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糖尿病併存のCOVID-19治療、入院時のシタグリプチン投与が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、高血圧症や糖尿病などの併存疾患を有する患者で転帰不良となることがこれまでの研究で明らかになっており、併存疾患に応じた治療を模索する必要がある。イタリア・パヴィア大学のSebastiano Bruno Solerte氏らは、COVID-19治療のために入院した2型糖尿病患者を対象に、標準治療(インスリンなど)にDPP-4阻害薬シタグリプチンを追加したケースと、標準治療のみのコントロールを比較する多施設後ろ向きケースコントロール研究を行った。その結果、シタグリプチン追加群で死亡率の低下と臨床転帰の改善がみられた。Diabetes Care誌オンライン版2020年9月2日号に掲載。 本研究では、2020年3月1日~4月30日、北イタリアの複数の医療機関においてCOVID-19治療のために入院した、連続した2型糖尿病患者338例について、標準治療にシタグリプチンを追加した169例(シタグリプチン追加群)を、年齢・性別をマッチさせた169例(標準治療群)と比較した。主要評価項目は退院、死亡、臨床転帰の改善(7段階の評価スケールで、2ポイント以上の増加と定義)とした。 その結果、シタグリプチン追加群では、標準治療群に比べ死亡率の低下(18% vs.37%、ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.29~0.66、p=0.0001)、臨床転帰の改善(60% vs.38%、p=0.0001)および退院者数の増加(120例 vs.89例、p=0.0008)がみられた。 著者らは、本研究で入院時のシタグリプチン治療が死亡率低下および臨床転帰の改善に寄与することが示されたが、進行中のランダム化プラセボ対照試験においてさらなる検証が必要であるとしている。

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ミズイボへの新規外用剤、有効性・安全性を確認

 子供に多いことで知られるウイルス性皮膚感染症、いわゆるミズイボへの新規外用剤VP-102の、第III相臨床試験の結果が報告された。VP-102は、1回使い切りタイプの独自の薬剤送達デバイスで、カンタリジン0.7%(w/v)を含有する局所フィルム形成溶液を病変部に塗布するというもの。病変塗布部が区別しやすいよう外科用染料ゲンチアナバイオレットが使われ、また苦味を加味して潜在的な経口摂取の防止が図られているという。今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが、2歳以上の伝染性軟属腫(MC)患者への有効性と安全性を検討した2件の第III相臨床試験の結果を報告した。いずれの試験でもVP-102はビヒクル(プラセボ)と比較して、試験終了時のMCの完全消失率が有意に優れており、有害事象は概して軽度~中等度で塗布部に限定されたものであることが明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「VP-102は、米国食品医薬品局(FDA)による承認治療薬がない一般的な皮膚症状であるMCについて、潜在的に有効で安全な治療薬であることが示された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年9月23日号掲載の報告。 2件の第III相臨床試験は、同一試験デザインの無作為化二重盲検ビヒクル対照にて、米国の31医療施設で行われた(Cantharidin Application in Molluscum Patients[CAMP-1とCAMP-2])。 2歳以上のMC患者計528例が参加。CAMP-1は2018年3月21日~11月26日に、CAMP-2は2018年2月14日~9月26日に実施された。 被験者は無作為に3対2の割合で、VP-102を局所塗布する群(VP-102治療群)またはビヒクルを局所塗布する群(ビヒクル群)に割り付けられた。病変の完全消失または最大4回塗布まで、21日ごとの受診時にすべての治療病変に塗布が行われた。 主要有効性アウトカムは、すべてのMC病変が完全消失したVP-102治療群の患者割合で、84日の時点での最終受診時にビヒクル群と比較評価した。有効性はintent-to-treat集団にて解析した。 副次有効性アウトカムは、21日、42日、63日の各時点でのMC完全消失率などであった。安全性アウトカムは、予測された局所の皮膚反応を含めた有害事象の評価が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・528例の登録患者のうち、527例が治療を受けた(CAMP-1:265例、CAMP-2:262例)。267/527例(50.7%)が男児で、VP-102治療群の平均年齢(SD)はCAMP-1が7.5(5.3)歳、CAMP-2が7.4(8.0)歳、ビヒクル群はそれぞれ6.3(4.7)歳、7.3(6.7)歳であった。・VP-102治療群は、ビヒクル群に対して、最終受診時のMC病変完全消失達成患者の割合でみた有効性が優れていることが示された(CAMP-1[VP-102群46.3% vs.ビヒクル群17.9%、p<0.001]、CAMP-2[54.0% vs.13.4%、p<0.001])。・有害事象は、VP-102群では99%(CAMP-1)および95%(CAMP-2)、ビヒクル群は73%(CAMP-1)および66%(CAMP-2)で観察された。・最も頻度の高い有害事象は、塗布部の小胞、疼痛、かゆみ、紅斑、痂皮であり、ほとんどの有害事象の重症度は軽度~中等度であった。

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4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを大幅に低減/NEJM

 スウェーデンの10~30歳の女児および女性は、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低く、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJiayao Lei氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。これまでに、子宮頸部高度異形成(Grade2または3の子宮頸部上皮内腫瘍[CIN2+、CIN3+])の予防における4価HPVワクチンの効能と効果が確認されている。一方、4価HPVワクチン接種と接種後の浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を示すデータはなかったという。全国的な登録データを用いたコホート研究 研究グループは、スウェーデンの全国的な登録データを用い、HPVワクチンと浸潤性子宮頸がんリスクの関連を評価するコホート研究を行った(スウェーデン戦略研究財団などの助成による)。 解析には、2006~17年に経時的に登録された10~30歳の女児および女性の集団(167万2,983人:4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した群52万7,871人、非接種群114万5,112人)のデータが含まれた。 子宮頸がんの発生は、31歳の誕生日を迎えるまで評価が行われた。フォローアップ時の年齢、暦年、居住県、親の因子(学歴、世帯所得、母親の出生国、母親の病歴など)で調整したうえで、HPVワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスクとの関連を評価した。83.2%が17歳以前に接種開始 ワクチン接種群のうち、43万8,939人(83.2%)が17歳になる前に初回の接種を受けていた。研究の期間中に、ワクチン接種群で19人、非接種群では538人が子宮頸がんの診断を受けた。 30歳までの子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種群の女性では10万人当たり47件であり、非接種群では10万人当たり94件であった。17~30歳の間にワクチン接種を開始した女性では、30歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり54件、17歳になる前に接種を開始した女性では、28歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり4件であった。 フォローアップ時の年齢で補正すると、ワクチン接種群の非接種群に対する発生率比は0.51(95%信頼区間[CI]:0.32~0.82)であった。さらに暦年と居住県、親の因子を加えて補正すると、発生率比は0.37(0.21~0.57)となった。 すべての共変量で補正した場合の発生率比は、ワクチン接種を17歳になる前に受けた女性で0.12(95%CI:0.00~0.34)、17~30歳で受けた女性では0.47(0.27~0.75)であった。また、20歳になる前にワクチン接種を受けた女性は0.36(0.18~0.61)、20~30歳で受けた女性は0.38(0.12~0.72)だった。 著者は、「4価HPVワクチン接種は、HPVワクチン接種プログラムの最終的な目的である浸潤性子宮頸がんのリスク低減を達成した」とし、「これらの結果は、ワクチン接種は既存のHPV感染症に対する治療効果はないため、最大の効果を得るには、HPV感染症への曝露前における4価HPVワクチンの接種を推奨する見解を支持するものである」と指摘している。

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心房細動治療が変わるEAST-AFNET 4試験(解説:高月誠司氏)-1294

 心房細動に対する治療方針として、リズムコントロールとレートコントロールを比較したランダム化試験が約20年前にいくつか行われ、リズムコントロールの優位性は示せなかった。その後心房細動のリズムコントロールの手段としてカテーテルアブレーションが発達したが、こちらも薬物療法と比較して予後を改善したという結果は、低心機能の心不全例を対象としたランダム化比較試験でのみ得られている。結局症状のない心房細動に対しては、レートコントロールで良いという根拠になっている。 本EAST-AFNET 4試験は、1年以内に発症した心房細動に対する治療方針をリズムコントロールとレートコントロールに分けて比較したランダム化比較試験である。対象は2,789人、年齢70.3歳、CHA2DS2-VAScスコア3.3点と比較的ハイリスクの患者を対象とした。結果的に主要エンドポイントである心血管死、脳卒中、心不全や急性冠症候群による入院の複合エンドポイントは、リズムコントロール群で3.9%/人年、レートコントロール群で5.0%/人年で有意にリズムコントロール群で少なかった(ハザード比:0.79、96%信頼区間:0.66~0.94、p=0.005)。 本試験は心房細動治療の臨床に大きな影響を及ぼす可能性がある。とくに日本では健康診断が盛んに行われており、そこで見つかった心房細動に対してどのように治療すべきかの指針はなく、心房細動のまま放置されるケースもあった。本試験ではそのような発症1年以内の心房細動に対しては、予後の改善を期してリズムコントロールをすべきであることを示した。心房細動は予後不良な疾患であるが、症状にかかわらずそれは早期に治療介入すべきであるということが示されたのである。

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ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

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音羽幼女殺害事件【なぜママ友の子どもを殺したの?人ごとじゃないわけは?】Part 1

今回のキーワードママ友付き合い摂食障害支配観念強迫性パーソナリティ障害ママ友文化幼稚園文化フレネミー良妻賢母皆さんは、二児の母親がママ友の2歳の女の子を殺したうえにその遺体を埋めて隠すことを想像できますか? これは、1999年に東京都文京区で実際に起こった音羽幼女殺害事件のことです。当時は、幼稚園や小学校への「お受験」と関係づけられ、「お受験殺人」とも呼ばれていました。その後、この事件をモチーフとして、小説「森に眠る魚」や、テレビドラマ「名前をなくした女神」などが生まれました。なんで殺してしまったのでしょうか? 恨み? 妬み? それとも? 当時の裁判では、犯行動機の解明のために、被告人質問が6回も行われました。これは、事実関係を争わない裁判では、かなり異例であったと言われています。なお、事実関係を争わなかったため、責任能力については問われませんでした。今回は、当時から20年の時を経て、ノンフィクション本「音羽幼女殺害事件」をはじめとする公判記録をもとに、その「心の闇」に精神医学的な視点で迫ります。いつもとは違い、シネマセラピーのスピンオフバージョン、症例検討セラピーです。この事件の動機の解明を通して、この事件が決して他人ごとではない訳を理解し、ママ友付き合いのより良いあり方を一緒に考えてみましょう。なお、この事件の加害者は、すでに刑期を終えています。よって、この記事ではMさんと表記します。また、被害児をHちゃん、被害児の母親をWさんと表記します。動機は憎しみ?(1)検察側の主張Mさん(事件当時35歳)とWさんは、事件が起きる5年前に、近所の公園で出会いました。当初は、2人の上の子が共に乳児であったことから、子どもを一緒に遊ばせるようになりました。その後、一緒に出かけることもたびたびあり、ママ友としてはかなり仲が良くなりました。Mさんは、「初めて心を許せる相手」と当時を振り返っています。そして、事件が起きる3年近く前、2人とも同時期に、下の子をそれぞれ出産しました。a. 嫌悪感事件が起きる2年半前、2人は、上の子を共に同じ幼稚園に入園させます。その後、Wさんは、もともと明るくオープンな性格であったこともあり、園のママ友が新しく増えていきました。1年半前から、そのママ友たちの子どもと自分の子を遊ばせるようになりました。一方、Mさんは、コミュニケーションが不器用で生真面目な性格であったため、園ママたちに気を遣って合わせることはあっても、新しく仲を深めるママ友はできませんでした。こうして、WさんはMさんと結果的に疎遠になっていきました。ところが、Mさんは、「自分の子どもを遊ばせてくれなくなった」「避けられた」「仲間外れにされた」と受け止めました。こうして、Mさんは、徐々にWさんへの嫌悪感を強めていきました。b. 競争意識Mさんは、「幼稚園のほかのお母さんから、いつもHちゃんと長女(下の子)が比較されるのがイヤだった」とも述べています。一方で、事件の8ヵ月前には、MさんがWさんを不意に自宅に招き、買ったばかりのひな人形を見せびらかしました。その後、MさんもWさんもそれぞれの夫に、関係がぎくしゃくしていることをたびたび打ち明けていました。事件の2日前、Mさんは、上の子の小学校受験のための貴重な問題集をWさんからの好意で譲り受けますが、「うちの子は小学校に入るまで勉強させない」と言ってお受験にはあまり関心がないように装いました。実際には、夫や実母の証言によると、上の子の小学校受験、下の子の幼稚園受験にはかなり熱心であったことが判明しています。事件の前日には、姓名判断の記事を読んで、自分の長女よりHちゃんの名前のほうが良い画数だと目つきを変えて夫に訴えていました。Mさんは、Wさんに対して競争意識がかなりありました。事件の当日、Mさんは、上の子の幼稚園のお迎えの際、たまたま境内(園内)の片隅で一人で遊んでいるHちゃんを見つけました。Mさんは、即座にHちゃんを人気のないトイレに連れていき、Hちゃんが身に付けているマフラーでそのまま首を絞めて殺害しました。その後、持っていた大きなバッグにHちゃんを入れて、遠方の田舎町の実家まで行き、裏庭に埋めました。その後、Mさんが実家の母親に打ち明けたことから、母親がMさんの夫に打ち明け、最終的には、夫の後押しによってMさんは事件の3日後に自首しました。(2)検察側の論告の要旨Mさんは、Wさんに対して、嫌悪感に加えて競争意識を持ったことから、一方的に邪推して憎悪をつのらせ、殺意を抱いた。しかし、実際には殺害が難しいため、母親と一体ともいうべきHちゃんに殺意を向けた。Hちゃんを殺害することで、Wさんに対する憎悪を晴らし、交際を断つこともできると考え、殺害を実行した。その動機は、身勝手で理不尽極まりない。(3)精神医学的な考察MさんとWさんは、年齢が2歳差で近く、近所に住んでいます。家族構成もほぼ同じで、上の子の幼稚園への送り迎えで毎日顔を合わせます。しかし、もともと2人の性格は真逆です。決して相性は良くないにもかかわらず、生活環境をはじめとする共通点が多かったため、ママ友付き合いが続きました(社会的交換理論)。これは、実際によくあるママ友の関係性です。しかし、人間関係というものは、時間をかけることで、より相性が良い者同士に選別されていくものです。WさんがMさんと疎遠になっていったことは、ごく自然なことで、時間の問題にすぎませんでした。Mさんは、その事実を受け入れられず、差別的に扱われたと思い込み(被害念慮)、Wさんが悪いと決め付けていきました(自己正当化)。また、Mさんは「比較されるのがイヤだった」と言いつつ、姓名判断についてまで、自分の長女とHちゃんと張り合わせていました。これも、実際によくあるママ友の葛藤です。子どもの成長に伴い、たとえば、子どもの容姿、発達のスピードなどを細かく比べて、一喜一憂するようになっていくことです(比較癖)。こうして、自己正当化や比較癖から嫌悪感や競争意識が生まれました。これらは、恨みと妬みの心理と言い換えられます。ただし、ここで大きな疑問が残ります。この心理だけで、殺害までできるものでしょうか? Mさんは、非行を含む前科前歴はもちろんないです。Hちゃんと同じ2歳の長女の子育てをしており、ごく普通の主婦に見えます。仮にこの心理があったとしても、それだけでは嫌がらせのレベルでとどまるでしょう。たとえば、ドラマ「名前をなくした女神」では、匿名で誹謗中傷の手紙を書いたり、お受験の入学辞退のなりすましが描かれていました。もちろん、Mさんが嫌がらせをできないくらい不器用だった可能性もあります。しかし、いきなり殺害するには、あまりにも飛躍しています。何よりも、これまでの犯罪でほかに例がないです。だからこそ、犯行動機に当時の人たちの関心を集めました。次のページへ >>

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音羽幼女殺害事件【なぜママ友の子どもを殺したの?人ごとじゃないわけは?】Part 2

動機は執着?(1)弁護側の主張動機の解明には、Mさんがもともとどういう人なのかをもっと詳しく知る必要があります。そのため、心理カウンセラーが弁護側の証人となりました。以下がその心理分析です。a. 良い子になりきるMさんは、ある田舎町の農家の大家族の長女として生まれ育ちました。その家族構成は、両親、妹、父方の祖父に加えて、その祖父の後妻の祖母(Mさんにとっては義理の祖母)、その子ども2人(Mさんにとっては叔父と叔母)でした。義理の祖母が家計の権限を握っていたことに加えて、父と叔父のどちらが跡取りになるかの問題で、家の中はもともと緊張感がありました。Mさんは、子どもながらに、争いごとに巻き込まれないために、そしてあら探しをされないために、常に礼儀正しく勉強のできる「良い子」になりきりました。小学生の時は、祖父や義理の祖母が近所の人に両親の悪口を言っていると、自発的にその内容をすべてメモして、両親に渡していました。中学生になると、学級委員も務める優等生で、担任教師との交換ノートには、教師が不在の教室で騒ぐ男子生徒のリストを密告していました。ところが、その担任教師は、そのノートを見ながら、その男子生徒たちに厳しく注意をするというミスをしてしまいます。Mさんは、男子生徒たちから「格好をつけて告げ口した」と非難されます。そのことで、「良い生徒」としての自信を失い、人目をますます気にするようになりました。Mさんは、「全然関係のない人たちのいるところに行きたい」という気持ちから、高校は、遠方の高校にわざわざ遠距離通学をしていました。その後、他県の短大の看護科に進学し、アパート暮らしを始めました。そして、その頃、摂食障害が始まります。拒食と過食によって10kgの体重の増減がありました。短大卒業後は、出身県に戻ってその大学病院に就職しましたが、「いつも頭の中が食べ物のことでいっぱい」との理由で、1ヵ月で退職しました。その後は、実家で引きこもり、過食が多くなり、体重は20kg増加しました。父親への暴言や暴力もありました。引きこもりの1年後には、風邪薬の過量服薬による自殺企図をしました。幸いにも、これが契機となって、食事コントロールの意識が高まっていきました。引きこもりから2年近く経った22歳の時、総合病院に再就職しました。看護カルテを丁寧に書き、休日は精神障害者の共同作業所でボランティアをするなど、「良い看護師」に徹していました。また、当時から仏教サークルにも通っていました。しかし、同僚から過食嘔吐のやり方をたまたま聞いてしまったことで、自己誘発性嘔吐を覚えてしまい、摂食障害は悪化しました。そして、再就職から6年後の28歳の時、睡眠薬の過量服薬による2度目の自殺企図をしました。その後、Mさんが仏教セミナーで知り合った僧侶に自己啓発セミナーの勧誘をしたことで、その男性と親しくなり、29歳の時、看護師を辞めて、結婚し、上京しました。そして、夫が勤務する寺で、パート勤務を始めました。30歳の時に、長男が生まれました。忙しさとあいまって、生活環境が変わったことで、いつの間にか過食嘔吐をしなくなり、摂食障害は回復していきました。b. 良いママ友になりきるしかし、夫(副住職)とその上司(住職)の関係が悪いことを知り、関係を取り持つために、寺の仕事を積極的に行い、体調不良でも休まず、「良い副住職夫人」になりきりました。Wさんと出会ってからは、実は基本的に彼女に気を遣い、彼女のやり方に合わせていました。Mさんは「良いママ友」にもなりきりました。また、Mさんは、子どもが「良い子」にしていない時には、とくにWさんの前で手を上げていました。その後、Mさんは、Wさんとの関係がだんだんと煮詰まっていく中、「MさんがWさんと仲違いした」とほかのママ友から思われたくないために、距離は取ろうとしませんでした。事件の8ヵ月前に、Wさんにひな人形を見せたのも、Mさんなりに仲直りができないかと模索した結果だったのでした。つまり、「良い園ママ」にもなりきろうとしていました。当然ながら、その努力がMさんをますます苦しめます。当時、Mさんは夫に転居や転園の相談をしています。しかし、夫が職場から遠くなる点や、子どもが幼稚園に馴染んでいる点で、現実的ではないと夫に諭されます。Mさんは、それ以上は訴えなかったのでした。その後、Mさんは、近所のWさんのマンションの自転車置き場に行き、Wさんの自転車があるか確認するようになりました。事件の2、3ヵ月前には、Mさんは子ども2人を自転車に乗せて、あちこちの公園に行き、「なんでこんなことをするのか自分でもおかしい」と思いつつ、Wさんの居場所を探し回ることが10回以上あったと述べています。その結果、Wさんに鉢合わせることもありました。事件の1ヵ月前には、Mさんは夫に「私が犯罪者になったらどうする?」と漏らします。しかし、それ以上、話そうとせず、会話はうやむやになりました。Mさんは「良い妻」にもなりきろうと無理をしていたのでした。そして、事件は起きたのでした。裁判でMさんは、「ただとにかくWさんがいなくなればいい」「Wさんを苦しめるのが目的ではない」「Hちゃんを殺しても、Wさんがいなくなるわけではないということは、当たり前なのだけれども、そのとき私の頭の中では、ごちゃごちゃになってわけが分からなくなっていた」と述べています。(2)弁護側の最終弁論の要旨MさんはWさんのことに頭をめぐらせ、強迫観念にさいなまれ続けていた。動機の形成に、摂食障害に発する強迫性障害という病的な心理が大きな影響を及ぼしている。Mさんではなく、Hちゃんを殺害したのは、八つ当たり(置き換え)の心理機制が働いていた。Mさんは、病的な心理の自覚がなかった。犯行直前には、子ども2人の入園・入学の準備のストレスが加わり、抑うつ状態に陥り、突発的に犯行に至った。恨みや妬みが直接的な動機ではない。(3)精神医学的な考察a. 摂食障害Mさんは、複雑な家庭環境によって、心休まる居場所(安全基地)がなかったことが想像できます。その生い立ちが、他人に対して弱みを見せられず(自尊心の低さ)、他人と親しくなるのが苦手な性格の一因になった可能性があります(親密性の低さ)。一方で、規範意識が強く、周りの目(主流秩序)を気にして、がんばりすぎる性格の一因になった可能性もあります(過剰適応)。Mさんが看護師という職業を選んだのは、単純に患者を助けたいという思いよりも、弱い立場の患者なら比較的に安心して接することができるという思いがあったでしょう。なお、低い自尊心と過剰適応は、摂食障害を発症する根っこのパーソナリティとして典型的です。「良い子」を演じるために自分の思い通りに生きていないのですが、唯一思い通りになるのが体重だと知り、体重を減らせることで、コントロール感を得ようとするのです。さらには、「良いダイエット実践者」であると思い込んでしまうのです。ただし、摂食障害は、5年前から回復しており、事件との直接的な関係はないと言えます。b. 支配観念心理分析には、明らかな誤りもあります。MさんがWさんのことに常に頭を巡らすという執着は、強迫観念ではなく、支配観念です。強迫観念は、不潔さや不完全さなどの抽象的なことへの了解不能な心の囚われです。一方、支配観念は、特定の個人や出来事などの具体的なことへの了解可能な心の囚われです。Mさんが頭を巡らすのは、Wさんという特定の個人に限定されており、その主な内容は恨みや妬みという了解可能なものです。これはまさに支配観念です。よって、強迫性障害とは診断できないです。そもそも当時の診断基準(ICD-10、DSM-IV)に照らし合わせても、まったく当てはまりません。また、「抑うつ状態」とも言えないです。その根拠は、殺害から死体遺棄までの流れが、あまりにも手際良いからです。また、翌日には長男の小学校受験の手続きをしているからです。抑うつ状態であれば、誰にも悟れられずに死体遺棄まですることも、日常生活を維持することも難しいでしょう。なお、心理分析をした心理カウンセラーは、当時メディアに出ている著名人であり、「母親の心理にくわしい」との理由で証人になりました。ただし、臨床心理士(1988年から認定開始)ではないです。無資格の自称「心理カウンセラー」が世間に注目される事件の裁判で、精神障害の診断まで下してしまうところに、時代性を感じます。c. 強迫性パーソナリティ障害Mさんは、その生真面目さ(完璧主義)、我慢強さ(過剰適応)、堅苦しさ(親密性の低さ)から、強迫性パーソナリティ障害と診断できるでしょう。ただし、これは強迫性障害とは違い、あくまで性格の偏りを説明したものにすぎません。よって、パーソナリティ障害と診断されたからと言って、量刑に影響を与えることはないです。Mさんの強迫性パーソナリティ障害による問題点は、その生真面目さから「良い子」「良い生徒」「良い看護師」「良い妻」「良い夫人」「良いママ友」「良い園ママ」になりきろうとして無理をしている点です。実際に、その破綻が、進学や就職で各地を転々とする結果を招いています。また、摂食障害の発症、引きこもり、父親への暴言・暴力、自殺未遂を招いています。また、その頑固さから、Mさんは、弁護人の質問に対して「(人付き合いが)下手だとは思いません。わりあい誰とでも上手に付き合えるほうだと思います」と言い切っています。「(Wさんの家がうらやましいと思ったことは)まったくありません」と完全否定しています。最後は、本人なりの「良い被告」になりきっていたのかもしれないです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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音羽幼女殺害事件【なぜママ友の子どもを殺したの?人ごとじゃないわけは?】Part 3

動機は懲らしめ?(1)判決検察側は、有期刑の最長の18年を求刑しました。一審の判決で、Mさんは懲役14年となりました。そして、検察側が控訴した控訴審の判決で、懲役15年が確定しました。量刑の判断において、自首をした点や、犯行の事実関係を隠すことなく述べた点が酌量すべき情状とされました。一方、控訴審の判決で量刑が重くなった主な理由として、犯行の悪質性と被害者感情を重視した点が挙げられています。(2)精神医学的な考察a. なんで執着したの?-ストーカーの心理公判中には、Mさんは、犯行動機については多くを語らないわりに、Wさんとの関係については饒舌に語っていました。それが、Wさんを悪く言っている態度となり、裁判官への心証が悪くなっていました。本来、情状酌量のために反省の態度を見せたいと思えば、Wさんのことは悪く言わないのが得策と判断します。それができないのは、もちろんMさんの強迫性パーソナリティ障害による頑固さや不器用さによるところがあります。そして、それ以上に、先ほどご説明した支配観念という執着によるところがあると考えられます。Mさんは、出会った当初のWさんへの印象を「初めて心を許せる相手」と述べていました。しかし、よくよく考えると、この発言は、20歳代前半まで若者の発想です。当時30歳を過ぎている点、仕事をしてきた点、結婚をしている点、子どもがいる点で、それなりに人生経験を積んでいるはずの女性が、この発言をするのはかなり短絡的でナイーブです。支配観念は、恨みや妬みだけでなく、恋愛感情や友愛感情も含まれます。つまり、Mさんは出会った時点で、恋愛感情と同じような執着のスイッチが入ってしまったと考えられます。関係がぎくしゃくしている中、Mさんが唐突にWさんを呼び出し、ひな人形を見せたのは、Mさんなりに何とか仲を取り戻したかった、彼女なりの友愛感情であったとも考えられます。Mさんの根っこの心理は、「こんなにあなたのことを気にかけているのに」「親友だと思っていたのに」という思いです。それなのに、「ほかのママ友と仲良くしている」「私の気持ちを分かってくれない」という愛憎入り混じる感情になっていたことが考えられます。これは、典型的なストーカーの心理です。Mさんの心理は、男女間の恋愛感情ではなく、ママ友間の友愛感情ですが、根っこの心理は同じです。MさんがWさんの居場所を探し回ったのは、元恋人を執拗に追い回すのと同じストーカー行為です。ストーカー行為の最悪の結果は、「自分がこんなに愛しているのに分かってくれない」と訴え、ストーカー殺人に至ることです。Mさんは、もともとWさんへの友愛感情が強かったと考えれば、それが裏切られたという恨みの気持ちから、殺意が芽生えたと想像するのは容易でしょう。判決文では、その心理を「自分本位な考え方に取りつかれたまま認識、判断、行動したものであって」「被告が一方的に反感や敵の感情を増殖・肥大させていった」と表現しています。なお、「こんなにしてあげてるのに」という一方的な思いは、子ども虐待、患者虐待、高齢者虐待にも通じる心理です。b. なんで距離をとれなかったの?-同調の心理判決文には、「Wさんに対する感情が殺意の念が浮かぶまで高まっていったという事態の深刻さについて、真剣に自省すれば、多様な対処手段がありえたにもかかわらず、結局は成り行きに任せ」と書かれています。確かに、夫は「幼稚園のお母さんたちとは、さっぱりした付き合いをすればいい」「だらだら遊んでないで、とっとと帰ってくればいい」と助言していました。しかし、公判で、Mさんは「正論ですけど、それができないから悩んでいるのを、分かってほしかった」と述べています。どういうことでしょうか?その理由は、主に3つあります。1つ目は、先ほどご説明した「良い園ママ」になりきろうとするMさんの生真面目さ(強迫性パーソナリティ障害)による同調の心理です。2つ目は、単独行動をしてはいけないというママ友同士の暗黙のルールによる同調圧力です。ママ友付き合いは、子育ての大変さを共感し合い、勇気付け合うというプラス面があります。一方で、夫が助言する「さっぱりした付き合い」をすれば、自分だけでなく、子どもまで仲間外れにされる恐怖があります。そういう意味では、子どもは「人質」とよく言われます。また、お受験や習い事などの情報を得ることもできなくなります。当時は、今と違ってインターネットがまだ普及していなかった事情もあります。これは、独特のママ友文化です。この詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。3つ目は、同調圧力を高める幼稚園のルールです。通わせていた幼稚園は、毎日の送迎をはじめとして親が参加する日課やイベントがとても多い特徴がありました。これは、親同士が親密になり、家族ぐるみで子どもの社会的な体験を豊かにするメリットはあります。一方で、そのデメリットは、Mさんのように一度仲違いしてしまっても、何かと顔を合わせて関わらなければならず、お互いの距離が取れなくなる危うさです。これは、独特の幼稚園文化です。この詳細についても、末尾の関連記事1をご参照ください。Mさんは、執着の自覚がありました。ストーカーは、自覚があるなら、自省して相手から離れようとします。ストーカーされる人も近付かないようにするでしょう。しかし、どうしても顔を合わせなければならないという独特のママ友文化や幼稚園文化の中、Mさんに残された選択肢は、引っ越しだけだったのでした。 c. なんでHちゃんを殺したの?-懲らしめの心理一審に続いて控訴審でも、「当初Wさんに向いていた殺意は、実行可能性がないとの理由から被害者(Hちゃん)に転化した」点を認定しています。端的に言うと、Wさんを殺せないから、代わりにHちゃんを殺したというのです。検察側も弁護側も、この点については認識が同じでした。一方で、控訴審の判決では、Mさんの「恨みを晴らす気持ちのほうが大きかったと思います」との供述を取り上げています。ただし、それでも「Wさんに死よりもつらい苦痛を与える気持ちがあったとは供述しておらず」と書かれています。また、「相手の大切なものを壊してしまえという感覚はなかった旨供述している」という点を取り上げています。そして、「被害者(Hちゃん)が殺害されれば、当然ながら、その結果からして母親(Wさん)が非常に悲嘆にくれることは明らかではあるものの、被告人(Mさん)が当初よりそれを意図して本件犯行を行ったものであるとは、上記のとおりこれを認めることはできない」と結論付けています。また、「競争心(妬み)が存在していたことを強調するのには疑問がある」として、妬みは犯行の主な動機として認めていないです。つまり、控訴審では、動機が恨みであると明確にしつつも、Wさんを悲嘆させる意図(動機)については認めませんでした。恨みはあるけど、懲らしめるつもりはなく、でも代わりに子どもを殺したということになります。この点は、精神医学的に考えれば疑問が残ります。その理由は主に3つあります。1つ目は、恨みと懲らしめの心理はつながっているからです。逆に言えば、懲らしめたいと思わない恨みの心理は、臨床的にほかに例が見当たりません。なお、懲らしめるという制裁の心理の詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。Wさんを懲らしめたいからこそ、計画的だったと考えられます。確かに、Hちゃんの殺害にあたっては、偶発的な要素が大きいです。しかし、Mさんは公判で「この時は、私が(Hちゃんを)連れ出せる条件がすべて揃っていました」と述べています。また、殺害から死体遺棄までの手際が良すぎます。やはり、最初からHちゃんの殺害と死体遺棄を計画していたことが示唆されます。また、Mさんが母親に打ち明けたのは、自首するためではなく、秘密を共有して味方になってもらうためでした。それを端的に表してるのが、母親から自首を勧められた時に、「私は35年間生きて、土壇場で裏切られた」と電話越しに泣き叫んだことです。この言葉に、Mさんの罪悪感は読み取れません。Mさんのシナリオは、Mさんなりの「被害者感情」による「正義」のもと、母親が味方になり、事件をやり過ごすことだったでしょう。そして、Hちゃんが行方不明になったことでWさんが悲嘆にくれるのを見届けることだったでしょう。2つ目は、悲嘆させて恨みを晴らすという「正義」があるからこそHちゃんを殺せるということです。もともと規範意識が強いMさんなら、動機としてなおさら理解できます。裏を返せば、「正義」がないのに、一介の二児のママが他人の幼児を殺す例はほぼないと言えるでしょう。なお、弁護側の心理カウンセラーから、八つ当たり(置き換え)の心理の説明がされていました。どうやら、裁判官はこれを採用したようです。しかし、これは無意識に働くレベルの心理です。殺人の計画は、無意識では不可能です。古今東西から、近親者や関係者を代わりに殺す例は、敵討ちや見せしめなどの意図がもともとあります。ちなみに、一介のママが自分自身の子どもを殺す例ならあります。それは、無理心中(拡大自殺)です。これは、集団主義による母子の一体化の強い日本でとくに見られます。3つ目は、悲嘆させてこそWさんがいなくなることです。ただHちゃんがいなくなっても、上の子同士は年長組でまだ幼稚園に通っています。悲嘆を想定していれば、Wさんは送り迎えに来なくなるので、顔を合わせることはなくなります。また、たとえWさんが来たとしても、悲嘆にくれたWさんなので、Mさんはその優越感から顔を合わせても良いと思えるでしょう。逆に言えば、Wさんの悲嘆を想定していなければ、MさんとWさんは顔を合わせることは続くわけですので、矛盾します。当時の検察側が、以上のような主張をした記録は見当たりませんでした。裁判官は、Mさんの言うことをそのまま受け止めたようです。結局のところ、懲らしめの心理は、Mさんにしか分からないです。もしかしたら、Mさん自身も「良い被告」になりきって、その心理を自覚しきれていなかったかもしれないです。究極的には、裁判官は、被告が懲らしめの動機を否定し続ける限りはその動機について認めることはできず、犯行の形式で量刑を評価するしかないのでしょう。 この事件の教訓は?Mさんの犯行の動機は、ストーカーの心理をもとに、同調の心理に追い詰められ、懲らしめの心理が決定打となったことが分かりました。それにしても、これらの1つ1つは、ママ友付き合いにおいては、決して珍しくない心理です。つまり、ママ友付き合いには、殺意を抱くほどの恐ろしいリスクがあることに気付かされます。もちろん犯行は明らかにMさん(個人因子)の責任です。しかし、Mさんを駆り立てた状況(環境因子)を見過ごすことはできません。それは、同調の心理を高めるママ友文化と幼稚園文化です。ここから、そのリスクをそれぞれ「ブラックママ」「ブラック幼稚園」と名付け、表1に具体的にまとめてみましょう。ちなみに、ママ友文化の危うさは、人間関係でトラブルを起こしやすい「フレネミー」の心理にもつながります。「フレネミー」の詳細については、関連記事3をご参照ください。 私たちの中の小さな「Mさん」この事件が決して人ごとではない点として、Mさんが良妻賢母を目指していたことにも注目する必要があります。子どものためにと良妻賢母になりきる危うさは、体裁を取りつくろう余りに、中身がなくなり、自分自身が何をしたいのか、何を目指してるかのかが分からなくなってしまうことでしょう。私たちの中にこの小さな「Mさん」がいることを自覚したとき、私たちの生き方、親としてのあり方を考え直す良いチャンスになるのではないでしょうか?<< 前のページへ■関連記事マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 1苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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セルメ税制の延長・拡大でスイッチOTC化は増える?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第55回

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用が所得控除できる制度で、5年間の特例として2017年に始まりました。あまり盛り上がることもなく若干忘れられつつある気がしますが、このセルフメディケーション税制が延長・拡大しそうです。厚生労働省は21年度税制改正要望をまとめた。(中略)セルフメディケーション税制は、2017年~2021年の5年間に限って適用が認められている。厚労省は「インセンティブ効果の維持・強化が重要で、政策効果の検証を引き続き実施することが必要」とし、「2022年から5年間の延長」(2026年まで)を求める。対象品目については既存制度の対象である「スイッチOTC薬」に加えて、「非スイッチOTC薬のうち、治療・療養に使用されるものも対象とする」ことを要望する。(RISFAX 2020年9月25日)期間の延長だけではなく、対象となる医薬品の拡大や所得税控除額上限の引き上げなども要望しています。昨年の調査では、セルフメディケーション税制の認知度は71.3%と高いものの、利用意向は11.0%と低調でしたが、これが実現するとずいぶん使いやすくなりそうです。また、5月には、内閣府の規制改革推進会議において、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大に向けた意見」が示され、スイッチOTC医薬品の開発や普及のための取り組みを求めるなど、セルフメディケーションに関する議論が活発化しています。スイッチOTCについてはもはや説明するまでもありませんが、医療用医薬品として用いられている成分を一般用医薬品へ転用することです。スイッチOTC化する成分については、以前は日本薬学会が候補成分を選定し、日本医学会などの関係医学会に意見を聞いたうえで了承していましたが、2015年6月の閣議決定を受けて、関連学会や団体、消費者などから候補成分の要望を受け付けて、医学・薬学の専門家などで構成される評価検討会議が議論、承認するという新しいスキームができました。この新しいスキームでは消費者の意見も反映されるため脚光を浴びました。しかし、実際に新しいスキームによって発売されたスイッチOTC医薬品は「フルコナゾール点鼻薬」の1成分のみです。この新しいスキームなるものは、スイッチOTC化を推進するどころか、結果的にスイッチOTC化をせき止めてしまったと言っても過言ではないかもしれません。この問題に着目した規制改革推進会議は、スイッチOTC化を推進するだけでなく、評価検討会議の役割の見直しなどセルフメディケーション全体を促進する仕組みを再構築する旨の意見を提出しています。セルフメディケーションの推進はもはや国策ですので、おそらく今後はスイッチOTC化が進むと想像できます。コロナもセルフメディケーションを推進国の政策とは別に、セルフメディケーションが進む要因として新型コロナウイルス感染症の流行も考えられます。医療機関への受診が抑制されたこともあり、軽い症状の場合は自宅での療養を選択する患者さんが多くなってきました。思ってもみなかったセルフメディケーションへの追い風で、受診しなくても購入可能なOTC医薬品の利用がさらに進むのではないかと思っています。これらの変化が実際にセルフメディケーションにどう影響するのか、そして販売する薬剤師の役割がどう変わるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。

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第29回 新型コロナウイルスはタンパク質生成3工程をどれも妨げてインターフェロンを抑え込む

ヒト細胞がウイルスの侵入を察知するとタンパク質生成の3工程―切り貼り(スプライシング)で成熟したmRNAの核外移行、リボソームでの成熟mRNA翻訳によるタンパク質製造、シグナル認識粒子(SRP)の働きによる細胞膜へのタンパク質誘導が稼働し、感染抑制と加勢要請の伝令役を担うタンパク質・インターフェロンが細胞外へと放たれます1)。とにかくインターフェロンが嫌いらしい新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はそれら3工程のどれも妨害する手立てを備えていることが先週8日にCell誌に掲載されたカリフォルニア工科大学(Caltech)Mitchell Guttman教授率いるチームの研究で明らかになりました1,2)。SARS-CoV-2が作るタンパク質はおよそ30種あり、Guttman教授のチームはそれらとヒト培養細胞の分子との相互作用を調べました。その結果、ウイルスタンパク質NSP16は3工程の最初の段階・mRNAスプライシングを妨害し、別のウイルスタンパク質NSP1はリボソームを目詰まりさせて第2工程のmRNA翻訳を妨害すると分かりました。それらの妨害をかいくぐってヒトタンパク質が作られたとしてもさらに2つのウイルスタンパク質NSP8とNSP9が行く手を阻みます。NSP8とNSP9はSRPの一部・7SL RNAに結合して細胞膜へのヒトタンパク質輸送を妨げます。そして、それら3工程の妨害はどれもウイルス感染へのインターフェロン反応を抑制すると分かりました。重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のインターフェロン応答は鈍いことが知られています1)。それに、1型インターフェロン伝達の不具合はCOVID-19の重症化に寄与するらしく、その感染予防にわれわれの体はどうやら他のウイルス感染予防に比べて1型インターフェロンをより頼りとしているようです3)。今回の研究でインターフェロン妨害の担い手が判明したことを受け、インターフェロン反応を底上げする治療薬が開発できそうです。たとえばリボソームRNAを標的とする低分子薬は多く存在し、ウイルスタンパク質NSP1とリボソームの18S rRNAの相互作用を阻害してCOVID-19防御を手助けする薬の開発が期待できます。また、SARS-CoV-2はなんと小賢しいことにNSP1による翻訳阻害がヒトmRNAにだけ及んで自前のウイルスmRNAには及ばないようにする通行手形のような仕組みを備えることも今回の研究で判明していますが、その仕組みを担うウイルスmRNA領域・SL1に結合してウイルスタンパク質生成を遮断する低分子薬の開発も可能でしょう。参考1)How SARS-CoV-2 Disables the Human Cellular Alarm System / Caltech (California Institute of Technology) 2)Abhik K, et al. Cell. 2020 October 08. [Epub ahead of print] 3)Hidden immune weakness found in 14% of gravely ill COVID-19 patients / Science

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FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360mg 3週間ごとイピリムマブ1mg/kg 6週間ごと投与。 今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。 世界肺学会(WCLC2020)で発表された結果によると、ニボルマブ・イピリムマブの全生存期間(OS)の中央値18.1ヵ月に対し、化学療法は14.1ヵ月であった(HR:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.002)。 盲検化独立中央評価委員会(BICR)によるPFS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ6.8ヵ月に対し、化学療法で7.2ヵ月であった(HR、1.00; 95%CI、0.82-1.21)。2年PFSは、ニボルマブ・イピリムマブ16%に対し、化学療法7%であった。

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内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性/日本感染症学会

 2020年8月に現地とオンラインのハイブリッド方式で開催された日本感染症学会学術講演会において、名古屋大学医学部附属病院の手塚 宜行氏(中央感染制御部)が「内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性」とのテーマで発表を行った。 手塚氏によると、小児感染症が成人と異なる事項は、以下の4点に集約される。1)年齢(月齢)によってかかる病気が変わる2)ウイルス感染症が多い 3)検体採取が困難なケースが多い4)病勢の進行が速い さらに小児感染症を診るときのチェックリストとして使う「R(A)IMS」という概念を紹介。これは以下の4つの視点から診療するという考え方だ。・R(Risk):基礎疾患の有無・I(Infected organ):感染臓器・M(Microbiology):原因微生物・S(Severity):重症度年齢月齢による違いは非常に大きい 小児感染症のリスク判断基準において、基礎疾患の有無が重要となるのは成人と同様だが、小児特有なのが月齢年齢差による違いだ。例として1998~2007年の米国コホート研究による細菌性髄膜炎の起炎菌についての研究では、新生児ではGBS(B群溶血性連鎖球菌)が多いが、1~3カ月児では腸内細菌科細菌が増え、3カ月~3歳児では肺炎球菌の割合が高くなり、3歳~10歳児以上では大半が肺炎球菌になるなど、年齢に応じて起炎菌の発生頻度が劇的に変化することを紹介した。また、「1年に2回以上肺炎にかかる」「気管支拡張症を発症する」など10のワーニングサインにあてはまるときは、原発性免疫不全症が隠れている可能性があるため、注意して診察する必要がある。本人からの病歴聴取が困難なケースも 感染臓器については、病歴聴取と身体診察から推定する流れは成人と変わらないものの、本人から病歴聴取できないことが多い点、家族や保育園からの感染が多くSick contactの把握が非常に重要となる点が成人と異なり、母子手帳から予防接種歴や育児環境情報を把握することが肝要とした。身体診察においても本人が症状を訴えられないことが多いため、保護者の協力を得ることが大切となり、小児に特徴的な部位である大泉門・小泉門などから重要な所見が得られることも多いという。 さらに、小児で見つけにくい感染臓器としては、尿路感染症、固形臓器の膿瘍(急性巣状性細菌性腎炎など)、関節炎・骨髄炎(とくに乳児)、髄膜炎・脳膿瘍(とくに新生児・乳児)、副鼻腔炎、潜在性菌血症などがあり、こうした疾患は兆候から見つけることは難しく、「見つけに行く」姿勢で診察することが重要とした。中でも潜在性菌血症は成人ではほぼ見られないが、結合型ワクチン導入前は、生後3~36カ月の小児における局所的異常のない原因不明の39度以上の発熱がある症例の約3~5%に認められており、無治療の場合は髄膜炎に至る可能性もある。ワクチン導入後の症例数は減っているものの、可能性は頭に入れておくべきという。ウイルス由来が大半だが、注意すべき細菌も 小児疾患はウイルス由来が多いが、日本がほかの先進国に比べてワクチン導入が遅れるという、いわゆる「ワクチンギャップ」は解消されつつあり、多くの小児感染症がワクチンによって感染・重症化予防できることが実証されつつある。小児感染症で注意すべき細菌は多くはないが、肺炎球菌とインフルエンザ菌は成人と比べて想定頻度が極めて高く、百日咳菌は新生児・乳児において重症化し、致死的な場合もあるので注意が必要だという。一方、クロストリディオイデス・ディフィシル菌は、小児の場合には保菌しても発症しないことが多く、多くの場合検査も不要だ。重症化はバイタルサインよりも「見た目」重視で 重症度に関しては、小児のバイタルサインは月齢年齢での変化が大きく、正常値の幅も大きいため、外観や皮膚の色、呼吸といった「見た目」を重視すべきという。 手塚氏は「感染症診療の原則である『感染臓器・原因微生物・抗菌薬をセットで考える』ことは小児でも成人でも同じ。あとはここで紹介した小児特有の事項さえ抑えておけば、内科の先生でも問題なく診察できるはず」とまとめた。

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双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。 本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・3件の研究(1,223例)を分析した。・LURとOLZの奏効率は、プラセボよりも優れていたが、QUE-XRは差が認められなかった。 ●LUR:リスク比(RR)=0.78、95%CI:0.66~0.92 ●OLZ:RR=0.84、95%CI:0.71~0.99 ●QUE-XR:RR=0.87、95%CI:0.73~1.03・寛解率は、LUR、OLZ、QUE-XRともに、プラセボよりも優れていた。 ●LUR:RR=0.90、95%CI:0.83~0.98 ●OLZ:RR=0.87、95%CI:0.77~0.99 ●QUE-XR:RR=0.84、95%CI:0.73~0.98・MADRS合計スコアも、各抗精神病薬ともに、プラセボよりも優れていた。・中止率は、各抗精神病薬とプラセボとの間に差は認められなかった。・それぞれの抗精神病薬において、プラセボと比較し、発生頻度の高かった有害事象は以下のとおりであった。 ●LUR:アカシジア、体重増加、プロラクチン上昇 ●OLZ:傾眠、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 ●QUE-XR:錐体外路症状、アカシジア、傾眠、口渇、便秘、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 著者らは「双極性うつ病に対する第2世代抗精神病薬による治療の有効性は、3剤ともに同程度であるものの、安全性プロファイルに違いがあることが示唆された」としている。

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食道がん、食道胃接合部がんに対するニボルマブの術後補助療法(CheckMate-577)/ESMO2020

 米国・ベイラー大学のRonan J. Kelly氏は、術前補助化学放射線療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった切除可能な食道がん・食道胃接合部(GEJ)がんの切除後の術後補助療法でニボルマブ投与とプラセボ投与を比較した無作為化二重盲検第III相臨床試験であるCheckMate-577試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2020 Virual Congress 2020)で発表。ニボルマブによる術後補助療法は、プラセボと比較して統計学的に有意な無病生存期間(DFS)の延長を認めたと報告した。・対象:術前補助化学放射線療法でpCRが得られなかったStageII~III食道、GEJがん(PS 0~1)794例。・試験薬群:ニボルマブ240mg 2週間ごとに16週間投与後480mg 4週間ごと投与(ニボルマブ群、532例)・対照群:プラセボ(プラセボ群、262例)・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、1年OS率、2年OS率、3年OS率 主な結果は以下のとおり。・DFS中央値は、ニボルマブ群が22.4ヵ月、プラセボ群が11.0ヵ月で、ニボルマブ群で有意な延長を認めた(HR:0.69、96.4%CI:0.56~0.86、p=0.0003)。・全Gradeでの治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、ニボルマブ群が71%、プラセボ群が46%であった。Grade3/4のTRAEにおよる治療中止はニボルマブ群が13%、プラセボ群が6%であった。・ニボルマブ群での主な免疫関連有害事象は内分泌関連や消化器症状で、Grade3/4のものはいずれも発現率が1%未満だった。・EQ-5D-3LによるQOL評価でニボルマブ群はプラセボ群とほぼ同程度だった。 Kelly氏は今回の結果を受けて「対象となった患者集団の治療としては過去数年で初めての前進であり、ニボルマブによる術後補助療法は新たな標準治療として確立される可能性がある」と強調した。

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アテゾリズマブ単剤、NSCLC1次治療でOS延長(IMpower110)/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、アテゾリズマブ単剤はプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、組織型を問わず、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現量が多い患者の全生存(OS)期間を延長させることが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏らが行った「IMpower110試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。PD-L1発現NSCLCで転移のある患者の1次治療において、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブはプラチナベースの化学療法と比較して、有効性と安全性が優れるか否かは明らかにされていなかった。PD-L1発現量が多い集団のOS中間解析 研究グループは、EGFRとALKが野生型で転移のあるPD-L1陽性NSCLCにおけるアテゾリズマブの有用性を評価する国際非盲検無作為化第III相試験を実施した(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。今回は、PD-L1発現量が多い患者におけるOSの中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、化学療法歴がなく、SP142による免疫組織化学法でPD-L1の発現が腫瘍細胞の1%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上に認められ、転移のある非扁平上皮または扁平上皮NSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であった。 被験者は、アテゾリズマブ(1,200mg、静脈内投与)またはプラチナ製剤ベースの化学療法(4または6サイクル)を3週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。 主要評価項目はOS期間とした。OSの評価は、EGFR変異やALK転座がない野生型の腫瘍を有する患者のintention-to-treat集団において、PD-L1の発現量別に階層的に行った。また、EGFRとALKが野生型の腫瘍を持つ集団の血液中の腫瘍遺伝子変異量に基づくサブグループで、OS期間と無増悪生存(PFS)期間を前向きに評価した。OS期間が7.1ヵ月、PFS期間が3.1ヵ月延長 2015年7月~2018年2月の期間に、日本を含む19ヵ国144施設で、無作為割り付けが行われた。572例が登録され、アテゾリズマブ群に285例、化学療法群には287例が割り付けられた。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループ(205例)では、フォローアップ期間中央値15.7ヵ月の時点におけるOS期間中央値は、アテゾリズマブ群が化学療法群よりも7.1ヵ月長かった(20.2ヵ月vs.13.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.40~0.89、p=0.01)。1年OS率は、アテゾリズマブ群が64.9%、化学療法群は50.6%だった。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループでは、PFS期間もアテゾリズマブ群で良好であった(8.1ヵ月vs.5.0ヵ月、層別HR:0.63、95%CI:0.45~0.88)。この集団における担当医判定による奏効率は、アテゾリズマブ群が38.3%、化学療法群は28.6%であり、このうちデータカットオフ日に、それぞれ68.3%および35.7%で奏効が持続していた。 血液中の腫瘍遺伝子変異量が多いサブグループ(PD-L1発現量は問わない)では、OS期間中央値はアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められ(13.9ヵ月 vs.8.5ヵ月、非層別HR:0.75、95%CI:0.41~1.35)、PFS期間中央値はアテゾリズマブ群で優れた(6.8ヵ月vs.4.4ヵ月、0.55、0.33~0.92)。 有害事象は、アテゾリズマブ群が90.2%、化学療法群は94.7%で発現し、Grade3/4の有害事象はそれぞれ30.1%および52.5%で認められた。重篤な有害事象の発現率は、それぞれ28.3%および28.5%で、Grade5の有害事象が11例(3.8%)および11例(4.2%)にみられた。免疫関連有害事象は、それぞれ40.2%および16.7%で発現し、Grade3/4は6.6%および1.5%であった。 著者は、「アテゾリズマブ単剤の安全性プロファイルは、以前の研究で観察されたものと一致していた。転移のあるNSCLC患者におけるがん免疫療法への治療応答性を検出するバイオマーカーとしての腫瘍遺伝子変異量(血液、組織)の役割は不明である」としている。

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進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。 本試験は、わが国における多施設共同非盲検無作為化比較第II相試験のJBCRG-M04(BOOSTER)試験。主要評価項目である無作為化から治療戦略遂行不能までの期間(time to failure of strategy:TFS)については、wPTX+BV群8.87ヵ月、ET+BV群16.82ヵ月で有意に延長した(ハザード比:0.51、95%信頼区間:0.34~0.75、p<0.001)ことを、2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で同氏が報告している。・対象:ER陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法としてwPTX+BV療法を4~6サイクル施行後、SD以上の効果が認められた患者・介入群:wPTXを休薬しET+BVに置き換え、規定イベント後にwPTX+BVを再導入する群(ET+BV群)・対照群:wPTX+BV継続治療群(wPTX+BV群)・評価項目[主要評価項目]TFS[副次評価項目]全生存期間、無増悪生存期間、安全性、PROなど※PROの評価は、無作為化時および無作為化後2ヵ月、4ヵ月、1年、2年に、FACT-B、EQ-5D、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)、HADS、cancer fatigue scale(CFS)を使用 主な結果は以下のとおり。・1次化学療法が奏効した125例について、wPTX+BV群63例、ET+BV群62例に割り付けた。 ・mixed-effect models for repeated measures(MMRM)を用いた解析では、FACT-Bのtrial outcome indexに有意差が認められ(p=0.004)、PWBの平均変化は2ヵ月後(p=0.015)および4ヵ月後(p=0.028)に、ET+BV群がPTX+BV群より有意に優れていた。・CIPNについては、1年後における重度の運動神経障害の割合がET+BV群でwPTX+BV群よりも低かった(5.1% vs. 26.1%、p=0.017)。・CFSでも有意差が認められ(p=0.048)、そのうち精神的倦怠感のスコアの平均変化は、2ヵ月後(p=0.006)および4ヵ月後(p=0.010)でET+BV群がwPTX+BV群より有意に優れていた。 佐治氏は、「化学療法継続で蓄積毒性が懸念される症例において、ET+BVの維持療法は健康関連QOLの点で1つの選択肢となるだろう」と結論した。

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メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島巖氏)-1295

オリジナルニュースメタボ健診による特定保健指導に心血管リスク軽減効果なし(2020/10/13掲載) 特定健康診査とその結果に基づく特定保健指導は2008年(平成20年)から始まった全国規模の保健事業で、一般的にはメタボ健診と呼ばれているものである。メタボ健診では腹囲とBMIを測定するほか、血圧、HbA1c、LDLコレステロール値などを測定して、その結果により医師や保健師による指導を行うというシステムである。 そもそもの発端は、1989年に米国のKaplanによって提唱された概念で、上半身肥満・糖代謝異常・高中性脂肪血症・高血圧の4つが重なると心筋梗塞に罹患しやすいことから、「死の四重奏(Deadly Quartet)」と呼ばれていたものである。日本でいうメタボリック(メタボ)では、それらの上流に内臓脂肪蓄積を置いているのが、米国の死の四重奏と異なり、わが国では内臓脂肪症候群と呼ぶ場合もある。そこで日本の特定健康診査では腹囲を測定することに重点を置いているのが特徴であり、医療機関では腹部CTも測定するところもある。 しかし、そもそも米国の肥満と日本人の肥満はレベルが違い過ぎて、日本人への腹囲に重点を置く健康審査に、疑問を呈する声は少なくなかった。デンマークで約1万2,000人を対象として、健診を受けた群と受けなかった群を10数年間追跡した研究では、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発生や死亡率に両群で差がないという結果が発表された。 今回、京都大学の福間教授らによって行われた約7万5,000人を対象とした追跡調査の結果では、保健指導を受けた群では体重、BMIは1年後わずかに減少したものの3、4年後には元に戻っていた。さらに血圧、糖尿病、抗コレステロール血症に関しては、1年後も、3、4年後も改善効果は認められないという結果であった。 効果が乏しかった理由の1つとして、保健指導の対象となっていても実際に指導を受けた人は16%にすぎないことが関係している可能性もあるが、実際に受けた人だけを対象として解析を行ってもやはり心血管リスク低減効果はみられなかったという。保健指導を受けるべき人が受けていないという現実も重要である。 この制度には年間160億円の費用がかかっており、費用に見合った健康に関する有益性が見いだせないからには、その制度そのものの見直しが必要であると研究主任の福間教授は述べている。

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第26回 新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定

<先週の動き>1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定菅内閣は10月9日に、新型コロナウイルス感染者のうち、入院対象者を原則65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人らに絞る法令改正について閣議決定を行った。今回の改正では、感染症法が定める「指定感染症」の位置付けに変更はなかった。これまでは新型コロナの感染者全員が入院対象だったが、インフルエンザ流行を前に医療機関の負担を減らし、重症者治療に重点を置くための施策。24日に施行となる。(参考)新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(案)等について(概要)(厚生労働省健康局結核感染症課)2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ8日に開催された財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会において、今後の医療や子育てに関して議論を行った。この中でわが国の社会保障の現状について、OECD加盟国と比較して、受益(給付)と負担のバランスが不均衡の「中福祉、低負担」の状況が指摘された。2022年度以降、団塊世代が75歳を超えると、社会保障関係費が急増することが予想できる。これを念頭に、社会保障制度の持続可能性を確保するための改革が急務とされ、現在の年齢が上がるほど患者負担割合が低く、保険給付範囲が広がる構造を含め、患者負担のあり方を見直していく必要があるとした。今後、11月のまとめる建議に向けてさらに議論を行うが、患者負担の増加については国民の関心も高く、医療機関や医師会などとの調整が必要になる見込み。(参考)財政制度等審議会財政制度分科会(令和2年10月8日開催)資料:社会保障について(1)(総論、医療、子ども・子育て、雇用)(財務省)3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要総務省は、5日に通知「新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて」を各都道府県や指定都市などに向けて発出した。本年の7月までに示すとされていた新ガイドラインは発表を延期するが、今年度は「公立病院改革ガイドライン」の最終年度であることから、新改革プランの進捗状況について点検・評価を求める内容となっている。また、不採算地区の公立病院への財政措置については、地域医療構想の推進に向け、過疎地など経営条件の厳しい地域において、二次救急や災害時などの拠点となる中核的な公立病院の機能を維持する目的で、新たに特別交付税措置を講ずるなどの見直しを行うこととなった。今後の新型コロナ拡大に伴う景気・財政悪化を考えると、リスト外の病院に対してもより一層の健全な病院経営を求められることとなり、地方自治体や医療従事者への影響は避けられない。(参考)新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて(通知)(総務省自治財政局準公営企業室長)4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足安倍政権が2016年に内閣府に設置し、医療・介護を含むさまざまな分野について検討を重ねてきた未来投資会議が廃止され、菅政権では新たに成長戦略会議として立ち上げることを、9日の閣議後に西村 康稔経済再生担当相が明らかにした。未来投資会議が担っていた機能は縮小される。議長に加藤官房長官、副議長に西村経済再生相と梶山経済産業相がそれぞれ就任し、今後は、経済財政諮問会議が国の経済財政政策をリードし、それに沿った形で成長戦略会議が具体化を検討することとなる。(参考)未来投資会議を廃止 「成長戦略会議」に衣替え―政府(時事ドットコム)5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発大阪府警は、嘘の体験談を用いて健康食品の効果をうたった広告・販売を行ったとして、広告会社と広告主の健康食品販売会社「ステラ漢方」を7月に摘発した。今年の3月上旬まで開設されていた商品サイトには「医者が絶句するほどの脂肪肝だった私が1ヵ月で正常値まで下げた『最強健康法』とは?」といった目を引く内容のほか、肝機能の数値改善など効能効果の表記がされていた。商品は健康食品会社ホームページのリンクから購入できる仕組み。なお、同社は2014年にも根拠のない宣伝をしたとして、消費者庁から景品表示法の規定に基づく措置命令を受けている。今後、悪質な広告についてはさらに規制強化が進むだろう。(参考)記事広告が薬機法違反…大阪府警、広告代理店ら6人を逮捕(通販通信)脂肪肝が1ヵ月で……。嘘の体験談で宣伝、広告主を摘発(日本経済新聞)

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薬機法の定めるオンライン服薬指導と「0410対応」は似て非なるもの【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第21回

本年9月1日から、改正薬機法の一部が施行されました。今回施行されたものの中で、薬剤師業務に影響が大きいと考えられるのは、患者の継続的な薬学管理が義務付けられたことと、オンライン服薬指導が解禁になったことかと思います。このうちオンライン服薬指導については、新型コロナウイルスのために示された「0410対応1)」によって、すでに電話などによる服薬指導が行われているため、施行となっても大きなインパクトはなかったかもしれません。しかし、この「0410対応」は、あくまで「時限的・特例的」な取り扱いであり、原則として3ヵ月ごとに見直されることとなっており、恒久的なものではありません。麻薬・向精神薬は初診時の処方不可、要件を満たさない場合の処方上限など再周知2020年8月6日に開催された厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、当面の間「0410対応」を継続する方針となったようですが、不適切な事例も指摘されました。このような事例を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(事務連絡 令和2年9月4日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)が発出されています。1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療に伴う処方箋により調剤を行う薬局における留意事項初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関に関して、4月10日付け事務連絡1.(1)に記載している以下の要件を遵守しない処方が見られたことから、薬局においても、これまでの来局の記録等から判断して疑義がある場合には、処方した医師に以下の要件を遵守しているかどうか確認すること。(1)麻薬及び向精神薬を処方してはならないこと(2)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とすること(3)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆる「ハイリスク薬」)の処方をしてはならないこと※「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」より一部抜粋これを受けて、日本薬剤師会からも「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)2)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)が発出されています。「0410対応」では、医療機関に対し初診から電話などを用いた診断や処方が認められていますが、この場合、麻薬・向精神薬は処方してはならないことや、状況によって日数の制限が設けられています。薬局では、これらの要件を必ずしも把握できるものではありませんが、疑義がある場合には医師への確認など、適切な運用に資する対応が求められています。日薬も「混同せずに運用する」よう求めている「0410対応」もオンライン服薬指導も、必要性だけでなく安全性も考慮してルールが定められています。単に電話やオンラインでの服薬指導が可能となったということではなく、正しいルールを確認しておく必要があります。今回紹介したこれらの通知も踏まえて、いま一度「0410対応」についての運用を確認するとよいでしょう。また、厚労省の事務連絡においても、薬機法改正による9月1日施行のオンライン服薬指導について言及があるとともに、日本薬剤師会の通知では、時限的・特例的な「0410対応」と薬機法に基づくオンライン服薬指導は異なることを指摘したうえで、混同せずに運用することも求めています。「0410対応」が進んでいるため、オンライン服薬指導も簡易にできるような印象を持ちますが、薬機法上のオンライン服薬指導にはさまざまな要件が設けられており、適法に運用するためにはより注意が必要です。これらの違いも意識し、内容を確認すべきでしょう。参考資料1)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて」(事務連絡 令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)2)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)

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売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第2回

第2回 売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所の買い手にとって、一番の価値はすでに通っている「患者さんを引き継げる」ということです。加えて、現在のスタッフを引き継げることも大きな魅力といえます。というのも、患者さんは、(売り手である)現院長やそこで働く顔なじみのスタッフへの信頼や安心感から通院しているのであり、スタッフを引き継ぐことは患者さんの離反防止にもつながるからです。また、スタッフも現院長や同僚、現在の雇用環境に満足しているからこそ働いているのです。医業承継が決まり、新院長に交代する話は、基本的に買い手との最終契約が締結されてからスタッフへ開示することが鉄則です。ここで一定の割合で発生するのが「そんな話は聞いていない! 院長が交代するなら辞めます!」と言ってスタッフが大量に離職してしまうケースです。スタッフを引き継ぎたいと考えている買い手にとって、これは大きな痛手です。実際、スタッフの離職が原因となって買い手に辞退されるケースもあるのです。では、このようなケースはどうしたら防ぐことができるでしょうか? 私たちは以下のようにアドバイスをしています。それは「最終契約を締結した後に、新院長になる方に引き継ぎ先の診療所にて数ヵ月の間アルバイトをしてもらい、スタッフとの関係性を築いたうえで情報を開示する」というものです。これでスタッフの不安を払拭し、院内での人間関係もできたタイミングでスムーズに開業することができます。設備や医療機器と違って、スタッフや患者さんは人間です。その気持ちに配慮しながら、上手にコミュニケーションをとることが開業の成功につながります。スタッフへの告知時期や方法は仲介会社などのアドバイスを受けて決定するとよいでしょう。

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