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日本の入院患者における向精神薬使用と転倒リスク~症例対照研究

 これまでのいくつかの研究において、転倒のリスク因子の1つとして向精神薬の使用が挙げられている。しかし、これまでの研究では、管理データベースより取得したデータを用いる、向精神薬の使用から転倒や転落までの時間間隔に関する情報が欠如しているなど、いくつかの制限が含まれていた。東京医科大学の森下 千尋氏らは、カルテより収集した信頼できるデータを用いて、入院患者における向精神薬の使用と転倒や転落との関連について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年12月8日号の報告。 カルテから抽出したデータに基づき、東京医科大学病院に入院している患者を対象に、年齢、性別、入院部門をマッチさせた新規使用者デザイン(new -user design)の症例対照研究を実施した。アウトカムは、転倒・転落の発生率とした。抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬の4つのクラスの向精神薬の使用について、転倒経験患者254例と転倒経験のない対照患者254例の間で比較を行った。転倒や転落とこれら向精神薬の使用との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量分析では、すべてのクラスの向精神薬使用と転倒リスクとの間に統計学的に有意な関連が認められた。・年齢、性別、入院部門、BMI、入院時の転倒リスク評価スコア、他の向精神薬使用などの潜在的な交絡因子で構築された多変量ロジスティック回帰分析では、睡眠薬の使用と転倒リスクとの関連は、有意なままであった。 著者らは「入院患者において睡眠薬の使用は、転倒や転落の危険因子であることが示唆された。転倒や転落の発生率の低減させるためには、睡眠薬の使用を可能な限り控えることが重要であろう」としている。

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spesolimab、膿疱性乾癬(汎発型)の膿疱・皮疹を改善/NEJM

 膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)の治療において、ヒト化抗インターロイキン-36受容体モノクローナル抗体であるspesolimabはプラセボと比較して、投与後1週の時点での膿疱や皮膚症状の消失割合が高いが、感染症や全身性薬物反応の発現が認められることが、フランス・Paris Hopital Saint-LouisのHerve Bachelez氏らが実施した「Effisayil 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年12月23日号に掲載された。12ヵ国37施設の第II相試験 本研究は、GPPフレアを発症している患者におけるspesolimabの有効性と安全性の評価を目的とする第II相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年2月~2021年1月の期間に実施され、日本を含む12ヵ国37施設で参加者の登録が行われた(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳、European Rare and Severe Psoriasis Expert Network基準によるGPP既往歴があり、中等度~重度のGPPフレアが認められる患者であった。 被験者は、spesolimab(900mg、単回)群またはプラセボを静脈内投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、1週後に症状が持続している患者は8日目にspesolimab(900mg、単回)の非盲検投与を、1週以降にフレアの再発がみられる患者はレスキュー治療としてspesolimab(900mg、単回)の非盲検投与を、あるいはこれら両方を受けることが可能とされた(プラセボからspesolimabへのクロスオーバーを許容)。追跡は12週目まで行われた。 主要エンドポイントは、1週目の終了時点での「医師による膿疱性乾癬(汎発型)の全般的評価(GPPGA)」の膿疱サブスコア(0[肉眼的膿疱なし]~4[重度膿疱]点)が0点であることとされた。主な副次エンドポイントは、1週目終了時のGPPGAの総スコア(0~4点、点数が高いほど疾患の重症度が高い)が0または1点(皮膚症状が消失またはほぼ消失)であることだった。GPPGA膿疱サブスコア0点:54% vs.6% 53例が登録され、35例がspesolimab群、18例はプラセボ群に割り付けられた。ベースラインの平均年齢(±SD)はspesolimab群が43.2±12.1歳、プラセボ群は42.6±8.4歳であり、spesolimab群で女性(60% vs.83%)およびアジア系人種(46% vs.72%)が少なかった。 ベースラインのGPPGA膿疱サブスコアが3点の患者は、spesolimab群が46%、プラセボ群は39%で、同4点はそれぞれ37%および33%であった。また、GPPの乾癬面積と重症度指標(GPPASI、0~72点、点数が高いほど重症度が高い)の総スコア中央値は27.4点(IQR:15.5~36.8)および20.9点(12.0~32.0)だった。 1週目の終了時点で、GPPGA膿疱サブスコアが0点であった患者の割合は、spesolimab群が54%(19/35例)と、プラセボ群の6%(1/18例)に比べ有意に高かった(群間差:49ポイント、95%信頼区間[CI]:21~67、p<0.001)。 また、1週目終了時のGPPGA総スコアが0または1点の患者の割合も、spesolimab群で有意に良好であった(43%[15/35例]vs.11%[2/18例]、群間差:32ポイント、95%CI:2~53、p=0.02)。 ベースラインで観察された性別、人種、GPPASIスコアの両群間の不均衡を補正するために主要および主な副次エンドポイントの事後的な感度分析を行ったところ、主解析の結果と一致した。 1週目に、spesolimab群の66%(23/35例)、プラセボ群の56%(10/18例)で有害事象が発現した。spesolimab群では、発熱が2例に認められた(プラセボ群は4例)。また、spesolimab群の2例で薬物反応が報告され、このうち1例は薬物性肝障害を併発していた。 感染症は、1週目にspesolimab群の17%(6/35例)で発現し、12週目までにspesolimabの投与を受けたプラセボ群の患者を含む51例では24例(47%)に認められた。抗薬物抗体は、少なくとも1回のspesolimabの投与を受けた患者の46%(23/50例)で検出された。 著者は、「膿疱性乾癬患者におけるspesolimabの効果とリスクを明らかにするには、より長期で大規模な試験を要する」としている。

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転移のない前立腺がん、アビラテロン+エンザルタミドで無転移生存期間延長/Lancet

 転移のない高リスク前立腺がん男性の治療において、アンドロゲン除去療法(ADT)による3年間の標準治療にアビラテロン酢酸エステル(アビラテロン)+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミドを併用すると、標準治療単独と比較して、全生存期間の代替指標とされる無転移生存期間が延長し、前立腺がん特異的生存期間や生化学的無再発生存期間も改善されることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGerhardt Attard氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年12月23日号で報告された。2つの第III相STAMPEDE試験のメタ解析 研究グループは、非転移性前立腺がん男性の治療における、ADTへのアビラテロン+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミド併用の有効性を評価する目的で、STAMPEDEプラットホームプロトコールに基づく2つの第III相非盲検無作為化対照比較試験のメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。これら2つの試験は、英国とスイスの113施設が参加し、2011年11月~2016年3月の期間に実施された。 対象は、年齢制限はなく、高リスク(リンパ節転移陽性、または陰性の場合は次の要件のうち少なくとも2つを有する:腫瘍Stage T3/T4、Gleasonスコア8~10点、前立腺特異抗原[PSA]値40ng/mL以上)あるいは、高リスクの特徴(ADTの全期間が12ヵ月以下で治療なしの間隔が12ヵ月以上でありPSA値4ng/mL以上で倍加時間が6ヵ月未満、またはPSA値20ng/mL以上、またはリンパ節再発)を持つ再発の非転移性前立腺がんで、WHO performance statusが0~2の患者であった。放射線療法は、リンパ節転移陰性例では行い、陽性例では推奨された。 2つの試験(第1試験、第2試験)とも、被験者は、ADT単独(手術、黄体形成ホルモン放出ホルモンの作動薬と拮抗薬)による治療を受ける群(対照群)、またはADT+経口アビラテロン酢酸エステル(1,000mg/日)+経口プレドニゾロン(5mg/日)を受ける群(併用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。第2試験の併用群は、さらにエンザルタミド(160mg/日、経口投与)が追加された。ADTは3年間、併用治療は2年間行われたが、放射線療法を受けなかった患者では、病勢が進行するまで治療を継続できることとされた。 主要エンドポイントは無転移生存期間とし、無作為化の時点から全死因死亡または遠隔転移(画像で確定)の発現までの期間と定義された。両群とも期間中央値には未到達だが、併用群で47%延長 1,974例が解析に含まれた。第1試験(2011年11月~2014年1月)では、併用群に459例、対照群に455例が、エンザルタミドを含む第2試験(2014年7月~2016年3月)では、それぞれ527例および533例が割り付けられた。全体の年齢中央値は68歳(IQR:63~73)、PSA中央値は34ng/mL(IQR:14.7~47)であった。また、39%がリンパ節転移陽性で、85%は標準治療として放射線療法を受けていた。 追跡期間中央値は72ヵ月(IQR:60~84)で、この間に無転移生存イベントが併用群で180件、対照群で306件発生した。 無転移生存期間中央値(月)は、両群とも未到達(IQRは併用群が評価不能[NE]~NE、対照群は97~NE)であり、併用群で有意に延長していた(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.44~0.64、p<0.0001)。6年無転移生存率は、併用群が82%(95%CI:79~85)、対照群は69%(65~72)であった。 また、全生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.60[95%CI:0.48~0.73]、p<0.0001)、前立腺がん特異的生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群はNE~NE、HR:0.49[0.37~0.65]、p<0.0001)、生化学的無再発生存期間(併用群は中央値未到達でIQRはNE~NE、対照群は中央値86ヵ月でIQRは83~NE、HR:0.39[0.33~0.47]、p<0.0001)、無増悪生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.44[0.36~0.54]、p<0.0001)は、いずれも併用群で有意に長かった。 治療開始から24ヵ月の期間に、Grade3以上の有害事象は、第1試験の併用群で37%(169/451例)、対照群で29%(130/455例)に、第2試験ではそれぞれ58%(298/513例)および32%(172/533例)に認められた。併用群で頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、高血圧(第1試験の併用群は5%[23/451例]、対照群は1%[6/455例]、第2試験はそれぞれ14%[73/513例]および2%[8/533例])と、高アラニントランスアミナーゼ血症(第1試験の併用群は6%[25/451例]、対照群は<1%[1/455例]、第2試験はそれぞれ13%[69/513例]および1%[4/533例])であった。 Grade5の有害事象は7件が報告された。第1試験の併用群で3件(直腸腺がん、肺出血、呼吸不全)、第2試験の併用群で4件(敗血症性ショック2件、突然死2件)であり、2つの試験とも対照群では発現しなかった。 著者は、「アビラテロン+プレドニゾロンは、転移のない高リスク前立腺がんの新たな治療法として考慮すべきである」としている。

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肺がんマルチ遺伝子PCRパネルAmoyDx発売/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、複数の抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断薬「AmoyDx肺マルチ遺伝子PCRパネル」の日本国内での販売を2022年1月11日に開始する。  同製品は、非小細胞肺がん(NSCLC)の5種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET)をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異を1回の測定で同時に検出し、10種の抗がん剤の適応判定の補助が可能。保険点数は10,000点(5項目)。 リアルタイムPCR法を用いたマルチプレックスのコンパニオン診断薬が承認・保険適用されたのは本邦初であり、その感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。 製品概要・製品名:AmoyDx肺マルチ遺伝子PCRパネル(製品番号:A246)・承認番号:30300EZX00059000・使用目的:がん組織から抽出したDNA中の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異及びBRAF遺伝子変異)及びRNA中の融合遺伝子(ALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子)の検出NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる ・EGFR遺伝子変異 ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、オシメルチニブメシル酸塩 ・ALK融合遺伝子 クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ ・ROS1融合遺伝子 クリゾチニブ ・BRAF V600E変異 ダブラフェニブメシル酸塩とトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の併用投与 ・MET遺伝子 exon14スキッピング変異テポチニブ塩酸塩・検査原理:PCR法(リアルタイムPCR法およびRT-PCR法)・検体材料:腫瘍細胞の存在が確認されたFFPE組織、新鮮凍結組織・保険点数:10,000点(準用保険点数: D004-2 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査 イ 2項目4,000点と ロ 3項目6,000点を合算した10,000点)・包装 1キット(12テスト)・製造販売業者 株式会社理研ジェネシス・製造元 Amoy Diagnostics Co., LTD(中国)

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第84回 相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?

2022年となりました、本年もよろしくお願いします。<先週の動き>1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?政府は、正月明けのコロナ感染者数の急激な増加、相次ぐオミクロン株の感染例に対して、都府県での無料検査や濃厚接触者に対する宿泊施設への待機要請などを実施し、対応を進めている。東京都は、4日までにオミクロン株感染が確認された55例のうち、およそ7割はワクチンを2回以上接種していたと公表した。岸田総理大臣は、3日に関係閣僚会合を開催し、翌日の年頭記者会見において、医療提供体制のフル稼働や、医療従事者・高齢者を対象とした3回目接種の前倒し、治療薬の普及などの措置を機動的に講じると語った。SNSでは、3回目ワクチンの進捗状況に医師からの不安の声も見られる。広がるオミクロン株の市中感染に危機感を持ち、対応していかなければならない。(参考)コロナワクチンの3回目接種、政府が高齢者に前倒し実施へ 気になる副反応は?オミクロン株への効果は?(東京新聞)東京都 オミクロン株感染者 約7割はワクチン2回接種済み(NHK)岸田首相、コロナ対策「臨機応変に」指示 関係閣僚会合(毎日新聞)2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ厚労大臣は5日の記者会見で、コロナ感染者急増のため、病床の逼迫が予想される地域では原則全員入院の対応を自宅療養などに切り替えることを認めると発表した。年始に沖縄県、山口県の米軍キャンプなどをきっかけに急増した感染者に対して、まん延防止等重点措置が申請され、政府はこれを認める方針だ。最新の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.1版」では、オミクロン株や経口治療薬モルヌプラビルについて追記されている。(参考)宿泊・自宅療養可能に、厚労省 オミクロン株の拡大地域で(中日新聞)オミクロン株 感染急拡大の地域で自宅療養認める通知 厚労相(NHK)B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて(厚労省)3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市医療法人 友愛会が大阪市から無担保で融資を受け、約2億円を返済しないまま昨夏に経営破綻したため、市は交付予定だったコロナ受け入れ協力金を未返済分の回収目的にて相殺していたことを明らかにした。法人は相殺は不当だとして、市に1億8,000万円の支払いを求めている。融資は、友愛会の元理事長が運営していた社会福祉法人が特別養護老人ホームを建設するために5億1,000万円、さらに病院との複合施設であったため、整備費用として4億9,000万円を貸し付けており、昨年10月時点で、利息を含めて約2億円が未返済となっていた。(参考)大阪市、コロナ協力金で融資回収 医療法人「不当」と1.8億円求め提訴(産経新聞)大阪市の融資未返済で倒産 医療法人にコロナ協力金「支給せず」(毎日新聞)4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院昨年電子カルテにサイバー攻撃を受けた徳島県つるぎ町の半田病院は、システムの復旧を終え、4日からすべての診療を再開したことを発表した。同院は昨年10月末、データ暗号化によるランサムウェア(身代金ウイルス)によって、電子カルテ約8万5,000人のデータが使用不能となったため、新規患者の外来診療を停止していた。報道によれば、国内の電子カルテシステムを標的としたランサムウェア被害は、2016年以降少なくとも11病院で発生しており、厚労省は安全管理に関するガイドラインを今年度中に改定する見込み。医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針では、電子カルテのバックアップデータを病院のネットワークから切り離して保管することを明記し、各医療機関に対策を求める。(参考)サイバー攻撃受けた町立病院 すべての診療再開 徳島 つるぎ町(NHK)「身代金」ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も(読売新聞)病院サイバー対策、カルテデータ「独立保管」…厚労省が新たな指針策定へ(同)5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大津地方裁判所は、三重大学への医療機器納入をめぐる贈収賄事件で、12月28日の公判にて、元講師に対して懲役1年、執行猶予3年(求刑:懲役1年2ヵ月)を言い渡した。すでに汚職やカルテ改ざん事件で起訴されている元上司・臨床麻酔部の元教授の指示の下、医療機器メーカーの担当者に対して寄付金を要求し、機器選定に大きな影響を与えるようなメールを送るなどとして、共謀共同正犯が成立するとされた。(参考)三重大病院元講師に有罪 医療機器納入汚職―津地裁(時事通信)三重大元講師に有罪判決 医療機器納入めぐる汚職事件で津地裁(ミクスオンライン)

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診療所の承継時、やってはいけない3つのNG行動【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第33回

33回 診療所の承継時、やってはいけない3つのNG行動漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継の業界は不動産業界と似た構造となっており、優良な案件情報を誰よりも早くキャッチするためには、私たちのような「仲介業者」との良好な関係性を築くことが不可欠です。今回は、仲介業者を利用する医師が「やってはいけないNG行動」を紹介します。(1)秘密保持契約を守らない承継案件の開示を受ける際には、売り手側が大きなリスクを負うため、秘密保持契約を締結する必要があります。(売り手側のリスクについては「第20回 『うちの診療所引き継ぐ人いない?』、うっかり漏らして大惨事!」参照)この秘密保持契約を守らず、医師仲間や他社の仲介業者に、過去に検討した案件名や詳細を話してしまう方がいます。仲介業者はこのような方とは信頼関係が築けないと考え、案件紹介を中止することがあります。(2)希望条件が定まっていなのに、多数の案件に問い合わせをする前述のように、売り手側の情報開示には大きなリスクが潜んでいるため、仲介業者は売り手から「多数の買い手に案件を開示することなく、条件が合致している場合にだけ開示してほしい」と言われているケースがよくあります。このような前提を知らず、「すべての案件を開示して」と主張する買い手の方がいます。仲介業者は「すべての案件」と言われた時点で、希望条件が整理できておらず、開業準備が整っていない方だと判断し、良質な非公開案件があった場合でも、紹介を避けるケースがあるのです。(3)急に連絡が途絶える自ら問い合わせをして、案件の開示を希望したにもかかわらず、その後連絡が途絶える買い手の方がいます。仲介業者としては、このような方を紹介すると、売り手からの信頼を毀損するリスクがあるため、積極的に案件を紹介しないようになります。以上は一例ですが、こうしたNG行動を避け、仲介業者と良好な関係性が築くことで、良質な承継案件の紹介を受けられるようになるのです。

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コロナのワクチンキャンペーンに効果はある?米国での反響は…

 国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。 本研究には、ワクチン宝くじプログラムを実施している11州(取り扱い群)とプログラム未実施28州(対照群)に対し、家庭パルス調査(HPS)と州ごとの1日あたりのワクチン接種率を基に『新型コロナワクチンを接種しましたか?』という質問を行い、それに回答した成人40万3,714人のデータを使用した。差分の差分法(DID)では、HPSの質問反応を使用し、取り扱い群と対照群の間でワクチン接種率の変化を比較した。一方、拡張された合成コントロール(ASC:augmented synthetic control)法では、取り扱い群の毎日の新たなワクチン接種率を、対照群のドナープールから構築され合成して重みづけされた対照群と比較した。データは2021年3月17日~7月5日までのものが分析された。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢±SDは52.7±15.7歳だった。・女性は23万9,563例 (加重パーセンテージ:51.6%)、黒人3万1,746例(同:11.9%)、ヒスパニック系3万9,709例(同:18.2%)、白人33万4,034例(同:76.4%)がHPSのワクチン接種状況に関する質問に回答した。・HPSに回答した8万949人(同:28.1%)はワクチン接種をしていなかった。・両方法でプールされた分析によると、宝くじプログラムがワクチン接種の増加と関連していることが示された。・ASCによる分析では、宝くじプログラムが0.208 log points(95%信頼区間[CI]:0.004~0.412)の増加に関連していることが明らかになった。これは1日あたり新しくワクチン接種率が平均23.12%増加することを意味する。・州独自の分析によると、どちらの方法でも宝くじプログラムが役立つことが示唆され、オハイオ州では0.09 log points(p

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抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・過去6ヵ月間でソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した患者は、ミラベグロンを使用した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。 ●ソリフェナシンのOR:1.24(95%信頼区間[CI]:1.08~1.43) ●darifenacinのOR:1.30(95%CI:1.08~1.56)・診断前6ヵ月~1年間でソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した患者は、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症率の上昇との関連が認められた。 ●ソリフェナシンのOR:1.34(95%CI:1.11~1.60) ●darifenacinのOR:1.49(95%CI:1.19~1.86) ●トルテロジンのOR:1.21(95%CI:1.02~1.45) ●フェソテロジンのOR:1.39(95%CI:1.14~1.71)・オキシブチニンまたはtrospiumでは、影響が認められなかった。この原因として、プロトパシーバイアスが考えられる。・本研究の限界として、アウトカムの誤分類や健康関連データベース使用による交絡因子の影響が挙げられる。 著者らは「診断6ヵ月前にソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した高齢者、診断前年にソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した高齢者では、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。OAB患者の治療に際して、慎重な薬剤選択が求められる」としている。

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良かれと思うことも確かめてみる価値あり(解説:折笠秀樹氏)

 表題の「Bah humbug!」は何だろうかと思った。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の中で、主人公が放った有名な言葉らしい。「当てにならない、ばかばかしい」といった意味のようだ。何が当てにならないかというと、「クリスマスカードを臨床試験の被験者へ送ると脱落が減る」だ。クリスマスカードが届くと意識が高まると思いがちだが、実はそんなことはなかったのだ。当然といえば当然。 うちにも保険会社から季節のあいさつ状が届くが、開封するも、中身はほとんど読まないままにごみ箱行き。ダイレクトメールもしかり。1%でも反応してくれたら御の字なのだろう。ということは、クリスマスカードを送付しても、せいぜい1%しか来院率が上がる効果はないのかもしれない。 この研究では、インフォームドコンセントを取っていたみたいだ。ということは、この研究について説明しているはず。半分の家にはクリスマスカードが届くと知っていたら、さらにそのありがたみを感じることはないだろう。 この試験デザインはちょっとユニークだ。8つの進行中の臨床試験の中で、RCTが組まれていた。全部で3,223例が割り付けられたが、1,754例もが解析除外されていた。大丈夫なのかと一瞬思ったが、よく読むと合点した。その原因はCOVIDに伴う来院停止にあった。来院拒否したのか、やむなく来院しなかったのか、判明しない分を除外したようだった。しかし、同数ずつ解析除外されていたので、とくに誤った結論になっていないだろう。 オンライン授業のほうが対面授業よりも成績が良くなるという方がいるが、これも単なる印象ではなく、RCTをして確かめてもらいたい。脱落率を減らすために、何らかのリマインドをするのが効果的だといわれている。忘れるのを防ぐ効果のあることは確かだろうが、勉強熱心になる効果についてはわからない。

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アサガオが体内で発芽した子ども【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第201回

アサガオが体内で発芽した子どもphoto-ACより使用最近、日本語の論文ばかり紹介していますが、結構面白くて、いろいろな他科雑誌を読んでいます。アサガオといえば、夏休みの観察日記が定番中の定番です。ウチの子どもも小学1年のとき、ゴツイ植木鉢を持って帰ってきて、毎日アサガオの観察をしていました。アサガオを、なんと体内で育ててしまったという驚愕の医学論文があるので紹介しましょう。小山新一郎ら.アサガオ種子気管支異物の1例喉頭. 2006;18:146-148.この論文の主人公は、生後5ヵ月の男の子でした。口にものを入れたい盛りですよね。ウチの子どもも、よくトミカのミニカーを口に入れていました。アサガオの種が入った容器を誤って倒してしまい、その際、いくつか種が口に入ってしまったそうです。その後、呼吸器症状が出現したため、近くの小児科を受診しました。大きな異常はないだろうと診断され、感冒薬を処方されて帰宅しました。しかし、2日後に40℃の発熱がみられ、別の小児科を受診しました。その際、胸部レントゲン写真で明確な所見が確認され、総合病院へ紹介されたそうです。その後、胸部CT検査を行うと、「左の気管支に何か詰まっていること」がわかりました。タイトルに書いてあるように、気管支にはアサガオの種が入り込んだわけですが、全身麻酔下で左気管支をのぞくと、黒褐色のアサガオの種とは異なるモノがありました。それを取り除いてみると、あれ、アサガオの種じゃなかったのだろうか。主治医は、その取り出した異物をつぶさに観察しました。すると、それは発芽して大きくなったアサガオの種でした。体内ですでにアサガオは発芽していたのです。さすが、成長が早い!おそらく、最初に小児科を受診した時点ではアサガオが発芽していなかったので、気管支の通気性がよく、画像で無気肺を指摘できなかったのでしょう。その後、気管支を閉塞することで含気不良の肺葉が出てきたということだと思います。もし風邪や喘息と診断されたままで、どんどんアサガオが成長していったらどうなっていたのかと考えると恐ろしいですね。

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第90回 第6波のまん防・緊急事態宣言を否定する人に、聞いてみたいよ、その根拠

もはや第6波到来なのか。1月5日、全国では2,638人もの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)検査陽性者が報告された。2021年の年末最終週あたりから徐々に増え始めていた陽性者はわずか1週間で6倍以上に膨れ上がった。この増加は正月休み明けの検査件数の急増などによる形式的増加も影響していると思われる。しかし、昨年12月中はPCR検査数に大きな変動があるわけではないのに下旬以降徐々に陽性者が増加していることを考えると、デルタ株より感染力が3~4倍といわれるオミクロン株の登場で局面は変わりつつあることがうかがえる。しかし、テレビやネットを見ていると、オミクロン株での重症化率が低いことをフックとした、とんちんかんな解説や意見があまりにも多いことに呆れてしまう。あるテレビ番組では厚生労働省の元医系技官が「増えたから感染を抑えるなんて2年前と同じ馬鹿げた事は、絶対にやってはいけない」と声高に言っていた姿にはもはや失笑を禁じ得なかった。確かに南アフリカ国立感染症研究所からの査読前論文を見ると、対デルタ株比でのオミクロン株の重症化リスクは0.3倍。同様の報告はほかにもある。だが、単純な算数の問題として、感染者がデルタ株による第5波の3倍に増えてしまったならば、この医療側にとって好都合なオミクロン株の特性はチャラになってしまう。また、裾野として広がった軽症、無症状感染者をほぼ全員自宅療養とするにしても社会全体が抱える負荷は莫大なものだ。一部には、ならば新型コロナの感染症法上の取り扱いを指定感染症としての2類相当を5類にすれば良いではないかという意見もあるが、そもそも致死率がいまだインフルエンザなどと比べれば高く、対抗手段も揃いつつあるとはいえまだまだ「帯に短し襷に長し」という現状を考えれば、こうした意見の具体化はまだ時期早尚だろう。ワクチンは有力な手段ではあるものの、それのみで感染・発症を完全には防げず、かつ現時点で国内のワクチン接種率が約8割に達しようとする中、結局、感染者増加という蛇口の元栓を締めるには個人レベルでは手洗い、マスク、三密回避という基本的感染対策の徹底化、公的施策としてはブースター接種の迅速化と感染拡大阻止に向けた行動抑制対策という限られた選択肢しかない。その意味で沖縄県、広島県、山口県の3県で新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の適用がほぼ確実になったことはやむを得ない措置と言えるだろう。しかし、ネット上では首都・東京都などで同様の対策、あるいは一歩進んで緊急事態宣言まで進むことへの警戒感や倦えん感からなのか、先ほどの厚労省の元医系技官以外でも、いわゆる識者と呼ばれる人から「オミクロン株は重症化率が低いのだから」とか「今現在の重症者は少ないのだから」などの論理で強い措置をすべきではないという意見が散見される。重症者数は感染者発生から1週間後に見えてくる後発指標。少なくともオミクロン株での重症化率の低さや国内のワクチン接種率の高さゆえに理論上はかなり低値に抑えられるのではと思われるものの、あと1週間後の「答え合わせ」で万が一予想を超えてしまった場合は取り返しのつかないことになるのは、医療従事者の中では百も承知のことだろう。また、重症者数が後発指標であることは報道でも繰り返し伝えられてきた。こうした現実を目の当たりにすると、パンデミックから丸2年が経過した今、改めて当たり前になっていると思い込んでいた情報を再整理して繰り返し伝える必要性を認識している。とはいえ正直個人的にもそうした作業に倦えん感がないとは言えない。何とも気が重い年明けになってしまったようだ。

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COVID everywhere【臨床留学通信 from NY】番外編7

COVID everywhere昨年の大晦日、残念ながら運悪く(くじを引いたわけでもありませんが)24時間当直となり、空いた時間ができたため、本稿を備忘録的に書いています。ニューヨークでは、クリスマスを終えた週から、COVIDによる入院がぐんと増え、院内は再びコロナ患者だらけ。現場には緊張感が走っています。米国の陽性患者は、1日当たり58万人(本稿を執筆した2021年末時点)、人口2,000万人のニューヨーク州は、1日で7万人が陽性になっており、まだまだ増えそうです。日本の人口で換算すると40万人ほどに相当する数です。実際に日本で40万人が陽性になったらパニックになりそうですね。現在ICUで働いていないので、正確なワクチンとの兼ね合いと重症度は不明ですが、今回のオミクロン株は拡大が早く、印象としては単独の呼吸不全よりも心筋梗塞、心不全、COPD等の合併症を伴って来院する人が多い気がします(ワクチン未接種の人が呼吸不全になる可能性が高いのは、ほぼ間違いありません)。日本で流行り始めたら、1週間程度でパンデミックになるのではと懸念します。Booster接種はリスクの高い人優先でしょうが、この状況を鑑みるとリスクに関係なくすぐに必要だと考えます。というのも、3回目接種済みの同僚たちもやはりコロナにかかってしまっているのです。CDCは、無症候のコロナ陽性の隔離期間を従来の10日から5日に短縮し、これはmedical workerが互いの穴を埋める期間が少なく済むのでありがたいのですが、本当に良いのかどうかはよくわかりません。文末のグラフは、私が勤務する病院系列MHS(Montefiore Health System)の入院患者ですが、急峻に増加しているのがわかると思います。デルタ株は、ほとんど流行りませんでしたが、オミクロン株は昨年1月の第2波(グラフ中央)をも超える勢いなのではないかとも思います。なお、グラフの最初の第1波はひどいもので、病棟の8割がコロナ患者に占拠されている状態でした。日本の大学病院で1,000床、800人以上が酸素を必要とするコロナ患者、というのはちょっと想像し難いと思いますが、まさに阿鼻叫喚の様相でした。私もいつ罹患するかわからない状況ですが、コロナを併発した心筋梗塞、心肺停止など待ったなしの人もおり、我が身に迫る危機を実感する日々です。

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事例041 オフロキサシン点眼液の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例は、糖尿病患者の「角膜びらん」に対して、オフロキサシン点眼液を投与したところ、病名不備や療養担当規則違反などの事由に当てはまらないその他の場合に分類されるC事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。査定原因を調べるために添付文書を参照しました。オフロキサシン点眼液は、「広範囲抗菌点眼剤に分類され、長期間使用しないこと」が明記されています。改めて診療開始日を確認すると6か月を越えた病名に対して投与されていました。次に診療録を確認したところ、左眼の炎症を伴う「角膜びらん」を繰り返していることが記載されていました。病名の更新を行わずに、その度、オフロキサシン点眼液が処方されていました。レセプトからは、再発時の投与であることが読み取れないため、急性期用剤の新鮮例への投与ではなく、古い疾病に対する漫然投与と捉えられて査定となったものと推測できます。再発防止に、医師には抗菌剤を処方する場合には、その判断をした日付と病名を診療録へ記載をいただくようにお願いしました。併せて、会計担当者には、抗菌剤が処方されていた場合の病名日付を確認することを伝え、レセプトチェックシステムに限度日数の登録をしました。

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うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。 本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は、平均4つの併存疾患を有しており、84.4%で1つ以上の併存疾患が認められた。・うつ病を対象とした併存疾患ネットワークは、対照群よりも複雑であった(839 vs. 369)。・うつ病患者の併存疾患ネットワーク内には、複雑ではあるが明確なコミュニティが発見された。その最大のコミュニティは、脳血管疾患、慢性虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症が含まれた。・性別特有の疾患は、中枢神経性疾患であった。また、男女ともに心血管疾患が主要な中枢性疾患であった。・併存疾患ネットワークの主要な疾患は、うつ病患者が高齢になるほど、疾患重症度が高まった。・なお、観察された相互関連の因果関係は特定できなかった。 著者らは「併存疾患のパターンを評価するための縦断的な医療データセットへのネットワーク解析の適用は、従来の臨床研究のアプローチを補完するうえで役立つであろう。本調査結果により、うつ病関連の併存疾患についての理解が向上し、うつ病の統合管理が強化されることが望まれる」としている。

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モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【4. 抗ウイルス薬等の選択】(1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。【モルヌピラビル】の項目を追加・機序 モルヌピラビルは、リボヌクレオシドアナログ。SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、ウイルスRNAの配列に変異を導入、ウイルスの増殖を阻害する。・海外での臨床報告 日本国内の3施設を含む20ヵ国、107施設で実施した多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験。重症化リスクのある非重症COVID-19患者(目標症例数1,550例)の外来治療を対象。発症5日以内の治療開始で偽薬群(699名)の重症化が68名(9.7%)に対し、治療群(709名)では48名(6.8%)と、相対的リスクが30%減少。また、死亡例は治療群で1名(0.1%)に対して、プラセボ群では9名(1.3%)と治療群で少なかった。・投与方法(用法・用量) 通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。[投与時の注意点]1)臨床試験における主な投与知見を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。2)本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていることなどを踏まえ、重症化リスク因子を有する者(例:61歳以上、活動性のがん、慢性腎臓病、糖尿病など)が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。3)重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者(中等症II以上)に対する有効性は確立していない。4)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は臨床試験で除外されているため、ブレイクスルー感染での重症化予防等の有効性を裏付けるデータは得られていない。6)妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、授乳婦については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。・入手方法 本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼により、無償譲渡。 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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高リスク外来コロナ患者、レムデシビル早期3日間投与で入院リスク低減/NEJM

 疾患進行リスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の非入院患者において、レムデシビルによる3日間の外来治療は、安全性プロファイルは許容可能であり、プラセボに比べ入院/死亡リスクは87%低かった。米国・ベイラー大学メディカルセンターのRobert L. Gottlieb氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GS-US-540-9012(PINETREE)試験」の結果を報告した。レムデシビルは、中等症~重症のCOVID-19入院患者の臨床転帰を改善することが示唆されていたが、疾患進行リスクが高い症候性COVID-19の非入院患者における入院予防効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年12月22日号掲載の報告。発症7日以内、疾患進行リスクを有する外来患者を対象にプラセボ対照試験 研究グループは、COVID-19発症後7日以内で、疾患進行リスク因子(60歳以上、肥満、併存症がある)を1つ以上有する非入院患者を、レムデシビル群(1日目200mg、2日目および3日目100mg、静脈内投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、28日目までのCOVID-19に起因する入院または全死因死亡の複合、副次評価項目は28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診または全死因死亡の複合、安全性の主要評価項目はあらゆる有害事象とした。レムデシビル早期導入により入院/死亡のリスクが87%低下 2020年9月18日~2021年4月8日に、米国、スペイン、デンマーク、英国の64地点で患者の登録が行われた。解析対象は、無作為化され少なくとも1回のレムデシビルまたはプラセボの投与を受けた562例(レムデシビル群279例、プラセボ群283例)。平均年齢は50歳、女性47.9%、ヒスパニック系またはラテン系41.8%であった。高頻度にみられた併存疾患は糖尿病(61.6%)、肥満(55.2%)、高血圧(47.7%)であった。 主要評価項目のイベントは、レムデシビル群で2例(0.7%)、プラセボ群で15例(5.3%)確認された(ハザード比[HR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.59、p=0.008)。副次評価項目である28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診は、レムデシビル群で1.6%(4/246例)、プラセボ群で8.3%(21/252例)発生した(HR:0.19、95%CI:0.07~0.56)。28日目までに死亡した患者はいなかった。 有害事象は、レムデシビル群で42.3%、プラセボ群で46.3%に認められた。

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早期乳がん術前化学療法、pCRは代替エンドポイントには役不足/BMJ

 病理学的完全奏効(pCR)は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)のいずれについても、臨床試験の代替エンドポイントとして不十分であることが、イタリア・European Institute of Oncology(IEO)のFabio Conforti氏らが実施した、早期乳がんを対象とする術前化学療法の無作為化臨床試験に関するシステマティックレビューおよびメタ解析で確認された。米国食品医薬品局(FDA)は、早期乳がんの術前化学療法を検証する無作為化臨床試験において、pCRをDFSおよびOSの代替エンドポイントとすることを承認している。しかし、先行のメタ解析(試験数に限界があった)で認められたpCRとDFSおよびOSとの間の強い相関関係は、患者レベルであり試験レベルではなく、pCRを代替エンドポイントとすることについては議論の的となっていた。著者は、「今回示された結果は、pCRを早期乳がん術前化学療法の主要エンドポイントとして規定すべきではないことを示すものである」とまとめている。BMJ誌2021年12月21日号掲載の報告。54件のRCTをメタ解析、試験レベルで検証 研究グループは、Medline、EmbaseおよびScopusを用い、2020年12月1日までに発表された、術前化学療法の単独または他の治療(抗HER2薬、標的治療薬、抗血管薬、ビスホスホネート、免疫チェックポイント阻害薬など)との併用を検証した無作為化臨床試験を特定し、pCRとDFSまたはOSの試験レベルでの関連性を解析した。 治療効果推定値(DFSおよびOSのハザード比、pCRの相対リスク)を対数変換した後、加重回帰解析を実施し、決定係数(R2)を用いて関連性を定量化した。また、実験群における治療法の種類、pCRの定義(乳房およびリンパ節vs.乳房のみ)、疾患の生物学的特性(HER2陽性またはトリプルネガティブ乳がん)によって試験を層別化し、事前に計画されたサブグループ解析の結果の異質性を検証するとともに、DFS/OSのハザード比に関する代替閾値効果についても評価した。 無作為化臨床試験54件(計3万2,611例)が本解析に組み込まれた。DFSおよびOSとの関連は弱く、OSの代替エンドポイントとはならず pCRの対数(相対リスク)と、DFS(R2=0.14、95%信頼区間[CI]:0.00~0.29)およびOS(0.08、0.00~0.22)の対数(ハザード比)との間に観察された関連性は弱いものであった。全サブグループ解析において、pCRの定義、実験群における治療法の種類、疾患の生物学的特性にかかわらず、同様の結果が得られた。 代替閾値効果は、DFSに関しては5.19であったが、OSについては推定できなかった。 3つの感度解析(登録患者200例未満の小規模試験を除外、追跡期間中央値24ヵ月未満の試験を除外、pCRの相対リスクを治療群間のpCR率の絶対差に置き換え)の結果、一貫した結果が確認された。

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心肺停止時にカルシウム投与は無効(解説:香坂俊氏)

ACLSのプロトコールには「低カルシウム血症や高カリウム血症、さらにカルシウム拮抗薬のoverdose」といった、ごく限られた状況でカルシウム製剤の静注投与が推奨されている。今回デンマークで行われたRCTでは、このカルシウム製剤の有効性をより広範囲の一般的な院外心肺停止症例で検証したが、残念ながらその結果はカルシウム製剤側に害がある可能性が高いということで(ROSC[return of spontaneous circulation]がカルシウム製剤投与群で19%であったのに対し、プラセボ群で27%[リスク比:0.72、p=0.09])、途中で試験中止が勧告されるという結果となった。カルシウムは狭心作用があることが知られているが、その一方で細胞内のカルシウム濃度が上昇することで心筋細胞が過収縮してしまうことも知られており、今回の試験の結果はカルシウム製剤がこの悪い方に作用したものと考えられる(ほかに、カルシウムを投与することにより酸化ストレス反応が亢進することも知られている)。心肺停止症例の予後を改善することは容易ではなく、残念ながら今回のカルシウム投与に関しても否定的な結果となったが、それにしても北欧諸国のこの領域でのRCTの取り組みの多様さには恐れ入る。国や自治体レベルでの取り組みが功を奏しているものと思うが、こうした一つひとつの取り組みが心肺蘇生に対する「科学的」アプローチを徐々にひもといていくものと期待したい。

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2022年を迎えて【Dr. 中島の 新・徒然草】(407)

四百七の段 2022年を迎えて皆様、新年おめでとうございます。今年も多くの年賀状をいただきました。高校時代の同級生からは「会社を定年退職して悠々自適の生活を送っている」とあり、羨ましい限りです。一方、70代で新しい医学分野に挑戦している先生もおられ、まさに超人!案外多かったのが「いつもケアネット読んでます」という文面。皆さんどうもありがとうございます。さて、私自身は年末年始に何回か病院に行った以外はダラダラと過ごしました。字を読むのも面倒なので、もっぱらkindleで漫画を読んでいます。中でも特に面白かったのが、シグルイ神の雫ソムリエの3つです。「シグルイ」は「死狂ひ」から来ているのだそうですが、剣の道を極めようとする若者の話です。ただ、1600年代の話ゆえ、安全性など二の次、三の次。登場人物全員が無傷ではおられません。修業が進むにつれ、指やら耳やら顎やらに大怪我をしてしまい、凄惨な描写が続きます。なので、万人向きではないかも。「神の雫」はワイン版の「美味しんぼ」です。幼い頃から父親によってワインを仕込まれた若者、神咲 雫が主人公。もちろん子供がワインを飲むわけにいかないので、独特のやり方で味覚や嗅覚を鍛えられました。彼が、天才ワイン評論家・遠峰 一青とワイン対決をするというのがストーリーの主軸となっています。面白いのは、1つひとつのワインに関する蘊蓄や表現。たとえば、「ここは……さびれた古城……? かつては栄華を誇った城に違いない。だがここには、もう何もない。人も住まず、訪れる者もない」(1984年、ラフィット)というのは、漫画という媒体にぴったりの情景描写です。また、「美しい……わずかに紫がかったルビー色。小さいバラ……黒い果実、それに無花果。ボルドーのワインらしい香りだけど何か特徴のある芳香が感じられる。これは……そうだ、煙草だ! それも安っぽくない高級な洋モクの香り」(2002年、シャトー・オー・ブリオン)という言葉の選び方も、ワイン物語ならではですね。読み進めるにつれ、普段飲まない私までワインが欲しくなってきました。「ソムリエ」は文字通りパリで働く日本人ソムリエの物語。こちらも「神の雫」に似た設定とストーリーですが、少しあっさりした印象です。とはいえ、ちらほら出てくる歴史物語には驚かされます。例をあげると、5大シャトー(醸造所)の1つ、シャトー・ムートン・ロートシルトに関するお話。実はパリ万博の時、1855年に2級と格付けされてしまったのです。不当な評価を受けたオーナーのナタニエル・ド・ロートシルトの無念やいかに。以来、ブドウ畑や醸造技術の改良など、あらゆる努力がなされたのだそうです。そしてついに1973年、バロン・フィリップが念願の第1級を勝ち取りました。曽祖父の受けた屈辱を、118年ぶりに晴らしたのです。記念すべき昇格の年のエチケット(ラベル)の絵を描いたのは、あのパブロ・ピカソ!こうした人間ドラマに思いを馳せるのも、またいいですね。というわけで漫画の世界に浸りつつ、自らも創作意欲をかき立てられた正月でした。本年もよろしくお願いいたします。最後に1句漫画読み 算段めぐらす 新年や★kindleでは、それぞれに期間を区切って、私が電子出版した『スキンヘッド物語(ペンネーム:笹生 直孝)』と『トイレを求めて三千里(中島 伸)』を無料で閲覧できます。よかったら読んでみてください。

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