ペメトレキセド(500mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)を3週に1回、4サイクル投与後、病勢進行が認められなかった患者を、ベバシズマブ+ペメトレキセド群(ペメトレキセド併用群)またはベバシズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、3週に1回、病勢進行または許容できない毒性発現まで投与した。 主要評価項目は、無作為化後のOSであった。 主な結果は以下のとおり。・2010年9月~2015年9月に、907例が導入療法を受け、このうち599例が無作為化された(ペメトレキセド併用群298例、ベバシズマブ群301例)。・OS中央値は、23.3ヵ月 vs.19.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.73~1.05、片側層別log-rank検定のp=0.069)であった。・EGFR野生型サブグループでは、OSのHRが0.82(95%CI:0.68~0.99、片側非層別log-rank検定のp=0.020)であった。・PFS中央値は、5.7ヵ月 vs.4.0ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.57~0.79、両側log-rank検定のp<0.001)であった。・安全性は、治療レジメンの以前の報告と一致していた。

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仕事のストレスと不眠症との関係

 横断的データによると、仕事のストレスと睡眠不足は密接に関連しているといわれているが、プロスペクティブデータによるエビデンスは限られている。スウェーデン・ストックホルム大学のJohanna Garefelt氏らは、認識されたストレスや仕事のストレッサー(仕事の要求、意思決定、職場の社会的支援)が不眠症に及ぼす経時的な影響について、構造方程式モデリングを用いて分析を行った。Journal of Sleep Research誌オンライン版2019年12月2日号の報告。 スウェーデン労働者の大規模サンプルから得られた2008~14年の2年ごとの測定値より、ストレスから睡眠への影響および睡眠からストレスへの影響の両方向について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体として、不眠症と4回すべてのストレス測定値との間に相互の関連が認められた。・しかし、不眠症の各症状と各ストレス測定値の関連は、影響の方向においていくつかの違いが認められた。・ストレスから睡眠への影響においては、認識されたストレスを含むすべての仕事のストレッサーが、入眠困難と睡眠維持困難を予測した。・また、意思決定を除き、熟眠障害においても同様の影響が認められた。・睡眠からストレスへの影響においては、睡眠維持困難が、仕事の要求および認識されたストレスレベルの増加を予測した。・ストレス測定値を予測しなかった不眠症状としては、入眠困難が最も顕著であった。・一方、すべてのストレス測定値を予測した唯一の症状は、熟眠障害であった。 著者らは「ストレスと睡眠の関係、不眠症と仕事のストレッサーおよび認識されたストレスとの潜在的な悪循環への理解がより深まり、職場における不眠症緩和のための介入の必要性が示唆された」としている。

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膝関節術後のVTE予防、osocimabは有効か/JAMA

 膝関節置換術を受ける患者の術後静脈血栓塞栓症の発生(主要アウトカム10~13日時点)に関して、osocimabの術後投与(0.6、1.2、1.8mg/kg量)はエノキサパリン投与に対して非劣性を示す基準を満たし、osocimab術前投与(1.8mg/kg量)はエノキサパリン投与に対して優越性を示す基準を満たしたことが示された。カナダ・マックマスター大学のJeffrey I. Weitz氏らが、第II相の国際多施設共同非盲検無作為化試験「FOXTROT試験」の結果を報告した。osocimabは、XI因子を阻害する長時間作用型の完全ヒトモノクローナル抗体である。これまでXI因子阻害が血栓塞栓症の予防に効果があるかについては明らかになっていなかった。JAMA誌2020年1月14日号掲載の報告。osocimabの術前・術後投与について、エノキサパリン、アピキサバンと比較 研究グループは、膝関節置換術を受けた患者の血栓塞栓症に関して、異なるosocimab用量群投与とエノキサパリンおよびアピキサバン投与を比較することを目的とし、試験は判定者盲検下、osocimab投与について試験オブザーバーには盲検下で行われた。13ヵ国54病院で片側の膝関節置換術を受ける成人を対象とし、2017年10月~2018年8月に無作為化を行い、2019年1月まで追跡した。 被験者は、osocimab静脈投与を術後に単回(用量:0.3mg/kg、0.6mg/kg、1.2mg/kg、1.8mg/kg)、同術前に単回(用量:0.3mg/kg、1.8mg/kg)、またはエノキサパリン40mg皮下注を1日1回、あるいは経口アピキサバン2.5mgを1日2回のいずれかを、10日間以上または静脈造影検査を受けるまで投与された。 主要アウトカムは、術後10~13日の間に発生した静脈血栓塞栓症。術後10~13日時点の実施を義務付けた両側性静脈造影検査、または症候性の深部静脈血栓症あるいは肺塞栓症の確認で評価した。エノキサパリンとの比較による非劣性マージンは5%とした。 また、安全性のアウトカムは、大出血または臨床的に意味のある非大出血とし、術後10~13日まで評価した。エノキサパリンに対する非劣性、優越性を確認 813例(平均年齢66.5歳[SD 8.2]、BMI 32.7[5.7]、女性74.2%)が無作為化を受けた(osocimab術後0.3mg/kg群107例、0.6mg/kg群65例、1.2mg/kg群108例、1.8mg/kg群106例、osocimab術前0.3mg/kg群109例、1.8mg/kg群108例、エノキサパリン群105例、アピキサバン群105例)。主要解析のためのper-protocol集団には600例が包含された(それぞれ76例、51例、79例、78例、77例、80例、76例、83例)。 主要アウトカムの発生は、osocimab術後投与では0.3mg/kg群18例(23.7%)、0.6mg/kg群8例(15.7%)、1.2mg/kg群13例(16.5%)、1.8mg/kg群14例(17.9%)であった。またosocimab術前投与では、0.3mg/kg群23例(29.9%)、1.8mg/kg群9例(11.3%)であった。 エノキサパリン群は20例(26.3%)、アピキサバン群は12例(14.5%)。 osocimabの術後投与はエノキサパリン投与に対して非劣性に関する基準を、0.3mg/kgを除く用量群で満たした。リスク差は0.6mg/kg群10.6%(片側95%信頼区間[CI]:-1.2~∞)、1.2mg/kg群9.9%(-0.9~∞)、1.8mg/kg群8.4%(-2.6~∞)であった。術前投与では、1.8mg/kg群がエノキサパリンに対する優越性の基準を満たした。リスク差は15.1%(両側90%CI:4.9~25.2)であった。 0.3mg/kg群は術後、術前の両投与群とも規定の非劣性基準を満たさなかった。リスク差は術後群が2.6%(片側95%CI:-8.9~∞)、術前群が-3.6%(両側95%CI:-15.5~∞)であった。 大出血または臨床的に意味のある非大出血は、osocimab投与群では最大で4.7%(術前1.8mg/kg群)、エノキサパリン群は5.9%、アピキサバン群は2%観察された。 結果を踏まえて著者は、「osocimabの静脈血栓塞栓症予防としての標準投与に関する有効性、安全性を確立するため、さらなる試験を行う必要がある」とまとめている。

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再入院抑制施策の導入で、死亡は増大したのか/BMJ

 米国では再入院率を低下させるため、インセンティブ付きのプログラム「Hospital Readmissions Reduction Program(HRRP)」が施行されている。しかしそのために、直近の退院患者では再入院が必要となった場合も入院を拒否される可能性があり、死亡リスクが増大するのではとの指摘がある。実際にここ数年、心不全で入院が必要になったメディケア受給者で退院後30日死亡が増加しており、全米で経過観察病棟や救命救急部門(ED)での治療の増加が報告されているという。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのRohan Khera氏らは、HRRP対象症状で入院した患者の退院後間もないEDなどの利用データと患者アウトカムについて、プログラムの影響を評価する必要があるとして調査を行った。結果、プログラムの影響はみられなかったことが判明したという。BMJ誌2020年1月15日号掲載の報告。退院後30日間の死亡について、急性期治療の利用状況を詳細に分析 研究グループは、HRRP対象症状の入院患者が退院後30日間に再入院はしなかったが経過観察病棟やEDで治療を受けており死亡リスクが増大していたか、またそれら患者の退院後の入院、ED、経過観察病棟での急性期治療利用の時間的経過を、後ろ向きコホート研究にて評価した。 2008~16年のメディケア支払いデータを用いて、HRRP対象症状(心不全、急性心筋梗塞、肺炎)で入院した65歳以上の患者の退院後30日死亡を、その間の急性期治療の利用状況(退院後30日間および31~90日間の入院、経過観察病棟、EDの利用)とともに分析した。死亡増加は心不全例のみ、その半数がホスピスへの退院例 HRRP対象症状の入院は、心不全377万2,924例、急性心筋梗塞157万113例、肺炎313万1,162例であった。 退院後30日全死亡率は、心不全例8.7%、急性心筋梗塞例7.3%、肺炎例8.4%であった。リスク補正後の死亡率は、心不全例では年間0.05%増加(95%信頼区間[CI]:0.02~0.08)していた一方、急性心筋梗塞例では年間0.06%減少(-0.09~-0.04)していた。肺炎例では有意な変化はみられなかった。 とくに心不全例で死亡の増加がみられたのは、退院後あらゆる急性期治療を受けていなかった患者であり、年間当たりの増加は0.08%(95%CI:0.05~0.12)で、心不全例の退院後死亡率の全体の年間絶対増加率を上回っていた。 また、死亡増加は経過観察病棟やEDではみられなかった。 一方で、30日再入院率の低下とともに、経過観察病棟での滞在やEDの受診は、全3症状ともに、退院後30日間およびそれ以降の期間についても増加していた。しかし、退院後30日間の急性期治療の全利用について、有意な変化はみられなかった。症状別にみると、急性心筋梗塞を除き、心不全例と肺炎例では有意に低下していた。 著者は「死亡の増加は、プログラムの公表前に起きていたもので、退院後急性期治療を受けていない患者に集中しており、その患者の半数の退院先はホスピスであった」と述べるとともに、「退院後、経過観察病棟とEDの利用は増加したが、これら部門での治療と死亡リスク増大に関連性はみられなかった」としている。

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聴診器を消毒していますか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第155回

聴診器を消毒していますか?ぱくたそより使用ラエンネックが聴診器を発明してから、約200年が経ちましたが1)、臨床でまだまだ活躍している聴診器。形状や性能は進化しましたが、まさか自分が開発したものが200年先まで使われているとはラエンネックも予想していなかったでしょう。さて、聴診器を介して病原微生物がアウトブレイクすることはまれな現象と思いますが、明らかに接触感染対策が必要とされる患者さんでも、消毒されていないことがしばしばあります。聴診器が微生物によって汚染されるのは間違いないので、できる限りこまめに聴診器を消毒したいものです。聴診器、血圧計のマンシェット(カフ)などのノンクリティカル器具は、はっきりと目に見える汚染がなくとも、患者ごとにアルコール系消毒薬注で清拭を行うべきというのが世界的な常識です。さて、聴診器の消毒ってどのくらいの頻度で行われているのでしょうか? 過去の文献をいくつかひも解いてみると、ある事実が見えてきました。Bukharie HA, et al.Bacterial contamination of stethoscopes.J Family Community Med. 2004 Jan;11(1):31-3.サウジアラビアのとある病院のスタッフから集めた100本の聴診器を調査したところ、消毒頻度は毎日が21%、週に1回が47%、年に1回が32%という散々な結果でした。毎日消毒していない人が8割近くいるということになります。とくに医師30人のうち、15人(50%)は「一度も消毒したことがない」と回答していました。Merlin MA, et al.Prevalence of methicillin-resistant Staphylococcus aureus on the stethoscopes of emergency medical services providers.Prehosp Emerg Care. 2009 Jan-Mar;13(1):71-4.これも救急部からの報告で、50本の聴診器を前向きに調べたところ、スタッフの32%は最後にいつ聴診器を消毒したのかさえ覚えていなかったそうです。スタッフが覚えている日が古いほど、聴診器はMRSAに汚染されやすいと報告されました。Tang PH, et al.Examination of staphylococcal stethoscope contamination in the emergency department (pilot) study (EXSSCITED pilot study).CJEM. 2011 Jul;13(4):239-44.3施設の救急スタッフ100人の聴診器を調べた前向き観察コホート研究です。患者さんを診察する前後で消毒できていたのは、全体の8%だけだったそうです。Saunders C, et al.Factors influencing stethoscope cleanliness among clinical medical students.J Hosp Infect. 2013 Jul;84(3):242-4.医療先進国であるイギリスの医学校では、回答者の22.4%は聴診器を一度も消毒したことがなく、すべての患者診察の後に聴診器を消毒していたのは、わずか3.9%という結果でした。Sahiledengle B.Stethoscope disinfection is rarely done in Ethiopia: What are the associated factors?PLoS One. 2019 Jun 27;14(6):e0208365.エチオピア21施設576人の医療従事者に対する調査によると、39.7%は聴診器使用後に毎回消毒を実施していました。しかし、34.6%はまったく消毒していなかったそうです。消毒の習慣すらない人がかなり多いことが示されました。Bansal A, et al.To assess the stethoscope cleaning practices, microbial load and efficacy of cleaning stethoscopes with alcohol-based disinfectant in a tertiary care hospital.J Infect Prev. 2019 Jan;20(1):46-50.インドの三次医療施設における調査では、62人の医療従事者のうち53%が「消毒をしたことがない」と回答しました。消毒の習慣がない、ではなく、したことがないというのです。さて、いろいろな文献を紹介しましたが、要は「みんな聴診器ほとんど消毒しないじゃん!」ということです。時間もないし、面倒くさいんですね、たぶん。これらは、われわれも身につまされるデータではないでしょうか。1)Atalic B. 200th Anniversary of the Beginning of Clinical Application of the Laennec's Stethoscope in 1819. Acta Med Hist Adriat. 2019 Jun;17(1):9-18.

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ASCO- GI 2020現地速報 消化器がん

インデックスページへ戻る2020年1月23日から25日まで開催されるASCO-GI2020 の重要トピックを、関西医科大学 佐竹 悠良氏が現地サンフランシスコからオンサイトレビュー。現地サンフランシスコからオンサイトレビューレポート一覧消化器がんレポーター紹介インデックスページへ戻る

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