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055)皮膚科医が臨床写真を撮る意義【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第55回 皮膚科医が臨床写真を撮る意義ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来では、患者さんの病変部を写真に撮ることがよくあります。これらの臨床写真は、カルテの記録として残したり、医師・スタッフ間で情報を共有したり、症例報告や研究、論文発表に使われたりしています。1回にたった2~3枚の写真とはいえ、カメラを用意してポジションを決めて…と準備に意外と時間がかかることや、撮った写真の保存作業にも一定の労力が必要なこともあり、すべての症例を撮る訳にはいきません。実際には症例やタイミングを選んで撮影することになりますが、この臨床写真が治療の上でとても役に立つのです。普段、患者さんだけでなく私たち医療者も、それぞれの主観で捉えた患部の状態を記憶に保持しているため、現在の状態と比較する際にその記憶をよりどころとしています。ただ、この主観というのが厄介で、自分の先入観で事実がゆがめられてしまっていたり、実は変化があるのに見過ごしていたりすることがままあります。そんな時に臨床写真を見返すと、事実を客観的に確認することができます。それは、医療者が経過の評価を客観的に行えるだけにとどまらず、治療効果を患者さんと共有するのにも大いに役立ちます。とくに「頑張っているのに全然治らない」などとネガティブになりがちなタイプの患者さんに、前より良くなっていることを伝えるのに有効な方法だと感じます。日々診療に追われる中で、ついついカルテへの記入のみで満足してしまいがちですが、時々初心に帰って写真として記録を残しておくのも大切なことだなと、あらためて思いました。それでは、また〜!

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「マーロックス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第78回

第78回 「マーロックス」の名称の由来は?販売名マーロックス懸濁用配合顆粒一般名(和名[命名法])乾燥水酸化アルミニウムゲル水酸化マグネシウム(JAN)効能又は効果下記疾患における制酸作用と症状の改善胃・十二指腸潰瘍、胃炎、上部消化管機能異常用法及び用量通常成人には1日1.6g~4.8gを数回に分割し、本品1gに対し用時約10mLの水に懸濁して経口投与するか、または、そのまま経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由【禁忌(次の患者には投与しないこと)】透析療法を受けている患者[長期投与によりアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血等 があらわれることがある。]※本内容は2021年11月17日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年2月改訂(改訂第17版)医薬品インタビューフォーム「マーロックス®懸濁用配合顆粒」2)サノフィe-MR:製品情報

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FGM導入で患者も主治医もWin-Win【令和時代の糖尿病診療】第3回

第3回 FGM導入で患者も主治医もWin-Win令和時代の糖尿病診療として、今回は薬剤ではなく、器機の面から考えてみる。糖尿病は生活習慣病の代表選手でもあり、治療の根源は食事や運動など生活習慣の改善にあるが、そもそも「生活習慣病とは何ぞや?」というと、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義される。裏を返せば、生活習慣を改善すれば良くなる見込みのある疾患であり、今回取り上げるFGM(Flash Glucose Monitoring)は、血糖値を連続的に「見える化」することにより、生活習慣の改善をサポートできる画期的な器機だ。従来の血糖自己測定(Self-Monitoring of Blood Glucose、以下SMBGと略す)は、穿刺針で指先から採血しその時点の血糖値を測定するものだが、FGMとは、上腕後部に着けたセンサーに服の上からリーダー(読取機)をかざすだけで、瞬時に血糖値を確認できるものである。正確には、FGMは血糖値ではなく間質液のグルコース濃度を測っているのだが、補正のために自己穿刺して血糖測定をする必要もないので、極めてシンプルに血糖管理ができる。センサーは最長14日間、自動的に毎分測定し記録し続ける(なお、最長8時間おきのスキャンが必要)ので、リーダーをかざした瞬間だけでなく、経時的な血糖推移も簡単に知ることができる。すなわち点が線になるのだ。図1:血糖グラフは「点」から「線」へ画像を拡大するこのメカニズムをご存じの方は、「CGM(Continuous Glucose Monitoring)との違いは?」という疑問にぶつかるかと思う。一言で表すならば、FGMはCGMの一種であり、間欠式スキャンCGM(intermittently scanned CGM:is-CGM)とも呼ばれる。リーダーをセンサーにかざした“瞬間”の皮下グルコース値を読み取る点から、“Flash”と名付けられた。患者が意図してセンサーにリーダーをかざすことで、現在から後ろ向きにグルコース値を認識する(一般的に、5~10分遅れて血液中のグルコース濃度が反映するとされる)。なお、CGMの中でもリアルタイムCGMはbluetoothで接続されるため、リーダーをかざす必要はない。FGM器機は、2017年に発売後まもなく保険適用され、さらに進化して2020年2月にはスマートフォンでも血糖値スキャンができるようになった。ここまで読んでいただき、少しでも興味を持っていただけたであろうか。「この手の器機は所詮専門医が使用するマニアックなもの」と決めつけてはいないだろうか? しかし、答えは「No」で、保険上では「糖尿病の治療に関し、専門の知識および5年以上の経験を有する常勤の医師または当該専門の医師の指導の下で糖尿病の治療を実施する医師が、間欠スキャン式持続血糖測定器を使用して血糖管理を行った場合に算定する」とある。対象は「強化インスリン療法を行っているもの、または強化インスリン療法を行った後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているもの」とされ、1型糖尿病でも2型糖尿病でも適応可能となっている。これにより、SMBGを行っているならばFGMを使用できない施設はほとんどないと言っていいのではないだろうか?FGMを装着後、劇的に血糖コントロールが改善した2例前置きはこのくらいにして、臨床現場での実例を見てみよう。まずは、小児発症の1型糖尿病で罹病歴27年の女性である。SMBGをきちんと行っているものの、HbA1cは7%台後半で変わらない状況であった。3年ほど前にFGMを装着したところ、インスリンを増量することもなくみるみるHbA1cが6%台後半まで下がり、なおかつ低血糖の頻度も減り非常に安定した。「子供のときは毎回針で指を刺して血を出すのが本当に痛くて嫌だったが、これ(FGM)になってからはいつでもどこでも測れるし、何よりも痛くない。時代は変わったなあ!」と、しみじみとご本人から語られたときは目頭が熱くなった。このときの言葉は今でも忘れられない。次に、2型糖尿病で強化インスリン療法を行っている60代女性のHbA1cを示す。図2:2型糖尿病:罹病歴21年(合併症:神経障害馬場分類1度[軽度]・網膜症[右A0:左A1」・腎症第1期)画像を拡大するどこからFGMが開始になったかは疑う余地もなかろう。これだけ劇的に下がったのは、薬剤を変えたわけでもインスリン量を増やしたわけでもなく、FGMを装着しただけである。患者は以前からSMBGを行っていたがさぼりがちで、測定結果も診察時には「忘れた」と言って持って来ないことが多々あった。そんな方が、スマホ対応のFGMを着けてからは多い時で1日に40回以上も測定したのである。最初は「先生に血糖値がすべてばれてしまう」と少し困惑気味だったが、聞くとゲーム感覚で楽しんでいるようで、どのようなものを食べると血糖値が高くなるとか、よく運動をすると血糖値がうそのように下がるなどとうれしそうに話してくれた。血糖変動が手に取るようにわかることで、行動変容が生まれたケースである。今後は薬剤の減量を検討しており、これがまた患者のいい動機付けになると考えられる。我々の施設では、強化インスリン療法施行中の2型糖尿病患者について、FGM導入は血糖コントロールのみならず、身体活動や治療満足度の改善にもベネフィットをもたらしたことも報告している1)。FGMデータを読むうえで重要な「AGP」と「TIR」それでは、実際のFGMデータ(AGPレポート)を見てみよう。図3:AGPレポート画像を拡大するここで2つのキーワード、AGP(Ambulatory Glucose Profile)とTIR(Time in Range)を以下に解説するので、ぜひ覚えていただきたい。これらは、HbA1cを補完する臨床目標およびアウトカム評価指標として、2019年6月にInternational Consensusで推奨されたものである2)。CGM/FGMの測定は1回の測定期間を2週間として、その間に得られたデータの70%以上を使用して解析すること解析にはAGPの手法を用いること血糖コントロール指標として、70~180mg/dLを治療域(Target Range)とし、この範囲内の測定回数または時間をTIR、治療域より低値域をTBR(Time Below Range)、高値域をTAR(Time Above Range)と定義する糖尿病リソースガイド3)より一部引用AGPについて、日々の血糖値を連続的に見ることができるのは言うまでもないが、FGM測定データの解析に用いられているAGPレポートとは「測定期間のグルコース値の要約」で、記録した数日間にわたる血糖変動の傾向が、一つのグラフとして示される。図4:AGPレポートの読み方《AGPレポートから読み取れる内容》1)24時間の平均血糖値2)24時間の血糖変動幅(i)中央値曲線(実線):中央値曲線の上下動が大きい箇所は、1日の中で血糖変動が大きい時間帯であることを示している。(ii)25%タイル曲線~75%タイル曲線(青色帯):各時間帯で、たとえば10日間のうち5日間はこの範囲内に血糖値が入る(50%の確率)。(iii)10%タイル曲線~90%タイル曲線(水色帯):各時間帯で、たとえば10日間のうち8日間はこの範囲内に血糖値が入る(80%の確率)。3)食後血糖の平均上昇幅このようにAGPで解析すると、1日のうちで低血糖/高血糖となる可能性の高い時間帯や血糖値の変動が大きい時間帯などが視覚的に確認でき、これを活用することで、血糖変動の幅や目標範囲との差、低血糖/高血糖の可能性の有無などについて把握しやすくなる。次にTIRとは、1日のうち血糖値が目標範囲内で過ごせた時間を表したもので、異なる糖尿病患者群のそれぞれで標準的なCGMの目標値が決められている。図5:異なる糖尿病患者群におけるCGMの目標値画像を拡大するこれらの指標に基づき、2型糖尿病患者を対象にした研究では、重症度に基づく糖尿病網膜症(DR)の有病率はTIR四分位の上昇とともに減少し、DRの重症度はTIR四分位数と逆相関を示した4)、TIRは大血管合併症の代替指標である頸動脈内膜中膜肥厚度と関連した5)など多くの論文が出され、有用性が実証されている。FGMによるAGPレポートを見るメリットとして、糖尿病のさまざまな合併症を防ぐため、24時間の血糖値がどのように変動しているか、つまり「血糖トレンド」に注目することが重要とされ、それをしっかり理解できると、下記のような点に関し、患者の状態が確認しやすくなる。(1)食後高血糖(血糖値スパイク)の有無(2)夜間低血糖や暁現象の有無(3)HbA1cの値だけではわからない、「血糖コントロールの質」などさらに今後の方向性として、コロナ禍などで対面診療ができない場合でのオンライン診療なども視野に入るかと思われる。FGM導入で患者も主治医もWin-Winいろいろと利便性ばかり述べてきたが、もちろん限界もある。装着を避けるべき患者像は、血糖値に振り回され、血糖ありきで生活習慣の改善がおろそかになってしまうような患者(たとえば血糖値が高いときインスリンを多く打ち過ぎて低血糖を繰り返す、あるいは補食し過ぎて高血糖になり悪化するケースなど)や、逆にせっかく装着しても、興味がなく規定の時間内に測定しない人や血糖値を他人に見られるのを非常に嫌がる患者などには、決して無理強いするものではない(医療機関でしか測定データを確認できない器機もあるにはあるが…)。また、皮膚に直接貼付するため、かぶれやすい患者などでは着けられない場合もある。いずれにせよ、患者の適性を考慮して使用することで行動変容につながり、薬剤以上の素晴らしい効果が期待できることをぜひ体験していただきたい。これを機に、糖尿病診療にFGMを活用すべく、まずは自身から行動変容を試みてはいかがだろうか。1)Ida S, et al. J Diabetes Res. 2020 Apr 9;2020:9463648.2)Battelino T, et al. Diabetes Care. 2019;42:1593-1603.3)糖尿病リソースガイド 糖尿病治療におけるTime in Range(TIR)の重要性と血糖トレンドの活用4)Lu J, et al. Diabetes Care. 2018;41:2370-2376.5)Jingyi Lu, et.al. Diabetes Technol Ther. 2020 Feb;22:72-78.

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第84回 診療報酬改定シリーズ本格化、「躊躇なくマイナス改定すべき」と財務省、 「躊躇なくプラス改定だ」と日医・中川会長(前編)

政府、新型コロナ第6波に向けた対策決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球も、今週末からいよいよ日本シリーズです。クライマックスシリーズは、東京ヤクルトスワローズ、オリックスバッファローズ共に大胆かつ手堅い戦い方で、どちらにもリーグ覇者の強さを感じました。気になったのは、ヤクルトと戦った読売ジャイアンツです。メディアの多くは打線の弱さを指摘していましたが、私は野手の守備の杜撰さが目に留まりました。練習をちゃんとしているのかな、と疑うようなプレーがいくつかあり、「これが今の巨人なのか?」と正直驚いた次第です。ベンチには原 辰徳監督以下、かつてのスター選手がコーチとして居並んでいたのですが、ヤクルトと比べるとなんとなく時代遅れの感も。金にあかせて強い選手を外から持ってくるだけでは、本当に強いチームをつくることは難しいのかもしれません。さて、政府は11月12日、新型コロナ感染症の第6波に向けた対策の全体像を決定しました。全体像は、1)医療提供体制の強化、2)ワクチン接種の促進、3)治療薬の確保、4)日常生活の回復の4本柱で構成。医療提供体制については、第5波で最大で2万8,000人の入院が必要になったことから、第6波ではさらに3割増えた場合を想定し、3万7,000人分の病床を用意することとしました。“器”は十分だが、スタッフは集められるか?医療提供体制としては、「第81回 国立病院機構とJCHOに法律に基づく病床確保要求、民間への『要求』法制化の“前哨戦”か?」で書いた、国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)は約2,700人の患者受け入れ増を確保したとのことです。また、重症化リスクのある患者向けの臨時の医療施設や入院待機施設は今夏と比べ4倍弱の3,400人を受け入れられる体制を築く、としています。軽症者の宿泊療養施設も今夏より3割増しの6万1,000室を準備。さらに、全国3万2,000ヵ所の医療機関などと連携してオンライン診療や訪問看護を実施する体制も整える、としています。確保しているにもかかわらず、コロナ病床に患者を受け入れない、いわゆる「幽霊病床」対策としては、病院ごとの病床稼働状況を12月から毎月公表し、ピーク時の使用率を8割以上に高める、としています。第5波の反省を踏まえ、今回の全体像では、重症病床から臨時の医療施設、宿泊療養施設、訪問看護まで、満遍なく医療提供体制を整えたと言えるでしょう。ただ、気になるのは、本当に第6波が到来した時に、病床をはじめとするそれぞれの“器”に、十分な医療スタッフを配置できるかどうかです。「幽霊病床」が生じた一因としては、重症者対応などで人手不足が生じたことも指摘されています。今回、国立病院機構やJCHOなど公立・公的病院に病床の確保要求が行われましたが、民間病院に対しても病床や医療スタッフの供出を、要請ではなく要求できる法的な仕組みの整備はまだです。この点についても、流行が沈静化している今のうちになんらかの手を打っておいたほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。診療報酬改定率巡り、財務省が強烈なジャブさて、現場の医療機関が今後のコロナ対応を模索する中、来年の診療報改定に向けての議論も本格化しています。今回は、11月に入りこちらも恒例のバトルがスタートした、来年の診療報酬改定を巡る動きを追ってみました。財務省主計局は11月8日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、来年度の診療報酬改定について、「まずは改定前の診療報酬(本体)の伸びがどのような水準かということを出発点として改定の議論を行うことが適当であり、そこが高止まりしているのであれば、躊躇なく『マイナス改定』をすべきである。そうしたプロセス抜きに、診療報酬(本体)の改定率を論う意義は乏しい」と断言、日本医師会をはじめとする医療関係団体に強烈なジャブをかましました1)。さらに、「診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の『マイナス改定』を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」とも言い切りました。診療報酬改定を翌年に控えたこの時期、財務省がマイナス改定を主張するのは恒例行事とも言えますが、今年はその真剣度が違う気がします。今回の改定は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって医療提供体制の脆弱さや地域医療構想の進捗遅れが顕になった中で行われます。さらに国の財政もコロナの余波で大幅に悪化したことを考えると、改定率がどうなるか(本体プラスとなるか)は予断を許さない状況です。「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」を再度強調振り返れば、財務省主計局は今年4月15日にも、財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明しており、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を示しました(「第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの」参照)。そして今回、医療提供体制についても改めて言及、「新型コロナ禍では、病院数・病床数の多さに比して医療従事者が少なく、医療資源が散在し、手薄な人的配置により『低密度医療』となっている。医療機関相互の役割分担や連携が不足している」と指摘、「国民が必要な時に必要な医療にアクセスできる医療提供体制に改革していくためには、医療機関の再編・統合を含む地域医療構想の実現、医療従事者の働き方改革、医師偏在対策の三位一体での推進が重要」として、「こうした改革の進捗がないまま、あるいは改革の進行を視野に入れることなく、診療報酬改定を行う意義は乏しく、財政資源の散財となりかねない」と、再度「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」のスローガンを強調しています。国民医療推進協議会はプラス改定を強く要望財政制度分科会が開かれた翌日、すぐさま医療関係団体が財務省の主張に反論しました。日本医師会など医療関連41団体で構成する国民医療推進協議会は11月9日、次期改定において財源の確保を求める決議文を採択しました。決議文の内容は、「新型コロナウイルス感染症禍において、今後も緊張感を持った徹底的な感染防止対策が必要である。国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない。よって、適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する」とシンプルなもので、新型コロナ対策における有事とそれ以外の平時の医療提供体制を車の両輪として維持するために、次期診療報酬本体のプラス改定財源の確保を求める内容です。同協議会終了後の記者会見で、中川 俊男会長(日本医師会会長)は、「新型コロナウイルス感染症禍において、地域の医療提供体制は依然として厳しい状況にさらされている。マイナス改定は到底あり得えず、当然プラス改定にすべきであると考えている」と述べ、財務省の「躊躇なく」の言葉を自身も用い、「躊躇なくプラス改定だ」と強く語ったとのことです。診療報酬改定シリーズはまさに本格化の様相です。次回は、今後の動きを少し予想してみたいと思います(この項続く)。参考1)財政制度分科会(令和3年11月8日開催)資料一覧

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日本人と米国人の認知症リスクを比較

 アルツハイマー病ニューロイメージングイニシアチブでは、一般集団において日本人は米国人よりも脳のAβ負荷が有意に低いことが示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のChendi Cui氏らは、認知機能が正常な高齢の日本人と米国人の血管疾患負荷、Aβ負荷、神経変性について比較を行うため、横断的研究を実施した。Brain Sciences誌2021年9月8日号の報告。 日本人と米国人の対象者は、年齢、性別、アポリポ蛋白E(APOE)遺伝子型でマッチさせた。脳血管疾患負荷は白質病変(WML)、脳Aβ負荷は11C-labeled Pittsburgh Compound B(PiB)を用いて評価した。神経変性は、海馬体積と皮質厚で評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は、日本人95人と米国人95人(男性の割合:50.5%、平均年齢:82歳)。・日本人は、米国人と比較し、WMLが大きかったが、全体的なAβ standardized uptake value ratio(SUVR)、皮質厚、海馬体積に有意な違いは認められなかった。・日本人は、腹側線条体、後帯状皮質、楔前部における局所のAβ SUVRが有意に低かった。 著者らは「日本人と米国人では、血管疾患やAβ負荷に関して異なるプロファイルを有していることが明らかとなった。このことは、認知症発症には複数のリスク因子が関与している可能性が高いことを示唆している。さらに、日本人は米国人よりもAβ負荷が小さいため、認知症リスクが低い可能性がある。調査結果の予測精度を確認するためにも、これらコホートの長期的なフォローアップが求められる」としている。

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免疫チェックポイント阻害薬が有効な固形がんは腸内細菌叢が多様/日本治療学会

 腸内細菌叢の多様性は、固形がん患者の免疫チェックポイント阻害薬の有効性および生存改善に関連していた。 この研究は、全国的がんゲノムスクリーニングプロジェクトMONSTAR-SCREENのコホート3として行われたもの。国立がん研究センター東病院の洞澤 智至氏が第59回日本治療学会学術集会のプレナリーセッションで発表した。免疫チェックポイント阻害薬治療と腸内細菌叢の多様性はORRとPFSに有意に関連 対象は免疫チェックポイント阻害薬単独または併用療法を受けた固形がん患者で、2019年9月~2020年9月に登録された。治療直前に血液サンプルと糞便サンプルが採取され、腸内細菌叢などのバイオマーカーの状況と免疫チェックポイント阻害薬の有効性が解析されている。 評価項目は客観的奏効率(ORR)と無増悪生存期間(PFS)で、OTUスコア(Operational Taxonomic Unit:細菌叢を構成する菌種の数を表す)、MSI、血液中の腫瘍変異量(bTMB)、組織腫瘍変異量(tTMB)、といったバイオマーカーとの関係が評価された。OTUのカットオフ値は240以上、TMBのカットオフ値は10mt/Mbと定義されている。 腸内細菌叢などのバイオマーカーの状況と免疫チェックポイント阻害薬の有効性を解析した主な結果は以下のとおり。・データ入手可能な症例は167例であった。・がんの種類としては、頭頸部がん(43例)、悪性黒色腫(26例)、胃がん(25例)が多かった。・免疫チェックポイント阻害薬単剤治療を受けた症例は31例(19%)、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法を受けた症例は136例(81%)であった。・単変量解析によるバイオマーカーとORRのオッズ比(OR)は、OTU高値が0.37(p=0.01)、MSI高値が0.27(p=0.16)、bTMB高値が0.57(p=0.28)、tTMB高値が1.28(p=0.86)と、OTUが唯一の独立因子であることが示された。・OTUとPFSの関係をみると、高OTU患者のPFSは8.6ヵ月、低OTU患者は2.6ヵ月、と高OTU患者で有意に長かった(ハザード比:0.48、95%CI:0.30〜0.78、p=0.002)。 中間解析ではあるが、進行固形がん患者の免疫チェックポイント阻害薬治療において、腸内細菌叢の多様性は、ORRとPFSの成績に有意に関連していた。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害薬の腫瘍横断的なバイオマーカーとしてのOTUの可能性を示すものだ、と洞澤氏は述べている。

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STEMI患者 、COVID-19合併で院内死亡率上昇/JAMA

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた患者は、過去1年間にCOVID-19の診断を受けていない患者に比べ院内死亡率が有意に高く、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムも不良であることが、米国・ブラウン大学Warren Alpert医学校のMarwan Saad氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2021年10月29日号に掲載された。米国の後ろ向きコホート研究 研究グループは、STEMI患者において、COVID-19の有無別の患者の特徴や治療、転帰の比較を目的とする後ろ向きコホート研究を行った。 解析には、米国のVizient Clinical Databaseに登録された509施設のデータが用いられた。対象は、2019年1月1日~2020年12月31日の期間に、これらの施設に入院した院外または院内のSTEMI患者(18歳以上)であった。院外例は入院時にSTEMIが認められた患者、院内例は入院中にSTEMIを発症した患者と定義された。 主要アウトカムは院内死亡とし、COVID-19の診断の有無で傾向マッチングを行った。院内死亡率は院外群15.2% vs.11.2%、院内群78.5% vs.46.1% 院外STEMI群は370施設の7万6,434例(マッチング後はCOVID-19群551例、非COVID-19群2,755例、51~74歳64.1%、男性70.3%)、院内STEMI群は353施設の4,015例(マッチング後はCOVID-19群252例、非COVID-19群756例、51~74歳58.3%、男性60.7%)が解析に含まれた。 院外STEMI群の院内死亡率は、COVID-19群が15.2%と、非COVID-19群の11.2%と比較して有意に高かった(群間の絶対差:4.1%[95%信頼区間[CI]:1.1~7.0]、オッズ比[OR]:1.43[95%CI:1.1~1.86]、p=0.007)。また、院内STEMI群の院内死亡率は、COVID-19群が78.5%、非COVID-19群は46.1%であり、COVID-19の合併は院内STEMI患者の死亡率を上昇させた(群間の絶対差:32.4%[29.1~35.9]、OR:4.11[2.97~5.69]、p<0.001)。 院外STEMI群では、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカム(COVID-19群18.0% vs.非COVID-19群13.2%、群間の絶対差:4.8%[95%CI:1.6~7.9]、p=0.003)および死亡と脳卒中の複合アウトカム(18.0% vs.13.1%、4.8%[1.7~8.0]、p=0.002)の発生率が、いずれもCOVID-19群で高かった。同様に、院内STEMI群でも、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカム(80.9% vs.50.9%、29.9%[26.7~33.2]、p<0.001)および死亡と脳卒中の複合アウトカム(80.9% vs.50.4%、30.5%[27.2~33.7]、p<0.001)の発生率は、いずれもCOVID-19群で高率だった。 著者は、「STEMI患者では、COVID-19の合併が院内死亡率の上昇と有意に関連した」とまとめ、「これらの関連性の根底にある潜在的なメカニズムを理解するには、新たな研究を要する」としている。

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アトピー性皮膚炎の精神面への影響、4歳児でも

 英国の小児1万1千例超を長期10年にわたって追跡したコホート研究で、小児におけるアトピー性皮膚炎(AD)とメンタルヘルスの関連が明らかにされた。重症ADは、小児期のうつ症状および内在化症状を呈する可能性を約2倍増大することが、また、軽症~中等症ADはうつ症状との関連は認められなかったが、4歳という早い時期に内在化問題行動との関連が認められたという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のChloe Kern氏らが報告した。 先行研究で成人におけるADとメンタルヘルス状態の関連は明らかにされているが、小児に関しては、世界中でADの大きな負荷が問題になっているが、メンタルヘルス併存疾患の発症に関する文献は限られている。JAMA Dermatology誌2021年10月号掲載の報告。 研究グループは、小児および思春期の複数時点で、ADと内在化問題行動およびうつ症状との関連を調べ、また喘息/鼻炎、睡眠、炎症など潜在的な媒介因子を調べる住民ベースの縦断的出生コホート研究を行った。UK Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenの登録児について、出生から平均10.0年間(SD 2.9)追跡した児のデータを解析した。データの収集期間は1990年9月6日~2009年12月31日で、解析は2019年8月30日~2020年7月30日に行われた。 屈面性皮膚炎(flexural dermatitis)に関する標準化質問票によって測定した年間AD有病率を、月齢6ヵ月~18歳の11時点で評価。主要評価項目は、うつ病の症状(10~18歳の5時点でShort Moods and Feelings Questionnaireを用いて得た小児からの回答で測定)、内在化問題行動(4~16歳の7時点でEmotional Symptoms subscale of the Strength and Difficulties Questionnaireを用いて得た母親からの回答で測定)であった。 主な結果は以下のとおり。・解析には、1万1,181例の小児が含まれた(男子5,721例[51.2%])。・期間中のうつ症状有病率は、6.0~21.6%、内在化問題行動は10.4~16.0%であった。・軽症~中等症ADは、うつ症状との関連は認められなかったが、内在化問題行動は4歳という早い時期に関連が認められた(補正後モデルにおける小児期全体の平均増大オッズ:29~84%)。・重症ADは、うつ症状(補正後オッズ比:2.38、95%信頼区間[CI]:1.21~4.72)、内在化問題行動(1.90、1.14~3.16)と関連していた。・睡眠の質は、上記の関連の一部を媒介していたが、睡眠時間、喘息/鼻炎、炎症マーカー(IL-6、CRP)値の違いによる関連は認められなかった。

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新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第86回

新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」今回は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬「ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に対して、新しい作用機序で心血管イベントリスクを低減させることが期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2021年6月23日に承認され、9月15日に発売されました。なお、左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。<用法・用量>通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量します。なお、血圧など患者の状態に応じて適宜減量します。<安全性>国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)において、副作用は本剤投与群2,519例中367例(14.6%)で報告されました。主な副作用は、低血圧172例(6.8%)、浮動性めまい37例(1.5%)、悪心19例(0.8%)、起立性低血圧、消化不良各14例(0.6%)、疲労11例(0.4%)、頭痛10例(0.4%)などでした。なお、重大な副作用として、低血圧(7.4%)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は心臓や血管の機能を調節し、慢性心不全が悪くなるのを抑えます。2.血管を拡張させる作用によって、めまい・ふらつきが現れることがあります。高い所での作業、自動車の運転や機械の操作には注意してください。3.(女性に対して)本剤を服用中および服用終了後一定期間は確実な方法で避妊してください。妊娠を希望する場合は医師に伝え、今後の方針について相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、慢性心不全の適応で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。既存のsGC刺激薬としてはリオシグアト(商品名:アデムパス)が肺動脈性肺高血圧症などの適応で承認されています。慢性心不全の病態では、内皮細胞機能不全による一酸化窒素(NO)産生の低下やsGCの機能不全により、cGMPシグナルの低下が引き起こり、その結果として心筋および血管の機能不全の一因、さらには心不全の悪化に寄与していると考えられます。本剤は、NO受容体であるsGCを直接刺激する作用と、内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序により、心血管系の重要なシグナル伝達経路であるNO-sGC-cGMP経路を活性化して、慢性心不全の進行を抑制します。日本人を含む国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)では、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFrEF患者に対して本剤またはプラセボが投与されました。前治療として、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤併用療法を受けていた患者が59.7%を占めていました。その結果、本剤群では、心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発現の相対リスクが10%減少しました(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98)。本剤と既存のsGC刺激薬であるリオシグアトは、降圧作用を増強する恐れがあるため併用禁忌であり、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬、一硝酸イソソルビドなどの硝酸剤およびNO供与剤も同様の理由から併用注意となっています。なお、本剤投与前の収縮期血圧が100mmHg未満の患者では過度の血圧低下が起こる恐れがあるため血圧の確認も必要です。近年、HFrEFに対する新しい治療薬として、HCNチャネル阻害薬のイバブラジン(商品名:コララン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(同:エンレスト)、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(同:フォシーガ)などが使用できるようになりました。本剤は既存の治療薬とは異なる作用機序であり、標準治療が効果不十分な患者であっても心血管イベントリスクが低減する可能性があります。参考1)PMDA 添付文書 ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg

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問診が要の片頭痛、判断基準を整理しよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第8回

第8回 問診が要の片頭痛、判断基準を整理しよう!―Key Point―二次性頭痛の除外が最も大切である二次性頭痛が否定的ならば、片頭痛の特徴的症状がないかを問診で確認する三叉神経・自律神経性頭痛は片頭痛と治療が異なるので鑑別は重要症例:27歳 女性主訴)頭痛現病歴)生来健康な27歳女性。1ヵ月前から毎日1時間続く、ひどい頭痛を主訴に来院。いつも右の頭部に痛みがある。このような頭痛の経験はない。片頭痛の既往はなし。NSAIDs(商品名:ロキソニン)は効かない。2週間前から、頭痛時に頭痛と同じ右側の目から流涙、右鼻から鼻汁あり。ズキズキするひどい痛みが1時間続く。明け方4時30分頃や20時頃に、決まって毎日右側の頭痛あり。20~21時の頭痛は目をえぐられる感じ。頭痛時に落ち着きがなくなり歩き回る。既往歴)特になし薬剤歴)定期服用薬なし経過)症状から群発頭痛を疑った。酸素投与とトリプタン(皮下注)の投与を開始した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!雷鳴頭痛は内科エマージェンシー。くも膜下出血が最多三叉神経・自律神経性頭痛を見逃さない。群発頭痛が最多インドメタシンが著効する頭痛がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】二次性頭痛を除外し、片頭痛なのか診断しよう■二次性頭痛を疑うred flag1)初めて経験する、または最悪の頭痛突然発症した雷鳴様頭痛増悪する、または今までとはまったく異なるパターンの頭痛脳神経学的異常所見あり50歳以上の新規発症頭痛担がん、凝固異常、免疫抑制状態の患者、妊婦に起こった新規の頭痛意識変容や意識障害を伴う頭痛体位、労作、性行為、バルサルバ法により誘発された頭痛これらがあれば、MRIでの精査が必要となる。■雷鳴頭痛*の鑑別診断1)*1分以内に最高となる突然発症の頭痛くも膜下出血(最多)、脳静脈洞血栓症、内頸動脈解離/椎骨動脈解離、可逆性脳血管攣縮症候群、可逆性後白質脳症症候群、下垂体卒中、緑内障発作、脳梗塞可逆性脳血管攣縮症候群は2番目に多い。入浴やシャワー、性行為、薬剤が誘引となり雷鳴頭痛を繰り返す■片頭痛なのか診断二次性頭痛が否定されれば、医療機関を訪れる患者の90%は片頭痛である片頭痛は軽症から重症までいろいろな表現形を持つ。緊張型頭痛と誤って診断される片頭痛は非常に多い。片頭痛の問診(POUND)2):3つ以上の項目が当てはまるなら、片頭痛と診断できる。PPulsatile quality(拍動性)O4-72 hOurs(4〜72時間続く)UUnilateral location(片側性)NNausea/vomiting(吐き気)DDisabling intensity(日常生活に支障)薬剤乱用頭痛、睡眠時無呼吸症候群、カフェイン中毒を否定することが大切である頭痛ダイアリーは診断に大いに役立つ【STEP2-2】三叉神経・自律神経性頭痛(TACs: trigeminal autonomic cephalalgias)を鑑別のために、次のいずれかの症状の有無を疑う■下記の自律神経症状(頭痛と同側に起こる)の発症、または発作中に興奮し落ち着きがなくウロウロ歩き回る結膜充血または流涙鼻閉または鼻汁眼瞼浮腫前額部と顔の発汗縮瞳または眼瞼下垂■群発頭痛(TACsでは最多)1,3)「キリで眼を突き刺されるような」かなり激しい片側性の頭痛かつては男性にほぼ特有の疾患と考えられていたが、最近の疫学統計では男女比は3~7:1発作の頻度は1日に1~8回、夜間決まった時刻に起こることが多い持続時間は15~180分で、数週〜数ヵ月続くアルコールが誘引となる■インドメタシンが著効する頭痛発作性片側頭痛(頻度:1~40回/日、持続:2~30分)や持続性片側頭痛(頻度:3~200回/日、時々悪化しながら持続する痛み)がある3)【STEP3】治療■片頭痛急性期治療はNSAIDs、トリプタン製剤、制吐薬である。いくつかを組み合わせて使うと効果的である頭痛が起こって1時間以内に薬を使うことが大切である皮膚アロディニア(感覚異常)が起こってからではトリプタン製剤の効果は減る。トリプタン製剤は十分な量を使用し、効果がなければ別のトリプタン製剤を試すと有効なことがある1ヵ月に10日以上、片頭痛発作があるときは、予防治療を考慮する。非薬物的療法として、規則正しい睡眠、分割した少量ずつの食事、十分な水分摂取を指導する。薬物ではプロプラノロール(商品名:インデラル)、トピラマート(商品名:トピナ)を用いる1)■群発頭痛治療は高流量の酸素投与(リザーバーマスクで12L/分、15分間)とスマトリプタン(商品名:イミグランキット)の皮下注を行う。経口トリプタン製剤は効果発現が遅いため役に立たない。群発頭痛の予防はベラパミル(商品名:ワソラン)を用いる。<参考文献・資料>1)ACP MKSAP19 Neurology. P1, 20212)Wilson JF, et al. Ann Intern Med. 2007;147:ITC11-1-ITC11-16.3)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 26th. Elsevier. 2020.p2316-2323.日本頭痛学会:頭痛ダイアリー日本神経学会、日本頭痛学会、日本神経治療学会:頭痛の診療ガイドライン2021

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英語で「随時報告します」は?【1分★医療英語】第2回

第2回 英語で「随時報告します」は?I want to know when my surgery will be...(手術がいつか知りたいのですが…)Not decided yet, but I will keep you posted.(まだ決められませんが、随時報告します)《例文1》患者So, did you find anything on my CT scan?(CTで何がわかりましたか?)医師Well, the official report is still pending, but I will keep you posted.(まだ正式な報告書を待っているところですが、随時報告しますね)《例文2》患者Do I need surgery now? (手術が今必要ですか?)医師I understand your concern. We are still discussing your best treatment plan, but I promise we will keep you updated.(心配なのはわかります。最善の治療法をまだ検討中ですが、随時報告いたします)《解説》“I will keep you posted/updated.”は、米国の臨床現場では非常によく使われる表現です。患者やご家族からの質問は絶え間なくありますが、その場ですべてに回答できるわけではありません。正式な検査結果がまだ出ていなかったり、他科の医師と治療方針の協議中だったり、あるいは外来スケジュールの調整が必要だったりします。そのような場合に使える表現として、この“I will keep you posted/updated.”があります。絶え間なく変化する状況の中で物事を決定する医療現場にあって、「新たなことがわかり次第、お知らせします」というこの表現は有用性が高いのです。“post”には「手紙を投函する」や、最近では「SNSに動画や写真を投稿する」といった意味がありますが、「情報を知らせる」という意味もあります。“update”は日本語ではカタカナで使われているとおり「アップデートする」という意味です。したがって、“keep someone posted/updated”で「~に随時情報を知らせる」という意味になります。この表現は非常に便利で、同僚や上司から「随時連絡ください」という意味合いで“Please keep me posted/updated!”と言われることもあります。似たようなニュアンスを持つ言い回しとしては、“I will let you know when I know more.”もありますが、やはりより簡潔な今回紹介した表現のほうが頻繁に使われます。ぜひ使ってみてください。講師紹介

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第86回 COVID-19後遺症、感染と関連したのは無嗅覚のみ?

フランスのおよそ3万人(26,823人)の試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したと自己申告した人は調べた20近いさまざまな症状のほぼすべてのいずれかを長く(8週間以上)経験していましたが、抗体検査や医師の診断等で裏が取れたSARS-CoV-2感染と関連した症状は嗅覚消失の1つのみでした1,2)。調べた症状は睡眠障害、関節痛、背痛、胃腸異常(胃痛、下痢、便秘)、筋肉痛、疲労、注意困難、皮膚の異常、感覚症状(ヒリヒリしたり焼けるような感じ等)、聴覚障害、頭痛、呼吸困難、動悸、めまい、胸痛、咳、無嗅覚、その他の18項目で、SARS-CoV-2感染の自認は聴覚障害と睡眠障害を除く他全部と関連しました。対照的に、感染したことを裏付ける抗体検査陽性はただ1つ無嗅覚(嗅覚消失)とのみ関連しました。抗体検査陽性の人数は1,091人で、そのうち4割ほどの453人が感染を自認していました。医師や臨床検査(laboratory test)による判断でSARS-CoV-2感染が確認されていることも抗体検査陽性と同様に無嗅覚とのみ唯一関連しました。それらの結果によると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に長く続く症状は感染そのものより感染したという念に駆られること(belief in having experienced COVID-19)とより関連するようです。SARS-CoV-2自体のせいではなさそうなCOVID-19後の長患いが生じる仕組みを今後の研究で調べる必要があります。大学の運動部学生のCOVID-19後遺症は稀感染したという思い込みに起因するものを含めて理由はどうあれCOVID-19後の患者の多くが後遺症を被ります。たとえばスイスのジュネーブの外来患者を調べた試験ではCOVID-19診断から30~45日時点の少なくとも約3人に1人(32%)に長引く症状が認められています3)。しかし、常に体を鍛えている若者にCOVID-19後遺症が付け入る余地はどうやらほとんどないらしく、米国の大学の運動部の学生3千人超を調べたところSARS-CoV-2感染後の後遺症はほとんど認められませんでした4)。発症から3週間を超えて症状が続いた学生の割合は1.2%(44/3,529人)、12週間を超えて症状が続いていた割合は僅か0.06%(2/3,529人)でした。部活に復帰してからの胸痛、息切れ、疲労、動悸等の労作性症状の割合も低く4%(137/3,393人)でした。ただし、部活に復帰してから胸痛があって心臓MRI検査を受けた学生のうち21%(5/24人)におそらくまたは確実な心臓の支障が見つかりました。運動部の大学生のCOVID-19後遺症は少ないと分かって一安心ですが、感染後に部活に復帰した選手の体調は気をつけて見守って把握し5)、もし労作性の胸痛があれば心臓MRI検査を検討するべきでしょう。参考1)Long COVID symptoms may have causes other than SARS-CoV-2 / University of Minnesota2)Matta J, et al. JAMA Intern Med.2021 Nov 8. [Epub ahead of print]3)Nehme M, et al.Ann Intern Med2021 May;174:723-725.4)Petek BJ, et al.Br J Sports Med. 2021 Nov 1:bjsports-2021-104644. 5)Lingering COVID symptoms in young, competitive athletes rare, large study finds / Eurekalert

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抗精神病薬の最小有効維持用量への挑戦~10年間のフォローアップ調査

 初回エピソード精神疾患に対する抗精神病薬による長期治療の必要性については議論の余地がある。台湾・国立台湾大学のChen-Chung Liu氏らは、抗精神病薬治療の継続か、投与中止かの2つの案を超えた代替案があるかを調査した。Frontiers in Psychiatry誌2021年9月7日号の報告。 本レトロスペクティブ観察研究では、2006年スタートの早期精神疾患研究に参加した患者のカルテデータを分析した。低用量の抗精神病薬投与で良好な機能を達成できている患者にとくに注目した。 主な結果は以下のとおり。・初回エピソード精神疾患患者81例のうち、55例(67.9%)は5年以上のフォローアップ期間を有していた。・多くの患者は非情動性精神疾患に罹患していた(46例、83.6%)。・55例中20例(36.4%)は、最終診察時までフルタイムで就業/教育を続けていた。そのうち15例は、最小有効用量以下の抗精神病薬投与を受けていた(クロルプロマジン[CP]換算量:200mg/日)。・また、55例中10例(18.2%)は、維持療法期間中の抗精神病薬の投与量がCP換算量50mg/日未満と非常に少なく、このことが良好な機能と有意に関連していた。・機能低下と関連していた因子は、男性、入院歴、クロザピン治療歴であった。・抗精神病薬治療が行われていなかった患者は、非情動性精神疾患患者の2例のみであった。 著者らは「抗精神病薬の長期使用を完全に中止できなかったとしても、多くの患者では、初回エピソード精神疾患後の維持治療において、抗精神病薬の低用量投与を実現し、良好な機能を達成することができると考えられる。維持療法中、抗精神病薬の用量を微調整することで再発予防と機能維持のバランスを最適に保つ治療を行うことは、臨床的に注目されるべき課題である」としている。

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CKD4/6阻害薬、HER2低発現の進行乳がんでの有効性は?

 CDK4/6阻害薬はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2-進行・再発乳がん(MBC)の1次/2次治療において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間を大幅に改善する。しかしながら、表現型および遺伝子解析では、有効性に関連する予測マーカーは特定されていない。今回、香港・クイーンエリザベス病院のKelvin K. H. Bao氏らは、CDK4/6阻害薬で治療されたHR+/HER2-MBC患者のHER2低発現と予後の関連を調査した結果、HER2低発現例ではCDK4/6阻害薬の有効性が低いことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年11月1日号に掲載。 本研究では、香港・クイーンエリザベス病院において、2017年3月~2020年6月にレトロゾールもしくはフルベストラントとの併用でCDK4/6阻害薬を投与されたHR+/HER2-MBCの患者について調べた。HER2-低発現はIHCスコア1+もしくは2+かつISH陰性とした。また、PFSはCDK4/6阻害薬投与開始日から病勢進行または死亡までの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象のMBCの女性患者は106例で、治療時の年齢中央値(範囲)は58.0(23.0~91.4)歳、90例(84.9%)がパルボシクリブ、16例(15.1%)がリボシクリブを投与されていた。54例(50.9%)が1次治療で投与されていた。・乳管組織型が88例(83.0%)、エストロゲン受容体Hスコア200以上が76例(71.7%)、プロゲステロン受容体陽性が81例(76.4%)だった。・PFS中央値は、HER2低発現の82例(77.3%)では8.9ヵ月(95%CI:6.49~11.30)で、HER2 IHCスコア0の24例における18.8ヵ月(95%CI:9.44~28.16)より短かった(p=0.01)。・多変量解析において、治療ライン(2次治療以降のラインに対する1次治療のHR:0.30、95%CI:0.18~0.53、p

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2020年の平均余命、コロナ影響で多くの国が低下/BMJ

 2020年に、世界31ヵ国で2,800万年を超える損失生存年数(YLL)の超過が発生し、発生率は女性よりも男性で高く、この年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行に関連した超過YLLは、2015年の季節性インフルエンザの5倍以上に達することが、英国・オックスフォード大学のNazrul Islam氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年11月3日号に掲載された。37の国と地域の時系列分析 研究グループは、COVID-19の世界的大流行に関連する2020年の平均余命およびYLLの変動を評価する目的で、37の国と地域の時系列分析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、高中~高所得の国と地域の死亡データが用いられた。2005~20年のHuman Mortality Databaseから、年間総死亡のデータが収集された。 Lee-Carterモデルを用いて、2020年の平均余命の低下が、観察余命と期待余命の差として推算された。また、世界保健機関(WHO)の標準生命表を用いて、2020年の超過YLLが、観察YLLと期待YLLの差として推算された。平均余命が低下しなかったのは6つの国と地域のみ 2020年に、ニュージーランド、台湾、ノルウェーでは平均余命の上昇が認められたが、デンマーク、アイスランド、韓国では平均余命の変化の証拠がなく、これら6つの国と地域以外では、男女とも平均余命が低下した。 ルクセンブルクを除くすべての国で、出生時の平均余命の低下が女性よりも男性で大きかった。平均余命の減少が最も大きかったのは、ロシア(男性:-2.33年[95%信頼区間[CI]:-2.50~-2.17]、女性:-2.14年[-2.25~-2.03])、米国(-2.27年[-2.39~-2.15]、-1.61年[-1.70~-1.51])、ブルガリア(-1.96年[-2.11~-1.81]、-1.37年[-1.74~-1.01])、リトアニア(-1.83年[-2.07~-1.59]、-1.21年[-1.36~-1.05])、チリ(-1.64年[-1.97~-1.32]、-0.88年[-1.28~-0.50])、スペイン(-1.35年[-1.53~-1.18]、-1.13年[-1.37~-0.90])の順であった。 YLLについては、台湾、ニュージーランド、ノルウェー、アイスランド、デンマーク、韓国の6ヵ国/地域では、2020年の観察YLLが期待YLLを下回った。残りの31ヵ国では、2020年に2億2,200万年の生命の損失が認められ、期待YLL(男性:1,730万年[95%CI:1,680~1,780]、女性:1,080万年[1,040~1,130])よりも、観察YLLが2,810万年上回った。 10万人当たりの超過YLLが最も大きかったのは、ブルガリア(男性:7,260年[95%CI:6,820~7,710]、女性:3,730年[2,740~4,730])、ロシア(7,020年[6,550~7,480]、4,760年[4,530~4,990])、リトアニア(5,430年[4,750~6,070]、2,640年[2,310~2,980])、米国(4,350年[4,170~4,530]、2,430年[2,320~2,550])、ポーランド(3,830年[3,540~4,120]、1,830年[1,630~2,040])、ハンガリー(2,770年[2,490~3,040]、1,920年[1,590~2,240])の順であった。 超過YLLは、全般に65歳未満の集団で相対的に低かったが、65歳未満の超過YLLが10万人当たり2,000年を超えた国として、ロシア(3,290年、95%CI:2,780~3,810)、ブルガリア(2,650年、2,220~3,070)、リトアニア(2,580年、1,790~3,410)、米国(2,390年、2,280~2,510)が挙げられた。 これら2020年のCOVID-19の世界的大流行に関連した超過YLLは、2015年の季節性インフルエンザの5倍を超えていた。 著者は、「これらの知見は、標的を絞った人口ベースの公衆衛生施策に基づく介入などによるウイルス抑制・排除の重要性を強調するものであり、今後の世界的大流行の衝撃に対処するには、より回復力の高い医療システムを目指した包括的な対策が鍵となるだろう」とし、「世界的大流行の影響は、生命に測定可能な作用を及ぼすまで長い時間を要する可能性があるため、超過YLLの持続的で時宜にかなったモニタリングは、超過死亡や超過YLLの原因を特定するのに役立つであろう」と指摘している。

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EGFR陽性肺がん1次治療ラムシルマブ+エルロチニブの日本人サブセット(RELAY)/JTO Clin Res Rep

 未治療のEGFR変異非小細胞肺がん(NSCLC)に対するラムシルマブ+エルロチニブの1次治療は、国際第III相RELAY試験で無増悪生存期間を有意に延長した(ハザード比率[HR] =:0.59、p<0.0001])。同試験の日本人サブ解析の結果が発表された。グローバルと同様の良好な結果が示されている。 この日本人サブ解析では有効性、安全性および進行後のEGFRT790M変異発現率を評価している。 主な結果は以下のとおり。・RELAY試験449例中、日本人サブセットは211例(47.0%)で、ラムシルマブ+エルロチニブ(RAM+ERL群)106例、プラセボ+エルロチニブ(ERL群)105例に割り付けられた。・日本人ITT集団のPFS中央値はRAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群11.2ヵ月(HR :0.610、95%:0.431~0.864)であった。・EGFRexon19欠失グループではRAM+ERL群16.6ヵ月、ERL群12.5ヵ月(HR:0.701、0.424~1.159)であった。・EGFRexon21 L858RグループではRAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群10.9ヵ月(HR:0.514、0.317~0.835)であった。・RAM+ERL群のGrade3以上の有害事象は高血圧(24.8%)、ざ瘡様皮膚炎(23.8%)などであった。・治療進行後のエルロチニブ耐性によるEGFRT790M発現率はRAM+ERL群47%、ERL群50%、と両群間で同等であった。 ラムシルマブ+エルロチニブの1次治療は、日本人サブセットにおいて、臨床的に意味のある有効性を示し、新たな安全性の問題も認められなかった。ラムシルマブの追加が、治療進行後EGFRT790Mのへ発現に影響をおよぼすこともなかった。

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第78回 HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討

<先週の動き>1.HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討2.コロナワクチン3回目接種を特例承認、12月から実施へ/厚労省3.大手医薬品卸6社の談合疑惑で立ち入り検査/公取委4.介護・保育職で3%の賃上げ、看護師なども給与水準UPを5.急性期医療の集約化をめぐって議論白熱/中医協6.財務省、診療報酬のマイナス改定を求める/財政制度等審議会1.HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開催し、子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の呼びかけ再開について検討された。海外の大規模調査で子宮頸がんに対する予防効果が示されたことや、接種後の副反応について診療・相談体制など強化を行っていること、ワクチンの安全性と有効性について十分な情報提供が行われるようになっていることから、再開を妨げる要素はないとし、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を了承した。2013年6月以降、定期接種の機会を逃した人へのキャッチアップ接種などの対応についても、予防接種・ワクチン分科会において引き続き議論を行っていくことになった。(参考)HPVワクチン、積極的勧奨の再開を了承 厚労省の審議会(buzzfeed)HPVワクチン接種の積極勧奨再開へ 専門部会が了承、厚労省近く決定(CBnewsマネジメント)子宮頸がんワクチン、8年ぶりに積極勧奨再開 自民の一部「性の乱れ」と抵抗、コロナ追い風に(東京新聞)資料 HPVワクチンについて(厚労省)2.コロナワクチン3回目接種を特例承認、12月から実施へ/厚労省厚労省は11日、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン「コミナティ筋注」について、3回目接種の用法・用量追加を特例承認した。2回目のワクチン接種後8ヵ月以上経った18歳以上の希望者に来月から3回目の接種を行うため、本日より全国の自治体や医療機関に配送が開始される。(参考)3回目接種用のワクチン 約400万回分 あすから全国に配送(NHK)厚労省 新型コロナワクチン「コミナティ」の3回目接種を特例承認(ミクスonline)ファイザー製ワクチン、18歳以上のブースター接種を厚労省が承認(ケアネット)3.大手医薬品卸6社の談合疑惑で立ち入り検査/公取委独立行政法人「国立病院機構」が発注する医薬品の入札をめぐり談合を繰り返した疑いがあるとして、公正取引委員会が大手医薬品卸会社の福岡支店などに立ち入り検査したことが明らかになった。検査を受けたのは、九州シェア首位のアステム(本社・大分市)、アトル、翔薬、九州東邦(いずれも同・福岡市)、富田薬品(同・熊本市)、アルフレッサ(同・東京)の九州拠点。関係者によると、6社は2016年度以降、国立病院機構本部が発注する医薬品の一般競争入札で、事前に話し合って受注者を決めていた疑いがある。公取委は昨年12月、別の独占禁止法発注の入札を巡る談合容疑で大手卸系の3社を刑事告発しており、これを調べる過程で今回の容疑が新たに浮上したとみられる。(参考)医薬品の入札めぐり談合容疑 卸会社の支店などに立ち入り検査(NHK)国立病院機構など発注の医薬品、6社で談合か…公取委が立ち入り検査(読売新聞)地方の卸にもメス、公取委の狙いは 医薬品卸に再び談合容疑(朝日新聞)4.介護・保育職で3%の賃上げ、看護師なども給与水準UPを政府は介護職員や保育士の処遇改善策として、賃金の引き上げ幅を現行月収の3%程度とする方針を決めた。看護師も同程度の引き上げを検討し、幼稚園教諭などの賃金も上げる。19日に決定する経済対策に盛り込むこととなった。現在の介護職や看護職の給与水準については、全職種平均と比べて低い状況であり、岸田首相も、介護職員や保育士らの収入増を最優先課題に掲げており、早急な手当てが必要としてきた。(参考)保育士や介護職、3%賃上げへ…事業者支援は最大250万円(読売新聞)介護・保育・看護の賃金3%アップへ 政府調整、一部対象絞る案も(朝日新聞)介護・保育3%賃上げ、看護師も検討 経済対策政府検討 困窮世帯に30万円の再支給も(日経新聞)5.急性期医療の集約化をめぐって議論白熱/中医協厚労省は、来年度に実施される診療報酬改定に向けて中医協の総会を13日に開催し、急性期医療や地域包括ケア病棟について議論を行った。支払い側からは、医療・看護必要度や重症度患者割合を厳格化し、高度急性期について集約化を求める意見が出されたが、診療側からはコロナ禍の影響を受けている中でのデータを元にした見直しに慎重な姿勢を示した。また、地域包括ケア病棟では、「自院の急性期病棟から転棟」の患者が中心となっているなど、受け入れ患者が大きく偏っている病棟があり、次の診療報酬改定にどのように行っていくか議論が佳境に入っている。(参考)中医協総会で支払側 コロナ禍での脆弱性是正へ急性期入院医療で「医療資源の集約化」求める(ミクスonline)地ケア病棟、機能の差で「評価のめりはり付けを」中医協・支払側が要望、診療側は反対姿勢(CBnewsマネジメント)ICU看護必要度のB項目廃止案、支払側は理解示すが、診療側は反対し入院医療分科会の批判も―中医協総会(Gem Med)看護必要度、一般病棟用「心電図モニター」等の除外を巡り意見が対立 支払い側は賛成、診療側は「2022年度改定での削除はあり得ない」と猛反発(日経ヘルスケア)6.財務省、診療報酬のマイナス改定を求める/財政制度等審議会財務省は財政制度等審議会財政制度分科会を8日に開催し、2022年度の予算編成に当たって、これまでの診療報酬改定は医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたとし、引き続き医療費の適正化を図るため、躊躇なく「マイナス改定」をすべきと主張した。症状が安定している患者については、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方についても時機を逸することなく導入すべきだとした。なお、リフィル処方の導入に当たっては向精神薬等については避けるべきであり、生活習慣病等に対象を限るべきだと方向性が示された。(参考)財務省ふくらむ医療費に注文 診療報酬の「マイナス改定」も想定(朝日新聞)診療報酬本体、財務省「ためらわず下げを」高止まりを指摘、DRG導入も主張(CBnewsマネジメント)資料 財政制度分科会(令和3年11月8日開催)

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精神症状に書道が効果的というメタ解析【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第198回

精神症状に書道が効果的というメタ解析いらすとやより使用中国書道療法(Chinese calligraphy therapy)、要は漢字をきれいに毛筆で書く行動療法の1つですが、これまでの研究を集めてメタ解析したものがあります。ちなみに私、書道は大の苦手で、高校のときに真剣に書いた字を笑われたことがあります。Chu K, et al.Does Chinese calligraphy therapy reduce neuropsychiatric symptoms: a systematic review and meta-analysisBMC Psychiatry. 2018 Mar 7;18(1):62.英語および中国語のデータベースを検索し、入手可能な文献(出版年の下限は問わず)から2016年12月までの文献を検索しました。ランダム化比較試験など信頼性の高い文献を集め、21論文を解析しました。ヘテロな集団ではありますが、書道療法は精神症状を有意に改善させました(p<0.01)。また、不安症状(p<0.001)、抑うつ症状(p<0.001)についても、有意な改善をもたらすことが示されました。統合失調症の症状についても、有意に軽減したと報告されています(陽性症状:p=0.003、陰性症状:p<0.001)。メタ解析に含まれた研究は、ほとんどが15~30人という小規模な比較試験であり、統合して解析するにあたり、不均一な集団になってしまう点が懸念です。大規模な比較試験を行うには、少々手間が掛かる行動療法であることから、なかなかレクリエーションの域を出ない治療法に位置付けられたままになるかもしれません。身体を動かすという点では、大きな筆を持ってパフォーマンスをする書道のほうがメンタルにはよさそうですが、ランダム化比較試験を行うには少々大掛かりになってしまいます。

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小児アレルギーのトリセツ

「小児トリセツシリーズ」始動!アレルギー診療をマスターせよ小児におけるアレルギー疾患は増加の一途をたどっている。今やアレルギー診療は小児医療にとってコモンスキルといえる。しかし、アレルギー診療は外来のなかで話を聞き、診察と鑑別を繰り返し、対応を考えるということを短時間に行わなければならない非常にタフな分野である。専門性の高い食物アレルギーや気管支喘息の長期管理などは専門医にお任せ、という医師も多いだろう。しかし「誰でも、アレルギーは診れる」。本書は専門医ではないけれど、患者に相談されたときに的確に専門医レベルの対応ができるようになるためのマニュアルである。臨床で知りたいことがすぐわかる!「小児感染症のトリセツREMAKE」に続く、第一線・気鋭の単独著者による小児トリセツシリーズがついに始動。「トリセツ」で小児科医療はもっと面白くなる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    小児アレルギーのトリセツ定価3,960円(税込)判型B6変判頁数240頁発行2021年10月監修笠井 正志編集岡藤 郁夫著者田中 裕也電子版でご購入の場合はこちら

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がんと血栓症、好発するがん種とリスク因子は?【見落とさない!がんの心毒性】第8回

がん患者における血栓症は、頻度が多いにも関わらず見逃されやすい病気です。慎重な身体診察と適切な検査を行うことで、早期診断、早期治療を行うことが重要です。近年、がん患者の血栓症の発症頻度は増加傾向にあり、がん関連血栓症(CAT :Cancer-Associated Thrombosis)と呼ばれて注目されています。とくに、深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PTE)を合わせた静脈血栓塞栓症(VTE :venous thromboembolism)の頻度が高く、入院中のがん患者では約20%に起こると報告されています1)。主な原因は、がんや治療による血液凝固能の異常な活性化、長期臥床や血管の圧迫などによる血流のうっ滞、検査や治療による血管内皮障害により静脈血栓が形成されやすくなることです。さらに、診断率の向上、がん治療の長期化、がん患者の高齢化、心血管毒性を有する抗がん剤の使用なども増加の一因と考えられています。一方、がん患者の動脈血栓塞栓症の頻度は1%以下ですが、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患などの重篤な病態の原因となり注意が必要です。本稿では、VTEの診断と治療のポイントを解説します。症状と診断VTEを診断するための重要なポイントは、症状を見逃さないように注意深く病歴を聴取し、全身の診察を怠らないことです。DVTの症状では、四肢の腫脹、疼痛、皮膚の色調変化が重要ですが、時に症状に乏しく突然のPTEを来たして診断されることもあります。PTEの症状では、呼吸困難、胸痛が多く、そのほかに咳嗽、喘鳴、動悸、失神などが見られます。急性PTEは致死率が高いため、Dダイマー上昇などの検査所見からVTE を疑うことも重要です。(表1)にDVT、PTEの診断を予測する代表的な「Wellsスコア」「改訂ジュネーブスコア」を示します。「Wellsスコア」では合計点数が3点以上では高リスクで精査が必要ですが、2点以下(低or中リスク)でDダイマー陰性であればDVTの可能性は低くなります2)。「改訂ジュネーブスコア」においてPTEの頻度は1点以下で7.7%(95%信頼区間[CI]:5.2~10.8)、2~4点で29.4%(%同:26.6~33.1)、5点以上では64.3%(同%:48.0~78.5) と予測されています3)。日本のガイドラインでも、問診・診察・Dダイマー検査を行い、DVTが疑われる場合は下肢静脈超音波検査・造影CT、PTEの場合は胸部造影CTなどで確定診断を行うことを推奨しています4)。(表1)DVT、PTE診断における代表的なスコア画像を拡大するVTEのリスク因子がん患者におけるVTE発症のリスク因子は(表2)に示すように患者・がん・治療関連の因子に大別されます。先天性血栓素因やVTEの既往などの一般的な患者関連リスク因子に加えて、がん関連またはがん治療関連リスク因子が報告されています。がんの原発部位別にみると、膵臓がん、胃がん、脳腫瘍でVTEのリスクが高く、組織型、進行度も重要です。また、大手術や中心静脈カテーテル留置もリスクを上げます5)。化学療法中のがん患者は、非がん患者と比べるとVTE発症のリスクが6~7倍上昇すると報告され6)、とくに血管新生阻害薬、血液がんの治療に用いる免疫調整薬、ホルモン療法(タモキシフェンなど)では注意が必要です。(表2)がん患者のVTE発症リスク因子画像を拡大する管理法・治療法VTEの標準治療は抗凝固療法です。本邦で使用可能な抗凝固療法には点滴製剤である未分画ヘパリン(海外では低分子ヘパリンが推奨)、経口製剤としてワルファリン、直接経口抗凝固薬(DOAC)のアピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバンなどがあり、経口製剤単独もしくは点滴製剤と組み合わせて治療を行います。DOACは、がん患者を対象とした大規模臨床試験(Hokusai-VTE Cancer7)、CARAVAGGIO8)、SELECT-D9))において、VTE再発や重篤な出血に関して低分子ヘパリンと比較して遜色ない良好な成績が示されたことから、海外の最新のガイドラインではがん患者の急性VTEに対する治療として推奨されています10)。しかし、がん患者では抗がん剤と抗凝固薬との薬物相互作用(例:ワルファリンと5−FU)、抗凝固療法による出血リスクの上昇など、患者ごとに慎重な抗凝固療法の適応判断と薬剤選択を検討する必要があります。抗凝固療法の継続期間は、がん患者では再発リスクの観点から3ヵ月以上の長期的な使用が推奨されています。(表3)DOAC3剤とワルファリンの注意点画像を拡大するそのほかの治療として、血行動態が不安定となるような重症PTEに対して血栓溶解療法(商品名:クリアクター)や外科的血栓除去術を行うこともあります。また抗凝固療法が困難な症例や、抗凝固療法を行っているにもかかわらずVTEが増悪する症例に対しては下大静脈フィルターを留置し突然死を予防することもあります。VTEを発症した症例において、がん治療を中断・中止すべきかどうかは、個々の例の状況に応じて、腫瘍内科医と循環器内科医とが緊密に連携して検討する必要があります。1)Lecumberri R, et al. Thromb Haemost. 2013;110:184-190.2)Wells PS, et al. Lancet.1995;345:1326-1330.3)Klok FA, et al. Arch Intern Med. 2008;168:2131-2136.4)日本循環器学会編. 日本循環器学会編. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン)2017年改訂版)5)Ay C, et al. Thromb Haemost. 2017;117:219-230.6)Blom JW, et al. JAMA. 2005,;293:715-722.7)Raskob GE, et al. N Engl J Med. 2018;378:615-624.8)Agnelli G, et al. Engl J Med. 2020;382:1599-1607.9)Young AM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2017-2023.10)Stevens SM, et al. Chest. 2021 Aug 2.[Epub ahead of print]講師紹介

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