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アテゾリズマブ+化学療法の非小細胞肺がん脳転移例への効果(ATEZO-BRAIN)/WCLC2021

 脳転移はがんの合併症として多くみられ、治療やQOLに悪影響をおよぼす。 世界肺学会(WCLC2021)では、脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINが発表された。その結果、アテゾリズマブ+化学療法の脳転移を有する非小細胞肺がんへの有用性が示唆されている。アテゾリズマブと化学療法併用は脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに有用対象:脳転移病変未治療の非小細胞肺がん(PD-L1発現問わず、ステロイド[デキサメタゾン4mg以下/日]は許容)介入:アテゾリズマブ(1,200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+カルボプラチン(ACU5 ) 3週ごと4~6サイクル→アテゾリズマブ+ペメトレキセドを疾患進行まで、または最大2年間投与主要評価項目:治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)、安全性副次評価項目:奏効率(ORR)、奏効期間、全生存期間(OS)、QOLなど 脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINの主な結果は以下のとおり。・40例が対象として登録された。・患者の年齢中央値は62.6歳、男性72.5%、腺がんが97.5%を占めた。・有効性評価対象は24例、安全性評価対象は11例であった。・PFS中央値は8.9ヵ月、18ヵ月PFS率は24.9%であった。・頭蓋内PFS中央値は6.9ヵ月、18ヵ月頭蓋内PFS率は10.4%であった。・OS中央値は13.6ヵ月、2年OS率は32%であった。・Grade3/4の有害事象は27.5%、頻度が高いものは、疲労感、貧血、息切れ、悪心であった。 アテゾリズマブと化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン)併用は、脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに対して、良好な効果と安全性を示した。脳画像イメージと血液サンプルの関係を調べる試験が進行中である。

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全身性ALアミロイドーシスにダラキューロ承認/ヤンセンファーマ

 2021年8月、ヤンセンファーマは抗CD38抗体「ダラキューロ配合皮下注(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、以下ダラキューロ」について、全身性ALアミロイドーシス治療における承認を取得したことを発表した。今回の承認は、未治療患者を対象に、ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(CBD)療法に対するダラキューロの上乗せ効果を評価した第III相試験ANDROMEDAの結果に基づいたもの。同社は9月2日にメディアセミナーを実施し、日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木 憲史氏と石田 禎夫氏が、病態の特徴や新薬による治療の展望について講演を行った。 最初に鈴木氏が全身性ALアミロイドーシスの疾患の病態について講演を行った。ALアミロイドーシスは血中にアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が発現し、全身のさまざまな臓器に沈着して機能障害を起こす病気の総称で、死因は心臓死が多くを占める。日本では年間530人ほど、人口100万人あたり4.2人が罹患し、国内の総患者数は3,000人程度とされる指定難病である。 鈴木氏は「進行すると予後は悪く、透析が必要となる患者も多い。早期診断、早期治療が非常に重要だが、多くの医師は一生に一人の患者を診るかどうかで見逃されがち。確定診断までに診察した医師の数が5名以上の患者が30%いるなど、診断が遅れて悪化するケースが多い」と説明した。 さらに新規罹患者数について「指定難病の登録数は530人ほどだが、診断されずにいる人や診断されないまま亡くなる人もいると思われ、実際は年間800人ほどではないか」とした。「初診の主訴はむくみや舌肥大であることが多く、整形外科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、そして一般内科医にこの疾患を知ってもらい、早期発見につなげたい」とし、下記のような原因不明の症状がある患者には、血清フリーライトチェーンの検査を行って欲しい、と述べた。【診断時の主な臨床症状】心臓/うっ血性心不全、不整脈腎臓/尿蛋白、ネフローゼ症候群肝臓/肝肥大、肝不全消化管/難治性下痢、下血消化管穿孔イレウス神経/低血圧、神経障害その他/舌肥大、眼周囲の内出血【診断確定には】・骨髄で単クローン形式細胞の証明、腹壁脂肪組織と骨髄生検でのアミロイド検出、血清フリーライトチェーン(FLC)のκ/λ比で確定 続いて石田氏が、「従来の全身性ALアミロイドーシスの治療はメルファラン+デキサメタゾンまたは自家末梢血幹細胞移植で、移植不適の患者にできることは限られていた。ANDROMEDA試験の結果では、心アミロイドーシスや高齢者など予後不良が予測される群でも高い有効性が報告されており、さらに自家末梢血幹細胞移植における完全奏効(CR)+部分奏効(VGPR)率は70%前後なのに対し、ダラキューロ上乗せ群は79%と同等以上で、今後は日本を含めた世界のALアミロイドーシスの移植不適患者に対する標準療法はCBD+ダラキューロになり、移植適応患者にも導入療法として検討されるだろう」とまとめた。

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mRNAワクチン後の心筋炎、日本でも10~20代男性で多い傾向/厚労省

 ファイザー社および武田/モデルナ社ワクチン接種後、アナフィラキシーは若年女性で、心筋炎関連事象については若年男性で報告頻度が高いことが示された。9月10日開催の第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会と合同開催)の報告より。同会では他に使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている該当ロットの武田/モデルナ社ワクチン接種後死亡例についての現時点での評価結果、継続実施中のコホート調査の最新結果も報告された1)。接種後のアナフィラキシー、現在の発生状況 ファイザー社ワクチンについて、製造販売業者からアナフィラキシー疑いとして報告された件数は8月22日までの集計で24件(100万回接種当たり)と、前回報告から変化はなかった(米国では7月22日までの集計で5.0件/100万回、英国では8月25日までの集計で12.1件/100万回)2)。 武田/モデルナ社ワクチンについては、同様に8月22日までの集計で12件(100万回接種当たり)と、前回より2件増加したがほぼ変化はなかった(米国では7月31日までの集計で4.9件/100万回、英国では8月25日までの集計で15.5件/100万回)。 今回公開された年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンは30代女性で30.2件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンは20代女性で6.7件/100万回と最も高く、若年女性で多く報告されている。心筋炎は10~20代男性で頻度高い傾向、必要な注意喚起は? 心筋炎関連事象疑いとして報告されたのは、ファイザー社ワクチンが前回より3件増の62件、武田/モデルナ社ワクチンが前回より14件増の27件であった。100万回当たりの件数はファイザー社ワクチンが0.6件、武田/モデルナ社ワクチンが1.6件となっている2)。 年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンが20代男性で7.7件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンが10代男性で17.1件/100万回と若年男性で最も高くなっている(ただし、現状10代の推定接種回数は他年代と比較して低い点に留意が必要)。なお、参考資料として提示されたCOVID-19感染者の心筋炎関連事象者数は、15~40歳未満男性で推計834件/100万回となっている。 国内の心筋炎関連事象疑いの報告事例においては、因果関係が疑われている若年男性に係る事例では、引き続きほとんどの事例で軽快または回復が確認されている3)。2回目接種後数日以内に発症する若年の男性での報告が多いこと、典型的な症状としてはワクチン接種後4日程度の間に、胸痛や息切れが出ることが想定されることから、こうした症状が現れた場合は医療機関を受診することを厚労省のWebサイト(Q&A)4)等で注意喚起を行っている。遅延性の皮膚反応はファイザー社ワクチンでも 武田/モデルナ社ワクチン後に報告されていた遅延性の皮膚反応が、ファイザー社ワクチンにおいても1回目接種後0.23%にみられ、40~50代女性に多くみられたことが報告された。継続的に実施されている「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」から、伊藤 澄信氏(順天堂大学)が報告した5)。 ファイザー社ワクチン後に健康観察日誌が回収できた1万9,783人中46人(0.23%)で1回目の接種後に遅延性の皮膚反応が報告され、40代女性で0.52%、50代女性で0.45%と多い傾向がみられた。平均消失日は12.8±2.7日、10日時点の最大径は9cmであった。 なお、同武田/モデルナ社ワクチン接種者への調査では、1万29人中195人(1.94%)で報告されており、平均消失日は12.5±2.3日、10日時点の最大径は30cmであった。該当ロット接種後の死亡例、現時点での評価結果 使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている武田/モデルナ社ワクチンの3つのロットのうち、異物混入は報告されていないものの、同時期に同じ設備で製造されたロットの1つ(3004734)において、3例の死亡例が報告されている。うち38歳男性について死因が判明し、致死性不整脈であったと報告された6)。 専門家による因果関係評価ではγ(情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの)とされ、「剖検の結果、急性死が示唆されること、死因に影響を及ぼす損傷を認めず中毒学的にも異常を認めないことから死因は致死性不整脈と考えると報告されており、ワクチンの影響は不明とされている。致死性不整脈は確認されたものではなく除外診断であり、ワクチンと死亡との因果関係については評価不能である。使用ロットに異物混入があったとした場合に異物が本症例の死亡に与えた影響についても同様に評価不能である」とされている。 他2例については剖検結果待ちおよび死因検索中で死因は判明していない。参考文献・参考サイトはこちら1)第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料2)資料1-7-1 副反応疑い報告の状況について3)資料1-7-2 副反応疑い報告の状況について(報告症例一覧)4)厚生労働省新型コロナワクチンQ&A「ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか。」5)資料2(スライド1~26)新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(13)6)資料1-6-1 モデルナ筋注使用見合わせロットに係る副反応疑い報告(死亡)の状況

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コロナワクチン後の重篤疾患、接種3週までのリスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン安全性サーベイランスデータの中間解析において、重篤な疾患の発生リスクはワクチン接種後1~21日間(リスク期間)と22~42日間(対照期間)とで有意な差はないことが示された。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアのNicola P. Klein氏らが、Vaccine Safety Datalink(VSD)に登録された620万人、1,180万回の接種に関するデータの解析結果を報告した。COVID-19ワクチンの安全性サーベイランスは、安全性の確保、信頼性の維持、および政策への情報提供に重要である。JAMA誌オンライン版2021年9月3日号掲載の報告。米国のワクチン安全性監視システムのデータを用い23疾患の発生を解析 研究グループは、米国のワクチン安全性監視システムであるVSDに参加している8つのヘルスプラン組織(Kaiser Permanente Colorado・Northern California・Northwest・Southern California・Washington、Marshfield Clinic、HealthPartners、Denver Health)の包括的な医療記録を用い、2020年12月14日~2021年6月26日の、mRNAワクチン接種後の重篤なアウトカムについて解析した。解析対象は12歳以上のワクチン適格者1,016万2,227人で、対象ワクチンはBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)またはmRNA-1273(Moderna製)とした。 主要評価項目は、急性散在性脳脊髄炎、急性心筋梗塞、虫垂炎、ベル麻痺、脳静脈洞血栓症、痙攣・てんかん、播種性血管内凝固症候群、脳炎/脊髄炎/脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、免疫性血小板減少症、川崎病、心筋炎/心膜炎、肺塞栓症、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、血小板減少を伴う血栓症、血栓性血小板減少性紫斑病、横断性脊髄炎、静脈血栓塞栓症、急性呼吸促迫症候群、アナフィラキシー、多系統炎症性症候群、ナルコレプシー/カタプレキシーの計23疾患の発生である。 ワクチン(1回目または2回目)接種後1~21日間をリスク期間、接種後22~42日間を対照期間として、同じ暦日に各期間に該当する接種者について、対象疾患の発症リスクを比較した。ポアソン回帰法を用い、年齢、性別、人種/民族、ヘルスプラン、暦日で調整した率比(RR)を算出した(有意水準は片側p値<0.0048)。なお、急性呼吸促迫症候群、アナフィラキシー、多系統炎症性症候群、ナルコレプシー/カタプレキシーの4疾患については記述的解析のみ実施した。重篤な疾患の発生リスクは、接種後1~21日間と22~42日間で有意差なし 2020年12月14日~2021年6月26日の期間に、620万人(平均年齢49歳、女性54%)に対して、mRNAワクチンが計1,184万5,128回接種された。BNT162b2が675万4,348例(57%)、mRNA-1273が509万780例、1回目接種が617万5,813例、2回目接種が566万9,315例であった。 リスク期間vs.対照期間での100万人年当たりのイベント発生率は、虚血性脳卒中が1,612 vs.1,781(RR:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.08)、虫垂炎が1,179 vs.1,345(0.82、0.73~0.93)、急性心筋梗塞が935 vs.1,030(1.02、0.89~1.18)であった。ワクチンとイベント発生との関連性については、すべての対象疾患において事前規定の有意水準を満たさなかった。 確認されたアナフィラキシーの発生率は、BNT162b2ワクチン100万回当たり4.8(95%CI:3.2~6.9)、mRNA-1273ワクチン100万回当たり5.1(3.3~7.6)であった。

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高齢者への心房細動スクリーニングでイベント発生減/Lancet

 心房細動のスクリーニングは、標準ケアと比較し、わずかではあるもののネットベネフィットがあり、高齢者におけるスクリーニングは安全で有益であることが示された。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のEmma Svennberg氏らが、高齢者を対象とした心房細動スクリーニングの有用性を検証した多施設共同無作為化非盲検比較試験「STROKESTOP試験」の結果を報告した。心房細動は虚血性脳卒中の主な原因であり、心房細動の早期発見により抗凝固療法による虚血性脳卒中および死亡の減少が期待できるが、十分なエビデンスがないという。Lancet誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。75~76歳の高齢者をスクリーニング群と対照群に無作為化 研究グループは、スウェーデンのハッランドおよびストックホルムに居住している75~76歳の全住民を、心房細動のスクリーニングに招待する群(スクリーニング群)と対照群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 スクリーニング群は、地元のスクリーニング施設を受診し、心房細動の既往歴がない参加者は携帯型心電図を用いて1日2回14日間、心電図を記録。心房細動が検出された参加者、あるいは未治療の心房細動を有する参加者には、経口抗凝固薬を用いた治療が開始された。対照群は、介入せず通常ケアのみとした。 主要評価項目は、虚血性/出血性脳卒中、全身性塞栓症、入院を要する出血および全死亡の複合エンドポイントであった。無作為化された全参加者を、最低5年間追跡し、intention-to-treat解析を行った。スクリーニング群で対照群より有意にイベント発生率が低下 2012年3月1日~2014年5月28日の期間に、2万8,768例がスクリーニング群(1万4,387例)または対照群(1万4,381例)に無作為に割り付けられた。試験への招待前の死亡または移住により、スクリーニング群408例、対照群385例が除外となり、解析対象はそれぞれ1万3,979例および1万3,996例であった。 スクリーニング群では、1万3,979例中7,165例(51.3%)がスクリーニングを受けた。 追跡調査期間中央値6.9年(IQR:6.5~7.2)において、主要評価項目のイベント発生率は、スクリーニング群が31.9%(4,456/1万3,979例)(100年当たり5.45件、95%信頼区間[CI]:5.52~5.61)、対照群が33.0%(4,616/1万3,996例)(5.68件、5.52~5.85)であり、スクリーニング群が有意に低かった(ハザード比:0.96、95%CI:0.92~1.00、p=0.045)。

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タクシー暴走事故に思う【Dr. 中島の 新・徒然草】(392)

三百九十二の段 タクシー暴走事故に思う9月11日、東京都千代田区で信号待ちをしていたタクシーが、発進後に歩道を暴走して自転車や歩行者をはね、さらに街路樹に衝突して大破した、という事故がありました。この事故で歩行者1人と64歳のタクシー運転手が死亡し、タクシーの乗客を含む4人が重軽傷という大変な事になっています。目撃者によれば、タクシー運転手は信号を待っているときに下を向いており、青になっても発進しなかったため、後方からクラクションを鳴らされ、その後、暴走してしまったそうです。運転手の死因はくも膜下出血で、タクシーの表示灯にはSOSが点灯されていました。以下、少し脳外科的に考えてみます。すべてニュース報道を基にした推測になることは御了承ください。おそらくこの運転手は、未破裂脳動脈瘤をもっており、この動脈瘤が破裂してくも膜下出血を来したのではないかと思われます。読者の皆さんが御存じのように、くも膜下出血というのは突然の激しい頭痛で発症しますが、いきなり意識障害になってしまうことも珍しくありません。有名人でいえば、2010年に巨人軍の木村拓也コーチが試合前の練習中に倒れて意識不明になり、そのまま死亡したということがありましたが、あれがまさにくも膜下出血です。とはいえ、激しい頭痛にもピンからキリまであり、意識障害の程度もさまざまで、発症様式は個々人で違っています。時には、最初に脳動脈瘤の軽い出血で頭痛が起こり、しばらくしてから再出血し、激しい頭痛と共に意識障害が起こることもあります。今回の運転手に起こった状況を推理してみると、信号待ちの間か直前にくも膜下出血が起こってその頭痛に耐えていたところ、青信号で後ろからクラクションを鳴らされて慌てて発進させたと同時に再出血で意識不明となってアクセルを踏みっぱなしになったのではないかと考えます。「意識不明になったら足の力が抜けて、アクセルも緩むのではないか」という疑問を持つ方もおられることと思います。もちろん多いのはアクセルが緩む方で、フラフラとガードレールにぶつかって軽い自損事故というのが典型的ですが、中には踏みっぱなしになるのか暴走してしまうこともあります。なので、今回もこのパターンではなかったかと思います。くも膜下出血は前兆なく突然発症するので、自動車の運転中に起こっても不思議ではありません。私が自分で治療したり、カンファレンス等の検討対象となったりした運転中のくも膜下出血症例は、正確には数えてはいませんが、通算で10件以上あるのではないかと思います。世間に知られていないだけで、あまり珍しくないということですね。で、このような悲劇を防ぐにはどうすればいいのでしょうか? 結論から言うと、完全に防止するというのは無理であり、各自が色々な方法でリスクを下げる、というのが現実的ではないかと思います。まず、運転手の立場としては、自らが未破裂脳動脈瘤を持っているか否か、脳ドックなどで診断し、破裂予防のための手術を受けておく、というのが1つの方法です。とはいえ、手術も100%安全だというわけではなく、治療後に死亡したり合併症による後遺症を負ったりということが一定の確率で起こります。なので、未破裂脳動脈瘤が見つかったとしても、破裂リスクの低いものは治療せず経過観察に留めることもよくあります。次に歩行者の立場としては、いつ車が暴走してはねられるかわからないので、周囲に気をつけておく、ということが考えられます。周囲に注意を払っていたからといって、必ずしも暴走する車を避けられるとは限りませんが、少しははねられるリスクを下げることができるでしょう。逆に、スマホを見ながら歩いて注意散漫というのは避けるべきです。さらに乗客の立場で考えると、自分が乗っているタクシーの運転手が突然意識不明となり、暴走するということもあり得るということです。そうなった場合、後ろから手を伸ばしてギアやセレクターレバーを操作して車を停止させるというのもなかなか難しいので、何かに衝突したときのことを考えて、車内のアシストグリップを握りしめて、衝撃に備える、というのが現実的かもしれません。最後に自動車メーカーの立場です。安全装置の開発により、運転手が意識不明になっても暴走しない車をつくる、ということが望まれます。それでも100%事故を防ぐことは難しく、事故の確率を下げたり、事故によるダメージを減らしたりする程度になるかと思います。結局、どのような立場においても事故やダメージを完全に防ぐことは難しく、各自がそれぞれにリスクを減らすということに留まることでしょう。あまり画期的な話ではありませんが、すべからく世の中はそうなっているわけです。皆がリスク低減を心掛け、その積み重ねによって大きな悲劇を1つでも2つでも防ぐことが大切だと思います。亡くなった方の御冥福をお祈りいたします。最後に1句歩行中 四方八方 注意せよ

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それ、本当に「あなたにしかできない仕事」ですか?【今日から始める「医師の働き方改革」】第3回

第3回 それ、本当に「あなたにしかできない仕事」ですか?医療の現場はチームワークで成り立っています。医師、看護師、理学療法士、薬剤師、メディカルクラークなど、さまざまな専門職の人が働いています。資格がないとできない業務もありますが、そうでないものもあります。こうした「チームで動く現場」では、いかに美しい「パス回し」ができるかが重要です。さまざまな人が自分の業務を受け取り、次の人に回し、お互いの専門領域を尊重しながら業務を行います。ただ、実際は情報連携がうまくいかなかったり、相手が期待していた動きをしてくれなかったりで、パス回しがうまくつながらないことも…。その原因の多くが「誰がやってもよい仕事」の認識が異なっていたり、「情報連携の手法」が噛み合っていなかったりすることです。今回は「それは誰であればできる仕事か」について考えてみます。前回は、自分の業務時間の配分を可視化しました。その時に使ったエクセルや付箋を基にします。やっていない方は前回の内容を参考にトライしてください。各業務が書かれた隣に、「それは誰であればできる仕事か」を追記します。エクセルであれば新しい列を加え、付箋であれば隣に新しい付箋を追加します(表1)。表1他の専門職や専門職以外のスタッフが行える業務を、医師など最も多忙な人が引き受けてはいないでしょうか。そうした状況があれば、それはなぜなのかを考えます。その人にしかできない事情があるのか、伝統的にそうなっているのか…。もちろん医療行為などは該当する資格を持つ専門職が担当しますが、診療現場ではカルテを書く、準備する、事務作業など、「訓練すれば誰でもできる業務」が多く発生します。これらの、一見すれば「誰でもできる業務」は仕事の流れによってできる人が担ったり、明確なルール決めがなく、人によってやり方が異なっていたりして業務効率を下げています。こうした業務に対する判断基準やルールを設け、「“真の意味で”、誰でもできるようにする」ことが重要です。業務過多になっている人の業務を、他の人が担うこと。これが「タスクシフティング」です。業務リストができたら、他の人に渡せる業務があるかを探していきましょう。タスクシフティングを行うべきかどうかは、次の3つの視点で判断します。(1)他の人でもできる業務か(2)他の人が担うことでチーム全体の業務時間を削減できるか(3)短期的だけでなく、中長期的なメリットがあるか(1)ここで言う「他の人」とは同じ専門職の他のメンバーも含みます。(2)該当者の業務だけが減ればよいわけではなく、長期的にチーム全体の労働時間の削減に寄与するかを見る必要があります。(3)働き方改革はその場しのぎの時間削減策ではなく、少し先のチームのあり方も考える必要があります。単純に「仕事ができる人」や「業務に慣れたベテラン」が動くだけでは、若手の育成が進まず、ますます業務が属人化します。教育という観点を入れ、最初は少し時間がかかっても若手に習熟してもらい、誰もが同じ業務をできるようにすることで、中長期的なチームの業務時間を削減できます。医師の働き方改革は1、2年やって終わりではなく、2035年に向けて業務全体を効率化していくことが求められます。「まだ10年以上先だから」と考えるのではなく、今のうちに後輩を育成する仕組みを整え、全体の底上げを図る必要があります。チームメンバーと一緒にタスクシフティングを検討する場合は、「同じ名前の業務なのに人によってかかる時間が大幅に異なるもの」に注目してください。そこに効率化のヒントが隠れている場合が多いのです。長崎大学病院の場合、「当直」として行う業務内容が医師ごとに大幅に異なっていました。そこで「当直」の業務とは具体的に何なのか、という観点で話し合いを行いました。当直の医師が担う業務を具体的にしていく中で、各医師の価値観が見え、どこまでが「当直」の業務なのか、という共通基準をつくることができました。今回紹介した3つのポイントを確認し、「その業務は誰が行うとよいのか」を考えましょう。具体的にどのように業務をシフトするとよいかについては、再度長崎大学病院の例を踏まえ、別の回でご紹介します。

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第75回【特集・第6波を防げ!】在宅療養者の急変・死亡回避のカギを握る“幽霊病床”

政府は緊急事態宣言を9月30日まで延長する一方、「ワクチン・検査パッケージ」により、11月頃をめどに、宣言が発令されている地域でも飲食やイベントなどの制限を緩和する方針を明らかにした。宣言解除後のリバウンドで感染者数が増え、医療の逼迫に拍車を掛けることにならないのか。11月は衆議院選挙の時期と重なる。行動制限の緩和を政府与党の“好材料”にしようとしているのかと勘繰りたくなる。医療従事者にとって気懸りなのは、インフルエンザの時期と重なることだろう。2020年秋から21年春のインフルエンザシーズンでは、感染者数は例年に比べて大幅に減った。コロナ禍で多くの人がマスクや手洗い、消毒液を使う習慣が、インフルエンザの流行を抑えたと見られている。今シーズンも同じ状況が続けば、コロナ禍での医療機関のさらなる負荷は避けられるだろう。ワクチンの入院予防効果は90%以上リバウンドによる感染者増の影響はどうか。ワクチン接種率が米国並みに進む中、希望するすべての人への接種が政府の目標通り10~11月までに完了すれば、感染者数が増えたとしても、重症数や死亡者数を抑えられることが想定される。デルタ株に対するファイザー社やアストラゼネカ社のワクチンの入院予防効果は90%以上と報告されている1)。接種後に時間の経過とともに抗体が減り、ウイルスの感染を防げなくなったとしても、細胞性免疫による重症化予防効果は保たれているからだ。また、ワクチン接種に加え、治療薬でも感染者数の増加を抑えられれば、医療の逼迫を防げる。米メルクなどが開発を進めている新型コロナ治療薬が承認されれば、重症化リスクのある人に処方することで、重症者数は一層減ることが予想される。メルクの日本法人MSDは、軽症者向けの経口薬「モルヌピラビル(一般名)」の最終段階の治験を進めている。メルクは、低所得国向けにはパテントを放棄し、インドのジェネリック医薬品メーカーが製造・販売することを表明している2)。米国では、早ければ年内に緊急使用許可(EUA)が申請される見通しだ。日本においても、遅れることなく審査を進める必要がある。使われていないコロナ病床で病床逼迫解消を感染者の受け入れ体制はどうか。臨時の医療施設は急ピッチで各地に開設されているが、それでも医療機関における新型コロナ感染者の病床逼迫は続いている。国と東京都は、都内のすべての医療機関などに対し、改正感染症法に基づき、新型コロナ感染者の受け入れや病床の確保などを要請。正当な理由がなく従わなければ、医療機関名を公表することができるとしたが、「医師会が病院名公表に反対し、受け入れは進んでいない」(厚労省職員)という。都は今月9日、6,651床が確保できる見通しになったと発表した。要請前の5,967床から684床増えたが、目標としていた7,000床には届かなかった。しかも、4割が実際は使われていない「幽霊病床」と指摘された。このような状況下、政府の新型コロナ対策分科会会長の尾身 茂氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)の傘下病院や、東京都医師会や病院協会幹部の病院で、補助金を受けながらも病床使用率が低いことが報じられた。JCHOの場合、傘下の都内5つの公的病院(総病床数約1,500床)で、コロナ患者用病床が30~50%も使われていないという。公衆衛生危機に対応することが設置根拠法で義務付けられている機構だけに、極端なことを言えば全病床をコロナ病床に転換してもおかしくないはず。病床不足問題を解決するカギは、こうした既存の「幽霊病床」を明け渡すことにあるのではないだろうか。コロナ療養者が自宅や宿泊施設などで急変・死亡するニュースが連日報じられている。この状況を解消せずして「行動制限緩和」など、少なくとも医療従事者にとっては甘言でしかないだろう。参考1)https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1016465/Vaccine_surveillance_report_-_week_36.pdf2)https://www.reuters.com/world/india/indias-hetero-seeks-emergency-use-nod-mercks-covid-19-drug-2021-07-09/

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境界性パーソナリティ障害に対する薬理学的治療~20年間の変化

 境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療では、承認されている精神科治療薬は存在しないにもかかわらず、日常的に薬物治療が行われている。スペイン・バルセロナ自治大学のJuan C. Pascual氏らは、スペインの外来特定ユニットで治療されたBPD患者の薬理学的マネジメントにおける20年間の変化および処方に関連する要因について調査を行った。CNS Drugs誌オンライン版2021年8月9日号の報告。 2001~20年にスペイン・バルセロナのBPD外来プログラムに連続して受診したBPD患者620例を対象に観察横断研究を行った。抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、気分安定薬、抗精神病薬の処方傾向を調査した。処方データは5年ごとに4段階に分類し、データ分析を行った。薬理学的処方と多剤併用に関連する社会人口統計学的および臨床的変数を特定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・薬物療法を実施している患者数は、時間とともに減少した。・研究期間中、抗うつ薬の処方率は高いまま維持されており(74%)、ベンゾジアゼピンの有意な減少(77%→36%)第2世代抗精神病薬の増加が認められた(15%→32%)。・精神医学的併存疾患は、薬理学的治療(オッズ比:2.5、95%信頼区間:1.5~4.2)および多剤併用に関連する主な要因であったが、併存疾患のない患者でも薬物治療の割合は高かった。 著者らは「BPD患者に対する薬理学的治療は、20年間で大きな変化を遂げており、とくにベンゾジアゼピンの減少と第2世代抗精神病薬の増加が認められた。多くの臨床ガイドラインで推奨されているよりも、BPD患者に対する薬物療法は普及していることが本結果より明らかとなった」としている。

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反復性片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体の有効性と安全性~ネットワークメタ解析

 これまでの研究では、抗CGRPモノクローナル抗体は、反復性片頭痛の予防や治療に効果的な薬剤であることが報告されている。中国・Hospital of Chengdu University of Traditional Chinese MedicineのMin Shi氏らは、さらなる臨床研究の参考になるよう、用量、薬剤、投与経路、投与方法などの違いに基づき10の治療レジメンについて、比較を行った。Neurological Research誌オンライン版2021年7月19日号の報告。 2020年8月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Embase、Ovid MEDLINE、Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trialsより検索した。 主な結果は以下のとおり。・11件のRCT(6,397例)を分析に含めた。・ネットワークメタ解析の結果、1ヵ月当たりの平均頭痛日数の比較では、エレヌマブ(140mg)、ガルカネズマブ(120mg、240mg)、フレマネズマブ(225mg、675mg)は、プラセボおよびエレヌマブ(7mg)よりも有意に優れていることが示唆された。フレマネズマブ(225mg、675mg)は、エレヌマブ(21mg、70mg)よりも有意に優れていた。・1ヵ月当たりの急性片頭痛薬の平均投与日数の比較では、エレヌマブ(70mg、140mg)、ガルカネズマブ(120mg、240mg)、フレマネズマブ(225mg、675mg)は、プラセボよりも優れていた。エレヌマブ(140mg)、ガルカネズマブ(120mg、240mg)は、エレヌマブ(70mg)よりも有意に優れていることが示唆された。・投与前の平均頭痛日数および急性片頭痛薬の平均投与日数に統計学的に有意な差は認められなかった。 著者らは「包括的な評価において、フレマネズマブ(225mg)およびガルカネズマブ(120mg)は、最良のプロトコルとなりうる可能性が示唆された」としている。

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小児のコロナ入院の多くが軽症例/国立成育医療研究センター・国立国際医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した。 これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19入院患者のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてとなる。 分析の結果、分析対象期間に登録された小児のCOVID-19入院患者の多くは、無症状または軽症であり、酸素投与を必要とした患者は15例、症状のあった患者全体の2.1%だった。また、ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日で、2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることがわかった。そのほか、38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730例)のうち10.3%(75例)、13~17歳の患者(300例)の約20%に、味覚・嗅覚異常がみられたことが示唆された。 なお、本研究は、デルタ株がまだわが国に存在しない時期に実施されているため、小児に対するデルタ株の影響については評価外となっている。1,038例の小児患者の解析からわかったこと 本研究は、小児のCOVID-19で入院した患者にはどのような症状がみられ、どのくらい入院していたかを明らかにするとともに、「症状がない」患者と「症状がある」患者の、患者背景にどのような違いがあるかについて、小児患者におけるCOVID-19の疫学的・臨床的な特徴の解明を目的とした。【研究概要と結果】・研究対象2020年1月~2021年2月の間にCOVID-19 Registry Japanに登録された18歳未満のCOVID-19患者・研究方法登録患者の細かな症状、入院期間、患者背景などのデータを集計・分析・研究結果(1)期間中に3万6,460例の患者が登録され、そのうち研究対象となった18歳未満の患者は1,038例だった。(2)入院時にまったく症状がなかった患者は308例(29.7%)。これは、隔離目的や、保護者が入院してしまい、子どもの面倒を見る人がいないなどの社会的理由での入院例が多く存在することが示唆された。(3)何らかの症状があった患者(730例)のうち、酸素投与を必要とした患者は15例(2.1%)。また、死亡した患者は0例で、この期間の小児新型コロナウイルス感染症は極めて軽症であったといえる。(4)無症状者と比べると、症状のある患者では、「2歳未満」「13歳以上」「何らかの基礎疾患のある患者」の割合が高くなっていた(ただし、基礎疾患のある患者の割合については統計学的な有意差はなかった)。(5)38℃以上の発熱は、症状のある患者全体の10.3%にしか表れていなかった。一方で、特徴的な症状の1つである味覚・嗅覚異常は13歳以上の小児において20%以上に表れていた。(6)入院期間の中央値は8日で、無症状者、有症状者で変わらなかった。医療的ケアが必要ない無症状の患者に対しても、長期間の入院させていたことがわかった。 庄司氏は、「今回の研究によりわが国の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態が明らかになった。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待される。また、今後デルタ株が小児に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考える」と期待を寄せている。

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ワクチンによる入院回避効果、mRNA vs.アデノウイルスベクター/NEJM

 米国で使用されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン3種、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、Ad26.COV2.S(Johnson & Johnson-Janssen製)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による入院やICU入室、あるいは救急部門や救急クリニック(urgent care clinic)の受診に対し、高い有効性が認められたことを、米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが報告した。COVID-19による入院患者約4万2,000例と救急・緊急外来クリニックを受診した約2万2,000例を調べた結果で、これらワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染で受ける影響が不均衡な集団にも認められたという。NEJM誌オンライン版2021年9月8日号掲載の報告。187病院、221ヵ所の救急部門・クリニックを対象に調査 研究グループは2021年1月1日~6月22日に、COVID-19が疑われる症状でSARS-CoV-2分子検査を受けた50歳以上を対象に試験を行い、COVID-19ワクチンの有効性を検証した。被験者は、米国内187の病院に入院した4万1,552例と、221ヵ所の救急部門や救急クリニックを受診した2万1,522例だった。 対象者の予防接種状況を電子健康記録と免疫レジストリの記録を基に確認し、検査陰性デザインを用いて、ワクチン接種者と非接種者のSARS-CoV-2陽性に関するオッズ比を比較し、ワクチン有効性を推定した。ワクチン有効性は、ワクチン接種傾向スコアに基づき重み付けし、また、年齢、住所、暦日(2021年1月1日から各医療機関受診日までの日数)、地域のウイルス流行性で補正を行った。mRNAワクチンの有効性、85歳以上84%、慢性疾患有病者90% COVID-19・mRNAワクチン完全接種(2回目接種から14日以上経過)の、SARS-CoV-2感染検査確定者の入院に対する有効性は89%(95%信頼区間[CI]:87~91)、ICU入室の有効性は90%(85~93)、救急部門・クリニック受診に対する有効性は91%(89~93)だった。 COVID-19関連の入院や救急部門・クリニック受診に関するワクチンの有効性は、BNT162b2とmRNA-1273は同等であり、mRNAワクチン完全接種者の有効率は、85歳以上では84%(95%CI:73~91)、慢性疾患有病者は90%(87~92)、アフリカ系/ヒスパニック系成人は95%(84~98)/81%(70~88)であった。 Ad26.COV2.Sワクチンの有効性は、検査確定SARS-CoV-2感染者の入院に対しては68%(95%CI:50~79)、救急部門・クリニック受診に対しては73%(59~82)だった。

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低Na塩の利用で血管イベント・全死亡が減少/NEJM

 脳卒中の既往者または60歳以上の高血圧症の患者において、通常の塩の代わりに、塩化ナトリウムの成分含有が75%の代替塩を使うことで、脳卒中率や主要心血管イベント率、および全死因死亡率が低下したことが示された。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、中国農村部600村に住む2万例超を対象に行った、非盲検クラスター無作為化試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月29日号で発表した。代替塩は、ナトリウム値を低下させ、カリウム値を上昇させ、血圧を低下させることが示されている。しかし、心血管への有効性や安全性アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。中国600村を無作為に分け、代替塩使用と通常塩使用を比較 研究グループは2014年4月~2015年1月にかけて、中国農村部の600村を対象に、脳卒中の既往者または60歳以上で高血圧症の患者2万995例を対象に試験を開始した。 試験対象村を無作為に2群に分け、一方の村の被験者は代替塩(質量で塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)を、もう一方の村の被験者は通常塩(塩化ナトリウム100%)を、それぞれ使用した。 主要アウトカムは脳卒中、副次アウトカムは主要心血管イベント、全死因死亡で、安全性アウトカムは臨床的高カリウム血症だった。 被験者2万995例の平均年齢は65.4歳、女性が49.5%、脳卒中既往者72.6%、高血圧症既往者は88.4%だった。平均追跡期間は4.74年。 脳卒中の発生率は、代替塩群29.14/1,000人年、通常塩群33.65/1,000人年で、代替塩群が低かった(率比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.006)。 同様に、主要心血管イベント発生率(49.09 vs. 56.29/1,000人年、率比:0.87[95%CI:0.80~0.94]、p<0.001)、死亡率(39.28 vs. 44.61/1,000人年、0.88[0.82~0.95]、p<0.001)は代替塩群が低かった。 高カリウム血症による重篤有害イベントの発現頻度は、代替塩群3.35/1,000人年、通常塩群3.30/1,000人年で同程度だった(率比:1.04[95%CI:0.80~1.37]、p=0.76)。

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がん薬物療法時の制吐目的のデキサメタゾン使用に関する合同声明/日本治療学会・日本臨床腫瘍学会

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、デキサメタゾン製剤の供給が不足している。2021年8月27日に厚生労働省から発出された「デキサメタゾン製剤の安定供給について」の通知を受け、新型コロナウイルス感染症患者およびがん患者の薬物療法に関して、9月9日、日本治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会が合同声明文を発出した。 そのうち、がん患者の薬物療法に関する合同声明文では、がん患者の薬物療法に携わる医療関係者に対して、薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(CINV)を制御するために使用されるデキサメタゾン製剤の適正使用およびデキサメタゾン内服薬の代替使用について、以下のように協力を呼びかけている。1. 制吐薬適正使用ガイドライン等、関連ガイドラインに従い、個々の症例の催吐リスクに応じて適切な制吐療法の提供を継続ください。2. 以下の例のように、経口デキサメタゾン等のステロイド製剤を減量できる、あるいは代替療法がある場合は、経口ステロイド製剤の使用量を可能な範囲で低減ください。例1)高度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、第 2 日目、第 3 日目の経口デキサメタゾンを省略する。例2)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、多元受容体作用抗精神病薬を積極的に使用し、経口デキサメタゾンの使用を省略する。例3)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合の、遅発性の悪心・嘔吐の予防には、5-HT3受容体拮抗薬を優先する。例4)軽度催吐性リスクの抗がん薬を投与する場合で制吐療法を行う場合は、経口デキサメタゾンの使用を避け、メトクロプラミドあるいはプロクロルペラジンを使用する。例5)多元受容体作用抗精神病薬であるオランザピンは、糖尿病性昏睡/糖尿病性ケトアシドーシスによる害よりもCINV対策が優先されると考えられる場合は、コントロール可能な糖尿病患者に限り、患者より同意を得た上で主治医が注意深く使用する場合には考慮してよい。3. 前サイクルのがん薬物療法で、CINVが認められなかった場合、経口デキサメタゾンの減量や省略を検討ください。4. 患者が経口デキサメタゾンを保有している場合、新たな処方を行わず、持参の経口デキサメタゾンの有効活用にご協力ください。

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中国人でも積極的降圧の有用性を証明するも、論文としての粗さも目立つ~STEP試験(解説:桑島巖氏)

 SPRINT試験は、年齢を問わずより積極的降圧が心血管イベントを抑制することを2015年に発表し、世界の高血圧治療の在り方を一変させた。中国でも負けじと2021年、ほぼ同規模の症例を対象としたSTEP試験の結果をNEJM誌で発表した。 (60歳から80歳の高齢者高血圧患者の)降圧目標値を収縮期血圧110~129mmHgとする積極治療群と130~149mmHgの標準治療群にランダム化して、3.34年追跡し、脳心血管合併症を主要評価項目として、その発症率を比較した大規模臨床試験である。 結果としてはSPRINT試験同様に、積極的降圧群のほうが標準降圧群よりも有意に脳心血管合併症を抑制した。 しかしその対象においていくつかの違いがみられる。最も大きな違いは血圧測定環境の違いである。SPRINT試験では医師やナースのいない環境の下での自動血圧計による測定であったが、STEP試験では医師またはナース同席での測定である。この点は日本の実際の高血圧診療と同様であり、外来において降圧目標値130mmHg未満を目指すことの妥当性を示した点で評価できる。また対象症例において糖尿病を除外したSPRINT試験とは異なり、STEP試験で含んでいる点は糖尿病合併高血圧症例が多いわが国の日常診療に役立つ情報である。 しかし一方において論文としての粗さがある点は否めない。方法論に家庭血圧を測定したとあるが、その結果については少なくとも本論文には掲載されていない。家庭血圧の血管については別論文で発表するのかもしれないが、まったく言及していないのは不自然である。ただsupplementにおいて、季節変動と家庭血圧測定値の推移が掲載されているが、季節を問わず治療後経年的に家庭血圧が上昇傾向するという不思議な現象がみられている。この点についての説明も本論文には記載がなく、何か不都合な真実があるのではないかと勘ぐってしまう。 低血圧がSPRINT試験では積極治療群のほうが標準治療群に比べて有意に少なかったのに対して、STEP試験では逆に有意に多くなっている。これは前者では起立性低血圧に限定したのに対して、後者では単に収縮期血圧110mmHg未満、または拡張期血圧50mmHgを低血圧としている点が異なる。低血圧によって眩暈や腎障害が積極治療群で多いというわけではないので、血圧が110/50mmHg以下に下がることの臨床的有害性は証明されなかった。 いずれにせよ、家庭血圧や有害事象の詳細な分析に関するサブ論文の発表が期待される。

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文科省も薬学教育の質向上のための検討開始【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第75回

薬剤師養成のための薬学教育が6年制になってから約15年がたちました。すでに一般の方にも、薬剤師になるためには医師と同様に6年間の教育が必要だと浸透しているのではないでしょうか。6年制では実学としての医療薬学を十分に学ぶために、実習などが充実しました。その新制度下における薬学系大学の教育の質を検討するために、文部科学省において「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」が発足し、第1回目の会合が2021年8月27日に実施されました。検討期間は2021年8月~2023年3月末までの約1年半とされていて、2022年6月には意見の取りまとめ案を決定(コアカリキュラムについては2022年12月まで議論)するとされています。あれ? 最近似たような検討会を見たような…と思った方もいるかもしれません。このコラムでも少し前に紹介しましたが、厚生労働省で「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」という会合も実施されています。そちらは2020年7月に始まり、2021年6月には第10回が開催されて、とりまとめも公表されています。文部科学省の検討会は大学の薬学教育のあり方を軸としていて、厚生労働省の検討会は医療者としての薬剤師のあり方を軸として検討しているという違いがありますが、双方とも薬剤師の資質向上を目的としています。薬学教育と薬剤師業務は切っても切れない関係であるため、結果として両方の検討会から教育にも実務にも提言がなされるのだと思われます。さて、文部科学省の「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」に話を戻しますが、本検討会では薬学教育の質に関する課題として、毎年入学定員を充足していない大学や退学率や留年率が著しく高い大学、国家試験の合格率が著しく低い大学、国家試験対策に偏った授業を行う大学が存在することが挙げられています。将来的な薬剤師の供給過多や18歳人口の減少に伴う薬学教育の質の保証、社会のニーズに応じた6年制過程と4年制過程の役割、それに伴ったコアカリキュラムの改訂といったことがメインテーマとなるようです。皆さんも薬剤師として仕事をしていると、これらのことは少なからず気になっているのではないでしょうか。私は製薬会社で仕事をしていたこともあるのですが、4年制過程は製薬会社での開発や品質業務などを行う人材の育成を目的としている一方、製薬会社の総括製造販売責任者は原則薬剤師と定められているため、4年制過程の卒業者では総括製造販売責任者になれないといった“矛盾”も感じています。また、本検討会では薬学部教育の質保証専門小委員会というものが設置され、薬科大学や薬学部に対する書面調査やヒアリング調査、実地調査を行い、課題を整理することが予定されています。薬学教育に関わる方に話を聞くと、薬学部の数が増え、基本的な学力が一定の水準に達していない学生も少なからず存在し、国家試験合格に導くのが精一杯だという声を聞くこともあります。ぜひ、表向きのあるべき論だけではなく、薬学教育の現場の課題や意見も取り入れた議論を展開してもらいたいと思います。これらの調査や議論がなされ、2022年末には新たな薬学教育が提案される予定です。今後の薬学教育にどのような変化があるのか楽しみです。

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ポリオワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第9回

ポリオについて急性灰白髄炎(ポリオ)は、ポリオウイルスの感染によって引き起こされる感染症で、ヒトのみに生じる。ポリオウイルスには1型、2型、3型の3つの型があり、どの型でも同じ症状を起こす。軽症では、軽い感冒様症状や胃腸炎症状のみだが、麻痺型ポリオでは麻痺などの中枢神経症状を起こし、数日間の高熱の後に非対称性の四肢の弛緩性麻痺となるため、小児麻痺(しょうにまひ)とも言われる。わが国では1940年代頃から全国で流行し、麻痺の後遺症を残した患児が多かったが、1961年より経口生ポリオワクチンを使用するようになってから次第に減少し、1980年の1例を最後に国内での患者の発生はなく、2000年にポリオが排除状態にあることが宣言された。海外では、2020年8月、WHO(世界保健機関)がアフリカでの野生株ポリオの根絶を宣言し、流行国はアフガニスタンとパキスタンの2ヵ国を残すのみとなっている。ポリオウイルスの感染経路は経口(糞口)感染である。ポリオウイルスで汚染された水などが人の口に入り、腸の中で増殖して全身に感染が広がる。特に上下水道が整備されていない衛生状態が悪い環境では、下水に流入したウイルスが他の人の口に入り、感染が拡大する。現在、ポリオは野生株に加えて、ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV、後述)が課題となっている。そのため排除宣言後の今でも海外渡航時や感染者が本邦へ入国した際に、ポリオが国内に持ち込まれて感染する可能性は続いている。学校保健安全法では第1種感染症、感染症法では2類感染症に分類されている。主な症状ポリオの感染者の多く(90~95%)は症状がない不顕性感染で自然に治癒する。発症者が1人いれば、その周囲に100人の不顕性感染者がいると推定される。感染者の約5%前後では、発熱、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感、便秘などの症状を認め、感染者のうち1〜2%は上記の症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こす。腸管から体内に入ったウイルスはウイルス血症を経て、血液脳関門か神経軸索を介して中枢神経組織に侵入する。ウイルスの感染から麻痺発症までは3日~1ヵ月間である。麻痺は0.1~2%に生じ、ひとたび麻痺が発症するとその進行を止めたり、麻痺を回復させるのは困難である。また、呼吸筋の麻痺などで死亡することもあり、致死率は小児で2~5%、成人で15~30%に達する。診断主な診断方法は、糞便からのウイルス分離である。麻痺が出現して早期に糞便や咽頭分泌液などを採取して検査する。血液検査でも診断可能だが、ワクチン接種によって免疫を持っている人が多いため補助的手段となる。治療法ポリオウイルスに対する薬はなく、症状に応じた対症療法のみである。予防法有効なワクチンがある。ワクチンポリオワクチンは、毒性を弱くしたウイルスを口から飲むタイプの経口生ワクチンと、ウイルスの成分の一部が含まれた注射の不活化ワクチンがある。わが国では1963年から経口ポリオワクチン(OPV)が乳児期に接種された。しかし、ポリオ生ワクチンの接種後にワクチン株によるポリオ様の麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis:VAPP)が生じることが報告されるようになった。そのため、2012年9月以降は生ワクチンでの定期接種は中止され、不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種が導入された。さらに2012年11月以降は四種混合(DPT-IPV)ワクチンが定期接種として乳児期に接種されるようになっている。接種のスケジュール(小児/成人)経口ポリオワクチンは2回接種だったが、不活化ワクチンは4回接種を行う。不活化ワクチンのスケジュールは、初回接種として生後3ヵ月で1回目、4ヵ月で2回目、5~11ヵ月で3回目の接種を行い、追加接種として生後12~23ヵ月で4回目の接種である。不活化ワクチンは効果が弱いためにより多くの接種回数を必要とする。いずれも接種回数が不足している場合はポリオに感染する可能性があるため、母子手帳で確認し、不足している場合は医療機関に相談してワクチン接種を終わらせることが肝要である。さらに、ポリオワクチンによる免疫効果は、ポリオ含有ワクチンの4回目の追加接種後、4年で抗体価が防御レベルを下回る可能性が示唆されており、厚生労働省で5回目の追加接種の導入とその実施時期などに関して検討が行われている。4~6歳の時期にポリオ含有ワクチンの追加接種を行うと十分に抗体価が上昇し維持することが知られており、世界の多くの国ではこの就学前の時期に2期としてポリオワクチンの追加接種が行われている。今後、わが国でも就学前などにポリオ含有ワクチンの追加接種が制度として整備されることを期待する。伝播型ワクチン由来ポリオウイルス経口生ワクチンに含まれるポリオウイルス(ワクチン株ウイルス)は、接種された人の腸管で増殖し、一部は便に排出され下水などに流入する。通常、このワクチン株ウイルス自体では病気を起こすことはない。しかし、このワクチン株ウイルスが下水などの環境の中で長期間循環し続けると、ごくまれに遺伝子変異を起こし、従来のポリオウイルス(野生株ウイルス)のように、ポリオと同様の麻痺性の病気を起こすようになる。これを「伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(circulating vaccine-derived poliovirus:cVDPV)」と呼ぶ。野生株のみならずこの伝搬型ワクチン由来ポリオウイルスの感染例は世界の国々で確認されており、2020年には、23ヵ国で441例が報告されている。ウイルスが国内に持ち込まれて感染する可能性があるため、ワクチン接種を継続して免疫を維持しておく必要がある。今後の課題・展望不活化ポリオワクチンは、定期接種としての1回の追加接種のみでは抗体価が減衰し、2回目の追加接種を4~6歳で行うことで抗体価が大きく上昇することが確認されている。欧米の多くの国が4歳以降に就学前の追加接種を行っており、長期にわたりポリオ抗体価を維持するためには、5~7歳頃(就学前)の2回目の追加接種が必要である。日本では、任意接種として、不活化ポリオ単独ワクチン(IPV)を2回目の追加接種(計5回目)として接種できる。しかし、任意接種であるため知らない人も多く、接種率は高くない。青森県藤崎町などのいくつかの自治体は不活化ポリオワクチンの就学前追加接種に対して全額公費助成を行っている。また、日本プライマリ・ケア連合学会、日本小児科学会もワクチンスケジュールの中で就学前の2回目の追加接種を推奨している。世界のポリオは、紛争やテロ活動によりワクチン接種が妨げられると根絶が難しくなり、世界からの根絶まではまだ時間がかかると思われる。また、野生株は減っているものの、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)は多くの国で報告されている。そのため、ポリオ発生地に渡航する際には、成人も不活化ワクチンによる追加接種を受けることが望ましい。今後、わが国でも就学前のポリオ含有ワクチンの追加接種が制度として整備されること、そして、成人も世界のポリオの流行状況や日本への輸入のリスクを考慮して、不活化ポリオワクチンの追加接種の検討が必要である。参考となるサイト厚生労働省 ポリオとポリオワクチンの基礎知識日本プライマリ・ケア連合学会 こどもとおとなのワクチンサイト日本小児科学会 ワクチンスケジュール講師紹介

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「デベルザ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第69回

第69回 「デベルザ」の名称の由来は?販売名デベルザ®錠20mg一般名(和名[命名法])トホグリフロジン水和物(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人にはトホグリフロジンとして20mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。警告内容とその理由設定されていない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年9月15日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年10月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「デベルザ®錠20mg」2)興和株式会社:製品情報検索

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第75回【特集・第6波を防げ!】行動制限緩和の前に、あのナンセンスな制限だけは先行して撤廃を

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、この週末は、オリンピック、パラリンピックでしばらく放送されていなかったNHK BSのMLB中継で、ロサンゼルス・エンジェルスの試合を観戦して過ごしました。大谷 翔平選手は残念ながら10勝目はなりませんでしたが、44号ホームランを見ることができました。残り20試合余り、アメリカン・リーグの本塁打王争いが楽しみです。それにしても、久しぶりに観たMLBの試合、球場(アストロズの本拠地で南部テキサス州ヒューストン)でマスクをしている人は皆無でした。MLBのニュースを見ても、マスクをしている観客がいるのは西海岸、たとえばドジャー・スタジアム(ロサンゼルス)やT-モバイル・パーク(シアトル)だけのようです(しかもちらほら)。連邦制の米国では、ワクチン接種やマスク着用など、公衆衛生に関する規制権限のほとんどを州や地方自治体が有しています。西海岸の州以外は、マスク着用に関して相当寛容になっているのかもしれません。ということで今週は「特集・第6波を防げ!」として、一般人の視点から行動制限緩和の可否判断について図のようなマトリクスを提案したいと思います。図・行動制限緩和の可否判断のためのマトリクス(by萬田 桃)政府が緩和に向けた基本方針提示9月13日から、東京や大阪など19都道府県で緊急事態宣言が再び延長されました。期限は9月末です。この宣言延長の決定とあわせ、9月9日、政府は新型コロナウイルス感染症の流行地域で実施中の個人の行動や経済活動の制限を段階的に緩和する基本方針、「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方(案)」を公表しました。「延長(ムチ)」だけではあんまりだから、「緩和(アメ)」も見せておこうということなのでしょう。この「考え方」では、ほとんどの希望者にワクチンが行き渡る頃から、(1)飲食、(2)イベント、(3)人の移動、(4)学校、において、ワクチン・検査パッケージ(ワクチン接種歴及びPCR等の検査結果を基に、個人が他者に2次感染させるリスクが低いことを示す仕組み)や飲食店の認証制度を活用した行動制限の緩和が提言されました。緊急事態宣言下でも、認証を受けた飲食店に対しては酒類提供や営業時間短縮の要請を見送り、ワクチン・検査パッケージを利用すれば大人数での会食も認めるとしました。また、イベントの人数制限の緩和や撤廃を検討し、ワクチン・検査パッケージによって県境をまたぐ移動や学校での部活動も可能とする、としています。一方、「新たな変異株の出現などにより、感染が急速に拡大し、医療提供体制のひっ迫が見込まれ、例えば、緊急事態措置による更なる行動制限が必要となる場合」には、これらの緩和を見直し、強い行動制限を求めることも明記されています。今後行う実証実験の結果や感染状況を踏まえて本格実施の可否を判断する、とのことです。緩和より先に「一人飲み」解禁を行動制限緩和は喜ばしいことですが、もっと先に確実に緩和できることがあるのではないか、と私は思います。今の行動制限、エビデンスが非常に薄弱にもかかわらず、不当に国民に強いている部分が多々あるからです。その最たるものが「一人飲み」です。居酒屋で一人ちびちび飲む「一人飲み」は、感染リスクが極めて低いといえます。また、サラリーマンが1人で夕食をファミレスで食べる時などに、ビールを1本頼んで喉を潤す場合も感染リスクはほとんどありません。コロナ禍となって、テレビ東京系のドラマ『孤独のグルメ』の先見性が評価されているようですが、少なくとも「一人飯」でのアルコール飲酒は、即日解禁できることだと思います(原作者の久住 昌之氏が、最近の同番組のお店紹介コーナーでいつもの“麦ジュース”を頼まなかったのは残念でした)。町中のカフェやファミレスなどでは、昼間、主に女性たちが、長時間おしゃべりをしている場面によく出くわします。「一人飲み」「一人飯」と比べてどちらのほうがマイクロ飛沫が多く、感染リスクが高いかは、実証実験をするまでもないでしょう。「大勢で騒ぐ」ことが最大のリスク緊急事態宣言の中、私自身、ヤクルトスワローズの試合、ナンバーガールのライブ、小劇場の芝居、大劇場のロック・オペラ、映画、奥多摩の登山とあちこち出かけてきましたが、幸いなことに感染はしていません。これらの場所で共通するのは、登山は除いて、どこもマスク着用で飲酒は禁止、私語(おしゃべりや応援)も極力制限されていたことです。大勢の集団であっても、それなりの空調施設(もしくは屋外)において、大声で騒いだりおしゃべりを延々と続けたりしなければ、感染リスクは相当低いだろうと考えられます。愛知県の中部空港島(愛知県常滑市)で8月28日と29日に開かれた、野外音楽フェスティバル「NAMIMONOGATARI(波物語)2021」は、飲酒しながらマスクなしで声を張り上げる観客の動画が世間のひんしゅくを買いました。観客同士の距離確保ができておらず、酒類も提供していたことが明らかとなり、経済産業省の補助金の支給も中止されました。このフェス、9月13日の朝日新聞の報道では、クラスターでの感染者は26人。他の都府県で確認された感染者は18人で、フェス関連の感染者は合計44人とのことです。また、県と名古屋市による無料PCR検査では、最終的に計1,154件の申し込みがあり、8人の陽性者が確認されているとのことです。8,000人規模で酒を飲んで騒いで関連の感染者が44人、というのは思ったよりも少ない数字だと思うのですが、どうでしょう?空調が“完璧”な野外フェスや、神宮や甲子園のような屋外球場での野球観戦はかなり安全性が高いといえるのではないでしょうか(もちろん、飛沫が飛びまくるジェット風船はNGです)。MLBの観戦でマスク着用が強制されていないのは、そうしたデータがあるからかもしれません。ちなみに8月20日〜22日にかけて新潟県越後湯沢市で開かれた国内最大のフェス「フジロックフェスティバル’21」に参加した友人に話を聞くと、「会場で飲酒している人はまったく見かけなかった。そもそもビン・カンが持ち込み禁止で、手荷物検査もあった。モッシュは一切なく、観客は歓声を抑え、拍手だけでアーティストを讃えていた。会場に潜入した記者が飲酒の写真とともに記事を書いていたが、少なくとも私はあのような人は見なかった」と話していました。今年のフジロックの観客は3万5,000人(例年の約3分の1)だったと報道されていますが、今のところクラスターが発生した、というニュースは出ていません。私の友人ももちろん感染しておらず、今も毎週のようにあちこちのライブに出かけています。「大勢で騒ぐかどうか」が問題こう見てくると、ことは非常にシンプルです。問題は「酒を飲むかどうか」ではなく、「大勢で騒ぐかどうか」なのです。旅行についても、「(県をまたいでの)移動」ではなく、「移動先で大勢で騒ぐ」ことが問題なのです。若者や仕事の憂さ晴らしをしたいサラリーマンや公務員は、ついつい大勢で騒いでしまい、それがクラスターの原因となっています。ですから、「大勢で騒ぐかどうか」どうかだけを、飲食店やイベント会場、旅館・ホテルでチェックすればいいのです。例えば、冒頭で示した図のような単純なマトリクスが考えられます。要素は人数、騒ぐかどうか、空調の3つ。飲酒の有無や時間は関係ありません。これを当てはめれば、大抵の活動は「大勢で騒がない」限り、OKになります。「騒ぎ方がそれぞれ違うだろう!」と言われる方もいるでしょう。でも、それは各関連団体や店舗が自主基準をつくればいいだけです。旅行で言えば、恋人同士の温泉旅行はOK、会社の部署の忘年会旅行はNG。山登りで言えば、テント山行はOK、大勢のパーティでの小屋泊まり山行はNGといったことです。ちなみに、パチンコ店もコロナが流行し始めた昨年、その営業可否を巡って話題となりましたが、これまでクラスターが発生したという例は聞きません。台はアクリル板で仕切られ、客のタバコの煙を吸い込むために空調も強力ですし、台に集中するあまり話している客は誰もいない(店内は台の音でうるさいですが)ことが奏功していると考えられます。ワクチン・検査パッケージの導入も意味があることだと思いますが、もっと単純に「大勢で騒ぐかどうか」に着目した行動制限緩和も必要だと思います。飛沫感染、接触感染、空気感染…、何が一番危ないのか?この「マトリクス」にせよ、ワクチン・検査パッケージにせよ、行動制限緩和に向けて一点、明確にしてもらいたいことがあります。それは、「感染経路ごとのリスクの大きさ」です。これまで飛沫感染と接触感染が中心と言われてきましたが、最近では、会話のときに出てくるマイクロ飛沫による空気感染が近くの人の感染を引き起こすとも言われています。8月末には、感染症や科学技術社会論などの研究者らが、「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める声明を出し、話題となりました。ただ、飛沫感染、接触感染、空気感染(マイクロ飛沫感染)がそれぞれどの程度で起こっているのか、その詳細なデータは示されていません。仮にマイクロ飛沫による空気感染が主体だとしたら、飲食店の店舗に設けられたアクリル板の壁は無意味となり、マスク着用と会話制限、空調にこそ力を入れるべきだ、ということになります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年半近くが経ちますが、そういった感染経路の基本的なことも明確に示さないまま、今でも闇雲に行動制限や営業自粛を課すのはどうかと思います。横浜スタジアムの近くで焼肉屋を経営している私の友人が先日電話をかけてきて、「うちはアルコール消毒もしている。アクリル板も設置した。もちろん酒は出していない。今度はマイクロ飛沫だと言うのだが、一体何をやればいいんだ。もう対策がないよ」とぼやいていました。「煙を強力に吸う無煙ロースターなら飛沫も吸うので、焼肉屋はパチンコ店並に安全では」と慰めたところ、「なるほど」と納得していました。近々、横浜スタジアムと焼肉屋の安全性を確認しに、現地に出向こうかと考えています。

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J-CLEAR特別座談会(3)「GLP-1受容体作動薬の心腎血管合併症予防効果」

J-CLEAR特別座談会(3)「GLP-1受容体作動薬の心腎血管合併症予防効果」出演東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巖 氏東京慈恵会医科大学 客員教授、J-CLEAR 理事 景山 茂 氏佐賀大学医学部循環器内科 教授 野出 孝一 氏公益財団法人日本生命済生会日本生命病院 糖尿病・内分泌センター 住谷 哲 氏東京慈恵会医科大学客員教授、三穂クリニック院長補佐 栗山 哲 氏「CLEAR!ジャーナル四天王」でおなじみのJ-CLEARメンバー5氏が、「GLP-1受容体作動薬の心腎血管合併症予防効果」をテーマに、各々の専門領域の知見を基に議論を交わしたウェブ座談会の模様を全6回でお届けします。なお、この番組は2021年7月21日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。

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