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がん患者、直近の化学免疫療法で新型コロナの転帰が悪化

 がん患者は、新型コロナ感染時の重症化リスクが高いとされるが、その要因は化学療法や免疫療法によるもので、こうした治療を受けていない患者では、死亡・重症化リスクは非がん患者と同等だったという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMariana Chavez-MacGregor氏らによる研究結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2021年10月28日号に掲載された。 研究者らは、非識別化された電子カルテデータを使い、2020年1月1日~12月31日までにCOVID-19と診断された50万人以上の成人を分析した。最終的に507例のCOVID-19患者を(1)非がん患者群、(2)最近治療を受けていないがん患者(非治療群)、(3)COVID-19診断前3ヵ月以内に放射線療法または全身療法のがん治療を受けたがん患者(治療群)に割り付けた。 主要評価項目はCOVID-19診断後の死亡、人工呼吸装着、ICU入室、診断後30日以内の入院とした。有害事象の未調整の発生率と調整後のオッズ比(OR)を群別に示した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者50万7,307例(平均[SD]年齢48.4[18.4]歳、女性28万1,165例[55.4%])が確認され、うち49万3,020例(97.2%)は非がん患者だった。・がん患者1万4,287例(2.8%)のうち、9,991例(69.9%)は非治療群、4,296例(30.1%)は治療群だった。・調整前の解析では、治療の有無にかかわらず、がん患者は非がん患者に比べ有害な転帰をとる可能性が高かった(死亡率:非がん患者群:1.6%、非治療群:5.0%、治療群:7.8%)が、調整後、非治療群は非がん患者群と同等以上の転帰となった(死亡率OR:0.93[95%CI:0.84~1.02]、人工呼吸器装着:0.61[95%CI:0.54~0.68])。・一方、治療群は、死亡(1.74、95%CI:1.54~1.96)、ICU入室(1.69、95%CI:1.54~1.87)、入院(1.19、95%CI:1.11~1.27)のリスクが有意に高かった。・転移のない固形がん患者と比較して、転移のある固形がんと造血器腫瘍患者は転帰が悪かった(死亡率:2.36[95%CI:1.96~2.84]、人工呼吸器装着:0.87[95%CI:0.70~1.08])。・直近の化学療法および免疫療法も転帰の悪化と関連していた(化学療法を受けた患者の死亡率:1.84[95%CI:1.51~2.26])。 著者らは、直近のがん治療が有害な転帰のリスクと関連していることが明らかになり、この知見はリスクの層別化と効率的な医療資源の利用に役立つとしてる。

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中和抗体薬の発症抑制での投与時の注意など、コロナ薬物治療の考え方10版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、11月4日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第10版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回9版以降の新しい知見などの追加のほか、中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブに関しての追記が行われた。確認しておきたいカシリビマブ/イムデビマブの適用要件 主な改訂点は下記の通りである。抗ウイルス薬 レムデシビル 入手方法につき2021年10月18日より一般流通が開始されたこと。中和抗体薬 カシリビマブ/イムデビマブ【海外での臨床報告の追加】96時間以内に感染者と家庭内接触のあった被験者1,505例を対象としたランダム化比較試験で、カシリビマブ/イムデビマブの単回皮下投与により、発症に至った被験者の割合は、本剤群11/753例、プラセボ群59/752例であり、プラセボと比較し、発症のリスクが81.4%有意に減少。【発症抑制での投与時の注意点を追加】1)SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては下記のすべてに該当する者とされている。(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者 このうち、(1)の「濃厚接触者」(例:同居家族、共同生活者に加え、高齢者施設や医療機関勤務者など)および(3)の「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者」(例:ハイリスク患者のうち、免疫抑制状態[悪性腫瘍治療中、骨髄または臓器移植後、原発性免疫不全症候群など]にある患者など)は、中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。 なお、SARS-CoV-2の既感染やワクチン接種等により自己の抗体を有すると考えられる患者では中和抗体薬の必要性、有効性が低くなる可能性があると考えられるが、現時点ではその臨床的意義は必ずしも明らかではなく、国内で使用可能な抗体検査薬は承認されていないため、今後の知見が待たれる。 本稿の詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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小児市中肺炎、退院後の経口アモキシシリン投与量と期間/JAMA

 救急部門または入院病棟から退院(48時間以内)した市中肺炎の小児患者において、外来での経口アモキシシリン投与は、低用量群は高用量群に対して、また3日間群は7日間群に対して、いずれも非劣性であることが示された。英国・ロンドン大学セントジョージ校のJulia A. Bielicki氏らが、患児824例を対象に行った多施設共同2×2要因デザイン非劣性無作為化試験の結果を報告した。なお著者は、「今回の試験結果の解釈については、重症度、治療環境、抗菌薬投与歴、非劣性マージンの受容性について考慮する必要がある」と指摘している。JAMA誌2021年11月2日号掲載の報告。英国28ヵ所、アイルランド1ヵ所で小児824例を対象に試験 研究グループは、英国28ヵ所、アイルランド1ヵ所の医療機関を通じ、市中肺炎の臨床診断を受け、救急部門・入院病棟からの退院後に外来でアモキシシリン治療を受けた月齢6ヵ月以上の小児824例を対象に試験を行った。 被験児を、アモキシシリン低用量(35~50mg/kg/日、410例)、または高用量(70~90mg/kg/日、404例)投与群と、両群について投与期間を3日間(413例)、7日間(401例)とする群に、それぞれ無作為化した。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内の、呼吸器感染症に対する抗菌薬再投与(非劣性マージン8%)。副次アウトカムは、保護者の9項目の市中肺炎症状の報告に基づく重症度/期間、3項目の抗菌薬関連有害事象、肺炎球菌分離株のコロニー形成における表現型耐性などだった。重症市中肺炎児の再投与発生率も有意差なし 被験児824例が4群のいずれか1群に無作為化され、814例(年齢中央値2.5歳[IQR:1.6~2.7]、男児421例[52%])が少なくとも1回の試験薬投与を受けた。主要アウトカムは789例(97%)で入手できた。 低用量群vs.高用量群の主要アウトカムの発生率は12.6% vs.12.4%(群間差:0.2%[片側95%信頼区間[CI]:-∞~4.0])、3日間投与群vs.7日間投与群の同発生率はともに12.5%だった(0.1%[-∞~3.9])。投与量、投与期間ともに非劣性が示され、投与量と投与期間に有意な交互作用は認められなかった(p=0.63)。 事前に規定した14項目の副次アウトカムのうち、有意差が認められたのは、3日間投与群vs.7日間投与群の咳症状の期間(それぞれ、中央値12日vs.10日、ハザード比[HR]:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.04)と、咳による睡眠障害の期間(中央値4日vs.4日、HR:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.03)だった。 また、サブグループ解析での重症市中肺炎児の主要アウトカム発生率も有意差は示されなかった。低用量群17.3% vs.高用量群13.5%(群間差:3.8%[片側95%CI:-∞~10]、交互作用に関するp=0.18)、3日間投与群16.0% vs.7日間投与群14.8%(1.2%[-∞~7.4]、p=0.73)だった。

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新型コロナのブレークスルー感染リスク、既感染者 vs.非感染者/JAMA

 カタールにおいて、2020年12月21日~2021年9月19日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)接種者におけるブレークスルー感染リスクは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者が非感染者と比べて統計的に有意に低かった。同国・Weill Cornell Medicine-QatarのLaith J.Abu-Raddad氏らが、接種者約153万例について行った適合コホート試験の結果を、JAMA誌オンライン版2021年11月1日号で発表した。「BNT162b2」または「mRNA-1273」接種者を今年9月まで追跡 研究グループは、カタールで2020年12月21日~2021年9月19日にCOVID-19ワクチン「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種を受けた153万1,736例を対象に試験を行い、SARS-CoV-2感染歴の有無によるブレークスルー感染リスクを比較した。 被験者について、ワクチン2回目接種後14日以降、2021年9月19日まで追跡した。 SARS-CoV-2感染の定義は、鼻腔拭い液によるPCR検査で陽性であることとした。累積発生率は、Kaplan-Meier推定法で算出し比較評価した。既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染リスクは0.18~0.35倍 BNT162b2接種群のうち、既感染者(PCR検査で確認されたことがある)は9万9,226例、適合非感染者は29万432例だった(年齢中央値37歳、男性68%)。mRNA-1273接種群は、既感染者5万8,096例、適合非感染者16万9,514例だった(年齢中央値36歳、男性73%)。 BNT162b2接種群で、ワクチン2回目接種後14日以降の感染例は、既感染者では159例(再感染)、非感染者では2,509例だった。mRNA-1273接種群では、それぞれ43例、368例だった。 BNT162b2接種群の感染累積発生率(追跡期間120日)は、既感染者で0.15%(95%信頼区間[CI]:0.12~0.18)、非感染者は0.83%(0.79~0.87)と推定された(既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染に関する補正後ハザード比[HR]:0.18[95%CI:0.15~0.21]、p<0.001)。 同様にmRNA-1273接種群では、既感染者で0.11%(95%CI:0.08~0.15)、非感染者は0.35%(0.32~0.40)だった(同HR:0.35[0.25~0.48]、p<0.001)。 また、既感染者のうち、初回ワクチン接種が感染後6ヵ月以上経過後だった人のほうが6ヵ月未満だった人よりも、ブレークスルー感染リスクが低かった(BNT162b2接種群[補正後HR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02]、mRNA-1273接種群[0.40、0.18~0.91、p=0.03])。 なお著者は、本試験は観察試験デザインのため、2つのワクチン間の感染リスクの直接比較はできなかったとしている。

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医師の生命保険の年間払込額、3割は10万円以下/会員アンケート結果

 10月にCareNet.comにて医師の『生命保険の加入状況に関するアンケート』を実施した結果、9割超の医師が何らかの生命保険に加入し、医師の生命保険加入者の約3割の年間払込額が10万円以下であることが明らかになった。また、重粒子線治療などが支払い対象となる「先進医療1)特約」については医師の生命保険加入者の4割が申し込んでいた。医師の生命保険の年間払込総額5~10万円が17%で最多 生命保険文化センターが行った一般家庭における「2021年度生命保険に関する全国実態調査※(速報版)2)」によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%、そのうち医療保険の加入率は93.6%だった。また、世帯の普通死亡保険金額は平均2,027万円、世帯年間払込保険料は平均37.1万円であることが明らかになった。※一般家庭における生命保険の加入実態および生命保険・生活保障に対する考え方を把握することを目的として、1965(昭和40)年以降3年ごとに実施している調査。 では、本会員医師はどうだろうか。今回は、自由記入を含む全6問のアンケートを実施。Q1「現在加入している生命保険の種類について」では、医師は死亡保険と医療・入院保険にそれぞれ3割が加入しており、意外にもがん保険への加入は1割に留まった。Q3「保険に加入または解約/減額したきっかけ(未加入者は加入しようと思うタイミングを回答)」については、“自分の意思”が最も多く、次いで“結婚や離婚”、“家族に言われて”の順で多かった。Q4「世帯全体の保険料の年間総額」では、医師の生命保険加入者の3割が一般家庭の平均を上回る保険料(個人年金含む額)を支払っていたが、10万円以下も3割だった。そのほか、Q5「どこの保険会社の商品に加入しているか」、Q6「生命保険について、気になることや疑問に感じること(自由記入)」について回答を得た。どの年代でも医師がどのくらいの生命保険の掛け金を支払っているのかなどに疑問を感じていた。<Q6:気になること、疑問に感じることの一例>・同世代の保険料・内容(20代/臨床研修医)・各保険会社のプランのお得な組み合わせについて(30代/脳神経外科)・医院開業時に加入すべき生命保険の情報を知りたい(40代/小児科)・年齢とともにどれくらいの掛金にするか、難しい(50代/産婦人科)・掛け過ぎたことを後悔している(60代/外科/乳腺外科) 保険には生命保険、損害保険、年金保険などさまざまな商品が存在する。医師の場合、患者から保険請求に必要な診断書の記述を求められるなど、“保険”という言葉に慣れ親しんでいる一方で、自身や家族の「保険」をどのくらい意識しているだろうかー。そんな疑問から、医療現場で活躍する医師がどんな保険商品にどのくらいの費用を投じているのかを調査した。そのため、今回は医師の生命保険に絞り込んだ調査であり、学資保険や年金保険、地震保険などに対する認識は明らかではないが、この機会に保険全般を見直してみるのはどうだろうか。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『医師の「生命保険」への加入状況は?』

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「フィアスプ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第77回

第77回 「フィアスプ」の名称の由来は?販売名フィアスプ®注フレックスタッチ®フィアスプ®注ペンフィル®フィアスプ®注100単位/mL一般名(和名[命名法])インスリン アスパルト(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果インスリン療法が適応となる糖尿病用法及び用量画像を拡大する警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.低血糖症状を呈している患者2.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年11月10日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年6月改訂(第2版)医薬品インタビューフォーム「フィアスプ®注フレックスタッチ®・フィアスプ®注ペンフィル®・フィアスプ®注100単位/mL」2)Novo Nordisk Pro:製品情報

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 1

今回のキーワード認知能力非認知能力(社会情動的スキル)自信と自尊心レジリエンス敏感期不登校皆さんは、自分の子どもに英才教育を受けさせたいと思いますか? それは、才能を伸ばすため? お受験のため? じゃあ、できるだけ長い時間やるほうが良いでしょうか? できるだけ小さい時からやるほうが良いのでしょうか? 逆に、そうすることのリスクはないでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「そして父になる」を再び取り上げます。この映画では、子どもの取り違え(新生児取り違え)に巻き込まれた 2組の夫婦の葛藤と自己成長が描かれています。すでに2021年7月号の記事で、親子の絆をテーマとして詳しく解説しました。今回の続編記事では、映画に登場する2組の家族による対照的な子育ての仕方の違いに焦点を当てます。そこから、英才教育によって特に高まるとされる認知能力とそれ以外の非認知能力の違いについて考えます。そして、その能力の違いから、英才教育で親がハマる、ある「罠」を明らかにします。なお、非認知能力は、2015年にOECD(経済協力開発機構)によって、社会情動的スキルという名で提唱されており、昨今注目されています。認知能力とは?野々宮家の父親は野々宮良多で、東京の大企業のエリートサラリーマン。母親はみどりで、専業主婦。そして、子どもは慶多で、6歳の一人息子。野々宮家は、慶多を有名私立小学校に受験させるため、お受験塾とピアノ教室に通わせます。そして、慶多の認知能力は高まります。ここから、その認知能力の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)言われたことを覚えている-記憶力受験での集団の行動観察ではビニールで「生き物作り」の課題が出されますが、慶多は創造的なおばけをつくります。実は、彼は、お受験塾で、似たような課題を繰り返しやっており、「創造的なおばけ」は、採点官に高評価が得られるように仕込まれたものでした。この事実は、映画のノベライズ版で明かされています。対照的に、琉晴は、慶多のようにお受験塾やピアノ教室に通うことはなく、ふざけていたずらばかりをしています。1つ目の認知能力は、言われたことを覚えている、記憶力です。これは、多くの知識や方法を知っていることでもあります。(2)言われた通りにやる-情報処理能力慶多は、家族揃っての面接の時、面接官から「今年の夏には何をしましたか?」と質問されて、「お父さんとキャンプに行って、凧揚げをしました」「(お父さんの凧揚げは)とても上手です」」とそつなく答えます。実は、慶多は父親と一度もキャンプに行ったことはなかったのですが、お受験塾で、聞かれたらそう言うように指導されていたのでした。対照的に、琉晴は、実際に父親と川遊びに行ってはいますが、正直に「お父さんの凧揚げは下手くそ。僕のほうがうまいよ」と言って、面接官から失笑を買いそうです。2つ目の認知能力は、言われた通りにやる、情報処理能力です。これは、質問に対して、望まれる正解を出すことでもあります。(3)言われたことに気を付ける-注意力慶多は、集団での行動観察の時に、あえて人数分用意されていない道具をほかの子と一緒に使い、自分だけで使うことはありません。面接の時は、常に背筋をしっかり伸ばし、はきはきと礼儀正しく質問に答えます。これも、お受験塾で繰り返し訓練されたものであることがノベライズ版で明かされています。対照的に、琉晴は、レストランで食事をするとき、ストローの先を噛んで潰す癖があり、食べこぼしでテーブルを汚しています。何かあると「オーマイガット!」と言う口癖もあります。3つ目の認知能力は、言われたことに気を付ける、注意力です。これは、普段の挨拶、テーブルマナー、落ち着き、立ち振る舞いなどの礼儀作法でもあります。非認知能力とは?斎木家の父親は斎木雄大で、地方(前橋)の町の小さな電気屋の主。母親はゆかりで、町のお弁当屋のパート店員。子どもは、6歳の長男の琉晴をはじめ3人。そして、ゆかりの父親、つまりおじいちゃんが同居しています。琉晴は、2人の妹と弟と一緒に、プールに行ったり家族で川遊びに行き、けんかしながらも仲良く遊び回っています。慶多と琉晴の取り違えが発覚してから、半ば強引に、慶多は斎木家に、琉晴は野々宮家で暮らすようになります。そして、琉晴の非認知能力が発揮されます。ここから、その非認知能力の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)自分で考えて行動する力-自発性琉晴は、ずっと野々宮家で暮らすことが分かると、良多に「なんで? パパちゃうやん? パパちゃうよ」と言います。良多から「なんででも」「そのうち分かるようになる」といくら言われても、「なんで」と食い下がります。そして、その数週間後に、みどりの隙を見て、東京から前橋の斎木家まで一人で新幹線に乗って勝手に帰ってしまうのです。対照的に、慶多は、良多から斎木家でずっと暮らすことは「ミッション」だと言われると、それ以上抵抗しません。斎木家で暮らすようになっても、不安そうにしながらも大人しく従っています。1つ目の非認知能力は、自分で考えて行動する力、自発性です。これは、好奇心や積極性であり、医学用語としては、実行機能やコミットメントとも言い換えられます。疑問を持つ、自己主張をする、やり抜くなど自分の力で問題を解決しようとすることでもあります。一方で、慶多は、言われた通りにやることはできますが、言い返したり、自分で考えて行動する様子は見受けられません。(2)自分を落ち着かせる力-セルフコントロール琉晴は一人で新幹線に乗って斎木家に帰りますが、6歳の子どもがすぐに思い付いてできるものではないでしょう。これを実行に移すためには、それまでみどりに悟られないように平然を装い、機をうかがっていたことが考えられます。また、言うことを聞かなかったことで良多から叱られても、顔をしかめるか無表情で毅然としています。対照的に、慶多は、これまで良多に叱られてすぐに泣いていました。斎木家でも、元気がなくなっていくばかりです。2つ目の非認知能力は、自分を落ち着かせる力、セルフコントロールです。これは、我慢強さであり、医学用語としては、抑制、シフティング(切り替え)とも言い換えられます。一方で、慶多は、一見我慢できているように思われますが、我慢強くはないです。なぜなら、元気がなくなっている点で、無理をしており(過剰適応)、その後に限界(適応障害)が来ることが予測されるからです。(3)心を通わせる力-共感性琉晴は、野々宮家で暮らす初日、良多が作った野々宮家のルールのリストを読まされます。「なんで?」とさんざん突っ込んだ直後に、歯磨き粉で洗面台の鏡にいたずら描きをして、お風呂の中で声を出して遊んでいます。さっそく、「お風呂は静かに一人で入る」というルールを破っただけでなく、それを上回ることをしでかしているのでした。家出から連れ戻されたあとも、おもちゃの拳銃で「バババババ!」とみどりと良多に打つまねをして、「拳銃ごっこ」を急に仕掛けています。対照的に、慶多は、お風呂で雄大からおふざけで口の中のお湯をかけられても、作り笑いを浮かべ戸惑うだけでやり返しません。3つ目の非認知能力は、心を通わせる力、共感性です。これは、仲良くなったりうまく人付き合いをしていくためのユーモアやコミュニケーション能力であり、医学用語としては社交性、向社会性とも言い換えられます。一方で、慶多は、礼儀作法などのコミュニケーションの体裁(形式)はかなり心得ていますが、その中身(内容)はあまり育まれていません。次のページへ >>

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 2

認知能力と非認知能力の違いとは?認知能力とは、主に記憶力、情報処理能力、注意力であることが分かりました。一方、非認知能力とは、主に自発性、セルフコントロール、共感性であることが分かりました。車に例えると、認知能力は、車の備品のそれぞれの細かい性能です。一方、非認知能力は、アクセル(自発性)、ブレーキ(セルフコントロール)、ハンドル(共感性)など運転手がどうしたいかという意思です。それでは、これらの本質的な違いはなんでしょうか? ここから、その違いを大きく3つに分けて考えてみましょう。(1)数値化できるかどうか-測りやすさ慶多が参加したお受験やピアノ演奏会では、合否や優劣をはっきりさせるために、その評価が点数化されたり順位付けされます。一方、慶多と琉晴がそれぞれの新しい家族と一緒に暮らす適応能力については、評価の基準が定まらず、点数化することは難しいです。1つ目の違いは、数値化できるかどうか、つまり測りやすさです。認知能力は、学力(学習能力)、IQ(知能指数)、楽器演奏の技術、工作や絵画の出来栄え、姿勢や立ち振る舞いなどです。つまり、望ましいとされる正解がある点で、点数化できて測りやすいです。一方、非認知能力は、何かを考えたり行動する楽しさや誰かと一緒にいる心地良さを感じる「能力」とも言えます。そこから、不確定な状況(標準化しにくい課題)への適応能力であったり、相手との相互作用から協力関係を築く能力が発揮されます。つまり、正解がなかったり、逆に正解がいくつもあり、必ずしも正解が決まっていない点で、点数化できず測りにくいです。先ほどの車に例えると、車の性能は測りやすいですが、運転手の意思は測りにくいと言えます。なお、お受験では、工作の課題で創造性(自発性)を見たり、集団での行動観察で相手への気配り(セルフコントロールや共感性)を見ており、非認知能力を評価しようとしているように見えます。しかし、すでにお受験対策でその課題のパターンが見抜かれており、望ましいとされる正解を受験生の子どもたちが訓練によって学習できる点で、結果的に非認知能力を評価することは難しいことが分かります。また、子ども同士が仲良くなるためにふざけることも非認知能力としては評価できることですが、面接官が望ましいとしている正解ではない点で、やはり非認知能力を評価することは難しいでしょう。面接でも非認知能力を評価しようとする質問がされていますが、そもそも面接の質問パターンへの模範解答がすでにお受験対策で叩き込まれており、あたかも非認知能力が育まれているように見せかけることができる点で、やはり非認知能力を評価することには限界があるでしょう。なお、測りやすさの視点で、認知能力と非認知能力は、それぞれ自信(自己効力感)と自尊心(特に自己肯定感)に関係が深いと思われます。その訳は、自信は、「自分はできる」という客観的な評価であるのに対して、自尊心は、「自分は大丈夫」という主観的な評価であるからです。つまり、自信は根拠がある(測れる)のに対して、自尊心は根拠がない(測れない)「自信」とも言い換えられます。これらの詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)環境変化に適応できるかどうか-心の折れにくさ慶多は、お受験塾でのたゆまぬ訓練によって、見事志望校に合格しました。一方の琉晴は、いきなりお受験で合格することは難しいでしょう。しかし、その後、慶多と琉晴は、それぞれの新しい家族と一緒に暮らすようになってから、慶多は元気がなくなり、心が折れそうになっています。一方で、琉晴は、何とかうまくやって行こうとしており、心は折れていません。2つ目の違いは、環境変化に適応できるかどうか、つまり心の折れにくさです。認知能力は、環境が変化しない状況(標準化された課題)への処理能力と言い換えられます。逆に言えば、環境が変化する状況への適応能力ではないため、そのストレスへの弱さがあり、心が折れやすいと言えます。一方、非認知能力は、まさに環境が変化する状況への適応能力と言い換えられ、そのストレスへの強さがあり、心が折れにくいと言えます。先ほどの車に例えると、一般道(環境変化が少ない状況)では車の性能が発揮されますが、草原(環境変化が大きい状況)では車の性能は当てにできず、運転手の判断(意思)が重要になってくると言えます。さらに踏み込めば、慶多と同じく、実は良多の非認知能力も高くないことが分かります。良多は、子どもの取り違えが発覚(環境が変化)してから、ストレスを抱え込み、これまでのエリート街道から外れ、みどりと夫婦関係の危機に直面しているのでした。なお、心の折れにくさは、医学用語として、心のしなやかさ(レジリエンス)と言い換えられます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。(3)癖になるかどうか-幼児期での敏感さ慶多は、ピアノの練習について良多から「1日休むと取り戻すのに3日かかる」とたびたびたしなめられています。慶多と同じように、良多もかつてピアノの習い事をしていましたが、小学生でやめてしまうと、その後は大して弾けなくなっていたのでした。お受験の対策も、受験が終わったら、ほとんど忘れているでしょう。一方、琉晴の行動力やふざける癖は、ストローを噛む癖や「オーマイガット!」の口癖と同じように、変わらず続いています。3つ目の違いは、癖になるかどうか、つまり幼児期での敏感さです。認知能力は、いったん身に付いても、やり続けていないとだんだん失われていく、つまりなかなか癖にならない特徴があります。一方、非認知能力は、なかなか失われにくい、つまり癖になる特徴があります。その原因は、敏感さです。特に幼児期においては、認知能力よりも非認知能力に敏感に反応することが分かっています。この時期は、敏感期、臨界期と呼ばれています。先ほどの車に例えると、まずは運転手が運転したいという意思があるからこそ、車の性能があるのです。運転手が運転したいと思わなければ、いくら車の性能があったとしても使われず、すぐに錆びれてしまうと言えます。幼児は、それほど単純であると言えます。実際に、ヘックマン(2000年にノーベル経済学賞を受賞)の研究において、経済的な貧困層(幼児教育などの子育てが適切に行われていないネグレクトの可能性が高い家庭)の幼児を対象に、幼児教育プログラムを受けた子どもと受けていない子どもが成人になった時の両者を比較した結果、受けた子どもグループは、収入、学歴が高く、犯罪率が低いことが判明しました。その一方で、IQ(知能指数)には明らかな差が出なかったことも判明しました。これは、このプログラムによって、認知能力ではなく、非認知能力が高められたことが考えられてます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 3

英才教育で親がハマる「罠」とは?認知能力と非認知能力の本質的な違いは、測りやすさ、心の折れにくさ、幼児期での敏感さであることが分かりました。この違いから、良多の関わり方を通して、英才教育のリスクを大きく3つ挙げてみましょう。そして、英才教育で親がハマる「罠」を明らかにしましょう。(1)測りやすい認知能力ばかりにとらわれる良多は、みどりに「今の時代、優し過ぎるのは損だからな」と説き、慶多にしつけを厳しくして、ピアノの練習を毎日必ずさせています。しかし、ピアノ演奏会で、慶多はうまく弾けず、うまく弾いているほかの子に「上手だね」と感心して言います。そんな慶多に、良多は「悔しくないのか? もっと上手に弾きたいと思わなければ続けてても意味ないぞ」と叱るのです。1つ目のリスクは、測りやすい認知能力ばかりにとらわれることです。良多は、社会は厳しいと言っていますが、それは彼の考え方が投影されています。つまり、彼自身が自分に厳しく、そして他人にも厳しいのでした。その厳しさとは、勝ち負けの結果や体裁を重んじることです。それが、彼が説く「意味」なのでした。だからこそ、良多は慶多を有名私立小学校に入学させ、ピアノ演奏会で悔しがることを強いるのです。すると、子どもも、その親の価値観がすり込まれて(内在化)、結果を出すことや体裁を気にするようになるでしょう。そして、自分も相手もそれでしか評価できなくなってしまいます。たとえば、聞かれてもいないのに自分の学歴や家柄をひけらかすことです。また、学歴、キャリア、家柄、見た目などで相手を値踏みすることです。さらには、すでにお受験対策で学習してしまったように嘘をついて体裁を取り繕ったり、結果を出すために無理をする生き方(過剰適応)をしてしまうリスクもあるでしょう。その測りやすさから、権威を振りかざし、権威にすがる生き方をしてしまうこともあるでしょう。(2)非認知能力が育まれずに心が折れやすくなる慶多は、自宅でのピアノの練習ではかなりうまく弾けていたのに、演奏会ではありえないミスを連発します。彼は、本番(いつもと違う状況)に弱いのでした。2つ目のリスクは、非認知能力が育まれずに心が折れやすくなることです。ピアノの演奏会における非認知能力とは、本番であっても心を落ち着かせて(セルフコントロール)、ピアノの演奏そのものを楽しみ(自発性)、その気持ちを一緒にいる人たちと共有することです(共感性)。慶多は、父親(良多)の顔色ばかりを伺い、自分の演奏をあまり楽しめていません。もちろん、斎木家でお試し外泊を繰り返している最中であることも、心を落ち着かせられない要因として考えられます。認知能力にとらわれるということは、裏を返せば、非認知能力を疎かにすること、つまり価値がない、無駄だと思ってしまうことです。たとえば、琉晴が野々宮家で暮らすようになってから、置かれているピアノの鍵盤をメチャクチャに(大胆に?)弾くシーンがあります。見かねた良多は、「うるさいぞ。静かにしろ」「やめろって言ってんだ!」と怒鳴ってしまいます。しかし、よくよく考えれば、琉晴なりに音感や演奏のヒントを探しているかもしれません。かつてバンド活動までしていた良多の血を引いていると考えれば、琉晴には音楽の素質があるかもしれません。良多は、やめさせるのではなく、音量を下げてそのまま好きにさせてあげたり、そのあとに琉晴に演奏の仕方の基本を教えてあげれば、演奏の楽しさ(自発性)を育むこともできたでしょう。もちろん、認知能力も非認知能力も両方高めていくことが理想です。しかし、子どもの時間とエネルギーは限られています。その時間とエネルギーを、認知能力のために使ってしまえば、その分、非認知能力のために使えなくなってしまいます。これは、トレードオフ(一得一失)の関係です。これが極端になれば、認知能力は、やればやるほど結果が出る、早くやればやるほど結果が出ると思い込みます。こうして、英才教育をやらせ過ぎたり、早くにやらせ過ぎてしまいます。そのために、「あれだめ!」「これして!」「早くして!」としつけが厳しくなってしまいます。すると、子どもが自由に遊んだり自分で考える時間(自発性)や友達と一緒に遊ぶ時間(共感性)がますます減るでしょう。また、友達とけんかをすることは、本来セルフコントロールを育むために必要です。しかし、その機会も、不要なこととされてしまい、先回りによって奪われてしまうでしょう。なお、世の中では、このような厳しいしつけは、セルフコントロールを育むために必要であると考えられています。しかし、これは大きな誤解です。実際の研究では、親が子どもの行動をコントロールし過ぎると、逆に子どもは自分で自分の行動をコントロールしなくなることが分かっています。その訳は、しつけが一方的な命令の場合、恐怖刺激によって言われた通りに行動する条件反射は形成されても、思考停止によって自分で自分の行動を決めることができなくなるからです。そして、受け身の指示待ち人間になってしまうのです。(3)その後に認知能力が伸び悩むピアノ演奏会で、良多の説教を慶多の横で聞いていたみどりは、「みんながあなたみたいに頑張れるわけじゃないわよね」と言います。良多は「頑張るのが悪いみたいな言い方だな」と言い返します。すると、みどりは「頑張りたくても頑張れない人もいるってこと」「慶多はきっと私に似たのよ(私がそうだったから)」と語気を荒くして言います。みどりは、練習を頑張っている慶多の姿をそばでずっと見てきており、自分と同じ、ある危うさをほのめかしています。3つ目のリスクは、その後に認知能力が伸び悩むことです。幼児期の認知能力は、すでにご説明した通り、その癖のなりにくさから、いったん高まっても、やり続けていないと、だんだん失われていきます。つまり、非認知能力が充分に育まれていなければ、その後にやり続けたいという気持ち(自発性)が芽生えず、結局その認知能力が維持できなくなってしまうということです。つまり、学ぶとは、「ただ学ぶ」(認知能力)のではなく、「学ぶ楽しさ」(非認知能力)も一緒に学ぶ必要があるということです。たとえば、知能指数(IQ)が分かりやすいです。英才教育によって、知能検査の類似問題を解く特訓をより長い時間やれば、そしてより小さい時からやれば、知能指数は確実に上がります。すると、親は喜びます。しかし、それがその後の学力が高くなることに直接結び付くわけではありません。ましてや大人になって仕事や人間関係でうまくやって行く能力とも結び付くわけではありません。よって、その後に子どもの認知能力が伸び悩んだら、親は焦ります。良多のように「頑張りが足りない」と言い出し、ますます本人の自由、つまり非認知能力を高める機会を奪うでしょう。これは、教育虐待と呼ばれます。教育虐待とは、勉強や習いごとなどの教育を子どもに過剰に強いる不適切な関わりです。子ども虐待の1つとして、昨今注目されています。これは、認知能力を重視するあまりに非認知能力が育まれない点でも、子どもの人権への侵害と言えます。非認知能力が育まれない危うさがある点で、先ほどのヘックマンの研究でご紹介した、もともと経済的な貧困層(ネグレクト)の子どもと、逆に認知能力を重視する良多のような富裕層の子どもが共通しているのが興味深いです。つまり、ネグレクトと教育虐待は、それぞれ教育をやらなさ過ぎとやり過ぎであり、一見すると真逆ですが、非認知能力が育まれないリスクがある点では同じであるということです。そして、非認知能力が育まれていない点で、もしも取り違えが発覚せずに野々宮家の英才教育がそのまま続いていたとしたら、慶多は不登校やひきこもりになるリスクが高まります。これが、英才教育で親がハマる「罠」なのです。<< 前のページへ■関連記事クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]

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第83回 医師臨床研修マッチング結果公表、東大マッチ者数105人、フルマッチでも自大学出身者15.2%の意味

病院のチーム編成の基礎、医師臨床研修マッチングこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、MLBのワールドシリーズはアトランタ・ブレーブスの26年振りの優勝で幕を閉じました。ブレーブスの優勝を牽引したのは、エディ・ロザリオ外野手、ホルヘ・ソレア外野手、ジョク・ピダーソン外野手ら、トレード期限である今年7月30日に新規加入した野手たちであったのはなかなか興味深いところです。7月初めの前半終了時点で負け越し(44勝45敗)だったチームが、ワールドシリーズで優勝したのは史上2チーム目だそうです。米国メディアでは、チーム構成の権限を持ちこれらの選手の獲得を行ったアレックス・アンソポロス GM(ゼネラル・マネージャー)の仕事ぶりを称える記事が数多く上がりました。一方、日本では、北海道日本ハムファイターズの新庄 剛志監督の就任会見インタビューが大きな話題となりました。見た目の派手さとは裏腹に、采配などに関する手堅い発言は、ひょっとしたら、と期待を抱かせるものでした。稲葉 篤紀GMとどのような新チームをつくるのか、楽しみです。ということで今回は、病院のチーム編成の基礎(プロ野球ならドラフトでしょうか)とも言える、医師臨床研修マッチングについて書いてみたいと思います。研修先内定8958人、内定率91.7%厚生労働省は10月28日、2021年度の医師臨床研修マッチングの結果を公表しました。医学生などの2022年度の臨床研修先を決める今回のマッチングで、研修先が内定した人数は8,958人(20年度比89人増)でした。マッチングの募集定員は1万904人(同103人減)、希望順位登録者数は9,768人(同142人増)でした。希望順位を登録した研修希望者のうち、臨床研修を受ける病院が内定した人の割合(内定率)は91.7%(20年度92.1%)でした。医師臨床研修マッチングは、2004年度に医師の臨床研修が義務化されたことにあわせて導入されました。臨床研修を受けようとする者と臨床研修を行う病院の研修プログラムを、お互いの希望を踏まえて、一定のアルゴリズムに従って、コンピュータにより組み合わせを決定するシステムです。 臨床研修を行う病院等の団体で構成される医師臨床研修マッチング協議会により行われています。臨床研修病院にマッチした医学生は63.3%で大学病院の倍厚労省のサイト、同協議会のサイトに「2021年マッチ結果発表資料」が掲載されています。それらのデータを基に独自集計した分析記事が、いくつかの医療専門媒体に掲載されました。「日経メディカル」は、大学病院希望者数と臨床研修病院(市中病院)希望者数の割合を出しています。それによれば、臨床研修病院にマッチした医学生は63.3%、大学病院の36.7%の倍となりました。大学病院と臨床研修病院の内定者数の差は2009年から拡大しているとのことです。多様で魅力的な研修内容や、待遇改善を打ち出す市中の臨床研修病院の人気は、今後も衰えないと見られます。大学病院本院81校中、定員充足率100%は14校発表資料には、「大学病院(施設別)における自大学出身者の比率」のデータがあり、大学病院別の定員充足率や、マッチ者に対する自大学出身者数の割合を見ることができます。大学病院本院81校中、定員充足率100%(フルマッチ)となったのは、東京大学(マッチ者数105人)、東京医科歯科大学(94人)、京都大学(76人)、京都府立医科大学(63人)、大阪医科薬科大学(55人)、奈良県立医科大学(54人)、関西医科大学(46人)、東海大学(46人)、聖マリアンナ医科大学(45人)、川崎医科大学(39人)、昭和大学(36人)、東京慈恵医科大学(35人)、藤田医科大学(32人)、産業医科大学(11人)の計14校でした。関西医大は7年連続、昭和大は5年連続でフルマッチを達成しています。なお、今回フルマッチを達成した中で、奈良県立医大、聖マリアンナ医大は昨年は30位以下(32位、36位)で、大躍進と言えます。逆に、定員充足率の低い大学病院本院を見ていくと、下位から弘前大学(マッチ者数4人、8.9%)、熊本大学(6人、14.0%)、岩手医科大学(7人、17.5%)、信州大学(12人、26.7%)、福島県立医科大学(12人、27.3%)となっています。地方の国立大学医学部が多いです。マッチ者の自大学出身割合が高い地方国立大医学部大学病院本院では、東京大学のマッチ者数105人、東京医科歯科大学94人、京都大学76人が際立っていますが、これを自大学出身者数の割合で比較すると、また違った風景が見えてきます。マッチ者の9割以上を自大学の出身者が占めた大学は17校あり、中でも高知大学(21人)、鳥取大学(15人)、島根大学(7人)、弘前大学(4人)はマッチ者の全員が同大の卒業生でした。こちらも地方の国立大学医学部にこの傾向が強いようです。ちなみに昨年、マッチ者全員が自大学出身者だったのは、旭川医大、山梨大学、金沢医科大学、香川大学、岩手医科大学でした。金沢医大、岩手医大以外はやはり地方国立大医学部です。地方の大学医学部は、うかうかしていると初期研修医を十分に集められない、というのが現状のようです。自大学出身者に残ってもらうため、研修内容の充実やアピールに毎年腐心している姿が浮かび上がってきます。”ブランド”大学医学部の自大学出身者率は低い傾向一方、自大学出身者 30%未満だったのは、東京慈恵会医科大学(14.3%)、東京大学(15.2%)、横浜市立大学(17.8%)、慶應義塾大学(22.0%)、順天堂大学(24.4%)、名古屋市立大学(25.0%)、神戸大学(25.9%)、北海道大学(29.4%)の8大学でした。自大学出身者の割合が低いのは、関東の”ブランド”大学医学部によく見られる傾向です。これらの大学では、初期研修では出身大学には進まず、市中の有名病院で腕を磨き、後期研修で出身大学の医局に戻ってくるケースが多いようです。慶應大学の場合は8割近くが戻ってくる、という話を聞いたこともあります。東大のようにいわゆる「ジッツ」(関連病院)が圧倒的に多い大学は、OBが多いジッツの有名病院で研修を受けるのがトレンドのようです。数年前に東大医学部を卒業した友人の息子も、研修先には東京の国立国際医療研究センター(今年の定員は32人で充足率100%)を選んでいました。自大学出身者が少なくても、定員充足率が100%近くにできるのは、”ブランド”大学医学部の強みと言えます。大都会という立地に加え、東大や慶應というブランドで、研修医を呼び込んでいるわけです。研修医としても、「研修先は東大でした」と後々周囲に言えるわけです。特に医師ではない一般人への効果は結構大きいと言えます(「東大王」というクイズ番組もあるほどですから)。「学歴ロンダリグ」とまでは言えませんが、自分の経歴に相応の箔を付けておきたい研修医は少なからずいることでしょう。一方、大学側としても、自大学出身者に加え、他大学からやってきた初期研修医も自分たちの”手駒”として将来使える可能性も出てくるわけで、双方にメリットがあることだと言えます。もちろん、医師臨床研修マッチングは、大学医学部だけではなく、市中病院にとっても貴重な若手戦力を確保する重要な機会です。各病院で、初期・後期の臨床研修を担当する責任者は、病院の将来のチーム編成の要の機能を果たしているわけで、そうした意味では、プロ野球チームのGMに近い存在と言えるかもしれません。

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双極性障害に対するアドヒアランス強化戦略

 双極性障害患者は、服薬アドヒアランスが不良であることが少なくない。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のMartha Sajatovic氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬を組み合わせたカスタマイズアドヒアランス強化(CAE)戦略が双極性障害患者のアドヒアランス、症状、機能へ及ぼす影響を評価するため、パイロット研究を実施した。The Primary Care Companion for CNS Disorders誌2021年9月16日号の報告。 アドヒアランスが不良な双極性障害患者30例を対象に、LAI抗精神病薬を組み合わせたCAE戦略の有効性を評価するため6ヵ月間の非対照試験を行った。アドヒアランスの評価にはTablets Routine Questionnaire(TRQ)、症状の評価には簡易精神症状評価尺度(BPRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)、臨床全般印象評価尺度(CGI)を用いた。機能は、社会的職業的機能評定尺度(SOFAS)、機能の全体的評定尺度(GAF)を用いて評価した。評価は、スクリーニング時、ベースライン時、12週目、24週目(6ヵ月後)に実施した。調査期間は、2018年4月~2020年5月であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は49.5±9.3歳、黒人の割合は56.7%であった。・研究を途中で中止した患者は9例(30%)であり、副作用による中止は1例(振戦)のみであった。・LAIの平均投与量は、314.3±96.4mgであった。・過去1週間で服薬を守れなかった割合(平均TRQ)は、スクリーニング時の50.1±24.8%から24週目の16.9±27.0%へ有意な改善が認められた(p<0.001)。過去1ヵ月間のTRQについても40.6±23.8%から19.2±24.0%への改善が認められた(有意傾向、p=0.599)。・ベースライン時から24週目のTRQの変化に有意な差は認められなかった。・BPRS(p<0.001)、MADRS(p=0.01)、YMRS(p<0.001)、CGI(p<0.001)、SOFAS(p<0.001)、GAF(p<0.001)においても、有意な改善が認められた。 著者らは「LAIを組み合わせた個別のアドヒアランス強化戦略は、ハイリスク双極性障害患者のリカバリー向上が期待できる」としている。

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子供へのマスクはどうするの?疑問に回答/成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会生活を混乱させただけでなく、子供たちの日常も奪った。12歳未満の子供にはCOVID-19ワクチンの接種も、現在わが国ではできないことから、今後の感染の増加について子供の保護者や学校関係者などは危惧をしている。また、この時期に妊娠した妊婦は情報が少ない中での生活に不安を抱えている。 こうした不安や心配の声に応えるべく国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)は、11月5日に同センターのホームページに「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」を公開し、COVID-19やそれ以外の感染症対策や症状、こころの問題について、情報発信を開始した。感染症、精神、耳鼻咽喉、産科のエキスパートが回答するQ&A このQ&Aでは、大きく4つの分野について、同センターの専門医が解説し、回答を行っている。 主な質問項目は次のとおり。【感染対策について】(感染症科)・コロナ禍になって2年。これまでのデータから分かるコロナウイルスについて教えてください(症状や感染対策、変異株、コロナ初期と変わったことなど)・マスクができない子どもへの感染症対策はどうすればいいですか?・医療的ケア児の感染対策で、特に気を付けた方がいいことはありますか?・子どものワクチン接種について教えてください(安全性や副反応、リスクについて、インフルエンザワクチンと一緒に打っていい?)・デルタ株で子どもの感染者も増えていましたが、子どもでも重症化するのでしょうか?【こころについて ~子どもとご家族~】(こころの診療部)・友達と話せなかったり、自由に外で遊べなかったり、コロナ禍のストレスは子どもの心に将来的にどんな影響を及ぼしますか?・フィジカルディスタンスやマスクを常につける生活で、子どもとのコミュニケーションがうまく取れないこともあります。どうしたらいいですか?・子どもが新型コロナウイルスをとても怖がっています。どうしたらいいですか?・子どもがコロナ太りを気にしてあまりご飯を食べてくれません。どうしたらいいですか?・保護者の不安やストレス解消法について教えてください【身体について】(眼科、耳鼻咽喉科)・オンライン授業になったり、また、ゲームをするためにスマホやタブレットばかり見ています。子どもの視力などに影響はありませんか?・子どもが部屋でゲームをするときなど、イヤホンを長時間使っています。聴力への影響はありますか?【妊婦さんについて】(妊娠と薬情報センター)・妊婦、また授乳中のワクチン接種について教えてください。・今、妊娠しても大丈夫でしょうか? なお、Q&Aの情報は2021年11月現在の情報で公開している。

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臓器移植後患者における複数の皮膚がん発症リスク

 米国の臓器移植を受けたレシピエント(OTR)における皮膚がんリスクについて、米国・ペンシルベニア大学のMackenzie R. Wehner氏らによる、10年間にわたる電子健康記録(EHR)と医療費支払いデータをレトロスペクティブに解析した結果が報告された。 移植後に少なくとも1回の皮膚がん治療を受けていたOTRは4.5~13.3%で、そのうち約半数が2年以内に2次皮膚がんを発症しており、約20人に1人が10以上の皮膚がんを発症していたことが明らかになったという。これまでOTRにおける複数原発皮膚がんのリスクに関する報告は限定的であったが、今回得られた結果を踏まえて著者は、「複数の原発皮膚がんリスクが最も高いOTRを特定することが、予防と早期発見のターゲット戦略に寄与する可能性がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年10月20日号掲載の報告。 研究グループは、検討に用いたデータセットにおける(1)移植後皮膚がんの発症、(2)移植後の初発皮膚がん発症後の2次皮膚がん発症、および(3)10以上の皮膚がん発症について、OTRの経時的リスクとリスク要因を確定するレトロスペクティブなコホート研究を行った。 使用したデータセットは2つで、2007~2017年のOptumの匿名化されたEHR(患者770万人分)とTruven Health MarketScanの医療費支払いデータセット(患者1億6,100万人分)であった。皮膚がんは、診断+治療コード(基底細胞がん、扁平上皮がん、メラノーマ)で特定。OTRは、4つ以上の臓器移植の診断コードを用いて識別した。データ解析は、2007年1月1日~2017年12月31日に実施された。 主要評価項目は、使用データセットにおけるOTRの(1)移植後のあらゆる皮膚がんの治療、(2)移植後の初回皮膚がん治療後の2次皮膚がんの治療、(3)10以上の皮膚がん治療の累積リスクとした。また、Wei-Lin-Weissfeldマージンモデルを用いてあらゆる皮膚がんのリスク要因を推定した。 主な結果は以下のとおり。・Optumで7,390例のOTR、MarketScanで13万3,651例のOTR関連データを特定した。・少なくとも1回の皮膚がん治療が認められたのは、Optum OTR群4.5%、MarketScan群13.3%であった。・また、初回皮膚がん治療後2年時点で、OTRは44.0~57.0%の2次皮膚がん治療のリスクを有しており、10以上の皮膚がん治療を有するリスクが3.7~6.6%に認められた。・あらゆる皮膚がんに関する統計的に有意なリスク因子は、両データセットにおいては年齢、皮膚がん歴、日光角化症歴などであり、MarketScanのデータセットでは、男性、胸部への移植などであった。

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入院COVID-19の生存日数は?デキサメタゾン6mg vs.12mg/JAMA

 重度の低酸素血症を呈する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人入院患者において、デキサメタゾンの12mg投与は6mgと比較して、28日後の生命維持装置を使用しない生存日数を改善せず、28日と90日後の死亡率にも差はないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie W. Munch氏らCOVID STEROID 2 Trial Groupが実施した「COVID STEROID 2試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2021年10月21日号で報告された。欧州とインドの医師主導無作為化試験 本研究は、重度の低酸素血症を有するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mgと6mgの有効性の比較を目的とする医師主導の二重盲検無作為化試験であり、2020年8月27日~2021年5月20日の期間に、4ヵ国(デンマーク、インド、スウェーデン、スイス)の26病院で行われた(Novo Nordisk財団などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が確定されて入院し、(1)酸素補充療法(流量≧10L/分)、(2)低酸素血症に対する非侵襲的換気または持続陽圧呼吸療法、(3)侵襲的機械換気のいずれかを受けている患者であった。 被験者は、最長10日間、デキサメタゾン12mgを静脈内投与する群または同6mgを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、28日時点の生命維持装置(侵襲的機械換気、循環補助、腎代替療法)なしでの生存日数とし、層別変数で補正された。副次アウトカムは事前に8つが設定され、今回の解析では、そのうち5つ(90日時点の生命維持装置なしの生存日数、90日時点の生存退院日数、28日時点と90日時点の死亡、28日時点の1つ以上の重篤な有害反応)が評価された。重篤な有害反応にも差はない 982例(年齢中央値65歳[IQR:55~73]、女性31%)が解析に含まれ、デキサメタゾン12mg群に497例、同6mg群に485例が割り付けられた。このうち971例(12mg群491例、6mg群480例)で主要アウトカムのデータが得られた。介入期間中央値は両群とも7日で、12mg群の9例(1.8%)、6mg群の11例(2.3%)が医師の指示に反して28日以内に退院した。 28日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が22.0日(IQR:6.0~28.0)、6mg群は20.5日(4.0~28.0)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:1.3日、95%信頼区間[CI]:0~2.6、p=0.07)。 副次アウトカムである90日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が84.0日(IQR:9.3~90.0)、6mg群は80.0日(6.0~90.0)であった(補正後平均群間差:4.4日、99%CI:-1.6~10.4)。また、90日時点の生存退院日数は、それぞれ61.5日(0~78.0)および48.0日(0~76.0)だった(4.1日、-1.3~9.5)。 さらに、28日時点の死亡率は、12mg群が27.1%、6mg群は32.3%(補正後相対リスク[RR]:0.86、99%CI:0.68~1.08)、90日時点の死亡率は、それぞれ32.0%および37.7%(0.87、0.70~1.07)であり、いずれも有意差はみられなかった。 28日までに1つ以上の重篤な有害反応(敗血症性ショック、侵襲性真菌症、臨床的に重要な消化管出血、デキサメタゾンに対するアナフィラキシー反応)が発現した患者の割合は、12mg群が11.3%、6mg群は13.4%であり、両群間に差はなかった(補正後RR:0.83、99%CI:0.54~1.29)。体外式膜型人工肺(ECMO)は、12mg群が3例(0.6%)、6mg群は14例(2.9%)で使用された。 なお著者は結果について、「本試験は、有意差を同定するには、検出力が十分でなかった可能性がある」としている。

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ニボルマブ+化学療法の肺がん術前補助療法、無イベント生存率を改善(CheckMate-816)/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2021年11月8日、Stage IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法を評価する第III相CheckMate -816試験で、主要評価項目である無イベント生存率(EFS)の改善を達成したことを発表した。 事前に指定された中間分析において、ニボルマブと化学療法の併用による手術前補助療法は、化学療法単独と比較して、統計的に有意かつ臨床的に意味のあるEFSの改善が示した。 この併用では、すでにほかの主要評価項目である病理学的完全奏効の有意な改善が報告されている。

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乳がん放射線治療中、デオドラントの使用を継続してよいか~メタ解析/日本治療学会

 デオドラント製品を日常的に使用している日本人女性は多いが、放射線治療期間中に使用を継続した場合に放射線皮膚炎への影響はあるのだろうか? 齋藤 アンネ優子氏(順天堂大学)らは、放射線治療期間中のデオドラント使用に関連する放射線皮膚炎について調査した無作為化試験のメタ解析を実施し、第59回日本治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。なお、本解析は「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版」のために実施された。 2020年3月までに、PubMed、医中誌、Cochrane Library、CINAHLより、デオドラント使用が放射線皮膚炎に与える影響を検討した無作為化比較試験を中心に検索がされた。評価項目は腋窩の放射線皮膚炎の重症度(Grade2以上/ Grade3以上、NCI-CTC v5.0による評価)で、金属含有デオドラントと金属非含有デオドラントを別々に評価した。メタアナリシスの効果指標はリスク比(RR)とした。 主な結果は以下のとおり。・乳がん患者を対象とした前向き比較第III相試験が5編、アンケート調査1編の計6編の論文が特定され、定性的・定量的システマティックレビューが実施された。・金属含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:1.01、95%信頼区間[CI]:0.85~1.20)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.79、95%CI:0.22~2.84)のいずれも有意な差はみられなかった。・金属非含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:0.9、95%CI:0.5~1.6)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.76、95%CI:0.33~1.78)のいずれも有意な差はみられなかった。・QOLの評価は2編の論文で行われた。デオドラント使用群で汗の量は有意に少なかったが、QOLについては使用群と対照群の間で有意な差はなかった。しかし、1編のアンケート調査では、習慣的にデオドラントを使用しているとした乳がん患者のうち64%は、デオドラントを使用できないことで体臭が気になったと回答していた。 皮膚炎の評価にかかわる主な交絡因子としては、喫煙、化学療法、照射範囲・線量、体型などが考えられ、デオドラントの使用方法が規定されておらず、盲検化が行われていないため、エビデンスの強さとしては「非常に弱い」とされた。また金属非含有デオドラント使用群との比較については研究数が3~4編となった一方、金属含有デオドラント使用群との比較については研究数が2編のみとなり、さらにこの2編が類似のバイアスの影響を受けていると考えられるもので、エビデンスとしてはより脆弱と考えられた。 以上より、害と益のバランスとしては、下記のように評価された:・金属非含有のデオドラントによる放射線皮膚炎の増悪は、エビデンスは弱いが、認められなかった・習慣的にデオドラントを使用している患者には益が害を上回る ガイドラインにおける推奨文としては、「放射線治療中のデオドラント使用の継続を弱く推奨する」とされた。ただし、金属含有のデオドラントについては皮膚炎への評価をした研究のエビデンスの確実性が非常に低く、注意をしながら使用を継続することが推奨される。 実臨床で質問を受けたときに医療者が提供できる情報として、齋藤氏は、習慣的に使用している場合であれば金属非含有のものを使用するのがいいのではないかという点に加え、商品としてはアルミニウムフリーと明記されて販売されていることを挙げた。また、ミョウバン入りの商品について、ミョウバン=アルミニウムということを認識していない患者さんも多いため、補足して伝えることができればよいのではないかと話した。

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ファイザーの経口コロナ治療薬、入院・死亡リスク89%減

 米国・ファイザーは11月5日付けのプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規経口治療薬であるPF-07321332・リトナビル配合剤(商品名:Paxlovid)について、入院していない成人のCOVID-19高リスク患者を対象にした第II/III相試験(EPIC-HR試験)の中間解析で、発症3日以内に治療を開始した場合、プラセボと比較して入院または死亡のリスクが89%減少したことを発表した。28日目までの全試験集団において、プラセボ投与群の死亡が10例に対して、本剤投与群で死亡例はなかったという。EPIC-HR試験の中間解析結果を受け、同社はこの研究への追加登録を中止し、今後米国での緊急使用許可を目指してFDAへ速やかにデータを提出する予定。 EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。今回のEPIC-HR試験の中間解析では、2021年9月29日までに登録された1,219例のデータを評価した。軽度~中等度の症状発現後5日以内でCOVID-19重症化リスクのある患者を、本剤またはプラセボ投与群に1:1で無作為に割り付け、12時間ごとに5日間経口投与した。EPIC-HR試験は発症後3日以内の内服で入院・死亡リスクを大幅減 EPIC-HR試験の中間解析の結果、発症から3日以内に治療を受けた患者において、プラセボと比較して、本剤が投与された群ではCOVID-19関連の入院または何らかの原因による死亡のリスクが89%減少したことが示された(主要評価項目)。無作為化後28日目までで、本剤群の0.8%(3/389例)が入院し、死亡例はなかったのに対し、プラセボ群の7.0%(27/385例)が入院し、その後7例が死亡した(p<0.0001)。 EPIC-HR試験では、発症5日以内に投与された集団においても同様の傾向が見られ、本剤群では0.01%(6/607例)が入院・死亡例なしに対し、プラセボ群では6.7%(41/612例)が入院し、その後10例が死亡した(p<0.0001)。 1,881例を対象とした安全性コホートにおいて、治療に起因する有害事象は本剤群19%、プラセボ群21%と同等であり、そのほとんどは軽症だった。評価可能症例の中で、本剤はプラセボと比較して重篤な有害事象が少なく(1.7% vs.6.6%)、有害事象による試験中断も少なかった(2.1% vs.4.1%)。 なお、今回のEPIC-HR試験以外に第II/III相EPIC-SR試験(標準リスクを有する患者における評価)およびEPIC-PEP試験(曝露後の予防における評価)が進行中という。

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藤井チャートならわかる!整形外科診断

第1回 頚部痛第2回 肩痛第3回 肘痛第4回 手関節痛第5回 腰痛第6回 鼠径部痛第7回 膝痛第8回 足関節痛 肩痛や腰痛などよくある訴えこそ、その原因疾患を特定しなければいけません。このシリーズでは診察開始から順を追って確認すべき項目をフローチャートでまとめた「藤井チャート」で、診断プロセスをレクチャーします。整形外科診察に不可欠な身体所見の取り方も実技と解剖図を交えて丁寧にサポート。内科でも出合う症例を挙げて、押さえておくべき初期治療まで解説します。第1回 頚部痛このシリーズでは診察開始から順を追って確認すべき項目をフローチャートでまとめた「藤井チャート」で、整形外科的な痛みの診断プロセスをレクチャーします。第1回は頚部痛。症例は交通事故後、痛みが消えずに受診した25歳女性。問診で絞り込むべき項目をフローチャートで順番に追い、身体所見の取り方は実技と解剖図を交えて丁寧に解説します。押さえておくべき初期治療もカバーします。第2回 肩痛症例は2週間前からの肩痛を訴える72歳男性。肩が上がらなくなり救急外来を受診しました。原因が肩関節か、周囲の組織かを見極めるのが最初のステップ。肩関節の問題だとわかった後、鑑別に挙がるのは、腱板断裂、肩関節周囲炎、そして上腕二頭筋腱炎です。絞り込むために必須の身体診察3つを実技で解説します。第3回 肘痛43歳男性が数日前からの肘痛を訴え来院。外傷か、痛い部位はどこかを念頭に診察を進めます。上腕骨内外顆、橈骨頭など触診に必要な解剖を押さえたうえで、the chair testなど身体診察を実演で解説します。また、整形外科で使う鎮痛薬の使い分けについても解説します。第4回 手関節痛今回の症例は77歳女性。転倒後、手首の痛みを訴えています。手首外傷で確認すべきは、創部の有無。そして力が加わった方向の聴取も重要です。方向がわからない場合も、橈骨、尺骨、舟状骨、手根骨と骨折しやすい部位の圧痛を丁寧に確認することで診断にたどり着けます。手や指の解剖をイラストで、身体診察を講師の実演でわかりやすく解説します。第5回 腰痛転倒した翌日に動けなくなった85歳女性の症例から、腰痛の診断フローを学びます。腰痛を診るポイントは、下肢症状の有無。下肢症状がある場合はどの姿勢で増悪するかを手掛かりに疾患を絞り込みます。画像検査では、レントゲンオーダーの落とし穴を解説します。第6回 鼠径部痛認知症で施設入所中の87歳女性が歩けなくなって救急搬送されてきました。問診が困難な場合にも、高齢者で近年頻度が高まっている骨折の種類、併存疾患がある場合に気を付けるべき疾患を知ると診断の助けになります。身体診察では、股関節痛であっても周辺まで確認することが重要。必ず触診すべき部位とその部位に特有の疾患を押さえ、ROM(関節可動域)とFaddir-Testはすぐに真似できるよう実演で解説します。大腿骨近位部骨折に特徴的な身体所見は迅速な診断につながるのでぜひ確認してください。第7回 膝痛78歳女性が3カ月前からの膝痛を訴えて来院しました。外傷では3つの点に注目すると容易に診断を絞りこむことができます。今回の症例のように外傷ではないときは、疼痛部位の特定が診断の鍵。解剖を押さえたあとに、膝の前方・内側・外側・膝窩それぞれに疑う疾患を示します。BOP(膝蓋跳動テスト)、ROM(関節可動域)の確認といった身体診察のポイントを実技で解説します。第8回 足関節痛子どもの運動会で受傷した37歳女性患者を例に、足関節痛の診断フローをみていきます。足関節の診断でも問診は重要です。ぶつけたのかひねったのかといった病歴聴取のポイントを解説します。外傷/非外傷いずれでも鑑別の決め手になる触診は、外側・内側・足背・足底と部位ごとに解説、実演します。

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経済的に困窮してしまう医師、3つの特徴【医師のためのお金の話】第50回

ドクターあるあるの1つに「月末の給料日が待ち遠しい」があります。給料日が待ち遠しい人は世の中にごまんといますが、医師は高給取りのイメージが強いので、そんなことを言おうものなら総スカンを食らってしまいそうですね…。でも、実際のところ、身近にたくさんいますよね、給料日が待ち遠しいドクター…。医師同士の飲み会なら気軽にカミングアウトできそうですが、一般の理解を得られないために公になることはあまりありません。私自身も大勢の「月末の給料日が待ち遠しい」ドクターを見てきましたが、彼・彼女らにはいくつかの共通点があることに気付きました。では、経済的に困窮してしまう医師の特徴を考えてみましょう。1)公的基幹病院に勤務している医師としてステータスが高いのは、何といっても大学病院や大規模な公的基幹病院の上層部になることでしょう。世の中への貢献度はピカイチで申し分ないのですが、残念ながらこうした立場にいる多くの医師は経済的に恵まれているとは言い難い状況にあります。主任教授を除くと経済的な見返りに乏しく、社会への貢献度と報酬のミスマッチが甚だしい状況です。この状況はコロナ禍でさらに加速してしまいました。場末病院に勤務する私の立場からは本当に申し訳ない思いです。公的基幹病院に勤務する医師は絶対的な報酬額が少ないので、浪費することに精神的充足を求めないほうがよいでしょう。医師としての価値や世の中への貢献度が最高レベルであることを誇りとして、満足感を得るのが得策です。2)独身歴が長い最近でこそ、FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)を志向して若いうちから節約に励む独身医師が増加していますが、医療業界における独身歴の長いドクターの多数派は、いわゆる「自由人」です結婚で縛られることを嫌い、人生を謳歌するスタイルを堅持する彼・彼女らは金遣いが荒いことが特徴です。アリとキリギリスでいうところの典型的なキリギリスなので、将来に備えて貯蓄する、という概念が希薄です。はたから見ている分にはうらやましい限りですが、40歳を越えたあたりから老後の生活に対する不安が出てきます。幸いにも医師は高給なので、将来に不安を感じたときが吉日です。少しずつ生活習慣を改め、将来のことを考えてみましょう。3)おとこ気がある外科系でよく見掛けるタイプで、先に挙げた独身歴の長いドクターとかぶることも多いです。人間味があってとても魅力的な人が多いことが特徴で、私もこのタイプのドクターは大好きです。実質的に、彼・彼女らが後進に医療技術を伝承してきたと言ってもよいかもしれません。しかし各方面への面倒見がいいので支出が多くなってしまいます。おまけに価値観が経済的成功ではないので、どうしても金銭感覚が甘くなりがちです。幸いにもコロナ禍でこれまでのような濃密な付き合いの機会が少なくなりました。おとこ気を発揮するのは職場だけで十分です。これを機に少し経済的な側面を見直してもよいかもしれません。収入と支出のバランスが重要ここまで経済的に困窮してしまう医師の特徴を考えてきましたが、書いていて少し切なくなりました。世の中への貢献度が高かったり、人間的魅力のある医師が多かったりすることに気付いたからです。しかし、彼・彼女らのような医師すべてが経済的に困窮してしまうわけではありません。困窮するのは収入に対して支出が大きいことが原因だと理解できれば、給料日が待ち遠しい事態は避けられるはずです。自分が3つのタイプの医師に該当している自覚がある人は、収入と支出のバランスが適切かを確認してみてください。

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