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閉経後乳がん術後療法、タモキシフェン後のレトロゾール延長の効果は?(GIM4)/ESMO2021

 閉経後のホルモン受容体(HR)陽性乳がんの術後補助療法において、タモキシフェン2〜3年間投与後のレトロゾールの投与期間について、標準の2〜3年間に比べて5年間のほうが無浸潤疾患生存期間(DFS)と全生存期間(OS)を有意に改善したことが、イタリア・Gruppo Italiano Mammella(GIM)によるGIM4試験で示された。IRCCS Ospedale Policlinico San MartinoのLucia Del Mastro氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。なお、この結果はLancet Oncology誌オンライン版2021年9月17日号に同時掲載された。 本試験は、イタリアの64施設で実施された多施設非盲検無作為化第III相試験で、2005~10年に2,056例が登録され、対照群と延長群に1:1に割り付けられた。・対象:タモキシフェンを2~3年間投与され、再発していないStage I〜IIIの乳がん患者・試験群(延長群): レトロゾール5年投与(内分泌療法7~8年まで)1,026例・対照群:レトロゾール2~3年投与(内分泌療法5年まで)1,030例・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値11.7年(四分位範囲:9.5~13.1)において、DFSイベントは、対照群で262例(25%)、延長群で212例(21%)に発生した。・12年推定DFS率は、対照群が62%(95%CI:57.5~66.5)、延長群が67%(95%CI:62.2~71.2)だった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.65~0.93、p=0.006)。・サブグループ解析では、全体として延長群が有意に(p=0.014)良好だったが、リンパ節転移の有無で有意差がみられた。・死亡は、対照群で147例、延長群で116例だった。・12年推定OS率は、対照群が84%(95%CI:81.8~86.9)、延長群で88%(95CI:85.7~90.5)だった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.98、p=0.036)。・主な有害事象は関節痛(対照群29%、延長群35%)筋肉痛(対照群7%、延長群11%)だった。骨折(p=0.28)、高コレステロール血症(p=0.17)、心血管イベント(p=0.069)について、両群で有意な差はみられなかった。 Mastro氏は「タモキシフェン2~3年間投与後レトロゾール5年間投与は、閉経後HR陽性乳がん患者における標準内分泌治療の1つとして考慮されるべき」と結論した。

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ファイザー製ワクチン、60歳以上で3回目接種の効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)について、2回接種を5ヵ月以上前に完了した60歳以上の高齢者に対する3回目ブースター接種は、COVID-19感染および重症化リスクが大幅に低下することを、イスラエル・Weizmann Institute of ScienceのYinon M. Bar-On氏らが報告した。イスラエルでは2021年7月30日に、5ヵ月以上前にBNT162b2の2回接種を完了した60歳以上の高齢者への、3回目接種が承認されている。研究グループは、追加免疫のデータを収集するため3回目ブースター接種を行った同国約114万例の高齢者を対象に試験を行った。NEJM誌オンライン版2021年9月15日号掲載の報告。ブースター接種後4~6日、12日以上経過の有効性も比較 研究グループは2021年7月30日~8月31日に、イスラエル保健省のデータベースを基に、60歳以上でBNT162b2の2回接種を5ヵ月以上前に完了した113万7,804例を対象に、3回目ブースター接種の予防効果を検証した。 主要解析では、COVID-19感染率と重症化率について、ブースター接種後12日以上経過者(ブースター群)と、ブースター非接種者(非ブースター群)を比較した。2次解析では、ブースター接種後4~6日群と、12日以上経過群について同発生率を比較した。 すべての解析は、交絡因子補正後Poisson回帰分析を用いて行った。ブースター接種後12日以上群、4~6日群に比べ感染率5倍超低下 ブースター群のCOVID-19感染率は、非ブースター群に比べ11.3倍低かった(補正後率比:11.3、95%信頼区間[CI]:10.4~12.3)。重症率についても、ブースター群は非ブースター群に比べ、19.5倍低かった(補正後率比:19.5、95%CI:12.9~29.5)。 2次解析では、ブースター接種後12日以上経過群が、4~6日経過群に比べ、感染率は5.4倍低かった(率比:5.4、95%CI:4.8~6.1)。

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無症候性重度狭窄へのCAS vs.CEA、長期有効性・リスクに差は?/Lancet

 インターベンションを要する無症候性重度狭窄患者に対し、頚動脈ステント留置術(CAS)と頚動脈内膜剥離術(CEA)の有効性およびリスクを比較したところ、長期5年の手技非関連脳卒中リスク、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡リスク共に同等であることが示された。英国・オックスフォード大学のAlison Halliday氏らが、33ヵ国・130病院を通じて行った国際多施設共同無作為化比較試験「ACST-2」の結果を報告した。重度狭窄を有するが直近の脳卒中や一過性脳虚血の既往のない無症候性の患者では、CASまたはCEAのいずれもが有効で長期脳卒中リスクを低減可能なことが報告されている。しかしながら最近の全国規模のレジストリデータで、いずれの手技共に後遺障害を伴う脳卒中や死亡に1%程度の手技的リスクをもたらしていることが示され、大規模な無作為化試験を行い長期的な影響の比較のエビデンスを得る必要性が提言されていた。Lancet誌2021年9月18日号掲載の報告。片側性・両側性重度頚動脈狭窄で手術を要する患者を対象に無作為化試験 ACST-2試験の被験者は、他のすべての試験で判断されたインターベンションを要する重度狭窄患者で、片側性または両側性に重度頚動脈狭窄があり、医師・患者共に頚動脈手術の施行に同意していた場合に適格とされたが、CASとCEAの選択権は実質的になかった。被験者は無作為に2群にCAS群またはCEA群に無作為に割り付けられ、1ヵ月後、その後は毎年の追跡を平均5年間受けた。 術後30日以内に発生したイベントを、手技関連イベントとし、ITT集団を対象に表解析による手技関連ハザードなどの解析を行った。手技非関連脳卒中については、Kaplan-Meier法やlog-rank検定法を用いて解析した。5年手技非関連脳卒中の発生率は同等 2008年1月15日~2020年12月31日に、被験者3,625例をCAS群(1,811例)とCEA群(1,814例)に無作為に割り付けた。コンプライアンス、薬物治療はいずれも良好で、平均追跡期間は5年だった。 全体で、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡は1%(CAS群15例、CEA群18例)、手技関連の後遺障害を伴わない脳卒中は2%(それぞれ48例、29例)だった。 Kaplan-Meier法による5年手技非関連脳卒中の推定発生率は、致死的または後遺障害を伴う脳卒中については両群共2.5%、あらゆる脳卒中は同CAS群5.3%、CEA群4.5%だった(率比[RR]:1.16、95%信頼区間[CI]:0.86~1.57、p=0.33)。 手技非関連脳卒中の発生に関するすべてのCAS群vs.CEA群試験の率比は、症候性・無症候性の患者で同等だった(全体RR:1.11、95%CI:0.91~1.32、p=0.21)。

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第76回 「ブレインフォグ」に見るCOVID-19後遺症の社会的影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡り、後遺症に関するデータが徐々に蓄積されてきている。後遺症として確認されている症状は、200種類以上にのぼるという。睡眠障害などの精神神経症状、筋力低下などの全身症状、呼吸苦などの呼吸器症状、胃腸障害などの消化器症状、そして味覚障害や嗅覚障害、脱毛などだ。中でも、比較的若い世代で増えていると言われているのが「ブレインフォグ」だ。脳に霧がかかったような認知機能障害の一種で、主な症状としては記憶障害、集中力不足、精神疲労、不安などの症状が挙げられる。コロナ感染により、脳に炎症が起きてアルツハイマー病に起こるような変化が脳細胞に生じ、脳機能が低下、認知機能障害などが起きると見られている。日常生活や勤務にも大きな影響社会的・経済的な影響も大きい。昨年8月にCOVID-19の症状が出た30代女性は、何か作業をするとすぐに頭痛が生じ、店で考えながら買い物をしただけで疲れて寝込むこともあるという。今年5月にCOVID-19の症状が出た40代女性は、文章が書けなくなったり、文字は読めても内容が理解できなくなったりして、会社を退職した。フランスの大学病院が実施したコロナ入院患者の調査によると、患者の38%が入院から4ヵ月経過後も認知障害を認める結果が出た。一方、キングス・カレッジ・ロンドンが2020年12月~2021年7月までの約220万人のデータを分析したところ、ワクチンを2回接種した場合、後遺症リスクが49%減少したという。また、LongCovidSOSによると、4月にワクチン接種を受けた約900人を調査したところ、後遺症があっても57%が改善したという。後遺症のメカニズムはどの症状も解明途上にあるが、これらの調査によると、コロナ後遺症の転帰に関しては「ワクチン接種」が1つの重要なカギを握るようだ。「コロナ後遺症外来」を設けている都内のクリニック院長は「COVID-19は男性のほうが重症化しやすいと指摘されているが、後遺症については20〜40代の女性が多い。世界的に見ても、女性は男性の約1.5倍多くなっている。女性に自己免疫系疾患が多いことと関連しているのかもしれない」と話す。6ヵ月後も3割超で症状が残存東京・世田谷区が今月公表した、コロナ感染者を対象に今年7〜8月に実施した調査によると、回答があった3,710人のうち48.1%が「後遺症がある」と回答。年代別では10代で30%、10歳未満でも14%など、若い世代や子供でも後遺症が見られることが明らかになった。全体で最も多かったのは嗅覚障害(54%)で、次いで全身の倦怠感(50%)、味覚障害(45%)などが続き、ブレインフォグと見られる集中力低下(24%)や記憶障害(10%)を訴える人もいた。また厚生労働省のアドバイザリーボードは、2020年1月~2021年2月に入院した525症例を対象にした研究の中間報告を今年6月に公表。退院時までに疲労感・倦怠感、筋力低下、息苦しさ、睡眠障害、思考力・集中力の低下などの症状があった患者の3割以上で、6ヵ月後にも同じ症状が認められた。世田谷区、厚労省の調査・研究のいずれにも、記憶障害や思考力・集中力が低下するブレインフォグの症状が認められる。症状の類似性から筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)との関連も指摘されているように、COVID-19の後遺症はさまざまな要因の症状が同時多発的に起きている。しかも影響が多岐にわたる懸念があり、原因解明に向けたサーベイランスや、後遺症治療のための地域医療体制も必須である。一命は取り留めても、その後の社会生活を困難なものに変える懸念をはらむコロナ後遺症。長期的経過を注意深く見ていく必要がありそうだ。

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ポルノ依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連

 男性がポルノ関連情報に触れる機会は、過去10年間で大きく変化しており、インターネットポルノ(IP)依存症やそれに関連する性機能障害の有症率は増加している。DSM-Vのコンセンサスや正式な認識が欠如していることにより、IP依存症の定義は明らかとなっていない。現在得られているIP依存症や性機能障害に関連するエビデンスの多くは、消費者、ケーススタディ、定性研究からの情報に限られている。経験的な測定が用いられることにより、研究者は、性的反応に関するさまざまなアウトカムを発見したが、これらのデータは、IPの利用と自己認識しているIP依存症との混同、性機能障害の臨床診断による性的反応の正常な変動と関連している可能性がある。そのため、IPの利用や自己認識しているIP依存症の両方が男性の性機能に及ぼす影響を評価するためには、さらなる経験的な解明が求められる。オーストラリア・マッコーリー大学のGeorgina Whelan氏らは、IP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連について調査を行った。The Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2021年8月13日号の報告。 この研究の目的として、次の3つについて評価を行った。(1)IP単独利用と勃起不全、早漏、性的満足度との関連(2)自己認識しているIP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連(3)IPの利用または自己認識しているIP依存症が男性の勃起不全、早漏、性的満足度の予測因子であるか 米国のオンライン掲示板RedditのIPサブグループが行ったオンライン調査に参加した18~44歳の異性愛者男性942人を対象に、相関分析および回帰分析を実施した。主要アウトカムの指標として、Cyber-Pornography Use Inventory(IPの利用尺度)、International Index Erectile Dysfunction(勃起不全の尺度)、The Checklist for Early Ejaculation Symptoms(早漏の尺度)、New Sexual Satisfaction Scale(性的満足度の尺度)、Depression Anxiety Stress Scale-21(うつ病、不安、ストレスの尺度)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・IPの利用と勃起不全、早漏、性的満足度との関連は認められなかった。・自己認識しているIP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との間には、小~中程度の相関が認められた。・自己認識しているIP依存症は、勃起不全、早漏、個人の性的不満の増加に対する独立した予測因子であることが示唆された。・予想に反して、自己認識しているIP依存症は、性的パートナーに対する性的不満を予測しなかった。 著者らは「IPの利用自体が性機能障害を予測するわけではなく、IP依存の増加に対する自己認識が、性的にネガティブな影響と関連していることが示唆された。そのため、IPの利用に対する主観的な解釈が、男性の性的問題の原因であると考えられる。臨床医は、自己認識しているIP依存症が、性機能障害の原因である可能性を考慮する必要がある」としている。

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交互接種・コアリング防止など追記、新型コロナ予防接種の手引き/厚労省

 厚生労働省は、2021年9月21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(4.1版)」を公開した。 この手引きは、2020(令和2)年12月17日に初版が公開され、逐次新しい知見やエビデンスを追加し、ほぼ毎月改訂を重ねてきた。妊婦や交互接種、接種時のコアリングについて追記 今回の主な改訂点は下記の通りである。【第3章 3(10):妊娠中の者等への接種体制の確保について追記】 妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとされている。妊娠中の者及び配偶者等(以下「妊娠中の者等」という)が希望する場合には、できるだけ早期に、円滑に新型コロナワクチンの接種を受けることができるよう、例えば、予約やキャンセル待ちに当たって妊娠中の者等を可能な範囲で優先する、現時点で妊娠中の者等が年齢等によって必ずしも接種予約の対象となっていない場合には妊娠中の者等を接種予約の対象とする、といった方法により、特段の配慮をすること。【第3章 3(11):交互接種への対応について追記】(交互接種への対応) 新型コロナワクチンについては、原則として同一の者には、同一のワクチンを使用することとしているが、被接種者に対し1回目及び2回目に同一の新型コロナウイルスワクチンを接種することが困難である場合については、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(以下「交互接種」という)ができる。そのため、やむを得ず交互接種を受ける者に対して、適切に接種機会を提供できるよう予約対応やコールセンターでの対応等に留意すること。【第4章 3(1)ア:新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者を追記】 予防接種を行うことが不適当な状態にある者※1 明らかな発熱を呈している者とは、通常37.5℃以上の発熱をいう。※2 いずれかの新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者については、当該者に対し、当該新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンの接種を行うことができない。※3 アストラゼネカ社ワクチンの接種を行う接種会場では、上記血栓症及び毛細血管漏出症候群の既往歴の有無を確実に確認するために、必ずアストラゼネカ社ワクチン専用の予診票を用いて予診を尽くすこと。【第4章 3(5):コアリングの防止について追記】 コアリング(ゴム栓に対して斜めに針を刺すと、針のあご部でゴム栓が削り取られてしまうこと)を防ぐために、注射針をバイアルに穿刺する際は、ガイドマーク(中心円)の内側に、針を垂直に押し込むこと。また、刺しながら注射針を回転させたり、同じ場所に何度も穿刺したりしないこと。【第6章 4:交互接種について追記】(交互接種) 新型コロナワクチンについては、原則として、同一の者には、同一のワクチンを使用すること。ただし、新型コロナワクチンの接種を受けた後に重篤な副反応を呈したことがある場合や必要がある場合には、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(交互接種)ができること。「必要がある場合」とは、以下の場合をいう。(1)接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンの国内の流通の減少や転居等により、当該者が2回目に当該新型コロナワクチンの接種を受けることが困難である場合(2)医師が医学的見地から、接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンを2回目に接種することが困難であると判断した場合(接種間隔) 交互接種をする場合においては、1回目の接種から27日以上の間隔をおいて2回目の接種を実施すること。前後に他の予防接種を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。 以上のほかにも図の改訂、予診票、16歳未満の接種の保護者の同意なども改訂されているので、一読を願いたい。

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リレー小説、有名作家の皆さまによる新型コロナ座談会【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第40回

第40回 リレー小説、有名作家の皆さまによる新型コロナ座談会本日は高名な作家のせんせい方にご参集いただき、代表作の登場人物とともに新型コロナウイルス感染症やワクチンについて語り戯れていただきます。あまり意味のない中川の言葉遊びの作文です。私は、このような文学遊びが大好きです。こんな意味のない作業に耽溺できる生活にあこがれます。一番バッター、中島敦せんせい(山月記)滋賀の義久は浅学非才、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、COVID-19に甘んずるを潔しとしなかった。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中に、何か身体中に力が充ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。これは夢に違いないと考えた。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分はコロナウイルスとの闘いに身を投ずる覚悟を得た。ICUから病院屋上に躍り出た虎は、月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、ワクチン接種会場に躍り入って、再びその姿を見なかった。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。二番バッター、五木寛之せんせい(青春の門)「織江!」信介は博多駅で荷物の整理をしている間に、織江がいなくなったのに気付いた。信介が織江を見つけたのは、丁度織江が橋を渡ろうとしているところだった。織江は信介の姿に気付くと一瞬逃げようとしたが、なぜか再び信介の方を振り向いた。「馬鹿野郎! 一体何を考えているんだ、なんでワクチンを打たないんだ!」「信介しゃんなんかに、うちの気持ちは分からんとよ!」信介は思いもかけなかった織江の言葉に、思わず、つかまえた織江の手を放した。腕には、猫の引っ掻き傷から血が滲んでいた。三番バッター、庄司薫せんせい(赤頭巾ちゃん気をつけて)「薫クンじゃないの?」ぼくは驚いてじっとこのなんていうかイカレたようなすごい美人の顔をまじまじとみつめた。ぼくは彼女に引きずられるように話に入っていった。「COVID-19は感染症の一種なの、本当に大事なことは理解されていないのね。ワクチンを打つことが決め手なのよ!」ぼくは女性と多くつきあってきた方で(もっとも、どこからが多く、どこからが多くないかは、良く分らないけれども)知り合いの女性はたくさんいるんだけど、この女性ほど自らに厳しさを求める人は知らなかった。今日はワクチン2回目の日。彼女はぼくの手を掴んで(本当に掴むという表現がピッタリなほど強く)接種会場の正面玄関に向かって足早に歩き始めた。四番バッター、小川洋子せんせい(博士の愛した数式)彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。「おお、賢い心が詰まっていそうだ」博士は、そういいながら息子をみつめた。「COVID-19は、憎むべきウイルス感染症ですが、素数が含まれていますね」この世で博士が最も愛したのは、素数だった。素数というものを私も一応知っていたが、それが愛する対象になるとは考えたためしもなかった。しかし彼の素数への愛し方は正統的だった。相手を慈しみ、無償で尽くし、敬いの心を忘れず、博士は素数のそばから離れようとしなかった。「しかし、COVID-19に素数が含まれているのは許せませんね」博士の瞳には決意がやどっていた。五番バッター、宮澤賢治せんせい(雨にも負けず)雨にも負けず 風にも負けず パンデミックにも負けぬ 丈夫なからだを持ち 欲は無く 決して瞋からず 何時も静かに笑っている 東にコロナに感染した子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた医療者あれば 行って防護服を着て手伝いをし 南に死にそうな人あれば 行ってECMO管理を手伝い 北にワクチンの流言飛語があれば つまらないからやめろと言い ICUの中をオロオロ歩き 皆にデクノボーと呼ばれ 誉められもせず苦にもされず そういう者に 私はなりたい。六番バッター、川上宗薫せんせい(赤い夜)弥生が、「わたしには秘密があるの」と言った時、浦川はギョッとなった。「わたしは、これだけは言うまいと思ってたんだけれど、やはり隠しておれないわ」「ぼくが驚くようなことかね」「驚くとおもうわ」「ぼくが驚くとしたら、殺人をやったとか、そういうことだよ」弥生は笑った、なのに眼には涙がたまっている。「やっぱりワクチンを打つことにしたの」浦川は、狼狽を露わにした。七番バッター、フロイトせんせい、(精神分析入門 高橋義孝訳)そのワクチン接種者の副反応を皆さんにお話する前に、その方が私に語った彼自身が見た夢の話をせねばなりません。私にこう語ってくれたのです。「私は気が付くとなにか暗い闇の中を彷徨うような気持ちでした。もがいていると一筋の光がすうっーと刺し込んできたのです。猫の瞳が輝くような光です。アセトアミノフェンを口にすると嘘のように再び眠りに帰ったのです」さて皆さん、ここまでくるとあなた方の中には、この患者の夢の内容が、私がこれまで述べてきた「リビドー」の観念で容易に分析できると考えるひとが出てくるでしょう。八番バッター、宇能鴻一郎せんせい(むちむちぷりん)そうなんです。あたし、ワクチンを打ったんです。初めはワクチンなんか、とっても厭だったの、あたし。だって恐ろしかったんですもの。ワクチンを打つと不妊症になるってSNSで読んだの。でも、今考えてみると、あなたが大丈夫って言ってくれて、打つ勇気がでたの。ワクチンを早く受けておいてよかったわ。COVID-19のこと知ってる? この病気のこと。コロナウイルスに捕まっちゃう病気なの。感染症っていうのね、分った? お家にいる子猫さんは大丈夫かしら。あたし、心配なんです。九番バッター、太宰治せんせい(走れメロス)メロスは激怒した。必ず、かのワクチンのデマを流布する主を除かなければならぬと決意した。「待て」「何にをするのだ。私は陽の沈まぬうちに接種会場へ行かなければならぬ。放せ」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け」「私にはいのちの他には何も無い」「その、いのちが欲しいのだ」山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃を食らわせた。もっと多くのせんせい方にも登場いただきたいのですが、このあたりでさようなら。

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毎日剃るのか?【Dr. 中島の 新・徒然草】(393)

三百九十三の段 毎日剃るのか?総合診療科というのは、何でも診る科です。なので、何にでも対応しようという気持ちは持っているのですが、困ってしまうこともあります。時々あるのが、「髪の毛が抜ける」という主訴。「脱毛の原因となる疾患が隠れていないか探してほしい」という要望なら理解できますが、「何かいい薬はありませんか?」と真顔できかれても何と答えていいやら。私が「このクリームを使いましょう」と言ったとしても説得力がありません。なので、もしアドバイスさせていただくなら「剃ったらこうなります」というほうですね。大昔のこと。他診療科の同僚医師に突然、尋ねられたことがあります。同僚「先生は毎日剃っているのですか?」中島「毎日というわけではないですよ。3日に2回くらいかな」同僚「実は私も髪の毛が薄くなってきまして」なるほど、という言葉は呑み込みました。同僚「いっそのこと剃ろうかとか、考えているんですよ」中島「それがいいですね。数少ない髪の毛をやり繰りするのもみっともないですから」同僚「やっぱり!」この先生はとくにやり繰りしているわけではなく、爽やかな短髪です。中島「頭を剃ったら洗うのが楽です。30秒で済みますよ」同僚「シャンプーですか、石鹸ですか?」中島「石鹸ですね」剃ったばかりの頃はシャンプーを使っていました。でもいつのまにか、顔を洗うついでに頭も洗うようになりました。同僚「剃るのはバリカンですか?」中島「5枚刃の剃刀です」同僚「なるほど」中島「散髪屋にはかれこれ30年近く行ってません」なんといっても安上がりです。中島「それにね、剃ったほうが女性にもモテますよ」同僚「ホ、ホントですか!」自信満々に言ってしまいましたが、もちろん根拠はありません。中島「僕が独身時代の自分にアドバイスするなら」同僚「なんて言うんですか?」中島「『薄毛を嘆いている時点で、すでに気持ちが負けとるぞ』って」何事も堂々としているのが一番!中島「当時の自分には『早いこと剃ってしまえ』の一言です」同僚「剃っちゃうんですか!」中島「もうね、メンテナンスフリーっすよ」同僚「……」中島「怖いモンなしですわ、ガッハッハ!」剃ってしまえば一発解決!考えてみれば、Amazon創業者のジェフ・ベゾスもスキンヘッドです。結局、世界一の金持ちが剃っているくらいですから、我々庶民が悩むのは時間の無駄ということですね。謎のロジックの後で1句生えずとも クヨクヨするな 剃りがある

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特発性後天性全身性無汗症〔AIGA:acquired idiopathic generalized anhidrosis〕

1 疾患概要■ 定義発汗を促す環境(高温、多湿)においても発汗がみられないものを無汗症とよぶ。そして、「後天的に明確な原因なく発汗量が低下し、発汗異常以外の自律神経および神経学的異常を伴わない疾患」を特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と定義する1)。■ 疫学2011年に国内の大学病院神経内科、皮膚科94施設を対象に行った調査では過去5年間のAIGA患者数は145例であった1)。男性が126例を占め、発症年齢は1~69歳まで幅広いものの、10~40歳代にかけて多くみられた。その後に報告された単施設で結果でもおおむね同様の傾向にある2-4)。また、症例報告のほとんどは本邦からの報告となっている。まれな疾患ではあるが、患者の生活環境によっては無汗に気付かれないこと、後述するようにコリン性蕁麻疹として治療されている例もあり、実際にはより多くの患者がいる可能性がある。しかし、最近ではAIGAの存在が徐々に認知されるようになってきたためか、受診・紹介患者は増えてきている印象もある。■ 病因全身無汗になる病態として次の3つがありうる。(1)交感神経の中の発汗神経の障害(Sudomotor neuropathy)(2)特発性純粋発汗不全(Idiopathic pure sudomotor failure:IPSF)(3)特発性汗腺不全(Sweat gland failure)しかし、臨床経験上(1)(3)はまれであり、またその証明も難しいことから、AIGAの多くが(2)に相当する。(2)の具体的機序としては汗腺分泌部とその周囲のマスト細胞上のアセチルコリン受容体の発現低下が推定されている5)。本病型(IPSF)には減汗性/無汗性コリン性蕁麻疹として主に皮膚科領域から報告されてきたものも含まれる。■ 症状激しい運動や暑熱環境にさらされると無汗による体温上昇のためにほてり感、顔面紅潮、めまい、悪心、動悸などの症状がみられ、容易に熱中症に陥る。手掌や足底、腋窩は障害されにくく、また、前額も発汗が保たれやすい傾向がある。四肢は無汗でも体幹は低汗にとどまっている例もみかける。患者の6~8割程度に発汗誘発時のコリン性蕁麻疹を伴う(IPSF)。明瞭な膨疹が出現せずピリピリとした痛痒さを訴えるだけのこともある。体幹・四肢の無汗のために代償性に生じた顔面の多汗が主訴となることがあり、問診に際して注意が必要となる。■ 予後長期予後に関する大規模な調査はないが生命予後は良い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 鑑別のステップと検査無汗症の分類を図1に示す6)。先天性・遺伝性には無汗性/低汗性外胚葉形成不全症、先天性無痛無汗症、ファブリー病などがある。一方、後天性には種々の神経疾患、内分泌・代謝異常症、シェーグレン症候群、薬剤性などの要因による続発性のものがある。これらを除いた特発性とせざるをえない無汗症のうち、無汗部位が髄節性(分節性)でなくほぼ全身に及ぶものがAIGAとなる。診断基準を表6)に示す。図1 無汗症の分類画像を拡大する表 特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準A明らかな原因なく後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが、発汗以外の自律神経症候および神経学的症候を認めない。Bヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくはサーモグラフィーによる高体温領域が全身の25%以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる。● 参考項目1.発汗誘発時に皮膚のピリピリする痛み・発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられる。2.発汗低下に左右差なく、腋窩の発汗ならびに手掌・足底の精神性発汗は保たれていることが多い。3.アトピー性皮膚炎はAIGA に合併することがあるので除外項目には含めない。4.病理組織学的所見:汗腺周囲のリンパ球浸潤、汗腺の委縮、汗孔に角栓なども認めることもある。5.アセチルコリン皮内テストもしくはQSARTで反応低下を認める。6.抗SS-A抗体陰性、抗SS-B抗体陰性、外分泌腺機能異常がないなどシェーグレン症候群は否定する。A+BをもってAIGA と診断する。(中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン改訂版. 自律神経.2015;52:352-359.より引用)■ 検査1)温熱発汗試験簡易サウナ、電気毛布などを用いて加温により患者の体温を上昇させて発汗を促し、ミノール法などで発汗の有無を評価する(図2)。正常人では15 分程度の加温により全身に発汗点を認める。サーモグラフィーでは、発汗のない領域に一致して体温の上昇が認められる。無汗部の面積の評価に有用。図2  AIGA患者でのミノール法所見画像を拡大する発汗反応(黒点部分)が低下している2)薬物性発汗試験(1)局所投与5%塩化アセチルコリン(オビソート:0.05~0.1mL)を皮内注射する。正常人では数秒後より立毛と発汗がみられ、5~15 分後までに注射部位を中心に発汗を認める。汗腺自体の発汗機能を評価できる。(2)定量的軸索反射性発汗試験(QSART:quantitative sudomotor axon reflex tests)アセチルコリンをイオントフォレーシスにより皮膚に導入し、軸索反射による発汗を定量する試験。AIGAでは、発汗が誘発されない。(3)皮膚生検AIGAのうち、特発性純粋発汗不全(IPSF)では光顕上、汗腺に顕著な形態異常を認めないが、汗腺周囲にリンパ球浸潤を認めるときがある。(4)血清総IgE値測定IPSF では血清総IgE値が高値の場合がある。(5)血清CEA値測定高値の症例でその値が発汗状態と相関することから、個々の症例における治療効果の指標になりうる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)ステロイド全身投与現存する治療法のうち最も効果が期待できる方法である。点滴パルス療法(メチルプレドニゾロン500~1000 mg/日、3日間連続投与)が用いられることが多い。後療法として30mg/日程度の経口投与を行う場合もある。また、経口内服療法(30~60mg/日)のみで開始して漸減する方法などもとられる。パルス療法の回数や後療法の適否・容量については一定の見解がない。反応がみられる例では、パルス療法直後から2週間程度までに効果が表れ、また、コリン性蕁麻疹や疼痛発作もみられなくなる。ステロイド治療によって寛解する例がある一方、部分寛解にとどまる例、症状が再燃する例、そして、ステロイドにまったく反応しない例がある。パルス療法はおおむね3回程度行われていることが多いが、まったく反応がえられない例では漫然と繰り返すよりも、他の治療法への切り替えまたは積極的に発汗トレーニングによる理学療法を取り入れる。2)抗ヒスタミン薬内服ヒスタミンがアセチルコリンによる発汗を抑制することから試みられる7)。ただし抗コリン作用のない好ヒスタミン薬を選択すること。効果が明瞭でない場合には通常量より増量してみることも必要。3)免疫抑制剤内服シクロスポリンの内服(2~5mg/kg/日)が効果を示すことが知られるが、報告症例数は少ない。4)その他の内服療法漢方薬である紫苓湯、葛根湯、または塩酸ピロカルピン(や塩酸セビメリン)などの投与も試みる価値がある。5)理学療法薬物療法に頼りがちであるが、発汗を刺激するための発汗トレーニングは補助療法として、また、再発予防として重要である。熱中症に陥らない範囲、また、コリン性蕁麻疹によるピリピリ感が苦痛にならない程度に、半身浴や徐々に運動負荷をかけるなど工夫する。5 主たる診療科皮膚科および神経内科。ただし、発汗異常を取り扱っている医療機関であることが必要。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性後天性全身性無汗症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン. 2013;50:67-74.2)柳下武士. 日本皮膚科学会雑誌. 2021;131:35-41.3)小野慧美ほか. 発汗学. 2016;23:23-25.4)中里良彦. 自律神経. 2018;55:86-90.5)Sawada Y, et al. J Invest Dermatol. 2010;130:2683-2686.6)中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン改訂版. 自律神経. 2015;52:352-359.7)Suma A, et al. Acta Derm Venereol. 2014;94:723-724.公開履歴初回2021年9月22日

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「カドサイラ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第70回

第70回 「カドサイラ」の名称の由来は?販売名カドサイラ®点滴静注用100mgカドサイラ®点滴静注用160mg一般名(和名[命名法])トラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果○HER2 陽性の手術不能又は再発乳○HER2 陽性の乳における術後薬物療法用法及び用量通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。警告内容とその理由1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。2.肺臓炎、間質性肺炎等の間質性肺疾患があらわれ、死亡に至る例も報告されているので、 初期症状(呼吸困難、咳嗽、疲労、肺浸潤等)の確認及び胸部 X 線検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分又はトラスツズマブ(遺伝子組換え)に対し過敏症(過敏症と鑑別困難で死亡につながるおそれのある重篤なInfusion reactionを含む)の既往歴のある患者2.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2021年9月22日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年8月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「カドサイラ®点滴静注用100mg/160mg」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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外来診療の質を高める「リフレクション」って?【非専門医のための緩和ケアTips】第12回

第12回 外来診療の質を高める「リフレクション」って?前回は患者さんと医師の状態を「モード」という言葉で表現し、そのズレを意識することをお伝えしました。両者のモードが大きくズレていると、せっかく頑張っていろいろな指導をしても伝わらず、逆に反発が生まれがちになります。今回はその続きのお話ができればと思います。今日の質問私もいつも患者さんに「問題解決モード」で接していることに気付きました。でも、集中して診療すればするほど、自分や患者さんの「モード」を忘れ、医学的な説明ばかりしてしまいます。どうしたらいいのでしょうか…。私もこの問題に長らく苦しみました。というか、今でも気を抜くと「問題解決モード」があふれてしまいます。前回もお伝えましたが、医師が問題解決モードでいることは決して悪いことではありません。医師が医学的な問題に対して適切に対応することは、患者さんにとっても非常に大切なことです。ただ、その強みがミスマッチしやすい状態の患者さんがいることを意識しましょう!というのがお伝えしたいメッセージなので、誤解なきようお願いします。そんな前提を確認したうえで、今回のご質問です。以前にお話ししたナラティブ・アプローチを実践するのにも通じる、この「モードに気付く力」はどう高めればよいのでしょうか。個人レベルで、さほど負担感なくできることに「振り返りの時間を持つ」ことがあります。医学教育ではこれを「内省」「リフレクション」なんていったりします。「今日の患者さんの反応、思っていたものと違っていたけれど、説明よりも感情に寄り添った言葉が欲しいモードだったのかな?」という具合です。もちろん毎日する必要はありません。時々でいいんです。ただ、患者さんとのやりとりで「あれ?」と違和感を持ち、その感覚が新鮮な時のほうが効果は高いでしょう。振り返りをしてみて、「もしかして問題解決モードではなく、物語的(ナラティブ)なモードで対話したほうがよかったのかな?」と気付けたらしめたものです。私は以前に「生活指導をしたものの、どうも伝わっていないな」と感じた糖尿病患者さんの診察を振り返り、次の外来時には違ったアプローチをしてみました。「前回、食事のことなどを話しましたが、聞いてどのように感じたか教えてもらえますか?」と問い掛け、患者さんの話を聞いてみたのです。すると、「先生の言うことはわかるんですが、今は自分のことに取り組む気持ちになれないんですよね…」という答えが返ってきました。重ねて聞くと、母親の持病が悪化し、通院支援などが必要で、時間にも気持ちにも余裕がない、とのこと。そのような状況では、自分の治療に専念できないのも無理ないと感じ、そうお伝えしたうえで「できることは相談に乗りますよ」と言うと、患者さんは「先生に聞いてもらってよかったです。自分の治療もできることからやってみます」と言ってくださいました。力を入れて栄養指導をした時よりも、患者さんの行動変容につながった実感がある診療でした。問題解決モードでいると、なかなかこうした介入にならないのですよね。私がお手伝いしている日本内科学会の全人的医療ワーキンググループでは、こうした患者さんと物語的なやりとりをして診療の質を高めることを目的としたワークショップが開催されています。もう少し深く学びたい方はこうしたセミナーに参加してみるのもよいでしょう。高齢化が進む日本において、こうした「緩和ケア的アプローチを生かした外来診療」は医師の重要なスキルになるはずです。ぜひ、取り入れてみてください。今回のTips今回のTips患者さんとのやりとりで「あれ?」と思ったら、時間をとって「振り返り」をしてみよう。

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第76回 「空気感染」主流説報道続々 “野球感染”リスクは球場によって大きく異なる可能性も

的外れではなかった“萬田マトリクス”こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末、所用があって知人と食事をしたのですが、テーブルに備え付けられたアクリル板には閉口しました。そもそも会話が聞き取り辛い(結果、高齢者は大声に…)ことに加え、あの閉塞感はいただけません。さらに、利用したお店は料理の取り分けのためか、正面のアクリル板の下に四角い穴が開けてありました。「これ、意味ないです!」と思わずお店の人に言いそうになりました。さて、先週の「第75回 行動制限緩和の前に、あのナンセンスな制限だけは先行して撤廃を」でも書いた新型コロナの空気感染ですが、掲載直後、「コロナ空気感染」に関する記事が新聞などのメディアに頻出しています。前回示した私の“萬田マトリクス”もあながち的外れではなかった、と胸をなでおろしましたが、こうした報道や情報発信によって、今後の国の感染対策の方針も大きく変わりそうな予感がします。「飛沫が支配的なのは、0.2メートル以内の会話だけ」医療ガバナンス学会が発行するメールマガジン 「MRIC」のVol.179(9月16日発行)号では、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の高橋 謙造氏が、8月27日のScience誌に掲載された「呼吸器感染するウイルスの空気感染について」と題する総説論文を解説しています1)。それによれば、「SARS-CoV-2においての飛沫感染ははるかに効率が悪く、飛沫が支配的になるのは、個人同士が0.2メートル以内で会話をしているときだけであることがわかってきた。飛沫よりもエアロゾル感染の方が支配的になることも明らかになってきた」とのことです。その上で高橋氏は「日本はこれまで、『3密(密集、密接、密閉)』を主たる対策、しかも特に密集、密接対策を主として推進し、密閉対策には十分に配慮されて来なかった」と指摘し、「もし、空気感染が寄与しているとすれば(中略)、その対策の主眼は、徹底した換気(つまり密閉対策)とマスク装着等に主眼が置かれるべき」と主張しています。高橋氏の解説は、Nature誌やLancet誌における議論についても触れています。ご一読をお勧めします。「エアロゾル感染」という言葉がわかりにくいと日経日本経済新聞も9月16日の朝刊で「コロナ『空気感染』対策を」という記事2)を掲載しています。8月に感染症の専門家など科学者有志が「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める緊急声明3)を出したことを踏まえ、厚生労働省の言う「エアロゾル感染」という言葉のわかりにくさについて指摘、科学者たちが「新型コロナウイルスは『空気感染する』と言い換えるよう求めている」と書いています。同記事は、この声明に賛同した国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長の西村 秀一氏の言葉を紹介しています。同氏は、「エアロゾル感染は空気を介した感染で空気感染と表現すべきだ。空気感染があると明確にしないと飛沫感染や接触感染への対策が重視されすぎて、対策全体の実効性が高まらない」と述べ、前述の高橋氏と同じく、飛沫感染、接触感染重視から転換しない国の対策を強く批判しています。専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ったことが元凶9月15日には毎日新聞も「コロナ空気感染、不都合な真実? 認めぬ国に専門家38人緊急声明」と題し、賛同者の一人、愛知県立大看護学部教授の清水 宣明氏のインタビュー記事4)を掲載しています。感染制御学、微生物学が専門の清水氏はこの記事で、国や専門家組織の専門家が頑なに空気感染(エアロゾル感染)を認めてこなかった結果、「真の感染経路に真正面から向き合わず、消毒や手洗い、アクリル板の設置といった効果の低い対策ばかりを推奨した結果『第5波』までに多くの犠牲者を生み出したのだと思います」と話しています。さらに、国が空気感染を認めたくない理由として、新型コロナが国内で初めて確認された段階で、専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ってしまったことや、東京オリンピックの開催を控えていたことなどの理由を指摘しています。日本の専門家が、「空気感染」と呼ばず、「マイクロ飛沫感染」という海外文献でもあまり見ることのない用語を使っている点については、「換気の必要性を訴えないといけなくなったけれど、いまさら『飛沫』は外せない。さりとて『空気感染』とは言いたくないと、無理やりひねり出したのでしょう」と話しています。ZOZOマリンスタジアムは「とても安全」空気感染、飛沫感染、接触感染がどれくらいの頻度かを実験で測定することは相当難しいとのことですが、もし空気感染が主体とするならば、世界(やさまざまな業界・業態)における感染予防対策を根底から見直さなければならなりません。例えば、野球観戦は観客数制限ではなく、球場のつくりや環境に目を向けるべきでしょう。ドーム球場より屋外球場の方が安全なのは確かですし、特に海に面して風が強いZOZOマリンスタジアムの野球観戦は「とても安全」というお墨付きが出るかもしれません。飲食店の意味のないアクリル板も早々に撤去されることを期待しています。冒頭でも書いたように、今やアクリル板設置は感染対策というより、お店の“優良マーク”取得のためだけの設備と化しています。アクリル板のない静かな居酒屋でゆっくりと「一人飲み」。これが、秋から年末にかけてのささやかな私の目標です。参考1)Vol.179 COVID-19:空気感染に関する議論2)コロナ「空気感染」対策を/日本経済新聞3)最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明4)コロナ空気感染、不都合な真実?/毎日新聞

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小細胞肺がんに対するlurbinectedin+ドセタキセルの2次治療、主要評価項目は達成できず(ATLANTIS)/WCLC2021

 lurbinectedinは小細胞肺がん(SCLC)において、3.2mg/m2用量の単剤で、米国で承認されている。 in vitroでは、lurbinectedinとドセタキセルの併用による相乗効果が確認されている。この結果を基に、第I相用量拡大試験が行われ、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル40mg/m2とトポテカンまたはCAV(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン)の併用が有望な効果を示した1)。 WCLC2021では、小細胞肺がんに対する、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル(またはCAV)の併用を評価する第III相試験ATLANTISの結果が発表された。 併用群は対照群に匹敵する有効性を示したが、主要評価項目は達成できなかった。・対象:2次治療のSCLC・試験群:lurbinectedin 2mg/m2 +ドセタキセル40mg/m2 3週ごと・対照群:トポテカン1.5mg/m2day1~5 3週ごとまたはCAV 3週ごと・評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はlurbinectedin併用群8.6ヵ月に対し、トポテカン(またはCAV)群は7.6ヵ月であった(HR:0.967、p=0.7032 )。・独立評価委員会評価のPFS中央値は4.4ヵ月対4.0ヵ月であった(HR:0.831、p=0.0437)。・12ヵ月PFS率は10.8%対4.4%であった(p=0.0129)。・全Gradeの有害事象(AE)発現率はlurbinectedin併用群88.4%に対し、トポテカン(またはCAV)群は92.0%であった。・Grade3以上のAEは47.2%対75.4%と、lurbinectedin群ではGrade1~2が多かった。・lurbinectedin併用群で多くみられた有害事象は貧血14.5%、好中球減少37.0%、血小板減少13.1%であった。 lurbinectedinとドセタキセルの併用は主要評価項目は未達であったが、対照群に匹敵する有効性を示した。安瀬寧については、対照群よりも良好な結果を示した。

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ストレスと認知症や軽度認知障害リスクとの関連~メタ解析

 多くの研究において、ストレスと認知症リスクとの関連が調査されてきたが、ストレス評価の測定尺度にばらつきがあるため、調査結果に一貫性が認められてない。オーストラリア・メルボルン大学のKatherine H. Franks氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、成人の心理的ストレス(神経症、ストレスの大きいライフイベント、認知されたストレスなど)と認知症および軽度認知障害のリスクとの関連を調査した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年8月3日号の報告。 適格基準を満たした観察的プロスペクティブ研究をPsycINFO、Embase、MEDLINEより検索した(2020年10月まで)。1,607件の研究をスクリーニングし、定性分析に26件(24件の固有コホート)、定量分析に16件(15件の固有コホート)を含めた。 主な結果は以下のとおり。・認知されたストレスレベルの高さは、軽度認知障害リスク(860例中207例、ハザード比[HR]:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)およびすべての原因による認知症リスク(1,882例中203例、HR:1.44、95%CI:1.07~1.95)の増加と有意な関連が認められた。・2つ以上のストレスの大きいライフイベントを有する人は、なかった人と比較し、すべての原因による認知症リスクの増加と有意な関連が認められた(1万1,597例中3,354例、HR:1.72、95%CI:1.14~2.60)。なお、1つ以上のストレスの大きいライフイベントを有する人では、有意な関連は認められなかった。・神経症傾向がより高かった人では、アルツハイマー型認知症リスクの増加と有意な関連が認められたが(4,771例中497例、HR:1.07、95%CI:1.01~1.12)、すべての原因による認知症リスクとの関連は認められなかった。 著者らは「成人期の心理的ストレスは、認知症リスクの増加と関連していることが示唆された。これらの根底にあるメカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法が、NSCLC1次治療の生存を改善(POSEIDON)/WCLC2021

 Stage IVの非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用、および、同併用への抗CTLA-4抗体tremelimumabの上乗せの評価結果が世界肺学会(WCLC2021)で発表された。 試験は無作為オープンラベル国際第III相POSEIDON試験である。その結果、デュルバルマブ、tremelimumabと化学療法の併用が、統計学的に有意に生存を延長したことが示された。・対象:未治療のStage IV NSCLC・試験群: -デュルバルマブ+化学療法*→デュルバルマブ+化学療法(+ペメトレキセド**)(Durv+CT群) -デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(+ペメトレキセド)(Durv+T+CT群)・対照群:化学療法(CT群)・評価項目[主要評価項目]Durv+CT群における盲検下独立評価委員会(BICR)判定の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]Durv+T+CT群におけるBICR判定のPFS、Durv+T+CT群のOS、高TMB(20mut/MB以上)症例のOS*化学療法:ゲムシタビン+シスプラチン(扁平上皮)、ペメトレキセド+カルボプラチン(非扁平上皮)、nab-パクリタキセル(扁平上皮/非扁平上皮)**初回治療でペメトレキセドを用いた症例のみに適用 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,013例は、Durv+CT群、Durv+T+CT群、CT群に、1:1:1で無作為に割り付られた。・各群で患者の偏りはなかった。[Durv+CT群]・PFS中央値は、Durv+CT群5.5ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+CT群で有意に改善した(HR:0.74、95%CI:0.62~0.89、p=0.00093)。・OS中央値は、Durv+CT群13.3ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+CT群の有意な改善は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.07581)。・全奏効率(ORR)は、Durv+CT群41.5 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.26)。[Durv+T+CT群]・PFS中央値は、Durv+T+CT群6.2 ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.72 、95%CI:0.60~0.86 、p=0.00031)。・OS中央値は、Durv+T+CT群14.0ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.00304)。・ORRは、Durv+T+CT群38.8 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.00)。[安全性]・いずれの群においても、新たな安全性シグナルは認められなかった。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は、Durv+CT群96.1%、Durv+T+CT群97.3%、CT群は96.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、54.8、53.3、51.7%である。・全Gradeの免疫関連AE(imAE)発現率は、Durv+CT群19.2%、Durv+T+CT群33.6%、CT群は5.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、6.9、10.0、1.5%である。 Durv+CT群においては、PFSは有意に改善したものの、OSは有な改善には至らなかった。一方、Durv+T+CT群においは、PFS、OSともにCT群から有意に改善した。また、どちらの併用群もimAE以外のAE発現率はCT群と同程度であった。 筆者は、化学療法へのデュルバルマブとtremelimumabの併用は、Stage IV NSCLCの1次治療における、新たな選択肢となる可能性がある、と述べている。

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β遮断薬投与のLVEF 50%未満の予後、人工知能が予測可能か/Lancet

 左室駆出率(LVEF)の低下が認められる心不全患者において、人工知能を用いたクラスタリング法は、β遮断薬の投与がもたらす予後に関して、洞調律の心不全のうち効果が不十分な集団や、心房細動を伴う心不全のうち死亡率が低い集団などの予測が可能であり、この手法は有害な転帰の回避につながる可能性があることが、英国・バーミンガム大学のAndreas Karwath氏らcardAIcグループの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月27日号に掲載された。9試験の患者データを統合、階層的クラスタリング法で解析 研究グループは、新たな人工知能を用いたアプローチは、併存症の多次元およびより高次元の相互作用を適切に評価し、洞調律や心房細動を有する心不全患者において、β遮断薬の有効性が異なる集団の分類が可能との仮説を立て、これを検証する目的で機械学習を用いたクラスター分析を行った(英国医学研究審議会[MRC]などの助成による)。 β遮断薬に関する9件の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験の個々の患者データが統合され、これにニューラルネットワークを用いた変分オートエンコーダおよび階層的クラスタリング法が適用された。 追跡期間中央値1.3年における全死因死亡が、intention to treat法で評価され、心電図上の心拍のリズムで層別化された。これまでは研究者の裁量に任されることが多かった集団(cluster)および次元(dimension)の数が客観的に選択され、階層的クラスタリング法で反復的に検証され、さらに試験の1つ抜き法(leave-one-trial-out)を用いて外的妥当性の反復的検証が行われた。日常診療での有用性を評価する無作為化試験が必要 LVEFが50%未満の心不全患者1万5,659例(年齢中央値64歳、女性24%、LVEF中央値27%)が解析に含まれた。このうち洞調律の心不全患者が1万2,822例、心房細動の心不全患者は2,837例であった。 洞調律の心不全患者では、全死因死亡に関して、全体としてプラセボと比較したβ遮断薬の利益が示され(補正後オッズ比[OR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.67~0.81、p<0.001)、各集団のORの範囲は0.54~0.74であった。一方、症状が重度でない高齢の洞調律心不全の集団では、β遮断薬の有効性に有意な差は認められなかった(OR:0.86、95%CI:0.67~1.10、p=0.22)。 心房細動がみられる心不全患者では、5つの集団のうち4集団で、プラセボと比較したβ遮断薬の中間的な有効性が一貫してみられた(全体のOR:0.92、95%CI:0.77~1.10、p=0.37)。一方、死亡リスクは低いがLVEFが平均値と同程度の若年心房細動の集団では、β遮断薬の投与により死亡率が有意に低下した(0.57、0.35~0.93、p=0.023)。 すべてのモデルで、クラスタリング法の頑健性と一貫性が確認され(無作為割り付けとの比較のp<0.0001)、9件の独立の臨床試験の全体で、クラスターメンバシップ(cluster membership)の外的妥当性が検証された。 著者は、「人工知能を用いたクラスタリング法は、複数の併存症を組み込み、同時に調整することが可能であり、一般的な治療への応答をより精緻に層別化できるため、有害な転帰の回避につながる可能性がある。とくに心不全のような、高額な医療費や不良な患者QOLの主な要因となっている疾患の予後の改善において、この手法が日常診療で有用かを評価するために、無作為化試験による前向きの評価が求められる」としている。

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新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。標準的な治療への上乗せ効果を評価 本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病を伴うCKDで、添付文書に記載された最大用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療で受容できない副作用の発現がみられない患者であった。スクリーニング時に、持続性のアルブミン尿の中等度上昇(尿中アルブミン[mg]/クレアチニン[g]比:30~<300)がみられ、推算糸球体濾過量(eGFR)が25~90mL/分/1.73m2(ステージ2~4のCKD)の患者、または持続性のアルブミン尿の高度上昇(尿中アルブミン/クレアチニン比:300~5,000)がみられ、eGFRが≧60mL/分/1.73m2(ステージ1/2のCKD)の患者が解析に含まれた。 被験者は、finerenone(10mgまたは20mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合とされ、生存時間解析を用いて評価が行われた。副次アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから4週以降における40%以上の持続的な低下、腎臓が原因の死亡の複合であった。主要アウトカム:12.4% vs.14.2% 7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は64.1±9.8歳で、69.4%が男性であった。 ベースライン時に、全体の70.5%がスタチン、47.6%が利尿薬の投与を受けていた。また、97.9%が血糖降下薬の投与を受けており、このうち54.3%がインスリン製剤、8.4%がSGLT2阻害薬、7.5%がGLP-1受容体作動薬の投与を受けていた。試験期間中に、15.8%がSGLT2阻害薬、11.3%がGLP-1受容体作動薬の投与を新たに開始した。 追跡期間中央値3.4年の時点で、主要アウトカムのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)で認められ、finerenone群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.76~0.98、p=0.03)。 この主要アウトカムのfinerenone群での利益は、主に心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で低かったためであり、心血管死(5.3% vs.5.8%、0.90、0.74~1.09)、非致死的心筋梗塞(2.8 vs.2.8%、0.99、0.76~1.31)、非致死的脳卒中(2.9% vs.3.0%、0.97、0.74~1.26)に差はみられなかった。 副次アウトカムは、finerenone群が9.5%(350例)、プラセボ群は10.8%(395例)で認められた(HR:0.87、95%CI:0.76~1.01)。 担当医の報告による全般的な有害事象の頻度は両群で同程度であり、重篤な有害事象はfinerenone群が31.4%、プラセボ群は33.2%で発現した。高カリウム血症は、finerenone群で頻度が高かった(10.8%、5.3%)が、高カリウム血症による死亡例はなく、高カリウム血症による恒久的な投与中止例(1.2%、0.4%)や入院例(0.6%、0.1%)は、finerenone群で多いものの頻度は低かった。 著者は、「患者の60%以上がベースライン時にeGFR≧60mL/分/1.73m2のアルブミン尿を伴うCKD患者であったことから、尿中アルブミン/クレアチニン比によるスクリーニングで早期にCKDを診断し、この心血管リスクが高く認知度が低い患者集団の転帰を改善するための治療を開始する必要性が浮き彫りとなった」としている。

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HR0.28、T-DXdがHER2+乳がん2次治療でT-DM1に対しPFS改善(DESTINY-Breast03)/ESMO2021

 トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)でDESTINY-Breast03試験の中間解析結果を発表した。 DESTINY-Breast03試験は、トラスツズマブとタキサンで以前に治療されたHER2+mBC患者におけるT-DXdとT-DM1の有効性と安全性を比較した多施設共同非盲検無作為化第III相試験。・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付けT-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・2021年5月21日までに15ヵ国から524例が無作為化された。・年齢中央値はT-Dxd群54.3歳、T-DM1群54.2歳。両群ともアジア人が約6割を占め、HER2 Statusは3+が約9割、ホルモン受容体陽性の患者は約5割を占めていた。脳転移を有する患者はT-Dxd群23.8%、T-DM1群19.8%。内臓転移を有する患者はT-Dxd群70.5%、T-DM1群70.3%だった。・治療歴については、1ラインがT-Dxd群49.8%、T-DM1群46.8%、2ラインがT-Dxd群21.5%、T-DM1群24.7%。トラスツズマブ治療歴を有する患者が両群とも99.6%、ペルツズマブ治療歴を有する患者がT-Dxd群62.1%、T-DM1群60.1%だった。・観察期間中央値は、T-Dxd群が16.2ヵ月、T-DM1群が15.3ヵ月だった。・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NR(95%信頼区間[CI]:18.5~NE) vs.T-DM1群6.8ヵ月(95%CI:5.6~8.2)、ハザード比(HR):0.28(95%CI:0.22~0.37、p=7.8×10-22)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。12ヵ月時点でのPFS率はT-DM1群34.1%(95%CI:27.7~40.5)に対しT-Dxd群75.8%(95%CI:69.8~80.7)だった。・PFSのサブグループ解析の結果、ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、治療ラインの数、内臓および脳転移の有無によらず、すべてのグループでT-Dxd群における有意な延長がみられた。・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(95%CI:22.1~NE)vs.T-DM1群7.2ヵ月(95%CI:6.8~8.3)、HR:0.26(95%CI:0.20~0.35、p=6.5×10-24)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。・OSデータは未成熟であり、中央値は両群でともにNE、HR:0.56(95%CI:0.36~0.86、p=0.007172)となり事前に設定された有意性水準(p<0.000265)を満たさなかった。・ORRは、T-Dxd群79.7% vs.T-DM1群34.2%でT-Dxd群で有意に高かった(p<0.0001)。CRは16.1% vs.8.7%、PRは63.6% vs.25.5%だった。・治療期間中央値はT-Dxd群14.3ヵ月 vs.T-DM1群6.9ヵ月。Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群45.1% vs.T-DM1群39.8%で発現した。T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(19.1%)、血小板減少症(7.0%)、白血球減少症(6.6%)、吐き気(6.6%)だった。・治療中止に関連した有害事象としてT-Dxd群で最も多かったのはILD/肺炎(8.2%)、T-DM1群では血小板減少症(2.7%)だった。ただし、T-Dxd群でGrade4あるいは5のILD/肺炎はみられなかった。Grade2の左室駆出率低下がT-Dxd群で2.3%、T-DM1群で0.4%みられたが、Grade3以上の報告はない。 Cortes氏は、本結果はT-DxdがHER2陽性mBC患者の2次治療における標準治療となることを支持するものと結論付けている。

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23日より血液学会スタート!会長インタビューと注目演題紹介

 9月23日より第83回日本血液学会学術集会がオンラインで開催される。ケアネットが運営する医師限定キュレーションサイト「Doctors'Picks」では学会の特集サイトを公開しており、掲載された会長の東北大学の張替 秀郎氏による動画メッセージの一部を紹介する。ーー本学会のテーマ「恒常性と復元力」にはどのような意味を込めたのでしょうか? 血液細胞は、酸素運搬、感染防御、止血といった身体の恒常性の根幹を担う必須の細胞です。そして、血液のがんはほかのがんと異なり、腫瘍を取ってしまえばよいわけではなく、そこから正常な造血機能が回復してはじめて寛解となる。そうした意味で復元力が極めて大切な臓器です。そうした2つの血液の本質に立ち返り、改めて考察したいという狙いからテーマとしました。 そして、このテーマには、もう一つの思いが込められています。2021年は東日本大震災から10年の節目にあたります。2011年、東日本大震災により日本、とくにこの東北は甚大な被害を受け、すべての恒常性が失われました。そして2020年、COVID-19感染症によって、世界は再度すべての恒常性を失いました。東日本大震災から10年、社会がその復元力によって恒常性を取り戻したように、現在はまだコロナ禍にはありますが、社会の復元力によって生活・科学・医療の恒常性を取り戻すことを信じて願う、という意味も込めました。ーー今回の学会でとくに注目の演題は? 各専門別の最新の情報が集まるというのは毎年のことですが、私が企画したのはPresidential Symposiumと特別講演です。Presidential Symposiumは「The Path from Stem Cells to Red Blood Cells」という演題で、赤血球の分化過程という基礎的なテーマを設定しました。特別講演は2つで、ハーバード大学の幹細胞研究を専門とするDavid Scadden氏の「Biology to therapy in the hematopoietic niche」と、UCLAの鉄代謝を専門とするTomas Ganz氏の「Systemic iron homeostasis: hormones, pathways, diseases」、いずれもなかなか話を聞けない高名な先生なので、貴重な機会になるはずです。海外演者の方もディスカッションにはライブで参加いただく予定です。 また、コロナ関連の特別シンポジウムも企画しており、「ポストコロナの医療・社会変容」をテーマに、早稲田大学教授のロバート・キャンベル氏、プロ野球楽天の社長である立花 陽三氏など、医療以外の専門家を招き、多様な視点からコロナ後の社会の変化についてディスカッションを行う予定です。ーー仙台の会場とオンラインのハイブリッド開催を予定されていましたが、完全オンライン方式に変更されました。 新型コロナの感染状況を鑑みてやむを得ないと判断しました。ただし、学会のライブ感を大切にしたいと考え、会期後にオンデマンドで配信するのは教育講演と一部のシンポジウムにとどめ、基本的には会期中にライブで視聴いただくことを想定しています。ぜひご参加いただき、血液学の「旬」を感じ、明日からの治療に役立てていただければと思います。Doctors’ Picks 第83回日本血液学会 特集サイトhttps://drpicks-spot.carenet.com/ 特集サイトでは、入山 規良氏(日本大学)、柴山 浩彦氏(国立病院機構 大阪医療センター)、丸山 大氏(がん研究会有明病院)、山崎 悦子氏(横浜市立大学附属病院)が選定した学会の注目演題も紹介している。

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