サイト内検索|page:625

検索結果 合計:35646件 表示位置:12481 - 12500

12481.

新作用機序のアトピー性皮膚炎外用薬「モイゼルト軟膏0.3%/1%」【下平博士のDIノート】第87回

新作用機序のアトピー性皮膚炎外用薬「モイゼルト軟膏0.3%/1%」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏0.3%/1%、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害作用を有する外用のアトピー性皮膚炎治療薬であり、既存薬とは異なる作用機序で皮膚の炎症を抑制します。<効能・効果>本剤は、アトピー性皮膚炎の適応で、2021年9月27日に承認されました。<用法・用量>通常、成人には1%製剤を1日2回、小児には0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児でも、症状に応じて1%製剤を使用することができますが、症状が改善した場合は0.3%製剤への変更を検討します。なお、1%製剤で治療開始4週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>国内でアトピー性皮膚炎患者を対象に行われた第III相試験では、本剤1%を投与した15歳以上182例中1例(0.5%)、2~14歳85例中3例(3.5%)、同様に本剤0.3%を投与した2~14歳83例中5例(6.0%)で副作用が報告されました。また、長期投与試験では本剤1%を投与した15歳以上166例中14例(8.4%)、2~14歳56例中8例(14.3%)、同様に本剤0.3%を投与した2~14歳144例中8例(5.6%)で副作用が報告されました。主な副作用は、色素沈着障害、毛包炎、掻痒症、ざ瘡などでした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、体内の炎症物質の活性を阻害することで、皮膚の炎症を抑えてアトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.通常、人差し指の指先から第一関節まで(約2.5cm)チューブから押し出した量が、成人の手のひら2枚分の広さを塗るために必要な量です。3.粘膜や傷がある部位には塗らないでください。4.(女性に対して)この薬を使用している間および使用終了から一定期間は確実な方法で避妊してください。<Shimo's eyes>アトピー性皮膚炎(AD)の薬物療法は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、保湿薬を中心として行われてきました。近年は新しい治療薬として、2018年に皮下注射薬のデュピルマブ(商品名:デュピクセント)、2020年に外用薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のデルゴシチニブ軟膏(同:コレクチム)が発売され、治療選択肢が増えています。本剤は、既存のAD外用薬とは作用機序が異なり、PDE4の酵素活性を選択的に阻害して抗炎症作用を示す油脂性軟膏です。既存のPDE4阻害薬としては、2017年3月にアプレミラスト錠(同:オテズラ)が乾癬などの適応で発売されています。本剤の塗布量は、ステロイド外用薬を塗る際の目安となる1FTU(finger-tip unit)に順じ、人差し指の先端から第一関節まで押し出した量(約2.5cm、0.35g)が成人の手のひら約2枚分の皮疹面積に必要な塗布量となります。小児についても同様に、1FTUが小児の手のひら約2枚分の面積に相当すると考えてよいでしょう。服薬指導では、皮膚の清潔や保湿などのスキンケア、室内の清潔、適度な室温・湿度の保持、ストレスを避けるなど生活指導についてもフォローしましょう。なお、2歳未満の幼児を対象とした臨床試験は行われていません。妊婦への使用については、ラットにおいて大量に使用した場合に胎児死亡率などが高くなったことが報告されており、投与しないことが望ましいとされています。授乳婦については、ラットにおいて授乳中の移行が報告されているので有益性投与です。参考1)PMDA 添付文書 モイゼルト軟膏0.3%/モイゼルト軟膏1%

12482.

英語で「検査をしてほしい」は?【1分★医療英語】第5回

第5回 英語で「検査をしてほしい」は?I might have been exposed to COVID.Can I get tested for it?(コロナウイルスに曝露してしまったかもしれません。検査を受けることはできますか?)Okay,do you have any symptoms?(わかりました、何か症状はありますか?)《例文1》He needs to get tested for Hepatitis B before the surgery.(彼は手術前にB型肝炎検査を受ける必要があります)《例文2》You haven’t got tested for STI for the past three years. Would you like?(ここ3年間性病検査を受けていないようですね。検査されますか?)《解説》“get tested for A”で、「Aの検査を受ける」という表現になります。医療現場でも“want to get tested for COVID”という表現で、患者から検査を要求されることが頻繁にあります。この言い回しは使い勝手が良く、たとえば医師が患者に説明する際にも、“You need to get tested for A(Aの検査を受ける必要があります)”などと説明することができます。ちなみに、日本ではメディアが「新型コロナウイルス」という表現を使って報道しているのに対して、医療現場を除いた日常会話では「コロナ」という略称を使うことが多いかと思います。一方、米国のメディアは“COVID-19”や“Coronavirus”という表現で報道することが多いです。そして、日常ではほとんどの人が“COVID(コービッ)”と言います。“Coronavirus”や“Corona”を聞くことはまずありません。「COVID-19の検査を受けたい」という表現では、“I want a COVID test”という非常にシンプルな伝え方もあります。こちらの表現も日常的によく使われます。“I want to get tested for COVID”と同じ意味ですが、ネイティブからすると、“I want a COVID test”のほうがやや楽観的な印象を受けるようです。講師紹介

12483.

第89回 米国が自宅でのCOVID-19検査も無料化、英国は自宅治療を検討

6日のReutersのニュースによると、いまや米国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染が少なくとも16の州で認められています1)。それらオミクロン株感染の多くはワクチン接種済みの人に生じており、幸いなことに症状は軽度です。米国での先週の1日当たりのSARS-CoV-2感染(COVID-19)者数は平均約12万人(11万9,000人)でした。米国疾病管理予防センター(CDC)の長Rochelle Walensky氏によるとそれら新規感染のほぼすべて(99.9%)は依然としてデルタ株によるものです。しかしオミクロン株らしき報告は多くなっており、おそらくその感染数は今後増えると同氏は予想しています。さしあたり軽症ともっぱら報告されているとはいえまだはっきりしないオミクロン株感染重症度の見きわめに科学者が取り組み、保健部門がこれからの寒い季節の感染数増加への準備を進めるなか、米国政府はデルタ株やオミクロン株から同国民を守るための新たな対策を発表しました2)。今後は米国の誰もが家庭でのCOVID-19検査を無料で受けられるようになります。民間保険に加入している1億5,000人超は病院や薬局で検査を無料で受けられることに加えて自宅での検査も保険からの支払いで無料になります。民間保険に非加入の人は米国全域の2万を超える無料検査拠点を利用できることに加えて自宅でできる無料の検査製品を保健所や病院から配布してもらえるようになります。バイデン政権はワクチン接種を引き続き推進し、飛行機・鉄道・バスなどの公共交通でのマスク着用義務を継続します。マスク非着用の違反には罰金が課されており、最低でも500ドル、違反を繰り返す人は最大3,000ドルを払わねばなりません。米国が検査なら大西洋を挟んだその隣国・英国は家庭で使えるCOVID-19治療探しに取り組みます。COVID-19治療を同定して広める世界的な取り組みを率いてきたことを自負する英国はオミクロン株感染に弱そうな人を守るべく米国Merck(メルク)社の経口薬Lagevrio(モルヌピラビル/molnupiravir)を家庭に届ける試みを準備しているようです3)。その取り組みでは病弱な人や免疫が低下している人のCOVID-19検査陽性判定から48時間以内に同剤が自宅に届けられる予定です。家庭での治療が検討されるのはモルヌピラビルの他にもあるらしく、その詳細は追って伝えると政府の広報担当者は話しています。Reutersのニュースによると英国では先週末12月5日(日曜日)までに246人のオミクロン株感染が確認されています4)。12月5日の感染者数は86人でした。新たな決まりとしてイングランドはオミクロン株感染らしき人と接触した人に10日間の隔離を義務付けています5)。参考1)Omicron variant found in nearly one-third of U.S. states / Reuters2)President Biden Announces New Actions to Protect Americans Against the Delta and Omicron Variants as We Battle COVID-19 this Winter / WHITE HOUSE3)Covid antiviral pill molnupiravir/Lagevrio set for UK at-home trials / Guardian4)UK reports 86 new cases of Omicron COVID-19 variant, total 246 / Reuters5)New rules in response to Omicron variant / Gov.UK

12484.

高血糖の進行に影響を及ぼす抗精神病薬の関連因子

 抗精神病薬は、高血糖リスクを高める危険性がある。高血糖の進行に影響を及ぼす因子として、抗精神病薬の種類、1日投与量、数量などが挙げられているが、これらとの関連を調査した研究は少ない。北海道大学の石川 修平氏らは、高血糖の進行に関連すると考えられる背景因子で調整した後、高血糖の進行に影響を及ぼす抗精神病薬治療の関連因子について調査を行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年10月9日号の報告。 新規に抗精神病薬治療を開始した患者を対象に高血糖の発生率を12ヵ月間調査した全国多施設共同プロスペクティブ研究を実施した。ベースライン時に正常な血糖値であった患者631例を対象に人口統計データ、処方歴、血液検査値を収集した。主要評価項目は、高血糖の発生率(正常状態から糖尿病予備軍または糖尿病が疑われる状態への進行)とし、統合失調症患者を対象とした日本のモニタリングガイダンスに基づき評価を行った。経時的なグルコース代謝に対する抗精神病薬の影響を調査するため、各抗精神病薬治療開始3、6、12ヵ月後のHbA1cレベルの変化を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ゾテピンおよびクロザピンの使用が、高血糖の発生率の高さと有意に関連していることが示唆された。・ゾテピン治療開始6ヵ月後のHbA1cレベルの変化は、ブロナンセリンおよびハロペリドール治療と比較し、有意に高かった。・対照的に、同期間の総コレステロール、トリグリセライド、HDLコレステロール、BMIの変化に有意な変化は認められなかった。・高血糖の発生と抗精神病薬の1日投与量および数量との関連は認められなかった。・しかし、抗精神病薬のH1、M1、M3、5-HT2C受容体に対する阻害作用の強さに基づき2つの群に分類した事後分析では、抗精神病薬の中~高用量治療群における高血糖の発生は、低用量群と比較し高かった。 著者らは「抗精神病薬の1日投与量や数量ではなく、種類が高血糖の発生率に影響を及ぼしている可能性が示唆された。なかでもゾテピンは、高血糖の発生率を増加させる可能性が高く、とくに注意が必要であろう」としている。

12485.

他の抗CGRP抗体への切り替えによる片頭痛予防効果

 ある抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体に反応しなかった片頭痛患者に対する他の抗CGRP抗体への切り替えは治療選択肢の1つとなりうる可能性があるが、現時点ではデータが不足している。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のLucas Hendrik Overeem氏らは、抗CGRP受容体モノクローナル抗体であるエレヌマブによる治療で有効性または安全性の懸念が認められた患者に対する他の抗CGRP抗体による治療反応を評価した。Cephalalgia誌オンライン版2021年10月13日号の報告。 対象は、ドイツの頭痛センター4施設において、効果不十分または継続しがたい副作用により他のCGRP抗体へ切り替えを行った片頭痛患者78例。対象患者の頭痛日誌をレトロスペクティブに分析した。対象患者のうちエレヌマブによる3サイクルの治療に反応が認められず(1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少が30%未満)、他のCGRP抗体治療開始1ヵ月前および治療中に完全な頭痛データが得られた25例を特定した。主要評価項目は、ガルカネズマブまたはフレマネズマブ切り替え3ヵ月後における30%以上の治療反応率とした。副次的評価項目は、50%以上の治療反応率、1ヵ月当たりの片頭痛日数、1ヵ月当たりの急性頭痛薬の使用日数とした。対象患者を頭痛頻度が毎日(9例)または非毎日(16例)で層別化し、探索的サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・エレヌマブからガルカネズマブまたはフレマネズマブへの切り替え3ヵ月後における30%以上の治療反応率は、32%であった。・50%以上の治療反応率が得られた患者は、12%であった。・1ヵ月当たりの片頭痛日数は、ベースラインと比較し、3ヵ月後に減少が認められた(20.8±7.1→17.8±9.1、p=0.009)。・層別分析では、頭痛頻度が毎日の患者では治療反応が認められなかったが、非毎日の患者における30%以上の治療反応率は、50%であった。 著者らは「エレヌマブ治療で効果不十分または継続しがたい副作用が認められた片頭痛患者において、他の抗CGRP抗体への切り替えが恩恵をもたらす可能性が示唆された。とくに頭痛頻度が非毎日の患者において、有望な治療オプションとなりうるであろう」としている。

12486.

「五輪の裏で現場はギリギリまで追い詰められていた」感染症内科医・岡秀昭氏インタビュー(前編)

 2021年も残すところあと数週間。昨年の年明け早々に始まった新型コロナウイルス感染症との闘いは、2年近くになる。医療現場のみならず、社会全体を激変させたコロナだが、その最前線で治療に当たってきた医師は、最大の患者数を出した第5波を乗り越え、今ようやく息をつける状態となった。この休息が束の間なのか、しばらくの猶予となるのかは不明だが、諸外国の状況やオミクロン株の出現などを鑑みると、それほど悠長に構えていられないのが現在地点かもしれない。 第6波は来るのか。これまでのコロナ政策で今後も闘い続けられるのか―。地域のコロナ拠点病院で重症患者治療に奔走した感染症内科医・岡 秀昭氏(埼玉医科大学総合医療センター)に話を伺った。******* 今現在(11月8日)、コロナが始まって以来、一番落ち着いている。ここひと月近く、コロナの入院患者はいない。夏休みも取れなかった部下たちが、ようやく交代で休みを取ることができた。――最大のピークとなった第5波はどのような推移を辿り、減少傾向はいつごろから? まず、8月の上旬から逼迫感が出てきて、8月いっぱいはしんどかったと記憶している。それが9月に入り、患者が急激に減ってきた。8月と9月とでは状況がまったく違った。私自身、9月中旬には第5波の振り返りをする余裕も出てきて、9月後半にはずいぶん落ち着いていた。 過去の記録を見ると、9月7日時点で、入院数よりも退院数のほうが上回っている。9月13、20、27日と1週間ごとに、いくつかあったコロナ病棟を、患者の退院で空床化し、いったん閉鎖状態にしたのがこの時期だった。 振り返ると、五輪開幕の直前辺りから五輪期間中が最も大変だった。時期的にも、メディアでは五輪ばかりが話題になって、コロナの状況が取り上げられなくなっていた。 われわれの現場では、7月ごろからかなり危機感が募っていた。しかし一部の人が、重症者数は多くないので、医療体制は問題ないとメディアで公言し、五輪開催の機運が高まった。われわれもできる限りメディアの取材に応え、「重症者のピークは遅れてやってくるので、むしろこれから増える。楽観視しないでほしい」と切実な状況を訴えていたにもかかわらず、それは聞き届けられなかった。 私の主張はただ1つ、「五輪の延期」だった。今になってみてわかることだが、ワクチン接種が進んで落ち着いて来る時期、せめて10月以降になれば有観客でも開催できるはずだっただろうと思う。これは“後出しじゃんけん”ではなく、SNSでもたびたび発信していた。 しかし、菅 義偉前首相は、五輪開催を強行した。それが原因で感染者が増えたのかどうか、本当のところはわからない。しかし、五輪の裏で多くのコロナ患者が重症化し、医療が逼迫した結果、本来失わずに済んだ命が失われたことが紛れもない事実であることを伝えたい。 感染者数が減少にシフトしたかなりの要因は、言うまでもなくワクチンの普及によるものだろう。もうこれ以上の患者数になれば終わりだ……というギリギリまで追い詰められたところで、急速にブレーキが掛かった感覚だった。言い換えれば、われわれが治療に当たったそのころの重症患者のほとんどがワクチン未接種者、死亡も(免疫がつきにくい重篤な基礎疾患を有するなどの一部例外を除いて)、いずれも未接種者だった。五輪を強行開催した菅前首相に関して評価する点を挙げるなら、ワクチンを五輪に何とか間に合わせようと、かなりテコ入れしたことだろう。明らかにワクチン接種の急加速が入った。仮に五輪開催がなかったとしたら、あれほど接種が進まなかったかもしれない。そうなれば、第5波は高齢者を中心に重症者が増え、さらに大きなピークになっていた可能性がある。事実、第5波ピーク時の患者はワクチン未接種の40~50歳代が多かった。ワクチンが広がっていなかったら、さらに高齢者層が大きく上乗せされただろう。そうなれば死亡も格段に増えた可能性がある。 もう1つ、日本人の感染予防に対する意識の高さは、大いに評価されるべきだと思う。海外メディアが報じる現地の状況を見ると、マスクを着けていない人がいかに多いかがわかる。日本人の同調圧力とまでは言わないが、相互監視的に「ほかの人が着けてるから自分も着けなくては」という意識からか、外では皆がきちんとマスクを着用している。 この、ワクチン完遂率の高さと予防意識が、かなり第5波のブレーキには貢献したと考える。――第5波の渦中では、五輪開催と緊急事態宣言の発令などの相反する行動に多くの国民が矛盾と戸惑いを感じた。 さかのぼるが、第4波(2021年3月1日~6月20日)は、緊急事態宣言がスムーズかつ早く、大型連休前に発令された。あの発令については、医療者の中では高く評価されている。中には、「タイミングとして早過ぎるのでは」という指摘もあったようだが、先手を打って出せたのが第4波の宣言だった。ちょうど、より感染力の強いアルファ株に置き換わるタイミングだったにもかかわらず、少なくとも関東地域では比較的“ボヤ”程度で済んだ。ところが、第5波は違った。五輪という目標があり、そこに政治家たちが惑わされた。「そうたやすく宣言は出せない」という政府の思惑があったと思う。しかも、現場からの訴えを聞かず、「重症者は増えていない」というストーリーまで語ったのは間違いだった。あの時点で、すでに静観している場合ではなかった。 さらに、感染力が強いデルタ株の出現があり、より重症化しやすい特性もあった。そして、長らく続いた自粛ムードへの疲れと抑制効果の低下。国民はすでに相当な疲れと緩みを覚えていたし、そういう状況下にもかかわらず五輪は開催されるという。それなら、もう大丈夫なんじゃないかという形で、世論を割ることになってしまった。つまり、五輪開催と感染対策が矛盾し合うことになり、国民にうまく伝わらなかったのが、あの時期の日本だったと思う。――ワクチンに関して、ブレークスルー感染については現場で影響が? 自院では重症や中等症IIの治療がもっぱらで、在宅療養の軽症者は送られて来ない。つまり、ブレークスルー感染が起きていたとしても、現在の状況から推測できるのは、軽症で済んでいる、つまり重症化には至っていないということだ。したがって、ワクチンの90%の予防効果というのは、完全に100%防ぎ切るということではないにせよ、かなり予防できていて、ブレークスルー感染も想定の範囲内だということ。それでも重症化して送られてくるのは、重症化リスクを有するのにワクチン未接種の人とみて、第5波ではほぼ間違いなかった。 ワクチンが接種者のためだけと考えると、重症化しにくい年齢層にはその意義がなかなか見出しにくいかもしれない。ただ、これだけ効果があることがわかってきているコロナワクチンなので、自分も接種者となることで、社会の集団免疫を作る一員になるということ、それに協力することになる。今後、子どもへのワクチンも議論になってくるだろう。子ども個人の健康を守るという側面もあるが、もし第6波で重症者が多く出て来たら、子どもまで接種していかないと抑制できないのではないかと考える。それは子ども自身の現在だけでなく、成人した後の未来も守ることになり、ひいてはその周りの家族をも守ることになる。――米国ではすでに5~12歳まで接種対象が引き下げられている。 日本での導入には議論が必要になると思うが、ポイントとしては、子どもが感染したとしても重症化リスクは小さいということと、人種として多系統炎症症候群(MIS-C)を起こすアジア人が相対的に少ないという点がある。そして大人から子どもへの感染は多いが、その逆は少ないというのもある。その点で、周りを守るというワクチンの意義が、子供に関してはそこまで大きくないのではないかという指摘もある。治験では一定の効果が示されているが、副反応もあり、そこまでして子供に接種させるべきなのかというと、微妙だという意見もある。ワクチン供給量とのバランスという観点も考える必要があるだろう。もしくは、追加接種も含め途上国とのバランスという問題もあり、そこが崩れると輸入感染症になるという危惧が出てくる。 コロナに関しては、ある1つの国が“ひとり勝ち”というわけにいかない。今後、世界的に経済活動が再び活発化してきた時、海外との人流増加は避けられない。ビジネス相手国となるワクチン接種が遅れている一部のアフリカや南米、アジア諸国との行き来が増えれば、確実に入って来る。そうした点でも、世界のバランスをとってワクチン接種を進めていく必要がある。 抗体価は接種から半年で低下するのはすでに知られているが、デルタ株でも重症化を減らす効果は依然続いており、そこまで追加接種を慌てなくてもよいのではないかとは思う。一方で、ワクチンを2回打っていても免疫不全者、とくに抗がん剤治療中の患者や臓器移植患者には抗体が2回では十分につかず、ワクチンの予防効果が下がることがわかっている。今、追加接種が優先的に必要なのはそうした患者、もしくはその周りにいる医療従事者や家族だろう。更なる展望としては、抗体カクテル、モノクローナル抗体治療薬、経口薬も出てくるだろうが、高額な薬価の問題がある。抗体カクテルの重症化リスクがある患者への早期治療投与が有用ということはデータに示されているが、それも7割の重症阻止効果ということで、単純比較だがワクチンのほうが効果が高いことがわかる。また、曝露後予防には9割近い効果があるとされているが、推定薬価は30万前後と高額だ。これらの治療薬の効果が証明されているのは、重症化リスクがある患者に対してであり、リスクのない患者にはコストパフォーマンスも含め効果は不透明である。ワクチンが数千円ということを考えると、未接種者でも、万一感染したら皆が抗体カクテルや経口薬の治療が受けられ、効果もあるという理屈は間違っているという認識が必要だ。抗体カクテルは受動免疫で、一時的に外部から抗体を入れるという仕組み。つまり、入れた抗体がなくなれば無効になる。一方、ワクチンの免疫は接種によって能動的に免疫をつけるという仕組みなので、減弱するものの、長く効果が続く。しかもコストパフォーマンスも良い。抗体カクテルや治療薬が、ワクチンに置き換わるものでは決してないことも理解してほしい。 一部からは、「コロナを5類感染症に」という声が上がっているが、医療費が現在の全額公費負担から3割負担になるのだというところまで理解して言っているのかと問いたい。例えば、レムデシビルは1本6万円。入院初日はそれを2倍量使うので、2本で12万円。さらにその後4日間使うので、薬剤費だけで40万円近く掛かる。レムデシビルが必要な人は酸素やステロイド剤、場合によってはICUに入り、人工呼吸器が必要なケースもある。状況によっては、高価な生物学的製剤や抗菌薬も使う。相当額になる治療費を、現在は公費で全額負担しているのに、5類となった場合にはどうなるのか。高額療養費が適用されるかもしれないが、それでもかなりの額を患者自身が負担することになる。自己負担が大きく増えるということは、全員が望む治療を受けられるかどうかという観点からもかなり危惧する。それだけ最近の治療薬は高コスト。今後続いていくコロナ治療薬も、内服であってもそれなりに高額な薬価となるだろう。 また、コロナ治療薬に関しては、現在のところすべてが特例承認で迅速化が優先されているが、今までもガチフロキサシンやテリスロマイシンなどの抗菌薬などでIII相試験まで治験が進んで効果が確認されたにもかかわらず、いざ承認されて多くの患者に投与したら、低血糖や意識消失などの思わぬ副作用が確認されて使われなくなった例が複数ある。さらにもう1つの懸念は、感染症治療薬は、多用すればいずれは耐性化するのが常であるという問題がある。選択肢が増えてくるのはいいが、その裏にはたくさんの課題があることも忘れてはならない。 コロナに関して、ワクチンの副作用は気にする人が多いのに、治療薬だとなぜウェルカムなのかは疑問だ。治療薬にも副作用があって、新薬が怖いという点はワクチンと同じだ。治療薬を投与するのは、つまりコロナに罹患したということなので、後遺症の問題もある。やはり、感染するより未然に防げたほうがよいのは自明だ。したがって、治療薬が出てきたらワクチンは不要ということには決してならないということは強調したい。<後編に続く>

12487.

高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。米国の40施設のクラスター無作為化試験 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。転倒の発生率も低下 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

12488.

mRNAコロナワクチンによる心筋炎・心膜炎、「重大な副反応」に追加/厚労省

 厚生労働省は12月3日、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンに対し『重大な副反応』の項に「心筋炎」と「心膜炎」を追記するよう、使用上の注意の改訂指示を発出した。対象製剤はファイザー社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ)とモデルナ社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:(COVID-19ワクチンモデルナ筋注)。 今年7月の時点で重要な基本的注意に追記されていたが、その後の解析で各2回接種後の若年男性(10~20代)で頻度が高いことが示唆された。 このほか、『その他の注意』の項に注射部位反応に関する記載が新設され、「海外において、皮膚充填剤との関連性は不明であるが、皮膚充填剤注入歴のある被接種者において、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、皮膚充填剤注入部位周辺の腫脹(特に顔面腫脹)が報告されている」旨が追記された。

12489.

第80回 オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省

<先週の動き>1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省政府は新型コロナウイルスの新しい変異型オミクロン株の世界的な急拡大に対応するため、来年1月以降から本格的に取り組む予定であった3回目のワクチン接種について、諸外国と同様に2回目接種との間隔の短縮を検討している。12月2日に開かれた全国知事会と日本医師会のオンライン会合では、3回目接種の時期を「前倒しする必要がある」との意見で一致している。3回目の接種をめぐっては、ファイザー製ワクチン以外に、モデルナ製ワクチンの在庫も活用する方向で検討に入っており、早期の開始に向け、準備が進められる。(参考)オミクロン株2例目 政府 ワクチン3回目接種の間隔見直しも検討(NHK)首相、3回目接種前倒し表明へ モデルナ在庫を活用(日経新聞)3回目接種「前倒しする必要がある」…全国知事会と日本医師会が意見交換(読売新聞)2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に厚生労働省は、11月30日に労働政策審議会分科会を開催し、医師の働き方改革に関する検討会報告書と医師の働き方改革の推進に関する検討会中間とりまとめを踏まえた医療法の改正に伴い、2024年4月から上限規制を適用することとなった。地域医療を担う医療機関などで特例水準(連携B、B、C-1、C-2)の医療機関で、長時間労働を避けられない場合は、医師労働時間短縮計画作成ガイドラインに基づいて医師労働時間短縮計画の立案と実施をもとに、都道府県の許可を受けた医療機関のみ年1,860時間とする省令案について了承した。なお、都道府県から指定を受けるためには、2021年10月~2022年9月末までに各医療機関が「医師労働時間短縮計画」を策定し、2022年度中に第三者機関による評価を受けたうえで、2023年度に都道府県に申請することが必要となる。(参考)医師残業、年1860時間 上限定める省令案了承(中日新聞)資料 医師の時間外労働の上限水準を超える時間外労働時間を設定する医療機関について(山形県)資料 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案等の概要(厚労省)資料 医師の時間外労働規制について(同)3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省厚労省は3日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の取り組み・検討状況について調査し、その結果について討論した。再検証対象の436医療機関において、2025年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは340医療機関(全体の78%)だった。また、再検証の実施について合意済みまたは合意結果に基づいて措置済みの175医療機関において、2022年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは150医療機関でほとんどを占めた。具体的には、医療機能(病床機能、診療科など)の集約化のために、医療機関の統合、地域医療連携推進法人の設立、在宅療養支援病院の指定など役割の明確化・変更など実施状況が共有され、今後も重点支援区域の設定を通じて国による助言や集中的な支援を行うこととした。なお、重点支援区域には、宮城県仙南区域、石巻・登米・気仙沼区域のほか、滋賀県(湖北区域)、山口県(柳井区域、萩区域)、北海道(南空知区域、南檜山区域)、岡山県(県南東部区域)、新潟県(県央区域)、佐賀県(中部区域)、兵庫県(阪神区域)、熊本県(天草区域)、山形県(置賜区域)、岐阜県(東濃区域)、新潟県(上越区域、佐渡区域)、広島県(尾三区域)の12道県17区域が含まれている。(参考)資料 地域医療構想に関する地域の検討・取組状況等について(厚労省)再検証対象の公立・公的175医療機関が合意済み 重点支援区域に新潟「上越」「佐渡」、広島「尾三」(CBnewsマネジメント)4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省厚労省は11月30日にがん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループを開き、要件の見直しについて検討を行った。がん対策基本法に基づき閣議決定されている「がん対策推進基本計画」により、全国どこでも質の高い医療を提供することができるよう、がん診療の均てん化を目指して整備を進めてきたが、この整備指針の要件や、要件を満たせなくなった施設への対応などについて議論を行った。今後、2022年6~7月までに議論を重ね、整備指針を改定する見込み。(参考)資料 がん診療連携拠点病院等における指定要件の見直しについて(厚労省)2022年夏にがん連携拠点病院の指定要件見直し、高度型の意義、診療実績・体制要件等を議論―がん拠点病院指定要件WG(Gem Med)がん診療拠点病院、指定要件見直しの議論開始 厚労省WG、「望ましい」要件など論点(CBnewsマネジメント)5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省厚労省は1日に新型コロナウイルス感染症について、「罹患後症状のマネジメント」を公表した。感染者数が減少する一方で、新型コロナウイルス感染からは回復したにもかかわらず“後遺症”と呼ばれるような症状に悩む患者が存在する。今回、診療の手引きの別冊として、回復後の経過を診るかかりつけ医がどのタイミングで専門医の受診を勧めるべきかなどについて書かれている。なお、新型コロナウイルス感染症の後遺症の頻度については、海外における45の報告から出された系統的レビューで、COVID-19の診断・発症・入院後2ヵ月あるいは退院・回復後1ヵ月を経過した患者のうち、72.5%が何らかの症状を訴えたと報告されている。倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身症状のほか、咳、喀痰、息切れなどの呼吸器症状、あるいは集中力低下、記憶障害、不眠、抑うつなどの精神・神経症状のほか、嗅覚障害・味覚障害などが含まれており、もっとも多いのは倦怠感(40%)だった。(参考)新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(厚労省)新型コロナ後遺症 初の医療関係者向け手引きを公表 厚生労働省(NHK)「コロナ後遺症」に初めての手引き 「患者の支援を」厚労省が公表(朝日新聞)6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD米メルク日本法人のMSDは、厚労省に新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬として抗ウイルス薬molnupiravir(モルヌピラビル)の製造販売承認を申請した。今回は特例承認の適用を求めており、今月中に厚労省の専門家部会で審議される見込み。軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の入院していない成人患者を対象としてモルヌピラビルを投与した第III相MOVe-OUT試験の中間解析の結果、無作為割り付けから29日目までに入院または死亡した患者はモルヌピラビル群では7.3%(28/385例)、プラセボ群では14.1%(53/377例)と有意差を認めた(p=0.0012)。29日目までにモルヌピラビル群では死亡は認めず、プラセボ群では8例の患者が死亡した。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として経口の抗ウイルス薬モルヌピラビルの製造販売承認申請 特例承認の適用を希望した申請(MSD)米製薬大手メルク 新型コロナの飲み薬 日本での使用 承認申請(NHK)コロナ飲み薬「モルヌピラビル」、オミクロン株にも有効な可能性…今月中に特例承認へ(読売新聞)コロナ飲み薬の承認を申請 米メルクのモルヌピラビル(産経新聞)

12491.

Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

第71回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨 徹哉氏が解説する。

12492.

臓器間癒着や切除部の表現~腹腔鏡下S状結腸切除術~【誰も教えてくれない手術記録 】第9回

第9回 臓器間癒着や切除部の表現~腹腔鏡下S状結腸切除術~こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。本連載ではこれまで、オペレコの作成手順や活用方法を中心に紹介してきましたが、今回からはもう少し踏み込んだ内容として、実際のオペレコ※を題材に、おぺなか流のこだわりポイントについてご紹介します! 今回は、腹腔鏡下S状結腸切除術のオペレコから、臓器間の癒着と切除部位の表現方法について解説します。オペレコを描く楽しさや重要性がさらに伝わるとうれしいです。※個人情報保護の観点から、オペレコは本連載用に描き下ろしています。《術式解説》腹腔鏡下S状結腸切除術は、S状結腸がんに対する標準的な術式です。S状結腸がんを中心にその前後の腸管と周囲のリンパ節を一塊りに切除します。切除した腸管は臍の小開腹創から摘出します。切除後の再建は、腸管同士を自動吻合器で吻合します。例:腹腔鏡下S状結腸切除術のオペレコ(完成図)大まかな手術の流れがひと目でわかるオペレコになっているでしょうか? イラストの細部に注目し、こだわりポイントをいくつか紹介したいと思います。こだわり1:臓器や組織間のつながり(癒着)は線の密度で表現する腹腔内臓器は、腹膜などにより固定されています。がんの手術では、そのような固定や臓器間の癒着を適切に外し、標的臓器を摘出できる状態にしなければなりません。とくに癒着の程度は、がんの進行度や症例ごとにさまざまで、たとえば腹部手術の既往があれば想定以上に癒着していることもありえます。僕は、癒着やがんの浸潤など、臓器間のつながりを、線の密度に差をつけて描いています。癒着が強い部分は密に、弱い部分は疎に線を描き込むと、強弱が生まれわかりやすくなります。参考:臓器間癒着の表現部分を拡大こだわり2:剥離や切除の範囲を矢印などで図示同じ手術でも、臓器や病変部の状態によって剥離や切除の範囲が異なるので、その範囲をイラストに矢印などを用いて図示するとわかりやすいです。正確に手術内容を記載するためにも重要なポイントですね。参考:矢印で図示した部分を拡大僕流のこだわりポイントを紹介しましたが、いかがでしたか? オペレコの描き方は人それぞれですが、目指すところは一緒で「手術内容がわかりやすく伝わる」ことです。今後も僕の専門である消化器外科分野の手術を中心に、“伝わるオペレコ”のポイントをお伝えしていきたいと思います。次回もお楽しみに!

12494.

精神神経疾患や発達障害に対する音楽療法の有効性

 音楽療法は、身体的、感情的、精神的な健康を維持・回復・促進するために用いられる。オーストリア・AIHTAのLucia Gassner氏らは、自閉スペクトラム症(ASD)、認知症、うつ病、不眠症、統合失調症に対する音楽療法の有効性を評価した。European Journal of Public Health誌オンライン版2021年10月1日号の報告。 システマティックレビューおよび医療技術評価レポートの検索により、139件の文献が抽出された。コクランレビューが利用可能な5疾患の診断グループに焦点を当てた。第2検索は4つのデータベースを用いて実施した。独立した2人のレビュアーが、研究の選択、データ抽出、方法論的質の評価を行った。バイアスリスクが中~低の試験のみを選択した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たしたランダム化比較試験は10件(1,248例)であった。・統合失調症では、バイアスリスクが中~低の研究がなかった。コクランの著者らは、統合失調症のQOL、社会的機能、全体的症状および精神症状の改善が認められたが、全体的な機能の改善は認められなかったとしていた。・ASDでは、行動、社会的コミュニケーション、脳内ネットワーク、親子関係の改善が認められた。・うつ病では、気分の高揚の改善が認められた。・不眠症では、睡眠の質、ストレス、不安、総睡眠時間、疾患重症度、心理的QOLの改善が認められた。・認知症では、気分症状、神経精神医学的行動、無気力、コミュニケーション、身体機能の改善が認められた。また、重症の場合では、行動および心理的症状の改善、軽度アルツハイマー病では、記憶力と言語の流暢さの改善が認められた。認知機能の改善が認められた研究は、4件中1件であった。・認知症に対する音楽療法では、能動的(演奏する)および受動的(聴く)方法が用いられたが、ASDとうつ病で用いられたのは能動的方法のみであった。また、不眠症では受動的方法のみが用いられた。 著者らは「精神神経疾患や発達障害に対する音楽療法は、身体的および心理社会的な健康の改善に役立つことが示唆された。これらの効果の長期的な影響を評価するためには、さらなる研究が求められる」としている。

12495.

固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。ブースター接種後にほぼすべてのがん患者で高い抗体価 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。 がん患者のブースター接種後の体液性応答を調査した主な結果は以下のとおり。・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だったがん患者で、ほぼすべてのがん患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

12496.

VHL病の腎細胞がんにbelzutifanが有効/NEJM

 フォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)病はVHL遺伝子の生殖細胞系列の病的変異に起因するまれな常染色体性優性の遺伝性疾患で、良性または悪性の新生物と関連し、低酸素誘導因子2α(HIF-2α)の恒常的な活性化などにより生涯に患者の約70%が腎細胞がんを発症するという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏らは、VHL病患者の腎細胞がん治療における第2世代分子標的薬のHIF-2α阻害薬belzutifan(MK-6482)の有用性について検討した(MK-6482-004試験)。その結果、本薬の有害事象は主にGrad1または2であり、VHL病関連の腎細胞がんだけでなく膵病変や網膜・中枢神経系の血管芽腫にも抗腫瘍活性を有することが示された。研究の成果は、NEJM誌2021年11月25日号に掲載された。4ヵ国11施設の非盲検単群第II相試験 本研究は、VHL病患者の腎細胞がんの治療におけるbelzutifanの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検単群第II相試験であり、2018年5月~2019年3月の期間に4ヵ国(米国、デンマーク、フランス、英国)の11施設で患者の登録が行われた(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、生殖細胞系列のVHL遺伝子異常に基づいてVHL病と診断され、少なくとも1個の測定可能な腎細胞がん(CTまたはMRIで最長腫瘍径≧10mm)を有し、パフォーマンスステータス(PS、ECOG基準)が0または1の患者であった。 被験者は、belzutifan 120mg(40mg錠を3錠、1日1回、経口)の投与を受け、許容できない有害事象の発現または病勢が進行するまで継続された。 主要エンドポイントは、VHL病関連腎細胞がん患者における客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とされ、固形がん治療効果判定基準(RECIST ver. 1.1)に基づき、独立画像審査委員会による中央判定が行われた。腎細胞がん以外のがんを有する患者(網膜と中枢神経系の血管芽腫、膵病変[重度の嚢胞腺腫、神経内分泌腫瘍]など)における奏効と安全性の評価も実施された。客観的奏効率49%、2年無増悪生存率96% 61例が登録された。年齢中央値は41歳(範囲:19~66)、男性が32例(52%)で、50例(82%)はPS 0であった。膵病変が61例(100%)、中枢神経系の血管芽腫が50例(82%)、網膜血管芽腫が12例(20%)で認められた。59例(97%)が、1つ以上の腫瘍減量手技(例:腎部分切除術、開頭手術、凍結融解壊死治療)を受けていた。 追跡期間中央値は21.8ヵ月(範囲:20.2~30.1)、投与期間中央値は21.7ヵ月(1.9~30.1)であり、データカットオフ日の時点で54例(89%)がbelzutifanの投与を継続していた。 客観的奏効が得られた腎細胞がん患者は30例で、客観的奏効率は49%(95%信頼区間[CI]:36~62)であった。いずれも部分奏効で、完全奏効を達成した患者はいなかった。30例(49%)が安定と判定された。また、奏効までの期間中央値は8.2ヵ月(範囲:2.7~19.1)で、奏効期間中央値には未到達だった。 56例(92%)で全標的病変径の合計の縮小が認められた。ほとんどの患者で、治療開始前には腫瘍の増大が進んでいたが、治療開始後はこれらの患者で最大腫瘍径の縮小が観察された。24ヵ月時の無増悪生存率は96%(95%CI:87~99)だった。 膵病変を有する61例中47例(77%)で奏効が確認され、このうち6例(10%)は完全奏効であった。中枢神経系血管芽腫では、50例中15例(30%)で奏効が得られ、3例(6%)は完全奏効だった。また、ベースラインで網膜血管芽腫が見られた12例で評価が可能であった16眼では、すべて(100%)が改善と判定された。 最も頻度の高い有害事象は貧血(90%)および疲労(66%)であった。7例が治療を中止し、このうち4例は患者の自発的な中止、1例は治療関連有害事象(Grade1のめまい)による中止、1例は担当医の評価で病勢進行と判定されたことによる中止であり、1例は死亡した(フェンタニルの急性毒性)。有害事象は全般にGrade1または2であり、Grade3は20例(33%)で報告された。 著者は、「VHL病患者は、罹患臓器に生涯にわたって腫瘍が発生するリスクがあり、ほとんどの患者は生涯に数回の手術を受けており、これに伴い合併症が発生する。有効な全身療法が確立されれば、外科的な負担が軽減される可能性があり、臓器に限局したVHL病関連の新生物の管理における新たなアプローチとなるだろう」としている。

12497.

ファイザー製ワクチン2回目後、90日から徐々に感染増加/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製、21日間隔で2回接種)は、2回目接種から数ヵ月後には重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の防止効果が低下し始め、2回目接種から90日以降はブレークスルー感染リスクが徐々に増加することが、イスラエル・Leumit Health ServicesのAriel Israel氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年11月25日号で報告された。イスラエルの後ろ向きのtest negative design研究 研究グループは、BNT162b2ワクチンの2回目接種後の経過期間とCOVID-19の罹患リスクとの関連を評価することを目的に、test negative designを用いた後ろ向き症例対照研究を行った(イスラエル・Leumit Health Servicesなどの助成を受けた)。 解析には、イスラエルの大規模な国立医療機関であるLeumit Health Servicesの電子健康記録(electronic health records)が用いられた。対象は、年齢18歳以上、2021年5月15日~9月17日の期間に逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)による検査を受け、ワクチンの2回目接種後少なくとも3週間が経過し、3回目の接種は受けておらず、COVID-19の既往歴がない集団とされた。 解析では、2回目接種からRT-PCR検査までの期間が90日未満の集団を参照として、30日ごとに90~119日、120~149日、150~179日、180日以上の集団に分けた。また、全年齢層のほか、3つの年齢層(60歳以上、40~59歳、18~39歳)に分けて解析が行われた。 主要アウトカムは、RT-PCR検査で検出されたSARS-CoV-2感染とされた。SARS-CoV-2陽性例と対照(陰性例)を、検査を受けた週、年齢層、人口統計学的集団(超正統派ユダヤ教徒、アラブ系住民、一般人口)でマッチさせた。条件付きロジスティック回帰を用いて、年齢、性、社会経済的状況、併発疾患で補正し、感染リスクの補正後オッズ比(OR)を算出した。ブレークスルー感染率:接種後90日未満1.3%から180日以上は15.5%に上昇 研究期間中に8万3,057例(平均年齢43.97[SD 16.89]歳、女性4万3,554例[52.4%])がSARS-CoV-2感染を検出するRT-PCR検査を受け、7,973例(9.6%)が陽性であった。2回目接種からRT-PCR検査までの期間中央値は164日(IQR:138~185)であった。マッチング後のコホートは、陽性例が6,320例、陰性例は3万1,600例だった。 マッチング前の集団における2回目接種後の経過期間(日数)中央値は、3つの年齢層のいずれにおいても、RT-PCR検査陽性例が陰性例よりも有意に長かった。すなわち、60歳以上では、陽性例が192日、陰性例は173日(p<0.001、標準化平均差[SMD]:0.61)、40~59歳ではそれぞれ185日および166日(p<0.001、SMD:0.62)、18~39歳では174日および164日(p<0.001、SMD:0.62)であった。 マッチング前の集団における2回目接種後のSARS-CoV-2陽性率(ブレークスルー感染の割合)は、接種後の経過期間が長くなるほど有意に高くなり、21~89日(参照集団)の1.3%に対し、90~119日が2.4%(OR:1.91、95%信頼区間[CI]:1.39~2.67)、120~149日が4.6%(3.67、2.75~4.98)、150~179日が10.3%(8.82、6.67~11.90)、180日以上は15.5%(14.10、10.68~19.01)と、経時的に上昇した。また、2回目接種から180日以上が経過すると、3つの年齢層のすべてでSARS-CoV-2陽性率が有意に上昇していた(p<0.01)。 マッチング後の集団における2回目接種から90日以上経過後の、参照集団(90日未満)と比較した感染の補正後ORは、90~119日が2.37(95%CI:1.67~3.36)、120~149日が2.66(1.94~3.66)、150~179日が2.82(2.07~3.84)、180日以上は2.82(2.07~3.85)であった(30日間隔ごとのp<0.001)。 著者は、「これらの知見の解釈は、観察研究デザインの制約を受けるが、3回目のワクチン接種の検討が必要であることを示唆する」としている。

12498.

もはや「新型コロナ辞典」【Dr.倉原の“俺の本棚”】第48回

【第48回】もはや「新型コロナ辞典」新型コロナ系の本はたくさん刊行されています。しかし、おそらくこの書評を執筆している2021年11月1日時点で最高傑作と私が考えているのは、神戸市立医療センター中央市民病院のこのマニュアルです。フルカラーでむちゃくちゃ見やすいんですが、この本には、新型コロナのすべてが載っています。「この世のすべてをそこに置いてきた」と言ったのは、ゴールド・D・ロジャーという稀代の大海賊ですが、コロナのすべてを置いてきちゃったパネェ本が、コレです。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹/監修. メディカ出版. 2021年10月発売当時ニュースにもなっていたのでご存じの人も多いと思いますが、神戸市立医療センター中央市民病院では、院内クラスターが出たことがあります。逆境に耐えて前に進むしかありませんでした。冒頭にある「第1種・2種感染症指定病院として自信満々であった自分たちの感染症対策が今回の新型コロナウイルス感染症には役に立たなかったことを潔く認める」という言葉、重みと覚悟を感じます。軽症から重症まで、院内が一致団結して多職種で新型コロナの対応に当たりました。一般的な新型コロナに対する感染対策だけでなく、入院時スクリーニングの是非、外来のチェックリスト、産科フローチャート、重症化した場合の酸素療法や人工呼吸器のマニュアル、多職種カンファレンス、家族への説明、面会の基準、精神科リエゾン、退院支援。何もかもが余すことなく記載されています。逆に何が書いていないのか、見つかりません。何より、新型コロナに立ち向かう1人ひとりのプロたちの矜持がビンビン伝わってくる内容で、世界に誇ることができる日本のマニュアルに仕上がっています。第6波、第7波がやってくるのかどうかわかりません。新たな新興感染症だっていつやってくるかわかりません。それに備えて、これは病院に1冊は置いてもらいたい「新型コロナ辞典」です。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹 /監修.出版社名メディカ出版定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

12499.

第86回 “外交官”のオミクロン株感染から学ぶ、入国禁止以外にできる水際対策とは

一体、私たちはギリシャ文字のアルファベットをいくつ覚えなければならないのだろう。そしてこれまでの各方面の努力が水泡に帰するのだろうか? 南アフリカ(以下、南ア)が起源と考えられている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新たな変異株・オミクロン株の登場に世界が震撼している。ちょうど先週末から今週初めまである地方都市に滞在していたので、夜の飲食店の暖簾をくぐったが、カウンターだけの店内ではオジサンだらけ(もちろん自分も含めてである)。そこでもほかの客が時々「オミクロン」と口にしていて、ややうんざりしてしまった。もっとも私自身は何もオミクロン株を軽視しているわけではない。むしろこれまでよりも厄介なのではないかとすら思っている。すでに広く知られているように、オミクロン株は新型コロナウイルスの野生株と比べ、スパイクタンパク質部分に30ヵ所以上の変異を有し、この数はこれまでの変異株の中で最多。このうち約半分が受容体結合部位(RBD)に関する変異で、常識的に考えれば、この数の多さだけで感染やワクチン接種によりできた抗体の抗原認識能力は低下すると考えられる。しかも細胞へのウイルスの侵入を容易にし、感染性の増強に関わる変異も有するので極めて厄介と言わざるを得ない。起源と言われる南アでは昨年5月下旬から9月初旬にかけての第1波、昨年11月下旬から今年2月上旬にかけての第2波、そして今年5月中旬から9月下旬まで続いた第3波を経験し、11月中旬から第4波とみられる感染流行を見せている。この第4波では各国で猛威を振るい日本の第5波を引き起こしたデルタ株からオミクロン株への置き換わりが進み、感染流行の主流株になりつつあるという。その意味でオミクロン株はデルタ株より感染力は増している可能性があり、実際一部の事例の報告からその可能性がうかがい知れる。たとえば、香港では入国後に検疫用隔離ホテルに滞在していた南ア渡航歴がある人でオミクロン株感染が判明し、同じホテルでこの感染者の真向いの部屋に滞在していたカナダからの帰国者でも感染が発覚。その後の調査から同じフロアの廊下などの環境中からもオミクロン株が検出されている。このような経緯もあり、日本政府は11月27日から水際対策の強化を目的に南アとそれに隣接するナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、エスワティニ(旧スワジランド)、レソトの計6ヵ国からの入国者に国指定の宿泊施設で10 日間の待機を義務付け、翌28日にはこの対象国にザンビア、マラウイ、モザンビークを加えた。もっともアフリカの事情を考えた場合、この対策は不十分だと思い、私個人はそのことをTwitterでツイートもしていた。何かというと、アフリカ大陸は1880年代から第一次世界大戦期までの「アフリカ分割」と称されるヨーロッパ列強による植民地支配により、各国とも人流において、当時の支配者だったいわゆる旧宗主国とのつながりが深い。たとえば当初の水際対策強化の対象だった6ヵ国の場合はそうした事情でイギリスが旧宗主国であり、追加された3ヵ国のうちモザンビークはポルトガル、残り2ヵ国もやはりイギリスがそれである。つまりこれらの対象国からの流入阻止を考えた場合、ヨーロッパからの入国にも一定の制限を設けなければ理屈に合わない。また、前述の9ヵ国から日本への直行便はないため、これらの国からの来日はアフリカ大陸でも世界各地への旅客機の本数が多いエジプト、エチオピア、ケニア、あるいは中東のアラブ首長国連邦やカタール、アジア圏内の韓国、中国、タイ、シンガポール各国を経由する。つまりこのルートも厳重警戒を払わねばならない。結局のところ水際対策を強化するならば、ほぼ全世界からの入国に対して対策強化をしなければならないのだ。その意味で11月30日午前0時から全世界からの外国人の入国を1ヵ月停止し、オミクロン株が確認されている各国からの日本人帰国者を厳重な隔離施設で待機させるとした首相官邸の決定は、かなりの英断だったと個人的には評価している。ただ、最終的に撤回はされたものの、国土交通省を通じて日本に到着する国際線を運航する各航空会社に新規予約を止めるよう要請していた件は、不安に駆られ帰国を急ぎたい日本人をさらに不安に陥れるという意味で愚策だったことは確かだ。また、日本の在留資格を有する外国人が、日本入国直前14日以内に前述の9ヵ国にアンゴラを加えた10ヵ国に滞在歴がある場合、特段の事情がない限り再入国を原則拒否する決定もやり過ぎの感がある。在留資格を持つということは日本に一定の生活基盤があることを意味し、そうした人たちを追い返すのは人道上問題だからだ。さて、それだけの対策を取っていても、日本では11月28日に入国したナミビア滞在歴のある30代男性、29日にペルーから入国した20代男性の合計2人のオミクロン株感染者が確認された。ナミビアからの入国者に関しては外交官で、モデルナ製ワクチンを2回接種済みだったと報じられている。正直、ブレークスルー感染という事実以上に、私は日本で確認された1例目が外交官だったことに衝撃を受けている。表現が適切と言い難いかもしれないが、外交官と言えば、どこの国であっても社会の上流層だ。ナミビアの人口当たりのワクチン接種完了率は、「Our World in Data」によると12月1日時点で11.39%で、この外交官はまさに国民の10人に1人の恩恵にあずかった人である。そのナミビアは国連が算出した所得分布の不平等さ、つまり経済格差を表す「ジニ係数」は世界2位。ワクチンを接種できる外交官が感染する社会・衛生状況ならば、下流層はどうなっているのだろうか? いわんや、ジニ係数で世界1位、アフリカ大陸内での国別人口ランキング5位、人口密度はナミビアの16倍でオミクロン株の起源国と言われる南アの実際の状況はいかばかりかと想像してしまう。さらに12月2日午前段階で日本も含め世界の27ヵ国・地域でオミクロン株の感染者が確認されているが、そのうちの1つ、ベルギーで確認されている事例はアフリカ大陸内で国別人口第2位(約1億39万人)のエジプトへの渡航歴を有する人であり、お隣の韓国で確認された事例はアフリカで最大の人口(約2億96万人)を有するナイジェリアに渡航した韓国人だったと報じられている。これらも渡航目的が業務であれ観光であれ、この時期と社会環境で渡航できる以上、衛生面にも配慮が可能なある程度の裕福な層の人だろう。そうした人たちがこの巨大な人口を有する国で感染してしまうのである。これらを総合すると、アフリカでのオミクロン株の蔓延は数字で判明している以上のものなのではないかと考えられる。もっとも現状でのせめてもの救いは、各国で判明しているオミクロン株の感染者の多くが無症候か軽症であるということ。ただ、いまだに新型コロナに対抗する手段が十分とは言えない状況では、軽症であれ感染者が増加するのは看過できない事態である。水際対策では完全に流入を防ぎきれるものではないことは確かだが、メリハリをつけながらも当面は厳重な体制を敷くほうが合理的ではないだろうか。一方、懸念されるワクチンの効果減弱だが、理論上はワクチンの効果が低下すると予想されているが、そうした中でイスラエルからファイザー製ワクチンのブースター接種完了者で検討したオミクロン株に対する有効率が、感染予防で90%、重症化予防で93%と報道されている。数字だけを見れば安心してしまうが、そもそも国内で4例しかオミクロン株の感染者がいないイスラエルで、南アのデータなども参考にして算出したともいわれているが、根拠が不明確で額面通りに受け取るのは難しい。とくに日本の場合はブースター接種が医療従事者で始まったばかりで、参考にするには状況が違いすぎる。また、ここで浮かび上がってきた課題がある。それはワクチン接種率の低い発展途上国で新たな変異株が登場したという現実だ。今回警戒されているアフリカ南部10ヵ国のワクチン接種完了率は、Our World in Dataによると、最高でレソトの26.51%、最低はマラウイの3.06%である。こうした接種率の低い国が存在すれば、そこで感染が激増し、変異株を生むことになる。そうなればワクチン接種と変異株登場のイタチごっこが続くだけだ。日本や先進国は自国の接種率向上やブースター接種推進を急ぐだけでなく、こうした国々へのワクチン供与などで協調支援に動くべき段階に来ているとも言えるだろう。

検索結果 合計:35646件 表示位置:12481 - 12500