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統合失調症患者の抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する薬理学的介入~メタ解析

 抗精神病薬誘発性脂質異常症は、統合失調症患者で一般的にみられる副作用であり、代謝性合併症や心血管疾患の発症リスクを高める可能性がある。このような問題があるにもかかわらず、抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する治療は十分でなく、脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有効性は、十分に評価されていない。カナダ・ウォータールー大学のPruntha Kanagasundaram氏らは、統合失調症患者の脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有用性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年3月17日号の報告。 Medline、PsychInfo、EMBASEより、1950~2020年11月に英語で公表されたランダム化プラセボ対照試験を検索した。主要アウトカムは、治療群とプラセボ群におけるトリグリセライド、HDLコレステロール、LDLコレステロール、VLDLコレステロールの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化比較試験48件(3,128例)を特定し、29件の薬理学的介入について調査した。・全体として、薬理学的介入により、HDLコレステロールレベルは上昇し、LDLコレステロール、トリグリセライド、総コレステロールレベルは低下した。・治療群のサブグループでは、承認されている脂質異常症治療薬では、総コレステロール以外の脂質パラメータを低下させなかった。一方、抗精神病薬の切り替えや追加投与により、トリグリセライド、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロールを含む複数の脂質パラメータの改善が認められた。・適応外の脂質異常症治療薬では、トリグリセライド、総コレステロールレベルの改善が認められ、メトホルミンにおいて、統計学的に有意な変化が認められた。 著者らは「現在利用可能な脂質異常症治療薬は、抗精神病薬で治療されている統合失調症患者では、効果が不十分な可能性がある。また、抗精神病薬の切り替えや追加投与および特定の適応外の脂質異常症治療薬による介入は、一部の脂質パラメータに対する改善効果が期待できる。今後の研究により、抗精神病薬誘発性脂質異常症を効果的にマネジメントするための新たな介入の発見が望まれる」としている。

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乳房温存術が切除術より生存率が高いのは独立した効果か

 術後放射線療法を伴う乳房温存術が、放射線療法を伴わない乳房切除術より生存率が高いことがコホート研究で示されているが、独立した効果なのか、選択バイアスの結果なのかは不明である。今回、スウェーデン・Capio St Goran's HospitalのJana de Boniface氏らは、重要な交絡因子である併存疾患および社会経済的状態の補正後も、乳房温存術の生存ベネフィットがみられるかどうか検討した。JAMA Surgery誌オンライン版2021年5月5日号に掲載。 本研究は、前向きに収集されたスウェーデンの全国的なデータ(National Breast Cancer Quality Registerからの全国的な臨床データ、National Board of Health and WelfareのPatient Registersからの併存疾患データ、Statistics Swedenからの個人レベルの教育と収入のデータ)を使用したコホート研究。スウェーデンで2008~17年にT1-2 N0-2の浸潤性乳がんと診断され手術を受けたすべての女性を対象に、放射線療法ありの乳房温存術、放射線療法なしの乳房切除術、放射線療法ありの乳房切除術の3群に分け、全生存率(OS)と乳がん特異的生存率(BCSS)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・計4万8,986例のうち、放射線療法ありの乳房温存術が2万9,367例(59.9%)、放射線療法なしの乳房切除術が1万2,413例(25.3%)、放射線療法ありの乳房切除術が7,206例(14.7%)で、観察期間中央値は6.28年(範囲:0.01~11.70)だった。・全死亡は6,573例、乳がんによる死亡は2,313例で、5年OSが91.1%(95%CI:90.8~91.3)、5年BCSSが96.3%(95%CI:96.1~96.4)だった。・放射線療法なしの乳房切除術を受けた女性は、年齢が高く、教育レベルと収入は低かった。・乳房切除術を実施した2つの群では、放射線療法の有無に関係なく併存疾患の負荷が大きかった。・すべての共変量の補正後、OSおよびBCSSは、放射線療法ありの乳房温存術に比べ、放射線療法なしの乳房切除術(OSのハザード比[HR]:1.79、95%CI:1.66~1.92、BCSSのHR:1.66、95%CI:1.45~1.90)および放射線療法なしの乳房切除術(OSのHR:1.24、95%CI:1.13~1.37、BCSSのHR:1.26、95%CI:1.08~1.46)で有意に悪かった。 本研究では、これまで測定されていなかった併存疾患および社会経済的状態の補正後も、放射線療法を伴う乳房温存術が、乳房切除術(放射線療法の有無に関係なく)より生存率が高いことが示された。著者らは「どちらの治療も妥当な選択肢であれば、乳房切除術が乳房温存術と同等と見なされるべきではない」と結論している。

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第53回 時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省

<先週の動き>1.時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省2.コロナ即日受け入れ、外来・入院加算の併算定が可能に3.コロナ労災6,041件、医療・福祉関係が75%を占める4.大規模接種センター開設も、医療者の未接種が先決問題か5.大学病院の経営状況、コロナ再拡大で回復の見込みなし6.受診控え、10ヵ月で1診療所当たり500万円以上の減収1.時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省厚労省は、7月末までに希望する高齢者全員に接種を完了できるよう、ワクチン接種を行う医師・看護師等を確保するため、時間外・休日の接種について、被接種者1人当たりのワクチン接種対策費負担金2,070円に、診療報酬上の時間外等加算相当分の上乗せを行うと発表した。また、医師が不足すると都道府県が判断した地域に対しては、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」により、接種会場に時間外・休日の医師・看護師等を派遣した医療機関に対しても、財政支援が実施される。(参考)ワクチン接種要員派遣、医療機関に財政支援 医師1人1時間ごと最大7,550円、時間外・休日(CBnewsマネジメント)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)における「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」について(事務連絡 令和3年4月30日)2.コロナ即日受け入れ、外来・入院加算の併算定が可能に厚労省は7日、新型コロナ患者の受け入れをスムーズに行う目的で、初診・再診の後、その患者がただちに入院した場合、「医科外来等感染症対策実施加算」と「入院感染症対策実施加算」の同時算定で1日あたり10点が加算できるとの事務連絡を発出した。ただし、算定に当たっては、院内感染予防策を実施した上で、患者あるいは家族等に対して、十分な対応を行っている旨を説明することが求められている。この加算は、2021年4月から9月診療分までであり、2月26日に発出された通知に対するQ&Aの形で発出されている。(参考)初・再診後の入院も10点加算 感染予防策が前提、新型コロナ臨時措置(CBnewsマネジメント)初・再診から直ちに入院した場合、【医科外来等感染症対策実施加算】と【入院感染症対策実施加算】を併算定可―厚労省(Gemmed)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その44)(事務連絡 令和3年5月7日)3.コロナ労災6,041件、医療・福祉関係が75%を占める昨年、新型コロナウイルス感染症が原因の労働災害の発生件数は、全業種で合計6,041件、うち医療保健業(病院など)の発生が2,961件、社会福祉施設での発生が1,600件に上ることが明らかとなった。これは、2020年1月1日~12月31日までに新型コロナウイルス感染による労災(休業4日以上の休業や死亡)について、厚労省が報告したもの。これより、医療機関や福祉施設における感染防御がより重要だと言える。(参考)コロナ労災、昨年1年間で6,041人…医療・福祉関係者らが計75%(読売新聞)資料 令和2年労働災害発生状況の分析等(厚労省)4.大規模接種センター開設も、医療者の未接種が先決問題か菅 義偉首相は、新型コロナワクチン接種について、1日100万回を目標とする方針を7日に明らかにした。24日に東京と大阪で大規模接種センターを開設し、6月末には高齢者の5割、7月末には全員の接種完了を目指す。なお、厚労省の4月時点の調査では、集団接種を行う2割の自治体で医師や看護師の不足が課題とされており、地方自治体の中には、高齢者ワクチンの配送が急増しても、接種を行う医療従事者の確保が十分でない現状。また、医師・看護師で2回目の接種を終えている者はまだ2割前後であり、ワクチン接種を受ける前にワクチン接種に従事することになるなど、医療従事者側にも混乱が見られる。今後、これらの課題を対応しつつ、7月末までの接種完了に向けた取り組みが強化されるだろう。(参考)新型コロナ 接種従事、医師にリスク 8割ワクチン未完了(毎日新聞)新型コロナワクチンの高齢者向け接種の前倒しについて(事務連絡 令和3年4月30日)5.大学病院の経営状況、コロナ再拡大で回復の見込みなし全国医学部長病院長会議は、新型コロナウイルス感染症に関する昨年度の大学病院の経営状況について発表した。アンケート結果によると、第3波のコロナ患者増加の中で、収支状況についても落ち込みが見られ、初診外来患者数は前年度に比べて19%減少、入院延べ患者数、新入院患者数は前年度に比べて9.9%減少、2021年1月末時点の2020年度の医業収益率は8.4%(2,196億円)減収となり、依然として厳しい経営状況にある。大学病院が通常の重症患者の医療も維持しながらコロナへの対応を果たしていくために、医療連携体制の構築や一層の財政支援を要望している。(参考)資料 新型コロナウイルス感染症に関する大学病院の経営状況調査(1月度)(全国医学部長病院長会議)コロナ入院1人につき診療報酬500万円減 京大推計(朝日新聞)6.受診控え、10ヵ月で1診療所当たり500万円以上の減収日本医師会は、新型コロナウイルス感染症による2021年1月までの診療所経営への影響に関する調査結果を公表した。これによると、「入院外(外来と在宅医療)総件数の対前年同月比」で、総件数は2020年5月を底として6月以降改善傾向だったが、11月に再び大きく落ち込み、2021年1月の対前年同月比は、小児科38.5%減、耳鼻咽喉科25.1%減と受診控えが再び見られたことが明らかとなった。また、2020年4月~2021年1月の10か月で、1施設当たり医業収入の増減額の累計は、有床診療所で573万8,000円減、無床診療所で1,091万7,000円減であった。(参考)新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響-2020年11月~2021年1月分-(日本医師会)

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IL-6受容体拮抗薬の新型コロナ重症化阻止には低用量ステロイドの併用が必要?(解説:山口佳寿博氏)-1383

 新型コロナ感染症の重症化は生体の過剰免疫反応に誘発されたサイトカイン・スト-ムに起因する。サイトカイン・スト-ムの形成にはIL-6関連細胞内シグナル伝達系の賦活が重要な役割を担うと考えられており、IL-6受容体拮抗薬の効果を検証するために多数の試験が施行されてきた。しかしながら、期待とは裏腹に新型コロナ感染症の重症化に対するIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文と否定する論文が混在し、IL-6受容体拮抗薬の効果が確実だと断定できないのが現状である。本論評では、2021年2月下旬にNEJM に同時に掲載されたIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print])と否定する論文(Rosas IO,et al. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1503-1516.)をとり上げ、なぜこのような正反対の結果が得られたのか、その原因について考察する。 新型コロナ重症肺炎に対するIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ、商品名:アクテムラ)の効果を肯定した最初の論文は、イタリアにおける後ろ向き観察研究TESEO Trialであった(Guaraldi G,et al. Lancet Rheumatol. 2020 Aug;2:e474-e484.)。この解析では、静注、皮下注の別なくトシリズマブ投与は、重症肺炎患者における入院2週間以内の累積死亡率を62%低下させることが示された。中等症以上の肺炎患者を対象としたフランスの多施設ランダム化非盲検対照試験CORIMUNO-19 Trialでは入院後4週までの死亡率に有意差を認めなかったものの2週までの死亡率はトシリズマブ群で有意に低かった(Hermine O,et al. JAMA Intern Med. 2021 Jan 1;181:32-40.)。米国の多施設観察研究STOP-COVID Trialは、ICU入院の重症~重篤肺炎患者を対象としたものである(Gupta S,et al. JAMA Intern Med. 2021;181:41-51.)。この解析では、ICU入院2日以内の早期にトシリズマブを投与すると4週後の死亡リスクが29%低下すると報告された。英国での多施設ランダム化非盲検対照試験REMAP-CAP Trialは、ICU入院の重篤肺炎患者を対象として2種類のIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ群: 353例、サリルマブ[商品名:ケブザラ]群: 48例)の効果を解析したものであり、対照群として402例が登録された(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1491-1502.)。本試験では、全対象の93%で何らかのステロイドが基礎治療として導入されていた。IL-6受容体拮抗薬はICU入院1日以内に静脈投与されており、その結果として、IL-6受容体拮抗薬は、ICU入院3週目までの心肺機能支持療法の必要日数、病院内死亡率、3ヵ月後の死亡率において有意な改善効果を示した。4月29日現在、正式論文として出版されていないが英国の大規模RECOVERY Trial(多施設ランダム化非盲検対照試験、トシリズマブ群: 2,022例、対照群: 2,094例)でもIL-6受容体拮抗薬によって4週間以内の死亡率が有意に低下すると報告された(RECOVERY Collaborative Group. medRxiv.)。RECOVERY Trialにおいては、基礎治療としてのステロイドが全対象の82%に投与されていた。 トシリズマブの効果を否定した最初の論文は、イタリアから報告された(Salvarani et al. JAMA Intern Med. 2021;181:24-31.)。この試験は、前向き多施設ランダム化非盲検対照試験で中等症の急性呼吸不全/ARDSを呈した肺炎患者を対象としたものであり、ランダム化は症状発現から8日以内に行われ、トシリズマブはランダム化から8時間以内に投与された。本試験では、トシリズマブの効果を認めず、2週、4週以内の死亡率はトシリズマブ群と対照群でほぼ同一であった。米国における多施設ランダム化二重盲検対照試験BACC Bay Tocilizumab Trialでは、中等症~重症の肺炎患者を対象としてインフォ-ムド・コンセント取得3時間以内にトシリズマブが投与された。4週目までに挿管に至った、あるいは、死亡した患者の割合は、トシリズマブ群と対照群で有意差を認めなかった。英国、米国など世界9ヵ国62施設が参加して施行された国際的多施設ランダム化二重盲検対照試験COVACTA Trialでは、重症肺炎患者を対象とし、トシリズマブ群:294例、対照群:144例が登録された(Rosas IO,et al. N Engl J Med.2021 Apr 22;384:1503-1516.)。本試験では、退院までの日数はトシリズマブ群で有意に短かったが、4週目までの死亡率には両群間で有意差を認めなかった。本試験における基礎治療としてのステロイドは全対象の24%のみにしか投与されておらず、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialに比べ明らかに少なかった。 REMAP-CAP Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を肯定)とCOVACTA Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を否定)における試験計画には種々の差が存在する。たとえば、対象患者のエントリ-基準(対象患者の重症度など)、IL-6受容体拮抗薬の投与時期、Primary endpointの内容ならびに判定時期、試験の盲検性(二重盲検か非盲検か)などが異なっている(Angriman F,et al. Lancet Respir Med. 2021 Apr 27. [Epub ahead of print])。しかしながら、論評者は、両試験の差の中で最も重要なものは基礎治療としてのステロイドの導入頻度だと考えている(REMAP-CAP Trial: 93%、COVACTA Trial: 24%)。 新型コロナ感染症における重症化の最も重要な機序であるサイトカイン・スト-ムの発生にはIL-6関連シグナル伝達経路の賦活化が重要である。コロナウイルスが生体細胞に感染し細胞のACE2を占有すると、ACE2のリガンドであるアンギオテンシンII(AT)はACE2ではなくType 1アンギオテンシン受容体(AT1R)と結合する経路に流入する(AT-AT1R複合物の形成)。AT-AT1R複合物は、細胞膜に存在するタンパク分解酵素ADAM-17を賦活化し、細胞膜に付着しているTNFα、IL-6受容体α(IL-6Rα)を膜から切断、可溶性TNFα、可溶性IL-6Rα(sIL-6Rα)を産生する。可溶性TNFαは転写因子NF-кBを活性化し、TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など多様な炎症性サイトカインを産生する。すなわち、可溶性TNFαは、NF-кBを活性化、活性化されたNF-кBはTNFαを再度産生するという“positive feed back回路”を形成する。本論評では、この回路をTNFαル-プと定義する。一方、sIL-6RαはIL-6と結合し、種々の細胞において転写因子STAT3を活性化する。STAT3はNF-кBとの物理的結合などの機序を介してNF-кBの活性を上昇させる(STAT3とNF-кBのcross talk)。このようなSTAT3を介するNF-кBの活性化はIL-6 amplifier(IL-6アンプ)と呼称される(Hirano T, et al. Immunity. 2020 May 19;52:731-733.)。IL-6アンプは、NF-кBの活性化によって細胞遊走因子(ケモカイン)を含む多様な炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など)の持続的過剰産生を惹起する。それ故、IL-6アンプはNF-кBの活性化を持続させる“positive feed back回路”の1つと考えることができる。以上のTNFαル-プとIL-6アンプは互いに連携しており、サイトカイン・スト-ムの主たる発生機序として重要である。IL-6アンプを阻止するためには、可溶性IL-6Rαの効果を抑制すればよく、IL-6受容体拮抗薬が最もシンプルかつ有効な手段である。しかしながら、IL-6受容体拮抗薬はTNFαル-プの一部を抑制するもののすべてを抑制する訳ではなく、TNFαル-プの確実な抑制のためにはTNFα阻害薬の投与が必要である(Feldmann MJ,et al. Lancet. 2020 May 2;395:1407-1409.)。TNFαル-プとIL-6アンプの同時抑制には、これら2つの経路に対して“扇の要”として作用するNF-кBの活性を、たとえば、低用量ステロイドなどによって阻害すればよい。 以上の分子生物学的機序を基礎として、IL-6受容体拮抗薬が新型コロナ感染症の重症化阻止に有効であると報告したREMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialとそれらとは逆に無効と報告したCOVACTA Trialの意味する内容について考察する。有効と報告した前2つの試験では、対象の82~93%に基礎治療としてステロイドが投与されていた。すなわち、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialは、IL-6アンプとTNFαル-プに対して“扇の要”として作用するNF-кB活性をステロイドによる基礎治療によって抑制したものであり、IL-6ル-プ単独の効果を見たものではない。言い換えれば、REMAP-CAP Trial、RECOVERY TrialからはIL-6受容体拮抗薬が単独で新型コロナ感染症の重症化阻止に真に有効であるとは結論できない。一方、無効と報告したCOVACTA Trialでは基礎治療としてステロイドが投与されていた対象の割合は24%と低いものであった。すなわち、COVACTA Trial は、ほぼ純粋にIL-6アンプの効果を観察したものであり、COVACTA Trialの結果は、IL-6受容体拮抗薬の単独投与が新型コロナ感染症におけるサイトカイン・スト-ムに起因する病態の重症化を有意に抑制するものではないことを示唆する。以上の考察より、現時点では、IL-6受容体拮抗薬自体の新型コロナ感染症重症化阻止作用は否定的と考えなければならず、IL-6受容体拮抗薬の臨床的効果発現のためには、ステロイド(低用量)の併用が必要であるものと推察される。これに関する明確な機序は不明であるが、IL-6受容体拮抗薬の効果発現には、IL-6アンプに加えTNFαル-プの同時抑制が必要、あるいは、IL-6受容体拮抗薬とステロイドとの間に本論評で考察した機序以外の相加/相乗効果が存在するのかもしれない。今後、IL-6アンプの抑制、TNFαル-プの抑制、あるいは、両者の同時抑制を意識した確実な臨床試験を期待するものである。

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Lancetでもこんなことがあるんだ…(解説:後藤信哉氏)-1386

 各種学会の作る診療ガイドラインでは、観察研究よりもランダム化比較試験のエビデンスレベルが高く、ランダム化比較試験のメタ解析のエビデンスレベルがさらに高いと書いている。しかし、メタ解析のエビデンスレベルは本当に高いのだろうか? チカグレロル、プラスグレルなどの高価な新薬がクロピドグレルの特許切れ後に販売されたとき、価格の圧倒的に安いクロピドグレルに著しく勝る有効性、安全性を示すことは困難であった。実際、いずれの薬剤も血小板のP2Y12 ADP受容体の選択的阻害薬なので有効性、安全性の革新を期待することは困難であった。チカグレロル、プラスグレルともにクロピドグレルに対する有効性の優越を目指したため、pivotal trialでは患者集団の重篤な出血が増加して標準治療の転換はできなかった。 肝臓で代謝される薬剤は多数ある。どのような薬剤でも有効性、安全性は、ランダム化比較試験など患者集団を対象として施行される。不思議なことに、クロピドグレルではCYP2C19による代謝速度の個体差が問題とされた。個別最適化医療の論理は確立されておらず、血栓イベント・出血イベントにおける血小板の役割も正確に解明されていないのに、血小板凝集などの確立されていないバイオマーカーを用いた臨床研究が多数施行された。本論文は、それらの、なぜ施行されたのか、科学的観点では不明の臨床研究のメタ解析である。 本研究の対象症例は2万743例と多数になった。しかし、本研究はランダム化比較試験と観察研究のメタ解析である。仮説検証を目指すランダム化比較試験と仮説を生み出す観察研究では登録基準、除外基準のハードルが異なる。比較的サイズの大きい個別のランダム化比較試験では、MACEにはguided therapyとnon guided therapyに差がない。小規模のランダム化比較試験にはguided therapy betterに見えるものが多い。メタ解析全体ではguided therapyが良いように結論されている。さまざまな視点のランダム化比較試験が一様の結果を示すメタ解析はエビデンスレベルが高いかもしれない。しかし、異なる方向の結果を集めたメタ解析には意味がない。Lancetでもこんなことがあるんだ…と正直感じた。

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診療所を売った後、「もう少し働く」メリット&デメリット【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第17回

第17回 診療所を売った後、「もう少し働く」メリット&デメリット漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所の引き継ぎ後、売り手はさっさと引退して第二の人生を楽しみ、買い手はやる気に満ちて働きはじめる…。そんなイメージがありますが、実際には、医業承継後に買い手側の新院長が売り手側の旧院長に対して「承継後も継続して勤務してほしい」と考えるケースが半数を超えています(弊社調査)。これはなぜでしょうか?買い手側には、大別して下記の2パターンの方がいます。(1)医療法人の理事長(分院として承継する)(2)開業する勤務医(自分が院長となって承継する)(1)の医療法人の理事長の場合には、旧院長の継続雇用を希望する割合は9割超と圧倒的です。この理由としては、医療法人の場合、その経営者が新院長になって自ら診療する、というケースは滅多にありません。つまり、新院長を自分の医療法人から、もしくは新たに探して雇用しなくてはならないのです。これは簡単なことではなく、新たな院長が見つかるまでの数ヵ月から数年間は、売り手側の旧院長に継続して勤務してほしい、と希望するのです。旧院長が引き続き勤務することで、スタッフや患者の離反防止も期待できます。(2)の開業する勤務医の場合でも、患者やノウハウの引き継ぎを期待して、旧院長にしばらく働いてほしいと希望するケースが多いのです。弊社の過去の実績でも、売り手の旧院長が継続勤務できる期間が長いほど、またその勤務可能日が多いほど「成約率」と「譲渡対価」が上がる傾向にあります。それだけ前任者に対する期待値は高い、ということです。ただし、旧院長と買い手側で診療所の経営方針がまったく違う場合には、継続勤務はリスクともなるので、その点は慎重に検討する必要があります。承継後の旧院長の継続勤務はメリットやデメリットを踏まえておけば、お互いにとって良い機会にできるのです。

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第37回 調和平均値とは?【統計のそこが知りたい!】

第37回 調和平均値とは?通常、私たちが使う平均値は、「平均年齢」「平均身長」「平均体重」で用いるように、データをすべて足し合わせ、データの個数(人数)で割って求める平均値です。これを「算術平均値」(Arithmetic average)と言います。前回は、「幾何平均値」(Geometrical average)について解説しました。では、「調和平均値」(Harmonic average)とは、どのような平均値なのでしょうか。今回は、調和平均値について解説します。■調和平均値(Harmonic average)調和平均値は、n個のデータがあるとき個々のデータの逆数をとり、これらの算術平均値を求め、算術平均値の逆数をとった値です。調和平均値は、データの逆数に意味があるときによく用いられます。逆数に意味があるとは、たとえば、ある距離を移動したときの「時速x=30km/時」であるとき、その逆数は 「1/x=1/30」です。これは「1km進むのに要した時間」に当たるため、「逆数に意味がある」ということになります。■調和平均値の計算式表に時速の調和平均を求めてみましょう。各時速を上から順に x1, x2, x3,とし、前述の計算式に代入します。 となり、調和平均値は、20km/時ということになります。■調和平均値に関する留意点上記の事例は、合計180kmを9時間かけて走ったので、平均は180km÷9=20km/時と考えられます。この考え方が調和平均です。余談になりますが、音の調和を「ハモる」といいますね。2つの音が調和する(ハモる)かどうかは、2つの音の周波数の比率で決まります。その関係から、比率の平均を調和平均(ハーモニック平均)と呼びます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第36回 幾何平均値とは?「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよ

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新型コロナワクチン接種で注目の副反応、SIRVAとは?

新型コロナワクチン接種による副反応疑いとして「ワクチン投与関連肩損傷(ワクチン投与関連肩損傷)」「ワクチン接種部位疼痛」などが報告されている。しかし、これはワクチン成分自体による副反応ではなく、接種手技により避けられる可能性がある。これらの発症予防のための必要な知識について、プライマリ・ケア連合学会の動画監修にも関わった仲西 康顕氏(奈良県立医科大学整形外科・臨床研修センター 講師)を取材し、末梢神経を損傷してしまう原因や実際の症状、注意点について伺った。末梢神経障害やSIRVAとは、その症例数や日本での認知度はどのくらいでしょうか?筋肉注射の手技が原因で生じる問題には、不適切な部位への接種による腋窩神経や橈骨神経などの末梢神経損傷とSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)があります。三角筋への筋肉注射によるワクチン接種が一般的ではない日本においては、医原性末梢神経障害を専門とする私でも、筋肉注射に関わる症例には数例しか関わったことがありません。近年、整形外科医のなかで問題視されているSIRVAは、「ワクチン接種に関連した肩関節障害」と訳され、三角筋下滑液包内への不適切な薬剤注入が原因で生じる肩の急性炎症(肩関節周囲炎、滑液包炎、腱板炎など)のことです。米国で2010年頃に報告されたのをきっかけに徐々に報告数も増えていますが、2016年時点での米国での年間報告数はわずか200例超1)と世界的にもまだまだ稀な疾患です。そのため、整形外科医以外には聞き慣れない病名だと思います。しかし、これらの合併症はワクチン接種後の患者さんのQOLを損なう恐れがあり、新型コロナワクチンの安全な投与のための手技マニュアル作成には重要だと考え、プライマリ・ケア連合学会の動画「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版」の監修にも携わらせてもらいました。また、マニュアルと同時に作成した、われわれの筋肉注射手技の根拠に関する論文2)は、現在、オンラインで一般公開されています。私たちが提示した安全な手技に従って注射した場合、神経損傷やSIRVAについて避けることが可能です。ただし、ワクチン接種現場でこれらの合併症の診断方法や治療方法まで医療関係者の一人一人が“深く理解しておく必要性はない”というのが個人的な意見です。今回は従来の手技によって生じる可能性のある副反応について解説しますが、神経損傷とは関係なくワクチン接種後に生じる手の違和感などへの実際の対応については別稿で述べたいと思います。末梢神経障害やSIRVAを予防するための対策を教えてください筋肉注射に関する多くの手技解説には、穿刺部位について「肩峰から3横指下(5cm)」と書かれていますが、その部位には三角筋を支配し肩関節の外転を司る腋窩神経が走行しています。また、橈骨神経は上腕骨に螺旋状に巻き付くように走行しているため、腕の肢位によっては神経の走行を推測しにくく誤った穿刺を起こしかねないんです。さらに、前述のSIRVAは三角筋下滑液包へのワクチンの注入が原因と考えられますが、高齢者では症状がなくても腱板の広範囲断裂や滑液包内の液体貯留は珍しいことではなく3)、滑液包の形状が変化するこれらの疾患では肩峰より5cm以内の接種は滑液包内への誤注入のリスクがより高くなると推測されます(図1)。(図1) 正常の肩関節と腱板断裂、滑液包水腫画像を拡大する広範囲腱板断裂では、正常よりも末梢まで三角筋下滑液包が拡張することがある。さらに水腫がある場合、滑液包内への誤注入の可能性は高くなる。高齢者ではこれらの変化は症状を伴っていないことも稀ではない。われわれ整形外科医はこれらの神経損傷に必ず注意を払って手術に臨むわけですが、ワクチン接種現場の報道映像では “腰に手を当てて上腕後方を差し出す姿勢”のように神経損傷を招く可能性のある手技が多く見受けられました。これらの神経損傷を避けるために、整形外科では髄内釘のスクリューや創外固定のピンを安全に上腕骨に刺入することのできる部位について、永年蓄積されてきたノウハウがあります。当院では過去の複数の文献報告なども踏まえて、新しく筋肉注射を行うためのマニュアルを作成しました。ですが、“従来の手技での合併症の発生頻度”も“新たな接種方法による予防効果“も高いエビデンスを示すことのできる臨床研究はこれまで行われておらず、まだまだ議論の余地は残っています。<現時点で仲西氏らが提案する新たな接種方法>上腕が内旋しないように力を抜き、肘は自然に伸ばして腕をおろしてもらう肩峰から下ろした垂線と前腋窩線の頂点・後腋窩線の頂点を結ぶ線の2つの線が交わる点に穿刺する接種者、被接種者が共に腰掛けた状態で接種する末梢神経損傷やSIRVAを生じた患者が訴える症状、その対処法を教えてください腋窩神経損傷では穿刺時も含めて痛みや痺れもなく、数日後に肩を挙上しにくいと気付いたとの症例報告があります。診断するには、両肩を十分に露出した上で部分的な三角筋の収縮力の低下がないか観察する必要があるでしょう。しかし、腋窩神経損傷は比較的自然に治りやすく、おそらく医療従事者に十分認識されないまま治ってしまうことも多々あると思われます。一方、橈骨神経損傷は受傷後の比較的早期に手の甲から親指や人差し指にかけての痺れ、手首や指の動かしにくさを訴えることが多いようです。一言で神経損傷と言ってもその度合いにより、自然回復が見込めるか、あるいは何らかの外科的な治療を検討すべきかで治療方針は異なります。筋肉注射によって生じた重度の橈骨神経麻痺症例を経験したことがありますが、日常生活や就労に大きく影響する後遺症が残りました。もし橈骨神経損傷を疑った場合は、自然回復を待つのではなく早期に手の外科を専門に行っている整形外科あるいは形成外科医に相談すべきと考えます。正確な神経学的評価に加えて、近年では末梢神経の超音波による観察が診断に有用です。SIRVAに関しては、まだまだ日本では報告されている症例は多くありません。海外の報告を見ると、ワクチン接種後数時間から2日程度の間に肩関節の強い自発痛を生じ、自然に改善しないことが多いようです。新型コロナワクチンの2回目の接種では、三角筋の強い痛みを生じることがしばしばあるようなので、発症早期に診断することは難しいかもしれません。ワクチン接種から数日経っても安静時に軽減することのない強い肩の痛みが続く場合は、肩関節の単純MRIが有用と考えます。接種された三角筋ではなく、肩関節の滑液包を中心として広範囲に炎症を示す所見があれば、より積極的にSIRVAを疑うことができます。治療としては、初期には滑液包内へのコルチコステロイド投与が検討されますが、早めに整形外科へ紹介することをお勧めします。ワクチン接種部位に関する問題の背景を踏まえ、今後の手技の標準化についてはどのように考えますか?実は整形外科医の中でも、前医とのトラブルをしばしば抱えて受診される「医原性末梢神経損傷」の患者さんを積極的に診ようという医師は多くありません。また、筋肉注射の手技自体が全体的に少なく、さらには医療トラブルへの対応に慎重になるあまり、まとまった症例の検討や論文による知識の共有が行われにくかった背景があるのではと思います。そのために厚生労働省を含めて安全なワクチンの接種方法を検討する内科、小児科の医師の間には神経損傷が現実的な問題として認識されてこなかったのではないでしょうか。今回、当院のパンフレット公開後に日本プライマリ・ケア連合学会の中山 久仁子先生、守屋 章成先生から連絡があり、専門性を越えて議論した結果、整形外科医の声に耳を傾けていただき、一旦公開した筋肉注射手技の動画を再度撮影し公開するという決断まで下されました。おそらく、この動画で新しい手技を知った方がとても多いのではと思います。神経損傷やSIRVAといった問題が発生した際、実際に治療にあたるのは整形外科医ですが、コロナ禍で筋肉注射についての問題が注目を集めています。整形外科医の中にも、私が尊敬する名古屋大学の平田 仁教授をはじめとして、真剣に医原性末梢神経損傷の問題に取り組んでいる医師がおります。今後、筋肉注射の手技について検討する際には、ぜひ整形外科医の持つ知識も参考に、さらに安全性を高めるための建設的な議論に結びつくことを期待しています。現時点では筋肉注射の推奨接種部位について、各団体間で統一されていません。しかし、これからもワクチン接種に関わる医療者にも、接種を受ける多くの人にも安心してもらえるように取り組み、新型コロナウイルス感染症対策に貢献していきたいと思っています。次回「ワクチン接種後の手のしびれ、痛みをどう診るか」に続く。(インタビュー:2021年4月20日、聞き手・構成:ケアネット 土井 舞子)参考1)Hesse EM, et al. Vaccine. 2020;38:1076-1083.2)仲西 康顕ほか. 中部整災誌. 2021;64:1-9.3)Minagawa H, et al. J Orthop. 2013;10:8-12.*奈良県立医科大学附属病院臨床研修センターのサイトに「Q&A」などを掲載中厚生労働省予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について(令和3年2月17日から令和3年4月4日報告分まで)

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肺がん再生検のモダリティ、気管支鏡 vs.CTガイド下針生検/Respir Investig

 治療薬の進歩により進行非小細胞肺がん(NSCLC)の再生検の必要性が増している。再生検のモダリティは、気管支鏡検査やCTガイド下針生検(CTNB)などのがあるものの、どの手法が最適か、コンセンサスはない。そのような中、岡山大学による気管支鏡検査とCTNB生検を比較した後ろ向き研究の結果がRespiratory Investigation誌に発表された。 対象は、2014年1月~2016年12月に、岡山大学で気管支鏡検査またはCTNB再生検を受けたNSCLC79例。 主な結果は以下のとおり。・再生検採取は気管支鏡検査49例、CTNBは30例であった。・診断率は気管支鏡検査83.7%に対し、CTNBは100%であった(p=0.023)。・処置による合併症率は気管支鏡検査18.4%に対し、CTNBは36.7%であった(p=0.11)。・気胸の発生率は気管支鏡検査0%に対し、CTNBは23.3%と有意に差があった(p<0.01)。

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トシリズマブ、重症COVID-19肺炎入院患者の病態改善せず/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎で入院した患者の治療において、IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブはプラセボと比較して、28日後の臨床状態を改善せず、死亡率を抑制しないことが、米国・ベイラー医科大学のIvan O. Rosas氏らが行った「COVACTA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月22日号に掲載された。欧米9ヵ国のプラセボ対照無作為化第III相試験 COVACTA試験は、重症COVID-19肺炎入院患者におけるトシリズマブの有効性と安全性を評価する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(F. Hoffmann-La Rocheなどの助成による)。 2020年4月3日~5月28日の期間に、北米と欧州の9ヵ国62施設で、年齢18歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法と、胸部X線またはCT検査で重症COVID-19肺炎と確定された患者が登録された。 被験者は、トシリズマブ(8mg/kg体重)の静脈内投与を1回受ける群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者の約4分の1が、トシリズマブまたはプラセボの1回目の投与から8~24時間に、2回目の投与を受けた。 主要評価項目は、修正intention-to-treat集団(トシリズマブまたはプラセボの投与を少なくとも1回受けたすべての患者)の28日目の臨床状態とした。臨床状態は、1(退院または退院準備の状態)~7(死亡)の順序尺度で評価された。28日の臨床状態中央値:1.0 vs.2.0、死亡率:19.7% vs.19.4% 438例が登録され、トシリズマブ群に294例(平均年齢[±SD]60.9±14.6歳、男性69.7%)、プラセボ群に144例(60.6±13.7歳、70.1%)が割り付けられた。 28日の時点での順序尺度による臨床状態中央値は、トシリズマブ群が1.0(95%信頼区間[CI]:1.0~1.0)、プラセボ群は2.0(酸素投与がなく、集中治療室[ICU]以外に入院)(1.0~4.0)であり、両群に有意な差は認められなかった(群間差:-1.0、95%CI:-2.5~0、van Elteren検定によるp=0.31)。 安全性解析集団では、重篤な有害事象は、トシリズマブ群が34.9%(103/295例)、プラセボ群は38.5%(55/143例)で発生した。また、28日時点の死亡率は、トシリズマブ群19.7%、プラセボ群19.4%であり、両群に有意差はなかった(加重平均差:0.3ポイント、95%CI:-7.6~8.2、名目上のp=0.94)。 著者は、「今回のデータからは、退院または退院準備までの期間、およびICU入室期間においては、トシリズマブが有益である可能性が示唆されたが、これらはいずれも別の追加研究を要する」としている。

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ポロキサマー188、鎌状赤血球症の血管閉塞性疼痛改善せず/JAMA

 鎌状赤血球症の小児/成人患者における血管閉塞性の疼痛エピソードの治療では、ポロキサマー188はプラセボと比較して、非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの期間を短縮しないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のJames F. Casella氏らが行った「EPIC試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年4月20日号で報告された。12ヵ国66施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、鎌状赤血球症患者における血管閉塞性の疼痛エピソードに対するポロキサマー188の有効性を再評価する目的で、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した(米国・Mast Therapeutics, Inc.の助成による)。 2013年5月~2016年2月の期間に、12ヵ国66施設で、年齢4~65歳、鎌状赤血球症(ヘモグロビンSS、鎌状赤血球、S-β0サラセミア、S-β+サラセミア)と診断され、非経口オピオイド鎮痛薬による治療を要する血管閉塞性の急性疼痛エピソード(4時間以上持続する中等度~重度の疼痛)で入院となった患者が登録された。 被験者は、ポロキサマー188(負荷投与量100mg/kg/時を静脈内投与後、30mg/kg/時を12~48時間持続注入)の投与を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 388例(平均年齢15.2歳、女性176例[45.4%])が無作為化の対象となり、ポロキサマー188群に194例、プラセボ群に194例が割り付けられた。15日の時点でフォローアップができたのは357例(92.0%)、30日時にフォローアップができたのは368例(94.8%)だった。16歳未満では明らかな有害性 無作為化の時点から非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの平均時間(主要評価項目)は、ポロキサマー188群が81.8時間、プラセボ群は77.8時間であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:4.0時間、95%信頼区間[CI]:-7.8~15.7、幾何平均比:1.2、95%CI:1.0~1.5、p=0.09)。 年齢と試験薬の有意な交互作用(p=0.01)に基づき年齢別の解析を行ったところ、16歳未満では、非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの平均時間は、ポロキサマー188群の88.7時間に比べ、プラセボ群は71.9時間と有意に短かった(群間差:16.8時間、95%CI:1.7~32.0、幾何平均比:1.4、95%CI:1.1~1.8、p=0.008)。 ポロキサマー188群で頻度が高かった有害事象は高ビリルビン血症(12.7% vs.5.2%)などであり、プラセボ群で高頻度の有害事象は低酸素症(5.3% vs.12.0%)などであった。1件以上の重篤な有害事象が発現した患者は、ポロキサマー188群が33.9%、プラセボ群は29.8%だった。 著者は、「ポロキサマー188は、鎌状赤血球症患者における血管閉塞性疼痛の期間を短縮しなかった。既報の他の第III相試験では、16歳未満で明らかな有益性を認めたのに対し、本試験では有害性が示された」とまとめている。

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ファイザー社ワクチン、英国・南ア変異株に対する有効率は?/NEJM

 有効率95%と報告されているファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)だが、英国で確認された変異株(B.1.1.7)および南アフリカで確認された変異株(B.1.351)に対する実社会での有効率はどの程度なのか? カタール・Weill Cornell MedicineのLaith J. Abu-Raddad氏らが、変異株への感染および重症化に対する同ワクチンの有効性を検証したコホート研究結果を、NEJM誌オンライン版2021年5月5日号のCORRESPONDENCEに報告した。 カタールでは、2月23日~3月18日にゲノム解析された症例の50.0%がB.1.351、44.5%がB.1.1.7により引き起こされていた。また3月7日以降はゲノム解析されたほぼすべての症例が、B.1.351またはB.1.1.7のいずれかへの感染であった。同ワクチンの接種は2020年12月21日に開始され、2021年3月31日時点で計38万5,853人が少なくとも1回のワクチン接種を受け、26万5,410人が2回の接種を完了している(訳注:カタールの総人口は約280万人)。 ワクチン接種状況、PCR検査結果、および臨床的特徴に関するデータは、流行開始以来蓄積されている全国的なCOVID-19データベースより抽出された。 主な結果は以下のとおり。・B.1.1.7への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で89.5%(95%信頼区間[CI]:85.9~92.3)であった(ワクチン2回接種群:PCR陽性50例 vs. PCR陰性465例、ワクチン非接種群:16,354例 vs.15,939例)。・B.1.351への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で75.0%(95%CI:70.5~78.9)であった(ワクチン2回接種群:179例 vs. 698例、ワクチン非接種群:19,396例 vs.18,877例)。・B.1.1.7およびB.1.351への感染が優勢である中、SARS-CoV-2感染による重症、重篤、および致命的な病態に対する2回目接種後14日以上における有効率は非常に高く、97.4%(95%CI:92.2~99.5)であった(ワクチン2回接種群:3例 vs.109例、ワクチン非接種群:1,692例 vs.1,586例)。・全国コホートの抗体陰性者の感染率と比較したnegative case-control designによる有効率は、B.1.1.7に対して87.0%(95%CI:81.8~90.7)、B.1.351に対して72.1%(95%CI:66.4~76.8)と推定され、上記結果が確認された。 著者らは、B.1.1.7およびB.1.351が国内で優勢の状況の中で、BNT162b2は感染および重症化に対して有効であったとまとめている。ただし、とくにB.1.351への感染に対する有効率は同ワクチンの臨床試験やイスラエル・米国からの実社会での報告(>90%)よりも約20%低かったと指摘。カタールでは、3月31日時点で、ワクチンを1回接種した6,689例と、2回接種した1,616例でブレークスルー感染が確認されている。また、ワクチン接種者におけるCovid-19による死亡も7例報告されている(1回接種後5例、2回接種後2例)。そのうえで、B.1.351感染に対しても、入院または死亡につながる最も深刻な感染に対する有効率は90%を超える強力なものであったとしている。

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依存症の衝動性に対する認知機能改善介入~メタ解析

 衝動的な行動や選択に対する3つの認知機能介入アプローチ(コンピューター化された認知トレーニング、認知矯正療法、薬理学的な認知機能介入)の効果を評価し、それらの比較検討を行うため、オーストラリア・モナシュ大学のAlexandra C. Anderson氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Addiction誌オンライン版2021年3月10日号の報告。 物質使用障害またはギャンブル依存症の治療を求めている成人患者を対象として認知機能改善介入を評価した研究を抽出した。主要アウトカムは、介入後に検証した衝動的な行動または選択に関する認知機能スコアの減少とした。バイアスリスクは、Cochrane Collaborationツールを用いて評価し、選択した研究よりプールした推定値を決定した。衝動的な行動および選択の結果について、ランダム効果分析を実施し、モデレーター分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・特定された研究2,204件のうち、60件を全文レビューした。・適格基準を満たしていた研究23件のうち、16件をメタ解析に含めた。・分析対象研究の内訳は、以下のとおりであった。 ●コンピューター化された認知トレーニング:5件、236例 ●認知矯正療法:3件、99例 ●モダフィニルによる薬理学的介入:4件、160例 ●ガランタミンによる薬理学的介入:4件、131例・研究期間は、5日~13週間の範囲であり、即時フォローアップ評価が行われていた。・ギャンブル依存症を対象とした研究は、確認されなかった。・66例が参加した2つの研究のみで、認知矯正療法の衝動的な選択に対する有用性が認められた(標準化平均差:0.86、95%CI:0.49~1.23、p=0.02、I2=0%、p=0.95)。 著者らは「依存症の衝動性の調整に対し、コンピューター化された認知トレーニングや薬理学的介入の効果は認められず、認知矯正療法のみが、依存症の衝動的な選択に有用な治療法である可能性が示唆された」としている。

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Dr.林の笑劇的救急問答16 皮膚科救急編

第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだ第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある? Dr.林の笑劇的救急問答も16年目に突入!下巻は「皮膚科救急編」。壊死性筋膜炎、ダニについて取り上げます。見逃し厳禁の「壊死性筋膜炎」。手遅れにならないための診断のポイントと詳しい病態をお教えします。また、「ダニ」のセッションでは、皮膚に張り付いたマダニの簡単な取り方やダニが介する感染症の診断・治療について解説します。思わず笑ってしまう症例ドラマと楽しくわかりやすいDr.林の講義でしっかりと学んでください。第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだDr.林の笑劇的救急問答16の後半は皮膚科救急です。そのなかでも見逃し厳禁の壊死性筋膜炎について取り上げます。壊死性筋膜炎の典型といえば、血性水泡やまっ黒い皮膚。教科書でよく見る所見です。でも、そこまでいってしまうともう手遅れ。早期では、そんな典型所見をみることはありません。また、血液検査の数値で予測できるとされるLRINECスコア。感度は90%以上といわれていますが、実は、臨床では役に立ちません。ではどうすれば早期に発見できるのでしょうか。第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?前回に引き続き壊死性筋膜炎についてです。原因菌とその病態、タイプ分類などをDr.林が整理してわかりやすくお教えします。それらをきちんと理解し、病歴を詳しく聴取することが早期発見につながります。とくにリスクの高い患者さんには注意が必要です。どのような疾患がリスクとなるのか、しっかりと確認しましょう!第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!皮膚科救急のもう1つのテーマはダニ。一晩でホクロができたと言って患者さんが受診することはありませんか?実はマダニがついているのです。あなたなら、どうやってそのダニを取り除きますか?無理に引っこ抜くと口器が残り、肉芽になったり、感染したりすることも。それならばワセリンやアルコールを使って滑りを良くして引っこ抜く?根性焼で焼き切る?それとも、皮膚ごと切り取ってしまう?いえいえ、実は簡単な方法があるんです!必見です!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある?Dr.林の笑劇的救急問答16もいよいよ最終回!今回のテーマもダニ。不明熱+発疹で受診したときは、リケッチア病、ライム病など、ダニが介する感染症を疑う必要があります。その場合、探さなくてはならないものは「刺し口」。疑わないと見つけることができないので、疑うことから始めましょう。そして、治療については、選択する抗菌薬についてもしっかりとお教えします。

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生データに基づくメタ解析の信ぴょう性が怪しい(解説:折笠秀樹氏)-1385

 メタ解析は統合研究ともいわれ、同じ課題に対して複数の研究データを統合する研究法です。一般的なのは文献から得られた集計データ(aggregate data)に基づくメタ解析ですが、生データ(individual participant data:IPD)に基づくメタ解析もあります。メタ解析のメッカであるコクラングループでは、ずいぶん前からこのIPDメタ解析を推奨してきました。その手法や点検法については、コクランIPD Methods Groupが主になって活動しています。私もこのグループへ所属しておりました。 生データに基づくメタ解析をするには、研究グループから生データが提供されなければ実現しません。臨床研究の事前登録制度は2005年に始まりましたが、近年、その中にデータシェア宣言の項目が加わりました。研究データを共有するつもりがあるかの事前宣言です。こうした風向きもあってか、近年、生データに基づくメタ解析論文は増えてきました。 この論文は、生データに基づくメタ解析論文323件のシステマティックレビュー(SR)です。方法論上の信ぴょう性を調査しました。323件の論文のうち、コクランレビュー(CDSR)が53件(17%)を占めていました。チェックリストとして有名なAMSTAR-2では不十分のため、2015年に出版されたIPDメタ解析のためのチェックリストも使われました。それを作ったのは、コクランIPD Methods GroupのJayne Tierneyらです。 生データに基づくメタ解析論文の品質は、全般的に低かったという結論でした。信ぴょう性が疑われたということです。とくに、バイアスリスク(Risk of Bias)の考察が足りないこと、事前にプロトコールを作っていないこと、出版バイアスを考慮していないことなどが指摘されました。そのとおりだと思います。生データに基づくメタ解析のほうが、通常のメタ解析よりもバイアスが入りやすいのです。まず、生データが入手できないことによるバイアスがあります。すなわち選択バイアスですね。また、生データを解析する際の統計モデル選択に伴うバイアスも考えられます。いわゆる、解析の多重性によるバイアスです。 メタ解析はエビデンスの最高峰と目されているため、商業的目的で実施されるケースが増えています。生データに基づくメタ解析は、通常のメタ解析よりも厳しく点検する必要があります。そのためのチェックリストも必要でしょう。通常のメタ解析に対しては、PRISMA声明というチェックリストがあります。それは2020年に更新されました。その生データ(IPD)版、PRISMA-IPD声明も2015年に出版されました。これらはメタ解析論文を書くためのガイダンスですが、その中にみられるチェックリストを査読においても活用し、信ぴょう性が薄い論文は出版を却下するべきでしょう。

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鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第186回

鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例いらすとやより使用いやがる人に無理やり鼻咽頭スワブを突っ込んで新型コロナウイルスの検査をしたり、あろうことか空港では肛門から長いスワブを突っ込んだり、一体どうなってんだ的な検査を行っている国もあるようですが……。Gaffuri M, et al.An Unusual Retained Choanal Foreign Body: A Possible Complication of COVID-19 Testing With Nasopharyngeal SwabEar Nose Throat J . 2021 Feb 26;145561321993933.この症例報告はイタリアのものです。本文には何度か「非協力的な患者」という用語が出てきますが、認知力に問題があるとはいえ、鼻咽頭を無理やり突っ込むのはさすがに日本では問題になりそうです。鼻咽頭スワブによる新型コロナウイルスの検査が行われたのは、ダウン症の濃厚接触者の37歳男性です。施設でクラスターが発生したため、濃厚接触者として検査を受けに来たのです。処置中、頭を急に動かしたため、スワブが左鼻腔内にズボっと入ってしまい、しかもボキッと折れてしまいました。プラスチック製だと、折れる可能性は確かにありますね。かなり奥に入って折れたためか、肉眼的に見えない状況でした。医師は焦ります。どうにかして抜かないといけませんが、もしも鼻腔後壁を突き破っていたら…と思うとまずは画像検査を行わないといけません。しかし、この医師の肝っ玉の強いところは、画像検査前に逆の右鼻からササっと2回目の鼻咽頭スワブを行ったところです。外科的処置が必要になるにしても、とりあえず彼がコロナかどうかみておこう、というわけです。メンタル強いな……。単純X線写真では、折れたスワブの先は見つかりませんでした。そこで、鼻咽頭スコープを使って、スワブの先端がないか探すことにしました。……あった!!鼻中隔と上鼻甲介の尾の間に挟まれる形で、スワブの先がありました。ディスポの鼻咽頭スコープを使って観察したのですが、どうも容易には摘出できそうにないことがわかりました。その後、男性は新型コロナウイルス陽性であると判明し、手術室に移動して処置が行われました。把持する鉗子が必要だったので、鉗子チャネルがある内視鏡が必要でした。というわけで、気管支鏡を使って摘出処置が行われました。そして、スワブの先が摘出されました。ヤッター!鼻出血やその他合併症はなく、しばらく様子を見てからCOVID-19病棟に入院になったそうです。――こういう症例報告をみると、唾液PCRが広く普及してよかったなぁと思います。イタリアにおける4,876人の鼻咽頭スワブ検査のうち、鼻腔に合併症を起こした症例は8人(0.16%)です1)。きわめてまれな合併症ですが、8人のうち3人が鼻咽頭スワブの断裂です。無理矢理突っ込まないことは当然として、愛護的に検査しないとコワイということがわかります。1)Fabbris C, et al. Am J Otolaryngol. 2021 January-February; 42(1): 102758.

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第56回 コロナ禍で個人情報を晒す困窮者も、今こそ地域密着医療の出番では?

コロナ禍で2度目、しかも一部地域では緊急事態宣言発出中となるゴールデンウイーク(GW)は、多くの国民にとって過ごしにくかったに違いない。コロナ禍でたまりにたまった1年分の鬱憤を晴らしたくとも晴らす機会すらないのだから。かく言う私は、そもそもGWがあってないような立場に従来からおかれている。仕事を引き受けても、その一部を誰かに割り振ることができないフリーの立場にとっては、世間一般の長期休暇で仕事関係先から連絡が激減するGW、お盆休み、年末年始は溜まった仕事を片付けるための好機となる。実際、4月29日のGW入り以降、出かけた範囲は最も遠くても電車で20分以内の場所に限られている。また、GWは前述のように仕事関係先から連絡がこないので仕事をしながらも比較的普段よりはのんびり時間が過ごせる。ということで仕事の合間に仕事場周辺をトボトボ散歩することが増える。そんな散歩の道すがら、電柱に張られたある張り紙が目に留まった。それを見て「ああ、またか」と思った。同じような張り紙はちょうど昨年の第1回目の緊急事態宣言発令中にも目にしている。1回目の張り紙にはこう書いてあった。「お仕事探してます。特別なことはできませんが買い物の同行、散歩の同行お手伝いします。車椅子の方でも同行のお手伝いします。その他の事はそちらの方で決めてくださいよろしければ電話ください。090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」正直、メディアで仕事をしているとさまざまな人に会い、さまざまなシーンに出くわすので、一般の人と比べ、何かに驚くことは明らかに少ない。しかし、これを見た時は正直かなり驚いた。私の場合、個人情報は守っても限界があるという認識がある上に、職業柄どうしても個人情報を一定程度さらさなければならないことが多く、自分の個人情報の開示に一定の耐性がある。しかし、一般人にとっては明日の生活がかかっていても個人の携帯電話番号や名字だけとはいえ、名前を不特定多数の人に晒すことはかなり勇気がいることだと思う。ちなみに余談になるが自身の個人情報開示については30代前半の頃、やややり過ぎの行動をし、周囲からたしなめられたことがある。それは取材相手とトラブルになった時のことだ。トラブルとは相手の発言をほぼ忠実にテープ起こしをして掲載したにもかかわらず、相手から電話があり、「そんなことは一言も言っていない」といきなり激怒されたのである。明確な言いがかりで録音音声もあるので、「お会いしてお聞かせしますよ」と言ったのだが先方はそれを無視。そうこうするうちにいきなりブログを開設し、私の名指し批判(というか中傷)投稿をし始めた。投稿の中には「この男の住所などの個人情報を集めております。提供していただいた方には謝礼5万円を差し上げます」との記述が。ちなみに私がこの相手に渡した名刺には住所は記載済み。まあ、放っておけばよかったのだが、若気の至りで自分の免許証の写メを添付し、「この通り情報提供しましたので謝礼をお振込みください」とご丁寧に銀行口座まで記載したメールを相手に送信したのだが返信はなかった。ちなみにこのメール送信の2日後にはブログそのものが消え失せていた。今ならば当然こんなことは決してしない。誠に若気の至りである。余談が長くなってしまったが、今回新たに見かけた張り紙はこう書いてある。「高齢者一人暮らしの方のお手伝い致します。日常生活で困ったこと掃除・洗濯電気等の交換・自転車の修理買い物の代行・買い物のお供その他いろいろお手伝いいたします。お気軽にご連絡して下さい090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」電話番号と氏名は前回と同じで完全な同一人物だ。この地域には10年以上暮らしているが、こうした張り紙を見たのはこの2回だけである。やや極端を思うかもしれないが、この2回の張り紙だけでも、コロナ禍が社会全体に深刻なダメージをもたらしている証左の一部になると考えている。その意味で今回のコロナ禍がもっとも直撃した業種は、飲食業、宿泊業、医療・福祉業に代表される。前者2つの業種は、感染拡大阻止に伴う人と人の接触減、移動減の影響をまともにかぶった業種であり、医療・福祉業はまさに感染者発生などの対応でマンパワーが要求され、オーバーキャパシティとなった業種である。そして前述の張り紙を見て改めて調べた中で出てきたのが、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部企画課が過去に作成した資料である。約10年前のものでやや古いが、今でも一定の傾向は示せていると思う。私が注目したのは、この12ページ目にある業種別非正規雇用労働者の割合である。今回、負の影響が直撃した飲食、宿泊業での非正規雇用の割合が突出しているのである。つまり今回のコロナ禍で前年比5割以上の売上減などはもはや当たり前となっている飲食・宿泊業では、もともと経済・社会基盤がぜい弱な単身者・女性などを中心とする非正規雇用者が多く、これらの人が収入減や雇用調整などの影響を大きく受けていると想像できる。コロナ禍はもともと存在していた弱者を、さらに過酷な環境をもたらすことによって社会全体により強く印象付けているとも言える。こう書くと一見医療とは何も関係ないではないかと言われてしまうかもしれない。しかし、医療の世界でもこうした残酷な可視化はより進行しているはずである。たとえばちょっと考えただけでも次のような問題が浮かび上がってくる。ひとり親家庭での親側、老老介護夫婦家庭でのどちらか一人が新型コロナに感染したら、残された家族を誰がどうケアするのか?独居の認知症高齢者が感染したら、きちんと行動自粛をしてくれるだろうか?軽度認知障害の人が外出自粛を長期間続けたら症状の進行が加速しないだろうか?生活のリズムを整えることが重要な精神疾患患者が突然在宅ワークになったら悪影響はないだろうか?このようなことは挙げればキリがないはずだ。もちろんこれらの問題は現場の医療者だけで解決できることは少ない。ただ、行政や民間などとの連携で解決に導くとしても数多くの局面で医療者はゲートキーパーとならなければならない。まだ早いと言われるかもしれないが、ワクチン接種率が上昇し、今回のパンデミックが一定の収束を見せた時に、どのように行政や民間、あるいはつかみどころのない「地域」との連携を深めていくかは、今から各医療者に考えておいて欲しいことだと思い始めている。街角の張り紙一枚から「大仰な」と言われてしまうかもしれないが、敢えてこのようなことを言ったのはこの件をきっかけに過去数年間、医療の世界でよく耳にするある言葉に対する違和感を改めて思い出してしまったからだ。その言葉とは「地域密着」「地域包括ケア」の2つである。最近では新規のクリニックが開業するとほぼ即日インターネット上のホームページもオープンしていることが少なくない。そこでクリニックの院長の「ご挨拶」ページに行くと、多くは「地域に密着した」というキーワードが使われている。一方、「地域包括ケア」はご存じのように官製用語と言ってもよく、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」仕組みを指す。どちらの言葉も聞こえは良く、そのことを誰も否定はできない。その分、気軽すぎるほど多用されている。意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉を指す「プラスチック・ワード」に該当するとさえ、個人的には思っている。ただ、ここまで使われてしまったものだからこそ、単なる「プラスチック・ワード」で終わらせず、より価値のある「プラチナ・ワード」とでも言うべきものに徐々に転換させていく必要があるのではないかと考えている。まさにそのため今回の方策の一つが、コロナ禍により医療者の目に映った弱者情報の発信と周囲との連携によるその対策の立案とだと考えている。そしてそれを支えるための情報発信がメディア側に求められているとも思うのだ。繰り返しになるが、このことは本来はポスト・コロナ・パンデミック期に考えるべきこと、さらに問題に対するより明確な対策やアイデアを伴ってすべきことと言われればそうである。ただ、このコロナ禍が近現代まれに見る事態であるがゆえに、ポストコロナ期になってからでは、反動でこれらの問題が一時的に忘れ去られ、そのまま一気に忘れ去られてしまうのではないかとの危惧も持ってしまう。そんなこんなを街角の張り紙から考えながらGWを過ごしている。結局のところ自分の蚊のような微々たる脳ミソもまったく休まらない日々となっている。

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RAAS系阻害薬と認知症リスク~メタ解析

 イタリア・東ピエモンテ大学のLorenza Scotti氏らは、すべてのRAAS系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)と認知症発症(任意の認知症、アルツハイマー病、血管性認知症)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。Pharmacological Research誌2021年4月号の報告。 MEDLINEをシステマティックに検索し、2020年9月30日までに公表された観察研究の特定を行い、RAAS系阻害薬と認知症リスクとの関連を評価した。ARB、ACE阻害薬と他の降圧薬(対照群)による認知症発症リスクを調査または関連性の推定値と相対的な変動性を測定した研究を抽出した。研究数および研究間の不均一性に応じて、DerSimonian and Laird法またはHartung Knapp Sidik Jonkman法に従い、ランダム効果プール相対リスク(pRR)および95%信頼区間(CI)を算出した。同一研究からの関連推定値の相関を考慮し、線形混合メタ回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・15研究をメタ解析に含めた。・ACE阻害薬ではなくARBの使用により、認知症(pRR:0.78、95%CIMM:0.70~0.87)およびアルツハイマー病(pRR:0.73、95%CIMM:0.60~0.90)リスクの有意な低下が認められた。・ARBは、ACE阻害薬と比較し、認知症リスクの14%低減が認められた(pRR:0.86、95%CIDL:0.79~0.94)。 著者らは「ACE阻害薬ではなくARB使用による認知症リスク低下が示唆された。認知症予防効果に対するARBとACE阻害薬の違いは、独立した受容体経路に対する拮抗作用のプロファイルまたはアミロイド代謝に対する異なる影響による可能性がある」としている。

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COVID-19のmRNAワクチン、妊婦の安全性に問題認めず/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のTom T. Shimabukuro氏らは、米国の3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを用いて初期調査を行い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種を受けた妊婦において、明らかな安全性の問題は認められなかったことを報告した。ただし、著者は「母体、妊娠および新生児の転帰について情報提供するためには、妊娠初期にワクチン接種を受けた妊婦を含むより多くの妊婦の長期的な追跡調査が必要である」とまとめている。米国ではすでに多くの妊婦がCOVID-19に対するmRNAワクチンの接種を受けているが、妊娠中のワクチン接種の安全性に関するデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを解析 研究グループは、“v-safe after vaccination health checker”サーベイランスシステム(v-safe)、v-safe pregnancy registry、およびワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の3つのワクチン安全性モニタリングシステムを用い、2020年12月14日~2021年2月28日の期間にワクチンを接種し、かつ妊娠していることが確認された妊婦を対象に解析した。 v-safeは、COVID-19ワクチン接種プログラムのために開発された新しいCDCのスマートフォンによる積極的サーベイランスシステムで、登録は任意となっている。v-safe登録者のうち、妊娠中または受胎前後にワクチン接種を受けた18歳以上の女性を対象に、希望者をv-safe pregnancy registryに登録し、妊娠、出産、乳児について追跡調査を行った。VAERSは、自発的な報告システムで、CDCと米国食品医薬品局(FDA)が運用している。妊婦と非妊婦で有害事象は同程度 v-safeにおいて、16~54歳の3万5,691例が妊婦と確認された。非妊婦と比較して妊婦では、注射部位疼痛の頻度は高かったが、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の頻度は低かった。 v-safe pregnancy registryに登録された妊婦は3,958例で、このうち妊娠を完了したのは827例であった。827例中、712例(86.1%)が生児出産(このうち98.3%は妊娠第3期にワクチン接種)、104例(12.6%)が自然流産、1例(0.1%)が死産、10例(1.2%)が人工妊娠中絶および子宮外妊娠であった。 新生児の有害アウトカムとしては、早産が9.4%(60/636例)、在胎不当過小児が3.2%(23/724例)、先天異常が2.2%(16/724例)報告されたが、新生児死亡は認められなかった。 また、VAERSに報告された妊娠関連有害事象は221件で、このうち最も多く報告された事象は自然流産(46例)であった。 著者は先行研究の結果等を踏まえて、「直接比較ではないが、COVID-19 mRNAワクチン接種を受け妊娠を完了した妊婦における妊婦/新生児有害事象の発現率は、COVID-19パンデミック前に実施された妊婦を対象とする研究で報告された発現率と同程度であった」と考察している。

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