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2種類のコロナワクチン、副反応疑いの報告状況/厚労省

 厚生労働省は、7月7日に今までに報告された新型コロナワクチンの副反応疑い報告など、ワクチン接種後の副反応(副作用)に関する情報をまとめたレポートを「新型コロナワクチンの副反応疑い報告について」として公開した。 レポートは、ワクチンの接種後に生じうる副反応を疑う事例について、医療機関などに報告を求め、収集したものを同省の審議会に報告し、専門家による評価を行ったもの。副反応疑いについて対象期間:令和3年2月17日~6月27日副反応の頻度:・ファイザー社ワクチン(商品名:コミナティ筋注)は0.04%(3,921万8,786回接種中1万5,991例)・武田/モデルナ社ワクチン(同:COVID−19ワクチンモデルナ筋注)は0.02%(95万9,165回接種中191例) いずれのワクチンも、これまで通り安全性において重大な懸念は認められないと評価された。なお、ワクチンにより接種対象者の年齢や接種会場などの属性が大きく異なるため、両ワクチンの単純な比較は困難であり、注意が必要。死亡例について対象期間:令和3年6月27日までの集計・ファイザー社ワクチンは453例・武田/モデルナ社ワクチンは1例 追加で7月2日までに両ワクチンを合わせて102例の報告 死亡例の報告に関しては、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。アナフィラキシーについて・ファイザー社ワクチンは1,632件(100万回接種あたり42件)が報告され、うち289件(100万回接種あたり7件)が専門家によりアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)と評価された。・武田/モデルナ社ワクチンは医療機関から14件(100万回接種あたり14.6件)が報告され、うち1件(100万回接種あたり1.0件)が専門家によりアナフィラキシー(同)と評価された。 アナフィラキシーの報告に関しても、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。その他の懸念事項 接種後の心筋炎・心膜炎に関し、ワクチンの添付文書に本症について追記の改訂内容が報告された。心筋炎関連事象について検討が行われ、現時点においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされた。ワクチンの不正確な情報に惑わされないための注意 同省では【ご注意ください】を掲示し、下記のようにワクチン接種におけるデマや流言への注意喚起も行っている(以下に一部抜粋)。・国内外で、注意深く調査が行われていますが、ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません。・海外の調査によれば、接種を受けた方に、流産は増えていません。・接種後の死亡と、接種を原因とする死亡はまったく意味が異なります。接種後の死亡にはワクチンとは無関係に発生するものを含むにもかかわらず、誤って、接種を原因とする死亡として、SNSやビラなどに記載されている例があります。

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ALK阻害薬ブリグチニブのコンパニオン診断薬としてベンタナ OptiView ALK(D5F3)承認/ロシュ・ダイアグノスティックス

 ロシュ・ダイアグノスティックスは、ALK陽性非小細胞肺がん患者の診断補助に用いるALK融合タンパクキット「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」の一部変更承認を6月21日に取得。武田薬品のALK阻害薬ブリグチニブに対するコンパニオン診断薬として承認された。 ベンタナOptiView ALK(D5F3)は、がん組織、細胞中に発現するALK融合タンパクを検出する体外診断用医薬品であり、ALK阻害薬クリゾチニブ、セリチニブ、およびアレクチニブのコンパニオン診断薬として製造販売承認されている。 今回ブリグチニブに対して承認されたことで、未治療のALK陽性肺がんに対して国内で承認されているすべてのALK阻害薬のコンパニオン診断薬となった。

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Novavax製コロナワクチンの有効率89.7%、第III相試験/NEJM

 健康成人への遺伝子組み換えナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373(米国Novavax製)の2回接種はプラセボと比較して、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染予防の有効率が89.7%と高率で、B.1.1.7変異株(α株)にも同程度の効果を有することが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のPaul T. Heath氏ら研究グループが実施した「2019nCoV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年6月30日号に掲載された。英国33施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 本研究は、SARS-CoV-2感染の予防におけるNVX-CoV2373の安全性と有効性の評価を目的とする評価者盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2020年9月28日~11月28日の期間に、英国の33施設で参加者の登録が行われた(米国Novavaxの助成による)。 対象は、年齢18~84歳の男性または非妊娠女性で、健康または安定期慢性疾患(多剤併用療法[HAART]を受けているHIV感染、心疾患、呼吸器疾患の患者を含む)の集団であった。 被験者は、21日間隔で2回、NVX-CoV2373ワクチン(遺伝子組み換えナノ粒子スパイク蛋白5μg+Matrix-Mアジュバント50μg)の筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインで血清学的に陰性の参加者において、2回目接種から7日以降に発症し、ウイルス学的に確定された軽症、中等症、重症のSARS-CoV-2感染とされた。 1万5,187例が無作為化の対象となり、1万4,039例(ワクチン群7,020例、プラセボ群7,019例)が有効性のper-protocol集団に含まれた。全体の年齢中央値は56歳(27.9%が65歳以上)、48.4%が女性であった。44.6%が、米国疾病管理予防センターの定義で重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスク因子とされる併存疾患を1つ以上有していた。65歳以上の有効率88.9%、B.1.1.7変異株86.3% 2回目の接種から7日以降に症状の発現が認められ、ウイルス学的に確定されたSARS-CoV-2感染者は、ワクチン群が10例(6.53/1,000人年)、プラセボ群は96例(63.43/1,000人年)であり、ワクチンの有効率は89.7%(95%信頼区間[CI]:80.2~94.6)であった。 ワクチン群のSARS-CoV-2感染者10人に入院および死亡者はなく、このブレークスルー例のうち8人がB.1.1.7変異株(α株)に感染していた。また、重症COVID-19感染症は5例報告され、いずれもプラセボ群であった(入院1例、救急診療部受診3例、自宅療養1例)。 65歳以上のワクチン有効率は88.9%(95%CI:12.8~98.6)であった。事後解析では、B.1.1.7変異株に対する有効率は86.3%(71.3~93.5)、B.1.1.7以外の変異株では96.4%(73.8~99.5)だった。 非自発的な報告による局所的有害事象(痛み、圧痛、紅斑、腫脹)の頻度は、初回(57.6% vs.17.9%)および2回目接種(79.6% vs.16.4%)ともワクチン群で高く、全身性有害事象(頭痛、疲労、悪心・嘔吐、倦怠感、筋肉痛、関節痛、体温上昇)も、初回(45.7% vs.36.3%)および2回目接種(64.0% vs.30.0%)のいずれもワクチン群で高かった。 自発的な報告による有害事象はワクチン群で多かった(25.3% vs.20.5%)が、重篤な有害事象(0.5% vs.0.5%)、接種中止の原因となった有害事象(0.3% vs.0.3%)、COVID-19でとくに注目すべき有害事象(0.1% vs.0.3%)の発現率はいずれも両群で同程度で、頻度は低かった。また、反応原性(reactogenicity)は全般に軽度で一過性であり、反応は高齢者で頻度が低く、より軽度で、2回目以降に多かった。 著者は、「NVX-CoV2373は標準的な冷蔵温度で保存でき、スパイク蛋白抗原の多くのエピトープへの反応を誘導する可能性がある。これらの特性は、新たな変異株に対する継続的なワクチン接種の必要性を考慮すると、このワクチンの世界に向けた効率的な導入において重要である」と指摘している。

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トランスグルタミナーゼ2阻害薬、セリアック病の十二指腸粘膜傷害を改善/NEJM

 中等量(3g)のグルテンを毎日摂取しているセリアック病患者において、経口トランスグルタミナーゼ2阻害薬ZED1227はプラセボと比較して、グルテンによる十二指腸粘膜の傷害を抑制し、有害事象の頻度や重症度は同程度であることが、ドイツ・ヨハネス・グーテンベルク大学マインツのDetlef Schuppan氏らが実施したCEC-3試験で示された。研究の成果はNEJM誌2021年7月1日号で報告された。3用量を評価するプラセボ対照無作為化第II相試験 研究グループは、セリアック病の治療における選択的トランスグルタミナーゼ2阻害薬ZED1227の概念実証試験として、二重盲検プラセボ対照無作為化第II相用量探索試験を行った(ドイツ・Dr. Falk Pharmaの助成による)。本試験は、2018年5月~2020年2月の期間に、欧州7ヵ国の20施設で行われた。 対象は、年齢18~65歳、スクリーニングの12ヵ月以上前に生検でセリアック病と確定診断され、HLA-DQ2またはHLA-DQ8の遺伝子型が陽性の患者であった。 被験者は、ZED1227 10mg、同50mg、同100mgまたはプラセボを経口投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。これらの参加者は、毎朝、少なくとも6時間の絶食後に服薬し、30分後の朝食前にグルテン3gを含むビスケットを1つ食べ、6週の試験期間中、このビスケットを除き、厳格なグルテン除去食を継続するよう求められた。 主要エンドポイントは、グルテンによって誘導された粘膜傷害の軽減とし、十二指腸生検で得られた検体を用いて、絨毛の高さと陰窩の深さの比で評価された。 163例が登録され、ZED1227 10mg群に41例(平均年齢40.2歳、女性90%)、同50mg群に41例(42.8歳、71%)、同100mg群に41例(41.0歳、62%)、プラセボ群に40例(42.5歳、74%)が割り付けられ、それぞれ35例、39例、38例、30例において、十二指腸生検で主要エンドポイントの評価のための適切な検体が得られた。担当医の評価と患者の日誌に基づくアドヒアランスは、4群で服薬およびグルテン摂取とも96~100%と高かった。3用量すべてで主要エンドポイント達成 ZED1227の3用量のいずれにおいても、グルテンによる十二指腸粘膜傷害が改善された。すなわち、絨毛陰窩比(平均値)のベースラインから6週までの変化量の、プラセボ群との推定差は、10mg群が0.44(95%信頼区間[CI]:0.15~0.73、p=0.001)、50mg群が0.49(0.20~0.77、p<0.001)、100群は0.48(0.20~0.77、p<0.001)であった。 上皮内リンパ球密度(修正Marsh-Oberhuber分類)の6週までの変化量の、プラセボ群との推定差は、上皮細胞100個当たり10mg群が-2.7個(95%CI:-7.6~2.2)、50mg群が-4.2個(-8.9~0.6)、100mg群は-9.6個(-14.4~-4.8)であり、ZED1227の用量依存的に増加の程度が低くなった。 患者報告アウトカムとしてのセリアック病症状指標スコア(プラセボ群との推定差[95%CI]、10mg群:-3.0点[-5.9~-0.2]、50mg群:-2.0点[−4.9~0.9]、100mg群:-3.8点[-6.7~-1.0])、および健康関連QOLを評価するセリアック病質問票スコア(同10mg群:5.3点[-0.4~10.9]、50mg群:2.9点[-2.7~8.6]、100mg群:5.8点[0.1~11.5])は、いずれも100mg群で良好な傾向が認められた。 頻度の高い有害事象は、頭痛、悪心、下痢、嘔吐、腹痛で、発生率は4群で同程度であった。皮疹が100mg群の8%(3/40例)で発現したが、他の3群ではみられなかった。 著者は、「患者報告アウトカムはZED1227の全用量で改善されたが、これは、症状を評価するにはどの用量も症例数がやや少なく、尺度にはセリアック病と共通するが関連のない症状がいくつか含まれたことを反映している可能性があり、今後、より大規模な試験で確認する必要がある」としている。

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JAK阻害薬フィルゴチニブ、潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持に有効(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)は特定疾患に指定されている原因不明の炎症性腸疾患(IBD)であり、最近の全国調査によると18万人以上の患者が存在している。UCに対する薬物治療については、寛解導入および寛解維持を目的として5-ASA製剤、ステロイド製剤、免疫調節薬、生物学的製剤が使用されている。なかでも生物学的製剤については、抗TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬ウステキヌマブ、インテグリン拮抗薬ベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬など、異なる作用機序を有する分子標的薬が次々と開発され、それぞれの臨床試験結果が報告されている。なお、本邦のIBD診療ガイドライン2020において、血球成分除去療法や生物学的製剤の適応はステロイド依存例で免疫調節薬も効果のない患者やステロイド抵抗性の患者に限定されている。さらにJAK阻害薬と免疫調節薬チオプリン製剤との併用が原則禁忌となっている。 今回は中等度から重度の難治性UCを有する成人患者を対象として、10週間での寛解導入と58週間の寛解維持に対するJAK阻害薬フィルゴチニブの有効性と安全性に関する、第III相臨床試験(SELECTION試験)の結果がLancet誌に報告された。わが国では慢性関節リウマチ(RA)に対して承認されている経口剤フィルゴチニブが、TNF阻害薬やベドリズマブの治療歴の有無にかかわらず、難治性UCの寛解導入と寛解維持においてプラセボに比べて有意な有効性と同等の安全性を示したとされている。 今回の研究結果から、フィルゴチニブはステロイド依存性や抵抗性の難治性UCに対して有用性の高い経口治療薬として期待される。しかし、わが国においてRAに対して保険承認されている5種類のJAK阻害薬の中で唯一UCに対して保険適用を得ているトファシチニブに関しては、RA患者を対象とした安全性臨床試験の予備結果において、TNF阻害薬や低用量トファシチニブと比べて高用量のトファシチニブが心血管血栓イベントと死亡のリスク上昇を認めた結果、FDAにより慎重な使用に関する警告が発出されている。同じJAK阻害薬であるフィルゴチニブに関してもRAに加えてUCの適応が追加された場合、一般診療現場における長期間のリスクに注意した慎重な使用が必要と思われる。

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病棟マスターになれる医学書【Dr.倉原の“俺の本棚”】第44回

【第44回】病棟マスターになれる医学書指示簿、入院サマリー、手技や手術の記録、コンサルテーションの仕方、対応に困る患者の対処法、維持輸液の処方、カンファレンスの症例プレゼンテーションの喋り方、保険の自己負担、死亡診断書(死体検案書)の書き方、介護保険意見書の書き方、DPCの仕組み、各診断・治療の保険点数、文献検索の方法……研修医になってから、何度ググったかわかりませんよね。どこの医学書にも、こういうノウハウが全然書いてないんだもの。誰かわかりやすくまとめてくれないかな~と、医局の机に突っ伏しているそこのアナタ!『総合内科病棟マニュアル 病棟業務の基礎(赤本)』筒泉 貴彦, 山田 悠史, 小坂 鎮太郎/編. メディカルサイエンスインターナショナル. 2021年え……?そんな医学書あるんですか?はい、あるんです!それが、『総合内科病棟マニュアル』の赤本です。上記のような総論的なことだけでなく、病棟の患者さんや病棟の看護師さんから相談されることが多い、コモンな徴候から輸血・ステロイド・ワクチン・血糖管理まで、臓器横断的な項目がこの赤本にムギュっと凝縮されています。密度がすごいです、密度が。情熱の密度がすご過ぎて、ページをめくる手がヤケドしてしまいますわ、ホント!「赤血球輸血したらどのくらいヘモグロビンの改善が予想されますか?」「ステロイドの副作用を予防するエビデンスは?」こういうこともしっかり書かれています。これを読めば、病棟マスターになれる気がしますね。そして、7月に青本が出ます。青本は、疾病や病態の各論的なことが書かれています。このクオリティで続編が出るとか、どないなってんねんレベルです。赤本が縦斬り!青本が横斬り!で、難解な医学の世界を"サイコロステーキ先輩※"にしてやりましょう。※『鬼滅の刃』に登場する隊士。敗北・死亡フラグを立てて、あっという間に回収してあの世へ旅立つ弱さから、「お前さんをボッコボコにしてやんよ」と言いたいときに使う。『総合内科病棟マニュアル 病棟業務の基礎(赤本)』筒泉 貴彦, 山田 悠史, 小坂 鎮太郎/編出版社名メディカルサイエンスインターナショナル定価本体4,400円+税サイズB6変刊行年2021年

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第65回 潤沢なワクチン在庫は一体どこへ、実はわれわれのすぐそばに届いていた!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン2回目の接種を数日前に完了した。さてその男性、52歳の接種後の状況だが、現時点で接種から2日経過したが、これまでのところ体温計で測定した体温は平熱の範囲。ただ、接種翌日の朝からなぜか足の裏が熱い感じがほぼ丸一日続いた。それと接種翌日の昼間、外を歩いて何とも言えない倦怠感に襲われた。初めは気のせいだと思っていたが、夕方にスポーツジムに行き、あまりの倦怠感で、普段と同じ時間をかけても計算上の消費カロリーにして6割程度の運動量しかこなせなかった。しかも、いつもと比べ、明らかに発汗量が多い。今は7時間の睡眠を経て、驚くほどすっきりしている。これが副反応だったのかもわからない。ただ、一つだけ分かったのは「若い人ほど発熱がある」というのが事実だとすれば、自分は若くはないということだろうか?さてそのワクチンだが、連日の報道によると「供給不足」が懸念されているという。ただ、私はこの報道についてはやや疑問に思っている。「ないものはない」ではなく、「あるけどない」とみているからだ。少なくともモデルナ製ワクチンについては、どうやら予定通りの供給になっていなかったということをワクチン担当の河野 太郎大臣が明らかにしている。しかし、ファイザー製もそうだろうか?まず、厚生労働省が発表しているファイザー製ワクチンの一般接種向けの供給状況のデータを見てみよう。7月の予定供給量は2,527万2,000回分で、前月の6月分が3,451万5,000回分だから確かに7月は6月の27%減。そして8月以降の見通しは、報道によると2週間おきに約1,170万回になる見込み。つまり8月の予定供給量は約2,340万回分。7月比で7%減となる。確かに数字上は減少している。ただ、すでに7月末までの供給量は回数にして約1億78万回分となる。ちなみに前述の河野大臣によるモデルナ製ワクチンの供給状況の数字と合わせれば、日本国内全体としては約1億1,400万回分が供給されていることになる。そして7月6日現在の一般接種の総接種数は4,143万4,655回。現時点では国内に約7,257万回分が残されていることになる。日本国内の計算上の接種対象者(12歳以上)は約1億1,500万人であり、ここには優先接種対象となった医療従事者が含まれている。首相官邸のホームページに掲載されているデータ上では、「医療従事者等」枠で2回の接種を終えた人は7月2日時点で約499万人。また、高齢者も含む一般接種で2回の接種を終えた人は7月6日時点で約1,251万人。ここからすると、残る高齢者を含む一般住民の接種対象者は9,750万人となる。現在一般接種で1回目を終え、2回目待ちが約1,300万人、同じく医療従事者枠で2回目待ちが約100万人、合計で2回目接種待ちが約1,400万人。この2回目接種待ちの人に優先的にワクチンが配布されると仮定すると、残る国内の接種対象者は約8,350万人に対して、ワクチンの国内在庫は約5,800万回分残されていることになる。もっとも残る国内接種対象者の試算はあくまでワクチンの適応上の年齢をカットオフ値にして算出したもので実際の接種希望者とは異なる。おそらく、このうちの2~3割は接種を希望しないと考えられる。そのように考えると、今後のワクチン供給速度の多少の減速を考慮しても、一部で騒ぐような「供給不足」とまでなるのかは正直疑問を感じている。この件について私は2週間ほど前からいくつかのメディアから取材を受けているが、問題の本質は、都市部を中心にまだ優先接種対象者のみの接種段階で留まっている自治体の一部医療機関で、ワクチン在庫が滞留しているからではないかとみている。今回のワクチン接種では自治体が高齢者に対する接種を細々と開始していた5月に菅 義偉首相が突如「1日100万回接種」の目標を公言。これを機に自治体が集団接種会場での接種枠を増加させ、防衛省が運営する大規模接種センター、職域接種などがスタートして接種機会の選択肢が大幅に増加した。この頃から私はワクチン接種を担当している都市部の中小医療機関で「接種の予約枠が埋まらない」という話をよく耳にした。前述のように接種機会が増えたことで、なるべく早く接種したい人ほど多少遠い場所でも予約が入りやすそうな接種会場を選ぶ傾向が強まり、結果として「灯台下暗し」で市中の中小医療機関で予約枠に空きが生まれてしまっていたのだ。こうした状況に、自治体が「(接種担当医療機関の)かかりつけ患者ならば、優先接種対象者でなくとも余った予約枠で接種しても良い」などの柔軟な対応をしていれば、問題はなかったのかもしれないが、多くの自治体側は高齢者や基礎疾患のある人という接種順位をきっちり横並びで守っている。地方自治体としてはやはり「出過ぎた真似」はできないということなのだろう。こうした状態は今でも結構あちこちで聞こえてくる。しかも今の仕組みでは自治体側が個々の接種医療機関の在庫を必ずしもリアルタイムで把握できないため、どこに滞留ワクチンがあるのかもわからない。この状況を「劇薬」で改善するならば、一つは接種券を広く配布して、優先接種順位を維持しつつも原則先着順で誰でもが受けられるようにすることだ。もっともこれを行えば、強烈な「副産物」が2つ発生する。1つは、ただでさえマンパワー不足で悩む地方自治体のワクチン関連業務のさらなるひっ迫である。悩ましい問題ではあるのだが、これまでのワクチン関連のイベントの動向をみると、新たな動きから1~2週間後にはピークアウトが起こる。実例は防衛省が運営する大規模接種センターでの予約状況などだ。正直、ここは地方自治体の職員の皆さんに「短期間だけ我慢して」とお願いするよりほかにない。もう1つは滞留在庫もはけた後の本格的なワクチンの供給不足である。これについての解決策は、現在公的接種では使用されていないアストラゼネカ製ワクチンを使うことだ。このワクチンは、接種した人でごくまれながらも重篤な血栓症の副反応が報告されたことから、日本では製造販売を承認しながら公的接種での使用を控えている。しかし、すでにデータで示されているが、この血栓症の発症確率は約25万分の1。それによる死者は血栓症発症者の5人に1人なので、このワクチンを接種することで死亡する確率は約125万分の1という低頻度である。本来ならば使用を控えるまでの頻度ではないし、若年者で発生しやすいことも分かっているので、対象者を絞り込んで接種することで頻度をより低く抑えることも不可能ではない。とはいえ政府側では、たとえ低頻度でも重篤な副反応が発生することが分かっているワクチンを使用して実際に副反応が報告された場合、今回の新型コロナのワクチン接種全体への信頼性低下につながる可能性があることを危惧し、公的接種での採用を控えたのだろう。だが、現在はまさに非常時。そろそろ政府も一歩踏み出した決断とそれに伴うリスクコミュニケーションを身に付けて欲しいのだが…。

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抗精神病薬で治療された統合失調症患者における非アルコール性脂肪性肝疾患リスク

 統合失調症患者のメタボリックシンドローム有病率は、一般集団よりも高いことはよく知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率については、あまり知られていない。下総精神医療センターの是木 明宏氏らは、抗精神病薬で治療された統合失調症患者におけるNAFLDリスクについて、調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年6月4日号の報告。 腹部エコー検査を実施した統合失調症および統合失調感情障害患者253例の医療記録を分析した。 主な結果は以下のとおり。・腹部エコー検査でNAFLDが認められた患者は、108例(42.7%)であった。・これらの患者のうち、NAFLDの線維化の徴候が認められた患者は、13例(12.0%)であった。・年齢分布に関しては、NAFLDは若年患者(とくに女性患者)において多かった。・統合失調症患者のNAFLDと有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●BMI(p<0.001) ●メタボリックシンドロームリスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.049) ●高プロラクチン血症リスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.041)・探索的解析では、NAFLDの線維化の徴候は、女性患者においてより関連性が高いことが示唆された(p=0.023)。・この若年女性患者でみられるリスクは、一般集団と比較し、統合失調症患者に特有である可能性が示唆された。

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日本人反復性片頭痛患者に対するガルカネズマブの治療満足度~第II相試験

 京都・立岡神経内科の立岡 良久氏らは、反復性片頭痛の予防に対しガルカネズマブ(GMB)を投与された日本人患者の治療満足度(4~14ヵ月間の1ヵ月当たりの片頭痛日数)について、評価を行った。Neurology and Therapy誌2021年6月号の報告。 この第II相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、日本の医療機関40施設において、18~65歳の片頭痛患者が登録された。対象患者は、プラセボ群230例、GMB皮下注120mg(GMB120群)115例、GMB皮下注240mg(GMB240群)114例にランダムに割り付けられ、6ヵ月間の投与を行った。治療に対する印象は、患者による重症度の改善度(PGI-S)、患者による全般印象度の改善度(PGI-I)、薬剤に対する患者の満足度質問票(PSMQ-M)を用いて評価した。PGI-Sはベースライン時および1~6ヵ月、PGI-Iは1~6ヵ月、PSMQ-Mは1および6ヵ月目に評価を行った。GMB群とプラセボ群におけるPGI-Iスコアの違い、PGI-Sスコアのベースラインからの変化、PGI-IとPSMQ-Mのポジティブな反応を評価するため、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインから1~6ヵ月間のPGI-Sスコア平均変化は、以下のとおりであった。 ●プラセボ群:-0.09±0.05 ●GMB120群:-0.17±0.07(p=0.33) ●GMB240群:-0.30±0.07(p=0.013)・1~6ヵ月の平均PGI-Iスコアは、以下のとおりであった。 ●プラセボ群:3.39±0.05 ●GMB120群:2.55±0.07(p<0.05) ●GMB240群:2.71±0.07(p<0.05)・1ヵ月当たりの片頭痛日数2.8~3.0日の減少は、プラセボ群と比較し、GMB群におけるPGI-Iの高いポジティブ反応率(25~31%)と相関が認められた。・満足度と好みに対するPSMQ-Mのポジティブ反応率は、プラセボ群と比較し、GMB群で有意に高かった。【満足度のオッズ比】 ●GMB120群:3.142(95%信頼区間[CI]:1.936~5.098)、p<0.05 ●GMB240群:3.924(95%CI:2.417~6.369)、p<0.05【好みのオッズ比】 ●GMB120群:3.691(95%CI:2.265~6.017)、p<0.05 ●GMB240群:3.510(95%CI:2.180~5.652)、p<0.05 著者らは「GMBによる予防治療を受けている日本人反復性片頭痛患者は、プラセボと比較し、満足度が有意に高かった」としている。

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中国製不活化ワクチン、3~17歳に良好な安全性と免疫応答

 新型コロナワクチンの成人に対する接種が世界的に広がっているが、小児に対する有用性を検証することを目的とした臨床試験も進んでいる。中国において3~17歳の小児および青年を対象とした研究の結果が発表された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版6月28日号掲載の報告。 中国・河北省にある疾病対策センターで、3~17歳の健康な小児および青年を対象に、中国Sinovac Biotech社の不活化ワクチン「CoronaVac」(WHO緊急使用リストおよび33ヵ国で承認済み)の二重盲検無作為化比較第I/II相試験を行った。 参加者はSARS-CoV-2への曝露または感染歴のある人は除外され、ワクチン群と対照群(ミョウバンのみ)に割り付けたうえで、2回接種(0日目と28日目)を受けた。 第I相試験は、72例を対象に、各年齢層(3~5歳、6~11歳、12~17歳)を低用量段階(ブロック1)から高用量段階(ブロック2)へ順に割り付けた。ブロック1は低用量ワクチン群(1.5μ)または対照群(ミョウバンのみ)、ブロック2は高用量ワクチン群(3.0μg)または対照群に3:1で無作為に割り付けた。 第II相試験は、480例を対象に、3ブロックに分け、ブロックごとに低用量ワクチン群(1.5μg)、高用量ワクチン群(3.0μ)、対照群に2:2:1で無作為に割り付けた。 安全性の主要評価項目は、少なくとも1回の接種を受けた全参加者における28日以内の有害反応であった。免疫原性の主要評価項目は、2回目接種から28日後のSARS-CoV-2に対する抗体陽転率だった 主な結果は以下のとおり。・2020年10月31日~12月2日に72例が第I相、2020年12月12日~30日に480例が第II相に登録され、計550例がワクチンまたはミョウバンのみを少なくとも1回接種された(第I相71例、第II相479例)。・第I相と第II相を合わせた安全性プロファイルでは、接種後28日以内に何らかの副反応が発生したのは、1.5μg群56/219(26%)、3.0μg群63/217(29%)、対照群27/114(24%)であり、有意差はなかった(p=0.55)。・副反応の多くは軽度および中等度であった。最も高い頻度で報告されたのは注射部位の痛み(73/550[13%])で、1.5μg群36/219(16%)、3.0μg群35/217(16%)、対照群2/114(2%)に発生した。・2021年6月12日現在、対照群で肺炎の重篤な有害事象が1件報告されているが、ワクチン接種とは無関係と考えられている。・第I相試験では、2回目接種後に抗体陽転が1.5μg群27/27(100%)、3.0μg群26/26人(100%)に認められた。第II相試験では、1.5μg群180/186(96.8%)、3.0μg群180/180(100%)に認められた。対照群では検出可能な抗体反応はなかった。 研究者らは、この研究は不活化ワクチンを3~17歳の小児および青年を対象に試験を実施した初めての報告であり、CoronaVacは3~17歳の小児および青年において忍容性が高く安全であり、体液性免疫応答を誘導した。3.0μg投与で誘導された中和抗体価は1.5μg投与よりも高い免疫応答を示し、今回の結果は小児および青年を対象とした今後の研究において3.0μgの投与量と2回の免疫スケジュールの使用を支持するものである、としている。

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タンパク質の効果的な摂取方法とは?

 昨年、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」において、65歳以上のタンパク質目標摂取量が総エネルギー量の15~20%に改定された(以前は、18歳以上の全年代で13~20%)。 これを受け、6月28日に一般社団法人Jミルク主催のメディアミルクセミナーが開催され、藤田 聡氏(立命館大学 スポーツ健康科学部 教授)が「タンパク質の“質“と効果的な摂取法」をテーマに講演を行った。タンパク質、足りていますか? 加齢と共にアミノ酸から合成される筋肉量が減少する。十分な運動を行った場合でも加齢に伴う筋肉量の低下を防ぐことは難しい。筋肉量の低下は、内臓脂肪の増加やインスリン抵抗性に関与し糖尿病のリスクとなることが報告されている。また、筋肉量の低下は心疾患や死亡のリスクを高めるとの報告もある。 筋肉量を増加させるには、各食事でバランスよくタンパク質を摂取する必要があるが、30代以上の過半数で朝食のタンパク質摂取量が不足しているという研究データが示された。1食でもタンパク質の摂取量が不足すると、筋肉量が低下しやすくなるため、とくに朝食では積極的にタンパク質を摂取する必要がある。 しかし、高齢者では、食が細くなりタンパク質の十分な摂取が難しいこともあるため、より効率的に筋肉を合成できるタンパク質を摂取することが重要だと強調された。効率的な筋肉合成のカギを握る「ロイシン」 総合アミノ酸40gと必須アミノ酸18gでは、筋肉の合成を刺激する力が同程度であったことが示されている。さらに別の研究では、必須アミノ酸であるロイシンの含有率を上げることで、筋肉の合成速度が上昇したと報告された。これらの研究データを踏まえ、筋肉の合成には必須アミノ酸がとくに重要だが、ロイシン含有率の高い食品を積極的に摂取することで、筋肉をより効率よく合成できる可能性があると強調された。ロイシンの含有率が高い食品には、乳製品などがある。 そして、ロイシンの利用効率を高めるためには運動が重要であり、とくに筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動が有効だとされている。レジスタンス運動2時間後には筋肉の合成速度が2倍になるため、運動2時間後を目安にロイシンを摂取することが望ましいと述べられた。筋肉量の低下は身近な課題 筋肉量の低下が懸念されているのは、高齢者だけではない。日本では若い女性の「やせ」(BMI 18.5未満)が問題となっていることや、昨今、コロナ禍でテレワークや外出自粛が進んだことで、すべての世代で筋肉量の低下が懸念されている。 個々に合わせた運動と、積極的なロイシン摂取を心掛け、筋肉量を増加させることが重要であると、藤田氏は講演を締めくくった。

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ファイザー/モデルナワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARSCoV-2))であるコミナティ筋注(ファイザー)とCOVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項に心筋炎および心膜炎に関する注意喚起を追記するよう、7月7日付けで改訂指示が発出された。 今回の改訂指示は、国内ではこれらのワクチンとの因果関係が否定できない心筋炎および心膜炎の副反応疑い報告はないものの、以下の状況を考慮し、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断されたことによる。・海外において、因果関係は不明であるが、これらのワクチンの接種後に心筋炎および心膜炎が報告されていること・海外において、心筋炎および心膜炎の注意喚起がなされていること・国内においても、因果関係は不明であるが、症例集積が認められること・心筋炎、心膜炎が疑われる症状が認められた場合には医師の診察を受ける旨をあらかじめ被接種者に指導することが、早期発見および重症化への対処の上で重要であると考えること・接種対象者の拡大に伴うAYA世代への接種数増加が予想されること なお、国内で集積された症例は、心筋炎関連はコミナティ筋注で12例(うち死亡2例)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注で1 例(死亡例なし)、心膜炎関連はコミナティ筋注で3例(死亡例なし)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注では報告されていない。いずれも、因果関係が否定できない症例は報告されていない。 両ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。15. その他の注意15.1 臨床使用に基づく情報海外において、因果関係は不明であるが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に心筋炎、心膜炎が報告されている。報告された症例の多くは若年男性であり、特に2回目接種後数日以内に発現している。また、大多数の症例で、入院による安静臥床により症状が改善している。

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新規GIP/GLP-1受容体作動薬、セマグルチドに対し優越性を示す/NEJM

 2型糖尿病患者において、tirzepatideはセマグルチドに対しベースラインから40週までのHbA1c低下が有意に優れていることが認められた。米国・National Research InstituteのJuan P. Frias氏らが、第III相無作為化非盲検試験「SURPASS-2試験」の結果を報告した。tirzepatideは、新規2型糖尿病治療薬として開発中のデュアル・グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬で、第III相国際臨床開発プログラムであるSURPASSプログラムにおいて、有効性と安全性が検討されている。そのうちSURPASS-2試験では、選択的GLP-1受容体作動薬セマグルチドの承認されている最高用量との比較が行われた。NEJM誌オンライン版2021年6月25日号掲載の報告。メトホルミンで血糖コントロール不良、tirzepatide(3用量)vs.セマグルチド SURPASS-2試験の対象者は、メトホルミン1日1,500mg以上による単独療法で血糖コントロール不十分(HbA1c:7.0~10.5%)の、18歳以上、BMIが25以上の2型糖尿病患者1,879例。tirzepatideの5mg群、10mg群、15mg群、またはセマグルチド(1mg)群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースラインの平均HbA1cは8.28%、平均年齢は56.6歳、平均体重は93.7kgであった。 主要評価項目は、ベースラインから40週までのHbA1c変化量であった。主な副次評価項目は、ベースラインから40週までの体重変化、ならびにHbA1c 7.0%未満および5.7%未満を達成した患者の割合とした。tirzepatide全投与群でセマグルチドよりHbA1cおよび体重低下が有意に低下 HbA1cのベースラインから40週までの推定平均変化量は、tirzepatideの5mg群-2.01ポイント、10mg群-2.24ポイント、15mg群-2.30ポイントで、セマグルチド群は-1.86ポイントであった。5mg群、10mg群、15mg群とセマグルチド群との推定群間差は、それぞれ-0.15ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.28~-0.03、p=0.02)、-0.39ポイント(-0.51~-0.26、p<0.001)、-0.45ポイント(-0.57~-0.32、p<0.001)であった。tirzepatideの全用量群で、セマグルチド群に対する優越性が示された。 体重のベースラインから40週までの推定平均変化量は、5mg群-7.6kg、10mg群-9.3kg、15mg群-11.2kgおよびセマグルチド群-5.7kgであり、tirzepatide群の用量依存的な体重減少が認められ、tirzepatideの全用量群で、セマグルチド群より有意に減少した(最小二乗平均推定群間差はそれぞれ-1.9kg、-3.6kg、-5.5kg、すべてのp<0.001)。 主な有害事象(いずれかの投与群で発現率5%以上)は胃腸障害で、悪心がtirzepatide群17~22%、セマグルチド群18%、下痢が13~16%、12%、嘔吐が6~10%、8%であった。重症度はいずれも軽度から中等度であった。低血糖症(血糖値<54mg/dL)の発現率は、tirzepatideの5mg群0.6%、10mg群0.2%、15mg群1.7%、セマグルチド群0.4%であった。重篤な有害事象は、tirzepatide群で5~7%、セマグルチド群で3%であった。

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エンパグリフロジン、HFpEFに初の有効性を確認/EMPEROR-Preserved試験

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした第III相EMPEROR-Preserved試験において、主要評価項目(心不全による心血管死または入院いずれかの最初のイベントまでの期間)を達成し、糖尿病の有無にかかわらず、HFpEF患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に減少させたことを、ドイツ・べーリンガーインゲルハイムと米国・イーライリリーが、7月6日、プレスリリースで発表した。本試験の結果は、2021年8月の欧州心臓病学会(ESC)年次学術集会で発表される予定。 EMPEROR-Preserved試験は、慢性HFpEF患者5,988例を対象に、プラセボと比較した1日1回のエンパグリフロジン10mg服用の有効性と安全性を評価するための第III相ランダム化二重盲検比較試験である。  「HFpEFに対する最初で唯一の成功した試験」と題された速報では、結果の詳細は明らかにされていないが、両社は「今回得られた所見は、駆出率に関係なく、あらゆる形態の心不全におけるエンパグリフロジンの有効性を示している。また、安全性プロファイルは、既知のプロファイルと概ね一致していた」と報告している。 イーライリリーの副社長Jeff Emmick氏は、「エンパグリフロジンは、2型糖尿病と心血管疾患のある人々の心血管死を減らす最初のSGLT2阻害薬。今度は、心不全というもう1つの重要なマイルストーンに到達した。本結果は、これまで治療が非常に困難だったタイプの心不全に有望だ」とコメントした。 本プレスリリースは、日本心不全学会の公式Twitterが取り上げ、30件以上も引用ツイートされるなど、SNSでも話題を呼んでいる。

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非小細胞肺がん、ニボルマブ+化学療法の術前補助療法(CheckMate816)/ASCO2021

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法において、ニボルマブ(NIVO)+化学療法と化学療法を比較する無作為化化第3相試験CheckMate816の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。・対象:Stage IB~IIIAの切除可能なNSCLC(ECOGPS≦1)・試験薬群:ニボルマブ360mg+プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術(n=179)・対照薬群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術(n=179) 根治手術は治療から6週間以内に行われた・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立委員会評価の病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存率[探索的評価項目]手術実施状況、手術関連有害事象 主な結果は以下のとおり。・pCR達成率は、NIVO+化学療法群24.0%、化学療法群2.2%と、NIVO+化学療法群で有意に優れていた(オッズ比:13.94、99%信頼区間:3.49~55.75、p<0.0001)。(既報)・根治的手術率は、ニボルマブ+化学療法83%、化学療法群では75%であった。・肺葉切除術はNIVO+化学療法群の77%、化学療法群の61%で実施され、肺全摘はNIVO+化学療法の17%、化学療法群の25%で実施された。・R0切除はNIVO+化学療法群83%、化学療法群78%で達成され、原発巣の残存生存腫瘍率はニボルマブ+化学療法10%に対し、化学療法群では74%であった。・全Gradeの手術関連有害事象の発現はNIVO+化学療法群41%、化学療法群47%であり、Grade3/4はそれぞれ11%、15%で発現した。 CheckMate816において、NIVO+化学療法の術前補助療法は、pCRを有意に改善した。また、同治療は忍容性が高く、ニボルマブの追加により術後合併症が増えることもなかった。この結果は、ニボルマブ+化学療法のNSCLC術前補助療法の選択肢としての可能性を支持するものだと。発表者は結んでいる。

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ラロトレクチニブがNTRK陽性固形がん治療薬として発売/バイエル

 バイエル薬品は、2021年7月7日、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんの治療薬として、ラロトレクチニブ(製品名:ヴァイトラックビ)を発売したと発表。 ラロトレクチニブは、NTRK遺伝子融合陽性の進行・再発の固形がん治療に特化したトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬として開発された。ラロトレクチニブは、NTRK遺伝子融合を有する成人および小児固形がん患者に対する高い奏効割合と持続的な奏効、NTRK遺伝子融合を有する中枢神経系原発腫瘍に対する高い病勢コントロール率を示している。ラロトレクチニブの適応は「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形」 ラロトレクチニブは、すでに米国、英国、EU諸国などで承認を取得しており、日本では2021年3月23日に厚生労働省より製造販売承認を取得していた。内用液についても日本での発売に向けて準備を進めている。ラロトレクチニブの製品概要・販売名:ヴァイトラックビカプセル 25mg、同 100mg、同 内用液 20mg/mL・一般名:ラロトレクチニブ硫酸塩(larotrectinib sulfate)・効能・効果:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形・用法・用量:通常、成人にはラロトレクチニブとして1回100mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。通常、小児にはラロトレクチニブとして1回 100mg/m2(体表面積)を1日2回経口投与する。ただし、1回100mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する。・製造販売承認日:2021年3月23日・薬価基準収載日:2021年5月19日・製造販売元:バイエル薬品株式会社・薬価:ヴァイトラックビ カプセル 25mg 4042.50円、同 100mg 14542.90円 、同 内用液 20mg/mL 2%/1mL 2908.6円・発売日:ヴァイトラックビ カプセル 25mg、同 100mg(2021年7月7日) 同 内用液 20mg/mL 発売準備中(8月予定)

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COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

 COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。 本研究は3例の経験にすぎない。しかし、世界のCOVID-19 pandemic抑制に期待されるワクチンでもまれに重篤な血栓イベントを起こすこと、血栓イベントに対してまったく対応法がないわけではないことを示している。ワクチンによる血栓症ではいわゆるHIT抗体が高いとされていた。HITであれば、血栓症に対してヘパリンを使うわけにはいかない。アルガトロバンなどの他の抗凝固薬に転換された。しかし、抗凝固薬転換のみでは血小板数は活性化しなかった。HITではHIT抗体による血小板活性化がFcRg受容体刺激を介して起こる。そこで大量のIgGを添加すれば病態を改善できる可能性がある。本研究の対象は3例であり、臨床イベントを標的とした研究ではないが、3例の血小板数、HIT抗体量などを丁寧に計測してIgG療法の有効性を示唆した。 筆者はワクチン反対論者ではない。積極的ワクチン接種がCOVID-19 pandemic克服への唯一の希望と思っている。ワクチンによる合併症はまれである。しかし、0(ゼロ)ではない。ワクチンには血栓イベントなど致死的な合併症のリスクはあるが、臨床医は確立された治療がなくても類似病態を参考にベストを尽くす。すべての合併症が治るとは言わない。しかし、合併症が起こったら、その実態を社会で共有し、対応策をみんなで考えることが大事である。 本論文は、まれだが致死的合併症に対してでも医師がベストを尽くして対応している、カナダ社会の健全性を示す論文として評価できる。

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