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小林化工の抗真菌薬に2.5倍量の睡眠薬混入はなぜ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第59回

※本原稿は2020年12月11日時点での情報をもとに作成しています。医薬品の自主回収はさまざまな理由によって行われるため、望ましいことではありませんが、回収自体はそれほど珍しくはありません。しかし今回、死亡例を含む多くの健康被害が起こってしまった回収事例が発生しました。福井県は12月4日、同県あわら市の製薬会社「小林化工」が、爪水虫など皮膚病の治療に使う経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」約10万錠分を自主回収すると発表した。製造過程で通常の服用量を超える睡眠導入剤成分が混入し、岐阜、大阪、佐賀の3府県で計12人に意識消失や強い倦怠感などの副作用が確認されたという。(2020年12月5日付 日本経済新聞夕刊)この製造過程で混入した睡眠導入薬とは短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬「リルマザホン塩酸塩水和物(以下、リルマザホン)」で、当然ながら通常は含まれることなどありえません。しかも、イトラコナゾール錠50mgの1錠中に、リルマザホンの最大量の約2.5倍という高用量が混入していました。イトラコナゾールの内服薬は、1日1回もしくは1日2回服用しますので、朝食後に服用することも多くあります。短時間作用型の睡眠薬を朝食後に服用し、そのまま車を運転して出勤…などと考えるとゾッとしますが、残念なことに、12月11日時点で重篤を含む健康被害は計133例に上り、死亡例も1例生じています。製薬会社のずさんな製造工程のために、患者さんに健康被害が生じるなどあってはならないことで怒りが込み上げてきます。混入した経緯としては、厚生労働省に事前に承認された手順ではないものの、薬の製造過程で原薬の量が減った際に小林化工の担当者が成分を後で追加していたとのことで、その際にリルマザホンが混入したとされています。これが本当であれば、医薬品医療機器等法の違反です。今回のイトラコナゾール錠の回収については、製造販売元である小林化工株式会社から患者用のFAQが出ていますので抜粋して紹介します(一部改変)。ロット番号が不明の『イトラコナゾール錠50「MEEK」』を持っていますが、服用していいですか?絶対に服用しないでください。このお薬を服用された方は、自動車や自転車などの運転や危険を伴う機械の操作は絶対にやめてください。どのロットが回収対象ロットですか?睡眠薬の成分(リルマザホン塩酸塩水和物)が混入していることが判明したロットは「T0EG08」のみですが、ほかのロットについても、すべて回収いたします(50mg製剤)。服用を中止した残薬はどうしたらよいですか?残薬については、処方元または入手した薬局に返却してください。費用などは補償してもらえるのでしょうか?薬代などの補償については、服用されていた製剤を回収し、代替処方が必要となる際に補償をさせていただきます。イトラコナゾール錠の50mg製剤は、すべてのロットを対象として患者さんの手元にあるものまで回収されます。100mgと200mg製剤は、リルマザホンの混入が認められていないとのことですので、患者さんの手元にあるものは回収しないようですが、承認書に記載のない工程で製造していたことが判明したため、医療機関にあるものは回収となります。なお、リルマザホンが混入している当該ロットが調剤された患者さんは全員が特定されていて、服薬中止の連絡が行われたとのことです。すでに服用してしまった患者さんも多くいると思いますが、これ以上被害が拡大しないことを切に願うとともに、原因がきちんと解明・公表されて二度と同じようなことが起こらないようにしてほしいと思います。

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膵臓がん2020 Wrap Up【消化器がんインタビュー】第8回

第8回 膵臓がん2020 Wrap Up出演:国立がん研究センター 東病院 肝胆膵内科長 池田 公史氏2020年膵臓がんの重要トピックを国立がん研究センター東病院の池田公史氏が、一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の膵臓がん研究の要点がわかる。

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第39回 より感染しやすい新型コロナウイルス変異株が英国で急増/ 重症COVID-19への幹細胞治療の試験結果が判明

より感染しやすい新型コロナウイルス変異株が英国で急増英国ケント州やロンドンでの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の増加を受けて同国の保健行政組織Public Health England(PHE)がいっそうの注意を傾けて調べたところ新たなSARS-CoV-2変異体が急速に広まっていることが判明し、VUI - 202012/01と名付けられたその変異体の感染例1,108人が先週13日までに確認されました1)。その1週間後のこの週末19日の記者会見でBoris Johnson(ボリス・ジョンソン)英国首相はロンドンやイングランド南部/東部でのCOVID-19急増は13日発表の新たな変異株のせいらしいとの見解を示しました2)。変異株感染は重病や死に至りやすいという謂われはいまのところないが、他のSARS-CoV-2感染よりも次から次にどうやら感染しやすいらしいと示唆されています。PHEが他と協力しての調査は進行中ですが、いまのところ重症度、抗体反応、ワクチン効果へのVUI - 202012/01の影響は示唆されていません3)。今年2月の遅くに南欧で見つかって今や世界で最も幅を利かせる先着のSARS-CoV-2変異株4)がスパイクタンパク質に614Gという変異を有するのに似て新参のVUI - 202012/01もスパイクタンパク質にN501Yという変異を有します。世界を席巻しているその614G変異ウイルスもVUI - 202012/01と同様に感染を広めやすいらしいことがNatureに最近発表された培養実験やハムスター実験で裏付けられています5)。その実験で614G変異ウイルスは培養気道上皮細胞や気道を模す3次元組織でより増えて居座ることができ、より感染力が高いと示唆されました。続いて614G変異株をハムスターに感染させたところ鼻の拭い液や気管で盛んに増えており、その結果は614G変異ウイルスが上気道により集まるという感染者所見に見合うものであり、どうやらより感染しやすいことを示唆しています。目下のCOVID-19予防ワクチンは614G変異ウイルスに先立つウイルス(614Dウイルス)を起源としており、614Dウイルス感染で生じる抗体が614G変異ウイルスも中和できるならワクチンは614G変異ウイルスにも通用しそうです。そこで研究者は614Dウイルスを感染させたハムスターの血清が614G変異ウイルスの細胞感染を防げるかどうかを調べました5)。その結果、血清は幸いにも614G変異ウイルスの細胞侵入や複製を防ぐ中和活性を発揮し、614G変異は目下のCOVID-19ワクチンの守備範囲にあると示唆されました4,5)。 英国で広まる新たな変異株VUI - 202012/01のCOVID-19ワクチン等の効果への影響はいまのところ示唆されていませんが、確実な答えを得る研究が進行中であると英国の最高医学責任者(CMO)・Chris Whitty氏は14日の声明で述べています6)。COVID-19の幹細胞治療remestemcel-Lの試験は残念な結果になった本連載の第6回で紹介した急性呼吸窮迫症候群(ARDS)合併COVID-19患者へのMesoblast社の間葉系幹細胞(MSC)薬remestemcel-L(レメステムセル-L)の第III相試験が途中解析され、残念ながら主要評価項目・30日間の死亡減少の達成は不可能と判断されました7)。すでに組み入れ済みの233人全員の計画に沿った検討が済むまで試験は続けられ、追跡期間最終の60日時点での人工呼吸器なしでの生存日数・生存率・集中治療日数・入院期間・心臓/神経/肺損傷の結果が後に判明します。先月の終わりにノバルティス社はCOVID-19やその他の病気に伴うARDS へのremestemcel-Lの用途の権利を得る合意を発表しています。同社は残りの試験結果をMesoblast社と共に解析し、有意義な情報を見つけ出してremestemcel-Lの今後の開発方針に役立てることを目指します。参考1)PHE investigating a novel strain of COVID-19/GOV.UK2)Prime Minister's statement on coronavirus (COVID-19): 19 December 2020 /GOV.UK 3)COVID-19 (SARS-CoV-2): information about the new virus variant/GOV.UK4)Baric RS. N Engl J Med. 2020 Dec 16. [Epub ahead of print] 5)Plante JA,et al . Nature. 2020 Oct 26.[Epub ahead of print]6)Statement from Chief Medical Officer, Professor Chris Whitty about new strain of Covid-19/GOV.UK7)Mesoblast Update on COVID-19 ARDS Trial/ Mesoblast

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高齢者扁平上皮NSCLCの新スタンダードとなるか(CAPITAL)/名古屋医療センター

 高齢者のStage IIIB/IV扁平上皮非小細胞肺がん(SQ NSCLC)1次治療の標準治療が世代交代か。nab-パクリタキセルとカルボプラチンの併用(nab-PTX+CBDCA)とドセタキセル(DTX)単剤を比較した無作為化第III相試験CAPITAL試験の結果を名古屋医療センターが発表した。 肺がんには高齢患者が多い。高齢患者の標準化学療法は長期にわたりドセタキセル単剤である。非扁平非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)おいては、JCOG1210/WJOG7813L試験でカルボプラチン+ペメトレキセドのDTX単剤に対する非劣性が示され、2019年の肺診療ガイドラインでCBDCA併用レジメンの使用が推奨された。しかし、SQ NSCLCについては依然としてドセタキセル単剤が標準である。 そのような中、CA031試験で良好な成績を示したnab-PTX+CBDCAが高齢者SQ NSCLCの新たな治療薬として浮上した。そこで、高齢者SQ NSCLCの1次治療におけるnab-PTX+CBDCA療法の第III相CAPITAL試験が行われた。CAPITAL試験は、山本小班インターグループ試験として6つの臨床試験グループ(NEJSG、TCOG、NHO、CJLSG、WJOG、LOGiK)から92施設が参加して行われた。 対象は70歳以上の化学療法未施行の根治照射不能進行・再発SQ NSCLC(ECOG PS 0〜1)250例を目標症例とした。登録患者は、DTX(60mg/m2 day1 3週ごと)とCBDCA(AUC6 day1 3週ごと)+nab-PTX(100mg/m2 day1,8,15 3週ごと)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、安全性である。 事前から予定されていたイベント数92例時点での中間解析の結果、nab-PTX+CBDCAはドセタキセル単剤に比べOSを改善。有意水準0.0158を下回り、早期有効中止を達成した。 研究事務局である名古屋医療センターの小暮啓人氏は、この中間解析の結果から、nab-PTX+CBDCAは高齢者SQ NSCLCの標準療法になると述べている。この試験結果は2021年に投稿すると共に米国臨床腫瘍学会(ASCO)での発表を目標としているとのこと。

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「リウマチを悪友」と呼ぶ患者さん/日本イーライリリー

 高血圧、糖尿病などとともに慢性疾患の代表格と言われる「関節リウマチ」。わが国の関節リウマチ患者数は70~80万人と推定され、仕事や家庭を築くライフステージの重要期にある40代の女性が診断されることも多い疾患と言われている。近年では、治療薬の進歩もあり、患者さんのQOLの改善は大きく進展している。その一方で、目に見えない「痛み」、「倦怠感」、「朝のこわばり」という症状は、周囲の理解を得ることが難しく、また、伝えることも容易でないため、社会生活において悩みを抱える患者さんも多いという。 日本イーライリリーと女性の暮らしを応援する「生活情報サイトハルメクWEB」は、関節リウマチ患者さんの周囲に理解されにくい症状・日常生活の困りごとを俳句で詠む「GoodDAY関節リウマチ俳句コンテスト」を共催し、受賞作品を発表した。 コンテストでは、関節リウマチ患者さんや周囲の方を対象に、患者さんが抱える日常生活の困りごとや、医療従事者やご家族の方とのコミュニケーションについて、俳句とその元になったエピソードを募集。当事者ならではの疾患に対するさまざまな想いや、自身の経験をリアルに綴った俳句とエピソードが828句が寄せられた。 選者は、テレビで活躍中の夏井いつき氏を審査員長に、関係する患者団体、医療者の代表が審査し、大賞1句、審査員特別賞3句、部門賞4句が決定した。 日本イーライリリーでは、「本コンテストが、関節リウマチ患者さんのより良い1日(GoodDAY)について、患者さんや患者さんを取り巻く皆様と共に考えるきっかけとなることを願っている」と期待を寄せている。■受賞作品【大賞】 リウマチを悪友と呼び花野ゆく(吉野智子さん/70代/神奈川県)【入賞】 つまめない箸も下着も枝豆も(浜崎真理さん/30代/神奈川県) 決断の空路9時間氷河踏む(鈴木みつよさん/70代/大分県) コオロギの愚痴も拾った聴診器(小松崎有美さん/60代/埼玉県) 木の芽時(このめどき)まずは頑張り誉める医師(瀬川令子さん/50代/三重県)【審査員特別賞】 こわばりや寒月にまた触れたらし(ぐさん/30代/神奈川県) さする手に重ねてさする秋始め(かあたさん/50代/岐阜県) リウマチと告げられし日や雛の日(田中ウカさん/60代/神奈川県)

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高齢者の身体活動とうつ病との関係

 都市部または農村部で生活している高齢者において、日常生活での身体活動(PA)に違いがあるのか、さらにPAとうつ病との関連について、アイスランド大学のBirgitta R. Smaradottir氏らが調査を行った。Laeknabladid誌2020年10月号の報告。 2017~18年のアイスランド北部のデータを用いて、横断的人口ベースの調査を実施した。対象は、地域在住の65~92歳の高齢者175人(参加率:59.7%、女性の割合:43%)であり、地方在住者は40%であった。PAの測定には、Physical Activity Scale for the Elderly(PASE)を用い、PA合計スコアと余暇、家庭、仕事に関連するPAを反映するサブスコアを調査した。うつ症状の評価には、老年期うつ病評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・都市部と農村部のPA合計スコアは同程度であった。・性別では、男性は女性よりも活動的であった。・年齢層では、65~74歳は75~92歳よりも活動的であった。・農村部の高齢者は、都市部と比較し、仕事関連のPAが高かった。65~74歳のPAも75~92歳と比較し、同様であった。・男性は女性よりも、家庭関連でのPAが高かった。・PASEのPA合計スコアおよびサブスコアの高い高齢者では、抑うつ症状の少なさと有意な関連が認められた。・余暇関連のPAは、PASEサブスコアの中で唯一、抑うつ症状の少なさと独立した関連が認められた。 著者らは「さまざまな状況に関連するPAは、健康上のベネフィットをもたらすと考えられるが、余暇関連のPAに注目することは、メンタルヘルスに最も有益な影響を及ぼすであろう」としている。

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診療ガイドライン2020薬物療法の改訂ポイント/日本肺学会

 肺診療ガイドラインが改訂され、2020年版が発刊された。第61回日本肺学会学術集会の教育講演では、薬物療法領域の変更点について岡山大学の堀田勝幸氏が発表した。肺診療ガイドライン2020の主な変更点EGFR変異陽性 一次治療におけるゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの追加(CQ52 2A)、エルロチニブと血管新生阻害薬の併用がアップデート(CQ52 2A)されるなど改訂された。ALK融合遺伝子陽性 二次治療において、アレクチニブの使用のアップデート(CQ59 1C)、新たなALK-TKIブリガチニブが追加(CQ59 2C)されるなど改訂された。MET遺伝子変異陽性 MET遺伝子変異陽性が新設され、MET-TKI(テポチニブ、カプマチニブ)の推奨が追加された(CQ62 1C)。ROS1融合遺伝子陽性 エヌトレクチニブ使用の推奨が追加された(CQ60 1C)ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明 一次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用がPD-L1 TPS50%以上(CQ64 2C)、1~49%(CQ70 2C)に追加された。小細胞肺  進展型小細胞肺においてのプラチナ製剤併用療法へのPD-L1阻害薬の上乗せについて、プラチナ製剤併用療法+PD-L1阻害薬の使用が推奨された(CQ11 1A)。

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新型コロナ、病床逼迫の診療現場から~呼吸器科医・倉原優氏が緊急寄稿

 各地で新型コロナ感染症の新規感染者数の増加が止まらない。7~8月にかけてのピーク時を超え、間違いなく現状は「第3波」の真っただ中にある。自治体独自の基準により「非常事態」を宣言している大阪府の状況について、CareNet.com連載執筆者の倉原 優氏(近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)が緊急寄稿した。大阪府コロナ第3波の現状 大阪府は、現在コロナ第3波の最終局面であると信じたいくらい新規入院患者数が増えている。指定感染症として診療しているので、必然的に病床が逼迫している。政府は12月17日、向こう1年間は現行の指定感染症扱いを継続するという見通しを発表した。医療者の一部にも、「5類感染症に変えるべき」という意見もある。ただ、COVID-19を5類感染症にすることにより、複数の病院で分散して診療されるようになり、追跡されない水面下で感染者が激増するため、医療崩壊への道をたどることになるのではという懸念がある。 大阪府は現状、重症病床以外を軽症中等症病床という枠組みで運用しているが、医療施設によっては、ほぼ軽症しか診なくなっていたり、当院のようにほぼ中等症病床化していたりする施設もある。普段から高齢者を多く診ている施設には、基礎疾患がある寝たきりの症例を担当してもらい、当院のような急性期病院には少し重症寄りの症例を担当してもらおう、という暗黙の住み分けはあるかもしれない。重症化の予測は可能か パンデミック当初から、重症化指標として、フェリチン・CRP・リンパ球数が報告されていた。軽症例が少ない当院では、6~7人に1人が重症化(高流量鼻カニュラ酸素療法[HFNC] or 気管挿管 or 死亡)しているが、後ろ向きにデータを取ると、いろいろなことが見えてきた(2020年11月までの約120人で検討)。 COVID-19患者のリンパ球絶対数は、おおむね1,000/μL前後で、重症化例で際立って低いという印象はない。圧倒的に差があるのがCRPで、非重症化症例の中央値が3.7mg/dL(IQR:1.0~7.6)、重症化症例の中央値は11.0mg/dL(IQR:7.1~15.3)だった(p<0.001)。フェリチンも、非重症化323.1ng/mL(IQR:114.1~840.8)、重症化787.5ng/mL(IQR:699.9~1407.3)と約2倍の開きがある(p=0.002)。これらが高い患者は、中等症病床から重症病床へ転院する可能性が高いと言える。ASTとALTについては、正常上限を10 IU/Lほど上回っていることが多く、その理由として胆管細胞にACE2があるからという説が有力だという。時に150~200 IU/L近くまで上昇しているケースがあり、そういう場合抗ウイルス薬はなかなか使いづらい印象である。また、呼吸器専門施設ということで、当院ではKL-6を多くの症例で測定しているが、非重症例250U/mL(IQR:190.8~337.8)、重症例333.5U/mL(IQR:261.0~554.1)と、重症例でII型肺胞上皮細胞の傷害が強いことがわかる(p=0.04)。 重症化した患者さんは全例、「両肺全葉」に肺炎像があった。含気が1葉か2葉に残っていれば気管挿管は回避できるかもしれないが、全葉が侵されていると換気する肺胞がなく、呼吸不全から気管挿管に至るということである。「入院時の胸部画像検査を見たとき、医師がゾっとするほど陰影が多い」という現象は、もしかしたら重症化の一番のリスク因子かもしれない。治療と気管挿管 抗ウイルス薬については、軽症~中等症Iでファビピラビル、中等症I~重症でレムデシビルを使うことが多いが、発症早期にこれらを投与して効果があるかどうかは、臨床で実感できない。理論的には効果があると信じているが、現状「投与しない」という選択肢はほぼない状況である(投与していない施設もあると聞くが)。 SpO2が低め(94%未満)あるいはすりガラス陰影(GGO)主体のフレッシュなCOVID-19の肺炎には、デキサメタゾンを積極的に使用しているが、それが急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進展するのを抑制しているのかどうか、これも実感があるとは言い難い。入院時に広範囲にGGOがあるシビアなARDSでは、ステロイドパルス療法を適用して、早い段階で気管挿管に踏み切っている。エアロゾルボックスの使用は、ハードウェアを介した接触感染のリスクがあるため、いまだ議論の余地がある。また、RSI(rapid sequence induction)の技術を持っている医師が院内に常時いるわけではないので、当院では呼吸器センターの強みを生かした気管支鏡を用いた気管挿管を行うことも多い。咳嗽によって術者に飛沫が飛ばないというメリットがあるが、内視鏡なので洗浄が煩雑である。 気管挿管した場合、大阪府では重症病床に転院することになる。大阪府コロナ重症センターが稼働したとはいえ、実運用ベースでの病床使用率は75%を超えているので、転院してから数日後に抜管され、再び中等症病床に戻ってくるというケースが多くなっている。今後、患者数がさらに増えてくれば、中等症病床においても重症患者を診るケースが増えることを覚悟している。【倉原 優氏プロフィール】2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て、08年より現職。CareNet.comでは、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」「Dr.倉原の“俺の本棚”」連載掲載中。

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高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。北米157施設が参加した実践的な無作為化実薬対照比較試験 本研究は、米国とカナダの157施設が参加した実践的な二重盲検無作為化実薬対照比較試験であり、2016年9月21日~2019年1月31日の期間の3回のインフルエンザ流行期に実施された(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 対象は、1つ以上のリスク因子(65歳以上、糖尿病、LVEF<40%、BMI≧30、CKDの既往、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患など)を有し、過去12ヵ月間に急性心筋梗塞による入院歴または過去24ヵ月間に心不全による入院歴のある患者であった。 被験者は、高用量3価または標準用量4価の不活化インフルエンザワクチンを接種する群に無作為に割り付けられ、最大3回の流行期に再接種が可能とされた。 主要アウトカムは、各流行期における全死因死亡および心肺疾患による入院の複合が発生するまでの期間とした。最終フォローアップ日は2019年7月31日だった。4つの副次アウトカムにも差はない 3回の流行期に5,260例(平均年齢:65.5[SD 12.6]歳、男性3,787例[72%]、心不全3,289例[63%]、心筋梗塞1,960例[37%])が無作為化の対象となり、高用量ワクチン群に2,630例、標準用量ワクチン群にも2,630例が割り付けられた。総ワクチン接種回数は7,154回で、5,226例(99.4%)が試験を完了した。 主要アウトカムは、高用量群では、3,577人流行期当たり884例に975件(心肺疾患が原因の入院883件、全死因死亡92件)発生した(イベント発生率:45件/100人年)。これに対し、標準用量群では、主要アウトカムが3,577人流行期当たり837例に924件(心肺疾患が原因の入院846件、全死因死亡78件)発生した(イベント発生率:42件/100人年)。イベント発生のハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.97~1.17)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.21)。 個々の流行期(2016~17年:HR:1.08[95%CI:0.80~1.45、p=0.61]、2017~18年:1.12[0.98~1.29、p=0.10]、2018~19年:1.01[0.89~1.15、p=0.86])においても、両群間に有意差はみられなかった。また、4つの副次アウトカム(個々の流行期の心血管死および入院、全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡、全流行期の心肺疾患による入院および全死因死亡の初回発生)にも有意な差はなかった。 ワクチン関連有害事象は、高用量群が1,449例(40.5%)、標準用量群は1,229例(34.4%)で発現した。最も頻度の高い有害事象は、注射部位の疼痛(高用量群26.1% vs.標準用量群19.1%)、筋肉痛(14.0% vs.11.8%)などであり、高用量群で高い傾向がみられた。重度の有害事象は、高用量群が55例(2.1%)、標準用量群は44例(1.7%)で、重篤な有害事象はそれぞれ2例および4例で認められた。 著者は、「この患者集団では、引き続きインフルエンザワクチン接種が強く推奨される」としている。

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日医・中川会長、Go Toトラベル一時停止を「率直に評価」

 日本医師会・中川 俊男会長は、16日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の増加に歯止めがかからない状況を受け、日本医師会の見解を述べた。菅総理と共にCOVID-19に対応する代表的な医療機関の内部を視察 中川氏は、14日に菅 義偉内閣総理大臣と共に新型コロナウイルス感染症対策で中核的な役割を担う国立国際医療研究センター(NCGM)を視察したことを報告した。特殊感染症病棟の病室内でECMOなど重症患者への対応、特殊防護具を着けた挿管訓練、タブレット端末を用いてICU病棟で活動する医療従事者の様子などを見学し、日々尽力いただいていることに感謝を申し伝えたという。 今回の視察は、中川氏が12月1日に菅総理と会談した際、直々にお願いし実現したもの。総理からは「国としてできる限りの支援を行う」との考えが改めて明確に示された。 また、同日(14日)は、Go Toトラベルを全国一斉に停止すると表明された日でもある。当初は新型コロナ流行終息後に実施予定だったGo Toトラベルが前倒しで行われたことに触れ、「国民の生命と健康を守ることが第一であり、徹底した感染防止対策こそが結果的には一番の経済対策になる」との考えを一貫して訴えてきたと説明。中川氏は、「今回、経済対策のバランスに苦慮されながら、菅総理がGo Toトラベル一時停止の結論を英断されたことを率直に評価したい」と述べた。 同氏は、「医療従事者にとって何より今一番の支援は、感染を極力広げないこと。最強の感染拡大防止策は、国民一人ひとりの日常の慎重な行動と所作であり、われわれのお願いが行動の自粛につながっていると実感している」として、来週のクリスマスを前に「今年は静かなクリスマス、Silent Nightで過ごしていただきたい」と国民に呼び掛けた。

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慢性リンパ性白血病におけるBTK阻害剤 アカラブルチニブの心血管系有害事象

 アストラゼネカは第62回米国血液学会で、慢性リンパ性白血病(CLL)に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤アカラブルチニブ単剤療法を受けた患者762例の心血管安全性データの統合解析において、アカラブルチニブで投与中止に至る心血管系の有害事象(AE)の発現率が1%未満であったと発表した。 この解析は、第III相のELEVATE-TN試験とASCEND試験、第II相の15-H-0016試験、そして第I/II相ACE-CL-001試験の4つの臨床試験が対象となり、アカラブルチニブ単剤療法を受けた未治療、または再発/難治性 CLLの患者が含まれている。観察期間中央値 25.9ヵ月時点で、129例(17%)の患者に心血管系のAEが認められ、7例(0.9%)の患者が心血管系のAEのために治療を中止した。 アカラブルチニブの投与期間中央値は 24.9カ月で、患者の2%以上に発現した心血管系のAEには、心房細動(4%)、心房細動/粗動(5%)、動悸(3%)、頻脈(2%)などがあり、心房細動の発現率は一般的な未治療CLL患者の集団と同程度(6%)であった。 グレード3以上の心血管系のAEは、37例(4%)に認められ、そのうち25%は治療開始から6カ月以内に報告された。その内訳は、心房細動(1.3%)、完全房室(AV)ブロック(0.3%)、急性冠症候群(0.1%)、心房粗動(0.1%)、第二度AVブロック(0.1%)、心室細動(0.1%)などであった。2例は心血管系のAEのため、死亡した(うっ血性心不全、心臓発作が各1例)。 全体として、心血管系のAEが認められた患者の91%、認められなかった患者の79%が、アカラブルチニブ投与前に1つ以上の心血管疾患リスク因子を有していた。心血管系のAEを発現した患者における、患者さんの20%以上が有していた心血管疾患リスク因子は、高血圧(67%)、高脂血症(29%)および不整脈(22%)だった。 Jennifer Brown氏(Dana-Farberがん研究所)は、CLL患者に対するBTK阻害剤による治療では、心血管系の合併症が治療中止の理由となることが多いことに言及したうえで、「アカラブルチニブ投与に伴う心血管系のAEリスクは、未治療のCLL患者の一般集団と同程度であったことが示唆されており、医師にとってアカラブルチニブを処方するうえで重要なデータである」と述べている。 アストラゼネカは、前治療歴のある高リスクCLL患者を対象に、アカラブルチニブとイブルチニブを比較評価する第III相のELEVATE-RR試験など、CLLを対象とした追加試験を検討している。

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第35回 新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か新型コロナウイルスワクチンについて、来年2月下旬をめどに医療従事者への接種を始められるよう、厚生労働省から自治体に体制整備を指示したことが報道された。18日、ファイザーがビオンテック(ドイツ)と共同開発している新型コロナワクチンの製造販売承認申請を行ったことを受け、来年のワクチン接種スケジュールと優先接種対象者について議論が進んでいる。ファイザーのワクチンは、-70度以下での流通・保管体制が必要となる。政府はワクチン保管用に、-75℃のディープフリーザーを3,000台、-20℃のディープフリーザーを7,500台確保するなど体制を整える方針。新型コロナワクチン接種は、通常の定期接種と同様に、住民票所在地の市町村での接種を原則とし、各市町村は、接種対象者に対し、接種券(クーポン券)を発行する。対象者は接種券を医療機関に持参してワクチンを接種し、医療機関は接種券を市町村への費用請求に用いる。接種後、接種券と一体の接種済証が発行され、接種情報は市町村の予防接種台帳で管理・保存される。25日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、ワクチンの接種優先順についてなど、さらに具体的に議論される見込み。(参考)新型コロナワクチン 2月下旬の接種開始準備を指示 厚労省(NHK)新型コロナウイルスワクチンの接種体制・流通体制の構築について(厚労省)ファイザーとBioNTech、日本においてCOVID-19ワクチンの製造販売承認申請を発表(ファイザー)2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を踏まえた診療に係る特例的な対応として、外来や入院を問わず、すべての診療に対して感染予防策の徹底を行った場合、2021年4~9月まで診療報酬を臨時で引き上げることを決めた。この改定により、初診・再診料は1回当たり5点、入院料は1日当たり10点の加算を算定できる。算定条件としては、すべての患者診療において、状況に応じて必要な個人防護具を着用した上で、感染防止に十分配慮して対応を実施する、COVID-19の感染予防策に関する職員研修を行うなどが求められる。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて(厚労省)3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会において、来年度の薬価改定について討論した。2021年から毎年実施される薬価改定の品目ならびに改定幅について、乖離率が5%を超える品目(医療用医薬品のうち69%)を対象に、来年度の薬価改定(薬価の引き下げ)を行うこととした。ただし、COVID-19による影響があるのを考慮して、薬価の削減幅を0.8%緩和することを了承。この決定により、患者や保険者の負担は軽くなるが、新薬の開発コストが増加している中で、製薬企業にとっては経営上の打撃となる。日本医師会・中川 俊男会長は、従来から薬価財源は医療費本体に充当するのが基本で、「コロナ禍の現状において、国民の生命を守るために最前線で活動する医療機関支援の原資とするなど、診療報酬上で中間年に加算をし、医療費財源に充てるべき」との意見を16日の定例記者会見で発表している。(参考)全世代型社会保障検討会議の最終報告取りまとめなど最近の政府の動向について(日医)2021(令和3)年度薬価改定の骨子(案)(厚労省)4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に18日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、2021年度介護報酬改定に関する審議報告がまとめられた。改定率は、前日の田村 憲久厚生労働相と麻生 太郎財務相による折衝でプラス0.7%と決められ、2回連続のプラス改定となった。今回の改定の5つの柱として、「感染症や災害への対応力の強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止に向けた取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」を挙げ、これらを促進するような改定となる見込み。また、厚労省が廃止期限を設けていた介護療養型医療施設や有床診療所から介護医療院への移行促進なども含まれる。(参考)令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)(厚労省)5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ厚労省は、17日に「高齢者医薬品適正使用検討会」を開催し、病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方をまとめた。ポリファーマシーは、単に服用薬剤数が多いことではなく、それに付随する薬物有害事象リスクの増加や、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態。これに取り組み始める病院が、初期に直面するであろう課題を解決するためのスタートアップツールとしてまとめられた。また、第二部はポリファーマシー対策をある程度進めている病院が、業務手順書を整備し、業務をより効率的に行う参考資料としてまとめられている。この取り組みに揃えておくべき資料としては、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))について」「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」が挙げられており、とくに高齢者の入院治療を行う病院に取り組み開始を求めている。(参考)病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(案)(厚労省)第12回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省)

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第48回 学び直し!やさしい冠動脈の話【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第48回:学び直し!やさしい冠動脈の話2020年という年は、全世界が新型コロナウイルスに翻弄され続けた一年でしたね。ところで、ボクも含め、多くの循環器医にとって、“コロナ…検査”と言えば、抗原でもPCR検査でもなく、「冠動脈造影」のことだと思います。コロナリー・アンジオ、いわゆるCAG(coronary angiography)ね。循環器分野では、ごくごく基本的な検査のうちの一つです。皆さんは冠動脈について、どこまで理解してますか? “ドキ心”のメインは心電図の解説ですが、今回は循環器分野での「コロナ…検査」の話をしてみようと思います。“冠動脈の基礎のキソ”心臓が活動するのに必要な酸素や栄養を供給する冠動脈、英語でcoronary arteryといいますよね。そう、「コロナリー」です。「“corona”の語源的には心臓血管もウイルスも同じなんだよ」という話、耳にタコができるほど聞きました(笑)。たしかに、3本の血管が王冠(crown)に絡まるツタのように見えなくもありません。しかし、昔の人のイメージ力ってすごいな。そうくるか、ってレベルですよね? 今回のテーマは、“クイズ形式で冠動脈について楽しく基本を学びましょう”で、以前からご意見として頂戴していたものに答えるレクチャーです。冠動脈に関しては.実際、個々人でかなりバリエーションがあり、厳密な話は少し難しいと思います。また、読者のすべてが循環器の専門医ではないことを踏まえ、あまり微や細を論じることなく、あくまで“学び直し”として、大事な点に絞って解説していこうと思います。では、はじまり~。【問題1】冠動脈はどこから出ますか?解答はこちら右冠動脈:右冠尖、左(主)冠動脈:左冠尖解説はこちら最初は冠動脈の“はじまり”を問う問題からはじめましょう。循環器の医師が“カスプ”と呼ぶ構造物について理解しましょう。“冠動脈の起始部の原則”大動脈の根元(基部)は、若干膨らんでいて、ボク自身は3つのスズランの花のようなイメージを持っています。このスズランはカップ(cup)にも例えられ、間に“s”を足して「冠尖」([coronary]cusp)と呼ばれます。そして、3つのスズラン・カスプの部分を「バルサルバ洞」(Sinus of Valsalva)といい、冠動脈の出どころはここになります。具体的なCT画像を供覧しましょう(図1)。(図1)左右冠尖と冠動脈の起始部[冠動脈CT画像より]画像を拡大する(図1)Aの最も前方にある「右冠尖」(RCC)からは右冠動脈(RCA)が、その左の「左冠尖」(LCC)から左冠動脈(LCA)が出るというのが一般的です。右左そのままでしょ。左の血管は2本に分かれる前の部分であり、「左(主)冠動脈」ないし「左冠動脈主幹部」と呼ばれています1)。(図1)Bの3つの冠尖のうち、唯一、血管が出て行かないのが“ノンコロ”とか言われる「無冠尖」(noncoronary cusp)です。ここが最も後方に位置するわけです。図でも何も出ていませんよね?1):わが国では「LMT:left main trunk」という表現のほうが市民権を得ているように思いますが、海外ではLMCA(left main coronary artery)という言い方をよく見かける気がしてます。【問題2】冠動脈は何本あるか?解答はこちら2本(ないし3本)解説はこちら問題の答えに関しては2本ですかね。あるいは、3本だと答える人もいるかもしれませんが、どちらも正解だと思います。ボクは患者さんに「心臓には血管が3本あってね…」と説明することにしてますが、左も元々は1本ずつですから、ここは「2本」と思ってください。“冠動脈の基本的な本数”右冠動脈は「Cの字」の本幹部分を1本と捉えてください。実際は、最後にそこからヒゲのようなチョロが出ます。フランス語とかにありますよね、「Ç」っていう字。あんなイメージ(笑)。“セディーユ”とかっていうんですよね、たしか。左(主)冠動脈は左冠尖から出て、はじめは1本ですが、ほどなく左前下行枝と左回旋枝の2本に分かれて「逆Yの字」を形成するケースが普通です2)。正味は2本で構成されると考えられ、もちろんそれぞれ枝も出します。たとえば、冠尖からだいぶ上の(上行)大動脈から出たり、右冠動脈のくせに左冠尖から出たり…その逆なんていう起始異常はここでは放っておきましょう。まずはスタンダードを知ることが大事ですから。2):時に最初から2本別個に出て、主幹部がない人もいます。“ダブルバレル”(double barrel)とか、俗称ですが“豚鼻”なんて呼ぶ人もいるなぁ…たしかにそう見えます(笑)【問題3】「右冠動脈」「左冠動脈」以外の“第3の”冠動脈はあるか?解答はこちらときどき「ある」解説はこちら「あれ? コロナリーは、右と左に少なくとも最初は1本ずつ言ったじゃんか」そう思うのは最もで、実際、多くはその血管だけだと思います。でも、皆さん“第3の”冠動脈があるって人、時々いるの知っていますか? この“3番目”の称号は、最も有名なものとしては、左冠動脈に当てられ“クマデ(熊手)”のように、Y字に2本に分岐する左冠動脈のちょうど間を抜くように走る血管を持つ人がいます(図2)。20%、実に5人に1人と、まぁ多いワケ。日本だと“ハイラテ”(high lateral branch)「HL」と呼ばれる血管を指すことが多いです。ほかに、「Ramus Intermedius」なんていう名称の血管も、これと同一だと思われます(しかしここまで来ると覚えづらいですね)。そのほか、右冠動脈にもあるそうです。つまり、仮に右冠尖を内側から覗いたら、穴が2つかそれ以上あいているというケースです。ややマニアックですが、最初に分岐する円錐枝(conus branch)が右冠動脈と独立して冠尖から出るケースが2~3割ほどあるそうです(図2)。ただ、個人的には小さい血管なので、これを“第3の”(または2本目の右冠動脈)というのは抵抗があります。(図2)“第3の”冠動脈?画像を拡大するさらに、右室枝が右冠尖から直接出ることがあります。しかも複数枝が出たりもしたら、もはや「3」では済みませんね。ただ、こんな特殊な例を覚えておく必要はないでしょう。【問題4】右冠動脈は、(A:三尖・僧帽)弁を“巻く”ように(B:   )溝[右房と右室の間]を下方[尾側]に向かって“Cの字”を描くように走行する。最下面に至り、心室中隔面にきた時点で2本に分かれる。基本的な灌流域は、刺激伝導系、(C:右室・左室)および左室 (D:   )壁と考えておくと良い。解答はこちらA:三尖、B:右房室間、C:右室、D:下解説はこちら冠動脈の走行を理解するには、血管用に作られた溝について理解することが大事です。直交する道路で地理的な場所をとらえる“京都”的な考えであり、個人的には好きな思考法です(笑)。“冠動脈を理解するための2平面と溝”血管の話をしてるのに、なぜ溝(salcus)の話を持ち出すのって?…そう思いますよね。まあまあ、聞いてください。心臓を栄養するのが冠動脈の役割ですが、外側というか表面を走りつつ随所で枝を出します。腎臓や肝臓との違いは何でしょう? 直接中に入り込むのではなく、表面を伝って各所に外側から血液を提供する点です。このユニークな構造って…たしか、心臓と脳だけなんですってね。まず、冠動脈がどういう風に走っているのかを理解するのには大事な“平面”があります。これをおさえましょう。一つは心室中隔で、右室と左室とを分けている壁(面)、そして、もう一つは房室弁が乗っている平面です。房室弁とは、心「房」と心「室」をつなぎ目の「弁」ということで、ご存じ、三尖弁と僧帽弁があります。まぁ、言ってみたら“中隔面”と“房室面”ですかね(図3)。(図3)直交2平面を意識した右冠動脈の走行画像を拡大する実は、これらの面の一番外側(表層)に溝(ミゾ)3)があり、ここを冠動脈が走ります。3):個人的には“排水溝”のようなイメージ“右冠動脈の起始部の原則”このミゾを理解した上で、右冠動脈から考えていきましょう。右冠動脈は、右側の房室面のミゾ、正式には「右房室間溝」を“反時計回り”に走行します。三尖弁の周りをグルーッと大外に回って時計の“6時方向”(心臓の真裏)まで来れば“Cの字”完成です。道すがら、何本かの枝を出しますが、基本的に覚えておくべき重要なものは「右室」への枝になります。人によっては複数本ありますが、最低1本は鋭縁枝「AM:Acute Marginal branch」として知られます。三尖弁を回ってCの字の最終点、位置的には心室中隔一番後ろまで来ると、そのままの勢いで左室の裏側に回り込む枝(房室結節[または後側壁]枝)と“中隔面”の後ろ側のミゾ、すなわち「後室間溝」を走る枝(後下行枝)「PD」の2本に分岐するパターンが標準的だと思います。いいですか? “Cの字から2分岐”―これが右冠動脈のパターンです。房室結節(または後側壁)枝や後下行枝の灌流域は、反対の「左房室間溝」を走ってくる左回旋枝との“力関係”で決まります。右冠動脈と左回旋枝は互いに拮抗するのだと考えましょう。後室間溝を走り、左室の「下壁」へ血流を提供するのが後下行枝ですが、この部分は8~9割は右冠動脈が担うことが知られています。この枝は、心室中隔に突き刺さる枝を出し、後方3分の1を潅流する、なんて習いましたよね?4)4):前側の大半(目安:3分の2)は左前下行枝が担当する一方、房室結節や左室「側壁」や「後壁」と呼ばれるゾーンに侵入してゆく房室結節(または後側壁)枝は左回旋枝と“半分こ”か、むしろそちらに主導権を渡すことが多いようです。残りの細かい枝振りは循環器専門医でなければ不要ですが、一応載せておきましょう。【右冠動脈】(RCA:right coronary artery)*円錐枝(conus):右室流出路洞結節枝(sinus node):洞結節右室枝(RV):右室鋭縁枝(acute marginal)5):右室(自由壁)後下行枝(posterior discending):心室中隔(後1/3)房室結節枝/後側壁枝(AV nodal/posterolateral):房室結節ほか(側壁、後壁)*:「branch」は省略。以下同様5):循環器医が“アキュート・マージン”と呼んだりする。横隔膜を“なめる”ように沿って走り、右室の一部(側壁)を栄養する円錐枝については、専門家以外は暗記(意識すら)する必要はないと思いますが、最初の枝で肺動脈へとつながる右室の“ヤカンの注ぎ口”にあたる部分(右室流出路)を担当します。ほかに心房や、もっと大切なものとして、洞結節や房室結節にも血流を供給しているんですね。後二者とも回旋枝を経由した流れもあると思いますが、この2点は右冠動脈の影響が強いことが多く、右冠動脈閉塞時に徐脈性不整脈が起きやすいのにも納得でしょうか。右室枝は文字通り、そして鋭縁枝も右室に血流を供給します。標準的な右冠動脈造影をお示しします(図4)。(図4)右冠動脈造影画像を拡大するあまり煩雑にならないよう、“覚えなくて良い”と言った枝は(あえて)ラベルしていません。大筋でとらえると、房室弁に対峙するAでは頭に三尖弁を思い浮かべてたしかにCの字に回って最後に2分岐していますし、Bが心室中隔に向かい合う面で櫛(クシ)状の後下行枝がキレイに見えますね。【問題5】左冠動脈前下行枝は、(A:  )溝(右室と左室の間)を心尖部に向かって下っていく。途中、前方の(B:   )を栄養する何本かの中隔枝、および左室(C:   )壁などを灌流する対角枝を各々何本か出す。非常に発達している場合、心尖部から後室間溝に回り込み、左室(D:   )壁まで支配するケースも見られる。解答はこちらA:前室間溝、B:心室中隔、C:前、D:下解説はこちら左冠動脈のうち、左前下行枝から扱いましょう。これは、“3人戦隊!コロナ・レンジャー”ではセンターの赤色のヒーローです(笑)。もっとも大事な冠動脈のとも言えるこの血管の走行は非常にシンプルで理解しやすいです。“左前下行枝は冠動脈のエース”では、次に左冠動脈脈のうち前下行枝について話します。先ほども言ったように、左の冠動脈も最初は一本で、ちょっとして2本に分かれると考えましょう。そのうちの一本、冠動脈のエースと言えば、そう、左前下行枝です。循環器医は“エルエーディ”(LAD)とか略称で呼んだりしてますが、その血管はどういう走行、枝ぶりをしているのでしょうか。左前下行枝は、冠動脈のエースにふさわしく、ここが根元でやられると心臓の約半分がダメージを受けると言われています。非常に大事な血管です。ここでも、(心室)“中隔面”と“房室面”を意識しましょう(図5)。(図5)直交2平面を意識した左前下行枝の走行画像を拡大する左前下行枝は心臓のど真ん中、右と左の心室を分ける前側のミゾ、正確には「前室間溝」をレールとして使います。つまり、心室中隔の一番上、ダムで言う“天端”(マニア以外知らないかも…)を心尖方向に向かって下り落ちます。途中で出す枝の系統は大きく分けたら2通りあり、一つは心室中隔にグサッと突き刺さる「中隔枝」で、ここが右冠動脈の後下行枝を迎え撃つ前側3分の2くらいに血流を供給することになります。右冠動脈の後下行枝のちょうど反対側を走るので、これもクシのように見えるのが特徴です。左前下行枝の本幹以外のもう一系統はと言えば、対角枝(Dx)です。複数あったら(おおむね)出た順にD1、D2、D3…と表記し、“ダイアゴナル・ブランチ”なんて言いますかね。この枝は、左室の前面、つまり「前壁」を中心に、全例ではないものの(左)側方である「側壁」ゾーンを担当することもあります。画的に見ても、理解できると思います。さらに、とてつもなく大きな左前下行枝の話もしておきましょう。レールの終端である心尖部から後室間溝まで回り込むという例があり、その場合は左室「下壁」までを栄養してしまう“欲張り”ぶりを発揮することがあります。これはおさえておきましょう。“wrapped(あるいはwraps around)-LAD”というようです。ラップで“包み込む”感じね(笑)。以上、“エース”左前下行枝の走行は比較的シンプルで、灌流域に関してもバリエーションが比較的小さいと思います。【左前下行枝】(LAD:left anterior discending artery)中隔枝(septal):心室中隔(前2/3)対角枝(diagonal):左室前壁ほか(側壁)本幹:心尖ほか(下壁)【問題6】左回旋枝は、(A:三尖・僧帽)弁を“巻く”ように(B:  )溝(左房と左室の間)を走行し、右冠動脈の走行と対称的なイメージで良い。左室(C:   )壁および(D:   )壁が主な灌流域である。解答はこちらA:僧帽、B:左房室間、C:側・後、D:側・後解説はこちら最後に残った左回旋枝の走行を考えましょう。これも前述のミゾを理解していれば,走る場所はだいたいわかりますね?それを言葉で表現しただけの問題です。“左回旋枝は残りモノ担当”では、もう一本の左回旋枝のほうはどうでしょうか? これは通称“エルシーエックス”(LCX)、ないし“シーエックス”(Cx)という風に呼ばれます。基本的な理解としては、また例の溝の絵で、左回旋枝は、右冠動脈と反対側の「左房室間溝」を通って僧帽弁の周りを走ります。つまり、力士の“まわし”で例えますと、“右まわし”がRCA、“左まわし”がLCX、そしてLADは真ん中の“ふんどし”ないし“さがり”のような部分が守備範囲となるわけです。ボクの言ってる意味、わかります?そして、基本的に左回旋枝は、左室「側壁」、そして「後壁」に血流を送ることになります。これも左側方から後方に向かうイメージをつけておけばいいでしょう。左前下行枝と右冠動脈が担当する場所“以外”という、すき間産業的な印象を抱いてしまうのは、ボクだけでしょうか。主な枝は“オーエム”(OM:Obtuse Marginal)と呼ばれる鈍縁枝、そして右冠動脈にも似たような名前がありましたが、後側壁枝を出すと考えましょう。前者は主に「側壁」、後者は文字通り「側壁」+「後壁」ゾーンを流れると考えて良いと思います。まとめて“marginal branches”と呼んでしまえば、左側後方に向かうイメージそのものです。左回旋枝に関しても、枝振りをまとめておきましょう。【左回旋枝】(LCX:left circumflex artery)鈍縁枝(obtuse marginal)後側壁枝:側壁(・後壁)後下行枝(PD):下壁(左優位の場合)左冠動脈造影も標準的な画像を二方向で示しておきます(図6)。(図6)左冠動脈造影画像を拡大する図6の中隔面と平行なAでは、ジェットコースター的なLADの走行や中隔枝の様子がわかりやすいです。一方の房室面に対峙するBの断面は、前側壁に流れる対角枝と僧帽弁を巻き、ほとんど同じゾーンに枝を出す回旋枝の様子もわかってもらえると思います。このように考えると、冠動脈造影も別に難しいことはないわけです。“さいごに”今回は冠動脈の基本中のキホンを一緒に学びましたね。この知識が何に生かせるのかを述べて今回のレクチャーを終わろうと思います。それは次のまとめの図と関連します。(図7)冠動脈と心電図誘導[まとめ]画像を拡大する心電図の世界では“誘導”は“目”と言い換えるのでしたよね。この表は、「ST上昇」や「異常Q波」がどの誘導にあったら、「~壁梗塞」でどこの血管がつまっているという対応を示しています。今日学んだ知識を習得していれば、V2~V4誘導あるいはV1誘導を含めた「前壁(中隔)梗塞」の場合、閉塞した血管は左前下行枝かなぁと思えるでしょう。一緒にII、III、aVFにも「ST上昇」があったら、ドデカいLADなんだろうなぁ…なんて予想ができるはず。ほかに、「下壁梗塞」は単独なら概ね右冠動脈ですし、そのほか「側壁」や「後壁」が組み合わさっても、左回旋枝とのどちらかだろうなぁと予想ができると思います(現実的には心電図だけでの両者の厳密な鑑別は難しい) 。実際には、複数の血管の“力関係”が拮抗するゾーンもあるため、画一的かつ確実な予想は容易ではありません。もちろん、これはあくまでも“目安”です。心筋梗塞の患者さんに対峙したとき、心電図を使って詰まっている血管を当てる“ゲーム”が本題ではなく、その何倍、いや何十倍、やるべき大事な事がありますので、現実ではDr.ヒロはあまり“予想屋”はしないと心に決めています。以上、基本といいながら、冠動脈に関してまあまあちゃんとした知識をつけるレクチャーになったのではないでしょうか。年末年始を利用して復習してみてくださいね。本年もご愛読ありがとうございました。2021年からはペースは不定期となりますが、有用な情報が提供できれば嬉しいです。Young PM. AJR Am J Roentgenol. 2011:197;816-826.Villa AD, et al. World J Radiol. 2016:8;537-555.【古都のこと~延暦寺:文殊楼】前回に引き続き、今回も比叡山延暦寺の話をしましょう。今回ご紹介するのは「文殊楼」(もんじゅろう)で、国の重要文化財です。延暦寺発祥の地である東塔(とうどう)にあり…というか、根本中堂を出てすぐの長くてキツイ石段を登ったところにあります。ここは868年(貞観8年)、慈覚大師円仁が「常坐三昧院」として創建したもので*1、比叡山の総門(いわゆる正門)です。1668年(寛文8年)に焼亡した直後に再建されたものが現在のもので、唐様がちりばめられる中に和様も忘れない折衷様式となっています。楼上には文殊菩薩がまつられ、今では合格祈願スポットとしても有名です。谷崎潤一郎の小説*2にも登場するというのは知らなかったなぁ。“忍者屋敷”を思わせる階段を登るには手の力が相当いります。内部はもとより、全体的な佇まいも素敵。ぜひ、皆さんにも訪れて欲しい個人的お気に入りスポットです。*1:唐留学時代に修行した五台山の文殊菩薩堂に倣ったとされる。*2:『二人の稚児』。幼い頃から比叡山に預けられた千手丸と瑠璃光丸の兄弟が登場する。世間が恋しくなり脱走した兄は、残った弟も誘い出そうとするが、弟は御仏の恵みを受けるべく山に留まると返答する。手紙を届けた使者が崇高な瑠璃光丸を待ち続けた場所が文殊楼であった。

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「俺はデキる男!」――、 たとえそうでも契約時の直接交渉はNG!というお話【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第7回

第7回 「俺はデキる男!」――、 たとえそうでも契約時の直接交渉はNG!というお話漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継の事業をしていると「業者なんて要らないよ」「契約も自分でやりますから」とおっしゃる医師の方に遭遇することがあります。医師の方は概して優秀で「勉強すれば何でもわかる」という成功体験をされている方が多いこともあるでしょう。でも、皆さんは不動産の売買契約を自分でやろうと思うでしょうか? 医業承継は実際に不動産契約が含まれる場合もあり、高い専門性が求められる分野です。不動産売買のように古い業界でも、今なお仲介事業者が介在する取引が一般的であることを考えると、当事者同士の直接取引がいかにトラブルを招きやすいものであるかが理解できるかと思います。直接取引でありがちなトラブルとしては、以下のようなものがあります。(1)口約束で話を進め、契約直前でどちらかが辞退したり、条件を大きく変更したりする(今回の事例ですね)(2)譲り受ける資産・売上(患者数)などの情報について、口頭の感覚値で話を進め、承継直前で実態が異なることが判明する(3)当事者同士は合意したものの、不動産オーナーなど関係者への根回しができておらず、そこがネックになって破談になる(4)簿外債務(決算書内に記載がないため見落としがちな負債)を引き継いでしまう(5)不十分な内容で契約を締結した結果、想定していた譲渡金が得られない医業承継では、下記のようにフェーズごとに行うべき取り組みが決まっています。医業承継の基本の流れと要する期間画像を拡大するさらに言えば、医業承継における契約書のフォーマットもある程度まで決まっています。これは過去のトラブル例を踏まえ、同じ轍を踏まないため今のかたちになっているのです。確かに仲介事業者に依頼すれば費用は発生しますが、それに見合うだけの「先人の知恵」と「トラブル回避策」があるのです。直接取引は避け、仲介事業者へ依頼することをお勧めします。

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事例016 ピロリ菌検査の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説ピロリ菌の除菌判定にD023-2尿素呼気試験(UBT)を実施しましたが、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)により検査そのものが査定となりました。調べてみるとUBTは、除菌療法終了後8週間以降に行う、プロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはPPI複合剤を服用中もしくは投与中止または終了後2週間以上経過している場合に行うとされています。今回のケースでは、除菌療法終了後8週を越えての検査予約で来院されたものでした。縦覧点検での査定と記されていたので、過去にさかのぼり調べてみたところ、院外処方の中にPPI製剤エソメプラゾール(商品名:ネキシウムカプセル)20mgが42日分処方されていました。その期間が、服用中止後2週間以降と重なっていたため、UBT検査の適用なしと判定されたものでした。患者さんには、胃に関連するお薬は飲まないようにと指導されており、患者さんは1月から服用していなかったとのことでした。この事例では、「服用中止後2週間以内に服用がないことを確認して検査実施」のコメントを付けて請求すべきでした。こうした事例はよくあるケースなので、医師に検査前の確認をお願いして防止策としています。

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医療マンガ大賞2020 入選エピソード「おんぶ―息子のぬくもり」(原作:そらじろー氏)

医療マンガ大賞2020 入選エピソード「おんぶ―息子のぬくもり」(原作:そらじろー氏)漫画家・chiku氏からのコメント今回のエビソードを拝読した時、童謡の「赤とんぼ」が頭の中に流れてきました。そして、子供のころ、秋の夕暮れ空を飛んでいく赤とんぼを見て、なんだか嬉しくなり追いかけた日々を思い出しました。そんな情景を思い描きながら執筆した作品です。今は亡き叔母が70歳になったとき、「人生は、思い返すと本当に“夢”のように早かった」と言いました。赤とんぼの唄で「山の畑の桑の実を 小篭につんだは 幻か」という歌詞がありますが、叔母の気持ちはそのようなものだったかもしれません。そして何よりも、医師が患者さんの生きた時間の一瞬の輝きを大切に思い、その死に対して号泣するほどの人情に感動しました。エピソードの原作者・そらじろー先生の“仁”の心に敬意を込めて、この漫画を捧げます。また、この作品の中に『銀河鉄道の夜』をオマージュしたシーンも盛り込みました。そらじろー氏(40代・腎臓内科)による原作エピソード『おんぶ―息子のぬくもり』はこちら参考医療マンガ大賞2020 医療マンガ大賞受賞作品 心がふるえたエピソード (横浜市医療局)医療マンガ大賞特設Webサイト(同)バックナンバー

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医療マンガ大賞2020 「心がふるえたエピソード(医師視点)」入選作品

「おんぶ―息子のぬくもり」今から9年程前、腎臓内科医としてやっと中堅に差し掛かった頃、元々は近医に高血圧などで通院していた70代女性の方(Aさん)が、発熱、呼吸困難などで他院に入院し、腎機能障害が生じたため、当時私が勤めていた病院に転院してきました。精査の結果、顕微鏡的多発血管炎があり、その後、呼吸状態の悪化などで、同じ病院のICUに入室しました。この病気で併発する肺出血が生じたようで、気管挿管して人工呼吸器管理となりました。同じくこの血管炎の特徴である急性腎不全があったため、血液透析も行っていて、意識は清明であるものの、かなり重症でした。Aさんの息子さんは熱心に面会に来ていましたが、私はよくない病状ばかり説明せざるを得ませんでした。ある時、一時的に呼吸状態が改善し、抜管できる時期がありました。Aさんは、もう自分は長くないと悟っていたのか、細かな経緯は忘れてしまいましたが、看護師に「息子におんぶしてもらえないか?」と、かわいらしいお願いをしました。後から考えれば、無機質なICUで闘病する中、愛する息子のぬくもりを少しでも多く感じたかったのではないかと思います。最初は、ICUのベッドから降りておんぶなんて、まず血圧が下がるでしょうし、危険すぎる! と思い、逡巡していました。「先生、お願い。たった1度でいいから」、Aさんは訴えます。危ない道を何度も通りながらも闘病を続けてきたAさんにお願いされ、一瞬だけでもそれに応えてあげたいと思っている自分がその時いました。点滴のチューブや酸素マスクなど、いろんなものがAさんにつながっていましたが、看護師の協力の下、面会に来た息子さんになんとかおんぶしてもらい、久々の笑顔を見せてくれました。周りにいた私達はみんな拍手し、温かい気持ちになりました。その後、数日のうちに、Aさんの病状が悪化し、連絡を受けましたが、私は出張先から帰って来るところで、亡くなられる時には間に合わず、死亡確認に立ち会えませんでした。すごく思い入れのあった患者さんだったので、いろいろ手を尽くしても助けることができなかったこと、最期を見ることができなかったこと、様々な想いが溢れてきて、ICUで人目をはばからずに泣いてしまったことを覚えています。息子さんも初めは打ちひしがれていたと思いますが、「また、こんな患者が運ばれてきても、がんばってくださいね!」という激励の言葉まで下さり、看護師さんからも「Aさんが亡くなられた時、先生がそばにいらっしゃった気がしました」と慰めの言葉をいただき、また頑張ろうと気を引き締めた若き日でした。原作:そらじろー氏(40代・腎臓内科)バックナンバー

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COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。しかし、欧米の指針に準拠した予防対応が適切であるか、国内でのコホート/レジストリベース研究を含むさらなる研究を行うことが喫緊の課題」としている。 また、感染症指定医療機関の有無に関わらずCOVID-19症例の入院を受け入れている施設が多いものの、COVID-19症例での血栓症予防に関して、指針やマニュアルが存在する施設が少数であったことも明らかにしている。

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TN乳がん1次治療でのipatasertib+ PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS[主要副次評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常) 主な結果は以下のとおり。・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。・安全性については、以前の報告と一致していた。 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

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