サイト内検索|page:631

検索結果 合計:35172件 表示位置:12601 - 12620

12601.

mRNAワクチン、初回接種後2週間は要注意/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチンは、2回接種により症候性感染と重症化に対する高い有効性が認められることが示された。ただし、1回接種の場合、とくに高齢者では接種直後は有効性が低かった。カナダ・ICESのHannah Chung氏らが、診断陰性例コントロール試験の結果、明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「mRNAワクチンの症候性感染に対する効果は、1回接種では中程度であることから、とくに初回接種後最初の2週間(高齢者ではさらに長い期間)は効果がないこと、マスク着用や物理的距離、社会的な集まりを避けるなどの推奨されている公衆衛生対策を継続して行うべきであることを、人々に伝える必要がある」と指摘している。BMJ誌2021年8月20日号掲載の報告。有症者約32万例でmRNAワクチンの有効性を評価 研究グループは、SARS-CoV-2の症候性感染および重症化に対するワクチンの有効性を検証する目的で、診断陰性例コントロール試験を実施した。対象は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状があり2020年12月14日~2021年4月19日にSARS-CoV-2検査を受けた16歳以上のオンタリオ州の住民32万4,033例であった。 主要評価項目は、RT-PCR法による症候性SARS-CoV-2感染(検査陽性)、ならびに症候性感染の重症化(入院または死亡)で、検査データはOntario Laboratories Information System、アウトカムはCase and Contact Management system、Canadian Institute for Health Information's Discharge Abstract DatabaseおよびOntario Registered Persons Database、ワクチン接種状況はオンタリオ州の一元化されたCOVID-19ワクチン情報システムであるCOVaxONを用いて特定した。なお、対象ワクチンは、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)およびmRNA-1273(Moderna製)とし、ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)の接種者は除外した。 多変量ロジスティック回帰モデルを用い、検査陽性例と検査陰性例(ワクチン未接種者を参照群とする)でワクチン接種状況を比較した。高い効果が得られるのは初回接種後14日以降、2回目接種後7日以降 症状があり検査を受けた32万4,033例中、5万3,270例(16.4%)が検査陽性で、2万1,272例(6.6%)は少なくとも1回のワクチン接種を受けていた。検査陽性例のうち、2,479例(4.7%)が入院(2,035例)または死亡(444例)した。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された症候性感染に対するワクチンの有効性は60%(95%信頼区間[CI]:57~64)であり、14~20日後は48%(41~54)であったが、35~41日後には71%(63~78)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認されたワクチンの有効性は91%(89~93)であった。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された入院または死亡に対するワクチンの有効性は70%(95%CI:60~77)であり、1回目接種14~20日後は62%(44~75)であったが、35日以降には91%(73~97)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認された同ワクチンの有効性は98%(88~100)であった。 70歳以上の成人では、1回目接種後の期間が短い間はワクチンの有効性が低く、28日後以降で若年者の14日後以降に相当する有効性が得られた。また、2回接種後は、E484K変異(ガンマ株)に対して高い有効性を示すことが確認された。

12602.

世界の高血圧患者数、30年で2倍に/Lancet

 1990~2019年における高血圧有病率、治療率およびコントロール率の改善は、国・地域によって大きく異なり、一部の中所得国がほとんどの高所得国を上回っている現状が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、約200の国・地域の研究1,201件、計1億400万人のデータの解析結果を報告した。著者は、「高所得国だけではなく低所得国や中所得国においても、高血圧の1次予防と治療およびコントロールの強化を介して高血圧有病率を減少させる二元的アプローチ(dual approach)は達成可能である」と強調している。Lancet誌オンライン版2021年8月24日号掲載の報告。1億400万人のデータを解析 非感染性疾患の危険因子に関する国際共同疫学研究グループ(NCD Risk Factor Collaboration:NCD-RisC)は、1990~2019年に184の国・地域で実施され、血圧測定ならびに高血圧治療に関するデータが得られる一般住民を対象とした1,201件の研究を特定し、30~79歳の1億400万人のデータを解析した。 主要評価項目は、高血圧の有病率、診断率(高血圧と診断されたことがあると報告した人の割合)、治療率(降圧薬を服用している人の割合)、コントロール率(血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている人の割合)で、ベイズ階層モデルを用いて推定した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬を服用していることと定義した。世界全体で2019年の高血圧有病率は約30%、診断率は50~60%、治療率は40~50% 世界全体で30~79歳の高血圧の年齢標準化有病率は、1990年が男女とも32%、2019年が男性34%、女性32%と安定していたのに対して、高血圧患者数は1990年の男性3億1,700万人、女性3億3,100万人から、2019年には男性6億5,200万人、女性6億2,600万人と2倍になった。 2019年の年齢標準化有病率は、男女ともカナダ、ペルーで最も低く、女性は台湾、韓国、日本、およびスウェーデン、スペイン、英国を含む西ヨーロッパの国で、男性はエリトリア、バングラデシュ、エチオピア、ソロモン諸島などの低・中所得国で低かった。2019年の高血圧有病率が50%を超えたのは、男性で9ヵ国(パラグアイ、ハンガリー、ポーランド、アルゼンチン、リトアニア、ルーマニア、ベラルーシ、クロアチア、タジキスタン)、女性で2ヵ国(パラグアイ、ツバル)であった。 2019年の高血圧患者において、診断率は男性49%、女性59%、治療率はそれぞれ38%、47%、コントロール率は18%、23%であった。 2019年の治療率およびコントロール率は、韓国、カナダ、アイスランドで最も高く(治療率>70%、コントロール率>50%)、次いで米国、コスタリカ、ドイツ、ポルトガル、台湾であった。ネパール、インドネシア、サハラ以南のアフリカおよびオセアニアの一部の国では、治療率が男性で20%未満、女性で25%未満であった。これらの国の男性および女性、ならびに北アフリカ、中央・南アジア、東ヨーロッパの一部の国の男性では、コントロール率が10%未満であった。1990年以降、ほとんどの国で治療率およびコントロール率は向上したが、サハラ以南のアフリカとオセアニアのほとんどの国では変化はわずかであった。治療率およびコントロール率の改善が最も大きかったのは、高所得国、中央ヨーロッパ、ならびにコスタリカ、台湾、カザフスタン、南アフリカ、ブラジル、チリ、トルコ、イランなどの中・高所得国であった。

12603.

新型コロナ変異株「ミュー株」国内で2例確認/厚労省

 WHOが8月30日、感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される「注目すべき変異株(VOI)」に位置付けたことを発表した「ミュー株」について、厚生労働省は9月1日、これまでの検疫結果を改めて集計したところ、今年6月および7月に空港検疫で新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された2例がミュー株と確認されたことを発表した。 WHOが8月31日に公表した週報によると、コロンビアで今年1月に初めて報告されたB.1.621系統の変異株が、8月30日にVOIと位置付けられ、ミュー株と命名された。これを受け、厚労省が国内の新型コロナウイルス感染症患者について国立感染症研究所の検査の結果を遡及的に調べたところ、2例がミュー株に該当したという。2例は空港検疫で確認され、▽6月26日にアラブ首長国連邦から成田空港に到着した40代女性▽7月5日に英国から羽田空港に到着した50代女性。いずれも無症状であった。

12604.

モデルナ混入異物はステンレス片、接種後死亡は「相互関係なく偶発的」

 武田薬品工業は9月1日、同社が輸入および日本国内への供給を行う製造販売承認を取得している「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」について、ワクチン製造元であるモデルナ社との共同ステートメントを発表した。複数のワクチン接種会場から、モデルナワクチンの特定のロットでバイアル内に異物があるとの報告を受けて調査を進め、当該バイアルから得られた粒子状物質を詳細に分析した結果、ステンレススチールであると同定されたという。ワクチン接種後の死亡事例については、「現時点では、接種の因果関係があることは確認されておらず、相互関係なく偶発的に生じたもの」という認識を示した。 モデルナワクチンを巡っては、8月に複数の接種会場から未使用の状態において異物の混入があるとの報告を受け、8月26日付で3つの対象ロット番号「3004667(約57万回接種分)」「3004734(約52万回接種分)」「3004956(約54万回接種分)」について、使用を見合わせるよう通知。厚生労働省によると、8月31日現在で、大規模接種会場と職域接種会場合わせて、全国901会場に約162万回分が配布されていた。 モデルナ社およびワクチン委託生産拠点であるスペインのROVI社と共に調査を進めたところ、ワクチン製造ラインのモジュールに取り付けられた2つの金属部品の設置不具合による摩擦によって粒子状の物質が混入した可能性が高いことがわかったという。この粒子状物質は「316ステンレススチール」で、心臓の人工弁や関節置換、金属製の縫合糸やステープルなどに用いられる。 武田薬品工業によると、ワクチン薬液内にステンレススチールがごく少量存在したとしても、被接種者の健康や安全に対する過度のリスクや、ワクチンのベネフィット・リスク評価への悪影響はないとの見立てだ。また、注射針を通過できる大きさの粒子状金属が仮に筋肉内に注入されてしまった場合、局所的な反応を引き起こす可能性があるものの、注射部位以外での副反応を起こす可能性は低いと考えられるという。 今回の問題に関連して、ワクチン接種後の2件の死亡事例が報道などで取りざたされているが、共同ステートメントでは、「現時点では、これらの死亡事例とモデルナ社製ワクチン(ロット番号3004734)接種の因果関係があることは確認されていない。現在のところ相互の関係なく偶発的に生じたものと考えられる」との認識を示しつつ、因果関係の有無について正式な調査を実施する重要性についても言及している。

12605.

新型コロナとインフルのワクチン接種間隔、現時点の考え方/日医

 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量とそれに伴う予約の設定についての留意点、新型コロナウイルスワクチン接種との接種間隔の考え方について、日本医師会の釜萢 敏常任理事は9月1日の定例会見で情報提供を行った。昨シーズンと比較すると供給量減る見込み、予約の組み立てに注意を 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量は、8月時点で約2,567万本から約2,792万本(1mLを1本に換算)の見込みであり、昨シーズンより減る見通しとなっている。同日開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)において示された1)。とくに接種開始の10月供給量が少なく、供給時期が12月2週目まで続くことから、例年と比較して後ろにずれる見込みという。 昨年は供給量3,342万本に対し使用量は3,274万本と製造効率等がとくに良好だったために供給量が多く、使用量も平成8年以降最大となっていた。しかし一昨年は供給量2,964万本に対し使用量は2,825万本となっており、昨年と比較すると少ないが、例年の使用量に相当する程度は供給される見込みという2)。 釜萢氏は、「11~12月には増えていく見込みとなっているが、接種開始の10月の供給量が少ない。“早く打ちたい”という方への情報提供が重要になる。各医療機関が自分のところに供給されるワクチンの見通しを把握したうえで、希望される方への予約を設定していく必要がある」と説明。とくに小児(13歳未満)の場合は2回接種が推奨されるため、それを踏まえた予約の組み立てをお願いしたいと呼びかけた。新型コロナワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔が必要 また、現在接種が進む新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔についても留意が必要になる。9月1日時点で、わが国では新型コロナウイルスワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることとされている3)。同氏は、「たとえばファイザー社のワクチンは1回目と2回目の間隔が3週間となっており、この間にインフルエンザワクチン接種をスケジュールすることは難しい」とした。 一方、米国疾病予防管理センター(CDC)では、以前は他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることが推奨されていたが、現在では変更され、新型コロナウイルスワクチンを他のワクチンの接種タイミングと関係なく接種することが可能とされている4)。釜萢氏は日本でも今後変更される可能性はあるが、現時点では前後2週間の接種間隔が必要なことに留意が必要とした。

12606.

特許切れの悪夢(製薬企業にとって)と新薬開発(解説:後藤信哉氏)

 製薬企業にとって自社製品の特許切れは大きな痛手である。直近ではARB、クロピドグレルなどの特許切れが業界に大きなインパクトを惹起した。日本ではあまり実感しないが、米国では特許切れと同時に価格が10分の1以下のジェネリック品に置き換わる。新薬開発メーカーは特許期間内に手厚く守られると同時に、特許切れショックを覚悟する必要がある。 2019年、世界で最も売れた薬(AnswersNews)を見ると、アピキサバンが2位(134億ドル!)、リバーロキサバンが第4位(103億ドル)となっている。すなわち、両者ともに1兆円を超える売り上げが毎年ある。特許が切れれば売り上げは急速にゼロになる。現在の仕組みでは、利潤をゆっくり上げることはできない。投資の損失を短期間に回収し、同時に特許切れに備えた革新的新薬開発が必須である。DOACはいずれも、第III相試験の結果を「エビデンス」として特許期間内の販売戦略に利用してきた。Xa阻害薬を超える有効性、安全性を持つ新薬を開発しないと特許切れに耐えられないが、特許期間内にはXa阻害薬の欠点が論じられると売り上げが落ちる。抗血栓薬の開発メーカーは現在の膨大な利潤を保持しつつ、現在のXa阻害薬の欠点を明らかにして、その欠点を乗り越える新薬を速やかに開発しなければならないとの困難な状態に置かれている。 本論文は新規の第XI因子阻害薬abelacimabの臨床開発第II相試験である。一般に、第II相試験は安全性の確認を目的として施行されることが多い。しかし、いずれXa阻害薬の市場の争奪を目指す第XI因子阻害薬は血液凝固内因系で、XI因子欠損症でも出血は少ない。本研究は、412例と少数例ではあるが、イベントリスクの高い静脈造影による静脈血栓再発を有効性のエンドポイントとして有効性に重点を置いていることが、一般的な第II相試験とは異なる。本研究はAnthos Therapeuticsが施行した。この第II相試験の結果を基に、どのような疾病を対象として、どのような第III相試験を計画して、abelacimabの特許期間内にどれだけの利潤を上げることができるか? 世界中の賢いヒトたちが戦略的に計画を練っていると想定される。 1990年代、日本経済が世界を席巻した時には日本流の長期安定雇用が良いとされた。製薬業界のように特許により短期利益確保がルールとなると、当たりを出した企業に人材が流動できるほうが有利である。日本経済の長期低迷には、米英による競争ルールの変更の寄与も大きいと思う。製薬業界は農耕民族よりも狩猟民族に有利な産業に見える。

12607.

夏休みの宿題【Dr. 中島の 新・徒然草】(390)

三百九十の段 夏休みの宿題この原稿書いている今日は8月31日。日本中の小学生が絶望的な気持ちで夏休みの宿題に取り組んでいる日です。すべての日本人の共通体験、夏休みの宿題!苦痛と可笑しさと、ちょっとした懐かしさの入り混じった経験ですね。かく言う私も、夏休みの宿題の先延ばしについては誰にも負けませんでした。夏休みの最初の数日間は少しやっていても、だんだんやらなくなります。そして、蝉の声がアブラゼミからツクツクボウシに変わるころ、そろそろ焦りが……。最後の数日間で何とかやっつけるのは、誰でも同じだと思います。このあたりのこと。例のオンライン英会話で、フィリピン先生に話してみました。中島「今日は日本人共通の苦しみについてです」先生「なにそれ、怖ーい!」中島「心配しないでください。苦しいけど可笑しい話ですよ」先生「聴きたい、聴きたい!」中島「夏休みの宿題についてです」ついに出た、夏休みの宿題。先生「せっかくの夏休みに宿題? そもそも家族で旅行に行ったりして楽しく過ごすのが休みなんじゃないの」中島「いやいや、日本では小学生にも宿題が課せられるのです。それを説明します」外国の人に説明するときには、あらかじめ整理をしておかなくてはなりません。しゃべりながら考えるというのは、母国語だからできることであり、英語では不可能です。中島「夏休みの宿題は4つのパートからできています」先生「はい」中島「まずはワークブックです。漢字を書いたり、計算したりする練習です。漢字ってわかりますか?」先生「カンジね。わかります」中島「そのワークブックは『夏休みの友』という名前でした」先生「プワーハッハッハ! なんですか、それ」中島「皮肉な名前ですね。私たちは『夏休みの敵』と呼んでいました」ホントに陰でそう呼んでいましたが、読者の皆さんはどうでしょうか?中島「第2のパートは絵日記です。1日1ページで毎日書かなくてはなりません」先生「大変ねえ」中島「でも、毎日書く小学生がいるわけもありません。なので、最後の2、3日で40ページ分をまとめて書くのです」ここで「書く」と言うよりも「創作する」と言うと臨場感が出たかも。中島「第3のパートは理科の自由研究です」先生「何ですか、それは!」中島「これは単純に無理です。私には何も思いつきませんでした」今考えれば、小学生向けの学習雑誌から自分にできそうな研究テーマを拾い上げ、それをやって適当にお茶を濁しておけばよかったのですが、その当時は「何かオリジナルの大発見か大発明をしなくてはならない!」と思い込んでいました。中島「そして第4のパートが読書感想文です」先生「そんなものまであるの? 感想は1冊でいいのよね」中島「1冊です。本を読むのは楽しいけれど、感想文を書くのは楽しくありません。というか、机に向かっても何も書けません」先生「確かに」というわけで全日本人共通の苦痛体験、夏休みの宿題!大人になってからも何かと引用されます。曰く 「夏休みの宿題を終えるためには、まずスタートしなくてはならない」曰く 「学校の成績は良かったが、夏休みの宿題はついぞ完成できなかった」などなど。先生「小学校の教師は子供の気持ちがわからないのね」中島「いや、御自分が小学生の時は夏休みの宿題に苦しめられたに違いありません」先生「じゃあ、もう日本の伝統になってしまって、やめられないわけ?」中島「多分そうなんでしょうね」同僚医師たちに聞くところによると、最近はあまり宿題を出さない学校もあるのだとか。教育熱心な地域だと、受験勉強の邪魔にならないよう、あまり宿題を出さないそうです。ま、そのほうが教師も宿題の採点業務が減って嬉しいんじゃないかな。というわけで、本日が8月31日ということで過去を振り返ってみました。読者の皆さんの小学校時代はいかがでしたか?最後に1句 宿題で 頭の痛い 夏休み

12608.

切り傷の縫合処置(手術器具、糸、針の選択)【漫画でわかる創傷治療のコツ】第5回

第5回 切り傷の縫合処置(手術器具、糸、針の選択)《解説》お待たせしていましたが、今回は、縫合の主役である手術器具の選択について、知っておくべきポイントを説明していきます。形成外科の縫合で使われる器械は、外科系の他科よりも繊細で細かい操作が可能なものが多いです。とはいっても、人によって好みが分かれるので、一例として参考にしていただければと思います。(1)器械の選択持針器(じしんき)へガール型、マチュー型などがあります。通常、形成外科では3−0~7−0といった細手の針付き縫合糸を使用することが多く、繊細な操作がしやすいへガール型を使います。一方、これより太く、大きな針を使う縫合糸や、弾機針(針の根元が糸を通しやすい構造になっているもの)に絹糸などを掛けて使用する場合は、マチュー型を使用します。大きな針を繊細なヘガール型でつかむと器具が傷むので注意しましょう。鑷子、スキンフック形成外科では、先が細くなっている鑷子(セッシ、ピンセット)の中でも小さいものを使います。マッカンドー、アドソン、ビショップハーモンの3種類が代表的で、大きさで適切なものを選んでいきます。それぞれ、先端部に「鈎(こう)」がついている有鈎と、ついていない無鈎があります。ほかに、形成外科や皮膚科は、スキンフックもよく使います。どれを使うにせよ、組織をがっちりつかんではいけません! 皮膚の縫合、剥離に用いる鑷子は、好みにもよりますが、「有鈎」が多いです。皮膚を直接つかむのではなく、漫画の図のように皮下組織をつかみます。または、スキンフック(有鈎)の鈎を引っ掛けて使います。剪刀やメスも必要に応じて使用しますが、ここでの説明は省きます(解説は別の回で行う予定です)。そのほか、縫合セットには筋鈎やモスキート鉗子、メッツェンバウム剪刀などもあると安心です。(2)縫合糸の選択縫合糸の種類について、大きく分けると吸収糸と非吸収糸に分けられます。天然素材(わが国では絹糸のみ)か合成素材かでも分かれますが、外来で取り扱う創傷の縫合においては、ほぼ合成繊維の糸しか使いません。また、それぞれモノフィラメント(単繊維糸)とマルチフィラメント(多繊維の撚糸)があります。図1:縫合糸の種類非吸収性縫合糸:治癒後の抜糸が必要なので、表皮組織を中心に使用モノフィラメントの成分としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリブテステル、ポリフッ化ビニリデンなど(商品名:エチロン、ノバフィル、プロリーンなど)がありますが、ポリアミド系のナイロンは使用頻度が高く、多くの病院に置いてあると思います。マルチフィラメントの成分にはナイロンとポリエステル(同:サージロン、ベアブレードなど)があります。吸収性縫合糸:生体内で加水分解を受けて吸収されるため、主に真皮・皮下組織に使用モノフィラメントの成分としては、ポリジオキサノン、ポリグリコネート、ポリグレカプロン25など(商品名:PDSII、マクソン、モノクリルなど)、マルチフィラメントの成分は、ポリグラクチン910やラクトマー9-1など(同:バイクリル、ポリゾーブなど)が使われています。より吸収時間が短くなるように加工されている製品もあります。種類によって、強度持続時間や吸収日数が異なるので、必要に応じて選びます。たとえば、頬部の真皮縫合は6-0吸収性合成モノフィラメント糸、表皮縫合は7-0非吸収性合成モノフィラメント糸など。強度が持続するものは傷痕を小さくし、創部がきれいになるメリットがありますが、細菌感染などによる縫合糸膿瘍のリスクもあるので、メリット・デメリットのバランスを考えて選びましょう。(3)針の選択針の形状(と、使用する糸の太さ)は、図のようにパッケージに表示されています。形成外科では、皮膚表面や軟部組織を扱うことが多いです。皮膚の縫合では糸付きの角針、とくに逆三角形の3/8円の弱彎針がよく使われます。深部の縫合になると1/2円の強彎または5/8円の強強彎が便利です。裂けてしまいそうな組織、たとえば口腔内の粘膜などには丸針を使うこともあります。図2:縫合針の分類そのほか、糸を切るための糸切りばさみ(眼科用セーレ、太めの糸であればクーパー)、出血などを拭く滅菌ガーゼなども忘れずに準備しましょう。また、今回紹介した内容は、あくまでも縫合をするために必要な最低限のセットなので、デブリードマンなど追加の処置をする場合は、道具も適宜追加してください。参考1)McCarthy J.G. Introduction to plastic surgery. Plastic Surgery. Vol 1. Philadelphia:W. B. Saunders Co.;1990.p.42-53.2)小林 寛伊. 縫合材料の歴史と問題点. 医科器械学雑誌. 1975;45:627−634.3)日本医療用縫合糸協会ホームページ4)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書I 形成外科の基本手技1. 克誠堂出版;2016.5)菅又 章 編. PEPARS(ペパーズ)123 実践!よくわかる縫合の基本講座<増大号>. 全日本病院出版会;2017.6)上田 晃一 編. PEPARS(ペパーズ)88 コツがわかる!形成外科の基本手技―後期臨床研修医・外科系医師のために―. 全日本病院出版会;2014.

12609.

第73回 これが現実?コロナ患者受け入れ病院の厳しい末路

新型コロナウイルス感染症を巡っては、希望と懸念を感じる動きがそれぞれあった。希望は、研究者らが声明で出した感染対策1)。「策が尽きた」との閉塞感を打破する可能性がある。懸念は、大阪市で新型コロナ患者受け入れ病院を運営する医療法人が、全国で初めて民事再生法を申請したことだ。医療が逼迫する中、「臨時医療施設」設置の動きが出ているが、肝心のコロナ患者受け入れ病院が倒産するようでは、コロナ患者受け入れに対する医療機関の懸念を招きかねない。日本ではほとんど議論されていない空気感染声明は、本堂 毅氏(東北大学大学院理学研究科准教授)と平田 光司氏(高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設ダイアモンドフェロー)らがまとめ、全国の感染症研究者や医師ら30人超が賛同者になっている。声明では「空気感染が主な感染経路」という前提で、「いまだ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である」と訴えている。厚生労働省は、新型コロナの感染経路として唾による「飛沫感染」や「接触感染」が一般的としているが、世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)はエアロゾルの吸引も感染経路としている。また欧米の医学界でも、空気感染がコロナ感染拡大の主因であるということがコンセンサスになっているという。日本では空気感染に関してほとんど議論されていない中、この声明の意義は大きいのではないだろうか。研究者らが空気感染の具体策を提言空気感染は、感染者の口腔から放出されるウイルスを含んだエアロゾル(0.005ミリ以下)が空間に滞留する量(濃度)に応じて起こる。声明では「エアロゾル滞留濃度を下げることで感染抑止は可能なはず」とし、▽若者に広く使われているウレタンや布のマスクはエアロゾルの吸入阻止に無力だが、不織布マスクは抑制できる▽ドイツでは公共の場などでは一定以上の性能を持つマスク着用が罰則付きで義務化され、ウレタンマスクの着用は禁止されたが、日本では制約もなく、正式な呼びかけすらない▽1時間に2回程度の換気は不十分で、空気清浄機などを含めた機械的換気の適切な活用が重要―と指摘した。その上で、国や自治体に▽不織布マスク装着の周知と必要な制度的措置▽換気装置や空気清浄機などを正しく活用するための市民へ周知▽中立的組織による感染対策効果の検証―を求めた。企業や飲食店などで、飛沫感染防止用のアクリル製パーテーションをよく見かけるが、空気感染が主な感染経路となると、予防に必要な対策もおのずと異なってくる。国や自治体は、声明で求められた対策を早急に検討すべきだろう。コロナ患者受け入れを萎縮させる病院倒産報道新型コロナ患者を受け入れていた松本病院の運営主体である医療法人友愛会(大阪市福島区)が、8月26日に大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、コロナ患者受け入れの医療法人の倒産は全国で初めてで、負債総額は約52億円。今後はスポンサーの支援を受け、病院の運営を継続していくという。同病院は地域の中核病院で、大阪府の要請を受けて今年1月から新型コロナの軽症と中等症の患者を受け入れ、それによって外来患者が減り経営破綻したと報じられた。同病院は申請理由として「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債の負担など、法人経営の稚拙さに起因するもの」と、コロナ患者受け入れによる経営悪化を否定。しかし、速報時の衝撃は大きく、厚労省と東京都が都内医療機関にコロナ患者受け入れ病床の確保などを要請する中、コロナ患者受け入れによる経営悪化を懸念する医療機関も出ている。国や都は、正当な理由なく応じなかった場合、医療機関の名称公表などの“脅し”をちらつかせているが、そんなことよりも先にやるべきなのは、コロナ患者を受け入れる医療機関に対し、経営を強固にバックアップする公的な支援策を示すことではないだろうか。参考1)最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明

12610.

倦怠感は日中の過度な眠気と独立して抑うつ症状と関連

 一般集団における倦怠感に対する睡眠障害や併存疾患の影響について、韓国・ソウル大学校病院のJun-Sang Sunwoo氏らが、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2021年7月22日号の報告。 2018年に実施された韓国の横断調査より得られたデータを用いて、分析を行った。倦怠感の評価には、Fatigue Severity Scaleを用いた。就業日の睡眠時間、クロノタイプ、休日の睡眠不足を解消するための睡眠、日中の過度な眠気などの睡眠習慣および抑うつ症状、その他の併存疾患について調査した。倦怠感を従属変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、19~92歳の成人2,493人(男性の割合:50%、平均年齢:47.9±16.4歳)であった。・就業日の平均睡眠時間は、7.1±1.1時間であり、倦怠感の有病率は、31%であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、倦怠感は以下の因子との関連が認められた。 ●日中の過度な眠気(オッズ比[OR]:3.751、95%信頼区間[CI]:2.928~4.805) ●抑うつ症状(OR:3.736、95%CI:2.701~5.169) ●睡眠不足の認識(OR:1.516、95%CI:1.249~1.839) ●休日の睡眠不足を解消するための睡眠(OR:1.123、95%CI:1.020~1.235) ●アルコール摂取の少なさ(OR:0.570、95%CI:0.432~0.752) ●運動不足(OR:0.737、95%CI:0.573~0.948)・サブグループ解析では、日中の過度な眠気が認められない人において、倦怠感と就労日の睡眠時間の短さとの関連が認められた(OR:0.899、95%CI:0.810~0.997)。・日中の過度な眠気が認められる人において、倦怠感と関連が認められた因子は、抑うつ症状(OR:2.842、95%CI:1.511~5.343)とアルコール摂取の少なさ(OR:0.476、95%CI:0.247~0.915)であった。 著者らは「日中の過度な眠気と独立して、倦怠感と抑うつ症状の有意な関連が認められた。倦怠感、抑うつ症状、睡眠の病態生理学的関連を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

12611.

医療従事者のバーンアウトとそれに伴う仕事量の変化

 COVID-19感染流行に収束の兆しが見えない中、医療従事者の燃え尽き症候群(バーンアウト)が問題となっている。COVID-19感染流行前に、医師以外の医療従事者(HCW)における燃え尽き症候群(バーンアウト)と組織への満足度が、その後の仕事量の変化と関連するのかを調査した研究結果が、JAMA Network Open誌2021年8月20日号で報告された。 米メイヨー・クリニックのLiselotte N. Dyrbye氏らは、米国の複数の州にある地域密着型病院と医療施設において、2015年~2017年にかけてHCW(看護師、理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカー等)を対象に、バーンアウト及び組織への満足度と、その後24ヵ月間の仕事量の変化との関連を探る縦断的コホート研究を実施した。分析は2020年11月25日に完了した。主要アウトカムは、給与記録に記録されるフルタイム換算(FTE)単位で測定される仕事量の変化だった。バーンアウトの診断はMaslach Burnout Inventory(MBI)による情緒的消耗感と脱人格化の測定、組織への満足度は5段階アンケートで測定した。 主な結果は以下のとおり。・2万6,280例(45~54歳が7293例[27.8%]、女性2万263例[77.1%])が対象となった。勤続期間は5年未満(8,570例[32.6%])と15年以上(8,115例[30.9%])が多く、6,595例(25.1%)が看護師だった。・ベースライン時には、5,695例(21.9%)が「情緒的消耗感が強い」、2,389例(9.2%)が「脱人格化が強い」、6,177例(23.8%)が「バーンアウト状態」を示した。組織への満足度は「非常に満足」(9,125例[35.0%])または「満足」(1万3,339例[51.1%])が大半を占めた。・性別、年齢、雇用期間、職種、ベースライン時のFTEとバーンアウトを調整したところ、ベースライン時のバーンアウト状態(オッズ比[OR]:1.53、95%CI:1.38~1.70、p< 0.001)、情緒的消耗感(OR:1.54、95% CI:1.39~1.71、p

12612.

COVID-19重症化リスク因子ごとの致死率、年代別では?/厚労省アドバイザリーボード

 COVID-19の重症化リスク因子ごとの致死率についてHER-SYSデータを集計し年代別に解析したところ、どの年代でも慢性腎臓病が独立したリスク因子として示された。8月25日に開催された「第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(厚生労働省に対し、新型コロナウイルス感染症対策推進に必要となる医療・公衆衛生分野の専門的・技術的な助言を行うもの)の資料として報告された。 本結果は、COVID-19重症化リスク因子(慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病、悪性腫瘍、肥満、喫煙、免疫抑制)を保有するCOVID-19患者の致死率について、2021年4月1日~6月30日(発生届ベース)のHER-SYSデータを集計し、年齢階級別(65歳以上、50~64歳、40~49歳)に解析したもの。<65歳以上>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で5.63%/13.4%、糖尿病で5.47%/8.15%、脂質異常症で5.78%/5.99%、高血圧症で5.42%/7.03%、慢性腎臓病で5.30%/18.0%、悪性腫瘍で5.40%/11.8%、肥満で5.69%/7.69%、喫煙で5.53%/6.93%、免疫抑制で6.64%/14.4%であった。 ・年齢・性別・各リスク因子を加えた多変量解析(ロジスティック回帰分析)で独立したリスク因子として示されたのは、加齢(1歳ごとのオッズ比OR:1.099、95%信頼区間[CI]:1.088~1.109)、男性(女性と比較したOR:1.767、95%CI:1.487~2.100)、糖尿病(OR:1.33、95%CI:1.070~1.653)、慢性腎臓病(OR:2.239、95%CI:1.669~3.004)、悪性腫瘍(OR:1.569、95%CI:1.183~2.079)、喫煙(OR:1.401、95%CI:1.059~1.853)、免疫抑制(OR:2.125、95%CI:1.511~2.990)だった。<50~64歳>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で0.33%/3.56%、糖尿病で0.29%/1.16%、脂質異常症で0.35%/0.53%、高血圧症で0.33%/0.66%、慢性腎臓病で0.31%/6.59%、悪性腫瘍で0.33%/2.28%、肥満で0.32%/1.35%、喫煙で0.36%/0.55%、免疫抑制で0.44%/2.07%だった。・多変量解析で独立したリスク因子として示されたのは、加齢(1歳ごとのOR:1.133、95%CI:1.062~1.210)、男性(女性と比較したOR:3.445、95%CI:1.756~6.761)、糖尿病(OR:3.545、95%CI:1.718~7.312)、慢性腎臓病(OR:12.167、95%CI:4.932~30.02)、悪性腫瘍(OR:4.550、95%CI:1.562~13.26)、肥満(OR:3.596、95%CI:1.376~9.399)だった。<40~49歳>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で0.08%/0%、糖尿病で0.07% /0.65%、脂質異常症で0.08%/0.28%、高血圧症で0.06%/0.57%、慢性腎臓病で0.07%/1.42%、悪性腫瘍で0.08%/0.47%、肥満で0.06%/0.84%、喫煙で0.08%/0.10%、免疫抑制で0.14%/0%だった。・多変量解析では、慢性腎臓病(OR:44.739、95%CI:7.817~256.06)が独立したリスク因子だった。

12613.

オシメルチニブによるEGFR変異陽性肺がん術後補助療法を申請/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)について、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法」に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を実施した。 今回の申請は、米国、欧州、南米、アジア、中東の20ヵ国以上、200を超える施設で実施された第III相ADAURA試験の結果に基づき行われたもの。 ADAURA試験は、腫瘍完全切除後のStage IB、II、IIIAのEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者682例を対象に、オシメルチニブの術後補助療法を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験である。患者はオシメルチニブ80mg1日1回経口投与で3年間または再発するまで治療を受けた。 主要評価項目はStage IIおよびIIIA患者におけるDFSである。データ解析は当初2022年に予定されていたが、2020年4月に独立データモニタリング委員会よりオシメルチニブが顕著な有効性を示したとして、試験の非盲検化を予定より2年早める勧告を受けた。被験者は試験を継続中であり、全生存期間の評価を引き続き行う。 オシメルチニブは、早期肺がんの術後補助療法として米国、欧州および中国を含む50ヵ国以上の国で現在承認されている。

12614.

閉経前の進行乳がん1次治療、エベロリムス併用でPFS延長(MIRACLE)/JAMA Oncol

 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)投与中に病勢進行したホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性の進行乳がんの閉経前女性を対象とした第II相無作為化試験(MIRACLE)で、レトロゾール単独に対して、エベロリムス併用で無増悪生存期間(PFS)延長が認められた。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのYing Fan氏らがJAMA Oncology誌オンライン版で報告。 本試験は、2014年12月8日~2018年9月26日に1次治療を実施した対象患者において、レトロゾールとエベロリムス併用をレトロゾール単独と比較した多施設非盲検第II相無作為化試験。2015年1月5日~2019年12月30日にITT解析を実施した。対象:SERM投与中に病勢進行したHR陽性/HER2陰性の進行乳がんの閉経前女性 199例試験群:レトロゾール(2.5 mg1日1回経口)+エベロリムス(10 mg1日1回経口)101例対照群:レトロゾール(2.5 mg1日1回経口)98例両群とも28日サイクルの1日目にゴセレリン(3.6mg)を皮下投与。レトロゾール単独群の患者は、病勢進行時にエベロリムス併用群へのクロスオーバーが認められた。主要評価項目:無増悪生存期間(PFS) 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢(SD)は44.3歳(6.3歳)だった。・エベロリムス併用群はレトロゾール単独群に比べ、PFS中央値が有意に延長した(19.4ヵ月[95%CI:16.3~22.0ヵ月]vs.12.9ヵ月[同:7.6~15.7ヵ月]、ハザード比:0.64[同:0.46~0.89]、p=0.008)。・レトロゾール単独群98例中56例(57.1%)がエベロリムス併用群にクロスオーバーされ、クロスオーバー後のPFS中央値は5.5ヵ月(95%CI:3.8〜8.2ヵ月)だった。

12615.

ファイザーワクチン後の重篤な有害事象リスク、感染後より低い/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ほとんどの臨床的に重要な有害事象のリスク増大とは関連しておらず、ワクチン接種と心筋炎の過剰リスクとの関連は認められたが(10万人当たり1~5件)、これら心筋炎を含めた重篤有害事象リスクは、SARS-CoV-2感染後のほうが大幅な増大が認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月25日号掲載の報告。イスラエル国民データを基に、臨床的に重要な有害事象のリスクを解析 研究グループは、イスラエルで最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータ(イスラエル国民の約52%が加入)を用い、2020年12月20日~2021年5月24日にBNT162b2ワクチン接種を受けた人(接種群)、ならびにワクチン接種者と人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせたワクチン未接種者(対照群)を対象として、BNT162b2ワクチンの安全性を評価した。 臨床的に重要な短期および中期の潜在的な有害事象(発熱、倦怠感、局所注射部位反応などの軽度の有害事象は含まない)について、Kaplan-Meier法を用いてワクチン接種後42日目の各有害事象のリスク比とリスク差を算出。また、SARS-CoV-2感染者と非感染者をマッチさせ、同様の解析を行った。心筋炎リスク、ワクチン接種vs.未接種群は約3倍、感染者vs.非感染者では約18倍 解析対象は、ワクチン接種群および対照群で各88万4,828例、SARS-CoV-2感染者群および非感染者群で各17万3,106例であった。 ワクチン接種は、心筋炎(リスク比[RR]:3.24[95%信頼区間[CI]:1.55~12.44]、リスク差:2.7件/10万人[95%CI:1.0~4.6])、リンパ節腫脹(2.43[2.05~2.78]、78.4件/10万人[64.1~89.3])、虫垂炎(1.40[1.02~2.01]、5.0件/10万人[0.3~9.9])、および帯状疱疹感染(1.43[1.20~1.73]、15.8件/10万人[8.2~24.2])のリスク上昇と強い関連が認められた。 一方で、SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、心筋炎(RR:18.28[95%CI:3.95~25.12]、リスク差:11.0件/10万人[95%CI:5.6~15.8])のほか、急性腎障害(14.83[9.24~28.75]、125.4件/10万人[107.0~142.6])、肺塞栓症(12.14[6.89~29.20]、61.7件/10万人[48.5~75.4])、頭蓋内出血(6.89[1.90~19.16]、7.6件/10万人[2.7~12.6])、心膜炎(5.39[2.22~23.58]、10.9件/10万人[4.9~16.9])、心筋梗塞(4.47[2.47~9.95]、25.1件/10万人[16.2~33.9])、深部静脈血栓症(3.78[2.50~6.59]、43.0件/10万人[29.9~56.6])、不整脈(3.83[3.07~4.95]、166.1件/10万人[139.6~193.2])の大幅なリスク上昇が認められた。

12616.

異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

 米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。気候変動監視のERA5再解析データを用い、気温と死亡の関連を解析 研究グループは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、パート1として、ECMWFが作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値を用い、死亡との関連を解析した。 ベイジアンメタ回帰の2次スプラインを用い、1日平均気温と23の平均気温帯に従い、個人の死因176疾患に関して死因別相対リスクをモデル化した後、日間死亡率データが入手可能な国について、死因別および全気温に起因する負担を算出した。また、パート1で得られた死因別相対リスクを世界のすべての場所に適用した。 曝露-反応曲線と日平均気温を組み合わせ、「世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study)」による疾病負担に基づき、1990~2019年の死因別負担を算出した。異常低温・異常高温による死者は2019年では169万人 パート1では、1980年1月1日~2016年12月31日の、9ヵ国(ブラジル、チリ、中国、コロンビア、グアテマラ、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、米国)における6,490万人の死亡データを用いた。評価対象となった死因176疾患のうち、有意差の基準を満たした17の死因が解析対象となった。 虚血性心疾患、脳卒中、心筋症/心筋炎、高血圧性心疾患、糖尿病、慢性腎臓病、下気道感染症、慢性閉塞性肺疾患は、日平均気温とJ字型の関連性を示したが、外因(例えば、殺人、自殺、溺死、および災害やその他の不慮の事故に関連するもの)リスクは、気温とともに単調に増加した。 理論的な最小リスク曝露レベルは、基本的な死因の構成の機能として、場所と年によって異なっていた。非最適気温に関する推定値は、ブラジルにおける死亡数7.98人/10万人(95%不確実性区間[UI]:7.10~8.85)、人口寄与割合(PAF)1.2%(95%UI:1.1~1.4)から、中国における死亡数35.1人/10万人(95%UI:29.9~40.3)、PA F4.7%(95%UI:4.3~5.1)の範囲であった。 2019年には、データが得られたすべての国で、低温に関連した死亡率が高温による死亡率を上回った。低温の影響が最も顕著だったのは、中国(PAFは4.3%[95%UI:3.9~4.7]、寄与率は10万人当たり32.0人[95%UI:27.2~36.8])、およびニュージーランド(それぞれ3.4%[95%UI:2.9~3.9]、26.4人[95%UI:22.1~30.2])、高温の影響が最も顕著だったのは、中国(0.4%[95%UI:0.3~0.6]、3.25人[95%UI:2.39~4.24])、およびブラジル(0.4%[95%UI:0.3~0.5]、2.71人[95%UI:2.15~3.37])であった。 これらの結果を世界のすべての国に適用した場合、2019年に世界で非最適気温に起因する死者は169万人と推定された。暑さに起因する負担が最も高かったのは、南・東南アジア、サハラ以南のアフリカ、北アフリカ・中東、寒さに起因する負担が最も高かったのは東・中央ヨーロッパ、中央アジアであった。

12617.

新しい病気の登場(解説:後藤信哉氏)

 人類は時代に応じて各種疾病と戦ってきた。ペストの時代があり、結核の時代があり、心血管病の時代があった。数の多い疾病に対して、発症メカニズムを解明し、予防、治療手段を開発してきた。新型コロナウイルスも人類が克服すべき疾病である。ワクチンは新型コロナウイルス感染に対する人類の反撃の第一歩である。 ヒトの細胞にウイルスの蛋白を作らせる新型コロナウイルスワクチンも歴史的な医学の進歩として記録されるだろう。しかし、革新的ワクチン特有の副反応も見つかってきた。ワクチンによる免疫血栓症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia:VITT)も新規に出現した問題である。実証的な英国医学では理論よりも現実を注視する。英国の規制当局は、ワクチン接種を担う医師たちにワクチン接種後の脳静脈洞血栓症の報告を依頼した。本研究では2021年4月1日から5月20日までに報告された99例の脳静脈血栓症のまとめである。70例はVITTとされた。新しい病気に対する新しいワクチンなので、どんな合併症がどれだけ起こるか、誰も知らない。新型コロナウイルス感染による死亡を減らせるのであれば、まずワクチンを使ってみよう! しかし、合併症があれば、公開してみんなで議論しよう! というのは英国人の良いところである。 新しい病気の新しいワクチンによる合併症の治療法は誰も知らない。VITTに類似した血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症ではヘパリンは増悪因子となる。ヘパリン以外の抗凝固薬は効くかもしれないし、免疫グロブリンは有効かもしれない。よくわからないけれども、わかるところだけは公開しようとの英国の姿勢を反映した論文である。しかし、厄介な病気が増えたものだ。ペスト、結核、心血管病のように、予防、治療の基本が明確になるまでどのくらいかかるのだろうか?

12618.

「エックスフォージ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第67回

第67回 「エックスフォージ」の名称の由来は?販売名エックスフォージ®配合錠エックスフォージ®配合OD錠一般名(和名[命名法])バルサルタン(日局、JAN)/アムロジピンベシル酸塩(日局、JAN)効能又は効果高血圧症用法及び用量成人には1日1回1錠(バルサルタンとして80mg及びアムロジピンとして5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。警告内容とその理由なし禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.ジヒドロピリジン系化合物に対し過敏症の既往歴のある患者3.妊婦又は妊娠している可能性のある女性4.アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)※本内容は2021年9月1日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年4月改訂(第16版)医薬品インタビューフォーム「エックスフォージ®配合錠・エックスフォージ®配合OD錠」2)ノバルティス:DR’s Net

12619.

第73回 中外製薬ロナプリーブ記者説明会で気になった「確保量」「デリバリー」「高齢者優先」

抗体カクテルに過大な期待かける菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、渋谷のPARCO劇場に、宮藤 官九郎作・演出の「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」を観に行きました。劇場内はマスク着用で私語禁止というなかなかに厳しい環境でしたが、相変わらずの、くだらなくて笑い満載の芝居(クドカンによればロックオペラだそうです)を楽しんできました。もっとも、底に流れるテーマは、分断と多様性で、過激な笑いとともに提示されるクドカンのメッセージには考えさせられるものがありました。劇場の斜向かいは、「予約なしワクチン接種」で話題となった渋谷区立勤労福祉会館で接種初日だったのですが、観劇後は既に大混乱は収まっていました。それにしても、ワクチン接種を高齢者優先にしたことは最善だったのでしょうか。検証し直す必要もありそうです。さて、今回は菅 義偉首相が治療法の切り札として過大とも言える期待をかける抗体カクテル療法、中外製薬のロナプリーブについて考えてみたいと思います。ロナプリーブ投与可能場所がどんどん拡大菅首相は8月17日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象県拡大を説明する記者会見で、抗体カクテル療法について「重症化リスクを7割も減らすことができる画期的な薬です。政府としては、十分な量を確保しており、今後、病院のみならず、療養するホテルなどでも投薬できるよう、自治体と協力を進めていく方針」と述べ、投与可能場所の拡大を大きくアピールしました。翌18日には、宿泊療養施設・入院待機施設での投与を認める事務連絡が発出されています。その1週間後、8月25日の記者会見でも菅首相は、「新たな中和抗体薬は、重症化を防止する高い効果があります。既に1,400の医療機関で1万人に投与しています。これまで入院患者のみを対象にしていましたが、多くの人に使いやすくなるよう、外来で使うことも可能とし、幅広く重症化を防いでいきます」と述べ、同日、今度は一定の条件を満たした医療機関において、外来診療による日帰りでの投与も認める事務連絡を発出しました。7月の承認段階では入院患者限定でしたが、投与可能な施設がどんどん広がっていったわけです。軽症や中等症の自宅療養の患者が激増する中、発症前〜中等症Iに有効とされるこの薬に過大な期待をかけざるを得ない、菅首相と政府の苦しい事情が透けて見えます。外来にまで拡大された日の翌日、8月26日に中外製薬がロナプリーブに関するメディア等向け説明会を電話会議形式で開きました。発症7日以内の軽症、中等症1で重症化リスク因子を持つ人対象抗体カクテル療法は、2種類の抗体を混ぜ合わせて投与することで、新型コロナウイルスの働きを抑える薬剤です。アメリカのトランプ前大統領の治療にも使われ(「第27回 トランプ大統領に抗体カクテル投与 その意味と懸念」参照)、去年11月に米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可しました。ちなみにこの緊急使用許可は改定され、この8月から抗体カクテルは濃厚接触者等、コロナウイルスに曝露した一部の未発症の人にも使用できるようになっています。日本では、開発した米国のバイオテクノロジー企業、リジェネロン・ファーマシューティカルズ社と契約したロシュ社とライセンス契約を結んだ中外製薬が承認申請を行い、厚生労働省が7月19日に特例承認をしています。添付文書の効能・効果には、「臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」とされています。また、「用法・用量に関連する注意」には「臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない」と書かれています。つまり、発症から7日以内の軽症・中等症Iの患者で重症化リスク因子を持つ人が対象ということになります。なお、承認時の評価資料などによれば、これまでに報告されている有効性は、入院および重症化・死亡の抑制(70%以上)、 症状改善までの期間短縮(約4日)、ウイルス量の減少(高ウイルス群で抑制効果)などとなっています。濃厚接触者への適応拡大や皮下注射も検討中と中外製薬26日の中外製薬のメディア等向け説明会では、奥田 修代表取締役社長が出席し、「デルタ株がまん延し、治療薬の需要が世界的に高まっているが、日本政府からの要請に応じて、必要な供給量を確保したい」と述べ、政府が容認した外来診療での投与に対応するためにも必要な量を確保する考えを示しました。また、今後は米国で認められている濃厚接触者に対する予防的投与について適応拡大として申請する方向で国と協議していることや、点滴に限定して認められている投与方法について皮下注射でも使えるよう申請を検討する考えも示しました。さらに、同社は米アテア社が創製し、ロシュ社と共同開発した経口タイプのRNAポリメラーゼ阻害薬「AT-527」も軽症から中等症の患者を対象に国内で最終段階の治験を進めており、2022年に申請予定であることも明らかにしました。ロナプリーブの日本の確保量は本当に十分なのか?説明会に同席し、新型コロナ感染症の現状とロナプリーブについて説明した東邦大学医学部の舘田 一博教授は「ロナプリーブが承認され、その有効性が確認されてきている。臨床の先生方から、本当に多くの期待が寄せられてきている。外来投与ができるようになり、自宅などで経過を観察しなければならないような、まさに使ってほしい人たちに投与できるのは大きい」と述べ、説明会は全体として新型コロナウイルス感染症の今後の治療に期待を抱かせる内容でした。しかし、気になった点もいくつかありました。一つはロナプリーブの確保量です。2021年5月に中外製薬がロナプリーブの2021年分確保について日本政府と合意した際、「年内20万人分、当面7万人分」という報道がありました。その後、7月の承認の際や、菅首相の記者会見の際などに確保量についての質問が度々行われてきたのですが、明確な数字は公表されていません。この日も奥田社長は「具体的な数字は政府との契約上明かすことはできない。政府と連携しながら、必要な供給量をロシュ社から確保するため努力している」と述べるにとどまりました。なお、8月17日の記者会見で菅首相は確保量について質問を受けた際、具体的な数字は示さず、「政府としては十分な量を確保しています。これは私が指示して確保しています」と述べています。「私が」とわざわざ強調している点が気になります。投与場所を拡大し、軽症、中等症Iに広く使えるようにしたのに、途中で“弾切れ”になったのでは、首相のメンツは丸つぶれです。誰も“十分な量”の具体的な数字を明かさない、明かせないのは、国(首相)が過度な要求をし、中外製薬が供給元のロシュとタフな交渉をしているからかもしれません。年内20万人分という数字は今の感染状況を考えると、いかにも足りない気がします。抗体カクテル療法の普及・定着がある程度進んだ段階で、ワクチンのように「足りません」という事態にならなければいいのですが…。対象患者はロナプリーブまで辿りつけるか?もう一つ気になったのは、本当に必要とする患者に、タイムリーに抗体カクテル療法が提供されるのか、というデリバリーの問題です。適応は発症7日以内の軽症、中等症Iの患者ですが、現在、この状態の患者の多くが自宅療養を余儀なくされ、コロナを治療する医療機関にアクセスできない状況です。重症化リスクのある人に、悪化する前、あるいは発症7日を過ぎる前に、ロナプリーブを点滴静注できる医療機関や施設の早急の整備が求められます。しかし、現実には、自宅待機が長引き、入院した段階では発症1週間が過ぎてしまっている人が少なくありません。ロナプリーブにはアナフィラキシーの報告もあり、厚生労働省は投与施設に24時間健康観察を十分にできる体制を確保するよう求めています。病院のベッドが中等症、重症で埋まっている現状では、宿泊療養施設・入院待機施設などで対応するしかありませんが、この人材不足のなか、24時間体制の構築は難しいところです。今回の説明会で舘田教授は「ロナプリーブ・ステーションのような施設も必要だ」と話していましたが、ロナプリーブを本当に効果的に使うには、“野戦病院”的施設の検討に加え、軽症者治療に特化した治療ステーションの整備も必要でしょう。ワクチン同様、結局は高齢者優先になってしまうのでは?最後に、もう1点気になったのは、投与対象に「発症7日以内の軽症、中等症Iで重症化リスク因子を持つ人」と、「重症化リスク因子」が入っている点です。単純に考えれば、重症化リスク因子のあるなしにかかわらず、軽症、中等症Iに打ってしまえばいいわけですが(濃厚接触者への適応拡大も検討中ですし)、そうはできないのは、確保量や投与場所、そして費用の問題があるからでしょう。重症化リスク因子は、65歳以上、悪性腫瘍、COPD、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満(BMI 30以上)、喫煙などとなっています。そうすると、結局、ワクチン接種と同様、高齢者が優先されるケースが多くなり、若者はまた後回しにされる状況が起きてくるかもしれません。デルタ株の蔓延に伴い、基礎疾患がなくても重症化する人も増えています。そうした状況の中、「ロナプリーブを打っていれば…」という人が、若年者を中心に増えていくことが懸念されます。それもこれも、「確保量」と「デリバリー」次第です。そもそも「十分な確保量」があるなら、重症化リスク因子は大目に見て、軽症者にもどんどん投与して欲しいものです。ところで、現在は国費で賄われているロナプリーブ投与ですが、仮に新型コロナが5類感染症となり、治療が保険診療になれば、自己負担は3割負担で約6万円(米国での医療費約20万円)と高額になるかもしれません。そうなった時にこの治療法が現場でどう使われるかも気になるところですが、それについてはまた機会を改めて書きたいと思います。

12620.

農薬スピノサド0.9%局所投与、疥癬治療に有効

 要介護者のいる家庭や高齢者施設での感染問題で知られる疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生することで生じる伝染性皮膚疾患である。承認されたOTC薬はなく、承認された処方薬にも潜在的な耐性などの欠点があるが、土壌放線菌由来のマクロライド系殺虫剤スピノサドが、同治療薬として有効であることが示された。 米国・LSRN ResearchのJeffrey C. Seiler氏らが2つの無作為化試験の結果を解析し、4歳以上の被験者において、スピノサド0.9%懸濁液の1回局所投与が有効であったことを明らかにした。著者は、「スピノサド0.9%懸濁液は標的局所療法として、ほかに選択肢がほぼない医師や患者にとって新たな疥癬治療の選択肢となる」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年8月12日号掲載の報告。 研究グループは、2つの対照臨床試験の結果を統合して、疥癬の根絶におけるスピノサド0.9%懸濁液局所投与の有効性を評価した。各試験には、インデックス被験者(疥癬症状が認められる世帯内で最年少の家族)とそれ以外の家族(1世帯最大5人)が包含され、被験者はスピノサド0.9%または溶媒(vehicle)を1回局所投与された。 主要有効性評価項目は、28日目における疥癬が完全に治癒したインデックス被験者の割合であった。追加した有効性評価項目は、臨床的治癒、顕微鏡的治癒、病変数であった。 主な結果は以下のとおり。・28日目に完全治癒を達成したインデックス被験者の割合は、スピノサド0.9%群と溶媒群で同等ではなかった(それぞれ78.1% vs.39.6%、p<0.0001、n=206例)。・追加の有効性解析により、スピノサド0.9%の一貫した治療効果が確認された。・安全性に関するシグナルは観察されなかった。・スピノサド0.9%は角質層(すなわちダニが潜み繁殖する場所)にも到達するため、疥癬の効果的な治療法になる可能性が示唆された。 本研究は、同等性を評価するために少数サンプルサイズを使用しており、結果は限定的である。

検索結果 合計:35172件 表示位置:12601 - 12620