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心血管疾患へのアスピリン、用量による有効性・安全性の差なし/NEJM

 心血管疾患患者のアスピリン治療において、1日用量81mgは同325mgと比較して、心血管イベントや大出血の頻度について統計学的に有意な差はなく、投与中止や用量変更の割合は325mgで高いことが、米国・デューク大学のW. Schuyler Jones氏らが実施した「ADAPTABLE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年5月27日号に掲載された。適切な用量を無作為化試験で評価 研究グループは、心血管疾患患者における死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクを抑制し、大出血の発生を最小化する適切なアスピリンの用量を検討する目的で、実践的デザインの非盲検無作為化試験を行った(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。参加者の募集は、米国のPCORnetに参加する40施設において、2016年4月に開始され2019年6月に終了した。 各施設の電子カルテのデータから、アテローム動脈硬化性心血管疾患と確定された患者が選出された。被験者は、アスピリン1日1回81mgの投与を受ける群または同様に325mgの投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院の複合とし、生存時間(time-to-event)解析が行われた。安全性の主要アウトカムは大出血による入院とし、同様に生存時間解析で評価された。割り付け用量の曝露日数も325mg群で短い 1万5,076例が登録され、アスピリン81mg群に7,540例、同325mg群に7,536例が割り付けられた。全体の年齢中央値は67.6歳で、68.7%が男性であった。ベースライン時に、35.3%に心筋梗塞の既往歴が、53.0%に過去5年以内の冠動脈血行再建術の既往歴が認められた。 無作為化の前に、1万3,537例(アスピリン使用の事前情報が得られた患者の96.0%)がすでにアスピリンを投与され、このうち85.3%が81mg、2.3%が162mg、12.2%が325mgの連日投与を受けていた。追跡期間中央値は26.2ヵ月(IQR:19.0~34.9)だった。 有効性の主要アウトカムは、81mg群が590例(追跡期間中央値の時点での推定値7.28%)、325mg群は569例(同7.51%)で発生し、両群間に差はみられなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.91~1.14)。複合アウトカムの個々の構成要素(全死因死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院)にも、両群間に差はなかった。 大出血による入院(安全性の主要アウトカム)は、81mg群が53例(0.63%)、325mg群は44例(0.60%)で発生し、両群間に差は認めなかった(HR:1.18、95%CI:0.79~1.77)。 アスピリンの投与中止は、81mg群が7.0%、325mg群は11.1%で発生した。また、81mg群に比べ、325mg群は用量変更の頻度が高く(7.1% vs.41.6%)、割り付けられた用量のアスピリン曝露日数中央値が短かった(650日[IQR:415~922]vs.434日[139~737])。 著者は、「用量を時変共変量とする感度分析では、325mgの投与を継続した患者は経時的にイベント発生率が低下したが、無作為化後の他の分析と同様に、この分析にも患者の行動や医師の見解、アウトカムに影響を及ぼす可能性のある有害事象など多くのバイアスの寄与が考えられる」としている。

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ウパダシチニブ、ステロイド併用でアトピー性皮膚炎を改善/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブと副腎皮質ステロイド外用薬の併用は、プラセボと同外用薬の併用と比較して忍容性および有効性が優れ、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した「AD Up試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月20日号で報告された。22ヵ国171施設のプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む22ヵ国171施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年8月~2019年12月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国・AbbVieの助成による)。 対象は、発症から3年以上が経過し、Hanifin/Rajka基準で診断された中等症~重症の慢性アトピー性皮膚炎の成人(18~75歳)および青少年(12~17歳)であった。中等症~重症は、アトピー性皮膚炎が体表面積の≧10%、湿疹面積・重症度指数(EASI)のスコアが≧16点、担当医によるアトピー性皮膚炎の全般的な重症度の総合評価(vIGA-AD)のスコアが≧3点、最悪のかゆみの数値評価尺度(WP-NRS)のスコアが週平均値で≧4点と定義された。 被験者は、ウパダシチニブ15mg、同30mgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。全例が、副腎皮質ステロイド外用薬を使用した。投与期間は16週であった。担当医、試験施設職員、患者には、試験薬の割り付け情報が知らされなかった。 主要複合エンドポイントは、16週の時点におけるEASIスコアのベースラインから75%以上の低下(EASI-75)を達成した患者の割合と、vIGA-ADの奏効(スコア0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2点以上の改善)を達成した患者の割合とされた。EASI-75達成:65%、77%、26%、vIGA-AD奏効達成:40%、59%、11% 901例(成人785例、青少年116例)が登録され、ウパダシチニブ15mg群に300例(平均年齢32.5歳[範囲13~74]、18歳未満13%、男性60%)、同30mg群に297例(35.5歳[12~72]、12%、64%)、プラセボ群には304例(34.3歳[12~75]、13%、59%)が割り付けられた。 16週時に、EASI-75を達成した患者の割合は、15mg群が65%(194/300例)、30mg群は77%(229/297例)であり、プラセボ群の26%(80/304例)との補正済み群間差は、15mg群で38.1%(95%信頼区間[CI]:30.8~45.4)、30mg群では50.6%(43.8~57.4)と、双方の用量とも有意に改善した(いずれもp<0.0001)。 また、16週時に、vIGA-AD奏効を達成した患者の割合は、15mg群が40%(119例)、30mg群は59%(174例)であり、プラセボ群の11%(33例)との補正済み群間差は、それぞれ28.5%(95%CI:22.1~34.9)および47.6%(41.1~54.0)と、2つの用量とも有意な改善が認められた(いずれもp<0.0001)。 青少年の集団における有効性は、全集団で観察されたものと一致していた。 二重盲検期におけるウパダシチニブの2つの用量と副腎皮質ステロイド外用薬との併用は、いずれも良好な忍容性を示した。全体で最も頻度の高い治療関連有害事象は、ざ瘡、鼻咽頭炎、上気道感染症、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値上昇、頭痛、アトピー性皮膚炎であった。 ざ瘡は、15mg群(10%)および30mg群(14%)が、プラセボ群(2%)に比べて多かった。また、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(15mg群:1%、30mg群:1%、プラセボ群:2%)および重篤な有害事象(2%、1%、3%)の発生は、3群で同程度であった。死亡例の報告はなかった。 著者は、「これらのデータは、15mgと30mgの双方とも、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることを示している。2つの用量で統計学的な比較は行われなかったが、すべての重要なエンドポイントについて、30mgは15mgよりも、奏効例の数が一貫して上回っていた」としている。

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日本における認知症高齢者に対するエビデンスベースの作業療法の実践と影響要因

 日本では、認知症患者数が急速に増加しており、エビデンスベースの作業療法(EBOT)に対するニーズが高まっている。このEBOTについて、認知症に対する臨床的改善効果が報告されている。北海道大学の長谷川 愛氏らは、日本の認知症患者に対するEBOTの現在の実践状況を調査し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、検討を行った。Hong Kong Journal of Occupational Therapy誌2020年12月号の報告。 認知症患者の治療を行っている作業療法士432人を対象に、郵送にて匿名の自己報告アンケートを実施した。記述統計データを整理し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、重回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・アンケート回収率は、31.3%(135人)であった。・EBOTの実践頻度に関する質問に対し、頻繁(7段階のスケールで5以上)に実施していると回答した作業療法士の割合は、46.3%であった。・ステップワイズ法による重回帰分析を用いて、最もフィットしたモデルを選択した。・このモデルにより、β値の高い(影響力の強い)以下の3つの因子が抽出された。 ●科学的論文を理解する能力:β=0.419 ●情報取得方法の十分さ:β=0.214 ●アドバイスの利用可能性:β=0.158 著者らは「日本の認知症患者に対するEBOTの実践には、3つの因子が重要となる。作業療法士は、科学的論文の質を評価することのできる読解力の習得が求められる。また、さまざまな論文にアクセス可能な環境を整備し、上司や同僚などとの議論をする場を設けることが必要である」としている。

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新型コロナウイルスの感染性高める抗体を発見/大阪大

 大阪大学の荒瀬 尚教授ら研究グループは5月24日、COVID-19 患者由来の抗体解析により、新型コロナウイルスへの感染によって、感染を防御する中和抗体だけでなく、逆に感染性を高める「感染増強抗体」が産生されていることを発見したと発表した。感染増強抗体が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に結合することで、抗体が直接スパイクタンパク質の構造変化を引き起こし、その結果、新型コロナウイルスの感染性が高くなるというメカニズムで、この感染増強抗体が中和抗体の感染防御作用を減弱させることもわかった。Cell誌オンライン版2021年5月24日号掲載の報告。感染増強抗体は抗体依存性感染増強(ADE)とはまったく異なる新たなメカニズム 抗体はウイルス感染防御に重要な機能を担う一方で、逆に抗体によって感染が増悪する現象(抗体依存性感染増強:ADE)が見られることがある。ADEはデングウイルスなどで知られており、デングウイルス感染後、異なる型のデングウイルスに感染すると、最初の感染で産生された抗体により重症化する場合がある。こうした抗体による感染増強には、ある種の免疫細胞が発現しているFc受容体が関与していると考えられてきた。 本研究では、COVID-19 患者で産生される抗体の機能を解明するために、患者の免疫細胞から同定された76種類のスパイクタンパク質に対する抗体を解析。その結果、Fc受容体を介した抗体依存性感染増強とは異なり、ウイルス粒子に結合するだけで感染性をFc受容体非依存性に高める抗体が存在することがわかった。また、COVID-19患者における感染増強抗体と中和抗体を測定してその差を調べたところ、重症患者において感染増強抗体が高い傾向が認められた。一方、非感染者においても少量ながら感染増強抗体を保有するケースも見られ、そうした人では、感染やワクチン投与によって感染増強抗体の産生が高まる可能性が考えられるという。  さらに、感染増強抗体が中和抗体によるACE2結合阻害能を減弱させることも明らかになり、感染増強抗体が産生されると、中和抗体の効きが悪くなる可能性があるという。実際、感染増強抗体は新型コロナウイルスのヒト細胞への感染性を顕著に増加させていた。本研究結果は、これまでに知られていた抗体依存性感染増強とはまったく異なる新たなメカニズムが存在することを示唆している。 著者らは、「実際に感染増強抗体が体内で感染増悪に関与しているかはまだ不明であり、今後の詳細な解析が必要」としつつ、「中和抗体が十分効かない変異株に対しては、感染増強抗体が優位に作用する可能性があるため、将来的には感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン開発が必要になる可能性がある」と述べている。

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国内コロナ患者へのCT検査実施率とVTE発症の実態は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者での血栓症が世界的に報告されている。日本国内でもその状況を把握するために種々のアンケート1)2)が実施されてきたが、発症率や未診断症例(under-diagnosis)に関する詳細は不明であった。そこで、京都大学の山下 侑吾氏らは画像診断症例を対象にCOVID-19症例の静脈血栓塞栓症(VTE)発症の実態を正確に調査するレジストリ研究を実施した。その結果、以下4点が明らかになった。1)国内の現実臨床では、COVID-19症例に造影CT検査が実施される事はかなり少数だった。2)VTE発症について、軽症例では一例も認めなかったが、重症例では比較的高率だった。3)VTE発症例では、肥満やCOVID-19重症例の割合が多かった。4)VTE発症例と非発症例の生存退院の割合には有意差を認めなかった。また、肺塞栓症の重症度はすべて軽症だった。 この報告はCirculation Journal誌2021年5月20日号オンライン版に掲載された。研究概要と結果 本研究は、日本静脈学会および肺塞栓症研究会の有志「日本でのVTEとCOVID-19の実態調査タスクフォース」によって実施された医師主導の多施設共同の後ろ向き観察研究である。対象者は2020年3~10月に参加施設22件において、PCR検査でCOVID-19と確定診断された症例の中から、胸部を含む造影CT検査が実施された患者1,236例。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19症例の中で、造影CT検査が実施されていたのは45例(3.6%)だった。・そのうちの28例(62%)では、VTE発症を疑い造影CTが撮像されたていたが、残りの症例は別目的での撮像であった。・45例のうちVTEを認めたのは10例だった。COVID-19の重症度別では、軽症は0%、中等症は11.8%、重症は40.0%だった。・VTE発症例は非発症例と比較して、過体重(81.6kg vs. 64.0kg、p=0.005)かつBMI高値(26.9 kg/m2 vs. 23.2kg/m2、p=0.04)であり、人工呼吸器やECMOを要するような重症例の割合が有意に高かった(80.0%vs. 34.3%)。・一方、VTE発症例と非発症例で、退院時の生存割合に有意な差は認められなかった(80.0%vs. 88.6%)。・45例のうち30例(66.7%)には抗凝固薬が投与されていた(予防用量の未分画ヘパリン:46.7%、治療用量の未分画ヘパリン:30.0%、低分子ヘパリン:13.3%)。・VTE発症例において、入院からVTE診断までの日数の中央値は18日であり、50.0%の患者はICU入室中に診断された。残り50%の患者は一般病棟入室中に診断されていた。・8例(17.8%)に肺塞栓症を認めたが、肺塞栓症の重症度はすべて軽症例であった。しかし、5例(11.1%)に大出血イベントを認めていた。 研究者らは、「海外では、予防的な抗凝固療法の実施に関して、適切な対象患者、抗凝固療法の種類と強度、および投与期間などを検討するさまざまな報告が相次いでいる。日本の現場でも、画像診断の可否を含めどのように対応すべきか議論を進めていくことが重要と考えられる」と考察している。

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脳卒中後の上肢麻痺、“慢性期”でも回復の希望―リハビリの効果を底上げする神経刺激デバイス(解説:森本悟氏)-1399

 脳卒中診療は、近年血栓溶解療法や血栓回収療法、あるいは急性期・回復期リハビリテーションの発達により、機能予後の改善は着実にみられている。しかしながら、それでもなお、麻痺等の後遺障害が残存、数ヵ月以上を経て症状が固定し、いわゆる慢性期というそれ以上回復の望みにくいステージへと移行していく。 無論治療法がないわけではなく、脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019対応)において、脳卒中後の上肢機能障害に対するリハビリテーションは、慢性期であっても麻痺の程度に応じて、麻痺側上肢の強制使用や、特定の動作の反復を伴った訓練、あるいは電気刺激の使用が、(上肢機能障害に対して)行うよう勧められている。さらに、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電流刺激(tDCS)、robotic therapy(装着型サイボーグHAL(R)など)といった、新たな併用療法も登場し、患者の選択や安全面に配慮したうえで、上肢機能障害に対する治療選択肢として一部考慮しても良いことになっている。 このように、麻痺症状が固定した慢性期であっても、リハビリテーション治療の有用性というのは複数の根拠をもって示されている。 今回、過去の知見を踏まえ1,2)、スコットランドのグラスゴー大学らのグループから、108人の患者を対象として、迷走神経刺激デバイスを体内に埋め込み、リハビリテーション時に同時に神経刺激を行うことで、中等症から重症の障害を受けた上肢機能の改善幅が、リハビリテーション単独より有意に大きくなり、有害事象に関しても許容できるものであったと報告された。 治療の作用メカニズムとしては、迷走神経刺激を介したヘテロなシナプス伝達修飾(ノルアドレナリン作動性、コリン作動性、およびセロトニン作動性システムの活性化)により、リハビリテーション中という反復する短時間刺激でも、運動ニューロンの長期的なシナプス変化を促進する可能性が想定されている。 リハビリテーションがさまざまな原因による運動機能後遺障害に対して最も重要な選択肢であることは言うまでもないが、脳卒中や脊髄損傷等の外傷後障害に対する、新薬、デバイス、細胞治療についても、臨床試験や評価を行ううえで「リハビリテーション」+「新たな治療法」という枠組みが一般的となっている。 本治験結果は、その中でも対象としては最も治療が困難な「慢性期(当該治験では発症から9ヶ月〜10年の患者)」に対する「臨床的に意義のあるレベル(FMA-UEスコアのベースラインからの変化が6ポイント以上)」で改善効果を示したという点で、期待の持てるものであろう。6週間の施設内治療で改善がみられ、以降90日まで在宅でリハビリ+神経刺激療法を継続したところ、その効果は維持されていた。 ただし、本試験は90日までを評価対象としており、長期の機能改善持続効果、あるいは治療を中断した後の効果が不明なこと、さらには長期の反復する迷走神経刺激による有害事象については懸念材料である。 総括すれば、虚血性脳卒中による上肢運動麻痺に対する、最もハードルの高い慢性期治療に対して、在宅でも実施可能という簡便さと高いアドヒアランスを兼ね備えた、「リハビリテーション」+「埋め込み式神経刺激療法」という新たな治療選択肢のエビデンスが加わったといえる。今後さらに長期の使用成績が得られ、本邦でも心臓ペースメーカーや脳深部刺激療法といった広く使用されている体内埋め込み式デバイスと同様に、開発が進むことが期待される。

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第60回 コロナワクチン接種を優先すべき意外な職種とは?

海外に比べて接種率が低いと言われる新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種率だが、6月1日時点で医療従事者等と高齢者の1回目接種完了者合計は931万4,956回。現在のワクチン接種対象年齢から計算しても総対象者はほぼ1億2,000万人となるので、国民全体で見れば、接種率はまだ1割にも達していないことになる。政治主導で決まった1日100万回接種という目標に対して、現状(6月1日)で52万回強。政府は今月中に職域接種や大学での接種なども開始して目標達成を目指すとみられる。今回の接種で優先順位が最も高かった「医療従事者等」の接種回数は6月1日時点で1回目が465万3,566回、2回目が313万9,628回に達した。この括りでの優先接種対象者は約480万人と推定されているため、1回目接種の完了者はすでに9割超に達している。そして、約3,600万人と推計される高齢者のうち1回目接種が完了したのは620万人強で、ようやく6人に1人という計算だ。ところが、ここにきて国や地方自治体が設置した大規模接種会場では、すでに予約の空きも目立つことが報じられている。その典型が防衛省の運営する大手町の大規模接種センターで、東京都民の高齢者向けに用意した予約枠に空きが目立ったことから、周辺3県の高齢者の受付を前倒しした。こうした現象はほかの地域でも起きている。「仙台会場は予約に空き 大規模接種、1000人以上余裕ある日も」(河北新報)「大規模接種の予約「4割空き」 愛知で準備急ピッチ」(朝日新聞)「大阪市の大規模接種会場、予約埋まらず 利便性低い?」(日本経済新聞)大規模接種会場の予約に空きが出やすい主な理由は、会場のアクセスがあまり良くない、あるいはミスマッチな場所(大手町は現役世代にとってはアクセスが良いが、自宅を中心に生活している高齢者にとっては必ずしもアクセスが良いとは言えない)ためと言われる。ところがこうした予約の空きが報じられるたびに、市区町村の集団接種やかかりつけ医接種の予約者の一部がより早い接種に期待をかけて大規模接種会場に予約を入れ、結果的に二重予約になる問題が指摘されている。そして自治体側ではその予約取り消しに職員がさらに四苦八苦し、さらに一部の個別接種医療機関では逆にワクチン予約の空きが出て埋まらないという何とも酷な状況が起きている。すでに余剰ワクチンの扱いについては、前回、国も最終的には誰に接種しても問題なしという趣旨の通知を出したことを紹介している。ただ、各自治体とも接種券がまだ発行されていない住民や他の自治体の住民を接種対象とすると、後の事務作業が煩雑になることが予想されるためか、余剰ワクチン接種の対象者にも細かく優先順位を付けたりしているところが少なくない。たとえば、ネットメディアの「BUSINESS INSIDER」が記事公開している東京23区の余剰ワクチン対応もかなりまちまちだ。概して言えば、優先接種対象の高齢者で代わりを探す、高齢者の付き添い者、高齢者施設職員、小中学校教職員などが「次点」対象者となっている。ただ、私個人は医療従事者等の接種完了が見えてきたからこそ、高齢者以外の新たな優先接種の対象を設定すべきではないかと考えている。ちなみに最優先だった「医療従事者等」については、リンク先を見れば分かる通り、単純に医師や看護師だけでなく、広く新型コロナ患者に接する人が対象になっている。では、誰を新たな優先接種の対象とするべきかというと、それは「新型コロナ対応に欠かせない人」である。「『新型コロナ患者に接する人』と何が違うのか?」という人もいるかもしれない。だが、患者には接しなくとも対応に必要な人たちはいるはずである。私は次のニュースを見た時にまさにそう思ったのである。「札幌市コールセンターでクラスター 受付時間変更に」(テレビ朝日)札幌市が大手企業へ業務委託したワクチン接種予約のコールセンターでクラスターが発生したというもの。このニュースに対して一部では「民間に丸投げするからこうなる」との指摘もあるようだが、それは筋違いである。そもそも自治体側はマンパワーが不足しているから委託をせざるを得ないケースがほとんどだ。ちなみにこのケースは関係者によると、コールセンター内でのフェイスシールドやマスクの着用が徹底されていなかったことがクラスター発生の原因だったらしいが、そもそもこれらの人たちが1回でもワクチン接種を行っていれば、発生が避けられた可能性は十分にある。「たかだかコールセンター?」という人もいるかもしれないが、これからワクチン接種回数をより増やしていくためには、こうした人たちが安全に業務できる環境を整備することは重要である。また、実は各自治体などが設けている発熱相談コールセンターの担当者も実は優先接種対象者ではない。あるコールセンターで勤務し、医療従事者の国家資格も持つ人は「よく周囲から『あなたは優先接種対象なんだよね?』と聞かれますが、現時点で1回もワクチン接種をしていないと話すと、すごく驚かれます」と明かす。これ以外にもワクチンや医薬品を輸送する運送関係者や医薬品卸関係者も対象とはなっていない。新型インフルエンザ等対策特措法では国民生活や経済安定に資する業者として「特定接種」という対象を設け、これに医薬品卸関係者も入っているのだが、あくまで患者との接触の有無を前提に今回の優先接種対象からは外れている。また、自治体でワクチン接種などの関連業務に従事する公務員も自治体によってかなりワクチン接種状況が異なると言われている。有効なワクチンが登場してきたとはいえ、今も一旦感染すれば決定的な治療薬もないのが新型コロナの現状だ。しかも、こうした関連業務の従事者から感染者が報告されれば、二次感染に対する警戒レベルは高くせねばならず、当然ながら濃厚接触者追跡などもより厳格になる。そうすれば当然のことながらその業務がマヒする可能性が高まる。いずれにせよ、これらの人たちは大規模接種会場や個別接種医療機関の近隣の小中学校教職員よりも優先度が高い人であるはず。国や各自治体にはより現実的な対応を望みたいところだ。

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あのエクササイズゲームの治療効果は?

 任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journal誌オンライン版2021年4月22日号に掲載された。 近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。 40例の慢性腰痛患者を、経口薬単独群(男性12例および女性8例、平均年齢55.6歳)、経口薬に加えてRFAエクササイズを週1回40分行う経口薬+RFA併用群(男性9例および女性11例、平均年齢49.3歳)にランダムに割り付け、8週間にわたる治療の前後における、痛みと心理的スコア(痛みの自己効力感、痛みの破局的思考および運動恐怖症)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・経口薬+RFA併用群において、8週間後の腰痛、臀部の痛みおよび痛みの自己効力感が有意に改善された。・下肢のしびれ、痛みの破局的思考および運動恐怖症といった心理的スコアに有意な改善はみられなかった。・経口薬単独群では、8週間後の治療効果に変化は認められなかった。

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FGFR阻害薬ペミガチニブが胆道がん治療薬として発売/インサイト

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンは、2021年6月1日、選択的FGFR阻害薬ペミガチニブ(製品名:ペマジール)の販売を開始したと発表した。ペミガチニブは経口のFGFR阻害薬 ペミガチニブは経口のFGFRのチロシンキナーゼ阻害薬であり、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんの治療薬として、2021年3月23日に国内製造販売承認を取得している。 製品概要・販売名: ペマジール錠4.5mg・一般名: ペミガチニブ・効能・効果: がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道・用法・用量: 通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、 7日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態によ り適宜減量する。・製造販売元: インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社

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視神経脊髄炎治療薬イネビリズマブ発売/田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬株式会社は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)[視神経脊髄炎を含む]の再発予防」を適応症として2021年3月23日に製造販売承認を取得した、ヒト化抗CD19モノクローナル抗体イネビリズマブ(商品名:ユプリズナ点滴静注100mg)が2021年5月19日に薬価収載されたことを受け、6月1日に販売を開始した。イネビリズマブは半年に1回の長い間隔の治療薬 NMOSDは、日本での有病率が10万人あたり2~4人と低く、重度の再発を繰り返し致命的となり得る中枢神経系の自己免疫疾患。身体の免疫システムが、健康な細胞(一般的には視神経、脊髄および脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらす。その結果、眼の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下および呼吸不全を引き起こす。これらは再発を繰り返し、1回の再発で失明や車椅子生活に至ることもある。病態には、主に抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与し、NMOSD患者の約73~90%で抗AQP4抗体が検出されるとされる。 今回発売されたイネビリズマブは、抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞に発現するCD19というタンパク質に結合し、CD19陽性B細胞を循環血液中から速やかに除去することで、NMOSDの再発を予防する。NMOSD患者を対象とした日本を含むグローバル臨床試験において、イネビリズマブ投与により、主要評価項目である再発抑制効果が確認された。また、イネビリズマブ投与間隔が半年に1回という利便性から同社では「患者の生活様式に合わせた治療を可能とし、再発予防期のNMOSD患者に新たな治療選択肢が提供できる」と期待を膨らませている。イネビリズマブはすでに米国では2020年6月11日にNMOSDの適応で承認されている。イネビリズマブの製品概要製品名:ユプリズナ点滴静注 100mg一般名:イネビリズマブ(遺伝子組換え)効能・効果:視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防用法・用量:通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6ヵ月後に、以降6ヵ月に1回の間隔で点滴静注する薬価:100mg 10mL 1瓶 349万5,304円製造販売承認日:2021年3月23日薬価基準収載日:2021年5月19日発売日:2021年6月1日製造販売元:田辺三菱製薬株式会社

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心筋炎と心筋梗塞を簡便に鑑別できる新規miRNAを同定/NEJM

 心筋炎のマウスおよびヒトにおいて同定された新規マイクロRNA(miRNA)のヒト相同体(hsa-miR-Chr8:96)は、心筋炎患者と心筋梗塞患者の区別に利用できる可能性があることを、スペイン・国立心臓血管研究センターのRafael Blanco-Dominguez氏らが明らかにした。心筋炎は、冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA)と初期診断を受けた患者の最終診断となることが多く、心筋梗塞の基準を満たす患者の約10~20%にみられる。急性心筋炎の診断は通常、心内膜心筋生検または心臓MRIのいずれかが必要であるが、前者は侵襲的であり、後者はすべての施設で利用できるわけではない。そのため、新たな診断法が求められていた。NEJM誌2021年5月27日号掲載の報告。心筋炎または心筋梗塞モデルマウスのT細胞を解析 研究グループは、心筋炎に特異的なmiRNAを同定するため、マウスに実験的自己免疫性心筋炎または心筋梗塞を誘発した後、CD4陽性T細胞およびTh17細胞を分離してmiRNAマイクロアレイ解析と定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)解析を実施した。また、コクサッキーウイルスにより心筋炎を誘発したマウスから採取した検体でも、qPCRを実施した。 さらに、このmiRNAのヒト相同体を同定し、急性心筋炎患者の血漿における発現を、各種対照群での発現と比較した。心筋炎患者で確認され心筋梗塞患者では検出されないmiRNAを確認 炎症性サイトカインであるインターロイキン-17を産生するTヘルパー(Th17)細胞が、心筋炎の急性期における心筋損傷の特徴であることを確認した。Th17細胞により合成されるmiRNAのmmu-miR-721が、急性自己免疫性心筋炎またはウイルス性心筋炎のマウスの血漿中に存在することが確認されたが、急性心筋梗塞のマウスの血漿からは検出されなかった。 このmmu-miR-721のヒト相同体をクローニングし、hsa-miR-Chr8:96と名付けた。hsa-miR-Chr8:96は、心筋炎患者の独立した4つの患者コホートで特定された。血漿中hsa-miR-Chr8:96の検出による急性心筋炎と急性心筋梗塞の鑑別に関するROC曲線下面積は0.927であった(95%信頼区間[CI]:0.879~0.975)。年齢、性別、駆出率、血清トロポニン値で補正したモデルでも、このmiRNAの診断的価値が認められた。 なお著者は、このmiRNAは拡張型心筋症などの他の心疾患では評価されておらず、hsa-miR-Chr8:96の発現には大きなばらつきがみられたことなどから、「hsa-miR-Chr8:96が心筋炎の診断検査に適しているかを判断するには、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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低出生体重児、出生直後からのカンガルーケアで生存率改善/NEJM

 出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児において、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児は、従来ケアで状態が安定した後にカンガルーケアを開始した新生児と比較し、28日死亡率が低下した。72時間死亡率も、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児のほうが、有意差は認められなかったものの良好であった。WHO Immediate KMC Study Groupが、アフリカとインドの5施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。カンガルーケアは、母親または他のケア提供者が新生児を胸の上で抱き皮膚と皮膚を接触させるなどの新生児ケアの一種で、従来、低出生体重児(2.0kg未満)において状態安定後にカンガルーケアを受けた新生児は受けなかった新生児と比べ死亡率が低下することが示されていた。しかし、低出生体重児の死亡の大多数は、状態安定前に生じている。低出生体重児において出生後すぐにカンガルーケアを開始した場合の安全性と有効性は、これまで不明であった。NEJM誌2021年5月27日号掲載の報告。アフリカとインドの5施設で、3,211例の新生児と母親を対象に無作為化試験 研究グループは、ガーナ、インド、マラウイ、ナイジェリア、タンザニアの病院5施設において、出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児を、出生直後にカンガルーケアを開始する群(介入群)と、状態が安定するまで保育器やラジアントウォーマーで従来ケアを受けた後にカンガルーケアを開始する群(対照群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、新生児期(生後28日間)および出生後72時間以内の死亡であった。 計3,211例の新生児と母親が、介入群(1,609例)または対照群(1,602例)に無作為に割り付けられた。出生直後からカンガルーケア開始で、新生児期死亡も生後72時間死亡も減少 新生児集中治療室における1日の皮膚接触時間中央値は、介入群16.9時間(四分位範囲[IQR]:13.0~19.7)、対照群1.5時間(0.3~3.3)であった。 生後28日間の死亡は、介入群191例(12.0%)、対照群249例(15.7%)であり、介入群で有意に死亡リスクが低下した(死亡の相対リスク:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p=0.001)。出生後72時間以内の死亡は、介入群74例(4.6%)、対照群92例(5.8%)であった(死亡の相対リスク:0.77、95%CI:0.58~1.04、p=0.09)。 出生直後からカンガルーケアを受けた低出生体重児群で死亡率の低下が認められたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により試験は早期中止となった。

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がん通院中患者の新型コロナ抗体量は低値、投与薬剤によって差も/国がん

 国立がん研究センターとシスメックスは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500人のがん患者と1,190人の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した。 その結果、新型コロナウイルスの罹患歴のない対象では、がん患者、健常人共に抗体保有率は低く、両群で差がないことがわかった。一方、抗体の量は、健常人と比較し、がん患者で低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。 さらに、がん治療が抗体量に与える影響を検証したところ、細胞障害性抗がん剤を受けている患者では抗体量が低く、免疫チェックポイント阻害薬を受けている患者では高いことが明らかになった。同研究結果から、がんの合併、ならびにがん薬物療法が抗体量に影響を与える可能性が示唆された。 本調査結果は、JAMA Oncology誌2021年5月28日号(オンライン版)に掲載された。

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コロナワクチン接種の最新版手引き、対象拡大やモデルナが追記/厚労省

 厚生労働省は6月1日付で、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(3.0版)」を公開した。今回の改版では、ファイザー社のワクチン接種対象者が「16歳以上」から「12歳以上」へ変更となったことや、や、5月21日に特例承認されたモデルナ社のコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」についての記載などが追記された。 本改版の改訂内容は以下のとおり。・ファイザー社のワクチンのドライアイスを用いた保管方法について削除・ファイザー社のワクチンが2~8℃で1ヵ月保管可能になったことに伴う改訂・ファイザー社のワクチンの対象者が12歳以上の者になったことに伴う改訂・接種単価、超低温冷凍庫の適正使用、武田/モデルナ社のワクチン、基礎疾患を有する者の確認方法、電話や情報通信機器を用いた診療の活用、意思確認を行うことが難しい場合の対応、保冷バッグの取扱い、在宅療養患者等に係る対応、副反応疑い報告についての追記・接種順位、新型コロナワクチンの各社情報、予診票の様式の更新 手引き(3.0版)のほか、最新の臨時接種実施要領や予診票などは、厚生労働省のホームページに掲載されている。

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統合失調症患者における末梢炎症レベルの再定義~FACE-SZコホート研究

 統合失調症の予後には、末梢炎症が関連しているといわれている。高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は、日常的に最も使用されている炎症性バイオマーカーである。しかし、末梢炎症の有無を区分するための合意に基づくカットオフ値は、これまで明確に定義されていなかった。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、1mg/L未満の患者と比較し、治療転帰が不良であるかを検討した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月29日号の報告。 対象は、2010~18年にフランス国内の専門学術センター10施設が参加したFACE-SZコホート研究より抽出したhs-CRP 3mg/L未満の統合失調症患者。炎症の潜在的な原因、社会人口統計、疾患の特徴、現在の疾患重症度、機能、QOLを、FACE-SZ標準化プロトコールに従って収集した。 主な結果は以下のとおり。・580例が抽出され、そのうち226例に軽度の炎症(hs-CRP 1~3mg/L)が認められた。・炎症の潜在的な原因として、過体重と歯科治療の欠如が特定された。・これらの因子で調整した後、炎症の認められた患者は、検出値(hs-CRP 1mg/L)未満の患者と比較し、より重度の精神症状、抑うつ症状、攻撃性、機能障害を有していた。・喫煙や身体活動レベルとの関連は認められなかった。 著者らは「hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、炎症関連障害のリスクがあると考える必要がある。末梢炎症の原因をコントロールするうえで、減量や積極的な歯科治療の実施が、有用な戦略である可能性が示唆された。カットオフ値hs-CRP 1mg/L超は、統合失調症患者の末梢炎症の検出において、信頼できるマーカーであると考えられる」としている。

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厳格な降圧により心血管イベント抑制、しかし腎機能低下例は多い〜SPRINT追跡最終報告(解説:桑島巖氏)-1397

 収縮期血圧120mmHg未満の厳格な降圧が140mmHg未満の緩和降圧に比べて心血管イベントを有意に抑制するという結果を示した2015年発表のSPRINT試験は、世界のガイドラインに大きな影響を与えた。本論文はランダム化解除後、約8ヵ月延長された後のイベントを解析した追跡解析である。 主要エンドポイント(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死)の発生は、厳格治療群1.77%/年対緩和治療群2.40%/年(HR:0.75)、全死亡は各々1.06%/年対1.41%/年でいずれも厳格降圧群で有意に少なく、2015年のオリジナル発表と同じ結果であった。 急性腎障害の発生に関しては、厳格降圧群が緩和降圧群に比べて有意に多いことはオリジナル論文ですでに明らかになっていたが、可逆性であると解釈されていた。しかし今回の追跡では、eGFRが30%以上低下した腎機能低下例が厳格降圧群148例(1.39%/年)、緩和降圧群41例(0.38%/年)でHR 3.67と大幅に増えていることは注目すべきである。腎透析や腎移植にまで至った例は両群ともいなかったようであるが、実臨床にあたっては厳格降圧による心血管イベント抑制を目指す一方で、腎機能に配慮しながら慎重な個別的降圧治療が必要であることを示している。

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子供の眼に刺さったものランキング【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第188回

子供の眼に刺さったものランキングpixabayより使用もう救急現場からは遠のいてしまいましたが、研修医のとき眼外傷ほどこわいものはありませんでした。研修病院は、高速道路のインターチェンジの真横にあったので、たまに交通事故外傷が搬送されて来るんですが、私が人生で最初にみた高エネルギー外傷は、右腕がグニャグニャになったトラックの運転手でした。その人が「思ったほど痛くないッス」と私に話しかけてくれたのですが、その眼球に割れたミラーがブスっと刺さっていて、いまだに夢に出てきます……(ちなみに彼は元気に退院しました)。さて今日紹介するのは、子供の眼外傷に関する論文です。Guo Y, et al.Characteristics of paediatric patients hospitalised for eye trauma in 2007-2015 and factors related to their visual outcomesEye (Lond) . 2020 Jun 9. doi: 10.1038/s41433-020-1002-1.上海の単施設において、2007年1月~2015年12月の間に、眼外傷の治療を受けた16歳未満の子供の入院患者の診療録が収集されました。年齢、性別、外傷の種類、原因、合併症、入退院時の視力について調べました。合計2,211人の患児、合計2,231眼が登録されました。73.7%が男児で、61.2%が0〜6歳の子供でした。機械的な眼外傷は75.3%に見られ、なんと穿通性の損傷が59.8%に見られました。眼外傷の原因となったものは、はさみ(16.3%)、爆竹(8%)、鉛筆(4.9%)という結果でした。爆竹がランクインされるあたり、中国らしいなと思いますが、2倍以上の大差をつけて1位がはさみというのが怖いですね……。鉛筆もそうですが、そのままダイレクトに眼球に刺さるのを想像するだけでちょっと体が震えてしまいます。虹彩脱出、網膜剥離、眼内炎を起こしたケースでは、視力障害の予後不良と有意に関連していました。とにかく、はさみや鉛筆など、子供が触りそうなものには注意が必要です。今は「子供用」のはさみがあるので、日本では眼外傷は少ないと思いますが、鉛筆やペンなどの尖ったものは持たせないよう注意する必要があります。

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ゲームで英語学習、その後【Dr. 中島の 新・徒然草】(377)

三百七十七の段 ゲームで英語学習、その後大阪のコロナも、ようやく収束の兆しを見せています。新規感染者数の7日間平均は5月11日の851人から1週間ごとに641人、374人と減っていき、ついに6月1日には235人となりました。とはいえ、まだまだ油断禁物、気を引き締めなくてはなりません。さて、2021年4月8日の本欄で「ゲームで英語学習」という提案をしましたが、その後を報告させていただきます。まず、「ゲームで英語学習」で提案した内容を簡単に述べますと、英語版のゲームを夢中になってやりながら、知らないうちに英語が上達するという虫のいい話はないものか、というものでした。それから約2ヵ月して「これは結構いいんじゃないか?」と思うゲームに出会ったので、そのことをお話しさせていただきます。そのゲームの名前は、「ホームスケイプ」と「ガーデンスケイプ」です。名前が似ていることから想像できるように、この2つは姉妹ゲームです。主人公のオースチンが「ホームスケイプ」では実家の住み心地を改善し、「ガーデンスケイプ」では庭を整備していくわけです。前者ではオースチンが古くなった本棚とかソファを新しいものに取り換え、階段やフローリングの修理をして両親のために快適な家を実現しようと奮闘します。プレーヤーは、次々に出てくるミニゲーム(マッチ3ゲームなど)をクリアしてポイントを貯め、オースチンが家具を購入したり家を直したりするのを支援するわけです。実際に、このゲームを英語版(言語設定を英語にするだけ!)でやってみると、両親とオースチンとのやりとりなどが英語で表示されるので、英語圏の人たちの一般的な日常会話がよくわかります。とはいえ、やはり馴染みのない単語が頻繁に出てきます。たとえばbanister。これは階段の手すりのことで、オースチンが母親に「ママ、階段は修理したけど、手すりはまだできていないから使わないでね」と言う場面などに出てきます。同じように「ガーデンスケイプ」ではrakeという単語が出てくるのですが、これは落ち葉をかき集める熊手のことです。banisterもrakeも易しい単語なのに、受験英語では出てこないのが難しいところ。でもゲームでは何度も出てくるので記憶に残ります。この2つのゲームをスマホにダウンロードしてやってみると結構面白く、2~3時間があっという間に過ぎてしまいます。これにハマってしまうと危険なので、やめられなくなる前に削除しました。実際にやってみて感じたことですが、やはり「ゲームを通じて英語を学ぶ」というのと「英語版のゲームをする」というのは、少し違っているように感じました。前者は挑戦する部分が英語にあり、後者はあくまでもゲームにあります。なので、「ホームスケイプ」や「ガーデンスケイプ」を英語学習者向けに改造するとすれば、ミニゲームの難易度を下げる(現行版ではミニゲームで消耗する)英語表示の時間を少し長めにする(現行版では読み終える前に表示が消える)音声と英語表示を自由に選べるようにする(リスニング、リーディングをそれぞれに鍛える)が、目的にピッタリかと思います。誰か作ってくれませんかね。それにしても、家の修理や庭の整備にこんなに夢中になるとは、自分でも想像していませんでした。中毒性のあるゲームと英語に興味のある読者は、ちょっと覗いてみてはいかがでしょうか?最後に1句オースチン 家も庭も 手伝うぞ!

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