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第87回 規制緩和を背景に「感染性胃腸炎」が例年並みに増加中

国内でも、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染者が見つかり始めているが、一方で別の感染症による患者数が増えている。ノロウイルスやロタウイルスなどにより腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起きる感染性胃腸炎だ。例年は11月から増え始め、12月をピークにいったん減少し、1~3月ごろに再び増える傾向にある。12月のピークはノロウイルス、春のピークはロタウイルスによるもので、冬場に流行する感染性胃腸炎はウイルス性のものが多い。保育園や幼稚園、福祉施設などでの集団発生の多くはこの時期に発生し、少量のウイルスで感染するノロウイルスによるもの(ノロウイルス感染症)と推察される。子どもや高齢者では重症化や、嘔吐物による誤嚥性肺炎、最悪の場合は気道に詰まって窒息死することもある。また、ノロウイルス感染症の患者の糞便や嘔吐物には、大量のノロウイルス(感染者の吐物1g当たり100万個以上)が含まれており、適切な処理を行わないと2次感染も起こりうる。昨シーズンはコロナ禍による外出抑制で患者数は激減ところが、昨シーズンは過去に例がないくらい患者数が少なかった。その背景について東京都健康安全研究センターでは、コロナ禍で会食や外食の機会が減ったことによる影響が大きいのではないかと見ている。主な感染経路は経口感染で、人から人へ感染する場合と、食べ物から感染する場合などがあるからだ。しかし今シーズンは、規制が緩和され、人と会う機会も増えているため、11月から感染者数が増加し、例年並みのペースにまで近付いている。アルコール消毒より流水と石けん手洗いが効果商業施設などの入り口や家庭内でアルコール消毒が行われているが、感染性胃腸炎は通常の新型コロナ対策では防ぎ切れない。ノロウイルスやロタウイルスは、消毒剤への抵抗性が強く、消毒用アルコールはあまり効果がないと言われている。それより有効なのは、従来からの流水と石けんによる手洗いだという。国立感染症研究所によると、手のひら側はしわの多い部分や指の間、手の甲側は親指を中心に全体的に洗い残しが多いという。来院患者さんたちにも、意識してしっかりと洗うよう伝えたい。糞便や嘔吐物の処理には次亜塩素酸ナトリウム前述のように、糞便や嘔吐物を適切に処理することも重要だ。処理者は感染しないように、使い捨ての手袋やマスク、ガウンなどを着用する。また汚染した床は、乾いた嘔吐物が舞うことを防ぐため、乾燥させないよう速やかに、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系の消毒剤や家庭用塩素系漂白剤)で汚染場所の外側から中心に向かって浸すように拭くなど、汚染を広げないようにして処理する。じゅうたんなど次亜塩素酸ナトリウムを使いづらい場所で嘔吐した場合は、スチームアイロンによる熱処理が有効だ。ノロウイルスは熱に弱く、85度以上1分間以上の加熱で不活化するという。今の時期、新型コロナウイルスだけがクローズアップされ、その陰に隠れがちだが、経済活動が再び活気を取り戻し、着実に人流が増えている中、気を付けるべき感染症があることを改めて確認し、患者さんにも周知する必要があるだろう。

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日本人高齢者におけるコーヒー、緑茶、カフェインと認知症リスク

 コーヒー、緑茶、カフェインは、高齢者の認知症予防の潜在的な因子といわれているが、根拠となるエビデンスは十分ではない。新潟大学のNana Matsushita氏らは、中高年の認知症リスクとコーヒー、緑茶、カフェインの摂取との関連を調査した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2021年10月8日号の報告。1日3杯以上コーヒーを飲んでいる人では認知症リスクが50%減少 本研究は、8年間フォローアップを行ったコホート研究である。対象者は、40~74歳の日本の地域住民1万3,757人。2011~13年に自己記入式のアンケート調査を実施した。予測因子は、コーヒー、緑茶の消費量とし、そこからカフェインの摂取量を推定した。アウトカムは、介護保険データベースより抽出した認知症発症とした。調整済みハザード比(HR)の算出には、Cox比例ハザードモデル、遅延組み入れCoxモデルを用いた。 高齢者の認知症リスクとコーヒー、緑茶、カフェインの摂取との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・調査期間中の認知症発症数は309例であった。・コーヒーの消費量が多い人はHRが低く、五分位で最も消費量が多い群(326mL/日以上)は、最も少ない群(26mL/日未満)と比較しHRが有意に低かった(HR:0.49、95%CI:0.30~0.79)。・同様に、カフェイン摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比較しHRが有意に低かった(調整p for trend=0.0004)。・遅延組み入れCoxモデルにおいても、同様の結果であった。・これらの関連性は、男性では有意であったが、女性では有意な差は認められなかった。・コーヒーの消費量が1日2~2.9杯(HR:0.69、95%CI:0.48~0.98)および1日3杯以上(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89)の人は、0杯の人と比較しHRが低かった。・緑茶の消費量と認知症リスク低下との関連は、60~69歳でのみ有意な関連が認められた(調整p for trend=0.0146)。 著者らは「コーヒーやカフェイン摂取は、とくに男性において、用量依存的に認知症リスクの低下が認められた。1日3杯以上コーヒーを飲んでいる人では、認知症リスクが50%減少することが示唆された」としている。

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米国の主要ガイドライン、低エビデンスも推奨強が多い?/BMJ

 米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の作成した臨床ガイドラインについて、エビデンスの質が低いにもかかわらず、推奨の度合いが強い事例が少なくないことが示された。そうしたエビデンスの質と推奨の強さの「不一致」は、エビデンスベースのガイドラインと比べてコンセンサスベースのガイドラインに多かったという。カナダ・マックマスター大学のLiang Yao氏らが、ACC、AHA、ASCOの作成したガイドラインとそれに基づく推奨について実証分析を行い明らかにした。エビデンスに基づく医療とは、推奨の度合いとエビデンスの質が一致していることを原則とするが、コンセンサスベースのガイドラインでこの原則を満たしているかは明らかにされていなかったという。著者は「“信頼できる”ガイドライン作成のためには、エビデンスの質と推奨の度合いを適切に一致させることが鍵になる」と指摘している。BMJ誌2021年11月25日号掲載の報告。推奨の根拠や作成過程などを評価 研究グループは、推奨の度合いとエビデンスの質との整合性が、コンセンサスベースのガイドラインとエビデンスベースのガイドラインで異なるかを調べるため、2021年3月27日時点で検索を行い、ACC/AHA、ASCOが作成した臨床ガイドラインのうち、(a)エビデンスに基づく明確なコンセンサスから作られたガイドライン、(b)推奨を含むもの、(c)推奨がコンセンサスに基づくものか、エビデンスに基づくものかを明確に分類しているもの、(d)エビデンスの質とそれぞれの推奨の度合いを明記したものを抽出し調査した。 検証作業は2人1組で行い、それぞれが推奨について根拠がエビデンスかコンセンサスか、推奨作成に当たりグレードシステムを用いたかどうか、推奨の度合い、エビデンスの質といった推奨の特徴を評価した。また、弱いエビデンスに基づく強い推奨といった「不一致」が認められる推奨や、適切性基準に見合わない「不適切で不一致」な推奨事項の数を数えた。コンセンサスアプローチによる「不適切で不一致」推奨事例は2.6~5.1倍 ACC/AHAの12のガイドラインに基づく1,434件の推奨事項、ASCOの69のガイドラインに基づく1,094件の推奨事項が調査対象に含まれた。 質の低いエビデンスに基づくACC/AHAの504件の推奨のうち、200件(40%)がコンセンサスアプローチにより、304件(60%)がエビデンスアプローチにより作成されたものだった。 また、ASCOの質の低いエビデンスに基づく404件の推奨は、292件(72%)がコンセンサスアプローチによるもので、エビデンスアプローチは112件(28%)のみだった。 ACC/AHA、ASCOのガイドラインの両者において、コンセンサスアプローチのほうが、より多くの「不一致」の推奨事項を生み出しており(ACC/AHAガイドラインのオッズ比[OR]:2.1[95%信頼区間[CI]:1.5~3.1]、ASCOは同2.9[1.1~7.8])、またより多くの「不適切で不一致」な推奨事項を生み出していた(それぞれ2.6[1.7~3.7]、5.1[1.6~16.0])。

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ICIによる非小細胞肺がんの術前・術後補助療法の有効性を探る(CheckMate 77T試験)/日本肺学会

 最近のStageIIAからIIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後の5年生存率は50%以下であり、その治療効果は十分とはいえず、何らかの追加治療が必要とされてきた。 1990年代から化学療法を用いた術前補助療法が行われてきたが、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場。周術期治療への可能性が期待されている。そこで、化学療法にICIを加えた周術期治療の有用性を検証するCheckMate 77T試験が現在進行しており、その概要が第62回日本肺学会学術集会において、神奈川県立がんセンターの伊藤宏之氏から紹介された。 StageIIIAのNSCLC患者46例を対象に、化学療法にニボルマブを併用する術前補助療法の後に手術を施行する第II相試験として、NADIM試験が実施された。その結果、残存するがん細胞の面積ががん組織中に占める割合が 10%以下の症例の割合を表すmajor pathological response(MPR)が83%、病理学的完全奏効(pCR)は59%との良好な成績を示し、18か月後の無増悪生存率は81%、全生存率は91%となっていた。この結果を受け、第III相試験としてCheckMate 77T試験がデザインされた。 CheckMate 77T試験は、切除可能なNSCLC患者を対象に、組織型に基づく化学療法にニボルマブ360mgまたはプラセボを加えた術前補助療法を行い、さらに術後補助療法としてニボルマブ480mgまたはプラセボを1年間投与する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は盲検下独立中央評価委員会(BICR)による無イベント生存期間(EFS)、主な副次評価項目としてBICRによる全生存期間(OS)、pCR、およびMPR、安全性と忍容性などについても評価される。 対象は、切除可能なStage IIAからIIIBのNSCLCで、ECOG PS が0~1の患者。EGFR/ALK変異、脳転移、自己免疫疾患もしくはその疑いがある患者は除外された。 現在、日本を含む21ヵ国から115施設が参加し、2024年9月の修了を目指して試験が進行している。伊藤氏は、これまでICIは内科領域の治療で使われる薬剤であったが、今後は外科領域における周術期治療においても使用されるようになる可能性が高いとの期待を示した。

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mRNAワクチン後24週間の感染リスク、ワクチンで差はあるか/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン、「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を接種後24週間の感染リスクは4.5~5.8件/1,000人と低率であることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のBarbra A. Dickerman氏らによる、ワクチン接種済み米国退役軍人約44万人のデータの解析で明らかにされた。リスクは、BNT162b2よりもmRNA-1273で低く、こうした情勢はアルファ変異株、デルタ変異株が優勢だった時期にかかわらず一貫していたという。mRNAワクチンはCOVID-19に対して90%以上の効果があることが示されていたが、多様な集団におけるさまざまなアウトカムについて有効性の比較は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。リスク因子に応じ、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価 研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.7変異株(アルファ株)が猛威を振るっていた2021年1月4日~5月14日にかけて、「BNT162b2」または「mRNA-1273」の初回接種を受けた米国退役軍人を対象に、電子健康記録を基に分析を行った。 接種者のリスク因子に応じて、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価した。アウトカムは、記録されたSARS-CoV-2感染、症候性COVID-19、COVID-19による入院やICUへの入室および死亡で、Kaplan-Meier推定量を用いてリスクを推算した。 また、B.1.617.2変異株(デルタ株)の影響を評価するため、別途2021年7月1日~9月20日にワクチン接種を受けた退役軍人を対象に試験を行った。感染、発症、入院リスクはBNT162b2接種群よりmRNA-1273接種群で低い 「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種者それぞれ21万9,842人について分析を行った。 アルファ株流行期24週間の追跡期間中の確定感染の推定リスクは、BNT162b2群が5.75件/1,000人(95%信頼区間[CI]:5.39~6.23)、mRNA-1273群が4.52件/1,000人(4.17~4.84)だった。 同リスクはBNT162b2群がmRNA-1273群より高く、1,000人当たりの過剰イベント数は、確定感染が1.23件(95%CI:0.72~1.81)、症候性COVID-19が0.44件(0.25~0.70)、COVID-19による入院は0.55件(0.36~0.83)、同ICU入室は0.10件(0.00~0.26)、同死亡は0.02件(-0.06~0.12)だった。 なお、デルタ株流行期に注目した12週間の追跡調査において、確定感染に対する過剰リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、6.54件/1,000人(95%CI:-2.58~11.82)だった(リスク比:1.58、95%CI:0.85~2.33)。 結果を踏まえて著者は、「これらのワクチンについて有効性と安全性のさらなる比較評価が必要である」とまとめている。

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日本人ならでは?結果が出た後に垣間見える仕事への向き合い方【臨床留学通信 from NY】第28回

第28回:日本人ならでは?結果が出た後に垣間見える仕事への向き合い方フェローシップマッチの結果が出たのは昨年の12月でしたが、そこからは半年ほど内科レジデントの残りのローテーションを終え、今年7月からフェローシップとなりました。残り半年といえども、推薦状はすでにもらっており、かつマッチングも終えてしまったとなると、正直誰もが少しだらけがちになるのは米国気質かもしれません。日本では、あまり推薦状による縛り付けもなく、ある意味自由な研修で各々がやりたいことをやるということに尽きますが、米国では相互評価、推薦状の兼ね合いもあり、ネコを被るようにある程度気を遣っていた緊張関係が緩んでしまうということによるのでしょう。もちろん我々日本人で、Mount Sinai Beth Israelのメンバーではそのようなことはありませんでしたが、同僚の中には、研修の最後のほうになると明らかなずる休みなども散見されました。日本ならば、当直などでなければ日中の業務をほかのレジデントがカバーすることはさほどありませんが、米国ではレジデント同士で抜けた人員のカバーをし合います。そのためJeopardyと呼ばれるオンコール制の業務があるのですが、誰かが休むと、土日も含め、日勤・夜勤問わずカバーを余儀なくされるため不満が多いローテーションでもあります。これは内科研修の内容が日本に比べて手技も少なく、パソコンに向かってカルテをしっかり書くことが求められていて、あまり面白くないことに起因しているのかもしれません。また、カバーするためだけにローテーションを設定できるのも、そもそもレジデントの数が圧倒的に多いからであり、その中に多少不真面目な人がいても(もちろんコロナを含めた体調不良者の場合もありますが)病院が回るようになっている仕組みなのです。私の場合、フェローシップのマッチの結果が出てからの半年は、淡々とレジデントの仕事をこなし、コロナ研究の残りを仕上げつつ、機械学習による解析方法の勉強などといった新しいことにトライする時間となりました。Column画像を拡大する上記の機械学習の論文を、コロナ患者約1万人のデータベースから死亡予測モデルをPythonを使い、Light GBMという方法で作成しました。ただ、変異株やワクチンの影響など目まぐるしく変わるコロナに対し、死亡予測モデルの意義がなかなか見出せず、論文を仕上げるまでには時間を要しました。それでも、方法論としてこの方法を用いて他のデータベースでも応用できるようになっただけでも収穫かと思います。機械学習で作成した予測モデルを用いてこちらのウェブサイトを作成し、簡単に死亡率が予測できるようになっています。

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記憶に残る医療略語―多尿に関連したPOD【知って得する!?医療略語】第1回

第1回 記憶に残る医療略語―多尿に関連したPOD「POD」は医学界では“Post-Operative Day”(術後○○日目)を意味することが多いですが、PODが別の意味を持つことはありますか?コム太君、そうなんです。1つの略語でも複数の意味を持つことがありますね。カルテで見かける「POD」は圧倒的に“術後〇〇日目”を意味する「POD」が多いですね。でも、あまり知られていないけれど、“Post obstructive diuresis”(尿閉解除後利尿)という“疾患・病態”を意味する「POD」もあるんですよ。カルテでみかけたら、意味を間違えないようにしましょうね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】POD【日本語】尿閉解除後利尿【英字】Post obstructive diuresis【分野】腎・泌尿器【診療科】救急/集中治療・泌尿器・腎臓【関連】尿路閉塞・利尿過多・電解質異常【略語】POD【日本語】術後○○日目【英字】Post-Operative Day【分類】カルテ表現【分野】―【診療科】外科一般【関連】術後日数実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。本シリーズでは皆様のお役に立つかもしれない医療略語をご紹介していきます。今回は「POD」です。外科系の先生は、この「POD」から“Post-Operative Day”(術後◯日目)を連想されるのではないでしょうか。しかし、「POD」が「尿閉解除後利尿」を表していることがあります。そこで今回は尿閉解除後利尿に関する話題を取り上げたいと思います。PODは1951年にWilsonらにより尿閉解除後のナトリウムと水の過剰排泄により生命の危機を来たした3例として報告されたのが最初とされます。国内の論文報告を調べると、「POD」は「尿管閉塞解除後利尿」「閉塞後利尿」「尿閉解除後利尿」「尿閉解放後」と訳されており、統一した和訳はありませんが、いずれも尿路閉塞解除後に生じる利尿過多の病態を指しています。本邦でも、1984年には既にPODと略されています。1987年に比嘉氏らが尿管閉塞61例における尿閉解除後の尿量を報告1)しており、55例中16例では24時間蓄尿で5L以上の尿量が記録されています。日常診療で尿閉患者さんは時々遭遇し、バルーンカテーテルで尿閉を解除する機会は多いと思います。一方、日々の臨床でたまに、原因不明の多尿患者さんに遭遇することがあります。PODの概念を知っておくことは、多尿患者さんの鑑別に役立つかもしれません。PODのメカニズムと管理については、以下に詳述されていますのでぜひご参照ください。A guide for the assessment and management of post-obstructive diuresisurology news MARCH/APRIIL 2015 VOlL19 No31)Higa I, et al. Kinyokika Kiyo. 1987;33:1005-1010.

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第87回 厚労省「対面での面会の検討」求めるも、空気感染濃厚のオミクロン株登場で対応再び難しく

コロナ禍の医療施設と社会福祉施設の面会方法の改善目指すこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は今年の山登りの反省会を兼ねて、山の仲間数人で埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳に行って来ました。西武秩父線の吾野駅から子ノ権現、天目指峠を経て伊豆ヶ岳、正丸峠という少々長いコース。行程後半、正丸峠にある奥村茶屋で名物のジンギスカンを食べるというのが毎年恒例の行事になっています。天気もよく紅葉もまだそこかしこ残っていて楽しめたのですが、4週間前に骨折した左手小指の固定がまだ取れていないので、急な登り下りで左手をつかないようにするのが難儀でした。山登りには足だけではなく、手の指も相当使っていることを実感した初冬のハイキングでした。さて、今回は厚生労働省が11月24日付で出したある事務連絡とオミクロン株の空気感染について書いてみたいと思います。事務連絡は、医療施設と社会福祉施設に対して適切な面会方法の検討を求める内容のものです。ただ、この事務連絡発出から2日後の26日、世界保健機関(WHO)は南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「B・1・1・529」を、現在世界で流行の主流となっているデルタ株などと並ぶ「懸念される変異(VOC)」に指定、「オミクロン株」と命名しました。せっかくの事務連絡発出ですが、病院や高齢者施設での入院患者との面会は再び難しい状況になりそうです。「面会実施の方法について各医療機関で検討せよ」と具体的事例を紹介コロナ禍となって、医療機関や特別養護老人ホームなどで大きく変わったことの一つが面会の規制です。とくに長期療養のための病院や特養などでは、面会の禁止は入院患者や入所者の認知機能の低下にも関係するため、その対応の模索が続いていました。11月24日に都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部に向けて発出された事務連絡「医療施設等における感染拡大防止に留意した面会の事例について」は、新型コロナウイルスの感染状況が一定程度に収まってきた国内の状況を踏まえて出されました。この事務連絡では、「『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』」(令和3年11月19日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)が決定され、面会については、面会者からの感染を防ぐことと、患者や利用者、家族の QOL とを考慮することとし、 具体的には、地域における発生状況等も踏まえるとともに、患者や利用者、面会者等の体調やワクチン接種歴、検査結果等も考慮し、対面での面会を含めた対応を検討すること、との方針が示され」たとして、「地域における感染の拡大状況や入院患者の状況等のほか、患者及び面会者の体調やワクチン接種歴、検査結果等を総合的に考慮した上で、面会実施の方法について各医療機関で検討すること」としています。その上で、コロナ禍での感染対策に留意した面会における具体的な事例を紹介、各衛生主管部局に医療機関への周知をお願いする内容となっています(社会福祉施設に対しては担当部局が異なるため別の事務連絡「社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点 について」が発出されています)。紹介された事例は、「アクリル板で仕切った面会室を利用」「ワクチン接種歴を参考とする」「タブレット端末を使ったオンライン面会」などで、厚生労働科学研究の研究班の資料を基にしています。オミクロン株登場で「空気感染」再び注目入院患者にとって面会は、家族や社会との接点を保ち、心の安定をもたらす重要な要素です。ゆえに国が「対面での面会」を進めるようアクションを起こすことは、歓迎すべきことだと思います。ただ、気になることもあります。オミクロン株の感染拡大で、感染防止対策が大きく変わりそうだからです。オミクロン株については12月5日現在、感染力がデルタ株より強い可能性があること、再感染のリスクが上がっている可能性があること、ブレークスルー感染を起こす可能性が高いことなどが報告されています。また、ホテルの廊下を挟んで「空気感染」した可能性についても報道されています。香港政府が11月25日に明らかにしたところでは、同じホテルの向かいの部屋にそれぞれ隔離されていた新型コロナウイルスワクチン接種済みの旅行者2人(南アフリカからの旅行者1人と、カナダからの旅行者1人)がオミクロン変異株に感染していることが確認されましたが、南アフリカからの旅行者1人が着用していたのはサージカルマスクではなく、呼気弁には吐く息のフィルター機能がなかったそうです。そのため、部屋のドアが開かれた際にウイルスが廊下に流れ、後者に感染させた可能性が示唆されました。この件には続報があり、12月6日付のBloombergの報道によれば、12月3日に発表された調査結果では、監視カメラの映像によって、2人とも部屋から出ておらず、人にも接触していないことが確認されたそうです。調査を行った香港大学の研究者らは「食事の受け取りや新型コロナ検査のために開けたドアを通じた空気感染が考え得る感染経路として最も可能性が高い」と指摘したとのことです。厚労省も10月に「空気感染=エアロゾル感染」を追認空気感染については、「第76回 『空気感染』主流説報道続々 “野球感染”リスクは球場によって大きく異なる可能性も」でも詳しく書きました。実は厚生労働省は10月下旬にサイトを更新し、新型コロナはウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込むことで感染する、との見解を初めて示しています。それまでは、飛沫感染と接触感染の2つしか挙げていませんでした。感染力が強いデルタ株による第5波を受け、換気対策を進める必要があると考えたためとみられます。更新されたのは、「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の「新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか」の項目。「感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています」と記され、エアロゾル感染(言うならば空気感染)の危険性を強調するに至っています。今回、感染力がより強いオミクロン株の感染拡大で、空気感染の危険性が再び注目されています。オミクロン株の感染力の強さとコロナの空気感染の関連がより明確になれば、医療機関での面会に限らず、飲食店や交通機関の感染対策なども大幅な見直し(アクリル板はナンセンス…など)を余儀なくされるでしょう。「終末期の患者が家族にずっと会えないと、悲劇的状況を生み出す」面会に話を戻すと、私が先日取材した、あるがんの患者団体の代表の方は、「とくに緩和ケア病棟などにおいて、終末期の患者が家族にずっと会えないと、悲劇的状況を生み出すこともある」と話していました。現在では、スマートフォンやパソコン、タブレット端末などを用いれば、自宅の家族と病院の患者とのコミュニケーションも相当程度可能となりますが、デジタルに弱い高齢者にはハードルが高い面もあります。そう考えると、リアルでの面会をどう安全に行うかは、それぞれの医療機関腕の見せどころと言えそうです。オミクロン株の動向が気になるところですが、「これだ!」という面会方法が、現場で“発明”されることを期待しています。

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腎不全患者の在宅中心静脈栄養の輸液設計を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第43回

 今回は、腎機能低下時の中心静脈栄養(以下、TPN)の設計についてです。腎機能低下時はタンパク質の利用制限があるため負荷量の制限が必要です。そのため、タンパク質の利用効率の指標であるNPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)を考慮して輸液設計を提案しました。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、前立腺がん(多発骨転移・リンパ節転移)、慢性心不全、心房細動、陳旧性脳梗塞、慢性腎不全、腹部大動脈瘤術後介護度要介護4服薬管理妻(点滴交換も妻が実施)介護状況毎週月曜日ルート交換、訪問看護処方内容 ※内服薬は誤嚥リスクのため中止1.エルネオパNF2号輸液 1,000mL 24時間投与2.フロセミド注20mg 1A 静脈注射本症例のポイントこの患者さんは、在宅医療で介入した当初よりBUN:49.8mg/dL、血清クレアチニン値:2.66mg/dLと高度の腎機能低下がありました。心不全もあるため水分量が多く、浮腫を繰り返して治療に難渋している状態でした。ある日、医師より電話連絡があり、「Alb値(1.9g/dL)、総タンパク(5.4g/dL)が低いので、がん末期で悪液質があることは承知のうえだが、栄養改善のために今の輸液内容にアミノ酸輸液を追加したいと考えているがどうか」と相談がありました。そこでポイントを整理することにしました。<NPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)>アミノ酸は十分な糖質や脂質を摂取できている状態ではタンパク合成に利用されるが、糖質や脂質が不足している状態ではエネルギーとして消費され、タンパク合成に利用されない。アミノ酸が効率よくタンパク質の合成に利用されるかどうかをみる指標としてNPC/N比が用いられる。NPC/N比=(総エネルギー量)-(タンパク質エネルギー量)/(タンパク質重量)÷6.25現行のエルネオパNF2号輸液1,000mLのNPC/N比は149で、腎不全時の推奨NPC/N比は300~500です。患者は腎不全があることからアミノ酸合成能力は低下しており、タンパク質の異化(分解)が亢進している状態と考えられます。タンパク質負荷が増加してアミノ酸利用能を超えると、BUN上昇から尿毒症や高NH3血症などが惹起される可能性が高くなります。輸液内容全体を見直して、アミノ酸利用効率の高い輸液設計が必要と考えました。処方提案と経過医師への折り返し電話の前に、トレーシングレポートで下記の輸液設計プランを送付しました。現在のエルネオパNF2号は電解質+糖質+アミノ酸+ビタミン剤+微量元素を含有した製剤であり、ここにアミノ酸輸液を上乗せするとさらにNPC/N比が低下します。そのため、電解質+糖質の製剤であるハイカリックRF輸液への変更を提案しました。ハイカリックRFの「RF」はRenal Failure(腎不全)の略で、腎不全患者用に調整された製剤です。また、本剤のみでは不足する成分もあるため、総合ビタミン剤や微量元素も追加し、アミノ酸輸液も腎不全用の低タンパク質製剤で個々に調整することが適当と考えました。提案内容1.ハイカリックRF輸液 500mL2.10%塩化ナトリウム注射液キット 20mL3.塩化カリウム注射液キット 20mEq4.高カロリー輸液用総合ビタミン剤キット 1キット5.腎不全用アミノ酸製剤(1-2)注射液200mL 2袋Total:1,094.4kcal、NPC/N比:312.5、水分量:900mL医師より上記の設計プランが承認され、投与内容を変更するよう指示がありました。変更対応後10日目に高Na血症(155mEq/L)が発現したことで10%塩化ナトリウム注射液キットが中止になりましたが、それ以外の輸液内容は継続となりました。その後、栄養評価に関する検査値の改善は認められませんでしたが、電解質も含めて悪化なく経過し、看取りまで点滴内容は継続となりました。日本静脈経腸栄養学会・大塚製薬工場. やさしく学ぶための輸液・栄養の第一歩 第4版.

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機械学習でアトピー性皮膚炎患者を層別化

 アトピー性皮膚炎(AD)の治療を巡って、近年の治療薬の開発に伴い、対象患者の層別化の重要性が指摘されている。そうした中、ドイツ・ボン大学病院のLaura Maintz氏らはAD重症度と関連する主要因子を明らかにするため、同病院入院・外来患者367例について機械学習ベースの表現型同定(deep phenotyping)解析を行い、アトピースティグマと重症ADとの関連性や、12~21歳と52歳以上で重症ADが多くなる可能性などを明らかにした。 ADは、ごくありふれた慢性の炎症性皮膚疾患であるが、表現型は非常に多様で起因の病態生理は複雑である。著者は、「今回の検討で判明した関連性は、疾患への理解を深め、特定の患者に注視したモニタリングを可能とし、個別予防・治療に寄与するものと思われる」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年11月10日号掲載の報告。 研究グループは、思春期および成人ADの重症度関連因子の表現型を深める検討として、2016年11月~2020年2月に前向き追跡試験に登録されたボン大学病院皮膚科の入院・外来患者を対象に断面データ解析を行った。 被験者を、Eczema Area and Severity Index(EASI)を用いて重症度別にグループに分け、AD重症度と関連する130の因子について、相互検証ベースの同調機能を有する機械学習勾配ブースティング法と多項ロジスティック回帰法で解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、367例(男性157例[42.8%]、平均年齢39歳[SD 17]、成人94%)。うち177例(48.2%)が軽症(EASI:≦7)、120例(32.7%)が中等症(EASI:>7~≦21)、70例(19.1%)が重症(EASI:>21)であった。・アトピースティグマは、重症ADと関連する可能性が高かった(口唇炎のオッズ比[OR]:8.10[95%信頼区間[CI]:3.35~10.59]、白色皮膚描画症:4.42[1.68~11.64]、ヘルトーゲ徴候:2.75[1.27~5.93]、乳頭湿疹:4.97[1.56~15.78])。・女性は、重症ADと関連する可能性が低かった(OR:0.30、95%CI:0.13~0.66)。・総血清免疫グロブリンE値1,708IU/mL超、好酸球値6.8%超は、重症ADと関連する可能性が高かった。・12~21歳または52歳以上の患者は、重症ADと関連する可能性が高く、22~51歳の患者は軽症ADと関連する可能性が高かった。・AD発症年齢が12歳超では30歳をピークに重症ADと関連する可能性が高く、AD発症年齢が33歳超では中等症~重症ADと関連する可能性が高く、小児期の発症では7歳をピークに軽症ADと関連する可能性が高かった。・重症ADと関連するライフスタイル要因は、身体活動が週に1回未満と、(元)喫煙者であった。・円形脱毛症は、中等症AD(OR:5.23、95%CI:1.53~17.88)、重症AD(4.67、1.01~21.56)と関連していた。・機械学習勾配ブースティング法と多項ロジスティック回帰法の予測能は僅差であった(それぞれの平均マルチクラスAUC値:0.71[95%CI:0.69~0.72]vs.0.68[0.66~0.70])。

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精神病性うつ病の疾患経過に影響を及ぼす因子

 精神病性うつ病は、重度の症状や疾患経過を伴う疾患であるが、いまだ十分に研究されていない。フィンランド・トゥルク大学のMiika Nietola氏らは、精神病性うつ病の発症年齢や疾患経過に対する性別および精神医学的併存疾患の影響について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年10月8日号の報告。 本研究は、1966年フィンランド北部の出生コホートに基づき実施された。精神医学的診断歴、入院歴、発症年齢、障害年金受給率、死亡率に関するデータを収集した。精神病性うつ病患者58例において、性別およびアルコール使用障害またはパーソナリティ障害の合併に基づくサブグループ間における疾患経過を比較した。 主な結果は以下のとおり。・パーソナリティ障害の合併率は38%(22例)、アルコール使用障害の合併率は41%(24例)であった。・パーソナリティ障害を合併した精神病性うつ病患者は、発症年齢が若く(p<0.01)、死亡率が高かった(p=0.03)。・精神科病床への入院率の高さと関連が認められた因子は、男性(p=0.03)、アルコール使用障害の合併(p<0.01)、パーソナリティ障害の合併(p<0.01)であった。・男性では、アルコール使用障害の合併が多かった(男性:61%、女性:29%、p=0.03)。 著者らは「精神病性うつ病の疾患経過に、性別や精神医学的併存疾患が影響を及ぼしていることが示唆された。臨床応用していくためには、精神病性うつ病の不均一性に関するさらなる研究が求められる」としている。

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「今後のコロナ医療に必要なことは?」感染症内科医・岡秀昭氏インタビュー(後編)

 2021年も残すところあと数週間。昨年の年明け早々に始まった新型コロナウイルス感染症との闘いは、2年近くになる。医療現場のみならず、社会全体を激変させたコロナだが、その最前線で治療に当たってきた医師は、最大の患者数を出した第5波を乗り越え、今ようやく息をつける状態となった。この休息が束の間なのか、しばらくの猶予となるのかは不明だが、諸外国の状況やオミクロン株の出現などを鑑みると、それほど悠長に構えていられないのが現在地点かもしれない。 第6波は来るのか。これまでのコロナ政策で今後も闘い続けられるのか―。地域のコロナ拠点病院で重症患者治療に奔走した感染症内科医・岡 秀昭氏(埼玉医科大学総合医療センター)に話を伺った。 前編「五輪の裏で医療現場は疲弊し、ギリギリまで追い詰められていた」はこちら。*******――当面続くと見られるコロナ診療。これまでの経緯を踏まえると、重症者に特化した病院とプライマリとの分担および連携が肝要では? そこが最も重要なポイントだと思う。結局、物事を回転させていくには、ヒト・モノ・カネのバランスが必要で、それらがすべて噛み合うことで回転し、物事が前に進んでいく。しかし、報道や国や政治が声高に強調するのは、モノとカネの支援。だから、「ベッドの占有率が〇%だ」とか、「日本は病床数が世界最大規模なのに、現場がなぜ回らないのか」というズレた議論、医療者はけしからんという論調になる。今、圧倒的に足りないのはモノでもカネでもなく、「ヒト」なのだということをきちんと理解してほしい。例えるなら、航空機のボーイングが何台もあって、飛ばせと言っても、小型機のパイロットしかいなければ飛ばせないのと同じ理屈だ。われわれ医療者に引き寄せて考えてみてほしい。医師免許を持っている人が全員、人工呼吸器を使えて、特殊な感染症が診られるのか。つまり、「ヒト」の考え方がまったく欠落している。今回、コロナで盛んにECMOが取り上げられたが、所有していたところで、それを扱える医療従事者がほとんどいないという現実がまったく知られていない。見当外れの世論を助長させた一端には、モノ・カネ偏重の政策とメディアの報じ方があったのではないかと考える。 コロナ医療を「ヒト」の視点で考える際、軽症と重症に分ける必要がある。軽症は、感染対策が可能な病院や医師ならば誰でも診られると言っていい。問題は、風評被害への懸念、未知の感染症への恐れなど、どちらかというと精神的側面が大きい。そもそも現時点で重症リスクがない患者には有効な薬剤がないので、軽症であれば、周りにうつらないように自然軽快を観察していくことになる。一方、重症者治療となると対応が大きく変わる。厳重な感染対策のもとで細やかな循環呼吸管理をしていかなければいけない。しばしば人工呼吸器やECMOの操作も必要となり、これは集中治療の領域だ。 日本の医療界は、歴史的に集中治療医と感染症医のような臓器横断的に診る医師が圧倒的に少ない。病床数が多かろうと、医師免許を持った人がそれなりにいたとしても、病床の大部分が療養型だったり、精神科病床だったりする。そのような中、カネを出してハード面を整えたとしても、十分に扱える人員がいないのが現状。重症者を診る医師が絶対的に足りないのは、そうした背景がある。 今後、第6波以降に重症者が増えたとしたら、再び医療逼迫が起きるのは必至。現在、感染者数は抑制できているが、今後は患者数が増えてきた場合に、重症者をどれだけ抑えられるかにかかっていると思う。軽症~中等症Iであれば、付け焼刃でも医師免許を持っている人たちへの促成教育は有効だと考える。実際、私は埼玉県に提案し、県のトレーナー制度でコロナ治療に協力してくれる医療機関、医師に対する指導をすでに始めている。しかし、重症を診る人材の育成は即席では難しく、短期的な視点では限界があり、重症者を診る人員が足りないという現実はそう簡単に変わらない。 今回のコロナ・パンデミックに関して新たな人材育成の猶予はないので、やはりポイントは「重症者を増やさない」ことに尽きる。国の対策としては、悪いほうにシナリオを考え、本当に機能する重症者病床は、これ以上増やせないことを理解してほしい。増やすことを仮定した対策ではなく、現状のベッド数で医療が回る対策が必要だ。 私の聞くところであるが、重症者を診るのが大学病院や一部の大病院に限られている上に、呼吸器内科、救急科、集中治療、感染症、総合内科のような一部の診療科の医師がほぼ診ている状態。自院に関しては、感染症と救急の医師に、少数の派遣医師で回しているのが実情。もともと人数の少ない診療科の医師だけで回さざるを得ず、皆が疲弊し切っている。 なぜ、救急や集中治療、感染症、総合診療の医師が育ってこなかったか。理由の1つは、専門としていまだに認められていないということ。麻酔科の経緯に照らして考えるとわかるだろう。外科医が1人で手術をする際、現在ならば麻酔科医が麻酔をかける。しかし、術後感染症が起きたとしたら、外科医が診ることになる。術後、抗がん剤治療を開始する場合、米国ではオンコロジストが担当するが、日本では外科医が抗がん剤治療も行う。さらには、緩和治療をも外科医が一手に引き受けなければならないのが実状。こんな多忙な外科医に、感染管理ができるのだからコロナを一緒にやってくれとはとてもじゃないが言えない。それどころか、本来やるべき手術などがいっさい回らなくなるだろう。それでもやるなら、通常医療を捨てざるを得ないという本末転倒に陥ることになる。その先には病院の収益の問題につながる。 将来的な対策として長期的視点で必要なことは、集中治療医、感染症科医を育て、それなりの病院では現在の麻酔科医のように必須にすること。これは外科医の負担軽減だけでなく、患者にとってもメリットが大きい。集中治療しかり、感染管理しかり、麻酔しかり、専門医が担当することは、医療の質の担保にもつながる。もはや、日本の根性論、精神的頑張りに負うような医療体制は通用しない。今回のコロナを巡る医療逼迫の背景にも、こうした日本独特の医療体制に一端がある。つまり、臓器別の縦割り診療科は認められているので志す人は多く、臓器に関係ない感染症科や麻酔科や集中治療といった横割りの診療科には人が来ない。今後のパンデミックに備えるには、こうした診療科の医師が足りていないということをまずは認め、本腰を入れて養成に入るべき。 感染症科医を例にすると、コロナのような何十年に1度という事態に直面した時には必要性が感じられるが、平時には割に合わないのではないか、というのが一般的な考え方で、経営にもそういう考え方の人が多いのは確かだ。しかしそれは間違っている。感染症指定医療機関でなくても、結核、HIVはもちろん、輸入感染症の患者が来る可能性は十分にあるし、多くの結核患者は咳や微熱で一般病院を受診し、診断を受ける。今回のコロナ禍で、「空気感染を予防できる設備がないのでコロナは診られない」という病院がいくつもあったが、それはおかしいとはっきり言いたい。 病院というのは、そもそもコロナにかかわらずインフルエンザでも結核でも水疱瘡でも日常的に診ている。感染症が未知の種類だから診られないというのはおかしい話で、どんな新興感染症が突然現れたとしても、周りの人が守られるような安全対策が取られているのが「病院」であるべき。何十年に1度のパンデミックに備えて設備投資するのは見合わないなどと言うのは本末転倒で、海外往来が当たり前のこの現代、もうすでにどこの病院にもそのような患者は来ていることを自覚し、備えるのが正しい在り方だろう。さらに、急性期病院は、例えば200床につき1人以上の感染症医を置き、診療報酬上でも加算化する。集中治療医に関しても、そういう形で、必要不可欠にしていくことで専門性が認められていくべきだと思う。他科から診察依頼やコンサルテーション があった場合にも、対価として診療報酬が支払われるべきだろう。そうでなければ、こうした専門医が定着するのは難しい。 私の懸念は、今回のコロナ禍の経験で、厚労省がますます病床数を増やそうという方向に加速していくことだ。必要なのは、増やすことではなく有効に回せるベッドをいかに残すか。診る医師も設備もないのに、病床数をやみくもに増やしても、「日本は世界に誇るベッド数を準備しているのになぜ回らない」と批判的な世論を生むだけだ。――メディアでは“幽霊病床問題”として大きくクローズアップされた。 その通り。まるで病院や医療従事者が対応していないかのような論調だが、そもそも人員が足らないのだから患者を受け入れられないのは当たり前。でも一般市民にはそれはわからない。厚労省は、ベッドの多さ、患者の多さを基準に病院を評価しがちだが、たくさん受け入れたことが偉いという評価基準それ自体が間違っている。その先、医療の実態はどうなのかというところまできちんと確認するべきだ。 当院は40床のコロナ病床を準備したが、人員に照らしたキャパシティを考慮すると38床の受け入れが限界だった。なぜなら、受け入れた患者さんはもちろん、働くスタッフの医療安全上の問題なども考えなければいけなかったからだ。例えば、50床あるのに患者2人しか受け入れないというのは明らかに悪質だが、7~8割の病床を埋めて頑張っているところを責めるのはおかしい。 ECMOの稼働率がメディアに取り上げられたこともあったが、それを扱える人的リソースの問題で「使わない」という選択をすること批判が集まった。しかしわれわれは、人工呼吸器よりも圧倒的に人的負担がかかるECMOにリソースを割くことよりも、その分、人工呼吸器の患者をより多く受け入れて、より多くの患者を救命しようという方針だった。 コロナはある意味、災害医療とも言える。そこにはトリアージの考え方があった。ECMOへのこだわりを持っていると、本来は受け入れられる人を受け入れられなくなり、助けられた人を助けられないということが起こり得た。――最後に、コロナ第6波あるいはもっと長い闘いを想定するとき、医療者はどう備えるべき? これからの戦略を立てる以前に、まずはこれまでの総括・検証が必要だ。少なくとも、五輪開催時期を巡っては、少しでも後ろ倒しにしてワクチン接種率を上げてからにすべきという医療者側の切実な訴えは、政府に聞いてもらえなかった。メディアでは、五輪までにコロナが収束するなどという“有識者”の発言もあったが、とんだデタラメだった。したがって、政策の検証だけでなく、どの専門家の発言が信頼に足るのかというメディアの発信の仕方についても検証が必要だろう。 次に、次のピークに向けた戦略として私が言えるのは、重症者病床がこれ以上増えないという仮定のもとで動くべきだということ。大事なのは「増やす」ではなく「増えない」前提のプランを準備し、明確にしておくこと。実際、第6波において重症者が増えるのか否かは不明だ。しかし、デルタ株に対して重症化を防ぐワクチンの効果は確実なので、ワクチン接種は引き続き進めていくべき。そして、抗体カクテルや今後登場するであろう治療薬をワクチン代わりにはしないこと。ただし、プライマリで重症化リスクのある患者に対し、抗体カクテルや治療薬が確実に使える体制を整えることはとても重要。これは、プライマリの先生方に望むことにもつながるが、軽症や中等症の治療を第5波まではわれわれがやってきた。今後は、プライマリの先生方と協力し、役割分担しつつ、重症者病床は現状から増えないという想定で、ワクチンや抗体カクテル、薬で治療を進めていくべきと考える。 もう1つ、医療にひずみが出ている問題がある。コロナ医療を巡っては、医療と報酬が見合っていない。中には、コロナ重症者を診るスタッフの給与よりも、ワクチン接種のアルバイト報酬のほうが高いといったケースも見られた。これは明らかにおかしい。病院に寝泊まりして、重症コロナ患者を懸命に診て疲弊しきっているスタッフの月給が、ワクチン接種に従事する人の日給と同程度なんてあんまりだと思う。 医療には、その負担や技術・能力に見合った適正価格がある。このような状況では、将来的にも感染症や集中治療を目指す医師はいないだろうと危惧する。将来的なことだけではなく、目下の第6波に備えるためのモチベーションにもつながる。医療の水準に対する正当な評価。これをなくしてコロナ医療は前に進まない。

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Pacak-Zhuang症候群にbelzutifan治療が有効/NEJM

 赤血球増加症と多発性パラガングリオーマを有するPacak-Zhuang症候群の16歳女性患者において、低酸素誘導因子2α(HIF2α)阻害薬belzutifan治療により、高血圧、頭痛、および長期にわたる赤血球増加症の解消とともに、迅速かつ持続的な腫瘍縮退効果がもたらされたことを、米国・ダナファーバーがん研究所(DFCI)のJunne Kamihara氏らが報告した。Pacak-Zhuang症候群は、HIF2αをコードする遺伝子(EPAS1)の活性化変異によって引き起こされるまれな疾患で、生殖細胞系列の遺伝子検査で検出されることはほとんどなく、患者は幼少期に赤血球増加症を呈し、その後に複数の再発性および転移性のパラガングリオーマを発症する。小児期に発症した患者は複数の複雑な治療を受けることになるが、症候群の根本的な遺伝的原因を標的とする治療選択肢は限られていた。今回の結果を踏まえて著者は、「分子標的薬のレパートリーが増える中で、その長期的な効果を徹底的に調査することにより、腫瘍素因症候群の子供と大人におけるケアの目標はスクリーニングと早期発見から、将来的に腫瘍の治療、さらに予防へとシフトする可能性があるだろう」と述べている。NEJM誌2021年11月25日号掲載の報告。14歳時に臨床診断、16歳時に再発を認めbelzutifan治療(1日120mg)を開始 研究グループが報告した、Pacak-Zhuang症候群におけるbelzutifan治療評価は、16歳の女性患者を対象に行われた。 患者が初発症状(一過性脳虚血による左側脱力と複視)を呈したのは6歳時で、9歳時に赤血球増加症に関連すると推定される高血圧症に対する降圧療法を開始、14歳時に複数の腫瘍がみつかり切除が行われた。病理所見で少なくとも8つのパラガングリオーマが確認されている。その後に研究グループの小児がん遺伝リスクプログラムに紹介され、3世代家族歴の聴取が陰性であったこと、赤血球増加症と新規パラガングリオーマの同時罹患などを踏まえてPacak-Zhuang症候群と臨床診断された。 術後に降圧薬投与は中止となったが、2年後の16歳時に頭痛および高血圧症の再発、赤血球増加症の悪化、画像診断で腫瘍の存在が確認され、治療オプションが検討されbelzutifan治療(1日120mg)が開始された。投与量は、成人進行腎細胞がんを対象とした第II相試験の推奨用量に基づいている。治療開始17日時点で症状軽減、腫瘍の縮退を確認 belzutifan治療開始9日後に、Pacak-Zhuang症候群で上昇が認められる血漿中ノルメタネフリン値(16.2→5.7nmol/L)とクロモグラニンA値(642→136ng/L)が劇的に低下、赤血球増加症も速やかに軽減し、17日目までにヘモグロビン値は正常範囲に低下した。 それらに伴い、belzutifan治療開始後10日までに頭痛症状が解消され高血圧症が改善。降圧薬は3ヵ月後に中止に至った。 治療24ヵ月後において、Pacak-Zhuang症候群の一部の患者にみられるソマトスタチノーマは認められなかった。 画像診断では、治療開始11日前の時点では左副腎腫瘍(2.4×2.6cm)、大動静脈瘤(1.3×1.3cm)、および2つの小軟部腫瘍(<1cm径)が存在していたが、これらは治療開始17日後にはわずかだが縮退を認め、56日時点では明らかに縮退し大動静脈瘤や後腹膜腫瘍はかろうじて認められる程度になっていた。696日時点のMRIでは左副腎腫瘍は1.2×0.7cmまで縮退し、正常な副腎組織が大半を占めていることが確認された。 安全性については、治療24ヵ月時点までに報告された副作用は最小限にとどまり、有害事象Grade1/2のみであった。 belzutifan治療は本報告時点で継続中である。

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新作用機序のアトピー性皮膚炎外用薬「モイゼルト軟膏0.3%/1%」【下平博士のDIノート】第87回

新作用機序のアトピー性皮膚炎外用薬「モイゼルト軟膏0.3%/1%」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏0.3%/1%、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害作用を有する外用のアトピー性皮膚炎治療薬であり、既存薬とは異なる作用機序で皮膚の炎症を抑制します。<効能・効果>本剤は、アトピー性皮膚炎の適応で、2021年9月27日に承認されました。<用法・用量>通常、成人には1%製剤を1日2回、小児には0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児でも、症状に応じて1%製剤を使用することができますが、症状が改善した場合は0.3%製剤への変更を検討します。なお、1%製剤で治療開始4週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>国内でアトピー性皮膚炎患者を対象に行われた第III相試験では、本剤1%を投与した15歳以上182例中1例(0.5%)、2~14歳85例中3例(3.5%)、同様に本剤0.3%を投与した2~14歳83例中5例(6.0%)で副作用が報告されました。また、長期投与試験では本剤1%を投与した15歳以上166例中14例(8.4%)、2~14歳56例中8例(14.3%)、同様に本剤0.3%を投与した2~14歳144例中8例(5.6%)で副作用が報告されました。主な副作用は、色素沈着障害、毛包炎、掻痒症、ざ瘡などでした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、体内の炎症物質の活性を阻害することで、皮膚の炎症を抑えてアトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.通常、人差し指の指先から第一関節まで(約2.5cm)チューブから押し出した量が、成人の手のひら2枚分の広さを塗るために必要な量です。3.粘膜や傷がある部位には塗らないでください。4.(女性に対して)この薬を使用している間および使用終了から一定期間は確実な方法で避妊してください。<Shimo's eyes>アトピー性皮膚炎(AD)の薬物療法は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、保湿薬を中心として行われてきました。近年は新しい治療薬として、2018年に皮下注射薬のデュピルマブ(商品名:デュピクセント)、2020年に外用薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のデルゴシチニブ軟膏(同:コレクチム)が発売され、治療選択肢が増えています。本剤は、既存のAD外用薬とは作用機序が異なり、PDE4の酵素活性を選択的に阻害して抗炎症作用を示す油脂性軟膏です。既存のPDE4阻害薬としては、2017年3月にアプレミラスト錠(同:オテズラ)が乾癬などの適応で発売されています。本剤の塗布量は、ステロイド外用薬を塗る際の目安となる1FTU(finger-tip unit)に順じ、人差し指の先端から第一関節まで押し出した量(約2.5cm、0.35g)が成人の手のひら約2枚分の皮疹面積に必要な塗布量となります。小児についても同様に、1FTUが小児の手のひら約2枚分の面積に相当すると考えてよいでしょう。服薬指導では、皮膚の清潔や保湿などのスキンケア、室内の清潔、適度な室温・湿度の保持、ストレスを避けるなど生活指導についてもフォローしましょう。なお、2歳未満の幼児を対象とした臨床試験は行われていません。妊婦への使用については、ラットにおいて大量に使用した場合に胎児死亡率などが高くなったことが報告されており、投与しないことが望ましいとされています。授乳婦については、ラットにおいて授乳中の移行が報告されているので有益性投与です。参考1)PMDA 添付文書 モイゼルト軟膏0.3%/モイゼルト軟膏1%

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英語で「検査をしてほしい」は?【1分★医療英語】第5回

第5回 英語で「検査をしてほしい」は?I might have been exposed to COVID.Can I get tested for it?(コロナウイルスに曝露してしまったかもしれません。検査を受けることはできますか?)Okay,do you have any symptoms?(わかりました、何か症状はありますか?)《例文1》He needs to get tested for Hepatitis B before the surgery.(彼は手術前にB型肝炎検査を受ける必要があります)《例文2》You haven’t got tested for STI for the past three years. Would you like?(ここ3年間性病検査を受けていないようですね。検査されますか?)《解説》“get tested for A”で、「Aの検査を受ける」という表現になります。医療現場でも“want to get tested for COVID”という表現で、患者から検査を要求されることが頻繁にあります。この言い回しは使い勝手が良く、たとえば医師が患者に説明する際にも、“You need to get tested for A(Aの検査を受ける必要があります)”などと説明することができます。ちなみに、日本ではメディアが「新型コロナウイルス」という表現を使って報道しているのに対して、医療現場を除いた日常会話では「コロナ」という略称を使うことが多いかと思います。一方、米国のメディアは“COVID-19”や“Coronavirus”という表現で報道することが多いです。そして、日常ではほとんどの人が“COVID(コービッ)”と言います。“Coronavirus”や“Corona”を聞くことはまずありません。「COVID-19の検査を受けたい」という表現では、“I want a COVID test”という非常にシンプルな伝え方もあります。こちらの表現も日常的によく使われます。“I want to get tested for COVID”と同じ意味ですが、ネイティブからすると、“I want a COVID test”のほうがやや楽観的な印象を受けるようです。講師紹介

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第89回 米国が自宅でのCOVID-19検査も無料化、英国は自宅治療を検討

6日のReutersのニュースによると、いまや米国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染が少なくとも16の州で認められています1)。それらオミクロン株感染の多くはワクチン接種済みの人に生じており、幸いなことに症状は軽度です。米国での先週の1日当たりのSARS-CoV-2感染(COVID-19)者数は平均約12万人(11万9,000人)でした。米国疾病管理予防センター(CDC)の長Rochelle Walensky氏によるとそれら新規感染のほぼすべて(99.9%)は依然としてデルタ株によるものです。しかしオミクロン株らしき報告は多くなっており、おそらくその感染数は今後増えると同氏は予想しています。さしあたり軽症ともっぱら報告されているとはいえまだはっきりしないオミクロン株感染重症度の見きわめに科学者が取り組み、保健部門がこれからの寒い季節の感染数増加への準備を進めるなか、米国政府はデルタ株やオミクロン株から同国民を守るための新たな対策を発表しました2)。今後は米国の誰もが家庭でのCOVID-19検査を無料で受けられるようになります。民間保険に加入している1億5,000人超は病院や薬局で検査を無料で受けられることに加えて自宅での検査も保険からの支払いで無料になります。民間保険に非加入の人は米国全域の2万を超える無料検査拠点を利用できることに加えて自宅でできる無料の検査製品を保健所や病院から配布してもらえるようになります。バイデン政権はワクチン接種を引き続き推進し、飛行機・鉄道・バスなどの公共交通でのマスク着用義務を継続します。マスク非着用の違反には罰金が課されており、最低でも500ドル、違反を繰り返す人は最大3,000ドルを払わねばなりません。米国が検査なら大西洋を挟んだその隣国・英国は家庭で使えるCOVID-19治療探しに取り組みます。COVID-19治療を同定して広める世界的な取り組みを率いてきたことを自負する英国はオミクロン株感染に弱そうな人を守るべく米国Merck(メルク)社の経口薬Lagevrio(モルヌピラビル/molnupiravir)を家庭に届ける試みを準備しているようです3)。その取り組みでは病弱な人や免疫が低下している人のCOVID-19検査陽性判定から48時間以内に同剤が自宅に届けられる予定です。家庭での治療が検討されるのはモルヌピラビルの他にもあるらしく、その詳細は追って伝えると政府の広報担当者は話しています。Reutersのニュースによると英国では先週末12月5日(日曜日)までに246人のオミクロン株感染が確認されています4)。12月5日の感染者数は86人でした。新たな決まりとしてイングランドはオミクロン株感染らしき人と接触した人に10日間の隔離を義務付けています5)。参考1)Omicron variant found in nearly one-third of U.S. states / Reuters2)President Biden Announces New Actions to Protect Americans Against the Delta and Omicron Variants as We Battle COVID-19 this Winter / WHITE HOUSE3)Covid antiviral pill molnupiravir/Lagevrio set for UK at-home trials / Guardian4)UK reports 86 new cases of Omicron COVID-19 variant, total 246 / Reuters5)New rules in response to Omicron variant / Gov.UK

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高血糖の進行に影響を及ぼす抗精神病薬の関連因子

 抗精神病薬は、高血糖リスクを高める危険性がある。高血糖の進行に影響を及ぼす因子として、抗精神病薬の種類、1日投与量、数量などが挙げられているが、これらとの関連を調査した研究は少ない。北海道大学の石川 修平氏らは、高血糖の進行に関連すると考えられる背景因子で調整した後、高血糖の進行に影響を及ぼす抗精神病薬治療の関連因子について調査を行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年10月9日号の報告。 新規に抗精神病薬治療を開始した患者を対象に高血糖の発生率を12ヵ月間調査した全国多施設共同プロスペクティブ研究を実施した。ベースライン時に正常な血糖値であった患者631例を対象に人口統計データ、処方歴、血液検査値を収集した。主要評価項目は、高血糖の発生率(正常状態から糖尿病予備軍または糖尿病が疑われる状態への進行)とし、統合失調症患者を対象とした日本のモニタリングガイダンスに基づき評価を行った。経時的なグルコース代謝に対する抗精神病薬の影響を調査するため、各抗精神病薬治療開始3、6、12ヵ月後のHbA1cレベルの変化を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ゾテピンおよびクロザピンの使用が、高血糖の発生率の高さと有意に関連していることが示唆された。・ゾテピン治療開始6ヵ月後のHbA1cレベルの変化は、ブロナンセリンおよびハロペリドール治療と比較し、有意に高かった。・対照的に、同期間の総コレステロール、トリグリセライド、HDLコレステロール、BMIの変化に有意な変化は認められなかった。・高血糖の発生と抗精神病薬の1日投与量および数量との関連は認められなかった。・しかし、抗精神病薬のH1、M1、M3、5-HT2C受容体に対する阻害作用の強さに基づき2つの群に分類した事後分析では、抗精神病薬の中~高用量治療群における高血糖の発生は、低用量群と比較し高かった。 著者らは「抗精神病薬の1日投与量や数量ではなく、種類が高血糖の発生率に影響を及ぼしている可能性が示唆された。なかでもゾテピンは、高血糖の発生率を増加させる可能性が高く、とくに注意が必要であろう」としている。

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他の抗CGRP抗体への切り替えによる片頭痛予防効果

 ある抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体に反応しなかった片頭痛患者に対する他の抗CGRP抗体への切り替えは治療選択肢の1つとなりうる可能性があるが、現時点ではデータが不足している。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のLucas Hendrik Overeem氏らは、抗CGRP受容体モノクローナル抗体であるエレヌマブによる治療で有効性または安全性の懸念が認められた患者に対する他の抗CGRP抗体による治療反応を評価した。Cephalalgia誌オンライン版2021年10月13日号の報告。 対象は、ドイツの頭痛センター4施設において、効果不十分または継続しがたい副作用により他のCGRP抗体へ切り替えを行った片頭痛患者78例。対象患者の頭痛日誌をレトロスペクティブに分析した。対象患者のうちエレヌマブによる3サイクルの治療に反応が認められず(1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少が30%未満)、他のCGRP抗体治療開始1ヵ月前および治療中に完全な頭痛データが得られた25例を特定した。主要評価項目は、ガルカネズマブまたはフレマネズマブ切り替え3ヵ月後における30%以上の治療反応率とした。副次的評価項目は、50%以上の治療反応率、1ヵ月当たりの片頭痛日数、1ヵ月当たりの急性頭痛薬の使用日数とした。対象患者を頭痛頻度が毎日(9例)または非毎日(16例)で層別化し、探索的サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・エレヌマブからガルカネズマブまたはフレマネズマブへの切り替え3ヵ月後における30%以上の治療反応率は、32%であった。・50%以上の治療反応率が得られた患者は、12%であった。・1ヵ月当たりの片頭痛日数は、ベースラインと比較し、3ヵ月後に減少が認められた(20.8±7.1→17.8±9.1、p=0.009)。・層別分析では、頭痛頻度が毎日の患者では治療反応が認められなかったが、非毎日の患者における30%以上の治療反応率は、50%であった。 著者らは「エレヌマブ治療で効果不十分または継続しがたい副作用が認められた片頭痛患者において、他の抗CGRP抗体への切り替えが恩恵をもたらす可能性が示唆された。とくに頭痛頻度が非毎日の患者において、有望な治療オプションとなりうるであろう」としている。

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「五輪の裏で現場はギリギリまで追い詰められていた」感染症内科医・岡秀昭氏インタビュー(前編)

 2021年も残すところあと数週間。昨年の年明け早々に始まった新型コロナウイルス感染症との闘いは、2年近くになる。医療現場のみならず、社会全体を激変させたコロナだが、その最前線で治療に当たってきた医師は、最大の患者数を出した第5波を乗り越え、今ようやく息をつける状態となった。この休息が束の間なのか、しばらくの猶予となるのかは不明だが、諸外国の状況やオミクロン株の出現などを鑑みると、それほど悠長に構えていられないのが現在地点かもしれない。 第6波は来るのか。これまでのコロナ政策で今後も闘い続けられるのか―。地域のコロナ拠点病院で重症患者治療に奔走した感染症内科医・岡 秀昭氏(埼玉医科大学総合医療センター)に話を伺った。******* 今現在(11月8日)、コロナが始まって以来、一番落ち着いている。ここひと月近く、コロナの入院患者はいない。夏休みも取れなかった部下たちが、ようやく交代で休みを取ることができた。――最大のピークとなった第5波はどのような推移を辿り、減少傾向はいつごろから? まず、8月の上旬から逼迫感が出てきて、8月いっぱいはしんどかったと記憶している。それが9月に入り、患者が急激に減ってきた。8月と9月とでは状況がまったく違った。私自身、9月中旬には第5波の振り返りをする余裕も出てきて、9月後半にはずいぶん落ち着いていた。 過去の記録を見ると、9月7日時点で、入院数よりも退院数のほうが上回っている。9月13、20、27日と1週間ごとに、いくつかあったコロナ病棟を、患者の退院で空床化し、いったん閉鎖状態にしたのがこの時期だった。 振り返ると、五輪開幕の直前辺りから五輪期間中が最も大変だった。時期的にも、メディアでは五輪ばかりが話題になって、コロナの状況が取り上げられなくなっていた。 われわれの現場では、7月ごろからかなり危機感が募っていた。しかし一部の人が、重症者数は多くないので、医療体制は問題ないとメディアで公言し、五輪開催の機運が高まった。われわれもできる限りメディアの取材に応え、「重症者のピークは遅れてやってくるので、むしろこれから増える。楽観視しないでほしい」と切実な状況を訴えていたにもかかわらず、それは聞き届けられなかった。 私の主張はただ1つ、「五輪の延期」だった。今になってみてわかることだが、ワクチン接種が進んで落ち着いて来る時期、せめて10月以降になれば有観客でも開催できるはずだっただろうと思う。これは“後出しじゃんけん”ではなく、SNSでもたびたび発信していた。 しかし、菅 義偉前首相は、五輪開催を強行した。それが原因で感染者が増えたのかどうか、本当のところはわからない。しかし、五輪の裏で多くのコロナ患者が重症化し、医療が逼迫した結果、本来失わずに済んだ命が失われたことが紛れもない事実であることを伝えたい。 感染者数が減少にシフトしたかなりの要因は、言うまでもなくワクチンの普及によるものだろう。もうこれ以上の患者数になれば終わりだ……というギリギリまで追い詰められたところで、急速にブレーキが掛かった感覚だった。言い換えれば、われわれが治療に当たったそのころの重症患者のほとんどがワクチン未接種者、死亡も(免疫がつきにくい重篤な基礎疾患を有するなどの一部例外を除いて)、いずれも未接種者だった。五輪を強行開催した菅前首相に関して評価する点を挙げるなら、ワクチンを五輪に何とか間に合わせようと、かなりテコ入れしたことだろう。明らかにワクチン接種の急加速が入った。仮に五輪開催がなかったとしたら、あれほど接種が進まなかったかもしれない。そうなれば、第5波は高齢者を中心に重症者が増え、さらに大きなピークになっていた可能性がある。事実、第5波ピーク時の患者はワクチン未接種の40~50歳代が多かった。ワクチンが広がっていなかったら、さらに高齢者層が大きく上乗せされただろう。そうなれば死亡も格段に増えた可能性がある。 もう1つ、日本人の感染予防に対する意識の高さは、大いに評価されるべきだと思う。海外メディアが報じる現地の状況を見ると、マスクを着けていない人がいかに多いかがわかる。日本人の同調圧力とまでは言わないが、相互監視的に「ほかの人が着けてるから自分も着けなくては」という意識からか、外では皆がきちんとマスクを着用している。 この、ワクチン完遂率の高さと予防意識が、かなり第5波のブレーキには貢献したと考える。――第5波の渦中では、五輪開催と緊急事態宣言の発令などの相反する行動に多くの国民が矛盾と戸惑いを感じた。 さかのぼるが、第4波(2021年3月1日~6月20日)は、緊急事態宣言がスムーズかつ早く、大型連休前に発令された。あの発令については、医療者の中では高く評価されている。中には、「タイミングとして早過ぎるのでは」という指摘もあったようだが、先手を打って出せたのが第4波の宣言だった。ちょうど、より感染力の強いアルファ株に置き換わるタイミングだったにもかかわらず、少なくとも関東地域では比較的“ボヤ”程度で済んだ。ところが、第5波は違った。五輪という目標があり、そこに政治家たちが惑わされた。「そうたやすく宣言は出せない」という政府の思惑があったと思う。しかも、現場からの訴えを聞かず、「重症者は増えていない」というストーリーまで語ったのは間違いだった。あの時点で、すでに静観している場合ではなかった。 さらに、感染力が強いデルタ株の出現があり、より重症化しやすい特性もあった。そして、長らく続いた自粛ムードへの疲れと抑制効果の低下。国民はすでに相当な疲れと緩みを覚えていたし、そういう状況下にもかかわらず五輪は開催されるという。それなら、もう大丈夫なんじゃないかという形で、世論を割ることになってしまった。つまり、五輪開催と感染対策が矛盾し合うことになり、国民にうまく伝わらなかったのが、あの時期の日本だったと思う。――ワクチンに関して、ブレークスルー感染については現場で影響が? 自院では重症や中等症IIの治療がもっぱらで、在宅療養の軽症者は送られて来ない。つまり、ブレークスルー感染が起きていたとしても、現在の状況から推測できるのは、軽症で済んでいる、つまり重症化には至っていないということだ。したがって、ワクチンの90%の予防効果というのは、完全に100%防ぎ切るということではないにせよ、かなり予防できていて、ブレークスルー感染も想定の範囲内だということ。それでも重症化して送られてくるのは、重症化リスクを有するのにワクチン未接種の人とみて、第5波ではほぼ間違いなかった。 ワクチンが接種者のためだけと考えると、重症化しにくい年齢層にはその意義がなかなか見出しにくいかもしれない。ただ、これだけ効果があることがわかってきているコロナワクチンなので、自分も接種者となることで、社会の集団免疫を作る一員になるということ、それに協力することになる。今後、子どもへのワクチンも議論になってくるだろう。子ども個人の健康を守るという側面もあるが、もし第6波で重症者が多く出て来たら、子どもまで接種していかないと抑制できないのではないかと考える。それは子ども自身の現在だけでなく、成人した後の未来も守ることになり、ひいてはその周りの家族をも守ることになる。――米国ではすでに5~12歳まで接種対象が引き下げられている。 日本での導入には議論が必要になると思うが、ポイントとしては、子どもが感染したとしても重症化リスクは小さいということと、人種として多系統炎症症候群(MIS-C)を起こすアジア人が相対的に少ないという点がある。そして大人から子どもへの感染は多いが、その逆は少ないというのもある。その点で、周りを守るというワクチンの意義が、子供に関してはそこまで大きくないのではないかという指摘もある。治験では一定の効果が示されているが、副反応もあり、そこまでして子供に接種させるべきなのかというと、微妙だという意見もある。ワクチン供給量とのバランスという観点も考える必要があるだろう。もしくは、追加接種も含め途上国とのバランスという問題もあり、そこが崩れると輸入感染症になるという危惧が出てくる。 コロナに関しては、ある1つの国が“ひとり勝ち”というわけにいかない。今後、世界的に経済活動が再び活発化してきた時、海外との人流増加は避けられない。ビジネス相手国となるワクチン接種が遅れている一部のアフリカや南米、アジア諸国との行き来が増えれば、確実に入って来る。そうした点でも、世界のバランスをとってワクチン接種を進めていく必要がある。 抗体価は接種から半年で低下するのはすでに知られているが、デルタ株でも重症化を減らす効果は依然続いており、そこまで追加接種を慌てなくてもよいのではないかとは思う。一方で、ワクチンを2回打っていても免疫不全者、とくに抗がん剤治療中の患者や臓器移植患者には抗体が2回では十分につかず、ワクチンの予防効果が下がることがわかっている。今、追加接種が優先的に必要なのはそうした患者、もしくはその周りにいる医療従事者や家族だろう。更なる展望としては、抗体カクテル、モノクローナル抗体治療薬、経口薬も出てくるだろうが、高額な薬価の問題がある。抗体カクテルの重症化リスクがある患者への早期治療投与が有用ということはデータに示されているが、それも7割の重症阻止効果ということで、単純比較だがワクチンのほうが効果が高いことがわかる。また、曝露後予防には9割近い効果があるとされているが、推定薬価は30万前後と高額だ。これらの治療薬の効果が証明されているのは、重症化リスクがある患者に対してであり、リスクのない患者にはコストパフォーマンスも含め効果は不透明である。ワクチンが数千円ということを考えると、未接種者でも、万一感染したら皆が抗体カクテルや経口薬の治療が受けられ、効果もあるという理屈は間違っているという認識が必要だ。抗体カクテルは受動免疫で、一時的に外部から抗体を入れるという仕組み。つまり、入れた抗体がなくなれば無効になる。一方、ワクチンの免疫は接種によって能動的に免疫をつけるという仕組みなので、減弱するものの、長く効果が続く。しかもコストパフォーマンスも良い。抗体カクテルや治療薬が、ワクチンに置き換わるものでは決してないことも理解してほしい。 一部からは、「コロナを5類感染症に」という声が上がっているが、医療費が現在の全額公費負担から3割負担になるのだというところまで理解して言っているのかと問いたい。例えば、レムデシビルは1本6万円。入院初日はそれを2倍量使うので、2本で12万円。さらにその後4日間使うので、薬剤費だけで40万円近く掛かる。レムデシビルが必要な人は酸素やステロイド剤、場合によってはICUに入り、人工呼吸器が必要なケースもある。状況によっては、高価な生物学的製剤や抗菌薬も使う。相当額になる治療費を、現在は公費で全額負担しているのに、5類となった場合にはどうなるのか。高額療養費が適用されるかもしれないが、それでもかなりの額を患者自身が負担することになる。自己負担が大きく増えるということは、全員が望む治療を受けられるかどうかという観点からもかなり危惧する。それだけ最近の治療薬は高コスト。今後続いていくコロナ治療薬も、内服であってもそれなりに高額な薬価となるだろう。 また、コロナ治療薬に関しては、現在のところすべてが特例承認で迅速化が優先されているが、今までもガチフロキサシンやテリスロマイシンなどの抗菌薬などでIII相試験まで治験が進んで効果が確認されたにもかかわらず、いざ承認されて多くの患者に投与したら、低血糖や意識消失などの思わぬ副作用が確認されて使われなくなった例が複数ある。さらにもう1つの懸念は、感染症治療薬は、多用すればいずれは耐性化するのが常であるという問題がある。選択肢が増えてくるのはいいが、その裏にはたくさんの課題があることも忘れてはならない。 コロナに関して、ワクチンの副作用は気にする人が多いのに、治療薬だとなぜウェルカムなのかは疑問だ。治療薬にも副作用があって、新薬が怖いという点はワクチンと同じだ。治療薬を投与するのは、つまりコロナに罹患したということなので、後遺症の問題もある。やはり、感染するより未然に防げたほうがよいのは自明だ。したがって、治療薬が出てきたらワクチンは不要ということには決してならないということは強調したい。<後編に続く>

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