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第24回 高齢糖尿病患者のサルコペニア、介入タイミングと方法は?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第24回 高齢糖尿病患者のサルコペニア、介入タイミングと方法は?Q1 評価法と介入の判断、目標設定の考え方について教えてください2019年にアジアのワーキンググループにおいて、サルコペニアの診断基準の変更がありました1)。これによると、一般の診療所におけるサルコペニアの簡単なスクリーニングと評価法が示されています。すなわち、下腿周囲長が短いもの、SARC-Fと呼ばれる簡単な10点満点の質問で4点以上のもの、あるいはその両者をあわせたSARC-Calfと呼ばれるスコアが高値のものは評価の対象となります。評価としては握力または5回椅子立ち上がりテストを行い、前者では男性<28kg、女性<18kg、後者では12秒以上かかるものはサルコペニアの可能性ありとして介入をはじめてよいとされています。本来サルコペニアの確定診断には筋量測定が必要ですが、これにはDXA法やバイオインピーダンス法といった特殊な装置が必要であり一般診療所では行いにくいこと、さらに身体機能として示されてきた歩行速度も実地では実施が困難であるため、より簡便な握力と椅子立ち上がりで評価できるようになりました。なお、近年筋量より筋力のほうが予後をよく反映するとする報告がみられています。これらの指標(下腿周囲長、握力、椅子立ち上がり)の維持・向上を目標とするわけですが、筋量の増加は効果が認めにくい一方で、筋力や身体機能の改善はその後の機能予後の改善やフレイルの予防に重要です。さらに、トレーニングの内容にもよりますが、握力よりも下肢筋力や下肢運動機能のほうが効果が出やすいようです2)。したがって、クリニックにおいては、椅子立ち上がりテストを定期的に行って、時間の短縮を確認することが治療効果の評価に有効ではないかと思います。改善が認められたら努力を賞賛し、さらに0.5~1秒短い目標時間を設定する、とすればモチベーションも維持できるのではないかと思います。Q2 食事療法・タンパク質量の設定について、具体的な考え方は?日本人の食事摂取基準(2020年版)では、フレイルおよびサルコペニアの発症予防を目的とした場合、65 歳以上では少なくとも1.0g/kg体重/日以上のタンパク質を摂取することを推奨していますので3)、1日およそ60g以上, 1食当たり20g以上となります。低栄養が疑われるものではさらに多くの摂取が推奨されます。魚、鶏ささみ肉、牛赤身肉など油脂が少ない肉は100g当たり約20gのタンパク質を含みますが、バラ肉などの油脂が多い肉や加工肉では含量が少なくなるため注意が必要です(表)。画像を拡大するタンパク質を十分摂取するには、まず3食食べ欠食しないこと、それぞれにタンパク質を含む主菜をとることが重要です。主食を増やさず油脂の多い肉を避けるよう指導すれば体重はさほど増加しないと考えられますし、多少の増加は許容しています。肉がとりにくい人は、大豆製品や乳製品を利用しますが、20gのタンパク質を豆腐からとるには300g(1丁)が必要であり、やはり肉、魚の摂取を勧めたいところです。また単品料理よりもグラタン、クリームシチュー、ピカタなどにすることで乳製品や卵のタンパク質を追加したり、みそ汁に豆腐や油揚げを入れるなどの工夫も有効ですが、脂質や塩分の増加には注意します。麺類をとる時などは、卵、ツナ缶、納豆などをトッピングしたり、冷奴など一品追加するようにします。ビタミンDもタンパク質合成に重要ですが、きのこ類の他、イワシ、サンマ、サケなどの魚類に豊富に含まれるため、魚を1日1食とるように勧めます。腎機能低下例にもタンパク質摂取を勧めるべきかには議論があります。慢性腎臓病(CKD)ではタンパク制限が末期腎不全への進行を防止するとするエビデンスがある一方、サルコペニアを合併した高齢者では死亡リスクが高いが高齢CKDではタンパク制限が死亡率上昇につながることも報告されています。したがって、2019年に日本腎臓学会が公表した「サルコペニア・フレイルを合併した 保存期 CKD の食事療法の提言」では、末期腎不全への進行予防を重視するか、死亡リスクを重視するかで摂取量を柔軟に設定することとしています5)。すなわち死亡リスクが高いと考えられる例、サルコペニアが重度と考えられる例ではタンパク質の摂取制限を緩めることを考えますが、それでもCKD4-5期ではタンパク0.8g/kg体重/日を上限とするとしています。Q3 運動療法・筋肉量を増やすための指導法についてサルコペニアの予防・治療にはレジスタンス運動を含む運動が重要です。強度については、高齢者においては、低強度であっても反復して行うことによって筋力や筋量の向上が期待できるという報告があります6)。実際に高齢者が定期的にジム通いして高強度の運動を継続することは難しく、自宅で自重や簡単な器具(ゴムチューブ)などを用いた運動が適当であり、継続もしやすいと考えられます。たとえば中腰のスクワットや座位でのももあげ、つまさきあげ、かかとあげだけなどでも効果が期待できます。そのうえで、本人が「楽」と感じるレベルから「ややきつい」レベルにあげていくとよいでしょう。歩行などの有酸素運動やバランス運動、柔軟性運動を組み合わせた多要素の運動も勧められますが(図)、バランス運動の施行時には転倒に注意が必要です。また当然ながら十分なタンパク質摂取をあわせて指導することが重要です。画像を拡大する運動には継続も必要ですが、意欲を保つのは容易ではありません。運動を開始、継続してもらうには具体的な目標を設定することと、毎日記録をつけてもらうことが大切です。歩数計をもたせて目標を設定し記録してもらいます。また、たとえばいくつかの運動の画を書いた簡単なカードを作成して渡し(Webにもいろいろヒントがあります)、行ったらマルをつけて提出してもらいます。それに対し必ずコメントをし(がんばりました、もう一息など)新しい記録紙を渡して、少し高い目標を患者さんと一緒に設定します。昔ラジオ体操のカードにはんこを押してもらった、あの感覚です。どうしても意欲が乏しいときは、場合によってはご家族も巻き込んで一緒に運動するようお願いしています。また、前述のようにたびたび椅子立ち上がりや握力などの検査を行い、結果をフィードバックして効果を実感してもらうことがモチベーション維持に大切であると考えます。Q4 サルコペニア傾向ないしやせ型の高齢糖尿病患者さんにSGLT2阻害薬を使ってよいでしょうか?最近日本人2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬の投与の体組成への影響の違いを検討した研究の65~74歳のサブ解析において、SGLT2阻害薬はメトホルミンと比較して筋量や筋力の低下をきたさなかったと報告されましたが7)、BMI≧22、平均BMI 27とやや肥満で筋量や筋力も保たれているものを対象としており、75歳以上の患者ややせた患者の筋量や筋力への影響は明らかではありません。日本糖尿病学会が策定・公表している「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」でも、75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳でサルコペニアなどの老年症候群のある場合の投与は注意して慎重に行う、とされており8)、やはりこれらの患者ではなるべく使用を避け、使用する場合はタンパク質摂取と運動が十分に行われていることを確認することが重要です。さらに定期的に体重、筋力や運動機能をフォローし、明らかな低下がみられた時には中止を検討すべきと考えられます。1)Chen LK, et al, J Am Med Dir Assoc 2020 ;21: 300-307.2)Makizako H et al, J. Clin. Med. 2020, 9, 1386.3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版) 」4)文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂) 」5)日本腎臓学会「サルコペニア・フレイルを合併した 保存期 CKD の食事療法の提言」6)山田実. 日老医誌 2019;56:217-226.7)Koshizaka M, et al, Diabetes Ther 2021; 12: 183-196.8)日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」2020

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患者さんと短時間でも深く話が聞ける「深掘りワード」とは?【非専門医のための緩和ケアTips】第4回

第4回 患者さんと短時間でも深く話が聞ける「深掘りワード」とは?前回に続き「時間がないから、緩和ケアができない」問題について一緒に考えていきましょう。今回は診療上の工夫を深掘りしていきます。今日の質問患者さんと「医学的なこと以外」の話をする意味って何なのでしょうか? それに、病状以外のことを聞くきっかけもありません…。前回のメッセージは「医学的な情報提供をコンパクトにして、生まれた時間で物語的(ナラティブ)なやりとりをしてみよう!」というものでした。でも、そこまでしてやる意味って何なのでしょうか? 雑談をすることが緩和ケアなの?と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。まあ、何を緩和ケアと呼ぶかというと、いろいろな意見があると思うのですが、私はこうしたナラティブなやりとりをすることが非常に重要なアプローチだと考えています。緩和ケアの非常に重要な分野として「意思決定の支援」があります。多くの人は、人生のどこかで病を得て、自身の生活に向き合いながら、さまざまな決断を迫られます。効果が乏しくなってきた抗がん剤治療を続けるか通院から訪問診療に切り替えるか最後の時期に入院するか自宅にいるか…診療所の外来においても、このような相談を受けることがあるでしょう。これらの正解のない選択に対して、ご本人の意向や価値観に沿った意思決定を一緒にサポートすることが緩和ケアの非常に重要な部分になります。緩和ケアというと「(主に終末期のがん患者さんの)痛みを軽減する」といった、身体症状への介入部分が注目されることが多いのですが、実際のところ、症状緩和はそれ自体が目的というよりは、人生の最終段階の意思決定といった大切な局面において、患者さんが自分の人生と向き合うための「手段」という側面も大きいのです。そのような場面で支援する医療者としては、患者さん自身について、病気のこと以外も知っておきたいですよね。私自身は病院で入院した患者さんを中心に緩和ケアを実践していますが、「いつも見てくれている先生」をとても頼りにしている患者さんがとても多いことを実感します。長年のお付き合いのある診療所の先生だからこそ、リラックスして話せることもあるはずですし、それぞれの立場の医師が連携して緩和ケアに当たれるといいと感じます。患者さん側も「忙しいのに悪いかな」「病気とは関係ないのに」と考え、医師と医学的なこと以外を話すことに対して、ハードルが高く感じる方も多いようです。患者さんとナラティブなやりとりをしたいときは、ちょっとした工夫をしてみるといいでしょう。たとえば、私はよくこんな言葉掛けをしています。――外来に来た付き添いが必要な高齢の患者さん。いつも娘さんが付き添っているようです。私「いつも付き添ってくださるのは娘さんですか? 助かりますね」こんなふうに声掛けしてみると、患者さんからは「そうなんです。いつもよくしてくれて」「少し前に妻が死んだので、心配してくれてね…」といった家族の話に広がったりします。話が広がらずに「そうです」の一言で終わってしまってもいいのです。この一言で「私はあなたについて、病気以外のことも気に掛けていますよ」というメッセージが伝わります。私のよく使っている「ナラティブ深掘りワード」をもっと挙げてみると、大変な病気の中、頑張って来られましたね元気の秘訣は何ですか?そういえば、以前はどんなお仕事をされていたんでしたっけ?こうした言葉を、違和感のないタイミングで相手の状況を見ながら、使うようにしています。皆さんもぜひ、自分のコミュニケーションスタイルに合った「ナラティブ深掘りワード」を考え、使ってみてください。今回のTips今回のTips患者さんとの話を広げる「ナラティブ深掘りワード」を持とう!

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第60回 立法措置のないコロナワクチン「打ち手」拡大に保団連が疑義

政府は新型コロナワクチン接種を加速するため、不足している「打ち手」を救急救命士や臨床検査技師にまで広げようとしている。医師や看護師以外の職種で最初に候補に挙がった歯科医師に対し、厚生労働省が4月26日付で事務連絡を発出、歯科医師による新型コロナワクチン接種について法的な整理を示した。これに対し、全国の医師・歯科医師10万7,000人で構成する全国保険医団体連合会(保団連)は5月21日、宇佐美 宏副会長(歯科代表)名で、「歯科医師による新型コロナワクチン接種は法律により適法性を確保して実施すべき」との声明を発表、問題点を指摘した。行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。声明では「新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師の職業的使命である。必要に応じ、安全性を確保してワクチン接種に協力することは、歯科医師としてやぶさかではない」と、打ち手としての役割には前向きな姿勢を示した。一方、打ち手不足問題については「新型コロナワクチン接種のための体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で十分に想定しえた課題である」と指摘。「厚労省が、円滑に対応できるようあらかじめ法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈による対応をとったことには問題がある」と、行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問を呈した。厚労省は事務連絡で、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し、医師法第17条に違反するとした上で、以下の3点の条件を示している。(1)歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない(2)歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている(3)被接種者の同意がある。この3条件を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とした。そして集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは、歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法だ。声明では「新型コロナワクチンについては、接種後一定頻度でのアナフィラキシーの発生や、死亡事例も報告されている。PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、同じ医行為であっても検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらず、PCR検査の検体採取と同様に、行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である」と、行政解釈による対応を批判した。国は解釈と条件を示すだけ、責任は現場任せ…その上で、「本来的に、国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施されるべきものである」と提案。「医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である」と、現場視点からの問題点を示した。様々な職種の協力を得て新型コロナワクチンの接種が進んでも、今後も新たなウイルスの感染拡大が起こる可能性がある。声明では「これからも起こり得る緊急事態への対応も視野に、協力に当たる歯科医師の法律上の位置付けを明確にするよう、厚労省の責任ある対応を求める」と結んでいるが、ほかの職種に関しても同様の措置が必要だろう。医療人の善意に頼るだけでなく、安心して対応できる体制づくりが必要だ。

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日本においてアルツハイマー病の重症度が介護費用などに及ぼす影響

 アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。 対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・401例が抗アルツハイマー病薬を使用しており、そのうち287例が調査票に回答を行った(年齢:86.1±6.4歳、女性の割合:76.7%)。287例の重症度別内訳は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(年齢:84.0±6.9歳、女性の割合:71.7%) ●中等度:118例(年齢:86.6±5.9歳、女性の割合:76.3%) ●高度:116例(年齢:86.6±6.5歳、女性の割合:79.3%)・各群のBIスコア、EQ-5D-5Lスコア、介護費用の平均値は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(BI:83.6、EQ-5D-5L:0.801、介護費用:211万1千円) ●中等度:118例(BI:65.1、EQ-5D-5L:0.662、介護費用:247万円) ●高度:116例(BI:32.8、EQ-5D-5L:0.436、介護費用:280万9千円)・アルツハイマー病が重症化すると、BIスコアおよびEQ-5D-5Lスコアが有意に低下し、年間介護費用の有意な増加が認められた。 著者らは「アルツハイマー病の重症度は、ADL、QOL、介護費用などさまざまな影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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パロノセトロン、小児への用法・用量追加承認/大鵬

 大鵬薬品工業とヘルシン・ヘルスケアは、5-HT3受容体拮抗型制吐薬パロノセトロン(製品名:アロキシ)について、2021年5月27日、厚生労働省より小児に対する用法・用量の追加承認を取得した。  今回の追加承認は、主に、生後28日以上18歳以下の小児患者を対象に国内で実施した第III相試験の結果に基づいたもの。主要評価項目である1コースにおける高度又は中等度催吐性抗がん剤投与開始0~120時間後の嘔吐完全抑制(嘔吐性事象なし、制吐処置なし)率は58.6%。95%信頼区間は44.9~71.4%で、事前に設定した95%信頼区間の下限閾値30%を上回ったことから、本剤の小児患者における臨床的有用性が検証された。本剤の安全性について新たに大きな問題となるものはみられなかった。  同剤は、2004年1月から大鵬薬品工業が国内での臨床開発・販売権を取得し、2010年1月に「アロキシ静注 0.75mg」、2012年8月に「アロキシ点滴静注バッグ 0.75mg」の製造販売承認を取得、販売している。同剤は、成人患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では80以上の国・地域で、小児患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では60以上の国・地域で承認されている。 ・用法及び用量(下線部が今回承認内容) 通常、パロノセトロンとして0.75mgを1日1回静注又は点滴静注する。ただし、18歳以下の患者には、通常、パロノセトロンとして20μg/kgを1日1回静注又は点滴静注することとし、投与量の上限は1.5mgとする。

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ファイザー社の新型コロナワクチン、接種対象が12歳以上に

 米国・ファイザー社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)用ワクチン「コミナティ筋注」の接種対象者が、「16歳以上」から「12歳以上」に変更・拡大された。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(分科会長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)が5月31日、新型コロナウイルス感染症にかかる予防接種の実施について指示した厚生労働大臣通知の一部改正案の諮問を受け、これを了承した。適用は6月1日付。 新たに接種対象となった12~15歳について、同ワクチンの国内治験は実施されておらず、審議に当たっては海外の臨床試験データが提示された。それによると、ワクチンの有効性は、接種前から2回目接種後7日以前にSARS-CoV-2感染歴がない場合は100.0%(95%信頼区間[CI]:75.3~100.0)、同感染歴を問わない場合も100.0%(95%CI:89.9~97.3)だった。 また、2回目接種後1ヵ月のSARS-CoV-2血清中和抗体価の評価については、12~15歳(190例)の中和抗体幾何平均値は1239.5(95%CI:1095.5~1402.5)で、16~25歳(170例)の中和抗体幾何平均値705.1 (95%CI:621.4~800.2)に対する非劣性が示された。有害事象の頻度および種類については、16~25歳と同様だった。 「コミナティ筋注」については、5月31日付で添付文書が改訂され、「用法及び用量に関する注意」「接種回数」「特定の背景を有する者に関する注意」「副反応」「適用上の注意」の項にそれぞれ内容の追加・改訂の記載がある。

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中国のコロナワクチン2種、初の第III相試験中間解析/JAMA

 中国で開発された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化ワクチン2種の、第III相二重盲検無作為化試験の事前規定中間解析の結果が、アラブ首長国連邦・Abu Dhabi Health Services CompanyのNawal Al Kaabi氏らによって発表された。試験は中国Sinopharmの子会社であるChina National Biotec Group(CNBG)に属する武漢生物製品研究所と北京生物製品研究所がデザインし、中東4ヵ国で被験者を集めて行われた。中間解析にはうち2ヵ国(アラブ首長国連邦とバーレーン)の被験者4万例超のデータが包含された。ワクチンの症候性COVID-19に対する予防効果はプラセボ接種の対照群と比較し72.8~78.1%であり、重篤な有害事象発生率は0.4~0.5%で対照群と同等だったという。JAMA誌オンライン版2021年5月26日号掲載の報告。SARS-CoV-2・WIV04株/HB02株からの不活化ワクチンを投与 試験に用いられたワクチンは、中国・武漢の金銀潭医院(Jinyintan Hospital)の2人の患者からそれぞれ採取されたSARS-CoV-2分離株(WIV04株とHB02株)を基に開発されたものである。 研究グループは、SARS-CoV-2等への感染歴がない18歳以上を無作為に3群に分け、WIV04株から作った不活化ワクチン(5μg/回)、HB02株から作った不活化ワクチン(4μg/回)、および水酸化アルミニウム(対照群)を、それぞれ2回、21日間隔で投与した。 主要アウトカムは、無作為化時にSARS-CoV-2感染が認められなかった被験者における、ワクチン2回投与から14日以降の症候性COVID-19(検査により確認)に対する有効性だった。副次アウトカムは、重症COVID-19に対する有効性とした。 有害事象・副反応に関するデータは、1回以上投与した被験者を対象に集計した。重症COVID-19、対照群で2人に対しワクチン群では0人 ワクチンまたはプラセボ1回以上投与を受けたアラブ首長国連邦とバーレーンの被験者は計4万382例(WIV04群1万3,459例、HB02群1万3,465例、対照群1万3,458例)で、平均年齢は36.1歳、男性が84.4%だった。このうち2回投与を受け、2回投与後14日以降に1回以上のフォローアップを実施し、また試験開始時に、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が陰性だった3万8,206例(94.6%)を対象に分析を行った。 追跡期間中央値77日(範囲:1~121)において、症候性COVID-19が確認されたのは、WIV04群26例(12.1/1,000人年)、HB02群21例(9.8/1,000人年)であり、対照群は95例(44.7/1,000人年)だった。対照群と比較したワクチンの有効性は、WIV04群72.8%(95%信頼区間[CI]:58.1~82.4)、HB02群78.1%(64.8~86.3)だった(いずれもp<0.001)。 重症COVID-19の発生は、対照群で2例報告されたが、不活化ワクチン群では発生しなかった。 接種後7日間の副反応の報告は、WIV04群44.2%、HB02群41.7%、対照群46.5%だった。重篤な有害事象はまれで、WIV04群64例(0.5%)、HB02群59例(0.4%)、対照群78例(0.6%)と3群で同等だった。 なお、最終解析では、さらにエジプトとヨルダンの被験者データも包含して分析する予定となっているが、両国からの被験者数が3,469例であったことから結果が大幅に変わる可能性は低いなどとして、最終解析のためのデータ収集については未確定だとしている。

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3剤配合剤抵抗性の高血圧、腎デナベーションが有効/Lancet

 利尿薬を含む3剤配合降圧薬に抵抗性を示す高血圧患者に対し、超音波腎デナベーションは、2ヵ月後の収縮期血圧低下に有効であることが示された。偽治療に比べ、収縮期血圧値は中央値5.8mmHg低下したという。フランス・パリ大学のMichel Azizi氏らが、米国・欧州50ヵ所以上の医療機関を通じて行った無作為化単盲検偽治療対照試験の結果を報告した。血管内腎デナベーションは、軽症~中等症高血圧患者の降圧に有効だが、真性の抵抗性高血圧患者の有効性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「降圧効果と腎デナベーションの安全性が長期的に維持されるのならば、抵抗性高血圧患者にとって腎デナベーションは降圧薬に追加しうる治療法となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値をITT解析で比較 研究グループは、米国28ヵ所、欧州25ヵ所の3次医療機関を通じて、利尿薬を含む3種以上の降圧薬を服用しながら、診察室血圧が140/90mmHg以上の18~75歳を対象に試験を行った。被験者は、試験開始後4週間は、Ca拮抗薬・ARB・サイアザイド系利尿薬の配合剤(投与量一定)の1日1回服用に切り替えた。 その後、日中自由行動下血圧が135/85mmHg以上の被験者を施設で層別化し1対1の割合で無作為に2群に分け、一方には超音波腎デナベーションを、もう一方には偽治療を行った。患者とアウトカム評価者は割り付けをマスクされ、規定した血圧値を超えた場合には、追加の降圧薬投与を可能とした。 主要エンドポイントは、ITT解析で評価した2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化だった。安全性もITT解析にて評価した。腎デナベーション群、2ヵ月後収縮期血圧値は8.0mmHg低下 2016年3月11日~2020年3月13日に、989例が試験に登録され、そのうち136例が無作為化を受けた。腎デナベーション群69例、偽治療群67例だった。 尿検査で確認した2ヵ月時点の配合剤の服用アドヒアランスは、腎デナベーション群82%(42/51例)、偽治療群82%(47/57例)と同等だった(p=0.99)。 2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化は中央値で、腎デナベーション群-8.0mmHg(四分位範囲[IQR]:-16.4~0.0)、偽治療群-3.0mmHg(-10.3~1.8)と腎デナベーション群で有意な降圧が認められた(群間差中央値:-4.5mmHg[95%信頼区間[CI]:-8.5~-0.3]、補正後p=0.022)。完全なデータが得られた被験者における群間差中央値は-5.8mmHg(-9.7~-1.6、補正後p=0.0051)だった。 なお、安全性アウトカムについては、両群で差はみられなかった。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に適応拡大/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年5月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいたもの。 同解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われているが、今回の承認により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が悪性胸膜中皮腫患者にとって新たな治療選択肢になるものと期待されている。

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イキサゾミブ、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫の維持療法に適応追加/武田

 武田薬品工業は、2021年5月27日、イキサゾミブ(製品名:ニンラーロ)について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得した。 今回の承認は、主に無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際第III相試験であるTOURMALINE-MM4試験の結果に基づくものである。同試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、同剤がPFSを統計学的に有意に改善することが確認された。イキサゾミブの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、TOURMALINE-MM4試験で新たな懸念は確認されなかった。 イキサゾミブは、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能効果で、2017年3月に厚生労働省より製造販売承認を取得し2017年5月24日から発売。2020年3月25日に「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得している。

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非糖尿病肥満症に対するGLP-1受容体作動薬と運動の併用によるリバウンド抑制効果(解説:小川大輔氏)-1398

 肥満によるさまざまな健康障害に内臓脂肪蓄積が関与していることが知られている。また内臓脂肪蓄積があれば糖尿病や脂質異常症などの疾患を発症することが予測されるため、減量治療が推奨されている。そして治療の基本は食事療法、運動療法、行動療法などの生活習慣改善療法である。ただBMI≧35kg/m2の高度肥満症では、生活習慣改善療法で一時的に体重の減少が得られても、リバウンドを繰り返し、長期的にみると減量治療が成功しないことも多いとされている。 今回減量治療後の体重維持に、GLP-1受容体作動薬リラグルチド3mgと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることがNEJM誌に報告された1)。この試験は非糖尿病の肥満成人(平均BMI 37.0kg/m2)を対象に、まず8週間の低カロリー食による減量を行い、その後体重がベースラインから5%以上低下した195例を4群(リラグルチド群、運動群、併用群、プラセボ群)に割り付け1年間治療が行われた。その結果、主要エンドポイントである無作為化の時点から治療終了までの体重変化は、併用群で-9.5kgと最も大きく、次いでリラグルチド群-6.8kg、運動群-4.1kgであった。また、副次エンドポイントである体脂肪率の変化は、併用群で3.9%と最も低下し、次いで運動群2.2%、リラグルチド群2.0%であった。 本試験で減量治療後のリバウンド抑制や体脂肪率低下に対し、リラグルチドと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることが示された。また、糖化ヘモグロビン値やインスリン感受性、心肺持久力の改善が認められたのは併用群のみであったことは、従来の肥満治療に薬物療法としてGLP-1受容体作動薬を加えることの有用性を示唆していると考えられる。ただし安全性については、リラグルチド群において心拍数上昇と胆石症が併用群より多く認められており注意が必要である。また本試験はデンマークで実施された試験であり、日本人を対象にしていない点についても留意したい。 日本では現在のところ、GLP-1受容体作動薬の保険適用は2型糖尿病に限られており、非糖尿病肥満症に対しては適応外となっている。また自由診療での処方について、日本糖尿病学会は2020年7月9日に『GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解』を発表している2)。一部引用すると、「我が国において2020年7月時点で、一部のGLP-1受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません。したがって、2型糖尿病治療以外を適応症として承認されたGLP-1受容体作動薬は存在せず、美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、2型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていません」と記されている。以前に本連載第1365回のセマグルチドの臨床試験(STEP 3)のコメントでも述べたが、リラグルチドについてもセマグルチドと同様に、日本人の非糖尿病肥満症を対象とした臨床試験で安全性や有効性が確認されれば、肥満症の治療の選択肢となる可能性があると考えられる。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける予防効果はなぜ国/地域によって異なるのか?(解説:山口佳寿博氏)-1400

 mRNAワクチンであるBNT162b2(以下、ワクチン)の第III相試験が終了した後、real-world settingでの実際の予防効果が、ワクチン接種が早期に開始された中東諸国(イスラエル、カタール)、英国、米国などから相次いで報告されている。各国で報告された予防効果は、必ずしも一致せず背景因子に何らかの差が存在するものと考えられる。本論評では、Angel氏らの論文(Angel Y, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])を基礎としながら、なぜ、各国からの報告でワクチンの予防効果に差を認めたのか、その原因について考察する。Angel氏らは、2020年12月20日~2021年2月25日の2ヵ月の間にワクチンを2回接種したイスラエルの医療従事者を対象(接種者:5,517人、非接種者:757人)として2回目ワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染、無症候性感染に対するワクチンの予防効果を検討した。その結果、有症候性感染に対する予防効果は97%、無症候性感染に対する予防効果は86%であることが示された。一方、Dagan氏らは、ほぼ同じ時期(2020年12月20日~2021年2月1日)にワクチンを接種したイスラエルの一般住民を対象(接種者と非接種は同数で各59万6,681人、総数はイスラエルの総人口の13%に相当)とした解析で、2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染に対する予防効果が94%、無症候性感染を含む感染全体に対する予防効果が92%、入院予防効果が87%、重症化予防効果が92%であると報告した(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。対象者数、従事する仕事の内容に差を認める両解析ではあるが、最も信頼できる有症候性感染予防効果に関しては2つの論文でほぼ同じ値が報告された。この時期のイスラエルでは、従来株(D614G株)から英国株(B.1.1.7)に蔓延ウイルスの置換が進んでいた時期で、上記の2つの論文は、従来株と英国株が混在した状況下でのワクチンの有効性を示したものだと判断できる。この予防効果は、従来株が主流を占めた2020年の夏から秋にかけて施行されたワクチンの第III相試験によって示された予防効果(95%)とほぼ同じであり(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)、英国株に対するワクチンの予防効果は従来株に対するそれと同等であると結論できる。 英国株が主体を占めた英国からの報告では、80歳以上の高齢者にあって、有症候性感染に対するワクチン2回接種後の予防効果は89%であり、年齢と無関係にワクチンの予防効果はほぼ維持されることが判明した(Bernal JL, et al. BMJ. 2021;373:n1088.)。 カタールでは、2021年3月31日までに26万5,410人が2回目のワクチン接種を終了した。この時期、カタールを席巻していたウイルスは、44.5%が英国株、50%が南アフリカ株(B.1.351)であり、同じ中東のイスラエルとは異なったウイルス分布を示していた。このような状況下で、Abu-Raddad氏らは英国株、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果を検証した(Abu-Raddad LJ, et al. N Engl J Med. 2021 May 5. [Epub ahead of print])。ワクチン2回接種後14日以上経過した時点での英国株の有症候性感染に対する予防効果は89.5%、南アフリカ株の有症候性感染に対する予防効果は75%で、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果は英国株に対する予防効果より14.5ポイント低いことが示された。この結果は、南アフリカ株が液性免疫回避変異を有し(山口. J-CLEAR論評-1381, 2021 April 28)、ワクチン接種後のウイルス中和作用を抑制したことが原因の一つであることを示唆する。 2020年12月17日~2021年3月20日の間に米国で施行されたワクチン予防効果に関する検討では(2回接種:2,776人、1回接種:3,052人、非接種:2,165人)、有症候性感染に対する予防効果が84%、無症候性感染に対する予防効果が72%であることが示された(Tang L, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])。これらの値はAngel氏らがイスラエルから報告した値に比べ13~14ポイント低い。米国において蔓延しているウイルスの種類は複雑で、米国CDCは、2021年4月30日現在、米国全土で英国株、米国株(B.1.427/429)、ブラジル株(P.1)、南アフリカ株と多数の変異ウイルスが混在して流布していると報告した(CDC COVID-19 Vaccine Breakthrough Case Investigations Team. MMWR; Vol. 70, 2021 May 25)。これらの変異ウイルスの多くは、ワクチン接種によって形成される中和抗体に対して抵抗性を有し、ワクチンの予防効果を低下させる(山口. 日本医事新報 2021;5053:32-38)。 以上のように、ワクチンの予防効果は国によって異なり、その地域に流布しているウイルスの種類が主たる規定因子として作用する。それ故、いかなるウイルスが蔓延しているかを念頭に置いて各国から報告された予防効果に関するデータを読み解く必要がある。

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キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?【臨床留学通信 from NY】第21回

第21回:キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?こちらニューヨーク州では、コロナ陽性者が1日5,000人くらいであった1ヵ月前に比べ、2,000人台まで減少してきました。そして5月16日現在、12歳までワクチン接種が可能になっていますが、打ちたがらない人も少なくないようで、接種率は思うように上がっていないのが実情です。そのため、ワクチン接種者に対し、ハンバーガーショップShake Shackのフリーポテトサービスや、Krispy Kreme Doughnutsのフリードーナッツサービスなど、あの手この手の優遇施策が取られているようです。さて、こうした状況下ですが、今年のフェロー候補者は現在、7月中旬までに出さなければならないアプリケーションの書類整理に追われています。私もコロナ禍の中、去年同じプロセスを経験しました。フェローのマッチングの書類は基本的にはレジデントの時と同じです。重要なのは推薦状4通で、そのほかにもCurriculum Vitae(履歴書)の充実、そしてPersonal Statement(なぜ自分がその道のフェローになりたいか、その後目指すゴールは、など)の作成があります。レジデントのマッチングにおいては、日本国内で働いていると、どうしても米国からの推薦状を得にくいことが不利になります。あらゆる手段で米国の病院の指導医からオブザーバーシップ等で推薦状を作ってもらうほか、海軍病院に勤務して推薦状をもらうなどの方法があります。ただ、いったんレジデントに入ってしまうとその先の心配はありません。大事なのは、どのような内容を誰からもらうかです。スケジュールとしては、レジデント3年目早々にアプリケーションを揃えなければいけないため、実質2年しか準備期間がありません。まず、内科のプログラムディレクター(PD)に作成してもらう書類ですが、このPDレターをいかに良い内容にしてもらうかが最も重要です。例えば普段の病棟業務も、指導医からの評価、インターン(1年目)であれば、2年目もしくは3年目のレジデントとの相互評価になります。日本と違ってweb basedの指導医からは実名ですが、レジデント同士は匿名の評価なので、悪いことを書かれると、おのずとPDからのレターのレベルも下がってしまいます。しかし、そこは日本人の勤勉さで日々真面目に働いていれば、とくに問題になることはありません。また年に1度、7~8時間ほど掛けてACP(American College of Physicians)の模試を受けるのですが、この点数も良いに越したことはないので、試験直前はMKSAP18で勉強しておきました。これは内科専門医試験の勉強にも使える教材ですが、内容は日本の専門医試験より格段に難しいです。私自身としては、真面目に働いてきたつもりで、模試の点数も悪くはなかったので、PDレターはStrongという評価だったようです(候補者には非公開で推薦者がウェブ上にアップロードするので、最後までレターの内容はわからない仕組みです)。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33987794/2)https://www.kinpodo-pub.co.jp/book/1806-8/Column画像を拡大するCOVID-19患者約9,500例の患者のデータを使用し、回復期血漿についてRで解析した論文が先日オンラインとなりました1)。結果はeven、RCTの結果に沿う形となりました。昨年は入院時の血清antibodyが陰性なら全員に使用していましたが、現在、私の病院では、high titerを免疫不全の場合のみ、と限定されています。今回2,000万行を超えるデータを扱う解析のためにRを一から勉強したのですが、この本2)が大変参考になりました。お勧めです。

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「シグマート」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第54回

第54回 「シグマート」の名称の由来は?販売名シグマート®錠2.5mgシグマート®錠5mg※シグマート注は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])ニコランジル(JAN)効能又は効果狭心症用法及び用量ニコランジルとして、通常、成人1日量15mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)(次の患者には投与しないこと)ホスホジエステラーゼ 5 阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者※本内容は2021年6月2日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年2月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「シグマート®錠2.5mg・5mg」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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第60回 スギ、亀田、セコム…。“ずる賢い”医療者たちの“抜け駆け”接種で垣間見えた病院経営のダークサイド

“抜け駆け”ワクチン接種で大騒ぎこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週は神宮球場にセ・パ交流戦のヤクルト−日ハム戦を観戦に行って来ました。ヤクルト球団に勤める友人に頼んで5,000人限定のチケットを確保、友人との2年ぶりのプロ野球観戦が実現しました。小雨降る中、カッパ、マスク、飲酒なしの観戦は、なかなか辛いものがありましたが、入団2年目、星稜高校出身の奥川 恭伸投手の好投を間近で観ることができ、満足の一日でした。観戦後、外苑前で一杯、と思ったのですが、当然ながらどこの飲食店もやっておらず、空きっ腹のまま現地解散になったのは少々残念でした…。さて、東京や大阪など9都道府県に出されていた緊急事態宣言が6月20日まで延長となりました。東京都、京都府、大阪府、兵庫県は4月25日からですから、実に2ヵ月近く緊急事態宣言下にあることになります。各地の新規陽性者数が引き続き高い水準であること、関西圏や北海道などで病床逼迫が続いていること、インドで発生した変異株の流行が懸念されること、などが延長の理由とされています。そんな中、医療従事者に続き、65歳以上の高齢者のワクチン接種が遅々として、ではあるものの進んでいます。予約電話がつながらない、高齢者には到底できないと思われるインターネット予約の煩雑さなどが話題となっていますが、まあ新しい試みには困難が付きものです。高齢者以外の一般人が打つころには、もう少しスムーズに予約ができるシステムになっていることを願うばかりです。今回は、高齢者接種が始まってから大騒ぎとなった”抜け駆け”ワクチン接種について考えてみたいと思います。スギ薬局を経営するスギホールディングス会長夫妻による地元・愛知県西尾市での”抜け駆け”接種未遂や、いくつかの市町村の首長の接種が話題となりましたが、先々週は亀田総合病院、先週はセコム医療システムの”抜け駆け”接種が週刊誌やTVなどで報道されました。ただ、それぞれの“抜け駆け”の意味合いや悪質性は微妙に異なっているようです。医療従事者よりVIPを優先した亀田総合病院千葉県鴨川市の医療法人鉄蕉会・亀田総合病院の”抜け駆け”接種は、週刊文春の5月27日号(5月20日発売)でスッパ抜かれました。同誌の報道によれば、東証一部上場のシステム関連会社、オービックの代表取締役会長夫妻(共に80歳代、東京都大田区在住)が、亀田総合病院に割り当てられた医療従事者枠の新型コロナウイルス・ワクチンを4月に接種していたとのことです。会長夫妻が接種した時点で、同病院の医療従事者の接種は完了していませんでした。おそらく、同病院の従業員によるタレコミで週刊文春が動いたのでしょう。同誌によれば、会長夫妻は同病院にとってのVIPであり、亀田医療大学の開学に際しての寄付など、毎年多額の寄付を行っているとのことです。会長夫妻への接種を勧め、医療従事者用のワクチンの使用を決めたのは、鉄蕉会理事長の亀田 隆明氏とされています。亀田総合病院は週刊文春に対し書面で「ご夫妻には亀田医療大学設立当初から理事にもなっていただき、以来個人として寄付をいただき何とか経営が成り立っています。(中略)ご夫妻の年齢を考慮し、早めのワクチン接種は不可欠と判断しました。(中略)当院職員の接種希望者全員分のワクチン確保の目途が立った上で、余剰分を使用しています。当院配布分の『対象となる医療従事者等』の枠を使用しました」と回答していますが、鴨川市以外の住民に、医療従事者用を自院で働くスタッフよりも先に打つのは明らかにアウトですね。なお、この件よりも前に発覚したスギ薬局の会長夫妻の接種未遂は、会長夫妻側から西尾市への強固な要請があったということです。夫妻は薬剤師の免許は持っているようですが現場には出ていないわけですから、こちらもアウトですね。亀田が位置する医療圏の高齢化、人口減は深刻さて、私は記者時代に何度も亀田総合病院を取材し、理事長の亀田氏にも取材を行ったことがあります。週刊文春は、亀田総合病院が、米週刊誌Newsweekが患者満足度などを基に毎年発表している「World's Best Hospitals 2021」で国内第3位にランクインしたことや、亀田氏が、2019年『カンブリア宮殿』(テレビ東京)に「革新経営者」として登場した、といった“明”の部分に触れていますが、地元の地銀や都銀などからの巨額な借り入れの存在や、医療以外の事業の失敗といった“暗”の部分は書かれていません。亀田氏はまだ副理事長だったバブル時代、関連企業で千葉県・幕張に「ホテルフランクス」を開業、ホテル事業に乗り出しましたが、結局失敗し、ホテルは売却に至っています。「革新経営者」は言い過ぎのような気もします。現在、亀田総合病院が位置する医療圏の高齢化や人口減は深刻で、病院経営にも少なからぬ影響を及ぼしているでしょうし、成田空港に近いことから力を入れていたメディカルツーリズムもコロナで開店休業状態でしょう。従業員のタレコミのリスクを負い、ルールを曲げてまでVIP(いわゆるパトロン)のワクチン接種を敢行しなければならないほどに、医療法人鉄蕉会の経営は苦しいのかもしれません。セコム役員が提携先の病院で接種と報道もう一つニュースになった“抜け駆け”接種は、セコムの常務で子会社・セコム医療システムの取締役会長である布施 達朗氏によるものです。5月21日、TBS(JNN系列)は警備大手セコムの役員である布施氏が、提携先の病院で“医療従事者向け”の新型コロナワクチンを接種していた、と報じました。この報道によれば布施氏は、千葉県松戸市の医療法人誠馨会・新東京病院で、3月13日と4月1日の2回、医療従事者向けに優先的に割り当てられたワクチンを接種したということです。JNNの取材に対し、セコム医療システムは「3月初旬に新東京病院から『ワクチンに余剰が出た』として、接種のお誘いを受けた」「布施会長は医師と席を同じにする機会も多く、接種の必要があるとの病院側の判断だったが、軽率であり、お断り申し上げるべきだった」とコメントしたとのことです。また、報道では、新東京病院では、ほかにも病院職員ではない取引先など、少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けたとされています。新東京病院は「セコムの病院」このケース、亀田と似ているようで構造はまったく違います。JNNの記者はその点もきちんと報道すべきだったと思いますが、気がついていなかった可能性もあります。報道では、ワクチンを接種したのは「提携先の病院」とされていますが、新東京病院は「セコムの病院」であり、布施氏は自分が“経営する”病院でワクチン接種を行ったのです。医療関係者なら既知のことだと思いますが、セコムは「提携病院」と称して多くの病院を実質的に経営しています。セコム医療システムはセコムのさまざまな医療事業を束ねる会社であると同時に、病院経営を行う会社でもあります。その先駆けは東京都世田谷区にある久我山病院で1992年から経営に当たっています。その後も経営が傾いたり、経営者が手放したりした病院などに支援の手を差し伸べてきました。その経営スキームはさまざまですが、基本、セコムが言う「提携」とは、債務保証を含む経営支援であり、土地や建物をセコムが賃貸したり、医療機器などをセコムの関連会社が販売・リースをしたりすると共に、医療法人に経営スタッフを送り込む、という仕組みになっています。かねてから循環器系が強かった新東京病院は、2006年にセコム医療システムの提携病院となり、2008年に前から提携法人であった千葉県の医療法人誠馨会が吸収し、現在に至っています。なお、セコムの提携医療機関はセコム医療システムのサイトで見ることができます。病院については現在、北海道から兵庫まで20病院が提携先となっています。札幌で有名な手稲渓仁会病院、あの長嶋 茂雄氏もリハビリをした東京都渋谷区の初台リハビリテーション病院も提携医療機関です。アウトとセーフの間、グレーの“抜け駆け”そう見てくると、「ほかにも病院職員ではない取引先などの少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けた」というのは、病院に出入りするセコムの関連会社の社員たちがワクチンの接種を受けた、と考えられなくもありません。善意で解釈すれば、関東地区の提携病院の中の基幹病院とも言える新東京病院でセコムの関連社員たちをまとめて受けさせ、出入りする病院で感染したり感染させたりすることを予防するのが目的であったとも考えられます。市町村の首長が優先接種の際に語る理由、「私は病院の管理者だから」というのと同じロジックです。新東京病院のホームページには「一部報道につきまして」として、今回の件について中村 淳病院長のお詫びの文章が掲載されています。そこでは「不当又は軽率な新型コロナワクチン接種はしておりません」として、「報道の一部にありました『非職員』というのは派遣業務、委託業者等で病院内部に頻回に出入りし、医療機関としての業務に携わっている者であり、患者さまにも接触する可能性のある方々です。医療従事者等に含まれうる非職員らを守るためにワクチンを接種したのではなく、あくまで病院内部で入院しておられる患者さまを守るために、通常医療を適正に提供するために」接種した、と弁明しています。他の病院では、クラークや清掃担当、そして首長も医療従事者として接種を受けているのですから、この接種はアウトとセーフの間、グレーだったと解釈できます。もっとも布施氏が既に病院にはほとんど赴かない立場だったとしたら問題ですが。 観客制限なし、マスクなしでビール飲みまくりの米国球場それにしても、日本のこのワクチン接種を巡るドタバタ振りはなんでしょう。この日曜(5月30日)、NHKBSでMLBのヒューストン・アストロズ対サンディエゴ・パドレスを観戦していたのですが、ヒューストンにあるミニッツメイド・パークはもはや観客制限はなく、ほとんどの観客はマスクなしで、ビールを飲みまくり観戦していました(州によって基準は違うようですが)。米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチンの接種を完了すれば、屋内外を問わず、マスクを着用しなくてもよいとする新たな指針を5月13日に発表(バスや飛行機、病院など混雑した屋内では引き続きマスク着用が求められる)、それがもう全米で浸透しつつあります。全米の1日の新規感染者はまだ2万人近くもいるのに、です。私も早くワクチンを打って、神宮球場恒例の「生ビール半額ナイター」に行きたい、と切に思ったこの週末でした。

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簡易懸濁法に合わせた薬剤への変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第37回

 2020年の診療報酬改定において、簡易懸濁法導入時の薬剤師の活動が評価され、経管投薬支援料が新設されました。簡易懸濁法を導入するには、服薬管理の手順の確認や問題点の整理など薬剤師の積極的な介入が必要です。今回は、簡易懸濁法導入の際に処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧症、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2認知症自立度IIIb処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.エスゾピクロン錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイント介入時の患者さんは、日中は怒りっぽい様子で夜間も大声を出し、食事などの介護拒否があるなど介護負担が大きい状況でした。また、嚥下機能も低下していて、服薬時に錠剤がそのまま口中に残っていることが多いため、施設職員がすべて粉砕して、食事に混ぜて服薬させていました。この施設では同様の理由で粉砕指示となっている施設利用者が半数を占めていたため、介護負担が大きく、粉砕時の曝露に不安を覚える職員も多くいました。そこで、主任介護士と相談のうえで簡易懸濁法導入のための勉強会とデモンストレーションを実施したところ、溶解が容易な口腔内崩壊錠に統一して懸濁投与にしたいという意向を聞き取りました。提案前の整理内容1)興奮を抑えるためにドネペジルの中止を検討ドネペジル錠5mgを入居前から長期的(開始時期不明)に服用していて、賦活化作用から過覚醒状態となっている可能性があると考えました。患者家族・施設側としても本人らしさを失うような治療は望んでいません。そこで、ドネペジルの治療効果よりも薬物有害事象の問題が大きいと考え、暴力行為などが問題になる前にドネペジルの中止を提案することにしました。2)口腔内崩壊錠への変更を検討簡易懸濁法導入のため、降圧薬とスタチンを当薬局採用の口腔内崩壊錠へ変更することを検討しました。ベニジピン錠4mg→アムロジピン口腔内崩壊錠5mg 1錠カンデサルタン錠4mg→オルメサルタン口腔内崩壊錠20mg 1錠アトルバスタチン錠10mg→ピタバスタチン口腔内崩壊錠2mg 1錠3)エスゾピクロン錠からゾルピデム口腔内崩壊錠への変更を検討粉砕したエスゾピクロン服用時の苦味あるいは起床時まで残る苦味が、不機嫌や食事拒否に影響しているのではないかと考えました。エスゾピクロンはゾピクロンと比較して苦味が軽減した薬剤ですが、依然として苦味を感じる患者は多いです1)。そこで、短時間作用型薬剤かつ口腔内崩壊錠のあるゾルピデムを提案することにしました。処方提案と経過訪問診療に同行し、ラウンド前の会議で医師に上記の提案を直接伝えたところ、1)のドネペジルの件は介護士との協議後に中止の承認を得ました。2)の口腔内崩壊錠への変更についても承認いただき、変更後のバイタル推移や患者さんの状況を慎重に確認していくことになりました。なお、事前に勉強会を行っていたこともあり、介護士の簡易懸濁の手技に問題はなく、患者さんからも好意的に受け入れられました。3)の提案については、エスゾピクロンの苦味が不機嫌や食事拒否につながるのは意外な悪影響だと注目され、変更して様子を見るという条件で承認を得ることができました。変更して1週間後には患者さんの易怒性や介護拒否はなくなり、介護負担も減少したことが介護士との会話で確認できました。血圧も乱れることなく140/80台で推移しています。肝心の服薬管理も簡易懸濁法導入により、粉砕・開封・食事への混入時の施設職員への曝露や薬剤ロスを減らすことができました。1)日病薬誌. 2017;53:192-196.

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MSのB細胞を標的とする治療薬発売/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマ株式会社は、多発性硬化症(以下「MS」)に対してわが国で初めてのB細胞を標的とする治療法であるオファツムマブ(商品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン)を発売した。 MSは、ミエリンの損傷、脳、視神経および脊髄の機能障害を特徴とする中枢神経系の慢性炎症性疾患。わが国のMS患者数は約1万5千人とされ、年々増加している。また、発症のピークは20歳代で、女性に多い疾患。MSは、再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(RRMS)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行する二次性進行型(SPMS)に移行する。進行期に移行すると日常生活に影響を及ぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられるようになる。また、認知機能障害が進み、雇用に影響をもたらすこともあり、日常生活において、次第に家族のサポートが必要となることから、進行の症状は患者のみならず家族の社会生活にも少なからず影響を与える指定難病である。日本初のB細胞を標的とした治療 今回発売されたオファツムマブは、ペン型デバイスを用いて月1回皮下投与で治療可能な完全ヒト抗CD20モノクローナル抗体で、主にリンパ節のCD20陽性B細胞表面に結合することにより、B細胞の融解および減少を誘発する、国内で初めてのMSに対するB細胞を標的とする治療法。B細胞はMSの障害進行の原因となる炎症性サイトカイン産生やT細胞の異常活性化を促すため、B細胞の除去がMSの効果的な病態修飾ならびに優れた臨床的有効性の発現につながると考えられている。また、B細胞は、MS病態における初期から進行期に至る一連の臨床経過ステージにおいて関与が示唆されていることから、幅広い患者に対して治療選択肢となることが期待されている。製品概要製品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン一般名:オファツムマブ効能・効果:下記患者における再発予防および身体的障害の進行抑制再発寛解型多発性硬化症疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症用法・用量:通常、成人にはオファツムマブ(遺伝子組換え)として1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。製造発売承認日: 2021年3月23日発売日:2021年5月24日薬価:20mg 0.4mL 1キット:230,860円製造販売元:ノバルティス ファーマ株式会社

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新型コロナ感染の後遺症リスクが高い人の特徴/BMJ

 新型コロナウイルス感染によって後遺症が出現することは多数報告されているが、重症度によって異なるのか、どんな人に起こりやすいのかなど具体的なことは不明だ。そこで、ユナイテッド・ヘルスグループOptumLabsに所属するSarah E. Daugherty氏らが新型コロナウイルス感染症の急性期後(回復期・慢性期)の後遺症発症リスクを調べた結果、「50歳以上」「既往あり」「新型コロナで入院」に該当する患者が最もリスクが高くなることを明らかにした。一方で、メンタルヘルスなどのいくつかの後遺症リスクは、年齢や既往歴の有無に関係なく増加することも示唆した。BMJ誌2021年5月19日号掲載の報告。 研究者らは、18~65歳における新型コロナウイルス感染症の回復期・慢性期に偶発的な後遺症を発症する超過リスクと相対危険度を調べるため、2019年1月から新型コロナウイルス感染症の診断日まで継続的に健康保険プランに登録されていた18〜65歳について後ろ向きコホート研究を行った。対象者を傾向スコアマッチングで調整後、3群(2020年群[新型コロナの診断がなかったもののPCR陽性または2020年に新型コロナで入院した18~65歳]、2019年群[2020年のパンデミック時に医療サービスの利用減少で発生する可能性のある確認バイアスを説明するために作成したグループ]、ウイルス性下気道疾患の既往群[過去にインフルエンザ、急性気管支炎などを発症した18~65歳])と比較し、新型コロナ急性感染後4ヵ月の超過リスクとハザード比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の14%(2万7,074例/19万3,113例)は、回復期・慢性期に治療を要する1つ以上の新たなタイプの後遺症があり、その割合は2020年群よりも4.95%高かった。・後遺症リスクは、50歳以上ではあらゆる症状において最も高かった。一方、18 ~ 34歳の若年成人では高血圧、不整脈、凝固亢進状態、記憶障害、糖尿病、疲労などが、いくつかの条件でわずかではあるが有意に上昇した(すべてのp<0.001)。メンタルヘルスを発症するリスクは、年齢に関係なく有意に増加した (相互作用のp=0.35)。・新型コロナウイルス感染に起因する超過リスクは、急性期から4ヵ月後の診断で100人あたり0.02~2.26と低かった(すべてのp<0.001) 。 研究者らは、「新型コロナウイルス感染の回復期・慢性期において、ほかのウイルス性疾患ではあまり見られない特定のタイプの後遺症を含む、臨床的に新しい後遺症を発症する過剰なリスクが示され、これは医療計画にも影響する」としている。

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日本の小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対するアリピプラゾールの52週間市販後調査結果

 大塚製薬のYuna Sugimoto氏らは、日本の実臨床現場における小児自閉スペクトラム症(ASD)患者の易刺激性に対するアリピプラゾールの安全性および有効性について、市販後調査のデータを用いて評価した。BMC Psychiatry誌2021年4月22日号の報告。 本市販後調査は、52週間の多施設プロスペクティブ非介入観察研究として実施された。6~17歳のASD患者に対し、実臨床下でアリピプラゾール1~15mg/日を投与した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者510例におけるアリピプラゾールの治療継続率は、168日(24週)目で84.6%、364日(52週)目で78.1%であった。・副作用が認められた患者は、116例(22.7%)であり、主な副作用は、傾眠(9.4%)、体重増加(3.3%)であった。・4週目における異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)の過敏症サブスケールスコアのベースラインからの変化量は-5.7±6.8(288例)であった。・重回帰分析では、注意欠如多動症の症状を併発した患者においても、エンドポイントのABC-J過敏症サブスケールスコアに影響は認められなかった。・24週目における子供の強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)の総合的困難さスコアのベースラインからの変化量は-3.3±4.9(215例)、SDQの向社会的な行動スコアのベースラインからの変化量は0.6±1.7(217例)であった。 著者らは「実臨床下において、日本人小児ASD患者の易刺激性に対するアリピプラゾール治療は、長期的に忍容性が高く、有効な治療法であることが示唆された」としている。

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高齢患者の術後の記憶力低下、CABG vs.PCI/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈血行再建術を受けた患者では、記憶力低下に関して、術式の違いによる差はないが、off-pump CABGはPCIと比較して、記憶力低下の割合が有意に高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のElizabeth L. Whitlock氏らの調査で示された。JAMA誌2021年5月18日号掲載の報告。HRSのデータを用いた後ろ向きコホート研究 研究グループは、CABGはPCIに比べ記憶力低下率が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で後ろ向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。 解析には、米国のHealth and Retirement Study(HRS)の参加者で、1998~2015年の期間に、65歳以上の年齢でCABGまたはPCIを受けた患者のデータを使用した。血行再建術施行前の最長5年間と、施行後の10年間または死亡、脱落、2016~17年の受診までのデータがモデル化された。最終フォローアップは2017年11月だった。 主要アウトカムは、記憶力スコア(点数が高いほど複合的な記憶機能が良好)とした。記憶力スコアは、HRSで2年ごとに行われた認知検査スコアと代理人による認知報告の要約指標であり、1995年に72歳以上であったHRS参加者のzスコア(平均値0、SD 1)として標準化された。on-pump CABGが認知機能に有益な可能性 1,680例(施術時の平均年齢75歳、女性41%)が解析に含まれた。CABG群が665例(off-pump手術168例、on-pump手術497例)、PCI群は1,015例であった。 PCI群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.064記憶単位/年(95%信頼区間[CI]:0.052~0.078)、施行後は0.060記憶単位/年(0.048~0.071)であった(群内の変化:0.004記憶単位/年[-0.010~0.018])。また、CABG群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.049記憶単位/年(0.033~0.065)、施行後は0.059記憶単位/年(0.047~0.072)であった(群内の変化:-0.011記憶単位/年[-0.029~0.008])。 差分の差分法による両群間の記憶力低下の差の推定値は0.015記憶単位/年(95%CI:-0.008~0.038)であり、有意差は認められなかった(p=0.21)。 一方、off-pump CABG群では、PCI群と比較して、記憶力低下率が統計学的に有意に増加した(差分の差分法によるoff-pump CABG施行後の記憶力低下率増加の平均値:0.046記憶単位/年[95%CI:0.008~0.084])が、on-pump CABG群はPCI群に比べ有意な増加は示さなかった(差分の差分法によるon-pump CABG施行後の記憶力低下率の減速化の平均値:0.003記憶単位/年[95%CI:-0.024~0.031])。 著者は、「PCIとCABGで、晩年期の認知機能の変化率に有意差がなかったことは、血行再建の方法が、その後の認知機能の老化の強力な規定因子ではないことを示唆する。また、off-pump CABGはPCIに比べ長期的な認知機能が劣っていたことから、on-pump CABGで達成された、より耐久性に優れ完成度の高い血行再建が、認知機能に有益な影響を与えるのではないかとの仮説がもたらされた」としている。

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