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広範囲梗塞の患者にも経皮的脳血栓回収術の有効性が示された(解説:高梨成彦氏)

 ASPECTS 5点以下の大きな虚血コアを有する症例に対する、経皮的脳血栓回収術の有効性を示唆する後方視的研究はこれまでいくつか報告されている。本研究はランダム化比較試験で、主要評価項目である90日後のmRSが0~3であった患者の割合は内科治療群が13%であったのに対して、血管内治療群が31%と有意な予後改善効果が示された。虚血コアが大きいことで再開通後の出血が危惧されるところであるが、すべての頭蓋内出血こそ血管内治療群で58%と多かったものの症候性出血は内科治療群が5%で血管内治療群が9%と有意差はなかった。 発症6時間以内の患者に対する経皮的脳血栓回収術の有効性を示した4つの試験、MR CLEAN、ESCAPE、SWIFT PRIME、REVASCATはいずれも虚血コア領域を頭部CT検査を基にしたASPECTSで評価している。各試験における血管内治療群のASPECTSは下表のとおりであった。この結果を基にこれまでは、経皮的脳血栓回収術をASPECTS 6点以上の患者に適用することが推奨されていた。 本研究は経皮的脳血栓回収術の積極的な適応拡大に道を開くものであり、治療の恩恵を受ける患者が増えることが期待される。ただし本邦に特徴的なこととして頭部MRI検査で急性期脳梗塞を診断する施設が多く、これは小梗塞でも明瞭に描出されるため領域ごとの減点法であるASPECTSでは梗塞体積が小さくともASPECTSは低くなってしまう傾向にある。MR-ASPECTSはCTよりも1点程度低くなるともいわれている。本研究も大半の症例が頭部MRI検査で評価されているので、他の人種/地域における試験との比較には注意が必要である。

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循環器フェロー編始動!3年のレジデント生活を乗り切った後の景色は…?【臨床留学通信 from NY】第31回

第31回:循環器フェロー編始動!3年のレジデント生活を乗り切った後の景色は…?連載開始より、USMLE(米国医師免許試験)突破までの道のりや、内科レジデントとして過ごしたMount Sinai Beth Israelでの日常などについてお伝えしてきましたが、今回より、循環器内科フェローとして着任したMontefiore Medical Center/Albert Einstein Medical Collegeでの様子を綴っていきたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いします。これまで述べてきた通り、内科は外科系に比べると門戸は広め(それでも近年、外国人のハードルはどんどん上がっています)ではあるものの、3年の内科レジデントを終えた後、循環器フェローに入り込むのはなかなか熾烈な競争でした。人気の診療科かつ収入も良いというところと、米国内で循環器フェローのスポット数が決まっているところも要因です。米国では、ACGME (Accredition Counsil for Graduate Medical Education)と呼ばれる組織が必要な教育をその病院が提供できるかを判断し、雇えるフェローの数を決めているからです1)。その点は日本より統率されていて、特定の診療科が過剰になることもなく (フェローを終え、専門医試験に合格しないと原則働けない)、逆に人気のない科にも人が充足されるという仕組みになっています。もちろん、国土が広大で地域間格差も当然ありますが、そこは田舎のほうが給与がよい、といったことで多少バランスを取ろうとしているようです。循環器フェローで必要な年数は3年で、循環器専門医だけでなく、心臓超音波専門医や心臓核医学専門医を取得することもできます。ただカテーテル治療にはInterventional cardiologyのフェローを1年追加する必要があります。さらにこの後、Structural heart disease fellowshipを別に1年、不整脈(EP)で2年、心不全で1年、心エコー、心臓MRI/心臓CT等のイメージングフェローで1~2年といったadvanced fellowshipなどがあり、専門によっては果てしなきトレーニング期間が続くことになります。米国のフェローのトレーニングは、レジデント同様2週間ごとのローテーション制度です。3年のうち、CCU、心エコー、カテ、EP、コンサルト、核医学があり、このほかに先天性心疾患、心臓CT/MRIといったオプションもあります。それぞれにアテンディングと呼ばれる指導医がついて指導に当たれるのは、日本よりはるかに豊富な医者の数によってトレーニングがまかなわれているメリットとも言えますが、その背後には途方もない高額な医療費によってまかなわれている事情もあります。3年目はElectiveと呼ばれ、自身の興味ある分野を集中的にとレーニングできるようになり、たとえばカテーテル治療に進みたい人は、半年以上かけてそこに注力することもできます。気になる当直頻度は、1年目は月5回、2年目は月2回程度で、日本の比にはならない米国大学病院ならではの業務量をこなすことになります。ここを超えると、3年目には当直がなくなり、年次によるQOLの差がかなり大きいと言えます。しかしながら、給料は残念ながらレジデントとほぼ同等。年間7.6万ドルでは、物価の高いNYでは赤字財政を余儀なくされることを覚悟しておいたほうがよさそうです。参考1)ACGME Program Requirements for Graduate Medical Education in Cardiovascular Disease (Internal Medicine) Column画像を拡大するこちらはワシントン記念塔の写真です。サンクスギビングと呼ばれる連休を利用してワシントンDCまで行ってきました。実は高校生の時、ニューヨークでの短期留学でもこの景色を見ています。24年前には米国で医師として働くことになるとは全く思わず、英語もしゃべることもできなかったのですが…。

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エルドハイム-チェスター病〔ECD:Erdheim-Chester disease〕

1 疾患概要■ 定義エルドハイム-チェスター病(Erdheim-Chester disease:ECD)は、1930年にJakob ErdheimとWilliam Chesterによって初めて報告された組織球症の一病型である。類縁疾患としてランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)が挙げられる。対称性の骨病変と特徴的な画像所見を有し、骨、心臓・大血管、皮膚、中枢神経、内分泌系、腎・後腹膜などの多臓器に浸潤しさまざまな症状を起こす全身疾患である。■ 疫学ECDはまれな疾患であり2004年の時点で報告数は世界で100例にも満たなかったが、ここ15年ほどで認知度が上昇したことにより報告数が増加した。2020年の報告では世界で1,500例以上とされており、国内でも2018年時点で81例が確認されている。好発年齢は40~70歳で、男性が約7割を占める。小児例はまれで、その多くがECDとLCHを合併する混合型組織球症に分類される。 ECDの1割に骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍を合併していたとの報告があり、これらの症例は非合併例と比べて高齢で混合組織球症の割合が多いとされている。■ 病因ECDが炎症性の疾患か、あるいは腫瘍性の疾患かは長らく不明であったが、近年の研究でMAPK(RAS-RAF-MEK-ERK)経路に関連した遺伝子変異が細胞の増殖や生存に関与していることが報告され、腫瘍性疾患と考えられるようになってきている。変異の半数以上はBRAF V600Eの異常である。■ 症状ECDの症状および臨床経過は侵襲臓器と広がりによって症例ごとに大きく異なってくる。病変が単一臓器に留まり無症状で経過する例もある一方、多発性・進行性の臓器障害を起こし診断から数ヵ月で死亡する例もある。最も一般的な症状は四肢の骨痛(下肢優位)で、全体の半数にみられる。そのほか、尿崩症・高プロラクチン血症・性腺ホルモン異常などの内分泌異常、小脳失調症・錐体路症状などの神経症状、冠動脈疾患、心膜炎、心タンポナーデなどの循環器系の異常に加え、眼球突出、黄色腫などの局所症状など非常に多彩である。その他、発熱・体重減少・倦怠感などの非特異的な全身症状がみられることもある。一人の患者がこれらの症状を複数併せ持つことも多く、その組み合わせもさまざまである(図、表1、2)。図 ECDの主要症候(Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.より改変)表1 わが国におけるECD症例の臓器病変(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する表2 わが国におけるECD症例の症状(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する■ 分類WHO分類の改定第4版ではリンパ系腫瘍のうち、組織球および樹状細胞腫瘍に分類されている。また、2016年改定の組織球学会分類では「L」(ランゲルハンス)グループに分類されている。■ 予後ECDの予後はさまざまで、主に病変の部位と範囲に左右される。高齢患者、心病変、中枢神経病変を有する患者ではがいして予後不良である。2000年代前半の報告では3年生存率50%程度であったが、近年では診断と治療の進歩によって5年生存率80%程度にまで上昇してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ECDは症状が極めて多彩であることから診断が困難であり、過去の報告でも発症から診断までの中央期間は数ヵ月から数年と言われている。診断の主体は組織診断だが、症状や画像所見を含めて総合的に判断することになる。形態学的所見としては、泡沫状(黄色腫様)細胞質を持つ組織球の増殖と背景の線維化を認め、ほとんどの症例で好酸性細胞質を有する大型組織球やTouton型巨細胞が混在する。免疫組織学的所見としてCD68、CD163、CD14、FactorXIIIa、Fascinが陽性、CD1a、 CD207(Langerin)は陰性である。S-100蛋白は通常陰性だが陽性のこともある。ECD患者の約10~20%にLCHを合併し、同一生検組織中に両者の病変を認めることもある。画像所見としては、単純X線撮影における長管骨骨端部の両側対称性の骨硬化や99Tc骨シンチグラフィーにおける下肢優位の長管骨末端への対称性の異常集積を認める。PET-CTは診断だけでなく活動性の評価や治療効果判定にも有用である。CTの特徴的所見として大動脈周囲の軟部陰影(coated aorta)や腎周囲脂肪織の毛羽立ち像(hairy kidney)を認めることがある。診断時には中枢病変の精査のためのGd造影頭部MRIや血液検査にて内分泌疾患、下垂体前葉機能、腎機能、CRPの評価も行うことが推奨されている。造血器腫瘍を合併する例もあるため、血算異常を伴う場合は骨髄穿刺を検討すべきである。鑑別診断として、LCHのほかRosai-Dorfman病、若年性黄色肉芽腫、ALK陽性組織球症、反応性組織球症などが挙げられ、これらは免疫染色などによって鑑別される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)以前はLCHに準じて副腎皮質ステロイドや抗がん剤などによる治療が行われていたが、効果は限定的であった。その後interferon-α(IFN-α)が全生存期間を延長することが報告され、ガイドラインで第1選択薬として挙げられている。また、BRAF遺伝子変異陽性のECDに対するBRAF阻害薬の有効性も報告されており、2017年にはベムラフェニブが米国FDAで承認されている。ただし、わが国ではこれらの薬剤は保険適用外となっている。第1選択薬のIFN-αは300万単位を週3回皮下投与が通常量だが、重症例では600~900万単位週3回の高容量投与も考慮される。また、PEG-IFNαで135ugを週1回皮下投与、重症例では180ugを週1回投与する。これらは50~80%の奏効率が期待されるが、半数程度に疲労感、関節痛、筋肉痛、抑うつ症状などの副作用がみられ、忍容性が問題となる。BRAF阻害薬(ベムラフェニブ)はBRAF遺伝子変異陽性のECDに効果が認められているが、皮膚合併症(発疹、扁平上皮がん)、QT延長などの副作用があり、皮膚科診察、心電図検査などのモニタリングが必要である。副作用などでIFNαが使用できない症例についてはプリンアナログのクラドリビンなどが検討される。副腎皮質ステロイド、手術、放射線療法は急性期症状や局所症状の緩和に使用されることがあるが、単体治療としては推奨されない。その他、病変が限局性で症状が軽微な症例については対症療法のみで経過観察を行うこともある。4 今後の展望ECDの病態や臨床像は長らく不明であったが、ここ20年ほどで急速に病態解明が進み、報告数も増加してきている。ベムラフェニブ以外のBRAF阻害薬やMEK阻害薬などの分子標的療法の有用性も報告されており、今後のさらなる発展とわが国での保険適用が待たれる。5 主たる診療科内科、整形外科、皮膚科、眼科、脳神経外科など多岐にわたる※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本の研究.com  Erdheim-Chester病に関する疫学調査(医療従事者向けのまとまった情報)Erdheim-Chester Disease Global Alliance(医療従事者向けのまとまった情報)1)Diamond EL, et al. Blood. 2014;124:483-492.2)Toya T, et al. Haematologica. 2018;103:1815-1824.3)Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.4)Haroche J, et al. Blood. 2020;135:1311-1318.5)Goyal G, et al. Blood. 2020;135:1929-1945.公開履歴初回2022年3月16日

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「乳腺外科医事件」最高裁判決を受けて~担当弁護人の視点から

手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた執刀医が、逮捕・勾留・起訴された事件。一審では無罪判決となったが、控訴審では懲役2年の実刑判決が東京高裁より言い渡されていた。執刀医側の上告を受けて出された今回の最高裁判決は「東京高裁への差戻し」。弁護人の1人である水沼 直樹氏に、実際に法廷で論じられた争点と今後について解説いただく。1.事件概要(1)概要本件は、2016年5月、右胸部の良性腫瘍(再発)摘出術を受けた患者Aが、術後約30分間に2度回診に訪れた執刀医Xから、健側の右胸部を舐められたと訴えたことから始まった事件です。科学捜査研究所は、Aの右胸からXのDNA型と一致するDNA(定量値1.612ng/μL)が検出され、またアミラーゼ検査が陽性であったと鑑定しています。これに対し、Xは、Aの被害申告は、Aが術後せん妄(覚醒時せん妄)により幻覚を体験したに過ぎない、と逮捕当初から一貫して主張しています。当時の患者がせん妄状態にあり幻覚体験をしたか否か、検出されたDNA定量検査の結果を信用できるかが争われました。(2)裁判の経緯東京地裁では、当時の患者がせん妄により幻覚体験をした可能性があることを主な根拠に、事件そのものがなかったと推認して無罪判決を言い渡しました(詳細は「判決の争点」前編・後編を参照)。これに対して東京高裁は、DSM-5等により診断した弁護側証人の証言の信用性を否定し、診断基準を使用せずせん妄による幻覚の可能性を否定した検察側証人の証言の信用性を肯定して、懲役2年の実刑判決を言い渡しました(詳細は「控訴審、逆転有罪判決の裏側」前編・後編を参照)。なお、東京高裁はDNA定量値については一切証拠調べをしませんでした(詳細は脚注1))。2.上告での活動弁護人は、上告するとともに、10名を超える専門家(大学教授を中心としたDNAの専門家およびせん妄の専門家)の意見書を提出しました。その要旨は、当時のAがせん妄状態にあり幻覚体験していた可能性が高いこと、DNA定量検査は検査原理に反し検査結果に信用性がないこと、鉛筆書きのワークシートが消しゴムで消されたり加筆されたりしており、科学鑑定とは言い難いこと、DNA抽出液が廃棄されているなど再現性がない等の意見が寄せられました(詳細は「判決の争点」前編を参照)。3.最高裁判決内容最高裁は、東京高裁が信用できるとした検察側証人の「見解が医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」として、その証言の信用性を否定しました。他方で、DNAが多量に付着しているとすると、A証言の信用性が肯定できると見る余地もあるため、本件DNA定量検査が検査原理に反して実施されていたことや、標準資料の増幅曲線や検量線が作成されていないことが検査結果にどのような影響を与えるのか、いまだ不明なところがあるため、これを審理する必要があるとして、原判決を破棄し、東京高裁に差戻しました。4.最高裁判決の評価本判決に対しては、さまざまな評価があります(脚注1-2))。しかし少なくとも、一審で検査プロトコルに反したリアルタイムPCRの定量検査の結果に科学的信頼性のないことを専門家が証言しており、新たな証拠調べをする必要性が乏しいと思われます。また、アミラーゼ検査が陽性であったことを示す写真もゲル平板も存在しませんので、アミラーゼ検査が陽性であった証拠は、鉛筆書きされたワークシートの「+」との記載と、鉛筆書きして消しゴムで消したり書き直したりした検査担当者の法廷証言しかありません。このような事実関係に鑑みれば、本件については、最高裁は、新たに東京高裁で審理を求めるまでもなくすでに提出されている証拠を基に、破棄自判して無罪とすべきであったと思います(その意味で本判決は不当判決だと考えています)。なお、検察官は、控訴審の段階で、検査ノートを鉛筆書きして良いとの書籍等を証拠請求していますが、これらが明らかに科学的常識に反していることはいうまでもありません。5.今後の動向今後は、最高裁が指示した、DNA定量検査の結果である1.612ng/μLの正確性、その意味合い等について、東京高裁で審理されることとなります。そして、その結果を前提に、せん妄状態にあり幻覚体験をしたことが疑われるAの証言がどこまで事実として認定できるのか、すなわち被害体験が事実であったといえるのかどうかを、新たな裁判官で構成された東京高裁が判断することになります。脚注1)令和4(2022)年2月19日付東京新聞26面では、元東京高裁部総括判事の門野 博弁護士が『「まだ、科学鑑定で有罪にできる道がある」と検察側に助け舟を出したような印象だ。今回の事件ではDNA型鑑定に使われた試料が廃棄され再鑑定ができない上、実験記録が鉛筆で書かれるなど、捜査の過程に不備がある。科学的証拠の有罪の根拠とするには理論に寸分の緩みもあってはならず、最高裁がこの問題点に言及しなかったのは残念だ。』と述べたと報道されている2)江川 紹子氏著『“手術後わいせつ事件”の最高裁判断に江川紹子が疑義…「疑わしきは検察の利益」でよいのか』では「最高裁は、肝心の点で判断を避け、結論を先送りして、高裁に委ねた。最高裁が役割を放棄した以上、高裁は司法の責任において、司法における「科学的な証拠」とは何か、という問題に正面から向き合ってほしい。」と述べている講師紹介

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第100回 私が見聞きした“アカン”医療機関(前編)時間外接種費用の上乗せ不正請求、処方箋の応需義務違反

100回記念、「身近で下世話な話題」集こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。心配していたMLBの労使交渉が3月10日(現地時間)、やっと合意しました。短縮が決まっていたレギュラーシーズンは従来どおり162試合で行われ、開幕も4月7日に決まりました。その後日本人選手の交渉も急進展、鈴木 誠也選手はサンディエゴ・パドレス、菊池 雄星投手はトロント・ブルージェイズと合意したとの報道もありました。と、ほっとしていたら、MLB好きの大学時代の友人から「エンゼルスの開幕戦のチケットがあるのだが、行きませんか?」とのお誘いが。「神宮に行きませんか」くらいの軽いノリの文面でしたが、球場はカリフォルニア州アナハイムです。彼は昨秋、コロナ禍の中、日本からシアトルまで大谷 翔平選手のホームランをわざわざ観に行った強者です。一瞬心が動きましたが、本連載含めいくつかの原稿の締め切りもあり、泣く泣く断念しました。さて、この連載も100回を迎えました。大きな事件や、医療政策などを取り上げて、偉そうな意見を述べてきたのですが、知人からは「もっと身近で下世話な話題も読みたい」と言われることも度々でした。今回も、旭川医科大学をクビではなく辞任となった吉田 晃敏・前学長の一件か、所得税法違反罪で検察側から懲役1年を求刑された田中 英寿・日本大学前理事長のことでも書こうと思っていたのですが、100回記念ということで少し趣向を変え、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関について、書いてみたいと思います。内容としては10年前にフジテレビ系列で放映された、ダウンタウン司会の「爆笑 大日本アカン警察」をイメージしていただければと思います。【その1】ワクチン接種の時間外接種費用上乗せを不正請求ワクチンの3回目接種が各地で進んでいますが、知人がツイッターに投稿した写真を見て、衝撃を受けました。知人は土曜日に近くのかかりつけの診療所に3回目接種のために訪れたそうです。接種時間は11時過ぎだったのですが、医療機関に提出した問診票をふと覗いたところ、下の段にある医療機関記入欄の「時間外」の欄にはなぜかチェックが…。そして手書きの文字で12時過ぎの時間が。知人は「何か変だな」と感じ、その部分を携帯で撮影、ツイッターに上げたわけです。これはワクチンの時間外の接種費用上乗せを狙ったものと推察されます。ワクチン接種を通常の診療時間外に行う場合は2,070円→2,800円と730円上乗せされます。休日の場合は、2,070円→4,200円と2,130円上乗せされます。「時間外」の欄のチェックは、看護師によってごく当たり前のように行われていたそうです。1人730円でも、100人分なら7万3,000円になります。休日も混ぜるとなると、相当な金額になります。日本医師会の肝いりで進められた個別接種ワクチンの個別接種は「第72回 今さら「手紙」で協力求める日医・中川会長、“野戦病院”提言も動かない会員たちにお手上げ?」でも書いたように、日本医師会の肝いりで強引に進められました。しかし、診療所を含めることによって、ワクチンの配送や管理、接種登録が煩雑になることや集団接種への人員が割けないなど、さまざまな問題も発生。結果として接種推進の妨げの一因ともなりました。結局、個別接種は診療所医師がコロナ禍で存在感を示しつつ、手軽に臨時収入を稼ぐ手段となったわけですが、今でも診療所でのワクチン接種には、接種促進を理由に業務内容の割に手厚い報酬が用意されています。週100回以上、週150回以上を続ける場合にも上乗せ“特典”があります。にもかかわらず、こんなセコい不正請求もしているとは……。通常のレセプトの審査よりチェックが甘いと見ての時間外請求だとしたら悪質です。こうした医療機関は多くはないとは思いますが、これは“アカン”ですね。【その2】「薬がないから処方箋は受け取れない」と応需義務違反の薬局次は私の家族の体験です。1ヵ月ほど前に、家族が国立系のある病院を受診しました。年数回、定期的に通っている病院です。受診を終え、電車に乗って自宅に帰り、いつも利用している近所の個人経営の薬局に処方箋を持っていったのですが、そこの男性薬剤師から、「この処方箋は薬がないから受け取れない」と拒否されてしまったのです。処方箋は、バルプロ酸(デパケン)錠90日分でした。後発品メーカーの自主回収については、約1年前に「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び『ゾロ』と呼ばれる日」で書きましたが、その後、日本ジェネリック製薬協会および各社の自主的な製造過程の点検が行われ、多くの薬剤で未だに供給不足が続いています。バルプロ酸についても、1社の徐放顆粒が供給停止となり、その後すべての剤形で先発品、後発医薬品ともに、出荷調整が続いているようです。「正当な理由」に当たらず明らかに薬剤師法21条違反家族は「ないのなら、在庫がある薬局を教えて下さい。薬剤師会などで、薬の在庫の情報共有とかはしていないのですか」と聞いたのですが、男性薬剤師は「そんなことしていない。処方箋を発行した病院に問い合わせてみてくれ」と、最後まで処方箋の受け取りを拒否しました。「薬がないから処方箋を受け取れない」というのはいただけません。薬剤師には処方箋の応需義務があります。薬剤師法21条の「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」に基づくものです。「正当な理由」については、薬局業務運営ガイドライン(厚生省薬務局長通知 平成5年4月30日 薬発第408号)に例が挙げられていますが、薬剤がなくて断っても「正当」とみなされるケースについては、「患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが、医薬品の調達に時間を要する場合。但し、この場合は即時調剤可能な薬局を責任をもって紹介すること」と、他の薬局を紹介せよ、と明記されています。3月5日、日本薬剤師会は山本 信夫会長を次期会長に選びました。なんと5選目だそうです。会見では「医療の中で、薬剤師の担う責任の重さを実感させるとともに、処方医との連携体制をさらに強化しつつ、薬物治療に関する薬剤師・薬局業務の新たな可能性が示唆された」と語ったとのことですが、末端会員の薬局では今でもこんな応需義務違反が堂々と行われています。これは全く“アカン”ですね。ちなみに家族は、街の薬局を何軒か回って、やっと40日分だけ在庫がある薬局を見つけ、事なきを得ました。90日分が揃ったのは約1週間後でした。次回も、引き続き“アカン”医療機関を紹介します(この項続く)。

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4回目接種は必要か?その時期は?~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 前編]

感染者数・死者数ともに過去最多となったオミクロン株(BA.1)による第6波のピークは越えたとみられ、ワクチン3回目接種が進みつつある中、4回目接種についても政府が検討をはじめている。免疫学の視点からみた4回目接種の必要性や既感染者へのワクチン接種について、宮坂 昌之氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)に話を伺った。4回目接種は必要か?その時期は?~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 前編]―4回目接種の必要性やその時期について、現時点ではどのようにお考えですか?まず1つ言えることは、4回目がいつ必要になるかということは現時点でははっきりしていないものの、必要になったときに遅れずに対応できるように、国としては準備をしておかないといけないと思います。そのうえで、ワクチンの有効性は大きく年齢依存的・かつ個人差があり、とくに高齢者では2回接種しても抗体がしっかり作れない人というのが存在します。例えば下記は和歌山県での2回接種6ヵ月後のS抗体値を年齢別にみたものですが(高齢者施設での職員を含む100人の調査)、75歳を超えると2回接種後でも十分に抗体を作れない人の頻度が高くなっていることがわかります。抗体価は時間に応じてさらに減少していくので、3回目の追加接種が必要になってきます。画像を拡大する2回接種しても抗体価が上がらなかった人たちについても、多くは3回目の接種で大きく抗体価を上げることができます。しかし同時になかには2回接種しても3回接種しても反応しない人というのが一定数存在し、高齢者ほど多くなります。S抗体値はウイルスの初期防御に重要な役割を果たすので、これが低くても細胞性免疫やナチュラルキラー細胞などが働き、2回接種していれば重症化予防効果は期待できますが、ブレークスルー感染の大きな原因の1つとなっていると考えられます。またオミクロン株は免疫回避性があり中和抗体ができにくく、下記は査読前のデータですが、2回接種だけでは不十分なことがわかります。3回目の接種によって、BA.1だけでなく今後日本でも置き換わりが進む可能性のあるBA.2に対しても、中和抗体価を上げることができています。一方で、今後は3回目接種によって上がった抗体価も下がっていくと考えられ、いずれかのタイミングで4回目接種が必要となると考えますが、それがいつかに関しては、次に現れる変異株がどのような特徴を持つかによるでしょう。画像を拡大する免疫学の立場から言えることは、1回より2回、2回よりも3回免疫をつけたほうが免疫は長続きします。1回接種では2~3ヵ月、2回接種では4~6ヵ月で抗体価が下がり、3回接種では6~8ヵ月続いているという報告がありますが、それが1年続くかは分かりません。上記左図の追加接種2週間後のオミクロン株に対する中和抗体価のばらつきをみてもわかるように(100~1万ほどの幅)、個人差が大きいことにも注意が必要です。適切な接種時期を考えるうえで重要なもう一つの視点としては、接種間隔が短すぎてもよくない可能性です。下記は1回目と2回目の接種間隔を4週か16週かで比較したデータですが、16週としたほうがオミクロン株を含む種々の変異株に反応する良質な中和抗体が得られています。これは1回目接種後にリンパ球が十分に成熟する機会が与えられると、2回目に抗原が入ってきたときに十分に抗体を作る能力ができるのだと考えられます。画像を拡大する3回目の接種に関しても、2回目接種後2~3ヵ月などあまり早くに接種すると、抗体価は一時的に上がるものの、早く下がってしまうというデータがでてきています。イスラエルはこの状態に該当してしまっているのではないでしょうか。おそらく4回目接種についても同じことがいえる可能性が高く、感染性がより高いなどひどく恐い変異株が入ってきていない限り、半年ないし8ヵ月など、データをみながら十分な間隔を空けて慌てずに4回目接種を行っていけばよいと思います。ワクチン接種は接種者本人が得られる直接効果だけでなく、感染伝播に対しても大きな防御効果を発揮します。ワクチンを接種した人が感染しても、のどの中に抗体が存在するわけなので、そこにウイルスが増えたとしても、抗体にくるまれた形でくしゃみや咳によってウイルスが排出されます。中和抗体にくるまれたウイルスは、感染能力が下がります。PCRでは同じウイルス量が検出されますが、感染性のあるウイルス量はぐんと下がるのです。したがってやはり集団としての感染リスクを下げるには、3回目までの接種ももちろん重要ですし、時期を見極めながら4回目接種も行っていくことが必要となってくると考えています。―既感染者へのワクチン接種や、再感染リスクについてはどのように考えればよいでしょう?ウイルス感染によってできた免疫とワクチン接種によってできた免疫を比較すると、ワクチン接種では約9割の人に免疫を作ることができるのに対し、感染者の場合はウイルスによる感染の度合いや個人の免疫能力に左右されるので、次の感染時に確実に中和できる免疫ができているかというと、やはりワクチン接種のほうが確度が高いと言えます。先ほどの査読前データの右図をみると、BA.1感染者の血清には、中国での元の株(図中WA)・BA.2いずれも中和する抗体が確認されており、BA.1感染者はこの中和抗体がある間、BA.2にすぐには感染しにくいと考えられます。一方、英国からのデータをみると、デルタ以前の株への感染者の抗体はオミクロン株を認識しにくく、再感染する可能性が高いことが示唆されています。下図の通り、オミクロン株が流行するまでは再感染する人はそれほど多くなかったのに対し、オミクロン株流行下では急激に増加しています。今後出てくる変異株の特徴にもよりますが、既感染者もいずれかのタイミングでワクチン接種を受けておくほうが有利だと思います。画像を拡大する(インタビュー:2022年3月11日、聞き手・構成:ケアネット 遊佐 なつみ)

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今後登場する新たなワクチンの可能性は~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 後編]

感染者数・死者数ともに過去最多となったオミクロン株(BA.1)による第6波のピークは越えたとみられ、ワクチン3回目接種が進みつつある中、4回目接種についても政府が検討をはじめている。宮坂 昌之氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)へのインタビュー後編では、今後登場する新たなワクチンの4回目接種における可能性や小児へのワクチン接種について話を伺った。今後登場する新たなワクチンの可能性は~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 後編]―交互接種の有効性について、免疫学の観点からはどのように考えますか? 今後登場するかもしれない新たなワクチンについても同じことが期待できるのでしょうか?当初英国で多く使われたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの接種後に、mRNAワクチンを接種した場合、同じウイルスベクターワクチンを接種した場合より高い有効性が報告されました。また、mRNAワクチンどうしの交互接種の場合でも、他社のワクチンを接種したほうがおおむね良い結果がでているようです。B型肝炎ワクチンなどですでによくわかっていることですが、100人にワクチンを打つと5人ぐらいノンレスポンダーが発生します。この人たちは肝炎ウイルスワクチンに一切反応できないかというとそうではなくて、A社のワクチンでは反応しなかったが、B社のワクチンでは反応できたという例が報告されています。ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンで言えば、同じスパイクタンパク質であっても作り方が違うことで、Bに反応できなくてもB‘には反応できるということが免疫の世界では起こり得ます。抗原を変えるということは全然悪いことではなくて、マイナスはむしろ考えにくく、変えてよくなることの方が通常は多いと考えられます。また、1~2回目の接種で基礎免疫ができていれば、新型コロナウイルス反応性のT細胞とB細胞の数が増えていて、スパイクタンパク質(抗原)が入ってきたときの親和性が高まり準備態勢が整った状態(少量の抗原でも認識できる状態)といえます。たとえ1~2回目のワクチンとしてみたときにmRNAワクチンに効果が劣るものだったとしても、4回目のワクチンとしては十分に使えるものがでてくる可能性はあるでしょう。―小児へのワクチン接種が開始されましたが、効果の持続期間が短いという報告もあります。小児へのワクチン接種についてはどのようにお考えですか?基本的には若ければ若いほど自然免疫の力も獲得免疫の力も高く、感染時の新型コロナ反応性T細胞の働きも成人よりも小児で高くなっています。ところがB細胞をみてみると、抗体は作られるものの抗体価が早く低下してしまうという傾向が報告されています。小児がワクチンを打つべきかどうかとなったときに、私はよく下記のスライドを使って説明しています。両親がまずきちんとワクチンを打っていれば、アルファ株感染の場合で約70%、デルタ株感染の場合でも約60%子どもへの家庭内感染リスクを下げることができます。画像を拡大するまた、オミクロン株流行下で小児がどれくらい感染し、入院者がでているかをみてみると、ヨーロッパでは感染者・入院者ともに急激に増加しています。一方成人では感染者の増加に比して入院者はそれほど増加していません。この原因はオミクロン株が重症化しにくいことに加えて、成人のワクチン接種率が例えばイギリスでは70%以上など非常に高かったことが寄与したと考えられます。日本でもオミクロン株流行下で小児感染者が増えたことは間違いないと思いますが、入院者がどれくらい増えたかというデータはまだ出てきていません。そのデータもみながら判断していく必要があるとは思いますが、現段階では、慌てて5~11歳にもワクチンを打つべきかという議論はあるべきだと思います。私は今の段階では、12歳以上は2回の接種を、成人は追加接種も含めてしっかり受けたうえで、5~11歳については家庭の状況次第ではないかと思っています。ワクチンはゼロリスクではないので、例えば家に高齢者がいる場合や、両親の職業上小児が学校で感染してくることによる影響が大きい場合など、ケースバイケースで親御さんが判断して、打つ人がいてもいいし打たない人がいてもいいという位置づけであるべきではないかと考えています。画像を拡大する(インタビュー:2022年3月11日、聞き手・構成:ケアネット 遊佐 なつみ)

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片頭痛と認知症との関係~メタ解析

 片頭痛と認知症リスクとの相関を明らかにするため、中国・The First Hospital of Jilin UniversityのWei Jiang氏らは、包括的なシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging Clinical and Experimental Research誌オンライン版2022年1月31日号の報告。 PubMed、EMBASE、Cochrane library databasesより、システマティックに検索した。血管性認知症を含む認知症患者の片頭痛について報告されたコホート研究(プロスペクティブおよびレトロスペクティブ)およびケースコントロール研究を抽出した。プールされた効果を分析し、95%信頼区間(CI)を用いて、相対リスクの評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・9件の研究(コホート研究:7件、ケースコントロール研究:2件)より、29万1,549例が抽出された。・片頭痛患者では、すべての原因による認知症リスクが高いことが示唆された(相対リスク:1.33、95%CI:1.16~1.53)。・4件の研究におけるプールされた結果の分析では、片頭痛が血管性認知症リスクの増加と関連していることが示唆された(相対リスク:1.85、95%CI:1.22~2.81、p=0.004)。 著者らは「片頭痛は、認知症とくに血管性認知症のリスク因子である可能性が示唆された。片頭痛と認知症との関連、その潜在的な病態生理学的メカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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コロナ禍で医療従事者のビタミンD欠乏が顕著/国立成育医療研究センター

 日々の生活でビタミンDが不足すると免疫力を低下させる可能性があり、長期間の屋内生活での運動不足(骨刺激不足)では骨粗鬆症への影響も懸念される。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延する環境下で、医療従事者の長期間の屋内生活での影響はどのようなものがあるだろうか。 国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)の「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」グループは、感染者の易感染性や重症化要因を評価する目的で、COVID-19患者受け入れ病院である同センターのハイリスク医療従事者361人(男性87人、女性274人)を対象に、2021年3月1日~5日に調査を行い、その結果を発表した。 調査の結果、対象者にはビタミンDの欠乏が顕著にみられた。そのため医療従事者だけでなく、長期間の屋内生活をしている方には、適度な日光浴もしくはビタミンDの補充(食事、サプリメント、薬剤)が重要である可能性が示唆された。屋内生活が長いときに意識したいビタミンDの摂取【背景・目的】 COVID-19の最大の特徴は、ウイルス側の感染性および病原性の変化に加え、感染者(ホスト側)の年齢や基礎疾患などによる病状の多様性にある。この点に着目し、ホスト側の易感染性もしくは重症化要因を評価するために、感染防御能力低下、動脈硬化、耐糖能異常、肝・腎機能障害、栄養低下、骨髄機能低下のスクリーニング調査を行った。【結果概要】 ・本調査で顕著に異常を認めたのはビタミンDであり、性別、年齢を問わず多くの研究参加者で不足していた。・COVID-19の防御対策や、医療従事による長期間の室内生活が紫外線吸収の低下を招いたことが原因の1つとして考えられる。・ビタミンDには多様な生理作用があり、細胞の分化・増殖や免疫機構、骨代謝と深くかかわっている。・ビタミンD不足においては、感染防御能力の低下に加え、骨代謝の低下と運動不足(骨刺激不足)による骨粗鬆症や、それに起因する骨折への注意が必要。【今後の展望・発表者のコメント】 ビタミンDを補充する方法はまちまちだが、日光(紫外線)曝露、経口摂取とそれに加え薬剤(活性型ビタミンD3製剤)の補充により免疫能力の改善、骨粗鬆症の予防が期待される。この調査は医療従事者を対象とした調査結果だが、コロナ禍で長期間の屋内生活をしている方は、適度の日光浴やビタミンDの補充を行い、ビタミンD不足を起因とする感染防御能力の低下、骨代謝の低下と運動不足による骨粗鬆症や、骨折への注意が必要と警鐘を鳴らしている。

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ダロルタミド、転移を有する前立腺がんに適応追加申請/バイエル

 バイエル薬品は、2022年3月11日、経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)ダロルタミド(製品名:ニュベクオ)について、遠隔転移を有する前立腺がんの適応追加を厚生労働省に申請した。 今回の申請は、転移を有する前立腺がん患者を対象とした第III相ARASENS試験のデータに基づくもの。ARASENS試験のデータでは、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示された。 このデータは、2022年2月にサンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器生殖器がんシンポジウム(ASCO GU)で発表されると同時にNEJM誌に掲載された。 同剤は転移を有するホルモン感受性前立腺(mHSPC)を対象とした第III相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが高い限局性前立腺がんの術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第III相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺がんを対象とした検討が進められている。

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コロナ禍での女性の雇用喪失、世界共通で多い要因は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が、健康、社会、経済の指標の男女差に及ぼした最も大きな影響は、新たな不平等を生み出すというよりも、以前から広く存在していた不平等を強化したことであり、とくに女性は男性に比べ、雇用の喪失や家事の増加、無報酬の介護義務による仕事の断念の割合が高い点が懸念材料であることが、米国・ワシントン大学のLuisa S. Flor氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年3月2日号で報告された。5つのカテゴリーに関する指標を193ヵ国で包括的に再検討 研究グループは、健康関連、社会的、経済的な幅広い指標に関して、COVID-19が男女差に及ぼした間接的な影響の評価を目的に、包括的な調査を行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。 解析には、2020年3月~2021年9月の193ヵ国のデータが用いられた。次の5つのカテゴリーに関する指標の、公表されているデータセットを再検討し、COVID-19の世界的流行の影響が評価された。 (1)ワクチンへのためらい(接種サービスが利用可能なのに拒否)と接種(完全接種者)、(2)保健サービス(医療全般・性と生殖に関する健康・予防医療・薬剤の入手・健康製品[眼鏡、補聴器、杖など]の入手の混乱)、(3)経済上および仕事関連の心配事(雇用喪失、収入喪失、家事の増加、他人の世話の増加、介護が原因の離職)、(4)教育(学校の中途退学、適切な遠隔学習)、(5)家庭と地域社会での安全性(性差に基づく暴力増加の認識、家庭での不安感)。 混合効果回帰とガウス過程回帰、ブートストラップ法を用いて、すべてのデータソースが統合された。基礎データとモデル化過程の不確実性を考慮したうえで、混合効果ロジスティック回帰モデルを使用して、世界および地域別の男女差(gender gap)の検討が行われた。ワクチンへのためらいや接種には差がない COVID-19の世界的流行の開始以降、雇用喪失の割合は高く、男性よりも女性で顕著に高率であるが、男女とも着実に減少する傾向がみられた。2021年9月の時点で、女性の26.0%(95%不確実性区間[UI]:23.8~28.8)、男性の20.4%(18.2~22.9)が、COVID-19の世界的流行期間中の雇用喪失を報告した。 回答者の半数以上が、COVID-19の世界的流行の期間中に、家事や他人の世話が増えたと報告しており、北アフリカと中東を除き、女性が男性よりも有意に高率であった。最も男女差が大きかったのは、他人の世話の増加が高所得国で女性が男性の1.10倍に、家事の増加は中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアで女性が男性の1.22倍となっていた。 同期間中に、どの地域でも女性は男性に比べ、介護が原因で仕事を辞めたとの報告が多く、この性差は時間の経過に伴って拡大した。2020年3月の時点で、介護が原因の離職の世界的な割合は、女性が男性の1.8倍であり、2021年9月には2.4倍に拡大していた。 同期間中の学校の中途退学の割合は、全体では6.0%(95%UI:5.98~6.02)であった。学校閉鎖以外の理由による中途退学の報告は、女性/女児が男性/男児の1.21倍(95%UI 1.20~1.21)だった。最も性差が大きかったのは、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジア(女性が男性の4.10倍)と南アジア(同1.48倍)であった。 性差に基づく暴力の報告の割合は、女性が53.7%(95%UI:53.6~53.8)、男性は43.7%(43.7~43.8)であり、女性が男性の1.23倍(1.22~1.23)であった。最も頻度が高かったのは、中南米諸国とカリブ海諸国(61.2%、95%UI:60.9~61.5)、高所得国(59.9%、59.6~60.3)、サハラ以南のアフリカ諸国(56.7%、56.4~56.9)だった。 2021年9月の時点で、ワクチンへのためらいや接種には有意な男女差は認められなかった。 著者は、「社会はいま、重大な局面を迎えており、男女平等(gender equality)に向けた重要な進展がCOVID-19の世界的流行によって停滞したり、逆行したりしないように、女性/女児の能力開花(empowerment)への投資が必要とされている」としている。

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短期曝露の大気汚染、乾癬フレアのトリガーに?

 大気汚染への短期曝露が乾癬フレアのトリガー要因である可能性が示唆された。イタリア・ベローナ大学のFrancesco Bellinato氏らが症例クロスオーバーと断面調査法による観察試験の結果を報告した。 再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性疾患の乾癬は、感染症やストレスフルなライフイベント、薬剤など特定の環境要因によって再燃が引き起こされる可能性が示唆されているが、大気汚染がトリガー要因なのかについては不明なままである。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。 研究グループは、大気汚染への短期曝露が乾癬フレアに関連するかどうかを調べるため、症例クロスオーバーと断面調査法の両者を取り入れた観察試験を行った。2013年9月~2020年1月に縦断的に集めたデータを後ろ向きに解析。対象は、ベローナ大学病院の外来皮膚科クリニックを受診した慢性尋常性乾癬患者であった。 症例クロスオーバー解析には、「3~4ヵ月の期間中における2つの連続した評価時点の間にPASIが5以上上昇した場合」と定義された乾癬フレアを、1回以上有した患者を含んだ。断面的解析には、6ヵ月以上あらゆる全身性治療を受け、2回連続して行ったPASIの評価結果がグレード2以上であった患者を包含した。 主要評価として、乾癬フレア群と対照受診群の、それぞれ先行する60日間における大気汚染物質(一酸化炭素、二酸化窒素、その他の窒素酸化物、ベンゼン、粗大粒子状物質[PM10、直径2.5~10μm]、微小粒子状物質[PM2.5、直径<2.5μm])の平均および累積(曲線下面積[AUC])濃度を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、計957例の患者(フォローアップ受診4,398回)が包含された。平均年齢は61歳(SD 15)、男性602例(62.9%)であった。・イタリア環境保護研究所(ISPRA)の公式オープンソースの速報から取得した1万5,000超の大気汚染物質の濃度測定値を用いて解析を行った。・全体コホートのうち乾癬フレアを有する患者369例(38.6%)が、症例クロスオーバー解析に包含された。・すべての汚染物質の濃度は、乾癬フレア前60日間(フレア時のPASI中央値:12[IQR:9~18])のほうが、対照となる受診前60日間(PASI中央値:1[1~3])よりも有意に高かった(p<0.001)。・断面解析では、評価前60日間のPM10曝露平均20μ/m3超(補正後オッズ比[aOR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.21~1.99)およびPM2.5曝露平均15μ/m3超(1.25、1.0~1.57)が、PASI 5以上の悪化のリスクと関連していた。・さまざまな曝露の遅れや治療タイプを補正して評価のトリメスターを層別化した感度解析でも、同様の結果が得られた。

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高齢者と基礎疾患のある成人に早期の3回目接種を

 2022年3月11日、モデルナ・ジャパン株式会社(以下モデルナ社)はメディアセミナー「この春の感染拡大を見据えた3回目追加接種の必要性~Long COVID リスク等も視野にいれて~」を開催した。 本セミナーでは、はじめにモデルナ社 代表取締役社長の鈴木 蘭美氏より、コロナワクチンの開発と最新パイプラインについての説明が行われた。 コロナワクチンに関しては本年秋頃の追加接種の可能性を見込み、モデルナ社ではオミクロン株用を含む追加接種用の2価ワクチンを開発中だという。またmRNA医薬品創出技術を生かしたパイプラインについては、サイトメガロウイルス感染症ワクチン、MSD社と共同開発のがんに対するワクチン、アストラゼネカ社と共同開発の心臓発作時の損傷を防ぐ新薬など、グローバルで計44の新薬開発プロジェクトが進行している。パイプラインの中には新型コロナウイルス・インフルエンザ・RSウイルスに対する3種混合ワクチンも含まれており、2023年秋までの提供開始を目指しているという。 3回目接種と今後のワクチン開発について、鈴木氏は「できるだけ多くの方に3回目のワクチン接種を受けてもらい、免疫を備えてもらいたい。ワクチンのリーディングカンパニーとして、(今後の感染状況が)最悪の場合を想定して最善を備えたいと思っている」と強く語った。 続いて、国際医療福祉大学の和田 耕治氏より、第7波を見据えたワクチン戦略についての講演が行われた。 和田氏は、ワクチン接種状況のデータや自主調査の結果から3回目接種の遅れを指摘、国内外における3回目接種による重症化予防効果のデータを示し、とくに高齢者と基礎疾患のある成人に対する早期接種の重要性を述べた。また、英国のCOVID-19ワクチンサーベイランスレポート1)のデータを用いて、モデルナワクチンとファイザーワクチンの混合接種を含んだ3回目接種による発症予防効果についての解説を行った。 モデルナ社では、3月11日から5月10日まで、60名のサッカー選手が所属クラブの公式Twitterアカウントで、「#GoGoGo 3回目接種」のハッシュタグを付けて3回目接種を支援するツイートを行うキャンペーンを実施している。

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TAVR後の心房細動へのエドキサバン、日本人での解析(ENVISAGE-TAVI AF)/日本循環器学会

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)成功後の心房細動患者に対するエドキサバンとビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を比較したENVISAGE-TAVI AF試験の日本人サブ解析の結果、臨床アウトカムにおけるエドキサバンとビタミンK拮抗薬の違いはごくわずかだったことを、帝京大学の渡邊 雄介氏が第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)のLate Breaking Clinical Trialsで報告した。 ENVISAGE-TAVI AF試験は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化比較試験。TAVR成功後の心房細動患者においてエドキサバン(60mg/日もしくは30mg/日)とビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を最大3年間比較した。有効性に関する主要アウトカムは有害臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性塞栓イベント、人工弁血栓症、大出血)の複合、安全性に関する主要アウトカムは大出血だった。全体集団ではエドキサバン群がビタミンK拮抗薬群に対し非劣性を示すこと、および大出血発生率が高いことが報告されているが、わが国ではTAVRを受ける患者は小柄な女性が多く、抗血栓療法による出血リスクに影響する可能性がある。そこで、日本人においても全体の結果と一致するか評価するべくサブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は159例(エドキサバン群82例、ビタミンK拮抗薬群77例)で、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群における平均年齢は84.3±4.7歳と83.4±4.0歳、体重は53.8±10.1kgと53.1±10.3kg、BMIは22.1±3.4と22.3±3.2、投与量を減量した患者の割合は85.4%と85.7%であった。・有害臨床イベントの累積発生率は日本人集団のほうが全体集団より低かった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するハザード比(HR)は、全体集団が1.05(95%CI:0.85~1.31)、日本人集団が0.85(同:0.38~1.90)と同様だった。・大出血の累積発生率は全体集団と日本人集団で同程度だった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するHRは、全体で1.41(95%CI:1.03~1.91)、日本人集団で1.17(同:0.45~3.05)と日本人集団で若干低かった。・消化管の大出血は、全体集団ではエドキサバン群で多かったが(5.4%/人年vs.2.7%/人年、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)、日本人集団ではエドキサバン群3例(2.8%/人年)、ビタミンK拮抗薬群4例(4.1%/人年)だった。 これらの結果から、渡邊氏は「エドキサバンがTAVR施行後の日本人心房細動患者に対するビタミンK拮抗薬の代替治療となりうることが示唆される」とまとめた。

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HFpEFに対する左心房の負荷を軽減する心房間シャントデバイスの経カテーテル留置の第III相試験では有意な臨床効果が示されなかった(解説:原田和昌氏)

 駆出率が保持された心不全(HFpEF)に対して有効な薬物療法がないなかで、左心房の負荷を軽減する心房間シャントデバイス(IASD System II、Corvia Medical)の留置がHFpEF患者の運動時のPCWPを有意に低下し、1年後の心不全入院を減らす傾向(p=0.06)があることがHasenfuβらのREDUCE LAP-HF I試験により示され、にわかに注目を集めることとなった。 しかしながら、LVEF≧40%の心不全626例に対する無作為化第III相試験であるREDUCE LAP-HF II試験において、同デバイスの経カテーテル的留置を受けた群は、対照群と比較し有意な臨床効果が示されなかった。本試験は89施設による国際共同試験で、スクリーニング時に心エコーと運動時の血行動態検査(PCWPなど)を行い、対照群はシャム手技を受け最大24ヵ月の観察が行われた。主要エンドポイントとして、心血管死、非致死性虚血性脳卒中、心不全イベント、KCCQサマリースコアの変化を用いて、重要なものから階層的に検定していくFinkelstein-Schoenfeld法(WIN比)にて統計解析が行われた。シャム群と比較した心房間シャント療法群のWIN比は1.0で有意差はなく、主要評価項目の個別の要素にも有意差はなかった。本試験は多大な労力をかけたわりに非常に残念な結果となってしまった。 あくまでもおまけの解析であるが、事前規定のサブグループ解析において、シャム群と比較して心房間シャント療法群では、運動時の肺動脈圧が70mmHg超の群、右心房容積係数が大きい群、男性という3つのサブグループでむしろ治療が有害であった。また、運動時の最大PVRが基準値上限を超える188例をPost-Hoc解析したところ心不全イベントがさらに増加したが、運動時の最大PVRが基準値上限を超えない患者でのWIN比は1.28(p=0.032)であった。このデバイスは現在のところHFpEF患者全体に対する有効な治療法ではないと考えられるが、非常に多数例で運動時の血行動態を調べたことで、結果的にHFpEFやHFmrEFにおいて右心房機能(圧―容積関係)や肺血管抵抗の低酸素に対する反応性などの不均一性にも注目すべきであることが示唆された。 このシャントデバイスは欧州で利用可能である。欧州における製造販売後臨床試験のREDUCE LAP-HF III試験では、薬物療法に効果無効のHFpEFまたはHFmrEFに対し同デバイスを留置した患者が追跡されている。SGLT2阻害薬やARNIのHFpEFないしはHFmrEFに対する有効性が示唆されている現在、心房間シャントデバイスは付加的な治療でしかなく、他の薬剤と併用した際の有効例の探索やシャントサイズの最適化などが今後焦点になってくると考えられる。

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単回投与で効果が期待できる世界標準の梅毒治療薬「ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ」【下平博士のDIノート】第94回

単回投与で効果が期待できる世界標準の梅毒治療薬「ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ」今回は、持続性ペニシリン製剤「ベンジルペニシリンベンザチン水和物(商品名:ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は早期梅毒に対して単回投与で効果を発揮するため、既存治療の課題であったアドヒアランス不良による治療失敗を防ぐことができると期待されています。<効能・効果>本剤は、梅毒トレポネーマによる梅毒(神経梅毒を除く)の適応で、2021年9月27日に承認され、2022年1月26日に発売されました。<用法・用量>成人および2歳以上の小児早期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内に注射します。なお、2歳以上13歳未満の小児の場合は年齢、体重により適宜減量可能です。後期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして1回240万単位を週に1回、計3回、筋肉内に注射します。なお、2歳以上13歳未満の小児の場合は年齢、体重により適宜減量可能です。2歳未満の小児早期先天梅毒、早期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして体重1kgあたり5万単位を単回、筋肉内に注射します。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、主な副作用は、皮疹(斑状丘疹状皮疹、剥脱性皮膚炎)、蕁麻疹、喉頭浮腫、発熱(いずれも頻度不明)などでした。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、間質性腎炎、急性腎障害、溶血性貧血(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.梅毒の原因菌である梅毒スピロヘータの細胞壁の合成を阻害して感染症を治療する薬です。2.接種後に一時的な発熱、頭痛、倦怠感などが生じることがあります。症状がひどい場合はご相談ください。3.接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。<Shimo's eyes>わが国では2010年以降、梅毒の感染者数は男女ともに増加しています。国立感染症研究所感染症疫学センターが公表したデータによると、2021年第1~47週までに届出があった症例数は、2020年の同時期の約1.4倍であり、1999年に感染症法が施行されてからもっとも多いことが示されました。男性は20~40代の幅広い年齢で届出がありますが、女性では20代前半が突出して多く、これは先天梅毒の増加にもつながる問題です。本剤は、海外では梅毒治療の標準薬として広く用いられており、これまで耐性菌の報告はありません。一方、わが国での現行の治療は、アモキシシリンを1日3回、2~4週間(第2期以降はさらに継続)服用する方法が一般的で、アドヒアランス不良による治療失敗が少なくないという課題があります。そのような背景から、日本感染症教育研究会などの関連団体から本剤の開発が要望され、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を受けて開発されました。本剤の溶解性は低く、筋注部位から緩徐に放出された後、ペニシリンGに加水分解されて吸収されるため、血中濃度が長時間持続します。本剤は粘性が高いため、240万単位には18ゲージ、60万単位には21ゲージの注射針を用い、針が詰まらないよう、ゆっくりと一定速度で注射する必要があります。感染から1年未満(早期梅毒)の場合は単回投与ですが、感染から1年以上たった後期梅毒の場合は、週に1回を計3回投与する必要があります。本剤投与後、梅毒治療に特異的な「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」による一時的な発熱、頭痛、倦怠感などが生じる可能性があります。多くの場合は一過性ですが、治療したにもかかわらず調子が悪くなったと勘違いする患者さんもいるので、あらかじめ説明しておきましょう。参考1)PMDA 添付文書 ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ/ステルイズ水性懸濁筋注240万単位シリンジ

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腹痛患者、波があれば“管”を疑おう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第12回

第12回 腹痛患者、波があれば“管”を疑おう!―Key Point―肋間神経の前皮枝が腹直筋を貫く部位で絞扼されることがある前皮神経絞扼症候群は慢性腹痛のかなり多い原因と考えられているリドカインの局所注射で劇的に痛みが改善する症例:72歳 女性主訴)増悪する左下腹部痛現病歴)5ヵ月前に頻尿となり、近くの診療所で膀胱炎と診断、抗菌薬を処方された。膀胱炎の症状は良くなったが、しばらくして尿道の先端にツーンとする痛みが出現した。左下腹部の異常知覚もある。その後、徐々に左下腹部に耐え難い痛みが出現した。総合病院の泌尿器科と婦人科の診察では異常なしと言われた。食欲あり。体重変化なし。排便は規則的。帯下はない。既往歴)虫垂炎(20歳)、左卵管筋腫摘出術(33歳)薬剤歴)漢方[猪苓湯]、アセトアミノフェン生活歴)飲酒:なし 喫煙:なし身体所見)体温35.9℃、血圧197/116mmHg、心拍数96回/分、呼吸回数18回/分、意識清明腹部:恥骨左上方(腹直筋外縁)にピンポイントで圧痛あり。カーネット徴候陽性。tapping painなし。圧痛点周囲の皮膚3×3cmの領域に異常知覚あり。この部位をつまむと対側と異なり強く痛みを感じる直腸診:活動性出血なし、黒色便なし、骨盤内腹膜に圧痛なし経過)症状と身体所見から前皮神経絞扼症候群:ACNES(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome)を疑った1)疼痛部位に1%リドカイン10mLを皮下注射した注射の5分後から左下腹部痛は3/10に減少した。腹痛が悪化しため、2ヵ月後に追加の注射を行い、その後は軽快している◆上記の患者背景を『痛みのOPQRST』に当てはめてみると…Onset(発症様式)突然痛くなるPalliative/Provocative factor(寛解/増悪因子)前かがみ、足を組む、下肢を伸ばす時、左側臥位で痛みがひどくなる。歩きまわると痛みがまぎれる。楽になる姿勢はないQuality(症状の性質)焼けるような痛み。痛みがゼロになることはない。疼痛のある所に何かが張りついているような異常感覚ありRegion(部位)いつも左下腹部が痛む。尿道のほうに放散するような感じがするSeverity(強さ)死にたくなるくらいズキンという激しい痛みTime course(時間的経過)5ヵ月前から痛みはあるが、最近3ヵ月間はとくにひどい。痛みは毎日数回襲ってくる。持続時間は1~10分くらい。余波のような軽い痛みは一日中ある◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性腹症は年齢により疾患頻度が異なる。50歳以下なら虫垂炎、50歳以上ならば腸閉塞、胆嚢炎/胆管炎、虫垂炎を第一に考える 虫垂炎と鑑別が必要な疾患は、カンピロバクター感染症と憩室炎である前皮神経絞扼症候群は慢性腹痛の原因として多い【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】間欠痛か持続痛か腹痛に波があるかどうかを確認する。波がある腹痛は管(くだ)の痛みである。消化管や尿管由来の痛みであり、内臓痛とも呼ばれる内臓痛では、どこの部位に問題があるのかはっきり自覚できない尿管結石の痛みは非常に激しい。痛みが楽になった時も7/10程度の痛みは持続する。患者はベッドで七転八倒する。尿管に詰まった石が落ちると、痛みは嘘のようになくなる持続的に痛む場合には膜(まく)の痛みである。体性痛と呼ばれる。腹膜炎の痛みである痛みは限局し、振動によって痛みが響くことが特徴である。患者は腹部に振動を与えないようにそろりと歩き、寝返りをうたないようにじっとベッドに横たわっている胆嚢炎では胆嚢周囲に限局性の腹膜炎が起こるため、ピークに達した痛みは持続する(表1)内臓痛と体性痛(図)疝痛パターン2)画像を拡大する【STEP3-1】痛みの原因となっている層を明らかにする●皮膚ピリピリする、皮疹は数日後に出現することもある●筋骨格/皮神経体動時に痛みがひどくなる、カーネット徴候*が陽性である*カーネット徴候(Carnett’s sign)では、両手を胸の前で組み、臍を見るように頭部を前屈させ腹筋を緊張させる。この状態で疼痛部位を押し、痛みの軽減がなければ陽性●腹膜筋性防御あり。tapping painあり●内臓交感神経の緊張から嘔気、嘔吐、冷汗、徐脈を引き起こす【STEP3-2】虫垂炎の可能性を考える手術が必要な急性腹症の場合、50歳以下では虫垂炎が20%と最も頻度が高い。50歳以上では胆嚢炎/胆管炎、腸閉塞、虫垂炎が多い3)急性虫垂炎の典型的な症状経過は、(1)心窩部または臍周囲の痛み[間欠痛](2)嘔気/嘔吐または食欲低下(3)右下腹部へ痛みが移動[持続痛](4)振動で右下腹部が響く(5)発熱、が一般的である「アッペもどき」と呼ばれるカンピロバクター感染症では、腸間膜リンパ節炎を起こすので右下腹部痛となることがある。頻度の高い食中毒であるカンピロバクター感染症では、初期から発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛を起こす点が虫垂炎の典型的な症状とは異なる。急性憩室炎は右下腹部に痛みがあることが多く虫垂炎と紛らわしいが、虫垂炎が3日くらいで状態がかなり悪くなるのに対し、憩室炎では1週間以上状態は安定し食欲もあることが多い(表2)4)画像を拡大する<参考文献・資料>1)Waldman SD, et al. Atlas of Uncommon Pain Syndromes 3rd edition. Saunders. 2013.2)Silen W, et al. Cope's Early Diagnosis of the Acute Abdomen 22nd edition. OXFORD UNIVERSITY PRESS, INC. 2010.3)de Dombal FT, et al. J Clin Gastroenterol. 1994;19:331-335.4)窪田忠夫. ブラッシュアップ急性腹症. 中外医学社. 2014. p19.

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英語で「違法薬物」は?【1分★医療英語】第19回

第19回 英語で「違法薬物」は?Do you use any recreational drugs?(娯楽目的の薬物を使っていますか?)I’ve never use them.(一度も使ったことがありません)《例文1》Do you take any medications or drugs for recreational purposes?(医薬品や薬物を娯楽目的で使用していますか?)《例文2》This patient has a history of recreational drug-induced seizure.(この患者は薬物使用によるてんかんの病歴があります)《解説》米国での臨床においては、すべての患者さんに、違法かどうかにかかわらず娯楽目的で医薬品や薬物を使用しているかを確認しています。その際、薬物の種類が限定的にならないよう、“For example, medications that have not been prescribed to you, or any street drugs.”(たとえば、処方されていない薬やストリート・ドラッグなどのことです)と付け加えます。私が住むカリフォルニア州では、娯楽用途のマリフアナ使用は認められているため、マリフアナについては処方薬や違法薬物とは別に「タバコを吸いますか?」という質問の流れで「マリフアナを吸ったり食べたりしますか?」と聞くようになりました。一方で、オピオイド中毒も深刻な問題となっており、「痛み止め等の薬を服用していますか?」という点も念入りに確認します。おまけの知識として、薬は“medication”や“drug”ですが、今回の会話例のように“drug”は使い方次第では、「違法・娯楽薬物」を連想させることがあります。日本語の場合も「薬」と「ドラッグ」では、ニュアンスが少し違いますよね。「~の薬を飲んでいる」という表現は、前置詞の“on”を使って、“I’m on antihypertensive medication.”(高血圧の薬を飲んでいます)となりますが、“What drug are you on?”(何の薬を飲んでいるのですか?)という表現にすると、“on”と“drug”の組み合わせによって、「何の(違法・娯楽)薬物を使っているの?」というニュアンスにも聞こえるので、私は仕事においては“drug”より“medication”を多く使います。ただ、医療現場では“drug”もよく使われており、多くの場合、問題は生じていません。講師紹介

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第103回 実は存在するらしいデルタ株とオミクロン株の融合株

今年1月、キプロス大学のウイルス学者Leondios Kostrikis氏が率いるチームはデルタ株とオミクロン株の両方の変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ゲノムを見つけたと報告し1)、Deltacron(デルタクロン)と名付けたそれら配列をゲノム情報データベースGISAIDに登録しました。即座に反応した世界の専門家からの風当たりはきついものでした。Kostrikis氏らがGISAIDに登録した52の配列は新たな変異株を意味するものではないし、ましてや異なるウイルスがそれぞれ手持ちの遺伝情報を融合させて生じたものでもなく、実験での不手際による混入が招いたものであろうと多くの専門家はツイッターなどのソーシャルネットワークやら記者会見などで言い散らしたのです。たとえば世界保健機関(WHO)のCOVID-19チームのメンバーKrutika Kuppalli氏などはツイッターにオミクロン株とデルタ株が混じった超変異株などない(“#Omicron and #Delta did NOT form a super variant.”)と当時断言しました2)。研究の過程でオミクロン株がうっかり混じってしまったデルタ株検体の配列を読んでしまったことが原因だろうと同氏は推察しています。キプロスのKostrikis氏が配列をデルタクロンと呼んでしまったせいでデルタ株とオミクロン株が融合したウイルス配列が見つかったと幾つかのニュースは報じました。しかし配列はデルタ株であってデルタ株とオミクロン株の融合配列とは言っていないと同氏は釈明しています。とはいえ針のむしろのKostrikis氏はすっかり気が引けてしまったらしく、せっかくGISAIDに登録した“デルタクロン”の配列を72時間後には更なる調査が必要と言って引っ込めてしまいました。そんなこんなでもはやデルタクロンは幻として忘れ去られると思いきやさにあらず、デルタ株とオミクロン株の融合と思しきゲノムの報告は先月2月に入って相次ぎ、その月末27日までに融合産物らしいどれも非常に似通った配列がGISAIDに15も登録されています。そしてとうとう先週8日のmedRxiv掲載報告3)でフランスの研究者がその尻尾を捕まえたことを明らかにしました。デルタ株とオミクロン株のそれぞれに特有の変異を併せ持つSARS-CoV-2株・デルタミクロン(Deltamicron)を感染者の1人から培養で単離していわば生け捕りにし、そのゲノム配列を読み取ることに成功したのです。SARS-CoV-2感染は世界に広まってすでに数年が経ち、複数の変異種が時にあいまみえつつ入れ代わり立ち代わり跋扈しています。ウイルス2種がそれぞれ手持ちのゲノムを融合させるにはそれらがあいまみえている期間に同じ細胞に一緒に感染することを必要とします。デルタ株とオミクロン株の感染流行は数週間ほど重なっており、一つの細胞にそれらが共存して果てはそれぞれのゲノムを共有する機会は確かにありました。実際、デルタ株とオミクロン株の同時感染の報告は幾つか存在しますし、WHOのKuppalli氏のツイッター投稿とは裏腹にコロナウイルスがそれぞれ手持ちのゲノム情報を共有するのはよくあることです3)。フランスの研究報告の4日後の先週土曜日(12日)には米国の遺伝研究企業Helix社もデルタ株とオミクロン株の同時感染とゲノム情報の共有を裏付ける解析結果を発表しています4,5)。同社は米国でデルタ株流行とオミクロン株流行がかぶっていた去年11月から今年2月の感染例検体およそ3万件を解析し、同時感染20件を同定しました。そのうちの1つではウイルスゲノムの共有の痕跡が認められ、さらには、デルタ株とオミクロン株のゲノムが融合したウイルスが感染者2人から見つかりました。それらのSARS-CoV-2ゲノムは両端の一方(5‘末端)がデルタ株、もう一方(3’末端)がオミクロン株からのものでした。Helix社の研究で示唆されているようにデルタ株とオミクロン株の融合はどうやら稀であり、それら融合株がオミクロン株に比べて人から人により伝染しやすいという謂れは今の所ありません。ただしフランスの研究チームのスパイクタンパク質解析によると気味が悪いことにデルタミクロンは細胞膜への結合にうってつけ(optimization of virus binding to the host cell membrane)になっているようです3)。フランスの研究チーム曰く世界で初めてデルタミクロン株が今や単離されたことで細胞への結合のほどが実際にはどうなのかの検討が早速始まるでしょう。加えて、細胞各種でのその増えやすさ、先立つ感染やワクチン接種で備わった中和抗体の効き具合、遺伝的変化の様子なども今後調べることができます3)。ちなみにデルタ株とオミクロン株の融合などないと断言した件のKuppalli氏のツイッターには「今はどう考える?(So, what do you have to say about this now?)」といった問いかけがあり、また最近のニュースでも言及されました。それに対して同氏は先週11日に以下のように回答しています。“This is a perfect example of media taking a tweet out of context. I wrote that tweet in December in relation to a preprint that reported “Deltacron” that tweet was relevant to that story at the time. Using a tweet from three months ago when things have evolved is inappropriate(ニュースが状況を無視してツイートを取り上げる良い例だ。私のツイートはデルタクロンを報告したプレプリントに関する去年12月のものだ[筆者注:ツイートされたのは今年1月10日。それにツイートで引用されているのはプレプリントではなくCNBCのニュース]。3ヵ月前[筆者注:2ヵ月前が妥当でしょう]のツイートを状況が変化した今になって取り上げるのは不適切だ)。この言い分はちょっと的外れと思うのはわたしだけでしょうか。参考1)Deltacron: the story of the variant that wasn’t. Nature.2)Krutika Kuppalli氏ツイッター投稿3)Culture and identification of a “Deltamicron” SARS-CoV-2 in a three cases cluster in southern France. medRxiv. March 08, 20224)Evidence for SARS-CoV-2 Delta and Omicron co-infections and recombination. medRxiv. March 12, 20225)"Deltacron" with genes of Delta and Omicron found Reuters.

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造影剤お役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」開設【ご案内】

 ケアネットは、オンラインでのエンゲージメントに特化した新プラットフォーム「DXPlus」を用いて、GEヘルスケアファーマ提供のもと、放射線科の医師や医療従事者を対象とした造影剤に関するお役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」を公開した。 本サイトは「集まって学び、解決する」をキーワードに、トップランナーの先生方による症例紹介コンテンツなどを掲載するライブラリコーナーや、造影剤に関する疑問やその答えが一覧ですぐに見つかるように工夫されたQ&Aコーナー、GEヘルスケアファーマの講演会などの告知をするイベントコーナーなどを充実させ、造影剤で困ったら「Contrast ColleGE」というブランディングを目的にスタートした。 今後は、提供元の「機器と造影剤のGE」の強みを活かしたシームレスな情報発信や、双方向コミュニケーション機能などの実装を通し、医療現場に寄り添った新しい価値を「Contrast ColleGE」から提供していく。「Contrast ColleGE」はこちらから※Contrast ColleGEは、CareNet.com会員ID(メールアドレス)のみでサイト利用登録が完了します。

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