サイト内検索|page:671

検索結果 合計:35181件 表示位置:13401 - 13420

13401.

ファイザー新型コロナワクチン、がん患者ではとくに2回接種を/Lancet Oncol

 がん患者に対する新型コロナワクチンBNT162b2(ファイザー)の安全性と免疫原性をがん患者における評価を目的とした前向き観察研究の結果が発表された。 対象は、2020年12月8日~2021年2月18日に、ロンドンの3つの病院でBNT162b2接種を受けたがん患者と健康成人(主に医療従事者)。複合主要評価項目は、がん患者におけるBNT162b2ワクチンの初回接種後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合、2回目(初回から21日後)接種後の同陽性例の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・期間中に151例のがん患者(固形がん95例、血液がん56例)と健康成人54例が対照群として登録された。・2回目の接種を受けたのは対照群16例、固形がん患者25例、血液がん6例であった。・SARS-CoV-2に曝露された17例を除外した、ワクチン初回接種21日後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群94%(34例中32例)、固形がん患者38%(56例中21例)、血液がん患者18%(44例中8例)であった。・2回目接種2週間後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群100%(12例中12例)、固形がん患者95%(19例中18例)、血液がん患者60%(5例中3例)であった。・BNT162b2ワクチンの忍容性は良好で、初回接種後毒性がなかったものはがん患者では54%、対照群では38%、2回目の接種後毒性がなかったものはがん患者では71%、対照群では31%であった。・毒性は初回接種後7日以内の注射部位の痛みがもっとも多く、がん患者では35%、対照群では48%に発現した。ワクチン関連の死亡は報告されていない。 健康成人例に比べ、がん患者では1回接種でのBNT162b2ワクチンの効果は低いことが示された。一方、固形がん患者においては、2回目ブースト接種から2週間以内に免疫原性が有意に増加した。筆者は、これらのデータは、がん患者におけるBNT162b2ワクチン2回目接種の優先を支持するものだとしている。

13402.

TNF阻害薬治療中のIBD患者、新型コロナワクチン単回接種では抗体応答が不良

 新型コロナワクチンを巡っては、世界的に需要が高まり、限られた供給量をどう配分するかが各国における喫緊の課題になっており、単回接種の有効性についての研究も進んでいる。一方で、炎症性腸疾患(IBD)など全身免疫を抑制する治療を行っている患者では、免疫応答が十分に得られず、ワクチンの有効性が落ちるのではないかという懸念がある。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、インフリキシマブもしくはベドリズマブ治療中のIBD患者に対し、2種類の新型コロナワクチン(ファイザー製BNT162b2、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19)接種後の抗体価を比較。その結果、インフリキシマブ治療患者では、ベドリズマブと比べワクチン単回接種後の抗体価が有意に低かった。ただし、SARS-CoV-2感染後のワクチン接種、もしくは規定通り2回接種後は、ほとんどの患者でセロコンバージョンが認められた。著者らは、「インフリキシマブ治療患者においては、ワクチンの単回投与に対する抗体応答が悪く、SARS-CoV-2感染のリスクが高まる可能性があり、2回目接種の遅延は避けるべき」と述べている。Gut誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者(5歳以上、インフリキシマブまたはベドリズマブ治療を6週間以上実施、過去16週間に少なくとも1回の薬物治療を受けている)7,226例を連続して登録。インフリキシマブ治療中の865例とベドリズマブ治療中の428例を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1回目のワクチン接種後3~10週間で測定した抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体濃度は、ベドリズマブ治療群と比べ、インフリキシマブ治療群でBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれにおいても低かった。・ワクチンの種類に関係なく、ベドリズマブ単剤の治療患者におけるセロコンバージョン率が最も高く、インフリキシマブと免疫抑制剤を併用した患者において最も低いセロコンバージョン率が観察された。・SARS-CoV-2感染歴がある患者において、いずれかのワクチンの1回目接種前およびBNT162b2ワクチンの2回投与後でより高い抗体濃度およびセロコンバージョン率が認められた。・インフリキシマブ治療群においても、2回接種後の患者では抗体価の上昇が認められた。

13403.

新型コロナワクチン戦略、65歳未満は1回目接種優先が有益/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、PfizerのBNT162b2およびModernaのmRNA-1273共に2回接種が標準となっているが、米国・メイヨー・クリニックのSantiago Romero-Brufau氏らは、エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションの結果、65歳未満の人々には1回目の接種を優先して行い2回目の接種を遅らせるワクチン接種戦略が、有益であることを明らかにした。同戦略で1日当たりのワクチン接種率が人口の0.1~0.3%で死亡率は最大20%低下し、1回接種のワクチン有効率が80%以上になる可能性があるという。BMJ誌2021年5月12日号掲載の報告。エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションを実施 研究グループは、米国の実際の人口統計および職業分布を代表する10万人をエージェント(模擬集団)とし、3種類の接触ネットワーク(仕事、家庭およびランダムな遭遇)を介したエージェントの相互作用による感染をモデル化した。標準的なスケジュールでワクチン接種を行った場合と、1回目の接種を優先し2回目の接種を遅らせる場合とで、1回目のワクチン接種後180日間におけるCOVID-19による累積死亡率、SARS-CoV-2累積感染率およびCOVID-19による累積入院率をシミュレーションにより比較した。 シミュレーションは10回繰り返し、平均として結果を示した。また、1回目のワクチンの有効率を接種後12日目で50%、60%、70%、80%、90%、1日当たりの接種率を人口の0.1%、0.3%、1%、ワクチンは無症候性感染ではなく症候性感染のみを予防すると仮定し、65歳以上のすべての人々がワクチン接種を終えた後に65歳未満の人には2回目の接種を遅らせるというワクチン接種戦略を採用することとして、感度分析を行った。2回目接種を遅らせ1回目接種を優先することで、全体の死亡率は最大2割低下 すべてのシミュレーションにおいて、標準接種vs.2回目遅延接種の10万人当たりの累積死亡率中央値は、1回目接種の有効性が90%の場合226 vs.179、同80%の場合233 vs.207、同70%の場合235 vs.236であった。 2回目遅延接種戦略は、ワクチンの有効率が80%以上、1日当たりのワクチン接種率が人口の0.3%以下の場合に最適となり、絶対累積死亡率が10万人当たり26~47減少することが示された。65歳未満の人々に対する2回目遅延接種戦略は、検討したすべてのワクチン接種率において一貫して良好な結果であった。

13404.

心房細動後1年以内のリズムコントロールで心血管転帰良好/BMJ

 心房細動の診断から1年以内の患者では、リズムコントロール治療の早期開始により、レートコントロールに比べ有害心血管イベントのリスクが有意に低下したが、この関連性は心房細動を発症して1年以上経過した患者では認められなかった。韓国・延世大学校医科大学のDaehoon Kim氏らが、長期観察コホート研究の結果を報告した。心房細動患者の予後に対するレートコントロールとリズムコントロールの効果の比較については結論が得られておらず、最近発表されたEAST-AFNET 4試験では、発症後1年以内の心房細動患者の場合、リズムコントロール治療は通常治療より有害心血管イベントのリスクが低いことが示されていた。BMJ誌2021年5月11日号掲載の報告。約2万3,000例でリズムコントロールとレートコントロールを比較 研究グループは、韓国・国民健康保険公団のデータベースを用い、2011年7月28日~2015年12月31日に、リズムコントロール(抗不整脈薬またはアブレーション)またはレートコントロール戦略で新たに治療を受けた心房細動および心血管疾患の成人患者2万2,635例を特定し、心血管疾患による死亡、虚血性脳卒中、心不全による入院、または急性心筋梗塞の主要複合エンドポイントについて解析した。心房細動診断1年以内のリズムコントロール開始は、心血管イベントのハザード比が0.81で有意に低い 2万2,635例の患者背景は、1万2,200例(53.9%)が男性で、年齢中央値は70歳、追跡期間中央値2.1年であった。 心房細動の診断から1年以内に治療が開始された早期治療患者では、レートコントロールと比較してリズムコントロールで、主要複合エンドポイントのイベント発生リスクが低かった。100人年当たりの重み付き発生率は、リズムコントロール7.42 vs.レートコントロール9.25であった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.71~0.93、p=0.002)。 一方、心房細動の診断から1年経過した後に治療が開始された治療遅延患者では、リズムコントロールとレートコントロールの間に主要複合エンドポイントの差は認められなかった。100人年当たりの重み付き発生率は、リズムコントロール8.67 vs.レートコントロール8.99だった(HR:0.97、95%CI:0.78~1.20、p=0.76)。 心房細動の診断から1年以内では、治療開始時期が早いほどレートコントロールよりリズムコントロールで心血管転帰が良好であった。 安全性については、治療開始時期の違いで、リズムコントロールとレートコントロールの間に差はみられなかった。

13405.

モデルナ製ワクチンの副反応、ファイザー製との違いは?/JAMA

 モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273)が日本でも特例承認され、大規模接種会場を中心に接種が始まる。商品名はCOVID-19ワクチンモデルナ筋注。既存株に対するワクチン有効率は約94%*でファイザー社ワクチン(BNT162b2mRNA、有効率:95%)とほぼ同等だが、副反応疑い症状の発症率についてはどうだろうかー。 今回、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19レスポンスチームに所属するJohanna Chapin-Bardales氏らは、「BNT162b2mRNA」と「mRNA-1273」の接種者からの局所的・全身性の症状に関する報告の詳細を明らかにした。 その結果、両ワクチンともに接種部位の痛み、倦怠感、頭痛が多かった。また、いずれも副反応報告は2回目接種後のほうが多く、とくにmRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAと比べ、悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)、接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)を多く報告していた。JAMA誌2021年4月5日号オンライン版に掲載の報告。 この報告は、2020年12月14日~2021年2月28日の期間、v-safe**登録者が各ワクチン接種後0~7日目にv-safeへ自己申告した局所的および全身性の症状を収集したもの。2021年2月21日までに4,600万人以上が新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンを1回以上接種し、計364万3,918例がv-safeに登録されていた。登録者は1回目のワクチン接種後7日以内に1回以上の毎日の健康調査を完了し、そのうち192万872例は2回目のワクチン接種も受け、接種後7日以内に1回以上の健康調査を完了した。 主な結果は以下のとおり。・BNT162b2mRNAワクチンは1回目に165万9,724例、2回目に97万1,375例が接種し、mRNA-1273ワクチンは1回目に198万4,194例、2回目に94万9,497例が接種した。・v-safe登録者のほとんどは、ワクチン接種後0〜7日目に局所的な症状(接種1回目:70.0%、接種2回目:75.2%)または全身性の症状(同:50.0%、同:69.4%)を報告した。・両ワクチンの報告を合算した場合、1回目の接種後に最も報告されたのは、接種部位の疼痛(67.8%)、倦怠感(30.9%)、頭痛(25.9%)、および筋肉痛(19.4%)だった。・両ワクチンともに、2回目接種後に増えた報告は、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛だった。・mRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAワクチンと比較して、反応原性の割合が高いと報告され、2回目接種でその差は顕著に現れた[悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)]。・65歳以上の登録者は局所反応、全身性の反応いずれにおいてもあまり報告していなかった。・v-safe登録者による症状発現の報告割合は、ワクチン接種後1日目で最も高く、7日目までに著しく減少した。 研究者らは「いずれのワクチンにも局所反応および全身性の反応が予想され、大半は一過性のものだが、それらの経験が被接種者の認識に最も直接的な影響を与える可能性がある。そのため、臨床医はワクチン被接種者に具体的な副反応症状を伝えるとともに、副反応症状がとくに2回目接種当日~翌日に出現しやすいこと、また、症状は短期間で解消することを助言する必要がある」とも結論づけている。* 感染歴がない被験者では94.1%、感染歴を問わない被験者では93.6%1)** v-safeとは、 CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。患者説明用スライドはこちら『ファイザー社とモデルナ社のワクチン副反応比較』

13406.

治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、重度の陽性症状のみならず他の症状とも関連する非常に複雑な病態生理を有している。また、統合失調症では、自閉スペクトラム症と重複する心理的および生物学的プロファイルが注目されている。千葉大学の仲田 祐介氏らは、治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害について、検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年3月30日号の報告。 TRS患者30例、寛解期統合失調症(RemSZ)患者28例、ASD患者28例を対象に、一般的な認知機能および社会的認知機能障害とオキシトシン系機能障害との関連について、比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・3群間でオキシトシン濃度に差は認められなかった。・TRS群の血中オキシトシン濃度は、処理速度および心の理論のスコアと正の相関が認められたが、RemSZ群およびASD群では、いずれのスコアにおいても有意な関連は認められなかった。・オキシトシン受容体遺伝子の一塩基多型であるRs53576は、統合失調症患者の社会的認知機能に影響を及ぼしていた。 著者らは「全体的な調査結果は予備的なものである」としながらも「TRS患者の重篤な認知機能障害にオキシトシンシステムの機能障害が関連していると考えられる」とし「この結果は、TRS患者がASD患者と共通の生物学的特性に基づいて初期の神経発達異常を有している可能性を示唆している」としている。

13408.

直腸と膀胱を貫通させた、ある行為【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第187回

直腸と膀胱を貫通させた、ある行為Photo-acより使用おどろき医学論文の連載も200回近くになってきました。ここまで来ると、膀胱や直腸の異物ごときでは驚かなくなります。ただ、その両方の臓器がやられてしまった、となると話は別ッ!Hosni A, et al.A rectal foreign body: An unexpected cause of a rectovesical fistula with hematuriaUrol Case Rep . 2021 Feb 4;36:101596.50歳の男性が、尿閉を訴えて救急外来を受診しました。排尿障害の病歴はなく、とくにこれといった既往歴もなさそうです。とりあえず導尿をしてから、泌尿器科へコンサルトされました。尿閉どころか、肉眼的血尿が出てくるようになり、これはいよいよおかしいぞということで造影剤を用いてCT尿路検査が行われました。おや……おやや!ぞ、造影剤が、膀胱から直腸に流れているぞ……?――こ、これは「膀胱直腸瘻」だっ!患者に直腸出血の可能性はないかと尋ねましたが、答えはNOでした。また、骨盤内手術や結核などの慢性炎症の既往もありませんでした。直腸診でも、これといった異常もありませんでした。いや、なぜ直腸と膀胱に穴が開いているんだ。頼むから、隠していることを言ってくれ。そうお願いしたのでしょうか、再び患者に詳しい問診と検査を開始し始めたとき、こんな回答が返ってきました。「便秘の自己治療のために、長いブラシを肛門に突っ込んで使っていた」おかしな性癖があって異物を入れる症例は、過去何度も紹介してきましたが、便秘治療でブラシを突っ込んで膀胱直腸瘻をつくるって、あーた、どんなに強く入れたの!しかも、普通のブラシではなく、排水管の詰まりを取るような、長いアレです。あれを膀胱が貫通するほど突っ込んでいたということになります。膿瘍化したり重症化したりせずにこの症例は治癒に至りましたが、便秘のときに摘便するがごとくブラシを突っ込んでしまう事態、高齢者では起こる可能性があるため、注意が必要です。

13409.

まず手に取るべき「1冊目の臨床問題集」THE内科専門医問題集1&2

いつでも・どこでも専門医試験対策が可能に内科専門医をめざす研修医・専攻医のための臨床トレーニング問題集&WEBアプリ。トップ指導医たちがレビューを重ねて磨き上げた「スタンダード430問」(1&2巻合計)により内科臨床の基礎を一通り学ぶことができる。スマホ、タブレット、PCで「いつでも、どこでも」専門医試験対策が可能になるWEB版付。内科全領域のスタンダードをスキマ時間に効率的に学ぶことができる。まず手に取るべき「1冊目の臨床問題集」。呼吸器内科医・田中 希宇人氏による書評このコロナ禍で内科、特に全身を診ることができる内科専門医の必要性が上がっています。そしてコロナに対応すべく、実臨床に即した問題対応能力や知識の習得が必須となっています。内科専門医を取得することも大事ですが、専門医として相応しい幅広い知識を勉強することが極めて重要です。本書は、内科専門医として身につけておくべき専門医カリキュラムの中から、内科専門医試験に必要なトピック・疾患・治療などを厳選して430問の臨床実地問題にまとめられています。特筆すべきはチーフエディターである筒泉先生・山田先生と各専門分野で活躍されるパートエディターの先生方の重厚さでしょう。中身を読んで頂ければすぐに分かりますが、各問題の解説が詳しく、かつ分かりやすく記載されています。私も呼吸器専門医や内科専門医の資格を持っていますが、自分が専門医試験を受ける時にも持っていたかったと思わせる本書。試験を受ける先生は勉強すべき内容がほぼ網羅されておりますし、試験に関係ない先生方も知識のアップデートとしてぜひ熟読して頭に入れておきたい、内科医必読かつ最強の2冊組です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。THE内科専門医問題集1THE内科専門医問題集2画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。THE内科専門医問題集1THE内科専門医問題集2 THE内科専門医問題集1 [WEB版付]総合内科I II III・消化器・循環器・内分泌・代謝・腎臓定価7,480円(税込)判型B5判頁数422頁発行2021年4月編集筒泉 貴彦 / 山田 悠史THE内科専門医問題集2[WEB版付]呼吸器・血液・神経・アレルギー・膠原病・感染症・救急・集中治療定価7,480円(税込)判型B5判頁数462頁発行2021年4月編集筒泉 貴彦 / 山田 悠史

13410.

第58回 防衛省の逆ギレは誰のため?ワクチン接種センターの予約システム不備の件

高齢者に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)のワクチン優先接種が本格化している。1日100万回接種で7月末までに高齢者への接種を完了させると菅 義偉首相が宣言したこともあり、防衛省が運営する大規模接種センターも東京、大阪に設置されることになった。ところが、その大規模接種センターの予約システムが穴だらけということが朝日新聞出版の雑誌「AERA」のwebニュースサイト「AERA.dot」で報じられ、その取材手法を巡って岸 信夫防衛大臣と報じたメディア側とのつばぜり合いがまた報じられるという泥仕合になっている。同じような検証は毎日新聞、日経XTECHも報じている。まず、予約システムでは、ホームページにアクセスした後、対象の高齢者に送付されている接種券に記載の市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)、接種希望者の生年月日を入力後、接種希望日時を選ぶ画面で空きがある日時を予約する。報道によると、この市町村コード、接種券番号、生年月日を架空の数字を入力しても予約が成立するという。この問題が報じられると岸大臣はTwitter上で次のようにつぶやいた。「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」さてこの件、医療従事者の方々の中では「メディアはけしからん!」という声も少なくないと聞く。私の見解を言うと、ポジショントークと言われてしまいかねないが、ほぼ問題ないと思っている。もし私自身が同じような情報を得たら同じように入力して検証し、その通りならば報道したと思う。AERA.dotの記事を読めば分かるが、今回の記事の発端は防衛省関係者からの内部告発、つまり内部で今回の問題に懸念を持った人がいたということだ。私も報道の世界に27年いて思うことだが、内部告発が行われる場合、大概は内部での意見具申が無視される、あるいは告発者がしがらみなどで意見具申がしにくい立場にあるなどの事情からやむにやまれず外部を頼ってくる場合がほとんどである。「そもそも内部告発者が愉快犯や怨恨で情報提供している可能性もあるだろう」と言う指摘もある。その可能性は常にある。ただ、さすがにわれわれも馬鹿ではない。例え短時間であっても情報提供者のバックグラウンドは可能な限りチェックする。さらに怨恨のケースは提供してくる情報につじつまが合わないことも多く、裏取りの過程でもおのずとその辺の状況は明らかになる。また、多少怨恨が背後にあったとしても、提供された情報で明らかになった問題点が多くの人に不利益をもたらす可能性が高いならば、それは慎重に裏取りをしたうえで報じることになる。さて話を今回の一件に戻そう。まず架空の予約を入れたことは問題なのか? 少なくともほかの手段で事実検証が代替できなければ、この手法は選択肢の1つである。ただ、それを実行するか否かのカギを握るのは、予約キャンセルの可否である。キャンセルが可能であるならば、システムや現場に与える負荷はほぼ無視できるので、入力による検証作業が岸大臣の言うところの「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」には当たらないと考える。また、この件で「わざわざ予約をしてなくとも、防衛省やシステム開発会社に情報提供者の言うことの真偽を問い合わせすれば代替できるではないか」という意見もあるかもしれない。この意見は一見すると論理的に聞こえるものの、実は物事の本質を見失う可能性がある。そもそも内部にシステムの脆弱性を認識した人がいながら、このシステムがリリースされてしまう組織体制が本質的に問題なのである。その組織に対してこちらが検証結果も持たずに取材をかければ相手側は不適切な隠ぺいに走る恐れがある。ちなみに、この報道について防衛省に抗議された朝日新聞出版の見解が公開されている。これを読むと、検証の上で防衛省に見解を問い合わせたものの回答はなかった旨が記載されている。防衛省はこの段階で事実を公表し、システムを一時停止するなどの措置が取れたはずである。経験上、こうした反応の場合は決定的な証拠を提示しない限り、隠ぺいが行われる可能性がある。にもかかわらず上述の岸大臣のツイートである。このツイートは直訳すれば、「お前らは気にくわない」の逆ギレに過ぎない。ちなみにこのシステムの穴に関して岸大臣はこのようなツイートもしている。「本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました」さてこれは個人情報に関してはそうかもしれない。しかし、6桁の市町村コードすら適当な数字の入力でよかったことの言い訳としては苦しい。そして事の真相についてはこんな記事も出ている。結局のところ非常に大雑把で掛け声だけの「1日100万回接種」の無理がたたったということである。そして今回の報道、まさに大規模接種のスタート前で本当に良かったと思う。一部にはワクチン接種前の関係者の努力に水を差したという指摘もあるが、もしこれが本格的にスタートしてから実際に悪意を持った入力が大量に行われていたらどうなるのか? そちらのほうが想像するだけでぞっとする。幸いにして大規模接種会場で使うモデルナのワクチンは、ファイザーのコミナティと違って解凍から有効期間が30日あるので、ニセの予約を大量に入れられても大量廃棄に至る可能性は低いだろう。しかし、虚偽予約があれば現場のマンパワーはかなり疲弊する。いずれにせよ今回は不幸中の幸いだったというべきだ。それでも中には防衛省とのやり取りも含め全部修正が済んでから報道すればという御仁もいるかもしれない。しかし、それは「万引きした人はモノを基に戻すか、お金を払えば無罪」という論理と同じだ。さて、そうはいってもちょっとだけAERA.dotには物申したいところがある。上述の記事を読めばわかるが、この記事ではこの穴だらけのシステムの運営会社の経営顧問が菅首相の盟友で、自民党の小泉 純一郎政権時の特命大臣を務めた竹中 平蔵氏であることに言及している。まあ、私もメディアの側にいるのでこの手の補足情報の記述に理解を示さないわけではないが、なくても良い情報かとも思う。この辺で「色」がついて、逆に変に嫌味っぽく受け取られかねないのだ。まあ、もっとも今回の報道で指摘されたことは事実無根のことではないことや、岸大臣があくまで権力者という前提に立てば大臣のツイートのほうがはるかに大人げない。そしてそのツイートをわざわざ引用して次のようにツイートしたのが、岸大臣の実兄・安倍 晋三元首相である。「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」日本歴代最長政権を司った元首相のツイートとしてはかなり粗雑で品性に欠けると私には映ってしまうのだが。まあ、遡って考えればご両人のツイートも、安倍元首相の政治姿勢に厳しい目を向け続けた、朝日新聞、毎日新聞への恨み節がにじんで見えるといううがった見方も成り立つかもしれない。もちろんこうした見方はある種、私個人のバイアスともいえる。ただ、同時にこの一件に関して「メディアはけしからん」と思った方は、実はメディアの好き嫌いというバイアスが混入している可能性はある。というのも両社ともメディアとしては一般人から好き嫌いが分かれやすいからである。もちろんそのスタンスは自由だが、この件で「メディアはけしからん」と公言するならば、「朝日、毎日はけしからん」のバイアスが混じってないか否かはご自身で検証してみる必要はあるだろう。

13411.

妊婦のストレス症状、COVID-19パンデミック前後の比較

 コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のストレスを受けている妊婦は、そうでない妊婦と比較してストレスレベルが有意に高いことが、オランダ・Amsterdam Reproduction & Development Research InstituteのSanne J. M. Zilver氏らによって明らかにされた。COVID-19ストレスの軽減を目的とする介入は、パンデミック下における妊婦の全体的なストレスレベルを減らす可能性がある。Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 COVID-19のパンデミックは、多くの人々のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ストレス、不安、うつ病の症状を抱える人々が増加している。不安やうつ病は、妊婦に良からぬ影響をもたらし、新生児の転帰を悪化させる可能性がある。 本研究は、妊婦のストレスや不安、うつ病について、COVID-19流行前に妊娠した女性とCOVID-19流行下で妊娠した女性を比較したコホート研究。対象は、2020年5月21日~6月22日にソーシャルメディアプラットフォームを通じて募集された、オランダ語を習得している18歳以上の妊婦。精神症状の評価はHADS※1とPSS-10※2を用いた。記述統計により人口統計学的特徴を評価し、グループ間の人口統計学的変数の潜在的な相違は、Mann-WhitneyのU検定およびカイ二乗検定によって比較した。ロジスティック回帰分析または独立した一元配置共分散分析により、両グループの連続的なHADS合計スコアとサブスコア(HADS-AおよびHADS-D)を解析した。 主な結果は以下のとおり。・質問票の回答が得られたのは、COVID-19流行下の妊婦1,102人、COVID-19流行前の妊婦364人だった。・臨床的に高レベルな不安(HADS-A≧8)とうつ病(HADS-D≧8)について、COVID-19流行下の妊婦(それぞれ19.5%と13.2%)とCOVID-19流行前の妊婦(それぞれ23.1%と19.5%)で差は認められなかった。・COVID-19関連のストレスを受けている妊婦は、COVID-19に関連しないストレスを感じている妊婦と比較して、PSS-10の全体的なストレスレベルが有意に高かった(平均15.62[標準偏差6.44]vs.平均10.28[標準偏差5.48]、p<0.001)。※1:HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale):14の精神症状に関する項目から、身体的疾患を有する患者の抑うつと不安の測定に用いる尺度※2:PSS-10(Perceived Stress Scale-10):10項目の設問から、包括的なストレスレベルを評価する尺度

13412.

日本人高齢者における認知症リスクと音楽活動

 認知症リスクの低減のために、余暇の認知活動が推奨されている。大阪大学のAhmed Arafa氏らは、日本人高齢者における認知症リスクとさまざまな音楽活動との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2021年4月6日号の報告。 日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトに参加した65歳以上の高齢者5万2,601人を対象に、縦断的データを分析した。楽器演奏、カラオケ、合唱、民謡などの音楽活動についてアンケートを用いて評価した。認知症の診断には、介護保険制度で標準的に使用される認知症尺度を用いた。Cox回帰を用いて、音楽活動に関連した認知症のハザード比および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値は、5.8年であった。・男性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。 ●1つの音楽活動を実施:0.94(95%CI:0.82~1.07) ●複数の音楽活動を実施:0.59(95%CI:0.32~1.10)・女性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。 ●1つの音楽活動を実施:0.79(95%CI:0.69~0.90) ●複数の音楽活動を実施:0.89(95%CI:0.63~1.26)・楽器の演奏およびカラオケを行っていた高齢者は、音楽活動未実施者と比較し、男性では認知症リスクがわずかに減少し、女性では認知症リスクの有意な減少が認められた。 【男性】 ●楽器の演奏:0.70(95%CI:0.45~1.02) ●カラオケ:0.90(95%CI:0.79~1.04) 【女性】 ●楽器の演奏:0.75(95%CI:0.58~0.98) ●カラオケ:0.77(95%CI:0.68~0.89) 著者らは「音楽活動、とくに楽器の演奏やカラオケは、日本人高齢女性の認知症リスク低下との関連が認められた」としている。

13413.

非虚血性心筋症に対する左脚ペーシングは有効か【Dr.河田pick up】

 左脚ブロックを改善させて、心室再同期を図るヒス束ペーシングは実現可能な方法であるが、リード留置が容易ではなく、閾値が高くなるという問題がある。本研究は、左脚ブロックを伴った非虚血性心筋症患者に対する心室再同期療法(CRT)の手段として、比較的新しい中隔アプローチによる左脚ペーシング(LBBP)が現実的に可能で有効な方法かを評価するために、中国・温州医科大学のWeijian Huang氏が米国や英国の研究チームと共に実施したもので、JACC誌に掲載された。非虚血性心筋症、完全左脚ブロック、左室駆出率≦50%の患者で、手技成功率などを評価 本研究は前向き多施設研究で、2017年6月~2018年8月、中国、米国、英国の6施設で実施された。非虚血性心筋症、完全左脚ブロック、左室駆出率≦50%、CRTもしくは心室ペーシングの適応で、左脚ペーシングが試みられた患者を対象とし、手技の成功率、術前後のQRS幅、LVEF、左室収縮末期容量、そして心不全NYHA分類を評価した。手技成功率は97%、QRS幅、LVEF、左室容量が改善 左脚ペーシングは、63人中61人(97%、平均年齢68±11歳、52.4%が男性)で成功した。左脚ペーシング中、QRS幅は169±16msから118±12ms(p<0.001)に短縮された。ペーシング閾値とR波は、1年後のフォローアップでも植込み時の値と変化が認められなかった(0.5±0.15 V/0.5 ms vs. 0.58±0.14 V/0.5ms、11.1±4.9 mV vs.13.3±5.3 mV)。LVEFは有意に改善し(33±8% vs.55±10%、p<0.001)、左室収縮期末期容量も減少した(123±61 ml vs.67±39 ml、p<0.001)。さらに、1年後には75%で正常化(≧50%)した。NYHA分類は、ベースラインの2.8±0.6から1年後に1.4±0.6まで改善していた。死亡や心不全での入院は、フォローアップ期間中見られなかった。左脚ペーシングは有効かつ有望な手技だが、より大規模で長期の観察が必要 左脚ペーシングは可能な選択肢であり、左脚ブロック患者において心室再同期療法を得るのに有効で、左室の器質的および機能的改善に結びついた。左脚ブロックを有する非虚血性心筋症患者に対する選択肢として、左脚ペーシングの低く安定したペーシング閾値は、His束ペーシングと比べても優れた点と考えられた。Dr.河田コメント ヒス束ペーシングは生理的ペーシングとして古くから試みられてきた。新しいデリバリーシステムが登場したこともあり、近年特に注目を浴びているが、植込み後のペーシング閾値の上昇やヒス束より遠位部で起きている左脚ブロックを修正できない点などが問題として挙げられており、それらの欠点を補うために左脚ペーシングが行われるようになってきた。個人的な印象でもHis束ペーシングに比べると、ペーシング閾値の上昇が起きにくいと感じている。ただ、この論文のケースの2/3は筆頭著者であるHuang氏の病院のケースであり、97%という成功率を一般的に当てはめるのは早計と考える。また、中隔深くにペーシングリードを突き刺して行うペーシングの長期成績や、リード抜去への影響は未だに不明であり、今後より大規模かつ長期のフォローアップの成績の解析が必要であると考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

13414.

ファイザー製ワクチン、感染報告率の低下は接種後何日から?/感染研

 ファイザー製の新型コロナワクチンBNT162b2は、国内では2021年2月14日に薬事承認され、2月17日から医療従事者を対象とした先行接種が開始となった。国立感染症研究所は、先のワクチンの臨床的効果を迅速に評価するため、既存のサーベイランスデータを用いた仮想コホートを構成し、1回目接種後のCOVID-19報告率の変化を検討した(追跡期間は2021年4月30日まで)。その結果、報告率は1回目接種日から12日前後を境に低下する傾向がみられ、接種後0~13日の報告率と比較すると、14~20日で0.42倍、21~27日で0.39倍、28日以降で0.14倍であった。イスラエルで行われた先行研究では、1回目接種後から2回目接種までの期間のCOVID-19報告の抑制効果(VE)は46~60%と報告されており、本結果はそれと同等である可能性があるという。 本研究では、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)のデータを用いて分析を行った。V-SYSのワクチン接種実績記録からワクチン被接種者の仮想コホートを構成し、HER-SYSのワクチン接種歴が記録されたCOVID-19患者のデータを、1回目のワクチン接種日と都道府県に基づいて突合した。 解析対象は、医療従事者への先行接種が開始された2021年2月17日から高齢者への接種開始前の4月11日までの期間に、新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者とした。主要評価項目は、報告されたCOVID-19症例の診断日で、副次評価項目は報告時有症状例の診断日と報告時無症状例の診断日。 主な結果は以下の通り。・観察期間中、医療従事者110万1,698人に対し1回目の新型コロナワクチン接種が実施され、このうち4月30日時点で2回目の接種終了者は104万2,998人(94.7%)だった。・4月30日までにHER-SYSに登録され、少なくとも1回のワクチン接種歴が記録されているCOVID-19症例は282例だった。・発症日がワクチン接種前だった1例を除く281例中、ワクチン接種後28日以内に診断された症例は256例(91.1%)だった。症例は、女性および20~40歳代が約7割を占めていた。・2回目の接種後に診断された症例は全体の16.7%で、このうち報告時無症状例が占める割合は40.7%、1回目接種後に診断された症例に占める報告時無症状例の割合(20.0%)より高い傾向にあった。・COVID-19報告率は、接種後0~13日が1.26/10万人日、14~20日が0.53/10万人日、21~27日が0.49 /10万人日、28日以降が0.18/10万人日だった。・接種後0~13日の報告率と比較した報告率比は、14~20日が0.42倍(95%CI:0.30~0.59)、21~27日が0.39倍(95%CI:0.27~0.56)、28日以降が0.14倍(95%CI:0.09~0.21)だった。報告時有症状例に比べ、報告時無症状例の報告率は全期間において低かった。

13415.

骨髄腫に、ダラツムマブの皮下注新発売/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは、2021年5月19日、抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブとボルヒアルロニダーゼ アルファを配合した皮下投与製剤ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)の販売を開始した。ダラキューロは、本年3月23日に多発性骨髄腫を効能又は効果として製造販売承認を取得している。 ダラツムマブの点滴静注製剤(以下、ダラツムマブ IV)は、多発性骨髄腫に対して、複数の治療レジメンで承認されており、国内外の各種ガイドラインでも推奨されている。一方で、infusion reaction(急性輸液反応)を予防するため、投与に際しては500~1,000mlの輸液が必要となり、約3〜7時間の投与時間を要する。今回製造販売承認を取得したダラキューロでは、皮下投与に要する時間が約3〜5分へと短縮され、また固定用量となるため薬剤調製手順が簡略化されることにより、医療従事者および患者の負担が軽減されることが期待されている。 ダラキューロについては、日本人を含む再発・難治性の多発性骨髄腫を対象とした国際共同第III相試験(MMY3012試験[COLUMBA試験])において、ダラツムマブ IVに対する非劣性が単剤療法にて示され、安全性が確認されている。また日本人集団における薬物動態および有効性は全体集団と一貫しており、安全性に明らかな差異は認められなかった。ダラキューロ配合皮下注製品概要・製品名:ダラキューロ配合皮下注・一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)・効能又は効果:多発性骨髄腫・用法及び用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人には本剤1回15mL(ダラツムマブ(遺伝子組換え)として1,800mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として30,000単位(2,000単位/mL))を、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で皮下投与する。 A法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。 B法:1週間間隔、3週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。・製造販売承認日:2021年3月23日・薬価基準収載日:2021年5月19日・発売日:2021年5月19日・薬価:15mL 1瓶 434,209円・製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社

13416.

Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。南アフリカでHIV陽性/陰性の6,324例を対象にNVX-CoV2373ワクチンを評価 研究グループは、18~84歳のHIV陰性成人、および18~64歳の医学的に安定しているHIV陽性者を、NVX-CoV2373ワクチン(組み換えスパイクタンパク質5μg+Matrix-M1アジュバント50μg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ2回接種した。接種するスタッフのみ割り付けを知っており、他の研究スタッフおよび参加者は盲検化されていた。 主要評価項目は、安全性、ならびにベースラインSARS-CoV-2血清陰性者における2回目接種後7日以上経過時点の検査で確認された症候性COVID-19発症に関する有効性とした。 6,324例がスクリーニングを受け、このうち4,387例が少なくとも1回の接種を受けた(ワクチン群2,199例、プラセボ群2,188例)。平均年齢は32.0歳で、65歳以上の高齢者は4.2%、男性が57%であった。また、抗スパイクIgG抗体の評価により、ベースラインで30.2%がSARS-CoV-2血清陽性であった。ワクチンの有効率は全体で約50%、HIV陰性者で60% 2回の接種を受けベースラインで血清陰性であった有効性解析対象集団(per-protocol集団)は2,684例(HIV陰性94%、HIV陽性6%)で、ワクチン群1,357例中15例、プラセボ群1,327例中29例において軽症~中等症のCOVID-19が発症した。 全体でのワクチン有効率は49.4%(95%信頼区間[CI]:6.1~72.8)、HIV陰性者におけるワクチン有効率は60.1%(95%CI:19.9~80.1)であった。 COVID-19を発症した44例のうち全ゲノムシークエンス解析が可能であった41例において、38例(92.7%)でB.1.351変異が確認された。B.1.351に対するワクチンの有効性(事後解析)は、HIV陰性者(ワクチン群11例、プラセボ群22例)において51.0%(95%CI:-0.6~76.2)であった。 初期の局所/全身の反応原性イベントは、ワクチン群で高頻度であったが、重篤な有害事象は両群においてまれであった。

13417.

特発性肺線維症に抗菌薬は無効/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)成人患者において、通常治療にコトリモキサゾール(ST合剤)またはドキシサイクリンを追加しても、通常治療単独と比較して呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間に有意な改善は認められないことが、米国・New York Presbyterian Hospital/Weill Cornell MedicineのFernando J. Martinez氏らによる実用的な無作為化非盲検臨床試験「CleanUP-IPF試験」で示された。IPFは、肺微生物叢の変化が病勢進行と関連しており、線維化を伴う間質性肺疾患患者においてST合剤がアウトカムを改善することや、ドキシサイクリンはIPF患者の予後を改善し、メタロプロテアーゼを阻害することが予備的研究で示唆されていた。今回の結果を受けて著者は、「IPFの基礎にある病態に対する抗菌薬治療は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年5月11日号掲載の報告。ST合剤またはドキシサイクリン追加の有効性を通常治療単独と比較 研究グループは、2017年8月~2019年6月の期間に米国35施設において、40歳以上のIPF患者513例を通常治療に加えて抗菌薬を投与する群(254例)または通常治療単独群(259例)に1対1の割合で無作為に割り付け、2020年1月まで追跡調査を行った。 抗菌薬群では、ST合剤(スルファメトキサゾール800mg/トリメトプリム160mg)の1日2回投与+葉酸5mgの1日1回投与(128例)、またはドキシサイクリン投与(体重50kg未満は100mgを1日1回、50kg以上は100mgを1日2回)(126例)を行い、通常治療単独群ではプラセボは投与しなかった。 主要評価項目は、予定外の初回呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間であった。無作為化された513例(平均年齢71歳、女性21.6%)の全例が解析に組み込まれた。予定外の呼吸器関連入院または死亡までの期間は、通常治療+抗菌薬で延長せず 本試験は、2019年12月18日、事前に計画された初回有効性解析の結果に基づきデータ安全性モニタリング委員会により早期中止が決定した。 平均追跡期間13.1ヵ月(中央値12.7ヵ月)において、主要評価項目のイベントは合計108例で発生した。通常治療+抗菌薬群で52例(100人年当たり20.4件、95%信頼区間[CI]:14.8~25.9)、通常治療単独群で56例(18.4件、13.2~23.6)であり、両群で有意差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.71~1.53、p=0.83)。 主要評価項目に対する事前に規定した抗菌薬の影響(ST合剤vs.ドキシサイクリン)については、統計学的な相互作用は確認されなかった(補正後HRの比較:コトリモキサゾール群1.15[95%CI:0.68~1.95]vs.ドキシサイクリン群0.82[0.46~1.47]、p=0.66)。 主な重篤な有害事象(発現率5%以上)は、通常治療+抗菌薬群vs.通常治療単独群で呼吸器系有害事象が16.5% vs.10.0%、感染症が2.8% vs.6.6%などであった。とくに注目すべき有害事象は、下痢(10.2% vs.3.1%)および発疹(6.7% vs.0%)であった。

13418.

GLP-1受容体作動薬セマグルチドは中止により体重減少効果が消失する(解説:住谷哲氏)-1392

 ダイエットでよく知られた現象にヨーヨー効果(yo-yo effect)がある。運動や食事でうまく減量できても、サボるとすぐに元の体重に戻ってしまうことが、玩具のヨーヨーの上下運動に似ていることから名付けられた。運動による筋肉量の維持を伴わずにカロリー制限だけで減量を試みると、減った筋肉量が脂肪に置換されてその後の減量が一層困難になる弊害もよく知られている。 STEPは抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチド注射薬開発を目的とした国際第III相試験プログラムである。すでにSTEP 1-3において、2型糖尿病の合併の有無に関係なく、セマグルチド2.4mg/週の投与により著明な体重減少がもたらされることが報告されている。STEP 4である本試験では、セマグルチドによる体重減少が投与を中止することでリバウンドするか否かを検討したwithdrawal trialである。 STEP 1-3とほぼ同様のプロトコルで実施された本試験において、対象患者はセマグルチド2.4mg投与20週後に2対1の割合でセマグルチド継続群と中止群にランダム化され、その後68週まで観察された。結果は、中止群では中止4週後にすでに体重のリバウンドが認められ、その後68週まで体重が増加し続けた。一方、継続群では68週までさらなる体重減少が持続した。つまりセマグルチド投与による体重減少効果は中止すると同時に消失すると考えられる。中止群における68週でのベースラインからの体重減少は論文中のグラフから見ると約8%程度である。STEP 1におけるプラセボ群における体重減少は約3%程度なので、概算すると中止48週後においても5%の体重減少は維持できている。単純に考えると中止1年後にはほぼ元の体重に戻ると考えていいだろう。 読者の多くも、外来で患者さんに「この薬はずっと飲み続けないとだめですか?」と質問されたことがあると思う。「薬で血糖(血圧、コレステロール値など)を抑えているので病気を治す薬ではありません。将来起こるかもしれない心臓病などの予防のためにずっと服用する必要があります」といつも答えているが、セマグルチドにもまったく同じことが言える。体重減少を維持するためには投与を続ける必要がある。長期投与に伴う安全性の問題、医療経済上の問題など、抗肥満薬としての一般的治療薬となるまでは解決すべき問題は山積していると思われる。

13419.

YouTube中毒を克服する【Dr. 中島の 新・徒然草】(375)

三百七十五の段 YouTube中毒を克服する5月半ばにして梅雨入りしてしまいました。雨さえ降っていなければ涼しく過ごしやすい天気です。降ったら降ったで人流が減り、コロナ対策になりますね。大阪のコロナ新規感染者数も、ついにピークアウトした感があります。7日間平均の最大は4月20日の1,150人でしたが、5月18日には641人にまで減りました。緊急事態宣言下とはいえ人も車も多く、いつもの風景にしか見えません。しかし、数字が改善しているので緊急事態宣言にも効果があったと思われます。今回の宣言に効果のあった理由は何でしょうか?人々を3つのグループに分けると考えやすいと思います。第1のグループは緊急事態宣言の有無にかかわらず、常に自粛している人たち。医療従事者なんかは大部分がこのグループですね。コロナの恐ろしさを目の当たりにしつつ、自宅と職場の往復で毎日が過ぎていきます。第2のグループは緊急事態宣言によって行動の変わる人。多くの一般の方がこのグループではないでしょうか。そして第3のグループは緊急事態宣言を無視して濃厚接触を繰り返している人。酒を飲んで大騒ぎしたり、カラオケしたり。この人たちの行動は目立ちますが、数としては少ないのだと思います。で、コロナを抑え込むためには、大多数を占める第2グループの行動が鍵になります。つまり、緊急事態宣言があれば自粛するが、なければ自粛しない人たち。この人たちが常時慎重な行動をすれば、徐々にコロナの新規感染者数が減るはずです。そうすれば都道府県がわざわざ飲食業に自粛要請する必要もありません。皆が1人で行って、1人で静かに食べる。単にそれだけのことです。アルコールを飲みたければ家で飲む。何も難しいことはありません。そうやって時間稼ぎをしている間にワクチンが行き渡れば、自然にコロナは収束するはず。簡単なことだと思うのですが……。ところでタイトルにした YouTube の話。何回も述べていますが、私は2015年の春から自宅にテレビがありません。なので、リオ五輪も平昌五輪も知らない間に終わってしまいました。平昌なんか、いまだにヒラマサと呼びそうになります。ピョンチャンですよね、確か。テレビがなければ時間が沢山できるはずでした。ところがそこに現れたのが YouTube。好きなチャンネルをいつでも何度でも見ることができます。中毒性が高く、考えようによってはテレビより危険。休みの日なんか、気がつけば動物ビデオをずっと見てしまいます。ハイエナとライオンの戦いとか、チーターの子育てとか。一体、人生の何の役に立つのか?自分で自分にツッコミを入れずにはおれません。こりゃ駄目だ!というわけで YouTube を長時間見ない方策を考えました。まずは YouTube の危険性を認識する次に YouTube に代わるものを探すそして心穏やかな毎日を過ごすこれらの中で一番大切なのは YouTube の代替物を探すことですね。今、試しているのはキンドル(電子出版)の英語小説。決して難しい小説を読むわけではありません。700語以内とか1,000語以内とか、限られた語彙で書かれた平易な英語小説です。色々なシリーズがありますが、私は Oxford Bookworms Library を読み始めました。易しいほうから、Starter、Stage 1……と続いて、Stage 6 まで全部で7段階。まずは Stage 2 の "Dead Man's Island" を読んでみました。英検では準2級~2級相当とされています。小さな島に住む大金持ちの男性の話ですが、これがなかなか面白い。辞書をひくことなく最後まで読めました。難しい単語を使わずにここまで表現できるのか、と感心させられます。次に Stage 3 の "Skyjack!"搭乗していた飛行機が過激派に乗っ取られる話です。英検では2級相当ですが、これも辞書要らず。2~3語ほど「ん?」と思った単語はありますが、文脈から容易に意味を推測できました。ストーリーも手に汗を握るものでお勧めです。そして Stage 4(英検2級~準1級相当)の "The Thirty-Nine Steps"国家間の戦争を仕掛けようと暗躍する人たちの話です。まだ途中ですが、辞書を使ったのは1回か2回、読むのに苦労はありません。Bookworms のシリーズは、イギリスを中心にヨーロッパを舞台とした小説が多いようです。登場人物が容赦なく殺されてしまうのがイギリスらしさかも。さて、英語小説を読むことのいいところは、罪悪感のなさです。知らないうちに何時間も経っていたとしても、何ら恥じることはありません。むしろ、「英語の小説に夢中になる俺、スゲエ!」と思ってしまうくらいです。また、寝るときにスマホで読もうとすると3分以内に眠りにつけます。これ以上の睡眠薬は、この世に存在しないでしょう。というわけで英語小説を使って YouTube 中毒からの脱出を図っております。なんか読書に夢中だった子供時代を思い出してしまいました。もし YouTube に毒されている読者がおられましたら、是非やってみてください。最後に1句ユーチューブ はまるな危険 距離を置け

13420.

インサイド・ヘッド(続編・その1)【やったのは脳のせいで自分のせいじゃない!?】Part 1

今回のキーワード自由意志リベット決定論分離脳「潜在意識」「ホムンクルス問題」2021年3月号で、子どもから大人まで楽しめるディズニーアニメ「インサイド・ヘッド【なんで悲しみは「ある」の?どうすれば?(感情心理学)】」を紹介しました。この作品では、ライリーという女の子の頭の中で、感情の小人たちがコミカルに活躍する様子が描かれていました。そして、彼らの働きぶりから、感情心理学を学びました。ただ、皆さんの中で、この作品を見終わった人は、いつもの純粋なディズニーアニメにない、ある不気味さに気づきませんでしたか? それは、主人公であるはずのライリー自身がどう考えて、どう行動しようとするかという彼女自身の心の中(意識)がいっさい描かれていないことです。もっと言えば、ライリーが完全に小人たちの操縦通りに動く「ロボット」になっており、自分で決める能力(自由意志)がないように描かれていることです。今回は、この作品への続編記事として、制作者が確信犯的に仕込んだこの「私たちに自由意志はないの?あるの?」という裏メッセージを脳科学的に読み解きます。そして、意識を生み出す脳の正体を解き明かします。さらに、意識の起源を進化心理学的に迫ります。そこから、私たちはなぜ自由意志があると思ってしまうのかという問いへの答えを探っていきましょう。 意識の正体とは?意識とは、脳が作り出している脳の一部と理屈では理解できるような気がします。と同時に、1つの魂という存在として体に宿っているようにも感じています。そもそも意識とは何でしょうか? まず、ライリーとライリーの頭の中(脳)の関係から、意識の正体を解き明かしてみましょう。小人たちがいつもいる司令部の建物は、よくよく見ると、脳のど真ん中にある間脳を逆さまにした形をモデルにしています。間脳とは、感覚入力の中継(視床)、自律神経やホルモンの調整(視床下部)、ホルモンの指令(下垂体)をする3つの部位が合わさった、まさに中枢です。また、小人たちの目の前にある感情操縦デスクは、脳の神経細胞のシグナル伝達をする接合部位(シナプス後部)の形をモデルにしています。彼らは、この感情操縦デスクのボタンやレバーを動かすことで、ライリーは考え、行動するように描かれています。つまり、この作品の裏メッセージを脳科学的に読み解くと、意思決定は、意識が行っているのではなく、実は先に脳が行っているということです。つまり、意識の正体とは、脳が決めたことをただ見ているだけであるということです。簡単に言うと、意識は、主役ではなく、観客であるということです。これは、実際に、リベットによる実験で明らかになっています。この実験では、開頭手術中の患者の脳(随意運動野)に電極を取り付けます。そして、手を動かそうと意図した瞬間、手を動かす脳の指令信号(運動準備電位)が出る瞬間、実際に手が動く瞬間のそれぞれ3つのタイミングの時間差を計りました。もともとの予想は、「意図する→指令信号が出る→実際に動く」という順番でした。ところが、実験の結果は、「指令信号が出る→(0.3秒経過)→意図する→(0.2秒経過)→実際に動く」という衝撃の結果だったのでした。これは、その後のfMRIによる追試研究でも繰り返し確かめられています。意識とは、これまで「司令部」として能動的に決断を下しているように思われていましたが、実は私たちがそう思い込んでいるだけであり、実際は、脳が決めたことを0.3秒後に受け身的に見ているだけであったということです。つまり、私たちの考えや行動はあらかじめ脳によって決められていることになります。これは、決定論(神経生物学的決定論)と呼ばれ、実際に現在の多くの脳科学者たちから支持されています。ただし、そうなると、ある問題が起きます。たとえば、ライリーが家出をするために、ママの財布からクレジットカードを盗むシーンがあります。これは、ライリーの頭の中で、イカリという小人の暴走によるものでした。つまり、問題とは、盗んだのは小人(脳)のせいであり、ライリー自身(意識)のせいじゃない、ライリーに盗みの責任はないという理屈が成り立つことです。言い換えれば、自分(意識)に、自分の考えや行動を決める能力(自由意志)がないということは、犯罪行為の責任を問えなくなるかもしれないことを意味します。果たして、私たちに自由意志はないと言えるのでしょうか? この答えを探るために、脳の意思決定のプロセスをもっと掘り下げてみましょう。次のページへ >>

検索結果 合計:35181件 表示位置:13401 - 13420