サイト内検索|page:738

検索結果 合計:35182件 表示位置:14741 - 14760

14741.

治療抵抗性うつ病患者の平均余命調査

 うつ病は、死亡率の増加と関連しているが、治療抵抗性うつ病(TRD)の場合、平均余命にどの程度の影響があるかは不明である。デンマーク・オーフス大学のKathrine Bang Madsen氏らは、TRD患者の原因別超過死亡率および損失生存年数(Life Years Lost:LYL)の推定を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月10日号の報告。 デンマーク国立処方箋レジストリより抽出した、2005~12年に初めて抗うつ薬を処方されたデンマーク生まれの18~69歳を対象とした。TRDの定義は、2年以内の2種類以上の異なる抗うつ薬の使用とした。死亡率の比(Mortality rate ratio:MRR)の推定には、初回処方時の年齢、暦年、併存疾患で調整した後、Cox回帰を用いた。平均余命の違いは、LYL法により推定した。 主な結果は以下のとおり。・初めて抗うつ薬治療を受けたうつ病患者15万4,513例のうち、8,294例(5.4%)がTRDであった。・103万2,245人年のフォローアップ期間中に、9,795例が死亡した。・TRDの男性(aMRR:1.34、95%CI:1.18~1.52)および女性(aMRR:1.39、95%CI:1.19~1.63)は、非TRD患者と比較し、死亡率が有意に高かった。・TRDの男性(1.21年、95%CI:0.36~2.44)および女性(1.24年、95%CI:0.35~2.34)は、すべてのうつ病患者よりも、平均余命が短かった。・過剰なLYLの大部分を自殺が占めており、TRDの男性では1.10年(95%CI:0.46~1.61)、女性では0.82年(95%CI:0.44~1.27)であった。・本研究の限界として、処方箋ベースでTRDを定義しているため、誤分類リスクが高まる可能性がある。 著者らは「いくつかの治療に対し適切な反応がみられないTRD患者では、早期死亡(とくに自殺)リスクが高まることが示唆された」としている。

14742.

体験ルポ・新型コロナワクチン接種―米国の日本人医師が緊急寄稿

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種がついに始まった。世界に先駆け、英国で12月8日から、14日からは感染者数世界最多の米国でも医療・介護従事者に対し、優先的に接種が行われている。今回、米国・ワシントンDCの病院に勤務する日本人医師の安川 康介氏が、ワクチン接種の体験についてケアネットに緊急寄稿。日本においても来年には一般接種が開始されるとみられる中、同氏の体験をぜひ参考にしていただきたい。3月から感染者数急増、全員体制でもひっ迫する診療現場 米国FDAが12月11日、Pfizer社とBioNTech社が開発したmRNAワクチン(BNT162b2)の緊急使用を認めた。これを受けて、わたしが勤務するワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにおいても、12月16日から医療従事者を対象にワクチン接種が始まった。本稿では、COVID-19に関するわたしの経験を振り返ると共に、ワクチン接種に対する個人的な所感について述べたい。 米国では3月以降に新型コロナウイルスの感染が急速に広がり、すでに29万人以上がCOVID-19で亡くなり、1日の死亡者が3,000人を超える日もある(12月13日現在)。わたしの病院でも、3月後半からCOVID-19による入院患者が増え始め、最初の約2週間で100人近い患者が入院し、一時期は常時200人近い患者が入院している状況が続いた。当初は、COVID-19専用病棟として1棟準備していたが、感染者数の増加に伴って専用病棟が次々と増え、ピーク時は約5病棟が感染者専用病棟となり、ICUの大部分も感染患者によって占められる状況であった。人員の再配置(redeployment)も必要になり、集中治療医や内科医の負担を減らすために他科の専門医やナース・プラクティショナーが「助っ人」として駆り出された。ピーク時よりも感染者が減少したものの、今ではCOVID-19診療がすっかり日常となっている。 COVID-19のさまざまな合併症については世界規模の研究で明らかになりつつあるが、3月以降、この感染症がいかに多種多様な症状・合併症を引き起こすかということを、研究論文のみならず実臨床からも多く学んだ。時に、急速に進む呼吸不全はもちろんのこと、消化器症状、肺塞栓症や脳梗塞、肝障害、腎不全など、COVID-19の恐ろしさを、同僚と共に目の当たりにしてきた。病院のスタッフでも、亡くなったり重症化したりする方もいた。深刻な症状を引き起こす一方で、軽症もしくは無症状で済むケースもまた少なくないことは確かであり、ウェブ上のCOVID-19関連の情報や意見はまさに玉石混交。医療のコミュニケーションの難しさについてもずいぶん考えさせられた。ワクチン接種はコロナと格闘してきた9ヵ月越しの「特別な日」 Pfizer/BioNTech社のmRNAワクチンを巡っては、その効果と安全性を検証した論文が12月10日付のNEJM誌に掲載され、その数日前から、FDAによる53ページに及ぶ詳細な報告書が閲覧可能となっていた。それによると、当該ワクチンの2回投与後の感染予防効果は約95%と高く、短期的な局所反応・全身反応を除いて重篤な副反応はまれであるとのことである。とはいえ、mRNAワクチンは今回初めて承認となるため、長期的およびまれな副反応については、注意深くモニタリングしていく必要がある。 さまざまな不確定要素があるが、それでも私が接種を決めた理由はいくつかあり、先述したワクチンの効果・安全性についての臨床試験の情報、自身の置かれている状況(コミュニティーにおける高い感染者数、勤務先でのCOVID-19診療)、自分が感染した場合、家族や患者、同僚への感染拡大を避けるため―などである。 12月16日(現地時間)、私の働く病院にてワクチン接種が開始された。病院は接種を推奨しているが、もちろん強制ではない。ワクチンの数量が現在のところ限られているため、院内職員でも優先順位が設けられ、COVID-19患者がとくに多い、救急科、集中治療、そして内科の医療従事者が先んじて受けることになった。事前に予約していた時間に病院内のワクチン接種会場に行くと、すでに数人の同僚が並んでいた。CDCからワクチン接種のカードが配られ、ワクチンに関する簡単な資料が渡された後、ワクチンの筋肉内注射を受けた。アレルギー反応が出ないか接種者全員が15分会場で観察され(ちなみにわたしにはアレルギー歴はない)、その後通常の仕事に戻った。その時点では、痛みはほとんどなかったが、数時間経つとインフルエンザワクチンを受けた時のような注射部位の痛みが生じた。夜になると、その痛みはやや増加し、翌日(現地時間で12月17日)もその痛みは持続しているものの、倦怠感・発熱・頭痛・悪寒などの全身症状はない。同僚の中には、受けた夜に発熱・発汗が生じた人もいたが、周りで受けた人のほとんどが主に注射部位の痛みがあった程度である。次の数ヵ月で米国では数百万人単位で今回のワクチンを受ける可能性があるので、日本で接種が開始される頃には、安全性についてより知見が蓄積していることだろう。今年3月以降、新型コロナウイルス感染者の方を日常に診療してきた。この9ヵ月を乗り越えてきた自分や同僚にとって、12月16日は特別な日となった。 2回目の接種は、2021年1月4日に予定している。次回、1回目の接種後から2回目の接種についてお伝えする。【安川 康介氏プロフィール】2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターにて初期研修を修了後渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。現在は、ワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにて、ホスピタリストとして勤務。

14743.

特発性肺線維症へのST合剤、生存ベネフィット認めず/JAMA

 中等症~重症の特発性肺線維症(IPF)について、コトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)はプラセボと比較して、死亡・肺移植または予定外の初回入院までの期間の複合アウトカムの発生を低下しないことが、英国・イースト・アングリア大学のAndrew M. Wilson氏らによる検討で示された。IPFは予後不良で治療法が限られており、肺微生物叢の変化による肺への細菌負荷が死亡率に関連するとされている。先行の小規模無作為化試験においてST合剤投与による臨床アウトカムの改善および優れた費用対効果が示唆され、また探索的解析で健康関連のQOLや酸素必要量の改善、および試験プロトコールを順守した被験者における12ヵ月間の死亡率低下が示されていたが、生存ベネフィットのエビデンスは確定されていなかった。JAMA誌2020年12月8日号掲載の報告。中等症~重症IPFへのST合剤の有効性、二重盲検プラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、中等症~重症IPF患者におけるST合剤の有効性を確定する、二重盲検プラセボ対照並行群比較無作為化試験を行った。被験者は、IPFで息切れ症状(MRC息切れスケールスコア>1)と肺機能障害(努力肺活量[FVC]予測値≦75%)を有する患者で、英国の間質性肺疾患専門医療センター39ヵ所で、2015年4月(最初の患者が受診)~2019年4月(最後の患者のフォローアップ完了)に342例が試験に参加した。 被験者は、1日2回960mgのST合剤を服用する群(170例)または適合プラセボを服用する群(172例)に無作為に割り付けられ、最短12ヵ月間および最大42ヵ月間のフォローアップを受けた。また、全患者に1日1回5mgの経口葉酸が投与された。 主要アウトカムは、死亡(全死因)・肺移植・予定外の初回入院までの期間であった。副次アウトカムは15項目で、主要エンドポイントの呼吸関連イベントの各項目、肺機能(FVCおよび肺ガス交換能)、患者報告のアウトカム(MRC息切れスケール、5段階EQ-5D質問票、咳重症度、Leicester Cough Questionnaire[LCQ]、King's Brief Interstitial Lung Disease[KBILD]質問票スコア)などであった。死亡・肺移植・予定外入院の複合アウトカムほか副次アウトカムも、有意差なし 無作為化を受けた342例(平均年齢71.3歳、女性46例[13%])において、283例(83%)が試験を完了した。フォローアップ期間中央値(四分位範囲)は1.02年(0.35~1.73)であった。 ST合剤群およびプラセボ群のイベント件数はそれぞれ、0.45(84例/186フォローアップ人年)、0.38(80例/209フォローアップ人年)で、ハザード比は1.2(95%信頼区間[CI]:0.9~1.6、p=0.32)であった。 その他のイベントアウトカム、肺機能、患者報告のアウトカムについても統計的有意差は認められなかった。有害事象は、ST合剤群696例(悪心89例、下痢52例、嘔吐28例、および発疹31例など)、プラセボ群640例(悪心67例、下痢84例、嘔吐20例、および発疹20例など)が報告された。

14744.

ガイドライン、報告書、意見記事、レビューでも利益相反の影/BMJ

 臨床ガイドライン、諮問委員会の報告書、意見記事、ナラティブレビューにおいて、金銭的な利益相反と薬品およびデバイスの推奨は関連しているとのシステマティックレビューによる調査結果を、デンマーク・オーデンセ大学病院のCamilla H. Nejstgaard氏らが報告した。ただし今回のレビューには、包含した研究に交絡リスクがあったこと、個々の文書の解析に統計学的に不正確な点があったことなどの限界があり、非金銭的な利益相反が推奨事項に影響を与えるかどうかは定かでないとしている。これまでの研究では、金銭的利益相反と推奨との関連は、重要な試験やシステマティックレビューでは認められることが報告されていたが、臨床ガイドライン、諮問委員会の報告書、意見記事、ナラティブレビューについては関連性の程度は明らかになっていなかった。BMJ誌2020年12月9日号掲載の報告。システマティックレビューで、利益相反と推奨との関連を調査 研究グループは、臨床ガイドライン、諮問委員会の報告書、意見記事(エディトリアルなど)、ナラティブレビューにおける、利益相反と薬品またはデバイスの推奨(たとえば推奨薬など)との関連を比較していた研究を対象としたシステマティックレビューを行った。適格研究はPubMed、Embase、Cochrane Methodology Register(創刊~2020年2月)、参考文献リスト、Web of Science、灰色文献で検索され、2人の著者がそれぞれデータを抽出し、試験の方法論的質を評価した。統合相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を、ランダム効果モデルを用いて算出(RR>1は利益相反のある文書がない文書よりも多くの推奨を有することを示す)。金銭的および非金銭的利益相反をそれぞれ解析し、4タイプの文書別に解析(事前に計画)および統合して解析(事後解析)した。関連性の相対リスクは各文書で1.20~2.62、統合解析で1.26 解析には、21の研究(臨床ガイドライン106本、諮問委員会の報告書1,809本、意見記事340本、ナラティブレビュー497本)が包含された。11の研究で非公表データ(8研究は完全データ、3研究は要約データ)を入手できた。一方で、15の研究では、比較文書が利益相反以外の要因(異なる薬品が異なる集団に使われたなど)によって異なる可能性があり、交絡リスクが認められた。 金銭的利益相反と推奨の関連性のRRは、臨床ガイドラインで1.26(95%CI:0.93~1.69、4研究・86本)、諮問委員会の報告書で1.20(0.99~1.45、4研究・629本)、意見記事で2.62(0.91~7.55、4研究・284本)、ナラティブレビューで1.20(0.97~1.49、4研究・457本)であった。 これらの調査結果は、4タイプの文書のすべてを統合した解析でも支持された(1.26、1.09~1.44)。 なお、専門分野について調査した1つの研究(臨床ガイドライン12本を包含)で、ガイドラインの著者に放射線科医を含めること、および乳がんのルーチンなスクリーニング推奨に、関連性が認められることが報告されていた(RR:2.10、95%CI:0.92~4.77)。

14746.

IL-1阻害薬による残余リスク低減効果に期待(解説:佐田政隆氏)-1330

 rilonaceptはインターロイキン-1(IL-1)の可溶性受容体製剤である。IL-1α、IL-1β双方をトラップして阻害する。当初、関節リウマチでの応用が期待されたが、TNF阻害薬ほど劇的な効果は認められなかったという。希少自己免疫疾患であるクリオピリン関連周期性発熱症候群に対して、2008年にFDAによって承認されたが、日本や欧州では承認に至っていない。 原因不明の再発性心膜炎は、日常の循環器内科診療でたびたび遭遇する疾患である。心嚢穿刺など対症療法しかなく治療に難渋することが多い。本試験は、86人と比較的少数例を対象にした二重盲検第3相試験である。標準的治療を施しても再発する心膜炎の再発を、rilonaceptが有意に抑制した。今後、再発心膜炎への適応拡大が期待される。 さて、動脈硬化性疾患の2次予防、1次予防にスタチンが有効であることが確立している。しかし、スタチンによるリスク低下効果は3割程度であり、7割程度はLDLコレステロールを十分に低下させてもイベントが再発し、残余リスクと呼ばれ問題になっている。 動脈硬化の根本的病態は非感染性の慢性炎症であると20年以上前から提唱され、抗炎症薬が有効であることが期待されていた。積極的な2次予防治療後もCRPが高値の心筋梗塞既往例において、IL-1β中和抗体であるカナキヌマブが心血管イベントを抑制することを示したCANTOS試験が世界を驚かせたことが記憶に新しい。 rilonaceptが、同じIL-1阻害薬であるカナキヌマブと同じように動脈硬化性疾患の残余リスク低減に効果があるのではないかと期待される。今後の大規模臨床研究の結果が楽しみである。しかし、IL-1は、感染に対する生体防御のために必要な免疫の中心的な役割を担うサイトカインであり、その阻害による有害性を慎重に検討する必要がある。実際、CANTOS試験でも蜂窩織炎、致死的感染症、敗血症といった重篤な有害感染性イベントはカナキヌマブで有意に増加した。本試験でも50週程度の比較的短い期間で、注射部位反応と上気道感染症の有害事象がみられている。IL-1阻害治療の長期的安全性も、今後検討されなければならないであろう。

14747.

感染症の広辞苑【Dr.倉原の“俺の本棚”】第37回

【第37回】感染症の広辞苑私が研修医の頃から愛読している本です。本書は、実はまだ第4版と、それほど頻繁に増版されていません。研修医時代から何度も繰り返し読んでいるので、軽く20~30版くらいになっているのかと思っていました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』青木 眞/著. 医学書院. 2020年私が、青木眞先生に初めて会ったのは、17年前の医学部5年の夏、湘南鎌倉総合病院のプレハブ小屋でした。プレハブ小屋なんて書いたらスゴイ失礼かもしれませんが、確かにあの時、プレハブ小屋で研修医レクチャーをやっていたのです。扇風機が回る中、私は一番右前の特等席に座って、イヤーノートで得た知識を武器に青木先生の講義と向き合いました。私に青木先生がどんな質問を振ったのか覚えていませんが、「そのとおり、君は、感染症の道に進みなさい!」と言われたことだけははっきりと覚えています。運命のいたずらか、宝箱のようなキラキラとした時間を過ごした私は関西に残り、一緒に見学に行った友人が、当の湘南鎌倉総合病院にマッチすることになりました。研修医になってから「レジデントのための感染症診療マニュアル」は私のバイブルの1つになりました。その後私が感染症医となって、青木先生に向かってこの思い出を語ることができる瞬間があれば、ドラマティックでカッコよかったのですが、スイマセン、呼吸器内科医をやっています(笑)。本書の第1版の時代、この本と日本の実診療との間には、いささか乖離がありました。それはよい意味での乖離で、日本の保険診療や抗菌薬の濫用が、いかに国内の感染症診療をガラパゴス化させたのか教えてくれたのです。読めば読むほどこの本を「いぶし銀でいい本だな」と感じましたし、こういう診療ができるようになりたいと思ったものです。その後、レジェンドたちの尽力もあって、日本の感染症診療が底上げされ、実臨床がこの本に追い付いてきました。Gram染色アラカルトの付録までついてくるようになり、もう感染症に関して、載っていないことがないくらいの完成形に到達しています。これは、もはや感染症の広辞苑なのです。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』青木 眞 /著出版社名医学書院定価本体12,000円+税サイズA5判刊行年2020年

14748.

第37回 差別・偏見問題から「マスク警察」の思考を考える

先日、ある専門家の講演を聞いていてハッと気づいたことがある。話とは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての差別・偏見問題である。この専門家はCOVID-19以前に感染症で差別・偏見が発生していた背景要因を複数指摘したが、その中でもっとも腹に落ちたのが「潜在的な被差別構造」という要因だ。これは感染症の蔓延に関係なく、差別・偏見を受けやすい集団があり、一部の感染症はそうした集団で広がりやすい。このため社会で従来から存在した差別が感染症の蔓延で顕在化しやすいという論理である。この具体例を一つ挙げるならば、結核だろう。結核は従来から貧困層で感染が拡大しやすく、これに未知・不治の病への恐怖、医療措置としての隔離がもたらすマイナスイメージなどから、結核患者は忌み嫌われた。現在でもWHOの調査などでは、世界各国の推定結核罹患率と国民総所得は逆相関の関係にあり、先進国でハイリスク集団と指摘されるのはホームレス、受刑者、薬物中毒者など社会的には敬遠されがちな集団である。ちなみに講演をした専門家は社会全般に感染が広がるCOVID-19に関しては「潜在的な被差別構造」が必ずしも当てはまらないと話したが、逆に私はCOVID-19でもこの要因は合致するかもしれないという思いを強くした。なぜそのように思ったかと言うと、私自身がこれまで微妙に理解しがたい経験をしていたからである。その経験とはマスク着用を巡るものである。私はマスク着用を最小限にしている。屋外を歩く際にマスクは着用していない。というのは、もともと皮膚が弱く、不織布マスクなどを長時間着用していると口の周りのひどいかぶれにより日常生活で苦労するからである。政府の旧・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が市民向けに発したメッセージでも屋内で人と会話する時、人と十分な距離が取れない時はマスクの着用を謳っているものの、屋外でのマスク着用はとくに推奨していない。感染症専門医に話を聞いても屋外で人と話をしない場合にマスクは不要と言う人がほとんどである。このような対応をしていると、路上で前方から歩いてくる人が私を避けたりすることなどは経験しているものの、マスクを着用するよう指摘する、いわゆる「マスク警察」と呼ばれる面々と出会ったことはない。厳密にいうと1人は出会ったことはあるが、それは私にではなく、コンビニの店員に向かって「マスクをしていない人がいる」と私を指していた人物がいたくらいである。一方、私の周囲ではマスク警察からかなり厳しい指摘を受けたという話はよく耳にするし、SNS上でもそうした話はあふれている。この違いはなぜだろうと従来からやや不思議に思っていたのである。だが、この専門家の指摘を受けて気づいたのである。少なくとも私の周囲でマスク警察に遭遇したことがあると話してくれた人(7人)はいずれも女性と未成年。Twitterを検索すると、それほど顕著ではないがやはり遭遇者には女性や未成年が多く、これに若年男性が加わる。大概彼らにマスク着用すべきと言うのは年長者のようだ。単純に言えば、指摘する側から見て弱い、反撃してこないと思われる、あるいは若年やそれに伴う「無知」と勝手に決めつけられているであろうケースがほとんどである。つまり私がマスク警察に遭遇しなかったのは、すでに頭部の両サイドに白髪が交じる五十路のおじさんで、小汚くて面倒臭そうと思われているからだと推定できる。また、本人はそういう自覚はないのだが、時々眼光が鋭すぎる、あるいは目つきが悪いと指摘されることがあるので、その影響もあるかもしれない。余談になるが、「小汚くて面倒くさそう」は自虐でも何でもない。20代の若い頃はむしろ電車や街頭で因縁をつけられることが多かった。前述の目つきが悪いという指摘と、私が身長167cmで、学生時代は体重が55.5kgしかない小柄なもやしっ子だったから「弱そう」「反撃してこないだろう」と思われていたのだろう。現在も身長はそのままで体重60kgなので、まだ小柄なほうに入るはずである。そう考えると、マスク警察の指摘(因縁?)がないのは、小汚くて面倒くさそうと思われているとしか考えられない。余談ついでに言うと、もともと勝気な私は若い頃に因縁をつけられた場合も黙っていることができず、周囲に聞こえるような大声で「何か問題でも?」と言いながら、間合いを詰めて相手に近寄っていたが、そうすると大概の相手は自分から去るか周囲が慌てて止めに入るという感じだった。この性格は、相手が嫌がることであっても報じる必要があれば堂々と、そして手を変え品を変え何度も質問するという今の職業に求められるスキルにそのまま繋がっている(笑)。そしてこの専門家の講演に対する参加者の質問に「新型コロナを受けての医療・介護従事者に対する差別には、医療従事者・介護従事者=女性が多い、と言うことも関係しているのではないだろうか?」というものがあり、専門家が「それもあるかもしれない」と答えていた。私もさもありなんと思ったものである。こうしてみると、実は今回のCOVID-19を巡る差別・偏見も新しい問題ではなく、古くからの苔むした差別・偏見が少なからずベースにあるのだろうと考えられる。だが、それ故に根深く、一朝一夕には解決できない問題だともいえる。差別・偏見を解消するための一つの手段は、当事者同士の対話と言うことになるのだろうが、それすらも接触を減らすというプリミティブな予防対策しか取れないこの環境では難しい。理解が一歩進んだと思う反面、現実で前に進めないというもどかしさ、ジレンマを感じずにはいられないのである。

14749.

治療抵抗性うつ病に対するケタミン静注の有効性~メタ解析

 治療抵抗性うつ病(TRD)患者の治療において、ケタミンによる治療が期待されているが、いくつかの問題点は、いまだ不明である。カナダ・コンコルディア大学のWalter S. Marcantoni氏らは、TRD患者に対するケタミン静脈内投与が、うつ病スコア、臨床的寛解および奏効率に及ぼす影響を評価し、時間および頻度の両方における有効性について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年12月1日号の報告。 2019年1月4日までに、TRD患者に対する麻酔域下用量で用いたケタミン治療を評価した研究を5つの電子データベースより検索した。研究の選定、品質評価、データ抽出は、2人のレビュアーが独立して実施した。結果は、narrative synthesisで統合した。投与4時間後、24時間後、7日後のアウトカム測定値の標準化平均差およびオッズ比の調査が可能な場合には、変量効果モデルを用いてメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・35件の論文より28件の研究が抽出された。・ケタミンの強い効果は、単回投与4時間以内に認められ、24時間でピークに達した。・ケタミンの有効性は、投与7日後でも持続していたが、いくらかの低下は認められた。・複数回投与により、ケタミンの効果は増強、延長された。・TRD患者に対するケタミンの長期的な安全性および有効性は、データが不十分なため、調査されなかった。 著者らは「抑うつ症状の迅速なマネジメントに対し、ケタミン投与は支持された。TRD患者の短期治療においてケタミンは、有用であると考えられる。今後、ケタミン長期投与の有効性、耐性、安全性に関するより多くの臨床的および実験的データが求められる」としている。

14750.

患者の『コロナうつ』、早期発見するには?

 新型コロナウイルス感染症によるメンタルヘルス不調には「感染に対する恐怖・不安」「環境の変化によるストレス」「自粛制限によるストレス」「経済的な不安」などが挙げられるそうだが、ご自身や家族、診察を受ける患者に該当するものはあるだろうかー。 11月18日、うつ病疾患啓発セミナー「雇用形態別に見る、うつ病患者さんの現状と課題―求められる対策とは~働くうつ病患者さん464人への調査結果から見えた実態と新型コロナウイルス感染症の影響~」が開催され、三村 將氏(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授)が「就労するうつ病患者さんの雇用形態別の現状と課題、コロナ禍での影響」について講演。アンケート結果を踏まえ、コロナ禍に悩むうつ病患者の解決策を解説した(主催:武田薬品工業株式会社、ルンドベック・ジャパン株式会社)。メンタルヘルスによる長期休業、15年前の2.5倍 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する以前から職場におけるメンタルヘルスは問題視されてきたが、コロナ禍ではこの問題に拍車がかかっている。そこでまず、三村氏は職域におけるうつ病について、平成30年度の地方公務員健康状況等の現況概要を示し、「悪性新生物や循環器系疾患などによる休業は15年前から横ばいだが、精神及び行動の障害が影響する休業は15年前の2.5倍にまで増加している」と説明。この原因として、「ストレス社会を反映しているのはもちろん、精神障害による労災申請および労災認定も増加し、過労死・過労自殺なども社会問題となっている」と話した。一方で、自殺件数は国の対策や医療者によるサポートが功を奏し、10年前と比較して減少傾向であった。ところが、今年はCOVID-19の流行により自殺件数がとくに女性で増加し、例年以上に深刻さを増す可能性が指摘されている。在宅勤務の患者へ意識しておきたい3つのこと では、医師としてコロナと関連するストレスに関し、どのような対策を意識しておく必要があるのだろうか。4月16日に発令した緊急事態宣言を受け、多くの企業が在宅勤務へのシフトを余儀なくされた。在宅勤務に関し、さまざまなアンケート調査で、就労者のメリットも多く挙げられていたが、一方で同氏は、「対人関係(孤独感・コミュニケーション困難)、仕事量の増加、仕事時間の長期間化や時間管理の困難など、仕事の質・量・時間に大きな影響を与えている」点も危惧されると指摘した。 また、これらの状況の因果関係をみるために同氏らは就労におけるうつ病患者の実態調査を実施。その結果、コロナ関連での不調が如実に増えていることが明らかになった。調査の主な結果は以下のとおり。・2020年9月24日~10月1日にインターネット調査を行った。・対象者は19~64歳で、過去5年以内に精神科/心療内科/メンタルクリニックで初めてうつ病と診断され、うつ病の治療として1ヵ月以上の通院を行った者、または初めてうつ病と診断された際に正社員、契約社員または嘱託社員、派遣社員、アルバイト・パートタイムいずれかの勤務体系で就労していたものとした。・参加者は464名で、雇用形態の内訳は、正社員が200名、契約社員/嘱託社員が116名、派遣社員は46名、アルバイト・パートタイムは102名だった。・男女比は正社員では男性が多く、女性はパートタイムが多かった。・雇用形態に関わらず、仕事の継続・キャリアへの影響について不安を感じているものの、働くうつ病患者の53%は受診への抵抗を感じていた。・診断時に仕事をするうえで支障になった症状として最も多かったのは、集中力が保てないで44%だった。・うつ病を上司に伝えた理由は、正社員、契約・嘱託社員では「診断書が出たため」「会社の制度を利用するため」「仕事面で配慮を求めるため」で、派遣社員、パートタイム・アルバイトでは、「診断書が出たため」「会社の制度を利用するため」「仕事面で配慮を求めるため」だった。また、派遣社員では「周囲に病気であることを知らせるため」、パートタイム・アルバイトでは「退職するため」が最多だった。・コロナ禍では、参加者の58%が心身のストレス増加を感じており、主な理由は、経済的な不安が59%、感染への不安が50%、外出の自粛が48%だった。 そのほか、COVID-19の影響による生活の変化として、SNSの利用、動画視聴時間、ネットショッピングの増加を指摘し、「不眠があるからこれらの行動が増えるのはもちろん、これらの行動が増えたことによって不眠になったり、不眠が悪化したりする場合もある」と説明し、医療者は患者の生活の質・リズムの変化にも注意を喚起するよう説明した。 最後に同氏は職場内での解決策として、「患者は職場で上司や同僚と病状について話すことで安心感につながる傾向があることから、アンケート結果のような不安感を払拭するために治療中・治療後にうつ病患者が就業継続できるよう、企業内のサポートや包括的な社会の構築が重要である」と締めくくった。

14751.

みんなで医療の働き方を考えよう

 AI問診サービスで医療現場の業務効率化をサポートするUbie株式会社は、医療従事者がより働きやすい医療現場づくりを実現すべく、『#みんなで医療の働き方会議』プロジェクトを勤労感謝の日である2020年11月23日より開始した。 同社共同代表取締役で医師の阿部 吉倫氏は「本プロジェクトを通じて、医療サービスを受ける一人ひとりの生活者にとって、よりよい社会の実現へ一歩近づくことを願う」と、プロジェクトへの思いを述べている。 2020年は世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、医師や看護師などの医療従事者は、今もその最前線で人々を守るために尽力している。そういった方々の今後の働き方について、社会全体で考えて改善できるきっかけとなることを本プロジェクトに期待したい。医師の残業時間の現状 「働き方改革関連法案」の改正により、企業の年間残業時間上限は720時間となったが、全国に約20万人いる病院勤務医の約4割は年間残業時間が960時間以上である。さらに、約1割の医師の年間残業時間は2,000時間を超えていた1)。この調査はコロナ禍以前に実施されたものであり、現状はより過酷であると推察される。医療従事者、その家族の働きやすい環境への期待 全国の医療従事者(医師・看護師・准看護師)118人と医療従事者の家族200人を対象に、同社が2020年10月に実施したアンケート※では、医療従事者の約7割が「勤務先の働きやすい環境づくりに期待したい」と回答した。また医療従事者の家族の約9割が「医療業に勤める家族の職場がもっと働きやすい環境になってほしい」と回答しており、医療現場の労働環境改善に対する強い要望があった。『#みんなで医療の働き方会議』プロジェクトの開始 医療現場の労働環境改善と、医療従事者が働きやすい現場の実現に向けた『#みんなで医療の働き方会議』プロジェクトは、2020年11月23日「勤労感謝の日」に開始された。医療従事者やその家族、そして患者として医療サービスを受ける生活者の立場から感じる、医療現場における働き方の課題・改善案を特設サイトやTwitter上で募集している。将来的には、賛同する全国の医療機関とこれらを共有し、実現に向けたアクションプランを共創する予定である。Twitterでトレンド入りも 本プロジェクトの立ち上げとともに、ハッシュタグ「#みんなで医療の働き方会議」がTwitterでトレンド入りし、現在も医療従事者の声が上がり続けている。新型コロナウイルスに伴う感染拡大の影響で、引き続き医療従事者にとっても厳しい状況が続く。感染症の影響が落ち着いた時に実現に向けたアクションプランが始まり、働きやすい医療現場が実現することが望まれる。【参考資料】1)厚生労働省 第16回 医師の働き方改革に関する検討会資料「時間外労働規制のあり方について(3)(議論のための参考資料)」(2019年[平成31年]1月)※アンケート調査概要<調査概要>「Ubie株式会社 全国の医療従事者の働き方に関する調査」・調査対象:全国の医療従事者男女20~59歳118人/全国の医療従事者の家族である男女20~59歳200人・調査時期:2020年10月・調査方法:インターネット調査プロジェクト特設サイト:https://ubie-thanksgiving-for-healthcare-professionals.studio.site/プロジェクト公式Twitter@Ubie_AI:https://twitter.com/Ubie_AI

14752.

PTX被覆デバイスによる末梢動脈疾患の血管内治療、死亡率増大させず/NEJM

 末梢動脈疾患患者において、パクリタキセル被覆血管内デバイスと非被覆血管内デバイスに、追跡期間1~4年での全死因死亡率に差は認められなかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のJoakim Nordanstig氏らが、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「SWEDEPAD試験」の計画外の中間解析結果を報告した。症候性末梢動脈疾患に対する下肢血管内治療で、パクリタキセル被覆血管形成バルーンおよび溶出ステントによる死亡リスクの増加が最近のメタ解析で示され、懸念が生じていた。NEJM誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。パクリタキセル被覆vs.非被覆血管内デバイスの全死因死亡を評価 研究グループは、症候性末梢動脈疾患患者2,289例を薬剤被覆デバイス群(1,149例)または非被覆デバイス群(1,140例)に無作為に割り付けた(症例数は解析時点のもの)。無作為化は、高度慢性下肢虚血(1,480例)または間欠性跛行(809例)の有無に基づいた疾患重症度により層別化された。 中間解析のエンドポイントは全死因死亡であった。 追跡調査で脱落した患者はいなかった。薬剤被覆デバイスは、すべてパクリタキセルが被覆薬剤として用いられていた。平均追跡期間2年半の全死因死亡率、薬剤被覆群25.5%、非被覆群24.6% 平均追跡期間2.49年において574例が死亡した。全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群が25.5%(293/1,149例)、非被覆デバイス群が24.6%(281/1,140例)であった(ハザード比:1.06、95%信頼区間:0.92~1.22)。 1年時点の全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群10.2%(117/1,149例)、非被覆デバイス群9.9%(113/1,140例)であった。 また、平均追跡期間2.49年において、高度慢性下肢虚血を有する患者の全死因死亡率は、薬剤被覆デバイス群33.4%(249/745例)、非被覆デバイス群33.1%(243例/735例)であり、間欠性跛行を有する患者ではそれぞれ10.9%(44/404例)、9.4%(38/405例)で、いずれも両群間に有意差は認められなかった。

14753.

TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ上乗せ、化療レジメンによらず有効(KEYNOTE-355)/SABCS2020

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、併用する化学療法の種類によらず、ペムブロリズマブの追加で無増悪生存期間(PFS)を改善することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験の新たな解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 同試験については、CPS≧10のPD-L1陽性患者におけるPFS中央値が、ペムブロリズマブ+化学療法群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.49~0.86、片側p=0.0012)と有意に改善したことが報告されている。今回は、探索的評価項目(併用化学療法別のPFS中央値)ならびに副次評価項目(ORR、DOR、DCR)の解析結果が発表された。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・対照群:プラセボ+化学療法 281例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団における併用化学療法の種類による治療効果の一貫性 主な結果は以下のとおり。・併用化学療法別のPFS中央値[CPS≧10の患者]全体(323例):ペムブロリズマブ群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)ナブパクリタキセル(99例): 9.9ヵ月 vs. 5.5ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.34~0.95)パクリタキセル(44例):9.6ヵ月 vs.3.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.14~0.76)ゲムシタビン/カルボプラチン(180例):8.0ヵ月 vs.7.2ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.53~1.11)[CPS≧1の患者]全体(636例):7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90)ナブパクリタキセル(204例):6.3ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.47~0.92)パクリタキセル(84例):9.4ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.26~0.82)ゲムシタビン/カルボプラチン(348例): 7.5ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.11)[ITT集団]全体(847例):7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)ナブパクリタキセル(268例):7.5ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)パクリタキセル(114例):8.0ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.35~0.93)ゲムシタビン/カルボプラチン(465例):7.4ヵ月 vs.7.4ヵ月(HR:0.93、95%CI:0.74~1.16)・ORRはCPS≧10の患者で53.2% vs.39.8%、CPS≧1の患者で45.2% vs.37.9%、ITT集団で41.0% vs.35.9%であった。・ORRを併用化学療法別にみると、ITT集団のゲムシタビン/カルボプラチン併用を除いて(40.2% vs. 42.2%)、ペムブロリズマブ群で高かった。・DCRはCPS≧10の患者で65.0% vs.54.4%、CPS≧1の患者で58.6% vs.53.6%、ITT集団で56.0% vs.51.6%であった。・DOR中央値はCPS≧10の患者で19.3ヵ月 vs.7.3ヵ月、CPS≧1の患者で10.1ヵ月 vs.6.5ヵ月、ITT集団で10.1ヵ月 vs.6.4ヵ月であった。 Rugo氏は、サブグループ解析の結果、化学療法レジメンの種類によらずペムブロリズマブの上乗せによりPFSは改善し、またその治療効果はPD-L1発現状況に応じて高まる傾向がみられると結論付けた。ディスカッサントを務めた米国・NYU Langone Medical CenterのSylvia Adams氏は、併用する化学療法レジメンの比較については、本サブ解析結果のみで判断するのはエビデンスとして十分ではないと述べている。

14754.

HIV維持療法、長時間作用型注射剤2剤併用2ヵ月ごと投与は?/Lancet

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者において、長時間作用型注射剤cabotegravirと長時間作用型注射剤リルピビリンの2剤併用の8週ごと投与は、4週ごと投与と比較し有効性および安全性プロファイルは類似していることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のEdgar T. Overton氏らの「ATLAS-2M試験」で明らかとなった。cabotegravir+リルピビリン2剤併用投与については、第II相試験で8週ごと投与と4週ごと投与の有用性が示唆され、第III相試験で4週ごと投与の経口抗レトロウイルス療法に対する非劣性が検証されたことから、8週ごと投与のさらなる評価が求められていた。結果を踏まえて著者は、「HIV-1感染患者の治療選択肢として、より簡便なcabotegravir+リルピビリンの2ヵ月ごと投与の使用は支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。cabotegravir+リルピビリン8週ごと投与の有効性と安全性を、4週ごと投与と比較 ATLAS-2M試験は、HIV-1感染患者の維持療法としてcabotegravir+リルピビリン8週ごと投与(cabotegravir 600mg+リルピビリン900mg)の4週ごと投与(cabotegravir 400mg+リルピビリン600mg)に対する非劣性を検証する第IIIb相無作為化非盲検非劣性試験。現在、13ヵ国(オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、ロシア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、米国)で行われている。 対象は、初回または2回目の標準的な経口レジメンを、連続して最低6ヵ月以上受けており、ウイルス学的失敗のない18歳以上のHIV-1感染患者で、ATLAS試験からの参加者はATLAS-2M試験のスクリーニング時に血漿中HIV-1 RNAが50コピー/mL未満で52週間の比較試験期を完遂した患者とした。対象患者を、cabotegravir+リルピビリンの8週ごと投与群または4週ごと投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、48週時点のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合(非劣性マージンは4%)であった。48週時のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合は非劣性 2017年10月27日~2018年5月31日に1,149例がスクリーニングを受け、このうち1,045例が8週ごと投与群(522例)と4週ごと投与群(523例)に無作為化され治療を受けた。患者背景は、37%(391例)がATLAS試験のcabotegravir+リルピビリン4週ごと投与群から移行した患者であり、年齢中央値は42歳(四分位範囲:34~50)、女性(出生時の性別)は27%(280例)、白人は73%(763例)であった。 48週時点のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合は、8週ごと投与群2%、4週ごと投与群1%、補正群間差0.8(95%信頼区間[CI]:-0.6~2.2)で、8週ごと投与は4週ごと投与に対して非劣性であることが検証された。ウイルス学的失敗(2回の測定で連続してHIV-1 RNA≧200コピー/mL)は、8週ごと投与群8例(2%)、4週ごと投与群2例(<1%)で確認された。8週ごと投与群では8例中5例(63%)、ベースラインでリルピビリンに対する耐性変異ウイルスが検出された。 安全性プロファイルは両群で類似しており、1,045例中844例(81%)に有害事象(注射部位反応を除く)が発現した。治療に関連した死亡は確認されなかった。

14755.

乳幼児診療に感染予防策加算上乗せ、診療科問わず/日医

 厚生労働省は、小児診療の実態や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復後における継続的治療の必要性などの観点から、新型コロナ感染が急速に拡大している間の特例措置として、2020年12月15日付けで事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」を発出した。 「外来における小児診療等に係る評価」と「新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援」に関する上乗せ加算が軸となっている。これに対し、16日に実施された日本医師会の記者会見で、松本 吉郎常任理事が補足説明を行った。乳幼児への外来診療などに感染予防策加算上乗せ(1)外来における小児診療等に係る評価 今回、感染予防策実施について、より配慮が求められる6歳未満の乳幼児への外来診療などに対する評価として、通常の乳幼児加算に上乗せで医科100点、歯科55点、調剤12点を特例的に算定できることとなった。これは、『小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針』を参考に、感染予防策を講じた上で外来診療などを実施した場合、初診・再診に関わらず算定可能。(2)新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援 COVID-19から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で入院診療を行った場合の評価を3倍に引き上げ、これまでの250点から750点となった(臨時特例二類感染症患者入院診療加算)。 なお、算定に当たっては、患者またはその家族に対して、院内感染予防に留意した対応をしっかり行っている旨を十分に説明し、同意を得る必要がある。松本氏は、「医療現場の皆さまには一定の負担をかけることになるが、口頭で構わないので説明と同意への対応をお願いしたい」と理解を求めた。乳幼児診療への感染予防策加算は小児科に限定されない 記者会見では、補足説明として「両加算は発出時点(12月15日)から算定可能」「乳幼児診療への加算は小児科に限定されず、病院・診療所も問わない」「あらゆる現行の算定に対して上乗せで算定できる」などが示された。松本氏は、「まずは今回の措置をきっかけに、医療機関が継続的に感染予防策に取り組むことで、受診をためらっていた患者・家族に安心を与え、疾病の悪化や健康への悪影響が少しでも軽減されることを期待している」と述べた。 日本医師会は、今回の措置も不可欠だが決して十分ではなく、COVID-19に対応する全国すべての医療機関・医療従事者に対して、精神的ケアと人的・物的サポートが提供され、崩壊が進む医療提供体制の立て直しの一助となるよう、さらなる対応を引き続き要望していくとした。

14756.

ニボルマブ、胃がん1次治療に国内申請/小野薬品

 小野薬品工業株は、2020年12月10日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を新たに行ったと発表した。 今回のニボルマブ胃がん1次治療の承認申請は、以下の2つの臨床試験のデータに基づき行われた。・CheckMate-649試験(ONO-4538-44):日本、韓国および台湾を含む世界規模で小野薬品およびブリストル マイヤーズ スクイブが実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験・ATTRACTION-4試験(ONO-4538-37):日本、韓国および台湾で実施した多施設共同無作為II/III相臨床試験

14757.

多読、精読、速読、そしてドクドク【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第31回

第31回 多読、精読、速読、そしてドクドク多くの人にとって、英語の論文を読まねばならなくなった最初の時期は苦しいものです。小生の場合、その苦しみは医師になって2年目に浜松労災病院で訪れました。卒後に大学病院での1年間の初期研修を経て赴任となりました。その病院の循環器内科部長は、英語論文が大好きでした。月曜・火曜・木曜・金曜と週4回、朝8時から抄読会が開催されていました。各担当者が選んだ英語論文を紹介するのです。要点のみではなく、最初から最後まで全文を完全に翻訳するのがルールでした。部長や先輩医師は、論文に目を通しながら、その場で訳していました。自分にはとても無理でしたので、事前にレポート用紙に日本語の全訳を書いて準備し、それを読みながら説明していました。入職した時には自分は一番の若造なので、少なくとも週に1度は当番がまわってきます。この病院に派遣された不幸を嘆いたものです。数年だけ上級の先輩たちも参加していますが、誰も愚痴を言わないことは驚きでした。自分1人だけが脱落することはできません。歯を食いしばって参加し続けました。参加したくないから参加しないという選択肢のない時代です。不思議なことに、半年過ぎた頃から全訳の下書きは不要になりました。前もって2回か3回ほど通読するという準備だけで抄読会での役割を果たせるようになったのです。今も英語の論文を読むことに関して壁を意識しないのは、このトレーニングのお陰です。高橋 正明先生、ありがとうございます。英語の論文を読むのは、どの人にとっても最初は苦しく時間がかかる作業です。この苦労が嫌で、英語論文は読まない、そして読まないから読めないという経過をたどる人もいるでしょう。脱出が難しい悪循環です。その気持ちは理解できます。英語の論文を読む力は訓練でつきます。1つの文章を繰り返して読みこなす精読も大切ですが、量を読みこむ多読も必要です。意図的に努力すれば、必ずスピードアップします。その訓練の過程においては強制されることも必要なのでしょう。高橋 正明先生の厳しさと、厳しさが容認された時代に感謝です。精読のメリットは、英語に対して深い知識が得られることです。多読ではとにかく数多くの英文に触れることが肝要です。文全体の内容を把握することに焦点をしぼり、英語に慣れる感覚をみがきます。スムーズに全体の流れを掴むことは速読する能力の向上につながります。論文の英語は、複数の節から構成される複文であることが通常です。どこまでが1つの節なのか、節と節の関係はどうなっているのかを把握することは、文意を正しく捉えるためのコツです。節と節の関係を表す接続詞にも注意をはらいましょう。意味を理解しにくいときには、その文章の主語と、その主語に対応する動詞である述語を探すことが鍵です。比喩的な表現も少ない論文の英語は、文法的に例外が少なく読解は楽なはずです。偉そうなことを書いてしまいました。英語の論文を読むことが大好きと誤解されては困ります。苦にはならないという程度です。英語よりも、日本語の本を読むことが大好きです。多読、精読、速読・・・濫読、愛読、一読、購読、誤読、査読、熟読、素読、代読、通読、拝読、必読、未読、黙読、朗読・・・読むことに関する言葉は数えられないほど沢山あります。読書の楽しさは、だれにも邪魔されずにゆったりと時間を過ごせることです。本を読むことでその物語に入り込むことができます。読書は楽しむだけではなく勉強にもなります。ストーリーに感情移入する人もいます。他人の人生を知り、自分の人生に取り入れることもできます。自分の人生は一回だけですが、読書を通じて何人分もの人生を愉しむことができます。ドーパミンは人間を支配する快楽物質で、脳内麻薬とも呼ばれることはご存じでしょう。傍らに鎮座する猫をなでながら読書することは至福の時間です。その時の自分の脳は、ドーパミン「ドクドク」です。

14758.

2020年「新・徒然草」の振り返り【Dr. 中島の 新・徒然草】(354)

三百五十四の段 2020年「新・徒然草」の振り返りコロナ第3波で、大阪は大変なことになっています。太陽の塔のライトアップが「非常事態」を示す赤色に染まっているだけではありません。向かいにある観覧車「レッドホース・オオサカホイール」も真っ赤に燃え上がっています。聞くところによると、通天閣も灼熱の赤なのだとか。さて、コロナに始まりコロナに終わろうとしている2020年。1年間の「新・徒然草」を振り返ってみたいと思います。まず、私の卒業した神戸高校が舞台となった映画「思い思われ、ふりふられ」です。新・徒然草では自分自身の高校時代を述べたわけですが(340の段)、母校の同窓会誌に顛末記が出ていました。ロケは学校活動に影響の少ない春休みを選んで、9日間行われたそうです。教員、生徒あわせて約120人がエキストラとして出演していました。面白いのは、映画が公開されるまで守秘義務が課せられており、SNS等での発信が禁じられていたのだとか。あわせて「有名人が来てもワーワーキャーキャー騒ぐんじゃないぞ」と指導されていたのでしょうか。淡々と接する生徒たちに、俳優さんらは「自分たちは人気がないのだろうか?」と思ったそうです。いかにも神戸高校らしいエピソードだと思いました。次に「約束のネバーランド」(351の段)読みましたよ、最後まで。一緒に育ち、生活を共にしてきた孤児院の子供たち全員を“敵”から助けようとしたエマ。やはりそれは生半可なことではなく、エマも無傷ではすみません。自らの一番大切なものを犠牲にして、抗い難い運命に立ち向かいます。そのエマの覚悟に泣けた、大泣きしました。読み終えて思うのは、性別未公開とされる原作者は、やはり女性ですね。「一番大切なもの」というのが私には想像もつかないものでした。皆さんもぜひ読んでみてください。令和に相応しい新感覚の物語です。そしてこの新・徒然草。最後の1句のグレード・アップを図っています。これまでは川柳だったのですが、何とか季語を入れて俳句に挑戦。ちょうど「人間ドックの順番争い」(339の段)から新しい試みを始めました。考えてみれば31文字の短歌と違って、俳句は17文字と短い上に季語が必要です。それだけ制約が厳しく、作るのも時間がかかって苦しい!でも、苦労した分、記憶に残るものができるような気がします。俳句は、季語という日付の入った記念写真のようなものかもしれません。たった1枚の写真に多くを語らせるわけですね。そういえば、先日の日本脳神経外科学会第79回学術総会の文化講演は、演者が俳人の夏井 いつき氏。講演当日の出席はできませんでしたが、後日、ビデオを観ることができました。ハイブリッド学会ならではの有難さですね。ということで、何やかんやあった2020年。この徒然草も、次回が今年最後になります。年の終わりに何を書くかはまだ決めていませんが、とにかく1句冬夜空 真っ赤に浮かぶ 観覧車

14759.

あなたには帰る家がある(前編)【なんで倦怠期になるの?】Part 1

今回のキーワード夫婦関係かかあ天下型亭主関白型愛着スタイルストレンジ・シチュエーション法システム化と共感性カサンドラ症候群ジェンダーギャップ夫婦でいる皆さんやパートナーのいる皆さん、倦怠期でお困りのことはありませんか? 倦怠期とは何でしょうか? なぜ倦怠期になるのでしょうか? そもそもなぜ倦怠期は「ある」のでしょうか? そして、どうすれば良いでしょうか?これらの答えを探るために、今回は2018年のテレビドラマ「あなたには帰る家がある」を取り上げます。このドラマは、夫婦関係の「あるある」が満載であり、うまく行かなくなっていく夫婦のよくある日常を生々しく描いています。このドラマを通して、夫婦関係を発達心理学的に、進化心理学的に、そして文化心理学的に掘り下げます。そして、夫婦関係のより良いあり方(マインド)とより良いやり方(スキル)を一緒に考えていきましょう。倦怠期とは?このドラマには、2組の倦怠期の夫婦が登場します。まず、この2組の夫婦を通して、2つの典型的な夫婦の倦怠期を明らかにしてみましょう。(1)真弓と秀明-かかあ天下型1組目の夫婦は、41歳の真弓と39歳の秀明です。12歳の麗奈との3人暮らしです。真弓と秀明は、行きつけのカレー屋の店主の圭介に、別々のタイミングでそれぞれ夫婦関係の不平不満を吐き出します。真弓は、「家事のこと何にも分かってないんだよ。家のこと何にもやらないから」言います。一方、秀明は、「常に上から来るんだよ。マウンティング病だよ。玄関のドアを開けて、カバンを置く前に文句。1でも返そうもんなら、100倍になって返ってくる」と言っています。1つ目は、かかあ天下型です。これは、妻が夫より強い夫婦関係です。妻が夫を一方的に責め立てるために(攻撃性)、夫は妻を腫れ物扱いして、あえて何もしないことによる反撃をしています(受働攻撃性)。結果的に、お互いに歩み寄りができずにうんざりしている状態が続いています。しかし、子どもがいるために、かろうじて夫婦関係は維持されています。(2)亭主関白型-太郎と綾子2組目の夫婦は、47歳の太郎と43歳の綾子です。太郎の両親(舅と姑)と16歳の慎吾との5人暮らしです。太郎は、外出先でのトイレの後の手洗いでも、綾子に太郎のハンカチを持たせ、自分の手を拭かせています。そして、太郎は口癖のように「誰のおかげだ?」と綾子に尋ね、「あなたのおかげです」と言わせています。また、食事の時は、綾子は、姑や舅から「梅干し!」「ぬか漬けなかったっけ?」と注文され、けなげに給仕しています。良く言えば良妻賢母、悪く言えば召使いです。2つ目は、亭主関白型です。これは、夫が妻より強い夫婦関係です。夫が妻を言いなりにさせています。妻が我慢して反抗しないため、一見すると夫婦円満が維持されています。 倦怠期からどうなる?倦怠期とは、夫婦が、その関係性に疲れ、面倒くさくなり、嫌気が差している時期であることが分かりました。この心理は、とくに夫婦関係のストレスをため込んでいる弱い側に顕著です。それでは、倦怠期からどうなるのでしょうか? ここで、倦怠期によるリスクを大きく3つ挙げてみましょう。(1)不倫秀明の営業の担当先の家が太郎と綾子であったことから、秀明と綾子は出会い、夫婦関係による葛藤や寂しさをお互いに満たすべく、W不倫に至りました。1つ目は、不倫です。さらに、不倫がなかったとしても、子どもが成人して自立すれば、一緒にいる必要がなくなるので、その時点から離婚のリスクが高まります。また、相手の稼ぎを当てにしている場合、相手が退職した時点から離婚のリスクが高まります。いわゆる熟年離婚です。(2)母子密着真弓は、もともと専業主婦として娘の麗奈の中学受験に一緒に励んでいました。娘の第一志望の合格を自分のことのように喜んでいます。2つ目は、母子密着です。子育てに熱心であることは、それ自体良いことです。ただ、夫婦関係がうまくいっていない分、夫が仕事に没頭するように、妻は子育てに没頭します。そして、子どもを自分の分身のようにとらえ、子どもをコントロールして、子どもを心理的に自立させないようにしてしまうリスクがあります。この結果が、不登校やひきこもりです。また、子どもが巣立ってしまえば、その反動で無気力になるリスクも高まります(空の巣症候群)。(3)嫁姑問題姑(太郎の母)は、綾子を召し使い扱いするだけでなく、「だめな嫁だよ」とたびたび綾子をなじっています。3つ目は、嫁姑問題です。ただでさえ、嫁と姑の関係は危ういものなのに、夫婦関係がうまくいっていない分、姑と夫との親子関係が強まり、姑が強くなって夫婦関係に介入することで嫁(妻)が孤立するリスクがあります。次のページへ >>

14760.

あなたには帰る家がある(前編)【なんで倦怠期になるの?】Part 2

なんで倦怠期になるの?倦怠期によるリスクは、不倫、母子密着、嫁姑問題であることが分かりました。それでは、なぜ倦怠期になるのでしょうか? ここから、その原因を大きく3つ挙げてみましょう。(1)不安的なコミュニケーションスタイル-愛着スタイル1つ目は、不安的なコミュニケーションスタイルです。コミュニケーションスタイルとは、発達心理学的に言うと、愛着スタイル(ストレンジ・シチュエーション法による)です。ここから、登場人物を3つの愛着スタイルに分類してみましょう。なお、ストレンジ・シチュエーション法とは、乳幼児を親との分離・再会や知らない人(ストレンジャー)との面会という新規な状況(ストレンジ・シチュエーション)にあえてさらして見られる反応を3つのタイプに分類する実験手法です。a. ガミガミ型-不安型真弓は、夫婦関係のストレスに対して過敏に反応し、秀明にたびたび激怒しています。太郎は、先回りして自分の言いなりになることを綾子にしつこく確認しています。このように、夫婦関係で強い側の真弓や太郎はガミガミ言っています。1つ目は、ガミガミ型です。愛着スタイルで言うと、不安型です。これは、乳幼児が、親との分離のあとに泣き出しますが、親と再会しても怒りから泣き止まない反応をすることです。この原因は、親の愛情が気まぐれで一貫していないことが示唆されています。真弓の父親が不倫をしていたことから、母親はその苦労で情緒不安定だったことが描かれています。ちなみに、臨床的には、反応性愛着障害脱抑制型(脱抑制型対人交流障害)につながります。この詳細については、関連記事1をご参照ください。b. ヘコヘコ型-回避型秀明は、激怒する真弓に、顔色を伺ったり、話を逸らしたり、急に作り笑いをして立ち去るなど、向き合おうとしません。綾子は、太郎のモラハラに、笑顔ですべて受け流しています。このように、夫婦関係で弱い側の秀明や真弓はヘコヘコしています。2つ目は、ヘコヘコ型です。愛着スタイルで言うと、回避型です。これは、乳幼児が、親との分離のあとに泣き出さず、親との再会でよそよそしい反応をすることです。この原因は、親の愛情が一貫して乏しいことが示唆されています。綾子の実家は、もともと綾子に対して冷たかったことが描かれています。なお、後半の綾子は、秀明に執拗に迫っていく点で一見不安型にも見えますが、秀明と同棲を始めると、それ以上の距離を縮めようとしなくなる点で、やはり回避型と言えます。ただし、回避型も、根っこの心理は不安です。不安を不安としてそのまま過剰表出するのが不安型であり、不安を抑制しているのが回避型とも言えます。ちなみに、臨床的には、反応性愛着障害抑制型につながります。この詳細については、関連記事2をご参照ください。c. どっしり型-安定型カレー屋の店主の圭介は、真弓の話も秀明の話も親身に聞き、暖かみがあります。離婚歴があるというのは意外ですが、不安型の真弓に思いを寄せていたことが判明した点で、世話焼きの性分(共依存)から前妻が依存的になりすぎて結婚生活がうまくいかなった可能性を想定できます。圭介は、相手をそのまま受け止め、体格と同じく、内面的にもどっしりしています。3つ目は、どっしり型です。愛着スタイルで言うと、安定型です。これは、乳幼児が、親との分離の後に泣き出しますが、親との再会で速やかに泣き止む反応をすることです。この原因は、親の愛情が一貫して注がれていることが示唆されています。以上から、どっしり型が安定したコミュニケーションスタイルであるのに対して、ガミガミ型とヘコヘコ型は不安定なコミュニケーションスタイルであることが分かります。これらの3つのコミュニケーションスタイルの組み合わせによる倦怠期のリスクを表1にまとめてみましょう。たとえば、夫婦の一方がどっしり型の場合は、たとえもう一方がヘコヘコ型やガミガミ型であったとしても、その包容力によって夫婦関係としては概ね安定することが分かります。ヘコヘコ型×ヘコヘコ型の組み合わせの夫婦関係は、夫婦げんかがあまり起きないので、表面的にはうまく行っているように見えます。ただし、お互いに距離が縮まらずに絆自体は深まっていないです。いわゆる仮面夫婦です。ちょうど、同棲していた時の秀明と綾子がそうでした。よって、子どもの不登校やリストラなどの夫婦関係以外のストレスによってリスクが顕在化します。ガミガミ型×ガミガミ型の夫婦関係は、お互いに攻撃し合って疲弊するので、早い段階でリスクが高まるでしょう。(2)男女の脳機能の違い-システム化と共感性2つ目は、男女の脳機能の違いです。太郎は、理屈っぽいです。秀明は、真弓とは話し合いができないから最初から話をしないと割り切る理屈があります。このように、男性は、原因と結果の因果関係である論理(システム)や結果そのものに重きを置く心理があります(システム化)。この心理の詳細については、関連記事3をご参照ください。一方、真弓は、感情に任せて言いたいことを言います。綾子は、感情に従って、しつこく秀明に迫ります。このように、女性は、感情や関係性(プロセス)に重きを置く心理があります(共感性)。この心理の詳細については、関連記事4をご参照ください。このような男女の脳の働きの違いから、男女はなかなか分かり合えないという現実があります。とくに、共感性のとても高い妻が、共感性のとても低い夫に対して、気持ちが通じないためにストレス状態になるのは、ギリシア神話の登場人物にちなんでカサンドラ症候群と呼ばれています。一方で、システム化がとても高い夫が、システム化のとても低い妻に対して、理屈が通じないためにストレス状態になることも同じようにあります。ただし、この状態にはまだとくに名前が付けられていません。よって、この記事では、「逆カサンドラ症候群」と名付けます。ちなみに、名付けがまだされていない理由としては、おそらく、このストレス状態にある多くの夫が、秀明のように理屈が通じないことを理屈で理解してあきらめているため、その不満を妻ほど表立って表出しないからでしょう。この点から、男性に多い不安定な愛着スタイルは回避型であるのに対して、女性に多い不安定な愛着スタイルは不安型であるとも言えるでしょう。(3)男女の社会的な役割の違い-ジェンダーギャップ3つ目は、男女の社会的な役割の違いです(ジェンダーギャップ)。これは、秀明や太郎が外で働き、真弓や綾子が家で家事や育児をしていることです(性別役割分業)。これには、さらに3つのポイントがあります。1つ目は、お互いに関心がなくなることです。たとえば、分業によって、必然的に夫婦が一緒に生活する時間が少なくなります。そして、お互いにやっていることの大変さが見えなくなり、ますます分かり合えなくなります。心理学的には、同じ格好をする、同じ行動をする、同じ考えをすると相手への親近感が高まることが分かっています(同調性)。逆に言えば、別々のことをしていれば、それだけ心が通じ合えなくなるというわけです。もはや夫はATM、妻は家事代行サービス兼ベビーシッターにそれぞれなり下がってしまいます。2つ目は、助け合いを避けるようになることです。たとえば、最初は分業がうまくいっていても、子どもができる(または増える)、夫がリストラされる、親の介護が必要になる、夫婦のどちらかが病気になるなど、結婚生活で状況が変わることはいくらでもありえます。この時、分業にとらわれていると「家事育児をちゃんとしない妻が悪い」「稼ぎがない夫が悪い」「先にルールを破ったあなたが悪い」という心理が働くからです。分業は、結婚生活を維持するための手段であるはずが、目的そのものになってしまい、逆に結婚生活を維持できなくなる危うさがあります。また、分業が長い期間続くことで、ますます夫は家事育児に抵抗を感じるようにもなるからです。これは、専業主婦を長らくやっている妻が再就職に抵抗を感じるのと同じです。3つ目は、上下関係ができやすくなることです。たとえば、「誰のおかげだ?」と言う太郎のセリフのように、稼いでいる側(夫)が稼いでいない側(妻)よりも、偉そうに振る舞い、夫婦の決定権を握ることです。そのわけは、稼いでいない側が経済的に自立していないことで離婚した場合に経済的に困難になるリスクを稼いでいる側が見透かし、その足元を見るようになるからです(モラルハザード)。こうして、「頼れる夫」「尽くす妻」というステレオタイプ、いゆわる「男尊女卑」が揺るぎないものになっていきます。もちろん、この逆パターンもあります。ワーキングママが専業主夫に対して「私が働いてんのよ」といびることです。かかあ天下型は、「頼れる夫」というあるべき形(ステレオタイプ)ではないことへの夫の葛藤があります。一方、亭主関白型は、「尽くす妻」というあるべき形(ステレオタイプ)が行きすぎていることへの妻の葛藤があります。さらには、この「頼れる夫」は、モラルハラスメントのリスクを高めます。これは、妻が言いなりになるため、夫がやりたい放題になることです。たとえば、家計が夫の管理下に置かれ、妻が自由に使えるお金の余裕がないことです。また、妻が家事育児の負担を一方的に強いられ、時間や労力の余裕がなくなることです。このリスクは、とくに、子どもが1人目、2人目、3人目と増えるごとに高まります。つまり、「頼れる夫」によって「尽くす妻」を強いられることです。これは、もはや奴隷と言えるでしょう。なお、モラルハラスメントの心理の詳細については、関連記事5をご参照ください。また、「尽くす妻」は、共依存のリスクを高めます。この心理の詳細については、関連記事6をご参照ください。とくに日本は、ジェンダーギャップ指数において世界121位(2019年)です。世界的にも、夫婦が、お互いに関心がなくなり、分業というルールにとらわれ、上下関係ができやすい文化であることがよく分かります。ひと言で言えば、夫婦の分業は夫婦の分断を招くと言えるでしょう。 ■関連記事1.グッドウィルハンティング【反応性愛着障害】2.八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】3.「カイジ」と「アカギ」(前編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】4.マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 15.美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】6.だめんず・うぉ~か~【共依存】1)夫婦という病:岡田尊司、河出書房文庫、20162)共感する女脳、システム化する男脳:サイモン・バロン=コーエン:、NHK出版、2005<< 前のページへ

検索結果 合計:35182件 表示位置:14741 - 14760