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モデルナ製ワクチン第III相最終解析、重症化予防効果は/NEJM

 mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は、2回接種後5ヵ月以上にわたり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症および重症化の予防に有効で、無症候性感染も減少した。米国・Baylor College of MedicineのHana M. El Sahly氏らが、mRNA-1273ワクチンの安全性および有効性を検証した無作為化観察者盲検プラセボ対照第III相試験における盲検期の最終解析結果を報告した。mRNA-1273ワクチンは、この試験の中間解析で有効率94.1%を示し、緊急使用が許可された後、プロトコールが修正され非盲検期が追加されていた。NEJM誌オンライン版2021年9月22日号掲載の報告。約3万人を対象にmRNA-1273ワクチンの有効性と安全性を評価 研究グループは、2020年7月27日~10月23日の期間に、米国の99施設において、SARS-CoV-2感染の既往がなく、SARS-CoV-2に感染するリスクが高いあるいは重症化するリスクが高い18歳以上の参加者を、mRNA-1273(100μg)群またはプラセボ群に1対1の割合に割り付け、28日間隔で2回筋肉注射した。 主要評価項目は、SARS-CoV-2感染歴がない参加者における2回目接種後14日以降でのCOVID-19発症予防とし、有効性の評価は盲検下で独立判定委員会が行った。データカットオフ日は、2021年3月26日であった。 3万415例が登録され、mRNA-1273群1万5,209例、プラセボ群1万5,206例に割り付けられた。約5ヵ月間のCOVID-19予防効果は93.2%、重症化予防効果は98.2% 参加者の96%以上が2回の接種を受け、2.3%がベースラインでSARS-CoV-2感染が確認された。盲検期の追跡期間中央値は5.3ヵ月で、COVID-19は799例確認され、プラセボ群が744例(5.3%)、mRNA-1273群が55例(0.4%)であった。mRNA-1273のCOVID-19発症予防効果は93.2%(95%信頼区間[CI]:91.0~94.8)、発症頻度はmRNA-1273群が9.6例/1,000人年(95%CI:7.2~12.5)、プラセボ群が136.6例/1,000人年(95%CI:127.0~146.8)であった。 重症COVID-19の予防効果は98.2%(95%CI:92.8~99.6)で、重症例はmRNA-1273群で2例、プラセボ群で106例であった。接種後14日以降の無症候性感染例はmRNA-1273群214例、プラセボ群498例で、無症候性感染予防効果は63.0%(95%CI:56.6~68.5)であった。mRNA-1273の有効性は、人種/民族、年齢、併存疾患等にかかわらず一貫していた。安全性に関する懸念は認められなかった。

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急性低酸素性呼吸不全、超低容量換気は転帰を改善せず/JAMA

 急性低酸素性呼吸不全(AHRF)患者において、従来の低容量人工換気(low-tidal-volume mechanical ventilation)と比較して、体外式二酸化炭素除去装置(ECCO2R)を用いた超低容量人工換気は、90日死亡率を改善しないことが、英国・クイーンズ大学ベルファストのJames J. McNamee氏らによる多施設共同無作為化非盲検実用的臨床試験「REST試験」で示された。機械的人工換気を必要とするAHRFにおいて、従来の低容量換気よりも1回換気量をさらに減少することで、転帰が改善する可能性が考えられていた。JAMA誌2021年9月21日号掲載の報告。1回換気量≦3mL/kgと6mL/kgを比較 研究グループらは、2016年5月~2019年12月の期間に、英国の集中治療部門51施設において、中等度~重度のAHRFで人工換気を受けている患者412例を登録し(予定症例数は1,120例)、少なくとも48時間のECCO2Rを用いて1回換気量を段階的に減少し超低容量(≦3mL/kg予測体重)とする群(ECCO2R群)(202例)、または従来の低容量換気(6mL/kg予測体重)を行う標準治療群(210例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は無作為化後90日の全死因死亡。事前に規定された副次評価項目は28日時点の人工呼吸器離脱期間および有害事象等であった。 本試験は、予定された中間解析に基づき、独立データモニタリング/倫理委員会が無益性および実現性を理由に試験の中止を勧告したことから、2020年2月11日に試験が中止された(追跡調査は2020年3月11日に終了)。90日死亡率は41.5% vs.39.5% 無作為化された412例(平均年齢59歳、女性143例[35%])のうち、405例(98%)が試験を完遂した。 90日死亡率は、ECCO2R群41.5%、標準治療群39.5%であった(リスク比:1.05[95%信頼区間[CI]:0.83~1.33]、群間差:2.0%[95%CI:-7.6%~11.5%]、p=0.68)。人工呼吸器離脱期間は、ECCO2R群のほうが標準治療群より有意に短かった(平均7.1日[95%CI:5.9~8.3]vs.9.2日[7.9~10.4]、平均群間差:-2.1[95%CI:-3.8~-0.3]、p=0.02)。 重篤な有害事象は、ECCO2R群で62例(31%)、標準治療群で18例(9%)報告され、頭蓋内出血が9例(4.5%)vs.0例(0%)、その他の部位の出血が6例(3.0%)vs.1例(0.5%)などであった。また、ECCO2Rに関連した重篤な有害事象は、21例に22件認められた。

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安静時の島皮質活性によるうつ病と双極性障害の鑑別~メタ解析

 うつ病エピソードが認められる双極性障害とうつ病の両疾患は、鑑別診断および治療選択において問題となることがある。双極性障害では、躁病エピソードよりもうつ病エピソードが頻繁に認められ、とくに診断時にはうつ病エピソードが主であることが診断を難しくする要因であり、やはり唯一信頼できる鑑別マーカーは躁病歴を把握することであると考えられる。安静時fMRIは、非侵襲性でタスクが少なく、忍容性が高い方法であり、自発的な神経活動から得られる診断マーカーを検出できる可能性がある。双極性障害とうつ病の鑑別に焦点を当てたこれまでの安静時fMRIの研究では、サンプル検出力が低く、サンプルの不均一性や分析方法の多様化により、一貫した結果が得られていない。チェコ・カレル大学のMartin Pastrnak氏らは、賦活尤度推定(activation likelihood estimation)メタ解析を用いて、双極性障害とうつ病の安静時活動の違いについて調査を行った。Scientific Reports誌2021年8月20日号の報告。 2000年1月~2020年8月に公表された、うつ病患者とうつ病エピソードの双極性障害患者を比較した全脳安静時fMRI研究を、各種データベース(PubMed、Web of Science、Scopus、Google Scholar)より検索した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者234例、うつ病患者296例を含む10件の研究が分析に含まれた。・メタ解析によると、双極性障害患者と比較し、うつ病患者では左島皮質と隣接領域での活動増加が認められた。 著者らは「島皮質は、安静時の神経活動パターンと関連しており、双極性障害とうつ病を鑑別するバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆された」としている。

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重症化リスクのある外来COVID-19に対し吸入ステロイドであるブデソニドが症状回復期間を3日短縮(解説:田中希宇人氏、山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではエビデンスの乏しかった2020年初頭からサイトカインストームによる影響がいわれていたことや、COVID-19の重症例のCT所見では気管支拡張を伴うびまん性すりガラス陰影、いわゆるDAD(diffuse alveolar damage)パターンを呈していたことから実臨床ではステロイドによる加療を行っていた。2020年7月に英国から報告された大規模多施設ランダム化オープンラベル試験である『RECOVERY試験』のpreliminary reportが報告されてからCOVID-19の治療として適切にステロイド治療が使用されることとなった。『RECOVERY試験』では、デキサメタゾン6mgを10日間投与した群が標準治療群と比較して試験登録後28日での死亡率を有意に減少(21.6% vs.24.6%)させた(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704. )。とくに人工呼吸管理を要した症例でデキサメタゾン投与群の死亡率が29.0%と、対照群の死亡率40.7%と比較して高い効果を認めた。ただし試験登録時に酸素を必要としなかった群では予後改善効果が認められず、実際の現場では酸素投与が必要な「中等症II」以上のCOVID-19に対して、デキサメタゾン6mgあるいは同力価のステロイド加療を行っている。 また日本感染症学会に「COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」のケースシリーズが報告されたことから、吸入ステロイドであるシクレソニド(商品名:オルベスコ®)がCOVID-19の肺障害に有効である可能性が期待され、COVID-19に対する吸入ステロイドが話題となった。シクレソニドはin vitroで抗ウイルス薬であるロピナビルと同等以上のウイルス増殖防止効果を示していたことからその効果は期待されていたが、前述のケースシリーズを受けて厚生労働科学研究として本邦で行われたCOVID-19に対するシクレソニド吸入の有効性および安全性を検討した多施設共同第II相試験である『RACCO試験』でその効果は否定的という結果だった(国立国際医療研究センター 吸入ステロイド薬シクレソニドのCOVID-19を対象とした特定臨床研究結果速報について. 2020年12月23日)。本試験は90例の肺炎のない軽症COVID-19症例に対して、シクレソニド吸入群41例と対症療法群48例に割り付け肺炎の増悪率を評価した研究であるが、シクレソニド吸入群の肺炎増悪率が39%であり、対症療法群の19%と比較しリスク差0.20、リスク比2.08と有意差をもってシクレソニド吸入群の肺炎増悪率が高かったと結論付けられた。以降、無症状や軽症のCOVID-19に対するシクレソニド吸入は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版』においても推奨されていない。 その他の吸入ステロイド薬としては、本論評でも取り上げるブデソニド吸入薬(商品名:パルミコート®)のCOVID-19に対する有効性が示唆されている。英国のオックスフォードシャーで行われた多施設共同オープンラベル第II相試験『STOIC試験』では、酸素が不要で入院を必要としない軽症COVID-19症例を対象にブデソニド吸入の効果が検証された(Ramakrishnan S, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:763-772. )。本研究ではper-protocol集団およびITT集団におけるCOVID-19による救急受診や入院、自己申告での症状の回復までの日数、解熱薬が必要な日数などが評価された。結果、ブデソニド吸入群が通常治療群と比較して有意差をもってCOVID-19関連受診を低下(per-protocol集団:1% vs.14%、ITT集団:3% vs.15%)、症状の回復までの日数の短縮(7日vs.8日)、解熱剤が必要な日数の割合の減少(27% vs.50%)を認める結果であった。 本論評で取り上げた英国のオックスフォード大学Yu氏らの論文『PRINCIPLE試験』では、65歳以上あるいは併存症のある50歳以上のCOVID-19疑いの非入院症例4,700例を対象に行われた。結果は吸入ステロイドであるブデソニド吸入の14日間の投与で回復までの期間を通常治療群と比較して2.94日短縮した、とのことであった。本研究は英国のプライマリケア施設で実施され、ブデソニド吸入群への割り付けは2020年11月27日~2021日3月31日に行われた。 4,700例の被検者は通常治療群1,988例、通常治療+ブデソニド吸入群1,073例、通常治療+その他の治療群1,639例にランダムに割り付けられた。ブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入し、最大14日間投与するという治療で、喘息でいう高用量の吸入ステロイド用量で行われた。症状回復までの期間推定値は被検者の自己申告が採用されたが、通常治療群14.7日に対してブデソニド吸入群11.8日と2.94日の短縮効果(ハザード比1.21)を認めている。同時に評価された入院や死亡については通常治療群8.8%、ブデソニド吸入群6.8%と2ポイントの低下を認めたが、優越性閾値を満たさない結果であった。 今までの吸入ステロイドの研究では主に明らかな肺炎のない症例や外来で管理できる症例に限った報告がほとんどであり、前述の『STOIC試験』においても酸素化の保たれている症例が対照となっている。本研究ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症を有する症例が対照となっており、高リスク群に対する効果が示されたことは大変期待できる結果であった考えることができる。ただしCOPDに対する吸入ステロイドは新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ、COVID-19の感染予防に効果を示す(Finney L, et al. J Allergy Clin Immunol. 2021;147:510-519. )ことがいわれており、本研究でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。そして吸入薬であり「タービュヘイラー」というデバイスを用いてブデソニドを投与する必要がある特性上、呼吸促拍している症例や人工呼吸管理がなされている症例に対してはこの治療が困難であることは言うまでもない。 また心配事として、重症度の高いCOPD症例に対する吸入ステロイドは肺炎のリスクが高まるという報告がある(Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.、Crim C, et al. Ann Am Thorac Soc. 2015;12:27-34. )ことである。この論評で取り上げたYu氏らの論文では重篤な有害事象としてブデソニド吸入群で肋骨骨折とアルコールによる膵炎によるものの2例が有害事象として報告されており治療薬とはまったく関係ないものとされ、肺炎リスクの上昇は取り上げられていない。ただもともと吸入ステロイド薬であるブデソニドは、気管支喘息や閉塞性換気障害の程度の強いCOPDや増悪を繰り返すCOPDに使用されうる薬剤であり、ステロイドの煩雑な使用は吸入剤とはいえ呼吸器内科医としては一抹の不安は拭うことができない。 心配事の2つ目として吸入薬の適切な使用やアドヒアランスの面が挙げられる。この『PRINCIPLE試験』で用いられているブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入、最大14日間であるが、症状の乏しいCOVID-19症例に、しかも普段吸入薬を使用していない症例に対しての治療であるので実臨床で治療薬が適切に使用できるかは考えるところがある。COVID-19症例や発熱症例に対して対面で時間をかけて吸入指導を行うことは非現実的なので、紙面やデジタルデバイスでの吸入指導を理解できる症例に治療選択肢は限られることになるであろう。 最後に本研究が評価されて吸入ステロイドであるブデソニドがコロナの治療薬として承認されたとしても、その適正使用に関しては慎重に行うべきであると考える。日本感染症学会に前述のシクレソニド吸入のケースシリーズが報告された際も、一部メディアで大々的に紹介され、一時的に本邦でもCOVID-19の症例や発熱症例に幅広く処方された期間がある。その期間に薬局からシクレソニドがなくなり、以前から喘息の治療で使用していた患者に処方ができないケースが散見されたことは、多くの呼吸器内科医が実臨床で困惑されたはずである。COVID-19の治療選択肢として検討されることは重要であるが、本来吸入ステロイドを処方すべき気管支喘息や増悪を繰り返すCOPD症例に薬剤が行き渡らないことは絶対に避けなければいけない。

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iPhone 13 を買っちまった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(394)

三百九十四の段 iPhone 13 を買っちまった!あれは2015年3月のこと。初めてスマホを買いました、携帯電話ショップの店員さんに言われるままに。それが iPhone 6。性能的には全く問題なし。ところが、だんだんバッテリーが弱ってきて年中コンセントを探している自分に気付きました。そして、最初にバッテリーを入れ替えたのが2018年2月。約3年間もったことになります。2021年9月になって、再びコンセント探しの日々が訪れました。なんだかネットのつながりも悪くなり、アプリの動作も遅い気がします。再度、バッテリーを入れ替えるか、それとも思い切って新しい iPhone を買うか?いろいろ迷った挙句、新しいものを買うことにしました。あまりサイズが大きいのは、シャツやジャケットのポケットに入りません。なので、iPhone 6 とほぼ同じサイズの iPhone 13 mini というものにしました。ネット経由で申し込んで、郵送されてきたのが9月24日。なんと、iPhone 13 シリーズの発売日でした。私自身は、初日だとか最新だとかにこだわる人間ではありませんが、期せずして最初に入手したうちの1人になってしまったのです。で、実際に使ってみた感想を述べます。まず旧機種から新機種へのデータ移行はさほど難しくはありません。ただ、パスワードとか、2段階認証だとかが面倒なだけです。あと、表面に貼ったシールに気泡が入ってしまいました。やり直すのも面倒なので、そのまま使っています。次にサイズです。 iPhone 6 とほぼ同じサイズなので違和感がありません。少し分厚く、手に持つとズシッと来ます。測ってみると20gほど重いです。当然ながらバッテリーの減りは遅い。散々使っても残り80%とかなので、充電は1日1回、寝ている間だけで十分な気がします。また、5Gについては驚くほど速いという感じではありません。しかし、ほとんどのYouTubeの動画をタイムラグなしに高画質で見ることができます。ということは、やはり速いということでしょうか。ちなみに、ネット速度計測をやってみると、自宅のネット環境では下りが99Mbs、上りが9Mbsで、大阪市内の5Gではそれぞれ49Mbsと23Mbsでした。あと、下端中央にあったホームボタンがなくなり、その分、画面が全体に拡がりました。メカニカルな部分があると故障の元になるので、これはいい改良ですね。またイヤホンジャックもありません。なので、イヤホンを使いたいときは Bluetooth を利用しています。充電については iPhone 6 と同じ lightning です。ヨーロッパではおそらく安全性の理由から lightning を使用しなくなるということですが、私自身あと数年は使うことになりそうです。カメラ機能に関しては詳しくなくて申し訳ないのですが、とくに問題もなく、機嫌よく使っています。結局、私にとって iPhone 6 と iPhone 13 mini の違いは、新機種のほうがバッテリーが長持ちしネット速度が向上した、ということになります。画期的なものを感じるわけではありませんが、これまで感じていたフラストレーションがほとんどなくなったので買って良かった、という印象です。iPhone 13 の購入を考えている読者がおられれば参考にしてみてください。最後に1句機種変えて ちょっとは減った ストレスが

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SGLT2阻害薬は主役か?それとも脇役か?【令和時代の糖尿病診療】第2回

第2回 SGLT2阻害薬は主役か?それとも脇役か?前回のGLP-1受容体作動薬に続き、今回はSGLT2阻害薬について、実話と私見に基づき述べていく。この薬剤もまた、生誕7年とまだまだ若い経口糖尿病治療薬である。発売当初は「尿に糖を捨てるだけの単純な薬」と認識され、糖尿病専門医の間でもあまり評価はされず、期待もされていない薬剤だったと記憶している。1つ、この薬剤があまり浸透していなかったためか、当時の面白いエピソードがあるので紹介させていただく。SGLT2阻害薬を服用中の患者さんで、会社の健康診断を受けた際、当然のことながら尿糖4+という結果が出た。本人はこの薬剤を飲んでいることを医師に告げたが、「“血糖コントロール不良”と言われた」と私に笑顔で伝えてくれた。さらに、本薬剤については私どもの施設でも、1型糖尿病への適応追加に関して治験を行ったが、専門医がいる病棟でも、ケトアシドーシスを恐れて参加しない施設が多く見られたという話があったくらいである。現在は経口薬として、α-GI薬に続いてSGLT2阻害薬の一部が1型糖尿病に適応追加を取得し、予想以上にいい効果が発揮されている。それどころか、昨年末に心不全に対する適応も加わり、さらには今年8月に透析予防の観点から現在大きな問題となっている慢性腎臓病(以下、CKDと略す)の適応まで追加になった。まさに、マルチな効能を兼ね備えた薬剤で、合併症を見据えた治療が可能になり、狭義の血糖降下薬を超えたとも言えるかもしれない。いろいろと話題の尽きない薬剤であるが、今回の話を進める中で、さらにいくつか述べていこうと思う。重要な3つのポイント:適応患者の選択、使い分け、心不全に対する効果ある日、恩師からの電話でSGLT2阻害薬について質問があった。内容は3点。(1)どのような患者がいい適応か?(2)多くの種類(国内承認は6成分)があるが、使い分けはどのようにしているのか?(3)循環器の先生が心不全に効果があると言っているがどのようなものか? といったもの。これらの質問に対し、答えた内容を順に紹介する。(1)どのような患者がいい適応か?これを語るには、まず分類・作用機序から簡単に確認する必要がある。SGLT2阻害薬は、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中でインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用としては腎臓でのブドウ糖再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進である。そして特徴として、単剤では低血糖を起こしにくく、体重減少効果があり(なお食欲増進に注意、詳しくは後述)、主な副作用として、性器・尿路感染症、脱水、皮疹、ケトーシスが知られている。使用上の注意として、「1型糖尿病患者において、一部製剤はインスリンと併用可能」「eGFR30未満の重度腎機能障害の患者では、血糖降下作用は期待できない」と記載され、さらには、主なエビデンスとして「心・腎の保護効果」「心不全の抑制効果」が示されている。上記からおのずと見えてくるいい適応症例は、「低血糖を起こしたくない肥満(とくに内臓肥満、いわゆるメタボ)で、尿路感染症がなく、腎機能が比較的保たれ脱水を引き起こしにくい患者」すなわち、(食事時間の不規則な)メタボ型の若年~中高年糖尿病患者ということになる。なお、それ以外の患者さんには使用できないのか? というと、そういうわけでもない。が、絶対に使用してはいけないのは、寝たきりの高齢者で水分もあまり摂れず、食事量も少ないインスリン分泌の落ち込んだ血糖コントロール不良の患者である。同様に、下痢や嘔吐で食事が摂れないシックデイや、脱水のときに服薬継続した場合は危険なため、処方する際はあらかじめ、休薬する条件をしっかり伝えておく必要がある。なぜならば、正常血糖ケトアシドーシスを起こすリスクがあるからである。これは、SGLT2阻害薬が上市されてからクローズアップされた医学用語であり、日本糖尿病協会からも「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」として出されている。また、本薬剤は、膵臓からのグルカゴン分泌を促進し、腎臓からの3-hydroxybutyrateとアセトアセテートの分泌を減少させることによりケトーシスのリスクを増大させるともいわれている2)。とくに経験年数の長い医師は、血糖値100mg/dL台でケトアシドーシスが起こるなんて今まで考えたこともない病態であろう。馴染みが薄いかもしれないが、現実にあちらこちらで起こっていて、決して頻度の低い珍しい病態ではないことを理解していただきたい。そして、内科以外の先生方にもぜひ覚えておいてほしい。また、たとえいい適応症例であったとしても、使用する際に重々注意してほしいことは、決して“痩せる薬”であることを前面に押し出し過ぎないことである。図1:エネルギー摂取量を減少させたときの体重の変化(理論計算結果)画像を拡大する薬の効果があっても、生活改善なくして体重は減らない。また、食事制限をしたとしても、現体重に合わせて目標を強化していかなくては、上記グラフのように1年あまりで下げ止まってしまうと考えられる。しかし、患者さんは、自分に都合のいいように考えるため、「(薬で痩せるなら)これでいくらでも食べられる」と勘違いして過食に走り、体重が落ちるどころかさらに増えてしまい、血糖コントロールが悪化する事態も起こりうる。そうなってしまうと、この薬剤に期待する効果が十分に得られないだけでなく、中止後のさらなる体重増加、血糖コントロール悪化につながる恐れまである。処方時には、食欲増進作用を併せ持つことに対する注意をぜひ伝えていただきたい。(2)薬の使い分けはどのようにしているのか?(class effectはあるのか?)この質問の答えとしては、SGLT1/2の受容体選択性や作用時間などで差異をつけ、いろいろな議論もあると思うが、私見として大差はないと考えている。副作用として、皮疹や下痢の頻度には若干の差があるが…。その中で、半減期と尿量に関して興味深い報告を1つ紹介する。入院中の2型糖尿病患者36例を対象に、トホグリフロジン20mg(商品名:アプルウェイ、デベルザ)を朝1回追加投与することで、日中の尿量は増加するものの、夜間の尿量増加はわずかにとどまり、夜間就寝中のQOLを損なうことは少ないことが示唆された3)。トホグリフロジンはSGLT2阻害薬のなかでは半減期が5.4時間と最も短く、健康成人に対する朝1回単回投与試験でも、夜間の尿糖排泄は少ないことが示されている4)。このような結果から、日中に比し、夜間の尿量増加が少なかったことは、トホグリフロジンの半減期が短いことによると推察される。夜間の尿意で眠れないといった患者さんには本剤の選択がいいかもしれない。表1:SGLT2阻害薬の作用持続時間画像を拡大する(3)心不全に対する効果ここに関しては私の出る幕ではないが、驚くべきことに昨年11月にダパグリフロジンが慢性心不全の標準治療に対する効能・効果の追加承認を取得した。この承認は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)を対象とした第III相DAPA-HF試験5)の良好な結果に基づいている。表2:DAPA-HF試験の主要評価項目(複合アウトカム)心不全悪化イベント発生(入院または心不全による緊急来院)までの期間または心血管死画像を拡大するさらには、糖尿病患者に多いといわれている左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)に対するエンパグリフロジンの有効性を検討した、EMPEROR-Preserved試験において、主要評価項目(心血管死亡または心不全による入院の初回イベント)の発生リスクは、エンパグリフロジン投与群で有意に抑制されたという。以上のことから、SGLT2阻害薬はこれからさらに、循環器内科の先生方にも注目されると思われる。SGLT2阻害薬は主役か? それとも脇役か?ここまで述べたように、SGLT2阻害薬は血糖降下作用を持つ糖尿病治療薬としてのみならず、心不全・CKDの治療薬としても認められたことは記憶に新しい。いずれの病態も糖尿病の重大な合併症であり、第1回(前回)の図3「2型糖尿病における血糖降下薬:総括的アプローチ(ADA2021)6)」でも提示ししたごとく、動脈硬化性心血管疾患やCKDの合併または高リスクの場合は、メトホルミンとは独立して検討すると記載されており、まさに主役になれそうな勢いのある薬剤である。しかし、わが国において高齢者糖尿病が急増している中で、今回示したとおり適正な症例を選ぶ能力も身に着けていただく必要があり、決して万能薬ではないことを最後に付け加えたい。私個人の意見として、この薬剤の立ち位置は“名脇役”ということにさせていただこう。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)A Pfutzner, et al. Endocrine. 2017;56:212-216.3)大工原 裕之. 診療と新薬. 2017;54:25-28.「SGLT2阻害薬投与前後の血糖ならびに尿量変化について」4)Hashimoto Y, et al. BMC Endocr Disord. 2020;20:98.5)John J V McMurray, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.6)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S111-S124.

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第77回 想定の範囲外!? 「人流増加でも感染者減少」で問われる専門家の説明責任

人流増加にかかわらず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数が一気に減少したことについて、感染者増加のシミュレーションを描いていた専門家は納得のいく分析ができていない。このことは、専門家への信頼を揺るがすだけでなく、感染症対策に関しては人流抑制を前提にできないことも示している。数理モデルでは予測できなかった行動変容9月16日に開かれた厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーホードで、新規感染者数の減少要因の可能性として(1)連休・夏休み・長雨の影響などで外出が減少した(2)感染者急増・医療逼迫などの報道によるメディア効果で行動変容が起きた(3)ワクチン接種が現役世代を含めて進んだ―ことが要因として挙げられた。数理モデルでCOVID-19の流行を分析している西浦 博氏(京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻教授)は、あるテレビ番組で「デルタ株の流行で他国の状況を見ていると、人出がこれだけある中で減らすのは、もう無理かもしれないと本気で思っていた」と述べた上で、「医療が大変な状況であることなど、リスクを皆さんが認識した。データに基づく分析は未完成だが、これが相当大きかったと考えている」と人々の行動変容の影響を強調した。西浦氏は、8月の東京の新規感染者数について、1日1万人を超え、8月末には3万人を上回ると予測していたが、実際は8月中旬の約5,800人をピークに下降している。9月になって新学期が始まり、連休もあったが、9月27日現在の東京の新規感染者数は154人にまで減少している。西浦氏ら専門家に対して、元大阪府知事で弁護士の橋下 徹氏は、別のテレビ番組の中で、「予想が外れたなら、なぜ外れたのか言ってもらえないと信用できない。彼らの計算はあくまで机上論だと感じる。この人たちの予測が当たる確率がどのくらいの程度か。100%正しいと思って、危ない、危ないと言っていたけれど、その感覚はやめないといけない」と批判した。複製のエラー増加でウイルス自体が自滅、という説もまた、西浦氏がCOVID-19拡大防止策として、「人との接触8割減」を国に提言し「8割おじさん」として知られるだけに、橋下氏は新規感染者数の減少について「ウイルスが自然に減少することもあるのではないか。人流抑制の一本槍ではいけない」と述べた。ウイルスの自然減少に関しては、ドイツの生物物理学者でノーベル化学賞受賞者の故マンフレート・アイゲン氏が1971年に発表した「エラーカタストロフの限界」という考え方が今、改めて注目されている。ウイルスが増殖する際にコピーミスが起き、変異株が出現する。中には増殖の速いタイプのウイルスが生まれ、急速に感染が拡大。しかし、増殖が速ければコピーミスも増える。一定の閾値を超えると、ウイルスの生存に必要な遺伝子まで壊してしまい、ウイルスが自壊するという考え方だ。この考え方に基づくと、新型コロナウイルスのコピーミスにより7月以降に急速に感染拡大したが、8月中旬にコピーミスが「エラーカタストロフの限界」を超えたため、ウイルスの自壊が始まり、感染が急速に減少したのではないか、ということになる。あくまで仮説の1つだが、検証してみる価値はあるのではないか。反省から生まれる「リスク評価」「リスク管理」の軌道修正西浦氏の予測には過激なものもあるだけに、『週刊新潮』では「『8割“狼”おじさん』は怖がらせるのがお仕事」という見出しの記事まで掲載された。数値的データ中心の予測には、人々の行動変容を変数にすることは難しいかもしれないが、予測が外れたことを説明しない理由にはならないはずだ。そもそも専門家は、どうリスクを評価し、それをどう政治家や国民に伝えるべきか。専門家は、未知のリスクに対して科学的に最悪のケースを含めた選択肢を示すのが責務だ。政治から独立した姿勢が国民の信頼を高めるだろう。一方、専門家のリスク評価をどう政策に活かすかというリスク管理は、政治家の責務だ。専門家も政治家も、言いっぱなし、やりっぱなしではなく、説明責任の義務を負うべきだ。それがメディアを通した発信であればなおさらである。自身の言動に真摯に向き合った結果分析や反省によって、より正しいリスク評価やリスク管理への軌道修正が可能となるだろう。

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脳卒中治療ガイドラインが6年ぶりに改訂、ポイントは?

 今年7月、『脳卒中治療ガイドライン2021』が発刊された。2015年の前版(2017年、2019年に追補発行)から6年ぶりの全面改訂ということで、表紙デザインから一新。脳卒中治療ガイドライン2021では追補の内容に加え、関連学会による各指針など最新の推奨が全面的に取り入れられている。そこで、脳卒中ガイドライン委員会(2021)の板橋 亮氏(岩手医科大学内科学講座脳神経内科・老年科分野 教授)に、近年目覚ましい変化を遂げる脳梗塞急性期の治療を中心として、主に内科領域の脳卒中治療ガイドライン2021の変更点について話をうかがった。脳卒中治療ガイドライン2021の変更点にエビデンスレベルの追加 まず脳卒中治療ガイドライン2021の1番大きな変更点としては、追補2019までは推奨文にエビデンスレベルはついておらず、文献のエビデンスを踏まえた推奨度のみが記載されていたが、2021年版では推奨文に推奨度(ABCDE)とエビデンス総体レベル(高中低)の両方が記載された。すべての引用文献に、エビデンスレベル(1~5)が示されている。 さらに、脳卒中治療ガイドライン2021では今回初めてクリニカルクエスチョン(CQ)方式が一部に採用され、重要な臨床課題をピックアップしている。利便性を考慮し、あえてCQ方式と従来の推奨文方式の両方にて記載した内容もある。 また、脳卒中治療ガイドライン2021の全般的な構成の変更点として、前版までリハビリテーション関連の内容はすべて後半のページにまとめられていたが、今回から急性期に関してのリハビリテーションは前半ページ(目次I「脳卒中全般」)に記載された。脳卒中治療ガイドライン2021脳梗塞急性期の変更点 脳卒中治療ガイドライン2021の具体的な内容に関しては、たとえば目次II「脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)」項の冒頭に、CQ「脳梗塞軽症例でもrt-PA(アルテプラーゼ)は投与して良いか?」「狭窄度が軽度の症候性頸動脈狭窄患者に対して頸動脈内膜剥離術(CEA)は推奨されるか?」が追加された。 また、脳卒中治療ガイドライン2021では、脳梗塞急性期における抗血小板療法の推奨として、DAPT(抗血小板薬2剤併用療法)の推奨度が見直され、発症早期の軽症非心原性脳梗塞患者の亜急性期までの治療法として、推奨度BからA(エビデンスレベル高)に引き上げられた(なお、高リスクTIAの急性期に限定した同療法は、DAPTの効果の大きさと出血リスク上昇を総合的に勘案し、推奨度Bで据え置きとなっている)。これに伴い、従来経静脈投与で用いられていた抗凝固薬アルガトロバン、抗血小板薬オザグレルNaは、推奨度BからCに引き下げられている。 さらに、脳梗塞急性期の抗凝固療法における直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)についての推奨、脳梗塞慢性期の塞栓源不明の脳塞栓症における抗血栓療法についての推奨などが、脳卒中治療ガイドライン2021には新たに追加された。 全体的には、『静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版』『経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第4版』などの推奨に準じた内容で、目新しさには欠けるかもしれないが、それが脳卒中治療ガイドライン2021として1つにまとめられたことは大きな意義を持つだろう。 詳細は割愛するが、塞栓源となる心疾患に対するインターベンションについての記載も充実した。たとえば、脳梗塞慢性期の奇異性脳塞栓症(卵円孔開存を合併した塞栓源不明の脳塞栓症を含む)については、『潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き』に準じた推奨が、出血の危険性が高い非弁膜症性心房細動患者については、『左心耳閉鎖システムに関する適正使用指針』に準じた推奨が追記されている。脳卒中治療ガイドライン2021にテネクテプラーゼを記載 機械的血栓回収療法は、急性期治療の中でもとくに注目されており、軽症例や単純CTで広範な早期虚血が見られる例に関して、国際的な無作為化試験が行なわれている。本治療に関するエビデンスはここ数年で変わる可能性が高い。 また、海外ではCTPT系P2Y12拮抗薬チカグレロルとアスピリンによるDAPTの臨床試験が行われ,米国ではすでに脳卒中領域の承認を得ているが、わが国で導入される見通しは不明である。このように、推奨文にするほどではない、もしくはわが国では保険適用がない場合でも、臨床医に知っておいてほしい情報は、脳卒中治療ガイドライン2021の解説文の中にコラム形式で記載されている。 推奨文としては書いていないが、脳卒中治療ガイドライン2021の脳梗塞急性期の経静脈的線溶療法の解説文には、海外の一部で使われ始めているテネクテプラーゼについても記載がある。おそらく、無作為化試験の結果が揃えば、今後アルテプラーゼに代わって使われるようになるだろう。国内での臨床試験も行われる予定だが、わが国で導入できる目途は立っていないため、こちらも今後の展開に注目されたい。脳卒中治療ガイドライン2021は読みやすさを重視した構成 驚くことに、脳卒中治療ガイドライン2021は、前版から解説文の文字数を半分近くに減らしたという。現場で参照することを第一に、各項目はできる限り2ページ以内に収めるなど、読みやすさを重視した工夫が凝らされている。板橋氏は、「推奨文だけ読めば最低限の重要事項が確認できるように作られてはいるが、推奨度そしてエビデンスの根拠となる解説文の内容も是非確認していただきたく、できるだけ読んでもらえるように短くまとめた」と語った。また、手元に置いておきたくなるような脳卒中治療ガイドライン2021のスタイリッシュなデザインは、委員会事務局の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)が選んだこだわりの青色が採用されたという。脳卒中治療ガイドライン2021の電子版は11月に発売予定だ。『脳卒中治療ガイドライン2021』・発行日 2021年7月15日・編集 一般社団法人日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会・定価 8,800円(税込)・体裁 A4判、320ページ・発行 株式会社協和企画

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ペムブロリズマブ+化学療法、子宮頸がん1次治療の生存改善(KEYNOTE-826)/ESMO2021

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)において、ペムブロリズマブ+化学療法±ベバシズマブの子宮頸がん1次治療による生存の改善が報告された。 KEYNOTE-826試験は、全身化学療法未実施の再発または転移を有する子宮頸がん患者617例を対象に、ペムブロリズマブ+化学療法±ベバシズマブとプラセボ+化学療法±ベバシズマブを比較した無作為化第III相試験。 主要評価項目である全生存期間(OS)は、全対象患者でペムブロリズマブ群24.4ヵ月に対し、プラセボ群16.5ヵ月(ハザード比[HR] :0.67、95%信頼区間[CI]: 0.54~0.84)、もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)も、ペムブロリズマブ群10.4ヵ月に対し、プラセボ群8.2ヵ月と、ペムブロリズマブの併用により有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.53〜0.79、p<0.001)。 ペムブロリズマブ群のPFSおよびOSの改善は、PD-L1陽性レベル(CPS)を問わず示されている。 ペムブロリズマブの併用の毒性は、既報と一致しており、新たな安全性シグナルは見られなかった。 発表者のフランス・Universite ClaudeBernard Lyon IのIsabelle Ray-Coquard氏は、「ペムブロリズマブと化学療法の併用による1次治療での生存期間を延長に関する高レベルのエビデンスを提供した。これらのデータは臨床を変えるであろう」と述べる。 この発表は、New England Journal of Medicine誌に同時掲載された。

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ADHD児の睡眠問題と母親のメンタルヘルスとの関連

 小児の注意欠如多動症(ADHD)では、一般の小児と比較し、睡眠障害が多く認められる。また、ADHD児の両親は、メンタルヘルスに問題を抱える割合が高いことが知られている。この関連は横断研究では報告されているものの、縦断研究は実施されていなかった。オーストラリア・ディーキン大学のChristina A. Martin氏らは、ADHD児の睡眠障害と母親のメンタルヘルス問題(全体的なメンタルヘルス、うつ病、不安、ストレス)との潜在的な双方向の関連を12ヵ月間調査した。Journal of Attention Disorders誌2021年9月号の報告。 5~13歳のADHD児379例の母親に対し、子供の睡眠状態(子供の睡眠習慣質問票)および自分自身のメンタルヘルス(うつ病不安ストレススケール)について、12ヵ月間で3度(ベースライン、6ヵ月、12ヵ月)の調査を行った。子供の年齢、性別、ADHD症状の重症度、ADHD治療薬の使用、併存疾患(自閉スペクトラム症、内在化障害、外在化障害)、母親の年齢、社会経済的状況でコントロールし、自己回帰クロスラグパネル分析を用いてデータ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・子供の睡眠障害と母親のメンタルヘルス問題は、12ヵ月間にわたり非常に安定して認められた。・長期的な関連は明らかであり、6ヵ月時の子供の睡眠障害は、12ヵ月時の母親の全体的なメンタルヘルスおよび不安の予測因子であった。・しかし、6ヵ月時の子供の睡眠障害は、12ヵ月時の母親のうつ病やストレスを予測しなかった。・母親のメンタルヘルス問題が、調査期間を通じて子供の睡眠障害を予測することは、ほとんどなかった。 著者らは「ADHD児の睡眠問題が、その後の母親のメンタルヘルス問題に影響を及ぼすことが示唆された。そのため、子供の睡眠を改善するための介入は、時間とともに母親のメンタルヘルスの改善につながる可能性があると考えられる。そして、睡眠障害を有する子供を持つ母親では、潜在的なメンタルヘルス問題を抱えている可能性があることを認識する必要がある」としている。

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デルゴシチニブ軟膏、小児ADへの有効性と安全性を確認

 昨年、世界で初めてわが国で承認された、アトピー性皮膚炎(AD)に対する外用JAK阻害薬デルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏)について、東京慈恵会医科大学名誉教授の中川 秀己氏らが小児(2~15歳)に対する有効性と安全性を評価した56週の第III相無作為化二重盲検基剤対照試験の結果が、Journal of the American Academy of Dermatology誌2021年10月号で報告された。デルゴシチニブ軟膏塗布患者で重篤有害事象の報告なし 56週にわたり塗布群は有意な改善を示し、忍容性は良好であったという。上市されたデルゴシチニブ0.5%軟膏の適応対象は、当初16歳以上の成人であったが、本年5月に小児への適応拡大が承認されている。 小児ADに対するデルゴシチニブ軟膏の有効性と安全性を評価する試験は、2つのパート構成で行われた。パート1は、4週間の二重盲検無作為化試験で、2~15歳の日本人AD患者を1対1の割合で無作為にデルゴシチニブ0.25%軟膏群または基剤群に割り付け、追跡評価した。パート2は、52週間の非盲検延長試験で、適格患者(パート1試験完了者と、パート1試験中にAD増悪のため早期にパート2試験に組み込まれた患者)はデルゴシチニブ0.25%軟膏またはデルゴシチニブ0.5%軟膏を投与された。 デルゴシチニブ軟膏の小児ADに対する有効性と安全性を評価する試験の主な結果は以下のとおり。・パート1試験では、137例が無作為化を受けた(平均年齢8.3歳、男子51.1%、平均罹患期間6.0年)。試験を完了したのは、デルゴシチニブ0.25%軟膏群が62/69例(89.9%)、基剤群が48/68例(70.6%)であり、パート2試験への早期組み込み被験者はそれぞれ7例(10.1%)、19例(27.9%)であった。・パート2試験の被験者は計135例で、118例(87.4%)が試験を完了した。・パート1試験の開始時点で、約半数の患者(54.7%)が中等症AD(IGAスコア3)、21.9%が重症AD(IGAスコア4)であった。・パート1試験終了時の主要有効性エンドポイント(修正Eczema Area and Severity Index[mEASI]スコアのベースラインからの最小二乗平均変化率)は、デルゴシチニブ0.25%軟膏群(-39.3%)が基剤群(+10.9%)よりも有意に低下した(p<0.001)。・パート2試験でも、56週間にわたってmEASI、IGAおよびかゆみのスコアの改善が認められた。・パート1および2試験を通して、デルゴシチニブ軟膏塗布患者115/134例(85.8%)で有害事象が報告されたが、大半はデルゴシチニブ軟膏による治療とは無関係とみられ、関連していたのは13例(9.7%)ですべて軽度であった。重篤有害事象の報告例はなかった。・本試験の対象患者は日本人のみであり、パート2試験で対照群が設定されておらず、レスキュー治療が許容されていた点において結果は限定的である。

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ニボルマブ、小児ホジキンリンパ腫に対する承認取得/BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、小児の再発又は難治性古典的ホジキンリンパ腫に対する承認を取得したことを発表した。 ホジキンリンパ腫はリンパ細網系から生じた細胞の限局性又は播種性の悪性腫瘍であり、国内の年間発症患者数は約1,720人、小児における年間発症患者数は約70人と推定されている。小児ホジキンリンパ腫の一次治療には化学療法等が行われ、再発または治療抵抗性の場合にはさらなる化学療法や抗CD30モノクローナル抗体であるブレンツキシマブ ベドチン等による治療が行われているものの予後は厳しく、ニボルマブは新たな選択肢の一つとして期待される。 今回の承認取得は、国立がん研究センター中央病院で実施された、小児期およびAYA(思春期・若年成人)世代の患者を対象としたニボルマブの有用性を見ることを目的とした医師主導治験(PENGUIN試験)の結果に基づいたもの。本試験は、小児・AYA世代の難治悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫患者のうち、標準的な治療(2種類以上の化学療法後)抵抗性の患者を対象とし、主要評価項目は用量制限毒性相当の有害事象の発生割合、副次評価項目は全生存期間、無増悪生存期間、奏効率等だった。 試験は2017年から開始され、26例の患者(平均年齢12.4歳、11歳以下10/26[38.5%]、12~17歳13/26[50.0%]、18歳以上3/26[11.5%]が組み入れられた。参加者のがん種は横紋筋肉腫が4/26(15.4%)、ユーイング肉腫が3/26(11.5%)、神経芽腫および神経節芽腫が2/26(7.7%)、古典的ホジキンリンパ腫、肺の神経内分泌がんなどが1名ずつだった。結果として、古典的ホジキンリンパ腫の1例において完全奏効が得られ、成人患者での承認時用量と同様の3mg/kgの体重換算用量で確認した結果、有害事象と薬物動態について成人において観察されたものと大きな違いがないことが確認された。 その他のがん種に対するニボルマブの有効性など、本試験の詳細な結果は10月21日から開催されるSIOP 2021(国際小児腫瘍学会)で発表予定となっている。

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早期パーキンソン病、イノシンによる尿酸値上昇に効果なし/JAMA

 早期パーキンソン病(PD)と診断された患者において、イノシンはプラセボと比較して臨床的疾患進行率に差は認められず、早期PDに対する治療法としてイノシンの使用を支持しない。米国・マサチューセッツ総合病院神経変性疾患研究所のMichael A. Schwarzschild氏らParkinson Study Group SURE-PD3 Investigatorsが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SURE-PD3試験」の結果を報告した。尿酸値の上昇は、臨床的には痛風などの結晶性疾患、心血管障害、代謝障害と関連している一方で、前向き疫学研究では血清尿酸値の上昇がPDのリスク低下要因となることや、早期PDでは血清尿酸値高値が進行を遅らせることなどが報告され、尿酸塩の代謝前駆体であるイノシンによる疾患修飾治療の可能性が追求されていた。JAMA誌2021年9月14日号掲載の報告。血清尿酸値5.8mg/dL未満のPD患者を対象に、イノシン群とプラセボ群を比較 研究グループは、2016年8月~2017年12月に、米国の58施設において、ドパミン作動薬をまだ必要としないPD患者で、線条体ドパミントランスポーターが減少しており、血清尿酸値5.8mg/dL未満の患者298例を、イノシン群とプラセボ群に1:1の割合に無作為化した。投与期間は最長2年間で、投与量は1日最大3g(500mgカプセル2個を1日3回)とし、血清尿酸値が7.1~8.0mg/dLとなるよう盲検下で漸増した。なお、腎結石のリスク低下のため、2018年1月からは1日最大投与量は2g/日とした。 主要評価項目は、運動障害疾患学会パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)のパートI~IIIの合計スコア(範囲:0~236、スコアが高いほど障害が大きい)の年間変化で、臨床的に意味のある最小差は6.3ポイントとした。副次評価項目は、血清尿酸値、有害事象、およびMDS-UPDRSの各パート、QOL、認知機能、線条体ドパミントランスポーター結合能などの有効性である。 なお、本試験は、予定されていた中間解析において、事前に規定された無益性基準を満たしたため、早期終了となった。有効性に差はなし、安全性ではイノシン群で腎結石が多い 無作為化された298例中273例(92%)(女性49%、平均年齢63歳)が試験を完了した。MDS-UPDRSスコアの変化量は、イノシン群が11.1ポイント/年(95%信頼区間[CI]:9.7~12.6)、プラセボ群が9.9ポイント/年(95%CI:8.4~11.3)で、両群の差は1.26ポイント/年(95%CI:-0.59~3.11、p=0.18)であり、臨床的疾患進行率に有意差は認められなかった。 イノシン群では血清尿酸値が持続的に2.03mg/dL上昇した(ベースラインの4.6mg/dLから44%上昇)のに対し、プラセボ群では0.01mg/dLの上昇であった(群間差:2.02mg/dL、95%CI:1.85~2.19mg/dL、p<0.001)。ドパミントランスポーター結合能の低下を含む有効性の副次評価項目については、有意差は認められなかった。 安全性については、イノシン群ではプラセボ群と比較して重篤な有害事象の発現頻度は低かったが(100患者年当たり7.4 vs.13.1)、腎結石の発生が多く認められた(100患者年当たり7.0 vs.1.4)。

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学校のコロナ対策、毎日迅速抗原検査の効果は隔離と同等/Lancet

 学校において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)接触者に対する毎日の迅速抗原検査は、自己隔離と比較してCOVID-19感染制御において非劣性であり、両アプローチによる生徒および学校職員の症候性SARS-CoV-2感染率は同程度であることが、英国・オックスフォード大学のBernadette C. Young氏らが実施した非盲検クラスター無作為化比較試験で示された。イングランドでは、学校でのCOVID-19接触者は自宅での自己隔離を求められ、重要な教育機会が失われている。そこで著者らは、接触者には毎日検査を実施することで学校への出席を可能にしつつ、自己隔離と同様の感染抑制効果が得られるかを検討した。著者は、「学校内の接触者の感染率は低く、学校での曝露後の自宅隔離に代わり、接触者の毎日の検査を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年9月14日号掲載の報告。学校単位で、接触者10日間自己隔離群vs.学校で毎日迅速抗原検査群を検討 研究グループは、イングランドの中等学校(11~16歳)および継続教育カレッジ(16~18歳)を、学校単位で、COVID-19接触者を10日間自己隔離する群(対照群)と、SARS-CoV-2抗原迅速検査(Orient Gene製)で陰性の接触者は学校に留まり7日間毎日任意で同検査を行う群(介入群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、学校の種類と規模、第6学年(16~18歳)の有無、寮生の有無、無料の学校給食を受ける生徒の割合によって層別化された。 主要評価項目は、生徒ならびに学校職員における、COVID-19に関連した学校欠席およびPCRで確認された症候性COVID-19である。準ポアソン回帰法を用いたintention-to-treat解析により、地域の感染率で調整した学校内感染を推定した(非劣性マージン<50%相対的増加)。また、順守者のみの平均因果効果(CACE)も推定した。PCRで確認された症候性感染ならびにCOVID-19関連欠席の発生頻度に差はなし 2021年3月18日~5月4日の間に、研究に同意し参加を決定した201校が無作為に割り付けられた(対照群99校、介入群102校)。試験期間は最長10週間で、2021年4月19日~5月10日に開始し、事前に指定された中止日(2021年6月27日)まで継続した。201校中、生徒および学校職員が参加したのは対照群76校、介入群86校であったが、参加を辞退した学校のほとんどは国のデータを追加することで主要評価項目の分析に含めることができた。介入群では、接触者5,763例中2,432例(42.4%)が毎日の検査に参加した。 PCRで確認された症候性感染は、対照群では感染リスクのある778万2,537日(59.1/10万人/週)において657件、介入群では同837万9,749日(61.8/10万人/週)において740件であり、補正後発生率比(aIRR)はintention-to-treat解析で0.96(95%信頼区間[CI]:0.75~1.22、p=0.72)、CACE解析で0.86(95%CI:0.55~1.34)であった。 生徒および学校職員のCOVID-19関連欠席発生頻度は、対照群では365万9,017人学校日当たり5万9,422人(1.62%)、介入群では384万5,208人学校日当たり5万1,541人(1.34%)であり、aIRRはintention-to-treat解析で0.80(95%CI:0.54~1.19、p=0.27)、CACE解析で0.61(95%CI:0.30~1.23)であった。

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ribociclib+レトロゾールが乳がん1次治療のOSを改善(MONALEESA-2)/ESMO2021

 HR陽性HER2陰性の転移を有する乳がん(mHRBC)に対するCDK4/6阻害薬ribociclibとレトロゾールの併用療法による1次治療は、レトロゾール単独療法より全生存期間(OS)を延長することが示された。国際共同の大規模臨床試験であるMONALEESA-2試験の最終解析で、米国The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのGabriel N. Hortobagyi氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 本試験は二重盲検無作為化第III相試験であり、ribociclibは本邦では未発売である。・対象:閉経後のmHRBCで、転移・再発に対する治療歴のない症例 668例(ホルモン剤による術前または術後療法は許容)・試験群:ribociclib+レトロゾール群 334例(Ribo群)・対照群:プラセボ+レトロゾール群 334例(Pla群)ribociclibは 600mg/日を3週間投与1週間休薬。レトロゾールは2.5mg/日を連日投与。・評価項目[主要評価項目]主治医評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、QOL 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のPFSについては、すでにRibo群の有意な延長が報告されている(中央値25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.568、p=9.63×10-8)。・今回のOS最終解析のデータカットオフ時(2021年6月)の観察期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)であり、この時点ではRibo群の30例(9.0%)、Pla群の17例(5.1%)が投薬継続中であった。・OS中央値はRibo群63.9ヵ月、Pla群51.4ヵ月で、HRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93)、p=0.004と有意にRibo群で良好であった。・4年OS率はRibo群が60.9%、Pla群が55.2%、5年OS率はRibo群が52.3%、Pla群が43.9%、6年OS率はRibo群が44.2%、Pla群が32.0%と、期間が延びるほど両群の差は大きくなっていた。・試験投薬終了後に後治療を受けていたのはRibo群が87.8%、Pla群が90.2%で、何らかのCDK4/6阻害薬の投与を受けていたのは、Ribo群21.7%(パルボシクリブが16.1%)、Pla群34.4%(パルボシクリブが31.5%)であった。・探索的解析である化学療法施行までの期間中央値は、Ribo群50.6ヵ月、Pla群38.9ヵ月で、HRは0.74(95%CI:0.61~0.91)であった。・安全性に関する新たな徴候は見られなかった。Grade3/4の主な有害事象は好中球減少症(Ribo群63.8%、Pla群1.2%)、肝機能障害(14.4%、4.8%)、QT延長(4.5%、2.1%)などであった。 Hortobagyi氏は最後に、「Ribo群のOS中央値は5年を超え、さらにPla群に比し臨床的にも意義のある12ヵ月のOS延長を示した本試験の結果と、これまでのribocilcibの試験(MONALEESA-3、MONALEESA-7)の結果から、ribociclibとホルモン剤の併用療法は、治療ラインを問わずmHRBC治療の重要な治療選択肢となり得る」と述べた。

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「ザイボックス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第71回

第71回 「ザイボックス」の名称の由来は?販売名ザイボックス注射液600mgザイボックス錠600mg一般名(和名[命名法])リネゾリド(JAN)効能又は効果○〈適応菌種〉本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)〈適応症〉敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎○〈適応菌種〉本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム〈適応症〉各種感染症用法及び用量<ザイボックス注射液 600mg>通常、成人及び12歳以上の小児にはリネゾリドとして1日1200mgを2回に分け、1回600mgを12時間ごとに、それぞれ30分~2時間かけて点滴静注する。通常、12歳未満の小児にはリネゾリドとして1回10mg/kgを8時間ごとに、それぞれ30分~2時間かけて点滴静注する。なお、1回投与量として600mgを超えないこと。<ザイボックス錠 600mg>通常、成人及び12歳以上の小児にはリネゾリドとして1日1200mgを2回に分け、1回600mgを12時間ごとに経口投与する。通常、12歳未満の小児にはリネゾリドとして1回10mg/kgを8時間ごとに経口投与する。なお、1回投与量として600mgを超えないこと。警告内容とその理由警告本剤の耐性菌の発現を防ぐため、「5.効能又は効果に関連する注意」、「8.重要な基本的注意」 の項を熟読の上、適正使用に努めること。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年9月29日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年6月改訂(第17版)医薬品インタビューフォーム「ザイボックス®注射液600mg・ザイボックス®錠600mg」2)Pfizer for Professionals:製品情報

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コロナ治療用:ステロイド各種の換算表/患者の不安軽減のためのスライド

新型コロナウイルス感染症では、酸素が必要な中等症II以上の患者さんに対し、ステロイド投与が必要になるケースもあります。その際、デキサメタゾンの供給不足や個々の体調に応じて代替処方が予想される場合も。そんな時に「換算表」があればオーダー時の悩みが解決されるのではないでしょうか。 今回の換算表は日本鋼管病院の薬剤部医薬品情報室の方々、田中 希宇人氏(日本鋼管病院 呼吸器内科医長)にご協力いただき、一部改変して公開しています。 また 、自宅療養を余儀なくされる患者さんのステロイドに対する不安軽減には「患者向けスライド」をお役立てください。医師向け患者さん向け参考日本感染症学会:COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版

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第77回 コロナ受け入れで病院は潰れない!大阪・松本病院倒産の原因は巨額の診療報酬不正請求か?

負債約52億円で民事再生法の適用を申請こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのレギュラーシーズンの試合も残り少なくなってきました。9月27日は朝5時に起きて、NHKBSでロサンジェルス・エンジェルスの大谷 翔平投手の登板試合を観戦しました。7回1失点、10奪三振という好投でしたが、今回もチームの打撃が振るわず、10勝目をあげることはできませんでした。あと、残り6試合(9月28日現在)です。10勝目の登板機会がやってくるかどうかと、アメリカン・リーグのホームラン王争いがとても気になります。それにしてもエンジェルス、打てなさ過ぎです。さて、8月26日、大阪市福島区で松本病院を経営する医療法人友愛会が、負債約52億円を抱え大阪地裁に民事再生法の適用を申請、弁済禁止の保全処分と監督命令を受けました。このニュース、「コロナ受け入れ病院が倒産」といったセンセーショナルな切り口で取り上げるメディアがいくつかありました。コロナを受け入れている病院は、「第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)」でも書いたように、非常に手厚い補助金が入っています。「コロナ受け入れが理由で倒産はあり得ない」と思ったのですが、その後、興味深い続報が出たので、今回はそれについて書きます。不正請求分の返還が求められると事業継続困難に医療法人友愛会・松本病院は阪神電鉄野田駅前に建つ199床の病院です。内科、外科、循環器内科、脳神経外科、整形外科、形成外科など外科系に強く、救急患者の24時間受け入れを行っています。病床構成は一般病棟93床、回復期リハビリテーション病棟49床、地域包括ケア病棟44床、ハイケアユニット13床で、民間の中規模病院に多い典型的なケアミックス型病院と言えます。今年1月からは新型コロナの軽症と中等症の患者も受け入れていました。倒産報道から2週間ほど経った9月10日、毎日新聞が、民事再生法の適用を申請した医療法人友愛会が診療報酬を不正に請求していた疑いのあることが判明したと報道しました。債権者への説明資料に基づく情報として、保険医療機関の指定取り消しの可能性があるとともに、不正請求分の返還が求められた場合、事業継続が困難になると判断したことが民事再生法の適用を申請した理由であると同紙は報じています。不正請求が疑われているのは、前理事長時代の2014年2月~2017年4月の約3年間。入院基本料や回復期リハビリテーション病棟入院料について、施設の基準を満たしていないにも関わらず、満たしたとして不正請求を続けていたとのことです。通常、医療機関の不正請求の調査は、地方厚生局(大阪だと近畿厚生局)の指導監査担当部署の指導から始まります。悪質な場合は本格的な監査となり、改善命令、処分決定と続きます。返還命令が下されるのは処分決定後ですから、医療法人友愛会はその決定を待っている段階とみられます。返還金額が決まる前に民事再生法の適用を申請したということは、相当悪質かつ巨額な不正請求だったことが予想されます。8月の倒産報道時は、理事長名で倒産の理由を「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債など経営の稚拙さに起因する」というコメントを出していましたが、実際のところは過大な設備投資が経営悪化を招き、不正請求に走ったのかもしれません。コロナで焼け太りの病院、日赤は黒字1,000億円松本病院の民事再生法の適用申請はコロナ患者受け入れとは全く無関係(というよりむしろ、収入増で倒産までの時間が長くなった可能性もあります)で、「コロナ受け入れで倒産はあり得ない」という見立ては正しかったわけです。実際、2020年度の病院の経営状況は、コロナを受け入れた病院については、以前も書いたように桁違いに“ウハウハ”だったようです。いくつかの病院団体の調査や決算などを見ても、コロナに伴う患者数の減少で通常診療の収支は悪化したものの、コロナに対応する医療機関に対する補助金がプラスに働き、最終的な損益としては黒字を計上しているところがほとんどです。例えば、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3病院団体による病院経営状況調査では、20年度はコロナ関連の支援金を加えた利益率は、コロナ受け入れ実績のある病院では2.4ポイント増でした。また、日本赤十字社(91病院中89病院でコロナ対応)の20年度医療施設特別会計の決算は最終的に1,090億円の黒字を計上しました。うち約1,000億円はコロナ関連補助金などとのことです。東京都病院経営本部がまとめた2020年度の都立8病院の決算も、経常収支が102億円の黒字(19年度は42億円の赤字)でした。都立病院も外来患者や入院患者の医業収益は落ち込んだものの、コロナ病床確保に対する国からの約300億円の補助金によって黒字となったとのことです。1,000億円とか、100億円とか、とにかく桁違いの数字に唖然とします。日赤と都立病院は公的・公立の病院で民間病院とは事情が違う部分もあると思いますが、大雑把に「コロナを受け入れた急性期病院は1病院あたり10億円前後の黒字」と言えそうです。「ポスト・コロナ倒産」が起きるかも一方で、コロナに対応していない病院の経営状況は芳しくありません。前述の3病院団体の病院経営状況調査では、コロナ受け入れ実績のない病院の利益率は、コロナ関連の支援金を加えても0.3ポイント減となっていました。そんな中、コロナ未対応の医療機関にとってショックなニュースが、先週末飛び込んで来ました。田村 憲久厚生労働相は9月24日、新型コロナウイルス感染対策を促す目的で、全医療機関を対象としてきた診療報酬の特例加算を9月末で廃止する方針を表明したのです。代わりに実費分を補助する仕組みを設ける予定だそうです。これまでは、防護服着用や職員研修の経費として、初診・再診は1回50円、入院は1日1,000円、調剤は1回40円などを加算。この特例加算はコロナ患者を受け入れていない医療機関も対象となっており、「なぜコロナ未対応の医療機関も」という強い批判がありました。この加算の創設が決まった2020年12月当時、厚労省と財務省は「21年10月以降は延長しないことを基本想定としつつ、感染状況や地域医療の実態を踏まえ、年度前半の措置を単純延長することを含め、必要に応じ、柔軟に対応する」という玉虫色の内容で合意していました。ギリギリまで決まらなかった特例加算の廃止ですが、結局はコロナの第5波の収束も踏まえ、財務省の意向を反映する形で廃止が決まったわけです。コロナとは無関係の医療機関にとっては“お年玉”のような加算の廃止は、相当な打撃でしょう。世の中が徐々にポスト・コロナに動き始めています。医療機関も、そろそろコロナで変わった人々の受療行動や、マスク習慣化による感染症減少といったさまざまな要素も勘案しつつ新しい医業経営の仕方を考えないと、それこそ「ポスト・コロナ倒産」が起きてしまうかもしれません。

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広範囲の疼痛と認知症や脳卒中リスク~フラミンガム研究

 慢性疼痛は、認知機能低下の初期に認められる指標である可能性があるといわれているが、広範囲の疼痛と認知機能低下や脳卒中リスクとの関連をシステマティックに調査した研究は、これまであまりなかった。中国・重慶医科大学付属第一医院のKanran Wang氏らは、慢性疼痛の一般的なサブタイプである広範囲の疼痛とその後の認知症、アルツハイマー型認知症および脳卒中との関連を調査した。Regional Anesthesia and Pain Medicine誌オンライン版2021年8月16日号の報告。 米国コミュニティベースのフラミンガム心臓研究のデータを用いてレトロスペクティブコホート研究を実施した。疼痛の状態は、1990~94年の単一時点で評価した。広範囲の疼痛は、フラミンガム心臓研究の疼痛ホムンクルスに基づき決定した。ベースライン時に認知症でなかった人を対象に、中央値で10年間(四分位範囲:6~13年)フォローアップを行った。広範囲の疼痛と認知症、アルツハイマー型認知症、脳卒中との関連を調査するため、比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・広範囲の疼痛が認められた人は347人(14.1%)、認められなかった人は2,117人(85.9%)であった。・すべての原因による認知症が認められた188人中、128人はアルツハイマー型認知症であった。・フォローアップ期間中に脳卒中を発症した人は、139人であった。・年齢や性別を含む多変量で調整後、広範囲の疼痛は以下のリスク増加との関連が認められた。 ●認知症リスク43%増(HR:1.43、95%CI:1.06~1.92) ●アルツハイマー型認知症リスク47%増(HR:1.47、95%CI:1.13~2.20) ●脳卒中リスク29%増(HR:1.29、95%CI:1.08~2.54)・65歳以上のサブグループにおいても、同様の結果が確認された。 著者らは「広範囲の疼痛は、すべての原因による認知症、アルツハイマー型認知症、脳卒中の発症リスク増加との関連が認められた」としている。

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反復性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 片頭痛の約90%を占める反復性片頭痛に対する予防療法は、現在の利用可能な治療では十分でない。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、慢性および反復性片頭痛に対して効果および忍容性が確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の反復性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌2021年7月号の報告。 反復性片頭痛患者を対象にフレマネズマブのランダム化プラセボ対照試験を実施した。対象患者は、フレマネズマブ月1回投与群(初回、4週目、8週目に225mg)、フレマネズマブ四半期ごと投与群(初回675mg、4週目プラセボ、8週目プラセボ)、プラセボ群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、初回投与後12週間での1ヵ月当たりの頭痛日数のベースラインからの平均変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化された患者357例のうち、安全性の分析には356例、全体の分析には354例を含めた。・各群における12週間での1ヵ月当たりの頭痛日数の最小二乗平均変化は以下のとおりであり、フレマネズマブ群は、プラセボ群と比較し、頭痛日数の有意な減少が確認された(各々対プラセボ、p<0.0001)。 ●フレマネズマブ月1回投与群(121例):-4.0±0.4日 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群(117例):-4.0±0.4日 ●プラセボ群(116例):-1.0±0.4日・フレマネズマブ群における12週間での1ヵ月当たりの平均頭痛日数が50%以上減少した患者(治療反応患者)の割合は、プラセボ群よりも高かった。また、その他の副次的評価項目でも、同様であった(各々対プラセボ、p<0.001)。【治療反応患者の割合】 ●フレマネズマブ月1回投与群:41.3% ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:45.3% ●プラセボ群:11.2%・フレマネズマブ治療による注射部位の反応は、より頻繁に認められた。 ●フレマネズマブ月1回投与群:25.6% ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:29.7% ●プラセボ群:21.4% 著者らは「フレマネズマブは、日本人と韓国人の反復性片頭痛患者の予防的治療において、これまで報告された結果と同様の有効性が認められ、安全性に対する新たな懸念は認められなかった」としている。

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