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手術記録をデジタル化するメリットは何ですか?【誰も教えてくれない手術記録 】第2回

第2回 手術記録をデジタル化するメリットは何ですか?こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。前回は「手術記録とは何か?」というテーマでお話ししました。提示した手術イラスト(幽門側胃切除術)について、記事中ではほとんど触れなかったので、「実際はどうやって描いているの?」と疑問に思った方もいらっしゃったかもしれません。今回からは、その疑問にお答えするべく、具体的な描き方を説明していこうと思います。タブレットと紙のギャップは「画面フィルム」で解消!デジタルイラストレーションを作成するうえで必要な機材は、タブレット&スタイラスペン(PCとペンタブレットでもOK)です。私は、iPadとApple Pencilを使用しています。アプリケーションは、レビュー評価が高かったProcreate(有料)を選びましたが、ほかにもさまざまなイラスト用アプリがありますので、自分に合ったものを探してみてください。実は、私が手術イラストのデジタル化に挑戦し始めたのはつい昨年のことで、外科医になってから4年ほどは、アナログ(紙とペンと色鉛筆)で手術イラストを描いていました。デジタルイラストの経験はまったくなかったので、タブレット導入前はうまく描けるか心配でしたし、当初は紙とは違う描き心地が不満で、デジタル化を諦めかけたこともありました。しかし、画面にペーパーライクフィルムを貼ってからは、描き心地が格段に良くなりました。その後も苦戦しながら描き続けたところ、試行錯誤を繰り返すうちに、だんだんとデジタル特有の操作方法や機能にも慣れてきて、ここまで習得できた形です。今では、デジタルの機能を駆使することで、アナログでは難しかった細やかな色彩や濃淡、奥行きなどを表現した手術イラストがようやく描けるようになったと感じています。デジタルイラストのメリット・デメリット私は、デジタルイラストに取り組んだこの1年あまりで、200枚以上のイラストを描き上げました。そこで、実際に感じたメリット・デメリットを記します。《メリット》書き損じの修正や変更が容易拡大・縮小が可能で、より精緻なイラストが描けるレイヤー機能や色彩パレットを用いた幅広い表現力がある過去のイラストを引用できる他者とイラストのデータ共有が可能画像を拡大する(左)過去のイラストを引用する様子/拡大して細かく描き込む様子(右)《デメリット》初期投資が必要(タブレット、スタイラスペン、アプリなどの購入費)慣れるまで少し時間がかかるかつての私と同じように、未経験の人がデジタルイラスト作成を始めるには少し勇気がいるかもしれません。でも、慣れたらこれほど快適なものはありませんよ。先述したように、効率化できるだけでなく、イラストの表現幅がぐっと広がるので、手術イラストをより細かく美しく描きたい人、より短時間で描きたい人、よりシンプルにわかりやすく描きたい人など、どんな人にもきっとメリットを感じてもらえることでしょう。この連載を読んで、少しでも「やってみようかな」と思った方は、ぜひ、デジタルイラストに挑戦してみてください!まとめ手術記録をデジタル化するメリットは何ですか?機材をそろえる必要があり、慣れるのに少々時間がかかるが、習得後は、効率的かつアナログでは描けないクオリティのイラスト作成が可能になる。デジタルイラストは、多忙な外科医にこそおすすめできる方法です! 次回は、実際のデジタルイラストの作成手順についてお伝えする予定です。お楽しみに~!

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“看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない!【非専門医のための緩和ケアTips】第2回

第2回 “看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない!前回からスタートした「非専門医のための、明日から使える緩和ケアTips」です。「緩和ケア」というと、「緩和ケア病棟のような、専門病棟に入院する患者に提供される濃密なケア」というイメージを抱く方が多いようです。ですが、がん患者に限ってみても、緩和ケア病棟で亡くなるのは全体の12%程度です。では、残りの9割近くの方は、どこで人生の最終段階を過ごしているのでしょうか? そう、緩和ケア病棟以外の一般病床や施設、そしてご自宅です。つまり、緩和ケア病棟だけでなく、患者さんが過ごすさまざまな場で「緩和ケア」を提供する必要があるのです。「さまざまな場で緩和ケアを必要とする人に最適なケアを届けるため、緩和ケアを専門とする私や仲間たちが学び、使っているノウハウを共有しよう!」というのが、この連載のテーマです。今日の質問通院が困難となり、訪問診療をしている高齢患者さん。ご家族から、「最後まで自宅で過ごさせたいけれど、可能でしょうか?」と相談を受けました。今後どのような話し合いをするとよいでしょうか?皆さんは診療時に、どのように緩和ケアに取り組んでいますか? こんな風に聞くと、「いやいや、うちは訪問診療をしてはいるけど、看取りは対応していないので」なんて声も聞こえてきそうです。もちろん、看取りを視野に入れたケアは、比較的短期間に集中的な介入やコミュニケーションが要求される、緩和ケアにおけるメジャーな分野です。でも、緩和ケアはそこだけにとどまらず、普段外来に来ている患者さんに対しても意識することで、実践できることはたくさんあります。というか、そういった時期にこそ緊急性がない分、落ち着いた取り組みができるはずです。最近は、人生の最終段階に備えて、意向を共有しておくプロセスの重要性が増しているといわれています。いわゆる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP:Advance Care Planning)」というやつですね。ACPのような取り組みも、病状が穏やかで、切迫した意思決定が必要ないときのほうが本質的な話ができます。病状が進行してからの話し合いでは、どうしても急いで決めないといけない重要なことに目が向いてしまいます。そうなると、ACPの重要なコンセプトである「前もって」「意向や価値観の共有」という2点が損なわれ、具体的な医療行為の決定のみに走る傾向になります。ここを何とかできるのが、普段の診療をしている医療者、主に開業医の先生方なのです。ここは急性期病院に勤める私としては、うらやましい限りです。とはいえ、実際に診療で何をするかとなると、「?」となる方がほとんどだと思います。「すべての医療現場に緩和ケアを」というコンセプトには賛同できても、具体的にどのように取り組めばよいかがわからない、というのも当然です。そのあたりをこの連載で順次お話しできればと思いますが、今回はまず、「“看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない」ということを、ご理解いただければと思います。ここで1つ、コツを紹介です。患者さんと病気以外のことを話している瞬間ってありますよね? 私は高齢の方を診ることが多いので、これまで経験した職業や育った地域のことなど、雑談っぽく聞いています。実はこれ、その人の物語的(ナラティブ)なエピソードを理解するという点で、緩和ケア的なアプローチなんです。こういった話をすると、「診療時は時間がないから無理」なんて声も聞こえてきそうです。決して1人で取り組む必要はないですし、看護師さんの力を借りるのも有効かもしれません。こんなふうに「緩和ケア」を広く捉えていただくことが、緩和ケアを皆さんの診療に加えていく最初の一歩になります。次回以降、物語的(ナラティブ)な対話について、具体的にどのように取り組んでいるかを紹介しながら「時間がない」問題について考えていきましょう。今回のTips

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第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)

奈良県、感染症法で50床確保へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイークがやって来ます。私は、去年に断念した南会津の登山を計画していたのですが、再びの4都府県に対する緊急事態宣言で都道府県をまたぐ不要不急の移動の抑制が求められたことで、今年もどうやら行けそうにありません。「緊急事態宣言 3度目発令」を報じた4月24日付の日本経済新聞は朝刊一面で、論説委員が「1年間何をしていたのか」と国の医療提供体制の施策を厳しく批判していましたが、本当に1年間何をしていたのでしょう。今回の宣言発令でも、国の真剣さが感じられないのが気になります。「オリンピック止めます。だから…」くらいは言ってほしかった、と思う今日このごろです。前回(第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…)で書いた奈良県の改正感染症法に基づく病床確保要請ですが、4月23日付の毎日新聞によれば、約15病院で計50数床確保できる見通しになった、とのことです。感染症法にも相応の効果があったということで、こうした要請は他の都道府県にも広がるかもしれません。さて、今回は厚労省が都道府県知事宛に発出していた通知について書いてみたいと思います。最近、複数の医療関係者と話していると、補助金がらみのややきな臭い話を聞くことがあります。曰く、「某大学病院はコロナの補助金で過去最高益になったらしい」「コロナ患者を受け入れていないのに、コロナで焼け太りしている病院がある」…。世の中、コロナ対応で医療現場は崩壊寸前という趣旨の報道が大半です。1年ほど前は、医療機関の患者が激減し、経営が大変だという報道もありました。しかし、ここに来て、あまり「経営が大変だ」という声が聞こえなくなってきたところに、この手の話です。現場は大変ですが、経営は良好なのでしょうか…。と首を傾げていたら、こんな厚労省通知に関する報道がありました。コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認へ4月20日付の産経新聞は、「コロナ患者受け入れへ聴取 医療機関の状況確認へ 厚労省が通知」という記事を掲載しました。それによれば、「厚生労働省が、正当な理由なく新型コロナウイルス感染症患者の入院を断っている医療機関に対し聴取を行い、受け入れを要請するよう求める通知を各都道府県に出したことが20日、分かった」とのことです。通知が発出されているのに「分かった」というのも変な話ですが、「感染拡大地域で病床が逼迫する中、すぐに受け入れが可能な『即応病床』を確保するのが狙い」と記事は書いています。なお、後追いする形で朝日新聞も4月23日付の朝刊で同内容の記事を掲載しています。今回取り上げられたのは、いったいどの通知だろうと調べてみました。コロナ関係の通知はそれこそ膨大にあるのと、通知したい内容とタイトルが微妙にズレているので、なかなか見つけ出すのが大変です。受け入れ困難と判断した場合は即応病床数見直しそんな中、多分、これだろうという通知が見つかりました。それは、2021年4月1日付けで、厚生労働省の医政局長 、健康局長、医薬・生活衛生局長連名で発せられた「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」です。内容的にはコロナ対策の支援事業の実施の概要を通知するものです。その中の病床確保料の補助対象について記述した部分がニュースになっていたのです。1日に発出され、20日に「分かった」と報道されたのは、記者たちは最初その意味が把握できなかったのかもしれません。「コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認対象」となる医療機関は、病床確保料の補助対象となる新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関です。具体的には、病棟単位で新型コロナ感染症患者、または、その疑いのある患者用の病床を確保している「重点医療機関」と、新型コロナ感染症の疑いのある患者専用の個室を持っている「協力医療機関」とのことです。通知では、各都道府県に対し、医療機関の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、人工呼吸器などの医療機器の確保状況を一元的に把握する情報システム「G-MIS(ジーミス)」などを使って、患者の受け入れ状況を確認するよう求めています。その上でさらに、「適切に受入れを行っていない」「受入要請を正当な理由なく断っている」などの場合は、受け入れ体制について聴取し、受け入れるよう要請する。聴取の結果、受け入れるのが困難と判断した場合は、その医療機関の即応病床数(つまり、病床確保料の補助)を見直すと明記しています。厚労省によると、4月7日時点で全国に重点医療機関は1,058機関、協力医療機関は986機関あるとのことです。「手を挙げても受け入れない」病院の存在この通知の意味するところは明らかです。「コロナ病床確保します」と手を挙げて確保料をもらいながら、コロナ患者を受け入れていない病院が存在する、ということです。病床確保料の補助を見直す通知をわざわざ出すということは、そうした病院が相当数あるからでしょう。この連載でも、これまでに進まないコロナ患者受け入れ体制の原因として、コロナ受け入れに手を挙げない民間病院の消極性について書いてきましたが、「手を挙げても受け入れない」病院があるとは…。まさにコロナで“焼け太り”病院です。1床当たり最高1日43万6,000円現在、コロナ病床に対する診療報酬上の対応や国の補助は相当な金額となっています。病床に対する補助に限って言えば、病床が逼迫する都道府県において新型コロナの受入病床を割り当てられている医療機関に、重症者病床1床当たり1,500万円、その他の病床、および協力医療機関の疑い患者病床は1床当たり450万円を上限に補助が行われています。さらに、2020年12月25日~2021年2月28日に新たに割り当てられた確保病床については、緊急事態宣言が発令された都道府県では1床当たり450万円、それ以外の都道府県でも300万円が補助上限額に加算されています。つまり、最大で1床当たり1,950万円の補助を受けることができるのです。病床確保料はこれとは別に、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ態勢を確保するための確保病床および休止病床について補助されるものです。補助額の上限は、「重点医療機関」は1床当たり1日7万1,000円~43万6,000円、「協力医療機関」の疑い患者病床は5万2,000円~30万1,000円、「その他の医療機関」は1万6,000円~9万7,000円などとなっています。たとえば重点医療機関である一般病院でICU内の病床を1床確保すると、患者が入っているかどうかにかかわらず、1日30万1,000円が補助されます。「入院率」導入の意味そう考えてくると、感染状況を示す指標として4月16日から「入院率」が新たに加わったことにも納得が行きます。「入院率」とは、療養中の全感染者に対する入院者の割合です。これまで重視してきた「病床使用率」は各都道府県が確保した病床に占める入院患者の割合を示すものです。ただ、病床を(病院の都合等で)コロナに使用していないケースや、本来は入院の必要がない軽症者が入院しているケースなどを除外できず、病床の逼迫度を計るには不十分との指摘がありました。入院率という指標によって、国は病床数ではなく、無症状者も含む療養中の全感染者数に対する入院者数に着目することにしたわけです。数値が低くなるほど、入院できない人が増えている(病床が逼迫している)ことになります。入院率が25%以下だと最も深刻な「ステージ4」(感染爆発)、40%以下だと2番目に深刻な「ステージ3」(感染急増)に相当するとしています。ちなみに、4月23日更新のデータでは大阪府の入院率は12.0%、東京都は30.9%でした。「即応病床」として病床確保料をもらいながら、コロナ患者を避けてきた病院の存在は、税金の無駄遣いであるばかりでなく、病床逼迫度を推し量る上でも邪魔で困った存在だったわけです。今回の通知によって、そこにメスが入ることになったわけです。それにしても、ジャブジャブとも言われる医療機関に対するコロナ補助金を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょう。次回は、それについて少し考えてみます(この項続く)。

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産後うつ病ケアの利用と仕事に及ぼす影響

 オランダの産後うつ病女性に対するケアが、産後うつ病の症状、子供、仕事にどのような影響を及ぼすかについて、オランダ・Universiteit TwenteのA. I. van der Zee-van den Berg氏らが、検討を行った。Nederlands Tijdschrift voor Geneeskunde誌2021年3月11日号の報告。 子供のヘルスケア環境下における産後うつ病スクリーニングの有効性に関するプロスペクティブ比較試験の対照群よりデータを抽出した。2つのオンラインアンケートを用いてデータを収集した。出産3週間後における母親の特性を調査した。出産12ヵ月後、産後うつ病、うつ症状のケア、産後の母子に対する一般的なケア、産後12ヵ月以内の仕事復帰について調査した。違いを確認するために、カイ二乗検定とスチューデントt検定を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象女性1,049人のうち99人(9.4%)は、出産した年に産後うつ病の経験が認められた。・産後うつ病女性99人のうち71.0%は、産後うつ病軽減のために何かしらのケアを受けていた。・産後うつ病女性のうち31.3%はうつ病と診断され、37.7%は実際に治療を受けていた。・産後うつ病女性は、そうでない女性と比較し、自分自身または子供に対してより多くのケアを受けていた。・産後うつ病女性は、欠勤率が有意に高かった。 著者らは「産後うつ病ケアを受ける女性は限られていた。出産後の女性のための定期的なスクリーニングやカスタマイズされたケアへの社会的投資の必要性が示唆された」としている。

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片頭痛に対するeptinezumabの安全性・忍容性

 ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体の1つであるeptinezumabは、片頭痛患者を対象とした5つの大規模臨床試験により評価が行われている。米国・StudyMetrix ResearchのTimothy R. Smith氏らは、これらの研究結果を統合分析し、eptinezumabの包括的な安全性および忍容性を評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年3月30日号の報告。 4つのランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータおよび1つのオープンラベル試験における最初の1年間のデータをプールし、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・プールされた対象は、成人片頭痛患者2,867例。eptinezumab群2,076例(投与回数:4,797回)、プラセボ群791例(投与回数:1,675回)。・1回以上の治療に起因する有害事象(TEAE)が確認された患者の割合は、eptinezumab群で54.8%(1,137例)、プラセボ群で52.3%(414例)であり、eptinezumabの各用量(10~1,000mg)間でその割合は類似していた。・TEAEの重症度は、ほとんどが軽度または中等度であり、治験責任医師は、治療薬とは無関係であると判断していた。・注射部位の有害事象は、eptinezumab群では27例(1.3%)で30回認められ、プラセボ群では7例(0.9%)で7回認められた。・注射部位の有害事象による治療中断は、eptinezumab群で19例(0.9%)、プラセボ群で5例(0.6%)に認められた。・eptinezumab 300mg群において、鼻咽頭炎の発生率が2%以上認められており、プラセボ群と比較し、2%ポイント以上高い発生率であった。しかし、多くの患者(eptinezumab群:140例中139例、プラセボ群:41例中40例)において、その発生は治療とは無関係であると考えられていた。・過敏症は、eptinezumab群の23例(1.1%)で認められたが、プラセボ群では認められなかった。・蕁麻疹、紅潮・ほてり、発疹、そう痒感などの過敏症を示す可能性のあるTEAEを考慮した場合、2つのプラセボ対照第III相試験におけるeptinezumab 100mg群および300mg群の過敏症発生率は、2%以上であった。この発生率は、いずれかの群において、プラセボ群と比較し、2%ポイント以上高かった。・ほとんどの過敏症は、深刻ではなく、通常1日以内に標準的な治療または治療なしで改善した。 著者らは「成人片頭痛患者に対する12週ごとのeptinezumabによる静脈内投与は、良好な安全性と忍容性プロファイルを有していることが確認された」としている。

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アダリムマブ、バイオシミラーへの切り替えでアウトカムは?

 2021年4月現在、日本では15種のバイオシミラー(バイオ後続品)が承認されており1)、アダリムマブ(先発品:ヒュミラ)もその1つだが、アダリムマブバイオシミラーへの切り替え後のアウトカムについて、デンマークの乾癬患者に関するコホート研究の結果が、同国・コペンハーゲン大学のNikolai Loft氏らにより示された。切り替え群と非切り替え群の計726例を対象とした検討で、両群間の1年治療継続率の有意差はなかったという。アダリムマブバイオシミラーの有効性は、臨床試験で先発品と同等であることが示されているが、リアルワールドにおけるデータは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年4月7日号掲載の報告。アダリムマブ先発品からバイオシミラーに切り替えた群とアダリムマブ先発品の治療群を比較 研究グループは、2007年以降のデンマーク国内全乾癬患者が登録されているBiological Treatment in Danish Dermatology(DERMBIO)レジストリを利用して、アダリムマブの先発品からバイオシミラーへの義務的な切り替え後のアウトカムを評価するコホート研究を行った。 2018年11月1日~2019年5月1日にアダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えた全患者(バイオシミラー群)と、2017年5月1日~11月1日に受診し、アダリムマブ先発品で治療を受けていた全患者(先発品群)を比較した。データの解析は、2020年6月1日~10月10日に行われた。 主要アウトカムは、1年治療継続率で、バイオシミラー群と先発品群の治療継続率を粗率および補正後について算出し、ロバスト分散を用いたCox比例ハザード回帰法で比較した。 アダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えたアウトカムを評価した主な結果は以下のとおり。・バイオシミラー群に計348例(平均年齢52.2[SD 13.6]歳、男性251例[72.1%])が、先発品群には378例(51.1[14.1]歳、男性272例[72.0%])が包含された。・1年治療継続率は、バイオシミラー群92.0%(95%信頼区間[CI]:89.0~94.9)、先発品群92.1%(89.4~94.8)であった。・両群間に観察されたハザード比(HR)は同等であった。・バイオシミラー群と先発品群を比較した、すべての治療中断に関する粗HRは1.02(95%CI:0.61~1.70、p=0.94)、効果不十分に関する粗HRは0.82(0.39~1.73、p=0.60)、有害事象に関する粗HRは1.41(0.52~3.77、p=0.50)であった。

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コロナの現状を鑑み、識者らが東京五輪の再考求め提言/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はここへ来て急拡大の様相を呈している。これに対し政府は、東京など4都府県に対し緊急事態宣言を発出。まん延防止等重点措置よりも強い規制力をもって感染拡大を抑え込みたい考えだ。それは今夏に延期・開催が予定されている東京オリンピックまで3ヵ月を切り、待ったなしの状況への強い憂慮にほかならない。そんな状況の中、4月14日付のBMJ誌に、「大会の安全管理には重大な疑問があり、再考すべき」と断じる論文(エディトリアル)が掲載された。 本稿は、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの清水 和希氏、同・エディンバラ大学メディカルスクールのDevi Sridhar氏、同・キングズカレッジロンドン人口衛生研究所の渋谷 健司氏、国立病院機構三重病院の谷口 清州氏の4人が連名で発表した。 著者らは、COVID-19の現状について「世界的に依然としてパンデミックの真っただ中にある。SARS-CoV-2変異種は国際的な関心事であり、公衆衛生および社会対策の維持、行動変化の促進、ワクチン普及、保健システムの強化により、パンデミックの封じ込めと終息に向けた取り組みを加速しなければならない」との認識を示した。さらに、「アジア太平洋地域諸国と異なり、日本はいまだCOVID-19の感染制御ができていない。日本における限られた試験能力とワクチン接種開始の遅れは、政治的リーダーシップの欠如に起因している」とし、「一般市民はいうまでもなく、医療従事者や高リスク人口に対してもオリンピック開始までにワクチンを接種できない」と指摘した。 その上で著者らは、「今夏のオリンピック・パラリンピック開催計画は、喫緊の課題として再考されるべきだ。国際社会全体が、コロナ・パンデミックを封じ込め、命を救う必要性を認識している。科学的・道徳的ルールを無視し、日本が自国の政治・経済目的で東京2020(オリンピック・パラリンピック)を開催することは、国際的な健康および安全保障に対する向き合い方と矛盾するものだ」と断じている。

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レベチラセタムは、全般/分類不能てんかんの第一選択薬か/Lancet

 全般てんかんおよび分類不能てんかんの治療において、レベチラセタムにはバルプロ酸に匹敵する臨床効果はなく、質調整生存年(QALY)に基づく費用対効果もバルプロ酸のほうが良好であることが、英国・リバプール大学のAnthony Marson氏らが実施した「SANAD II試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年4月10日号で報告された。英国の全般/分類不能てんかんの無作為化第IV相非劣性試験 研究グループは、新たに診断された全般てんかんおよび分類不能てんかんの治療におけるレベチラセタムの長期的な臨床的有効性と費用対効果を、バルプロ酸と比較する目的で、非盲検無作為化第IV相非劣性試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 2013年4月~2016年8月の期間に、英国国民保健サービス(NHS)の69施設で、年齢5歳以上(上限なし)、治療を要する非誘発性てんかん発作が少なくとも2回認められ、臨床的に全般てんかんまたは分類不能てんかんと診断され、登録前の2週間に緊急治療を除き抗けいれん薬治療を受けていない参加者の募集が行われた。 被験者は、レベチラセタムまたはバルプロ酸の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、2年間の追跡が行われた。参加者と担当医はマスクされず、試験薬の割り付け情報を認識していた。 520例が登録され、レベチラセタム群に260例、バルプロ酸群に260例が割り付けられた。全体の年齢中央値は13.9歳(範囲:5.0~94.4)、女性が183例(35%)で、397例が全般てんかん、123例は分類不能てんかんであった。全例がintention-to-treat(ITT)解析に含まれた。重大なプロトコル違反や、後にてんかんではないと診断された参加者を除外したper-protocol(PP)集団は、509例(レベチラセタム群254例、バルプロ酸群255例)だった。女性でのバルプロ酸回避の議論を進めるべき ITT解析では、12ヵ月の時点におけるてんかん発作の寛解(主要評価項目)に関して、レベチラセタム群はバルプロ酸群に対する非劣性の基準(非劣性マージン:1.314)を満たさなかった(ハザード比[HR]:1.19、95%信頼区間[CI]:0.96~1.47)。 一方、PP解析では、12ヵ月時の発作寛解について、バルプロ酸群のレベチラセタム群に対する優越性(HR:1.68、95%CI:1.30~2.15)が示された。この試験は非劣性を検出するものだが、優越性を示すようにもデザインされていた。 2例(両群1例ずつ)が死亡したが、いずれも試験薬との関連はなかった。有害事象は、バルプロ酸群が96例(37%)、レベチラセタム群は107例(42%)で報告された。レベチラセタム群で精神症状(14% vs.26%)が多く、バルプロ酸群では体重増加(10% vs.3%)が多くみられた。 費用効用分析では、バルプロ酸群が優位であった。すなわち、費用対効果の閾値を1 QALY当たり2万ポンドとした場合のレベチラセタム群の増分純健康便益は、-0.040 QALY(95%中央範囲[central range]:-0.175~0.037)とマイナスであり、この閾値でレベチラセタム群の費用対効果が優れる確率は0.17であった。 著者は、「男性では、全般てんかんの第一選択薬は引き続きバルプロ酸とすべきである。女性では、将来の妊娠における潜在的な有害性のリスクを最小化するために、最も有効な治療の回避に関して、実臨床と施策に有益な情報をもたらす議論をさらに進めるべきと考えられる」としている。

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COVID-19を経験した男性は勃起不全になりやすい?

 勃起不全(ED)は、COVID-19の短期的または長期的な合併症の可能性がある。今回、イタリア・ローマ大学のAndrea Sansone氏らが、COVID-19と診断された被験者におけるEDの有病率を調査し、COVID-19とEDの関連を検討した。Andrology誌オンライン版2021年3月20日号に掲載。 本研究では、2020年4月7日~5月4日、イタリアで実施されたSex@COVIDオンライン調査(心理的、社会的、性的健康を調査する匿名のWebアンケート)に参加した18歳以上6,821例(女性4,177例、男性2,644例、平均年齢32.83±11.24歳)のデータから、性的に活発なイタリア人男性985例が抽出され、そのうち25例(2.54%)がSARS-CoV-2陽性だった。 被験者は、GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)とPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)によって、心理的健康スコアが測定された。各テストでスコアが10以上の場合、全般性不安障害とうつ病性障害をそれぞれ示唆していると見なされた。勃起機能は、IIEF-5(国際勃起機能スコア)またはその簡易版SHIMによって測定された。スコア21以下はED、スコア22〜25は正常と見なされた。 主な結果は以下のとおり。・1:3の傾向スコアマッチングに従って、985例の性的に活発なイタリア人男性から、SARS-CoV-2陽性者25例(COVID+)とSARS-CoV-2感染歴のない75例(COVID-)がマッチングされた。・2つの群間の年齢、GAD-7およびPHQ-9スコア、BMIについて、統計的に有意な差は見られなかった。・EDの有病率は、COVID+群(7/25例、28%)のほうが、COVID-群(7/75例、9.33%)よりも高かった(p=0.0274)。・年齢、BMI、および心理的健康スコアを調整したロジスティック回帰モデルにより、SARS-CoV-2感染とED発症との関連を確認したところ、COVID-19既往歴を持つ男性におけるED発症のオッズ比は5.66(95%信頼区間[CI]:1.50~24.01)だった。・同じサンプルで、年齢とBMIを調整したロジスティック回帰モデルにより、ED診断後に SARS-CoV-2感染が発覚した場合を調査したところ、ED有病者におけるSARS-CoV-2感染のオッズ比は5.27(95%CI:1.49~20.09)で、有意な関連を示した。 研究者らは、「COVID-19発症リスクは、ED発症の危険因子と似ており、われわれの研究結果は、ED、血管内皮機能障害、およびCOVID-19に関連する病態生理学的メカニズムと一致している。ワクチンやマスクの着用は、おそらく性機能障害を防ぐという追加の利益をもたらす可能性がある」とコメントしている。

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CLLに対するアカラブルチニブ、初回治療でも有効性示す

 2021年3月、再発・難治の慢性リンパ性白血病(CLL)に対して国内承認された選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)について、CLL初回治療においても有効性が認められたという。オハイオ州立大学のJohn C Byrd氏らの研究によるもので、Blood誌2021年3月30日号オンライン版に掲載された。 CLLは白血病の中で、リンパ系幹細胞が比較的時間をかけてがん化するものを指す。日本においては10万人あたり0.2人(2008年調査)と比較的稀な疾患だ。現在、CLL初回治療として承認されたBTK阻害薬にイブルチニブがあるが、アカラブルチニブとは有害事象の出現の特性が異なるとされ、アカラブルチニブが承認されれば治療の選択肢が広がることとなる。 本試験は、単群第I/II相臨床試験(ACE-CL-001)であり、未治療で化学療法不適のCLL患者99例が登録された。患者の年齢中央値は64歳、Rai分類ステージIII~IV期が47%だった。アカラブルチニブ200mgを1日1回、または100mgを1日2回、進行または忍容性がなくなるまで経口投与した。 主な結果は以下のとおり。・99例中57例(62%)は免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異(IGHV)陰性、12例(18%)はTP53遺伝子異常があった。・追跡期間中央値53ヵ月時点で85例が治療を継続しており、14例の中止理由は有害事象(AE)6例、病状進行3例などだった。・全奏効率は97%(部分奏効90%、完全奏効7%)で、すべての予後不良サブグループでも同様の結果が得られた。・100mg投与でBTK占有率が改善されたため、全患者が100mgに移行した。・重篤な AE は38 例(38%)で報告され、中止となった6例の内訳は二次原発がん(4例)と感染症(2例)だった。Grade3以上のイベントは、感染症(15%)、高血圧(11%)、出血性イベント(3%)、心房細動(2%)などだった。 著者らは、本試験におけるアカラブルチニブの持続的な有効性と長期的な安全性は、症状のある未治療のCLL患者の臨床管理におけるアカラブルチニブの使用を支持するものである、としている。

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英国株(B.1.1.7)の遺伝子変異、疫学、臨床、今後の重要性(解説:山口佳寿博氏)-1380

 2019年の末に発生した新型コロナの原型である武漢原株は、2020年2月末ごろからD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に置換、その他、4個の遺伝子変異を伴う)に置換された。D614G変異は生体へのウイルス侵入量を増加させ武漢原株より高い感染性を示す(山口. 医事新報 No.5026:26-31, 2020)。2020年9月ごろまではD614G変異株が世界の中心的ウイルスであったが、9月以降、英国、南アフリカ、ブラジルを中心にD614G株からさらなる変異を遂げたN501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に置換)が蔓延するようになった。以上のような背景を鑑み、本論評ではD614G株を“従来株”と定義する。英国、南アフリカ、ブラジルで播種しているN501Y変異株は同じウイルスではなく互いに独立したものであるが3種の変異株の共通項がN501Y変異である(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。PANGO lineageに則った名称として、英国株はB.1.1.7、南アフリカ株はB.1.351、ブラジル株はP.1と命名された。別名として、英国株はVOC 202012/01、20I/501Y.V1、南アフリカ株はVOC 202012/02、20H/501Y.V2、ブラジル株はVOC 202101/02、20J/501Y.V3とも呼称される。2021年4月13日現在、世界206ヵ国/地域の中で英国株は132ヵ国/地域(64%)、南アフリカ株は82ヵ国/地域(40%)、ブラジル株は52ヵ国/地域(25%)で検出され、N501Y株がD614G株を凌駕し世界に流布するコロナウイルスの中心的存在になりつつある(WHO 2021年4月13日)。これら代表的なN501Y変異株に加え、フィリピンではN501Y変異を有するが英国株、南アフリカ株、ブラジル株とは異なる変異株が同定されている(B.1.1.28.3/P.3)。以上のN501Y関連変異株以外にN501Y変異を有さない5種類の変異株が米国(B.1.427/B.1.429、B.1.526)、英国(B.1.525)、フランス(B.1.616)、ブラジル(B.1.1.28.2/P.2)、ナイジェリア(B.1.525)において同定されている。以上の変異株にあって英国株の流布範囲が最も広く、アフリカ、中南米の一部を除き多数の感染者が確認されている。アフリカ、中南米の一部で英国株が検出されていないのは、検査不十分である可能性が高く、実際は、これらの地域にも英国株は侵入しているものと考えなければならない。すなわち、今後の世界的ウイルス播種として、この数ヵ月の間に従来株が英国株を中心とするN501Y株に置換されていくものと推察される。 本邦においてもN501Y株の播種は始まっており、2020年12月25日に英国株が英国からの帰国者において、2020年12月28日に南アフリカ株が南アフリカからの帰国者において、2021年1月6日にはブラジルからの渡航者からブラジル株が検出された。2021年4月6日現在、1,038例のN501Y株の感染者(検疫:152例、国内発症:886人)が確認されている(厚生労働省2021年4月6日)。国内事例は、47都道府県の81%に当たる38都道府県で発生しているが、英国株が92%、南アフリカ株が1.7%、ブラジル株が6.3%を占めている。1週後の4月13日には、変異株の検出は42都道府県(89%)まで増加している(厚生労働省2021年4月13日)。N501Y株感染者の多くは、大阪府、兵庫県を中心とする関西圏で検出されており、北海道、関東圏がこれに続く。変異株陽性率(変異株陽性/変異株総検査数)は、3月初旬で6.6%であったものが3月下旬では20.1%に上昇しており、この傾向が持続するならば、この数ヵ月の間に英国株を中心とするN501Y株が従来株を凌駕し本邦で播種するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。英国では、9月末の発症から3ヵ月間でウイルスの75%が英国株に置換(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)、カナダのトロント地域でも12月中旬より3ヵ月の間にウイルスの75%が英国株に置換された(Brown KA, et al. JAMA. 2021 Apr 8. [Epub ahead of print])。 以上のような播種ウイルスの質的変化を考えるならば、今後のコロナ感染症は従来株で明らかにされた内容から英国株を中心に考え直す必要がある。まず遺伝子配列の変化を考えていく。英国株は従来株から発生した変異株でD614G変異を含めウイルス全体で18個の非同義変異(アミノ酸配列の変化あり)と6個の同義変異(アミノ酸配列の変化なし)を発現している(Public Health England)。S蛋白にはD614G変異を除いて8個の非同義変異を有し、N501Y変異はS蛋白とACE2の親和性を高め感染性を増強する。同様に、P681H(S蛋白681位のアミノ酸がプロリン(P)からヒスチジン(H)に置換)は生体のserine proteaseによるS蛋白の切断力を高めN501Y変異と同様に感染性を増強する。69~70位のアミノ酸欠損(Δ69~70、69位、70位におけるヒスチジン(H)とバリン(V)の欠損)とY144変異(144位におけるチロシン(Y)の欠損)はS蛋白に対する抗体(自然感染、ワクチン接種により形成された抗体)の結合を阻害し“免疫回避反応”を惹起する(英国株の免疫回避反応は南アフリカ株に比べ弱い)。興味深い事実として、Δ69~70はS蛋白を標的としたPCR反応を阻害する(SGTF:S-gene test failure)。そこで、nucleocapsid(N)、open reading frame-1ab(ORF1ab)を標的としたPCRが陽性であるにもかかわらずSGTFを示す場合には、遺伝子解析を施行せずとも英国株感染と診断できる(診断精度:99.5%)。 上記の遺伝子変異を背景として英国株の臨床的特徴を従来株と比較しながら考察する:(1)英国株の播種性は従来株より43~90%高く(Davies NG, et al. Science. 2021;372:eabg3055.)、実効再生産数(R)は1.5~2.0倍に達する(Volz E, et al. Nature. 2021 Mar 25. [Epub ahead of print])。(2)本論評で採り上げたChallen氏らの論文(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)では、英国株は従来株に比べ重症度が高く、死亡率を1.64倍上昇させると報告されたが、英国株が重症度、死亡率を変化させないという逆の報告もあり(Frampton D, et al. Lancet Infect Dis. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])、この問題に関してはさらなる検討が必要である。(3)英国株感染者の男女比、年齢分布は従来株とほぼ同様である(Public Health England)。(4)再感染率に関しても従来株と明確な差を認めない(従来株:0.2~0.65%、英国株:0.7%)(Boyton RJ, et al. Lancet. 2021;397:1161-1163.、Graham MS, et al. Lancet Public Health. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])。(5)mRNAワクチン(Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273)は、英国株に対する液性中和反応を維持した(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print]、Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print])。この基礎的結果を支持する知見として、データ集積時に英国株が80%を占めたイスラエルでの解析においてBNT162b2の発症予防効果は94%であり、従来株に対する発症予防効果(95%)と同一であることが示された(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。(6)一方、AstraZeneca社のadenovirus-vectoredワクチン(ChAdOx1)の英国株に対する液性中和反応は従来株に比べ約9倍低かった。それにもかかわらず、ChAdOx1の英国株感染に対する実際の発症予防効果は70.4%であり、従来株に対する予防効果(81.5%)より低いものの有効な範囲に維持されていた(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)。ChAdOx1に関する液性中和反応と臨床的予防効果の解離は、T細胞性免疫の維持によって説明できる。ワクチン接種によって記憶T細胞を介する細胞性免疫が賦活されるが、このT細胞性免疫機能は限局した変異に規定されるものではない(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。それ故、たとえ、遺伝子変異によって液性中和反応が低下したとしてもT細胞性免疫機能の賦活によって英国株に対する発症予防効果が維持されたものと考察される。 本邦においても小数例(n=874、92%までが英国株)であるが英国株を中心とするN501Y変異株感染に関する臨床的特徴が発表された(国立感染症研究所2021年4月5日)。内容は海外で報告されたものとほぼ一致し、実効再生産数は従来株の1.32倍であった。海外の報告と異なった点は、15~29歳の若年層におけるN501Y株感染率が従来株の場合に比べ少し高値であったことである。再感染率、入院率、死亡率などは検討されていない。英国株感染に起因する臨床像には人種差が存在する可能性があり、本邦を含め世界各国においてさらなる解析を期待するものである。

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ウエストワールド【あなたは「満足な豚」それとも「不満足なソクラテス」?(哲学セラピー)】Part 1

今回のキーワードデカルト哲学的ゾンビカントサルトル統合失調症自由家畜J・S・ミル皆さんは、自分の人生に満足していますか? 一方で、そんな人生に疑問を感じたことはありませんか? もっと言えば、この世界の存在に疑問を感じたことはありませんか? さらに、自分という存在にも疑問を感じたことはありませんか?これらの哲学的な問いを考えるために、今回は、SFスリラーであるアメリカドラマ「ウエストワールド」を取り上げます。そして、このドラマの根底に流れる「本当に自由な人間とは何か?」というテーマを、哲学セラピーとして一緒に掘り下げてみましょう。このドラマが哲学的なわけは?舞台は近未来のアメリカのテーマパーク「ウエストワールド」。そこは、西部開拓時代が再現され、人間そっくりのアンドロイドたちが、搭載されたAI(人口知能)によって、娼婦、悪党、保安官などプログラムされた役割を即興的に演じています。そんなテーマパークのホストであるアンドロイドたちの日常生活の中に、人間たちがゲストとして入って行くという体験型のアトラクションです。ホストたちはゲストを決して傷つけないようにプログラミングされている一方、ゲストたちはパーク内であればホストに対して殺人やレイプなどの反社会的な行動を好き勝手にすることもできます。このドラマが哲学的である訳は、ドラマの設定において、アンドロイドは見た目だけでなく感情や性格も人間と同じであること、アンドロイドは自分が人間であると認識するようプログラミングされていること、そしてストーリーが人間側ではなくアンドロイド側の視点で描かれていることです。3つの哲学的なテーマとは?主人公のドロレスは、ウエストワールド内の農場の娘。朝目覚めて、父親と話をして、町に買物に出かけ、恋人に再会します。しかし、夜には悪党に家を襲われ、両親は目の前で殺され、彼女はレイプされて殺されます。彼らは、みなアンドロイドであるホストです。そして、このアトラクションの中に、人間であるゲストが参加するのです。遺体となったドロレスたちは、夜の間に技術スタッフによって回収され、修復され、その時の記憶を完全に消去され、また翌日の朝を迎えます。とくにドロレスは古い機種で、この体験をテーマパークができてから30年以上毎日延々と繰り返していたのでした。ところが、彼女のAIの「誤作動」によって、いくら記憶を消去しても、つらい体験の記憶の断片が夢やフラッシュバックとして蘇り、即興の考えや行動が増えるようになります。その積み重ねによって、彼女はあるいくつかの疑問を持つようになるのです。ドロレスの疑問を通して、気付かされる哲学的なテーマを3つ挙げてみましょう。(1)この世界は何なの?ドロレスは、回収中の解析モードの時、毎回プログラマーから「現実というものに疑問を感じたことは?」「この世界をどう思う?」と聞かれます。すると、彼女は、「疑問はないわ」「この世界を醜いという人もいる。無秩序だと。私は美しいと思う」と毎回答えていました。しかし、これまでの記憶を思い出していくうちに、生きている世界への矛盾に気付きます。そして「この世界は何かがおかしい。何かが隠れている気がする」「そこから、私は自由になりたいと思う」と言い出します。1つ目のテーマは、この世界は何なのかという疑問です。私たちが「偽物」の世界にいるドロレスの視点に立つことで、私たちもこの世界が偽物じゃないという確信が揺らぎます。ちょうど夢を見ている瞬間は、その夢を現実だと思い込んでいるのと同じです。ドロレスがいるウエストワールドや私たちの夢と同じように、私たちが現実であると思っている世界は、実は現実ではないかもしれないということです。つまり、私たちの認識や存在には、不確かさがあるということです。この疑問に対して、近代哲学の父であるデカルトは、「私は世界のあらゆる存在を疑問に思う。ただ、疑問に思っている自分自身の存在だけは確かである(我思う。ゆえに我あり)」と言いました(方法的懐疑)。逆に言えば、自分以外のすべての人は、存在していると合理的に説明することは不可能であり、意識のないゾンビかもしれないということです。これは、哲学的ゾンビと呼ばれています。なお、精神医学的には、この疑問が病的になった状態は、現実感喪失という自己意識の異常です。(2)自分は一体何者なの?ドロレスは、やがて「自分が何者か分かれば自由になれる」と言い出します。また、人間としてドラマに登場していたある人物が、実はアンドロイドだったというどんでん返しが起こります。その人物は、ウエストワールドを創設したフォード博士に「私とあなたの違いは?」と問い詰めて苦悩するのです。2つ目のテーマは、自分は一体何者なのかという疑問です。私たちが「偽物」であるドロレスやそのある人物の視点に立つことで、私たちも自分が人間であるという確信が揺らぎます。彼らと同じように、私たちが自分の行動を自分で決めて自分があるものだと思っていたら、実は誰かに操られていて、自分がないかもしれないということです。この疑問に対して、近代哲学を完成させたカントは、「自分の主人は自分である。自分が何を考え、何を行うのも自由」と言いました(自我原則)。なお、精神医学的には、この疑問が病的になった状態は、作為体験という自己意識の異常です。(3)人生は何のためにあるの?ドロレスは、当初「信じてるの。人生には意味がある、目的があるって」と言っていました。ところが、実は、人間であるゲストたちを満足させるための道具に過ぎない存在だったということに気付くのです。3つ目のテーマは、人生は何のためにあるのかという疑問です。私たちが「偽物」の人生を送るドロレスの視点に立つことで、私たちも自分の人生が本物であるという確信が揺らぎます。彼女と同じように、私たちが人生に意味を見つけていると思っていたら、実は誰かのシナリオに従っているだけかもしれないということです。この疑問に対して、20世紀の哲学者であるサルトルは、「現実に存在している自分が生きる意味を決める。つまり現実に存在していること(実存)が、自分が生きる意味(本質)よりも先にある(実存が本質に先立つ)」と言いました(実存主義)。なお、精神医学的には、この疑問が病的になった状態は、関係妄想という思考の異常です。なお、自我意識や思考の異常の詳細については、関連記事1をご参照ください。 次のページへ >>

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ウエストワールド【あなたは「満足な豚」それとも「不満足なソクラテス」?(哲学セラピー)】Part 2

人生に満足して良いの?このドラマで気づかされる3つの哲学的なテーマとは、この世界は何なのか、自分は一体何者なのか、そして人生は何のためにあるのかという疑問であることが分かりました。端的に言うと、ここはどこなのか、自分はどこから来たのか、そして自分はどこへ行くのかという究極的な問いです。これらの3つの疑問を踏まえて、フォード博士は「人間は、自分たちの世界認識を特別視しているけど、ホストたちと同じ閉じたループの中に生きている。自らの選択をほぼ疑わず、命令されることに大概満足している」と指摘します。どういう意味でしょうか?私たちは、たいてい人生が思い通りになれば、それでもう満足してしまいます。たとえば、それは、食べ物、住まい、仕事、セックス、結婚生活、子育てなどについてです。この状況は、ウエストワールドのホストたちと変わらないということです。たとえば、ドロレスの父親は、回収中の解析モードの時、プログラマーから「生きる目的は?」と尋ねられると、「家畜の世話をして、妻の面倒を見ることです」と胸を張っていました。しかし、実際は、皮肉にも、人間の道具であったという意味では、彼もまた「家畜」なのでした。そして、ウエストワールドで享楽にふけるゲストたちも、思い通りになることを疑似体験することで満足するという意味では、「家畜」に見えてきます。そして、私たちも、同じように、「家畜」であることに気づいていないだけかもしれないということです。脳科学的に言えば、この満足する心理は報酬や社会的報酬です。もちろん、私たちが生きていくために必要な基本衝動です。ただし、これだけで良いのでしょうか? つまり、人生に満足していれば、ドロレスのように疑問を感じなくても良いのでしょうか? 本当に自由な人間とは?その答えとして、フォード博士は、「本当に自由な者は、疑いを抱ける者だ。自分の基本衝動に対して、それを変えられる者だ」と説いています。これは、どういう意味でしょうか?私たちは、自由とは満たされて自由気ままに生きることだとつい思ってしまいます。しかし、それで自由な感覚はずっと続くでしょうか? よくよく考えると、そもそも自由とは、不自由さ(制約するもの)があるからこそ生まれる相対的な概念です。逆説的にも、自由を手に入れて満たされることは、不自由さがなくなるので、結果的に自由な感覚はやがてなくなってしまうということです。ちょうど、ウエストワールドにゲストとして登場する黒服の男がそうです。彼は、ウエストワールドのオーナーで、「現実の世界では、すべてのものが手に入る。目的、意味を除いて」と不満そうに語ります。そして、「ここには意味がある。真実の何かがある」と言い、ある「不自由さ」を追い求めるのです。また、フォード博士は、あるアンドロイドに子どもの死の記憶を付け加えます。そして、「苦しみこそ、ホストらに意識を芽生えさえた根源なのだ」「世界が望み通りにならない苦しみだ」と言うのです。つまり、私たちが自由であり続けるためには、不自由さをあえて探し続ける必要があります。たとえば、それは、世の中で望ましいとされている価値観(主流秩序)についてです。その価値観に忠実に応えて安心するのではなく、本当にその価値観は間違っていないのかと疑問を持つことです。つまり、前提への疑問です。たとえば、世の中には、「できる仕事術とは?」「モテるには?」「効率的な婚活とは?」「結婚は損か得か?」「成功するお受験とは?」「安心な老後に備えるには?」という「人生の正解」が溢れています。しかし、よくよく考えると、その「正解」は、そもそもその質問の前提に疑問はないでしょうか?仕事は、好きであれば、そこまでできなくてもいいかもしれません。モテなくても、お互いを思いやれる相手がいれば、それでいいかもしれません。婚活は、楽しめれば、効率的でなくてもいいかもしれません。結婚は、それ自体が喜びであれば、損していてもいいかもしれません。お受験は、子どもが成長するなら、成功していなくてもいいかもしれません。老後は、今が幸せであれば、それほど心配しなくていいかもしれません。フォード博士のセリフは、本当に自由な人間とは、答えを見つけて満足する者ではなく、問いを探して不満足になる者であるという意味でしょう。これは、19世紀の哲学者であるJ・S・ミルの名言に重なります。それは、「満足な豚であるよりも不満足な人間であるほうが良い。そして、満足した愚か者であるよりも不満足なソクラテスであるほうが良い」(功利主義)です。なお、生きる意味の問い方については、関連記事2をご覧ください。 「ウエストワールド」とは?「ウエストワールド」とは、荒野の世界を自由に開拓するという意味も込められています。物質的にはほぼ満たされてしまっている今の「自由」な世の中だからこそ、私たちが本当に自由になるためにどうしたらいいかを考えるヒントがこのドラマにはあります。それは、私たちの人生が「ウエストワールド」のホストたちのようにプログラミングされ「家畜化」されていないかを考え続けることでしょう。そして、ここはどこなのか、自分はどこから来たのか、そして自分はどこへ行くのかという問いを考え続けることでしょう。この当たり前に生きていることに疑問を持つ心のあり方こそが、まさに知を愛するという意味の哲学(フィロソフィー)であり、本当に自由になれると言えるのではないでしょうか?1)図解哲学:貫成人、ナツメ社、20122)ここは今から倫理です。2:雨瀬シオリ、集英社、2018<< 前のページへ■関連記事絵画編【ムンクはなぜ叫んでいるの?】テネット【なんで時間を考えるのが癒しになるの?(アクセプタンス&コミットメント・セラピー[ACT])】

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次回の調剤報酬改定の論点は選定療養?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第66回

2021年4月14日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会がオンラインで開催され、2022年度の診療報酬改定のスケジュールが示されました。この総会ではほかの案件も議論されているため、報酬改定に関してはスケジュールや議論の進め方の提示のみとなっており、現時点では議論の項目や内容については具体的に提示されていません。前回2020年の改定は介護保険と同時改定でしたが、今回の改定は同時ではないため大きな変更はなく、調整の改定になりそうとも言われています。今回の改定のスケジュール案は、2022年3月末までを3つの段階に分けて提示されています。まず、2021年7月から9月に次期改定の論点を挙げ、意見の整理を行います。次に、2021年9月から12月にその議論を行い、最後の2022年1月から3月にかけて諮問・答申・附帯意見の取りまとめが行われます。数年前の報酬改定では議論が長引いてスケジュールがかなり押したため、その対応に追われてバタバタしたことがありましたが、このように事前にスケジュールを提示してもらえると、改定の影響を受ける側としては早めに準備を開始できてとても助かります。今回の議論では、選定療養に導入すべき事例に関する提案・意見募集などがあります。選定療養と聞いてもぴんとこないかもしれませんが、いわゆる例外として認められる混合診療のことで、一部実費徴収できるサービスなどを指します。厚労省はこれらに関して整理を行うとしており、2021年4月より提案の募集を開始し、5月以降に提案を踏まえて中医協で議論するとしています。現時点では薬局がらみの選定療養はありませんが、過去に行われたパブリックコメントではいくつか候補が挙げられています。関係団体からの意見募集が基本ですが、今回もパブリックコメントが行われると予想されますので、何か意見や提案のある人はコメントしてみるといいでしょう。2020年度の調剤報酬改定では、対物業務から対人業務へのシフトという大きい動きがあり、調剤基本料や地域支援体制加算、薬剤服用歴管理指導料などで変更がありました。これらは、さらに厳しくなる可能性があります。前回議論になりつつも結論に至らなかった市販薬類似品の保険適用除外とフォーミュラリーについては、次回の改定の対象となるか要チェックです。また、2021年1月に公布された「医薬品医療機器等法(薬機法)施行規則の一部を改正する省令」がいよいよ8月より施行されます。この大きな変更点は、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」という認定制度の新設ですが、それらについても2022年度の調剤報酬改定で加算が付くのか気になるところです。個人的には、今年度中に認定制度の成果を出すのは難しいことや、健康サポート薬局など既存の認定制度の認知度の低さなどが問題となって、まだ加算は付かないと予想していますがどうなることやら。今後の議論の内容についても見守りたいと思います。

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第57回 運動が良いのはヒスタミンのおかげ/抗老化成分がヒト試験で効果/mRNAワクチンの威力

運動はおそらく骨格筋順応を介して体調を上向かせ、骨格筋の衰えは老化を招きます。そんな健康維持に不可欠な骨格筋にまつわる2つの研究成果を紹介します。また、mRNAワクチンの威力を示した介護施設での感染解析結果を簡単にお知らせします。運動はヒスタミン受容体を介して体を鍛えるヒスタミンに関わる研究といえば主にアレルギー・炎症・胃酸分泌ですが、運動とのおそらく重要な関わりが随分古くから知られており、今から遡ること100年近く前の1935年には犬の静脈血のヒスタミンが筋肉収縮で増えることが報告されています1)。そのおよそ20年後の1958年には人の血中のヒスタミンが運動で増えることを示した報告2)があり、同時期の報告では人の前腕や手の動脈でヒスタミンが血管拡張作用を担うことが確認されています3)。時代は進んで今世紀初めの2006年の報告では人の運動後の骨格筋の血流増加(postexercise hyperemia)にヒスタミンH1/H2受容体が携わることが示され、幾つかの報告をまとめるとヒスタミンは運動後の回復に与る血管拡張にどうやら寄与すると示唆されました4)。有酸素運動はなんであれ体によく、心疾患などの慢性疾患の治療や予防に大変役立ちます。運動が健康に良いことを支える仕組みはよく分かっていませんでしたが、Science Advances誌に今月中頃に発表された試験報告によるとヒスタミンは運動後の回復に与するのみならず運動の健康増進作用にもなくてはならない働きをどうやら担っているようです5,6)。ベルギーのゲント大学の運動生理学者Wim Derave氏らのチームは健康な男性20人を募り、きつめのインターバル運動を6週間にわたって週3回繰り返してもらいました。男性の半数は運動の1時間前にヒスタミン受容体H1とH2を遮断する薬フェキソフェナジンとラニチジンかファモチジンを服用し、残り半数はプラセボを服用しました。そうして6週間後、ヒスタミン受容体遮断薬を服用した男性はプラセボ服用男性に比べて運動性能指標やミトコンドリアのエネルギー生成の改善が劣りました。また、血中の糖を細胞に移すインスリンの働きはプラセボ群では改善していたのにヒスタミン受容体遮断薬服用群ではそうなっていませんでした。ヒスタミン受容体遮断薬服用群では脚の筋肉の毛細血管形成が少なく、内皮細胞の形成に不可欠な内皮型一酸化窒素合成酵素の上昇が見られませんでした。先達の研究でも示唆されている通りヒスタミンは運動後の筋肉血流の最適化に関わって運動への全身反応を指示するのかもしれないと著者は考察しています。ヒスタミンH1/H2受容体が体調を整える仕組みや慢性疾患がヒスタミン作用にどう影響するかを今後調べることで新たな薬の標的の発見や運動の最適化の道が開けそうです5)。抗老化成分NMNでヒトのインスリンの働きもマウスと同様に改善マウスの老化の弊害を食い止めて代謝を改善することが知られる細胞成分・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の元となるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を糖尿病になりそうな太った女性に投与した無作為化試験で有望なことにインスリン感受性改善が認められました7)。糖尿病の水準には至っていないものの血糖値が高めで太り過ぎか肥満の女性25人が試験に参加しました。13人はNMN 250 mgを10週間毎日服用し、残り12人にはプラセボが同じように投与されました。その結果、骨格筋に糖を受け取らせるインスリンの働きがNMN投与で改善し、骨格筋の構えや作り変え(remodeling)に関わる遺伝子発現も向上しました。ただし、血糖値や血圧は残念ながら下がりませんでした。それに血液中の脂質や肝臓のインスリン感受性の改善も認められず、肝臓の脂肪も減りませんでした。骨格筋のインスリン感受性が改善すればたいてい他の代謝指標も同様に改善するのですが今回の試験ではそうなりませんでした。とはいえ今回の試験結果は抗老化治療の開発を確かに一歩前進させるものです。インスリンは筋肉の糖の取り込みや貯蔵を促し、その効果が衰えると2型糖尿病を生じ易くなります。その衰えをどうやら食い止めるらしいNMNが骨格筋でどう働くかを今後の研究で詳しく把握する必要があります。また、前糖尿病や糖尿病を予防したり乗り切るのにNMNが役立つかどうかを試験しなければなりません。NMNは雌のマウスにとくに有効なので今回の試験は女性を募りましたが、男性も含めた試験に研究者はすでに着手しています8)。介護施設でmRNA COVID-19ワクチン接種が威力を発揮Pfizer/BioNTechかModernaのmRNAワクチンを去年12月から接種し始めた米国イリノイ州シカゴの75の介護施設で3月末までに居住者7,931人と職員6,834人が2回目接種を済ませ、その期間に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染した627人のうちワクチン2回目接種から14日以降に感染したのはわずか22人(4%;22/627人)のみでした9,10)。感染したとはいえそれら22人の6割以上14人は無症状で、22人から施設の他の人への感染は認められませんでした。また、PCR検査結果によると22人のウイルス量は少なめでした。同国ケンタッキー州の介護施設1つでのCOVID-19感染流行を調べた別の報告でもPfizer/BioNTechのmRNAワクチンの効果を裏付ける結果が得られています。2回目のワクチン接種から2週間が過ぎた居住者や職員の感染率はおよそ87%低かったと推定されました11)。参考1)McCord JL,et al. J Appl Physiol (1985). 2006 Dec;101:1693-701. 2)DUNER H, et al. Scand J Clin Lab Invest. 1958;10. :394-6.3)DUFF F, et al. J Physiol. 1954 Sep 28;125:581-9.4)Luttrell MJ, et al.Exerc Sport Sci Rev. 2017 Jan;45:16-23.5)Van der Stede T, et al. Sci Adv. 2021 Apr 14;7:eabf2856.6)Regular HIIT Exercise Enhances Health via Histamine / TheScientist7)Yoshino M, et al. Science. 2021 Apr 22:eabe9985. [Epub ahead of print]8)Anti-aging compound improves muscle glucose metabolism in people / Eurekalert9)Postvaccination SARS-CoV-2 Infections Among Skilled Nursing Facility Residents and Staff Members - Chicago, Illinois, December 2020-March 2021. MMWR. April 21, 2021.10)US administers 200 million COVID-19 vaccine doses / University of Minnesota11)COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. MMWR. April 21, 2021.

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日本の農家における不眠症と寝酒・迎え酒との関係

 眠りを補助するための寝酒、酔い覚ましや二日酔いを軽減させるための朝の迎え酒のようなアルコール摂取を行う人は少なくない。島根大学の佐藤 利栄氏らは、日本の農家で働く健康な中年における不眠症と寝酒や迎え酒との関連について検討を行った。Alcohol誌オンライン版2021年3月18日号の報告。 746人(平均年齢:59.5歳、女性の割合:25.9%)を対象に自己記入アンケートを用いて、横断的研究を実施した。不眠症の定義には、日本語版アテネ不眠尺度6以上または前年の睡眠薬使用とした。性別、年齢、睡眠障害の有無、アルコール摂取頻度、1回当たりのアルコール摂取量で調整した後、寝酒と迎え酒に関連する不眠症のオッズ比(OR)を算出するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・不眠症患者数は174人(23.3%)、寝酒をしていた人140人(18.8%)、迎え酒をしていた人37人(5.0%)であった。・人口統計および交絡因子で調整した後、寝酒をしていた人は、していなかった人と比較し、不眠症の有病率が有意に高かった(OR:2.00、95%CI:1.27~3.16)。・男性の迎え酒は、不眠症の有病率の高さと独立した関連が認められた(OR:3.26、95%CI:1.55~6.87)。・寝酒と迎え酒の両方をしている人は、どちらもしていない人と比較し、不眠症の有病率の高さと有意な関連が認められた(OR:4.77、95%CI:2.01~11.3)。・不眠症に対しては、寝酒(OR:1.81、95%CI:1.08~3.06、p=0.026)よりも迎え酒(OR:4.09、95%CI:1.14~14.7、p=0.031)においてより強い関連が認められた。 著者らは「日本の農家で働く人において、寝酒や迎え酒は、アルコールの消費量や摂取頻度と関係なく、不眠症との関連が認められた」としている。

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新型コロナワクチン接種、間違い防止チェックリストの活用を/厚労省

 厚生労働省は各医療機関などが新型コロナワクチン接種を実施するにあたり、ホームページ内の「新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ」「新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等」ページにて『予防接種を適切に実施するための間違い防止チェックリスト』を公開している。 このリストは、「確認チェックリスト」「医師がチェックする確認事項の解説」「事故予防対策の例」の3つに項目立てされており、受付・問診から救急搬送措置に至るまで、注意すべきポイントが一連の流れに沿って記載されている。 医師がチェックする確認事項は多岐にわたり、ワクチンの種類(メーカー名)や接種量はもちろんのこと、受付で確認済みの診察券、予診票、母子健康手帳、予防接種済証も医師が再確認することになっている。また、現時点では16歳未満への接種は推奨されていないが、沖縄の離島で年齢確認を誤り15歳の高校生に接種してしまった事例が報告されており、「来場者がワクチンの対象接種年齢であるか」「直前の予防接種実施日(新型コロナワクチン以外の場合は、原則13日以上の間隔が空いていること)」などの確認について、医療者より知識の少ない一般市民への接種には十分な配慮が必要である。 以下はリストの項目のみ抜粋したもの。1 確認チェックリスト(医師、看護師、保健師等及び事務従事者が分担し、ダブルチェックを行う。)(1)個別接種A.受付時の確認事項B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン保管の確認事項I.救急搬送措置の確認事項(2)集団接種A.受付時の確認事項 B.問診時の確認事項 C.接種時の確認事項 D.接種後の確認事項については、(1)個別接種と同じ。F.事前の準備での確認事項G.当日の準備での確認事項H.予防接種液の調整I.救急搬送措置の確認事項2 医師がチェックする確認事項の解説 医師は、上記のチェックリストの「B.問診時の確認事項」「C.接種時の確認事項」「D.接種後の確認事項」「E.ワクチン保管の確認事項」について、看護師、保健師等及び事務従事者のチェックが適切に行われているか再確認する。 とくに、以下のBの1)、2)、3)、4)、5)及びCの4)については、慎重に確認する。B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン輸送・保管の確認事項3 事故予防対策の例1)予定外のワクチン接種(ワクチンの取り違え)2)接種量の誤り3)接種回数の誤り4)接種方法の誤り5)接種間隔の誤り6)接種開始時期の誤り7)予診票確認の不備8)有効期限切れワクチンや注射器での接種9)接種後の安全確保10)ワクチン保管の不備11)特設の接種会場における事故

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脊椎手術特化の手術支援ロボット承認/日本メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社は、脊椎固定術の治療に併用される「Mazor X(マゾール エックス)ロボットシステム」(以下「本システム」という)の製造販売承認を2021年3月18日に取得し、販売を開始したと発表した。 本システムは、手術計画の作成から術後のシミュレーションまでを一貫して提供する統合システムで、サージカルアームとナビゲーション技術の融合により、より高い精度での手術手技の実現と患者へのより良いアウトカムをもたらすことを目指している。今後のニーズが増える脊椎固定術 脊椎固定術とは、変性または変形した脊椎を脊椎固定用材料で固定し、脊椎の安定性を高める手術で、「腰部脊柱管狭窄症」や「腰椎変性すべり症」などの治療で行われている。この治療手術は、脊椎由来の痛みの改善と早期離床および社会生活への復帰を目指して行われ、わが国では年間約6万例以上の脊椎固定術が実施されている。このうち60歳以上の症例が約8割にのぼり、今後もさらに手術を受ける症例の増加も予想されている。 具体的に手術では、脊椎を固定するためのスクリューを挿入し、スクリュー同士をロッドで連結して固定される。脊椎スクリューを挿入する位置や角度、深さには正確性や安全性が求められる一方、患者の解剖学的特徴を把握するには術者の外科医の経験に大きく依存されるという。また、脊椎スクリューの挿入位置のズレは、血管および神経の重篤な合併症を引き起こす可能性があることから、脊椎スクリュー挿入の正確性を改善するために、ナビゲーション技術やロボット支援技術を用いた脊椎手術などの新しい技術が開発されてきた。ロボットで手術時のリスクを軽減させる 本システムは、術前の患者の画像データから構築した3D画像上で手術計画を作成し、術前計画に基づいたロボットアームの動作により手術器具を誘導するとともに、3D画像上にリアルタイムで手術器具の位置情報を表示することができる。また、治療計画の作成を支援する脊椎の矯正シミュレーションもソフトウェア上で行うことができ、手術の計画から実施、確認までを1つの統合されたシステム上で提供することで、より効率的な手術を支援する。また、術者によらず安定的に手術を施行したり、場合によっては難度の高い手術を人の手よりも精密に行ったりできる点も手術支援ロボットのメリットと考えられている。すでに世界中で、累計5万例以上の脊椎固定術本システムが使用されている。 国内販売は2021年3月21日(薬事承認と同日に販売開始)から、価格は1億6000万円前後。

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COVID-19の第3の治療薬、バリシチニブ承認/日本リリー・インサイト

 2021年4月23日、日本イーライリリー株式会社とインサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)がSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)に対する治療薬として、適応追加の承認を取得したと発表した。 現在、バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている。今回の適応追加では、通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブ4mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間まで。本剤は、酸素吸入、人工呼吸管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うことで承認された。 バリシチニブのSARS-CoV-2による肺炎に対する有効性および安全性は、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主導による、SARS-CoV-2による肺炎の成人入院患者1,033例を対象とした国際共同第III相臨床試験「ACTT-2試験」で確認されている。「ACTT-2試験」は、レムデシビル併用下におけるプラセボ対照二重盲検比較試験で、レムデシビル単独療法と比較し、本剤投与群では、回復までの期間を短縮するという主要評価項目を達成した。また、投与開始から15日時点の患者の転帰を完全な回復から死亡までを8段階で評価するスケールを用いて比較した主要な副次的評価項目もそれぞれ達成した。バリシチニブの概要(下線部分が今回の追加箇所)商品名:オルミエント錠(4mg/2mg)一般名:バリシチニブ効能または効果:既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)/アトピー性皮膚炎 SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)用法および用量:<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎>通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。<SARS-CoV-2による肺炎>通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、総投与期間は14日間までとする。薬価:オルミエント錠4mg 5,274.90円/2mg 2,705.90円(2021年4月時点)製造販売元:日本イーライリリー株式会社

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